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#1
第061回国会 本会議 第17号
昭和四十四年三月二十五日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第十一号
  昭和四十四年三月二十五日
   午後二時開議
 第一 産炭地域における中小企業者についての
  中小企業信用保険に関する特別措置等に関す
  る法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第二 交通安全施設等整備事業に関する緊急措
  置法の一部を改正する等の法律案(内閣提出)
    …………………………………
  一 公害に係る健康被害の救済に関する特別
   措置法案(内閣提出)及び公害紛争処理法案
   (内閣提出)並びに公害に係る被害の救済に
   関する特別措置法案(角屋堅次郎君外十二
   名提出)及び公害紛争処理法案(角屋堅次郎
   君外十二名提出)の趣旨説明
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 日程第一 産炭地域における中小企業者につい
  ての中小企業信用保険に関する特別措置等に
  関する法律の一部を改正する法律案(内閣提
  出)
 日程第二 交通安全施設等整備事業に関する緊
  急措置法の一部を改正する等の法律案(内閣
  提出)
 公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法
  案(内閣提出)及び公害紛争処理法案(内閣提
  出)並びに公害に係る被害の救済に関する特
  別措置法案(角屋堅次郎君外十二名提出)及び
  公害紛争処理法案(角屋堅次郎君外十二名提
  出)の趣旨説明及び質疑
   午後二時七分開議
#2
○議長(石井光次郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 日程第一 産炭地域における中小企業者についての中小企業信用保険に関する特別措置等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
#3
○議長(石井光次郎君) 日程第一、産炭地域における中小企業者についての中小企業信用保険に関する特別措置等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
    ―――――――――――――
#4
○議長(石井光次郎君) 委員長の報告を求めます。石炭対策特別委員長平岡忠次郎君。
    ―――――――――――――
    〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔平岡忠次郎君登壇〕
#5
○平岡忠次郎君 ただいま議題となりました産炭地域における中小企業者についての中小企業信用保険に関する特別措置等に関する法律の一部を改正する法律案について、石炭対策特別委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 御承知のとおり、深刻な事態に直面している石炭鉱業を再建するため、先般、石炭鉱業審議会の答申に基づき、昭和四十八年度を目標とする石炭対策の基本的方向が示され、産炭地域振興対策もなお一そうの拡充強化をはかることとなったのであります。
 本案は、その一環として、石炭鉱山の休廃止により影響をこうむった中小企業者に対し、その信用力を補完し、経営の安定または企業の再建に資するための中小企業信用保険に関する特別措置等を引き続き実施するため、石炭鉱業合理化基本計画の目標年度に合わせて、本年度末期限到来の本法の廃止期限を、昭和四十九年三月三十一日まで五年間延長しようとするものであります。
 本案は、去る二月二十日当委員会に付託され、二月二十五日大平通商産業大臣より提案理由の説明を聴取し、慎重に審査を重ね、三月二十日に至り質疑を終了し、直ちに採決いたしましたところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
 以上、御報告を終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
#6
○議長(石井光次郎君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○議長(石井光次郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第二 交通安全施設等整備事業に関する緊急措置法の一部を改正する等の法律案(内閣提出)
#8
○議長(石井光次郎君) 日程第二、交通安全施設等整備事業に関する緊急措置法の一部を改正する等の法律案を議題といたします。
    ―――――――――――――
    ―――――――――――――
#9
○議長(石井光次郎君) 委員長の報告を求めます。交通安全対策特別委員長内海清君。
    ―――――――――――――
    〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔内海清君登壇〕
#10
○内海清君 ただいま議題となりました交通安全施設等整備事業に関する緊急措置法の一部を改正する等の法律案につきまして、交通安全対策特別委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案は、最近における交通事故の発生状況にかんがみ、現に交通事故が多発している道路、その他緊急に交通の安全を確保する必要がある道路について、新たに昭和四十四年度を初年度とする特定交通安全施設等整備事業三カ年計画等を作成すること、交通安全施設等整備事業に地方単独交通安全施設等整備事業を加えること、これらの実施に要する費用の補助及び財政措置等、所要の改正を加えることにより、国及び地方公共団体が一体となって総合的な計画のもとに交通安全施設等整備事業を実施し、これらの道路における交通事故の防止をはかろうとするものであります。
 また、通学路に関する事業を、交通安全施設等整備事業に関する緊急措置法に取り込み、実施することとし、通学路に係る交通安全施設等の整備及び踏切道の構造改良等に関する緊急措置法を廃止することといたしております。
 本案は、去る三月五日本委員会に付託され、翌六日坪川建設大臣から提案理由の説明を聴取し、同月二十日、質疑を終了し、討論もなく、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
 なお、本案に対し、道路整備事業の実施にあたっては、交通安全施設等の整備について遺憾なきを期すること、地方単独交通安全施設等整備事業に要する費用については、地方公共団体の財政を圧迫せざるよう必要な財政措置について配慮すること等を内容とする附帯決議が全会一致をもって付された次第であります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#11
○議長(石井光次郎君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#12
○議長(石井光次郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法案(内閣提出)及び公害紛争処理法案(内閣提出)並びに公害に係る被害の救済に関する特別措置法案(角屋堅次郎君外十二名提出)及び公害紛争処理法案(角屋堅次郎君外十二名提出)の趣旨説明
#13
○議長(石井光次郎君) 内閣提出、公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法案、及び公害紛争処理法案、並びに角屋堅次郎君外十二名提出、公害に係る被害の救済に関する特別措置法案、及び公害紛争処理法案について、趣旨の説明を順次求めます。厚生大臣斎藤昇君。
    〔国務大臣斎藤昇君登壇〕
#14
○国務大臣(斎藤昇君) 公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 今日、産業経済の急速な発展と都市化の進展等に伴って発生する公害問題が、緊急に解決を要する重大な社会問題となっていることは、すでに御承知のとおりでございます。
 この問題に対処するため、政府といたしましては、公害対策基本法に定められた理念と方向に従い、従来から、各般にわたる公害防止のための施策の拡充強化につとめてまいったところであります。公害問題の解決のためには、公害の発生を未然に防止するための対策が重要であることは申すまでもありません。しかしながら、現に発生している公害による被害の救済をはかることもまた対策の一つとして欠くことのできないものであります。
 公害による被害については、公害の発生原因者の民事責任に基づく損害賠償の道が開かれておりますが、現段階においては、その因果関係の立証や発生責任者の明確化等の点で困難な問題が多く、このため、被害救済の円滑な実施をはかるための制度の確立が強く望まれているのであります。このような見地から、公害対策基本法の精神にのっとり、公害による被害のうち、当面緊急に救済を要する健康被害について迅速かつ適切な救済をはかることを目的として、ここに本法律案を提案することといたした次第であります。
 以下、この法律案のおもな内容について、その概要を御説明申し上げます。
 第一に、この法律による救済の措置は、相当範囲にわたる著しい大気の汚染または水質の汚濁が生じたため、その影響による疾病が多発している地域を指定し、これらの指定地域の都道府県知事または政令で定める市の長が当該疾病にかかっている旨の認定をした者に対して行なうことといたしております。
 第二に、救済の措置としては、医療費のほか、医療手当及び介護手当を支給するものとしております。医療費は、当該疾病の医療に要した額から社会保険等による医療に関する給付の額を控除した額を対象として支給することといたしております。医療手当は、病状が一定の程度以上の者に支給し、介護手当は、特に介護を要する者に支給することといたしておりますが、本人、配偶者等の所得税の額が一定額以上の場合は支給の制限を行なうことといたしております。
 第三に、給付に要する費用についてでありますが、産業界、国及び地方公共団体がそれぞれ分担するものとし、その割合は、都道府県が実施する場合は、産業界四分の二、国及び都道府県それぞれ四分の一とし、市が実施する場合は、産業界六分の三、国、都道府県及び市がそれぞれ六分の一といたしております。なお、産業界及び国の分担は、公害防止事業団を通じて行なうことといたしております。
 第四に、産業界の分担は、本制度に協力することを目的とする民法による法人で、その申し出により厚生大臣及び通商産業大臣の指定を受けたものが公害防止事業団と契約を締結し、毎年事業団に対して所定の額を拠出することによって行なうことといたしております。
 以上のほか、被害者が損害賠償等を受けた場合における本制度による給付との調整の措置、その他この法律を実施するため必要な措置について規定いたしております。
 以上をもって公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法案の趣旨の説明を終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
