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1968/12/18 第60回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第060回国会 決算委員会 第1号
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1968/12/18 第60回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第060回国会 決算委員会 第1号

#1
第060回国会 決算委員会 第1号
本国会召集日(昭和四十三年十二月十日)(火曜
日)(午前零時現在)における本委員は、次の通
りである。
   委員長 大石 武一君
   理事 鍛冶 良作君 理事 四宮 久吉君
   理事 白浜 仁吉君 理事 田川 誠一君
   理事 丹羽 久章君 理事 田中 武夫君
   理事 華山 親義君 理事 吉田 賢一君
      椎名悦三郎君    篠田 弘作君
      中曽根康弘君    長谷川 峻君
      早川  崇君    三木 武夫君
      水野  清君    勝澤 芳雄君
      芳賀  貢君    森本  靖君
      柳田 秀一君    鈴切 康雄君
      池田正之輔君
―――――――――――――――――――――
昭和四十三年十二月十八日(水曜日)
   午前十時三十八分開議
 出席委員
   委員長 大石 武一君
   理事 鍛冶 良作君 理事 四宮 久吉君
   理事 白浜 仁吉君 理事 丹羽 久章君
   理事 田中 武夫君 理事 華山 親義君
   理事 吉田 賢一君
      篠田 弘作君    早川  崇君
      水野  清君    赤路 友藏君
      森本  靖君    浅井 美幸君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 西郷吉之助君
 出席政府委員
        人事院事務総局
        任用局長    岡田 勝二君
        警察庁刑事局長 内海  倫君
        行政管理庁行政
        管理局長    河合 三良君
        法務政務次官  小澤 太郎君
        法務大臣官房長 辻 辰三郎君
        法務省民事局長 新谷 正夫君
        法務省刑事局長 川井 英良君
 委員外の出席者
        法務大臣官房会
        計課長     安原 美穂君
        法務省矯正局長 勝尾 鐐三君
        法務省保護局長 鹽野 宜慶君
        法務省人権擁護
        局長      上田 明信君
        法務省入国管理
        局次長     瀧川 幹雄君
        会計検査院事務
        総局第二局長  石川 達郎君
        専  門  員 池田 孝道君
    ―――――――――――――
十二月十二日
 委員鈴切康雄君辞任につき、その補欠として矢
 野絢也君が議長の指名で委員に選任された。
同月十八日
 委員柳田秀一君及び矢野絢也君辞任につき、そ
 の補欠として赤路友藏君及び浅井美幸君が議長
 の指名で委員に選任された。
同日
 委員赤路友藏君辞任につき、その補欠として柳
 田秀一君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
十二月十日
 昭和四十一年度一般会計歳入歳出決算
 昭和四十一年度特別会計歳入歳出決算
 昭和四十一年度国税収納金整理資金受払計算書
 昭和四十一年度政府関係機関決算書
 昭和四十一年度国有財産増減及び現在額総計算
 書
 昭和四十一年度国有財産無償貸付状況総計算書
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 国政調査承認要求に関する件
 昭和四十一年度一般会計歳入歳出決算
 昭和四十一年度特別会計歳入歳出決算
 昭和四十一年度国税収納金整理資金受払計算書
 昭和四十一年度政府関係機関決算書
 昭和四十一年度国有財産増減及び現在額総計算
 書
 昭和四十一年度国有財産無償貸付状況総計算書
 (法務省所管)
     ――――◇―――――
#2
○大石委員長 これより会議を開きます。
 この際、国政調査承認要求に関する件についておはかりをいたします。
 すなわち、決算の適正を期するため、本会期中において
 一、歳入歳出の実況に関する事項
 二、国有財産の増減及び現況に関する事項
 三、政府関係機関の経理に関する事項
 四、公団等国が資本金の二分の一以上を出資し
 ている法人の会計に関する事項
 五、国または公社が直接または間接に補助金、
 奨励金、助成金等を交付しまたは貸付金、損失
 補償等の財政援助を与えているものの会計に関
 する事項
以上の各項について、関係各方面よりの説明聴取、小委員会の設置及び資料の要求等の方法によりまして、国政調査を実施することとし、規則の定めるところにより、議長の承認を求めることにいたしたいと存じますが、これに御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○大石委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
     ――――◇―――――
#4
○大石委員長 昭和四十一年度決算外二件を一括して議題といたします。
 本日は、法務省所管について審査を行ないます。
 法務政務次官より概要の説明を求めます。小澤法務政務次官。
#5
○小澤(太)政府委員 昭和四十一年度法務省一般会計歳入歳出決算の大要を御説明申し上げます。
 法務省主管の歳入につきましては、予算額三百七億五千八百五十八万三千円に対しまして、収納済み額三百二十六億二千五百五十一万四千円でありまして、差し引き十八億六千六百九十三万一千円の増加となっております。
 収納済み額の増加のおもなものは、罰金及び科料の八億七千五百九十四万八千円、刑務所作業収入の六億八千二百五十三万九千円であります。
 次に、法務省所管の歳出につきましては、当初予算額五百九十四億八千五百六十万二千円に、大蔵省所管からの予算移しかえ増加額五千三百七十三万七千円、予備費使用額五億九千七百四万一千円、給与改善等に伴う補正予算額十五億九千二百二十万七千円を加えました予算現額六百十七億二千八百五十八万七千円に対しまして、支出済み額は、六百十五億九千九百九十六万四千四十五円であり、その差額は、一億二千八百六十二万二千九百五十五円となっております。この差額のうち、翌年度に繰り越した額は、四千五百二十八万五千円であり、不用額は八千三百三十三万七千九百五十五円であります。
 支出額のうち、おもなものは、外国人登録事務処理経費として一億五千百三十八万二千円、登記及び土地・家屋台帳事務等処理経費として十億八百九十三万三千円、検察事務処理経費として七億八千四百九十万六千円、矯正施設における被収容者の収容、就労経費として六十五億六百九十九万五千円、補導援護経費として九億一千二十三万五千円、出入国関係に伴う出入国審査並びに被退去強制者の収容、送還等の経費として八千七百六十二万円、公安調査庁における破壊活動防止のための調査経費として九億一千七百四十一万三千円、施設費として三十二億四千五百三十九万六千円となっております。
 不用額となったおもな経費は、人件費及び刑務所等被収容者の食糧費・更生保護会委託費であります。
 詳細につきましては、お手元に提出しております「昭和四十一年度決算について」に記述してありますので、御了承願いたいと存じます。
 最後に、昭和四十一年度決算検査の結果、会計検査院から不正行為として批難を受けた事項がありますことは、まことに遺憾とするところであります。この事故に対しましては、その発生原因を究明いたしまして、是正の方途を講じましたことはもちろんでありますが、今後一そう監督を厳重にするとともに、内部監査の励行等により、この種事故の根絶を期したい所存であります。
 以上をもって、昭和四十一年度法務省所管一般会計歳入・歳出決算について説明申し上げました。
 よろしく御審議を賜わりますよう御願い申し上げます。
#6
○大石委員長 次に、会計検査院当局より検査の概要の説明を求めます。石川会計検査院第二局長。
#7
○石川会計検査院説明員 法務省の昭和四十一年度歳入歳出決算につきまして書面並びに実地に検査をいたしました結果、不当事項として掲げましたものは職員の不正行為によりまして国に損害を与えましたもの一件でございます。
 事案の内容でございますが、横浜地方法務局磯子出張所におきまして、部内職員が受け付けました登記申請書に張ってあります収入印紙をはぎ取るなどの方法によりまして七十二万円を領得したという事案でございます。
 簡単でございますが以上で説明を終わります。
#8
○大石委員長 これにて説明聴取を終わります。
    ―――――――――――――
#9
○大石委員長 これより質疑に入ります。華山親義君。
#10
○華山委員 会計検査院の検査報告にあります不正事項につきまして、これと関連してお尋ねをいたします。ここに「事務補佐員木下某」というふうに書いてありますが、事務補佐員というのは通俗的には使いますけれども、会計検査院の報告の中にも事務補佐員と書いてあるのです。会計検査院にお聞きいたしますが、事務補佐員というのは正式の名前ですか通俗のことばですか。
#11
○石川会計検査院説明員 事務補佐員と申しますのは賃金支弁の職員でございます。賃金で支弁いたします職員でございまして、当時人員不足のために特に雇い上げまして、非常勤職員として勤務していた者でございます。
#12
○華山委員 ことばを責める問題じゃありませんけれども、そういうのは事務補佐員ということで一般に通る名称でございますか。
#13
○石川会計検査院説明員 法務省部内において一般にさような名称を用いているように承知いたしております。
#14
