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#1
第061回国会 本会議 第14号
昭和四十四年三月十四日(金曜日)
    ―――――――――――――
  昭和四十四年三月十四日
   午後二時 本会議
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 国土総合開発審議会委員の選挙
 東北開発審議会委員の選挙
 奄美群島振興特別措置法の一部を改正する法律
  案(内閣提出)
 宇宙開発事業団法案(内閣提出)の趣旨説明及び
  質疑
 国税通則法の一部を改正する法律案(内閣提出)
  及び国税審判法案(横山利秋君外十二名提出)
  の趣旨説明及び質疑
   午後二時九分開議
#2
○議長(石井光次郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国土総合開発審議会委員の選挙
 東北開発審議会委員の選挙
#3
○議長(石井光次郎君) 国土総合開発審議会委員及び東北開発審議会委員の選挙を行ないます。
#4
○西岡武夫君 国土総合開発審議会委員外一委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。
#5
○議長(石井光次郎君) 西岡武夫君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(石井光次郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 議長は、国土総合開発審議会委員に
      森下 國雄君    福岡 義登君
      玉置 一徳君を指名し、
 東北開発審議会委員に
      千葉 佳男君を指名いたします。
     ――――◇―――――
 奄美群島振興特別措置法の一部を改正する法
  律案(内閣提出)
#7
○西岡武夫君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。
 すなわち、この際、内閣提出、奄美群島振興特別措置法の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
#8
○議長(石井光次郎君) 西岡武夫君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#9
○議長(石井光次郎君) 御異議なしと認めます。
 奄美群島振興特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
#10
○議長(石井光次郎君) 委員長の報告を求めます。地方行政委員長鹿野彦吉君。
    ―――――――――――――
    〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔鹿野彦吉君登壇〕
#11
○鹿野彦吉君 ただいま議題となりました奄美群島振興特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、地方行政委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案は、奄美群島経済の自立的発展の基礎を確立し、群島民の福祉の向上を期するため、奄美群島振興計画の実施期間を現在の五カ年から十カ年に延長し、引き続き群島について特別の措置を講じようとするものであります。
 本案は、二月十八日本委員会に付託され、三月四日野田自治大臣より提案理由の説明を聴取した後、慎重に審査を行なったのであります。
 本日、本案に対する質疑を終了し、討論もなく、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、本案に対し、自由民主党、日本社会党、民主社会党及び公明党の四党共同提案により、群島民と鹿児島県民との所得の格差を解消することを目途として、積極的な施策を講ずることなどを内容とする附帯決議を付することに決した次第でございます。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#12
○議長(石井光次郎君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#13
○議長(石井光次郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 宇宙開発事業団法案(内閣提出)の趣旨説明
#14
○議長(石井光次郎君) 内閣提出、宇宙開発事業団法案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣木内四郎君。
    〔国務大臣木内四郎君登壇〕
#15
○国務大臣(木内四郎君) 宇宙開発事業団法案について、その趣旨を御説明いたします。
 宇宙開発は、通信、気象、航行、測地等の各分野において国民生活に画期的な利益をもたらすとともに、関連する諸分野の科学技術の水準を向上させ、新技術の開発を推進する原動力となるものであります。先進諸国におきましては、この宇宙開発の重要性に着目し、開発体制を整備し、具体的な開発目標を定め、国家的事業としてその積極的な推進をはかっており、その成果には刮目すべきものがあります。
 このような情勢にかんがみまして、わが国においても、宇宙開発の本格的な推進とそのための体制の整備が各方面から強く要請されるに至り、その体制整備の一環といたしまして、まず、昨年五月、国の宇宙開発を計画的かつ総合的に推進するため、その重要事項について企画、審議、決定する宇宙開発委員会が設置されました。
 現在、わが国の宇宙開発は、宇宙開発委員会の昨年十一月の決定に沿って、昭和四十六年に電離層観測衛星を、昭和四十八年度に実験用静止通信衛星を打ち上げることを目標に進められておりますが、この目標を達成するためには、多岐にわたるきわめて高度な技術を駆使するとともに、短期間に多額の資金を投入することが必要でありまして、これは国の総力を結集して行なうべき大事業であります。
 これを成功させるためには、政府はもちろん、学界、産業界から広くすぐれた人材を結集するとともに、弾力的な事業運営を行なうことが必要であり、このために、中核的な開発実施機関として、新たに特殊法人宇宙開発事業団を設立し、宇宙開発を総合的、計画的かつ効率的に実施しようとするものであります。
 この事業団は、現在の科学技術庁宇宙開発推進本部を発展的に解消いたしまして、その業務と組織を引き継ぎ、これに加えて、従来郵政省電波研究所で行なっておりました電離層観測衛星の開発関係部門を移管させることとし、また将来、開発実施体制の一元化をさらに推進し得るような仕組みといたしております。
 次に、この法律案の要旨を御説明申し上げます。
 まず第一に、この事業団は、人工衛星及び人工衛星打ち上げ用ロケットの開発、打ち上げ及び追跡を総合的、計画的かつ効率的に行ない、宇宙の開発及び利用の促進に寄与することを目的として設立されるものであります。
 第二に、事業団の資本金は、設立に際して政府が出資する五億円、科学技術庁宇宙開発推進本部及び郵政省電波研究所から承継する特定の財産の価額並びに民間からの出資額の合計額でありまして、このほか、将来、必要に応じて資本金を増加することができるようにいたしております。
 第三に、事業団の機構につきましては、役員として、理事長一人、副理事長一人、理事五人以内及び監事二人以内を置くほか、非常勤理事及び顧問の制度を設けまして、関係各界の参加を得て、その協力体制の確立をはかることといたしております。
 第四に、事業団の業務といたしましては、みずからまたは委託に応じ、人工衛星及び人工衛星打ち上げ用ロケットの開発、打ち上げ及び追跡を行なうことといたしております。
 なお、事業団がその業務を行なうにあたっては、主務大臣の認可を受けて定める基準に従ってその業務の一部を民間機関等に委託することができることといたしております。
 また、事業団の業務の運営につきましては、宇宙開発委員会の議決を経て内閣総理大臣が定める宇宙開発に関する基本計画に従ってその業務を行なうことといたしております。
 第五に、事業団の監督は、主務大臣がこれを行なうこととしておりますが、主務大臣は、内閣総理大臣及び郵政大臣のほか、将来、政令でこれを追加し得るようにして一元化の進展に応ずることといたしております。
 第六に、事業団は、その設立の際に、科学技術庁宇宙開発推進本部の廃止及び郵政省電波研究所の業務の一部の移行に伴う権利義務の承継を行なうことといたしております。
 その他、財務及び会計等につきましては、他の特殊法人とほぼ同様の規定を設けております。
 以上が宇宙開発事業団法案の趣旨でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
 宇宙開発事業団法案(内閣提出)の趣旨説明に
  対する質疑
#16
○議長(石井光次郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。松前重義君。
    〔松前重義君登壇〕
#17
○松前重義君 私は、ただいま提案されました宇宙開発事業団法案に対しまして、日本社会党、民主社会党、公明党の三党を代表いたしまして、内閣総理大臣、大蔵大臣、科学技術庁長官、文部大臣、通産大臣、郵政大臣に対しまして、ここに若干の質問を試みたいと存じます。同時にまた、これに関連いたします総合科学技術の振興に関して、質問を行ないたいと思うのであります。