#15
○議長(石井光次郎君) 国務大臣床次徳二君。
    〔国務大臣床次徳二君登壇〕
#16
○国務大臣(床次徳二君) 公害紛争処理法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 公害問題は、申すまでもなく、現在緊急な解決を必要とする国民的課題でありますので、政府といたしましては、従来から公害対策基本法の精神にのっとり各般の公害対策を講じているところであります。
 公害対策におきましては、何よりも公害の発生を未然に防止する措置を講ずることが肝要でありますが、同時に、公害が発生した場合に備えて、公害紛争処理制度を整備することが必要であります。
 公害による被害は、単に財産的なものにとどまらず、人の生命、健康にも及び、しかも、当事者が多数にわたり、かつ、加害と被害との因果関係の究明も困難である等、公害特有の問題があり、これらが公害にかかわる紛争の迅速、円滑なる解決を困難ならしめているのが実情であります。
 かかる公害にかかわる紛争を処理する行政上の制度として、現在、水質の汚濁、大気の汚染等につきまして和解の仲介制度がありますが、調停、仲裁を行ない得ない等不備な点が多く、また、現行の司法制度をもってしては、必ずしも簡易迅速な解決をはかるのに十分でないうらみがあります。
 このような公害紛争処理制度の現状にかんがみ、また、公害にかかわる紛争について必要な措置を講ずべきことを定めた公害対策基本法第二十一条第一項の精神にのっとり、公害にかかわる紛争の迅速かつ適正な解決をはかるため、公害紛争処理制度を整備すること等を目的として、ここに公害紛争処理法案を提案することといたした次第であります。
 次に、この法律案のおもな内容について、その概要を御説明申し上げます。
 第一に、公害にかかわる紛争を処理するための専門的な機構を中央及び地方に置くこととしたことであります。中央に置かれる中央公害審査委員会においては、現に人の健康または生活環境に公害にかかわる著しい被害が生じ、かつ、当該被害が相当多数の者に及び、または及ぶおそれのある紛争、広域的な見地から解決する必要がある公害にかかわる紛争、被害地及び加害地が二以上の都道府県の区域にわたる公害にかかわる紛争について調停及び仲裁を行なうこととしております。また、地方に置かれる都道府県公害審査会等においては、これらの紛争以外の紛争について和解の仲介、調停及び仲裁を行なうこととしておりますが、さらに、被害地及び加害地が二以上の都道府県の区域にわたる公害にかかわる紛争については、関係都道府県が事件ごとに共同して連合審査会を設け、これを処理することができることといたしております。
 第二に、これらの機構におきましては、人格が高潔で識見の高い者のうちから、委員長、委員または審査委員候補者が任命または委嘱され、これらの者のうちから、事件ごとに指名された仲介委員、調停委員または仲裁委員が、それぞれの所定の手続に従い、和解の仲介、調停または仲裁に当たることとしております。なお、調停の場合には、当事者に対し出頭要求を、また一定の場合には文書、物件の提出要求ないし立ち入り検査を行ない得ることとしております。仲裁の場合にも、同様の権限を与えております。
 第三に、これらの機構については、具体的な紛争の処理を通じて得られた公害防止の施策の改善についての意見を、中央においては内閣総理大臣等に対し、地方の公害審査会においては都道府県知事に対して申し述べることができることとしております。
 以上のほか、公害問題は、地域住民に密着した問題でありますので、地方公共団体は、公害に関する苦情について適切な処理につとめる旨の規定を設けた次第であります。
 なお、いわゆる基地公害といわれる防衛施設にかかわる障害に関する事項については、この法律案において別に法律で定めるところによることとしておりますが、これは、その原因となる自衛隊等の行為の殊特性から見て一般の産業公害と同じ扱いとすることは不適当であり、また、政府はすでに防衛施設周辺の整備等に関する法律等により障害防止工事及び民生安定施設の助成、損失の補償等について手厚い措置を講じ、その補償について異議の申し出等の制度を設け、円滑なる解決をはかってきておりますので、これらの措置によることといたした次第であります。
 以上が公害紛争処理法案の要旨でございます。
    ―――――――――――――
#17
○議長(石井光次郎君) 提出者角屋堅次郎君。
    〔角屋堅次郎君登壇〕
#18
○角屋堅次郎君 私は、提案者を代表いたしまして、日本社会党提出、公害に係る被害の救済に関する特別措置法案、並びに公害紛争処理法案につき、提案の理由とその内容の概要を御説明申し上げます。
 戦後わが国の経済は、敗戦の廃墟の中から再出発し、今日、世界第三位の生産力を誇るまでに成長いたしましたが、庶民の生活実感からすれば生活は決して楽になったとはいえず、むしろ物価の上昇、公害の激増、交通事故の多発等による健康と生命の脅威に絶えず不安を感じ、はなやかな見せかけの数字より、もっと中身のある経済成長を待ち望んでいるのであります。特に公害の激増は、近年大きな社会問題であり、政府の相も変わらぬ企業擁護の姿勢に鋭い批判の眼が向けられ、また、企業の社会的責任を無視した経営方針の転換を望む国民的世論も、日増しに高まりつつあります。しかし、依然として、政府も、企業も、その態度に根本的な反省は見られず、公害は経済発展の必要悪のごとき観念の存することは、まことに遺憾であります。
 昨年十二月の国連総会において、スウェーデンの提案による、世界は核戦争による絶滅は避け得ても、公害により同じような脅威を受けている、政府も産業界も必要な責任をとるべきだ、とする決議案が採択されましたが、これは、世界のいずれの国よりも、まず日本の政府と産業界に対する警鐘として謙虚に受けとめるべきであります。(拍手)
 元来、公害の対策の万全を期するためには、公害の予防、公害の排除、公害にかかる被害の救済について、思い切った法制的、財政的措置を必要といたしますが、かかる観点からわが国の公害対策の現状を見るとき、両者ともにきわめて不十分であり、特に法制的には、現行の公害対策基本法をはじめ、大気汚染防止法、騒音規制法、水質二法等の抜本改正が必要であり、ただいま提案されました政府の二法案も、原案のままでは、とうてい公害に呻吟ずる患者はもとより、公害追放を望む国民の期待にも沿い得ないことは明らかであります。すなわち、政府の公害救済法案は、その対象を大気の汚染と水質の汚濁による健康にかかる被害に限定するのみならず、所得制限をし、しかも、被害者及びその家族の生活費についての配慮を全く欠いており、被害者救済についてはきわめて不十分であります。これでは、もし紛争処理法案が完全なものであったとしても、被害者としては当面の医療、生活の費用にもこと欠き、ついには加害者に有利な条件のもとにおいて妥協してでも、急いで紛争解決をせざるを得ない羽目に追い込まれると判断されるのであります。
 さらに、政府の紛争処理法案は、国に置かれる中央公害審査委員会が独立の行政委員会ではなく、総理府の付属機関とされていて弱体であることは否定できず、その上、仲裁制度も、当事者双方の合意による申し立てが仲裁開始の条件であり、したがって、これを利用するかいなかは事実上加害者の選択にまかされており、今日の企業者の倫理意識と責任感では、ほとんどこの制度は画餅に帰すると申せましょう。
 さらに重大なことは、騒音、振動などの基地公害が現に多発しており、今後もその増加が十分予測されるのに、これを適用除外とし、救済の道を閉ざしていることは、国民の健康、生命よりも軍事を優先するという政府・自民党の姿勢を端的にあらわしたものであり、断じて許すわけにはまいりません。(拍手)
 今日、公害紛争がこじれて、補償問題も解決しないまま苦難にあえぐ公害病患者の悲惨さは、わが党が現地調査を行なった新潟の水俣病、富山のイタイイタイ病、四日市の公害病等の患者の実態でも明らかにされ、骨身にこたえるほど公害絶滅に対する政治の責任を痛感したのであります。また、新産都市その他の都市の公害紛争を見て、企業の強引さに憤激を覚え、正しい紛争解決の道筋を示すことの必要も痛感しております。
 わが党が、昨年来の公害総点検、公害絶滅の運動の実績の上に立ち、政府と企業の姿勢に警鐘を鳴らし、国民の健康と生命を守り、被害者擁護の立場から公害二法案を提案いたしましたのも、当面の重大な政治的課題に真剣にこたえんがためであります。
 以下、二法案の内容について簡潔に申し上げます。
 まず、公害に係る被害の救済に関する特別措置法案について、その概要を御説明申し上げます。
 第一に、公害にかかる被害の救済は、第一条において明らかなとおり、健康または物についての被害について行なうことといたしております。
 第二に、公害病患者の認定は、政府案の場合は指定地域の区域内に相当期間住所を有することが必要とされておりますが、わが党案では、相当時間指定地域内において過ごした期間が厚生大臣の定める基準以上であればよいとして、郵便集配人等をも対象としたところに相違があります。また政府案では、公害病認定患者が指定地域外に住所を移したとき、または住所が指定地域でなくなったときには、一定期間で給付が打ち切られますが、わが党案では、指定疾病もしくは障害に該当しなくなったと認められるまで打ち切られることはないのであります。
 第三は、医療費等の支給について、政府案のような所得制限等の制限を設けていないことはもとよりでありますが、医療費について、政府案では、国民健康保険の一部負担金分のみが支給されるのに対し、わが党案では、健康保険法その他の社会保険各法及び健康保険臨時特例法による一部負担金分をも支給することを定め、また介護手当について、政府案は、介護を受けても介護に要する費用を支出しない場合には介護手当の支給をしないこととしておりますが、わが党案では、介護を必要とする状態にあり、かつ、介護を受けている者に対しては、当然支給をすることといたしております。
 第四に、生活援護手当については、生計基準額と収入とを比較し、収入が生計基準額を下回ることとなったとき、その差額を生活援護手当として支給し、安んじて療養できるよう措置いたしております。
 第五に、物にかかる被害についての救済は、生計基準額と収入とを比較し、収入が生計基準額未満となったとき、政令で定める期間、その差額を特別手当として支給することにより、物にかかる被害の打撃から立ち上がれるよう措置いたしております。
 第六に、費用は、政府案では、国、県、政令で定める市、事業者の四者負担方式をとり、そのうち事業者は、拠出金として拠出することになっております。その場合、政府案に基づく中途はんぱな拠出で事業者に免罪符を与えたことになる危険性があるのでありますが、わが党案では、これを排し、国が費用を受け持ち、反面、国は支給した額の限度において、その支給を受けた者が加害者に対して有する損害賠償の請求権を取得することとして、加害者の責任を徹底的に追及することといたしております。
 次に、公害紛争処理法案について、その概要を御説明申し上げます。
 第一に、公害の紛争については、和解の仲介及び調停の制度並びに裁定制度を設けて解決をはかることといたしておりますが、政府案の仲裁制度に対し、裁定制度を設けたことがわが党案の大きな特徴であります。すなわち、救済法によって当面の費用は十分めんどうを見てやり、いたずらに加害者に有利となるような妥協を排し、加害者の責任を徹底的に究明するため、当事者の一方のみの申し立てでも開始される準司法的な裁定制度を設けたのであります。