○華山委員 人事院に伺いたいのでございますけれども、公の文書によって事務補佐員というふうなことばを使われることはどうかと思いますが、これは、見たって事務補佐員という身分がわからないですね。人事院でも事務補佐員ということばを使っておりますか。
#15
○岡田政府委員 非常勤職員のカテゴリーいろいろございますので、その中身によりましていろいろ名称が付されております。その名称の根拠といたしましては、現在これは総理府人事局で所掌しておりますが、人事局及び人事統計報告に関する政令それから総理府令がございます。その取り扱いの中でいまお話の出ております事務補助職員とか技術補助職員だとか技能職員だとか医療職員だとかいろいろの名前が掲げてございます。いまお話しの事務補助職員というものであろう、このように考えます。
#16
○華山委員 木下という人の履歴書を見ますと、日給を支給されて大体三カ月に更新をしておりますね。これは人事院のほうに伺いますけれども、こういうのは公務員等の法律等のどの条項による職員でございますか。あるいは法務省で発令されたものですから、責任は法務省にあるのかもしれませんが、法務省のほうからでもよろしゅうございます。
#17
○新谷政府委員 ここで言っております事務補佐員、正式には非常勤職員と申し上げるのが正しいかと思いますが、これは国家公務員法の附則の第十三条によりまして人事院規則で特例が設けられております。それに基づいて採用した者でございます。
#18
○華山委員 この人は受付をやっていたということでございますけれども、私考えますのに、そういうふうな日々雇用の職員に受付等の仕事をさせるということはどうして起きるのでしょうか。私は人事院に伺いたいのでございますけれども、日々雇用というものは事の性質上臨時的に仕事が起きた。臨時的の仕事を処理するのに経常職員では間に合わない。それですから、臨時的の仕事を臨時的に所掌する、たとえば書類の整理であるとか、いろんなことでやる。これがいわゆるいまおっしゃった事務補助員といいますか、補佐員の性格なのであって、経常的な受付等の仕事はやらすべきものではない、こういうふうに私は考えますけれども、その点につきまして、人事院のほうの御意見を伺いたい。日々雇用の非常勤職員というものは、人が足りないといって、こういう経常的な仕事をさせることができる性質のものですか。立法の趣旨から御説明を願いたいと思います。
#19
○岡田政府委員 非常勤職員は、臨時的に多量な業務が発生したような場合に、定員外の職員として臨時的に短期間雇用するというのが非常勤職員が置かれた趣旨だろうと思います。この点につきましては、場合によりますと、そういう仕事に当てる職員を、他の恒常業務に緊急的に一時応援とかいろんな形で当たらせることはあろうと思いますが、本来的には一般の常勤職員がする仕事と、それから臨時的非常勤職員がする仕事とは、一応原則的には分かれておるもの、このように考えるべきだと思います。
#20
○華山委員 法務省にお伺いいたしますが、この人を採用したのは、何か臨時的にこの磯子の出張所でどうしても経常職員ではできないような臨時の仕事ができたので採ったのでございますか。あるいはまた初めから一般経常職員が少ないので、人を入れて経常的な仕事をこの人にやらしたのか、どちらなんですか。
#21
○新谷政府委員 法務局におきましては、数年前から特別の作業をいろいろやっておるのでございます。たとえば登記簿と台帳の一元化の仕事、あるいは商業登記簿の遺棄作業、粗悪用紙の遺棄作業、あるいは税務署の通知、そういった臨時の特殊の仕事がいろいろあるわけでございます。これは現在職員が非常に不足しておりますし、加えて仕事がだんだんとふえてまいりますので、仕事の能率化をはかり、制度の合理化をはかるということから、このようないろいろの作業をやって、登記所の仕事をさらに能率化していく、こういう目的からいろいろの特別の臨時作業をいたしておるわけでございます。この非常勤職員は、そういった特殊な作業のために予算で認められまして採用いたしておる職員でございまして、一般経常事務の人員不足のために臨時職員を採用しておるのではございません。
#22
○華山委員 しかしこれに先ほど会計検査院のほうから報告もありましたとおり、登記簿の受付をさせたということになっておりますけれども、受付の仕事等は非常に重要な仕事でもございますし、そういう臨時的な仕事に従事させる職員に、受付の仕事というものは臨時じゃないと思いますけれども、どういうわけでこういう仕事をさせたんですか。
#23
○新谷政府委員 先ほど申し上げました一元化の仕事とか、あるいは粗悪用紙の遺棄の仕事、これは定員職員が本局の本来の仕事としてやるべき性質の仕事でございます。しかし事件の増加が非常にはなはだしい関係から、一般の職員の手はどうしてもそういった特別の作業に回りかねる現状にございます。そのために一般職員の手不足を補うという意味で、なおかつそういった特殊の作業をやる目的で、この非常勤職員を採用いたしておるのでございます。しかしもともとこの特別の作業と申しましても、本来の法務局の仕事の一環でございます。場合によりますれば、一元化の作業の進行状況によりましては、その手のすくことも十分考えられるわけであります。お互いに有無相通じて力を合わせて登記所の能率化をやっておりますので、場合によりますと、ただいま仰せのような受付の仕事、これを臨時的にちょっとやらせるというふうなこともあったのじゃないかというふうに考えておる次第でございます。確かにお説のように、こういった受付の仕事のために臨時職員を採用するということは相当でないと私どもも考えておるのでございますけれども、そのとき、その場所の状況によりまして、臨時に、同じ登記所の本来の仕事でございますので、そこを融通し合って、お互いに協力し合ってやっておるという関係ではないかと思うのでございます。
#24
○華山委員 私この人を考えるのに、ずいぶん継続的に犯罪を犯しておる。ときどき手伝わしたということじゃないと思う。非常に登録事務が忙しいので、初めからこの受付等の仕事をやらせるために採用したのではないか、こう思わざるを得ないのでございますけれども、実態はどうなんですか。あるいは初めは臨時的の仕事で雇ったのかもしらぬけれども、ほんとうにこの人がやったことは、こういう受付の仕事を経常的に継続してやったのではないか。あなたのおっしゃるとおり、ときどき人が足りないからそのほうにも回したということじゃないのじゃないだろうか、こういうふうに思われますけれども、実態はどうなんですか。
#25
○新谷政府委員 私どものほうの考え方としましては、先ほど申し上げましたように、法務局の特別の作業のためにこの予算をいただきまして、臨時の仕事をさしておるわけでございます。ただいまお話しのように、受付の仕事は登記所の仕事といたしましてはたいへん重要な仕事でございます。これに当てるために臨時職員を当初から採用して振り向けるということは、これはすべきことではないということは十分承知いたしております。法務局に対する私どもの指導といたしましても、一般の職員の不足を臨時職員で補うことは許されないことだ。特別のこういった作業のために予算が認められておるのでありますから、それに使うならいいですが、ただいまお話しのような一般の仕事のために臨時職員の採用はできません、こういうふうに言ってまいっておるのでございます。磯子の出張所におきまして窓口の受付事務をかなりの期間にわたってやらせたということは、これは確かに御指摘のように相当でない措置であったかと思うのでございます。いろいろの特別の作業を次々と登記所でやっております関係で、ついその臨時職員を受付の仕事に回してしまったということなのかもしれませんけれども、この点は確かに私どもとしましても反省もし、また法務局にもそういう趣旨をはき違えることのないようにというふうな指導をしてまいりましたし、今後も極力注意をいたしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
#26
○華山委員 くどく申しませんけれども、いまのお話によりますと、特別の予算をもって採用したところの職員、その職員を経常的な、しかも重要な仕事にも継続的に使ったというふうなことは、私は相当重大な問題だと思う。予算の使い方にも間違いがある、そう私は思わざるを得ないのでございますが、この点につきまして今後ひとつ十分な御配慮も願いたい。そしてこのことによってこういう不正事件が起きたということになれば、一そう法務省の責任は私は重大だと思う。この点につきまして次官から、ひとつ今後の考え方、方針等につきましてお示しを願いたい。
#27
○小澤(太)政府委員 今回のような不祥事件を生じましたことはまことに申しわけない次第でございまして、従来法務省におきましては、この職務の性質上特に非違を生じた場合におきましては、そのつど厳重にその職責を追及いたしまして、綱紀の維持をはかっておるのでありますが、また今回このような事件を起こしましたことはまことに遺憾にたえません。この種の事件につきましては、関係者に対しまして適正な処分を行なってまいりましたことはもちろんでございますが、ただいまお話のありましたように、原因を追及いたしまして所要の対策を講じまして、あらためて綱紀を振粛し、厳正な規律のもとに職務が遂行されることに全力をあげたいと考えております。ことに法務局関係におきましてはこういう不正不当の事件が生じないように常に注意を喚起してまいっておるのでございます。したがいまして、会同等のつどにはその問題を取り上げて、法務局が本省と一体となって不正事件の根絶を期してまいったわけでございます。
 今後の対策といたしまして、次のことを徹底させたいと考えております。ただいま御注意のございました人事管理でございますが、これは民事局長から御答弁申し上げましたような趣旨が正しいのでございまして、十分注意をしてまいりたいと思います。さらに、職場の規律の維持を厳格にやりますと同時に、やはり効果的な事務監査を実行いたしまして、ことに今回の事件になりました印紙の即時証印を励行させまして、このようなことのないように特に注意いたしたいと思います。それから申請書の保管の方法等につきましてもさらに検討を加えまして、このような事件の発生を防ぎたいと思っております。また、本件の事件が部外者との私的な交際の関係もあったように見受けられますので、こういう点につきましても十分に注意をいたしまして、これを規正してまいりたい、かように考えております。今回のような事件が再び起こらないように十分な注意をいたしたい、かように存ずる次第でございます。
