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1968/01/30 第61回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第061回国会 本会議 第4号
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1968/01/30 第61回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第061回国会 本会議 第4号

#1
第061回国会 本会議 第4号
昭和四十四年一月三十日(木曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第四号
  昭和四十四年一月三十日
   午前零時十分開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑
 議員辞職の件
    午前零時二十分開議
#2
○議長(石井光次郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑
#3
○議長(石井光次郎君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。成田知巳君。
    〔成田知巳君登壇〕
#4
○成田知巳君 施政方針演説に対する私たちの代表質問が、われわれの反対にもかかわらず、深夜国会で行なわれるというこの異常な事態こそ、一九七〇年を前にしての政界の今後の動向、特に、私たちと政府・自民党とのきびしい対立を浮き彫りにしたものであり、私たちは、ますます安保廃棄の不退転の決意を強めた次第であります。(拍手)
 一九七〇年を明年に控え、以下、私はすべての国民が重大な関心を寄せています内外政治の基本について、日本社会党を代表し質問をいたしたいと存じます。
 質問に入る前に、総理にお願いしておきたいことがあります。
 総理の施政方針演説が国民の期待に反し、説得力のない、顧みて他を言う、まことに内容の乏しいものであったというきびしい世評を受けておることは、総理もすでに御承知のことと存じます。(拍手)ついては、以下私は、私の政治信念をかけて質問いたしますから、総理も官僚のつくった答弁メモを読み上げるのではなくして、答弁を通して、ぜひとも、総理の腹の底からの政治信念を国民の前に明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
 私は、まず国民最大の関心事である沖繩問題につき、お尋ねいたします。
 いま沖繩県民は、来月四日のゼネストを中心に、B52撤去の一大行動に立ち上がろうとしております。総理も御承知のように、嘉手納空港でB52が墜落した、その現場からわずか百メートル先には、核爆弾を貯蔵した倉庫があることは公然の秘密になっております。もし墜落が一秒おくれておれば、沖繩全体が壊滅していたのではないかといわれておるのであります。沖繩県民が、生命を守る県民会議と名づけて、文字どおり、みずからの生命を守るために立ち上がっているのは、人間としてのぎりぎりの要求であり、やむにやまれぬ行動であります。(拍手)沖繩の米民政府は、この県民の要求を受け入れるどころか、新しく労働布令を出して、基地の内外を問わず、争議行為に関係なく、労組員であろうとなかろうと、米軍と重要産業の運営に影響するような行動を禁止しようとしております。すなわち、B52撤去の運動はもちろんのこと、祖国復帰のための集会、デモ等、一切の行動を刑罰の対象にするというのであります。このような不当、理不尽な米民政府のやり方を、総理は、相変わらず、日本には施政権がないなどという理由で、若干の手直しを要望する程度で黙認されるつもりでしょうか。それでは、政府・自民党の持論である、いわゆる一体化政策すら、みずから否定し去ることになるのではないでしょうか。(拍手)
 言うまでもありませんが、国家は、外国に居住する自国国民の利益を保護するための外交保護権を持っております。ましてや、沖繩は外国の領土ではございません。日本の領土沖繩で、日本国民である沖繩県民の人権と生命が侵されようとしているとき、いな侵されているとき、これに抗議し、沖繩県民を守るのは、日本政府の当然の権利であり、国民に対する義務でございます。(拍手)
 総理は、労働組合にスト中止を説く前に、日本国総理として、アメリカに対し、B52の即時撤去と新労働布令の撤回を要求し、これを貫き通すべきだと思うが、総理の決意のほどを国民の前に明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
 B52問題にこそ、沖繩返還に対する政府の政治姿勢が象徴されていると思うのでありますが、以下私は、沖繩県民の悲願であり、日本国民の民族的要求である沖繩祖国復帰について、具体的に承りたいと存じます。
 沖繩返還につき、いままで掘り下げた論議が行なわれなかった最大の責任は、白紙論を固執して論議を避けてきた総理にあることは言うまでもありません。(拍手)このようなことで、どうして総理の言う国民的合意が得られるでしょうか。今日、まだ白紙だと言われるならば、それは国民に知らしたくない方式をひそかに考えておられるか、総理として国民を指導する能力が全くないことをみずから告白するものだといわなければなりません。(拍手)
 ここで総理にただしたいのは、政治、外交の最高の責任者であるあなたが貝のように口を閉ざしているとき、一外務官僚下田大使が、国の命運に関するこの重大問題について突如として衝撃的発言をした事実は、一体何を意味するかということであります。下田大使は、闘争によって沖繩を奪還しようとする姿勢を清算しなければ、沖繩返還は不可能である、本土並みで対米交渉に当たるのは責任ある外交のやり方ではない、返還の方式は本土並みと現状の中間にあるべきだと言っております。特に見のがしてならないことは、下田発言が佐藤・ジョンソン共同声明を前提として、共同声明の線に沿ったものであることを示唆している点であります。
 まず確かめておきたいことは、下田発言の内応は、下田大使の考えるように、共同声明の線に沿ったものであると総理自身お考えになっているのかどうか。大使の個人的発言などと逃げ口上は許されません。問題は、発言の内容であります。総理の明確な御答弁をお願いしたいと存じます。(拍手)
 下田発言こそは、主席選挙で明らかにされた沖繩県民の総意を無視したものであり、沖繩県民に対する最大の侮辱であります。(拍手)核基地つき自由使用を事実上認めよということであって、日本の駐米大使ではなく、米国の駐日大使としての発言であります。(拍手)総理は、この下田大使を、今後とも沖繩返還交渉の責任者として認められるのかどうか、本土並みの返還を打ち出すことすら責任ある外交でないと総理もお考えになっておるのかどうか、明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
 今日まで、総理は、沖繩返還について、時期は両三年のうちにめどをつける、返還の方式については白紙であり、国際情勢、世論、科学技術の進歩を考慮してきめると言われてきましたが、両三年と言われてからすでに一年余りを経過いたしております。ベトナム和平会談の動き、中国文化大革命の動向など、ほぼ方向は固まりつつあります。世論はといえば、沖繩選挙で示された即時無条件全面返還の声が象徴的だと考えます。科学技術の発達についても、現時点でおおよそのものが想定できるはずであります。返還交渉の時期は到来し、条件はほぼ固まったと見るべきであります。
 そこで、総理は、現時点での米国との交渉で、いかなる方針をもって臨まれんとしておるのか、国民が最小限度知りたいと考えている二点にしぼってお尋ねしたいと存じます。
 その第一は、返還の時期と方式はワンパッケージ、すなわち、一体のものとして話し合うと理解してよろしいか。返還の時期は明示すべきだと思うが、大体何年までを考えておられるかということであります。
 次に、返還の方式は、無条件全面返還なのか、本土並みなのか、それとも、沖繩が何らかの形で本土とは差別的立場に置かれる可能性を考えていらっしゃるのか。特に、本土と同様、非核三原則をあくまで貫く決意があるのかどうか。伝えられるように、もしポラリス潜水艦の自由寄港を認めるというならば、非核三原則を破るものであります。総理が施政方針演説で沖繩米軍基地の重要性をことさらに強調されたことは、国民に大きな疑惑と不安を与えております。沖繩に政治生命をかけると言われた総理です。国民のこの疑問に答えるためにも、政治家としての信念と良識に従った明確な答弁を要請するものであります。(拍手)
 以上の二点につき特にお尋ねいたしましたのは、このことが日本の安全保障に重大なかかわり合いを持っているからであります。
 総理は安保条約堅持を強調されましたが、世論の動向は、すでに総理の考え方とは逆の方向に結論を下しつつあるのであります。総理もすでにお読みになっていると思いますが、最近相次いで行なわれた有力新聞の安全保障についての世論調査がそれであります。試みに、そのうちの二つを取り上げてみましょう。
 A紙によれば、日本を守るためにアメリカにたよったほうがよいか、中立の立場をとったほうがよいかという問いに対し、総理と同様、アメリカにたよるはたった二四%、われわれと同様、中立の立場をとるは実に五八%に達しております。(拍手)
 では、自衛隊の力で防衛するというのが世論でしょうか。確かに、現在程度の自衛隊ならあってもよいと考える人が六四%いますが、自衛隊の増強に賛成する人はたった一九%にしかすぎません。四十四年度予算案で、大幅欠員があるにもかかわらず自衛隊員六千名を増員しようとする政府案は、まさに世論に逆行するものであります。(拍手)
 しかも、自衛隊が何のために必要かといえば、B紙の世論調査がこれを明らかにしております。侵略に備えるため必要という人はたった一七%にしかすぎず、国内治安、災害救助のため必要という人が五八%に達し、自衛隊は不要だという人と合わせると、実に六〇%をこえておるのであります。このことは、自由民主党の自衛隊必要論は国民の中では少数派であり、われわれの自衛隊解消、国民警察隊、国土建設隊への改組が多数派であることを数字で示したものであります。(拍手)国民の正常な感覚は、安保と自衛隊による日本防衛の欺瞞性を鋭く見抜き、その論理を強く拒否しておるのであります。
 佐藤総理は、一昨年の予算委員会における私の質問に対し、世論は世論として自分は安保条約を必要と考えると言われましたが、これほど民意否定の暴論はございません。世論は世論、自分は安保が必要と考えると言われますが、そのあなたの考えは、もちろん独断であってはなりません。その信念を裏づける具体的根拠がなければなりません。一九七〇年の安保再検討期を前にして、安保が必要だという総理の信念を裏づける根拠は何かを具体的に示していただきたい。さらに、自動延長という形での安保継続を考えておられるのか、それとも条約改定を考えておられるのか、あわせて明らかにしていただきたいと存じます。
 われわれが国の安全保障を論ずる際、まず第一に考えなければならぬことは、安全保障、国を守るということは一体何かということであります。国を守るということは、何よりも、独立国家の国民が自国の独立と主権、国民の生命と財産を侵略から守るということであります。
 いま日本は、軍事占領の継続を合法化した安保条約と沖繩のアメリカ占拠を許したサンフランシスコ平和条約第三条により、日本の主権と独立は大きく制限されております。国民こぞって守るに値する祖国日本、独立日本をつくることによって、初めて総理の言う国を守る気概が国民の間に満ち満ちてくるのではないでしょうか。だからこそ、われわれは、安保条約の廃棄と沖繩の祖国復帰による完全独立の達成を最大の政治課題、民族課題として取り組んでおるのであります。
 次に、政府・自民党は、安保条約と自衛隊で国を守るといいますが、安保条約といい、自衛隊といい、はたして日本を守るための条約であり、軍隊であるかというこの問題をまず明らかにしなければなりません。私は、自衛隊員個人を憎むものでは決してありません。ほんとうに国土防衛の任に当たりたいという気持ちから入隊した人もあると思います。これらの人々の善意を私は理解するものであります。しかし、組織としての自衛隊は、明らかに憲法違反の軍隊であり、その命令系統、兵器系統からいっても、ほんとうに日本を守る目的でつくられた軍隊とは言えないと存ずるのであります。(拍手)
 安保条約はどうでしょう。安保条約第六条には、極東の平和と安全に寄与するため、アメリカ合衆国の陸軍、空軍及び海軍は日本国において施設及び区域を使用することができるとあります。政府・自民党は、今日まで、極東の平和と安全は日本の平和と安全につながるものである(「そのとおり」と呼ぶ者あり)と強弁して、この極東条項を合理化してまいったのであります。そのとおりと言われますが、しかし、このことがいかに欺瞞に満ちたものであるかは、ベトナム戦争の現実によって国民の前に明らかに示されたのであります。(拍手)
 アメリカは、御承知のように、極東の平和と安全の名のもとに、本土と沖繩の基地を、ベトナム戦争の前進基地、攻撃基地として一〇〇%利用しました。この安保条約に基づくアメリカの行動が、日本の平和と安全のために役立ったと考える日本人が一人でもいるでしょうか。(拍手)もしいるとするならば、その人は、すでに破綻したダレス流のドミノ理論の亡霊に取りつかれた気違いじみた反共主義者であることをみずから証明するものであります。(拍手)安保の存在こそが、関係のない戦争に日本を巻き込む危険をつくり出しているのであって、何らの偏見を持たない人には、このことはあまりにも明白な事実であります。総理の言うように、安保があったから日本の平和が保たれたのではございません。逆に、安保があったにもかかわらず戦争に反対し、平和を守り抜くわれわれ護憲勢力があったからこそ、日本の平和と安全が保たれたのであります。(拍手)
 世上、中立国の多くが武装していることをもって、非武装中立を非現実的だと説くものがありますが、スウェーデン、オーストリア、カンボジアは、隣国から巨大な軍事圧力を加えられた場合、これに対抗するだけの武力はもちろん持っておりません。これらの諸国の安全は、少しばかりの武力によるのでは決してございません。国民の祖国愛に基づく団結を基礎としたその平和中立外交政策により保たれているという事実を知らなければなりません。(拍手)
 特に私が強調したいことは、熱核戦争の今日、平和なくして安全はあり得ないということであります。他国と軍事同盟を結び、特定の国を敵視し、軍事緊張を高めることは、戦争への危険をつくり出す以外の何ものでもございません。(拍手)口で平和を唱えながら、この緊張を強める危険な道を推し進めてきたのが歴代保守党政府の政策でありました。(拍手)ある朝、目をさましたら侵略が行なわれていたなどという想定は、全く非現実的であります。もし侵略があるとするならば、それまでに緊張増大の過程が必ずあるはずであります。その緊張の原因をつくらず、緊張の原因を取り除き、平和の環境を不動のものにしていく平和共存の外交を推進することこそ、真の安全保障の道であります。(拍手)
 世上、自衛隊がなければ侵略があった場合どうするかという素朴な疑問がありますが、万々一侵略があった場合、自衛隊で戦うのが国民の生命と財産を守る道なのか、それとも、徹底的なレジスタンスを行なうことが真に国を守る道なのか、答えは至って簡単であります。
    〔発言する者あり〕
#5
○議長(石井光次郎君) 静粛に願います。
#6
○成田知巳君(続) 強大な軍事力も、国民の祖国愛に基づくレジスタンスの前にいかに無力であったかを示す世界の歴史を見ればおのずから明らかであり、われわれはこの歴史の教訓に学ばなければなりません。(拍手)
 以上の立場から総理にお尋ねしたいのは、日中友好、国交回復の問題でございます。
 佐藤内閣は、中国の核脅威と文化大革命による混乱を気違いのように宣伝してきましたが、総理もすでに認められておるように、文化大革命は収束の段階に入っています。中国の外交活動は再び活発な胎動を見せ始めております。これとベトナム和平の動きとをあわせ考えますとき、アジアの平和と日中両国関係の改善をはかる絶好の機会はすでに到来しておるのであります。すでに、中国はアメリカに対し平和五原則に基づく外交正常化を提起し、ワルシャワ会議が世界の人々の注目のもとに持たれようとしております。さらに、イタリアは中国承認を決定いたしました。続いてカナダ、ベルギー等にも中国承認の動きがあります。情勢は大きく動いております。隣国日本、特に、中国に対する侵略戦争のあと始末さえつけていない日本としては、いまこそ、われわれのほうから日中友好、国交回復のための積極的努力を払うときではないでしょうか。(拍手)
 総理は、一昨日の演説で、中国の態度の変化を期待すると言われましたが、中国の外交姿勢を口にする前に、日本の中国に対する姿勢を変えることをまず考えるべきであります。(拍手)それによって中国の日本に対する姿勢もおのずから変わってくるでありましょうし、また、そうすることは、日本の中国に対して負っておる政治的、道義的責任からいっても当然だといわなければなりません。(拍手)
 また総理は、中国が広く国際社会の一員として迎えられるようになる事態は、わが国としてこれを歓迎すると言われましたが、アジアの隣国であるわが国は、歓迎するなどという受け身の立場をとるべきではありません。わが国が積極的な姿勢と行動をとることによって、初めて中国問題の正しい解決が得られるのであって、総理の考え方は、まさに順序は逆ではないでしょうか。(拍手)もし佐藤総理が、このわかりやすい道理を理解されないで、相変わらず中国に対する敵視政策を続けるならば、佐藤総理は、日中両国の国民だけでなく、全アジアの平和の敵として指弾されることは必定だと考えるのであります。(拍手)総理は、中国と友好関係を進める上でどのような具体的方策を考えておられるのか。特に政府間交渉を持つ用意があるのかどうか。政経分離との関係で、この点を明らかにしていただきたいと存じます。
 総理が安保問題に政治生命をかけると言われたとき、なぜ物価問題に政治生命をかけると決意されなかったかと思ったのは、私一人ではないと思う。(拍手)昭和四十四年度予算は、過去十年にわたる経済成長政策が生み出した矛盾とひずみを除去して、国民の人間らしい生活の回復をはかるための最初の予算案でなければならないと思います。しかし、残念ながら、佐藤内閣の手でつくられた予算案は、それとは逆の方向を推し進めようとしております。政府みずから五%の消費者物価上昇を認めておるように、まさに、物価政策不在の予算案であります。租税の自然増収一兆二千億円は、国民からの税金の取り過ぎであります。にもかかわらず千五百億円の所得減税しか行なわないというに至っては、重税と収奪の予算案であります。(拍手)公害対策のための七名の担当官増員さえ認めず、逆に、自衛隊員六千名、警察官五千名の増員が大手を振って通っておるという軍事型、警察型予算案であります。(拍手)
 申すまでもなく、どのような予算を編成するかということは選択の問題であります。政治的圧力を排して、弱いものに救いの手を思い切って差し伸べることが正しい選択であり、予算本来の姿であります。この意味では、昭和四十四年度予算案は逆選択の予算案であります。総理は自民党内のタカ派といわれておりますが、そのタカは、ワシには弱く、ハトには強いタカだと言うべきであります。(拍手)
 まず第一に指摘したいことは、消費者物価が、昭和三十五年以来、平均年五・七%という異常な上昇を示しておるということであります。四十四年度についても、五%を上回ることは、経済企画庁長官が保証しておるところであります。物価対策はすでに論じ尽くされております。要は実行あるのみであり、総理に政治生命をかけて物価問題に取り組む決意があるかどうかにかかっております。
 総理に二点にしぼってお尋ねいたします。
 最近の物価上昇は、戦中戦後の物資の不足のときの物価高ではなく、豊富の中での物価値上がりであり、まことに異常であります。このことは、物価の上昇は構造的要因からくるという福田大蔵大臣の認識が誤りであることの証左であり、政府のインフレーションの政策が物価上昇の根本原因であることを示しておるのであります。(拍手)したがって、民主的資金計画委員会をつくりまして、資金の配分をコントロールし、無政府的な民間設備投資を規制することが何より必要であります。再生産に役立たない軍事費と警察費、経済援助という衣をかぶった反共軍事国家に対する事実上の軍事援助費等を思い切って切り捨てるなど、財政金融を通じての資金量の合理的規制を行なうことなくして物価上昇を押えることは不可能であります。すなわち、インフレーション政策の根本的転換を行なうべきだと考えるものでありますが、総理の見解を承りたいと存じます。(拍手)
 次は、独占価格の問題であります。
 最近の価格形成は、全体として独占価格、管理価格の性格を濃くしておりますが、政府はこれを容認し、助長さえしょうとしておるのであります。王子三社の合併が問題になったとき、政府当局が独禁法の改正を示唆して、公取委員会に政治的圧力をかけたことは明らかな事実であります。もし総理に国民の立場、消費者の立場に立って物価問題を処理するという誠意があるならば、もちろん限界はありますが、消費者の利益を確保し、国民経済の民主的発展を促進するという独禁法本来の精神に基づいて、公取委員会が行動することを積極的に支持すべきであります。さらに、公取委員会の中に真の消費者代表を加えるという独禁法の改正をも考えるべきだと思うのでありますが、総理の御見解を承りたいと存じます。(拍手)
 物価の上昇が台所を通じての国民生活の破壊だとするならば、公害は直接的な国民の生命と健康に対する侵害であります。
 公害の歴史は、利潤の追求のみを考えて生産する資本主義とその歴史を同じゅうしております。特に、日本資本主義の特異性からして、日本では公害のあらわれ方が残酷であり、その対策ははなはだしくおくれております。この国会のある千代田区において、亜硫酸ガスの濃度が、人体許容量を上回るときが実に年間二千三百時間に達しております。日本経済の繁栄を説く総理の頭上に、人体許容量を越える亜硫酸ガスがスモッグとなって降りかかるということは、現代日本の悲劇的姿の象徴だと考えるのであります。(拍手)
 公害は、もちろん大気汚染だけではありません。水汚染、騒音、交通麻痺、清掃麻痺、さらには基地公害等、お互いに重なり合って公害が公害を呼び起こし、いまや日本の公害は国民的社会病となっておるのであります。国民は健康をむしばまれ、緩慢な死に至らしめられておるのであります。昨年の国連総会で、世界はいま熱核戦争による絶滅を避けることができたとしても、公害により同じような脅威を受けておる、政府と企業家は公害防止の責任を負うべきであると強調いたしております。世論や住民の動きに刺激され、政府は、おそまきながら公害対策への取り組みを見せ始めたのでありますが、それが公害対策の名に値しないことは、公害担当官七名の増員さえ認めていないことで明らかだと考えるのであります。(拍手)総理、予算は政治そのものの顔だといわれております。私は、国民の生命と健康を守るため、国民の名において公害対策費の思い切った増額を要求いたします。公害の加害者である企業の無過失責任を明らかにし、きびしい環境基準を設けて、企業に公害防止の義務を負わせる公害対策基本法の抜本的改正を政府に要請するものでありますが、総理の見解はいかがでしょうか。(拍手)
 物価問題といい、公害問題といい、政府の施策は人間疎外、新しい貧乏をつくり出す以外の何ものでもございません。この政治の貧困こそが国民の政治不信を高め、民主主義のよって立つ代議制そのものの信用さえ失われようとしておるのであります。主権者といわれながら、主権の行使である一票を投じても、物価はどんどん上がる、交通事故、公害はどうにもならない、主権者である自分たちの手の届かぬところで主要な政治決定が次々と行なわれていくということに対するもどかしさと不満と憤りは、いまや国民の問に充満いたしております。(拍手)若い青年諸君は純真であるだけに、政治に対する彼らの反応が鋭い形をとることも、これまた当然であります。羽田事件、新宿事件、さらには東大問題における彼らのゲバルト至上主義は、もちろん許されることではございません。しかし、彼らの暴力行為を非難することはやさしく、警察権力で彼らを鎮圧することも可能でしょうが、その社会的背景である政治不信を一掃することなくしては問題の根本的解決は不可能であります。(拍手)それどころか、警察権力至上主義という逆ゲバルトが事態を一そう混乱せしめる結果になることを私はおそれるものであります。(拍手)学生運動が激化するその根本原因には目を閉じて、学生に向かって警察権力を動かすことしか知らない政府は、将来国民に向かって軍隊を動かす、自由と民主主義の敵になるおそれさえあるのであります。(拍手)
 以下、私は、東大問題を中心に二点お尋ねいたします。
 その第一は、東大当局と、ほとんどすべての学生が強く望んでいた入試をなぜ政府は中止と決定されたのか。入試を行なうかどうかは、大学当局の自主的判断を尊重すべきであり、政府が大学の意思に反して中止決定を押しつけることは、大学の自治に対するはなはだしい侵害であります。(拍手)政府は、大学の施設が荒廃し、学術資料が散失していることを理由にしていますが、大学教育は、もちろん施設が行なうものではございません。教授と学生の人間的つながりこそ大切であります。その教授と学生がともに入試を強く要望しているにもかかわらず、なぜ政府は中止を決定されたのか。入試実施の権限は、慣行として最終的に大学にあるはずでありますが、中止決定した法的根拠をあわせて明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
 私は、東大紛争処理にあたっては、学校当局と学生の間にかわされた十項目の確認書を問題解決の出発点とすべきだと主張するものであります。このことは、基本的には、大学の管理運営に学生参加を認めるべきだという立場であります。
 政府・自民党は、確認書に強く反発し、大学生は教えられるものであり、大学生には責任感がないなどと公言し、学生参加を拒否しようとしておりますが、大学生は単に教えられる客体としての存在ではございません。精神的に独立した人格であり、みずから学ぶ者、ともに学ぶ者であり、大学の不可欠の構成要素であります。その大学生が、大学内部の立法にも行政にも司法にも関与できず。ただ服従だけをしいられるとするならば、それは学内民主主義の全面否定であります。これでは民主的人間が育つわけがありません。学生を大学という社会においてその運営に参加させない政治は、主権者である国民を国家の運営に参加させない政治につながるものであります。(拍手)国民を国家の運営に参加させない政治が数百万の国民の生命を奪った太平洋戦争を引き起こしたことをわれわれは忘れてはならないと考えます。(拍手)
 総理は、大学は現在の国家社会のための単なる手段であり、効率的な人間を大量に生産する工場であるとお考えになっているのか、それとも、大学とは、文化を創造し、未来を先取りする人間形成の場とお考えになっているのか、もし後者ならば、十項目確認書の基本精神である大学の学生参加を積極的にお認めになるべきであります。学生参加を出発点に、大学人全員が大学の自力再建と大学改革に取り組むことを政治はあたたかく包んでいくべきであります。十項目を否認することによって、大学を官僚統制に追い込むことは絶対に許すことができません。総理は、十項目確認書を違法だとお考えになっておるのかどうか、明らかにしていただきたいと存じます。
 また、近代化の名のもとに東大を大学院大学と単科大学に分離改組し、私企業と大学院、軍事研究と大学院を直結させ、産学協同、いな、産軍学協同路線につながるような大学形態はとるべきではないと思うが、総理の見解を明らかにしていただきたいと思います。
 最後に、私は、本議場を通し学生諸君に訴えたいと存じます。
 学生諸君が、封建的、官僚的な大学運営を鋭くつき、大学のあり方についての問題提起をされた事実を決して過小評価するものではございません。しかし、ゲバ棒による暴力主義に私は声を大にして反対するものであります。若い学生諸君には、ゲバ闘争が一見前進のように思われるかもしれませんが、それは真の前進ではございません。それどころか、多くの副作用を引き起こすことは、今回の紛争でついに警察権力の介入を許して、せっかく提起した大学改革が行くえ不明になりそうな悲しむべき事実を考えれば明らかであります。さらに、正義は力であるという信念をなくしてゲバ闘争に走ることは、力は正義なりという権力主義への屈服であり、取り返しのつかないモラルの荒廃をもたらすことになります。(拍手)学生諸君は、モラルを荒廃させるのではなく、新しいモラルを創造すべき立場にあります。そうあってこそ、諸君と国民大衆は正しく結ばれ、諸君の運動が前進するものであることを心から訴えるものであります。(拍手)
 以上、私は、安保、沖繩、物価、公害、大学問題について私の考え方を述べながら、総理の所見をただしたのでありますが、これを一言にしていえば、これらの諸問題を通して、現代の政治そのものが国民からその存在を問われておるということであります。われわれにも責任なしとはいたしませんが、主たる責任は、もちろん今日まで日本の政治を担当してきた保守支配の政治にあり、それが今日集中的に国民から告発されておるのであります。(拍手)
 国民の政治に対する意思は総選挙で明らかにすべきであります。特に、総理は、日本国民の運命を左右する安保と沖繩返還問題につき、国民の意思を確かめることなく近くニクソンと会談し、その方向を決定しようとしておりますが、このことは、民主主義否定の憲法逸脱の行為であります。
 佐藤総理、あなたは施政演説で、沖繩問題で国民の納得のいく解決をはかりたいと言われました。もしあなたに、ほんとうに国民の意思を尊重する考えがあるならば、渡米前に、沖繩返還の方式、安保の取り扱いについての考え方を国民の前に明らかにして総選挙を行ない、国民の審判を受けるべきだと思うが、総理の所見はいかがでしょうか。(拍手)
 総理の明確な答弁を期待いたしまして、質問を終わる次第であります。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#7
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 成田社会党委員長にお答えをいたします。
 あなたと私は、いままでしばしば、衆議院本会議の席上あるいは予算委員会等で議論をかわしたものでございますが、今夜はこんな深夜、しかも初めての党首として、ただいま御意見を発表されながら、私に対するお尋ねがございました。
 私もさような意味で、実はただいまの御質問について、たいへん緊張して拝聴いたしたのでございます。しかしながら、残念ながら多くの点におきまして意見を異にするといわざるを得ないのであります。(拍手)特に、国家の基本的命題である安全保障問題につきましては、基本的な認識を異にしているということは、国民の皆さんに対しましてもまことに悲しむべきことであると痛感いたしております。(「そんなことを言わずに答弁しろ」と呼ぶ者あり)ただ、ただいま答弁しろというお話がございますので、以下、御提示になりました問題ごとにお答えをしてみたいと思います。
 第一は、B52の撤去並びに沖繩の労働布令の問題であります。沖繩における労働布令につきましては、政府は、いまその内容を検討中であります。政府としては、その施行が延期されたことでもあり、今後、この布令が沖繩基地関係労働者の福祉向上に役立つようなものになるよう、政府の意向を米側に反映させていきたいと考えております。
 B52の問題につきましては、沖繩県民の生活上の不安をなくするという見地から、これまでも再三にわたって米側の配慮を促してまいりました。これに対しまして米側は、沖繩をB52の恒久基地にするという考えはない、かように申しておりますし、また、それをきわめて最近におきましても再確認いたしたのであります。米国は、B52を自主的に撤去する情勢の早期到来を期待するという日本側の意向につきましても、十分理解を示しております。
 次に、下田発言についてのお話がございました。下田駐米大使の帰朝の際の発言につきましては、全体として見れば、特に問題にすべき筋のものとは私は思っておりません。しかし、表現上の問題から、下田君の真意が必ずしも正確に伝わらなかったのではないか、かような気がいたします。それはそれとして、下田大使は、目下ニクソン新政権との間に、国民世論を背景として、沖繩の早期返還を実現するよう鋭意努力中であります。私は、下田大使がその重大な責任をりっぱに果たし、国民の期待にこたえてくれるものと確信しております。(拍手)
 次に、返還の時期並びに方式についてお答えいたします。
