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#1
第061回国会 本会議 第46号
昭和四十四年六月十二日(木曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第三十八号
  昭和四十四年六月十二日
   午後二時開議
 第一 児童扶養手当法及び特別児童扶養手当法
  の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第二 同和対策事業特別措置法案(内閣提出)
 第三 法務省設置法の一部を改正する法律案
  (内閣提出)
 第四 恩給法等の一部を改正する法律案(内閣
  提出)
 第五 租税条約の実施に伴う所得税法、法人税
  法及び地方税法の特例等に関する法律案(内
  閣提出、参議院送付)
 第六 地方公務員法の一部を改正する法律案
  (内閣提出)
 第七 公職選挙法の一部を改正する法律案(内
  閣提出)
 第八 所得に対する租税に関する二重課税の回
  避のための日本国とベルギー王国との間の条
  約の締結について承認を求めるの件(参議院
  送付)
 第九 所得に対する租税に関する二重課税の回
  避及び脱税の防止のための日本国とアラブ連
  合共和国との間の条約の締結について承認を
  求めるの件(参議院送付)
 第十 日本放送協会昭和四十一年度財産目録、
  貸借対照表及び損益計算書
 第十一 日本放送協会昭和四十二年度財産目
  録、貸借対照表及び損益計算書
    …………………………………
  一 国務大臣の演説(観光基本法に基づく昭
   和四十三年度年次報告及び昭和四十四年度
   観光政策について)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 議員請暇の件
 建設省設置法の一部を改正する法律案(内閣提
  出、参議院回付)
 日程第一 児童扶養手当法及び特別児童扶養手
  当法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日提第二 同和対策事業特別措置法案(内閣提
  出)
 日程第三 法務省設置法の一部を改正する法律
  案(内閣提出)
 日程第四 恩給法等の一部を改正する法律案
  (内閣提出)
 日程第五 租税条約の実施に伴う所得税法、法
  人税法及び地方税法の特例等に関する法律案
  (内閣提出、参議院送付)
 日程第六 地方公務員法の一部を改正する法律
  案(内閣提出)
 日程第七 公職選挙法の一部を改正する法律案
  (内閣提出)
 日程第八 所得に対する租税に関する二重課税
  の回避のための日本国とベルギー王国との間
  の条約の締結について承認を求めるの件(参
  議院送付)
 日程第九 所得に対する租税に関する二重課税
  の回避及び脱税の防止のための日本国とアラ
  ブ連合共和国との間の条約の締結について承
  認を求めるの件(参議院送付)
 日程第十 日本放送協会昭和四十一年度財産目
  録、貸借対照表及び損益計算書
 日程第十一 日本放送協会昭和四十二年度財産
  目録、貸借対照表及び損益計算書
 国会議員の秘書の給料等に関する法律の一部を
  改正する法律案(議院運営委員長提出)
 愛知外務大臣の訪米報告についての発言及び質
  疑
    午後二時六分開議
#2
○議長(石井光次郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 議員請暇の件
#3
○議長(石井光次郎君) おはかりいたします。
 議員田原春次君から、海外旅行のため、六月十六日から七月二日まで十七日間請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(石井光次郎君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
     ――――◇―――――
 建設省設置法の一部を改正する法律案(内閣
  提出、参議院回付)
#5
○議長(石井光次郎君) おはかりいたします。
 参議院から、内閣提出、建設省設置法の一部を改正する法律案が回付されております。この際、議事日程に追加して右回付案を議題とするに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(石井光次郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。建設省設置法の一部を改正する法律案の参議院回付案を議題といたします。
    ―――――――――――――
#7
○議長(石井光次郎君) 採決いたします。
 本案の参議院の修正に同意の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#8
○議長(石井光次郎君) 起立多数。よって、参議院の修正に同意するに決しました。
     ――――◇―――――
 日程第一 児童扶養手当法及び特別児童扶養
  手当法の一部を改正する法律案(内閣提出)
#9
○議長(石井光次郎君) 日程第一、児童扶養手当法及び特別児童扶養手当法の一部を改正する法律案を議題といたします。
#10
○議長(石井光次郎君) 委員長の報告を求めます。社会労働委員長森田重次郎君。
    ―――――――――――――
    〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔森田重次郎君登壇〕
#11
○森田重次郎君 ただいま議題となりました児童扶養手当法及び特別児童扶養手当法の一部を改正する法律案について、社会労働委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 まず、児童扶養手当法について。
 改正の第一点は、手当の額を月額二百円引き上げ、児童一人の場合は二千百円、二人の場合は二千八百円、三人以上の場合は二千八百円に三人以上の児童一人につき四百円を加算した額とすること。
 第二点は、所得による支給制限の限度額に関する規定を改め、政令で定める額とすることであります。
 次に、特別児童扶養手当法の改正について。
 手当の額を月額二百円引き上げ、児童一人につき千九百円から二千百円に、所得による支給制限の限度額は児童扶養手当と同様とすることであります。
 本案は、去る三月十九日本委員会に付託となり、六月五日の委員会において質疑を終了し、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#12
○議長(石井光次郎君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#13
○議長(石井光次郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第二 同和対策事業特別措置法案(内閣
  提出)
 日程第三 法務省設置法の一部を改正する法
  律案(内閣提出)
 日程第四 恩給法等の一部を改正する法律案
  (内閣提出)
#14
○議長(石井光次郎君) 日程第二、同和対策事業特別措置法案、日程第三、法務省設置法の一部を改正する法律案、日程第四、恩給法等の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題といたします。

#15
○議長(石井光次郎君) 委員長の報告を求めます。内閣委員長藤田義光君。
    ―――――――――――――
    〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔藤田義光君登壇〕
#16
○藤田義光君 ただいま議題となりました三法案につき、まして、内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 まず、同和対策事業特別措置法案について申し上げます。
 本案は、歴史的、社会的理由により、生活環境等の安定向上が阻害されている地域を対象として、国及び地方公共団体が協力して行なう同和対策事業の目標を明らかにし、この目標を達成するため、対象地域における生活環境の改善、社会福祉の増進、産業の振興、対象地域の住民の職業の安定、教育の充実、人権擁護活動の強化等、必要な措置を講ずることとするとともに、これに要する経費について、地方公共団体の財政負担を軽減するため、国の負担または補助の割合を引き上げる等、特別の措置を講じようとするものであります。
 なお、この法律は、その目的のすみやかな達成をはかるため、十年間の時限立法とし、昭和五十四年三月三十一日限りその効力を失うことといたしておるのであります。
 本案は、五月九日本委員会に付託、六月五日政府より提案理由の説明を聴取し、直ちに質疑に入り、この事業推進にあたっての国庫補助、起債、金融等の措置について政府の所見をただした後、質疑を終了、討論もなく、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 次に、法務省設置法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本案は、中央矯正研修所と地方矯正研修所を統合して矯正研修所とし、必要がある場合にはその支所を置くことができることとすること、市原市に市原刑務所を設置し、浦和刑務所を廃止すること、塩釜市ほか四カ所に入国管理事務所の出張所を設置すること等を内容といたしておるのであります。
 本案は、二月二十日本委員会に付託、二月二十五日政府より提案理由の説明を聴取し、慎重審議を行ない、六月五日質疑を終了いたしましたところ、伊能委員外三名より、施行期日のうち「昭和四十四年四月一日」としている部分を「公布の日」に改める旨の自由民主党、日本社会党、民主社会党、公明党四党共同提案にかかる修正案が提出され、趣旨説明の後、討論もなく、採決の結果、全会一致をもって修正案のとおり修正議決すべきものと決しました。
 次に、恩給法等の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本案は、恩給審議会答申の趣旨を尊重し、恩給扶助料について昭和四十四年十月分以降、昭和四十年十月改定時の年額の四四・八%増の額に改定することとし、妻及び子並びに傷病恩給受給者を除く六十五歳未満の者の普通恩給及び扶助料については、昭和四十四年十月分より同年十二月分まで増額分の三分の一を停止すること、また、特別項症の増加恩給の第一項症に対する割り増し率の最高限を引き上げること、特例扶助料の支給条件を緩和すること、長期在職者の普通恩給及び普通扶助料の最低保障年額を引き上げること、傷病年金受給者の加算恩給は普通恩給所要最短年限に相当する額とすること、扶養家族加給及び扶養遺族加給の年額を引き上げること、旧軍人の長期在職者の仮定俸給の格づけの是正をはかること、傷病恩給症状等差調査会の報告の趣旨にかんがみ、症状等差の査定基準を改善すること等の所要の措置を昭和四十四年十月から実施しようとするものであります。
 本案は、二月二十一日本委員会に付託、二月二十五日政府より提案理由の説明を聴取し、慎重審議を行ない、六月十日、質疑を終了、討論もたく、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 なお、本案に対し、自由民主党、日本社会党、民主社会党、公明党四党共同提案による附帯決議が全会一致をもって付されました。
 附帯決議は次のとおりであります。
  政府は、次の事項について速やかに善処する
よう要望する。
 一 恩給法第二条ノ二の規定については、本規定制定の趣旨にかんがみ、国家公務員の給与、国民の生活水準を基準として、消費者物価その他を考慮の上、その制度化を図ること。
 二 ハンセン氏病については、その病状の特殊性にかんがみ、症項の査定につき特別の配慮を加えること。
 三 外傷等に因る各種機能障害の査定基準については、傷病恩給症状等差調査会の報告において改善すべきであるとする点に引き続き検討を加え、速やかにその是正を図ること。
 四 旧満州拓植公社等の在外国策機関及び在外国策会社の職員期間については、外国特殊法人及び外国特殊機関の職員期間として、公務員期間との通算措置につき検討を加えるこ
  と。
 なお、この附帯決議に対し、床次国務大臣より、決議のあった事項については政府としても十分検討する、特にハンセン氏病の方に対する処遇の改善については、決議のとおり今後の裁定において配慮したい旨の発言がありました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
#17
○議長(石井光次郎君) これより採決に入ります。
 まず、日程第二につき採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#18
○議長(石井光次郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。(拍手)
 次に、日程第三及び第四の両案を一括して採決いたします。
 日程第三の委員長の報告は修正、第四の委員長の報告は可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#19
○議長(石井光次郎君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり決しました。
     ――――◇―――――
 日程第五 租税条約の実施に伴う所得税法、
  法人税法及び地方税法の特例等に関する法
  律案(内閣提出、参議院送付)
#20
○議長(石井光次郎君) 日程第五、租税条約の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律案を議題といたします。

    ―――――――――――――
#21
○議長(石井光次郎君) 委員長の報告を求めます。大蔵委員長田中正巳君。
    ―――――――――――――
    〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔田中正巳君登壇〕
#22
○田中正巳君 ただいま議題となりました租税条約の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律案につきまして、大蔵委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 この法律案は、近年わが国の締結する租税条約及びその実施に関する特例法がきわめて定型化してまいっておりますことに顧み、従来各条約ごとに制定されておりました個別的な特例法を一本化するとともに、今後締結する租税条約の実施に備えて、この際、租税条約一般についての特例法を設けることにより、租税条約関係法制の簡素化をはかろうとするものであります。
 すなわち、本案は、租税条約の相手国の居住者の取得する配当等に対する所得税の源泉徴収税率を条約上の限度税率によるものとするほか、相手国の居住者に対して申告納税方式が適用される場合には、この限度税率を超過する税額部分を軽減し調整をはかることとする等、条約の実施に関する事項を一般的に定めることを内容としているのでありまして、形式的にも実質的にも現行の個別特例法と同一の性格を持つものであります。
 本案は、さきに参議院を通過して本院に送付されたものでありますが、審査の結果、去る六月四日、質疑を終了し、同六日採決を行ないましたところ、全会一致をもって原案のとおり可決となりました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#23
○議長(石井光次郎君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#24
○議長(石井光次郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第六 地方公務員法の一部を改正する法
  律案(内閣提出)
#25
○議長(石井光次郎君) 日程第六、地方公務員法の一部を改正する法律案を議題といたします。

#26
○議長(石井光次郎君) 委員長の報告を求めます。地方行政委員長鹿野彦吉君。
    ―――――――――――――
    〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔鹿野彦吉君登壇〕
#27
○鹿野彦吉君 ただいま議題となりました地方公務員法の一部を改正する法律案について、地方行政委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案は、職員の離職に関する規定を整備することにより、地方公共団体が条例で定年制を設けることができる道を開くとともに、定年退職後の再雇用者を特別職とするものであります。
 本案は、二月二十五日当委員会に付託され、四月二十四日野田自治大臣より提案理由の説明を聴取し、熱心に審査を行なってまいりました。
 かくて、五月九日原案のとおり可決すべきものと決定した次第であります。
 なお、本案に関しましては、五月十五日、同十六日及び六月五日、委員より発言があり、五月十九日には参考人を招いてその意見を聴取いたし、六月六日、委員の発言の後、日本社会党、民主社会党、公明党及び共産党の各委員から意見の表明が行なわれましたことを申し添えます。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#28
○議長(石井光次郎君) 質疑の通告があります。これを許します。山本弥之助君。
    〔山本弥之助君登壇〕
#29
○山本弥之助君 私は、日本社会党を代表し、ただいま地方行政委員長報告の地方公務員法の一部を改正する法律案に関して、委員長、総理及び自治大臣に二、三の質問をいたしたいと存じます。(拍手)
 本法律案は、委員長報告のとおり、地方公共団体が人事管理の適正化のためということで地方公務員の定年制を採用することと、地方公務員を定年退職後退職年金等を受けつつ勤務できる特別職として短期間再雇用し、低賃金雇用の道を開くことを目的として、地方公務員法の一部を改正せんとするものでありますが、地方公務員定年制の採用に関する法律案は、過去第二十四国会に提出され、第二十五国会及び第二十六国会と審議を重ね、廃案となり、さらに第五十入国会に提案、廃案となった法律案が、今第六十一国会に重ねて提案されたのであります。
 この改正法律案の提案及び審議の経過から明らかなごとく、その内容は、地方公務員が一定の年齢に達することにより一方的に離職させられるという、地方公務員にとってきわめて重要な分限事項であります。したがって、地方行政委員会においては十分慎重に審議する必要を認め、与野党委員十四人の質問通告をなし、審議を始めたのでありますが、法律案の提案理由の説明も、野党側理事の十分な了解なしに強行し、さらに、質問者十一人を残して強行採決を行なうなど、委員会運営上きわめて遺憾な点があったのであります。与野党国会対策委員会の委員長の折衝と、異例の議長のあっせん及び委員長の深い反省により審議を続行し得たことは、かろうじて議会民主主義を守り得たというべきであります。
 鹿野委員長は、平素、他の委員会はともかくとして、当地方行政委員会においては、委員長としての中立的立場を固く守りつつ、十分審議を尽くすことを第一義として委員会の運営を行なうことをしばしば言明してこられたのであります。しかし、本法案の審議にあたっては、既述のごとく、その所信を曲げられ、運営を誤ったのみならず、国会法第五十四条の少数意見の報告という、少数意見者の重要な権利を剥奪したことにつきどうお考えなのか、委員長としての御所見をお伺いしたいのであります (拍手)
 また、鹿野委員長は、常に多数決原理を口にせられますが、その意味するところは委員会の能率的運営を意味するのでありまして、多数決原理は常に少数意見を十分尊重されることが前提でなければなりません。
 自民党所属委員長は、国会会期延長後の委員会において相次いで行なわれた強行採決が示すごとく、常にその自主性を喪失する体質をお持ちのようですが、鹿野委員長の今後の委員会運営の所信をお聞きいたしたいと存じます。(拍手)
 私は、本案は否決すべきであるという考えに立つものでありますが、次の点につき、総理の御見解をお聞かせ願いたいと存じます。
 わが国経済の高度成長に伴い、若年労働者の不足及び労働人口の高年齢化は年を追うて深刻化することが明らかになっております。核家族の細分化、青壮年層の職域間及び地域的移動の激化は、老人福祉対策の充実を必要とするとともに、今後の経済成長を持続させるためにも、中高年齢者の雇用対策は、政治的、経済的、社会的に、国としても地方公共団体としても、重要な施策になってまいりました。民間企業における五十七、八歳の定年制を含めて、総合的に、科学的に再検討すべき段階に当面しておるのであります。労働省においては、ここ数年間、あらゆる角度から定年制に関する研究や調査を行ない、問題点の究明につとめてきているのであります。また、厚生大臣は、五月十二日に、中央社会福祉審議会に老人問題に関する総合的諸施策につき諮問をいたしまして、十項目の諮問内容の第一に、現在の定年制が適当かどうかを問うているのであります。すなわち、政府部内において、定年制を今後の経済政策あるいは社会政策として、問題の究明に当たらんとしているのであります。いわば定年制は、将来の新しい重要懸案として、新しい角度からその解決に当たらなければならないのでありまして、いわば問題は今後に残されておると思うのであります。
 地方公務員については、昭和二十八年から昭和三十年にかけての地方制度調査会や公務員制度調査会の定年制に関する答申は、主として地方財政上の理由によるものであって、昭和三十九年に至って、臨時行政調査会の答申は、初めて、定年制について、公務員の処遇の改善という見地から取り上げ、公務能率の向上もさることながら、公務員の退職後の生活保障を重視し、その年齢も当面六十歳とし、将来、外国の例に見られるような相当高い年齢の定年制を指向すべきであるとしているのであります。臨時行政調査会は、多額の調査経費を費やし、国、地方の行政の簡素合理化を調査目的とし、しかも、その委員は、経済効率を重視する民間人を中心として構成せられているのであります、しかるに、定年制については、経済性よりも生活保障を重視していることは、将来を展望しての識見を感ずるものでございます。したがって、昭和四十一年三月、定年制を内容とする地方公務員法の改正法案の提出を一たん決定しながら、総理は、その与える影響の重大さを政治的に判断し、方針を変更して、公務員制度審議会に意見を求められたのであります。けだし当然というべきであります。しかし、公務員制度審議会は、その後長期にわたり中断し、その結果、定年制に関する意見は明らかになっていないのであります。定年制の再検討が、すでに述べたごとく重要性を加重し、多くの検討する問題を内包しておる段階において、公務員制度審議会に諮問しているのは公務員制度の基本に関する事項、すなわち、労働三権に関するもので、定年制は離職の一態様にすぎないのであるから、同審議会に諮問すべき必要はないと断言していることは、政府部内、各省のとりつつあるもろもろの施策、及び総理としての見識からまことに了解に苦しむ点で、私どもといたしましては承服しがたいのであります。私は、総理が、本法律案の取り扱いに慎重を期せられ、公務員制度審議会にあらためて諮問すべきことを強く要請いたす次第であります。(拍手)総理の御見解をお聞かせ願います。
