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#1
第061回国会 本会議 第47号
昭和四十四年六月十三日(金曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第三十九号
  昭和四十四年六月十三日
   午後二時開議
 一 国務大臣の演説(昭和四十四年産の米穀の
  政府買入れ価格の決定について)
 二 国務大臣の演説(観光基本法に基づく昭和
  四十三年度年次報告及び昭和四十四年度観光
  政策について)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 原子力委員会委員任命につき同意を求めるの件
 長谷川農林大臣の昭和四十四年産の米穀の政府
  買入れ価格の決定についての演説及び質疑
 床次国務大臣の観光基本法に基づく昭和四十三
  年度年次報告及び昭和四十四年度観光政策に
  ついての演説及び質疑
    午後二時八分開議
#2
○議長(石井光次郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 原子力委員会委員任命につき同意を求めるの件
#3
○議長(石井光次郎君) おはかりいたします。
 内閣から、原子力委員会委員に北川一榮君を任命したいので、本院の同意を得たいとの申し出があります。右申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#4
○議長(石井光次郎君) 起立多数。よって、同意を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説(昭和四十四年産の米穀の政
  府買入れ価格の決定について)
#5
○議長(石井光次郎君) 農林大臣から、昭和四十四年産の米穀の政府買入れ価格の決定について発言を求められております。これを許します。農林大臣長谷川四郎君。
    〔国務大臣長谷川四郎君登壇〕
#6
○国務大臣(長谷川四郎君) 昭和四十四年産の米穀の政府買い入れ価格の決定について御報告申し上げます。
 米は、農家経済及び消費者家計にとって重要な問題であるばかりでなく、広く国民経済全般にとっても重要な意義を持つものであります。特に農民各位の長年にわたる努力と農業技術の改善によって生産力が画期的に向上し、完全自給の段階に到達し得たことはよろこびにたえないところであります。
 しかしながら、最近における米の需給緩和に見られますように、農業をめぐる諸情勢はきわめて困難な状態になってきております。このような状況のもとでは、米価のあり方のいかんは、農業生産の均衡ある発展という点から見ても重要な意義を持つに至っているのであります。
 そのような意味におきまして、昭和四十四年産の米穀の政府買い入れ価格つきましては、去る六月四日、米価審議会に対しまして、昭和四十四年産の米穀の政府買入価格については、生産費および所得補償方式を基本とし米穀の需給事情を考慮して決定することにつき、米価審議会の意見を求める旨の諮問を行なうとともに、この考え方に立った試算を提出して審議の参考に供しましたところ、同審議会における熱心な審議の後、会期を一日延長した同月七日、諮問に対する答申を得たところであります。
 答申のあらましを申し上げますと、「生産費および所得補償方式を基本とすることは差し支えない。」とし、米穀の需給事情を考慮することにつきましては、「米穀の需給事情を考慮することは食糧管理法の趣旨にもとるので、米穀の需給事情を考慮することなく、労賃、物価の上昇を適正に反映するよう従来の生産費および所得補償方式により決定すること」という意見が表明され、他方「需給事情を考慮することは妥当である」との意見が多くの委員から表明されるとともに、これに関連して、政府試算米価につきましては、「これには全く反対であり、これをさらに引き上げるべきである」との強い見解があり、これに対し、需給事情を考慮することは妥当であるとの立場の多くの委員においては、「この際試算米価でやむを得ない」とする見解が有力でありましたが、そのほか「政府試算米価を引き下げるべきである」との強い見解が述べられたのであります。
 政府といたしましては、この答申の趣旨に即し、最近における米をめぐる諸事情を考慮して、慎重な検討を続けました結果、六月十日、次のように決定いたしました。
 一、昭和四十四年産の生産者米価は、据え置く
  こととし、うるち一−四等平均包装込み生産
  者手取予定価格を一五〇キログラム当たり二
  〇、六四〇円とする。なお、消費者米価も据
  え置くこととする。
 二、暫定加算は、諸般の事情を考慮して、本年
  度に限り昨年どおりとする。
 三、等級間格差、歩留加算、もち米加算および
  陸稲格差は、昨年どおりとする。
 なお、稲作農家がこれまで国民の基幹的食糧である米の生産に努力してきたことに配慮するとともに、米価据え置きの稲作農家に与える影響等を考慮して、稲作対策特別事業費として、昭和四十四年度において二百二十五億円の補助金を支出することといたしました。この補助金は、過去三カ年間の米の政府売り渡し数量に応じて市町村に配分し、米生産者の肥料、農薬その他資材の購入等に必要な財源として交付するものであります。
 また、関係各省の緊密な協力のもとに新しい時代の趨勢に対応する農業の均衡ある発展を推進するため、内閣に農政推進閣僚協議会を設け、農政の総合的推進をはかるよう最善の努力をいたす決意であります。
 なお、食糧管理制度につきましては、もとよりその根幹を維持してまいりたいと考えております。
 以上でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説(昭和四十四年産の米穀の政
  府買入れ価格の決定について)に対する質
  疑
#7
○議長(石井光次郎君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。石田宥全君。
    〔石田宥全君登壇〕
#8
○石田宥全君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま御報告になりました四十四年産米穀の価格問題につきまして質問をいたします。
 本年産米価の据え置き論は、昨年末すでに財界や政府の一部から出ていたところでありますが、去る十日、ただいま御報告のように決定がいたされたのであります。よくもまあ、あつかましくも昨年の米価以下のものを決定したものと驚くばかりでございます。(拍手)政府は、昨年の生産者米価決定の際に、生産費が対前年比で一三・九%上昇しておるにもかかわらず、米価を五・九%引き上げたのであるから生産者米価は値上げをしたのだと、言っておったのでありますが、実質的には八%の値下げとなっておるのであります。また、昨年度におきましては、農林省の調査によりましても、十アール当たり生産費で一〇・五%、百五十キロ当たりで一一%の上昇を認めているのであります。そして、食管法の第三条では、米穀の再生産の確保を旨として定めると規定しております。生産費上昇の事実を全く無視して、据え置きや値下げを行なわんとすることは、政府みずからが法律をないがしろにするものであるといわざるを得ません。(拍手)いやしくも行政府が法律を無視し、かってに行政権を行使することは、国会の審議権を無視し、じゅうりんするものであり、立法府に対する侵犯行為であって、われわれの断じて許しあたわざるところであります。(拍手)総理の所信をただしたいと存じます。
 また、昨年度政府買い入れにあたっては、等外上規格米を米として扱わないことといたしたために、いわゆるやみ米が大量に取引され、公然と相場が立ち、取引が行なわれ、政府登録の米販売業者は、これをやみ米と称して売却しております。こうして消費者を欺瞞しているにもかかわらず、あえてこれを取り締まらず、法律を空洞化しているものであり、それに加えて自主流通米の実施を契機とし、さらに大量の第三の米、つまりやみ米が横行するであろうことは明らかであります。政府は、何ゆえにこれらの法律違反行為を放置しているのであるか、所見をお聞きいたしたいと思います。
 国民の主食である米に対し、政府がこのように米だけについても幾つかの法律を守る意思のないことが、今日の青少年の異常なまでの犯罪を生む温床となり、国民の順法精神を麻痺せしめる最大の原因であると思うのであります。今後なお食管法違反行為に対して野放しにし、違反、違法を奨励するがごとき方針であるのかどうか、法務大臣並びに警察庁長官の所信のほどを伺いたいと思うのであります。(拍手)
 さらに、今回行なわれる自由流通米は、政府管理米の一部をやみ米として公認するものであり、実質上の消費者米価の引き上げであります。佐藤内閣成立以来、昭和四十年から四年間、連続して消費者米価を三五%も引き上げたのでありますが、本年は消費者米価据え置きと称しながら、実は自主流通米というごまかしの方法によって消費者米価を引き上げようとしているのであります。しかも、従来のやみ米にも示されているとおり、政府売り渡し米の一部が末端において高い自主流通米に化けて配給されるおそれがあるのであります。政府米の上質のものが抜き取られ、自主流通米にまぜて配給されることは、政府の正規の配給米の品質を低下させるとともに、消費者は当然安く買えるはずの政府米を、高い自主流通米として買わされる結果となることは明らかであります。これは消費者をペテンにかけることであります。消費者米価は上げないと言いながら、政府米をやみ米に流して米価を高くする制度であります。農林省は、自主流通米の配給にあたっては、これを産地、銘柄を明記した小袋入りとして、政府売り渡し米と厳重区分すると言明したにもかかわらず、その後この点をあいまいにしていることは、消費者の立場から断じて許すことができないのであります。政府は、自主流通米を産地、銘柄別の小袋に入れて配給することを確実に実行するかどうか、農林大臣の明確な言明を求めるものであります。
 また、都市におけるいわゆるやみ米の値段は十キロ当たり千八百円ないし二千五百円いたしておるのでありますが、自主流通米は政府売り渡し米に比較して値が張ることは必至であります。そうでなければ自主流通米制度は成り立たないと考えるがどうか。そして、その上積みされる部分はいかほどになるのか、農林大臣の所見を伺っておきたいのであります。食管法により消費者米価の面で家計の安定が維持されてきた一般消費者にとって、きわめて重大な影響と不安を与えるであろうことは、ただいま申し上げたとおりであります。
 次に、食糧事情緩和の問題でありますが、国民食糧の自給こそ多年の国民の強い念願であります。かつて農業倉庫がからになり、東京においては都民の配給量のわずか二日分くらいしかなく、深刻な食糧危機に見舞われたのであります。そのときに私が、この問題に対して本院において緊急質問をなさんとしたのでありますが、与党諸君の相いるるところとならなかったのは、過ぐる昭和三十九年であったことを思い知るべきであると思うのであります。(拍手)その後需給が緩和したのは、一昨年と昨年の史上まれに見る豊作が基因をなしておるのであり、加えて、一昨年までの四年間に二百六十五万トンの外米を輸入し、さらに、三年間に外国小麦を一千三百万トン、米換算にして約一千万トンの輸入が相重なって、昨年秋の二百七十万トンの米の手持ちとなったのであります。まさに虚構の過剰といわなければなりません。(拍手)外国米麦の輸入をやめて、すみやかに国内食糧の自給体制を確立すべきであると確信するが、いかがなものでありましょうか。所信を伺っておきたい。
 財界の強い要望である、農業経営を不安にさらし、衰退させ、もって農村の労働力をかり出し、工業製品輸出のために、一次産品たる農産物を輸入せざるを得ないということは、農民に安楽死々求めようとする以外の何ものでもないと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)このような政策を政府が強行するとあらば、何をか言わんやであります。わが国経済の高度成長は、農民と労働者のたゆまざる勤勉さと低米価、低賃金政策の所産であるといわなければなりません。政府はいま、総合農政、新農政というまぼろしを掲げて食管法を破壊し、一面においては、農業憲法ともいわれる農地法の改悪を意図し、加えて、新都市計画法を実施して、各方面より小農切り捨て政策を前面に打ち出してきております。政府は、しばしば農民にバラ色の夢を与えては、むざんにもそれをかなぐり捨て去り、農民首切りをやってまいりました。しかしながら、わが国の社会保障制度の貧困は目に余るものがある。都会に出た農民は病気になっていなかに帰る。年老いれば帰村する。事業に失敗すれば農村に帰る。これらの人たちを救う道はあるのか。現行制度のもとでは全くないと言っていいのではないか。厚生省の調査によっても、四十二年度は三十五年度の二倍の農村帰郷者の数になっておるのであります。一たび都会に出たならば、再び農村に帰らずに安住の地を求め得るような抜本的社会政策の配慮なしに、小農を農村から追い出すことは断じて許されないのであります。
