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1949/04/06 第5回国会 参議院 参議院会議録情報 第005回国会 労働委員会 第4号
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1949/04/06 第5回国会 参議院

参議院会議録情報 第005回国会 労働委員会 第4号

#1
第005回国会 労働委員会 第4号
昭和二十四年四月六日(水曜日)
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  委員の異動
四月四日(月曜日)議長において中野
重治君を委員に選定した。
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  本日の会議に付した事件
○一般労働問題に関する調査の件
○夏時刻法改正に関する陳情(第百七
 十九号)
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   午後一時四十二分開会
#2
○委員長(山田節男君) 只今から労働委員会を開会いたします。先ず最初に今回四月四日付をもちまして、共産党の中野重治君が労働委員に選任されました。御紹介申上げます。どうぞよろしくお願いします。続きまして本日の議題になつております一般労働問題調査におきまして、大阪の大和製鋼株式会社並びにヤマサ農機具株式会社、この生産管理につきまして大阪地方裁判所におきまして、合法化と申上げたら語弊があるかもしれませんけれども、これに対する判決が降りておりますので、これに対しまして法務廳の檢務局長の高橋さんがお見えになつておりますので、この両会社の生産管理に関する判決の経緯について御説明を願うことといたします。
#3
○政府委員(高橋一郎君) 只今の委員長のお話にありました大阪地方裁判所における、大和製鋼株式会社関係の刑事事件、これは本年の一月十二日に刑の免除の言渡がありましたので、上訴期間内に檢事が控訴いたしております。從つて判決はまだ確定しておりません。それから次の大阪ヤマサ農機具株式会社の業務妨害事件、これは昨年の十二月二十七日に執行猷予、うち一部無罪という判決がありまして、これは檢事控訴に至らず、そのまま期間の経過によりまして確定いたしております。実はこのヤマサ農機具の問題も、これを確定せしめたことは、法務廳といたしましては聊か不満足でありましたのですが、事情を聽いてみまするに、年末押しつまつての判決言渡でもつて、而も判決の理由が書類が整つてなかつたために檢討ができなかつたというような事情があつたようであります。でこの二つの事件は、いずれもいわゆる生産管理に関する事件でございますが、第一の大和整鋼の事件は、最初会社側が工場閉鎖をいたしまして、倉庫に鍵などをかけて生産管理に事前に対抗したのでありますが、その灘を壊したりなどいたしまして、生産管理を始めたというような点を捉えまして、暴力行爲等処罰に関する法律違反として、組合側数名を起訴した事件であります。でこれに対しまして裁判所は、刑の免除という言渡をしておるのでありますが、その理由を要約して申上げますというと、生産管理に伴う暴力行爲につきましては、刑法第三十五條のいわゆる正当なものとしての違法性阻却ということは考えられない。併しながら特別な事情によつて緊急行爲として刑法第三十七條の緊急避難に当るものとしていろいろ條件がありますけれども、その條件に当嵌ります限りは、違法性を阻却する場合がある。で本件の場合は、この緊急避難の一つの場合であるけれども、ただ方法が必要の程度を超えておる、いわゆる過剰行爲である。併しその程度が酌量すべきものであるからして刑を免除する、こういうことになつておるのであります。
