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#1
第061回国会 本会議 第34号
昭和四十四年五月八日(木曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第二十六号
  昭和四十四年五月八日
   午後二時開議
 第一 外航船舶建造融資利子補給及び損失補償
  法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第二 石炭対策特別会計法の一部を改正する法
  律案(内閣提出)
 第三 交付税及び譲与税配付金特別会計法の一
  部を改正する法律案(内閣提出)
 第四 農業協同組合法の一部を改正する法律案
  (第五十八回国会、内閣提出)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 土地調整委員会委員長及び同委員任命につき同
  意を求めるの件
 運輸審議会委員任命につき同意を求めるの件
 日程第一 外航船舶建造融資利子補給及び損失
  補償法等の一部を改正する法律案(内閣提
  出)
 日程第二 石炭対策特別会計法の一部を改正す
  る法律案(内閣提出)
 日程第三 交付税及び譲与税配付金特別会計法
  の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第四 農業協同組合法の一部を改正する法
  律案(第五十八回国会、内閣提出)
 佐藤内閣総理大臣の健康保険法及び船員保険法
  の臨時特例に関する法律等の一部を改正する
  法律案についての発言
 健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する
  法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)
  の趣旨説明及び質疑
   午後二時九分開議
#2
○議長(石井光次郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 土地調整委員会委員長及び同委員任命につき同意を求めるの件
 運輸審議会委員任命につき同意を求めるの件
#3
○議長(石井光次郎君) おはかりいたします。
 内閣から、土地調整委員会委員長に谷口寛君を、同委員会委員に近藤武夫君を、運輸審議会委員に仲原善一君を任命したいので、それぞれ本院の同意を得たいとの申し出があります。右申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#4
○議長(石井光次郎君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
 日程第一 外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
#5
○議長(石井光次郎君) 日程第一、外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法等の一部を改正する法律案を議題といたします。を提出する理由である。
    ―――――――――――――
#6
○議長(石井光次郎君) 委員長の報告を求めます。運輸委員会理事大竹太郎君。
    ―――――――――――――
    〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔大竹太郎君登壇〕
#7
○大竹太郎君 ただいま議題となりました外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法等の一部を改正する法律案について、運輸委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本法案は、今後六年間に二千五十万総トンの外航船舶を建造するため、同期間に限り、その建造融資について船主の負担金利を軽減する等の措置を定めようとするものでありまして、おもな内容は、
 第一に、政府は海運会社の申請により、外航船舶の建造に対し、日本開発銀行及び一般金融機関が協調して行なう融資について、これらの金融機関と利子補給契約を結ぶことができることとし、利子補給率は船主負担金利が平均五分六厘五毛となるよう措置し、また、利子補給期間は船舶の建造期間とその後の八年間といたしております。
 第二に、利子補給にかかる国庫納付金の納付及び猶予利子の支払い方法を合理化することとし、国庫納付金は、一定の率をこえて利益をあげた場合、その利益の額の範囲内で利益率に応じて累進的に定める額を納付することとし、猶予利子の支払い方法については、今後十五年間に毎年一定額を支払うことといたしております。
 さて、本法案は、三月十八日当委員会に付託され、四月十一日政府より提案理由の説明を聴取し、慎重に審査いたしましたが、その詳細については会議録により御承知を願います。
 かくて、四月二十五日、質疑を終了し、討論の申し出もなく、採決の結果、本法案は起立多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#8
○議長(石井光次郎君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#9
○議長(石井光次郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第二 石炭対策特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第三 交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出)
#10
○議長(石井光次郎君) 日程第二、石炭対策特別会計法の一部を改正する法律案、日程第三、交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。
    ――――◇―――――
#11
○議長(石井光次郎君) 委員長の報告を求めます。大蔵委員会理事渡辺美智雄君。
    ―――――――――――――
    〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔渡辺美智雄君登壇〕
#12
○渡辺美智雄君 ただいま議題となりました二法律案につきまして、大蔵委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 まず、石炭対策特別会計法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 御承知のとおり、政府においては、最近における石炭鉱業の状況にかんがみ、さらに石炭鉱業の整備の円滑化及び再建整備の促進をはかるなどのため、別途今国会において石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案、及び石炭鉱業再建整備臨時措置法の一部を改正する法律案等の関係法案を提出いたしましたが、本案は、これらの措置に伴い石炭対策特別会計法についても次のような改正を行なおうとするものであります。
 すなわち、まず第一に、今回の石炭対策を実施するため、本特別会計の存続期限を昭和四十五年度末から昭和四十八年度末まで三カ年間延長することといたしております。
 第二に、石炭対策に要する費用は、昭和四十四年度から昭和四十八年度までの五カ年間を通じて毎年度おおむね平均的であるのに対し、その財源となる原重油関税の収入は逐年増加していくものと予想されてはおりますが、初期において財源不足が生ずる見込みであります。そこで、昭和四十四年度及び昭和四十五年度に限り借り入れ金をすることができる規定を設けることといたしております。
 第三に、石炭鉱業を営む会社が負担している金融債務及び従業員等に対する会社の関係債務の償還に充てるため、昭和四十四年度から再建交付金を交付することといたしております。この交付金を本特別会計の歳出の範囲に加えるほか、所要の規定の整備をはかることといたしたのであります。
 以上がこの法案の概要でありますが、審査の結果、本案に対しましては自由民主党、民主社会党、公明党の三党共同提案にかかる修正案が提出されました。
 修正案の内容は、原案において昭和四十四年四月一日と定められている施行期日を公布の日とし、改正後の石炭対策特別会計法の規定は、昭和四十四年度の予算から適用することに改めようとするものであります。
 以上の原案並びに修正案につきまして、昨五月七日採決いたしましたところ、修正案並びに修正部分を除く原案はいずれも多数をもって可決され、よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
 なお、本案に対しまして附帯決議が付せられました。すなわち、この交付金は巨額の国費支出を約束するものであるにかんがみ、この特別会計は厳正かつ効率的に執行されるべきこと、及び会社が石炭関係以外に投融資したため生じたと認められる借り入れ金の額を再建交付金の対象債務から控除すること、並びに再建交付金の交付により解除された会社の担保物件の処分については、当該再建整備会社に最も有利に措置されるよう厳重に規制することなどの点にわたり、全会一致の附帯決議が付せられたことを申し添えます。
 次に、交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 この法律案は、別途今国会に提出され、さきに本院を通過いたしました地方交付税法の一部を改正する法律案による地方交付税にかかる特例措置に対応いたしまして、交付税及び譲与税配付金特別会計法について所要の改正を行なおうとするものであります。
 すなわち、本特別会計法の規定により、地方交付税に相当する額として一般会計からこの特別会計に繰り入れる金額を、昭和四十四年度においては所定の額から六百九十億円を控除した額とし、他方、この控除した額に相当する金額は、昭和四十五年度において繰り入れる金額に加算することといたしますが、地方財政の状況等によっては、別に法律で定めるところにより、その一部を同年度に加算しないで、昭和四十六年度または昭和四十七年度に繰り延べて加算することができることとしようとするものであります。
 本案につきましては、審査の結果、昨五月七日討論に入りましたところ、自由民主党を代表して大村襄治君は賛成の旨を、日本社会党を代表して村山喜一君、民主社会党を代表して河村勝君、公明党を代表して田中昭二君は反対の旨をそれぞれ述べられました。
 次いで、採決いたしましたところ、本案は多数をもって原案のとおり可決となりました。
 以上、御報告を申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#13
○議長(石井光次郎君) これより採決に入ります。
 まず、日程第二につき採決いたします。
 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#14
○議長(石井光次郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。
 次に、日程第三につき採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#15
○議長(石井光次郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
    ――――◇―――――
 日程第四 農業共同組合法の一部を改正する法律案(第五十八回国会、内閣提出)
#16
○議長(石井光次郎君) 日程第四、農業共同組合法の一部を改正する法律案を議題といたします。
