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1949/05/18 第5回国会 参議院 参議院会議録情報 第005回国会 労働委員会 第16号
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1949/05/18 第5回国会 参議院

参議院会議録情報 第005回国会 労働委員会 第16号

#1
第005回国会 労働委員会 第16号
昭和二十四年五月十八日(水曜日)
   午後三時四十三分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○労働組合法案(内閣提出、衆議院送
 付)
○労働関係調整法の一部を改正する法
 律案(内閣提出、衆議院送付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(山田節男君) これより委員会を開きます。前日に引続きまして、質議を続行いたします。質議は関係各省ごとにまとめて各逐條に審議した方がよろしいと存じますが、さようにして御異議ございませんでしようか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(山田節男君) 一章なら一章としまして逐條御審議を願つて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(山田節男君) それでは念のため一條ずつ專門員をして朗読させまして……。
   〔「朗読省略」と呼ぶ者あり〕
#5
○委員長(山田節男君) それでは第一條よりお願いいたします。
#6
○平野善治郎君 第一條の目的でありますが、政府から一般質問においていろいろこの目的につきまして、民主的な、或いは自主的な組合のできるためにという言葉がありましたが、第一條を見ますというと、むしろ現行の條文よりも労働権の保障、或いはいろいろな立場の保護については、非常に弱められておる感じがすることが一つでありますが、これに対する政府の御意見を一つ伺いたいのであります。それから第二項の方に新たに但書としてつけましたいわゆる暴力行使の問題、この問題につきまして政府から今まで一般質問でお伺いしておりますというと、こういうことは官憲においても取締らないようにするし、又、一般の労働組合においても暴力の行使はそう考えておらないというようなことに私は聽いておるのでありますが、そういう状態であるならば、その條項を入れる必要がないじやないかとこう思います。そこでこの條項を特に差し挾んだ目的はどういうところから來ておるのか、例えてみれば、この暴力の行使ということがだんだん今までよりもふえる傾向にあると政府は考えておるのか、若し考えておるならば、その具体的な、暴力の行使が労働組合運動の中にだんだん殖えてきておるというような数字も一つお示しを願いたいとこう思うのであります。
#7
○政府委員(賀來才二郎君) お答えいたします。第一條は現行法の第一條の趣旨を具体化いたしたものでありまして、現行法の趣旨とは變らないのであります。ただ現行法は新憲法以前に公布されましたので、労働者の團結権、團体交渉権及び団体行動権を特に労働組合法におきまして、規定をする必要があつて、これを規定いたしたのでありますが、この言葉と殆んど同じような言葉を以ちまして、労働組合法によりまするよりも、憲法で廣く強く保障をいたしておりますので、重複した文句を避けまして、これを更に具体化いたしました場合に、どうであるかということを、必要の都度ここに定めたものであります。從いまして、この條は、憲法二十八條の基盤に本法律が立つておるということを示しておることは勿論でございます。憲法二十八條というものをいわば土俵に例えてみますならば、その土俵の上で必要と認められまする事柄を立法化しようというものでありまして、これを平面的な問題としてみました場合には、憲法二十八條のカバーしまする事柄のうち、基本的なものを取上げたという点であります。尚それ以上にこの上に組立てましたものにおきましては、本法全体におきまして、それよりもこれを具体化した点もあるわけでありまして、必ずしもこれら書きましたことが、憲法の規定しておりまする土俵と、幾何学的にぴつたり一致するものではありませんけれども、特に法律で具体化する必要のないものは、これは憲法の條章によつて、保障されておるわけであります。決してこれがために弱めたということはないのであります。重ねて申上げますと、現行法で書いてありますことは、新憲法にこれが書いてありまするので、それに基いてこの趣旨を具体化いたしまして、ここに書いてあるこういうわけでございます。御質問の第二点につきましては、檢務局長からお答え申上げます。
#8
○政府委員(高橋一郎君) 組合法の第一條第二項に新たに暴力の行使は正当と認めない趣旨の改正を入れましたのでありますが、これは從來三年間の経驗におきまして、実際の爭議行爲或いはそれを取巻くところのいろいろな学説、或いは論議という中に、恰も暴力を肯定するかのごとき傾向もあつたので、かねがねこの点は暴力の行使は、如何なる場合でも正当とは解し得られないのだということを明らかにする必要があるのではないかというふうに考えておつたのであります。今日までその趣旨のことを通牒などでも謳つたこともあるのでありますが、やはりこういう重要なる問題は、國会の御審議を経て法律として明らかにすべき基本的なものではなかろうかというふうに考えておる次第であります。幸いにして最近暴力行使の事件は、從前よりは私は減つておるように考えておりますけれども、決してその傾向が全然なくなつたとも考えておりません。
#9
