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#1
第061回国会 大蔵委員会 第10号
昭和四十四年三月十一日(火曜日)
    午前十時三十九分開議
 出席委員
   委員長 田中 正巳君
   理事 金子 一平君 理事 倉成  正君
   理事 毛利 松平君 理事 山下 元利君
   理事 渡辺美智雄君 理事 只松 祐治君
   理事 村山 喜一君 理事 竹本 孫一君
      伊藤宗一郎君    大村 襄治君
      奧野 誠亮君    木野 晴夫君
      河野 洋平君    笹山茂太郎君
      正示啓次郎君    地崎宇三郎君
      中村 寅太君    西岡 武夫君
      坊  秀男君    本名  武君
      村上信二郎君    阿部 助哉君
      井手 以誠君    多賀谷真稔君
      中嶋 英夫君    広沢 賢一君
      広瀬 秀吉君    堀  昌雄君
      春日 一幸君    河村  勝君
      田中 昭二君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        大 蔵 大 臣 福田 赳夫君
 出席政府委員
        内閣法制局第三
        部長      荒井  勇君
        総理府人事局長 栗山 廉平君
        法務政務次官  小澤 太郎君
        法務省民事局長 新谷 正夫君
        大蔵政務次官  上村千一郎君
        大蔵省主計局次
        長       相沢 英之君
        大蔵省主税局長 吉國 二郎君
        大蔵省証券局長 広瀬 駿二君
        大蔵省銀行局長 澄田  智君
        大蔵省国際金融
        局長      村井 七郎君
        国税庁長官   亀徳 正之君
        通商産業省通商
        局長      宮沢 鉄蔵君
 委員外の出席者
        国税庁直税部長 川村博太郎君
        専  門  員 抜井 光三君
    ―――――――――――――
三月十一日
 委員佐藤觀次郎君及び有島重武君辞任につき、
 その補欠として堀昌雄君及び田中昭二君が議長
 の指名で委員に選任された。
同日
 委員堀昌雄君辞任につき、その補欠として佐藤
 観次郎君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 参考人出頭要求に関する件
 租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣
 提出第五三号)
 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
 九号)
     ――――◇―――――
#2
○田中委員長 これより会議を開きます。
 租税特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
    ―――――――――――――
  租税特別措置法の一部を改正する法律案
  〔本号その二に掲載〕
    ―――――――――――――
#3
○田中委員長 政府より提案理由の説明を聴取いたします。上村大蔵政務次官。
#4
○上村政府委員 ただいま議題となりました租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。
 政府は、昭和四十四年度の税制改正の一環として、当面要請される住宅対策、原子力発電の推進、中小企業対策等のための措置を講ずるとともに、土地問題の解決に資するため土地税制について抜本的な改正を行なうこととし、ここにこの法律案を提出した次第であります。
 以下この法律案の内容について、その大要を御説明申し上げます。
 まず、住宅対策等の当面要請される措置について申し上げます。
 第一に、住宅対策といたしましては、住宅貯蓄控除制度について、その対象となる住宅貯蓄契約の要件の緩和をはかるほか、新築貸し家住宅の割増償却制度及び新築住宅の取得登記等の登録免許税の軽減措置について、その適用期限を延長するとともに適用範囲を拡大することとしております。
 第二に、原子力発電の推進策といたしましては、電気事業者が建設する原子力発電所について償却準備金及び特別償却の制度を創設し、また、動力炉・核燃料開発事業団が行なう原型炉の建設のために企業の支出する出指金については、これを損金に算入する制度を設けることとしております。
 第三に、中小企業につきましては、中小企業近代化促進法に基づき中小企業構造改善計画の承認を受けた商工組合等の組合員について、割増償却制度及び合併、現物出資の場合の課税の特例を設けることとしております。また、協同組合の留保所得控除制度等についてその適用期限を延長するとともに、商工組合中央金庫の抵当権の設定登記等について登録免許税を軽減する措置を講じております。
 第四に、輸出振興につきましては、輸出割り増し償却、海外市場開拓準備金、海外投資損失準備金、技術等海外取引の所得控除の諸制度及び外航船舶の保存登記等の登録免許税の軽減措置について、それぞれ適用期限を延長するとともに、中小商社の海外市場開拓準備金の積み立て率を引き上げる等制度の改善合理化を行なうほか、外航船等に旅客用として積み込む酒類等の免税措置を船員用等についても適用できるようその適用範囲の拡充を行なうこととしております。
 第五に、法人が支出する交際費の一部を損金不算入とする交際費課税の制度につきましても、その適用期限を延長するとともに、法定の控除額をこえる額に対する損金不算入の割合を六〇%に引き上げて、社用消費の抑制に資することといたしております。
 以上のほか、山林に関する課税の特例については、適用期限を延長するとともに、間伐のための伐採を特別控除の対象とする等の合理化を行ない、ガス事業者の特定ガス導管設備について特別償却制度を創設し、また、地方公共団体の行なう身体障害者扶養共済契約に基づく年金受給権、石炭企業が交付を受ける再建交付金及び日本万国博覧会の会場で行なわれる催しものについて、それぞれ課税しない措置を講ずることとしております。
 さらに、期限の到来するその他の措置については、効果が認められないものを廃止し、実情に応じ簡素化ないしは合理的改定を加える等、所要の配意を加えた上で、なお必要とされる措置については、適用期限を延長することとしております。
 なお、以上のほか、税制簡素化の見地から、納税準備預金の利子等について目的外の引き出しの場合の課税計算の方法を合理化する等所要の規定の整備合理化を行なうこととしております。
 次に、土地問題の解決に資するための土地税制の改善措置について申し上げます。
 第一に、個人の有する土地、建物等の譲渡所得について、他の所得と分離して課税を行なう特例を設けております。すなわち、土地の供給促進に資するため、個人が五年をこえて保有していた土地、建物等を譲渡した場合の譲渡所得については、昭和四十五年から昭和五十年までの間は、他の所得と分離して、比例税率による課税を行なうこととし、たとえば、昭和四十五年から二年間は、一〇%の軽減税率を適用することとしております。一方、土地の投機的需要を抑制する等のため、保有期間が五年以下の土地、建物等及び昭和四十四年一月一日以後に取得した土地、建物等については、その譲渡所得の四〇%の額と本来の所得税負担額の一一〇%に相当する額のうちいずれか高い額により課税することとしております。
 なお、昭和二十七年以前から引き続き保有していた土地、建物等を譲渡した場合の取得費は、譲渡による収入金額の五%相当額とする特例を設け、所得計算の簡素化をはかることとしております。
 第二に、収用その他特別な事情によって、土地、建物等を譲渡した場合には、それぞれの事情に応じてその譲渡所得から特別控除を行なうこととしております。すなわち、収用等の場合には一千二百万円、日本住宅公団の行なう土地区画整理方式による宅地造成事業等のために譲渡した場合には六百万円、特定の民間宅地造成事業等のために譲渡した場合には三百万円、また、現に自己の居住の用に供している家屋及びその敷地を譲渡した場合には一千万円をそれぞれその譲渡所得から控除することとし、さらに、一般の長期譲渡所得については、百万円を控除することとしております。
 なお、従来の居住用財産を取得するための買いかえ制度は、一千万円の特別控除制度の創設に伴い、昭和四十四年十二月三十一日限りで廃止することとしております。
 第三に、事業用資産の買いかえ制度の合理化をはかることとしております。すなわち、現行の事業用資産の買いかえ制度は、期限の到来を待って廃止することとし、その後は、首都圏の既成市街地内にある土地、建物等を売却して、既成市街地外にある土地、建物等を取得する場合等、土地政策または国土政策に合致する買いかえについてのみ特例を設けることとしております。
 第四に、収用等の場合の課税の特例について整理合理化をはかることとしております。すなわち、収用等を受けた場合のいわゆる四分の一課税の特例は廃止するとともに、土地区画整理事業等によって換地を受けた場合については、土地の譲渡及び取得がなかったものとする等、実情に即するよう措置することとしております。
 最後に、経過措置としまして、昭和四十四年分の個人の譲渡所得について、選択適用の特例を設けることとしております。すなわち、これまで申し述べました土地税制に関する改正事項は原則的には昭和四十五年以降の譲渡から適用することとしておりますが、昭和四十四年中の譲渡所得の全体について、新しい制度による課税を受けることを納税者が選択したときは、昭和四十四年分についても新しい制度による課税が受けられることといたしております。
 以上、租税特別措置法の一部を改正する法律案について、提案の理由とその内容を申し述べました。
 何とぞ御審議の上、すみやかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
#5
○田中委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。
#6
○田中委員長 次に、本案に加えまして、所得税法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。
 まず、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。
 両法律案につきまして参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選、手続等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○田中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
    ―――――――――――――
#8
○田中委員長 次に、質疑の通告がありますので、順次これを許します。広沢賢一君。
#9
○広沢(賢)委員 サラリーマン減税についてお尋ねします。
 今度のサラリーマン減税は非常に評判が悪い。それはどういうところから出てきたかというと、一つは形式というかワクが小さい、それから内容の中身がきわめて不公平である、この二つだと思うのです。
 まず第一にお伺いしたいのですが、この間の広瀬委員に対する主税局長の答弁で、物価調整減税は四百二十億というのですね。ところが、よく調べてみますと、この前の税調の答申書があるわけです。中山伊知郎さんがやっていた時代ですが、その税調の答申書では、昭和三十八年、消費者物価が五%上昇すると、その自然増収のうち三〇%は物価上昇による税の増加である。この一兆二千億の自然増収のうち、ことしは所得税の自然増収は六千億ですから、三〇%かけると千八百億になるという問題について、これだったら増税になってしまう。その間の食い違いはどうなったのでありますかということについて、お答え願いたいと思います。
#10
○吉國(二)政府委員 昭和三十八年の税制調査会の答申におきましては、当時所得税の減税についてかなり強い反対がございましたが、所得税の減税をやらなければならない理由といたしまして、所得税が累進課税をとっているために、物価騰貴がある場合には、実質所得が五%しか伸びない場合でも、名目所得は一〇%伸びる。しかるに累進税率はその名目所得に対して課税される結果として、実効税率そのものが上がるという部分は、これは負担が重くなるのではないかという理論を展開したわけでございます。それをいろいろ推定計算いたした場合に、当時の税制調査会では、全部の納税者をひっくるめまして、物価騰貴が五%ある場合には、所得税に生ずる自然増収のうち、三〇%程度はその物価の影響によるものがあるのではないかということを指摘いたしたわけでございます。これは確かに事実だと思いますけれども、これをもって直ちに物価調整減税の必要額とするかどうかについては、若干問題があるかと思うのであります。たとえば、高額の所得者などの場合もすべて含めておるわけでございますけれども、高額の所得者については貯蓄率が高いというような関係で、消費者物価の上昇が直接影響のない部面もある、そういった点も考慮いたしますと、私どもとしては、この間御説明申し上げましたように、物価調整を要するというものは、現在の課税最低限が、各種控除が実額で定めてありますために、消費者物価の上昇がございますと、実質的にはその定額できめられた控除額は切り下げられた結果になる、それを調整することがまず必要ではないか。なぜならば、所得税は、最低とは申しませんが、適正な生活を保障する意味において課税最低限を設けておるわけでありますが、その課税最低限が物価騰貴の結果として切り下げられることになることは、税の課税上好ましくない。したがって、課税最低限の額を物価騰貴に応じて引き上げるという措置が最小限必要ではなかろうか、そういうような意味で計算いたしますと、四百二十億という数字になるということを申し上げたわけでございます。
 いま御指摘のございました税制調査会の計算は、もう少しこまかく申しますと、ことしの六千億の所得税の自然増収の中には、実は前年度当初予算で見積もった後、前年度中にすでに所得税の土台が上がってしまった分が千五百億くらい含まれておりますから、税制調査会の調整額計算をやった場合の基礎といたしましては、六千億から千五百億を差し引いた四千五百億を対象とすべきものだと思いますし、またその中には、分離課税によって累進税率の適用のない所得に対する所得税がかなり含まれております。その分を差し引いて、従来私どもがこの税制調査会方式によって計算をいたしておりましたシステムによりますと、大体ことしの自然増収に対する物価上昇による増収分というものは約八百億円程度と計算されますが、これはもしなんならば後ほど資料を提出してもよろしゅうございます。
#11
○広沢(賢)委員 この問題はやはり重要です。物価が年がら年じゅう上がっているのですから。だから、これについては十分な根拠を究明しなければいかぬ。
 ここでお聞きしたいのは、つまり高額所得者については物価調整減税はなるべく及ぼしたくない、及ぼさないほうがいいという御答弁がありました。そうしますと、今度の減税の案を見ますと、ずっと四十一年から比較していきますと、給与所得の減税額で、年収百万円の人と年収一千万円の人、この二つに分けて、独身者と子供一人、子供二人、子供三人の場合を歴年でずっとやっていきますと、たいへんな傾向が出るのです。つまり、独身者は四十一年には一万三千三百二十円の減税なんですよ。ところが、四十二年は七千二百円の減税、四十三年六千五百七円の減税、四十四年三千二百三十八円の減税ですね。これは夫婦子供一人、二人、三人と、全部同じ傾向になっておりまして、ずっと歴年少なくなっていくし、ことしは特に少ない。ところが、逆に年収一千万円の高額所得者のこれを見ますと、独身者でいいますと、四十一年は七万五千円の減税、次の年は一万八千円の減税で、下がったように見えますが、そうじゃなくて、四十三年には二万五千九百五十円、それから四十四年には何と十四万八千七百五十円、こういうようにはね上がっております。だから、百万円の人はずっとしりつぼみ、それから年収一千万円の人は今度は先行きずっとたいへんに減税が大きくなっている。これは全く不公平、逆進性だと思いますが、そう思いませんか。
#12
○吉國(二)政府委員 御指摘のように、同じ減税をいたしましても、たくさん税金を払っている者は、率は少ないけれども、減税額は大きくなる、これはやむを得ないと思います。実効税率が七割の人と一割の人とでは、かりに同じ割合で減税をしたとしても、減税額は七倍になる。これは累進課税である以上当然であるかと思います。御指摘のように、百万円の人はだんだんしりつぼみになるのは事実でございますが、これは、毎年課税最低限を上げましたので、課税されている所得そのものが減っているわけでございます。昭和四十一年から現在までの間の累積の減税高を比べてみますと、かりに夫婦子三人で見てみますと、昭和四十一年度において夫婦子三人で百万円の収入金額を有する人は、四十一年から四十四年までの間で税額が実に八四・五%軽減されているわけでございます。残ったものは一五%程度ということになります。これに対しまして、千万円の人は、四十一年からの減税を累積いたしましても平年度で八・九%。ですから、一割にも足らない減税しか受けていないわけでございます。御承知のように、現在課税最低限をずっと引き上げてまいりました結果といたしまして、課税最低限はかなり高いところにまいりましたが、税率の刻みは従来どおり狭い幅で急激に上がっておりますから、百万から三、四百万のいわゆる中堅といわれている層、現在すでに納税者の三〇%を占めている層の負担が非常に重いし、しかもその層は限界税率が高いために、所得がふえますとその所得の四〇%、五〇%が税金として取られる、という実情にあるのが、サラリーマンの減税の一番中心的な問題かと思うのであります。そういう部面を軽減するということがことし初めて行なわれましたために、あるいはそれが反映をいたしまして、千万円の人は四十四年が一番大きな減税になった、これはやむを得ないことではないかと思います。したがいまして、減税額と申しましても、納めている以上の減税はできないわけでございますから、百万円の人が来年になればゼロになると、それ以上は減税はできないわけでございます。そういう意味で、減税額だけをお比べ願いますと、そういうことが起こるかと思いますが、総体の税額の中で百万円以下の人が納めておる所得税というのは三〇%に満たないわけで、百万円をこえる三〇%程度の人が実に七〇%の税を負担しているわけでございますから、減税をいたしますと、どうしてもその滅税額の割合は上が大きくなるということ、これはやむを得ない結果であると思います。
#13
○広沢(賢)委員 割合で言ってはだめなんですよ。割合で言ったら、これはごまかしなんですよ。税制調査会の答申の中のいろいろな趣旨を見ましても――税制調査会でもいっているでしょう。特に独身者の増加、いまだに相当所得の低い層にまで税負担を求めるということについてるる書いてあります。これは四十二年の答申です。そうしますと、割合ではないんですよ。やはり高額所得者には、さっき言った自然増収のときの操作でもってそういうものは及ぼさなくてもいいのだという思想がある。それだから、これだけ数字が変わったんですよ。その根本精神が変わった。私はそう思うのです。あとからまたいろいろと検討しますが、これはやはり額なんですよ。
 そうしますと、もう一つ聞きますが、六万円の月収の人、これは平均ですが、その六万円の月収の人は、一〇%の賃上げで六千円ですが、大体いろいろな会社でもことしは六千円、定期昇給を含めてそれぐらいはあるだろうといっているんですね。そうしますと、五人家族で年収百万円の人は百十万円になるが、この人の税額は、二万三千三百円が二万六千円になって、二千七百円の増税になるのですが、この層が一番多いのです。どうですか。これは増税でしょう。
#14
○吉國(二)政府委員 いま御指摘になりました数字をちょっと書きとめられなかったのでございますが、御承知のように、累進税率というものは、課税最低限と税率とからなっているわけでございます。課税最低限は、最低の控除をいたします関係で、これはかりに百万円の所得がある人が、八十万円の課税最低限といたしますと、二十万円の課税所得が残りますけれども、これがもし一割所得が上昇いたしますと、所得全体は一割の上昇でございますが、課税最低限を上回る部分、つまり課税所得は実に五割の増加になる。これが一つの累進制としてあらわれてくる。その上に、さらに累進税率を加えて累進構造というものができておりますから、いま御指摘がございましたように、百万円の人が百十万円になった場合には、当然税のふえ方は、従来の所得のふえ方よりも大きくなる。そしてそれが所得税の弾性値を生んでいるわけでございます。したがいまして、今後もそうだと思いますけれども、現在まででも、所得の上昇が大きい場合には、課税最低限を引き上げまして、その課税所得がふえることによる累進制というものをできるだけ緩和していく。ある程度まで課税最低限を合理化すれば別でございますけれども、わが国のように、非常に低いところから課税最低限が逐次引き上げられた国におきましては、所得が一〇%伸びたといっても、下のほうの階層は担税力が急に二倍になるというわけではございませんので、ふえた分に対する所得税の増加割合が従来程度にとどまるようにするためには、やはり課税最低限を上げるということが必要ではないかと思うわけでございます。
 御承知のように、昭和二十五年以来、大体納税者の一人当たり所得は約十倍になっておりますが、課税最低限もほぼ十倍まで引き上がっております。その関係で、国民所得のうちの個人総所得に対する所得税の総体の割合というものは、昭和三十年の初めから現在までほとんど変わらずに推移してきております。これは平均所得的なところに着目いたしまして、課税最低限を上げてきた結果でございまして、累進課税である所得税が、国民所得全体が十倍に上がっても、ほとんど比例税率と変わらない結果になっているというのは、そういう課税最低限の引き上げの結果だったと思います。
#15
○広沢(賢)委員 累進税というのは、税負担力のない人が生活費に食い込まないように、それから上の人の高額所得者のほうはうんと取るというのが累進税の目的でしょう。これが公平の原則でしょう。ところが、いまの主税局長の御答弁では、やむを得ないのだ、累進税というのは、こういうふうに不公平な結果を招くのだ、逆の方向にはね返ってしまうのだ、そうすると、これは税率がよくないのだ、税率の下限をいろいろくふうしなければならぬ、これは答申にも出ておりますね。ですから、税率の下限をよくするということを考えなければいけないのではないかと思いますが、その点についてはどう思われますか。
#16
○吉國(二)政府委員 御指摘のように、累進税率というのは、担税力に応じて税負担割合がふえるということをねらっているわけでございますから、いま申し上げたようなことが起こるのはむしろ当然でございます。下のほうは担税力が弱いから、せいぜい所得が一〇%ふえても、担税力が急にふえるかどうかということが問題であるので、むしろ下のほうは比例税率が働くように課税最低限を直していきたいということだと思います。さらに課税最低限がある程度合理化されれば、今度はその最初の税率であるとか、それから次に出てくる税率であるとかいうものの幅を広くしていって、課税最低限を越えても急に高い税率が適用にならないように配慮していくことが必要かと思います。
 税制調査会の長期税制の答申は、そういう意味で二つのやり方、一つは税の累進制を弱める、つまり従来五%であったものを、低いほうは二%、そしてそれを逐次三、四、五というふうに上げていくということで、下のほうの税率の上がり方をなだらかにする、しかもその幅を今後できるだけ広げていくという考え方を出したわけです。そして、これは所得の増加に対してどの程度の累進をはかるかという租税政策の問題だと思いますけれども、今度の長期税制の考え方は、従来いわば図によりますと、凸の形になっていた税率を、ほぼ平行線といいますか直線にするという効果を持っておりますので、その面では累進制としてはすぐれたものである、かうに考えております。
#17
○広沢(賢)委員 すぐれたものかどうかわかりませんが、まあすぐれたと認めておきましょう。ところが、物価が上がるのですから、一〇%賃上げということになると増税になるのです。そして高額所得者は相当の減税なんです。幾ら考えても減税なんです。ことに不労所得の配当所得者になると、もっと減税です。そういうことを考えると、こうなっているのを、さらにぐっとこういうふうにしなければだめなんですね。そういう形のものを考えなければならぬと思うのです。
 もう一つ、今度は内容の問題で申し上げますが、十年間で平均して自然増収に対する減税の割合は二二・二%であった。ところが、今度は一二・五%になっておりますね。中身も悪いけれども、外がだめなんですね。だから、税率を変えようとかいろいろなことをしても無理なんですが、これについてきわめて不十分であるということはお考えになると思いますが、どうですか。
#18
○吉國(二)政府委員 私も税の面だけを考えますと、もっと減税をやりたいという気持ちを持っているわけでありますが、これは、御承知のように、財政というものが全体として考えられなければならないという観点から申しますと、税制調査会が自然増収の二〇%程度は必ず減税に充てていくべきだという答申を出しましたのが三十九年でございます。その当時は、大体租税の弾性値が国民所得に対して一・五くらいと実績的に認められたわけでございます。そして一・五に対してその二〇%を減税すれば、弾性値は一・二に落ちる、少なくともその程度はやるべきだという考え方であったと思います。ところが、その直後に、四十年という年が出てまいりました。これは、当初予算で見積もったよりも税収が減ってしまうという事態が起きまして、特別法を出して赤字公債を出さざるを得なくなった。さらに、その傾向は翌年にも続きまして、弾性値がふえるどころか、前年度の当初予算よりも四十一年度に見積もられる税収が少なくなるという事態が起きてまいりました。そのために、景気調整をはかる意味で公債を七千百億発行いたしまして、その一部で減税をさらにやったわけであります。その結果、従来国民所得に対して二〇%程度であった負担率が、四十一年度の当初予算におきましては一八・五、実績におきましても一八・六と下がってしまったわけでございます。つまり、従来の負担率を下げて、その不足部分を公債でまかなってきたという姿になるわけでございます。これは不況期の景気対策としては適切なものであったかと思いますが、四十二年、四十三年と景気が回復して税収もふえてまいります際には、この公債に振りかわっておった財源をもとに戻す努力をいたしませんと、再び不況が参った場合に、わが国の財政法のたてまえから申しますと、公債を増加発行する余地がきわめて限られたものになって、景気調整的な財政運営が不可能になるという事態が生じてまいりました。そういう意味では、減税を私どもぜひやりたいという主張もいたしますけれども、同時に、財政の収入面の改善ということもはからなければならぬ。そういう趣旨で、従来の負担程度に戻るまではある程度公債減額ということも考えていかなければならぬ。
 ことしは、ごらんのとおり、当初予算におきましては、租税収入は国民所得に対して一九・七まで回復をいたしました。これは、三十九年度の負担率とほぼ匹敵するものでございます。かなり税負担が戻ってまいりました。しかし、なお、四千九百億の公債を発行しなければやっていけないという状態であるわけであります。そういうところで、ことしは、歳入歳出両面を見、かつ、財政の景気調整機能というものを考え合わせた結果といたしまして、減税の範囲が千五百億、ある程度制約を受けざるを得なかった。
 来年度は、さらに、もし経済情勢が許せば、減税をしやすい環境ができつつある。去年、ことしと公債依存度をずっと減らしております。そういう環境づくりがだんだんでき上がってくれば、より多くの減税を期待することもできるんではないかと私ども考えておるわけでございます。
#19
○広沢(賢)委員 減税の額が少ないと言うと、公債の発行減を持ち出すのですが、公債発行でもってずいぶん議論がありましたね。
  〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕
その公債の発行を削減しても、それが、市中銀行の金に余裕を持たして設備拡張に向かうということをやったら、何にもならぬじゃないかという議論がずいぶん起こっていました。それについて、政務次官はどう思いますか。
#20
○上村政府委員 この問題につきましては、過般、福田大蔵大臣が答弁をしておったと思います。その線と、いま吉國局長が御答弁申し上げたことは一致しておりまして、私も大体そういうふうな考えを持っております。
#21
○広沢(賢)委員 どういうふうに考えるかということは言っていないんですよ、まだ。
#22
○上村政府委員 実は、減税の問題につきましては、私はもっと減税していくほうがいいと思うのです。けれどもが、四十四年度のこの編成過程におきましては、公債の発行を減額していく、そうして、減税額とそれから公債発行額を大体同じ比率くらいでやっていこう、こういうふうなこと、いろいろ御意見もあることはわかっております。が、しかし、財政事情その他財政体質の改善というような諸般の点を考えながら、不十分ではあるけれどもが、ともかく、減税の規模は、四十四年度はこの程度にしていこう。ただし、四十五年度につきましては、もちろん百万円の減税という問題はやるとともに、それ以後につきましては、あわせながら税率の改正の点も取っ組んでいこう、こういうふうな答弁内容かと思いました。私も、減税の点につきましては、まだ十分ではもちろんございませんので、財政事情等をにらみ合わせながら、前向きに取っ組んでいくべきものだ、こういうふうに思っているわけです。
#23
○広沢(賢)委員 もうちょっと突っ込んで聞きます。つまり、これから法人税の問題を聞こうと思いますが、いま連続六期、大きな会社はずっともうかっているのですよ。それで、法人税は、実効税率は大体だんだん低くなっていくんですね。割合から比べればずっと低くなる、こういう傾向にあるのですから、そうした割合についても考えれば、さっき私が質問した、公債を減額しても、市中で資金がだぶつけば同じことになるんじゃないかということを学者が盛んに言ったですね。公債減額はそういう結果になると思うのですが、それに対する措置はできるわけでしょう。それについてはどうですか。
#24
○上村政府委員 この問題につきまして、法人税が高いのじゃないかというふうな御意見もしばしば諸先生から出ておりますが、大体日本の法人税というものは、諸外国と比べて、そう高いという割合でもない。なお、実体的において日本の法人企業というものの内部蓄積というものが不十分である、もっと充実さしていくべきものであろうというわけでありまして、いろいろ今後検討をしていかなくちゃなりませんけれどもが、法人税について、特に上げていくという考えは持っていない、こういう考えでございます。
#25
○広沢(賢)委員 それでは全くほんとうの答弁になっていないのです。つまり、外国に比較して法人税は低くなっているのです。低いのですよ。たとえば、アメリカと比較しても――イギリスだけが、まあ実効税率が日本と大体同じくらいだといわれているけれども、ほかのところは全部、日本の四三に対して、アメリカは五〇ですね。西ドイツは四九、フランスは五〇と、つまり日本だけが法人税を軽くしているのです。それから、毎年毎年法人税の占める地位が低くなってきているのです。そういう点は政務次官、お認めになるでしょう。
#26
○吉國(二)政府委員 いま御指摘がございました、法人税だんだん低くなってくるという学者の計算は、付加価値の中に占める税金の配分が低くなっておるということをいっているわけでございます。日本の場合は、付加価値の中には支払い利子その他が入っておりまして、単純に比較するわけにはいかないと思います。
 それから、実効税率としては、御指摘のように、日本は決して高くないというところではないかと思います。イギリスより若干高いけれども、アメリカや西ドイツよりは低いという結果になっておりますが、これは、一つには、配当軽課措置があるということも理由になっているかと思います。そういう意味で、法人税の割合が下がってくるから、それと公債の関係ということになりますと、これは必ずしも関係はないんじゃないかと思います。いま御指摘の点は、公債を減額しても、日本の場合は、公債は金融機関が大部分持っているんだから、公債を減額すれば、それだけ金融機関の手元はゆるやかになって、貸し出し能力が出るではないかというお話だと思います。これは、中央銀行の公債政策というものがございまして、これで市中の資金の点等を十分に考えて、オペレーションを行なう場合に、買いオペを減らし、売りオペを実行するというようなことで、資金量が適正になるように調整されるという前提で国債減額は考えられておるわけです。財政と金融一体化がはかられなければあるいはそういう問題が起こるかと思いますが、わが国の場合においては、財政金融の一体化というものがかなり進められておるという観点から、国債減額そのものとしては、ある意味として景気の拡大を防ぐという趣旨のものであるというふうに解釈いたしまして、国債減額というものが行なわれているということは、御承知のとおりだと思います。もちろん中央銀行の政策がまるきり反対に動けばそういうことも考えられると思いますけれども、中央銀行は国債減額というものの意味に即して通貨政策をとっていると思いますので、その点は政府側も安心をして国債減額をいたしておるということかと思います。
#27
○広沢(賢)委員 国債の問題は、金融の問題でいろいろ議論しますけれども、しかし、主税局長がそういうことを言っては、その次の年に差しつかえると思うのですよ。実際、国債は一年なんですよ。一年でもってもう市中からどんどん買い上げることができるのだから、日銀保有になるという、これはずいぶんいろいろ議論になっているところなのですから、あとは日銀の当局のあれにまかせるなんて言ってたんじゃ、これはとてもあれですよ。一番重要な問題は法人税と、もう一回申し上げますが、所得税との収入の歴年比較をやると、十年間で法人税の収入は三・三倍、所得税は四・八倍なんです。それで大きな会社は大もうけしている。だれも認めているのですよ、これは。そうすれば税収のあり方としては逆行していると思いませんか、どうですか。
#28
○吉國(二)政府委員 所得税は、御承知のように、個人の所得の大きさを基準にして課税されるわけでございますが、個人所得の一人当たりがふえていけば、累進税率によって当然ふえていくという現向を持っております。法人税は、法人自体に担税力があるという前提がございませんから、どこの国でも比例税率をとっております。したがって、所得がふえていけばその割合に応じてしかふえないということになるので、先進諸国においては、大体において所得税のほうが法人税よりも租税収入における地位は高くなっております。
 たとえば、アメリカでは所得税は法人税の二倍以上になっているわけでございます。わが国では現在、またここ数年来、所得税と法人税はほぼ同じ割合で推移してきております。国税総体の三〇%前後で推移してきておりますが、これは、所得税については極力減税をいたしましてその増加を防いでおりますが、法人税についてはほとんど減税をせずに推移してきているということによるかと思います。もちろん所得税がだんだんふえてきているのも事実で、三十四年ごろに比べますと、所得税はだいぶふえております。しかし、個人総所得に対する所得税の負担割合というものは、現在では住民税を加えまして五・八%、法人所得に対する法人税の負担割合は三〇%をこえております。これは全国の事情も同じでございます。アメリカでは大体個人所得に対する所得税の負担は一一、二%程度でございますが、法人税の法人所得総体に対する割合は三〇%程度でございます。
 そういう意味から申しますと、日本の場合は所得税に依存する程度がまだ諸外国に比べて低いと言うことができるかと思いますが、これはやはり数年ほっておけば当然所得税の割合というものは倍以上に高くなります。しかし、減税によってできるだけ所得税を合理化していくという政策が続いてとられているために、所得税の割合がふえずにとどまっているというのが現在の実際の状況だと思います。
#29
○広沢(賢)委員 そうすると、もう一回所得税のほうに返りますが、とにかく一番数の多い百万円もしくは百五十万円の人が年々減税の絶対額が少なくなってきている。そして高額所得者は絶対額が多くなっている。それで世間並みのあれでもって一〇%の賃上げをやられると増税になっちゃう。これは全く不都合なので、累進税の取り方がやはりおかしいのですよ。
 それからもう一つは、法人税は外国に比べればそういう傾向かもわかりませんけれども、日本の場合、いまの実情から見ますと、やはり設備拡張について今後どうなるかという問題がある。過剰生産のかげりがどんどん出てきている。これをどう判断するかということになっておる。設備拡張がそれほどになっているのですよ。内部留保とおっしゃるけれども、これもいろいろとあとで議論しますが、すぐ国際競争力の強化と内部留保に持っていっちゃう。ところが、自己資本率はどんどん減っているのです。大もうけをしていながら、自己資本率はどんどん減っている。そうすると、あとの特別措置の効果は、あとで議論しますが、これは全然影響をなさない。そういう状況になってなおかつ税負担率は――一番働いている、これから家を持たなければならぬとか、子供が産まれるような人たちがかえって増税になるので、サラリーマン減税が怨嗟の的になるのはあたりまえです。そこで、たとえばいま言われましたけれども、課税最低限の操作が終わったら百万円からの減税――とにかく物価が上がります。幾ら非課税にしても、また物価が上がったときにはどうなるかということは答申に書いてない。これについてはどう思うか、まず第一に聞きたいのです。
#30
○吉國(二)政府委員 先ほどお話がございましたが、百五十万あたりの人の減税が少なくなっているというのは、その人たちの納めている税金が毎年の減税が減ってきているわけですから、その分、全体の税額が少ないものですから、減税額も減っているということだけだと思います。これはそのとおりです。
 それから百万円程度の人が一〇%所得が伸びると増税になるという点は、それは累進税率によってでございますから増税になる点がございますけれども、それを毎年の減税で、一般論として増税にならないように調整をしてきたというのが現実の姿でございます。毎年同じ税制をしいておればおっしゃるとおりだと思いますが、日本では毎年減税をしている。それによって実は動態としてはそういう現象を防ぐということだと思います。ほかの国では四年、五年たっても一向減税をしないのに、日本だけが毎年やっているわけでございますから、そこはよくお含みおき願いたいと思います。
  〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕
 それから法人の自己資本が減っていることは事実でございます。いろいろ措置をとっても、どうしても減っていく。これは御指摘のとおり設備投資が大き過ぎるということかもしれません。その設備投資は借り入れ金にかなり依存しているために、総資本がふえても自己資本がむしろ減る。しかもその自己資本が減っているうちで、先生ごらんいただきますとおわかりだろうと思いますが、自己資金による増加というものは一番少ないわけであります。内部資本の増加はかなりございますけれども、まだ留保所得による増加というものが一番少ないのが現状でございます。そういうことはやはり企業が借り入れ金に依存し過ぎていると言えば言えるかと思いますが、同時に、日本のようにこれだけ引き続いて大きな投資をしている国はないので、経済成長という面から見れば結局新しい設備投資が経済成長を生む、かつ需要不足を補っているという面がございます。完全雇用に至るまでには実はこういう形の資金の獲得状況はどうかと思いますけれども、経済全体の運営としては、この設備投資があるということが日本経済を引きずって世界にまれな経済成長をやっているということも事実だと思います。法人がそれによって利益を得ているかというと、資本の拡大に比べれば利益の拡大はむしろ少ないのではないか、それだけ利益率は低下しつつあるということが言えるかと思います。ただ、最近はまたかなりの増益が進んでいることは事実のようでございます。
#31
○広沢(賢)委員 毎年世界各国でまれに見る物価の上昇をしている、だから毎年減税せざるを得ないのですよ。話は逆なんですよ。それで、毎年減税する中身が増税になっちゃう。百十万円の人は増税になってしまうなんという減税では、それでは毎年減税の恩恵に浴しているのは高額所得者だということになる、絶対額でいうと。絶対額ですよ。そうしまずとたいへんな――あとでいろいろ数字を出しますけれども、絶対額では、一千万円の人は、夫婦だと十五万円減税ですね。だから累進税率の考え方についていろいろ考えなければいけないのではないか。そうすると、課税最低限の操作が終わったら、今後、来年度から楽になるから税率の操作に取りかかるということですが、税率の操作に取りかかるといまおっしゃいましたが、そうすれば、やはり低額もしくはサラリーマン、年収二、三百万円から下の人について、やっていけるような、非常に不満が起きないような税率にして、上のほうは最大限のストップをかけていく、こういう操作が必要だと思いますが、どうでしょうか。
#32
○吉國(二)政府委員 先ほど申し落としましたが、答申で、百万円の目標を達成した場合にはあとは何もしないと書いてあるとおっしゃいましたけれども、これは、「所得、物価の上昇による調整は必要であるけれども」ということをいっておりますので、決してそのままというわけではないのであります。
