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#1
第061回国会 本会議 第8号
昭和四十四年二月二十五日(火曜日)
    ―――――――――――――
  昭和四十四年二月二十五日
   午後二時 本会議
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 議員辞職の件
 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出)及
  び租税特別措置法の一部を改正する法律案
  (内閣提出)の趣旨説明及び質疑
 昭和四十三年度衆議院予備金支出の件(承諾を
  求めるの件)
    午後二時八分開議
#2
○議長(石井光次郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 議員辞職の件
#3
○議長(石井光次郎君) 議員西宮弘君より辞表が提出されております。これにつきおはかりいたしたいと思います。
 まず、その辞表を朗読いたさせます。
    〔参事朗読〕
      辞職願
 今般宮城県知事選挙に立候補の為議員を辞職いたしたく御許可下さるようお願い申し上げます。
  昭和四十四年二月二十五日
          衆議院議員 西宮  弘
   衆議院議長 石井光次郎殿
#4
○議長(石井光次郎君) 採決いたします。
 西宮弘君の辞職を許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○議長(石井光次郎君) 御異議なしと認めます。よって、辞職を許可するに決しました。(拍手)
     ――――◇―――――
所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
#6
○議長(石井光次郎君) 内閣提出、所得税法の一部を改正する法律案、及び租税特別措置法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。大蔵大臣福田赳夫君。
    〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#7
○国務大臣(福田赳夫君) 所得税法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 政府は、さきに経済の安定的成長に即応する税制のあり方とその具体化の方策につきまして、税制調査会に諮問いたしたところでありますが、昨年七月、同調査会から、三年間にわたる審議の結論として、「長期税制のあり方についての答申」、「税制簡素化についての答申」及び「土地税制のあり方についての答申」、この三つの答申が提出され、さらに昨年十二月には、これらの答申の内容のうち、来年度の改正において実現すべき事項につき「昭和四十四年度の税制改正に関する答申」が提出されました。政府といたしましては、これらの答申を中心として昭和四十四年度の税制改正につきまして鋭意検討を行なってまいったのであります。
 その結果、最近における国民負担の状況にかんがみ、中小所得者の所得税の負担軽減を主眼として、平年度一千八百二十五億円にのぼる所得税の減税を行なうこととし、また、当面の経済、社会情勢に即応して住宅及び土地対策の拡充合理化、公害対策の促進、原子力発電の推進、中小企業の構造改善等に資するため、税制上の諸措置を講ずるとともに、交際費の課税を強化するほか、納税者の権利救済制度の改善をはかることといたしたのであります。
 今回は、これらの税制改正の一環として、所得税法の一部を改正する法律案を提出した次第であります。
 以下、この法律案の内容につきまして、その大要を御説明申し上げます。
 まず、中小所得者の所得税負担の軽減をはかることといたしておるのであります。すなわち、基礎控除を現在の十六万円から十七万円に、配偶者控除を同じく十六万円から十七万円に引き上げるとともに、扶養控除を現在の八万円から十万円に引き上げることとしております。この結果、夫婦と子供三人の給与所得者の課税最低限は、現在の八十三万三千円が九十三万五千円となり、十万円程度引き上げられることになるのであります。
 次に、給与所得者の給与所得控除について大幅な改善を行なうこととしております。すなわち、現在、給与の年収が百十万円をこえる者については、控除額が頭打ちとなり、すべて同額となっているのでありますが、これを改めまして、年収が三百十万円に達するまでは、収入の増加に応じて給与所得控除額も増加するようにいたしたのであります。
 さらに、税率につきまして、主として中堅以下の所得階層の負担軽減をはかる見地から、税率の刻みとその適用区分の改善を行なうことといたしております。
 その他、ノーベル賞を非課税所得として法定し、短期譲渡所得の範囲及び予定納税を要しない者の範囲を拡大するほか、小規模企業共済掛け金を年末調整の段階で控除するなど所要の規定の整備をはかることといたしております。
 以上、所得税法の一部を改正する法律案につき、その趣旨を申し上げた次第であります。(拍手)
 次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 私は、さきに所得税法の一部を改正する法律案についてその趣旨を御説明いたしました際に、昭和四十四年度の税制改正の基本的な考え方を申し述べたのであります。今回ここに提出いたします租税特別措置法の一部を改正する法律案は、その一環として、当面要請される住宅対策、原子力発電の推進、中小企業対策等に資する措置及び土地問題の解決に資するための税制上の措置を講ずることを内容とするものであります。
 まず、住宅対策等の当面要請される措置について申し上げます。
 第一に、住宅対策といたしましては、住宅貯蓄控除制度について適用要件を緩和するほか、新築貸し家住宅の割り増し償却制度等について整備をはかるとともに、その適用期限を延長することといたしております。
