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#1
第061回国会 法務委員会 第22号
昭和四十四年六月十七日(火曜日)
    午前十時四十四分開議
 出席委員
   委員長 高橋 英吉君
   理事 大村 襄治君 理事 田中伊三次君
   理事 永田 亮一君 理事 濱野 清吾君
   理事 中谷 鉄也君 理事 畑   和君
      大竹 太郎君    鍛冶 良作君
      鴨田 宗一君    中村 梅吉君
      藤枝 泉介君    松野 幸泰君
      村上  勇君    猪俣 浩三君
      神近 市子君    黒田 寿男君
      山内  広君    岡沢 完治君
      山田 太郎君    松本 善明君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 西郷吉之助君
 出席政府委員
        法務政務次官  小澤 太郎君
        法務大臣官房長 辻 辰三郎君
        法務省入国管理
        局長      中川  進君
 委員外の出席者
        議     員 猪俣 浩三君
        法務省入国管理
        局次長     瀧川 幹雄君
        専  門  員 福山 忠義君
    ―――――――――――――
六月十七日
 委員坂田英一君及び西村榮一君辞任につき、そ
 の補欠として鴨田宗一君及び岡沢完治君が議長
 の指名で委員に選任された。
同日
 委員鴨田宗一君及び岡沢完治君辞任につき、そ
 の補欠として坂田英一君及び西村榮一君が議長
 の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 出入国管理法案(内閣提出第九〇号)
 政治亡命者保護法案(猪俣浩三君外五名提出、
 衆法第四六号)
     ――――◇―――――
#2
○高橋委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、出入国管理法案を議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。鍛冶良作君。
#3
○鍛冶委員 多年法務当局において研さんを積まれた出入国管理法も、いよいよ実質審議に入りましたので、この際われわれも十分研究して、いろいろこれに対して批判がありますから、それらの疑問の点をひとつできるだけ解明していただくようにと思って、私は質問に入ったわけでございます。
 そこで、いろいろの議論があるにもかかわらず、法務当局としてこれを出されたのには相当の理由があることと心得ますので、第一番に承りたいのは、現在ありまする出入国管理令を全面的に改正して出入国管理法をつくらなければならない理由を、ひとつ大臣から承り、なお補足して中川局長から承りたいと存じます。
#4
○西郷国務大臣 現在の出入国管理令は、御承知のとおり、最初ポツダム政令として制定されまして、制定以来今日まですでに十七年を経過しておりまするが、その間、わが国の国際的地位も相当高まりましたし、また最近における航空機の非常な発達で、わが国への出入国者は非常な激増の一途をたどっておるような現状でございます。しかしながら、現在の管理令を見ますると、当時今日ほど出入国者の多くない、しかも船舶による外来を中心として規定しておりますので、現在ほとんど航空機で参ります方々に対する措置が、現在の管理令ではそぐわぬ点がたくさんございます。また、その他におきましても、在留資格制度の機能が十分果たされておらなかったり、また在留管理がどうも強制退去に偏しておるような、いろいろ不十分な点が多々あるわけでございます。さようなことでございますので、今回、現在の管理令を廃止いたしまして、そういう諸要請に十分対処いたすために、出入国の手続の簡素化とか、在留管理の合理化等を盛りました法律を制定いたしまして、現在の出入国に対する諸要請に対処してまいり得るところの出入国管理制度を置きたい、かように考えてまいりましたことが、お尋ねの、今回提案いたしました大体の理由の骨子となるものであります。
#5
○鍛冶委員 ただいまのお答えで、現実に必要なことはわかりましたが、いろいろ世上批判をしております点では、政治的に何か特別の考えがあってやられたのじゃないかということが、疑問を持たれておる根本のように思います。これについて、大臣なり局長なりから、そのことの有無、あるとすればどの点であるかをひとつお答え願いたいと思います。
#6
○西郷国務大臣 お尋ねの件でございますが、先ほどお答え申し上げましたとおりに、今回提案の主たるものは、この出入国管理制度の簡素化、在留管理の合理化の二点でございまして、その他いまお尋ねのような政治的にあれこれしたいというようなことは、毛頭考えておらないわけであります。
#7
○鍛冶委員 じゃ、それはまたあとでおいおい承ることにします。
 それでは、提案理由の説明その他逐条説明で承りましたが、ここでもう一ぺんあらためて改正のおもな点を、そう長くやられては困りますから、ほんの、あなたとしてはこれが焦点であると思うところ、並びにそれをどうあってもやらなければならないのだという必要性及び理由を解明していただきたいと思います。
#8
○中川(進)政府委員 この時期にこの法案を提出いたしますと、いかにも政治的な要請がうしろにあるかのように一部で誤解せられておりますが、そういうことは毛頭ございませんので、ただいま大臣の御答弁になられたとおりでございます。ただ、私どもがこれを提案いたしたいと思いますのは、何よりも技術的な必要に基づくものでございまして、現在の出入国管理令ができましたのは、もうしばしば申し上げますように、昭和二十六年の秋でございまして、その時分、日本を訪れる外国人及び日本から出ていく日本人というものの総数は、さだかではございませんが、ごくわずかでございました。ところが、昭和四十三年というものを見ますと、日本人、外人、それから特例によるものでございますが、一時的なもの、そういうものを全部入れまして、入国管理局で扱いました対象は全部で約三百六十万をこしておるのでございまして、たいへんな取り扱い対象の激増ということが、何といってもいまのままではどうにもならぬじゃないかという大きな原因でございます。ことに、御承知のごとく、明年は万国博覧会が開かれますので、この三百六十万という数がさらに飛躍的に伸びるんじゃないかと考えるのでございます。それで、何とかひとつこの万博までに、事務の合理化ができるような、大量交通時代に即した、飛行機時代にふさわしい新入国管理体制を整えたい、そういう技術的な必要から、こういう提案がなされたのでございます。そうやって外国人の出入国、日本人の出国及び帰国が非常に簡易化される一面におきましては、やはり近ごろ新聞などにも出てまいりますように、不良外国人の出入国ということが絶無ではないわけでございまして、門戸を大きく開く一方におきましては、やはり入ったあとの外国人の管理というもの、これをしっかりしなくちゃいけないということでございまして、ごく一音に申しますというと、出入国を簡易化し、管理体制を合理化するということに尽きるのでございます。