 それから、ただいまお話のございました絶対額で申すとふえているではないかということ、これは所得がふえているのでございますから、ふえるのはやむを得ない。一千万円の人も、所得が一〇%伸びまして一千百万円になれば、絶対額ではるかに増税になるわけであります。同じ条件で比べていただかないといけないと思いますし、それから、なるほど十五万円の減税でございますけれども、片や三百六十万円納めているわけです。片っ方は一万三千円納めているうち、平年度で申しますと八千円軽減するわけでございますから、百万円のところは税金は五千円しか残らない。片や一千万円のところは三百四十五万円残るわけでございますから、絶対額で比較をされますと――納めている税金も一ぺんながめていただかなければいかぬという感じがするわけでございます。
 それから税率調整は、御指摘のように、できるだけ、下から中堅にかけてはよりなだらかにいくように、上に行くに従って累進率も高くなるということが望ましいと思いますが、現在かなり中堅がぐっと上がる形になっておりますのを、長期税制では中堅のところをぐっとなだらかにするようにいたしております。将来の方向もそういうことであろうと私ども考えております。
#33
○広沢(賢)委員 これは今度大蔵大臣が来たときに聞きますが、いま主税局長はそういうふうにおっしゃいました。当然のことなんですよ。今後の税率緩和については、減税の方向についてはそこへ行かなければいけない、これはだれが考えたってそうですよ。幾ら理屈をいろいろ考えてみてもそうなっちゃう。だから、その点については、主税局長は大体その方向に行くというように私はいまの御答弁は理解しまして、大蔵大臣にお聞きしたいと思うのです。
 それからもう一つは、法人税を、たとえば累進は無理だという場合に、三段階くらいにして、――やはり法人税というのは、いまいろいろお話をしましたあれで、だんだん、もうけに比較しては比率は少なくなってくる、こういうことですから、御自慢のとおり、世界にまれに見る高度経済成長を遂げたのですから、やはり法人税についてもいろいろ考慮しなければならぬと思うのです。たとえば来年は、利子配当の問題がある。例のやつが出てくるわけですね。こいつは断固としてやめなければならぬと思うのですが、そうするとその期限切れがあるでしょう。それから法人擬制説と実在説の問題では、もはや実在説が勝った、実情としてそうなってきた、こういう情勢で、税調のいろんな答申もありますが、そういう方向にいろいろ考えなければならぬじゃないかという点についてはどう思いますか。
#34
○吉國(二)政府委員 法人税制というものは非常にむずかしいことは御承知のとおりだと思います。ただいま擬制説、実在説のお説が出ましたが、これを擬制説、実在説ということで割り切るというのは、いささか無理があると思います。擬制説、実在説という考え方は、むしろ法人に権利能力を与えるか与えないかというところから起こった構想なんで、百年前の話で、そのときすでに実在説が勝っていたのでございまして、この法人税の負担を法人そのものの負担と考えるか、しかし結局は利益処分としての個人に帰属した段階で考えるかという問題は、いまだに解決していないと思うのです。現にアメリカにおいては法人独立課税主体という考え方で貫いておりますけれども、従来その立場をとっておったドイツが、戦後はむしろ株主の負担であるという考え方に変わっております。フランスも一部その考え方を取り入れました。ところが逆に、その考え方をとっておったイギリスが、今度独立課税主体説に変わる。わが国も大正九年に独立課税主体説に変わって以来、昭和二十五年に至って大転換したようなわけでございまして、なかなかこの点はむずかしい問題であると思います。
 ただ、しかしこの現在の日本の仕組みが中途半端であることは、これは税制調査会も指摘をしているわけでございます。もし法人税の負担を個人の税負担の前取りとして考えるならば、その調整方式として幾つか考えられますけれども、日本の場合は、それは一応法人段階で一部軽減税率という形でやり、さらに受け取る段階で配当控除という制度をとっておるわけでございますけれども、それが非常にわかりにいくために、どちらかというと、法人自体も配当控除ということを特別措置のように考える傾向があって、それを配当政策に必ずしも反映してないという批判がございます。それから受け取っているほうも、これも法人で税を納めたから自分が引いてもらうためだという意識がなくて、配当で受け取れば配当控除という特典があるのだというふうに受け取っている気味がある。したがって、また配当控除した結果として、配当だけを持っている人は、二百数十万の人が所得税を申告納税しないで済むということが非常におかしな現象であるというふうに受け取るのです。これも国民感情としてわからないことはないわけでございます。そういう意味でいまの制度自体が、理論の筋からいっても不徹底である、あるいはそれを十分に反映するような構造になっていないということも事実だと思います。そういう意味で税制調査会も根本的な改革を企図したほうがいいんではないか。――むしろ配当控除に相当する負担を所得税率で調整をしておいて、法人の課税はむしろ独立課税的な意味で税率を下げても、配当控除を前提としない課税にしたらどうかというのが、先生御指摘の利潤税の考え方なのでございます。ただ、これがまたはたしてそれほどいまの経済体制から見て簡単に切り変わるかどうかという疑問も出てまいります。
 今回の税制調査会の答申では、そもそも法人を考える場合に、閉鎖的な法人と公開されている法人と一緒に考えていいものかという疑問を呈しております。たとえば、同族会社で個人会社に類似した形をとっているものは、まさにシャウプの申しておりましたような法人の負担とその所得者の負担が全く一致している、観念的にも実体的にも。したがって、同族会社の行為計算否認というものが行なわれるのも、それは法人、個人一体であるということから説明できるわけでございます。大会社になってまいりますと、株主が自分の会社という意識があるかどうか、またその配当を受け取る場合も、法人税がどれくらいかかって、したがって、配当はどうなるのだろうということまで考えているかどうか。むしろ定額の利子を受け取るようなつもりで株式を購入しているという面もあるのではないか。したがって、法人税制自体を二つに分けるということも、実体法との関係で研究してみる必要があるということまで言っているわけでございます。
 したがいまして、私どもといたしましても、この一年間に法人税についての考え方をさらに徹底して深めてみまして、国民感情の納得するような、しかも歳入としても十分なものを得られるような制度を考える必要がある、これは迫られているわけでございます。
#35
○広沢(賢)委員 そういう特別措置のときにまたあらためてこれはいろいろ議論しますが、楽しみにとっておきます。
 ただ一言、これはもう前から、あなたのおっしゃるとおりのことが、やはり答申案にも出ているのですね、何回も議論されているのですよ。四十二年、四十三年、四十四年、四十五年、ずっとこの議論ばかりやっておって、国民は救われない。同族会社は文句をいう。否認行為の場合に、幾らでもそこらじゆうで国税庁といろいろやり合うというような形になったのではだめなんでして、もうなるべく早く――いい機会だと私がさっき申し上げたのは、いろいろな条件がそろっているから来年は結論を出さなければいかぬじゃないかと思うのですね。そういう点で申し上げたんです。内容については、この次の楽しみにとっておきます。
 もう一つお聞きしますが、こういうことなんです。高額所得者について、給与所得を受けていてしかも配当所得、雑所得も受けている、そういう方は所得申告をしなければならぬ。その申告の場合に、いろいろ計算してみると、五百万円以下の方々は、全部合算すると実効税率はどのくらいになるか、それから千万円以下の方は実効税率はどのくらいになるか、二千万円、二千万円超と出していただきたいと思います。
#36
○吉國(二)政府委員 実績で、四十一年分で申し上げたいと思いますが、五百万円以下の人は実効税率は一二・五になります。それから千万円以下の人は実効税率が三一・八、二千万円以下の人が四〇・七、二千万円超の人が四九・八というのが実績でございます。
#37
○広沢(賢)委員 そうしますと、五百万円以下の総合した申告の実効税率は一二・五%というふうに、きわめて低い税率ですね。この方は本来は、五百万円以下ですからほぼ三五%から四〇%、給与所得だったらば税金がかかってくる。ところが、一二%というのは、これはたいへんな軽減だと思うのです。これは不公平だと思うのですが、どうですか。
#38
○吉國(二)政府委員 この、ただいま申し上げましたのは仮定計算ではなくで、五百万円以下の人の総体の平均を申し上げているわけでございまして、所得金額は、五百万円以下の人の総体の平均は百十九万円でございます。ですから一二・五なのでございます、つまり四十一年当時は、百万円から五百万円の間と申しましても、ほとんどが百万円のところにかたまっているという結果といたしまして、その階層の平均実効税率を出しますと一二五程度になってしまう、そういうことでございます。
#39
○広沢(賢)委員 そうすると、五百万円から一千万円の人を比べますと、この人は五〇%の給与所得税を払わなければならぬのですね。ところが実効税率塗三一・八%、やはり低いと思いませんか。給与所得税を払っていれば五〇%なのに三一・八%しか払わない。これは不公平だと思いませんか。
#40
○吉國(二)政府委員 この場合の平均所得は六百五十九万で、そうしますと実効税率は給与所得もやはり三〇%台でございます。三一・八というのはおかしくないわけでございます。千万円のところだけをとれば、それは五〇%になるのですが……。
#41
○広沢(賢)委員 でもこれは平均を言っているだけです。五百万円から一千万円以下の人ということで計算しますとね。一千万円の人はそうなるでしょう。それから二千万円の場合を言います。そうすると、二千万円は五五%の所得税のあれがかかってきますね、ところが実効税率は四〇・七%です。やはり低いですね。不公平ですね。
#42
○吉國(二)政府委員 限界税率は高くても、平均所得が六百五十九万であれば、実効税率はやはりその前後になると思います。給与所得の場合とそう変わりはないと思います。
#43
○広沢(賢)委員 そんなことないですよ。私は税率で言っているのですから、これ自体について見れば不公平ではないかということを言っているのです。
#44
○吉國(二)政府委員 先生のおっしゃるのは限界税率でございますが、超過累進でございますから五五の限界税率がかかるところだけで見てはおかしいので、千万円の人は限界税率は五五でございますけれども、千万円の人でも実効税率で考えますれば三七%程度だと思います。超過累進をとっておりますから、千万円をこえた部分には五五%がかかるわけでございます。ですから実効税率としては……(広沢(賢)委員「五〇%」と呼ぶ)五〇%にはならない。たとえば、四十一年とずれますけれども、ことしで一千万円の人が減税前で実効税率は三六%でございます。
#45
○広沢(賢)委員 今度は実態の調査でなくて、私は理論的に申し上げますと、配当所得の方は二百八十二万円まで税金がかからないですね。それから、いままで言われた数字がいろいろありますね。そういう不公平について、やはりどうにもしようがないのだというように主税局長はお考えになりますか。
#46
○吉國(二)政府委員 これは国民の所得に対する課税の場合に、どうものを考えるかということにかかってくると思います。いま御指摘のございましたように、二百八十何万までは、個人の所得税は配当だけでは課税にならないと申しますけれども、それに対応する税は、法人税では百二十万から払っておるわけです。この法人税の課税は一体どこに行くのだということを考えた場合に、法人を通じて形成された所得は何べん課税されてもいいと考えるか、あるいは所得に対する課税は一回限りであるという前提があるとするならば、それは法人に対して課税された分は個人において調整すべきであるということになりましょうし、この点についてはまだ定説はないと私は思います。そういう意味では、二百八十二万円の人が課税にならないというのは、あたかも私どもが源泉徴収を受けて年末調整をされているために――私も三百万ばかり所得がございまして、申告は実際しておりますけれども、もし給与所得だけであれば申告しないでよろしいということと、観念的には同じことだと思います。ただ、そういう考え方は不適当である、法人に対しては法人税を取り、法人からの分配に対してはさらに税を課すべきだ、あるいは法人間で何回も所得が動けば、そのたびに法人税を取るべきだという考え方をとりましたならば、それは不公平だということになるかもしれませんが、そういうことになりますと、法人を通じた所得というものは、法人を何回か回っているうちにほとんどなくなってしまう、税金だけ取られてしまうということになるわけであります。はたしてこれが国民全体の所得に対する課税の公正あるいは資本の蓄積という点から正しいのかどうかという点は、まだまだ突き詰めてみる必要があるところだと思います。ですから、この現象、形態だけをとれば、確かにおっしゃるようなおかしな姿があるということは私も認めますけれども、それが法人、個人を通ずる課税体制として適当であるかどうかは慎重に検討してみる必要があるというふうに考えておるわけでございます。
#47
○広沢(賢)委員 そうすると、さっきの法人税の性格に入っちゃうから、これは数字的にみっちり検討しなければならぬ問題だと思うのですよ。そんな二つに分けたから今度どんどんもうけがなくなるほどまで法人に税金がかかるかどうかということは、そんなのはおどかしですね。全然考えられない。
 それで吉國さんも非常にいいことを言っているのですよ。「法人税法」という本の中で、「所得に対する所得税および法人税は、納税義務者の全体としての所得を課税標準とし、同一の所得を有する者に対しては、同一の税負担を課することをもって、その公平を維持しようとしている。すなわち所得の発生の原因等を捨象して、所得の金額の多少をもってその担税力を測定するものとし、これに対してそれぞれの所得の量に応じた税率を適用しようとしているのである。」というこの大原則から見れば、私がさっき申し上げたことで、それをちゃんといっているのですよ。いっていますね。そうするとやはり吉國さんとしては、これはもう本格的に、さっき私が申し上げたいろんな矛盾の問題に取り組まなければいかぬということになりますね。ちゃんと出ているのだから、どうぞ答えてください。
#48
○吉國(二)政府委員 原則はあくまでも私どもそう信じております。ただ、税金というものが、一つには歳入目的というものを持っておる。同時に、所得の再分配を通じた公平という機能も持っている。同時に、国民経済全体の最適成長率を維持するという財政の一環もになっているわけでございますので、私どもは進んで不公平なる税制をつくりたいとは思いませんけれども、国民経済全体の必要性から、ある程度予算支出にかえて税制を運用するということが行なわれた場合に、そのプラスが非常に大きい場合に、税制の公正のみで対処できるかどうかという点は、やはり問題があるかと思います。しかし、私どもとしては、税制だけを考えた場合は、あくまでも斉一な税制であることが望ましいということは言うまでもないと思います。
#49
○広沢(賢)委員 それが大原則ですね。それが大原則で、あなたは今度は国の経済、いろいろなことを考えるのですが、これはこの次に質問しますが、それでは交際費が国の経済についていろいろのことになるかといったら、これは非難ごうごうですね。
 それから、いろいろ見てみますと、利子の分離課税の問題でも、こういうことをいっていますよ。これは「中央公論」に出ているのですが、国税庁の植松課長が、「いまの税制はいろんな不合理な点があり、特に配当控除もさることながら、」――さることながらというのは悪いということを言っているのですよ。それから「一番ひどいのは利子配当の分離課税だと思うんです。」と。そうなんですよ。高額所得者は分離課税なんです。さっき私が申し上げた配当控除の人はまだ罪は軽い。「あるいは有価証券の譲渡所得が課税されていない。」これも今後たいへんな問題になっていくのですね。「せっかく累進課税という形はできていても、それがそういう肝心の資産所得に対しては、まったく無力だという形ですね。これは非常におかしいんで、何といっても弁解できない。」弁解できないと言っているのですよ。交際費が国民経済上何とか、そういうことはないし、利子が貯蓄率と関係ないというのは、この前御答弁をとりましたね。それは立証されますね。それはいかぬということだったらあとで立証しますが、それからその次に自己資本率が下がっているのですね、さっき言ったとおり。全部理由ないのですよ。それで会社は大もうけしているのです。
 したがって、先ほど申しました問題に返りますが、百十万円の人が、物価が上がって、定期昇給も含んで一〇%賃上げが行なわれたら増税される。生活内容はほとんど変わりない。その人はがっぽりと税金を二千七百円取られるのですから。しかもこういう不合理があるということについてはメスを入れなければならぬと吉國さんが言っておるのだから、これは大原則で。だから、それはメスを入れなければならぬ。これは大蔵大臣にもう一回聞こうと思いますが、政務次官はどう思いますか。
#50
○上村政府委員 私は、先生のおっしゃることはよくわかるわけです。それから法人税の関係につきましても、相当メスを入れる必要があるというふうな感じを持っております。と申しますのは、この前、平林先生の一番最初の御質問の際にもお答えしましたが、この法人関係につきましては、実在説と擬制説がございます。先ほど吉國局長が言いましたように、現在の税制の立場からいいますれば、シャウプ勧告以来、いろいろ論議はされてはおりまするが、法人が権利主体である。これは擬制説のときだって権利主体であった。実在説のときだって権利主体であった。同じことです。ただ法人の擬制説と実在説がずっと進展しましたのは、実在説の場合には結局権利主体であるだけでなくて、それがいわぱ実在して動きますから、権利主体だけでなくて、たとえばいわば人間的なおつき合いというものも必要だというようなことで、法人の行動範囲もずっと拡大されてきておりますから、先ほど先生がおっしゃったように、たとえば交際費の問題なり、普通の権利主体だったらおかしいじゃないか。けれども、実在説が定着してまいりますと、法人は普通の自然人と同じような形態においておつき合いも必要であろうというような議論がずっと展開されてきたわけです。そうしまするのに、一方は単に擬制説の当時と同じような考えがあり、実態上、法人実在というものは、大企業におきましては、先生のおっしゃるとおり、完全な自然人として独立の体制に入ってしまった、こういう状態でございますので、いろいろと理論的にいきましても、実際的にいきましても、割り切れぬ点が非常にたくさん累積してきたとぼくは思うのであります。
 それで、この前にも平林先生から御質問があったときに、私は一回ここで洗い直して検討してみる時期に来ておるであろう。けれども、これは理論だけでなくて、税制は従来の長い積み重ねもありますし、それから税制内部の体制もありましょうし、また財制需要ということもありますので、理論一点ばりにもいきかねる点もあるかもしれぬけれども、しかし、先生のおっしゃる論点もたくさん含んでおりますので、一回検討すべき時期ではあろう、こういうふうな考えを持っております。
#51
○広沢(賢)委員 交際費と法人の問題とは関係ないのですよ。問題は、私が聞こうと思ったのは、いまの税率はおかしい、所得税の累進税率はおかしい、これが一つ。ことに二、三百万円以下の問題については十分考えなければならぬ、サラリーマン減税も含めてですね、これは検討するということですね。
 それから第二番目に、それに付随して財源がいろいろ問題になってくる。そういう場合には租税特別措置、利子配当の分離課税をはじめとし七、法人税そのものに何らかメスを入れなければならぬ。この二つについて政務次官にお聞きしたいのです。
#52
○上村政府委員 これは先生のおっしゃるとおりだと思います。ただ、どういうふうにメスを入れるかという問題につきましては、先ほど申し上げましたように、慎重に検討しなければなりませんけれども、一回ここで洗い直して見直していく時期に到来しておるのではないかという感じを持っております。先生と同じような考え方になるかと思いますが、慎重にいろいろの問題の点を先ほど申し上げたわけであります。
#53
○広沢(賢)委員 終わりますが、以上のことを大蔵大臣に伝えていただきたいと思うのですが、十分伝わっておるかどうか、一回大蔵大臣に以上の詰めをきちっとやって大臣のお約束をとりますから……。終わります。
#54
○田中委員長 多賀谷真稔君。
#55
○多賀谷委員 先ほどから広沢委員から法人税についていろいろお話がありましたので、私はいわばその続きの質問をやっていきたいと思います。
 法人擬制説あるいは法人実在説というもの、必ずしもそういう古い観念にとらわれておるんじゃないと主税局長はお話しになった。しかし、政務次官はやはり法人擬制説あるいは実在説ということを根拠にお話を進められたようであります。そこで私は、シャウプ税制そのものは法人擬制説をとっておるんじゃないか、こういうように思うのですが、どうですか。
#56
○吉國(二)政府委員 実在説、擬制説という問題のとらえ方というのは、だれが始めたかわからないのでございますが、非常に比喩的に都合がいいというので、いまや確定観念になってしまいました。これは先生御承知のとおり、百年前の論争なんですね。ギールケとサビニーの間に戦われて、法人の権利能力の主体になるものは何であるかということから出た理論でございます。税のほうの考え方というのは、法人を通ずる所得というものに課税をする場合に、その負担をどこに求めるかという考え方だと思います。シャウプの考え方は、シャゥプ勧告にすっきり書いてございますが、事業を行なう場合に、法人形態を通じて得る所得と直接事業を行なって得る所得との課税が均衡を失しているということになると、税制が企業のあり方を規制する結果になる。したがって、法人を通じて得た所得であっても、その最高の負担は個人を通じて得た所得と同率にとどめるべきである。ただし、それは全部を強制してしまう必要はないというのがシャウプの考え方でございます。以上のようにグロスアップしてしまう必要はないのであって、むしろ当時の最高の個人所得税の税率の五五%を限界といたしまして法人に税がかかり、さらに個人で総合された場合にその総合された税額が幾らになるか、それを排除するためには幾らの税額控除を設けたらいいかという計算をいたしまして、最終的には五五%になるようにするために二五%の税額控除をすればいいというふうに算式をつくってやったわけでございます。
 したがいまして、シャウプの考え方というのは、完全に法人と個人の間の二重課税を排除するというよりは、世の中の進展の度合いによっては、次第に法人企業の優位さというものが手伝って法人企業が多くなるであろう、その趨勢を税制の上で無理やりに押えつけないようにということで、最高税率は両者ともに一致すべきところに置くべきである、こういう考え方だったと思います。
#57
○多賀谷委員 要するに、法人の所得は株主の所得のところで把握するというのが基本である。そこで問題は、総合課税の徹底的な要望をシャウプはしておるわけですね。この点が日本政府の都合のいいようにとられ、それがその後次から次へ改正によって全く一方の側がネグレクトされたところに今日の問題がある、こういうように考えるわけです。
 そこで、先ほどは五五%に最高額を押えたという話がありましたが、しかし、富裕税というものをつけておる。ですから、そこに資産所得というものに課税をするという概念を入れておるわけですね。それがまた日本ではくずれた。それから要するに高額所得者のバランスシートの申告義務というのを課しておりますね。さらに偽名預金の禁止、それから無記名証券の強制登録、高額所得者の課税に対するさまざまな公示義務あるいは税務官吏の活動調査の強化、それから利子所得とか配当所得、キャピタルゲインの捕捉の徹底、これが条件になっておるわけですね。その条件のほうはだんだんもう影を薄めて、そうして法人税――いわば法人税というのは先ほどの理論でいけば無税になるわけですけれども、そうはいかないというので――というのは留保所得がある、配当されない所得がある。これに課税をしなければならぬというので、比較的に低率で低い線できめた。その低い線できめたのが、さらに政府によってだんだん下げられてきておる。こういうところに私は根本問題があると思うのですね。都合のいいところだけとって都合の悪いところはだんだん影を薄めていっておる。そこに私は、今日の混乱をした情勢があるし、社会から矛盾をした税制だと見られる点があるだろう、こういうように考えるわけであります。
 そこで、そういうことを踏まえながら、一体なぜ四二%から四〇%あるいは三八%、三七%、三五%と法人税を下げたのか、これをお聞かせ願いたい。
#58
○吉國(二)政府委員 御承知のように、シャウプ税制におきましては、三五%の税率を主張したわけでございます。その後朝鮮事変が起こりまして、法人所得の非常な増加が見られました。いわゆる所得インフレが生ずるということがいわれまして、そのときに一挙に二割税率を引き上げました。二割上げたために、三五の二割でありますから四二まで上がったわけであります。その後朝鮮事変が鎮静をいたしまして、経済界が不況になってまいりまして、法人税率を下げろという声もずいぶんあったわけでございますが、不況になると法人税はむしろ減るものでございますから、なかなか下げにくいということで法人税をもとへ戻す作業というものがたいへんおくれまして、徐々にもとに戻ってまいりまして、現在三五に戻ってしまったというわけであります。御指摘のように、個人のほうは富裕税が廃止されて、そのかわり七五%という最高税率に引き上げられたわけで、その権衡からいけば四二でもよかったではないかという考え方もあり得ると思います。ただ、おそらくわが国の法人の場合、先ほど御指摘がございましたように、自己資本比率というものがどんどん下がっていく。しかもその下がっていく理由は増資ができないということではなくて、留保所得の部分が総資本に比べてどんどん下がっていくというところにあるわけであります。アメリカの場合などでございますと、自己資本の比率のうちで大体六〇%近くが内部留保からできておりまして、内部留保が内部留保を生むという力を持っておりますが、日本の場合は戦時補償特別税、さらに再建整備によって内部留保を一ぺん全部洗い出しております。そういうような点から、資本蓄積が急がれているときだけに、最初の税率である三五%に戻るというのが一つの大きなめどとされまして、現在まで下がってきたわけでございますから、先ほど来御指摘があるように、日本の法人税はいまの段階で高いとは決していえないという状況になっているのではないかと思います。
#59
○多賀谷委員 よその国の話が出ましたからついでに聞きますが、あなたのほうから出されております統計で、法人の総資本利潤率等の国際比較というのがありますね。統計はいささか古いわけですけれども、しかし傾向値は変わらない。すなわち、昭和三十四年から四十年までの粗利潤の構成――粗利潤というのは、社内留保、償却、役員賞与、配当、税金、支払利子、これを使用総資本で割っておる。これを見ますると、税金は、三十四年が一八・三で四十年が一一・四に日本ではなっておる。それから償却は、三一・八からさらに三六・六と上がっておる。四十年は非常に不況でしたから社内留保というのは減っておりますけれども、しかし全体としてはかなり上がっておる。それからアメリカは逆に税金というのが高い。ですから三〇・六とかあるいは三〇・三というパーセンテージを示しておる。それからイギリスは、これも同じく三三から三四という地位を粗利潤に対して税金が占めておる。西ドイツはこれも三〇から二八というように税金が占めておる。こういう状態ですが、粗利潤に対して日本はやはり税金が安い、こう見ていい。そうでしょう。これは一体どういうような考え方なんです。
#60
○吉國(二)政府委員 御指摘のように、これを賃金が入っておりませんので付加価値とはいえませんが、付加価値に近い粗利潤という立場で見ますと、その粗利潤の分配分として考える場合には、日本の場合、税金が非常に低いという事実はございます。これは一つは、そこでごらんいただきますと、日本の場合、支払い利子が、たとえば四十年でございますと三六・一%を占めているわけでございます。アメリカの場合は、支払い利子というものは全然ないわけであります。これは自己資本がほとんどであるということから来ていることだと思います。イギリスにいたしましても、支払い利子は四%程度、それからドイツがやや高いようでございますが、一〇%程度でございまして、粗利潤のうち三分の一が支払い利子になっておるというのは日本独特の姿でございます。いわば総資本の中にいかに借り入れ金が多いかを反映していると思います。したがいまして、この粗利潤自体の中で課税所得を構成すべきこの税金、配当、社内留保、役員賞与、これだけを足したものに対する割合をとりますと、各国とあまり差がなくなる。つまり、普通の場合は粗利潤といえばほとんどが実体利潤と近いわけでございますけれども、日本の場合はいわゆる営業外費用としての支払い金利というものが非常に大きいために、粗利潤は各国並み――各国よりちょっと低い程度でございますが、かなり高い粗利潤をあげていながら、実際に所得となりますとそこから三分の一が利子で支払われてしまう。したがって、課税所得がほかの国に比べて半分以下になってしまうということになります。
 そこで、粗利潤に対する割合をとりますと、税金が非常に低くなっておりますけれども、これはもっぱらといっては少し言い過ぎになるかもしれませんけれども、支払い利子が多過ぎるということと、それから御指摘のように減価償却も日本の場合かなり高くなっています。しかも、その結果として内部留保が非常に低い。アメリカの場合などでは内部留保が二〇%をこえておりますが、日本の場合は内部留保というのは、極端な場合には二%、一番多いときで一〇%程度であります。イギリスでも内部留保は大体一五、六%、西ドイツが、これが非常に低い日本的な姿を示しておる。結局成長の早い西ドイツと日本というものは、借り入れ金が非常に大きい。したがって、その反映として自己資本比率が低い。したがって、粗利潤の中の構成割合としても、支払い利子が大きいために、実際の課税所得が粗利潤に比べてはるかに小さくなる。その結果として、支払い税金が割合が低いという結果が出てきたように私は考えるわけでございます。
#61
○多賀谷委員 それは確かに利子は高いのです。一方は経済が、イギリスあたりわりあい停滞している、投資が行なわれないという点もあるでしょう。しかし、ドイツと比べてみると、問題はあるのです。なるほど若干日本は高い。しかし、ドイツは償却をしておる、しかも税金を取っておる、こういう形ですね。それから日本のほうは社内留保が少ないと言うけれども、これは償却が多ければ結局は同じようなものですよ。償却をルーズ――ルーズと言ってはなんですが、かりに余裕を持たして、定額から定率法というように余裕を持たしてやれば結局社内留保は少なくていい、こういうこと。ですから、わざわざ税金まで納めて積み立てをする必要はないのです、償却で大幅にとられれば。
 それにしても、法人税というものについて、なぜかようにだんだん低めてきたか、ここに問題がある。そこで、この経済社会発展計画を見ましても、これは政府がつくって閣議決定までしたのですが、四十六年度には計画では四一%取ることになっておる。そして四十三年は四〇・六、これは同じ対象でいけば、いま三六だ、こういう点も指摘されておるとおりですね。ですから、なぜ計画とおり法人税すら取っていかないのか――法人税といいますと、広義の法人税ですよ。法人税すら取っていかないのか、こういう点に非常な疑問を持つわけです。これについて、どういうように回答になりますか。
#62
○吉國(二)政府委員 経済社会発展計画そのものではなくて、内田論文にそういう指摘があったことは私も存じております。内田論文では……(多賀谷委員「内田論文は四十三年だけです」と呼ぶ)法人税所得に対して税額は下がってきておるという指摘をしているわけでありますが、これは確かに先生御指摘のように、税率を下げたというのが一つございます。それから景気のいいときは配当性向が高くなりますから、配当が多くなりますから、軽課税率の適用が出てくるということもあると思います。一番大きな点は、内田論文でいっている点は、歴年の法人税所得と法人税とを比較しているわけです。法人税は、御承知のとおり、半年以上ずれて出てまいります。したがって、上昇期にありますときには、内田論文的な計算をしますと、必ず法人税のほうが低くなってくる。前の年の法人税が半分入っているものと、それから法人のことしの所得を比較いたしますから、法人の所得がふえている限りは必ず税は低くなってしまうわけです。逆に、もし停滞期であれば、前の多い税額が減った所得に対して出てまいりますから重くなる。その景気のズレ、景気と法人税収入のズレが十分に調整されていない面があるということは、私どもも思います。ただ、御指摘のように、税率を下げた影響というものは確かに出てまいます。
#63
○多賀谷委員 いやしくも計画を決定して、そして実施に移る。これは政府の基本計画ですね。それに法人の税金という一番肝心な――これは逆にいえば資本蓄積の側ですね、それから財政の影響、幾多もある、こういう基本的なものを変えていく。これなら計画はくずれますよ。計画をしないほうがいい。資本の蓄積の側からいっても、財政の支出の側からいっても、基本的な問題でしょう。ですから、よく税率が変わりましたということを政府が言うこと自体がおかしいでしょう。それなら閣議決定しなければいい。閣議決定の前にそれを直せばいい。そういう、いわば日本経済にとって基本的なものをなぜ変えるかですね。ですから、そういう点が、今度逆に財政の面からいえば公債の発行になったり、あるいは公共投資の不足になったりしているわけです。しかも法人の税というのは、御存じのように、所得税と並び、いま大きな財源である。その税率を変えるということはたいへんなことなんです。ですから、それを役所のほうで自由に――役所といっても、国会の決議ですけれども、自分が出しておきながら、すぐそれを変えておるというところに、私は基本的な問題があると思うのです。これはどうですか、政務次官。
#64
○上村政府委員 そのとおりだと思います。
#65
○多賀谷委員 そういう計画書を出して、そして計画が狂った、狂ったと騒いでおる。しかも、そのもとは政府がつくっておる。何か民間の投資がどんどん伸び過ぎた、こう言う。しかし伸び過ぎたもとは、あなたのほうがつくっておるわけでしょう。それだけ税金を安くすれば、すなわち社内留保も多くなり、償却もでき、結局蓄積をやろうとする。ですから、そういういわば基本的なところはやっぱり計画どおりやるべきである、こういうように私は考えるわけです。
 そこで、質問を続けたいと思いますが、われわれが質問をして、あるいはいままでの議事録を見て、どうもよくわからない点は、あなたのほうは、日本の法人税は決して少なくない、かなり取っておる、こう言っておる。ところが、表にあらわれてくるものを見ると、外国よりも少ない。一体こういう矛盾はどこにあるのか。たとえば実効税率にいたしましても、フランスは五〇%、西ドイツは四九%と、あなた方自体が言っておる。それなのに実際はそれほど安くないのだ。どうもわからないですね。ひとつしろうとにわかるように御答弁願いたい。
#66
○吉國(二)政府委員 社会経済発展計画について、法人税を上げるということにはいっていないわけですが、見積もりをしたときのデータがそういうことになっておるようでございます。ただ、見積もりでは税外収入を含めて二二%になるという想定をしておる。それはほぼそうなると思います。ただ、内容は推算したときと違っておるということは確かだと思います。
 それから、いま御指摘のございました法人税が多いか、少ないかという問題、これは非常に各国と比較する場合に困るわけでございますが、法人所得というもの自体の把握が各国で必ずしも一致していないわけでございます。国連統計その他でとってみますと、課税所得とずいぶん乖離がある。実際に国連の統計等で法人所得を把握してみまして、それに対してその国の法人税というものを比較いたしますと、各国ほぼ三〇%程度で並んでいるわけでございます。ところが、実効税率を見ますと非常に違う。これはやはり各国の税制の中にいろいろ仕組みが違う点があると思います。日本の場合は、租税特別措置ということで、(多賀谷委員「実効税率を聞いておるのです」と呼ぶ)実効税率と申しますのは、その一定の所得に対して、法人税、事業税、住民税を加えた、しかもそれが事業税が損金算入ということを調整したのを実効税率と称しているのでございまして、実際の所得に対する実際の税額の率はどうかと申しますと、むしろ私が申し上げましたように、国連統計等で把握された総所得に対しての負担率は、各国ほとんど差がないというのが実情でございます。というのは、おそらく課税所得の基準が日本のようにはっきりした特別措置をうたっていない面があるのではないか。したがって、所得といいながら、課税所得においてはかなりの差があるのではないかと思います。その辺は実は私ども不勉強ではっきり把握いたしておりませんが、それが一つであります。
 それから、相対的に申しまして、先ほど広沢委員にお答えいたしましたが、国税に占める法人税の割合というのは日本が一番高いわけでございます。現在三〇%をこえておりますが、アメリカなどではほぼ二六・七%くらい。イギリスでは一二・三%というように、非常に低いわけです。それはなぜかと申しますと、一つは間接税があるということと、それからもう一つは、アメリカなどは個人所得税が非常に大きいということ。個人所得に対する個人所得税の割合というのは、日本の倍以上ですから。日本としては国民総生産は世界第二位までになったといっておりますけれども、一人当たり国民所得はアメリカの三分の一でございますから、そういう意味では担税力が劣っているということで、実際上所得税総額は国民所得中の個人所得に比べて低いということでございます。
 そういう観点から見れば、日本は法人税のほうをより多く取っておるという言い方もできるということを申しておりますので、いろいろな観点から、あるいは矛盾した言い方が出てくるかと思いますけれども、各国の国際比較というのは、課税の実情までさかのぼってみないと、なかなかはっきり申せませんので、私ども不十分な資料で説明しておりますので、あるいは御納得がいかない点があるかと思います。
#67
○多賀谷委員 アメリカは二二%という。付加税が入っておるでしょう。これは国でしょう。連邦政府でしょう。
#68
○吉國(二)政府委員 アメリカは、付加税と申しますと地方税でございましょうか。
#69
○多賀谷委員 違うよ。二万五千ドル以上をこえる課税所得に対する二六%……。
#70
○吉國(二)政府委員 もちろんそれは入っております。基礎税率が二二、一定の金額をこえたところは二六課税しておりますから、実効税率四八、それを入れて。二六と申しましたのは国税の中に占める割合が二六%、日本の場合は三〇%であるといっているわけです。
#71
○多賀谷委員 そこで、外資導入と税制の問題をちょっと聞いてみたい。
 とにかく、スイスは、御存じのように、外資を入れるために法人税を無税にした。無税にしたために外国企業が入っている。ヨーロッパに投資をしたアメリカは、その管理会社をスイスにつくった。こういう事例がある。そこでアメリカがいまかなりヨーロッパにも日本にも資本の進出をしたり、せんとしているわけですけれども、一体アメリカのいわば親会社というのは、日本から株の配当が来る、こうした場合に、収益をどうコントロールをしているのか。要するに日本のほうからいえば、外資の導入というものについて、是非は別として、法人税を安くすれば外資が入りやすい、こう見るのか、法人税を高くすれば外資は入りにくいと見るのか、どういうふうに見ているか。
#72
○吉國(二)政府委員 これはいろいろ条件があると思います。いまおっしゃった例は、リベリアとかパナマあたりにもございます。法人税がない国というのがございます。ここに管理会社をつくるということは確かにございますが、ここに外資がいわゆる支店の形で入ってくる限りにおいては、アメリカはもちろん日本でもそうでございますけれども、総所得課税――支店を含めた課税をいたしておりますから、たとえ日本の税が低くても、その差額は全部取られてしまう結果になる。ですから、管理会社をつくれば、その管理会社が日本に利益を留保している限りは、これはアメリカに返せませんから、低いほうが楽だという問題はあると思います。現にリベリヤやパナマに船舶会社が集中しているという現象がございます。アメリカはこれを非常に遺憾といたしまして、そういう親会社に何とか課税をして、それを取り上げるということでいま新しい方式を考えておりますが、まだ効果的な措置はないように聞いております。
#73
○多賀谷委員 そうすると、親会社がアメリカにある場合には同様である、こう考えていいわけですか。管理会社がアメリカにある場合は……。
#74
○吉國(二)政府委員 アメリカはまさにそうだと思います。子会社を独立して出してしまった場合、この場合は、子会社が配当しない限りは日本の税制だけで終わる。ところが、支店を出している場合は、支店へ送るもうけでもその分を含めてアメリカで課税をしてしまいまして、日本の税額を控除いたしますから、結果においてはアメリカの税制が適用になってしまう、その点は有利にも何にもならぬということです。
#75