 第二に、組織としては、中央に国家行政組織法による三条機関たる公害審査委員会を、都道府県に公害紛争調停仲介委員会を設けることといたしております。中央は裁定を、地方は和解の仲介及び調停を行なうのであります。
 第三は、中央の公害審査委員会に公害専門調査会を設けたことであります。公害紛争の焦点は、因果関係の究明が困難な点にあるのでありますが、これを究明させるため、権威ある自然科学者を専門調査会に動員いたしまして、これに自然科学上の判断を行なわせ、法律的判断たる裁定はその意見に基づいて裁定委員会が行なうこととし、専門調査会の委員及び臨時委員は、審理、証拠調べに立ち会い、独自でも事実調査をすることを認め、これによって裁判上救済の困難な事案を救済するレールを敷いたわけであります。
 第四は、裁定と訴訟との関係について、特に、大気の汚染または水質の汚濁によって生じた人の生命または身体にかかる被害についての損害賠償に関する紛争その他の民事上の紛争については、裁定を経た後でなければ訴訟を提起することができないこととし、裁定の権威を高めるための機構、運営に万全を期することといたしております。裁定委員会の証拠調べ及び証拠保全、職権探知、立ち入り検査等も、公害専門調査会の活動と相まち、裁定の科学性、合理性、客観性を立証するための必要な措置と申すべきであります。
 第五に、裁定の効力は、裁定について、裁定書の正本の送達を受けた日から三カ月以内に訴えの提起がなかったとき、裁定の内容について当事者間に合意が成立したものとみなすことといたしております。
 以上、公害関係二法案の提案の理由とその概要を説明したわけでありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御賛同くださいますようお願いを申し上げまして、二法案の趣旨説明を終わる次第であります。(拍手)
     ――――◇―――――
 公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法案(内閣提出)及び公害紛争処理法案(内閣提出)並びに公害に係る被害の救済に関する特別措置法案(角屋堅次郎君外十二名提出)及び公害紛争処理法案(角屋堅次郎君外十二名提出)の趣旨説明に対する質疑
#19
○議長(石井光次郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。島本虎三君。
    〔島本虎三君登壇〕
#20
○島本虎三君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありました公害関係二法案について、総理並びに関係大臣等に対し、若干の質疑を行なわんとするものであります。
 一昨年、第五十五国会における公害対策基本法案の審議の際、佐藤総理は、公害紛争処理機関の整備と無過失責任制度については前向きに検討すると述べ、人間尊重と国民の健康を確保し、生活環境を保持することこそ政治の大目標である旨、答弁を行なったのであります。公害対策基本法が制定されて三年、水俣病、イタイイタイ病、四日市ぜんそくが公害病と認定されて二年にもなりますが、これによって公害病がいささかなりとも減少するどころか、今日ますます激増の一途をたどり、広く深く国民の生命、財産をむしばみ続けているではありませんか。昨今、政府自身が箱根をはじめとする国立公園にさえ、急遽緑を守るための特別の措置を講ぜざるを得ない状態に追い込められていることは、すでに御承知のとおりであります。
 いささか古い統計ではありますが、一九六五年六月二十五日のニューヨーク・タイムズの伝えるところによりますと、アメリカでは国民一人当たりの公害による損失は年間六十五ドルであるといわれ、アメリカ全土で百十億ドル、邦貨に換算すれば約三兆九千六百億円、まさに日本の国家予算の四割に該当する額が公害によって失われていると報ぜられたのであります。また、昨年の大阪市や川崎市で調査したところによりますと、一世帯当たりの家計被害が大阪で一万四千円、大阪市総計百二十九億円、川崎市では年十万円の家計被害が報ぜられているのであります。公害は、知らないうちに国民の家計費にまで忍び寄り、ささやかな生活をさえ脅かしているのであります。
 公害は現代における最も深刻な問題の一つとして、先進諸国におきましてもその対策に苦慮していること、御承知のとおりでありますが、わが国のごとく、その公害による被害が今日のように拡大してからではすでに手おくれであり、施策の重点は、あくまでも企業責任において公害予防を行なわせることに置くべきであったと思うのであります。しかるに、自民党政府による施策は、今日なお産業優先、企業擁護の範囲を一歩も出ないものであり、その政治責任は国民的批判の対象とさるべきであると思うのであります。昭和四十四年度予算の編成に際しても、自衛隊員六千名、警察官五千名の増員は認めても、わずか七名の公害担当官の増員は認めず、政府みずから公害病と認定しても、その治療対策の積極的開発をサボってきた態度こそ、公害紛争をいたずらに長期化させている原因であるといっても過言ではないと思うのであります。(拍手)
 私は、ここで人間尊重を主張された佐藤総理に思い起こしていただきたいのであります。
 富山県にイタイイタイ病が発生して二十三年を経ております。熊本県に水俣病が発生して足かけ十六年であります。この間、イタイイタイ病では百数十名が死亡し、水俣病では四十名以上の死亡者を出しているのであります。これこそ企業の人命を無視した生産活動による社会的殺人といっても過言ではありません。(拍手)この責任は当然当該企業にとらせるべきであります。いまなおこの問題の早期解決すらできないなら、人間尊重などという誇大広告の看板を即刻引きおろさなければなりません。(拍手)
 そこで、私は総理に具体的にお伺いいたします。
 熊本の水俣病に見られるように、企業責任が明確になったにもかかわらず、いまもって補償問題の解決がおくれている最大の原因こそ政府の怠慢であると考えるのでありますが、総理はこの点について、公害対策会議の最高責任者としていかなる政治責任を感じておられますか、誠意ある御答弁を承りたいのであります。
 次に、総理並びに総務長官にお伺いいたしたいと思います第二点は、今回提案された公害関係法案が、その作成の段階でいわゆる基地公害が除外されたように、内容が、総理の一昨年の国会答弁とはおよそかけ離れたきわめて不十分なものだといわざるを得ないことであります。これは国民が多くの不満を抱いていることを見ても明らかであります。
 総理は、この二法案が、国民が満足するに足る十分な内容を持ったものだとお考えになっておるのでしょうか。現に被害のある基地公害を、紛争処理法案の適用外とした理由はどこにあるのですか。また、今後はどのように救済の道を開く方針であるのか、御答弁願いたいのであります。
 第三点は、農水産物等の物的被害により生活権すら脅かされている者に対して、何ら生活保障の措置が講ぜられていないことであります。
 公害病患者の多くは、生活の道を断たれ、一家の働き手を失った家庭が多いのであります。紛争処理機関によってたとえその補償がなされたにしても、その間、これらの被害者の生活を保障する道がない限り、安心して治療に専念することができないのであります。このような立場にある者に対して、いかなる生活保障の施策を施されるおつもりなのか、率直な御意見を承りたいのであります。
 次に、公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法案について、厚生大臣にお伺いいたします。
 第一は、この法律の適用の対象についてであります。
 政府案によりますと、救済の対象を大気の汚染と水質汚濁にかかる健康被害のみに限定しているのであります。本案が、騒音、振動、地盤沈下、悪臭による場合を除外しているのは、いかなる理由によるのでありましょうか。また、適用範囲も、水俣病、イタイイタイ病、四日市ぜんそく等に限定されるようであるが、大阪、川崎、東京、安中等の公害患者も当然その適用を受けてしかるべきだと考えるのでありますが、今後、これらを本法案の適用対象とするのはいつのことでありましょうか、この点、承りたいのであります。
 第二は、対象となる医療給付の範囲であります。
 政府案によりますと、健康保険による医療費のうち、自己負担分のみを支給するにすぎないのでありますが、これでは救済の実効を著しく減少するものであることを指摘しなければなりません。何となれば、公害病のごとき、治療も困難で、原因究明の容易でない疾病は、健康保険の診療方針のワク内では、とうてい治療し尽くせるものではありません。健康保険の診療方針によらない医療でも支給対象に当然すべきだと思うが、御所見を承りたいのであります。
 第三にお尋ねいたしたい点は、所得制限の問題であります。
 政府案によれば、医療費、医療手当、介護手当のいずれにもきびしい所得制限を設けることになっておるのであります。このように医療の救済になぜ所得制限を設けたのか、その理由を承りたいのであります。すべての国民がひとしく医療を受ける権利を有することから見ても、全く納得できないところであって、おそらく国民の批判は免れ得ないでありましょう。
 第四は、医療費の負担についてであります。
 この問題点は、公害の発生者が明らかになった場合には、立てかえ払いをした国が加害者に対して求償権を持つべきであるにかかわらず、最も弱い立場にある被害者住民に損害賠償請求権をゆだねてしまったことであります。法的責任、道義的責任をすべて回避しようとする加害者企業に対して、被害者住民がどれだけの要求を貫くことができるかは、公害の紛争がこじれて補償問題も解決しないまま、絶望的な苦難にあえぐ公害患者が、苦しみの中で一番よく知っているのであります。社会保障制度審議会も、政府に求償権が明白な場合には、それを国または地方公共団体がかわって行使すべきだと勧告しているのであります。この点について厚生大臣の御意見を承りたいと存じます。
 次に、公害紛争処理法案について、総理府長官にお伺いいたします。
 まず第一は、国の中央公害審査委員会が準司法的行政機関として、省庁並みの強い権限を持った国家行政組織法の第三条機関ではなく、総理府の付属機関、すなわち同法八条機関として位置づけられたことであります。これでは、遺憾ながら、いかに名目上立ち入り権を認めたといえ、紛争処理や被害者救済等の実効をあげ、加害者の主力である大企業から弱い立場の被害者住民を守ることは、とうてい期待できるものではありません。たとえば、公害紛争の処理には高度の技術的、科学的、法律的専門知識が必要であって、専門的調査機関を紛争処理機関の下部に常設していることが不可欠の要件であると思うのですが、この点について総務長官の御所見を伺いたいのであります。
 第二にお尋ねいたしたいことは、紛争処理の最終段階である仲裁が、加害者の合意がなければ、被害者は制度の適用を受けられないことになっていることであります。
 従来の公害紛争の例から見て、このような条件を設けた制度ならば、その活用はほとんど期待できないことは、だれの目にも明らかではないでしょうか。公害紛争処理の重要性にかんがみ、調停、仲裁は、被害者よりの申請があれば直ちに発動し得るようにして初めて実効があがるものといわなければならず、場合によっては職権仲裁を講ずる必要さえあると思いますが、御所見を承りたいのであります。
