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1949/04/26 第5回国会 参議院 参議院会議録情報 第005回国会 農林委員会 第9号
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1949/04/26 第5回国会 参議院

参議院会議録情報 第005回国会 農林委員会 第9号

#1
第005回国会 農林委員会 第9号
昭和二十四年四月二十六日(火曜日)
   午後一時三十六分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○本委員会の運営に関する件
○獸医師法案(内閣送付)
○農業協同組合自治監査法を廃止する
 法律案(内閣提出)
○農業協同組合法の一部を改正する法
 律案(内閣提出)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(楠見義男君) それでは只今より農林委員会を開会いたします。本日は公報で御通知申上げておきましたように、議題は農業協同組合自治監査法を廃止する法律案、農業協同組合法の一部を改正する法律案、この二つは参議院先議になつておりまして、從つて本付託になつておる議案でございます。それから獸医師法案はこの前に予備審査として付託されまして、皆樣の御審議を煩わした案件でございます。衆議院の方からまだこちらの方に正式に廻つて來ておりません。それから大体獸医師法案の問題につきましてはこの前も非常に御熱心に皆樣方の御審議を煩わしたのでありますが、その際大体の大筋の質疑は終了したものと思われるのでありますが、ただ経過的の規定として、現在獸医師の仕事に從事しておる者、或いは又獸医師の仕事に從事しておる者、それからもう一つ獸医師の試驗を受ける資格のある者で現在まだ獸医師の試驗に合格せずにおる人人の救済をどうするかという、この経過的な問題が主として中心になつたのであります。從つて爾余の質疑は大体終了し、この点が唯一の残つた問題でございましたが、たまたま衆議院の方でお手許にお配りしておる修正案のようなものが今論議されておるようでございます。この獸医師法案に関する衆議院農林委員会修正案が今議せられておるようでございます。從つてこれが関係方面の承認を得ますと、こういうような修正案が來るのではないかと思います。そういう関係になつておりますので、獸医師関係の問題につきましては、大体この修正案の來るのを待つて、改めて本付託、本審査として御審議を煩わしたらどうかと、こういうふうに思います。そこでこれ以外のことで、又これに関連して何かございますれば、その方を本日は最初に片付けて頂きまして、それから先程申上げました協同組合関係それから自治監査法の廃止、この二つの案件を本日は中心にやつて頂きたいと思います。この委員会に付託されております法律案については、これも表が皆さんのお手元に行つておりますが、現在十件こちらに参つておりまして、本付託のものが五件でございますが、段々迫つて参りましたので、できますれば協同組合関係の方の質疑は内容も簡單のようでありますから、できれば本日中に質疑を終了するような段取にして頂ければ非常に仕合せだと存じます。勿論採決は先になつても結構でございますが、一應質疑だけはそういうようにして頂いて明日、明後日にはこちらに本付託になつておりまする食糧確保臨時措置法の一部を改正する法律案と、食糧管理法の一部を改正する法律案、これは予備付託でありますが、同じ食糧関係でありますので、この二つの法律案について大体質疑を大ざらいして頂いて休みが続きますので、その間にいろいろ御勉強を願つて休み明けに最後の締括りの質疑をやつて採決をして行く、とこういうような段取にやつて頂きたいと存じます。そういう順序で本日はお願いいたしたいと存じます。獸医師法につきまして何か御質問がありましたらこの際……
#3
○北村一男君 前の委員会におきまして、獸医手の問題につきましていろいろ希望意見が述べられましたが、その御議論の多くは現在の獸医手をどういうふうにして救済するかというような立場から、いろいろ御意見が、述べられたというのであります。併しながら農村実態から申しましても、この人々は多くは協同組合とか或いは共済組合というような第一線で実務に從事いたしておる人々でございまして、又その地方の畜産事情にも通じ、又從いまして家畜の疾病などについて土地特有の事情にも通じておる人々でありまして、以上診療費の安いということ、それから早期診断をすることができる。これも從いまして、診療費を安くすることができるといことになりますので、そういう点から考えまして、非常に重要な働きをしておる人々であります。
 ところが衆議院の修正案を見ましても、これらの人々はそのいろいろの團体の職員である間に限つてその業務を行うことができるのでありまして、この團体の職員たる地位を取れば診療ができないというようなことになるわけでありまして、長らく農村のために働いた人々は相当年配になつて團体を辞めると、その職を失わなければならんという点はこの個人の問題ではありますが、又農村としても誠に不便、不利な問題も含んでおりまするので、委員長に第一にお伺いしたいのは衆議院の修正案というのは今どういう段階まで進んでおるのでありましようか。これはGHQの了解を求めるためにすでに交渉されておるのでありましようかどうか。そういうまだところまで至つておりませんければ、その團体の職員である間に限りということでなしに、獸医師としての資格を與えるような御交渉が是非ともお願いしたい。こういうふうに考える者であります。政府としてもその点につきましてどういうようなお考えを持つておられるか。是非ともそういう方向に向つて御努力願いたいということを強く要望する者であります。この点についての委員長の御見解、若しくはその間の事情を一つお伺いして、合せて政府の御答弁を煩わしたいと思います。
#4
○委員長(楠見義男君) 実はこの修正案については、私本日承知したのであります。それでこの前の審議の時にいろいろ皆樣からこの問題について御質疑があり、又御意見の御開陳があつた際の政府の考え方は、現在の獸医手の人人は、本年の最後の獸医師國家試驗にできる限り多く合格させるように事前に十分講習会等も開いて、そうして救つて行きたい。こういうお考えであります。これは御承知の通りであります。ところが本日こういうように修正案が衆議院で論議されておるという話を聽いたものでありますから、この修正案で行くと、獸医手は獸医手として團体に、或いは團体の職員である限りは獸医手として別に獸医師の試驗を受けないでもそのまま仕事ができるようにするのだ。こういうふうな案なのです。そこで実は問題は根本的に遡つて、昭和十五年の「獸医師法等ノ臨時特例ニ関スル法律」がどういう趣旨でできたかということを先ず檢討する必要が私はあると思うのです。でその当時できた法律において特に獸医師と獸医手と区別したるその理由がはつきりすれば、そのはつきりした区別に從つて、今の獸医手は獸医手として團体の存続する限り、その業務を認めるという行き方で行くのがいいという結論になるかも分らんし、又その根拠如何によつては今北村さんのおつしやつた團体だけでなくて、一般的に團体以外の獸医師の仕事もできるようにする。そういうふうに結論として私はなると思います。從來の十五年の法律の際も、その獸医手の制度は團体に限つて認めるということになつておるのですが、併しその当時のそれを認めた法律の趣旨、或いは又その資格の内容如何によつて、只今申上げましたような二つの途に分れるのではないかと思います。でそれによつてこの衆議院の修正案をいいということになるか、或いは更にこれよりも廣いことになるか。この点も一つここで皆さんによく御檢討を願つたらいいと思います。その結果衆議院の方はまだGHQの方には行つていないそうでありますから、明日ぐらいに行くような話でありますから、そうすれば衆議院が向うに行く前に早急に私共の方の態度も決めて、共同して一つの案を作つて参りたい。こういうふうに私は考えます。
#5
○政府委員(池田宇右衞門君) 只今北村さんから非常に獸医手の問題について人情あり、又経験を活かせという懇切なお言葉のお尋ねがありました。御承知の通り本案を提出する骨子は、獸医師の学術的習得、その優秀さをより以上向上させる意味から本案を提案したのであります。併し今日日本の畜産増産の上から申しまして、医は必ずしも学術のみでなくて経験、非常な体験によつて、その医業の手腕、力量に役立てる方々があることは御指摘の通りでございます。さような意味から考えて見ますならば、当然この人々の長い体験と経験と研究を活かさんとする趣旨であつたのでありますが、一應本案を作るときに交渉いたしましたが、今日の場合においては、かくのごときものでありましたが、議会におかれまして各委員の御決定と、又GHQの御了解を得るならば、御趣旨に副うような方法も考えておる次第でございます。この点につきましては、周分に当局といたしましても研究いたして見たいと考えておる次第でございます。
#6
