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1949/05/19 第5回国会 参議院 参議院会議録情報 第005回国会 文部委員会 第16号
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1949/05/19 第5回国会 参議院

参議院会議録情報 第005回国会 文部委員会 第16号

#1
第005回国会 文部委員会 第16号
昭和二十四年五月十九日(木曜日)
   午前十時四十四分開会
  ―――――――――――――
  委員の異動
五月十八日(水曜日)委員小野光洋君
辞任につき、その補欠として深水六郎
君を議長において選定した。
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○社会教育法案(内閣提出)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(田中耕太郎君) それでは今日の文部委員会を開会いたします。
 先ず社会教育法案につきまして質疑を継続いたします。それでは別に御発言もございませんければ、本案に対する質疑は終了したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(田中耕太郎君) 御異議ないものと認めます。それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにして御発言を願います。修正の意見もございましたらこの際お述べを願います。
#4
○若木勝藏君 私はこの法律案に対して修正の意見を持つております。その修正案の趣旨と修正案についてこれから申上げます。
 この法律は教育基本法の精神に則り、社会教育に関する國及び地方公共團体の任務を明らかにすることを目的として、國及び地方公共團体の任務を社会教育の奬励に必要な施設の設置及び運営、集会の開催、資料の作製、頒布その他の方法により、すべての國民があらゆる機会、あらゆる場所を利用して、自から実際生活に即する文化的教養を高め得るような環境を釀成するように努めなければならないと規定しておるのであります。私はこの基本要件を肯定する者でありますが、國及び地方公共團体がこのような任務を遂行するためには、次の諸点が確立されていなければならないのであります。然るに政府提出の原案におきましてはこの点が不明確であり、不備であると考えますので、これを要点といたしまして條文の修正をしようとするものであります。
 その第一点といたしましては、任務遂行に必要な物的並びに人的條件を整備するために國費、地方費の負担を明らかにして、これを継続的に支出する予算的措置を講じなければならないのであります。然るに原案では立法の裏付けとなるべき予算措置を軽視しているのであります。即ち國と地方公共團体が同一の任務を持つように規定しながら、経費の面につきましては、殆んど地方費のみに負担させるようになつているのでありまして、これでは特に地方財政の逼迫しておる現状は勿論のこと、將來と雖も社会教育の実績を挙げることは不可能であることは明白であります。從いましてこれは、國においても経費負担の責任を明らかにするように当然訂正しなければならないと考える次第であります。
 第二点といたしましては、國及び地方公共團体は民間の社会教育関係團体が自主的に、且つ積極的に十分な活動ができるようにするために、その助成、奬励の態勢を持つていなければならないのであります。然るに原案ではこれに対する用意が極めて不十分であるのみならず、却つてこれを統制するがごとき施設、手続等が規定されているのでありまして、この点を是正してその自主的な活溌な活動の途が開かれるようにしようとするのであります。