 第三に、調停、仲裁の内容が非公開とされたことであります。
 このような秘密主義は、法的責任、道義的責任をすべて回避し、あいまいにしようとする加害者にはまことに有利であっても、被害者には著しく不利なことは、実例を見れば明らかではないでしょうか。公開をあくまで原則とすべきであると思うが、いかがでしょう。
 最後に、特定有毒物質、水質二法の改正、裁判の簡素化などについて、関係大臣にお伺いいたしたいと思います。
 まず、通産大臣にお尋ねいたします。
 いわゆる有機水銀やカドミウムの流出による被害は、いまや生命に対する脅威にもなってきたことは御承知のとおりであります。しかしながら、これらに対する法的規制が何ら有効に行なわれていないことはまことに遺憾であり、政治の怠慢といわなければなりません。通産大臣はこれに対しいかに対処せんとしているのか、お伺いいたしたいところであります。
 次に、経済企画庁長官は、水質二法の主管大臣として、現在のままで水質保全は万全と考えておられるのでしょうか。人間の生命にかかわる重大な公害の発生源は、かかって河川を中心にして惹起されていることを考えるとき、その改正は目下の急務であると思うが、どうでしょうか。
 次に、法務大臣にお伺いいたします。
 公害紛争の中で最も困難なことは、因果関係の究明であります。たとえ訴訟に踏み切っても、結審に至るまで長年月を要し、被災者の多くは、生活に窮し、訴訟費用すら満足に支払えない状態に追い込められるのであります。民事訴訟法により免除規定はあるとしても、公害の特殊性にかんがみ特別の措置が必要であり、また、裁判の進行についても、実情に見合った運営をすべきであると思うが、いかがでございましょう。また、公害罪の新設について検討を進めているようでありますが、その内容等についてお示し願いたいのであります。
 また、運輸大臣にお伺いいたしますが、民間航空騒音と自動車の排気ガスの規制は、騒音と大気汚染には重大な影響があるのでありますが、この規制の具体策並びにその効果について、国民の前に明らかにしていただきたいのであります。
 なお、社会党案の提案者である角屋議員には、党案と政府案の基本的な相違並びに政府案の欠陥と思われる点を御説明願いたいのであります。
 最後に、私は、富山のイタイイタイ病患者で訴訟に踏み切った一婦人のことばを、そのまま総理並びに各大臣にお伝えいたしたいのであります。それは、「私は金を取りたくてやっているのでありません。私の母もこの病気で死んでしまいました。しゅうとめも死にました。いま私もかかっています。私が食いとめないで、だれがやってくれるのでしょうか。そう思ってやっているのです。」経済繁栄の陰に泣く公害病患者の救いを求める心底からのこの叫びに耳を傾け、誠意ある答弁を期待いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔角屋堅次郎君登壇〕
#21
○角屋堅次郎君 島本議員のほうから御質問がございました点は、政府案と社会党法案を比べまして、政府案の欠陥と両法案の基本的な差異について簡潔に御説明願いたいということであります。私は、先ほどの社会党の二法案の提案理由の説明の中でも、政府案の欠陥、問題点については、要点は触れたつもりでありますが、せっかくの御質問でございますので、簡潔にポイントだけをお答え申し上げたいと思います。
 まず、救済立法の点でありますが、先ほども私指摘しましたように、政府の法案では、救済の対象が大気汚染と水質の汚濁にかかる健康被害だけにとどめられておる。これは現行の公害対策基本法からいきましても、そのほかに騒音であるとかあるいは地盤沈下であるとか悪臭であるとか、公害にはそれぞれさらに多くの問題があるわけであります。したがって、やはり救済法案の場合も、単に大気汚染、水質汚濁にとどまらず、他の公害にかかる被害の救済についても当然対象にすべきであると考えるのであります。
 さらに、政府案では、人的被害、健康にかかわる被害だけが取り上げられております。しかも、それは大気汚染と水質の汚濁にかかる健康被害でありますが、わが党案をごらんになればわかりますように、公害の対象が全般的に及んでおると同時に、人的被害ばかりでなしに、物的被害の場合にも、いわゆる物的被害によって生ずる生活面というものについての生活補償は最低限やらなければならぬ、御承知のようにこういう立場に立っているわけであります。
 さらに、政府案が、こういう限られた対象、限られた給付の中で、しかも所得制限を行なっていることは御承知のとおりであります。やはり公害にかかわる被害に呻吟する患者に対しては、所得の大小にかかわらず、これに対してめんどうを見るということは、公害の基本理念から見て当然のことだと考えるのであります。しかも、政府の手当てをいたしますのは医療費、医療手当、介護手当、しかもこれは、こまかくは申しませんけれども、いろいろな制限を設けていることは御指摘のとおりであります。したがって、われわれの場合には、生活保障面を含めて、あるいはなくなられた場合には埋葬料等も含めて、配慮をいたしておるのであります。
 さらに、医療給付の問題についても、政府案は単に健康保険法の自己負担分のみめんどうを見るということでありますが、社会保険各法について配慮することは当然必要であると考えるのであります。
 また、費用負担分と関連をいたしまして、政府案では、いわゆる事業者、国、県、政令で定める市、この四者負担の形式を考えておるわけでありますが、その場合に、事業者のいわゆる拠出という形で出しておる分が免罪符的な性格になってはいけないという点を配慮すると同時に、やはり公害の紛争との関連もありますけれども、公害の被害者というのは、どうしても相手側に対しては弱い立場に置かれておるわけでありまして、わが党案では、国が費用のめんどうを見ると同時に、国がめんどうを見た分について、加害者に対する国の求償権行使ということを通じて、加害者の責任を徹底的に追及する、これが公害絶滅にも大きく貢献すると考えておるのであります。
 紛争処理法案について若干申し上げたいと思います。
 先ほども島本議員御指摘のように、組織については、公害対策基本法の論議がなされたときにも、多くのこの方面の世論は、いわゆる八条機関ではなしに、国家行政組織法第三条機関として、独立権限を持って公害の問題に対処すべきだというのが、ほうはいたる世論の声でありました。したがって、われわれは、その世論を公害対策基本法の論議以来受けまして、紛争処理法案についても三条機関をとっておるのでありまして、政府案の八条機関では十分な成果をあげ得ないことは、今日までの経過からも明らかであろうと思うのであります。
 さらに、政府案は、和解の仲介、調停、仲裁と、この三つのシステムをとっておりますが、先ほど私も申し述べ、また島本議員も御指摘のように、政府の紛争処理制度の最終段階である仲裁については、一方または双方から申し入れができるようになっておりますけれども、一方から申し入れたときには相手側の合意を必要とするということになっておりまして、事実上加害者の合意がなければ仲裁は発動されない。今日の日本の企業の倫理観、責任感ということから申しましたならば、いわゆる加害者の合意を必要とする政府案では、実際には発動しないことに相なるのじゃないかというのがマスコミの一致した批判でございます。わが党案は、それに対しまして、いわゆる和解の仲介、調停、と同時に準司法的な権威あるものとして裁定制度を設けた点が、政府案と全く異なった点であります。いやしくも裁定制度を実施するという以上は、やはり自然科学の面についても、日本の学界における専門家を網羅いたしまして、自然科学面の判断は、これらの意見を中心にして自信ある裁定をする、そのために公害専門調査会を公害審査委員会の中に設けておることも御承知のところであろうと思います。
 最後に、政府案が基地公害を除外しているという点は、先ほども私は触れましたけれども、これは人間の健康、生命よりも軍事を優先する政府・自民党の体質が端的にあらわれたものでありまして、基地から出る騒音、震動の被害者については、他の産業公害と同一であって、基地公害を除外するという考え方は、私どもの了承し得ない点でございます。
 以上、数点について簡潔に御答弁申し上げました。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#22
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 島本君にお答えいたします。
 今回私どもが御審議いただこうという公害関連の二法は、その内容は、公害対策として全く新しいものでありますし、また四十四年度予算はたいへん少ない、こういう御批判でありますが、四十四年度予算は積極的に充実をはかったつもりでありますので、公害対策は飛躍的に充実するものと、私はかように確信しております。社会党の方が先入観で、産業優先で、公害被害に対して政府がこれをあとにしているんじゃないか、こういう考え方、これは先入観を持っておられるようですが、今回の処置は決してさようなものではございません。
 また、公害対策のための七名の増員さえ認めない、このおしかりもございましたが、これは総定員法さえ御了解いただければ、現在の厚生省の定数で十分まかなえるのでございます。これらの点をよく御認識いただいて、他で御審議をいただいております総定員法の機能をこの際よく御認識いただくことが、もっと大事ではないか、かように思います。(拍手)
 次に、今回の問題から基地公害というものをはずしておる、こういう御批判でございますが、御承知のように、防衛施設周辺整備法等の運営によりまして、周辺住民の生活の安定や福祉の確保のための措置が実行されつつあるので、これを除外したものでございます。この点は島本君もよく御承知のことだと思います。したがって、私どもは基地公害を放任しておこう、こういう考えでは、もちろんございません。また、現在のところ、防衛施設周辺整備法の改正は、特にこの際は必要ない、私はかように考えております。
 その他諸点についていろいろお尋ねがございましたが、それぞれ関係大臣からお答えさすことといたします。(拍手)
    〔国務大臣斎藤昇君登壇〕
#23
○国務大臣(斎藤昇君) 公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法案のうちで、救済は大気汚染、水質汚濁による健康被害に限った理由いかんということでございますが、他の公害から、今日まだ公害病患者というようなものが認定されておりませんし、そのおそれもほとんど考えられませんので、したがって、公害病患者といたしましては、この二つに限ってしかるべきであろう、かように考えた次第でございます。
 なお、京浜、大阪方面の公害ぜんそく、これはどうするかというお尋ねでございますが、京浜も、それから大阪方面も、なるべく近いうちに決定をいたしまして、公害病患者の認定のできるようにいたしたい、かように考えております。
 なお、医療の範囲は社会保険の範囲では狭いではないかというお尋ねでございますが、このたびの措置は、公害による原因者の加害を民事賠償の責任をかわってやるというのではなくて、さしあたって行政措置として、医療に欠くることのないようにいたしたいというのがねらいでございます。したがいまして、医療といたしましては社会保険の範囲内で十分できる、かように考えたからでございます。