#28
○華山委員 次官のおっしゃったことは当然なことでございますけれども、私、次官にお尋ねしたのは、人事の採用の混乱、臨時職員をして、日雇いの、日々雇用の職員に経常事務をやらせる、そういうふうなことは経理をみだるものだ。しかも責任のある受付の仕事、やろうと思えばやれるようなあぶない仕事、そういうことに日々雇用の職員を使ったというようなことはおかしいのではないか。そういう点につきまして、人事の管理の面について法務省として欠けるところがあるんじゃないか、こういうことをお尋ねをしたわけでございます。ひとつ気をつけていただきたいと思っております。
 それで、この点につきまして私考えるのでございますけれども、この日々雇用の職員を、経常職員が足りないからといってそれに向ける、そういうふうなことは私は全般的にいって、法務省だけではないんじゃないか。どこの省もそういうことが、多かれ少なかれ、特に現場職員等には行なわれているのではないか、こういうふうな気持ちがいたしますが、このようになりますと、国家におきましてこれについての経費をとっておるということになりますれば、会計法上の間違いだと私は思う。
 会計検査院、今後この点につきましてお調べになる御意向はございますか。
#29
○石川会計検査院説明員 賃金支弁非常勤職員でございますが、これは各省庁にわたってあるわけでございますが、ただいまの報告に載せました事案が、御指摘のような事実がもとになりまして起きたということもこれまた認めなければならないと思います。先生の御指摘のような趣旨を含めまして、今後検査にあたってまいりたい、かように考えております。
#30
○華山委員 それで私は考えるのでございますが、会計検査院にも私はたいへん不満だ。この事実、非常勤職員を予算をとっていただいて、お調べになるとわかると思いますが、そういうものを一般経常事務に継続的に使ったということ、私はこれは会計法上の問題だと思うのです。予算の費目の混乱を来たしてくるのだろうと思うんですよ。会計検査院はこのことについて、こういうことがあるということがわかるはずなんですから、なぜ御指摘にならないのか。あるいはこの点につきまして、報告には載せなくても法務省には注意を与えられたのかどうか。どうだったのでございますか、会計検査院。
#31
○石川会計検査院説明員 木下なる者は、ここに書きましたように登記官の補助者でございます。それで登記事務というものが会計事務に入るかどうかということでございますが、一般に検定の対象とかあるいは懲戒処分の対象として責任を追及する場合におきましては、これはその法律の範疇には入ってこないという考え方でございますが、広い意味の会計事務の中には御指摘のとおり確かに入るか思います。本件は特別なケースと言えば言えるわけでございますが、なお、このような事態につきましては、御指摘のとおり、現金並びにそれに類するものを取り扱わせるということは、ほかの省庁にはこれはないことでございます。したがいまして、法務省の検査にあたりましては、このような点につきまして今後十分留意をして検査をしてまいりたい、かように考えております。
#32
○華山委員 ただいまの御答弁がございましたので思いつくわけでございますけれども、ただいまここにこういう問題が起きましたけれども、地方法務局あるいはその出張所等におきまして、多くの場合に一般事務、特に重要な受付事務等につきまして、日々雇用の職員を使っておるというのが実態じゃないのですか。現在どうなのですか。それは名目はいろいろの臨時事務があるからということで予算をお取りになったのでしょう。そうしてそれを採用なすったのでしょう。しかし、実際は一般職員が足りない、登録事務が山積する、そういうふうなことから補助職員として日々雇用の職員を使っているのが実態なのじゃないですか。どうなんですか。法務省、どういうふうな実態ですか。
#33
○新谷政府委員 一般事務の繁忙のために非常勤職員を使うということは、これはたてまえ上もおかしいのでありまして、本来一般の事務に職員が不足すれば定員の増加でこれをまかなうべき筋合いのものでございます。私どものほうもまさに華山委員の仰せのとおり、一般事務に、不足のために臨時職員を使うことは許されない、こういうことを固く法務局に対しては申しておるのでございます。実は、私自身、ただいま御心配になりましたのと全く同じ一種の懸念を持ちましたために、法務局の会同の際にも、一般予算でこういう非常勤職員を採用することはできない、これは将来にいろいろな問題を生ずるのみならず、公務員というものについて定員制がしかれ、厳格な規制のもとに公務員の仕事が取り行なわれている現在の体制下におきまして、適当にそこを予算の運用でやるということは、これは許さるべきものでないということを厳に申しまして、そのような運用は厳に慎むように指導いたしておるのでございます。ただ、先ほど申しましたような登記簿と台帳の一元化の仕事とかあるいは粗悪用紙の遺棄の仕事、こういったものはそれぞれの登記所を指定いたしまして、本年度はどこどこ、来年度はどこどこというような計画的な執行をいたしております。したがって、その計画に乗ってまいりました庁に対しては、予算をそれに見合うものを配付してまいっておるのでございまして、ただいまお話のございましたような、一般にこれを流用するということはいたしてないと私は存じておるのでございますが、なお、先ほど申し上げましたような趣旨で今後もそういうことのないように十分注意もいたし、また法務局自体も自粛いたしまして注意いたすように指導いたす考えでございます。
#34
○華山委員 形の上の費目の流用はないでしょうけれども、実質的に費目の流用が行なわれるということになりますね。そういう点はおかしいと私は思うのです。会計検査院はいろいろなところをごらんになっていると思いますけれども、こういうふうな実態は各省に見受けられませんですか。あまり気をつけてごらんになったことはないですか。
#35
○石川会計検査院説明員 他の現金を取り扱う……。
#36
○華山委員 現金でなくてもいいのです。臨時職員を一般職の人が足りないからといってそっちに使っているようなことはあるか、ないかということなんです。
#37
○石川会計検査院説明員 先生御指摘のような観点から特に調査をいたしてはございませんけれども、われわれの承知している範囲におきましては、他の省庁においてはさような事実は見受けられません。
#38
○華山委員 ないということはないと思います。ありますよ。一般の職員とか技術職員とか、事務職員が足りないから臨時の人を入れて、そしてこれでやっていく。これはもう昔からなんです。どこの省だってありますよ。特に現場職員は、これは昔からですよ。明治百年といいますけれども、明治時代からなんです。これを称してはかま人夫、こういうのです。はかま人夫というのは事業費の人夫賃から金を払う。仕事は人夫の仕事をしておりません。昔ですから、はかまをはいて机で仕事をしていた。これをはかま人夫といっていた。そういうふうなものが至るところにある。しかも、これが、その省の首脳部にはわからないうちに行なわれている。たとえば、庁費というものにおきまして、使い方はその部局なりそういうふうなものにまかしてありますから、そうしますと、その部局は庁費でもって人を雇って仕事をやらせる。これが一般的の傾向だと私は思うのです。
 それで、これは私の経験を申し上げて恐縮ですけれども、本庁の仕事につきましてはそういうことにあまり感じませんけれども、地方庁に参りますと、とにかくそういうふうな、知事なり総務部長なり人事課長が知らないうちにどんどんふえていくのです。こういう職員、日々雇いの職員がどんどんふえてくる。これは、私、聞いた話ですから真偽はわかりませんけれども、福島県庁を建てたときに、建てたとたんに手狭になった。なぜか。そういう職員がべらぼうに多いからなんです。そういう職員を表に出して、これで大きさをつくって、それによって起債の承認を求めることができない。正規の職員だけである。建ったときには、いざというときには狭くなったという話が、真実かどうかわかりませんけれども、あるくらいなんです。そういうふうなものですから、自治省は手に余ってしまって、経理の混乱を来たすということから、定員の増加を勧奨してこれらの職員を、できるだけ経験に基づくような試験のやり方をやって正規の職員に繰り入れた。これが自治省の方針だった。こういうふうなことが、私は国においてもあると思う。
 この点は気をつけなければいけないと思うのでございますが、行政管理庁に私は申し上げたい。あなたのほうは人を減らすことに一生懸命のようでございますね。このごろ人を減らすことで一生懸命なんです。たとえば三年間に五%減らす、こう言った。それは減る。減った場合にこういうふうな日々雇いの職員、こういうものがどんどんしりのほうからふえていくということを覚悟しなければいけない。これが、むしろ無責任な職員がここにあらわれたように、きわめて重要な金の出し入れに関係のあることまでやってしまう。印紙のような、有価証券をごまかすような仕事までやらせる。こういうことが起きますから、行政管理庁は気をつけてもらいたい。人を減らすだけが能じゃないのです。やらなくちゃならぬ仕事はきまっているのですから……。いま一般国家公務員は、私は遊んでいるとは思わない。それを減らす。減らせば何といったってしりのほうからまたどこかに抜け穴ができる。その抜け穴というものは省庁の幹部は知らない。そこに、ここにあらわれたような日々雇いの無責任の者が不正事件を働く、こういうことが出てくることを私はおそれるのです。その点は行政管理庁、よほど気をつけてもらいたい。行政管理庁、所見どうなんですか。その点ひとつ伺っておきたい。そういうところまでお考えになっておりますかどうか。
#39
○河合政府委員 お答えいたします。
