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#1
第061回国会 本会議 第6号
昭和四十四年二月十八日(火曜日)
    ―――――――――――――
  昭和四十四年二月十八日
   午後二時 本会議
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 土地調整委員会委員任命につき同意を求めるの
  件
 日本銀行政策委員会委員任命につき同意を求め
  るの件
 国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案(内閣
  提出)及び日本国有鉄道財政再建促進特別措
  置法案(内閣提出)並びに日本国有鉄道の鉄
  道施設の整備に関する特別措置法案(久保三
  郎君外九名提出)の趣旨説明及び質疑
 福田大蔵大臣の財政に関する演説及びこれに対
  する質疑
   午後二時七分開議
#2
○議長(石井光次郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 土地調整委員会委員任命につき同意を求めるの件
 日本銀行政策委員会委員任命につき同意を求めるの件
#3
○議長(石井光次郎君) おはかりいたします。
 内閣から、土地調整委員会委員に岡部得三君を、日本銀行政策委員会委員に濱口巌根君を任命したいので、それぞれ本院の同意を得たいとの申し出があります。右申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#4
○議長(石井光次郎君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
 国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法案(内閣提出)並びに日本国有鉄道の鉄道施設の整備に関する特別措置法案(久保三郎君外九名提出)の趣旨説明
#5
○議長(石井光次郎君) 内閣提出、国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案、及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法案、並びに久保三郎君外九名提出、日本国有鉄道の鉄道施設の整備に関する特別措置法案について、趣旨の説明を順次求めます。運輸大臣原田憲君。
  〔国務大臣原田憲君登壇〕
#6
○国務大臣(原田憲君) まず、国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 日本国有鉄道は、近年におけるわが国経済の急速な発展に伴って増大する輸送需要に対処するため、第一次及び第二次五カ年計画に引き続き、昭和四十年度を初年度とする第三次長期計画を策定し、大都市通勤輸送の改善、幹線輸送力の増強、保安対策の強化等のために必要な工事を進めてまいりました。その結果、前期工事の進捗を見た昭和四十三年十月を期し、画期的な輸送改善を実施いたしましたが、今後もさらにこれを推進し、国民経済及び国民生活における要請にこたえることとしております。
 一方、国鉄財政の現状は、昭和三十九年度以来大幅な欠損を続け、昭和四十三年度におきましては、同年四月一日から定期旅客運賃の改定を行なったにもかかわらず、なお一千四百億円に及ぶ膨大な欠損が見込まれ、このまま推移すれば、一両年度中には償却前赤字を生じ、自後、赤字は加速度的に増加し、遠からず破局的な状態に立ち至るものと憂慮されるのであります。
 このような状況にかんがみ、政府といたしましては、各界の学識経験者からなる国鉄財政再建推進会議を開催し、抜本的な国鉄財政再建の諸施策について鋭意検討を進めてまいりましたが、昭和四十三年十一月一日、同会議から、「国鉄みずからの徹底的な経営の能率化、合理化、国及び地方公共団体の財政援助と並んで運賃改定を行なう必要がある。」とする意見書が提出されたのであります。
 政府といたしましては、同意見書の趣旨にのっとり、国鉄の能率化及び国の財政措置に関し、日本国有鉄道財政再建促進特別措置法案を本法律案とあわせて提案いたしており、また、昭和四十四年度予算案におきましても、この点につき十分の配慮を行なっております。
 これらの諸点にかんがみ、国鉄財政の再建をはかるためには、この際国民各位の十分なる御理解と御協力を得て、必要最小限度の運賃改定を行なうこともまことにやむを得ないものと決意いたした次第であります。
 この法律案の提案にあたりましては、運輸審議会の答申を尊重したのはもとよりでございますが、運賃改定の国民生活に与える影響も十分考慮いたしました。
 次に、運賃改定の具体的内容について申し上げます。
 まず、鉄道の普通旅客運賃の賃率につきましては、現行では、営業キロ一キロメートルごとに、四百キロメートルまでの部分については三円六十五銭、四百キロメートルをこえる部分については一円八十銭となっておりますが、これをおおむね一五%引き上げるとともに、遠距離逓減制を一部是正いたしまして、五百キロメートルまでの部分については四円二十銭、五百キロメートルをこえる部分については二円五銭に改定することといたしました。なお、鉄道の普通旅客運賃は、この賃率によって営業キロの区間別に定めることとし、この営業キロの区間を定める場合には運輸大臣の認可を要することといたしました。
 第二に、航路の普通旅客運賃につきましては、近傍または類似の民営航路の運賃等を勘案して改定することといたしました。
 第三に、旅客運賃の等級につきましては、現在二等級制になっておりますが、最近における一等車と二等車との設備格差の縮小、旅客の利用の実態等を勘案し、ひいては業務の能率化に資することともなりますので、この際等級を廃止することといたしました。これに伴いまして、従来の一等車を利用する場合には特別車両料金を要することとし、この料金につきましては運輸大臣の認可を要することといたしました。
 以上がこの法律案の趣旨でございます。
 次に、日本国有鉄道財政再建促進特別措置法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 日本国有鉄道は、近年におけるわが国経済の急速な発展に伴って増大する輸送需要に対処するため、第一次及び第二次五カ年計画に引き続き、昭和四十年度を初年度とする第三次長期計画を策定し、大都市通勤輸送の改善、幹線輸送力の増強、保安対策の強化等のために必要な工事を進めてまいりました。その結果、前期工事が一応の進捗を見た昭和四十三年十月を期し、画期的な輸送改善を実施いたしましたが、今後もさらにこれを推進し、国民経済及び国民生活における要請にこたえることとしております。
 一方、国鉄財政の現状は、昭和三十九年度以来大幅な欠損を続け、昭和四十三年度におきましては、同年四月一日から定期旅客運賃の改定を行なったにもかかわらず、なお一千四百億円に及ぶ膨大な欠損が見込まれ、このまま推移すれば、一両年度中には償却前赤字を生じ、自後、赤字は加速度的に増加し、遠からず破局的な状態に立ち至るものと憂慮されるのであります。
 このような現状にかんがみ、政府といたしましては、各界の学識経験者からなる国鉄財政再建推進会議を開催し、抜本的な国鉄財政再建の諸施策について鋭意検討を進めてまいりましたが、昭和四十三年十一月一日、同会議から、「国鉄みずからの徹底的な経営の能率化、合理化、国及び地方公共団体の財政援助並びに運賃改定を行なう必要がある。」とする意見書が提出されたのであります。
 政府といたしましては、この意見書の趣旨にのっとり、本法案により、政府が決定する国鉄財政再建の基本方針及び国鉄の定める再建計画の実行を通じて日本国有鉄道の近代化、能率化の推進を確保するとともに、国の財政措置を規定し、別に本国会に提案いたしております国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案とあわせ、国鉄、国及び国民の三位一体となった抜本的財政再建施策の推進をはかることといたした次第であります。
 次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。
 第一は、財政再建の趣旨及び目標でありますが、本法による財政再建は、国鉄に将来とも国民経済及び国民生活におけるその使命を遂行させることを趣旨とするものであり、また、その財政再建の目標は、将来にわたるわが国の交通体系において国鉄が果たすべき役割りに応じ得る近代的経営体制を確立しつつ、少なくとも、今後十年間の財政再建期間の最終年度には黒字が生ずるよう、財政の健全性を回復することにあることを明らかにいたしております。
 第二は、財政再建策の樹立とその実施でありますが、財政再建期間中における国鉄の財政再建に関する基本方針、及びこの基本方針に基づき国鉄が運輸大臣の承認を得て定める財政再建に関する経営の基本計画にのっとって諸般の施策を推進することといたしており、また、その実行の担保についても遺憾なきを期しております。
 第三は、国の財政措置についてでありますが、昭和四十三年度末現在で、資金運用部、簡易生命保険及郵便年金特別会計、及び国債整理基金特別会計が日本国有鉄道に対して有する債権にかかわる利子に相当する金額の範囲内で、再建期間中の毎年度、政府が政令で定める特別の融資条件により長期資金を日本国有鉄道に貸し付けるよう特別に配慮すること、及び再建期間中、この長期資金にかかわる利子を政府が利子補給すること、並びに昭和四十三年度予算から実施されました国鉄財政再建補助金を、昭和五十年度工事までを対象として交付することといたしております。
 以上がこの法律案の趣旨でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#7
○議長(石井光次郎君) 提出者久保三郎君。
  〔久保三郎君登壇〕
#8
○久保三郎君 日本社会党提出、日本国有鉄道の鉄道施設の整備に関する特別措置法案について、提案者を代表し、提案の趣旨を御説明いたします。
 戦後、国鉄は他産業の発展に著しく立ちおくれ、安全性さえ疑われるに至り、その整備をはかるため、昭和三十二年より二次にわたる五カ年計画が策定されました。しかし、いずれも中途で修正を余儀なくされ、ただいまは、昭和四十年度より始まった第三次長期計画の四年目を終わろうとしております。しかし、この計画もその半ばにおいて三たび修正せねばならない羽目におちいっております。
 いま、その経緯を振り返ってみまするに、国鉄は戦後しばらくの間、民生安定、経済復興の名のもとに荒廃した施設を酷使してまいりましたが、昭和二十四年、マッカーサー指令によって、労働問題処理のため、従来の国営事業に独立採算制のワクをはめ、公共企業体となりました。しかし、公共企業体に移行はしたものの、経営に何らの改善を加えられないまま、引き続くインフレの中で老朽施設を食いつぶし、ついに桜木町あるいは洞爺丸等の事故を引き起こすに至りました。ここにおいて、もはや老朽施設も限界に達し、昭和三十二年度を初年度とする第一次五カ年計画が、老朽施設の取りかえを中心として実施に移されたのであります。しかし、この第一次五カ年計画は、資金計画に行き詰まりを来たし、かつ、計画が経済の伸展に即応し得ない小規模のものとなり、四年目で打ち切り、昭和三十六年度から第二次五カ年計画として出直しました。この計画は、東海道新幹線を完成させ、鉄道経営に新しい分野を切り開いたものの、全体の計画はこれによって制約を受け、一方、都市における過密化は急速に進み、既設線区の輸送力は量質とも立ちおくれ、輸送需要を満たすことが困難となり、昭和四十年度から第三次長期計画に移行し、今日に至ったわけであります。
 昭和三十二年度第一次五カ年計画発足以来ここに満十二年、施設整備が意のごとくならぬまま、いまや国鉄は経営の危機に直面し、抜本的な対策を必要としております。三次にわたる長期計画がいずれも成功せず、中途挫折した原因は、すでに申し述べましたとおり、計画が経済の伸展に即応しない小規模なものであったこともさりながら、むしろ、計画の実行を裏づける資金が、硬直した運賃の値上げと資金コストの高い一般からの借り入れ金によってまかなわれ、財政の悪化を一そう深刻ならしめたからであります。また、施設の不備と相まって、国鉄の陸上交通における独占性は失われ、輸送分野は伸び悩み、自己資金の調達は困難となり、政府は政策実行のためのいわゆる公共負担を国鉄に背負わせながら、積極的な財政援助を与えぬまま今日に至ったからであります。
 特にこの際指摘しておきたいことは、国鉄が去る昭和三十九年度予算要求にあたり、政府に強く財政援助を要求しましたが、いれられず、政府は国鉄基本問題懇談会を設置し、「責任をもって国鉄経営の抜本的再建のための計画と資金確保について検討する」との約束とすりかえたのであります。しかし、昭和三十九年一ぱいかかっての検討の結果、数多くの対応策が打ち出されはしたものの、結局、昭和四十年度から七カ年間に約三兆円の資金投入が必要であること、その資金調達は、相変わらず運賃値上げと借り入れ金によることが実行されたにすぎません。まさに、国鉄をして今日の事態に立ち至らしめた責任の一半は政府にありといっても過言ではありません。(拍手)
 いま、国鉄をしてその本来の任務を遂行させることが国民経済上いままで以上に必要であるとするならば、経営の安定と将来の発展が期待できる内外の条件を整備するための基本的な施策が実行に移される必要があります。
 それはまず第一に、国鉄をして陸上交通に確固たる地位を占めさせることであり、それに即応した施設の増強と近代化を行なわせ、経営安定の基盤をつくることであります。すなわち、国鉄が担当すべき輸送分野は、その特性からして、主として中長距離貨物、都市間旅客及び通勤輸送でありますが、それぞれについて、国鉄は現在その能力を欠いておりますから、これが増強をはかることであり、また、総合交通政策によって他の交通機関との調整をはかる必要があります。
 その第二は、現に経営の重圧となっている財政的、制度的諸要因を取り除き、再建を容易ならしめることであります。
 この二つの基本的な方針は、いわゆる企業性のみを強調し、その公共性を失わせるものであってはならず、また、国鉄の全国一体的運営による国民経済上の利益をそこなうものであってはなりません。
 以上申し述べたところに従って制度を確立し、国鉄の施設を整備するとともに、その財政の健全化をはかり、国鉄経営の再建をはかるため、本法案を提案した次第であります。
 次に、法案の内容について御説明いたします。
 まず第一に、鉄道施設の整備についてであります。
 国鉄が受け持つべき輸送分野は、すでに申し述べたとおり、主として都市間旅客輸送、中長距離大量貨物輸送及び通勤輸送でありますが、国鉄の現状はその責任を果たすことが困難でありますので、それぞれの施設を計画的に整備しようとするものであります。
 そのためには、非能率な幹線及び亜幹線の輸送力増強をはかることであります。これらの線区はいまだに単線部分が多く、軌道強化も行なわれず、近代的輸送機関としての能力を欠き、そのすべてがいわゆる赤字線であって経営の重圧となっておりますので、これらのそれぞれに対し、線区別の増強計画を立て、改良を加え、本来の任務を遂行させるとともに、経営の改善をはかろうとするものであります。
 また、国鉄の貨物輸送は、経済の発展に即応した輸送力増強、近代化がおくれ、国鉄が果たすべき役割りを果たし得ないものがあります。よって、これを増強し、近代化することとしたのであります。これは国鉄の経営を好転させるばかりでなく、その使命達成上必要なことであり、特に最近における陸、海、空を通じて進みつつある輸送革命の中でとらねばならない当然の措置であります。
 次は、通勤輸送の増強であります。
 都市における路面交通の渋滞を緩和し、通勤地獄を解消するため、都市高速鉄道の建設促進を含む鉄道輸送力の増強は、都市交通全体の立場から進める必要がありますが、特に国鉄が果たすべき役割りは大きなものがあります。この輸送力増強は、経営の再建という観点よりは、むしろ、その特性による固有の任務として取り上げる必要があります。よって、われわれは、国鉄以外の私鉄、公営交通の改良資金については、道路並みに政府が助成すべきものとして、すでに都市鉄道整備促進法案を提案しておりますが、国鉄の改良資金については全体の中で考慮することとし、後に述べるところによりました。
 次は、安全対策の事業でありますが、これら施設は、従来以上に計画的に整備する必要があります。特に最近における事故の傾向にもかんがみ、人間工学的、医学的な安全対策をも推進しようとするものであります。