○平野善治郎君 第一條の第一項の法の目的といたしましては、今賀來政府委員から基本的な労働権の問題につきましては憲法に讓つて、これはその具体的ないろいろなことを詳しく書いたというような話でありますが、これは又別の機会にいろいろ法に現われて來る場合に讓ることにしまして、第二項の暴力行使の今の政府の答えを聞きますと、暴力の行使というものは大体当然なことでありまして、刑法でこれは取締つております。又今の政府委員の説明を具体的に聞きますと、近頃はだんだんよくなつて來た。そういう行爲が私の聞いた記憶ではだんだん前よりもなくなつて來たときに、私はこの條項を入れることが適当ではないのではないかという、私の考えでもあるのであります。こういう勞働立法ができまして、初めのうちはいろいろこれに馴れない点もあり、或いは誤解の点があつたのでありますが、私の知つておる範囲におきましては、逐次労働組合自身もそういう行過ぎは是正されて來ておつて、よくなつておるのじやないか。よくなつておるときに、こういうものを特に入れる必要はないという質問をしたのであります。それで若しもこれを入れるところの具体的に増加の傾向があるかというと、今政府委員の説明によれば、だんだん前よりは暴力行使はなくなつて來ておる。それであるならばその必要がないのじやないかと思いますが、更に政府の意見を一つお聞きしたいと思います。
#10
○政府委員(高橋一郎君) 暴力の行使は、当然いかんじやないか、刑法にちやんと規定があるではないかという御意見でありまして、暴力の行使が許さるべきものじやないという点は誠に同感でありますけれども、この條項は刑法に罰則があつても正当なる爭議行爲となれば処罰されないのだと、こういう規定でありますために、從來その点に関する労働者の方々のお答えなり、或いは指導的な立場にある人々の論説の中においても、可なり曖昧なというよりも、むしろ誤解が生じ易い傾向があつたのであります。從つてただ今日逐次減つて行く傾向にあるからということで、このような考え方を明らかにする必要性がないというふうには考えられません。
#11
○平野善治郎君 だんだんこういう行爲が労働組合自身において少くなつて行くについても、これをやらなければならんということになりますると、私の見解と全く反対でありますから、その答弁はそれ以上求めないのでありますけれども、一方、別の方面から参りまして、私共の非常に心配しておるのは、この立法をやつておる場合に、立法者が少くとも余り極端に労働組合に対して理解がないじやないか、なにかものおじておる氣持からこういうことをやつておるのではないかというような疑を挿むわけであります。もう一つ大事なことはしばしば各委員から指摘されたように、こういう文字を使つておりますというと、取締の側に立つものがこの字句を誤つていろいろに使つた場合において、非常にそこに悪い結果が來るのではないか、こういうことを非常に心配するのでありまするが、この字句を使つて置いても、取締に対する場合においてなんら弊害がないという政府の御見解であるかどうか、この点を一つ承わりたいと思う。
#12
○政府委員(高橋一郎君) 第一條第一項は、この法律の目的を規定した包括的な一般規定でありまして、これを又字に拘泥して窮屈に解釈するというようなことを考えておりませんし、又そういうことには適しない條文であるというふうに考えておるのであります。從つて一條一項の改正がなにか取締を非常に嚴しくするのではないかというような観懸念は私共はないものと考えるのであります。
#13
○政府委員(賀來才二郎君) 労働者の立場といたしましては、只今の御指摘の点に関連いたしまして、かような規定がありますことに関連をいたしましては、只今檢務局長から申上げましたように、御質問のような御懸念はないものと考えますけれども、今度の運営につきましては、さようなことが、一件と雖も起ることのないように関係庁とも十分連絡をし、特に末端におきまするそれぞれの関係庁にはその趣旨徹底を図らねばならんと、かように考えておる次第であります。
#14
○原虎一君 やはり今の第一條について具体的にお聞きいたしたいと思います。第一條、第二項の一行目の中頃に「労働組合の団体交渉その他の行爲であつて前項に掲げる目的を達成するためにした正当なものについて適用があるものとする。」即ち刑法第三十五條の適用を受ける。そこで問題は第一條、第一項に対する現行法と改正法との相異点であります。そこから來る具体的な問題を考えて置かなければならん。第一條、第一項は御承知のように、現行法を具体化したものと言われておりますが、條文それ自体を見て行きますと、こういう疑が出て來ます。例えび選挙運動に労働組合法の範囲で動くということ、或いは法律の制定に反対し、或いは制定促進運動をする、國際活動をするというようなことは、これは第一條の目的には現れておりません。そういたしますというと、その第一條第二項の「労働組合の団体交渉その他の行爲であつて前項に掲げる目的を」……。この「前項に掲げる目的」というものは、今私が申しましたような運動は、目的の中に列記されていないし、判然としないのであります。こういう場合におけるところの当局の考え方はどういう解釈でありますか。それから労働省の解釈を伺つた後に続けてお伺いしたいと思うのです。
#15
○政府委員(賀來才二郎君) この労働組合法がその目的といたしますところの地位の向上ということを達成するために、政治活動も必要でありましようし、又國際的な労働活動も必要であろうということは十分認められるのであります。ただ第二條におきましては、政党的な……、政党的なと言いましようか、政党と同じように政治活動のみをやる場合には、これは労働組合とは認められないということがありまして、そうでない場合には労働組合としての政治活動は認められているのであります。從つてその他の団体行動というものには、國際活動なり、政治活動というものは、これのみを主とするものでない限り、当然含まれているものと解釈いたします。
#16
