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#1
第061回国会 法務委員会 第27号
昭和四十四年七月八日(火曜日)
    午前十時四十五分開議
 出席委員
   委員長 高橋 英吉君
   理事 大村 襄治君 理事 鍛冶 良作君
   理事 進藤 一馬君 理事 田中伊三次君
   理事 永田 亮一君 理事 中谷 鉄也君
   理事 畑   和君
      植木庚子郎君    大竹 太郎君
      中馬 辰猪君    藤枝 泉介君
      松野 幸泰君    村上  勇君
      猪俣 浩三君    神近 市子君
      黒田 寿男君    田中 武夫君
      山内  広君    岡沢 完治君
      山田 太郎君    松本 善明君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 西郷吉之助君
 出席政府委員
        法務政務次官  小澤 太郎君
        法務大臣官房長 辻 辰三郎君
        法務省刑事局長 川井 英良君
        法務省入国管理
        局長      中川  進君
        公安調査庁長官 吉橋 敏雄君
 委員外の出席者
        法務大臣官房訟
        務部長     川島 一郎君
        法務省入国管理
        局参事官    辰己 信夫君
        専  門  員 福山 忠義君
    ―――――――――――――
七月八日
 委員西村榮一君辞任につき、その補欠として岡
 沢完治君が議長の指名で委員に選任された。
同日
 委員岡沢完治君辞任につき、その補欠として西
 村榮一君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
七月七日
 出入国管理法制定等反対に関する請願(勝澤芳
 雄君紹介)(第九八五五号)
 出入国管理法制定反対に関する請願外三件(猪
 俣浩三君紹介)(第九八五六号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 出入国管理法案(内閣提出第九〇号)
 法務行政に関する件
     ――――◇―――――
#2
○高橋委員長 これより会議を開きます。
 法務行政に関する件について、調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。大村襄治君。
#3
○大村委員 死刑の確定判決を受けた者に対する再審の臨時特例に関する法律案の対象者のような死刑確定者については、恩赦の運用につき検討する余地があると思いますが、法務大臣はどうお考えになりますか。
#4
○西郷国務大臣 およそ刑の確定者につきましては、刑政の本義にのっとり、寛厳よろしきを得た執行がなさるべきことは言をまたないところでございます。また、犯情、行状並びに犯罪後の状況等にかんがみまして、特に恩赦を行なうことが相当であると認められるものにつきましては、これを行なうべきこともまた当然でございます。
 今般この再審特例法案が提案されましたことを契機といたしまして、この法案の対象となるもののような死刑確定者に対しましては、この際、さらに右の観点から十分の検討を遂げ、恩赦の積極的運用について努力いたしたいと考えておる次第でございます。
#5
○大村委員 再審特例法案の対象者は、全国で何人おりますか。その氏名はお尋ねいたしませんが、地方別にその人数を明らかにしていただきたい。法務大臣に重ねてお尋ねいたします。
#6
○西郷国務大臣 再審特例法案の対象者は、全国で七名でございます。その現在地を地方別に申し上げますと、大阪府二名、福岡県三人、宮城県二名と相なっております。
#7
○大村委員 終わります。
     ――――◇―――――
#8
○高橋委員長 次に、内閣提出、出入国管理法案を議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。猪俣浩三君。
#9
○猪俣委員 本日質問するにあたりまして、前回私が質問いたしておりました問題で、法務省でも調査なさっていると思うのでありますが、アメリカの軍用機を利用して立川飛行場へ外国人が密入国してくる、そういう事案については調査なさいましたか。
#10
○中川(進)政府委員 お答えいたします。とりあえずの調査でございまして、全く完全であるとは言いかねるかとも思いますが、そういうケースは絶無ではございませんございました。
#11
○猪俣委員 そういうケースはあったとおっしゃるのですか。
#12
○中川(進)政府委員 ございました。
#13
○猪俣委員 そうすると、この前の返事とは違うわけですね。
#14
○中川(進)政府委員 この前私ないということを申し上げたつもりはございませんが、私が存じないということを申し上げたのでございます。
#15
○猪俣委員 そうすると、現在ではないとおっしゃるのですか。
#16
○中川(進)政府委員 あったことがわかりましたのでございます。
#17
○猪俣委員 現在はどうなんですか。現在もありますか、ありませんか。
#18
○中川(進)政府委員 ただいまのわかっておりますところでは、昭和三十九年までにございますが、昭和三十九年以降は、そういうケースは承知いたしておりません。
  〔委員長退席、進藤委員長代理着席〕
#19
○猪俣委員 そこで、実際問題といたしまして、アメリカの軍用機に乗って立川飛行場へかりに軍人・軍属にあらざる者がおりたとします。入国管理庁では、それに対する監督というか、調査というか、一体どういうふうにしてできるのです。
#20
○中川(進)政府委員 普通は証明書の提示を求めるわけでございますから、その証明書の提示をできない者は不法入国でございます。ただし、不法入国が初めからわかっておりましたら入国を許可することはないのでございまして、これはどういう経路とか、とにかく入国管理官署の目の届かないところで日本へもぐり込んだということになっておるのでございます。
#21
○猪俣委員 私のお尋ねするのは、アメリカの軍用機で来るのです。それが軍人・軍属はいいわけだが、軍人・軍属にまぎれて入ってくる者があった場合に、アメリカのほうから通報がなければ、一体それを一々取り調べることを入管でやっていますか。立川に一体そういう調査所はあるのですか。
#22
○中川(進)政府委員 立川には、私ども入国管理事務所はございますございますが、アメリカの基地について、基地から出ていくという場合に、こちらに通報がない場合には、事実問題といたしまして入国管理局の調査ができない場合もございます。
  〔進藤委員長代理退席、委員長着席〕
#23
○猪俣委員 私は、それを聞いているのだ。だから、あなたは現在ないといったって、あってもアメリカのほうから通報がなければ、入国管理局としては調べようがないじゃないか、それを私お尋ねしておるのだ。
#24
○中川(進)政府委員 論理的には、日本におります外国人は、旅券とかあるいは外国人登録というものを持っておることになっておりますから、だから全く調査が不可能だということにはなりませんのでございますが、何ぶん六、七十万の外国人、七十万人をおそらくこえる外国人がおるわけでございますので、事実問題といたしましては、調査は非常に困難だということは認めざるを得ないのでございます。
#25
○猪俣委員 アメリカの軍人・軍属にまぎれてくる。これは軍人・軍属が承認しなければできないはずなんだから、アメリカではわかっておるはずなんだ。そういう者を必ず日本人の入管に通報することになっておりますか。それは現に通報されておりますか。それは私が問題にいたしました――これはいまから十年前の話だから、三十七年ごろまでそういうのがあったとおっしゃるなら、その中へ入るかもしれませんが、これは韓国から相当のテロリストが日本へ入ってきた。私は十人ばかり名前をあげてただしたのに対して、警察では全然知らないという。その当時朝鮮人がこわがりましたのは、そういうふうにアメリカの飛行機に乗ってきて、日本でテロをやって、また立川へ舞い戻って飛行機で帰られたのでは、つかまえることもできない。それを非常におそれたのです。そこで、私はこの委員会で質問しましたが、そのときも十分な回答を得られなかった。現在、ないならいいのだが、ないということがあなた方に確実にわかっていないのじゃないかと思うんだ。わかるようなシステムになっておらぬのだ。だから、そこを私は念を押して聞いておるわけなんだ。アメリカの軍人が承認の上でだれかを一緒に連れてきたという場合において、どういうふうにして日本の入管でそれを発見することができるようになっておるのか、なっていないのか、その点なんです。
#26
○中川(進)政府委員 お尋ねの点でございますが、こういうようなアメリカの地位協定に該当しない人間が参りまして、そして日本の入国管理局の手続を踏まないで日本に入った場合、すなわち不法入国した場合には、わかっている限り米軍から通報がありまして、そしてこれをつかまえたのでございまして、たとえば過去の例におきましても、昭和三十五年にアメリカの船で横須賀へ入って不法入国した男がございますが、もうそれが日本へ入って五日後には羽田から送還される、こういうことでございますので、たてまえといたしましては、米軍から通報をしてもらうというようなことになっておるのでございます。
#27
○畑委員 ちょっと関連して。その問題について関連の質問をいたしたい。出入国管理令の施行規則の第二条によりますと、「令第二条第八号に規定する出入国港は、別表の通り定める。」こうなっておりまして、その中には羽田等はありますけれども、立川はございません。ところで、立川飛行場は、日米地位協定に基づいて、在日米軍の使用すべき基地として米軍に提供するものであることはもちろんであります。したがって、立川から地位協定に基づく米軍軍属及びこれらの家族以外の外国人が出入国することは、一応考えられない。ところが、先ほど猪俣委員からの質問のとおり、どうもあることは間違いなさそうだ。なぜこれをしっかり取り締まらぬのかと思う。法務省設置法の第十三条の十一、第二項に別表十二というのがありますね。これによると、東京入管の立川出張所というのを置くことが規定されておる。したがって、入管の事務所は立川出張所というものがあるわけなんです。ところで、さらに「法務統計月報」昭和四十四年五月、第二百三十一号の出入国管理関係の統計、これを私、調べてみたのです。そうすると、入国、出国双方について、多数の民間人が出入国しておるというふうに見られる数字が出ておる。このことと、出入国管理令の第二条第八号の規定との関係は、一体どうなっておるのか。この点について質問いたしたい。この事実は、日本政府の特定国に対する弱さを裏書きしていることではないか、かように思うのです。この数字は、ちょっとそちらの手元にありますか。
#28
○中川(進)政府委員 出入国法は、いま畑委員御指摘のとおり、外国人の出入りを認めておるところでございます。しかしながら、出入国法に指定しているのはいま百十三ございますが、その指定したところ以外から外国人が出入りしてはいけないということじゃございませんので、立川に限りませず、たとえば瀬戸内海などでも、いゆわる外国船が入って、上げてくれということで、私ども入国管理官署の役人が出かけまして、そこで審査をして上げている例はたくさんございます。それで、立川にはたまたま米軍の基地があることはいま先生御指摘のとおりでございまして、米軍のいろいろな関係で、飛行機によりまして地位協定の適用を受けない人が乗ってくることも事実でございます。そこで、わがほうといたしましては入管の出張所を出しておるのでございまして、私の手元にある数字によりますと、たとえば、昭和四十二年でも四百九十名の者が立川から入国して、入国管理事務所の手続を受けております。
#29
○畑委員 そうすると、立川を出入国の関係の第二条第七号に規定する出入国港とはなぜしないのか。おもに軍用機の出入りだ、向こうの地位協定に基づくものが大部分だ、それに付随して来るんだから、出張所は置くんだけれども、正式には出入国港というんですか、それに指定してないんだ、こういうことなんですか。
#30
○中川(進)政府委員 そのとおりでございます。
#31
○畑委員 そうすると、その数字のものは、不法の出入国じゃないんですね。
#32
○中川(進)政府委員 これは合法的な出入国でございます。
#33
○畑委員 はい、わかりました。
#34
○猪俣委員 そこで、今度は憲法との関係をお尋ねしたいと思うのであります。