 次に、自治大臣にお伺いいたします。
 本法案は、憲法第二十七条に「すべて國民は、勤勞の権利を有し、義務を負ふ。」という規定との関係が明瞭になっていないということであります。
 地方公務員は、現行地方公務員法第二十七条以下の規定により、個人の能力、行為等による分限条項や懲戒処分に該当しない限り、その意に反して免職されないことになっております。いわば地方公務員法によって、地方公務員は身分が保障され、初めて全体の奉仕者としてその責務を遂行することができるのであります。現行地方公務員法施行前に、一部地方公共団体において定年制が採用されていたことや、任期の定めのある地方公務員が任期満了により当然退職する場合との比較において、法を改正して定年制を採用することは、正当の理由とはなり得ないのであります。
 また、民間企業において定年制が広く採用されているが、それはすべて労働協約や就業規則で定められ、労働者の参加により、その意思が反映されているのであって、その責務の性格から、団体交渉権や争議権を剥奪されている公務員に、一方的に離職の一態様として定年制を強要する理由にはならないのであります。すなわち、憲法第二十七条の規定に違反するおそれがあり、なお十分慎重に検討する必要があります。しかも、現在、多くの地方公共団体において実施されている、本人の意思を無視しない退職勧奨制度を活用することこそ、民間企業と同一歩調をとることになるのであります。退職勧奨制度ではその効果を十分期待し得ない地方公共団体があるとするならば、むしろ、その運営及び労使関係における不信ないし欠陥があるのであって、この点にこそ十分注目すべきであります。(拍手)
 次に、地方公務員の任免、給与その他の勤務条件は、常に国家公務員に準じて決定すべきたてまえになっていて、従来、自治省は、この点、かなり厳格な指導をし、国家公務員に比し優遇に値しない特例措置に対しても、その自主性を許さず、財政的圧力を加えることすらあったのであります。しかるに、国家公務員の定年制の採用は、政府においてその必要を認めておらず、検討の段階にも至っておりません。国家公務員、地方公務員間には、年齢構成率においても、公務能率等についても、何ら変わりのない現状において、なお検討すべき多くの問題点を持つ定年制を、国家公務員に先行すべき緊急性に乏しいのであります。しかも、三千有余の地方公共団体の中に特殊の場合があるからといって、これは当該地方公共団体の沿革なり事情があるのであって、定年制の採用により一挙に、いうところの人事の停滞を解消するがごときは、あらゆる角度から対処すべき人事管理を安易な方法に依存するにすぎないのであって、決して適正な人事管理が行なわれるとは言いがたいのであります。(拍手)
 人間が高齢化するにつれて、その能力、体力が低下することは自然の摂理であることは否定いたしませんが、五十七、八歳で労働分野から締め出すことは、今日、人間寿命の著しく延びた現状において、まことに不当であり、野田自治大臣みずからが体験せられるごとく、人間には個人差のあることもまた事実であります。また、老後の生活の安定があるならば、時代の進展に抗してまで次代をになう青年たちに席を譲ることを拒む者もないはずであります。労働人口の高齢化の中で、定年制は、政策上からも、またどう性格づけるかも不十分なまま強行しようとする考えには賛成できがたいのであります。
 自治大臣の確信のあるお考えをお尋ねするとともに、本案の撤回を強く要求いたしまして、質問を終わります。(拍手)
    〔鹿野彦吉君登壇〕
#30
○鹿野彦吉君 山本議員の質疑に対しまして、私の委員会運営あるいはまたそうした今後の行き方などについてお答えいたしたいと思います。
 五月九日、委員会報告書を議長に提出したのでありますが、議長からの話があり、各党が話し合った結果、さらに審議を続けることになり、委員会報告書を保留いたし、審議を続行し、さらに確認の採決を行なったものでありまして、これらの事情などを勘案して、今回の少数意見の報告は御遠慮願うことといたしました次第でございますので、何とぞ御了承をお願いいたします。
 なお、今後の運営などについての委員長の考え方はいかん、あるいはまた民主政治の問題についてどうだというようなこともございましたが、私は、常日ごろ当委員会の人々と話し合ってまいったことでございまして、民主政治というものは、人類の歴史の過程においていろいろな形式を経てきました中にあって、これこそ最もいい方法だということで、わが日本もまたこれを採用いたしておるわけでございます。しかしながら、この民主政治もいろいろ欠陥があるわけでございまして、そうした欠陥をお互いに是正しながら、うまく運営をしていくところにこの特色が発揮されるものと思うものでございます。すなわち、この社会にあって、いろいろな意見を持った人々が集まっておるわけでございますから、そうした人々の意見も十分聞きながら、少数の人の意見といえどもこれを十分聞きながら、結局、最後には多数の意見に従ってこの規律を守っていく、ここに民主政治の基本があり、私はまたその方針に従ってまいりたいと思うのです。
 ただ、私が申し上げたいことは、山本議員は常日ごろほんとうに正しい意見を吐かれる方であり、私は尊敬をいたしておりますが、民主政治の運営の中にあって、少数党の人々の意見も十分聞きますが、しかし、少数であるがために約束を破ってよろしいというようなこともないわけでございますから、今後そうしたお互いに話し合ったことについては守っていくという、この線に沿うて御協力くださいますならば、私は、山本議員のおっしゃられるような民主政治の正しい理念に沿うて、そうして委員会を皆さま方の御協力を得て運営してまいりたいと思いますので、何とぞその線に御協力くださることをお願い申し上げる次第でございます。
 以上をもって終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#31
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 山本君にお答えいたします。
 お尋ねというよりも、私に対しては、もう一度公務員制度審議会に差し戻して、そうして審議し直せ、こういう御要請であったように伺います。しかし、事柄の性質上、政府の考えるところを率直に申し上げまして、御了解を得たいと思います。
 私が申し上げるまでもなく、公務員制度審議会の審議事項というものは、総理府設置法におきまして「労働関係の基本に関する事項」と規定されておりますが、これは労働基本権に関する事項と解しております。定年制は離職の一つの態様にすぎません。労働基本権に関する事項ではないと考えられますので、特に公務員制度審議会に諮問しなかったもので、別にその審議を避けようとしたものではございません。この点をぜひ御了承いただきたいと思います。
 お答えといたします。(拍手)
    〔国務大臣野田武夫君登壇〕
#32
○国務大臣(野田武夫君) お答えいたします。
 憲法第二十七条の規定に反するというお尋ねがございましたが、勤労の権利は、具体的に各種の勤労獲得の機会をすべての国民に保障するという意味ではなく、国はそのように努力すべきものであり、それができないときは失業保険その他適当な失業対策を講ずる義務があるとするものでありまして、国の政治的な基本姿勢を明らかにしたものでございます。
 言うまでもなく、定年制は、一つの組織体において一定の年齢に達した場合、その組織体における雇用関係をなくすることをきめるにとどまるものでありまして、働くこと自体を否定するものではありません。したがって、定年制は勤労の権利を否定するものではありませんので、憲法第二十七条に違反するとは思っておりません。
 なお、国家公務員と地方公務員の関係でございますが、公務員制度は、国と地方公共団体と同様の状況のもとにあるものにつきましては、同様の性格として、その運用について均衡を失しないよう配慮を払うべきことは当然であります。国と地方公共団体と同様の状況にないものにつきましては、それに応じて異なった制度がとらるべきものであります。たとえば労働基準法の適用関係、政治的行為の制限の態様等がこれでございます。
 地方公共団体における職員の年齢構成は多種多様であります。その中には、国家公務員の年齢構成よりも著しく高齢化しているものも見受けられますし、このような地方公共団体におきましては定年制を必要とする場合が考えられるものであり、今回の法案は、このような場合におきまして地方公共団体が定年制を採用することができるような、その法律上の道を開くにとどまるものであります。したがって、当然必要と考えております。
 先ほど山本議員からの御要望がございましたが、以上のような理由がございますので、本法案の撤回の意思はございません。
 以上、お答えいたしておきます。(拍手)
#33
○議長(石井光次郎君) これにて質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
#34
○議長(石井光次郎君) 討論の通告があります。順次これを許します。太田一夫君。
    〔太田一夫君登壇〕
#35
○太田一夫君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となっております地方公務員法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行ないます。(拍手)
 まず私は、本定年制法案に対し、わが党並びに本法に関係する労働者諸君のみならず、国内多数の識者を先頭とする大きな世論の反対があるということを申し上げなければなりません。
 日本における労働者の基本権は、まず憲法において、団結権、団体交渉権、団体行動権の保障として明確に定められております。そしてまた、使用者と労働者とは対等の人格であることを出発点として、近代労働法の第一原理は成り立っております。このことを理解せずして民主主義を唱え、民主政治を語ることはできません。もし使用者、当局者が一方的恣意に立脚して相手方労働者に不当な条件を押しつけ、あるいは服従と奉仕を求めることありとすれば、それはもはや現在の憲法下における労使関係ではなく、支配者と隷属者という古い昔の身分関係に逆戻りしたものということになるのであります。
 地方公務員は、昭和二十三年以来労働基本権を剥奪されたまま今日に至っております。職員組合は結成し得られても、労働条件について団体交渉をもって改善する道はふさがれております。この不利益、差別を救済する最小限度の保障が、現行地方公務員法上の分限の基準であります。すなわち、同法二十七条におきましては、定年制というような画一的離職強要の制度を排除して、理事者側の一方的身分支配を防いでおるのであります。しかるに、このたび政府は、本改正法によって、このささやかな身分保障さえ破壊しようと企図いたしました。このことは、地方公務員にとってみますれば、まさに耐えがたき基本的権利の制限であり、否定であります。どうして私どもは、このような時代逆行、血も涙もない反動的法改正を容認することができましょうか。
 さらにまた、われわれの不満とするところは、本法提出に際し、最も直接に不利益な処分を受くることになる地方公務員の団結体である組合に対し、何らの協議もせず、その合意を求める配慮もせず、やみくもに、力づくで対決をいどんでまいったという点でございます。政府当局には、労働法上の諸認識があるのでありましょうか。きわめて常識的な、初歩的な労使関係の認識さえ欠除しているのではないかとさえ疑われるものがあります。
 市長会という理事者側の意見に加担し、安易な労務管理と経済至上主義におちいった今回の定年制の発想は、今日まで二百二十八万地方公務員が、血と汗をもって全体の奉仕者たらんとしてその一生をささげてきた努力に対する報いとしては、あまりにも冷酷きわまりない措置でありまして、全く理解に苦しむものであります。(拍手)もし、理事者側、当局側にひそかに蔵する意図ありとすれば、それは財政上の都合による人件費削減のねらいでありましょう。労使関係をそろばんで割り切ろうとするならば、定年制法案をまともに説明することはむずかしいことになります。今回の委員会審議に際し、われわれの納得し得る説明は行なわれず、国民世論にこたえる解明もなされなかったのも、けだし必然のことと申さねばなりません。(拍手)
 元来、地方公務員の労働条件は、国家公務員のそれに準ずるものとして処置されてまいりました。国家公務員にない定年制を地方公務員にのみ強制しようということは、議論の余地なく不当な措置であります。政府は、都合のいいときには国家公務員に準ずると言い、都合の悪いときは地方公務員は別のものだと言う、不信これより大なるものはありません。われわれは、このような、そのときそのときのかってな御都合主義を認めることはできないのであります。(拍手)
 本法が施行されますと、おそらく各地において次々に条例が制定されるようになりましょう。もし万一、五十五歳以上定年となったときには、全体で十二万人余の人々が職場を追われます。自治省の説明のように、五十七、八歳の線できまるとしても、五万人以上七万人近くの人々が路頭に迷うことになります。そこで、再雇用という制度がつくられるというのでありますが、どういうことか、詳細には内容が説明されませんでした。しかし、三年間を限度とするこの再雇用は、民間の場合のごとく、希望者全員に対し認められるというものではなく、理事者側に取捨選択権を握られ、その意にかなった者の少数者に限ってのみ認められるという、特例的、恩恵的措置となる危険をはらんだものと見なければなりません。(拍手)したがって、多くの離職者は、月平均二万円か三万円のわずかな年金をたよりに、苦しい余生を暮さなければならないという運命をになうこととなりましょう。私は、この意味において、何ゆえに総理は尽くすべき手続をとらしめず、制度化されている公務員制度審議会に諮問をしようともなされなかったのか、まことに遺憾千万に存ずる次第であります。
 定年制は重大な身分保障制度の変革であり、労働関係の基本問題の一つであることは、疑う余地のないものであります。(拍手)かつて、昭和四十一年三月、時の総務長官は、この定年制について、公務員制度審議会に諮問の手続をとられた事実があります。その結末はいまだについておらない。それを無視して、あえてかける必要がないなどと極言されることは、許されないことであります。この審議会は、労、使、中立の三者構成でありまして、したがって、その答申には権威と重みがあります。定年制については、長い間労使間に意見の対立が続いている重要問題であるのでありますから、当然に政府は公務員制度審議会の答申を求めて提案なさるというのが責務と申すべきであります。しかるに、それをなそうともせず、ことさらに定年制をしてささいな問題であるかのごとき詭弁を弄し、ときには強行採決の暴挙まで行なってその成立をはからんとするがごときは、その意図に不純なものあり、独裁政治の偏向をはらみ、戦後確立された労働する者の基本的諸権利の否定、剥奪をねらう重大なる違憲、不法の疑いあるものといわねばなりません。(拍手)
 私どもは、かかる見地に立って、本法案に絶対的反対の意を表明いたすものであります。政府・与党の諸賢各位が、憲法を重んじ、民主国家の原則を尊重されるといわれるならば、すみやかに本法案を撤回し、あらためて公務員制度審議会にはかるという、本来の手続を踏まれるよう強く要望いたしまして、私の定年制法案反対の討論を終わる次第でございます。(拍手)
#36
○議長(石井光次郎君) 塩川正十郎君。
    〔塩川正十郎君登壇〕
#37
○塩川正十郎君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました地方公務員法の一部を改正する法律案に対しまして、賛成の討論を行ないます。(拍手)
 地方公共団体における定年制につきましては、昭和二十五年に地方公務員法が制定される以前には、相当数の地方公共団体がこれを設けていたのでありますが、同法施行後、解釈上疑義があるとされ、これを廃止せざるを得なくなり、本人に退職の意思がなければ、終身雇用しなければならぬような制度となっておるのであります。その結果、地方公共団体の中には、職員の年齢構成が著しく高齢化し、人事の停滞に悩んでいるものが相当多数存在しております。これに対し、この弊害を阻止するために、わずかに勧奨退職制度をもってこれが対策としておるのでありますが、有能な者やこの制度の意義を理解している者は、公共団体の新陳代謝をはかるため、再就職の機会を得て、どんどん新しい社会分野に進出し、過去の経験を生かして活躍しておるのでありますが、あくまでも居すわろうとする者は、この勧奨退職制度ではいかんともしがたいのが実態であって、まさに、正直者がばかを見るというようなことが出ておるのであります。最も公平を期すべき人事管理に、実質的な不平等、不公平が生じ、ひいては職場の士気にも好ましからざる影響を与えているととは厳然たる事実であります。(拍手)本法案は、このような経緯にかんがみ、地方公共団体が条例により定年制を採用する道を開き、もって人事を明朗にし、かつ計画的に管理することを目的としたものであります。
 次に、国家公務員に先んじて地方公務員に定年制を設けることは不当であるという意見を聞くのでありますが、国家公務員の場合、現に一部のものにありましては、すでに法律によって定年制がしかれており、また、一般の職員につきましても、必要があればいつでも定年制を設けることが法律的に可能であるのに対しまして、地方公共団体の場合、現行法のもとではその道が全く閉ざされているのであります。このことは、まことに不合理であるといわざるを得ないのでありまして、地方公共団体がその団体の意思をもって退職制度をつくろうとしても、従来法的に不可能であったことは、むしろ地方公共団体の自由と自治を制限していることになり、これこそ自治の本旨を無視したこととなるのであります。本法により、退職制度が自治体の自由意思によって定年制を採用し得る道を開いたことは、これこそ自治尊重の大きな前進であるといわねばなりません。(拍手)
 さらに、本法案が成立すると、十二万人の地方公務員の首切りが行なわれるというようなことが、もっともらしく一部で言いふらされておるようでありますが、そのようなことは全く事実に反し、いわば、ためにする意見であるといわざるを得ません。(拍手)なぜなれば、十二万人という数字は、地方公共団体に勤務する教育公務員あるいは警察官などを含めた全地方公務員のうち、五十五歳以上の者の総数をさしているものと思われますが、さきに述べたとおり、本法案は地方公共団体に定年制を採用し得る道を開くにとどまるものであって、制度の採用並びに年齢等は、あくまでもそれぞれの地方公共団体が自主的に決定すべきものであり、本法案が首切り法案でないことは明白であります。(拍手)むしろ本法案は、定年退職後も引き続き再雇用されるよう理事者の努力を要請しており、定年退職者の生活の保障と高年齢労働力活用に適切な配慮が加えられているものと申すべきであります。
 以上の趣旨から明確なように、本法案は、人事の刷新と士気の高揚を通じまして地方公共団体における公務能率の向上を推進するための重要な制度的基盤を整備するためにぜひとも必要なることは当然であって、それがために、新聞の論調、解説等、世論もひとしく本法案を支持し、その早期成立を要望しているのであります。(拍手)
 思うに、公務員の給与は国民の貴重な税金であります。したがって、公務員は主権者たる国民に対し、質のよい高能率なる勤務をもって奉仕しなければならぬ責務があり、終身雇用を特権化しようというような考え方は、許されるべきものではありません。納税者である国民の要望と期待にこたえるため、本法案により、すみやかに人事を明朗公正にし、高能率な行政を推進するため、一そうの努力を要望いたしまして、私の賛成討論を終わります。(拍手)
#38
○議長(石井光次郎君) 折小野良一君。
    〔折小野良一君登壇〕
#39
○折小野良一君 私は、ただいま議題となっております地方公務員法の一部を改正する法律案につきまして、民社党を代表いたしまして、反対の討論をいたすものであります。(拍手)
 まず、現行地方公務員法は、その制定の趣旨から、人事管理の近代化を目ざしたものであります。したがって、それより以前に行なわれておりました地方公務員の定年制は、この法律施行に伴って違法のおそれあるものとされ、それぞれの個人差に基づいて、分限上合理的な措置がとられることが期待されたのであります。すなわち、それは正しい勤務評定や科学的診断に基づいて、適正な運用がはからなければならなかったのであります。ところが政府は、このたび、地方公務員につきまして定年制を採用し得る道を開くという趣旨におきまして、現行法律の正しい運用と、それを実現するための努力をなすことなく、単に昔の制度に返るという安易な道をとろうといたしているのであります。このことは、政府と一部の地方公共団体の怠慢であると申さねばなりません。(拍手)
 そもそも、定年制を設けなければならないという現場の実態は、同じ職場で同じ仕事をやっている若い人と高年齢者との間に給与のはなはだしい格差があるということ、いわば労働と、これに対する報酬とのアンバランス、このような現実からきているのであります。すなわちそれは、公務員の年功序列型賃金体系の矛盾が露呈している、こういうことであります。
 これらを最近の民間事業所の実態から見ますと、労使の協議の上で定年制を採用いたしております事業所におきましても、若年労働力の逼迫等の事情を背景といたしまして、定年延長の動きが顕著にあらわれてまいっているのであります。また、給与の実態から見ましても、年齢別賃金格差、あるいは勤務年数別賃金格差等が事実上なくなりつつあり、したがって、また、職務給の採用や能率給につきましての考慮が、現実の問題となってまいっているのであります。