○原虎一君 現行法を改正するに当つて、現行法の精神を具体化したものだという前提に立てば、今賀來局長の御答弁のようなことが成立ちますが、現行法がなく、新しく法律を作られるというときに、この改正案の第一條を読んで見ますと、そうならないのじやないか。と申しますのは、第一條の「この法律は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること」の行動範囲というものは限定されたのであります。即ち現行法に比較いたしますならば、「本法ハ団結権ノ保障及団体交渉権ノ保護行成ニ依リ労働者ノ地位ノ向上ヲ図リ経済ノ興隆ニ寄與スルコトヲ以テ目的トス」これは現行法第一條でありますならば、賀來局長の御答弁通り私共は解釈できるのであります。この改正法第一條の「労働者の地位を向上させること」ということは、どういうことをさせるかということになれば、その前に労働者を使用者との交渉において労使対等の地位に置くということ、それを促進することによつて労働者の秋位を向上させる。あとの団体交渉、団体行動というような問題について総合的に地位を向上させるという点は、今度取去られているのであります。でありますから、字句の解釈、法文の解釈を冷靜にいたしますならば、私が申しましたような政治活動……、勿論政治活動のみを目的としたならば、第二條に違反するのでありますが、現行の労働組合法の適用を受ける労働組合でも、今度の改正によつては、怪しくなる。これは私はこの点が冷靜にお考え願えれば、私の質問の趣旨がよくお分りになる、そういう目的というものが、現行法の精神を説明的にしたために、法の目的というものが、非常に狹ばめられているのであります。その狹ばめられたものに対して、二項は労働組合の団体交渉その他の行爲であつて、前項に掲げる目的を達するためにして行爲でありますから、いわゆる法律制定のためのデモンストレーシヨンというものは、一体この第一條の目的に合致するものであるかどうか、合致しない場合においては、即ち第二項の前項に掲げる目的を達成する正当な行爲と解釈されないという結果になつて來る。でありますから、これは私は非常に重要に考えなければならんと思う。取締を如何にするかの善悪でなくして、立法者の精神が、今後現行法がなくなつた後に、冷靜にこの條文のみを以て判断しますれば、私が言つたようなことが成立つのであります。これは非常に重要でありますから、今少し労働省の御見解を明らかに願いたい。
#17
○政府委員(賀來才二郎君) 只今のような御懸念の点は衆議院でも特に重要に取上げられまして、御質問があつたところであります。これに関しましては先程私から憲法二十八條との関係について申上げましたように、本條は憲法二十八條を土俵ということにいたしますならば、その土俵の上におきまして必要と認められる事柄のみを立法化しようといたしたものであります。從いまして憲法におきまして保障という文字から見ました場合には、これをやや上廻つた場合も出て参るのであります。ただこれら両方が幾何学的にぴつたり一致するかということになりますると、この表現ではさようになつておりませんので、この保障のために具体化する必要のないものというふうなものは、当然憲法の二十八條に直接に「これを保障する」という方面に委ねておるのであります。で私先程現行法の一條を具体化というふうなことを申上げましたが、我々といたしましては、それよりもむしろ憲法二十八條を具体化いたしたもの、かように御了解を願えますれば、現行法の一條とは変りはないのでありまして、先程私が申しましたような國際活動、政治活動等が、やはりこれらの団体行動のうちに含まれて参る次第でございます。
#18
○原虎一君 大体労働省としての御見解は一般質問の場合又今日の質問等において、大体変つていない、或いは矛盾する御答弁はないのであります。そこで私自身が法律の專門家ではございません。それで高橋檢務局長がお見えになつておりますが、法律專門家としての解釈、これは非常に重要であろうと思うのであります。で只今の労働省のような見解でこの改正の法文は間違いない、そういう解釈で間違いないのであるか、或いはその相違点が幾分どの点にあるかという点を明らかに願いたいと思うのであります。
#19
○政府委員(高橋一郎君) 大体労働省からお答えしておる通りと考えております。
#20
○原虎一君 我々は実際行動をいたすのでありますから、実際行動の場合におきまして問題を或る程度まで明確に願つて置きたいと思うのです。從つて先程申しましたような政治運動に、選挙法に基く政治運動に労働組合が活動する、或いは一つの法律制定、或いは法律に反対するデモンストレーシヨンを行う、或いは國際活動を行うための國内におけるデモンストレーシヨンを行うという問題については、この一條の目的に何ら反するものでない、一條の目的に副うものであるという今までの御見解を変える必要はない、こう明確に判断してよろしいのですか。又法はそういう精神を毫末も狂げているものではないという見解に立つてよろしいか、その点を明らかに願いたい。
#21
○政府委員(高橋一郎君) 只今お述べになりましたような具体的の例の場合になりますと、これはお答えにならないかも知れませんが、私共の立場といたしましては、予め一般的に当不当ということは決めることが可なり危險でもあり、それからその必要が多くの場合ないのではないかというようなふうに考えられるのであります。即ち何らかの目的でデモをやるというような場合におきましては、第一條第二項で取締をすると申しますのは、必ず何らかの條文で罰則のある場合でなければ解締ることはできないのでありまして、通常のデモといつたようなものについては、そういうことが通常ないのでありますので、予めその当不当というようなことを決めてかかる必要が実務上は殆んどなかつたのでありますし、今後と雖もやはりそうではないかというふうに考えております。
#22