 以上の鉄道施設整備事業は、昭和四十四年度以降七カ年間に実施しようとするものでありまして、総額約二兆八千億円の経費を見込み、その三分の一に相当する額約九千三百三十億円を政府が助成するものといたしました。もっとも、この計画とその経費の中には、山陽新幹線の関係は含まれておりません。新幹線及び通勤高速鉄道の整備は、別途策定さるべき総合国土計画の中で措置しようとするものであります。現在進行中の山陽新幹線については、この七カ年計画とは別ワクとし、新幹線建設から来る既設線区へのしわ寄せを遮断しようとするものであります。この七カ年計画は、その事業が適確に遂行されるよう道路や港湾と同様政府において承認され、責任を持つものにしようとするものであります。
 次は、国鉄の長期負債に対する利子負担の軽減措置であります。
 国鉄は、昭和四十三年度末において政府関係の長期負債の残高は約六千三百四十億円、その他のものの残高は約一兆三千七百二十億円に達し、これに対する利子負担も、昭和四十四年度支払い見込みは年間約千五百億円となり、経営悪化の大きな因子となっておりますので、施設整備を進め、国鉄本来の任務を果たし得る形態になるまでの七カ年間、既往の債務について、政府関係のものに対しては利子相当額、その他一般のものについては年利五分をこえる相当額を政府がそれぞれ助成することとし、この面からも再建を促進しようとするものであります。
 以上が法案の概要でありますが、最後に、運賃問題について付言させていただきます。
 この法案による国鉄の施設整備と財政再建は、運賃値上げ等を含む運賃制度の改正を考えておりません。なぜなら、今日国鉄経営悪化の原因の大きなものは、すでに述べましたとおり、戦後、経済復興のため資産を食いつぶしてきたことと独立採算制のワク内での公共負担でありますから、これを利用者である旅客、荷主に運賃値上げという形で負担さすことは公正妥当なものではありません。(拍手)また、物価安定が至上命令であるにもかかわらず、一向にこれを鎮静できない政府が、みずからの手によってさらに物価値上げの主導権をとることは許されないことであり、かつ、便乗値上げを暗に認めようとする態度は絶対に容認できません。(拍手)
 いま政府が国有鉄道運賃法改正によって企図しております運賃値上げは、運輸収入実収の一〇%の増収をはかろうとしましたが、貨物運賃の値上げは他の輸送機関に荷物が逃げ、かえって減収を来たすとして旅客運賃に上積をいたし、平均一五%の値上げを実施しようとしておるわけであり、かくては、将来にわたって国鉄の正常な発展を期待することができないおそれもありますので、われわれのあえてとらざるところであります。
 また、政府提案の日本国有鉄道財政再建促進特別措置法案は、国鉄の経営権に大幅な制約を加えようとするものであって、問題の解決にはなりません。
 本案は、政府が提案する以上二つの法案に対し、われわれの主張を明らかにしたものであります。
 何とぞ慎重御審議をお願いし、説明を終わります。(拍手)
     ――――◇―――――
 国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法案(内閣提出)並びに日本国有鉄道の鉄道施設の整備に関する特別措置法案(久保三郎君外九名提出)の趣旨説明に対する質疑
#9
○議長(石井光次郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。野間千代三君。
  〔野間千代三君登壇〕
#10
○野間千代三君 私は、日本社会党を代表して、ただいま説明のありました政府案、国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案、すなわち、国鉄運賃値上げ法案並びに日本国有鉄道財政再建促進特別措置法案の二案に対して、質問をいたしたいと存じます。
 今日、国鉄の財政は、昭和四十三年度債務残高は、実に一兆九千八百五十億円に達しております。毎日の元利合計返済金八億円、つまり、一秒間に九千円を政府と銀行に返済し続けるという財政的危機に直面をいたしております。ただいま提案をされております政府両法案の内容は、この国鉄の財政を運賃値上げ並びに地方線の廃止という国民の犠牲と、国鉄職員十六万五千人の人員削減という労働者の犠牲との二つによってだけ再建しようという、国鉄財政再建推進会議の意見書をもとにして立案されたものでありまして、とうてい国民大衆の承服することのできないものであります。
 国鉄は、申すまでもなく、国民生活に長く、深く、そしてかたく密着している公共の交通機関であって、提案されている両案は、再建するどころか、国鉄を通じてかえって国民生活を大きく圧迫することになるものであるといわなければなりません。(拍手)
 私は、両案に対して絶対反対の立場に立って、以下、総理並びに関係大臣に質問をいたしたいと思います。
 まず、第一にお尋ねしたいのは、物価と運賃についてであります。
 四十四年度予算編成作業の過程で、菅野経済企画庁長官は、今年度経済見通しの消費者物価上昇率を五%にとどめて、そのためには、物価上昇に〇・二%の影響力を持つ国鉄運賃は値上げをすべきではないと強く主張されたのは、世間周知のとおりであります。君子は豹変をいたしました。長官は、その後大蔵省との折衝ではもろくもくずれ、国鉄値上げを認めてしまいました。あの主張はサル芝居だったのかと国民から嘲笑される羽目になったのであります。(拍手)その後、国鉄以外の公共料金については、すなわち、来たる三月、運輸審議会で審議される予定の私鉄大手十四社の値上げ申請には、菅野長官は、私鉄は赤字ではないとの反証をあげてもこれを阻止すると、強い言明をされております。ところが、一方、原田運輸大臣は、去る予算委員会の席上で、同じ区間で国鉄と私鉄の運賃に格差があるのは是正するのが筋だとか、私鉄の訴えを白紙状態から検討すべきであるなどと答弁をされているのであります。佐藤総理、一体閣内はどうなっているのですか。この問題の答弁に限って、最初に私鉄値上げ論の運輸大臣、次に反対論の経済企画庁長官、そして総理の順番で御答弁をいただきたいと思います。そして、もし閣僚間に意見の不統一のある場合は、総理は閣内不統一の責任を負っていただきたいと思います。(拍手)
 このように、国鉄運賃の値上げを認めることは、物価抑制の歯どめを失い、目白押しに申請している私鉄、ハイヤー、タクシーその他多くの公共料金の値上げを、やがて認めざるを得ないことになるのでありまして、この意味から、上昇ムードにある物価を押えるためには、国鉄運賃の値上げは取りやめるべきだと思うのでありますが、政府の物価対策について、首相の考えをお尋ねいたします。(拍手)
 第二に、四十四年度以降の運賃の取り扱いについてであります。
 すなわち、国鉄財政再建推進会議の意見書は、昭和五十三年までの十年間に実に三兆三千七百六十億円の運賃改定を予定いたしております。この答申のとおりとなれば、四十四年度以降、運賃法改定と定期運賃や諸料金の値上げを大幅に、交互に繰り返して実施をしなければならなくなるだろうと思われます。運賃値上げ案は、やるべき施策をすべて完全にやり尽くして、その後、なお慎重に国民と相談すべきものではないかと思われますが、総理は再建期間中の運賃をどう考えているのか、お答えをいただきたいと思います。
 第三には、国鉄財政の赤字の根本的な原因をどこに見ているのかという問題であります。
 国鉄財政の赤字の真の原因は、わが党提案の、日本国有鉄道の鉄道施設の整備に関する特別措置法の提案理由に明らかなとおり、戦後経済の伸長に即応する投資が確実になされなかったこと、高度成長政策に追われて、資金コストの高い民間資金によって工事資金がまかなわれていたところに主たる原因があったのであります。したがって、私は、工事費そのものを政府が出資するというわが党提案を施策に生かさなければ、真の赤字解消、財政の再建は全く不可能であると思います。今日、政府提案の再建措置法では、今後も毎年三千億にのぼる工事資金は、民間資金の借り入れによらなければならないでありましょう。過去債務二兆円の長期負債は、計画どおり毎年多額に返済をしなければならないでありましょう。したがって、再建の最終年度に当たる昭和五十三年には、私の試算によれば、実に元利合計年間七千五百億円に達する巨額な返済金を計上しなければならなくなってまいります。まさに、何の再建ぞやと言いたいのであります。
 フランスでは線路建設費、すなわち、工事費も政府が出資することになっており、西ドイツ、オランダなどにおいても同様の資金援助が行なわれているのであります。今日、通勤輸送あるいは幹線輸送の増強は、明らかに政府の責任であって、政府が年間一千億円くらいの国鉄建設資金を負担しても、文句を言う国民は一人もいないだろうと信じます。運輸大臣は、工事費の政府出資を確保しようとする考えがおありかどうか、その誠意がもしあるならば、再建措置法第七条の「工事勘定の支出に充てられた資金に係る費用の一部について補助する。」というややこしい条文は、明確に、「資金の一部を補助する。」としなければならないと考えるのですが、運輸大臣の答弁を求め、大蔵大臣の所見をも伺いたいと思います。
 第四に、財政再建促進特別措置法案の国鉄に対する政府の不当な干渉にわたる点についてであります。
 同法によると、たかだか年間八十四億という助成措置と引きかえに、同法第四条によって、運輸大臣と大蔵大臣は、まず年度当初の再建計画策定にあたって、業務の運営の基本方針、輸送力の増強策等をはじめ、再建に必要なすべての事項に対する承認権を通じて、国鉄運営のすべての分野に干渉することになっております。そして第九条では、業務の運営については改善命令をも出すことになっております。
 かかるやり方は、財政再建に名をかりて日本国有鉄道法の制定趣旨に背反し、国鉄運営に対する不当な圧迫となり、国鉄の自主的な運営を阻害することとなり、そして、それはやがて運賃改定の権限を国会から所管大臣の認可権に移すという危険な道に踏み込むことになりはしないかという危惧を抱かざるを得ないのでありますが、運輸大臣の意見をただしておきたいと思います。
 第五に、地方線の問題であります。
 国鉄当局は、財政再建の一環として、財政再建推進会議並びに国鉄諮問委員会の意見書に基づいて、地方線の整理と小駅の廃止を地方局に指示いたしました。その内容は、線区八十三線、営業キロ二千六百キロに及んでおります。鉄道を生活の一部としている地方住民は、地方線の廃止に政党政派を超越して断固反対しているのが実情であります。日本国有鉄道は、国家権力の有するものではなくて、一本のまくら木、一粒の石といえども、すべて運賃によって利用者により蓄積された国民的資産なのであります。これを、単に企業の採算の事情のみで廃止をするということは、断じて許されるものではありません。(拍手)
 そこで、運輸省としては、この問題を国鉄のほしいままの意思にまかせることなく、地域住民の声を正確に反映し、地方線の再建を達成する立場に立って、利用者の参加する機関を設置して、それこそ白紙に返して地方線充実を検討する必要があると考えられるのでありますが、運輸大臣としての賢明なお答えをいただきたいと思います。
 最後に、輸送体系の問題であります。
 意見書は、将来の交通体系における国鉄の役割りを考慮しつつ、総合交通体系の形成を強く要望しているのでありますが、この両案には、国民経済の上で最も効率的な交通機関の調整運営をはかるという基本的な政策を抜いておるのであります。私が考えるに、近年わが国は、鉄道輸送時代から道路輸送時代へと移り変わるかの感が持たれたのでありますが、狭隘な国土、都市の過密化、無計画な自動車生産とによって道路輸送の限界が見え始め、いまや、わが国の輸送の大動脈は鉄道輸送にあるとの再認識がなされているのでございますけれども、総理はいかにこれを受けとめておられるのか、総理並びに運輸大臣の所見を伺いたいと思います。
 以上で私の質問は終わるのでありますが、あらためて言うまでもなく、国鉄はその性格上、とうてい経済ベースだけで事業が成り立つべきものではないと思います。成長経済というのは、大企業、大会社の拡大をはかることではなくて、国民一人一人の経済基盤を強くすることであり、そのためには、国鉄の先行投資、採算の度外視を回避すべきではないと思います。国をつくること、国づくりを国鉄の収支の狭い均衡の中だけで考えるのではなくて、地域社会、地域経済の発展という広い収支の均衡の中で国鉄をとらえてこそ、初めて日本国有鉄道は生かされ、再建されるのではないかと思うのであります。
 かかる観点から、私ども日本社会党は、提案されている二法案は、国民生活を犠牲にし、国鉄の企業を政府の桎梏の中に閉じ込め、再建の道をむしろ閉ざすものと判断して、絶対に反対しなければならないと決意をいたしておるところであります。したがって、両法案を、国民の意見を代表して国会成立を阻止するためには、野党のとり得るあらゆる国会活動の手段を駆使して、徹底的に戦うことを申し添え、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#11
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 野間君にお答えいたします。
 答弁の順序についても御注文がございましたが、ただいま指名がありましたので、一括して私お答えいたします。御了承いただきたいと思います。
 来年度の物価の上昇は五%の範囲内にとめるよう、政府としては最善の努力を払う所存であり、この場合、国鉄運賃の引き上げによる消費者物価への影響は〇・二%程度と考えられております。ただいま御指摘になったとおりであります。そこで、便乗値上げさえ誘発しなければ、国鉄運賃の値上げが物価対策を破綻させるようなことにはならない、かように考えております。
 第二に、そういう意味合いで、便乗値上げは極力認めないという方針のもとに、この方針を堅持してまいりますが、料金改定を認めないと倒産してしまうというようなことが明らかな場合にまで、何が何でも料金改定を認めない、こういうものではありません。これはやはり私企業については、その存立ははかってまいらねばなりません。個々の経営の実態と経営改善の可能性について厳正に調査し、その上で判断されるべき問題かと、私どもは考えております。
 次に、御承知のように、国鉄財政再建推進会議の答申におきましても、財政制度審議会の答申におきましても、いずれも今後十年間にさらに二回の運賃改定を必要と予想しております。このことからもおわかりがいただけるかと存じますが、国鉄の現状は非常に苦しいし、なまやさしいものではありません。また、その財政再建の道も容易ならざるものがあるのであります。政府としては、国鉄運賃につきましては、利用者負担の考え方のもとに、コストの状況、他の料金の状況等々を勘案して、適時、適切に処理すべきものと考えており、今後さらに運賃改定を必要とするかどうかにつきましては、今後の検討課題と考えております。当面は、今回の運賃改定のもとに、国鉄経営の合理化に全力をあげてまいりたいと存じます。
 最後に、今回提案いたしました国鉄財政再建促進特別措置法におきまして、合理的な総合交通政策の樹立を義務づけているのも、この国鉄の、運輸機関としてのその位置づけであるのでございまして、その必要性を実は痛感しておるのであります。政府としては、さらに慎重に検討の上、的確な総合輸送体系の樹立につとめてまいります。(拍手)
  〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#12
○国務大臣(福田赳夫君) お答えいたします。
 国鉄財政の赤字の原因は、時代の推移、これが主たる原因である。つまり、自動車時代、航空機時代、そういう時代になりまして、国鉄が陸の王者たる地位を失いつつある、そういうことが基本的な原因だと思います。しかし、国鉄が担任する任務、これが、だからといって、私はいささかも軽減されておるとは思いません。したがいまして、政府といたしましては、工事費に対しましては利子補給をする、国鉄再建補助金を支給するという方針をとっておるのであります。
 お話しのように、工事費の重圧、これはそのとおりに考えます。でありまするが、これは、もうあらゆる企業においてそうでありますけれども、工事費は、これは大体借入金でやる、これが原則なんです。原則でありまするけれども、ただいまのような時代の推移、また国鉄の重要性にかんがみまして、国鉄財政再建補助金、つまり、利子補給を工事費に対して行なうという態度をとっておるのであります。