    ―――――――――――――
#17
○議長(石井光次郎君) 委員長の報告を求めます。農林水産委員長丹羽兵助君。
    ―――――――――――――
  [報告書は本号末尾に掲載]
    ―――――――――――――
    〔丹羽兵助君登壇〕
#18
○丹羽兵助君 ただいま議題となりました農業協同組合法の一部を改正する法律案について、農林水産委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案は、最近における農業及び農業協同組合をめぐる諸情勢の推移にかんがみまして、
 第一に、農業生産の効率化等に資するため、農業協同組合による農業経営受託の道を開くこと及び農事組合法人の組合資格と員外従事者に関する制限を緩和すること。
 第二に、農業協同組合及び同連合会の管理運営の適正化に資するため、総代会の権限を拡大すること及び連合会の会員にかかわる議決権等の特例を設けること。
 第三に、その他農業協同組合の事業に関する規定を整備すること等、所要の改善を行なおうとするものであります。
 本案は、第五十八回国会に提出され、今国会まで引き続き継続審査となってきたものであります。
 当委員会におきましては、四月二日以降五回にわたり慎重審査を行ない、四月二十二日、質疑を終了し、五月七日、日本社会党が反対の討論を行ない、採決の結果、本案は賛成多数をもって可決すべきものと決した次第であります。
 なお、本案に対し、農業協同組合連合会の一会員一票制に対する特例については、当該連合会の民主的管理運営を確保すること等、五項目にわたる附帯決議が付されたことを申し添えます。
 以上、報告を終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
#19
○議長(石井光次郎君) 討論の通告があります。これを許します。森義視君。
    〔森義視君登壇〕
#20
○森義視君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま報告のありました農業協同組合法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行なおうとするものであります。
 現在、わが国の農業と農政は大きな転換期を迎えております。それだけに、わが国農村の中核的団体である農業協同組合の持つ使命と責任は、まことに重大なものであります。しかるに、最近の農協の運営状況を見ますと、農協本来の使命と遊離し、もうかることなら何にでも触手を伸ばすという方針で、安易な仕事のみと取り組む営利追求団体であるとの批判が各地に高まっております。また、役員の選挙にあたっては、供応、買収は公然化しており、さらに、零細農民から集めた農協資金にかかわる不正事件は、農林省が把握したものだけでも、昭和四十二年度において百一件、その金額は実に四十億円にのぼり、これが昭和三十四年以降の数字は、不正件数が実に千八百七十九件、その金額は約百億円となっており、この種事件は、なおそのあとを断たないのが実情であります。
 このような農協の現状に対し、内外からきびしい批判がなされるのは当然であり、特に農村の青年層は、農協の現状に大きな不満と失望を抱いているのであります。
 端的に言って、現在の農協は、組合員の意思が十分に反映される運営がなされていないと指摘せざるを得ないのであります。また、政府が食管法を無視して、いわゆる自主流通米制度の発足に踏み切ったことに対して、農民は、食管制度がなしくずしに崩壊するのではないかと、大きな不安と動揺を来たしているのでありますが、中央農協幹部の一部が、このような農民の意向を無視して、自主流通米制度の発足を容認したことなどは、まさに組合員の意思を無視した幹部の独断的な行為といわざるを得ません。(拍手)これらのことは、法改正以前の問題として、政府において指導を行ない、適切な措置がなされるべきものであると思うのであります。
 われわれも、最近の農業や農村の変貌に対応して、農協法の改正を行なう必要性を認めているわけでありますが、今回の改正案は、われわれの期待するものとは大きな差異があり、質疑の過程で明らかになったように、農村、農民の要望とかけ離れた御都合主義的な法案といわざるを得ません。
 具体的には、まず、農業協同組合連合会の会員に対して、一会員一票制の原則に対して特例を設けようとしていますが、たとえそれが例外的措置であるといたしましても、特定の会員に議決権等が過度に集中するなどの事態を招き、はたして連合会の民主的管理運営が確保されるかいなかについて危惧の念を抱かざるを得ないのであります。
 また、この改正案は、今後の組合運営に関して、総会にかわる総代会の権限、すなわち、役員の選挙、選任、定款の変更、解散、合併の決議等を大幅に拡大しようとしておりますが、このことは、まことに重大な問題でありまして、農協運営と組合員の意向が遊離しつつある現状にますます拍車をかけることになり、その運用を誤ると、農協は一部有力者のための団体となり、農民から孤立化することが懸念されるところであります。したがって、このような農協の基本的理念にもとるような改正には断じて同意することができないのであります。
 また、改正案の中でさらに検討の余地があると考えられるのは、農業経営委託の点であります。
 現在の農協に、はたして農業経営受託の能力があるかどうかが問題であります。農協に大型機械施設が整備されておらない、また、農地の基盤整備等が不十分なまま、ただ政府のかけ声だけで無理に推し進めようとすれば、これは農業経営を混乱におとしいれるだけであって、受託経営による農業生産力増大等はとうてい及びもつかないところであります。政府は昭和三十七年に農協法の改正を行ない、農協の農地信託制度を創設したのでありますが、この結果について見れば、実施以降約六百ヘクタール程度が信託されたにすぎず、当初政府が意図した経営規模の拡大等には一向に結びつかず、ただ単に農林省の机上の作文に終わっているのが現状であります。このことは、政府が農業経営並びに農協等の実態を十分把握することなく、また、この事業に対する見通しが甘く、積極的な助成を行なわなかった結果によるものでありまして、今回の農業経営の受託事業につきましても、農林省の確固たる指導と助成措置がなされない限り、単なる画餅に終わる可能性が非常に強いのであります。われわれはこの点を質疑の過程で政府に強くただしたのでありますが、建設的な回答が得られず、単に農協請負耕作の追認措置でしかないことが明確になったのであります。
 次に、現在農協の弱点とされている販売事業体制等の強化については、政府は当初、この点に対し、専属利用契約の強化をはかることによって問題の解決をはかる姿勢を示したのでありますが、法案作成の過程において公取等の反対意見があったために、何ら措置がされ得なかったのであります。専属利用契約の強化について、社会党は、事あるごとに政府にその改善策を要望し、今回の法改正でも最も強く期待してきたのでありますが、農林省が公取等関係機関に対し十分納得させることができなかったことは、われわれはもとより、農協関係者の期待を全く裏切ったものであり、農林省の熱意を疑わざるを得ないのであります。
 以上、見てきたように、今回の政府改正案は、農協の組織管理、事業運営の強化に何ら改善を加えるものではなく、われわれの期待に全く反したものであることが明白であります。政府が、もし、このような改正措置で、最近の混乱した農協の改善策として事足れりと考えるならば、これは全く農協の実態を知らないとしか言えず、今後ますます農協が農民から遊離した官僚的組織となり、不祥事件等もひんぱんに起こることは明らかなところでございます。政府が当面行なわなければならないことは、まず、農協の実態を十分把握することと、農協をして農民に対する最大の奉仕機関たるべき本来の姿に返るよう指導することにあります。
 このように見てきますと、法改正の基礎ともいうべき農協の実態の把握と、必要な指導を行なう政府の責任は放置されたままであり、このままで法改正を行なうことは、地盤の弱い土地の建物の上に、基礎づくりをしないままさらに建て増しをするのにも似て、利少なくして弊害のみ多く、所期の目的を達成し得られるとは考えられないのであります。
 かかる観点から、この法改正については、日本社会党としては、断じて賛成し得ないものであります。
 ここに、政府の猛省を促して、私の反対討論を終わります。(拍手)
#21
○議長(石井光次郎君) これにて討論は終局いたしました。
 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#22
○議長(石井光次郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。(拍手)
    ―――――――――――――
 佐藤内閣総理大臣の健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律等の一部を改正する法律案についての発言
#23
○議長(石井光次郎君) この際、内閣総理大臣から、健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律等の一部を改正する法律案について発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣佐藤榮作君。
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#24
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 健康保険特例法は、二年間の時限立法として制定されたのでありますが、政府としては、この期限内に抜本対策の実現をはかるべく具体策の検討に全力を注いでまいりました。しかしながら、この問題は、きわめて広範多岐にわたるほか、根深い問題点を有しており、現在のところ、最終的な結論を得るに至っておりません。このことは、この法律の制定経緯等にかんがみ、まことに遺憾に存じます。
 政府としては、さらに一そうの努力を重ね、抜本対策の早期実現を期する決意であります。これが具体的な実施に至るまでの間、当面、保険制度を維持し、国民に必要な医療を確保することがぜひとも必要と考えられますので、この際、本法案の審議に御協力をお願いいたします。(拍手)
     ――――◇―――――
  健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
#25
○議長(石井光次郎君) 内閣提出、健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。厚生大臣斎藤昇君。
    〔国務大臣斎藤昇君登壇〕
#26
○国務大臣(斎藤昇君) 健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 まず、健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律の一部改正部分について申し上げます。
 この点につきましては、ただいま総理大臣から御発言があったとおりでありますが、所管大臣といたしましても、このたび健康保険特例法の延長について御審議をお願いいたしますことのやむなきに至りましたことにつきましては、その間の事情はともかく、深く遺憾の意を表する次第でございます。もとより、医療保険の抜本対策はきわめて難事業でありますが、一日も早くその実現を期するよう、私も、総理の御指示のもとに、今後とも全力を傾ける所存でございますので、何とぞよろしく御了承をお願い申し上げたいと存じます。
