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#1
第061回国会 農林水産委員会 第48号
昭和四十四年七月十日(木曜日)
    午前十一時九分開議
 出席委員
   委員長 丹羽 兵助君
   理事 安倍晋太郎君 理事 仮谷 忠男君
  理事 藤本 孝雄君 理事 三ツ林弥太郎君
   理事 湊  徹郎君 理事 兒玉 末男君
   理事 森  義視君 理事 稲富 稜人君
      伊藤宗一郎君    菅波  茂君
      田澤 吉郎君    中尾 栄一君
      中山 榮一君    野原 正勝君
      八田 貞義君    石田 宥全君
      工藤 良平君    佐々栄三郎君
      柴田 健治君    永井勝次郎君
      芳賀  貢君   米内山義一郎君
      神田 大作君    斎藤  実君
 出席政府委員
        農林政務次官  小沢 辰男君
        農林省畜産局長 太田 康二君
 委員外の出席者
        農林省畜産局衛
        生課長     信藤 謙蔵君
       専  門  員 松任谷健太郎君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 農林水産業の振興に関する件(畜産問題)
     ――――◇―――――
#2
○丹羽委員長 これより会議を開きます。
 農林水産業の振興に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。柴田健治君。
#3
○柴田委員 委員の出席が非常に悪いので、まことに残念なんですが、一応焦点をしぼって簡単にお尋ねを申し上げたいと思うのです。
 今日、農政の転換ということで、米重点から畜産、果樹、蔬菜と、こういう方向へ大きく転換をさせようとする政府の考え方、そういう立場から判断をして、今後それに適応するようないろいろな措置を講じていかなければならぬ、これが農林省の一つの責任ではないかと思うわけであります。
  〔委員長退席、三ツ林委員長代理着席〕
そういう立場から、本日は、家畜の問題の中で養鶏、養豚、そういう小家畜でなしに、大家畜といわれる乳牛と和牛、この点に焦点をしぼってお尋ねをしたい、こう思います。
 和牛でも乳牛でも動物でありますから、人間も動物でありますが、人間以上に細心の注意を払って、飼育管理を完全にしていかなければならない。それにはまた、品種の改良等も加えていかなければならないのでありますが、ややもすると、今日家畜に対する飼育管理というか、そういう面で、環境の整備というものは、人間と同じような、あるいはそれ以上の考え方で取り組んでもらわなければいけないのではないか、われわれはこういう考え方に立っておるわけでありますが、どうも古い考え方のほうがいまだに消え去らない。旧態依然の考え方で、そういう基礎的なものを十分認識せずして将来畜産の振興をやろうとすると、いずれは失敗に終わるのではないか。その失敗は、生産農家が全部その責任を負わなければならないということになりかねないという一つの不安と心配がありますから、いまからこの問題を取り組んでもらいたい、こういう気持ちでお尋ね申し上げ、同時にまた、四十五年度の予算編成期を迎えておりますので、四十五年度の予算の編成については、そういう観点で予算の編成に当たってもらいたい、こういう希望的条件をつけながらお尋ねを申し上げたいと思うのです。
 まず、乳牛と和牛の疾病の問題なんですが、今日いろいろ科学的な病名がつけられております。そういう立場からお尋ね申し上げるのですが。この疾病の、たとえば家畜共済等で取り扱っている問題の中で、乳牛の場合は、乳房炎は家畜共済がまだ適用されてないというような面もあるのではないか、こういう気がしますが、家畜共済制度については今後いろいろ――先般も農業災害補償法を改定したらどうかというお尋ねを申し上げたんですが、いずれ検討されるだろう、こう思っております。
 そこで、とにかくいま一番農民が心配しておるのが繁殖障害です。この繁殖障害は、和牛、乳牛ともに万全な処置を講じておるのでありますが、どうしても繁殖障害にかかりやすい動物ではないか、こう思っておるわけです。この繁殖障害にはいろいろ原因があります。この原因の究明がまず科学的にされなければならないし、また、その究明された後に処置をどうするか、こういうことになるのではないか、こう思うわけでありますが、その点について、和牛、乳牛のいまの疾病の状況、それからそうした調査研究というか、疾病の原因の究明等についてどういう方法でやっておられるのか、その点、お答えを願いたいと思います。
#4
○太田政府委員 最近におきます家畜の疾病の状況につきまして、家畜共済統計による資料で御説明申し上げたいと思うのでございます。
 乳用牛の場合でございますが、舎飼いにおきますところの死亡率というものは、ただいまの統計によりますと五・四%ということになっております。それから、牧野放牧の場合の死亡率が一・一%であります。それから肉用牛の場合でございますと、舎飼いにおきます死亡率が一・三%、これに対しまして牧野放牧におきますところの死亡率が約〇・七%ということになっております。
 そこで、死亡事故のうち最も多いのは寄生虫病で、中でもピロプラズマ病が全死亡率のうち約二二%を占めておる。それから寄生虫病では、ほかに肝蛭症とか肺虫症が発生しておるのでございまして、消化器病といたしましては、鼓張症あるいは下痢症、それから生殖器病では乳房炎などがあるわけでございまして、また、最近ワラビの中毒様疾病、いわゆる汎骨髓癆症が見られるのでございます。
 これらにつきましては、われわれのほうといたしまして、家畜保健衛生所が中心になりまして、それぞれの技術指導に当たっておるという実態でございます。
#5
