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#1
第061回国会 商工委員会 第27号
昭和四十四年五月十六日(金曜日)
    午前十時四十七分開議
 出席委員
   委員長 大久保武雄君
   理事 宇野 宗佑君 理事 浦野 幸男君
  理事 小宮山重四郎君 理事 藤井 勝志君
   理事 武藤 嘉文君 理事 中村 重光君
   理事 堀  昌雄君
      天野 公義君    内田 常雄君
      小笠 公韶君    小川 平二君
      大橋 武夫君    海部 俊樹君
      神田  博君    鴨田 宗一君
      黒金 泰美君    小峯 柳多君
      坂本三十次君    島村 一郎君
      増岡 博之君    岡田 利春君
      加藤 清二君    勝澤 芳雄君
      佐野  進君    中谷 鉄也君
      古川 喜一君    武藤 山治君
      塚本 三郎君    吉田 泰造君
      近江巳記夫君
 出席国務大臣
        通商産業大臣  大平 正芳君
 出席政府委員
        公正取引委員会
        委員長     山田 精一君
        公正取引委員会
        事務局長    柿沼幸一郎君
        通商産業省企業
        局長      大慈彌嘉久君
        通商産業省重工
        業局長     吉光  久君
        建設政務次官  渡辺 栄一君
        建設省計画局長 川島  博君
 委員外の出席者
        議     員 海部 俊樹君
        法務省民事局参
        事官      味村  治君
        専  門  員 椎野 幸雄君
    ―――――――――――――
五月十六日
 委員田原春次君辞任につき、その補欠として中
 谷鉄也君が議長の指名で委員に選任された。
同日
 委員中谷鉄也君辞任につき、その補欠として田
 原春次君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 電気工事業の業務の適正化に関する法律案(海
 部俊樹君外八名提出、衆法第四二号)
 通商産業の基本施策に関する件
 経済総合計画に関する件
 私的独占の禁止及び公正取引に関する件
     ――――◇―――――
#2
○大久保委員長 これより会議を開きます。
 海部俊樹君外八名提出、電気工事業の業務の適正化に関する法律案を議題といたします。
#3
○大久保委員長 まず、提出者から本案の提案理由の説明を求めます。海部俊樹君。
#4
○海部議員 電気工事業の業務の適正化に関する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
 近年、国民生活の高度化によって各種の電気用品が広く普及し、家庭の電気の使用が著しく増大するとともに、家屋構造の変化、屋内配線技術の革新等と相まって、一般家庭等に設置される一般用電気工作物は、著しく複雑化、大型化してきております。これに伴いまして、一般用電気工作物の保安の確保の必要性は、ますます高まっているのであります。
 現在、これらの一般用電気工作物に関する保安の確保をはかるための法律的措置としては、電気用品取締法によって配線材料等に関して必要な規制を行ない、電気工事士法によってその設置の作業に従事する者の資格及び義務を定めているほか、電気事業法においても保安上必要な規制を行なっております。
 しかしながら、一般用電気工作物の設置者である一般国民は、通常、電気工事に関する専門的な知識に乏しく、その設置の工事を行なう電気工事士をみずから監督指導してその安全性の確保をはかることができないのが実情であり、また、電気工事士は通常電気工事業者の従業員としてその作業に従事しているため、電気工事業者の規制を行なっていない現行法の体系は、遺憾ながら一般用電気工作物の保安を確保するため十分であるとは言いがたい状態にあります。
 したがって、一般用電気工作物による災害の発生の防止に万全を期するためには、一般国民から依頼を受けて電気工事士を使い電気工事を行なう電気工事業者の責務を法律上明らかにする必要があるのであります。
 ここに提出しました電気工事業の業務の適正化に関する法律案は、このような最近の事態に対処して一般用電気工作物の保安の確保をはかることを目的としているものでありまして、このため電気工事業を営む者の登録及び主任電気工事士の設置その他の業務の規制を行ない、電気工事業を営む者の業務の適正な実施を確保しようとするものであります。
 次に、本法案の概要を御説明申し上げます。
 第一は、電気工事業を営む者の登録に関する規定であります。
 すなわち、電気工事業を営む者は、通商産業大臣または都道府県知事の登録を受けなければならないこととし、何人も登録を受けないで電気工事業を営むことを禁止したことであります。
 第二は、電気工事業者の業務に関する規定であります。
 電気工事業者は、その営業所ごとにその業務にかかる電気工事の作業を管理させるため、電気工事士免状の交付を受けた後、電気工事に関し三年以上の実務経験を有する等その職務を遂行できる要件を備えた電気工事士を、主任電気工事士として置かなければならないこととするほか、電気工事士以外の者を電気工事の作業に従事させることの禁止、電気工事業者でない者に電気工事を請け負わせることの禁止、電気用品取締法による所定の表示が付されていない電気用品の使用の禁止、必要な器具の備えつけ、標識の掲示、帳簿の備えつけ等の規定を設けて、業務の適正な実施を確保させることとしております。
 第三は、苦情の処理あっせん等の規定であります。
 通商産業大臣または都道府県知事は、その登録を受けた電気工事業者と注文者との間の電気工事に関して生じた苦情の処理あっせん等につとめなければならないこととしております。
 そのほか、危険等防止命令、登録の取り消し、報告の徴収、立ち入り検査等の監督、手数料、罰則等所要の規定を設けたことであります。
 なお、建設業法の適用を受けている建設業者には、本法案の登録及び登録の取り消しにかかる部分の規定は適用しないこととするとともに、その者が電気工事を営むときは、本法案の登録を受けた電気工事業者とみなして、本法案の業務、監督等の規定を適用することとしております。
 以上がこの法律案の提案理由及びその要旨であります。
 何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。(拍手)
#5
○大久保委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。
 本案の質疑は後日に譲ります。
     ――――◇―――――
#6
○大久保委員長 通商産業の基本施策に関する件、経済総合計画に関する件並びに私的独占の禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。堀昌雄君。
#7
○堀委員 大臣がまだ御出席になりませんので、最初に公正取引委員会のほうにお尋ねをいたします。
 今回の八幡、富士の合併問題に対して公正取引委員会がたいへん長期にわたって問題を精査され、最終的に七日の日にすでに皆さん御承知のような決定を行なわれましたことについては、私は公正取引委員長はじめ委員の皆さん、事務当局の皆さんのなみなみならぬお骨折りに対して敬意を表したいと思います。
 さらに、私、昨年の十月に当委員会において、当時王子製紙の合併問題についてとられておりました通産当局のいろいろな発表等については問題があると思って、その旨を指摘をいたしまして、公正取引委員会が仕事を続行しておられる際には通産省もつとめて発言を気をつけてもらいたいという申し入れをいたしておりましたが、今回のこの問題の取り扱い中にあたって、通産省は大臣はじめ事務当局、私どもの意向を受け入れて、きわめて慎重な態度でこの公正取引委員会の作業を見守っていただいたことについても、私は正しく評価をいたしたいと思っております。
 そこで実は、けさの新聞でございますけれども、昨日記者会見で委員長が今度の問題について御発言になっておる部分が新聞紙等に伝えられておりますが、新聞等に伝えられております点については、これまでも必ずしも正確を期しがたいときもありますので、ひとつ昨日の記者会見においてお述べになりました真意を委員長からお答えを最初にいただきたいと思います。
#8
○山田政府委員 昨日私が新聞記者諸君に会見をいたしまして、その談話がいろいろと今朝の新聞に出ておるわけでございます。もとより、御承知のとおり、私は原稿があって読み上げましたわけではございませんで、まあフリートーキングでございましたものですから、かなり記者諸君の観測が、主観的観測と申しましょうか、まじっておるわけでございます。私が述べました趣旨は、ただいま公正取引委員会といたしましては、去る七日に一定の内容を持ちました勧告をいたしまして、先方の諾否を待っております段階でございますので、事件の内容に立ち入りましてとやかく意見を申し上げることは適当でないと思う、また勧告を受諾した場合にはどうとか、あるいは拒否した場合にはどうとか、こういう仮定を置きまして私どもの考えを述べるということも、いまの時点においては、非常に微妙な時期でございますから、適当ではあるまい、こういうことを申しましたのでございます。あとは大体においてごらんになりましておわかりになりますように、成規の手続によりまして厳正に忠実に処理をしていこうということでございます。それ以外には特にコミットいたしておりませんつもりでございます。
#9
○堀委員 ただいまお述べになりましたことで、まだ問題が進行中でもございますから、特に私もお尋ねをいたしません。問題は御承知のように、これから、いま委員長もお答えになったように、両社がどういうふうな処置をとられるかによって、公正取引委員会における処置もおのずからそれに伴って起こってくるかと思うのであります。私どもは、皆さんのこれまでのいろいろな御努力に対して、今後ともひとつ厳正中立に独禁法を守っていただくということを特にお願いをいたしておきたいと思います。
 大臣の出席がおくれておりますから、大臣の御出席がなくて済むところだけをちょっと先に論議をいたします。
 私どもは、今度の八幡、富士の合併問題が現段階になりましたところで、毎年この時期に行われます鉄鋼の設備調整の問題はこれからどうなるのかということをきょうはお伺いをいたしたいわけでありますが、最初に重工業局長にお伺いをいたしますけれども、産構審鉄鋼部会では、たしか最近長期需要見通しをお出しになったと思いますが、この長期需要見通しの四十四年度分及び四十六年度分についてお答えをいただきたいと思います。
#10
○吉光政府委員 ことしの四月十四日に、いまお示しございました産業構造審議会の鉄鋼部会におきまして、四十八年までの長期需要見通しを策定いたしました。お尋ねの問題は、四十四年度及び四十六年度の数字でございます。四十四年度は七千八百十万トン、四十六年度九千四百八十五万トン、このように推定いたしたわけでございます。
#11
○堀委員 あわせて、高炉銑は四十四年と四十六年は幾らにお考えになったのかを伺いたいと思います。
#12
○吉光政府委員 四十四年度が五千八百万トンでございます。四十六年度が七千四百二十七万トンでございます。
#13
○堀委員 そこで、最近はだんだんと新しい高炉が建ちますと、たいへん容積の大きい高炉が建ちますから、一基で年間出銑が二百五十万トン程度というようなことのようでありますが、一体この現在の高炉から出ます銑鉄でありますが、高炉は御承知のように一定量以下で操業することは困難でございますけれども、しかし上限と可能な範囲の下限というものがあるだろうと思います。この出銑の上限と下限の比率といいますか、上限に対して何%くらいアローアンスがあるのかをお伺いいたしたいと思います。
#14
○吉光政府委員 平均いたしまして、おおむね一割でございます。
#15
○堀委員 いまお話しになりました四十四年度の五千八百万トンというのは、これは私、大体上限で見てある数量だろうと思いますが、いいがでしょうか。