 さて、右のような事情によりまして、このまま本年八月末をもって健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律が失効いたすことになりますれば、きわめて大幅な単年度赤字を生じ、すでに千二百億円をこえている巨額の累積赤字にさらに上積みされる結果、制度運営に重大な支障を来たすことは必至でございます。このため、国といたしましても、昨年度に引き続き財政措置を講じますと同時に、抜本改革が実施に至るまでの間の当面の措置といたしまして、この法律の有効期間を延長することといたしたいと存ずる次第でございます。
 改正案の内容は、この法律の有効期間を二年間延長し、昭和四十六年八月三十一日までとするものであります。
 次に、健康保険法及び船員保険法の一部改正部分について申し上げます。
 人口構造の推移等に即応いたしまして、将来のわが国の繁栄を期するためには、次代をになうべき児童の健全な育成と資質の向上をはかりますことがますます重要な課題となってまいりました。このため、政府といたしましては、母性及び乳幼児の健康と福祉の向上を期しまして、本年度において母子保健対策の一そうの推進をはかることといたしておるのでございますが、これに即応して、医療保険の分野におきましても、分べん時における経済的負担の軽減に資しますために、抜本改革の問題とは一応切り離して、現行制度のたてまえのもとで分べん給付の改善を緊急に行なうことといたし、昭和三十六年以来据え置かれております分べん費の額を大幅に引き上げることといたした次第であります。
 改正案の内容は、健康保険及び船員保険における分べん費の最低保障額を現行の六千円から二万円に、配偶者分べん費の額を現行の三千円から一万円に、それぞれ引き上げるものであります。
 また、この財源につきましては、保険料によって措置することとし、政府管掌健康保険及び船員保険の保険料率をそれぞれ千分の一引き上げることといたしております。
 最後に、この法律の実施の時期につきましては、健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律の一部改正部分は公布の日から、健康保険法及び船員保険法の一部改正部分は昭和四十四年九月一日からといたしております。
 以上をもって趣旨説明を終わりますが、何とぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)
     ――――◇―――――
 健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
#27
○議長(石井光次郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。谷垣專一君。
    〔谷垣專一君登壇〕
#28
○谷垣專一君 私は、自由民主党を代表して、ただいま趣旨説明のありました健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、若干の質疑を行ないたいと思います。
 一昨年八月、世上健保国会と呼ばれた第五十六回臨時国会において、健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律が非常な国民的関心と注視のもとに成立を見ましたことは、今日なお記憶に新たなところでございます。いまここに再びこの法律の期間延長を内容とする改正法案が提出されるに及びまして、国民の間に本法案をめぐっていろいろな論議があり、また、わが国医療保険制度の将来について、従来以上の強い期待と関心が寄せられていることは見のがせない事実であります。政府は、この際、国民の前に医療保険の現状を明らかにすると同時に、今後医療保険問題に取り組む政治姿勢と、その具体的方針を率直に披瀝する義務があると存ずるものであります。
 昭和三十六年に、先進諸国にも類例を見ない国民皆保険を達成しましたことは、まさに画期的なことでありました。国民の日常生活にとって最大の不安と脅威であった医療費負担の軽減を実現し、この制度が国民の健康回復にはかり知れない貢献をしてきたことは、何人も否定し得ないところでございます。しかしながら、ここで謙虚に反省しなければならないことは、国民皆保険体制を確立するにあたって、将来の人口構造、疾病構造、社会経済の変動等を見通し、既存制度の持つもろもろの欠陥を是正すると同時に、長期的視野に立って皆保険に必要な基盤整備を行なうことが不十分であったことでございます。さらに、医療保険制度について目を向けますと、各制度間における給付面、費用負担面の格差や不均衡が露呈してきており、また一方、現行の診療報酬体系についても、適正な国民医療を推進する上で数々の問題点を投げかけておるのであります。
 健康は幸福の根本であり、それ自体が目的であると同時に、人間活動の源泉であります。わが国が世界に類例のないほどの高度経済成長を遂げましたのも、健康な国民の活力あふれる努力の成果であることは申すまでもありません。われわれは、国民医療の現状について根本的な反省を加え、高度経済成長の成果を積極的に国民の健康投資、保健投資に振り向けるという姿勢のもとに総合的な国民医療対策を進めることこそ、今日の政治の重要課題であり、次の世紀の民族の繁栄を期するための国民の責務であると信ずるものであります。(拍手)
 このような観点に立って、わが党は、医療基本問題調査会におきまして、昨春以来関係諸団体の意見を聴取するとともに、国民医療の将来のあるべき姿について鋭意検討を重ねてまいりました。先般その対策大綱について調査会の一応の結論を得たことは御案内のとおりであります。今後、抜本改正の実現のため強力な推進がはかられることと存じます。しかしながら、政府が二年間の期限つきで約束した抜本改正が今日なお実現を見なかったことは、理由のいかんを問わず、きわめて遺憾と申さなければなりません。
 この際、政府の最高責任者である総理大臣より、国民に対し、その間の事情について率直な御説明をいただき、あわせて広く国民医療対策の将来の方向について御所見と御決意のほどを承りたいと存じます。
 次に、健保特例法の有効期間の延長について御質問申し上げます。
 この法律は、極度に窮迫した保険財政に対処するため、抜本改正までの当面の措置として制定されたものでありますが、国会審議の過程において、抜本改正の早期実現を期し、二年間の時限立法とする修正がなされたことは御承知のとおりであります。そもそも、医療保険の問題は、わが国においても五十年の歴史を有し、その抜本改正は、今日及び将来の国民生活に広く、深く、きわめて重要な影響を与える大事業であります。関係各方面の激しい利害の対立が抜本改正を困難にしている最大の原因であります。だが、理由のいかんを問わず、一昨年の健保特例法の制定経緯にかんがみて、今日ここに至った政府の責任はきわめて重いといわなければなりません。しかしながら、それを責めるにとどまって、抜本改正まで何らの措置を講じないで保険財政を破綻に導き、現行制度を混乱させるような考え方は、国民の健康を守り、福祉を考える立場からいって、断じてこれを避けなければなりません。(拍手)健保特例法が失効するままに何ら対策を講じないとしました場合、政府管掌健康保険における本年度の赤字は、単年度において四百七十四億円にも及ぶと聞いておりますが、この際、厚生大臣から、政府管掌健康保険等の本年度及び明年度の財政状況はどうなるか、また、その結果としてどのような事態の発生が予測されるかといった点を明確にお答えいただきたいと思います。
 また、政府の責任は最大限に講ずべきであると思いますが、この点、大蔵大臣の御見解を伺っておきたいと存じます。
 次に、本法案におきましては、健康保険の分べん費等の引き上げ措置を講ずることとしており、この点につきましては、きわめて時宜に適した措置と考えるのでありますが、母性の保護と安全な出産を確保するためには、産前産後を通じての一貫した総合的な母子保健対策が必要であります。諸外国に比較して、この面での施策がかなりおくれておるのがわが国の現状でありますが、本年度どのような推進方策を講ずることとしておるのか、また、今後の方針についても、ここで厚生大臣にお伺いいたしたいと存じます。
 最後にお伺いしたいことは、抜本対策が樹立されるまでの間放置することが許されない当面の緊急課題についてであります。これらはみな保険財政に深い関係がありますが、第一は、医療費の緊急是正に関してであります。
 健保特例法の延長措置を講ずることにより、保険財政は抜本改正に至るまで破綻することなく維持することができるといたしましても、年々の人件費及び物価の上昇に伴い、病院等の経営は悪化してきております。病院、診療所の健全経営をはかり、国民に適切な医療を約束するために、この際、当面の緊急是正措置を講ずることが必要ではないかと思いますが、厚生大臣並びに大蔵大臣の御所見を承りたいと存じます。
 第二は、看護婦対策についてであります。
 近時、各地において看護婦の不足を訴える声が高く、深刻な社会問題となっておる現状であります。看護婦、准看護婦の就業者は、昭和三十五年末の十七万五千人に対し、昭和四十二年末には二十五万三千人となりまして、政府のこの間の努力を認めるにやぶさかではありませんが、医療需要の増大、病床数の増加、医療内容の高度化等により、ますます多くの看護婦が必要とされてきております。このためには養成力を大幅に拡充するとともに、安んじて患者の看護に専念できるように、勤務環境の整備や処遇の改善をはからなければならないと考えます。わが党におきましても、この問題が国民医療を確保する上できわめて重要であると考え、対策委員会を設け、意欲的に取り組むことといたしておるのでございますが、看護婦確保対策に関する厚生大臣の御方針を、ここで特に伺っておきたいと存じます。
 総理は、かねがね社会開発と人間尊重の政治を理想として掲げてこられました。国民医療の確保ということは、まさしく総理の政治理念を実現する上で欠くことのできない問題であります。数々の困難と障害はございましょうが、国民の強い期待にこたえて、勇断をもって事に当たられまするよう心から要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#29
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) まず、健康保険特例法を延長しなければならない事態となったことは、率直に申しまして、たいへん申しわけなく思っております。
 医療保険の抜本改正は、御指摘にもなりましたように、百年に一度ともいうべき重要な変革であり、国民生活に及ぼす影響もきわめて大きいので、あえて若干の時間的余裕を再度お願いした次第であります。国民医療を確保するためには、単に医療保険制度ばかりでなく、医療制度その毛のや関連の諸制度につきましても総合的に検討する必要がありますので、なお各方面の御意見を十分に聞かせていただくことが肝要と考えられます。そういう意味で、国民医療の将来のあり方についてせっかくのお尋ねがありましたが、この際は、国民各位に納得のいくりっぱな成案を得るため全力をあげる決意だけ申し上げておくこととし、これでお許しを得たいと存じます。(拍手)
    〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#30
○国務大臣(福田赳夫君) 政府管掌健康保険へ最大限の財政援助をなすべし、こういうお話でありますが、そのとおりに心得ております。すなわち、本年度は四十三年度に比べまして五割増しの二百二十五億円の補助をいたすことにいたし、これに、特例法で御協力お願いできますれば、まずまず単年度赤字は回避し得る、かような状況でございます。何とぞよろしくお願い申し上げます。