 米国新政権の体制が整うのを待って、政府は、今後沖繩問題に関する日米両国間の外交交渉を進めてまいります。私自身、本年後半の適当な時期に訪米して、ニクソン大統領と直接話し合って返還の時期を取りきめたい、かように思っております。その際、返還の方式、基地の態様等については、私の訪米までの間にあらゆる機会を通じて話し合っていきたいと思います。たとえば、事務レベルの接触、あるいは外務大臣の訪米、日米貿易経済合同委員会などの場を通じまして、この話をだんだん煮詰めてまいりたい、かように思っておりますが、最終的には、日米首脳会談で国民の納得のいく政治的解決をはかりたい、かように考えております。
 そこで、一番問題になりますのが、いわゆる非核三原則を沖繩に適用するかどうか、ただいまのお尋ねにもありました。沖繩返還にあたりまして、非核三原則を適用するかどうかという問題は、従来からしばしば御質問を受けております。私は、これに対し、そのつど、基地の態様については白紙であると答えてまいりました。政府が非核三原則を政策として打ち出したことは、これを可能にする前提、つまり、沖繩基地を含めて米国の戦争抑止力がアジアの平和と安定に有効に働くという保証があったからであります。もちろん、この政策は、核兵器の絶滅を願うという国民の悲願から出発していることは申すまでもありません。沖繩の返還問題がいよいよ現実味を帯びるに至って、国内の論議も、大別して次の二つに尽きているのではないかと私は思っております。その一つは、沖繩の米軍基地については、将来本土並みになるという保証さえあれば、当面は、何はともあれ、まず施政権返還を実現することが先決だという、こういう意見であります。(拍手)もう一つは、返還の時期はおくれても核兵器は認めない、こういう意見の、この二つであります。したがいまして、政府としては、沖繩の基地が第一義的にわが国の安全と、わが国のみならず、極東の安全保障に果たしている役割りを認識しながら、早期返還の国民的願望をいかに実現するかについての方策を探求しているわけであります。沖繩の返還について、問題点に対する国民の理解がここまで深まったことは、政府といたしましては、対米交渉にも大きなプラスであると、私はかように考えておるのであります。今後、国民各位の御協力を得ながら、心を新たにして沖繩の祖国復帰を実現したいと思います。また、沖繩県民を含めた日本国民全体にとって最も正しい選択は何であるかという日地から判断する考えでありますから、今後の交渉の推移を見守ってもらいたいと、かようにお願いをいたします。(拍手)
 次に、成田君は、非武装中立論を真正面に掲げて安保条約を破棄すべきであると、るる述べられました。結論から申し述べますと、政府は、一九七〇年以降も引き続いて日米安保体制を堅持する方針であります。(拍手)これは実績から見ても最も国益に合致するものであり、国民の大多数もまた政府のこの政策を支持するものと確信しております。(拍手)安保堅持の理由、そして社会党の非武装中立論がいかに空虚なものであり、現実にそぐわないものであるか、過去の国会審議におきましてもしばしば申し述べたところでありますが、重ねてのお尋ねでありますから、この際、国民の前にこの点を明らかにしたいと思います。(拍手)
 政府は、わが国の憲法が理想としている恒久平和の到来を強く望んでいます。しかし、現実の国際情勢は、チェコ事件や中東紛争に見られるように、一国の安全に対する脅威がいつ何どき起こるかもしれないというのが現状でございます。これに対し、国連による安全保障措置がまだ十分でないため、いずれの国もそれ相応の防衛努力をしておりますが、現在の国際情勢では、独力で自国の安全を確保できる国はほとんどないため、集団安全保障の措置を講じているのが世界の大勢であります。(拍手)もっとも、スイスやオーストリアのような中立国、ユーゴ、インド、アラブ連合など非同盟の国もありますが、これらはいずれも国力以上の防衛努力をしているというのが現実であります。(拍手)一国の安全は、いやしくも実験に供するというようなものであってはなりません。ましてや、多少でも危惧や懸念がある場合は、冒険をおかすようなことは、責任ある政党の主張とは言いがたいのであります。(拍手)過日、私も見たのでありますが、多数の皆さん方もごらんになったように、新聞紙上の討論会で社会党の非武装中立論の弱点が各党から指摘されたように私は記憶しております。よもやお忘れではないでありましょう。また、防衛の概念につきましても、社会党とわれわれとでは基本的な認識の違いがあるように思われます。われわれは国力相応の防衛努力をし、日米安保体制によって紛争を未然に防止するという考え方に立っているのに対し、社会党は、戦争に巻き込まれるという前提に立っていることであります。過去十一年の間、日本は、日米安保体制のもと、一度も戦争に巻き込まれたことはありません。(拍手)それどころか、この体制のもとでめざましい経済発展を遂げることができました。しかも、戦争にならなかったのは、社会党その他護憲勢力の結果だと、かように言われますが、この間政局を担当したのは、私ども、わが自由民主党でございます。(拍手)安全保障体制を堅持するその政党のもとにおいて、かようなりっぱな発展をいたしたのであります。この歴史的な事実を踏まえて、政府は、当面、日米安保体制を堅持する方針をとっているのであります。これこそ、責任ある政府として、国民に対しその義務と責任を果たすものであると私はかように考えております。(拍手)
 また、その際に、自動延長か条約改定かと、かようなお尋ねがありますが、その問題は、諸般の事情を勘案いたしまして、最も妥当な処置をとるつもりであります。まだきめておりません。
 なおまた、先ほど、これは別にことばじりをとるわけではありませんが、守るに足る国という、何か自分の国でないようなお話がちょっと聞けるのです。日本人ならば、また、一党の委員長ならば、他の政党はどうあろうと、おれの手で守るに足る国をつくるのだ、この決意が私はあってほしいと思います。(拍手)社会党の委員長にそのことを申し上げます。
 次に、中共問題についてお触れになりました。私は、いまだかつて、中共に限らず他国を敵視する政策をとったことはありません。政府は、中共との関係につきまして、従来から一貫して相互の立場尊重、内政不干渉の原則と政経分離のたてまえのもとに民間の交流を促進してまいりました。政府としては、当面この政策を基本的に変更する必要は認めておりません。施政方針演説で申したとおりであります。
 次に、物価につきましてお尋ねがありました。これについて、政府の態度が物価を押えるというか、安定さすということについて熱意が足らないというおしかりも受けましたが、私どもは、この物価問題がただいま政府に課せられた重大政治使命だと、かように考えております。この消費者物価の上昇は、そういう意味で十分取り組んでおりますが、この上昇そのものは、経済の成長に伴う労働力不足の結果、特に、低生産性部門では賃金の上昇を生産性の上昇により吸収できないため、これを価格に転嫁するという構造的要因が基本的な原因と考えられます。その意味で、福田大蔵大臣の認識が誤っておるわけではありません。しかしながら、御質問のように、需要の圧力も物価上昇の大きな要因であることも事実でありますので、政府としても、適切な総需要の抑制につきましては、財政金融政策全般を通じて景気調整の機能を十分発揮してまいる所存であります。四十四年度予算もそのような配慮のもとに編成したものであります。ただ、総需要抑制の方向として、防衛予算等の削減の御提案がありましたが、これは国防、安保等の論議を通じて明らかなとおり、基本的な認識の相違からよってくるものであり、私どもとしては、その議論には賛成することはできません。(拍手)
 また、総需要抑制のため民間設備投資を抑制し、そのための委員会を設置せよとの御提案でありますが、設備投資は生産性の向上に寄与し、ひいては物価抑制の機能をも持つものであり、一がいにこれを抑制するわけにもまいりませんが、過当競争の結果としての設備投資につきましては、これは避けるべきであり、政府としては、これがため産業構造審議会において主要産業についての適切な設備投資のあり方について審議し、その調整の機能を発揮させているところであります。御提案のような委員会をつくって設備投資の規制を行なうことは考えておりません。
 次に、価格形成が独占価格の性格を濃くし、かつ、政府がこれを助長しているとの御質問でありますが、私は、さようには思っておりません。わが国産業の多くは、今日までのところ、市場構造が競争的でありますので、独占価格の弊害はあまりあらわれていないと考えております。また、不当な価格形成が行なわれないよう十分注意してまいります。また、王子三社合併の問題について政治的な圧力などは加えたことはございません。
 次に、公取委員会に消費者代表を加えるよう法律を改正せよとの御提案でありますが、現在、公正取引委員会では独占禁止懇話会を設けて、民間有識者の御意見を十分しんしゃくしながら消費者行政を進めており、これが活用によって十分御提案の趣旨は実現され得るもの、かように考えております。(拍手)
 次に、公害に対する対策の強化についてのお話がありました。そうして、予算はたいへん少ないということでありますが、四十四年度予算の編成にあたりましては、最もこの公害対策は重視したものの一つであります。いま詳細に申し上げるつもりはありませんが、単に一般会計予算のみでなく、公害防止事業団の事業活動や開発銀行並びに中小企業振興事業団の融資などを通じて、従来に比べて格段の充実がはかられております。今後とも公害対策については十分配意いたします。(拍手)
 なお、公害対策基本法を抜本的に改正すべきではないかという御意見でございますが、この法律は一昨年に制定を見たばかりであります。これが改正はただいま考えておりません。
 次に、大学問題について、その問題の社会的背景についてるるお述べになりました。私、一部賛成のものもありますが、全部賛成ではございません。私は、今日の大学問題は、わが国だけではなく、世界先進諸国の共通の悩みになっている、かように思っておりますが、その背景についてはさまざまな角度から論じられており、複雑な要素がからんでいることは御承知のとおりであります。わが国の場合、戦争を体験した世代と平和な時代に育った新しい世代との間に思考の断絶があることも指摘されます。また、物質的な豊かさが精神的な豊かさに必ずしもつながらない傾向があったこともその背景として見のがすことはできません。さらには、戦後、質的にも量的にも変貌した大学に対して、管理運営上の面でも十分なくふうがなされなかったことは、政府を含め教育界全体が反省すべき点であります。いずれにしても、大学問題は現在の文明の病理ともいうべきものであり、政治家や教育関係者だけでなく、国民の一人一人が真剣に考えてもらいたい、かように念願しております。(拍手)
 次に、東大の入試問題についてお答えをいたします。政府は、もとより学問の自由と学園の自治は尊重するものであります。この点は、特に重ねて申しますから、誤解のないようにお願いをいたします。
 東大の入試を実施するかどうかは、社会的影響も大きいので、単に東大の判断だけではなく、文部省と東大とで協議の上きめるという了解のもとに、昨年十二月末入試中止に決定いたしたのであります。その後、入試復活について具体的な努力がなされましたが、入試実施に必要な条件が整わないため、結局当初の方針どおり中止にきまったのであります。政府としては、東大が一日も早く正常な教育環境を取り戻し、授業を再開するよう期待しており、今回の措置が政府の不当な権力介入というようなものでないことをはっきり申し上げておきます。(拍手)
 さらに、確認書についてのお尋ねであります。東大の十項目の確認書につきましては、文部当局で東大当局の説明を求めた上で、政府のこれに対する見解を明らかにする予定であります。いずれにしても、これは東大内部の紛争処理の過程で急いでつくられたものであり、東大内部にも、純粋に法律上の観点からこれに対する批判があると聞いております。したがって、成田君のお説のように、確認書をそのまま承認して、これを出発点として新しい大学を創造せよという御意見には、私は賛成いたしません。(拍手)政府といたしましては、基本的には、中央教育審議会の結論を待って教育制度全般にわたって改革を断行する決意でありますが、国家の将来につながる問題でありますから、慎重に、しかも国民的合意を得る方向で対処してまいります。
 また、大学院大学についてもお話がありましたが、ただいま御説明いたしましたように、私どもは、中教審の答申を得た後これを実行するというのでございますから、大学院大学というような構想をただいま批判する、また、御意見を聞く程度ではございません。
 次に、私個人の考え方を、この席ではありますが申しますと、現在の大学のあり方は、いろいろな面で変化に対応できなくなっているという認識を持っております。少なくとも、今後は教育、研究、管理、この三部門に分けまして、特に管理部門の専門家を養成することが急務ではないか、かように私は考えております。
 最後に、いろいろ重要な政治問題がある。そういう意味から、国民の民意を問うという意味で解散問題に触れられました。多分に御意見をまじえてのお尋ねでありますが、私は解散は考えておりません。はっきり申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#8
○議長(石井光次郎君) 根本龍太郎君。
    〔根本龍太郎君登壇〕
#9
○根本龍太郎君 私は、自由民主党を代表いたしまして、佐藤総理並びに関係閣僚に対しまして、内外の重要な諸問題について御質問申し上げます。
 佐藤内閣が成立して以来、すでに四年有余を経過しております。この間、対外的には日韓国交の正常化、小笠原の祖国復帰、沖繩施政権返還の促進等、歴史的な成果をあげ、また対内的には、深刻な不況を克服し、未曾有の経済の繁栄をもたらしているのであります。すなわち、昭和三十九年度には二十八兆六千億円でありました国民総生産は、四十三年度にはその二倍に近い五十兆六千億に達するものと見られ、いまや自由諸国ではアメリカに次ぐ第二の生産国に迫りつつあるのであります。この繁栄の恩恵を受けまして、勤労者の収入も年々増加し、物価の上昇を差し引いた実質収入指数は、三十九年度の九七・五から四十二年度は一一〇・六と、一一%以上も上昇しているのであります。
 このような内政外交にわたる治績をあげた佐藤総理は、先般の総裁公選によって、さらに二年間の政権担当が約束されたのであります。引き続き六年間も政権を担当した内閣総理大臣は、明治以来吉田茂元総理のほかはないのであります。ときあたかも一九七〇年を目前に控え、内外の情勢がきわめて流動的である現在、佐藤総理の責任はきわめて重大であり、国民の期待もまたはなはだ大きいものがあるのであります。
 わが国現下の最大の問題は、奇跡的な経済的繁栄にもかかわらず、国民の心の豊かさが失われ、むしろ荒廃の一途をたどりつつあるかに見える現状であります。すなわち、神聖なるべき学問の府は暴力学生によって占拠され、また、交通戦争や公害によって国民は生命と健康の恐怖にさらされ、あるいは自己の欲求充足のためには、他人の権利と所有物を侵害しててんとして恥じざる風潮が流行し、利益追求のために風俗を紊乱する映画や刊行物が、表現の自由の名において横行しているありさまであります。古来礼節の民といわれた日本民族のよき習慣は、古い封建制度のなごりとして排撃され、人間の本能的欲求をそのまま追求することこそ現代人の生活態度であると主張するものが、文化人と称せられておる今日であります。こうした風潮の中に、国民は日本人としての共通の連帯感を失いつつあるのであります。このことは、政治の上にも、社会の上にもゆがみを生ぜしめているのであります。いまにしてこの禍根を除かなければ、日本は、経済的繁栄の中に人間の魂を失った利己的な人間集団に堕落するおそれがあるのであります。(拍手)
 国家は国民から絶大な権力を与えられております。国民は租税を納め、法律を順守する義務を負うそのかわりに、国家は、国民の生命、財産を侵害し自由を奪うものに対しては、国民を保護する責任を負っているのであります。国家がその権力を行使するにあたって、市民生活の平和と秩序を守ることに欠けることがあるとき、そのときこそ、人心の荒廃が生まれるのであります。われわれは民主政治のワクの中では相互に寛容であっても、このワクを破る暴力に対しては絶対に寛容であってはならないのであります。(拍手)人類の自由は、人間の尊厳と自由を奪う暴力と圧迫に対する勇敢な戦いによって守られてきたのであります。私は、政府は政治以前の問題として、すべての暴力と脅迫を排除し、公共の秩序を維持する責務を負うものと信ずるものでありまするが、総理の所信を伺いたいのであります。(拍手)
 次に、外交及び防衛問題についてお尋ねいたします。
 わが国は、政治思想や社会制度を異にし、また、強大な軍事力を持つ国家と隣接し、しかも狭く、資源の少ない国土に膨大な人口を擁しておる国家であります。したがって、わが国の平和と安全を確保し、国民の自由と経済的繁栄を守ることこそ、わが国外交、防衛の根本課題であります。すなわち、わが国は、相互に内政干渉しない条件のもとで、政治体制を異にする国といえども、ひとしく友好親善の外交を深めてまいったのであります。わが国と立場を同じくする自由主義諸国はもとより、ソ連、東欧諸国とも数多く国交を結んでおるゆえんであります。しかし、古い時代から密接な関係にある中国大陸については、終戦以来いまだに国交が結ばれておりません。中国の国内事情も最近ようやく安定したかに見え、これに伴って、外交路線も従来に比して柔軟になりつつあるように見えます。また、中国大陸をめぐる国際情勢も大きく流動しておる今日、積極的に中国大陸との関係改善をはかるべき時期が迫っているものと思われまするが、総理の所信を伺いたいのであります。
 次に、日米安全保障体制についてお伺いいたします。
 そもそも、日米安全保障条約は、日本区域における平和と安全の維持のため、国際連合の措置が十分となるまで効力を有することになっておりますが、発効後十年を経た後は、一方の通告によってその後一年で終了する定めになっております。このため、一九七〇年は、一般に日米安全保障条約の再検討期といわれているのであります。しかし、この種の条約でこういう定めのあるのは通例であり、このことは条約の廃止とか改定とかを求めているのではないのであります。ところが、社共両党は、この機会に日米安全保障体制を破棄しようと運動しておるのであります。
 わが国の防衛費負担は、日米安全保障条約によって、世界の先進国の中で最も少ないのであります。来年度予算に占める防衛費の比率は七・一%であります。イタリアとイギリス、フランス、西独はそれぞれ一四%から二〇%であります。また、国民総生産に占める比率、これは「ミリタリー・バランス」一九六七年−六八年度版によりますれば、アメリカは九・二%、ソ連は八・九%、中共は一〇%、イギリスは六・四%、フランスは四・四%、イタリアは三・三%、ポーランドは五・三%、これに対して日本はわずかに〇・八四%であることを忘れてはなりません。(拍手)
 また、昭和三十五年の安保改定によりまして、日本は、この種の相互防衛条約にはその類例を見ない有利な取りきめをいたしているのであります。すなわち、アメリカは、日本が他国に侵略された場合は、日本を防衛する義務を持っているのでありまするが、日本は、日本国憲法のたてまえからいって、米国が他国と戦争状態に入った場合でも、自衛隊の海外派遣は義務づけられていないのであります。これはベトナム戦争について見ても明らかであります。日米安全保障条約を締結して以来、わが国の周辺でベトナム戦争、中印紛争、マレーシア・インドネシア紛争などが発生いたしましたが、この間日本は、何ら戦争にも紛争にも巻き込まれておらず、平和のうちに経済の発展を続けることができたのであります。しかるに、安保反対勢力は、日米安全保障条約がある限り、日本は常に戦争に巻き込まれるおそれがあると、事実に反する宣伝をしているのであります。また、これらの勢力は、日本に米軍基地が存在することは米国に従属することであると唱えておりますが、現在世界の国々の多くが、互いに二国あるいは多数国間の集団安全保障体制をとっていることは周知の事実であります。
 昨年十二月に朝日新聞が行なった日米安全体制に関する世論調査の結果が、日米安全保障条約に対する国民の考えを知る一つの目安となるのであります。その第一は、一般国民大衆は、防衛と安全保障という高度の政治問題に対しまして判断に迷っている傾向が見られることでございます。具体的にいえば、戦後のわが国の経済発展は日米安全保障体制のおかげであると認める者が実に五五%を占めておる、すなわち、過半数を占めているのであります。かと思いますると、自衛中立に賛成する者が六四%という高い比率を示しているのであります。
 第二は、このような素朴な国民感情の中にも、国民が日米安全保障体制に対し現実的な評価と判断を下しているということであります。一九七〇年に日米安全保障条約を破棄せよと主張する者はわずかに一二%にすぎません。段階的解消論から十年間延長に至る安保存続論者は七四%という圧倒的多数を示しているのであります。特にわれわれが力強く思うことは、安保即時破棄を唱える社会党支持者の中で、それに賛成する者がわずかに一八%にすぎないということであります。(拍手)
 毎日新聞社の昨年十二月の世論調査の結果を見ましても、一九七〇年に安保を解消せよという意見は一四%にすぎないのであります。安保条約破棄や、非武装中立の宣伝攻勢にもかかわらず、国民の多くが、これら観念論よりは、健全で現実的な判断を持っていることがここに明確に示されているのであります。(拍手)政府は、国民の理解と支持のもとに、わが国の安全を守る姿勢を貫き、今後も日米安全保障条約の堅持の方針について、一そう率直に訴える必要があると思うものであります。
 次に、日米安全保障体制の維持について、国民的な合意を得るために必要なことは、その運用を現実に即して改善することであります。この条約を改定した九年前と現在とでは、内外の諸情勢も多く変化しています。このため、私は、特に基地問題の処理について強調したいのであります。
 かつて二千八百余件もありました駐留軍の陸上施設は、昨年末には百四十五件に激減しております。土地面積も十三億五千万平方メートルから、わずかに三億六千万平方メートルに減っておるのであります。しかしながら、なお基地をめぐるトラブルは少なくなく、これが基地周辺の住民の安保体制に対する反感の原因となっていることも否定できません。必要性の乏しい基地は、日米当局者が積極的に協議してこれを整理し、市街地から他の地域へ移転可能な施設は移し、基地周辺の生活環境を徹底的に改善するなど、適切な措置を強く推進することは、日米安全保障体制の基礎を固める条件と思うのであります。総理の所信を伺いたいところであります。
 次に、沖繩問題についてお尋ねいたします。
 佐藤総理は、就任以来、沖繩の祖国復帰にその政治生命をかけ、みずから渡米し、ジョンソン前大統領との会談によって、両三年のうちに復帰の時期のめどをつけるところまでこぎつけたのであります。沖繩の返還は、沖繩県民をはじめ全国民の念願であります。今後、ニクソン大統領との交渉によって、沖繩返還を具体的な日程にのぼせることは、佐藤総理の使命であり、責任であります。
 およそ、外交交渉は相手のあることでありまして、双方の主張が互いに理解され、かつ、相互に信頼される状況においてのみ、初めて妥結を見ることができるのであります。みずからの国の利益や主張を一方的に強調するだけでは、成果をあげることはできません。この意味から、即時無条件返還をわが国が一方的に強く要求すれば、そのままこれが実現し得るかのような錯覚を国民に与えることは、百害あって一利なきことであります。もしそのような主張をする政党ありとするならば、その政党はどのようにして対米交渉でこれを実現するか、具体策を国民に示す政治責任があるはずであります。(拍手)
 沖繩が、終戦後対日平和条約が締結されるにあたって、何ゆえに米国の施政下に置かれるに至ったか、その原因が現在どのように変わったか、また、日本はいかなる根拠に基づいて沖繩返還を要求するか、政府はこうした点を具体的に国民に示して、国民の理解と合意を求めるべきであります。これをなくしては、沖繩返還に対する国民の中正な判断を求めることは困難であります。
 沖繩の祖国復帰は、沖繩県民の民族的な権利を回復し、また、同胞一体化の願望を達成するためのものであります。したがって、施政権の返還が沖繩問題の最重要課題であることは、もちろんであります。同時に、沖繩の持つ防衛的役割りをも、これは忘れることはできません。すなわち、施政権の返還と基地の役割りをどう調和させるかが沖繩問題の核心であります。このことは、日米双方にとって見解の相違のあることはやむを得ないことと思いまするが、日米両首脳が胸襟を開いて真剣に交渉すれば解決し得るものと思います。総理の所信を伺いたいところであります。
 なお、沖繩では、二月四日に、B52の即時撤去などを目的とした異例のゼネストが行なわれようとしております。しかし、このような問題は、政治的な力を直接に行使することなく、日米間の相互信頼に立つ話し合いによって解決されることを期待するものであります。
 また、沖繩では、米国民政府が一月十一日公布した総合労働布令が問題になっております。幸いにして、同布令の施行は、とりあえず三月以降に持ち越されましたが、このような事態を生じたことは、日米双方の間に十分な意思疎通を欠いたものといわざるを得ません。本土と沖繩の一体化政策を進めておるおりから、沖繩県民の福祉に関する重要な事項については、日米双方があらかじめ十分に連絡をとり、県民の意見を反映した施策を進めるべきだと思うのであります。所管大臣の意見を求める次第であります。
 次に、大学紛争と大学の再建についてお尋ねいたします。
 一部の暴力学生集団による社会秩序の破壊と大学の混乱は、現在のわが国の重大な社会問題であります。一昨年秋における羽田事件以来、暴力学生集団の行動は量、質ともにエスカレートしつつあります。すなわち、学園の外にあっては、ついに騒乱罪の適用を受けた新宿事件にまで発展し、学園内においては、九十年の伝統を持つ東京大学の一部は廃墟と化し、ついに入試中止という非常事態にまで立ち至ったのであります。いまなお紛争中の大学は全国で四十五校に達し、そのうち二十一校は無法な学生集団によって校舎の一部が封鎖されておる実情であります。学生運動の激化は世界的な傾向といわれております。しかし、ヘルメットをかぶり、手に手に角材や鉄棒を持ち、加えて劇薬や火炎びんまで使用し、市街戦さながらの破壊活動を行なうのは、ひとりわが国においてのみこれを見られるのであります。貴重な国民の税金によってつくられた国立大学の建物が、数カ月の長きにわたって暴力学生によって不法占拠され、公の研究資料及び物品が破壊され、かつ、盗まれ、また、研究室や教室の施設が見る影もなく破壊される状態がそのまま放置されるということは、国民の常識をもってしてはとうてい理解できないところであります。かくのごときは大学そのものの崩壊につながるものといわなければなりません。
 事、ここに至らしめた原因はいろいろあるでありましょう。しかし、私は、まず第一に、大学当局者が、大学自治の名のもとに、話し合いによる解決にとらわれ過ぎたことにあると考えます。すなわち、みずからの力で暴力学生を排除し得ないにもかかわらず、暴力排除のための警察力を学内に導入することさえ大学自治の侵害になるものと考え、長期間これを要請しないことによって、結果的には、大学構内を暴力学生集団にとって最も安全なとりでとしたのであります。
 およそ、暴力は、学問の自由、大学の自治だけではなく、平和な市民生活、ひいては民主政治そのものの存在を否定するものであります。政府は、理由のいかんを問わず、大学と市民社会を暴力から守るべき重大な責任を持っておるものと思うのであります。
 次に、東大をはじめ、大学の再建についてお尋ねいたします。
 東大の再建について私が重視せざるを得ないのは、七学部集会における確認書の問題であります。この確認書は、現在まだ東大の最高機関である評議会において正式に決定されておりません。その内容もまた、厳密に検討した場合、あながち違法とはいえないまでも、その解釈においては、はなはだしく疑問の点があるということは、東大法学部の教授会においてすらこれが指摘されておるといわれるのであります。法解釈において最も権威ありとされる東大法学部ですら、このような立場であるとするならば、一般国民がすなおにこの確認書を読んだ場合、不当と受け取られる筋のものが多いことは当然といわなければなりません。当面する大学再建の目的は、学問の自由と大学の自治を暴力から守り、大学と学問の権威を高めることであります。同時にそれは、まじめな学生諸君が静かに学ぶことができ、学者が安心して教育と研究に専念できる環境をつくり出すことであります。また、教授と学生間の信頼の回復にあるのであります。大学は次の世代のわが国をになう人材を養成する場所であります。大学の再建は、いまや単に東大だけの問題ではなく、将来におけるわが国の科学や文化全般にかかわる根本的な問題であります。大学再建に関する基本方針について、総理の所信を承りたいのであります。(拍手)
 次に、物価問題についてお尋ねいたします。
 物価問題こそは、国民がひとしく関心を寄せておる重要問題であります。本年度の経済成長率は名目で一七・三%、国際収支は十二億ドルの黒字という空前の大型景気の進行が見込まれておりまするが、この中にあって、ただ一つ暗影を投じているのが消費者物価の上昇であります。消費者物価の上昇を抑制するにあたって、公共料金の抑制が叫ばれることは常でありまするが、私は、それだけで物価の上昇が押えられるものとは考えません。
 わが国における消費者物価の年々の上昇には、特別な原因があるのであります。すなわち、技術革新や経営の合理化によって増収増益の続いておる企業においては、わが国の特異現象である毎年のいわゆる春闘に際し、労使間のトラブルを回避するために、容易に高い春闘相場を出して妥結する傾向があるのであります。労働力が不足しておる現在、特定の企業でこのような高い賃上げが行なわれますと、技術革新や経営の合理化がそれほど進んでおらない企業も、春闘相場に追従して賃上げをする場合が多いのであります。これは、そのようにしなければ労働力確保ができなくなり、労務倒産に追い込まれるおそれが生ずるからであります。この傾向は、中小企業、零細企業において特に著しいのであります。そしてこれらの企業における高賃金は、そのまま物価及びサービス料金に直接はね返りまするので、必然的に消費者物価の上昇を招くものであります。
 このように見てまいりますと、増収増益のある企業においては、その利益を労使双方だけで分配するのではなく、さらに一歩を進めて、その利益の一部を国民、すなわち消費者に還元することを考えるべきであります。このような行政指導をこれから行なわなければならないものと考えます。労働組合の諸君が、企業の合理化には反対しながら、賃金の大幅引き上げを要求し、他方では物価の引き下げを叫ぶことは、組合エゴイズム以外の何ものでもないと思うものであります。(拍手)また、このような矛盾に満ちた組合の要求を支持し、その実現につとめる政党は、国民全体の利益を代表するものとは、遺憾ながら言い得ないと思うものであります。(拍手)
 次に、賃金と物価との関係について特に一言いたします。
 それは公務員給与の引き上げについてであります。民間の賃金は、原則として、その企業の生産性の向上に見合って行なわれるものであります。しかし、公務員については、その行政能率の向上改善とは関係なく、民間賃金の上昇に見合って機械的にベースアップの勧告がなされております。こうした現在の人事院の勧告制度につきましては、再検討さるべきものと信ずるものであります。
 およそ、物価問題を論ずるにあたりましては、国民の所得が大幅に上昇しておる場合、その上昇の幅と消費者物価の上昇とを比較して論議しなければなりません。すなわち、国民生活が向上したか、それとも低下したかは、実質所得、実質家計の動向によって判断すべきものであります。わが国における勤労者世帯の実質収入指数は、昭和四十年度を一〇〇とした場合、四十一年度は一〇四・二、四十二年度は一一〇・六と着実に上昇し、さらに四十三年度において大幅に伸長することは確実であります。しかし、私は、そうだからといって、年率五%という消費者物価の上昇をこのまま放置してよいと言うのではありません。国民生活をあずかる政府としては、あらゆる手段を尽くし、消費者物価の上昇を押えなければならないことは、けだし当然であります。
 そこで私は、二、三の点について、政府の所信をただしたいのであります。
 その第一は、公共料金の抑制であります。国鉄運賃の引き上げは、急激な都市集中に伴う通勤ラッシュを緩和するため、都市周辺の国電を増設、増発するためであります。また、地域開発を促進する新線建設のためでもあります。これは真にやむを得ないものと思うものであります。これと同時に、国鉄全体はその合理化を一そうきびしく実行すべきであります。しかし、国鉄運賃の引き上げに便乗した私鉄運賃の引き上げは、これを認めることをせず、また、国鉄以外の公共料金は極力抑制すべきであります。