○委員長(楠見義男君) ちよつと北村さんに申上げますが、私今ちよつと申上げたように、この臨時特例ができて、獸医手という制度が獸医師の制度の外に新たに設けられて、その獸医手は一般の獸医業務はできないけれども、團体に関する仕事だけはできる。これは恐らくまあ少し言葉が惡いのですが、若しまずくてもそれの影響を受けるのはその團体に限るのだから、從つて或る程度その資格の低い者でもいいのじやないか、こういうような戰爭中に他のいろいろ免許資格を低減をしたり、或いは非常に柔らかくして認めた例が外の方にもあるのですが、私はそれと同じような関係から、この獸医手制度についても認められたのじやないかと、こういうふうに理解しておつたのです。ところがその話を聞いて見るとどうもそうでもないようだということになると、その辺をはつきりしてこちらもよく腹を決めて基礎を固めてから行かないと、向うへ行つて十分なる説明もできず、変な結果になつて元も子もなくなるようなことになつちやまずいと思いますので、その辺は私はよく檢討して頂いた方がいい。而もこれは一日や二日を爭う問題でもないから、その如何によつては衆議院の方にも話をして、何も明日行かなくても少し先に延ばしても、とにかくこちらの基礎を固めてから行くようにしたらいいのじやないか、こういうふうに私は思いますが……
#7
○北村一男君 ちよつと関連して…実際この第一線で働いておる獸医手の方は二千七百名見当だと聞いております。今委員長の仰せになりましたこのいろいろお調べになつた結果、どうもそうでもないようだと仰せになつた点は、前に三年間実業学校でこの專門の教育を受けた人は獸医師となる資格が與えられて、十五年から同じ教育を受け、その後二ケ年の專攻科を出た人も獸医手としてしか認められないというような事実を意味されたものでないかとも私は考えておりますが、事実はその通りでございまして、どうも十五年を境にしまして、同じ教育を受けた人を不公平な取扱がある。こういうことは私はこれ亦人数も少くて、これから殖えるのでありませんから、今までの人をどう扱うかという問題でありますから、一つ段階を付けてお考え頂きまして、当委員会の全員の御決議として一つお纒め頂きたいことを希望いたすわけであります。
#8
○委員長(楠見義男君) 実は私も古いことは記憶しておりませんけれども、前には甲種の農学校を出、獸医関係については、四年中獸医関係の勉強しておつたものと、それからその後三年になつた時と、四年の中で三年間獸医の勉強をした時と、そういうふうに課程が変つたことがあることを記憶しておる。それが実は何年からそういうふうになつたか、よく記憶しておらないのですが、そういう関係も一つ檢討して見る必要があると思います。いずれにしても同じ資格で、而も戰爭中に人が余計おるに拘わらず、特別に同じ課程を経ながら獸医師と獸医手とを区別した理由をはつきりつきつめて、それからこちらの修正案の基礎を固めた方が、どこへ出しても押強くやつて行けるのじやないかと思いますから、そういうふうにして見たいと思います。取敢ずこの問題は先程も申上げましたように、前回でも経過的の問題としては一番皆さんが関心を持たれた問題で、獸医師の法律の審議は、実は外の免許資格の禁治産、準禁治産とか、懲役の制限とかいろいろありましたけれども、主として問題は、経過的にこの問題に集中しておつたようですから、一つそれを中心にして固めて行つたらどうかと思います。
#9
○羽生三七君 今の問題についてどういうことで獸医師と獸医手に分れたか、当局より何か説明を聞きたい。
#10
○委員長(楠見義男君) いずれにしてもこれは衆議院でもそう急ぐ問題でないのだから、一日二日を爭う問題でないのだから、衆議院へはこちらからも一つの提案をしたいと思うから待つてくれということを申込んで置いた方がいいですね。(「そうです」と呼ぶ者あり)
#11
○山崎恒君 只今北村さんが発言された趣旨と私も全く同感でありまするが、この区別をした理由は、農林省で大正十五年の問題ですから恐らく分ると思うのです。これは特に打撃を蒙るのは獸医手ばかりでなく、現在獸医手を採用しておる團体が非常に困るだらうと思う。これはもう恐らく我々の常識で考えまするというと、当時二つに分けたというのは、主として馬匹組合等の改正その他によつて、恐らく戰爭以前に馬の改良発達をさせるというようなことで、團体を利用しての馬の改良発達を図るというようなところからいつて、正規の獸医師というものが少いので、獸医手という制度を設けて、恐らく馬匹の改良発達の問題を強く取上げられたじやないか、そういうためにこういう制度を作つただろうという、こういうような想像をされるのでありますが、とにかく北村さんが発言されましたように、長い経験と技術を持つておる者でありますし、又員数から行きましても三千名足らずの人間でありますので、而もその人達が殆んど現在農業共済保險組合或いは畜産協同組合というような團体に、奉職しておる諸君が多いのでありますので、この獸医手はどこまでも人数も少いのでありますので、衆議院の方の審議と睨み合せまして、これを生かすような方法に少くもこの委員会では案を纒めるという方針をとつて頂いた方がいいと思います。
#12
○委員長(楠見義男君) これは衆議院の修正案ができましても、特例に関する法律で同條に規定する團体は、法律では畜産組合、畜産組合連合会というような現在現存しない團体名が載つておるのです。尤もこれは命令を以て定むる團体とありまして、その命令では産業組合とか農会とか産業組合連合会とか、そういうものが入つておるが、こういう点なんかも法律の問題としては檢討しなければならんだろうと私は実は思つておる。從つていずれにしてもそういうような点は協同でやるようにした方がいいのじやないかと思いますから、皆さんの御意見もそういうことでありますればそういうようにいたしましよう。
#13
○山崎恒君 この際附け加えますが衆議院の方と連携をとりまして、僅かに人数が二千七、八百の人間ですから、獸医師にして手を切つてしまつて、医師に昇格してしまうというようなことにした方がいいと思う。
#14
○委員長(楠見義男君) これは今の羽生さんのお話の点は畜産局の衞生課長が一番詳しいのですが、今の局長も畜政課長も当時畜産局におりませんでしたから、よく記憶しておらんと思います。後から衞生課長が参るそうでありますからその際にお願いをいたしたいと思います。
#15
○羽生三七君 衆議院の修正案の中のいわゆる同法第二條の規定という場合、この中の團体というのが、前の産業組合とか或いは農業会というものが協同組合に変れば協同組合そのものに適用されて行くものと見ていいわけですね。
#16
○委員長(楠見義男君) だからそういうふうな法律上で移り変るというようなことにして置かないと、もうそんな團体はないのでということになつてしまうと、今申しましたように、命令を以て定むる團体というので逃げる途もありまするけれども、これははつきりとして置いた方がいいと思います。
#17
○加賀操君 この法律の第一條に「技能の最高」という字が使つてあるのですが、この意味を少しお尋ねして置きたいと思うのですが、第三條において國家試験に合格することを要すと書いてあるのですが、そういう点から見ますれば、國家試験を受ける資格のある者は大学を出た者だ、こういうことに決まつておりますが、それでこの最高という字は受験資格が最高である、言い換えれば大学が最高の技能だからその最高の学校の技能がここで言う最高の技能の程度かどうか。或いは本質的に最高というものを他に考えられておるのかどうか。こういう点を一つお伺いしたいと思います。
 それから二番目には第一條によつて「畜産業の発達を図り、」と書いてあるのですが、その点からいえば、家畜診療の立場において最高の技術、こういうように考えられまするが、その次に併せて「公衆衛生の向上」こういうのがあります。牛の結核だとか脳炎だとか豚ペストだとか狂犬病だとか、こういう非常に公衆衛生に関係があるのですが、この方が最高か、どちらが本当の最高かと、こういう点でございます。それは後の方から考えますれば公衆衛生上最高である、こういうことになりますると、普通の医師と同様な技術を要する、こういうことになるわけでございます。併し医師法には最高の技術という字は使つてありませんので、その関係も一つお聞かせ願いたい、こう思つております。
 それから三番目には、この法の改正で認められておりまする獣医師及び今修正されようといたしておりまする獣医手の方々を、この線まで向上さして上げなければいかんと思う。これに対する政府としての対策が考えられているかどうか、こういう点を一つお伺いしたい。
 それから四番目に獣医師の資質を向上するというためにこの法律ができたのですが、最も大切なのは、家畜の防疫に関することが重大なんですが、本年度の予算を見ますと伝染病にしても脳炎にしても、こういうようなものの研究費が全額削除になつていたり、或いは或るものによると非常に減つているわけですが、こういう点を考へますと一方では法を出して技能を最高の線まで持つて行く。こういう法律を作つて置いて、それでありながら予算の方におきましては、こういう技術の改善発達の阻害をするような行き方になつておりますので非常に因ることになるのですが、こういう点に対するお考えをお聽かせ願いたい、かように考えております。
#18
