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1949/05/17 第5回国会 参議院 参議院会議録情報 第005回国会 労働委員会 第15号
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1949/05/17 第5回国会 参議院

参議院会議録情報 第005回国会 労働委員会 第15号

#1
第005回国会 労働委員会 第15号
昭和二十四年五月十七日(火曜日)
   午前十一時開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○労働組合法案(内閣提出、衆議院送
 付)
○労働関係調整法の一部を改正する法
 律案(内閣提出、衆議院送付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(山田節男君) これより委員会を開会いたします。労働組合法案及び労働関係調整法の一部を改正する法律案に対する質疑を続行いたします。ちよつと速記を止めて。……。
   〔速記中止〕
   ―――――・―――――
#3
○委員長(山田節男君) 速記を初めて……。
#4
○原虎一君 私の質問の要点は、労働組合運動を法的に取締るということによつて、目的が達成するのでなくして、やはり矯激な労働組合運動が行われておるということは、社会的欠陷であるから、社会的欠陷より起るものであるから、その社会的欠陷を取除くことに具体的努力が拂われなければ、法律を如何に改善し、或いは取締る、法律を変えて改正しても、それによつて目的を達するものではない、こういう質問の要旨であつたのでありますが、総理の御答弁はその後速記でみましても、ただ私の質問が政府が取締るというだけの考えであるということに、重点をおいて、聞かれておるようであります。私はむしろ吉田民自党総裁として、或いは今日の吉田内閣の総理として、社会的欠陷を除去するための、具体的な方法をお持ちになつておるならば、聞かして貰いたい、こういう質問をいたしたのであります。これに対する総理の御答弁は、速記にありまするが、健全な労働組合を助長するためには、政府は十分これらの運動の発達に、或いは組合の発達に飽くまでも助力するつもりでおるのであります。從つて政府の考え方については、更に御再考を要望いたします。私に考え直せ、こういう御答弁でありましたが、私は考え直すよりか、尚一層政府のいわゆる総理が考えられる矯激な労働組合運動が、起つて來るというこの社会的欠陷を、取除くための民自党内閣の総理として、如何なる具体的方策をお持ちになつておるか、これが非常に大事なのであります。この点についてお聞きしたいのと、総理は一体健全なる労働組合とは如何なるものか、どういう労働組合を健全とお考えか、この二点をお尋ねしたいと思います。尚続いてお伺いしたいと思いまするが、先ずこの二点についての総理のお考えをお伺いしたいと思います。
#5
○國務大臣(吉田茂君) この間議場において、私の答弁が簡單にすぎたがために、御了解ができなかつたかとも思われますが、簡單に申しますれば、その通りであります。即ち社会の欠陷を除くについて如何なる方策があるかとおつしやられれば、無論欠陷を除くことにおいては政府としては万全の策を講ずるつもりでありますが、その方法の一つとしては、或いは健全なる組合の発達を助長するということも、一つの方法でありましようし、又失業対策等についても労働者、労働勤労大衆の生活を保障するというがために、それぞれいろいろな例えば社会保險とかいうような方策等も講じて、いわゆるお話の社会的欠陷を取除くことにおいては、万全を期したいと思うのであります。從つて又取締ばかりを決して政府としては、考えておるところではないということを申したのであります。健全なる組合ということは、労働大臣からしてお話もあつたでありましようが、民主的にして各々その考えなり、思想なりを述べる、十分発露し得るような、民主的な組合を拵えるというふうに、政府は飽くまでも協力するという考を以て臨みたいと思つておるのでおります。
#6
○原虎一君 総理が御答弁なされます場合に抽象的……、私は今日の政治は抽象的であつてはならん、やはり具体的な問題についてお互いが忌憚なく檢討して行くということが必要だと思います。総理は社会的欠陷を取除くために万全の策を講ずる、併しその中には失業対策もあるというお話でありますが、私は現に今日起つておる問題、又起らんとしつつある問題に対して、総理が労働組合を如何なる対象として考えておられるかということに、疑問を懷かざるを得ないのであります。今日大きな問題、且つ労働者にとつて大きな問題は、御承知のように行政整理による馘首と、九原則に基きますところの民間企業の労働者の整理の問題であります。この問題に対して総理は例えば公務員の、この馘首に際しては十分なる失業手当、退職手当という問題が処理されてない、確立されてないで、相も変らず首切を断行しようとする、それから九原則に基づいて起つて來ますところの民間企業の失業に対して、失業対策は決して重視されておると思われないのであります、と申しますのは、先般労働委員会でこの方面の重要なる関係、立場にある安本長官の説明を求めましたところが、内閣に失業対策審議会というものを総理の指令によつて作つている、從つてこういうところで根本的に失業問題の対策が行われるのだ、こういう答弁がありました。ところがこれは決して民主的なものと私は思わない、いわゆるあなたの指命によるところの與党側に立つ人間のみを以て失業対策審議会を置かれる、安本長官はこれに非常に重点を置かれておりまするが、官房長官はこれは單なる諮問機関程度で、大したものではない、從つて議員がこの委員になる場合におきまして、國会法三十九條の但書の承認を得る必要もないのだというくらいに軽く考えておるという、こういう矛盾したことが行われておる、失業対策というものを考えるときに労働組合の代表者も入れないで、與党だけの委員を以て作られるというところに、果してあなたは労働大衆の意思を尊重し、社会的欠陷を取除いて行こうという積極性を持つところのお考えは持たれておると私共は断定できないのであります。むしろ逆である、自派の勢力範囲の人間のみを以て失業対策の委員会を作られる、かくのごときことで一体万全の至を講じておられるのか、それから又第二の問題です、事実を挙げて行きますれば、この配炭公團法の一部改正法に基きましても、いわゆる四千カロリー以下の鉱山地というものは非常な打撃を受けて破産に瀕する、從つて全國には八万八千人に達する失業者、家族を合せますれば四十万人からの失業者が出て來る、こういう重要な法案を出されるときに、その結果が労働大衆に如何なる生活に大きな影響を及ぼすかということをお考えあるならば、これは勿論生産増強の立場から考えることではありましようが、その反面に直接の労働者が八万八千人、家族を合せて四十万人からの者が失業しなければならんという、失業の恐怖に曝されるような政策を敢て断行されて、大手筋と言われる即ち三井、三菱、或いは北海道汽船炭鉱というような大資本系統の炭山を擁護する、而して全國に亘りましては二三%何がしの中小鉱山が潰れて失業者が出る、こういう問題についても一片の法律を出すことによつて労働者がかくも多数生活の恐怖に曝されておるという問題を何ら対策を講ぜられないでその政策、その施策その法律の改正が必要でありますならば、日本の経済再建のために必要でありますならば、仮に止むを得んといたしましても、こういう、ついて來るところの破綻から來るところの犠牲者を救済するとか、或いは他の方面に向けてその生活の途を図らしめるということに深い考慮が拂われないでいられるところに、今御答弁のように万全の策を講ずると言われるところの対策はできないのであります。こういう具体的事実によつてのみ労働大衆は政府の施策に対して判断し、批判し、贊否を決めるのであります。從つてこういう問題についての総理の今後これに対するお考えを明らかにされたいと思うのであります。
#7
○國務大臣(吉田茂君) 政府の施策について御信用がないと言われればそれだけの話であります。併しながら政府としては何を言つてみても行政整理をして日本の再建、経済の再建をしなければならない、これは目下の状態において必要欠くべからざるところでありまするから断行いたしまして、その結果失業者が出た、その場合には失業対策については相当の考慮をするということはしばしば機会のある毎に報じてあつたところであります。その政策が信用ができない、或いは期待されないといつてここに攻撃になれば、それはいたし方ない話でありますが、政府として十分失業対策その他について万全を期する考えであります。
#8
○原虎一君 ただ私は攻撃をいたすという考えではありません。即ち民主政治は思想の政治でありますけれども納得政治であります。フアツシヨンは納得はどうでもよいのであります。命令でやるのでありますから、御承知のように私が申すまでもなく、その点深く経驗、知識を有せられる総理であります。数によつて國会多数を有するから何でも数によつて御する、それが民主政治ということではある得ないのであります。十分に國民の納得、反対党の納得の行くだけのものが説明されなければならん、私は今申しましたように、失業対策というものに対しては、政府は十分なる万全の策を講ずる考えである、こう言明され、その具体策としておやりになつておる一つの重要な失業対策審議会に一体自党だけのものを、與党だけのものを以て構成し、労働組合の代表者も、労働組合の代表的な立場にある人間を一つも加えないでこれをおやりになる。これが果して労働大衆の、いわゆる健全な労働組合の発達を助成するところの意思を持たれる総理のやり方としては即ち納得ができない、即ちあなたのやられることを攻撃して私は事足りるのでなくして、日本の前途を憂えるが故にあなたのやり方についてはやはり納得が行くようにあなたの意思に対して十分我々は尋ねるところの義務がある権利もあると思つておる。單に政府のやり方を攻撃してるという考えでありますれば何をか言わんやです。具体的のやり方について我々はそれが如何なる意図によつて政府がなされておるか、又我々は國民としてこれをこういう考えで見ざるを得ないが、一体政府はこれに対してどういう考えであるかと当然尋ねるべき責任があり義務がある、失業対策審議会の構成一つを見ましてもどうも我々は納得行かない、これに対してただ政府のやり方について攻撃されるのでありますればそれまでだという御答弁は我々は余りにも情ない御答弁で、もう少しお互いに國を憂うる者としてお互いに眞劍にこういう問題を考える立場であつて欲しいと思うのであります。
#9
○國務大臣(吉田茂君) 今お話でありますが、我々も決して多数を占めたからその多数で押切ろうという、いわゆる非民主的な考えは毛頭持つておりません、從つて又そういう意思であろうと断定せられて政府の施策をお考えにならないように希望いたしたいと思つております。それから又失業対策審議会もまだ構成ができ上つておりません。のみならずその構成の中には勤労大衆側からも委員を入れる考えでいたしておるので、單に自分の與党ばかりの者を以て構成する意思は毛頭ないのであります、以上お答えいたします。
#10
○委員長(山田節男君) 吉田総理はお急ぎになつているのですが、御質問がございましたら極く簡單にお願いいたします。
#11