 今度の国鉄財政再建につきましては、再建推進会議の答申は、自己努力をせよ、また政府も援助をせよ、利用者も一部を負担せよ、この三者一体でこれを再建しろという答申になっておるわけであります。その政府の協力の方法としては、政府からの借金、その借金の利息のたな上げということを言ってきた。私どもがこれを検討してみた。国鉄財政は非常な窮地に立っておる。これはどうしても再建しなければならぬ。しかも、再建推進会議がそこまで言ってきておる。しかも、こういう国民、利用者に対しましては、その料金引き上げによって負担に応じなければならぬとまで言っておる。その際に、政府がふん切らぬということは、これはよろしくない。これはもう非常な決意をもって、この答申には取り組むことにいたしたわけであります。
 石田総裁は、皆さんも御承知のとおり、非常にがんこというか、頭を下げたことがないというような人です。その石田総裁が、この提案がきまったとき、私はほんとうにこれで国鉄の再建ができると信じますと言って、私どものとった対策を評価しておるのであります。この一事をもちましても、政府がいかに厚い考え方を国鉄に対してとっておるか、ひとつ御承知願いたい、かように存じます。(拍手)
  〔国務大臣原田憲君登壇〕
#13
○国務大臣(原田憲君) 野間さんのお問いの最初の私鉄の運賃問題につきましては、総理から答弁がございましたので、重複を避けさしていただきます。要するに、極力抑制をしていくという態度で、諸般の事情を総合的に考慮して、慎重に対処をいたしたい、毎度申しておるところでございます。
 それから、私にお問いのありました国鉄財政の赤字の最大原因は何か。いまも大蔵大臣が御答弁になったことと重複するのでございますが、この工事費を借りるということに対して、政府が出資する用意はないのか、すなわち、国鉄の資本金を、日本国有鉄道法第五条で追加することを認めよ、こういう二つの形でお問いになっておるわけでございます。
 いまも大蔵大臣から話がございましたが、企業の工事費というものは、大体は借り入れ金でやっている。国鉄の場合は、特に重大な事業でございますから、長期、低利の財政投融資という安い金利の金を使い、なおその上に、現在まで再建補助金というものももらっておったのでございますが、それでもなかなかいかぬというので、今度は四十三年度末の政府資金債務にかかわる利子相当額の長期資金の優遇貸し付け及びこれにかかわる利子の補給を行なうというような、いわば画期的な助成策というものをとることにいたしておるのでございまして、私は、正直に言いまして、いままで大蔵省は少し冷たいじゃないかといわれたことも事実に近いと思いますが、今度は、この国鉄再建のために思い切った措置をとっておるということがいえると思うのでございます。
 なお、そのほかにも、御存じのように、地方財政が非常に困っておるその中で、国鉄納付金をまけてもらうということを自治省のほうでもやっていただくというような、いわゆる国、地方を通じて、国鉄再建のための財政措置をやろうというのでございますから、私は、遺憾ながら政府出資を行なうことは考えておらないわけでございます。
 もう一つ私にお問いのありました、この財政再建特別措置法は国鉄の自主性を制限するのではないか、大蔵省と運輸省と寄って制限するのではないか、こういうお尋ねがございましたが、そうではございませんで、逆に、基本的な考え方というものを立てまして、そうして国鉄に示しはいたしますけれども、本来の計画というものは、国鉄が、こういう方法でやりたい、こういうことをやってくるわけでございます。いまの国鉄の地位を考えますときに、国鉄がこれからほんとうに再建されるかどうかという非常に大事なときでございますから、国も国鉄もほんとうに責任を持った形でやりていくことが一番大事であると思いますので、私は、この法律は決して国鉄を押えつける法律ではないと考えておるのでございます。
 それから、国鉄赤字線の廃止についてお尋ねがございましたが、これはお尋ねのとおりでございまして、国鉄赤字線の廃止ということについてはなかなかむずかしい問題でございます。これは、その地方におけるその線の役割り、それから総合的な国土開発計画との関連、地域開発等から見た将来性、道路の整備状況等を、具体的かつ綿密に調査の上、総合的観点から判断をいたしたい問題でございます。また、この廃止ということはなかなか簡単な問題じゃない。ということは、運輸審議会に諮問をいたさなければなりません。この運輸審議会では、公聴会、聴聞会等で学識経験者、地元利用者の意見も述べられるはずでございますから、十分考えた措置がとられるはずであるという見地に私は立っておるわけでございます。
 それから、最後にお尋ねになりました、交通機関が適正な輸送を分担できるように考えなければならぬのじゃないかというお尋ねでございます。これは、私は全くそのとおりであろうと考えるのでございます。今日、国鉄というものが、何を国民経済の中で国民生活のために果たすべきかということを考えるときに、お説のように、中長距離輸送であるとか、あるいは大量都市間の輸送であるとか、あるいは通勤輸送であるとか、それぞれの任務がはっきりいたしておるわけでありますから、それらと勘案して、トラックというもの――モータリゼーションといわれておりますが、こういうものができてきた、これとどう一貫した輸送体系を立てていったらよいのかということにつきましては、私も同感でありまして、合理的な輸送体系の確立に努力いたしたいと存ずる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣菅野和太郎君登壇〕
#14
○国務大臣(菅野和太郎君) 国鉄料金の値上げの経緯、並びに国鉄の料金の値上げに便乗して値上げをしようとする交通関係の公共料金は、極力押えるという総理の御意見と同じ意見であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#15
○議長(石井光次郎君) 山下榮二君。
  〔山下榮二君登壇〕
#16
○山下榮二君 私は、民社党を代表いたしまして、ただいま提案されました国鉄財政再建促進特別措置法案並びに国有鉄道運賃法改正案の主要問題点について、総理並びに関係大臣に質問をいたしたいと存じます。
 まず、質問に先立ってお伺いいたしたいことは、去る六日、自民党の外交調査会長川島氏と駐日アメリカ臨時代理大使がお会いになり、沖繩問題をめぐる国会論戦などについて懇談の席上、同代理大使は、最近の国会の論戦を聞いてみても、沖繩問題をめぐる佐藤総理の真意がよく理解できないと述べたと、新聞は報道をいたしておるのであります。これはただ沖繩問題だけではなく、わが国経済問題、ことに物価問題、なかんずく公共料金の問題等についても、佐藤総理の真意が那辺にあるか、国民はその理解に苦しまなければならぬところでございます。(拍手)そこで、佐藤総理の、物価問題、公共料金に対する決意をまずお伺いをいたしたいと存じます。
 あなたは、過日の再開国会の男頭、施政方針演説において、消費者物価問題には特に力を入れ、公共料金についても、国鉄運賃以外の値上げはこれを抑制すると言明されておるのでございます。ところが、公共料金の中で国民生活に一番重大な関係を持つものは、何と申し上げましても、交通料金と米価の問題であることは御承知のとおりであります。しかるに、その最も重大な国鉄運賃を、昨年の定期料金の値上げに引き続き、本年またぞろ定期料金並びに一般運賃の大幅値上げを政府みずから行なうことは、公共料金抑制、物価安定に逆行することはなはだしいといわなければならないのであります。(拍手)
 最近のわが国の物価上昇は、卸売り物価並びに輸出物価は一応安定しておるにもかかわらず、消費者物価だけは依然として激しい上昇を続けておるのであります。さらに、その上昇の原因は、究極のところ、公共料金をはじめとした政府主導型の物価上昇になっていると申し上げましても決して過言ではないと存ずるのであります。したがって、この際、物価を抑制する歯どめとしては、何といいましても、わが党が多年主張してまいっております公共料金の全面値上げストップ以外には、その方法はないと思うのでありますが、総理のこれに対する見解をお伺いいたしたいと存じます。(拍手)
 次に、受益者負担問題について質問をいたします。
 政府は、公共料金については受益者負担を云々されておるのでございます。今回の国鉄運賃値上げ案を見ると、都市における通勤、通学並びに新幹線等、経営上の黒字路線に対して大幅値上げを行なうというのであります。これは、政府のいう受益者負担の論理に逆行し、取りやすいところから取るという、全く安易にして、かつ、利用者を無視したものといわなければなりません。この点について、経済企画庁長官並びに運輸大臣の見解を承りたいと存じます。
 なお、交通料金問題は国民生活と切り離すことのできない重大な問題でありますが、国鉄は申すに及ばず、私鉄、バス、地下鉄、タクシー等の公共料金については、一切便乗値上げを認めないという態度で臨むべきであると思いますが、もしそれが値上げになるといたしますならば、一般諸物価に及ぼす影響はきわめて重大であると思うのであります。そこで、企画庁長官並びに運輸大臣の明確な御答弁をお願い申し上げます。
 次に、国鉄の長期再建問題についてお伺いをいたします。
 第一は、交通輸送政策の役割りは何であるか、その中で、国鉄の果たすべき任務は何であるかの問題であります。
 政府は、昨年十一月の国鉄財政再建推進会議の答申に基づいて、国鉄は今後わが国の総合的な交通政策上、特に都市間の旅客輸送、中長距離の大量貨物輸送、大都市における通勤通学輸送の分野で重要な役割りを果たすべきであるとの前提を立てて、この重要性にかんがみ、国鉄財政再建十カ年計画を立てられておるのであります。私は、この基本方向は正しいと思うのでありますけれども、そこで問題となるのは、これら交通輸送の整備、改良、改善をはかる過程において、政府は独立採算制で黒字を維持しなければならないとしておられるのであります。これはあまりにも国鉄の営利性を強調したもので、国鉄が本来果たすべき国民の福祉増進という公共性を軽視したものといわなければなりません。(拍手)先進諸国の鉄道の例を見るまでもなく、公共の福祉増進のためには、一部の赤字発生もやむを得ないと思いますが、この点についての政府の御見解を賜わりたいと思うのであります。
 さらに、具体的にお伺いをいたしますが、国鉄は経営の公共性にかんがみて、通勤通学定期割引、貨物運賃の割引など、国鉄であるがゆえに課せられている公共負担額が昨年度で六百三十億円にものぼっておるのでございます。これは国の政策による要請でありますから、当然一般会計予算でこの公共負担額を補てんすべきであると思いますが、これに対する大蔵大臣の所見を伺いたいと思う次第でございます。
 第二点は、国鉄再建のめどがつくまでの間、政府関係債務六千三百四十二億円について、その利子は、先ほども話がございましたように、政府も形式上たな上げを行なっているのでありますが、その元本については何らの措置が行なわれておりません。これでは再建措置が行なわれたとは考えられず、昭和四十四年度の元本返済額五百十六億円について当然たな上げ処置を行なうべきであると思いますが、これらについて、運輸大臣並びに大蔵大臣の見解を伺いたいと思う次第でございます。(拍手)
 もしこれら政府の措置が行なわれずに、国鉄赤字の解消を運賃値上げだけに依存するならば、国鉄内の合理化、近代化など、国鉄職員がいかに企業努力をしても結局は無為に帰してしまうことは火を見るよりも明らかであります。その結果は、国鉄職員の労働強化となり、また順法闘争等がますます激化して、通勤通学地獄は解消どころか、なお一そうその混乱を招くことは、これまた火を見るよりも明らかでございます。政府は、これらに対し、いかなる対策を考えておられるのか、その所信をお聞きいたしたいと存じます。
 次に、国鉄再建の積極的施策についてでございます。
 第一に、国鉄の総合的多角経営の推進について申し上げたいと思います。たとえば自動車輸送との一体化の道をはかる、石油パイプラインの敷設を行なう、新線、増線に伴う土地開発事業を行なう、あるいはまた、主要駅の高層化によるホテル、アパートなどの経営を推進し、企業経営の総合的、多角的方途を講じて赤字の解消につとめるべきであると思うのでありますが、政府のこれらに対する所信を伺いたいと思います。
 第二に、鉄道建設公団についてであります。
 新線建設は、申し上げるまでもなく、国鉄並びに道路建設、地域開発などの総合的視野から、今後は行なわれるべきものであります。かつまた、経費のむだを極力排除するため、この際思い切った処置を行なうべきであると思うのでございます。すなわちその第一は、鉄道建設公団などは、国鉄との一体化など、抜本的な企業合理化をはかり、新線建設等を行なうべきであると考えます。さらに、赤字ローカル線については、地域住民の福祉並びに地域開発を考慮し適切なる措置を講ずべきであると考えるのであります。また、過疎地域で赤字に悩む中小私鉄、バス等の経営についても、沿線住民サービスの維持向上をはかるため、政府の財政補助、または金融上、税制上の特段の措置を強化すべきであります。これら諸点について、運輸大臣並びに大蔵大臣の御見解を伺いたいと思う次第でございます。(拍手)
 以上、私は、わが党の考え方を申し述べつつ、数点にわたり政府の見解をただしてまいったのでございますが、最後に、総理は、組閣以来、安定成長経済政策と物価の抑制を主張し、また社会資本の拡充強化を強調されてこられたのでございますが、いまこそ、物価安定に対する総理の所信を実現される唯一の機会ではなかろうかと存ずるのであります。(拍手)したがって、総理は、この際、公共料金はもとより、物価抑制について勇断をもって対処されるべきであると存じ、ぜひ総理の勇断を切望いたしまして、私の質問を終わる次第でございます。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#17
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 山下君にお答えいたします。
 私の物価政策の基本の考え方はどうかというお尋ねであります。施政方針演説やその他の機会に、この本会議場でたびたび言明いたしましたとおり、物価問題は、御指摘になるまでもなく、目下の最大の政治課題として、政府は真剣にこれと取り組んでまいる決意であります。そのため、政府の主導する物価につきましては、極力抑制する方針をとったのでありますが、残念ながら、国鉄旅客運賃だけは、国鉄の経営の現況にかんがみ、運賃改定をやむを得ないものと考えたのであります。政府といたしましては、国鉄運賃改定に便乗した公共料金の引き上げは絶対に認めない、極力これを抑制する、また、両米価据え置きの方針を堅持するとともに、財政金融政策全般の適切なる運営によりまして、極力物価上昇を抑制してまいる考えであります。
 そこで、具体的に、この際公共料金を全部一時ストップしてはどうか、こういうお話でありますが、一定の期間これをストップするといたしましたら、その期間を経過した後に、混乱を必ず引き起こすと思いますので、その説には私は賛成いたしません。
 また、最後に、山下君から、政府は、もっと真剣に、さらにさらに勇断をもって物価問題と取り組め、こういう激励をいただきまして、ありがたくお礼を申し上げておきます。(拍手)
  〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#18
○国務大臣(福田赳夫君) 国家資金を投入して運賃値上げを抑制することはできなかったのか、こういうお話でございます。国鉄は、申し上げるまでもなく、いま非常なピンチに当面しているわけでございまして、これが私企業でありますれば、まことに重大なる時期かと思うのであります。この重大なる局面に対しまして、各界の権威を集めました国鉄財政再建推進会議は、先ほどからお話のある三つの対案を意見具申をしておるわけではございまするが、それはさておき、この際、国家資金を投入して運賃の値上げを抑制しようと思えば、これは実はできないことはないのです。しかし、このむずかしい事態になりました国鉄に対しまして、一時しのぎの財政補給という注射をして、一体あとはどうなるか、このことを考えてみまするときに、そういう三者分担、これでいこうという気がまえのできた、また、そういう有力なる投資のできたこの際こそ、根本的な解決をやらなければならぬ、こういうふうに考えまして、ただいま提案のような方針をとったわけでございます。さようなことで、一時しのぎはやろうと思えばできまするけれども、あとのことがたいへんだ、この際思い切って再建をするんだ、十年後には、もう赤字をほんとうに払拭した、前途明るい国鉄を再建するんだという見地に立ったことであることをお答え申し上げます。(拍手)