○政府委員(山根東明君) 私からお答えいたします。お話のように新制獣医師の免許を受ける者は、大学を出た者ということに十二條に規定になつておりますが、第一條の最高水準を私共が狙つておりますのは、大学がいわゆる最高学府であるということ、それを反映してこうした字句を使つたという意味では特にないわけでありまして、御承知のように從來の我が國の獣医の水準が端的に申しますと、世界の諸外國に比べれば、相当或る程度低かつた。これを現在の世界的な水準にまで高めて行きたいという意味で最高水準という表現を使つたわけであります。このことは勿論公衆衛生の向上の面ににおきましても、この最高水準の技能がそれに役立たせるという意味をも持つておるとお考え願いたいと思います。尚若しそうであるならば、一般の医師の知識も必要ではなかいというような御趣旨のように承わりましたが、その分野は一般の医師に分担して貰う範囲でありまして、獣医師といたしましては、獣医の面を通じてそれが公衆衞生に関連する部面において公衆衛生の向上に寄與する、こういうことになるであろう、こう考えております。
 それから次に獣医手の資質なり技能の向上のお話が出ましたが、これは私共もかねてから獣医手の素質向上には考をいたしておるわけでありまして、たしか毎年そのために全國幾箇所かにこれを集めまして、講習会等の企てをいたしておるわけであります。更に獣医師の資格を向上すると併せて、防疫の面に力を畫さなければ嘘ではないか、防疫関係の予算が殆んど見るべきものがないのは片手落ではないかという御意見は誠に御尤もでありまして、私共も全く同じ考えを持つておるわけでありますが、予算の都合上お話のように今年度は十分に計上できなかつたのでありますが、防疫方面の進退につきましては今後予算の面その他において十分努力いたして參りたいと、かように考えておる次第であります。
#19
○板野勝次君 これは前回質問した点なんですが、もう一度第十二條についてお伺いしたいのですが、どうしても現在日本のおかれておる経済的な條件というものは、正規の四ヶ年の大学を出てそうしてやつたものしか國家試験を受けることができないというのでは、実情に即さないと思うのです。從つて或る一定の課程を独学でもやつて、十分獣医師の國家試験を受け得る資格のあるものは誰でも受験できるというふうなことにしないと、現状は若し獣医師が非常に少くなるという憂いはないにいたしましても、將來この四ヶ年間大学を出ていなかつたら國家試験を受けることができないといえば、現在の経済的な條件からして相当困難ではないか。それよりも獣医師の國家試験の一定の水準があるのならば、その大学を四ヶ年出ていようといまいと、その出ておると同等の学力のあるものは、又國家試験を受けることができるというふうに、独学者に対しても獣医師になり得る途を開くということが妥当じやないかと思うのですが、その点に対する政府の見解をもう一度確かめておきたいと思います。
#20
○説明員(伊藤嘉彦君) お話の点、御尤もの点があるかと思うのであります。ただ前回も申上げたと思いますが、今後少しずつでも獣医の更新に際しまして資質を上向して行くという措置を採る意味におきまして、かようなことに受験の資格等もなつたわをでありますが、その内容はこの前にも確か申上げたと思うのでありますが、配付申上げてあります獣医学の教育基準というようなものを一應この目標にして、そういう学問及び実習を身に附けるということが必要であろうと、こういうふうに考えておるわけでありまして、これらの学問から見ますると、一船の教養の課目というようなものにおきましても、三十六單位というようなもの、それから專門課目になりますと解剖学、生理学、薬理学等々の、それぞれ專門的な分野に亙ります学問を、相当の実習をも含めまして行う。これは必修の課目になつておるわけでありますが、それから一方これを講義の單位で申しますと、大体一船教養課目と專門課目と併せますると、百二十四單位ぐらいになります。專門学課だけで申しますと八十四單位なるのでありますが、これを新らしく学制の、いわゆる高等学校実業高等学校の場合はどうなるかと申しますと、実業高等学校の場合には獣医というものは大体獣医総論と申しますか、獣医大綱といいますか、今の大学の場合には八十四單位に比しまして、四單位乃至五單位しか教え得ないというようなことになつておるような次第でありますから、これらを総合いたしまして、又医学というものの特殊な事情からいいますると、必ずしも独学というものが絶対的に不可能であるということは申し得られませんけれども、まずまずそれらの施設が必要でありまするし、組織的な勉学を修得するというようなことも必要でありますので、資質向上というような意味から申しますと、一定の施設を持つたところを通つたものが適当であろう、こういうふうに考えております。
#21
○板野勝次君 その点は前回のときに質問して、大体了解しておるのですが、その大学を出なかつたならば、全然受驗資格にはならないという理由は、つまり実際に独学をし、解剖の知識についても他の方法によつていろいろなものを利用して自分でやる、併しそれが或る場合には正規の大学を卒業したものよりも素質はもつていいかも知れないというような、独学の士に対する道がこれでは全く塞がれて來ておる。そういう第十二條のこのような受驗資格というものが限定されて來るのならば、國家はこの四ヶ年間の学生生活というものを保障若しくは補助する、こういうような道が講ぜられておるのならば、これが勿論経済的にも裏付されておるのだから、四ヶ年間大学に行くということはできる。併し今の國民の置かれておる経済的の條件では極めて困難じやないか。そういう客観的の條件というものに一應入れられて、これと同一の学力あるものについての途を開くということは、亳も第十二條の精神を傷つけるものでないように思われます。そういう特殊の人達を救済することも必要と思います。
#22
○羽生三七君 やはり私は板野議員と同じ意見でありまして、正当な実力を持つておるものが國家試驗を受けることができない。受けて実力がなくて脱落するというなら、これは分りますが、試驗そのものを受けることができないということは不合理である。現在、最近になつて高等文官試驗制度なんかも改革されようとするようなときに、その逆を行くような規定がこの中に入つて來るというようなことは、どうしても私は納得できない。ただ純粹の学問だけをやつても、例えば施設その他で実驗学的のことができないというお話がありますけれども、こういう場合に見習とか或いは助手とかいうような形で、いろいろなところで勉強をしたり経驗を積んで、それが決して正規の大学を出たものに劣らない実力があつても、それが受驗すらできないということは原則的に見てどうしても私は不合理であると思う。從つて私は板野議員と全く感を同じくするのであります。
#23
○板野勝次君 その点について我々の納得の行くような説明が願いたいのです。
 それからもう一つは、今八十四單位とか何ぼ單位ということを言われたが、それは予め準備されておることで、そういう單位でなければならんと法制的に決められておるのではないのでしよう。審議会において何ぼ單位取らなければいけないということをこれから決めるわけなんですね。
#24
○説明員(伊藤嘉彦君) 学校の設置法かなんかに單位が決められておると思います。
#25
○板野勝次君 國家試驗の場合……
#26
○説明員(伊藤嘉彦君) 國家試驗の場合はまだ現つておりません。
#27
○政府委員(山根東明君) 大学を出なくても、それと同じ程度に実力を持つておるものには受驗資格を與えたらいいじやないか、そういう方向が最近のものの考え方じやないかというお二人の御意見でありましたが、実はそういう考え方も勿論否定するわけではないのでありますが、こと医学に関しましては人命なり、或いは公衆衞生という大きな問題に直接繋がるような点も考えられまして、本法に限らず医師法その他の規定におきましても、一應大学を卒業するということを受驗資格の一つに取入れられているわけでありまして、学校を出たからどうというような考え方は、如何にも逆行的な考え方のように感じられはしますけれども、医師法等の制度の先例にも習つて、本法ではそういう前提がしておるようなわけであります。
#28
○板野勝次君 それですから、前例は分るのですけれども、特にそういう特殊な場合に対して途を設けるということは差支ないのじやないか、これは勿論政府委員の人の意見になるでしようけれども……
#29
○羽生三七君 そのために國家試驗というものがあつて、不合格者は脱落するのですから……受験もさせないということはどうも僕は納得できない。
#30
○山崎恒君 今度提案された獸医師法の提案理由は、現在の獸医師の水準が低いから、そういうために新情勢に即應しない点が非常に多いということは認められるので、獸医師の水準を一層高めるために、特にその素質の向上を図るというために出された法律案ですが、素質の改善を前提としますれば、獸疫防除に関する技術の改善発達が必要である、こう思うのでありますが、然るに政府は本年度の予算において、今の伝貧とか或いは脳炎等の研究費を全額削除されている。これは技術の改善発達を阻害するところが非常に多いと思うのですが、さような点から見ますと、本末顛倒の嫌いがありはせんか。こう思うのですが、政府の御意見を一つお聞きしたいと思います。