 従来、生活給的考え方のワクをはみ出すことができず、また、きわめて封建的な雇用体系の中にありました公務員につきましても、今日、新しい社会経済の情勢に即応して、合理的、近代的な人事管理と給与体系が考慮されなければならない時期に来ているのであります。それは、従来の終身雇用制度と、これを裏づけてまいりました年功序列型賃金体系の再検討であります。(拍手)同一労働同一賃金の立場における職務給、能率給体系の導入であります。政府は、すみやかに公務員の給与体系についての基本的な検討を行ない、これに基づく抜本的な人事管理体制の改革を行なうべきであります。
 また、将来にわたってのわが国の労働事情を考慮いたしますとき、若年労働者の逼迫はますます進んでまいりましょうし、国民の平均余命もまた伸びてまいるでありましょう。今後ますます中高年労働力の活用が必要になってくるであろうことは、火を見るよりも明らかであります。国民のエネルギーをいかに有効に活用するか、その立場からの国民のエネルギーの再編成ということは、これからのわが国にとりまして、きわめて重要な問題であります。これに応ずる雇用政策、給与対策、老人福祉問題等、現に厚生省等におきましても、老人対策を中心とするこれらの問題についての検討が始められておりますとおり、今日喫緊の問題であります。これらの事情を考慮いたしますとき、今日ここにあらためて地方公務員の定年制を問題にすること自体、むしろ、社会、経済の情勢に逆行するものといわざるを得ません。(拍手)かえって、今日検討すべきは、これからの公務の相当の部分が、中高年齢層の労働力とその社会的な経験について処理されてしかるべき職域ではないかと、こういうことでありましょう。(拍手)
 その他、地方公務員の定年制の問題につきましては、労働の基本的な問題についての憲法上の疑義や、国家公務員の一般職の職員との均衡の問題、定年後の再雇用制度の不備、老人対策のおくれ等、今日までの審議の経過を通じましても、政府が十分に明らかにすることができず、また、あえて明らかにしようとしなかった多くの関連する、しかも重要な諸問題があるのであります。
 さらに、本案の審議にあたりましては、再三にわたりまして委員会の運営につきまして不正常な事態を生じたことは、私ども、まことに遺憾にたえないところであります。これらの点につきましては、お互い十分に反省をし、委員会の正常な運営のもとに十分な審査を尽くし、もって国民の負託にこたえるべきであることを、あえてここに申し添えるものであります。
 以上、私は、政府原案に対する反対理由の一端のみを申し上げました。政府におきまして、さらに一そう検討を深め、将来を見通した大局的な立場において、施策に遺憾なきを期せられるよう強く要望いたします。
 ここに、地方公務員法の一部を改正する法律案につきまして、反対の討論を終わるものであります。(拍手)
#40
○議長(石井光次郎君) 小濱新次君。
    〔小濱新次君登壇〕
#41
○小濱新次君 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま議題となりました地方公務員法の一部を改正する法律案に対して、反対の意見を述べようとするものであります。(拍手)
 政府提出にかかる定年制法案は、地方公務員二百三十万人の労働基本権にかかわる問題であり、また、これら地方公務員の生活そのものを左右するきわめて重要な問題であります。したがって、定年制を実施するにあたっては、退職後の生活の保障を十分に考慮し、慎重に検討すべきものと考えるものであります。しかるに政府は、この重要な法案を提出するに際して、公務員の労働基本権を審議する公務員制度審議会の意見を聞かず、その答申を受けることもなく、無謀にも法制化しようとしているのであります。しかも、地方公務員との話し合いもないままに定年制法案を提出したことは、二百三十万地方公務員の人権を踏みにじるものであり、わが党は、この法案に関して強く反対するものであります。
 以下、順次その理由を述べてまいりたいと思います。
 理由の第一は、国家公務員においては、裁判官等の一部の特定職種において定年制が設けられているのみで、一般公務員には定年制がないのであります。しかるに今回、地方公務員にのみ定年制を設けようとしております。従来、地方公務員の給与その他勤務条件については、国家公務員に準ずることをたてまえとしてきたのでありますが、定年制についてのみ、地方公務員に対し国家公務員に先んじて制定することは、いままでのたてまえから見て異例のことであり、全く納得がいかないのであります。
 第二に、本法案においては、定年の年齢が法律に規定されておりませんが、これは地方自治の本旨に沿った措置であると政府当局は申しております。しかし、この結果、必要以上に若い年齢で定年制の設けられるおそれが多分に考えられるのであります。政府は、この年齢制定の行政指導により行ない、あまり低い年齢にしないと言っておりますが、従来の行政指導のあり方から見て、はたしてその行政指導のとおりに行なわれるかどうか、はなはだ疑問を持つものであります。すなわち、一般公務員について若年定年制のおそれがあると同時に、女子職員に対しては、特に低い年齢で定年年齢が定められるおそれが多分にあるのであります。
 第三には、本法律改正のかねてからの大きな理由の一つとして、地方財政の赤字対策を定年制により打開しようとしていることがあげられますが、地方財政は、都市の近代化に伴い、多額の予算とそれにかかわる人員を投入せざるを得なくなり、住民サービスは年を追うごとに増加の傾向にあります。したがって、これに伴う財政の支出が増高することも否定できないところであります。そのため、地方財政は、その収入において多少の伸びはありましても、非常に苦しいことは否めない事実であります。しかるに、このような地方財政の困窮が、公務員の人件費の増大によるものであり、特に高年齢者の高額給与所得者がその大きな要因であるという説を唱える者がありますが、これは全く問題の筋道を取り違えているものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)すなわち、これは財政問題を定年制実施によって解決しようとする本末転倒の不当な措置であると思うのであります。
 第四に、わが国の社会保障制度の中でも、老後を保障する老齢年金の部門は、医療保険などに比べて著しく立ちおくれておるのであります。本来、年金制度は、一定の所得喪失に対する生活保障を目的とするものであり、この見地から見たとき、現在の年金額は、賃金や物価の上昇に大きく引き離され、あまりにも低額であり、年金の大幅な引き上げを叫ばざるを得ない現状なのであります。(拍手)このように、老後の保障が不十分な現状において、団交権や争議権のない公務員を、政府の一方的な都合によって馘首することは、人間性無視以外の何ものでもないと思うのであります。(拍手)総理が日ごろ看板としている人間尊重とは、国民のあらゆる階層が伸び伸びと安心して生活できるような社会をつくるところにあるとわれわれは考えるものでございます。老後の保障がされないまま、公務員を不安定な生活におとしいれる定年制の実施は、人間尊重の精神に相隔たるところはなはだしいものがあると断ぜざるを得ないのでございます。(拍手)
 さらに、本法案は、「定年に達したことにより地方公共団体の特定の業務に期間を定めて雇用される場合」と規定して、一応再雇用の道を開いているように見えますが、これだけでは、いかにも形式的であり、定年により退いた場合の再雇用の道が具体的に何ら保障されておりません。従来の例によりますと、地方公務員が勧奨退職等により退職し、再就職した場合、新しい職場の条件等は地方公共団体のあっせんによる条件とははなはだしく食い違ったものであり、そのため再就職した者はみじめな思いをしているのが現状なのでございます。また、定年退職者の再就職に関しては、当該地方公共団体は何ら責任はなく、その義務もないのであります。このように社会保障制度も完備しておらず、また、再就職の道もあまり明らかでない現状における定年制は、全く冷たい仕打ちであり、冷酷むざんともいうべき措置であると断言せざるを得ないのでございます。
 最後に、憲法二十七条に「すべて國民は、勤勞の権利を有し、義務を負ふ。」と規定されているように、勤労は国民の権利であります。この権利を一方的に奪うような本法案に対して、公明党を代表し、重ねて反対するものであります。
 以上をもって、私の反対討論を終わります。(拍手)
#42
○議長(石井光次郎君) これにて討論は終局いたしました。
 地方公務員法の一部を改正する法律案につき採決いたします。
 この採決は記名投票をもって行ないます。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参ぜられんことを望みます。――閉鎖。
    〔議場閉鎖〕
#43
○議長(石井光次郎君) 氏名点呼を命じます。
    〔参事氏名を点呼〕
    〔各員投票〕
#44
○議長(石井光次郎君) 投票漏れはあり、ませんか。――投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。――閉鎖。
    〔議場閉鎖〕
#45
○議長(石井光次郎君) 投票を計算いたさせます。
    〔参事投票を計算〕
#46
○議長(石井光次郎君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。
    〔事務総長報告〕
 投票総数 三百四十四
  可とする者(白票)       百九十八
  〔拍手〕
  否とする者(青票)       百四十六
  〔拍手〕
#47
○議長(石井光次郎君) 右の結果、地方公務員法の一部を改正する法律案は委員長報告のとおり可決いたしました。(拍手)
    ―――――――――――――
 地方公務員法の一部を改正する法律案を委員長報告の通り決するを可とする議員の氏名
      足立 篤郎君    阿部 喜元君
      青木 正久君    赤城 宗徳君
      秋田 大助君    天野 公義君
      天野 光晴君    井出一太郎君
      井原 岸高君    伊藤宗一郎君
      伊能繁次郎君    池田 清志君
      稻葉  修君    稻村佐近四郎君
      宇野 宗佑君    上村千一郎君
      植木庚子郎君    臼井 莊一君
      内田 常雄君    浦野 幸男君
      江崎 真澄君    小笠 公韶君
      小川 半次君    小川 平二君
      小澤 太郎君    小渕 恵三君
      大石 八治君    大久保武雄君
      大竹 太郎君    大坪 保雄君
      大野  明君    大野 市郎君
      大平 正芳君    大村 襄治君
      岡崎 英城君    岡本  茂君
      奥野 誠亮君    加藤常太郎君
      加藤 六月君    鹿野 彦吉君
      鍛冶 良作君    海部 俊樹君
      桂木 鉄夫君    金丸  信君
      金子 一平君    金子 岩三君
      上林山榮吉君    神田  博君
      亀岡 高夫君    亀山 孝一君
      鴨田 宗一君    仮谷 忠男君
      川崎 秀二君    川島正次郎君
      川野 芳滿君    菅  太郎君
      木野 晴夫君    木部 佳昭君
      菊池 義郎君    北澤 直吉君
      吉川 久衛君    久野 忠治君
      久保田円次君    久保田藤麿君
      草野一郎平君    鯨岡 兵輔君
      熊谷 義雄君    倉石 忠雄君
      倉成  正君    黒金 泰美君
      小峯 柳多君    小宮山重四郎君
      小山 長規君    河野 洋平君
      河本 敏夫君    佐々木秀世君
      佐藤 文生君    齋藤 邦吉君
      坂田 道太君    坂村 吉正君
      坂本三十次君    櫻内 義雄君
      笹山茂太郎君    四宮 久吉君
      始関 伊平君    椎名悦三郎君
      塩川正十郎君    塩谷 一夫君
      重政 誠之君    篠田 弘作君
      澁谷 直藏君    島村 一郎君
      進藤 一馬君    周東 英雄君
      菅波  茂君    鈴木 善幸君
      砂原  格君    瀬戸山三男君
      園田  直君    田川 誠一君
      田澤 吉郎君    田中伊三次君
      田中 榮一君    田中 角榮君
      田中 龍夫君    田中 正巳君
      田村 良平君    高橋 英吉君
      高橋清一郎君    竹内 黎一君
      竹下  登君    谷垣 專一君
      谷川 和穗君    地崎宇三郎君
      中馬 辰猪君    塚原 俊郎君
      辻  寛一君    渡海元三郎君
      登坂重次郎君    床次 徳二君
      内藤  隆君    中尾 栄一君
      中垣 國男君    中川 一郎君
      中曽根康弘君    中村 梅吉君
      中村庸一郎君    中山 マサ君
      永田 亮一君    南條 徳男君
      二階堂 進君    丹羽 久章君
      西岡 武夫君    西村 直己君
      根本龍太郎君    野田 卯一君
      野田 武夫君    野原 正勝君
      野呂 恭一君    羽田武嗣郎君
      葉梨 信行君    橋本登美三郎君
      橋本龍太郎君    長谷川 峻君
      八田 貞義君    濱野 清吾君
      早川  崇君    広川シズエ君
      廣瀬 正雄君    福家 俊一君
      福田  一君    福永 健司君
      藤尾 正行君    藤田 義光君
      藤波 孝生君    藤山愛一郎君
      船田  中君    古内 広雄君
      古川 丈吉君    古屋  亨君
      坊  秀男君    細田 吉藏君
      堀川 恭平君    本名  武君
      前尾繁三郎君    益谷 秀次君
      増岡 博之君    増田甲子七君
      松澤 雄藏君    松田竹千代君
      松野 幸泰君    松野 頼三君
      三池  信君    三木 武夫君
      三原 朝雄君    水野  清君
      武藤 嘉文君    村上  勇君
      村上信二郎君    村山 達雄君
      毛利 松平君    粟山  秀君
      森下 國雄君    森田重次郎君
      森山 欽司君    保岡 武久君
      山口喜久一郎君    山口シヅエ君
      山口 敏夫君    山下 元利君
      山田 久就君    山中 貞則君
      山村新治郎君    吉田 重延君
      早稻田柳右エ門君    渡辺 栄一君
      渡辺  肇君    渡辺美智雄君
 否とする議員の氏名
      安宅 常彦君    阿部 昭吾君
      阿部 助哉君    赤路 友藏君
      淡谷 悠藏君    井岡 大治君
      井手 以誠君    井上  泉君
      井上 普方君    石川 次夫君
      石野 久男君    石橋 政嗣君
      板川 正吾君    江田 三郎君
      枝村 要作君    小川 三男君
      大出  俊君    大柴 滋夫君
      大原  亨君    太田 一夫君
      岡田 利春君    岡本 隆一君
      加藤 清二君    加藤 万吉君
      勝澤 芳雄君    角屋堅次郎君
      金丸 徳重君    唐橋  東君
      川崎 寛治君    川村 継義君
      河上 民雄君    河野  正君
      木原津與志君    木原  実君
      北山 愛郎君    久保 三郎君
      栗林 三郎君    黒田 寿男君
      小林 信一君    後藤 俊男君
      河野  密君    佐々栄三郎君
      佐々木更三君    佐野  進君
      斉藤 正男君    阪上安太郎君
      島本 虎三君    田中 武夫君
      田邊  誠君    田原 春次君
      多賀谷真稔君    高田 富之君
      武部  文君    只松 祐治君
      楯 兼次郎君    千葉 佳男君
      戸叶 里子君    堂森 芳夫君
      内藤 良平君    中井徳次郎君
      中澤 茂一君    中谷 鉄也君
      中村 重光君    楢崎弥之助君
      成田 知巳君    西風  勲君
      野口 忠夫君    芳賀  貢君
      長谷川正三君    畑   和君
      華山 親義君    浜田 光人君
      原   茂君    平岡忠次郎君
      平林  剛君    平等 文成君
      広沢 賢一君    広瀬 秀吉君
      福岡 義登君    帆足  計君
      細谷 治嘉君    三木 喜夫君
      三宅 正一君    美濃 政市君
      武藤 山治君    村山 喜一君
      八百板 正君    八木 一男君
      八木  昇君    矢尾喜三郎君
      柳田 秀一君    山内  広君
      山口 鶴男君    山崎 始男君
      山田 耻目君    山中 吾郎君
      山花 秀雄君    山本 幸一君
      山本 政弘君    山本弥之助君
      米田 東吾君    依田 圭五君
      渡辺 惣蔵君    渡辺 芳男君
      池田 禎治君    内海  清君
      岡沢 完治君    折小野良一君
      春日 一幸君    河村  勝君
      小平  忠君    田畑 金光君
      竹本 孫一君    塚本 三郎君
      中村 時雄君    永江 一夫君
      本島百合子君    山下 榮二君
      吉田 賢一君    吉田 之久君
      浅井 美幸君    有島 重武君
      伊藤惣助丸君    石田幸四郎君
      小川新一郎君    大野  潔君
      大橋 敏雄君    近江巳記夫君
      岡本 富夫君    沖本 泰幸君
      北側 義一君    小濱 新次君
      斎藤  実君    鈴切 康雄君
      竹入 義勝君    中野  明君
      広沢 直樹君    伏木 和雄君
      正木 良明君    松本 忠助君
      矢野 絢也君    山田 太郎君
      田代 文久君    谷口善太郎君
      林  百郎君    松本 善明君
     ――――◇―――――
 日程第七 公職選挙法の一部を改正する法律
  案(内閣提出)
#48
○議長(石井光次郎君) 日程第七、公職選挙法の一部を改正する法律案を議題といたします。

#49
○議長(石井光次郎君) 委員長の報告を求めます。公職選挙法改正に関する調査特別委員長齋藤邦吉君。
    ―――――――――――――
    〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔齋藤邦吉君登壇〕
#50
○齋藤邦吉君 ただいま議題となりました公職選挙法の一部を改正する法律案につきまして、公職選挙法改正に関する調査特別委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案は、選挙制度審議会の答申にかんがみ、個人演説会の回数制限の撤廃及び立候補期間の短縮等により、選挙運動の方法及び立候補制度の合理化をはかるとともに、選挙期間中の政党その他の政治団体の政治活動及び選挙運動についても規制の合理化を行ない、その他テレビジョンによる公営の政見放送の実施等に関し所要の改正を行なおうとするものであり、そのおもな内容は次のとおりであります。
 第一に、立候補の届け出期間を二日間に短縮することとしたほか、各選挙について供託金の額を引き上げることといたしております。
 第二に、都道府県議会議員及び指定都市の議会議員の選挙運動期間を十二日間に短縮することといたしております。
 第三に、選挙運動のための連呼行為の制限を緩和し、街頭演説のできる時間を車上の連呼の時間と同様とすることといたしております。
 第四に、選挙事務所を表示するための立て札及び看板の類の規格を拡大するとともに、置き去り文書の撤去等の規定を設けることといたしております。
 第五に、衆議院議員、参議院議員及び都道府県知事の選挙において、新たにテレビジョンによる公営の政見放送を実施することといたしております。
 第六に、個人演説会の回数制限を撤廃し、候補者は、個人演説会の開催中、都道府県の選挙管理委員会の定める表示をした立て札または看板の類を掲示しなければならないこととし、演説会場以外のいずれの場所にもこれらの立て札及び看板の類は掲示することができることといたしております。
 第七に、ポスター掲示場の配置、選挙公報の提出期限及び立ち会い演説会の開催回数等、選挙公営制度の合理化をはかることといたしております。
 第八に、選挙運動員等に対する実費弁償等の基準額を実情に即するよう引き上げるものといたしております。
 第九に、確認団体の政談演説会の開催回数を現行の二倍に増加するとともに、ビラの頒布を自由にし、街頭演説をすることができる時間を選挙運動のための街頭演説の時間に合わせることといたしております。
 第十に、立ち会い演説会等、選挙に関する演説を多衆により妨害した者を処罰することとしたほか、当選を得させないため虚偽の事項を公にした者の刑を引き上げ、また、政見放送または選挙公報において営業上の宣伝をした者をも処罰することといたしております。
 なお、この法律は、公布の日から起算して三月をこえない範囲内において政令で定める日から施行することといたしております。
 以上が本案のおもな内容であります。
 本案は、五月二十一日本特別委員会に付託され、六月四日野田自治大臣より提案理由の説明を聴取した後、質疑を行ない、同月六日、質疑を終了し、委員長より、
 一、衆議院議員、参議院地方選出議員及び都道府県知事の選挙における供託金「五十万円」とあるのを「三十万円」に、参議院全国選出議員の選挙における供託金「百万円」とあるのを「六十万円」にそれぞれ改めるものとすること。