  〔国務大臣菅野和太郎君登壇〕
#19
○国務大臣(菅野和太郎君) 公共料金は受益者負担の原則でやることは間違いないかというお話がありましたが、お話しのとおり、公共事業は、これは受益者負担の原則は、私は全部はできないと考えております。これは公共事業であるがゆえに、したがって、国あるいは市町村ができるだけ応援すべきであるということで、今回は、ただいま大蔵大臣が述べられたとおり、政府もまた市町村も、この問題については協力することに相なった次第であります。
 なお、公共料金を値上げすれば物価に影響するのじゃないかというお話、もちろんそうです。国鉄料金の値上げによって〇・二%の物価の上昇を来たしますが、しかし、この際政府といたしましては、なるほど国鉄の料金は値上げはしましたけれども、最も重要な問題である米価の問題、これは据え置くという方針、それから麦、塩あるいは電話、電信などの値上げを抑制したということは、これはよほどの勇断でやったわけでありまして、したがいまして、国鉄料金だけで物価が上がるというものじゃなく、国鉄料金の値上げにかわるに、ほかのいろいろの方法を講じて、そして五%で押えたいという決意でやっておる次第であります。(拍手)
  〔国務大臣原田憲君登壇〕
#20
○国務大臣(原田憲君) 黒字の新幹線等を含んで値上げをするということは、受益者負担の原則に反するのではないかというお問いがありました。いま菅野大臣からもお答えがございましたが、国鉄の場合は、これは全部を通じて公共企業体としての使命を果たしておるものでございまして、いわゆる総合原価主義ということでございますから、この場合、これに反するものではないと考えるのでございます。
 それから国鉄運賃並びにバス、タクシー等の公共料金値上げ問題についてお尋ねがございましたが、先ほどから何度もお答え申しておりますように、便乗値上げは一切しない、事業の経営内容、物価に与える影響等を総合的に考慮して、慎重に対処することとしております。
 それから、元本返還についても何らかの猶予措置を講ぜよ、それぐらいのことをやらなければ、ほんとうの抜本的な再建はできない、職員へしわ寄せをやったり、それが順法闘争というような形になって、大衆への迷惑というような悪循環になって、ほんとうの対策にはならないじゃないかというお尋ねがあったのでございますが、今度の措置は、先ほどから何度もお答え申し上げておりますように、相当思い切った財政措置をいたしておるのでございまして、これの返還方法も、十年据え置き、二十年間にわたって返すという、かつてない返還方法を考えておるのでございまして、これだけのことをやるのでございますから、国鉄内部におきましても、いわゆる管理者と職員が一体になって、国民のための事業であるという態度をもってかかっていただきますならば、私は、必ず国鉄は再建されるものと、かたく信ずるものでございます。この間も順法闘争というような形が一時あらわれましたけれども、その後すぐ話し合いがついたということは、私は、労使ともに、これらのことについて十分お考えになっておることと信じておるのでございます。
 それから、国鉄に多角経営をさしたらどうだ、こういうお尋ねがございました。このことについては、具体的に、パイプラインの運営だとか駅ビルの管理というようなことをお尋ねでございました。このことはきわめて重要なことでございまして、今後慎重に前向きに検討すべき事項であろうと考えます。ただ、土地の売買や百貨店経営というようなものは、国鉄本来の使命、及び民間企業への影響等を考慮して、これは慎重に考慮すべきものだと考えます。
 それから、赤字ローカル線についてのお尋ねがございましたが、これは先ほどもお答えを申し上げておりますので、それで御了承を賜わりたいと存じます。
 それから、鉄道新線の建設について、鉄道建設公団と国鉄の計画の一元化というお話でございました。この鉄道建設公団というものをこしらえました経緯にかんがみまして、重点的に新しい線をつくっていけという推進会議からの御指摘もございます。これから、いままで建議されておるたくさんな線がございますが、これらの問題について十分勘案して、国土の均衡ある発展をはかるために、地域の情勢等を十分考えて、重点的に推進していくべきものであると考える次第でございまして、お説のように、国鉄、公団の密接なる連絡はとっていかなければならない、私どもはそういうふうに指導していきたいと考える次第でございます。
 それから、過疎地帯の中小私鉄、バス等の問題についてお尋ねがございましたが、これらにつきましても十分措置を講じまして、地方住民の交通手段を確保してまいりたいと存じております。来年度予算には、新しくこれらにつきましての補助体勢もとっておるような次第でございます。
 以上、お答えを申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#21
○議長(石井光次郎君) 沖本泰幸君。
  〔沖本泰幸君登壇〕
#22
○沖本泰幸君 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま御説明のありました政府提出の国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案、並びに日本国有鉄道財政再建促進特別措置法案に関し、佐藤総理並びに関係各大臣に御質問いたします。
 国鉄運賃を一五%引き上げるだけで消費者物価を約〇・二%引き上げる要因になることは、まぎれもない事実であります。この国鉄運賃値上げを他の物価に波及させないために、他の公共料金の便乗値上げを抑制すると、ただいまも総理は明らかにされたわけでありますが、原田運輸大臣は、私鉄運賃は国鉄運賃とのつり合い上、別途に考慮すべき問題であると、大体値上げ承認の口ぶりのようなことを昨年からたびたび申されております。私鉄運賃も上がり、国鉄運賃と合わせますと、消費者物価を〇・三%以上つり上げる要因になってまいります。さらに、地下鉄やバス、トラックなどの運賃値上げがメジロ押しに控えておりますが、これが一般物価に飛び火することは目に見えておるわけです。福田大蔵大臣は、物価抑制予算の姿勢を貫いたと自信満々の御様子ですけれども、ただいま述べましたような状況のもとで物価上昇率を五%以内に押えられるのかどうか、この点について総理並びに大蔵大臣にお伺いいたします。
 さらに、経済企画庁長官は、国鉄運賃の値上げが他の関係公共料金の便乗値上げを誘発しないように厳重な態度をとる、先ほどの決算委員会では、私鉄五社は絶対認めない、こういうふうな御発言もあったそうでございますが、すでに運輸省のほうには大手私鉄十四社の値上げの申請が出ておりまして、運輸省のほうとしては、これを認めざるを得ないような口ぶりでもあります。地下鉄は、料金収入の大部分を借り入れ金の返済に充てておるわけでございますが、なおかつ赤字を出しております。バスや路面電車も赤字経営を余儀なくされております。しかるに、地方自治体のバス、地下鉄事業については、運賃の値上げをストップさせる財政措置はほとんどとられておりません。こうした事態について自治大臣はいかなる御見解か、これを明らかにしていただきたい。
 また、バスとか地下鉄は、国や地方自治体が元利払いの肩がわりを認めてくれない。したがって、料金の値上げを運輸省に申請しております。自治省のほうも、合理的な料金改定はやむを得ないというような態度をとっておると聞きますが、総理並びに経企庁長官、これでは公共料金は底抜けに値上げになってまいります。あなた方のただいま言われた、便乗値上げは認めません、こういうことは全くうそになってまいります。明快な御答弁をいただきたいと思います。
 それにしましても、国の輸送政策はあまりにも貧困であります。輸送体系はどうなるかという予測はありますが、個々の分野について言っているだけで、総合調整は経企庁がやるべきである、また運輸省がやるべきであるとかいって、具体的には何もやってないではありませんか。
 具体的な例をあげますと、東京−札幌間はもう飛行機が利用される時代に入っております。ところが国鉄は、青函トンネルの試掘を進め、また運輸省海運局では、北海道−内地間の内航海運政策を進めております。もっと大きな点では、国鉄や建設省がそれぞれ独立して、片方は鉄道、片方は道路の建設、整備を進めております。その相互に連係がない。これはどういうわけでしょうか。全く矛盾した問題でございます。港湾や航空機等を考えても同じであります。すべて異なる省、異なる局で、それぞれのなわ張りの中で計画、立案されているのであります。これが日本の運輸政策の現実の姿であります。国鉄経営の苦しみを生み出している根本原因にもなるわけであります。国鉄の独占時代の考え方に基づく仕組みや制度が、高速自動車道路やエアバスや海上コンテナなどとの激しい輸送競争時代になってもそのまま存続されているところにも、赤字の原因があります。自動車や航空機の発達した現在では、鉄道に関する諸制度は根本的に改められなければならないと思います。政府の輸送政策を、現在、未来にわたって明らかにしていただきたいと思います。総理並びに運輸大臣に具体的なお答えをいただきたいと思います。
 政府の国鉄財政再建政策は、企業の徹底的な合理化及び施策による増収、各種財政措置による政府の大幅な援助、そして国民負担による運賃の改定という三本の柱を基本方針として、向こう十年間で国鉄の財政を立て直す考えであると伺っております。これがすなわち国鉄当局の言う三方一両損という考え方でありますが、国鉄の試算を見ますと、その負担が国民に一番かかっているのであります。試算表には、累積赤字七兆円を解消するために、十年間で政府の財政措置が一兆円、国鉄の合理化努力が二兆円、国民負担の運賃値上げが三兆円です。どこにも三方一両損という割合は見当たりません。国民の負担率は全額の半分であります。三方一両損というのは国民の目をごまかすためのものであると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)ただ一般的に、国鉄や国も出しますから利用者も応じてほしい、こういうことであろうと思いますけれども、先ほど運輸大臣は、国も国鉄も非常な責任を持ってこの問題と取り組んでおると答弁されております。国民に大半の負担を背負わせて、国鉄も国も軽い負担で逃げるという、こういうふうなずるいやり方には絶対納得できません。(拍手)この点について明快な御回答をいただきたいと思います。
 国鉄の財政が赤字の一途をたどったその理由は、経費の伸びが営業の伸びを上回っているからであります。その結果、四十二年末の長期負債は一兆六千四百三十五億円にもなったのであります。こうした財政窮迫化の原因は、すでに国鉄の独立採算制が限界に来ていることを如実にあらわしております。たとえばヨーロッパ各国では、モータリゼーションの発達につれて、鉄道を国民全体のものという政府の考えから、建設費の負担や長期負債のたな上げ、通勤輸送に対する赤字補てん、営業欠損の国庫負担などの財政援助によって経営不振を補っていることは、先ほどのお話にもありました。国鉄の独立採算制が限界に来ている現在、政府は、大幅な財政援助によって経営の改善をはかるべきではありませんか。大蔵省は、先ほども、国家の援助は国鉄の合理化をおくらせる、こういうふうに言ってはねのけられますけれども、これではいつまでたっても赤字を解消させるわけにはまいりません。総理並びに大蔵大臣にもう一度踏み込んだお答えをいただきたいと思います。(拍手)
 通勤定期の課税についてお伺いいたします。
 通勤定期利用者のうち、九八・七%の人が会社負担であるから、値上げになっても利用者の負担はわずかである、こういうふうに言っておられます。全く無責任な発言であります。会社が全額負担しているものは五三・八%で、四四・九%は会社が一部負担しているにすぎないのであります。まして、中小企業関係の従業員の定期代の負担は、個人負担がほとんどであります。
 さらに、サラリーマンにとって重大な問題は、今回の定期運賃が値上げになれば、東京−大宮間は三千三百五十円から三千五百九十円になり、大宮より遠い通勤者の定期代は税金の課税対象となるのであります。すなわち、三千六百円までは非課税、これが運賃の値上げで大ぜいの課税対象者を出すということになります。通勤者の約一五%の方々が現在までは課税対象であったのが、約三〇%の方々が課税対象になってまいります。つまり、三〇キロ圏以遠の通勤者の方がこれに該当するのであります。最近の大都市のドーナツ化現象は、ますます中遠距離通勤者が増加し、それは、すなわち課税対象者の増加を生むことになります。このことは、運賃値上げだけで済む問題ではありません。この社会的問題に対して、大蔵大臣は通勤定期代を課税対象からはずすお考えはありませんか、お答え願いたいと思います。
 道路公団に対しては国家資金が相当出されております。料金収入が経費をまかなえない場合には、不足分は国家財政が背負うというたてまえになっております。ところが、高速道路との競争関係にある国鉄に対しては、昨年までは赤字の国庫補助はほとんど行なわれておりません。ほんとうは、おそろしく高い料金を払って使用しなければならない道路を、道路公団の犠牲、つまり、国民の税金で、きわめて安い料金で走ることができます。ガソリン税で道路建設費を負担しているといっても、これはものの数ではありません。ところが、国鉄のほうは、何から何まで独立採算でやっていかなければなりません。自動車は、他人のつくった道をわずかな使用料で走れるのに、国鉄の使う道、つまり線路は、全部自分の負担でつくるという、こんな不合理な、不公平な競争関係で合理的な輸送分野ができるわけはないのであります。そうして、赤字が累積して独立採算が危機に立ったとき、その負担を国民にしわ寄せするという、こういうこそくな政府のやり方は断じて許せません。道路政策における経費の不足を国家財政で見ているごとく、国鉄の赤字に対しても政府は肩がわりをしていくべきであります。総理並びに大蔵大臣の御見解を承りたいと思います。
 大都市は、ますます人口が集中し、なかんずく、東京、大阪、名古屋等といったところの通勤輸送の混雑は、極限をはるかに越えて、殺人的な状態でありますが、この混雑緩和のための施設の建設費だけでも非常に膨大な資金を要することになります。建設費をまかなうのに必要な資金を料金で徴収するわけにはまいりません。そのような意味からいいましても、通勤輸送については根本的に考え直さなければなりません。
 都心に大きなビルを建てて、住宅は遠いところにどんどん建てる。すなわち、住むところに働く場所がコンビナイズされていない今日のおくれた都市政策では、毎日の交通量はますますふえるのは当然の帰結であります。このような状態で膨張していること自体に無理があります。政府の都市対策の無為無策がこの結果を生んだことを考え合わせますと、政府がその大部分の責任を持たねばこの問題の解決はおぼつかないと考えますが、総理並びに大蔵、運輸各大臣の御見解を承りたいのであります。
 結論として言いますと、国鉄の独立採算制は限界に来て、その責任は、国鉄の放漫経営と政府の総合輸送政策の欠除から来たのであります。その責任を、国も国鉄も持つから、三方一両損で国民も負担してほしいと、大半を国民に背負わせる運賃の値上げと財政再建計画に対しては、断じて賛成するわけにはまいりません。
 以上をもちまして私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#23
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 沖本君にお答えをいたします。
 物価問題に対する基本的な考え方のお尋ねでございました。先ほど来たびたび申し上げたとおりでございまして、今回、国鉄の旅客運賃は上げるが、その他の便乗値上げ等が続出しないように最善の対策を立てていくから、どうかその意味において御協力願いたい、この点は、いままでお答えしたとおりでありますので、御了承いただきたいと思います。
 次に、私鉄等の運賃値上げにつきましては、これは便乗でないかどうか、厳正入念に調査いたします。個々の経営内容から見て、値上げをしなければどうしてもやっていけないというものがあるのかどうか。特に、経営の能率化なり、あるいは体質改善の余地は全くないかどうかなど、いろいろ調査をいたしまして、その必要の有無を十分検討して、そうして最終的に決定をするつもりであります。これが私がたびたび申し上げるように、いわゆる極力抑制するということでございます。