 宇宙の開発は、アメリカやソ連において着々その成果をおさめておることは、御承知のとおりであります。人工衛星あるいはまたアポロ七号、八号、九号等、相次いで打ち上げられておるこれらの人工衛星の成果は、皆さま方御承知のとおりでありまするが、今日まで人類が不可能と考えておりましたことが、科学技術の成果として、その可能性を具体的に証明するに至ったのであります。ここにおきまして、政府はようやくみこしを上げて、宇宙開発事業団法案を本国会に提案いたしたのでありまするが、わが国が、今日その宇宙開発に関しまする科学技術において著しいおくれをとっておることは、まことに遺憾千万であるといわなければなりません。このことは、今日までの政府がいかに科学技術を軽視したかを物語るものでありまして、ここにきびしい反省を促すものであります。(拍手)
 さて、ここにようやく宇宙開発事業団なる法案の提出を見たのでありまするが、私はまず、政府の目ざす宇宙開発の目的がいずこにあるか、総理大臣並びに所管大臣の御答弁を願いたいと存ずるのであります。
 まず、宇宙開発に関しましては、国際間の取りきめにおきまして、その目的を平和の目的に限定しております。しかし、宇宙開発の科学技術的な実績は、それが平和の目的のみに限定されるといえども、どことなく潜在的な軍事的圧力を感ぜしめるものがあります。それは、その技術は直ちに軍事目的に転換し得るからであります。そこで、幾ら国際的取りきめが平和の目的のためと言っておりましても、わが国の宇宙開発は、わが国として自主的に、これが平和と公開と自主と、この三つの原則を確立する必要があるのであります。(拍手)
 そこで、私は佐藤総理にお伺いしたいのでありまするが、今後早急に右の三原則を基調といたしまする宇宙開発基本法を国会に提案し、わが国としてあらためて平和利用に徹することを確約することができますかどうか、お伺いを申し上げたいと存じます。(拍手)かつて、私ども超党派の有志が、科学技術振興に関しまする行政機関を確立いたしたいと考え、科学技術庁の設置をはじめとする一連の法案とともに、平和と自主と公開の原則の上に立つ原子力基本法案を原子力研究所設置法案と一緒に提出いたしたのでありまして、したがって、国民が安心して原子力の平和利用のための研究に協力し得るようにいたしたのであります。ここにわれわれは、あらためて、宇宙開発に関しまして、平和と公開と自主の三原則を基幹といたしまする宇宙開発基本法案をすみやかに提出する御意思がありますかどうか、お伺いしたいのであります。
 宇宙開発が平和の目的に限定されまするといえども、その目的は多種多様でございます。すなわち、それは電波の中継による地上のすべての地域にわたる通信連絡用の衛星あるいは気象観測の衛星、その他測地あるいはまた航行等、多方面にわたる宇宙の科学的調査等に対してでありまするが、最近、通信衛星においてインテルサットという通信衛星による電波中継の国際的事業体が組織されたのであります。これは世界通信の根幹をなす重要なる機関であります。この事業体の株式配分は、アメリカが五三%でありまして、他の国々は数%にすぎないのでございます。この株式保有量よりいたしますれば、アリメカの独占的性格を持つものであるのであります。しからば、わが国は、このアメリカの独占的性格を持つインテルサットに対しまして、どのような態度をもって臨もうとされるのか、伺いたいのであります。
 また、宇宙開発事業団の研究の成果は、この事業団に奉仕する目的のためであるかどうか、それとも、アジアにおける地域衛星の権利を保留し、その開発のためのものでありまするか、また、政府は、この事業団によりアジアの地域衛星による通信網の実現を目的としておるのであるかどうか、郵政大臣より御答弁をお願いしたいと存ずる次第であります。
 なお、以上の諸問題を含みまする宇宙開発国際協定に対するわが国の基本的態度につきまして、外務大臣の御見解をあわせて伺いたいと存じます。
 宇宙開発に関しまする科学技術は、一般科学技術の総合化したものでございます。よって、私は、ここに総合科学技術の振興に関するもろもろの政策について伺いたいと存じます。
 総合科学技術の振興にあたりましては、まず、科学技術基本法の制定を先決といたします。基本法の制定により科学技術振興の安定した不動の軌道をつくり、その軌道の上を計画的に強力に推進しなければなりません。ところがこの基本法は、今日に至るもなお成立を見ないで低迷を続けております。今日、科学技術振興の急務なるにかんがみまして、まことに遺憾にたえない次第であります。聞くところによりますると、この低迷の原因は、政府部内の不一致によるとのことでありまして、文部省及び科学技術庁等の間の調整が不十分である、そのためにこの基本法の制定に対しまして非常なおくれを見つつあるということでございまするが、これらの調整に対し、総理大臣並びに文部大臣、科学技術庁長官は、今後どのような処置をとられようとするのでありまするか、伺いたいと存じます。(拍手)
 科学技術政策のごときは、国家永遠のいしずえを築くものでありまして、政党を越えて、明日の歴史に備うべきものであることは言うまでもございません。前にも述べましたように、かつて科学技術庁を設置いたしましたそのときには、完全な超党派的協力をもってこれが実現に努力したのでありまするが、最近においては、政府部内の不一致のせいか、自民党案を強引に提案することのために超党派的性格を失いつつあるごときその傾向は、まことに遺憾のきわみであります。(拍手)政府部内の調整と超党派によってすみやかに科学技術基本法を制定し、科学技術の安定せる軌道を確立する意図がありますかどうか、総理大臣の御見解を伺いたいと存じます。
 次いで、科学技術振興に必要な予算についてお伺いいたします。
 わが国の科学技術振興に関しまする予算は、一九六六年度におきまして、フランスの三・五分の一、ドイツの五・四分の一、イギリスの四分の一、アメリカと比較しますると、まるでお話にならないような比率であります。すなわち、これら先進国にはるかに劣っておるのであります。ある人は言うでありましょう。科学技術研究の費用は少なくても、日本の経済力は自由圏第二位になったではないか。なるほど日本の経済は成長いたしました。しかし、それは高度の技術の製品の生産によるにあらずして、それは労働者の低賃金のゆえであります。したがって、日本の経済成長は、国民大衆の犠牲の上に今日を迎えたものであって、頭脳的、技術的優位のためのものではない。そのことを正しく反省しなければならないのであります。(拍手)
 私は、大蔵大臣に伺いたい。経済の高度成長が科学技術の高度化の上に築かれるとするならば、日本の国民生活の向上は期して待つべきものがあると思われます。よって、今日の貧弱な科学技術研究予算を大幅に増大し、たくましい高度の生産国家を確立する意図があるかどうか、お伺いしたいと存じます。
 次に、科学技術行政機構についてお伺いいたします。
 いまや、世界はあげて科学技術の振興と生産力による経済力の培養に全力を注いでおります。しこうして、これに伴いまする行政機構を確立いたしまして、たくましい努力を払っております。英国のウィルソン首相は、労働党首就任に際しまして、英国の下り坂を阻止し、これを上り坂に向かわしめるものは、まさに科学技術の振興にある、そうして、科学技術者の養成とこれがアメリカへの流出を防ぐことにあるとの異色の演説によりまして、彼は内閣を組織するに至りました。そして、新たに科学教育省、技術省、これらを設置いたしまして、強力なる科学技術振興の政策を推進しつつあります。その他の国々も、争って行政機構の強化によって新時代に即応せんとしておるのであります。これに比べまして、わが国は、十数年前にようやく生まれた科学技術庁が、いまなお科学技術行政の中心となっておるのでありまするが、これを科学技術省として、強力な研究体制の整備拡充を企図する御意思があるかどうか、総理大臣にお伺いしたいと存じます。
 次に、経済の発展に伴う特許制度とその政策について、通産大臣にお伺いいたします。
 世界平和が続くにつれまして、世界の経済競争はますます激しくなったのであります。その国の科学技術のレベルが高いか低いかによって、国際競争の勝敗がきまるのであります。そこに工業所有権に関する特許制度の重要性があります。わが国の工業技術は、いまだに外国依存を脱しておりません。日本の企業家が外国に支払っておりまする特許料、すなわちロイアルティーは、年間約二億ドル前後でありまして、日本からの技術輸出により外国より受け入れるロイアルティーは、わずかにその八%にすぎないのであります。しかも、外国の特許権を使用するとき、このロイアルティーのほかに、わが国において生産されたる製品の市場を制限されるのであります。すなわち、外国の特許を使用して生産いたしまするとき、その生産品は日本のみが市場であって、これを外国に輸出することを禁ぜられるのが普通であります。これでは、国際収支の改善にならないばかりでありませんで、かえって外貨の流出を来たすのみであります。これは、科学技術の高度化が経済発展の基礎であることを証明するものであります。特許政策の重要性はここにあります。日本においては、外国の特許出願が潮のように攻め寄せてきております。日本の特許庁が、もしもその人員不足と事務繁忙のため、外国特許の審査に手抜かりがあるといたしますれば、日本の産業に大きな影響を及ぼすものであります。現在、特許庁に特許を出願してから、その審査に四年の日子を要するとのことであります。これでは、特許による外国産業の日本侵略に対抗することはできないのであります。通産大臣は、この特許問題、特に外国の特許侵略について、いかなる特許庁拡充強化の方策をお持ちでありますか、伺いたいのであります。(拍手)