 次に第三点といたしまして、國及び地方公共團体は社会教育に対するその任務の基本が國民のみずから実際生活に即する文化的教養を高め得るような環境を釀成するところにあることを自覚し、その行政が特に民主的になされなければならないのであります。然るに原案では市町村の教育委員会の事務、都道府縣の教育委員会の事務、社会教育委員会の構成及びその職務、法人公民館に関する取扱等、各項に亘りまして徒らに社会教育の体系を確立することに囚われまして、國及び地方公共團体の任務の基本を逸脱しておるのであります。この結果は社会教育が画一統制を招來することが明白に考えられるのでありまして、この点を是正して社会教育に対する行政が民主的に行われ、社会教育が基本法に示された教育の一般方針を逸れることのないようにしようとするものであります。以上の観点から、お手許に差上げた修正案を提出する次第であります。一應修正案を読みます。
   社会教育法案に対する修正案
 社会教育法案の一部を次のように修正する。
 目次中「第四章 公民館(第二十條―第四十三條)第五章 学校施設の利用(第四十四條―第四十九條)第六章 通信教育(第五十條―第五十八條)」を「第四章 公民館(第二十條―第四十二條)第五章 学校施設の利用(第四十三條―第四十八條)第六章 通信教育(第四十九條―第五十七條)」に改める。
 第四條中「必要があると認めるときは」を削り、「あつ旋を行うことができる」を「あつ旋を行う」に改める。
 第五條第一号中「指導及び助言」を「援助」に改める。
 第六條第一号中「認可」を「届出」に改め、同條第二号中「指導する者の養成及び」を「行う者の」に改める。
 第十一條に次の一項を加える。
2 文部大臣及び教育委員会は、社会教育関係團体の求めに應じ、これに対し、社会教育に関する事業に必要な物資の確保につき援助を行う。
 第十五條を次のように改める。
 (社会教育委員の構成)
第十五條 都道府縣及び市町村に社会教育委員を置くことができる。
2 社会教育委員は、左の各号に掲げる者のうちから、教育委員会が委嘱する。
 一 当該都道府縣又は当該市町村の区域内に設置された各学校の長
 二 当該都道府縣又は当該市町村の区域内に事務所を有する各社会教育関係團体において選挙その他の方法により推薦された当該團体の代表者
 三 学識経驗者
3 前項に規定する委員の委嘱は、同項各号に掲げる者につき教育長が作成して提出する候補者名簿により行うものとする。
4 教育委員会は、前項の規定により提出された候補者名簿が不適当であると認めるときは、教育長に対し、その再提出を命ずることができる。
 第十七條中「教育長に助言するため」を「教育長を経て教育委員会に助言するため」に改め、同條第一号を次のように改める。
 一 社会教育に関する諸計画を立案すること。
 同條に次の一項を加える。
2 社会教育委員は、教育委員会の会議に出席して社会教育に関し意見を述べることができる。
 第二十五條に次の一項を加える。
2 前項の報告に必要な事項は、都道府縣の教育委員会規則で定める。
 第二十六條の見出しを削る。
 第二十六條第一項中「都道府縣の教育委員会の認可を受けなければならない。」を「あらかじめ、都道府縣の教育委員会に届け出なければならない。」に改め、同條第二項中「前條の報告及び前項の認可」を「前項の届出」に改める。
 第三十條第二項中「互選」を「選挙」に改める。
 第三十五條中「援助をすることができる」を「援助を行う」に改める。
 第四十一條を削る。
 第四十二條中「第四十條」を「前條」に改め、同條を第四十一條とし、第四十三條から第四十七條まで一條ずつ繰り上げる。
 第四十八條中「第四十六條」を「第四十五條」に改め、同條を第四十七條とし、第四十九條から第五十五條まで一條ずつ繰り上げる。
 第五十六條第二項中「第五十二條」を「第五十一條」に改め、同條を第五十五條とし、第五十七條を第五十六條とする。
 第五十八條第二項中「第五十二條」を「第五十一條」に改め、同條を第五十七條とする。
 附則第二項中「と読み替えるものとする」を「と読み替え、第十七條第二項の規定は、適用しないものとする」に改める。
 附則第五項中「第五十二條」を「第五十一條」に改める。
 修正案は以上の通りであります。委員の皆さん方におかれましては、どうぞ御賛成下さいますよう切に希望する次第であります。
#5
○委員長(田中耕太郎君) 若木君の提出になりました修正案につきまして御意見がございますか。
#6