 次に、総合輸送政策につきましてお尋ねがありました。これは国鉄の場合におきましても、総合輸送政策というものがいままで欠除されて、十分考えられなかった、こういうことが確かに原因でございます。現在は、お説のように、空の発達あるいは自動車の発達等から見まして、国鉄のいままで果たしてきた輸送使命、これは大きく変わっております。いわゆる交通体系が変化している、これは御指摘になったとおりであります。
 そこで、総合輸送政策をやはり立てて、そうしてこれに対応していくということでなければならないと思います。国鉄が現在のように困っておる原因は、ただいまも申したとおり、また御指摘にもありましたとおり、この点が十分考えられなかったのではないか、かように私どももいま反省しておる次第であります。これから御審議を願う国鉄財政再建促進特別措置法におきましても、将来にわたるわが国の交通体系の中において国鉄が果たすべき役割り等について、基本方針の中に明らかにすることを義務づけた次第であります。でき得る限り早急に合理的な総合輸送政策の成果を得て、そのもとに国鉄の再建をはかってまいります。これが私どもの基本的な考えであります。
 次に、ヨーロッパの例を引かれて、もっと国庫が負担したらどうか、またそれをすべきだ、こういうお話であります。確かに、わが国の場合におきましては、国庫も負担はいたしますが、その負担のしかたが欧州に比べて少ない、こういう御指摘であります。しかし、ヨーロッパの例は、あなたとは別な、教訓である、かように私は受け取っておるのであります。結論的に申しますと、ヨーロッパの国営鉄道、この場合は国家財政による援助に依存し過ぎた、そのためにかえって非効率な鉄道経営を温存する結果となり、そのため鉄道の赤字は、財政援助にもかかわらず増加を続けて、ついに国家財政として負担に耐えられなくなり、鉄道自体の徹底した合理化に取り組まざるを得なくなった、かように私は見ております。
 かように申しましたからといって、私は、国鉄の再建に国庫の援助は必要ないと、かように申しておるのではもちろんありません。適切な総合交通政策のもとに、国鉄自体の合理化と、必要にして十分な国からの援助と、さらにまた利用者の負担とによりまして、国鉄の財政再建がはからるべきものであると、かように私は考えます。したがいまして、この三つのうち、国の負担分が少ない少ないと、かような御批判でございますが、これは全体をにらみ合わして、しかる上でこれと取り組むのが当然の考えではないだろうか、かように私は思います。
 以上が私に対するお尋ねだったと、かように思います。(拍手)
  〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#24
○国務大臣(福田赳夫君) 物価上昇を五%と見ておるが、一体これがやり抜けるのかという、私に対するまず第一の質問でありまするが、今度の予算編成におきましては、物価問題に最重点を置いたことは、しばしば申し上げておるとおりであります。昭和四十一年度代になりましてから、それ以前の六%台という物価上昇の傾向が四%台になってきたわけであります。非常にいい傾向でありましたが、昭和四十三年度において再び五%台、五・四%という傾向になった。一体それはどういうところからかと考えますると、私は、これは消費者米価の八%というのが決定的に響いておる、かように見ておるのでございます。昭和四十四年度の物価政策を遂行するにあたりましては、他の、あるいは麦にいたしましても、あるいは塩にいたしましても、あるいは電電の料金にいたしましても抑制をいたしまするが、米価にいたしましても、四十三年度の八%というものを今度は据え置きにするという方針を打ち出しておるわけであります。これは私は、四十四年度の物価には非常に大きな影響力を持つ、かように見ておるのであります。また、いわゆるげたの問題を考えてみましても、四十三年度に比べ、かなり楽になる状態であります。さようなことを考量いたしまして、私は、五%物価上昇、これにとどめ得るということを確信いたしております。
 国鉄赤字に対する西欧諸国の財政援助、このことにつきましては総理からお答えがありましたので、私からは重ねて申し上げません。
 また、道路、港湾、飛行場等に対して政府は財政援助をするにかかわらず、国鉄に対して援助をしないのは不均衡ではないかというお話でございまするが、道路は、御承知のとおり、これはもう一般不特定の国民が利用するものであり、港湾もまた同じような性格を持っております。飛行場は、その国際性あるいは貿易等に深い関係があるという特殊性もあります。さようなことで一部財政援助をしておるのでありまするけれども、最近の傾向は、その一部財政援助をだんだんと縮小いたしまして、利用者負担にしようじゃないかというのがわが国財政の傾向でもあり、また、諸外国においてもそういう傾向をとっておるのであります。そのことをひとつ御了承願いたいのであります。
 また、通勤手当全額について、これを非課税にすべきではないか、さような御意見でございます。全額を非課税にいたしますと、これはいろいろな好ましからざる現象が起こってきますることは、想像にかたくないことかと存じます。しかし、この通勤手当の非課税限度というものは、そのときの通勤負担、この状況によって逐次変化をしていくべきものである、さように考えておりますので、これが引き上げにつきましては考慮をいたしたい、かように考えておる次第でございます。何とぞよろしく願います。(拍手)
  〔国務大臣原田憲君登壇〕
#25
○国務大臣(原田憲君) 国の総合輸送政策がないから国鉄がここまで追い込まれたのではないかというお話がございまして、総理からもお答えがございました。そのことについて反省をすべきであるという総理のおことばもございましたが、私もそのとおりであろうと思います。国鉄が、それではお話の中に出ましたように、モータリゼーション時代になって、もう役目はないのか、斜陽産業なのかというと、そうではない、今後も、国鉄はこの輸送体系の中で果たすべきりっぱな任務がある、都市間の旅客輸送、中長距離の輸送、大量貨物輸送、大都市における通勤通学輸送の分野において十分な役割りを果たすべきである、その点に立って、総合輸送政策を効果的に立てていく上に、今度の財政再建推進をやっていかなければならぬというのが、御提案をいたしております二つの法律案の目的でございまして、社会党の久保さんからも同じことを述べられたと思うのでございます。その手段、方法によってそれが異なっておる。沖本さんも、その点において、三方一両損というが、利用者ばかりがやっておって何が三方一両損か、こういうお話でございました。これは三位一体論といったほうがよいかと存じます。
 やはり企業は、先ほどもお話がございましたように、建設をしていくのには借入金を充てて、そしてそれを返していくのには、電車、自動車、あるいはその他の場合は運賃をもって企業を経営していくというたてまえでございます。国鉄の場合は、これが広い範囲で、お話のような公共的な部門もある、こういうことから、これを立て直すために、いわゆる国あるいは地方、そして国鉄自体の合理化、近代化、そして利用しておる皆さんにも御負担を願いたい、こういうことでございますので、ひとつ御協力を賜わりたいと存ずるのでございます。
 それから、運賃の値上げについて私が発言しておることについてのお尋ねがございましたが、私は、何度も申し上げておりますように、大手私鉄の運賃改定については、各社の収支状況、輸送力増強計画等のほか、物価対策上の配慮をも加えて、諸般の事情を総合的に考慮して慎重に対処したい、便乗値上げのようなことは許さない、極力公共料金は抑制するという政府の方針を順守するということを申し上げておるのでございます。
 それから、最後に御意見のございました、都市政策をなおざりにしておった結果今日の状態もあらわれておるのではないか、その責任の大半は、政治の責任の座にある現在の政府が負うべきであるというお話がございました。私は、責任の場にある者は十分それを承知しなければならぬという御指摘に対しましては、そのとおりであろうと思います。そういう立場に立ちまして、都市政策を含んで今度のこの国鉄再建対策を出しておりますので、どうぞ御協力を賜わるようにお願いを申し上げる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣野田武夫君登壇〕
#26
○国務大臣(野田武夫君) 公営交通事業においては、できるだけその企業自身の努力によって経費の高騰を押え、料金値上げを抑制するよう努力はいたしておりますが、御指摘のとおり、なかなか地方公営企業におきましてもその経営は困難でございます。いまお話がありました、元利負担によって経営を圧迫されているというのは特に地下鉄道でございまして、この地下鉄の対策というものは、私どもも非常に重点的に考えております。したがいまして、地下鉄事業に対する現行の財政援助措置につきまして、私も十分検討を要するという考えのもとに、財政当局とも折衝いたしまして、昭和四十五年度からは、さらにひとつ配慮を加えるということになっております。また、公営企業金融公庫の資金の貸し付け条件につきましても、その利子負担を軽減するよう現在努力いたしております。(拍手)
  〔国務大臣菅野和太郎君登壇〕
#27
○国務大臣(菅野和太郎君) 私に対する御質問に対しては、総理、大蔵、運輸大臣から詳細にお答えがありましたから、それに重ねる必要はないかと思いますが、ただ一つだけ、鉄道の料金を値上げしたことによって〇・二%消費者物価が値上がりをするではないかということは、ごもっともで、そのとおりであります。なお、それに便乗値上げをすれば〇・三%の値上げを来たすじゃないかというお話ですが、われわれもそのとおり計算をいたしております。しかし、便乗値上げはしないという方針をとっておりますからして、したがいまして、鉄道料金の値上げによって受ける影響は〇・二%ということになります。
 しからば、五%の消費者物価上昇で押えることができるかどうかという御質問かと思うのでありますが、これはたびたび申し上げましたとおり、公共料金のみですべてが解決されるものではありません。物価の問題については、これは構造的な問題あるいは公共料金以外のいろいろの対策があるのでありまして、それらをあわせ、強力にその対策を講じて、鉄道料金の値上げによる影響を消していきたい、こう考えておる次第であります。(拍手)
#28
○議長(石井光次郎君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
 福田大蔵大臣の財政に関する演説
#29
○議長(石井光次郎君) この際、大蔵大臣から、財政に関する演説のため発言を求められております。これを許します。大蔵大臣福田赳夫君。
  〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#30
○国務大臣(福田赳夫君) あと一月余りで昭和四十三年度も終わろうとしておりますが、この際、本年度の財政状況について御説明申し上げます。
  〔議長退席、副議長着席〕
 当面の財政金融政策につきましては、先般の財政演説において申し述べたとおりでありますから、重ねて申し上げません。
 御承知のとおり、昭和四十三年度の予算は総合予算主義の方針のもとに編成され、恒例的な予算補正の慣行を排するという方針に基づいて運営してまいったのでありますが、国内米の政府買い入れ数量が著しく増加し、食糧管理特別会計の損失額が大幅に増加する見込みになったという異常な事態に対処するため、補正予算を提出することといたしました。しかしながら、総合予算主義を堅持するという政府の方針には、今後ともいささかの変わりはないのであります。
 この際、昭和四十三年度補正予算の大要を御説明申し上げます。
 今回の一般会計補正予算におきましては、歳出において総額千二百八十億円の追加を行ないますとともに、既定経費の節減二百九十三億円を修正減少し、差し引き九百八十七億円を増加しておるのであります。
 一方、歳入につきましては、租税及び印紙収入の増加見込み額二千四百五億円を追加計上いたしますほか、税外収入の増二百五億円を計上いたしておりますが、公債金を千六百二十三億円減額しておりますので、差し引き増加額は九百八十七億円となっております。この結果、昭和四十三年度一般会計予算は、歳入歳出とも五兆九千百七十三億円となるのであります。
 歳出の追加につきましては、当初予算作成後に生じた事由に基づき、特に緊急に措置を要するものにつきまして所要の額を計上いたしておるのであります。
 まず、食糧管理特別会計への繰り入れに必要な経費として三百七十億円を計上いたしております。これは、国内米の政府買い入れ数量が著しく増加する見込みであること等により、食糧管理特別会計の食糧管理勘定における損失額が当初予算において予定いたした額より大幅に増加する見込みとなりましたので、同特別会計の経理運営の改善をはかるため、一般会計から同特別会計の調整勘定へ追加繰り入れすることにしたものであります。
 次に、国民健康保険助成費の昭和四十三年度不足見込み額として百七十四億円を計上いたしております。
 最後に、地方交付税交付金でありますが、これは所得税、法人税の増収及び酒税の減収を歳入に計上したことに伴い必要となるものでありまして、これらの三税全体としての増収額の三二%相当額の七百三十六億円を計上いたしておるのであります。
 歳入につきましては、最近の経済情勢及び現在までの収入状況等を勘案し、まず、租税及び印紙収入におきまして、所得税、法人税等を中心に増収を見込むとともに、酒税と印紙収入について減収を見込み、全体として、増収見込み額二千四百五億円を計上いたしておるのであります。さらに、税外収入におきましては、日本専売公社納付金、日本銀行納付金等につき二百五億円の増収を見込んでおります。
 最後に、昭和四十三年度の財政は、経済の予想外の発展を受けて順調な推移を示してまいりました。特に今回の補正予算において千六百二十三億円の公債減額ができますことは、財政体質の改善に資するところがきわめて大きいと存ずる次第であります。
 以上、当面の財政運営について御説明いたしました。(拍手)
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑
#31
○副議長(小平久雄君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。高田富之君。
  〔高田富之君登壇〕
#32
○高田富之君 私は、日本社会党を代表して、ただいまの政府の財政演説と昭和四十三年度補正予算に対して、佐藤総理、福田大蔵大臣並びに経済企画庁長官に若干の基本的な諸点について質問いたしたいと思うのであります。
 まず第一にお尋ねいたしたいことは、この補正予算の提出に対する政府の重大な責任に関してであります。
 昨年の第五十八回国会におきまして、当時の水田蔵相は次のように述べております。「予算の組み方につき、新たに総合予算主義をとることにいたしました。すなわち、昭和四十三年度予算におきましては、恒例的な予算補正の慣行を排除することとし、公務員の給与改定等に備えて予備費の充実をはかると同時に、食糧管理特別会計への繰り入れについては、年度の途中において、米価の改定等事情の変化があっても、これにより補正財源を必要としない方式。確立を期することといたしております。」以上のように述べておるのであります。これに対して、佐藤総理もまた、本会議でわが党の八木昇君の質問に答えて、きわめて明確にこう述べております。「私は、年度の中間において多額の補正をするというような予算の組み方は、これは間違っておると思いますので、今回総合予算主義に踏み切ったことは大英断であったと思います。」これは総理みずからの言明であります。
 しかるに、今日ここに四十三年度補正予算が提出されましたことは、一体これは何を意味するのでありますか。これほどの大英断であったはずの総合予算主義なるものが、事実上破綻してしまったことを意味するものではありませんか。(拍手)このような事態に追い込まれるだろうということは、当初から十分に予想されていたことでありまして、わが党はこれを具体的に指摘してまいったのであります。すなわち、現在の財政法は、あらためて申すまでもありませんが、正しい意味での総合予算主義のたてまえに立っているのでありまして、そのことは、当然に緊急の場合には補正予算が必要であることを明記しておるのであります。