 なお、医療費の緊急是正、これを早くしなければならぬ、かようなお話でありますが、これもごもっともなお話と存じます。すでに中央医療協に対しまして医療担当者側からもう提案が出ておるわけでありまして、中央医療協において審議中でございます。この審議の結果を待ちまして、政府といたしましては善処をいたしたい、かように心得ておりますので、御了承のほどをお願い申し上げます。(拍手)
    〔国務大臣斎藤昇君登壇〕
#31
○国務大臣(斎藤昇君) 健保特例法がこのまま延長されないで失効した場合に、どのぐらい赤字がふえるかというお尋ねでございますが、本年度は、単年度収支だけで四百七十四億円の赤字が見込まれるわけでございます。明年度以降もさらにその赤字がふえまして、来年度は八百億に達する、かように存じます。四十三年度末ですでに千二百十六億の巨額の累積赤字が現在ございまするので、このまま放置しておきますれば、医療費の支払い遅延あるいは制度の崩壊が憂慮されるわけでございます。このような見地からいたしまして、政府といたしましては、抜本改正の実現に至るまでの応急措置といたしまして、ただいま大蔵大臣から御答弁がありましたように、本年度二百二十六億の国庫補助を計上いたしますとともに、特例法の二カ年間の期間延長をお願いいたしている次第でございます。
 母子保健対策の重要でありますことは、お説のとおりでございまして、政府といたしましても極力その方向に努力をいたしておるのでございまして、本年度といたしましても、妊産婦の健康診査あるいは乳児の精密健康診査、三歳児の精神発達検査等、新しい仕事も今年から始めるようにいたしておるわけでございます。なお、保健指導や母性保護事業の推進にも、また母子栄養の強化、妊娠中毒症の対策費、未熟児対策費等につきましても、本年度はいままでよりも思い切った増額をいたして推進してまいる予定でございます。今後も日本の現状にかんがみまして、母子対策につきましては十分の配慮をいたしてまいりたいと存じます。
 次に、医療報酬制度の適正化と当面の緊急是正の問題についてお尋ねがございましたが、おっしゃいますように、医療報酬制度の抜本的な対策を立てますことが、医療保険の見地から考えましても、また国民医療という見地から考えましても、まことに大事なことだと存じているわけでございます。抜本対策とあわせ適正な診療報酬制度を樹立いたしたい、かように存じておるのでございますが、当面の緊急対策につきましても、今日の諸物価の情勢、人件費の上昇等にかんがみまして、ことに病院等におきましては相当経営が苦しいことと存じております。ただいまこの問題につきましては、御承知のとおり、中医協におきまして熱心に審議をしていただいておりまするので、その結論を得次第、政府といたしましては、その答申に従って善処をいたしたいと、かように考えておるわけでございます。
 看護婦問題の今日重要でありますことは、お説のとおりでございまして、今日の看護婦の状況は、あるいは人権問題とさえ考えてしかるべきだと思うわけでございます。多年、厚生省といたしましては、看護婦の処遇の改善、あるいはまた看護婦の増加の問題について、それぞれ必要な措置を講じてまいったのでございますが、しかしながら、今日の医療需要の観点から考えまして、とうていいままでの考え方では追いつかない、かように考えます。したがいまして、今後の予想される医療需要に十分マッチすることのできるように、抜本的な看護婦対策を、あるいは養成の面から、処遇改善の面から、あるいは医療の面から、いろいろと抜本的に考えまして、そうしてこの問題に対処をいたすべく、厚生省といたしましても最重要問題の一つとして取り組んでまいりたい、かように思う次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#32
○議長(石井光次郎君) 田邊誠君。
    〔田邊誠君登壇〕
#33
○田邊誠君 私は、日本社会党を代表いたしまして、国民世論の反対を押し切って提出されてまいりました健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律等の一部改正法案等について、総理並びに関係閣僚の所信を問いながら、真実を解明せんとするものであります。(拍手)
    〔議長退席、副議長着席〕
 総理、私があなたにお伺いしたい第一の事柄は、この悪法を再び提案してまいりました佐藤内閣の政治姿勢についてであります。
 去る一月二十七日、施政方針演説において、総理は、「人間の尊厳と自由が守られ、国民のすべてが繁栄する社会を実現する」と、ことばを強めて述べられました。この言やよし。しかし、国民のだれしもが総理の所信表明をすなおに受け取ることはないでありましょう。佐藤内閣の掲げる政治目標が高く雄大なものであれば、それだけ、その内容が空虚に感ぜられる現実は、いかんともしがたいのであります。沖繩返還問題においてしかり、日中貿易拡大と中国敵視政策の矛盾においてしかり、物価、減税政策の誤りにおいてまたしかり、そして今回の公約を踏みにじった特例法延長の提案に至って、国民を欺瞞することきわまるというべきでありましょう。(拍手)総理の言う人間尊重、社会開発、これと全く逆行した国民犠牲の上に成り立ったこの法案との関係は、一体どのようなものと解すべきでありましょうか。こういう矛盾に満ち、ときに相反することを、いとも容易に言ってのけて恥じない態度を改めない限り、国民から誠実な国民大衆のための政治が行なわれているという信頼を呼び戻すことは、とうていでき得ないのであります。総理のしかとした政治信条を承りたいのであります。
 総理にお伺いする第二の点は、社会保障政策に対する基本的な考え方を根本から変革する必要があるということについてであります。
 工業生産力において世界有数の地位にのし上がったわが国が、国民生活の充実の面では、先進諸国に比べてはるか低位にあることは周知のとおりであります。特に社会保障水準は、人口一人当たりで昭和三十六年当時の西欧の三分の一、国民所得に対する比率で二分の一でしかなく、著しい立ちおくれを来たしているのであります。この主要な原因は、自民党政府による高度経済成長に名をかりた生産第一主義の政策によるものであり、政治が国民所得再配分の機能を十分発揮していない結果であることは明白であります。しかも、その底には、一九四八年の国連総会において採択された世界人権宣言の、何人も社会保障を受ける権利を有するということや、一九五三年の国際社会保障会議における、真の社会保障は法律で保障された基本的な社会的権利として理解しなければならないという、世界的通念を否定する思想が流れていることも事実であります。佐藤総理は、社会保障を国民がひとしく享受すべき権利として認識されているかどうか、その基本的考えをお聞きしたいのであります。
 この質問は、私の第三のお尋ねにつながるのであります。すなわち、国民の生命と健康を守る医療保障は、社会保障制度の主要な柱となっています。したがって、わが国で実施されている各種の医療保険制度がたとえ保険方式をとっておっても、あくまでも社会保障制度の一環として正しく位置づけることが肝要であり、受益者負担の観念を不法に拡大解釈して、国民の犠牲や不当な負担を正当化するようなことは断じて許されないのであります。薬剤一部負担の新設を含んだ特例法が、医療保険制度の後退を意味することは明らかなとおりであり、特例法実施直前の一昨年八月に比べて、改正直後の十月の受診率が一七%も減少している事実がこれを雄弁に物語って、おるのであります。保険主義に閉じこもることなく、国の責任によって医療を保障するための長期計画を立てて、欧米に追いつく考えがあるかどうか、お伺いしたいのであります。
 総理、私のお伺いする第四の点について謙虚に耳を傾けてもらいたい。それは、公約違反をあえてした特例法延長案提出に対する佐藤内閣の政治責任についてであります。
 一昨年の特別国会、臨時国会を通ずる再三の混乱の中で強行成立をはかった健保特例法は、全く国民の批判にさらされた悪法でありました。社会保険審議会、社会保障制度審議会の答申においても、すなおにこれを肯定できるものでないと指摘されていることからも、これは否定しようのない事実であります。しかも両審議会において、この特例法はあくまで暫定措置であって、いままでの政府の無策は責められるが、今度こそ抜本改正を断行すべしとの意見も付されていたのであります。抜本対策の確立はまさに天下の声であるという制度審議会の意見をまつまでもなく、この二年間に抜本改正を行なうことは国民への厳たる公約であります。しかし、今日、この国民の悲願もついに実施することができなかったのであります。総理は、これに対する政治責任をはたしてどう感じられておるのか、国民の怒りと政府に対する不信に対して、あなたの腹の底からの答えを聞かしていただきたいのであります。
 さらには、今回の不可解な特例法延長の提案であります。
 去る四月三日、社会保障制度審議会は、その答申の中できびしい政府弾劾を行ない、「この特例法の二カ年の期限が延長されるような提案がなされることは、国民としておおよそ予想されなかったところというのほかはない。ことここに至らしめた政府の責任の重かつ大なることは、改めて強調の要がないほどである。心からの遺憾を感ずる」とまで言っているのであります。まさに国民の憤りを言い当てているといえましょう。この見解に対し、諮問機関の答申は必ず尊重するという予算委員会における言明から、一体あなたはどのような態度をとられるのか、お伺いいたしたいのであります。
 私は、この際総理に勧告をしたい。佐藤内閣に一片の政治的良心があれば、この法案は撤回すべきであると思うのであります。(拍手)もしこの私の提言に対して、撤回の必要はない、目下努力中であるというような、その場のがれの答弁を繰り返しても、国民は絶対に納得しないでありましょう。なぜならば、政府の無責任な措置によって生命と健康をむしばまれ、一昨年の特例法強行制定以来、毎日医療費の値上げによる負担増加に悩まされてきたことの体験から、抜本改正の公約履行を迫る国民の声が日一日と高まっているからであります。総理の所信を問うゆえんであります。
 次に、福田大蔵大臣、斎藤厚生大臣にお伺いしたい。
 特例法の主要な目的は、財政対策にあることは言をまちません。しかし、赤字だからこれを国民の負担で肩がわりしようというのでは、財政のつじつまを合わせることにきゅうきゅうとして、国民の健康をどう守るかという本来の目標が置き忘れられてしまっているといっても過言ではないではありませんか。しかも、国民皆保険、保険制度全体の視野から見れば、千三百万に及ぶ零細企業の労働者を対象とした政管健保に赤字を生ずるのは当然なのであります。生活水準は低く、疾病量が多く、したがって受診率が高いのであり、また、老人が多くなっている現状でもあります。国民の健康を守る最低の保障としての健康保険制度の立場から、生ずる赤字は当然国の定率負担で解消すべきものであります。しかるに、国の財政規模は年々拡大しているにもかかわらず、政管健保に対する国庫補助は、昭和四十二年度の二百二十五億円以来、四十三年度、また今年度と、全く同額を負担しているにすぎません。すなわち、国の負担割合は年々減少しているのであります。このような政府の無責任な措置は、断じて許しがたいのでありまして、このままいきますと、四十三年度当初の赤字見込み百四億に比べて、実績は四十五億円の赤字で済むことから見て、四十四年の二十七億赤字見込みも、あるいは黒字に転ずるのではないかとも推測できるのであり、そうなれば、国庫負担を逆に減額するのではないかとすら考えられるのでありまして、国民の納得のいく方針を大蔵大臣から明示してもらいたいのであります。