 次に、海洋科学技術の開発について伺います。
 今日、宇宙の開発とともに最も重要なる課題は、海洋の開発であります。四面海をもってめぐらす日本としては、日本経済の発展の方向を海洋に求むべきでありまして、そのことは、宇宙開発もさることながら、最も手近な日本に与えられた恩恵であります。さればこそ列国は、争うて海洋の開発に必要なる科学技術の研究に乗り出し、米ソのごときは、太平洋はもとより、世界の七つの海洋、特に海底の調査を行ないつつあります。一九六一年の正月、米国大統領ケネディは、その年頭教書におきまして、米国の今年の最大の基幹政策は海洋の開発と国防とであると発表いたしました。次いで彼は、ソ連首相フルシチョフとの間に、海水の淡水化の共同研究なる協定を結びました。いまや、日本の近海も、ソ連やアメリカの調査船によってほとんど調査され、知らぬは日本ばかりなりけりであります。
 これに比しまして、わが国の情勢はどうでありますか。先年、文部省におきまして、ユネスコによりまするインド洋学術調査の協力費が不成立に終わりまして、まさにインド洋に対するわが国の発言権を喪失せんとしたとき、海洋学会長日高博士は、私にこの国際協力脱落の不利益を訴えられたのでありました。私は、当時科学技術庁長官であった三木武夫氏に連絡して、科学技術庁より文部省に対し、特別研究促進調整費一億円を移譲いたしまして、かろうじて日本の発言権を継続したことを思い起こします。すなわち、このことは、いかに日本の政府が世界の実情と海洋に無知であるかを示すものであります。このようにして、今年度の科学技術庁の海洋開発に関する予算はわずかに三億四千万円にすぎないのでありまして、私事を申し上げてまことに恐縮でありますが、私の大学の海洋調査の研究費よりはるかに少ないのであります。(拍手)
 海洋の開発のいろいろな問題といたしまして、海底資源の開発、水産資源の開発、海水の淡水化、海洋エネルギーの開発、海底原子力発電所の開発、海洋土木技術、大船舶あるいは海中潜航船等の開発によりまして、無限の経済力を海洋より獲得し得るのであります。これらの海洋科学技術の振興に関し、今年度予算の示すようなスズメの涙程度で、これらのもろもろの研究開発により日本の経済力を伸ばし得るとお考えになりますか、科学技術庁長官の御所見を伺いたいと存じます。
 海洋開発に関しまする日本の行政は各省ばらばらでありまして、政府としての一定の総合的方針なき状態であります。すなわち、農林省、通産省、運輸省、科学技術庁、文部省、外務省等々、それぞれの連絡もなく、そこに何らの調整も行なわれない状態であります。ここに、海洋開発の基本的方策の確立と、これを強力に推進し、海外に対抗する必要があると考えられまするが、総理大臣の御所見を承りたいと存じます。
 このようにいたしまして、海洋科学技術の発達に伴い、海洋の科学的調査を米ソ等により急速に進展を見るに至ったのでありまするが、いまや、海洋に領土権ならざる権益を主張するに至り、ついには領土権にまで及ぶ可能性さえあるのでありまして、漁業に関する国際条約のほかに、資源に関する条約等に今日において備えておかなければならないと思うのでありまするが、外務省におきましては、これに対する準備がおありでありまするかどうか、外務大臣より承りたいと存じます。
 その次に、科学技術振興と科学技術教育計画についてお伺いいたします。
 科学技術教育の振興は、科学技術振興の母であります。経済の発展が科学技術力によることは言うまでもありませんが、科学技術教育は経済発展のいしずえであります。さればこそ、各国は争って科学技術教育の拡充に全力を注ぎまするとともに、それぞれ人材養成のために必要な教育計画を樹立して、鋭意これが実現に努力しつつあるのであります。すなわち、これらの計画は、高等教育、一般教育における理科系、文科系の養成人員の比率の設定の問題であります。そうして、各国の大学教育における比率は次のようであります。ソ連におきましては、文科系は三割五分、理科系は六割五分、英国におきましては、文科系が五割以下、理科系が五割以上、フランスにおきましては、文科系は四割七分、理科系は五割三分、いずれも理科系の人数を多くいたしておるのでありまするが、これに対しまして日本は、文科系七割五分、理科系二割五分、はるかに理科系は少ないのであります。後進国家におきましては、理科系の教育はほとんど少なくて、大部分が文科系であります。この意味におきまして、日本は先進国であるといばっているわけにはまいらないのであります。文明国家の建設には、一定の教育政策に基づく教育計画がなければなりません。日本の現状は、全く場当たりの無方針の教育体制であるといっても過言ではないと思います。文部大臣は、日本の明日の未来像にふさわしい教育計画を樹立し、二十一世紀に向かう人づくりの高らかな目標を持った教育計画を樹立する御意図があるかどうか、伺いたいと存じます。
 以上、私は、宇宙開発、総合科学技術振興、海洋科学技術の振興、科学技術教育計画等につきまして、それぞれ総理大臣並びに所管の大臣にお尋ねを申し上げましたが、今日、科学技術の進歩の急速な足取りを見まするときに、一日もゆるがせにすることのできないことを痛感するものであります。過去において、科学や技術は難解なものとしてこれを神だなに祭り上げ、ごみだらけにしてほうり出されたことがあるのであります。そうして、今日もなおその傾向は継続されておると見なければなりません。かつて大正時代には、郵便の封書は三銭でありました。それが今日では十五円となりました。同じ時代に、電話の度数料金は同じく三銭でありましたが、今日では七円となりました。かつて同じ三銭であったものが、封書は十五円となり、電話は七円でとまっております。電話は封書の半分以下にとどまっておるのであります。これは電話技術の革新による電話の多重化等による技術研究のもたらした結果であります。物価の問題に対しましてもこのような影響を及ぼしておる科学技術の研究に関しまして、今日われわれは、重大なる関心を持って進んでいかなければならないと思うのであります。今日のごとき計画性がなく、しかも貧弱な研究体制によっては、とうてい加速度的に進みつつある世界の進歩に即応することは困難であります。
 科学技術は、このようにいたしまして長期的な計画を持って進まなければなりません。今日の場当たりのこう薬ばりの政策は、人々に希望どころか失望を与えます。大学の混乱も、今日の政治に責任なしとはいえないのであります。二十一世紀の格調高い未来像を打ち立てまして、これに向かって一路邁進する経路と計画を明らかに示し、国民に輝かしい希望を与えてほしいものであります。各閣僚におかれましては、国民の前に率直に御所信のほどを御披瀝願いたいと存じます。
 以上、私の質問を終わる次第であります。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#18
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 松前君が三党を代表して質問された各項目につきまして、私から二、三の点についてお答えし、その他はそれぞれ所管大臣からお答えすることにいたしたいと思います。
 まず第一は、宇宙開発はわが国としても強力に推進してまいる考えでございますが、その推進にあたっては、従来たびたび明言しておりますとおり、平和目的に徹してこれを行なう所存であります。このように宇宙開発を平和目的に徹して行なうにあたっては、松前君が御指摘のとおり、原子力の場合と同様の三原則に立ち、その原則を含む宇宙開発基本法を制定すべきであるとの考え方には、私も基本的には同感であります。ただし、基本法制定にあたりましては、世界における宇宙開発の動向等も十分見きわめた上で論じなければならない点も多々あると思われますので、党派を越えた議論が十分尽くされた上、わが国将来の宇宙開発の基本を定めるものとしてまことにふさわしい、りっぱな基本法ができるよう努力してまいる考えでございます。
 次に、松前君御指摘のとおり、科学技術の問題につきましては、超党派的で事が運ばれることが最も望ましく、従来もこの方針で進んできた結果、科学技術の振興の実もあがっていると思うのであります。今後とも、この考え方を変えるつもりはございません。一そう各党協力いたしまして、科学技術の前進に寄与したい、かように思います。
 次に、科学技術の振興につきましては、予算面で従来から特段の配意を加えてまいりましたが、四十四年度予算におきましても、動力炉、宇宙、海洋及び大型工業技術の開発等を中心に科学技術振興費の飛躍的増額をはかっており、前年度に比べ約二五%増に及ぶ九百十七億円を計上しております。もちろん、以上をもちまして十分だというわけではありません。政府の努力のあとをただいま御披露して、御理解を得た次第であります。われわれは、ビッグサイエンスの時代に対応して、一そうこの上とも積極的な努力をしなければならない、かように思います。
 さらに、体制強化についての御指摘の点でありますが、松前君も十分御承知のとおり、わが国では関係省庁がそれぞれ分担をして科学技術の振興をはかり、科学技術庁がこれらの総合調整を行なう体制をとっておりますが、総合調整機関としては、総理府の外局という現在の形態が適切であると、かように考えております。