○柴田委員 何としても家畜を奨励する場合には、伝染病という脅威を防がなければならぬ。法的に食いとめる制度になっておりますけれども、油断をすると、いろいろな法定伝染病によって、農家経営の根底から破壊されるようなそういう被害をこうむる。そのほか飼育管理の過程において、先ほどあなたが答弁をされたように、いろいろな疾病に基づいて死亡なり障害を起こして、農家経済に非常に不安も与える。
 この点の取り組み方で、特に本日重点としてお尋ねしたいのは、今後放牧場をどんどんやっていこうということで小規模、中規模、大規模、こういう種類もいろいろございますけれども、その放牧基礎頭数によって――先般の国有林の活用法案も、草地造成というものをある程度農業と結びつけてやっていこうというお考え方になっているようでありますが、この放牧場の考え方は正しいとしても、放牧をさせても今後いろいろな問題が起きてくる。たとえば、百頭放牧しておる中規模的な放牧場がだんだん放牧する頭数が減ってくる。農民の考え方を聞いてみますと、放牧しておる牛には、和牛でも乳牛でもなんですが、どうも病気になる率が多い。それで、放牧料金を一日七十円も八十円も出して料金を払った上に、牛の病気の感染しやすいようなところには放牧する気になれないという。それで、これは肉牛でもそうなんですが、家畜商までがそれをねらって、農家の庭先で安く買いたたく。ほんとうに農民は知らないものだから、障害にかかったといわれると、そういう専門の畜産の技術員の指導も受けない前に売ってしまう。こういうことで、農家は知らず知らずのうちに被害をこうむっておる。こういうことで、放牧場から頭数がだんだん減る、放牧観念が薄らいでくることは、今後国の農政の進め方の中で、畜産振興で放牧場をつくって、放牧でやったらいいじゃないかという簡単なことだけで解決できない一つの悩みがここに出てきたのである。そういうことから、私らの地方では放牧病という名前をつけている。放牧して病気にかかったやつを放牧病といっている。
 この放牧病の中には、害虫というか、アブだとかダニ類。このアブの種類が、大体数字的には何種類あるのかよく知らぬが、大体二十何種類あるということを聞いておるのですが、一体何種類アブの種類があって、ダニも何種類あるのか。このアブやダニによって、これから媒介される寄生虫なり貧血、それから発育障害、ピロプラズマ病というんですか、専門語でいえばむずかしい名前なんですが、こういう病気になるということがいま出てきたわけですね。これらの点についてどういう考えを持っておるのか。
 それから、不完全な放牧管理という面もあるわけで、その不完全な放牧管理について、たとえば、殺菌をしなければならぬというこの殺菌の方法をどう指導をしておるのか。そういう不完全な放牧管理における一つの病気で下痢症状を起こして、非常に肉質の低下、または乳質の低下、乳量の低下というものもある。
 それから、またもう一つは、草地改良をするのでありますけれども、どうしても野性的な草が出てくる。そういう野生的な草類によって、先ほど局長が言われましたが、ワラビだとかなんとかいうて、いろいろ野生的な草種があるわけですが、これらにおける中毒、これが特に乳牛のほうに影響しておるようであります。肉牛においても肉質の低下を来たしておる。
 これらを考えますと、農民に与えておる心理的な影響は大きい。放牧場をどんどんつくる、草地改良で農林省が奨励して融資もする、そういうことでいろいろ奨励しても、基本的なものを早く抜本的に対策をしないと、放牧する観念が薄らいできたら、どんなに奨励しても、農民は一たん失敗をしたら、二度と手を出す気になかなかなれない。これはどんな事業でもそうですが、一たん失敗した事業は、二度と手を出さないというのは、これは人間の一つの心理的な作用だと思うんですね。
 それは、放牧場を農林省はすすめてくれるけれども、相当の融資を受けて牧道も、牧さくも、用水も全部ひっくるめてやるものだから、牧道だけは別に公共事業でやってくれればいいものを、全部やるものだから高くつく。高いからやはり放牧料金も高く取らなければならぬ。既定の計画どおりの放牧頭数百頭なら百頭、二百頭なら二百頭を放牧してくれれば、ある程度償還計画も実施できる、計画どおりいく。ところが、頭数が減ってくると、放牧料金があがってこないしたいへんなことになってくる。管理者のほうも困るし、農民のほうも心配して、利用度がだんだん下がってくる。
 こういうことになってきたら、どんなに笛を吹いて大鼓をたたいても、そういう畜産の放牧ということについては前へ進まぬのではないか、こういう気がするわけですが、こういう点について、局長、具体的にひとつお答え願いたいと思います。
#6
○太田政府委員 先生御指摘のとおり、乳用牛、肉用牛につきましては、繁殖育成部門につきましては、迂回生産の期間が非常に長いわけでございまして、投資をしても必ずしもすぐ回収されないというようなことで、できる限り公共育成牧場をつくりまして、市町村、農協等の公的機関によりまして、農家から預かって育成をするという施策を進めておるのでございまして、その際、るる御指摘のような問題が出ていることは、われわれも十分承知をいたしております。最近の傾向を申し上げますと、昭和四十三年に全国で公共育成牧場が五百八十七カ所ございまして、順次入牧率等も高まりまして、四十一年が七五%の入牧率であったものが、現在では九〇%というふうに向上をいたしておることは事実でございます。そこで、先生おっしゃいますように、確かに多数の家畜を放牧するというような飼育形態は、従来日本にあまりなかったわけでございまして、そのために、さまざまな問題が起こっていることは事実でございます。そこで、従来公共育成牧場が必ずしも十分機能を発揮しなかったという点には、ただいま御指摘のような、技術者の知識の不足、あるいは牛と草とのアンバランスというような問題、さらには、牧野衛生の問題というようなことがあったのでございまして、特に、放牧に伴いますところの牧野衛生の問題が最も大きな問題でございまして、先ほど御指摘のように、ダニ等を媒介といたしますピロプラズマ病等が発生をいたしまして、これが家畜につきまして家畜の増体量が減るというようなところから、ともすると公共育成牧場に預けて飼育をしてもらうというようなことは、先ほどおっしゃいましたように放牧病ですか、そういうようなことで農家がきらうというようなこともあったのでございます。