 第二に、原子力発電の推進策といたしましては、原子力発電設備について償却準備金及び特別償却の制度を創設し、また、動力炉・核燃料開発事業団が行なう原型炉の建設のために企業の支出する出損金について、これを損金に算入することといたしております。
 第三に、中小企業の体質強化という面におきましては、中小企業構造改善計画を実施する商工組合等の組合員について、割り増し償却制度及び合併、現物出資の場合の課税の特例を設けることといたしております。また、商工組合中央金庫の抵当権の設定登記について登録免許税を軽減する等の措置を講じております。
 第四に、輸出振興に関しましては、輸出割り増し償却、海外市場開拓準備金、海外投費損失準備金、技術等海外取引の所得控除の諸制度及び外航舶船の保存登記等の登録免許税の軽減措置について、それぞれ適用期限を延長するとともに、中小商社の海外市場開拓準備金の積み立て率を引き上げる等制度の改善、合理化を行なうことといたしております。
 第五に、交際費の節減をさらに進めるために、交際費の損金不算入制度について適用期限を延長するとともに、法定の控除額をこえる額に対する損金不算入の割合を六〇%に引き上げることといたしております。
 以上のほか、ガス事業者の特定ガス導管設備について特別償却制度を創設し、また、地方公共団体の行なう身体障害者扶養共済契約に基づく年金受給権、石炭企業が交付を受ける再建交付金及び日本万国博覧会の会場で行なわれる催しものについて、それぞれ課税しない措置を講ずることといたしております。
 さらに、適用期限の到来するその他の特別措置については、効果が認められないものを廃止し、実情に応じ簡素化ないしは合理的改定を加える等所要の配意を加えた上で、なお必要とされる措置については適用期限の延長を行なうことといたしております。
 次に、土地税制の改正について申し上げます。
 土地政策全般において、税制の果たし得る役割りは補完的、誘導的なものにとどまると認められ、土地利用のための制度の確立を待たずして税制上の施策のみによって土地問題の解決をはかることには、おのずから限界があると考えざるを得ないのであります。しかしながら、現下の土地問題の深刻さに顧みますと、土地税制の改善をいたずらに遷延することもまた許されない状況にあると考えられますので、今回その改正を行なおうとするものであります。
 第一に、土地の供給の促進に資するため、個人が五年をこえて保有している土地等の譲渡所得については、昭和五十年までの間分離比例課税といたし、たとえば昭和四十五年から二年間は一〇%の軽減税率を適用することといたしております。
 第二に、土地の投機的需要を抑制する等のため、個人の保有期間五年以内の土地等及び昭和四十四年一月一日以後に取得した土地等の譲渡所得につきましては、現行負担を上回る高率の分離課税を行なうことといたしておるのであります。
 第三に、買いかえ制度の縮減合理化であります。すなわち、事業用資産の買いかえ制度は、期限到来を待って廃止し、その後は、あらためて土地政策または国土政策に合致すると認められる特定の買いかえに限って特例を設けるとともに、居住用財産を取得するための買いかえ制度は昭和四十四年十二月三十一日限りで廃止し、これにかえて、現に居住している土地、家屋を譲渡した場合について新たに一千万円の特別控除を設けることといたしております。
 第四に、収用等を受けた場合については、いわゆる四分の一課税の特例は廃止することとしておりますが、買いかえの特例及び一千二百万円の特別控除はそのまま存続することといたしております。
 最後に、経過措置といたしまして、個人の昭和四十四年中の土地等にかかわる譲渡所得については、納税者の選択により、改正後の新しい課税方式の適用を全面的に受けることができるようにいたしております。
 以上、租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げました。(拍手)
     ――――◇―――――
 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
#8
○議長(石井光次郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。広瀬秀吉君。
    〔広瀬秀吉君登壇〕
#9
○広瀬秀吉君 私は、日本社会党を代表して、ただいま趣旨説明のありました所得税法の一部を改正する法律案について、総理大臣及び大蔵大臣に質問をいたし、その所信をたださんとするものであります。
 まず最初に、総理にお尋ねいたしたいのであります。
 四十三年度、昨年度は、財政硬直の一大キャンペーンのもとに、所得減税は一千五十億、一方、酒、たばこ、物品税の増税千五十億であり、まさに減税ゼロ、所得減税をすら受けられない低所得層に対しては、実質増税であったことを想起していただきたいのであります。しかも、消費者物価一%上昇につき必要とされる物価調整減税は七十億といわれますから、五・二%の物価上昇によって三百五十四億は確実に増税になったと見られるのであります。
 しかるに、昭和四十四年度予算編成においては、今年度当初あれほど喧伝されました財政硬直化については、ほとんどその声が聞かれなかったのであります。財政硬直化はもはや終わったのであります。
 しかも、四十四年度予算は、すでに有識者から指摘されているように、景気警戒型ないし中立型ではなく、インフレ促進的積極施策型予算ないしは軍備促進、治安増強、海外援助に重点を置いた選挙対策、七〇年に向けての大資本優先に編成をされました。これは自然増収という名の増税見込み一兆二千億円、うち四九%は所得税の増収でありますが、この数字にささえられたものと思われます。したがって、長い重税に苦しみ抜き、しかも、昭和四十三年度における実質増税にあえいできました納税大衆は、これだけ巨額の自然増収がある以上、四十三年度の過酷な増税への埋め合わせを含めて、今回こそ実のある大幅減税をしてくれるであろう、こういう大きな期待を持ったのであります。この国民の切実なる願いと期待は、もののみごとに裏切られたのであります。