 第二は、流通機構の改善であります。物価安定の根本は、農業、中小企業及び零細企業など、生産性の低い各部門の生産性を向上させることにあることは言うまでもありません。しかし、これにはなお相当の年月を要するのであります。さしあたって効果の早い施策といえば、前近代的な流通機構を改善することであります。これによって中間経費が削減され、それによって消費者物価を引き下げることが可能となります。流通業務団地、各種市場の整備などを積極的に推進すべきであります。
 第三に、地価の安定であります。市街地における地価の異常な値上がりは、家賃の値上がり、住宅建築費の上昇の最大の要因となっております。そしてまた、地価の上昇があらゆる公共投資の効果を減殺していることは周知の事実であります。地価の抑制こそ物価対策の重要なポイントと見るべきであり、このため、土地の流動化、地価の公示制度、税制上の措置を強く実行すべきであります。
 第四は、技術革新と経営の合理化によって高収益を得ている企業から、その利益の一部を消費者に還元させること、すなわち、物価の値下げを民間企業になさせることであります。
 これらの諸点につき、所管大臣の御所信を伺いたいのであります。
 次に、総合農政についてお尋ねいたします。
 近年、わが国経済が高度工業社会に発展するに伴い、膨大な労働力を必要とするようになり、労働賃金もまた急速に上昇してまいりました。このため、わが国の農業も企業農家として再編成されなければならない状況に立ち至っておるのであります。すなわち、現在の都市化及び産業構造の急速な高度化の中で、農村の労働力は、高賃金を支払う第二次産業、第三次産業に急速かつ大量に吸収されつつあります。このため農村の労働力は急激に減少し、従来の労働集約的な営農型農業は崩壊し始め、いわゆる省力農業、機械農業が急ピッチで発達してきました。いまや農業は、まず企業として採算がとれなければ存在し得なくなったのであります。そしてこれらの事実は、高度工業社会における農業がたどるべき当然の趨勢であるといわなければなりません。
 これまでのわが国の農業は、国民の嗜好と気候風土の関係から、米作本位の農政が行なわれてきたのであります。ことに敗戦の結果、多くの海外領土を失い、しかも、数百万に及ぶ同胞が海外から引き揚げてきた終戦直後におきましては、国民を一人でも飢え死にさせないために、何よりもまず米の増産が叫ばれ、農政の根幹となったのは当然であります。(拍手)農民も政府も、困難な状況の中で、この至上命令を達成するために精魂を傾けて努力しました。すなわち、米の品種改良、土地改良、稲作技術の向上、農薬の開発及び価格政策の推進などを積極的に進めてきたのであります。その結果、近年に至って稲作は著しく向上し、昭和四十二年度に至って、有史以来初めてお米の過剰を見るに至りました。次いで四十三年度も引き続き豊作に恵まれ、二年続いて多量の過剰米を保有するに至ったのであります。しかも、こうした米の過剰は、国民の米食率が年々低下する事実とも相まって、恒常的な現象としてあらわれることが明らかになってまいりました。したがって、これまでのような米作本位の農政のあり方に改善を加え、国民の食生活の変化に対応し、しかも企業的に有利な農業経営に転換するために、総合的な施策を実行すべき段階を迎えたのであります。
 すなわち、稲作が企業的な農業として最も適当な地域におきましては、これまでにも増して稲作の振興策がとらるべきでありますが、稲作よりもほかの農業部門、たとえば果樹、野菜あるいは畜産または特用作物が企業農業として有利な地域におきましては、それらを中心とした農業に転換させるため、基盤整備や転換のための営農資金の手当てなど、各般にわたるきめのこまかい政策的な配慮が必要であります。このような総合農政を展開するために、政府はいかなる対策をもってこれに臨まれようとするか、その具体策を伺いたいのであります。(拍手)
 次に、今回、自主流通米を認めることによりまして、消費者に対し、その好むところの米を自由に選択できる便宜を与えたことは、米の流通の実情に見合った措置と思われます。(拍手)しかしその反面、自主流通米制度が悪用されて、米を投機の対象にしたり、あるいは生産農民が出来秋に買いたたかれたりすることはないか、また、端境期になって消費者が不当に高い値で米を買わなければならない状態に陥ることはないか、一まつの不安なきを得ません。これらに対し、政府はどのような措置を講ずるか、その方策を伺いたいのであります。(拍手)
 最後に、私は、日本民族の精神の回復についてお伺いいたします。
 現代は、人類の歴史上かつてない大きな変革の時期に遭遇しているといわれます。科学技術の発達は、人類を地球から宇宙へ旅行させることを可能にしました。また、生命の神秘のとびらが開かれて、生体の本質である原形質を人工的に生産することも、臓器の人工移植も可能になりました。物質的な繁栄は、未来の天国を約束するかに見えます。にもかかわらず、人類が今日ほど滅亡の恐怖と不安にさいなまれているときはありません。米国は、世界最大の軍事力と経済力を所有しています。にもかかわらず、ベトナム問題を、その力のみをもってしては解決できないのであります。ソ連は、膨大な軍事力と思想的強圧をもってしても、チェコ国民の自由に対する強い要望を制圧することはできないのであります。人類は、物質面における支配力については無限の可能性を見出しました。しかし、人間みずからの心をコントロールし、心の安らぎを得る道を見失ったのであります。人間は、いまやみずからの心のよりどころを回復しなければなりません。日本民族は、古い昔から、幽遠にして健康な情操と情緒を有し、この上に民族の道統をはぐくんでまいりました。さらに、古代インド、中国の深遠な宗教哲学を受け入れ、近世以来は西洋の科学や思想を余すところなく吸収しております。いま、人類は、物質文明の中で、心の再建の道を求めております。その素材はことごとく日本に集積されておるのであります。物質的繁栄の無限の可能性に耐え得る雄渾にして創造的な精神――この困難な課題を解決することができるのであります。総理は、みずから民族の使命感に徹し、国民の先頭に立ち、現実に足を踏み締め、遠く未来を目ざして邁進することを切望するものであります。(拍手)
 重ねて総理の所信をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#10
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 法秩序を維持し、社会秩序を保つことは、民主主義国家の基盤であります。およそ脅迫によって自己の主張を貫くようなことは、放任されてはならないのは言うまでもありません。理由のいかんを問わず、脅迫や暴行行為などの不法行為は排除されなければなりません。このような風潮を放置することは、やがて自由主義、民主主義を否定することにつながると、かように考えます。私は、学園の内外を問わず、不法行為、暴力行為にはきびしい態度で臨み、市民生活の安全を確保するために、法秩序維持に全力をあげていく決意でございます。(拍手)
 次に、外交の問題についてお尋ねがありました。先ほどもお答えしたのでありますが、中国大陸との関係について御指摘になりましたように、いままでのままであってはならない、かように私も考えております。しかしながら、現在の中共は、内外に多くの問題をかかえており、国際的な協調や友好善隣の精神に基づいて、わが国をはじめ近隣諸国との関係改善に熱意を持っているとは判断されない状況でございます。また、現在の時点では、中共をめぐる国際情勢は、基本的には変化しておりません。したがって、政府としては、当面は従来どおり各種の交流を促進し、一方では中共の対外政策の変化を期待するとともに、中国をめぐる国際情勢の推移を見守りたい、かように考えております。
 次は、安保の堅持並びに基地対策についてのお尋ねがありました。根本君の安保問題に対する御指摘は、一つ一ついずれももっともなものと私も考えております。ことに新聞の世論調査にあらわれた安保支持の国民の声は、私もつとに承知しておりますが、なお一そう国民の理解を求める努力を尽くし、日米安全保障体制の堅持を国民的合意にまで到達させることがわれわれの目標であり、課題であると考えております。(拍手)また政府は、わが国の安全確保という大きな目的が十分に達成されるよう、日米安保条約の円滑な運用につとめておりますが、そのためには、御指摘になりましたように、特に基地周辺住民に直接影響を与える問題につきましては、日米双方の理解の上に、合理的な解決をはかってまいりたい、かように考えております。(拍手)
 沖繩問題解決のための最善にして最短の道は、日米相互信頼関係のワクの中で施政権返還を実現するというのが、私の一貫した考え方であります。今後とも、このような基本的な考え方に基づいて沖繩問題の解決に努力してまいります。先ほども成田君にお答えしたのでございますが、一方で、沖繩問題の本質は、沖繩県民を含む日本国民の強い願望である施政権の早期返還を、安全保障上の要請をそこなうことなく達成することにある、かように考えております。私は、このことが日米間の話し合いによって満足する解決をはかれるものと、かように確信しております。御指摘になったとおりであります。
 かような見地から、先ほどもお答えしたのでありますが、本年後半の適当な時期に訪米をいたし、ニクソン大統領と率直な話し合いをする考えであります。
 また、B52並びに総合労働布令についてのお尋ねがありましたが、先ほどお答えしたとおりでありますから、割愛さしていただきます。
 大学の問題について、十項目の確認書についてお尋ねがありました。先ほどもお答えしたのでありますが、目下関係者の手で検討を加え、文部大臣が近く学校当局の意見を聞くことになっております。確認書の内容は、御指摘になりましたように、随所に解釈の分かれるような、あいまいな表現が多いようであります。その是非はともかく、あのような異常な雰囲気のもとでそれがつくられ、しかも、大学の将来を拘束するような取りきめをしていることは、かなり問題がある、かように考えております。今後慎重に、さような意味で内容を検討いたすつもりであります。
 また、大学改革問題につきましては、東大問題などの経験に照らし、今後、大学が国民のための新しい大学として、教育研究の場であると同時に、社会的に大きな責任を達成できるよう配慮しなければなりません。高等教育の長期的な課題につきましては、現在中央教育審議会で検討中であり、過当な答申が行なわれることを期待しております。政府としては、答申が出れば、すみやかにその趣旨に沿って必要な措置をとる考えであります。
 総合農政につきましては、農林大臣からお答えすることにいたしますし、また、物価については企画庁長官からお答えすることにいたします。
 私は、ただ一言、総合新農政を展開するに際しまして、消費者米価並びに生産者米価を据え置くという方針を明らかにいたしましたが、このことは、食糧管理法及び米価審議会との関係から不当だ、かようなことが言われたと思いますが、もとより米価の正式な決定、これは今後食管法に基づいて、かつ、米価審議会にはかった上でなされるものであります。ただ、政府としての方針を申したのであります。したがいまして、その際には、米価審議会に対しまして、十分政府の意のあるところを御説明すれば、以上申し上げたような方針につきまして御了解が得られるものと、かように存じております。重ねて国民各位の御理解と御協力をお願い申し上げます。(拍手)
 最後に、根本君の私に対する民族精神の回復についてのお尋ねでございますが、これには私もたいへん深い共感を覚えております。われわれ日本民族は、古い伝統に基づく独自の日本文化を持っております。明治以来の近代化も、この独自の日本文化の上になし遂げられました。われわれが新しい百年に向かって進んでいくに際し、この伝統の上に新しい時代を築いていくことになります。私は、今度の施政方針演説で、急激な社会の変化に賢明に対応するためには、物質的な豊かさが心の豊かさに結びつく新たな精神文明を確立しなければならないと、かように訴え、進歩する社会にふさわしい倫理観の上に強い社会連帯の意識を育てていきたいと、国民各位に呼びかけました。一人の政治家がなし得る仕事には限度があります。しかし、時代の流れを的確に判断して、誤りなくレールを敷くことは可能だと、かように信じております。大きな時代の転換期に政権を担当する者として、この方向だけは見誤らないようにしたいものだと、かように私は念願をしております。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)
    〔国務大臣長谷川四郎君登壇〕
#11
○国務大臣(長谷川四郎君) お答え申し上げます。
 流通機構の改善をはかることは、農業生産の安定と所得の確保、また反面、消費者経済の見地から、きわめて重要な問題でございます。特にこれにつきましては留意をいたしてまいりたいと考えております。そのために、中央と、また地方の卸売り市場について整備を推進するために、関係予算の増額及び融資制度の拡充をはかりました。なお、小売り業につきましては、融資制度の拡充、指導、研修の強化を行なうつもりでございます。
 次に、自主流通米の構想は、従前どおり事前売り渡し申し込み制による制度を、また、政府の買い入れを継続しつつ、食糧管理の立場からする行政的な規制のもとに、生産者が農協等指定荷受け業者を通じて直接卸売り販売業者に売り渡し、さらに小売り販売業者を通じて消費者に配給する道を開くものであります。また、政府の売り渡す米穀については、基本価格による配給を行なうものでありますので、その御心配はないと考えるのであります。
 また、総合農政につきましては、まず、戦後の長い食糧不足の時代に、食糧確保に多大の労苦を払われた全国の農民の方々に深く感謝を申し上げるとともに、総合農政の推進のためには、昭和四十四年度農林予算については、総額で七千六百八十八億円という、前年比にいたしまして一七・五%増の大型予算を計上いたしたのでございます。また、農業金融については、農業近代化資金のワクを三倍にする等の貸し付けワクの大幅な拡充をはかったのでありまして、昭和四十四年度においては、これらの予算措置及び融資措置について、次の点に重点を置いて所要の施策を講ずることにいたしております。
 まず、第一点といたしまして、農業生産基盤の整備を計画的かつ強力に推進をいたします。
 また、需要に即応した農業生産を進めるために、米の生産の合理化、稲の作付の自主的な転換、及び今後需要の増大が期待される畜産、園芸等の振興に重点を置いて生産対策を拡充いたしております。
 農地法の改正等、一連の構造政策関連諸法案の成立を期し、さらに、第二次構造改善事業を発足させるとともに、農業者年金制度について、四十五年度実施を目途に調査検討を行なう等、構造政策の一そうの推進をはかるつもりでございます。
 さらに、総合農政の推進のため、当面講じようとする施策については明らかにいたしましたが、農業の発展を期するためには、長期的総合施策を進める必要があることは御指摘のとおりでありまして、このような観点から、総合農政の今後の展開につきましては、各方面の意見を十分尊重しつつ、施策の充実強化をはかってまいる考えでございます。(拍手)
    〔国務大臣菅野和太郎君登壇〕
#12
○国務大臣(菅野和太郎君) 一昨年の秋以来上昇してまいりました消費者物価の問題につきまして、根本議員より、適切な、各方面から見た対策を示唆されたのでありまして、私は、その点において、深甚な敬意を表したいと思うのであります。
 施政演説でも申し上げましたとおり、この物価問題は、現内閣の最重要施策といたしておりますので、現内閣におきましては、全力を注いでこの消費者物価の問題を解決したいと存じておるのであります。
 それで、お尋ねがありました第一の問題、国鉄料金以外の公共料金は押えるかどうかというお話がありましたが、これは施政演説でも申し上げましたとおり、極力これを押える方針であるのでありまして、一般物価に影響を及ぼさないように努力するつもりであります。
 それから第二の、流通機構をよくすることによって物価を安定せしめ得るじゃないかというお話でありましたが、御説のとおり、日本の多年の商慣例、交通関係から、流通機構が非常に複雑であります。これを簡素化することが、すなわち物価を安定せしめるゆえんになると、こういうふうに考えております。たとえば、いま政府がやっております商業団地あるいはボランタリーチェーンとか、あるいは卸総合センターとかというようなものを一そう数多く設けまして、合理化、近代化を一そう促進したいと考えております。
 第三番目のお尋ねの土地の問題、地価の問題、これが物価の上昇に非常に影響しておることは申すまでもないことでありまして、何とかしてこの地価を抑制したいということを考えておるのであります。その点につきましては、昨年の十一月に地価対策閣僚協議会を設けまして、これが対策を決定いたしております。お話しのとおり、税制の問題あるいは地価の公示制度の問題、そういう点につきましては、来年度の予算におきましても、土地の税制の改正をやり、あるいは地価の公示制度もこれを確立したいということで、極力地価の騰貴を押えたいと考えておるのであります。
 第四番目のお尋ねの、生産性を向上せしめることが、すなわち物価を安定せしめるゆえんでありますので、せっかく生産性を向上しても、それが物価、商品価格を下げないというようなことではいかぬじゃないかというお話がありましたが、もうお説のとおりでありまして、その点につきましては、生産性が向上することによって余剰価値が生まれれば、これはもちろん賃金も上げますし、配当もよくしますが、同時に、この販売価格を低くするということを極力やってもらいたい。それは独占禁止法によって活動するし、あるいは競争条件を整備するとかいうような方法によってやりたいと思います。しかし、なおそのせっかくの価格が高いようであれば、あるいは輸入を奨励するとか、あるいは関税を引き下げるとかいうようなことによって物価を下げたいというような方針をとるつもりであります。(拍手)
    〔国務大臣床次徳二君登壇〕
#13
○国務大臣(床次徳二君) 沖繩の二月四日に予定されるストにつきまして、日米琉の話し合い等によって解決すべきではないかという御意見でありますが、まことにさようであります。今回のスト、これは政治的ストの性格を持っておるものでありまして、まことに遺憾なことと考えております。政府におきましては、琉球政府に対しまして、これが回避を強く要請しておる次第であります。
 なお、政府といたしましては、B52に対しまして沖繩住民の抱いておりますところの不安を除去するために、米国政府に対しまして善処方の要請を行なってきておることは、先ほど総理からも御答弁のありましたとおりでありまして、沖繩の関係団体がこの際ストを回避し、慎重な行動をとられることを期待しておる次第であります。
 なお、原潜の入港によるところの海水の汚染等の問題につきましては、政府といたしましても、正式要請がありますならば、技術者を派遣する等、今後住民の不安解消のための協力をしていきたいと考えております。
 また、労働布令の問題につきましては、今後米国と話し合った上で日本側の意見を十分に反映させまして、沖繩の軍労務者の福祉向上のために尽くしたいと思っております。特にこの労働布令につきましては、日本政府が米国政府に対して伝えてまいりましたところの見解が反映されまして一時施行延期になったことは、適切な措置であったと考えております。
 御指摘のとおり、今後は布令問題に限らず、沖繩住民の福祉に重要な影響を及ぼす制度につきましては、たとえ米国に沖繩の施政権がありましょうとも、あらかじめ米国から公式、非公式に日本政府の協力の要請がありましたならば、日本政府といたしましては、できるだけ協力をいたしたいと思っておるのであります。また、現在の段階では、こうした日米間の信頼の上に立って協力が行なわれて、それが沖繩住民の福祉に役立つものであり、ひいては沖繩問題を円満に解決するものであると考えております。今日におきましては、地元にあります諮問委員会も、このために非常に役立っておるのでありますが、政府といたしましては、ただいまのように、今後一そう米国政府に対して日本側の意向を十分に伝えまして、そうして解決を進めてまいりたいと考えておる次第であります。
 なお、公務員の給与に関する御意見がありましたが、給与が勤務能率の向上を考慮しつつ決定されなければならないということ、まことにお説のとおりでありまして、今後とも、公務員の給与に関連いたしまして、能率の向上につとめてまいりたいと思います。
 なお、人事院の勧告制度につきまして、再検討すべきではないかとの御意見でありますが、公務員給与の改定は、中立的第三者機関である人事院の勧告を待って決定する仕組みになっており、勧告がありますならば、それを尊重し、総合的に措置することが適当でございます。しかし、勧告の時期とか方法とか予算計上等の措置などに関しまして、公務員給与の決定の仕組みを改善すべく鋭意検討いたしておりますが、その場合におきましても、人事院の勧告制度の基本に立脚して考えることにいたしております。
 なお、さしあたって来年度の予算の編成にあたりましては、給与改善の所要財源の計上のしかたに一つの改善を加えておることは御承知のとおりであります。
 また、公務員給与と民間企業の賃金との関係でありますが、現在の公務員給与は民間追随主義をとっておりまして、公務員給与が民間に先立って引き上げられることはないのでありまして、したがって、公務員給与の決定が民間賃金の引き上げに直接影響を及ぼすことはないと考えておりますが、一般的な賃金と物価の問題につきましては、別に経済企画庁において調査をいたしておるところでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#14
○議長(石井光次郎君) 楯兼次郎君。
    〔議長退席、副議長着席〕
    〔楯兼次郎君登壇〕
#15
○楯兼次郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、佐藤内閣の施政方針に対する質問を行ない、その諸施策についての問題点を国民の前に明らかにしてまいりたいと思うのであります。(拍手)
 まず、財政経済の基本ともいうべき本年度政府予算案について質問いたします。
 資本主義社会における国家財政の役割りは、第一に景気調整的機能であり、第二に所得の再配分的機能であり、第三には資源の適正配分機能の三点に集約されます。しかも、これが三位一体となって機能を発揮するところに健全なる経済発展が期待でき得るのであります。しかるに、四十四年度予算案はそのいずれをも全うしていないところに、私は佐藤内閣の政治の貧困を見出すのであります。
 私が指摘をする四十四年度予算案の悪しき特徴の第一は、景気刺激、財政インフレ型予算にあります。来年度の経済財政の運営につきまして、その刺激的要因を慎むべきことは、政府の予算編成方針ばかりでなく、財政制度審議会、資金運用審議会、物価安定推進会議等々随所で注文がなされてまいったのであります。しかるに、一般会計規模におきましては、来度年の経済成長率一四・四%をはるかにこえて、一五・八%の大幅な伸び率を計上しているのであります。また、財政投融資は一四%の伸び率であり、地方財政計画は一八%にも拡大をし、来年度財政全体はきわめて刺激的であります。とりわけ、一般会計の中身におきましても、道路予算を中心とする公共事業費は一五・四%の異常な伸び率となり、また財政投融資計画は、各機関の自己資金も含めると約五兆円に達し、財政インフレは必至であると思われるのであります。しかるに福田大蔵大臣は、一般会計のみを摘出して、政府財貨サービス購入は一二%の伸びにすぎないから、景気警戒中立を貫き通したなどと詭弁を弄しておるのであります。このような態度は国民に対する侮辱であり、かつ、きわめて無責任といわなければならないのであります。(拍手)佐藤総理、福田大蔵大臣は、はたしてわが国の経済運営についていかなる基本的態度を持っているのか、国民の納得する見解を賜わりたいのであります。
 四十四年度の予算案の第二の悪しき特徴は、安保治安対策型予算という点であります。一昨年の日米共同声明以来、佐藤内閣は日米安保条約の長期堅持を明らかにし、かつ、沖繩の核つき基地自由使用返還をほのめかし、これを国民合意として誘導しつつ、安保条約を核安保、アジア安保に拡大発展させようとしていることは明瞭であります。とりわけ、過般の日米共同声明第五項並びに第六項におきましては、南ベトナムをはじめとするアジアの反共諸国に対して、政治的、経済的、軍事的援助の拡大を約束したのでありますが、ニクソン新大統領の出現によって、この方向は一そう強化されようとしているのであります。四十四年度予算案では、特に反共政権のてこ入れ費ともいうべき海外経済協力費は約百億円にのぼり、一七・四%という大幅な伸び率を示しているのであります。また、日米安保条約による軍事力強化の義務に伴い、自衛官六千人の増員、一機二十億円もする戦闘爆撃機F4Eファントムの購入とその国産化など、防衛費は国民生活関係をはるかに上回る伸び率を示しておるのであります。これは、政府が一昨年来強調してまいりました財政硬直化を一そう促進するものであると同時に、佐藤内閣の歴史に憲法違反の犯罪実績をまた新たに一つつけ加えたことを意味するものであります。(拍手)
 さらにまた、一年後に迫りました安保改訂期に備えて、機動隊及び公安警察の大幅な増員をはかるなど、公務員総定員の五%削減とはおよそ逆行する方向を強めておるのであります。私は、ここに佐藤内閣の反動的本質が露骨にあらわれていると考えるのでありまするが、力による社会秩序の維持は早晩力によって破れ去ることは、世界の歴史がその教訓としてわれわれに教えておるところであります。(拍手)
 四十四年度予算案の第三の悪しき特徴は、放漫総選挙対策型予算という点であります。佐藤内閣と自民党は、来年度予算編成にあたって、一兆二千億円にのぼる自然増収という名の税の増徴を基礎に、自民党の支持基盤たる各種団体におおばんぶるまいを行なったことは、すでにマスコミ等からも鋭く批判されておるところであります。その端的な例が各種補助金であります。行政管理庁は、昨年八月の補助金に関する監察結果において、各省庁の民間団体への補助について、三十二件にわたって改善命令を行ない、うち十三件については廃止を勧告したのであります。しかるに各省庁は、自民党の圧力によっておくめんもなく前年度並みの予算要求を行ない、ふしぎなことに、大蔵省もまたその予算化を全面的に認めたのであります。私は、ここに自民党と高級官僚との癒着、行財政の私物化を発見するのであります、さらに、各閣僚、自民党幹部との復活折衝の過程におきましては、総選挙への配慮を軸といたしまして、公共事業費、恩給、農政費、財政投融資等、自民党の票田との関係における復活財源は、一般会計及び財政投融資を通じて実に千六百七十億円に達したのであります。かくのごとき放漫と党利党略は、日本政治の非近代的側面を物語るものであります。(拍手)佐藤総理は、内閣及び自民党の最高責任者として、かかる民主政治の原理の否定につながる行動に対し、いかなる責任を痛感しておられるのか、その所見を伺いたいのであります。(拍手)
 四十四年度予算案の第四の悪しき特徴は、物価上昇、国民生活破壊型予算という性格であります。政府の経済運営の基本的態度並びに予算編成方針におきましては、来年度予算案において物価の安定を最大の課題に置いているのであります。もともと、経済見通しにおいて、来年度は五%程度の消費者物価の上昇を見込んでいること自体、基本的に矛盾をいたしておるのであります。この点について、昨年末の物価安定推進会議は、定期預金金利に近い上昇を示しつつある状況は明らかに異常であると指摘しているのであります。しかるに佐藤内閣は、その経済見通しで見込んでおりまするように、五%程度の物価上昇はしごく当然であるという基本的態度をとっておるのであります。すでに佐藤内閣が成立して以来消費者物価は一七%も上昇し、四十四年度中には二五%にも達するのではないかと思われるのであります。これは物価の安定を掲げながら、全くその政策的努力を放棄していることを物語るものであります。しかるに、福田蔵相は、公共料金の引き上げを国鉄旅客運賃のみにとどめたことをもって物価安定なれりとしているのでありますが、このような理由では、自分自身をも納得させることができないでありましょう。物価安定推進会議におきましては、国鉄を例にとりつつ、公企業は本来企業性を前提とした独立採算性を貫くことは困難であり、これを利用者の負担に帰することは適当でないと明確に指摘しているのであります。総理大臣の諮問機関たる物価安定推進会議の意見が、かくもむざんにほごにされるということになれば、国民は一体何を信用し、だれを信頼すればよいのであるか、全くとほうにくれざるを得ないのであります。国鉄運賃一五%の値上げだけでも物価上昇見通しをさらに押し上げ、経済企画庁の試算によれば、消費者物価五・三%の上昇は免れないことが明らかにされているのであります。そればかりか、国鉄に続いて私鉄、バス、タクシー等の値上げ申請もなされており、すでに一月二十日には十九社に及ぶ地方鉄道、バスの値上げを運輸大臣は認可しておるのであります。
 しかも、政府の物価政策にはきわめて幼稚なトリックが隠されておることも見のがすことはできません。すなわち、国鉄運賃の値上げ以外にも、第一に電話料金の事実上の値上げを無視するわけにはいかないのであります。郵政省と電電公社は、当初一三・五%の電報、電話料金の値上げをもくろんだのでありますが、政府の公共料金抑制策によって、直接的な料金値上げは見送られたのであります。しかるに、それにかわって、基本料金の段階制を改正し、二段階ごとに百円から百五十円、つまり、平均三〇%の値上げをすることによって、平年度三百億円の増収を見込んでおるのであります。
 第二は、消費者米価の問題であります。政府は、来年度予算案において、生産者米価、消費者米価について、両米価の水準据え置きを決定しておるのであります。このことは、相互米価主義を前提としており、生産費所得補償方式による生産者米価の引き上げが、直ちに消費者米価にスライドして値上げされ、消費者物価の上昇に連なることも明らかであります。このことは、先日の総理の施政方針演説でも、公共料金は極力抑制する――先ほどの答弁と一緒であります。米価は据え置く方針であるなどと、極力とか方針等のことばによってもその自信のなさがうかがわれるのであります。(拍手)
 このほか、企業合併による寡占化の過程を通じて価格カルテルによる独占価格、管理価格の強化は必至であり、さらに、地方公営企業の各種料金の値上げ等々、四十四年度においてとうてい五%程度の消費者物価上昇にとどまる見通しはないのであります。しかも、これらの物価上昇の基調は政府主導型にあることは、菅野経済企画庁長官さえもみずから認めているところであります。国民は、いかにして物価上昇を食いとめるかを必死に望んでおるのであります。佐藤総理は、その政治生命をかけても物価上昇を食いとめる決意を明らかにすべきだと考えるのでありますが、総理並びに財政関係閣僚の明快な答弁をお願いいたします。(拍手)
 以上、私は、四十四年度予算案における国民不在の反動的性格を明らかにしてまいったのでありますが、今日、わが国を取り巻く国際経済環境はきわめて激動と変転の渦中にあると思うのであります。中でも、ことしじゅうにはベトナム戦争の終息が実現するものと考えられまするし、これに関連するアメリカ経済の景気後退や鉄鋼をはじめとする輸入制限が一段と強化され、また、対日自由化の圧力も一そう強まるでありましょう。佐藤総理は、その所信表明におきまして、国際収支の黒字基調を強調しておるのでありますが、外貨準備高二十七億ドルの中身はきわめて貧弱であると考えざるを得ないのであります。すなわち、四十三年度の外貨準備高の増大は、ベトナム特需による輸出の拡大とともに、長期、短期の資本流入及び株式投資によるものでありまして、その基礎はきわめて不安定というべきであります。(拍手)来年度の国際経済の停滞傾向並びにわが国の輸出入実績から見るならば、少なくとも四十億ドル台の外貨準備高を確保することが必要と考えられるのでありますが、福田大蔵大臣は、わが国の国際収支の健全化についていかなる所見を持っておられるのか、答弁を求めるものであります。
 次に、私は、全国民の関心の的となっている税金問題について、関係閣僚の所見をお尋ねいたしたいのであります。
 さきにも触れましたように、来年度の税の自然増収は一兆二千億円計上されているのでありますが、一般的には、さらに二千ないし三千億円の上積みが見込まれているといわれるのであります。これは端的にいえば、税金の取り過ぎということに尽きるのであります。このように過大な自然増収にもかかわらず、四十四年度の減税額はわずか千五百億円にすぎないのであります。しかも、租税体系は直接税から間接税方式に移行しつつあり、これは大衆収奪の一そうの強化となり、租税負担の公平の原則はますます失なわれることになるのであります。
