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#1
第061回国会 商工委員会公聴会 第1号
昭和四十四年六月二十七日(金曜日)
    午前十時三十四分開議
 出席委員
   委員長 大久保武雄君
   理事 宇野 宗佑君 理事 浦野 幸男君
  理事 小宮山重四郎君 理事 藤井 勝志君
   理事 武藤 嘉文君 理事 中村 重光君
   理事 堀  昌雄君 理事 玉置 一徳君
      天野 公義君    小笠 公韶君
      大橋 武夫君    海部 俊樹君
      神田  博君    鴨田 宗一君
      黒金 泰美君    小峯 柳多君
      島村 一郎君    菅波  茂君
      田澤 吉郎君    丹羽 久章君
      橋口  隆君    福永 健司君
      三原 朝雄君    石川 次夫君
      岡田 利春君    加藤 清二君
      佐野  進君    千葉 佳男君
      中谷 鉄也君    古川 喜一君
      武藤 山治君    塚本 三郎君
      近江巳記夫君    岡本 富夫君
 出席政府委員
        特許庁長官   荒玉 義人君
 出席公述人
        株式会社名機製
        作所取締役第二
        技術部長    篠田米三郎君
        株式会社グレー
        ス代表取締役日
        本発明婦人連盟
        副会長     大橋 摂子君
        水沢化学工業株
        式会社取締役社
        長
        君島技術研究所
        所長      菅原勇次郎君
        社団法人発明協
        会東京支部理事 君嶋 武彦君
        弁  理  士 中島 信一君
        三井経営経済研
        究所所長    佐藤得二郎君
        経営評論家
        株式会社孝安産
        業代表取締役  桝屋 好昭君
        弁  理  士 志賀 武一君
        日本商工会議所
        常務理事    三輪 包信君
        全国発明コン
        クール受賞者連
        盟総務     白石 国彦君
        吉村科学院長
        技術士     吉村 昌光君
        株式会社海光社
        取締役社長   林   寿君
 委員外の出席者
        専  門  員 椎野 幸雄君
    ―――――――――――――
六月二十六日
 委員勝澤芳雄君辞任につき、その補欠として太
 田一夫君が議長の指名で委員に選任された。
同日
 委員太田一夫君辞任につき、その補欠として勝
 澤芳雄君が議長の指名で委員に選任された。
同月二十七日
 委員遠藤三郎君、田中榮一君、増岡博之君及び
 佐野進君辞任につき、その補欠として田澤吉郎
 君、菅波茂君、三原朝雄君及び中谷鉄也君が議
 長の指名で委員に選任された。
同日
 委員菅波茂君、田澤吉郎君、三原朝雄君及び中
 谷鉄也君辞任につき、その補欠として田中榮一
 君、遠藤三郎君、増岡博之君及び佐野進君が議
 長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の公聴会で意見を聞いた案件
 特許法等の一部を改正する法律案(内閣提出第
 七四号)
     ――――◇―――――
#2
○大久保委員長 これより会議を開きます。
 特許法等の一部を改正する法律案について、公聴会に入ります。
 本日御出席願いました公述人は、株式会社名機製作所取締役第二技術部長篠田米三郎君、株式会社グレース代表取締役・日本発明婦人連盟副会長大橋摂子君、水沢化学工業株式会社取締役社長菅原勇次郎君、君島技術研究所所長・社団法人発明協会東京支部理事君嶋武彦君、弁理士中島信一君、三井経営経済研究所所長・経営評論家佐藤得二郎君、株式会孝安産業代表取締役桝屋好昭君、弁理士志賀武一君、日本商工会議所常務理事三輪包信君、全国発明コンクール受賞者連盟総務白石国彦君、吉村科学院長・技術士吉村昌光君、株式会社海光社取締役社長林寿君、以上十二名の方でございます。
 この際、公述人各位に一言ごあいさつ申し上げます。
 本日は、御多用の中を御出席いただきまして、まことにありがとうございます。
 御承知のとおり、本案は、最近における出願の激増と、出願内容の高度化等の実情にかんがみ、その出願の処理の促進に資するため、出願の早期公開及び出願審査の請求の制度を設ける等、工業所有権制度の整備をはかる必要があるとして、政府から提出されたものであります。
 当委員会といたしましては、連日慎重審議を続けておるわけであります。この機会に、広く各界からの御意見を求めるべく、ここに公聴会を開会いたした次第であります。何とぞ公述人各位におかれましては、本案について、それぞれのお立場から、忌憚のない御意見をお述べいただき、もって本案審査の参考に資したいと存ずる次第でございます。
 なお、御意見の開陳は、一人十五分以内におおさめいただくよう特にお願い申し上げます。
 この際、念のために申し上げますが、発言の際は、委員長の許可を得ることになっております。また、公述人は、委員に質疑をすることができませんので、あらかじめ御承知おき願います。
 それでは、まず篠田公述人にお願いいたします。篠田公述人。
#3
○篠田公述人 私が今回の公述人として申し上げたいと存じますことは――私の立場を最初にちょっと申し上げなければいけないと思いますが、資本金一億五千万、従業員約七百名の、いわゆる中小企業の、名古屋にありますプラスチック成型機など、そういうプレス機械をつくっておる企業の技術及び特許関係を担当しております役員といたしまして、今回の改正法案に対して、若干意見がございますので、それを申し述べさしていただきたいと思います。
 まず私どもの立場でいきますと、中小企業が大企業に対抗して生きていくためには、御承知のとおり、自分の専門技術を持つ以外にないのです。この専門技術は、特許とノーハウでございます。大企業の資本力、その他の強力な攻撃から守ってくれますのは、現在特許制度以外にないと存じております。それゆえに、私どもは現在特許約百五十件、実用新案百五十件、計三百件ほどの工業所有権を持っておりますが、さらに年々大体百件内外の特許、実用新案等を出願しております。ところが現実は、これが三年とか四年とかたちませんと、その結果がわからないのでございます。現実にこういう例でたいへん困った例もございますのですが、たまたま新機械を開発いたしまして、それは私どものような企業ですと、特許を申請すると間もなく実際その機械を売りに出します。市場に出すわけです。そうしますと、いろいろこれを模倣する会社等が出てまいりましてなかなか困るのですが、さて特許のほうの黒白はなかなかつかない。それでたまたま四年何がしかかかりまして公告になって、その段階になりますと、出願当時の技術というものがだんだん忘れられてしまって、たいへんな異議が出る。またそこで異議の決定があったりいろいろありまして、私どもは出願人の立場として実はにがい経験をなめておりますので、その立場からも早期公開を望むものであります。
 それからさらに、いわゆる第三者の立場に立って、競争相手の特許の実情、これは非常に神経を使うのでありますが、たとえば今日では外国の競争相手が非常に問題になってきておりますので、私どもといたしましても、たとえばアメリカのオフィシャル・ガゼットだとか、イギリスのアプリッジだとか、ドイツのアウスツーゲというようなものまで若干目を通しております。もちろん国内の特許公報は、自分の守備範囲は目を通しておるわけです。こういう立場に立ちますと、実は一番神経を使っておりますのは、大体同業の競争相手が何かやりますと、広告が一番先に出るわけです。そうすると、広告の中に新しいことが書いてある、特許出願中だと書いてありますと、一体どういうことをやっておるだろうと非常に神経をとがらすわけです。それはフランスの特許が早いとか、いろいろありまして、そういう点もありますけれども、何といっても国内の特許公報が公開という手段ででも早く知らしていただけるということは最も望ましいことなんです。この立場からも早期公開を希望するものであります。
 しかし、それだからといって、すべてそれでは早期公開だけしていただけばよろしいかということ、そうではなくて、希望がございます。それは、先ほども申しましたように、あくまでも私どもは狭い範囲を見ておるのです。自分の専攻範囲だけを見ておりますので、分類を正確にしていただきたいということであります。分類がかりにはずれますと、永久に網にかからないことになります。したがって、人間のおやりになることですから間違いがないということは保証できぬかもしれませんが、幾分余裕を持って、つまり多少でも関係のあるものを入れていただくというようなことで、狭い範囲を見ておる者にも分類に落ちがないということをやっていただきたい。
 それからいま一つは、審査の請求の期間が長過ぎるということを痛感するものであります。これは何か答申にも七年というようなあれが出ておるようですが、実は私は先ほど申しましたような理由によりまして、思い切って短くしていただきたい、できれば私の希望は二年ぐらいに限定していただきたいと思っております。これは私は可能ではなかろうかと思っております。その理由を簡単に申しますと、出願人は出願のときに、これは防衛的なものか、権利を主張するものかは大体わかっているはずです。それから重要なものなら外国出願をするかどうかということも一応考えるでしょう。そうすると一年以内にやはり態度をきめなければいかぬ。となれば、大部分が一年で一応その決断がつくのじゃないか。としますれば、一年三カ月の期間をかりに与えるとしますと、公開のときには出願人が審査請求をする決意かどうかということが明らかになります。これは第三者の特許等を見る者にとってはたいへん安心になります。これが七年間もいつ特許になるかならないかわからぬようなことで、幽霊のような存在でおりますことは、たいへん迷惑だと思います。それから第三者の請求はもちろん公開になってからでなければできませんから、これはその後のたとえば三カ月とか六カ月とかかかるとしましても、通算して出願から二年あれば一応その黒白ははっきりする、こういう形に持っていっていただけたら、たいへんこの公開制度が前向きで有効になるのではないかと確信しておるのです。
 その次に、もう一つはいわゆる補正の制限が甘過ぎると思います。大体この改正法案全体を見まして私の感ずることは、出願人の立場を考慮し過ぎておって、第三者に対する考慮が非常に欠けておる。つまり第三者の立場をあまり重視してない。これが七年間もいつ特許になるかわからぬ、しかも補正はだらだらとやられる、そういう不安定なものを監視しておる、それは中小企業、個人というような調査網の狭いものにとってはたいへん苦痛であるということを十分お考え願いたいと思います。
 それから、それでは自分で大体あやしいものを審査請求したらいいではないかという御意見があるかもしれませんが、これは御承知のとおり値段も高い。中小企業ではなかなかそういうわけにはいかないと思います。ことに私の所見では、大体特許になるとはっきりしたもの、ならないときはっきりしたもの、こういうものは五〇%、残り五〇%はボーダーラインで、どちらになるかはっきりしないものだろうと思うのです。そうすると、そういうものがいま申しましたようにふらふらといつまでもペンディングの状態におる。これはかりに七年後に審査請求があったといたしますと、その七年前の出願当時の状況にさかのぼって異議の資料を出すにしても、あるいは情報を提供するにしましても、もう古い文献などいまとっておくのはたいへんなんです。頭の中で整理するのだってたいへんです。こういうものに、おそらく審査官でも、その古い時点までの資料をお探しになるということはたいへんだと思います。これはマイナスであって、一つも益するところはないと思います。したがって、なるべくできるならば私は出願と同時に早期公開していただけば、すぐなまなましいわれわれの現在の知識でもって情報提供ができるのでありますが、それは無謀でできませんとしても、どうか早期公開をお進めになるならば、なるべく早い期間に少なくとも審査請求は打ち切っていただきたい。そうすればペンディングになっているものが明らかになる、こういうことを切望したいわけであります。
 それからもう一つは、早期公開があると模倣が多く出るのじゃないかという議論があるそうですが、これは補償金の制度もできておることでありますし、模倣をやるというようなことを考え出したら、これは大体企業としても盗用で長く栄えるわけはございませんので、このほうは私はそれほど問題にならぬと思いますが、ただ願わくば補償金は手続を簡単にしていただいて、裁判所まで持っていくその手数、費用のために中小企業は二の足を踏みます。これを簡単にしていただくという方策が何かあるように承っておりますが、これはぜひ強力に進めていただきたい、以上が私の所信でございます。
 どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
#4
○大久保委員長 次に、大橋公述人にお願いいたします。
#5
○大橋公述人 私は、日本発明婦人連盟の大橋でございます。
 おかげさまで、いろいろ特許庁はじめ関係御当局の発明奨励、特に女性への、また児童への奨励のおかげをもちまして、このところ年々急激に女性の発明家がふえていて、現在、全国発明婦人協会と私ども日本発明婦人連盟と、女性だけでも二団体ございます。これはまことに喜ばしい傾向でございますし、また関係御当局に深く感謝いたしております。これからさらに一段と飛躍してというおりもおり、私ども婦人発明家を無視、死滅に追いやるような法案が出されたことは、非常に遺憾でございます。と同時に、その矛盾、そういうものに対して理解に苦しむものでございます。
 いつ、どこの世の中でも、自分でせっかく育てたかわいいわが子を自分の手で、ないしは自殺させるような、そんなばかなことはあり得ないはずでございます。それが今回の法改正が不幸にして通りますと、現実にあり得る状態になるのでございます。
 そこで、それではなぜそういうような結果を招くかということを次に三点ほど申し上げさせていただいて、十分に慎重御審議を賜わりたい次第でございます。
 先ほどの公述人からもお話が出ましたように、料金の改正問題、出願料が一挙四倍も五倍にもなるということ、この値上げ問題は、非常にみみっちい考えでございますが、女性だとか児童の場合には非常に深刻な問題なのでございます。そればかりではございません。今度は、権利として保護していただくためには、さらに審査請求という手数のかかることをしなければならないのでございます。こういう二重手間、また二重費用のかかるということは、それでなくとも諸物価の値上がりでやりくり生活に非常に忙しい私ども主婦にとりましては、たいへんな負担になるわけでございます。結局、極端な言い方かもしれませんが、言をかえますと、もう女性の発明は要らないんだ、子供の発明は要らないんだ、もう発明しなさんなという、突き放されたような状態に置かれたのとひとしいと申し上げても決して過言ではないと思います。先ほど申し上げたように、片や、御奨励いただいてここまで育った私どもが、片や、もう必要ないんだということ、ここに非常な疑問を感じる次第でございます。