 ただいまの御指摘の点につきまして、私ども三年間五%の削減の計算をいたします際も、そういう種類の行政需要の多い職員につきましてはこれは削減の率を若干軽減しております。そういうことによりまして行政需要の増したところあるいは多いところに、行政需要の減ったと申しますか、相対的に低いところから人間ができるだけ回るようにというような考え方で現在定員管理の仕事を行なっております。
#40
○華山委員 行政管理庁はこのような事実、たとえばいまここに出てきた不正事件が起きたような事実、こういう事実を重視すべきだと私は思うのです。人を減らしたために臨時雇い、日々雇いがふえて、そうしてそういう無責任な者が行政事務を担当するというふうなこと、こういうものは経験済みなんですから……。私はほかの県のことを言いましたけれども、なぜそういう人員がふえたかといいますと、昭和二十八、九年から三十年にかけて地方財政が窮乏した。そのときに無理な人件費の削減をやった。それは自治省の指導による。それだものですから何といったって足らないから、勢い日々雇いを多くした。ところが自治省でもこれじゃかなわぬというので今度は定員の増加に踏み切ってきた。そうして日々雇いを減らした、こういう経過を経ているんですね、地方につきましては。そういう経験というものを生かして責任をもって管理庁はやってもらいたい。行政管理庁、ひとつ一ぺんどれだけのそういう職員があるのか、そういうことによってさらに五%とか三%、そういうことが無理なのか無理でないのか、ひとつよく再検討をお願いしたいと思う。どうです、そういう実態を調べていますか。
#41
○河合政府委員 お答えいたします。
 三年、五%の削減につきましては、大体年間を通じまして、離職率がこの数年間若干変わっております。平均いたしますと約四・九%ございますので、そういう離職率等を見合わせまして三年、五%の削減をいたしたわけでございます。内容につきましては、ただいま申しましたように、これは業務の繁閑に応じまして、削減の率をかげんいたしております。また、法務省の登記関係の仕事につきましては、この数年間でき得る限りの人員の増員をいたしております。
#42
○華山委員 一度、行政管理庁で、どれだけの臨時職員がいるのかどうなのか、そういう点をよく徹底して、人というものと仕事というものはどういうふうになっているのかということを見分けてからやっていただきたい。そうでなければ、私たちが地方庁において踏んだと同じ轍を踏みます。われわれもそうだった。自治省の指導によりまして何年間かの不補充あるいは退職勧告、そういうことによって計画を立てて、人員の減少をいたしますと、日々雇いの職員が、われわれの知らないうちに事務費でまかなわれて、だんだんふえてくるわけです。それですから、これではたいへんだということで、自治省のほうが、今度はむしろ定員をふやしたいという方向になってきた。弊害がひどかったから、そういう轍を踏まないように、よく気をつけていただきたい。そのことはお考えを願いたいと思うのです。特に実施官庁におきまして、非常にそういう点が行なわれます。東京の本庁だけをながめておったのではだめですよ。そういう点、ひとつ気をつけていただきたいと思います。
#43
○森本委員 関連して。
 いま行政管理局の局長の答弁では、さももっともなような話があるけれども、これは華山さんが副知事をやっておられたから、地方庁のこと、よく知っておられるが、われわれとしても地方官庁のことについては、かなり内容は知っているつもりです。あなたのほうは、現業官庁も五%あるいは三%ということで一律に指示を一応出しておられます。だから、やむを得ぬから、それに調子を合わすように各省庁も合わせたわけです。だから、現業官庁であろうが何であろうが、一律に出しております。だから、いまそういうことで論争しておるわけであって、たまたま平常業務を非常勤職員がやっておって問題になったわけだから、そういうふうな定員削減の問題について、行政管理庁が強力に指導するとすれば、各省庁におけるところの平常業務を非常勤職員が一体どれくらいやっておるかというくらいの指数、資料というものは持っておっていいわけです。ところがそのくらいの資料が、実は行政管理庁にはない、それまで調べるところの能力がない。ところが実際には閣議できまった至上命令だから、一律何%の削減、こうなってくるから、各省庁、それに合わせて数字を考えていかなければならぬ、こういうことになるわけです。これはおらぬけれども、ほんとうは荒木さんに聞いていただきたい。行政管理庁としても、定員については、ある程度行政事務がだんだん減ってきて、確かに要らないところもあります。そのかわり、逆に今度は行政事務がふえてきて、どんどんどんどん人をふやさなければならぬというところもあるわけですから、そういう点については、やはり相当調査をして、そうして国民にサービスがまんべんにできるように、不要なところは除くようにというふうな適確な資料を集めてもらいたい。そこで、せめてきょう問題になっておるところのいわゆる平常業務についてどの程度非常勤職員が、全官庁でやっておるかというくらいのことについては、ひとつ調べてみたらどうですか、こういうことを言っておるわけですよ。それくらいの調査は各省庁に命令すればできるでしょう。
#44
○河合政府委員 ただいまの御趣旨を体しまして、各省庁と十分検討していきたいと思います。
#45
○華山委員 その点につきましては、私が法務省からとりました資料によりますと、臨時職員をどれだけ使っておるかということは、法務省のほうではわかっておるわけですから、各省庁もわかるわけですから、ひとつ調べていただきたい。そして定員を削減することが無理なのかどうかよく研究していただきたいと思います。
 それからこの事件について考えられるのは、何か磯子出張所だけですか、横浜全体ですか、厚生会というものがあって、職員厚生会のほうと何か印紙のことでやりとりがあったようですが、その厚生会というものは印紙を扱うのでございますか。
#46
○新谷政府委員 詳しいことは私、存じませんが、おそらく職員の厚生のために何かそういった団体ができておるのじゃないかと思います。そういった場合に、役所としては印紙の取り扱いはできませんので、窓口に見える一般の申請者のために、印紙の売りさばきをそういうところでやっておるのじゃないかと思うのであります。本件の場合に、厚生会とこの木下との関係がどうであったかということは、私、申しわけないのですが存じません。
#47
○華山委員 私はその点不明朗だと思うのですよ。印紙を厚生会が売りさばいて幾ばくかの手数料でもって何か厚生事業を職員の間で行なっておる、こういうところにいろんな問題が胚胎するのではないか、おそらく厚生会の職員というものは、あるいは法務省を退職したような人なのかもしれません。それはりっぱな人もいるかもしれませんけれども、そういうことから悪因縁を生じていろんな問題を起こすのじゃないか。厚生会の実態、厚生会というものは一体何を仕事としておるか。印紙の販売等にタッチしておるのかどうか、そういう点です。印紙の販売等につきまして成規の手続によってやっておるのかどうか、そういう点いかがなものですか。
#48
○新谷政府委員 印紙の売りさばきは成規の手続をとりませんとできないのでございますから、どのような主体が印紙の売りさばきをいたしますにもせよ、すべて成規の手続をとって許可を得てやっておると思います。
#49
○華山委員 じゃ、厚生会なるものがそういうことを実際に許可をとってやっておるのかどうか、ひとつ調べていただきたいのでございますけれども、あなたはお聞きになっておるかどうか、この厚生会なるものは全国的なものなのか、全国にぽつぽつあるものなのかどうか、そうしてそれがすべて印紙収入を得ておるのかどうか。それは登記所でパンを売ったり紙を売ったりすることはいいと思いますけれども、印紙ということになりますと、事が一般商品とは違いますので、どういうふうなことなのか、おわかりになっておるならばお答え願いたいし、そうでなければ調べていただきたい。
#50
○新谷政府委員 これはいろいろの形のものが考えられると思うのであります。たとえば、職員の厚生団体としてやっておるもの、あるいは先ほどお話しの退職者が中心になって申請人の弁当、パン、飲みもの類を、窓口の近くに店をかまえて売っておる場合、あるいはまた職員組合でやっておる場合、いろいろの形のものが考えられるわけです。しかし、この印紙の売りさばきは、少なくともやみでは当然できないわけでありまして、すべて成規の手続をとっておるものと私は確信しております。
#51
○華山委員 厚生会がその許可をとって印紙を売りさばいておるということであれば私はそれで悪いとは申しません。ただしかし、印紙売りさばき人が別にあって、それをある程度値引きをして厚生会がただ便宜登記所の中で、法務局の中で売っておるということになると、これは法律違反だと思います。その点どうなのか、事実……。
#52
○新谷政府委員 売りさばき人が別にあって厚生会が割り引きしてそれを取り次いで売っておるという事実は、これは絶対ないと思います。すべて印紙を窓口で売っている場合には、その窓口の担当者が売りさばきの許可を得ておると確信いたしております。
#53
○華山委員 私はそれは問題だと思いますから、ひとつ調べてみてくださいませんか。それは大体のところで売っておりますから、そういうところで、これは杞憂にすぎなければ一番いいのでございますけれども、そういうことがないのかあるのか。あるといたしますとたいへんなことになりますから、お調べを願いたいと思います。
 それでは別に聞きたいこともございますけれども、きょうはこの問題だけにしておきますけれども、一言だけ私御注意を申し上げたいことがある。よく調べられなかったのですけれども、矯正協会というのがございますね。矯正協会というものは、事業、商売をやっているわけですけれども、商売する品物は一体何なのですか。
#54
○勝尾説明員 矯正協会が営んでおります収益事業は、収容者の日用品並びに施設に勤務しております職員の日用品の販売でございます。
#55
○華山委員 そうして利益をあげているわけですね。刑務所に入っておる人の日用品を刑務所の人に売って、刑務所に入っている人は金を払って買う。その間から利益があがる。おかしくないですか、どんなものですか。そんなものは損をする必要はないけれども、協会ならばちゃんと利益を取らないで売ったらいいじゃないですか。もしも利益を得たならば、それは受刑者に還元すべきものじゃないですか。