#16
○吉光政府委員 そのとおりでございます。
#17
○堀委員 四十六年度の七千四百二十七万トンも、これも大体上限ではないかと思いますが、さようでございますね。――そうしますと、ことしの鉄鋼の設備調整で問題になりますのは、高炉の問題がことしは主たる問題だろうと思います。いま各社から出ております高炉の新設に対する希望はどういうふうになっておるか、お答えをいただきたいと思います。
#18
○吉光政府委員 現在申請が出ておりますものにつきましてお答え申し上げます。
 八幡につきましては、君津の三号、炉内の容積が三千立米でございます。それから富士の広畑の新一号、これが二千五百立米でございます。それから大分の一号、三千五百立米でございます。日本鋼管の福山四号、三千五百立米でございます。川鉄の水島三号、三千三百立米でございます。住友金属鹿島一号、三千立米でございます。大きな一貫メーカーの計画はこのとおりでございます。
#19
○堀委員 これに対して、通産省のほうではまだ作業を終わっておられるわけではないと思いますが、大体感触として、通産省側の希望はどういう形でこれらの高炉が建つことを希望しておられるのか、まだ予測の段階かもわかりませんが、承れる範囲でお答えをいただきたいと思います。
#20
○吉光政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、四十八年度までの長期見通しにつきまして、鉄鋼部会で御了承を得たわけでございますが、それに基づきまして、本年度の所要の着工設備能力を現在算定いたしておるわけでございます。その能力の算定が終わりましてから、それぞれについての具体的な措置について御相談申し上げるわけでございますけれども、ただいまお答え申し上げましたように、現在計画中の高炉の内容積は非常に大きなものでございまして、したがいまして、粗鋼換算いたしましても、おおむね一基につき三百万トン程度というふうなことでございまして、五本の能力を合計いたしましても、粗鋼で一千五百万トン以上というふうな状況になるわけでございます。したがいまして、この四十四年度中にこれを全部着工するというふうなことにつきましては、何としても無理があるのではないであろうかと思っておるわけでございまして、高炉の操業の幅、先ほどお答え申し上げました一割程度というふうなものを一応前提に置いておりますけれども、この一割程度だけではカバーし切れないのじゃないだろうかというふうな感じでございます。
 ただ、具体的な調整の方式の問題といたしましては、先ほどお答え申し上げましたように、需要見通しにつきまして、現在まだ相当大きな需要が予想されるというふうな状況でございますので、こういう設備調整の方式につきましては、できるだけ企業の自主性が生きるような形で問題を処理するのが最もいいのではないであろうかということで、実はまだ検討に入っておる段階でございます。
#21
○堀委員 いまお話がありましたが、四十六年度は七千四百二十七万トン、これは上限で出されておるので、もしこれにアローアンスを一割ということになりますと、七百四十万トン程度のアローアンスがある。銑鉄で七百四十万トンということは、要するに大体三基分のアローアンスがあるということになろうかと思います。いま建てようというのは五基でございますから、この間の四十四年度から四十六年度に対する伸び率というのは、銑鉄ベースで千六百万トン見られているわけでありますから、この間千六百万トン現在から向こう二年後に伸びる、そこにさらにいまの七百四十万トンのアローアンスがあるということを考えますと、数学的に見ると、私はどうもことしのうちに――おおむねことしのうちといいましても、前半に希望しておる会社もありましょうし、下期に着工を希望しておる会社もありますから、いずれもこれは自己責任として認めても、四十六年度における銑鉄の需給関係においてはあまり大きな問題は起こらない、どちらかというと、銑鉄は予定したよりも必要が多いものですから、輸入のほうが当初の見込みよりはふえてきたというのがこれまでの経過ではないのか、こう考えるのでありますが、その点についていまの私の計算、要するに四十四年−四十六年の間の差千六百万トン、それからアローアンス七百四十万トン、これらを見込んで――もちろんその中には今後に出てくる四十三年着工分もありますから、そこらはこまかく差し引きが必要でありますけれども、これらを計算してみて、どうも私は四十四年度中にこの五本が着工されてもあまり問題がないような気がするのですが、その点はいかがでしょうか。
#22
○吉光政府委員 御質問の中にもございましたように、全体として見ました場合におおむねおさまるだろう、これはちょっと長期的に見た場合でございます、というふうな感じもいたさないわけではございませんけれども、これもいま御質問のうちで御指摘いただきましたように、これが同時にすべてこの十二月まで、あるいは本年度一ぱい中に全部が同時期に着工するということになれば、これはちょっと問題が起こるのではないだろうか。現在いまもお話の中にございましたように、ことしの初めから戦力に入る、あるいはまたことしの十二月までの間に設備が完成する予定のものもございます。こういうふうに順次完成していく予定のもの、その完成時期との関係におきまして、新規高炉の着工の時期についてある程度の期間を持ってと申しますか、幅を持って考慮していけば、おおむね入っていけるのではないだろうかというふうに考えておるわけでございます。
#23
○堀委員 大臣にお伺いをいたします。
 いま大臣の御出席がおそかったものですから、鉄鋼の設備調整問題を先に取り上げておるわけですが、この富士、八幡問題がどうなるかは別として、私は、これまでも申しておりますように、競争原理を一番重要視しなければならぬところは実は設備投資の問題であろうと思うのです。設備投資がある程度自由でなければ競争は自由に行なえないのじゃないか、設備投資が、ある巨大な部分が非常に前に出て、その力によって、その他のものが押えられるということになることは、自由な競争だというふうには見られなくなってくる、こう考えるわけでありますが、その点において、これからの今年度における設備投資の問題は、できるだけ、私はいま競争をしようとしておる企業側に自由な設備投資を認めるということから始めるのが、大臣もいろいろおっしゃっておる競争条件の整備ということになるのじゃないか、こう思いますけれども、大臣いかがでございましょうか。
#24
○大平国務大臣 原則としては堀委員のおっしゃるとおりでございます。ただ鉄鋼業のような大きな装置産業におきましては、巨大な投資を呼びます。それは国民経済にとりましてもたいへん大きな圧力を持っておるものと思います。したがって、そういう巨大な投資、投資期間が長くかかる、実際の生産を開始するまでの時間的な経過も非常にある、そのあとの需要がどのようになるかということについても不安がある。したがって、一般に自由先進国におきまして、自由経済下における計画化の問題というような問題がいまやかましい論議の中心になっておりますことも御案内のとおりと思うのでございます。したがいまして、われわれといたしましても、原則としてそういう活力のある競争の場を保障する、そういう考え方でいくべきでございますが、巨大な設備を行なう場合におきまして、企業の自主性を尊重しながら、ある程度の設備調整という名において御相談に乗ることはやむを得ないことでないか。しかし、これはできるだけ最小限度にとどめるように配慮いたしたいと思います。
#25
○堀委員 それでは、一応いまの設備調整問題をここまでにいたしまして、五月九日の閣議のあとで、通産大臣が新聞記者会見でお述べになっておるのを新聞紙の報道から拾って申し上げますと、「ただ勧告書には両社だけでは解決できない問題も含まれているので政府としては問題点解消のため競争促進的な鉄鋼政策の立場から協力していきたい。具体的には産業行政全般の立場から新規参入者を育成していくとか需要家が同一価格、同一品目であれば問題なく買えるよう行政指導していくつもりである。」こういうふうにお述べになったように新聞は伝えておりますが、大体これでよろしゅうございましょうか。
#26
○大平国務大臣 大体私の考え方が出ていると思います。
#27
○堀委員 そこで、この中でちょっと二点ばかり伺いたいのですが、これは何もこの問題に限るわけでもございません、一般的でもいいのですが、大体、新規参入者がある産業部門に出てくるというときには、私はやはりその産業界における生産量、場合によっては需要でありますが、生産量が増大をしていく過程では新規参入者が入ってくることは比較的容易であるけれども、この新規参入者が入ってくるのに非常に困難な場合というのは、大体その生産量があまりふえない、ふえることはふえるといたしましても、あまり著しくふえていかないときには、新規参入者が入ってくるというのは非常に困難なことになるのじゃないか。それを育成していく、こういうふうにおっしゃっておるわけでありますから、これの考え方は一体どういうことなのかを、いま私の申し上げました問題を含めてお答えをいただきたいと思います。
#28
○大平国務大臣 私が申し上げた意味は、われわれはこういう合併問題があろうがなかろうが、競争促進的な産業政策でなければならぬということは根本の考え方でございます。したがいまして、今度のような事案が公取さんによって審議されて、この審議されておる間は、まあとやかくいろいろ申し上げないほうがいいと思いまして遠慮をしておりましたが、勧告の姿で公取の考え方が表明されたわけでございます。それを拝見してみますと、若干の寡占品目、商品につきまして違反の事実が指摘されておる、これに対して両当事者が対応策を考えるということは、寡占品目の競争条件を整備するという方向で措置しなければならぬ性質のものである、そのように理解するわけでございます。そういたしますと、私どもは競争促進的な産業政策をやるというラインとマッチするわけでございますから、そういうラインに沿って適切な対応策というものに政府も十分協力してまいらなければ、まいるばかりでなく、まいらなければならぬものではないかということが第一点の考え方でございます。
 第二点の堀委員の御指摘は、寡占品目が、いま拝聴しますと、何か魅力のないもの、あまり新規参入者が入りにくいといいますか、新規参入者にとりまして魅力のないものである場合にこれを育成するというのはどういうことかという御質問かと思うのでございます。いま指摘されておるような寡占品目、一般的に申しまして、そういう寡占商品につきまして競争条件が整備されることはけっこうだと思いますけれども、もともと事柄の本質上そういうものは魅力のないものであって、新規参入者なんというものを期待するのが無理なのかどうか、それは、御指摘のように具体に即して判断せなければならぬ問題だと思うのでございます。寡占状態がもう手のつけられないものであるとわれわれ断念するのは早いと思うのでございまして、その場合に新たなくふうの余地があるかどうか、これを十分検討いたしまして、でき得ればそこに健全な競争条件というものをつくり出す努力をすることが産業政策の本筋じゃないかというように私は考えるのでございまして、具体的な指摘された品目について云々ということまでいま私の頭にありませんけれども、事柄の筋としてそういうように考えるべきじゃないかと思います。
#29
○堀委員 私は、魅力のない商品というよりは、生産がふえないということのほうで申し上げたわけなんです。生産がどんどんふえていくものなら新規参入者は入りやすいわけですね。これまでの人が持っているシェアよりも需要のほうのシェアがふえてきますから、間に入っていく余地が非常に大きい。しかし、すでに寡占で持っておるシェアと需要との間に幅が狭ければ狭いほど、新規参入者が入っていこうと思っても、シェアを逆に切り取っていかなければならぬということはたいへんな問題でしょうから、裏返してみれば魅力のない商品ということになりますけれども、私は、一般論としておっしゃることはよくわかるのです。しかし、今日八幡と富士の中に、私も当委員会で何回か指摘をしましたように、そういう寡占品が残っておるというのは、そうすると、これまでの通産行政があなたのおっしゃるようなあるべき通産行政をやっておらなかったということになるわけでしょう。