○原虎一君 ちよつと檢務局長は私の質問の要点を誤解されているような氣もいたします。私は一つのデモンストレーシヨン、その事柄に言つているのではないので、その注文からして第一條におけるところの法の目的に反するか反しないかという問題であります。事柄の行爲が刑法に触れるとか、或いは民法に触れるというような問題ではない。即ち第一條二項の「労働組合の団体交渉その他の行爲であつて前項に掲げる目的を達成するために」、この前項に掲げる目的を達するということに反しないかということをお伺いしているのであります。その点を一つもう一度明確に願いたい。
#23
○政府委員(高橋一郎君) 経済上の地位の向上を図るということは、経済は政治に密接に繋がるものでありますから、経済上に地位の向上を図るために或る程度の政治活動ということは伴うものと考えるのであります。從いましてそういう経済上の主目的のためになすところの政治目的ということ田、当然組合活動として正当視さるべきだと思うのです。併しながら組合というものが組合法において認められるという根本趣旨から言いまして、專ら政治目的を行うというようなことは、組合のあり方としては私は許されないと思う。そのことが第二條に出ていると思うのでありまして、そのような場合には当該組合の活動としては不当になる。ただそれ不当になつた場合に、それでは通常のデモなんかにつきましては何か取締るのかと言いますと、デモそのものを取締るものはないから、不当であつてもそれは処罰されないということと思うのであります。從いまして現実の問題として、このデモがどちらになるかというようなことは、やはり具体的判断に俟つより外ないというふうに考えております。
#24
○原虎一君 そういたしますと、結論的に一條の「労働者の地位を向上させること、」それはその前を承けて、「労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより」、この文句というものは、余り拘泥する必要はない。労働者の地位の向上を図るということが、一つの限定された條文になつて來ている。この前の現行法は御承知のように、「本法ハ団結権の保障及団体交渉権ノ保護助成ニ依リ労働者ノ地法ノ向上ヲ図リ」と、こうなつております。労働者の地位の向上を図るということは、今度の改正法では、資本家と対等の地位に置くということによつて労働者の地位の向上を図るのだと、こう決められたところに私は非常に疑問が生じて來る。そういうこともし、そうして団体交渉もし、或いは代表者も選び、労働協約も締結する、その他の行爲によつて労働者の地位の向上を図る、こうなつておれば、これは私は了解できるのであります。ここに私は非常に疑問を持つのであります。尚その点は私の知識の足らざるところであるかも知れませんが、十分に了解いたさない。從つて私は現行法の方を口語体にした方が無難であり、法の精神に副うものである。こう考えております。その信念を狂げて、改正法の方がよりいいのだというふうに考えることができないことは、甚だ遺憾であります。これ以上は我々の判断によつてこけを如何に及うかということになつて來ると思います。大体その問題はこの程度で打切りまして、尚あとの條文を進めて行く間に、もつて深く理解できる点がある場合もあろうと思いますから、留保いたして置きます。
 ただ先程平野委員より質問がありまして、いわゆる暴力行使は労働組合の正当なる行爲と解さない、ここに一つの注意書を入れられたわけでありますが、これに対してもたびたびすでに質問いたしたのであります。ただ私は檢務局長にお伺いして置きたいと思いますのは、成る程過去三年間におきましては、そういう暴力行爲を余儀なく行なつた組合、敢て行わざるを得なかつた場合、いろいろあつてできたと思いますが、併し先般も一般質問のときに私も申上げましたのでありますが、労働組合法を制定する以前におきましては、非常に労働爭議がこじれて参りますというと、陰惨な事件が起きている。即ち硫酸投げであるか、或いは蛇を投げるとか、いろいろなことが行われた。併し労働組合法が制定されました戰後においては、硫酸を投げるとか或いは蛇を投げるというような問題は、一件も起きておりません。たまたまこれは戰爭中、産報によつて縛られたところ労働大衆が、いわゆる法によつて団結権と、罷業権と、団体交渉権を認められたところに、又戰時中自分らは、資本家階級のなしているいろいろな悪事を目の前に見ている。配給品に対して然り、或いは終戰直後におけるところの軍物資を隱退藏する、こういうような事実を見ている。それが正当になかなか取上げられて解決しない、こういうところに労働者の不滿が爆発して來た。つまり労働者のみでなくして、日本國民全体が道徳に欠けたところがある。そういう点から考えて大局から考えて行きますれば、私はこういう注意書は、むしろこの弊害があつても今後今日の労働組合は、今御指摘のように、そういう暴力行爲というものは少くなるという傾向にある。労働者みずからがそれを冷静に判断する時期になりつつある時に、逆にこういう條文が、注意書に入れるために私に言わせますならば、地方の檢察当局或いは警察官が、こういうものができたために、ちよつとしたことも嚴格に労働組合活動を取締らなければならないという考え方を持つて、逆な結果を來す虞れが多分にある。これはむしろ法を作るときに或いはそういう注意書も必要であつたかも知れません。今日では必要がなくなりつつあるときに敢てこれをやるということは、逆に結果を來す、労働組合に関しての知識は取締当局者には地方へ行く程薄いのであります。こういうものにこういうものを見せれば、道端におけるところの泥醉者の喧嘩より、労働組合の暴力が一層嚴格にちよつとしたわずかのことでも取締らなければならんという考え方、これの虞れが多分にあるのであります。そこで労働省はそういうことがあつてはならんと言われておるのでありまするが、然らば労働省としては、具体的にそういうことの起きないように起る前に御注意が必要である。そういうことが起らないように、如何なる具体的に注意をなされるかこの具体策を一つお聽きしたいと思います。
#25