 まず、所得税の課税最低限は、勤労者五人世帯の場合、四十四年度は九十一万五百十八円で、若干の引き上げがなされたのでありますが、いまだに生活費にまで課税されていることには変わりありません。しかるに、配当だけで暮らしている不労所得者には二百八十四万円まで税がかかりません。課税最低限は給与所得者の三倍以上も高いという不公平が許されているのであります。しかも、四十四年度は、サラリーマン減税と称して十二年ぶりに税率の緩和がはかられたのでありますが、はたして税金が安くなるかは疑問なのであります。総理府の推計によれば、四十三年度の平均的サラリーマン世帯の年収約百四万円から差し引かれる所得税は二万六千円でありますが、四十四年度に一〇%のベースアップがあって、年収約百十四万円になった場合には、逆に所得税は二千四百円ふえる結果となるのであります。これではとうてい減税などとはいえないのであります。(拍手)このことは、昨年の税制調査会の答申を福田大蔵大臣の裁断において三分の一に値切ったことにその原因があるのであります。さらにまた、課税最低限の極端な低さのために、所得税の納税人員は、戦前の八十万人程度から、今日では二千百万人以上に増大し、その九〇%が給与所得者で占められており、いかに大衆課税が強化されておるかを示しているのであります。
 わが党は、すでに再三にわたってその改善を主張してきたのでありますが、もはや大衆重課に支柱を置く租税体系は根本的に改める時期に来ていると考えるのであります。とりわけ、サラリーマン減税のためには、給与所得控除を大幅に引き上げ、税率を大幅に緩和しない限り、ほんとうの減税はあり得ないと思うのであります。
 このような給与所得者の過重負担に比較いたしまして、法人所得の場合は、相次ぐ減税政策の結果、法人税率は低下し、昭和三十三年の四〇%から、十年後の今日では三五%に引き下げられているのであります。また、三十五年度に比べて四十二年度の法人所得は二・六五倍になったのでありますが、法人税額は二・二五倍にすぎないのであります。しかも、大企業中心の租税特別措置によって、四十三年度国税だけで二千六百五十億円、地方税を合わせると三千五百億円からの減税措置がとられ、大企業ほど特に優遇されているのであります。政府は、大企業優先に対する批判をそらすために、四十四年度予算においては交際費に対する課税をちょっぴり強化したのでありますが、他方、地方税においては、高級料亭やキャバレーの料理飲食税を引き下げ、大衆料飲税と同水準にするといった本末転倒をやってのけているのであります。これら政府の税制は、負担公平という徴税の原則をはたはだしく踏みにじるものであります。政府が再三口にしている財政硬直化を打開するためにも、いまこそ法人税課税を大幅に強化し、租税特別措置の抜本的改正をすべきだと考えるのであります。
 このように、四十四年度税制改正は、政府の減税キャンペーンにもかかわらず、一向に大衆収奪が軽減される見通しはないのであります。今日の租税体系の矛盾の解消と大衆課税の軽減について、福田大蔵大臣の明快な答弁を賜わりたいのであります。(拍手)
 次に、私は、四十四年度予算案との関連における公務員給与並びに人事院勧告について所見を伺いたいのであります。
 政府は、人事院勧告を待つことなく、公務員給与について五%の引き上げを七月実施を前提に四百五十億円を計上しているのでありますが、このことは、政府みずからが初めから人事院勧告を無視し、かつ、勧告の完全実施を放棄したことを意味するものであります。しかも、給与引き上げ五%ということは、政府の四十四年度の消費者物価上昇見込みと同じであります。かりに五%が引き上げられたとしても、公務員労働者の生活水準は、物価高騰の中でかえって低下せざるを得ないのであります。しかも、政府のこのような法律無視が強行されることは、いわゆる所得政策の具体的実施に一歩を踏み出したものといわざるを得ないのであります。
 すでに明らかなように、政府は昭和三十九年度以降かつて一度として人事院勧告を完全に実施したことはなく、このため、公務員労働者の対政府不信はつのるばかりであり、現在では行政運営の遂行にも支障を来たしているのであります。わが党は、政府の法律違反、理不尽な態度に対して再三にわたって猛省を促してきたところであり、特に、昨年末の衆議院の内閣委員会におきましては、四十四年度においては勧告の完全実施をはかるべきであるとの決議が全会一致で採択され、同時に、給与担当大臣の床次総務長官も、その趣旨の実現に努力すると答弁いたしておるのであります。福田大蔵大臣は、この際、給与の五%引き上げと七月実施を前提とした予算編成の法的根拠を明らかにすべきであります。さらに、給与担当としての総務長官は、人事院勧告の完全実施にいかなる努力を払う所存であるか、明快な答弁を賜わりたいのであります。(拍手)
 次に、私は、四十四年度予算案との関連を持たせつつ、当面する農業問題について、数点の疑問点を明らかにしていただきたいのであります。
 政府は、来年度予算案の編成にあたり、食管制度の根幹は堅持すると言明してまいったのでありますが、自主流通米制度、作付転換制度等は明らかに食管制度の根本をくずすことになりかねないのであります。
 特に、自主流通米制度においては、総配給量の五分の一にも達する百七十万トンを政府買い入れから除外し、これが自由価格で流通することになると、食管制度の根幹を堅持したとはとうてい考えられず、重大な公約違反といわざるを得ないのであります。しかも、自主流通米制度が実現したならば、やみ米が公認され、直接統制はなしくずしに崩壊することになり、さらに消費者米価も上昇し、米価の変動が激しくなり、国民生活に甚大な影響を与え、生活不安の原因になるであろうことは明らかであります。さらにまた、四十四年度予算案における政府の買い入れ量は七百五十万トンに制限されており、これに自主流通米分の百七十万トンを加えても九百二十万トンにしかならないのであります。すでに四十三年産米の政府買い入れ量は一千万トンをこえようとしておりまするが、来年度においてこのような低い買い入れ見込みを立てること自体、政府・自民党が食管制度の破壊をねらっていることが明らかであります。したがって、私は、政府が公約どおり食管制度を堅持し、自主流通米制度を取りやめ、政府買い入れは実態に即して検討すべきであると考えるのでありますが、福田大蔵大臣、農林大臣の御所見を賜わりたいのであります。(拍手)
 さらに、私は、今日の日本農業はきわめて危険な曲がりかどに立っていると思うのであります。政府は農業基本法を制定して以来、農業生産の選択的拡大と言い、畜産や果樹、野菜など、需要の伸びている農産物の生産拡大を言ってきたのであります。しかしながら、農業経営の現状を見ますると、農業生産は米だけに集中し、畜産物の伸び率は、昭和四十年代に入ってから全く伸び悩み、酪農基地になるはずであった北海道でも、米作に生産が集中しておるのであります。これは、米には食管法という農民が安心して生産できるささえがあるのに反し、米以外の農畜産物の保障は全く放置され、逆に輸入自由化政策によって生産農民に不安を与えてきたことに原因があるのであります。したがって、政府は、農民が多角的な農業生産にいそしむことができるように、特に米以外の農畜産物を対象とする価格政策、生産対策の強化等を強力に推し進めるべきであります。
 しかるに、政府の総合農政は、米以外の農畜産物に強力な施策を講ずるのではなく、逆に米の生産を抑制し、米価を押え、食管制度の根幹をくずして、農民にとって唯一の柱まで崩壊させようとしておるのであります。政府の総合農政とは、結局は、米にしかたよることのできない農民に対して、米もつくるなということにならざるを得ないのであります。これは農民べっ視の典型であります。政府は、総合農政のもとにいかなる日本農業の発展を展望しておるのか、とりわけ、米以外の農畜産物に対する価格支持政策、生産対策をどのように強化しようとしているのか、農林大臣から農民が納得できる答弁を賜わりたいのであります。(拍手)
 次に、中小企業の問題についてお伺いをいたします。
 イザナギ景気といわれておる好景気の陰に、中小企業の異常な倒産が相次いでおるのであります。東京商工興信所の調査によりましても、昨年一年間の倒産は実に一万七百七十六件と最高を記録し、その負債額も、一千万円以上のもので七千九百七十四億円にものぼっておるのであります。表面はなやかな高度成長といわれる経済の中でも中小企業の倒産が続き、毎年その記録を更新しておるのであります。中には、数万円の金策に苦しみ、一家心中を行なった悲惨な事実もたびたび報ぜられておるであります。このような傾向は、今後大企業の産業再編成などの方向を見れば、さらに一そう強まる情勢にあります。このようなことは、一口に言えば、政府の政策が独占奉仕の経済政策で、陰に陽に中小企業が整理されざるを得ないという冷酷な結論を生み出しておるからであります。その証拠には、中小企業対策費は予算総額のわずか〇・六%で、四十三年度に続いて、まさにコンマ以下という扱いを受けておるのであります。
 一体、政府は今後の中小企業の状況はどのようなものになると見通しておられるのか。口では中小企業の育成と宣伝されるが、少ない予算で何をどう育成されるのか、具体的に十分納得できる説明をしていただきたいものであります。(拍手)
 この際、あわせて石炭政策についてお伺いいたします。
 昭和三十七年以来三千億円を費やし、三次にわたる石炭政策を行なったが、ことごとく失敗し、今日のごとき破局を迎えました。その原因を何と考えておるのか。石炭政策の根本的対策は、鉱区の統合、流通機構の一元化、雇用の安定、保安の確保であります。しかるに、今日の措置は、現行の企業形態をそのままにして、四千二百億円も投じようとしておるのであります。これは大企業金融機関の救済であって、産業政策ではありません。(拍手)
 わが党の主張する国有、公社化は、西欧資本主義国においてもとられておる政策であって、世界の常識であります。政府は過去の失敗を再び繰り返そうとしておるのでありますが、総理は今次政策を抜本策と考えておるのかどうか、お尋ねいかします。
 次に、政府の交通事故対策についてお聞きをしたいと思います。
 昨年一年間の交通事故による死亡者は、実に一万四千人に達しております。負傷者の数は約七十万人といわれ、またもや史上最高となったのであります。そして、いままでの交通事故によって親を失った遺児が、小中学校だけで二万八千人余りという状態であります。この瞬間にもおそろしい交通戦争が続いておるのであります。しかし、人々の心が慢性化するということは、つくづくおそろしいことだと感ずるのであります。もし一日三十九人もの殺人事件が毎日起こったとしたならば、一体社会は、政府はどのような反応を示すでありましょうか。自動車の急激な発達、道路、都市計画などの立ちおくれというアンバランスに対して、政府には全くその基本政策の持ち合わせがないのであります。その上、大都市の交通規制問題にあらわれておりまするように、運輸省、自治省、警察当局と、それぞれまちまちな対策を出して、官僚のなわ張りに固執しているのであります。都市における交通の一元化の必要は長年叫ばれているにもかかわらず、いまだに解決の糸口すら見出せないのであります。かくて、日本ほど政治の場で交通問題を軽く扱っておる国はないのであります。まぼろしの仮想敵を想定してばく大な防衛費を惜しげもなく支出する政府が、一日四十人も死んでいく交通戦争にはきわめて緩慢な対策しか立て得ないとは、人間尊重のスローガンが泣こうというものであります。(拍手)総理は勇断をもって抜本的対策を立てるべきであると思うが、総理並びに関係閣僚にお伺いをいたします。
 最後に、佐藤総理自身の政治の基本姿勢についてお尋ねしたいと思います。
 佐藤総理は、初めて首相の座についたときから、あなたの基本的な政治信念として、政治の姿勢を正すということをしばしば述べてこられたのであります。しかし、その具体的な施策として打ち出した政治資金規正法の改正は、総理みずからがたびたび選挙制度調査会の答申を尊重する、あるいは小骨一本抜くことはしないと言明してきたのに、いまだに具体的に法案が提案されないのであります。総理は昨年の自民党大会で、総裁に三たび選ばれました。三選以後、総理は、身命を賭して懸案問題と取り組み、その解決をはかることをたびたび言明されておるのであります。こうした総理のことばから、あなた自身、総裁公選に四たび立候補されることはまず念頭にないと推察をされるのであります。もしそうであるとするならば、この国会が総理としての最後の国会になるやもしれないのであります。私は、佐藤総理が、おそらくいまでも、政界浄化のために、選挙制度調査会の答申を尊重して、政治資金規正法の改正案を提案したいという意思を持っておられると解釈するのであります。
 佐藤総理、あなたは、あなたの手で行なわれるであろう最後の解散、総選挙に間に合うように、党内の俗論を退け、き然として、選挙制度調査会の答申どおり、政治資金規正法改正案をすみやかに国会に提出することを強く要求いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#16
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 来年度予算を、これは反国民性だ、こう言って頭からおしかりを受けました。そうして、この四十四年度予算については四つの性格づけがなされました。どうも、私、聞いておりまして、何か既成概念を無理にこしらえて、その中に予算の数字を押し込んだような感じが実はしてならないのであります。いずれ、詳細につきましては大蔵大臣からお答えをいたします。
 で、私は、一般的に申しますが、この来年度の予算は、いわゆる総選挙対策予算じゃございません。適度の財政規模の中に、国民から期待されている数々の施策を、均衡を留意しつつ適切な財政配分をしたのでございます。それがただいまのようにひがんだ見方をされるようであります。さようなものではありません。で、財政の基本的態度なり、物価に対する強い決意につきましては、すでに所信表明におきまして明らかにしたとおりでございます。重ねて申し上げることはございません。
 この際、楯君に私のほうからもお願いいたしたいのですが、何ごともすべて非である、いかぬ、こういうような態度でなくて、やっぱりいいことはいいとして、建設的な御意見をいただき、そうして、この場を通じて、これは国民の皆さんがみんなお聞き取りになるのでありますから、国民各位に正確に問題の所在を明らかにしていくようにしていただきたいと思います。以上のお願いをいたします。
 ところで、物価の安定についての政府の態度は一体どうだ、こういうことでございますが、これは政府に課せられた重大施策、かように私ども考えております。したがいまして、今回の予算におきましても、この点について留意し、また、とかく抽象的な答弁になりがちなこの物価対策でございますが、今回くらい対策を具体的に説明したことはないように思います。いま物価安定を要求される楯君は、私どもは実は大英断をもって生産者米価、消費者米価、さらに麦や塩は上げない、据え置く、かような決意をしたのでありますから、これなどにも進んで賛成していただきたいと思います。御承知のように、物価の問題は、政府だけがいかにがんばっても、これは十分の効果をあげるものではありません。国民の皆さんの御協力なくしては、ましてや有力なる社会党の協力がなければ、これはうまく成果があがるものではございません。そういう意味で、とくと御留意を願いたいと思います。(拍手)
 次に、石炭政策について、今回のが抜本策か、こういうお話がございますが、これは中小企業並びに石炭政策につきましては、大平君からお答えすることにいたします。私は、今回の対策が抜本策であってほしい、かようにだけ、私の期待を申し上げておきます。
 次に、交通事故につきまして、さすがに楯君は出が出であるだけに深い関心を示しておられる。私も同じように、実は交通問題では頭を悩ましております。ことに、御指摘になりましたように、一日四十人も死者が出る、これはたいへんなことだ、かように考えております。
 で、問題は、やはり御提案にありますように、いま四つの目標を掲げて力を入れておりますが、総合的な施策を強力に推進していく以外には、これに対する対策はないように思います。ことにまた国民総ぐるみ運動というものも展開して、国民の積極的な協力を願っております。総理府に設置されております交通対策本部、これを通じまして、さらに徹底するように、一そう強力に防止対策を進めてまいりたい、かように考えております。これも御協力をお願いいたします。(「何を言っているか、わからぬぞ」と呼ぶ者あり)おわかりにならなかったら、よく勉強していただきたい。
 最後に、政治資金規正法についてのお話がございました。私は、今回の施政方針の演説におきましても、政治の姿勢を正すということを申しました。それには、ただいま御指摘になりましたように、政治資金規正法、これはどうしても私は成案を得たい、成立を願っておるのでございます。また、楯君から要求されるような、完全なもの、りっぱなものを成立するように要求する、かように仰せでございますが、私は、現状におきましてはそういうものはなかなかできない、しかし、一歩でも前進するような――まだ程度の低いものすら実はでき上がらないのでありますから、一歩でも前進するような案を皆さん方の御協力によりましてぜひ成立さしていただきたい、これが実現可能な方法だ、かように実は考えております。いずれ国会の御審議を願うつもりでございますから、どうかよろしくお願いいたします。(拍手)
    〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#17
○国務大臣(福田赳夫君) 楯さんから、昭和四十四年度予算が景気刺激インフレ型だときめつけられ、その理由として、予算の総ワクが膨張したということを言われておりますが、この膨張の度合いは、楯さんがお考えになっているほどのことではございません。膨張した最大の原因は、地方交付税交付金がふえたのでありまして、これを差し引いて考えますると、ちょうど経済成長率の一四・四%、非常に適当なところでございます。
 それからなお、内容において公共事業費が多過ぎるじゃないかというお話でございますが、必ずしも私はこれは多いとは思っておりません。いま、社会資本の立ちおくれということを考えてみますると、この問題にこそ私どもは大いに力を入れなければならぬ、かように考えております。(拍手)今日の道路事情を考えてみましても、あと五年もたちますれば乗用車は三倍になるという。五年たった後に、あのときの国会は何していたんだといって非難を受けるような事態が私は考えられると思う。そういうようなことを考えますると、公共事業費は決して過当にふえたものとは私は考えておりません。
 お話しのように、財政の任務、これは所得の再配分もありますし、資源の配分もあります。また、国策遂行、これもしなければならぬ。しかし、お話しのように、景気の調整にこの財政を通じて留意しなければならぬ。これは私も十分心得ておるつもりでございます。そういう観点から、国債政策の運用、景気のいいときには国債の発行額を減らす、節度を持って公債政策を運用するという点に特に配慮いたしておる点に御注目いただきたいのであります。
 第二に、この予算を安保治安予算というおきめつけでございまするが、防衛力を充実した、自衛隊を六千名ふやす、また、新戦闘機を採用する、これはお話しのとおりでございます。しかし、わが国もいつまでもアメリカのかさの下でのうのうとしているわけにはまいりません。われわれは自衛力を充実する、これを補うに安保体制をもってする、これでわが国の安全をはかっていくのでありまして、自衛力を国力に応じて漸増しなければならぬことは、私どもは、当然のことである、かように考えておるのであります。
 国内の警察につきましても同様でありまして、交通のああいう事故の状態――いまお話がありましたが、ああいう状態を見ましても、また、最近の学生の騒動等を見ましても、警察力を強化する、これは政府の当然なさなければならぬところの義務であります。
 また、対外経済協力にこれは力を入れ過ぎるじゃないかという御批判でございまするけれども、いま日本の国力というものが経済的には世界の第三位まで来た、こういう際におきまして、わが国がわが国だけで繁栄するわけにはいかない。近隣諸国、低開発国にわが国はわが国応分の協力をいたしまして、初めてわが国の繁栄も安全もかちえられるのであります。さような観点から対外経済協力に力を入れる、これもわれわれが特にこれから力を入れなければならぬ点であるとこそ思うのであります。
 また放漫財政であり、総選挙型であるという御批判でございまするが、私といたしましては、限られた額の中において最も効率的にこれを配分いたしておるというふうに考えております。第一に、社会保障を充実した。これは先般も申し上げたとおりであります。また公共投資に力を入れた。そのほか新農政、中小企業、また輸出の増進、海外経済協力、さようなものに特に重点を置いております。総選挙型ではありませんけれども、国民は歓迎してくれる、かように考えております。(拍手)
 さらに、物価上昇、国民生活破壊型の予算である、こういうお話でありまするが、この点につきましては、総理からもだんだんとお話がこれあり、また、先日も申し上げたとおり、私ども予算の編成にあたりましては、経済の成長と相並んで物価の上昇に最大の重点を置いておる。(発言する者あり)公共料金据え置きにつきましても大いに努力をしておる。また、総需要の抑制につきましても努力をいたしておる。低生産性部門の近代化、流通条件の改善、この物価上昇の抑制については最大の関心を払っておるということを申し上げたいのであります。
 なお、国際収支の内容につきまして御警告をいただきましたが、私は御警告そのとおりにちょうだいいたしたいと存じます。四十三年度につきまして国際収支がたいへん改善された。しかしながら、その内容を検討してみますると、必ずしも楽観を許さない、手放しでは喜べない問題が多々あります。お話しのとおりであります。私どもは、さらに国際収支の内容の健全化をはかり、四十億ドルも外貨を保有せよというお話でありまするが、さような目標に向かって邁進をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
 税の問題につきましては、私はこの前大蔵大臣をいたしておるときから申し上げておるのでありまするが、やっぱり経済を安定させるためには企業に蓄積を与えなければならぬ、また家庭に蓄積を与えなければならぬ、さように考えております。したがいまして、減税政策につきましては多大の関心を寄せておるのでございまするが、しかしながら、ただいま御承知のように公債を発行しておる財政状態でございます。したがいまして、この公債政策運営という観点からいたしますると、自然増収が出た、それをあげて減税にというわけにはまいらない。しかしながら、そういう状態下におきましてもこの減税につきましては配意はいたしておるのでありまして、御承知のように、課税最低限を九十三万円まで引き上げることにいたしましたが、大体国際水準まで来た、かように御了承を願いたいのであります。また税率の調整等を通じ、また必要経費の控除の拡大等を通じまして勤労者に特に配意をいたしておる点、御了承願いたいのであります。
 また、税に関連いたしまして、大企業には寛であるが、中小企業に酷であるというようなお話でありますが、これは逆なんです。ただいま、御承知のように大企業に対する法人税の税率は三五%でありまするが、中小企業に対しましては二八%、非常に格差を設けておるのであります。法人税全体につきまして課税を強化したらどうだという意見が聞かれます。これは非常に根本的な問題に触れますので、今回は法人税率には触れておりませんけれども、御指摘のように交際費の課税をいたす等、若干の配意はいたしておるのであります。
 特別措置につきましての御批判がありましたが、これは今度の税法の改正におきましても、かなり整理はいたすのであります。しかし、残っておる特別措置の大半は貯蓄――零細貯蓄の保護であります。いま国の経済政策を進める上において必要であると、かように考えております。
 公務員給与につきまして、七月から五%上げという予算が組まれておるのであります。ありますが、私といたしましては、人事院勧告という制度がある、なるべくこれの完全実施を早くしたいというふうに考えておりまするけれども、しかし、これは限られた財源の中で他の諸経費とのバランスを見ながら考えなければならぬ問題と考えておるのでありまして、先ほども申し上げましたように、四十四年度におきましては七月実施五%といたしましたが、これはなお不足があるということは考えております。それは予備費の中でまかないたい、かように考えるのでありまするが、人事院の勧告を見て具体的な処置はきめなければならぬ。予算は一応そういうふうにいたしておる、かように御了承願いたいのであります。
 なお、自由流通米につきましていろいろお話がありましたが、私といたしましては、買い入れ制限はいたす考えはありません。したがいまして、食管制度の根幹をこれで変えるというようなことに相なるとは夢にも思いません。さらに、作付転換が食管の根幹に何か触れるようなお話でございましたけれども、どういう事情でこの食管の根幹にこれが関係してくるのか、私には理解ができないのであります。また、自由米と政府買い入れ米との合計額を九百二十万トンというふうにいたしておりますのは、これは平年作を基準といたしまして、平年における政府買い入れ量を合計いたしますとその辺になる、さようなことでございます。これはまた農林大臣からもお話があろうかと思います。
 中小企業につきましてたいへん御心配のお話がありまするが、これは私どもも同様心配しております。ただ、最近の状況は、中小企業倒産の傾向が多少緩和されている。その件数におきましても、また金額におきましてもしかりであります。中小企業は、いろいろ御意見がありましたけれども、財政支出でこれを援助するというのになじまない。これはやはり税と金融なんです。税と金融面におきましてはかなりの援助をいたしているわけでありまして、ことに中小企業三機関、いわゆる三機関の融資総額のごときは、四十四年においては実に八千四百九十九億円に及ぶ配慮がされているということも御了承願いたいのであります。中小企業は、なお今度の予算におきましては振興事業団におきまして格別の配慮をいたすとか、信用補完制度を拡充いたしますとか、きめこまかい配慮をし、大企業と相並んで繁栄するように努力をいたしている。この点を御認識願いたい、かように存ずる次第であります。(拍手)
    〔国務大臣長谷川四郎君登壇〕
#18
○国務大臣(長谷川四郎君) お答え申し上げます。
 自主流通米と作付転換制度につきましてのお話でございますが、米穀の管理については、最近、米の需給事情、また、米穀の管理の現状にかんがみて、管理制度の根幹を維持しながら、事態に即応して所要の改善を行なうようにしているのでございまして、その一環として、一定の規制のもとに政府を通さない米の流通を認めようとすることを考えているものでございます。また、従前どおり事前の売り渡し申し込み制による政府の買い入れを継続するとともに、食糧管理の立場から行政的な規制のもとに、生産者が農協あるいはまた指定集荷業者を通じまして直接卸販売業者等に売り渡しまして、さらに小売り販売業者を通じて消費者に配給する道を開くというものであります。したがって、米の需給が大幅に緩和をいたしました今日において、このような米の流通を認めることは、食管制度の根幹をくずすこととはならないと考えておるのでございます。
 また、作付転換は、最近の米の需給事情から見て、米の生産を需給に見合ったものとするための米の生産調整措置でありまして、国民食糧の確保という点に触れるような措置ではない。なお、現段階において米の買い入れ制限を行なうことは考えておらないのでございます。
 次に、農業基本法につきましてでございますが、基本法の制定以来、政府が各般の施策の充実をはかってまいりまして、農業生産の増大と農家の生活水準の向上につとめてまいりまして、相当の成果があがったと思うのでございます。しかし、経済の高度成長をはじめといたしまして、農業を取り巻く事情が変化をいたしまして、また農産物の需給についても、米の生産が過剰となる一方、生産が消費に追いつかない農産物ができてまいりました。こういう事態に即しまして、従来の農政に反省を加え、基本法農政をさらに充実していこうとするのが総合農政であると考えておるのでございます。
 このような考え方に立って、食管制度については、現在の事情に即した、そして必要な改善を加えることが制度の根幹を維持するゆえんだと考えるのであります。また、現に農業生産額の約七割に相当する農産物について価格政策を行なっておるのでございますが、これをさらに適正に運営するようにしていきたいと考えております。(拍手)
    〔国務大臣大平正芳君登壇〕
#19
○国務大臣(大平正芳君) 最初の御質問は中小企業対策でございますが、中小企業は、内におきましては、労働力の異常な不足、需要構造が非常に変わってまいりましたばかりでなく、外におきましては、後進国の漸次追い上げが続くというような状況のきびしい環境のもとで、これに適応する力を政府としてはつけるようにお助けをしなければならぬ責任があると思うのでございます。
 そこで、先ほど大蔵大臣からもお話がありましたように、まず第一に、体質の改善のために思い切った金融の措置を講ずる。中小企業振興事業団ばかりでなく、政府関係金融機関全体を通じまして、相当ことしは思い切った融資をちょうだいいたしたのでございます。それから第二は、財政面からは、特に小規模の事業につきましては、近代化の補助あるいは機械を貸与する等の措置で体質改善を促進していく。それから、税制面からは割り増し償却制度あるいは準備金制度の活用等によりまして、これを促進するような措置を講じておるわけでございます。さらに技術の水準を高める、あるいは金融力をつけて信用を補完するというようなことも進めてまいっておるのでございまして、先ほど大蔵大臣からもお話がありましたように、これは財政面の表づらではなくて、全体として配慮いたしてありますので、予算上のパーセンテージだけで、政府が中小企業対策に冷淡であると御即断されないようにお願いいたしたいと思います。
 それから、石炭産業の問題につきましては、総理からもあらましお答えがありましたが、この間、石炭鉱業審議会から御答申をちょうだいしたのでございますが、この答申は八カ月もかかった答申でございまして、楯さんが御指摘の、改正問題を中心に長い間論議の末、いただいた答申でございます。
 この答申によりますと、石炭鉱業の再建は、企業の自己責任の原則を前提として進めるべきであるということを明らかにいたしております。政府も、この方針に沿って対策を実施してまいる所存であります。楯さんからは、公社案等の斬新な御提言もござひましたけれども、私どもは、特定の財源を石炭対策にちょうだいいたしております。その財源には限界があるわけでございまして、与えられた財源の中でやりくりをして、ベストな改正を考える自由しかないわけでございます。したがいまして、財源が無限にございますればいろいろなことが考えられますけれども、仰せのような方向をとりますと、あるいは財政依存をいたずらに高めるおそれがありはしないか、あるいは経営効率の上で問題が多いのではないかと考えておるのでございまして、私どもといたしましては、石炭鉱業審議会の答申の線で施策をさせていただきたいと考えております。この施策が、でき得れば最後のものでありたいということ、そういう決意でベストを尽くすのがわれわれの責任であろうと心得ております。(拍手)
    〔国務大臣原田憲君登壇〕
#20
○国務大臣(原田憲君) 楯さんにお答えを申し上げます。
 交通安全についての基本的な方策は、ただいま総理大臣の答弁のとおりでございますが、お説のように、昨年来、飛騨川事故等、交通事故が相次いで発生いたしましたことは、まことに遺憾にたえません。交通安全対策は、運輸行政の当面する最も重要な課題の一つでございます。
 このため、たとえば鉄道事故につきましては、その原因の総合的科学的な調査を行なう機関として、鉄道事故防止対策委員会を運輸省に設置し、鋭意検討を行なっておりますが、近くその結論が出されると思いますので、これに基づき、総合的な鉄道事故防止対策を樹立し、これを実行することにより、国民の全幅の信頼を得るよう最大の努力をいたす所存でございます。
 また、航空機事故につきましては、昭和四十一年の事故発生以来、特に重大な事故はございません。このことは、政府の安全施策が徐々に効果をあげてきておる結果と存じます。
 海上におきましても、従来の施策に加えまして、海上交通法等を用意いたしておりますが、これをもちまして十分な対処をいたしていこうと考えております。