 今次所得税制改正の基礎となった昨年七月の税調答申が尊重されるならば、課税最低限引き上げで千二百億、税率緩和で千六百億、合わせて二千八百億程度の減税を待ち望んでおったのであります。にもかかわらず、今回提案されている減税は、自然増収に対し一二・五%、千五百三億円にすぎません。かつて税調が答申をいたしました自然増収の二〇%ぐらいは毎年減税することが望ましいとした数字からも隔たることまことに遠い、お粗末な減税規模でしかないのであります。総理、いかがお考えでありますか。
 四十四年度予算策定において、減債か減税かの激しい論議の末、減債方針に軍配があがって減税が犠牲にされた、このように評されるのもむべなるかなと思うのであります。減債千五百億円によって国債発行は四千九百億、依存度は七・二%に押えることができましたが、これが景気抑制の意味をどれだけ持ちますか。おそらく減債千五百億円は、今日の国債引き受け方式から申しましても、市中銀行の余裕金となり、かえって大企業中心の民間設備投資に向けて貸し出され、その刺激要因となることは確実であります。
 減税分を増額すれば景気に拍車をかけるとの論をなす者もありますが、今日まで相次ぐインフレ、物価値上げの中で、生計費を切り詰め、貯蓄を減らしてきた国民大衆は、減税分はささやかな家計の改善と不時の災害に備えての貯蓄に向かうでありましょう。国民総支出における個人消費支出五二・四%、これは先進国から見て著しく低いことが、総生産では世界第二位だ、国民一人当たり所得、そして生活水準では第二十位だという、その数字の裏づけになっているのであります。経済高度成長政策は個人消費支出の引き上げ、生活向上をもたらすことにその主眼を置くべきだと言えるのではないでしょうか。
 大蔵大臣は、自然増収見込み額に対して上回った数字が出た場合には、これを減債に回すと言明しております。総理は、このような場合、年度途中においても減税を行なうよう、大蔵大臣に指示される気はございませんか。
 次に、総理にお伺いいたしたいのは、法人税と所得税の関係についてであります。
 税制調査会は、その答申において、所得税については、納税者個々の所得水準や蓄積の低さにもかかわらず、いわゆる中小所得者層にかなりの重い税負担を求めている、特に給与所得者は捕捉率が高く、負担が過重であるといっております。一方、法人税については、国際的水準に比べても、個人所得の負担水準から見ても、相対的に高い水準ではない、法人税負担にはなお余裕があるということを認めておるのであります。
 ちなみに、この十年間を通じ、所得税の伸びが実質所得の伸びの二・四、五倍になっているのに対し、法人の場合は、三十五年度に比較いたしまして、四十二年度で総資産、資本は三倍に、桂内留保は三・二八倍に、配当金は二・八四倍と伸びているのに対し、法人税はわずかに二・一倍にしかなっていないのであります。
 このような状況を念頭に置き、かつ法人、特に法人数において一・二%にしかならないそういう数字の大会社が、総所得の六四・四%を占める、こういう一億円以上の大法人は、租税特別措置による減税額、国税、地方税で四千二百億と推定されておりますが、そのうち七割の恩恵をこれらが受けておるのであります。こういうことを考え合わせますると、大法人にはなお十二分な税負担能力があるものと思います。
 総理及び大蔵大臣は、これらに着目をいたしまして、法人擬制説から脱却をし、法人独自の税負担を求めること、このことこそが社会、経済の実態に即して税の公平を回復するものであることを認識し、法人に対して法人利潤税導入など能力に応じた納税強化を行なうとともに、租税特別措置の勇気ある改廃を行ない、そして、これを財源として所得税減税を大幅に行なうことが必要であると思いますが、所信を承りたいのであります。(拍手)
 次に、課税最低限についてお伺いいたします。
 今次改正案によりますれば、標準世帯が四十四年度で九十一万五百十八円、独身者で三十二万五千四百八十六円であります。戦前、昭和十一年ごろの給与所得者の課税最低限は、今日に引き直して比較をいたしてみますると、平均所得の一・八倍程度の高いところに課税最低標準があったのであります。それに引きかえ、昭和四十年度一人当たり給与所得は、大蔵省提出の資料によれば九十万六千円であるのに対し、課税最低限は九十一万という数字であります。この点から考えましても、戦前に比して課税最低限が低く押えられて、課税が今日広範な低所得者層にも及んで、その最低生活費に食い込んでいたことが明らかになるのであります。
 総理並びに大蔵大臣は、昭和四十五年度には課税最低限を百万円以上にするとしばしば国会で公約されているのでありますが、戦前、昭和十一年当時、八十七万人の所得税納税者に対し、今日は二千百六十四万に及ぶ納税者数を数えているという、その革命的な変化が、課税最低限を低く押えてきたことによるものであるとは思いませんか。今日、理論生計費を基礎に算定すれば、五人家族で百七十万円以上の生計費を要するということを考え合わせる場合、最低生活費に課税せず、蓄積とゆとりのある家計をという見地に立って、少なくとも四十四年度百二十万円程度に引き上げるべきであると思うのでありますが、お考えを承りたいのであります。
 今日、高卒者の初任給にいたしましても、月額二万五千円以上になっております。これを、ボーナス三カ月分として十五カ月で計算をしてみますと、三十七万五千円になります。課税最低限を少なくとも四、五万こえるわけであります。就職して、とたんに、まだ未成年者が所得税を取られるという事態になるのであります。
 さらに、この点に関し大蔵大臣に所見を伺いたいのは、大蔵省の統計によっても、給与所得者の家族構成は、世帯主を含めて三・八九人であります。夫婦子供三人を標準世帯としている今日のやり方は、現実の姿を反映しておりません。したがって、現実と遠い五人世帯を標準世帯とする方式を、四人世帯に改めることが必要であろうと思いますが、その点について、いかがでございましょうか。(拍手)