 これに対しましては、実は昭和三十九年度と四十年度に、御承知のとおり新しいヘリコプター利用によりますところの開発試験といたしまして、農林水産航空協会に助成をいたしまして、ヘリコプターを利用いたしまして、牧野に対するBHCの散布というものを実験事業といたしまして、全国で九カ所実施いたしたのでございまして、これによりまして、先ほど申し上げましたようなピロプラズマ病発生の中間宿主になりますところのダニの駆除というのを実施いたしたのでございますが、かなり効果をあげたようでございます。
 そこで、われわれがこれを事業化するということで、その後地方競馬全国協会の畜産振興の助成によりまして、薬剤散布を実施いたしますための航空機のチャーター料とか、あるいは薬剤費、散布費につきまして、ヘクタール当たり定額の補助をするという道を開きましたほか、常時二十頭以上経営をいたしておりますところの牧野に対しましては、動力噴霧機を助成する、あるいはパドック、牧さくその他必要な施設についての助成をするというような補助をいたしてまいったのでございます。
 それから、特に申し上げておきたいのは、実は家畜放牧に伴いますところの衛生対策につきまして、私のほうの農林水産技術会議が中心になりまして、各県とタイアップして特別研究で事業を実施してまいりまして、ようやくその成果もまとまったのでございまして、われわれといたしましては、放牧衛生に対する個々の技術はおおむね確立されておるのでございますが、実際にこれが放牧地において確実に利用されておるという実態にまだ十分ないわけでございますので、明年度予算におきましては、これらの技術をいろいろ組み合わせまして、主要な全国の放牧地におきまして、実際にこの技術を応用する事業、そして経済的な放牧衛生方式を確立するための実験事業というものをぜひやりたいということで、明年度予算におきましてはぜひそれを実現いたしたい、かように思っておる次第でございます。
#7
○柴田委員 どうも局長は、人のゴボウで法事をするような言い方をしているが、競馬協会なんていうのはギャンブルでしょう。ギャンブルの金を当てにしてやろうとする農林省の考えは私はおかしいと思うのですよ。やっぱり多少の研究調査費くらいは――これはいまあるんだからそれはいいですけれども、こういう家畜衛生に関しては、もう家畜が飼育される限りは必要な問題なんですから、これはひとつ農林省として抜本的に、人の金を当てにしないように、予算編成においては大蔵省とよく折衝して、これだけはやってもらいたい。
 私は、予算編成の前ですから具体的に私の考え方、こうしたらどうだろうかという問題点を提起しておきますので検討願いたいのですが、たとえば、放牧場で放牧する、百頭なら百頭、二百頭なら二百頭の基礎頭数の中で、たとえば五分の一以上とか四分の一以上という障害が出た放牧場については、融資金額の償還期限を考えてやるとか、利子補給をしてやるとか、永久でなしに一定期間については、そういうことをしてやるとかいうような道がとれないものだろうか。
 それからもう一つは、草種の選定なりまた土壌検査なりいろいろな検査、それから出た場合には予防注射も放牧地には、定期予防注射でなしに、特別に年に何回かさせていく、そういう防除体制というか、駆除対策についてできる限り補助をしてやるとか、それから環境整備でも、やはり施設の問題があるわけですから、この施設の問題については、特別な財政援助措置を講じてやるとか、こういう点を十分掘り下げて善処してもらえないものだろうか、こういう気がするのですが、そういう点についてのお考えを聞きたいのです。
#8
○太田政府委員 実は、先ほど申し上げました実験事業におきまして、まさにいま先生御指摘のようなことをやろうといたしておるのでございます。
 御承知のとおり、舎飼いから放牧に移ります場合に、先ほど申されましたような下痢症の問題が起こってまいりますが、これは馴致期間を一カ月にしたらいいのか十日にしたらいいのか、あるいは害虫駆除は牧野散布がいいのか牛体散布がいいのか、それから内部の寄生虫の検査、これは投薬でやるわけでありますが、投薬をしてみたものと投薬をしてみないものがどうなるか、あるいはピロプラズマ病の検査、これも投薬の問題にからむわけですが、実際に投薬したほうがいいのかあるいは投薬しないでも十分防げるのかどうか、さらにはアデノ予防の問題でございますが、下痢症に対しまして、注射をしたらいいのか注射をしないでも済むのかどうか、これらを実際実行いたしまして、できる限り経済的な放牧、衛生方法を確立するということが農家のためでもございますので、いま申し上げたようなことを組み合わせまして試験を実施いたしまして、これから指導に移してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
#9
○柴田委員 あなたといろいろこまかい論戦をしたいのだが、時間がないからなるべく早く済ますようにということですから、その点については、ひとつ今後局内で十分検討していただいて、また大臣にも次官にもこの問題については特に配慮してもらわぬと、畜産振興をいいながら、基本的な問題の体制づくりがまだできていないということは、先を急ぐあまりそういうものを手落ちをすると、かえって取り返しがつかないことになってくる。この点は十分配慮してもらいたい、こう思います。
 次に、実畜改良法規には、家畜改良増殖法というりっぱなものがあるのです。これについてですが、家畜改良とそれに対する増殖対策、要するに増産対策なんですが、いま各県に農家経営の安定というか、経済的安定感を与えていく一つの手段として、各都道府県に肉用子牛価格安定基金協会という制度をつくっているのは、御承知であろうと思うのですが、これは全国にどの程度できているのか、そしてこの内容についてどういう考えを持っておられるのか、その点を聞かせていただきたい。