 また、所得制限を若干つけましたのも、いま申しました、医療にこと欠かないという意味でやったわけでございますので、したがって、生活保障等も、必要があれば、これはその生活保障の面で保障をいたしていくわけで、あくまでもこれは行政措置でありまして、原因者のいわゆる損害賠償を立てかえ払いとして先にやるという、こういう趣旨ではないわけでございますので、御了承いただきたいと存じます。したがいまして、立てかえ払いをして、あとで加害者からそれを国が求償をしないのはおかしいというお尋ねでございますが、先ほど申しました理由によって御了承いただきたいと存じます。(拍手)
    〔国務大臣大平正芳君登壇〕
#24
○国務大臣(大平正芳君) 有機水銀、カドミウムに対する流出規制が手ぬるいではないかという御質疑でございますが、有機水銀につきましては、去る二月三日、規制対象水域を拡大いたしまして、三月十三日には規制対象設備を追加いたしまして、排出規制を充実させることにいたしております。
 カドミウムにつきましては、鉱山保安法によりまして、現に鋭意規制を行なっておる次第でございます。(拍手)
    〔国務大臣菅野和太郎君登壇〕
#25
○国務大臣(菅野和太郎君) 毒性の重金属の河川放流によって水質が汚濁し、それがひいて人命に影響を及ぼすということについての対策があるかどうかという御質問であったと思います。
 御存じのとおり、水質保全法によりまして、水質が汚濁した場合には、それが人命に影響するのを防止するために水質基準というものを定めておるのであります。すでに、メチル水銀につきましては、その水質基準を定めまして、一部は実行し、また、近く全国的に実行する予定であります。
 先ほどからお話しのイタイイタイ病の原因であるカドミウムにつきましても、厚生省並びに通産省においていま調査中でありますからして、その結果によって水質基準をきめたいと考えておる次第であります。(拍手)
    〔国務大臣西郷吉之助君登壇〕
#26
○国務大臣(西郷吉之助君) まず、公害に関連いたしまして、民事上の訴訟の促進と訴訟の救済についてお答え申し上げます。
 公害問題を含めまして、民事訴訟の促進ということは、一般的に国民がひとしく願うところでありますので、裁判所においても鋭意その努力をしておるわけであります。また、訴訟救助を受けようとする人は、裁判所にその実情を申し立てて、資力のないことを疎明すれば、裁判所はその事情を十分参酌いたしまして、訴訟費用の支払い猶予等の救済措置を認めることになっておるのであります。そのほかに、全国に法律扶助協会がございまして、そのほうに事情を申し出れば、弁護費用の立てかえ等の救済措置も受けられることになっております。
 第二点の、刑事上の訴訟促進と公害罪の新設についてお答え申し上げます。
 従来、公害に対しましては、公害取り締まりのための特別法の中に定められておりまする刑罰のほか、主なるものといたしまして、刑法の業務上過失致死傷罪の適用を検討してきたのでございまするが、この刑法の規定は、御承知のとおり、要件といたしまして、結果の発生を必要とするものであるために、行為と結果との間の因果関係の立証がきわめて困難でございます。そこで、現在法制審議会刑事法特別部会におきまして、致死傷の結果の発生を必要としない規定を新設いたしますことにつきまして、目下検討がなされておるのでございます。私といたしましては、この法制審議会の答申を待ちまして善処をいたしたいと考えておるのでございます。このような規定ができますれば、この種の刑事訴訟の促進に大いに役立つものと確信いたしておる次第であります。(拍手)
    〔国務大臣床次徳二君登壇〕
#27
○国務大臣(床次徳二君) まず最初に、紛争処理法案におきましては基地公害を除いているではないかという御意見でありまするが、今回の紛争処理法案におきましては、いわゆる基地公害といわれます防衛施設にかかわるところの障害に関しましても処理の対象としておるのでありますが、ただ、その性質が、いわゆる自衛隊等の行為によるところの特殊性にかんがみまして、なお第二点といたしまして、政府は、すでに防衛施設周辺の整備等に関する法律等によりまして、障害防止工事の助成あるいは民生安定施設の助成、損失の補償等につきまして手厚い措置をいたしております。なお、異議の申し出等の制度を講じておりますゆえに、現在の一般産業公害とは異なるところの取り扱い方法によりまして解決せんとするものであります。
 次のお尋ねは、三条機関にしなかった、これでは不十分ではないかというお話でありまするが、政府の案におきまする八条委員会におきましても、本委員会の目的とするところの委員会の中立性、独立性というものを十分に保ちながら、なお委員会として処理に必要なところの権限を持たしておるのであります。すなわち、総理大臣の所管のもとにおきまして、委員長及び委員に対しましては独立の職権を行なう。なお、その任命等におきましては国会の同意を要することにいたしました。なお、その地位を保障することにいたしております。そうして独自の立場でもって、公害紛争の適正な解決をはかり得るようにできておるのでありまして、八条機関でありましても、設置の目的に十分役立つものと考えております。
 なお、その委員は、もとより識見の高い人を選ぶことになっておりますし、なお、仲裁、調停等におきましても、その審査のために必要な権限も与えられておりますし、なお補佐する職員もありまするばかりでなしに、なお関係行政機関の長等に対しまして、公害の原因に関する資料その他の技術的知識の提供等も協力を求めることができるのであります。したがって、研究機関等を設けなくても、その目的を十分に達することができると思うのであります。
 次に、政府の案におきましては、加害者のみを保護する結果になるのではないか、強制力がないではないかという御意見でありまするが、政府の案といたしましては、今日民事訴訟によってこの問題を解決するということがいろいろと困難が少なくないのでありまして、したがって、社会的の観念におきまして適正にかつ迅速にこれを解決する、かような趣旨から仲裁、調停という趣旨において設けた次第でありまして、十分円滑にその目的を達することができると思っておるのであります。
 なお、その内容等につきまして、調停、仲裁等が非公開であるという点につきまして御懸念をお持ちのようでありまするが、実は調停というものは、訴訟とは異なりまして、当事者の互譲の精神によりまして紛争の解決をはかるものであり、このため当事者の双方がお互いに意見を十分に胸襟を開いて述べ合い、その意見の調整をはかることが必要であるわけであります。したがって、本法案におきましては、この公害の特殊性にかんがみまして、十分にその効果があがりますように、あえて非公開にいたしておる次第であります。
 以上です。(拍手)
    〔国務大臣原田憲君登壇〕
#28
○国務大臣(原田憲君) 航空機騒音対策に対しましては、四十二年八月に航空機騒音防止法が制定されて以来、同法に基づき、東京、大阪両空港周辺における小中学校の騒音防止工事の助成及び共同利用施設の助成を行なっております。特に明四十四年度予算案においては、本年度の約二倍に相当する十億円の補助を予定する等、強力に対策を講ずる所存であります。
 また、昨年八月には、航空機騒音防止法に基づく対策を補完する目的で、財団法人航空公害防止協会を発足させ、所要の対策を実施させることといたしております。
 さらに、東京国際空港においては、昨年十一月からB滑走路を延長する工事に着手しており、四十五年度にこれが完成すれば、同空港周辺の騒音は大幅に軽減されることとなります。
 次に、自動車排出ガスの規制につきましては、第一に新車については、現在一酸化炭素濃度を三%以下にするよう規制を行なっておりますが、本年秋からは二・五%以下と、さらに規制を強化し、昭和四十四年度において、外国製輸入自動車についても同様の排出規制を行なう方針であります。
 第二に、使用過程の中古車につきましては、同じく昨年十二月一円に道路運送車両法第四十八条に基づき、排気ガスによる大気汚染防止に必要な定期点検基準を定め、その励行をはかっているとともに、さらに道路運送車両法第六十二条に基づく継続検査の際に、一酸化炭素濃度の検査を行なうべく所要の体制を整え、定期点検整備の状況を確実に検査する方針であります。このため、昭和四十四年度において、東京、大阪、名古屋の検査場に所要の設備をして、排気ガス検査の実施準備を進めてまいります。(拍手)
    ―――――――――――――
#29
○議長(石井光次郎君) 折小野良一君。
    〔議長退席、副議長着席〕
    〔折小野良一君登壇〕
#30
○折小野良一君 私は、ただいま趣旨説明のありました内閣提案の公害二法について、民社党を代表して若干の質問をいたします。(拍手)
 およそ公害対策の要諦は、公害発生の原因に深くメスを入れ、その原因をなくするための十分な措置を講ずることにあることは申すまでもないところであります。そのため、公害対策基本法において、それぞれの立場における責務を明確にし、基本的な対策の基準を示し、公害防除のための科学技術の開発を要請しているのであります。しかしながら、現実にはこれらの基本的な対策が進むより以上の速さと広さをもって、公害は国民の健康とその生活をむしばみつつあるのであります。公害に関する紛争はますます激化し、公害による被害はいよいよ増大しつつあります。このような現実に対処するために、今回紛争処理並びに健康被害の救済に関する二法案の提出を見ましたことは、一歩前進であるとは申せ、一面まことに悲しむべき事態であると申さねばなりません。(拍手)
 まず、紛争処理法案について質問をいたします。
 第一に、多くの公害紛争が、経済主義に対する不信、ことに企業側、加害者側の態度に対する不信がうっせきし、これが爆発して不測の事態を惹起する例が多いのであります。このことは、何よりもまず経済の発展をすべてに優先し、生産第一主義をとる高度成長政策に根本の原因があるのであります。佐藤総理のいわゆる社会開発あるいは人間尊重の理念が、いわば口頭禅に終わっていることの証拠でありましょう。人間尊重とは、端的にいって、他人に迷惑をかけないというきわめて初歩的な心がまえから発足すべきものであります。今日、公害が幾百人の人命を奪っている、公害が幾千人の健康をむしばんでいる、そして公害が幾百万人の生活環境を阻害している、このような多くの迷惑を社会にかけていて、しかも、そのことに関する対策が遅々として進まず、紛争の多くが解決を見ていないのであります。このようなわが国経済の実情を、総理の社会開発ないしは人間尊重の立場からどのようにお考えになるのか。その心情と決意のほどを御披瀝を願いたい。(拍手)
 第二は、国民総生産において世界第二位を呼号いたしておりますわが国産業界の公害に対する心がまえであります。
 さきにも述べましたとおり、多くの公害紛争が、加害者である企業に対する不信に根本の原因がある場合が非常に多いのであります。生産力増強のその意欲のせめて万分の一を公害対策に振り向けられないものなのか。生産力を高めるための技術のせめて千分の一を公害防除技術の向上のために発揮できないものなのか。生産につぎ込む経費のせめて五%を公害対策費に回すことはできないのか。経済は本来人間の幸福に奉仕すべきものであります。人間を犠牲にして何の経済の発展ぞやというべきでありましょう。産業指導の立場にある通産大臣の所信をお伺いいたします。
 第三は、この法案の国会提出までの過程におきまして、いわゆる基地公害を除外されたことであります。