 この管理法には、遵守事項という条項があって、この遵守事項はおよそ六カ所にあると思うのです。入国のとき八条、それから在留資格の区分の変更のとき二十九条にある。それから在留期間の延長のとき、これは三十一条にある。それから子供が生まれた等による在留資格の取得のとき、三十二条にある。特別在留許可のときが六十条に書いてある。それから再入国許可のとき、これは三十六条に書いてある。およそ六回にわたりまして遵守事項というものが出てくるわけであります。そこで各場合につきまして遵守事項とは何ぞやを確かめなければならぬのですが、条文の個別審査はまたあとにいたしまして、まずこの第八条についてお尋ねしますが、ここに書いてありまする、その者が本邦に在留するについて守るべき活動の範囲その他の事項、こうなっておりますが、一体これは入管は具体的にどういうことを考えておられるのか。非常に抽象的で、概括的で、さっぱりわけがわからない。本邦に在留するについて守るべき活動の範囲その他の事項、これは一体何なんですか。これを読んだだけではさっぱりわからない。どういうことを考えておられるのか。
#35
○中川(進)政府委員 遵守事項ということでただいま考えておりますことは、大きく分けまして大体三つございまして、まず第一番目は、在留資格の範囲内における活動を指定することでございます。それから第二番目は、相互主義による制限ということ、第三番目には、政治的行為等の制限ということでございます。
 そこで、まず第一番目の在留資格の範囲内における活動の指定ということでございますが、この在留資格は新しい法律の第二条に十四項目にわたって出てはおりますが、それでもまだまだ分け方が非常に大ざっぱでございますので、その十四の中をもう少し詳しく区分するという大体考え方でございまして、たとえて申しますと、商用活動というのがございますが、法案第二条第二項第六号の在留資格という同じカテゴリーに、貿易に従事する者と「企業、投資その他の営利事業の管理業務に従事する者」というのが出ておりますが、それを分ける。また「企業、投資その他の営利事業の管理業務に従事する」という後段の中におきまして、場合によっては業務とか勤務先を指定するということが一つ考えられます。それからその次には、第二項第八号に掲げる在留資格でございます技術研修生につきましては、受け入れ機関、研修の場所、それから研修する事項、こういうことを指定するということを考えております。それから三番目に、法案第二条第二項の第九号の興行活動者というものでございますが、これにつきましては、興行の種別、何をやるかという興行の種類でございますとか、興行をどこでやるかという興行を行なう場所の問題、そういうことを考えております。それから四番目の法案第二条第十号の熟練特殊労働者でございますが、これにつきましては、職業の種類とか収容先の指定というようなことも考えておるのでございます。
 それから大きな分類の二番目の相互主義による制限と申しますのは、たとえば相互主義によりまして一定区域外に旅行する場合の旅行日程及び旅行目的等を届け出てもらうということがあり得るということでございまして、ある国々におきましては、日本人が参りましても、その旅行の区域、通路、日時等を全部指定せられまして、それにはずれることができないというような国がございます。そこで、日本もそういうような制限が少しでも弱まるために、そういう国からお見えになった方に対しましては、日本のことでございますから、旅行をしちゃいけないとか、何日でなくちゃどこどこへ行っちゃいけないとか、その場所とか日時とかいうようなことを制限するつもりはございませんが、せめてその旅行するという予定をあらかじめ通報してもらいたいという制限を課することがあるということでございます。必ず課すというわけではございません。
 それから三番目に大きな分類といたしまして、政治的行為の制限ということが考えられるのでございます。どういうことかと申しますと、たとえますと、まず日本国の機関におきまして決定しました政策の遂行を妨げるための集会、示威運動の組織、これらへの参加または演説もしくは文書図画の頒布を禁止するということでございます。または日本国の国際的な友好親善関係を阻害するおそれがある集会、示威運動の組織、これらへの参加または演説もしくは文書図画の頒布の禁止というようなことを考えておるのでございます。
 ただし、くどいようでございますが、この遵守事項というのは、必ずかけるというわけでは決してないのでございまして、そういう必要がある場合、法務大臣がそういう必要性を認定せられた場合におきまして初めてかけるということでございます。
#36
○猪俣委員 必ずつけるわけでもないが、またつける場合もある、そういうきめ方というものは、非常に危険なんだな。そのときどきの大臣の気分や頭で、どうも夫婦げんかでもしてきたような大臣があると、その気分でやられる。それだからいけない。だから、憲法では三十一条に「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」ところが、たとえばこの八条をとるならば、八条に遵守事項なるものを大臣の裁量できめる。それに違反すれば、中止命令が二十七条で出る。これを中止しないと、今度は三十七条で退去命令が出る。そのほかに八十六条によって六カ月以下の懲役、禁錮、五万円以下の罰金の処罰がされるのです。その処罰のもとが、そのときの気分あるいは相手によってかってに行政官がきめられるということは、憲法の第三十一条に全く違反している。この第三十一条については、先般内閣法制局長官も、この憲法の三十一条は「法律の定める手続によらなければ」となっているが、「法律の定める手続」という意味は、ただ法律という名前であればいいという意味ではないのだ。罪刑法定主義としかも手続が適正でなければならぬということを要求しているのだということを、これは学者の通説であるのみならず、法制局長官がこの私の質問に対して言明された。また、この点につきましては、内閣法制局の参事官の菊井康郎という人が「行政手続と人権保障」と称しまして、詳細なるこの点についての論文を発表している。この人の論文を見るならば、結局通説は、この三十一条は罪刑法定主義と適正の手続を要求しているものだということになっている。そうすると、いま言ったように、そのときの気分によってつけたりつけなかったり、人によっても、国によっても、みんな違うような遵守事項なるものをきめておく。これと一体罪刑法定主義と矛盾しないのですか。これはわが国の憲法に非常に違反していると私は思っている。
#37
○辰己説明員 法案の第八条に規定いたしております遵守事項の定めと憲法三十一条との関係についてお尋ねでございますので、御説明申し上げます。先生御指摘のように罪刑法定主義と申しますのは、ある行為が犯罪とせられ、その行為に対して一定の刑罰が科せられるためには、あらかじめ成文の法をもって犯罪及び刑罰が規定せられていることを必要とすると、法学通論に書いておるとおりでございます、というのが原則でございます。で、憲法第三十一条が罪刑法定主義の原則をも規定したものであるかどうかにつきましては、説が分かれておりますけれども、通説は、先回法制局長官からも御答弁がありましたように、手続のみならず、実体をも法律で規定すべきことを含んでいるという説が通説で、一般的でございます。ところで、この法案におきまして第八条の遵守事項を定めることになるわけでございますが、遵守事項の定めに違反いたしました外国人に対しましては、二十七条によりまして中止命令等を発し、さらに当該中止命令等に違反した場合に刑罰を科することをはっきりとこの法案では規定いたしておるのでございまして、これが罪刑法定主義に違反すると言われる論はおかしいというふうに考えます。なお、具体的に刑罰を科せられる対象となりますところの行為の構成要件が、先生御指摘のように、行政命令によって補充されているということになっておるのでごございますが、その遵守事項は、この法律の目的を達成いたすために必要があると認められる場合に具体的事項を特定して大臣が定めるものでございまして、その遵守事項は旅券等にも記載されまして明示することになっておるのでございます。さらにまた、遵守事項違反がありました際に発せられる中止命令等も、この遵守事項の定めに違反した外国人に対しまして、個別的に具体的な内容を明らかにして中止その他の命令を出すということになっておるのでございまして、この程度のいわゆる補充規範を設けるということが罪刑法定主義に違反するものとはいえないことは、ほかの立法例からも明らかであると私どもは考えるのでございます。先生御承知と思いますが、刑法九十四条「外国交戦ノ際局外中立ニ関スル命令ニ違背シタル者ハ三年以下ノ禁錮又ハ千円〔五万円〕以下ノ罰金ニ処ス」という規定がございまして、いわゆる白地刑法の例ということになっておりますが、これも刑法においてすら認められており、さらに、ほかの国内行政法規には、かような程度の遵守事項の定めというものを規定する場合が数多くあるのでございまして、罪刑法定主義に違反するというふうには、私どものほうは全く考えておりません。
#38
○猪俣委員 そういう全く考えていないところに、一番問題があるのだ。最も考えなければならぬ問題じゃないですか。それを全く頭から考えておらない。この遵守事項というものは、罪刑法定主義と違いますよ、あなた。ちゃんと法律というもので具体的事項をきめているのではない。大臣がそのときどきの自由裁量によってきめるものだ。法律でちゃんとこういう事項はこうなるときめているのが、罪刑法定主義ですよ。行政官がかってに縛っておいて、それに違反すれば刑罰だ、これは罪刑法定主義じゃないですよ。あなたはおかしいと言うけれども、おかしいと思うのがおかしいのだ。そうでしょう。歴史を見ましても、結局「人権の保障は手続の発達による」ということを有名なアメリカの判事が言っている。こういうワクをはめることを自由に大臣がやる。そのことが法律に明示されていないのだ。どういう場合こういうワクをはめるなんということは、書いていない。大臣の出たとこ勝負でワクがはめられる。そうして場合によると、それが刑罰までにつながる。そういうことが、罪刑法定主義に違反しているということになる。罪刑法定主義というのは、法律でこれこれのことをやった者はこれこれにするという具体的なことをあげていることが罪刑法定主義なんですよ。行政官が煮て食おうが焼いて食おうがかってだ。先般私が言うたような検事もいるのだ。そういう頭でいろいろの遵守事項がくっつけられ、そうしてそれに違反すれば、中止だ、処罰だ、これは罪刑法定主義の精神に反していますよ。法律できめなければならぬ。だから、この国会でこういう場合には義務を負担させることができる、これをせにゃならぬ、これはやってはならぬ、こうやってはならぬというふうに、ちゃんとここで事実を掲記して、それに違反する場合には中止なり処罰なりする、これが罪刑法定主義なんです。ところが、法律に何にもきめていない。大臣が自由にいろいろの遵守事項というものをきめられる。こういうことがいわゆる罪刑法定主義と反しているという、そこにあるんですよ。あなた、そこの根本を間違えている。こういうこととこういうこととこういうことは守らなければならぬということを、法律にちゃんときめておかなければならぬ。きめておかないで、それは大臣がかってにきめていい。そうしておいて中止せよ、処罰だということが、罪刑法定主義に反するんだ。反しないと考えることは、ぼくはふしぎでならないのだ。そうしたら、一体罪刑法定主義というのは何ということですか。法律でちゃんと義務規定を、われわれが守らなければならぬ規定を法律で具体的にあらわすことが、罪刑法定主義じゃないですか。大臣が何を言いつけるのか、これはわからぬじゃないですか。何を守れというのか、初めからわからぬ。日本へ行くならばそういうことをしちゃならぬということがあらかじめ法律で明らかになっていれば、外国から入る者もいいわけですよ。入るに際して、突然これは守れ、あれをやっちゃならぬ、こういうことをそのときの大臣の考え方によってきめられる、それが罪刑法定主義というものに反すると、われわれは考えるんだ。諸君の考えている罪刑法定主義と学者の考えている罪刑法定主義というものとは、意義がちょっと違うような気がするがね。いま学説がいろいろある。通説は、長官が述べたようなことだというけれども、これは通説ばかりじゃありませんよ。罪刑法定主義というものの意義は、これはもう判例で明らかになっている。昭和三十七年九月三十日の最高裁判所の判例で明らかになっている。昭和三十七年九月三十日の最高裁の判決ですよ。そういう判決の趣旨、また学者の考え方と、まるで諸君の解釈というのは別なんだ。そういうことは、私は違っていると思う。