 これに対してヤマサ農機具の方は、いわゆる生産管理というものを刑法の二十五條、或いは三十七條、いずれということもはつきり申しませんで、合法な場合があり得るのじやなかろうか、併し本件の場合は、これは合法の場合とは言い得ないということで、執行猷予の判決を言渡しておるのでありますが、併し起訴された事実の中で、生産管理中のヤマサ農機具大阪支店に置いてあつた判製品等を会社側の者が東京本店に送ろうとして、自動車に積んで運び出そうとした。それを組合側の者が威力を以て妨害したのでありますが、これを業務妨害として起訴いたしましたところ、これは会社側の方がやり過ぎである。組合としてこれを阻止するのは当然であるというような考え方で、この点は無罪にいたしておるようであります。行爲の大要その他は判決書に詳しく書いてございますので、お手許の資料について御覧を願いたいのでありますが、現在生産管理に関する刑事乃至民事の事件は相当沢山ございます。その全体の傾向は、法務廳といたしまして考えております方向に向つておると見ておるのでありますが、中にはやはりそれと違つた裁判例もございます。その数は少ないのでありますが、ここに現れました二件などはそういう少数の例に当るものであります。この種の問題はできるだけ早く最高裁判所の権威のある裁判によりまして、確定されることを希望するのでありますが、遺憾ながらなかなかその運びに至つておりません。私共も個々の裁判の内容についてもできるだけ注意をいたしておりますけれども、どうもこの二つの問題は大勢から言いますと多少特殊な例になるのではないか。從つて生産管理に対する裁判所の考え方というものを、この二つの例によつてのみ判断するということは間違いではないかというふうに考えておる次第であります。尚御質問によりましてできるだけ詳細に御答えをしたいと思います。
#4
○委員長(山田節男君) 只今の法務廳檢務局長高橋さんの大和製鋼並びにヤマサ農機具会社の生産管理に関する判決の経緯について御説明ありましたが、これについて御質問ございませんか……。私から一つお尋ねしますが、大阪の地方裁判所で二つともこういう判決を下しておるのですが、確か第二國会と私記憶するのですが、当時の鈴木法務総裁が法務廳としての生産管理の経緯をはつきりさせておるのですね。そういうものがあるにも拘わらず違法性の阻却、こういつたような労働組合法の第二條でしたが、これの経緯ですが、私は法務廳の生産管理の経緯は相当はつきりしておると思うのですが、これを見ると何だか部分的の合法性だけを謳つておるのであつて、例えば生産管理全体を合法化しておるという意味じやない。
#5
○政府委員(高橋一郎君) 無論そのようには見えません。
#6
○委員長(山田節男君) そのように見えませんね。これは村尾委員は大阪ですが、この経緯をあなた御存じないですか。
#7
○村尾重雄君 ヤマサは知つてますが、言うことはありません。
#8
○委員長(山田節男君) これは法務廳としてこの判決の要旨を御覽になつての意見はありませんせか。意見というとおかしいが、この要旨は御覧になつたですか。
#9
○政府委員(高橋一郎君) 見ました。意見はいろいろあるのでありますけれども、特にこの判決についてのみということではなくして、私共は生産管理に関する全体の傾向ということをいつも氣をつけておるのであります。むしろそういう方のお答ですとやり易いのですが、この判決自体を特に取上げてちよつと申上げます。この二つの判決を比較いたしまして法理論的に私が法務廳といたしまして注意する点がございます。それはヤマサ農機具の方は、生産管理について合法の場合があり得るという考を持つておるのでありますが、その考え方は昭和二十一年の食糧メーデー前後に現われました一部の学者の、いわゆる理想型生産管理合法論という域を多く出ていないというふうに考えておるのであります。それに対しまして、大和製鋼の方の判決は結論はともかくといたしまして、理論的には一つの進歩を示しておると私は考えております。その違いは大和製鋼の判決におきましては、いわゆる刑法第三十五條の正当の行爲という問題ではないということをはつきり言つておるのであります。そうしてただ問題として残るのは、いわゆる緊急行為として許される場合があるかどうかということを更に判断しておるのでありまして、從來の生産管理合法論というものは、非常に大雜把でありまして、その点の解明が実は足らなかつたのであります。私は大和製鋼の判決をこのように三十五條の問題と三十七條の問題とを区別して考える考え方は非常に結構であるというふうに実は考えておるのでありまして、三十五條の正当行爲として論ずる場合と三十七條の場合とどのようにでは結論的、結果的に違うかと申上げますと、第三十七條の緊急避難というものは、法律が介入するいとまのない時と場合における問題でありますから、裁判所の前に現れたときには、これは止むべき問題であります。