○松野喜内君 只今若木委員から縷々修正案を要望されましたが、私共は過日來熱心にこれを質疑應答を重ね、この重大なる社会教育法制定に際しましては、これによつてこそ眞に民主的又社会大衆的、公民館に、博物館に、図書館に、社会の廣い意味の教育に貢献する第一歩である、極めて重要なことである。愼重なる審議を重ねた結果今若木委員の言われるごとく修正することが極めて妥当であると考えますが故に、本員はこの修正案に賛成の意を表する者であります。
#7
○梅津錦一君 私も松野委員のように若木君の修正案に対して賛成する者であります。賛成する主なる理由は法案全体に亘つては聊か不満の点もございますが、大体若木君の修正案によつて補われておる点が多いと考えるのであります。目下一番日本の教育の中で遅れているものは社会教育であると思いますので、この法案が出ることは時宜を得ていると考えるものであります。この法案が出まして、社会教育運動が一刻も早く発足することによつて、日本の民主化が健全な方向に進んで行くことを希望するものでありますので、この修正案に対して賛成の意を表する者であります。
#8
○木内キヤウ君 民主党も若木委員の修正案に賛成いたします。
#9
○高良とみ君 社会教育が振興されることに対する私共委員の期待は非常に大きなものがありまして、殊に近來國民道義の廃頽といわれることは私共胸を刺されるごとく痛く感じておつたのでありますが、学校教育においてできない面も、今まで微かながら民間の諸青年團体運動とか、ボーイ・スカウト、ガール・スカウト、YMCA、YWCA、或いは民間における生活改善運動、婦人團体の運動等が非常に困難な中を乘り切つて今日まで辛うじて戰後の態勢を整えて來たのでございます。それに対しまして社会教育が法律的な根拠を持つことは非常に望ましいことでございましたのでありましたが、原案におきましてはその意図は明らかでありましたけれども、未だ隔靴掻痒の感がございまして、それが今回の修正によりまして本当に公民館にしましても、その他の通信教育等もこれに関係する方達が、殊に官吏の立場にあります人が身を低うして國民に奉仕するというその精神を以て今回の社会教育法を実施して行ける途が開かれることと思うのであります。併し尚今後の運営の上におきましても、どうかそういう方面が官僚的になりませんで、官僚統制の臭いを徹底的に拂拭いたしまして、あらゆる物資の配給の便宜を図るとか、或いは映画その他の教育材料を提供するとかいうふうにしまして、國民が官吏とは即ち私共を心から手傳つて呉れるよき公僕であるという感を持ちまするように、この法案の下に運営が行きますことを希望いたしまして、私共は賛成いたしますものであります。
#10
○藤田芳雄君 私の只今の修正案に賛成する者であります。修正案はこの法律の目的をより以上に達成するように変えられていると信ずる者であります。併しながら自分の尚欲を申しますならば、もつと財政的な強い裏付、或いは物資の裏付がなされるように期待します。併しながらそれの理想的な形にまでは行き得ませんでしたけれども、とにかくそれに近い形において修正されますので、原案よりも教等勝れたものと思いまして、今の若木君の修正案に賛成する者であります。
#11
○岩間正男君 私はこの修正案に拂われた同僚諸君の熱心な努力を非常に多とし、又この修正案によつてこの法案そのものが進歩している点は認めるのでありますが、法案全体の性格が現在の状態において行われるということに対して根本的に政治的見解を異にせざるを得ないのでありますから、この法案に対して、修正案に対しては賛成することはできません。
#12
○委員長(田中耕太郎君) 次に修正の部分を除いた原案につきまして御発言を願います。
#13
○岩間正男君 私は日本共産党を代表して本法案に反対する者であります。本法案は連日に亘つて熱心に討論され、又公聽会等も持たれまして、その結果大幅の修正がなされ、熱心な同僚諸君と共に私も審議を参加して來たのでありますから、できるならばその修正案にも賛成したいといろいろ実情を考え、その理由を探したのでありますが、私はどうしても結論としましてその理由を発見することができなかつた、私の政治的信念を盡し、政治的見通しを以てしては、本法案の施行によつて起るであろうところの政治的な現実の混乱に対しまして、人民大衆の前に十分にその責任を負うことができないことを確信するが故に、私は反対せざるを得ないのであります。そうしてこのことは私自身の職責を明らかにすることであり、又皆さんが外の多くの人が賛成されておるのでありますが、こういうような反対討論によりまして、無論今まで本会としましてできるだけ同じような歩調でやつて來たその友情を何ら損なうものでなく、ますますそのような友情を明らかにするものであるという確信を持つものであります。