 しかし、交通機関は今後ますます発達し、かつ、高速化する趨勢にございますので、人命尊重の根本理念に立脚しまして、関係各省庁とも緊密に連絡調整を行ない、御意見のように総合的な交通安全対策を積極的に行なっていきたいと考えております。(拍手)
    〔国務大臣河本敏夫君登壇〕
#21
○国務大臣(河本敏夫君) 電信電話の料金は、明年度値上げをしないことに決定したことは御承知のとおりでございます。ただし、現在の電話の料金体系は、施行せられましてから相当の年月を経過しておりまして、不合理な点が非常に多くなっております。
 そこで、今回この点を是正することといたしまして、改正案を用意しておりますが、その内容は、第一に現在十数段階あります基本料金を五段階に簡素化いたしますると同時に、若干引き上げることにいたしております。この点は御指摘のとおりでございます。ただし、この引き上げ分だけ近距離料金を引き下げることにいたしております。したがって、加入者の負担は、全体として一切増減はございません。(拍手)
    〔国務大臣菅野和太郎君登壇〕
#22
○国務大臣(菅野和太郎君) 物価問題につきましては、先ほど総理から力強くお答えがありましたので、私からこれ以上お答えする必要はないかと思うのでございますが、なお補足する意味でお答えしたいと思います。
 いま、消費者物価の上昇について、楯議員が、これは国民生活の破壊性があるのじゃないかというお話、これはもう私ももちろんそういうように心配しております。したがって、この消費者物価の問題につきましては、現内閣が全力を注いでこれが対策を討議しておるのであります。もちろん、消費者物価が上がることによって国民生活を不安定にするのみならず、外国との競争上においても不利である。いままでせっかく輸出が増進しておるのでありますが、この消費者物価が上がることによって輸出の増進を阻止するおそれがあるということで、どうしても消費者物価の上昇をとめなければならぬ。
 そこで、どうしてとめられるかという問題です。物価が上がれば賃金が上がり、賃金が上がれば物価が上がるというような、いま情勢になっておりますから、そこで、どうしても五%以内にこの消費者物価の上昇を押えなければならない。四十三年度が大体五・四%ですから、そうしますと、銀行の定期預金にほぼ近いパーセンテージになります。それでは預金する人がなくなるというような心配もありますので、そこで、どうしても五%以内に消費者物価の上昇を押えようということで、いま一生懸命にやっておるのでありまして、したがいまして、この消費者物価を押える道といたしましては、さしあたり、先ほどもお話がありましたとおり、従来の上昇が政府主導型だ、こういわれておりますから、まず公共料金を押えるということであります。そこで、国鉄料金以外の公共料金は押えるということで、先ほども電報、電信のお話がありましたが、郵政大臣からお話がありましたとおり、電報、電信のほうは押えた。それから麦、塩の値上げも押えたということになっておるのであります。最も一般物価に影響を及ぼすものは米価であります。米価が上がるたびに消費者物価は上がっております。でありますから、この消費者米価を押えるということが必要でありまして、消費者米価を据え置くという方針をきめております。先ほど総理からお話がありましたとおり、これは食管の関係で決定するわけにはいきませんが、据え置くという方針でやっておるのであります。
 なお、この消費者物価を押えるにつきましては、これは各省がやはり協力しなければならぬということになるのでありますから、先般も各省の大臣各位に御協力をお願い申し上げたのでありますが、先ほど総理からも言われましたとおり、これは国民の協力にもまたなければならぬということで、消費者物価を五%以内に押えるということに極力努力するつもりであります。(拍手)
    〔国務大臣荒木萬壽夫君登壇〕
#23
○国務大臣(荒木萬壽夫君) 楯さんにお答え申し上げます。もっとも、総理大臣、大蔵大臣、運輸大臣から御答弁もありまして、無用かとも思いますけれども、重複を避けまして蛇足を添えさしていただきます。
 第一は、政府は三年間で五%の公務員の定員削減を実施しようとしているが、一方では自衛隊をふやしているじゃないか、矛盾しているんじゃないかという意味のお尋ねであったと存じます。仰せのとおり、政府は、行政の簡素能率化をはかり、国民負担の軽減に資する見地から、国家公務員の定員の計画的削減を行なっているのでありますが、自衛官は一般の公務員と性格を異にしており、その定数の決定は防衛の特殊性に基づくものでありますので、もともとこの削減計画の対象からは除外しているのでございます。今回の自衛官の増員は、国防の基本方針並びに第三次防衛力整備計画における方針及び整備目標にのっとって増員しようとするものでございまして、一般の公務員の定員管理とは別個の見地からその必要性が認められたものでございます。
 第二のお尋ねは、行政管理庁では補助金整理等をやっておるのだけれども、三十二件の勧告を行なっていながら、十三件については廃止するよう指摘しておるのに、四十四年度予算を見ると、これが十分に生かされていないという御趣旨のお尋ねであったと存じます。民間団体に対します補助金につきましては、廃止を勧告したものが十三件のうち、八件は廃止することにいたしました。その他の五件については、いずれも減額することにいたしております。したがって、当庁としましては、今後とも勧告の趣旨が十分生かされるように推進してまいる考えでございます。
 第三番目は、交通事故についてのお尋ねでございましたが、先ほど申し上げましたとおり、それぞれ一応のお答えがあっておりますけれども、補足さしていただきます。
 最近、わが国においての自動車の普及、またその利用の著しい伸展に伴って、自動車等の保有台数がはなはだしく伸びておることも御案内のごとく、運転免許取得者数も、これまた急激に増加いたしております。したがって、交通事情も逐年複雑かつ悪化している状況でありまして、このために交通事故が激増し、昨年におきましては、楯さんも御指摘のとおり、死者が一万四千二百五十六人、負傷者が八十二万八千七十一人、楯さんの御指摘よりも多うございますことは、まことに残念でございますが、こういう数字に相なっております。このことは、交通戦争において、楯さん御指摘のごとく、政府ないしは地方公共団体が、ある意味では負けておるんじゃないかという御非難もあり得るかとは存じますけれども、何としましても、自動車の台数の激増ぶり、それから運転免許証の取得者がまた自動車数の倍近くあるなどという種々の関係からいたしまして、なかなか簡単にこの事故件数を引き下げるような成果があがりませんことを恐縮に存じております。
 したがって、政府としましては、これに対処して、交通関係閣僚協議会並びに交通対策本部を設置して総合的な事故防止対策を策定、実施しているところでございますが、警察当局としましても、関係各省と連絡協調を密にし、人命尊重の立場から交通事故の防止対策を強力に推進しているところでございます。すなわち、昭和四十四年度から、あらためて交通安全施設整備三カ年計画を策定して、交通安全施設の整備充実をはかるとともに、悪質な交通違反者に対する指導、取り締まりを重点的に行ない、交通規制を適切に実施するほか、運転免許制度の効果的運用につとめ、さらに運転者、歩行者等に対する交通安全教育の徹底をはかり、もって交通事故の防止につとめたいと考えておるところでございます。(拍手)
    〔国務大臣床次徳二君登壇〕
#24
○国務大臣(床次徳二君) 公務員の給与に対するお尋ねでありますが、来年度予算におきましては、本年度のように給与改定に備えて予備費を充実する方式を改めまして、完全実施に努力するという基本方針のもとに、各省別に一応五%程度の予算を人件費に組み込むほか、人事院勧告に対処するための調整費の予備費を計上しておるのでありまして、御意見のように、これは所得政策を意図するものではないのであります。
 なお、今後この予備費と人件費の二本立て方式によりまして、政府としては、あくまで人事院勧告の尊重とその完全実施に努力することを基本的なたてまえといたしまして、勧告のあった時限におきまして最善の努力をいたしたいと思います。
 なお、交通対策につきましては、それぞれお話がありましたが、総理府といたしましては、その連絡調整に一そうの努力をいたしたいと思うのであります。明年度におきましては、引き続き新しい三カ年計画の整備事業を行ないますほか、損害保険の保険金額を五百万円程度に引き上げますほか、なお、交通遺児の育英、進学援助の対策といたしまして財団法人を設立することを推進いたしておりまして、近く具体的に発足する予定でございます。
 なお、調査会の答申によりますが、交通安全対策基本法の制定に関しまして、今国会に提案することを目途といたしまして、今日検討中でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#25
○副議長(小平久雄君) 三木喜夫君。
    〔三木喜夫君登壇〕
#26
○三木喜夫君 私は、日本社会党を代表して、教育と科学技術、とりわけ、大学問題を中心に質問をいたします。
 いま、世界は、科学技術の進歩によって、かつて人類の経験しなかった大きな前進を遂げようとしております。人類はことしじゅうにも月に着陸しようとさえしているのであります。
 ひるがえって、わが国の現状を見ますと、科学と技術、学問と芸術の最も高い、集中的な研究の場である大学で、昨年来紛争が相次いでおります。昨年じゅうに紛争を起こした大学は実に百十六校、紛争のまま年を越したものは六十五校、そして本年になって新たに発生した学校は二校になっております。とりわけ、東京大学の紛争は、ついに機動隊の導入、入学試験の中止という最悪の事態を迎えているのであります。なぜこのような事態になったか、問題の根源を正しくとらえ、それぞれ責任のある立場からしんぼう強い努力をしなければならないと考えるものであります。ましてや、問題を矮小化し、力による収拾などが許されるものではないと信ずるものであります。
 佐藤首相は、さきの施政方針演説の中でこの大学問題に触れ、こう述べられております。読み上げますと、「学園が暴力によって長期にわたり占拠されたにもかかわらず、管理者が秩序維持の責任を果たさず、学生もまた暴力の前に学園の自治を放てきした結果、建物や研究施設が破壊され、学内の信頼問題までも荒廃させるに至りました。」と述べております。この佐藤首相の認識は、明らかに大学紛争の原因をいきなり暴力と規定し、責任の一切を大学管理者と学生に押しつけている点でまことに特徴的であり、無責任きわまりないものといわなければなりません。(拍手)わが国の政治に最高の責任を持つ総理が、このような表面的な上すべりの認識しか持たれないことに、私は深い失望と激しい怒りをさえ覚えるものであります。真の紛争の原因がどこにあるのか、首相は胸に手を当てて考え直していただきたいと思うのであります。今日の紛争はことごとく政治に対する強い不信につながっており、政府の大学行政、文教行政の重大な欠陥に根ざしているのであります。(拍手)
 具体的に紛争の経過を振り返ってみますとき、東京大学の場合、そのきっかけとなったのは医学部研修生の問題であります。大学医学部にはいわゆる無給医局員がいて、この人たちが医学部付属病院と医局における研究と実験をささえてまいりました。この無給医局員制度によって、大学を卒業し、インターンも終えて、医師の免状を持っている若い医師たちが教授の意のままに、しかも、ただ働きをさせられてきたのでありますが、これは江戸時代の徒弟制度にも匹敵するまことに封建的な、非民主的なやり方であるといわねばなりません。(拍手)こうした大学の古い制度や前近代的な運営に対し、若い医師や研究者たちの不満や要求が高まり、医局解体などを初めとする改革の火の手が上がったのは理の当然であります。教授の中にも、それを支持する人たちが少なくないのであります。
 このような古い制度が永年にわたって温存されてきたのは、政府が医学教育と医学研究を軽く見て、大学医学部にふさわしい予算と定員をつけなかったからであります。(拍手)医師の人数が十分確保され、その人たちに支払うべき給料が予算上十分に措置されていたならば、こんな不合理なことはとっくの昔に消えていたはずであります。(拍手)ところが、若い人たちが合理的な新制度を要求したとき、政府がとった施策は、その要求に逆行するものであり、財政措置どころか、権力的な大学運営を押しつけ、それが紛争の火に油を注ぐ結果になったのであります。
 私は、この際、総理に明確なお答えをいただきたい。あなたの姿勢には、大学問題を引き起こした政府としての反省が全く見られない。そればかりか、施政方針演説を貫く考え方は、大学紛争を治安問題としてとらえ、機動隊の導入、政治権力の介入を合理化し、権力によって大学の管理運営を強化しようというねらいを露骨に示していると思えます。(拍手)総理は、これほどはっきりした事実の前に、いまや大学紛争の本質がどこにあるのか、政府の責任をどう感じておられるのか、お伺いいたしたいのであります。
 入試が中止された東京教育大学の場合も、紛争の根本原因は政府みずからがつくり出しているのであります。この大学の紛争は、大学の筑波研究学園都市への移転問題がもとで起こったのであります。筑波研究学園都市の建設は、昭和三十九年、政府が敷地をきめ、十年がかりで四千億円かけて建設しようという構想であり、河野一郎建設大臣の手で進められました。ところが、河野氏なきあと、政府・与党の熱意は急速に衰え、計画あって実行なしという、まことに奇妙な状態になっております。このような先の見通しのない、無人の荒野に校舎だけがぽつんと建つというような悪い環境で、産学協同の底意のあるところへだれが進んで移転をするでしょうか。
 坂田文部大臣にお尋ねいたします。すばらしい学園都市をつくるという政府の構想は、産業界に従属することをすばらしい学園都市と言うのでしょうか。こんなことですばらしい研究条件を備えた学園都市ができるとお考えでしょうか。
 事は東京大学や教育大学に限りません。全国の大学紛争の原因は、学生寮の問題、学生会館の問題、米軍ジェット機墜落事故の問題、米軍資金導入の問題など、さまざまではありますが、その根本原因は、すべて政府の大学学術行政の貧困に根ざしているといえます。この際、政府は、行政ペースで解決できる問題は早急に処理すべきであると考えますが、文部大臣は具体的にどのように対処しておられるか、お聞きいたしたいのであります。
 佐藤総理は、さきに読み上げました施政演説の中で、大学紛争は学内の信頼関係まで荒廃させるに至ったと述べておられますが、このことは、きわめて重大であります。師弟の関係は薄れ、総理の言う人間形成という崇高な使命を持つ場であるべき大学は、逆に人間疎外の場とさえなっておるのであります。これはなぜなのか、なぜそこまで追い込まれたのか、私は、こうした事態をもたらした背後には、基本的な二つの重大な問題点があることを指摘しなければなりません。
 その一つは、これまでるる述べてまいりましたように、政府が果たすべき責任を果たさず、大学を貧困の中に放置してきたため、大学はいまや学生の犠牲、父兄の重過ぎる負担、教師や職員の労働強化によって、かろうじてささえられているのが現状であるということであります。もう一つは、政府・与党が社会進歩のための批判のとりでであるべき学問研究の世界に介入し、一貫して大学を支配しようとはかってきた、こういう事実であります。この二つが一つに合わされて、今日の大学の危機を決定的なものにしていることを見のがすわけにはいかないのであります。(拍手)
 大学問題解決への糸口は、何よりも――学生の貧困の実情は、各地の大学紛争の中によくあらわれております。すなわち、生活環境をよくせよ、学生寮の増設をせよとの要求がそれであります。さらに、佐藤首相は、口では物価抑制に真剣に取り組むとは言いながら、物価値上がりを経済成長に伴う不可避の現象として放置し、かえって政府みずからの手による計画的なインフレを進めてまいったので、物価の上昇は学生たちの生活にも大きな圧迫を加えております。下宿や貸し間の値段は日に日に上がっており、アルバイトをしなければならない学生が急増しております。アルバイトを必要とする学生は、国立大学では五四%、公立四一%、私立でも二六%で、全体の三割以上がアルバイトを必要としておるのであります。学生たちが学生寮の増設を求めるのはあたりまえのことであります。国立大学の学生寮がいかにひどいものであるか、佐藤首相は実情を御存じないと思いますが、たとえば東大教養学部の学生寮では、旧制一高時代の二倍に相当する寮生がすし詰めにされておるのであります。高度成長の今日、昭和元禄こいいますが、学生たちの日々はまことに最低の生活を送っておるのであります。政府は、産業界や財界の人材要求に沿って、ただむやみに大学の字生定員をふやしてまいりました。東京大学の場合、一学年の学生定員は、十数年前に比べて二倍ほどにふくれ上がっておりますが、政府はそれに見合うだけの施設や教官をそろえたでしょうか。いなといわなければなりません。私立大学に至っては一そうひどい状況でございます。そのために、大学は大量教育生産工場の観を呈し、大きな講堂に大ぜいの学生を詰め込んで、教授はスピーカーでしゃべるという講義が、大学のあたりまえのことになってまいったのであります。このような教育のあり方では、教授と学生との間に師弟の人間的交流や信頼関係など生まれようはずはないのであります。(拍手)
 先日、機動隊導入の後、総理が東大を視察したのはスタンドプレーだと言う人がございます。機動隊の投げた催涙ガスの余韻に流した涙を、なぜもう少し前に大学の貧しい環境に向けて真実の涙を流してくれなかったのかと私は強く抗議したいのであります。(拍手)現在の大学の紛争の火の手は、真の大学の自治を要求する学生、助手たちによってあげられたのであります。学部教授会の自治に矮小化されてきた大学の自治を取り戻し、政府、官僚の干渉をやめさせ、大学の自治に学生が直接参加する学生の基本権を要求してまいったのであります。総理も施政方針演説の中で「政府は、もとより学問の自由と学園の自治を尊重するものである」と述べられておりますが、腹と口とは大違いで、これまで政府がとってきた政策は、これまた総理のおことばとは全く逆であったと言えます。政府の方針は大学の科学者、研究者たちを貧困な状況に追い込み、ひぼしにしておいた上で、政府・与党の支配下に置くことにあったとしか考えられないのであります。(拍手)たとえば、昨年学界を大混乱におとしいれた文部省科学研究費補助金の問題などはその典型的な実例であります。文部省は学術審議会の答申をたてに、年間五十億の研究費の配分審査について直接介入のきっかけをつくろうとしました。従来は学者、研究者の自主的な審査によって配分されていたのに、文部省はこの配分方式を改めて、文部省の意向を入れた配分を行なおうとしました。この試みは学者たちの強い抵抗にあって一応は挫折した形となっておりますが、このような例を取り上げましても、政府の意図ははっきりするのであります。
 坂田文部大臣にお伺いいたします。あなたは、学生をあたかも甘ったれ子であるかのように言われているが、研究、教育の自由、大学の自治のための大学の改革という大事業に取り組んだのは、ほかならぬあなたの言う甘ったれ子じゃありませんか。文部大臣は大学の自治をどのように理解されているのか、学生の最も基本的な要求である大学の管理運営に対する共同決定参加をどう考えておられるのか、これは学生の基本権であると思うのであります。お答えをお願いいたします。
 さらに、今回の東大をはじめ東京教育大学の入学試験の中止は、大きな社会問題になっておることはいまさら申し上げるまでもございませんが、東大の入試中止の経過を見ますと、これはまことに不明朗であります。一月二十日、入試見通しのついた東京大学の加藤学長代行は、評議会の議決を経て入学試験を行なうという方針を打ち出したのであります。ところが政府は、この段階に至って、十二月三十日に、今後入試については、両者で協議すると約束をしておきながら、あらかじめ文部省が中止を決定しておいて、これを大学に押しつけたのであります。私は、これは大きな背信行為だと思います。さらに、このことは、学生の入学などは「教授会の議を経て、学長が、これを定める。」とある学校教育法に違反する疑いさえあるのであります。大学の自治に対して政府が直接介入し、これを踏みにじった暴挙だといわなければなりません。(拍手)また政府は、なぜ入試のタイムリミットを十二月十五日以来一寸刻みに延ばしてきたのか。これは時をかせぐことにより、大学自治能力の低下を待って、警官アレルギーをなくし、そうした上で機動隊を導入するという機会をうかがっていたとしか思えないのであります。入学試験の実施は、大学正常化のいわば原動力ともいえるものであり、受験生も入試を受けたがっている。父兄も受けさせてやりたい。大学も入試をしたい。それなのに、政府はなぜ入試中止を大学に押しつけたのですか。私は、入試中止を政府が東大に押しつけたのは、大学の自治に対する政府の不当な介入であり、学校教育法違反であると思うが、文部大臣の御答弁をいただきたいのであります。
 このような政府のやり方は、学生たちのより激しい反発を招くでありましょう。特に最近、自民党の中では、東京大学当局が学生たちに約束した十項目の確認書を破棄すべきだという主張がなされていると聞きます。もしこれが事実であるとするならば、これは大学が学生と話し合って大学の改革をはかろうとしている努力を無視し、自民党が直接介入しようとしているといわざるを得ません。坂田文部大臣は、大学当局がまだ決議機関にはかってこれを決定するという機会が残っておるのにもかかわらず、このような論議が自民党の中に起こっておることをどのように受けとめられ、どう対処されようとしておるか、承りたいと思うわけであります。
 この際、総理に特にお伺いしておきたいことは、総理は施政方針演説の中で、教育制度全体につき、すみやかに改革を断行する決意であると述べておられるが、一体、どういう改革を断行するおつもりであるか。その基本的考えをお聞きしておきたいのであります。私は、いままで申し上げましたように、政府の学術行政のあり方、大学行政のあり方全般に対して、反省のない改革はナンセンスであり、また危険であると思います。
 制度の改革についで提案いたしますと、まず第一に、坂田文部大臣に申しましたように、行政ベースで改革できる点は早急に措置するという当面の方策と、第二は、恒久策とに分けて考えたいと思います。これには、中央教育審議会に諮問中という隠れみのにたよることなく、国大協、学術会議、私学団体等の英知を集め、中央教育審議会にはかるというような国民的合意の方向をとるべきだと考えます。フランスのドゴール大統領は、みずから大学自治に対する学生の参加を認めております。紛争に紛争を続ける大学問題を解決つける道は、うしろ向きでなく、常に前向きで、前途がかつ然と開けるものであってほしいのでございます。
 次に、大学問題と関連して、科学技術関係について若干の質問をいたしたいと思います。
 政府の大学軽視の姿勢は、そのまま科学技術を軽視する態度とつながっております。総理府統計局の調査を見ましても、科学技術の振興に対する施策がいかに不十分なものであるかを証明しております。たとえば、国民所得の何%を科学技術の研究開発費に充てているかという数字をとってみますと、アメリカは三・六%、西ドイツは三・一%、イギリスは二・八%と、いずれも二・五%をこえておるのに、わが国はその半分の一・八%という低い水準にあります。しかも、世界の各国では科学技術の研究開発費のうち五〇%から七〇%近くを政府が負担し、残りを民間が支出しています。ところが日本の場合は、この比率が逆になっています。つまり、政府負担はわずかに三二%で、六八%を民間が負担しています。外国とはまるで反対の比率となっておるのであります。こうした科学技術予算の貧困は、日本の科学技術の不振を招き、勢いアメリカ依存の方向へと進んでまいりました。たとえば、ビッグサイエンスの一つである原子力をとってみても、これまでアメリカから原子炉を買ったり、アメリカから技術導入をしたり、長いこと、こういう状況が続いておりました。最近になってようやく国産の発電用原子炉をつくろうという政策が進められておりますが、わが国で原子力の研究開発が始まってから実に十年たってようやく自主開発が進められるという現状は、まことに嘆かわしいものであります。
 第二のビッグサイエンスとして登場した宇宙開発の分野でも、政府は重大な誤りをおかしております。佐藤首相は、昭和四十年、ソ連の女性宇宙飛行士テレシコワさんが日本に来たとき、日本は間もなく人工衛星を打ち上げ、世界で三番目の人工衛星打ち上げ国となると言ったものであります。それからすでに四年の年月がたっておりますが、わが国の人工衛星はいまだに上がっておりません。第三の衛星国という称号はフランスに奪われたのであります。東京大学宇宙航空研究所は、これまでに三回人工衛星の打ち上げに失敗し、この一月十六日には、予備実験であるラムダ3H4号機の打ち上げにも失敗しております。私は、失敗を責めるものではありません。科学技術の開発には失敗はつきものです。しかし、ラムダロケットについては、当初からまじめな学者たちから、もっと基礎的な研究と実験をやらなければ上がらないだろうと、賢明にも予言されていたのであります。それにもかかわらず佐藤首相らは、いますぐ安く日の丸衛星が上がるという一部の学者の景気のいい話を信じ込んで、多額の予算をつぎ込んだのであります。東大宇宙航空研究所のロケット開発予算は、このところ毎年三十億円にものぼっております。そして東大宇宙航空研究所では、おととし経理の乱脈という大きな事件を引き起こしています。これは不幸な事件でありましたが、われわれは、ここにも政府の大学学術行政の誤りと欠陥を見るのであります。基礎研究から積み上げるべきだという大学のまじめな学者たちの意見に耳をかさず、政策的なロケット開発を大学に押しつけ、しかも、三十億という予算を処理するための事務機構は全く整備しなかったのであります。これがいままでの政府のロケット政策であります。そして、日の丸衛星がなかなか上がらないとわかると、今度はアメリカから技術導入をするという。しかも、その技術導入はアメリカの言いなりになり、いろいろな条件をのんだ上の技術導入であります。このようなことでは、わが国の自主的な科学技術は決して育たないのであります。
 文部省の科学研究費補助金については、先ほども触れましたが、米軍資金の問題が国会で審議されたとき、当時の文部大臣剱木氏は、四十三年度の科学研究費補助金は百億円にふやすと答弁したのでありますが、実際に予算化されたのは、その半分の五十億にすぎませんでした。これは国会に対する約束をほごにしたものであります。四十四年度の予算案でも、この研究費補助金は六十億にすぎません。これを何千人という大学の研究者が分けるのですから、一人頭にすればわずかな金額になってしまいます。乏しい研究費のため、大学教授たちは産業界とうしろめたい手の結び方をしたり、産学協同へと傾斜させられ、果ては産学軍協同になりかねないのであります。(拍手)
 佐藤首相にお伺いいたします。政府は、大学の基礎研究についてどのようにお考えになっておりますか。四十三年度には百億円にすると国会で文部大臣が約束をした文部省科学研究費補助金が、四十四年度でさえ六十億にすぎないという現状について、佐藤首相はどうお考えになりますか。これでも、大学を尊重し、学術研究を重く見ているとい、えるでしょうか。お答えいただきたいと思います。
 私は、質問を終わるにあたりまして、御答弁くださる総理並びに関係閣僚に対して一言お願いしておきます。
 今日の大学問題をはじめ、国民の底流に流れている根強い政治不信は、議会が広く国民に開かれていないことに原因があります。総理並びに閣僚の答弁は、いつでも国民の、そこが聞きたいというところを巧妙にはずして、内容的には不親切で空疎なものになっております。これでは、政治不信はもとより、民主政治の根底を危うくするものであります。
 私は、社会党の代表でありますと同時に、国民の声をすなおに申し上げました。しかも、前もって政府に質問する事項を提出しております。どうか本日は、国民の聞きたいところをはっきりと御答弁くださるよう、特にお願い申し上げまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#27
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 三木君にお答えいたします。
 大学問題について政府の反省がない、ことに総理はどう考えているのか、その責任をどうするつもりだ、こういうまずおしかりを受けました。もちろん、私は政治の最高責任者として、異常な事態に対する責任は当然感じております。その責任を他に転嫁するつもりはございません。したがいまして、この機会に、あらためて国民に対して、まことに遺憾であると、その遺憾の意を表したいと思います。
 そこで、いろいろお尋ねがありました。大学紛争の実態は、先ほどおあげになりましたように、それぞれがそれぞれの原因、理由のもとに紛争が起きている。あれだけ大きくなった東大紛争にいたしましても、これは御指摘になりましたように、医学部の問題でありました。その医学部の問題がなぜ全学部の問題になったか、ここに問題があるのであります。私は、大学自治を尊重し、また学問の自由を尊重すると、かように申しておりますので、各管理者がそれぞれの段階においておさめることができたのじゃないだろうか、かように思います。三木君自身が教師の御出身でありますが、私は、今回の場合も、ただ管理の立場にある人だけではなく、教師、教授、そういう方々の責任もまたあるのではないかと思います。私は、政府の責任を免れるつもりはございません。そういう点については国民全体が、また今日、国家、社会の中枢の地位にある者、われわれの責任ではないか、かように考えます。そういう意味で、これはやはり全体としての反省が必要のように思います。
 ことに、先ほども三木君のお話で、私まことに残念に思いますのは、アルバイトするような学生、また真剣に通学するところの学生、その学生と暴力行為をする学生を一緒にして、そうしてわれわれに訴えられる。これはまことに残念なんです。私は、こういうことは、問題をすりかえらわないようにお願いしたいと思います。
 また、ただいまのような大きな大学ができたということ、これは時代の要求でできたのだと私は思います。もちろん、この大きな大学ができたことによりまして、先生と学生との間のコミュニケーションは昔のようではないと思います。しかしながら、必ずしも学校が大きくなったからそれはけしからぬのだ、こういうことではなくて、こういうように大学が開放された、そうしてまたマス教育をやる、その結果が――これは社会の要請であります。すばらしい経済発展をする原動力でもあった。そういう変化のあることについて、教師、学生、一般国民、(「政府、政府」と呼ぶ者あり)政府、それぞれがこの事態の変貌を十分認識して、それに対する対策を立てればよかったと思います。私はそういう点で、いま政府、政府とおっしゃいますけれども、政府がちょっと関与したら何とおっしゃいますか。そういうような関与もできないようなもので責任はとれません。(拍手)
 改革案はどうするかというお話でありますが、これは中央教育審議会の答申を得て、その答申の線でこの改革案を片づけるつもりでございます。
 また、科学技術の振興についていろいろお話しになりました。確かに私は、国産で第三の人工衛星を上げる国になりたいということを申しました。してみせると言った。フランスはすでに人工衛星を上げた。これはしかし、三木君も御承知のように、アメリカから購入したのでありますから、純国産ではありません。私ども、日本がこれにややおくれたことは、まことに残念ですが、やはり自主的に科学技術を開発するということも、これはどうしても必要であります。
 そこで、それがなぜおくれておるか、基礎研究について十分の理解がないからじゃないか、かような御指摘であります。私も、確かに科学技術を自主的に開発するという意味からは、基本的な基礎研究、これに対しまして十分な研究費を出して、そして研究をする方々に十分研究に遺憾なきようにする、それが私どものつとめだと思います。政府は、そういう意味で研究費の充実はそれぞれはかってまいったと思います。まだまだ不十分でございます。また、それがときに問題を起こしておることもあります。私は、こういう問題をいろいろ御指摘になりましたが、多くは文部大臣からお答えをいたしますけれども、ただいま話をしたように、これは政府だけが悪いとか、あるいは学生だけが悪いとか、教官だけが悪いとか、こういうものではなくて、全体が反省して、そしてりっぱな国民の大学をつくる、そういうことでなければならない。そういう意味でひとつ御協力をお願いします。(拍手)
    〔国務大臣坂田道太君登壇〕
#28
○国務大臣(坂田道太君) 三木さんにお答えをいたしたいと思います。いろいろ多岐にわたっておりまして、非常にお答えにくいかと思いますが、まじめにお答えを申し上げたいと思います。