#30
○大平国務大臣 御指摘痛み入ります。
#31
○堀委員 それはもうそうおっしゃればあとはありませんけれども、私は実は新規参入者を通産省が育成をしていきたいとおっしゃることばにちょっと引っかかるのです。大体、産業界というのは、やはり自由競争といいますか、企業の自己責任でやることですから、通産省として新規参入者を育成をするということは一体どういうことになるのか。そこへ入りやすくするという。しかし、入りやすくするといっても、たとえば鋼矢板のようなものは、公共事業が伸びる伸び率以上になかなか需要はふえていかない。片やきわめて高度な技術的な部分を必要としておることは公正取引委員会の勧告の中に明らかにされておるわけであります。私どもこういうものを見て、どうもここが具体的によくわからない。
 もう一つ続けて、「需要家が同一価格、同一品目であれば問題なく買えるよう行政指導していくつもりである。」こういうようにおっしゃったように新聞は伝えておるわけです。そこで、これはどうも鋳物銑の問題に関係があるような感じがするのですが、「同一価格、同一品目」というところまではいいと思うのですけれども、「であれば問題なく買えるよう」という、その買うかどうかは品質のところに一番比重があるのであって、同一価格、同一品目に実は需要家のほうはアクセントはついていない。品質にアクセントのついておるものを「同一価格、同一品目であれば問題なく買えるよう行政指導していく」というのは具体的にどういうことなのか、ちょっとお答えいただきたいと思います。
#32
○大平国務大臣 「同一価格、同一品目」というのはちょっと正確な表現でないので、「同一価格、同一品質」という意味に私は申し上げたつもりでございます。需要家が使いなれと申しますか、あそこの製品でなければもううちは使わぬのじゃというものに、品質とか価格で合理性があればよくわかるのでございますけれども、そういう保守的な考え方の中に非合理な面があって、ほかにもいろいろそういう同一価格、同一品質で提供し得るメーカーがある場合に、そういうものからも購入できるというデモクラティックな状態にあることが望ましいわけでございます。で、そういう場合に、同一品質、同一価格というようなことを保証する意味でわれわれはJISマークとかいろいろなことで需要者が安心して買えるような行政を実際やっておるわけでございますね。そういったことはまあ考えられることじゃないか。そういうことによって非合理な保守性が産業界からなくなること、それは非常にけっこうなことじゃないかと思っております。
#33
○堀委員 後段のほうはおっしゃるとおりでして、確かに非合理な問題が残っているんだろうと思うのですが、ただ、その非合理な問題が今日そういう形で残っておるのは、これもさっきの話じゃないですけれども、通産行政としてはより経済合理性、価格的合理性の上に立った指導が十分行なわれていなかったということが今日の事態を招いたんではなかろうか、こういう感じがいたすわけですが、大臣、いかがでございましょうか。
#34
○大平国務大臣 そのようなおしかりを受けましても返すことばもございませんけれども、しかし実際は、人間というのはそういう保守――保守党びいきじゃありませんけれども、保守的なものなんですよ。それから、その間に人間的ないろいろなつながりもあったりいたしまして、もうそこからうちは買うことにきめておるんだというようにきめ込むことはよく日本の社会にはあることなんでございまして、それをどこまで近代化できるかというのが政治の課題でございますけれども、十分な成果をあげていないじゃないかというおしかりは、そのまま私は受け取りますけれども、そういうようなことを完全にやり遂げろと言われてもなかなか、これは行政の能力を越える問題だと思いますが、そういう方向に少しでも努力してまいるという姿でなければならぬという意味でございます。
#35
○堀委員 私は、大臣のお考えになっておること、それでけっこうだと思うのです。それでけっこうなんですけれども、ただこれまでできなかったこと――さっき大臣、痛み入りますとおっしゃったんですが、これまでできなかったことが今日急にできるかどうか。これはいま大臣のおっしゃるように、本来保守的な全体の中で、八幡、富士問題がこういうところにきたから、大いにここでひとついまの近代化をいろいろなところに進めてみようといっても、現実の問題として相当に私は時間のかかる問題なんじゃないだろうか、こう思いますけれども、大臣、いかがでございましょうか。
#36
○大平国務大臣 それは仰せのとおりだと思います。ただ、合併問題がまあ大きな問題になっておりますが、これはいいチャンスではないか、このチャンスを利用というか、こういうチャンスに、せっかく寡占商品について指摘された問題が出てきたのでございますから、それを打開していくというようなことは、この問題が起こりました一つの副産物として、それを活用して前進をはかるということは、ごくすなおな態度ではないかと思います。
#37
○堀委員 ちょっと事務当局にお伺いをいたしますが、ここでいまの二つに関係がありますのは、特に明らかに鋳物用銑鉄と鋼矢板に関係があると思うのです。鋼矢板の問題は、公正取引委員会も御指摘のありますように、昭和三十四年から富士製鉄がこの生産に参加をいたしまして今日まで、鋼矢板は昭和三十四年を一〇〇といたしますと、四十二年には四四五ということで、これは確かに年率二〇%程度の生産及び需要が伸びておるように思います。ところが鋳物用銑鉄の場合には非常にフラクチュエーションが大きいのですね。これは私もなぜこんなにフラクチュエーションが大きいのかわからないのですが、ちょっと読み上げますと、三十三年が七十三万二千トン、三十四年が九十五万四千トン、三十五年は百二十七万七千トン、ここで三三%くらいふえて、次は三十六年が百六十九万八千トン、ここでこれまた三二%くらいふえる。ところが三十七年になると、百十八万五千トンで六九%に減る。次は百二十六万一千トンで六%増、次が一二%増で百四十一万六千トンですか、昭和四十年になると、また不況の影響があると見えて九七%に減る。こういうような式で鋳物用銑鉄というものは非常にフラクチュエーションが高い。伸び率も三十八年あたりから見ましても四二%くらいですから、鋳物用銑鉄というものは非常に需要がゆるやかな増加しかないように思うのですが、この二つの品目について今後の需要の増加は、いまの長期見通しの中にはなかったので、こういうこまかい品目はありませんのでわかりませんが、大体どういうふうに考えておられるのでしょうか。
#38
○吉光政府委員 鋳物の生産の伸びにつききましては、ただいま御指摘がありましたが、非常にフラクチュエートいたしております。この原因は鋳物の主たる需要者が機械業界であります。機械鋳物が一番中心でありまして、いわゆる日用鋳物と申しましょうか、なべ、かまのたぐい、ストーブのたぐい、こういうものはだんだんとほかのものに置きかえられております。したがいまして、機械工業がどういうふうな伸び方をしているかということと非常に大きな相関関係があるわけでございます。と同時に、これはまた日本の経済全体がどういう伸長過程あるいは設備投資の過程をたどったかというふうなことともまた大きな関係を持っておるわけでございまして、先ほど御指摘いただきました数字の谷間のところというのは、いずれかといえば不況のどん底と申しますか、いささか時期の食い違いはございますけれども、タイミングの差はございますけれども、それを極端に反映いたしておるわけでございます。ただ、昨今の状況から判断いたしますと、御存じのとおり、現在は相当の機械投資需要があるわけでございます。そのためにいずれかといえば鋳物用銑鉄は少し不足ぎみというふうなことで推移いたしておりまして、したがいまして、日本機械工業連合会で実は昨年の初めごろから鋳物用銑の不足が訴えられ始めましたので、約一年間にわたって、それぞれの需要業界の積み上げ計算をもとにいたしまして、将来どうなるであろうかという伸びの推定をやったわけでございます。四十三年度で需要二百五十七万トンであったわけでございますけれども、これが四十七年度には百万トン程度ふえた三百五十一万トン程度は必要ではないであろうかというふうな、これはもちろん見通しでございます。これは需要業界のほうからの要望を入れた数字を累積したものでございます。そういうふうな感じの数字、約百万トンは伸びるであろうというふうな計算が出てまいっておるわけでございまして、まさにいま不足しているこの事態から判断いたしますと、そして日本の経済の動向が年々――もちろん現在ほどの成長率は予想していないと思いますけれども、安定的に成長してまいるということを前提にすれば、ただいまお答え申し上げましたような需要の伸びは期待できるのではないであろうか、こう考えておるわけでございます。
 それから鋼矢板につきましては、実はこういう意味での需給見通しをやっておらないわけでございまして、厳密な数字は現在手元に持ち合わせておりませんが、大体の傾向といたしまして、現在までの鋼矢板の生産数量の伸びというところから判断いたしますと、土木建築工事、港湾工事が活発になってまいります現状を反映いたしまして、依然として相当量の伸びが見込まれるのではないであろうかと思うわけでございます。その伸び率でございますけれども、おおむね鋼矢板の平均的な伸び率は、いまの見通しからいきますと、粗鋼生産全体の平均伸び率よりも少し高いところの伸び率で推移していくのではないであろうか、こういうふうに推測いたしております。
#39
○堀委員 いまお話しのようなことで、需要が伸びることは確かに間違いはないと思いますけれども、ただ、その需要と見合って新規参入がいま通産大臣が希望されるような産業政策としての望ましい姿として行なわれるかどうか、この点は実はまだ非常に問題が残っておると私は思います。特に、さっき通産大臣が御指摘のような、業界における保守的な要素がそう簡単に近代化されないということも、私は大臣がお述べになったとおりだろうと思うのであります。私はそれらの点から感じまして、いま通産省がとっておられるこの点に対する態度、要するに競争促進的な立場で対処していきたいとおっしゃる態度については賛成でございます。ですから、そういう意味で産業界が競争の上で発展をしていくことが日本経済にとっても望ましいのでありますけれども、少なくとも設備投資を含めて競争促進的な条件が維持されるように、今後もこの問題に対処していただきたいということを特に要望いたしておきます。
 建設政務次官お入りいただいたのですが、実は閣議で大臣がお話しになったことと関係がありますので、政務次官にお伺いするのはどうかと思いますから、せっかくでございますけれども、その点は次回に大臣の御出席をいただいてお答えをいただくことにいたしたいと思います。
 私時間が参りましたからこれで終わりますけれども、要するに、公正取引委員会が独禁法を正確に守って今回の措置をとられたことは、私は今日のいろいろな政治的な情勢の中では、たいへん困難を克服して措置をしていただいたということで、高く評価したいと思っております。通産当局も、私が前段でちょっと申し上げたように、一般の国民から見て不当な介入にならないように、いま通産大臣がお話しになったような、あるべき産業体制へ向かう過程の中において当然行なうべきことを行なうという範囲においてこの問題に対処していただきたいということを強く要望いたしまして、私の質問をこれで終わります。
    ―――――――――――――
#40
○大久保委員長 この際、通商産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。大平通商産業大臣。
#41
○大平国務大臣 本月の十二日、十三日、アメリカのスタンス商務長官を迎えて、日米間で当面の貿易経済問題の討議が行なわれました。その中で、とりわけ繊維問題につきまして委員会並びに委員各位からたいへん御心配をいただいておりますので、この会談の概要につきまして御報告を申し上げます。
 スタンス長官の来日の目的は、第一は、交渉をする目的ではない、当面の諸問題について隔意のない意見の交換を通じて理解を深めたいという趣旨であるということでございました。