#31
○政府委員(山根東明君) ちよつと山崎さんの御質問に先にお答えいたします。伝貧なり脳炎なりの経費が削除された問題については、先程お話を申上げたように、私共としましては誠に遺憾に思つているわけでございます。で本末顛倒という御表現がありましたが、本末顛倒と申しますか、とにかく車の両輪の一方を欠いている嫌いがあるわけでありまして、先程も申上げましたように、これらの予算の今後における復活その他につきましては、私共としましても、そういう見地から最善の努力をいたしたいと覚悟いたしておりますので御了承を願います。この程度で……
#32
○板野勝次君 獸医師の素質の改善を図ると同時に診療設備を整備しなくちやできないのでありますが、診療設備の設置状況は先に配付されました表で大体分るのでありますが、このくらいのことでは家畜衞生上十分ではないと思うのでありますが、將來において診療施設をどんな方法によつて充実し、家畜の衞生状態を完備しようというお考えであるか、その点をお伺いしたいのであります。又現在獸医師であつて、診療施設を開設しているところの獸医師の数というものはどのようなものであるか、こういうことをお伺いしたいのであります。
 それから第二の点は、馬匹去勢法を廃止する際の理由を承つたのでありますが、その際においては獸医の数が多くなつた、又獸医の技術が進歩した、又馬の所有者も去勢の必要を感じておるから、法律によつて強制せなくても、みずから進んで去勢するようになつたから、馬匹去勢法を廃止するのだ、こういうふうな理由であつたのでありますが、法律廃止後にどういうふうな去勢状況があるのであるか。又この法律を廃止して民間に任せても、馬匹の所有者の負担は増加せないというような意見であつたのでありますが、現在民間で馬匹の去勢をやつて、その結果去勢費は去勢法があつたときと現在とはどのくらい増減があるか。こういうふうなことも第二にお尋ねしたいと思うのであります。
 第三番目には、今までいろいろ意見があつたのでありますが、今度の獸医師法によつて獸医師の素質を改善するためには、講習会を開くということであつたが、講習会にもいろいろの程度があるのでありますから、本当に獸医師の素質を完備しようとしたならば、徹底したところの講習会を開いて、さつき問題になつている獸医手というようなものも、獸医師にするというような方法を講ぜられた方がいいと思うのでありますが、今政府の説明では、講習会を開いて素質の改善をやると言われたが、それはどんな方法でどの程度の講習会をやつて素質の改善を図られるお考えであるか、その点をお伺いしたいと思うのであります。
#33
○説明員(伊藤嘉彦君) 將來の診療施設の整備の問題でございますが、大体私共の計画といたしましては、一面においては家畜衞生技術の滲透を末端に十分ならしめるというような考えも同時に併せまして、毎年百ヶ所程度の保健施設というものを補助をいたしまして、府縣において設置をして行くという計画を前年度から持つておるのでありますが、今年度におきましても、予算の関係で百ケ所がたしか八十ケ所になつたかと思うのでありますが、今後五ケ年間におきまして、そういうものをやはり百ケ所程度ずつ毎年増加して行くという計画を持つているのでございます。
 尚関連いたしまして、共済組合や協同組合の施設等につきましても、技術普及の関係等から、或いはその他の関係からいたしまして、できるだけこれを充実して行くように努力をいたしたいという考えでおります。尚現在の獸医師の状況の問題でございますが、差上げました獸医師及び獸医手の調査表、これは少し古いのでありますが、昭和二十三年十二月現在でございますが、これによると開業をいたしております獸医師は約五千人ということになつておるのでございます。それから去勢の関係でありますが、殊に的確に数字的に実は持合せておりませんので、大変恐縮でございますが、大体におきましてあの法律を審議して頂きました当時にもお話が出ましたように、去勢技術の関係の講習等をその後いたしておるのでありますが、大体において経費の点は審かでないのが大変恐縮でありますが、支障が余りなく行われているようなふうに承知いたしておるわけであります。
 尚申落しましたのですが、講習会につきましてはやはり経費等の関係からいたしまして、必ずしも常に希望した通りの十分なものが行い得ない点が、甚だ遺憾でございますが、できる限りのことを、例えば、長いものになりますと、一月に亘る長期講習会等も持つておりまするし、その間又民間の関係においての講習会を実際問題として、これに協力をして講師等の斡旋、又事実講師に出て行くと、こういうふうなことによる援助等々のことによりまして、できるだけのことはいたしておる次第でございます。
#34
○板野勝次君 附則の第十六項に、獸医師と新制獸医師の称号が二つここに出て來ているのですね、これはどうして獸医師と新制獸医師の、こういうふうな差別待遇というのですか、称号を区別する必要、何か根拠があるのですか。
#35
○政府委員(山根東明君) 新らしいこの法律による獸医師は先程來いろいろ御意見もありましたように、非常にむずかしい條件で、非常にむずかしい試驗を課して、いわゆる程度の高い獸医師の資格を與えるわけであります。これに対しまして從來の獸医師はいろいろな変遷がありますけれども、新らしい獸医師に比べますと、学歴なり或いはその経て來ました試驗の程度等から見まして、一口に申しますと程度が或る程度その意味では低いと言わざるを得ないかと思うのであります、その間これはまあこの資格を貰う者の立場から申しますと、非常にむずかしい試驗をはずして貰つた者とそうでない者と、やはり何らか区別をした称号を貰いたいという氣持は、これは人情の当然としてあるであろうと思うのでありますが、そういうような点を考えまして、新らしい獸医師には新制という二字を冠して区別をしたのであります。
#36
○板野勝次君 併し獸医師法の中には新制獸医師の称号を用いろという規定はないんですね。殊更十六項のところだけ新制獸医師という称号を用いなければならないという、何かあるんですか。それは或いは私の見落しかも知れませんが。
#37
○政府委員(山根東明君) 積極的に、お話のように称号を用いろという規定はないのでございますが、第二十三條で獸医師はその業務に関しては、学位、称号又は專門科名の外は云々という規定があるのでありますが、これの称号に当るものとして新制獸医師の場合にはそのことを使い得る、こういうことになつておるのであります。
#38
○板野勝次君 これはどうも一向、我我立法学者でないから分らんのですが、新制獸医師の称号を用いてはならないと、ここへぽつんと出て來ているのはおかしいと思う。それから又新制獸医師だという称号を用いさせるようにここになつているのは、却つて二十三條の精神と矛盾しているので、学校を出て國家試驗を受けているから、立派な経歴だから、前のいわゆる旧制獸医師とは違うのだというような錯覚を與えるので、むしろ二十三條の禁止しようとする精神と逆行するように思われるのですがね。その点の見解はどうですか。
#39
○説明員(伊藤嘉彦君) 如何にも附則の而も一番終にポツンと出て参りますのでおかしいのでありますが、これはやはりこういう考えだと思います。段々段々と相当に長い年月がかかりますけれども、結局におきまして新制獸医師に置換えられるという意味においての長い経過規定であるということ。それから二十三條との関連におきましては、二十三條にとにかく学位とか称号とか專門科名というようなもの以外には誇大廣告はしてはならないという趣旨でありますので、新制獸医師ということは、この法律に基いての一定の保証されたるものであるという意味の称号でありますので、二十三條と必ずしも矛盾はないこういうふうに考えます。
#40
○板野勝次君 二十三條と矛盾しているというのではないのですが、二十三條のつまり精神と矛盾するのではないか。そうするならもう獸医師の場合は獸医師というふうに統一してしまつて、いろいろ複雜な名称を用いないというふうなことを、むしろ積極的に禁止して置く方がいいのじやないかと思うのです。その点は如何ですか。
#41
○説明員(伊藤嘉彦君) 一面におきまして、新制獸医師は今申上げましたように、この法律によつて水準が高まつて來たところのものであるというような意味からいたしまして、これを積極的に載せるということではないのでありますけれども、誇大の廣告になるということにはならないのでありまして、そういう意味からいたしまして、ここの称号でもこの称号の中に入つている、こういうわけであります。
#42