 政府は、昨年以来総合農政を看板に掲げてきましたが、この総合農政とは何であるのか、だれもはっきりした内容を明らかにしないのであります。いわく畜産、果樹などへの選択的拡大でありましょう。しかし、牛乳は、乳製品輸入の激増によって、都市の住民はごまかしの高い加工乳を飲まされ、酪農民は生産過剰に圧迫されている。リンゴも、ミカンも、ビートも、やっていけない現状ではありませんか。自主経営の拡大も、一向進まない実態であります。今日の農村の出かせぎと兼業化の傾向は、農家がますます農業収入では生活していけない現実を示しているではありませんか。政府のいわゆる総合農政は、この農業の現状をどうしようというのですか。昨年春の国会で、政府は、総合農政でいくと言った。一年半たったいま、農政審議会に諮問している。この答申の出るのは来年の夏ごろといわれている。一体政府や農林省は、一年半の間何をしているのですか。もはやことばだけのごまかしでは、国民は承知しないのであります。いまこそ、まさにはっきりと農林大臣から総合農政なるものの具体的内容を聞かしていただきたい。明確にお答えを要求いたします。
 自民党の政調の一部で、五年間十二兆円の農政費を計上するというが、政府も同じ考えなのでしょうか。数字入りの具体策をこの国会の会期中にも示すべきだと思うが、そのお考え方を承りたいと思います。(拍手)
 次に、経済企画庁にお伺いいたしたいのであります。
 今日の米価据え置き論には、生産者米価を上げれば物価も上昇するという飛躍した論議が、まことしやかに論ぜられております。生産者米価が直接的に物価に影響するとは考えられず、消費者米価にしても、かつて昭和三十五年から五年間据え置いたのでありますけれども、諸物価は一一%上昇しているではありませんか。公共料金の抑制こそ先決ではないかと考えるのであります。
 農林大臣は、つい先般、本年度は消費者米価を上げない、したがって、米価審議会にはかけないと言明しているのであります。政府は、食管法を守る意思も持たず、やみ米の上昇を誘発するならば別でありますが、生産者米価が直接的に物価に影響すると考えられるならば、その根拠をお示し願いたいと思うのであります。
 次に、大蔵大臣に伺いたいのであります。
 今回、米価決定にあたり、政府は二百二十五億円の稲作対策事業費なるものの支出を決定されましたが、これは昭和四十一年の五十億円のつかみ金を連想するのは私一人ではありますまい。二百二十五億円の財政支出の方針をきめた以上は、憲法第八十三条ないし八十六条の規定及び財政法第二十九条によって、本国会に補正予算を提出することが当然であり、(拍手)その予算の内容については予算委員会などで明らかにされると思うが、いまは次の一点のみをお尋ねいたしたい。
 この二百二十五億円の金は、米を売り渡した個々の農家に配分されるものであるのか、または市町村の農政費として一定の事業に使用されるものなのか、そのどちらであるか、明らかにしてもらいたい。
 また、そのいずれの場合でも、国が一定の政策に基づき市町村に事務を委託することであるから、地方自治法第二条の規定により、法令の根拠を持たなければならない。このための立法措置をどうするつもりであるのか、伺いたいと思います。(拍手)政府は、地方自治体に対して、国が法令によらずにかってに仕事を押しつけてはならず、また市町村も、ただ金をもらっただけでは処置に困るであろうから、この点の立法措置について自治大臣から答弁をわずらわしたいと思います。(拍手)
 経済企画庁に伺いますが、かつて経済企画庁の立案した新産都市計画の地域指定を総花的に行なったことが、今日の土地価格の暴騰を招きました。今回の新全国総合開発において、わが国農業に対していかなる位置づけをしようとしておるのか、伺っておきたいのであります。
 また、去る二日、武道館における農協の要求米価貫徹総決起大会に出席しました自由民主党の根本政調会長は、農林予算に比較して農民の負担する税金が軽微であることを指摘したのでありますが、これは農民に対する自由民主党の挑戦というべき暴言であります。(拍手)都市近郊の土地成金になった一部の者はいざ知らず、一町歩や二町歩を耕やし、一年に一度や二度の収穫しかない大多数の農民に担税力がないのは、むしろ当然ではないでしょうか。農民が多額の税金を納められるほど豊かであるならば、何で兼業がふえたり、多数の農民が出かせぎに出るのでしょうか。今日、平均して農家所得の半分以上が農業以外の収入によっていること、農業だけでは生活が立たなくなっている事実を、よもや根本政調会長御存じないはずはありますまい。
 私は、あえて根本君の反省を求めるとともに、総理大臣の所見を要求して、質問を終わるものであります。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#9
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 石田君にお答えいたします。
 いろいろ広範にわたってのお尋ねでありますし、それぞれの大臣からお答えする点も多いのでありますが、基本的なものの考え方について私から説明したいと思います。
 まず、石田君は、米価据え置きが不当だ、こういう見解を述べられましたが、私は、そのようには思っておりません。また、心ある農民諸君も、そのやむを得ない事情につきましては、よく御了解いただいているところと私は信じております。(発言する者あり)
 まず、おとなしく聞いていただきたいのですが、米の生産過剰は、すでに御承知のように、貴重な米を飼料にまで格下げしなければならない状況になっており、国民経済的観点から見て、その損失はばく大なものであるばかりでなく、この状態を放置すれば、今後年々その損失は拡大するばかりであります。私は、このような憂慮すべき状況を見て、さきにこの国会の施政方針演説におきましても、生産者米価を据え置く、この方針をつとに明らかにしたのであります。
 私が申すまでもなく、御承知のように、国際価格に比べてもはるかに高くなっている米価をこれ以上引き上げていくことは、食管制度そのものの崩壊にもつながるものであること、ひいては日本農業に大きな痛手を与えるものであることを痛切に感じたからであります。決して財政負担の観点や物価対策の観点だけから米価据え置きを考えたものでないことを、よく御理解いただきたいと存じます。
 私は、まず今回の米価の据え置きは、従来の、ともすれば惰性的に引き上げられてきた米価について、あるいは日本農業の現状について、国民各位とともに真剣に考え直してみた結果であり、日本農業の将来にとって大きな意義を持つものと考えております。今後は、畜産物や果実、野菜など、新しい時代の要求に適応した農産物に農政の重点を向け、米価の矛盾を克服し、国際的競争力のある農業への体質改善を行なうため、政府としても万全の措置を講じてまいる決意であります。米価据え置きの真意とその意義につきましては、率直に御了解、御認識いただきたいものと考えます。
 さて、米価据え置きが、米穀再生産の確保を規定している食管法に違反しておるとのお説でありますが、今回の米価も、基本的には食管法の精神に基づき生産費及び所得補償方式をもととして決定したものであって、何ら食管法に違反するものではありません。ただ、現在の米の過剰の中で、なおすべての米作農家が再生産できる価格を主張してみましても、現実の解決にはなり得ないことは、容易に御理解いただけるところと私は考えます。
 次に、国民の主要食糧はなるべく自給自足しろ、その体制をつくれということは、私も石田君と全然同意見であります。特に米につきましては、国内ですでに大幅な過剰となっているのでありますから、貿易構造上の特殊の必要性からやむを得ず購入する以外に、積極的に輸入を行なう考えは毛頭持っておりません。麦につきましては、需要が強いのでありますから、また、日本農業の性格から、相当程度輸入に依存せざるを得ない現状であります。
 その他の各項目につきましては、一応私からも答弁を用意いたしましたが、これは各大臣に譲ることにいたします。
 そうして、最後に、根本政務調査会長の発言についての私に対するお尋ねでございますが、冒頭に私が申し上げたところで私のお答えといたします。私は、残念ながら根本調査会長の発言を聞いておらないのであります。そのとおりに申し上げます。(拍手)
    〔国務大臣長谷川四郎君登壇〕
#10
○国務大臣(長谷川四郎君) 農業の健全な発展なくしては、国民の経済の均衡ある発展は期待しがたいと考えておりますし、今後とも国民の必要とする良質、豊富な食糧の安定的な供給をはかるとともに、このことを通じて、農家の所得と生活の向上につとめてまいる所存でございます。このため、農産物の供給につきましては、必要なものについては輸入に依存することになりますが、米については完全自給は当然として、畜産物、野菜、果実等については、つとめてその生産の増強をはかってまいるつもりでございます。
 さらに、農山漁村からの出かせぎに対しましては、出かせぎの就労先の条件が必ずしも良好でない等の事情から、種々の問題を起こしている場合があるように聞いておりますので、社会保障の充実とともに、就業の相談活動等の施策を強化してまいりたいと存じます。
 自主流通米につきましては、嗜好に応じて選んだ米を食べたいという消費者の需要に応じて流通するものでありまして、その場合、自主流通米には政府の財政負担が伴わないから、政府配給米より高くなることは避けがたいが、配給米の大部分を占める政府管理米の適切な操作によって、消費者米価の安定については不安はないと考えるのでございます。
 なお、米穀の自主流通に伴う本年度食管会計の損失の減少は約百六十億と見込まれますが、自主流通の制度は、事態に即応した改善措置の一環として、消費者の選好に応じた米の生産、消費の増大をはかることをねらいとするものでありまして、財政負担の軽減を直接のねらいとするものではないということをはっきりと申し上げておきます。
 さらに、総合農政といいましても基本農政でございまして、今日のように、価格のみによって政策を行なうということの結果があらわれてきておるのでございます。でありまするから、今度はさらに、これらを少ないものと多いものとのバランスをとった農政を行なわなければ相なりません。そういうような観点に立ちまして、もって今後の方針は、生産政策あるいは構造政策、こういうような方向に向けて大いに努力を傾けてまいるつもりでございます。現在特に主産地形成をやっておることも、この一例であることを御了承を賜わりたいと思うのでございます。
 さらに、本年度の総合農政といたしましても、本年度、米の主産地において、おおむね五千ヘクタールの米の水田をやる、あるいは水田対象としてカントリーエレベーター群を中心として、機械化稲作集団を育成し、生産から流通までの一貫した生産性の向上と、品質の改善をはかってまいっておるのでありまして、特に本年度は、四十四年度で八地区をやっており、これらの補償金額によっても四億円をそれらに与えておるのでございまして、さらにまた、第二次農業の改善事業にいたしましても、これらは、従来一地区当たり事業費が九千万円であったものが、融資三千万円、計一億二千万円、さらにこれらを飛躍をいたしまして、事業費の三億円、融資一億円、計四億円に拡大しておる等におきましても、総合農政の一環として、これらの基盤をつくっておるのでございますから、その点は御了承賜わりたいと存ずるのでございます。(拍手)
    〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#11
○国務大臣(福田赳夫君) 私に対する質問は二百二十五億円の補助金についてでありますが、これは米価ではございませんから、一般会計から支出いたします。一般会計の財源が二百二十五億円さらに追加需要されるということになりまして、私も非常に頭が痛いのでございますが、この支出は数カ月後――つまり、いろいろな手続がありますので――に行なわれるということになりますので、それまでにどういうふうな支出をするか、財源をどういうふうに調整するかということは、とくと検討してみたい、さように考えております。