 しかるに、政府は、その解釈をことさらにゆがめて、補正なし予算ということを強調することによって、みずからの失政が招いたいわゆる財政硬直化なるものの打開策として、国民生活に犠牲を押しつけ、地方財政を圧迫しようとする、このようなことを企図したものにほかならなかったことが、いまやはっきりと暴露されたのであります。(拍手)先国会におけるわが党の多賀谷君の質問に答えて、福田大蔵大臣は、「組みかえ補正なんかはあり得るわけであります。それから国家非常の際とかなんとか、国民に非常に迷惑があるという際に、これは高度の政治判断できめなければならぬ」云々と、このように述べておるのでありますが、この間の経緯を振り返ってみますというと、重大な政府の欺瞞があったことは明らかでありまして、今日では、結局総理みずからの言明をも否定しなければならない羽目に追い込まれたものであり、これはまことに重大な食言であったといわなければならぬと思うのであります。(拍手)総理は、一体、この責任をどうお考えになっているのか承りたいと思うのであります。
 本来、予算は、数字で示された国政の鏡ともいうべきものであって、国民は、政府の予算編成を通じて政治の実態を知ることができるのであります。しかるに、政府は、その実態を国民の目からおおい隠すために、あるときは総合予算主義を口実として国民に犠牲を押しつけ、それに失敗したことが明らかになりますや、たちまち言を左右にして責任を回避しようとする。
 大蔵大臣に伺いますが、今回の補正は、あなたの言う国家非常の際なのかどうか、はっきりお答え願いたいのであります。(拍手)
 このような無責任な態度は、国民の予算というものに対する不信感を高めるのみならず、政治不信をいよいよ強めることとなると考えるのでありますが、重ねて総理の御所見を伺いたいと思うのであります。
 次に、税収入の問題についてでありますが、四十三年度において、当初見積もりを越えて二千四百億円にのぼる税の自然増収がありましたことは、四十三年度の減税が全く少な過ぎ、実質増税による税の取り過ぎが行なわれたからであります。すなわち、四十三年度当初予算では六千五百七十六億円の税の自然増収が計上されていたにもかかわらず、所得減税を削り、その上、酒、たばこなどの増税を強行いたしました結果、実質的な自然増収が九千億円にのぼるに至ったのであります。さらに、この結果として、地方交付税は七百五十四億円の追加となっております。これは、総合予算のたてまえからいえば、当然、当初予算の際に見込むことができたはずのものであって、単なる予算見積もりの狂いでは済まされないと考えるのであります。(拍手)しかも、地方交付税を国の景気政策に組み込んで、国の意のままに動かそうという姿勢がとられておりますのは、法の趣旨にも反し、地方自治を侵害するものといわなければなりません。これは昭和四十四年度予算にも貫かれて、六百九十億円の国への貸し付けを強要しておりますことなど、まことに許さるべきことではないと考えるのであります。
 政府はこのような増税による大衆収奪と地方財政圧迫というこのやり方を根本的に改めるべきだと考えるのでありますが、この際、政府のお考えを承っておきたいのであります。
 第三は、国債削減の問題であります。
 政府は、本年度当初予算において六千四百億円の国債発行を予定していたのでありますが、税の自然増収を引き当てとして千六百二十三億円の国債減額が計上され、四十三年度国債発行額は四千七百七十七億円となったわけであります。このことは、政府が四十四年度に国債発行を千五百億円減額し、四千九百億円にすると申しましても、実際の発行額は四十三年度よりも増加することになるのでありまして、景気抑制に逆行するといわなければなりません。しかも、この国債発行の削減は、短期的には金融界、産業界の要望にこたえるための金融緩和の要因となるものであります。また、長期的に見ましても、すでに発行された国債の半分近くが、日銀の買いオペ操作を通じて実質的には日銀引き受けによる国債発行と同じ効果をもたらし、大きなインフレ要因となっておるのであります。つまり、四十三年度に発行される国債は四千七百七十七億円となったのでありますが、実は、日銀による買いオペによって、四十三年中に約四千億円の国債が買い取られているのでありまして、これは買いオペ対象債の約七割が買いオペにより日銀に還流したことを意味しておるのでありまして、四十三年分の国債発行は、実は、日銀引き受けによる国債発行そのものであったといわなければなりません。(拍手)その結果、通貨増発、物価上昇をもたらすインフレ政策となっておるわけであります。
 福田大蔵大臣、あなたは、かつて、国債発行政策導入にあたりまして、国債の市中消化を強調し、日銀引き受けはしないと公言されたのでありますが、ただいまのこの事実を一体どうお考えになっておるのか、責任ある御答弁を承りたいと思うのであります。(拍手)
 第四に、補正予算の内容について一言いたしますならば、政府は、緊急な国民のいろいろな要求にこたえる気持ちがないのではないか。たとえば、公務員給与につきましても、人事院勧告を完全に実施するための予算を計上すべきでありまするし、また、食管会計繰り入れにつきましても、恣意的にその額を決定すべきではなく、実態に合わせた追加をなすべきでありますことは、申すまでもありません。また、低所得層に対する措置とか生活保護、失対賃金など、物価の上昇、賃上げ補償に十分見合う予算の計上を行なうべきであります。さらにまた、公害対策、石炭対策、沖繩援助等々、国民的な緊急を要する諸課題を全く軽視していると考えるのでありますが、政府の御所見を承りたいのであります。
 なお、政府の補正予算の内容について大きな疑問がございます。
 すなわち、今回の補正の一つの原因は、食管会計の赤字が当初予算よりも著しく増加したので、一般会計から繰り入れを三百七十億円増加するところにあったのでありますが、一般会計歳出には三百七十億円の追加繰り入れを計上しておきながら、食糧管理特別会計の補正予算は提案されていない。これは一体どういう理由によるものであるのか。食管会計に赤字を生じたのでありますから、その食糧管理勘定歳出の組みかえ補正をしなければならないと思うのであります。地方交付税の増加には特別会計の補正をしておきながら、食管特別会計の補正をしていないということは、まことに不可解というほかありません。これは明らかに財政法上の手続に欠けるものがあるのではないかと考えるのでありますが、政府は、あらためて食管特別会計の補正案もあわせ提出する考えはないのかどうか、この点、ひとつ明確に御答弁をいただいておきたいのであります。
 最後に、もう一度強調しておきたいことは、今回の補正予算は、政府のいう総合予算主義が完全にくずれ去ったことを示すものであります。それと同時に、四十三年度予算は、まさに増税とインフレの予算でありますことが決定的となったことを示すものであります。しかるに、大蔵大臣は、いまなお総合予算主義のたてまえを堅持すると称して、このような欺瞞的なやり方を今後とも引き続き運用して、大衆収奪と民生圧迫の道具にしようとしていることは、断じて許すことはできません。(拍手)
 ここに、総理並びに財政当局の責任をきびしく追及いたしますとともに、根本的な反省を促して、私の質問を終わる次第であります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#33
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 政府は、従来から、予備費ではとうてい対処できないような異常な事態が発生したような場合には、補正をすることはあり得ると言明してきたものであり、当初から一切の補正を否定していたものではありません。今回の補正予算は、歳出予算の内容を見ていただけば一見して明らかなように、いわば義務的な経費を計上したものであって、総合予算のたてまえをくずしたものとは考えておりません。したがいまして、これによりまして政治の不信を招くなど、さようなことは考えておりません。(拍手)
  〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#34
○国務大臣(福田赳夫君) 総合予算方針がくずれたのじゃないかというお話です。いま高田さんが御指摘のように、佐藤総理も水田蔵相も、いまお話がありましたようなことを申されたことは事実でございます。しかし、これはどういう意味かと申しますれば、従来補正予算というものが年度途中においてつきものだった、ああいう状態を何とかして是正しなければならぬじゃないか、年度初めにあらゆる歳出要件というものを見通し、また、それに対して完全な財源対策を整えておく、これはもう予算といたしまして非常な進歩であります。その進歩した方針をとろう、こういうのが総合予算方式でございます。しかし、私がここで皆さんにも申し上げましたとおり、この考え方というものは組みかえです。つまり、年度途中で行政需要というものが変化してくる、それに対応いたしまして組みかえ補正というものを排斥している趣旨ではない、これは御了解願えると思います。また同時に、いろいろな異常な事態もあり得る、また、非常な事態もあり得るわけであります。財政は国政を円滑に遂行する手段であります。財政を立てるために国政をないがしろにしてはならぬという事態が必ずあるはずであります。(拍手)そういうようなことを考えますと、私がしばしば申し上げているように、増ワク補正は、異常な事態または非常な事態に対しましてはやむを得ない、これまた御了解ができるのじゃないかと思います。
 今回、八百五万トンと見積もられました米の政府買い入れ額が一千万トンをこえるという事態になった。これはうれしいことでもありまするが、同一時に、異常な事態でもあるのであります。これを手をこまねいておるわけには政府としてはまいらないのでありまして、これに対して補正予算を編成する、これは私は当然なことである、かように考えるのであります。私は、しかしながら、補正なしでいけないかということでずいぶん努力をしてまいったのでありますが、しかし、どうしてもこの米の問題だけは増ワク補正がない限り解決しない、こういう判断に到達いたしましたので、御審議をお願いすることに相なった次第でございます。
 自然増収が二千四百億円出た、これは歳入の見積もりの狂いじゃないかというお話でございまするが、そういうふうに言って言えないことはございません。しかしながら、これは経済の見通しそのものが狂ったのです。一昨年の暮れごろ、一体一〇%をこえる経済成長があるという見方をしておった人があるか。これはほとんどありません。去年、四十三年という年はきわめてむずかしい年だ、こういう見方であったわけであります。その見方に従いまして見積もられた額が、この昭和四十三年度予算の税収見積もりになっておるわけでございますけれども、その経済見通しが狂いまして、一二%をこえる実質成長、一七%をこえる名目成長、こういうふうになってまいりました結果、二千四百億円の自然増収と相なった次第でございまして、まあ狂いであったといってしかられれば頭を下げまするけれども、経済の見通しに狂いがあったということもまた御理解願いたいのであります。
 それから第三は、地方交付税交付金、この六百九十億円の処置が不当ではないかというお話でございます。しかし、高田さんも御承知のように、四十四年度には一兆二千億円の自然増収がある。そのうち、私どもは九千億円を歳出の財源として用いたのでございまするけれども、この九千億円の歳出の中に、ほっておきますると三千百億円の地方交付税交付金というものがこれを占めるということに相なるのであります。これは国の財政にも非常に窮屈な要因となる。私は、国の財政、また地方の財政というものは車の両輪でなければならないと思う。地方が苦しいときには国が助ける、国が苦しいときには地方が助ける。現に昭和四十年度には、あれだけ中央政府が地方に対して援助をしているじゃありませんか。そのことは逆になってきておる。でありまするから、ことしは地方に協力してもらいたいという事情が一つあるわけです。
 同時に、私は、地方の財政というものが、異常に交付税によってふくらんだり縮んだりするという事態はよくない、やっぱり年度間において、地方財政というものがその財源調整を行なう必要がある、こういうふうに考えるのでありまして、そういう制度的なまだ機構ができておりませんものですから、まあ臨時、便宜の措置として六百九十億円をことしの地方交付税から落とす、そのかわり、翌年度にこれを繰り戻す、こういうことを考えたのでございまするけれども、私は、これは制度的に何とか検討さるべき問題である、かように考えておるのであります。
 それから第四には、国債の減額、これでありまするが、私は、国債が減額された、これはたいへんけっこうなことだ、こう思うのです。また、昭和四十四年度におきまして、私は、かりに自然増収があるということがありますれば一ないとは思いまするけれども、ありますれば、私は、公債の減額をしていきたい、かように考えておるのであります。いままで発行されました国債が日銀の引き受けになっているというようなお話でございまするが、さようなことはございませんです。公債政策を運用するにあたりまして、その前提として、かたい方針がある。それは、日銀引き受けで発行しては相ならぬということであります。このことは、かたく守って今日まで来ておるのであります。ただ、しかしながら、日本銀行の通貨供給方式が変わってまいりまして、いままでは貸し付けの方式で来た。それを国債が出ておるという現実に即して、国債を担保とする貸し出し方式にかえましてオペレーションの方式をとった。その通貨供給方式が変わってきておる、これだけの話でありまして、今日の経済情勢を、私どもは決してインフレとは見ておりません。世界でも模範生、優等生とされる日本経済である、かように考えておるのであります。(拍手)
 さらに、補正予算の内容につきまして御意見がありましたが、確かに人事院勧告は補正には見ておりません。国の全体の施策との権衡から見まして、議院において修正になりました七月実施、これが適当であると考えたからであります。
 その他もろもろの経費につきましては、予備費をもってかなりの額を出しておるということを御承知願いたいのでありまして、国政に何らの支障はないのであります。
 第六番目は、食管会計への繰り入れでございまするが、この食管会計の補正を出さぬのはどういうわけだ、こういう話でございまするけれども、食管会計の支出、米の買い入れに要するところの支出は、これは予備費等を使ったのであります。なおそれでも足らないときに、弾力条項を発動して買い入れを行なったのであります。支出について、国会において御審議願う事情はないのであります。収入は、ただ単なる見積もりである。さようなことでありますので、特に補正予算の御審議はお願いをしない。これは従来からそういう先例でもあり、また食管会計だけではございません、各会計におきまして、収入だけの問題につきましては御審議をお願いしないという慣例でありますので、今回も食管会計の補正につきましては、これを提出する考えはありません。かように御了承を願いたいのであります。
 昭和四十四年度予算においては、総合予算主義をまた貫く考えか、また、それが欺瞞ではないかというお話でございまするが、総合予算主義というのは、先ほどから申し上げているとおり、国の財政を効率化、近代化する一つの大きな手段でございます。四十四年度以降、ずっとこれを堅持してまいる考えであるということを申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#35
○副議長(小平久雄君) 折小野良一君。
  〔折小野良一君登壇〕
#36
○折小野良一君 私は、民社党を代表いたしまして、ただいま提案されております昭和四十三年度一般会計等補正予算案に対しまして、数点にわたって質問をいたします。(拍手)
 質問の第一点は、政府の一貫性を欠いた財政経済政策についてであります。
 およそ近代国家の要諦は、国民福祉の高い理想を掲げながら、その目標を達成するために、国民の自由を尊重しつつ、これに総合的計画性を付与するところにあるのであります。(拍手)しかるに、わが国の現状は、この点に関しましてまことにお粗末である、こういうふうに申さねばなりません。すなわち、そのことは、財政の無計画性であります。このことは、ここ数年間におきます政府の財政に対する姿勢がこれを明らかに示しているのであります。