#9
○鍛冶委員 そこで、各条にわたっていろいろ世上問題になっている点を主として承りたいと存じまするが、私はこの法律を読みまして第一番に感じましたことは、この法律案には百条に余るものがございまするが、実体規定が二割ぐらいしかないんですね、三割まであるかなし。あとはほとんど手続規定でございます。手続規定がこう並ぶものだから、非常に複雑に考え、そしてまたいろいろ入り組んでおるものですから、これらの点に対していろいろな疑問が出てくると思う。したがって、いろいろの陳情がありまするが、その陳情の内容も、まちまちなことを書いてあって、それほどでないことまでも大きく書いてあるが、しかし、これはあまりに手続を複雑に書き過ぎてそういろ疑問が出るものだと思うのです。いまさら言うてもしょうがないかもしれないが、もっと何か手続規定は政令か何か施行令か何かで特別にやって、実体規定を主としてやるというわけにはいかなかったものでしょうか。この点は、特に私は大きく立法上考慮せらるべき点だと思うが、いかがお考えです。
#10
○中川(進)政府委員 なるほど、御指摘のごとく、手続規定に関する点がたくさんございますが、しかし、何と申しましても、これは外国人の日本における在留を許可し、場合によってはこれを禁止をいたしまして強制退去を命ずるということでございまして、その人の一身の自由に非常な重大な影響がある問題でございます。そこで、やはり憲法の現在ございます、たとえば三十一条の規定というような趣旨も勘案いたしまして、できるだけこれを法律で定めたほうがよいと考えまして法律にしたのでございまして、したがいまして、かように長くなっておるのでございます。現在の出入国管理令におきましても、この点は重要である、かように考えております。
#11
○鍛冶委員 この手続が複雑になるので、適用を受ける人は困りもするし、迷いも出てくる、そういうことからいろいろ批判が出ると思うので、これは特に私は御留意を願っておきたいと思うのですが、要するに、手続をするのは人間でございます。こういういろいろなめんどうなことがありますると、その局に当たる者に管理令の趣旨を十分のみこませ、また、外国人に対する取り扱いの根本を理解させて、しかしてこの取扱いに対しては万遺憾なきを期することが私は一番大事じゃないか。それについては、少し質問が早いようだがついでだから申しまするが、これらに当たる者に対する訓練、教育ということが非常に大切なことだと思うのですが、いろいろ新しい官庁をもつくってこれに当たっておられるようだが、人間の教育ができておるか、指導ができておるか、今後もさらにこれに対して十分やるだけの御用意があるか、また具体的にどのようにしてこれを指導していこうというお考えであるか、その点を承りたいと思います。
#12
○中川(進)政府委員 入国管理局の職員も国家公務員でございますから、御承知のごとく、もちろん国家公務員の試験を合格したいわゆる有資格者の中から採用するのでございまして、この一応の資格を有する者を採用いたしますと、横浜に研修所がございますが、そこに入れまして、約半年間起居をともにさして勉強さして、この入国管理事務のイロハのイの字から教えるわけでございまして、それが終わりますと、またそれぞれの現場に配属いたしまして実習をやらせます。その後も機会あるごとに、たとえば中間監督者と申しまして、課長補佐クラスぐらいの人、いなかの課長ぐらいの人、そういうような連中を集めまして、多いときには二カ月、短くも三週間くらい、年に大体二回ないし三回、一回に大体三十人くらい集めまして研修をしておりまして、そうして繰り返し繰り返し研修をする。そのほかにも、東京に呼び集めまして、各いなかの所長、それから次長、それからいなかの各事務所の課長――審査課長、警備課長、総務課長というようないろいろな課長がございますが、そういうようなものも年に必ず一回は集めまして、二日ないし三日にわたりまして、本省からいろいろ新しい問題を説明して仕事の割り振りに対する懇篤な指示を与えるというふうにやっておりまして、確かにこれで必ずしも満点というわけにはまいりませんが、及ばずながら職員の規律の維持、士気の高揚、能率の促進というようなことに関しましては、若干の努力を尽くしておる次第でございます。
#13
○鍛冶委員 次に、いろいろな問題が出ておりますが、私はなるべく問題をここで解明して、いろいろ不安を感じておる人の不安をなからしめたいと思うのが私の質問の趣旨ですから、その点に関して主として聞きたいのですが、一部では、本法はアジアの社会主義諸国の人民と日本国民との交流を阻害して、また在日朝鮮人に対して同化するか、それでなければ追放するという、いわゆる択一政策を推進することをねらいとしたものだという説をなしておる者がございます。先ほど申しましたように、政治的のねらいが何かありますかということの一つはこの点にあるのですが、さようなことを言っておるが、はたしてそういうことを政府は考えたのか。ないなら、どうしてそういう疑問が出たか、これは明瞭に一つ答えていただきたいと思うが、まず大臣からこの点に対して御説明を願い、あと局長から補足説明をお願いします。
#14
○西郷国務大臣 御質問にお答え申し上げます。いま特定の国との出入国につきましてお尋ねがございましたが、そういう問題について阻止をしたり、交流を阻害したり、また第二点のお尋ねのようなものに対してある程度規制を行なうというような、さようなことは全く考えておりません。なお補足説明をいたさせます。
#15