 この補助金は、市町村長に対して交付するものであります。ただ、市町村長は、ただ単に市町村長がその恣意によってその配分をきめるのではございません。個々の農民の生産資材、つまり、肥料、農薬など、あるいは個々または共同の生産施設等、個々の生産農家の意見をよく総合いたしまして、その使途を決定する、かように心得ておるのであります。
 五十億補助についての経験につきましては、この際よく反省し、あのときのような事態の起こらないように厳重な措置をいたしたい、かように考えております。(拍手)
    〔国務大臣菅野和太郎君登壇〕
#12
○国務大臣(菅野和太郎君) 生産者米価が一般消費者物価にどのように影響を及ぼすかという御質問であったと思いますが、この生産者米価が消費者物価に影響を及ぼす筋道が大体三つあると私は考えておるのでありまして、一つは、生産者米価が上がれば、おのずから消費者米価を引き上げる機運が助長されるということ、消費者米価が引き上がれば、したがって物価が上がるということが考えられるということなのでありまして、そういう点から一般物価に影響を与える、こう考えておるのであります。
 次の問題は、生産者米価を上げますると、したがいまして、それだけ米作が有利性を帯びまするから、おのずから他の農産物の政策が軽んじられるという危険がある。そうしますと、その農産物の価格が上がってまいりますから、したがって、一般物価に影響を及ぼすということが考えられるのであります。
 第三は、生産者米価は、これは米価の上下が物価の上下に非常な影響を持っております。これは、日本の今日の経済事情のもとにおきましては、やはり米価がすべての物価の基本になっておりまするから、したがいまして、生産者米価を上げますると、それがひいて一般物価に影響する、すなわち物価上昇のムードを助長する危険があるということも考えられるのでありまして、そういう意味におきまして、生産者米価は、この際、物価を上げないという意味において据え置くべきであると考えておる次第であります。
 次に、新全国総合開発計画において、農業をどのように位置づけるかというような御質問があったと思うのでありますが、これは今日の国際化の進展、あるいは食糧事情の変化の増大、あるいは労働生産性の大幅な向上の要請、あるいは地域経済社会構造の変貌等に対処しまして、地域的特性を生かした農業の意欲的展開をはかることを目的といたしておるのであります。
 すなわち、大都市に集積する食料消費市場に対応いたしまして、各地域にその特性に応じた食料供給基地の形成と配置を意図しつつ、高生産性農業展開のための高度な基盤整備、あるいは大家畜畜産の大幅な展開、あるいは生鮮食料品等の流通体系の新たな整備等を進めていく考えでおります。中でも、土地資源に恵まれた北海道、東北及び九州において、わが国の主要な食料供給基地を形成していくというつもりで、今度の計画を立てておる次第であります。(拍手)
    〔国務大臣西郷吉之助君登壇〕
#13
○国務大臣(西郷吉之助君) やみ米の取り締まりについて、お答えいたしまするが、食糧管理法違反として、検察庁において受理いたしまする件数は、最近非常に減少してきておりまするが、その原因については、必ずしも的確につかんでおるとは申せませんが、一般的に申しまして、米の需給関係が、最近非常に緩和されてまいりましたので、軽微な違反の取り締まりは、これを避けまして、大口、悪質な者に対する取り締まりに重点を置いてきておる結果と考えまするが、しかし、今後とも適正な配給制度や、また価格統制を不当に乱しまして、大規模、大がかりのやみ米によって暴利をむさぼるような者に対しましては、厳正な態度で臨みたいと考えております。(拍手)
    〔国務大臣荒木萬壽夫君登壇〕
#14
○国務大臣(荒木萬壽夫君) 石田さんのお許しを得まして、警察庁長官にかわり、公安委員長である私からお答えをさしていただきます。
 やみ米の問題、またその取り締まりについては、すでに法務大臣からお答え申し上げたことで尽きておると存じます。幾らか具体的に補足さしていただきます。
 食管法違反の検挙状況を簡単にまず申し上げます。
 戦後昭和二十四年の約百万件にのぼります検挙数に対しまして、昭和三十三年は、はるかに少なくなりまして、七千八百件でございます。さらに昭和四十三年には、さらにはるかに下がりまして、百四十七件と相なっております。このことは、純然たる法律論から申し上げますれば、取り締まりが不十分であるということを意味するかと存じますけれども、法務大臣からお答えしましたように、最近の食糧事情にかんがみまして、ただいたずらに軽微な違反を取り締まることを避けまして、常習的にブローカー等へ米穀を横流しする悪質生産者、組織的背景を有し、トラックなどを利用する大規模なやみ米ブローカー、そういうような大口悪質の反社会性の強い者に重点を置いて、取り締まっておる状況でございますことを申し添えます。(拍手)
    〔国務大臣野田武夫君登壇〕
#15
○国務大臣(野田武夫君) 稲作対策事業の補助金は、直接地方財政に関係はございませんのと、この取り扱いは、従来の補助金を取り扱っておりました手続に準じて行ないますので、この際特別の立法の必要はないと存じております。(拍手)
#16
○議長(石井光次郎君) 農林大臣から、答弁の追加をいたしたいとのことであります。
    〔国務大臣長谷川四郎君登壇〕
#17
○国務大臣(長谷川四郎君) たいへん失礼いたしました。小袋詰めの自主流通米につきましては、生産年月日、生産地、生産者名、これらを記入いたしまして、小袋詰めにする考えでございます。
 それから、自主流通米は、政府米よりは検査料、倉庫料、運賃が当然かかりますので、これらを合わせますと、幾ぶんか高くなるだろうということが予想されますが、幾ら高くなるだろうかということは、私はここで申し上げるわけにはまいりません。(拍手)
    ―――――――――――――
#18
○議長(石井光次郎君) 小沢貞孝君。
    〔小沢貞孝君登壇〕
#19
○小沢貞孝君 私は、民社党を代表して、ただいま報告のありました昭和四十四年度の米穀の政府買い入れ価格の決定に関連して、若干の質疑をいたしたいと思います。(拍手)
 まず第一に、米価の決定のあり方についてであります。
 毎年のように繰り返される米価闘争もさることながら、本年は全国各府県農協本部長会議が異例な申し入れを行ない、政府と与党に不信と怒りをぶちまけ、選挙を通じて対決せざるを得ないとまで言わしめたそもそもの原因は何にあるでありましょうか。言うまでもありませんが、総理が食管法を無視して、据え置きを早々と国会で言明したことに端を発しておるのであります。これを受けて、事務当局が据え置きを固執し、ゆがめられた諮問を米価審議会に提示し、その答申の上に、つかみ金というより表現のしようのない補助金をつけ加えて当面を糊塗しようとするそのやり方にあるのであります。政府の御用をつとめるのが米価審議会ではなくて、法に基づいて再生産を確保するための答申を経て政府がきめなければならないのであります。順序が逆なのであります。それに、米審から国会議員を締め出し、国会開会中に緊急質問をしたいというのに対し、審議を拒否するという政府・自民党の態度にあるのであります。(拍手)これに対する総理の反省と、今後の米価決定のあり方について、まずお尋ねをしたいと思うわけであります。
 米価は、消費者、生産者を含めて、国民生活に重大な影響があります。したがって、国会が米価をきめるのが妥当だと思うわけであります。あるいは適当なあっせん、仲裁の機関を設けつつ、生産者代表と政府が団体交渉によってきめるか、そのいずれかによるべきだと思うのであります。この点についての所信を承りたいと存ずる次第であります。
 次に、米の過剰となったそもそもの原因いかんという問題であります。
 政府は、米穀の需給事情を考慮して米価を決定することについて、米価審議会の意見を求められたのであります。米が不足している時代は、需給事情を無視して強制買い上げを行ない、残ってきたら、需給事情を考慮して、米価を押えようということでございます。
 総理府の資料によれば、昭和二十三年、四年当時、やみ米がトン当たり十二万二千円でありました。そのときの政府の買い入れ価格は二万九千円、三万一千円であって、ちょうど自由価格の四分の一の価格で政府に売り渡しをしてきたのであります。農民はまだこのことを昨日のことのように覚えているわけでございます。その間、政府の指導で、ビートの奨励やその失敗、麦の増産や減産、養蚕のための桑園の増反、減反あるいは増反等々幾変転、ことごとく政府の指導のもとにやってまいりました。米も政府の指導と国家的要請にこたえるためであったのであります。ところが、昨今、あたかも米づくりをやってきた農民が罪人扱いを受けているような報道が、政府の発表によって行なわれているわけであります。しかし、今日米が過剰となった原因は、政府の責任であります。その理由の第一は、米以外に見るべき農政がなかったからであります。第二には、開田の融資、補助、稲作技術の改良等、政府の指導が効を奏したわけであります。第三には、膨大な外国食糧の輸入であります。
 この際、農林大臣にお尋ねをいたしますが、国内の米の生産がおよそ年一千三百万トンであるのに、それと同量の農畜産物が年々輸入されてきております。昭和四十一、二、三年の間、米麦は年々五百万トン、飼料は六百万トン、畜産物その他を合わせて二十四億ドルを輸入に依存しているわけであります。一体、本年度の農畜産物の輸入計画とその予算をここで明らかにしていただきたいと思います。
 以上、いずれにいたしましても、今日の米の過剰はすべて政府の責任であって、この点の認識を総理はどう考えておるか、あえてここにこれを問わんとするものであります。
 お尋ねしたい第三点は、先ほども大臣は、米価は据え置く、こう言っておりますが、実質的には、生産者米価は引き下げ、消費者米価は引き上げ、こういうことになっておるという点についてであります。
 その前に、先ほども質問がありましたが、米価の二%余に相当するという稲作特別対策事業費は、一体いかなる性格の金で、どういうような方法で、何に使うか、その財源はどうするか、もう一回、この点を大蔵、農林両大臣にお尋ねしたいと思うわけであります。
 物価は、御承知のように、政府の推定でさえ五%以上になろうとしております。米価算定の基礎となるべき都市勤労者の賃金は、男女込みで対前年比一六・八%に上がっております。さらに三公社など、たとえば国鉄などの賃上げは五千二百五円、定昇千九百二十四円、計七千百二十九円というようになっております。これに期末手当四・二カ月、残業その他のはね返りを含めると、一人一年実に十数万円、全国鉄職員で年額七百五十億円といわれております。今年の国鉄料金の値上げ一五%で、本年の収入が七百九十億円であります。そのほとんどが給与の増額で食われておるというのが実態であります。また、近く公務員のベースアップ勧告が行なわれようとしておりますが、一〇%以上だと推定されております。一%が約八十八億円であって、これまた定昇を含めれば、公務員ベースの一%と米価の一%とがちょうど見合うような額であろうかと思います。しかも、これらはすべて消費者と納税者の負担によってまかなわれるわけであります。しかるに、何がゆえに米価だけを押えて、農民に賃金引き下げの犠牲を強制しなければならないのでありましょうか。総理の明快な御答弁をお願いいたします。(拍手)
 しかも総理、米価の算定でも明らかなように、農民は単位面積当たりの投下労働時間を節減して、生産性を上げてまいりました。これらは、ことごとく米価算定の上から米価を引き下げる要素となっているわけであります。米価を上げるべき要素は、農民の責任以外の要素によって引き上げられなければならないのであります。しかるに、政府の責任に帰すべき理由を農民に転嫁して、実質的に米価を引き下げようとしているわけであります。はたして、こんなことが許されるでありましょうか。
 次に、農林大臣にお尋ねをいたします。
 ことしからいよいよ全農民の反対を押し切って、自主流通米という、いわば政府公認の自由米制度が登場することとなりました。そこで質問の第一点は、これは単に消費者米価を値上げすること以外の何ものでもないのではないか。というのは、消費者から高く買ってもらわなければ、この制度は成り立たないからであります。第二に、うまい米を消費者に届けるためには、集荷、配給機構における役人の非能率さえ改めれば実現可能ではないか。第三に、米が過剰だという中で、単に流通制度をどう改めようとも、需給のバランスをとることについては、何の役にも立たないのではないか。このように考えるならば、何のためにこの期に、かくのごとく農民と消費者に不安を与える制度を採用しようとするのか、明確に農林大臣の御答弁をわずらわしたいわけであります。