○村尾重雄君 現下非常に経済情勢並びに労働情勢は行き詰つておるのであります。その行き詰つている上に、九原則をば遂行しなければならない重荷を担わされた日本の経済並びに労働事情の前途には、非常に又大きな困難が横たわつていると思うのであります。これを乘切るためには、又九原則を遂行するためには、今後企業者側の方の協力も勿論であるが、即ち勤労者、働く人の非常なる協力を得なければならんということは、総理が度々要望されているところであります。特に私達が考えますのに、今後のこの九原則の遂行及びこの困難なる経済事情を乘切るためには、單に働く人の協力の線だけではなくて、これを乘越えて、その犠牲を拂つて貰うことを望まなくては、犠牲の負担なくしては、日本の現況を乘切ることが私はできないと思う。そういうような現下の事情の下において、実は労働組合を弱体化すとか、又労働組合の今後の罷業及び交渉を却つて弱体化するとかいうような、非常に改惡とみなされて、全部日本の労働組合の反対を起している今日の情勢において、労働法規の改正ということをなさることは非常に私は間違いではないか、却つて摩擦を起すような、こういう労働法規の改正はなさらない方が私はいいのではないか、こう思うのですが、総理の考え方を伺いたいのであります。それと今一点は御承知のように最初関係当局から労働法規の改正を取上げるべき指示があつた、それに対して第一次吉田内閣の下において、これが改正に着手されて、続いて第二次吉田内閣が生れてからこの問題を継続された。その間G・H・Qから一度二度三度、又労働省において第一次、第二次、第三次といういろいろの試案が組まれたということを聞いているのでありますが、一番最後の政府案をば決定するために、衆議院の倉石労働委員長並びに鈴木労相が、いわゆる政府と民主自由党の意見を代表して、例えば最後案折衝のときに、喧嘩に亙る團体交渉権の禁止とか、又産業を危殆に陷れるゼネストの全面的禁止とか、こういう條項の内容については又後程鈴木労相にお尋ねすることにいたしますが、即ち民主自由党並びに政府が考えている、もう一ついえば日本の経営者が、日本の資本家側の希望するところの線に副うて、最後案の労働法規をG・H・Qと決められるときに、それが全面的に断わられて、拒否されて、全面的に政府の最後の意嚮というものが当時入れられなかつたために、民主自由党内部においても相当紛糾があり、又政府においてもこれは暫定的に今自分が考えているように、思うようにならなくとも、今後暫定的に段々自分等が考えているような方向に変えて行こうとする、こういうような考え方に変えられたということをば、四月十日を中心とする四月十五日までのG・H・Qとの最後の交渉において、そういう肚を決められたということを伺つている、この点から考えますと、今度政府が提案になつた労働法規の改正そのものが肚から満足されておらないと思う、即ちあなた自身が今度の労働法規の改正案に対して肚から満足された法案だと考えておられるのか、これは非常に不満なものだ、併しないよりましだというような考えから出されておるのか、私はこの点についてのあなたのお考え方を聞きたいのであります。尚もう一つ足して、では若し最後案の折衝のときに一應民自党の意見、政府の意見として傳えられた暫定的に今後しばしば機会を見て労働法規を変えて行くとか、又労働法規を次の機会を見て改正するという点についてのお考え方を聞きたいと思います。
#12
○國務大臣(吉田茂君) この度の改正は政府としては改惡なりと考えて提出いたしておるのではないのであります。又この労働法規が不満足であるが暫定的に出すのだ、又與党内の、若しくは閣内においていろいろ反対論があつたことは事実ないのであります。又今後情勢に應じて法律が変ることがあり得るものであり、又変えるべきであろうと思いますから、必要に應じて変えることはあり得ることであります。併しながら今日は止むを得ないからこれで満足して出したというような無責任な考えで提出いたしたのではないのであります。
#13
○中野重治君 総理大臣はお忙しいそうですから簡單な質問をします。一つは総理大臣の施政方針演説の中にあつた経済愛國主義というものはどういうものか、その後分りませんから、経済愛國主義というのはどういうことかということ、それが一つ、第二は労働組合法の改正案というものは経済愛國主義とどういう関係にあるか、これが第二。第三は今まで労働大臣その他の答えを聞いていますと、これは役所の性質上そういうことに自然なるのかも知れませんけれども一種のセクシヨナリズムが感じられます。それで例えば政府末支拂が四百二十七億あるというようなことについては直接労働省は責任を持つていないというのは御尤もなわけで、そういう政府末支拂の、これの支拂いとか、或いは資本家が労働者に支拂うべき労賃を食つているというかうなことについてお尋ねしたところがこれは、昨日のお話ですが、資本家が労働者に支拂うべき賃金を支拂わないでこれを食つているというような場合は労働者に債権が永久に残るのだというふうなお答えがあつたわけです。それはそれに違いないけれども、こういう実情は、そうなれば労働者は死ぬということなんですから、そういうような点について総理大臣としては直接労働者の管轄事項でない、こういう大きな問題については政府として直ぐ打つべき手を打つという答えをここで得られるかどうか、これが三番目です。それから四番目は今総理大臣から健全な労働組合というものはどういうものかということについての簡明なお答えがあつたわけですが、健全な労働組合とはどんな労働組合か、その他労働組合関係のことについて労働大臣その他労働省関係の人達の答えと総理大臣の答えとの間に食違いがあつた場合は、総理大臣のお答えを中心にして統一さるべきものとこう考えていいかどうか、この四つです。
#14
○國務大臣(吉田茂君) お答えをいたしますが、経済愛國主義というのは、これはその字の示すがごとくに、経済を以て日本の復興を助ける、助けたいという主義であります。その主義にこの労働法改正法が合するか合しないか、政府は合しておると考えたから提出いたしたのであります。今の賃金云云については若しその間に私の言うことと主管大臣との言うことが相違があるという場合についてのお話でありますが、相違があつた場合にお尋ねを願いたいと思います。我々は主管事務については主務大臣が責任を持つてせられることでありまするから、主管大臣の主張は、これは内閣の主張なりと考えて私は飽くまでもその線に同調するつもりでおります。でありますから食違いはない筈であります。理論的に申せば……。
#15
○委員長(山田節男君) 総理大臣お忙しいですから……。もう一つですか。
#16
○中野重治君 今のことに関して、その今の総理大臣のお答えに関して……、簡單です。一つは、第三番ですね、この政府支拂の遅れておるような分、こういうものはこれを督促して支拂うまでは……。
#17
○國務大臣(吉田茂君) その支拂は成るべく速かに政府の負担に属する支拂は現に支拂うことに大藏大臣その他において努力いたしております。故に支拂の停滯ということは次第に消えつつあるものと私は承知しております。
#18
○中野重治君 労働省関係の問題について、総理大臣の考えと主務大臣の考えとの間に食違いがあつた場合には、これは問題になり得る、事実若しそういうことがあるならば問題になり得る。
#19
○國務大臣(吉田茂君) これは私から申せばあり得ないというのであります。理論的に申せば……。
#20
○中野重治君 事実ここにありますから、それについてお尋ねいたします。簡單なことについて……先つき総理大臣は健全なる労働組合の定義を、自主的にそしてそれに属する人々が自己を発露し得るごとき組合というお言葉で、これは私と全く合致するので甚だ喜ばしいのですが、現に五月七日の衆議院の労働委員会の速記録を見ますと、政府委員はいろいろ話をされて、そして或る委員のこういう問に対してこういうふうに答えています。「問そうすると結局この法案に從うような組合を称して、政府は自主的、民主的健全な組合、こう理解しておるというように解釈してよいわけですね。」政府委員「さように心得ております。」こうあります。これは一つの小さな実例ですが、こういうようなことが、欺瞞しておるところである。つまり政府は一つの改正案を出そうとしておる、この改正案に合致するものがそれが健全な組合だと、つまり政府が改正であるか改惡であるかは別として、政府の案に副うものが健全な組合である、そうすると政府の案に副うのはつまり健全な自己発露ということになる、こうなりますのでだから首相といわゆる理論的な食違いはそこにあるわけです。そういう場合に私は首相のお言葉に労働組合関係法規当事者の根本解釈は統一された方がいいだろう、こう私は考えるのであります。
#21
○國務大臣(吉田茂君) 私その間に食違いはないと考えております。その間に食違いはないと考えますからお話のような御議論は私においては……。
#22
○中野重治君 答えることができない……。
#23
○國務大臣(吉田茂君) 答えることができないのじやない、理解ができないのであります。
#24
○中野重治君 そうすればもう一度理解を願うために言います。政府はここで……。総理大臣は退席するんですか。
#25
○委員長(山田節男君) 二十五分までということにお願いしておりますから。
#26
○中野重治君 そういうことは前に予告されているんですか。
#27
○原虎一君 止そうそう。総理大臣に帰つて貰つていいということは誰も言いはしないよ。委員長議事進行……。総理は今委員長に断つて帰りましたが。委員長の許可を得て帰られたんですか。
#28
○委員長(山田節男君) 断られました。
#29
○原虎一君 それは委員長皆んなにお諮りすべきじやありませんか。
#30
○委員長(山田節男君) 諮ろうとしたときに帰られたのです。
#31
○原虎一君 休憩して本問題は別に討議いたしましよう。休憩の動議を提出いたします。そんな馬鹿なことがあるか、二十五分までというのは予告してあつたんですか。
#32
○委員長(山田節男君) 予告していない。
#33
○原虎一君 予告は聞いていない。それはまずいですよ、まだ我々は質問が残つている。委員長……休憩。
#34
○中野重治君 今労働大臣が結末のつくまでおりましようかと言いましたね、労働大臣、ちよつと待つて下さい、つまりどうい筋道になるのですか、筋道をはつきりしないと……、私達は全部総理大臣が忙しいことは分つておりますよ。
#35
○原虎一君 委員会中は総理と雖もこれは委員長の権限に依るんじやないか、委員長はなめられておるんじやないか。
#36
○委員長(山田節男君) どうでしよう、五分程休憩して、今のは帰られるのは一般の許可を受けられたわけではない、ただ最初から今日は見えられないというのを特にお願いして。
#37
○中野重治君 今日見えられないというのなら何も……。
#38
○原虎一君 今日は見えられないというのではないのですよ委員長。昨日は陛下が九州の方面においでになるのでこの見送りをするために出られないというのですから私共は昨日はよして今日は必ず出られると言うから、今日総理を待つたところが、先程になつて総理大臣は都合が惡いから明日にして呉れと言われるので、それは止むを得ん、としておりました。ところが総理は來ると言われた、二十五分間しかおられないなら今日は來て貰わんでもよかつた、來て貰つた以上は委員長の権限にある、委員長は全体の許可を得ずに帰えすということは、そんな議員の審議を無視するような総理ならば、我々は考えなければならない。
#39
○門屋盛一君 原委員け言われる通りである、更に重要な問題は、政府は成るたけ早く審議を上げて呉れということを要望されておる、早く審議して貰いたいためには、政府がそれだけ熱心に答えなければならん、問に対してお答えをして貰わなければならんということは、私は総理大臣に本会議で要求してあるのです。それはこういうことなんです。法案をごてつかせる、審議をごてつかせる責任は始終政府側にある、二十五分なら二十五分でもいいです。初めから分つておれば……それでは質問を打切つて又明日でも明後日でも延ばすということもある、そういうこともいいのだから、予定して計画して昨日と今日くらいに質問を打切ることに、計画的に政府の方に同調的に考おておる、それにも拘わらず今の態度は何ということですか。又委員長もですね、個人の委員長じやないんだ、委員会の権威ということも考えて貰いたい。
#40
○委員長(山田節男君) 私が許可を與えたわけではない。
#41
○原虎一君 なぜ帰えした。
#42
○委員長(山田節男君) ですからちよつと十分程休憩して。総理大臣は委員長に無断に帰られたんですから。
#43
○門屋盛一君 私が本会議で言うことはここです。早く上げようとすれば、これだけのことは政府の方で勉めて呉れなければ困るじやありませんか。
#44
○委員長(山田節男君) それでは十分程休憩いたしたいと思いますが御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#45
○委員長(山田節男君) それでは十分間程休憩いたします。
   午前十一時四十八分休憩
   ―――――・―――――
   午後零時十一分開会
#46