○多賀谷委員 そのとおりだろう。私の調べたところによると、アメリカは歳入法の改正をして、要するに日本で納めた税金は向こうで控除する、そうしてアメリカの四八%を適用しているわけです。ですから結局、どこの国に資本の投資をし、子会社を持っておっても、あるいは子会社ということが問題になるかもしれないけれども、そこで税金を納めても、統一的に把握するようになっている、こういうふうに見た。そこでスイスの持ち株会社というのは閉鎖をした、こういう例があるわけですが、やはり四八という税率は変わらない。ですから、なるほどアメリカの全体の経済からいえば、所得税が多くて法人税が少ないということは言えるけれども、個々の企業から見ると同じである、こういうことが言えるわけですね。ですから、私はそういう意味においては、日本の税金がやはり三〇%というのは非常に少ないじゃないか、どうもこれはやはり上げる必要があるのではないか、こういうように思う。
 なぜ私がこういうことを言うかといいますと、あなたのほうでいろいろ再配分の効果とか、そういうものも計算されておりますが、どうも再配分効果もうまくいっていない。それから、最近における公共事業の伸びというのは、逆にいえばやはり法人のコストが非常に安くなっておるところに起因をしている。そのことはすなわち法人は大需要地にみな集中的に集まっておる。ですから、企業のコストは非常に安い。しかし、それは全部公共投資という形で転化をされておる。ですから、公共投資は無限に拡大をされる。簡単にいいますと、住宅問題とか交通の問題とか公害問題、いろいろありますが、要するに、そういう経済の状態になっておる。ですから、いまどこの市町村も、どこの府県も、国も、全部公共事業の投資に苦しんでおる。幾らやっても間に合わない、こういうことになるわけですね。それを資本蓄積という形で法人の税金を軽くするということは、もう時代錯誤ではないか。ですから、企業コストがあれだけ安くなっておる――それは、日本の大人口移動をあえて行なった、またいま行なおうとしておるわけです。その大人口移動のしりぬぐいは、みな国や市町村に来ておる。それが社会資本の不足となってあらわれておる。ですから私は、法人から直接相当取ってもいいのではないか、こういう気持ちがするわけです。いまから、日本経済で要る金の使途を考えてごらんなさい。これは結局、国、及び県あるいは市町村が法人の企業コストを安くするために努力をした投資ですよ。ですから私はここの段階で、税制の理論以外に、全体的に国の政策を見て考え直す必要があるのではないかと思う。一体どこから税金を取るかということですよ、問題は。ですから、法人税はやはりある程度増額をする。こういうことに踏み切るべきではないか、こういうように思うのですが、ひとつ政務次官から御答弁を願いたいと思います。
#76
○上村政府委員 いま先生からいろいろ御質問がございましたが、私もそういうふうな一貫した考え方で今後検討する必要があるであろうということを申し上げておるわけでございます。と申しますのは、いま先生もおっしゃったとおり、このいろいろな公共投資の場合、各地方を考えてみましても、実際上、大企業あるいはその他いろいろな問題に対して、あるいは道路にしましても、その他いろいろの諸般の問題にしましても、投資を行なっておることは確かですね。でございますが、しかし、この法人税そのもの、あるいは税制全体の体系ということもございましょうし、いろいろな財政的な問題もあるであろう。だから、そういうことが大きなウエートを占めるわけでございまするので、いまの先生の言われた御事情を含めまして、この際検討をいたしていく必要があるであろう、こういうふうな考え方でございます。同じようなものの考え方をとっておるわけでございます。
#77
○多賀谷委員 いま政務次官が答弁をされましたように、そういう財源的な面からいえば、いま再検討の要がある。かなり国民の犠牲において経済が繁栄しておるということが言えるわけです。ですから、企業コストが安くなり、競争力がついたというのは、やはり他に転化するものがあった。要するに、企業コストを社会資本のトータルとして、われわれは工業立地その他も見ていかなければならぬ、こういうように考えるわけです。
 そこで私は、先ほどネグレクトされたいわばシャウプ勧告の全額課税の徹底化の問題について質問したいと思います。それは、資産所得――昨年度かなり株が高くなったんですが、一体、有価証券上場二部を含めて、トータルでどのくらい値上がりをしておりますか。四十二年でもけっこうですよ。
#78
○吉國(二)政府委員 手元に資料を持っておりませんが、現在の時価総額が大体十二兆をこえておると思います。昨年一年間で時価相場というのはおそらく二割程度上がったんじゃないかと思いますから、時価総額にいたしまして二兆円程度の値上がりがあったんじゃないかと思います。これは達観でございますから、あるいは間違っておるかもしれませんが。
#79
○多賀谷委員 結局配当と社内留保あるいは償却、こういうのを総合的に勘案してみれば、留保所得というのはかなり高くなっておるわけですね。留保分が高くなっておる。配当分よりも留保分が高くなりつつあるでしょう。でありますから、これが無償株になったりあるいはいろいろな形で株主の側に還元をされておるわけですね。一体この資産の増加という所得は、どこでどういう形で把握するのですか。
#80
○吉國(二)政府委員 現在無償交付を受けている例はかなり少ないと思いますが、前のいわゆる資本剰余金による分、つまり再評価積立金を資本に振りかえた増資がございます。これを別といたしまして、一般的にいま内部留保、利益剰余金を無償交付しているという例はきわめて少ないと思いますが、それにいたしましても、各株式の値上がり益というものの把握、これは遺憾ながらいまの税法では一定の雑所得ないし事業所得に該当するもの以外は非課税となっておりますので、所得税の課税は行なわれていないわけでございます。法人税はこういう特例がございませんから、法人のキャピタルゲインは全部すべて全額課税ということで、一般の所得と同様に課税をされているわけでございます。個人分の証券譲渡所得が非課税になっておるというのが実情でございます。
#81
○多賀谷委員 ですから、株主の段階で把握する、こう言うから、一体株主の段階でキャピタルゲインはどうして把握しておるかと、こう聞いておるのです。
#82
○吉國(二)政府委員 株主個人の段階ではキャピタルゲインは把握しておりません。法人の段階では、もちろん法人が他の株主である場合は、完全に把握をしております。
#83
○多賀谷委員 ですから、私は非常に片手落ちな税制だ、こう言っておるのです。これが一番強調されたところでしょう。その強調されたところのほうは漸次影をひそめて、しかも昨年度のようにかなり株も上がり現実に売買が行なわれておって、相当の益金が出ておるはずである。それが把握の対象になっていない。これを一体どういうようにやるのですか、どういうおつもりですか。政務次官、将来の法人の課税に対する検討をするとかあるいは所得税との関連において検討されると言いますが、いまいわばキャピタルゲインの問題が最大の問題ですね。これを一体どういうように考えておるか伺いたい。
#84
○上村政府委員 非常に重要な問題で、いろいろな御意見を承っておって、大きな矛盾を感ずる点がたくさんあると思うのです。ですからこういう点も含めまして、ひとつ前向きに検討する時期に到来しておる、こういうふうに思っておるわけでございます。また、現実に検討しなければならぬ時期である、こういうふうに思っておるわけでございます。
#85
○多賀谷委員 主税局長、今度税制調査会はそういうものについて、四十四年度中に報告書を出すわけですか、また研究、研究とずっと延ばすのですか。
#86
○吉國(二)政府委員 これは税制調査会のおやりになることで、私どもの申し上げるべきことではないかもしれませんが、四十四年中には結論を出していただくつもりでいるわけでございます。税調の答申自体でも、法人税については四十四年度中に出すという決意をもって、四十三年度の最終において答申をいたしておりますから、四十五年度税制改正に間に合うように結論を出すというのがいまの税調のかまえでございます。
#87
○多賀谷委員 いまの主税局長の話でも二兆以上の益金が出ておるわけでしょう。あなたは十二兆という話をされた。それが二割ぐらい上がっておるだろう、こういうことですから、少なくともあなたの計算でいけば二兆四千億――数字が出ましたら、ちょっと御答弁を願いたい。
#88
○吉國(二)政府委員 いま数字がございましたので申し上げますと、これは東証一部だけ――二部は何千億というものでありますから、捨象してもいいと思いますが、四十三年末の時価総額は十一兆六千五百億、四十二年の末が八兆五千九百億でございますので、私の申したのよりは少ないようでございます。ただ、時価総額は寝ている株も全部評価しているわけですから、いわゆる評価益が全体を占めておりますので、実現益としてはもちろんこんなものではないと思います。
#89
○多賀谷委員 ですから、取引のない株は益になってあらわれていないのですから、またこれが変動するわけですが、少なくともかなり大きな財源ですね、ですから、これを黙って見ている手はないでしょう。金が足らぬ、金が足らぬ、こう言っておるのですからね。ですから、もう手をつける時期に来ておるのではないか、私はこういうように考えるのですがね。
#90
○吉國(二)政府委員 税の理論から申しますと、私もキャピタルゲインというものを捕捉すべきものであると思うのでございますけれども、もちろん税の理論の中ではキャピタルゲインは所得ではないという立場もございます。前のイギリスの税制ではまさにそうだったわけでございますが、新しい税制では短期譲渡所得を取り込み、さらに長期譲渡所得も取り込む、漸次日本型になったわけでございますが、その間に日本が抜けてしまったような形になったわけであります。事実これは私どもも、シャウプ博士が答申をいたしました直後の税制は、全額課税で出発いたしたわけでございます。それが一年後に二分の一課税になり、さらに有価証券取引税との引きかえで非課税になったわけでございますが、この事情は先生もよく御承知と思いますけれども、全額課税をしたときの課税実績というのはきわめて少なかったわけでございます。というのは、これを把握するためには証券の流通をとめるような調査をしない限り――相手に良心があれば別でございますが、良心税として考える限りはほとんど課税が行なわれない。まじめにやった人たちは申告をして他は全部逃げるという実情があったわけで、これをいかにすべきかは税務当局として実際面から非常に問題になったわけでございます。むしろ有価証券取引税を取るほうが株式流通から得る税収としては大きい。現在、実際に有価証券取引税は四十四年度で百五十五億という額にのぼっておりますが、そういうことから非常に実行不可能であり、かつ、不公平な現実を起こすということから廃止になったわけでございますけれども、御指摘のように、問題が残っておることは確かでございます。ただ、世界の税制でもこのキャピタルゲインの扱い方は非常に区々でございますし、実効があがっておるかどうかという点になると、なかなか問題があるわけでございます。私ども、もちろん税制調査会を通じてこの問題は再三検討をいたしましております。確かに問題の所在として大きなものであることは私も認める次第でございますが、これをいかにするかということについては、さらに慎重な検討が必要かと思っております。
#91
○多賀谷委員 次に、私は税金の再分配の効果というものを検討し、質問してみたいと思うのです。税金でもいろいろあるわけですけれども、まず所得税あるいは地方税を含めた、あるいはさらに言うならば社会保障の給付から、社会保障の負担費用を引いたものですね、こういったものが一体国民にどういうような再分配効果を与えておるか。ことに税金の場合は、所得税というのは、何を言いましても、比較的その効果は大きいわけです。しかし、地方税になりますと、その効果がかなり薄められておる。間接税になると逆進的になる。これは、間接税は、御存じのように、均一に取るわけですから、これは逆進的に作用する、マイナス要因ですね。それから社会保障。社会保障の場合はいろいろ問題がある。日本の場合は所得層によってかなり違うのです。日本の場合は高額所得者はむしろ軽いのです。これはぐっと低額と高額が軽いのですね。こういう問題があるわけですけれども、一体税金が再分配効果としてどういうようにあらわれておるか、これをひとつお聞かせ願いたい。
#92
○吉國(二)政府委員 これは非常にむずかしい問題でもあり、研究を要すべき問題でもあると思いますが、その点でまだ開拓されてない分野であることは事実でございます。
 ただ、日本の場合を申し上げますと、ただいま御指摘がございました間接税の逆進性という問題は、間接税が四割を割っておるという実情から申しますと、ほかの国に比べると、たとえば六割が付加価値税を含めた間接税であるフランスとか、さらに七割がそうであるイタリアとか、半分程度がそうであるドイツよりはまだましである。しかも一般売り上げ税ではなくて担税力をある程度捕捉できるような課税方式をとっております日本のほうが、その点はいいということは一つの前提になるかと思います。
 そこで、残った直接税の点では、所得税が三〇%を占めておる。しかも所得税のうち、大体推定をいたしますと、納税人員のうちで三五%程度の人が約八割の所得税を払っているわけでございます。その納税者が有業人口の半分と見ますると、大体全体の有業者のうち一五、六%程度の人が実に八割の所得税を納めておるということから申しますと、所得税だけを見た再分配効果というものは、かなり大きいのではないかと私は思います。そして法人税は、これは比例税率でございますが、再分配の効果としては、配当として主として高額所得者に流れておる、配当控除はあるわけでございますけれども、これもやはり総合されておる点では、先ほどの八割の中に入っているわけでございますから、相当高い再分配効果があると思いますし、歳出のほうは、これもたいへんばく然とした言い方でございますが、大体公共事業等は、まあ学者に言わせれば所得弾性値は一以下である、つまり公共事業の一単位は、所得に比べれば大きな所得者よりも小額の所得者にプラスが大きいということになりますから、日本の場合、公共事業費が歳出でほかの国に比べて非常に大きな割合を占めている点等を考え合わせますと、まあ不十分とはいいながら、相当な再分配効果はあがっておると考えておるわけでございます。
#93
○多賀谷委員 公共事業は必ずしもすぐ再分配効果にあらわれるかどうか、これは質問ですね。生産基盤といえば法人だ、こういえばものの考え方ですからね、これは問題としておきます。
 いろいろとり方があるわけですけれども、大蔵省のほうで、私はちょっと資料を調べたのですが、ローレンツ曲線等を使って調査をしたものはないわけですか。
#94
○吉國(二)政府委員 非公式にローレンツ曲線等を引いてやってはおりますが、大体あまり適切な資料ではないと思いますけれども、だんだん再分配効果があがっておるという曲線にはなっております。ただ、それはあまり正確ではないので、資料として提出するまでにはまだ至っておりません。
#95
○多賀谷委員 私も見せていただいたわけです。ところが三十五年から三十六年、三十七年という数字を使って、若干あがっておるのじゃないかという話もしておるのですけれども、そうじゃなくて、二十八年、二十九年、三十年、三十一年くらいを見ると、むしろ効果は三分の二ぐらいなんですね。ですから、都合のいいところだけとってやっておるから何か再分配効果が非常にあらわれておるように見えるけれども、そうじゃなくて、要するに高度成長になる前の時点をとってみると、再分配効果がむしろ減退をしておる。そこで、四十二年、四十三年の、あるいは四十四年に向かってのデータがないものですから、それがずっと上昇期に入って、二十八年くらいから三十一年くらいまでの再分配効果をあらわしておるかどうか、これは私も疑問なんです。疑問なんですけれども、いままでのデータによると、少なくとも二十八年から三十一年までの効果の三分の二くらいしかあらわれていない、こういうところに問題があると思うのです。これは一体どういうところにそういう問題があるのか。これは先ほども議論がありました所得税の減税の問題とやはりからむわけでしょう。これは少なくとも社会保障は別にして、地方税と所得税を入れてみて、一体どういう曲線を描くか、効果としてはどういうようになるのか、これは一つの大きな問題だ。それからもう一つは、何をいいましても先ほど申しました社会保障の給付とその負担率というものを勘案してみた場合にどうか、やはりこういう大きな問題を考えながら税制をその一環として行なわないと、国の政策の視点を失う。先ほど政務次官は理論一点ばりではいかぬ、こうおっしゃいましたけれども、ただ税制理論だけではなくて、もう少し大きな視野に立ってそういうものを見ていただきたい、こういうように考えるわけです。
 それから、もう一つ政務次官のお話の中に抜けておるのは、やはり政治的な圧力と言ったら悪いけれども、率直にいうと財界の要請、こういうものもあるのですよ。これはきれいごとでお話にならなかったけれども、やはりそういうものをどう排除をしながらあるべき姿をつくっていくか、ここに問題がある、かように考えるわけです。
 大蔵省のほうでも、新しい研究でありますけれども、一体再分配効果がどういうようにあらわれておるかというデータを省として出すなり、あるいはそういうものはむしろ経済白書で経済企画庁あたりが出して、そして国民に示すべきである、そのことが非常に重大だ、かように思うわけです。たとえば振替所得にいたしましても、経済社会発展計画によれば、二%くらい四十六年度に向かってふえる予定でありますのに、全然横ばいである、こういう点も非常に問題です。社会保障の問題も、やはり国民所得に占める割合がずっと横ばいなんですね。ですから、経済が発展をしても、貧しい人々あるいはわりあいに低下層にある人々が恵まれていないというところに政治の貧困がある。ですから、所得が倍になれば、低所得者は三倍くらいにならないとバランスがとれないのです。それが依然として同じ率でいっているというところに何らの発展性がない。この点についてひとつ政務次官から御答弁を願いたい。
#96
○上村政府委員 先生のおっしゃる点はよくわかりますし、いろいろ非常にむずかしい問題もございますが、極力いま所得の再配分効果の点につきましてデータの出るように努力をいたしていきたいと思っております。ただ先生も御案内のように、結局所得の再配分の効果というものは重要な問題であるし、政治の中心的なものになるとともに、一面社会の連帯性、国家の連帯性という観点からいいますれば、ちょうど地方税の住民税などの理念というものにもあらわれてくるように、その負担の圧迫感というものを減殺していくことはもちろんでございますけれども、しかし、共同生活において何らかの財政負担をしていくというような観念も必要であろう。そういうような度合い、歩合というものは、社会の変化なりその他いろいろなことで私はウエートが違ってくると思うわけですが、現時点におきまして所得の再配分効果についてどういうふうな効率を持っておるかということは、私は非常に重大な問題であるというふうに思っておりますので、先生がおっしゃったような点について、いま事務当局のほうではデータ上非常にむずかしい問題も出てくるということでございますが、極力努力していきたい、こう思っておるわけです。
#97
○多賀谷委員 私は、そういう大きな視点に立って個々の税制というものを扱うべきだと思うのですよ。いままでの経過を見ると、その部分に限って税金をいじっておるのですね。ですから、全体がどう行くか、その関連として扱っておるのじゃなくて、いや理論が悪い、ここを直す、ここを直すというように税制の改正がなされておる。そういう点はやはり方向を見失う、かように私は考えるわけです。なるほど負担の過重という問題もありますけれども、御案内のように、振替所得なんというのはとても――国民所得の一人当たりが二十一位とか二十番目というよりも、振替所得とか社会保障の国民所得に占める地位なんというものは二十五番目くらいですよ。ですから、国民所得の一人当たりよりも、国民所得に占める社会保障とか振替所得がどのくらいあるかといえば、それは一人当たりよりもずっと低いのですよ。私はそこに問題があると思うのです。結局国民所得は低いなりにその基準に達していないということです。ですから、はっきり言えば、福祉国家ではないということですよ。そこに私は問題がある、こういうように思うわけです。経済が全体よくなれば、範囲が大きくなれば、配分が大きくなることはあたりまえです。それは何も努力しなくてもできるわけです。しかし、やはりそれではならないのであって、政治目標があるわけですから、その目標の方向に進めるためにはそのことが必要ではないか、こういうことを申し上げて質問を終わりたいと思います。
#98
○田中委員長 午後二時再開することとし、暫時休憩いたします。
   午後零時五十八分休憩
     ――――◇―――――
   午後二時十九分開議
#99
○田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。堀昌雄君。
#100
○堀委員 先般の予算委員会におきまして、私は夫人の相続、贈与に関する問題を取り上げて質問をいたしました。これについては総理大臣も非常に賛成の意を表されて、検討したいということにいまなっておるわけでありますけれども、昨日も参議院の予算委員会におきまして、われわれがかねて主張いたしております二分二乗方式の問題をわが党の竹田委員が質問をしたのに対して、新聞の伝えておるところによれば、大蔵大臣は、現在の税率の刻みのあり方では問題があるというような答弁をしておられるようであります。私がきょうこれを取り上げますのは、要するに、いまの二分二乗方式という問題の背景をなしておる妻というものの財産権に対するところのものの考え方といいますか、一つの思想という形でこの問題を少しとらえてみる必要があるのではないか、こう考えておるわけです。
 二分二乗方式という問題が出てきたアメリカの歴史は、この前も私、委員会で申し上げましたように、一九四八年歳入法の中で、夫婦共有財産州とそうでない州との調整をはかるための連邦法の規定がこの問題にかかわりがある、こうなっておるわけなのであります。ですから、要するに二分二乗方式というのは、単に税率を軽減する手段の問題ではなくて、その法律の背景にあるものの考え方のところにもつと焦点が置かれるべきであるというのが私の考えなんでありますが、まず最初に、政務次官はいま私の申し述べた考え方についてはどのようにお考えになっているか、承りたいと思います。
#101
○上村政府委員 妻の立場と、また相続税法上の立場というものにつきましては、これはまあ局長からいろいろな税法上の実情につきまして説明をお聞き取り賜わりたいと思いますが、わが国におきますところの妻の税法上の立場というものは、御案内のように、相続法の改正以前は妻の相続分というものは無視されておった。そしてその後、妻につきましては、憲法改正によりまして、いわゆる性別によって何らの差別をつけてはならぬという思想と、また妻の座の向上によりまして、先生御案内のように、妻の相続分というものは大幅に戦前から見ると改善をされております。がしかしながら、いまそれが十分対等な立場によってできておるかということは、これは疑問でございます、率直に申し上げまして。これも、日本の長い間の家族制度、あるいはそういうような中につちかわれておったひずみであろうと、こういうふうに思っております。これは今後憲法のたてまえからいいましても、また大いに検討していかなければならぬというような基本的な考え方を持っておりますけれども、現在の税法上どういう実態になっておるかということにつきましては、局長から説明させていただきたいと思います。
#102
○堀委員 いや、私が伺っておりますのは、要するに税法というものも、ものの考え方が先にありませんと、ただ税金をまけるための手段としていろいろな方法を考え出すのじゃないと思うんですね。特に、いま私どもが指摘をしております二分二乗の問題というのは、これは妻の財産権のあり方に関係があるわけなんですね。ですから、それが所得の形で入ってくる財産権の問題と、それが蓄積をされた相続の問題というのは、思想としてはやはり一つの体系になっていないと、思想がばらばらだということでは税の体系としては不適当である、こう私は考えているわけです。だからその点、まず思想ありき、ものの考え方ありき、続いてその考え方に基づいた税法ありきと、こうならなければおかしいのじゃないかということを伺っているわけなんですよ。そういう基本的な考え方……。
#103
○上村政府委員 基本的な考え方につきましては、従来のいきさつは、いわばだいぶ不平等といいますか、無視された立場になっておりますけれども、思想的な考え方では同列に持っていくべきものだ、こういう考え方を持っております。
#104
○堀委員 そこで、法務省に入っていただいておりますから、ちょっと法務省にお伺いしたのですけれども、現在の民法の相続で妻の相続の規定がございますね。その相続の規定の中に、御承知のように民法の第九百条というのがある。これは法定相続分、こういうことになっておりますが、この法定相続分の中で最初の一番目が、直系卑属及び配偶者が相続人であるときは、直系卑属の相続分は三分の二とし、配偶者の相続分は三分の一とする、これが一番ですね。二番目に、「配偶者及び直属尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分及び直系尊属の相続分は、各各二分の一とする。」今度三分の一から二分の一にふえましたね。三番目に、「配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、兄弟姉妹の相続分は、三分の一とする。」妻の相続分は三分の二になりましたね。要するに、この民法第九百条が相続分として妻の相続を三分の一、二分の一、三分の二というふうに規定をしておるこのものの考え方の背景ですね。これは一体なんでしょう。
#105
○新谷政府委員 御承知のように新憲法が施行されまして、この憲法の制定に合わせるように、昭和二十三年から民法の親族、相続法が改正されまして施行になったわけでございまして、女性の立場、特に夫婦共同生活におきますところの妻の立場というものについて十分な配慮を加える必要があるということが根本の思想であろうと思います。したがいまして、民法九百条に定めております相続分につきましても、被相続人と相続人との関係をいろいろと考慮いたしまして、特に直系卑属が相続人として最も重視されるという思想から、直系卑属と妻の場合には御指摘のような割合になっております。さらに直系尊属ということになりますと、直系卑属よりはやや後退する感じになりますので、この場合には妻と直系尊属を対等に扱う。さらに兄弟姉妹になりますと、かなり被相続人との関係が疎遠と申しますとちょっと語弊があるかもしれませんが、関係が薄くなるところを考えまして、この場合には妻の相続分は多くしてある、こういうことであろうと思います。
 いずれにいたしましても、妻の立場というものを民法の上でも十分配慮を加えまして、新民法におきましてこのような九百条の規定ができた、このように理解いたしております。
#106
○堀委員 実は民法が定めておりますこの考え方は、いろいろなコンメンタールその他調べてみますと、思想が二つあるようですね。その二つ思想があるということは、少なくともこれまでの相続の関係の中で妻の相続というものを独立して一つ考えようという思想ですね。だから、妻の相続については他の関係で見て三分の一、二分の一、三分の二になるということは、要するに夫の残した財産というものに対する妻の相続というものは、非常に明確な相続権をここで確定をしたということになると思うのです。あとの相続人の状態は相続人の姿によって変化をするのであって、妻とはそれはちょっと次元が違うんですよというかっこうがこの民法の中に非常に明らかになっているのじゃないか、こういうふうに私は実は理解をしておるわけです。それでこのことは私は、民法がそれを定めたことは、要するに夫の財産というものの中に妻が当然それを請求し得る部分を一つの比率をもって明らかにした、具体的な形で明らかにしたいまの法律上の規定の一つだと思うのです。
 もう一つ、七百六十八条ですね。財産分与の請求、「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。」と民法は定めておるわけですね。この財産の分与を請求できるというこの考え方は一体何かというと、夫婦で共同して働いてきて、夫の財産というかっこうで置かれておるものについて、離婚をするときには、その夫側の財産と目されておるものの中には、共同の、妻の財産が入っておるから、そこで法律は、協議離婚をするときにはその妻の財産と考えられるものについては分与請求ができるということを明示したというふうに理解をしておるのですが、その点は法務省どうでしょうか。
#107
○新谷政府委員 財産分与につきましては、確かにお説のような思想がこの中に入っておると思います。もちろん、この財産分与の規定の趣旨がどういうところにあるかということにつきしては、学説上もこれはいろいろの説がございます。夫婦共同生活によって築き上げた財産であるから、少なくともその婚姻を解消する場合には妻の功績を認め、その内助の功によって得たものを若干は妻に与える必要があろうという考え方、さらに、特に離婚後の妻の扶養という考え方も入っておるという考え方もございます。また、たとえば夫のほうにその離婚原因をつくった責任があるといった場合に、これに対する損害賠償、言いかえますと慰謝料的な要素も含めておる、こういうふうな見方もあるわけでございまして、いずれにいたしましても、妻の立場を十分尊重するという観点からこの財産分与の請求の規定ができておることは間違いないことであると思います。
#108
○堀委員 実は有斐閣から出しております「親族・相續法」という、中を読んでみますと、簡単にいいますと、「離婚しなかったら相続し得たであろう生前相続の観念をとる考え方もある。しかし夫が先に死ぬか妻が先に死ぬか分らず、ことに妻が年上の場合はそうであるから、これも額を定める上にしんしゃくされるとしても、これを財産分与の本質とはいえない。このように、夫婦の財産が共有である場合はもちろん、単独所有であっても、潜在的には共有であるから、離婚に当って精算する。これが本来の財産分与である。」こういう書き方がされておるわけです。ですから、私がいまここでこういう形でものを言っておりますのは何を言いたいかといいますと、やはり相続という民法の規定の考え方からは、要するに夫の名前になっておる財産といえども、これは夫婦が共同して得た財産の集績であるという考え方が民法で確立しておることは、私はもう間違いがないと思うのです。
 そこで、政務次官にひとつお伺いをしたいのですけれども、いま私どもはこの民法の定めによって、その三分の一というところから始まるのですね、直系卑属と妻が。しかしこの問題は、この法律ができた当時は、私はこの概念でよかっただろうと思うのですけれども、今日、日本でもようやく民主主義が定着をしてまいりますと、どういう現象が起きておるかというと、御承知のように核家族というのが非常にふえてきた。核家族がふえてきたということは、要するに親の代と子供の代は、かつて旧憲法の時代には戸主だとか家督相続とか、家という概念の中で包括されておった日本の社会構造が、これが要するにある世帯世帯によって区切られる段階に日本でも発展をしてきた。ですから、年寄り夫婦、子供夫婦というのは一緒に住むという形態から、だんだんと老人夫婦は老人夫婦だけ、むすこたちは独立の家計を営むという傾向が強くなっておるのが、いまの日本の核家族の現状だろうと私は思うのです。
 そうなりますと、その際に夫が死亡したときに、なるほど民法その他も子供に扶養の義務を課してはおりますけれども、実態としては、一緒に暮らしていれば扶養というのは非常に具体的になりますけれども、こうなるとなかなか問題が出てくる。当然そうなってきた今日の段階においては、私は、そういう夫婦の財産共有制という考え方が多少土台にもしあるとするならば、少なくとも二分の一は妻の法定遺留分として認めてやらないと実は困るのではないか。だんだんと子供たちに寄りかかっていこうというようなことができなくて、妻は妻としてだけ残って年老いた人生をあとやっていかなければならない人が今日だんだんとできてきておるというのが、今日の日本の社会構造的な状態じゃないのだろうかと私は思いますので、ひとつこの際、私が問題提起をしたいのは、もう一歩進めて――なぜかといいますと、私は、民主主義の原則の上に立てば、ものの考え方としては、われわれが働いてわれわれがつくった財産がもしあるとするならば、これをむすこたちが何ら労することなく引き継ぐというのは、これは実は多少問題があるのではないかと思っているのです。この間には相続税が相当かかっていいのではないかと思う。しかし、夫婦二人がつくった部分については、これが横向けに移動するについてはもっとおおらかなものがあっていいのではないか、社会構造的にもこれからは。そう考えてみますと、どうも遺留分三分の一というのは、今日の段階ではここから二分の一にしていいのではないかという気持ちがいま私しておるわけなんです。民法上、法定相続分について、これはひとつ政務次官、今日すぐしなさいというのではないのです。考え方として、今日の核家族の情勢から見たら、そういう方向に検討を進める余地がある段階に日本の社会構造はなってきているのではないかと思うのですが、どうでしょうか。
#109
○小澤(太)政府委員 堀先生のおっしゃることは、まさに核家族ということから多少そういう趨勢はあり得ると思います。さらに、先般、ごらんになったと思いますが、法務省で調査いたしました、妻の財産に対する共同の意識の問題では、これはとんでもない――とんでもないと言ってはおかしいですけれども、まことに日本の夫は妻を非常に愛しておるということがわかるようなことが出ておりました。夫が働いて得た財産、蓄積した財産はどうだ、妻とどういう関係が出ておるか、大部分が、八十何%ですかが、妻と一緒のものだということ。ことに東京のようなところでは九十何%がそういう意識なんです。ですから、夫が妻に自分の働いたものを当然一緒に働いたものとして分けてやろうというその気持ちというものははっきりあらわれておるわけです。ただし、それだけではいけませんので、今度は子供の関係がございます。また親の関係がございます。したがって、現在の状態では、共同でつくった、子供に対する妻の気持ちもありましょうし、そういうことからいいますと、やはり子供が三分の二で妻が三分の一という相続分の問題は、いまのところではまだ妥当しているのではないか。将来はわかりません。それから外国の立法例など見ましても、三分の一か四分の一、まあ日本より核家族的に進んだところでも、そういうところが多いようでございます。
 したがいまして、将来はいざ知らず、いまの状態では、情緒的にはそうでありましても、相続分の問題としては、妻が三分の一、しかし兄弟に対しては三分の二、親に対しては半分、同等、こういうのがまず適当な姿ではなかろうかと私ども考えておる次第でございます。
#110
○堀委員 いま、法務省の御調査で、財産権に対するアンケート、これは一ぺん資料としてちょうだいしたいと思っているのですけれども、子供の問題は、妻にとっても子供なんですね。夫にだけ子供じゃない、妻にも子供なんですから、妻としては、要するに自分がもらったものはこれはどこにも行かないのですね。横に一回すべってきたものは、やがては必ず下に下がるということになるわけですからね。ただ問題は、妻の生きている間、その妻が余生を暮らしていく。人生において共同で働いて得た財産が有効に使われることのほうが大事であって、妻がともかく六十歳、七十歳になれば、むすこたちというのは四十歳、五十歳になるのですね。言うなれば、父親の財産を当てにする必要のない年齢に来ておるのに、法定的にそうなるということになりますと、私が心配しておるのは、いまの家庭の構成は、むすこ一人ずつなら問題はないのですけれども、むすこには一人ずつ妻がつくわけです。ところが、妻にすると母は、なるほどそれは形式的には母でしょうけれども、これはちょっと感じが違ってきますから……。そこで私は、残された妻が子供のほうにいろいろものを言いたくてもなかなか言いにくいというのが今日の世上の姿ではないのか。要するに家つき、カーつき、ばば抜きというようなことがいわれる世帯になっておるこのことは、私は少しこの問題について、夫がそういう認識をしていれば、そういう時代こそ、やはりここらで二分の一の方向について検討をしてみる余地はあるのじゃないか、こう思いますが、法務政務次官どうでしょう、検討くらいできませんか。
#111
○小澤(太)政府委員 検討すべきかどうかということは、まだそこまでは遠いと思います。検討というのがどういう方向であるか――とにかくいまの日本人の感情としまして、親子の関係、夫婦の関係というような関係は、まだまだ先生のおっしゃるようなところまでいっていないのじゃないかと思うのです。いずれどうなるかわかりません。しかし、これは非常に大きな問題ですから、ここで軽々に申し上げることはできませんが、将来は一つの研究の対象にはなると思います。この程度でひとつ……。
#112
○堀委員 小澤さん、たいへん消極的なお話なんですね。研究の対象になる。私は、検討してみるということは、いますぐしなさいと言っているわけじゃないのですよ。しかし、やはり社会は動いておるわけでしょう。その動いておる中で、この法律ができましたのは昭和二十三年ですか、二十三年のときにおける日本の社会構造と、今日四十四年ですから、二十何年たって社会構造には変革があるわけであります。だから私は、そういう変革を踏まえて検討してみたけれどもまだ時期尚早というのなら、それでいいと思うのですよ。しかし私は、今日、そういう社会構造の変革、核家族の問題、さっき言うようなばば抜きの問題、そういう小澤さんや私ともの年代と――これはたいへん悪いですけれども、もうすでに過去になりつつある年代なんです。もう新しい時代、要するに今日昭和生まれというのがもう四十四歳までなっている世の中ですから。私はまだ大正だけれども、おそらく小澤さんは明治でしょう。明治は遠くなりにけりということばもあるのだから、やはり昭和は昭和の感覚の人たちが検討してみることが必要ではないのか、こう思うのですが、たいへんしつこいようですが……。
#113
○小澤(太)政府委員 そういう検討はもちろん必要だと思います。ただ申し上げるのは、こういう相続分だとか遺留分だとかいう問題はたいへん大きな問題ですから、これが機関車となって現在の国民感情をリードしていくというのは本末転倒であって、やはり国民感情が成熟することに従って、社会状態に従って、それにアダプト、適当するような法制を考えるということが正しいかと考えます。したがって、それは黙ってほうっておくわけではなく、よくこれを注視しながら、したがって、先般申し上げましたように、一応参考になるように、法務省において夫と妻の財産に対する意識の問題もアンケートで調査いたしております。これも関心を持っておるということの証左でございますから、そのように御了承いただきたいと思います。
#114
○堀委員 お気持ちはよくわかりました。いまのも確かに検討の一部ですから、ひとつそういう問題を含めて少し前向きに検討をしてみていただきたいと思います。
 そこで、今度は大蔵政務次官にお伺いをしたいわけですが、夫の意識も、いまのように法務省のお話で、いまの財産権に対する認識がきまりました。ですから、私はやはり相続税という問題もこの民法の思想を受けて――民法というのは一つの基本法ですから、その基本法の思想を受けてものを考えるのが筋ではないか、こう思いますけれども、ものの考え方だけをちょっと最初に伺っておきたい。
#115
○上村政府委員 いま相続関係について法務政務次官がお話しになりましたが、先生御案内のように、前は戸主権を認めて、そして長子相続制一本やりで相続をやったということから見ますれば、まあ三分の一の場合におきましても相当な改善だと思います。
 それから、今後のいき方ということの趨勢におきましては、先ほど先生がおっしゃったように、夫婦単位になってきますから、従来のいきさつから見まして、私は、今後次第に先生のおっしゃったような方向で検討されていくのではなかろうか。ただ、法律的にいいますれば、先生がおっしゃったとおりに、最近の夫婦単位の家族構成におきまして、所得は、夫婦で得られたものは共有財産になるわけですね。ですから、そういう法律関係をよく知っておる夫婦ならば、十分法律的に、現行法上でもその地位を確保させる法制にはなっておりますけれども、しかし、すべての者がそういう法律の詳しいことを知っておるわけではございません。そういう点からいいますれば、いま先生がおっしゃったような点において、税制的な部面でもカバーしながら、その実情に即していくような考え方が私はいいんじゃないか、基本的にですよ。ただし、実際の状態という問題につきましては、事務当局から説明させていただきます。
#116
○堀委員 そこで今度は、吉國さんだいぶ発言したそうだから吉國さんに伺いますけれども、相続税法第十五条の二に、十五年以上の婚姻をしておる配偶者に対する特例が設けられておりますね。十五年というのは何ですか。十五年とここで切って、十五年以上一年につき幾らと、こうなっているわけですが、これは一体何ですか。
#117
○吉國(二)政府委員 お尋ねの分は、多年連れ添った妻に対して居住財産を分与した場合に一定の控除を行なうという趣旨の規定でございますが、それを十五年以後累増することにして二十五年で頭打ちになるという制度をとっておりますが、これも制度をとるかとらないか、だいぶ議論がございましたけれども、いままでの御説明のような妻の夫の所得に対する貢献、したがって、その累積である財産に対する貢献度というものを考えて、少なくとも居住用の家屋を妻に与える場合には、当然にそこに何らかの配慮が必要であろうということできめられた規定だと思います。したがって、結婚して直ちに分与を受けたというようなことになりますと、みすみす相続税、贈与税の脱税ということにもなりますので、一定の定着した夫婦関係というものを前提にするために十五年以上というものを切ったということだと考えます。