 さて、今日、政府が米の過剰を論ずるならば、どうして需給の均衡を得るかという一点に集中しなければなりません。そうでなくては、政府の言明している食管の根幹さえ維持は不可能であります。このため、輸出対策、消費の拡大、備蓄対策等、緊急を要するものがたくさんあるわけであります。政府一体となってこれに取り組まなければならないにもかかわらず、たとえば外務省では、国際穀物協定に基づくインドネシアへの米の援助を、わざわざタイ米を買い付けて、それを無償で渡そうというわけであります。一体、こんなことが許されるでありましょうか。これを含めて、後進国援助、輸出対策についての政府の見解を伺いたいわけであります。
 文部大臣もまた米の消費拡大に非協力的であるかのようであります。学校給食のパンを子供たちはきらって、カバンの中に隠して持ち帰って、途中で捨てて帰ってくるというのが実態であります。この子供たちに、なぜパンを強制しなければならないでしょうか。給食改善について、文部大臣の積極的な御答弁をお願いいたします。
 次に、消費の拡大の一環としての外麦輸入制限についてであります。
 本年度予算によると、政府が売り渡す米は六百十三万トン、外国から輸入した麦の売り渡しが三百五万トンであります。政府の売り渡し量だけで言うならば、国民の二人が米、一人が外国産の麦であるというわけであります。米が余っているというときに、はたして今日これが許されるでありましょうか。これについては、かつて幹事長当時に、たれよりもたれよりも農民を愛すると言った福田大蔵大臣にお尋ねをいたします。
 外麦の輸入量は、昭和三十三年度二百七十万トン、本年度予算では三百五万トンということで、約一割ふえておるわけであります。また、価格の面では、国内への売り渡しが、昭和三十三年度にトン当たり三万七千円、本年は三万五千余円というように値下がりしておるわけであります。消費者米価も生産者米価も物価も賃金も、この十年間に約二倍に下がっている中で、ただ一つ外麦の国内売り渡しだけは逆に下がっておるわけであります。これでは、政府はいかにどう言おうと、価格政策の面から、国内産米を食べないで外国の麦を食べろ、外国の麦を食べろということを国民に奨励していることにほかなりません。
 しかも、財政制度審議会の答申では、国内産米が著しく過剰であるのに、大部分を輸入に依存する小麦の政府売り渡し価格が、米に比べて著しく安くなっているという不均衡を是正するため、小麦の売り渡し価格を引き上げることによって、間接的に米の消費を促進することとなり、かたがた財政負担の軽減にも資するであろう、こう言っておるわけであります。そしてさらに、これらの措置で、政府米を家畜の飼料として処分するとか廃棄処分にするということを避けよ、こういうように、財政制度審議会は答申をいたしております。政府は、財政制度審議会の答申を最大限に尊重して、たとえば自主流通米を、その勧告に基づいて、農民の反対を押し切って実施に踏み切ったのではありませんか。しかるに、なぜ外麦のことだけは勧告を無視しておるのか、このことについて、総理、大蔵、農林大臣にお尋ねをしたいと思います。
 こんなことでは、たれよりもたれよりも愛すると言った農民は、実は日本の農民ではなくて、日本に小麦を輸出しておるカナダやアメリカの農民を愛していることではないでしょうか。特に大蔵大臣の明快な御答弁をお願いいたしたいと存じます。(拍手)
 最後に、これからの農業のあり方について、政府はどのように対処せんとするか、総理の所信を承りたいと存じます。
 産業構造の変化、食糧消費構造の動向等々に対応できる、生産性の高い、近代産業としての農業を確立し、とうとうたる国際化の中にたくましく成長していく日本農業を築き上げることが、青年と農民に希望を与えるゆえんであることを私は確信いたしております。それがまた、消費者にもこたえるゆえんであろうと思います。米価の算定の中で、平均反収農家に近い農家だけが採算に合うようにして、生産性の低い農家は、理論的に言うならば切り捨てられたかっこうであります。また、先般施行された新都市計画法によって市街化区域に指定される農用地は膨大な面積であって、転用も許可制ではなくなり、固定資産税の評価は引き上げられて、結局、農民は農地を奪われるようなかっこうになるのであります。生産手段を奪われる農民をどこに就業させようとするのでありましょうか。また、かろうじて成長性の高い農畜産物に転換していく農民は、残存輸入制限の撤廃という貿易自由化のあらしの前に立たされておるのであります。これでは、まさに農民は袋の中のネズミのように行くえがないわけであります。
 今日では、五年十年後の食糧消費構造も明確に予測できるわけであります。国際的な農畜産物の価格も予見できるのであります。このような中で、日本農業はどのような構造政策のもとで国際社会に伍していくことができるかも、計画ができるはずであります。今度設けられた農政推進閣僚協議会は、どの閣僚が加わり、何をせんとするのか。米価闘争のときだけにあらわれては消えていく思いつき農政であってはならないと思います。農業近代化のための中期、長期の見通しのもとに、計画的財政援助、価格政策の確立と相まって、安んじて農民が政府の誘導に従うという具体策を示さなければなりません。その具体化によって、農民が米づくりから成長農畜産物の生産に自然に転換できるようにしなければならないと思うわけであります。長期計画の樹立の決意と、それを裏づける予算措置について、総理の確固とした決意をお伺いいたしたいのであります。
 その日暮らしの農政をやめて、責任感とビジョンを示せ、これが今日自民党政府に対する農民の声であるわけであります。
 以上をもって、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#20
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 小澤君にお答えをいたします。
 私が生産者米価を据え置く方針を早く打ち出した、そのために米価決定の方式まで乱れた、こういうおしかりでございます。しかし私は、食管法の定むる所要の手続はとったつもりでありますし、また、ただいま言われるような、私自身がその方針を打ち出してそういう方向へ指導する、これが総理大臣の責任でございます。そういう大事な、国民生活に直結し、また農村の生産に直結するこの重大な問題について方針も示し得ないというような総理、これは無意味であります。(拍手)したがって、私がその方針を示したことは、これをいいことだと思います。
 そこで、食管法の定むるところによらないで、これからは国会できめたらどうか、こういうお話でありますが、ただいまりっぱな、皆さん方がつくられた食管法というのがありまして、それで米価はきめられるのであります。われわれはそれを守っていこうじゃありませんか。別に新しい、ただいまのような決定方法を変えるというようなことなどは考えないほうがいいように思います。
 これを基本的に申し上げまして、さて、いろいろお尋ねがございましたから、それらについてお答えをしたいと思います。
 まず、米の過剰は政府の責任だ、こういうことでありますが、私は、政府の無責任農政の結果というこのおしかりは当たらないように思っております。もちろん、率直に申しまして、政府に全然責任がない、かようには私は申しません。しかしながら、一面、このような事情のもとに農家所得の向上がようやく実現されてきたことも事実であります。この点は、やはり承認していただきたい。
 また、かつての食糧増産対策事業を農業基盤整備事業と名を改めたのも、すでに約十年前であります。その当時から警鐘を鳴らし始めていたのではありますが、戦後の混乱を乗り切るための中心的課題として登場した米の増産の強い動きは、容易にはとまらなかったのが実情であります。現に、早くから米価の据え置きの方針を明らかにしてきた本年度におきましてすら、米作面積は増大しております。これが現状であります。しかしながら、いまや農家所得もかなりの程度向上し、米作労働報酬は都市労働を凌駕し、一方、全体として稲作所得は農家所得の三分の一以下になるなど、米作中心の農業を転換する客観条件が、このところ、ようやくにして成熟してきたのであります。私は、この機会をとらえて、米価据え置きの方針を貫いたことは、日本農業の一つの転機として評価されるべきであると考えます。今後は、総合農政を強力に展開し、強力な日本農業の育成をはかるべく、万全の措置を講じてまいることが政府の責任であると考え、決意を新たにして、この問題に真剣に取り組んでまいります。
 何と申しましても、食管法を堅持することが、農村の皆さま方に安心を与えるゆえんだと、かように思っておりますが、私は、この国民の基本的な食糧である米の必要量を確保し、国民経済の安定をはかるために、政府が責任をもって米の需給及び価格を調整し、円滑な米の配給をはかってまいることが今後なお肝要であり、このため、万全の措置を講じてまいります。
 このような食管制度の根幹は、引き続き維持してまいる考えであり、今回の米価据え置きも、大局的に見て、むしろ米価の据え置きが、食管制度維持に寄与するものであると考えたからであります。この点も御了承をいただきたいと思います。
 次に、今後の農政の展望の問題でありますが、これについてのいろいろ御意見を交えてのお尋ねがありました。私は、農政の重大問題は、米作偏重からやはり畜産、果実、園芸、蔬菜等の成長農産物のほうへ転換して、自立経営農家の育成と生産性の向上をはかり、生産、価格、流通等の総合的施策を通じて近代的農業の確立をはかっていくことにあり、その具体的方向については、目下農政審議会におきまして調査、御審議を願っているところであります。その結論をまって、また、今日の農業の問題は、単に農政固有の領域にとどまらないで、広範な分野にわたる検討と対策を必要としておりますので、新たに農政推進閣僚協議会を設置いたしまして、農政に関する重要問題について各方面の緊密な連絡、協力のもとに、農政の強力な推進をはかることとしたものであります。その中には、もちろん、構造改善の問題もありますし、さらにまた、国際競争力にひけをとらないような、りっぱな国際競争のできるような農政を展開する、そのための協議会でもあります。
 私は、小澤君よく御承知のことだと思いますが、この統計資料等を見ましても、賃金の問題に先ほど触れられましたが、都市労賃と米作賃金、これは、まあ一時間当たりの比較でありますが、この一時間当たりの比較をしてみると、都市のほうは二百二十六円九十銭、米の場合は三百五円九十三銭、これは三五%弔都市よりも高いのであります。(「うそをつけ」と呼び、その他発言する者あり)私は、この数字を、うそをつけだとかおっしゃらないで、よく資料をお集めになりまして御精査を願いたいと思います。これは私が持ってきた数字であります。その基礎はうそではございません。
 さらにまた、御承知のように、生産の数量は、大体千四百四十孔万トン前後の数量実績があります。消費は、米のほうは千二百万トン。どうしてもそこに米が残ってくる。それがだんだん古米となるとかあるいは古古米となる。そこらに一つの問題があるのであります。私は、これらの点につきましても、米をだんだん人が食べないで、残ったものが飼料になるというような、もったいないことをしないで、やはり保管その他もっといろいろくふうすれば、外に出ていくことも考えられるのではないか。ことしなどは、わずかではあるが、日本の内地米を沖繩に出したとか、あるいはまた、韓国に出したとか等々の問題もございますから、私どもは、生産を増強し、そうして自給自足し、そうして余ったものはさらにそのはけ口も考えていく。とにかく、知恵を持ち寄る。この意味では、社会党の皆さんからも政府に教えていただきたい。ただやじるだけが能ではございません。どうかよろしくお願いいたします。(拍手)
    〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#21
○国務大臣(福田赳夫君) お答えいたします。
 今回の二百二十五億円の補助金の性格いかん、こういうことでございますが、これは米価ではございませんです。今回、米価はこれを据え置くことといたしましたが、これは実に十二年ぶりのできごとである。そういうことでもございますので、激変緩和と、こういうような趣旨において支出をするものであります。