 それから、討議された議題を大別いたしますと四つになります。一つは資本の自由化問題、第二は残存品目の輸入自由化の問題、第三はNTBすなわち非関税障壁の減殺の問題、それから最後に繊維の対米輸出自主規制の問題、この四つでございました。
 第一の資本自由化の問題でございますが、まず米国の立場から申しますと、米国としては、あらゆる国に米国に対する投資を開放いたしておる。そのことは投資国も米国も双方にとって多大の利益であったと思う。しかるに日本は、先進国の中でもいま現に自由世界で第二の国民総生産を記録いたしておる国といたしましては、非常に厳重な外資の導入についての規制を設けられておることは解しかねる。とりわけ自動車のように、日本からは十数万台の乗用車が現にアメリカに輸出されておる。しかるにアメリカから日本に輸入されておる自動車は三千ないし四千台程度にとどまっておる。にもかかわらず、自動車につきましては、全く門戸を閉ざしてしまっておるばかりでなく、関税率は非常に高い。物品税も高い。しかも自動車税も高い。それは、それの構造をよく見てみると、ことさらにアメリカの自動車が入りにくい状況をわざわざかまえたような状況になっておるというようにしか思えない状態ではないかということを指摘されました。したがってアメリカとしては、わが国に対しまして思い切った自由化の促進を要請したい。とりわけ自動車につきましては、もう完全無条件に一〇〇%の自由化を実現してもらいたいということが、先方の要請の要旨であったと思います。
 これに対しまして当方といたしましては、われわれも資本の自由化に反対するところではなく、資本の自由化を具現すべく鋭意努力をしておる。一昨年の七月に第一次の自由化をやり、ことしの三月に第二次をやり、来年三次、再来年四次というスケジュールをもちまして鋭意やっておるゆえんのものも、私どもは自由化マインドであるということの証左ではないか。それから、なるほど一〇〇%の自由化品目は少ない。五〇、五〇を軸にしてやっておるが、これは永年国際的に隔絶された世界に生きてきたし、またわが国の産業体制そのものが、技術におきましても、資本におきましても、組織におきましても、なお幾多の弱点を持っておるし、低生産性部門、農業、中小零細企業のウエートは先進諸国に比べて一番高いというような状況であるので、したがって外資に対して若干アレルギー的になっておる実態的な基礎があることも御理解をいただきたい。しかしながら、われわれはとりあえずは五〇、五〇というところで先進諸国の高い技術、それから資本、これは加うるにわが国の新鮮な労働力、それから市場に対する知識、そういうものを賢明に組み合わせることによって特に相当効果をあげておるものもある。したがってそういう五〇、五〇のところを目安にいたしまして一ぺんそういう訓練をいろいろやっていただいて、その間に外資に対する不当なアレルギー症もだんだんなくなっていくことであろう、そういう考え方でやってきておる。こういうことに対しての十分の理解を求めたわけでございます。
 自動車につきましては、仰せのとおりなかなか厳重な規制をいたしておるが、目下自動車業界も静かな体制整備も進んでおるし、自動車業界だけでなくて、日本の経済界全体におきましても、自動車の自由化の問題というものは一つの生きた課題になっていま論議が進んでおるし、日米財界人の接触も非常にひんぱんになっておるということであるから、われわれは去年の八月二十日に日米間で自動車交渉が行なわれて、一応の了解がありますけれども、いつまでもそれにこだわるつもりはない。そういう討議の経過を見ながら、できるだけ自由化を早めてまいるという気持ちではおるというように答えておいたのでございます。
 結論といたしまして、それでは業界レベルの話し合いをもっと進めてもらうようにしょうかということでございましたから、理解を深める意味におきましてけっこうでしょう、そう答えておいたわけでございます。
 第二の輸入自由化の問題でございますが、これは実はスタンス長官を待つまでもなく、皆さまにも御報告申し上げましたとおり、去年の暮れ、トレザイス特使が参りまして、日本の残存品目の自由化についてアメリカ側が関心を持つ品目の提示がありました。外交チャンネルを通じてこの問題はすでに討議に入っておるわけでございますから、この問題にはあまり深入りする必要はないでないかというようなことで、先方の希望に一応とどまったわけでございます。
 それから第三の問題といたしまして非関税障壁の問題でございます。これはアメリカ側が特に指摘いたしましたのは、たとえば日本の輸入担保制度でありますとか、あるいはユーザンスの標準期限の問題であるとか、あるいは政府の購買制度、専売制度、その他数々の非関税障壁が依然としてあるばかりでなく、通産省という役所は非常に強力で、貿易についていろいろなしちめんどうくさい行政上の手続を持っておって、われわれがなかなか打ち破れない壁になっておるというようなことも非常に困ったことだ。そこで、これを早く撤廃して自由化の方向に大いに進めてもらいたい。
 われわれのほうも、しかしながら、アメリカに対しましていろいろな注文があるわけでございまして、国会の論議を呼んでおりまするバイアメリカン政策にいたしましても、あるいはアメリカン・セリング・プライスの問題、アメリカ関税法の四〇二条の問題等しょっちゅう鼓を鳴らしてあなた方のほうの撤廃を求めておる。しかしこういう問題は、現にガットの場におきまして非関税障壁の撤廃について討議が行なわれておるから、そこでお互いに討議しようじゃないか、それで必要にして十分じゃないかと申し上げたのでありますが、日米間におきましてさらに具体的に資料を、ガットの場でやるばかりじゃなく、バイラテラルな形で資料の交換というようなことで、もう少し勉強し合うようにしたいということでございまして、けっこうでしょうと、そうお答えいたしておいたわけでございます。
 それから第四の繊維問題でございまして、これには一番力点を置いて先方がわれわれの理解を求めた問題でございます。
 先方の言い分を要約いたしますと、アメリカはここずっと慢性的に国際収支の逆調を記録をしてきておる。従来は貿易収支の大幅の黒字で相当カバーをしておったのでございますけれども、貿易収支が余裕がだんだんなくなってきた。とりわけ繊維におきましては一九六八年八億ドルの輸入超過である。しかもその八億ドルの半分は日本がもたらしたものであるということ、そういう状況にあり、この趨勢で進めば将来アメリカの繊維産業は重大な影響を受け、部分的に失業が出、倒産が出てまいるであろうことは明らかなことではないか。このままいけば、いわばアメリカ繊維に対する雇用が減って、日本の雇用がふえる、つまり雇用がアメリカから日本に移動するようなことに結果するじゃないかというような点が第一点でございます。
 それから第二点は、綿製品につきましてはLTAの形で現に国際的な長期協定を持っておりますが、日本はこれは非常に輸入制限的だという理解を持っておるかもしれませんけれども、実績を見てみますと、LTAができてから今日まで対米輸出は二倍にふえておるじゃないか。いわばオーダリーマーケッティングな方式で順調な輸出の伸びを見ておるじゃないか。われわれはアメリカへの繊維の輸入というものにつきましてこれをあくまで抑圧しようというのでなくて、足らないものは秩序ある形で各国に公平に供給できるような仕組みを考えていこうとしておるのだ。――ちょっと断わっておきますけれども、対米繊維輸出の自主規制の具体的なやり方について御提案はありませんでした。そういう意図を、つまり自主規制を各国に求めたいという背景をいろいろわれわれに理解を求めるという説明でございました。
 それから第三の理由としては、アメリカとしては、この問題を片づけて、そうして政府もコングレスも、新しい通商拡大法を通じて自由貿易の大道を切り開いていくといういろいろな立法を前向きにやりたいのだが、この問題が前面にあるものだから非常に障害になっておるので、これは唯一の例外として各国の理解を求めて、この問題を早く片づけて、それでオーバーオールな通商拡大に全体を持っていくべく苦心をしておるところであって、そういう政治的な理由につきましても理解をいただきたい。そういうようなことがあらまし先方の要請の要旨でございました。
 これに対しまして私といたしましては、第一にアメリカの輸入が多いということ、しかしこれは繊維という品物だけがもたらしたものでなくて、繊維の輸入超過の寄与率というのは一〇%、一割強程度のものであって、繊維だけを責めるわけにいかぬじゃないか。それからアメリカはヨーロッパ諸国に比べて比較的繊維の自給率が高いじゃないか。全体として数%の輸入で、あとは国内で自給しておるということでございますから、これをいろいろ特にお取り上げになる理由はないじゃないか。とりわけアメリカとしてはそういう繊維産業に困難があるのであれば、日本なんかでもいろいろの繊維政策を国内政策として講じて、供給力、適応力をふやしていくことを鋭意やっておるので、アメリカもそれをやるべきじゃないか。国際的な手段に訴える前にまず国内政策としておやりになるのが順序じゃあるまいか。そうしないと私どもは国内を説得できないのだというようなことを申し上げたのでございます。
 それから繊維産業自体は日本にとりましても大産業でございまして、アメリカが全製造業の中で占める繊維産業の割合というようなものも日本にほぼ匹敵するだけのウェートを持っておる産業であって、アメリカの繊維産業はわれわれの見るところ相当の繁栄を記録し、雇用もふえ、出荷もふえ、生産もふえておるじゃないか。倒産云々というが、日本のほうが倒産も多いじゃないか。われわれは繊維産業につきましては非常に重大な政治の責任を持っておるのだということも強調しておいたわけであります。そういう意味で、あなたのほうにもいろいろ政治問題があるように、私のほうも、国会から労働組合に至るまで、国をあげて、この自由貿易の原則に反するばかりじゃなくて、十分の説得力を持たないあなたのほうのお考え方につきましては、全く理解ができない状態で、みんなが反対をしておるから、そういう意図について理解を得たいということに対しては理解ができない、こう申し上げるよりほかはない。アメリカ側は、そういう問題に対して、さらに国際会議の場でひとつ相談に参加してくれないかということでございましたから、いまの日本のフィーリングから申しまして、国際会議に参加するというようなこともできないと、たいへんつれないお返事を申し上げたのでございます。
 そこで問題は、今後どうするかの問題でございますが、それじゃ外交チャンネルでいずれ資料の交換、対話の継続というようなことはやってくれるかということでございますから、それをやることにやぶさかではございませんという姿でお別れをいたしたわけでございます。
 私の全体の感想といたしましては、アメリカ側が日本の壁が案外厚いということは御理解いただけたのじゃないかと思いますが、同時に私どもも、この問題にアメリカ側が非常に執拗であるということも一面理解ができたと思うのでございまして、今後この成り行きにつきましては十分注目をしていかなければならぬ問題であると考えております。
 以上をもって御報告といたします。
    ―――――――――――――
#42
○大久保委員長 中村重光君。
#43
○中村(重)委員 山田公取委員長にお尋ねいたします。先ほど堀委員の質問に対しお答えになった点ですが、昨日の記者会見の内容が報告されて、これを必ずしも正確ではないというお答えであったわけです。しかし八幡、富士両社の合併に対して独禁法上当然のことを委員長はお話しになっておられる。さらにまた事態が非常に進展をしてまいりましたから、記者会見等あるいはまた当委員会においての質問に対するお答えを、事態の進展に伴って若干具体的にお話しになったにすぎないのではないかというように思うわけですが、また数紙を私が読んでみまして、実は同じような内容でございますから間違いないと思いますのでお尋ねするのですが、「勧告書の中で示した違反事実を排除するための対応措置は合併する時点で市場構造が競争制限にならないような条件を持つことが必要で、少なくともそれが合併時点で、有効なけん制作用をするものでなければむずかしい。」、そういったこと、これは私も二つほど新聞を持ってきておりますが、二つとも同じようになっております。この点はこのようにお考えになっていらっしゃるのだろうと思いますが、いかがでございますか。
#44