○委員長(山田節男君) それでは委員会を再開いたします。都合によりまして午後二時から再開いたすこととします。これをもつて休憩いたします。
   午後零時二分休憩
   ―――――・―――――
   午後二時三十一分開会
#47
○委員長(山田節男君) これより労働委員会を開会いたします。
#48
○原虎一君 議事進行について……。
#49
○委員長(山田節男君) 原委員
#50
○原虎一君 午前中の会議における吉田総理の態度は明らかに本委員会の審議権を軽視し無視したところと思うのであります。これに対して、委員長として然るべき手続をされてあるのか。その報告があつて然るべきだと思います。委員長から然るべき報告を聞きたい。
#51
○委員長(山田節男君) 今原委員の御発言については、只今総理大臣がお見えになつたとき、その事情を質した上で御報告申上げたい。時間の経済上総理も衆議院の方の本会議の質問が済んだら直ちにこちにお見えになることになつております。午前に引続き一般質問を続行いたしたいと思います。
#52
○原虎一君 先程私が申しました総理の本委員会に対する午前中の態度というものは明かに國会議員の審議権を軽視している、無視している態度、その処置をしないで直ちに進めるということは理事会でも開かれた結果か、或いは総会に諮られたのですか、そういうけじめをつけないで、委員会を再開されるというごときは大いに異議があるのです。
#53
○委員長(山田節男君) どうでしよう。総理大臣がお見え下さるのですから、お見えになつてからその理由を質して、皆さんにお諮りする、又総理から御説明があるだろうと思います。
#54
○原虎一君 私は委員長自身にお尋ねいたします。ああいう態度をとられた問題を不問の中にやるということは、私は委員会のいわゆる権威に関するばかりでなくして、今後こういうことがあれば審議に非常に支障を來すのであります。それは総理大臣というのがどういう事情にあるかも知れませんけれども、午後の開会劈頭に來て弁解なり陳謝なりがある筈じやないですか、それもなさらないで、委員長はべんべんと委員会を進めて行かれる考えですか。それは私は單に野党であるから総理の責任を追及するというようなのでなくして、明かに委員長自身に対する……委員長が承諾を與えて総理が帰つたわけでないと私は聞いている、そういう行動であつて、少くとも御承知のように國会法によれば、議長を通じて、政府、國務大臣の出席を求め、法規の基く出席であります。そうなれば法規に基いて、委員長の了解なしに、承諾なしに帰つたしまうということは、國務大臣としてとるべき態度でない、そういう問題を忽せにして、この委員会を進めて行くということは困難である、又本委員会の権威に関する問題であります。そういう問題を総理がいつ來るか知らんけれども、総理が來て弁明によつては、本委員会において、十分討議されなければならん、そういう事態があるにも拘わらず、簡單に総理が來て弁明するという話であるから、この委員会を続けて行く、こういうことについて私は納得できないのであります。
#55
○委員長(山田節男君) 今の原委員の発言についてお答えいたしますが、実は先程の午前の委員会において総理大臣がここを去られたということについては、労働大臣を通じて抗議をしてあるわけです。それに対しまして今後総理大臣は衆議院の本会議で緊急質問が済むや否やこちらに來る、こういう御回答であります。その間の事情についての総理大臣の釈明があり、或いは他の発言があるものと私は信じております。時間も経ちますので、それまで一般質問を続行して頂きたい、こういうようにお願いしたわけなんです。
#56
○原虎一君 それならば会議に掛けておやりになるべきで、委員長の権限で理事会を開かれたかどうか知りませんが、委員長の権限でこれから会議を続行するということは我々は了承できない、どういうことを政府に向つて警告を発し、総理に対して注意を與えたか、そのことも報告なしに、どういう事情でああいう中野委員の質問中に突如として席を蹴つて立つて行つたか。そういうことで総理自身がこの委員会の審議が円滑に順調に進むとお考えになればともかく、我々は委員の権限、國会議員の権限として手続をとつて出席を求めて、それが委員長の承認を経ずして、委員長は委員会の了解を得ないで、突如として帰つた問題を、何ら結末をつけずに、委員会に諮ることもなく、理事会にも相談をされることなしで、総理に後から弁明を聞いて、委員会を開くということに我々は了承できないのであります。
#57
○委員長(山田節男君) 今の原委員の発言ですが、先程のお説には今私の回答申上げた通りで、最初に申上げたことを、後程に又申上げて申訳ありませんが、それを簡單に最初に申上げて、そういう了解の下に委員会を再開して一般質問を続行したい、こういうわけでありますが、御異議ありませんか。
#58
○中野重治君 そうするとこういうふうに理解していいのですか、この委員会としては、これは私の質問中総理大臣が鳥の立つように出て行かれたのだから、私としては余り言いたくないけれども、委員会としてはお晝前に総理大臣が席を立つて行つたことは委員会に出席した大臣として不当なやり方で出て行つたということを我々委員会として認めて、その意味で委員会が労働大臣を通じて、吉田首相に抗議を申込んである、こう理解していいのでありますか。
#59
○委員長(山田節男君) 私はそういたしました。
#60
○中野重治君 それが委員会で認められれば、私としては格別異議はありません。
#61
○一松政二君 私は先程の総理大臣が退席されたことについては何か誤解があるかと思うのです。それで総理大臣としては一應委員長の承認を経て帰つたものとして、私の想像ではそういうふうに了解された。その点については、私は主管大臣である労働大臣が何かメモを渡されて、総理大臣に渡されたのか、委員長に渡されたのかはつきり分らない、それから労働大臣の発言が委員長に対して発言したものか、中に総理大臣がおられたものだから、総理大臣は自分に言つたものと思つて、私は処置されたように考えられる、それでありますから、総理大臣みずからこの委員会を軽視したり、或いは委員会の意向に反して勝手に立つたものでないと私は信んずべき理由があり、その間については私はその事情を委員諸君に労働大臣みずから説明になつて御了解を求めて貰いたいと私は提案したいのであります。
#62
○中野重治君 私は一松委員の提案に不賛成ではありませんが、お言葉の中の、何か誤解があつたというのは総理大臣側の誤解というわけですか、委員長側の……。
#63
○一松政二君 総理大臣の誤解です。
#64
○委員長(山田節男君) 如何でしよう。今一松委員からの御発言でございますが、一松委員の御提案のように、一つ労働大臣からその間の経緯を御説明願うようにして御異議ございませんか。
#65
○原虎一君 私は労働大臣からの釈明でありますか、それに強いて反対するものでありませんが、一体我々からあの午前中の総理のとつた態度についてかくのごとく要求しなければ主管大臣も政府として弁明をする必要ないと思つておりますか。私共はこの会議の劈頭に少なくとも労働大臣からその弁明があつた然るべきで、総理は如何に午前中に態度に対して、誤解があつてそういう態度をとつたにしても、それは委員会の審議を軽視した態度であることは事実であります。そういう問題について委員会から要求があつても政府委員は弁明をする必要がないというお考えでありますか。或いは総理大臣がするであろうから、労働大臣は默つておるというお考えであるか。私共は誠に委員会の審議に対する政府当局の考えが了解に苦しむのであります。
#66
○國務大臣(鈴木正文君) 実は先程ここに参りましたときに委員長からその間の説明があるならばとこう言われましたけれども、丁度委員会自体の何といいますか、運営の持つて行き方の問題と一緒に話されておつたので、委員会自体の問題には私共はどうこうということを容喙すべきじやないからと思つて、先つき委員長にお断りしたのでありますが、私自身としてこの間のことを御報告といいますか、御了解を得たいという氣持は持つておつたのでございます。原委員に指摘されたからという味意では決してありませんが、今申上げましたように午前に引続いての委員会のどうこうというふうなことを話しておられましたから、私といたしましてはそのときには委員会自分の運営の問題であるから発言は控えておつたわけでございます。午前中の問題でございますが、メモは私自身が書いたメモでもありませんし、私自身が委員長にお渡ししたメモではありません。恐らく政府委員か誰かに出席の時間がどれくらいの時間があるということをお話しておいたのだろうと思います。それから大体二十五分ということは入つて來たときに委員長のところのメモを見て了承しておりました。それが過ぎて参りましたので、私が委員長に対しまして、もうそろそろ時間だから成るべく質問を簡單にして頂きたいということを一、二度申しました。そうしてもうそろそろ時間じやありませんかと言つたことは事実でありますが、その外には何にも発言いたしません。総理がどういうふうにお聞きになつたかという問題も、別に私自身から総理にそのことを聞き質してはおりません。そうして午前中のああいうふうな状態でありましたから、早速私も大臣室まで参りまして直ぐもう一度出て貰おうと思つて参りましたときに非常に急いだと見えて外に出ておられた。それから深しましたけれどもなかなか連絡がつかず、二時に、今は二時半に変りましたが、そのときは二時に緊急質問を受けるために衆議院におられるということは分りましたからそれでこういう状態であるから御出席を願ひたいということを直ちに秘書官を通じて申入れておきました。そうして先つき出て参りましたから直ぐ私が会いまして事情をお話しましたら出席せられるというお話でありました。それ以上に複雜な推移はないのでありまして、今申上げましたような推移であるというわけでございます。
#67
○中野重治君 そうすると一松委員の言われた誤解云々の問題は労働大臣の解釈によればどうなつておるわけですか。
#68
○國務大臣(鈴木正文君) その点につきましては、私一松委員におつしやつたようにメモを総理が御覽になつたか、或いは言葉をお聞きになつたかという問題につきましては、私自身は今申しましたように総理にお聞きしておりません。或いは又そういうようなこともあつたかとも考えられますけれども、そういうふうに私自身こうだつたという判定も想像もつきかねます。
#69
○中野重治君 労働大臣の解釈では誤解があつたかも知らんけれども、労働大臣の解釈する限りにおいては、それにタッチし得るがごとき形でない、問題は一松委員の解釈では総理大臣側に誤解があつたと信ずるというのですが、どういうことになりますか。
#70
○一松政二君 私は先程鈴木大臣がもうそろそろいいのではないかと言つたというのですから、私の考えるところによれば、それは委員長に言つたのだか、総理に言つたのだか、総理の隣に委員長がおつたのだから、私は労働大臣の発言を総理の方では退席してもいいというふうに思われたのではないかと思うのです。そうでなければ私は総理はあのとき退席されなかつたであろうと想像します。
#71
○原虎一君 一松委員の御覽になつたことはそうであつたかも知れませんが、一間程離れた私のところから見ると、中野委員が再び委員長と呼んで、それは総理の答弁が終ると直ぐ呼んでおる、これは常識的に考えても、総理に重ねて質問するという態度であることは誰でも納得できる、三十秒か一分でもおれば分るにも拘わらば、それを出で行つたということは、我々はどうしても了解できない、誤解とは思えない、あのときに三十秒でも一分でもおつて各委員から一つも発言がなく、総理としては急ぐからもうこれでいいと思つて帰つたというならば我々は了解できますが、中野委員が直ちに委員長と呼んで質問を続けようとしたにも拘わらず、総理が帰つておるのでありますから、單に誤解されて帰つたというふうには考えられない、又総理は二十五分しかおられないということについては、委員長は御承知であつたか知らんけれども、委員は誰も聞いておりません、殊に午前中これは私的な話でありますけれども、鈴木労働大臣から今日も総理が出られないかと明日にして貰いたいという申出がありました、出られない御都合がある以上は、我々も明日出られるということを期待して、今日の労働大臣に対する一般質問をやろう、こういうことでおりますときに急に総理がお見えになつたのでありますから総理は少くともまだ十二時前でありますし、我々は二十五分しかないということは知つておりません、委員長も恐らく知らなかつたのではないか、委員長が知つておれば前以つて我我にお断りがあつただろう、そういうところに私は單なる誤解においてのみ総理がああいう態度をとられたとは思えない、これは総理自身にお聞きしなければ分らんことでありますけれども、一松委員の言われたことをそのまま率直に我々は受容れるという状態でなかつたことも十分にお考え願いたい。