 健保特例法の悪法たる理由は、すでに明らかなとおりであります。事実、その施行以来、初診時負担の引き上げが早期受診を抑制し、入院時負担の増加が、なおるべき患者の回復をおくらせ、薬代の負担制新設が売薬療法に拍車をかけ、国民医療は著しい低下を来たしておるのであります。年々増加してきた受診率が、四十二年度一〇・二九に比べて四十三年度は初めて一〇・二四と減少したことに加え、薬剤は一部負担がかかる十五円以上の投薬が大部分を占めていることや、高血圧や肺結核などの複雑長期にわたる疾病は、数単位の投薬を必要とすることから、薬代負担は当初の予想より大幅に増加している事実、また、二万四千円以下の低所得者に対する負担免除の適用が、当初の七〇%程度の予想から四〇%に下がっていることなど、国民を欺瞞する結果が続々生じておるのであります。特例法実施によるこれらの現象に対し、政府の立場に立っても、当然の手直しが考慮されるべきであるにもかかわらず、それすらも怠っていることについて、厚生大臣の所見を承りたいと存じます。
 さらに厚生大臣にお伺いしたいのは、このような行政怠慢を国民の前にさらしながら、なおかつ、分べん費の増額のためと称して保険料の千分の一引き上げを行なわんとしていることについてであります。
 分べん時における経済負担を軽減することはもちろん肝要であり、次代をになう児童の健全な育成は社会全体が責任を負う立場から、出産費は国の負担でまかなうべきであります。わが党が提出している出産手当法案はその精神を貫いているのでありますが、政府は、分べん費の引き上げの財源をすべて保険料によって措置するという、全く虫のよい提案をいたしておるのであります。さすがに、この引き上げには自民党内でも反対の意見があるやに報道されているのでありますが、このような羊頭狗肉の策を出された考えをお聞かせ願いたいのであります。
 最後に、総理に再びお伺いしたい。
 今日、わが国の医療をめぐる問題点は、逐次浮き彫りにされてきております。国民が医療費負担の増大、医療サービスの低下の中で呻吟している現状の根底には、制度の分立から生ずる弊害を中心とした健康保険制度、医師、看護婦など医療従事者の不足のため、三時間待って三分診療といった貧困を暴露している医療機関と、矛盾に満ちた医学教育、製薬資本に奉仕し、技術を軽視する診療報酬体系と、重い医療費などの解決すべき課題が横たわっております。この医療の抜本改革に対して、どのような構想のもとに、いつまでにこれを断行しようとするのか、総理の抜本改革に傾ける決意を披瀝してもらいたいのであります。
 それと同時にお伺いしたいことは、抜本改正を行なう手段についてであります。
 さきに、一昨年十一月、医療保険制度改革厚生省試案が出されました。しかし、この中身は、現行医療給付水準の引き下げと赤字の責任を国民に転嫁した保険財政対策に終始したものであり、抜本改革に向ける素材に値しないものであります。
 さらに、最近、自民党から医療保険制度改革要綱案なるものが発表されておりますが、新聞論評にあるとおり、その意図が公約違反の特例法延長に対する世論の批判を幾ぶんでも緩和することにあり、自民党の正式決定案でもなく、政府の成案でもないことから、多くの意見を加えることは避けなければなりませんが、その内容が抽象的かつあいまいであり、医療保障の後退を意味することは、また疑いない事実であります。この際、政府は、社会保障制度審議会の答申の王立委員会のごとく、利害関係者を除いた学識経験者による機関を設置して、正しい原案作成の権限を一任する考え方があるかどうか、政党の利害を越えた立場からお答えいただきたいのであります。
 以上、国民の注目する諸点にしぼってお伺いいたしました。どうか国民の不安と疑念を解明し、国民的合意の得られるよう、政府の率直、明快な答弁を要求して、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#34
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) まず、田邊君は、政府の政治姿勢を生産第一主義あるいは経済成長第一主義であるときめつけられましたが、決してそのようなことはありません。すべての国民が健康で明るく、快適な生活を営むことができるようにするのが政治の目標である。そのことは、いままでもたびたび申し上げたとおりであります。そのために、私はかねてより、公害対策、住宅対策、社会保障対策、過密過疎対策等を真剣に取り上げているものであります。
 私は、社会党の諸君も、全体としての国民の生活水準の著しい向上に対しては、正しい評価を与えていただくことが何よりも大事なことのように思います。人間尊重の政治、そのためには経済成長の成果を、成長に取り残されやすい階層の方々にまで行き渡らすことがきわめて大切であり、まさに社会保障の任務であると考えます。社会保障の水準の向上には、今後とも全力をあげてまいります。
 なお、そのためには、長期的な視野に立って、計画的に施策を講じていくことが望ましいことは申すまでもありませんが、ただ、現実の制度を具体的にどのように充実していくかの方法論につきましては論議の分かれるものであり、特に、社会保障の重要な一翼をになう医療保険制度につきまして種々の懸案問題をかかえている現段階におきましては、長期計画を樹立するのに多くの困難がありますので、今後の課題として検討を続けてまいりたい、かように考えております。
 次に、医療保険の財政負担につきましてでありますが、これをどのようにしてまかなうかは、税負担とのかね合いで考えられる問題であって、一般税負担を増して医療保険に対する国の責任を重くすることは、もちろん考えられないことではありません。しかしながら、わが国におきましては、従来から低所得層に対しては過重な負担とならないよう、特別の配慮を払いつつ、社会保険方式を中心として考えており、今後とも、このたてまえを変えるつもりは毛頭ありません。
 次に、今回、臨時応急の対策として特例法の延長をお願いせざるを得なくなったことは、先ほども谷垣君に答えましたとおり、また冒頭にも申し上げましたとおり、たいへん遺憾なことではありますが、医療保険制度の改革は、国民生活に及ぼす影響がきわめて大きい問題でもあり、なお若干の時日をいただいて、慎重に検討を進めさしていただきたいと存じます。私としては、抜本改正策として、りっぱな成案を得ることが何よりも責務である。かように考えており、与党並びに関係政府当局を督励してまいりますが、野党並びに関係審議会のより深い御理解と御協力をいただきたいものと考えます。
 なお、抜本対策はいつまでにつくるか等の具体的なお話でございますが、いま申し上げますように、この医療制度そのものは、国民生活に重大なる影響を与えるものであります。もちろん慎重ではありますが、同時に、できるだく早く結論を得なければ国民は安心しない、かように考えます。その意味で、政府はサボっておるんじゃないかとか等々の御批判、また、おしかりもあると思います。私は、これらの点も、国民全体の御協力のもとに、どうしてもこの際はりっぱな制度をつくり上げたい、かような決意でいることを重ねて申し上げておきます。
 なお、田邊君から、この審議にあたりまして、抜本改正のための委員会の新設の御意見、これの改編とでも申しますか等につきましては、これは私は、一つの有力な御提案であると考えますが、利害得失もいろいろとあろうかと思いますので、御提案を含め、抜本改正の審議のあり方につきましては、広い立場に立って研究してみたい、かように考えております。
 以上、お答えいたします。(拍手)
    〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#35
○国務大臣(福田赳夫君) 政府管掌健康保険に対して財政協力が下がってきておるのではないか、こういうお話でありますが、下がってきてはおりませんです。いまあなたが指摘されました四十二年度は、途中でこの特例法ができました年でありまして、変則的な年であります。本年度と比較すべき年は、特例法がフルに働きました昨年度、四十三年度である。ことしは二百二十五億円の補助をするのですが、昨年は百五十億円、五割の増加であるということでございます。政府管掌健康保険は、その保険参加者がきわめて弱い者、小さい者という性格を持っておるので、政府といたしましても、今後とも極力援助していきたい。しかし、保険でありまするから、その保険のたてまえ、これも堅持していかなければならぬ、かように考えております。(拍手)
    〔国務大臣斎藤昇君登壇〕
#36
○国務大臣(斎藤昇君) 薬価及び診療費の一部負担は、正当な受けるべき診療を妨げておるのじゃないか、そのために国民の医療を低下しているではないかという御意見でございますが、私は、数字の面から見まして、さようには考えておりません。ことに、先ほど総理からもお答えがありましたように、低所得者に対しましては一部負担の免除の規定をいたしておるわけであります。ただ、その一部負担の免除者の割合が、当初予想しておったよりも少ないという事実はございますが、これは国民をだましていたものでも何でもなく、やはり給料が、当初予定しておりましたよりも年間のベースアップが高いものでありますから、したがって、低所得者の割合が予想よりも少なくなったというように御理解をいただきたいと存じます。
 分べん費を全部政府負担にすべきではないかという御意見は、御意見といたしましては一つの御意見と存じまするが、ただいまの段階におきましては、現在の健康保険法のあり方の中において、今日六千円であるのを二万円に、三千円であるのを一万円に上げる、そして、その財源のあり方は、現在の保険体制の組織のあり方においてやるということでございます。したがいまして、抜本改正の際にはまた考慮する余地があろうと思いますが、今日は、現体制のもとにおいて緊急に分べんの費用に対処をいたすための措置として提案を申し上げたような次第でございます。
 他の点につきましては、総理、大蔵大臣からお答えがございましたから、私は遠慮いたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#37
○副議長(小平久雄君) 本島百合子君。
    〔本島百合子君登壇〕
#38
○本島百合子君 私は、民主社会党を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありました健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律等の一部を改正する法律案に対し、総理並びに関係各大臣に御質問をいたします。(拍手)
 現在の健康保険特例法は、昭和四十二年の第五十六回臨時国会、いわゆる健保国会に提出され、難航に難航を重ねた末に制定されたことは、いまだ記憶に新しいところであります。わが民社党は、この法律の成立に際して、同法案を単なる赤字解消のための暫定策に終わらせないため、次の二つのことを当時提案したのであります。すなわち、その第一は、この法律は二年の時限立法にすること、その第二は、この二年の間に、政府は、医療制度の抜本改革案を準備し、国会に提案する義務を負うことの二点がそれであります。このわが党の主張は、国会混乱の中にあって、事態収拾のための議長あっせん案という形で全面的に取り入れられ、成立を見たものであります。したがって、この二つの条件の実行は、政府に課せられた厳正な義務であったのであります。しかるに政府は、今日までこの義務を履行せず、漫然と特例法を再度二年延長する特例法改正案を提出してきたことは、明らかに責任回避であり、政府の政治責任はまことに重大といわなければなりません。(拍手)このような政府の姿こそ、国民の間に蔓延しつつある政治不信の根源と申さなければなりません。
 以上のような見地から、この際、佐藤総理にお尋ねいたします。
