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#1
第061回国会 本会議 第9号
昭和四十四年二月二十七日(木曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第六号
  昭和四十四年二月二十七日
   午後一時開議
 一 国務大臣の演説(農業基本法に基づく昭和
  四十三年度年次報告及び昭和四十四年度農業
  施策について)及び農地法の一部を改正する
  法律案(内閣提出)の趣旨説明
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 長谷川農林大臣の農業基本法に基づく昭和四十
  三年度年次報告及び昭和四十四年度農業施策
  についての演説及び農地法の一部を改正する
  法律案(内閣提出)の趣旨説明並びに質疑
    午後一時八分開議
#2
○議長(石井光次郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説(農業基本法に基づく昭和四十三年度年次報告及び昭和四十四年度農業施策について)及び農地法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
#3
○議長(石井光次郎君) この際、農業基本法に基づく昭和四十三年度年次報告及び昭和四十四年度農業施策についての農林大臣の発言を許し、あわせて、内閣提出、農地法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。農林大臣長谷川四郎君。
    〔国務大臣長谷川四郎君登壇〕
#4
○国務大臣(長谷川四郎君) まず、昭和四十三年度農業の動向に関する年次報告及び昭和四十四年度において講じようとする農業施策につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 まず、昭和四十三年度農業の動向に関する年次報告について申し上げます。
 昭和四十二年度は、農業にとり、端的に申し上げて恵まれた一年でありました。農業の生産性及び農業従事者の生活水準は、引き続き上昇し、他産業との格差も縮小いたしております。ことに、農家の所得は前年度を一九・五%上回り、世帯員一人当たり家計費を見ますと、生活環境の類似している地方在住の勤労者世帯を初めて五%上回るに至りました。
 次に、農業生産は、昭和四十二年、四十三年と、米の二年連続の大豊作や畜産物の増加などにより高水準に推移いたしました。しかしながら、米の需給が大幅に緩和し、米の問題の解決が当面の主要な課題であると同時に、野菜や畜産物など将来需要の増大が期待される農産物につきまして、需要の動向に即応した効率的な生産体制の確立が緊要となっておるのであります。
 さらに、農業構造についてみますと、農家戸数はこの一年間に八万一千戸を減少し、五百四十二万戸となり、農業就業人口も引き続き減少し、九百三十六万人になっております。しかしながら、なお農業構造の改善は順調に進んでいるとはいえない状況にあります。加えて、わが国農業を取り巻く国際環境も一段とそのきびしさを加えてきております。
 以上のような農業を取り巻く内外の諸情勢に対処するためには、農政の新たな展開をはかる必要があることは申すまでもありませんが、さらに、今日の農業問題の解決をはかるには、農政固有の領域にとどまらず、他産業の雇用や賃金、さらには地価や社会保障などの各面にわたって施策を強化していく必要があると考えられます。
 以上が第一部の概要であります。
 次に、第二部の農業に関して講じた施策は、四十二年度を中心といたしまして、おおむね農業基本法第二条に掲げる施策の項目に従って記述したものであります。
 最後に、昭和四十四年度において講じようとする農業施策について申し上げます。
 ただいま御説明いたしました農業の動向に対処するために、政府といたしましては、農業基本法の定めるところに従い、諸情勢の推移を織り込んで総合農政を推進してまいることにいたしておりますが、当面、四十四年度におきましては、農業生産基盤の整備、需要に即応じた農業生産の推進、農業構造の改善、農業金融の拡充、流通消費対策の充実等に特に力を入れて所要の施策の充実強化をはかることといたしております。
 以上、昭和四十三年度農業の動向に関する年次報告及び昭和四十四年度において講じようとする農業施策について、その概要を御説明申し上げた次第でございます。
 次に、農地法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 戦後の農地改革により自作農が創設され、これによってわが国の農業生産力は画期的な発展を遂げ、農業者の経済的社会的地位の向上をもたらしたのみならず、戦後における日本経済の復興と繁栄に寄与したことは申し上げるまでもありません。現行農地法は、このような農地改革の成果を維持するという使命をになったものであります。しかしながら、わが国の農業の現状は、いまだ経営規模が零細であり、このため、生産性の向上をはかるにもおのずから限界があることを否定し得ません。したがいまして、農政の基本目標を実現するためには、農地がより生産性の高い経営によって効率的に利用されるようその流動化を促進し、農業構造の改善をはかることが肝要であります。政府といたしましては、このような観点から農地法の改正をいたすこととした次第であります。
 次に、この法律案の主要な内容について御説明申し上げます。
 第一は、以上述べました趣旨に基づき、農地法の目的に、「土地の農業上の効率的な利用を図ること」、これを追加することであります。
 第二は、農地等の権利移動の制限の改正であります。近年における農業技術の進歩、兼業化の進行に照応して、上限面積の制限の廃止と下限面積制限の引き上げを行なうこととし、また、国が売り渡した農地につきましては、売り渡し後十年を経過したものは貸し付けることができることとし、さらに、農地保有合理化促進事業を行なう非営利法人が農地の権利を取得することができることとしております。
 第三は、集団的生産組織の育成と土地の効率的利用に資するため、農業生産法人の要件を実情に即して緩和するとともに、農業協同組合が委託を受けて農業経営を行なう場合には、農地の権利の取得を認めることとしております。
 第四は、小作地の所有制限についてでありますが、農業生産法人に貸し付けられる小作地等につきましては、その所有制限をしないこととするほか、農業をやめて住所を他へ移した場合にも、在村の場合と同じ面積まで小作地の所有を認めることとしております。第五は、農地を貸しやすくするために農地等の賃貸借の規制を緩和することとし、合意により解約する場合及び十年以上の期間の定めのある契約について、その更新をしない場合には、許可を要しないこととしております。また、小作料の統制につきましては、農業者の地位が向上し、雇用の機会が増大した現在では、戦前のような高率の小作料が発生する余地は一般的にはないものと判断されますので、これを廃止することとしております。第六は、草地利用権設定制度の新設であります。これは、飼料の生産基盤の拡大強化をはかるため、未利用の里山等について、市町村または農業協同組合が草地造成をする必要がある場合には、都道府県知事の裁定により草地利用権を設定することができる制度であります。
 以上が農地法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説(農業基本法に基づく昭和四十三年度年次報告及び昭和四十四年度農業施策について)及び農地法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
#5
○議長(石井光次郎君) ただいまの年次報告等についての発言及び趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。工藤良平君。
    〔工藤良平君登壇〕
#6
○工藤良平君 私は、日本社会党を代表いたしまして、昭和四十三年度農業の動向に関する年次報告並びに昭和四十四年度において講じようとする農業施策に関して質問をいたします。
 「いまわれわれは何をすればよいのですか、米がつくれないとすれば、これからの進むべき道を示してください」これは、いまわれわれ政治家に求められている最も率直な農民からの質問であります。(拍手)
 ここ二年間、米の生産は千四百五十万トン台の生産を記録し、政府手持ち米も本米穀年度末には六百万トンに達すると見られています。米のみの需給から見た現況は、確かに過剰の傾向にあることは事実であります。しかしながら、現在食糧の総合自給率からするならば、米の豊作により前年に比し若干の上昇を見たものの、依然として八三%であり、飼料をはじめとして、外国食糧への依存度は高まりつつあります。食糧の需要の動向に即応した供給体制をつくる農業を樹立することも、緊急の対策を要することであります。激動する国際競争に対応する日本農業の体質を改善することも、論をまたないところであります。
 ところで、すでに八回にわたって報告された農業白書が、政府みずからが指摘しているように、転換を迫られている農業に新たな指針を見出すことができるかどうかということであります。日本農業は零細にして、しかも過剰な人口を擁し、常に低価格農産物の供給を余儀なくされ、新しい農業への移行を予期しながらも、その手だてを十分に行なうに至らなかったのであります。日本農業は、いま国民経済の高度成長に刺激され、生活向上の必然性から新たな転換を迫られているのであります。したがって、本農業白書と四十四年度講ずべき施策についての農民の期待は、農産物の長期安定的生産と農業所得の向上の方針を導き出す上にきわめて重要であったのであります。その点からいたしまして、従来の報告に若干の前進は見られますが、依然として形式に流れ、現状認識にとどまっていることは残念であります。今後大きく変貌する農業の日本経済の中における位置づけと、さらに、日本農業の歩むべき指針を引き出すため、今後一そうの改善を要することを指摘いたしたいのであります。
 第二は、農業経済の内容分析についてであります。