#72
○田村文吉君 私当時おりませんで甚だ失礼でしたが、暫く休憩されたらどうでしようか。
#73
○國務大臣(鈴木正文君) 委員長ちよつと発言中ですが、総理の方からこういう連絡が今參つております。衆議院本会議で緊急質問終了後直ぐ參ります。但しこれは終了後ですからちよつと明確な時間は……。
#74
○委員長(山田節男君) 速記を止めて下さい。
   午後二時五十一分速記中止
   ―――――・―――――
   午後三時三十一開会
#75
○委員長(山田節男君) それでは休憩前に引続きまして労働組合改正法並びに労調法一部改正法律案に対する一般質疑を続行いたします。
#76
○中野重治君 ちようど今問題になつた打切られた質問を簡單ですから一つします。それはこういうわけであつたわけです。総理大臣は健全なる労働組合というものはどういうものかときかれて、それは自主的に自己を発露し得るごとき組合のことだ、これはよく分る、ところが労働省関係では、そうではなくて健全なる労働組合というものは、政府が今出そうとしているこの労働組合法案に從う組合が健全なる労働組合だと、こう答えておる、私はその差異は労働省関係の人たちの答えが誤りであつて、総理大臣の答が正しいと考える。そういう食違いがあつた場合には総理大臣は主管大臣の方に同調すると言われたけれども、むしろ主管大臣が総理大臣の方へ同調すべきではなかろうかと私はこう考えるのであります。その点はどうでしようか、こういうことであつたわけです。
#77
○國務大臣(吉田茂君) 先程私が申したのは労働大臣と私との間に食違いがない筈だ、何となれば、我々が責任を以て答弁せられる労働大臣の答弁を以て政府の答弁と考えておるのであるから、食違いはない筈である、それから更に裏から説明をすれば、私の言つたことは抽象的で、具体的に言えば労働法のその趣意が即ち健全なる組合を拵えるものになつているというふうに政府は解するものであります。
#78
○中野重治君 そこは一般的論理的にはその通りであるわけです。若し現実にそういう食違いがあつた場合はどうかと言つたところが、現実の具体的な問題については労働省の方式に賛成すると、こう総理大臣は言われたわけです。それでは私は五月七日の衆議院の労働委員会における政府の答弁を実例として出したわけです。その実例において政府はどう言つておるかというと、政府の出した法案に從う組合が健全なる組合だ、こう言つたわけです。そうするとこれはファッショ的ですね。
#79
○國務大臣(吉田茂君) それはどう言われたか知りませんが……。
#80
○中野重治君 どう言われたか分らなければ読み上げます。「そうすると結局この法律に從うような組合を称して政府は自主的民主的、健全なる組合だとこう理解しているというような解釈していいわけですね、政府委員、さように心得ております。」こうあるわけです。であるからこうであれば、私は政府のために言うわけではないけれども、労働省関係の政府委員はさように心得えることを止めて、そうして総理大臣の心得ておるように考えを改める方が私はいいと思う、若しそうでないとすれば、この法案には日本の全組合員が反対しているわけですから、反対しているのは政府法案に反対であるから不健全な労働組合である、こういうふうになつてしまう、そうすると健全であるか、不健全であるか、民主的であるかないかということは政府の出す法案によつて左右される、こういうことになるわけです。実際の問題として……。私はこれは総理大臣の方が正しくて、労働省関係の政府委員の方が誤つておるのではないか。そうして総理大臣の考え方のように政府部内全部同調すれば問題にならんのであります。正しいにしろ正しくないにしろそういう意味です。
#81
○國務大臣(吉田茂君) 同じことを繰返しますが、私は今申しました通り、抽象的に言えば私の議論、具体的に言えば労働大臣の言われた議論、裏表をなすものであつて、その間に食違いはないものと考えます。
#82
○中野重治君 そうすると総理大臣の仰せに從つて抽象的表には健全な労働組合とは自主的な自己を発露し得るごとき労働組合であるということを認める、併し事実においては政府の出そうとしているこういう法案に從うものが健全な労働組合であるというのが実であると、名と実とはこの関係にある、こうとることにしてこの質問を終ります。
#83
○原虎一君 午前中の私の質問に対して総理のお答えがあつたのでありますが、尚二点だけを重要でありますからお伺いしたいと思います。その第一は私の質問に対して政府は健全な労働組合育成のために、社会的欠陷を是正するためにいろいろ施策をやる、労働関係におきましては、いわゆる失業対策、今後起つて來る失業に対する失業対策審議会、それに労働者側の代表者を入れるということを言明されております。ただ私は國会議員は、與党側、與党に近い者のみを以て委員に任命されているのであります。この委員会に対して眞に野党の國会議員も入れて、そうして審議会を作る意思があるか否か、殊にこの審議会は我々非常に重要だと考える、と申しますのは、参議院におきますこの國会の運営委員会におきましては、この委員に國会議員、即ち與党側と見られる國会議員が任命を受けているのです。御承知のように國会議員が公務員たることは、少くとも國会法第三十九條の但書によつて國会の承認を経なければならない、初のうちは承認を経ずに、國会においていろいろなことが問題になつて來ると承認を経るべく申入れられております。これは先程も申しましたように、失業対策法に対して安本長官に質問いたしましたときには、この委員会が非常に重要な決定をするのだ、総理の指名によつて作られている委員会である、これが又運営委員会に來て官房長官の説明は全く諮問的なものであつて、國会法の第三十九條但書の承認を経んでもいいと思うというようなお話があり、その数日後において今度は國会の承認を経るべく委員の氏名を出されているようであります。それは運営委員会におきまして問題になつておりまして、今日尚決まつていないのであります。こういう委員会をそのままやつて行かれるつもりでありますか、私は眞に総理がいろいろな社会的欠陷を是正するために積極的な具体的な方法をとられるというのであれば、先ず以て今日すでに起りつつあります、起つて参ります三十万、四十万、五十万という官公吏を馘首することろの法案を提出されている、この委員会はまだかくのごとき不確実、不安定なものでごたごたしている、これに対して総理は如何なる態度をとるか、具体的に申しますれば、與党側の議員のみを以つて構成することなく、野党の議員を入れる、而もそれは國会法第三十九條の但書による承認を経るには非常に困難な状態にある、こういうわけであります。それからもう一つは提案理由の中に政府は現行法に対し幾多改正の必要はあるが、これを漸を追うて改正をなすと、こう言つておるのであります。これは労働大臣の提案説明の中に明らかに文書になつて出ておりますし、御説明もなさつておる、そこで私は本会議におきまして、幾多の改正の要があるが、漸を追つてするためにこれを出したというのでありますから、幾多あるという幾多あるその具体的な改正案をお示し願いたい、その幾多ある中を今日はこれだけしか出さない、客観状勢によつてこれだけしか出さないと言われるなら了解します、幾多あるものを漸を追うて出すというこの説明によりまして、これは幾多ある改正の政府の意図を明らかに願いたい。この二点をお伺いしたいと思います。
#84
○國務大臣(吉田茂君) お話の趣旨のついては了解いたします。よく御趣意については研究いたします。それから又漸を追うてということは、これは情勢の変化において自然に適当な処置をとると申せば漸を追うてと申上げるより仕方がないと思います。
#85
○原虎一君 これは先程も御質問がありましたのでありまするが、その中に今後改正する意図ありや否やという問題について、それは今後この法を改正して、実施して後でなければ分らないという御意見でございましたが、少くとも提案理由の説明の中には幾多改正の要があるということを言われておるのであります。幾多改正の要があると言われた、どういう点が改正の要があると政府は考えるか、併しこれは客観情勢で今回はこれだけしか出さんというなら納得できます。幾多改正の要ありというから、その幾多の改正の要点を、項目は挙げて参らんから、それで私はお尋ねいたすのであります。それは大綱的にもあつて然るべきだと思います。それがないのなら結構であります。今回は客観情勢により、國内の情勢によりこれだけの改正を必要とする、それならば私はこの改正法はこのまま率直に信んじて審議できまするが、尚改正の要があるというとの前提に立つての改正でありますから、尚改正の要を少くとも聽かなければ、聽くのが私は任務であり、義務であり、責任であると思う、それが政府で分らない筈はないのでありまして、現在において、幾多改正の要がありと言われておる以上は、それは情勢の変化によつて幾らも出て來るというならば了解できますが、現在尚幾多改正の要ありと言えば、持つておられる、それを隠さずに出して貰いたい、そうして私は忌憚なく審議したいと、こういうわけであります。
#86
○國務大臣(吉田茂君) 隠さずに申上げます。率直に申上げますが、情勢の変化と共に考うべきものである、政府としては考えるのが義務とこう思いますが、併し詳細の点については労働大臣からお聽きを願いたいと思います。
#87
○原虎一君 この点は非常にくどいようでありますが、非常に重要であります、と申しますのは、私はこうして総理に質問しておるのは惡意に解釈されては困る、これがあるかないかは、労働大衆側から率直に申しまして、非常に不滿である、労働大衆は、而ももうないならば我慢しようということも言えるのであります。ところが政府はまだ持つておる、これが我慢したら、何を出すか分らないということは労働者の心理を知つておられる方ならば分ると思います。仮に労働者はよりよきものを望んでおるのだから、当然これに不滿を持ちます、それをその上に尚且つまだ出て來るのじやないか、私はその眞情から申上げておるのでありまして、從つて総理はそういう眞情、労働者の眞情というものが分るならば、政府は今これを持つていない、幾多改正の要あると認めて暫定的なもの、或いは漸を追うて出すか、或いはこれだけしか出さないか、こういうのでなくして、幾多改正の要ありというものはない、こうはつきり総理が言明なさることによつて、少くとも我々はこの法を審議するのに率直に將來の不安をなくして、これを中心に審議して行く、そうでないというと、次のいろんな問題を想像いたします。そうすればこの法をできだけ善意に解釈すべき條項に対してすら、次にこういうことも考える、次はこうさせてはならん、こうしなければならん、という問題が必ず出て來る、この点から私は申上げておるのであります。でありますから曖昧にされないでゐないならばない、あるならこの点この点であると、こうおつしやつて頂きますことを、私はただ單に総理を責めるという立場でなくして、本当に労働者の氣持を、或いは國民の氣持を汲んで立法をされるという政府の責任がありますならば、私の質問は決して無理を言つていないと思うのであります。この点をもう一度明らかに願いたいと思います。
#88
○國務大臣(吉田茂君) 私の言を繰返すようでありますが、客観情勢においては考え直す、又幾多変えなければならんことは、喜んで変える、これ以上に申すことはできません、後は労働大臣にお聽きを願います。
#89