 なるほど、基地に関しては、防衛施設周辺の整備等に関する法律があり、一定の措置がとられるようになっております。先ほど総理もそのように御答弁になりました。にもかかわらず、基地公害ということばが生まれるほど、基地に関連した公害が多く発生をし、そのための紛争もあとを断たないのが現状でございます。相手が基地なるがゆえに、国民は泣き寝入りをせよというのでありましょうか。そこに紛争がある以上、当然これを処理するための措置が講ぜらるべきであります。態様が違うというのでありますならば、その態様に即した措置がとらるべきであります。何がゆえに基地公害にかかわる紛争処理を除外したのか。また、別途にいつどのような具体的な措置を講じようとされるのか。総理府総務長官並びに防衛庁長官の御答弁をお願いいたします。
 第四に、紛争処理は、それが公正にかつ能率的に行なわれることが必要であります。
 このような見地から、中央、地方における紛争処理機関が、不偏不党、その独立性が確保されなければなりません。また、その処理手続が公明であり、処理の結果が確実に履行される保障がなければなりません。水俣病に関する紛争も難航をいたしております今日、これらの点についての法案の規定は、不明確、不徹底、まことに不十分であります。はたしてこのようなことで紛争処理の実効を期待しておられるのか。総務長官の御見解をお伺いいたしたいと思います。
 次に、健康被害の救済法案について質問をいたします。
 およそ何らかの被害があった場合に、その被害の救済と補償を行なうべきものは当然にその加害者であります。しかし、公害の実態から見て、その態様がきわめて複雑不分明であり、因果関係の究明にも時間がかかるところから、とりあえずの被害の救済を制度化すべきである、こういうのがこの法案の本来の趣旨でございます。
 したがって、まず第一に、公害によって発生したと予想される被害で救済を必要とするものは、すべてこれを救済の対象とすべきであります。健康上の被害はもちろんでありますが、随伴して起こる経済上の問題がございます。公害病のために苦しんでいる人々の多くは、肉体的、精神的苦しみもさることながら、そのために生活の維持ができなくなるという経済上の理由もまた無視できないのでございます。現に水俣病患者の一家の悲惨な実情を見ますとき、健康に対する救済はもちろんでありますが、経済的な面についても適切な救済措置が講じてあるべきであったはずでございます。政府の救済法案が、大気汚染と水質汚濁のみを原因とする健康被害だけに限定いたしたことは、公害による被害の救済という本来の趣旨、そして公害対策基本法の精神から申しましても、不十分であることは明らかであります。しかも、後に述べるように、さらに多くの制限規定を設けようといたしております。この点につきまして、総理並びに厚生大臣の被害救済についての基本的な姿勢をお伺いいたします。
 第二に、政府案が救済の対象としておりますのは、一定の地域の特定の疾病に限定していることについてであります。
 もちろん、今日はっきりいたしております水俣病やイタイイタイ病や、あるいは四日市ぜんそく等については、直ちに国の救済措置が講ぜらるべきであります。しかし、これらの公害病が今日のようにはっきりするまでに、どのような経過をたどり、どれほどの日時を要したか、あえて申し上げる必要はないと思います。その最も初期の段階においてこそ、とりあえずの救済が必要ではなかったのでしょうか。そのときのためにこそ、救済のための制度をつくっておく意味があるのではないでしょうか。今日、公害はいつ、どこに、どのような形で発生するかわからない、そのような現実に対処し得るものとしておくことが最も必要なことであって、その点から申しましても、この法案は全くのおざなりと申さざるを得ないのであります。(拍手)厚生大臣の確たる御答弁をお願いいたします。
 第三は、加害者救済の原則についてであります。
 今日、公害対策が進まない原因の一つに、企業の社会的道義のきわめて低いこと、公害についていえば、加害者意識が希薄であるということがいえると思うのであります。公害の特質をみのにして責任を隠蔽しようとする態度は、断固排撃すべきであります。被害の救済は、たとえ原因と責任の究明に時間がかかるといたしましても、機を失せず行なわなければなりません。しかし、とりあえずの被害の救済が行なわれたからといって、大臣の言われる、いわゆる行政措置を行なったからといって、そのために加害者の責任が免れるということであってはならないのであります。この法案において、医療費に対する所得制限が付され、加害者の賠償義務が規定されていないことなど、その責任を不明確にするものであります。加害者の責任を不明確にすることは、かえって本来の公害対策の推進をも阻害することになりかねないのであります。さらにこの際一歩を進めて、公害に対する無過失賠償責任を明確にし、公害罪の法定を急ぐべきであると思いますが、厚生大臣並びに法務大臣の御所見をお伺いいたします。(拍手)
 最後に、公害対策の基本から申しますと、紛争が起こらないこと、救済措置の必要がないこと、これが最も望ましいことでございます。そういう立場からいたしまして、実質的な防除対策、予防措置を極力推進すべきであることは申すまでもないことであります。そのために、私どもは、かねて公害行政の一元的効率化を強く主張してまいりました。今日ますますその必要性の大なることを痛感いたします。行政管理庁においても、行政整理と行政の効率化の立場から、共管行政の整理を打ち出しておられます。最も多元的な行政であり、その弊害を最も多く露呈しておる公害行政について、まずその一元化をはかり、国民的な立場から公害行政の効率化を推進すべきであると思います。行政管理庁長官の決意のほどをお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#31
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 折小野君にお答えいたします。
 政府の念願しております国民生活の一そうの向上、繁栄のためには、もちろん経済の成長が必要であり、望ましいことであります。しかし、このことは、御指摘になりましたように経済優先、こういうものではございません。どこまでも人を相手に、国民が目的であります。したがいまして、経済成長の際に生じますひずみとして起きてくるその現象あるいは犠牲は、これを極力防止し、あるいは少なくしなければならないことは、これまた当然であります。今回、関係の二法案を用意いたしましたのは、私の社会開発、人間尊重の何よりのしるしであり、これにより公害対策が飛躍的に充実し、均衡のとれた充実した福祉社会の建設に役立つことを期待しているものであります。
 次に、この基本的態度についてお尋ねがございました。私が申し上げるまでもなく、公害対策は今回初めての措置を進めようとするものであります。したがいまして、当面、最も必要性が高く、かつ実施可能な対策から取り組もうとするものであり、将来、この制度の運営の状況を見て、さらに改善を要する事項が生じ、かつ、適切な解決の手段が見出される場合には、逐次所要の改正を行なってまいりたい、かように考えております。何とぞ御協力願います。(拍手)
    〔国務大臣大平正芳君登壇〕
#32
○国務大臣(大平正芳君) 公害に対する企業側の心がまえについての御質疑でございました。
 ただいままで、私どもが企業家の公害に対する態度を見てまいりますと、すでにこれを与件として受けとめて、企業の経営に差しつかえない範囲において取り組もうというような態度ではなくて、企業経営の一つの大きな柱として、真剣に取り組もうという気概が十分に見えることを認めるものでございます。すでにその証拠に、電力とか鉄鋼とか、主要公害型業種の投資を見てみましても、公害投資が全設備投資の六%にも達しておる事実がこれを示しておると思うのでございます。しかしながら、防止技術の一そうの開発、それから防止設備の投資等につきまして、一そう私どもは積極的に勧奨、指導してまいらなければならぬと思いまするし、政府が厳正な規制を加えつつ、また適切な助成を講じつつ、公害の事前防止につとめてまいる所存でございます。(拍手)
    〔国務大臣床次徳二君登壇〕
#33
○国務大臣(床次徳二君) いわゆる基地公害を一般産業公害と別の取り扱いにいたしましたことにつきましては、その特質によることでありまして、これは防衛庁長官からお答えを申し上げる次第でございます。
 紛争処理に関しまして、公正かつ能率的に、不偏不党で独立性がなければならないということ、また、確実にそれが履行される保証がなければならないということに対しましては、ごもっともな御意見でございまするが、このために、今回設けまするところの中央公害審査委員会等、その独立性並びに中立性を十分に確保いたしておるのでありまして、委員の資格、任免等に対しまして、なお権限等におきましても、先ほど申し上げましたような配慮をいたしておる次第であります。なお、府県の審査会におきましても、同様に自主的にこれを行ない得るように配慮をいたしておる次第であります。なお、その手続等におきましては、互譲の精神ということを中心といたしまして、そして能率的にこれを行なうようにいたしたのであります。
 なお、最後のお尋ねでありまする紛争処理の結果が履行されるということが、最もこれは大事でありまするが、この紛争処理法案に基づくところの処理によりまして和解の仲介、調停の場合には、当事者間に和解契約が締結されまして、また、仲裁の場合には、確定判決と同一の効力を持つところの仲裁判断がなされることになります。その履行につきましては、一般事件同様、裁判所を通じてこれを請求することができるようになっておるのでありまして、したがって、その履行は保証されることができます。(拍手)
    〔国務大臣有田喜一君登壇〕
#34
○国務大臣(有田喜一君) いわゆる基地に関する障害を紛争処理法案の対象の外にした理由はどうか、また紛争処理のための処理法案にかわる法律をいつごろにつくるのか、こういうようなお尋ねでございましたが、御承知のとおり、自衛隊及び在日米軍の行為並びにその施設は一般の産業活動とは根本的に違いまして、その規制及び施設の設置、変更等は、第三者機関の判断にゆだねることは許されない性格を持っております。ことに、調停、裁定等を行なうものは、文書、物件の提出、立ち入り検査等を行なわなければ公正な処理ができない場合があるのでありますが、一般の企業とは異なりまして、防衛施設にはそのようなことが不適当であります。
 このような事情から、防衛関係につきましては、実体法の救済制度として防衛施設周辺整備法を設けまして、騒音の防止その他の障害の防止措置を講じて生活環境の改善につとめますとともに、住民の健康についてもできるだけその影響を少なくするような措置をしておることは、御存じのとおりであります。また、自衛隊等の特定の行為によって生じた特別の損失につきましても、これを補償いたしますとともに、補償金額などについて不服のある者に対しましては、異議の申し出の制度を設けて、紛争の処理を迅速に行なうこととしております。
 これらの紛争にあたりましては、防衛施設庁という特別な機関がございまして、地域住民の陳情とか苦情等につきましては、都道府県知事とか市町村長がこれを取りまとめて防衛施設庁に申し入れを行なって、実際上その仲介、あっせんによって紛争の解決に当たっておるような次第でありまして、本法案につきまして、「別に法律で定めるところによる。」ということとしたのであります。現在のところ、紛争処理法案にかわる法案を直ちに提出するというような考えは持っておりません。