 先ず概括的に見ますときに、本法案は日本教育改革の大きな一還としてなされておるということが分るのであります。一方におきまして六・三制の建築費を一文なしに削り、又新たに六十八の新制大学を殆んど何らの予算的裏付けをなさないで名目的に発足させようとしておる日本政府が、このような社会教育の廣汎な内容と深い意義を持つた法案を同じく予算的裏付なしに発足させようとしておる態度について問題があるのであります。このようにして本年度は一方において六・三・三・四の新学制を一應形式的には整え、その連関において社会教育の体制を整えたということになるのでありますが、併しこうした教育の体系において日本の教育改革は一應完了したということが世界に宣傳されようとしておる。併しながらこれは飽くまでデスク・プランであつて、ペーパー・プランに過ぎない、その内容はお互い熟知のように、言うに足るべき何かの具体的措置がなされていないのであります。このようにして日本の教育改革は、民主化の戰後辿らんとするところの危險性に陷つておる、その結果教育は空廻りに終り、再び過去の失敗を重ねるという危險性が十分に出ておるのであります。そこに又現実の上に、社会面におきまして幾多の混乱と犠牲が発生しておる、このようなことはすでに六・三制とか教育委員会というこのような、一つの名目は立派ではありますけれども、そういうものを発足さして、現実との連関を十分に考慮することなしに達成させたことによつて起つたもう実驗済みの問題でありまして、我々はこの誤まりをこの現在の情勢において再び繰返してはならないということを嚴しく感ずるものであります。本法案の危險は正にこの点にあるのであります。たとえ大幅の修正が認められたとしましても、現実の経済的体制のうちにおいて果す役割を考えるときに、その効果はいずれ五十歩百歩のものに過ぎないのではないか。今日では法案がどんなに立派に作られたとしても、それを実施する経済的な裏付があるかないかということが問題なのであつて、そうしてない、そのことによつて法案そのものは空廻りをする実例をまま我我は見て來たのであります。この政治の実情に携わる者としましては、法案並びに法案が実施される結果起るところの社会的な影響を考慮しないわけに行かないのであります。そこでこういうような観点からしまして、この法案に対しまして聊か分析を加えて見ますというと、大体次の諸点を挙げることができると思います。
 先ず本法案が施行されることによつてどのようなことが起るかということを私は問題にして見たいと思います。本法案が実施されますというと、この法案によつて謳われておるところの廣汎な仕事が社会教育の内容としてこれは要論されて來るのであります。それは簡單に挙げて見ますと、公民館の設置及び管理、図書館、博物館その他社会施設の完備、社会教育講座の設置奬励、討論会、講習会、講演会、展示会、その他の集会の開催奬励、職業教育、産業に関する科学技術、生活の科学化、運動会、諸競技等の体育並びにレクリエーシヨン、音樂、演劇、美術等の藝術的なもの、社会情報の交換、調査資料その他こういうふうな廣汎な、非常に厖大な内容を見ておるのであります。この一つを取つて見ましても、これを完全に実施するためには厖大な予算が要るのであります。ところがこの中で最も眼目であると思う公民館の場合を考えて見ますと、公民館は先ず館長、職員を置かなければならん、これはその経常費で人件費はどうなるかということを考えて見ますと、館長、職員、これを仮に二人か三人置くとしましても、その俸給並びに経常費を合せますと、月三万円を下らないということが考えられるのであります。そうしますと、これにいろいろな雜費を合せますと、どんなところでも大抵年に五十万とか六十万はかかる。それにいろいろな先程挙げましたような仕事の極く一班を加えて行なつたとしましても、一市町村の負担が百万円を下らないというようなことを概括的ではありますが、私は観測することができるのであります。これを全國一万一千の町村に割当てて考えて見ますと、少くともこの分だけでも約百十億の予算が要る。