○國務大臣(鈴木正文君) その問題につきましては、説明が私自身の説明でありましたから、お答え申上げますが、幾多改正の要があるという意味は、公聽会、その他においてお聽きした幾多の意見において、できることなら実現したい、いい意見もある、例えばこれは労働委員会に仮処分的な力を持せるというふうなことは、労働者諸君の方のお立場を擁護するという上で実現したらというような要望などもありますると、そういつたものを指すのでありまして、原さんのおつしやいますような彈圧的な方向に幾多のものがまだ準備されて残されているというふうなことは絶対ないのでありまして、この最終案が出て來るまでに至ります推移を合せて考えて頂けば、私の申上げたことは了解をえられると思います。現に幾多のそういつたものを伏せているというような意味は毛頭含んでおりません、現実に又そういつたことはございません。
#90
○原虎一君 大体或る程度明確になりました。從つて今度は條章に入つてその点を確めることにいたしまして、私の一般質問は、これを以て終りたいと思います。
#91
○委員長(山田節男君) 別に総理大臣に対する御発言或いは御質問ございませんか。御質問ないものと認めます。それから尚労働組合改正法並びに労調法に対しての憲法的な方面の御質疑にお答えするということで法務廳の高辻法制第三局長が見えております。御紹介申上げます。
#92
○中野重治君 労働大臣に対する一般質問を続けてよろしいですか。
#93
○委員長(山田節男君) よろしうございます。
#94
○中野重治君 労働大臣に、総理大臣が退席されて後を受けて、今の問題について答えて頂きたいと思います。総理大臣の言葉によれば、総理大臣の労働組合の健全性に対する言葉は抽象的、表向きである。五月七日の労働委員会における政府委員の答弁は実質であり、裏側である、これを矛盾と認められるかどうか、念のためにもう一遍読めば総理大臣は健全な労働組合とはどんなものかという問いに対して、自主的な組合であり、組合員がその自己を発露し得る組合だ、こういつているわけです。ところが政府委員は政府の出す法律案に從う組合が健全な組合だと、こう言つておる。つまり政府の出す法案は労働者が全部反対して、これは改惡だといつて反対しておるのだが、これに反対しておるような組合はこれは不健全な非自主的な組合であつて、これを呑む組合が自主的な健全な組合とこう言つておる、そうすると、要するに政府の言うことをさへ聞けば自己が発露せられるということになるが、そう了解していいかどうか。
#95
○國務大臣(鈴木正文君) 質問の方が、これこれ政府の法律に從うものが健全かと、こう聞いて、簡單にそうですとこうお答えしたことと思いますけれども、大体私共の考え方では、この組合法自体が自主的な民主的な組合を作ることに寄與するということを目標として立案されたのでありまして、それ自体の部分につきましてはここはどうというふうないろいろな角度からの見方批評はありましようけれども、根本的には民主的な組合の育成土台ということを根本的の考え方としておることに間違いないのでありまするからして、從つて政府委員はこの組合法に從うという言葉で言つたかどうか知りませんが、合致するような組合は民主的な組合ということができるということを、それだけのことを申しましたし、又法案を作つた当事者自身は非民主的な法案を作るという意思の下に作つた筈はないのでありまして、それだけの確信は十分に自分の作つた法案に対して持つておつて正しいと思いますし、又我々考えましても、これから御審議願うのでありますけれども、この改正法は民主的な組合を育成するということに主眼を置いた法律に間違いはないわけでありますから、総理の言葉と表現は変つておりますか知りませんけれども、丸で変つてしまつておるというようなことはない思います。
#96
○中野重治君 そうするとその改正案が、本当に組合の自主性を擁護しようとするものであるということが明らかになつた場合は、これは労働大臣の答えは受け取ることができるということにして次に入つて行きたいと思います。それでこの改正案にはいろいろ特徴がありますが、その特徴の一つは労働委員会を、地方の場合も中央の場合も、これを政府の手にしつかりと今まで以上に握るということにあるのですが、若しこの改正案がその主要特徴の一つである労働委員会の処理の仕方において、今までよりももつと政府の手に上から握るということにあることが明らかになつた場合には、その点は改正案が改惡案であることを政府も認めるであろうし、從つてそういうものに從う組合が健全な組合だという定義も飜えされるだろうと思います。そのことはどこに現われておるかというと、地方労働委員の問題に関する都道府縣知事の、あれは何と言いますか、職権委嘱といいますか、あれにおいて知事なり知事が、労働委員の氣に食わない者はこれは拒否することができるという形式になつておるあのことと、それからこの間からしばしば問題になつた中央労働委員会を労働省の行政機構としての外局にすると、こういう問題があります。それでそういう点について、知事が労働委員の任命に関して、氣に入らん者はこれを拒否するというふうなことにするのが、本当に労働委員会そのものを民主化することになるか、それともそうでない方がその運用を民主的にすることに役立つか、その辺のことを答えて欲しい、こう思います。
#97
○國務大臣(鈴木正文君) 労働委員会の方の問題はしばしば御質問もあつた点でありますが、これは國家行政組織法との関係上法制的には法律の扱ひにそういう外局の扱いになるという一般方式が生れますのでそこに合わしただけであります。労働委員会の中労委の活動自体は労働関係法の定めるところに基いて独立に活動するのでありましようからして、そこに政府の干渉というようなことは毛頭考えておりませんし、行えません。それから府縣知事の労働委員会の問題につきましては局長から実状と共に説明をして頂きます。
#98
○政府委員(賀來才二郎君) 只今御質問の大体の趣旨は労働委員分制度というものに対しましてこれを中央においては外局扱いにし、或いは又中央地方ともに労当大臣或いは各知事が委員を職権委嘱し罷免することができるとこういうふうになつておるので、この労働委員会というものの民主的な性格というものをそうでないものにして行こう、労働大臣或いは知事が支配するというようなふうな形に持つて行く意図が現われておるではないか、かような点が一つの主要点であつたと思うのであります。外局扱いをいたしました経過につきましては、又趣旨につきましては、只今労働大臣から申上げた通りでありまするが、先ず任命について申上げますと、現行の施行令三十七條の趣旨を今度の改正以後におきましてもこれは継続せられるものと予定をいたしておるのであります。從來改正前の三十七條におきましては、いわゆる職権委嘱といたしまして如何にこの労働組合側の同意なくしても、又推薦があるに拘わらずこれを委嘱できたのであります。併しながら今度の三十七條の改正の趣旨によりますれば、同意がないと、どうしても労働組合の同意が得られないときには、これは止むを得ませんから適当な人を知事が委嘱すると、こういうふうになつておるのでありまして、從來のような職権委嘱というものはこれは行われないものと思つておるのであります。又行われるべきでないと考えております。それから罷免の問題でありまするが、これは從來の規定にも一部ありましたし、明確を欠いておつた点でありまするが、欠格條件がでました場合に、これを罷めて貰う、活動ができないというような場合、或いは非行があつた場合にこれが罷めて貰うということはこれは行政機関の一つでありまするが、労働委員会の委員として当然だと考えるのであります。但しこれを勝手に好きなように首切れるというようなことでありましては、御指摘のような非常に委員会の性格というものを、これを阻害することになりますので、労働委員会の同意を得ましたときにはこれは罷免することができる、かようなことにいたしておるのでありまして、御指摘のようなことはないように注意をいたしておるつもりであります。
#99
○中野重治君 その点については先日これは委員会でありませんでしたが、労政局長に私の質問を述べておいて個人的な答えも聞きしたが、改めてお尋ねしたいのでありますが、行政組織法乃至それを改正するという案の下に外局に入れるというようなことは、法律の関係においてはそれで法律に合せるというようなことになりましよう、併し我々は大事なことは法律を作つて、この法律に事実を合せて行くということよりも、それが大事なことはないということではありませんですよ、併しその基礎に実際に合せて法律を作つて行くということがなければ、これは政府もそのことを呑込んで沐えると私共は思います。現にこの前のあれは次官通牒か何かで出ると、そうすると地方では知事が労働委員会を動かして、その趣旨において例えば山口縣では十三程の組合が、労働委員会によつてこれはお前のところは労働組合としては認められない、認可を取上げるというような扱いを受けて苦しんでおる、こういうことは残念ながら日本にはずつと残つていて今日まであるわけです。これを政府と雖も、認めないというわけには行くまいと思います。それでそういうふうな状態において、縣知事が地方労働委員会を勝手に左右することのないようにという目的のために、消極的な拘束力が法律的に定められておるとしても、なかなかそういうものは政府自身が氣をつけても、その通りには末端に行つて行われない、これはもう知れ渡つた事実ですから、根本的にそうでないように話を持つて行く必要があると思います。外局というものは、何か部内局とどういうふうに違うかということを私が聞いて見ますと、外局というものも部内局というものも根本的には変りない、又何か外局というものに関しても、法的権威が明確でないというようなことも聞きましたが、そういうことはとにかくとして、外局であれ何であれ、なぜ、その運営は独立であるという、その中央労働委員会を外局にして、そして労働大臣の管轄の下に官吏としての上下関係を形の上だけでも持たせなければならんか、それは実際には行政機構内へ組入れて、表向きには独立の運営をやるという欺瞞的な目的の下にことが運ばれて行くということを反撥する積極的材料が政府にあるかということを私が聞きましたに対して、そういうものはまだ出ていないわけなんです。それですからこれは飽くまでも労働委員会は独立に運営するようにする。併しこれこれの事情で外局にしなければならんのだ、外局にするということは本來これはよくないけれども、併し日本の現実では、こういう積極的な理由があるからそれを滿足させるために、敢て外局にする方がいいんだという材料がここに出て來れば、それを我々は討議する用意がある、それが出ない以上は、表には運営を独立にすると言つて、実は外局にして、内部機構に入れてしまうと、こういう腹黒い企みだと言わざるを得ない、これについては去年の暮でしたか、一昨年の暮でしたか、今年の初めでしたか、例の〇・八ケ月の問題で非常に問題が喧しくなつたとき、参議院の予算委員会で民自党の石坂さんが質問されたことがある。それは速記録に明らかですが、簡單に言いますと、あのとき、中央労働委員会が、労働組合側の要求を呑んで、政府が今度は中央労働委員会の裁定を呑んだ、それに対して、労働組合側の連中が、がんがん言うと、中央労働委員会が、これに押されて裁定する、そうするとその裁定を政府が呑む、こういうことになると、労働者が、騒げば騒ぐ程、取れるんだという勢になつて、そうして默つている学校職員とか、官公吏の一部とかいうものは、極めて不当な取扱を受けることになりはしないかという質問が出た際に、西尾官房長官はこういうふうに答えています。そうじやない、政府としては、今度の中央労働委員会の裁定というものは、理窟に合わない点があるということを知つている、それでそれを批判しようと思えば批判できるんだけれども敢てこれを呑み込んだんだ、なぜ呑み込んだかというと中央労働委員会の裁定というものに権威あらしめねばならない。そうして今度のあの裁定は、いろいろ理窟の上ではがたぴししておるけれども、これを政府が呑んで、それ程中央労働委員会の裁定というものが権威があるものだということをはつきり天下に示して置いて、今度はこの権威あらしめられた労働委員会を使つて、そうして次の労働攻勢に対する政府のための防波堤に使おう、こういう腹であれを呑み込んだのだから、石坂さんの御心配は御無用ですということを答えています。それで西尾官房長官の答えを労働大臣に持つて來て私は質問するわけではありません。これは違いますから……、併しながらそういう経緯を経て今日まで至つておる、こういう西尾官房長官の答えに対して、具体的な事実による反駁は今の政府によつてなされていないのですから、ですから外局にするというふうなことの必要な積極的材料が出されないことと、過去からの因縁がこういうふうであることとを結びつけて、私共は独立の運営会云々ということが頻りに言われておるけれども、これを納得することができない、それで何とかしてこれを納得できるような具体的材料を一つ出して欲しい、それでその基礎は行政組織法に合せて云々というようなことでなくして、行政組織法すらも現実の事態に合せて作つて行かなければならんという、この理解の上に立つて答えて欲しいと、こういうわけです。