 そこで大臣、メーデーに参加する人間が外国からやってきた。これは一体どうなるんだ。政治活動なのか。政治活動を取り締まるというなら、これこれこういうことが政治活動だということを明らかにすることが、罪刑法定主義じゃないですか。ただ「政治活動」といったようなばく然たることを置いておるということ自身が、はや問題なんだ。一体何を政治活動というんですか。労働者の祭典であるメーデーに参加することが、政治活動になるのか、ならぬのか。その解釈は全部時の法務大臣の頭で、なるかならぬか決定する。法律には必要な規定がない。政治活動というものを規定していないのだ。ただ、いま局長の言ったことをいえば、政治活動なんというものもその一つだというが、一体何を政治活動というのか。メーデーというのは、労働者の祭典なんだ。それに参加することが、一体政治活動なのかどうか。どうなんです、それは。
#39
○中川(進)政府委員 メーデーが政治活動であるかどうかということは、われわれはそのときの状況によりまして考えればいいんでございますが、むしろいまの常識といたしましては、必ずしもこれは政治活動というようなものじゃなくて、結局一種の社会的な運動というふうに私自身としては考えます。しかし、政治的活動の云々ということ、これは先ほども申し上げましたように、日本国の機関において決定した政策の遂行を妨げるための集会、示威運動の組織でございまして、その妨げることに非常に重点が置かれるという認定が政府によってなされるものであるならば、それはそういうことにならぬとも限りませんが、しかし、一般的に現在行なわれておりますようなメーデーでございましたならば、少なくとも私自身としては日本の政府の政策の遂行を妨げるために行なわれるものとは思いませんので、何も政治活動云々ということを気にする必要はないと思います。
#40
○猪俣委員 だからさっぱりわからないのだ。メーデーに参加するといっても、そのときになってみて、政治活動かどうかきめるといったようなことで。そこで大体あなた方が基準というものをきめておったって、これは法律じゃないわけなんだから、基準に違反した大臣が出てきて――西郷さんは常識の発達しておられる人だからこんなことはないでしょうが、ファッショ的な大臣が出てきて、そんな内規なんというものと違った処分をやった際に、法律違反になりますか。私は自分の経験から言うと、北海道で、北海道教職員組合の政治資金規正法違反があった。その弁護に行ったときに、立ち会いの検事が何と言ったか。私はその際、政治資金規正法の審議の際の政府委員の答弁、議員の質問、そういう速記録をみな参考として出したんだ。こういう精神でこの法律というものはできたものなんだ。そうしたら、立ち合いの検事何と言いおる。そんなものはわれわれは関知しない。法律として出た以上は、法の解釈はわれわれの権限で解釈するのだ。司法府の解釈だ。国会でどういうふうな趣旨であれしようが、法律となった以上は、われわれが解釈権を持っているんだ、こういうことをその検事は公然と言うたのです。そういう考えがあるのだ。だから、あなた方は内規で何をきめてやったって、法律にあらわれていないのだから、その内規に違反したことを大臣がやったって、直ちに違法だといえない。法律の解釈は入管がやるのだ、法務大臣がやるなんということになってしまえば、どうにもならぬじゃないか。だから、この罪刑法定主義というものは、その意味において大事なんですよ。国会で審議して具体的事実を明らかにする、そこで値打ちがあるのだ。そうしないと、いまの話の検事のような頭を持ってくると、ここであなた方がどういう答弁をしようが、そんなものは法律に書いていないのだから、何にもならぬ。遵守事項を守らぬやつは強制退去だ。大臣が遵守事項をつけたのに、彼らは守らなかったから、この論法でやられてしまう。だから、あなた方のきめた内規に違反したような遵守事項を強制する大臣があったとしても、それに違ったとしたってこれは違法だと言い得ない。その意味において、罪刑法定主義というものは人権保障の大事な柱ということが、そこから出てくるわけですよ。だから、諸君のきめた内規に違反したような行動を大臣が遵守事項とした際に、どういう効力があるのだ。
#41
○中川(進)政府委員 先生のただいまお話しになりました北海道の事件というのは私存じませんが、法律の解釈、運用というものは、その立法の趣旨ということが尊重せらるべきことは当然でございまして、ただいまの第八条の解釈、運用というものも、立案者の意思というものはどういう点にあるということは、国会で大臣以下政府側におきまして答弁したその答弁によりまして明らかにされるものと私は考えます。そこで、いま猪俣先生御指摘のような、万が一にもただいま政府当局によりまして答弁しております趣旨と違った遵守事項の運用ということが起こりまして、その結果として御指摘のようなたとえば退去強制というような事態が起こりました場合には、それこそ堂々と訴訟に持ち込まれましてやっていただいたらいい、私はかように思います。
#42
○猪俣委員 これはりっぱな学者も言っているんだ。特に穗積重遠さんなんというりっぱな学者が、やっぱり法律が出た以上は、この解釈権は検察官にある、裁判所にあるのだ。国会でどういういきさつ、どういう動機でできておる、そういうことにかかわる必要がないのだ。法律自身の論理的な解釈によって、広く検察官まで司法官というならば、司法官は司法官独自、法律それ自身の文理解釈、論理解釈から解釈をしてよろしいのだということを説いているのだ。それもまたある程度一理があるとは思う。国会では情勢上いろいろとできる場合がありますから、国会がどういう事情でそういうふうにしたかにかかわらず、検察官や裁判官が独自の見解でもって法の文理的、論理的解釈でもってやるということも、一つの態度だとぼくは思う。だから、たとえば国会におきましては、政府委員は通そうと思うから、なるべく議員の気に入るような答弁をやっているのだ。それはそうやるのですよ。あの軍機保護法事件なんというのは、私は戦時中弁護をやったが、全く明白にそれなんだ。軍機とは何ぞやということを、議員と政府との間に質疑応答を非常に重ねた。その速記録がある。そこから見るならば、軍機とは何ぞや、軍の最も極秘の中心的なものというようなこと、それが軍の機密であり、それが軍機保護法の対象だということをそのときの政府委員は口をきわめて説明している。委員は、この場合はどうだ、あの場合はどうだ、いやそれは軍機ではありません、それも軍機ではありませんと言っておったが、さあこの軍機保護法ができると、満州国の内蒙古の独立に際して、徳王という人が独立政権をつくった。それに関東軍の参謀長が列席したという情報を流しただけで、軍機保護法違反ということで処罰された。これは当時の政府委員の答弁と全く違うというのです。そんなものが軍機なんかになる道理のないような答弁を政府委員はやっておった。ところが、一たん法律ができると、時の情勢によって、戦局が非常に進展してくると、何もかにもみんな軍機にしてしまって、そうして処罰する。ですから、そのときの政府委員の答弁は、どうしても法案を通したいと思うがために、いろいろと低姿勢の答弁をなさる。ところが、法律ができてしまうと、さあ若い検事などは、そんなものに関係していない、まっ正面から法文どおりに取り組んでいくという傾向があるわけです。そこにやはり罪刑法定主義の人権保障のとりでであるという観念が出てくるわけです。法律に書いてあれば、そうはできませんよ。しかし、広範な裁量権を大臣に与えておいて、ただ内規だけで、こうこうこういう場合だと言うていたって、それは時代によって違っちゃう。だから、法律をつくるときに私どもはやかましく言わなければならぬということを、私は軍機保護法の弁護をやっていてつくづく感じました。だから、あなた方がどんなじょうずな答弁をやったって、何にもならぬぞ。法律に書いてないのだ。だから、この法律をつくらしちゃいかぬと思う。こんな条項をつくらしちゃいけない。つくったら最後だ、どんなうまい答弁をやったって。たとえば検事の中に、この前言ったように「法的地位二〇〇の質問」のあの著者のように、煮て食おうが焼いて食おうがかってだなんという、池上努なんという先生もいるんだ。いまメーデーに参加する問題についても、諸君の答弁はあいまいなんですよ。これもわからない。たとえばベトナム戦争反対だという、これは世界の世論だ。ベトナムにおけるアメリカ軍の行動には賛成いたしかねる、これは世界の世論みたいなものだ。ベトナム戦争反対だということを日本に来て演説する外人があったら、これはどうなるか。
#43
○中川(進)政府委員 これはしばしば申し上げますようにケース・バイ・ケースでございまして、態様とか、バックグラウンドとか、そのときの清勢とか、いろんなことによりまして、その時々の政府が、先ほどからくどいようでございますが、政策の遂行を妨げるとか、あるいはまた日本国との国際的な友好親善関係を阻害するおそれがあるとか、そういう認定をするかどうかの問題でございまして、前もってこういう行動はどうだ、ああいう行動はどうだということをここで、しかも大臣でもない私がどうこう言うことは、差し控えさしていただきたいと思います。
  〔委員長退席、進藤委員長代理着席〕
#44
○猪俣委員 これもやはりケース・バイ・ケースだという。だから、それは罪刑法定主義と違ったことになるんですよ。人により、時により、所によりみな違ってくる。そうすると、憲法三十一条というものは、外国人には適用にならぬということになってしまう。これは法制局長官も適用になると言っておる。だから、私は問題にしておるのですよ。あなたの説明によると、一体何を言われるのかてんで見当つかないのだ。もし内規のようなことがきまっていたら、なぜそれを法文に書かぬのですか。ただ遵守事項なんというばく然たるもの、だからここが問題だというのだ。日本の国交を阻害するような政治活動とか、日本の治安を乱すような政治活動とか、もっと具体的になぜそれを列挙しないのか。ただ大臣はどういう条項でもこれではつけ加えることができるようになっているから、さっきの議論が出るんですよ。大臣が遵守事項をきめたら、これは政府の答弁と違っているじゃないかと言ったって、法律から見れば大臣はどんな遵守事項でもきめられるのだから、法律違反じゃありませんよ。憲法違反になるかもしれない。だから、今度は憲法違反の訴訟が非常に起こるのだ。憲法違反になるんですよ。そういう初めから憲法違反になるような疑いのある法律をつくるということは、拙劣中の拙劣じゃありませんか。これはまた、憲法の規定からいっても政府のやるべきことじゃありません。憲法を守ることが、憲法九十八条に規定されているのだ。一体どうしてそんな憲法に違反するようなおそれのある法文をつくるのかという問題だ。入管令は、これはしようがないと思うのだ。これは占領中のことであるし、やむを得なかったが、これを国会の審議にかける以上は、もっと憲法との関係をしっかり検討して、それと矛盾しないような立案をすべきものじゃないか。それにおいて非常に粗雑だとぼくは思うのだ。いま言ったような、諸君が内規できめているようなことをどうして成文にできなかったのですか。
#45
○中川(進)政府委員 憲法との関係について猪俣委員御質問でございますが、いま御審議を願っております出入国管理法案が憲法に反しておらないということは、法制局の御審議を得まして私どもは確信を持っております。
 それから第二の点の、それではなぜはっきりと遵守事項を法律にうたい込まなかったかという点でございますが、これは立法政策の問題といたしまして、遵守事項というものがそのときどきの社会情勢によって必ずしも特定しがたいということがございます。
  〔進藤委員長代理退席、委員長着席〕
むしろ法文化してしまって、動かしがたい、時勢に合わないようなものになるよりは、そこは弾力的にしておきまして、そしてそのときどきの諸情勢に適した真の意味の社会的正義に合うようにしたほうがよいと思って、法律の条文には載っておらないのでございます。
#46