 東大紛争の原因についていろいろお話がございました。筑波学園の問題あるいは医学部の研修医の問題まさに、やはりこういうところに医学部の問題があると思いまして、私就任いたしまして、今度の予算で、一万五千円のものを、三万円まではまいりませんでしたけれども二万七千五百円、それから無給医の問題につきましては、これは三万五千円にいたしたわけでございます。
 それから筑波学園都市の移転問題です。これはいろいろございましょうけれども、しかし教育大学では、むしろ文学部だけが反対で、その他の学部は賛成で、移転を評議会では一応きめた。そういういきさつになっておるのです。私は、やはりこういう問題は、政府がどうだああだじゃなくて、皆さんがおっしゃるように、三木さんがおっしゃるように、大学自治を尊重いたしまして、大学当局の決定を待って、われわれのほうで応援すべきところは応援しなければならぬと考えておるわけでございます。(拍手)
 それからもう一つは、先ほど総理もお答えになったわけですが、三木さんのお話では、すべて大学紛争というものは政府だけに責任がある、これは非常に大きい間違いであると私は思うのです。いろいろな複雑な原因があるという認識こそ、大学問題に対処する対処のしかたでなければならないというふうに思うのでございます。
 まず第一に、この未成熟なことについて、甘やかし過ぎておったとおっしゃいましたけれども、今日の大学生の意識というものを考えた場合、確かに自立的人間形成ができておらないというこの事実は認めなければならない、私はそう思うのであります。その原因にはまたいろいろある。入学試験のマル・バツ式のやり方にもございましょう。あるいはまた、家庭の母親や父親がやはり過保護になって、ああかわいそう、ああかわいそうと、何でも手とり足とりしてやってしまう。そういう甘やかしが自立的人間形成をできなくしたということにもつながっていく。そういう一つの学生意識の問題。
 それからもう一つは、それじゃ学生ばかりに責任があるかといったら、大学それ自体、教授会の人たちが学部自治に堕していって、そうして全学的意思の決定ができない、したがって、大学の運営がなかなか思うようにならない、こういうことだと私は思うのです。十九世紀のフンボルトのベルリン大学の頭でもって、いまなお東大の先生方が管理運営をされておられるところに問題があるんじゃないかというふうに私は思うのでございます。それで、学生だけじゃなくて、教官のほうにも問題がある、管理運営のやり方にも問題がある、こういうことであります。
 それから、もう一つ三木さんおっしゃったのは、教官一人当たりの学生数が非常に多くなった。これは私立大学は非常に多うございます。しかし、頭割りにいたしまして、今日の国立大学の一教官当たりの学生数というのは一対八でございまして、戦前と変わりがございません。東大に至りましては、確かに駒場は御指摘のとおりに一対二十でございます。しかし、本郷におきましては一対五でございます。しかも、あの一番問題の発端になりましたところの医学部のごときは一対一・二でございます。こういう紛争の原因はどこにあるかというと、単に数量的な問題ではなくて、師弟関係の問題であり、先ほど御指摘になりましたような医学部におけるいろいろの古い、改めなければならない問題があるという認識、これはひとつ三木先生もぜひお考えいただきたいと思うわけでございます。
 それから学生の育った生活環境、これは終戦後非常に困難な時代から、すし詰め教室、それからまた急激な社会の変化、それから社会的な価値観の非常に崩壊したような一時期もあったというような、そういういろいろな面があるかと思います。
 それから、参加の問題です。私は、やはりこういう参加の問題というものは世界的な大きな問題でございまして、早急に、紛争のさなかに、しかも、力関係で警察力まで入れてやっておるその中において、簡単にきめられるべき性質のものではないのじゃないかというふうに考えます。(拍手)
 また、どんなに大学が大衆のための、国民のための大学に変わりましても、大学は学問の研究、それから大学の自治という本質というものは変わらない、変わるべきものじゃない。しかしながら、学生が学生であり、教授が教授である以上は、被教育者と教育者という関係は永遠に変わらないと私は思っております。(拍手)そういう意味合いにおきまして、参加ということは、学生の意思の反映を踏まえた大学運営をなさなければならないということは、まさに御指摘のとおりだと思います。学生の意思の反映をした大学自治というものを考えるとするならば、東大のごときは、ほかの国立大学は一学生当たり七十六万円、これは大体イギリス、アメリカとほぼ同じでございます。それくらいのお金をつぎ込んでおる。東大のごときは百二十六万円の税金を支払っておる。そういう国民の意思というものの反映を踏まえて、大学当局というものが大学自治を考えなければいけない時代になってきたということであります。(拍手)それこそが国民のための大学であり、大衆のための大学であって、大学を構成しておるのが学生であり、教官であり、事務職員であるから、その三者によって協議をするならすべてよろしいなんていう考え方は、これは昔の古い古い時代のことであると私は思うのであります。(拍手)
 それから、物価値上がりのために云々という問題について、学生の就学、学生生活等、大学教育を送るに必要な教育環境の整備につきましては、国公私立の別によって事情が異なりまして、一がいに言及することはむずかしいのでございますが、奨学金制度の拡充、図書館、課外活動施設等の学生関係施設の整備等、大学の要請に応じまして、ただいま努力しているところでございます。単に物価値上がりが、学生の生活、ひいては学生寮の要求に直接つながっているものとは考えられないと考えております。
 大学教育の改善のための予算その他につきましては、十分とは申しませんけれども、年々改善を加えておりますが、特に学生生活を享受し得る環境について今後とも努力をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
 それから入試中止の問題、これは大事な問題でございます。これはそもそもが十月の段階において入学試験を実施するか、あるいはまたそれを中止するかというこの課題というものは、これは大学当局と文部省と協議をしてきめるものである。なぜならば、文部大臣としては、もし中止をするならば、ほかの七十三の大学に増員をお願いしなければならぬ事情も出てくるでございましょうし、予算措置もいたさなければならないでございましょうし、東大だけのお考えでそれをきめるというわけにはまいらぬのではないかと申しましたら、向こうも、そうでございますとおっゃいまして、協議がととのったわけでございます。それによりまして十二月の二十九日に実は中止と決定をいたしたわけであります。これは双方のいわゆる協議が成立したのでございます。成立して、中止が決定いたしたわけでございます。そのときに、ただし、大学当局側のおっしゃることは、十五日ごろまでにもし復活の条件が整うならば、あらためてひとつ復活の協議をいたしたいがいかがかとおっしゃったのであります。私は、その時点で考えましょうとお答えいたしまして、これも了承を得ておるわけであります。その後、十七日に協議をいたしまして、一両日延ばしましょうということも、双方協議がととのいまして、延ばして二十日にいたしたわけであります。そうして(「うそを言え」と呼ぶ者あり)うそじゃないのです。それはほんとうでございます。そうしてその二十日の最後の段階に、東大当局のおっしゃることには、不十分ながら条件は満たされたものであるとおっしゃったわけです。しかし私は、主観的にはそうお思いになるかもしらぬが、われわれといたしましては、客観的に、どうしてもそれは不十分ながら条件を満たしたとは思いませんということになりまして、協議がととのわずして、そうして事実上中止となったということでございまして、その根底には、双方のいわば信頼関係というものがあるということ、そして入学中止あるいはまた実施という事柄につきましては、やはりこれは両方で協議してきめられるべきものであるという認識であったということを申し上げておきたいと思うわけでございます。これによって私どもが大学の自治を侵したなんとは毛頭考えておらないわけでございまして、今後とも、私文部大臣といたしましては、東大当局をはじめとして、国立大学全部に対して信頼関係を保ちつつ、大学の自治を尊重していくつもりでございます。(拍手)
     ――――◇―――――
#29
○副議長(小平久雄君) この際、午後一時まで休憩いたします。
    午前四時五十六分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時四十七分開議
#30
○議長(石井光次郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
     ――――◇―――――
 議員辞職の件
#31
○議長(石井光次郎君) 議員佐藤孝行君より辞表が提出されております。これにつきおはかりいたしたいと思います。
 まず、その辞表を朗読いたさせます。
    〔参事朗読〕
    辞職願
 今般一身上の都合に依り辞職致したく此処に御
 認可下さるよう御願い申し上げます。
  昭和四十四年一月三十日
               佐藤 孝行
   衆議院議長 石井光次郎殿
#32
○議長(石井光次郎君) 採決いたします。
 佐藤孝行君の辞職を許可するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#33
○議長(石井光次郎君) 起立多数。よって、辞職を許可するに決しました。
     ――――◇―――――
#34
○議長(石井光次郎君) 国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。西村榮一君。
    〔西村榮一君登壇〕
#35
○西村榮一君 私は、民社党を代表いたしまして、次の三点について政府に質問いたします。
 その第一は、戦後二十四年、累積されてきた高度経済成長下における社会的いびつと、精神的荒廃をいかにして解決するか、大学紛争はまさにその象徴的な姿であります。
 第二の問題は、物価高を中心とするインフレーションの克服、すなわち、国民生活と日本経済の安定的発展をいかにして確保するかの方策であります。
 第三は、日米安保条約の改定問題沖繩返還の早期実現並びに中国問題の外交問題についてでございます。
 私は、以上三点の質問に先立ちまして、沖繩のゼネスト回避について総理大臣の善処を要望するものであります。
 一昨日、政府は、アメリカの代理大使と会談の際、同氏は、「沖繩のB52は永久に常駐する意思はない。ただ、いつ撤去するかは情勢によって決定するのであるが、その情勢を判断する権限は自分にはない。」という回答があったそうであります。
 そこで、私は、佐藤総理に考えていただきたいことは、この情勢判断の重需要素としては、沖繩現地の急迫せる実情が最大のものと考えるのであります。その点を佐藤総理からアメリカ政府に伝えていただき、撤去の日時を明確にし、それによって二月四日のゼネストを回避すべきであると考えます。二・四ゼネストは不測の事態をも予想せられる危険なる状態であるがゆえに、本ゼネストの回避に、政府を中心として各政党協力し、もって最悪の事態を防止すべきであると考えるのでありますが、佐藤総理の御見解はいかがでありますか。(拍手)
 現下、政治の至上課題は、過去二十四年の足跡を静かに振り返り、その欠陥を冷厳に見詰め、新たな転機に対処し得るわが国の進路を明確化すべきときだと存じます。
 佐藤首相は、過日の施政方針演説において、進歩する社会にふさわしい倫理観の上に立つ社会連帯意識の育成を訴えられました。私は、このものの考え方に同感であります。しからば、このような発想の基調をいかにして実現するのであるか、その具体的方策が何ら提示されていないことは、国民の多くの不満と思われるところと存じます。(拍手)
 われわれは、第二次大戦後、アメリカから導入された民主主義、建設より対立に明け暮れる政党政治と議会主義、従来の物質偏重の高度成長政策という中で、この二十四年間を過ごしてまいりました。それは、軍国主義との訣別、主権在民の確立、戦後の退廃からの復興と国民生活の安定という当時の要請に対して、一定の役割りを果たしてきたことは事実であります。しかし、ここに二十数年を経て、一方に、世界第三位の工業実力を創造したわが国は、他方に、国家としても、また人間社会としても、重大な欠陥を持ついびつな日本をつくり上げつつあることを真剣に反省すべき時期ではないかと存じます。(拍手)今日の東大問題に見られる大学紛争は、まさにその社会的いびつの象徴的あらわれであります。
 そこで、私は大学問題について質問いたします。
 学問の荒廃は国の荒廃に通ずるということばのごとく、いまや東大問題を頂点とする一連の大学紛争は、単に教育界の問題にとどまらず、不毛な政治の対決、大きな社会混乱に発展する様相を示しつつあります。この見地から、私は先般の政府による拙速な東京大学の入学試験中止に対し、深く遺憾の意を表するものであります。特に入学試験中止という重要段階で政府と東大当局が相対立し、ついに合意なき入試中止という最悪事態を招き、これを契機に、政治、社会、大学、学生といった広い分野に対決の風潮と混乱を助長した責任は、まことに重大であります。(拍手)
 今日の大学の混乱は、大学当局が象牙の塔に隠れ、封建的ともいえる旧制度を時勢の流れに従って改革することを怠ってきたこと、学園自治の名に隠れて、一部学生の暴力行為、違法行為を放置したことにもよりますが、最大の責任は政府に存在いたします。(拍手)すなわち、大学紛争をどたんばまで拱手傍観して暴力排除に対するみずからの職責を放棄し、かつ、大学自治のあり方について大学当局との間に相互理解を確立し得なかったことであります。
 そこで私は、当面の東大問題の正常化のために、次の諸点を推進することが必要だと考えます。
 まず、さきの十項目の確認書については多くの問題があり、しかも、日本の大学全体の将来のあり方についても重要な影響を及ぼすものでありまするから、この際それをも含めて、今後の東大正常化については、大学と学生の合意、大学と政府の合意を一刻も早く確立し、教育機能をすみやかに正常化すべきであると存じます。(拍手)
 さらに今後の大学紛争の根本的解決のためには、まず第一に、学問研究の場であり、また教育の場である学内における暴力的な政治闘争は断固として排除すること。(拍手)第二に、科学技術の進歩発展に伴う社会構造の変革に即応し、大衆大学への新たなる展望を考慮して、大学制度の抜本的改革を断行すること。(拍手)第三に、教育者としての自覚と使命感に徹する教育者を多数養成するとともに、教育者の再教育を断行する体制を確立すること。(拍手)これら大学制度の根本的改革については、政府並びに国会代表に大学代表及び各界代表の参加を求め、国民の英知を結集して、その改革案に取り組むべきだと考えますが、政府の御方針はいかがでございましょう。(拍手)
 次に、財政経済政策について質問いたします。
 現下のわが国の財政政策の力点は、物価上昇を食いとめてインフレーションを克服することであります。しかるに、昭和四十四年度の財政政策には、何らこの点は考慮されておりません。
 第一に、政府は物価上昇を五%に食いとめると言われておりますが、それは公共料金を値上げしないことが前提になっております。しかるに政府は、すでに国鉄運賃の値上げを承認されました。そこで、それ以外の一切の公共料金を値上げしないと佐藤内閣総理大臣はこの席でお約束いただきたいのであります。(拍手)
 過去五カ年間の物価上昇率の年平均は、日銀統計によりますと、アメリカは一・七、西ドイツは二・七、イギリスは三・五、フランスは三・四、しこうして日本は五・七であります。
 ここに注目すべきは西ドイツの物価政策であります。西ドイツは、長年、物価問題に真剣に取り組んだ結果、四十二年度は物価上昇率を一・四%に食いとめました。四十三年度はついに一%に食いとめることが成功いたしております。今日ドイツマルクがきわめて国際信用を高めつつあることは、経済成長の高度化よりも、むしろそうした物価安定を基礎とした経済発展、財政政策の確立に主力を置いたからであります。(拍手)この西ドイツにおいてなし得ることが、何がゆえに日本においてなし得ないのでありましょうか。それは、なし得ないのではなくして、なさざるであります。(拍手)
 さらに、財政規模は一五・八%増でありますが、名目一四・四%と予想される経済成長率を著しく上回っているのであります。これは政府の言う警戒中立型予算ではなくして、不健全なるインフレ予算だと申さねばなりません。したがって、私は、財政規模は経済成長率の範囲内にとどめるべきだと思いますが、総理大臣の御見解はいかがでありますか。
 インフレーションの要因は、公債政策、通貨供給量の過大、物価政策の貧困など、原因は多々ありますが、問題は、財政支出が有効適切を欠き、むだづかいが多いことであります。(拍手)私は、かかる観点に立って、行政機構の根本的改革を要請いたすものであります。総理大臣は、臨時行政調査会の答申を受けた際、誠意をもって実行しますとお答えになり、さらに昭和四十年二月の予算委員会における私の質問に対し、すみやかに実行するとお答えになりながら、いまだ実行に移されていないのであります。それは実行の勇気がないのか、誠意がないのか、いずれかであります。
 現在問題になっておりまする公債発行額の縮減も、勤労所得税の大幅減税も、さらに立ちおくれている社会資本の充実も、この行政機構改革による冗費の節約によって十分まかなえるはずであります。特に一兆六千億円にのぼる膨大な補助金の三割は、政府当局も多くのむだがあるということを認めながら、何がゆえにこのむだづかいを清算し、国民の税金を有効適切に、生きた使い方をなさらないのでありますか。(拍手)まことに無責任なる財政政策と申さねばなりません。
 現下、わが国にとって最もおそるべき強敵はインフレーションでありまして、この問題の解決なくしては、国民生活の安定はおろか、将来の健全なる経済発展は望み得ないのであります。行政機構改革と物価政策に対する佐藤総理の明快なる御見解を承りたいのであります。(拍手)
 さらに、わが国の国策の重要問題は、日米関係の再検討とそれに伴う安保条約の取り扱い方であります。私は、この際、日米安保条約は改定すべしと主張するものであります。
 その理由は、第二次世界大戦が終わって二十四年を経過した今日、国際情勢は根本的に変革されております。第二は、日米両国間においても、当時とは経済的にも政治的にも根本的な変化を示しているのであります。第三には、同盟の概念それ自身が、現実的にも歴史的にも変革されているということであります。現に、アメリカのキッシンジャー大統領特別補佐官は、今日の国際情勢を指摘して、「軍事的には米ソの両極化、政治、経済は多極化の時代である。そして、米ソの軍事的巨大性を認めながらも、軍事力が世界的な発言力であることは漸次低下して、経済が国際発言力を優位ならしめつつある」と述べておられるのであります。
 国際情勢の変化もさることながら、特にこの際指摘しておきたいことは、日米間の変化であります。二十四年前、日本は無条件降伏の屈辱に耐え、廃墟の中にあって衣食住を求めてさまよえる苦しい環境から、国民の努力によって、現在は世界第三位の工業国として復興し、世界また経済大国として日本を遇し、かつ、その経済力に期待するに至っているのであります。この二十四年の歳月は、日米両国関係において、国際的地位において格段の変化を示しました。
 かくのごとく、占領政策の延長として生まれ、さらに米ソの冷戦時代、及び朝鮮戦争という極度に緊迫せる極東の情勢から生まれた日米安保条約を、現在の時点においてなおそのまま継続していくことが根本的に誤りであると考えます。(拍手)申すまでもなく、日米安保条約は、敗戦によってまる裸になった日本の安全を保障するために締結されたものであります。その結果は、いまなお日本に米軍が常時駐留し、百四十八カ所の米軍基地も存続しておるのでありますが、これによって、基地公害をはじめ日米両国間の国民感情の親善を阻害する多くの問題が発生しております。独立国家の内部に自国の憲法を適用し得ない地域が存在する限り、真の独立国家とは断じて申せません。(拍手)
 さらに重要なことは、わが国の安全保障は、世界の多くの国々と同様、自主防衛を基本とし、他国との安全保障、すなわち、日米安全保障条約は自主防衛の補完とすべきものと私は思います。(拍手)しかるに、現在では、日米安保条約が主軸であり、日本の自衛体制はその補完的役割りであって、本末転倒しておるのが日本の防衛体制であります。(拍手)
 同時に、日本の安全は、アジアの緊張緩和の中に求むべきであるという政治の基本姿勢をこの際思い出すべきであります。それがためには、わが国の自主外交の展開こそ必要であることは、国民つとに理解されるところであります。
 今日、日本は、政治的にも経済的にも、二十四年前と全く違った立場に直面しておるのであります。アジアにおける日本の果たすべき役割りまたしかりであります。特にこれから迎えんとする七〇年代のアジアにおける日本の役割りはきわめて重要であります。アメリカもヨーロッパも、そして何よりもアジア諸国が日本の出方を待っているのであります。(拍手)現在の日本の政党や政治家の多くは、国際情勢の方向と基盤がすっかり変わってしまっているのに、相も変わらず、安保問題を、十年前、十七年前と、基本的には同じ姿勢とことばで問題に取り組んでいるところに時代錯誤があります。いま日本に生起しつつある新しい政治的現象は、一般国民の間に、みずからの安全保障あるいはアジアの平和について、その経済力にふさわしい一そう積極的な責任をとるべきであるという強い意思が動き始めておるのであります。(拍手)
 以上の理由から、日米安保条約の段階的解消を目途とし、この際、常時駐留の排除と基地の原則的撤廃を内容とする条約に改定し、もって国論の分裂と政治的混乱というマイナス面を是正し、真の日米間の親善友好の基礎を固むべきだと考えますが、佐藤総理の御見解はいかがでありますか。(拍手)
 佐藤総理は、今朝、安保問題に関する成田社会党委員長の質問に答えられ、自動延長か条約改定かはいまだ決定していないと述べられましたが、それならば、私の提案する改定案に御賛成をいただきたい。もし私の改定案に反対されるというならば、何がゆえに反対なのか、その反対理由を具体的に説明していただきたいのであります。私は、改定の理由を逐条的にただいま御説明申し上げました。総理も、反対なら反対の理由を、逐条的に、かつ、具体的にお示しをいただきたいのであります。(拍手)
 次に、沖繩返還問題についてでありますが、アメリカ新大統領ニクソン氏は、選挙中に、沖繩を日本に返すのが米国の政策であるべきであり、日本の参加なくしてはアジアの問題の真の解決は不可能だと言明しておられます。これはニクソン新大統領の単なるゼスチュアにあらずして、世界の情勢、なかんずくアジアの諸情勢がかく言わしめておるのであります。
 しからば、問題は返還の時期と条件であります。これについて、前駐日大使ライシャワー教授並びに現在の上院外交委員長フルブライト氏は、ともに、沖繩返還の条件は本土並みであるべきであると主張されておるのであります。したがって、沖繩早期返還の条件は、アメリカ極東戦略の立場に立つ軍人的感覚において論ずるのではなくして、日米両国間の国民感情とアジアの平和体制確立という政治的見地から論ずるならば、アメリカは必ずや理解と祝福のうちに沖繩を返還されるものと私は確信いたします。(拍手)しかるに、日本の政治関係者が、日本民族の悲願を軽視し、アメリカのタカ派に阿諛迎合するがごとき言動をもって沖繩問題の解決に当たらんとすることは、日本国民の一員としてまことに憤慨にたえざる次第であります。(拍手)
 さらに、自主外交のもう一つの課題は、日中関係の再検討であります。もとより中国問題は、今日の中国それ自体の特殊的性格、日華平和条約に基づくわが国と国民政府の関係等、決して単純ではありません。しかし、わが国としては、中国が今後アジアにおいて、また世界においていかなる役割りを果たすべきかという展望を基本として日中関係の調整をはかるべきだと私は存じます。この見地から、私は、政府がこの際次の諸点を真剣に考慮するよう要請いたします。
 その第一は、中国の承認とその国連参加は、最近のイタリアの動向を見るまでもなく、すでに世界の大勢であり、カナダ、ベルギー等が早晩これに続くでありましょう。
 第二は、日本と中国の友好回復なくしてアジアにおける平和の確立はあり得ません。特にベトナム和平後におけるアジアの平和のためには、日中関係の正常化は不可欠であります。
 第三は、核戦争の防止、軍縮を含む世界平和のためには、国際社会への中国の復帰が絶対に必要である。
 われわれは、以上の認識に立って、この際日中関係打開のために、中国の国連参加、日中貿易の拡大、日中の人的交流の積極化の三点に真剣に取り組むべきだと考えます。しかるに佐藤総理は、過日の施政方針演説において、単に中国の態度の変化に期待し、従来どおり各種の接触の門戸を開放していくという抽象論の披瀝にとどまり、今後の日中関係打開の具体策を示さなかったことは、まことに遺憾であります。(拍手)
 すでに世界は中国問題の解決へ動きつつあります。現に中国自身が久しくとだえていたワルシャワ会談の再開を提唱し、米中緊張緩和への外交的模索を開始したのであります。同時に、ニクソン政権またベトナム和平後のアジアの情勢を展望し、中国との対立緩和を真剣に考えつつあることは、多くの動向から察知されるところであります。アメリカの上院軍事委員長ラッセル氏は、最近「アメリカは近い将来、中国と外交代表を交換することを考慮すべきだ」と述べ、さらにニクソン外交をになうヨースト国連大使もまた「中国との協力」を明確に提唱いたしておるのである。これらの言動は、もはやアメリカの片言隻語ではなくして、米中関係打開に対するアメリカの今後の動向を示すものであります。
 このような、微妙にして、かつ、基本的な動きが進行しつつある中で、ひとりわが国のみが何らの対策を示し得ない現状は、これ外交戦略の欠除と申すべきか、あるいは外交感覚の無能と申すべきか、外交を主として国の安全と平和をはからねばならぬ日本外交の使命の没却といわねばなりません。(拍手)かかる見地に立って、佐藤総理の深甚なる反省を促してやみません。
 最後に、佐藤総理にお伺いしたいのは、議会解散についてでありますが、これは今朝来多くの同僚によって述べられましたから、私は簡略に申します。
 私が佐藤総理に提案したいというのは、それはニクソン大統領と協議する前に、日本国民と協議すべきであるという一言に尽きるのであります。(拍手)日本の総理大臣として外国の大統領と協議する前に、まず自分の国の主権者である国民と協議して、しかる後、外国首脳と協議するというのが政治の常識だと私は考えます。(拍手)民主国家における指導者の使命は、大事を決するにあたって国民の声を聞き、大衆とともに苦楽の道を歩む政治姿勢を堅持することであります。それは洋の東西を問わず、民主国家に要求される鉄則であります。
 私は、総理大臣の明快なるお答えを求めまして、質問を終わる次第であります。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#36
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 西村委員長のお尋ねの前に、冒頭に沖繩のゼネストについて触れられました。沖繩でいまいろいろ準備が進み、あるいはまたどうしても避けられることができないと、かように見られておりますものに来月四日に行なわれるゼネストという問題があります。このゼネストとなりますと、これは明らかに政治ストということを意味することになります。さような意味におきまして、昨日、屋良主席と私会いました際も、このゼネストは何とかして回避する方法はないか、そういう意味で、ことに沖繩返還交渉を前にしたその際にゼネストが行なわれる、政治的にストに入るということは、祖国復帰等の交渉についてもたいへんな問題だから、どうかそういう点では慎重にあってほしい、かように申したのであります。屋良主席自身も、その点については十分理解はしておるが、とにかく、現状においてB52が常駐する限り、沖繩県民のこの気持ちを静めるわけになかなかいかない、さらにその点について本土政府においても善処してほしい、かような話でありました。
 ただいま西村委員長から、このゼネストについて超党派的に善処しようではないかという御意見が開陳されました。私も、まことに重大な問題でありますし、そういう意味で、ただいまの御意見、十分米側にも通報し、そして米側の善処を求めるつもりであります。以上、申し上げておきます。
 ところで、西村委員長の先ほどからのお話、そのもとは、やっぱり鋭い時代認識についてでありまして、それからの発言だと思います。この意味におきまして、私はそれに敬意を表するものであります。
 国家と民族の永遠の発展をはかるため、現代に生きるわれわれが、それぞれの分野において何をなすべきか、特に政治家の責任について、代表質問を通じてその信念を吐露されたものと私はかように理解いたします。どのような発想に基づくのか、あるいはその基地はどうするのか、いろいろ具体的な問題がございますが、私は、この問題こそ、皆さまとともどもに、かような方向で進めていくべきではないか、国の大問題だと、かように考えております。
 大学問題についてお答えをいたします。
 大学紛争などに見られる混乱に対する最終責任が政府にあるという御指摘につきましては、そのとおりであります。ことに、異常な状況のもとにある今日の大学紛争について、私は、その最高責任者としての責任を免れようとするものではありません。その意味におきまして、国民に対して心から遺憾の意を表します。
 今日の大学問題は、変貌する社会の中にあって、われわれがまず克服しなければならない国民的課題であると、かように私も考えております。そこで、真剣にこれに対処する決意であります。西村委員長の大学問題についての御意見は、私も基本的には同感であります。東大の場合においても、まず大学当局と学生が相互の信頼関係を回復し、共通の理解に達することが何よりも大事であります。また、大学は教育研究の場であり、人間形成という使命を持つものでありますから、いやしくも破壊的政治活動を行なったり、暴力の横行にまかせるようなことは、許されるべきではありません。私は、民主主義の否定につながる暴力について、今後ともきびしく排除する決意であります。もちろん大学は、その学園の自治は尊重され、学問の自由も尊重されなければなりません。私は、さような観点から、政府と大学との関係におきましても十分尊重すべきものは尊重し、また、正すべきは正す、こういう態度でなければならない、かように思っております。
 大学制度の改革について御意見をいろいろ述べられました。十項目を含めて、これからスタートしろということでありますが、いわゆる十項目については、今早朝来いろいろお話をしております。また、文部大臣からも詳しく説明しております。字句はあいまいであり、まだいろいろ解釈上も疑義があるようであります。また、学園内のそれぞれの側における手続、教授側の手続、あるいは学生側の手続等も終了はしておりません。ことに私が問題にするのは、十項目のそれぞれの項目別の個々の問題でなくて、あの異常な雰囲気のもとで、恒久的な大学の運営にかかわる基本的な問題があの混乱した状況のもとにおいて早急にきめられたという、そういうところに問題がある、かように私は考えております。したがいまして、十分慎重に、これは勇気をもってこの問題に取り組んでいかなければならぬと思います。
 また、使命感に徹した教育者を多数養成せよという御意見でありますが、これこそ当面の急務であると私も考えます。私が申し上げるまでもなく、政府の責任を追及したり、暴力学生を追及したりする方はありますが、教員、教育者自身が十分その使命を達していないという、そういう点に触れられたのは、西村委員長が初めてのように私は思います。(拍手)確かにこれは敬意を表すべきことであり、またそうなくちゃならない。私は、この点で今朝も社会党の方に、教員、教職員の責任はどうだ、かように私のほうからも反問いたしました。どうしてもこのことは必要だと思います。再教育の問題を含めまして、教育制度全般について改革を行なうため、国民の英知を結集したいというのが私の念願であります。この点は、特に各界各層の御協力を切望してやみません。その点について、私は、いままで、中教審の答申があったら、その上で善処する、勇気をもってこれを具体化する、かように申しましたが、さらに、先ほど提案がありましたように、中教審も中教審だが、もっと各界の代表を網羅するような、そうしてほんとうに国民の英知を結集するようなことを前向きで考慮したらどうかという具体的な御提案がございました。私も、さらに文部当局とも十分この点について相談をしてみたいと思います。ただいままでの中教審も、言われるような方向で選ばれた委員諸君だ、かように確信はしておりますが、さらにこの上つけ加えるものはないかどうか等も研究したいと思います。