 支出の対象は、これは市町村長でございます。市町村長は、過去三カ年におきまして政府に米穀を売り渡しました個々の農家に対し、または、同じ個々の農家、またはそれらの農家の共同の施設等に使用するために、これをさらに配分するということに相なるのであります。米価でございませんものですから、これは食管会計からは支出をいたしません。一般会計から支出をする。
 一般会計の財源はどうするかというお尋ねでございまするけれども、これはどうしようか、非常に私いま苦慮しておるところでございまするけれども、まあ、何とかしてこの財源はととのえなければならぬ、かように考えておるのであります。
 第二に、小麦の売り払い価格を据え置いておるのは不当ではあるまいか、こういうような御意見
 でございました。私も、実は、昭和四十四年度の予算編成の当初は、小麦の価格の引き上げを考えてみたのです。しかし、四十四年度、この年の経済政策の最大の問題は何だと、こう言うと、物価の問題である。この物価の問題に対処いたしまして、米価はこれを据え置かなければならぬ。また、麦価も据え置かなければならぬ。塩の価格も据え置かなければならぬ。さようなことから、麦価につきましては、これを本年度は据え置くということにいたしたのでございまするが、いずれにいたしましても、麦の価格が、私は、これは売り渡し価格は低いと思います。物価の推移を見まして、これが引き上げは、いずれは考えなければならぬというふうに考えておるのであります。
 私は、決してカナダの農民を愛しておるわけじゃございません。日本の農民を愛しておるのであるということを、とくと御了承願います。(拍手)
    〔国務大臣長谷川四郎君登壇〕
#22
○国務大臣(長谷川四郎君) 総理からこまかに御答弁がございましたので、消費の減退、外国からの食糧輸入、こういうような点につきまして申し上げますが、最近における米の消費の減退は、基本的には、食生活の高度化に伴いまして、でん粉質の食糧の消費が非常に減少しておる、こういうものもその中に大きなウエートを持っておることを、ひとつ御了承賜わりたいと存じます。
 さらにまた、外国からいろいろな品目にわたってかなりの食糧輸入をしておるということでございます。それも事実でございます。まずお知らせ申し上げますが、これは消費者の需要が基本的に変わってきておる、こういう点もひとつ考慮に入れてもらわなければならないと思うのでございます。したがって、昭和四十四年度はまだわかりませんけれども、昭和四十三年度における金額は、農産物合計でございますが、二十四億一千万ドルでございます。また四十四年度というお話でございますが、これはまだ数字に出ておりません。
 それから、新都市計画法による市街化区域を定めるにあたっては、農業との調整に特に留意をいたしまして、集団的農地や土地基盤整備事業を実施中の区域など、将来にわたって確保すべき農地は市街化区域に含めない、こういうような方針でありますので、地域の特性を生かした都市近郊農業の振興をこれによってはかってまいりたい、このように考えておるのでございます。
 農畜産物の残存輸入制限でございますが、農畜産物の残存輸入制限問題につきましては、昨年末の閣議決定の趣旨に即しまして、その具体的な取り扱いを検討中ではありますけれども、ただいま総合農政の展開という重要な時期にございますので、わが国農林水産業に不測の悪影響を及ぼさないよう、十分これらに配慮して、慎重に判断をしてまいりたいと考えております。
 次に、農業に関する中期、長期の展望の問題でございますけれども、現下の農業及び農業をめぐる諸情勢に対処して、政府といたしましては総合農政を展開することにしておりますが、今後の農政推進上留意すべき基本事項については、先ほどお話がございましたが、目下農政審議会において調査審議を願っておりますし、農業に関する中期、長期の展望とこれに伴う必要な措置につきましては、農政審議会はじめ各方面の御意見を十分にお聞かせ願って、農政推進閣僚協議会の場において、政府部内での協議を十分行なうこととしておりますので、農政の具体的方向を明らかにして、政府一体となって農政の強力な展開につとめたいと考えております。
 また、消費の拡大をというお話でございますが、消費の拡大をはかるためにいろいろな施策を講じております。この間からずっと、学校給食のような点につきましても、文部省との打ち合わせをずいぶんかなり長期にわたって行なっておるような次第でございます。しかし、何といっても、粉食粉食と奨励した今日、なかなか急速にこれが転換されることは非常に困難のあることも御了承
 賜わりたいと思うのでございます。
 輸出の増大をはかったらどうかというお話でございますが、先ほどもお話がございましたように、輸出を増大するにいたしましても、わが国の米穀が他の輸出先、たとえば東南アジア方面へ輸出する場合に、異質であるという点もひとつ御了承を賜わりたいと思います。過日もインドに参りまして、いろいろお話申し上げましたけれども、日本の米の性質というものがなかなか合わないというような事態も生じ、また、熱帯地方へ送る場合でございますものですから、船輸送中変味するおそれも十分にある、これらを十分考慮に入れた上でなければ、これらを拡大していくわけにはなかなかまいらないと思うのであります。
 最後に、自主流通米制度についてでございますけれども、自主流通米制度というものをやる、こういうことによって、すなわち味のよい米をつくってもらいたい、こういうような考え方、また、現在の日本の制度からいって、生産の規制を行なうことも非常に困難でありますし、また品種をこれでなければならないと規定することも困難であることは、御承知のとおりでございます。そういうようなことでございますので、自主流通米制度というものを四十四年度からやるのだという、これによって全県が味のよい米をつくる競争に変わってきたという現実は、見のがすことのできない事実だと思うのであります。こういうような点において、ただつくればいいのだ、米であればいいのだという、これから逸脱した、ほんとうに消費者というものを考えた上の、消費者あって初めて生産というものが行なわれるという、その実態に触れた再生産が行なわれるようになると思うのでございまして、自主流通米制度は決して私は悪い制度ではなかったと、このように考えておるものであります。(拍手)
    〔国務大臣坂田道太君登壇〕
#23
○国務大臣(坂田道太君) お答えをいたします。
 文部省は何ら協力をしておらぬのじゃないかというお話でございますが、学校給食は、やはり米の需給関係のみで論ずべきものではないと考えます。学校給食は、発育期にある児童生徒の健康と体位の向上をはかるため、栄養を旨として、従来、パン、ミルク、おかずの食形態をその基本としてまいりました。しかし、農山漁村等でパンの入手困難な地域や、その他特別の事情にある地域におきましては、米を使用して差しつかえない旨の指導をしてまいりました。なお、なま牛乳も取り入れ、乳価の安定、酪農の振興に協力をしてまいりましたことも思い出していただきたいと思います。
 学校給食に米飯を全面的に取り入れることにつきましては、実施運営上種々問題もあり、従来の学校給食の基本的な体制とも関連するので、慎重を期したいと考えておりますが、なお御指摘の点については、今後保健体育審議会はじめ各方面の意見を徴し、十分検討さしていただきたいと存じます。(拍手)
    ―――――――――――――
#24
○議長(石井光次郎君) 斎藤実君。
    〔議長退席、副議長着席〕
    〔斎藤実君登壇〕
#25
○斎藤実君 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま農林大臣より御報告のありました昭和四十四年産生産者米価の問題につきまして、総理並びに関係大臣に対し、若干の質問をいたします。
 政府は、経済原則論をたてに、農家の要求米価を完全に無視して、四十四年産米の生産者米価を据え置きに決定いたしましたが、最近の、全国平均一五%にも及ぶ国鉄運賃の値上げをはじめ、諸物価の値上がりや労働賃金の大幅上昇等相次ぐ中で、政府のとった生産者米価の据え置き措置は、食管法第三条の「政府ノ買入ノ価格ハ政令ノ定ムル所二依リ生産費及物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ米穀ノ再生産ヲ確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」の精神に明らかに反するものであります。また、物価値上がりによる実質収入の低下を考えるときに、生産者米価の据え置きは、米作農家に生活水準の切り下げを一方的にしいる不当なものであります。そうでないというならば、生産者米価を据え置いて、米作農家にいかなる方法で所得を補償されようと考えておられるのか、総理の明確なる答弁をお伺いいたします。
 また、このような情勢をもたらしたのは、農家が米をつくり過ぎた結果であると、過剰米の生じた責任を農家に転嫁しておりますが、かつて政府は、三十六年に農業基本法が制定された当時、米の需給事情がよくなってきたので、米はつくらなくてもよいと、農家に他の作物への転換を奨励したのであります。ところが、それから三年後の三十九年ごろになると、また米が不足ぎみになってまいりました。すると、政府はあわてて、米を増産せよと、米作農家をあおってきたのであります。そこで農家は増産計画を立てて、米づくりに涙ぐましい努力を重ねてきたのであります。その結果、四十二年には史上最高の豊作という大成果をおさめ、今日過剰米が出るほどになったのであります。ところが、米の増産を奨励した政府は、いまになって米がだぶついて困ると、あくまでも農家に過剰米の責任をなすりつけているのであります。今日このような事態になった原因は、政府の需給見通しの根本的な誤りであり、長期構想を持たずに、その場しのぎの思いつき農政に最大の原因があるといわざるを得ません。
 かつてアメリカでは、主食である小麦が一年分もストックされていたという例もありますように、諸外国では、食糧自給の原則に立ち、多量のストックを確保しているのであります。また、このような点から見ましても、わが国においても完全な貯蔵倉庫を設けて、半年分ぐらいのストックは当然必要でありましょう。わが党が、これまで再三にわたって主張し続けてきた完全な貯蔵倉庫や、また水中貯蔵についても、政府はいまになってやっと琵琶湖で水中貯蔵の実験を開始したようであります。完全なる貯蔵を行なえば、古米、古古米でも変質の心配はほとんどないのであります。また、このような過剰米問題は、当然予測されていたところであります。政府の対策が後手後手になっている責任は、まことに重大であるといわざるを得ません。
 また、無責任な政府は、過剰米対策として、昨年から総合農政なるものを掲げてまいりました。先ほど総理は、総合農政があるかのような答弁をされました。しかし、その実態たるや何もないではありませんか。ただ作付転換を米作農家に押しつけているだけのものであり、しかも、その内容たるや全くお粗末なものであり、夢の幻想といわざるを得ません。すなわち、作付転換奨励金は、十アール当たりわずか二万円で、しかも、三カ年しか保証されないのであります。農家としては、十アール当たり約七、八万円の米作収入を捨ててまで作付転換をしないのは当然ではありませんか。
 いままでの政府奨励の作付転換政策は、東北において行なわれたビート栽培の失敗に見られるように、常に農家を裏切ってきたのであります。もし政府が転換政策を奨励するのであれば、具体的に何に転換させるのか、またその過程について、はっきりと具体策を明示すべきではありませんか。(拍手)そうして、農家の収入を向上させ、生活水準を上げることができる道を明らかにし、これを保証していくのが政府の責任でありましょう。また、これまで国民の食糧確保に貢献してきた農家に報いる道であると思うのであります。政府は、このような憂うべき農家の現状に対し、いかなる具体策をもって臨もうとしておられるのか、明確に答弁をしていただきたいのであります。
 次に、政府と自民党で取りきめた稲作特別対策事業費についてであります。