○猪俣委員 その行政官が弾力的に考える余地、そこに問題があるのですよ。裁判官が弾力的に考えるという立場というのはあり得ると思いますが、行政官が弾力的にそのときどきの都合によって、遵守事項という義務に違反すれば処罰されるようなことを考えていく、それが罪刑法定主義の精神と違うと言うのですよ。あなた方は違わぬのだと言うけれども、説明を聞いていると違うのだ。それがおわかりでないかな。人により、所により、そのときどきによってある者にはいいと言い、ある者には悪いと言うような、そういうきめ方というものが罪刑法定主義に反する。勢い、それは今度は属する国によったり、人種によったり、条約があるかないかによって、非常に違った差別をする原因なる。そういう余地を残すために、諸君はこういうばく然たる抽象的なきめ方をやっていると思うのだ。だから、人権保障にならぬということを言うのです。あなたの説明それ自体が、罪刑法定主義の精神に反しているわけなんだ。それをおわかりでないかな。ケース・バイ・ケースにそのときどきによって弾力的に考えるのだ、それが罪刑法定主義と違っているんだと言うのだ。わからぬとすればどうもならぬ。
#47
○中川(進)政府委員 これは先ほど参事官も申しましたように、法律によって授権されて、行政権の補充的な規定によって罪刑法定主義を補うという考え方でございまして、罪刑法定主義に反しているとは思いません。
 それから、そういう遵守事項をかけるのは、しばしば申しますようにきわめてまれな場合でございますし、それからかける場合にはちゃんとこれを旅券に記載するわけでございますから、本人がやってきて、何かやぶから棒に逮捕収容されたというようなことではないのでございまして、本人が入国する前から、その条件ということをよく承知の上で入国するわけでございます。外国人を入国させるかどうか、もしさせる場合にはどういう条件ないし状況のもとにさせるかということは、これは主権国家の自由でございますし、また場合によってはそういう必要性があるわけでございますから、罪刑法定主義の議論にも私は別に反しない、かように考えます。
#48
○猪俣委員 そういう頭の人と幾ら議論したってらちがあかぬ。外国人だって、いろいろ日本にはこういう入管法というものがあるのだ、こういうことを守らなければならぬのだということを法律に規定しておれば、日本に来るときに、横浜あるいは羽田へ来るときに、もうそれがわかるはずなんだ。ところが、何にもわからないのです。どういうことを守れといわれるのかわからぬでやってくる。だから、そういうことが人権保障にならぬと言うのですよ。政府には便利なんだ。行政官には便利ですよ。気に入らぬやつにはうんと条件をつける。気に入ったやつはまあよし。それは政府には便利だ。行政権者に便利ということは、人権の保障とは相当問題があるということなんですよ。だから、皆さんのほうから見れば、まことに融通自在にしておいて、どういうふうにでも発動できるようにしておいたほうが便利でしょう。しかし、便利と外国人の権利を守るということは、両立しないじゃないかとぼくら言うのだ。それがおわかりにならないとすれば、これ以上幾ら繰り返したってしようがない。
 それから、私は憲法問題で以上の条文解釈はあとに譲ることにいたしまして、なお三十七条に退去強制の対象者という規定があるが、この二十二号に「前各号に掲げる者を除くほか、法務大臣において日本の利益又は公安を害する行為を行なったと認定する者」とある。第一、日本国の利益を害する行為ということは、どういうことを想定されておるのか。
#49
○中川(進)政府委員 これは日本の国家としての利益をそこなうということでございまして、政治的なこともございましょうし、経済的なこともございましょうが、一がいにこういうことであるということは言いがたいのでございまして、先ほど先生御指摘がありましたが、たとえば国家機密というものがございますれば、それを他国に漏らすというようなことは、やはり日本の利益をそこなうということであろうかと思います。
#50
○猪俣委員 これも非常にばく然たる規定であって、日本国の国益を害する、これはまことにわかったようなわからぬようなことなんです。何が国益を害するのか、これを広範に利用されると、すべて時の政府に気に入らぬような者は、この国益を害する中に入っちゃうのだ。社会党の考えからいえば、国益を害するなんというものではない、国益になると思うようなことが、自民党から見ると、国益を害する行為となる。そうすると、この国益というのは、時の政権の政策に反対するような者が国益を害することになるのですか、どういうことになるのです。
#51
○中川(進)政府委員 私どもは、ただいまたまたま自民党の政府のもとで役人をやらせていただいておりますが、別に社会党の政府ができましても決して反旗をひるがえすようなことはございませんので、忠実に職務を執行するつもりでございます。そこで、この「日本国の利益又は公安」ということは、先生御指摘のごとく、これを乱用いたしますというと、これはたいへんな問題になるわけでございまして、現在の入管令にもこれと同じ規定がございますが、これの実施ということは、法務当局といたしましてはきわめて慎重にやっておりまして、入国管理局が発足しまして十七年間になりますが、この条項を発動して退去を命じたのはただ一名でございます。だから、この規定はございますが、これが乱用されるということはまずない。事務当局といたしましては、少なくともこの規定の発動ということには慎重の上にも慎重を期しておるのでございまして、今後もまたその方針を変更するつもりはございません。
#52
○猪俣委員 北ベトナムの舞踊団が日本に入る、これが非常に難航したんだが、これは一体どういう理由で――それじゃ、どういう条件で入ったのです。
#53
○中川(進)政府委員 これは北ベトナムには限りませんが、一般に未承認国の人が日本に来るのには、やはり何かあった場合に国家に引き取ってもらうとかなんとかいうことの保証がないわけでございまして、そういうような関係からも、日本としては慎重にならざるを得ないのでございます。北ベトナムなるがゆえに、何というか、手間どったとたしかおっしゃったと思いますが、許可が手間どったのではなくて、未承認国なるがゆえに許可が手間どったのでございます。そしていろいろな日本の外交上の利益あるいは国内の公安の問題そのほかいろいろな観点を考慮しました結果、政府当局におきまして、結局は申請された方の半分が入国を認められたように記憶しております。
#54
○猪俣委員 あなた方の内規の中に、時の政府の機関が決定したことに反する行動をやるものがやはりこの中止命令の対象になるような説明でありますが、政府機関といえば、自民党の内閣だ。自民党の政策に反するような行動をやるものは、みんなここにひっかかることになるんじゃないですか。それはどうなるのですか。政府機関の決定に反する行動をやるものは取り締まる、こういう答弁ですか。
#55
○中川(進)政府委員 いや、反するとは申しませんで、日本国の機関において決定した政策の遂行を妨げるということを申したのであります。
#56
○猪俣委員 どういうんだ、遂行を妨げるということと反するということとは違うのですか。どういう違いがあるんだ。
#57
○中川(進)政府委員 これはニュアンスの相違があると思います。
#58
○猪俣委員 どうもそこのところが非常にごまかしがあると思うんだな。それは、罪刑法定主義じゃないからそうなんだ。それは国益ということについては非常に乱用を戒めるというのでありますが、それはもっともなことであるし、守ってもらいたいと思う。そうしないと、みんなやられるのです。ところが、私が心配するのは、北朝鮮の建国二十周年の祝賀団が出かける。これが非常に問題になった。そうして出た人間を今度は再入国させるということで、非常に問題になったわけです。とうとう裁判問題になったわけです。これは、一体どういう理由でこういう問題になったわけなんですか。
#59
○中川(進)政府委員 これが裁判になりましたのは、先生御指摘のごとく、政府において再入国を許可しなかったからでございます。
#60
○猪俣委員 どういうわけで再入国を許可しないのです。
#61
○中川(進)政府委員 これは、やはり日本の国益、公安上再入国を許可することは差しつかえがあるという決定があったからでございます。
#62
○猪俣委員 そうすると、結局国益問題なんですね。そこで問題が出てくる。時の政府が好まないことが、国益みたいになってしまう。われわれは北朝鮮とも友好関係を厚くすべきだという考え方を持っておりますし、私自身も北朝鮮まで行ってきました。どの国だって、建国――日本だって、建国祭だなんていって騒ぎになっておるが、建国のお祝いに対して、それに属する民族がその国へお祝いに行くのは当然のことだし、この前法制局長官と問答したのですが、憲法二十二条の問題なんです。これは出国の自由を認めておる。国連の人権宣言によれば、自分の国へ帰ることは基本的人権だ、それこそ。そうすると、出国の自由を認める以上は当然その中には入国の自由というものは含まれておる。そして日本に何十年も生活しておる、日本に妻子、眷族、財産、生活の本拠がある場合において、これはやはり人権保障を第一と考えた人権宣言から見るならば、それは自国ですよ。どっちからいったって、日本の憲法の規定からいったって、出た者を再入国を許さぬなんということがあり得るはずがないのです。それを、そういうことを国益に反するというようなことでいっている。どういうところが一体国益に反するのですか。日本に長らく住んでいた人が朝鮮にお祝いに行ってまた日本へ帰ってくるというのが、どういうところが国益に反するのだ。それが私はふしぎでかなわない。
#63
○中川(進)政府委員 国益の内容を一々分析して御説明申し上げることは、なかなかむずかしいことでもございますし、国益というのは各省にまたがることでもございますので、法務省の入管局で独断的な判断を下すことは誤りがあると困りますが、しかし、私どもが承知しております限りにおきましては、国益の中でも、特に外交上の利益ということが大きな要素であった、かように承っております。
#64
○猪俣委員 だから、国益というようなことに対してあなた方はしっかりした定義を持っておらない、そのときどきの事情でもって国益という解釈をする。そうすると、これは乱用されるおそれがあるんですよ。国益というものは何ぞやということを、各省にまたがるなら、各省と御相談の上決定してもらわなければならぬ。そして法文にあらわしてもらわなければならぬのですよ、こういうことをある程度。ところが、これに対して裁判所の判決があるんだ。裁判所のほうが、行政府よりよほど進んだ頭を持っておりますよ。裁判所の判決を、しょっちゅう諸君は参考として見ていてもらわなければならない。三権分立からいえば、裁判所の解釈というものが最も尊重せらるべきものなんです。東京高等裁判所では、四十三年の十二月十八日、ついいまから七、八カ月前だが、判決を下しておる中に、国益に対する判断を下しておる。「わが国の国益は、究極においては、憲法前文にあるとおり、いずれの国の国民とも協和することの中に見出すべきものであるから、一国との修交に支障を生ずる虞があるからといって、他の一国の国民が本来享有する自由権を行使することをもって、ただちにわが国の国益を害するものと断定することは極めて偏頗であり誤りといわなければならない」こういうようにいっているじゃないか。あなた方は韓国に気がねをして、それを国益と考えている。裁判所は、憲法前文にあるとおり、いずれの国とも修交を厚くすることは日本の憲法の精神だ。北の者を受け入れれば韓国がかれこれ言うというようなことから、北の人間の再入国を防止するというようなことは、はなはだへんぱであり、誤りであるとしなければならないと断定を下していますよ。私は、国益なるものの基準を憲法の精神に求めているということは、最も大切なことだと思うのです。憲法を軸にして動かなければ、最高の基準というものは出てきやしませんよ。それを時の政府の、いや日韓関係だと台湾関係とか、そんな時の政府の政策を中心として考えて、そうして台湾と仲よくすること、韓国と仲よくすることは国益で、中華人民共和国とか朝鮮人民共和国とかというものは別だ、それと仲よくすることは国益に反する、そういうふうに考えることは、非常な間違いだと思うのだ。長い間の日本の利益というものを考えたならば、彼らの国とも修交を厚くするような態度をとることが、結局は日本の国益になるはずなんだ。憲法の精神が、そういっているのですよ。あなたの説明によると、さっぱりわからない。おそらくこの判決がちらっと風刺しているごとく、これは「一国との修交に支障を生ずる虞があるからっといって、他の一国の国民が本来享有する自由権を行使することをもって、ただちにわが国の国益を害するものと断定することは極めて偏頗であり誤り」である。この判決の趣旨はどうですか。これは大臣、どうですか。
#65
○西郷国務大臣 ただいまの判決につきましては、目下上訴中でございます。
#66
○猪俣委員 これは高等裁判所の判決で、控訴じゃない。第一審の判決があって、それに対して法務省が控訴したんだ。その控訴審の判決ですよ。第二審判決ですよ。