 二、一般放送事業者も新たにテレビジョンによる経歴放送を行なうよう改めるものとすること。
 三、立ち会い演説会の回数は一選挙区につきおおむね十回とある改正規定を削除すること。
 四、連呼行為の制限緩和等に関する改正規定は、東京都議会議員の一般選挙等の地方選挙に適用するため、この法律案の施行期日及び適用区分をその旨改めるものとすること。
を内容とする修正案が提出され、討論なく、採決の結果、本案は全会一致をもって修正案どおり修正議決すべきものと決した次第であります。
 なお、本案に対し、自由民主党、日本社会党、民主社会党及び公明党共同提案にかかる附帯決議を付することに決しました。
 その内容は、立ち会い演説会の開催については、おおむね従来の三分の一程度を標準として開催計画を定めるよう、政府は都道府県の選挙管理委員会を指導することであります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#51
○議長(石井光次郎君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#52
○議長(石井光次郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり決しました
     ――――◇―――――
 日程第八 所得に対する租税に関する二重課
  税の回避のための日本国とベルギー王国と
  の間の条約の締結について承認を求めるの
  件(参議院送付)
 日程第九 所得に対する租税に関する二重課
  税の回避及び脱税の防止のための日本国と
  アラブ連合共和国との間の条約の締結につ
  いて承認を求めるの件(参議院送付)
#53
○議長(石井光次郎君) 日程第八、所得に対す租税に関する二重課税の回避のための日本国とベルギー王国との間の条約の締結について承認を求めるの件、日程第九、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアラブ連合共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件、右両件を一括して議題といたします。

#54
○議長(石井光次郎君) 委員長の報告を求めます。外務委員長北澤直吉君。
    ―――――――――――――
    〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔北澤直吉君登壇〕
#55
○北澤直吉君 ただいま議題となりました二案件につきまして、外務委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 ベルギーとの間の租税条約は、昭和四十三年三月二十八日東京において、また、アラブ連合との間の租税条約は、同じく四十三年九月三日カイロにおいて、それぞれ署名されたものであります。
 本二条約のおもな内容は、条約の対象となる租税の税目、不動産から生ずる所得に対する課税方法、企業利得に対する課税基準、船舶または航空機を国際運輸に運用することによって取得する利得に対する租税の免除、配当、利子及び無体財産権の使用料に対する課税、政府職員、短期滞在者、教授、学生及び事業修習者等が受け取る報酬等に対する租税の免除、わが国と相手国との間の二重課税の排除方法及び租税上相互に内国民待遇を供与すること等について規定しております。
 本二条約は、衆議院において承認されて後、四月二十三日に外務委員会に付託されましたので、政府から提案理由の説明を聞き、質疑を行ないましたが、詳細は会議録により御了承を願います。
 かくて、六月十一日、質疑を終了し、採決を行ないましたところ、本二案件はいずれも全会一致をもって承認すべきものと議決いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#56
○議長(石井光次郎君) 両件を一括して採決いたします。
 両件は委員長報告のとおり承認するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#57
○議長(石井光次郎君) 起立多数。よって、両件は委員長報告のとおり承認するに決しました。
     ――――◇―――――
 日程第十 日本放送協会昭和四十一年度財産
  目録、貸借対照表及び損益計算書
 日程第十一 日本放送協会昭和四十二年度財
  産目録、貸借対照表及び損益計算書
#58
○議長(石井光次郎君) 日程第十、日本放送協会昭和四十一年度財西目録、貸借対照表及び損益計算書、日程第十一、日本放送協会昭和四十二年度財産目録、貸借対照表及び損益計算書、右両件を一括して議題といたします。

#59
○議長(石井光次郎君) 委員長の報告を求めます。逓信委員長井原岸高君。
    ―――――――――――――
    〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔井原岸高君登壇〕
#60
○井原岸高君 ただいま議題となりました昭和四十一年度及び昭和四十二年度の日本放送協会の財産目録、貸借対照表及び損益計算書に関し、逓信委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 この両議案は、放送法第四十条第三項の規定に基づき内閣より提出されたNHKの決算書類でありますが、まず、昭和四十一年度の決算について申し上げますと、昭和四十一年度末現在におけるNHKの資産総額は九百八十四億四千四百万円で、前年度に比し八十一億三千九百万円の増加となっており、また、当年度の事業収支は、事業収入七百五十二億三千万円に対し、事業支出六百六十二億一千四百万円、資本支出充当七十二億三千万円で、差し引き当期剰余金は十七億八千六百万円となっております。
 次に、昭和四十二年度の決算では、昭和四十二年度末現在におけるNHKの資産総額は千六十五億四千七百万円で、前年度に比し八十一億三百万円の増加となっており、また、当年度の事業収支は、事業収入七百八十八億二百万円に対し、事業支出七百十三億四千五百万円、資本支出充当六十五億八千万円で、差し引き当期剰余金は八億七千七百万円となっております。
 なお、これら両件には、いずれも記述すべき意見はない旨の会計検査院の検査結果が添付されております。
 逓信委員会では、数回の会議を通じて質疑を重ねた後、六月十一日、両件についてそれぞれ採決を行なった結果、いずれも多数をもって異議なきものと議決すべき旨決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#61
○議長(石井光次郎君) 両件を一括して採決いたします。
 両件の委員長の報告はいずれも異議がないと決したものであります。両件を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#62
○議長(石井光次郎君) 起立多数。よって、両件とも委員長報告のとおり決しました。
 国会議員の秘書の給料等に関する法律の一部
  を改正する法律案(議院運営委員長提出)
#63
○西岡武夫君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 すなわち、議院運営委員長提出、国会議員の秘書の給料等に関する法律の一部を改正する法律案は、委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
#64
○議長(石井光次郎君) 西岡武夫君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#65
○議長(石井光次郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
 国会議員の秘書の給料等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
#66
○議長(石井光次郎君) 委員長の趣旨弁明を許します。議院運営委員会理事田澤吉郎君。
    〔田澤吉郎君登壇〕
#67
○田澤吉郎君 ただいま議題となりました国会議員の秘書の給料等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案の趣旨を御説明申し上げます。
 この法律案は、さきに政府職員の期末手当、勤勉手当の支給時期及び支給割合が改正されたことに伴いまして、国会議員の秘書に対しても政府職員と同様の期末手当及び勤勉手当を支給することができるようにするため、所要の改正措置を講じようとするものであります。
 すなわち、国会議員の秘書の期末手当の支給時期について、従来の六月及び十二月を三月、六月及び十二月に改め、また、その勤勉手当の支給時期及び支給割合について、従来、三月に〇・五月分、六月及び十二月に〇・三月分支給していたものを、六月に〇・五月分、十二月に〇・六月分支給するように改め、これらに伴う所要の整理を行なおうとするものであります。
 なお、この改正措置は、本年六月に支給する期末手当及び勤勉手当から実施しようとするものであります。
 本案は、議院運営委員会において起草提出したものであります。何とぞ御賛同くださるようお願い申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#68
○議長(石井光次郎君) 採決いたします。
 本案を可決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#69
○議長(石井光次郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。
     ――――◇―――――
#70
○議長(石井光次郎君) この際、暫時休憩いたします。
    午後三時五十一分休憩
     ――――◇―――――
    午後五時九分開議
#71
○副議長(小平久雄君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
     ――――◇―――――
 愛知外務大臣の訪米報告についての発言
#72
○副議長(小平久雄君) 外務大臣から、訪米報告について発言を求められております。これを許します。外務大臣愛知揆一君。
    〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
#73
○国務大臣(愛知揆一君) 私は、五月三十一日から一週間にわたり米国を訪問してまいりました。
 今回の訪米は、わが国の外務大臣としてニクソン大統領就任以来初めての訪米でありました。その意味におきまして、私は、ニクソン政権のアジア太平洋地域に対する基本的な考え方を明らかにすることにつとめました。ワシントン滞在中、まずニクソン大統領を訪問いたしましたが、大統領はアジア太平洋地域に対しきわめて深い関心を示し、この地域におけるわが国の地位を重要視し、日米両国が相協力してこの地域の平和と繁栄に貢献したいとの誠意を披瀝いたしました。(拍手)このような気持ちは、私が相次いで会談いたしましたロジャーズ国務長官、レアード国防長官、ケネディ財務長官、スタンズ商務長官等において、共通に感得されるところでありました。
 自由と民主主義を国是とするわが国の外交において、対米関係はその重要な柱の一つであります。戦争直後の時代から、とかく米国に依存しがちであった考え方をやめ、イデオロギー的な観念論に基づく米国批判にとらわれることなく、米国のアジア太平洋地域に対する政策を正しく評価することが、わが国が自主的に外交を推進するために最も肝要なところであると存じます。(拍手)日米安保体制は、わが国及びわが国周辺の安全に寄与し、もってわが国の平和と繁栄を確保するという大目的に発するところであります。私は、今回の訪米を通じまして、わが国が国力にふさわしい自主的で積極的な姿勢をもって、この正しい政策の遂行に誤りなきを期するとの覚悟を新たにいたした次第でございます。(拍手)
 申すまでもなく、今回の訪米の主たる目的は、沖繩問題についての日本政府の基本的立場を米国政府に十分説明し、米側首脳との隔意なき意見交換を通じて、今秋に予定されておりまする佐藤総理大臣訪米に備え、その解決を進めることにありました。
 私は、ニクソン大統領訪問に続き、ロジャーズ国務長官とは三回にわたり会談いたしましたほか、レアード国防長官とも会談し、沖繩返還に対する沖繩県民を含むわが国全国民の願望を十分に説明をいたしました。すなわち、沖繩の早期返還は沖繩県民を含むわが国全国民の一致した民族的な願望であり、おそくも一九七二年中には沖繩の施政権はわが国に返還せらるべきこと、また、施政権返還後の沖繩に残される米軍基地につきましては、日米安保条約及びその関連取りきめが本土の場合と同様に、そのまま適用せらるべきであるとの立場を主張いたしました。(拍手)特に核兵器の問題については、唯一の被爆国として、わが国には特殊の強い感情のあることをあらためて説きました。これらに対し米側は、深い理解をもってこれを傾聴し、鋭意検討を進めることを確約いたしました。(拍手)
 沖繩にある米軍基地は、戦争抑止力としてわが国及びわが国を含む極東の安全にとり、きわめて重要な役割りを果たしております。わが国の安全のためには、そのような基地の機能をそこなわないための十分な配慮が必要であります。この点は米側首脳も一致して指摘していたところでありますが、わが国としても、そのような観点から自主的な立場に立って対処することは、すなわち、わが国の国益に合致するゆえんであると信じます。
 今回の訪米は、沖繩返還交渉の第一ラウンドであります。今後、日米双方が問題解決という目標に向かってそれぞれの立場をもととしつつ、具体的な手段、方法について折衝を重ねることになるわけであります。これを要するに、沖繩返還という問題は、日米両国が相対峙する立場に立って相争うという性質の問題ではなく、対等の立場に立って、沖繩県民を含むわが国全国民の願望を達成すべく、日米双方が友好裏に話し合って解決を見出すという性質の問題であります。(拍手)私は、日米両国政府の率直な協議を通じて、必ずや沖繩県民を含むわが国全国民の期待に沿う解決に到達し得ると確信いたしておる次第でございます。(拍手)
 私は、沖繩返還交渉を開始するという重大な使命を果たして帰国いたしましたが、今後の交渉については、なお幾多の困難が予想されます。政府としては、全力を傾注してこの交渉に当たる覚悟でありますので、今後とも政府の努力に対する一そうの御理解と御支援をお願いする次第であります。
 なお、今回は、ニクソン大統領就任以来初めての訪米でもあり、沖繩問題のほかにも、日米間の諸問題について広く米国政府首脳と意見を交換することが必要と考えまして、先ほど申しましたように、商務、財務両長官等と日米間の経済問題を中心に、主として貿易及び資本の自由化等について意見の交換を行ないましたが、これらの問題につきましては、七月の日米貿易経済合同委員会において、さらに話し合うことといたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
     ――――◇―――――
 愛知外務大臣の訪米報告についての発言に対
  する質疑
#74
○副議長(小平久雄君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。小坂善太郎君。
    〔小坂善太郎君登壇〕
#75
○小坂善太郎君 私は、自由民主党を代表して、ただいま行なわれましたる外務大臣の報告に関し、沖繩返還に関連いたしまして、佐藤総理大臣、愛知外務大臣、その他関係閣僚に質問をいたさんとするものであります。
 沖繩の返還は、北方領土と並んでわが国民の非願でありまして、このことについては、歴代の戦後の政府が強くアメリカ政府に要請してきたところであります。一九六二年の春、故ケネディ大統領は声明を発しまして、沖繩は日本の領土であり、その住民は日本国民であることを明瞭にするとともに、いわゆる潜在主権の形を一歩進めて、アジアの国際環境が静穏となり、沖繩を日本に複帰せしめる日の一日も早からんことを期待すると言ったのであります。しかしながら、アジアの国際環境の現状から見て、それではいつ沖繩が日本に返ってくるかということにつきましては明らかでなかったのでありますが、一昨年、佐藤・ジョンソン会談によりまして、両三年内に返還のめどをつけることが合意されたのであります。今回、愛知外務大臣は、ニクソン政権誕生後初めて正式にニクソン大統領やロジャーズ国務長官等の要人と会談し、数カ月内、すなわち十一月の佐藤首相の訪米の際には、沖繩返還について、一九七二年を目途にこれを実現すべく合意したといわれているのであります。このことは、沖繩返還のゴールがきまったことでありまして、これはきわめて重要な事柄であると存ずるのでありますが、この点についての事情を明確にしていただきたいと存じまして、御答弁を願いたいと思います。(拍手)
 伝えられるところによりますると、ニクソン大統領は、自分は歴代大統領の中で最も数多く日本を訪問したものであり、最も日本のよき友人であると自負していると言ったといわれておるのでありますが、ニクソン政権の対日観をどのように把握してこられたか、総理大臣並びに外務大臣の考えを、この際特に伺っておきたいと思うのであります。
 ことに、アメリカのアジアに対するオーバ一コミットメントが再検討され、ASPACに見られるような新たなるアジア連帯の盛り上がりに期待しつつ、アメリカはその足らざるところを補うといった出方に変わるのではないかといわれておるのでありまして、アジア防衛のキーストーンとしての沖繩を見まする場合、これが作戦基地としてよりも補給基地として、より重要性を加えつつあるといわれておるのであります。アジアにおけるよきパートナーとしての日本を信頼するニクソン政権は、返還後の沖繩における自分自身の役割りをどのように考えておられるか、また、日本に対して何を期待していると感ぜられたかを明らかにされたいのであります。(拍手)
 次に、基地の態様に対する政府の基本的な立場について伺いたいと思います。
 現在の沖繩基地の果たしている平和への貢献、戦争抑止力としての働きにつきましては、政府の認識はいかがであるか、この問題が特に伺いたい重点であります。
 沖繩が本土に返還され、名実ともに沖繩県となりましたる場合には、当然日本国憲法が適用せられ、安保条約並びにこれに付属する一切の取りきめがそのまま適用さるべきことは、論理上の帰結として当然であります。政府は、今回の交渉に際して、早期かつ本土並み返還を要請したといわれ、愛知外務大臣は、ただいまさような意味のことを言われたのでありまするが、これに対する先方の反応はどうであったか、この点を承りたいと存じます。また、さらにこいねがわくは、この内容を詳細に承りたいと思うのであります。
 さらに、安保条約第六条に基づきまする事前協議の運用について、特に今後論議が活発になろうかと思うのでありまして、この点を、この際明らかにしておかれたいと思うのであります。
 社会党は、従来、事前協議は有名無実であって、日本側はノーと言うことはできないと言い、その証拠には、従来、日本側から事前協議を持ち出したこともないではないかと言ってまいりました。しかるところ、きわめて最近、事前協議はすべてノーと言うべきであると主張し始めたのであります。事前協議は、日本の国益にかんがみ、イエスもあり、ノーもあることは、協議という以上、これは性格上当然のことでありまして、これは言うまでもないことと思うのでありますが、いかがでありましょうか。(拍手)
 私は、これから事前協議の対象となるべき三つの項目のそれぞれについて質問をいたしたいと思うのであります。
 すなわち、第一項、配置の重要な変更はさておきまして、第二項の装備の重要な変更、すなわち、核兵器の持ち込み及び第三項の戦闘作戦行動のための基地の使用の問題であります。
 すなわち、核兵器につきましては、わが国は非核三原則、すなわち、核兵器はつくらず、使わず、持ち込ませず、これを政府の方針としているのでありまして、この点についてはイエスもあり、ノーもあるというわけにはいかないと思うのであります。アメリカはその原子力法によって、核兵器のことについては、その存在を肯定することも否定することもできないので、アメリカ側としては、現在あると伝えられる沖繩の核についての言明は、かなり言い回しが困難かとも思うのでありますが、その点をどのように考えられるか承りたいのであります。
 一九六八年に、当時のマクナマラ国防長官がアメリカ上院におきまして、数年の間に西独における戦略、ミサイル撤去の例にならって、メースBの今後の措置について言及したといわれておりまするが、この問題と沖繩にあるといわれるメースB撤去の関連をどのように考えておられるか承っておきたいと思うのであります。これは今後の交渉の重要なポイントとなると思うのでありまして、これは御意見があれば特に伺っておきたいと思います。
 第三の、沖繩から自由に発進している米軍が、返還後、この事前協議の条項でいかなる制約を受けるか、これまた大きな問題であると思うのであります一この点については、わが国の安全、またこれと密接不可分な関係を持つ極東の安全のために、わが国が主体的に考え、われわれ自身の問題として考えて、かつ、日米間の平素の隔意なき意見交換と了解のもとに、円滑に運用していかなければならぬと考えるのでありまするが、政府の見解を承りたいと思います。この点について、総理大臣は、かつて国会で、何らかの特別の取りきめを結ばざる限り、いわゆる自由使用はできないと言われたと思うのでありますが、どうでありますか、この点について政府の見解を承っておきたいと存じます。
 沖繩問題を論ずる場合、一部には、この問題が日米間の利害の対立の場であるがごとくに言う者もありまするが、かかる見解は全く誤りであります。戦争の所産である今日の沖繩の地位は、日米間の相互の信頼があって初めて解決できる問題であると信ずるのであります。(拍手)
 わが国は、自由圏におきましては、すでにアメリカに次いで第二の国民総生産を持つに至ったのでありますが、これは、戦後わが国の平和と安全について何らの不安がないためであります。また、日米安保条約によりまして、国民総生産の〇・八%というきわめて僅少な防衛費を支出しているにすぎませず、予算上これに倍する社会保障費を支出し、また、四倍に当たる公共事業費の支出をなし得るがために、経済の飛躍的な発展がなされているのであります。沖繩返還が達成されれば、固有の領土としての国後、択捉、歯舞、色丹の北方領土の問題を残すとはいえ、住民の問題については、一応の戦後の終わりと見るべきものでありましょう。したがって、自主防衛についても、沖繩返還問題を含めて、さらに物心ともに、在来のあり方を反省して改善すべき点が多々あると存ぜられるのであります。