ところがこれに対しては何ら一文も國庫の補助もないのであります。これはこの法案によつてやるからいいじやないかというような意見もあるのでありますが、現実においてこれは果してやれるかどうか今度の地方財政に対して政府が取つた態度を見れば明らかなのであります。つまり地方配付税は一千二百億にならなくちやならないというのに五百七十七億に切り、その結果厖大な地方税の負担が強化されておる。住民税一・六倍、家屋税二倍、地租二・五倍に引上げられる、酒税二倍、鉱区税一・五倍、猟区税一・五倍、こういうものが引上げられている状態になつておりまして、大衆負担は正にその極に達しておるのであります。去年でも重税の下に多くの問題が惹き起つたところのこのような地方財源の枯渇によりまして、多くの負担が起つておる。更に教育の面におきましては六・三制が無一文に削られておる、そのために六・三制の寄附の強化というものは、これは大衆の首をきうきう締めておる。そこへ更にPTAの寄附、これは学校の経常費なんかが殆んどないので、又教員の生活費が非常に現在におきましては足りないので、こういうような補助をするためにPTAではこのような寄附を集めることが最近の仕事になつておるので、更に新らしく作られたところの新制大学の予算が非常に少いために、これも殆んど地方の寄附によつて行われなければならないというようなことで、教育費の過重負担だけでも、全くこれは人民の負担し切れない限度に達して行くのであります。そのときにおきましてこのような法案が作られる、尤も文部省は事前におきまして地方財政委員会とこの点を打合せ、何ら地方財政を拘束しない範囲内においてこれを実施するというようなことを打合せておられたということを聞いておるのでありますけれども、併しながら現実はどうかと言いますというと、これはそういうことにはならない。こういうような法案ができますというと、そこに競爭が起る。現在教育委員会に属しているところの事務局の社会教育係の指導主事とか、そういう人達が必ず実績を挙げようとして各町村にこれは競爭させる。從來もそうであつたのでありますが、彼らは國家のこのような、一つの財政的な状態というものに対して、ともすれば、視野が狹い場合が多くて、自分の職責だけを忠実に守ろうというような観点から、ここに無理な形で競爭が発生するのであります。そうして、そこに大衆負担が強化される、このような競爭をさせないようにするかどうか、こういう点についても、審議の過程において文部省に質問をしたのでありますけれども、これに対して文部省は、そういう競爭はさせたくない、そういうことはさせたくなくても、起つた場合はどうするかという質問に対しまして、そういうときに金がかからないでも、実績の挙るような方法について指導するというようなことを答えられた。併しながら今度の政府の予算を見ますというと、現にこの予算の中に優良公民館表彰費として約二十二万三千円をこれは取つているのであります。予算に計上しているのであります。このような実態によつても分るのでありますけれども、政府はこういうような形において、これを國家の負担は殆んどないという形、尤も八千万円の予算が大体この社会教育のために計上されているようでありますが、これは殆んど中央だけの予算でありまして、何ら地方に対してこれは援助を與えるところの予算ではない、そういうような形であります。そうしますというと、そこに大衆負担によつてこれらの社会教育の殆んどを、九九%までを賄わせるということが起つて來るのであります。でこういうようなことが果して完全に行くか、私は行くことのできない。これは人民の負担も限度が來ている現在においては、絶対にできないし、從つてこの法案は過去の六・三制や、教育委員会と同じように裏付のない、血液のない形だけの名目的のものとして、空廻りをする結果に陷るということは、余りにも明らかじやないかというふうに思うのであります。そうしてなぜこういうような情勢におきまして、この法案を急がなければならないのであるか。我々は六・三制や、教育委員会の、あのような苦い経驗で、そうしてその解決のために、本当に精一杯の努力を傾けているし、又傾けなくちやならない。勿論社会教育に対するいろいろの施設をしなければならないのでありますけれども、併しながらこれは段階を追つて、日本の教育民主化はやられなくちやならない。