#10
○太田政府委員 お尋ねの各県に設けております肉用牛の子牛基金の現状でございますが、現在、畜産振興事業団から出資をいたしまして実施いたしております県は、主要生産県十県について実施をいたしております。
 ただ、御承知のとおり、これを実施いたしました趣旨は、何と申しましても肉用牛をふやしていくためには、子牛の価格の安定をはかる必要があるというところに着目をいたしまして実施をいたしたのでございますが、われわれ実施の過程におきまして反省をいたしておりますことは、一つは、もし価格が非常に低落をいたしまして、しかもこれが長期化するというような場合に、要するに下落が大幅となる場合には、基金額が補てん限度であって、価格下ざさえには不十分であるというような点が一点あるわけであります。
 それから、生産者団体が流通段階の把握に乏しい地域におきましては、十分事業に着手することができない。これはほかならず基金補てん準備金の積み立てを確保することが困難であるということに基づくわけでございますが、そういった意味で、生産者団体が流通段階の把握に乏しいというようなところにおきましては、この基金の機能が十分ファンクションしないといううらみがあるわけでございます。
 それといま一つは、最近われわれが進めておりますところの乳用の雄子牛、これが実は子牛価格の形成の場が確立していないというようなこともございまして、現在この基金の保証の対象にならないというような点もあります。
 これらの点を実は反省をいたしておるわけでございまして、なお、これらを全面的に解決するためには、やはりもう一度価格安定制度というようなものにつきまして、供給体制の整備あるいは流通改善、こういった点につきましての施策を進めなければならないだろうというふうに考えておる次第でございます。
#11
○柴田委員 基金協会のねらいとしては、私たちも賛意を表しておるわけです。ただ、何としてもこれは金が要ることなんで、金をどこから積み立てておくかということです。これらについて、農林省はもう少し知恵を使ってもらいたい。具体的に私が申し上げるとまた時間もかかるので、この点については十分配慮をしてもらいたい。特に子牛の価格を安定させることは、いまあなたが言われるように、和牛、乳牛の頭数をいかにふやそうとしたところで、要するに素牛になる子牛の価格安定対策が基礎ですから、これが解決できない限りは、どんなに叫んでみたところで頭数はふえっこないと思うのです。まして、農家の労働人口はいま非常に減ってきているときですからね。
 たとえば、一つの例を申し上げると、松阪牛の素牛、あれは兵庫県の但馬から行っているのです。それから岡山県の千屋牛、これはもう全国に広がっています。いま九州ブロックなり東北ブロックなり、各ブロックでは何としてもこの素牛をどう確保していくかという問題をやっています。そういうことから、やはり価格の安定をはかってやらないと、それぞれの肉質のいい牛が確保できない。こういうことになりますから、ただ導入資金のワクをふやしただけでは頭数はふえないと私は思うので、そうういった子牛の素牛を確保するという点で、もっと基金協会の育成強化というものを考えて、先ほど言った生産と共販体制の確立、流通の面の近代化、そういうものを前提に十分考えながら育成強化をやるべきではないか、こう思うのですね。
 今後それについて、どういう方法でこの基金協会の育成をしたらいいか、ひとつ考え方をすなおにお答え願いたい。
#12
○太田政府委員 御承知のとおり、現在の子牛価格安定基金制度は畜産振興事業団が実は出資をいたしておりますが、その財源は、あくまで借り入れ限度の保証みたいなことに役立つわけでございまして、実は実際に補てんするものにつきましては、個々の農家に負担をさせておるのでございます。
 なお、先ほど申し上げましたように、価格が非常に大幅に低落をいたす、しかもそれが長期化するというような場合には、先ほど申し上げましたように、借り入れ金の保証限度額というものをあるいはオーバーするというような事態もあるわけでございますので、いましばらく実態を見まして、畜産振興事業団からの出資をもっとふやすというようなことにつきましては、それぞれ各県、各県の実情に応じまして、また対処しなければならない必要も起こってくるのではないかということでございますので、十分それらの実態をきわめた上で、また畜産振興事業団の追加出資というようなことも、検討しなければならないのではないかというふうに考えておる次第でございます。
#13
○柴田委員 前進のお答えをいただいて、われわれも、局長にそこまで答えていただいたのだから、いずれは明るい面が出てくるのではないか、こう心強く思っておるわけですが、何としてももう少し出資金を早急に考えてやるべきではないか。これによって、国も力を入れてくれる、県ももっと出せ、農業団体も出しなさい、農家も出しなさい、特に畜産の振興をやろうとする市町村のそうした農業計画の中で、ひとつ町村のほうも出せ、こういうことで、みんなしてこういう基金協会を育成すべきではないか。こういう考えを持っておりますので、今後大いにこの問題と取り組んで、農民にもっと、安心感を与えるようなものを打ち出してもらいたい、こう思います。
 それから、もう一つ家畜改良について、法的には家畜登録の問題があるのです。この中で、乳牛のほうがまだ影響が少し少ないのですけれども、和牛のほうの登録関係です。これが十何年前は、戦後のときは、登録というと非常に尊重されてきた。そのいい面がいまだに続いておることはいいんですが、これだけにこだわっておるために、家畜の改良というものができないという弊害がある。この点のいい面と悪い面が、局長ももう理解されておると思うのですが、どういう面がいい、どういう面がいま悪くなっているか、ひとつ考え方をお答え願いたいのです。