 政府は、国民に呼びかけて、その理解を得つつ、自主的な立場から防衛を増強することが必要であると思うのであります。(拍手)今日のわが国の防衛力の現状について見ますると、陸上自衛隊の定員すら充足されておりません。専門家の話を聞いてみますると、東京急行便と称せられる空からの偵察が定期的に行なわれております。ウラジオストックには、原子力潜水艦数隻を含む約百隻の潜水艦が配置されているということであります。力の均衡によって保たれている今日の世界政治と、抑止力による平和の現状を見まするときに、ときおり日本に休養に立ち寄るアメリカの原子力潜水艦は、今日の平和に貢献しているのであります。(拍手)日米安保条約により、わが国の安全に寄与しつつあるアメリカの原子力潜水艦寄港反対を叫ぶ集団があることは、政府の国際環境の現況とわが国の防衛力の現状を理解せしめんとする努力が足りないからではないかと思うのでありますが、いかがでありましょう。(拍手)この点について、御所見を承っておきたいと思います。
 外務大臣は、アメリカにおいて安保条約の自動継続の方針を明らかにしたといわれておりますが、これは事実でありましょうか。すでに安保条約の堅持をうたい、これを適用しつつ、そのワク内におきまして沖繩返還を要請するならば、その時点における安全保障条約は、そのまま継続されるものと考えるのが当然でありまするが、国会における政府答弁では、いわゆる自動延長とも固定延長とも、いずれともきめていないと言っているのでありまするから、もし、このようなことを言ったとすれば、これは外務大臣の勇み足ではないかともいわれております。慎重なる外務大臣にしてさようなことはないと存じまするが、その真意はどうであるか、伺っておきたいと思います。
 また、総理大臣におかれては、この機会に、これに関する方針を明示せられることも一案かと思うのでありまするが、これについても御意見を承っておきたいと思います。
 沖繩返還問題が国会において取り上げられるに際しまして、常に基地の態様のみが問題になっておりまするが、沖繩がわが国に返還された後は、その経済問題がきわめて重大であります。沖繩の国民所得は一人当たり五百八十ドルといわれておりまして、この地域におきまする台湾よりもはるかに多いのであります。戦前五十九万の沖繩同胞が、今日百万人となり、しかも、かかる国民所得を得ているということは、これは基地収入によるところがきわめて多く、産業別国民所得で見ても、第三次産業によるものが七〇%以上を占めておるのであります。砂糖やパイナップルは、今日の特殊な環境のゆえに自由化を行なっておりませんが、その生産費の高いところから、農業収入の大宗としてはきわめて不安定なものであります。観光収入もまたきわめて微々たるものでありますが、それも今日沖繩がドル地域であるためのものであって、本土復帰のあとにおいての収入をいかにして確保するかについては、大いにくふうを要するところと考えるのであります。沖繩が本土に返還された後、内地への若年労働力の流入はどのようになるでありましょうか。また、中高年齢層によってのみささえられる沖繩経済はどのようになるでありましょうか。これらの重要な問題については、国内ではほとんど論議されておらないのであります。これらの問題は、基地の態様とともにきわめて重要な事柄でありますから、政府においては、長期の、実地に即した、また官僚の作文でない沖繩に関するビジョンを早急につくり上げる必要があると考えるのでありますが、政府の考えを聞いておきたいと思います。(拍手)これは特に総理大臣、また担当の床次国務大臣に御意見を伺いたいと思います。
 また、沖繩返還の大綱がきまった後は、専門家によって両国間の沖繩事後処理の討議が持たれねばならないと思います。水道、電気をはじめとする諸施設の引き渡し等は、要すれば沖繩建設公債のようなものを発行する必要もあるのではないかと思いまするが、どうでありましょうか。
 以上、私は、沖繩返還交渉についての疑念をただしましたが、この交渉は、あくまでも日米間の友好と信頼を基礎として行なわれなければならないと存ずるのであります。怒号と騒乱の中から返還をかちとれなどという考え方は、返還の条件を困難にするのみならず、わが国の基盤をも弱化するものであって、何らの利益にもならないものと思うのであります。(拍手)
 社共両党は、従来、沖繩返還については安保条約の破棄、基地の全面撤去を前提として、即時無条件全面返還を主張しております。かかる考え方に立っての沖繩返還は全く望み得ないことと考えるのであります。(拍手)政府は、き然たる信念をもって現実の情勢を説くべきであると思いますが、いかがでありますか。
 なお、政府は、アジアに対する経済協力、日米間の経済関係について、愛知外相の訪米を機として論議を行なったと聞きまするが、国会を通じて国民に報告することがあるならば、この際伺っておきたいと思うのであります。
 特に、ASPACは新たなる軍事同盟なりといい、社会党の委員長までも街頭に立ってASPAC粉砕を訴えているということであります。この際、政府のこの問題に対する所信を明らかにされたいと思うのであります。(拍手)
 以上をもちまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#76
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 小坂君にお答えいたします。
 まず最初に、ニクソン大統領の対日観についてお尋ねがありましたが、この点は、国民各位もひとしく重大な関心を持っているところだと私は思います。詳しくは愛知外務大臣からお聞き取りを願いたいと思いますが、ニクソン大統領は、一九六〇年以来六回にもわたって日本を訪問したことがあり、個人的にも日本に対する知識と理解が深く、特にわが国のアジアにおける役割りを高く評価している由であります。このことは、今後の日米友好関係の維持発展に大きな意味を持つものと私は考えております。
 政府は、施政権返還後も、米軍の沖繩基地は日米安保条約と関連取りきめの適用を受けて存続することを望んでおります。具体的には、今後の日米交渉の結果いかんによりますが、沖繩基地は、今後ともわが国の安全と、わが国のみならず、極東の安全保障に大きな役割りを果たすことを期待しております。さらに、米国としては、日米パートナーシップのもと、相携えてアジアの平和、アジアの経済発展と民生安定にわが国が応分の寄与をすることを期待しているものと私は思います。
 次に、事前協議についてお答えいたします。
 事前協議におきましては、イエスと言う場合もあり、ノーと言う場合もあるということは小坂君御指摘のとおりで、このことは当然のことであります。いかなる場合にイエスと言い、いかなる場合にノーと言うか、これは申すまでもなく、わが国の国益に基づいて政府が自主的に判断し、決定すべきことであります。(拍手)また、核持ち込みについての政府の方針は一貫しておりますから、あらためて申し上げるまでもございません。沖繩についても同様であります。これらの点は、予算委員会等においてすでにお答えしたとおりであります。
 次に、特別の取りきめをしない限り自由使用はできないのではないかというお尋ねでありますが、そのとおりであります。沖繩返還後も米軍基地の機能をそこなわないようにすることが、極東全体の平和を維持するためきわめて重要であると考えております。しかしながら、政府としては、安保条約並びに関連取りきめが、本土と同じようにそのまま沖繩に適用されるよう米側と話し合っており、特別な取りきめをすることは考えておりません。したがって、特別な取りきめをしない以上、いわゆる自由使用というようなことはありません。これははっきり申し上げておきます。(拍手)
 次に、国民が国を守る気概を持つことが自主防衛の基本であると私は絶えず申しております。これまでも機会あるごとにこの点を呼びかけてまいりましたが、今後とも、さらに努力したいと思います。わが国を取り巻く国際情勢あるいは一般の国際環境等につきましても、国民にさらに御理解と御協力をお願いする、その立場で、重ねてこれらの点について国民に直接呼びかけるつもりでおります。
 次に、安保条約の継続方式についてお尋ねがありました。一九七〇年以降も日米安全保障体制を堅持する、この方針は、私が国会等におきましても再三申し述べてまいりました。いかなる形でこれを堅持するかは、国民世論の動向、党内の意見をも十分見定めた上、十一月の訪米までにはきめたいと、かように考えておりますので、いましばらくお待ちをいただきたいと思います。
 愛知外務大臣の米国における発言は、私は党内における各種の意見、それを愛知君が感得した点を率直に申し述べたものだ、かように私はとっております。
 次に、日米間において沖繩返還に関する基本的諸問題、経済発展諸問題がまとまれば、わが国としては沖繩の経済問題を中心とした長期計画、これを立案しなければなりません。そのことは御説のとおりであります。戦後のわが国の経済発展をよそに、沖繩同胞の諸君は物心ともに言うに言われぬ苦労をしてこられたわけでありますから、社会的、経済的格差を一日も早く是正するよう、最大の努力を払う決意でございます。
 次に、返還の大綱がきまったら、専門家による日米間の沖繩問題処理の検討が必要だという御指摘がありました。そのとおりであります。私は、水道、電気など、日常生活の基本をなす事柄からまず手をつけなければならない、ただいまの御意見をも参考にいたしまして、返還時に混乱の起こらないように、米側とも十分連絡を密にしながら、準備を進めていく考えであります。
 最後に、アメリカが、わが国の信頼すべき友邦であることは、さきの小笠原諸島の返還、このたびの沖繩問題解決のための交渉経過におきましても、国民各位には十分御理解いただけたことと思います。また、話し合いによる領土問題の解決という事実は、現実の国際政治に新風を吹き込むものと確信いたしております。(拍手)
 国民各位は、冷静に政府の外交交渉を見守り、今後わが国が国際間の平和維持に一段と発言権を持ち得るよう、国力増進に努力していただくよう、切に希望いたします。(拍手)
 なお、ASPACにつきましては、外務大臣から詳しくお答えすると思います。(拍手)
    〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
#77
○国務大臣(愛知揆一君) まず第一に、ニクソン大統領の対日観、このお尋ねでございますが、一言にして申しますならば、歴代のアメリカの大統領の中で、ニクソン氏ぐらい日本の実情に明るい、あるいはアジアの情勢に対する認識が深い人はないということを自分自身で、いわば自負を持っているくらい関心が深い。こういうわけでございますから、その中から出てまいりますところの日本観というものは、私が見ましても、相当の客観性を持っているというように感得ができるわけでございます。したがいまして、先ほども御報告をいたしましたように、アジア太平洋地域等の安定については、ひとつ日本にも十分お願いをする、相互の信頼関係の中に、個々の問題について意見の違うこともたくさんあろう、沖繩返還問題につきましても、これから君と国務長官との間の折衝には、双方ともずいぶんと主張の食い違いもあろうが、十分これを戦わしていく中に、おのずから相互信頼関係の上に立ったりっぱな結論が出るに違いない、一口に申しますれば、かような態度で日本とのいろいろの問題に取り組む姿勢を示しておるわけでございまして、いわゆる相互信頼の上、ただいまもお話がございましたが、話し合いで、対決の姿勢ではなくて、話を煮詰めてまいる、かような、相手方としては実に好個の相手方ではなかろうか、私はかように感ずるわけでございます。(拍手)
 第二は、基地のあり方でございますが、ただいま御質疑の中にもございましたとおり、施政権の返還ということは、憲法、安保条約はもちろん、あらゆる条約、法制が本土並みに適用されることであります。したがって、これは論理の帰結であり、自然の成り行きで、さように考えることが私は当然であると思いますが、いわんや、沖繩の百万県民の人たちの気持ちは、あらゆる意味で日本の本土と差別されることは耐え忍びがたいところであり、この点をわれわれは十二分に取り上げていかなければならない。この点は、アメリカとの交渉におきましても、最も肝要な本土の国民のものの考え方であり、姿勢でなければならないと私は思うのでありまして、この点から申しましても、日米安保条約一連の取りきめというものが、そのまま沖繩に本土並みに適用されるようにしていかなければならない、かように考えるわけでございます。問題は、同時に、日本の国民の運命の安危にかかる安全保障という点からいって、こうした仕組みの中に、日米双方が協力し合って、そして何よりも大切な日本の安全、沖繩を含む日本の安全を守る、そういう仕組みができるようにするということが、これからの一番大事な点ではなかろうかと私は考えるわけでございます。(拍手)
 事前協議の問題につきましては、ただいま総理からもお話がございましたとおりで、これは日本が主権国であって、対等の立場で日米安保条約を結んでおるのであります。そして事前の協議をするのであります。私は、日本の国民、国家が主権を持った、そしてアメリカと対等の立場に立って、日本として必要なこと、あるいは日本の立場からこうならなければならないということを基本に置いて、いわゆる国益の立場に立って、対等の立場でイエスと言い、ノーと言うのが事前協議の適正な運営である、私はかように確信をいたしておるわけでございます。(拍手)さような点から申しまして、ただいま御質疑があったように、配置、装備、そして戦闘作戦行動、この三つが事前協議の対象であるわけでございますが、核の問題につきましては、ただいま総理からお話があったとおりであります。沖繩につきましても本土と同じように、非核三原則というものをあくまで守ることが大切なのであるということは、私は十二分にアメリカ側にも説明をいたしたつもりでございます。いまだ確たる反応はつかめておりませんけれども、私といたしましては、十分な説明をいたしてまいったつもりでございます。
 なお、自由使用という問題につきましても、私ただいま申しましたように、主権国の立場から言えば、一切をあげて自由にまかせるというようなことが考えられるはずはないと思うのでありまして、この点は、国益を守る主権国の立場というものを十分に今後も主張しなければならない、かように存じております。
 次は、安保条約の自動継続の問題でございます。御承知のように、今回の私の折衝というものは、たとえば文書をもって折衝しているわけのものでもございません。いわゆる第一ラウンドでございます。安保条約を守っていかなければならない、またこれが基本国策であると確信しておるわれわれの間には、来年六月以降どういうふうな方法をとるかということについて、真剣な検討が進められておる。その中の相当多数の意見は、いわゆる自動継続であるということを伝えたのであって、これが政府の正式の申し入れとか見解の表示ということではございません。話し合いを煮詰めていく過程において、資料として出ました一つの話でございます。何よりの証拠には、相手のアメリカ側が、これをいまだ日本政府の正式の提案としては受け取っておりません。さようなことで、これに対する私の見解は十分御了解いただけるものと信じます。
 最後に、ASPACにつきましては、私ここで、貴重な皆さまのお時間ですから、多く申し上げることを差し控えてしかるべきかと思いますが、ことほどさように、ASPACというものが軍事同盟だなどと言うことは、自分でつくった幻影に対して自分が戦いをいどんでおるようなものであって、全く私は問題にならないと思う。(拍手)これは責任のあるそれぞれの国の政府代表が集まってつくりました共同コミュニケーつをごらんになっても、あまりにも明白ではございませんかということを申し上げて、私の答弁といたします。(拍手)
    〔国務大臣有田喜一君登壇〕
#78
○国務大臣(有田喜一君) わが国の防衛力は、日米安全保障体制を堅持しつつ、国力、国情に応じて今日まで漸進的に防衛力の整備を進めてきたのでありまして、本年度も皆さんの御協賛を得まして、防衛予算は四千八百三十億円という巨額にのぼったのでありまするけれども、しかし、全体の予算のうちの割合を見ますと、わずか七・二%にすぎない。世界の国々を見まして、総予算の一割に満たないなんというのはほとんどありません。また、国民総生産との割合を見ましても、今回の予算は〇・八四%、国民総生産との割合が一%以下なんというのは、これまたほとんどありません。こういうことを考えますと、日本の国はここまで国力が伸びてきたのでございまするから、今後一そう防衛努力を自主的に推進していかなければならぬと思うのであります。
 防衛力は、国防に関する国民の強固な決意にさささえられてこそ、その機能を十分に発揮することができる。(拍手)私といたしましては、まず、自衛隊みずからを国民に信頼される自衛隊、国民とともに歩む自衛隊ということに進めたいと思いまして、精強な自衛隊の建設に力を尽くして、国民の負託にこたえたいと思っております。が同時に、国民の間に、国民みずからの、国はみずからの手によって守っていくという、このことがきわめて重大と思うのです。そうして、国民の深い理解のもとにささえられて、初めてわが自衛隊の士気も高揚し、その力もより大きく発揮することができるのであります。
 かようなことを考えましたときに、国民の方々に国防に対する深い理解を持ってもらう、このことが必要と思いますので、御説のとおり、われわれとしましては、今後とも一そうあらゆる機会をとらえまして、国防の重要性を広く国民に訴えていきたい、そうして十分な理解を得るように努力いたしたい、かように考えております。(拍手)
    〔国務大臣床次徳二君登壇〕
#79
○国務大臣(床次徳二君) 沖繩の復帰後の経済の問題に対しまして総理大臣からお答えがありましたが、復帰後におきましては、沖繩の経済を真に本土の経済の一環として位置づける必要があります。その復興、開発方策につきましては、十分な調査、研究を行ないましてこれを実行に移していきたいと存じまして、今日検討中であります。すなわち、現在は本土との一体化ということを三カ年計画におきまして実施すべく努力いたしておりますが、なお、将来のビジョンといたしまして、沖繩の経済振興計画を樹立し、これを実施いたしたいと思っております。
 また、労務の対策につきましてお尋ねがありましたが、軍離職者対策、また労務、技能訓練等を、援助によりまして本年から実施しております。また、ただいま国会において御審議中の免許資格の一体化等も大きく役立つものと考えております。
 なお、経済の問題につきましては、五月三十日に全国総合開発計画を樹立いたしましたが、沖繩の経済開発の方向につきましても、特に配慮すべき旨を明らかにしておりますので、その趣旨に向かって努力いたしたいと思います。
 次に、沖繩の返還の大綱がきまりました際におきまして、水道、電気等に対しまして、専門的な立場に立ちまして実施細目をきめる必要がありますことは、総理からもお答えがありましたが、さきに小笠原におけるところの前例を見ましても、今後なかなかこの問題につきましては十分な検討、努力を要するものでありまして、特に沖繩には百万の同胞が生活しておりますので、日常生活におきまするところの混乱を最小限度にするというような消極的な意味だけではなしに、さらに積極的に、将来の沖繩の経済の発展と、住民の生活向上のために研究を進める必要があると思うのであります。もちろん、これに対しまして、政府におきましては、受け入れ準備体制を十分に整備して、万全を期する考えでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#80
○副議長(小平久雄君) 松本七郎君。
    〔松本七郎君登壇〕
#81
○松本七郎君 ただいまの愛知外務大臣の訪米報告に対して、私は、日本社会党を代表して、質問を行なわんとするものであります。(拍手)
 きわめて遺憾ながら、外務大臣の報告は、国民が最も関心を寄せている政治的核心に触れた問題点には一言も触れていないお粗末なものであることを指摘しなければなりません。これは、佐藤内閣の対米交渉の基本的姿勢からくる当然の帰結であります。よって、私は、相手国たるアメリカの基本政策についての客観的な事実に基づいて問題点を指摘し、これに対する日本政府の明確な見解と態度を、本院を通じて国民の前に披瀝されるよう求めるものであります。(拍手)
 第一点。政府は、一貫して沖繩の早期返還と基地の重要性とを不可分一体のものとして強調しております。すなわち、安保堅持の上での沖繩返還であり、沖繩を安保体制の中に組み入れようとしているのであります。このように、アメリカの極東戦略を大前提にしている以上、アメリカ側からは、返還の代償として、戦略上必要なもろもろの保障を日本に要求してくるのは当然であります。今回の対米交渉なるものが、実は外交交渉にあらずして、陳情交渉の醜態をさらしたのはそのためであります。(拍手)日本国民は、この点に大きな疑惑と不安を抱いています。佐藤総理としては、今後もこの基本姿勢をくずさない方針なのかどうか、第一に明らかにしていただきたいのであります。
 もともと沖繩は、日本個有の領土であるばかりでなく、わが国の国連加盟と同時に、沖繩占有の国際法上の根拠は失われている。(拍手)すなわち、サンフランシスコ平和条約第三条の信託統治条項は無効となり、さらに日本国憲法及び国連憲章に違反し、世界人権宣言、さらには植民地廃止宣言への違反であることは明瞭であります。(拍手)したがって、日本としては、当然の権利として、即時無条件全面返還を要求すべき性質のものであります。(拍手)沖繩県民の圧倒的多数が、屋良主席当選を通じて、このことの正しさを立証し、また本年一月の朝日新聞全国調査によりますならば、本土国民の過半数もこれを支持していることが明らかにされています。(拍手)戦略上どう取り扱うかということは、無条件返還後の時点において、日本独自の立場と判断によって、右するか左するかをきめるべきものであります。この姿勢こそが、独立国としての民族的基本権に基づく外交の姿ではないでしょうか。日本国民のこのような要望にこたえ、いま一度、政府は根本的に再検討すべき時期だと思うが、首相の所信を伺いたいのであります。
 いやしくも、人口百万を擁する国土が異民族によって支配されている例が、世界じゅうのどこにあるでしょうか、あれば、その実例を外務大臣から示してもらいたい。