 次に、今度の改正問題で問題になっております公開制度、これについて二つほど申し上げたと思います。
 公開制度がとられますと、膨大な公開公報、そういうものの閲覧をしなければならないわけでございます。これは一面、机上では非常に簡単なように思われがちでございますが、大企業でそれ専門の方をおかかえいただくならば別ではございましょうけれども、それでもその費用また時間的な面では、なかなかたいへんだと思われます。それが私ども中小、零細微力な婦人発明家にどうしてできましょうか。時間的にもまた能力的にも不可能に近い問題だと思います。特に、私どもは全国的な会員組織でございますが、地方の会員の方は、ことさらたいへんなことだといまから憂うる次第でございます。
 もう一つ公開制度の件で、今度公開制度がとられますと、御承知のように一年半で公開されるわけでございます。これは私ども考案したものが、まるでどろぼう市場にさらされる――たいへんきついことばを使って恐縮でございますが、それだけ深刻ということでごかんべん願いとうございます。どろぼう市場にさらされるようなものでございます。結局その間の保障、保護の問題、理論上のことは一応納得できるのでございますが、よくお考えいただきますと、現在の日本の実情では不能なことばかりで、その点どうも納得できないわけでございます。御承知のように、現在のあれでも、私ども婦人の場合は微力なるがゆえに、だいぶ模倣されたもので泣き寝入りをしている点がございます。今日は時間の制限がございますので、一応実例は省かせていただきます。
 そういうふうに考えてまいりますと、公開制度というのはまるで模倣奨励ではないかというような解釈も片やできるのでございます。そうなってきますと、ずるい考えですと、発明するよりも盗用したほうが得であるというような考えも出てまいります。そういう悪徳な、道徳的に許されないことを、今度は私ども母親という立場に立った場合に、子供にどう説明できましょうか。
 もう一つ最も憂うることは、苦労して、またばく大な費用を使って研究、発明しても、盗まれてしまって泣いたりまた不愉快な思いをするなら、もう発明なんかしないほうがいいんだというようなことになってまいりますと、発明意欲が必然的になくなってまいります。女性の発明、たいへんな発明もございますが、くだらないものもというお考えもおありだと思いますが、女性の場合、ほとんどが母親になります。近代科学の上で、子供に科学する心を植えつける、そういう意味で女性の発明家というものがもう少し大きな組織になったならば、第二の湯川博士、第三の湯川博士が生まれることも可能だと思います。そういう意味で、女性の発明家を軽んずるような無視するような法案というものには、私どもは大反対なのでございます。
 模倣の問題で国内でもしかり。今度は東南アジア諸国、いわゆる後進国では模倣力がたいへん旺盛でございます。また低賃金その他で非常に安いものが入ってまいります。それに対して、さきごろ通産大臣さまでさえも、いまの状態ではどうにもならないんであるというような御見解でいらっしゃるようでございまして、これはゆゆしい問題ではございませんでしょうか。考えるところによりますと、どうやら残念なことながら、現行の通産行政というものが、中小企業者に対するそれよりも、大企業優先というような観が見られ、はなはだ私ども遺憾に感ずる次第でございます。女性の場合は、身近なものの考案が必然的に多くなってまいりますので、圧倒的に実用新案の出願でございます。実用新案の権利保持でございます。ところが実用新案と申しましても、先生方の御自分の身の回りの衣食住、何らかの形で社会に貢献していると私どもは自信を持って申し上げられるのでございます。特許は大発明である、実用新案は小発明であるというような御見解もございますようですが、その実施実情並びに社会貢献度合いというものは、現実に調べてみますとフィフティ・フィフティでございます。ということは、決して軽んずべきことではない、実用新案も大切なものであるという裏付けだと思います。
 結局、最後に私ども申し上げたいことは、もし今回のこの改正案が不幸にして通過してしまったならば、必ずや次に直ちに襲来してまいりますのが実用新案の廃止ないしは徹底的な弱体化であると、私どもはその点を憂うる次第でございます。何度も申し上げたように、もしそういうことになったならば、私ども婦人発明家は全減でございます。私ども婦人発明家ばかりでなく、中小企業並びに児童、そういう方々の個人発明家、こういう人たちは全部圧殺されることでございましょう。そこで、私が劈頭申し上げたように、せっかくお育ていただいたわが子をわが手で殺すような、また自殺させるような行為だというふうに申し上げた次第でございます。
 たいへん抽象的な、時間がございませんので実例を申し上げられなくて残念でございますが、一応いままで申し上げたことは、私一個人のことではございませんで、先ほど申し上げたもう一団体、全国発明婦人協会さん、並びに私ども日本発明婦人連盟の会員並びにそれに所属しない全女性発明家の切実なる声なのでございます。また訴えでもございます。どうぞ私どもの代表であらせられる国会の先生方、十二分に私どものこのせつない気持ちをおくみ取りいただきまして、また御賢察くださいまして、慎重に今回の法改正について御審議また御努力賜わりとうございます。時間ちょうどでございます。(拍手)
#6
○大久保委員長 次に、菅原公述人にお願いいたします。
#7
○菅原公述人 私は菅原勇次郎と申します。本法律案につきまして、私は賛成の意見を申し述べたいと思うのであります。
 賛成の第一点は、特許の審査を早くしていただきたいということであります。せっかく特許制度がありながら、われわれ発明者の権利の擁護と利益の保護ということが、非常におそいためにその効果が減殺されておるのが現状でございます。
 第二点は、技術革新がこのようにとうとうと迫っておりまして、われわれは日本国だけでなしに、世界の技術革新の波の中に、うずの中に巻き込まれておるのでございます。そうした場合に、技術情報を早く知りたいわけでございます。そういう意味におきまして、私は早期公開を希望しているわけでございます。こうしたことで私がいかに仕事をしている上で困難を感じておるかということを、私は実例をもって私の苦しんでおることを御説明を申し上げて、先生方の御理解を得たいと思うのであります。
 私は、不純金属成分を実質的に含有しないところの燐酸チタンの製造法という方法を考えまして、特許を出願いたしました。そうしてこれに続く特許は大体三十件ございます。国内に特許を出してございます。そのうち大事なものは十一件外国に特許を出しております。国別にいたしますと一番少ないので三カ国、多いのは十六カ国出しております。これに対するところの審査の状況を申し上げますが、いかに日本の特許の審査がおくれておるかということを十分御理解願えると思うのでございます。私は目が悪うございますので、言い誤りがあるかもしれませんけれども、これはお許しいただきたいと思います。
 まず私の特許を出しましたのは、四十一年一月二十三日に日本に特許を出しました。外国に特許を出します場合は優先権主張というものが認められております。それで四十二年の一月二十日、オーストラリアは一月十八日でございますが、オーストラリア、ノルウェー、それからアメリカ、それからイギリス、カナダ、ドイツ、フランス、イタリア、それからオランダ、ベルギー、スウェーデンに出したわけでございます。
 これの全部のことを申し上げますと時間が足りませんので、この基本特許だけについて申し上げますと、この特許に対しましてアメリカはどうなっておるかと申しますと、四十二年一月十七日に特許を出しまして、四十三年五月十七日に第一回の照会が参っております。そうして四十四年三月八日に特許になっております。日本のほうは審査も始まっておりません。それからイギリスでございます。イギリスは四十二年十一月十五日に第一回、それから四十三年の七月十二日に第二回、四十四年一月十四日、これは第三回の質問が参っております。これはやがで特許になると思います。一方、フランス、イタリア、ベルギー、これは特許になっております。その他のいま申し上げた国は全部審査中でございます。特許というものは、たとえばフランス、ベルギーあるいはイタリアでございますか、こういうところで特許になりますと、もうこれであとから幾らじたばたしてもこれは公知の事実になってしまうわけでございます。こういうぐあいにお蔵の中に長いこと入っておることでいかにわれわれが困るかということはよくおわかりだと思います。それと同時に、私の驚きましたことは、昨年の十二月、世界的の技術の売買をしておられるところの日本の代表者の方が私どもに来られまして、あなたのほうが外国に出した特許の燐酸チタンというもの、その特許をあなたのほうは売るのか売らぬのか、どういうことか詳細を知らせろということでございました。まだ日本では特許にもなっておりません。ところがオランダから日本の会社に十二月の、しかもたしか二十九日か三十日か、迫ったときに電報で照会が来ております。こういうぐあいに非常にテンポが早いのでございます。
 それと、私が当面いたしましたところの、特許の審査がおくれておるためにわれわれがどんなことで困っておるか、たとえば私は塩化ビニール樹脂の鉛系安定剤の粒状化という方法を発明いたしました。そうしてそれを販売いたしました。そのときに特許出願中ということが書いてありました。書いてありますけれども、一年半か二年くらいたちますと、同業者は製造を始められるわけでございます。ところが現在の特許制度におきましては、公告が決定してないときに、おまえのほうは特許侵害であるということは言えないわけでございます。言えないとするならば黙って見ているよりしかたがありません。そういう方々も特許をお出しになって、おれのほうは特許を出しているのだから文句言うなということで、なさるのを黙って見ているわけでございます。ところが、いよいよ特許が公告になりますと、われわれの特許に対して逃げようがないわけでございます。そうした場合に、われわれはやはり日本人同士でございまするから、そうひどいこともできませんし、まあ何とかしてくださいということをやっているわけでございまするけれども、これは私のほうが特許をとっておるからそれでございまするけれども、逆の場合に、われわれが法に基づいていかなきびしいことをやられても、これは抵抗ができないのでございます。こうした点をひとつお考え願いたいと思います。
 それから第二は、技術情報を早く入手したいと思います。これは大企業の場合には、ドイツ、アメリカ、フランス、みんなから特許を取り寄せて、そしてそれを分類してそれぞれの手元にお渡しになるでしょう。ところが、われわれのように資本金わずか二億五千万、そして一生懸命やっております。私が取締役社長なんていうようなことをいうておりますけれども、決して社長ではございません、研究者であり、技術者でございます。そして一生懸命文献をさがすわけでございますけれども、フランス語とかイタリア語とか、ことばがわかりませんし、そういうことを読める人をわれわれのほうがかかえておくわけにいきません。とするならば、日本の特許庁で公告される、それを見て外国の特許はこうなっているということを知るわけでございます。ところが、先ほど申し上げましたように、日本においても外国の出願に対しては一年の優先期間があります。だとするならば、日本の特許庁で五年間眠っておるということは、その前に一年、合計六年間のズレがあるわけでございます。六年前に外国で発明したものを、のそのそとあとから研究して一体何になるでしょう。これが、先ほど申し上げましたように私どものたとえばささやかな発明でございまするけれども、そういうものに対してやっぱり同業者の方が二重投資をされ、二重な研究をされるということになってまいります。外国との競争におきましても、そういうことはしたくないわけでございます。
 私は、技術をもって仕事をいたしております。特許並びに出願中のものを合わせますると約三百件近くあると思います。そのうちには国家表彰を受けたものが二件、それから四十二年には日本化学会化学技術賞を受けておりまして、文字どおり私は技術でもって自分の小さい会社を何とかしていこう、外国と戦いたいと考えているわけでございます。私どもは、ささやかな技術ではございまするけれども、アメリカからわれわれの技術を買いにきております。英国にも製品を輸出いたしております。いかにこの技術革新の激しいときに戦っていくかということでもって頭を深く悩ましております。緑内障で目を悪くしましたのも実はあまり勉強し過ぎたためじゃないかと思いまするけれども、こうしたわれわれの小さい企業が寄り集まって、そして外国に輸出をしたり技術を売ったりすることによって日本の国益を富ましたい、そういうことで私どもは一生懸命やっておりますので、どうぞ先生方におかれましても、われわれ中小企業のこうしたすみっこのほうの技術者が一生懸命で国家のために少しでも日本の富をふやしたいと思って努力していることを御了察いただきまして、この早期公開、審査を早くするということについて御賛成をいただきたいと思います。
 たいへん長く御説明いたしまして申しわけございませんでした。(拍手)
#8
○大久保委員長 次に、君嶋公述人にお願いいたします。
#9
○君嶋公述人 君嶋でございます。私はいま研究所長をやっておりますが、終戦後発明の重要性を自分で信じておりまして、昔海軍軍人でございましたが、自分で企業を始めまして、二十七年度に東京都から発明将励金をいただきました。そのとき一緒にいただいた方が五十三名でありましたが、どうしてもこれは皆さんこの発明の重要性を認識して、お互いに助け合おうじゃないかという一般の空気でございまして、任意団体がそのとき組織されました。その後三十二年に前のその当時の理事長がなくなられたので、私が理事長にかわりまして、三十四年に私理事長として財団法人にしまして、現在の日本発明振興協会になっておるわけでございます。四十二年に自分の仕事の関係で理事長を長く続けるわけにいかぬものですから、辞退いたしまして、現在顧問をやっております。それで、私の発明は、歯車ポンプ、それから現在は海中油タンクその他の発明をいま特許を出願し、また実施化のことでいろいろ努力をいたしておるわけでございます。
 本日はお招きいただきまして意見を発表することを得まして、厚く御礼を申し上げます。
 このたび特許法等の一部を改正する法律案が国会に提出されましたが、本法案の趣旨は、特許庁の審査事務の簡素化を主体とし、未審査件数の処理のための工業所有権申請書の早期公開主義であります。この問題は、実施の際各方面に悪影響を及ぼすものでありますので、単に特許権の審査、審判事務を担当しておる特許庁のみにまかせて処理する問題ではなく、政治行政上広い視野で処理すべきものであって、この法律案は適当と認められないので、これに関して意見を申し上げます。