○羽生三七君 今までお互いの議論が獸医師又は獸医手の資格等に関する一方的なものでありましたが、純粹に農民の立場から考えてみる必要があると私思いますことは、獸医師の有資格者が農村の各隅々まで行渡る程豊かになつて來れば結構でありますが、実際に有資格者がそんなに全國の農村の一村ごとに存在するというようなことのない場合に、例えば数百羽とか数千羽という鶏を飼つておいて、そこに集團の鶏コレラとか鶏ペストが出た場合に、遠隔の地から獸医師を頼むという場合は別ですが、手つ取早く家の鶏なり牛馬を治して貰うというようなときに、一々山間の僻地で遠い所から有資格者を頼むというようなことは、なかなか農村にはないと思うのであります。そういう場合から考えてみても、この有資格者の技術的高水準を保つための法律が制定されるということは結構でありますが、又一方には先程來問題になつておる獸医手というようなものが、適当な資格でそういう僻村で高い旅費なんか支拂わなくても、近くで簡便な治療をして呉れる程度の者を認めておかないと、実際問題として、これは法律として成立しても、事実上農村の民衆がこれによつて何らか有益な効果を受けるというようなことは非常に少いのではないか、そういう疑問を持つのであります。
#43
○説明員(伊藤嘉彦君) 今の問題でございますが、大数的に申上げますことは、必ずしも具体的には当らないわけでありますけれども、それにいたしましても最初に申上げました通り、アメリカの場合におきましては、家畜の数が家畜單位で申しますと七千万家畜單位、それに対して獸医師の程度の問題がありますけれども、数としては一万二千人、日本の場合には三百万家畜單位に対して獸医師の資格を持つておりますものは一万三千人、開業人員は五千人でありますけれども、そういう五千人をとりましても、その比較においては、相当何と申しますか、数としては多い。それで一面獸医師の場合は経済的な関係もありますから、何ぼ数が殖えましても、一羽々々、極端にこれを言いますと、そういうところでは獸医師がおるといことは恐らくそれは不可能だろうと思います。それでそういう場合には、実は法律の十八條には「獸医師は、自ら診察しないで診断書を交付し、」というようなことを規定いたしまして、極めて簡易な病氣については、獸医師がその容態を聽きまして、診察しないでもよいというようなものにつきましては、診断書を交付することができるというような途も、実はここに揚げてあるのでありまして、後は重要な病氣になりますと、やはりその畜種によりましても、或いはその他の、何ぼ離れておりましても重要な法定伝染病の或る種のものになりますと、非常なまだ今でも分らんようなといいますよりは、非常にむずかしい伝染経路をとるというようなこともありますので、早期撲滅とか予防というようなこと、いろいろなことを眞に心配をするということになりますと、或る種の不便はありましても、やはりそのことはむしろ診察した方が大局的にはプラスになるのじやないかというようなことの考えであります。
#44
○岡村文四郎君 私は丁度この法律を審議しておるときにいなかつたので、甚だ遺憾でありますが、今大分審議されて要は委員長の話によりますと、大体の質問は済んでおるから、衆議院から修正案が出たから、それによつて後から一應審議して決めたいというようなお話であつたのでありますが、いろいろと御質問がありましたが、今起つておる問題は、主として獸医手をどうするかということについて、いろいろ御質問がありましたが、百姓の立場と家畜の立場から申上げますと、今日本で獸医手なり獸医師が余つて困つておれば別でありますが、これができたのは戰爭のために獸医手を認めたのでありますが、非常に日本の現状の家畜に対する技術の必要なことは言うまでもないと思いますが、畜産局の方では先方の意のごとく話を作られたと思います。今のお話にありますように何頭單位なんと言つてみても、アメリカのようにすうすう自動車で走るところと、日本のようにちよこちよこ馬も行かれないような所とでは、畜産のことは全然違います。それを十分に考えて貰いませんと、資格を論じて四年の大学を出なければ資格がとれないということになりますと、要は技術でありまして、獸医師が長年十五年も資格を貰つて從事いたしておりますのに、今年大学を出たてのほやほやが資格をとつて來たつて間に合いはしません。それを十分お考え願つて、よく日本の現状を説いて貰わなければ、こういう法律を出さなければならんと思いますから、もう一層研究し我々も研究して先方へ申出たいと思います。畜産局の方でも、もう少し日本の現状に合つたような御研究を願わなければ困ると思います。そこで他にも理由がありますが、助長法を去年通されたとき、私はあの助長法は、「おたまじやくし」で耳をほじるのと同じで何にもならんと言つたのですが、その資格たるや実に面倒な資格である。その資格をさつぱり利用しないで、認定試験のような試験をして相も変らん人を使つて同じことである。そこでそういうふうなどうも感覚の違う人がいろいろ言われても困るから、熱心に日本の実情をお話が願いたい。実際に百姓や畜産家が困らんようにやつて貰わなければならんと思うのです。私は今日や明日で委員長が決めると言われても、これは決めるわけに行かんと思つておる。それで去勢法の時分に私は一人で反対した。それは後を処置しないから私は反対した。併し他の委員さんも賛成されたから私は默つておつたのですが、これも亦そういうことになると思いますから、この際大いに研究して向うへぶつかつて、もう少し直して貰わなければならん。このままの法律では日本の現状に即しません。畜産局の方で、現状に即するという御意見があれば、今ある獸医見を近くなくして、そうして現在の日本の獸医で今の日本の畜産家の立場から万全が期せられるというお考えがあれば承わりたい。
#45
○政府委員(山根東明君) お答えいたします。お話の点御尤もと思います。私共も徒らに手の届かん理想を掲げて一氣にそこへ到達を期するということは、これが実情にそぐわないことであることは、十分承知しておるわけでありまして、そういう意味から申しまして、この法律も究極は、獸医技術の最高水準を実現したいという一つの理想を持つておるわけでありますが、それだからと申しまして、現在の獸医師の活用なり、或いは先程來問題になりましたような獸医手の活用の問題につきまして、農村の実情を無視しようとは実は考えていないわけでありまして、そのためにいろいろの経過規定を実は設けておるわけであります。併しながら私共の理想としましては、獸医技術の最高水準を、一日も速かに実はそこまで持つて行きたいという一つの理想を持つておるわけでありまして、今日の現状から申しまして、一氣の到達は只今もお断わりしましたように、これはどうかと思うのでありますが、逐次そういう目的に進んで参りたいという氣持で以て、実はこの獸医師法を立案したわけであります。さような意味で一つの大きな目標は持つておりますけれども、これが全然今日の実情を無視した空に浮いた考え方でないことは、附則の経過規定その他に実は現わしたつもりでおるわけでありますので、その点は十分御了承をお願いしたいと思います。
#46
○岡村文四郎君 理想は私も賛成なんで、こうあるべきだと思いますが、日本の現状がそうでないことを十分に御認識になり、今脳炎とか新らしい病氣も入つて参りまして、殊に北海道は特別に困つておりますが、まだ出るのだろうと思つております。それから脳貧血にしましても、日本では一番これが多いと考えております。そういうふうでどうも日本の畜産の獸医の資格だけが惡いとは言われないのでありますが、段々と非常な目で見方が違うものと見えて最近馬籍法、牛籍法というものがなくなりましたが、これは畜産というものを否定した見方だと考えておりますが、あらゆる面にそういう憂いがありますので、畜産局の方でも万全を期してそうして御注意を願わんと、日本の畜産の現状と先方のとらんとする手段とは大きな食違いができると思います。そこは十分御理解がないと單なる理想だけでは日本の現状に合わんと思つておる。これは思つておるのではなく合わんと思う、そのつもりで是非理想は結構ですが、現実と理想が余りにも離れたことにならないようにして貰うことをお願い申上げます。これはもう少し研究をしてまだまだ調べて然る後にしなければならんと思いますので、今日は外の法案がまだあるように思いますので、この程度で止めます。
#47
○委員長(楠見義男君) 獸医師の問題はこの程度にして外の法案に移りたいと思います。ちよつと速記を止めて…
   〔速記中止〕
   ―――――・―――――
#48
○委員長(楠見義男君) では速記を始めて下さい。
  ―――――――――――――
#49
○委員長(楠見義男君) それではこれから農業協同組合自治監査法を廃止する法律案と、それから農業協同組合法の一部を改正する法律案、これを議題にいたします。最初に両方とも政務次官から提案理由の説明を一括して伺うことにいたします。
#50
○政府委員(池田宇右衞門君) 農業協同組合自治監査法を廃止する法律案の提案理由。農業協同組合自治監査法を廃止する法律案について提案の理由を御説明いたします。