#118
○堀委員 ここでは十五年以上たつと積み増せるようになっておる。ところが、今度は二十一条の五へいきますと、「その年において贈与に因りその者との婚姻期間が二十五年以上である配偶者からもっぱら居住の用に供する土地若しくは土地の上に存する権利若しくは家屋でこの法律の施行地にあるもの」云々、こういって、百六十万円までは大目に見ましょう、こういう話が続いて出ているわけですね。片一方は十五年、今度は片一方は二十五年以上、婚姻の状態について、たいへんこまかい規定を主税局は設けておるわけです。私はいま、二十五年も一緒におった者に対してようやく百六十万円の贈与というようなこと――これは贈与だけであって、どうせ相続の場合にはそれを差し引きますから生前相続みたいなことですけれども、このものの考え方、よろしゅうございますか、このものの考え方と、それからさっき私がちょっと言いかけた配偶者に対する相続税額の軽減、第十九条の二の第二号、これは私はどうも思想的に統一がないような感じがしてしかたがない。この第十九条の二の第二号では「当該相続又は遺贈に因り財産を取得したすべての者に係る相続税の課税価格の合計額(当該合計額が三千万円をこえる場合には、三千万円)を当該被相続人の第十五条第二項に規定する相続人がそれぞれ民法第九百条及び第九百一条の規定による相続分に応じて取得したものとした場合において、当該配偶者につき第十五条から第十七条までの規定を適用して算出した金額」こうなって、要するにここで一千万円までは無税にしましょうということになっているのでしょう、一つの考え方として。片方では、贈与をする場合には百六十万円までは無税にしてあげます。しかし、二十五年以上結婚してなければだめですよ、こういうことですね。私は、これを見て非常にちぐはぐな感じがしてしかたがない。
 そこで、ちょっとお伺いしたいのは、アメリカの相続税、贈与税は妻に対してどういう特例をとっておりますか。
#119
○吉國(二)政府委員 アメリカは御承知のとおり、先ほど来から御議論のございましたように、夫婦共有財産制と申しますか、共同財産制をとっております関係もございまして、妻の場合は相続税、贈与税を通じて二分の一の課税ということになっております。
#120
○堀委員 西ドイツはどうですか。それではあわせて、いまの所得の課税のほうと思想が一体ですから、相続、贈与について……。
#121
○吉國(二)政府委員 西ドイツもアメリカと類似したような二分二乗制を所得税法についてはとっておりますが、相続税法におきましては、これは若干アメリカとは違っておりまして、第一階級、つまり妻と子女に関しましては、低税率で課税をするということにいたしております。これはまあ低税率の程度が日本よりだいぶきついわけでございますが、日本でも妻といわゆる法定相続人の場合とそれ以外の場合とでは割り増しをしているようなことで、そういう類似の思想だと思います。したがって、西ドイツの場合は所得税、相続税を通じた制度としてはアメリカほどすっきりはしていないということでございます。
#122
○堀委員 ちょっと、第一階級と第五階級の差を具体的に言ってはっきりさしておいてもらいませんと、いまのようなあいまいなことでは、これは議事録に残りますから、第一階級の場合は一体最低何%から金額はどうなったら何%、第五階級というのは何か、これの相続、贈与についてはどうなっておるかということをやはりパーセンテージをもって言っておいてもらわぬと……。
#123
○吉國(二)政府委員 第一階級と申しますのは配偶者及び子女でございます。第五階級は、日本で申しますといわゆる親族からはずれておる者でございます。そして税率といたしましては、第五階級は最低一万マルクに対する一四%から最高千万マルク超の六〇%までの累進課税、それに対応する第一階級は二%から一五%までということになっております。
#124
○堀委員 御承知のように、贈与についてもたいへんな差を、要するに妻と子女といわば他人といいますか、その間に区別をしている。これが西ドイツの状態です。
 フランスはどうですか。
#125
○吉國(二)政府委員 フランスも西ドイツにやや似た形でございまして、直系親族間、夫婦間は五%から二〇%の累進税ということになっております。その他の場合は、傍系親族及び非親族間ではそれぞれ差がございますが、最高六〇%の累進税率が適用になるという制度でございます。
#126
○堀委員 政務次官、いまお聞きのように、フランスも二分二乗じゃないのです。フランスのは、子女を含めまして実はたいへん合理的な所得税の措置になっているのです。個人所得税の税額は、準所得額を家族除数で除した額に累進税率を適用して算出した額に、さらに当該家族除数を乗じて計算する、こうなっております。ただし、夫婦二人の場合はやはり二分二乗になる。ところが、その子供がおりますとこれが、二が三になり、三・五になるというたいへん合理的なそういう思想が導入されておりますが、御承知のように、全体的に見ましてアメリカが一番きちんとしておりまして、相続、贈与ははっきり五〇%に割り切っているということは、半分は奥さんあなたのものですよということをはっきり所得税段階でも相続税や贈与税でも全部一貫して認めておるわけです。西ドイツへいきますと、所得税は二分二乗方式ですけれども、さっきお聞きのようにこれは段階的な相続、贈与。大体相続、贈与一本の体系になっておる。日本のように相続と贈与を別々に分けたような――本来別々になっていないんですが、思想としてちぐはぐになっておるところは、実はほかはあまりないのです、みな大体思想が同じですから。相続税の比率が贈与税にかかって、同じようにいまの西ドイツのように最低二%から一五%まで、片方は、他人に対しては六〇%というような高率の贈与税をやっておるのはあたりまえだと思うのです。実はフランスも同じようなことになっておる。
 そこで、私がこの間予算委員会で議論をいたしましたのは、大体日本の贈与については、もう子女であるとか妻であるとかということは一切おかまいなしの贈与税だということになっておる。ここに日本の贈与税の思想が欠如しておる。やはり思想は、さっき私が相続税の配偶者控除その他の関係でちょっとここで触れましたごとく、要するに一千万円までの所得については、法定相続分については無税にしましょうということは、主人が残したその三千万円の財産の中の一千万円というのは、奥さんあなたの力によってできたものだから無税にしましょうという思想が初めてここに出てきたんですね。法定相続税についてはこの考え方はたいへんけっこうだと思うのですけれども、それが贈与のほうについてはどうなっておるかというと、私がいま触れたように、二十五年間一緒にいた人で初めて、それももっぱら居住用の財産に充てる、こうなっておりまして、国税庁で調べてみると、もっぱら居住用の財産というものはどうかというと、九〇%居住用でないとだめだと言っておるのです。私はこれはちょっと問題があると思うのです。それはなぜ問題があるかといいますと、要するに御主人が年をとってこれから奥さんが今後やっていかなければならぬ。むすこも独立をしておるけれども、なかなかむすこの世話にもなれない、子供たちの世話になれない。そこでひとつアパートでも建ててアパートの収入くらいで主人が死んだら細々それで暮らしていこうか、こう考えておる奥さんに、そのアパートとはもっぱら居住用のあれかということになると、それは違うのだという議論が出てくる余地が実はあるわけです。あるいは小さなお店をやっておる。それは、奥さんが片手間程度にやる店でしょうけれども、そういうお店をやっておる。その店の部分がその居住用財産の一〇%をこえてしまったら、これはもっぱら居住用の財産ではないということになるようでは、私は非常に問題があると思うのです。
 ですから、二十五年も一緒に連れ添った人に生前贈与をする贈与のあり方というものは、やはり西ドイツやフランスやアメリカの例にならって、相続で一千万円までのそういう横すべりを認めるならば、生前だってそれとちょうどバランスのとれた妻に対する贈与という制度を確立すべきではないか、こう実は考えて、この間予算委員会で論議をしたわけですが、時間が不十分でしたからこまかいところに触れていないわけですけれども、きょうは少し詳しくこまかく論議をして、少なくとも来年度の税制から日本の税制もアメリカ、西ドイツ、フランスに劣らないような思想の上に立った合理的な税制にしてもらいたい、こうまず第一点思うのですが、どうですか、政務次官。
#127
○上村政府委員 基本的な考え方は先ほどからずっと一貫して申し上げておるとおりで、先生のおっしゃるような節が理論的には筋が通るような気がします。でございますので、いま局長が御説明申し上げましたように、外国もその線で割り切っておるわけです。けれども、ただ先生も御案内のように、日本の家族制度というものは、アメリカやフランスやあるいはその他ともずっと違っておるのであります。戦後におきまして急角度に変わってまいりましたけれども、しかし、まだ国民感情なりあるいは日本の家族制度なりというものは、法律の制度とそれから実態とはまだ一体になっていない線がある。こんなようないろいろなことが加味されながら、いろいろと矛盾したようなものが出てきておるのだろうと思うわけでございますけれども、しかし、これも次第に世の中がずっと変わっていくのですから、それに沿うように国民感情が許すような方向で割り切っていくということが必要だ、私はこう思っておるわけです。
#128
○堀委員 局長にお伺いいたしますけれども、だから私は、これは進歩だと思っているのですよ。要するに皆さんが百六十万円の二十一条の五を新設をしたり、あるいは十九条の二の二号を新設をしたり、十五条の二を四十一年に追加したりしたことは、これまでのいろいろなあり方からみたらたいへんな進歩だと私は思っているのですよ。ただ残念ながら、それがちょっと個別ばらばらになっている感じがしてしかたがないのでね。やはりこういうものは一つの相続税法の中ですから、ある一つの体系として理解をされるような形にだんだん整理をされて、まあ最初にそうなったのだからあれですが、今度やる、来年には、ことしひとつ税制調査会のほうに御相談をいただいて、総理大臣も乗り気なのですし、この間ちょっと廊下を歩いていたら官房長官が、堀さん、あれはいいな、おれは大賛成だよと言っておられるし、おそらくあの日予算委員会に出席をしておった予算委員、政府関係者であれはおかしいと言う人はほとんどいなかったようですから、だからひとつそこらは――それがやはり私は国民感情というものだろうと思うのですね。国民感情というのは、やはりすなおに筋を理解するものだ、こう思うのです。だからひとつそういう点ではもう少しバランスのとれたものになるように、皆さんも頭を切りかえてやってもらいたいと思うのですが、どうでしょうか。
#129
○吉國(二)政府委員 いま御指摘がございましたように、日本の民法の制度を前提にした場合には、いまの相続税法は非常に進歩であるとおっしゃったのはそうだと思います。アメリカは二分二乗をとりましたが、こういう制度をとるまでには憲法論争が大いにあった。共有財産制というものをどう解釈するか、しかも州際で違っておりますから、非常な論争があった末にこれが採用になった。日本の場合は民法自体が特有財産制でございますから、本来基盤が全然違うわけであります。それを妻の貢献度というものを見て、税制上は三千万円を限度として、法定相続分についての税を最初二分の一にしておりましたが、それを免除するというところまでいったわけでございます。
 それから、贈与につきましては、ただいま御指摘がございましたが、この贈与税というものは何しろ毎年毎年贈与をして相続税の控除を免れるという、控除額をより大きくするということはある程度常識になっているような状況でございます。贈与は毎年できるというところから、相続税にかりに一千万円の控除があるといたしましても、その控除を贈与を何回もやることによってより拡大することもできる。そういうところから、贈与税については日本では伝統的に控除等はきびしくやっているわけであります。
 最後に、アメリカの場合のように、二分の一が配偶者のものであるという前提でございますと、贈与をやったときもそのまま二分の一はできるわけですから非常にすっきりするわけでございます。日本の場合は本来特有財産である。しかし、相続の際には一つの限度をもって免税をきめておるということになりますと、今度は具体的な贈与をやった場合に、かりに三分の一免税にするということにいたしますと、実際はその限度をオーバーしてしまうという問題も出てまいります。その辺がなかなかむずかしいところでございまして、首尾一貫していないという仰せはもっともなのでございますが、贈与税と相続税が宿命的にそういう関係にあるものでございますから、いまのところそういうかっこうがとられております。もちろん、もっと別の考え方ができるかもしれません。これは税制調査会等でよく論議してみたい、論議していただきたいと思っておりますが、いまの制度としてはそういうところが一つのポイントになっているのではないかと思います。
 先ほど御指摘がございました二十五年以上たった場合の贈与税の問題も、相続税の二百万円の控除というものを前提として、まあ二十五年たったら相続でなくともそれだけのものを家でやるならやったらよかろうということでできた制度だと思いますが、それが適用になれば相続税のほうの二百万円の控除は飛ばしてしまう、そこは妙な首尾一貫をしておるわけでございますが、相続と贈与との関係は実務的にも非常にむずかしい問題がございますので、よく検討いたしてみたい、かように考えておるわけでございます。
 なお、アパートの場合などは区別ができないわけでありますから、アパート一軒やった、その場合に奥さんが使っている専用部分は、これは百六十万円の控除の適用をするという扱いにしているようでございます。
#130
○堀委員 いや、実は私がこれまでやってきた贈与に対する議論は、アメリカは二分の一にしても、西独でもフランスでも妻や子供に対するものとその他に非常に段階が設けられておりまして、税率に非常に差があるわけですよ。贈与の性格というものがやはり相続と非常に似ているわけでありますから、贈与と相続はいわば生前と死後に起こるかの違いで、行為としては一体ですからね。それならば、贈与だってやはりいまの日本の贈与税というものは他人であろうと妻であろうと同じ税率になっているわけでしょう。違いますか。どこが違いますか、贈与について。
#131
○吉國(二)政府委員 贈与については同じ税率を使っているわけでございます。
#132
○堀委員 だから、そこを私言っているわけですよ。いいですか。要するにいま国民の中で税金に詳しい人は、四十万円先にやって、次に二十万円やって、また次に二十万円やって、その次の年に四十万円、その次に二十万円、二十万円と、そんなことは大蔵委員の皆さん方だってあまりよく知らないのじゃないですか。贈与税というのはそうやるならば税金はかからない、こういうことを知っているのはごく一部なんですよ。そんなことを毎年毎年実際にはやれませんよ。だから実際はそういうふうにはならないで、あとから換算してどうなるかということに一般的にはなっていると思うのですね。だからそういう場合に、いまあなた方のほうでは抜け道の問題ばかりを考えないで、私は少なくとも妻だけには、いまの一千万円までは横すべりを認めるという思想を確立した以上は、贈与について妻の特例として、言うなればその贈与された金額のうちの三分の一を控除するなら控除して、残りに同じような税率をかけるというならまだ話はわかるけれども、妻の贈与についてやはり何らかの――相続税はそういうかっこうで横すべりを認めた以上、その思想をやはり贈与についても適用するのが正しいのではないのか、こう言っているわけですよ。よそはみんなそうなっているのだから。西ドイツだってフランスだって、相続税と贈与税について格差を設けているわけだから。あなたがここでそれを言ったように一五%−六〇%、一番高いところで一対四の比率の格差が設けられているわけでしょう。だから、当然贈与についてもそういう思想を導入して、妻に対する贈与というものがもっと合理的に行なわれるようにしたほうがいいのではないのか。
 なぜ私がこのことをやかましく言っているかといいますと、要するに日本は非常に物価が上がるのですよ。どんどん物価が上がる中では、死んだときに財産の贈与を受けるよりも、もらうよりも、生前にもらったものがもし土地や建物になっておるのならば、それによって妻は将来安心して生活ができる余地があるのだけれども、残念ながら死んだときにしか問題がそういうふうにならぬといことでは――物価が安定していればこんなことはどっちだっていいのですよ、一緒に暮らしておる間のことだから。残念ながら物価は非常に上がるし、今後も日本は当分の間上がる方向は避けられない。こうなっておる段階で考えると、私は、生前贈与の問題について妻の立場をもっと何とか考えてやらなければ、せっかく一千万円の横すべりを認めても実態としては不十分ではないのか、こういう言い方をしておるわけですよ。わかりますか。
#133
○吉國(二)政府委員 御趣旨はよくわかりますが、一方においてそういう西ドイツなんかでもその点贈与税をかけておいて、離婚でもするとそのときに分与財産の範囲で調整するという、一種の累積的な考え方をしております。アメリカでも贈与については累積課税をやって、最後には相続税と調整をとっている。これは一つの考え方だろうと思うのです。日本でもその制度をシャウプ税制で一ぺんとりましたけれども、とてもその累積が複雑でやっかいであるということでやめてしまったわけです。そういう意味では、ほかの国の贈与税と違って、分割相続を起こす可能性を押えるためにかなりきつくなっているのは事実です。また、累積課税を復活するとかいろいろな考え方もあると思うのです。ただ漫然と贈与税を軽くしてしまいますと、相続税の体系がまたある意味ではもたなくなりますから、その辺をもっとこまかく考えてみる必要があるのではないかということを、私ども事務官としては考えるわけです。
#134
○堀委員 実はこの十九条の二の法律を審議をしたときに、当時塩崎さんが主税局長として、要するに、横すべりというのは将来また上から下へ移動したときに税金が取れるから、横すべりの段階を非課税にするというのは当然ではないかと思います、という説明を実はしているわけですよ。だから私が言っているのは、贈与税は何でもかんでも安くしろと一言も言ってないのです。さっきから一連の説きおこした夫婦共有財産制という考え方、これが少なくとも民法の中には思想としてあるわけですよ。表にはそういうふうに書いてありませんが、民法にはこれは特有制になっているんですよ。しかし、思想として流れているのは、共有制ということを私はさっきから九百条、七百六十八条を援用しながら言ってきたわけです。だから、横すべりについてだけは贈与でももう少し特例を考えていいんじゃないか。あとはどうせそれはやがて下にいくにきまっている。そのときに取ればいいのですよ。私は子女にいくものと、それから妻にいくものと区別して考えているわけです。それは世帯の横すべりという考え方と、上から下への問題と二つに分けて考えているから、税務当局としては下へ下がるときにそれはそれなりに取ればいいですよ。私の思想からいえばそうです。私は、大体民主主義の原則というものは、親は子供を一人前にする責任はあると思うのですよ。一人前にしたらあとは子供が独立して生計を営んでやればいい。そのかわり親は子供の世話にならぬ。どうせ親は自分たちで働いたものの蓄積の中で、親は親として独立の生計を死ぬまでやるというのが民主主義的な考え方の基盤にあっていい問題じゃないかと私は思う。だんだんそういう傾向に日本の社会構造は動きつつあるわけです。私のうちのおやじはそういう考え方だから、要するに大学を出て結婚したらおまえの住む家だけはやる、あとはおまえしっかりやれ、おれは知らぬ、そのかわり年をとっても世話にならぬ。今日九十歳になりますが、世話をしない。おやじに仕送りも何にもしない。おやじはおやじで自分で今日まで生活をしている。そういう関係です。だから親は親として、私は仕送りでなしにおやじにいろいろと協力するが、これは全然親子の情の問題だ。少なくとも理念的な考え方としては、私のところでは割り切れておるわけです。私は長男だけれども、結婚してもおやじと一緒に生活してないし、全然見ないわけです。結婚したらみんな出ていって、おやじはおやじとして生活をしている。将来私はだんだんこうなると思うのです。そうなってくる考え方の基本として、私は夫婦間の問題だけはもう少し考え方を改めておく必要があるんじゃないか、こう考えておるものだからこの問題をずっと提起しておるわけです。
 だから、ここで私がどうしろこうしろと言ったところであなた方も困るだろうから、それは研究課題として考える。思想としてはそういう横すべりというものを贈与税についても考えるということですね。横の問題と上の問題を整理をして贈与税の問題で考えるということは、それが私がこの間の予算委員会で言った中身ですから、これは皆さんもそういう形で理解して検討してもらいたい、こう思うのです。政府次官、よろしゅうございましょうか。
#135
○上村政府委員 それでいいと思います。
#136
○堀委員 ですから、それを今度は背景にして、その問題がそこまで進歩してきたのだから、長期的には日本の場合にもそういう二分二乗方式的な考え方――いますぐにはいきません。これは税率の刻みや何かのあり方がそういうことを予想してできておりませんからなかなかできないとしても、少なくともそういう相続、贈与の問題についてそういう考え方が確立をしてくる過程の中においては、所得税の課税のあり方についても二分二乗方式の考え方というものは、少なくとも一つのメルクマールとしてここにあげておいて、そうして今後の税率構造を変えていくときに、それが将来あったときにあまり不当な問題の起きないような形の配慮をしていく必要があるのではないか。これが私の言う思想的な問題として体系が全体として一つ組み込まれてくる中で――これはやはりいろいろばらばらになっておるものをこれから直すわけですから経過的に時間があります。時間がありますけれども、私が当委員会でいつも言うように、少なくとも政策にはやはりビジョンが必要だと思いますね。ある一つのビジョンを掲げて、そのビジョンに向かってどういう形で接近をしていくかという接近のしかたは、客観情勢や景気の変動やいろいろな問題があるし、財政上の問題でありますから、一直線にはいかないと思いますが、しかしビジョンがあってその方向に政策を進めるというのではないと、さっきちょっと私が触れたように、ちぐはぐになる。ここだけやっておく、ここだけでやっておく、こういうことになって、その時点ではバランスをあまりにも失するようになりやすい問題がありますから、その点私は、相続税、贈与税の問題をやって進めるかたわら、長期的にやはり二分二乗方式の問題を頭の中に置いて今後の税率の処理を考えるということが必要なのではないか、こういうふうに思うのです。政務次官、どうでしょうか。
#137
○上村政府委員 そのとおりと思います。
#138
○堀委員 そこでもう一つ、きょう午前中に広沢委員も触れておられるからあれですが、税率のいまの刻みの考え方、今度一つ改正されたわけですが、今度は五%が四%になったという問題が一つありますね。ただ私はこの中で、日本のような物価上昇の激しい国では、この上下の関係もさることながら、横の関係のほうがもうちょっと先にあってよかったのではないかという気がする。この点はどうですか。
#139
○吉國(二)政府委員 御指摘のように、税率の適用の幅を広げるというのが一つの考え方だと思うのです。長期税制の答申では両方をやろうということになっております。ただ、今回の改正の方向といたしましては、やはり下のほうの税率も下げるということがどうしても必要な理由がございましたので、四%と一%でも下げておいて、次の機会に全面的な実施を企図するということで、むしろ税率の引き下げのほうにまいりましたけれども、方向としては両方、二つやることによって初めて中堅層の中ぶくれが解消することになると思います。
#140
○堀委員 特にどっちを優先したか、それはいいのですがいまの、御承知のように物価上昇がこうありますと、これは短いものだからすぐ飛び越えてしまう。名目賃金の伸びだけで次の四%にひっかかってしまう。これが少し伸びてくれば、物価上昇があっても――それは、端っこにおる人はしようがない、すぐひっかかるが、今度ひっかかったあとは、しばらく間がありますね。いま幅が少な過ぎるんだから、名目で何回も飛び越えてしまうという問題があるので、私は物価上昇が強いこういう時期は、順序として先にこっちをやってもらったほうが、要するに名目的増税が避けられるということで有効ではなかったのか。だから、必ずあなたのほうではあとやるのですね。ちょっと、やるということを答えてください。横を広げるのをやるという……。
#141
○吉國(二)政府委員 長期税制の線は必ず実現をするというのが私どもの決意であります。
#142
○堀委員 必ず実現する、それは十年か二十年たてば実現するだろうが、そんなゆうちょうなことを言っておられないと思う。だから私は、最初は、今度の税制改正でいまの幅のほうが伸びるんだと思っておった。物価調整減税ということが非常にやかましい段階だからね。ところが、先に率が下がってしまったものだから、やや意外な感じがしたのですが、これはひとつ早急にやってもらいたいと思うのです。そういうのをやる過程の中で、しかし、いま政務次官答えられたように、ビジョンをひとつ明らかにしてこの問題に取り組んでもらいたいと思います。
 私、あと十分間しかないので、今度ちょっと話は別になるのですが、所得税の問題というのを考えておりまして、どうも今度初めてだろうと思うのですが、法人税よりか所得税が収入見込みでは多くなりましたね、四十四年度は。この前から日本の鉱工業生産はたいへんな成長を遂げて、昭和四十四年度ではおそらく世界で第三位、資本主義社会では二位ということになるのは、もう間違いないと思うのですね。それほど鉱工業が伸びておって、そうして国民所得は二十一番目だといわれているわけです。相変わらず二番のほうが納める税金が少なくて、二十一番目のほうが納める税金が多くなったというのは、これは政務次官、どういうことなんでしょうね。これは素朴な国民感情からいうと、全くふしぎでしょうがない。造船世界第一位、自動車世界第二位、テレビその他も世界第一位、世界一なんという生産はずいぶんたくさんあるわけですね。そういう中で国民は二十一番目だといわれているときに、所得税のほうはふえてきているわけです。政務次官のほうから先に聞きたいと思います。
#143
○上村政府委員 基本的な点だけについてお答え申し上げたいと思います。
 先ほど広沢先生からもその問題につきましてずっと御質問があり、お答えをいたしたわけでございまして、そういう点につきまして私どもも奇異に感ずる点もありますし、何らか検討しなければならぬ段階に至っておるであろう、こういうわけで四十五年度の税制に対しまして、この四十四年に何らかの検討を進めたい、こう思うわけであります。
#144
○吉國(二)政府委員 所得税が法人税より多かったのは、三十一年まではずっと所得税のほうが高かった。ところが、三十二年に大減税をやりまして、法人税が上回りましたが、景気が悪くなりました四十年にはまた所得税が上になり、四十三年の実績でも法人税が下になり、ことしの見積もりでも下になったという結果になっておりますが、これは先生も御承知のとおり、日本の国民所得、分配所得の中で法人所得が一五%くらいで、八五%は個人所得になっておるわけであります。したがいまして、むしろ各国では所得税のほうが多くて、法人税のほうが少ないのが常態なんです。日本では法人税が所得税を長いこと上回っておったというのは、むしろよく法人税をとっておったのではないかという感じもいたします。所得税は減税を続けていかなければならないと思いますので、今後も法人税をそう上回っていくのは、私もよくないと思いますけれども、一方において一人当たり国民所得がだんだんふえてまいりますと、どうしても所得税は累進課税でございますから、やや上昇傾向がございます。景気によっては、法人税は比例税率であるだけに減る場合もございます。所得税が上回ることも、今後もやはり相当あるだろうと思いますけれども、アメリカに比べて一人当たりでは三分の一程度の所得でございますから、アメリカのように所得税二、法人税一という関係は、これは無理だと思いますが、現在のところでは、まず所得税、法人税はほぼ拮抗した姿で今後も推移するのではないか、こう考えます。
#145
○堀委員 実は通産省の「世界の企業の経営分析」というのを少し調べてみますと、こういう事態が明らかなんです。鉄鋼をとりますと、日本の大手四社の平均は、粗付加価値額の中に占める租税公課が九・一七%です。アメリカは、USスチールは一四・一二%、レパブリックは一四・八三、同じくアメリカのアムコは一二・一一、西ドイツの上位四社の平均は一一・二一、こうなっているのですね。そうしますと、少なくともアメリカと日本の鉄鋼業の場合には、租税公課では約五%の開きがあるということになっているわけです。今度は減価償却を見ますと、要するに日本の四社の平均は二三・四六%、アメリカのUSスチールは一一・一七、レパブリックは九・〇九、アムコが一一・三六、西ドイツの四社平均が一六・九〇、こうなるのですね。要するに税金の面では五%安い、減価償却の面では倍ほど日本は減価償却ができておる、こうなっておるわけですね。これではいまの二十一番目から上がっていって、そうして世界第二の鉄鋼生産の税金が安くなるのは当然ではないかと思いますね。これは鉄だけですけれども、あとどれを見ても、おおむねそういうかっこうです。化学、自動車、みなたいていそうですね。だからこれを見て私は、日本の企業はありがたい企業だ、それは租税公課の比率が安いだけではなくて、償却をアメリカの倍も見てくれる税制だということですね。これが私は、日本の高度成長を誤らせておる最大の原因ではないかと実は思うのです。だから設備投資をすれば、それはすぐ固定資産になって、もう翌年になれば、それが償却をされてくる。要するに設備投資をすることは、端的にいえば最も利益を圧縮するといいますか、表面上の利益を圧縮するかっこうになって、強度の資本蓄積が企業の中にできる。そのことが結果としては、日本の高度成長をよけいに進みさせ過ぎて、その結果は物価が上がる、物価が上がると国民が預けておる領金は上がった分だけ貨幣価値は下がる。企業は、借り入れた分はそれだけ貨幣価値が下がって借金は少くなる。要するに、すべての仕組みがぐるぐる企業のほうに上積みをし、こっちへ上積みしただけ国民の側がだんだん下がる。それでいまの二十一番目という問題が出てくる。こういうのがどうもいまの日本の社会構造で、それを大いに税制が手助けをしておる、こういう感じがしてならないのです。
 だから私は、やはりここまで来たならば、この間福田大蔵大臣の話を聞いておりまして、何か公債の火種がいつまでも要るんだ、それはフィスカルポリシーの種だとおっしゃっている。フィスカルポリシーというのは、要するに支出だけでフィスカルポリシーをやろうと思ったら間違いで、収入にもフィスカルポリシーというのがあるのですね。
 ですから、私はもう少し主税局はそういう意味では、あなた方もフィスカルポリシーが必要だと思うならば――思わなければしかたがないけれども、思うならば、主計万能の考え方ではなくて、主税は主税なりにもう少し筋の通ったフィスカルポリシーについての考え方があっていいのじゃないか、私はこう思うのですが、どうですか。
#146
○吉國(二)政府委員 ただいま御指摘がございましたが、日本の企業の減価償却額が大きいというのは、決して減価償却の耐用年数がほかより短いというようなことではないのでありまして、むしろ現在西独などよりは耐用年数が長いといって非難されておるのであります。国民総生産をとってみましても、資本減耗引当金は国民所得に比べて二〇%以上というのが常態になっているのは、世界じゅうどこにもないわけでありまして、つまり新投資が非常に大きいということで、アメリカの大企業の場合は古い資産を使っておりますから、償却がない。日本の場合は戦後に急速に投資をしておりますから、減価償却が多い。これはあたりまえの話でありまして、これは税制が悪いのではないと私は思っております。
 それから租税公課が安いというのは、付加価値の内訳がだいぶ違うと思います。日本の場合は、さっき御指摘があったように、借り入れ金ばかり使っておりますから、付加価値の中で利子の支払い金が非常に大きいわけでありますから、付加価値全体は似ておりましても、所得に対する公課ということから見ると、付加価値がそのまま所得になりませんで、ずっと圧縮されてしまう。したがって、所得に対する租税の割合は当然低くなって、付加価値の中ではずっと低くなる。それはそういうことだと思います。
 それから、フィスカルポリシーの点につきましては、これはもう私どもいまここで長々と申し上げることもないかと思いますが、いつも申し上げているように、日本の場合、いま申し上げたことがそっくり適用になると思いますが、日本の法人というのは、借り入れ金が非常に大きいものでございますから、借り入れ資本に対する支払い利子が付加価値の中で大きな比率を占めている。したがって、増益が生じますと、いわゆる普通の営業利益というものがふえれば、それを上回って純利益がふえる構造になっておりまして、営業利益の中で三分の一以上が支払い利子になっております。また逆に不況になってまいりまして、減益が生じますと、その営業利益の減った以上に純利益が減ります。したがって、法人税は営業利益が減った以上の減り方を示すわけです。これが不況期には、企業に対する資金の緩和になり、好況期には資金の圧迫になるという非常に大きな自動調節作用を持っているわけです。これ自体は、他の金融なり歳出面なりが、それに沿った政策がとられる限り、日本ほど大きな景気調整能力を持った税制はないと私は思っておるわけでございます。ただ、それを相殺するようなことをやってしまってはだめである。したがって、こういう税制の持っておる非常に大きり景気調整力を、ほかの施策とあわせて生かしていくようにするということが、私は一番大きな景気調整の手段であろうかと思っております。もちろん、いろいろきめのこまかい調整手段も考えられるわけでございますが、基本的にはそれが一番大きいということを私はかねがね申し上げておるわけでございます。
 また御異論ももちろんございましょうから、いずれ機会を見て……。
#147
○堀委員 ちょっといまの問題は、五分やそこらで議論はできませんから、次回にまたゆっくりやらせていただくことにしまして、本日はこれで終わります。
#148
○田中委員長 竹本孫一君。
#149
○竹本委員 きょうは、大臣もお見えになりませんから、主として事務当局のものの考え方を伺いたいということでございます。
 今度の税制改正案が出てまいりましたが、それがどうして、またどういう考え方で取り組まれた結果そういうものになっておるかという、その背景といいますか、それについて主税局長さん、その他の事務当局のお考えを承りたいと思います。したがいまして、あまり議論はいたしませんで、主としてお考えを率直に承りたいということでございます。
 まず第一は、税法を論ずる場合に、一番大事な負担の公平という原則について、今日では給与所得と勤労所得との間、大企業と中小企業、零細企業との間、高額所得者と零細なサラリーマンとの間、そういったものの間の負担の公平の原則はどの程度貫かれておるというお考えであるか。どういうところに問題点、今後の努力目標を向けておられるか、その辺を伺いたい。
#150
○吉國(二)政府委員 たいへん広範な御質問でございますが、いまの税制調査会の率直な意見を申し上げますと、税制調査会の考え方は、現行の税体系というものを基本的に維持しながら、全体としての公正化をはかっていくという考え方をとっております。言いかえれば、いまの日本の税体系では、西欧諸国と非常に違っておりまして、一般売り上げ税、付加価値税というものを欠いているわけであります。一面には、所得税負担が重過ぎるとかあるいは不公平であるという声が非常に大きいために、一般売り上げ税的なものを起こして、むしろ間接税系統に負担を求めるべきではないかという思想もございます。あるいはまた、社会保障がだんだん充実してくる場合には、一般的な税収というものも考えていいのではないかという観点から、付加価値税を主張する人もございます。そういう点が、一つの租税体系をつくる上で日本の今後の重要な問題だと思うわけでございますが、いまの税制調査会の考え方は、将来の問題は別として、現在は、日本の税体系は直接税、ことに所得税に中心を置きまして、それに対して個別消費税を配置する、個別消費税は、主として酒、たばこというようなものは別といたしまして、日常生活に関するものについては、奢侈税あるいは趣味その他の娯楽というものを対象にしたものに限定するように努力して、できるだけ担税力に相応した課税をしたいという形をとっております。この形は、所得税というものは、何と申しましても所得に対する課税でございますから、市場経済に撹乱を与えないで、さらに累進課税をとって所得税の垂直的公平を期するということで、全体としていまの日本の税体系を基本的には維持するという方向で、しかもその中でなお公平を欠いている部面を適時適正化するということを基本に置いていると思います。
 さらに、税制上の公平と同時に、実施上の公平もはかっていかなければならないという問題があるわけでございますが、これは税制調査会の考え方をもちろん前提にしているわけでございます。
 なお、特別措置等のいわゆる原則的な税制に対する特例措置につきましては、税制調査会としては、これが国民経済全体の利益にかかるものであり、かつ、その利益が税の若干の不公平を償って余りある場合に限って厳格な判定をもって認めるべきであるが、とかく租税特別措置というものは、一たん認めると特権化し、慢性化するものであるから、絶えずこれを洗い直すべきであるという考え方を持っているわけでございます。数年前から特別措置には必ず期限を付する――期限を付したら、その場合に期限がくると、必ず終わりになるわけではございませんが、見直しのチャンスは必ずチェックしておくという考え方を採用したのも、そのあらわれだと思います。
 現在、税制調査会を中心にした、日本の税体系についてこれをいかに公正化するかという点についての基本的な考え方は、いま申し上げたとおりではないかと思います。
#151
○竹本委員 特別措置の問題は具体的な御答弁がありましたけれども、いわゆる垂直的公平、水平的公平なるものを全部うまくやっているというようなお考えのようであるが、私が伺ったのは、こことここにはまだ問題があるというふうに考えておられるのかということです。
 もう一つは、税負担の問題が出ましたけれども、負担は重たいとしても、公平であればまだいいので、その公平のほうを私は特に言っている。
 それから、税調のお考えの御説明がありましたけれども、それ以前の主税局のお考えを承りたい、こういうことです。
#152
○吉國(二)政府委員 いま御指摘のような公平の問題という点につきましては、現在、税制では公平を害する面としては、やはり各種の特別措置が非常に大きい問題だと思っております。これは、やはり長時間をかけても、できる限り適正化していくべきだと思います。
 それから、実際上の不公平といたしましては、これはやはり申告所得税というものの改善をはかっていかなければならないということがあると思います。これがやはり基本的な問題だと思います。しかし、これも二十数年来の努力でようやくその点は緒につきつつある、国税庁ではその信念のもとに努力しているわけでございます。しかし、これは絶えずその方向で努力をしなければならぬ問題であると同時に、源泉所得税の納税義務者が同じような把握の状態を求めるということではなく、申告納税義務者がやはり自覚して同じ把握の状態に持っていくということも、やはり精神的には進めていくべきであると考えているわけでございます。
 それから、問題として残っているのは、すでに皆さんも御指摘になりました法人税の課税対象、これは先ほど来から御指摘がございましたように、基本的なものの考え方としては二つあると思いますけれども、それにしても、いまの税制は、その基本的なものの考え方の一つをとったとしても、非常に不徹底だということが指摘されております。これはどうしても何らかの形で是正をはかる必要がある、これが具体的な問題としては一番大きな問題として私どもに残されている問題である、かように考えております。
#153
○竹本委員 きょうは議論はあまりいたさないで、お考えを承るほうに重点を置きますから……。
 次に伺いたいことは、これは総理が見えれば総理に伺うことでありますけれども、いわゆる百万円減税の問題、これは野党はみんな協力をして百万円減税を早く実現しろという要求を出しましたし、去年の予算委員会でしたか、この問題が非常にクローズアップされて論ぜられたそのときに、政府は、答弁は少しあいまいだったと思うのですけれども、一応は四十五年までということであるけれども、四十四年にやれるならばやりたいというような含みで答弁をしたと思うのです、速記録なんか一応別にしましてね。
 それで、私の考えでは、ことし百万円減税は一兆二千億の自然増収がある際であるから、ほんとうにやろうという気持ちになればやれたのではないかと思うわけです。それを特にやらなかった事務当局としての考えを聞きたいのです。それは、事務当局としてはやろうと思ったけれども、上からの政治の方針で、減債だとか九千億の歳出のほうに回すとかいったような問題でやれなくなったのか、初めからやることを忘れておったのか、あるいは言ったけれどもだめだったのか、その辺を伺いたい。
#154
○吉國(二)政府委員 御承知のように、百万円の公約というのは与党側が出して政府がこれを裏書きしたようなかっこうになったわけですが、その百万円というものを前提にしながら、全体としての所得税の均衡をはかるためにはどうしたらいいかということを税制調査会で検討していただいたわけでございます。