 四十二年度の農業総産出額は四兆二百四十四億円に達し、前年度に比し七・五%の上昇率を示し、農産物の自給率は、四十一年度の八〇%から四十二年度は八三%にと回復しています。また、四十二年度の農家所得は、全国平均で一戸当たり百三万円で、前年を一九・五%上回り、農家と勤労者世帯との一人当たりの家計費水準の格差は九一%と縮まり、人口五万人未満の市町村に住む勤労者に比べて、初めて農家のほうが上回ったとしています。しかし、農家所得の上昇といっても、それは農外所得の占める割合が農業所得の五十一万を上回り、米の大幅な生産量と生産者価格の上昇にまつところが大きく、四十三年度の傾向から推計するとき、すでに生産者米価の据え置き、生産抑制、他作目への転換が容易でないなどの原因から、必然的に農外収入にたよらざるを得ない結果となります。とりわけ、家族婦人労働の農外就業の比率が増加することによって、所得の向上をささえる傾向が強まっています。
 本来、農業は農業所得によって生活を営むことがたてまえでなければならないと考えますが、今後における食糧供給のための農業構造のあるべき姿について、兼業の道を歩むか、自立の道を歩むか、いかなる道を歩かせるのか、総理の所信を伺いたいのであります。(拍手)
 第三の問題は、農業就業人口の低下、すなわち、離農と経営規模の拡大との関連についてであります。
 四十二年度の農業就業人口は九百三十六万人と、総就業人口に占める割合は一八・七%と低下をしています。農家戸数もまた四十二年十二月現在で五百四十一万九千戸となり、前年度より八万一千戸の減少を見ています。しかしながら、当初政府の期待した離農による農地の流動化は行なわれていないのであります。経営耕地規模別に見ると、都府県では二ヘクタール以上、北海道で十ヘクタール以上の農家数がふえてはいるのでありますが、それらの戸数増大は新規開田によるものが多く、農地移動を通じての既耕地の取得による規模拡大の動きは活発ではないのであります。このことは農民の怠慢ではなく、政治の貧困によるものであると考えます。(拍手)農地価格が最近に至り全国的に騰勢を強めており、特に主要農業地域において著しいことから、農家戸数の減少と農地拡大が一致しない結果を生み出しているのであります。農地法の一部改正によって、あたかも農地の流動化が行なわれるかのような考え方がありますが、むしろ農地流動の阻害要因は、都市並びに都市周辺の地価騰貴が最大の要因と考えられるのであります。昨年制定された新都市計画法との関連において、地価対策についての長期的な見通しと対策について、建設大臣の考え方を伺いたいと存じます。
 さらに、新しい農業への転換を迫られる農業経営にとって、税負担率の増加傾向は改めらるべきであって、農地流動化に伴う減税措置、米の予約減税について今後も実施されるお考えがあるかどうか、大蔵大臣の所信を伺いたいと存じます。
 第四の問題は、食糧の効率的な供給という立場での農業生産の現況についてであります。
 白書は、三十年当時から今日までの国民一人当たりの食糧消費の傾向がでん粉質から大きく変化したことを取り上げ、それに対応する選択的拡大生産の畜産、園芸への方向をたどってきたことを報告し、その中であらわれたひずみについて、次のとおり述べています。それは、米が過剰基調に転じたこと、青果物のうち、野菜の生産が常に不安定であり、価格の騰落を招いていること、畜産部門における生産拡大と、それに見合った飼料対策が不十分であったということであります。そこで、まず、米が過剰基調に転じたという点について、その科学的裏づけを明らかにしていただきたいのであります。
 生産が二年連続千四百五十万トン台に達し、今後現況のまま推移した場合、稲作技術の向上、上地基盤整備、農産物の中に占める米の優位性等から、さらに生産は拡大の方向をたどると断定できるかどうか。昨年十一月提出された昭和五十二年における農畜産物の需要と生産の長期見通しによれば、水田面積四十二万ヘクタールの減反によって、需給は千二百四十四万トンに調整できると推計しています。すでに四十三年産米の反収は五十二年の目標を突破し、一方、消費の減少傾向は低下の一途をたどっています。この見通しはここ二、三年のうちに大幅な修正をしなければならないと思いますが、その点の見通しについて明らかにしていただきたいのであります。(拍手)
 次に、政府は、食味、銘柄を加味した自主流通米によって政府買い入れの軽減をはかり、漸次米の自由市場への切りかえをはかろうとしていますが、この自主流通米の意図はどこにあるのか、明らかにしていただきたいのであります。単に食味、銘柄のみであるとするならば、現行法の中においてもでき得るはずであります。結局は食管の中間経費を消費者に負担させるもので、実質消費者米価の値上げ、食管会計繰り入れの軽減が真のねらいであると考えられます。
 さらに、米が過剰基調に転じ、今後恒常的に持続するとすれば、その自主流通米で全体の量の調整ができるのか。できないとすれば、政府は今後いかなる方策によって生産と消費のバランスをとるのか、明らかにしていただきたいのであります。
 さらに、政府は、今後自主流通米を希望する以外の米は全部買い取りを行なうのか、そのことも明らかにしていただきたいと思います。
 次は、稲作の地域構造を市町村単位までおろして調査した点に注目したいと思います。水稲の平均反収別や立地条件によって分類され、高収量地域を中心に稲作の主産地が形成されつつあること、さらに、乳牛、肉用牛、豚などの飼養状況では、稲作の収量が高低どちらにも属さない中間地帯に集中していることが明らかにされています。これらの調査の努力は多とするものでありますが、その目的が米の作付転換を前提とした意図的なものであるとするならば、その点についても明らかにしていただきたいのであります。
 次に、生産者米価についてでありますが、すでに本年度予算において、政府管理米の両米価据え置きを決定しています。しかし、物価上昇率は五%がすでに見込まれていますので、生産者米価の据え置きは、実質的には米価の引き下げとなります。すでに指摘をされていますように、他の農産物価格と生産が常に流動的であり、また、今日農業の質的転換が迫られているおり、少なくとも最低限物価上昇に見合う生産者価格の引き上げが必要であると思いますが、この点に対する御回答をいただきたいと同時に、また、米審の任命については、昨年度のメンバーを再編成し、生産者、消費者代表を含める考えがあるかどうか、総理の所信をあわせて伺いたいのであります。(拍手)
 第五に、野菜、果樹、畜産など、総合食糧の安定的確保をいかにはかるかという点であります。
 選択的拡大という指導のもとに、これらの作目の生産が急速に進みつつありますが、これらは常に価格の変動が流動的であり、したがって、生産もまた安定した生産を継続するに至っておりません。本年度、ミカンのごときも、全体的には成長作目でありながら、すでに計画の初期において生産過剰、品質低下、価格の下落が起こっています。畜産においても、出産増強に入ろうとする今日、すでに大幅な生産者価格の暴落が起こっているのであります。このことは、総合食糧の安定確保のための長期計画を綿密に樹立するとともに、それに対する生産体制、価格保障対策、とりわけ、流通機構の改善については、今日までもしばしば言われてきたところでありますが、この際、思い切った大改革を行なう必要があると思います。農林大臣の所信を伺いたいのであります。
 第六に、過疎地帯の問題について伺います。
 白書にも述べられていますように、農村から都市への流動化は急速に進み、過疎地帯に対する総合的対策が必要となってまいりました。とりわけ、教育問題農民の健康管理の問題はきわめて重要であります。
 現在学校統合によってその打開策がとられておりますが、すでに統合も限界に来たといわれております。義務教育にもかかわらず、十数キロも通学を余儀なくされ、あるいは寄宿舎に入らざるを得ないという現況にあり、通学費をはじめとして父母負担、地方自治体の負担が増加し、これら町村財政の脆弱さから、憂慮すべき事態に立ち至っております。再び複式教育の再現が具体化しようとしておる今日、教育の機会均等、農業後継者対策、農村振興とあわせ、特別の措置を講ずべき必要があると考えます。
 さらに、過疎地帯における農民の健康管理についてであります。農業労働力の老齢化、婦人化により、健康管理はより重要な部分となります。過疎地帯における医療施設、医師の配置など、後どのような対策を講じていかれるか。その現況と対策について、総理並びに関係大臣に伺いたいのであります。
 次に、水質汚濁、大気汚染による農業公害についてであります。
 近時、公害は、ようやく国民的問題として重要化してまいりました。公害対策は、産業発展の中で人間の健康や生命がおかされることをいかに事前に防止するかということが前提となります。農業生産に及ぼす影響もまたきわめて重要となってまいりました。水俣、阿賀野川、富山、大分、水島などをはじめとして、農水産物の被害も年々増大し、公害防止の恒久対策が必要となってまいりました。公害行政の中における農業部門の位置づけについて、厚生大臣の所信を伺いたいのであります。
 最後に、貿易自由化と日本農業の対応策についてお伺いをいたします。
 今年度、すでに農産物の自由化は、諸外国の強い要請によって拡大されつつあります。日本農業の脆弱性とその対応策が十分でないとき、農産物の貿易の自由化は、きわめて慎重に扱わなければならないと思うのであります。いずれ、国際的により一そうの自由化の要請は強くなりましょうが、これに対する対応策として、輸入農産物に対する関税の引き上げを行なうとともに、国内的には、農産物の生産費低下をはじめとした諸施策を積極的に進める必要があります。そのための対策は、農産物の外国食糧依存の行き方を改め、農民的立場に立つ真の総合農政を確立することこそ大切であります。政府は、さしあたって、農地法の改正によりその成果に期待していますが、これに多くの期待をかけることが困難であることは、すでに指摘をしてきたとおりであります。現在実施中の土地改良事業長期計画、第二次構造改善など、計画は進められつつありますが、これとても、多くの規模拡大は、早急には実現は困難でありましょう。したがって、日本農業を、国土の総合開発という立場に立ち、大規模な土地基盤の整備と開発、水資源の開発における農業用水確保を含む具体的長期計画を早急に実施に移すべきであると考えますが、総理並びに関係大臣の所信を伺いたいのであります。