○中川(進)政府委員 ただいま大臣が御答弁になられましたごとく、この新しい法案が、特定の国ないし国民と日本の間の交流を阻害する、妨害しようというような意図は、毛頭ございません。ただ、鍛冶先生御指摘の、世間に、ややもすればそういうふうな意図をもって政府がこの法案を出したのではないかという誤解が行なわれておるという点でございますが、これについて若干御説明いたします。これはいずれ後刻また御質問があるかと思いますが、日本に来る外国人に対しましてその遵守事項を定めることができるという規定が新しい法律の八条に出ておるのでございまして、この点からそういうような御心配ないし誤解が生まれてきたのではないかと思います。これはまたその遵守事項の点で御説明申し上げますが、わが国の国益を守りあるいは国民の安寧秩序というものを保つために、外国人が守っていただくべき最低限の必要な事項を人によって課することがあるということをきめたのでございます。先ほども申し上げましたように、外国人の在留が、日本への訪問がいま年間四十二、三万人、往復で八十二、三万人ぐらいございますが、そのうち、そういうような遵守事項というものをかぶせる人はごくまれなことでございまして、何も来る人全部にそういうことをかぶせるつもりはないのでございます。これはまたいずれ遵守事項の点で申し上げたいと思います。
#16
○鍛冶委員 いまあなたの言われるとおり、第一番の大きな疑問点としてわれわれのほうへ陳情の来ておりますのは、遵守事項でございます。そこから出ておるとするなら、この点は全く明瞭にひとつここで解明していただかなくてはならぬと思うのです。これは第八条及び三十一条でしたか、その他に出てくるわけですが、上陸を許可する場合に、いままでなかったこの遵守事項というものを定める、こういわれるから、さては何を目的としてかような規定を設けたか、こう第一番に疑問が出てまいります。これが第一です。
 その次は、どういうことをやろうとするのであろうか。要するに、遵守事項に盛ろうとするあなた方の大体の考えをここで明らかにしてもらわぬと、何でもかんでも遵守事項だ、遵守事項だというて入れられたのではたいへんだ、こういうことが一番心配でございます。
 第三番として大きいことは、政治上の理由をこれへ持ってきて、そしてそれによってある種の政治上の考えを遂行するためにこれを使おうとする。そうなれば、悪用と人は言わなければならぬが、そういうことがあるんじゃないか、これが一番の問題だと私は思うのですから、ひとつこの点を三つに分けて申し上げます。どういうわけでこれはやらなければならなかったのか、しからばどういうことをやった場合にどういうことを守らせようとせられるのであるか、これを種にして政治上の考え方を制限し、こっちの目的を達するために入国その他を制限しようというのじゃないかというこの三つに分けて、ひとつ詳しく御説明を願いたいと思います。
#17
○中川(進)政府委員 まずお尋ねの第一点でございますが、何ゆえにこのような遵守事項なるものを設けたか、いままでなかったではないかということでございます。もちろんいままでの出入国管理令におきまして、法律上の規定はございませんでしたが、ただ、来る人の種類によりましては、事実上、こういうことをしてもらっては困る、日本へ入国することはけっこうでありますが、こういうことはお慎み願いたいということを、場合によっては誓約を書きもので出してもらう、あるいは書きものまでいかなくても、少なくとも口頭でそういうことを約束してもらい、しかもその方法は、本人からもらう場合もあれば、その身元引き受け人の保証人のような者からもらうこともあったのであります。いわゆるスポンサーでありますが、それからもらうこともあったのであります。しかしながら、そういうことでやってまいりますと、どうもやはりしっくりしない。そういうことに万が一違反したといたしましても、日本としては、政府としてはどうにも手がつけられないのでございまして、やはりこの在留資格というもののきめ方が非常に荒いのでございます。そこで、その荒い中でもう少し、いわば在留資格の縦割りが十四なら十四ございますが――いま十六ございますが、今度その横割りをひとつつくろうという必要が起こってきたのでございます。たとえば従来、研修員ということで東南アジア諸国から日本の進歩した技術などの勉強にたくさん若い人が来ております。そういうような場合に、よほど気をつけておりませんというと、名前は研修でも実質上いわゆる低賃金労働というようなものに化けるおそれがあるのでございまして、研修ということを、たとえば三菱なら三菱の何県の何村にある何々研究所において何々に関することを研修するということで、そこでやっている限りはいいのでございますが、これが、どこかの町の中小工場のようなところへ移りまして、そうして自動車なら自動車の勉強をしておる。なるほど勉強には違いないが、行ってよく調べてみると、何だか低賃金労働に類するようなことになるということになりますと、厳格にこれは資格外ではない、確かに研修生という資格の中の活動をしておるのでありまして、学生という資格でやってきた者がシナそば屋の手伝いをしておるというような、これは資格外でございますからいまの法令でそのまま取り締まれる、おまえは資格外の活動をやっておるから退去を命ずるということができるのでございますが、いまのように資格内であって、しかも事実上は違っておることをやっておる場合には、取り締まる方法がいままでなかったのでございます。そこで今度は、この資格というものが新しい法律では十四ございますが、非常に大まかでございますから、その大まかな資格の中でまた細目を設けて、そうして管理を合理的にやりたいということが、新しくその遵守事項ということがつくられました一番大きな理由でございます。
 そこで、第二の点でございますが、その遵守事項なるものの内容はどうかという点でございます。この内容には、ただいま一例をあげて御説明いたしましたように、在留資格の範囲内における活動の指定ということがございます。たとえば法案の第二条の二項の六号というのがございますが「本邦で貿易に従事し、又は企業、投資その他の営利事業の管理業務に従事する者としての在留資格」というものが一例としてございます。ところが、この中で国際貿易なり企業その他の営利事業の管理業務というのがございますので、そこで、少なくとも貿易に従事する者というのと、それから投資その他の営利事業の管理業務に従事する者というのに区別しまして、あなたは貿易をするために入ってよろしい、あなたは投資その他の営利事業の管理業務に従事する者として入ってよろしいというふうに分ける必要が起こるかもしれないというわけであります。そこでまた今度、企業、投資その他の営利事業の管理業務に従事する者につきましても、その職種、勤務先を指定する必要が起こるかもしれないのであります。