#67
○西郷国務大臣 控訴じゃない。上訴です。
#68
○猪俣委員 上告の間違いですか。上告なんか、成り立つはずないじゃないですか。事実関係でやっているんだ。まあいいです、上告中だからという答弁。ただ私が聞きますことは、そうすると、こういう裁判所の判決の趣旨には法務省は反対なんですね、上告するところを見ると。
#69
○中川(進)政府委員 この前もここで申し上げましたように、この許南麒さんの事件でございますが、この事件の第一審及び第二審判決には法務省としては不服でございますので、ただいま大臣が申しましたように、上告して争っております。
#70
○猪俣委員 そうすると、こういう裁判所の解釈そのものに皆さんは反対だ。裁判所の解釈は、憲法の前文の精神をもって、そうしてこの憲法の精神に服することが国益だ。そのときどきの韓国だ、台湾だというのは、これは自民党の政策ですよ。そういうことで国益をきめてしまってはいかぬ。判決はなおこういっております。「元来政府の政策は、国益や公共の福祉を目標として企画実施されるべきことは多言を要しないが、政策と公共の福祉とは同義ではないから、」そういって「たとえ政府の当面の政策に沿わないものであっても、政策に沿わないということのみで右自由権の行使が公共の福祉に反するとの結論は導かれないのである。」こう言っている。これは明快なる裁判所の態度だ。一体これに反対するというのは、どういう趣旨で反対するのですか。憲法の前文の精神に沿うということは間違いだということになるのか、あるいは一党の政策と公共の福祉とは同義ではないということが間違いだというのか、当面の政府の政策に従わないものであっても、政策に沿わないということのみで自由権の行使が公共の福祉に反するという結論は導かれない、こういうことが判決なんだ。これはどうなんですか。
#71
○川島説明員 先生御指摘の事件は、先ほど来大臣、局長から答弁されておりますように、目下最高裁判所に上告中の事件でございます。その上告いたしましたのは、政府といたしましては東京高等裁判所の判決に承服しがたいという理由に基づくものでございまして、その不服の理由は最高裁判所に対する上告理由で詳しく述べておりますので、ここで一々申し上げませんが、要するに三点ございまして、第一点は、本間に関係ございませんけれども……。
#72
○猪俣委員 本間に関係する部分について、どういうことで上告なさったか、それを答弁してください。
#73
○川島説明員 本間に関係する部分につきましては、第一は、再入国の許可を与えるかどうかは、これは法務大臣の裁量に属するものであるという点が一つでございます。それから第二点は、かりに憲法で保障されている自由と考えるにした場合にも、この場合の再入国を許可しなかったことについては合理的な理由がある。これは先ほどおっしゃいましたように、政府の政策に反するからという理由ではなくして、やはりこういう場合の再入国は、目下のいろいろな国際情勢その他を勘案して考えますと、日本の不利益になる。したがって、不許可とするについて相当な理由がある、こういう点でございます。
#74
○猪俣委員 そうすると、結局北朝鮮の祝賀団が祝賀を終えて帰ってくる――日本に生活の本拠があるのですよ。その帰ってくる人を入れることが、結局において日本の不利益になる、この論理がわからぬが、どういうわけなんだ。自民党が好まないからということじゃないのかね。それがさっぱりわからないのだ。
#75
○中川(進)政府委員 これは政府の判断の問題でございまして、外交上の利益というものは目に見えないことが多うございまして、数字で必ずしもはじき出せるものではないわけでありますが、いまの北鮮の建国祭に行った人をまた日本へ入れるという、この再入国の許可を与えるということは、もたらす不利益のほうが、再入国を与えてどういう利益か知りませんが、そのかもし出す利益よりも大きいという認定に基づいた政策であろう、かように考えます。
#76
○猪俣委員 だから、そういう解釈を自由にできるというところに危険性があるのですよ。日本に何十年も生活して、そこに生活の本拠のある人が、自分の本国が二十周年の祝賀会をやるために出て行った。それを入れない。それは人道的に見ても――いなかの純朴な百姓に聞いてごらんなさい。そんなばかなことがあるのか。国益というのは何だ、わけがわからぬのだ。それは結局自民党がきらいだということなんだ。社会党の政府になったら、大歓迎じゃないか。そうでしょうが。社会党なら大歓迎をやりますよ。自民党なら、反対だから、それが国益に反する。それは根拠も何もないのだ。だから、国益問題というのは、非常に重大だと思うのです。今後ますますそういう傾向が出てくる。朝鮮に祝賀会に行った人が日本へ帰ってくるのに、あなた、日本に生活の本拠があることも、妻子がいることも、日本を離れては生活できない人であるということも、十分承知しながら、なぜ入国を許さぬ。結局これは二十二条の出国の自由を許さぬ、この裏表なんだ。憲法に違反してまでもいう国益というものは、何であるか。それが明白にスパイだというようなことなら、それは別問題だ。だけど、日本に何十年いて、その人物、性格、行為はみんなわかっているはずなんだ。その人間が北朝鮮へただ行ったというだけで、もう帰ってくることは国益に反する。そうすると、それを締め出して路頭に迷わせるということが、国益だということになるのですか。反面そういうことになる。人道に反し、世界に糾弾されるような、日本は何という乱暴な国だといわれるようなことが、国益になるのかね。それはそうなるがね。
#77
○中川(進)政府委員 この問題は、何が国益であるかという認定は、確かにむずかしい問題でございますので、いま大臣から申し上げましたように、最高裁においてその御決定を仰いでおるわけでございます。政府としましては、最高裁の御決定が下りましたら、それに従いたい、かように考えております。
#78
○猪俣委員 実は、そういうのは隠れみので、私は、松川事件のときにえらいあれをなめさせられたのだ。松川事件のときに、仙台高等裁判所の判決が出て、検事が調書を偽造している、判決の中に書いてあるのですよ。警察官が偽証している、そういうことを判決の中へ書いてある。そこで、私が委員会で、高等裁判所の判決の中に明らかにこれが書いてあるが、少なくとも裁判所の判決の中に書いてあるのだから、こういう偽造した検事、偽証した警察官に対しては、取り調べて相当の処分をしなければならぬじゃないかと質問した。そうしたら、いまあなた方の言うた戦法だ。いま上告中でございますからという答弁で、それに対するまことの答弁をしないのだ。ところが、上告審でこれは無罪になった。無罪になったあとで、選挙で私は落選してしまった、それで追及することができない。そのうちに時日がたってしまって、いまさら古いからやれないんだ。それでうやむやになっちゃった。今日うやむやですよ。だから、いやしくも高等裁判所の判決の中にちゃんと書いて判事が摘示している事実について、一体判断を下さぬということが間違いなんだ。上告中ですからと言って、答弁に苦しいものだから、それで逃げちゃう。あなた方はその手を使っている。ひきょうな手だと思うんだ。この判決に対して反対なら反対、賛成なら賛成――上告中だから言えないという。だって、いま上告しているのじゃありませんか。そうしたら、反対で上告しているのじゃないかと思うのだが、そこははっきりさしてください。
#79
○中川(進)政府委員 先ほども申し上げましたように、政府といいますか法務省としましては、これは不服でございまして、反対しておるのでございます。だから上告しておるのでございます。
#80
○猪俣委員 そうすると、結局、時の政府の政策が必ずしも公共の福祉と直結するものではない。時の政府の政策に沿わないからといって自由権の行使が公共の福祉に反するとの結論は導かれない、これに対しても反対なんですね、こういう結論は。
 それからいま一つ、「わが国の国益は、究極においては憲法前文にあるとおり、いずれの国の国民とも協和することの中に見出すべきものであるから、一国との修交に支障を生ずる虞があるからといって、他の一国の国民が本来亨有する自由権を行使することをもって、ただちにわが国の国益を害するものと断定することは極めて偏頗であり誤りといわなければならない」これには反対なんですね。
#81
○中川(進)政府委員 判決文は、御承知のように非常に長いものでございまして、その一部分を取り出されまして、ここが反対、ここが賛成と言われましても、これは私どもとしては困るわけでございまして、私どもとしましては、判決全体に対しまして、これでは困る、反対であるということでございます。
#82
○猪俣委員 いや、判決全体に対しては反対であることはわかりますが、この裁判所の結論には賛成なのか、反対なのか、聞いている。この結論には賛成か反対かと聞いているのですよ。私どもにはもっともな判決だと思うんだ。それだから、あなた方の考え方を聞いている。ということは、国益というものの解釈について、今後相当これが問題になると思う。そこで、いまわれわれはこの法文を審査しているのですよ。三十七条の二十二号を含めたこれを審査しているのです。それで、国益とは何ぞやということをはっきりさしてもらわなければならぬ。裁判所はすでにはっきりさしておるから、いや、その趣旨はそれでいい、ほかのいろいろのことがあるから上告したんだ、それなら意味がわかるのだ。問題は、いま私が読み上げたような趣旨も反対で上告なさったのかどうか、それを聞いているのですよ。というのは、いま国益の解釈をしなければならぬじゃないですか。われわれは、それで法案を審議しているんじゃないですか。その上において、政府委員の国益に関する概念を聞きたいから質問している。裁判所の判決理由を聞いて質問している。どうなんですか。
#83
○川島説明員 いまお尋ねのございました二点につきまして、私からお答えをさせていただきます。
 第一の、政策に反することが直ちに国益に反するかどうかという点につきましては、政策に反するからといって国益に反するとは必ずしも言えないというふうに考えております。本件の場合におきましては、政府の政策に反するというよりも、むしろ憲法に規定してあります公共の福祉に反するという点の主張をしているわけでございます。政府といたしましては、本件の再入国を許可することが、現在の国際情勢、それから国内の治安情勢、その他いろいろな情勢から判断して、公共の福祉に反するおそれがあるというところから、原判決の判断には不服である、こういうことでございます。
 それから第二点の、諸外国との協和を尊重すべきであるという憲法の前文の趣旨、これはもちろん当然のことであるし、われわれとして守らなければならないというふうに考えております。
#84
○猪俣委員 その上告状の写しを当委員会へ提出してもらいたいと思うのです。もう至るところ、行政訴訟においてあなたの訟務部では国益論というものを必ず持ち出すのだ。これはたいへんですよ、この問題は。一審、二審とも裁判所の判例が出ているんだけれども、なお諸君はそれを争っている。それは無理もないと思うんだ。全部国益論を持ち出しては行政訴訟の対抗をやっておるんだ。ひとつ上告状をお見せ願いたいと思います。
 それで、この問題はおきまして、次に入国警備官及び入国審査官、この人たちは、一体どういう資格の者がなるのであって、そして人数は幾らあるのか、それを聞いておきたい。
#85
○中川(進)政府委員 入国審査官と申しますのは、行(一)六等級試験というものを行なって合格者の中から採用いたしますが、それが現在四百五十名でございまして、そのうち婦人十一名。それから警備官というのは、警備官試験というのを現在やっておりまして、これは大体程度は高等学校卒業程度でございますが、七百七名現在おりまして、婦人が二十七名、かようになっております。
#86
○猪俣委員 もう一ぺん復唱しますが、その警備官というのは、高等学校卒業程度で試験をやるわけですね。
#87
○中川(進)政府委員 はい。
#88
○猪俣委員 それから審査官というのは、どういう学歴ですか。
#89
○中川(進)政府委員 行(一)六等級試験というのがございまして、学歴は、それに受かるだけの学力があればいいのでございます。そして、これは人事院の試験でございます。しかし、これは技術問題ですから、参事官のほうから補足をいたさせます。
#90
○猪俣委員 まあ、突然の質問だから、そこでよく相談をしてください。
#91