 以上、申し上げてまいりましたが、総理が所信表明の中で明らかにいたしましたように、農業は、いま新たな曲がりかどに来ています。過去の農業も決して平たんな、まっすぐな道を歩いてきたものではありません。それは、常に曲がりかどの連続でありました。この曲がりかどがいつまで続くのか、平たんな道に出ることができるのか、農民には、いま大きな不安が残っています。平たんな道といえども、起伏は覚悟しております。その起伏は、農民自身の手によって、その知恵と自主性によって打開してまいります。せめて農民の求めている平たんな、まっすぐな道を差し示すこと、これこそ、まさに総理としての責任であります。
 農政に対する一そうの努力を期待をして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#7
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 私は、近代的な農業の達成のためには、何といっても農業が自立できる、いわゆる自立経営農家をできるだけ育成していくことが大切であると、かように考えております。このところ、自立経営農家の比重が少しずつではありますが高まってきておりますことは、そういう意味で歓迎すべきことと考えております。
 しからば兼業農家はどうなってもよいのか、あるいは積極的に減らしていくのか、かように申しますと、やはり兼業農家が数多く存在しているという現実は、これは無視するわけにはまいりません。また、現在の段階では、積極的な離農への施策を進めるということは、必ずしも適当でないと考えております。しかしながら、都市と農村の接点の拡大、あるいは農村自体の都市化の傾向の中で、特に零細経営規模の兼業農家の間では、家をあげて離農する、こういう方もあります。あるいは主婦層の農外就業が増加するといった現象が進んでいるとも思われます。こういった現実の動きに対応して、まず、農業内部の問題としては、兼業農家を含めた協業等、集団的な生産組織を助長することが必要であろうかと思います。また、その場合の、農業から他産業への転職に際しては、就業についての相談活動を活発にするとともに、できるだけ専業的農家層の規模拡大につながるように農地の流動化をはかること、あるいは後継者のない老齢経営主の引退を円滑にするための方策を講ずることなどのため、必要な対策を講じてまいる所存であります。
 なお、米価審議会の委員の選定はいかにするか、こういうお尋ねでありますが、この点につきましては、ただいま農林省におきましても検討中でありますから、さように申し上げておきます。
 次に、過疎地帯の教育についてでありますが、政府としては、従来から僻地教育の振興という観点から努力してきたところでありますが、特に今回の予算におきましては、過疎地域の小規模学校の教職員定数について改善を行ない、教育水準の向上について配慮いたしました。後継者問題が農業にとって大きな問題となっているおりから、特に過疎地帯におきましては、農林業の振興だけでなく、生活環境全般の整備をはかっていく必要があり、学校教育の問題も、その一環として今後とも特別な配慮をいたす所存であります。その意味におきまして、農業高等学校は卒業後の就農率もたいへん高いのでありまして、これはまず成功したかと思います。同時にまた、この過疎地帯では、教育も教育だが、医療問題も、御指摘のようにたいへん重要な問題をただいま提起しております。私どもは、この社会問題とも真剣に取り組んで、この地方にいる方々に対しましても政府の施策が十分行き渡るように努力するつもりであります。
 最後に、新国土総合開発計画における農用地、農業用水についての長期的マスタープランについてでありますが、都市化の進展に対応して農地転用が進み、農地の減少を来たしている反面、今後の農業の選択的拡大の先導部門としての畜産において飼料生産の増強が強く要請されていることを考えますと、大規模な草地造成が予想され、今後としては、農用地はむしろ現状よりも増加するのではないか、かように考えております。現在は御承知のように六百万ヘクタール、それが六百五十万ないし七百万ヘクタールになるだろう、かように想像しておるのであります。
 また、農業用水につきましては、農業自体の水利用の近代化をはかるとともに、他の水需要をもあわせた総合的な水資源開発を進めることによって、農業用水の安定的供給を確保いたしたい、かように考えております。
 なお、貿易の自由化その他についてのお尋ねは、それぞれの所管大臣から答えさすことにいたします。(拍手)
    〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#8
○国務大臣(福田赳夫君) 農家の税の問題ですが、他の階層に比べまして決して高いのではありません。むしろ非常に低いのであります。最近クロヨンということがよく聞かれますが、その中でヨンというのはどなたをさしておるのかといいますと、農家のことをさしておる。そのことによりましても、一般的に低いとも認められておるのであります。
 予約減税につきましては、私から申し上げるまでもございませんけれども、集荷を促進するという趣旨でつくられたわけであります。ところが、米の需給が非常にゆるんできた。非常に改善されてきた。そこで、減税の当初の趣旨はなくなってきたのです。でありますから、予約減税をすべしという議論がありますけれども、私は、直ちにこれに賛成するわけにはいきません。しかし、皆さんの中で、これを廃止することは激変ではないか、あるいはむしろおそ出し奨励金という形に変えていったらいかがだろうかというような、いろいろな意見が出ておるのであります。私もそれをよく承知しております。国会内で行なわれている議論がどういうふうにまとまりますか、そのまとまった結果に対しまして私は善処をしていきたい、かように考えております。
 農産物の自由化に対してどういう考えであるかというのでありますが、私、大蔵省といたしましては、この輸入が激増するというような事態がもしありとすれば、いつでも緊急関税を発動いたしまして、これを阻止いたします。(拍手)
    〔国務大臣長谷川四郎君登壇〕
#9
○国務大臣(長谷川四郎君) お答え申し上げます。
 白書で米が過剰基調といっている、その理論的根拠いかんということでございますが、さきに公表いたしました長期見通しでは、米については、現状のままで推移すれば、五十二年には百八十万トン程度生産が需要を上回る、こういう見通しを持っておるのでございまして、この見通しは、米の特性を考慮しながら、過去の動向の分析を基調として需給を予測したものでございまして、その見通しであります。現実とある程度狂いがないとも言い切れないと思いますけれども、現段階ではこれを妥当な見方としておるわけでございます。
 次に、自主流通米は米の過剰対策にならないとおっしゃいますのですが、自主流通米の構想によって米の過剰の問題が解消しないことはお説のとおりでございます。したがって、政府としては、米の過剰対策として、基本的には米の需給の均衡をはかることを目的といたしまして、来年度から開田について相当の抑制をするとともに、稲の作付転換を講ずることとしております。四十四年度の作付転換は一万ヘクタールの面積について、いろいろな立場から問題があろうと思いますが、ともかくも、政府としては米の生産の調整と真剣に取り組む考えでございます。
 生産者米価の据え置きでございますが、物価は明年度においてもある程度上昇することは避けられない、こう思います。その場合にも、米価算定の基準としてどのような反収の農家をとるかという問題などもあるので、需給事情を反映させて米価を据え置くことは可能であるだろうというようにも考えますが、これらは、最近における米穀の需要の大幅な緩和の実情を考慮すれば、真にやむを得ないところのものであり、したがって、国民各層の理解と協力を求めていきたい、このようにお願いしている次第でございます。
 次は、今後の米の生産については、主産地域を中心としてその生産性の向上と品質の改善をはかっていくことが基本であると思いますけれども、一方、わが国の農業経営における米の重要性、また地域の諸条件を考慮いたしまして、米の生産の地域分担については、慎重にこれは検討しなければならない大きな問題だと考えておりますので、そのようにいたしたいと存じております。
 過疎地帯については、総理が申し上げましたけれども、農業の振興については、それぞれの地域の特性に応じまして主産地の形成をはかる等、各般の施策を講じていく考えでございます。
 なお、林業、畜産、果樹その他、地域の実情に即した作目の振興をはかってまいりたいと考えております。
 畜産物、青果物については、需要の安定と消費の動向に即しまして生産の振興につとめるということは当然のことでございますが、流通面の対策にも、これまた大いに力を入れなければならない問題だと考えておりますので、特にこの面には今後力を入れる考え方でございます。
 農産物の公害は、容易ならざる問題でございまして、これらとはほんとうに真剣に取り組まなければなりません。すなわち、水質保全法とか工場排水規制法とかいう法律によって原因物質の排出規制を積極的に行なって公害防止につとめてはおりますけれども、まだ被害の因果関係、これらにつきましては、試験研究等を今後もさらに進めてまいる所存でございます。(拍手)
    〔国務大臣斎藤昇君登壇〕
#10
○国務大臣(斎藤昇君) 過疎地帯における医療保健問題は、厚生省といたしましても数年以前から非常に重要視をいたしまして、御承知のように移動保健所の事業を拡充いたしまして、一般住民の健康診断、栄養指導等をやりますと同時に、母子保健センターを特に過疎地帯に設け、そして助産事業も行なわせるというようなことなども、きめこまかくいたしておるわけでございますが、御指摘のように、だんだんと医者が過疎地帯から離れていくという現状にかんがみまして、診療所を特に助成いたして医者の誘致をするような施策もとっております。しかし、それだけではなかなか十分でございませんので、患者の輸送車の助成をいたしますとか、あるいは巡回診療をいたしますとか、また、国立病院の医者に過疎地帯において診療に携わらせるというような制度を考えまして、本年から実施をいたしたいと考えている次第でございます。