○政府委員(賀來才二郎君) 労働省といたしましては、先程平野委員にもお答え申上げましたように、又原委員の御指摘のように起つてからでは遅いと考えるのでありまして、起らない前に十分この立法の趣旨及びここに書きました趣旨の徹底を計るように努力をいたさなければならないと考えておるのであります。具体的には当然檢察庁当局或いは警察当局の御協力を得まして、又その実施の仕方につきましても、十分緊密な連絡を取つてやらなければなりませんが、尚我々といたしましては、直接労働行政の対象になつておりまする労使双方、その他の関係者に対しまして、特に地方労政当局者につきましては、直ちに講習も開きまするし、又会議も開きまして早急の間にこの趣旨の徹底を図りたいこのように考えておる次第であります。
#26
○原虎一君 労働省自身の具体的な対策は分りますが、檢察当局の方ではその必要がおありとお考えになられますか、その点を一つ明らかに願いたいと思います。
#27
○政府委員(高橋一郎君) 只今の原委員の御懸念は御尤もであります。我々もこの規定を置いたがために、そういうような逆効果を來すということは全くこれは望んでおらないし、又そうあつてはならないと考えておるのであります。そこで今月末全國の労働係檢事をすでに招集しておりまして、衆議院でも申上げたのでありますが、このような國会の審議の経過なんかも十分にそれらに傳えまして、今後の運用に氣を付けたいというふうに考えておるのであります。又現に法務庁としては労働関係におきましては、現地の可成り細かい事件に至るまで常に報告を取りまして、種々あらゆる機会にこれを檢討いたしておるのであります。又その檢事を通しまして、警察職員の方に対しましても、これは直接一般的な指揮監督権はございませんけれども、檢事が控訴権を持つております関係で、十分に何と申しますか指導する機会がありますので、そういう機会に十分これらの御懸念のないように注意したいと思つております。
#28
○國務大臣(鈴木正文君) 非常に重要な点でありますから、私からも原委員にお答え申上げます。この字句が不当な埒外に逸脱するような形で以て、そういつた権力の濫用が行われるというようなことはもとより立法当事者として、全くそういうような意図があつたわけではない。それでは立法の趣旨とはむしろ反するのでありますから、法務庁とも連絡をとりまして、その間の行過ぎ、誤解というようなことのないように只今両局長から言われましたような、そういつた線に副つて一応時期を遅れないようにいたしたいと考えます。
#29
○竹下豐次君 それに関連してちよつとお伺いいたします。先日頂いた労働組合に附随して発生した刑法犯一覧表、これを拜見したんですが、この一覧表は二十一年以後の分をお書きになつておるわけでもなさそうに思いまするから、これで以てどうという批判ができるわけではございませんが、ただこれを拜見したところによりますと、二十三年に起訴されたのが相当多いので、先程檢務局長から御説明の年々少くなりつつあるという御説明と、逆な統計のことがこれに現れておりますが、御説明のようにだんだん減つて行くことであつたならば誠に喜ばしいことであると思つております。それをもう少し具体的に数字をお示し願いましたら非常に結構だと思います。戴いた表に起訴の日が書いてありますが、暴行の日と食違つておるように思いますので……。
#30
○政府委員(高橋一郎君) 労働組合に附随して発生した刑法犯の一覧表ですが……、これは恐らく労働省の方で、最高裁判所の事務当局の発行しておる裁判集から取つたものだと思います。從つてこれは決して実際の数字は分りませんが、これから統計的な数字を申上げますと、昨年は例の政令二百一号違反、あれがありまして、あれを労働係檢事が取扱いまして、一応労働事件の統計に入れておりますので、総数から言いますと昨年は殖えております。只今手許に累年比較を持つておりませんが、私が毎日この報告をずつと見ておる感じで、確かにいわゆる暴力を用いる傾向というのは少しづつ改善の傾向にあるのじやないかというように感じております。只今具体的な統計を持つておりません。
#31
○竹下豐次君 先程平野委員の御意見ですね、だんだん減つて行くという御説明に対する御意見……、減つて行くならばいいのですが、一応御尤もの意見と拜聽しましたが、それでそうでないならば、あなたのお見込が違つていないならば、違つていないということを数字ではつきりお示しなさることが非常に必要じやないかと思ひます。今直ぐでなくても明日でも結構ですから、成るべく数年間、長い間の統計をお示し願いたいと思つております。
#32
○政府委員(高橋一郎君) 承知いたしました。
#33
○中野重治君 政府の答弁の仕方に対して私先ず註文して置きたいことがあるのです。それでその註文を容れるか容れないかはそちらの自由ですが、一つは、こちらは眞劍に聞いておるのですから、それについて答えて頂きたい。ということを言うのは、例えば暴力規定もこういうふうに入れると、役人側の権利の濫用になる虞れが生じはしないかという間に対して、そういう虞れはない、何となればかくの如く別個に決めてあるからという答え方をして、そういうことのないようにするつもりだ、そういつたように檢事を集めて訓辞をするというような約束を答えられる。これは約束はどういうことにするのかという問に対しては、こういうふうにするつもりだということを約束すると答えられても、十分答えとして受取ることができると思いますが、これでは一つ飛んでおると思う。大体世間では約束を守るならば民自党ではないとさえ言われておるのですから、だから約束をなさることは、つまり民自党がこれを破るという性格において罪を一つ重ねるということにしかならない。それですから約束について聞かれた場合は、約束を答えられて結構ですが、そうでない場合には問われたことに対して具体的に答えられて、それから信念なり約束を吐露して欲しいと私は望むのです。