 農業協同組合自治監査法は、昭和十三年に産業組合の自治監査を行うことを目的として制定された法律でありますが、その後農業会の制度となるに及んで農業團体自治監査法となり、更に農業協同組合法が制定されますに伴つて農業協同組合自治監査法となつた沿革を有しておりまして、この法律に基く監査連台会は多年に亘り農業團体の監査並びに監査事業の指導に当り、農業團体の健全な発達に資するところが少くなかつたのであります。併しながら自主を旨とする新らしい農業協同組合の精神から見ますると、この法律は事態にそぐわないところの強権的な趣を帶びておるのでありまして、即ち行政廳は農業協同組合に対し監督連合会への加入を命ずることができるとか、監査連合会は所属團体に対して一方的に監査する権限があること等を建前といたしておるのでありまして、これらの点は到底農業協同組合法の趣旨と両立し得ないものがあるのであります。更に実際の情勢におきましても農業協同組合は未だ設立早々のうちにあつて、この旧來から存する監査連合会とその行う監査事業に対しましては関心が薄く、從つて監査連合会の維持運営も極めて困難な事情に立つ至つたのであります。農業協同組合に対する監査事業の必要なことはもとより申す迄もありませんが、農業協同組合自治監査法は、以上申述べました制度の趣旨において又その実際の状況において、これをこの際廃止することが適当と認めまして、本法律案を提出した次第であります。何とぞ御審議の上速かに御可決あらんことを希望する次第であります。
 次に農業協同組合法の一部を改正する法律案について提案の理由を御説明いたします。改正事項は二つございますが、その第一は、農業協同組合と実質的に競爭関係にある事業を営んだり、又はこれに従事している者が組合の役員や主要職員に就任することを禁止することでありまして、会社法令等にもあります、いわゆる競業禁止の條項であります。
 第二は、行政廳による解散命令を廃止し、法令違反等により事実解散を要する場合は、行政廳の申立によつて裁判所の裁決によることにしたのであります。このことは農業協同組合の自主性を尊重し、行政廳の監督権に基く制約を可及的に縮小せんとする趣旨を徹底せしめんとするのであります。
 以上が同法案の内容でありますが、何とぞ御審議の上可決あらんことを希望する次第であります。
   ―――――・―――――
#51
○委員長(楠見義男君) それでは畜産局の衞生課長が見えましたから、先程羽生さんから御質問のありました獸医手制度が認められた当時の事情を御説明願うことにいたします。
#52
○説明員(齋藤弘義君) 獸医手が設けられました理由は、戰時中外地の獸医師の需要とそれから陸軍の獸医師の需要が非常に大きかつたために、内地の獸医師が殆んど動員されまして、何とか内地の畜産擁護のために獸医師を養成しなければならん。こういうようなことになつたのであります。併し御承知のように從來の学校教育におきましても三ヶ年の課程を実習いたしませんとなれませんので、急にはそれに應ずることができなかつたのであります。それで暫定的の手段としまして、從來專門学校程度の課程を終了しなければ獸医師の免状をやらないということになつていた外に、專門学校を出ませんでも、專門学校程度で中途退学二ヶ年とか、或いは中等学校を出まして、農学校で以て一定の解剖学を何時間とか或いは生理学が何時間というような、一定の基準を設けた課程を終了した者は、一應その國家試驗の受驗資格を與えて獸医師とする。こういうような暫定措置を講じたわけでありますが、それでも到底この厖大な需要を賄うことができない。それでこの獸医手という制度が始まつたのでありまして、それより先にこの獸医師法が明治何年でありますか、大分前からやつておりましたのですが、そのときは中等程度の教育であつたのであります。ところが段々と進歩するに從いまして、どうしても少くとも專門学校程度でなければいけないというので、昭和十五年に改正されまして、そうして中等出の獸医教育は、十二年の猶予期間を設けまして、大正十五年から十二年の間に全部專門学校程度に昇格させる。そういうことに十五年の法律で決まりましてそれでずつと行つたわけであります。丁度全部が專門学校になりましたのは日華事変のちよつと前に完成しました。それと同時に日華事変が始まりましたので、今申上げたような獸医の不足という事態にぶつかつたわけであります。
 それでこの獸医手の方法を採られたわけでありますが、これを始めますときにいろいろの議論がありまして、折角大正十五年の法律で以て專門学校ということに直したものを、更に又元へ戻すということは甚だどうも困ることでないかとか、いろいろ議論がございましたのですけれども、只今申上げたように獸医師の不足が非常に激しいので、どうしても暫定的に何とか措置をしなければならん。それであの獸医手の法律ができました当時に、中央衞生会にも掛けたわけでありますが、その時にもこれは今申上げましたような專門学校程度にやつて完成したに拘わらず、すぐと又あと戻りするという点において甚だ困る、その点何か良い方法はないかというようないろいろの議論が出まして、結局落着いたところは、陸軍の方でも相当強く要望しておるし、一應獸医手のこういうような暫定的措置を認めよう。併しこれはその当時は日華事変でありましたけれども、事変が終了すると同時に廃止すべきものだという條件と、それから尚あの時時は百年戰爭とかいろいろそういう長期というような話がありましたので、これをなくなすのもそう急には行かん。併し無制限にこれを存続させるということはできない。一應十年ということを限つて十年ごとに更新するようにしよう、そういうような條件附で中央衞生会という所も通つたわけであります。
 それでこの獸医手の法律に関しましては終戰後すぐ占領軍が参りますと同時に我々の係の方に、あれは戰時特例であるし、早急に廃止しなければいかんというような指示を貰つております。現在問題になつておりますような関係がありますので、急に廃止することがなかなかいろいろの点で困難でありましたので、いろいろと言訳をしまして只今まで続いて來たわけでありますが、今度丁度六・三・三・四の新学制ができますと同時に、獸医教育もその線に沿いまして完全に変つてしまいましたので、尚新制の高等学校を出ました者がそろそろ新制の獸医学校に入らなければならない時期になつて來ております。新制大学を始めなければならないというような時期になつておりますので、最近いろいろ関係方面から強く要望されまして、獸医師審議会というような民間の各方面の獸医教育に関係の者を関係方面から集められまして、その教育に何する案を三年越に獸医教育はどうしたらいいかということを練られた。それで結局獸医教育は四年の課程をどうしても必要とするのだ、その線で行かなければならん。ですから六・三・三・四、尚薬剤師の関係は六・三・三の次に一年の予備の課程を置きまして、更にその第に四年と、医者はそのプレメデイカルというコースを、確か二年だと思いますが、その後で更に四年、そういうふうにそれぞれ……尚看護婦の養成、そういうような各方面の学校教育の根本が向うの教育部、文部省その他で決定になつたわけで、獸医関係の方もそれによらなければならない。どうしてもそうなりますというと獸医師法の関係も改正しなければならない。それに伴つてこの獸医師法の廃止がどうしても止むを得ないというような事情になつたわけであります。以上が大体の経過でございます。
#53
○委員長(楠見義男君) 何か質問があつたらどうぞ……今のお話でいいますと獸医手という制度を設けたのは、一般獸医師の資格よりも程度を低くして、そうして急場の需要に應じた、こういうことですね。ところが先程表を見せられての説明を聽きますと、例えば獸医師については大学、專門学校の卒業生には免許資格がある。それから甲種農学校の卒業生はそれから後三年の修業期間といいますか、それが過ぎると免許資格がある。それからもう一つは國家試驗に合格した者が免許資格がある、こういうふうに三つある。それから獸医手の方は甲種農学校を卒業して、そうして三年経つておる者は獸医手の資格がある。それから甲種農学校の二部を卒業した者はこれ亦三年、乃至甲種から替つて來た人は結局五年ですが、その実習期間が必要になつて來る。そこで甲種農学校の獸医科の卒業生に関する限りは、獸医師もそれから獸医手も同じ資格じやないか。同じ資格なのに獸医手と獸医師との区別を、たまたま昭和十五年を境にしてやつておるのはおかしいじやないか。こういうことを言われておるんですが、そうなりますと甲種農学校獸医科卒業生に関する限りは、同じ資格で昭和十五年を境にして、一方は獸医師になり、一方は獸医手にしかなれない、これは如何にも変なので、同等に取扱つたらいいんじやないか、こういう意見が出ておりますが、その点はどうなんですか。今のお話で行くと甲種農学校卒業生が三年間の修業年限を経て獸医師になるのは、本來は獸医師法では認められないので、たまたま大正十五年の法律改正によつて十二年間の猶予期間を設けられたその人間だけが、その期間だけ認められたので、本来は実は整理さるべき対象であつたといいますか、資格條件からは落さるべき者が認められたということになるんだけれども、その辺はどうなんでしようか。
#54
○山崎恒君 更新しておつたでしよう、当時の法律に十年間となつておる、これは更新しておつた筈です。そうでなければ疾うに十年間は過ぎてしまつておるわけですから……
#55
○委員長(楠見義男君) ちよつと速記を止めて下さい。
   午後三時十八分速記中止
   ―――――・―――――
   午後四時十一分速記開始
#56
○委員長(楠見義男君) 速記を始めて下さい。
#57