 ところが、百万円まで課税最低限がまいりますと、課税最低限の幅はかなり広くなっておりますが、その上の税率の幅は昔のままでございますから、ちょうど三十二年でございますと、課税最低限の幅に比べると、相対的に税率の適用幅が三分の一ぐらいになる。それから見た刻みになっておるといってもいいと思います。そういう意味では、それに応じて、先ほど堀委員がおっしゃったように、税率の幅をもう少し広げていかないと、下のほうから押し上げられて、税率の累進度だけが、ことに下のほうの刻みの早く到達するところはラクダの背中のようにふくれているという現象が見られるわけです。実効税率の線を引きましても中ぶくれの形が出ております。そういう意味では、税率を課税最低限とあわせて調整する必要性というものが非常に強くなっているということが指摘されました。
 それと同時に、給与所得の必要経費という問題として、その概算控除をやっております給与所得控除が、最近急激に定額控除を引き上げましたために、低所得者には非常に大きな控除になっておりますけれども、やや上のほうの所得者になりますと急激にそれが低下してくるということがございまして、給与所得控除をさらに上まで拡大する必要があるのではないかというようなことがあわせて指摘されました。
 この三つを合わせた一括の税制改正案が提案されたわけでございます。一番いいのは、これを一どきにやるのが一番いいわけでございますが、財源的にそれはことしは無理であるということになりましたときに、百万円を先にするか、それともこの三つのセットをそれぞれ部分的に実施するかということが一番大きな問題になったわけでございますが、これは水田大蔵大臣が申されましたように、百万円だけ先にやることはことしの財源でも十分できたわけです。千五百億あればまずできたと思います。ところが、百万円やってしまって、あと税率と給与所得控除の調整をやります場合には、これは二年続いたものであるからという説明をしても、上のほうだけが減税になるという非常に国民感情に沿わない結果になる。これは非常に困るということで、実際上は税率の調整が必要であるにもかかわらず見送られる結果になりはしないかという問題もあるし、この三つのものはほぼ同じ緊要度を持っているかのように見受けられましたので、大体縦割りにして二分の一ずつを実施するという方針で進めたわけであります。百万円はそのために公約どおりに四十五年に実施せざるを得なくなったという事情にあるわけでございます。
#155
○竹本委員 念のためにもう一つ聞きますけれども、百万円減税については、主税局はそういう原案は財源等を考え、税率緩和等の問題があって初めから取り上げなかったということですか。その辺どうですか。
#156
○吉國(二)政府委員 今回の改正を課税最低限だけにとどめるという考え方は、最初からとっておりませんでした。
#157
○竹本委員 次へ参りますが、今度は物価調整減税の問題ですけれども、ことしのやつでは四百二十億というのがそうですね。これは将来どういう考え方で対処されようというお考えであるか、それをお伺いしたい。
#158
○吉國(二)政府委員 税制調査会の答申でも、百万円という課税最低限が実現いたしますと、いままでのように、さらに百三十万円とか百五十万円のところに目標を設定してやるという性質のものではなくなってくるのではないか、いろいろ種々の控除の相互間の調整をはかる、あるいはその他のきめのこまかい施策をやることは必要でございましょうけれども、むしろ一般的に課税最低限の目標を設定するという必要性はなくなるのではないか。ただ所得が相当早く伸びますし、物価もある程度上昇するということを考えれば、その調整は必要であるということを言っているわけであります。
 ただ、いま御指摘がありましたように、物価調整――五%上がったといたしましても、四百二十億程度でございますと、課税最低限をいまのように一万円とか二万円という単位で各控除を上げることによって引き上げるという形では、実はうまくいかない。まさかその場合に五千円ずつ上げるというわけにもまいりません。やはりそれはある程度の期間を見て、まとめて課税最低限の引き上げを実施するという形にならざるを得ないのではないか。そういう意味で毎年毎年課税最低限を引き上げることがはたして妥当かどうか。まとめて引き上げるということも考えなければならないのではないかという感じもいたしますし、また、その段階になってまいりますと、控除のあり方を個別の控除にするのか、世帯単位の控除の新しい考え方を取り入れるかという問題もあわせて検討しなければならないかと思っております。
#159
○竹本委員 いまの物価調整減税は四百二十億ですね。これはことしの千五百億の中に四百二十億くらい入っているだろう、こういう考え方ですね。いまかりに百万円減税が実現した後、これはまたあとで別途に伺うつもりですけれども、今後の物価調整減税というものは、ただそういう計算上の考慮ということに入るのか、あるいは独立一個の体系を考えて物価調整減税はこういう形でやるのだというような何かお考えが――いままとめて最低限を上げていけばいいじゃないかという一つの具体的な答案が出たわけですけれども、それ以外に物価調整減税という独立の体系というか構想は考えられないものであるかどうか。また、外国にいい例はないものであるかどうか。その辺どうですか。
#160
○吉國(二)政府委員 具体的な施策については、さらに私ども検討しなければならないと考えておりますが、物価調整減税的な考え方というのは、実は外国にはない日本独特のものでございます。(竹本委員「物価が上がらぬからね」と呼ぶ)もっともアメリカあたりでは最近四%とか五%上がっておりますけれども、ある程度のところまで課税最低限がいっておりますとあまり問題にはならない。日本のように課税最低限のぎりぎりのところを毎年毎年上げて合理化をはかっているというところでは、物価による税額の増加という問題はかなりきびしく響いてくるという面で、ああいう問題が取り上げられたものと思います。三十八年当時は課税最低限が四十万ぐらいでございましたし、なおやはり百万円にはほど遠い現状でございましたから、物価調整というものが非常にきびしく感じられたものと思います。この考え方は、しかし私はやはり基礎的にはあり得る考え方だと思うので、将来もう物価調整減税は要らないのだとは言いません。しかし、その実現のしかたにはそれ相応にくふうが要るのではないか。それを今後また税調等を通じて具体的に検討していきたい、かように考えておるわけでございます。
#161
○竹本委員 私は、物価の値上がりの将来に対して政府ほど楽観的でないものだから、日本ではアメリカやその他の国と違って物価調整減税というものにそれ自身独自の意義と必要を認めていいじゃないか。そういう意味で、先ほど最低限の問題がいろいろ出ましたけれども、何かもう少し前向きの取り組み方をしたらどうだろうか。いまは結局千五百億円の所得減税と物価調整減税とがごちゃごちゃになって、説明のときは、いま言ったように、四百二十億円入っておりますと、こういうようなあり方ですね。しかし、物価があまり上がらない外国とは違って、非常に上がるということと、それからへたをすれば――これはインフレ論争になりますからやめますけれども、いまは五%ずつぐらいいっている。それがある時期になるともっと急激に、いわゆる悪性インフレ的な徴候を示すようになる場合も考えられるというような意味もありますので、この辺で何とか物価調整減税というものを、独立の体系とまではいかないかもしれないけれども、考え方をすべきではないか。それが一つ。これは希望になりますが、取り組んでいただきたい。
 それからもう一つは、減税の政策のあり方というもののこれから先は、御承知のようにいま所得減税――百万円あるいは百二十万円、あるいは百三十万あるいは百五十万と、こういろいろ言われておりますね。そういういろいろの要求が出ており、考え方が出ておるわけですけれども、そういうものとの対比においても私はこの問題を考えておるのですけれども、それはきょうはやめますが、大蔵省としては、あるいは主税局としては、これから減税政策はどこまでどう推し進めるつもりであるか、この点をちょっと事務当局のお考えを承りたい。
#162
○吉國(二)政府委員 私どもとしては、とにかく早く長期税制答申を実現したいということを前提に考えておりまして、もちろんそれから先も減税をしないというわけじゃございませんが、まず第一の目標を実現するのに全力をあげたい、かように考えているわけでございます。ただ長期税制の答申でいっております、日本の非常に早い所得水準の上昇と累進課税の矛盾という問題は、長期税制の実現だけではまだ解消しないだろうと思いますので、将来あそこで指摘しておりますような現象が続く限り、それに対応する減税政策というものをとっていかなければならないのではないか。もちろん財政のほうも、福祉国家の推進ということでだんだんと負担を高めていかざるを得ない事情がございますから、それらを考えあわせながら租税の持っております弾性値等を勘案してその実施の方向をどう定めていくか、その辺の検討を今後続けてまいりたい、かように考えているわけでございます。
#163
○竹本委員 それから減税政策と、公経済の比重をだんだん大きくしなければならぬという問題とについては事務当局はどういうお考えですか。
#164
○吉國(二)政府委員 日本の税制はほかの国の税制に比べますと、対国民総生産弾性値が非常に大きいわけであります。これはもちろん一つは所得税の大きな弾性値にかかっているわけでございます。したがいまして、いかに財政需要が伸びていくと申しましても、それ以上に租税が伸びる傾向のほうが強いわけでございます。したがいまして、財政支出の増大傾向というものと減税というのが必ずしも矛盾しないという形で進行するのではないか、もちろんこれは経済成長が相当に続くと想定した場合であります。経済成長がとまってまいりますと、租税の弾性値も低くなりますし、所得税の弾性値自体も低くなると思います。そういう点から申しますと、経済成長が続く限りは、一方において財政支出の増大ということをまかないながら減税を実施していくということは当面可能であるというのが私どもの観測でございます。
#165
○竹本委員 次に、税制の簡素化の問題をひとつ伺いたいのですけれども、よくいわれるのだけれども、一向簡素化していないようだけれども、その点どういうふうにお考えですか。
#166
○吉國(二)政府委員 税制簡素化につきましては税制調査会でも長期間の検討を続けまして、第一次、第二次の答申が出まして、それが実施に移されているわけでございますが、なかなかこの簡素化というのもむずかしいものでございます。たとえば計算が非常に複雑であるから簡易な計算方式の選択を認めてほしいという要望がございました。それを認めてみますと、企業のほうはひとつも簡素化にならない。というのは、企業としては常に税金の安いほうを選択するものでございますから、結局両方の計算をやって、有利のほうをとるという結果になるので、ちっとも簡素化にならないという批判もございます。その実際の姿を見ると、そういうことも考えあわせましてやっていかなければならない。そういたしますと、やや税制の精緻な姿を思い切ってもう少しラフにするというようなことまで決心をしないと、ほんとうの簡素化はできないのではないかという感じもいたしますし、同時に、今度御検討願っております国税通則法の改正を通じまして、納税者が正しい経理であると信じたものをもって申告をした場合に、それに対する従来の税の取り扱い等が、個別事案についてむしろ通達が妥当しないという場合には、個別事案の解決が具体的に妥当性があればそれによって解決する手段を開くという意味で、国税不服審判所、さらに国税審査会というものを設けるという改正をお願いしておるわけでございます。そういう納税者がみずから正しいと信じ、また、客観的にも正しい経理をした場合には、一般性のある通達とは違った解決も可能であるという方式を導入することによって、納税者が正しい経理をすれば、かなり認められる範囲というものを広くするということが簡素化の一つの最後の終点ではないか、そのように考えて今度提案をいたした次第でございます。
#167
○竹本委員 解決の簡素化の問題はいまお話しのとおりだろうと思うけれども、その前に、税の体系そのものの交通整理、簡素化、それから税法の文章のもう少し大衆化というか平易化、その辺の努力は現在何をやっているか聞きたい。
#168
○吉國(二)政府委員 実は私ども、昭和四十年に行ないました所得税、法人税法の全文改正というのは、御指摘のような点を実現すべくやったわけでございます。それまでにいろいろのかな書きの法律を逐次整備してまいりまして、結局四十年の改正が一つの最後の終点のように思ったわけでございますが、やってみました結果は、必ずしも好評ではないので、ずいぶんわかりやすくなったと思いましたけれども、また、長くなり過ぎて複雑であるというような批判も出ております。私どもは、常にやはりこういう点は改善を考えていかなければならないと思いますが、何と申しましても部分的改正をやりますと、かえって複雑になりますので、ある時期を考えて、過去の経験にも照らして、やや長期的に考えてさらに改善をはかっていきたいというのが現在の状態でございます。
#169
○竹本委員 税法は大蔵委員会のわれわれが読んでもわけがわからないし、それから一般ではなおさらむずかしいものとなっているのだけれども、部分的でやるか全面的でやるか別としましても、やはりこれはもう少し、大衆の租税にするためには具体的な努力が要るのではないかと思うのだけれども、何かそういうことについてのいまの具体的な構想はありませんかということです。
#170
○吉國(二)政府委員 現在は一応一段落したという感じを持っておりますけれども、また、新しくいままでやった簡素化の結果を反省をいたしまして、次の簡素化を考えなければならないということは考えておりますが、ちょうどいま中間期と申しますか、具体的な構想までには立ち至っておりません。
#171
○竹本委員 一段落しても、われわれにわからないことにおいては、一つも解決をされていないということにおいては、非常に問題があるのではないかと思います。
 さらに次にまいりまして、今度の九十三万円に持っていくということで、基礎控除、配偶者控除は一万円、扶養控除は二万円引き上げられたわけですけれども、一番最初に、基礎控除の十六万円が十七万円になったということでございますが、基礎控除という概念はどういうものであるか、初歩的な話になりますけれども、ひとつ承りたい。かつ、それが一万円というのは腰だめでやったのかどうか、その辺もひとつ……。
#172
○吉國(二)政府委員 所得税におきまして、税率をいかに定めるかということが一つの問題でございますが、最低の税率はゼロであるはずでございます。そのゼロの部分というのが、つまり課税最低限という形で、所得ではあるけれども、その所得者の少なくとも最低生活を越えておる部分まで課税を宥恕しておく必要があるということから、課税最低限というものは、昔は免税点という形で行なわれておりましたが、それを一般的な形では基礎控除という形でまず推定をいたしまして、さらに家族の状況によって扶養控除を配するという考え方でいま進んでおるわけです。その基礎控除を定めますにつきましては、当初はもちろん一般的な家計のあり方等を考えまして、それを一つの類型として、多人数世帯の場合の家計費の増加状況等を勘案をして、基礎控除と扶養控除を振り分けるという作業から始まっておるわけでございますが、その後、毎年のように引き上げをしてまいりましたのは、一つは物価調整という観点もございますけれども、一つは日本の一人当たりの国民所得が非常に少ないという段階で、所得税が重いために累進税率を直ちに適用していくことには無理があるという意味で、所得の伸びに応じて、ほぼ同率で基礎控除、扶養控除をあんばいして引き上げてまいったわけでございます。そういう意味では、一つは、いわば所得の伸びに応じて課税最低限を調整するという観点から各種控除を見ていったわけでございますが、ことしの一万円というものも、そういう観点からきめたわけではございますけれども、一応百万円の課税最低限の構成を考えた税制調査会の具体案がございますので、それを半分実施するという意味でことしは一万円にいたしたわけでございます。もちろん具体的な考え方と相マッチしているわけではございますけれども、一応長期税制の二分の一を実施するという観点から、基礎控除一万円という数字をきめてきたわけでございます。
#173
○竹本委員 一万円は二万円の半分であることは議論はいたしませんけれども、問題は、私が伺っておるのは、たとえば課税最低限を百万円なら百万円にするという、きわめて簡単明瞭な目標があるわけですね。それに対してここは一万円、定額控除はこうして、定率はこうする、全部足してみると、ことしは九十三万円になったというあり方自身が、それこそ簡素化じゃないということを私は指摘をしたい。これは非常な専門家でなければ、これがずっといって九十三万円までいくのだといっても、やってみなければわからぬ。そういうことでしょう。それはやっぱり税の体系のあり方自体に、われわれは惰性で考えているからあたりまえになっておりますけれども、非常な問題があるんではないか。税の簡素化ということをこれから考えるならば、九十三万円なら九十三万円、われわれは百万円を言うわけだけれども、これで九十三万とぴんとくるような方法が考えられないかどうかということが、先ほどの簡素化の問題に関連があるんです。
 それから次に、きょうは議論いたしませんけれども、もう一つは、一体基礎控除とは何ぞや、いかなる目的のために設けられたもので、現在いかなる機能を果たしつつあるものかということについての専門家の御意見を伺いたい、こういうこととであります。
#174
○吉國(二)政府委員 基礎控除ができましたのは、御承知のとおり、免税点が変わって基礎控除になったわけでございます。免税点の時代は、大正時代が免税点の時代でございました。免税点の考え方はかなり理解しやすい。いわばこれ以上は税をかけないという意味で理解しやすいわけでございますが、その反面には、免税点すれすれの人に対しては、いきなり全額に対して税金がかかるというために、非常に複雑な足切り計算を行なわなければならないという欠点がございます。そういう点から新しく考え出されたのが基礎控除でございます。免税点と違って、だれの分もそのままあと課税所得になるというような形のほうがよりわかりやすいということで、基礎控除という制度を取り入れたわけでございます。
 その場合に、免税点からはずれて考えてまいりますと、控除を幾らにするかという観点からまいりますと、やはり世帯構成によって違いが出てまいります。まず単一の世帯、つまり独身者世帯というものの基礎的な控除というものは、まず一つの世帯、しかしそれは単身である場合の世帯ということを前提にして基礎控除というものを組み立てます。その後、複数世帯については増加分を他の控除で補充していくという考え方をとったのが、基礎控除でございます。いわば最低の課税を免除する基礎的な額である。それが単一の世帯を前提にしたものであるという定義をせざるを得ないと思います。
#175
○竹本委員 そこで私が伺っておるのは、基礎的だといまおっしゃったのだけれども、そして基礎控除――基礎と書いてあるのだけれども、一つも基礎になっていないのじゃないか。ただわわわれは――むろん免税点はいろいろ矛盾がありましたでしょう。だからこれを変えて、こういう考え方に変わったのだ、それはよくわかります。しかし、税を簡素化するたてまえからいっても、あるいは生活費に食い込む税金はいけないのだという基本原則からいっても、何か基礎控除が十六万円、これがかりに十七万円になったところで一つも基礎的でない。基礎的ではないのだけれども、ただ惰性でやっておるのか。あるいは、この辺でほんとうにこれをもう一ぺん検討し直してみて、最低生活費は保障するという、それこそ新しい考え方で税のあり方を考えるならば、これもまたもう一ぺん再検討しなければならぬものか。何かその辺ぼくは問題があると思うのだが、どうですか。
#176
○吉國(二)政府委員 いま御指摘のとおり、何が基礎であるかということになりますと問題でございますが、これはやはり課税の体制と一緒に考えなくちゃならぬと思います。日本の場合は、稼得者単位課税をとっておりますから、控除としても、いわゆる稼得者の所得を稼得するための控除という意味で基本的な控除であるという意味でございます。あとの扶養控除、配偶者控除は、いわばこの稼得者の担税力をある程度、家族の増加によって含めているものをしんしゃくするという意味で、補助的な控除でございます。基礎控除は、稼得者そのものに対する課税の限度をきめるという意味で基礎控除ということになっておると思いますが、これを、たとえば先ほど来御議論がございましたように、合算課税、二分二乗というようなことをとってまいりますと、世帯単位の控除というふうなものを考えられてくると思います。基礎控除、配偶者控除、扶養控除という組み合わせによる課税最低限が唯一のものでは決してないのであります。世帯単位課税というものを前提にした世帯課税控除というものも考えられると思います。それらを考え合わせますと、現在の日本の稼得者課税主義、単独で、合算せずに課税するという体系から見ると、納税者そのものの基礎的な担税力を測定する基準としての控除が基礎控除であるということになるのだと思います。
#177
○竹本委員 いまお話がありましたように、扶養控除とか配偶者控除とかいうようなものは、むしろ補完的なものであって、やはりこちらの基礎控除が主力というか、中心的なものでなければならぬということになるのじゃないか。ところが実際は、いま九十三万円のうち十六万か七万かということで、全然基礎的になっていないのじゃないか。ただ文字の上では基礎控除と書いてある、説明の上でもこれが中心になるのだ、こう書いてあるのだけれども、税の体系というか、今度のやり方から見ると、少しも基礎になっていない。要するに、ここで惰性で押え過ぎて、再検討していなければならぬところに全然再検討がされていないのじゃないかという疑問をぼくは持っておるのですが、その点はどうですか。
#178
○吉國(二)政府委員 確かにアメリカなどになりますと、人別に一人ずつ同じ控除をしておりますから、そういう意味では基礎控除というものはないことになるのだと思います。
  〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕
わが国でも、扶養控除は、最初はごくわずかでございましたものがだんだんふえてきて、そういう意味では、先ほど来御議論のように、家族というもの、あるいはことに配偶者というものの地位というものが考えられてきて、基礎控除的なものがだんだん色彩が薄らいで世帯人員控除に近づきつつあることは事実だと思います。将来の姿としては、やはり今度の税制調査会の答申にもございますように、扶養控除をより多く引き上げるというような方向がとられてきておりますが、まあアメリカのように一人当たり幾らの控除というところまではなかなかまいらないかと思いますけれども、御指摘のように、やや基礎控除が惰性化してほかの控除とあまり質的な差がないところに近づきつつあることは事実でございます。
#179
○竹本委員 これは再検討を大いに希望いたしておきます。
 それからもう一つ、給与所得の定額控除というものはどういう意味であるかということと、今度それを据え置かれた理由は何ですか。
#180
○吉國(二)政府委員 給与所得控除は、昔は御承知のとおり収入のパーセンテージで控除することにいたしておりましたし、アメリカなどでもスタンダード・デダクションというのは一〇%でありますし、一万二千ドル以下の所得者には千ドルを限度としてスタンダード・デダクションは与えられておりますが、これも一〇%という比例の額であります。ところが、給与所得控除の中では、必要経費的な控除にかえて概算控除として給与所得控除が与えられておりますだけに、最低生活費と申しますか、最低必要経費というものがあり得るのじゃないか、たとえ所得が少なくても、これだけは最低限かかるという控除があるはずだということから、昭和三十六年でございますか、一万円の定額控除というものを起こしまして、その一万円の控除したあとを定率で補足をしていくという制度に変わったわけであります。ところが、その後この定額控除をかなりしばしば引き上げてまいりまして、現在十万円にまでなった。十万円の控除というものを考えてみますと、これが作用して小さい所得者はかなり大きな控除になっている。それに比べて、所得がふえるにつれて逓減の度合いがひどいという結果になってまいりました。そしてことに、百十万円で頭打ちをしているいまの定率控除では、いかにも収入金額が二、三百万円というところにはひど過ぎるという結果が出てまいりましたので、今回は、定額控除を引き上げるということは、低所得者についてはむしろ限度にまで来ている、二、三百万円のところの控除を緩和するとすればむしろ定率控除に手をつけるほうが実際的ではないかということで、定率控除のほうに手をつけたということになったわけでございます。
#181
○竹本委員 局長の説明を承っておりますと、先ほども御指摘があったけれども、何だかビジョンと理論がなくて結論のほうが先に出てきているような感じを受けるのですよ。たとえばいまの定額控除にいたしましても、最低必要経費というのが一つの理論的立場であるならば、サラリーマンがあれだけ騒いでおるとか物価はどんどん上がっておるとかいう意味からいえば、やはり税率も大事ですけれども、これはもう必要最低の経費をまかなうのだという要請に応じたようなあり方をしなければおかしいじゃないかというふうに私は思うのです。今度の百万円、九十三万円とかいう問題を別にしても、とにかくこれだけの、たとえば千二百億なら千二百億の減税、大体見当はこの辺だ、あるいは千億とか千二百億だとかいうことのためには、これは一万円、これは一万円、これは大体現状維持、こういうふうにして数字の割り振りがあったというふうにしかどうしてもわれわれには受け取れない。しかし、たとえばいまの必要経費であれば、必要経費としてこれだけのものを見なければならぬではないかという理論や構想があって、その上で定額を据え置くとかあるいは五万円上げるとかいったような検討がなされないままに、今度は大体千億だという腰だめの結論が先に出て、それをたまたま一万円ずつやっていけば大体千二、三百億になる、ちょうどこれでよろしいといったような感じをどうしても受けるのです。
 私の指摘したいことは、先ほどの基礎控除でも定額控除でも、その理論的要請にこたえ得るような体制をこの辺で一ぺん再検討しないと、大事な所得税の肝心の体系がただおざなりの惰性だけになりはしないかという点を心配するわけですが、いかがですか。
#182
○吉國(二)政府委員 これはことしの減税額を前提にして積み重ねたというものではないのでございまして、たとえば給与所得控除については、全体としてそのあり方を税制調査会でこまかく検討いたしました。その結果として、定額控除というものが現在果たしている役割りというのはもう十分なところまでいっているという認識のもとに、給与所得控除の解決方向としては定率控除であるべきだという結論が出たわけでございます。それでむしろ定額控除を押えて定率控除に回したというのが内容でございます。
#183
○竹本委員 局長の御答弁は理路整然としておるのだけれども、結果的に見れば、私の言うように結論の千億あるいは千二百億というのがどうも先に出ているような感じがしてならない。たとえば、時間もございませんから一々こまかく言いませんけれども、まあ極端な言い方をしますと、バナナのたたき売りみたいなもので、とにかくこれは一万円、一万円、二万円。じゃ一万円を上げるということについてどれだけの理論的な検討が行なわれておるか、なぜ二万円にしなかったか、なぜ五千円では足らなかったかというような、えらいきめのこまかい議論を始めたら、もちろんそれにも当然限界があるべきでしょうけれども、しかしほとんど答えられないのじゃないか。一万円上げた、なぜ二万円にしなかったか、なぜ五千円では足らなかったかということをこまかく言い始めたら――幸いにして一万円ずつ上げたらちょうどいいぐあいに千二百億になったという答弁になるのかもしれませんけれども、その勘定も理論的な考察が加えられた感じが少なくともわれわれにはしないということは残念であるということを言うわけです。
 これはひとつお願いですけれども、あとでいいのですけれども、かりに基礎控除、配隅者控除を一万円ずつ引き上げて扶養控除については二万円を上げたやつを、さらにもう二万円上げる、それから定額控除十万円については十五万円に上げるというやり方をした場合には、理論的な問題は別にしまして、計算的な問題としてどのくらいの減収の増になるのか、これはあとで、お願いしておきますから一ぺん検討して教えていただきたいと思うのです。
 それから最後に、税法の改正についての修正案を国会のほうからやれるかどうか、それからやる場合に税法の別表の問題が出てくると思うのですけれども、それはどういう位置づけになっておるのか。
#184
○吉國(二)政府委員 もちろん国会でございますから税法の修正案を御提出になり可決になるということは、これはもう当然できることでございますが、問題は技術的な点にあるかと思います。この税額表は、具体的にたとえば月税額を出す場合に、適用すべき税率にかえて出しております。たとえば端数を切り上げるとかなんとかしておりますが、それが税率でございますから、税率の一部をなすもので税法の主要な一部でございますから、これが欠けた修正案は修正案じゃないといわざるを得ないと思います。
#185
○竹本委員 大蔵省が今度改正をやられた場合に、その一万円ずつやるとかいろいろやった場合に、その税額表をつくるのにはどういう機械を使って何日かかりましたか、それを承りたい。
#186
○吉國(二)政府委員 こまかい税額の計算は電子計算機を使用しておりますが、全体を通じて約三週間を要しております。
#187
○竹本委員 そうしますと、政務次官にお伺いしたいのですけれども、税法の改正は議会の固有の権限の一つとしてやれる、われわれはいまの九十三万円では不満である、百万円までこの際やるべきであるし、やれるではないかという立場にかりに立ったとして、それでその修正をやろうということになる。ところが、現実問題としては、国会の中に電子計算機が幾らあるか私知りませんが、かりに電子計算機があっても、三週間なければ修正案は出せないということになると、国会が持っておる修正権というものは実質的に技術的に制約を受けて、ほとんど有名無実であると思いますが、いかがでございますか。
#188
○上村政府委員 そういうことになるかと思います。
#189
○竹本委員 そういうことであれば、それに対して国会の修正権なら修正権を尊重する立場に立って、政府は今後どういうことを考えられますか。
#190
○上村政府委員 これは基本的な問題になるかと思いますが、私は、立法関係につきまして、議員立法を相当主力に置いていく必要はあると思うのです。今後の国会の基本的な問題でございましょう。それに対しましてそういう立法の措置、そういうものについて予算をどういうふうにするかというようなことにつきましては、私は、政府としましても前向きに検討していくものであろう、これは基本的な問題ですね。それからなお現実の問題としましては、いま議員修正をするんだからといって、政府がそっぽを向いていくというような、そういういき方はいかぬと思うのです。しかし、政府としましてもいろいろと仕事もあるでしょうし、いろいろでございましょうから、その協力のしかたというものにつきましては、いろいろ現実にあるかと思いますけれども、基本的な問題の考え方としましては、その議員立法というものにつきましていろんな財源的な措置というようなものを国会で考えていくことはいい、私はこういうふうに思います。
  〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕
#191
○竹本委員 議会の持っておる修正権が十分に機能できるだけの人的、物的施設、設備というものは当然備えなければ、ただそういう権利があるのだと言ってみても、言うてみるだけになってしまうということだと思いますので、これはまた別の場でも本格的に問題にしなければ、いまの修正権なんというものはナンセンスだと思うのです。それはまた、いまの政務次官の前向きな御答弁とあわせて、総合的に検討していきたいと私は思うのです。何か御答弁ありますか。特にあればお伺いしたい。
 それから本質論にもう一度返りまして、重要なる法の一部分であるという根拠はどこにありますか。
#192
○吉國(二)政府委員 これは税法の税率の具体化した表でございますから、具体的に適用する場合は税率そのものである、それだけにこれはもう法律として欠くべからざるものだ、かように考えます。
#193
○竹本委員 ちょっと説明がまだ一般論に過ぎると思うのです。もう少し条文に即してなら条文に即して、どういうわけで、たとえば選挙法の場合に、選挙区なんというものは、別表によって、選挙区の定員もきまるし、地域もきまるわけですから、これがなければどうにもならぬと思うのです。ところが税法の、たとえばいまの扶養控除はどうする、あるいは配偶者控除はこうするという問題は、いわゆる実体法できまるわけですね。それを受けて、ただ計算をし直して簡便に取り扱っているものが、どういうわけで実質的な主要な法の一部になるかということが、私には十分理解できない。
#194
○吉國(二)政府委員 税法を適用いたします場合に、源泉徴収税額というものを出します場合に、年税額とは別に、その月の所得に対して適用すべき税額をきめているわけでございます。これは年税額がきまりませんと、一般の税率、控除等の適用はできないわけでございますが、それを一応所得というものを継続的なものと前提をいたしましてかりに計算をしたところによって税額表を定め、この税額表で徴収するということを百八十五条で義務づけているわけでございます。そういう意味から申しますと、これは月々の源泉徴収に関しましては税率そのものである、他の方式ではこれは出てこないわけでございますので、これがないと税法にならないということになるわけでございます。
#195
○竹本委員 これはひとつ法律の専門家の政務次官に伺いたいのですけれども、いまの御答弁は税法の百八十五条なら百八十五条のところでそういうことになると思うのです。しかし私は、もっと本質論的なものをここでひとつ伺いたいのですけれども、百八十五条は一応別にしまして、幾ら取るか、どう取るかということは大事な税法の問題ですから、これは基本原則、実体的な規定を法律としてちゃんとすべきだと思うのです。しかし、ことばが悪いかもしれませんけれども、税額表というものは別表程度のものじゃないかと思いますが、そうするとそれを実体法の一部の中に織り込んだということは、それも問題をいたずらに複雑にしているだけの役割りしかないじゃないか。なぜ実体法の中へ織り込まなければならぬかということについて、本質論としてぼくは問題があると思いますが、いかがでございますか。
#196
○上村政府委員 私、詳しいことはわかりませんが、一般の法律論としましては、別表を本文の中に繰り入れてやる場合には、改正やいろいろ変動する部分が実体法の条文を一々変動させるのも、法律の技術的にもなかなかわずらわしいから、別表のほうへ持ってきまして、そして別表の場合におきましては比較的変化が起きてくるようなやつを別表に持ってきておる。そしてそれを法律の立法技術上本文の中に援用しておく。そして法律の解釈としましては、別表が本文の中に入っていく、こういうふうなのが普通の法律理論ではなかろうかというような感じがするわけでございます。
#197
○竹本委員 この問題はかつて予算のときに、数字のミスプリントか何かありましたときにも、一つの本質論として問題を出されたと思うのです。あのときの政府の考えは、これはこちらで実体がきまっておるのであって、これは単なるミスプリントだ、数字の差しかえだけで済むのじゃないかという意見だったように思うのです。また、それに一理あると思うのです。あのときは、取り扱いはいろいろ複雑な政治問題もからみましたけれども、結局税法できめることは国民の権利と義務、その限界なんですから、その実体できまったものを数字の上で計算して表現したものが表なら表になっているわけですね。こういう表自身が、ただ税の取り扱いはこうやるのだということであって、それは極端にいえば大蔵省の通達でやっても、きちんとした権威と責任をもってやればいいかもしれない。実体的には国民の権利、義務をきめるのは、別の場できめている。それは一種の計算の早見表としてこれを見ていくのだということであって、どう考えてもその実質的な、実体的な内容はないし、またあったらおかしいと思うのですが、どうですか。
#198
○吉國(二)政府委員 簡易税額表の場合には、やや先生の御議論のようなことかと思います。ただ、源泉徴収表は月々の所得というものに適用されますので、これは年税額を定める年所得に対する規定では動かない。その年税額と年所得に対する規定を月々の所得に適用すべく定めたのが百八十五条でございます。その百八十五条の内容をなすのが源泉徴収税額表でございますから、これは明らかに税率を創設しているものということになるかと思います。
#199
○竹本委員 だから私は、さかのぼっていえば、百八十五条自体が所得税法の中にこういう形で君臨しなければならぬかどうかを問題にしているわけです。というのは、それ自体が何も実体的な権利、義務を規定し得る筋合いのものじゃないじゃないか。それなら別なやつを、極端にいえば、こちらをやめて百八十五条の中に移し込んでしまえばいいじゃないか。でありますから、百八十五条を一応論拠にして主税局長は説明されるわけだけれども、百八十五条をそういうところに押し込んでおることのほうがおかしいじゃないかということをぼくは問題にしているわけです。
 これは、いささか専門的な議論をやらなければいかぬでしょうから、きょうは時間が参りましたからこの辺で終わりますが、どうもしかし、いまの税法改正なんというものは国会の場では出せないように、極端にいえば、法の立て方ができ過ぎておりはしないか。これは大蔵省の主税局長の陰謀とは申しませんけれども、少なくとも検討してみる重大な要素を含んでおるではないかということだけ指摘いたしまして、質問を終わります。
#200
○田中委員長 田中昭二君。
#201
○田中(昭)委員 税制改正については、国民が多大なる期待を持って毎年税制改正を見ておるわけでございますが、なかなか主税局のほうでできました税制改正案を訂正されようとしないですね。いま竹本委員のお話もありましたが、私も国会の合い間を見ていろいろの人と話し合ってみますと、特に同じ所得税法でありながら、給与所得者並びにそのほかの事業所得者、その申告納税の実態とあの悪評ふんぷんの利子配当の分離課税、分離課税した上に配当控除までして、法人において所得税の前払いだ何だという理屈をつけて御説明なさいますが、国民はそういうことではかえって税制というものに対して疑問も持ちますし、政府の態度を疑っていくような方向にいくのではなかろうか。この前も主税局長からそのことについて答弁がありました。成年にも達しない高校卒業したばかりのサラリーマンが一カ月間汗水流して二万円ちょっとのサラリーをもらうと、もう所得税がかかる。ところが、配当収入であれば、月に直して十四万円まではかからない。そういう、片方は二万円の収入からかかる、片方は十四万円の収入まではかからない。こういうことを皆さんにいろいろお話をしてみますと、そういう不公平、矛盾がどうしてあなたたち、私の言うのが、話がわからないのですか。議会民主主義のルールによって多数決です、こういうような話まで実は雑談あたりにも出るわけなんですが、きょうはその論議は、もう何回もいたしましたし、また別な機会にしてみたいと思いますが、同じこの所得税法の中で、現在申告所得者といわゆる源泉徴収所得者、いわゆるサラリーマンの人たち、そういう人たちの納税、いわゆる国が憲法に従って納税の義務を負わせて、そうして国民から税金を徴収する。そういうことについて政府は、そのいわゆる申告所得者と源泉所得者が不公平に扱われておる、こういう不満がいわゆるサラリーマン減税で最近やかましくなっておる問題だということは、すでに御承知のとおりでございます。
 でありますから、税制の上において不公平なものは直していかなければならない、また、それをいろいろな面において、政府も不公平でないというようなこともPRもしなければならない。また納税については、国民の立場に立って、納税者の立場に立って、不公平というようなことに対してよく理解を得て納税してもらわなければならない。こういうことにきょうは論点を置いて、いわゆる申告所得者並びに源泉徴収される所得者に対して、政府はどのような施策を今後持っていき、また現在持っておって、また、具体的にどのような方法をいわゆる不平不満を直すためにやってきたか。そういう点について、きょうは国税庁のほうはまだお見えになっていないようでございますが、主税局の立場並びに政府の立場について、次官のほうからお願いしたい、こう思うわけであります。
#202
○吉國(二)委員 給与所得者に対して源泉徴収を実施し、その他の所得者については原則として申告納税であるという形、これはおそらく世界ほとんどの国で実施していると思います。もちろん申告納税をとっているのは日本とアメリカだけでありまして、賦課課税ということがイギリス、西独等では行なわれていると思いますが、この給与所得の源泉徴収というものは、一応世界的な制度であるということを前提にいたしました場合に、給与所得者とその他の所得者との間の不公平という問題は、税制上の面といたしましては、具体的な必要経費控除が行なわれていないという点が一つと、第二の点は、申告納税の所得者についてはその申告納税があった後に十分な調査が行なわれていないのではないか、したがって、中に不適正な申告があっても放置されているのではないかということ、いわば把握の差があるということが第二の不満であるかと思います。