 次に大蔵大臣に伺いたい点は、税率についてであります。
 今次改正案によりますると、現行十万以下の最低税率九・五%を三十万以下一〇%に引き下げるとともに、現行の五%刻みの累進税率を、七百万以下の各段階について、その刻みを四%に引き下げたのであります。このことは、今次改正案がいわゆる部課長減税といわれるゆえんであり、中堅所得者の減税をはかる最大の点でありました。しかしながら、この点について考えまするに、所得税制の最も原理的な応能負担、公平負担、所得再配分の原則の立場に立てば、課税標準所得二百万円くらいまでは二%刻み、三百万円くらいまでは三%刻みにするというくらいの、きめこまかな税率改正をなすべきであったと思いますが、なぜ一率に四%刻みにしたのか、その理由を明らかにしていただきたいのであります。(拍手)
 おそらく財源が足りなかったと答弁されるでありましょうが、財源が足りなければ足りないように、税調の答申のごとく、百五十万円までの四段階は二%刻み、三百万円まではその三段階について三%の刻みにするという、そういうものを実現させて、残余のものについては明年度に持ち越すくらいの配慮があってしかるべきであったと思いますが、いかがでありますか。このような態度があってこそ、国民大衆の切実な願いにこたえた税制改正と言えるのではないでしょうか。
 次に、課税単位のあり方の問題について、大蔵大臣及び総理に質問をいたします。
 所得税の課税単位については、所得をかせぎ得る個人ごとに担税力を見出す方法と消費生活を同じくする単位ごとに課税する考え方とがあることは、御承知のとおりであります。そこで伺いたいのでありますが、すでにアメリカや西ドイツにおいて実施されている夫婦間の所得分割法がとれないかどうかであります。これは、いわゆる二分二乗方式といわれるものであります。今回の税制改正は、基礎控除、配偶者控除各一万円、扶養控除二万円引き上げ、税率の一部緩和が中心であります。さらに、給与所得控除の定率分の引き上げ、限度額の引き上げ等でありますが、このような方式による減税は、いまや限界に達しつつあると思います。真に蓄積とゆとりのある家計の実現を目ざす財政政策の中で減税を考えるとするならば、やはり抜本的減税方式を考える時期に来ているのだと思います。その観点から、夫婦所得に対して二分二乗方式が採用されてしかるべきときと存じます。共かせぎの夫婦ないしは内職する妻の場合等においてはもちろん、家事労働に従事し、子供の教育、夫をして安んじて職場において精一ぱい活動していくことができるようにするための妻の内助の功、働きというものを正しく評価すべきであります。現行配偶者控除は、独身者に与えられる基礎控除十七万と同額にするという現行の方式は、妻の一家の所得に対する貢献度を正しく評価しておりません。かりに妻のかわりに、いわゆるお手伝いさん、家政婦を雇っても、月額二万五千円以上は支払わなければならない現状から見ても、まことに不当であります。このような見地に立って、配偶者控除の思い切った引き上げを断行するか、いわゆる二分二乗方式による課税方式を採用する必要があると思うのでありますが、総理及び大蔵大臣の所信を明確にお聞きいたしたいのであります。(拍手)
 もし、佐藤総理にして、公平な税制確立について、抜本的方式としてこの方式を採用する英断を行なうならば、少なくとも千数百万の納税者の妻たちは、佐藤総理こそ希代の名宰相として、大きなかっさいを与えるであろうことは疑いをいれません。
 次にお尋ねをしたい点は、給与所得に対する源泉徴収の制度についてであります。
 この制度は、昭和十五年、戦争財政の必要に基づいてつくられた制度であり、民主憲法のもとにそのまま引き継がれ、今日に至っているのでありまして、今日違憲の疑いがあり、現に同志社大学大島教授から違憲訴訟が提起されておる重要問題であります。すなわち、給与所得者は、源泉徴収制度によって、他の所得者に比して著しく不利な取り扱いを受けているのであります。本来、法の前に平等であるべき国民のうち、給与所得者だけが、これあるがゆえに他に認められている自主申告の権利を奪われ、一〇〇%税金を先取りされ、給与所得を得るための必要経費の主張すら否定されているのであります。今日俗に言うクロヨンあるいはトーゴサンということは、給与所得者、事業所得者、農業所得者に対する課税捕捉率の状況を端的に表現するものでありまして、裏返せば、サラリーマンの憤りと恨みつらみの象徴であります。インフレ、物価値上げの高度経済成長政策の中で、有無を言わさず源泉徴収されている給与所得税の重さこそ、勤労大衆に耐えがたい重税感を与える最大の問題点であります。総理大臣、大蔵大臣、この人権無視、憲法違反の疑いの濃い源泉徴収制度を自主申告制に改める意思がありますか、所信をお伺いいたします。(拍手)
 もし、二千二百万に近い給与所得納税者に一々自主申告制を認めることは徴税事務上困難である、これをやめることはできないと説明されるならば、あなた方は、給与所得者には他の所得者に対する以上に有利な必要経費控除が給与所得控除の中で考慮されていることを数字をもって説明すべきであります。これはできないでありましょう。他の所得者は、いずれも翌年三月十五日の申告期限までに申告納税すればよいのに、ひとり給与所得者だけが毎月税金の先取りをされているのであります。総理並びに大蔵大臣、このような不公平に対して、税金先取り分の利子補てん、徴税費節約分などを考慮して、とりあえずの措置として、現在の諸控除のほかに、たとえば源泉徴収特別控除を、仮称でありますが、新設し、不当な給与所得者の重税を緩和し、税の公平を期するお考えはございませんか。
 さらに、給与所得控除を、定額分、定率分の思い切った引き上げを行なうべきであると思いますが、いかがでございますか。