これが雨後の筍のように何もかも、六・三制も、新制大学も、それから大学の設置も、社会教育も一緒くたに、この短期間に、日本の経済の混乱のさなかに、殊に九原則が実施されて非常に國民が窮乏の渕に追い込まれている中に、このようなものが実施される理由を見出さないのでありまして、どうしてもこのような現実面におきまして、我々はこの法案のようにまだ十分とは言えない、もつともつと練り直す余地があり、もつともつと考えなければならない余地のある法案を、十分練り直すことが必要だという考えを持つのであります。更にこの法案につきましては、どうしても修正は相当必要でありまして、例えば教育長の権限というようなものが、相当これは教育委員会に移されなければならない、そういう点については一應認められるのでありますけれども、依然としてやはりこの法案の実施の面におきまして、前述のような結果に陷るであろうというようなことを私ははつきりここで考えることができる、即ちそれはやはり今までの官僚統制的な集い、上からこのような社会教育の方式を押しつけるような傾向というものがどうしてもこの法案の中から完全に抜けきれているとは言えないのであります。修正によつて一應そういうところは改まつたように見えておりますけれども、併しながら教育委員会における委員長の位地そのものが現状のままである限りにおきましては、この法案だけが修正されたとしても、恐らく実際の運営の面におきましては、これは余り多くを期待することができないのじやないか、こういうような意味におきまして、この修正につきましては、もつともつと現実に深く掘下げ、更に今申しました現実に横たわつておるところの教育委員会法の完全に実施されていない実情というようなものと連関してこの問題を解決しなければならない、こういうふうに考えるのであります。又各学校を通じての講習会、これがどうしてもやはり上からの統制的な、ものを支配する態勢を強化する、そういう一つの機構を確立するためには非常に便利なような方向になつておる。そうして下から盛り上つて行くもの、民間から自然に発生して來るもの、そういうものを十分に育てるというような面におきましては、この法案は非常に力を持たないのであります。こういうような点を考えますときに、この法案そのものをもつともつと日本の現在の民主化の態勢の中で十分に檢討してやる必要がある。
 以上挙げましたような理由によりまして、日本共産党は日本の現実に合わないこういう法律の実施に対しては、その結果の見通しが余り明らかであるからして、本法案には反対せざるを得ない。そうして一日も早くもつともつと社会教育の本当の精神、機能を活かすところのいい法案が作られること、そうしてそれが日本の経済状態とも十分にマツチしてその機能を発揮されることを切望して、私はこの法案に対しまして反対を表明する次第であります。
#14
○委員長(田中耕太郎君) 外に御発言はございませんか。
#15
○河野正夫君 日本社会党参議院議員團はこの法案に対しまして、先程の若木委員の修正を加えた上で賛成をするものであります。もとより先程來又批判的な質問においても多くの方々が発言せられましたように、この法案には予算乃至物資の裏付が足りないとか、或いは各種の項目において統制的な臭いが強いとか、自発的な活動を助長する方面が不足であるとかいう種々の不満はございます。そうして修正案を出しましたけれども、それを以てしても、尚これらの欠陷が是正し得られるということの保証はまだ不十分であろうと思うのであります。けれども今日非常な危機に際会しておる六・三制の教育が出発をし、そうしてそのことの勢は当然六・三・三・四の後の三・四、特に新制大学制度も今年から当然出発しなければならない、こういう情勢にあるのであります。即ち日本の教育の民主化というものはすでにスタートを切つておるのであります。そうして社会教育の面につきましても、各地におきまして公民館活動というものは現実に行われておる。而も各市町村におきましては文化委員会とか社会教育委員会とか、いろいろの名前で呼ばれておるそれぞれの社会教育活動が盛んに行われておるという現状を私は知つておるのであります。そういたして見ますると、これらの社会教育活動に何らかの援助を與える、法的な根拠を持たせるということは、現状においても尚必要であるのであります。