 そう一つは檢務局長にやはりこういうふうに改めて欲しいのです。暴力規定に関してそれ程窮屈に解する必要はあるまい、こういうお答えで、これはですね、窮屈に解釈する必要はあるまいということは一応成り立つと思います。いろいろな條文の解釈について我我は非常に窮屈に問題を考えて行かなければならない。こういうところですね、現行法の第一條に対して、今度改正の第一條というものはそれ自身窮屈になつておる。窮屈に且つ曖昧になつておる。文句も長くなつておる。そうしてこれはなぜであるかというと、憲法二十八條或いは二十一條に規定してあるからということは分つておるから、それを一層具体化し、明確化するためにこういうふうにしましたという説明があるわけです。私はその説明に承服するわけではない。それは言葉としては一応成り立つ、成り立たせる場合、具体化する場合は、窮屈になつて行く、細かくなつて行く。我々はこれから逐條審議をやつて行くのに窮屈に考えなければならん。のみならば今まで政府がいろいろな法律を出すとか、或いは法律を改正するという場合に、窮屈に考えなかつたために被害は誰が蒙つたかというと、これはお人好しに考えた法律を適用される人々が蒙つて來ておる。例えばこの前國家公務員法ができたあのとき、あのどこかに暴力を以て政府を轉履しようとするような、そういう団体に入つておるものは國家公務員になれないと、こういうふうな條項が入つていた。それでそういうものは現在日本におるかと言いますと、ありませんと言う。將來そういうものが出た場合には、政府が他の現在法令によつてこれを取締るべき責任があるかと言えば、そうですと言う。だからこれは現にないし將來も政府が自己の責任を実行するならば、あり得ないもの、そういうものは役人になれない欠格條項だということになれば、例えばまあ河童は日本の役人になれない。これは欠格條項で書出すのはおかしいということに対して井手政務次官でしたか、併し法的観念として成立つ……。速記録を読み上げてもよいのですが、法的観念として成立つ、そういう暴力を以て政府を轉履しようという者は國家公務員にはなれないということは、一応法として成立つのじやないかということは言えるわけです。私はそのとき反対したのですが、多数が賛成して入れたわけです。そうして今度は政府が極めて窮屈に考え、且つ適用して、教育公務員の免許法案のあれですが、今度の法案はやはりそういうものはそのまま残して、こういう者には教師の免許状を与えることができない、こういうことを言つております。大体今まで法を適用される側は窮屈に考えなくともよいといわれると、お人よしだから窮屈に考えない。政府はまあそうひどくはやらない。だから食糧関係法規ができた場合にも、あの明らかによる夜中汽車から下ろされるということは誰も考えておらない。であれが問題になると、あれは乘客が警察官に協力して下りたのだ、こういうことを政府は答えておる。だから我々は何でもかんでも窮屈に考えなければならない。こうは考えません……、檢務局長が問題によつてはそう窮屈に考えなくともいいだろうという意見が出た。ときによつては出得るということは認めますけれども、併しこういう労働組合のこれからの多くの運命に関する問題は、現行法規が改められるのであるから、そこに新らしい規定が挿入されるときはこれを窮屈に考えて行かなければならん。このために我々は審議に集まつておるのであるから、だから窮屈に考えて、それで明確になればそれで決定するわけです。ですから私としてはすべての問題について言うわけではありませんが、こういう問題については、我々は窮屈にこれから審議して行くのであるから、それに対してそれ程窮屈に考えなくともいいでしようということを以て答えとして貰うということは困ると思います。その点をどうか肚に入れて答えを出すようにして頂きたいと懇願するわけですがね。
 で続いてそういうことを了承して貰つたものとして、この問題についてお尋ねしたいのですが、この第一條現行法がこんなふうになりますね。これは文章も長くなつておる。それから書いてあることがどうも……。私さつき逐條朗読を省略するということについて私も賛成したのですがどうもよく分らないのです。これはつまり憲法二十八條、二十一條関係は一般に大きく規定しておるけれども、併し労働組合に関しては、規定していないわけですね。それだからあのことを労働組合に関して、この第一條できつぱり規定するということは筋合上成立つと思います。それによつて具体化すると、一層明確になる、ところがこれを日本文として読みますと、現行法の第一條に比べて文章も悪い。この目的は何にあるのか。例えばこの法律は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること、又そのようにしてなになにすること、更にその手続を助成することを目的とする、こうなつておりますね。これならば私はこの規定には反対ですよ。反対であるが、こういう分り難いことを書くなら、もつと分りやすく書く日本語があるから、これは労働者が団結して労働者の地位を向上させること、そのために自主的に労働組合を組織させること、こういうことを守るためにということを目的とするということを書いたらよかりそうなものを、実に曖昧な書き方をしておる。私はその点だけでも大きく保障させておるものを更に細かく具体的に規定したのだということがどうも肯けないわけです。大きく保障されておるものを具体的に規定するならば、一層明確にならなければならないわけですが、ところが却つて具体化し、小さい範囲に限つて書いたところが曖昧になつておる。これはどういうわけですか。そういうふうに感じられないのですが。
#34
○政府委員(賀來才二郎君) 只今中野委員のような御意見は各方面からも十分承つております。併し我々の所期いたしましたところは、先程中野委員の御理解のような大筋を具体的に現わすために、これが適当なかような文章になると、かように考える次第でございます。
#35
○中野重治君 そうするとこの第一條に対する意見は私はありまするけれども、今意見は述べない、質問の範囲において言うと、若し政府がみずから唱えるごとき目的にかなうならば、この文章を文章として全面的にもつといい日本語に変えることには賛成ですね。