○岡村文四郎君 競爭相手になるということには非常に見解が面倒なことが起きて來ると思うのですが、今のところは名目上競爭相手にならなければ先ずよかろうという御見解らしいが、これは日本を廣く見てみると、連合会の役員にそういう人が非常に多いようです。そこで大分氣を付けなければいかんことになつて……一万円の罰金をとられたのじやしようがないのですが、何かはつきりしたこういうものは駄目だとか、先程お伺いしましたように、自分は農業が本旨であるが、家内事業的に雜貨商をやつている、私はこれも言えば競爭相手になると思うのです。これは非常に細部に亘つているから大分研究せねばならんというお話でありましたが、研究でなしに、相手方の協同組合が無能であるからやるのですから、これもきつと競爭相手になると思うのです。これはその業務でそのうちの一家が十分立つて行くものを業とみなすか、家内的のものは業とはみなさんかという点が、何とかもう少しはつきりできたらできる限り聞かしておいて貰う方がいいと思う。
#58
○説明員(打越顯太郎君) 組合と競爭関係にある範囲が具体的にどういうふうになるかというようなことでありまするが、これは只今のところ画然としたお答えを申上げるまでの段階に至つておりません。只今申上げられました範囲は、組合と同じ事業を営んでおりまする小賣業者、卸賣業者でありますとか、製造業者のごとき、営業として営んでりまして、それが実質上農業協同組合の事業とはどうしても競爭関係に立つということがはつきり認定できるという場合におきましては、これはもう役職員に就任ができないと、そういうふうに解釈したいと思います。只今御質問の中にございました通りに、家内が雜貨商を営んでおりまする場合において、それが組合の購買事業と競爭関係に立つかどうか、その点もやはりここに一つの基準を西して参ることがはつきりできますれば結構であるのでありまするが、その点も十分今後研究いたしてみたいと思います。若しはつきりそこに一つの区画ができますれば、非常に都合がいいと思いますが、今後重ねて研究いたしまして、その上で又改めてお答えを申上げることにいたしたいと思います。目下のところは実質上競爭関係に立つかどうかということを具体的に問題として認定してやつて行きたい。その場合におきまして、予め基準を示すことができればその範囲においてお示し申上げたいと思います。
#59
○岡村文四郎君 御承知のように非常に複雜な世の中でありますために、こういうことがなければ別ですが、違反した者は、一万円以下の罰金に処すということになつたのじや、ちよつと都合が惡いのですから、これは成るたけ早く政府の御見解をはつきりするようなことになつておらんと、非常に過ちができると思いますから、是非そういうように、一刻も早くその見解の範囲を示してほしいと思います。
#60
○政府委員(池田宇右衞門君) 只今岡村さんからの御指摘に相成りましたような問題を、將來起さないように関係方面とよく打合せおいたしまして、本法案の通過後にもそういう点の細則、注意等を下部に徹底する方法を講じたいと、かように思います。
#61
○藤野繁雄君 競爭関係にあるということは、名目上であつても、実質的であつても、競爭関係にあるものはいけないと私は考えております。いろいろな点から考えて、名目上であるとか実質上であるとかいうことから競爭関係にないとかあるとかいうようなことが、過去においての物議の因であるから、役員となるところの者は、或いはここに書いてあるような者は、名目上でも実質上でも競爭相手になる者はいけない、こういうふうなことをはつきり政府は方針を定めて貰いたいと思つております。
#62
○政府委員(池田宇右衞門君) 承知しました。
#63
○板野勝次君 私それとは直接の関連ないのですが、今度の改正も農民組織の十六原則からできて來ておるのだと思いますが、農業協同組合の組織を統合したり分割したりするという自由が現在極めて制限されておるのですが、それと十六原則との関連についてお伺いしたいと思います。十六原則と農業協同組合の統合分割の自由の問題です。
#64
○説明員(打越顯太郎君) この連合会の統合なり分立の問題と、十六原則の関係がどういうふうにあるかという御質問でありますが、農民組織の十六原則から申しますれば、農民の意思によつてこの連合会がどういう形で……或いは組合の場合でも同じでありますが、いかなる形において作つても、農民の自由な意思である、かようなことになつておるのであります。然るに現在政府の方針といたしましては、連合会の一部につきましては、未だに分立政策をとつたおります。この点は十六原則にも矛盾するように私共も考えておるのであります。これは非常にまずいということは申上げるまでもないのでありまして、私共は関係当局と折衝いたしまして、十六原則とも反する指道精神を、而も農業協同組合法にも反する精神を政府がとるということは、非常に苦しい立場にあるので、何とか現在とつておりまする指導方針は即刻改めるようにいたしたいと、かようなことで目下関係当局と折衝いたしておるような次第でありまして、私共は成るべく近い將來にこの十六原則の趣旨に副つた方向に持つて行くようにいたしたいと、かように努力をいたす次第であります。
#65
○板野勝次君 今の努力ですがね、実際に十六原則と矛盾した方向ですから、もう即刻から、明日からでもそういう矛盾したことのないように一つやつて貰いたいと思うのですけれども…
#66
○委員長(楠見義男君) ちよつと伺いますけれども、十六原則はGHQから日本政府に指令が來ておるのですか。と聽く意味は、この法では連合会の統合、分立その他組織は全然自由だ、一方は表面に現われていない指令といいますか、指導なんですね、これは若し十六原則が日本政府に当てられている指令とすれば、今の行政指導方針をとつておられる方が、むしろGHQに対して指令違反をやることになるわけなんです。その点どうなんでしようか。
#67
○説明員(打越顯太郎君) 只今の委員長の御質問に対してお答え申上げまするが、十六原則に対しまして公的な指示が政府にございましたのは、今回國会の法律改正案として提案いたしましたところのこの二点でございます。で只今のこの連合会の統合若くは分立の形態につきましては、この十六原則に基いた指令が政府には來ておりませんのであります。で十六原則は今日までの段階におきましては、極東委員会から連合軍司令部に対しましての指令でございまして、日本政府に対する直接の指令ではないのでございます。私共はこの十六原則に対しまする全般の指令があるものならば、早く頂くようにということを関係当局にお願いをしているのでありまするが、未だに出ておりませんので、今度のこの法律改正案として御提案申上げましたこの二点を、農民組織十六原則に基いて公的な指令とかように考えます。かように御了承願います。
#68
○板野勝次君 その点直接の政府に対する指令ではないが、とにかく極東委員会が司令部に出しておる指令ならばですね、それが直ちにこちらで統合分割の自由のできるような措置が採らるべきなのですが、これは速記を止めて貰つても、その事情が伺えるなら、どうして十六原則ができておるのに、今日までその指令が実際に日本において行われずにいるのかということを伺いたい。
#69
○委員長(楠見義男君) 速記を止めて。
   〔速記中止〕
#70
○委員長(楠見義男君) 速記を始めて。
#71
○板野勝次君 それでは農民の協同組合の末端でも、この農民組織の十六原則によつて、これは統合の自由だというのでやつた場合に、これは何ら指令に違反するものでもないし、当然これは認められるものだ、合法的なものだと解釈してよいわけですね。
#72
○説明員(打越顯太郎君) 只今の農民組織十六原則に基いて統合を申請したということになりますと、農民組織十六原則に関しまする司令部の法的な措置は今申上げました通り、この法律案の改正の二点だけで、從つて統合問題に対する関係当局の方針としては、現在日本政府に対して指示しております方針であるということになるのであります。極東委員会からの出ました農民組織十六原則による、日本政府に対する直接の指令というものは、今日までのところではこの改正案の二点だけであります。
#73
○板野勝次君 それでは、日本政府にどのような指令が來ておるかということは農民は知らないと思います。併しとにかく農民組織十六原則は新聞にも出ておるし、飜訳もされておるから、これによつて連合軍の意図は分つておる。そうすると、それによつてやつた統合の申請というものは、当然合法的なものと解釈するより外はないと思いますが、政府からいつも來たもので、農民はそれによつて知つておるというよりも、いろいろな報道機関その他から知つておる。ですからこの十六原則を活用して、大いに農民組織の自由をどんどんと実際の上に生かして行くと。こういう方向に対して政府はどういう態度を取るか、伺いたいと思います。
#74
○説明員(打越顯太郎君) 農民組織十六原則は、先程申上げました通りに、日本政府に対する直接の指令として参つておりませんが、改正案の二点だけでございますが、この十六原則と日本政府の方針とを完全に一致させるように、今後においても関係当局と打合せの上、できるだけ速かに解決して行きたいと考えておる次第であります。
#75
○板野勝次君 私の尋ねしておるのは、勿論政府の努力は分りますが、そういう方法をとつた場合に、政府はどういう態度をとられるか。つまり農業協同組合を統合して行くという方法を具体的にとつていつた場合に、今政府はどういう措置をとられるか。