 なお、御指摘の体制強化につきましては、これをもって足れりとするわけでもありませんし、今後とも、なお一そう注意して努力してまいりたいと、かように考えております。
 次に、海洋開発の問題でありますが、わが国にとりまして最も必要な資源、エネルギー等を確保するためには、わが国を取り巻く海洋における豊富な資源やエネルギーの開発利用、これをはかることが今後ますます重要になると考えております。このため、政府においても、従来から関係省庁において鉱物資源、生物資源等の開発のための調査研究を進めてまいっておりますが、近年、先進諸国におきましては、御指摘にもありましたように、広範かつ先端的な科学技術の粋を集めた、いわゆる海洋工学を駆使して大規模な海洋開発に乗り出しており、わが国としても、このような海洋開発技術の総合的、計画的な開発をはかって、海洋の本格的な開発利用と取り組んでまいる考えでございます。
 以上、お答えいたしまして、他はそれぞれ所管大臣に譲ることにいたします。(拍手)
    〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#19
○国務大臣(福田赳夫君) 私に対する御質問、もうすでに総理からお答えもあったんですが、せっかくの御指名でございますので補足いたします。
 わが国の研究費が国際的に少ないのではあるまいか、こういう御指摘でございまするが、確かに少ないんです。ただ、諸外国におきましては、国防費の中にたくさん研究費が入っておる。わが国は、自衛隊、防衛費が非常に少のうございます。そういう関係も響いておることを御了承願いたいのであります。ただ、私は、それにいたしましても、わが国が諸外国に比して多額であるとは考えません。今後とも努力しなければならぬと思います。少ないながらも、しかし非常に努力は続けておるのでありまして、佐藤内閣が出現いたしました昭和四十年度におきましては、科学技術研究費は四百十三億円でありましたが、四十四年度におきましては、倍以上の九百十六億円まで進んでおります。今後とも努力をいたしたい。お答えといたします。(拍手)
    〔国務大臣坂田道太君登壇〕
#20
○国務大臣(坂田道太君) お答えをいたしたいと思います。
 まず第一に、科学技術基本法でございますが、この点につきましては、科学技術庁長官と御相談をし、検討いたしまして、提出いたすことにつきまして、いま相談をいたしておるところでございます。
 それから科学技術教育につきまして、大学の比率が、理科系と文科系とでは、文科系が非常に多いんじゃないか、御指摘のとおりだと思います。これから漸次理科系を中心として充実していかなければならぬと考えております。国立大学におきましては、従来とも理科系を中心としてやってまいっておることは御承知のとおりでございます。今日、この大学がいろいろ紛争して問題を投げかけておるわけでございますが、一面におきまして、国民のための大学ということが求められますと同時に、やはり日本の大学というものが、その研究の成果というものを社会に還元するという働きも持つべきである。しかも、世界的学問の水準を維持、発展する役割りというものを大学が持っておる。特に科学技術の基本になりますところの基礎研究という点につきましては、日本の実情は、むしろただいま松前先生がおっしゃいましたとおりではないかと思いまして、私といたしましては、全力をあげまして大学紛争を解決し、あるいは教育を正常化しますと同時に、こういう基礎的な研究体制を確立しなければならない、かように考えておるわけでございます。
 思い起こしますと、昭和三十二年であったと思いますが、この本院におきまして、当時の自民党と社会党並びにその他の政党と一致いたしまして科学・技術振興に関する決議案を提出し、満場一致で決議になっておるわけでございます。自来、政府といたしましては、その線に沿いまして科学技術振興につとめてまいったわけでございますが、その年は、前々年に、イーデンがブラッドホードの大会におきまして科学技術の振興を訴えました。またその秋にスプートニクが上がった。そして、アメリカがそれにおくれまいといたしまして、科学技術振興ということについて非常な力をいたしたということを考えました場合に、今後の日本といたしまして、御指摘のとおりに、科学技術振興、特に大学における基礎研究を充実いたしてまいりたいと考えておる次第でございます。(拍手)
    〔国務大臣大平正芳君登壇〕
#21
○国務大臣(大平正芳君) 私に対する御質疑は、特許制度の改善についてでございました。
 技術の革新がたいへん早い速度で進んでおりまするし、御指摘のように、技術の輸入超過の傾向が顕著でございますので自主技術を開発する、そのために、現行の特許制度は急いで改善の要があるではないかという御指摘は、仰せのとおりでございます。これまで、私どもとしましては、審査官を増員いたしましたり、あるいは資料整備をいたしまして当たってまいりましたが、依然として審査、審判の滞りは著しく、その処理に要する期間もますます長期化を来たしておりますので、審判、審査の促進、技術早期公開ということを軸にいたしました改正案がようやくでき上がりまして、先日、本院の御審議をわずらわしておる次第でございますので、何とぞ御審議の上、御支援を賜わりますようお願いいたします。(拍手)
    〔国務大臣河本敏夫君登壇〕
#22
○国務大臣(河本敏夫君) 最初に、インテルサットの問題につきましてお話がございましたが、現在のインテルサットの協定は、昭和三十九年に成立いたしました暫定協定でございます。アメリカの出資率は五三%、御指摘のとおりでございます。そこで、アメリカの発言権がこのままではいかにも大き過ぎますので、特定の重要事項につきましては、約三分の二の過半数、正確に申しますと六五・五%をこえる賛成を必要とする、こういうことがきめられております。
 次に、二月の二十四日から、この暫定協定を恒久制度に直したいということで本協定の交渉が続けられております。この会議に臨むわが国の態度はどうかというお話でございますが、第一番には、まず、この本協定が成立することが望ましいというので、協定成立のために全力をあげております。さらに第二には、協定が成立いたしましても、将来わが国が地域衛星を打ち上げるという、この権利を留保しておきたいという立場をとっておるわけでございます。さらに、この運営の面におきましては、総会と理事会に分けまして、総会では政策面について検討する、そして一国一票制をとっていこう、こういう主張をしております。同時に、理事会におきましては、出資比率による投票が原則になりますが、これにも適当な制限をつけなければいかぬであろう、同時に、アメリカの出資比率を四五%以下に抑えていこう、こういうことで折衝しておるところでございます。さらに次には、先ほど御指摘のような測地、航行あるいは気象、こういうふうな特別の業務は、もちろん対象外にいたします。一般の国際通信業務を対象にしていく、これは当然のことでございます。さらにまた、この協定が将来弾力的に運用されまして、必要とあらば協定をある程度変えられる、こういうことにすべきである、こういう基本方針をもって臨んでおるわけでございます。
 さらに、わが国が通信衛星を開発しておる目的でございますが、これは御承知のように、現在は通信の需要が激増しております。マイクロ回線であるとか海底ケーブル、これだけではとてもさばき切れないのでございます。こういうふうな将来の通信需要の激増に対処していこう、これが第一の目標でございますが、同時に、あわせまして、関連産業の技術水準の向上、さらにまた、わが国の国際的な発言権の強化、こういうふうな多くの目的を持ちまして開発しておるということを申し添えさしていただきます。(拍手)
    〔国務大臣木内四郎君登壇〕
#23
○国務大臣(木内四郎君) 松前さんから、宇宙開発のみならず、広く科学技術振興全般にわたりまして非常に有益な御意見をお述べになりまして、たいへん参考になったのでございますが、以下、私に御質問の点につきましてお答えいたしたいと思います。
 わが国の宇宙開発は、御承知のとおり、当面、通信分野における需要を目ざしまして人工衛星等の開発を進めておるところでございまするが、世界における状況にも見られるとおり、宇宙開発利用は、単に通信衛星の分野のみではございません。先ほどお話のありましたように、気象予報、船舶、航空機の航行、地図の作製のための測地等広範な分野にわたるものでございまして、その前途は洋々たるものがあると考えておるのでございます。政府といたしましては、この宇宙開発の将来性に着目いたしまして、本格的な宇宙開発を進めることといたしておりまして、現在、宇宙開発委員会において、経済、社会の諸要請に照らしまして、いかに宇宙開発を進めていくべきかということについて長期的な視野のもとに開発計画を立案中でございまして、近く答申を得る予定でございます。
 そこで、このような宇宙開発につきましては、総理からも御答弁がありましたように、平和目的に徹し、また、国際平和の維持等を旨といたしておりまするところのいわゆる宇宙条約を順守して、これを進めてまいる所存でございます。その場合、原子力基本法と同様な原則を含む宇宙基本法を制定すべきであるという考え方には、全く同感でございますが、宇宙基本法を立案するにあたりましては、宇宙開発委員会設置法案御審議の際の附帯決議に述べられておりまする趣旨をどのようにこの法案に盛り込むか、また、基本法の対象範囲をどこまで持っていくべきか、そういうようないろいろな問題につきまして、党派を越えて十分に検討され、基本法の名にふさわしいものが制定されるよう、政府としても努力いたしたいと存じております。