 日本は、御承知のように人口は一億をこしまして、年々増加しておりますが、国土は狭く、資源にも乏しい国でありますので、今後国の平和的発展と国民の精神的並びに物質的幸福を向上させるためには、国民の知能、特に新しい夢の実現にファイトを燃やして考案開発した創造的発明機能とその実施の努力を活用することがきわめて重要であります。
 また企業におきましても、特に財産力の低い中小企業の発展は、発明技術とその基礎精神による実施化のファイトによって得られるところが多いのでありまして、発足当時個人または小企業で弱体であったのが、幾多の困難を乗り越えて現在優秀な企業に成長いたした実例も相当あるのでありまして、これは発明の力を実証しているところであります。
 また日本では、国民の性格からしても、男女、年齢を問わず健全なる精神の人々は創造的知能の活用にきわめて熱心でありまして、政治家の先生方がよく認めておられる農業家の熱意、実行努力と同様でありまして、国の正しい発展の原動力であると思っておるのでございます。したがって、これらの人々の発明の権利を正しく認め、これを振興することはきわめて重要でありまして、外国の例からしましても、米国その他有力国では、発明振興に関し国の憲法で規定するところもあることは御承知のとおりでございます。
 このたびの特許法の改正案は、特許庁の審査事務の負担を軽減することが主体でありまして、実質的には民間審査の結果となりまして、発明家の調査その他の事務負担を増大し、発明振興に反して、その低下、圧縮の結果になるのであります。したがって、正道を歩く国民の精神並びに才能の進歩発展や国の成長を妨害するという見地から政治行政上正道とは認められないのであります。
 日本がアジア諸国と平和な外交を続け、さらにその成長、発展をはかることは政治家の方々もよく認めておられまして、いろいろな方策が立てられておるのであります。この平和外交の原則は、各国とも互いに国並びに国民の特徴を活用して、よきチームワークにより国の幸福、発展をはかることであると思うのであります。日本としては国の特徴を生かすために、国民の発明した科学技術の実施、活用を願いたいのであります。この場合、アジアにおける科学技術の先進国である日本自体が特許権を軽視するような体制において、アジア各国に対しいかにしてその権利の重視のもとに優秀技術の活用を願うことができるか。このたびの法案が採用された場合には、この意味で日本の特徴、才能が無視される結果となり、将来外交上の一障害になると思うのであります。
 本法案に関しては、特許庁の審査事務負担は一時縮少することができるが、審査の性格が民間審査的に変わる結果となり、したがって民間企業、特に従業員の少ない中小企業に対する科学技術の調査負担は激増いたします。全国的に各企業が有能な技術調査担当者を集めてこのような事務を負担することは、人事、経費等で困難を与えるとともに、総経費負担が激増することが予想されます。したがって、本法案実施は無用の経費増大と法的事件発生の危険性も多くなるので、企業管理負担が増大し、これに関連して物価問題にも悪影響を及ぼすのであります。
 本法案は、基本的目標である特許庁の審査負担を減少することはできるが、他面出願件数全部を公表するために、印刷並びにその他の費用が増大いたしまして、これに関連して出願者は現在の申請経費の約五倍を負担する結果となるのであります。発明者、特にこれに熱心な人々は、企業が成功して発展するまでは財力に恵まれない場合が多いのでありますので、この見地からしても、実質的には本法案は発明圧縮の結果になるのであります。
 以上、このたびの特許法改正に対し成立反対の趣旨を申し上げましたが、単に反対だけを考えておるわけではありません。積極的解決に対する意見も申し上げたいと思います。
 現在の特許法が法律として成立したときに、議会の附帯決議として、歳入増加の分は「あげて人員の増加を初め、審査、審査事務の促進のための経費に充当し、出来得れば補正予算で措置すること。」という条項が第一にあげられてあります。しかるに特許庁の現状は、毎年常に歳入が歳出を上回って、多い年は年に二億八千万円、この五年間を平均しましても年平均一億四千七百万円であります。審査官の充実は業務に応ずるよう実質的には行なわれておりません。毎年採用は続けておるのでありますが、その反面、審査事務に熟練された優秀な人々が毎年平均二十二名依願退職を続けておられる状況のように聞いております。この状況からしても、法改正以前に特許庁の管理方策の一大改善、改革を行なうべきことを物語っておると思うのであります。今回の法改正案を答申した工業所有権審議会の意見としても、第六項に特許庁の業務の拡充を強調しておるのであります。法の改正だけを言っておるわけじゃありません。特許庁は一般官庁のような監督的な事務を担当しておるのではございませんで、調査とか審査とか審判というような実行官庁でありまして、業務の性格から見れば、かつて官庁でありました現在の国鉄とかあるいは電電公社とかあるいは専売公社というものと同様であるように考えられます。特許庁は、この特殊の性格の官庁にかかわらず、長官はじめ首脳の人事は、外部から見れば、従来特許庁の業務に関係の少なかった人々が在職期間一年ないし二年の腰かけ的でありまして、また審査官は前に申し上げたとおり年々退職者が多いのでありまして、これを改善するためには、実行官庁として業務実行に全員がファイトを燃やし得る体制に整備する必要があると思うのであります。若い人々や一般の方々が役人として就任した場合に、調査あるいは審査ということはきわめてじみな事務でありますので、この実行に関しては、将来に夢を持って最善の努力をなし得るように、組織とか配置とか、また常に一般社会と同様の程度の安定した生活を続けられるように給与等に考慮が必要でありまして、現在の官庁組織でこれが実行できない場合には、国鉄のような例もあるので、公社組織に変更して、最大の機能を発揮するよう改善すべきであろうと思うのであります。
 次には審査事務の能率化であります。工業所有権は科学技術関係でありますので、出願事項の内容を正しく分析することは可能でありまして、この分析の程度により全部電子計算機等によって機械化処理もできるでありましょうし、さしあたり困難な問題は全部機械化できなくても、これを大分類して、その程度に応じまして審査をすれば、この審査の範囲も縮小されると思うのであります。最近、郵便番号が決定されたということは、この方面の一つの考え方ではないかと思っておるのであります。したがって、出願様式もでき得るだけこれに合致するように改正いたしまして、全国各地に出願相談組織を充実しまして、電子式通信連絡等を活用して中央の整理資料との関係を明らかにすることができれば、発明者として不当の出願を取りやめることも可能であり、審査も電子計算機等の活用によりまして正確化、能率化もできると思うのであります。科学技術の内容の学問的分析は、一般民間からも有能な人々を集めまして組織をつくり、強力に実行すれば可能であると思います。これらに関する経費は前に申し上げたとおり、毎年歳入が歳出を上回っておりまして、すでに三十億をこしておるのじゃないかと思っておりますので、ほかの国のまねをするばかりが能でありませんので、大いに自主的に実行すべきではないかと思うのであります。
 調査、審査の体制が整い、ちょうどスポーツの記録のように国際的に正しい道が開けたならば、現在工業所有権の調査、審査能力が十分でないアジア各国にモデルケースとして示し、各国の発明家の努力による権利を正しく認める方法も確立すれば、他国もその方策を採用する時期も来ると思うのであります。かくすれば、現在発足しているアジア国際金融公庫のような思想で各国の適材を集めまして、アジア特許審査機関が一本化されることも必ずしも夢のみではないと思うのでありまして、民間外交上からも望ましいことと思います。
 以上、いろいろ意見を述べましたが、このたびの特許法改正に関連して他国の例を学ぶとすれば、科学技術に関しては日本の先輩であり、国の憲法にも発明振興を条項としてあり、また各種調査統計制度が昔から世界第一に整備しております、発明審査も厳格に行なわれているアメリカに学ぶべきであって、ヨーロッパで、出願全部の七〇%が外国からの出願で占めておる、各国の関係もアジアと異なるオランダの方式をどうして学ぶか、まことに法案改正の基本思想が適当とは認められません。国の今後の発展に重要な問題は、当面の事務的、便宜上の狭い視野で取り扱うべきものではありませんので、このようなことを官庁の力で強行する思想は、会社の技術の利用や、当面の金銭上の利益のみを考えておる企業は賛成するかもしれませんが、商売的なことには不得意だが、真実性のある努力を続けておる多数の国民から政府は信頼性を失なわれ、国の安定を欠く結果になると思うのであります。
 去る六月十九日の夜、丸の内のプレスクラブで開かれた東京外人記者主催の夕食会で、出席された佐藤総理大臣が演説を行なわれました。朝日新聞の記事によりますと、そのうち日本の政治の最大の課題として、日本の民族のエネルギーを紹介した。自国の経済建設の次元を越えた、高い目的に結集する必要があります。日本民族の創造力を、人類の福祉、なかんずくアジアの平和と安定のために発揮することこそ、かかる目的として最もふさわしいことであるということを、総理大臣が述べておられます。財源その他環境に恵まれておる大企業のうちには、当面の事務的の便宜上、利益のために国の発展の基礎的事項を無視する人もあるのでありますが、日本は現在、将来の正しい発展のため、その基礎を固める時期にきております。ここで発明に関し、常に夢を持ち、いかなる困難をも乗り越える創造的思想の国民を、昔から堅実性を認められておる農業家と同様に、その正しい、熱心な思想を認めて、努力によって得た考案を、正しい権利をして確定し、大いに激励することは、きわめて重要であると思うのであります。
 このような考えで、今度の特許法改正案に対しては成立反対であります。長くなりましてまことに失礼いたしました。(拍手)
#10
○大久保委員長 次に、中島公述人にお願いいたします。
#11
○中島公述人 私は昭和三年から弁理士をやっている者でございます。
 私は、さきに、この公述申し出の際に提出いたしました演述要領書の中で、この法案には、基本的には賛成である、しかし、内容については異議がある、ことに早期公開の方法として明細書の全文を印刷し、頒布することはやめて、出願書類の閲覧を自由にするだけで足るではないか、そういうことに修正さるべきである、こういう意見を書いておきましたが、実は私が、法案には基本的には賛成であると申しますのは、それは双手を上げて大歓迎をするという意味の賛成なのではなくして、審査の遅延のために特許法の機能が喪失されつつあるという重大な段階に来てしまった今日の、この急場を幾分でも救おうとするには、こんな手を打つことも、しないよりはましであろう、こういうきわめて消極的な、しぶしぶながらの賛成なのであります。
 私が、ここでしぶしぶながらの賛成だ、こう言う裏には、この審査遅延という重大問題の当面の責任者である政府当局のこの問題に対する考え方、姿勢というものに、たいへんな不満ともの足りなさを持っているからでありまして、最初にまずそれを申し上げなければならないと考えております。
 不満は、この法案の内と外の両面にあるのでありまして、その二つともが、よく考えてみますると、この審査遅延という事態に対する政府当局の認識不足、認識の誤りというところから、すべて発していると思うのであります。そしてそれは、政府の本法案の提案理由の説明の中から感じとられるのであります。政府が提案理由の説明の初めに、出願件数が年々急増していくのに対し、特許庁の審査能力がこれに伴わない、そういう状態が長い間続いたため、今日では出願してから審査が完了するまでに平均五年という長い年月がかかるような窮状、行き詰まり状態になってしまったということを率直に告白しておられます。この率直な告白は非常にけっこうなことでありますが、さてしからば、このような大幅な審査の遅延によって、一体だれがどのような迷惑と不利益をこうむっているのであろうか、こういう重大な問題の急所についての政府当局の御認識はまことに正しくない、的はずれだと私は思うのであります。
 申すまでもなく、特許法は発明者に特許権という独占権を与えて、一定の期間を限って、その発明の実施から生ずる利益を独占させる、一口にもっとわかりやすく言えば、独占価格で物を売れるという地位を与えるのが、この特許法の真の目的なのであります。そうしてそれによって国民一人一人の発明意欲、技術開発意欲を旺盛にさせ、あおり、ひいては国家全体の技術水準を高めて、国民全体の生活を豊かにしていこう、こういうのがその立法の目的であります。そうして審査はその権利の付与行為なのでありますから、その権利付与行為が大幅に遅延したとするならば、それによって迷惑と不利益をこうむるものは、言わずと知れた発明者、出願人その人なのであります。審査に五年もの長い年月を費やした場合に、この発明者、出願人がどのような苦しみにおとしいれられるかということにつきましては、先ほど来他の公述人からも切々と訴えられましたが、現行法のもとにおきましては、出願しただけでは全く他人を押える権利はありません。さりとて、いいものを考えて早く金をもうけたいというのが、これは人情の自然であります。五年も審査がかかるのを待っていて、その上で売り出そうなんというのんきな考えを持っている人は絶対にないのであります。そこでみなみなが出願しますというと、大体それを売り出す。つまり特許庁の発表など待たず、そういう公表など待たず、出願人自身がものを売って公表してしまっているのであります。そうすると、どういう事態が生じますか。特に日本の国民性からして、もう同業者の中では目を光らせておって、他人がうまいものを売ってたいへん売れ行きがいいとなると、あしたからすぐまねをする。まねをするとどういうことになるかというと、最初に売り出したものの価格よりも必ず下げて売る。下げて売るから、あとからまねしたものはみな最初の発明者の利益をとってしまう、特許料をとってしまう。ところが現行法のもとにおいては何ともそれを処置する方法がないのであります。指をくわえて見ているよりほかない。こんな惨たんたる状態が現在の発明界の実際の姿なのであります。こういうことを一体放置してよろしいのかどうか、こういうところからすべからくものは考えなくてはならないと思うのであります。いまやそういう状況からして、特許庁の審査の大幅な遅延のために特許法はその機能を失っておるのであります。