しばしば申し上げますように、必ずつけるというわけではございません。何か必要がある場合に限ってつけるというわけでございます。それから技術研修生につきましても、ただいま申し上げましたような問題が起こります。さらに興行活動者というのがございますが、これはいまの法案の二条二項九号というのでございますが「本邦で演劇、演芸、演奏、スポーツ等の興行を行ない、又はこれらの興行に出演若しくは出場する者としての在留資格」というのがございます。これにつきまして、興行の場合は歌を歌うのか、踊りをするのか、それとも野球をやるのか、あるいは何かアイスショーのようなことをやるのか、興行にもいろいろ種類がありますが、それを、何をやるかという興行の種類、それから興行の場所東京のどまん中でやるのとそれからまた北海道や九州のいなかでやるのとはたして全く同じことでいいか悪いかということもございましょうから、そういうような場所を場合によっては指定するということがあり得るわけでございます。しばしば申しますように、必ずするというわけでは絶対にございません。それから熟練特殊労働者というのがございますが、これは、日本でいま現在しております一番多いのは中国料理のコックでございまして、日本人にはできない特殊労働者だということで入れております。そういうような人、あるいはフランスパンの製法を教えるためにフランス人が来ておるということがございます。そういうときに、あなたはシナ料理のコックをして働くのはけっこうだが、日本料理のコックとして働いてくれては困る。日本人の労働者の、日本人の料理人の職場を侵されるということでございますので、それは困るというようなことで、熟練特殊労働者ではあるが、その内容は中国料理のコックであるということを指定する。働く場所も、あなたは東京で働き、九州のどこどこで働いてもらっては、やはりそこにいる日本人の中国料理人の職場を侵されるから困るということがあるわけでございまして、しばしば申しますように、必ず指定するわけではございませんが、そういうような条件を付することがあり得るわけでございます。
 それから第二番目に、相互主義による制限ということが考えられます。たとえば、外国によりましては、日本人が参りましたときに、その旅行地域とか旅行区域とか旅行経路とか、それから期間、期日、そういうことに関しましていろいろ制限をする、あるいは制限をしないまでも届け出ろというようなことを定めておる国があるわけでございまして、そういう国の人が日本に来たときには、日本はこういう国でございますから、旅行してはいけないとかなんとか言うつもりは少なくとも私どもの役所ではございませんが、しかし、旅行する場合に、最小限どこどこへ行くという届けを前に日程とともにひとつ出してもらいたいというようなことをきめることがあり得るわけでございます。必ずきめるわけではございません。
 それからその次に三番目には、一番問題になっておる、先ほど鍛冶先生からも御指摘があった政治的な立法云々という点でございますが、政治的な行為というものの制限を場合によってはする必要があるかもしれないということでございまして、たとえば日本国の機関において決定しました政策の遂行を妨げるための集会、示威運動の組織、これらへの参加、または演説もしくは文書、図画の頒布の禁止ということを守ってもらうということが起こり得るわけでございます。それからまた、日本国の国際的な友好親善関係を阻害するおそれのあるような集会、示威運動の組織、これらへの参加、または演説、文書、図画の頒布というようなことをひとつ禁止してもらうという必要があるわけでございます。それで鍛冶先生御指摘の政治的云々という点も、お答え申し上げたかと存じます。
#18
○鍛冶委員 それはいろいろな事項で政治的にわたることもありましょうが、要するに在留資格の範囲を逸脱させないことを目的としておるものと解釈してもいいのじゃないかと思うが、いかがでしょうか。それを主として守ってもらいたいということが遵守事項じゃないか、私はそう解釈するが、この点はどうです。
#19
○中川(進)政府委員 先ほど申し上げましたように、在留資格の中で、実は在留資格というものは非常に大まかな文言でございますので、その中で細目をきめたいということがむしろおもな目的でございますから、在留資格の中でおることはもちろん必要なんでございますが、それよりもむしろ日本に入国する目的の中にとどまると申しますか、それを逸脱しないというようなことに御了解願えれば幸いだと存じます。
#20
○鍛冶委員 この点は最も心配しておるようなところですから、十分心得て、国際法上その他から非難のないようにやられることを特に希望いたしておきましょう。
 それからこの規定は、新たに上陸許可を受ける場合、または在留期間の延長を申請するときにやられるものであって、前から長年日本におる者に対してはこういうことをきめるということはないものと心得るが、これはいかがですか。
#21
○中川(進)政府委員 御指摘のごとく、この遵守事項は新しく上陸する者に主としてかけることがあり得るわけでございますが、法律を読みますと、それのみならず、鍛冶先生ただいま申されましたような、いままでにいる人の在留期間を延ばす場合にもかかり得ることになっております。しかしながら、いままでおるという人に二つの種類がございまして、在留資格が先ほどもございましたが、この十四のうちの、たとえば商用なら商用ということで一年なり二年の間で入ってきて、それがまたあと一年おりたいということで延ばす場合、すなわち非常に長い目で見ますと短期滞在者と、それから先生いま申されたことの実際の意味は、戦前からおられる外国人、具体的にはもと日本人で現在朝鮮人及び台湾の方だと思うのでございますが、こういうような方自体は、永住資格があって、永住資格というのは在留資格じゃないわけでございますから、その資格外活動というのはあり得ないわけで、日本の法令に触れない限りは何でもできる、逆から申しますと、遵守事項はかけられないのでございますが、その子供さんはいま三年ずつの期間でその滞在を認めておりまして、その滞在の延長というときにおきまして、この法律を読みますと、かけられないではない、かけてもいいということになっておるのでございます。しかし、これは昔日本人であった人の子孫でございまして、なるほどいまは外国人でございますが、外国人になられた経緯というものが、御本人の意思に基づかず、敗戦という事実で外人になられたということでございますので、その人の子孫の在留期間の延長ということに関しましては、われわれといたしましてはこの遵守事項をかけるというようなつもりはございません。