 このように、政府の基本姿勢がそもそも誤っているために、陳情交渉が進めば進むほど、最初の勢いとは反対に、続々とぼろが出てきて、苦境に追い込まれたのであります。外務大臣渡米前の大げさな前ぶれに続いて、ニクソン大統領と会って予想以上の成果などとうちょうてんの感激にひたったのもつかの間、ロジャーズ国務長官その他との会談を重ねるにつれて、米国からもろもろの戦略上の保障を要求されるに至り、意気は上がらず、帰国するや、全く意気消沈した外相の姿を、首相はどう評価されるのでしょうか。(拍手)よかったよかったと宣伝ばかりは声を大にして誇張されているが、内容的には、一体何がよかったのか、外務大臣の具体的な、明確な答弁を求めます。(拍手)
 保利官房長官は、十一月に決着する約束でもできたかのごとく吹聴しておりまするが、実際はニクソン大統領が、十一月の佐藤訪米をめどに、もっと煮詰めよう、結論を得るように努力をしようという程度のことしか言っていないのではないか。しかも、その煮詰められる内容として予想されるものが、これまた従来政府が宣伝につとめてきた核抜き、本土並みとはおよそ無縁にして危険きわまりない、核を含む自由使用で、本土の沖繩化に通ずるものになろうとしているのであります。日本の外務省は早く手回しもよく、従来使ってきた核抜き、本土並みという表現をやめて、今後は本土、沖繩を通じて日米安保条約の全面適用、事前協議は本土、沖繩とも同様に使うが、弾力的運用でイエスもあればノーもある、こういう説明に切りかえることに意思統一をしたといわれております。国民が疑惑と不安を深めるのは当然ではないでしょうか。政府は、今回の外相渡米の機会に、非核三原則を本土、沖繩を通じてあくまで貫徹するとの決意を大統領に対し明確に示したのかどうか、外相から明らかにされたいのであります。
 B52の撤去さえなし得ず、国政参加もまだ実現できずにいる佐藤政府の手で、非核三原則の貫徹などとてもできまいとの不信感が国民の間に広がっているのが現状であります。(拍手)政府は、ほんとうにその決意があるならば、その裏づけとして、権威と迫力をつけるためにも、国会において、非核武装宣言をするのが当然な措置であり、国民の疑惑と不信を一掃する最良の道とも思われるのでありまするが、この際、これに賛同する意思がありやいなや。また、事前協議は弾力的運用でイエスもノーもあるといいまするが、核の持ち込みについては、イエスの返事は絶対にないとの確約ができるのかどうか、この点、佐藤首相から明確な答弁をお願いしたいのであります。これが質問の第三点であります。
 第四点。外相渡米前の否定にもかかわらず、日米経済関係が相当の話題になったことも見のがすわけにはいきません。これもやはり対米交渉の基本姿勢の誤りのために、沖繩返還の取引に使われるのではないかとの日本国民の憂慮が、決して杞憂ではないことを物語っております。七月下旬に予定されている日米貿易経済合同委員会における佐藤・ロジャーズ会談で、この問題を煮詰めようということになったようでございまするが、政府の言うように、経済関係を沖繩とはからませないという保証がどこにあるのでしょうか。あるのならば、具体的根拠を外務大臣から示してほしい。
 沖繩返還についても日米経済関係についても、ともに詰めに入る時期が一致しているという点からしましても、政府のことばどおりに、からませない方針を貫徹するには、ここでもまた民族の基本的権利として、沖繩の無条件返還を要求するという強い態度がなければだめではないのか。極東戦略を前提にしながら、返していただくといった姿勢である限りは、お返しの代償として、経済問題が取引に使われるのはあまりにも見えすいていると思うがどうか。総理の見解を聞きたい点でございます。
 誤りの第五は、日本側の意見や希望や手のうちは全部さらけ出して、米国に聞きおかれ、十一月までには煮詰める努力をしようと軽く受け答えされたにとどまっておりながら、肝心の米国側の基本的考え方や態度については、何ら日本国民に明らかにされていない点であります。(拍手)
 一体、ニクソン大統領のこれまでの言動に照らし、また、今回の会談を通じて、沖繩問題をめぐる米国側の基本的態度をどのように日本政府は理解しておるのでしょうか。国民に明らかにする義務があります。
 われわれの調査による客観的事実から重視すべき点は、アメリカの要求の根底に一貫して流れているものであります。それは、日本をアジアにおける反共のとりでとして、安全保障体制の指導的存在にしようとしている点にあります。これはいまに始まったことではなく、サンフランシスコ会議におけるトルーマン大統領の演説以来一貫しており、政治的、経済的役割りだけでなく、軍事的な役割りも要求していることは明らかであります。ニクソンが昨年の大統領選挙に際して内外に公約した政策を集めまして、共和党選挙本部が昨年十月二十九日に公表いたしました白書、すなわち、「重要問題に関するニクソン発言」によりますならば、この点がきわめてはっきりと浮き彫りにされてくるのであります。
 その中の日本に関する項目で、ニクソンは次のように言明しております。「日本では、依然として、軍事的な準備に関しては、政府当局の認識よりも世論のほうがおくれている。日本は注意深く、慎重に指導者としての役割りを拡大してきた。その過程で、日本は常にあまり激しく、そして熱心に指導的役割りを求めると、大東亜共栄圏というかつての苦い思い出がよみがえるのではないかということをきわめて強く気にしてきた。しかし、十年前、あるいは五年前に不可能であったことが、現在では可能になりつつある。現在アジアに住んでいる人々の半分は、第二次世界大戦後に生まれた人たちであり、この新しい世代は、征服することについての古い罪の意識も恐怖心も持っていない。」このようにニクソンはぬけぬけと聞き捨てならぬことを公言し、彼の持論であるところの、アジア人の犠牲において極東戦略を推し進め、日本にアメリカの肩がわりをさせる方針が随所に露骨に表明されているのであります。そのあとでニクソンは、沖繩問題について次のように結論づけています。「長期的に見れば、米国の政策は沖繩を日本に返還すべきだということであるべきだと私は考えている。日本の参加なしにはわれわれはアジアに真の集団安全保障を実現することはできないということをわれわれが認識することがきわめて重要だと私は思う。……長期的に見れば、自由で強力な日本から得られる日本とアジアの利益は、太平洋における自由で強力な米国の利益でもある。したがって、日本が指導者としての役割りを果たすときが来れば、沖繩は必ず返還できると私は考えている。」ニクソンはこう結んでいます。佐藤首相の率直な見解が聞きたい点でございます。
 自由で強力な指導者などとおだてられていい気になっていようものなら、再び日本は過去の誤りを繰り返す岐路に、いま立たされているのです。(拍手)この点を、総理は厳正にえりを正して反省すべきであります。人口の半分は第二次大戦のあとに生まれた人だから古い罪の意識がいまや消えている、だから過去の罪を再び犯し得る基盤が現在はすでにできている、その条件を生かして指導者になれ、そうして、日本が極東戦略上の役割りを果たし得る資格を備えたと認められれば沖繩を返そう、これがアメリカの一貫した立場であります。これを否定する根拠があるなら、佐藤総理から、納得のいく説明をいただきたいのであります。
 第六点。これを要するに、アメリカの一貫した対日要請は、日本が軍備を増強し、アジアの反共防壁として、沖繩、本土は言うに及ばず、アジア全域にわたってアメリカの肩がわりをして、いわゆる軍事力による安全保障の共同責任を果たすことにあるからこそ、今次の会談においても、外務大臣に対して極東情勢を説き、中国の核脅威を叫び、これに対する日本の防衛努力を強く要請した次第でありましょう。外務大臣が、ニクソンとの会談では、抽象的な外交辞令に気をよくしながら、その後の会談でたちまちしゅんとなったのは、これらの具体的要求がいかにきびしいものであったかを物語っているようであります。佐藤内閣の姿勢が、この要請を受け入れる方向に向かっていることは、一昨年の共同声明ですでに示されております。これは政府の言う安保の自動継続にあらずして、かってな拡大であり、アジア安保へのエスカレートである。
 これと関連して注目すべきは、ASPACの動向であります。政府や外務大臣は、口をきわめて、ASPACがアジア諸国の仲よしクラブだと宣伝しておりますが、その底流は、決してそのような甘いものではない。現にニクソン大統領は、フォーリン・アフェアーズの論文におきまして、次のように述べております。「ASPACは現在、文化や経済問題を主にしているが、中国の脅威に気づけば、この地域の安全保障の同盟に発展させることが可能である」と言明しております。この考え方が、今度のロジャーズ国務長官の記者会見でも、「日本がアジアの安全保障に果たす役割りを期待する」との発言で表明されているのであります。しかも、韓国の崔外相の、表面慎重なポーズをとりながらも、裏面では沖繩基地の完全確保を要請するなどの活発な動きを見るならば、アジア安保との関連で、国民の不安がつのるのは当然ではないでしょうか。社会主義諸国を除いたアジア仲よしクラブにつながりを持つこと自体が問題なのであります。
 いまや、国民は重大な選択を迫られています。佐藤内閣のアジア安保に賛成するのか反対か、この選択であります。安保、沖繩についての自民党から共産党まで五つの政策方針のうちから、一つを選択するということではない。佐藤内閣のごまかしの自動延長、アジア安保へのすりかえ、韓国、台湾など、極東のいわゆる自由地域の防衛の責任を肩がわりする方向に対して、イエスかノーかを迫られているのであります。(拍手)現に、韓国や台湾政府は、沖繩は決して単なる日米間の問題ではないと主張しています。極東戦略に協力せんとする佐藤政府の立場からすれば、当然これらの主張に同調するほかないと思うが、どうでしょう。
 また、訪米にあたってのポジションペーパーには、自衛隊増強、安保体制堅持、対外援助等が含まれているといわれておりまするが、真相はどうか。もしこれを否定するのであれば、ポジションペーペーを国会に提出すべきであります。首相の責任ある答弁を要求します。
 以上指摘しましたような、これから歩もうとしておる道は、日本がアメリカの下請帝国主義に進む道であり、日本が、中国のみならず、アジア諸民族の反帝国主義、反植民地主義、民族解放の勢力と対立する道であります。断じて進んではならない道であります。このような民族の運命にかかわる重大な選択を迫られている国民に対して、何らの説明も相談もなしに、外相が安保自動延長の意思表示を米国に対して行なった事実は、主権者無視の越権行為であるといわなければなりません。(拍手)しかも、外務大臣の先ほどの釈明によりますならば、正式な提案ではないという。一自民党内の多数意見を、外務大臣として外国に発言するということは、明らかに職務権限を逸脱した行為として、責任を糾弾さるべきであります。(拍手)
#82
○副議長(小平久雄君) 松本君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。
#83
○松本七郎君(続) 佐藤総理の所信をただしたいと思います。
 最後に、私は、佐藤総理がこの事態の重要性を再認識されまして、沖繩、安保について根本的再検討をすべきことを強く要求するものであります。この際、謙虚な態度をもって、いままでのとってきた態度、これからとろうとする方針に誤りがないか、一度ここで厳正な反省をするために、多数国民の意思に耳を傾けるために、党首会談でも開いて反省する気はないのか。その上で、なお従来の方針どおりやるというのであるならば、衆議院を解散して信を国民に問うべきではないか、私は、首相の率直な意見を求めて、質問を終わる次第であります。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#84
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 松本君にお答えをいたします。
 私は、ただいまの松本君のお尋ねを静かに私の席から聞いておりました。そして、つくづく考えたのでありますが、国際情勢に対する認識の度合いや、沖繩問題に対する取り組み方、そのいずれをとってみましても、松本君と私とではずいぶん次元が違う、これは困ったものだと、実はさような気がいたしたのであります。(拍手)この点は、私の率直な感じでございますので、あるいは気に食わないかもわかりませんが、どうか私の率直なこの感じをお受け取りいただきたいと思います。
 それはそれといたしまして、沖繩問題の歴史的経緯やきびしい国際情勢の現実を踏まえて、今日までこの問題と真正面から取り組んできましたが、私は、その基礎はどこまでも日米友好関係、その基礎に立ってこそ初めて沖繩問題の解決はできるんだ、これが私のゆるぎない信念であります。(拍手)この方向で沖繩問題は正しい軌道に乗り、着々と解決に向かって前進していくものと私は確信しております。したがって、さらにこの上とも忍耐強くこの方向を推し進め、歴史的な交渉を仕上げて、国民的願望を達成する決意であります。(拍手)
 いろいろ私に対しても御注文がございましたが、どうか党の立場は違いましても、私のこの気持ちについて御協力をお願いしたい、これを心からお願いをいたします。(拍手)
 次に、もうこの沖繩問題は当然の権利として要求したらどうだ、こういうお話でございました。私は、この点が問題だと思います。松本君はすでに御承知のことだと思いますが、一方的に要求を突きつけるだけで事が成就するとは、よもや松本君も考えてはおられないだろうと思います。そういう点が外交交渉の持つ意味であります。私ども自身がどこまでも国益を代表して、そうしてアメリカと話し合って友好裏に問題を解決しようという、この一貫した方針のもとに、責任のある外交をただいま展開しております。私は、この方針を変えろ、こういうお話がありますが、当面この方針を変える、再検討する、こういうような考えは毛頭持っておりませんから、この点もはっきり申し上げておきます。
 次に、外務大臣がニクソンと会談後、ロジャーズ長官と話をするようになってからたいへん意気が上がらない、こういう御批判でありました。これも、松本君にしてはずいぶん見方が皮相ではないだろうかと思う。私が申し上げるまでもなく、外務大臣の今回の訪米による交渉は、政府の基本的考え方を十分先方に伝えることができて、大きな成果をあげることができたと思っております。それだけに交渉当事者としては、問題の核心に入っていくにつけ、発言も慎重にならざるを得ないのは当然ではないでしょうか。松本君もしばしば中共なぞと交渉なさったと思いますが、いわゆる大筋の問題はともかくとして、問題が核心に触れれば触れるほど慎重になられる、いままでもそういう態度であったと私は思います。でありますから、この点については、松本君御自身がもうすでに御理解を十分いただいているものだと思います。
 たいへん簡単な答弁で相すみませんが、以上でこの交渉の経過を御了解いただきたいと思います。
 次に、非核三原則についてお触れがありました。非核三原則は、私が他の委員会等の席でしばしば申し上げておりますように、これは佐藤内閣の政策であります。国会で非核武装宣言をすることなどは考えておりません。これは佐藤内閣の問題でありますから、この点もはっきり申し上げておきます。
 次に、経済問題と沖繩問題をやはり取引の材料にするんではないか、沖繩返還の代償に経済的重荷を背負わされるのではないかとのお尋ねがありましたが、この点もまた基本的に松本君の認識と違う点であります。先日、川奈で行なわれたASPAC会議におきましても、各国代表がこもごも述べたことは、経済的自立であり、繁栄のための地域協力でありました。アジアに真の平和をもたらすためには、各国が経済的に自立を達成することが何よりも必要であることは申すまでもありません。幸いにして、わが国は、国民総生産五十兆円に達し、自由陣営では米国に次いで世界第二位になりましたが、みずから繁栄するだけでこと足りるとするのではなく、アジア諸国にもできるだけの力をかすということでなければならないと私は思います。また、わが国だけの力でできるととではありませんから、米国をはじめ世界の先進国が相協力してこれに当たらなければならないと思います。そういう意味で、沖繩返還で経済問題を取引の材料にするようなことは毛頭考えておりません。
 また、米国の基本的態度がわからないではないかというお話でありました。この点についても申し上げますが、今回の外務大臣の訪米は、主としてわが国の態度を米国政府に伝えるのが目的でありました。したがって、これに対する米国政府の反応は、七月下旬に予定されている日米貿易経済合同委員会や、九月の愛知外務大臣再度の訪米において、もたらされるものと思います。
 なお、わが国のアジアにおける役割りにつきましては、私がたびたび申し上げておりますように、アメリカも、日本の軍事的な協力を願ってはおりません、また頼んできてはおりません。どこまでも地域的経済協力のワク内にあることは、米国政府も十分認識しております。これもまたASPACの諸国もこの点を日本に期待するのでありまして、軍事的な問題は全然ございませんから、もうそういう点については二度と口にされないようにお願いをいたします。(拍手)
 次に、外務大臣の、安保の自動延長の意思表示をしたことは、越権行為ではないか、この職務権限を逸脱した行為に対して、外務大臣の責任を総理はどう考えるかという、きついお尋ねでありますが、先ほども小坂君にお答えもし、同時にまた、愛知君からも直接お答えをいたしましたとおり、わが国の実情についての愛知君の見解を述べたところであります。この問題については、もう少し時間をかしていただいて、そして私自身が、国民から越権行為だなどいわれないような、国民の支持を得るようなりっぱな結論を出して、交渉します。その点をいましばらくお待ちを願いたいのでございます。
 次に、最後に、その点にも関係するのでありますが、ひとつ党首会談をやったらどうかという御提案であります。この点は、具体的な提案といたしまして、たいへんいいことを言われると、私は大いに傾聴したのであります。せんだって、大学問題につきまして、各党首の御意見を伺ったように、これは全部各党が同一意見ではございませんが、国の大事な問題のときには党首会談を行なうというよい慣行ができることは、たいへん望ましいことだと私は考えております。特に、外交は、私が申し上げるまでもなく、水ぎわまでということばもございますとおり、これは重大な国益に関する問題であります。したがいまして、各党から建設的な意見を承ることは、これは大いに意義のあることだと思います。政府、与党、野党、こういう立場を越えて、やはり国家、国民のために建設的な意見をし、ときに政府を叱正もするが、同時に、大いに鞭撻もする、こういう気持ちであってほしいと思います。
 しかし、この点で誤解のないようにお願いをしておきますのは、内政の問題についても同様でありますが、外交は政府の責任において行なうべきものでありますから、松本君が言われるように、党首会談をやって、意見が食い違ったら解散せよ、こういうふうな結論には、私はならないと思います。私は、責任をもって政府が皆さま方の御協力を願うというその態度ではありますが、結論が出なかったら解散だという、そう解散を急ぐような考えには、どうしても賛成できないのであります。
 いずれにいたしましても、私は、十一月の訪米前に、野党各党首の建設的な御意見を伺う機会ができることを期待していることをはっきり申し上げまして、お答えといたします。(拍手)
    〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
#85
○国務大臣(愛知揆一君) まず第一は、返還の根拠の問題のお尋ねでありますが、これは、しばしばあらゆる機会に申し上げておりますように、平和条約第三条を根拠にしておるものでありまして、現に、条約上多数国が認めておる、条約上有しておる米国の立法、司法、行政の三権、これに対して返還を求めておるわけでございますから、御批評は御批評として、そのときにさかのぼって、これはけしからぬ条約だから認めないと言われても、ここまでまいりました返還交渉につきましては、私は問題にならない、かように申し上げざるを得ないのであります。
 それから第二、沖繩の返還と経済問題との関係、これも、直接話し合いに当たったおまえから答弁せよという御趣旨でございましたが、私は、一言にしていえば、それはそれ、これはこれというのが、外交に当たる態度であると思います。一例を申し上げますが、国会の一致の御決議であるところの繊維の自主規制の問題などについて、私は一歩も譲ってはおりません。それはそれ、これはこれでございます。
 何を一体してきたのか、顔色がどうのこうのと言われますけれども、先ほども申しましたように、十一月の佐藤総理訪米の際に決着がつくという、私としては確信を持っておる次第でございます。(拍手)
 また、核の問題その他につきまして、先ほど十分にお答えいたしたつもりでございますが、日本の国民全体の輿望というものを十分に私としては各方面から説いてまいりまして、必ずやこの反響はあるものと、私は現在期待しております。(拍手)
 最後に、私の今回の話し合いにつきまして、ペーパー云々という話があったようでございますが、今回の話し合いは、先ほども申しましたように、一切文書をもっていたした交渉はございませんことを明らかにいたしておきます。(拍手)
    ―――――――――――――
#86
○副議長(小平久雄君) 麻生良方君。
    〔麻生良方君登壇〕
#87
○麻生良方君 私は、民主社会党を代表いたしまして、ただいま愛知外務大臣の沖繩返還交渉に関する報告に関し、質問をしたいと思います。
 沖繩返還がない限り戦後は終わらないとは、佐藤総理の口から出た唯一の名言でありますが、私もまたきわめて同感であります。沖繩が敗戦によって米国に取られたものなら話は別です。アメリカは沖繩を占領しながら、その領土は日本のものであることをみずから認めたのであります。認めた以上、その施政権は、日本憲法に基づき、本来日本政府に帰属されるのは当然のことといわなければなりません。(拍手)しかし、アメリカは、その理由の是非は別として、現実において戦後二十数年過ぎた今日でも、依然として施政権の返還を行ないません。これは、どう解釈しても、アメリカの日本に対する占領政策の継続であると言うべきでありましょう。したがって、沖繩返還と、もう一つ、国内の占領時におけるアメリカが一方的に設定した軍事基地の撤退が行なわれない限り、日本は、依然としてアメリカの従属的立場にあることは否定できないのであります。