 政府は、わずか二百二十五億円の稲作特別対策事業費を市町村に配分し、米生産者に交付することを、米価据え置きの交換条件といたしましたが、これは米作農家を欺瞞する以外の何ものでもありません。政府は、この事業費を生産者の肥料、農薬その他資材の購入等に必要な財源として交付する、このように主張しております。しかしながら、かつて四十一年に、政府が各市町村などに交付した稲作改善対策費五十億円は、何ら稲作の改善には活用されずに、その使途についてもいろいろな問題を起こしておりました。会計検査院からきびしい指摘を受けた事例がありましたが、このような事例、あるいはこのたびこの補助金をきめた経緯等を考えれば、政府の主張するこの補助金が直接米作農家に渡されるものであるかどうか、きわめて疑わざるを得ません。政府の明確なる答弁をお伺いをしたい。
 また、政府は、なぜこのような補助金を交付するという形をとったのか。当然四十四年産生産者米価にこの金を値上げ分として加算されるべきではなかったのか、政府の答弁をお伺いいたします。
 また、政府は、この補助金二百二十五億円の財源措置を一般会計から支出して補うように考えておるようでありますが、公務員給与のベースアップや台風等による災害対策費の大幅な支出の予測される中で、一体予備費九百億円の範囲内でまかなえるのかどうか、政府の見解をお伺いいたします。
 また、さらに、自主流通米についてでありますが、政府は、今年産米より自主流通米制度を新しく発足させて、政府負担を国民に肩がわりさせようとしているのであります。私がこの制度について心配していることは、この自主流通米制度をもって食管制度を骨抜きにしていくのではないかということであります。また、消費者の立場から見ますと、消費者米価は、一部特定業者によって決定され、流通過程は複雑さを増し、いままで政府が負担をしていた生産者米価と消費者米価の差額のみならず、中間経費等が加算され、配給米よりもはるかに高額の値で売られることは明らかであります。このように、自主流通米制度は、米作農家の疲弊と消費者米価の高騰を招くものでありまして、国民生活に何ら利益するところがないと思うのでありますが、政府の見解をお尋ねいたします。
 次に、生産者及び消費者の両米価の決定方法についてであります。
 国民生活に重要な影響をもたらす米価の決定は、財政法第三条の特例法を廃止して、財政法第三条により国会で審議を尽くし、議決をすべきであると思うのでありますが、政府の見解をお伺いします。
 次に、食管制度に対する政府の態度でありますが、政府は、食管制度の根幹は維持するとたびたび言明をしてまいりましたが、食管制度の根幹とは一体何をさすのか、どの部分をさすのか、きわめて不明瞭であります。さきに述べましたように、自主流通米制度の実施や、また、このたびの生産者米価据え置きに対する政府の姿勢を見ますれば、食管制度を改廃しようとする意図は明らかであります。この際、食管制度は改廃の方向に持っていくのか、それとも堅持していくのか、政府の食管制度に対する態度を明確にお答えをしていただきたいと思うのであります。
 最後に、消費者米価についてであります。
 総理は、しばしば消費者米価は据え置きにすると言明をしてまいりましたが、国民生活に重要な影響を及ぼす消費者米価は、断じて値上げをしないと確約できるかどうか、再度総理の決意のほどをお伺いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#26
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 斎藤君にお答えいたします。
 生産者米価を据え置くこととした政府の考え方につきましては、先刻来、石田、小澤両君にお答えしたとおりであります。従来のような、米価は少しでも高いほうがよいという考え方、そういう考え方では、日本農業に行き詰まりが来ることは明らかであります。大局的に見まして、むしろ、そのような道を歩むときには、農業の発展が望めないことを考慮したからであります。決して農家の諸君に犠牲をしいているものではありません。そのことをよく御理解いただきたいと思います。今後は強力な総合農政の展開のもと、農業生産の均衡ある発展をはかることによりまして、農家所得の向上を積極的にはかってまいる考えであります。
 過剰米の在庫あるいはその水底保管だとか、あるいは完全保管をしたら過剰米が何か消化できるようなお話でありますが、とにかく、そういう保管をしただけでは問題が解決するわけじゃありません。したがいまして、私どもは、この保管中に米が腐るとか、品質が悪くなるとか、そういうことは、これはやはり政府が食管法を守るその立場からも十分注意しなければなりませんが、ただその保管だけの問題で過剰米が解決しないということ、これをよく御了承いただきたいと思います。
 また、生産者米価の据え置きが食管法に反するものではないかということでございますが、これまた先ほど来石田君や小澤君にお答えしたとおりであります。
 また食管法の定める「生産費及物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ米穀ノ再生産ヲ確保スルコトヲ旨トシテ」というこの点については、今回の米価の決定におきましても、十分適正に行なったつもりであります。したがって、食管法の精神に反して、今回の生産者米価がきめられたということは当たらないように思います。
 また、自主流通米等につきましていろいろの御意見も出ましたが、これらについては、後ほど農林大臣からお答えすることとします。
 また、米価を国会の審議の対象としろという御意見でありますが、これまた先ほど小澤君にお答えいたしましたように、ただいま米価決定の方式が法律で定められておりますので、これをやはり忠実に守ることが最も適切な処置だと、政府はかように考えております。
 また、この食管会計の根幹を維持するというが、それは一体何かというお尋ねがありました。この点についても、これは農林大臣からお答えすることにいたします。
 最後に、消費者米価の据え置きでありますが、物価対策の支柱としてその方針を堅持してまいります。このことははっきりこの機会にお約束しておきます。ありがとうございました。(拍手)
    〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#27
○国務大臣(福田赳夫君) お答え申し上げます。
 また重ねて二百二十五億円の補助金の問題についてのお尋ねでございますが、今回米価を据え置きといたしたわけでございまするが、これは、まあ十分な理由があるにいたしましても、久しぶりのことでありますので、激変緩和というような趣旨において、特に支出をいたすことにいたしたわけであります。
 その使途につきまして、四十一年度のような不手ぎわがないようにという御注意でございまするが、この御注意はありがたくちょうだいをいたしたいと存じます。十分気をつけて、その目的が達成されるようにいたしたい、かように存じます。
 それが財源につきましては一体どうするんだ、予備費でまかなえるかというお話でございますけれども、一般会計から支出することになりました。一般会計の状況ははなはだ窮屈でございまして、今後何とかその財源を調達しなければなりませんが、ただいまの私の考えといたしましては、総合予算主義を堅持する方針のもとにおいて、何とか財源の調達をいたしたい、かように御了承を願いたいのであります。
 次に、両米価は財政法第三条に基づいて国会で議決すべきではないか、そうするほうがいいのじゃないかという御提案のような御質問でございますが、財政法第三条は、米価のようなものを対象としておるのではないのであります。これは租税その他専売価格等につきまして、法定主義、俗に租税法定主義をきめたというふうにいわれておりますが、米価はこれとは別の問題であります。食管法においてそのきめ方がきちんとされておる。これに従いまして適正に価格がきめ得るものであるというふうに存じますので、これを改正するという御所見には賛成いたしかねる。御承知願います。(拍手)
    〔国務大臣長谷川四郎君登壇〕
#28
○国務大臣(長谷川四郎君) お答え申し上げます。
 自主流通米は政府米よりも高くなる、これはやはり検査料、倉庫料、運賃、こういうような諸掛かりがいたしますから、当然その分は高くなるだろうと考えられます。
 稲作特別対策事業費の件につきましては、ただいま大蔵大臣から御答弁申し上げましたから、省略をいたします。
 過剰米の生じた責任についても総理からお話がございましたが、米の需給が過剰基調に転じたことは、先ほども申し上げましたとおり、国民の食糧というものが非常に高級化してきた、そして食糧構造が大きく変わってきた、こういう点にも大きな相違が出てきておるということも考え、また、私は、政府に責任がないとは申し上げません。これらは、われわれも十分今後考えに入れて、今後の政策を行なってまいる考え方でございます。
 作付転換の現況はどうなっているかということでございますが、作付転換対策につきましては、本年度において一万ヘクタールを対象として実施をいたしましたけれども、結局、結論として五千ヘクタールしか御協力願うことができませんでした。そういたしますと、本年度の作付面積はちょうど二千ヘクタール昨年に比しまして増でございます。こういうことも御了承賜わりたいと思うのであります。
 それから、食管制度の根幹とは、米についていえば、国民の基本的な食糧であり、米の必要量を確保して、国民経済の安定をはかるために、政応が責任をもって米の需給及び価格を調整し、米の配給について必要な規制を行なうことでございすす。自主流通米制度は食管制度を骨抜きにするというようなお話でございますが、米穀の一部自主流通の考え方は、米の全く自由な流通を認めようとするものではなくて、米穀の需給事情に即応して、食糧管理制度の根幹を維持しながら、食糧管理のために必要な規制のもとに、政府を通さない米の流通を認めようとするものでございます。
 消費者米価につきましては、本年度は据え置くということを、六月十日の臨時閣議の際にも、政府としては確認をいたしておることを申し添えまして、私の答弁といたします。(拍手)
#29
○副議長(小平久雄君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説(観光基本法に基づく昭和四
  十三年度年次報告及び昭和四十四年度観光
  政策について)
#30
○副議長(小平久雄君) 床次国務大臣から、観光基本法に基づく昭和四十三年度年次報告及び昭和四十四年度観光政策について発言を求められております。これを許します。国務大臣床次徳二君。
    〔国務大臣床次徳二君登壇〕
#31
○国務大臣(床次徳二君) 昭和四十三年度観光の状況に関する年次報告及び昭和四十四年度において講じようとする観光政策について御説明いたします。
 この報告及び政策は、観光基本法第五条の規定に基づき、政府が毎年国会に提出することになっており、今回は六回目のものであります。
 初めに、観光の状況に関する年次報告について御説明いたします。
 まず、国民観光につきましては、所得水準の向上と、余暇の増大にささえられまして、観光旅行は、年々盛んになっております。昭和四十二年の全国の観光地を訪れた観光客の数は、昭和三十六年の一・八倍に当たる九億二千五百万人であり、また、一泊以上の観光旅行量は、昭和三十六年の一・六倍に当たる六千万人回に達するものと推計されております。
 また、このような量的増大と同時に、観光旅行の形態も、自主的、多様的になるとともに、能動的行動を伴うものへと次第に質的変化を見せております。すなわち、家族旅行や個人、グループ旅行の増大、都市化の進展に伴い、自然を求める旅行の増大、自家用乗用車や航空機利用による旅行の増加などが顕著であります。
 以上のように、国民の観光需要は増大し、また質的にも変化する傾向が見られますが、それと同時に、観光の発展をはかるために解決しなければならない種々の問題が表面化しております。すなわち、最近の観光需要の激増と、地域的偏在にどう対処するか、観光開発、産業開発などの各種開発と、自然や文化財などの保護をどう調整するか、今後、ますます狭隘化する国土空間の中で、観光やレクリエーションのための空間をいかに確保するか、最近のホテル、旅館の火災や交通事故などから観光旅行者をいかに保護するか、などの問題が生じております。
 次に、国際観光につきましては、昭和四十三年の来訪外客数は、米国の海外旅行制限の動き、欧州の通貨不安等の影響から、対前年九%増の五十一万九千人にとどまりました。他方、わが国の海外旅行者数は著しく増加し、昭和四十三年には、対前年二七%増の五十四万一千七百人となり、初めて、日本人の海外旅行者数が来訪外客数を上回りました。
 しかし、国際旅行収支の赤字幅は、年々拡大し続けておりましたが、昭和四十三年は、前年より一千百八十万ドル減少して、四千四百六十万ドルの赤字になると見込まれております。