#56
○勝尾説明員 収容者に売っております日用品は、品物が限定されております。すなわち監獄法上収容者が購入できる品物というのが限定されているわけでございます。したがいまして主として歯ブラシだとかあるいは鉛筆だとかいわゆる完給品以外の日用品で法令上許されているものについての使用を監獄法が認めているわけでございます。そこで収容者が監獄法上認められている日用品を買いたいという場合に、方法といたしましては一般外部の業者に売らせるということが一応考えられるわけでございますが、一般外部の業者に販売をさせますと、一つは高いと申しますか、一応普通の市場の価格でマージンを見て高く売られるということがあります。それからその販売の品物の中にやすりだとかいろいろなものを入れるという危険がある。そこでそれをやろうとするならば矯正協会が適当ではないかということで、矯正協会で取り扱うことになったわけでございます。
 その場合に、したがいまして現在市価に比較いたしましておおむね二割安く実は販売いたしております。しかしながらその販売をするにあたりまして人手が要ったり、それから品物を仕入れする費用が要りますので、そういった経費を捻出をするということで、おおむね三%程度の利益率を見ているというのが実情でございます。したがいまして利益を一銭もとらないでということにつきましては、矯正協会が民間の団体でもございますので、私のほうから一銭もとらないでめんどうを見ろと言うことについては、考えなければならないのではないかと思っております。
 したがって、その収益をどのように使うかという問題が次に入ってくるわけでございます。現在矯正協会が収容者に売っている日用品の売り上げと一般職員に売っている日用品の売り上げ、これはほぼ五〇%ずつでございます。したがいまして、収益につきましてもおおむねその利益の五〇%を目当てにして還元するようにという指導を現在やっておるわけでございます。一、二年前の実情を見ますと必ずしもそこまでいっていない。これは結局収容者に還充する場合におのずから法規上の制約があるわけでございまして、結局収容者の娯楽、たとえば運動会をやるあるいは演芸を呼ぶといった形での還元方法しか許されないものでございますので、一、二年前の調査では、総売り上げ高のうち三割程度が収容者に還元されておりまして、七割程度が職員に還元をされていたというのが実情でございますが、四十三年度からは、私のほうから収容者への還元を五〇%に近づけるということを指示をして、いま運営の改善をはかっているというのが実情でございます。
#57
○華山委員 私はたいへんな間違いだと思いますよ。この会は会費をとっている。それによって職員の福利厚生をはかる、これはいいと思う。当然のことだと思いますけれども、利益を得る目的ではないでしょうが利益を得ている。受刑者に物を売って、とにかく結果論といたしまして利益があがった。あがった利益というものは、厳然と経理上区別しまして、それを受刑者に還元すべきものだ。一部といえどもこれを刑務所職員の福利厚生に使うということはたいへんな間違いだと私は思う。あなたのほうの決算を見ましても、この中から受刑者に売ったものが幾らであってどうなのか、会費はどういうふうになっているのか、それから受刑者以外の人、職員に売ったものはどうなのか、三者を厳然と区別して使い方をきめなければいけない。それがなっていない。できるだけ五〇%に近づけるとか、努力するとか、前はもっと多かったとか、私はたいへんな間違いをおかしていると思う。それはあなたのほうの外郭団体で、理事長は刑事局長でしょう。そういうふうな純然たる内部団体なんだから、やろうと思えば直ちにでもやれる。悪く言えば刑務所がピンはねをするようなことはやめてもらいたい。そうして経理をきちっと分けてやるべきだと思う。
#58
○勝尾説明員 理事長は長年の慣例によって矯正局長がやっております。私が理事長でございます。
 それからいまの職員の福利厚生でございますが、これは蛇足になるかもしれませんけれども、職員の福利厚生の内容と申しますのは、職員に品物で行くとかいう形の福利厚生ではございませんで、職員が収容者に対するいろいろな処遇の方法だとかそういうものの研究会を開く、あるいは武道を盛んにするための奨励の費用、そういった形での福利厚生という使い方をしているわけでございます。私現在最も考えなければならないと思いますのは、ただいまおことばもございましたように、収容者のピンはねという印象をぬぐわなければならないというのが最も関心を持っているところでございます。
 そこで職員の福利厚生でございますが、いささか理屈っぽいようでございますが、その福利厚生の使い方が、間接的にはなりますが、やはり収容者のほうにいい影響となってあらわれていくような福利厚生の使い方をとりあえずはしてまいりたい。しかしながら、根本的な問題といたしまして、矯正協会がこういう事業をするのがいいかどうかということについては、十分基本的な問題として考えさせていただきたいと思います。
#59
○華山委員 いまあなたのおっしゃった問題につきまして、これは国の経費として、予算としてまかなわるべき性質のものです。受刑者に物を売った利益でもってそういう行政が行なわれるべきものではない、私はそう思います。直ちに経理を明確に分けて、そして福利厚生に関する面につきましては、会費なりあるいはそこで、職員に売ったところの利益でまかなう。受刑者につきましては、もしも生ずるならば、それは国費で足りないところの分につきまして、受刑者の利益に還元すべきものである、こういうふうに私は信じます。そういう方向につきまして、もう一度来年また聞きますから、改めていただきたい、このことを申し上げて質問を終わります。
#60
○大石委員長 森本靖君。
#61
○森本委員 同僚の田中君が法務大臣が来たら法務大臣に質問があるようでありますので、私は事務的な関係におけるこの決算についての質問を行ないたいと思いますが、あらかじめ断わっておきたいと思いますことは、大臣があと十分ぐらいしたら来られるそうですから私の質問が途中で切れますので、それはあしたでもまたゆっくりやりたいと思いますが、大臣が来るまでちょっと聞いておきたいと思います。
 まず最初にお聞きしたいことは、先ほどの職員の問題でありますが、その前に、法務省としての内部の監査機構というものは、一体どういう内部監査機構になっておるのか、その内部監査機構というものを御説明願いたいと思います。
#62
○安原説明員 事会計に関しましては、会計課の中に監査室というものを設けまして、監査室長を中心といたしまして、所管各機関の会計の事務の監査をいたしております。
#63
○森本委員 大体監査室というのは本省にあるのですか。
#64
○安原説明員 そうでございます。
#65
○森本委員 それで、この監査室長のもとにおける職員は、一応職名はどうなっておりますか。
#66
○安原説明員 俗に監査室長と申しておりますが、会計課長の私の課長補佐ということで室長が
 一人おります。
#67
○森本委員 そういたしますと、会計課長が監査室長を兼ねておるわけですね。
#68
○安原説明員 会計課長の責任においてやっておりますが、直接に担当しております課長補佐を俗に監査室長と名づけております。
#69
○森本委員 そういたしますと、その監査室長の課長補佐のもとに監査専門の人間が一体どの程度おりますか。
#70
○安原説明員 五名の事務官がおります。
#71
○森本委員 法務省で全国で金銭を直接出納官吏を置いて扱っておる場所は何カ所ありますか。
#72
○安原説明員 正確にはちょっと……。
#73
○森本委員 大体でいいです。
#74
○安原説明員 約百八十ということであります。
#75
○森本委員 そういたしますと、この五名の監査員がこの会計監査を行なうのについて、全国百八十ということでありますが、年に一回は必ずやりますか。それとも三年に一回か二年に一回ぐらい回ってくるわけですか。
#76
○安原説明員 監査室長を中心にいたしまして、現実には直接の仕事は監査室の仕事ではございますけれども、会計課の全職員を出張いたさせまして、会計事務の監査は常時やっております。
#77
○森本委員 しかし会計の方が、大体これは各省ともそうですが、会計関係の人がそれぞれの職場に行って調査をするというのは、大体これは会計事務のいわゆる指導、通達の誤りがないか、帳簿のつけ方が誤りがないか、こういうのが各官庁とも大体主なんです。そこで実際に不正があるかないかというような問題については、やはりある程度監察機構を持って、たとえば名前は監査員でも監察官でも何でもいいのですが、やはりそれを専門にする人が見ないと、これはまた観点が違うんですよ。会計業務指導というものと、会計に不正がないかどうかということを調査する人とは、おのずからこれは変わってこなければならぬわけです。一応それはできますよ。会計の担当が事務系統を調べに行って、そのついでに実際に不正があるかないかをまあ調べるということはあっても、本来こういうふうな不正事件があるかないかというようなことについては、これはやはり監査的なやり方をやらないと、当然内部ではなかなか発見できない。そういうふうな考え方からいくとするならば、かりに、私は法務省あたりは、これは定員問題もいろいろあると思いますけれども、法務省というのは役所の中でも一番かたくなければいけない役所である。また一番各官公庁に対してお手本を示さなければならぬ役所である。そういう点からいくとするならば、特にこの会計の不正事件その他については厳重に監査をする必要がある。そういう点からするならば、この監査の機構というものをいま一つ検討してみる必要があるのではないか。この決算を見ても、総金額はかなりの金額にのぼっておるわけです。
 それと、それから法務省というのは、一般会計のほうではあるけれども、収入の面もわりかたあるわけですね。そういう面についても、うかうかすると案外いろいろこういう犯罪が出てくる場合があるということで、私は法務省における内部監査機構というものをもっと確立してもらいたい。法務省の事件が刑事事件になって検察庁が手を出すというような、全くみっともないようなことはやってもらいたくない。それがためにはやはり法務省自体の内部監査ということを強化する必要があるのではないか、こういう考え方を持っておるわけで、いまちょっと聞いてみると、この監査機構では、とてもじゃないが私はなかなかむずかしいのではないかというふうに考えるわけですが、その点どうお考えですか。