 わが党は、これらの観点に立って、沖繩の本土並み早期返還と、駐留と基地なき安保改定の実現によって、戦後への断絶と対等な日米友好関係の樹立を主張してきたのであります。戦後からの断絶は、与野党を問わず、今日に生きるすべての政治家の民族的使命にほかなりません。初め、沖繩返還の基本姿勢は白紙白紙の一点ばりだった政府が、おそまきながら、本土並みの返還の基本姿勢のもとに交渉に臨み始めたことに対し、わが党はこの観点に立って、従来の行きがかりを水に流して、その実現のためにできるだけの協力を惜しまないつもりでございます。(拍手)とはいっても、総理、勘違いしないでくださいよ。わが党は、本土並み返還を実現するためにあなた方に協力するのであります。もし政府の交渉が、本土並みの実現ができないと判断すれば、われわれはまた、おのずから別個の評価をすることになりましょう。このことをあらかじめ申し添えておきたいと思います。
 さて、以上の基本的立場に立って、初めに総理にお伺いをしたい。
 まず第一に、本土並み返還という最近の政府の基本方針は、ほんとうに腰のすわった姿勢なのかどうかという点についてお伺いをしたい。
 私は、最近における訪米から得た印象を率直に申し上げると、政府の出先行政機関の中に、むしろ基地の自由使用が好ましいという有力な意見が先行していたのではないかと疑われる節がある。しかも政府は、返還交渉に当たる直前までその基本姿勢を明らかにすることができなかった。口を開けば、返還に臨む態度は白紙であると言い続けてきた。この政府の不明確な態度を顧みれば、アメリカ側が自国に都合のよいようにそれを解釈をし、また、政府の出先行政機関の責任者も、自己の主張と結びつけてそれを解釈したとしても当然ではありませんか。したがって、政府が交渉直前にとった本土並み返還の基本姿勢は、日本国民からもまたアメリカ側からも、きわめて疑い深く見られるに至っているのであります。私は、訪米中、米国のある政界の一員から、日本政府の本土並み返還の交渉は、日本の国内世論向きにとられた一応のポーズではないかとさえ問われたのであります。私は、ここに、この米国の一議員から向けられた痛烈な質問を、そのまま総理に向けたいと思う。
 総理、あなた自身、本土並み返還交渉は一応のスタートであり、それは必ずしもゴールではないと考えておられるのかどうか、また、初め白紙であった政府が、なぜ交渉直前になって本土並みの姿勢をとったのか、この二点について明確な答弁をお願い申し上げたい。
 よもや政府は、小手をかざしてながめていたら、本土並みが世論の動向となったのを見きわめ、急遽その船に乗ったわけではありますまい。このような外交交渉は、必ずしも世論に従うのを最善となすものではありませんよ。近くは明治以来の幾たびかの外交交渉の歴史を見ても明らかでありましょう。そのときにおいては強い世論の反撃にあっても、遠い目で見れば国益を守ったという事例は、幾つかこれを数えることができます。したがって、あなたがこれ以外に真の国益を守る道はないと信ずるなら、たとえその道がいまの世論に受け入れられなくても、き然としてそれをなし遂げるべきでありましょう。しかる後、あなたは内閣を去ればよいのであります。
 およそ外交交渉は、二つの場合があります。その一つは、利益計算の上に立つ場合と、国運を左右するぎりぎりの立場に立つ場合がそれであります。前者の場合には、当初十の主張を持っても、交渉の帰結としては六をとれば勝利と判定できるかもしれません。しかし、後者の場合はそうはいきません。もし一歩でも譲れば、それはその後の国の運命をさえ左右する結果になるからであります。沖繩返還交渉は、アメリカにとってはいざ知らず、日本にとっては、まさしくその後者であることは、あなたも認識されていることでございましょう。
 次に、私は外務大臣にきわめて具体的な事例について質問したいと思う。
 大局的に見て、いまアメリカはベトナム和平を急ぎ、アジア全域に拡大した軍事勢力を徐々に縮小する方向に向いていることは事実でございましょう。その意味では、アジアは緊張緩和の方向にあるともいえるかもしれません。しかし、その中で一つ、朝鮮半島と日本海周辺だけは依然として緊張状態にあることもまた事実であります。したがって、アメリカは、この方面に対する戦争抑止力、言いかえれば、最悪の事態における攻撃能力のある基地を沖繩に現在求めていることは否定できないところであります。現に、プエブロ号事件のときに、佐世保出港のエンタープライズ号と沖繩基地のB52は北朝鮮爆撃の戦闘体制に入った事実も、その後のアメリカ上院の軍事委員会の報告によって明らかにされております。この場合、北朝鮮、米側のいずれに非があったかの議論よりかも、日本にとっては、その事件によって引き起こされる現実的現象のほうがきわめて重要でありましょう。下田駐米大使がロスアンゼルスにおいて、アメリカは正当な立場にあり、正当な軍事行動をとるべき権利があった、しかし、事件を政治的に解決したのは日本にとって幸いであった趣旨の発言をしたことは、その意味できわめて重要な暗示を与えるものといわなくてはなりません。つまり、その発言の裏には、もしアメリカが軍事行動をとった場合、日本はどうなるであろうかという問題提示がひそんでいるのであります。アメリカ世論の中には、米偵察機撃墜事件のときにおいても、軍事行動を支持する根強い意見がありました。また、先ほど総理は二度と口にするなと言われましたが、このような危険な情勢下に沖繩返還が行なわれるなら、日本は憲法を改正し、軍備を持って米軍に協力すべきだとの強い見解さえ、アメリカ上院において公然と主張されておるではありませんか。日本の国内にもこのアメリカの世論に便乗して、自主防衛を強化しようとする意見がある。外国の要請に基づいて行なう自主防衛など、ろくなものはできませんよ。沖繩返還実現後、日本国民の自主的意思に基づく防衛こそ、真の自主防衛でございましょう。
 さて、こうした情勢を背景として、アメリカは一体沖繩返還についてどんな基本的考えを持っているか。訪米の結果、外務大臣が得た感触を、次の順序に従って、きわめて客観的にお答えを願いたいと思います。
 一、アメリカは沖繩に現在核基地があることを認めているかどうか。また、核基地つき返還の意図があるかどうか。
 二、核抜きにした場合、有事の核持ち込みを主張する可能性があるかどうか。
 三、核抜き返還の場合、安保条約とは別個の協定によって、基地の自由使用を求める可能性があるか。それにかりに日本が応じた場合、その協定は事務手続上日本の国会の承認を必要とするかどうか。
 四、核抜き本土並み返還にアメリカが応ずる見通しについて。その場合の事前協議の運営で、新たな覚え書きを交換する必要があるかどうか。
 五、無条件即時返還の可能性があるかどうか。
 さて、その中で外務大臣は、四の場合に該当する返還方式を現在とられている模様であります。しかし、事前協議の弾力的運用とは一体何を意味するのでありましょう。かりに、アメリカがその方式に同意したとして、もし第二のプエブロ号事件が起こり、アメリカが軍事行動をとった場合、当然基地使用の要請を日本側に行なうことになると思うが、一体政府は、さっきの総理の答弁に関連して、イエスと答えるのかノーと答えるのか、この点、自主的立場に立って、総理大臣から明確な御答弁を願いたいのであります。
 もし、その場合もイエスと答えるとすれば、現行安保条約の性格から、この種の事件を北朝鮮の日本に対する侵略行為と見ることに通ずると思うが、どうでしょうか。また、もし、そうは見ないが、イエスもあり得るとなれば、それは現行安保条約の根本的性格の変質、すなわち、安保の軍事同盟化、いうところの本土の沖繩化に通ずる結果にならざるを得ないではありませんか。いずれにしても、日本の紛争介入は避けられず、北朝鮮の報復措置を受ける結果になり、ひいては紛争そのものを多国間の戦争にエスカレートさせる導火線の役割りを果たすことはいなめないのであります。
 外務大臣、こう考えてくると、論理的には別として、イエスもあり得るという事前協議の弾力的運用とは、結果において基地の自由使用に通ずる可能性もあることを認めなければなりません。現行安保条約上の基地は、たとえどんな理由があろうと、米軍が他国とかってに紛争を起こした場合に使われるべきものでは断じてございません。あくまで日本が現に侵略の可能性にさらされたときのみ使用されるべきことは、当然でございましょう。プエブロ号事件や米偵察機撃墜事件が北朝鮮の日本に対する侵略行為であると総理が考えるなら、あに何をか言わんやでございます。この現行安保条約の本旨を心得ておれば、核抜き、本土並み返還が現実されれば、いまさら事前協議の弾力的運用などという必要は、さらさらないではございませんか。それを、交渉に先立ってぎょうぎょうしく言い始めたところに、結局は、それは自由使用を認めることにつながるのではないかという国民の疑惑が生まれる原因があることを、ここに強く指摘をしておかなければなりません。(拍手)
 次に、沖繩の現状について総務長官に御質問をしたいと思う。
 いま沖繩は憂慮すべき事態に立ち至っております。政府の態度いかんによっては、沖繩住民の反米感情はつのり、基地闘争と相まって、返還交渉に重大な影響を与えないとも限りません。特に米軍の態度は強圧的であり、遺憾のきわみであります。政府は沖繩の現状に対しどんな対策を持っているのか、明らかにしていただきたい。
 最後に、沖繩返還と安保条約との関連に触れておきます。
 外務大臣は、安保の自動延長が既定の方針であるかのごとき発言をワシントンで行なったとの報道がなされましたが、はたして真実でございますか。言うまでもなく、安保条約の取り扱いは、日本の国会においても、政府からその方針がいまだ示されたわけではありません。もし外務大臣の心の中に――心の中にですよ、安保の自動延長が沖繩返還の前提条件だというような考えがいまなおおありでしたら、はっきり御訂正を願いたいのであります。安保条約と沖繩返還との関連は、本土並み返還が実現されれば、結果として沖繩基地は現行安保条約の適用を受けるという事実関係だけがあるのみでございます。改定すれば改定の線に立って、廃棄をすればその上に立って、沖繩基地も本土のそれと同じように処置されることは当然でございましょう。あたかも本土並み返還は安保の自動延長のもとにしかあり得ないというような発言をあなたがなしたとしたら、理論家としてのあなたにも似つかわしくない発言であります。後々のためにも、取り消されたほうが賢明であろうと存じます。
 以上で一般的な私の質問は終わりますが、最後に総理に所信をただしたい。
 以上の質問の中にも明らかなとおり、私は、率直に言って、本土並み実現にはなお幾多の困難が山積みしていると思う。アメリカ側からも多くの要求が今後ともなされるでしょう。しかし、総理、沖繩返還に関する限り、日本はアメリカに与える条件は、本質的には何もないはずであります。日本領土に本来あるべき施政権をアメリカが返還するという、きわめて単純にして明快な行為があるのみであります。もしその返還に、核や基地の自由使用や事前協議の弾力的運用などというあいまいな覚え書きをつけられたら、それこそあなたは、日本の将来を再び地獄に突き落とす結果になることを十分肝に銘じていただきたい。
 どうか、卑屈にならず、真に本土並み返還が、日米両国の将来の友好関係の樹立のためにも不可欠な条件との不退転の信念を持って交渉に当たり、アメリカ当局の理解と説得のもとに本土並み返還を実現してください。これこそが、長い間米軍の施政権下に屈辱と苦しみを耐えてきた百万沖繩同胞への答えでなくて何でしょうか。
 ただ、沖繩住民の中には、返還後の沖繩経済について大きな不安があることも察知できます。この機会に、近くは返還後の沖繩住民の生活の安定、遠くはアジアの平和と繁栄に日本国民が果たすべき役割りについて、総理の所信をお伺いしたい。
 以上、私は、沖繩の本土並み返還の一日も早からんことを願いつつ、質問を終わりたいと思います。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#88
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) ただいま政府が当面しておる問題、外務大臣からも先ほど経過をお話しいたしましたように、外交上で一番大事な、国にとっての重大問題といま取り組んでおる最中であります。先ほど、麻生君から、政府に対しての鞭撻を受けました。私は、野党の鞭撻、これをほんとうにうれしく伺ったのであります。その中身について、もちろん意見が相違していると思いますが、しかしながら、この問題について、政府がもっとしっかりやれ、こういうことでお話しになったこと、これはありがたくお礼を申し上げます。
 ところで、白紙からどうして愛知外相の交渉のように急転したのか、こういうお話であります。しかし、経過をまず考えてみてください。私は、沖繩問題を解決する最善にして最短の道、それは、何といっても、日米相互信頼のワクの中で施政権の返還を実現するというのが、いままで一貫してきた考えであります。これは、各委員会や本会議の席上等におきましても、繰り返して申し上げたつもりであります。
 本年初頭の施政方針演説の中でも申し上げましたように、この際、沖繩にある米軍基地が、現状においてまず第一にわが国の安全に果たしている役割りと、あわせて、わが国のみならず、極東の安全保障に果たしている役割りを認識し、国際情勢の推移を見守りつつ、国民の納得のいく解決をはかるというのが、私の基本的な考え方であります。国会の論議を通じ、野党各党の御意見も十分に承ったつもりであります。また、あらゆる形の世論にも耳を傾け、これらを総合して、政府の対米交渉の方針を今日までいろいろとくふうしてまいったのでありますが、いよいよ外務大臣が訪米をして、本格的な交渉を行なうことになったので、政府としては、おそくとも一九七二年中には沖繩の施政権はわが国に返還さるべきこと、また、施政権返還後の沖繩に残される米軍基地については、日米安保条約及びその関連取りきめが、本土の場合と同様に、そのまま適用されるべきであるとの態度をきめまして、その旨、外務大臣から米側に伝えたのであります。白紙から態度を変えたのではなく、この時点で、初めて政府としての正式な方針を決定したのでありますから、この点を御理解いただきたいと思います。
 また麻生君は、最近訪米され、この問題につきましても、よく事情を御承知のとおりであります。したがいまして、政府の苦心も、また政府のとるべき態度等につきましても、かくあるべしというような考え方から、いろいろ政府にも示唆を与えられたと思います。私は、今日、米政府と、ワシントンにおいて外務大臣がいろいろ交渉いたしましたが、いわゆる単なる国内向けポーズとして主張するというようなことを考えて交渉を始めたのではありません。今日、私が主張しておる、政府が主張しております問題は、それこそ、国民全体が私どもを支持してくれる、その信念のもとに、国民の期待に沿うという最善の努力を払っていく、努力していく、これが政府の態度でもあります。したがいまして、この本土並みということばは、ポーズか、あるいはスタートだけの問題かとか、いろいろのお尋ねがありましたが、さようなものでなくて、政府自身、ただ外交の取引上の態度でいろいろなことを考えるというような小手先のことをやるのではございません。国民とともに、真正面からこの問題と取り組んでいこうというのが今日の態度であります。どうかそういう意味で御理解をいただき、政府を御叱正賜わりたいと心からお願いをいたします。
 そこで最後に、麻生君から、卑屈にならないで堂々とやってこい、こういうお話もございました。私は、しばしば申し上げますように、日本の国の代表者として、政府はアメリカと交渉するのであります。そこには卑屈になるような何ものもございません。追随するような考え方で、この大事な外交ができるものではありません。歴史的に見ましても、戦争で失った父祖の領土、それを返還してもらうという、いまだかつてないような大事な交渉をするのであります。そういう際に、一人の栄誉だけの問題、そういう点から、またかけ引きの点から、こういうものをやるような考えはございませんから、この上とも御叱正、御鞭撻を心からお願いをいたしまして、お答えといたします。(拍手)
    〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
#89
○国務大臣(愛知揆一君) 麻生君からいろいろの点について御激励をいただきまして、まことに感謝にたえません。
 先ほど、五つ具体的に分けてお尋ねいただきましたが、私は、この一つ一つにお答え申し上げますよりも、私といたしましては、現在の安保条約、これに関連する一連の取りきめ、これを適正に運営をしていく。そうして、そのワクの中で、沖繩を含む日本の安全、関連する極東の安全に寄与いたしたい。これが私としても苦心の存するところでございますし、同時に、アメリカとの間の相互信頼の関係の中において、何とかしてここから両方が満足できる結論を引き出すように、これから最善の努力をいたしたいと考えておるわけでございます。
 弾力的運用ということがよく言われますけれども、私はさような意味で、私としては弾力的運用ということばを使ったことはございませんので、いわば適正な運用とでも申しましょうか、要するに、従来から本土について考えられてきたような、さようなワクの中、さようなフォーミュラの中で本件を解決いたしたい、かように考えておるわけでございます。
 それから自動継続の問題は、しばしば御質問をいただいて恐縮に存じますけれども、先ほど来申し上げておりまするように、安保を大切な基本国策として、来年六月以降も延ばしていこうという多数の方々の中の、多数の御意向がこういうことであるように私は印象を受けておりますから、それをもとにしてその話が出た、ということに御了解をいただきたいし、事実そのとおりであります。相手方のアメリカも、私が日本政府案を、本件について正式に提案したとは受け取っておりませんことが何よりの証拠でございます。したがいまして、自動継続論とあわせて事前協議というものを結びつけて、何かおまえは考えているのではないか、いるのならばいまのうちに訂正しておいたほうがよかろう、このアドバイスに対しましては、御注意を御注意としてありがたくいただきますけれども、私のこの自動継続について発言がありました点は、以上のとおりでございますから、さように御了承を賜わりたいと存じます。(拍手)
    〔国務大臣床次徳二君登壇〕
#90
○国務大臣(床次徳二君) 沖繩におけるところの基地闘争に対する政府の対策に対してお尋ねがありましたが、沖繩の基地の存在をめぐりまして、県民の一部におきましては、その撤去を闘争によって実現しようという考えの者もあることは承知しておりまするが、県民の大半は、沖繩の祖国復帰は日米間の平和的な友好的な外交交渉によって実現さるべきものと考えておりまして、したがって、基地の問題に対しましても、基本的には、友好的に日米間の外交交渉によって処理せらるべきものと考えておりますので、基地闘争に対しましては、その前提に立って対処をいたしたいと存じます。
 なお、経済の問題につきまして最後にお尋ねがありました。簡単に申し上げまするが、沖繩が現状のまま本土に復帰するようなことになりますると、御指摘のようないろいろな問題があるので、社会面、経済面におきまして、非常な摩擦が起こり得ることは明らかであります。そこで、政府といたしましては、復帰に備えまして、本土との一体化を実現いたしたく、今日予算等におきまして努力をいたしておる次第でありまするが、なお、沖繩がはなはだしい戦禍を受け、なお長期間にわたりまして本土の経済圏と隔離されました、異なった制度におきまして、しかも、基地のもとに依存しておりますことがありますので、この空白に対しましては十分に埋めたいと思うのでありまして、調査、検討をいたしました上、一体化政策に重ねまして、沖繩の経済振興計画を策定して、これを強力に実施する考えでありまして、先ほど申し上げました全国総合開発計画といたしましても、その一部といたしまして、その趣旨によりまして実現いたしたいと思います。(拍手)
    ―――――――――――――
#91
○副議長(小平久雄君) 渡部一郎君。
    〔渡部一郎君登壇〕
#92
○渡部一郎君 私は、公明党を代表して、愛知外務大臣の報告に関し、深い憂慮を込めて、若干の質問を行なうものであります。
 このたびの日米交渉におきまして、愛知外務大臣は、沖繩返還に対する日本国民の総意を代表し、沖繩の即時無条件全面復帰の熱願をアメリカに十分伝えることが最も大事な問題でありました。しかしながら、ただいまの報告から判明することは、即時返還でもなければ、基地抜き返還でもない、核抜き返還という最低限度の要求さえ見通しをつけることができなかったばかりか、何一つ約束を取りつけぬ前に、いたずらに陳情と媚態の限りを尽くし、譲歩に譲歩を重ねてまいったと言うしかないのであります。このことは、沖繩県民はもとより、国民の期待を全く裏切ったと言うしかないのであります。(拍手)
 私は、悲しみを込めて指摘したい。譲歩の第一は、安保条約の自動継続の提案であり、第二は、現行安保条約第六条の事前協議事項を、弾力的運用という形で徹底的に骨抜きにすることであり、第三には、防衛力の大増強を約束することであり、第四には、アメリカの海外、特に東南アジア軍事援助を肩がわりし、ドル防衛に協力することであります。これらは日本の国益を大幅に失うばかりでなく、長期的に言えば、日米両国間に大きな災いの種をまくものであり、ひいてはアジアの平和に重大なマイナスを与えたものでありますが、その点をどう考えておられるのか。
 かねてから、わが党としては、政府に対し、このような対米追従の姿勢を改めるよう強く主張してまいりました。しかるに、佐藤内閣の沖繩返還交渉に対する姿勢は、ひたすら対米陳情とお願い外交に終始し、このたびの愛知訪米の結果は、そのことをますます露骨にしたにすぎないのであります。それは全国民の要求である即時無条件全面返還の主張は一顧だにすることなく、ただ沖繩が米軍の極東戦略基地としていかに有効に利用されるかということを、唯々諾々として話し合っている自民党外交に対し、私は国民の名において怒りを覚えずにはおられぬのであります。(拍手)そして、このことは、独立国家の民族の名においてきびしく追及されなければならないと信ずるものであります。
 沖繩は、まず日本の固有の領土であります。それならば、いますぐにも母国、本土のもとに無条件に返るよう主張することから始まるべきであります。いうなれば、流浪の子がなつかしい母のふところに帰るのと同じではありませんか。それに対して何の条件が必要でありましょうか。子が母のふところに帰るのを、手かせ足かせをかけて、これを阻害するのと同じではありませんか。私たちは、民族的な反発を感ずると同時に、このだらしのない日本政府の、ふがいのない交渉ぶりに対して、いきどおりを感ぜざるを得ないのであります。(拍手)