 第一の必要経費の控除の点につきましては、これは実際問題として、税制上、必要経費を個別に引くことを選択として認めている制度も、これは事実、世界的に見てございます。わが国の場合は伝統的に給与所得控除という特別な控除をもって概算的な経費控除にかえるという体制をとっておりますが、これが問題になる点は、どうも給与所得控除では足りないのではないかという点にあるかと思います。ただ事業所得者の場合と給与所得者の場合を比べていただきます場合に、たとえば、よく言われることでございますが、この間も質問がございました、開業医であると七二%の経費控除が行なわれる。ところが、医局につとめている医者は給与所得控除しかない。この不公平が大きいために医者がみな自立常業をやるようになってしまうのだという御批判がございました。ただ、この場合に注意していただきたいと思いますのは、まず七二%というのは、これは確かに問題のある特別措置でございますけれども、その七二%の内容をなすものは、開業している医者はその開業に必要な設備、家屋の減価償却とか、あるいは薬の仕入れがあり、注射液の仕入れがあるというような、収入を得るための直接必要な経費が内容をなしているわけでございます。それが大部分の経費であるわけでございます。単純に同じ収入があるのに対して、七二%の経費控除があるということではないのでございまして、給与所得控除に相当するようなものは、医者においては必要経費として実際上はほとんど家事関連費として控除されていないという実情が見落とされているように思います。普通の販売業者の場合も、三百万も売り上げがあるのに、税がかからぬというようなことがよく言われますけれども、この売り上げを得るための必要経費の大部分は仕入れ代金でございまして、これは給与所得者にはない特殊な――特殊と申しますか、必要経費の中でも、重要であるけれども、給与所得者には本来ないものである。この仕入れ代金を引いて販売経費を引いた残り、つまり、事業所得者が自分で着る洋服であるとか、あるいは自分の個人生活の洗たく代とか、こういったものは事業所得者においても必要経費控除を認められていないものでございます。そういう意味から、給与所得者の必要経費というものをいろいろ洗ってみますと、収入を得るために必要な経費という所得税の定義からして、これに該当する経費というのはなかなか判定がむずかしいし、また、なかなか得られないということがあるわけでございます。試みに家計調査等を見てみますと、家事関連的な生計費とかその他を除いてしまった費目というのは、ほとんど数%にすぎないという実情でございます。
 そういう点から税制上、この給与所得控除が不足かどうかという観点でいろいろ議論がございますけれども、いまの給与所得控除の一番の大きな問題は、やはり定額控除を十万円をしたあとの定率控除に問題があると認めざるを得ないかと思います。そういう意味では、ことし定率控除をさらに引き上げるという措置をとって権衡をとったわけでございまして、必要経費の点についてはいろいろ議論はございますけれども、給与所得控除というものが相当にこれをカバーしておるものと私ども考えておるわけでございます。
 それから、課税上の把握の問題でございますが、これは確かに五万の税務署員をあげて努力をいたしておりますけれども、基本的には申告納税というものは、国民が国民としての国家の経費の負担に参与するという意味で、適正な申告が出るという前提をとらなければ税法というものができないと思うわけでございます。したがって、税務署の活動も、田中先生御指摘のように、できるだけ信頼に基づいて指導行政ということで努力していくべきだ。正しい申告がなされるということ、これが源泉徴収との間の公平を保つ第一義的なものだと私は思うのです。税務署が不当な脱税を摘発するということは、これはもとより必要でございますが、それだけで申告納税の完ぺきを期し得るものではない。基本的にはやはり源泉徴収義務者と同じような把握の程度の申告をするという国民的な気風が成立して、はじめて最後的な満足が得られるものだと私は思うわけでございます。
 もちろんそのためには、税率があまり過酷な税負担ではこれは無理であるというところで、毎年のように、源泉徴収ももちろんでございますが、申告納税につきましても減税を続けてまいりまして、負担の適正化をはかり、それを通じて、さらに税務行政上の適正申告の制度を、青色申告をできる限り助長をするという形で努力を続けてきたわけでございます。私はやはり、時間がかかるにしても、正しい申告がなされる雰囲気が醸成されるということが必要であると思います。国税庁等におきましては、ことしは、小学校、中学校のカリキュラムにも、税の必要なるゆえん等を織り込みまして、国民的な納税意識というものを高めるという方向をさらに努力していかなければならない、かように考えておるわけでございます。
#203
○上村政府委員 ただいま局長から、サラリーマン減税、あるいはサラリーマン、要するに給与所得者に対しますところの現在の実情、並びに四十四年度の改善措置について申し上げたいと思います。がしかし、先生御指摘のように、いわゆるサラリーマンの課税問題ということは非常に大きな問題になっておると思うのです。たとえば、まあ理論は別としましても、現実にどうも公平を欠いておるのではないか、あるいはそれは源泉でやられて、そして税金の先取りみたいなかっこうになっていやせぬかとか、あるいは物価の上昇なり、あるいは賃金の上昇によりまして、従来の日本がとっておりました税金体系におきまして、累進税率の一番――ちょうど所得が上がっていた関係で、基礎控除あるいは課税最低限を引き上げましても、どうも税率の関係でうまくいっていない、ちょうど中ぶくれのところに入ってきている、諸般の実情がずっと出ております。私は、この前の諸先生のいろいろな御指摘、御質問がございました際にも申し上げておるわけでございますが、これはこの給与所得、特にこの中間と申しましょうか、そういうような所得の関係につきましては、この際、相当前向きで処置をしていく、そして期待に沿うような処置を講ずる必要があるであろうというふうな感じを持っております。
#204
○田中(昭)委員 説明は丁寧にしていただきましたからよくわかったつもりでおりますが、いま私がお聞きしましたことは、そういう申告納税、源泉徴収納税といいますか、そういうものについていろいろな問題が多いから、それについて主税局として、また政府として、どのように国民を啓蒙し納税意欲を高めていくかということについて、具体的にどういうふうなことを考えており、されてきましたかと、それを端的に聞いたのだったけれども、あとでまた御説明いただければ……。いま、何か主税局長のほうでは、学校教育の中にそういうものを取り入れていく。それともう一つございましたが、何でしたか。――それでは、また説明のときに伺うことにして、そういうことを私は聞きたかったわけです。
 もう一つ、私のほうから提案しておきますが、国税庁も見えましたから、もう一回先ほどの私の質問を概略申し上げてみたい。簡単に言いますが、所得税法に不平不満があるということを土台にして、申告所得者と源泉徴収される人たちに対して、税法できめられた実行機関として国税庁は、その不平不満に対してどのように納税意識の宣揚といいますか、そういう上に立ってPRもし、また、そのような不公平がなくなり、納税意識が高揚していく施策として、どういう具体的な方法をとったか、こういうふうに質問したわけです。わかっていただけますね。申告所得者とサラリーマンの源泉徴収というものに対して具体的にどういうことをやったか、こういうことだったわけです。おいでになりましたからお答え願います。
#205
○川村説明員 御質問のように、源泉徴収を受けるサラリーマンの課税の問題と、それから申告納税をします事業所得者の課税とのバランスの問題につきまして、いろいろ不平ないし不満があることは事実であります。この不平、不満のもとをいろいろ分析して考えますと、幾つかの理由があると思います。
 一つは、いわば私どもムード論と言っておるのでございますが、源泉徴収所得税の納税義務者であるサラリーマンにとってみますと、毎月の給与を支給されるときに、税額をいきなり源泉で徴収される。したがって、申告ということがございませんので、どっちかといいますと、税額をかなり一〇〇%に近く把握されておるという意識があると思います。一方、事業所得者にいたしますと、商店主にしても、あるいは農業者にいたしましても、三月十五日に歴年の所得を申告する。もちろんこの申告はまず自主的に自分で所得を計算するということでございますので、中には過少に申告される方もあるというようなことから、どうも自分たちだけが損をしておるんじゃないかというサラリーマンの不平がそこに根ざしておるように思います。
 しかしながら、私ども執行者の立場からながめてみますと、もちろん事業所得者で過少申告をしている人たちが少なからずおることは事実でございますが、この数年間の動きを見てまいりますと、かなり申告の水準がよくなってきておる。それからもう一つは、青色申告制度が普及をされてきておる関係上、かなり申告の正確度というものが進んできておると思います。もしそこで過少申告をされましても、私ども調査によりまして、三年間、場合によりましては五年間さかのぼりまして更正をするということを通じて、あとでは過少申告分が取り戻されるということになっておるわけでございますが、サラリーマンの皆さんは、そこまでのことはお考えにならずに、とにかく当初申告の段階での課税の水準についての御不平あるいは御不満を持っておるということではないかと思うわけでございます。いずれにいたしましても、私ども課税を徹底いたしますと同時に、また善意の納税者に対しましては、できるだけ指導ということを通じまして、全体の申告納税所得者の課税の水準というものを上げたいと考えております。
 それから、もう一つの不平、不満は、私、このごろ座談会等で納税者と直接お話し合いするときによく気になることなんでございますが、どうも自分たちの税負担がどこまで国の財政支出で還元されておるか、その財政支出の還元の状況が必ずしも明らかではない、したがって、自分たちは税金だけ納めて何ら国から恩恵を受けてないというような意識を相当持っておるようでございます。したがいまして、私ども国税庁といたしましては、税のPRをいたしますときに、単に税制のPRをするだけでなくて、むしろ国がどれだけ財政で国民のことを考えておるか、最近の財政支出の動きはこうなっておるのですという、要するに税金がどう使われるかということを御説明して、税金を快く納めていただくというような形に持っていきたいということで実は努力をしております。来年度、昭和四十四年度の社会科の教育のプログラムのうちに、税をかなり取り入れていただくことにもなっておりますので、今後、社会教育の面を通じまして、そういった税制、あるいはその根源にございます財政の問題につきましての国民の納得を得るということが、快く税を納めていただく基盤になるということで、私どもも努力をしているわけでございます。そういったPRを通じ、あるいは内部の私どもの調査体制というものを整えることによりまして、全般の課税水準をバランスとりながら引き上げてまいりたいということを国税庁としては考えておる次第でございます。
#206
○田中(昭)委員 その財政支出の内容についても、国民に知ってもらうということもいいことでございますが、いろいろいま言われましたが、それが実際の国民の一番身近な、一番末端といいますか――末端ということばはよくないかもしれませんが、そういう人たちに、いまあなたがおっしゃるようなことが実際行なわれているかどうか、そういう点を聞いたわけなんです。それは財政支出の問題でもいいでしょう。
 私は、それよりも税金が徴収される不公平、そういうものがあるならば、その不公平はこうこうこうなっておりますから、これはこうこうなんですよというような説明も、やはりしてもらわなければいけないじゃないか、片手落ちになりやしないか、こういうような気持ちもするわけです。考えておりましたことは、国税庁のほうからは、五の日には税の相談日というものを設けてある。では、その税の相談日によって、どういうふうに国民が税に対して知識を増し、また、税法を知らなかったために余分な税金を取られたとかいうようなことがどういうふうに救済されているか。その税の相談の人員から見ても、そういうことがどういうふうにふえておるとか減っておるとか、また、源泉徴収義務者に対しては説明会も行なうでしょう。その説明会はいままで以上にきめこまかく行なっていくとか、その説明会も、ただ年末の調整のときにするだけではなくて、新しく新制高校を出てきた人が初めてサラリーもらうときには、税の申告はこうこうこういうようにすれば税金は安くなりますよとか、いろんな節税の方法があります。年度中途の死亡者を扶養家族に入れていいとか、あるいはあなたは家族構成はどうなっておりますかとか、そういうようなことを初めにきちっと教えていくという方法も一つの方法ではないか、こう思うのです。そういうことをせず――そういうことをせずと一挙には言えないかもしれませんけれども、そういうことをするならば、私は、源泉徴収のサラリーマンの人たちが税金が高い高いというようなことについても、それだけのあたたかい手を差し伸べていくならば、国税庁は親切なところは親切だ、現在の税法に従っていけばこれしかないのだ、こういうことを理解すると思うのです。それの答えはいただけなくとも、そういうことを考えて今後進めていかれたらいいのじゃないか、こういうように思うわけです。
 次に、そういう意味で政務次官、具体的なことを聞きます。いろんないままでのここで答弁するようなことも大事でございますけれども、一つの方法を、具体的にこういうようにしたならばそういうものが達成されるのじゃなかろうか、こういうものをひとつあげてみたいと思うのです。
 それは、四十三年度の税収は、経済の高度成長に伴って政府の予定した以上にたくさんありましたね。十二月末の租税収入を見ましても、前年度収入の歩合から見ても、約千五百億ですか、はっきりした数字は。大体三%ですか、大体五兆円で千五百億。その内容を見てみると、申告所得税、サラリーマンの納める税金は、予定収入よりも何千億という、国民からいえばいわゆる納め過ぎと言いたいそういうものがある。法人税ももちろんたくさん入ってきております。それじゃ、そういう収入状況というものを、結論を先に言いますと、第一線の税務署の担当官に配付して、現実いまこうなっているんだ、こうなっているからこの税法の調査についてはいろんな手があるでしょう。そういうことについては、こういうふうにしたら一番いいのじゃなかろうかという、判定の基準にもなるのじゃないかと私は思うのです。
 なぜこういうことを私が言うかといいますと、予算委員会で大臣は私の問いに対してこのように答えられた。東淀川税務署の件で、あの東淀川署長さんの考え方は、とにかく税法にきめられた適切な額――この適切な額が問題なんですね。そして大臣は、「つまり多からず少なからず適切な額」これを快く皆さんに協力して納めてもらいたい、こういう発言もあります。この「多からず少なからず適切な額」をだれが判定するかといったら、申告所得税については第一線の担当官です。大臣がはっきり「多からず少なからず適切な額」とおっしゃっているのですから、そういう額を算定する上においては、そのように国が予定したよりも大きな税金の取り過ぎがあるような場合には、最大限の節税の方法を教えるということを現場の担当官がやるためには、私はそういうものが必要ではないか、こう思うのです。そのような収入額調なんというものは秘密にすべきですか。それとも秘密にしなくてもいいのですか。それが一点と、それからそういうことはできないのか、それを主税局長なり次官のほうからでもけっこうですからお答え願いたい。
#207
○吉國(二)政府委員 この毎月の収入実績は各税務署まではまだ現在は渡ってないようでございますが、各国税局では自分の管内の収入実績は各税務署に示達をしているようでございます。もちろんこの収入実績は、見積もりに対する増加が出ております場合もございますし、不足する場合もございますけれども、適正な額というのは、各個人の所得に対応した適正な税額を申告していただくわけで、その意味では、先生のおっしゃるように、節税ということはあくまでも正当な手段でございますから、むしろ国税庁の毎年出します基本方針の中の一つの項目として、先生も御承知かと思いますが、納税者に有利な事項は進んでこれをできるだけ教えるようにするという基本方針をとっております。ですから、取り過ぎたから教えるということではなくて、常時それを教えて、正しい税額が入って、かつ見積もりをこえるということは、私どもの見積もりができが悪かったとも言えますし、経済が伸び過ぎたとも言えますから、これとは関係はないとは思いますけれども、いまどういう状況であるかということを知らせる意味では、これはできるだけ現場も知っているほうがいいと思います。国税局が自分のところのを知らしておるのと同じように、国税庁も各国税局にはこれを知らしているはずなので、どの程度第一線に徹底するかということは今後国税庁でも研究してもらいたいと思います。
#208
○上村政府委員 先生も御案内のように、この徴税関係は税法に基づいて徴収しておるわけで、いわば執行機関であるし、比較的と申しましょうか、自由裁量の少ない執行機関であろうと私は思うのです。けれども、税法は先生も御案内のようになかなか複雑でございますし、一般になかなかわかりにくい。だから、税理士の方に頼んだりいろいろな方に頼んでやるようなわけで、なかなかむずかしい。けれども、むずかしいからといってそのままにしておくべきものじゃなくて、より一そう努力をして親切に、いま局長も言いましたように、周知徹底を常にやらなくちゃならぬ、こういうふうに思っておるわけでございます。
 それから、先ほどの徴収額につきまして、何も秘密にすべきものではございませんので、それを知らしておるわけでございます。
#209
○田中(昭)委員 国税庁のほうからお答えがないのですが、国税局までは収入額調がいっておって、税務署まではいかないわけですからね。いわゆる適切な額を国税局の人が一々現場に当たって――それは特別な調査は別ですよ。一般の納税者に当たる場合は税務署の担当官がやるわけですから、そこまで知らしてもらわなければ意味がないと思うのです。そういうことがあるわけです。いま次官のお答えになったことで、私、反駁する意味はございませんけれども、その適切な額は、私も現場におりましたからわかりますが、担当官の裁量によって適切にもなるし適切にもならないのです。それが係長、課長、署長の段階で適正じゃないということはめったにありませんよ。極端なことをいえば、百万円の所得があったとしましても、担当官が調査して七十万円だといえば、納税者は七十万円でありがとうございました。それできまっているのです。そういうことがあるからいろいろな問題も出てくるわけですね。それはそれとしまして、そういう一番大事な判断を下す現場において、こういうことを考えるならば、やはり知らせていいのじゃないか。そして長官もいつも言っておられるように、納税者の少々のミスは目をつぶって、それを重箱のすみをつつくようなことはしない。それはあとでまた東淀川のことをいろいろお話ししようと思っておりましたが、そういうことを考えれば、先ほど主税局のほうはわりあい軽い立場でいろいろおっしゃった。国税庁のほうはなかなか言えないということはわかります。わかりますから、節税ですね、それから調査。調査の問題でも、これは、ここで長官が言われるようないろいろなことが、実際末端でそれと逆なことが行なわれているのですよ。私何べんも言うてきても、それを態度を変えないからあきれているのです。
 そこで、私が言うことがうそだと思うならば、国税庁のほうで調べてみればいいんです、第一線の税務署で。ガサを入れたかどうか、入れなければどういう調査が行なわれておるか、その実態を持ってこられて、そういうことはありませんと言うならば私は聞きます。そういうことではなしに、この国会の場では往々にして、正しくやっております。そういうことが終わってしまうのですけれども、私はもう少しそういう点は考えてもらわなければいけない、こう思うのです。いまの収入額調を見せたほうがいいと思いますが、国税庁としてどういうようにお考えになるか、簡単にお答え願いたい。
#210
○川村説明員 税務行政を行なった執行の結果として、租税収入がどうなっておるかという意味の情報を税務署まで流すという意味では、私も賛成でございます。ただ、先生のお話しの中に、執行の体制の問題とそれが並べられてお話がございましたので、先ほど主税局長からもお話がございましたように、その点はひとつ分けてお考えをいただきたい。
 それから、最終のと申しますか、もう一つ、最後の点で、税務署が親切に納税者を指導していくべきであるというのは、まさに先生のおっしゃるとおりでございます。私どもも日ごろそういう方向で税務署を指導しておるつもりでございますが、なお不十分な点があれば、その点につきましてはなお努力を続けたいと考えております。
#211
○田中(昭)委員 そこで、収入額の問題が出ましたから、私、一つふしぎに思うことを、きょうは時間がありませんで、資料要求をしておりませんから、概略的なお答えになるかと思いますが、皆さんもそうじゃなかろうかというような常識的な質問をしてみたいと思うのです。
 現在、地方と中央ですね、いわゆる過疎、過密という問題もたいへん問題になっております。そういうことを考えてみて、日本全国には十一の国税局があります。その十一の国税局の中で、常識的に考えて、東京局とか大阪局とかいう都会の国税局の税収がふえなければならない、こう私は思うのです。これだけ経済活動も大きいし、人口も流入してきて、サラリーマンもどんどんふえて、そのほかのいろいろな法人、企業も――東京のこの法人を地方に持っていって調査したら、それは専門家だったらわかると思うのです。そういうこまかいことを言うのじゃなくて、全体的に常識的に考えて、地方の税収よりも東京局のほうが、ずっとさかのぼってみると、ふえてこなければいけないじゃないか、こう思うのです。その点は私の考えがおかしいでしょうか。それとも大体いいんでしょうか。主税局長、直税部長、次官のお答えを願います。
#212
○吉國(二)政府委員 全体の税収の中に占める東京局、大阪局のウエートというか、シェアはふえていくべきであるということは、ごもっともだと思います。私は、東京の国税局長をやっておりましたときは、大体東京局の収入は全国の四三%程度だったろうと思います。その五年ほど前には三七、八%であったと思います。それだけふえておりますけれども、ただ問題は、税目別に見て、それがはっきり全部そろって伸びておるかどうかということになりますと、ややその点は違っております。法人税がふえておりますが、所得税はあまりふえておらないということはございます。総体としてはシェアは漸次上昇しております。
#213
○川村説明員 総体のトレンドとしましては、田中先生おっしゃるような想定がまず妥当すると思いますが、実は税収にはいろいろ問題がございまして、大きく申し上げますと、直接税と間接税と分けて考えなければならぬと思います。一本で申しますと、その理由までは別といたしまして、あまり大きな違いはないと思いますが、必ずしも都会局のほうのウエートが高くなっているとは言えない年もございます。総体のトレンドと、それから年々の変化の問題があると思います。
#214
○上村政府委員 要は、的確な所得の把握というものが、都市は、通常常識から考えてみますれば、ずっとシニアがふえて広くなっておらなければならぬと思います。けれども、それが思うようにいってないというのは、的確に所得の把握ができておるかどうかというような問題になるかと思います。よく注意していきたいと思います。
#215
○田中(昭)委員 それで主税局長、聞いてください。いま五年間くらいで三八%が四三%ですか、おっしゃいましたけれども、私が国税庁の資料、主税局の資料を調べてみますと、東京局は三十五年は全体の四二・二%です。ところが四十一年は三九・七%ですよ。パーセントはわずかですけれども、全体の税収ですからものすごい減り方ですよ。そうして大阪もそうなんです。そういう傾向なんです。いいですか、聞いておってください。この差はわずか二・五ですけれども、大きいですよ、五兆円の二・五ですから。そして地方の局、広島局をとってみましたら、広島局は三十五年は四・三です。それが四十一年は五・二です。約一%ふえている。これは広島局が地方局じゃないと言われれば、それでは高松局、熊本局ですね。熊本局なんというのは一番いなかの局だろうと思うのです。これでさえ、三十五年は一・五%しか占めてなかったのが、四十一年は私たちの常識と逆に一・八%を占めている。それは国税庁や主税局のこの資料が間違っておるか知りませんが、しかし、ちゃんと書いてあるのです。こういう常識と相反した税収を国税庁並びに主税局は平然として国民からあげている。これは責任――まあ責任と言うとおかしいですけれども、税制にいろいろ不公平があるということと同時に、ほんとうに考えなければならない問題じゃないかと思いますが、次官、どうでございますか。常識で考えてみて、いなかのほうの局がずっと減っていかなければならぬのに、いなかのほうの局がどんどんふえて、都会の相当に所得が上がって――これはもう課税所得の把握が少ないという面は、それは人間のすることですからあり得るとしましても、それがあったとしても、考えられないような結果になっておるということは、これは問題だ、こう私は指摘しておるわけです。この数字に間違いがありますか。
#216
○川村説明員 実はいまおっしゃいましたような傾向は、この四、五年について総額で見ますと確かにあると思います。しかしながら、それを税目ごとにしさいに検討してまいりますと、それぞれに理由があるわけでございまして、執行の体制と必ずしもそれを比較して、よってこの体制が悪いということには私はならないと思うわけでございます。
 その一つ二つ、いままでの傾向について見ておられることを申し上げますと、たとえば間接税がかなりのそういった大きな傾向を示しておるわけでございますが、間接税につきましては、御承知のように、酒にいたしましても、その他の消費税にいたしましても、未納税の移出の問題、したがって、その場合の蔵置場を移すということがございますと、税収が都会局から地方に流れるということは考えられるわけでございます。それから直接税にいたしますと、源泉所得あるいは申告所得について見ますと、地方の開発の結果、従来よりもたとえば所得水準が地方について上がりますと、その税収は当然上がる筋合いでございます。それからなお法人税につきましては、年度年度によりましてかなり伸びに差がございます。ある場合には都会局が伸び、ある場合に地方局が伸び、この五カ年間の総体の伸びでは地方局が伸びておるのは御意見のとおりでございますけれども、そういう年々のフレがございますので、これをもって全体の執行の体制によってこういうことが起こっておるということは必ずしも一がいには言えないのではないかと思っております。
#217
○上村政府委員 いま現実にどういうふうに具体的になっておるかということがよく把握できませんが、常識から考えてみまして、一応先生おっしゃるような感じもするわけなんです。ただその問題につきまして、実は適切な所得の把握というものにつきまして、これはよく注意をしていくということをいま特に感じておるわけでございます。
#218
○吉國(二)政府委員 先ほどどうも不正確な数字を申し上げました。実は先ほど私、五、六年前と申し上げたのは十年前の間違いでございまして、三十年当時の東京局のシェアが三五・八だったのですが、四十二年に私がおりましたときは四〇となっているわけで、長期のトレンドではそういうかっこうですが、最近数年が、いま川村直税部長が申し上げましたように、ちょっと停滞しておるわけであります。
#219
○田中(昭)委員 自分の言うたことが間違いなら間違いでいいんですよ。数字というのはどうも動かせないのですから、何もそれを一々言っているわけじゃありません。やはり常識的に考えていくことがそうならないということは、どこかに何か問題があるんですね。それは、いま直税部長は酒とか法人とか言われたけれども、酒なんというのは、これはつくったところで税金があがるんだから、何も都会地だから税金があがるわけじゃないですよ。そうでしょう、製造課税ですから。お酒の税金は何も都会地がたくさんあがらなければいかぬということはないと思うんです。製造課税ですから、東京以外にたくさん製造している地方のほうで税収があるのですから。そうでしょう。あなたはいま税目別に言われたけれども、税目別に見ましても、そういう考え方からいけば、所得税の源泉所得税、申告所得税、法人税というようなものが大体そういう常識と同じにならなければいけない。間接税の酒税なんか持ってきても、そういう比較検討は意味がない。ですから所得税だけ見ましても、そうじゃないですよ。所得税だけ見ましたら、東京は申告所得税の場合には、これはここ五年も六年もとっておりませんけれども、三十九年に東京局の申告所得税の割合三八・九%が四十一年は三七・七%に減っている。そういうことがあるかと言いたい。
 いままで国税庁もそのことについて努力しておるんですよ。所得税の把握が困難だ。なぜ困難かといえば、人員が足らない。だから、地方局のほうに行って優秀な税務官吏を勧誘して、一ぱい東京局のほうに連れてきてやる。それにしてもまだこういう結果なんです。そういうことは、次官、わかっていただけますね。東京がたいへんだから、地方から優秀な税務官吏を引っぱってきて相当やったけれども、まだだめなんだという結果なんですよ。それはもう地方局から言わせれば、地方なんかどうもせぬでいい、東京局でうんと取ってくださいと、こういうふうに極端なことを言いますよ。ほんとうに切実な率直な感情ですよ。きょうは私はそこをわかってもらえばいいと思うのです。こまかいことは、私もきょう資料を見ただけですから、もう少し具体的に見れば問題も出てくると思いますけれども、こればっかりやっておりますと時間がありませんからその次に入ります。
 予算委員会の一般質問で私質問いたしました問題で、大阪の東淀川税務署が全国で特殊なケースとして――これは次官もあのときに詳しくお聞きになっていないと思いますので、初めからまた申し上げておるわけですから聞いておっていただきたい。大阪局の東淀川税務署は大阪国税局長に内申して、そうしていままでの税務行政のこういう行き方ではいけない。だから税務署長に権限を与えて、税法の許す範囲で納税者の立場に立って税務行政を進めていきたい、基本的にはこういうことですね。その中で私質問いたしましたが、現地に行ってみますと、納税協会というのができておりまして、それに関係することをお聞きしたのです。私は、その納税協会というのをバックアップしてやるべきじゃないか、そういうような特殊ケースでりっぱな税務行政をやろうというモデルケースですから、それだけのことをやる以上はやっぱり国税庁、大蔵省も応援して、それがうまいぐあいにいくようにやっていくべきではないですか、こういう質問をしたのです。ところが、長官はちょっと先走って考えられましたのでしょう。その協会に補助金とかそういうものを出せというふうに私の質問をとらえたらしいのですね。その答弁の一部をとりますと、「補助金その他を出すという必要はないと考えております。」こういう国税庁長官のお答えだったのです。私は、税の執行機関の長官として、そういうりっぱな税務行政を行なう上において、そういうことを考えてやらせておるならば、もちろん金が出せるならば出したほうが一番いいでしょうけれども、精神的にもその他の面についても、必要ないと考えるのではなくて、大いに必要あると考えてバックアップしていきます、こういう答えをいただこうと思っていたところが、逆なんですね。「補助金その他を出すという必要はないと考えております。」そうしてまた、それは一つ置きますが、その間に大臣は何べんもそういうことはいいことだから助長していきたい。積極的に大いにやりたい。またそのほかに極端なことをおっしゃっております。私はそういう姿勢でなければいけないと思うのです。私はほんとうは長官にお聞きしたがったのですが、またその納税協会のことをこういうふうにも言っておりますね。野党的立場だからやらない、いわゆるその税務署の御用組合じゃないからやらない、こういうような発言もあるのです。しかし、私たちの政治感覚からいけば、野党的なような立場のものこそ助成援助していくべきじゃないか。それがなかったら納税者は何のたよるところもないんですよ。せっかく納税をスムーズにやっていこうという、そういう心がけのある人に対しては、そういう御用組合以外のやつには何も援助せぬぞと、そういう態度ではいけないと私は思うのですが、これはひとつ政務次官のほうから、私の説明が足らない面もあるかと思いますが、お答え願いたい。
#220
○上村政府委員 要するに税務官吏、公務員でございますので、一般の国民に対する奉仕者であります。ですから、野党的とか与党的とかいうような区別でなくて、それは正しいいい納税関係ということになりますれば、もちろん私は協力していくべきものだ、こういうふうに思っております。
#221
○田中(昭)委員 そこで、これは次官にお聞きするのはどうかと思いますが、いま私が言いました「補助金その他を出すという必要はない」ということですが、「その他」というのはどういうものを考えて長官は言ったんでしょうか。次官がお答えできなければ直税部長のほうからでもけっこうです。
#222
○川村説明員 長官の答弁が必ずしも田中委員にそのまま御理解いただけなかったようでございますが、長官のそのときのお答えのお気持ちは、補助金というおことばが出たのは、若干あるいは田中委員のお考えをさらに飛び越したのかもしれませんが、大阪の納税協会というのは、御承知のように非常に自然発生的なものでございまして、役所がっくり上げたというものではない。しかも納税者の自主的な意欲で税務署のそういった税務行政に協力していこうという動きであったわけであります。したがって、そういう自主的な動きであるので、国がそこに金をつぎ込むあるいは何らか手を加えるということがかえって納税者のそういった自主的な動きを阻害することになってはいかぬ、あるいは何か税務署のためにする団体であるかのように誤解を受けてはいかぬというような意味で、補助金等はむしろ出さないほうがいいのではないかということを長官は答弁したものと思います。そのように田中委員にも御理解をいただきたいと思います。
#223
○田中(昭)委員 やはりこれは長官に聞かなければいけませんですね。
 もう少し次官にそのときの模様からお考えを聞いておきたいのですが、長官は私の質問に対して、東淀川税務署の行ないます税務行政に対してこういうことをおっしゃったのですが、ちょっと聞いておいていただきたいのです。「少なくとも重箱のすみをつつくようなことをして税務署から顔を向けるようなことのないように、少々の間違いでそこをいじめるというようなことはやっていけないということをかねがね言っております。まさにこの河手署長のやり方は、私がいま申し上げたような気持ちを地で行っている例だ、」こういうふうに東淀川署長のやっておることと長官の考えていることは一緒なんだということをおっしゃっておるわけです。私は、長官が日ごろそういうことを考えておるということはりっぱだと思います。そうであるならば、この東淀川で行なっておるような税務行政を行なうということについては、政務次官としても御異存はございませんでしょうか。
#224
○上村政府委員 いまお読み上げになりました国税庁長官の言われた心持ちというのは、私もわかると思うわけであります。
#225
○田中(昭)委員 それではもう少しこのことについて認識を深めていただく上において申し上げておきたいのですが、実際にいま税務行政が現場で行なわれているのは、はっきり言ってそうじゃないのですね。いまのそういう趣旨でいけば、零細な事業所得者なんかはもう簡単な調査でいいはずなんです。ところが、税務署の実際の調査というのは、先ほど私がちょっと言いましたように、いまの税務行政で、昔からのそろばんと鉛筆を持って調査に行くというようなことでは、実際その調査する税務官吏にとってももうどうしようもないところまで来ているのですね。ですから、いわゆるガサ入れというのをやるのです。帳面なら帳面があっても整備されてない、そういうことを見計らって、または預金調査をしたりいろいろなことをやってぱっとガサ入れが行なわれているのです。そういうことをされますと納税者はもうどうしようもないのです。
 これと別に考えてもらいたいことは、大きな会社は公認会計士を三人も四人も使って、税務のことはぴしゃっと帳面に記載される、そして事後調査しか行なわれない。ところが、小さい所得者に限って、そういう整備がなされていないことをいいえさにして、一つをつかまえられてそれが調査をされて、納税者のほうはもうどうしようもない、そういう調査が行なわれているのです。そうじゃないというならば、そういう態度でいってないというならば、そういう調査はやってないということを、全国の税務署で事業所得を調べて、その調査の内容を見て、これに対してはこのような――先ほど東淀川税務署でやっておるような温厚な方法でやったかどうかということは、調書を見ればすぐわかるのです。それを一ぺん出してもらいたいと思うのです。国税庁はいま事務簡素化であまりやれませんと言いますけれども、実際調査した、そういうガサを入れたのじゃなくてもいい、内容がそういうふうになっているものが何件でどのくらいあるものか、一ぺん私に対する反駁資料として調べてみませんか。こういうことについて次官にもひとつよく認識しておっていただきたい。資料として提出できますか。
#226
○川村説明員 現在の所得税、法人税の調査の実態について簡単に御説明いたしますと、私どもといたしましては、田中委員のおっしゃるような小さいものをいじめるというような調査はしておらないつもりでございます。現在、法人の実調の状況について申し上げますと、売り上げの大きなものから高階級、中階級、低階級、実はこれは製造業、卸売り業、小売り業で売り上げの基準を異にしておりますので、大規模、中規模、小規模とお考えいただいてけっこうだと思いますが、それぞれの調査率がかなり変わっております。大規模の、要するに高階級法人の実地調査の場合は、総体の要処理件数に対しまして二五・八%、総体の四分の一を調査しております。それから中階級の法人につきましては一二・三%、低階級につきましてはわずかに五・八%しか調査をしておらないわけであります。その一件当たりの調査日数もだいぶ違うのでございまして、高階級につきましては、先ほどの二五・八%を調査するものにつきましては、一件当たり六・五日を要しております。それから中階級につきましては四・二日、低階級につきましては二・七日と、調査日数をごらんいただきましても調査の深度というものはおわかりいただけると思うわけでございます。いまのは実調の状況でございますが、なおこのほかにも、一件当たり一日まではかけないで、帳簿に即して指導する。要するに、税務署で調査額を幾ら幾らと計算するまではやらずに、帳簿を検査した上で気のついた点を注意して申告を修正していただくように指導する。そのような指導ということをあわせて行なっておるわけでございます。
 お話しの東淀川の場合に、調査と指導との構成割合が、指導にやや割合が傾いておるということは、この間御説明したとおりでございます。
#227
○田中(昭)委員 最後にお答え願いたいのですが、いまの問題にしろ、政務次官、税金のことでございますからめんどうでございますけれども、よく注意しておっていただきたいために申し上げるのですが、現場でそういう問題がそのとおりいっていないという点は大体推察できると思うのですが、もう一つ具体的に申し上げておきますと、税理士法の規定によりましても、税理士関与、業者を調べに行くときには事前通知がなければならないとなっているのです。この事前通知の一つの項目すら守られていないのです。この前、私帰りましたら、福岡局のほうでこういう苦情を聞いたのです。調べてみましたら事実でした。福岡で税理士さんの政治連盟が結成された。その日は税理士さんが全部集まるから調査は全部遠慮してくれという申し合わせができておったそうです。ところが、そういう税理士さんがいないということがはっきりわかっていながら、わざわざそこに調査に行っているのです。それでは何のための約束か、何のための税理士法の規定か、そう言われてもどうしようもないと思うのです。やはりどうしても行かなければならぬならば、そういう事情を言って、そうして税理士さんのほうにも連絡をとっていくならばいいのですけれども、そういうところに抜き打ち的に行ったと言われてもしかたがないわけです。徹底しないんですね。約束を守らない、法律を守らない、そういうことが平然と行なわれることはよくないと思うのです。それを申し上げておきます。
 もう一つ最後にお願いしたいことは、この前の一般質問のお答えの中で、私が源泉、サラリーマンの税金は重いのじゃないか、不公平じゃないか、このような質問をしまして、結論として大臣から、給与所得者と申告所得者にいろいろな問題がある。これは大臣が言われたままですよ。「これらの問題が結集いたしまして、いわゆるクロヨンとかそういう声になっておる、」であるから「これらの点につきましては是正しなければならぬ。それで四十四年度の税制改正でもそれに手をつけている、」こう大臣がお答えになったわけでございます。手をつけておられることは少しはわかりますけれども、それはもう時間がありませんから省略しまして、その中に出てくるクロヨンということについて政務次官はどういうふうなお考えを持っておられますか、お聞きしておきたいと思う。
#228
○上村政府委員 クロヨンということはマスコミその他に載っておることばであることは先生も御案内のとおりと思います。これも結局実質な問題について不公平である、非常に公平を欠いておるのだというような一つの不満の声だと思うのです。だから先般も大蔵大臣が、そういうようなことばもあるのだから、いまの申告課税あるいは給与者の課税というような問題について検討をしよう、こういうふうなお答えを申し上げたと思うわけでございます。