ただそれに更に財政的な援助の本当の現実が加わるならば尚一層これは龍を画いて睛を点するということになるのでありまして、それを我々は希望しておつたのでありまするが、この点につきましても援助を行う、或いは行うことができるのでなくして、行うというような修正に我々は成功しております。從つてこの法案そのものは実施の部面におきましては恐らくは多くの困難があり、更に或る部分においては机上プランに過ぎない部分もあるかと思うのでありますが、それはこの法案が惡いのでなくして、日本の今日置かれた経済力の現状、それから本当に民主的にものを行うという民度、國民の啓蒙の度合によるのであると思うのであります。さればこそ尚我々はここに社会教育を必要とすることを痛切に考えるのであります。そういう意味におきまして、我々はここに自発的な市町村公共團体はもとより、そうでない民間團体としましても、自発的な社会教育活動がますます盛んになることを希望し、その方向に聊かでも現実に一歩を進ませ得るものであると認めて、この法案に賛成するものであります。この点につきましては曾て戰前戰時を通じて翼賛会的な社会教育活動が行われました。本法案はそういう点どうも民主的な社会教育乃至は公民館運営委員等々を以て、いわゆる翼賛会的な方向よりも國民の多数の意思を反映せしむるという方向に向いているのでありまして、こういう意味から言つても、なきにしも勝るということは言い得るのであります。ただ先程共産党の反対意見がございましたけれども、誠に尤なものは、経費の本当の裏付というものが欲しいことであります。一体この法案の草案というものにおいては、公民館の建設及び運営費の半額は國庫で補助するというような計画さえもあつたかと思うのでありますが、それも今日不可能である。而もこの法案と相関連をするところの図書館法というものが立案せられ、その図書館におけるいろいろな設備、図書の充実ということについても、或いは又図書館運営のための職員のような面につきましても、可なりに突込んだ規定がされようとしておつたかと思いますが、これも沙汰止みとなつた。この事情は今日六・三制さえ十分にできない日本の経済力の現段階としては止むを得ないとは言いながら、而も本当に文化國家を以て立とうとするためには、相当他の方面の堪え難きを忍んでも、この方面に十分なる力を盡し得る、盡さなければならない、努力しなければならない点であろうと思うのであります。
 それ故に希望條件といたしましては、將來図書館或いは一般博物館等についても、立法的な措置が講ぜられるように、而も公民館をも含めてこれらの公共的な社会教育機関というものに対し、相当の國庫の支出がなされ得るような大きな政治的な手を打つことを、一日も早く行われるようにということを希望するものであります。
 第二に希望いたしまするのは、同じ社会教育の方の精神から申しますれば、地方財政法の一部を改正する法律案の中に現われているところの動物園や植物園乃至は博物館の入場税というようなものについて規定したり、乃至は只今すでに非常に非難の的となつている映画、演劇等に関する高率の入場税といつたようなものについても、これら一連のいわゆる文化惡税に対しては十分再檢討を加え、そしてこの社会教育法と同じ精神によつて、これらの点についても國が安く樂しんでこういう施設を利用し得るようにしなければならんものであり、その点についても政府当局は十分努力しなければならんものであろうと思うのであります。
 希望の第三といたしましては、我々この法案の修正の途中において経驗したのでありますが、教育委員会法の運営及び解釈について相当に異なれる見解がある。國会における修正案、この教育委員会法の修正案の場合において、或いはその後我々の表明する見解において明らかであろうと思つておつたところのものが、現実にはそうでない解釈が施されていることが相当ある。これは社会教育法の修正の場合にも問題となつたのでありまするが、從つて將來機会があれば、教育委員会法を再檢討し、その運営の適正化を図るために努力しなければならん。この希望はむしろ議員諸君に向つて私は申述べているつもりであります。