 以上のような次第で、審査遅延の最大にしてかつ唯一の被害者は発明者、出願人その人なのでありますが、政府ははたしてそのように認識しておられるのであろうかどうか。本法案提案理由説明の第三ページに出願の早期公開制度を採用した理由としてこういうふうに述べられています。「第一は、出願の早期公開制度を採用したことであります。現在出願された発明、考案は審査の後その内容を公表しているのでありますが、審査の遅延によりその公表がおくれるためその発明等は長期間眠っていることになり、技術進歩の速度をおくらせるとともに重複研究、重複投資が行なわれる要因となっているのであります。そこで、審査の段階のいかんにかかわらず、一定の期間後にすべての出願の内容を公表することといたしました。公開された発明等の出願人に対しては補償金請求権を認め、その保護をはかっております。こう説明されておる。早期公開によって出願人以外の一般大衆に発明の情報を早く流して重複研究、重複投資の不経済から救ってやろうというのがこの早期公開制度を採用したまず第一のねらい。出願人に補償金請求権という早期の権利保護の道を設けてやったのは第二義的の従属的なねらいなのだという趣旨に受け取れるのであります。審査の大幅な遅延によって出願者、発明人に非常な迷惑、不利益を与えているから、それを幾ぶんでも償わしてもらうために早期にある種の権利保護の道を講じてやるのがこの法案の第一目的であるという意味は、どこにも書いてないのであります。これは審査の遅延の被害者は出願人ではなくして、出願人以外の一般大衆である。つまり審査遅延のために発明情報の流れがおそくなって、それで困っている一般大衆である、とこういうような誤った認識から出ているのであります。全く問題の根本をはき違えていると言われてもしかたがないと思うのであります。
 このような基本問題に対する認識の誤りが本法案の内と外と両方に感じられます。その本法案の内側に認められる点は何かと申しますると、特許法の第六十五条の二と三の配列であります。この法文の配列から見ると、本改正のキャッチフレーズとしておられるとおり、つまり早期公開が法律の立法目的なのだというキャッチフレーズでありますが、それと同様に、六十五条の二には早期公開をまっ先に掲げて、早期公開があたかも立法趣旨である、最大の目標であるかのように書いてあります。そうして六十五条の三の出願人に対する早期保護、つまり補償金請求権を認めたのはその公開の一効力でしかない、こういうたてまえをとっておられる。これは全く本末転倒もはなはだしいと思うのであります。でありますから、こういう本末転倒から、六十五条の三の出願人に対する早期保護、その早期保護はきわめて薄いものになっている。どういうふうに薄いものになっているかと申しますと、完成した特許権の侵害の場合に損害賠償として相手方から取れる一番弱い制度しか取り入れてないのであります。つまり通常実施権を設定するときに、普通の実施権を設定する場合に、普通の標準で取れるところの実施料しか取れない。だから先ほど私が申しました出願するとすぐまねをする、値下げをする、こっちも値下げせねばならぬ、こういうように追い込まれた不利益ですね、そういう重大な不利益は、いまのあの条文では取れないのであります。
 提案者がどのような弁明をされておるか知りませんけれども、これは審議会の答申とも相反するものでありまして、審議会の答申はたしかそうなっていない。一切の事情、不法行為と仮定するならば、損害を受けた一切の事情をしんしゃくしてその損害を計算するという答申になっておったのが、標準の実施料しか取れないということになった。こんなことで一体その出願人の早期保護が完全と言えましょうか、五年間もほったらかしておいて。
 それから私が公述申し出の際に演述要領書に書いておきましたが、公開のために全文印刷する、多額の金をかけて全文印刷するという、それも、出願人本位に考えたらこれ全く必要のないことであります。出願人はそんなことをしてもらったって何のありがたみもないのであります。出願人は自分の書類を他人が自由に見られるという状態、窓口さえ開いていてもらえばそれで足るのであります。
 そのほか出願書類の訂正を非常に窮屈に制限された。出願の訂正ということは、すべての出願人が経験しておりますように、審査を受けて、さていよいよ――私の議論のまだ半分にもまいりません。もうちょっとお許し願えませんか。(「やりなさい、やりなさい」と呼ぶ者あり)――どうも済みません。出願の補正というものは、拒絶の理由をぴしゃっと提示されたときに、それに対抗策を講じてどういうふうに訂正したら一番権利が取れるかという、そのどたんばが一番大事なのでありますが、そのときの肝心な訂正をできないようにしてしまっている。これらも出願人本位に考えない結果なのであります。
 法案の内容に見られるところの政府の姿勢の誤りはこのくらいにしておきまして、次に、この法案の外に見られる政府の姿勢の誤り、こういうものについて申し上げたいと思います。
 言うまでもなく、この法案は直接に審査を早めるという何らの役にも立たないのでありまして、むしろ審査が五年も六年もかかるというのは何とも避けがたいのだというあきらめの前提に立っている。そのあきらめを前提として、それではせめて審査前に出願人にある程度の権利保護を与えようではないか、こういう制度でしかないのであります。ですから、この制度のみによって審査の大幅な遅延が取り戻せるなんということは絶対期待できないのであります。審査を促進する方法、それはもうまことに明白なことでありまして、特許庁の審査能力を拡充強化する以外にないのであります。
 これを数字的に申しまするならば、米国やドイツでは、審査官一人一年に八十件前後片づければよいことになっております。ところで、日本ではどうでありましょうか。滞貨の問題はしばらく別といたしまして、昨年、昭和四十三年度の出願は、特許と実用新案合わせて二十一万件という膨大な件数であります。これを昨年の審査官の実数、六百名くらいですが、その六百名に割り立てますと、一人が三百五十件という大量な分担をせなければならぬのです。特許訴訟を御経験の方はおわかりのはずですが、一つの特許の明細書をめぐっての論争を裁判所では二年もかかって首をひねっているのであります。特許庁の審査官は一年にとにかく何百件というものをこなすというのだから、これはもう神わざでもできないのであります。一年に三百五十件なんということは神わざでもできない。
 このように数字の上から、審査能力と荷物との比較の上からして明瞭な欠陥をなぜ何年たっても改善しないのか、ここに国民というか、出願人の非常な不満があるのであります。この問題をわれわれ国民から考えると、行政措置で幾らでもその方途は考えられるはずだと思うのであります。その行政措置で考えられないということを非常に頑強に政府当局は言っておられますが、しからば立法措置でできるじゃないか。女を男にすることはできないでありましょうが、法律で制度をつくるぐらいのことは朝めし前のはずだと私ども国民は考えております。なぜそういうことをなさらないか。今回の法律の提案には、これと並行して、そういう本則、定石的な解決策、それをまず国民の前に示さなければ、これは政府がほんとうに自分の責任を痛感しておられない、この審査の大幅な遅延によって出願人に与えている非常なる苦痛、特許法の行き詰まり、これに対する真の認識が欠けている、熱意が欠けていると私は申したいのであります。
 前置きの議論で時間が尽きてしまいまして、出願の早期公開のために明細書の全文を印刷する必要はないという私の議論、これは六項目にわたって私が演述申し出の際に文書にして委員長のお手元に出しておいたはずでございますので、それでごかんべんをいただきたいと思います。(拍手)
#12
○大久保委員長 次に、佐藤公述人にお願いいたします。
#13
○佐藤公述人 私は経済研究所をやっております。経済研究所と特に経済というふうに銘打ってありますのは非常に大きな意味があるわけでございます。と申しますのは、私どもの経済研究所は国家経済と経営というものはどういうふうな結びつき方をすることが最も正しい社会的なあり方であるかということを主眼にやっております。また、私の過去の概略の経歴を申し上げますと、特許を取り組んできまして約十五年間、大企業におったわけですが、経営者をやっておりました。そういう点からいろいろ鑑定いたしまして、今度の改正案には絶対反対でございます。
 その反対の理由を申し述べます前に、三つの観点に問題を分けてお話ししたいと思います。
 まず第一番目は、二、三分時間をお借りいたしまして、まず法律制定なりあるいは法律の改正なりをやる基本的な問題はどこにあるかということ、この特許法の改正案にも影響することでございますので、基本的にそれを解明してみたいと思います。その次にこの特許法改正案の反対理由を申し述べます。最後にまとめといたしまして、この改正をやらなくても十分にやっていける方法がある。これは簡単な方法でございます。それを解決したいと思います。
 以上のポイントでお話ししていきますので、要点をそのようにとらえていただきたいと思います。
 まず、これは私がちょうちょう申し上げるまでもございません。皆さん大先生ですし、よくおわかりのことだと思うのですが、新しい法律をつくる、または法律を改正するという基本的なものは何かといいますと、われわれが国際社会に立ってどういうふうにわが国を位置づけていくか、あるいは将来わが国の歴史をどういうふうにしていくかということが一番基本的な問題になっていなければいけないと思います。次に、国家並びに社会、国民経済、こういう問題に対してどういう影響があるのかということが重要な問題でなければならないと思います。それから、そのことによって経済動向がどういうふうに動いていくのかということを考えなければいけないと思います。それは発展するものであるのか、あるいは萎縮するものであるのか、あるいは横ばいでいくものであるのかということが取り上げられなければならないと思います。それから、それによって産業構造、社会の編成がどのように変わっていくのか、これが非常に大きな問題だと思います。次に第五番目といたしまして、経済の正常化ということが取り上げられなければならないと思います。経済の正常化というのは、要するに経済の民主化でございますね。民主化が行なわれなければ、法律の改正とかそういったものをやってもあまり意味がない。こういう五つの観点に立って、私はこれから反対意見を申し述べます。
 まず、反対の第一理由は、この改正案の基本になっております政府に対する答申でございますが、これは非常に哲学的な表現の文章であって、ちっとも具体性がございません。私が先ほど申し上げましたように理論経済学、それから厚生経済学、そういう点に照らしてとにかく表現が全然なっておりません。これが反対理由の第一であります。序文において「最近における出願の激増とその内容の高度化、複雑化によって特許庁には未処理案件が累積し、出願から権利の確定までに、相当の長時間を要して」いる、こういうふうに述べてありますが、これは、私は先ほども申し上げましたように、特許とともに十五年間歩んできております。しかし十五年前と現在と、十五年前は出願件数がものすごく少なかったわけですが、これが依然として変わっておりません。その当時でも三年ないし四年はかかっておりました。問題はどこにあるか、これはまたあとで説明いたしますが、これが反対理由の一つでございます。
 それから第二番目の反対理由は、審議会の答申の骨子が序文の中にあるわけですが、序文の中にこういうふうに書かれてあります。「開放経済に移行したわが国にとって新しい技術の開発と利用はいよいよ重要となり、この面より工業所有権制度の適正かつ迅速な運用が強く要請されている。」これはまさにそのとおりであります。これが本来の趣旨であるならば、開放経済というものを一体どのように考えているのかということでございますね。私の申し上げたいのはそれでございます。開放経済の状況が社会、経済並びに国民経済に及ぼすところが少しも解明されていない。審議会の答申はしたがって前提になっていないというふうに私は断定してよろしいと思います。つまり自由化に対処するにあたって、わが国の産業界の事情はどういう事情にあるかといいますと、世界のビッグビジネス百のうち、わが国はわずか八社しかございません。トップ企業でも世界の五十何番目ですか、一番目か二番目、そんなところでございますね。これに対してアメリカ及びアメリカ系のあれはトップからずっと上位にあるわけですが、六十九社ございます。これは皆さんよろしく御存じのことだと思うのですが、そうなりますと、わが国がこれから自由化を迎えて、この資本構成で世界の国と競争していく場合に、ほとんどの企業が国際の競争力を持ってないと言って差しつかえないと思います。この点で私はいろいろ本を書いたり、それから論文を発表したりしておるわけですが、要するに、これに対処するのには、経営のユニット化とか生産のユニット化、これはつまりお互いに技術提携をしてやるとか、企業共同でやるとか、経営のむだを省いてやるということを提唱したのもこのためであり、それからたとえば三菱系であるとか、三井系であるとか、あるいはいま自動車会社で盛んに――私は自動車会社にも警告状を発しましたのですが、要するに自分の企業を守るために外資系と結びついて日本の経済を縦割りにするというようなことがあっては断じてならぬというふうに、要するにこれは国民経済を守るという立場からそういうことを提案しておるわけです。こういった経済情勢に対処するためには、特許制度によって裏打ちされた工業所有権を資本に変えて、そして対処するほかないと私は思います。これに対して、本改正案に見られるような、特許等の出願件数を大幅に処理件数を減らす、減殺しようとするような趣旨の本改正案は、私は国民の一人として、また国家的な立場から、非常に悪法であるというふうに断定せざるを得ないと思います。
 それからこれは、時間がございませんので、特許法の精神からいきましても、こういう安易な、処理を急ぐの余り、国家の財産を流出してしまうというようなことがあってはならない、私はこう思います。少ないわが国の資本をさらに過小に追い込むような危険性を持つ本改正案は、この序文に述べられてあるわけです。この序文というのは、審議会の序文に述べられてあるんですが、工業所有権制度の適正なる運用ということばを使っております。これは一体何を意味するのか、私はこのことばの解釈に苦しむわけですが、工業所有権制度の適正なる運用ということは、要するに無体財産権を資本に変えてやっていくことがこの正しい運用だと思うのです。したがってこの序文が、審議会の答申が何を書いているんだか、さっぱり私にはわかりません。
 それから、これはもちろん企業としても大切なことでありますし、国家的な面から見ても、これは非常に重要な問題だと思います。したがいまして、この改正によって安易な道を選んで国の方針を誤り、国民の生活をさらに悪化して追い込むような改正案に、私はどんなあれがあっても反対するという理由の一つでございます。
 それから、これは非常に重要な経済背景でございますが、これは皆さんも御存じの方があると思いますけれども、いまアメリカではどういうことが行なわれているかといいますと、いま日本の特許公報を盛んに集めまして、そしていろいろ特許の公報を分類しているわけです。そうしてその分類をして、盲点があるものに対して、日本に向かって大量に出願をして、日本の市場を独占しよう、こういうことが行なわれているわけです。これは私の三井物産を通じて調査網で調査したあれですから、これは絶対に間違いがございません。そういう大きな、おそるべき状態にあるわけです。