#14
○太田政府委員 御承知のとおり、家畜改良増殖法に基づきまして、家畜につきましての登録協会を設けまして、家畜の登録事業を実施いたしておるのでございまして、やはり血統、体型、能力等につきましてそれぞれ点数をつけまして、その優秀な牛を確保いたしまして改良増殖をはかってまいるというのが、家畜改良増殖法の基本にあるわけでございまして、このために、厳正な登録事業ということを実は実施をいたしておるのでございます。
 そこで、いい点と申しますと、実はこういった登録事業を通じまして、御承知のとおり従来の肉用牛につきましては、むしろどちらかと申しますと役使用が中心であったわけでございますが、だんだん肉使用に変わってくる。そこで、いかに増体量をふやすかというようなことでございまして、そういった登録による改良の結果、実は昭和三十年のものと四十一年度のものを比較いたしますと、胸囲におきまして約七センチ増加をいたしておる。そして、これを体重に換算いたしますと約五十キロくらいの増量ということに相なるのでございまして、従来でございますと、体重四百キログラムくらいのものが、この十一年間に、登録事業を通じた改良事業の推進によりまして、五十キログラム増加したというようなことによりまして、登録による改良の効果というものが顕著なものになっておるというふうに考えるのでございます。
 それから、悪い点についてどう考えるかという御指摘でございますが、やはり登録の事業でございますので、登録を通ずる先ほどの改良ということが一番の大きなねらいになっておるのでございますが、登録料がどうだとかいろいろな問題もあるわけでございますが、現段階におきます登録の制度というものは、先ほど申し上げたように、十分その効果を発揮しているのではないかというふうに考えております。
#15
○柴田委員 いま、いい面を局長盛んに言われたのですけれども、いま悪い面が出てきておる。その点を私から指摘したいのです。
 たとえば、Aの農家が和牛登録協会に登録牛を登録する、その証書だけに農民がこだわっている点がある。それからまた、その登録証書によって家畜商の連中が、中間の博労組合というのですが、家畜商がその登録証書によって、たとえば前任者前任者というのはおかしいですが、前飼育者はあまり飼育管理に熱意がなくても、登録証書だけ取引条件にする。これは人間でもそうですが、十歳代と二十歳代と体質が変わるというか、性格が変わらなくとも、いろいろな変化が人間でもあるように、牛でもそういう変化があるわけですね。たとえば、一年以内の牛でも、一年こした場合変化がある。そういう変化のある子牛を、ただ登録証書だけ取引条件にして取引価格をきめていくというそういうやり方は、改良という立場から見た場合には一つの障害になっておるのじゃないか。こういう悪い面をわれわれはまのあたり見るわけですね。
 私は、登録そのものが全面的に悪いと言っておるわけではないのですが、あまりにも登録証書だけにこだわり過ぎるという点は、弊害があるではないか、こう私は申し上げておるので、その点、局長どうなんです。
#16
○太田政府委員 現在の登録協会の登録事業を通じまして、先ほど増体量が非常にふえたというようなことを申し上げたのでございますが、やはり家畜の改良のために、血統をとうとぶというようなことで登録事業を実施いたしておるのでございますが、実際の取引にあたりまして、いま先生のおっしゃいましたように、この登録だけが基準になって取引されるという点については、確かに問題があろうかというふうに考えております。
#17
○柴田委員 いま登録料金を、乳牛と和牛と幾ら取っておるのですか。
#18
○太田政府委員 黒毛和種の登録料で申しますと、いろいろな登録があるわけですが、まず基本登録が、生後十六カ月から三十二カ月もので千三百円でございます。高等登録が三千五百円、育種登録が三千五百円。それから子牛の登記でございます。これは生後六カ月のものでございますが、これが三百円ということでございます。それから補助牛の登記という制度がございまして、これにつきましては六百円、こういう実情でございます。
#19
○柴田委員 この登録業務は、外国では国一本で登録をやっていない。ただ、アメリカは州で登録をやっておる。日本でいえば都道府県ですが、州で登録事務をやっておる。日本だけが全国組織で、その登録協会が出さなければならぬということは、私はどうもおかしいという気がするわけです。人間でも役場に届け出をすれば済む。外国へ行くのでも、町村の役場へ行って、戸籍抄本で町村長の証明があれば、内閣総理大臣の渡航証明もちゃんともらえてどこでも行けるのに、牛だけが全国籍の登録でいかなければならぬという、そういうことはおかしいので、都道府県に登録をまかして、たとえば、島根県なら島根県が沖繩へ出す、九州の長崎なら長崎が沖繩へ出す、こういうように、県の登録協会が責任を持ってやるべきではないか。このほうが農家の連絡も十分とれるし、全国一つの組織では、連絡も不十分です。いま登録してもなかなかおろしてこないし、平均どの程度かかつておるのか、一頭の登録証書をおろすのに何日間かかっておるのか、局長知っておられますか。それはたいへんな時間がいまかかっておるのですよ。この問題について、また途中でいろいろ作があるわけだね。
 それから、人間は結婚するときには、嫁さんや婿さんの身元調査をするわけですが、牛でもやはり登録証書だけでそういう取引上の価格をきめるのでなくして、登録証が間違いないかということの確認をする方法も、たまには農民に機会を与えていく。そういうことを考えたら、全国登録協会というものはどちらかといえば縮小して、都道府県のほうにある程度法律を改正してでもやったらどうか、こういう気がするわけですが、局長、その点はどうですか。
#20