#36
○政府委員(賀來才二郎君) 政府といたしましては、この文章を以ちまして妥当と考えております。併しながらこれは國會に提案をいたしまして御審議を願つたものでございまするから、國会の御意見を承わつて、政府といたしましてはそれに対處しなければならんということになるわけでございます。
#37
○中野重治君 そこで刑法関係の問題で、すでに他の人も尋ねられたことですが、まだ肝腎のことがどうもよく分らないのど重ねて問いたいと思いますが、今まで分つたところでは、政府答弁によれば、暴力行爲というようなものは、組合運動の発展につれて大体において次第に減る傾向をとつておる、ところがずつと前にこの問題が問題になつたときは、檢務局長である國宗榮さん、國宗榮というのは檢務局の人ですね。
#38
○政府委員(高橋一郎君) 私の前任者です。
#39
○中野重治君 あなたの前任者の場合に、こういうふうに答えられております。これは現行法に副うわけだろうと思いますが、問題は軽犯罪法が出ることに関しておりますが、途中から読みますと、更に二十八号の点につきまして特にお話がございましたが、他人の進路に立塞がつて、若しくはその身辺に群がつて立退こうとせず云々とありますのは、正に労働爭議等におきまする団体交渉の際に適用されるものではないかという、こういう御懸念でありますけれども、団体交渉をいたしますことは、御承知の通り憲法で保障されておる重大な権利でもございます。更にこれは組合法にとりましてもその爭議行爲が正当である限り、一切の違法性を訴却することになつております。この法律全体から申しましても、軽犯罪法全体から申しましても、正当な理由がなくて、或いは濫りにという文字を使つておりますし、それらが書いてありませんでも、すべてこの刑法上の違法性を訴却する趣旨にこれはできておるのであります。当然に労働団体の行動、団結権並びに団体交渉というような場合におきますところの労働組合員の行動並びにいわゆる大衆運動等に起きます、それに当然隨伴して起つて参りまする大声を挙げるとか、或いは旗竿を持つということは、社会通念上当然許される行爲ではあります。これはやはり刑法の総則の規定から考えても、違法性を訴却されると、こう言つておるわけです。それで一方ではこういうことが前にあなたの前任者から言われ、且つ正確な統計というのでは必ずしもないでしようけれども、あなたの手許に集つた報告によれば、大体においてこういう暴力沙汰というものは減つておる、それから他の委員のみずからの体驗によつても次第に減つておる、こういうわけであるならば、こういう暴力規定を入れることは何といいますか、麦畑に毒を注ぐようなものじやないか、これは勿論この前國家公務員法が成り立つたときのように、法的観念としては成り立ちますよ。私は法的観念として成り立たないというのではない。併しすでにあなたの前任者がこう言い、労働組合の側からも、使用者の側からも、又その他の經驗者からも勿論あなた御自身の集計によつても次第に減つておるというときに、何のためにこういう新たな規定を入れなければならんか、而もその新たな規定というのはどういう規定かというと、我我が余程窮屈に考えて、事前に具体的な防止策を講じなければ、末端へ行つて非常に大きな被害を労働組合側は蒙むらざるを得ないような、そういう規定ですね。それを何故入れなければならないか、この点を一つ話して欲しいと、こう思うのです。
#40
○政府委員(高橋一郎君) 私が先程窮屈に解すべきではないというようなふうに申上げましたのは、一條の第一項の問題であります。第二項の暴力規定を曖昧にしようというような考えはございません。但し運用は別でございます。一條一項の方は、先程労働省の方からもお話があつたようでありますが、要するに憲法の規定を具体的に大筋を規定したものである、こういうふうに理解するので、その意味において大筋以外の点をこの文字の末に拘泥して解釈しようとは思わない、又それに適しないのじやないか、こういう意味なのであります。それから暴力を以てする事犯が減つておるのに云々という再度のお尋ねでありますけれども、暴力を肯定するような思想に基く、考え方に基く事犯というものは決して何と申しますか、是正されておるのじやないのじやないかというふうに考えるのであります。たまたま起りましたいろいろな事犯の統計ということだけで、その必要がないというふうに言い切ることは、むずかしいのではないかというふうに実は考えております。
#41
○原虎一君 今日はこのくらいで…。
#42
○中野重治君 外の委員のお言葉もあるようですから今日のところは後一つで止めようと思います。それは窮屈に解釈する必要はないのではないかということについて、私の問に対してお答えがありましたが、これは私の質問に対する答えではありませんでしたからそれには触れません。
 次に暴力を是認するような思想があり、或いはそれに基く行動が後を絶つたというふうには、つまりさつきの問題はさつきの通りであるとしても、考えられないというお答えでしたが、私はそれは認めます。これは現にこの政府がトラツクを乘りつけて來て、そうしてぶち壞してデパートへ持つて行つてばんばん競賣をやつておるというようなことがありますし、さつき申しましたように汽車へ乘つて來た人間を警棒で叩き出して、そうしてやつておるんですから、これはそういう思想はあるし、そういう思想に基く組織的な暴力が行われておるということは私は認めます。併しながら労働組合が爭議その他の活動において、そうして暴力を不当に用いるというようなことが減つて來たということは、これはすでに今までの報告によつて認められておるわけですから、私は問題をそこへ限定して行かなければならんから、この労働組合法に関する限りは……、それからそれとは又別個に私は労政局からさつきのあのリストが出たときに、非常に不審に思いまして、これは早川委員も本会議で質問されましたが、あの出所というものは非常に疑わしい、これは私はすぐ最高裁判所に行つて、あの政府がその現物からああいう集計を出して來たところの現物を見ました。