 なお、農山村における公害も、厚生省といたしましては決してゆるがせにすべきではないと考えております。御承知のように、カドミウムの汚染あるいは水銀中毒というような事柄につきましては、その発生源をなくしますと同時に、これらに対する汚染、また、人体の健康をむしばんでくることについての対策を着々と樹立いたしておるような次第でございます。
 農林産物に対する公害問題についてはどういう位置づけをするかというお尋ねでございますが、御承知のように、公害対策基本法第二条第二項におきまして、生活環境の保全ということで公害防止対策の位置づけをいたしておるのでございます。したがいまして、直接人体に直ちに影響がありませんでも、その人間の生活に関係があるという事柄から、農林産物の被害に対しましても今後さらに強力に推し進めてまいりたい、かように考えている次第でございます。(拍手)
    〔国務大臣坪川信三君登壇〕
#11
○国務大臣(坪川信三君) お答えいたします。
 本年六月施行を予定いたしております新都市計画法においては、都市計画区域を、市街化を優先的にはかるべき区域としての市街化区域と、市街化を抑制すべき区域としての市街化調整区域と区分し、秩序あるところの市街地の形成をはかることとしておりますが、これによって都市周辺の農地等の無秩序な宅地化の防止と市街化調整区域内の地価の抑制が期待され、都市周辺における農業問題の解決にも寄与するものと考えておる次第であります。(拍手)
    〔国務大臣菅野和太郎君登壇〕
#12
○国務大臣(菅野和太郎君) 国土総合開発に関連しての私へのお尋ねは、まず農業用地の問題と、それから農業用水の問題であったと思うのであります。この二つの問題とも、総理から大体お答えになったのでありますが、なお補足する意味でお答えしたいと存じます。
 現在経済企画庁で策定作業中の新全国総合開発計画におきましては、土地の利用の面から、農業の展開の条件を備えた農業地域の積極的な保全をはかるとともに、大幅に新技術を導入した生産を展開し得るような土地基盤の整備を行なって、さらに低度利用林野における大幅な草地開発を進めていくつもりでいろいろ策定いたしておるのであります。
 なお、現在国会において御審議を願っております農業振興地域の整備に関する法律をも活用していきたいと、こう考えておる次第であります。
 また、宅地化の著しい発展をしております都市近郊におきましては、都市計画と農村計画の調整をはかって、そして都市、農村を一体として近郊地帯を整備したい、こう考えておる次第であります。
 第二番目の農業用水の問題でありますが、御承知のとおり、水の需要は国民生活水準の向上、経済の発展に伴いましてますます増加するものと予想されますので、これに対処して、政府は、水資源開発事業を鋭意進めております。したがいまして、たとえば利根川の水系などにつきましては、農業用水も含めて総合的な計画を進めておる次第であります。
 なお、現在利用されております水資源のうち、半ば以上は農業用水でありますが、一部農地の宅地化等によりまして水使用権と実態とが必ずしも一致しなくなった場所がありますので、これらは慎重に検討いたしまして、今後の水利用の変化に対応した農業用水の合理化につとめてまいりたいと考えておる次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#13
○議長(石井光次郎君) 美濃政市君。
    〔議長退席、副議長着席〕
    〔美濃政市君登壇〕
#14
○美濃政市君 私は、日本社会党を代表して、ただいま提案されました農地法改正案につきまして、総理以下関係閣僚に若干の質問をいたします。
 申し上げるまでもなく、農地法は、農業の位置づけと自作農を維持し、耕作者の権利を保護する重要な法律であります。政府・自民党は、さきに農業基本法を強行施行して、貿易の自由化を進め、国際競争力を高めるという方針のもとに、農業の形態を計画的に破壊する構造政策を立て、現在までの過程において麦、大豆等の生産を抑制し、極度に輸入率を高め、その他の農産物も年々輸入量を増大し、本年に至っては米の生産を抑制する方針を明示し、自主流通を強行し、政府の買い入れする量の制限をしようとしておるのであります。農業基本法制定以来の農政は、農業を安定するものではないという不信感と現実の苦しみから、農民は経営に対する自信を失っています。政府は、この際、農業の方向と自立経営の基本を明確にする責任があると考えますが、佐藤総理の方針と、農基法農政に対する評価について、どのようにお考えになっておるかを承りたいのであります。
 わが国の立地条件で自立経営の安定をはかるには、標準規模面積を定め、これを農地管理の上限目標として、他産業と均衡所得が得られる総合的な施策を樹立することが不可欠の要件であります。人為的に解消することのできない生産条件の有利な国との自由競争、あるいは資本自由化によってこれらの国の原料で大規模な加工販売が行なわれるとするならば、国内農業は根底から破壊されることは明らかであります。最近の情報によれば、EEC共同体地域においては、大半が輸入原料でつくられておる植物性油脂に大幅な消費税を賦課してマーガリン等の生産を抑制し、この税収を目的税として、地域内酪農の振興と余剰乳製品の輸出価格の調整をする特定財源にするという政策を進めておるのであります。世界の各国で、食糧の自給と社会構成の調和を重点とする農業政策をもって農業の安定をはかっておることは、御承知のとおりであります。しかるに、今回の農地法改正で基準上限面積を撤廃するということは、両三年以内に残存非自由化農産物の自由化を進める、あわせて農産物加工の資本自由化を進める、日米経済協力の圧迫からアメリカの余剰農産物の消化に協力をするという方針を定め、国内農業は、この競争に対応でき得る少数農家と輸入対象外の作物の生産に限定をする、したがって、基準面積を定め、総合的な農政をもって自立経営を位置づけし、耕作者の地位を安定させるべきこの法律の目的を放棄するという意図により、政策のかなめとして最も重要な上限標準面積を撤廃したと理解せざるを得ないのでありますが、佐藤総理から基本方針を具体的に承りたいのであります。(拍手)
 農業の生産を増進し、耕作者の地位を安定するというこの法律の目的を遂行する農地の制度は、自作農を基本とすべきであり、小作地の比率が高くなることは、近代農業経営には逆行するものであります。したがって、みずから耕作をしない農地は、耕作をする者に譲渡することを主体とする制度にすべきであり、特に既小作地については、自作地化する制度とすべきであります。そのため、これらを促進する対策として、土地取得資金の限度額の引き上げ、資金ワクを増額する必要があるのでありますが、これらの予算は、農民の要求を退け、据え置きとほとんど変わらない状態であり、小作地の所有制限を緩和して賃借流動化を重点としたことは、本末転倒と断ぜざるを得ません。
 特に、採草放牧地の所有制限の撤廃は、畜産振興、畜産経営の理解が不十分であります。採草放牧地として利用でき得る条件の土地は、草地改良を行ない、農地たる採草放牧地として高度の利用をしなければ、経営効率は上がりません。所有権に拘束された天然の野草利用でどのような畜産経営が可能という設計に基づくものでありますが、土地利用の高度化が農業を進歩せしめる第一の要件であるということを認識していただきたいのであります。
 現行の政策は、畜産経営の基盤整備及び粗飼料生産対策の不備、濃厚飼料対策の欠除等、精神分裂のような場当たり農政が畜産生産を阻害し、コスト高要因となっておるものでありますから、反省を求めるとともに、万全の方策を講ずるよう要求をいたします。また、賃貸借の解約についても許可制を必要と考えますが、農林大臣の所見を承りたいのであります。
 最近、農業者の所得は向上したと発表されましたが、農業外所得の向上率によるものが主体であり、農業部門の所得は大幅な格差となっておることも御存じのとおりであります。したがって、農地は生産手段の不動産でありまして、資本収益を発生する資産とはいえないと考えます。ゆえに、小作料は、収益還元方式による評価額を基準とする標準小作料を設定すべきであります。農地の所有者が耕作を必要としない期間は、信託もしくは賃貸しをして、必要が生じたときは復帰できる趣旨については検討すべきだろうと考えますけれども、この措置は、あくまで所有者の現況の利便をはかり、かつ将来の希望を保障するものであって、小作料の制限を撤廃し、青天井にして耕作者の所得を圧迫するということは許せないと考えます。
 片や、既小作地は小作料を規制し、制限するというのでありますが、同一条件のものに対する法律の二重制度は、農地管理の体系を乱し、法律の秩序を乱すものであります。みずから耕作することを必要としない理由で、新たに小作地とする所有者に小作料の制限を撤廃して青天井にしなければならない理由は、あらゆる角度から推定しても、ありません。また、社会常識で判断しても、その必要性はないと考えます。耕作者の立場を軽視し、所有権を過大に優遇すれば、農地の偽装取得行為が発生し、再び農地が投機の対象となり、旧地主制度の復活となりましょう。このような制度のもとでは、農業生産が増進し、耕作者の地位が向上するとは考えられないのでありまして、農林大臣は、これらに対して、いかような考えで今回の改正を試みられたのでありますか、明快なお答えを承りたいと思います。
 次に、小作料の制限を撤廃するということは、農地を収益資産という定義が生ずるのでありまして、固定資産税及びその他税制の評価基準に対し、大蔵大臣、自治大臣の御見解を求めまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#15
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 まず、政府の従来の、農業基本法あるいは農地法等にいたしましても、これらはわが国の農業を振興する方向ではなくて、むしろ萎縮さした、かような御批判だった、かように思います。しかし、何をもってそういうようにごらんになるのか、現状はよく御承知のとおりだと思っております。