○辰己説明員 入国審査官は、行政職一表の六等級以上のものから採用するということでございまして、採用する際に資格試験というものは設けておらない。警備官は、大体局長がいまお答え申し上げましたように、高等学校卒業程度の者の中から、入国警備官の採用試験を全国的に行ないまして採用をいたし、そして研修を一定期間行なうというようになっております。
#92
○猪俣委員 この警備官や審査官の研修にあたりまして、憲法や刑事訴訟法、そういうものの試験なり訓練なりをやっているのですか。
#93
○中川(進)政府委員 やっております。
#94
○猪俣委員 これについては、ちょっとあとに回しまして、きょうは公安調査庁、おいでになっていると思いますので、あまり長く待たしておりますので……。
 法務大臣が出入国問題を決裁するについて、公安調査庁からは何か資料を出すんですか。
#95
○吉橋政府委員 国益問題につきましては、法務大臣が認定されるので――その主務官庁は、先ほど来お話が出ておりますように、入国管理局長がその所管庁の責任者であります。それで、国益問題につきまして、公安上の問題点がある場合等に、入国管理局長のほうから私のほうへその意見の照会があって、その場合に御回答申し上げている場合があります。ただ、入国管理局長のほうからは、公安調査庁だけではなくて、その他の部局にも連絡がある場合が多々ある、かように承知いたしております。
#96
○猪俣委員 そうすると、入国管理局長のほうから公安調査庁に調査依頼するのは、一体どういう場合ですか。
#97
○吉橋政府委員 これは、きわめて数は少ないわけでございます。
#98
○猪俣委員 数を聞いているのではない。どういう場合ですかとお聞きしているのです。
#99
○吉橋政府委員 公安上に問題がある場合、国内の公安情勢、海外情勢等について入国管理局長のほうで承知したい、この法務大臣の国益問題についての御認定をされる過程において参考として承知したいという場合に、照会があるのであります。
#100
○猪俣委員 われわれの体験によりますと、共産圏へ出たい、あるいは共産圏の人を入れたいというときには、非常に手間どるんですよ。それを、だんだん聞くと、公安調査庁がいま調査中だからと言う。外務省に行くと、法務省がおくらしているのだ、こう言う。法務省の入管局と公安調査庁がいま調査中だ、こう言う。そのために非常におくれる。そこで、場合によっては三十日、四十日も中華人民共和国に行くのにはかかる。日本人までそうです。そうすると、その調査を要求される中には、出国する日本人も含まれるのですか。
#101
○吉橋政府委員 これは旅券法の関係の旅券交付についての国益問題がある場合に、外務省から法務省のほうに連絡がありまして、法務大臣と協議の上決定するという国益事項がございます。その場合には、日本人が外国へ出る場合、公安上の意見を御回答する場合があるわけであります。
#102
○猪俣委員 日本人が渡航しようとする、渡航の自由というのは憲法で保障されている。それを一体公安調査庁が調査するというのは、どういう場合なんですか。日本人なんですよ。たとえば共産主義者だとか社会党の左派だとかいうのが、その中に入るのですか。
#103
○吉橋政府委員 それは一がいには申されなくて、個々の事案に即して調査事項がきめられるわけであります。一定の基準はございません。
#104
○猪俣委員 そうすると、それも時の政府の好ききらいによってやるんですね。実際問題で言うと、たとえば新潟県あたりの純朴な農村の青年を中国の農業視察にやろう、向こうから招待を受けたから。それがなかなか出国ができない。そうすると、結局それは公安調査庁が調査中だということになるんだね。どうも日本の農村の青年を一々公安調査庁が調査するというのは、これは治安維持法時代と同じようなことになるじゃないかね。何を一体調査するのか。外国へ出すと、外国の治安を乱すという意味ですか。外国へ出すことによって日本の治安を乱すおそれがあるという意味ですか。どういう意味ですか。外国へ出すこと自身が日本の国益に響くという意味ですか。公安調査庁がこれに介在するのは、意味がわからぬのだ。何がゆえに、日本の内地で凶暴なことをやっておれば治安を乱すというけれども、外国へ出すか出さぬかというときに、その日本人に対して、一体これは国益を害する人間であるか、国益を害さない人間であるか――国益を害する人間なら監獄へ入れたらいいじゃないですか。監獄へ入れるまでもないが、外国へ出すと国益を害するという人間があるのですか。
#105
○吉橋政府委員 先ほど来申し上げておりますように、当人の外国へ行くことについて客観的に国内の公安情勢に影響があるかどうかというようなことが、調査の一つのポイントになっているわけであります。
#106
○猪俣委員 実に情けないことだと思うのだ。五人や十人の農村の青年が中国へ渡ったら、それでもう帰ってくると日本の治安は乱れるのですか。そんなに貧弱なのかね、日本の治安というのは。そんなばかなことないじゃないか。いやがらせじゃないか。それは何を調べるのですか。一生懸命百姓をやっている人間の、何を調べるというのです。全くふしぎ千万な行動をやっていると思うのだ。農業視察のために向こうへやるのに――それは社会党の人間かもしれません。社会党の人間で中国へ行く人間は、みな公安を害するということになるのですか、その辺がふしぎなんだ。
#107
○吉橋政府委員 先ほどお尋ねがありましたように、旅券の発付あるいは入国申請の決定が出るまでに相当期間がかかる、これは公安庁が調べておるからだということは、全然ございません。入国管理局から照会がありますと、大体二、三日中に回答いたしておりまして、しかもそれによって新しく当該事項を調べるということはなくて、ほとんど既存の資料に基づいて回答をいたしておるのでございます。
#108
○猪俣委員 わかりました。これは二、三日中で片づく。それを法務省に行くと公安調査庁の調査中というようなことを言って、それで一月も二月も引っぱっておく。あなた方はぬれぎぬを着ているんだ、いまの答弁だと。抗議をしなさい。みなそう言っているんだ。私ども談判に行くと、そうなんだ。そんなばかな話ないと思うのだ。やはりあなたがおっしゃるように、ちゃんとリストができているんだから、それさえ見ればわかるんだ。リストをつくるということも問題だが、それはよしておきましょう。きょうはよしておきますが、そんなに公安調査庁の調査が長くかかるはずはないんです。それをみんなそう言うんだ。それでないと、なぜそんな一月も二月もかかるのかふしぎ千万な話なんだ。何かいやがらせをしてやらせまいとするんじゃないかと思うのだ。あなたに来ていただいたのも、その実情を聞きたいと思ったんだ。あなたのぬれぎぬを晴らしてやりたい、こう思ったんだ。そこで、それはわかりましたから、長官は私もう質問ありません。
 さっき、三十七条の退去強制の対象者としての二十二号についてお尋ねしたのですが、関連してもう一つお尋ねしたいと思うことは、十二号ですね「貧困者、放浪者その他生活上の保護を必要とする者で、国又は地方公共団体の負担になっているもの」こういう条項があるのですが、これは入管局の調べでいうと、全国にどのくらいありますか。
#109
○中川(進)政府委員 約四万一千名ぐらいだと承知しております。
#110
○猪俣委員 そうするとこの「生活上の保護を必要とする者」というのは、たとえば生活保護法の適用を受けているような者は、この中に入るわけですか。
#111
○中川(進)政府委員 はい、さようでございます。
#112
○猪俣委員 そうすると、日本に何十年も住んでおる、かつては日本人であったような朝鮮の人で生活保護を受けている、こういう人もこの中に入るわけですか。
#113
○中川(進)政府委員 退去強制事由にただいま御指摘の「生活上の保護を必要とする者で、国又は地方公共団体の負担になっているもの」というのは、現在の出入国管理令にも、先生御承知のとおりございまして、退去強制事由になっております。しかしながら、これの運用といたしましては、現在の出入国管理令におきましても、戦前から日本におられて外国人になられた方、すなわち法律一二六の適用あるいは日韓協定に基づきまして協定永住をとられた人、こういう人は、現在までも運用の問題といたしまして、これのみを理由に退去強制をしたことはございません。今度の法律におきましても、この点は十分慎重に処理いたしまして、従来の方針を踏襲したい、かように考えております。
#114
○猪俣委員 これは一九三八年に、国際連盟で困窮者外国人扶助に関するモデル条約というものがあります。これを見ますると、単に困窮というだけでは外国人を追放することはできない、居住国と密接なつながりのできている者の送還は行なわない、特に一定の期間その国に居住している場合はなおしかりである、こういう規定が、一九三八年の困窮者外国人扶助に関するモデル条約という条約に書いてあるのですが、この条約の精神に徹するならば、この三十七条の十二号のようなものは削除すべきものじゃないかと思うのです。たとえば、今度この次の訴訟問題に私聞きたいと思っているのだが、困窮者があるとすると、この三十七条は法規裁量になる。法規裁量になるとすると、どうでも強制送還しなければならぬことになる。訴訟も何もできないことが起こってしまう。私は、そういうことが実際は人道に反するのだと思うんですがね。ことにこういう条約があるので、アメリカのごときは、五年間住んでいればいかなる理由があっても退去させないと、アメリカの移民法はなっているでしょう。アメリカの悪いところばかりまねないで、そういういいところをもう少しまねたらどうかと思うのです。アメリカ移民法というのは、非常にきびしい法律だということが世界的に定評があるのです。日本の出入国管理法は、それをモデルにしたのだと聞いておる。そのアメリカでも、五年間そこに住んだということを既成事実としていろいろの特典を与えているのですよ。日本はそういうこともない。こういう規定は、人道主義から考えても不都合な規定だと私は思うのです。いまの入管令にもあったでありましょうが、国会で法律としてつくる以上は、こういうことは不問に付するわけにはいかぬと思うのです。これは大臣どうですか。これでいいですか。
#115
○中川(進)政府委員 この貧困者で国または地方公共団体の負担になっているということが退去強制事由になっておるというのは、諸外国の立法もたくさんございまして、日本だけが特にひどいわけではございません。ただ、先ほど申しましたように、戦前から日本におられた方、すなわち、かつて日本人でおられた方及びその子孫という方は、日本とは特別な関係がございますので、昭和二十七年の法律百二十六号というものを出すときに、時の国務大臣岡崎勝男氏が、この運用については慎重にやっていくんだ、非人道的なことはやらないんだということを述べられましたが、その趣旨を体しまして私どももやっており、また将来もやっていくつもりであるということは、先ほど申し述べたとおりでございます。しかし、それ以外の、日本との関係、因縁がそれほど深くない外国人の方が、非常な貧困におちいりまして、そして国または地方公共団体の負担になった場合には、その方の本国にお願いしてお引き取り願うということは、国際立法の諸例から考えまして、必ずしも非人道的だ、ひどいというおしかりを受けることはないかと存ずるのでございます。
#116
○猪俣委員 時間がありませんからこの問題はこれでやめまして、あと一つ、訴訟問題を聞きたいと思うのですが、現在、この強制退去命令に対しては相当の行政訴訟が起こっておる。その実情、何件くらい起こっておって、その理由はどこにあるか、それをひとつ御答弁願いたいと思うのです。
#117
○川島説明員 強制退去命令の効力を争っております訴訟は、本年六月三十日現在で五十七件裁判所に係属しております。
 その理由といたしましては、結局退去強制をする理由があるかどうかということを争うわけでございまして、現在の入管令で申しますと二十四条、今度のこの案で申しますと三十七条に相当するわけでございますが、その理由があるかないかという点が中心になるわけでございます。そのほか、法務大臣が裁量権の範囲を逸脱して強制退去命令を発したのではないかというような点が、訴訟では問題になっております。
#118