 なお、科学技術基本法の制定につきましては、科学技術基本法は、御案内のとおり前国会にも提出されておったのでありますけれども、これが審議未了になりました。いま超党派的に関係国会議員の方々のお集まりにおいて御研究になっておるようでありまするので、なるべくすみやかに成案を得て、この法律がすみやかに制定されるようになることを期待いたしておるのでございます。
 さらに、わが国にとって特に重要な意義を有しておりまする海洋開発につきましては、従来から各省庁において、鉱物資源、生物資源等の開発のための調査研究が進められてきておるのでありますが、本格的な海洋開発は、従来の伝統的な技術をはるかに越えた、いわゆる近代的海洋工学の技術を確立して、これを駆使して進めていかなければならないことは、お説のとおりでございます。このため、現在、海洋科学技術審議会におきまして、海洋科学技術の開発計画について鋭意検討を進めておるところでございまして、これまた四、五月ごろにはその答申を得ることになっておりますので、これに従ってその開発計画を強力に推進してまいりたい、かように存じております。
 海底資源、海洋エネルギーの開発についても、その一環として検討が加えられておりまして、かねてから建造を進めておりました潜水調査船も先般竣工いたしまして、来年度から海洋開発に必要な各種の諸調査に従事する運びになっております。また、明年度は、海中作業基地の建設に着手することに相なっております。さらに、海洋開発の本格化に伴いまして、より性能の高い、大型の調査船等の整備強化の必要性もだんだん生じてまいるかと思うのでありますが、その開発につきましても検討を進めてまいるつもりでございます。なお、海洋科学技術開発の進展によりまして、大型船がだんだんできてきます。したがって、その築港とか、あるいは島と島とを結ぶ橋その他の建設等に必要な海洋土木技術の向上にも資することになるものと期待しておるのでございます。
 また、御示唆のありました専門分野別の研究機関の活用の構想、これは人材養成をはかっていく上におきまして、また、研究所、研究開発機関のあり方を考えるにあたりまして、大いに検討に値するものであると思うのでございまして、現に日本原子力研究所におきまして行なわれておるところの大学への研究施設の供与、これなどは不十分ではございますが、そのような趣旨に沿うものであると考えておるのでございます。なお、関係各省とも連絡をはかりまして、本件につきまして慎重に検討を重ねてまいる所存でございます。
 さらに、科学技術は一国の将来を左右するものであるということは、お説のとおりでございます。この振興には、国をあげて力を注いでいくべきであります。したがって、御指摘のとおり、科学技術の問題は超党派的に事が運ばれなければなりません。また、事実、過去においてもさようであったと信じておるのでございます。その成果といたしまして、科学技術政策につきましては、予算の面でも、先ほどいろいろお話がありましたけれども、また、体制の面でも、逐次強化充実されて今日に至っておるのでございますが、今後とも、この方向で一そう努力いたしてまいりたいと存じておるのでございます。
 なお、科学技術関係の予算が少ないとの御意見でございましたが、昭和四十四年度予算における科学技術振興費は、大蔵大臣からもお触れになりました九百十七億円が計上されておるのでございまして、前年度に比して約二五%増となっております。これは一般会計予算の伸び率を大幅に上回るものであることは、御案内のとおりでございます。
 なお、海洋開発の経費につきまして、先ほど科学技術庁の予算は三億数千万円じゃ足らないじゃないか、こういうお話がありましたが、海洋開発に関する施策は、通産省あるいは農林省その他各省にあるのでありまして、私どものほうにおきましては、ことし初めて海洋開発の研究費という項を立てて、少額ながらこれを盛ることになったのでございます。
 政府におきましては、かような状態でありまして、科学技術振興の重要性を十分認識いたしておりまして、その振興につとめておるのでございますが、今後とも、いまお話しの諸外国の例をも参考にいたしつつ、一そう努力をいたしてまいりたい、かように存じておる次第でございます。(拍手)
    〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
#24
○国務大臣(愛知揆一君) 私からは特に御答弁申し上げることもないかと思いますが、しいて申し上げれば、海洋開発につきまして、大陸だな条約等のことにお触れになったかと思いますので、その点だけ簡単にお答えいたします。
 松前議員も御承知のように、いわゆる上部水域の水深が二百メートルまでの海底の区域の海床、それから地下の鉱物資源、これらにつきましては、これを探査、開発するためには、沿岸国が主権的な権利を行使するということが今日では一般国際法として確立してまいったように存ぜられます。このことは、先月の国際司法裁判所の北海大陸だな問題についての判決にもあらわれておりますので、一九五八年の大陸だな条約にはいろいろの関係で日本は入っておりませんけれども、こうした一般的な国際法として確立された権利、権原を前提にいたしまして、先ほど来いろいろお話がございましたような海底の鉱物資源等に対しましては、関係各省と協力いたしまして御趣旨に沿うようにいたしたい、かように考えておる次第でございます。(拍手)
#25
○議長(石井光次郎君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
 国税通則法の一部を改正する法律案(内閣提
出)及び国税審判法案(横山利秋君外十二名
提出)の趣旨説明
#26
○議長(石井光次郎君) 内閣提出、国税通則法の一部を改正する法律案、及び横山利秋君外十二名提出、国税審判法案について、趣旨の説明を順次求めます。大蔵大臣福田赳夫君。
    〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#27
○国務大臣(福田赳夫君) 国税通則法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 政府は、さきに税制調査会から提出された税制簡素化についての第三次答申を中心として、最近における社会、経済の伸展に即応した納税者の権利救済制度のあり方について鋭意検討を重ねてまいりましたが、その結果、昭和四十四年度の税制改正の一環として、新たに国税不服審判所を設置する等納税者の権利救済制度の整備充実をはかることが必要であると考え、この法律案を提出いたしました次第であります。
 以下、この法律案につきまして、その大要を御説明申し上げます。
 まず、国税に関する審査請求の審理及び裁決を行なう機関として、国税庁に国税不服審判所を設けることとしていることであります。これにより、国税に関する不服申し立てについては、課税等の処分に関与する税務の執行系統から切り離された機関により審理及び裁決がなされることと相なります。
 次に、不服申し立て期間の延長、不服申し立てについての審理手続の合理化等の措置を講ずることといたしております。すなわち、異議申し立て等の期間は、これを一カ月から二カ月に延長することといたしております。また、納税者の不服に関する審理手続につきましては、国税不服審判所長は、一定の手続を経て、国税庁長官が発した通達に示されている法令の解釈と異なる解釈により裁決ができることとする等の整備合理化をはかることとしております。
 さらに、納税者が自己の申告が過大であると主張する場合の更正の請求について、現行二カ月の請求期間を一年に延長するとともに、やむを得ない後発的な理由による更正の請求については、さらにその特例を設ける等所要の改善を行なうこととしております。
 なお、このほか、差し押え等の国税の徴収を確保する措置がとられた場合には、差し押え等がなされている期間の延滞税率を日歩四銭から日歩二銭に軽減する措置を行なうこととしております。
 以上、この法律案の趣旨について御説明申し上げた次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#28
○議長(石井光次郎君) 提出者横山利秋君。
    〔横山利秋君登壇〕
#29
○横山利秋君 私は、提案者を代表いたしまして、国税審判法案につき、提案の理由及びその内容の概要を御説明申し上げます。
 戦後二十数年を経た今日、納税者の税金に対する不平と不満は依然として非常に多いのが現状であり、また、その不平不満を内容的に見ましてもきわめて切実なものがあることは、周知のとおりであります。