 私が申し上げるまでもなく、近年の農業の生産性の向上なり農家の生活水準の向上、この現実を率直にごらんいただけ、また、正当な評価をしていただけば、最初のような考えは出てこないだろうと私は思います。また、今後の農政の課題につきましては、簡潔ではありますが、さきの施政方針演説におきまして明確に申し上げたとおりでございます。私は、農業に従事しておられる農家諸君も、日本農業が新しい事態に直面しておる現状をよく認識されて、新たな農政の展開に対して、積極的に対応していただくことを期待するものであります。
 自由化の問題にいたしましても、基本的には自由化への方向で、いわゆる開放経済のもとで一段の経済成長と国民生活水準の向上をはかることは、わが国の基本的利益にも合致するものと考えます。農業といえども、その例外では決してあり得ません。農業の構造改善は、この国際化時代に対処するためにも、ぜひ進展させていかねばならない、かように考えております。
 以上、農家の諸君の決意を促す意味で、特に強く申し上げたものでございます。しかし、政府といたしましては、ただいま農林水産業の特殊性、特に農業、農政が現在転機にあることをも十分考慮いたしまして、わが国農林水産業に不測の悪影響を及ぼさないように、自由化の問題にいたしましても、その時期、方法等について十分配慮し、慎重に取り組んでまいるつもりであります。
 その他の問題は、それぞれ所管大臣からお答えいたします。(拍手)
    〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#16
○国務大臣(福田赳夫君) 今回の法改正の結果、小作料の制限が撤廃される、それに伴って、農地が収益財産という性格になるのじゃないか、それに応じて税法の適用も考慮すべきじゃないか、こういうようなお話でございます。ただいま、相続税など税の評価にあたりましては、市場価格比準方式をとっております。収益還元方式はとっておりません。お話しのように、小作料の制限が撤廃されますと、収益資産の性格が若干出てくるという傾向はあろうかと思いますが、市場価格比準方式を根本的に変えるという決定的な理由にはなりません。さように考えております。しかし、これは農地法を改正いたしましたならば、農地に対してどういう価格の変化が及ぼされますか、これは、その成り行き等を十分注意深く見守りまして、税の評価への適用は検討してみたい、かように考えております。(拍手)
    〔国務大臣長谷川四郎君登壇〕
#17
○国務大臣(長谷川四郎君) 上限面積制限の廃止は、農地法における上限面積制限は、農地取得についての許可基準としての制限であって、もともと経営規模拡大の目標を示したものではないので、これを廃止したとしても、それにより農業政策における目標が失われるものではないと判断をしておるのでございます。
 次に、自作農を中心とした政策でございますけれども、わが国の農業経営の大宗は、自作地を中心とした家族経営でありますが、農業生産の発展と農業経営の安定のためには、基本的には、自作農経営が望ましいという考え方を、今回の改正によっても変えるつもりはございませんが、小作地の自作地化、農家の自作地の取得については、農林漁業金融公庫の農地取得資金の融資を十分に活用をして、これは積極的に推進してまいるつもりでございます。
 畜産の生産基盤としての飼料基盤の整備を強力かつ計画的に進めるためには、まず草地の造成、改良を推進するほか、既耕作地における飼料作物の作付増大をはかるための諸措置を講じておるわけでございまして、今回の農地法の改正では、新たに、さらにまた草地の利用権の設定に関する制度の規定などを置いているので、これによる事業が一そう促進されるものと考えられるのでございます。
 次に、地主と小作人との間の賃貸借の交渉の件でございますが、今回の農地法の改正は、小作者の経営の安定を十分に配慮したものであります。すなわち、賃貸借の規制を緩和するといっても、合意的な解決などについての実情に即した改正を行なうものでございまして、賃貸借の規制を現在のように厳格にしておくと正規の賃貸借がなかなか行なわれないで、請負耕作などが発生をいたします。請負耕作では耕作者に何らの耕作権の保護もございません。したがって、現行の賃貸借についての規制を改めることにしまして、正常な賃貸借が行なわれるようにいたしたのでありまして、経営の拡大と耕作者の地位の安定との調和をはかろうとするものでございます。
 また、小作料の統制撤廃には賛成しがたいとの御意見でございます。統制小作料については、一律の最高額統制は検討すべき事項であると思いますけれども、青天井として、政府がこれについて法律上何らの責任も持たないとしているのは、現実の必要以上に規制を緩和するものであり、また、現在の小作地について統制制度をなお継続することとしている。かかる新旧制度の並立は法的安定性を害し、結果的には秩序が乱れることになるという御意見でありますが、これらの点については、政府は十分に検討を加えまして、今回の改正により、それらを間違いのないようにやる考え方でございます。
 大体、以上でございます。(拍手)
    〔国務大臣野田武夫君登壇〕
#18
○国務大臣(野田武夫君) 今回の農地法の改正によって、農地の固定資産評価についてどうかというお尋ねでございましたが、固定資産税における土地の評価は、自作地、小作地の区分とは関係ございませんで、売買実例価格を基礎として適正な時価を評定するとされておりますので、小作料の統制が廃止されましたからといって、農地の評価につきましては、影響を及ぼすことはないと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#19
○副議長(小平久雄君) 中村時雄君。
    〔中村時雄君登壇〕
#20
○中村時雄君 私は、民主社会党を代表して、昭和四十二年度農業動向に関する年次報告並びに昭和四十四年度において講じようとする農業施策に関して、総理大臣及び農林大臣に対し、二、三の質問をいたしますが、私は、個々の数字的の計数の問題は委員会でやるといたしまして、少なくとも、本日は農政の根源をもって重点的な質問をいたしたいので、簡明率直なお答えをお願い申し上げます。
 農業白書の提出は、今回をもって八回に及んでおります。すなわち、農業基本法制定後八年を経たということであります。八年という歳月は決して短いものではございません。子供なら、生まれてからもう小学校の三年生であります。にもかかわらず、今日の農政は、八年前に生まれたままの姿であり、本質的には何らの進歩も成長も見ておらないといっても過言ではないのであります。いな、むしろ混迷と苦悩を深めているのであります。そこで、この機会に、あらためて、農業基本法制定の趣旨に反して何ゆえにわが農政に進歩と前進の成果がないのか、その根本原因は一体何か、いささか所見を開陳し、また、政府の忌憚のない見解をただしてみたいのであります。
 農業基本法制定前夜の農業及び農村を見ますると、昭和二十八、九年以降の数次に及ぶ農業災害によって農業生産は停滞し、かつ、経済の高度成長期に差しかかって、農業の所得と非農業の所得とは次第にその格差を拡大し、わが農業及び農村はようやく落ち目の傾向になってきたのであります。したがいまして、欧米の先進諸国にならって、わが国においても農業基本法を制定し、小手先のそのつど行政を廃して、根本的かつ近代的な農政を展開し、近代国家にふさわしい農村を建設しようとして全国の農民が一斉に立ち上がり、政府がこれに従ったのでありました。自来、私どもは、来る年も来る年も、真に農政らしい農政の展開を期待し続けて今日に至ったのでありました。しかしながら、今次の農業白書を通読して、遺憾ながら、再び裏切られた感じをどうしてもぬぐい去ることができなかったのであります。私は率直に、総理以下閣僚諸公に、私の言わんと欲するところをお聞き願いたいと思います。
 率直に言って、あなた方はほんとうに農業及び農政というものがおわかりになっているのかどうか、私は疑うのであります。多数の役人のエネルギーを動員して書かれた、三百数十ページに及ぶところの活字と数字とが羅列されたこの報告書を手に取って、じっくりとあなた方はほんとうに御検討になったのかどうか。何ゆえに日本の国の農政がうまくいかないのか。何ゆえに農業基本法が予定する基本政策が円滑に進展しないのか。政府・与党が国政に対して真に責任感をお持ちであるとするなれば、今日の事態に対していかなる認識を持ち、いかなる手を打つべきかを十分お考えになっているのかどうか、これを私はお尋ねをしたい。
 現在、世界の奇跡といわれる経済的進歩の時代において、わが農業のみが著しい立ちおくれを示している現状について、一番心配しておられるのはほかならぬ総理大臣、佐藤さんではないかと私は思うのであります。もし、そうであるとするなれば、五ページでも一〇ページでもけっこうです、これこそ問題の真の根源であり、真の対策であるという自信のある案を率直に御提示され、すべての国民の協力を求めようとせられないのか。私どもは、今次の農業白書を受け取って、いつもながらの憤りと憂慮の情を押え得ないのであります。私は、この際、こまかい数字や説明は一切これを抜きまして、最も根本に属する問題に関し、私見を二、三示して御所見を伺っておきたいと思うのであります。
 その第一点は、農業基本法が指向する構造政策、すなわち、農業経営の拡大、自立経営農家の育成といった方針がうまく実現せず、全農家の八〇%に達するとうとうたる兼業農家の大量発生の最も大きな原因は那辺に存するかということを私はお尋ねしたいのであります。私は、その最大の原因は、主として地価並びに農地価格に対する政策がゼロにひとしいということであろうと思うのであります。坪何千円、何万円の農地を購入して、一体いかなる農業経営が成り立っていくのですか。そして、農民の側からするなれば、この擬制的な価格の農地を資産として保有し続けているのであります。この矛盾の解決策に関して、農業白書はほとんど一言も触れていないのが現実であります。私をして言わしむれば、経営の拡大に対して最も重大な側面がここにあるであろうと思うのであります。農地価格ないしは地価の上昇については、農民自体には全く責任はないのであります。農業に専心しようとする農民にとっては、全くこれはありがた迷惑なのであります。なぜそれでは地価が上がるのか。これこそ、政府・自民党の諸君が、戦後熱心に育て上げました金融資本を頂点とするところの、わが国資本主義体制の矛盾そのものに胚胎するのであろうと思うのであります。政府・与党は、まいた種はみずから刈り取らなければなりません。