 源泉徴収制度について、少なくとも給与所得に対しても、概算控除の現行制度と必要経費を自主申告によって認める制度の導入、いわば選択制度を採用すべきであると思いますが、いかがでございますか。これはすでに西ドイツにおいて実施せられておるのであります。この制度導入を、勇断をもって実施せられることこそ、従来の惰性による税制改正のからを破って、真に国民の切実な期待にこたえるゆえんであると信ずるのであります。
 最後に、私は、次の一文を呈して私の質問を終わりたいと思います。それは、税金酷書を発表した総評、社長や部課長を構成員とするサラリーマン・ユニオン、全国サラリーマン同盟の各代表者による共同討議の末、まとめられた共同宣言の一節であります。
 全国二千七百万人のサラリーマンは、有無をいわせず取立てられる重い税金に泣いている。サラリーマンは、その苦しさを訴えるすべを知らず、運動を起す組織を持たず、ただひつじのように従順に税金を納め続けてきた。しかし、いまこそわれわれサラリーマンの立上がるときが来た。「これ以上、不当な税金の手カセ足カセに甘んじることはできない。日本の中堅たるわれわれサラリーマンの声を、政治に反映させよう」と重い腰を上げたのである。総理、大蔵大臣、このように給与所得者は、いまきゅう然として減税の要求を掲げて立ち上がっておるのであります。これはかつて見られなかったことであります。長い長い酷税の中で苦しんだサラリーマンの血の出るような叫びであります。
 この声に謙虚に耳を傾け、給与所得を中心に大幅減税を断行されるよう明確な答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#10
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 まず、財政硬直化打開の声が陰をひそめているではないか、かようなお話でございますが、決してそのようなことはありません。国債の依存度の引き下げや、両米価の据え置き方針の強い決意などをごらんいただけば、政府が相変わらずこの問題と取り組んでいるその姿勢がおわかりだと思います。
 次に、自然増収は減税優先にと、こういうように主張されましたが、政府といたしましては、ただいま借金をしておる、その意味で、国債の発行額がなお相当額にのぼっております現在としては、何をおいても国債の依存度を引き下げることが財政体質の改善のために望ましいものである、かように考えております。年度途中においても自然増収分で減税をしろ、かようにお話しでございますが、減税は来年度予算におきまして積極的に行なったところであります。
 次に、所得税を軽減すべし、この御主張でございますが、方向としては、全くそのとおりだと私も思います。現に、来年度予算はその方向で減税を実施したのであります。しかしながら、法人税の増徴は、法人の税負担から見ましても問題があるし、また法人、個人を通ずる税体系から見ても、にわかに増税には賛成しかねます。
 次に、給与所得者の課税最低限の問題でありますが、課税最低限を四十四年からでも百二十万円にしろ、かような御主張であります。税制調査会の長期答申でも、夫婦子供三人、この標準家庭におきまして、その所得については百万円程度とすることが、先進諸国との比較から見ましても妥当である、かようにしております。政府としては、その線に沿った減税計画を遂行中であります。課税最低限の百万円の目標は、アメリカの百三十三万円には及びませんが、英国は七十八万円、ドイツは八十八万円、この水準等から見ましてもわが国の百万円は高いのでありまして、英、独よりも高い、一応の水準である、かように私は考えております。
 なお、配偶者控除につきましては、今回の改正で若干の改善を実現いたしたつもりであります。
 さらに、ただいまお話のありました、妻の座を重視して、夫婦の所得について二分二乗方式をとれとの御主張でありますが、これは現行所得税法の基本的な考え方に触れる問題であり、単に夫婦の所得の計算方式だけの問題ではなくなりますので、御意見は御意見として伺っておきます。
 なお、私は、妻の座を守るという意味からは、相続税並びに贈与税等に特に問題があるように思われます。このことは、さきに予算委員会におきまして、社会党の堀君からのお尋ねがありまして質疑応答をかわしたのでありますが、次の相続税手直しの機会に、妻の座を守るという意味合いでさらに一歩前進させたいものと、かように考えております。
 次に、源泉徴収の制度でありますが、これは諸外国でも広く採用されている納税者にも便宜的な制度であり、これを廃止するつもりはありません。問題は、御指摘のように、勤労所得者の重税感にあると考えますので、今後とも、特に中堅以下の所得税軽減に努力してまいります。
 また、御提案のあった源泉徴収方式の改善につきましては、制度的に種々むずかしい問題がありますが、今後の研究課題として取り組んでまいりたいと、かように考えております。
 最後に、御意見として、サラリーマン・ユニオンの、その一節を引き合いにして政府の施策を御批判になりました。私も謙虚に、その御意見は御意見として伺ったつもりでございます。(拍手)
    〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#11
○国務大臣(福田赳夫君) 広瀬さんのお尋ねは、おおむね総理からお答えがありましたのですが、私にもと言うので、重ねてお答え申し上げます。