 当時、総理並びに坊元厚生大臣は、同法案の成立に際して、政府としては必ず二年以内に医療保険制度の抜本改正を断行する旨を繰り返して公約されたのであります。よもや総理大臣は、このときのことをお忘れになったのではありますまい。このように、明らかに公約違反である今回の再度二年間延長という措置は、いかなる理由に基づくものなのか、政府はその政治責任をかけて、国会と国民に対し、抜本改正提案の遅延について、その理由をこの際明らかにすべきだと思うのであります。同時に、この二年間、政府は公約実行のためにいかなる具体的努力を尽くされたのか、また、何が基本的障害になってこれを今回提出できなかったのか、その辺を責任をもってお答えをいただきたいのであります。(拍手)先ほどからの御答弁を聞いておりますが、何が基本的障害になったのかということについては御答弁がないので、特にこの点をお尋ねするわけであります。
 すでに、現在政管健保財政の累積赤字は、先ほども申されたように、千二百十六億円に達していることは周知のとおりであります。そして、これ以上抜本的改革を回避し、当面の糊塗策に終始するならば、その赤字はさらに増大し、健保財政は収拾のつかない状態に立ち至ることもきわめて明白であります。しかも、もし今回の政府提案をそのまま認めるならば、医療制度の向上は全く行なわれない反面、逆に、国民は新たな保険料の引き上げを押しつけられるばかりか、これまで暫定的に負担を余儀なくされてきた初診料、入院料、薬価等の過重負担を固定化される結果になり、一方的に大きな犠牲を払わなければならなくなるのであります。これでは国民の利益をないがしろにするもはなはだしいと申さなければなりません。
 そこで、福田大蔵大臣にお尋ねいたします。
 昭和四十四年度の予算編成に際し、政府は、政管健保に対する国庫補助を、一昨々年と同様に二百二十五億円据え置きにいたしました。しかし、この措置は、例年に比してきわめて不合理であります。すなわち、四十二年度の二百二十五億の国庫補助は、政管健保の保険収入に対し六・八%に当たりますが、四十四年度の二百二十五億円は、わずかに五%にしか達しないのであります。これは明らかに財政負担の実質的減少であります。もし四十二年度と同程度の財政負担を行なおうとするならば、政府は最低三百億円以上の国庫補助を行なうべきであります。しかるに、政府はみずからの責任を回避して財政負担をいたずらに出し惜しみ、公約不履行の責任のしりぬぐいを、被保険者並びに事業主にしわ寄せする措置をとったのであります。その責任の転嫁もはなはだしいと申さなければなりません。当面の赤字解消に対する政府の財政努力はあまりにも不足していると思いますが、大蔵大臣の見解を承りたいと存じます。
 保険財政の赤字の原因は、医療保険制度の基本的構造に由来し、その累積赤字は年々上積みされ、保険財政の危機を招来しつつあります。今回の特例法の延長措置は、こうしたどろ沼の健保財政を、さらに二年間どろ沼の中に置こうという提案以外の何ものでもありません。健保財政の今後の展望について、政府の見通しをあわせて明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
 斎藤厚生大臣にお尋ねいたします。
 確かに、最近の健保財政の赤字を見ますとき、その単年度赤字は減少しつつあります。しかし、その赤字減少は、政府の努力ではなしに、被保険者の犠牲によって実現されていることを看過することはできません。すなわち、特例法の実施によって、保険料の増額をはじめ初診時や外来投薬価の一部負担が強制され、他方、これによって患者の受診を異常なまでに抑制する結果を招来することによって、その赤字の減少を引き起こしているといわざるを得ないのであります。この結果、全国保険医団体連合会等の発表でも明らかなように、患者の受診率は顕著に減少し、治療中断等の事故が激発していることは、きわめて重大と申さなければなりません。このような医療の後退以外の何ものでもない最近の事態を、厚生大臣は一体どのようにお考えになっておられますか、また、特例法との関係について、その御見解を明らかにしていただきたいと存じます。
 健保特例法はあくまでも臨時応急の措置であって、国民は今後の抜本改正に大きな期待を持って今日を迎えたのであります。すでに医療保険制度の抜本改正については、十年もの長い間柱会保険審議会、あるいは社会保障制度審議会等において徹底的に論議し尽くされ、その欠陥も明らかにされておるところであります。
 佐藤総理にお尋ねいたします。
 このたびの社会保険審議会の答申でも、抜本改正についての政府の姿勢について、全代表者が一致してきびしく追及しております。また、社会保障制度審議会でも、早くから抜本対策の樹立を強く政府に要求しており、前述のとおり、問題点はすでに各方面から指摘されておりますので、時期的には断を下すべき段階であったと思います。しかも政府は、みずから審議会に諮問してその答申も得ながら、これを全く尊重せず、事実上答申を無視し、抜本改正の実行を怠ってきたのであります。これは明らかに審議会軽視の態度と申さなければなりません。政府は、口を開けば、答申は尊重いたしますと言いながら、現実に答申の実行をサボタージュしている事実は、許すことができないのであります。(拍手)この点に関する政府の釈明を承りたいと存じます。
 今回の政府案のうち、納得できない弔う一つの点は、分べん費の改善に名をかりた保険料率の引き上げであります。政府は、今回の分べん費の改善分として千分の一保険料率の引き上げを行なおうとしておりますが、この引き上げを断行した場合、分べん費の支出増より保険料の増収が上回るはずであります。たとえば、保険料千分の一引き上げによる収入は六十三億円であり、分べん費は五十三万件を対象として、その支出増は四十二億円にしかすぎないのであります。これは明らかに水増しであり、保険料の取り過ぎと申さなければなりません。
 そこで、斎藤厚生大臣にお尋ねいたします。
 政府説明によりますと、分べん時におきます経済的負担の軽減をはかるために分べん給付の改善を行なうとありますが、直接国民の負担になる料率の引き上げによって増収をはかるのはいかなる理由でありましょうか。周知のように、わが国におきましては異常分べんのときのみ保険が適用され、正常分べんに保険が適用されない矛盾を、民社党並びに労働組合の同盟の婦人たちは全国的に立ち上がり、一昨年から昨年にかけまして百万名の署名をもって、昭和三十六年以来分べん給付の改善が行なわれていなかったのを、今回の改善までにこぎつけたわけであります。分べん給付を今後国際水準まで引き上げようとするならば、これの改善は、全額公費負担を目標に、当面、最低限の措置として、政管健保、国保ともどもに被保険者、配偶者全部を一律に二万円給付とすべきであります。もし、ここで二万円給付を断行いたしましても、その支出増はわずか百十億円程度であります。国の子供を出産するために、この程度の予算化がなぜできなかったのでしょうか。政府は、当然この点については再検討してしかるべきだと思いますが、今後の方針を具体的に明らかにしていただきたいと思います。(拍手)
 最後に、私は、世のおかあさんたちを代表いたしまして佐藤総理にお尋ねいたします。
 わが国の昭和四十二年の出生児は百九十三万四千九百五十八人でありました。優生保護法によりまして妊娠中絶をいたしましたものが七十五万六千八百三十八人でありました。また、未届け中絶数は年々減少して、昭和四十年には二十四万七千件となっております。これは政府機関の厚生省人口問題研究所の発表でありますから間違いないと存じますが、これと一方、家族計画の一普及率は着々と実を結んで、五一・九%となっておるわけであります。このように正しい出産計画が実現してきましたが、まだ百万人余のおかあさんたちが不幸にして妊娠中絶をしております。その理由は、母体の健康的な理由、経済的な条件、あわせて住宅難ということであります。そこで私どもは、出産は病気ではありませんが、国家的な問題でありますので、特別立法をしてでも、出産は国の手で十割給付を実現させたいと考えておるわけであります。(拍手)また、生まれ出てきた新生児に対しましては、手厚い児童手当が受けられる、こういうことにより児童手当制度の実現が必要である。また、政府は選挙のときに、一世帯一住宅の政策を発表いたしましたが、今日その実現ができておりません。両親の暮らしの中で、私どもは妊娠、出産、育児が安心して行なわれる社会をつくり上げていくためには、こうした公約を実現させることこそが、目下の急務と考えておるわけであります。
 そこで、今回の分べん費改善に伴う千分の一料率の引き上げは断固として廃止すべきものであると存じますが、この点に関しての御見解を承りたいと思うのであります。(拍手)
 以上、私は、健保特例法に対する疑点とわが党の同法に対する反対の理由を明らかにして、質問を終わりたいと存じます。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#39
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 本島君にお答えいたします。
 まず、本島君から医療保険の抜本改革についての考え方、政府の取り組み方についてお尋ねがありましたが、これにつきましては、先ほど谷垣君や田邊君の御質問に対してお答えしたとおりであります。ただ、できなかったその障害は何か、これをはっきり言えというお尋ねでございましたが、何と申しましても、問題が非常に重大であり、また困難、複雑な問題をはらんでおりますので、各方面の英知を集め、国民各位に御納得のいただける成案を得るためには、最大の努力を払っていかなければならないのであります。このために、所要の時間をなお必要とするのでありますので、今回、さらにもう一度延長法案を出したような次第であります。
 次に、分べん給付についての御要望がありました。私も、多くの妊娠中絶が容易に行なわれている事態につきましては、太陽を見ることもなく刈り取られる幼い生命の芽のためにはもちろん、母親の健康のため、あるいはまた将来の国力の基礎ともなるべきせっかくの人材の無為の喪失、これはたいへん残念なことと思います。御指摘のように、住宅対策なり医療対策は、そのような意味合いからもより充実すべきであり、政府としても、住宅五カ年計画を着実に進めると同時に、妊娠、分べん、新生児、乳幼児を通じた、一貫した総合的な母子保健対策を進めているものであります。今後とも、一そうその強化をはかってまいる決意であります。
 児童手当につきましては、昨年末の児童手当懇談会の報告によりまして、制度の構想、基本的方向について明らかとなってまいりましたが、さらに、関連分野との調整等について児童手当審議会の御審議を願うこととしており、できるだけ早急に結論を出していただいて児童手当を出発させたいと考えております。
 本島君は、さらに分べんを全額国費でという御意見でありましたが、これは一般税負担との関係や現行の社会保険制度の考え方などから見まして、飛躍した考え方のように思います。私は、現在の保険制度のたてまえのもとに、分べんについての経済的負担の軽減につき、今後とも努力してまいります。
 家族計画の進行、また私は、国民各位におかれても、妊娠中絶についての安易な考え方を捨て去り、小さいとはいえ、とうとい人命の萌芽を大切にしていただくよう、強く訴えたいと考えているものであります。
 以上、お答えをいたします。(拍手)
    〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#40
○国務大臣(福田赳夫君) お答え申し上げます。
 先ほど田邊さんにお答えしたとき、私、年度の記憶違いをいたしておりましたので、本島さんに対する答弁とあわせて修正をさせていただきます。