 日本経済は、あたかも大型経済時代に突入したといわれております。先般来公正取引委員会は、八幡、富士両製鉄の合併を認可しようとしております。これを契機にして、空前の大型企業時代が到来しようとしております。しかるに、わが農業経営に関しては、今日なお神代ながらのままの超小型経営の姿であります。政府・与党がこれまでのように小出しの農業政策を続けている限り、効果のきわめて少ない農業保護政策を、半永久的に持続せざるを得ないと考えるものであります。農民も日本国民である限り、人間としての生きる権利を主張しています。生きる権利を要求する限り、米価の値上げを要求し、また兼業化いたします。私は、総理はじめ閣僚諸公は、このように、本来の線から飛び出して、遅々として効果のあがらない農政の現状深く思いをいたされ、この際、抜本的な施策の検討に着手せられんことを切に望みたいのであります。
 私見をもってすれば、すなわちそれは、農地に対する二重価格制度の採用以外に方法はないでありましょう。政府が、生産物たる米について二重価格制度を堅持されるおつもりがあるとするなれば、生産手段たるところの農地に対しても、二重価格制度を採用されても一向おかしくないのであります。その具体的な方法については、公債を交付することもよし、あるいは農民年金制度とかみ合わせる方法もよし、方法の細部に関しては立ち入った検討を必要とするでありましょう。まず、本件について、農林大臣の御見解を承っておきたい。
 第二の質問は、農産物価格制度のあり方及びその決定の仕組みについてであります。
 農業白書は、一方において、米価の上昇により農家の収入が増大し、農工間格差が縮小したと誇らしげに述べると同時に、他方においては、米による収入と米以外の農産物との価格の相対関係が後者にとってますます不利となり、畜産物、蔬菜等のいわゆる選択的拡大が一向に進まないと嘆いているのであります。そして、米が五百万トン余ったとか、食管の赤字が三千億円に達したとか大騒ぎをしたあげく、生産者米価、消費者米価のストップ令とか、自主流通米とか、反間苦肉の策を弄して当面を糊塗しようとされているのであります。
 そこで私は、政府に、あるいは与党にお尋ねしたい。あなた方は、一体いつまで両米価にストップをかけておくつもりなのか。また、昭和四十四年産米の生産者米価は絶対に上げないのか、あるいは上げるのか。また、自主流通米は食糧行政の切り札であるかのごとくもてはやしているわけでありますが、総生産量の一五%にも達する自主流通米制度が全く無準備のままで実施せられて、食管制度の矛盾をうまくこれによって解消ができるとお考えなのかどうなのか、そういう点を明確にお答えを願いたい。私は、いままでやられている方式というものは、いずれも苦しまぎれの小手先行政にすぎないと考えるのであります。私は、そういうことよりも大事なことは、この際根本的に、全農産物の価格体系、その決定の仕組みそのものに真剣に検討を加えるべき時期にあると考えるのであります。私は、その方法を、私ながらに簡単に示唆しておきましょう。
 全農産物を、国民の必要度、生産の事情等に応じて、国内においてあくまでも自給を必要とするところの戦略的農産物と、必ずしもそうでない、国内自給を必要としないところの非戦略的農産物に分類をいたします。そして、前者に関しては、生産費所得補償方式に需給価格を加味した方法でもって価格体系を改定して、これによって著しく物価上昇に影響のあるものについては、十年とか十五年とかを限って国から価格差補給金ないしは不足払い金を交付するものとして、しこうして、このようにして算定された価格で計画的に生産し、計画的に販売する農業協同組合に対しては、管理価格が形成できるような仕組みを案出することであります。戦略的農産物としては、牛乳あるいは豚肉、鶏卵、おもな果実、蔬菜、飼料等が該当しましょう。また、非戦略的農産物は、この際思い切って輸入の自由化をはかり、物価の引き下げに役立てるようにすべきでありましょう。多くの熱帯農産物は、国内産と競合しない限り、自由化することがよいと思います。また、自給率二〇%に低下してしまい、輸入数量五百万トンに達しております小麦その他麦類を、政府は今後一体どう取り扱うつもりなのか。麦作農家は生かさず殺さずという考え方で進められようとしておるのか、明確なお答えを願いたい。私は、むしろ非戦略農産物に編入して、麦作農家の転換を考慮すべき時期に来ていると思っておりますが、いかがでしょうか。
 以上、私が申し述べましたように、農産物価格政策を採用する以外に、ますます激化の一途をたどるところの米と米以外の農産物間の生産及び価格のアンバランスを是正して、均衡のとれた農政を展開する方法が、もしいま言った以外にあるとするなれば、農林大臣から明確に私にお教えを願いたい。
 農林大臣は、ただいま、農業経営の拡大のために農地法を改正して、借地農主義を取り入れようとしておられますが、これはすでに農民自身が、以前において、請負耕作や裏作小作の制度によってみずから解決している問題であります。政府が四十四年度において講じようとする施策のごときは、全く視野の狭い、官僚の作文行政以外の何ものでもないと私は思っております。天下の大政党をもってみずから任ずるところの自民党の諸君や、並びにこれを率いるところの佐藤総理大臣及び閣僚諸公に、率直に、私は、これをこの際忠告をしておきたいのであります。
 わが国をめぐるところの内外の情勢を、活眼を開いて観察していただきたい。日本のGNP、国民総生産は、すでに世界の第二位にのし上がったといわれております。科学技術の進歩は、月世界へ人類を送り込もうとしております。いまや原子力の時代であり、エレクトロニクスの時代であります。企業に国境はなく、ますます国際化に向かいつつあるのであります。政府は、一九七〇年を迎えるにあたり、経済の二重構造を徹底的に打開して、近代農業の創設に全力をあげて取り組まねば、百年の悔いを残すことは明らかであります。そして、われわれには、それを可能とする力があるのであります。単に、農業基本法農政とか、総合農政とか、ことばの遊戯にふけっているときではないのであります。いやしくも政治家たる者は、枝葉末節の行政に振り回される醜態はすみやかに清算をしなければならない時代であります。われわれ世代の者がなすべきときになさざるの報いは、われらの子孫にその犠牲をしわ寄せすることになるのであります。
 そこで私は、最後に佐藤総理に伺いたい。
 私が本日ここに端的に申し述べました考え方を効果的に実現するには、現行の農業基本法を改正するか、あるいはヨーロッパ諸国が採用しているがごとき農業基本法補完法の制定を必要とすると考えますが、その決意ありやなしや、明確にお答えを願いたい。
 もし、なしとするなれば、在来あなたがおっしゃっている、持論であると伝えられておる、農業の安楽死を意味するところのオール兼業化が日本の農村に実現することになります。そして佐藤内閣は、農政に対しては、歴史に残る何らの仕事をしなかった内閣になるでありましょう。佐藤内閣は、ひとり沖繩問題に限らず、農業においてもまた選択の岐路に立つものといわざるを得ないのであります。
 私は、総理の真剣な御答弁を期待して、降壇するものであります。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#21
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 中村君にお答えいたします。
 私の施政方針演説には、簡単ではありましたが、政府の農政と取り組むその決意のほどが盛られておりました。また、先ほど社会党の工藤君やまた美濃君等にもお答えをいたしましたので、その質疑応答を通じて、基本的な態度は御理解をいただきたいと思います。
 要は、国民の食生活を守り、同時に、農家の、生産者の生活の向上、それをはかっていくことが、私ども政治の目標でございます。そういう意味で、この観点に立って、低廉、豊富な食糧を供給し、そのためには自由化もまたやむを得ない。それかといって、自由化のもとで農業がつぶれるようなことがあってはならない。こういうことで、これも時期や方法について慎重でなければならないということを、先ほど美濃君にもお答えしたとおりであります。
 私は、これらのことを考えながら、ただいまの中村君の御意見を交えてのそれぞれの問題について、十分検討してみたいと思います。それぞれのものが一つの方向を示しておる、かように私は考えますが、農地の二重価格の問題にしても、簡単にこれに賛成するわけにはまいりません。しかし、御指摘になりましたように、農地、また生産物の価格等が農家の生産意欲にも非常に関係のあること、これは御指摘のとおりでありますから、それらについても十分考えてまいりたいと思います。
 また、自由化については、ただいま申しましたが、賛成だ、農業といえども自由化の方向でなければならないという、この基本的態度について、私も同じ考え方を持っておりますが、しかし、この自由化は、安易な方向でこれを行なうわけにはまいりません。それが、先ほど来私が美濃君に答えたような、慎重な態度を要する、かようなことでございます。
 また、麦類について、ただいま日本産の麦は数量的にはきわめてわずかであります。それを他に転作しろという、これなどは一つの行き方として、今回総合農政を展開していく上にはもちろん必要なことだ、かように考えます。しかしながら、やはり日本の食糧問題は、自給体制が何よりも望ましいことですから、私どもも、そういう点について特別なくふうをできるだけしてみたい、かように私は考えております。