 今回の四十四年度予算につきまして、一兆二千億円も自然増収がある。歳出に充てた残りも三千億円もある。なのに、それを半分半分ずつ、減税には千五百億円しか充当しないが、これは拡大すべきであったのではないかというようなお話でございますが、今日の段階におきまして何よりも大事なことは、経済がすくすくと成長、発展していくこの基本路線を守るということであろうと思うのです。四十一年度以来公債政策が採用されましたが、依然としてわが日本の経済は堅実な歩みを続けて今日に至っております。しかし、公債政策の節度というもの、これはこの辺でぴしっと打ち立てなければいかぬ、かように考えまして、公債の減額、これを重要視した。しかし、お話しのように、減税ということも当面の問題である。さようなことで、半々というきわめて公正なさばきをした、かように御了承願いたいのであります。減税はしない、しないと言いますが、減税は少なかった。しかし、歳出が九千億円もふえているのです。この歳出の九千億円のふえは何になっているのだといえば、社会保障費になり、道路になり、橋梁になり、住宅になり、そういう形で国民にお返ししてあるのだ、このこともはっきりと御了承願いたいのであります。
 次に、法人税と個人所得税との比較論に触れられまして、法人税増徴の必要があるのじゃないか、法人擬制説をこの辺で清算する必要があるのじゃないかというようなお話でありますが、いま経済が変動するこの状態下において税制の基本を改めるのは適切でない、かように考えておるのであります。法人税につきましては、いま世界の経済の自由化という中に臨みまして、いかにもわが日本の経済の体質というものが弱い、いわゆる資本比率なんかにいたしましても世界で最低の水準である、これを改善しなければならぬという要請のあるこの際、法人税の増徴をするということは適切でない、さように考えております。
 また、給与所得者の課税最低限、これを大幅に引き上げよというお話でございまするが、いま総理からもお話がありましたように、昭和四十五年度におきましては百万円までこれを持っていく計画をいたしておるのです。しかし、この行き方、これには私は疑問を持っております。つまり、いま世をおおっておるところの議論は、税率が高いのではないか、その負担感というもの、これが問題にされておる。それは、過去長い間税率の調整が行なわれないで、ひたすらに課税最低限の引き上げに集中されてきておった、そこに問題があるのだろうと思う。政府の公約でありますので、四十五年度には課税最低限百万円までの引き上げはいたします。いたしまするが、その後の考え方といたしましては、税率調整、これにこそ重点を置くべきではないか、さように考えておるのであります。
 また、夫婦子三人という統計を大蔵省がつくっておりますが、これを夫婦子二人に改めよという話であります。これはもっともだと思うのです。ただ、夫婦子三人というのは、前からの長い統計上の必要がありますので夫婦子三人と言っておる、それだけの話なんです。何も、これを夫婦子二人といたしたところで税が減るわけでも何でもないのでありまして、夫婦子二人という計算をいたした場合におきましては、わが国におきましては八十八万五千円という課税最低限が、英国においては六十三万円、ドイツにおいては七十一万円となる。いずれにいたしましても、わが国の課税最低限制度というものはきわめて妥当なところまで来ておるということを申し上げたいのであります。
 所得税率の刻みをもう少し小さくしたらどうだというお話でありますが、これはごもっともだと思います。私どももそういう努力をしていきたいと思う。税制調査会でもそういっております。そこで、私どもとしては、ことしは、今度の改正におきましては四%刻みにいたしまするけれども、これはお話のような方向で進めてまいりたい、かように考えておるのであります。
 夫婦の関係、妻の座につきましては、ただいま総理からお話があったようであります。夫人の地位につきましては、私もこれを重要視いたします。しかしながら、二分二乗の方式につきましては、これは非常に根本的な問題でありますので、これが採用には慎重を期して臨みたい、かように考えます。
 源泉課税の方法の問題につきましては、これはいろいろ御意見がありましたが、御意見のように、自主申告に改めよ、こういう考え方は私どもはとりません。これは先進各国でも用いられておる税の徴収方法でございまして、ただ、源泉徴収を受けるところの所得者の立場、これはよく考慮しなければならぬ。それゆえに、四十四年度予算におきましても、給与所得の税率の引き下げ、また控除の拡大、そういうことをいたしますが、この方向はさらにさらに進めまして、給与所得者と申告所得者との間の不公平感の是正に大いにつとめていきたい、かように考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#12
○議長(石井光次郎君) 阿部助哉君。
    〔阿部助哉君登壇〕
#13
○阿部助哉君 私は、日本社会党を代表し、この際、租税特別措置をめぐる基本的な諸問題につき、総理大臣の見解をただしたいと思います。
    〔議長退席、副議長着席〕
 巨大な独占資本に奉仕する税の減免措置に対し、国民大衆のふんまんはいまや頂点に達しております。政府の御用機関ではないかといわれる税制調査会ですら、租税特別措置が課税公平の原則に違反し、さらに、慢性化、既得権化の危険を指摘しております。にもかかわらず、他方、経団連は、政府に対し特別措置の新設を強く迫っており、昨年末彼らが作成いたしました要望一覧表には、実に延べ二百三十余件にのぼる新たな特別措置が列記されておるのであります。
 本日提案されましたのは住宅、原子力発電などに関するものでありますけれども、独占資本に奉仕するための特別措置全体に対する理念、租税原則破壊による大衆収奪が大きく問題となっております。そこで、一つ一つの措置に関する質疑は大蔵委員会において十分これを行なうこととし、ここでは、冒頭に述べました租税をめぐる政治状況を踏まえ、基本的な問題をただしたいと思います。
 われわれが租税特別措置による大企業の暴利をなじると、当局は、必ず判で押したように、中小企業にはこれこれの優遇云々と、聞きもしないことを力説する。特別措置の中には、なるほど中小企業向けのものがあることは承知いたしております。同時に、中小企業向けの看板を掲げて出発いたしたものが、実際には大企業専用化したもののあることも承知いたしておるのであります。だがしかし、租税特別措置の主たる目的と実際の効果が、国家権力による大企業の利潤拡大の手段であり、勤労大衆に対する追加搾取の制度であるこの罪を断じて免罪するものではありません。(拍手)ここでは、そういったまやかしの答弁を控えていただきたいと思います。