#22
○鍛冶委員 その点はどうもみんな重大に考えておるようですが、大体いま申しましたように、戦前からおる人、前は日本人であったが、いま外国人については、何ら変わりがないと考えてよろしゅうございますね。ところが、長年の在留者でも、三年ごとに外国人登録の切りかえをやらされるということがあるらしい。この法律ではない、外国人登録法です。そしてその切りかえをやられるときにこの遵守事項を適用されるのだ、かようにいって非常に心配をし、はなはだどうも困るという申し出があるのですが、さようなことは私はないと思うが、どうですか。あるのですか、ないのですか。
#23
○中川(進)政府委員 長い間おると言われますが、先ほど申し上げましたように内容はいろいろ異なるわけでございまして、法律一二六号の適用を受ける人、すなわちもと日本人であって現在外国人である、しかも自分の意思に基づかないで日本の国籍を失った人でございますが、こういう人も確かに三年ごとに外国人登録をしなければならないわけでございます。しかし、この人及びその子孫――孫はまだあまりいまはおらないかもしれませんが、その子孫の外国人登録の三年ごとの切りかえにおきまして、この遵守事項をつけるというつもりのないことは先ほど申しましたと同じことでありまして、つけるつもりはありません。しかし、そのほかのいろいろな理由で長くいる人がございまして、一二六でない人も永住を持っている人がずいぶんございます。ことに大陸出身の中国の方々など、永住権を持っているとかそういうような人、それからそれ以外にも、もとの朝鮮半島出身者、それからたまにはいわゆる白人という中にも永住権を持っている人もいますが、そういう人であっても、やはり三年ごとにその登録をしなくちゃいけません。その三年ごとの登録のときに、やはりこの永住を持っている人というのは、これはもう永住という在留資格でございますので、先ほどから御説明いたします遵守事項の、いわゆるこまかい活動という意味の在留資格ではないのでございまして、何でもできるわけでございますから、これに対しても別に遵守事項をつけるつもりはございません。
#24
○鍛冶委員 じゃ、長年日本におった人に対してはこれは適用ない、だから心配要らぬものだ、こうはっきり考えてよろしゅうございますね。
 次に、本法案の第二十七条の規定ですね。資格外活動に対して中止命令を出すことができるという規定がある。これが非常などうも疑問を抱いておられるようですが、これは資格外活動したから、ほんとう言えば退去命令を出すべきものであるけれども、そういうことをやめたらまた考えようというので、そんなことをやっておると出ていかんならぬからやめろと、こういう意味でつくられたものでないかと思うのですが、この中止命令というものは、外国人に対する活動を制限する最も大きなものだと、ずいぶん言うてきておるのです。この点私は、そのように解釈いたしますが、どういう意味でつくったのか、まずあなた方考えていただきまして、外国人に対して活動を制限する、退去命令を早く出すためにつくったのか、それともなるべく退去をさせないように、いわゆる間接強制の意味で緩和する策としてつくられたものか、これはひとつぜひとも明瞭にしておいてもらわなければならぬと思いますから、この点ひとつはっきり答えていただきたい。
#25
○中川(進)政府委員 従来の入管令でありますと、もっぱら明らかに資格外活動しておったときには直ちに退去強制理由になったのでございますが、それでは行政運用の妙がないということでございます。そこで今度は、一度ひとつやめてくれぬかということを政府から申しまして、そうしてやめない場合にその退去強制に移していくのでございまして、先生御指摘のことばをかりますと、この命令を、二十七条を設けました理由は、第二の点でございまして、なるたけ置いてやろうという考えから、その資格に反することはやめたらいい、そしておりなさい、こういうつもりでございます。
#26
○鍛冶委員 もう少し具体的に順序を追うて説明してください。いわゆる資格外活動があった、こういうことを私は前提にとりますから、そのときに中止命令を出される。そしてその命令が出ればどういうことになるか、命令出さぬだったらどういうことになるのか、この点をひとつ明瞭にして、あなた方のほんとうの意味を明らかにしてもらわなくては、このためにどうもいわゆる痛くない腹を探られておったのではたいへんである。ぜひこれは明瞭にもう一ぺん具体的に答えてもらいたい。
#27
○中川(進)政府委員 外国人の在留者が資格外活動を行なうというような場合におきまして、入国管理官署の長はこれに対してやめろということを言うわけでございます。資格外活動のみならず、先ほどお話の遵守事項というようなことを守られなかったというときも同じでございますが、そのときには、まず書面をもちまして当該事項にかかる行為の中止命令その他必要な命令をすることができるわけであります。そこでその命令を受けた外国人が、いつまでたってもしてはいけないことをやめない、あるいは当然すべきことをいつまでたってもしないというようなときにおきましては、それは今度は退去強制手続に乗せていく、こういう次第でございます。
#28
○鍛冶委員 もしもこの中止命令がなかったら、どういうことになるか、これをひとつ言ってください。
#29
○中川(進)政府委員 中止命令がないというときには、その資格外活動とか、あるいは遵守事項違反ということはないという認定でございますから、別に、何か起こるかという御質問でございますが、その外国人はそのまま在留期間一ぱいおれるのでございまして、何ら問題はないわけでございます。
#30
○鍛冶委員 しかし、資格外活動をして中止命令が出るわけですね。そこで、資格外活動をしたときにおいて、もし中止命令というものがなかったら、どういうことになるか。これは理論上の問題ですが、どういうことになると思われますか。
#31
○中川(進)政府委員 ちょっと御質問の趣旨がよくわかりませんが、中止命令がないというときには、それは認定がないわけでございますから、資格外活動という認定がないわけでございます。