#100
○政府委員(賀來才二郎君) この前も休憩中でございましたか、開会前でありましたか、中野さんから非常に只今のような御質問なり御意見の趣旨を詳細承つたのでありまするが、只今の御質問は、現在の労働委員会を、或いは今度の改正法によります労働委員会というものを見ると、どうもその独立性というものが侵される虞れがあるように考える、そこで然らざるような組織にすることについての考え方、即ち若しそういう組織が必要であるというならば、それを現在の諸法規に当嵌めるような方向で考えられないか、或いはそれらの二つの意向についての利害得失と申しますか、そういうものをただ行政組織法があるから外局にしたという逃込みをせずに、答えて貰いたいという御質問だと覚えるのであります。中野さんのような御意見と申しますか、労働委員会の独立性を侵されないように運営をさるべきであり、保持すべきであるという意見は、これはもう輿論と申しますか、一般的に公認された議論でありまして、我々行政の任にありますものといたしましても、当然かくあるべきだと考えるのであります。ただ今の形から見ますると、どうも危險性がある、そこでこれを然らざるような形にやつたらどうかという意見が別にあるわけであります。この意見を具体的に持つて行く、殊に現在の新憲法下におきまする一つの組織といたしまして、これを持つて行くという場合に、或いはこれと関連して考えます場合に、さような制度は具体的に申しますならば、いわゆる裁判所制度、これは立法機関にも行政機関にも左右されないところの司法機関である。こういふうな形になるではないか、從つて少くとも裁判所自身がそれに当ることはこれは困難であろう、これは労資、中立、皆かような方面におきましても、結局裁判所がさようなことを扱うということになりますると、やはり一つの一定の資格要件というものがその裁判官には必要になつて來まして、これは現在のように、労資、中立という、いわゆる民主的な構成にすることができない、又然らば、さような構成を準用した特別裁判機関というものはどういうことになりますると、これも憲法に基きまして、これは不可能になつて参るわけであります。更にこれを行政的に考えて見ましても、現在にもそうでありまするが、苟も労働問題が起りましてから將来に亙つてもそうと考えまするが、この労働問題というものは非常に複雜多岐な要素を持つておるのであります。今朝程來原委員の御質問にもありましたように、現在の労働問題を片付けるためには、相当廣い面からこの複雜な要素を持つておるものを片附けて参らなければならんのであります。そういうことになりますると、審判をする際には一つの裁判所のような独立不覇のものがいいように見えましても、その組織が民主的にも参りませんし、特別にさようなものを拵えるわけにも参りませんし、又とかく行政と離れて参りますると、行政面とは非常に密接な関係のありまする労働問題の解決というものは、これは至難になつて参りますので、どうしてもこれは司法面というよりも行政面に近い制度で以て、行政面を十分取入れた面で解決をしなければ適当な解決ができない、即ち内閣の一体性というふうな建前から労働行政と一般行政というものは不即不離のみならず、一貫した流れにおいて解決しなければ、労働問題の解決は至難である、かような意味からいたしまして、いわゆる独立した、何らの権力にも侵されない立場で労働委員会が処置すべきことは必要でありますけれども、これを現在の行政機構外に置いて、そうしますと立法機関になるわけに行きませんから、司法機関の司法面にこれを入れて行かなければならない、これは憲法の定めるところであります。そういうことは不適当である、從いましてこれを行政面に入れまして、そして行政機関の特別なる行政機関といたしましてこれを処置するということが必要に……、その方が解決に適当である。
 かように考えて我々といたしましては、やはりさような制度を採るのがいいということに意見を決めておるのであります。そういうことになりますと、中労委の職務といものが、労政、この行政事務を行うということになるのでありやして、從つて一つの國家行政機関と解釈しなければならんのであります。行政権利というものは憲法六十五條の規定によりまして内閣に属しておりまするし、六十六條の規定によりまして、内閣は総理及びその他の國務大臣によつて組織され、行政権の行使について連帶して國会に対し責任を負うことになつておるのであります。内閣法第三條におきまして、各大臣は法律の定めるところによりまして、主任の大臣として、その行政事務を分担、管理するということになつておりまして、行政事務はいずれかの大臣の責任の下に置かれるということになるのであります。労働委員会の職務は労働行政の一部でありまして、特殊なる労働行政をやつておるという建前になるのであります。それ以外に亙るものでもありませんから、当然労働大臣がその行政事務につきましては、分担、管理するということが憲法の精神から見ましても、又内閣法の建前から見ましても、必要になつて來るわけであります。以上の理由によりまして、中労委は労働大臣の所轄の下に置き、労働省の一つの外局的な機関ということにいたした次第であります。併しながら先程來申しますように、労働委員会の行う調整的機能につきましても、或いは準司法的機能につきましても、その性格から見まして一般の労働行政と同一に行うことは、これは妥当ではないのであります。今日の実情からいたしますならば、労働大臣から一定の独立性を保ち、その構成につきましても民主的に選ばれた者が構成する合議機関であるということにいたしておるのであります。右の理由によりまして、中労委は労働大臣の所轄ではありまするけれども、その職務遂行につきましては独立性を保つ、合議体の外局ということにいたした次第であります。外局は一般的に独立性が強いのでありますが、その機関が合議体であるということは、その権限の行使につきましては当然の法理といたしまして独立して行うものでありまして、上級機関の指揮監督は受けないものであります。而も中労委につきましては、その委員の罷免について一般公務員よりも更に強い制限を課しておりまして、労働大臣が署免をなします場合には限定された…、これは法案の第十九條第十項で限定をいたしておりましてその独立性を担保いたしておる、かような実情になつておるのであります。以上によりまして御了解を願いたいと思います。
#101
○中野重治君 それではつまりどうなりますか、それ程詳しい説明を聽いた挙句、即ちこれは露わには民主的独立の運営を掲げて、実際には政府の行政機構内に中央労働委員会というものが入つたということになるということを政府自身認めたということになりませんか、外局というものは元來一般的に独立的なものであるとか、或いは労働委員会は合議制になるとか何とか言つていますけれども、明らかに政府に、行政機構内にこういうものができたということに具体的にはなるのですから、ですから私の言うように、今のあなたの説明よく分つたのですけれども、その説明と聽けば聽く程、それ程手の込んだやり方をして、運営は独立したやり方でやるのだと賣込んでおいて、実際は政府及び地方長官が動かすということになるということの反駁にはならん。なぜかと言うと、労働委員会のみならず、行政面と司法面という二つに分けて、司法面に入れるわけには行かないから行政面に入れる、或いは行政面に近ずけるということは或る程度分るのですが、併しそのことは行政組織法の中に入れなければならん、こういう、結果を理由付けるものでは必ずしもないということはあなたも認めるだろうと思う、今農地委員会、教育委員会、労働委員会というものがあるが、教育委員会というものを考えてみますと、教育委員会というものは、縣なら縣の行政機構の中に入つていない、外局ですらもない、独立のものです、形の上では。併し実際には、我々年中歩いて見ますと日本全國どの府縣においても一つも漏れなく教育委員会というものは完全に教育廳の下請機関になつておる、農地委員会は農民の力がなかなか強いからこれは違いますけれども、そこで労働委員会というものを教育委員会のようにしてはならない、これはもう言うまでもないと思います。ところがその教育委員会は外局でもなく、内局でもないに拘わらずそうなつておる、こういう事情が日本にはあるわけですね、そういう日本の実情においてこれは外局である、或いは合議制である、できるだけ勝手なことができないようにどこそこの承認を得なければあれができないようにしてあるということは分りますけれども、それはつまり惡しき運営を防禦するための消極的條件でしよう、惡しき運営を防禦するための消極的條件をそれ程課さなければならんということは、即ち客観的には、表には独立の民主的運営、実は政府がこれを強力に統合して行く、それだから形の上までも行政組織法云々というものに合して外局にして行く、そういうふうに行かなければならないのではないか、そうでないという保証はどこにあるかということです。
#102
○政府委員(賀來才二郎君) この外局といたしました結果は一應御説明を申上げました。ただやはり中野委員の縣念されておられますことは、第一に、これをこういうふうに持つて行つたその意図の中にこの独立性を阻害しようという意図があつてやつたのではないか、この点につきましては我々といたしまして、さような意図は持つていない、先程説明も申上げましたような意図からいたしまして、かような制度にいたしましたということを申上げたのであります。第二は仮に外局ということをやつても、そういう意図がその制度的にそこに持つていつたのではなくて、事実運営においてさような結果になり得る虞れが多分にあるんではないかという御懸念だと考えるのであります。今御指摘のように、如何に制度はうまくやりましても、教育委員会はどうもその独立性を侵害されておる、農地委員会はそうでない面がある、こういうお話でありました。我々といたしましては、この労働委員会というものが、若しもさような権力に対しまして、独立性を失うというふうなことがありといたしますならば、これは第一はさようなことを考える人がおつてやるかも知れませんが、そのなります原因は、やはり労働委員会自体が非常に民主的に選ばれたものといたしまして、非常に独自性をはつきり主張するしつかりした活動をして貰わなければならないこと。第二はこれらの活動に対しまして、正常なる世論の支持、或いは協力、或いは批判というものがなくてはできないのではないかと考えておるのであります。山口縣の例を御指摘になりましたが、これは知事といたしましては、あの現行法に基きまして、資格についての審査を労働委員会に要求をいたしました。労働委員会は、自分の立場からいたしまして、その資格については、これは該当しないという判定をいたしたのでありまして、それに対しまして、知事は却つて逆にこの通告を出すことを知事の方が澁りまして、その結果知事は非常に苦しい立場になつてたのでありますが、結局資格を一應否認いたしました翌日、これはその條件を備えた者については、資格否認の取消をいたしておるのであります。あの時には、知事自身これをやつたというふうなことはないように聞いておるのであります。結局要しまするのに、我々といたしましては、この独立性をその司法機能及び調整的機能はつきましての、この独立性について、若し危くなるというふうなことがありますならば、それは労働委員会自体の活動及び公正なる世論の支持、協力或いは批判によりまして、それが保たれることを期待せねばならんと思つておるのであります。
#103
○中野重治君 大分この点に関する御答えを聽きましたから、この点に関してはただ一つだけお聽きして次の質問に移りたいと思いますが、労働委員会等々の問題は、極東委員会における労働関係十六原則の中の第四の項目に基いてできたものだと思います。一口に言うと、我々は労働委員会、労働委員と言われるが、その運営が役人的にならないことを望むわけです。行政機構の中に入れて一層役人的に形の上でもすることにおいて、どうして役人的でないような運営の方へ一歩進んだということになるでしようか。