#78
○安原説明員 森本先生御指摘のとおりでございまして、常々監査機構の確立には努力いたしております。
 なお、申し落としましたが、先ほど申し上げましたのは本省大臣官房の会計課の監査の問題でございまして、もう一つ法務局なら法務局、民事局を頂点としまして各法務局の内部監査機構、あるいは地方法務局にはたとえばブロック機関である法務局から監査に行くというようなこと、あるいは検察庁の場合には、地方検察庁には高等検察庁から、高等検察庁を含めて出先機関には最高検察庁からということで、それぞれの組織におきまして上部機構が下部機構に対する監査をやっていることもございますので、それも含めまして整備、確立をはかりたいと思っておりますが、努力していることだけは申し上げたいと思います。
#79
○森本委員 そのやり方はよくわかります。ただ、これはたとえば検察庁に対しては最高検なりその他のものがやり、それから法務局に対しては中央からやるというふうなやり方は、これは本来言うと会計の業務指導になりがちなんですよ、そういういわゆる監査のやり方は。それも必要ですけれども、そうでなしに、ほんとうに会計関係の不正不当事項というものをいわゆる会計検査院あるいはその他の検察関係で、実際に刑事事件としてあげられる前に内部で処理をするということについては、それにはやはり本省を中心として、ある程度強力な、一元的な内部監査機構をつくる必要がある。そうでないと、上部機構の者が会計検査に来ましても、これは私もいろいろ経験がありますけれども、会計検査院が検査に来るのと自分のところの上局の者が検査に来るのとはまるきり違いますよ。その職員が対する態度が、会計検査院が来るといえば、一週間くらい前から書類をひっくり返して一生懸命整理をする。ところが自分の上部官庁の会計課長なりあるいは会計の課長補佐なり会計係長が会計の検査に来るなどといえば、これはやはりある程度のんびりかまえる。それだけの違いがあるわけです。だから会計事務を指導するという点についてはそれでけっこうだと思うけれども、法務省が、絶対に不正不当事項を今後出してはいけない、それを結局出さないようにするということを行なうためには、私はやはり法務省が全国的な一元的な一つの監査機構というものを考えるべきではないか。大体どこの単一官庁でもあるいは事業団でも、監査機構だけは一元的な監査機構を持っておるわけですね。人数は、定員がありませんからかりに十名でも五名でもやむを得ません。それでもしかし、一元的な監査機構を持っておって、いつやられるかもわからぬという体制を置いておいたほうが法務省あたりもいい。おまえのところは何月何日から今度は会計の検査をするぞというようなことをいってやったのでは、まるきり何にもわかってこないのです。私は何も法務省が悪いと言っているのじゃない。そういう不正不当事項というものをあらかじめ予備的になくするということをするには、やはり法務省全体の会計事項について、物品を取り扱う事項も多いわけであります。それから刑務所等においてもしばしば非常な問題が起こっておるのでありますから、そういう点についての一元的な監査機構を持っておって、ちょっとうわさがあるとかあるいはおかしいというときには、抜き打ち的に行ってみるということをやる必要があると私は思う。法務省という役所は他の役所と違って、そういう点についてはほんとうに模範的にならなければならぬ役所でありますから、そういう点について私はひとつ内部監査機構の充実を省議あたりで十分に考えてもらいたい。そうでないと、かりに最高検なら最高検の中から、一事務員であっても何か事件が起きたということになると、全くこれは権威が地に落ちるわけです。そういう点をひとつ今後十分に私は検討していただきたい、こう思うわけでありますが、重ねて回答を伺っておきたいと思います。
#80
○小澤(太)政府委員 森本先生の御意見、すごく私も同感でございます。私も多少行政経験を持っておりますが、大事なことだと思います。十分に検討いたしまして、いろいろやってみたいと思います。
#81
○森本委員 それではひとつそういうことでお願いをいたします。
 これは前にも私が、いまから五年くらい前でしたか、この決算委員会で質問をしたことがありますが、法務省ではよく充て検とこういっているわけですが、これがいつも問題になるわけです。いわゆる検事の職を持っておってそれを職にわざわざつけるというのが前から問題になっておるわけですね。
 そこで私が特にお聞きしたいと思いますことは、設置法の第十七条で「当分の間」「百三十三人」というふうに限定しているわけですが、この「当分の間」というのは一体いつまで「当分の間」と考えるのか、これから聞いていきたいと思います。
#82
○大石委員長 森本君、官房長が答弁するはずですが、もう少しおくれて来るそうですから、ちょっとその問題お待ちください。
#83
○森本委員 これはきのう、ぼくはこういう質問をするといってあった問題ですが、いなければ、ほかのことについて聞きます。
 これも前の決算委員会で私が質問をして、法務省としてもだんだんその計画をやっておるようでありますけれども、刑務所の移転の問題です。実際に県庁の所在地のどまん中に刑務所がある。今日ではその刑務所のある土地が十万も二十万もする。全くもったいないというのが各地にあるわけです。要するに、そういう点の移転計画を考えてもらいたいということを五、六年前の決算委員会で私のほうから申しまして、法務省のほうとしても、十分に今後検討していきます、こういうことになっておるわけでありますが、その後、この経過はどういうふうになっておりますか。
    〔委員長退席、鍛冶委員長代理着席〕
#84
○安原説明員 戦後、現在までにおける刑務所の移転関係というか、新設につきまして概況を申し上げたいと思います。
 刑務所あるいは少年院等で戦後、現在までに新営いたしました施設が全国で四十八カ所ございます。そのうち、いわゆる本所関係が十二カ所で、支所に当たりますものが三十六カ所ございます。現在新営中のものが二十六カ所でございまして、そのうち本所が十八カ所、支所が八カ所でございます。そのうち、森本委員御承知の地方公共団体等といわゆる建築交換方式によって新営をやりましたものが十八カ所ございます。そのほかはいわゆる歳出予算によるものでありまして、これが現在実行中のものを含めまして五十六カ所ございます。これは新築したかどうかという問題でございますが、なおさらに、現在地ではなくて、市街地化の影響で場所を移転いたしてまいりましたものが四十二カ所ございます。そして移転しなかったものがそのうちの三十二カ所でございます。
 それが現在の概況でございます。
#85
○森本委員 刑務所の移転計画を私のほうも法務省からもらっておりますが、完全に計画ができ上がるのは大体いつごろに見通しを持っているわけですか。
#86
○安原説明員 刑務所の移転につきましては、私どもとしてはまず老朽施設をできるだけ改築していきたいということはございますが、老朽ではございませんでも、市街地化のための移転要請があるものにつきましては、老朽度ともあわせ考えまして、できるだけ地方公共団体、いわゆる都市の御要望に沿いたいとは考えておりますが、何ぶんにも刑務所の移転というものは、新築には多額の国費が要るものでございますから、なかなか短期間に実行できないということが一つの難点になっております。
 それからもう一つは、さて移転いたしたいと思いましても、その移転の候補地が、用水の便が悪いとか、あるいは地元住民の受け入れの感情が非常に反対であるというようなことで、なかなか計画どおりにはいかない多分の要素を持っておりますので、できるだけ早くとは考えておりますけれども、いつまでにという計画が実は法務省だけでは立ちにくいというのが実情でございます。
#87
○森本委員 大臣が見えましたので、予定のとおり田中委員と交代をしたいと思いますが、大臣に一言だけ聞いておきたいと思います。その前に事務当局にお聞きしておきたいと思いますが、現在死刑囚で、刑が確定をして執行を待っておるのは全国で何人ありますか。
#88
○川井政府委員 八十名でございます。
#89
○森本委員 これはひとつ大臣にお聞きしたいと思いますが、その真相は知りませんけれども、歴代の大臣はこれに判をつくということを一番いやがるという。しかし、中にはそんなことはもう任務だからということでてきぱきと事務的にやっていくというような大臣もおるそうでありますが、そのことによって案外その大臣の人柄というものの想像ができるものでありますが、一体大臣は、こういう問題について、とにかく事務的にてきぱきとやっていくのか、あるいはいろいろな各方面のことを考えながらやっていくのか、その点の大臣の意見を聞いておきたい。そのことによってあなたの一つの性格が大体わかるのじゃないかというふうに感じますので、ちょっと聞いておきたいと思います。
#90
○西郷国務大臣 実はその問題につきましてただいま法務委員会で御質疑がございまして、答えてまいりましたが、この際、釈明を申し上げておきますが、何か雑誌社に対しまして、平沢の問題について云々ということがございましたが、まだ就任以来日が浅くてそういう報告を正式に聞いておりませんので、今後そういう問題をよく検討したいと思いますけれども、その際も、まだ全然聞いておらぬのでかれこれの意見は言えないということを申して、雑誌社もよくわかりましたということでございましたが、最近になって、何か私はそれを実行するようなことが世間に流布されておりまして、いま法務委員会でも私の考え方を申し上げましたが、それは先ほど猪俣委員からもこれについてお話がありました。いろいろのむずかしい条件もあるし、再審等の問題もございますので、こういう問題につきましてはきわめて慎重に取り扱ってまいりたいと考えております。
#91
○森本委員 私、ほかに大臣にもいろいろありますけれども、これは初めからの約束でありますので、ちょっと質問を途中で打ち切りまして田中委員と交代いたします。
#92
○鍛冶委員長代理 田中武夫君。