○山田政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、具体的の事件については私は意見を申し述べなかったわけでございますが、一般的の問題といたしまして、合併の時点において実質的な競争の制限がないことが要件でございますから、その時点において判断いたしまして、有効な牽制力があるかどうか、こういうことが肝心のポイントであろう、こういう趣旨を申しましたわけでございます。
#45
○中村(重)委員 いま勧告を行ない、また東京高等裁判所に対して緊急停止命令を申請されている時点でございます。非常に微妙な段階でございますから、あまり突っ込んでお尋ねをすることは差し控えたいと思っているわけですが、ここで差しつかえない範囲でお答え願ってけっこうでありますが、
  〔委員長退席、武藤(嘉)委員長代理着席〕
勧告で指摘しておりますのは四品目ということになっているのです。私どもが当然のこととして期待をいたしておりましたのは総合力、さらにまた事務局が指摘したと伝えられておりますところの九品目全体、合併に伴うそうした全体のものが当然勧告の対象になるものであろう、そのように実は考えておったわけですが、四品目に限って、そういうことになってまいりますと、両社は裁判所に対して、六月一日の合併を延期したのだから、したがって緊急停止命令の必要はないのだから、それを却下しろという意味の意見書を出しておるようでありますから、これは勧告を拒否するという形になってくることはもう十分予測できると思うわけであります。その場合に当然審判ということになってまいりましょうが、審判の際は勧告で指摘された四品目に限るということになるのか、総合力、それから九品目全体と申しましょうか、そういうものが審査されるということになるのでございましょうか、その点いかがでございますか。
#46
○山田政府委員 ただいまの段階におきましては、私どもはせんだって出しました勧告、この趣旨が受け入れられることを希望いたしておるのでございまして、かりにそれが拒否されたらどうであるかということをただいま申し上げますことは差し控えさせていただきたい、かように存ずる次第でございます。
#47
○中村(重)委員 一般論としてお尋ねをいたしますが、この緊急停止命令の効力というのはどの時点まで続くということになるのでございますか。
#48
○山田政府委員 原則論としてお答え申し上げますが、これはまず審決が確定するまでというのが原則であろうと思います。ただし、その必要がなくなりまして申し立てを取り下げました場合、これはまた別でございますが、申し立てが通りました場合にはその効力は審決があるまで、こういうふうに考えております。
#49
○中村(重)委員 通産大臣にお尋ねをいたします。
 公取の今回の勧告に対しまして、各方面から公取の措置を批判する意見あるいは支持する意見等、非常に活発な意見が展開をされておるわけです。通産大臣といたしましても、先ほど堀委員の質問にお答えになられましたけれども、競争促進的な形でこれに協力をしていきたいというような談話を発表しておられる。財界では特にこの際独禁法を改正しなければならないというような考え方すら表明をされておるわけです。ところが、大臣並びに熊谷事務次官は、現在の時点で独禁法を改正する必要はない、また産業政策を進めていく上について壁であるとは考えないというような談話等を発表しておるわけでございますが、そうした財界を中心とする独禁法改正に対する意見に対しまして、大臣としてはどのようにお考えになつておられるのか、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
#50
○大平国務大臣 デモクラシーの世の中でありますから、こういう大きな事柄になりますと、いろいろな意見が出てまいるのは当然かと思います。これをとやかく申し上げるつもりはございません。ただ、私どもといたしましては、現行法の体制の中で最善を尽くす責任を持っておるわけでございまして、いまこれをこうしていただかなければ行政のやり方がやりようがないというようなせっぱ詰まった考えは持っておりません。
#51
○中村(重)委員 そうすると、この八幡、富士の合併に対して競争促進的立場から解決策を考えていきたい、私どもは、この競争促進的な立場から通産大臣が産業再編に対処していくということに対しましては、もちろん異論はないのであります。私どもが八幡、富士の合併に対しまして適当でないという考え方を持っておりますのは、大臣が意図しておるような競争促進的な形にならないのだ、むしろ競争を制限する方向に進む危険性というものが非常に強いという点にあるのであります。そこで、八幡、富士の合併に対してことさら競争促進的立場からこれに協力して、この合併を実現させなければならぬというように大臣がお考えになっておられる点はどういうところにあるのか、その点をひとつお聞かせ願いたいと思います。
#52
○大平国務大臣 まあ根本の問題といたしまして、私どもは自由企業体制を基調にいたしておるわけでございまして、各企業にいたしましても個人にいたしましても、与えられた現行の法制のワク内で自由な権利を持っておるわけでございまして、いまの世の中が競争制限的になっていいとか悪いとか、そういうような判断は一つの倫理的な問題として感ずる人があるかもしれませんけれども、問題は独占禁止法という法律がございまして、その法律に抵触しない範囲におきまして各事業主体が事業を自由に運営できるたてまえになっておることは御案内のとおりでございまして、こういう制度がいいか悪いかは別にいたしまして、そういう状態になっておるわけだと私は思います。
 そこで、そういうワク内において私どもは産業行政を展開するというわけでございますから、こういう合併の事案が発生しようとしまいと、与えられた状況のもとで競争促進的な産業行政、鉄鋼行政をやってまいるというのが私どもの方針でございます。鉄鋼行政をそのように競争促進的にやっていくという上において、たまたま公取のほうで具体的事案として御審理中の問題について判断が出された中には、寡占商品について競争条件をりっぱにつくらないと違反になるじゃないかという指摘がなされておるわけでございますから、そういう問題点の解消につとめるのは、競争促進的な鉄鋼行政の筋から申しまして、当然なことじゃないか、これは当事者がやることであってじっと見ておるのだというのも無責任な話でございまして、政府としてはそういう条件をつくるということに積極的であるのはわれわれの義務ではないか、そのように私は考えております。
#53
○中村(重)委員 具体的な問題になってまいりますと、必ずしもいま大臣のお答えになられた問題というものがそれでよろしいということにはならないのじゃないかと私は思うのです。産業再編成、その再編成自体が目的ではないのだ、大臣がお答えになりましたように競争促進的な意味がある、その合併をすることにおいて競争制限をしないで促進される、そしてそのことが生産性の向上となり経済の発展を伴ってくる、そしてまた価格は硬直化するのではなくて、価格はずっと低下してくる、そういうやはり合併そのものが効果を発揮していくということにならなければ、私は意味がないと思うのです。大臣の競争促進的な立場の上に対処していこうとするのは、そういう意図であろうと思うのであります。八幡、富士の合併の場合において競争力がないかどうかということになってまいりますと、これは当事者が言っているように、競争力は十分あるのであります。それならば、大臣がことさらこの八幡、富士の合併に対して全面協力をして、ぜひこれを合併させなければならないというような取り組みというのは、私は大臣のいままで慎重な態度をとってまいりました態度からいたしまして、適当な態度ではないのではないか、そのように思うのでありますが、大臣は八幡、富士の合併ということに対して、その合併目的というものをどのように理解しておられるのか、この際お聞かせを願いたいと思う。
#54
○大平国務大臣 合併目的は、両社が決意されて、合意して、契約を結んで、公取に申請をしたということでございまして、両社にはいろいろな考え、目的があったと思うのでございます。両社はまたそういうことをする自由が現在の法制のもとで与えられておって、それを行使しておると思うのでございまして、問題は、それを公取さんのほうでどのように判断されるかということにかかっておると思うのでございます。ただ、一般論といたしまして、産業政策の立場からどう評価するかという問題は、これは私どもの問題でございます。これはたびたび申し上げておりまするように、開放経済下にございまして、日本の経済産業体制がこういう開放経済にたえるだけのものでありたいということを私どもはこいねがうわけでございまして、そのためにいろいろな政策を実行いたしておりますことは御案内のとおりでございます。しかし、それは合併というばかの一つ覚えみたいなことばかりを言っておるのではないので、合併もあれば分離もある、そういう専門化によって体制を強化する道もあるわけでございます。共同化とか協業化とか、これは生産面ばかりでなく、流通面におきましても、現行法制のもとにおきましていろいろなくふうをこらして、そうして全体として産業体制が国際化時代にたえるだけのものにしなければならぬという考え方でございます。
 それから中村委員は、現に鉄鋼業は十分の競争力を持っておるわけじゃないかという御指摘でございますが、私は、現時点で申しますならば、その御指摘は間違いじゃないと思います。しかし、いまの技術の革新はたいへんな速度で進んでおるわけでございまして、一日の偸安を許さないと思うのでございます。常に新たに技術革新への道を険しいながら歩んでいかなければならぬわけでございまするから、不断に技術開発力を強化していく。とりわけ日本の産業のように、外国の借りものの技術で今日までやってまいりました国柄といたしましては、自前の技術を身につけるだけの用意がなくて、将来の国際経済の展望に立ちまして日本の産業の生存と名誉を維持してまいるというようなことは、私はとうていできないと思うのでございまして、そういう観点から申しましても、やはり産業の体制はそういう要請にこたえるだけのボデーを持たなければならぬ。ある場合には合併になりましょうし、ある場合には分離になりましょうし、いろいろな組み合わせがあり得ると思いますけれども、そういうことを鋭意やってまいらなければならぬと思うのでございます。そういうラインから申しまして、今度の合併問題というのは、くれぐれも申しますけれども、独禁法上の問題点がなくなって、この体制が強化されて、技術開発力も金融力も経済力も強まってまいりますということは、われわれが希望しておる産業政策を進めるラインに沿って望ましいことであると私は考えております。
#55
○中村(重)委員 きょうは二十分までで私は時間の制約がありますので、あらためて大臣と議論をしてみたいと思うのですが、一般論としてのいまの大臣の御答弁というものは肯定できるのです。問題は具体的な問題であるということです、八幡、富士の合併が、両社は競争力というものはあるのだ、国際競争力をつけるために合併をするというものではないと言っておる。ならば何のための合併なのかということを、具体的な問題だからはっきりつかんで対処していくということでなければならない。また鉄鋼全体といたしましても、私はその競争力がないとは考えていない。四月の生産実績を見ますと、市場最高を記録している。輸出にいたしましても、全体の中の十八億ドルを占めている。しかもアメリカは、日本の競争力が強いのに対して、何とかしてこれを押えなければならぬというので、自主規制というような問題が強く出てきておることは、大臣も御承知のとおりであります。だがしかし、だからといって、鉄鋼全体を強めるということに対して、通産省がてこ入れをしてはいけないと申し上げているのではない。しかし、鉄鋼だけを切り離して対処していくということも適当ではない。全体の産業とのバランス、経済全体のバランスということも考えていかなければならないであろう。でなければ、経済全体に対する弊害というものが出てくることも十分予想されるところであります。アメリカのUSスチールが大型合併をいたしましたが、これは必ずしも成功していないという事実、むしろインフレの要因となっておるというようなこれらの事実を、十分慎重に考えてみなければいけないのではないかというように私は考える。さらにまた、公取がかって調査をいたしました、生産性が上昇しておるということは価格の硬直化をもたらしておるというこの事実。資本の集中化が必ずしも生産性を向上させるということにもならない。これらの点等を考えてみますと、この大型合併の問題に対しましてはよほど慎重な態度をもって対処していかなければならぬ、かように私は考える。したがいまして、あらためてまた大臣の見解をお尋ねすることにいたしますが、いままで慎重な態度をとってこられた通産大臣は、また合併の具体的な問題として進行中でありますから、従来の慎重な態度をくずさないように十分対処していただきたいということを要請しまして、きょうは私の質問を終わります。