 そこで、最後に、農業基本法を改正する意思ありやいなや、この端的なお尋ねであります。私は、ただいま重大なる転機に立っておる、その意味において総合農政を展開しよう、こういう考え方でございます。でありますから、その総合農政を展開していく上に支障を来たすような基本法であるならば、それは改正するにやぶさかではございません。しかし、私が先ほど申したように、必要な食糧の供給と農家の生活向上、これをねらった基本法でありますから、これまた簡単に結論を出すわけにはいかない、このことを申し添えておきます。(拍手)
    〔国務大臣長谷川四郎君登壇〕
#22
○国務大臣(長谷川四郎君) お答え申し上げます。
 農業基本法による農業の振興は、これは無にすることができないと私は考えます。しかし、さらに御指摘のような点も考えられますので、今後は総合農政というので、農業の基本をさらに充実させていきたい、そして御指摘のような点を十分にこの中に考慮していきたい、こういうような考え方で進めておるのでございます。したがって、最近のわが国の産業をめぐる諸情勢の変化は著しいものがありまして、米の問題はじめ種々の問題が生じております。今後も経済が相当成長していくと思われますので、他産業の従事者の所得の向上に対応して、農業所得、また、農家の生活水準を引き上げるように、大いに努力をいたしてまいります。
 そこで、今後、まず、農業生産についても、需要に見合った生産を進めなければならないし、同時にまた、農業生産をになう農家を健全なものにしなければならない。できるだけ農業で生活ができるような農家を数多く育成していって、また、兼業農家も多数農村に残っておると思うのでございまして、これら兼業農家をも含めて、機械の共同利用とか、あるいはまた生産の合理化につとめ、そして生産力が高く、環境のよい農村をつくるために、政府も懸命に努力を続けてまいるつもりでございます。
 二重価格制については、総理からもお話がございましたが、今回の農地法の改正では、農地が、より生産性の高い経営によって効率的に利用されるように措置をすることといたしているので、経営規模の拡大の方向に沿って農地の流動化が進むものと考えられるのであります。なお、二重価格制については、地価の上昇が続いている現在、制度としての合理的な条件や財政負担の面でも問題があると考えられますが、十分検討を加えてまいります。(拍手)
    ―――――――――――――
#23
○副議長(小平久雄君) 斎藤実君。
    〔斎藤実君登壇〕
#24
○斎藤実君 私は、ただいま御報告のありました昭和四十三年度農業の動向に関する年次報告及び昭和四十四年度において講じようとする農業施策に対して、公明党を代表して、総理並びに関係大臣に質問をいたしたいと思います。
 今回の農業白書は、米の生産過剰問題が取り上げられた四十二年度を中心に、わが国の農業問題を分析しており、また、四十三年度にも幾ぶん及んでいるようでありますが、一貫して評論家的無責任さに終始していると思うのであります。この白書は、本来、農業が他産業との格差是正のための生産性の向上と農家の地位の向上をはかることを目的として、政府が国民に日本農業の実態を報告すべきものであり、そしてまた同時に、農業の後進性の是正のための施策を責任を持って世に問うものでなければなりません。しかるに、過去八年間、今日まで適正なる施策の裏づけを欠いていたために、わが国農業はますます混迷の度を深めてきたのであります。したがいまして、その結果、他産業との格差は拡大の一途をたどっており、また、米作中心農政のため、畜産や畑作の生産低下を来たし、農家所得の低下と都市への人口流出等となってあらわれてきたのであります。政府は、最近になって総合農政を打ち出しました。そこには何ら具体的な施策も見当たらず、まさに、農政不在といわざるを得ません。農業施策を国家の重点施策として、真剣に取り組むべきであると思うのでありますが、総理の決意のほどを伺いたいのであります。
 農業施策は、主要農産物を自給でまかなうのか、それとも、海外からの輸入に依存するかによって、おのずと異なってくるのであります。わが党は、国民の健康を保持するため、少なくとも主要農産物は国内で自給すべきであると主張してまいりました。最近、特に政界や財界の一部の中には、農産物の自給を強化することが、あたかも経済の発展に逆行し、前近代的であり、非経済的であるかのごとく批判し、農産物を海外から安易に輸入せよと主張する声があります。しかしながら、安易に農産物を海外に求めたり、工業製品輸出の観点から、また輸出政策上さらに農産物をふやしていくことは、自給率の低下をさらに促進させ、国内産業をますます荒廃させることになります。しかも、最終消費財である農産物の輸入は、そこに何ら付加価値を生むものではありません。また、経済的にも全く非効率的なものであり、いたずらにわが国の国際収支を悪化させ、日本経済の健全なる発展に大きな支障を来たすものでないかと危惧せざるを得ません。総理並びに農林大臣は、一体、農産物の輸入と農産物自給の問題についていかなる見解をお持ちであるか、伺いたいのであります。
 また、国民に食糧を適正価格で安定的に供給することが、農業本来の使命であります。しかしながら、現実には、米は自給率一一五%と、十分に国民の需要にこたえられるようになりましたが、その反面、食生活向上に必要な小麦、大豆、果実、飼料等の自給率は低下の一途をたどっております。これは農業基本法の精神、すなわち、選択的拡大政策に逆行するものであり、基本法農政の失敗を意味するものと思うのでありますが、農林大臣の見解を伺いたいのであります。
 次に、農家所得については、前年に比べ一九・五%も上昇し、年間所得百万円を突破したと述べておりますが、その農家所得の内容を分析してみますと、農業所得四八%、兼業による農外所得五二%と、農外所得のほうが農業所得を上回っているのであります。農家所得だけでは家計費をまかないきれずに、出かせぎや兼業に収入を求め、その結果、農家所得が百万円をやっと突破したにすぎないのであります。また、農家所得の伸びは、夫婦共かせぎといった家族ぐるみの労働による面が多く、主人の収入のみにたよる都市勤労者家族の場合とは事情が異なっているのであります。政府は、このように深刻化する兼業農家の増大に対していかなる見解を持っておられるのか、また、将来どのように具体的方向づけをはかっていくのか、伺いたいのであります。
 さらに、このように見通しの悪い農業に見切りをつけ、農業者、特に若年労働者の流出が著しく、近年では年率三%近い流出率を示しております。そうして四十二年には、農業者が全国の全労働者の二〇%を下回ってしまったのであります。このように若年労働者が流出しているということは、政府のこれまでの農業施策の欠陥によるものであるといわざるを得ません。総理はいかなる対策をとられるのか、明確に御答弁をお願いしたいと思うのであります。(拍手)
 次に、酪農、畜産についてでありますが、国民の食生活向上により、必然的に酪農、畜産製品の需要は増大するものと考えられます。ところが現実には、政府の飼料政策の怠慢から、酪農、畜産の近代化がおくれ、一方においては、貿易自由化により、酪農、畜産製品の輸入が増大し、いよいよ国内の酪農、畜産業は経営困難となってまいりました。政府は早急に飼料政策を真剣に考えるときが来ていると思うのであります。したがって、わが党は、その飼料対策の一環として、山岳酪農、畜産経営の推進を主張してまいりました。政府は、飼料源として山地の活用を積極的に推進し、もって酪農振興のために力を入れるべきであると思うのでありますが、農林大臣の見解をお伺いいたします。
 今回の白書は、食管制度の危機について初めて明らかにしております。その内容を見てみますと、いたずらに問題点の羅列に終始しております。具体的な政策については何ら明確にされておりません。いま問題になっている自主流通米の問題、貯蔵の問題、さらに、米価算定方式の問題や、作付転換の問題について、あらためてここで政府の見解をお伺いいたします。
 さらに、政府は四十四年産米の生産者米価は据え置く方針のようであります。しかし、相次ぐ諸物価の上昇で、国民生活は日々に困窮しているおりから、一方的に生産者米価の据え置きの方針を明らかにすることは、生産者の所得と再生産を確保するという食管法第三条の精神に反すると思うのであります。さらに、米価審議会に諮問する前に、政府がこのようなことを決定し発表することは、米価審議会を無視したものといわざるを得ません。これらの点について、農林大臣並びに大蔵大臣の見解をお伺いいたします。
 次に、政府は今国会に農地法の改正法案を提出いたしました。戦後二十数年過ぎて、農村事情も大きく変化をしてまいりました今日、現状に即して、農業近代化の方向に農地法を改正すべきであります。しかしながら、政府の改正案で、はたしていかほどの農地の流動化、農業近代化が促進されると見込んでおられるのか、農林大臣の見解をお尋ねいたします。
 また、農業委員会に対し、小作料の紛争調停や減額勧告等、大きな権限を与えられることになりますが、政府は、この調停などスムーズに運営されるためには、農業委員会にどのような行政指導を行なうのか、具体的にお示しをいただきたいのであります。
 最後に、農業者年金についてであります。総理は、前回の総選挙の際、その実現を農業者に公約いたしましたが、三年たった今日、いまだに実現をしておりません。政府は一体農業者年金を実現する意思があるのかどうか、もし実現する意思があるのであれば、いつ実現するのか、明確にお答えをいただきたいと思うのであります。
 以上、基本的な問題について御質問いたしましたが、政府の具体的な答弁を期待して、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#25
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 農政に対する基本的な態度は、いままでの各党からの質問に対して、私答えてまいりましたので、この際に、また重ねてお答えはいたしませんが、とにかく、昔からいわれておりますように、農は国本と、かように申しております。国のもとだ、かように考えて、私は農政と取り組む決意でございますから、その点で誤解のないようにお願いしておきます。