#104
○政府委員(賀來才二郎君) 労働委員会の運営は極めて民主的でなければならんという御意見に対して我々もその考え方であります。さて労働委員自身がこれは役人的になるかどうかは、これは労働委員の心掛けでありましようが、恐らく労働委員自身はさようなことはないと思うのであります。ただ今度の諸制度の施行の結果、労働委員会事務局の職員が、やはり公務員という明確なるものになつて参りました場合、これが役人的になるということについての御懸念であります。一應御尤もな御懸念と考えるのでありますが、労働委員会自体がしつかりした権威を持つて、そうしてその事務局職員を十分指導し、或いはその活動を十分にして貰いますならば、これはそれが役人的なものになるということはないと私は考えております。これはさようなことを申上げては恐縮でありますが、実は私が中労委の幹事をやりました時、及びやつておりました間は、私と当時の幹事三人だけが役人であります。その他は嘱託という形をとつております。で私自身はその役人としていわゆる厚生事務官といたしまして、あの勤務しておりました間、いろいろ批判もあつたかも存じませんが、さような役人的な行動はしないようにということで十分まあ注意して來たつもりであります。從いまして制度の上でさようになるということは、我々は考えたくないのでありまして、職員自身もその使命を十分自覚し、又労働委員会もその立場に立つて、そうして極めて中正公平なる立場で活動するように指導することを期待いたします。
#105
○中野重治君 この労働委員会の事務局の人々が役人的になりはしまいかという懸念は、私は抱いてはおるけれども、それは問題にしたのではありません。労働委員各々が役人的になるだろうということを言うたのではなくて、労働委員会が役所の機構の中に一歩進むことによつて、労働委員会の活動が一歩民主的、独立的になるということは、私には理解できないことを言つたわけであります。それについてはもう私お答えを求めませんから、次の問題をお尋ねしましよう。
 それはこの間本会議で早川委員の問いに対する労働大臣のお答え、それから私の問いに対するお答えは今済んだようなものであります。早川議員の問いに対するお答えについてですが、その次の委員会でもう一度労働大臣から説明を願いました。そのことについてなんですが、時間が経ちましたから簡單に読みますと、こういうことです。最初早川議員からの質問に対して、労働大臣はこういうふうに答えられております。「併しながら少なくとも正当でない労働組合の行爲として明らかであるものは、檢務局長通牒によるごとく、暴力犯罪その他これに準ずる行爲を始めとして暴力的又は秩序を紊すような行爲、換言すれば平和的に且つ秩序を保つて行われるのでない行爲はすべて不当なものであつて、具体的には生産管理の不当性というふうなことはすでに申上げた通りであります。又政治的目的貫徹のために行うところのストライキ及び政治スト、同情スト、ゼネストのごときもいずれも労働者がその経済的利益を守るために認められた権利を濫用するものであつて、正当な爭議行爲とは解することはできないという解釈を持つておるのであります。」とあります。その中生産管理に関してはもう済みましたからこれは問題にいたしません。後の方の問題です。そのことを再びお尋ねしたところが、今度はこういうふうに答えられております。「政治的或いはゼネスト、そういうものにつきましては、その時々の情勢により一つの何といいますか、範囲、限度というものがあつて、現実に應じて考えて行くという意味であつたのでありまして、それはどの程度という問題につきましては、実は労政の局に当つている人達とも一度細かく檢討いたしまして、何らかの形で適当な時に正式にお答え申上げたいと思います。」それでこのことについて何ですか、私共は政治的ストライキ、或いは同情ストライキ、ゼネラル・ストライキ、こういうものはすべて労働者がその固有の権利によつてなすことのできるものであつて、これを不当と認めることは原則的にできない、こう考えます。ただいろいろな事情においてさまざまの條件を考えなければならんということはこれは認められるところである、そうでなければ、例えば今度の労働組合法の改正というようなものに反対する大きなストライキは禁止されるということになれば、もう労働組合法の改惡でも改正でも何でも勝手にできることになりますから、こういうことは不合理であるから政治的自由を持つ、但しそれが禁止される場合はどういう場合かと言えばそれは占領政策に違反する、この場合は禁止される。これはこの十六原則に明らかなようにストライキその他の作業停止は占領軍当局が占領の目的にも必要な直接不利益をもたらすと考えた場合にのみ禁止される、ですから或るストライキが、或る総罷業が、或る政治的ストライキが不当なものとして禁止されるかされないかということは占領軍当局の判断によるものであつて、二・一ストというようなものはああいう経過を辿つたわけです。併し労働大臣のお答えによると、これは占領軍当局が認めるか認めないかで決まるのではなくて、労働大臣が認めるか認めないかによつて、そのストライキが不当な行爲であるか、正当な行爲であるかが分れる、更に次の細かい説明によればそれは労政局長とは書いてないけれども、その労政局長がこれを決めるのだというふうにとられかねないような答えられ方をしております。私はそういうふうなことを労働大臣が考えておると思いませんけれども、この際その点をはつきりさして貰えないか、原則的に日本の労働者、労働組合は一般的に十六原則も示しており通りに、又その外文書その他に関して、こういうことはいけない、こういう書簡に出ておるものは別ですよ、すでに明らかに出ておるもの以外には何らの拘束を日本政府及び労働大臣から受けない、こういうふうにここで言明されるつもりはあるかないか。
#106
○國務大臣(鈴木正文君) この問題につきましては、先ず第一にその発端の本会議における答弁、これは時間も制約されましたしいたしまして、不十分の点があつたと思います。この前別の労働委員会かでどなたかにお答えした通り、政治的ゼネスト、それから同情ストと言いましてもいろいろな形が考えられるわけであります。純粹の何ら組合の本來の使命であるところの経済的問題、労働者諸君の地位の維持向上というふうな問題から一應離れて絶対的な意味で、例えば政府自体の政策の批判というような問題は終局的にはそれぞれの階級の立場という問題と全然離れてはおらないでありましようけれども、本來労働組合の任務が経済的な面にあるのでありして、それからまるで離れたところの純粹の政治的のストというふうなものに対しましては、中野さんの御主張もありますけれども、原則として不当なものが多い、それからゼネスト、これもいろいろあるわけであります。私より專門家の中野さんの方がよく知つておられるでしようけれども、すべて政治的意図を含めて全産業を麻痺せしめるようなゼネスト、又一産業について特殊な事情、これも皆ゼネストと呼ばれる、一概にこれを引つくるめての結論はつけにくいのでありますが、大体ゼネストというようなものがそういつた形において本來の労働組合自体の運動の線を著しく逸脱してしまう傾向がありまして、そういつたものは正当ではない、それから同情ストも同樣にその相手方になるところの経営者側の要求に対して何らこれに應じ得る関係も力もないような意味のストライキを受けるということは、その経営者にとりましては全く無関係、言わば無関係という場合が出て來るのでありまして、そういつたことを指して不当なものであるとこういつた意味であります。ただ中野さんの主張されるように、そういつたものは原則として全部合法的であつて、特殊なものだけが非合法になつて來るという解釈は私達と一致いたしませんけれども、私の申しましたのはそう廣い意味で一刀両断に全部不当だという意味ではなかつたのでありまして、当時言葉が足らなかつたことを認めて、私の考えをお傳え申上げます。尚どういう場合のどういつたものだというふうなものにつきましての最終の決定は、現在の日本の機構の下におきましては労働大臣とか、或いは行政官廳にあるのではなくして裁判所の方にある。個々の具体的事実に基いて発展して行くということになるのでありまして、労働大臣自体が或いは行政面を通じてこの当不当の最終決定を独断的に勝手にやつて行くような筋合にならない筈であります。尚詳細につきましてはこの実際の衝に当つております政府委員の方からお答え申上げます。
#107
○政府委員(賀來才二郎君) 補足的に私から申上げたいと存じます。
 労働大臣がこの詳細につきましては事務当局でというお話は、労政局長が当、不当、違法を決定するという意味ではないのであります。ただ併し我々といたしましては労働行政及び労働組合法その他の運営に当りまする立場といたしまして、労働大臣は行政上の解釈権限を持つておりまするし、責任も持つておるのであります。さような意味におきまして我々は労働大臣を補佐いたしまして政治ストというものは如何に取扱わるべきかということを決定をいたしておるのであります。この点が一つ。
 それから次に十六原則のスト禁止というあの意味のお話がありましたが、純粹のこの政治ストということは何ら法律で禁止にはなつて、いないのであります。併しこれは不当なものであるという考え方であります。即ち使用者に対しまして経済的な要求からそこに爭議が起つてそうしてやるのではなくして、両者に関係のない全く政府の問題でありますことに関連してストライキ権、一つの権利を行使するということはこれは権利の濫用にもなりまするし、我々といたしましてはこれは不当なものである、從いまして現行の労働組合法から言いますならば、我々の解釈から言えば、さような不当なる爭議行爲は、正当ならざる行爲でありますから、例えて言いますならば使用者側から損害賠償の請求を受けましてもこれは若しそういう損害賠償の請求を受ける原因を作つたやうなときに原因がありますならばこれは現行法十條の権限はないものとかように考える次第であります。
 尚これらの実際にこれが不当であつて、その結果どういうことになるかということにつきましては、これは法務廳関係になりますので、檢務局長からもお答えがあると思います。尚同情ストにつきましてはこれは実情において非常にいろいろ情勢がありまして、一概に不当なものと言うことは言いかねると思いますが全面的な関係のないゼネスト的なもの、或いはゼネストということになりますると、これは公共の福祉乃至はあの点、或いは権利の濫用という意味から不当な面が非常に多く出て参ります。ゼネストは大体不当だと考えざるを得ない。それから同情ストにつきましては、これはいろいろの事情がありますので、一概には言えないけれども、これはやはり不当なものになりわせんか、かように考えておる次第であります。
#108
○中野重治君 労働省関係の人たちが、今労政局長にしても、労働大臣にしても、労働行政の当面の責任者としていろいろな問題を考えなければならんことは、これは当然でありますからよく分ります。併しその人々が或る爭議が当然であるか、不当であるかということを考える際には、すでにその人人はこの十六原則の理解の上に立つていなければならん、これは司法関係でも同樣だろうと思いますが、その点でも異論がないのですね。
#109
○政府委員(賀來才二郎君) ちよつと分らなかつたのですが……。
#110
○中野重治君 もう一遍言い直します。労働省の責任者たちが、労働行政の責任者として、いろいろの問題を考えなければならんことは、これは当然ですが、労働行政上の責任者として、或るストライキが当であるか、不当であるかを考えないときでも、考えて行くための土台は十六原則の上になければならん、こうなりましようね。
#111
○政府委員(賀來才二郎君) 今度の法令の立案に当りましても、又平素におきましても、我々は常に憲法の規定及び極東十六原則の趣旨を守りつつ行政に当つております。
#112
○中野重治君 そうであるならば、十六原則の五に書かれておること、及びその他ここに示されたものがある場合を除いて、政治スト、同情スト等が一般には不当だという結論は出て來ないのではないか、一般にはそれは当であるけれども、個々の場合当であるか、不当であるかは個別的な諸條件を参考して決めなければならん、こう考えるのが穏当であろうと考えるのですが、どうですか。