#56
○武藤(嘉)委員長代理 中谷君。
#57
○中谷委員 二間だけお尋ねをいたします。公取の委員長に、法の六十七条と六十八条の問題についてのきわめて簡単な質問であります。時間も十分程度で終わりたいと思います。
 緊急停止命令申し立て書を詳細に拝見をいたしました。申し立て書第五項以下に、緊急性についての理由を五月七日付書面でお書きになっておられますが、要するにその一番末尾の部分、合併期日が二十四日後、すなわち六月一日に迫っているわけでございますね。だから緊急性がある。要するに、回復しがたい損害のほかに、いま一つは、そういうふうに切迫をしているということの要件として、合併期日が六月一日だということを二十四日後とお書きになっておられます。そこで結局、この緊急停止命令の申し立ては公取が申し立てられたわけですが、裁判所の審尋等の中で、あるいは公取に対する報告等の中で、審判に移行してください、審決があるまでは私のところは合併いたしません、こういうふうに会社が言った場合には、少なくとも緊急性、切迫性というものは失われるだろうと思うのです。その場合には、この申し立てについては、裁判所の判断にまかして、裁判所の判断を仰ぐのか。それとも、お取り下げになって、何かいわゆる緊急性に当たるにかかわらず、合併を強行しようとするときにあらためて申し立てをされるのか。そのあたりはいかがでございましょうか。
#58
○山田政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、緊急停止命令の申し立てをいたしました中で、合併期日が二十四日の後に迫っておるということが入っておりますけれども、その下をお読みくださいますと、二十四日後に迫っていることも思いあわせと書いてあるはずでございまして、それは一つのつけ足しと申してはちょっとおかしいかもしれませんが、幾つかの要件の中の一つでございますことを御理解いただきたいと存じます。
 それから、六月一日に合併しないということを先方が申した場合どうなるかというお尋ねでございましたが、これは私どもといたしましては、申し立てをいたしたのでございますから、あとは裁判所の御判断におまかせいたしたい、かように考えております。
#59
○中谷委員 同じく委員長に対する質問で、そうすると、きわめて常識的に考えてみますと、会社が、審判をお受けします、私のほうは審決があるまで合併をしません。そうしたら、これは相当の期間を要するということは公取御自身がお認めになっておられることですね。そうすると、相当の期間というのが一年先になるのか二年先になるのかは別として、そういう場合でもこの申し立てはお取り下げにならない。逆に言うと、そういう場合であると、裁判所としては、緊急停止命令については、緊急性の一つの回復しがたい損害のほかの切迫という観点から、却下してくる可能性も十分にあると思うのです。しかし、それは裁判所にまかすのだ。――私が心配しますのは、却下ということの与える対外的影響といいますか、緊急停止命令という、これは何も伝家の宝刀だと私は思いませんけれども、当然の手続をおとりになったんだと思いますけれども、審決するまで合併しないということを裁判所に言えば、緊急性の一つの要件が欠けるわけだから、却下になるということはわかっている。にもかかわらず公取の申し立てがそういう場合もあくまで維持されるのでしょうか。
#60
○山田政府委員 まだ先方から、私どものいたしました勧告を応諾するともあるいは応諾しないとも何も回答がない段階でございますので、応諾しない場合を前提にいたしまして、それではそのあとはどうするかとか、あるいは裁判所でもってその申し立てを受理されなかった場合どうするかということをあまり立ち入りましてお答え申し上げることは、ぜひ差し控えさせていただきたい。どこまでも私どもは、抽象論で申し上げますならば、裁判所の御判断を仰ぐ、こういう気持ちでおりますことだけを申し上げさせていただきたいと存じます。
#61
○中谷委員 しかし、そういうふうにおっしゃいますけれども、前記の勧告を応諾するとは必ずしも多く期待することはできない、勧告なんか応じてくるはずはないんだよ、こう公取がお書きになっているわけですね。私もそうだと思います。
 じゃ、ひとつ私のほうの意見を申し上げておきますが、裁判所にまかすのはけっこうです。けっこうですけれども、そういう場合にはいっでもまた――じゃ、こういうふうに聞いておきましょう。かりに緊急停止命令の申し立てを取り下げたとしても、また緊急性が生じた場合にはいつでも申し立てができるわけでございますね。これは法律問題だからお答えいただけるでしょうね。
#62
○山田政府委員 非常に仮定の場合のお尋ねでございますが、おそらく法律論といたしましては、一たん取り下げましても、またその必要が生ずれば、それは当然申し立て得るのではないか、かように考えます。
#63
○中谷委員 もう私の質問を終わるのですけれども、私の希望といたしましては、却下されたからといって何ほどのことはないと思うのです。これは私の前提がありますよ。とにかく六月一日には合併しません、合併をずっと先へ延ばします、こう言っている場合は、そういうことの理由をもって却下されても、私は何ほどのことはないと思いますが、そういう理由で却下になるんだから、何も痛くもかゆくもないんだという判断はあると思いますけれども、いつでもまた申し立てができるんだから、柔軟な態度をもって、伝家の宝刀はさやにおさめても、またいつでも抜けるんだということであってもいいのではないか。これは委員長のほうからはちょっと御答弁いただけないかもしれませんが、委員長はそういうようにお考えになっているだろうと思いますが、私のほうから申し上げておきます。
 それではあと一問だけ法務省にお尋ねをいたします。緊急停止命令について、これは法務省の御所管だと思いますが、六十八条は、要するに保証金とか有価証券を供託してその執行を免れることができるという規定がございますね。しかし独禁法の法益というのは公益であって私益ではない。私益ではなくて全部公益だといえばそれまでですけれども、いずれにいたしましても、富士、八幡の合併について、幾ら富士、八幡が保証金を積んでくれたからといって、実質的には競争制限がなくなるわけでもあるまいし、こんな六十八条の供託金を積んでというような規定は、このような合併の場合には全く予想もしてなかった規定というふうなことで、こういうふうな規定はこの種の合併問題については空文にひとしい規定だというふうに私思いますが、この点についての法務省の御見解――裁判所の具体的な事件としての見解を伺うのではございません、法務省の六十八条についての法律解釈を承っておきたいと思います。
#64
○味村説明員 ただいま御質問の問題でございますが、確かにこの六十七条の緊急停止命令、これは公益を維持するためのものでございますから、そういった観点から六十八条の供託による緊急停止命令の執行の免除が、特に合併の場合につきまして適用があるのかどうか、ことに御質問のように、合併ということをやってしまいますともうどうにもならないというようなことになりますと、このような六十八条の緊急停止命令の差しとめ、執行の免除ということは意味がないんじゃないか、せっかく緊急停止命令を出しておきながら執行の免除をしてしまうということになると意味がないんじゃないか、したがって合併の場合には六十八条の適用ということは考えられないんじゃないかという御質問の御趣旨に承ったのでございますけれども、私ども、実はこの合併につきましては、六十八条の解釈についての判例というのはまだないわけでございます。したがいまして、これを形式的あるいは文理的に解釈せざるを得ないわけでございますが、ともかく六十七条を受けましての六十八条でございますので、形式といたしましては、やはり合併の場合も六十八条の規定の適用があるといわざるを得ないんじゃないかと考えるわけでございます。ただこれは、執行の免除の申し立てにつきましてのいろいろな判例、従前の判例等を見ますというと、これは裁判所の自由裁量でやるわけでございまして、事案の性質が執行の免除に適しないというときには、これはもちろん、たとえ六十八条の規定による申し立てがありましても、執行の免除をしないんだ、こういう判例があるわけでございます。そしてその判例は正当だと考えるわけでございます。
#65
○中谷委員 あと一分だけあるようですから、もう一問だけ公取の委員長にいたしておきます。
 従来、審判を受けた事件について、ある事件だけが特別に早く、ある事件だけが特別におそくというふうなことはございませんでしたね。審判というのは迅速という要請と慎重という要請、この二つの要請は矛盾した要請だと思うのです。審判は迅速にしなければいかぬ、しかし慎重にしなければいかぬという二つの要請があると思います。したがいまして、では富士、八幡の審判をどうするかといわれると、委員長は仮定の事件だとまたおっしゃるから私は聞きますけれども、従来から審判については、どの事件についても、この事件だけは特別にゆっくりやったとか、この事件は特別に早くやったとかいうふうなことでないのが従来の実績であったと思いますけれども、この点いかがでしょうか。
#66
○山田政府委員 一般論としてお答え申し上げますが、ただいま御指摘のございました迅速とそれから慎重、公正、この辺の調和をはかってまいりますことが原則であろうと存じます。ただ、過去における具体的なケースについて見ますと、先方の代理人の都合とか、そういう場合で非常に延びたケースもございますし、順調に運んだケースもあるように承知いたしております。
#67
○中谷委員 終わります。
#68
○武藤(嘉)委員長代理 塚本君。
#69
○塚本委員 時間が少ないようですから、簡潔に山田委員長にお尋ねいたします。
 この合併に際しまして、事前審査の段階では三・五という項目について指摘がされて、これさえ問題が解消されるならばよろしいという意味の事前審査の結論が出された。しかし中止の勧告書は急転直下全く違った形が出てきております。私はこの公取の動きというものの急激な変化に驚いている一人でございます。どうしてそういう変化が起きてきたのか。何か特別の要素が加わってきてこういう形になってきたのか。いや、そうじゃない、あのときは粗雑な審査の状態であったから、調べてみたらこんなに実は問題点があったということがわかってきたのか。その態度が変わってきた、そのことに私どもでは理解に苦しむ点がありますので、もう少し詳しく公取の内部の意見の変わってきたその筋を説明していただきたいと思います。
#70
○山田政府委員 初めのときが三・五で、あとが四になって、急転直下というおことばがございましたけれども、私どもはさようには考えておらないのでございます。品目の数は初めも四品目でございました。あとも四品目でございます。多少のニュアンスの差はございますが、それは判断をいたしました時点が違っておりますので、これは必然的にそういうことがあり得るものと考えるわけでございます。それほど変わったものであるとは考えておらないわけでございます。
#71
○塚本委員 十五条の第一項の競争制限ということに対して、競争制限にならない蓋然性があればよろしい、こういうふうなことの御答弁がしばしばあったように記憶をいたしております。しかし、最近におきます公取の結論は、競争制限にならない確実性がさらに立証されることが要望されているようでございます。この点はどうでございましょうか。
#72