 東京大学の入学試験中止につきましては、文部省と大学当局との協議を積み重ねて決定したものでありまして、これによりまして政府と大学当局が対立するというようなことになるとは私は考えておりません。
 次に、物価について種々のお尋ねがありました。たびたび申し上げましたように、当面の経済政策の焦点は物価の安定であります。現在のところ、残念ながら物価の上昇には根強いものがあり、その事態は、西村君はこれをインフレと見、来年度予算はインフレ予算なりときめつけておられますが、私どもは、いわゆる悪性インフレだとは考えておりません。具体的なお答えは大蔵大臣からいたしたいと思いまするが、これは結論的に申しまして、新年度予算は物価抑制を目ざした節度ある予算であると御承知いただきたいのであります。また、インフレ論議は別として、今後とも物価の抑制に全力をあげてまいります。これだけははっきり申し上げておきたいと思います。
 公共料金について、国鉄以外一切上げないかどうかとお尋ねがありましたが、具体的な案件につきましては、経営状況などを十分調査する必要もあり、一切の引き上げを絶対に認めない、そうまではいまの段階では申し上げかねますが、極力抑制する、少なくとも便乗値上げは絶対に認めない、物価抑制の支柱として、公共料金を極力抑制してまいる決意であります。
 なお、西独の物価政策を見習えとの御示唆がありました。西独の物価政策は、経済成長を犠牲にし、失業者を増加させ、国民の実質所得の切り下げによって物価の引き下げをはかったものであります。私は、このような道は選びたくありません。困難ではありますが、経済の持続的成長を維持しながら、でき得る限り物価を安定させ、国民各層の実質所得を着実に増加させることが政治の要諦である、かように考えております。(拍手)この点は、国民諸君も十分に理解されて、物価安定をみずからの問題として御協力いただきたいものと考えます。
 次に、むだをなくせとの御意見、お尋ねがありました。私は、趣旨において全く同感であります。私もむだの排除には真剣に取り組んでまいります。また、今後もその努力を続ける決意であります。しかしながら、御質問にありました約五千億円、いわゆる一兆六千億円の三割、五千億円にものぼる補助金のむだを政府当局が認めているとの御指摘でありますが、そのようなことはあろうはずもありません。補助金といえども、国民経済社会の発展に深い関連を持つ大事な経費であります。誤解のないようお願いいたします。
 また、行政改革を勇断をもって実行せよとのお話であります。私は、さきに一省一局削減を断行いたしましたが、さらに行政の簡素化、能率化に真剣に取り組んでまいりますので、ぜひとも御協力をお願いいたします。
 次に、安保の問題についてお答えいたします。
 戦後二十数年間の国際情勢の変化は、まさに御指摘のとおりであります。ずいぶん変わってまいりました。しかしながら、政府は、その現実を踏まえつつ、なお日米安全保障体制を堅持する方針であります。この点は、残念ながら意見を異にするものであります。常時駐留の排除と基地の原則的撤廃によって、はたしてわが国の安全が確保できるかどうか、私は疑問なきを得ません。(拍手)国家の安全という基本問題に最高の責任を持つ者としては、現下の国際情勢のもとでは、お説のような構想をとることはできません。ただし、自主防衛の努力をさらにつとめるべきだという御意見は、全く同感であります。(拍手)国防の基本は、何といっても国を守る国民の気概にあります。政府は、今後とも防衛力を漸増、整備しつつ、一九七〇年以降も、御指摘の補完的な意味でありますが、日米安保条約を堅持し、わが国の平和を維持、確保し、繁栄を達成してまいります。
 次は、沖繩問題であります。
 日米関係の友好と信頼の基礎の上に立って沖繩問題の解決をはかるというのが政府の一貫した態度であり、西村委員長も、政府のこの基本方針をよく理解していただいているようであります。早期返還の国民的願望を実現し、日米関係の基本的な信頼関係をそこなわないためにも、誠意をもって交渉に当たりたいと思っております。
 また、その際、沖繩の基地がわが国の安全に果たしている役割り、さらには、わが国を含む極東の安全に果たしている役割りを認識し、国民の納得のいく解決をはかりたいと考えております。別に一部のタカ派に迎合して私がいろんなことを申しておるわけではありません。
 次に、中共の問題についてお答えいたします。
 中国大陸との関係がいつまでもこのままでいいとは私も考えておりません。施政方針演説で中国大陸との長期的展望に触れたのもそのためであります。しかし、中共の国内事情及び中共をめぐる国際情勢から見まして、政府が従来とってきた、いわゆる日本政府の政経分離の原則のもとにおける各種接触の方針を変更する必要をただいまは認めておりません。この点では、先ほど来の主張と異なっております。政府は、今後とも中共自身の動きや中共をめぐる国際情勢の動きを注視しながら、わが国の国益に即し、かつ、極東の緊張緩和に資する政策をとってまいる考えであります。したがいまして、具体的に、国連加入、これを進めろとか、あるいは北京政府、これを承認しろとか、かような考え方はただいま持っておらないということを明確に申し上げておきます。
 最後に、解散問題に触れられました。御趣旨は、訪米前に主権者である国民に問うべきではないか、かような御提案でございます。せっかくの御提案ではありましたが、解散については何も考えておりません。(拍手)
    ―――――――――――――
#37
○議長(石井光次郎君) 竹入義勝君。
    〔竹入義勝君登壇〕
#38
○竹入義勝君 激動と対立と矛盾の内外情勢の中で、一九七〇年並びに七〇年代の日本の新時代を展望しつつ、私は、公明党を代表し、当面山積する諸問題について、佐藤総理に対しその所信をただしたいのであります。
 今日、解決を迫られております諸問題は、戦後四分の一世紀になんなんとする長期間にわたって、保守政権による専断と無為から生じてきた政治の積弊の結果であります。われわれは、いまやこの政治の積弊の根源を明らかにし、新しい時代の日本の進路を選択すべき重大な時期に直面をしているのであります。
 いま、わが国民が最も望んでいることは、戦争の脅威から解放されることであります。そして同時に、豊かな生活を楽しむことのできる社会がつくられることであります。
 その第一の、戦争の脅威から解放されるという点については、政府・自民党のとってきた、これまでの外交、安全保障政策に重大な疑念を持たざるを得ないのであります。
 その中心課題は、安保条約の解消問題、沖繩の返還問題、日中国交正常化問題であります。
 今日、わが国の世論の大勢は、沖繩につきましては、無条件即時返還ということにほぼ意見が一致しておるのであります。
 また、安保条約につきしてまは、ある新聞の行なった世論調査においてもあらわれているように、かなり多くの国民が、安保条約ははたして日本の安全を守っているのかという点で、大きな疑問を抱き、むしろ、この条約によって日本が戦争に巻き込まれる危険があると感じているのであります。(拍手)
 総理が、日米安保体制を礼賛し、しかもなお、国民が日米安保体制の堅持を望んでいると断定したのは、きわめて独善的な考えであります。総理はいかなる根拠に基づいて国民の意思を云々されるのか、明確にお示しを願いたいのであります。(拍手)アメリカ当局も日本政府も、極東における緊張の存在を口実として、沖繩の返還にあたっては、核基地を温存し、しかも、沖繩に将来も存在する米軍基地及び米軍の行動については、日本との事前協議の対象としない、いわゆる自由使用に固執していると伝えられておりますが、この点について総理に明確なお答えを承っておきたいと思うのであります。
 最近、下田駐米大使は、「平和は力の均衡の上に保たれる」と述べ、沖繩、特にその核基地が、極東の力の均衡の上で果たしている役割りを強調し、日本が安全保障の努力もせず、沖繩の早期返還を求めるならば、核つき以外にあり得ないと主張いたしました。このような重大方針は、本来、総理または外務大臣の職責にかかわる問題でありますが、一大使が、アメリカの状況を報告するのみにとどめるならばこれは当然としても、このような世論操作を意図する意見を述べるのは、許されない越権行為であります。(拍手)総理は、下田発言、特に核つき以外に早期返還はあり得ないとする下田大使の意見に同意見かどうか、明確に伺っておきたいのであります。(拍手)
 いずれにせよ、このようなバランス・オブ・パワーの均衡論こそ、まさにアメリカの政策を一貫する基本的論理であります。力の均衡は大国の論理であります。なぜかならば、大国と小国との力の均衡など初めからあり得ないのであります。同時にまた、力の均衡は、相手国に優越しようとして無限の軍備拡張競争へとかり立てておるのであります。それは、平和とはほど遠い、恐怖と緊張の連続であり、やがては破局的な衝突に至ったというのが、過去の歴史の示すところであります。
 下田大使はまた、「沖繩の核兵器が戦争を抑止するもの」であると述べております。核兵器の巨大な破壊力は、それを使った戦争において、勝者も敗者もない破壊へと導き、ついには地球の破滅にもなりかねないのであります。
 米ソの間では核による力の均衡が成り立ったとしても、かりにこの二大国の一つが、どこかの小国に対して小型の戦術核兵器を使用した場合に、はたして他の一国が、みずからの危険を顧みず、核を使った相手に報復するためにみずからの核を使うでありましょうか。このようなことは考えられないのであります。ドゴールがアメリカの核のかさを信じなかったことは、この議論の非現実性、すなわち、大国の力の均衡が小国の安全を必ずしも意味しないことを示すものであります。したがって、弱肉強食の論理でもある均衡論を信ずる限り、小国は大国の言いなりにならざるを得ない場合がまことに多いのであります。下田大使が、沖繩問題でアメリカの言う以外に解決の方法がないと断言するのも、この論理の盲信からきたものなのであります。(拍手)
 この大国迎合の論理に立つ限り、初めから国民世論を背景として交渉する意思も持ち得ないし、その余地もないのであります。沖繩百万県民の意思も、本土国民の意思も、沖繩の基地撤去、早期返還であることは明白であります。総理は、この国民世論を背景として、なぜ強く基地撤去、早期返還をアメリカに迫ることができないのか、具体的にこの点を明らかにしていただきたいと思うのであります。(拍手)加えて、沖繩県民がゼネストにまで訴えようとしております沖繩常駐のB52撤去について、総理の明確なる態度をあわせて明らかに承りたいと思うのであります。
 力の政策が必ずしも有効ではなく、国際緊張緩和への努力こそが問題解決の唯一の方法だとすれば、沖繩問題、安保問題、日中問題で日本のとるべき方策もまた明らかであると思うのであります。
 アメリカ当局者の極東情勢判断の根底には、核兵器を持つ中国の存在が極東の安全にとって脅威であるという考え方があります。したがって、ベトナム戦争は北ベトナムを手先とする北京の南方への拡大政策のあらわれと受け取ったのであります。
 今日、ベトナム戦争が曲がりなりにもパリ会談によって平和的解決の軌道に乗り始めると、今度は朝鮮半島の緊張を強調しております。ベトナムと同じように、この不幸な分裂国家の北側、北朝鮮の最近の動きの中に、ベトナムと同じような北京の影を見出して不安がっているのであります。
 確かに、昨年末の北鮮ゲリラの韓国への侵入が伝えられましたけれども、このような事件が、直ちに北鮮が中国の軍事力を背景として朝鮮全域にわたる武力行使となると即断するのは、はなはだ早計ではないでしょうか。一九五三年以来、ひたすら自国の建設をもっぱらにしてきた北鮮は、現在自主独立路線を選んでおり、今日の国際環境のもとで、みずからの壊滅という危険をおかしてまで全面的武力行使に踏み切り得るとは考えられません。
 今日の中ソ関係及び米ソ関係は、朝鮮動乱の発生した一九五〇年当時と決して同一ではないのであります。いわゆる第二の朝鮮動乱発生の危険という仮説は、現実には、いずれの関係国の国家利益にも合致しないものであります。この点は、外交の専門家ならずともきわめて容易に推察できるのであります。したがって、三十八度線の緊張、あるいは危機意識は、アメリカ及び日本政府の安保堅持と沖繩の軍事的価値の強調のために、故意に、かつ過大につくり上げられた幻想ではないかと疑いたくなるのであります。(拍手)
 南北朝鮮の統一が実現されていないという不幸な事態に対して、アメリカが沖繩ないし日本本土から軍事的強圧を加えようとすることは、決して問題の解決にはならないと思うのであります。それのみか、かえって朝鮮半島の緊張をいたずらに硬化させるだけでありましょう。総理は、朝鮮半島の動向について、アメリカの判断に対しどのような見解をお持ちであるか、伺いたいのであります。
 アメリカが極東の脅威を問題にするとき、常に中国を意識し、その封じ込めを基本としてきました。しかし、従来の中国の行き方を見るとき、中国は、言論の上ではときに激烈な主張もいたしますが、その行動はきわあて慎重でありました。
 中国が現在きわめて高姿勢であるのは、かつて世界文化の中心として自任してきた中国が、過去一世紀、諸外国からの内政干渉を受け、その領土を蚕食され、さらに史上最も統一ある強大な政権が成立した現在、なお対外的にはその存在が否認されてきたことに対する不満が吐露されているからであります。中国が膨張政策をとっているかどうかということを判断する前に、アメリカの中国封じ込め政策が中国を刺激して、現在の中国の強硬政策をとらせているのではないかを判断すべきであると思うのであります。(拍手)その判断は、アメリカ上院外交委員会が、六六年一月から三月にかけて行なったベトナム・中国問題公聴会において、アメリカ有数の中国問題専門家が、アメリカ政府の対中国政策を批判して述べた意見なのであります。こうしたアメリカ政府を批判する専門家たちは、中国に対する軍事的封じ込め政策をやめ、国際社会に迎えることが、アメリカにとっても得策であることを主張したのであります。
 同時に、われわれとしては、中国を軍事的に封じ込めるために、アメリカが日本に軍事基地を置き、特に沖繩に核基地を持っていたこと、それが中国に核武装を決意させるに至った一つの原因でもあったことを考えておく必要があろうと思うのであります。それにもかかわらず、中国の脅威を過大に宣伝し、安保を長期に堅持し、沖繩の軍事的重要性を強調し、国民世論の主流である日米安保条約の段階的解消及び基地撤去、さらに沖繩の核抜き無条件返還をアメリカに強く迫り得ないというに至っては、国民世論に背を向けた論理のさか立ちというべきであります。(拍手)
 以上述べてきたように、沖繩返還、日米安保問題を論議するにあたってわれわれが考慮すべき国際情勢は、必ずしもアメリカや佐藤総理が主張するほどに、脅威に満ち、危機的情勢にあるとは言いがたいのであります。この際、中国の脅威に対する総理の基本的な見解を明らかに承りたいのであります。
 ベトナム問題が平和的に解決し、米中関係が多少でも改善のきざしを見せることがあれば、アジアの緊張は大幅に緩和されるでありましょう。だが、日本政府はこれまで日中国交正常化の努力を一度でも真剣に払ったことがあるでありましょうか。残念ながら、いなであります。この点、イタリアが中国承認の方向に踏み切ったことは、きわめて示唆的であります。ベトナム問題が平和的解決への方向に動き出し、アメリカにニクソン新政権が誕生したこと、中国が三年にわたる文化大革命に終止符を打ち、ようやく対外的に目を向け始めた今日、日中国交正常化へのタイミングとしては絶好の時期であろうと確信するものであります。(拍手)
 ベトナム問題の最終的解決の一つには、この地域の大国による何らかの形での不介入の保障を必要とすることは、さきのジュネーブ協定によっても明らかであります。このとき中国を無視し得ないことは言うまでもないのであります。アメリカもまた、ベトナム政策の失敗によって新しいアジアの新編成を考えております。このとき、好むと好まざるとにかかわらず、中国を無視し得ないことは当然であります。
 中国は、二月、ワルシャワで、長く中断していた米中会談を再開することを明らかにしており、イタリアの申し入れをむげに断わることはないだろうとの観測が強いのであります。むしろ、大いにこれを利用して、自国の国際的地位の向上をはかろうとするでありましょう。
 イタリアの中国承認に続いてカナダが中国承認の打診を始め、ベルギーなど、いわゆる西側陣営の多くの国に同一行動をとらせる誘因となるものと見られております。これによって、徐々にではあっても、世界の趨勢が中国承認の方向に向かうものと推察をされるのであります。したがって、アメリカも、これらの動きによって、これまでとってきたかたくなな中国非承認の態度に重大な変更を迫られるでありましょう。もしアメリカが、そのような方向で、しぶしぶながらも中国との話し合いを始めるとすれば、極東における緊張した米中関係は多少とも好転するはずであります。また、中国側の強硬態度を固定視することは、あまりにも素朴な見方ではないでしょうか。現に、ワルシャワ会談に臨もうとする中国の態度は、ここ数年の外交姿勢よりは著しく柔軟になった徴候を見のがせないのであります。このように見てくるとき、イタリアのとった中国政策は、まさにわが国がとるべきものであったと言いたいのでございます。(拍手)
 沖繩の返還を国民の望む無条件即時返還で実現させるため、日本の自主的なアジア情勢の改善、すなわち、極東の緊張緩和の諸政策の実行と努力が必要だと確信をするわけでありますが、イタリアをはじめカナダ、ベルギーの中国承認など、対中国関係の改善についての世界的な趨勢をどう見るか。中華人民共和国政府の承認、国連加盟の推進など、一連の日中国交正常化について積極的に取り組む考えがあるか。施政方針演説にいう「従来どおり各種接触の門戸を開放」するというのは、従来の政経分離方式からどのような前進があるのか、または、政治折衝はあり得るのか、具体的に説明をいただきたいと思うのであります。(拍手)
 わが党は、これらの世界情勢の推移を踏まえ、また、アジアの緊急緩和を積極的に推進していくため、さきの党大会において、日中国交正常化の具体的方途を発表いたしました。
 この対中国政策は、一つの中国論に発し、中華人民共和国政府を中国の政府として承認し、正常な国交を回復しようとするものであります。その実現のために、日中首脳会談の開催と日中基本条約の締結を提唱しているのであります。
 政府は、このように日中関係の正常化を前向きに取り上げないばかりか、イタリアの中国承認に関して、台湾政府がイタリアに対して国交断絶などの強硬な態度をとることのないよう説得する方針をとったが、これは明らかに二つの中国論を認めることになり、わが国の対中国方針も、その二つの中国論に立たねばならなくなると思うのでありますが、これに対する総理の所信を承りたいのであります。(拍手)
 ところで、わが国が日中の国交正常化、すなわち、中国承認に踏み切った場合、一部には、アメリカが経済上その他で強い圧力を加えてくることをおそれる声があります。しかし、いまの日米間の貿易は四十億ドルにも達し、日本からの輸出もまた巨額であります。同時に、アメリカの対日輸出もまた同様であります。したがって、ドル不安に悩み、構造的な貿易赤字に悩みつつある現在のアメリカが、日本との貿易で一方的に圧力をかけてくることは考えられないのであります。
 すでにイギリス、フランスは中国を承認いたしております。イタリアに次いで中国承認に踏み切るといわれておりますカナダも、日本以上にアメリカと経済的に密接な関係にあることは御承知のとおりであります。というよりは、カナダの主要工業は完全にアメリカの支配下にあるといっても過言ではありません。それにしても、なおかつカナダは、さきの北爆反対の表明に次いで中国承認に踏み切ろうとしているではありませんか。日米の経済関係を理由に日中国交正常化をはばもうとする一部の主張は、根拠のあるものとはいえないと思うのであります。
 特に、日中国交の正常化によって従来のアメリカとわが国との友好を破壊したり、ましてや、わが国が中国の側に立つものでないことが明らかであれば、どうしても理不尽な圧力をかけるでありましょうか。日中関係の正常化は、やがて中国の国際社会への復帰を早め、それは現在の米中の対決ムードを緩和し、アメリカのこの地域における防衛負担を減らし、同時に、基地の撤去、沖繩の早期返還が実現することなどによって、日米間に存在する外交上の困難事をも取り除き得ることを理をもって説けば、日米関係を悪化させるといった不安はないものと確信をするのであります。(拍手)すでにアメリカの一部、たとえていえば、マンスフィールド、フルブライトといった有力政治家の中には、このように日本が米中のかけ橋となるために積極的に行動することを期待する声さえあるのであります。
 要は、国際情勢がすでに変化し、小国が十分な発言権を持って行動できる時代が来たこと、また、こうした小国の独自の行動こそ、平和にとって一つの安全弁となり得る時代であることを認識し、それを果敢に実行する決意が必要であるということであります。
 中国との国交回復問題一つをとってみても、相手方の態度の変わるのを待つということではなく、みずから相手の態度を変えさせる処置をとることが最も必要であります。佐藤総理が、当面中国の態度の変化に期待しつつという、対中国政策の、消極的というよりむしろ硬直的態度こそ、時代の逆行ともいうべきであります。(拍手)総理は、この決意に立ってアメリカを説得する意思があるかどうか、明確なる答弁を求めたいのであります。
 わが党は、安保の段階的解消、完全中立構想を主張しておりますが、その中立を保障するものとして、アジア・太平洋の不可侵、不介入の国際環境の実現、さらに日中国交正常化、あるいは必要最小限度の領域保全のための国土警備隊の保持、さらに国連の安全保障機能、特にアジアにおける平和監察機能の強化を提唱いたしております。そのため、わが国に国連アジア本部が設置さるべきであると考えておりますが、たとえていえば、こん棒で守る、つまり安保の核のかさで守るよりも非常ベル、すなわち、平和監察機構、紛争があれば直ちに現地におもむき、その実態を国際世論に訴えるほうがより安全であり、平和であると考えるからであります。
 これは、日本のアジアにおける地理的条件と使命の自覚に立って、国連中心主義を基調とするアジア外交を推進することは必要であるとの前提に立ち、アジアの国々が意思の疎通をはかり、アジアにおける紛争解決と積極的な平和推進の場として、東京に国連アジア本部を設置することを提唱したものであります。このため、わが党は、ウ・タント国連事務総長に対し、国連アジア本部設置要請の書簡を送ることになっておりますが、政府においてもこれが推進に積極的な努力を要請したいのであります。総理の見解を承りたいと思います。(拍手)
 次に伺いたいのでありますが、大学紛争は全国に及び、なお続々と拡大する方向を示し、現在に至るまで、問題解決へのきめ手は何一つ見当たらぬ状態であります。
 東大の入試中止に関し、政府は、このたびの措置は一部学生の理不尽な暴力により大学の正常な運営が破壊された結果であるという、単純かつこうかつなる責任回避のすりかえ論を発表して、国民の視点を一部学生に集めようとしておりますが、大学が本来の機能を失い、学生と若い研究者とを絶望に追い込んだ結果が紛争の発端になっている事実は、国民一般のすでによく知るところであり、政府の入試中止の措置は、何と言いのがれようとも、いたずらに国民に混乱と、青年に失望を与えたのみであります。しかも、大学本来の問題解決にはほど遠く、かえって政府の学園自治介入の口実をつくった、全く非教育的かつ陰険な処置であることは、だれ人の目にも明らかであります。われわれの入試断行の勧告に対し、たとえ入学させても、正常さを欠いた教育環境では責任を持てないとの態度をとっております。それならば、他の大学には責任が持てるのか、もはや他大学には紛争の起こらぬ保証があるのか、他の大学において紛争が長引いたときには、次々と入試中止を宣告すれば事足れりとするのか、これが具体策をまず聞いておきたいのであります。
 次に、警官導入という過経はありましたが、大学の機構と制度の改革について、ともかくも新しい出発を志し、入試を決定して政府の協力を要請した東大当局の意図を踏みにじって入試中止の挙に出た総理は、東大の再開を含めて、今後いかなる構想を持っておられるのか、明確なるお答えを願いたいのであります。(拍手)
 学生問題は世界的風潮といわれておりますが、アメリカの学生は、巧妙な操縦民主主義のわなにがかった人材製造工場の悲劇だと叫んでおります。ヨーロッパの学生は、耐えられぬこの孤独、この冷たさと嘆いたといいますが、今日われわれの当面する問題もまた、産業に奉仕する大学、人間性を無視した心の冷たい専門教育、目的観を持たない空虚な大学に象徴される、現代社会のひずみの映像として把握しなければならないと思うのであります。
 すなわち、今日の大学問題こそ二十一世紀への峻厳なる胎動であります。したがって、その本質は、今日の社会体制の変革を求める現象として、この社会体制の持つ矛盾をきわめて直線的にとらえ、それが反発となって、急激に強く凝集されたものと見るべきであります。これを政府・自民党は、低次元の治安問題に引き戻そうとするところに、根本的な誤りがあることを指摘したいのであります。
 私は、ここで、暴力を肯定しない国民が、なぜ彼らに対して同情を寄せるのかということを考えていただきたいと思うのであります。みずからには寛大で他にはきびしく、みずからは何ら反省することなく他には正義をそらぞらしく強調する政治姿勢こそ、国民は憤り、学生たちの非難と政治不信の根本原因となり、紛争の大きな要因となったのであります。
 例を政治資金規正法にとっても、この悪法一つすらみずから改正し得ないで、学生問題の解決の資格はあり得ないと私は思うのであります。(拍手)確かに大学制度それ自体の改革も、今日の新しい時代に相応する改革は必然でありましょう。しかし、みずからの反省もなくして、政府や官僚の独善と強圧のもとに事態を収拾しようとするその姿勢こそ、まさに本末転倒といわざるを得ないのであります。(拍手)今日の荒廃をもたらしたものは今日までの政治であり、最も糾弾されるべきものは政府であると断ずるものであります。(拍手)
 このように問題を見るとき、総理は謙虚に反省し、この際、深く国民に謝罪し、直ちに政治姿勢を改めるべきであると思うが、総理の所信を国民の前に明らかにしていただきたいと思うのであります。(拍手)
 次に、消費者物価問題について、総理は、「公共料金については、国鉄の旅客運賃以外は極力抑制する」と言っておりますが、国鉄運賃が値上げになれば、当然、私鉄、タクシーなど関連企業の値上げも必至となることは明らかであります。極力抑制するということは何を意味しているか、国鉄運賃値上げ以外は絶対に認めないと理解してよいか。先ほどの西村委員長への答弁で、全部上げないとは言い切れない、このような答弁がありましたが、それでは、値上げを予想されるものはどういうものであるか、この際、あわせて明確な答弁を願いたいのであります。(拍手)
 また、公共料金は、ほとんどが寡占体制であり、自由市場価格ではないのであります。特に、国鉄のような公共性を持った独占企業においては、一般民間企業と比べて、市場性に即した適正なコストとは言えない場合が多いのであります。したがって、企業体質の改善なしに、今回のように赤字を理由に料金値上げを行なうことは、政府の言う受益者負担の原則に反するのみならず、企業の健全化を阻害する結果となることは明らかであります。したがって、安易な受益者負担にこと寄せ、昨年の旅客定期運賃値上げに引き続き、本年再び旅客運賃値上げを行ない、国民大衆にしわ寄せすることはやめるべきであると思うが、総理はどう考えておられるか、伺いたいのであります。(拍手)
 次に、総理は、来年度も総合予算主義を堅持すると言いながらも、米価決定については、ただ単に、両米価は据え置く方針であると、きわめてあいまいな表現をしているにすぎません。総合予算主義を貫くならば、予算編成において当然予見し得るすべての財政需要は組み入れらるべきでありますが、両米価を据え置く方針であるということは、来年度米価は絶対に値上げしないということか、それとも先行きはわからないという意味なのか。さらに本年度予算に見られたごとく、総合予算主義の名のもとに、年度途中において、生産者米価の値上げに伴いそれを上回る消費者米価の値上げが憂慮されるが、この点はどうか、あわせて総理の明確なる答弁を求めるものであります。(拍手)
 最後に伺っておきたいのでありますが、七〇年安保を来年に控え、政府は、安保、沖繩、中国問題あるいは大学問題などについての国民の不安、不満を無視して、何の説得も方向づけも行なわず、いたずらに治安対策的発想で押しつぶそうとされるか。私は、六〇年安保の大混乱は、政府が国民世論に背を向けた硬直した姿勢の中で、国民の選択の権利、すなわち、選挙をやらなかったからであると信じております。私は、本通常国会終了の時点において国民に信を問うことが政府の厳粛な義務と考えるのでありますけれども、七〇年安保に対し、総理の総選挙についての見解を伺いたいのであります。
 以上をもって質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#39
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 竹入委員長にお答えをいたします。
 たいへん質問が多岐にわたっておりますので、問題点を実は私のほうで整理をいたしました。その整理に基づいて順次お答えをいたしますから、お聞き取りいただきたいと思います。
 まず第一は、安保の問題であります。わが国の安全保障に関する問題につきましては、遺憾ながら、竹入委員長と私どもとの考え方には相違がございます。
 日米安全保障条約が締結されてから十七年経過しておりますが、その間、はたして御心配になるような、わが国が戦争に巻き込まれるような危険があったでしょうか。私はさようなことは感じておりません。いな、そうではない。これがあったがためにすばらしい経済発展をしたではありませんか。これはただいま、安全保障条約の効果だ、かように私は考えております。今朝も社会党にお答えしたのでありますが、別に護憲平和勢力の結果ではありません。これは、わが国の安全が確保されておる、そのもとで国民が安心してそれぞれの分野で精を出したその努力の結集が今日の経済の繁栄であります。(拍手)私は、この明白な事実をはたして否定することができるかどうか、国民の皆さんにもよく理解していただきたい点であります。安保体制を堅持する政府の方針は、さような意味におきまして、いささかの変更もありません。(拍手)
 そして、この安保体制についてまず理解していただきたいと思いますのは、安保体制は何だかアメリカのためにあるんだというような言い方をしばしばされますが、絶対にさようなものではない。わが国の安全確保のために、わが国は安全保障体制を日米の間に結んだのであります。(拍手)この点をまず理解していただかないと、わが国の自衛隊その他の防衛体制の整備にも非常な限度をいま加えておる、そのことが理解できないと思います。
 次に、沖繩問題についてお答えをいたします。いろいろお尋ねがありましたので、できるだけ漏れないようにと思いまして努力はいたしましたが、もし漏れたことがあれば、他の委員会等で十分その点は明らかにしていただきたいと思います。
 竹入君の主張は、つまるところ、基地撤去、早期返還、こういうことにあろうかと思います。その立場で対米交渉に当たるべきだということと私も理解いたします。早期返還が国民的願望であることは申すまでもありません。しかしながら、沖繩にある米軍基地が、現状においてまず第一にわが国の安全に果たしている役割りと、あわせて、わが国のみならず極東の安全保障に果たしている役割りを認識しなければ、沖繩問題の前進をはかることはできないのであります。私は、今年後半の適当な時期に訪米して、ニクソン大統領と直接話し合って返還の時期を取りきめる考えでありますが、それまでの間、各種接触の機会を通じまして、基地問題の取り扱いを煮詰めていきたいと思います。
 また、竹入委員長は、下田駐米大使の発言をかなり重視していられるようでありますが、私は、全体として見れば、特に問題とすべき筋のものとは考えておりません。(拍手)下田大使は、現地におきまして、米国の最高責任者との接触を通じてみずからが得た印象を述べたものと私は思いますが、表現が適切でなかった点もあり、必ずしも下田君の真意が伝わらなかったのではないか、かように考えております。
 また、B52についての御意見もございましたが、先ほど西村委員長に答えた点で御了承いただきたいと思います。