 以上でございます。(拍手)
    〔国務大臣斎藤昇君登壇〕
#35
○国務大臣(斎藤昇君) 健康被害に対する救済の基本的な考え方いかんというお尋ねでございますが、先ほどもお答えいたしましたように、これは公害のために健康被害を受けられた方々に対しまして、社会保障的な行政措置、かように観念をいたしておるわけでありまして、原因者の支払うべき民事責任を、かわってあらかじめ先にやるという、こういう考え方ではございません。したがいまして、そこにいろいろな制限もつくわけであります。同時に、社会保障的な行政措置でございますから、まず、医療面についてとりあえずの措置をいたしたい、そうしてまた、生活に困るというような場合には、いわゆる社会保障の現存のあらゆる規定を適用いたしまして、生活に困らないような措置を講じたい、かような考え方でございます。
 なお、公害病の認定には相当時間がかかる、こういうお尋ねでございますが、公害病の認定は、今日の医療の知識を動員いたしまして、できるだけ早くそのおそれがある場合には決定をいたしたいと考えております。川崎地区あるいは大阪地区の公害ぜんそくは、ほとんど、私は、その地域をどうきめるかということで決定をする問題であって、そう長くかかる問題ではないと考えております。
 その他、いろいろ問題になり得るカドミウム汚染その他によって、公害病患者であるかどうかという点につきましては、できるだけ至急にその判定をいたしたい、かように考えております。先ほど申し上げますような趣旨でございまするから、この法案は、決して公害の加害者の責任を軽減するものでは全くありません。
 無過失損害賠償責任をいかに考えるかというお尋ねは、私は、個人的にはそれに近いものに考えてしかるべきものであろうと考えますが、これは私法、賠償の原理の問題でございまするので、法制審議会において十分検討をしていただきたい問題だと考えております。(拍手)
    〔国務大臣西郷吉之助君登壇〕
#36
○国務大臣(西郷吉之助君) 公害に関しまして、民事上の無過失賠償責任についてお答え申し上げます。
 わが国の法律は、御承知のとおり、個人の自由を守る立場から、過失責任を原則としておりまして、過失責任に対する例外をなす特殊の場合といたしましては、鉱業権者に対するところの鉱業法並びに原子力事業者に対する原子力損害賠償法等がございます。これらはいずれも原因と結果との間の因果関係が比較的容易に立証し得るのでございまするが、この場合には、危険な事業を営む者が原因を与えたことが明らかである以上、その責任を容易に追及し得るようにするため、必ずしも故意過失を必要としないものとされておるのでございます。これに反しまして、公害の場合におきましては、その発生の態様、程度、因果関係等がきわめて多種多様にわたっておりますので、ことに因果関係を必ずしも明確にしがたい場合が非常に多いわけであります。これらの問題を除外して、ただ無過失責任についてのみ一般的に立証することはきわめて困難な問題と考えます。
 なお、公害罪につきましては、先ほどお答えしたとおりでございまするが、現在、公害に対しまして、個人の責任だけでなく、企業自体の責任をどうするかということも、あわせて目下法制審議会で検討中でございます。(拍手)
    〔国務大臣荒木萬壽夫君登壇〕
#37
○国務大臣(荒木萬壽夫君) 折小野さんにお答え申し上げます。
 公害現象は、大気汚染、水質汚濁、騒音防止等、御指摘のとおりきわめて多元的でありますと同時に、したがって、これに対処する公害行政も、多角的でなければ実態に即応しがたいと存じます。さりとて、単に公害に関係があるという点だけで、異質な行政を一カ所に集めましても、他面、本来の行政の能率を阻害する結果となることがおそれられるのであります。しかしながら、関係行政機関が多岐にわたるために、公害行政が不統一で、実効があがらないようなことがあってはならないこと、これまた御指摘のとおりであると存じます。
 そこで、政府としましては、個々の対策の実施は、それぞれ関係各省庁が専門的分野において責任をもって推進するというたてまえをとりますと同時に、政府全体として一貫性を保ち、総合的な公害対策の調整、推進をはかっていくために、総理府に、内閣総理大臣を会長とし、関係各大臣を構成員とする公害対策会議を置いておりますので、これを活用してまいりまして、万全を期してまいりたい、かように存じておる次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#38
○副議長(小平久雄君) 岡本富夫君。
#39
○岡本富夫君 私は、公明党を代表いたしまして、今回政府が提出した公害紛争処理法案及び公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法案について質問いたします。
 戦後、わが国の公害問題は、大企業の無規制な立地並びに政府の無計画な都市過密化のために激増の一途をたどっており、昨年十二月には、国連の舞台にまでその重要性が問題化されております。これは、公害そのものが、わが国に限らず世界的に重大なる影響を及ぼしてきていることを示している証拠であります。
 昨年八月、政府は公害対策基本法を制定し、その実施法の具体化に着手してまいりましたが、すべて実情を無視したざる法といわざるを得ないものでありました。
 さて、今回提出した公害紛争処理法案について、まずお尋ねいたします。
 その第一点は、公害紛争処理の対象を、公害対策基本法の定義に、相当範囲にわたる六種類の公害と定めながら、本法に至っては、防衛施設周辺整備法第二条に定める在日米軍基地及び自衛隊基地を適用除外したことであります。これは、公害問題の中できわめて特殊で、重大な部分を占める基地公害の実情をはなはだしく無視したものといわざるを得ないのであります。少なくとも、わが党が昨年実施した基地総点検の実態調査によれば、その基地公害の実態はきわめて深刻なものであります。政府は、この点を別の法律で定めるとして、その焦点をぼかしておりますけれども、これは、明らかに自民党政府の対米追従外交のあらわれと断ぜざるを得ないのであります。少なくとも、わが国民の福祉の向上について責任をとるべき政府の基本姿勢とは、はなはだ矛盾しているではありませんか。したがって、公害紛争処理法案の中から基地公害を除外した理由、及び基地公害に対する紛争処理と被害者の具体的救済方法について、明確にお答え願いたいのであります。(拍手)
 第二点は、昨年八月制定された公害対策基本法との関係であります。
 今回政府が提出した二つの法律案は、公害紛争処理法案と公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法案で、わざわざ二つに分類しておりますが、どういうわけでございましょうか。従来、わが国の公害問題は、その発生の経過を見ましても、きわめて深刻なる紛争問題に端を発し、ついには悲しい犠牲者を生むという歴史を繰り返してまいりました。この点、政府案は、実態をはなはだしく無視した、その易しのぎの性格を示していると思えるのであります。公害対策基本法には被害者の救済を明言しておきながら、実施法に至っては、きわめて近視眼的な性格を示すものであり、あまつさえ、これは公害対策基本法制定当初の精神及び附帯決議に反するものであります。したがって、法律を二つに分類した根拠、並びに公害対策基本法に定める被害の救済と二法案の解釈について、明確なるお答えを願いたいのであります。
 第三点は、公害紛争処理の機構として、中央公害審査委員会を総理府に設置したことであります。しかも、これは国家行政組織法第八条に基づく機関であり、国民の待望する三条機関から格下げされたことであります。
 元来、八条機関はきわめて付属機関的性格の強いものであり、複雑な公害問題の処理をどう解決していこうというのでありましょうか。この公害紛争処理機関こそ、最も力ある機構であるべきであり、その権限は、公正取引委員会に見られるごとく、どこからも圧力を受けない第三者的な行政機関とすべきであろうと思うのであります。もし政府案の機構で、ますます激増が予想される公害紛争を円滑にはかろうとするならば、当委員会にはきわめて強い権限を与えなければ、結局、現在厚生省が主務官庁として行なっている政府の公害対策から一歩も前進のない、かえって問題の解決をいたずらに遅延させる悪弊を招くことは必定であります。
 したがって、国家行政組織法第八条の機関とした理由並びに公害苦情処理に対する権限について、明確にお答えを願いたいのであります。(拍手)
 第四点は、公害苦情処理に対する対策がきわめて抽象的なものに終わっていることであります。
 昭和四十二年の自治省調査によりますと、全国で約二万七千件にものぼる苦情が訴えられているのであります。この実情に即していない政府案は、一体何を処理しようというのか、はなはだ不明確といわざるを得ないのであります。苦情問題も、昨今はその性格もきわめて複雑化し、しかも多数に及んでいる実情にあり、これらの件数を今後も上回ることは必定であります。まして、これらの実情を見るとき、都道府県審査会を地方には任意に設置するなどというなまぬるいことでは、とうていこの問題に対処することは不可能といわざるを得ないのであります。
 したがって、公害苦情処理に対する具体策並びに政府提出案のねらいについて、明らかにしていただきたいのであります。
 次に、公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法案についてお尋ねいたします。
 その第一点は、厚生大臣が指定した公害認定患者に対する医療費等の給付の問題であります。
 医療費については、健康保険の自己負担分を、また医療手当として、入院している者には四千円、通院患者には二千円、寝たきりで肉親以外の看護を受けている者にはそれぞれ月額九千円の看護手当を給付するというものであります。しかし、医療費について健康保険の自己負担分を給付するということは、問題の本質をすりかえたものであり、これはあくまでも公害医療費として見るべきであります。イタイイタイ病を例にとってみますと、患者の治療費は概算月額四万六千円から五万七千円もかかっております。また往診患者にいたしましても、二万四千円からの経費を必要としているのであります。まして現在までに死亡された方々も多数に及んでおるのであります。この補償、また一家の柱を失った生活困窮者への救済、事前予防策などは全く見る影もありません。四日市では、患者が、家族の生計を立てるため、昼間は働きに行き、夜は病院のベッドに帰るという実に悲惨な現状ではありませんか。わが国の社会保障が世界の水準を下回るゆえんも、この辺にはっきりあらわれているのであります。
 したがって、医療費、医療手当等の算出根拠について、また医療費を健康保険の自己負担としたことの理由、さらになくなった方への補償、生活困窮者への救済、健康診断などについてのそのお考えを明らかにしていただきたいのであります。
 第二点は、その少ない医療手当などに所得制限を設けたことであります。
 現在、高額所得者である人でも、いつ公害病にかかるか、だれも保証をする人はいないのであります。九十四万円以上の所得を除いた理由は、はなはだ不明確な点が多いといわざるを得ません。この点について明らかにしていただきたいと思うのであります。(拍手)
 第三点は、加害者との関係であります。