#93
○田中(武)委員 私は、ひとつ人権問題について項を追うてお伺いしていきたい、このように思っておるわけであります。と申しますのは、本年は世界人権宣言が採択せられてから二十周年です。そこで、国際人権年として法務省においても先日記念行事をせられたということでありますので、人権尊重ということについて法務省の方々あるいは大臣がどのように把握しておられるか、それをひとつ逐次聞いていきたいと思います。
 そこで、まず第一番に国際人権年の記念行事の式などやられたようですが、どういうことをどういうような観点の上に立って行なわれましたか、簡単にお伺いいたします。
#94
○西郷国務大臣 いまお話しのとおり、先般人権宣言二十周年記念式典を関係当局とともにやったのでございますが、仰せのとおり人権擁護という問題は、特にわが国の憲法上重要な点でもございますし、また、法務当局といたしましても人権擁護はなすべき重要な問題と考えます。現在の複雑な国際情勢等を見まするとますます人権の問題が強調されていかなければならぬと思いますので、今後ともそういう観点に立ちまして、人権擁護確保という点に全力をあげてまいりたいと思います。こまかい点につきましては漸次局長から御答弁をさせます。
#95
○田中(武)委員 先日、十二月十日ですか、記念式典をあげて皇太子殿下に来ていただいてやったというようなことは新聞で見ています。しかし、私はこういうことが形式に過ぎてはいけないと思う。もっと一般国民なりあるいはすべての人が人権を尊重するということについて、このときにあたって考え直す、こういうような意味を持つ行事が望ましいと思うのですが、パンフレットを出すとかあるいはポスターを張るとかいうような、いわゆる形式的なことだけしか計画をしておられないようなんです。そこで、私が考えますのに、今日のようにあらわる面において人権が無視せられておる時代はない。一足外に出れば交通地獄、公害あるいは日照権の問題とか、こういう方面からも問題を起こしております。大きくいって広い意味のいわゆる公害、こういう問題についても人権が侵されておる。したがって、公害は厚生省だ、あるいは交通問題は運輸省だ、あるいは工業災害は通産省だということでなくて、こういう上に立っての人権の尊重ということに対して、大臣はどのようにお考えになりますか。と申しますのは、私は、この種の問題で法務省が他の行政庁に申し入れをしたということをあまり聞かないわけなんです。しかし私は、人権という上に立って、工業災害、公害ということに対して法務大臣から他の省庁あるいは大臣に申し込まれることも必要ではないかと思うが、その点についてはいかがでしょうか。
#96
○西郷国務大臣 先ほどお話しいたしましたとおり、記念式典も単なる記念式典だけではなく、その当日全国の人権擁護委員会の全国大会等を催しまして、そういう諸点を全国的に強調してもらうというふうな努力も重ねておりまして、地方の人権擁護委員も最近非常にふえてまいりまして、次第にそういう趣旨が各地に徹底してくると思うのでございますが、現在の社会情勢を見ますと、お説のとおり人権無視の点が多々あるわけでありまするが、かようなことのなきよう、今後ともあらゆる機関を通じ、こういう点は強力に推進する心がけでおりまするが、その点につきましても、皆さん方の深い御理解と御支援のほどをお願いする次第であります。
#97
○田中(武)委員 いろいろなことについて、閣議において、法務大臣が人権を守る直接の管轄大臣であるというような上に立って、各省大臣にいろいろなことをもの申すとか、あるいは法務省から通産省なりあるいは運輸省等々へいままでそういうことで公式に申し入れられたことはないと思うのですが、これからそういうことをやられたらいかがでしょうか。
#98
○西郷国務大臣 非常にけっこうな御趣旨と存じますので、今後ともそういう面についても推進してまいりたいと考えております。
#99
○田中(武)委員 それでは法務省の直接の問題に入っていきたいと思います。
 まず法務省設置法の第十三条の三ですが、ここに監獄法というのが出てきて現在まだ明治四十一年の監獄法が生きております。そうして「監獄の名称及び位置は、別表四の通りとする。」となっておるが、現在監獄はない。この監獄というイメージと刑務所というイメージとは、あとでこれは議論をいたしますが、だいぶ変わってきておると思う。そこで、現にないのに、なぜこんな「監獄の名称及び位置は、別表四の通りとする。」というようなことが残っておるのですか。こういうのは直されたらいかがですか。
#100
○勝尾説明員 御指摘のとおり、現在監獄という名称の矯正施設はございませんで、全部刑務所に変わっております。したがいまして、ただいま御指摘の設置法十三条の三の監獄という名前は私としてはすみやかに直すべきものであろうと思っておりますが、現在監獄法改正の作業を進めておりまして、おおよそのめどもついてきておりますが、はたして刑務所という名称もいいのかどうかという点について鋭意検討を進めておりますので、事務的な段取りといたしましてはその際に全部直したい、このように考えております。
#101
○田中(武)委員 そこで、少し基本的な問題になって恐縮ですが、刑罰の目的は何ですか。少し理屈を言うならば、応報刑主義だとか教育刑主義だとかいっていろいろありますが、刑罰の目的とは何ですか。
#102
○勝尾説明員 御指摘のようにいろいろな学説はでございますが、刑罰の目的が受刑者の社会復帰、更生にあるということについては現在世界各国異存のないところと承知いたしております。
#103
○田中(武)委員 そうしますと、学説から言うならば、目的主義といいますか、あるいは教育刑主義といいますか、そういうことでいわゆる応報刑主義というのはもう滅んでおるといいますか、古い学説になっておると思うのです。ところが明治四十一年のこの監獄法は至るところにいわゆるこの応報刑主義という観念が出てきております。逐次明らかにしていきます。いまのお話で、監獄法の改正も考えられておるということでありますが、少なくともこれを戦後二十三年、今日までほうっておいたのはどうかと思うわけなんです。
 そこでまずお伺いいたしますが、受刑者の法的地位はどういうことなんでしょう。もっと言いましょう。世界人権宣言に、すべての人間ということばと何人もということばが使ってありますね。何人もというのが四条、五条、十一条二項、十二条あたりにも使ってあるわけです。これはそういうことを意識して書いたのかどうか知りませんが、すべての人間というのはいわゆる字のとおりであって、何人もというところが大体こういう受刑者等にあてはまるような文句じゃなかろうか、このように理解いたしますが、まず、受刑者の法的地位についてどのように把握しておられますか。
#104
○勝尾説明員 受刑者の法的地位、たいへんむずかしいことばなんでございますが、現在日本の行刑のみならず、世界の各国の行刑といたしましては、受刑者も――外国のことばを使ってたいへん恐縮でございますが、リーガルサブジェクト、いわゆる法的な対象、したがってリーガルパーソナリティ、法的な人格と申しますか、を持っているという考え方、この点についてはこれも世界各国ほぼ異存のないところというふうに承知いたしております。
#105
○田中(武)委員 それでは私のほうから申し上げますから、それでいいか、間違っておったらこの点は私は意見が違います、こう言ってください。むしろこれは大臣に聞いたほうがいいと思うのですが、受刑者の法的地位と申しますか、それについて私はこのように考えるのです。受刑者といえども人権は尊重せられるべきである。したがって、一定の制限はあるが、憲法で守られておる受刑者の地位は、法律により規制せられ、保障せられなければならない。これは特にいま問題にするのは、重刑を受けておる人たちです。これらは自由の拘束以外は原則として一般人と同様である。この点は確認できますか。
#106
○勝尾説明員 たいへんむずかしいところでございますが、いわゆる行刑の発達史というものを見てまいりますと、これはやはり受刑者の人権の発達史という見方ができると私思っております。したがいまして、いま田中委員の言われましたことについては、私は同じ意見でございます。
#107
○田中(武)委員 次に受刑者の生活条件、これも私のほうから申し上げますが、大体そういう理解でいいのか。まず第一点としては、生活程度を引き下げることによって苦痛を与えるような刑罰をかけてはならない。そのような刑罰の目的として使ってはならないということ。人たるに値する最低の基準が与えられなくてはならない。さらに出所後の社会的適応という点を考えて、その面からも妥当なものでなくてはならない。このように私は理解しておりますが、いかがでしょうか。
#108
○勝尾説明員 考え方、御意見としては私同意見でございます。
#109
○田中(武)委員 大臣、いまの矯正局長の考え方について大体是認せられますか、いかがですか。
#110
○西郷国務大臣 そのとおりでございます。
#111
○田中(武)委員 それじゃあ、その上に立って逐次お伺いをしていきたいと思うのです。
 まず、監獄法の二十七条に作業収入、作業賞与金というのがありますね。これはいわば賃金ですね。いわば賃金に値するものである。そこで、この監獄法のたてまえからいえば、これは恩恵的に与えるものである。そういうような上に立っておりますね。
 それからもう一つ、ついでにこれに関連して次次とこれも比較をして出しますが、一九五五年に国連において採択せられた、被拘禁者処遇最低基準規則というのがありますね。これは日本も守らねばならないと思うのですがそういう点についてはいかがでしょうか。
#112
○勝尾説明員 現行の監獄法の作業賞与金というものが恩恵的なものであるということは、御指摘のとおりでございます。それから最低基準規則につきましては、賃金とか恩恵的というような表現ではなしに、その労働に相当する対価が支払われなければならない、こういう御指摘になっておるわけでございます。そこで、いわゆる賃金ということばの使い分けの問題でございますが、これが一般自由な社会における賃金というものを、自由を拘禁されておる、しかも強制労働を科せられておる収容者にそのまま持ち込めるかどうかということについては、私、非常に慎重な検討を要すると思いますが、少なくとも労働に相当する報酬と申しますか、これは支払わなければならないのではないかと考えております。そういう意味から、名前が賞与金であろうがあるいは賃金であろうがその問題は別個といたしまして、その額が相当額かどうかという点について検討を加える必要がある、このように考えております。