 これはどういうところから出発しているかといいますと、これは私が大先生方を前に置いて言うのはおかしいのですが、アメリカは大恐慌のあとを受けて、一九三四年に、互恵通商協定法というのをつくって、みずから関税を撤廃するかわりに、おまえのほうもとにかくやれ、これが今日の自由化の発端なんですが、その当時はラテンアメリカ程度の市場より確保できませんでした。それでアジアに目をつけて、そうしてアジアに進出したわけですが、この一環として起こったのが大東亜戦争でございます。これは私が三井におって、まだ当時若かったのですが、はだ身で感じたことなんですけれども、要するに、アメリカは戦争には勝ったけれども、まだ東洋市場というものは握っていないわけです。アメリカの工業力は戦後やはり倍ぐらいになりまして、最近非常に指数が鈍化しております。どうしても東洋に進出しなければいけないということで、東洋に進出するといっても後進性の国が多いので、どうしても日本を攻略しなければいけないということで、アメリカの企業家連中はもうあらゆる手を尽くして日本を攻略しよう、こういう状況にあるわけです。そのときにあたって、特許の件数を減らすようなばかなことを何で行なわなければならぬのか、こういうことをよく御認識いただきたいと思うのです。
 それから、いまのあれに関連して申し上げますと、大体日本は世界に向かって、一年間に、これは特許庁発行の「明日をひらく特許」という書物に書かれてありますが、日本の外国向けの出願は、一年間に約一万一千件でございます。アメリカは十一万件と、日本の十倍です。それから西ドイツが約五・五万件で、日本の五倍でございますね。ですから、日本は特許が非常に盛んになったとか多いとかいっても、向こうの国に比べたら問題にならないわけです。そういった点からも、私は反対をするわけでございます。
 それから、次の反対理由は、審査請求制度で事務の促進をねらいとしておりますが、これはとんでもない間違いで、誤解だと思います。私たちが企業者側に立ってあれした場合に、そういう制度があれば、五千円料金が加算になろうが、七千円加算になろうが、これは初めからやります。したがって、そのことによって絶対件数は減りません。これは絶対減りません。時間がありませんので、具体的に申し上げたいことがまだあるのですが、こういう点も非常な勘違いで、幼稚で、問題にならないと思います。
 それから、特許によって市場価格が独占化できるという問題があるわけですが、これは日本の工業力が世界で二番目になった、しかし一人一人の所得が二十位ぐらいですか、という問題にも関連するわけですけれども、もし現在の特許法なりあるいは世界の特許法が悪法であるならば、市場の適正価格――価格というものはどういうふうにきまるかというと、その商品の価値なら価値というものを貨幣という交換媒体を通じて、それで適正な値段できまるわけです。そこに競争相手があらわれたり何かしてくると、市場が乱れる。日本の場合は特にそれが激しいわけですね。したがって、工業力では、日本の総生産では二位でありながら、国民生活が二十位であるということは、そういうところに一番大きな原因があります。これは私ここで、数字も持ってきておりますが、時間がありませんから発表いたしませんけれども、これはやはり議員の皆さんの非常に大きなお力をおかりしなければいけない。せっかくこういういい特許法というものがあるのですから、それを活用することによってどんどん国民生活水準は上がります。それから、過当競争というものは決して社会の秩序を維持していく上にいいことではなくて――いい面もありますけれども、日本の置かれている現状から、まだまだ国民生活の水準を上げなければいかぬという点からいきますと、非常に大きな問題だと思います。そういう点からも私は反対でございます。
 それから、これはたいへん口幅ったいことばでまことに申しわけないのでございますが、審議会の方々をお選びになられる動機とかなんかということは私はよくわかりませんけれども、たとえば内閣総理大臣は、国民経済並びに世界に置かれている立場といったものをよく考えて、世界の進運におくれないことを第一義として審議会の構成メンバーを今後お選び願いたい、こういうことでございます。これは実に審議会というものは、国民それから議会並びに国家、社会並びに国民経済、それから産業に非常に大きな影響がありますので、そのメンバーの選定というものに対しては、学術経験者とか、そういったあれだけからじゃなくて、もっともっと深い、奥底のある、要するに経済理論とかいろいろな要素を持っておられる方々をとにかく対象にしていただくことが望ましいのじゃないかというふうに考えるわけでございます。
 それから早期公開制の問題でございますが、これは私は逆説を持っております。特許公報というものはこれは一連の特許の技術の古典だというふうに考えていただきたいと思うのです。ということは、電気洗たく機というのは明治時代に特許になっておった、それからヒントを得て今日の電気洗たく機があれされておるわけでございますね。したがって、そういった点からも非常に特許公報というものは重要である。そういうふうなことを重視しなければならないという問題があると思うのです、出願件数を減らすとか、あるいは料金を上げて一般発明家の出願を押えるとかいうようなことは、これは非常に国の将来を誤るのじゃないかというふうに考えます。
 それから、先ほど大企業、中小企業というお話が出ましたが、私は大企業、中小企業という立場に立ってものを言っているわけじゃございませんので、問題は結局、今度のあれは中小企業並びに一般の人の出願を押えるというような要素も多分に含まれているんじゃないかというふうに受け取られるわけですけれども、われわれとしては、中小企業を育て上げなければ日本の経済はもちろん持ちませんし、経済的に非常に大きな問題が起こる。特に今度は外資系の会社が日本へ進出してまいります。そうしますと、彼らは中小企業の優秀な頭脳を彼らのところへ吸収いたします。そういたしますと、日本の経済状態というものは、中小企業にもいま優秀な方がたくさんおりますから、縦割り状態になってしまう。したがって、中小企業を育成するという立場からも、中小企業からもどんどん出願ができるという制度が望ましいんじゃないか。そういう点からも私は反対でございます。大企業では早期公開されましてもそんなに不便を感じません、人がたくさんおりますから。ところが中小企業並びに一般の方々は、一年間に二十万件も出るわけです。これをどうやって見るのか。逆に参ってしまうと思うのです。そういった点からも早期公開というものはもっと慎重に考えなければいかぬ。早期公開に私は反対しているわけじゃございません。しかし答申に見られるような内容のことでは反対である。ということは、あの中に重複研究ということばが使われております。しかし、重複研究というのはどういうことかというと、重複研究をすることによっていろいろなものが生まれるわけです。折り紙を使って折りヅルをつくるのは一つの方法しかありませんけれども、石油化学をやった場合に、同じ門から入ってもいろいろなものができるわけであって、そういう点からも審議会の答申というものはなってないというふうに私は申し上げていいと思います。
 まだ申し述べたいことが多少あるのですが、反対の趣旨は大体これくらいにいたしまして、それじゃどういうふうにしたらこの法律を改正しなくてもできるかという問題ですが、まず第一番に、これは皆さんあるいは御存じかどうか、私は元特許庁長官の倉八さんに忠告論文を出したんですが、特許庁の事務は非常にだらしがないのです。朝十時ごろ始めて、お昼ちょこちょことやって、二時ごろまではおりません。特許庁へ行ってみたらわかりますが、もう机ががらあきです。そしてこれは時間外であってもいけないことですけれども、時間内でも企業側へ遊びに行ったり何かして、いろいろ内報をやったり、これはぼくは事実をつかまえております。ここで一々申し上げませんけれども、そういうふしだらな勤務の状態です。私はいろいろ官庁なんかも関係がありますが、国鉄であるとか電電公社であるとか、そういうの現場を持っているところ、それから民間と接触の多い公社とか公団、そういうところに比べたら、まず三分の一より仕事をやってないと言って差しつかえないと思います。そういう点を抜きにしておいて、そして件数が多いからおれのほうはできないんだということは、これは特許庁の長官は任期が少ないので、実際を掌握しておられずにいろいろな意見を持ち出すんじゃないかというふうに考られるわけです。前の佐橋滋さんですか、あの方なんか非常に極端なことを言っているわけですが、おれは特許庁の長官だけれども、特許庁の仕事をやりに来たんじゃない、おれはすぐよそへ行っちゃうんだ。これが民間の社長だったら一ぺんに首になっちまいますね。そういうことも平気で言うわけです。こういうことも非常に困ります。職員の士気にも影響するということがあります。それで、民間ベースでやった場合に、じゃどうかといいますと、これは十分に現在の三倍の能率をあげられます。そういうことが一つですね。
 それから次に、それじゃもっと能率をあげるにはどういう点をあれしたらいいかというと、申請の明細書がありますね。申請のときの明細書を全部タイプで打たせまして、タイプの小さい活字を使うわけです。一々活字を組んであれしなくても、それを写真で焼けば、すぐそれが明細書になってできますね。その出願の要領と方法を変えれば――私が経験したあれでは、許可になってから印刷に大体半年間もかかっております。それはいろいろ問題があると思うのですが、一々版を組みかえたり何かしておりますから、活字を小さくして、それをそういうふうに焼けばそういう明細書はすぐできる。そういう方法が一つと、それから審査官の方が、行ってみますと、いろいろ御自分で書類をいじっておるわけですね。そうでなくて、ヘルプとして若い女の子でもつけて、これとこれとピックアップせよと言えば、これはどんどん能率があがるわけです。高い賃金でなくても、そういう方法があるということですね。
 大体そういうことで、いまのあれは公社制度にしてもよろしいでしょうし、もう時間がないので、まだ申し上げたいことがたくさんあるのですけれども、大体そういう方法でいけば、何もこの法律を改正しなくても現状で十分いけるということでございます。
 どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
#14
○大久保委員長 次に、桝屋公述人にお願いいたします。
#15
○桝屋公述人 ただいま御紹介にあずかりました桝屋でございます。
 このたび特許法の一部を改正する法律案につきましての公聴会に出席方依頼の御通知をいただきましたことは、大阪といいましても特に中小企業の密集している東大阪の住民の一人といたしまして、またほんとうに小さい企業を営む私にこの機会を与えていただきましたことは、この上もなく光栄に存じますとともに、唯一の立法機関であり、かつ国権の最高機関である国会で公述する責任は重大であると思いまして、私は、私の意見を正確に述べるべく、改正特許法案について賛成の理由を書きまとめてまいりましたので時間もきめられておりますので、これを読み上げて公述といたしたいと思います。
 改正特許法案の賛否の意見を述べる場合に、特に注意しなければならないことは、特許法すなわち特許制度の目的であります。この制度の目的の正しい認識なくしては賛否を論ずることはできません。
 すなわち、特許制度の目的は次に述べる三つにあるということです。
 一つは、出願された発明をすみやかに公開し――現在の制度では公告でありまして、一般社会に新しい技術の誕生を知らしめ、次の新技術開発の基礎たらしめ、もって産業の発展に寄与すること、二つ目は、発明者には技術公開の代償として一定の期間独占権、すなわち特許権を与えてその利益を独占させるとともに、次の研究への再投資を促すという発明者の保護と発明技術開発の奨励を行なうこと、三つ目は、特許権者は希望する者に特許権の譲渡あるいは実施権を与えることにより、開発した新技術を社会のために大いに利用し、普及さす、以上三点をしっかりと把握しなければならないにもかかわらず、しかるに特許庁の現状はどうでありましょう。
 特許庁の現状は、特許庁長官の大阪での説明会では、審査の滞貨は六十五万件といわれ、出願から公告まで三年から五年を要するということは、いかに前述の特許制度の目的に反しているか、私が述べるまでもありません。いまや世界的な技術革新時代であり、資本、貿易の自由化が唱えられているとき、世界経済の中で日本が生きていくためには、法律で保護された、世界各国平等に条約で保護された特許という技術しかないといっても過言ではないと思います。ここに特許法改正の必要があると思います。
 われわれ中小企業の立場から見た特許法改正の必要性を次に述べてみます。
 私は、前述のごとく零細企業の経済者でありますが、中小企業は大企業に比べて資本力においても、研究陣、技術陣においても、すなわち技術の開発力においても大きな差があり、太刀打ちはできません。しかし企業として特色ある独特の技術を有することにより、大企業に負けずりっぱな業績をあげることができます。何か一つ独特な技術、すなわち数は少なくとも特許権を持つことは、企業を強固なものにするものであります。
 私の企業も、先代の父親が発明に力を入れ、現在も発明技術開発に努力し、特許権、実用新案権合わせて十数件、意匠権数件を有し、さらに出願中の特許、実用新案を十数件有しております。大企業に比べたならば数は微々たるものでありますが、企業をささえる技術としては磐石なものであります。
 しかるに、ここに大きな問題があります。問題点の一つは、出願から権利を得るまでの審査が長過ぎ、中小企業の発明の多くは発明と同時にすぐ企業内で実施化、製品化できるものでなければならず、現在のように審査期間が三年から五年も長くかかっては、権利が確定するまで製品の実施化を待つということは、われわれ中小企業の崩壊を意味します。したがって、問題点の二つは、出願中から製品を実施化するとすぐ他社に模倣され、しかもこれを防止する手段も、事後の保証もありません。また三つ目は、出願中、権利になる前から製品を市場に出し、なお自分もよりよいものをと研究開発し、出願してみると、製品を市場に出したがために、資本力、開発力のある企業がこの製品にほんのちょっと改造を加えて先に出願することがあります。自分の研究開発努力がむだになることがあり、この研究、出願、投資の重複ほど苦々しいことはありません。これは実際に経験した人たちでないとこの気持ちはわからないと思います。これらはすべて特許庁の審査期間が長過ぎて、特許制度の目的を十分に果たし得ない状態になっていることを示すものであり、われわれ技術で生きていかねばならない中小企業にとってはゆゆしき問題であります。
 しかるにこの現状は、特許庁長官の説明のように、出願量の増加、処理件数、滞貨件数の量で納得でき、また審査資料の増加は、大阪特許室の公報の量の膨大さ、世をあげて情報時代といわれていることなどから納得できますとともに、出願の内容の高度化は、技術革新時代なので一応了解できます。審査人員の不足、補助事務官の不足は、公務員を増加しないと言っているので納得できますが、以上の点に原因するものであるならば、しかもそれが技術革新と経済の自由化にその根源を有するものであるならば、特許法を改正して本来の特許制度の目的を十分発揮できるように措置することは、政府として当然のことであると思います。