そうすると非常に沢山ある、それから暴力行爲は何件とかそんなふうに出して來ておるわけですね。如何なる標準であれを集計して來たかということはどこにも書いていない。それで私が口を酢つぱくして言つて、やつと昨日になつて原本の拔萃がやつと提出されたわけです。大体若し政府の側に本当に暴力を憎む心があつて、そうして日本の労働組合運動に暴力がくつついて來た。まだ後を断たない。これを本当に愼重な方法によつてなくさなければならんという肚があるならば、ああいう何が何件、何が何件というものを出して來たときには、いかなる現物によつてどういう標準で出して來たかということを同時に提出しなければならん。そうでなければ、これは労働組合はこんなに暴力事件を起しておるのだ、何件あるのだ、すでに……。それだから暴力規定をここへ挿むことは適当であるということを委員達に呑み込ませるという、かかる邪まな心で出して來たということを拒否できないわけでしよう。それですから私はおそらく私がこういうことを言えば、そういう邪まな心があつて、下心に基いてああいうリストを出したわけではありませんと答えられるでしよう。私もそう答えて貰わなければならん。だからそう答えられることは問題ないわけですよ。今まで問題の出し方が、つまりああいうリストをポンと出して、そうして委員会に誘導訊問をかける、そうしてここへ暴力規定を挿むことを幻想させるように、いつも問題を持つて來る。こういうやり方を基本的に改めるために、かくのごとくやるというその保障が言明されるならば、その方に立つて將來はこう約束すると言つても、私はこれを約束して採り上げる余裕はあります。
#43
○政府委員(松崎芳君) 中野さんからこの前から御請求があつたのでありますが、何分あの本は、御承知の通り非常に部厚い本でありますので、あの本自体をお配りするということは金もかかりますのでできません。それでその拔萃を非常に遅くなつて相済みませんが、御承知の通り御提出してあるわけであります。今後におきましては、この資料の蒐集といいますのは、結局私のところの労力が大変でありますが、正当労力も出ますので、なるべく早くいたします。
#44
○中野重治君 分りました。ああいうものを調べて拔き書するのは大変ですから、時間のかかることは私は認めます。私の聞きたいのは、その仕事が非常に面倒であることは認めますけれども、ああいうものを何のために出そうとしたかを是頃反省して欲しい。これが一つですね。それからあれが結局第三審まで行つて確定した後でも、これは一応認められるだけであつて、まして一審二審と途中にあるものを、暴力行爲の例として例に挙げることそれ自身学門的には違法であると思います。これは檢務局長も認められるであろうと思う。最終決定でさえも場合によつては疑い得るのですから……、併し我々は最終決定は認められるとしても、最終決定まで行かないものも、何何は何件というように出して、これを一つの典拠としようとすること、或いはこれを一つの根拠となり得るがごとき形において提出することは、これは妥当ではないと考える。これは今日國会で收賄とか何とか言つて問題になつておる人があります。併し我々は、決定が最終段階にまで來ておらないから……。國会の議員の議席を有して法廷に行つた人がある。併し我々は最終決定を尊重して、國会議員としての活動を許しておるわけです。これは我々は法を尊重する以上は当然であると思う。その法の下にはすべての人が平等なんだから……。労働組合に関してのみ最終決定に行かないものを、一つ二つと算盤を彈いて、何々は何件と言うことは、やはり考え直して貰わなければならん。このことは考え直して貰えないというならば別ですけれども、そういうことを考え直して貰うこととして、今日の質問はこれで終ります。
#45
○原虎一君 本日はこの程度で散会されんことを望みます。
#46
○委員長(山田節男君) 只今原委員からの提案もございますが、すでに時間が五時近くなつております。如何でございましよう。一応第一條の質疑は終了したものと認めて差支ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#47
○委員長(山田節男君) ではどうでございましよう……。
#48
○波多野鼎君 第一條がまだあるかも知れません。
#49
○原虎一君 第一條は非常に問題ですから、打切らんことにしておいて頂けば……、第一條が十分に質されれば、後は比較的スムースに行くのではないかと思いますから、そういうふうに願います。
#50
○委員長(山田節男君) では今日の第一條の質疑を続行するということにいたしまして、明日十時から開会することにいたします。本日の労働委員会はこれを以て散会といたします。
   午後四時五十六分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     山田 節男君
   理事
           一松 政二君
           平野善治郎君
           早川 愼一君
   委員
           原  虎一君
           村尾 重雄君
           岡田喜久治君
           門屋 盛一君
           竹下 豐次君
           波多野 鼎君
           田村 文吉君
           中野 重治君
  國務大臣
   労 働 大 臣 鈴木 正文君
  政府委員
   労働政務次官  宿谷 榮一君
   労働事務官
   (労務局長)  賀來才二郎君
   労働事務官
   (労政局労働法
   規課長)    松崎  芳君
   法務廳事務官
   (檢務局長)  高橋 一郎君
ソース: 国立国会図書館
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