○太田政府委員 実は、全国一本の登録協会で実施いたしておりますことにつきまして、県単位でやったらどうかという御意見も、現にいろいろ、特にホルスタイン等につきまして、北海道の登録協会とホルスタイン登録協会との関係というような問題もあるわけでございますが、現在肉用牛につきましては、全国一本の登録協会で実施いたしておるのでございまして、先生御指摘のような問題があろうかと思いますが、現段階におきまして、それぞれ審査員を中央、地方に設けまして、レベルの高いものは中央の審査、レベルの低いものは地方の審査という形で、それぞれ登録協会が委託をいたしまして、職員に登録の業務を実施させておるのでございまして、大体肉用牛の場合には、四十日ぐらいで登録証の交付ということが実施されておるような実情にあるというふうに承知いたしております。
#21
○柴田委員 日本の場合は、流通の近代化がされていないし、養鶏や養豚のようなものは、家畜商組合が中に入ってないから、大資本家が手を伸ばしてくる。大資本家が手を伸ばさないようなものは、家畜商組合があって、博労がやってしまう。博労というと昔のことばですが、家畜商が、あんたこの牛買いなさい、いい登録をもらってあげる、登録料金は三千五百円か四千円で、非常に金がかかりますけれども、それはまけてあげますよと言って、売りつけるときに高く売りつけておるのだから、登録料金は博労が自己負担のようなかっこうで、ていさいのいいことを言いますけれども、高く売りつけて、いかさま証書を送ってくる。実質的には、どうも一等級、二等級も、牛の価値よりか証書のほうが上になっている。場合によっては、証書のほうが下になったりする。こういうことなんで、途中の人為的な作用で等級がいろいろ違う、そういう不平不満がある。
 そういう確認をするのは、和牛の登録協会というのは、全国組織でなくとも、都道府県でどうですか、局長。人間ですら役場へ登録したらおしまいなんですよ。たとえば、柴田健治なら柴田健治の子が生まれたときに、届けたらおしまいなんですよ。それでちゃんと書いてある。牛だけが血統をいうのも、一応肉質改良でいいですけれども、私は、全国組織でああいう証書を出さなければならぬという理由がどうにもわからない。特別の場合だけはやるということにして、将来は都道府県に権限を委譲していく、こういうことにならないと、組織なりやっていることは旧態依然のことであって、それで畜産振興、畜産振興といったって成り立たぬと私は思うのですよ。農林省は言うておることとしておることは逆なんだと私は思う。将来そういう点について各階層の――いま私が言ったからといって、そうですがとあなたは答弁しないでしょう。けれども各階層の意見を聞いて、もう少し専門的に検討を加えて、改善すべき点があるとするなら、すなおに法の改正をしたらどうかと私は思うのですが、どうですか。
#22
○太田政府委員 家畜、特に肉用牛の場合に、家畜商の手を経て取引されるという実態が非常に多いことは事実でございまして、これらの取引が非常に非近代的であるという御非難もしばしば浴びておるのでございまして、これらの指導につきまして、大いに今後つとめなければならないだろうというふうに考えております。
 なお、取引の明朗化をはかるために、家畜取引基金等に対しまして、畜産振興事業団を通じまして出資するというような事業も事実はいたしておりまして、なお一そう家畜取引の明朗化、近代化というようなものにつきましては、努力を払わなければならないだろうというふうに考えております。
 なお、登録の問題につきましては、確かに御指摘のような問題もあろうかと思いますが、広く各界の御意見等を伺いまして、さらに検討を加えてまいりたい、かように考えております。
#23
○柴田委員 この場で明確な答弁を求めても、いろいろ関係がございますから、その答弁ができないことは私たちも理解しております。今後そういう点を放任しないように、ひとつ真剣に取り組んで検討を加えてもらいたい。
 次に、やはり家畜の改良という立場から、人工授精というものが戦後大きく取り上げられてまいりました。いま乳牛はほとんど人工授精に切りかえられておるが、和牛については、まだまだ人工授精が全面的に行なわれているとはいえない。昔は国の貸与牛、県の貸与牛ということで種牡牛を貸与しておる。いまだに県有牛という制度が残されておるわけですが、全国でそういう種牡牛が現在何頭おるのか。そして人工授精を自然交配との率はどうなっておるのか、この点をひとつお答え願いたい。
#24
○太田政府委員 実は、家畜の改良増殖の問題に関しまして、国、県、民間のブリーダー、これらがどういう役割りを果たすかということにつきまして、前々から検討いたしておるのでございますが、方向といたしまして、御承知のとおり、乳牛等につきましては、凍結精液の利用による人工授精というものが非常に進みましたので、従来のように、県が種畜を持ちましてやるというような形での改良増殖の組織は順次これを、現在家畜改良事業団というものをつくっておりますが、これらの機関に移しまして、家畜改良事業団がそれぞれ中心的なところに優秀な種畜を係養いたしまして、なおかつ、いま申し上げた凍結精液を利用いたしまして、全国的な流通をはかるというような方向で家畜改良増殖を進めてまいりたい。むしろ県でやっておりました種畜の係養は、漸次こちらの改良事業団のほうに移してまいる、国は優秀な種畜をこの家畜改良事業団に供給する、こういった体系で進んでいくのが適当ではないかということで、現に検討いたしておるのでございます。県のほうも、そういった形で種畜の購入等は改良事業団に譲りまして、自分のほうとしてはむしろ試験研究のほうに力を入れたいという方向が、大かたの県の御意向でございますので、改良増殖の体系としては、そういった方向で今後進めてまいりたいというふうに考えております。
 なお、全国の種畜の数は、ちょっといま手元に数字を持っておりませんので、十分お答えできないわけでございますが、肉用牛の雌に対する人工授精の率は、九〇%をこえておるというふうに聞いております。
#25