 このように、国際旅行収支の赤字が減少したとはいえ、わが国海外旅行者は今後とも増加傾向を続けるものと予想されるので、外客誘致の促進や、受け入れ体制の整備になお一そう努力し、受け取り額の増加をはかることが必要であります。
 特に、目前に控えた、日本万国博覧会の開催、大型航空機の就航などにより、大量の外客が来訪すると予想されますので、これに対する受け入れ体制の整備には、万全を期する必要があります。
 次に、昭和四十四年度において講じようとする観光政策について御説明いたします。
 この政策は、ただいま説明いたしました観光の状況等を考慮し、観光政策審議会の意見を聞いて作成したものであります。
 まず、国際観光につきましては、外客誘致を促進するため、国際観光振興会の活動を質量ともに拡充させ、また国際会議、行事の誘致活動を一そう強化するとともに、在外公館や日本貿易振興会を通じてわが国の紹介活動を一そう活発に行なうこととなっております。また、外客の受け入れ体制としましては、日本万国博覧会の開催、大型航空機の就航等により、大量の外客が来訪することが予想されますので、これに備え、京浜及び京阪神地区の宿泊施設に重点を置いて整備するほか、出入国手続の簡素化、迅速化をはかるとともに、通訳案内及び旅行あっせん体制を一そう充実させることとしております。
 次に、国民観光につきましては、観光需要の増大と質的変化に対処するため、特定地域への観光客の集中を緩和し、また、家族旅行などの健全な旅行を容易にするため、低廉で快適な宿泊施設を整備するほか、高密度人口地域の周辺に、自然公園を結ぶ長距離自然歩道を設けることを検討しております。
 また、観光資源の保護等につきましては、海中公園の指定、公園計画の再検討、公園区域の再編成、文化財の保護体制の強化、歴史的風土を保存するための土地の買い入れ、観光資源保護思想の普及の強化等をはかることとしております。
 なお、観光旅行の増大に伴い、観光旅行の安全の確保は重要な問題であり、従来からその防止に努力しておりますが、ホテル、旅館の火災事故や交通事故による被害があとを断たない現状であります。このため、ホテル、旅館の防火施設の点検の強化並びに不備な消防施設に対する優先的融資などにより、火災防止を強化するとともに、交通関係諸施設の整備、交通安全運動の実施などにより、これらの事故から観光旅行者を保護することといたしております。
 以上をもって、昭和四十三年度観光の状況に関する年次報告及び昭和四十四年度において講じようとする観光政策についての説明を終わります。(拍手)
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説(観光基本法に基づく昭和四
  十三年度年次報告及び昭和四十四年度観光
  政策について)に対する質疑
#32
○副議長(小平久雄君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。これを許します。渡辺芳男君。
    〔渡辺芳男君登壇〕
#33
○渡辺芳男君 私は、日本社会党を代表して、ただいま説明のありました昭和四十三年度観光の状況に関する年次報告及び昭和四十四年度における観光政策について、佐藤総理及び関係各大臣に対して質問をいたします。
 観光白書は、今回で六回目を数えますが、その内容は、従前と同様に総花的であり、しかも事務的な報告に終始をいたしております。このことは、すでに指摘されておりまするように、観光行政が十七省庁三十五部局の多岐にわたっていることから来る必然的な結果で、まことに残念であるといわなければなりません。特に、昨年来観光行政の一元化について行政管理庁を中心に検討され、いまだに各省庁との調整が整わないようでありますが、この際、観光行政機能の一元化は、すみやかに確立しなければならぬと思うのであります。このことは、特にここ数年来激増している国民観光とレクリエーションに対する対策が後手を踏み、積極的な対応策に欠けていることを痛感するからであります。総理の明確な方針を承りたいと存じます。
 次に、国民観光と総合開発計画との関連について伺います。
 昭和三十七年に全国総合開発計画が策定されすしたが、そのねらいは、申すまでもなく、工業中心の考え方でありました。つまり工場を誘致して、工業化を進めて、地域間の格差をなくすことにありましたが、その意図とは逆に、今日では、後進地域は人口の過疎で悩んでおります。反面、大都市や太平洋ベルト地帯には人口が集中して過密都市を生み、また、東海道メガロポリスが形成されつつあります。そして、過密都市や工業地帯に住む人々は、大気汚染、騒音、水質汚濁、緑の喪失などで生活環境が悪化しているため、いこいの場を求めて、自然の山河や青い海あるいは温泉地への旅行が殺到しているのが現状であります。
 このような大きな矛盾を生んだ開発計画の改定は、特に工業優先主義の是正、自然保護の徹底、過密、過疎対策と地域格差の是正、大都市の環境条件の整備などを最も重視し、人間疎外の現状を改めるべきであります。すでに発表された新全国総合開発計画も、従来の方針を踏襲していると考えますが、これではますます人間社会の矛盾の拡大を招くばかりで、きわめて重大な問題であると思うのであります。人間尊重を公約する佐藤総理は、どのような考えで対処するか、その所信を承りたいと存じます。(拍手)
 次に、観光政策と自然保護について伺います。
 現在、国立公園の指定が全国で三十三カ所、国定公園の指定が三十八カ所ありますが、これらの維持管理費は、本年度の予算を見てもきわめてわずかであります。これでは、政府は申しわけ的に管理費を出すだけで、自然の保護対策は皆無にひとしいといわなければなりません。しかも、従来、ともすれば観光開発がばらばらに行なわれたり、あるいは観光開発に名をかりて、自然の破壊が行なわれていることは遺憾なことであります。また、モータリゼーションの急速な進展に伴って、観光客が急増していることと相まって、いまや自然の保護対策は緊急を要する課題となっています。
 私は、今後政府は、自然保護のため、自然公園法による景観保護だけでなく、必要があれば民有地を買収するなどの積極的な自然保護対策を行なうべきだと思うのであります。また、大規模な観光開発については、自然保護をはじめ、道路、用排水など、その責任分担の基準を示すべきであると思います。特に、大都市近郊の観光開発は、その資源保護の立場に立って、今後はつとめてこれを抑制し、私は、むしろ過疎地帯の観光開発に重点を置くようにしなければならぬと思うのであります。
 私は、この際、次の具体的な問題について伺っておきます。
 富士箱根伊豆国立公園地区は、急速に道路の整備が進められるとともに、観光開発が行なわれております。最近、モータリゼーションの激しい進展と相まって、箱根の名所である杉並み木や、旧東海道でも数少なくなった箱根峠の松並み木などは、排気ガスの影響で枯れ始めています。また、日光東照宮の通称太郎杉ほか十数本の伐採をめぐる係争中の問題など、これらはいずれも関係団体から保護の要望が出ておりますが、文化財か名勝の指定を行ない、積極的に保護すべきではないかと思うのであります。
 以上の諸点について、関係各大臣の見解を承りたいと存じます。
 次に、厚生省が本年初め、延長八百九十キロに及ぶ東海道自然歩道の構想を発表いたしましたが、これは、いわゆる東海道メガロポリスが形成されていくに従って、住民に手軽なレクリエーションと休養を与えるものとして、この構想は国民から大きな期待が寄せられています。私は、この計画を進めるにあたって、次のことを要望しておきます。
 この自然歩道は、老若男女を問わず手軽に利用できる散歩道とすること、宿泊施設は、国民宿舎とキャンプ場などを主として、いわゆる俗化を防ぐことに配慮する必要があると思うのであります。
 また、林野庁の自然休養林の指定も、国民の期待にこたえるように、すみやかに施設の整備を要望いたしておきます。
 特に、この際、佐藤総理に要望しておきますが、東海道自然歩道の整備はすみやかに着手すべきだと思うのでありますが、お考えを承りたいと存じます。
 次に、野鳥の保護対策について伺います。
 わが国の戦前における最高の狩猟人口は十万人を数えましたが、現在の狩猟人口は約四十万人に達しているといわれております。このように狩猟人口が激増した上に、工業化が進んだ地域では、森林や草原、干潟の開発で、最近はますます野鳥が減り、都市近郊の自然公園や観光地にも野鳥がきわめて少なくなってきております。しかも、野鳥保護の現状は万全ではありません。野鳥保護区の立て札があっても、何の施設もなく、監視人も少なく、また、かすみ網などが相変わらず使われて、乱獲されておるのであります。農林大臣は野鳥の保護対策を強化するために、林野庁の一部が行政を担当するだけでなく、担当行政部門を拡大する必要があると思うのであります。また、禁猟区を拡大して、これらの対策について積極的に行なわなければならぬと思うのでありますが、この対策についてお伺いをいたします。
 次に、最近の遊漁ブームについての対策をお尋ねいたします。
 最近の遊漁人口は年間延べ千七百万人といわれておりますが、今日、全国各所で沿岸漁民との間に問題が起きております。魚の宝庫といわれておる伊豆半島一帯でもこの問題が取り上げられておりますが、この際、政府は、沿岸漁場保護と遊漁者との調整について、すみやかに対策を立てる必要があると思うのでありますが、その対策があれば明らかにしていただきたいのであります。
 次に、ホテル及び旅館等における火災事故の防止対策について伺います。
 統計によりますと、昭和四十二年度中に発生したホテル及び旅館の火災事故は、実に四百四十九件を数えております。特に、昨年二月には湯河原温泉大伊豆ホテルの火災事故で死者二人、負傷者四十六人を出し、十一月には有馬温泉の池之坊満月城の火災で死者三十人、負傷者四十四人を出し、さらに本年二月には、磐光ホテルの火災で死者三十一人、負傷者二十七人にのぼる犠牲者を出しております。去る四月、行政管理庁が観光地のホテル及び旅館等の行政監察を行なった結果、その問題点を指摘し、関係各省に対して勧告を行なっておりますが、たとえば国際観光都市熱海温泉で、ホテル及び旅館二百五十二軒について調査した結果、自動火災報知機を設置してあるホテル及び旅館は百十七軒で、百三十五軒が設置していないと報告されています。しかも、市の消防施設は、消防車が六台で、十五メートル用のはしご車が一台しかないといわれています。近代化された観光都市熱海にしてこのような現状でありますから、他の観光地の消防施設はきわめて貧弱であると思います。先般の片山津温泉における昼火災は、その実態を暴露いたしました。政府は、続発する観光地の火災事故にかんがみ、まず消防施設のすみやかな充実に特段の努力をしなければなりません。また、ホテルや旅館の消防設備の完備のために必要な金融措置をはじめ、改善命令などの指導を一そう強化し、あわせて防火訓練などに意を用いるべきだと思うのであります。この対策について伺います。
 次に、国民宿舎はだれもが気軽に利用できる低廉な施設として、今後もますます需要は増大するものと思います。現在、公営の国民宿舎は二百四十六カ所、民営の国民宿舎は百三十カ所ありますが、需要に応じ切れないようでありますから、さらに未設置地区をはじめ大都市近郊には増設をはかるように強く要望いたしておきます。
 また、四十二年度から新たに設置することになった日帰り休養施設である国民保養センターについても、地方公共団体に対してその設置を慫慂し、地域住民へのサービスに特段の意を用うべきであると思うのでありますが、以上について、この対策を伺います。
 次に、国際観光についてお尋ねいたします。
 日本万国博覧会は来春三月から開催されますが、全体計画で六千三百七十八億円の巨額の費用を投じて開催するのでありますから、平和と友好の実をあげるために、思想信条を越えて、最大多数の参加国を求めるように努力すべきであります。特に、一九六四年の東京オリンピックにおける経験と反省に基づき、この万国博覧会を契機に、外客の誘致の発展のために海外観光宣伝に当たる政府、在外公館、国際観光振興会、日本貿易振興会、国鉄、日航等は有機的な連携を保って、宣伝資料の効果的な作成と宣伝活動につとめなければならないと思うのであります。特に大量の外客誘致に対応するために、国際観光ホテルの整備充実及びユースホステルの増設を行ない、その利用につとめるとともに、ホテルの宿泊費が高いなどの非難のないように、業界の指導に当たるべきだと思うのであります。また、航空機の急速な発展はますます国際観光を容易にしておりますが、反面、海外旅行をゆっくり楽しもうとする多くの要望があることにかんがみ、新たに国際観光旅客船の建造を考慮すべき段階にあると思うのであります。