 今回の特許法の改正には特に次の諸点について賛成するものであります。
 ここに資料を持ってきておりますが、時間の関係上資料をお見せすることはできませんので、ただ文面だけでさせていただきます。
 出願の早期公開制度に賛成します。出願することは技術が公開されることを前提としているのでありますから、早く公開することは前にも述べた制度の目的に沿うものであり、賛成です。技術革新の激しい今日であるから、できればもっと早く公開すべきであります。昔は出願から三カ月、六カ月、一年以内にも公開、公告されております。これがほんとうの姿であり、またすみやかにこのような姿に戻ることを期待する次第です。このような姿に戻れば次の三点にも大きな期待をかけられます。
 一つは、重複研究、また重複出願、それから重複投資であります。早期公開により重複研究はいままでより少なくなり、第三者はさらに新しい高度な研究に邁進して、発明技術の開発を生み出させる可能性を与えられます。
 重複出願も特許庁にてスリーピング、眠っているものも多々あると思います。これが三年から五年後に公開されたら、先願人だけが太陽の光に当たり、その他の人は三年から五年の間の物心両面の損失は多大であります。これに費やす諸研究費、われわれ中小企業にとりましての重複投資は大きな負担であり、それがために町の中の発明者は資金に詰まり、異議申し立て、無効審判等ありますが、戦うのは繁雑となるので、それを防ぐため俗に私たちの言っている防衛出願となり、出願増加の一つの原因となるのであります。またそれがためにちまたの新聞、カタログ等には出願中とか申請中と記入して防衛線を張り、これが高じてきますと、このような、資料は出しませんが、とてつもない広告となり、一般の人たちも、特許になっていないにもかかわらず特許であるというふうに広告しまして、びっくりさせられる次第です。このようなことは国民経済全体から見て大きな損失であり、早期公開制度が採用されればこのような弊害も除去されることとなります。
 また、この改正で特に中小企業としては出願を早期に、しかも無審査で公開されても、そのささえとして補償金請求権が認められたから、安心して適当な時期に、出願中でも発明を実施化できます。現在はこのささえがないので、中小企業にとっては全く不利であります。
 また一方、自己の企業に関する技術全般についてその技術開発の方向、レベル等は公開公報を見ることにより、すみやかにかつ的確につかむことができますから、技術開発研究と企業経営上非常に有利であると考えられます。
 また審査請求制度も、現在のように審査がおくれているのでは、他社でどんなものが出願されているかわからず不安なので、われわれも防衛の意味で出願しているものが二、三あります。このようなものは審査請求せずに済むから、それだけ特許庁の審査が進むことが期待されるので賛意を表します。
 審査請求料も、自分の大切な技術を独占権として確保するためのものであり、われわれ中小企業の一技術は一企業の生命に密着しているのであり、この点を考えれば、請求料の納付は問題ではありません。しかし請求料の安いことに越したことはありません。
 また、先願の範囲の拡大は、いままでの追加補正の出願をなくし、むだな手間がはぶけるため、われわれには非常に有利になると思います。
 以上、出願の早期公開制度、審査請求制度、先願の範囲の拡大等の賛意を述べ、その他二、三の諸点について改正が行なわれておりますが、出願の早期公開制度と審査請求制度を採用する以上、当然のことであると思います。
 最後に、出願の早期公開制度の導入は世界的な傾向であり、特許制度の国際化の面からも早く法文化するのが望ましいことと思います。
 以上、この法案に賛成の意を表しまして、私の公述を終わります。(拍手)
#16
○大久保委員長 次に、志賀公述人にお願いいたします。
#17
○志賀公述人 私は弁理士をやっております志賀武一でございます。
 本日、発言の機会を与えられましたことに対しまして、大久保委員長さんをはじめ委員先生方皆さんに対しまして、衷心から御礼を申し上げます
 時間に制限がございまするが、私は本改正案に対しては反対でございます。したがって、その前提のもとに端的に、簡単に申し上げたいと存じます。したがいまして、まことに失礼な発言もあるかと存じまするが、どうかひとつあらかじめお許しのほどを賜わりたい、かようにお願い申し上げます。
 まず、今回の特許法の改正は、早期公開と審査請求制度、それによって現在までの六十何万件の未処理案件を処理する、審査を促進して将来に未処理案件を残さないようにする。さらに二重出願、二重投資、こういうようなことも避けたいということが改正案の目的である、かように理解をいたします。さらにそれに加うるに審査前置主義を設けておる、こういうことでございます。これに対しまして、私はこれは審査促進にならないということを率直に申し上げたいと思います。
 御承知のように、本人の意思いかんにかかわらず、毎年二十万件以上が公開公報として発行されるわけでございます。その発行する手数もたいへんでございまするが、審査請求がございますればその二十万件をいままでの公知例とともに全部審査しなくちゃならぬ、非常に時間がかかるというふうに私は考えます。
 さらに、現在までの特許庁の退職者、老練なる審査官、審判官の退職者は、平均いたしますと毎年二十二人でございます。これを新人に換算すると二百二十人に当たる。要するに一人の新人が一人の審査官に対して十分の一しか当分は仕事ができない、こういう実情だそうでございます。さような点から、これはとても審査促進なんかにならない。また新法が改正されますと、この法律になれるということに、いままでの例から見ましても、少なくとも二年ぐらいはかかるのじゃないでしょうか。非常に難解な条文がたくさんございます。さようなわけで、これを円滑にやるにはおそらく二年くらいかかるのではないかということを私は非常に心配をいたしております。
 なお、御承知のように、私から申し上げるまでもなく、発明権は財産権でございます。私は法律専門家でないので、こういうことを率直に申し上げますことは僣越でございまするけれども、財産権である。そういたしますと、これを強制的に本人の意思いかんにかかわらず発表するということになりますると、まことに僣越な表現でございますが、憲法第十三条、それから第二十九条、それから三十一条、これらの関連において憲法違反の疑義があるのではないか、こういうふうに考えます。
 それからさらに、審査請求をすると、審査請求して公告になれば補償金請求権がある、こういうことでございますが、これは業種によって非常に違います。たとえば玩具関係とかあるいは日用品関係とか、特にこの玩具類などにおきましては、一回か二回輸出すればそれでもう寿命がないのですよ。一発勝負です。おそらく一年ぐらいです。そういうものに対して、七年も八年もかかって公告になっても、補償金請求なんということは実際問題として私はたいした意味がないと思う。効果がないと存ずるのでございます。こういう業種はもうたくさんあると思います。
 さらにこの問題に関連いたしまして、これも法律論でまことに僣越でございますが、やはり非常に悪質な模倣者に対しては、民法七百九条の不法行為が成立するというふうに考えます。そういたしますと、七百二十四条によって損害賠償の消滅時効の問題、これがございます。これもただいま私が申し上げましたような玩具類とか日用品とかか、そんなものについては何らの効果も生じない。私はそういう業種が相当たくさんあるのではないかと思います。
 さようなわけで、今回の改正案に対しては反対でございますが、さらに、これもまことに失礼な申し上げ方で恐縮でございますが、特許庁内においても八〇%以上が反対しておる。これは特許庁の公報に印刷物として発表されておる、こういう実情でございます。
 またさらに、大体において中小企業の団体またわれわれの弁理士会においてもこれは反対の決議をいたしております。また中政連においても反対をしておる。そういうふうに反対者が非常に多いのです。私は、何を好んで一日を争ってこれを改正しなければならないかという点について、非常に疑問を抱くのでございます。
 御承知のように、ドイツにおきましても、これは昨年の十月から法律が改正されたわけでございますが、この改正については特許裁判所を十もつくっておる、新規性調査機関も設けておる、あらゆる必要なる前提条件を整えて、しかる後これをやっておるわけです。何もオランダごときのまねをしていまさらやることは私はないと思う。
 御承知のように、アメリカでも国会審議を相当やられたわけですが、そんなことをしなくとも、特許庁の内部の事務機構とかいろいろな機構を改善すれば審査促進の実効をあげることができるということで、国会審議が中止になりまして、御承知のように現在は特許庁の内部的な機構改正によよって現に実績をあげておる、こういう状態でございます。
 時間の制限があるので、私はもっと申し上げたいこともございまするけれども、いま少し審査をひとつやっていただきたい。
 それから非常に難解な条文がございます。これも失礼なお願いでございまするけれども、逐条審議をひとつやっていただきたい。
 さらにいろいろな法律問題、これは単なる産業政策的な問題だけではございません。憲法、法律いろいろな関連がございますので、お願いできまするならば、法務委員会とも御審議を賜わりたいということを衷心からお願いを申し上げる次第でございます。
 以上、私の反対理由でございます。(拍手)
#18
○大久保委員長 吉村公述人には、つごうがおありのようでありますので、順序を変更して先にお願いいたします。吉村公述人。
#19
○吉村公述人 私は、昭和二十六年から日本経済新聞の科学と技術欄というのを十五年担当しました。その後は、日本科学技術振興財団の機関誌に論文を主として発表しております。そういう取材活動で非常に数多い発明者にお会いしていろいろな話を聞いた。しかも、それは国内だけではありませんで、私は毎年ソ連と東ヨーロッパ、西ヨーロッパアメリカと、そういうところをぐるぐる回っております。ことしもつい最近帰ってきたばかりです。私は、実は法律のことはあまり知らないので、みんながどういうことをこれに関して言っておるか、あるいはどこの国がどういう動きをするか、法律的じゃなくて、一般の意見を述べてみたいと思うのです。
 その前に、いままで公述人の方からいろいろな意見が出ましたが、皆さんごもっともだと思いまして、私も賛成派には入っておるのですが、どっちがどっちだか法律的にはわからぬようになっております。しかし早くしなくちゃならぬということは、全世界の発明家の意見なんです。
 まず発明家の生理というのが、実は問題になりまして、特にハーバード大学のビジネススクールでは、三十五歳から四十歳までの将来経営者になる人たちの教育をやっております。そこで大脳生理学を講義しているのです。皆さん、こう見てみますと、みな額がはげておりますが、さてほかの動物にはげた動物がございますか。これはおそらくはかの動物が人間を見たら、一番不気味なのは、額がはげていることです。しかし、生理的に額が人間だけはげているのは、はげる理由があったわけでしょう。それは発明をしたからでしょう。三百万年前は、樹木生活をして猿人といわれましたが、そのときは、いまのゴリラぐらいの額で、ずっとあとへたれまして、それが百万年前の原人になりますと、少し額ができたのです。それからこの百万年間に、四回の氷河期があったが、その間生き抜いて、二万年前に新人というのがあらわれましたが、そのときは、すっかりはげ上がっておったのです。
 それじゃ、なぜ発明をするとはげるかということをまず言わなくちゃならぬと思うのです。すべて動物が生きているというのは、実は延髄という小さな卵大くらいの脳細胞があればいいのですが、それを九〇%も占めているのは、皆さん御存じの大脳なんですね。大脳を前後に分けます。四〇%を一応前頭脳という、前のほうにあるから。六〇%を後頭脳という。後頭脳の仕事というのは、見たり、聞いたり、いろいろなインフォメーションが入ってくる。それが記憶細胞というのがありまして、そこでいままでに記憶しておった知識と比べて、そして運動命令を起こして逃げるとか追いかけるとか、いろいろな行動に移るわけです。つまり電子計算機というのは、この後頭脳の仕事しかできないのです。ところが頭がりこうといわれるチンパンジーだとか犬というのは、前頭脳が一〇%もありません。人間だけが四〇%もある。この前頭脳の仕事というのは、後頭脳が蓄えた知識を使って発明をすることなんです。つまり知識というのは、過去の経験ですね。過去の知識です。前頭脳が未来を開く。つまり人間は、発明をすることによって万物の霊長になって、あらゆる動物を征服し、地球の支配者になった。その発明をするために百万年かかってすっかりはげて、このような額になったわけです。なぜならば、後頭脳のほうは、見たり聞いたりは瞬間の反応ですから、そこで細胞発熱が非常にわずかですが、ところが熟慮断行とかいいまして、いろいろなものを考えたり発明しようとすると――頭が熱くなったから外へ行って冷やそうなんていうのは、頭が熱くなるのは、全体ではなくて、この額です。つまり前頭脳だけなんです。この前頭脳が想像とか推理とか判断とか、こういう作用をします。したがって、ここへ熱がたまるために発散する。額がラジエーターになったのです。いろいろなものを考えた頭の熱は、全部これから出ます。しかも普通の状態では空冷です。しかし非常に考えて熱くなると、汗が出て水冷に変わる。もっと激情にかられますと、間に合わないので、内部で水冷をやって、その排水口が働いて、これを皆さん涙と言っているのです。こういうのは、あくまで生理学で、発明の問題は、いまのように前頭脳の仕事でしょう。そうしますと、皆さんがおつくりになった法律というのは、これも私は発明だと思うのです。いわゆる発明の特許をねらっているほうは、個人の利益ですね。ところが法律のほうの発明というのは、民主的多数の利益ですね。ところが、その出した法律が局主的でない場合は、ちょっと問題があるわけでしょう。ときどきあるようですけれども……。だから、いま問題になっているのは、皆さんは唯心的な発明をどう裁くかということをねらっておられる。特許のほうの発明家というのはは、唯物的な発明をやっているわけです。もう一つ、唯心的であるが、唯物的に似ているのが、学会の発表なんです。この学会の発表の場合は、論文を出しますと、編集部でそれを受け付けて、すぐ何時というのまでスタンプを押して、すぐ編集会議にかけて、これはだれが一番適当だというレフリーをきめます。で、レフリーが、よく読んで、確かに発明だと思えば、それを学会に論文として出すのです。それと同じようなことを特許庁でもやるわけなんですが、ちょっと事情が違う。特許庁というのは、もし午前一時とか二時という夜中に申請しようと思ったらできるでしょう。裏口営業をやっているのです。特許庁は、いつでも、一分一秒を争うのが特許の受け付けですね。受け付けておいて、あとはほったらかしにする。これは何というひどいことですか。