#113
○政府委員(賀來才二郎君) 私が申上げたのは、このいわゆる政治ストというものを禁止するということになりますと、それはそれ自体を刑罰その他で禁止するということになるのであります。併し我々の先程申しましたことは、政治スト等は、それ自体が法の保護を受け得ないということになるのでありまして、禁止されておる、法律によつて禁止されておるということは、ないということを申上げたのであります。
#114
○中野重治君 そうすれば政治ストは、法律によつて禁止されていないが、政治ストをやると法によつて処罰されるというのですか。
#115
○政府委員(賀來才二郎君) 労働組合法による保護は受けられません、その他これに関連して、不当なる行爲が出て参りますと、他の法律関係もあるかも知れませんが、これらの点につきまして、檢務局長の方から一つお答えさして頂きたいと思います。
#116
○中野重治君 檢務局長の方から又お答えを願うとしまして、ことに政治ストを行うことは、法によつて禁止されてはいない、具体的な例を言えば、今度こういう労働組合法が新らしくなる、これには日本の労働者が反対だ、政治ストを起すとすると、労働組合法改惡反対、政府は改正だというけれども改正でもいい、改正反対の日本の労働組合が全部連合して政治ストを起す、起そうと現にしておるのでありますが、そうすると、これを起すことは、法によつては禁止してはいない、併しながら起すことによつて、その労働組合は法の保護からは、アウトローする、こういうわけですね。
#117
○政府委員(賀來才二郎君) この政治ストをやりました場合には、我々は不当なる爭議行爲であると認定をいたしておるのであります。從いまして、労働組合法によつて正当なる爭議行爲としての保護は、現行法では保護はあり得ませんということを申上げたわけであります。
#118
○中野重治君 分りました。それではこの労働組合法改正反対の政治ストが起きた場合は、ストは不当なるストであるという認定は、何に基いてそういう結論は出て來るのですか。
#119
○政府委員(賀來才二郎君) 第一に、この爭議という、我々は組合法及び労調法の規定しております意味の爭議行爲という意味は、これは労資の間の経済的な問題につきまして、意見が一致いてない、でそれを貫徹いたしますために、團体行動を起して、そうして法律によつて認められたところの團体行動に移るということであります。さような意味からいたしますと、政治ストというのは何ら使用者とは関係のない問題で、そうして使用者、或いはそれに関連いたしまする公共の福祉に対して、影響を與えるものであります。從いたしてこれらは正当なるものとは、言えないと考えておるのであります。
#120
○中野重治君 今のお答えは、私には理解することができません。何となればそのお答えは、それ自身十六原則にマツチしていない、もう一つは事実の問題として、今度の労働組合法の改正の問題に関して、公聽会を開いて労働組合側、使用者側、それから学者側、改ういう人々が出て意見を述べております。使用者側は皆改正に賛成しており、労働者側は皆反対しておる、そうすればその法律案というものは決して使用者と労働者との対立関係というか、交渉関係というようなものについて、利害の触れないものであるというふうには決して言うことはできません、現実の問題として、そういう実際問題から言つても、十六原則の正しい理解から言つても、今のようなお答えでは私は満足できないし、これは論理上満足できないのが普通人だろうと思いますが、その点はそのままにして、次の点に移りたいと思います。檢務局長のお話の前に私は労政局長でも、労働大臣でもどちらでもよろしいのですが、今のような考えがやはり公聽会で述べられております。資本家の代表によつて……。今年の二月二十日の労働法規改正案公聽会速記録、第一日、これは東京において行われたのですが、これを見ますと、有名な東宝の渡邊銕藏さんがこういうことを言つております。これは大分話が長くて簡單簡單と途中で言われておりますが、今の問題に関連しておる点だけを読みますと、「これは重大問題です。このときの弁護士はその規定を引用して、爭議行爲を行う場合には、放火しても殺人をしてもかまわないなどいうことを言つているのであります。」これは後で暴言として問題になつておりますが、「そんな見当違いのことを法律家がいうのもこの規定からで、この規定にはなるほど第一條の目的を達するために行う爭議行爲は何でも正当な行爲ということになつてしまうのであります。この規定はいまの事実からも労働爭議を苛烈にし、日本の現在の情勢を見ると、この規定を利用して革命の道具にする、ある政党が利用して労働爭議をやる、どんなことでもやる、組合の幹部を占めて革命にもつて行く、ゼネストにもつて行く危險があります。
 私は先程、前田さんから言はれました処、労働者の立場を保護されるのは結構です。しかし使用者の経営の困難な点も考えられ、地方では使用者保護法を作つてくるといつている位ですから私は労働運動から見てイギリスの大戰後の國家権利保護法、二十七年の労働爭議法、あれにあります爭議に関する取締り規定、例えばゼネスト、同情罷業を取締る必要がある、同情参加を禁止する必要があると思います。東宝の爭議のときも全國の産別に入つて鉄道、電氣なども組合が、お前の方の電氣を消すとか、お前の方は運ばないと言つてくるので、我々の方でもこれに対抗するには全國から人を集めなければならぬのであり、どうか、そういうことにならないように労働爭議の行爲を明確にして、お互ひに誤のないようにしていただきたい。」こういう言葉があります。これは渡邊さんの言葉が明確でない点もありますけれども、併し渡邊銕藏氏が何でも彼でも一般的に総罷業、同情罷業、同情参加等は禁止する必要があると言つておる点では政府の意見と一致しておるように思うのでが、政府としては東宝社長の渡邊銕藏氏なんかからは独立に今のような考えに到達されておるわけですか。
#121
○國務大臣(鈴木正文君) お答え申上げます。渡邊氏のその際における発言は、これは不勉強だつたのかも知れませんが、私としては今初めて中野さんから聞かせて頂いたのが初めてというのが事実でございます。それから又直接的にも、間接的にも渡邊さんに限らずそういつた人たちとの折衝、或いはそうした人たちの考えを法の中にこの際実現するというような考えの下にこの法のどの一章も立案された事実はないのでございまして、今の点も勿論でありまするし、その他のすべての点につきましても批判は各角度から、皆さんの方から見ての批判もおありでしようから、又経営者側の批判もありましようけれども、政府といたしましては、これは諸般の事情、現実としばしば申上げました三年間の経驗と、そういつたものから妥当というところで以て立案したのでありまして、今お尋ねにありましたような意味のことは毛頭ありません。これは責任を以て申上げます。
#122
○一松政二君 議事進行について……。もうあと八分もすれば五時ですが、大分長いのですが、中野さんの御質問まだ余程長く掛かりますか、もう十分くらいで整理できないですか。
#123
○中野重治君 それは今日の分ですか。
#124
○一松政二君 一般質問です。
#125
○中野重治君 一般質問の中の今日の分ですか。
#126
○一松政二君 大体一般質問は今日で打切りたいというのが皆さんの意向のようであるのです。
#127
○中野重治君 そうですか。
#128
○一松政二君 あとで何か逐條……。
#129
○中野重治君 そういう御意見があれば、あとその八分なら八分で私は打切つてもいいです。
#130
○一松政二君 あと逐條審議のときに又いずれ何か出て來るでしようから、それはそのときに又お讓りになつてもいいと思うのですが、大分今日は朝からやつておるし、もう五時にもなるから、まあできるならば五時頃までに打切つて頂きたいという氣がするわけです。
#131
○中野重治君 その点に関しては私は異議はありません。(「賛成」と呼ぶ者あり)それではそうしますと、今大臣の答弁によつて例えばその公聽会における渡邊銕藏氏の意見等々と、政府のこの改正案とは何ら連絡なきものである、政府は独立にこういう結論に達しているのであるという説明がありまして、それはよく分りました。私もそうであろうと思います。そうしますとこういうことになりますか、戰後三年乃至四年間の日本の労働運動の発展経過から見て、渡邊銕藏氏が到達した結論と、民自党の政府が到達した結論とは、政治スト、同情スト、ゼネストに対する不当取扱いという点では容観的に一致するという点を政府自身でお認めになる、こういうことになりますか。
#132
○國務大臣(鈴木正文君) いろいろな問題についていろいろな角度といろいろな意見がございまして、たまたま政治ストその他につきまして似たような結論が出たことはあつても、廣い意味において民自党なり、或いは現政府なり、現在の労働大臣としての私自身が労働組合法の問題について渡邊銕藏さんと同じ角度で同じ結論に到達したというようなことは恐らくないだろうし、そう考えておりません。たまたま挙げられた種類のストに対するところの見解において、似たものがある、併しこれを拜見しますと、可なりプリミテイヴな形の結論を付けておりまするが、その委員会でも今も申上げましたように、私共の考え方は一つ一つ現実に即した幅を持つた考え方であることも御了解を得たと思いまするので、必ずしもこの点につきましても渡邊銕藏さんと私共の解釈がピタツと一致しているというようなことにもなつておらないと思います。もつと即往に立還りまして、決して渡邊銕藏さんなり、或いはどの一つといたしましても、或いは共産党に対しても、社会党に対しても民自党に対しても同樣でありますが、是非その政策と一致しなければならないという、そういつた立場で立案したのではないのでありまして、諸般の事情に立つて、そうして現在の與えられた條件の中ではこれが妥当だというところの結論をつけて行つたというのが法案を決定する事実上の推移であつたと御了解願いたいと思います。
#133
○中野重治君 私の質問はこれでよろしい。
#134
○委員長(山田節男君) 外に一般質問としての御質問はございませんですか。
#135
○原虎一君 あとは逐條審議に入つても労働大臣は質問に應ずるという御意思でありますから、大体この程度で今日は一般質問を打切ることに賛成いたします。
#136
○委員長(山田節男君) ではお諮りいたしますが、これを以ちまして一般質問は終了したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#137
○委員長(山田節男君) 御異議ないと認めます。
#138
○原虎一君 ちよつと又誤解があつてあとで問題になるといけませんから、あとでも機会があれば應ずるという政府の前提の下に……。
#139
○國務大臣(鈴木正文君) 私からお答え申上げます。もう衆議院の方は大体済んでおりますから、ずつと出て参りますから、その都度必要なときに一般質問されて結構でございます。
#140
○委員長(山田節男君) ではさように取計います。ではこれを以ちまして本日の労働委員会は、散会いたします。
   午後四時五十七分散会
 出席者は左の通り
   委員長     山田 節男君
   理事
           一松 政二君
           平野善治郎君
           早川 愼一君
   委員
           原  虎一君
           村尾 重雄君
           岡田喜久治君
           門屋 盛一君
           竹下 豐次君
           田村 文吉君
           中野 重治君
  國務大臣
   内閣総理大臣  吉田  茂君
   労 働 大 臣 鈴木 正文君
  政府委員
   労働政務次官  宿谷 榮一君
   労働事務官
   (労政局長)  賀來才二郎君
   労働事務官
   (労政局労働法
   規課長)    松崎  芳君
   法務廳事務官
   (法制第三局
   長)      高辻 正己君
ソース: 国立国会図書館
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