仮に緊急行爲として正当と認められたとしましても、それが民事或いは刑事の裁判所の問題になりましたときには、その行爲はもはや続けらるべき問題ではないのであります。然るに從來やられておりましたように、刑法第三十五條の正当行爲の問題である、こういうことになりますというと、裁判所の面前に出ましても、尚且生産管理を強行する、こういうような弊害をもたらすのでありまして、非常に專門的な点でございますけれども、実は生産管理論に関する重要なる問題であるというふうに考えておるのであります。法務廳の檢務局といたしましては、生産管理問題が非常に理論的にも紛糾の形を呈しております際は、先ず三十五條の問題ではないということを力説しておつたのであります。そのような結果がやはり大和製鋼の裁判例に現れているのではないかというふうに考えているわけであります。そうして、次に來る問題は、緊急行爲として認め得るか否かという問題なのでありますが、これも相当に研究すべき問題であろうと思います。この点については、まだ余り多くの議論を見ていないようでありますけれども、先ず生産管理論というものは、仮りに合法と認めらるるにしても、それは緊急避難として認めらるることがあるかどうかが問題となるのであつて、三十五條のいわゆる正当行爲としていつどこでも続けておられる行爲という意味では決して正当視されるものではない、こういうことを言つている点においては大和製鋼の裁判例は一つの興味のある資料である、恐らく結論だけを御覧になる方は、いろいろな感じをそれによつて持たれると思うのでありますが、それに到達した行き道を考えております我々といたしましては、その点を解明しただけ大和製鋼の裁判例は一つのプラスであるというふうに考えておるのであります。
#10
○委員長(山田節男君) 外に御質問ございませんか。
#11
○一松政二君 それではちよつと伺いますが、その三十五條は私は的確に存じませんですが、それが正当行爲である生産管理は、時と場合によつて、やつてもいいのだという概念的な考え方は裁判所の方の側においてもう大体解消していると、承つていいのですかそういう議論は……。
#12
○政府委員(高橋一郎君) これは裁判所は個々独立でありますので、私としては、裁判例によつて大体の傾向を申上げることができる程度でありますけれども、大体の傾向はそのように考えてよろしいのではないかと思つているのであります。
#13
○一松政二君 それは一般刑法から見た場合の生産管理に対する考え方も、あなたの今のお話のようなふうに余程はつきりして來ていると思うのですが、いわゆる緊急生産管理は、緊急避難のような場合というものは、常識的に考えて、めつたになかろうと考えるわけです。すると、今は労働組合法にこういう生産管理に関する、いわゆる労働者の不法行爲というものが、余りはつきりしていないものだから、こういう問題が一般刑法の條文によつてのみ考えられると思うのですが、これはアメリカでも問題になつておつていろいろ経営者の不法行爲、或いは労働者の不法行爲というものが或る程度明示されているのであります。労働立法にこれが明示されれば余程簡單になるのじやないですか。
#14
○政府委員(高橋一郎君) この問題は各方面に相当要望もありまして、私共も眞劍に考えたこともありますが、勿論法文に書き上げられれば明瞭であります。併しながらこれは法文に規定するということが、非常に技術的に困難だろうと思うのであります。
#15
○一松政二君 その点をもう少し具体的に御説明願いたいですね。技術的に困難であるという理由を……。
#16
○政府委員(高橋一郎君) 生産管理というものを先ず定義付けることが可なり面倒ではないかというふうに考えているのであります。むしろそのような規定をするよりは、私としては、こういう規定を置けばもう少しはつきりするという考えを持つておりますけれども、それも突き詰めて考えるというと、結局要らないのじやないかということになるのであります。それは労働組合法の第十二條に民事上の訴権について制限を加えております。御承知のように、これは損害賠償請求権を制限しているのでありますが、これは所有権に基く請求権、いわゆる物上請求権というものの民事上の訴権を制限するものではない、こういうことを規定すれば、生産管理については極めて明確になる、こう思うのであります。併し労働組合法第十二條が物上請求権まで制限しているように文理上読めるならば、そういう注意書も必要でありますけれども、当然只今の法文でそういう誤解は生じ得ないものというふうに考えておりますから、結局必要はないというふうに結論を一應得ている次第であります。