 まず、昭和四十一年度の予算編成に際しまして、当時の福田大蔵大臣は、本格的な公債発行に直面し、その正当化をはかるため、財政新時代の到来とか、財政主導型の経済成長などと、まことにもっともらしいことばを喧伝いたしました。総花的な膨張予算を編成し、その場を糊塗してまいったのであります。ところが昭和四十三年度の予算編成にあたりましては、一転して、さきに正当化してきた国債の累積がその最大の原因であるにかかわらず、社会保障、公共事業等の民生的支出を抑圧するため、財政硬直化の打開を新たなスローガンとして打ち出してきたのであります。総合予算主義の原則というのは、申すまでもなく、財政硬直化打開の一環として、政府が再三にわたって強調してきたものであります。しかるに、この政府の財政運営の態度は、またもや一年を経ずしてもろくもくずれ去ったのであります。現在政府が提案を余儀なくされております補正予算案こそ、その何よりも明白な証拠であります。(拍手)また、つい一年前の財政硬直化打開のスローガンをも無視し、選挙目当てのおおばんぶるまいをした四十四年度予算案は、その第二の証拠であります。
 このように、その場の御都合主義で一国の政治を運ぶ政府の財政政策の無責任さに対しまして、私は強く反省を促したいのであります。(拍手)総理並びに大蔵大臣の明確な御答弁をお願いいたします。
 私は、このような無責任な財政政策が行なわれます原因は、政府に長期の財政計画が欠除している、こういうところに原因があろうと思うのであります。当然、政府は長期の財政計画を立案し、広くこれを国民に明示すべきでございます。そして単年度予算は、この長期財政計画の一環として運営されるべきでございます。このことは、すでにアメリカにおきましてさえ、ケネディ大統領の予算局において導入されたところであります。わが国も早急に長期財政計画の導入に踏み切るべき時期に到来したと思うのでありますが、あわせて経済企画庁長官の所信をお伺いいたしたいと思います。(拍手)
 私の質問の第二点は、いわゆる総合予算主義の根本的な矛盾についてであります。
 本来、予算は総合的、計画的に運営されるべきものであることは申すまでもないのであります。そして同時に、そのことと補正予算を時の情勢に応じて組むこととは全く別ものなのであります。にもかかわりませず、政府は昨年もそしてまたことしも、総合予算主義の原則を堅持し、補正予算は組まない、こういうふうに述べております。そして、今回の補正予算は例外である、こういうふうに申しているのでございます。私は、なぜ四十三年度のこの補正予算が例外であるのか、全く納得がいかないのであります。政府は食管会計の予想外の赤字をその理由にあげておりますが、これは理由にはなりません。予備費は何のためにあるのかということであります。四十二年度の予備費の七百億円に対しまして、四十三年度はその倍に近い千二百億円もの予備費を計上いたしておるのであります。昭和四十三年度は災害も少なかった、しかもなお補正予算を組まなければならないということは、明らかに政府のいわゆる総合予算主義の崩壊でなくして何でありましょうか。(拍手)この際、政府はこのような詭弁を弄することなく、はっきりと、総合予算主義は破綻した、昭和四十四年度も必要に応じて補正を組むことがあり得る、こういうことを明らかにすべきでございます。それでもなお総合予算主義に拘泥するというのでありますならば、その意図は、明らかに公務員賃金の抑圧による所得政策の導入と、生産者、消費者両米価のスライド制による消費者米価の引き上げを事前に意図したものである、こういうふうに断言しても過言ではないのであります。(拍手)これらの諸点につきまして、大蔵大臣の明確な御答弁をお伺いいたしたいのであります。
 次に、今回の補正予算案の内容に立ち入りまして質問を行ないたいと思います。
 まず、歳入についてでございます。今回の補正予算案の歳入の中心は、当初予算に比較いたしまして、租税及び印紙収入二千四百五億円の増収にたよっている、こういうことでございます。その内容も、所得税の大幅な自然増収であります。私は、この点について、政府の当初予算の過小見積もりの弊害を強く指摘しなければならないと思うのであります。大蔵当局は、従来このように著しい歳入の過小見積もりを意図的に行ない、これをたてにして、国民の切実な要望であります減税の要求を押えてきたのであります。その端的な例が、四十三年度の一般会計予算にあらわれているのであります。政府は、わずか千五十億円の所得減税をも、酒、たばこをはじめとする間接税千五十億円の増税により帳消しにしてしまったことは、いまだにわれわれの記憶に新しいところであります。この実質減税ゼロを正当化する理由として、政府は、歳入増の見込みがない、こういうことを申しておるのでございます。ところが、今回の補正予算におきましては、実に千五百五十六億円もの所得税の自然増収が計上されているのであります。これは明らかに国民の減税に対する強い要求を意図的に無視し、あるいは抑圧したものといわなければなりません。(拍手)また、この千五百五十六億円は、事前に議会の承認を経ずして、政府が国民から取り上げた増税以外の何ものでもないのであります。(拍手)このような歳入の過小見積もりを常とする予算のあり方は、これを早急に改むべきであります。また、国民にとって意図しない自然増収に対しましては、翌年度その分を上積みして減税に回すべきである、こういうふうに思うのでございますが、大蔵大臣の所信をお伺いいたしたいのであります。
 次に、歳出についてであります。
 政府は、追加歳出の中心といたしまして、地方交付税交付金七百三十五億円を計上いたしておりますが、そのうち、昨年に引き続き、ことしもまた六百九十億円の政府の借り入れを行なっているのでございます。この根拠といたしまして、政府は地方財政の好転をあげておるのでございますが、これは全く地域住民の福祉向上を忘れた中央集権主義のあらわれといわなければなりません。申すまでもなく、政府の無計画な経済成長政策は、その矛盾をすべて地方へ押しつけ、その結果、地方自治体は、増大する財政需要にいかに対応するかに苦慮しておるのであります。さらに、住民税の課税最低限も国税に比べて著しく低く、その引き上げは焦眉の急務になっているのでございます。したがって、交付税交付金は、これら地域住民の福祉向上の立場から、全額直ちに自治体に交付すべきであります。自治体はそれを期待いたしておるのであります。大蔵大臣並びに自治大臣の御見解をお伺いいたします。
 以上、私は、昭和四十三年度補正予算についての矛盾点を指摘し、政府はこれらの点について深く反省をし、真に国民のための計画性のある予算を編成されるよう期待いたしますとともに、最後ではございますが、予算の編成について、これを総合的、計画的に行なうため、内閣直属の予算機構を整備すべきであると思いますが、総理の所信をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#37
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 財政政策あるいは経済政策に、佐藤内閣には一貫性がない、かようなおしかりを受けたのでございますが、私はさようには思っておりません。例としてあげられましたいわゆる公債政策にいたしましても、公債政策の導入が日本経済の浮揚のために寄与した効果はきわめて大きかったものというべきであり、また、その一応の効果を得られた今日としては、財政の景気調整機能の弾力性を回復するためには、公債発行を縮減していくことが必要であり、硬直した姿勢はとるべきではありません。要は、経済の安定的成長と、国民福祉の向上という一貫した目標のために、そのときそのとき適切な政策運営を行なっていくことであり、この数年間の経済の発展はその成果であると、私どもはかように考えております。十分その時期に当を得た、適切な政策をとる、その結果だ。いわゆる一貫性という、そういう意味ではないのであります。
 次に、内閣に予算編成の特別機構を考えてはどうかという御提案であります。予算編成のあり方や、予算編成に関する機構につきましては、従来からいろいろの角度から議論されてきたことであり、最も効果的な予算編成のあり方につきましては、政府としても、さらに検討してまいりたいと考えております。そういう意味で、現状は改善を要しないというものではありませんが、現状におきましても、内閣の主導性のもとに、十分総合的な予算の編成は確保し得るもの、かように私は考えております。現状でよろしいのではないかと考えております。ありがとうございました。(拍手)
  〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#38
○国務大臣(福田赳夫君) お答えを申し上げます。
 財政に計画性を持たせろという御意見でございまするが、これはもう私もそう考えます。それゆえにこそ総合予算主義、つまり、年度初頭にすべての歳出要因を見通し、それに対するすべての財源を整えるという考え方は、まさに、そういうお考え方にぴったりいくのじゃないか、かように考えます。
 また、いまや長期計画のもとに、その年々の財政を考えていくべき時期に来ておるのじゃないかというお話でございますが、これも私は賛成でありまして、何とかして長期計画を立てたい、こういうふうに考えますが、とにかく、ネコの目のように変わる経済情勢でありますので、なかなかその長期計画というものが全体としてむずかしい。そこで、公共事業とかそういうものについて、ただいまとしては長期計画を持っておる次第でございまするが、なるべく長期にわたる計画、これにつきましては検討を重ねていきたい、かように考えておるのであります。
 総合予算主義が今回の補正予算によって崩壊をしたというきびしいお話でございます。破綻したということをはっきり言え、また、四十四年度もしたがって補正予算を組むのだということもはっきり明言せい、こういうお話でございまするが、私は破綻したとは考えておりません。しかし、補正のほうは、組みかえ補正は四十四年度も組むことがあり得る、また、異常、非常の事態がありましたならば、増ワク補正もまたこれを組むことがあり得る、かようにお答えするほかはないのであります。
 財源といたしまして税収が過小見積もりではないか、そういう傾向があるのではないかというお話でございまするが、これは先ほど申し上げたとおり、決して意図的なことではございません。昭和四十三年度におきまして税収が見積もりよりもよけいに出てきたのは、これは経済が見込みより大きく成長をしたということに基づくものでございます。
 また、そういうふうに、見通しよりもよけいに税収が出たならば、減税に直ちに回せというお話でございまするけれども、これは、すぐそういうわけにはまいりません。当年度の自然増収は、これは減債に充てるのが、これが妥当であるというふうに考えます。しかし、そういう増収の事態を踏んまえて、次の年度で減税計画をどういうふうにするかという重要な資料に相なろうかというふうに考えておるのであります。
 地方財政が好転をいたしておるという認識のもとに、六百九十億交付税削減の措置をとった、けしからぬというお話でございますが、地方財政は、私は絶対的な意味におきまして、これが非常によくなっておるというふうな見方をしておるのじゃございません。しかし相対的、つまり、過去に比べるとはなはだしく好転をしておる、こういうことは申し上げて差しつかえはないと思うのであります。あらゆる指標がそれを示しておるのであります。そういうことで、急に交付税が非常な膨張をする、その影響等を考えますと、ただいまとっておるこの措置、これは私は妥当な措置である、かように考えておるのであります。(拍手)
  〔国務大臣菅野和太郎君登壇〕
#39
○国務大臣(菅野和太郎君) 経済計画の一環に長期財政計画を立てたらどうかというお話に対しまして、いま大蔵大臣から詳細お答えがありましたから、私は重ねて申し上げる必要はないと思いますが、ただ、一つだけ申し上げたいことは、アメリカで財政長期計画を立てておるから日本もやったらどうかという御意見です。これは日本とアメリカとは経済事情が違いまして、アメリカの経済は大体安定しておりますが、日本の経済は、御承知のとおり、急激な発展を遂げておりますから、経済自体が流動的であります。したがって、それに対する財政需要も流動的でありますから、いま財政の長期計画を立てるということについては非常に困難であります。しかし、日本の経済が安定すれば、財政長期計画は立てる必要があると考えております。(拍手)
  〔国務大臣野田武夫君登壇〕
#40
○国務大臣(野田武夫君) お答えいたします。
 折小野さんが地方財政につきまして格段の御配慮をいただいておることを感謝いたします。
 四十三年度に出ましたこの補正予算の七百三十六億、言うまでもなく、これは四十三年度における地方の財源であります。しかし、年度末となっております現在といたしましては、これを直ちに地方団体にそれぞれ交付することは、実際問題として必ずしも適当であるとはいえないと存じます。それに補正予算を組まなければ、昭和四十五年度以降において、つまりこの金額は予算化されないのでございまして、地方団体に交付されるべきものであった、四十五年度でなければ地方交付団体に交付できなかったということを考えますと、この際、この補正計上額を明四十四年度に繰り越し交付することが適当であると判断したのであります。
 なお、七百三十六億のうち五十二億円は、補正予算の御承認を得ますと、昭和四十三年度において調整戻しとして地方団体にこれを交付したいと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#41
○副議長(小平久雄君) 広沢直樹君。
  〔広沢直樹君登壇〕
#42
○広沢直樹君 私は、公明党を代表して、ただいま説明されました昭和四十三年度補正予算案に関する財政演説について、総理、大蔵大臣並びに関係大臣に質問を行ないます。
 政府は、昭和四十三年度予算編成にあたり、財政硬直化を打開し、財政の体質を改善することを理由に、従来続けてきた補正要因を当初予算に組み込み、適正な予算の配分をする、いわゆる総合予算主義を大きく打ち出したのであります。言うまでもなく、予算の編成にあたっては、当初において見込まれるすべての財政要因を当初予算に計上すべきことは当然であります。しかるに、いままで佐藤内閣は、これまでの高度経済成長から経済安定成長をスローガンにして、財政規模を経済成長の見通しに合わせ過小に見積もり、その反面、膨大な自然増収を当てにして、主要な財政需要を補正予算に組むなど、安易な予算編成を行なってきたところに、今日の財政の硬直原因があるのであって、これは明らかに政府の財政運用の誤りによるものと断ぜざるを得ないのであります。この点に関して、まず総理の所見を伺いたい。
 次に、政府は、四十三年度より総合予算主義を貫くことを前提に、毎年恒例的に補正予算の大きな要因となってきた公務員の給与改定、食糧管理特別会計の追加繰り入れの慣行を排除するために、公務員の給与改定は予備費の中に組み入れ、また、食管特別会計の繰り入れについては、年度の途中において米価の改定等事情の変化があっても、これによって補正財源を必要としない、いわゆる補正なし予算に徹すると、再三言明していたにもかかわらず、食管特別会計への繰り入れを中心に、国民健康保険助成費、地方交付税交付金など、合計九百八十七億円にのぼる追加補正が行なわれることは、ただいまも総合予算主義はくずしてない、こういう答弁がございましたが、これは明らかに総合予算主義はくずれているのであります。総理の答弁は、まさに言行不一致であり、無責任きわまりないものであるといわざるを得ないのであります。(拍手)
 さらに、総合予算とは、そのねらいが制度の改革を意図していたことは明らかであります。旧来の制度、慣行に種々の問題があることを解決せずして補正なし予算を編成することは、かえってその弊害を招き、ひいてはそのしわ寄せを国民に転嫁することになるため、補正の事由が出てくれば、実態に即して補正を組むべきであると再三指摘したにもかかわらず、これを無視したために、早くも第一歩からつまずき、くずれ去る結果を招いたことは、政府の見通しの誤りを明白に物語るものであります。総理並びに大蔵大臣は、この点いかに考えておられるか、率直な考えを承りたいのであります。
 また、来年度も総合予算主義を貫くと、ただいまもお話がありました。制度、慣行等、多くの補正要因を残しております実態に即して補正を組む用意があるのか、この点をもう一度明確にお答えいただきたい。
 次に、政府は、予算編成の原則論である総合予算主義を、いまさらもっともらしく主張し、財政硬直化打開を一応理由にしているものの、当面のねらいは、いままでの放漫財政によるしわ寄せを国民に転嫁しようとする意図であったことは明らかであります。その証拠に、公務員の給与改定について、予備費の中に五百億円程度をあらかじめ計上し、人事院勧告を無視して、総合予算主義をたてにして、人事院の五月完全実施勧告に耳をかそうとせず、一方的に八月実施を閣議決定してしまったのであります。一応国会修正で七月から実施に変更になったわけでありますが、これは憲法に保障された公務員の労働基本権を奪った暴挙といわざるを得ないのであります。この点について、今後は人事院勧告を必ず厳守されるかどうか、明確にしていただきたい。(拍手)