○山田政府委員 それは事柄によることでございまして、確実性を要するという表現はいたしておらないつもりでございます。さらにそれから突っ込みましたことは、先ほども申し上げましたごとく、微妙な段階にございますので、これ以上申し上げることは差し控えさせていただきたい、かように存じます。
#73
○塚本委員 競争制限にならないことが必要であるということでございますが、ならないかなるかということはやってみなければわからないことだから、ならないという蓋然性だとたしか委員長は再三説明しておいでになったわけでございます。しかし最近は、ならないことが必要であると言い切ってみえるように私ども新聞で見る限り受け取れておるのでございますが、どうでありましょうか。
#74
○山田政府委員 私の気持ちといたしましては、全く同じでございます。合理的蓋然性があれば、その判断をいたしました時点において競争を制限しない牽制力を持つわけでございますから、これは全く同じ内容のことである、かように考えております。
#75
○塚本委員 同じ内容と言われますと、蓋然性があればいいということですか。蓋然性があればいいというのと競争制限にならないという必要があるというのと全く日本語では違うと思うのです。委員長の腹の中ではそうだと思うのですけれども、私ども受け取る場合、蓋然性があればいいと受け取っていいのか、あるいは競争制限にならないという状態になる必要があるというのか、どっちを私たち受け取っていいのか、もう一ぺん説明していただきたいと思います。
#76
○山田政府委員 一つことを表から見ましたのと裏から見ましたのとの関係であると考えております。あるいは私のことばが足りないのかもしれませんが、合理的蓋然性があるとその時点において評価されますならば、これは当然支配力を牽制いたす、こういう関係にあると存じます。何もすべての条件が現実化して既成事実になってしまっておらなければならない、こういう意味ではございません。
#77
○塚本委員 次に移りますが、その三・五から四になったということは委員長もちょっと私が言う前に触れられたのでございますが、私はその要素の中にやはり鋼矢板というものがクローズアップせられてきておるというふうに思います。この鋼矢板の件につきましては、公聴会でたしか建設省のほうから意見が出ておったと受け取っておりまするが、公聴会における発言は証拠力として取り上げる必要があるかどうか、あるいはおたくの心理的な判断にとどめておくべきか、その点はどうでしょうか。
#78
○山田政府委員 厳密な意味で申し上げますと、公聴会の席における公述人の御発言は、いわゆる証拠力がある供述ではございませんけれども、私どもが一つの心証を得ます上において重要なる参考資料でございますことは事実であると存じます。
#79
○塚本委員 そういたしますと、公聴会における供述というものは心証を得るということで、そんなに重要視されなかった鋼矢板が突然最もきびしい対象とされておる。何か合併をしたい立場になると、ちょっとこれだけはひっかかったかなという感じを受けるのじゃないかというふうに私は思うのでございます。建設省の発言あるいは公聴会の発言は、公取の立場ではそれは心証を得るとして受け取られておるだけにとどまっておるのか、あるいは現実にその公聴会の供述を裏づける御調査を鋼矢板の場合になさったかどうか、この点はどうでしょう。
#80
○山田政府委員 私どもといたしましては力の及ぶ限りにおいて調査をいたしております。ただ、先ほど申し上げましたごとく、公聴会における公述人の御発言は非常に重要な参考として拝聴をいたしておるわけでございます。
#81
○塚本委員 それでは、その重要な御発言に基づ
 いて、実地調査によるところの実態を鋼矢板に関する限りは御調査なさった上での結論だというふうに見て差しつかえございませんか。
#82
○山田政府委員 そのとおりでございます。
#83
○塚本委員 勧告書の中に富士、八幡の製品と川鉄、鋼管等他社製品との間に一級、二級というランクをつけておられるとは申し上げませんけれども、勧告書の中にはっきりとした製品の優劣をたしかつけておいでになったわけでございます。この点どのような実験に基づいておるのか、その点はどうでしょう。
#84
○山田政府委員 ただいまのおことばでございますが、勧告書の中に製品の優劣ということは一切判断をいたしておりません。ただ需要者の側において評価に差がある、これは品質の優劣に基づくものかどうかは別といたしまして、評価に差がある、たとえば決済条件なり価格なりそういう点において評価に差がある、こういうことを指摘しただけでございまして、それは供述の裏づけがあってそういう判断をいたしたわけでございます。繰り返して申し上げますが、決して品質の優劣という判断はいたしておらないのでございます。
#85
○塚本委員 さらにもう少しお聞きしたいと思いますが、そういたしますと、需要家なり、学者とか権威者等の評価、いわゆる市場性に対する声というものを中心にしてそのことをなさった、こういうふうに受け取っていいわけですか。
#86
○山田政府委員 どこまでも当該商品の取引市場における状況を判断いたすのでございますから、別段学者に分析を依頼して品質の優劣をはかる必要は感じませんので、需要者側あるいは同業者同士での評価、これを調べたわけでございます。
#87
○塚本委員 富士、八幡は、合併はできないけれども、公取から一級品という声があるということを堂々と言っていただいたことにたいへん喜んでおると思います。しかし逆に、だからしておれたちはなぜ二流品なのかということで、同業他社の諸君からはおそらくおたくへも異議が届いておると思います。こういうことは世論の調査としてはしかたがないと思いますけれども、現実にそういうふうな差があるとおたくは判断してみえるわけですか、どうですか。
#88
○山田政府委員 くどいようでございますが、品質に差があるということは一切判断をいたしておりません。世上需要者の間において評価に差がある、こういうだけでございます。
#89
○塚本委員 そういたしますと、そういう評価の差というものは価格におきましても私的独占の影響力があると類推されるわけですか。
#90
○山田政府委員 ただいま御発言の御趣旨、ちょっとよく理解しかねましたけれども、競争関係が対等の競争条件にあるかどうか、そういう判断の資料にいたしたわけでございます。
#91
○塚本委員 これは前にも委員長と議論したことがあると思うのですが、実際に質は違っていない、しかし需要者側においていわゆる評価の違いがある、確かにそういう点はあり得ることだと想定されるわけでございます。しかしそういたしますと、いわゆる独占の問題になりますときに、実質は独占ではないけれども、心理的に少しぐらい高くても、こちらがいいといわれているからこちらのものを買うという形に、需要者側から今度は好んで、いわゆる独占の価格のごとく需要者が受け取る場合が私はあり得ると思うのです。だから実質はそういうことでなくても、需要者が心理的に八幡、富士のものは一級品で、いいものだ、そして支払い条件もきびしい、あるいはまた価格も高くてもやむを得ない、こういうふうになりますと、実質的に独占ではないけれども、心理的にそうだとすると、市場支配という点では独占になる危険性があるというふうに私どもは判断もされるわけでございます。おたくのほうでも、そういうふうな市場支配力という立場からいくと、実質はともかく、そういう世論があるということは競争制限に響くというふうに受け取られておるわけですか。
#92
○山田政府委員 抽象論でどうこう申し上げることは非常に危険であると存じます。要は、当該商品の需要者それから競争者の関係、ここにおいて具体的に判断をしていくほかはなかろう、かように考えます。
#93
○塚本委員 十六日の新聞に同意審決はむずかしいのではないかというふうな委員長の発言が掲載されております。ということは、現状からするならば、おたくの立場からいって、こちらの期待できるような対応策を出すことがむずかしいのではないかと想定されて、こういう発言をなさったわけですか。
#94
○山田政府委員 具体的の案件につきまして何ら申しておるわけではございません。一般論といたしまして、対応策というものはなかなかそう簡単なものではなかろうということは申しましたけれども、それ以外のことは申しておらないわけでございます。
#95
○塚本委員 これはもちろん私この場で触れるのはいかがかと思いますが、ある週刊誌によりますと、実は問題なのは富士鉄の釜石なんだ、釜石さえ分離すればそれですべて問題が解決するんだというふうなことがあからさまにある雑誌に載っております。そういう政治的な問題は別にいたしまして、やはり釜石で製造しておるものが一番問題になっておるから、これさえ分離が――富士、八幡がやるかやらぬかこれは私全然関知いたしませんけれども、一番問題になっているのは釜石の問題だというふうな受け取り方はどんなものでしょうか。
#96
○山田政府委員 そういう対応策ないし対応措置を考えるかということは、先方において経営者の責任において考えることでございまして、私どもの口からこういうことはどういうふうに評価するかとか、そういうことは申し上げる筋合いにない、かように考えております。
#97
○塚本委員 一般論として同意審決がむずかしかろうという根拠はどんなところにあるのですか。
#98
○山田政府委員 法律の構成からいたしまして、しかく簡単なものではなかろう、ただこう申しただけでございます。
#99
○塚本委員 さらにこれかれ具体的な対応策を両社から出されるならば、それをいわゆる参考にして結論を出しますということを、たしか前委員会で委員長はおっしゃったはずでございます。しかし今日の段階ではもはや合併中止の勧告が出されておる。この段階になりますると、対応策を八幡、富士が出すという状態になってきたときに、もはやそれは時期おくれだというふうに取け取っていいわけでしょうか。
#100
○山田政府委員 ただいまのお尋ねの意味がよくわかりませんが、時期おくれという御表現でございましたが、それは先方で考えられることであろうと存じます。
#101
○塚本委員 先方で考えてというと、私も時間が来ましたからこれでやめさしていただきますが、先方がさらにこれで不十分だというふうに言われたと思うのです。そういうふうに受け取ると思うのです。だから、それではここまでするならばおたくのほうの言われる競争制限にはならずに済むということで、両社から具体的にさらに思い切った対応策をこれから提出をしたとするならば、それをもおたくのほうにおいてはやはりこれからのいわゆる審決には加味なさるものでございましょうか。この点だけお聞きしておきたいと思います。
#102
○山田政府委員 先ほども申し上げましたごとく、私どもの立場は、せんだって出しました勧告を受け入れてほしいということでございまして、それ以外、先方がどういうふうな態度に出たらどういたすとかこういたすとか、それは申し上げることを差し控えさしていただきたい、かように考えます。
#103
○武藤(嘉)委員長代理 近江君。
#104
○近江委員 時間があまりありませんので簡潔にお願いしたいと思うのですが、内示後の三月上旬の当委員会におきまして、この内示において触れなかった五品目――四品目についてはもう一応こういう結論を出していらっしゃるわけでありますが、五品目について私がお聞きしたところ、未調査である、したがって正式審査段階で調査をする、このように答えられたわけです。今回の勧告においては、依然として一言も五品目のことについては触れておられない。要するにそれはまだ未調査であるのか、あるいはまだ結論が出ておらないのか、その辺のところはどういうわけで発表なさらないわけでありますか、まずお聞きしたいと思います。
#105
○山田政府委員 その点につきましては、前回の当委員会におきまして私どもの事務局長からお答え申し上げてあると存じますけれども、そのとおりでございます。
#106
○近江委員 部分的な四品目だけのこういう結論だけでこの合併の差しとめをやるということについて、見方によれば、合併に対するヒントを与えたんじゃないか、こういうような見方もできるのではないかと思うのです。そういう点でいままで努力をされてこられたことについては、われわれも非常に敬意を表するわけです。しかし、あくまで筋を通すというか、この問題の五品目についての結論、あるいはそこに至っていないにしても、ほぼ正式審査をやっておるわけですから、やはり発表というものはできるはずだと思うのです。その辺のとこはどうなんですか。