#17
○一松政二君 常識的に考えるというと、結局経営者が休止状態におけるものを経営者の意思に反して、これを部分的にか或いは全体的にこれを運行しようという行為のように考えられるのだけれども、そういうことを法的に決めることが非常に困難だとおつしやるのですか。
#18
○政府委員(高橋一郎君) そうです。むしろこれは使用者側の自覚が足りないので、そういうことがいろいろ問題になつているのであつて、使用者側の方が的確に対抗手段を講ずれば、何らそういう難解な規定を設ける必要はない、恐らく規定を設ければ難解なものになります。そういうものは置く必要はないというふうに考えております。
#19
○一松政二君 そうすると今の考えでは、使用者側の方で工場を閉鎖することは当然の権利と認められているわけでしよう。
#20
○政府委員(高橋一郎君) そうです。
#21
○一松政二君 であるから、それを明確に工場の閉鎖を宣言した場合にこれを侵す者は何によつて罰しますか。
#22
○政府委員(高橋一郎君) そのような場合に、直ぐに刑事処分ということを考えるのは私共は実はとつていないのであります。大体労働法の精神から言いまして、事柄は先ず第一に当事者間で解決すべき問題であるというふうに考えておりますので、從前のように直ぐいわゆる檢察、警察の権力を以てその間に介入するということは、これはできるだけ避けたいというふうに考えているのであります。それでは当事者間の話合いでそのような問題が片附かない場合に、使用者側としてどういう対抗手段があるかと申しますれば、先程もちよつと触れましたような物上請求権に基いて、工場の占有の引渡しを民事上求むることが私は妥当であるというふうに考えるのであります。從つてその民事訴訟によりまして然るべき決定がありますから、その裁判の執行はこれは嚴格にいたします。そういう方法で対抗の手段は十分に立つのでありまして、何も生産管理というものを定義づけて、そうしてそれに触れれば直ちに何らかの刑事訴追を受けるというようなふうにするまでの必要はないのじやないかというふうに考えておるのであります。
#23
○一松政二君 ちよつと速記を止めて下さい。
#24
○委員長(山田節男君) 速記を止めて。
   午後二時十一分速記中止
   ―――――・―――――
   午後二時三十二分速記開始
#25
○委員長(山田節男君) 速記を始めて下さい。別に質問がないようでありまするから、只今議題となりました大和製鋼株式会社並びにヤマサ農機具会社の生産管理に関する法務当局の説明並びに委員の質疑を終ることといたします。
#26
○委員長(山田節男君) それから次に陳情が三つ参つておりまして、夏時刻改正に関する陳情が香川縣の方から参つておりますので、これを一つ御審議を願いたいと思います。ちよつと速記を止めて。
   〔速記中止〕
#27
○委員長(山田節男君) 速記を始めて。それでは本日の労働委員会はこれを以て散会いたします。
   午後二時四十七分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     山田 節男君
   理事
           一松 政二君
           平野善治郎君
   委員
           原  虎一君
           村尾 重雄君
           田口政五郎君
           田村 文吉君
           中野 重治君
  政府委員
   檢 務 長 官 木内 曾益君
   法務廳事務官
   (檢務局長)  高橋 一郎君
   法務廳事務官
   (調査意見第一
   局長)     岡咲 恕一君
   労働政務次官  宿谷 榮一君
   労働基準監督官
   (労働基準局
   長)      寺本 広作君
ソース: 国立国会図書館
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