○柴田委員 局長は実態を知られぬから、これ以上言いますまいが、凍結精液は、五年も六年も八年も持つといわれております。日本は戦後、これは和牛でも乳牛でもですが、いま交通が発達して飛行機で何時間でも行ける。それをわざわざ外国から、一千万じゃ二千万じゃということで高い金をかけて買い入れる。そういうことはいまだにちょいちょいやっておられるようですが、そういうことはなるべくやめさしたらどうか。そんなことはやめさして、凍結精液は長期間もつわけですから――自然交配が、まだ一〇%残っておる。各県別に調べてみると一〇%以上です。全国平均にすれば、あなたの言われるように九〇%でしょう。けれども、おくれているところは依然としてまだ自然交配が行なわれておる。家畜保健所の距離の問題もあるし、それから離島の関係、そういういろいろな立地条件によって、自然交配が行なわれておる地域がたくさんあるわけです。
 たとえば、人間でいえば無医村ですね。家畜に対する無医村地帯がある。その無医村対策はどうするか。そういう人工授精で家畜増殖をはかっていくのに、無医村地帯の技術対策はどうするのか。こういう点の基礎的な問題からひとつよく検討を加えてもらいたい、こう思うのですが、そういう考え方についてお答え願いたい。
#26
○太田政府委員 非常に専門技術的な問題でございますので、衛生課長から答弁をさせます。
#27
○信藤説明員 全国に獣医師のいない畜産市町村がまだ多少ございます。現在、御承知のように畜産が進展してまいりますと、従来のような治療を目的としたような獣医師が、なかなか農村に定着しにくい環境になってきておりますので、われわれといたしましては今後農村に獣医師を定着させて、治療だけではなしに、衛生的なコンサルテーションが定職として成り立つような方策を講じたいということで、本年度も家畜防疫員の適正配置ということを考えまして、なるべく獣医師のいないようなところに、獣医師が定着するような方策を考えております。
#28
○柴田委員 局長、先ほど数々申し上げましたが、畜産振興、畜産振興というと、いやもう草地改良で、ちょうど新しい市町村長ができると、大きな総合グランドをつくってみんな行って遊びなさいというたところで、満五歳以下の子供は遊び場もない。グランドはできたけれども、それはおとながラグビーでもやったら、小さい五歳以下の子供が遊べないと一緒ですよ。草地改良をしたって、それをどう使うかということの基本的な問題を解決しなければならぬし、肉畜の改良だといいながら、その改良させなければならぬといういろいろな事務的な問題、また技術的な問題、技術革新だといいながら、そういう畜産技術員も一人もおらない、人工授精師も一人もおらない町村がある。これらの対策が、人間と同じに一つの無医村地帯になっているのだから、そういう点をどうするのかという基本的な問題をもっと掘り下げて取り組んでもらいたい、かように思うのです。
 それから流通の問題で、いま肉牛の取引価格が――畜産振興事業団は豚肉が中心になっている。和牛の価格が、一年十二カ月の間に三回も大きく変動をしておるというような、御承知のように長い歴史を持っておるわけです。もう四月、五月になったらだっと下がる、夏少し上がる、また年末下がるというわけで、年に大体平均三回、市場取引の素牛というか、そういう生体肉の取引の場所で価格が下がって、変動があるというところに、これはやはり流通の問題に影響があるのじゃないか。この流通の問題はどうしたら解決するのか、どういう方法をとったらいいのか。
 たとえば、生産者価格、それから生体肉と枝肉と精肉とこの三つの価格、生体肉価格は、統計的にはたとえば十キロ単位で出し、枝肉は一キロ単位で出し、精肉は百グラム単位で価格を出していく。こういうことでなしに、やはり統計的の数字の中でも、一キロ単位でずっと出していけば、ああいう価格の魔術にかからなくてもいいわけです。それを、生体肉のときだけは十キロ単位で統計的な標準価格を出す。そういうことは、これは数字的の魔術である。そういうことは言いませんけれども、やはり生体肉と、枝肉と、精肉との価格はなぜこうまで開くのか。
 それから、生産農家の手取りをふやすためにはどういう措置をしたらいいのか。たとえば、牛は角でもこれは熱とり薬になるというので、角も使えるわけですね。牛の角といったら、熱とりの薬になると昔からいわれていた。胃袋は胃腸の薬になる。もう牛は全部捨てるところがないのです。それを全部金に換算していくと、生産者である農民の手取りがもっとふえなければならぬ。はらわたまでみんなホルモン料理で食っておるのです。百貫以上の牛になると、ホルモン料理ではらわたの水揚げされておるのは、いまは時価でいうと一頭分で三万五千円くらいです。それが農民の手取りは、三千円か四千円だというのはもう話にならぬ。十分の一です。農民の手取りをどうふやして――国民総生産の五十一兆円の中でいま三兆五千億しかない。農民の生産したものの価格をもっと引き上げれば、農民の所得はふえてくるわけです。
 それから、いまの国民の消費経済の中で、その消費生活で二十二兆円も使われておる。そういう点を考えた場合に、流通の問題をどうするのか。これは肉畜振興については重大な問題だ、こう思うのですが、流通の問題を改善するのにはどういう構想があるのか、局長、ひとつお考えをお答え願いたい。
#29
○太田政府委員 私のほうで、事例を調査いたしたものがございまして、農家の販売価格、それから市場での卸売り価格、末端での小売り価格を見てまいりますと、昭和四十二年で申し上げますと、農家の販売価格が五百キロといたしまして十九万五千円。それに対しまして卸売り価格が七百六十二円。この場合には、五百キロのものの歩どまりが五五%ということでございますので、二百七十五キロを乗じまして二十万九千五百五十円。これが小売りにまいりますと、さらに歩どまり七五%ということになりまして、二百六キロで千二百四十円でございますので、二十五万五千四百四十円。したがいまして、小売り価格を一〇〇といたしますと、農家の手取り価格が七六%ということになっております。それは、御承知のとおり生産者の手取りが、大体七〇%から七五%くらいにあるわけでございますが、輸送費あるいは集荷費、特に系統の手数料の問題それから屠畜場における諸経費、卸売り人の手数料、仲買い人の手数料、小売り店のマージン、こういったものが積み重なって末端の小売り価格になるわけでございます。