 ところが、このような納税者の不平不満に対処すべき現行の権利救済制度は、その不平不満、すなわち、租税事案を正当に解決するにはあまりにも不備であり、かつ、欠陥の多いものであることはっとに指摘されてきたところであります。すなわち、現行の租税事案にかかる権利救済制度のもとにおきましては、処分庁及びその直近上級庁が不服申し立ての処理機関とされておりますため、同じ穴のムジナが審査することとなり、不服申し立てについての決定ないし裁決の公正は十分に確保されていないといわなければなりません。もちろん、審査請求の段階では協議団の制度が設けられてはおりますが、この協議団の制度につきましては、執行機関の系列内に置かれた付属機関であり、裁決権を有するものではなく、国税局長の指揮監督に属し、かつ、協議官はすべて税務職員で構成されていることなどから、やっぱり同じ穴のムジナ論から抜け出ることはできません。協議団に期待されている裁決の公正をはかるための担保的機能はきわめて不十分なものにとどまっているのが現状であります。さらに、協議団が執行機関の系列内にある限り、租税事案の審査にあたって国税庁長官の通達と異なる取り扱いをすることは困難であり、そのため、本来国民は法令に拘束されるが、通達には拘束されないものであるにもかかわらず、不服申し立て、すなわち、行政不服審査の段階では国税庁長官の通達による拘束から脱却することができない結果となっており、これでは納税者の権利利益の完全な救済が何ら確保されないことは明らかであります。
 一方、租税事案についての裁断の公正の確保という見地から申しますと、裁判所による救済が最もその目的に合致するものではありますが、しかし、裁判所による救済、すなわち、訴訟は、費用や時間を要する等の問題がありますので、裁断の公正を保持しつつ、比較的簡素な手続により事案が処理されるような制度が現在強く要望されているといわなければならないのであります。すなわち、現行の協議団制度には裁断の公正を保持することができないという致命的ともいうべき欠陥が存在するという批判、その批判からもたらされる完全な第三者機関の公正な裁断による救済への要求と、裁判のように費用や時間をかけなくても済むような租税救済制度が望ましいという納税者の立場、すなわち、行政段階での比較的簡素な手続による救済への要求という両者の要請を満たすような新しい租税救済制度を確立することが必要不可欠であるといわなければならないのであります。
 以上のような考え方によりまして、現行の協議団の制度を廃止し、行政段階の新しい租税救済機構として、執行機関から完全に分離独立した裁決機関としての国税審判庁を設けることとし、この国税審判庁が純粋の第三者機関として租税事案につき比較的簡素な手続で公正な審判を行なうことによって、納税者の権利利益の救済をはかることとする必要があることを強く認識し、ここにこの国税審判法案を提案した次第であります。(拍手)
 以下、この国税審判法案の内容について、その概要を御説明申し上げます。
 まず、第一に、この国税審判法案による制度の基本的な仕組みでありますが、内閣総理大臣の所轄のもとに国税に関する不服申し立ての処理機構たる国税審判庁を設置することとし、この国税審判庁による審判を、行政段階における租税救済制度の中心的な地位を占めるものといたしたのであります。ただ、事案が簡易少額である等の事情から、納税者が現行の制度によってより簡易迅速な処理を期待する場合も存することを考慮いたしまして、全面的にこの国税審判庁による審判の制度を強行するのではなく、現行の税務不服審査の制度のうち、二審的審査請求は廃止して、二審の段階では、すべて国税審判庁による審判の請求の制度によって不服の救済を求めるべきことといたしますが、異議申し立ての制度と始審的審査請求の制度は存置し、すなわち、一審の段階では、これらの制度と国税審判庁による審判の請求のいずれかを納税者が自由に選択することができることといたしました。
 第二は、国税審判庁の機構でありますが、国税審判庁は、中央国税審判庁及び地方国税審判庁の二つとし、中央に中央国税審判庁を、地方には全国を通じて十一の地方国税審判庁を置き、さらに、所要の地に地方国税審判庁の支部を設け、各国税審判庁には、審判官、調査官及び事務官を置くことにいたしております。
 第三は、審判請求先でありますが、国税庁長官のした処分に対する審判の請求は、中央国税審判庁に対し、国税局長、税務署長、税関長または登録免許税に関する登記、登録機関のした処分に対する審判の請求は、所轄の地方国税審判庁に対して行なうべきことといたしますが、しかし、その処分が、形式的には税務署長のした処分ではあるけれども、処分書に、その調査が国税庁の職員によってされた旨の記載がある場合、及びその不服が国税庁長官の通達が法律に適合しないことを理由とするものである場合におきましては、すべて中央国税審判庁に対して審判の請求をすべきことといたしております。
 第四は、審判の請求期間でありますが、これにつきましては、原則として、始審的審判の請求につきましては、処分があったことを知った日の翌日から起算して二カ月以内、二審的審判の請求につきましては、異議申し立てについて決定の通知を受けた日の翌日から起算して一カ月以内といたしております。
 第五といたしまして、審判権の行使の公正を確保いたしますため、審判官の除斥及び忌避の制度を設け、審判官が事件や当事者と特殊な関係がある場合におきましては、その職務の執行から除斥されることとし、また、審判官について審判の公正を妨げるべき事情があるときは、審判請求人、処分庁または参加人はその審判官を忌避することができることといたしております。
 第六は、審判の請求と国税の徴収との関係でありまして、これにつきましては、審判の請求は、処分の効力等を妨げないことといたしておりますが、審判請求人が滞納処分による差し押えをしないことを求めた場合には、審判の請求について明らかに理由がないと見える場合及び繰り上げ請求の理由に該当する事実がある場合を除き、国税審判庁は、処分庁に対し差し押えをしないことを命じなければならないこととし、また、審判請求人が相当の担保を提供して差し押えの解除を求めた場合には、処分庁に対し差し押えの解除を命じなければならないことといたしております。
 第七に、国税審判庁の裁決に不服がある処分庁は、その裁決を取り消さなければ著しく公益を害すると認めるときに限り、裁判所に出訴することができることといたしております。
 第八は、事件関係人の審理期日における意見の陳述、証拠の申し出の順序、国税審判庁の審理のための調査権等について、所要の規定を設けることといたしております。
 以上が国税審判法案の提案の理由とその内容の概要でありますが、納税者の権利救済制度の根本的改革という問題は、周知のように、かねてからの国民的課題ともいうべきものであり、処分庁から完全に独立した純粋の第三者機関による権利救済制度の実現は、真に納税者の権利利益の救済を万全ならしめるものとして、この国民的課題の解決への大きな前進を意味するものであることは明らかであり、国税審判法の制定が必要であるゆえんがここに存することを深く認識していただきたいのであります。
 国民の待望するこの国税審判法案につきまして、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げまして、国税審判法案の趣旨説明を終わる次第であります。(拍手)
     ――――◇―――――
 国税通則法の一部を改正する法律案(内閣提
出)及び国税審判法案(横山利秋君外十二名
提出)の趣旨説明に対する質疑
#30
○議長(石井光次郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。広沢賢一君。
  〔広沢賢一君登壇〕
#31
○広沢賢一君 私は、日本社会党を代表して、政府提出、国税通則法の一部を改正する法律案、並びに社会党提出、国税審判法案について、基本的な質問を行なうものであります。(拍手)
 税に対する国民の恨みは充満しております。それは、単に税金が生活費に食い込むという重税感ばかりでなくて、いまの税制がはなはだしく不公平、不合理だからであります。たとえば、政府が宣伝する今回のサラリーマン減税は、その実、年収百万円、月収約七万円の五人家族にとっては、物価上昇の今日、定期昇給を含め一〇%、七千円の賃上げがあった場合、減税どころか二千二百円の増税のうき目にあい、反対に、悪名高い利子配当、つまり、不労所得の優遇措置で、五人家族年収二百三十六万円まで無税が二百八十二万円に、一挙に五十万円も免税額がはね上がる、全く資産階級と社長、重役のための減税なのであります。(拍手)
 また、昭和元祿といわれ、独占企業は連続六期大きな利益をあげており、反対に、政府は財政硬直化を宣伝しているのに、法人税の実効税率は世界一安くなっております。こんなばかげたことが行なわれている一例をもってしても、新聞世論調査にあらわれた国民の政治不信、この原因がどこにあるか明らかであります。昔から、善政をあらわすに、乏しきを憂えず、ひとしからざるを憂うという名文句がありますが、佐藤内閣の税制は、まさしく正反対、つまり、悪政なのであります。
 来年は利子配当優遇措置の期限切れであり、これに関連して法人税の性格の明確化が迫られております。この際、所得税の税率の変更を含めて、税制そのものの根本的な見直しを行ない、一大改革を断行すべきであります。総理の決意を伺いたいのであります。
 もう一つの国民の恨みは、税金の取り立て方にあります。零細企業者は、私は警察より税務署がこわいと申しております。戦後、警察は一度自治体警察に民主化されましたが、税務署のほうは、戦前以来一度も民主化の波をくぐっていないのであります。たとえば税務大学校の教官からして、大内兵衛教授の本を読むと出世できないとおどかす教育であります。そこから生まれた税務署職員は、理屈抜きで、国民からできるだけ多く税を取り立てた者ほど点数が上がり、出世できると徴税にかり立てられているのであります。警察官は、裁判所の令状がなければ商店や銀行の金庫をかってにこじあけることができませんが、税務署は、不意打ちでかってにそれができるのであります。奥さんのたんすまでさがして、へそくりをさがし出す。しかも、大蔵省ほど法律を自分なりに解釈して膨大かつ難解な通達の乱発で、これに基づいて税金を取り立てている省はほかにないのであります。歴史的に民主主義の生まれた根本の原則、租税法定主義が、実際には平気でじゅうりんされているのであります。したがって、これから生まれる税金の紛争は、昭和四十一年で何と三万七千件にのぼっているのでありますが、このように異議申し立てや審査請求をやる人は、勇気のある人々であります。多くの国民は、あとがこわいというので、泣き寝入りが実情なのであります。総理大臣、こうしたことが民主国家の今日、あってよいと思いますか。国税通則法、国税犯則取締法及びそれに伴う政令、通達等を根本的にさらに再検討すべきであると思いますが、いかがでありますか。