 それからまた、立法論として、中止命令ということを設けてなかったらどうかということの御質問かと思いますが、それは現行令と変わらないのでございまして、もっぱら明らかに資格外活動をしておるということが認められた場合には、退去強制理由に該当するのでございますが、ただ、いまの法令でございますと、違反活動があってすぐ退去強制に乗せるというのはひどいじゃないか、やはり日本へ来て日本の事情が必ずしもわからないようなこともあるだろうから、おまえこういうことをしたら資格外活動である、だからそういうことはやめなさい。あるいはこういうことをしなかったらいけない、入国の目的に反するじゃないか、だからこういうことをしなさい。たとえば学校へ行くといって入ってきたのが、いつまでたっても学校へ行かないで下宿で寝ておる。これは困るので、やはり学校へ行ってもらわなければいけない、学校へ行きなさい、そういうことを言うのでありまして、そういう中止命令――作為命令、不作為命令両方ございますが、その命令にそむいたときに、それではあなたは日本におる目的が達せられないのだから帰ってもらいたいという退去強制が発動するわけでございますから、従来のように資格外活動があったからすぐ退去というのよりは、この法律は一つクッションをつけた意味におきまして、外国人の人権の尊重ということに沿うという考えでございます。
#32
○鍛冶委員 その点なんです。中止命令というものがいままでないのに、こういうものが出たものですから、さては中止命令という新しい制度を設けてまたぞろわれわれの活動を制限すると、こういうことなんです、みんな言うてきておるのは。そこで私の言うのは、資格外活動をした場合に、この中止命令がなかったら、資格外活動をしてはいかぬから出ていけというほかないのです。それではあまりひどいから、そういうことをしたら出ていってもらわなければならぬことになるから、日本におりたいならばそういうことはやめなさい、こういうのが中止命令でしょう。そしてなるべく退去強制することを緩和しようという意味でつくられたのだろう、こう思うのに、いや、そうじゃない、こう言うものですから、この点を明らかにしてもらいたいと思って言ったんですが、これは間違いございませんね。
#33
○中川(進)政府委員 私の誤解があったのかと思いますが、それは先生のおっしゃるとおりでございまして、これは緩和するために設けた規定でございます。
#34
○鍛冶委員 次は、第六十九条二項の規定でございますが、入国審査官は、船舶もしくは航空機に乗り込み、関係人に質問し、文書の提示などを求めることができる。次いで七十条の四項または七十三条の三項で同様の審査権を認めたことによりまして、これは強制捜査権を認めたものだ、こういって大へんな非難をしておるのです。これは、あなた方はどういう意味でやられたのか。また現管理令のほうと比較してみても、特別にどうもそういう強制捜査権を認めたものでないようにも思われるが、この点もひとつここで明瞭にしておいてもらわぬと、誤解が解けない、こう思いますから、これはこういうものを新たに設けたのかどうか。前からあったのならば、別に変わりはない。それからこれあるがゆえに特に強制捜査権というものをここに新しく考え出したのかどうか。この点をひとつ明瞭にしてもらいたい。
#35
○中川(進)政府委員 まず、六十九条でございますが、これは現行令にも六十一条の二というのがございまして、それとほとんど同じでございます。それから七十条でございますが、七十条も、一、二、三項までは現行令とほとんど変わりません。それから第六項も現行令とほとんど変わりません。第四項と第五項を新しくつくった、こういうことでございますが、これは先ほどからしばしば申し上げますように、出入国の数が非常にふえますので、そこでその事務を簡素化するといいますか、スピーディーにやるためには、やはりこういうような審査官に権限が与えられるということが必要じゃないかと思うのでございます。
#36
○鍛冶委員 いま出ました管理法によっていままでないところの強制捜査権を認めたものかどうか、これをまず第一番にわかりやすくお答え願いましょう。
#37
○中川(進)政府委員 これは先ほどから申し上げましたように、六十一条の二というものがございまして、いままでと変わりありません。
#38
○鍛冶委員 それから、この調査をするには、こういうものがなければいかぬのでしょう。それをなくてもいいものを、あなた方はあれば便利だからというので――ここに書いてあるのは、ひとり外国人だけではなく、内国人の自由をも制限するものだ、こう言っておるが、そういう意味で、なくてもいいんだけれども、あったほうが都合がいいから、人身保護なんということはかまわずにやってやれということでつくったんですか、どうですか。
#39
○中川(進)政府委員 何でもかんでもやってやれということではございませんで、入国管理事務を適正厳格に、しかも能率よくやるというために必要であると思って設けられている規定でございます。
#40
○鍛冶委員 そうすると、現在ありまする管理令の六十一条の二及び第八条等でも同様のものがあるから、特別にそういう目的をもってやったものでない、かように解釈してよろしゅうございますね。
#41
○中川(進)政府委員 そのとおりでございます。
#42
○鍛冶委員 だいぶむずかしいことになってくるが、ここにずいぶん来ておるのを私はなるべく解明しておきたいと思うから申し上げるのですが、その次は法案第五十五条の退去強制令書を発付するには、第四十九条以下の手続を経、さらに異議申し出の機会を与えて、十分保護されておると思うのです。ところが、現管理令の第五十条を廃止したので、法務大臣の特別在留許可がなくなったばかりか、これに伴ういろいろの行政訴訟ができなくなったということで、人身の保護を圧迫したものであるという非難がずいぶん出ておりますが、この点は法律的にめんどうなところですが、ひとつわかるように、そういう非難が当たるのかどうか、あなた方はどういう意味でこれをやられたのか、ひとつ明瞭にしていただきたい。
#43
○中川(進)政府委員 これは従来のやり方をより論理的にしたという一語に尽きるのでございまして、退去強制そのものの違法性を目的として訴訟を起こすことは、新しい法律でもできるのでございます。要するに、退去強制が行政訴訟の対象にならなくなった、あるいは行政訴訟ができなくなったというのは間違いでございまして、退去強制に関する行政訴訟は、新しい法律になってもできるのでございます。