#76
○説明員(打越顯太郎君) 農民が自由な意思に基きまして、農業協同組合法の範囲において統合いたしまする場合におきましては、政府といたしましてはこれを阻止することはできないのであります。從つて農民の自由な意思に委せるより仕方がない、かように考えております。
#77
○板野勝次君 はつきりさして置きます。それではそれをやつてよいわけですね。それを進めて行くことに対して、政府は何ら干渉しないと、この点をはつきりしたい。
#78
○説明員(打越顯太郎君) その点は農民の自由に委せるより仕方がないと思います。
#79
○板野勝次君 了承いたしました。
#80
○委員長(楠見義男君) 他に御質問はございませんか。
#81
○藤野繁雄君 農民の福利増進をするためには、どうしても農業協同組合を強化して行かなければならないのでありますが、十六原則にも書いてあるように、日本政府は可能の限り、実際的に農業協同組合に対し技術的援助、助言、その他のサービスを提供するのでありますか。こういうふうな点について政府は如何なる具体的の案を持つておられるか、お伺いいたしたいと思います。
#82
○説明員(打越顯太郎君) 農民組織十六原則に基きます農業協同組合の発達に関するところの、政府としての技術的その他の面につきましては、私共政府といたしましても、今日技術的な点につきましては、この農業改良局と連絡をつけまして、その方面の支援を相俟ちまして、協同組合に対しまする技術的援助を十分にやつて参りたいと、かように考えておりまして、その他の経営上の点につきましても、予算的措置といたしましては、役職員の教育方針でございまするとか、或いは農民の啓蒙宣伝に対する予算等を計上いたしまして、その方面から協同組合の自主性に慣れますように努力いたしたい、かように考えております。
#83
○藤野繁雄君 農業協同組合に対してはあらゆる自由の活動をさせて、その他のものと比較して不利のような差別待遇をしてはいけないということが十六原則に書いてあるのでありますが、現在農業協同組合が行う購買事業或いは販賣事業というようなものに対して、不利な條件に置かれて仕事をさせようと、いろいろの点について計画を政府はしておられるのでありますが、こういうふうな点については、十六原則の趣旨に基いて、速かにこういうような不平等的な措置を撤去せらるべきものであると、なくなしてしまうべきものであると考えておるのでありますが、そういうふうな点について如何なる具体案を以て進んでおられるのか、その具体案をお伺いしたいと思うのであります。
#84
○説明員(打越顯太郎君) 農業協同組合に対しまする差別的な待遇と取扱ということは、今日間々実際の問題としてはあるのでございまして、この点は私共も、農業協同組合の発達途上におきまして、非常に遺憾に存じておるのであります。この点につきましては、今日あらゆる物資の取扱につきまして、一々その具体的な事実をつかみまして、関係の部と関係の省と十分に連絡を取りまして、農業協同組合に対する公平な処置ができますようにいたしたいと、目下十分に努力をいたしておるのであります。そのためには品目一つずつにつきまして、解決をつけて参りたいと、かように考えているのであります。
#85
○藤野繁雄君 現在農業協同組合が取扱つている品物で、刻々と私らの耳に入り点からすれば、不利な状態に農業協同組合は追い詰められつつある現在でありますから、政府は十六原則の本旨に基いて、速かにこれらの問題を解決せられるように、更に一段の御努力をお願いしたいと思うのであります。
#86
○板野勝次君 ちよつとその十六原則の問題と関連するんですが、この前農産物の檢査の問題について、自主的檢査等の場合においては、事業者團体法の関連から、あれはいけないのである。自主的檢査はいけないということになつたのでありますが、その事業者團体法の中に決められている農民に対する制限というものと、この十六原則との関連ですね。これをちよつと伺つて置きたい。事業者團体法でいろいろな農民の組織について制限があります。今日は事業者團体法を私は持つていないですけれども、農民が十九名以上集まつて何かやると、そういうようなことが事業者團体法に引つかかるのではないか。
#87
○説明員(打越顯太郎君) 事業者團体法によりまする、農民の組織に対する制限は、数はちよつとはつきりいたしませんが、以下の場合には作れないというのがございましたですが、その場合におきまして、農林協同組合でありますれば十五名以上を以て……
#88
○板野勝次君 今お尋ねしておるのは、協同組合の場合でなくて、協同組合以外のです。
#89
○説明員(打越顯太郎君) その場合農林協同組合に成るべくして、そうしてやるようにというあれなんであります。
#90
○板野勝次君 いやいやそうじやなくて、十六原則の建前からいつて、事業者團体法に、農民の組織をも含めて行くというのは矛盾するかどうかということなんです。これはあなたにお尋ねするのは無理かも知れませんけれども、それを一つ政務次官研究して來て下さい。
#91
○政府委員(池田宇右衞門君) 研究して置きましよう。
#92
○羽生三七君 私は当局に要望して置きたいのですが、今の統合問題なんかが農民の自由の原則から当然であるということもありますし、それからこの程度のものの統合は、府縣單位とか郡連單位というものが全部統合されても、これは独占禁止法のあれにはならんと思うし、又アメリカが一番要望しておる日本の自立の欠くべからざる條件になると思う。そういう点から強く押して頂きたい。こう考えております。
#93
○政府委員(池田宇右衞門君) 先程藤野さんからの御質問又羽生さんからの御要望については、いずれも農民の自主的、民主的又協同的に立ち上つた協同組合の今後の育成に対する大きな指示のことであろうと、かように考えます。この点につきましては各委員からそれぞれ御意見のあつた通り、十六原則の主体を十分に認識いたしまして、農業協同組合の今後に処する幾多の惡條件と申しますか、協同組合の施行に当りまして、それぞれ除去すべき点は十分にこれを取り除きまして、堅実な農民の本当の自主的協力性を発揮するように、今後政府といたしましても十分にその育成方法を取りたいと、かように決願いたしておるものでございます。
#94
○岡村文四郎君 今までの部長のお話では十六原則は極東委員会から軍政部に來ただけであつて、日本政府に対しては何らの指示もない。あつたことは今日出した二つだけはあつたのだが、あとは何もない。こういうわけなんですが、お互いに十六原則を基準にしていろいろ御質問もしたり御要望申上げておるのですが、これは一体そこがはつきりしてないので、これをやれと言わんのに、向うの命令を横取りしたように持つて行くのはおかしいと思うのですが、どうなんです。
#95
○説明員(打越顯太郎君) 農民組織十六原則につきましては、先程來申上げておりますように、公的な、全般的な日本政府に対する指示は今日までないのであります。今回改正案として御提案申上げましたこの二点を以て、日本政府に対する公的な第一回の指示である、かように向うは申しております。私共は今後において農民組織十六原則に基いて、次に又刻々と他の指令が出るかということを関係当局にお尋ねいたしましたところ、それは次々と段々と出す、かようなことに相成つております。今日までの日本政府に対しまする十六原則といたしましてはこの二点である。その他はまだ正式な、公的な指示はない、かようなことであります。
#96
○委員長(楠見義男君) それでは質疑は大体この程度にしたいと思います。明日は、最初に申上げましたように食糧確保臨時措置法の一部を改正する法律案、これは本付託になつております。それから食糧管理法の一部を改正する法律案、これは予備審査として付託されております。この二つの法律案を議題にいたしたいと思います。明日は十時から開会いたします。本日はこれにて散会いたします。
   午後四時四十五分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     楠見 義男君
   理事
           羽生 三七君
           石川 準吉君
           藤野 繁雄君
   委員
           北村 一男君
           柴田 政次君
           星   一君
           加賀  操君
           徳川 宗敬君
           山崎  恒君
           板野 勝次君
           國井 淳一君
           岡村文四郎君
  政府委員
   農林政務次官 池田宇右衞門君
   農林事務官
   (畜産局長)  山根 東明君
  説明員
   農林事務官
   (農政局協同組
   合部長)    打越顯太郎君
   農林事務官
   (畜産局衞生課
   長)      齋藤 弘義君
   農林事務官
   (畜産局畜政課
   長)      伊藤 嘉彦君
ソース: 国立国会図書館
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