 で、私がちょっと感心したのは、ソ連の情報研究所なんですが、そこでは全世界の特許と、それから論文を、千二百人の翻訳官が、全部科学者ですが、それを全部読みまして、重要な部分を全部ソ連語でメモをつくるわけです。そのメモのつくり方が、郵便コードみたいに全部番号がつけてありまして、最も簡潔なメモをつくって、そしてそれを情報センターに全部置きますが、さらに必要な研究者にそのメモだけを発送する。それから論文は全部マイクロフイルムにとってあります。そして、その情報官だけで足らないところは、ほかにレフリーが四千人おりまして、どうしても自分たちでわからぬというのは、そっちのほうに頼んでメモをつくってもらう。それで、われわれ研究者が一番困るのは文献調査です。文献調査に使う時間というのが一番むだなんです。そのむだな時間を、現在、ソ連では、電話一本かければ、図書室からばんとそのメモがくる。そのメモの必要なものを頼むと、すぐマイクロフイルムをインラージしまして、プリントを送ってくる。こういうようなやり方をしまして、一分一秒を争って新しい情報を手に入れている。
 それともう一つ、アメリカの大会社では、研究員の定年は三十五歳です。これが、いま申しましたように、後頭脳の、いわゆる運動神経とか感覚神経をつかさどっているほうは、大体二十歳で完成しまして三十歳で終わる。これはスポーツマンと同じです。ところが、前頭脳の場合は、人間の発達史で一番あとから生まれたものですから、大体十五歳ごろから動き出す。そして二十歳ごろから活動を開始しますが、この前頭脳は、ただあればいいのじゃないのです。ここでも額の広い方は多いようですが、それは訓練しないと、見かけ倒しで、ただ広いだけです。訓練をしなくてもいいなら、アフリカの黒んぼは、みんな額が広い。結局アフリカの土人が発明できないのは、後頭脳の知識もないでしょう、ないそでは振れないわけですね。前頭脳も訓練していない。で、町の発明家が、いまでも永久運動なんか持ち込むというのはは、いまの後頭脳の知識が足らぬというほうですね。しかも前頭脳というのは大体二十歳から二十五歳にうんと訓練する。その訓練する方法というのは議論しかないのです。そしてアメリカのMITの講義などを聞きますと、一つのテーマで、それをいかにジャッジするかとか、推理するかとか、あるいはほかのアイデアはないかということを絶えず講義中議論だけしているのです。日本の大学のようにノートを読んで事足れりというような浪漫クラシックなものは大学の値打ちなし。大学というのはただ前頭脳の訓練をする場所ですよ。知識を教えるんじゃないのです。もう高校で独学するだけの実力はついたはずなんです。大学ではそれを訓練するだけです。ほかにとり柄はない。だから、ただ知識だけあって、昔なら学士なら嫁にやろうかなんということをいわれましたが、もうその手は使われない。明治開国以来、欧米に追いつけ追いつけの時代は、知識さえあればよかったのですが、追いついてしまったら今度は自分の前頭脳を使わなくちゃならぬ。創造力、すばらしい発明力は二十代で終わりです。三十歳代になりますと今度は推理力に変換する。四十歳代になりますと判断力になる。五十歳代になりますと決断力で、使っておれば、つまり議論をしておれば死ぬまでこの前頭脳のほうだけはうまいこと動いてくれる。だから、大臣諸君の中で相当な高齢の方がありますが、毎日いじめられているおかげであれはうまいこと頭が動いておる。大いに皆さんもいじめたほうが、彼らの長命のためにも頭脳のためにも必要だと思う。
 それからもう一つ、三月にイスラエルへ参りましたが、イスラエルみたいに四国より狭いところで、砂漠で、人口二百五十万で、一体何を立国にするかということを質問したら、パテント立国です、それをはっきり向こうの科学技術庁の長官に相当するドクター・タルが言いました。結局、われわれは資源にも恵まれぬ、人的資源にも量的には恵まれぬが、質的に戦ってみせる、このようにパテント立国というのを敢然と打ち出したイスラエルというのを、皆さんも気をつけて見ていただきたいと思います。
 終わります。(拍手)
#20
○大久保委員長 次に、三輪公述人にお願いいたします。
#21
○三輪公述人 商工会議所としての意見を簡潔に申し述べたいと存じます。
 今回の出願の早期公開、審査請求、審査前置制度の創設を含みます特許法及び実用新案法の改正につきまして、商工会議所といたしまして賛意を表するものでございます。
 その理由とするところは、皆さまも御承知のごとく、いまや技術革新は非常な勢いで進展をいたしております。おそらく今後日本の経済の発展はかかってこの技術の開発でいかに実現するかということにあるのではないかというふうに申して過言でないかと思うのでございます。したがいまして、特許法の改正問題も、この大勢に即応して、前向きに改正取り扱いをせられますことが必要であるというふうに考えるわけでございます。今日の特許行政の実情、審査の状況、滞貨の状況のままで放置いたしますことは、将来の日本経済にとりまして大きな損失を促すものであるというふうに考える次第でございます。したがいまして、この改正はぜひとも十分御審議の上、今国会で成立をいただきますよう切望をする次第でございます。
 この内容につきましては、皆さますでに各公述人から述べられておるわけでございますが、やはり相当大きな数でございますので、その及ぼすところは非常に大きいのでないかと思うのでございまして、特に出願人の権利保護ということに十分な配慮が加えられねばならぬというふうに考えておるわけでございます。
 公開されました発明につきまして補償金の請求権が認められておるほか、公告後には差しとめ請求権まで――これは最終的な審議で加わっておるわけでございますが、なお私どもも、この技術的な問題、あるいは法律的な根本的な問題につきましては実はしろうとでございますが、補正等の制限の問題につきましても、あらゆる方面の意見を調整されまして原案ができておるように考えるわけでございます。
 現在の改正法は適切でありまして、すみやかな実現を希望をいたす次第でございます。
 ここで二、三の点を申し上げておきたいと存じますのは、第一は、実用新案制度の問題でございますが、実用新案制度の問題につきましては、なおその根本的な問題が残っておるわけでございまして、私ども実用新案制度の有効な制度であることを主張をいたしておる次第でございますが、新案制度の内容とか、あるいは簡易審査の問題とかいうような根本的な問題について、この改正後にさらに御検討をいただきたいということを申し上げたいのでございます。私どもは、この改正と同時に行なわれますといろいろ困難な問題がありますので、まずやはりこの改正は改正として切り離して行ない、その後にさらに実用新案制度についての改正を考えてもらいたいということを申し上げておきたいと存ずる次第でございます。
 第二には、公報の閲覧所の整備の問題でございます。本年度東京、大阪に完全な閲覧所を設けられるというような、これは予算の関係でありますようでございますが、私どもは、全国の主要な都市には完備した閲覧所を設けられまして、出願者の便宜を十分にはかり得るよう整備をいただきたいということでございます。
 第三に、この改正が行なわれましたあとにおきましても、やはり特許庁の機構の強化なり行政の拡充についてさらに進めていただきたい。もうこれでいいのだというような考えを持たないで、予算的、行政的措置として、特許庁を拡充、整備して、この新しい制度の改正に十分適応するよう、予算上その他の措置を講じていただきたい。
 以上のような点を申し上げまして、私の意見を開陳いたした次第でございます(拍手)
#22
○大久保委員長 次に、白石公述人にお願いいたします。
#23
○白石公述人 私は、全国の発明コンクール受賞者連盟に属しております。これは、一件でも二件でも自分が特許をほんとうに持って、そしてNHKのコンクール、これに入賞あるいは入選された方の任意団体でございまして、この団体がお互いの親交を深め、発明の権利を重んじ、事業化の促進をはかり、助長をはかるという目的で集まった団体でございます。現在十回ほどこのコンクールが行なわれまして、現在われわれの会員といたしましては百五十名ほどになっておりますが、全数では一千五百名、これはこの十倍くらいの商品、あるいは発明の中から選ばれたものが、大体いままで千五百件くらいございます。
 それで、昭和四十一年以来、この特許の改正が問題にされましてから相当期間皆さんの間で審議されたと思います。しかしながら、なお、今国会に提出する今日に至るまで、反対の意見が圧倒的であると、きょうの公聴会をお聞きになりましても、そのような感があると思います。これは一に発明の意義あるいはその認識、こういうものに欠けている。いわゆる個人の発明、そういうような権利を持った方が、この審議に参加されるときに何人おられたかということも考えていただきたいと思います。第一、科学技術における発見と発明という、この二つの活動は、労働でもございませんし、生産でもございません。いわゆる創造というものでございます。この活動の中に、われわれの特許権または著作権というふうな人間の知的、精神的の所産であるというこの特許権に対して、皆さんがどういう考え方であるかということが疑われるのでございます。発明家の立場といたしますれば、人間のそういうような知的、精神的な所産であるところの特許権、いま世によくいわれております独占資本の、または企業家のごまかしのテクニックにひっかかる、われわれのこういう精神的なものがそういうものにひっかかるおそれがあるということからして、反対するものでございます。われわれは、イデオロギー、そういうようなものの考え方ではなくて、発明家の正論として今日述べさせてもらっておるわけであります。いままでの発明家の年齢を考えましても、昨年、ことしの入賞する方の年齢の平均が大体五十四歳になっております。いわゆる入選者のお年が平均五十歳、こういうふうな年齢でございまして、世にいう経験者、また心情豊かにして刻苦精励の士と申しましても過言ではないのでございます。まことに、その人たちを見てみますと、保守的な性格も十分持っておられます。しかし、世界の技術の進展ということも非常によくわかっておる。しかし、あまりにも、われわれ、この個人の発明家、そういうものより大企業優先のごとく察知されるというふうに考えておるのでありまして、これが自走独立の線に沿って、乏しい資力で開発精神に燃え、日本の産業の一端に貢献していることも皆さん御承知のとおりでございます。われわれの現在の個人で持っている発明品、実用新案、そういうものがこの零細企業に携わる発明家の実情でございます。このわれわれの立場が、商工委員会、こういうような席上で審議されるときには、まことに無視されたようなことになっていはしないかというような考えが深いのであります。いわゆる存在の無視ということは破壊ということに私は考えます。
 そこで反対の理由を述べさしていただきますが、われわれは反対せんがために反対しているのでは決してございません。まだ打つ手があるというように考えておるのであります。これはあとで御説明申し上げます。
 第一にあげますならば、この個人的な発明者のその発明の権利保護の安定の確立がないということであります。方法としましては、先ほどもいろんな方が申されましたが、いわゆる特許裁判所、こういうものを設けていただきまして、そこで権利の侵害に対する訴案を処理していただく。それもわれわれが、今日信頼を受けましたところの弁護士を頼むとか、そういうような多額な経費の持ち主ではございませんので、損害賠償なりあるいは権利の譲渡なり、そういうものがもっと簡単に行なわれるというような特許裁判所、これが第一に設けていただきたいものでございます。そういうものが確立した暁に、今度の法案のごときが提出されるならば、あえてわれわれ反対するものではないというような気がいたします。また企業家あるいは資本家というような方は、その発明家の権利あるいは人格に対して慳貧でないという、いわゆるけちらないということ。これを申し上げますと、明治二十九年に日本の野日――名前は忘れましたが、この方が現在自動車あるいは汽車、車両に使われておりますプラスネジを発明されたということを聞いております。当時資本家は、あるいは企業家はどうしておったかということであります。それが戦後アメリカを通じて、さもアメリカの特許であるごとく日本のほうへ、大資本でもってつくられたものがどっと押し寄せてきた。これなどは、当時まだいろんな工業が発達していなかったとはいえ、やはり企業家なり資本家の人がけちな考えであったのではないかというふうなことをいま申し上げても過言ではございますまい。また発時家自身も、発明家というのは、非常にてんぐになりやすいということもございますが、これは自分の権利に対しては、き然として立ち向かうと同時に、また資本家なりそういう企業家が手を差し伸べてこられたならば、これに寛容であり、また謙虚に対処すべきものだと考えます。
 第二は審査制度の合理化確立をはかるということでございます。
 これは、現在の特許庁の審査は書類オンリーでございまして、また審査官そのものは現場なりあるいは現物というものに対して不認識であるということが考えられます。そのために起こるいろんな長期のものがあると思います。
 第一この区分でございます。非常に新規性に富んだもの、あるいはあったが、それに改良したものだとか、その他簡易な出願、こういうふうに三種類ぐらいにお分けになりましたならば、もっと審査はしやすいのじゃないか。
 一番最後に表がございますが、これを見ていただければわかると思います。これは、私個人が、復員後困りまして、日本人は何をやればいいか、それは自分が持っている能力を最高度に発揚する、いわゆる創造、人間に与えられたその創造というものを発明に結びつけていくことが、資源もない日本人として今後の日本に残すべきものじゃないかと思って、発明ということを始めました。それから今日まで十七年間、特許歴としては、まことに個人としまして申し上げるのも恥ずかしいのでございますが、一応最初は拒絶を受けますと、ああこれはもういかなかったというようなものが十二件あります。しかしその十二件のうち三つ四つは、現在ある企業家がまねてやっております。それで、特許庁におりました審査官が、おれはどうしても拒絶を受ける、おまえは拒絶を受けて次の段階に入ってないじゃないか、拒絶はそういうものじゃない、いろんな文章の上あるいは考え方に足りないところがある、もう一回やってみてはどうかということを言っているのだから、そこでやめちゃいかぬのだということを言われましてからやったのが、昭和二十九年五月十一日から今日までのものでございます。
 そこで先ほど申し上げました合理化というような線に、自分がつくったものを試作なり模型なりあるいは精密な写真をもって特許庁に出願と同時に差し出すということであります。この表でごらんになりましたように、特許の「二ツ駒算盤」あるのは「カウント輪尺」と書いてございます。特許番号、出願番号が参りましてからは、私は、現物を見せて、私が出しているのはこれでございますと、こうして審査官にお見せしました。ほかのものが四年あるいは三年数カ月たっているのに、この二件だけが、現物を見てなるほどと納得していただけたもので、二年、二年五カ月、こういうふうに審査が非常に早くなりまして、特許権が交付されました。それから拒絶を受けました場合にも必ず現物を見せて、ああそうだったのか、――この間は、小さな方形ワクというものでございますが、これが大きな農業の田植え機械と間違えられる、こういうことは現場なりあるいは現物に接している特許庁の審査官の方々の不認識ということがこういうことになる。私は現物を見せて、これです、ああそうだったのか、こういうふうにして、その拒絶がすぐ公開、公告になるという事例もございます。いま郵政省でやっておられる郵便番号、これもわれわれ国民が大いに協力をしております。われわれ発明家自身も特許庁の人員の不足あるいは滞貨、こういうことに対して特許庁に協力をするという態度があったならば、いまの滞貨はそうむずかしくない時間において解決ができるのではないか、あまりにも秘密秘密でやって、自分しかわからないというようなものをもって審査官に対するということも、これは考え直さなければいけないことじゃないかと考えます。