 それからさらに、法務大臣の特別在留許可ということは、これは退去強制とは大体別個のことでございまして、従来はいわば官側が一方的に退去強制のかわりに特別在留許可をやるかどうかをきめたのでございますが、新しい法律におきましては、その本人から直接自分に特別在留許可を与えてくれという大臣に対する訴願と申しますか、願い出ができる。それからまたこの事件を扱っておりますところの地方入国管理官署の長も、大臣に対しまして、この外国人はひとつ特別在留許可を認めてやってくれという大臣に対する上申ができる、こういうことになっておるのでございます。
#44
○鍛冶委員 行政訴訟を起こす機会を失わしめた、こういうのですが、これはどうです。
#45
○中川(進)政府委員 行政訴訟を起こす機会を失わしめたということは、ないと思います。行政訴訟の対象にはなり得るはずでございます。
#46
○鍛冶委員 じゃ、この点も本法律案によっては決して制限しておらぬのだ、条文が違っておっても異議申し出の機会も与えてあるんだから、そういう非難は当たらぬのだ、かように解釈してよろしゅうございますか。
#47
○中川(進)政府委員 そのとおりでございますが、もしなおそういう訴訟法上の御疑念がございましたら、私の次長なり参事官なり、検事でございまして、訴訟の専門家でございますから、何でございましたら補足的に説明させてもよろしゅうございますが、いかがでございましょうか。
#48
○鍛冶委員 あまり長くても困りますが、じゃどうぞ……
#49
○瀧川説明員 補足して御説明申し上げます。従来から退去強制令書を取り消せという行政訴訟はできるわけでございますが、その点につきましては、今度の新法案においても全く変わりはないわけでございます。特別在留許可を与えるべきであるという行政訴訟は、従来からも成り立たないわけでございまして、その点につきまして、特別在留許可を退去強制令書と分けたことによって何ら影響はございません。
#50
○鍛冶委員 まあ、まだまだそれは聞けば切りがありませんが、ずいぶんやかましく疑問を申し出ておる点を拾って申し上げたわけです。
 あとは、私は政治的の点をもう一つ聞いて結論に入りたいと思いますが、本法案では、いつも問題になりまする国際法上の大問題の政治的亡命者に対する取り扱いを規定せられておりませんが、これはいつもずいぶん問題になることだから、でき得るものならばここで明瞭に条文にあげられたほうがいいんじゃないかと思うのだが、あげられなかった理由はどこにあるのか、これが第一でございます。
 そこで、あげておられぬとすれば、どのようにして政治的亡命者を保護しようとせられるのか。この二点をひとつ明らかにしていただきとうございます。
#51
○中川(進)政府委員 まず第一点の、政治的亡命の規定を置かなかった理由でございますが、これは政治的亡命というものの定義と申しますか、認定と申しますか、それがなかなか容易じゃない。これは政治的亡命者であるかどうかということをきめるとなりますと、いろいろな意味で、政治的にも法律的にも問題が複雑でございますし、それから例のここでよく問題になりました政治的難民の地位に関する条約、ジュネーブで五一年にできまして、五十四カ国が入っておる、この条約にも日本は加入しておらない。それから日本の憲法にも政治的亡命云々という規定はないのでございまして、そういうようなことから、政治的亡命の規定をわざわざ入国管理法に入れるということはいかがなものかと思って入れなかったのでございます。
 また、それでは実際上そういうような必要が起こったときに、その政治的亡命者なる者を日本に置けないかといいますと、現在の法律、いまお手元に御審議を願っております法律によりましても、これは十分置けるのでございますから、わざわざその政治的亡命者云々ということを書く必要もないかと思ったのでございます。
 さらにまた、日本の周囲には、御承知のごとく、朝鮮、あるいはベトナム、それから中国というふうに分裂、対立する国家がございまして、政治的な紊乱と申しますか、騒ぎが起こる可能性が非常に強いのでございまして、ということは、結局そういうところから政治亡命ということで日本に難を避ける人も多いかもわからぬということでございます。そんなこんなを考えますと、この際はっきり政治的亡命者は日本にどんどん入れてやるという規定を置くのも、必ずしも得策ではなくて、置かなくても目的が達せると思うのであります。それで入れなかったのでございます。
 それから第二の、これを保護する方法いかんという点でございますが、これは先ほどの訴訟の点でも問題になりましたごとく、法務大臣の特別在留許可という制度がございますから、理由はいかにあれ、法務大臣がその特別在留許可を与えることによりまして、事実上日本に亡命を認めてやるということは、可能になると思うのでございます。
#52
○鍛冶委員 これは、政治的亡命に対しては、国際法上ある一定のきまりができておるというてもいいのじゃないか、また慣行ができておると思うのですが、これに対する何か考えがありますか。それとも、大体国際法上認められておるようなことを日本でも遵守して保護する考えでありますか、どうです。
#53
○中川(進)政府委員 先ほども申し上げましたように、政治的亡命者というものの観念は、国際法的にはいろいろな議論があることは事実でございますが、しかし、まだはっきりとしてこういうのは政治的亡命者として各国が扱うべきであるというところまでは固まっておらないものと承知しております。少なくとも条約上の義務としては日本にはないわけでございまして、先ほど申し上げました、たとえば政治的難民に関する条約というようなものがございますが、これに加入しておる国は、いま五十四あると思います。おもにヨーロッパ諸国、それから中近東、アメリカ諸国でございまして、アジアにおきましては、一国もまだ加入しておりません。そういうことでございますので、そういうような条約とかなんとかいうような義務というものはあまり考えないで、むしろ日本の入国管理制度、あるいは外人の入国を認めるかどうかという、その入管法の運用の問題といたしまして事実上善処をしていく。政治的亡命でぜひ日本に置いてやらなければいかぬという必要がある者を何も追い返す必要は毛頭ございませんので、これは法務大臣の特別在留許可という権限を発動してその目的が達せられる、かように考えておる次第でございます。
#54
○鍛冶委員 そういたしますと、これをいろいろ非難しております者が、こんな法律をつくっては国際法上まことにどうもけしからぬ法律だなんて言っておるのですが、どうです。あなた方は、この法律が成立いたしますれば、諸外国の外国人管理法と比べてみて劣るところがないという確信がございますか。ことに基本的人権を尊重するという意味において、この点に劣るところはございませんか、どうです。これはひとつ確信を持って答えていただきたいと思います。