 政府は、租税特別措置の当、不当、また、その実態を不断に検討する義務があります。しかし、実際にはやられていない。われわれが資料を要求しても、満足に提示したためしがないのであります。たとえば、例年大蔵省から配ってくる減収試算表、この程度では役に立たないから、せめて業種別、資本規模別に分類してもらいたいといっても、それができないということであります。これでは政府自身検討することができないではないか。もし、あるものを出さないとするならば、これは国会議員の調査研究活動を故意に妨害するものであるといわなければなりません。(拍手)それとも、政府が検討しておりますという意味は、実は財界と寄り寄り打ち合わせ中ということなのか、いずれであるか、お答えを願いたいのであります。
 わが国の租税体系の中核は、所得、法人税であって、近代租税原則にのっとったたてまえであるはずであります。かりに特別措置が必要であるというなら、それは基本税法の具体的適用にあたって、部分的不合理を是正し、課税の公平を期する場合に限るべきではないか。現行特別措置のほとんどが、それとは逆に、租税原則をずたずたに破壊するものであって、民主国家においては許すことのできる限界を越えているのであるが、御所見を承りたいのであります。(拍手)
 もともと、金融その他あらゆる分野で有利にふるまっている独占資本に対し、国家が財政支出、さらにばく大な財政投融資によってフルサービスを行なっている。その上に税の減免である。国民的反撃の機運が高まるのは、これ当然であります。政府は、企業の利潤拡大という主目的を、やれ設備の近代化だの、国際競争力の強化だのといった衣装で飾り立ててはおりまするが、企業のほうは、もっと正直に事実を告白しております。ここでは時間の制約があるので、それを一々あげないが、要するに、適用される企業にとって特別措置は既得権であり、これを前提として経営計画を立てており、廃止されれば増税だといって騒ぎ立てるまでに慢性化しておるのであります。今日の独占資本は、市場のメカニズムを通じて公正な利潤を得ることでは満足をしない。会計制度に極力利潤の費用化方式を取り入れ、国家権力を道具に使ってばく大な利潤を獲得し、資本の蓄積に狂奔しているのであります。租税特別措置の主目的はここにある。だから、異なった産業間に特別措置の要求の競争が起こり、特別措置がまた新たな特別措置を呼んで、無限に拡大されることになるのであります。総理大臣の御所見を伺いたいのであります。
 租税特別措置法の第一条には、「当分の間」という規定があります。大部分の特別措置は期限つきであります。しかし、従来政府は、無反省に期限の延長を求めるか、あるいは装いを新たに新設の提案を行なって、今日百三十八件に及ぶ特別措置が現存しておるのであります。大企業は七期連続の高収益、増配を行なっている。また、昨年あたりは、設備投資の行き過ぎを押えるのだと称して、当局は金融財政の引き締めを行ない、重ね重ね自重を要望したが、その効果はなかったではありませんか。これでも特別措置の廃止を約束する勇気が起こらないのか、総理にお伺いをしたいのであります。
 特別措置は、減税という形はとっておるが、補助金と同じ財政上の効果を持つものであります。補助金より一そうたちの悪いことは、個々の対象、補助額などが国会審議の対象にならない。企業経理の操作によって弾力的な利用ができる。浮いた資金の使途に制限がない。営利企業としての成績のあがったものほど、つまり、独占企業ほど大きく活用できるのであります。この不合理を総理はいかにお考えになっておられますか。
 租税特別措置の本質と実態が明らかになれば、中小企業者がさらに減税を要求する。農民も黙ってはいない。中間層からも声があがる。当然のことであります。労働者階級は課税権、徴税権とまっこうから対決しなければなりません。われわれは、租税特別措置の全廃を主張するものであります。政府は、これが全廃を行なうことも、全廃の約束もせず、今年度は、予約減税に関する特別措置の提案を見送り、眠り込ませようとしている。かりに特別措置の廃止を順次決行するなら、まず大企業向けのものから征伐し、農民に対するこのような措置の廃止はあと回しにするのが政治の道ではないかと思います。(拍手)ことに、不公平きわまる利子配当の特別措置は、来年で期限が切れるのでありまするが、これをやめる御意思があるかどうか、総理にお伺いをいたします。
 資本の自由化に伴い、外資企業の急速な増加が予想されます。ここで私が外資企業をあげるのは、決して排外的な観点からではありません。特別措置自体が、資本と労働の関係からいいますれば、資本の労働に対する追加搾取の有力な手段であります。外資企業の日本進出の動機について、政府の調査によれば、第一に、目ざましい経済成長、次には、安い労働力だと指摘しております。つまり、大企業にとって、日本は税金天国であり、労働者は安く働く上に、税金の形でさらに企業に貢献するおめでたい国だということであります。いよいよもって全廃の決意を明らかにすべきときではないでしょうか。
 次に、地方税との関係についてお伺いしたい。
 地方自治体は、その政治的判断のいかんにかかわりなく、中央政府の特別措置によって自動的な税の減収を余儀なくされる。さらに、地方税法上の特別措置と合わせて千七百四十六億円の減収と自治省は試算をいたしております。支出面におけるひもつきの問題とともに重大な事態と思うが、総理の御所見を伺いたい。
 最後に、交際費は国民的な非難の焦点であり、企業にとっても道徳的退廃をもたらしている。これに対する全面課税を行なうため、むしろ本法に規定すべきではないか。御所見を伺いたいのであります。
 われわれは、租税特別措置の本質と実態を明らかにし、その全廃を期し、わが国租税体系に民主主義を確立する運動を展開する決意のあることを明らかにして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#14