 政府案では、加害者から損害賠償を受けた場合は、すでに受けた給付を還付するというものであります。まして被害者にとって、勝訴の見込みを望むということは、経済的、時間的に見ましても、はなはだ不利な条件にあるということは論を待つまでもありません。昨年から続けられている水俣裁判にしても、まだ結論は出されておらず、大企業の巨大な圧力にむなしい抵抗を続ける被害者こそ哀れというよりほかはありません。これこそ政府の大衆福祉を無視したあらわれであり、本法律の趣旨をはなはだしく逸脱したものといわざるを得ないのであります。それに、現在、法務省では公害罪も検討されているようでありますが、結局、政府案によれば、少ない補償で被害者の口はふさがれる結果となり、この法律の効果も期待できないといわざるを得ないのであります。これこそ国が被害者にかわって損害賠償請求権を取得し、企業の責任を大いに追及すべきであろうと思うのであります。
 したがって、公害罪新設への経過並びに損害賠償請求権を国が取得するという見解に対して、お答えを願いたいのであります。
 第四点は、事業者の費用負担の算定根拠についてであります。
 政府案によれば、県及び市のいずれが実施する場合にも、その費用の二分の一を負担すればよい。これは現代の企業が公害問題の責任の半分だけを持つという結論であり、これこそ大企業の圧力に屈した佐藤内閣の弱体を示すものであり、したがって、事業者負担割合の二分の一の算定根拠について、お答えを願いたいのであります。
 最後に、最近、紙上をにぎわしておる群馬県安中市の東邦亜鉛安中製錬所におけるカドミウム公害に関する厚生省一係官の発言についてであります。
 かつて厚生省の係官が現地を訪れ、その調査の結論だと思いますが、安中市におけるカドミウム公害は心配ないとの趣旨の発言をしておりますけれども、わが党は去る三月二十日、イタイイタイ病の権威者を含めた党の視察団を現地に派遣し、二日間にわたる調査を行ないましたが、現地の実情はそのような軽率な発言に集約されるものではなかったのであります。短期間の不十分な調査に基づいて、不用意な発言をするということは、係官としてその資格を疑わざるを得ないのであります。あの発言は、訂正を加えるか、何らかの処置をとってしかるべきであろうと思うのでありますが、明確にお答えを願いたい。
 ともあれ、このような公害の実情にマッチしない政府案に対しては、断じて賛成することはできないのであります。(拍手)
 その点、わが党案は、公害問題の本質をよく見きわめ、まず紛争処理並びに医療費などの救済を行政委員会によって一本化し、強力なる対策を推進していくものであります。当面の問題を見ましても、公害被害者を救済するには、政府のきわめて広域的な施策が必要なことは、衆目の一致するところではないでしょうか。
 なお、わが党案は、必要なる医療費等は当然のこと、なくなった方々への弔慰金、健康診断、公害により一家の中心を失った方々への救済等々を織り込み、万全を期しております。さらには、加害者との関係についても、損害賠償請求権は国が取得することとしております。わが党では、これらを含めた対案を、今国会、参議院で提出することになっております。
 以上、簡単に申し上げましたが、総理大臣並びに関係大臣の明確なるお答えを要求するものであります。以上。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#40
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えをいたします。
 いわゆる基地公害は、防衛施設周辺整備法等によりまして手厚い救済措置が行なわれていること、これは先ほど来政府各大臣からお答えしたところでありますので、もうそれで御了承をいただきたいと思います。
 紛争処理につきましても、異議申し立ての制度等によりまして、円滑な処理が可能となっているものであります。今回は、新しく対処すべき分野について立法措置を行なったものと御理解いただきたいのであります。
 次に、公害紛争処理と公害病対策とをなぜ二つの法律に分割したか、こういうお尋ねであります。御承知のように、紛争処理は民事上の問題として取り扱っているのに対して、被害救済制度、これは行政上の救済の問題として措置しているために、同一の法律にすることは処理しにくいということであったからであります。
 その他の問題につきましては、それぞれの所管大臣からお答えいたします。(拍手)
    〔国務大臣床次徳二君登壇〕
#41
○国務大臣(床次徳二君) 私に対する御質問は、なぜ八条機関でもって政府案を出したか、三条機関であることが必要ではないかという御意見でありまするが、八条機関におきましても十二分にその職能を発揮できると考えておるのであります。すなわち、紛争処理の準司法的な機関にいたしまして、独立性、中立性をもちまして、公平に職務が行なえると思っておるのであります。委員に対する地位あるいは任命、権限等に対しましても十分に保障いたしますと同時に、委員会といたしまして、文書、資料の提出を求め、あるいは立ち入り調査権等も与えてあるのであります。なお、関係公共団体の長あるいは政府の研究機関等に対しましても意見を求めるようにできておりまして、その職務を行ない得るようにいたしておる次第であります。
 なお、紛争処理に対するところの一般的な体制でありまするが、地方的に関係の多いことが少なくございませんが、この問題につきましては、市町村におきましても、苦情相談並びに各必要関係機関に対する連絡等の措置を講じますると同時に、府県におきましては、今回の措置によりまするところの審査会あるいは審査委員というものを設置いたします。そのほか、現に公害専門の部局を持っております都道府県が二十二、公害専門係を持っておりますものが十二というような調子でありまして、各都道府県におきましても、でき得る限り、苦情の処理、公害の防止、紛争処理等につとめておるのでありますが、今後とも、自治省とも十分連絡をとりまして、一そう紛争処理の中央機関の活動と相ともに、地方においても遺憾なきを期したいと存じます。(拍手)
    〔国務大臣有田喜一君登壇〕
#42
○国務大臣(有田喜一君) いわゆる基地障害を紛争処理法の対象の外にしたのはどうかということですが、これは先ほど総理もお話しになったし、私も、折小野議員にも申し上げたとおりでありまして、防衛施設並びに防衛行動の特殊性からきたものであります。なお、防衛施設周辺整備法があって、騒音の防止、障害の防止、その他民生安定、あるいは補償に対する不服があったときは異議の申し立てというようないろいろな制度がありまして、われわれは今後基地対策に一そう力を入れまして、万全を期していきたい、かように考えております。(拍手)
    〔国務大臣西郷吉之助君登壇〕
#43
○国務大臣(西郷吉之助君) 公害に対しまして、損害賠償請求権を被害者にかわって国が取得してはどうかというお尋ねでございまするが、御承知のとおり、公害によりまする被害者の損害賠償請求権は民事上の私的な請求権でございまして、本来、当該被害者に当然属するものでございますから、国が被害者にかわってこれを取得するというようなことは、せっかくのお尋ねではございまするが、その性質上妥当でないと考えます。
 なお、公害罪の新設の動きというお尋ねでございましたが、先ほど来、公害罪の新設については法制審議会で検討中でございますので、その答申を待って善処したいと存じます。(拍手)
    〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#44
○国務大臣(福田赳夫君) お答えをいたします。
 今回の特別措置法の手当額が少な過ぎる、内容がないじゃないかというような御意見でありますが、これは、最終措置は民事の問題です。結局、これはつなぎ措置なんですから、その点をとくと御理解願いたいのであります。しかも、つなぎ措置といたしましても、私は少な過ぎるとは思わないのです。むしろ、かなり手厚い措置であるというふうに考えております。
 たとえば阿賀野川で言いますれば、一月大体六万円ぐらいかかります。それを、健康保険に入っておりますれば全額が支給されまして、それで給付されまして、そしてその上に四千円、二千円また九千円、こういうことになるわけであります。本人の場合はそうですが、家族の場合は、健康保険から半分しかいかない、三万円しかいかない。そこで、その差額の三万円は本特別措置法で持とう、その上に四千円、二千円、九千円、こういうことです。それから、国民健康保険の場合におきましては七割給付でありまするから、差額の三割、これも政府が持とう、こういう措置なんでありまして、さようなことを考えまするときに、決してこれは少ない額ではない、かなり手厚い措置である、かように考えておるのであります。
 最終的の措置は民事上でとれるわけでありまして、したがいまして所得制限がある。これは非常な多額の所得がある人に本法を適用する必要はないのです。その人は、時間をかけて、そうして民事上で争ってもらう、そういうふうにするのが、これは当然じゃないか、かように考える次第であります。(拍手)
    〔国務大臣荒木萬壽夫君登壇〕
#45
○国務大臣(荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。
 私に関します御質問は、中央公害審査委員会を、国家行政組織法上の位置づけとして、いわゆる八条機関になぜしたかという点かと存じます。これにつきましては、もうすでに床次総務長官からしさいにお答え申し上げておりまして、私も同じ意見でございますことを申し添えてお答えにいたします。(拍手)
    〔国務大臣斎藤昇君登壇〕
#46
○国務大臣(斎藤昇君) 安中のカドミウム汚染事件に関しまして係員が不用意な発言をしたというおしかりでございますが、係員の考え方といたしましては、いま直ちにカドミウムの汚染による健康被害はないであろう、こういう見解を言ったわけでありまして、これは関係のお医者さんやその他の学者の方々がいろいろと調査をされまして、ここ数日のうちに結論を出していただきます。それに基づきまして、厚生省といたしましても十分の対策を考えてまいりたい、かように考えます。
 他の問題につきましては、大蔵大臣その他の大臣が答えましたとおりでございますので、省略をいたします。(拍手)
#47
○副議長(小平久雄君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#48
○副議長(小平久雄君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後四時十六分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        法 務 大 臣 西郷吉之助君
        大 蔵 大 臣 福田 赳夫君
        厚 生 大 臣 斎藤  昇君
        通商産業大臣  大平 正芳君
        運 輸 大 臣 原田  憲君
        建 設 大 臣 坪川 信三君
        国 務 大 臣 荒木萬壽夫君
        国 務 大 臣 有田 喜一君
        国 務 大 臣 菅野和太郎君
        国 務 大 臣 床次 徳二君
 出席政府委員
        内閣法制次長  吉國 一郎君
        防衛施設庁長官 山上 信重君
ソース: 国立国会図書館
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