 まず、兼業所得というものについてのいろいろのお話がありました。お尋ねどおりの順でお答えするわけでもありませんので、あるいは順は狂っているかと思いますが、お聞き取りをいただきたいと思います。
 本来の農業の繁栄ではないではないか、兼業所得の場合は、兼業のほうが主じゃないか、こういうような御意見があったと思います。私は、必ずしもそうだとは考えておりません。いま平均農家収入が百三万円だといわれております。そうして、農業収入は、そのうちの五十一万円、兼業収入は五十二万円。大体半々だという状態だと思います。さように御理解をいただきたい。
 兼業農家につきましての考え方は、これは工藤君にも私がお答えいたしましたとおりであります。日本農業から零細性が払拭されない限り、あるいはまた、農村自体の都市化なり、農村と都会の接点の拡大が続く限りは、むしろ必然的なことではないかと、かように私は考えております。もちろん、いま申しましたように、必然的なものだといっても、農政の基本は、何といっても自立経営農家の育成にあることを忘れているものではありません。この点は、あらためて申し上げるまでもございません。
 そこで、農家の後継者がなくなるではないか、この問題等、真剣に考えなければならないというお話であります。先ほどちょっと一言触れたのでありますが、農業高等学校が、後継者育成の意味におきまして、たいへん役立っております。最近の卒業生の就農率、これまた高いものがありますので、たいへん御心配はいただいておりますし、また私も心配はしておりますが、現在の傾向では、ただいま安定しておる方向ではないかと思います。
 また、農産物の自給と輸入の問題についてのお尋ねでありましたが、基本的には、お話にありましたように、大事な食糧はなるべく国内でまかなうことが望ましいと考えております。これは、先ほど中村君にも答えたとおりであります。しかしながら、物理的に生産のできないものだとか、あるいはコスト上問題にならないものなどは、これは輸入せざるを得ない。このほか、貿易上の要請も、現実の問題としては無視するわけにはまいりません。また、当面、国内の物価対策上、輸入の弾力的な運用も必要かと考えます。生産者に対する保護は保護、消費者に対する物価の維持、これまた私ども国民に対して果たさなければならない二つの重要な課題でございます。要は、農業自体、構造改善を推し進めて、国際競争力を増して、自給できるものはできるだけ自給していくということだと、かように考えております。
 次に、最後に、農民年金の問題についてお答えをいたします。
 現在、国民年金審議会で具体的な検討が進められており、政府としては、国民年金の改善との関係を考慮しつつ、四十五年度実施を目途として、ての実現を考えておる次第であります。はっきり即し上げておきます。(拍手)
    〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#26
○国務大臣(福田赳夫君) お答えいたします。
 生産者米価据え置きについての御質問でございますが、私ども国民は、戦時中また戦後、食糧事情の非常に苦しいときに、農民が汗とあぶらでわれわれをつないだ、これに深く感謝しなければならぬと思います。しかしながら、同時に、事情が非常に変わってきた。このわれわれが感謝しなければならない農民の願いは何であるかというと、これは食管制度を維持してもらいたいのだ。そこにあると思うのです。しかし、この事情の変化によりまして、食管がいまのままでは、その維持が非常にむずかしくなってきております。需給がゆるんできて、もう古米、古々米というような問題が起こる、あるいは食管会計における赤字が累積して、財政を非常に圧迫するという大きな問題も起きておるのであります。そういう問題を考えますと、農民の願いとするところの食管制度の維持をどうするか、そうすると、それらの問題を解決していかなければならない。つまり、この需給の事情の変化に応じまして、米価の問題、価格の問題につきましても、また集荷配給の問題にいたしましても、改善、手当てをしないと、この制度が動かなくなる。そういう角度から、生産者米価の据え置き、また自主流通米というもの、そういうことを考えておる次第でございます。食管制度といえども、この自然の経済法則に反してとれが維持できるはずがないので、需給事情の変化、そういうものには適切、着実に弾力的に適応していく、そこにこそ、食管制度を維持し得る基盤ができていく、かように考えるのであります。
 今度生産者米価を据え置くとか、あるいは自主流通米制度を採用するとか、そういう方向をとりながら、食管制度の目的を貫徹していきたい、かように考えているのであります。したがいまして、自主流通米、この制度を採用いたしますのは赤字解消、それがねらいじゃないのであって、食管制度を維持する、そのための改正でございます。しかし、結果において、赤字の解消にもなり、まことにけっこうなことである、さように考えております。
 また、自主流通米の制度を採用いたしまするが、政府の無制限買い入れの方針は、これは微動だもするものではございません。食管制度がくずれる原因にはなるものではございませんから、これも御安心を願いたいと思います。(拍手)
    〔国務大臣長谷川四郎君登壇〕
#27
○国務大臣(長谷川四郎君) 中村時雄先生に、先ほどの私の答弁の中で一つ漏れがありましたので、申しわけございませんでした。
 白書の構成がマンネリズムではないか、もっと簡単にしろ、そして農民が指針を得られるようにしろ、こういうお説でございましたので、いわゆる農業白書は、農業の当面する重要問題の分析に重点を置いて、できるだけ簡単に取りまとめたつもりでありますが、今後は、さらにお説のように、できるだけ簡単にして、まず農業経営の今後の進路の判断の材料にする、こういうような考え方で白書を提出いたしたいと考えております。
 斎藤さんにお答え申し上げます。
 農業生産は国民消費の実態に即して行なうことが基本であることは、御承知のとおりでございまして、すべての農産物について自給することはなかなか困難なので、政府としては、米について完全な自給を行ない、またさらに、野菜とか果実、畜産物、これらについても、ほんとうに自給に近い程度の生産をあげるような努力を今後も大いにする考えでございまして、日本農業のように零細集約的農業においては、大豆、トウモロコシの増産をはかることは、農業所得の面からも非常に困難だろうと考えますので、今後もこれらのものについては、相当輸入にたよらざるを得ない状況であることも御了承願いたいと思うのであります。
 酪農品について申し上げますが、畜産物の需要は今後とも増大することが見込まれます。これに対応して、畜産経営の合理化、畜産物の安定的供給をはかるためには、まず、総合的に畜産振興の施策を実施することが必要であろうと考えるのでありまして、特に畜産の生産基盤として必要不可欠な飼料基盤の拡充についても、草地の造成改良を計画的かつ積極的に推進するとともに、既耕地における飼料作物の作付増大の促進をはかることといたしておるのでございます。
 四十四年産米の米価の算定を具体的にどういうようにというお話でございますが、四十四年産米価の算定を具体的にいたしますのは今後の段階で、まだ、いまこれを申し上げるというわけにはまいりません。けれども、いずれにせよ、生産費及び所得補償の考え方に立って算定するつもりでございます。
 また、自主流通米の構想は、消費者の選択に応じて、米の生産、消費の増大をはかることをねらいといたしまして、食糧管理の立場からする行政的な規制のもとに、政府はこれを通さない米の流通の道を開くものであって、食管法違反とはならないのみならず、食管制度の根幹を維持するという方針には反していないと考えております。
 貯蔵につきましては、最近における米の在庫の増大に伴いまして、収容力の確保及び品質の保持対策が急務であることは、御承知のとおりでありまして、前年に引き続きまして、四十四年度におきましても、約五十万トンの長期保管倉庫を建設するために、また約七十億の融資をすることにいたしておるのであります。なお、これらに対するコーティングや水中の貯蔵方法とか、これらの問題につきましても、大いに研究を進めておるところでございます。
 さきに公表した今後の農業技術の展望と、こういうお話でございますが、今後の農業技術の展望は、今後の農業技術の開発、普及、長期的見通しを示すために作成したものであって、したがって、そこに示された稲作の規模は、あくまで機械による合理的な作業規模であって、個別経営でも共同経営でもよいのでありまして、それが個々の農家の経営規模を意味するものではないから、直接離農の問題とは結びつくことは考えられないと思うのであります。
 農地法の問題でございますが、今回の農地法の改正では、賃貸借の規制や小作地の所有限度をゆるめることとしており、これにより、農業から離れていこうとする農家が農地を貸すことも容易になり、経営規模の拡大の方向に沿って、農地の流動化が相当に進むものだと考えておるのでございます。
 農業委員会に対しましては、農業委員会の果たす役割りはきわめて重要であると考えまして、政府としては、農業委員会の委員、職員等の研究あるいは指導を一そう強化して、農業委員会の事務の適正かつ円滑な処理ができるように、大いに努力をする考えでございます。(拍手)
#28
○副議長(小平久雄君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#29
○副議長(小平久雄君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時五分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        大 蔵 大 臣 福田 赳夫君
        厚 生 大 臣 斎藤  昇君
        農 林 大 臣 長谷川四郎君
        建 設 大 臣 坪川 信三君
        自 治 大 臣 野田 武夫君
        国 務 大 臣 菅野和太郎君
 出席政府委員
        内閣法制局第二
        部長      田中 康民君
ソース: 国立国会図書館
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