 以上のような希望條項がありまするが、概括して申しますると、とにかくないよりも勝つている、我々の修正を以てすれば、尚一歩その本來の趣旨に近付き得るという見込を持ちまするが故に、本法案に賛成するものであります。以上。
#16
○委員長(田中耕太郎君) 外に御発言はございませんか。
#17
○藤田芳雄君 私は先程の修正案を加えたところの本案の賛成するものであります。社会教育に関するこうした法案は必ず必要なものであります。どうしてもこういうものがなければならんことは、誰しも反対しておらんのであります。ただその内容についていろいろ論議されておりまするが、今回の原案に対しまして、とにかく幾分でもその目的に副うべく先程の修正がなされたのでありますが、併し只今も共産党の方からも反対のお話がございましたが、あれらも余程この実施に当つては考慮すべき材料が多分に含まれているものと思うのであります。財政の面とか或いは実施の方法とかいう点において、この法案そのものにくつ付いたものでなしに、この法案の範囲内においてああしたものを取除くこともでき得るものと思う点もあるのであります。ただ欲を申しまするならば、全般的に先程來言われております財政的な裏付、物資の裏付、そういうものの欲しいこと、それから今一つ大きな問題といたしましては、すでに社会教育のために随分協力をされているところの、一般の民間にあります他の社会教育團体についての援助なり、或いはそれらに対する支援なりについて、何らこれには及んでおりません。それらに対しましても、今後実施の後に体驗いたしまして、おいおいとこの社会教育法案をよりよいものに育て上げて行くというようなことの第一歩として踏み出したものという意味において私は賛成するものであります。
#18
○委員長(田中耕太郎君) 別に御発言ございませんか……。ございませんければ、採決に移りたいと思います。
 それでは若木君の提出されました修正案に賛成の方は御起立を願います。
   〔起立者多数〕
#19
○委員長(田中耕太郎君) 多数の認めます。よつて若木君の提出の修正案は可決せられました。次に修正の部分を除いた原案に賛成の方の御起立を願います。
   〔起立者多数〕
#20
○委員長(田中耕太郎君) 多数と認めます。よつて社会教育法案は多数を以て修正議決されました。尚本会議における委員長の口頭報告その他の点につきましては、本院規則なり、又從來の慣例に從いまして、委員長において処理いたすことに御了解を願います。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#21
○委員長(田中耕太郎君) それでは又署名もいつもの通りお願いいたします。
  多数意見者署名
    松野 喜内  若木 勝藏
    梅津 錦一  高良 とみ
    深水 六郎  藤田 芳雄
    梅原 眞隆  大隈 信幸
    左藤 義詮  河野 正夫
    山本 勇造
#22
○委員長(田中耕太郎君) それでは速記を止めて。
   午前十一時二十九分速記中止
   ―――――・―――――
   午後四時四十九分速記開始
#23
○委員長(田中耕太郎君) 速記を始めて。本日はこれにて散会いたします。
   午後四時五十分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     田中耕太郎君
   理事
           若木 勝藏君
           松野 喜内君
           木内キヤウ君
           岩間 正男君
   委員
           梅津 錦一君
           河野 正夫君
           深水 六郎君
           大隈 信幸君
           梅原 眞隆君
           高良 とみ君
           山本 勇造君
           鈴木 憲一君
           藤田 芳雄君
  國務大臣
   文 部 大 臣 高瀬荘太郎君
  政府委員
   文部政務次官  佐藤 義詮君
   文部事務官
   (学校教育局
   長)      日高第四郎君
   文部事務官
   (教科書局長) 稻田 清助君
ソース: 国立国会図書館
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