 私は、先ほどの自民党の尊敬すべき議員が、怒号の中に、あるいはデモの中に沖繩は返らないと申されましたので、沖繩の屋良主席のことばをかりて一言申し上げておきたい。われわれは核つきにも自由使用にも反対である、無尽蔵に貯蔵されている核兵器に対する不安、B52常駐がもたらす恐怖さらに外国の戦争を間接的に援助しているという自責の念、これらに長年さいなまれ続けた県民にすれば、これ以上核のにおいはがまんができない、核兵器反対、自由使用にも反対という立場を対米交渉で強く反映してほしい、この血涙の叫びを一体どう考えられるのでありましょうか。(拍手)なぜ即時無条件全面返還を交渉の第一歩としなかったのか、その点を佐藤総理及び外務大臣に明確に御答弁を願いたいのであります。
 次に、政府は、沖繩返還交渉にあたって、極東の緊張は緩和する方向にありと見たか、あるいは緊張激化の方向にあると見たか、これは重大な問題であります。
 対米交渉中、外務大臣は、米国側の意見に同調して、緊張激化の方向にありと言ったのであります。それをEC121機撃墜事件の当時は、佐藤総理は、この事件は沖繩返還には支障がないと明言し、かつ国際緊張は緩和する方向にあると、この場所で言われたのであります。ところが、その後政府は逆転し、極東の緊張が緩和の方向にあるという見方は、アメリカの、日本の極東情勢に対する見方が甘いとの潜在的不満を誘発し、かえって沖繩返還を高価なものにするという結論に立つたものであり、去る五月十四日の衆議院外務委員会におきましては、その方向の答弁が行なわれたのであります。つまり二転、三転した無原則なこの見解というものは、極東戦略のかなめとアメリか側が主張している沖繩基地の重要性を認める結果となり、必然的に沖繩基地の軍事的機能を弱めるわけにはいかない、核抜きも本土並みもとうてい認められないという野蛮な結論になるのであります。したがって、愛知外務大臣の交渉方針は、わが国の主張すべき立場をすべて投げ捨てて、ただただアメリカの前にひざまずき、叩頭哀訴して、ひたすら米政府の慈悲の袖にすがるという態度であって、全く政治的な一貫性を欠除するものといわなければならないのであります。
 対米交渉を有利に導くためには、アメリカに対して――アジアの緊張を文句なしに緩和することなくして成功し得ないことは明らかであります。少なくとも、その努力を国際的に続けるべきであったわけであります。しかるに佐藤内閣は、ベトナムの平和一つにしても、何一つ貢献せず、何一つ努力を払いませんでした。また、中国との間にも、国交を樹立し、アジアの緊張を緩和することこそ日米両国の最大の利益となることを説得することもしなかったし、する意思もなかったようであります。米政府の対中国方針に基づいて、ひたすらそのしり馬に乗り、中共の脅威をアメリカとともに和唱し、対中国強硬方針を継続し、日中貿易を破壊し、アジアの緊張激化のために一役を買ってまいりました。このようなことでは、沖繩返還交渉の基盤となるべき国際緊張の緩和はとうてい招来することはできないのであります。沖繩返還交渉の挫折と障害は、ことごとく自民党政府頑迷にして固陋なる先見性のない対米一辺倒の外交方針にあったといわなくてはならないのであります。(拍手)
 政府・自民党は、それまで沖繩返還交渉に関しては白紙だと言ってごまかしておりましたが、三月十日の参議院予算委員会において、突如として核抜き本土並みで交渉するという態度を表明いたしました。これは、従来佐藤総理が沖繩返還の方式については白紙であると弁明していたものと大きく変わったわけであります。この起因となったものは基地研の報告でありまして、たてまえは核抜き本土並み返還でも、事前協議事項を骨抜きにすることによって逃げ道をつくり、アメリカに承認を取りつけられるとのヒントに飛びついたものであります。しかし、その真意は、外務当局が、対米交渉のスタートで、一応核抜き本土並みで始めるとのポーズを見せるだけであって、これをがんばり通す意思は初めからなく、対米交渉の当初にすでに大幅の妥協が予想されたのであります。特に、沖繩返還の交渉が核抜きに対する壁が厚いことを予想して、この際、責任を米国政府に転嫁するための布石として、沖繩の核抜き返還をお義理に要求しておいて、もしも核抜き返還が不成功に終わった場合には、自由民主党政府のけなげな努力を善意の国民にPRして、もって国民の批判をのがれようとする、責任を事前に回避するための策謀にすぎないと思われるのでありますが、総理の見解を伺いたいと思います。
 次に、愛知外務大臣訪米を前に、外務省と防衛庁が、二回にわたって沖繩返還に伴う防衛上の諸問題を討議したそうでありますが、その内容を防衛庁からここに明らかにしていただきたいと思います。またこの際、防衛庁の見方として、第一に核では、F104戦闘機、B52に搭載する核爆弾、メースBの核弾頭の撤去には応ずるにしても、ナイキハーキュリーズの撤去にはかなり渋るだろうというような見通しを立てたと報道されておりますが、その根拠は何かを明らかに示していただきたい。つまり、防衛庁側は、米国防総省の意向をそんたくして、核抜き返還に否定的な含みをもって行動されたのではないかと考えられるのでありますが、その点を明らかにしていただきたい。
 また、そのために骨抜きにされた事前協議制を持つ安保条約を、日本本土と沖繩の全域に及ぼし、安保を実質的核安保へとエスカレートするために努力したと考えるのでありますが、防衛庁長官の見解を承りたいのであります。
 さて、ことで以上述べたようなことを否定しようとするのであるならば、一歩進んで、次の点につき明確な御答弁を願いたいのであります。
 その第一は、佐藤総理の言われた非核三原則と愛知外務大臣の事前協議の弾力的運用――ただいま適正運用とか新語で言われましたけれども、この適正運用が非核三原則と矛盾しないというのであるならば、核の持ち込みに対しては、事前協議でイエスと言うことは絶対にない、核の持ち込みは事前協議でノーと言う約束ができるかどうかを、総理並びに外務大臣に伺いたいと存じます。(拍手)
 また、聞くところによりますと、防衛庁側では、第四次防の内容として、核兵器体系の起用を検討しておるといわれておりますが、もしそうだとするならば、沖繩返還の際、核抜きを主張すること自体がはなはだしい矛盾であり、撞着であり、自己欺瞞であります。あくまでも核抜き返還を主張するならば、わが党をはじめ野党の主張する非核武装宣言に同意し、これを天下に声明し、満天下の疑問を断ち、交渉の基礎とすべきであります。ところが、先ほども佐藤総理はなぜか知らぬが、核武装宣言はしないと、大きな声でここで叫ばれました。一体その理由は何なのか、ここでその理由を明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
 第二は、愛知外務大臣の強調された事前協議の弾力的運用とは、事実上の米軍の自由使用を意味するものであって、これは弾力的運用でもなければ、適正運用でもない、段階的な自殺行為といわなければならないのであります。もし米軍の戦闘行動に沖繩基地の使用を許すならば、沖繩を含めたわが国全域が戦闘区域になることは、国際法上確立した原則ではありませんか。政府は、このような重大結果を覚悟の上で、弾力的にイエスと言うのかどうか、伺いたいのであります。
 第三には、このように重大な事前協議制度の運用に関する重大なる変更に対して、政府はどのような手続を踏もうとするのか。すなわち、国会の承認を求める取りきめを結ぼうとするのか。あるいは交換公文、往復書簡、共同声明というような形でお茶を濁そうとするのか。それとも秘密協定、合意議事録、口頭の了解というような形で国民の目を閉じようとするのか、その点を明確にしていただきたいのであります。
 さきに述べましたように、弾力的運用は国家の運命にもかかわる重大な事項であります。これを一片の行政府の意向で取りきめ、国会の承認を、求めないとするならば、明らかに憲法違反であることを私は指摘しておきたいと思うのであります。この点、総理、外務大臣の見解を伺っておきたい。
 さて、愛知外務大臣はロジャーズ国務長官との公式会見の席上、安保条約の自動継続の提案を行ない、全日本国民に衝撃を与えました。今日までわが党をはじめ各野党の再三にわたる質問に対して、言を左右にして明らかにしなかったにもかかわらず、いきなりアメリカ側に申し入れるというのは、一体何事でありましょうか。外務大臣は、少なくともここ場に立って、しおらしくも謝罪お意を表せられ、申しわけなかった、つい口がすべったのだとかなんとか申されたらどうなのかと思うのであります。ところが、これほどの国家的な重大方針変更を国会にもはからず、国民にも信を問わず、総理さえも、ただいまのお話では検討中であると申されているにもかかわらず、政府部内に相談もせず、突如として個人的な感触について口をすべらし、申し入れをするとは、一体外務大臣は何を考えておられたのでありましょうか。国会無視もはなはだしいものではありませんか。日本国内のごうごうたる反対の声を予想しておびえられたのか、外務大臣はあとで、これは公式の提案でない、アメリカも提案とは受け取っていないとかなんとかしきりに弁解されておるようでありますが、正式会見の席上で日本の外務大臣とアメリカの国務長官が話し合ったことは、正式提案でなくて何でありましょうか。それとも、お茶飲み話でもなさったというのでありましょうか。このような不謹慎かつ軽率な発言をなさる外務大臣は、日本国民の代表として沖繩交渉に当たらしめるには、はなはだしく不適当であると思いますが、いかがでありましょうか。(拍手)総理はかねてより人材の起用については自信を持っておられるようでありますけれども、これに関してのみは大甘な起用の誤りであって、直ちに罷免するのがあたりまえだと私は考えるのでありますが、総理の見解を伺いたいのであります。(拍手)
 また、この際、問題を提起された日米安保条約の選択はどうか、国民の前に明らかにしていただきたいと存じます。アメリカ側には自動延長と言わずに自動継続と述べたこと自体、期限つきの延長ではなく長期固定を意味する継続であるとアメリカ側に受け取られているようでありますが、一体どんな方針をとろうとしておられるのか。総理は、安保条約に対するその方針を明示していただきたい。そして、安保検討期を目前にして、これほどわが国民を瞞着し、惑わした責任を負って、すみやかに国会を解散して、国民の前にその信を問うべきではないか。その勇気があるかないか、わからないのですけれども、この点、総理の確たる決意を伺って、私の質問を終わらしていただきます。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#93
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 渡部君にお答えをいたします。いままでの質問者とだいぶ重なる点もございますが、一応渡部君のお尋ねにお答えしたいと思います。
 政府の沖繩返還交渉につきましては、これはもうすでに各報道機関等を通じまして御承知のことだと思います。政府は、沖繩の早期返還という国民の願望を背景に、真剣にこれに取り組んでおるのであります。いろいろ御批判がありました。対米追従その他等々、ずいぶん、みずからをけなすということばはいかがかと思いますが、そういうような御批判がありました。まあ、その御批判は御自由でありますが、政府としては、今回の外務大臣訪米におきまして、わが国の国益を追求する立場から、十分に所期の目的を達成することができた、かように実は確信をしております。この点は、私はいかに批判されようとも、この会議場を通じて国民の皆さん方にはっきりと申し上げておきたいと思います。(拍手)
 第二の問題といたしまして、これまた沖繩の基地の性格等についてどう考えるかというようなお話があったのですが、これはまた相当渡部君独自の独断的な御意見であったようであります。
 沖繩問題を解決するにあたりましては、私は、沖繩にある米軍基地がまず第一にわが国の安全に果たしている役割りと、あわせて、わが国のみならず、極東の安全保障に果たしている役割りをも認識することが必要であると絶えず申しております。いたずらに感情にとらわれたり、あるいは国際間のきびしい現実を見失うようなことがあっては、真の解決は望めないのであります。政府としては、このような現実を踏まえて、なおかつ、早期返還という国民の願望を実現するために最善の努力をせっかく払っている最中であります。この点を申し上げまして、御理解を得たいと思います。
 次に、核抜きということを言っているが、どうもこれはお義理にそういうようなことを言っているのじゃないかというような、ちょっと私、御質問の趣旨をとりかねるような発言があったと思います。しかし、沖繩基地の態様をいかにするかということは、返還交渉における最大のポイントであります。これはもう御指摘のとおり、これが交渉の目である、かように申してもいいかと思います。したがいまして、政府は、あらゆる角度から国民世論の動向をとらえ、また国会の論議を通じて野党各派の御意見も十分伺ったつもりであります。その結果、愛知外務大臣の訪米にあたって、政府としての考え方を米国政府に伝えたのであります。政府のやることは文字どおり真剣に取り組んでおるつもりであります。いわゆるお義理でだとか、あるいは政略的方便だとか、かような批判は、幾ら御批判は御自由だとは申しましても、真剣に取り組んでおるこの政府の態度に対しまして、一言ぐらいは激励のことばがあってもいいのではないか、かように私は思います。(拍手)
 次に、どうも事前協議の問題にいたしましても、特別に曲解しておられるのじゃないだろうかと思います。先ほど来、外務大臣も真剣に、まじめにお答えしておりますが、十分お聞き取りをいただきたいと思います。
 この事前協議問題を中心にしてのいろいろの具体的なお尋ねがありました。渡部君も御承知のことだと思いますが、本土の沖繩化というようなことを言われましたが、このことは、政府の対米交渉について誤解しておられるのじゃないだろうか、沖繩が本土化するのだというのなら、これはわかるのであります。しかし、本土を沖繩化する、一体これはどういうことを意味されるのか。安全保障条約におきましても特別なものでも考えておるのか、こういうお尋ねかと思いますが、私どもは、特別なものを考えていないということを先ほど来声を大にして申し上げております。冒頭に愛知外務大臣から御説明いたしましたが、あらためて私からも申し上げたいと思います。
 すなわち、沖繩の早期返還は、沖繩県民を含む全国民の一致した民族的願望であります。おそくとも一九七二年中には沖繩の施政権はわが国に返還さるべきこと、また施政権返還後の沖繩に残される米軍地につきましては――ここが大事ですからよく聞いていただきたい。日米安保条約及びその関連取りきめが、本土の場合と同様に、そのまま適用されるべきであるというのが政府の基本的態度であります。したがいまして、返還後沖繩に核を持ち込むことはありません。しかしながら、これは政策の問題であって、非核宣言をすることは私はただいま考えていないということを、先ほども声を大にして申し上げました。これはどこまでも政策の問題だ、かように御理解をしていただきたい。
 また、事前協議におきまして、イエスという場合、ノーという場合の両方があることは当然なことでありますが、あくまでもわが国の国益にのっとって、そうして自主的に、当面したその時期に適切なる判断、時宜に適した判断をすることがもちろん大事なことであります。いわゆる抽象的、一般的原則で、こういう場合にはノーと言うか、こういう場合にはイエスと言うか、さようなことは言えない、そのことを言っておるのであります。
 さらに、事前協議の運用につきましては重大の変更をするのではないかとの疑問を出されましたが、現行安保条約及び関連取りきめをそのまま適用するのでありますから、この点も誤解のないようにお願いをしておきます。次に、……(「簡単」と呼ぶ者あり)簡単と言われますが、大事なことですから詳しく説明いたします。いましばらくがまんしていただきたい。安保条約をいかなる形で堅持するかはまだきめておりません。愛知外務大臣は、ロジャーズ国務長官との会談で、自民党内に自動継続を望む空気が強いことを伝えましたが、これは米側にとりましても重大な関心のあるところであります。沖繩問題交渉の過程で、先方からそのような打診がなされたこともまた自然の成り行きであったと私は思います。佐藤内閣が国会を軽視するようなことは断じてないことは、私の日ごろの言動から見てもよく御理解がいただけことだと思います。
 また、外務大臣が記者会見でそれを漏らしたのは不謹慎だから罷免せよとのお話でありますが、国民の輿望をになって、これから大事な交渉を継続しなければならない中心人物でありますし、ASPAC会議に見られるように、太平洋アジア地域の経済的自立を推進するまとめ役の外務大臣でもありますし、また、私は心から信頼しておる外務大臣であります。したがって、この首を切れと言われましても、切るような考えは毛頭ございません。はっきり申し上げておきすま。(拍手)
 この際に、私はまた重ねて申し上げますが、国家、国民のためにしっかりやれ、しっかりやってくれ、こういう激励のことばの一つくらいはあってもいいのじゃないだろうか、かように思います。幾ら野党といわれましても、そのくらいのことを言われれば、私どもも国民に責任を果たす、そういう意味でさらに奮起する、かように思います。どうかこの機会に、あらためて私は皆さんの御協力を、ひとり公明党だけではありません、共産党の方にも御協力をお願いをいたします。どうかよろしくお願いいたします。
 次に、日米安保条約に対する政府の選択を明らかにしろ、これは最後のお尋ねであります。最後に、とのお尋ねにつきましてお答えをいたしますが、日米安保条約に関する政府の選択、これはもう先ほども申し上げましたとおり、まだ政府の最終的な態度はきめておりません。しかし、私は、しばしば機会あるごとに日米安保体制は堅持する、かように申しております。それをどういうふうにするかということ、これは、さらに国民世論の動向を十分に見きわめた上、十一月の訪米までにはきめたい、かように考えております。何か解散でもしてという、よほど解散が気になるのではないかと思いますが、そういう意味で解散、解散と盛んにお尋ねがございますが、私はただいま解散などは考えておらない、これをはっきり申し上げまして、あまり気になさらないように、どうかひとつ一生懸命に政治に取り組んでいただきたい、お願いをいたします。(拍手)
    〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
#94
○国務大臣(愛知揆一君) ただいま総理大臣からお答えをいただきましたとおりで、私は何もつけ加えて申し上げることはありません。ただ一つのお願いは、国会における私の発言を御信用いただきたいと思います。ほかでどう言ったと伝えられたということにつきましては、先ほど来明らかに言明をいたしておるのでございますから、これを御信用いただきたいと思います。(拍手)
    〔国務大臣有田喜一君登壇〕
#95
○国務大臣(有田喜一君) 沖繩返還の問題に関連しまして、外務省と防衛庁が二回にわたって懇談いたしましたが、その第一回では、返還後の沖繩防衛構想について懇談したのであります。すなわち、施政権が返還された後は、言うまでもなく沖繩はわが領土となりますので、わが国土としての沖繩の防衛責任は第一義的にわが国にある、これは当然なことであります。御承知のとおり、今日の沖繩における米軍基地は、沖繩の土地を守るほかに、極東の安全と平和のために、いわゆる抑止力というものがある。そうして友好国に対する支援機能というものがありますが、われわれは、そういったような抑止力とか、支援機能というものは、これを受け継ぐわけにはいかない。われわれは、あくまで日本の本土と同じように土地そのものを守る、その前提の上に立って、沖繩にふさわしい陸海空それぞれの防衛整備をやっていかなくてはならぬ、こういうようなことを前提として話し合ったのであります。
 第二回目の会談では、今後のわが国の防衛整備の方向について話し合ったのでありますが、先ほども言いますように、わが国は相当国力も充実してきましたので、みずからの国はみずからの手で守っていくという、いわゆる自主防衛に進まなくてはならぬ。しかし、核抑止力の問題とか、憲法の制約がございますから、わが国がそういうことはなし得ない不十分な点があるから、これを補完するために、将来とも日米安保体制は必要である、こういうような前提に立って、わが国の国力、国情に応じた自主的防衛力を整備しようというようなことを話したのであります。
 なお、防衛庁が核抜き返還に対して何だか態度が変わったようなお話がありますけれども、それは何かの誤解であろうと思います。先ほども言いましたように、防衛力は、国防に関する国民の深い理解のもとに強力にささえられてこそ、その機能を十分に発揮できまするので、核に対する日本国民の特別の感情のあることは十分考えていかなければなりません。核の具体的処理については、今後の米国との交渉を通じて解決されるものと思いまするが、核抜きの返還の場合には、抑止力の面で不ぐあいの生じないような方法を慎重に検討していかなければならぬ、さように考えております。(拍手)
#96
○副議長(小平久雄君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#97
○西岡武夫君 本日の議事日程に掲げられた国務大臣の演説は延期し、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
#98
○副議長(小平久雄君) 西岡武夫君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#99
○副議長(小平久雄君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後七時三十七分散会
     ――――◇―――――
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        法 務 大 臣 西郷吉之助君
        外 務 大 臣 愛知 揆一君
        厚 生 大 臣 斎藤  昇君
        郵 政 大 臣 河本 敏夫君
        建 設 大 臣 坪川 信三君
        自 治 大 臣 野田 武夫君
        国 務 大 臣 有田 喜一君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 高辻 正巳君
        内閣法制局第三
        部長      荒井  勇君
        外務政務次官  田中 六助君
        外務省アメリカ
        局長      東郷 文彦君
        大蔵政務次官  上村千一郎君
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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