#229
○川村説明員 ただいまの田中委員の御質問のうちに、税務署が税理士法違反をやっているようなおことばがございましたので、ちょっと御説明をいたしておきます。
 税理士法には、まさにおっしゃるとおり、納税者に通知する場合には税理士にもあわせて通知しなければならないという規定はございますが、税務署といたしましては、もちろん調査の便宜上、相手がいないときに調査に行ってもむだでございますので、一般に所得税のときには大体事前に通知をしておるわけでございます。法人の場合には、個人と違いまして経理組織もある程度しっかりしておる。ということは、人的にもしっかりしておりまして、代表者がおらないでも調査ができる場合が多うございます。
 調査のあり方でございますが、現在までの調査の状況から申しますと、残念ながら、たとえば帳簿と金庫にあります現金の額とが違う場合がよくございます。したがいまして、税務署といたしましては、ほんとうの姿を調査いたしますためには、やはり通知をしないで、相手方が用意をしないときに出かけてその実態を見せていただくということが調査で実情をつかむ一つの手がかりになることが多いわけでございまして、差しつかえない場合には、もちろん法人の場合でも相手方に通知するわけでございますが、通知しないで行くのはそういう見地からでございます。納税者に通知しません場合には、必然的に税理士にも通知しないということになるわけでございまして、税理士法に違反してそういう調査を行なっているわけではないということを申し上げておきたいと思います。
#230
○田中(昭)委員 終わります。
#231
○田中委員長 この際、午後六時まで休憩いたします。
   午後五時四十分休憩
     ――――◇―――――
   午後六時二十三分開議
#232
○田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。広瀬秀吉君。
#233
○広瀬(秀)委員 参議院の予算委員会で、総理、たいへんお疲れのことと思いますが、大蔵委員会に総理がおいでになるのは、大体一年に一ぺん程度でございますので、この委員会に関係する諸問題について、論争はできませんが、政治の最高の責任者としてそのお考えを聞いておきたい、こういう問題について御質問をいたしたいと思いますので、ひとつ率直にお考えを答弁していただきたいと思います。
 まず最初に、中国貿易の問題についてお伺いをいたしますが、四十四年度の世界経済のかげり現象というようなものも、下期あたりにはあらわれるのではないかというようなこともございます。大蔵省は非常に強気で、予算の繰り延べ措置も撤回をされて、通常ベースで押されるというようなことでありますが、ややそういう面では警戒を要する情勢というものを見ておかなければいかぬだろうと思います。したがいまして、貿易の伸び悩みというようなものも、そういう面から出てくるのではないか。
 また、ベトナム戦争の問題で、例のベトナム特需が――これはいろいろ計算の方法で、六億から十七億ぐらいの幅でそれぞれの立場でやっておりますが、通産省試算でも八億六千万ドルぐらいはいわゆるベトナム関連の特需という形で、そのうち国際収支に及ぼす影響も六億五千万ぐらいはあるというように見られておるわけでありますが、こういうものが、ベトナム戦争終結というような事態を迎えまずと、これもきいてくる。もちろん復興特需というようなこともあるでしょうけれども、影響はマイナスの方向に働くことに変わりはないだろうと思います。
 さらにまた、相次ぐ民間設備投資というものがきわめて強調に推移しておりますが、日本国内においても先行き供給過剰の状態、供給の圧力というものが加わるような状況というものも出るのではないかというようなこと、それやこれや考えますと、いままでのアメリカを中心にする貿易の伸びにだけ期待する、あるいは先進国同士間の貿易にだけ期待するという貿易構造というようなものを、やはりいろいろなそういう見通しというものを考えていく場合に、転換をしていく。まるっきり転換ということではないけれども、新しい日本の海外市場というものを確保するというような面も、やはり強く考えておかなければならないだろうと思うのです。しかも、そういうように社会主義圏、中国との貿易面における強力なアプローチ、こういうようなものをやはり当然考えていくのが至当だと思うわけであります。
 そういうような観点から、最近における日中貿易を見てみますと、六六年は六億二千百万ドル往復ということで最高でありましたが、一昨年は五億五千七百万ドルに減り、しかも六八年度はこれをさらに下回る、少なくとも一・五%ぐらい下回るのではないかというように見られておるわけであります。こういうようなことでいいのかどうか。やはり隣国の、七億の人口を持つ、世界人口の約四分の一といわれるようなこの新中国との関係というものを、貿易の面においてさらに伸長さしていくというようなことでありますが、この面についての総理のお考えをまずお聞きしたいと思うわけです。
#234
○佐藤内閣総理大臣 中国大陸との貿易についての、いろいろな見方がございます。昨年の後半においては、どんどん伸びていった。したがってこれからの、ことしについては明るい見通しというか、増加する方向ではないか。せっかくただいま古井君と田川君とが、さらに民間の岡崎君も出かけて、いわゆる覚書貿易、それをひとつ長期化する、そういう取りきめをしようといって、いま努力しておる最中でございます。私はそういう意味で、ちょっとことばは在来から使っておることばでございますが、いわゆる政経分離の形においてこの貿易は持続し、さらにそれをふやしていく、増加していく、こういう方向でぜひやりたい、かように思って、せっかくいま努力しておる最中であります。
 また、いままでお話しになりました御意見、貿易を各方面に手を伸ばせ、もう言われるまでもなく、私も賛成であります。そういう意味では、いま日ソ間の貿易は七億ドルをこすという、そういう状態にまでなりました。かつては中国大陸との貿易のほうが、対ソ連貿易より以上だった、そういうことを考えると、さらにさらにもっと貿易額をふやし得る、かように私は考えています。
#235
○広瀬(秀)委員 お答えの中に、伸ばしたいというお気持ちは十二分にうかがえるわけであります。しかし、それに支障を与えている諸問題というものが、たとえば例の吉田書簡の問題がございますし、あるいはまた国連における中国代表権の問題もございますし、あるいはまた、最近政府が準備していると伺っております出入国管理令というようなものを、今度は法律にしようというようなこと、それらについてやはり中国を非常に意識して、敵視というようなことがよくいわれるわけでありますが、そういう問題がやはり一つの障害になっている。
 そこで総理に、時間があまりありませんので、簡単にお伺いしたい第一点は、まず、今日まで輸銀の使用を正式に認めておらない。昨年の予算委員会、あるいは商工委員会なり、この委員会等において、前向きでこの問題を検討します、実現する方向で検討しますというようなお答えを、総理も、当時の椎名通産大臣もされておった。この問題についてどうお考えになるかということをお聞きしたいし、さらに、当面十万トン程度の米の輸入をやっておったけれども、国内でも御承知のような情勢で、これを輸入しなくなった。その肩がわりということでもないわけでありますが、今日日本では非常に食肉が足りない。特に牛肉が足りないというようなことでありまして、高い牛肉をかなり大量に外国から買っておるわけでありますが、お隣の中国から、中国食肉の輸入というものが、向こうからも強く要請をされておる。もちろん口蹄疫の問題ということが、公式的には一つの障害のようでありますが、これについては、調査団も前後二度、三度にわたって、もう心配ないという報告も出されておるわけでありますので、それらの問題について、総理としてどのように措置をされ、指導をされるか。輸銀の問題とこの食肉の問題についてだけ、きょうはお伺いをいたしておきたいと思います。
#236
○佐藤内閣総理大臣 これも他の機会にしばしば申したのでございますが、輸銀を使うことについてはケース・バイ・ケースで考えていく、こういうことでございます。そのとおり、この席でもお答えをしておきます。
 ただいま食肉のお話が出ました。食肉は、いま御指摘になりました口蹄疫の関係、この点がまことに実は残念に思うのですが、これは大事な上にも大事をとるのが、わが国のひずめのある動物を保護するゆえんでもあろうか、かように思いますので、ただ、いままでの情報だけでだいじょうぶだ、だいじょうぶだというだけではちょっといかないのじゃないか、かように思って、私は、これについては慎重な態度で臨んでおるところでございます。
 また、米自身は、内地の需給状況が、ただいまのように非常にたくさん残っております。前に買ったときと異なって、過剰でございます。しかし、ウルチはごくわずかでも買い得るのじゃないか、こういうようなことで、そこらの点も指図しておるような次第であります。
#237
○広瀬(秀)委員 口蹄疫の問題、確かに総理がおっしゃるように、大事なことでございます。慎重を期されることはけっこうでありますが、やはり国際的信義という問題もございますし、そうかといって口蹄疫がもしあるとすれば大問題でありますから、たとえば権威ある、そういうものについての調査団を派遣して、積極的にその結論を得るような段階を経て、船上加工方式というような段階、大体そういう方向に行きつつあるようでありますけれども、そういうことでなしに、やはりなま肉を輸入できるような方向というものに近づくための努力というものを、なさるお気持ちがございますか。
#238
○佐藤内閣総理大臣 もちろん、国内の事情等から申しまして、私はこういうものは一顧だに値しないという、そういうものではございません。もちろんこれは十分慎重には扱いますけれども、関係の専門家から見まして、そういうことに万遺漏なきを期せば、これはまた別な方法があろうか、かように思います。
#239
○広瀬(秀)委員 次に、減債の問題をお聞きいたしたいと思うのでずが、ことしは自然増収の中で公債減額に千五百億割り振る、そしてほぼ同額の減税をやられる、こういうように、きわめて減税、減債論争を、いきなさばきをしたと福田大蔵大臣はおっしゃるわけでありますけれども、総理のお考えをひとつお聞きしたいのは、この国債というものを、ことしは四千九百億ということでありますが、自然増収が、やはりことしも大体昨年と同じような経済成長が見込める、鉱工業生産なども見込めるというような経済見通しどおりにいくとすれば、やはり一兆二千億を上回る自然増収もあり得る。大体いままで自然増収が足らなかったというのはわずか一年しかございませんから、これはあるだろうと予想されるわけです。そういうことも含めまして、ことしじゅうにもその分は、減債のほうに回したいということを大蔵大臣言われるわけであります。それについて、私どもは年度途中でも減税をやったらどうかというようなことも、本会議でもお聞きしたわけでありますが、そのこととは別に、公債を何年か先にゼロにするという方向を目ざされるのか、それともフィスカルポリシーの展開に都合のいい手段として残していく、そういう方向をあくまでとられるのか、依存度は五%以下に下げるということだが、そういうことなのか、その辺のところを聞いておきたいのが一つであります。
 それからもう一つは、新聞の伝えるところによると、また、この委員会でも大蔵大臣が答弁されたわけでありますが、公債をそういう場合に二千億程度のものは残しておきたい、それで財政の中にしっかり組み入れておいたほうが便利だ、そしてしかもそれは減税財源にも充てるということを発言されておるわけでありますが、そういうお考えをそのまま支持されますか、それともある段階ではやはりゼロということにもする気持ちがある、こういうようにお考えですか。
#240
○佐藤内閣総理大臣 長いことは、もちろん私予想を立てませんが、ただいまここでお答えする程度のこと、これは大蔵大臣と私との間に考え方に相違はございません。したがいまして、二、三千億程度の公債はやっぱり持つべきじゃないだろうか、そうしてそれがいま言われるように弾力的に運用されることによって、経済はうまくいくんじゃないだろうか、かように実は考えております。
 大体、公債政策を導入したその本人が福田蔵相でございますから、公債については、そのいいところも悪い点も、自分で一番よく承知しております。また、私どもが皆さん方に申し上げても、公債自身がこれは国の借金だ、それだけのものをやはり国民が背負ってるんだ、これだけは同じように意見が一致しておると思います。だから、当時公債発行に踏み切る際にも、そういう借金をいつまでもやるのはいかぬじゃないかというような批判も、皆さんからずいぶん受けたわけです。しかし、われわれこれに踏み切った。でありますから、いまの減税と、あるいは公債、こういうものを結びつけて考えた場合に、やっぱり二、三千億程度のものは残しておく、これは未来永劫と申すわけじゃありませんよ。いま私自身の考えられる範囲においてですね。そういうことは必要じゃないか、かように実は思っております。
#241
○広瀬(秀)委員 当初公債を発行されたときに、不況の際にはやはり公債を発行して景気をアップさせるという理由であったわけです。最近のように、四十一年の後半以来ずっと経済が好況をたどっている。しかも来年も一四・四%というような、かなり大幅な経済の伸びというものもあるのだという中で、やはりそういう当初の説明というものは狂ってきているのではないか。四十年代は税の自然増収が比較的伸びないのではないかということだから、もう公債を国の財政の歳入面にもがちっと組み入れてしまうのだ、そういうことに変わってきたわけでございましょうか。これは大蔵大臣でもけっこうです。
#242
○福田国務大臣 公債をどういうふうに運用していくか、これの考え方は初めから今日まで全然変わりません。つまり、不況時には公債を増発して需要を刺激する、また、好況時には公債の発行額を減額いたしまして需要の抑制をはかる、それで、国民経済全体をなだらかに成長発展させていくために財政を働かせる。この考え方は、今日ごうも変わっていないのです。ただ多少、皆さんがごらんになって疑いを持たれるのは、たとえば去年あたり非常に好況だった、そのときに多額の公債が発行された、こういうことをさすのだろうと思いますが、しかし、ことし四十三年度というこの年は、公債もずっと減って、四千八百億というふうになっております。それから四十四年度の見込みといたしましても四千九百億、こういうふうに見ておるわけでありますが、そういうふうにいま経済状態が非常に順調でありますので、公債は発行当初に比べますると非常に減ってきておる、私どもの考え方はそこに完全に貫かれておる、かように考えております。
#243
○広瀬(秀)委員 きょうは時間がなくて論争はできないと当初から申し上げてあるので、いずれまたその問題はやりたいと思います。
 次に、国鉄運賃改正法の問題とも関連する問題なんですが、総理は国鉄の御出身でいらっしゃる。国鉄関係のことは、総理であると同時にやはり政治家の中でも一番明るい方でありますので、この点、簡単にひとつ御質問いたしたいのですが、例の赤字線廃止八十三線区、二千六百キロという、財政制度審議会なりあるいは運輸大臣の諮問機関の財政再建推進会議というようなところで、そういう答申が出ておるということで、全国的に非常に、国鉄の将来のあり方までめぐって――そして現実に輸送需要があるにもかかわらず、必ずしも十分にこたえられてない閑散線区、赤字線、しかも通勤者、通学者というような人たちが何千といる、そういうようなものに対して、これは廃止されたらたいへんだという気持ちが、過疎問題などともからみ、あるいはまた地域開発がこれでは台なしになってしまうではないかという問題などとからんで、非常に大きな住民不安をかもし出しております。国鉄の使命というものは、そういう赤字になるところは全部切り離していってしまっていいのだ、財政再建推進会議が出したような、いわゆる都市間の旅客輸送だとか、あるいは大都市の中における通勤輸送だとか、あるいは中・長距離のフレートライナー方式などを導入した弾丸輸送であるとか、こういうものだけでいいのか。そういう赤字の出るようなところを営利企業が肩がわりできて、その交通体制というものが、地域住民の足を確保できるのか、国民の足を確保できるのか、これは全く疑問があるわけですね。それで、十年間にこれをやりなさいという形で出ているわけです。これに対して、総理は、こういう国鉄の使命というものは、もうそういうところまでいったのだというお考えなのか、まだまだやはり国鉄として、そういうところの足を確保する必要があるのだというお考えなのか。全国で不安におののいている沿線住民の人たちに対して答えられるような気持ちで、ひとつこの問題についての総理の基本的なお考えを聞かしていただきたい。
#244
○佐藤内閣総理大臣 私も国鉄出身ですが、最近の出身ではございません。ずいぶん古いので、もう最近の事情はよほど変わっておりますから、最近の事情に明るい方がそれぞれの方面にいらっしゃる、かように思いますが、それはともかくとして、いまの赤字線の問題ですが、一口に赤字線だから廃止する、こういうわけにいかないこと、これはよくおわかりだろうと思います。この個々の具体的な線について、廃止したらどうなるか。これが単に代替し得る交通機関があるのかないのか、そういう問題も一つございますし、さらにまた、現在のところはこれが赤字であるが、さらにその線が他につながる、そういう場合には一体どうなるのか。建設途中にあるがゆえにこれが赤字だとか、いろいろの問題があると思います。具体的にそういう点を詳細に調べて、しかる後に結論を出さないと、ただ財政再建推進会議がきめたから、赤字だ、やめた、こういうわけにいかない、かように私は思います。
 私どもが知っておるので一つ廃止して成績のいい線がある。これは白棚線といって棚倉−白河間の鉄道でありますが、これはもと民営としてやっておったのを、私どもいるときに国鉄に買収した。ところが、その線がどうも鉄道にはあまり適しないところのようだというので、線路をはずして、バスをそこへ通わせた。でありますから、そういうものもないことはないのです。しかし、どこまでも具体的な問題で結論を出す、これが本来の筋である、かように思います。
#245
○広瀬(秀)委員 時間がありませんので、税制関係の問題で、妻の座を税制上どう再評価するか、高めていくかという問題、これは本会議でも質問いたしたわけでありますが、二分二乗方式だとか、そういう方向に行くべきではないかということもございます。それに対して、相続税であるとかあるいは贈与税というような面について、できる限り考慮したいという意思の表明があり、また大蔵大臣も、総理も、参議院の予算委員会等においてもそういうお話をなさっておるわけです。しかし、これはそういう二分二乗方式というようなものの考え方がやがて取り入れられるにいたしましても、当面一番大事なことは、やはり配偶者控除、これを現在あるものをもっと引き上げる必要があるのではないか。妻の座に対する正当な評価という意味では、そういう方向を当然とるべきではないか。かりに妻がいなかった場合というものを考えると、家政婦を頼んでも一日千九百五十円で、これを月給に直せば大体五万八千円からになるというようなことを考えましても、これは適切な例かどうかはわからないにしても、あるいは家事労働をいまのように年間十六万五千円くらいにしか見ない、これだけしか控除されぬというような、そういう面から考えても、いかにもこの妻の座というものが正しく評価されていない。それをとりあえずの措置として1総理のお考えも、妻の座を高めたいということにあるならば、これは現実のいまの制度の改正の中でもやり得るものとしては、やはり配偶者控除の引き上げということが当然考えられてしかるべきだと思うのです。その点についての総理のお考えをひとつ……。
#246
○佐藤内閣総理大臣 妻の座について、堀昌雄君に実はたいへん詳しく質問を受けたのでございます。それで、委員会でお答えしたとおり本会議で答え、またここでも同じことを申し上げる。ことにお互い政治家である場合には、妻にたよっておる部分が非常に多いですから、そういう意味におきましてもこれは大事にすべきじゃないか、たいへん卑近な例を引き合いに出して、国民の皆さんには恐縮ですが、私どもそういうふうに思うのであります。妻の座はやはり確立する。それはただいま言われますように、妻の控除、そういうことにまず手をかけるのがいいか、あるいは相続税の場合に考えるか、あるいは贈与税のときに考えるか、あるいは二分二乗方式というものが採用できるか、そういうことをもあわせていずれ税制調査会で十分審議することだ、かように思います。この際に、あまり具体的なことを言わないほうがいいのじゃないか、かように思います。そういうことをも含めて、税制調査会にひとつ強い答申を出してもらう、これが望ましいことか、かように思います。
#247
○広瀬(秀)委員 次に、これもやはり予算委員会でえらい問題になっている点でございますが、源泉徴収の問題について、憲法訴訟も起きているというようなこと、また捕捉率は一〇〇%だという問題、あるいはまた、これは税の先取りではないかという問題など、あるいはまた、ほかの徴税の場合には、少なくとも徴税費というものが相当多額にかかっておるわけでありますが、この源泉徴収に限っては、もうほとんどゼロに等しいような徴税費だ、これらのことを考えてみますと、この委員会において、主税局長にもお聞きをいたしたのでありますが、源泉徴収をされる所得税の一%ぐらいが大体利息分に相当するということになりますと、約一%という金利の負担ということを考えましても――これはおそらく金利負担なとも、非常に安く見積もって大体一%ぐらい利息の先取り、利息を巻きあげられているというような形になる、こういうことであります。そうしますと、大体八十八億ぐらい税の先取りによって利息の面で損をする、こういうようなことで、大体一%ということをかりに肯定をしたとしましても――これには問題があるので、おそらく百二、三十億ぐらいになるんじゃないかと思うが、一%という主税局長の説明を引用しましても、八十八億から約九十億ぐらいの損をしている。俗なことばで損をしているということになるわけであります。そういうようなことを考えますならば、やはりこれは一〇〇%捕捉された上に、税を先納、先に納めて、そしてその分利子所得として当然納税者のふところに入るべきものすら許されない。しかも、サラリーマンの経費控除というようなものも認められていないのだというようなことを考えますならば、どうしてもこの際、あなた方にはこれだけの犠牲はしいております、しかしながら、それに見合うだけやはり控除をいたします。これは給与所得控除の中で見ているんだ、見ているんだといったって、それは通用しないんです。源泉徴収でわれわれはこれだけ損しているんだという、そういう考えというものは、やはり厳として勤労大衆に存在するのですから、そういうものに対して、これだけ特別な控除をしてあげましょうというようなことを、ひとつ佐藤総理の面目にかけて、政治家として国民大衆に対して、あたたかい血の通う政治をやる、おれは政治家だという姿勢を示していただくためにも、これくらいのことに何とか踏み切れないかという気持ちがいたすわけであります。たとえば、仮称でありますが、源泉徴収特別控除というようなものをやる、こういうお考えについて、総理のお気持ちをお聞きしたいわけであります。
#248
○佐藤内閣総理大臣 私自身もサラリーマンの一人として、そういうことができればたいへんけっこうだ、かように思います。ところで、源泉徴収はされているが、この生活必要経費の控除、それにどんなものが含んでいるか、なかなか説明を聞かないとわからない。いまも言われたように、どうも税の先取りで、金利だけ政府がもうかっているんじゃないか、そういうことをしばしば言われるように私聞いておったんですが、どうもいまの必要経費のうちに、やはりその利子も見てあります、こういうようなことも実は聞いております。けれども、やはり説明を聞かないと、それじゃ幾ら見ているんだ、おれの見方は足ったとか足らないとか、ずいぶんむずかしい問題になるだろう、かように思います。
 とにかく、結論から申せば、この問題は今後の問題として、さらにさらに検討する。これがお約束できることじゃないかと思います。しかも私、これは何もかも検討して――私が出てきたばかりに大蔵事務当局も困るんじゃないかと思いますが、どうもこの問題はサラリーマン・ユニオンの言い分ではないが、とにかくもう少し検討して、そうして理論的にも説明のできること、これが望ましいことじゃないか、かように私、思います。
#249
○広瀬(秀)委員 総理非常に慎重な答弁をされているわけですが、やはり今日源泉徴収の問題について、大衆の不満が一番爆発的に高まっておるわけですよ。だから、そのものに対して、ほかにいろいろ問題を移してぼかさないで、この問題についてはやはり何らかの、源泉徴収者には、これだけ重い税金になっているんだ、重い負担を課しているんだから、これについてはこれだけ配慮しましたという、これはやはり最高の指導者である総理の決断に私はかかると思うのです。その点で勇断をもって、単なる検討じゃなしにそういう方向が実現しますような決断を、ひとつもう一ぺん聞かしてください。
#250
○佐藤内閣総理大臣 税の問題は、重いとか軽いとかよりも、公平でなければならない、公平の原則に反することは一番国民が納得しないことだと思うのです。この源泉徴収課税をしておるその捕捉率等から見まして、完全に捕捉されている。どうも他にはそうではないようなものもあるように見受ける。こういうところにたいへん不満があるのだと思います。したがいまして、先ほどお答えはしたのですけれども、何か前向きでないようにお聞き取りだとすれば、それに私がさらにつけ加えることは、前向きでこれを検討さす、こういうことでございます。御了承いただきます。
#251
○広瀬(秀)委員 これで、一問でやめますが、課税の公平論が出ると必ず出てくる問題は、利子分離課税、税率の軽減措置、配当所得に対する軽課の諸特例、こういうものでありますが、来年、四十五年の三月三十一日で期限が切れるわけであります。いつもこの問題が、公平を害しているということになると、いつでも例外なしに例が引かれるというようなこの問題について、かなりの決意をもってこの改廃をやられるという御決意をひとつ最後に承って、只松委員の関連質問もありますので、これで終わりたいと思います。
#252
○佐藤内閣総理大臣 税の特別措置につきましては、いろいろ問題がございます。もちろん、一つの政策目標があって、しかる上でこの特別措置というのはあるのでございますけれども、どうも特権化したり、慢性化している、こういうようなきらいがございますから、そういうことのないように、もう来春期限のくるその問題、それとは真剣に取り組んで、そうして結論を出すようにしたい。税制調査会のほうからもすでにそういうような意見を申し出ておられます。ひとつその結果を、税制調査会の答申を、十分尊重するようにするつもりでございます。
#253
○広瀬(秀)委員 以上で終わります。
#254
○田中委員長 関連。只松祐治君。
#255
○只松委員 本委員会に総理がお見えになっている時間がたいへん限られております上に、関連でございますので、簡単に御質問をいたします。
 その一番重点は、やはり何と申しましても当面の税制の中では源泉所得減税を、いわゆるサラリーマン減税ですが、いかに軽減をしていくかということにあるわけです。しかし、この問題とうらはらをなす問題に、いま広瀬君がちょっと質問をいたしました租税特別措置というのがあるわけです。来年度国税で三千二百二十六億、地方税のはね返りが一千八十九億、地方税独自で一千百三十二億、計五千四百四十七億円にこれがのぼるわけです。こういう状態が続けば、――本年度もだいぶん税金問題が騒がしくなりました。これはアメリカやフランスや諸外国でも、いろいろ騒がしいようですが、日本では来年は容易ならざる事態になるだろう、そこで、ぜひひとつ来年は所得減税をさらに行なっていただきたいと同時に、本年度も、約三十八の本年並びに四十四年度中に期限の到来する租税特別措置がございます。明年度はさらに多くの利子や配当の特別措置の期限が参ります。これに対して強い決意で臨んでいただく。税調が言っておりますように、強い整理統合をしていただきたいと思いますが、ひとつ総理の御所見を伺いたい。
#256
○佐藤内閣総理大臣 ただいまお答えしたのと同じように、税制調査会の答申を、十分尊重して善処することにいたします。
  〔委員長退席、渡辺(美)委員長代理着席〕
#257
○只松委員 そういう意味で租税特別措置というのは、いわば特別の目的のために、したがって期限がついておるわけです。ところが、期限のない幾つかの租税特別措置というのがあります。たとえば価格変動準備金というようなもの、あるいは社会保障関係の医師の特別措置、あるいは毎年いままでやってまいりました農民の予約米減税、こういういろいろなものがございます。明年は米穀の予約減税はいたさない。本年もしないというような決意でございましたが、本年は何とか通りました。明年は絶対しないということでございます。ところが、四十三年度の税調の答申の中にも予約米減税と、それから社会保険診療報酬課税の特例、それから価格変動準備金というものについて、その善処方を要望しておる。それに基づいて、この予約米減税については、それだけじゃありませんけれども、強い態度をとられた。価格変動準備金についても具体策が進められておりますが、そのほかの問題、たとえば社会保険診療の問題、医師関係等につきましても、巷間、何らかの措置がとられる、こういうことがいわれておりますが、その点に関する総理の御所見を承っておきたいと思います。
#258
○福田国務大臣 私からお答え申し上げますが、米につきましては、只松さんもよく御承知のとおり、この間三党提案に御賛成くださったのであります。来年以降は特例がない、かように私どもは了承しております。
 それから、医師の問題につきましては、実態調査、これをよほど精密にしてやってみないと結論が出ない、こういうことでございます。その実態調査が、なかなかいきさつがありまして、進んでおらぬ、こういうようなことでございますけれども、いろいろ議論のあるところでございますから、議論なんかもよく頭に置きまして善処していきたい、かように考えております。
#259
○只松委員 もう少し歯切れのいい答弁が聞かれるかと思ったら、総理の答弁を横取りして、しかも、きわめて歯切れの悪いいまの答弁でございました。私は、総理の所見も承っておきたいと思います。
#260
○佐藤内閣総理大臣 いまの問題は、お医者さんの仲間でもたいへんな幸不幸がある、そういうことも考え、一般の人との格差もさることながら、いまの医者同士でも問題がある、さようなことを考えますと、一ぺんに片づくか片づかないかは別として、とにかくこの問題に取り組まないで税の問題をほおかぶりするというわけにはいかないのではないか、私はさように思っております。これもいずれ調査会で結論を出してくれるものと思っておりますから、ひとつこれを見守りたいと思います。
#261
○只松委員 時間がありませんから、税の問題これでやめますけれども、税というのは、公平というものが何よりも大きな原則でございます。いまサラリーマン減税が問題になっておりますので、税の負担感その他からくる公平の問題について、租税特別措置の問題について、ぜひ勇断をもって対処していただきたい。
 それからこの問題は、直接税金や財政問題と関係はないわけですが、総理に私たちが質問する機会がなかなかありませんので、一点だけ質問をしておきたい。それは定年制の問題であるわけでございますが、この問題はきわめて問題が大き過ぎる。しかし、佐藤総理が政権の座につかれるときに、社会開発ということばを、あるいは目標を掲げて政権の座におつきになった。その中でも私は高年齢者の就職問題、あるいは再就職問題、こういう問題は、たいへんに重要な問題として心の中にあっただろうと思います。
 ところが、そういうものの具体策として、民間では若干定年制が延びてきております。私もたびたび予算の分科会等でやりまして、去年は労働省で調査等をしてもらいました。そうこまかくは申しませんけれども、いま平均余命が男子は六十八・九一歳、女子が七十四・一九歳まで延びております。こういう状況の中にあって、調査ではその七〇%以上が再就職を望み、あるいはその中で四七%が定年時に就学の子弟を持っております。その上、順次私たちのような年齢の者に及んでまいりますと、戦争で婚期がおくれております。あるいはまた子弟の就学する年限が長くなってまいっております。六・三・三制等の施行あるいは大学への進学率が非常に多くなった。こういう中で、経済成長率は非常に多くなっておりますけれども、依然として一般公務員の場合は、五十四歳で勧奨され、五十五歳で退職だ。これは私は、世界各国が、若くて六十歳、長ければ七十五歳という定年の中で、総理の社会開発の意向とはたいへん違ってくるだろう。したがって、私はぜひひとつこの点に関して、また佐藤総理の政権構想の一つである社会開発と関連をして、勇断をもって定年制の延長に取り組んでいただきたいと思いますが、総理の御所見を承りたい。
#262
○佐藤内閣総理大臣 この定年制の問題が、会社の場合、それから政府の中央機関の場合、地方機関の場合、いろいろあると思います。しかし、そのいずれにいたしましても、とにかく有用な人を使わないとか、国のために、社会的に働かさない、これは非常にまずいことだと思うし、だからそういう立場に立って、何か、どうしたら一番いいのか、そういうことを考えていきたいと思うのです。私は、自分がつとめたところにいつまでもおれるように保障することも一つの方法なら、あるいはもっとどんどん他に転職する、そういうことをもっと自由にするような方法も考えてもいいんじゃないか、かように思います。しかし、まあそれはおそらくあまり自由にすると、いまの役所だとか、あるいは地方団体だとか、それなどはむしろ困るような状況で、そういうものをしばしば見受けるのです。また、いろいろ弊害も生ずる。天下り人事ということになると弊害になる、こういうように思いますが、しかし、ともかく適材適所で十分才能を働かせてもらいたい。こういうことをまず第一に考える。
 それからまたもう一つは、安心して働く、こういう意味で、やっぱりそれぞれの団体も、適当なところの定年制、それを考えるのが筋じゃないだろうか、かように思います。まあいまどういうことを考えているのか。私どもの政党で一番問題にしている地方公務員の定年制の法律案、これはずいぶん意見がいろいろになっております。これなどは私どももぜひつくりたいものだ、かように思っております。いま言われるのは中央の機関、それの定年の問題についてかと思いますが、そういうことができるようになれば、おそらくそれぞれのところにおいて必要な、また適当な定年制が生まれるのじゃないだろうか、かように思います。
#263
○只松委員 これで質問を終わりますけれども、私は、民間の問題あるいは地方公務員の問題、いろいろ、時間があれば論議したいのですが、時間がございませんから、そういう問題については、他日ほかのところでやりますが、総理に私がここで――いわば佐藤さんが総理大臣になって、善政の一つとして、これだけ平均余命が長くなってきて――いま二、三の理由を申し上げましたけれども、その中で、依然として国鉄や警察官や何か、一般の公務員がほとんど五十五歳で退職になっておる、そしてまた再びほかのところへ行かなければならない、こういう事態を考えたときに、たとえば五十六でも五十七でも、とにかく一年でも二年でも定年制を延ばすために努力する、このことだけの確言を得たいと思うのですが、いかがでしょうか。
#264
○佐藤内閣総理大臣 ただいま申し上げるように、国家社会に奉仕できる間はひとつ奉仕してもらいたい、そういう立場で適当なる年齢を考える。ただ、いま言われました国鉄の場合に、そういうことが適当かどうか、どうも筋肉労働をやっているものと、それから頭脳労働というか、ホワイトカラーというか、こういうものとやや違っておるように思いますので、その辺のところは適当に、それぞれの分野において適切な方法を考えていく、またそれもいまは管理者だけできめるような状態でございませんから、そういう点では落ちつくところへ落ちつくのじゃないか、かように私は思っております。
#265
○渡辺(美)委員長代理 村山喜一君。
#266
○村山(喜)委員 佐藤総理に、私二、三お尋ねをいたしておきたいと思います。
  〔渡辺(美)委員長代理退席、山下(元)委員長代理着席〕
 第一点は、予算の一般質問の中で私取り上げました。いま予算書が出されて参議院のほうに回っておりますが、この中で、財政法の二十三条によりますと、支出に関係のある部局等の組織別に区分をいたしまして、歳出にあってはその目的に従ってこれを項に区分をするというので、項の分まで国会の議決対象となっておるわけです。そこで、物価安定は最大の政治課題だということを触れられました。ところがこれについて、では物価安定対策費というものが予算項目の中にあるのかと聞いてみたら、それはありませんと言う。そのかわり出てきたのは、総理御承知のように、一兆三千七十九億の物価安定の関連経費というものが出てきたわけです。それで、経済企画庁が四千二百億円出した、これは一体どういうふうにしてこうなったのかというので私が追及をしたら、今度統一資料が出てきました。その統一資料は足して二で割った七千四百億の資料が出てきたことは総理ももう御承知だと思う。
 そこで、一体国民はこの政府の、佐藤総理の発言を聞いて、なるほど政府は物価対策については非常に熱意を持っているというふうに受け取るのではなくて、私はやはり、予算書の上においてどれだけの熱意を佐藤内閣は持っているのかということを見たいと思うのです。また見るであろうと思うのです。そうして私には、菅野経済企画庁長官は物価上昇率は五%の範囲内にとどめますという約束を衆議院ではされた。ところが参議院では、きのうの新聞を見てみましたら、五・五%までは責任を持ちますと、今度は、衆議院のほうは五%、参議院に行ったら五・五%と、向こうのほうが、だんだん日にちがたつのでその責任を持つことができないようになって〇・五%を積み上げたのかもしれませんが、そういうようなことになった。
 そこで、私は、この際佐藤総理大臣から、予算編成についてはもっと国民がわかりやすいように予算編成をしてみる必要があるんじゃないか。福田大蔵大臣は、一生懸命やっているのだということを言われたけれども、予算書をこうして見てみたときに、何も佐藤内閣やってないんじゃないかというような予算書では私ぐあいが悪いと思う。だから、ことしは大蔵省がコード番号の方式を入れまして、電子計算機にかけまして、そして科学的な手法を用いてやるような方法をとりました。努力もしております。そういうような点については敬意を表しますが、まだまだあの予算書は官僚の予算書ではあるけれども、国民の予算書ではないと私は思う。大体政治家の私たちが見てもわからない。それで聞いてみて資料を出させると、専門家の官僚の諸君が出すものがそれぞれ違う。これでは国民は、予算書を見てみても何のことやらさっぱりわけがわからぬということになる。私は、これは国民のための政治行政ではないと思いますので、そういうような財政のあり方の問題について佐藤総理大臣の御所見と、今後どういうふうにするかという御所信をひとつお伺いしたいと思います。
#267
○佐藤内閣総理大臣 佐藤内閣ずいぶん物価問題についてやったにもかかわらず、予算面に出てこないじゃないか、これはたいへん御理解のある御同情のある発言であったと思います。まあそれはともかくとして、いまの予算の編成のしかたについて見ますと、確かにただいまのような、一目瞭然というか、はっきりする、こういうものではないこと、これはどうももう少しくふうしなければならぬと思います。ことに物価問題についてやります場合に、われわれがとった対策としての場合は、構造改善対策が主になっておりますから、そういう意味から見ても項だけではどうも解決しない、こういう点でわかりにくい、こういうお話だと思います。これは私、いままでの予算の編成は別といたしましても、特別な政治課題になっておる問題、そういうものの一目瞭然、すぐわかるというような編成のしかた、そういうものが別表にあってもいいのだろう、かように思いますので、これはいませっかくの御注意でございますから、そういう点についてもひとつくふうしてもらうように、くふうができるかどうか、全然もう手がつきませんと――これは広い意味で考えれば、道路自身、それだって物価対策の一翼をになうものだ、こういうようなことにもなりましょう。それは、われわれの希望するものはそんなものじゃないんだ、もっと直接のものがほしいんだ、その物価の、道路一つにしてもこれも直接やはり関係がありますよ、こういうことにもなりましょうから、やはりずいぶん議論のある問題ですけれども、もう少し何か段階でも分けてわかりやすいようにひとつそういうものをつくることが、政治を国民に理解してもらう上に、政策的に、私どものほうに必要なことだろう、皆さん方が政府に少し教えてやる、こういうようなお気持ちでもって御発言になった、さように思ってひとつくふうしてみることにしたいと思っております。
#268
○村山(喜)委員 私は、佐藤総理がそういうような御所信でございますから、ぜひそれは遂行をしてもらいたいと思います。
  〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕
そうでなければ、幾ら関連をしているのだと聞いたら、どれだけ関連をしているか、感度でしかわけがわからない、これではまさにナンセンスだと思うのです。これで予算書でございますということにはなりませんので、努力をお願いしておきます。