#55
○中川(進)政府委員 御指摘の、諸外国との関連におきまして日本の法律がどうであるかという点でございますが、これはいろいろいままでに御説明いたしましたような考慮に基づきましてできたものでございまして、諸外国の外人管理法に比べまして、決して日本のほうが過酷であるとか不合理であるということはないと存じます。
#56
○鍛冶委員 また、そうでなければいかぬと思うが、それではついでに具体的に聞きたいのは、憲法上及び国際法上の外国人の地位について、どのような考えを持っておいでになるか、まず大臣に総括的に御答弁を願って、あとは局長から補足説明を――もしできなければ局長でもよろしゅうございます。
#57
○西郷国務大臣 これはきわめて重要なことでございますから、ことばが足りぬというようなことがあってはいけませんので、局長から十分に御説明いたさせます。
#58
○中川(進)政府委員 憲法と外国人の問題でございますが、それは確かに重要な問題で――重要でない問題は一つもございませんが、特に重要でございますので、またいずれ法制局その他の御専門の方から意見を伺っていただきたいと思いますが、私どもはかように考えております。国際慣習法上、外国人の入国を許すか、あるいは在留を許すかというようなことは、これはもっぱらその当該国家の自由裁量によって決定し得るということになっておるはずでございます。そこで、外国人の入国及び在留を認めるに際しまして、自分の国民にない制限を加えるということも、その制限を加えることに合理的な理由があり、しかもその制限自体が必要な限度、範囲を越えないというものである限りは、これは当然許されてしかるべきもの、かように考えるのでございます。そこで、憲法は、このように外国人に対しまして国際慣習法に由来しますところの主権の発動として日本人と異なる制限を加えることを当然の前提として容認しておる、このように考えておるのでございまして、この前提に反しない限度におきましての基本的な人権を保障しているのにすぎない、かように考えるべきものであると思うのでございます。
 そういうことでございますから、以上のような原則論から出てくることになるのでございますが、憲法は、このような主権の発動としての外国人に対する制限を加えることを自制しまして、基本的人権に関しましては、自国民と外国人との間に差別を設けない旨を定めてあるものとは、とうてい考えられないのでございます。憲法が外国人のわが国への入国につきまして何ら規定しておらないのも、このような国際慣習法に由来しますところの主権の発動を行なうことは当然の前提である、かように考えておるからでございまして、私が申し上げました憲法と外国人との関係というものは、少なくとも大まかにはただいまのような考え方に基づいておって大きなあやまちはないんじゃないかと思うのでございます。
#59
○鍛冶委員 これは大問題ですが、またおりを見てもう一ぺん深く研究することにいたしますが、憲法による人身保護の精神は間違いなくございますね。ただし、外国人は、外国人としての特別の取り扱いのあるものは特別の取り扱いをやらなければならない、その点は国際法上にのっとってわが日本もやるんで、他の国に劣るようなことはしない、こういうことでよろしゅうございますね。
#60
○中川(進)政府委員 さようでございます。
#61
○鍛冶委員 それからさっきも言うたが、大事なところですから、もう一ぺん最後に私は申し上げておきまするが、この改正法案によって在留外国人、ことに長年わが日本に在留しておる外国人に対して、特に不便を与えるようなことはないものと解釈してよろしいと思うが、その点は明言せられてよろしゅうございますか。
#62
○中川(進)政府委員 そのとおりでございます。
#63
○鍛冶委員 私のきょうの質問は、これで終わります。
     ――――◇―――――
#64
○高橋委員長 次に、去る六月十二日付託になりました猪俣浩三君外五名提出の政治亡命者保護法案を議題といたします。
#65
○高橋委員長 まず、提出者に提案理由の説明を求めます。猪俣浩三君。
#66
○猪俣議員 政治亡命者保護法案の提案理由の説明をいたします。
 最近、国際交通の発達と周辺諸国の政情不安定を反映して、わが国に政治亡命を求める外国人が増加する傾向があります。それに対して、わが国においては、現在何ら保護規定がなく、出入国管理令等の規定に基づき政治亡命者はほとんど不法入国、不法在留、つまり犯罪者として取り扱われ、わずかに法務大臣の自由裁量により特別在留許可が与えられたときに限り在留を認められるにすぎません。しかも、この運用は厳格であり、また自由裁量であるために、必ずしも客観的公正が保障されず、政治亡命に該当すると思われる外国人を刑罰その他の迫害を受けるおそれがある国に強制的に送還することも可能であります。
 しかし、国際的に見るならば、日本がその目的を実現するために努力するとサンフランシスコ平和条約の前文で誓った、世界人権宣言第十四条には、「何人も迫害からの保護を他国において求め、かつ享有する権利を有する」と定められており、この趣旨にのっとり一九五一年には亡命者(難民)の地位に関する条約、一九六七年には庇護権に関する宣言、一九六六年にはアジア、アフリカ法律諮問委員会の、亡命者の待遇に関する決議などによって国際的に亡命者の保護が認められ、各国の憲法や地域条約によってもそれが確認されています。わが国においてもすでに政治亡命者保護は、国際慣習法だとした裁判所の判決が出ています。文化の進んだ国ほど外国人の地位を高く評価し、その保護を厚くするとされています。日本が政治的にも、経済的にも、世界の大国として、文化国家として自負する以上、そのプライドのためにも、ヒューマニズムの感性の上に立ち、亡命者保護を期せねばなりません。本法案は、かかる趣旨によって提案したものであります。
#67
○高橋委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。本案に対する質疑は、後日に譲ることにいたします。
 次回は、来たる二十日午前十時より理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
   午前十一時五十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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