 ところで、今朝も社会党にお答えいたしましたように、この沖繩の基地が今後どう扱われるか、こういうところに実は問題がだんだんしぼられてきたように思います。即時無条件返還、かように言われるのもありますが、私は先ほど申しましたように、沖繩の基地が日本の安全に果たしておる役割り、それをよく正しく認識しなきゃいかぬ。まず第一に、わが国はいわゆる核三原則というものをちゃんと持っております。これは、いわゆる国民的感情からも核兵器をなくしようということだと思います。沖繩の基地自身がただいまあるから、さような核三原則をわが本土内において採用することもできたと思っております。沖繩が本土に返ってきた際に、そこにその問題があるのであります。したがいまして、一部の諸君は、行く行く本土並みにその基地がなるという、そういう保障があるならば、ひとつ早期返還けっこうだ、こういう意見もあります。しかし、早期返還どころか、やはりこの際、核に対してはっきりした態度をきめなきゃだめだ、返還はおくれてもやむを得ないのだ、こういう御意見もあります。これらの問題が、今後さらに、もっと国民的意向として固まってまいるのじゃないだろうか、かように私は思います。私は、ただいまの事態におきまして、いま言われておりますように、B52が問題になるとか、あるいは潜水艦が入ることが問題になるとか、人権が侵害されるとか、沖繩同胞が占領下のもとにおいて非常な苦しみを持っております。それらのことを考えると、やはり沖繩の同胞、これはやはり早期返還を心から希望しているのではないかと思います。しかし、私どもは、沖繩同胞の心情に同情もいたしますが、同時にまた、わが国の安全、その点に十分の考慮も払っていかなきゃならぬと思います。したがって、その点についてのいわゆる調和の問題があるのであります。これらの点は、私がアメリカに出かけます前に、だんだんいわゆる国論が固まってくるのではないか、かように私は期待しております。
 次に、中共、北鮮問題について、竹入委員長からいろいろ詳しいお話をされました。私どもの知らないような、中共はだいじょうぶだとか、あるいは三十八度線は安心だとか、たいへん詳しい、確信のあるお話をされました。もしそういう点があのとおりであるならば、私どもも教えていただきたいと思います。私は、この三十八度線の緊迫した状況については、竹入君とは違う認識のもとにおります。私、今日この点におきましては、朝鮮半島にたいへんな、将来、あるいは近い将来でもですが、緊張の場面が出てくるのじゃないだろうかと、実はたいへんおそれておるような次第であります。また、その状態、緊張が存在するということを、私は故意に、また過度に表現したつもりは毛頭ございません。公明党は、さような意味で、私どものこの朝鮮半島に対する認識を、それば間違っている、防衛、安保のためにことさらにそういう意味の危険感を国民に訴えているんだ、かように言われますが、そうではない。また、私はどこも敵視はしておりませんが、わが国の安全というものを確保するためには、あらゆる面に目をみはって、そうして、その国際的な情勢、その動向、そのもとにおいてわが国の安全を確保するに万遺漏なきを期す、これが総理の責任でございます。(拍手)そういう意味で、私は、大事にこういう問題を見きわめておるのであります。したがいまして、今日のこの状態、私自身も平和を念願する気持ちでございますから、朝鮮半島における緊張がこれ以上拡大しないように心から願っております。
 次に、中共の対外姿勢について、竹入委員長は、これまた非常にはっきりした、非常に確信に満ちた御意見を述べられました。これは御意見として承っておきますが、私が中共の脅威を過大に宣伝しているというような認識は誤りでありますから、その点は訂正していただきたい。北鮮に対するのと同様であります。
 しかし、われわれ日本国民の切なる願いにもかかわらず、隣国中共が核兵器の開発を行なっているという事実、また、中共の核兵器が将来わが国にとって脅威となる可能性を持っていることだけは無視できないと思うのであります。中共自身の核兵器の開発はアメリカに刺激されたものだ、かように言われますが、私どもはさようには考えません。国民とともに核兵器の絶無を心から念願しております。現に、この中共の核実験に対しては、国会における各党一致した決議のもとにおきまして中共に反省を求めたではありませんか。私は、そういう状態から見まして、この事実を十分よく考えていただきたいのであります。
 私は、施政方針演説におきまして、わが国の長期的かつ基本的な対中国政策を述べました。しかしながら、現在の中国は、ただいまも言うような、内外に多くの問題をかかえており、国際的な協調や善隣友好の精神に基づいて、わが国をはじめ近隣諸国との関係改善に熱意を持っているとは判断されない状況にあります。したがって、政府としては、当面は従来どおり各種の民間交流を促進しつつ、中国をめぐる今後の国際情勢を注意してまいりたいと考えております。これは民主社会党にお答えしたとおりであります。イタリアやカナダの動きによりまして左右されるものではありません。いわゆる自主外交の線を堅持するものであります。(拍手)
 また、竹入委員長は二つの中国論について触れられましたが、政府といたしましては、それこそ中国の内政問題である、かように考えておりまして、在来からそれは中国の内政問題だということで一貫しております。今日もその主張に変わりはありません。
 米中関係の改善は世界の緊張を緩和する大きな要素であり、わが国といたしましても、もとよりこれを歓迎するものであります。その意味で、政府は近く再開されるワルシャワ会談に期待しております。そこで、公明党の主張のようなその立場から、政府は米国を説得する、そういう考えはないかというお話でありましたが、せっかくのおすすめでありますが、ただいま政府はさような考えは持っておりません。
 次に、公明党が主張される国連のアジア木部設置の構想でありますが、この点は、公明党が初めて打ち出されたものであります。私どもは、いままでしばしば国連中心外交、これが日本の一つの柱だ、かように申してまいりました。私は、この点ができればたいへんいいことだと思います。しかし、ただいままでのところ、なかなかむずかしい事情もあるようであります。政府におきましても、せっかく公明党が、この問題について取り組んでいくんだ、こういうことでございますから、政府も慎重にこの問題を検討していくつもりであります。私は、いいことはいい、また、反対は反対だ、かように明確に申し上げるつもりであります。(拍手)
 次に、大学問題でありますが、大学の入試中止に関連して、他の大学に起こっている紛争をどのように解決するかというお尋ねがありました。現在、東大以外にも幾つかの国立大学で紛争が続いております。これらの大学では、大学当局者が紛争解決のため最大限の努力を払っております。現在のところ、これら当局者の自主的な努力に期待するのが最善の方法と私は考えております。政府としては、大学当局の努力を促すとともに、適切な助言を行なっていきたいと、かように考えております。いやしくも、学園の自治、それを乱すようなことのないように注意するつもりであります。
 竹入委員長は、東大の入試中止をきびしく批判しておられますが、当時から今日に至る事情を見ましてもわかるとおり、これはほんとうに万やむを得ざる措置であったことを御理解いただきたいのであります。また、文部大臣も、この問題につきましては、行き過ぎのないように、たいへん気をつけた折衝を、東大の加藤学長代行ともいたしております。また、御指摘を待つまでもなく、私自身が政治の最高責任者として、その責任を痛感しておること、これははっきりこの機会に申し上げておきます。そうして、この際に、国民の皆さまに、まことに遺憾であったと、かように私はおわびを申し上げる次第であります。
 また、こういう事柄がすべてが政治に返ってくるんだ、こういうお話につきましても、私もそういう点も考えなければならない。したがって、まず政治家は政治の姿勢を正す、これが必要なことだ、かように実は考えております。ことばはまことに簡単でありましたが、施政方針演説の中に「政治姿勢を正す」ということを入れましたのも、ただいま申し上げるような趣旨でございます。とにかく教育の問題は次代をになう国民養成の場であります。さような意味で、大学の社会、国家に持つ使命、これはまことに重大だといわなければなりません。同時にまた、今日、社会において中堅的な活動をするわれわれにも責任があるんだ。いわゆる政治家ばかりではございません。これは全部の方がそういう反省のもとに、これから大学を真に国民の大学にするんだ、国民の教育にするんだ、人物養成の場所にするんだ、こういうことで、ほんとうに真剣に考える必要があると思います。先ほど西村委員長からもお尋ねがありましたが、さような意味で、学生も、政治家も、教官も、すべての者が立ち上がる必要がある、かように私は考えております。
 次に、公共料金についてお答えをいたしますが、公共企業体の料金引き上げについての御意見がありました。政府としては、従来とも公共企業体の料金改定については、まず十分に経営状況を分析し、体質改善の必要があるときは、その実行が確実に行なわれることを前提として料金改定を認めているものであります。これは地方公共団体の行なう公共事業等についてすでに経験済みであります。御質問のように、単に赤字を理由として容易に値上げを認めるようなことはありません。国鉄の場合にも、国鉄財政再建推進会議の答申の趣旨に従って抜本的な構造改善策を実行してまいります。
 また、国鉄以外の一切の公共料金を引き上げないかどうかというお尋ねがありましたが、これは西村委員長にお答えをいたしましたので、これで御了承をいただきたいと思います。
 米価の問題について申し上げます。生産者米価及び消費者米価について、年度の途中で値上げするようなことはないかとの御質問であります。ただ方針をとった、こういうだけではどうも安心ができない、こういうことでございます。私は、申し上げるまでもなく、食糧管理法がありますし、米価審議会がございます。これらの機関を通じて、最終的に生産者米価、消費者米価は決定される、そういう手続がございます。その法律を無視するわけにはまいりません。政府が方針をはっきりしたということは、それこそいわゆる公約事項であります。しかも、国家最高の機関、その議会、その席上においてこの点を公約いたしたのであります。政府は、その意味におきまして、中間で変えるようなことはあり得ません。したがって、この点では御安心をいただきたいと思います。
 最後に、どうしたことか、野党各党から解散問題について御意見が聞かれます。これはしかし、私は考えておりませんから、御了承いただきたいと思います。(拍手)
    ―――――――――――――
#40
○議長(石井光次郎君) 松本善明君。
    〔議長退席、副議長着席〕
    〔松本善明君登壇〕
#41
○松本善明君 いま、わが国は、安保、沖繩問題をはじめ、重要な政治問題に直面をしておりますが、私は、日本共産党を代表して、大学問題と物価問題について、総理並びに関係閣僚に質問いたします。
 現在、大学問題は、学問の自由、学園の自治のみならず、教育制度と学問研究全体に関係をし、しかも国の将来にも影響を及ぼす重大な問題となってきております。総理は、施政方針演説で、今日の大学紛争と教育危機は管理者と学生の責任であるときめつけていますが、これを総理は無責任だと追及をされて、遺憾の意を表したり、あるいは姿勢を正すとか言いましたけれども、それだけで責任を免れることはできません。
 いわゆる大学紛争の根本原因は、東大問題で見られる無給医局員の問題、日大その他で見られる経営者の経理の乱脈や学生寮の問題等でも明らかなように、第一に、歴代自民党政府のもとで、教育予算が少なく、教員の研究費の不足や、常識を越える多数の学生を教育することによる教育の質の低下と勉学条件の悪化が進み、また、激しい物価上昇の中で学生と父母の経済的負担が激増していること、第二に、日米科学協力、無学協同、産学協同など、大学教育に対する国家と独占資本の介入が強まっていることなどに対する学生の不満が高まっているにもかかわらず、大学の管理運営が非民主的で、学生の意思が反映しないことにあります。したがって、大学紛争の根本的解決のためには、まず第一に、政府が大学予算の大幅増額、教育条件の抜本的改善、教員の研究費の増額、その他必要な措置をとることが必要であります。このことに対して政府はどのように反省をし、どのような措置をとろうとしていますか。四十四年度の予算でどのように予算化されているかをあわせてお尋ねしたいと思います。
 第二に必要なことは、今日のマンモス化した大学の民主的な運営を保障するために、大学自治の立場から、学生、院生、教授、職員が大学の運営に参加し、それぞれの立場から意見を反映させることができるような制度を確立することであります。東京大学では、この方向に沿って、大学当局と圧倒的多数の学生の努力によって、十項目の確認書を取りかわし、困難な条件を克服して、自主的、民主的解決の道を切り開きました。これを基礎として、東大当局は入試実施を決定したのであります。ところが、政府は、乱暴にも、何の法律的根拠もなく入試を中止させました。しかも、入試中止の理由として、初めはストライキをあげながら、これらが収拾されると、トロツキストの大学封鎖を持ち出し、封鎖が解除されると、今度は、施設の荒廃と学内の信頼関係が問題だ、というように、絶えずその理由をすりかえてきたのであります。そうして、これらの主張が根拠のないことが明らかにされてまいりますと、最後には、十項目の確認書を非難、攻撃して、確認書による解決は許さないという態度をとっているのであります。これでは、初めから入試をやる気がなかったのだといわれても、しかたがないではありませんか。政府が、このように東大当局の決定を拒否し、多くの人々の要望を無視して入試中止に固執する真の理由は何でありますか。大学の自治は、時の政府の政策によって大学教育が左右されることが、学問と科学の発達を著しく妨げ、大きな害悪をもたらしたという苦い歴史的経験によって打ち立てられたものであります。総理が、真に学問の自由、学園の自治を尊重するというのであれば、東大当局の決定を尊重し、これを援助すべきであると思いますが、総理の所信を聞かせてもらいたいと思います。
 さらに、政府は、十項目の確認書を出発点にする解決に不賛成だと言っておりますが、この確認書は、東大当局と圧倒的多数の学生が、東大問題の正しい解決のために自主的につくり上げたものであります。これを否認することは、学生、院生、教職員などの努力を踏みにじり、問題を振り出しに戻すことになります。総理は、施政方針演説で、大学当局と学生は、暴力に屈せず、問題を自主的に解決せよと述べていますが、一体、どのような自主的な解決をやれというのであります。これは大学の自治のはなはだしい侵害ではありませんか。はっきりとお答え願いたいと思います。
 自民党の文教関係者の大学改革案は、大学院大学構想とともに、大学の管理運営部門の責任者として副学長を置き、教官人事を政府が握るというものであります。これは、大学教育を国家統制のもとに置き、軍国主義復活と独占資本の要求に奉仕する反動的な文教政策を一そう強めようとするものであります。政府が東大の入試問題や確認書に干渉している意図は、東大問題を利用して、このような反動的な大学制度を全国的に実施しようとすることではありませんか。戦前の政府の大学人事への干渉や、戦時中の学徒動員などのもたらした不幸な結果を反省するならば、このような企ては絶対に許すことはできません。この点について、総理の考えをはっきり示していただきたいのであります。
 最後に、大学問題の解決を妨げている重要な要因であるトロツキスト暴力集団に対する政府の態度について質問します。
 総理は、施政方針演説で、学園の暴力を非難しますが、実際には、政府・自民党の有力者が、トロツキスト暴力集団を泳がせておけと言ってきたことは、隠れもない事実であります。実際に、一月十五日東大周辺に六千五百の機動隊が配置されていたにもかかわらず、角材や鉄パイプその他凶器を持ったトロツキスト集団が東大構内に侵入し、安田講堂その他に立てこもるのを全く放置したのであります。このような事例は、あげようとすれば幾らでもあります。このような政略的な態度によって大学問題の自主的な解決を妨げ、これを口実として政府は大学の自治への干渉を強め、かつ、治安体制の強化をはかっているのであります。いま、大学を暴力から守るには、トロツキスト暴力集団を学内で孤立させ、かつ、彼らが武装して学園に侵入することを阻止することが必要であります。この点について総理の明確な答弁を求めます。
 次に、物価問題について質問いたします。
 今日、物価問題を解決することは最も切実な問題であります。総理は、物価政策を重視すると言っておりますが、口先だけでなくほんとうに物価を安定させるには、値上がりの根源を抑えなければなりません。
 第一に、大企業の製品の独占価格を下げることであります。今日、大企業が、生産性の著しい上昇にもかかわらず製品の価格を下げず、年間百億円、二百億円というばく大な利潤をあげていることは、隠れもない事実であります。日本経済の大部分を支配している大企業の製品の独占価格こそ、物価上昇の最大の根源であり、このためにこそ、わが党は一貫して独占価格の引き下げを要求してきたのであります。経済企画庁長官は、この国民の声に押されて、「生産性が上昇している部門では、その成果の一部を価格引き下げに回すような環境をつくる」と述べましたが、カラーテレビや乗用車だけでなく、生産性の上昇しているすべての大企業の製品価格、特に国民生活の安定に役立つ食品、衣料品、薬、日用家具や、農産物のコスト引き下げに役立つ農業機械、肥料、飼料などの大企業製品の独占価格を下げるつもりがあるかどうか、お尋ねしたいと思います。
 第二に、公共料金引き上げ政策をやめることであります。総理や経済閣僚は、国鉄運賃以外の公共料金を極力抑制すると旨いましたけれども、これが、政府の物価政策の中心であるとすれば、全く国民を愚弄するものであります。現在公共料金は、たとえば国鉄が旅客運賃を上げながら、米軍用の物資や大企業製品の運賃を不当に低くしていることにあらわれているように、大企業や米軍に奉仕する料金体系になっております。また、国鉄はもとより、水道、地下鉄、電車などの地方公営企業は政府の十分な補助を必要としております。物価安定をはかるためには、この不当な料金体系を根本的に改め、十分な国家補助を行なうことによって、公共料金の引き上げを押えなければなりません。政府は、これを実行するかどうか、お答え願いたいと思います。
 第三に、政府のインフレ政策をやめることであります。政府は、景気警戒型などと宣伝しながら、来年度も、国債や政府保証債など、事実上の赤字公債八千五百億円を含む膨張予算を組み、さらに、独占企業の設備投資などのための日本銀行融資も野放し同然にしております。
 そこで、政府にお尋ねしますが、このような財政金融政策はインフレを激しくすると考えますが、政府はどのようなインフレ対策を行なおうとされるのでありますか。政府はことしも昨年以上に物価を上げ、さらに、減税の宣伝の裏で、国税不服審判所をつくり、徴税の強化をねらうだけでなく、食管制度、社会保障制度の根本的改悪などさえ強行して、国民の生活と権利を一そう踏みにじろうとしております。わが党は、このような政策をやめることを要求して、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#42
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 松本君にお答えいたします。
 今日の大学紛争の原因はすでにさまざまな角度から論議されており、複雑な要素がからんでいることは、すでに御承知のとおりであります。もとより政治の最高責任者としての責任を回避するものではありませんが、松本君のように一方的に、政府・自民党の文教政策が貧困であるとか、大学教育に対する国と独占資本の介入の結果であるとか、かようにきめつけられることはどうかと思います。共産党の主張は主張として、政府としては、戦後の教育が大きな転換期に立っているとの認識のもとに、中央教育審議会の答申を得次第、教育制度全般について改革をはかる決意であります。この際、今日の大学紛争の原因となっているさまざまな要素や社会的背景についても十分解明し、国民の理解と協力を得られる方向を打ち出したいと考えております。
 次に、東大の入試の問題でありますが、入試を実施するかどうかは、社会的な影響も大きいので、単に東大だけの判断によらず、文部省と東大とで協議の上きめるという了解のもとに、昨年十二月末入試中止に決定したのであります。今年になってから、東大当局の要望もあり、入試を復活できるかどうか具体的な努力をいたしましたが、どうしても入試実施に必要な条件が整わないために、結局、当初の方針どおり、まことに残念ではありますが、中止のやむなきに至ったのであります。政府としては、当面、在学生の授業再開に全力をあげてほしいと期待しておりますが、今朝の毎日新聞をお読みになったと思いますが、東大駒場教養学部の助手会全員が、授業再開に責任を持てない、こういう見解を発表しております。一日も早く正常な教育環境を取り戻してほしいと心から希望するものであります。
 次に、確認書の問題でありますが、東大の確認書につきましては、これもいままで、たびたびお答えいたしましたが、表現についてあいまいな点があったり、法律的に見ましても疑問点があると聞いております。いずれにいたしましても、これは、東大内部の紛争処理の過程で急いでつくられたものであり、大学制度の根幹に触れる問題でもありますので、大学当局の説明を聞いた上で十分論議を尽くしたいと、かように思います。
 次に、大学院大学等の改正について、また反動的な改革をやるのではないかという御心配があるようでありますが、先ほど申しましたように、中央教育審議会の答申のもとに、国民の合意を得るような方向で行なうつもりでありますから、松本君のように反動的な大学をつくるのではないかというような御心配をなさらないで、どうかその点は御無用だ、かように思います。ただ、もっとも、共産党の方の御賛成を得るのはなかなか私むずかしいことだろうと思いますので、いまのような、政府が反動的な考え方を持たないということだけ、それだけをひとつ理解していただきたいと思います。
 それから、これは表現がどうだったかと思いますが、大学を暴力から守るためにはトロツキスト集団を孤立化させるべきだ、政府はなぜそれをしなかったのだ、こういういかにも政府がこの点では大学の学園自治をこわしてもいいんだと言わんばかりの言い方をされます。私はちょっとこれは言い過ぎではなかっただろうか、あるいは私の聞き違いかな、かようにも実は思ったのであります。
 申すまでもなく、政府は、市民、社会を暴力から守る重大な責任があります。最近の過激派集団の暴力行為が学園の自治を侵し、国民生活にも有形無形の被害をもたらしつつある現状から見まして、私はたとえそれがどのような集団であろうと――これはトロツキスト集団ばかりに限りません、どのような集団であろうとも、暴力行為に対してはきびしくこれを排除する決意であります。(拍手)この点を誤解のないように願い、法と秩序の維持に万全を期し、自由主義、民主主義を擁護することこそ私どもの責任だ、かように考えております。(拍手)
 次に、独占価格並びに消費者物価についてのお尋ねがありましたが、これは菅野君から答えさせていただきます。
 また四十四年予算がインフレ予算だ、こういうことで御批判がありましたが、これまた大蔵大臣から答弁さすことにいたします。(拍手)
    〔国務大臣坂田道太君登壇〕
#43
○国務大臣(坂田道太君) 松本君にお答えをいたしたいと思います。
 大体もう総理大臣がほとんどお答えでございますから、簡単に申し上げたいと思いますが、第一は、紛争の根本原因についてのいろいろのお話でございますけれども、意見を私は異にいたします。むしろこれは、東大の大学当局みずからが申しておりますように、今日はもはや学内問題ではなくて、むしろ政治的な主張を貫くためには暴力でもあえて辞さないという、そういうようなことによって、もうどうにもならなくなっておる、学問の自由、そうして大学の自治が危殆に瀕しておる、こういうことだと私は思います。東大当局の認識と文部大臣の認識は一致をいたしておるわけでございます。
 それから確認書の問題につきましては、もう総理からお答えになりました。
 それから入試中止の問題につきましても、これは先ほどお答えを申し上げましたとおりに、入学試験を実施するしかないかということについては、両方が協議をしてきめるという形できめたことでございまして、事実上中止ということにきまったということを申し上げておきたいと思います。しかしながら、志願者の方々の希望をいれることができなかったということにつきましては、責任者の文部大臣としましてまことに申しわけないというふうに考えておるわけでございますが、また、教育の正常化に保証が、客観的にあかしが立てられないような状態で新しい入学者を入れることは、なお一そうその責任は重いと私は考えるわけでございます。授業が再開されてもいないし、再封鎖、再占拠ということが考えられるこの段階で、私は教育の正常化はまだ確信を持てないのでございます。確信の持てないことをやることは、私の国民に対する責任を果たすことにはならぬのじゃないかと考えております。
 それから、反動的な大学制度なんということは毛頭考えておりませんが、国民のための大学というならば、単に大学を構成する者が教官であり、教職員であり、大学院生であり、そしてまた学生である、それだから、おれたちだけできめたものはすべてよろしい、こういうような考え方こそ時代おくれの考え方であって、国民のための、大衆のための大学ではないと考えております。
 今日、大体国立大学に対して、予算のことを申されましたけれども、普通の国立大学においては、大体七十六万円国民の税金を払っておるわけでございます。ところが、東大におきましては百二十六万円のお金を支払っておるわけであります。そうして、一万五、六千の学生に対しまして、大体助手を含めまして教官が三千五百、それから事務職員が五千七百、合わせますと九千数百人で管理、運営し、教育、研究をしておるということでございまして、まことにこの管理、運営というものは時代おくれだというふうに私は考えさるを得ないのでございます。私どもは、国民のための大学というからには、こういう税金を払っておる国民の意思を十分に反映した大学自治というものを、大学当局も学生も考えていただきたい、かように考えておる次第でございます。(拍手)
    〔国務大臣荒木萬壽夫君登壇〕
#44
○国務大臣(荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。
 先ほど松本さんは、トロツキスト暴力集団を泳がせながら政府がこれを利用しておるのだというふうな御意見なり、お尋ねみたいなことがあっかのですけれども、そういうことは絶対ございません。警察は、公共の安全と秩序を守ることが、国民から負託された責務であります。いかなる暴力をも否定し、これを取り締まるべきものであります。代々木系の学生といえども暴力をふるうならばむろん取り締まります。反代々木系が現実に暴力をふるっておりますから、秩序維持のためにこれを排除しておるのであります。現に、去る一月十八日、十九日の東大事件においても、共闘会議系学生、すなわち反代々木系――共産系にあらざる者、これらの学生七百六十七名、学内で六百三十三名、学外で百三十四名、これを現行犯で逮捕しております。その取り締まりに当たりました警察官は、六百五十三名が学生の投石、すなわち反代々木系の投石、火炎ビン等で重軽傷を負っております。このことだけをもっても、政府側がこれらの過激派学生集団を泳がせているというようなことは、いわれのないこととお考えいただきたいと思います。(拍手)むしろ泳がしているのは、ノンポリ学生、ノンポリ教職員に魅力を感じさせるために、代々木系の民青、共産系の者がわざと泳がせながら、よくいわれるところの武装防衛、正当防衛――学内には警察官は入れてはいけない、自分たちが武装防衛して、正当防衛の理論に立ってこれをやっつけるから反対だとよくいわれますが、むしろその見地に立って、民青系の者が逆に泳がしておるのではなかろうかという説があります。(拍手)
    〔国務大臣菅野和太郎君登壇〕
#45
○国務大臣(菅野和太郎君) 大企業であるがゆえに独占価格で物を売っておるというわけのものではないのでありまして、いま、御承知のとおり自由競争の社会体制をとっておりますから、大企業といえどもみな競争をして、できるだけ値を安くして物を売りたいということをやっておるのでありますからして、その点において、大企業だからすべて独占価格というように即断されることはちょっと行き過ぎじゃないかと思うのであります。しかし、もしも大企業で独占価格で物を売っておるというような場合には、もちろん公取のほうで独占禁止法でこれを禁止いたしますから、その点はできるだけ公取の活動をまちたいと思っております。
 なお、これは独占価格ばかりではありませんが、大体品物の値段が高いというような場合には、たびたび申し上げますとおり、輸入政策あるいは関税政策をとりまして安くしておるのでありまして、その最もいい例はレモンであります。レモンが、輸入する前は一個百円であったものが三十円になったというような方法をとって、できるだけ物を安く売るという政策をとっておることを申し上げたいと思います。
 それから公共料金は、これはすなわち公益事業でありますからして、したがって、この公共料金を定める場合には、もちろん政府の認可を必要といたします。その認可をする場合には、はたしてこれが高い独占価格であるかどうかということを十分調査して認可するのでありますからして、公益事業であるがゆえに、できるだけ安く価格をきめたい、こう考えておるのであります。
 そこで、国鉄の料金の値上げの問題についてお尋ねがありましたが、もちろんわれわれは、国鉄の料金を値上げする前に、まず国鉄の体質改善をしてもらいたいということを申し上げておるのでありまして、その次には、これはできるだけ政府並びに国が補助すべきだということで、今回も国から四百億円の金を融通するし、また地方団体も二十五億円の納付金を減額いたしたのであります。その上で、なお赤字であれば適正な料金をきめたい、こういうことで、いま料金を査定中であります。さよう御承知を願いたいと思います。(拍手)
    〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#46
○国務大臣(福田赳夫君) 昭和四十四年度予算を編成するにあたりまして、何かインフレ政策をとっているがごときお話でございますが、断じてさようなことはございませんです。この予算、つまり財政とそれから金融政策を通じまして、日本国経済をインフレ化するがごときことは断じていたしませんから御安心を願います。(拍手)
 また、文教政策に意を用いよというお話でございますが、昭和四十四年度予算におきましては、実に八千五十八億円の金、六兆七千億の総額の中で一割二分、八千五十八億円を文教予算のほうへ割り当てております。経済は大体軌道に乗ってきた。文教、まあ精神面ということがこれから問題になるわけでありまするが、さように重要視しておるということを御了承願いたいと思います。(拍手)
#47
○副議長(小平久雄君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#48
○副議長(小平久雄君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後四時十四分散会
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 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        法 務 大 臣 西郷吉之助君
        外 務 大 臣 愛知 揆一君
        大 蔵 大 臣 福田 赳夫君
        文 部 大 臣 坂田 道太君
        厚 生 大 臣 斎藤  昇君
        農 林 大 臣 長谷川四郎君
        通商産業大臣  大平 正芳君
        運 輸 大 臣 原田  憲君
        郵 政 大 臣 河本 敏夫君
        労 働 大 臣 原 健三郎君
        建 設 大 臣 坪川 信三君
        自 治 大 臣 野田 武夫君
        国 務 大 臣 荒木萬壽夫君
        国 務 大 臣 有田 喜一君
        国 務 大 臣 菅野和太郎君
        国 務 大 臣 木内 四郎君
        国 務 大 臣 床次 徳二君
        国 務 大 臣 保利  茂君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 高辻 正巳君
        内閣法制次長  吉國 一郎君
ソース: 国立国会図書館
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