 今回の国税通則法の一部改正案は、こうした納税者の権利救済制度の改善のために、いままでの協議団方式を国税不服審判所設置に改めるのだというのでありますが、中身をよく検討すると、それはまっかな偽り、羊頭狗肉そのものなのであります。
 第一に、いままでの公平な審判を行なうべき協議団が、税金を取り立てる国税局のもとに置かれていて、その人事、任用、昇進、成績判定から審査手続に至るまで、すべてが国税局に従属していたのでは、これでは国税審判の役をなさないのであります。いわゆる制度そのものが同じ穴のムジナであると批判されてきたことは、税制調査会の答申にも認められているところなのでありますが、今回の改正案では、それが同じ税金を取り立てる大元締めの国税庁長官の任命になったにすぎないのでありまして、身分関係の実体は何ら変わらないのであります。そればかりか、本来、協議団という名の示すとおり、裁判官には、上下の別なく協議または合議が民主的原則であるにもかかわらず、今回の改正では、審判官に首席を置き、副を置き、副は審判官の仕事を代行するという行政執行の立場からの身分的な職階制を導入したのでは、これは改正でなくて、改悪であると思うのであります。(拍手)
 さらにまた、審判所は、国税庁長官の出した通達と異なった解釈で裁決するときは国税審査会の議を経なければならないことになっておりますが、この審査会の委員が、また国税庁長官が任命するというのであります。これでは、同じ税務行政の古手が学識経験者としてかってに長官から任命されて、もちろん国会の承認を必要としないというのですから、これまた同じ穴のムジナと古ダヌキで、事態は何ら改善されないことは明らかであります。(拍手)
 これらに対して、社会党が提出した国税審判法案では、特にこれらの点に留意して、審判庁は税金を取り立てる国税庁とは完全に切り離して、内閣総理大臣のもと、総理府の所管とし、その機能の独立性を法律によって保障しているのであります。それは、アメリカ合衆国租税裁判所が大統領任命官職であり、西ドイツが独立した租税裁判所を持っているという外国の事例、さらにまた、わが国においても、社会保険審査会委員が両議院の同意を得て内閣総理大臣の任命によるものであること、労働者災害補償保険審査官ですら労働大臣任命、保険審査会委員は両議院の同意事項であること、公正取引委員会の委員も、国会の同意により、その審判官のうちで特に事件に関与したことのある者は担当審判官に指定できないこと、海難審判制度では、独立した権能が法十一条で保障され、特許審判官では、合議体過半数と明記していること等から見て、最も大切な税金の公平処理が独立した機能を持つことは当然であり、法制上何ら不都合でなく、これを怠った今回の改正案は、以上のような法制上の基本的な民主主義的原則をじゅうりんした羊頭狗肉のしろものなのであります。(拍手)
 これは、最近、国民の税金徴収に対する不満が高まり、裁判所における提訴では納税者の勝訴が次々と多くなり、社会党の審判庁の法案の提出など追及がきびしく、たまらなくなった国税庁が、むしろこの羊頭狗肉を材料として、国民の税金に対する正当な権利を封殺してしまおうとして出してきたものであると思うのであります。というのは、この改正法案第八十七条において、まず審査請求人が、この税金が不当であると思う主張一切を明らかにすることを求めております。そもそも、債権を主張する者がその債権の存在を立証しなければならないのが争訟制度の大原則であります。改正法案では、このことを回避して、事実上その責任を審査請求人、つまり国民に求め、しかも、原処分庁の答弁書提出の義務では、九十三条「提出させるものとする。」と、あいまいな表現を使い、原処分庁の物件閲覧においては、九十六条「日時及び場所を指定することができる。」、だから指定しないこともあり得るというような表現を用い、あまつさえ、九十七条、審査のための質問検査においては、この場合、身分上は税務官吏同様の審判官、副審判官に広範な検査権を与え、その上で、たとえば質問に答弁しない、検査に協力しなかったら、事件関係人に対して三万円の罰金を科するという罰則規定が挿入されたのであります。さらにその上、この点がおかしいと不服を述べると、それではこの点ばかりではなくて、あらためて総収入、総支出金部を洗い直すという、いわゆる争点主義に対する総額主義の問題は、いまだ明快な結論がありませんから、たとえば日通のような大企業には、その点だけという争点主義の調査にとどめ、町の八百屋さんは洗いざらい総所得、総支出を調べ直すというように、調査、検査のしかたそのものが階層的に、階級的に不公平なものになっているのであります。大蔵大臣、これでもなお、庶民が権利救済を信頼し、審査請求をしてもらいたいという気持ちになれますか。
 以上の諸点について、大臣の答弁を求めます。また、社会党の国税審判法提案者、社会党の大蔵大臣横山利秋君の明快なる御所見を伺いたいのであります。
 最後に、今日ほど税金の不公平に対する怒りと恨み、ひいては政治不信の声がこのように大きく盛り上がっている今日、表だけの昭和元祿を自画自賛する前に、総理、大蔵大臣みずから、乏しきを憂えず、ひとしからざるを憂うという昔から政治家にとって最も大切な心がまえ、要諦を国民の前にはっきりと具体的な提案として示す以外に、今日の政治不信の解消の道はないと思いますが、いかがでしょうか。総理、大蔵大臣の深い反省を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#32
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 今回の税制改正の結果、増税になってしまうというような印象を与えかねないような御発言がございました。もちろん、ベースアップがあれば税額はふえます。ベースアップがあれば税額はふえる。そのこと自身は多少ふえましても、この場合でも、いわゆる負担率としてははっきりと低下していること、(「それはあたりまえだよ」と呼ぶ者あり)これはもう、あたりまえだと言われるように、それこそが減税になっておる証拠でございます。どうか誤解のないようにお願いしておきます。
 また次に、配当所得者に対しては格別に優遇しておる、こういう御指摘でありますが、これは法人税と所得税との関係につきまして、従来の考え方のもとに、当然に課税最低限の額が引き上げられたものでありまして、今回の改正が特に配当所得者を優遇する、そのもくろみでつくられたものでないこと、これだけははっきり申し上げておきます。しかしながら、利子、配当の租税特別措置につきましては、貯蓄増強、資本市場の育成等の政策目的に照らして設けられた租税特別措置法ではありますが、このことは、税負担の公平の観点からは、御指摘がありましたとおり問題がありますので、税制調査会におきまして十分審議をわずらわして、そうして結論を得たい、かように私は考えております。いましばらくお待ちを願いたいと思います。
 なお、減税について御要望がありましたが、私も、特に中堅以下のサラリーマンの減税につきましては、さらに一そうの努力を払ってまいる考えでございます。
 次に、納税者の納得のいくような徴税をしろ、こういう点でありますが、私もかねがね申しますように、民主的な税務行政というものは望ましいことでありまして、政府におきましても、それを努力しておるところであります。国税通則法や国税徴収法につきましても、ずいぶん古くから同じ法律に基づいておるんだ、かように言われますが、いずれも数年前に全文改正をしたものでありまして、また今後とも社会、経済の伸展に即応して見直していく、これは当然のことでありますが、そのつもりでございますから、御了承願いたいと思います。
 今日提案いたしまして御審議をこれからお願いするという国税通則法の改正案も、納税者の権利救済制度を一そう整備充実することを目的としておるものでありますから、どうか十分その趣旨のあるところを了とせられて、ひとつ御審議を願いたいとお願いをいたします。
 以上、私からの答弁といたします。(拍手)
    〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#33
○国務大臣(福田赳夫君) お答えいたします。