 さらに、米価につきましても、生産者米価五・八%値上げに伴い、食管法を無視して消費者米価にスライドしたばかりでなく、さらに生産者米価値上げを大きく上回る八%の消費者米価を値上げしているのであります。そのために諸物価は一斉に高騰し、政府見通しの消費者物価上昇率四・八%をはるかにオーバーして五・三%の物価上昇となったのであります。佐藤総理は、物価安定は最重点施策であると国民に公約しながら、みずからこれを破り、政府主導型の物価上昇となったことは、政府の物価対策は名のみあって実なしといわなければなりません。(拍手)これは明らかに食管特別会計の赤字にこと寄せ、総合予算主義に名をかりて、国民生活を圧迫する以外の何ものでもないのであります。佐藤総理は真剣に物価対策に取り組んでいく決意があるのか、また、あわせて物価安定についての具体的施策を伺いたい。
 今回の追加補正の最大の原因は、米の政府買い上げ量が、当初予定の八百五万トンから一千万トン以上にふくれ上がった異常事態のため追加補正のやむなきに至ったと説明しておりますが、四十二年度においても九百八十二万トンの買い入れを行なっていることから見ましても、四十三年度は一千万トンぐらいの買い入れが必要であることは容易に予想できたはずであります。特に、近年においては、平年作でも反当たり収穫量は増加しており、また、農村人口の流出等で農家保有米が年々減少していることから見ましても、一千万トンは常識的な数字であります。なぜ、政府はこのような計画的な過小見積もりをあえて行なったのか、その真意を伺いたい。単なる見込み違いとはいえません。明確にお答えいただきます。
 また、来年は、平年作で約千三百六十五万トンの収穫が予想されると聞いております。政府の買い入れ米を七百五十万トンに押え、新たに自主流通米制度を採用し、百七十万トンを消化する構想を打ち出しておりますが、具体案はあるのか、具体的に示していただきたいと思います。
 次に、一般会計から三百七十億円食管特別会計へ繰り入れるのに、食管の補正予算書が出ておりません。大蔵大臣は先ほど、食管特別会計の調整勘定に入れた、このように答えられておりました。予算書がなくて、どうして三百七十億円の繰り入れの妥当性が国会で審議できますか。四十二年は出しておりました。なぜ四十三年は出さないのか。このままでは、決算でないと、この結果がわかりません。この点も明確にしていただきたいと思います。
 次に、四十三年度の所得減税について、大蔵大臣に重ねてお伺いします。
 財政硬直化打開をスローガンに、所得税減税とすりかえ、酒、たばこの増税をはかり、実質減税ゼロとなったことは、先ほども指摘がありました。ところが、この一年間の税収は、見通しを大幅に上回り、さらに二千四百億円もの自然増収が見込まれることになったのであります。このことは、所得税減税の幅が小さく、税の累進度が高かったことを意味するものであります。ところが、四十四年度においては一兆二千億円の自然増収が見込まれるにもかかわらず、たった千五百億の減税に終わっているのであります。これは過去十年間の自然増収に対する減税率が最低であることを示しております。この四十三年度補正に見られる自然増から考えて、四十四年度においてさらに大幅減税をすべきであると思うが、総理、大蔵大臣の見解を承っておきたい。
 次に、国債減額についてであります。
 国債の減額については、これを認めることはやぶさかではないにしても、本来発行すべきではなかったのではないか。しかしながら、当初予算において六千四百億円というばく大な国債発行を予定し、インフレを助長しておきながら、自然増収があることを理由にして予算をかってに変更し、四十三年十月一千億円、四十四年の一月に五百億円をさらに減額することを決定しております。さらに、この補正が通ったといたしますと、二月、三月で百二十三億円の減額をすることになっております。国債発行について、当初から消化不能な額を計上したふまじめな財政運営といわなければならない。わずか一年のうちにこのような大幅な見込み違いがあることは、一体どこに原因があるか、またその責任が非常にあいまいであります。毎年見通しが大幅に狂いながら、それに対する責任体制が明確でありません。このことから考えて、四十四年度財政運営をどのように責任を持っておやりになるか、基本的な考え方を承っておきたい。
 また、国債発行については、本来健全財政を破綻させるものであり、やめるべき性質のものであります。国民のための政策目標を掲げるならば、これを廃止するという方向で四十四年度国債発行を考えるべきであると思うが、この点についてはいかがでしょう。もしそうでなければ、国債発行を永久に続けていくのか、その点についても伺っておきたい。
 最後に、政府は、四十三年度当初予算において、総合予算主義のもとに、先ほども指摘しましたとおり、公務員給与不完全実施、消費者米価の大幅な引き上げを行なったのであります。これら国民の意思を無視した政府は、こういう難問を切り抜けたと思ったら、すかさず補正予算を持ち出してきたのであります。このような予算編成は、国民不在の政治につながり、民主政治を脅かす以外の何ものでもないと思うのであります。今後の健全な財政運営をどのようになさるのか、今度は総理の所信をお伺いいたしまして、私の質問を終わりにいたします。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#43
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 広沢君にお答えいたします。
 まず、安易な予算編成の態度が財政硬直化の原因であるとの御指摘でありましたが、私は決して安易な態度で予算編成に臨んではおりません。財政硬直化の原因は、私がいまさら申し上げるまでもなく、経費の当然増の要因が大きく、これを容易に吸収し得ない状況になったところにあり、かつ、その根源は制度的なものに由来するところが大きいものと考えます。あるいは食管制度の改善に着手したことも、あるいは総合予算のたてまえをとったことも、その根源の改革を目ざしたものであり、財政硬直化の事態は、一挙にとは申しませんが、そのとおりにはまいりませんが、徐々に回復し、財政の健全さを早晩取り戻せるものと考えております。もちろん、予算編成の態度として、従来にも増して厳正な態度で臨んでいく方針であることは言うまでもありません。
 次に、特定の場合には補正を出すことはあり得る、かようにかねてから申し上げてきたところでありまして、補正をこのたび出すことが、いわゆる総合予算主義の上から見て言行不一致だ、こういうおしかりを受けましたが、私は、このおしかりは当たってないように思います。先ほどもお答えしたとおり、異常な事態が起これば補正は当然組まなければならない、そういう際に補正を組むことこそ政治の当然の責務ではないか、私はかように考えております。総合予算主義、それにこだわって、財政的要求があるにかかわらずそれを出さないほうが実はおかしい、かように私は思います。先ほど高田議員にお答えしたとおりであります。
 次に、米価は米価として、また公務員給与は公務員給与の問題として、あるべき姿について、あるいは他の施策の均衡を考慮して決定しているものであり、御指摘のように、総合予算主義の犠牲となっているものではありません。政府は、たびたび申し上げていますように、人事院勧告、これを尊重し、完全実施する方針のもとに今後鋭意努力を払っていく考えでございます。
 次に、物価問題について政府主導型との御批判でありましたが、私は、そのような物価上昇にならないよう全力をあげているものであります。国鉄旅客運賃以外の公共料金を極力抑制することとしたのも、そのあらわれであります。物価上昇の基本的原因は、何と申しましても構造問題にありますので、特に生産性の低い中小企業や農林水産業の生産性向上のための施策に力を注ぐほか、あわせて総需要の適度の規模への抑制をはかり、効果的な財政金融政策の運営によって物価の安定に努力をしてまいります。
 次に、減税や公債発行についてのお尋ねがありましたが、これは大蔵大臣からお答えすることにいたします。
 最後に、いままでもたびたび申し上げていますように、わが国経済を取り巻く国際環境は、必ずしも予断を許さないものがあります。また、国内的に見ましても、依然として根強い物価上昇の機運にあるので、基本的には慎重な財政運営が必要であります。総合予算主義のたてまえは、予算編成のあるべき姿として、今後ともそのたてまえを堅持してまいるつもりであります。
 ありがとうございました。(拍手)
  〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#44
○国務大臣(福田赳夫君) 補正予算を出したから総合予算主義が崩壊したんじゃないか、こういうおしかりでございますが、総合予算主義とても、補正予算は一切出すな、こういう意味じゃございません。補正予算を出さないほうがいいんでありますが、組みかえ補正、これはどうしてもつきまとう。また、異常の事態が起きた場合、非常の事態が起きた場合、そういう際に、財政のたてまえから予算を出さないんだ、こういう考え方は、むしろこだわり過ぎている考え方じゃあるまいか、さように考えておるのであります。
 昭和四十四年度において、またこのような総合予算主義を貫くかというお話でございますが、重ねて申し上げます。この総合予算主義は、これを堅持してまいる考えであります。また、堅持してまいりまするけれども、しかし、組みかえ補正はすることがあり得ます。また、非常の際、異常の事態がある際には、増ワク補正もいたすことがあり得るということをはっきり申し上げておく次第でございます。
 先ほど広沢さんから御指摘の、食糧管理特別会計のほうで補正予算書が出ておらないのはどういうわけか、こういうことでございますが、食糧管理特別会計におきましては、米の買い入れが八百五万トンから一千万トン以上に増加した分につきましては、予備費及び弾力条項ですでに対処をいたして済んでおるのであります。歳入のほうは、これは見積もりでございますので、したがいまして、補正予算を編成し、御審議をわずらわす必要がないものと考えておる次第でございます。
 第三点は、昭和四十四年度において一兆二千億円の自然増収があるにかかわらず、千五百億円の減税とはちと小さ過ぎるのではあるまいかという御意見でございますが、一兆二千億円の自然増収があると申しまするが、歳出の需要も非常に大きいのであります。御承知のように、社会保障も進めなければならぬ、あるいは社会資本の立ちおくれも取り戻さなければならぬ、文教政策も進めなければならぬ、いろいろな要請がありますので、これに九千億円を用いるのであります。残り得るところは三千億円になってしまうのでございます。公債政策の運営というところを考えますると、どうしてもこの際、公債の発行額を減らしておく必要がある、そういうことから、三千億円の余った財源を半分は減税に、半分は国債減額に充てるという考え方をとったわけでございまするが、この千五百億円の減税というものは、平年度に直しますると千八百二十五億円であります。これに、地方税におきまして八百億円をこえる減税をいたしますので、減税の総額は、平年度二千六百億円という規模に相なります。この二千六百億円の減税というものは、決して小さい減税ではない。戦後、五本の指の中に入る規模のものであるということを御承知願いたいのであります。
 なお、将来大幅な減税を行なうべしというお話でございまするけれども、まあ公債を発行している財政下でありますから、公債の減額にも努力をしなければなりませんけれども、同時に、お説のとおり、減税政策は着実にこれを進めていきたい、かように考えております。
 次に、昭和四十三年度におきまして国債の発行額が狂ったじゃないか、責任をどうするのだというお話でございまするけれども、なるほど、六千四百億円予算では見ましたのが、千六百六十三億円減ることになるわけであります。これはしかし、うれしい狂いではなかろうか、こういうふうに存ずる次第でございます。これは決して公債が消化できないから減らしたんじゃないのです。なるべく公債発行額は少ないほうがよろしい、こういう考え方から減額をいたしたものであることを御承知願いたいのであります。
 また、これに関連して、公債発行ということは健全財政を破綻させることになるのじゃないかというお話でございますが、私が昭和四十一年度に公債を初めて取り入れたゆえんのものは、これは一つは景気調整ということ、財政にそういう機能を持たせたいということ、それからもう一つは、公債発行によりまして国民の負担を軽減したい、こういうことであります。国費はどんどんふえていく。それに対して、いままでの考え方であれば、増税増税とやらなければならぬわけであります。減税なんかとんでもないことになるのです。そうじゃない。いまわれわれは、企業においても国民におきましても蓄積が乏しい。しばし公債を発行して、そうして増税政策はやめて、そして国民に、企業に蓄積を与える政策を考えるべきである、かようなことから公債政策を始めたわけでございまして、この政策の運営よろしきを得ますれば、昭和四十一年、四十二年、四十三年と、景気はずっと成長発展しているではありませんか。こういう経済運営を可能にする公債政策は、非常に効力を発揮している、かように考えておるのであります。(拍手)
 この国債発行政策を将来とも永遠に続けるかというお話でございまするが、経済が成長発展し自然増収がありますれば、逐次公債はこれを減額していきたい、かように考えております。つまり、公債漸減方式をとらんとしておるのであります。ただしかし、幾ら公債が減っていってるといっても、全部ゼロにするということはよろしくない。やはり二、三千億程度は残しておいて、そうして景気が悪いときにはこれを伸ばしていく、景気がいいときにはこれを引っ込めるという景気調整の機能というものを公債に残していく。この公債を全部なくすということは、私は、そういう景気調整の火の種を消してしまうということになるであろう、かように考えておる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣長谷川四郎君登壇〕
#45
○国務大臣(長谷川四郎君) 当初予算において、四十三会計年度の買い入れ見込みを八百五万トンと見積もったのは、大豊作であった四十二年産米に――これも特別の豊作でございまして、それ以外、四十二年度以外の累計をずっととってみまして、今度は最高を取り入れた、そういうことで八百五万トンという数字を申し上げたわけでございます。しかし、結果的には四十三年産米の推定実収高が、すなわち千四百四十四万九千トンと二年続きの大豊作となったために、買い入れ数量も大幅に増大することになったことでございます。(拍手)
#46
○副議長(小平久雄君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#47
○副議長(小平久雄君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後五時二十分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        法 務 大 臣 西郷吉之助君
        外 務 大 臣 愛知 揆一君
        大 蔵 大 臣 福田 赳夫君
        文 部 大 臣 坂田 道太君
        厚 生 大 臣 斎藤  昇君
        農 林 大 臣 長谷川四郎君
        通商産業大臣  大平 正芳君
        運 輸 大 臣 原田  憲君
        郵 政 大 臣 河本 敏夫君
        労 働 大 臣 原 健三郎君
        建 設 大 臣 坪川 信三君
        自 治 大 臣 野田 武夫君
        国 務 大 臣 荒木萬壽夫君
        国 務 大 臣 有田 喜一君
        国 務 大 臣 菅野和太郎君
        国 務 大 臣 木内 四郎君
        国 務 大 臣 床次 徳二君
        国 務 大 臣 保利  茂君
 出席政府委員
        内閣法制次長  吉國 一郎君
        大蔵省主計局長 鳩山威一郎君
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ソース: 国立国会図書館
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