 政府管掌健康保険に対する国庫補助は、昭和四十一年度が百五十億円、四十二年度が二百二十五億円、四十三年度同額、四十四年度同額であります。四十二年度以降ふえていないのは実質的には下がったのではないか、こういうような御意見、田邊さんにおかれましてもそういうようなお話でございましたが、四十一年度、これは百五十億であったわけであります。いよいよ特例法をやる、これのメリットともあわせてかなりの保険財政の改善をいたしたい、こういうことから、特例法のつり合いという意味で二百二十五億円、かような増額をいたしたわけでありまして、思い切った増額かと思います。これが三年続いておる、こういうことでございます。これらの二カ年間、一体財政状態はどうなんだ、こういうお話でございますが、四十三年度現在におきます健保会計の累積赤字は千二百億円であります。四十四年度において何らの特例措置も講ぜず、政府も助成しないという場合における赤字は五百億円であります。四十五年度における同じ意味の赤字額は、単年度におきまして八百億であります。それらが四十三年度の千二百億円に累積をされていく、こういうことになるので、まことに寒心にたえない状況でありますが、四十四年度はそのおよその五百億、それを政府のほうから二百二十五億、それから九月以降特例法を延長していただきまして、まあまあこれを埋めていきたい、また、四十五年度も同様な方針でこれを渡っていきたい、その間にひとつ根本対策を立てて、御心配のないようにいたしたい、こう考えておりますので、ひとつ御了承のほどをお願い申し上げます。(拍手)
    〔国務大臣斎藤昇君登壇〕
#41
○国務大臣(斎藤昇君) 本島議員にお答えをいたしますが、特例法による一部負担は正当な受診を抑制しておるのじゃないか、このごろ受診率が下がってきているという御意見でございます。政府管掌の受診率は、御承知のように、四十一年、二年までくらいは非常に急激に増加をいたしてまいりました。そこで、四十一、二年ごろからは、のぼるところまでのぼり切って、あとは大体横ばい状態になってきておりまして、この一部負担のために受診率が不当に抑制されておるとは、私どもは考えていないのでございます。しかし、本島さんは、いずれいろいろそういった具体的な数字等もお持ちだと思いますので、委員会等の席におきまして、私らのほうの数字とも照合しまして十分に検討いたしたいと思いますが、ただいまはさように私たちは考えておるわけであります。
 分べん費の問題は、総理からもお答えがございました。なるほど、被保険者本人とその家族、これが半分も違うということにつきましては、事分べん費でありますから、同様にとおっしゃる御意見もわからないわけではございません。これもただ、現在被保険者本人と家族とはちょうど半分という形になっておりますので、それを踏襲いたした次第でございます。他に意図があるわけではございません。理想といたしましては、分べん費は全額負担。そして、ただいまの立て方では、これはお互いの保険ということでやっておりますから、事業主と被保険者の保険料で負担をするという立て方になっております。今度抜本改正の際には、これらの立て方もあわせまして、健保、国保あるいは政管、他の保険を通じまして考えをきめてまいりたい、かように思っているわけでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#42
○副議長(小平久雄君) 大橋敏雄君。
    〔大橋敏雄君登壇〕
#43
○大橋敏雄君 私は、公明党を代表して、ただいま趣旨説明された健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律等の一部を改正する法律案に対し、若干の質疑を行なうものであります。
 いわゆるこの健保特例法なるものは、しょせん政府の怠慢行政から生じた政管健保の累積赤字を国民大衆の負担において解消しようとする、きわめて悪質な法律であります。まだ記憶に新しい、俗にいう健保国会において、国民あげて反対する中に、政府・自民党は、常套手段である多数の暴力による強行採決を断行し、国会を大混乱におとしいれたあげく成立させた、いわくつきの法律であることは周知のとおりであります。しかも、この特例法が成立した際、政府は限られた二年間のうちに、すなわち、ことしの八月までに必ず医療保険制度の抜本改正を実現すると、きわめて明確に国民の前に公約したものであります。しかるに、特例法の失効の八月を目前にしながら、政府はいまだに具体策もなく、蛮触に日を重ね、あまつさえ、みずからその無力、無能をさらけ出して、特例法の二年延長案を提出してきたのであります。全く厚顔無恥、無責任のきわみであるといわねばなりません。(拍手)
 さらに、政府・自民党は、公約違反の責任追及をおそれ、あるいはその目をそらすためか、本法案の提出に先立ち、国民医療対策要綱なるものを発表しました。しかし、これも国会運営上の一手段で、いわば特例法を策すための作戦であり、圧力団体の利益擁護のための代弁にすぎないものであります。自民党の中でさえ、良識派は特例法延長反対と叫んでいるではありませんか。したがって、医療対策要綱をもって決して国民への公約履行だというわけにはまいりません。しょせん、時日を浪費した責任は、佐藤総理がいかに弁解なさろうとも消え去るものではありません。自民党案は、国民の願いから遊離した誠意なき施策であることは、健保連、総評、日経連はもちろん、医師会すべてが猛反対していることからも推察できるというものであります。
 佐藤総理、私は、あなたに猛省を促したい。過去二年間の暫定措置によって、累積赤字のうち約一千億円が解消されたといいますが、これはすべて国民生活への圧迫と犠牲のしわ寄せの上に成り立ったものであります。にもかかわらず、再び特例法の延長を策すとは、とんでもないことではありませんか。
 さらに重大な問題は、一昨年の書記長、幹事長会談における確約事項であります。延長はしないと断言したその責任はどうなるのですか、あまりにも国民を愚弄し、足げにするものであります。
 以上の数々の背任行為に佐藤内閣は重大な責任を感じて、すみやかに特例法を撤回すべきであります。それが国民に対するせめてもの謝罪だと言えるからであります。この点きわめて重大な問題でありますので、総理並びに厚生大臣に明確にして責任ある御答弁を求めるものであります。(拍手)
 次に、船員保険法の関係についてお尋ねいたしますが、まず第一に、船員保険法の適用範囲の拡大であります。
 船員保険の対象は、船員法第一条に規定されております。総トン数三十トン未満の漁船に拡大するための法改正のお考えはないか、運輸大臣及び厚生大臣についてお尋ねいたします。
 次に、船員法の八十九条の療養補償の規定によれば、「船員が雇入契約存続中職務外で負傷し、又は疾病にかかったときは、船舶所有者は、三箇月の範囲内において、その費用で療養を施し、又は療養に必要な費用を負担しなければならない。」とあります。しかし、現実には、船員保険法に患者の一部負担を行なっていることは納得がいかない。船員法と船員保険法とは、給付についてはうらはらの関係にあります。したがって、船員保険法で一部負担をとるべきではないのであります。しかも、衆参両院の附帯決議において、しばしば全会一致で決議されております。これを無視して一部負担をやめないのはどういう理由に基づくものですか、運輸大臣及び厚生大臣にお答え願います。
 次に、大蔵大臣にお尋ねいたします。
 大蔵当局は、社会保険といえば直ちに社会保障と区別し、健康保険をあたかも生命保険や火災保険と同じように保険主義であると見て、社会保障の土俵からはずしてものを考えられているようでありますが、それは基本的な誤りであります。なぜなら、わが国の健康保険制度の出発は、社会保障の一環としてという歴史を有しているし、私的保険とは本質的に相違する要素があるということ、また、わが国はすでに国民皆保険であり、国民はすべて、いずれかの保険に強制加入させられております。したがって、医療保険制度は、当然社会保障という前提で進展していく性質のものであることは容易に理解されるところであります。政府は保険財政の赤字に悩み、しきりに受益者負担論を振りかざし、保険料値上げの口実にしておりますが、全く方向違いです。社会保険は相互扶助です。保険事故の場合には、個人の負担を軽減するための救済措置である。しかるに、患者に一部負担を課することは、保険の原理にももとるものではないか。患者に一部負担を課したことは、社会保険はもとより、社会保障における歴史にもいまだかつて例を見ないのであります。
 以上のことから、受益者負担についての大蔵大臣の御見解を承りたいものであります。
 次に、保険料の問題について、総理及び厚生大臣にお尋ねいたします。
 昭和二十四年以降保険料の値上げの推移を見ますと、今日まで千分の二十も上昇しております。しかるに政府は、本法案において、またもや分べん費の給付内容の改善という名のもとに千分の一の料率引き上げを行なおうとしております。すなわち、これは六十三億円を国民に負担させるということになるのであります。分べんに関する平年度の費用というものは約四十二億円であります。六十三億円マイナス四十二億円、すなわち二十一億円、この金額が浮く勘定になるわけであります。したがいまして、政府の真のねらいは、国民の求める分べん給付の改善の美名にこと寄せて、あくまで料率アップを合法化し、その差額分二十一億円を保険財政の赤字補てんに振りかえようとする、まことにこうかつな行為なのであります。わが公明党は、分べん給付の改善については、母子保健法の拡充整備の範囲において全額国庫負担とすべきであると主張しているものであります。社会保険審議会の答申にも、母子保健センターの充実と母子保健法の拡充強化を強調しているのではありませんか。以上の点からも、今回の分べん給付の千分の一引き上げは、きわめて不当であるといわねばなりません。佐藤総理、もうびほう策に終始することなく、大英断のもと、保険料の引き上げや患者の一部負担など、ことごとく排除して、国庫負担の大幅な増加で国民医療の真価を発揮すべきであります。総理並びに大蔵、厚生大臣の確固たる決意をお伺いしたいものであります。
 医療の根本問題について、総理並びに厚生大臣にお尋ねいたします。
 子供が病気になっても医者が来てくれないような国には安住できないといって、あこがれの日本をさびしく去っていったドイツ婦人の話は有名であります。これは人命尊重の近代において、逆に生命を無視した冷たい扱いを受け、日本とは何と非人間的な後進国なんだろうと思いつつ、その婦人は帰国したに違いありません。ところが、去る三月十八日、福田大蔵大臣は、記者会見の席上、わが国の一人当たりの国民所得は、スウェーデンを抜いて二十年後には世界一になるであろうと、景気のよいアドバルーンを上げておりますが、文化国家のバロメーターといわれる医療の充実度においては、残念ながら、わが国は外国の医療水準とは比較にならないほど劣悪であります。かの西ドイツは、人命尊重という立場から、医療は当然社会が国民に対して保障することとして、病院などの医療機関は計画的に各所に平均に設置されているのであります。また、スウェーデン、デンマーク、ノルウェーなどのスカンジナビア諸国はもちろんのこと、国家が責任管理して社会保障を統一的に行なっております。その典型的なものが、イギリスの国営医療であることは御承知のとおりであります。ともあれ、社会が管理して医療を施行するという国は、ソビエトや中国のような共産主義国だけではなく、資本主義の代表国アメリカでさえも、病院の経営者として、営利を目的としての投資は一切許されていないのであります。医療行政は、人命尊長に立脚して個人の幸福と社会の繁栄を願うという根本理念から医療計画が立てられ、住民の生命と健康を守るための合理的な体制が組み立てられているのであります。