#107
○山田政府委員 現在当該事件はまだ審査中に属しておるわけでございます。結了いたしておりません。その段階において中間でいろいろな発表をいたすということは適当でない、かように考えておるわけでございます。
#108
○近江委員 十一日のNHKのテレビの討論会で東芝の副社長さんが、両社の生産額のたった五%の比重しかない四品目を黒だとして全体の合併を認めないというのは条理に合わぬ、こういった意味の発言をなさっておったように思うわけでありますが、裏を返せば、九五%が五品目――五品目だけではありませんが、非常に該当する、こういう点からいけば、五品目はまだそういう段階であるからということで依然として内示後と同じような状態として変わらない、この辺がわれわれとしては非常にふに落ちないわけです。皆さんの御努力はよく認めますけれども、この辺の考え方というのはもうある程度発表してもいい段階ではないかと思うのですが、どうですか。繰り返しになるかもしれませんが。
#109
○山田政府委員 私どもといたしまして表明いたしましたところは、先般の勧告書にすべて尽きておるわけでございまして、それ以上を発表いたすことは差し控えさせていただきたい、かように考えます。
  〔武藤(嘉)委員長代理退席、委員長着席〕
#110
○近江委員 五品目について、いまの段階ではどうしても言えない、そういう公取委員長のいまの気持ちはいろいろと考えられるのですが、二、三例を申し上げますと、たとえば大型形鋼は合併後系列も入れると六六・五%のシェアとなる。この第二位となる日本鋼管との格差は五倍に開くわけです。これでも有力な競争会社があると言えるかどうかという問題なんです。こういう状態が競争制限にならないというなら、そういう理由をはっきりともう一回ここで聞かしてもらいたいと思うのです。質問はだいぶ以前に戻るかもしれませんが、さらに珪素鋼板は合併後六二・三%のシェアとなる。第二位の三四・七%と合わせると、これは完全に市場支配、つまり複占の状態になるわけです。ですから、こういうような複占の状態というのがどうして競争制限にならないか、こういうような疑問が非常に強くなってくるわけです。そういう点で私は一、二の例をあげたわけですが、あくまでも公取は最後まで筋を通してもらって、九品目の全体についてこうだ、われわれが納得できればいいのですけれども、全然依然として同じ状態、私は、たとえば二、三いまあげたわけでありますが、その辺についてもう一度この段階で簡潔にひとつ説明を願いたいと思うのです。
#111
○山田政府委員 先般来、先ほど来繰り返し申し上げておりますごとく、本件は現在なお審査中に属することでございまして、個々の品目につきましてこの席でどうとかこうとか申し上げることはぜひ差し控えをしていただきたいと存じます。要は、独禁法の規定を厳正に忠実に適用いたしてまいりたい。あとの点は、先般発表いたしました勧告書でおくみ取りをいただきたい、かように存じます。
#112
○近江委員 それからこの両社は、対応策の一つとして生産中止などというような不穏当なことをちょっと漏らしたように思うのですが、生産を中止したとした場合、それが競争促進的になるというようなことは当然あり得ないことでありますし、こういうような考え方についてどのように思っていらっしゃるか。独禁法の第一条には「事業活動を盛んにし、」とこのようにあるわけですが、こういう考え方、これについてはどのように思いますか。
#113
○山田政府委員 すべて勧告書でお読み取りをいただきたいと存じます。
#114
○近江委員 そう言ってしまえばおしまいなんですよ。もう少し味のある答え方をしたらどうですか。それでいけば何でも、どんなことだってみな結論は出ますよ。私たちは、いままでの努力に対しても非常に敬意も払っているわけです。あなたの立場はわかった上で聞いているわけですよ。そんな簡単な、ただもうそういう突っぱねるような言い方ではなくして、お互いにここは誠意と誠意のぶつかり合いじゃないですか。私たちにもあなたの立場はわかっているし、しかしそこにも一つの納得のいける、そういう答え方もあると思うのですね。委員長の人柄も私はよく知っておりますし、そういう点でもう少し――時間の点もあろうかと思いますが、この八幡、富士両社の生産状況を見ますと、現状においてすでに私的独占の状態というものは発生しておるのではないかと思うわけです。それはたとえば販売経路の系列化、あるいは価格の極端な硬直性あるいは差別価格の形成、いろいろな点、この現象が見られるわけでありますが、この現状で独禁法違反じゃないか、そういう声が非常に強いわけです。この辺のことについてどのようにお考えになっておられますか。
#115
○山田政府委員 私は当委員会におきまして十分誠実にお答えを申し上げるつもりでおりまして、また、ただいままでそう実行いたしておるつもりでございます。ただ、くどいようでございますが、先ほど来繰り返し申し上げておりますごとく、ただいま勧告をいたしまして、それに対して先方からどういう回答があるかというところを待っておる非常に微妙な段階でございまして、この微妙な段階であるということは御理解いただけると存じますのでございますが、その時点においては、いかに御質問がございましても、それに対して十分のお答えをいたしかねるその辺の事情は、ぜひ御了承をいただきたい、かように考えます。
#116
○近江委員 それから柿沼事務局長にお尋ねしたいのですが、今回の合併の件につきまして、あなたが事務局のスポークスマンのようなそういう立場でこられたと思うのです。ところが、委員会のこうした模様というものを正確に伝えておったかという点になりますと、この辺が非常にぼけてくると思うのです。そういう点で合併が六月一日にほぼ確実に実現するような、そういうような世間の伝え方があったわけでありますが、その辺のところのニュースソースというか、柿沼さんのそういう発言というものが非常に影響しておることが大きいと思うのです。そういう点、いまも非常に微妙な段階にあるわけですし、そういうあなたのスポークスマンとしての立場をどのように今後考えていかれようとしておるか、非常に微妙な段階にあると思うのですが、その辺率直な御感想をお聞きしたいと思うのです。
#117
○柿沼政府委員 私、委員会の決定がありました場合に、それを新聞記者の皆さん方にお伝えするという場合には、そのまま正確に伝えてきたつもりでございます。それから、委員会といたしましていろいろ審議をいたしております途中におきまして、委員会で何が審議されたかということは私から申し上げにくい場合が非常にたくさんあるわけでございまして、その点につきましては、むしろ私が話ししたことというよりも、それぞれの記者の方の受け取り方あるいは新聞社としての記事の扱い方のほうが主体になってきたように私は考えております。
 それから、ただいま御指摘の六月一日合併ということは、これは委員会で決定いたす問題ではございませんで、私の口からそういうことを記者の方に特にお話ししたというようなことはございません。
#118
○近江委員 通産大臣にお聞きしますが、先ほども出たわけでありますけれども、いまの段階では独禁法の改正は考えておらない、このように答えられたわけでありますが、この九日の一般紙によりますと、次官が、自動車も資本自由化が近いというときに、こまかい問題ばかり掘り下げる独禁法ではそのうちに役に立たなくなる、こういう現行の独禁法否定と受け取れるような発言をなさっておる。それからさらに、これは「エコノミスト」の三月十一日号でありますが、天谷企画室長も非常に気になる発言をなさっておる。「国民的な合意でもってサポートされていない法律は、岡に上がった船と同じことであるということです。」「要するにアメリカが作った法律で、日本経済全体との折合いというものを、考えないまま今日に至ってしまった。」こういうような発言ですね。ですから、大臣がいま独禁法の改正というものは考えておらないとおっしゃっても、そういう非常に根強いものがあるわけです。憲法においても、公務員というものはあくまでも法を守る義務というものが規定されておる。それをアメリカがつくった法律だからだめだとか、そういう放言、こういうことは今後許されていいかどうかということが問題になる。この辺のことについて最高責任者としてどのようにお考えになっておられますか。
#119
○大平国務大臣 先ほども申し上げましたように、いま民主社会でございますから、いろいろな立場の人がいろいろな所見を自由に申し上げる、新聞のほうは、取材の自由を持っておるわけでございますから、それを取り上げて活字にされるということは十分考えられることでございますし、それはいいことだと思います。ただ、それで役人であるからものが言えないというようなものでもなくて、役人でもものを言って差しつかえないと思いますが、いま近江委員が言われたように、公務員という立場がございますから、そういう立場を十分考慮して、慎重に公務員は発言をすべきものと考えます。いまあげられた具体的なものが、そういう公務員の言動を規制した法律にどのような関係を持つのか、私はまだ吟味したことはございませんけれども、本来そういう規制の範囲内におきまして自由濶達な論議がかわされるということは、民主主義の効用だろうと思います。私の意見は先ほど申し上げたのでございますから、通産省に関する限り、私の意見を通産省の意見として受けとめていただきたいと思います。
#120
○近江委員 もう時間がありませんからこれで終りますが、財界首脳部の考え方というものは、独禁法の改正ということに非常に強い方向に向いておると思うのです。そういう非常に独禁法に対する挑戦的な財界の動きに対して、政府はいま何も言わないのかという問題なんです。先ほどからずっと話されておるので、大体考え方はわかっておりますが、財界に対しても当然、通産省は常にリードしてきたわけですし、そういう指導する気があるなら、何とか言うべきじゃないか。ところが、そういう動きに対しては全然何も言わない。先ほどからお聞きしていますと、いまの段階ではというような、そういう非常に微妙な言い回しのように思うのです。そうしますと、いつかは将来は考えなければならないというニュアンスが非常に強くなってくるわけです。あるいはこの独禁法のそういう骨抜きというのは今後もこんりんざいやらないということをはっきり言えるかどうか、その辺のところをもう少しお聞きしておいて質問を終わりたいと思うのです。どうですか、その辺のところは。
#121
○大平国務大臣 一般論で申しまして、現在実定法がございまして、これは独禁法ばかりでなくて、あらゆる法律が事態に対して十分の適応力を持っておる限りにおきましてはレーゾンデートルが与えられると思うのでございまして、全然時代に合わなくなったというようなものは、またこれを改正していくということはあり得るであろうと思っております。具体的に独占禁止法はどうかという判断を求められた場合、私どもは、この法律があるからにっちもさっちもまいらないというような、そんな窮屈な考えは持っておりませんで、独占禁止法の指向する秩序の中で産業政策を鋭意やってまいりましたし、今後ともやっていけるものと考えております。
#122
○近江委員 これで終ります。非常に微妙な段階にもありますし、公取さんの努力に対してもわれわれは非常に敬意を持っていま見守っております。そういう点で通産省としても、そういういろいろな圧力、圧力というのはおかしいですが、そういうことはないと思いますけれども、公取の厳正中立な、いまのフェアな態度、さらに通産省としても厳正中立に、この前にも要望しておきましたが、そういうさらに一貫した態度で最後までやっていただきたい。この点を特に要望しまして私の質問を終りたいと思います。
#123
○大久保委員長 本日の議事はこの程度にとどめます。
 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後一時十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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