 広沢さんの御意見、いろいろ伺っておったのですが、今回不服審判所を政府が新設しようとしておるが、これは第二司法機関ともいうべき完全独立の機関となすべきではないか、かようなことと理解したのであります。私は、この司法上の権利の保護救済、これは終局的には司法裁判所、これにまつべきものである、かように考えておるのであります。今回不服審判所を設ける、これは行政的措置によりまして納税者の権利の救済を迅速にやっていこう、また誤りがあった行政措置をすなおに手直しをしよう、こういう二つの趣旨に基づくものでありまして、この行き方のほうがむしろ適正ではないか。不服審判所を第二司法機関とするというようなことになりますと、これはわが国の法制の体系としていかがなものであろうか。また、第二司法機関でない異質の独立機関だというふうにいたしますときには、これは重複機構となって、またこれ、いかがであろうか、かように存ずるのであります。税制調査会におきましてもいろいろ議論があったようでありますが、政府が提案をいたしておるこの方式こそが最善である、かように判決をいたしておるのであります。
 また、第二の問題は、審判にあたりまして、不服申し立ての納税者側に挙証の責任があるのではあるまいか、こういうふうな御意見でありますが、私は、この制度の真のねらいは、真実は何だ、ほんとうは何だ、どういうことが実相だという、この真実の発見こそが目標である、そういう過程を通じまして行政の適正化をはかっていく、こういうことにあると思うのでありますが、私は、この考え方からいいますと、納税者だけに挙証責任を与えるという考え方をとる必要はない、これは双方から挙証というか、大いに議論を戦わしたらいいのではあるまいか、また、場合によりますれば、審判所自身も出かけて調査をする、これくらいやるべきである、かように考えて御提案を申し上げておる次第でございます。
 さらに、広沢さんから、この審判は争点主義をとるのか総額主義をとるのかというようなお話でございます。争点、つまり納税者が不服の申し出をいたしたその点だけを争うことになるのか、あるいはそれに関連いたしまして、全体の税のそのケースの問題を議論することになるのか、それがどうも政府案でははっきりしていないというお話でありますが、これははっきりいたしておりません。率直に申し上げます。私は、この不服の人が訴えをする、そこから問題が出発するのでありますから、これはもう当然、事実上は争点主義になる、こういうふうに思います。しかし、その争点に関連いたしまして、事がその納税者の税全体に波及することなしとしない。これまた当然かと思うのでありますけれども、この争点主義であるか総額主義であるか、こういう問題はそのように理解しますが、いずれにいたしましても、納税者の利益、これはどこまでも尊重いたしていきたい、かように考えます。
 最後に、減税についての御要請がありますが、私も減税については深い理解を持っておるつもりでございます。ただ、いま公債財政、御知承のような状況でありますので、すみやかに公債を、大体そう気にかけるような状態でないところまで持っていった上、減税問題とはまっ正面から取り組んでみたい、かように考えております。
 税務行政につきましていろいろ御批判があり、どうも、こわいこわい税務署だというようなお話でございますが、私は、そういうことを感ぜられる方は特別の人だと思います。私どもには、どうもたいへん税務行政は親切になってきた、非常によくなってきた――私は、税務当局に対しましては、愛される税務署になれということを旨として指導をいたしておりますので、何とぞ、広沢さん、そのほうの権威者でございますので、御協力のほどをお願い申し上げます。
 また、たんす預金までかき回すようなお話でございまするが、さようなことは絶対にありません。これは犯罪の問題があって、裁判所の令状をもってする場合はあります。しかし、普通の場合におきまして、アパートへ立ち入ってたんすをかき回す、さようなことは絶対にいたしませんから、どうかひとつ御安心のほどをお願い申し上げます。(拍手)
    〔横山利秋君登壇〕
#34
○横山利秋君 大蔵大臣がたいへん有意義な御回答をされましたので、私も有意義に回答をいたしたいと思います。
 およそ税金で、私どもも選挙区で皆さん一緒に相談に乗るわけですが、納税者の不満は、高いというか不公平というか、あるいはわかりにくいというか、あるいは税務署が不親切でおもしろくないという、大体この四つあるわけであります。四つの中で、われわれがここで法律を改正したところで、税務署のさじかげんでどうにもならぬですよという、その税務行政の段階の問題が、実は一番私は多いと見ているわけであります。今度の政府案も私どもの案も、協議団を廃止することは一緒なのであります。これはいいことだと思う。しかし、どうせ廃止するなら、長期にわたって納税者の信頼を託するに足る機構にしなければならぬ。協議団が何が悪いか、協議団を廃止する原因は何かということをとことんまで追及して、それが削除されるようなやり方にしなければ意味がないと私は思うのであります。協議団を政府もやめるに至った理由は、先ほどから話が出てます同じ穴のムジナだという批判ですね、これがいかぬ。もう一つの批判は、国民は通達には左右されぬ。税務署の職員は通達で仕事をする。国民は法令には従わねばならぬけれども、通達には国民は従う義務はないのですからね。それを、国税局協議団は通達で仕事をしているから、あれをやめさせようというのが共通の概念なんです。その点は、政府も私どもも意見の違いはないのですよ。ところが、新たに設置するものについて、そうはいいながら、その根を残しているからいけないと私は言うのであります。そうでしょうが。国税庁長官の下に機構を置いたら、同じ穴のムジナじゃありませんか。それから審査会を置くといったところで、審査会の答申について国税庁長官は自由裁量です。裁量権が自由なんですから、そこでも根が残っておる。やるのだったら、今後十年、二十年、納税者の信頼に足るような機構にするためには、ほんとうに公正な第三者機構にしなければだめではないかというのが、私どもの意見であります。この意見については、私が去年提案をいたしまして、政府が検討にかかって調査会が案を出した。それから京都で日本税法学会が行なわれた。日本国じゅうの税法に関係のある裁判官から、検事から、公認会計士から、税法学者から、あるいは税理士から、全部集まった日本税法学会で、満場一致、私のほうの案がいいときまって、政府に対して批判的な結論を出しているのです。(拍手)これはもう社会的に明白に勝負がついたことなんです。だから私は、決して社会党が出したとかなんとかといわないで、全国の税法学会が満場一致私のほうの案がいいときめたんですから、どうぞひとつ率直な意味において御検討が願いたいと思うのです。
 それから、いまの御意見のように、大臣もお答えになりましたが、挙証責任、あるいは争点主義の問題であります。税務署長が百万と更正決定をかけた、それに文句を言ったら、証拠を出せ、こういうのは、いつもお互いに税務署で納税の問題で体験をしているところです。税務署長が百万と更正決定をかけたならば、かけた根拠があるだろうから、証拠はむしろ税務署が出してもいいではないか。百万がいかぬなら根拠を出せと納税者に迫っておるのが実際の姿です。それからもう一つは、文句があるか、文句があるなら、あなたのところ、もう一ぺん白紙に返して徹底的にそれじゃ調べてみるよ、こういうのですね。これはまあ、ある意味ではおどしなんです。それが納税者にとっては弱いところなんです。弱いというか、脱税をしておる、しておらぬということではなくて、うるさいから、商売のじゃまになるから、だからという意味において、この問題は総額主義と争点主義との間に問題があるわけです。
 それから、そんなたんす預金を取るようなことはないとおっしゃった。確かにたんす預金を取っていくということはありません。ありませんが、税務署が来たときに許されるのは、一般調査の質問検査権だけです。質問検査権というのは、質問し、検査する権利にとどまっているはずです。ところが、立ち入りですね、それから引き出しをあける捜査、それから持っていく押収、そういう例というものは、皆さんがやっぱりお互いにあちこちでごらんになって御存じになっていることだと思う。この挙証責任や争点主義、あるいは質問検査権の乱用、こういう点は、どうしても税務行政の民主化の中でためなければならないことだと思うわけです。この点を、私どもの案は、原則としては争点主義及び挙証責任を納税者に押しつけない、質問検査権の乱用を戒める、こういうようになっているわけであります。どうぞひとつ、こんなわけでございますから、私はまあ率直に申しますが、私どもの案のてまえみそじゃありませんけれども、理想に走らず、現実におぼれず、実に具体的に納税者の選択権まで用意をいたしましたものですから、だから京都の税法学会が満場一致、これはあなたのほうの案がいいというのは、当然なことでございます。
 皆さんの御協力を心からお願い申し上げまして、回答といたしたいと思います。(拍手)
#35
○議長(石井光次郎君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#36
○議長(石井光次郎君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時五十九分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        外 務 大 臣 愛知 揆一君
        大 蔵 大 臣 福田 赳夫君
        文 部 大 臣 坂田 道太君
        通商産業大臣  大平 正芳君
        郵 政 大 臣 河本 敏夫君
        自 治 大 臣 野田 武夫君
        国 務 大 臣 木内 四郎君
 出席国務大臣
        内閣法制局長官 高辻 正巳君
ソース: 国立国会図書館
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