○猪俣委員 いまは二十四条で強制命令が出ると、四十九条で異議の申し立てをやる。異議申し立ての理由がないと認めても、五十条で法務大臣が特別在留の理由があると思えば在留を許可する。それをしないと、初めてそこに強制送還が確定的になるわけなんです。そこで、二十四条の問題、それから五十条、大臣の特別在留許可の問題。ところが、二十四条の問題は、事実問題だと思うのです。事実問題であって、これで争うということはなかなか困難なんで、五十条の大臣の特別在留許可、それを許可しない、そして強制令書を出したというところで行政訴訟を起こして、強制令書の取り消しを求めるとともに、その取り消しの判決が確定するまで仮処分で執行を停止するという形の訴訟を相当やっておるわけです。ところが今度は、この法の三十七条によって退去の対象者がきまる。五十一条によって異議の申し立てをやる。ところが、異議申し立ての理由がないと却下されてしまう。そうすると、強制退去令書は自動的に発付され、退去させられてしまうということになると思うのです。なぜならば、大臣の特別在留許可をとるには、法の六十条で特別の出願というものをしなければならない、あるいは入国管理官署の長から申請というものをしなければならない。つまりいままでは、行政訴訟の対象になった強制令書を発付しない以前に、この大臣の特別在留許可というものがあったわけなんです。ところが今度は、それを切り離してしまって、三十七条のあれがあると、異議の申し立てができるといっても、これは事実関係の異議の申し立てで、この立証が非常に困難だと思うのだ。それは入管はなかなかよく調べていらっしゃる。感心するくらいよく調べているから、密入国ならざる者を密入国だということはめったにない。その点は感心していますが、十年、二十年前のことまでよく調べている。だから、この事実関係で争う、三十七条の各号に違反していないのだということで争うことは、容易なことじゃないと思うのだ。そこで、結局大臣の特別在留許可を許すべきものを許さなかったというところに、そして退去命令が出たということで、退去命令の取り消し訴訟を起こして、その訴訟が確定するまでは仮処分で執行を停止するということをやってきたのです。今度大臣の特別許可というものは六十条になってしまって、三十七条の退去の対象者とにらまれて、それに対して異議の申し立てをしても、それが取り上げられない瞬間において退去強制令書が執行されるということになる。この三十七条は法規裁量でしょう。自由裁量でないと思うのだ。だから、三十七条の対象者とにらまれた以上は、異議の申し立てが成り立たぬなら、必ず強制退去の対象になってしまう。一たん強制令書を出しておいて収容するが、収監しておいて後になって大臣の特別出願ということがきめられるという形になっているから、そうすると、法務大臣が、特別出願してもそれを許可しない、特別在留の許可をしないという決定をした際に、この人間に対してどういう一体救済方法が訴訟上できますか。私は困難だと思うんだ。これは訴訟のことですから、訟務部長から答弁していただきたい。前のこの入管令と今度の入管法の非常な大きな違いが一つ。どうも裁判所が介入してきて、いま相当の訴訟が起こって、そうして相当執行停止が出てますよ。そこで、それを脱法するために、きょうの午後呼び出しておいて、あすの朝は羽田へ連れていって飛行機に乗せてしまうというようなことがやられた。これは中川さんのときやったわけです。これはここでも問題になった。そういうことがあるわけです。そこで、裁判所の仮処分手続が間に合わぬようにして帰してしまう。そういうことが非常に非難を受けたので、今度は合法的にやろうというようなことから、わざわざこういう入管令と違って、強制令書の交付、強制執行と分離して大臣の特別出願制度というのをつくった。ところが、特別出願しても不許可になったら、不許可というものに対してどういう訴訟を起こしますか。許可せよという給付訴訟が起こせるかどうか。それから許可せよという給付訴訟が起こされたとしても、不許可という消極的状態なんだから、執行という問題がないから、執行停止の仮処分はできませんよ。これはどういうことになる。いままでだいぶんわれわれもやってきた強制令書に対して取り消し裁判を求めて、取り消しのあるまでは仮処分で執行を停止するということで救済してきた。今度の法案で一体それができますかどうか。行政訴訟において給付判決を求めることがむずかしいことは、学界の通説のようだ。ところが、大臣が不許可にしたのなら、許可せよという給付判決を求めなければならない。それのみならず、不許可処分ですから、執行がないのだ。だから、それに対して執行停止の仮処分ということができない。だから、三十七条に違反した者は、異議の申し立てが却下されるとともに自動的に送還されちまう。これに対して救済の道がほとんどない。そういうふうに私どもは考えられるが、いや、そうじゃないのだという御説明があるならば、その理由を説明していただきたい。その点はどうなんですか。
#119
○川島説明員 現行法の体系はもう先生御承知のとおりでございますので、特に申し上げるまでもないかと思いますが、要するに、退去強制令書が出るまでの間に、いろいろな違反事項の有無の調査がなされます。それからそれに加えまして、特別在留許可を与えるかどうかという点の判断も、一応なされるわけでございます。したがって、強制退去すべき理由がある者であっても、特別な事情があって特別在留許可が与えられるという者に対しては、強制退去命令が出ない、こういうことになるわけでございます。そして特別在留許可がなくて強制退去命令が出た場合には、あくまでそれを争うというのであれば、その強制退去命令の取り消しあるいは無効確認の訴訟を行なう、同時に執行停止を求める、これが現在の制度でございます。これに対しまして、今度の案ではどうなるかということでございますが、今度の案によりますと、退去を強制すべき理由がある者に対しては、一応その調査がされた上で退去強制命令が出るわけでございます。しかしながら、まだそれだけでは直ちに退去が強制されるということにはなりませんで、特別事情のある者については特別在留許可の道が残されておりますので、そちらのほうの出願なりあるいは上申の手続が進められてくる。そうして特別在留許可が認められれば、退去強制命令はその効力を失う、こういうことになるわけでございますから、要するに強制的に退去させられる者の範囲は変わりがないというふうに考えます。
 それから、この案で特別在留許可が認められなくて退去を強制されるという者の救済手続はどうなるかということでございますが、これはやはり退去強制命令を訴訟で争う、こういうことになるわけでございます。先生御指摘のように、特別在留許可が認められなかった、したがって、この認められない特別在留許可を与えようという訴訟は、現在の通説、判例から見て求められないわけでございますから、やはりもとになっております退去強制命令の効力を争う、こういう訴訟を起こしまして、そして同時に執行停止を求める、こういうことになるわけでございまして、結局は現行法と似たような形になるというふうに考えます。
#120
○猪俣委員 部長、そんな答弁であなたいいかい。えらい、それは問題だぞ。訴訟法の原理原則に照らして、部内でそういう検討の結果ですか、それは。あなた方そういう態度ならかまわぬ。かまわぬが、それはいまの法理論から言うと間違いだよ。大体、三十七条というのは、これは法規裁量じゃないの。どうですか。
#121
○川島説明員 一応現行法の二十四条、それからこの案の三十七条、これは私、同様の趣旨の規定である、法規裁量かいなかという点につきましては、同様の趣旨の規定であるというふうに考えております。したがって、これに該当する者がある場合には、それは退去強制ができるものであるというふうに考えております。
#122
○猪俣委員 現行法令は二十四条に違反した者でも異議の申し立てをやる。異議の申し立てを却下した者でも、まだ大臣の特別在留許可というものがあって、それが却下されたとき初めて強制令書が出るわけなんです。そこで、大臣の特別在留許可をすべきなのにしなかったというところで、行政訴訟なり仮処分が出ておったわけです。今度はそれは切り離されちゃっているから、一たん三十七条の事象があるとすると、それに対して退去命令が出て、異議の申し立てをしてもだめだとなれば、これは直ちに退去させられるじゃないですか。では、前の外国人登録法には、訴訟中の者は退去させないという保証があったが、これはどこにあるのですか。何にも保証がないじゃないか。収容されるなり退去させられるなり、そうしておいて、今度は特別出願というものをさせるのだ。この異議の申し立てが却下されても、特別出願が決定するまでの間はその令書を出さぬというのですか。どこにそんな規定があるか。
#123
○川島説明員 いまお尋ねの点で、先生と私の考え方の違いが一つ出てきたのですが、いま先生は特別在留許可を出すべきであるのに出さなかったということが訴訟で主張できるというふうにおっしゃられたわけでございますけれども、これは先ほど最初に先生がおっしゃったように、行政処分を求めるという訴訟はできないわけでございます。したがって、特別在留許可を与えるべきであった、しかるにそれを与えなかったということが、処分の違法だということにはならないわけでございまして、現実の訴訟におきましても、そういう主張はされておりませんし、裁判所も認めたことはないわけでございます。
 それから退去強制命令が出てからすぐ執行されてしまうのではないかという点でございますが、これは五十八条の二項と三項の規定によりまして、直ちに執行されないわけでございます。少なくとも三日間の猶予がありまして、その三日の間に特別在留許可の出願ができるようになっております。特別在留許可の出願をいたしますと、それに対する決定があるまでは送還を停止する、こういう規定になっておりますので、退去強制命令が出てすぐ執行されて送還をされてしまうというようなことは起こらないようになっておるわけでございます。
#124
○猪俣委員 それは五十八条の何項にありますか。
#125
○川島説明員 二項と三項でございます。
#126
○猪俣委員 そうすると、今度は特別出願して、それが却下になった場合にどうなるのか。
#127
○川島説明員 それが却下になりました場合には、退去を強制されるおそれがありますので、退去強制命令の効力を争うには、退去強制命令の取り消しあるいはその無効の確認を求めて裁判所に出訴すればよろしい、こういうことになるわけでございます。
#128
○猪俣委員 その場合に、強制執行停止の仮処分はできますか。
#129
○川島説明員 それは行政事件訴訟法の二十五条二項の規定によりまして、当然できるわけでございます。
#130
○猪俣委員 そうすると、法務大臣が特別在留を許さぬ場合においても、特別在留許可を不許可にした、そすると、許可しないということに対して、許可すべしという訴訟を起こすのですか。
#131
○川島説明員 特別在留許可を与えなかったということに対する訴訟ではなくして、その前に出されております退去強制命令に対する訴訟であります。
#132
○猪俣委員 そんなことを聞いているのではなくて、大臣が、六十条で特別出願をやった、しかし不許可にした。それに対してどういうふうな行政訴訟を起こせるかというのです。起こせなければ、強制送還してしまうじゃないですか。
#133
○川島説明員 特別在留許可を与えないことに対して、訴訟は起こせません。起こせませんけれども、その前に強制退去命令というものが出ておるわけです。それは別の行政処分でございます。ですから、その行政処分の効力を争うことによって訴訟ができるわけであります。
#134
○猪俣委員 それが実際ごまかしなんだ。いままでの訴訟の大半は、裁判所が仮処分停止をとっているのは、大臣の特別許可にかかっておるのですよ。それは大臣が特別在留許可を不許可にした、そのために強制令書が出た、そこで許可すべきものを許可しなかったということで取り消し訴訟及び仮処分申請ができたのだ。
  〔委員長退席、進藤委員長代理着席〕
今度は、あなたの言うのは、強制令書、三十七条に違反しているかどうか、それについて争えるというのだ。そんな事実関係で実際争えませんよ。ただ、要するに、人道的に見て――たとえばさっきの困窮者の問題ですよ。非常に困窮者で生活保護を受けているということが立証されるならば、強制送還になるわけなんだ。普通ならば、困窮者ではあるが、この人間は長い間日本におった人間だとか、特別に事情を考慮して大臣が特別在留許可というものを許したわけなんだ。それを許さなかったというので訴訟を起こすわけなんだ。だから、訴訟の中心は大体大臣の特別許可にかかっているんですよ。そうすると、いわゆる旧令でいうなら二十四条違反、その事実だけで争うといったって、争うことはできないですよ。さっき言ったように入管が詳しく調べているのだから、それをくつがえすことは容易じゃないのだ。ただ、大局から見て大臣の裁量権にすがっておったというのが、いままでのやり方なんですよ。今度あなたが言うには、大臣の裁量権については、大臣が不許可にした場合には訴訟が起こせない、しかし、その前の三十七条違反については訴訟を起こせる、そんなのは理屈だが、実際問題として成り立たぬですよ。そんなものは諸君は許さぬだろうがね。三十七条違反というものを列挙されておる。たとえば貧乏人だ。生活保護を受けているのだということは、証明をとればすぐわかることだ。それをくつがえすというのは容易じゃない話で、それに対してどうして訴訟できるかという問題だ。