 そこで、われわれといたしましては、まさに御指摘のような問題があるわけでございますので、できますれば産地で屠殺、解体処理して、部分肉にして流通をする。そしてスーパーとかいうようなところに直接売るような方法も、新しい流通のパイプとしてつくるべきではないか。従来の肉用牛の出荷につきましては、大部分が生体出荷でございまして、市場を通って出荷をされるというようなことで、先ほど申し上げたような手数料が加算されるというような問題もあるわけでございますので、新しい流通パイプをつくるということが必要であろうということで、明年度予算には、そういった事業も事業化したいということで、現在検討いたしておる段階でございます。
#30
○柴田委員 局長、当面数々やらなければならぬことがあるのですよ。
 そこで、一つ問題提起したいのですが、せめて明年度から県営の屠殺場をつくらせたらどうか。生産県にたいしては全部県営の屠殺場を、ぜひ明年度からは、年次計画でもいいから、ひとつ計画を立ててやる。屠殺場の整備というものとあわせて、やはり食肉衛生という衛生関係も考えて、もっと県営のというか、公営の屠殺場を整備させたらどうか。この点について何かお考えがありますか。
#31
○太田政府委員 御承知のとおり、食肉流通合理化のために、われわれは従来食肉センター等の設置に対する助成をやってまいったのでございますが、さらに中央卸売市場の施設の整備等に対する助成というようなこともやってまいったのでございまして、なお、現在屠場がはたして足りるのか、足りないのか、あるいはそういった食肉センターあるいは中央卸売市場との関係、こういった関係から見まして、屠畜場が不足しているかどうかというような観点から、もう一度検討いたしまして、もしそういったことで、ここには屠畜場を建てるべきであるというような実態が出てまいりますれば、十分考慮してまいりたい、かように考えております。
#32
○柴田委員 それは局長、こういうことについてはやろうと思えばやれないことはないのですね。それは、県がやるかやらぬか問題があるのでありましょうけれども、要するにこういう流通施設改善について、特に屠殺場だけでも整備をやるとするならば、補助金の問題なり融資の問題なりにつきまして、これはもう地方公共団体と地方農業団体――やはりいまの日本の農業で一番の弱点は、生産だけはするけれども、その共販体制が確立されていないし、市販についての、要するに小売り権というものがないわけですよ、生産者が。ほかの企業は生産から市場の小売り販売までみんな権利を握っておる。農民の場合は、自分でつくりながら、あとは全部人に握られてしまうところに問題があるわけですよ。個人個人の農家は積極的に参加できないものだから、そういう弱みはありますけれども、やはりそういう農業団体もあるし、それから地方公共団体もめんどうを見ていくという、農民のできないところをやはり政治的に解決してやるというのが、われわれの任務でもあるし、農林省としてもそういう考え方で、弱い面なり農家自身で解決できない面は、行政指導なりほかの方法でカバーしていくという、そういう姿勢が私はほしいと思うわけですね。
 だから、要するにやろうとすれば、屠殺場については補助なり融資のワクをふやす。融資のワクも、金利を長期の低利で融資をしていくという、そういう心がまえがあればやれないことはない。これだけ流通機構の近代化が出てきておるのですから、ことばにしても出てきておるのだから、そういう基本に沿って具体的政策を進めていくというのが正しいんではないか。
 局長、明年度の予算のときをもう迎えておるのだから、八月になれば大綱をきめるのでしょうから、先ほどから申し上げた質問は、明年度予算にみな関連しておるから、おくれてはならぬから、私はきょうあえて御質問申し上げたので、きょう申し上げた点は十分配慮願って、今後措置をしていただくということを強い希望でお願い申し上げるのですが、その点を簡単にお答え願って、私の質問を終わりたいと思います。
#33
○太田政府委員 実は、肉用牛の場合には、生産者団体が出荷をいたしておりますのは、全体の二〇%程度でございまして、従来、こういった面における生産者団体の活動が微弱であったというようなことがあるわけでございまして、大部分は家畜商によって出荷されるというようなことがあったわけでございますので、こういった点も、徐々に系統の共販率を高めるというようなことが、農家の手取りをふやすためにぜひ必要であろうというふうに考えております。
 それから、屠畜場の問題でございますが、私ちょっと先ほどことばが足りなかったわけでございますが、屠畜場につきましては、一応所管は厚生省の所管に相なっております。そこで、われわれが従来進めてまいりましたのは、産地におきまして食肉センターを設置いたしまして、そこで解体処理、枝肉で出荷するというような形での流通近代化を進めてまいったわけでございますので、さらに屠畜場と食肉センターとの関係等につきまして、十分両者連絡をとりつつ適正な配置の設置をはかってまいりまして、流通の近代化を実行に移してまいりたい、かように考えております。
 なお、いろいろ予算の編成にからみまして激励をいただいたわけでございますが、十分肝に銘じまして明年度予算に取り組みたい、かように考えております。
#34
○三ツ林委員長代理 次回は来たる十五日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後零時十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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