 振り返ってわが国の医療制度の危機、そして医療財政の逼迫というものは、それはさまざまな要素があるとはいうものの、特に医療機関の偏在とともに、わが国の公的医療機関があまりにも不足しているからであると指摘しているのであります。そのことが保険財政の赤字を増大させる重大な欠陥となっております。さらに、公的病院における独立採算制が医療経済の混乱を大きく助長しているのであります。したがって、私は、わが国の医療制度の抜本改正の基礎条件となるものは、医療の社会化にあると強く主張するものであります。抜本改正に対する総理の決意を伺うものであります。
 最後に、総理にお伺いいたします。
 四十二年八月、この健保特例法の強行採決をめぐって国会が大混乱したことは周知の事実であります。その際、公明党の提唱で、自民、民社、公明の三党首立ち会いの上、議長に差し戻し権を与えるとの申し合わせが行なわれたことについては、総理は決してお忘れではないと存じます。念のため、その際きめた内容をここで申し上げてみますと、「自由民主党、民主社会党、公明党の各党は、国会の正常化をはかり、現在の混乱した国会を収拾することとし、これに伴い、議長ならびに各党は、次の申し合せを誠心誠意尊重し、その実現をはかることとする。一、議長が委員会における採決を不適当(一方的な質疑打切り強行採決など)と判断した場合その採決を無効とし委員会に差しもどす権限を議長に付与する趣旨の国会法の改正を行なうこととし、近い国会において成立させることに各党は責任をもつ。」とあります。この三党申し合わせに限る国会法の改正については、民社党はもちろん、申し合わせに参加しなかった社会党においても、公式に賛意を示しているものであります。この申し合わせ実現について、佐藤総理は、自由民主党総裁として、公党間の公約を守り、この六十一国会において成立を期する決意があるかどうか、はっきりとお答え願いたい。
 以上、質問を終わりますが、国民が強い関心を寄せておりますこの重要法案に対し、明確な御答弁を願って、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#44
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 大橋君にお答えいたします。
 まず、特例法の延長につきましての御質問でありますが、これは谷垣君や田邊君にお答えしたとおりであります。私も、今回再び特例法を延長せざるを得ないことはたいへん遺憾に思いますが、問題の根本的解決につきましての成案を得るまでは、この延長はまことにやむを得ないものと考えております。健保財政は、この特例をもってしても単年度の収支では収支均衡できない状況にあり、このまま放置すれば医療保険制度そのものに大きなひびが入る結果となることが明らかでありますので、やむを得ず特例法の延長をお願いいたしたのであります。この間の事情につきましては、率直に御理解をいただき、撤回しろなぞ仰せにならないで、どうか御審議をいただき、何ぶんの御協力のほどお願いをいたします。(拍手)
 次に、大橋君は、いろいろな論点から、保険料の引き上げなどを行なわずに国庫負担の増でカバーせよとの主張をされました。例として分べん手当などを引き合いに出して、さように論ぜられました。それぞれの論点につきましては、政府としての言い分が十分にありますが、これは必要に応じて厚生大臣から申し上げることとして、私からは結論的に、当面の財政措置は、すべて国庫負担によるべきであるという考え方については、現行の制度が社会保険をたてまえとしている以上、そのような主張には同調いたしかねることを申し上げておきたいと思います。もちろん、国として何もいたさないということではありません。ただそれは、いま申し上げたような見地から、応分の援助が筋であり、これを惜しむものでないことは、念のため申し上げておきます。
 次に、医療機関の偏在は、御指摘のとおり大きな問題ではありますが、政府としては、従来より病床増設の規制や僻地診療の補助等を通じて、その解消に取り組んでいるところであり、今後とも、その努力を続けてまいりたいと考えております。私は、その対策として医療の社会化を主張されるのは、議論としては一つの見解ではありますが、わが国の現状におきましては飛躍に過ぎるものと、かように考えます。自由主義を基調とするわが社会体制のもとにおきましては、従来の路線において医療機関の計画的整備をはかることは十分に可能であり、今後とも、その方向でその推進をはかってまいります。
 次に、私は、医療問題は、医療を受ける者はもちろんのこと、医師、製薬会社、薬剤師等、医療に関係する者のすべてが、できるだけ納得のいく方向で解決されることが望ましいと考えております。それだけに、互いの協調と理解が望まれるのであり、また、問題のむずかしさもそこにあるのでありますが、大方の御協力、御理解を得て、りっぱな改正案を提出いたしたい、かように決意いたしております。
 次に、各党の申し合わせの問題についてお尋ねでありますが、これは自民党の総裁としてお答えしたいと思います。
 国会法の改正につきましては、これが現状にそぐわなくなっている点もあるところから、本院におきましても鋭意検討が進められているものと理解しております。委員会の決議を議長が不適当と認めた場合、これを委員会に差し戻すことができるようにする点と、少数党にも発言の機会を与えるべきだということにつきましては、私の考え方は少しも変わっておりません。また、その場合、議長の裁定には各党ともこれに従う、審議にあたって暴力をふるって審議の妨害を行なわないという議会民主主義の基本的ルールが尊重されなければならないのは当然であります。(拍手)民主主義の正しい発展のため、国会運営におきましても、改善すべき点は改善していくということが必要であると考えます。
 以上、お答えをいたします。(拍手)
    〔国務大臣斎藤昇君登壇〕
#45
○国務大臣(斎藤昇君) 大橋議員にお答えを申し上げます。
 船員保険法の一部負担の問題につきましては、御承知のように、これは船員保険法に基づきまして、船舶所有者から事前にまたは事後に償還をすることとなっておりますので、災害補償の精神に合致をしておるのが現状でございます。
 なお、船員保険法を三十トン未満の船にまで拡大適用することにつきましては、ただいま船員中央労働委員会において審議中でございますので、その結論を待って善処いたしたい、かように考えておるのでございます。
 医療保険の一部負担は受益者負担ではないかというお尋ねでございますが、医療保険は、これはお互い相互に扶助をし合っていくという観点から生まれた保険制度でございまして、御承知のように、一般の保険におきましては被保険者とそれから事業主、国民保険におきましては一般の住民から資力に応じた保険料というものでやっておるのでございまして、これはやはり社会保障のやり方、行き方でございます。社会保障の行き方も、全部国費でやるという社会保障もございまするし、特別な社会保障税においてまかなうというのもございまするし、また、お互いに分相応の保険料を出して保険をし合っていく、そして国が一部援助をするというのも行き方でございまして、わが国は今日、現状のような形をとっておるわけでありますが、しかし、沿革的にできてまいりましたこの保険制度が、それぞれの制度において非常に違っておるわけであります。このために、いま抜本改正の必要が論じられているゆえんも、その理由の一つがそこにあるわけでございますので、これらを解消いたしまして、より以上に社会保障的な見地を取り入れながら、保険料の負担にいたしましても、また給付の公平もはかってまいる、そうして国民に完全な医療のできるようにということを念願として、抜本制度をいませっかく考慮中であるわけでございます。
 なお、分べん費給付のための千分の一のアップは、これは分べん費給付に名をかりて保険財源をまかなうためではないかというお尋ねでございますが、田邊議員も本島議員も、千分の一では分べん費給付を支給するのになお余りがあるではないかというお尋ねでございました。これは、おっしゃるとおり、若干余るのでございます。これは事実でございます。しかしながら、いままでの保険料率といたしまして千分の一以下の料率はございませんので、若干は余るわけでございますが、千分の一に切り上げたというのが現状でございます。他に意図があるわけではございません。
 なお、日本の医療水準は、世界に比べまして、水準といたしましてはそう見劣っておるものとは私どもは考えません。その点は御回惑いただけると存じますが、しかし、医療機関の適正配置につきましては、まだまだ問題が残されております。総理もお答えを申し上げましたとおりでございますが、そのために医療機関を国営化する、あるいは社会化をするということにつきましては非常に問題があると考えます。現状の自由主義体制のもとに適正配置をはかり、そして、それぞれの切磋琢磨によってさらに医療水準も高め、国民の医療にもこと欠かないようにやってまいりたいというのが、抜本改正の際におきましても基本的な考えとしてやってまいりたい、かように思う次第でございます。(拍手)
    〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#46
○国務大臣(福田赳夫君) 医療保障の財源をどうするか、こういうお尋ねでございます。なるべく国が負担したらいいじゃないか、被保険者の負担を軽くせよ、こういうようなお話でございますが、これは制度として保険の仕組みをとっております。したがいまして、これを利用する患者がこれを負担する、これが本則でございまするけれども、同時に、これは社会保障的な側面も持っておるわけであります。でありまするから、保険者の負担だけではどうも十分な医療給付水準が維持できない。その限度におきましては、国がこれに助成をすべきである。国が助成する限度はそこにあると思うのです。ただ、無性格に国が国がというような考え方をいたしますれば、国ということは、すなわち国民の税ということです。税が幾らあったって足らぬ、こういうことに相なりますので、さようなことは考えられないと思いまするけれども、社会保障制度、その側面から国としては財政的な責任も持つ、かように御了承願いたいのであります。(拍手)
    〔国務大臣原田憲君登壇〕
#47
○国務大臣(原田憲君) 船員保険法の一部負担制の問題でございますが、これは厚生大臣がお答えになりましたのと全く同様でございますので、よろしく御了解をお願いいたしたいと思います。
 それから船員法の適用範囲の拡大の問題、これまた全く同様でございます。大橋さんよく御存じのように、現在、わがほうの所管でございます船員中央労働委員会において審議をいたしておりますが、その結論を得まして、漁船船員の労働条件の改善、社会保障の充実につとめてまいりたい所存でございます。(拍手)
#48
○副議長(小平久雄君) これにて質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
#49
○副議長(小平久雄君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後四時二十五分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        大 蔵 大 臣 福田 赳夫君
        厚 生 大 臣 斎藤  昇君
        農 林 大 臣 長谷川四郎君
        運 輸 大 臣 原田  憲君
        国 務 大 臣 床次 徳二君
 出席政府委員
       内閣法制局長長官 高辻 正己君
        厚生省保険局長 梅本 純正君
        社会保険庁医療
        保険部長    加藤 威二君
        運輸政務次官  村山 達雄君
        運輸省船員局長 高林 康一君
ソース: 国立国会図書館
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