  〔進藤委員長代理退席、委員長着席〕
要するに、大臣の特別在留許可となれば、いろいろな要素が加わる。三十七条違反ではあろうけれども、これはこれこれこれこれで人道的に見て日本に在留許可をすべきじゃないかという相当の政治判断、人道判断が加わっているわけなんだ。それをやらなかったということで争うのだから、争う余地が出てくるわけですよ。しかるに、それについて争いができないとなれば、今度はほとんど救済の道がないというわけだ。
 なお、この六十条の特別出願を大臣が不許可にした際に、許可すべしという訴訟が一体起こせますか、起こせませんか。なお、それに基づいて、許可すべきものをしなかったからといって執行停止の仮処分というのはできますか。いままではそれでみんなやってきたんだ。それで助けてくれたんですよ。送られようとするのを執行停止でもって押しとどめて、裁判が済むまでは国内に住まわしておったのだ。それができますか。今度はできないじゃないか。あなた、できるなんて言うたらたいへんな問題だぞ。よく考えてやれよ。できるならけっこうだがね。
#135
○川島説明員 許可を与えよという訴訟ができるかどうかという点につきましては、先ほど来お答え申し上げておりますように、できないと考えております。
 それから先生のお答えと私の考え方との間にちょっと違いがございますので、その点を申し上げたいと思いますが、たとえば生活保護を受けておる者に対して退去強制する。これに対して訴訟でもって退去強制命令が違法だ、取り消せ、こういう訴訟が起こるわけでございますが、この場合に先生のほうでは、これは法務大臣が特別在留許可を与えるべきであるのに与えなかった、こういう理由だろうというふうにおっしゃったわけでございますが、実際の訴訟では、そういう主張はほとんど出てまいりません。また、そういう主張をしても、裁判所は取り上げてくれません。どういう主張をするかと申しますと、これは現行法でいえば入管令二十四条でございますが、二十四条の法律の適用が間違っておる。つまり一応形式的にはそういう場合にも退去強制ができるような規定になっておる。法務大臣はそういう権限を持っておるように見えるけれども、しかし、具体的な場合に、この人に対して退去強制命令を出すのは、これはいろいろな事情を考え合わせてみると、権限の乱用である、逸脱である。したがって、この事案に対してこの条項を適用したのは間違いである。こういう理由でございます。そういう趣旨の主張というのは、私は、この新しい法律案のもとにおいてもそれはできるだろうということを申し上げているわけでございます。
#136
○猪俣委員 それはできると言われても、実際上三十七条の退去の対象者、それに対して強制命令が出たことについて、これはけしからぬといって争うことはたいへんですよ、入管が詳しく調べてあるんだから。事実の争いじゃないですか。そういうことで争うことは、実際上ぼくはむずかしいと思う。それでは実際上はなかなか通らないと思うのだ。そこで、この大臣の裁量権の乱用というようなことを理由にするんでね。今度の法案の三十七条に二十二項目も書いてある。これについての争いというのは、さっきも言った国益問題なんという争いがあるかもしれない。憲法違反なんといろ争いがあるかもしれない。あと困窮者かどうかということは、区役所の生活保護の証明をとればすぐ一ぺんに証明されることである。それをなぜ退去させたかというと、このとおり法律に規定があるとなったら、事実で争うというのは容易ではないでしょう。だから、結局大臣の政治判断をしなかったというところにわれわれの争う余地が出てくるわけなんだ。あなたの論拠を借りると、要するに今後争うことができるというのは、三十七条違反とされたことに対して争うことができるというのでしょうが、実際はそんなことはだめです。実際はむずかしいですよ。あなたのほうはげっ飛ばせばいいのだから楽なんだ。しかし、実際かちとろうとするのにはむずかしいのだ。これは実際問題としてはむずかしいですよ。そこで問題は、この六十条で特別出願をやる。大臣はこれを不許可にした。それに対しては救済策はあるかないか。
#137
○川島説明員 特別在留許可を与えよということは言えないわけです。したがって、これは大臣の裁量権に属するものであって、与えられなかったことに対する救済策というものはありません。
#138
○猪俣委員 それが現行法とたいへんな違いだ。もう少し訴訟の実態を調べてきてください。おもにどういう理由で弁護士が訴訟しているか。事実関係なんかで争うというのは、容易ならぬことですよ。そんなことは入管で詳しく調べているんだ。北海道の札幌におる密入国者は、人の奥さんなんだ。二十年前に密航してきて青森県に住んでいた。そこで青森県まで行って全部調べてきた。そうして密航者というふうになっている。それをくつがえすのには、個人には捜査権もなければ調査権もないんだ。容易なことじゃないのだ。結局日本国憲法の精神、国連の人権宣言、そういうふうな高度の法規範を持ち出して、そうして大臣に特別在留許可をすべきものではないかというところが、実のある訴訟としていままでやられてきたのです。事実の争いというものは、入国者は負けますよ。それは入管ではあらゆる調査をやる。だから、入管がでたらめに密入国者と認めているのでないことは、私も理解をいたします。相当の調査をやっている。しかし、その結果出てきたものを法のとおりにやるならば、全く一家離散して悲惨な運命に帰する。たとえば韓国に送り返されたりすれば、生活の道がない、そういう者がたくさんあるのだ。そういう事情は、やはり大臣の特別在留許可でもって救っているわけなのですよ。形からは密入国に違いないのだ、二十四条の違反に違いないのだ。それは二十四条の違反であるけれども、なお特別に在留許可をさせるべきものだというのが、大臣の裁量なのだ。そこで、国連憲章の精神や日本国憲法の精神を持ってきて、これだけ強制送還をするならば悲惨なことが起こるじゃないかということで、これを救わなければならぬのに大臣は救わなかったということで取り消し訴訟を起こして、そうして仮処分で執行停止をやっておるのが現状なんです。あなたの言うように、三十七条の違反で争える、しかし特別出願しても大臣が不許可にしたものは争えないというところに、大きな問題があるのです。大臣が特別許可を許さぬ場合には、直ちに強制執行されるわけだ。それに対して救う道がないじゃないですか。前には、大臣が特別許可を許さぬでも、救う道があった。特別許可を許さぬことを条件として、それを取り消せということで救う道があった。今回は、大臣が特別出願を不許可にした上は、もし給付訴訟を起こさないとすれば、そういう訴訟も困難だ。いわんや不許可なのだから、執行するものがないのだ。だから、執行停止の仮処分もできない。だから、大臣が不許可を決定した瞬間に強制的に送還されてしまうということが起こってくる。そこが前と非常に違うところだと私は言うのですが、それは同じなのですか。
#139
○川島説明員 私が申し上げておりますのは、まあ結局大体同じだということになるわけでございまして、現行法のもとにおきましても、先生は特別在留許可を与えられなかった場合に、特別在留許可を与えるべきだ、こういう主張ができるというふうにお考えのようでございますけれども、私どもはそれは現行法のもとにおいてもできないというふうに考えております。また、裁判所の判決としても、特別在留許可を与えるべきであったというような判決は、一件もされておりません。要するに、現行法のもとにおきましても、これは入管令の二十四条、この規定が正しく適用されたかどうかという点が、訴訟の論点になるのであり、また裁判所の判断の対象になるわけであります。その意味においては、この法案のできた後においても、訴訟の問題の中心は変わりがない、そのように考えているわけでございます。
#140
○猪俣委員 あなた、実際はみんなそれでやっているじゃないか。それで執行停止をとっているじゃないか。実際をあなたは何にも知らぬじゃないですか。そんなことを訟務部長が知らぬとはしようがない。それでみんなやっている。執行停止をとっている。民事訴訟法学者の意見を聞けば、今度はむずかしくなったとみんな言っているんだ。それを学理的に研究しなければいかぬ。今度は要するに裁判が非常にやりにくくなったということ、これは学者がみんな言っているじゃないですか。それをあなたは同じだという。同じじゃないですよ。たいへん違いますよ。前には大臣の特別在留許可をしなかったということを理由にして、訴訟をどんどんやっているのだ。私も幾つかやっている。それで執行停止をとっているじゃないですか。事実の争いなんて容易じゃない。われわれの飛びつくところは、大臣の特別在留許可なんだ。今度はそれが分断されてしまって、事実さえあれば強制令書が出されてしまう。三日だけは待つことになりましょうけれども、強制令書が出されてしまう。大臣が不許可にしたって、それに対して争うことはできない。事実の争いなんて、とてもこっちは勝ちっこないですよ。だから、そこに問題があるということをさっきから言っているのです。どうもあなたの言うことはよくわからぬ。それならそれで押し通すならいいが、われわれが訴訟すると、あなた方は必ずそれでやってくる、反対の論拠で。
#141
○川島説明員 先生のお話を伺っておりますと、いままでは強制退去命令に対して訴訟も起こしたり、執行停止もできた、ところが今後はそれができなくなるというふうに感じられるわけでございますけれども、それは、この法案の強制退去命令に対しては、訴訟も起こせるわけでありますし、執行停止はできるわけでございます。現実の訴訟に私、何件も実際に関与しておりますので、その立場から申し上げているわけでございます。
#142
○猪俣委員 あなたは、何べんも同じことばかり言うておるんだ。それは三十七条の違反じゃないというような事実関係の争いはできますよ。しかし、それは実際訴訟をやってみると困難だというんだ。いわば大きな法規範をもとにして、大臣が特別在留許可を許すべきではないかという主張が、弁護士としては残っているわけなんだ。入管で調べたその事実をしからぬという立証は、容易ではないと思うのです。あなたが訴訟を起こせる、起こせるというのは、この三十七条、現行法でいえば二十四条、それについての争いはできる、そんなことはあたりまえですよ。しかし、それはなかなか容易じゃないんですよ。きょうは突然の質問ですから、もっと調べてください。一体訴訟が裁判所でどのくらい通って、どのくらいの仮処分が出ているか、もっと調べてください。
#143
○高橋委員長 ちょっと私からも……。現在までに大臣の不許可決定に対する訴訟の起こっているのがあるのですか。先ほどの答弁では、そういうものは一件もないような答弁だったが、そういうものはあるのですか。
#144
○川島説明員 それは一件もございません。
#145
○猪俣委員 現在やっているじゃないですか。現在私もやっている。現に判決も下っている。
#146
○高橋委員長 それがないというわけだ。
#147
○猪俣委員 それは知らぬは亭主ばかりなりで、問題にならぬ。
#148
○高橋委員長 それでは、よく調査して、次回にひとつ答弁してください。
#149
○川島説明員 大臣の特別在留許可を求めるという訴訟は、一件もございません。これは昔からいままで一件もございません。
#150
○猪俣委員 これは訟務のほうでもう少し訴訟関係をよく検討してもらいたい。私どもは、訴訟法学者の議論をみな聞いてきてあなたに質問しているのだ。そんな思いつきで言っているのではない。非常に困難になったと全部言っている。ジュリストを見ても、法律時報を見ても、法律学者はみなそう言っている。それをあなたは前と同じことだ、同じことだと言っているが、非常に違うのだ。
 そこで、あとでもう少しやりたいと思いますが、きょうは、もうくたびれてしまったので、この程度にしておきます。
#151
○高橋委員長 次回は、来たる十一日午前十時より理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
   午後一時二十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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