 それから国民道義の高揚に反するということでございますが、世はあげて小学校、中学校、高校に至るまで、発明意欲に燃えまして、各地区で、また東京都内で皆さんの目に触れ、いろいろな発明の展示会が行なわれまして、発明意欲の高揚を来たしております。こういうような純真な若い伸びゆく青少年に日本の発明意欲を植えつける。そのときにおいて、われわれの年配においては、こういう審議会で、あるいは世界からエコノミック・アニマルと呼ばれ、ものをまねするじょうずな日本人と、こういうようなことをいわれる今日、この若い日本を背負って立つ青少年にどうしてわれわれのこういうような醜いことを打ち出していくことができるかというふうなことを考えますときに、現在の時点におきましては、まだまだ打つ手が十分あるのに、今日のこのような混乱というか、審議審議を重ねるということをやっていなければならないということが、私はどうしても解せないのでございます。どうしても私たちはこの日本の将来を背負って立つ若い青少年に、この芽をつむようなことは絶対にやってはならない、こういうふうな観点から、いまの時点においては、私はこの法案の改正には反対であるということを申し上げたいのであります。
 これで終わります。(拍手)
#24
○大久保委員長 次に、林公述人にお願いいたします。
#25
○林公述人 私は、御紹介いただきました林寿でございます。
 私は、発明者であり、特許権利者であり、株式会社海光社の代表取締役でございます。六十七歳になります。これは申し込みには書いてありませんが、なお公職といたしましては、全国団体の日本水産機械工業協同組合理事、創立以来の理事でございます。それから財団法人日本発明振興協会の常任理事及びそれぞれの工業所有権保護委員会の委員長でございます。なお、他の発明団体と連合いたしました特許制度擁護連盟の理事、代表幹事の一人でございます。また、発明協会東京支部の工業所有権対策委員会委員でございます。過去における研究、発明、考案の実績は三百数十件ございます。それによりまして大正五年に十五歳のときに、現在全国あるいは外国でも使っております電気集魚灯を実施化しまして以来三百数十件でございますが、その間特に戦後食糧難の時代に、稚魚を逃がし、成魚を数倍とれるトロール拡口底びき網、現在も七つの海で使われております。その実績によりまして戦後最初に藍綬褒章を賜わりました。なお、水産の宗家といわれている社団法人大日本水産会の水産功績賞及び東京都の発明功労賞、なお昨年科学技術功労賞をいただき、その間東京都知事賞、関東地方発明賞、全国表彰等その他の受賞が四十七件に及びました。この間に、非常にいい発明ほど問題になります。特許侵害が起こります。これを民事等で訴訟いたしますと、脅迫など三年間、数年前まで、裁判を取り下げろというので、ドスを持ち、短刀、ピストルを持ち、おどしでございます。皆さんはこういう御経験がございますか。発明者は特許に登録されただけでは何にもなりません。絵にかいたもちもたくさんございます。実施化するのに金が要り、努力が要り、ある場合は親戚中家族離散までした友人もございます。その間にいよいよ役に立ち売れるようになりますと、そういう目にあいます。こういった経験を反映させたいために申し込みまして、その一端を発表申し上げて、いい改正をしていただくために発言を許していただいたことを光栄に思います。
 端的に申しますと、このたびの法改正はまことに改悪でございますので、私どもは公私ともに強烈な反対をいたします。その理由は、こまかくはもう申し上げられない時間でございますので簡単に申しますが、この法案が出されました工業所有権の審議をされた内容――ここに発明者は、私どもの連盟の代表で出ております大條氏一人が発明の経験者でございます。どうして発明者を加えて、いま申し上げたような命がけで個人の経営――少なくとも多くの国家表彰、地方表彰、いろいろおほめをいただきましたけれども、陰ではおどされている、この現状が裏にあるということを、皆さん、十分認識されて御審議をいただきたい。
 ところが、この審議会で答申が出た。その審議員の中で、私が昭和二十一年、最初に藍綬褒賞をいただいたときの当時の特許局長官久保先生もその一員でございまして、この先生がその審議過程において何と言ったか。これはわれわれの代表からそのつど報告を受けていまして、これによりますと、この強制公開は、出願人が特許庁の窓口で追いはぎにあい、その追いはぎは出願人の明細書を市中でばらまいてしまうようなものだ、こういう意見を述べられておる。こんなことならば現行法がよほどいい、と。これはまことにもっともな御意見であります。
 なお、肝心の答申がなされたときまでに約二年間、個人個人は非常に反対意見を持っておられた学識経験者、たとえばいまの久保先生のごとき、ついに最後には三十数名の審議員が、大條氏を除いては何にも言われなかったと聞いています。賛成とも言われなかったやに聞いています。私はその場にいませんから真実はわかりませんが、報告によればそのとおり。そういうことは全国中小企業団体中央会における特許庁の説明のときも質問した人はたった一人。あとは黙っていた。一カ月以内に意見なりあらば出せと言ったが、これまた何にも出なかったからみんな賛成だ。ところが、肝心の特許庁の実務者、これはおそらく長官よりも、会社でも社長よりも部長課長、その部署で働く者がその実務は一番詳しい。大臣、長官よりも担当者が一番詳しいはずです。この困難な知能労働に対して過去四名も自殺者が出ている。こういうほんとうに精神的な苦労をなさっている審査官、事務官等が、先ほど来お話も出ておりましたけれども、ことしの三月のアンケートで八一%、いまではもう大部分が反対だ。弁理士会が、また私どもが特許制度擁護連盟でアンケートをとりました。これがまた弁理士さん千五百名に対して八四%の反対。これも弁理士会ではいろいろ工作があったりされたようですが、これもまた最後には条件つき賛成だったのが、条件が満足されないからというので、これは反対に回っております。それにまた連盟は五団体、さらにいま私の前に公述された組の団体、また中政連、これもすべて反対の陳情なり請願書を出されているやに伺います。これほどさように庁の内外から密接な関係者の大多数が反対している法案は、どうしてこれを無理に押し通して通そうとなさるのか。
 顧みれば、私は三十三、四年の現行法に至る時代から全国団体の水産機械と発明振興協会の両方の工業所有権保護委員長をやっておりますが、このときに、現在無効審判の除斥期間が廃止された。これは御承知のように特許は五年、実用新案は三年で無効審判ができませんから、それまでに無理して一生懸命実用化し、売るようになった。そうなると自己資金も資本家、銀行も金を貸してくれます。現在ではいつでも独占権といいながら、十年、十五年、いつでも金力、権力、政治力を持った人に脅迫され、実に弱肉強食の座に置かれているのが現状であります。このときの除斥期間を廃止されたこの現行法に至るまでは非常に発明者、中小企業者が伸びた。ところがこういう座に置かれた。この除斥期間を廃止されたのも当時荒玉長官が室長でおられたときで、このときの主役と聞いております。さらにまたこのたびは、より悪い、発明者、中小企業者が立つに立てないような早期公開、これは長官は国家のために大いによかれかしとやっておられるのかしらぬが、私ども発明者、中小企業者から見れば、弱いものをいじめる方向に、過去の八十余年国費を使って発明奨励をし、質はともかく世界一、二の出願件数といわれているこの育てを、逆に弾圧する方向に向かわれている。どういうわけかわかりません。いろいろとこれを無理押しするについては家庭の事情もあると思います。外郭団体では特許公報その他を一手に売っております。これが通れば相当な収入になると思います。この中身も普通の商売と違いまして非常にもうける発明協会ではないはずですが、発明者の協会として隠れみのです。一体われわれの協会が――特許庁も発明協会本部も、われわれの連盟に参加しているのは、誤解されないように特にお願いしますが、この問題ではその本部と別に東京支部がわれわれの擁護連盟に参加されております。これはまあいろいろな裏もあろうと思います。表面は穏やかでも、先ほど申し上げたようにピストルや短刀を突きつけられて言うことを聞けといわれている。命がけでやっておりますから、言うことを聞かないでここまで生き延びておりますが、その事件も特許庁では審判結論、鑑定結論で私が勝ちましたが、裁判ではこれを全然取り上げない。これも私はいつか長官に、特許庁は信頼し得る権威のある特許庁になっていただきたいということを要望いたしましたが実に情ない状態であります。
 それからなお四十一年度、四十年度あたりに、この前の廃案になった問題があります。このころパテント誌に、昭和四十年六月号に、特許庁は早期公開は審査処理の促進には効果はないと発表されている事実があります。それからまだ三年たたずにこのような推進を相当無理押しに押してこられたということがどこにあるか。この無責任な朝令暮改的な改正案はいかにもあさはかであり、いつも歴代の長官の席が腰かけであるといわれているのも、あとはこれが通ってしまえば長官はどこかへ行ってしまう。通産次官なりほかの公団なり、えらく御出世なさるというような先例もございます。じっくり落ちついていい改正をしていただきたい。われわれは、先ほど来賛成者側からお話があったように、反対の側でも、審査を早くしていただきたい。それが早くできればこれにこしたことはありません。現在私は、実用新案が五、六件昨年の十一月に、三十五年十月五日に登録になったものが固めてきました。これは知能を要する審査官の時間は必要ありません。女の事務員さんでけっこうなんです。これが何と権利が切れるころ着きました、特許がついて。三十五年の登録のものが最近来ました。これも特許はあとわずかであります。実に審査官を得がたいときに、技術を要しないこういう作業が隣の部屋から隣の部屋に行くのに四カ月、半年かかるといわれている。これはまだまだやり方があろうと思います。アメリカがしかり。特許協会の理事長の五月女さんが日刊工業に書いております。アメリカは平均四年半が、こういう法案を出して議会でけられて、特許庁の機構改革と努力によってやれるということを言われて、やってみたら二年半でできている、こういうこともあります。時間がありませんので、結論を急ぎますが、いま一つ、今度のは、先ほどの久保長官の御発言のとおりでありまして、そのかわり補償金の請求権を付与したと、先ほどは実にありがたそうな御発言もありましたけれども、全くこれはありがたくありません。なぜかならば、私が申し上げたように、現在も私の事件は続いております。私も裁判しても別にもうからない。逆です。だけれども、藍綬褒章までもらったことだから、はっきりしたいい判例を残してほしいという各団体の要望で、私の個人なものですから、私個人が原告であります。水産大手、中手、小手全国やっております。皆さんのあがっている魚の何分の一かは私の網でとっている、集魚灯でとっている、こういうものです。それにもかかわらず私が網をつくり、沖合いで波かぶってとり方を教え、私潜水を三十何年やっております。網は引けば引くほど網口はふさがり、目がふさがる。市場価値のある成魚は飛んで逃げる。飛べない稚魚が中に入る。尾数にすると何百、何千何万倍という尾数が殺されている。これをまのあたり見たので、網口を広げる、綱の高さを広げる研究を長年続けました。これは研究論文も出ている。学位も途中で辞退をいたしましたが、現在実用的にはどうにか皆さんのお役に、特に戦後の食糧難時代にお役に立っている。それなのに裁判ともなれば、教わった者は、当時の船長、漁労長は重役、社長になっております。裁判所に出てくる者は、全学連のようなかってなことを言う若者が出てくる。これは裁判所、検察庁の批判をすることになりますので遠慮いたしますが、せめて特許庁で二回勝ったんですから、それを採用していただき、正しい裁判をやっていただきたい。
 結論的に申し上げますと、補償は先ほどもお話が出ておりましたが、公開されて直ちにやられるものは、金力、設備、人があれば、特許のいろいろな実施例を、いろいろな試作品をつくり、その中で売れるものをつかみ出すのはそういう大手の力が早い。しかも販売網を持っている。さあ今度は審査して公告になった。それから裁判して、おまえの特許権だぞとなってから、これはこれはとやりましても、相手は、民事裁判をやったって、そのとっくに前にうんとかせいで、そのうちにちょっぴりやればいいんだ。私が十数年前に発明した特許も、四、五年前にある大手が特許侵害をやりまして、これが異議で負けると見たから話し合って、これはようやく仲直りをいたしました。そこで現在北洋のサケ、マス、カニ、これらに大量に使われるようになりました。そうしますと、これを堂々と侵害しているのがすぐ出てきました。これいわく、契約してくれと何回も来て、契約することに内諾を与えた。いろいろな材料をくれというのでやった。そうしたところが、民事で損害賠償請求やられても、五年、十年、二十年でも違う違う言っておれば、その間に四、五年で何億かかせいでみせるというようなことを言いながらこれをやっている。ようやくいま仮処分で差し押えだけやっておりますが、これは重要な発明特許になればなるほど実にたいへんな目にあっていることを御承知おきいただきまして、国会の先生方も、専門家でないのでという前提を置かないで、特許法はむずかしいから、しろうとが勉強してもむだだ、特許の専門家は長官である、長官の言うことは通らなきゃならぬというようなことでありますが、これを十分御検討いただきまして、いい改正をしていただきたいと思います。
 最後まで御清聴をわずらわしまして、たいへんありがとうございます。(拍手)
#26
○大久保委員長 以上をもちまして公述人の御意見の開陳は終わりました。
 公述人各位には、御多用中長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、たいへん参考になりました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。
 以上をもちまして公聴会は終了いたしました。
   午後一時四十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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