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 租税特別措置、この法律は、私が申し上げるまでもなく、特定の政策目標を達成する上から、いままで有効な役割りを果たしているものでございます。これは、あえて説明するまでもないと思います。今回、提案いたしております持ち家をすすめる意味においての特別措置なども、非常に目的がはっきりしているものであります。これは、過去におきましても有効に働いております。したがいまして、いま言われたように、これを全廃するような考えはもちろんございません。
 また、大資本擁護の問題だ、こういって声を大にして、特にこの点に力を入れて御説明になりましたが、大資本擁護ではございません。私がただいま例をとりましたが、中小企業関係の方々も、この特別措置の恩恵を受けておるものが、企業関係の減税額の五五%にものぼっております。このことを考えると、これは大資本だけのものでないことがはっきりわかる、かように考えます。どうも、特別な見方をしておられるようでありまして、この点は、私、社会党のためにもとらない。制度は制度として、率直にいいことはいい、かように認めていただきたいと思います。(拍手)
 また、租税の特別措置は既得権化する、あるいは慢性化しやすい、かように言われたこと、この点につきましては、私も、ややもするとそのようなおそれがある、かように考えます。したがいまして、制度は流動的にその改廃を常に検討していかなければならない、かように私は考えております。今回の税制改正におきましても、数多くの改正を実施しようとしていますので、その詳細は大蔵大臣から申し上げることにいたします。
 特に、利子配当についての特別措置、これが来年期限が来る。それはどうするか、こういうことでありますが、私は、この問題については、とくと税制調査会においてよく審議していただく、そうして、その意見を聞いて善処したいつもりであります。この点を申し上げておきます。
 次に、国税、さらにまた地方税とのあり方についてのお話がございましたが、これなども大蔵大臣に譲らしていただくこととして、失礼いたします。(拍手)
    〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#15
○国務大臣(福田赳夫君) おおむね総理からお答えがありましたのですが、ただ一点、中央、地方の税の関係につきましては、これは相補い、相助ける関係になければならぬ、かように考えます。しかしながら、所得税、住民税、これに見られるように、中央税と地方税、これはおのずからその性質も違いますれば、その体系も違ってくるのであります。所得税の最低限が百万円だからといって、地方自治体の所得に対する課税である住民税が百万円でなければならぬ、こういうことはない。やはりこれは違うのが、これは性質上ほんとうであろう、こういうふうな感じがいたします。しかし、地方税も国税も、個人から見ますれば、これはもう負担に違いないのでありまするから、両方合わせて、国民の負担軽減ということには今後とも努力をいたしてまいります。(拍手)
#16
○副議長(小平久雄君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
 昭和四十三年度衆議院予備金支出の件(承諾を求めるの件)
#17
○西岡武夫君 予備金支出の件上程に関する緊急動議を提出いたします。
 すなわち、この際、昭和四十三年度衆議院予備金支出の件を議題となし、議院運営委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
#18
○副議長(小平久雄君) 西岡武夫君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#19
○副議長(小平久雄君) 御異議なしと認めます。
 昭和四十三年度衆議院予備金支出の件を議題といたします。
    ―――――――――――――
#20
○副議長(小平久雄君) 議院運営委員長の報告を求めます。議院運営委員会理事田澤吉郎君。
    〔田澤吉郎君登壇〕
#21
○田澤吉郎君 ただいま議題になりました昭和四十三年度衆議院予備金支出の件について御報告申し上げます。
 今回御承諾をお願いいたしますのは、昭和四十二年十二月二十七日から昭和四十三年十二月二十六日までの間に本院で支出した予備金七百万円であります。その所属年度は全額昭和四十三年度分でありまして、使途は、すべて在職中なくなられました議員の遺族に贈った弔慰金であります。
 これらの支出については、そのつど議院運営委員会の承認を経たものでありますから、御承諾くださいますようお願いいたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#22
○副議長(小平久雄君) 採決いたします。
 本件は承諾を与えるに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#23
○副議長(小平久雄君) 御異議なしと認めます。よって、承諾を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
#24
○副議長(小平久雄君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時十五分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        大 蔵 大 臣 福田 赳夫君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 高辻 正巳君
ソース: 国立国会図書館
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