 それで、次は景気の判断の問題でありますが、最近はかげり論争が行なわれておるようであります。おまけにフランスはきょうゼネストに突入した。で、フランの急落あるいはポンドの相場の急落が訪れるのではないか、おまけにアメリカの国際貿易収支、これは昨年よくありません、七億二千万ドルくらいの、純粋の黒字はその程度にとどまっておる、こういうようなことで金の価格が最近暴騰した。そういう状況の中で、日本の場合も、自動車生産が四十万台くらい新車の売れ行きが悪くてストップ状態、これは一・五カ月分の生産量。あるいは繊維がそうです。あるいはデパートの売り上げがあまり伸びない、こういうようなことで、どうやら供給超過体質に転換をするきざしがあらわれてきているのではないかという、これは通産省あたりの見方、これは企業の応援団をもって任ずる通産省ですから、そういうような見方をする。それに対して大蔵省なり日銀は、景気過熱をこういうようなことで防止することにもなるし、そんなに心配するものじゃない、だから設備投資を抑制をするというような方向にも働くのだから、慎重に対処すればいいんだというような一つのかまえであるようであります。
 そこで、そういうふうに佐藤内閣の閣僚が、片一方においてはそういうような見方をする、片一方においては、いやそれはこれから大型低気圧に発達をしていくかもしれないぞということで見ているものが新聞に出ていますから、その全体の頂点に立つ佐藤総理はどういうふうに判断をしておられるのか、それを聞いておかないと安心できません。どういうふうにあなたは見ておられますか。
#269
○佐藤内閣総理大臣 いま最後に言われた、閣内には意見の不一致はございません。
 もう一つは、絶えず注意するというか、警戒をするというか、用心をする、それにこしたことはないのであります。一番大事なのは、変動にいつでも対処するという、そういう柔軟な態度でそれに臨むこと、これはもう必要だと思っております。いま一般的な景気循環説を申すわけではありませんけれども、いままでも好景気が三年続くと――それが一番長期であったように思います。したがって、もう景気が今度は変わってくるのじゃないのか、そういうことを考えたやさきに、いまのようないわゆるかげり現象が出てくる。しかし、それかと思うと、他の一面で、いま百貨店の売れ行きがどうこう言われましたが、どうもそのほうに携わっている連中はあまり驚いておらない。依然としてけっこうでございますと、こういうふうにも言っているし、また日曜日など出かけてみると、あのレジャーを楽しんでいる姿を見ると、これはなかなか心配は要らないのだな、こういうようにも思えるのです。しかし、私一番こわいのは、経済の問題はしばしばムードによってどちらにもいく。したがって、われわれの発言も非常に慎重でなければならないと思いますが、そのムードを動かすこと、これがよほど大事なことだろうと思います。したがって、責任のある大蔵省あるいはまた日銀、財政金融をあずかっておるほうから申すと、経済の動きについて絶えず神経過敏にものごとを見ている、しかし、それでうまくとにかく落ちつくところへ落ちついていくのだろう、かように私は思っております。いま楽観はできる状態ではございません。それかといって悲観すべきものもない。
 いまフランスの例をおあげになりましたが、フランスと私どもの持っておる力、これは比べものにならない。またアメリカも、最近の状態はやや変わってきておりますが、またわが国も、アメリカだけを相手にはしておらない。先ほどもお話がありましたように、各方面にわたって、中国大陸に対しましてもそれぞれの手を打って、まあ大体アメリカで鉄鋼が百万トン輸出減、これは自制する、こういえば、約これに近い程度中国大陸に新しい需要が出てきている、こういうような話もあるのでございます。十分そういうような点も考えて、そして各方面に注意を払って、そして間違いのないようにしたい。何よりも一番心配なのは、いままでの経験から見ると三年、その辺でとにかく景気が変わりつつある。実はそこを大蔵大臣とも話しながら、ひとつわれわれの力でできることかどうか、レコードをひとつつくってみようじゃないか、このためにはひとつ注意しよう、こういうので、たいへん慎重に取り組んでおります。そういう意味でいまの予算は編成されておると思いますが、これができ上がりましても、今度は執行の段階におきましても金融と十分の連携をとって、これらに万遺憾なきを期す、こういうのが私どもの態度であります。
#270
○村山(喜)委員 そういたしますと、金融は警戒型で、財政は中立型、大体そういうような感度でよろしいですか。
#271
○佐藤内閣総理大臣 ただいまたいへん適切なおことば、さように考えております。
#272
○村山(喜)委員 第三の問題は、総理はいま開発銀行とか、あるいは輸銀とか、いろいろ政府系の金融機関がたくさんあることを御承知のことと思いますが、幾つあるとお考えですか。――別に総理に答弁を私は求めようとは思わないのだが、二十三もある、これは銀行局が出した数字。そのほかに信用保証の政府機関等加えたら数がどれくらいになるか、ちょっとこまかいものまでずっと当たると、たいへんな数になる。
 そこでいま、金融再編成を民間の場合には大蔵省盛んにやっておるわけですが、これは一つは企業の金利負担というものが年間三兆円をこえる、たいへんなこれはコストです。ですから、金融の効率化によって、その企業の負担というものを下げていかなくちゃいかぬということは、私たちもよくわかる。だから、そういうような意味において、金融二法の成立が去年行なわれました。それに基づいていま再編成の過程にあります。
 ところが、政府の金融機関は、これは整理をする方向にはなくて、かえってこれからふえていくのではないかと私たちは危惧しているわけです。というのは、具体的な例を申し上げて非常にその人には気の毒な思いをさせますが、昨年でしたか、環衛公庫法が成立をいたしました。これは職員が四十名くらいですね。そしてそれの総裁ですか、理事長ですか、おいでになって、前の厚生次官をした人がいま就任をした、この人の月給は四十一万円、それでそのほかに役員の人がおいでになる、全部で専門の役員が三名ですか、そういうようなふうにしてつとめられる。そうすると、一期四年間ですが、任期一ぱいつとめたら退職金が千四百万円くらい、二期つとめたら三千万円くらいの退職金がもらえる、こういうような仕組みなんです。ですから、何のことはありません。これは一つの環衛事業というものをとらえたら、なるほど安い金利のそういうような公庫をつくることは必要だということになります。しかしながら、それだったら業種別にもう全部つくっていかなくちゃならぬ。こういうような非効率的な、まことに政治的な金融機関というものができ上がっていったら、政府金融機関は、これから業態別につくるのだったらたいへんな数を用意しなくちゃならぬ、まさにインフレです。
 そこで、これをひとつ整理をしたらどうだろうかというような意見が出ている。これは総理は御承知のことと思いますが、どうもわれわれの見るところでは、非効率的なやり方ばかりやっているような気がしてなりません。こういうようなのは、大蔵大臣にあなたは一任をしておられるのですか、それともいま私が申し上げましたようなことや、あるいはこういうようなのはもう整理をして、やはりきちっとすべきだというふうにお考えになるのか、またいろいろな、労働安全金融公庫とか、あるいはチケット販売金融公庫とかいうものをつくってくれということで持ってきたら、ああそうですかということになってしまうのか、そういうようなところについてお考えをお伺いしておきたいと思います。
#273
○佐藤内閣総理大臣 いままでいろいろ公庫、公団等あまりつくらさないようにと、こういうことを基本的な方針としてはとっております。
 それからもう一つは、やっぱり予算の審議にあたって、特別会計、そういうものはあまりつくらない、そういうことで、厳重にいままでやってきておりますが、いま、一つ問題になったのが環境衛生金融公庫、これが一番問題になっておるようです。これは人が少ないということで問題のようですが、しかし、他から聞くと、案外これは金融がうまくいっているようです。最近小さな店なども、そこから金を借りたのが、非常に設備もよくなっておる。われわれが腰かけて食事するようなところでも、よほど前と見違えるようになった、こういうような評判のいいほうもございます。しかし、いま御指摘になりましたように、総裁の金の取り方はけしからぬ、そうして、そんなものは無制限にできるのか、こういうような御心配もあるようです。民間については、金融の効率化というものからでしょう、金融制度調査会がございます。それで、民間の制度のあり方等もいろいろ調査して、結論を出されるようですが、同時にまた、政府関係の金融機関についても、これも金融制度調査会がそのうちに調査報告を出してくれる、かように私は期待いたしております。調査報告を出す、かように思っております。さようなことを考えて、これはめちゃくちゃにふやすものではないということだけはっきり申し上げておきます。いまの基本線をなるべく維持するようにいたしたいと思います。
#274
○村山(喜)委員 環衛公庫は、私たちは、環衛事業に携わる人たちの低利長期の資金が要らないと言うんでなくて、そういうようなのは必要だ、それは国民金融公庫がいま手足になってやっているんですから、そういうようなところでやれば十分であったのが、低利長期の資金がないから、だから、おれたちのところもやってくれというようなことで運動が始まって、公庫ができた。公庫ができたら、そこには役人が要りますから、そういう高級官僚の隠居場所になっちゃうんですよ。ですから、そういうような問題を考えていけば、もう少しやっぱりきっちりと政府みずからが姿勢を正すべきである、私はそのことを言いたかったわけです。
#275
○佐藤内閣総理大臣 いま答えたことについて、私自身、いま金融制度調査会に譲らないで、政府自身がもう一度よく検討する、こういうことを申し上げておきます。
#276
○村山(喜)委員 民間の場合は金融制度調査会のほうでやっておりますが、いまのそういうような問題については、これは諮問もしていないわけですから、いま総理がおっしゃったような方向で処理していただきたい。
 それから、金利の問題ですが、開発銀行の四十二年度の資料を調べてみたのです。貸し付け件数が七百五十四件、金額は二千三百二十八億円、一件当たり平均三億一千万円、平均金利が七分三毛ですか、七・〇三%。それから輸出入銀行は、四十二年度の貸し付け件数が六百六十二件、一件当たりの貸し付け金額が四億六千八百万円、その平均金利が四・四五%。それから国民金融公庫を調べてみますと、一件当たりの貸し付け金額は六十六万四千円、基準金利が八分二厘。中小公庫の場合には平均金利が八分三毛、これは一件当たりの平均の貸し付け額は、直接貸しで二千三十万円、それから代理貸しが四百五十万円。私がこの数字をいま総理に申し上げましたこの中では、輸銀が一番低利長期の資金が貸し出される。その次が開銀、その次に中小企業金融公庫、そして一番期間が短くて高利のもの、しかも一件当たりの金額が非常に小さいものが国民金融公庫、こういうふうに段階が、ちゃんとランクがついておる。一件当たりの貸し付け金額を見ても、いま申し上げたとおり、これは間違いない数字であります。
 そこで、一体こういうように段階別のなにがなされておるのをながめながら、たとえば輸銀資金の中の造船貸し付けの残高は六千億をこえておる。四十二年度だけで千三百六十三億、これが四四%で貸し出されておる。なるほど造船は世界第一です。ほとんど半分は、日本が造船の船腹量を押えておる。それくらいの実績をつくり出したのは、こういう政府の、大きな声じゃ言われないけれども、低金利政策というものがあるからで、そのようなふうにして延べ払い輸出ができる。
 ところが、中小企業の製品等については、国民の生活必需品については、そういうような低利長期の資金は供与されない。そこに私は、物価政策の一つの問題点があるのじゃないかと思うのです。ですから、こういうような政府の系統の金融機関の金利問題というものについては、もっと総理は、最高の責任者ですから、その立場からひとついろいろ見ていただいて、そうして適正な措置を講ずることによって、物価安定のために処理をする方針をお立てをいただきたいと思うのですが、いかがですか。
#277
○福田国務大臣 ちょっと私から……。
 ただいま村山さんのお話を承っておりますと、開銀ですね、これなんかは、特利という政策金利のほうまで入れて平均をされておりますので、かっこうがはなはだおかしくなってきますが、大体そういう特別の政策金利を除きますと、開発銀行は八・二、国民公庫も八・二というのでバランスがとれております。まあそういうことなんです。それを頭に置いて……。
#278
○佐藤内閣総理大臣 村山君、なかなかよくお調べになっていらっしゃいますが、まあそれぞれの目的で、それぞれの金利をつくっておる。たとえば農林中金でも、ずいぶん高い金利である。中に農業の近代化等をはかる、あるいは中小企業の近代化等についての金利、これは特利だとか、こういうようなそれぞれのものをやっぱり考えていかないと、普通銀行の経営の立場で、どれもこれも一緒にというわけにはいかない。まあそこらに個別審査というか、それぞれの項目によっての審査があるわけです。いま言われたように、私は、日本の金利そのものは、最近はわりに落ちついてきていて、外国に比べましても低い金利だ、こういうことが言えるのじゃないだろうかと最近思っております。これは別に日本が下げたわけじゃなくて、外国が上げた、こういう関係でございます。しかし、いま御指摘になったように、事柄、それからその目的、性質等によっては、特別な安い金利をつくること、これはもちろん必要だ、かように私も思います。
#279
○村山(喜)委員 時間がなくなりましたのでこれで終わりますが、大蔵大臣がおっしゃったのはよくわかるのです。それは基準金利というのがありますから……。しかし、特利を入れたら七分三毛ということになるのですよ。これは間違いない。大きな企業は開発銀行の資金を使っております。中小企業では、開銀の資金を使えませんからね。ですから、それだけ大企業の場合には、メリットが与えられる。中小企業の場合は、金融上メリットが与えられていないが、具体的の数字の上にあらおれておるのです。だからこの問題は、やはり今後の産業対策に関する問題なり、あるいは物価政策に関する問題に関係がある金融政策の問題だというふうにとらえていかなければならないと思いますので、物価が上がらないように、参議院に行ってから五・五%と、わずかの期間に〇・五%も上げられたのじゃかないませんし、予算の審査が終わったとたんに六%まではだいじょうぶと言われたのじゃ、国民は安心してまかせられませんので、そのあたり、佐藤さんよく心得て処理を願いたい。
#280
○佐藤内閣総理大臣 別に、いま参議院に行った段階に五・五になった、――ちょっと私もそばにいていろいろ聞いておるのですが、話が不明確だと思うのです。大体五%前後というのは変えてはいないようです。その中の説明に、昨年の年末近くなりまして、これではどうも五・五になるのじゃないかという心配をしたのだ、ところがそこへいかぬで済んだ、こういうような話だったと思います。だから五・五になってもだいじょうぶだというのじゃございませんし、またその辺は、菅野君のためにちょっと私弁解しておきたいのです。しかし、これも速記がどうなっているか、私の聞いたのはちょっとそんな感じに聞いたのですが
#281
○村山(喜)委員 まあいいです。終わります。
#282
○田中委員長 春日一幸君。
#283
○春日委員 佐藤さんの政権も、ことしが第四年目を迎えておりまして、先般来各委員会での御答弁を拝聴いたしておりますると、だんだんと緻密な政策にも通じられてまいったようでございます。人事の佐藤さんから政策の佐藤さんにアウフヘーベンされつつあるようでございまして、まことに祝着に存じます。
 そこで、きょうは現総理と次期総理と、二人そろっておられるようでございますから、この委員会で長く論じてまいりました税法上の重要な課題で、その後逐次解決を見てきたのでございまするが、なお残されておる重要な二、三の課題について、ぜひともひとつ解決に向かって取り組んでいただきたい、このような希望を込めて質問をいたしますので、御所見をお伺いをいたしたい。
 第一番は、中小企業の個人事業主、これに対して事業主給与を必要経費として算入する、こういう制度を導入するの意思はないか。先般青色申告の専従者控除を、青天井で実質支払われておるその実額が経費算入を認められました。いまだんだんと企業の合理化、近代化が叫ばれておりまするときに、この事業主の働いておる部分、そこから発生しました所得、これが事業所得として組み入れられておることは、その実態に合致しないと見なければならぬと思うのでございます。現在税制は、資産所得と給与所得、この二つだけに分類してその税制が組まれておりまするが、申し上げるまでもなく、八百屋さんだとか、魚屋さんだとか、自転車屋さんだとか、町の零細中小企業者は、自分の店で、かつ自分が働いてそのなりわいを立てておる。したがいまして、そういう事業所得はまさしく資産所得と給与所得――勤労所得ですね、これの合算所得と見るべきである。したがって、そのような合算所得、すなわち事業所得そのものでない、給与所得が相当入っておるにもかかわらず、それを税の制度として見ないということは、この所得発生の実態に合致いたさないと思うのです。そういう意味で、この問題は先般来中小企業者が広く要請し、この委員会においても何回も何回も論じてなお解決を見ておりませんが、昨年青色申告に対する専従者控除が、その支出実額全額が認められた、このこととあわせ考え、零細企業なるものの存立の基礎を、近代化、合理化に即して確保することのためには、私はこの勤労報酬相当分を必要経費として算入する、こういう方向へいまや踏み出すべきであると思う。御承知のとおり、四十四年度において一兆二千何十億というような膨大な税の増収が見込まれておりまするこの段階において、横の均衡、縦の均衡、これをはかりながら、長い間税法上の問題として論じられてきたことを、私はいまや国民の要請にこたえるのときが来たと思うのでありまするが、この問題について総理の御見解はいかがでありますか。
#284
○吉國(二)政府委員 事業主に対して、その勤労部分について事業主控除を与えるという御主張のようでございますが、これは地方税では、御承知のように事業税におきましては、事業税が物税でございます関係で、事業主控除をやっておりますけれども、所得税の立場におきまして、その勤労部分に控除をするということになりますと、勤労所得自体の課税というものとの権衡の問題も生じてまいりますし、また一つの考え方としては、事業主に給与を認めろという主張もありますが、事業主に給与を認めるということ自体、自分が自分に給与を払うということは矛盾でもございますし、結局それは、事業主に給与所得控除と同じものを与えるという結果になると考えられるわけであります。事業主につきましては、給与所得控除で考えられているような必要経費に相当するものを控除しておりますから、さらに給与所得控除をやるということは二重の結果になるわけでありますので、いままでたびたび御論議がございましたが、事業主控除あるいは事業主給与を認めるという点は、所得税としては現在の段階では取り入れられないものであるということで、いままで論議が進んできたことは御承知だと思います。
#285
○春日委員 いままでの論議は、われわれ政策マンが、政治家がかくのごとく論じてきたら、大蔵省の官僚が、いま言うたようなとぼけたことを言うて、問題の解決がはかられていない。そんなことはもう百ぺんも二百ぺんも聞いたのです。だから、ああいう連中を相手に話をしても、これはコンクリートに額をぶつけているようなもので、何にも解決がつかなかった。私は、佐藤さんがほんとうに政治家として、いろいろとこういう政策の機微に通じられてまいって、そしていまわが国の税法が、給与所得と資産所得の二つしかない、ところが、その資産所得の中に見られておるところの事業所得というものに、そのような零細業者が、自分のお店から発生する利益と、おやじ自体が働いて発生する利益との合算所得なんだから、したがって、そのような部分について、すなわちおやじが働いて得る所得については、やはりその所得を得るに必要な経費があるであろう、だからそういうようなものを見ていく道筋を立てるべきであるが、その立て方がいろいろむずかしいとすれば、この際、いま吉國さんが言われたような、事業主給与制度を導入すべきである、こういうことを申し上げておるのです。これはひとつ総理、勇断をもって踏み切りませんか。もうあなたが予算編成をされるのは今回限りかもしれません。
#286
○佐藤内閣総理大臣 どうも私、事情のわからない、ことに税制の問題は、ずいぶん複雑でわかりにくい。したがって、いまのような零細業者、これ自身が、まあ青色申告をするにしても、ずいぶん苦労しておられることだろうと思うのです。この前は、家族をどういうように扱うかということで、家族についての完全給与制度というものができ上がったと思います。それの残りの部分の、いまの、何といいますか、経営者自身の問題かと思いますが、そういう意味に解してよろしいのか、まあそういうことであるならば、吉國君にさらにまたもっと研究さして、今度はコンクリートでなしに、話がよくわかるようにしたいと思います。
#287
○春日委員 実は私に与えられた時間が二十分だけでございますので、あと二、三点を質問したいと思います。
 この問題は、吉國君はああいうことを、ずっと昔から、ばかの一つ覚えみたいに言っておりますけれども、いま申し上げましたように、これは根拠のある理論でございまして、われわれが思いつきで言っているのではない、相当の税制の学者、権威者の意見もそこにありますので、ぜひとも政策的にひとつ十分御検討を願いたい。われわれも長い間税制の審議に当たってまいりまして、徴税政策が、その理論が石垣のように組み立てられておるものであることを承知しております。なお、そのような理解と認識の上に立って、私どもはこのような主張をいたしておるのでございますから、どうか高度の、高い次元の上に立って、この問題の御検討を願いたい。
 次は、企業組合の課税の是正についてお伺いをいたしたいと思うのですけれども、現行税法上ではこれが普通の法人として取り扱われております。ここに私は、中小企業政策という政策目的というものがあると思うのですね。だから、中小企業の協同化というものが一つの政策方式であるといたしまするならば、この協同化を促進するためには協同組合もある、あるいはボランタリーチェーンもいろいろあるであろうが、この企業組合というのは歴史的に相当そしゃくされた方式である。そういう意味で、この企業組合化を促進するために一つの隘路になっておりますのは、この税金の制度なんです。事業協同組合は、これが特別法人で税率が二三%なんです。ところが、この企業組合は一般の法人と同じなものですから二八%と三五%、こういうことになっておるわけでございますね。だから私は事業協同組合は二三%、企業組合は一般と変わらない、これは中小企業政策として、中小企業団体法の中に並列してあるのです。事業協同組合あり、企業組合あり、いろいろな協同経営のやり方がある。ところが、一つは二八%と三五%、他のものは、事業協同組合ならば二三%だということでは、これは政策として均衡を欠くではないか、こういうことなんでございます。ただ、こういう理論をわれわれが展開しますと、吉國君の答弁は、事業協同組合という事業の協同組合は、事業というものの経営がなお他の地位に存在しておる、残存しておる、企業組合は全的に合同するのだ、だから一〇〇%協同化したものと、九九%協同化したものと、それは区別して税率を立てるのはやむを得ないことだ、こう言っておる。事業協同組合はその事業分量の九九%まで協同化することができるんです。九九%協同化して、なお一%だけ自分で残しておけば二三%の課税、企業組合は自分の商売をやめて全的合併なんですから、全的合併をすると、その場合においては普通の株式会社と同じ二八、三五プロという形になってくるんでございますね。私は、協同化を促進するというのがこの協同組合法の政策目的であるとするならば、一〇〇%協同化したやつを優遇する、多々ますます弁ず、これは当然のことだと思う。一〇〇%合体がきまったものは税金が高い、中途はんぱな合体をしたものは税金が安いということは、何といっても理論の撞着、政策のアンバランス、そのそしりを免れない。だから、これを特別法人にしろということを企業組合が願望し、税制調査会のほうに向かってもしばしばその陳情がなされておる。われわれのごとき税法学者も、この理論については全く撞着しておると思う。ただ吉國君だけが反対。総理、この問題については、やはり斯界の権威のことばに耳を傾けて、あなたの政治力によってこの問題をひとつ解決しませんか。
#288
○佐藤内閣総理大臣 どうも私はよくわからないのですが、まあ研究したいという――たとえばいまの会社、法人と個人と、どうも個人よりも法人のほうが、会社組織のほうが税金が安いとか、こういうようなことをしばしば言われて、どうも税負担について、経営形態によってこれが二、三になっておる、こういうことを間々聞くのであります。そういうことを考えると、ただいま言われるように協業、これは零細事業について協業を進めておる、協業化によってその地位を守れという、そういう政策とも合致するゆえんだろうと思いますので、そういう点を、その形態いかんによって負担が変わるということのないように、そこらをよくひとつ研究さす。どうもそれより以外にはこれがよろしいというまでにいかない。まあ斯界の権威ではあるようですが……(春日委員「失礼ですね」と呼ぶ)以上のように思います。
#289
○春日委員 これはぜひともひとつ御検討いただいて、いままでのような理論の堂々回りではなくして、やはり総理からお話のありましたように、政策の効果というものをねらって、近代化、合理化の時代なんですから、ぜひともひとつ新しい前進をはかってもらいたいと思います。
 それから、もうあと一問しかできませんが――総理、あなたよくわからぬのにそんな雑音立てておったらなおわかりませんぞ。
 同族会社の留保所得課税の廃止ですね。これもやはり資本自由化というものが差し迫った問題になっておりますから、中小企業としても自己資本の充実をはからなければならない段階に立ち至っておると私は思うのです。そこで、中小企業に属する同族会社については、留保所得に対しては特別の課税がなされておるわけですけれども、これは私はこの際廃止すべきではないかと思うのです。やはりそういうような自己資本を充実せしめて、あのような八幡・富士ですら、さらにさらに合併をしなければ国際競争に勝てない、国内競争においてはさらに資本を充実して、近代化、合理化をはかって、自分の企業体力というものを強めていかなければならない。そういうわけですから、すなわち内部留保するところのそういう部分に対して、いま特別の課税がなされておるのだが、これはもう一つ廃止して、そうしてそのような同族会社が、どんどんとその体力をつけるために、その内部留保ができるように政策指導を行なうべきこれまた段階に来ておると思うが、いかがでありますか。
#290
○吉國(二)政府委員 同族会社の留保課税は、御承知のように……
#291
○春日委員 委員長、ぼくは吉國君の話はもう何百ぺんも聞いているんだ、全然意味がないんだ。
#292
○田中委員長 簡潔に……。
#293
○吉國(二)政府委員 同族会社の留保課税は、御承知のとおり、同族会社は少数の株主によって支配をされておりまして、その所得の帰属者がきわめて少数の人間に限られ、したがって、法人税の通常の税率をもってしては、その少数の人間が法人の所得に参与して得た所得の高に所得税を課税した場合に比べ、著しく負担が低くなるということを考えて、その留保分について課税を行なう制度であります。留保しないで配当すれば、これは個人所得税が調整されてかかるわけでございますから問題がないけれども、留保された分だけは個人の場合、たとえば五五%の税率がかかるにかかわらず三五%で済むということになるのを防ぐ意味で均衡上やっている制度でございまして、個人所得税、法人税の系列の相互の調整としてやむを得ない制度であると思いますが、内容的に、さらに現在の同族会社の実態等十分検討して、いまの段階で、税率あるいは控除等について、必要があれば再検討する余地もあるとは考えておりますが、制度自体を廃止するということは、現在の段階では不可能である、このように思っております。
#294
○春日委員 この問題は、いま申し上げておるように、資本自由化もいまや最終段階に来て、そうして中小企業といえども、さらに国際的にも国内的にも競争が激化してくる、そのときに企業の競争体力というものを強めなければならぬという政策要請があるのですよ、あなたにはそういうことがわからぬかもしれぬが、現実の問題として。それにこたえるためには、いま制度として均衡上いけないというなら、向こう三年、五年という時限立法でもいいのです。とにかくある段階までそのような中小企業の資本力というものを強める、こういう政策的な要請を満たすために、何らかの措置をとるのその必要を感じないか、こういうことなんですが、総理……。
#295
○佐藤内閣総理大臣 同族会社には、ずいぶん昔からいろんな議論がございまして、またいま吉國君も、必要があらば再検討する。だいぶ弾力的な、これはどうもコンクリートじゃなさそうですから、そういう意味で、ことにただいま大型合併論まで出ている、そういう際でございますし、それにも御賛成になった、かように思うので、中小企業の問題として、そういう線で私どもも積極的に再編成に利するような税制をひとつ考えてみたい、これはひとつくふうすることにしたいと思います。
#296
○田中委員長 田中昭二君。
#297
○田中(昭)委員 単刀直入に総理にお尋ねをいたします。
 総理は、昨年の三月五日の本会議で、昭和四十三年の税制改正の私の質問に対して冒頭に、「今日のわが国の税は、国民にたいへん軽いものを課しておる、かような確信を持っております。」と、重大な発言をされました。
 また次の大蔵委員会で、高くないかとの私の質問に対しては、国民所得に対する租税負担率の諸外国との比較をもってお答えになりました。その租税負担率の比較だけで、たいへん軽いものであるとの理由にはならないことは、もう論をまたないところであります。たいへん軽いものを課しておる確信を持っているとはどういう意味なのか、明確にお答え願いたい。
#298
○佐藤内閣総理大臣 国民所得に対する税負担率、こればかりが、いま言われるようなことに答えるわけでもないのですが、これは一つの基準かと思います。日本の場合は、四十四年度見込みで一九・七%、これはむしろ田中君が専門だから、その辺は説明を要しないほど御承知じゃないかと思いますが、アメリカは二七・二、これは六七年です。イギリスは三六・四、西ドイツは三一・七、フランスも三一、イタリアが二六、国民所得に対する税負担率はかようになっております。私は、この点から税は安いのじゃないか、こういうことを申したのであります。
#299
○田中(昭)委員 またそういうことで御答弁になりますけれども、それではまた同じになるわけですが、税調等の答申を見ても、いま総理のおっしゃるそういうことだけで軽いということはおかしいのです。
#300
○佐藤内閣総理大臣 それはおかしい、そのとおり。
#301
○田中(昭)委員 であるなら、総理がおっしゃっております軽いという税金は、どういうものなのか。この前もお聞きしましたが、それに対してはお答えがないのです。私は、ここで税調の答申からとってその答えを言うようになりますが、一人当たりの実質の国民所得水準が、先進諸国の水準にかりに追いついたとしましても、国民の実質的な蓄積の水準に格差がある限り、その担税力は同一に論じられない。また税負担の不均衡が強く訴えられている今日、国民の税負担水準を、国民の納税協力の程度を無視して決定することは不可能であることを考えますと、将来の税負担について、総理の言われるように、単純に形式的な負担率の比較をもって判断することは、適当でないと思うのですが、いかがですか。
#302
○佐藤内閣総理大臣 以上の点で、私はもう税の軽減は必要ない、こういうわけじゃございません。もっと税は安く、減税をやってしかるべきだし、また考え方によっては、税はうんと払い得るような、そういうような所得でありたいと思います。もっと申せば、年間三百万円で、それに対する税が一〇%にしても、あと二百七十万残る、こういうことですね。だけれども、さらにそれが千万円も取るようになれば、これは五割差し引かれても残るのは五百万ということですから、この税の率だけでとやかくは言えない。だから、もっと税は高い率でもいいから、もっと所得がふえる、こういうことを国民生活の上にもたらすような政策をやることが大事だろう、かように私は思います。いま私がとった例は、いわゆる国民所得に対してどういう負担になっているか、こういうことでございますから、今度は個人当たりには一体どうなのか、こういうことになるとまた違うだろう。それは田中君がそのほうの専門でもあったようですから、私どもはいまの程度にお答えをしておきまして、減税がもうこれでいいんだということを言っているわけじゃない。それだけは誤解のないようにお願いしておきます。
#303
○田中(昭)委員 その個人の税が、たくさん集まって国家に吸い上げられて、問題があるのですね。世間では、その税金の取り方に、でこぼこがあったり、不公平があったり、矛盾があったりするのです。そのことをよく考えてもらわなければ、税が公平でなければならないということは、私がここで言うまでもありません。負担率全体が安いから、個人的には問題があっても、残る所得がふえていけばそれでいいというような、そんな簡単なことではいけないと私は思うのです。私、このことにつきましては、ことしも予算委員会の一般質問で、そこにいらっしゃる、責任ある福田大蔵大臣にもお聞きしました。ところが福田さんは、その総理の気持ちを察して、このようにお答えになったのです。これをぼくは聞いてみて、なるほどなと思いますよ。何も二人ともが――次の総裁候補の福田さんだからそういうことを言われたとは言いませんよ。やはり現職の総理大臣のほうが政治の最高責任者であるというので、私は敬意を表しておりますから、その敬意を表することにおいて、もう少し考えてもらわなければならない。
 それで、そのときの福田さんの総理のお気持ちを言われたことを読んでみたいと思うのです。「おそらく総理も、」総理が安いと言われたことですよ。総理聞いておってください。「おそらく総理も、そう言われたのは、租税負担率が国際的に見れば低いのだ、こういうことじゃないかと思います。」ここまでは同じですが、今度こうおっしゃった。「国民の声として租税負担感が一人一人には非常にきつく出ているということは、」このきつく出ているというのはちょっと意味深長なんですが、「きつく出ているということは、よく御承知のはずでございます。」総理はそう思っておられますか。いま、これは福田大蔵大臣があなたのお気持ちを察して言うたわけです。そうでしょうか。
#304
○佐藤内閣総理大臣 一つ一つやらないで、続きを追ってやってください。まだ続きがあるでしょう。
#305
○田中(昭)委員 そこまでです。
#306
○佐藤内閣総理大臣 ただいま言われるような点がいま問題になっておる、かように私も理解しております。
#307
○田中(昭)委員 そうしますと、その問題、初めは負担率についておっしゃった、次は国民の声として租税の負担感が一人一人には非常にきつく、いわゆる負担率が重くなっておる、こういうことをおっしゃったわけですね。それも同感だとすれば、その非常にきつく出ている具体的なものは何でしょう。
#308
○佐藤内閣総理大臣 いろいろな見方があるでしょう。おそらく免税点とか、いろんな問題についても、免税点などが低いとか、ものによってはもっと上げてはどうか、こういうようなものもあろうかと思います。たとえば入場税などはずいぶん低いところにある。今度は料飲税あたりで少し免税点を引き上げましたが、そういうようなものがやはり高いというか、そういう感じを持つのじゃないか、かように思います。
#309
○田中(昭)委員 いま、私よく総理のおことばが聞こえなかったのですが、入場税なんか安いからどうするのですか。何かそんなことをおっしゃったようですが……。
#310
○佐藤内閣総理大臣 この免税点を引き上げろ、こういうわけです。
#311
○田中(昭)委員 それでははっきり総理から、入場税の免税点は引き上げる。入場税は高いということですね。入場税は高いから、免税点を引き上げるということでしょう。
#312
○佐藤内閣総理大臣 引き上げろ。いまおそらく三十円ぐらいから税がかかっているのじゃないかと思うのですが、それをもっと免税点を高いところに持っていったら、税のかからないものができる、こういうことなんです。
#313
○田中(昭)委員 総理もなかなか勉強をきょうはしてきているようで……。ということは、重税感が――国民の税負担の軽減をはかるということだ、こういうことになりますね。それでようわかりました。
 そこで次は、やはり十七日の大蔵委員会で大蔵大臣は、税制のあり方として、第一に公平でなければならない、第二に、その能力に応じて徴収されるものでなければならない、第三には、負担感というものが感じられない方式がよい、このように述べられたのでありますが、残念ながら国民の側から見ますと、現行の税制は不公平で、かつ矛盾点が多い税制といわざるを得ないのであります。特に給与所得者の重税感ですね、他の所得者に比べて、きわめて強いわけであります。そのあらわれが、世間ではサラリーマン・ユニオンの結成と税金酷書の発表、そのようにあらわれておるわけですが、最近では、自民党の中にも、重税に対する軽減の動きがあると報道されております。これらの動きが急速に高まっている事実を見ましても、為政者としてどのように考えておられますか、今後どのような方策を講ぜられようとしておられますか、お聞きしたい。
#314
○佐藤内閣総理大臣 大蔵大臣といろいろ相談もしております。また、いずれこういうものは税制調査会にかけて、それぞれ結論を出さなければならない、かように思っておりますが、先ほど来、わずかな時間ではありましたが、問題になるような諸点についてお尋ねがございました。基本的に、今度は広い範囲で、いわゆる給与所得者が源泉徴収をやられておる、そういうところの人たちに対しての考え方は、何かくふうしなければならぬだろう、こういうようなことで、全般の公平な税負担、そういうような意味の検討を、この上ともする考え方でございます。
#315
○田中(昭)委員 そこで給与所得の重税感ということで、これは昨年も同じようなことを言ったのですが、総理、大体御自分で、どのくらいの所得で、どのくらいの所得税、住民税をお納めになっておりますか、教えていただければ幸いですが、どうでございましょうか。
#316
○佐藤内閣総理大臣 どうも、私はそれを知りませんで、秘書がみんな扱ってくれますので、実はいま申し上げることはできません。たいへん申しわけございません。
#317
○田中(昭)委員 私から申し上げてもいいのですが、いつものことでございますから、きょうはおきまして……。
 昨年私は初めて国会に参りまして、総理のおっしゃることは、確かにうそはおっしゃらない、こう思っておりましたのですが、昨年私の質問に対しまして、マッチの税金でございますか、前向きによく検討するというようなお答えをいただいたのですが、その後何のこともない。また税制調査会にも問題にならない、そういう結果のようでございますが、この点は……。
#318
○吉國(二)政府委員 確かに昨年、マッチについて問題があるという御指摘がございました。このマッチにつきましては、いろいろな特殊事情がございますのと、千本一円という税負担でございますので、これが直ちに国民生活に反映するかどうか、いろいろな問題がございます。ただ物品税は、御承知のとおり、いろいろな物品を包括して課税しておりますので、ある特定の品目だけを税制改正で取り出してやるというのは、なかなかむずかしいものでもございます。しかし、物品税につきましては、課税の状況等から申しまして、数年に一回は洗い直すというのが、これは一つの必要性であり、慣例でもございます。次に物品税を洗い直す際に、この御意見を十分反映しながら検討いたしたいという考えで、私ども十分承っておきたいと思います。
#319
○田中(昭)委員 総理、おわかりなくて、いま主税局長のほうからお話があったのですが、そういうことで検討するということは昨年おっしゃったのですね。そこは間違いないと思うのです、会議録にも残っておりますから。その辺の総理の政治的な判断をお聞きしておるわけです。
#320
○佐藤内閣総理大臣 これはいまいろいろ検討している、それがたいへん当たらずさわらずの話とすれば、物品税の整理はときどきやっておると、こういうことですが、いまマッチの税については業界自身でいろいろ意見が出ている。税をやめるのだから全部賛成しそうなものですが、どうも必ずしもそうでもない、そういうようなことのようでございます。あるいはいまマッチ業界としては、そういうようなことが、やはり不当競争とまで申しませんが、競争が激化しないそのゆえんでもあると考えておるのではないか、かように私は思っておりますので、その税自身はやめることにおいて、大蔵当局とすれば、税収自身を別にほしい、そういうものじゃないようでございます。
#321
○田中委員長 もう時間なんで、各党みんなそういうふうに申し合わせているのですから、ひとつかんべんしてください。
#322
○田中(昭)委員 もう一問です。皆さんずっと超過したから――委員長の言うとおりやりましょう、そういうふうにされるんだったら。やめますよ。
#323
○田中委員長 次回は、明十二日水曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
   午後八時十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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