 以上について政府の所見を承りたいと存じます。
 次に、旅行あっせん業者の問題について伺います。
 邦人旅行あっせん業者は、昭和四十三年四月一日現在で、陸運局長登録が九十九業者、海運局長登録が十六業者、都道府県知事登録が三千九十六業者で、合計して三千二百十一業者にのぼっています。しかも、業者数は年々増加の一途をたどっておりまして、これらは個人経営が全体の半数を占め、また、大半が零細業者であります。さらに、そのほかに、無登録旅行あっせんが行なわれているので、業界は非常な過当競争になっております。私は、今日、旅行あっせん業について抜本的な対策を立てるべき時期に来ていると思うのであります。
 また、昨年の飛騨川バス事故に見られるように、旅行あっせん業者が、悪天候に対しての配慮に欠けていたことにかんがみ、旅行あっせん業者の旅行安全に対する責任を法的にも明確にする必要があると思うのでありますが、これらについての対策を承りたいと存じます。
 以上、十五項目について質問いたしましたが、最後に、もう一度申し上げます。
 非能率な観光行政を改めて能率的な運営にすることが、国民への最大のサービスであると思うのであります。佐藤総理をはじめ、関係各大臣の誠意ある答弁を要望しまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#34
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 観光行政は非常に広範、しかも多岐にわたっているだけに、一元化しにくい分野であります。したがいまして、若干の混乱がときに起こるのであります。この点は、私ども政府といたしましても、まことに残念に思っております。御指摘のような点を否定するわけにはまいりません。このため、先般来、内閣に関係閣僚協議会を設置しまして、各省庁間の緊密な連絡調整をはかって、一そう総合的かつ強力な観光行政の推進につとめてまいる所存であります。ただいま御指摘のとおりであります。
 次に、従来の政策が人間性を忘れた工業中心のものであったとの御指摘でありましたが、決してさようなことはありません。人間尊重の政治は、私の基本的政治原理でもあり、新全国総合開発計画におきましても、当然これを受けて、計画の基本的目標の第一に、長期にわたって人間と自然の調和をはかり、将来一そう深刻化すると考えられます国民の自然への渇望に応ずるため、自然を恒久的に保護、保存することを考え、さらに観光、レクリエーション基盤の開発整備のための具体的構想を明らかにしようとしております。新計画は十分に御期待に沿い得るものと私は考えております。
 次に、開発と保存との問題でありますが、自然保護法の制定の御提案もございました。私は、自然保護の重要性につきましては全く同感であります。今後とも、その方向で努力してまいります。御提案につきましても、現行法との関係で、なお制度が必要かどうか十分検討したい、かように考えております。
 ことに、御指摘になりましたように、野鳥の保護あるいは渡り鳥の保護など、どうも文化国家としてこれらの点に欠くる点があるのではないか。ただいまいそ釣り等につきましてもお話がありましたが、こういうような点についても、こまかな注意が必要であり、御指摘のことにつきまして、実は私自身も、いいことをお尋ねくだすった、かように、感激まではちょっとことばがオーバーでありますが、たいへん私も同感で、こういうことを整備すること、これが必要ではないかと思っておるのであります。
 次に、観光開発のあり方について、ただいまも申したとおりでありますが、この開発と保護、この二者を適切に調和させなければならない点にむずかしさがあるものと考えております。そういう意味で、観光開発指針ないしは観光開発基準の策定が必要であり、目下観光政策審議会におきまして御検討願っているところであります。その状況については、所管大臣からお答えをいたします。
 最後に、東海道自然歩道計画でありますが、珍しく、これも率直におほめをいただいて感謝いたしております。この計画は、人間尊重と自然愛護の発露であり、関係地方公共団体の御協力を得て、ぜひ早急に実現したいもの、かように考えております。
 私の所信を申し上げて、お答えといたします。(拍手)
    〔国務大臣床次徳二君登壇〕
#35
○国務大臣(床次徳二君) ただいま総理からもお答えがありましたが、各地方におきまして、公共団体あるいは観光企業等がばらばらの事業等を行なっておりますものに対しましては、これを調整する必要があるのではないか、かような意味におきまして、過般の観光政策審議会におきましても答申がありました。
 なお、この際、観光開発指針あるいは観光開発基準というものをつくるかどうかというお話でありました。今日具体的にその審議を続けておるのでありまして、政府におきましてもその必要性を認めますので、関係閣僚協議会の設置について検討するほか、なお、地方におきましても、国の施策に応じまして適切な施策を講ずるようにいたしたいと思いまして、その指導を行なう考えでございます。(拍手)
    〔国務大臣原田憲君登壇〕
#36
○国務大臣(原田憲君) 渡辺さんの私に対するお尋ねは四点ございました。順次お答えいたします。
 先般の消防法施行令の一部改正に伴いまして、自動火災報知設備等の設置が義務づけられることになりましたので、これら防火安全設備に対する融資については、中小企業金融公庫等からの融資を受けられるよう措置を講じております。
 また、わが国の主要な海外広報宣伝機関につきましては、国際観光振興会のほかに、在外公館、ジェトロ、日本航空、国鉄、日本放送協会、国際文化振興会、日本万国博覧会協会、日本交通公社がありますが、これら九者に関係各省が加わりまして、海外観光宣伝連絡会を設けまして、各機関の事業計画、宣伝方針等について連絡調整をはかっております。一方、海外におきましても、国際観光振興会の各宣伝事務所は、前記関係団体の出生機関と定期的な会合を持っておりますが、特にジェトロ、日本航空、在外公館とは常時連絡を保ちつつ、催しものへの共同参加、共同広告の実施、各種宣伝資料の交換、相互利用を行ない、適切かつ効果的な宣伝が行なわれるようつとめております。また、ホテル等、業界等への指導は、御意見のように万全を期することにいたします。
 それから、現在、日本−北太平洋海岸−南米東海岸航路には、旅客船として、移住船を兼ねたぶらじる丸、あるぜんちな丸の二隻が就航しております。このほか、見本市船であるところのさくら丸、これが見本市開催時期を除き本航路に就航いたしております。この三隻で、年間約四千人の観光旅客を輸送しておりますので、これらを通じて観光を振興いたしたいと考えております。
 最後に、旅行あっせん業者が安全のためにとるべき措置につきましては、万全を期するために再三通達をいたして、その徹底化につとめておるところでございますが、お説のとおり、旅行あっせん業者の法的責任については必ずしも明確ではございませんので、現在、関係各省庁と連絡の上、検討を行なっております。その結果に基づきまして、所要の措置を講ずる所存でございます。(拍手)
    〔国務大臣長谷川四郎君登壇〕
#37
○国務大臣(長谷川四郎君) 狩猟等野鳥の件につきましては、総理からお答えがございましたから省略をいたします。
 それから自然休養林に対しましては、今後とも自然休養林の拡充をはかって、国有林野の有する公益的機能の増進につとめたいと考えております。
 釣り人口の増加に伴いまして、近年は、特に海面における漁民以外の者による釣りが年々増加しており、在来の沿岸漁業との紛争も漸次増加してきておることは御案内のとおりでございますので、海面におけるいわゆる釣りなどの遊漁につきましては、現在、その実態等について調査中であります。漁民以外の者による釣りと沿岸漁業の調整のあり方については、今後十分検討をいたすことにいたします。(拍手)
    〔国務大臣野田武夫君登壇〕
#38
○国務大臣(野田武夫君) お答えします。
 最近の相次いで起こっておるホテル、旅館の火災、まことに遺憾でございますが、これは消防法の強化とか、あるいは建築基準法の励行その他、関係各省間におきましてその対策を練って、十分これらのことに対して当たりたいと思っております。
 なお、旅館、ホテルの消防用施設等についての金融のことでございましたが、先ほど運輸大臣からお話のありましたとおり、中小企業金融公庫と、ほかにまた環境衛生金融公庫からの優先的な低利融資を行なっておりますが、特に、旅館ホテル防火安全対策連絡協議会というものを関係各省でつくっておりますから、これらの協議会その他において十分検討いたしまして、遺憾なきを期したいと存じております。(拍手)
    〔国務大臣坂田道太君登壇〕
#39
○国務大臣(坂田道太君) お答えいたします。
 箱根の杉並み木は、箱根旧街道として史跡に指定されておりますが、補助金を交付して保存の措置を講じてまいりました。なお、箱根旧街道は、現指定地のほかにも函南町、三島市内等に杉並み木、松並み木、石畳の残っておる個所が数カ所あり、文化庁におきましては、これらにつき追加指定を行なうべく、調査を行なっております。
 日光杉並み木は、日光杉並み木街道として特別史跡及び特別天然記念物として指定されており、日光街道、今市街道等の杉並み木が含まれておりますが、いわゆる太郎杉を含む日光山内の杉木には及んでおりません。
 今後も、自然の保護につきましては、関係各省庁とも連絡を密にし、将来にわたって自然と人間生活の調和した、豊かな国土を失わないよう努力していきたいと考えております。(拍手)
    〔国務大臣斎藤昇君登壇〕
#40
○国務大臣(斎藤昇君) 自然保護地域を確保するために、国で買収をすることを考えたらどうかという御意見に対しましては、自然保護地域を買収するために、昨年から予算をもちましてその施策に入っておるところでございます。今後、さらにこれを拡大してまいりたい、かように思います。
 なお、自然保護のために、立法措置はどうかという御意見でございますが、今日の国定公園あるいは国立公園、これを保護いたしますために要する場所を、特別の保護地域あるいは特別地区等に指定をいたしてまいりたい、かように思いますが、同時に、立法につきましては、慎重に検討してまいりたいと考えます。
 東海自然歩道につきましては、この構想を発表いたしまして以来、関係の向きからたいへん称賛のおことばをいただいているのでございますが、その趣旨と目的、これを達成いたしますために、ただいまおっしゃいました俗化をしないような配慮を特にいたしまして、老人あるいは男女が、ここに喜んで行けるようなプランを考えてまいりたいと存じます。本年から調査をいたしまして、本年は数カ所、モデルコースをつくりたいと考えております。あと二カ年間で大体千七百キロ、これを完成いたしたいと思うわけでございます。
 国民宿舎や国民保養センターはきわめて有効に利用されておりまするので、さらにこの施設を積極的に増しますると同時に、その運営あるいは管理等につきましては十分配慮をいたしてまいりたい、かように考えます。(拍手)
#41
○副議長(小平久雄君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#42
○副議長(小平久雄君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後四時三十七分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        法 務 大 臣 西郷吉之助君
        大 蔵 大 臣 福田 赳夫君
        文 部 大 臣 坂田 道太君
        厚 生 大 臣 斎藤  昇君
        農 林 大 臣 長谷川四郎君
        運 輸 大 臣 原田  憲君
        自 治 大 臣 野田 武夫君
        国 務 大 臣 荒木萬壽夫君
        国 務 大 臣 菅野和太郎君
        国 務 大 臣 木内 四郎君
        国 務 大 臣 床次 徳二君
 出席政府委員
        食糧庁長官   桧垣徳太郎君
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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