#113
○田中(武)委員 これから長い名前を言うのはめんどうですから、一九五五年国連において採択された被拘禁者処遇最低基準規則というのは国連規則というように簡単に申し上げたいと思います。
 国連規則の七十三条に、これは必要なところだけを読みますが、「同種の作業に対する通常の十分な賃金が、受刑者の生産高を参しゃくして、労務の提供を受けた者から当局に支払われなければならない。」、これは労務の提供を受けた者が支払うんですね。そこに賃金という観念が出てきております。ここで考えたら、私は一般的な賃金という観念はともかくとして、手当、報酬、それはいいとして、あまりにも少ないのじゃないですか。ここにその表は別に持ってきておりますが、一番よけいもらうのが月に七百円ぐらいでしょう。
#114
○勝尾説明員 多いのは二千円近く取っておる者もおりますが、平均いたしますと、月に七百十二、三円ということでございます。
#115
○田中(武)委員 なるほど、食事――食事の問題もあとで触れます。住居づきにしても月に七百幾らというのはいかがでしょうな。
#116
○勝尾説明員 いまの賃金かどうかという問題を抜きにいたしまして、どれくらいの額が適当かという問題をわれわれは一応重点に、いろいろ考えているのでございますが、一つの考え方といたしましては、一般市場のいわゆる賃金、これをやはり念頭に置きます。さらに先ほど御指摘もありましたように、刑の執行の目的が社会復帰、更正にあるということになりますと、出所後再犯におちいるのを防ぐために、ある程度の期間生活していけるような金額、いろいろそういうような要素を考えますと、現在の七百十二円というのは少な過ぎる、このように考えております。
#117
○田中(武)委員 先ほど読み上げました国連規則の七十三条の二項は、受刑者等の労務の提供を受けた者が「同種の作業に対する通常の十分な賃金」に相当するものを払わなければならぬということ。そして今度は、七十四条の二項では「法律により自由労働者に認められているものを下らない条件で、補償がなされるように規定が作られなければならない。」というのがありますね。現在、物をつくって売ったり、あるいは作業に出るときもあると思うのですが、刑務所としてはその労働に値する対価は受け取っているのでしょう。そして今度は、払うのは国連規則にのっとって、法律によって補償されなければならないというのは、いわゆる「自由労働者に認められているものを下らない条件」となっておりますね。そういうような点についてどうでしょう。現在はそこにいってないことは明らかだ。
 そこで大臣に伺いますが、一々こまかいことを議論しておっては前に進みませんので、少なくとも国連規則にのっとって受刑者の待遇を変えていくという気持があるならば、こういうような点を考えるべきだと思いますが、どうでしょう。
#118
○西郷国務大臣 やはり世の中が進んでまいりますから、受刑者に対する問題もだんだん改善を加えていかなければならないと考えております。
#119
○田中(武)委員 先ほども申しましたが、私はちょっと表を見たのですが、これは一類作業とか二類作業とかに分かれておって、一等工から見習いまであるのです。数字を当たってみますと、一番高い、いわゆる一類作業、一等工で一日五円五十銭、八時間労働として四十四円ですね。一番下のは一時間七十銭です。八時間労働として五円六十銭ですよ。そこで先ほど言ったように一人平均が一カ月七百十円程度である。そうして先ほど華山委員が若干触れておりましたが、矯正協会で日用品を買わすのでしょう。これはどうなります。私は、何も罪を犯した人を優遇せよとは申し上げておりませんが、少なくとも人権宣言の上に立って、ことにことしが国際人権年に当たっておるので、そういう問題を一ぺん考え直してみたらどうか、こういうことで申し上げておるのです。したがってそういう点が一点。そういう者に対して、一般よりは若干安いか知りませんが、矯正協会がものを売りつけておるということ。さらにもう一つ問題になるのは、この矯正協会が大体刑務所の中に事務所なり売店というのですか、置かれておるということ。刑務所というのは当然行政財産でしょう。そうすると国有財産法で行政財産の上には権利の設定は認められていないわけなんです。かりに賃貸しをしておるならば、ちょっと問題があると思うのですね。そういうものの家賃はどうなっておるのか。ただなのか取っておるのか。賃借権が設定せられておるのか、していないのか。無料で提供しておるというならば、その根拠を国有財産法の観念の上に立って、お答えを願いたい。
#120
○勝尾説明員 最初に作業に対する報酬の問題でございますが、この点につきましてはただいま御指摘の国連の最低処遇規則、これを一応念頭に置いて、従来から、また現在も、引き上げにつとめているところでございます。また今後監獄法を改正する際に、いまの問題をどのように規定をしていくかということも検討をいたしております。
 それから第二点の矯正協会の問題でございますが、結局収容者が日用品を買う際に、作業賞与金の中から買う場合と、それから本人が入所したとき等に持ってきている領置金の中から買う場合がございますが、指導といたしましては出所するときの金が少なくなるということは、本人にとってもいいことではございませんので、かりに日用品を買うといたしましても、本人の領置金の二割以内とかいうように、それぞれの状況に応じて規制をしているというのが実情でございます。
 それからなお矯正協会が刑務所のいわゆる行政財産を使っているという問題でございますが、この点につきましてはいわゆる国有財産の国の庁舎等の使用または収益を許可する場合の法令に準拠いたしまして、手続をとり、算出された借料を払っております。
 なお賃借権の問題につきましては使用の契約は一年更改でございまして、また条件として国のほうで必要がある場合には原状を回復して解除をする、こういう条項をつけてやっておりますので、いわゆる賃借権というようなものは設定されていない、このように考えております。
#121
○田中(武)委員 形式的には何かこれでいいというようになっておるけれども、実際は一年更新だといっても引き続きやっておるのでしょう。私はいまこの問題をどうと言っておるのではないのですが、これははっきりする必要があると思う。矯正協会の問題については、またあらためて聞く機会もあると思います。
 そこでいまの手当というか、監獄法でいうなら作業賞与金の問題ですね。これは月にわずか七百円くらいだから、家族に送るほどの金はないと思うのですが、国連規則の七十六条の二項では、「一部を家族に送付することが許されなければならない。」となっております。そういうことはいまどうなのですか。
#122
○勝尾説明員 家族に送ることを許可いたしております。たとえば収容者の子供が今度学校に入るというような場合に、その入学祝いと申しますか、それにランドセルを買うとか、そういうような使い道が間違いのない場合には送金をさせている、こういう扱いになっております。
#123
○田中(武)委員 次に、監獄法第二十八条の手当ですが、これは一般にいうなら労災保険に類するものだと思うのです。先ほど私が読み上げました国連規則の七十四条の二項は、まさにこのことをうたっているわけです。ところが、現在は、例の七十九条で手当金の給与は法務大臣がかってにきめるというか、法務大臣が定めるとなって、その基準も何もないわけですね。こういうところにいわゆる監獄法が応報刑主義の上に立って、すべてやってやることは恩恵的なものである。そういう精神がにじみ出ておる。少なくとも作業上死亡する、あるいは作業上の疾病にかかって死亡する、あるいは廃疾になる。その場合は、国連規則にもうたっておりますが、法律によって、自由労働者に認められておる条件というのは、労働基準法だと思うのです。少なくとも、そのような保障規定というものが必要だと思うのですが、 いかがでしょうか。――いや、これは大臣だ。大臣、どうだろう。あなた、その前に国連規則を守らなければならぬとお考えになるか、守るのか、どうですか。そういうところからまずいきましょう。
#124
○西郷国務大臣 いま、いろいろの点について御指摘がございましたが、私もその規則をさらに拝見いたしまして検討を加えてまいりたいと考えます。
#125
○田中(武)委員 とにかく三十一条に、文書、図画の閲読という項がありますね。これも行刑累進処遇令というのは一級から四級までありまして、一級の者だけにはこうだ、こういうようなきめ方なんですね。ところが、国連規則ではそうではないわけですね。
 そこで、これはあとでもその問題が出てまいりますが、私が申し上げたいのは、もちろん受刑者を管理する、監督する、あるいは受刑者がだんだんと出所が近づくに従って、社会生活に順応するようにならしていくという上において、一級から四級まで分けて、その処遇を変えるということは必要かもしれません。しかし、たとえ四級、一番下のものであったとしても、人権は尊重せられねばならない。そういう意味において、人権に関係するようなこと、図書を見たりすることもそうでしょう、を一級ならいいが二級以下はだめだ、こういうような考え方はどんなものでしょうね。
#126
○勝尾説明員 原則的には、施設の運営、管理に支障のない範囲でできるだけの人権と申しますか、いま言った文書、図画の問題も認めていくという考え方に立っているものでございます。したがいまして、現在の累進処遇令の処遇の内容でございますが、この点については検討を要すべきものがあるということで、目下検討しているところでございます。
#127
○田中(武)委員 それに関連して、国連規則のほうでは、重要なニュースは聞かさなければならぬ。あるいは図書の閲覧についても閲覧室を設けねばならぬというようなことになっておりますね。私は、いま矯正局長からそういう答弁があったからこれを了としますが、大臣、この一級、二級、三級、四級と分けることは、これは受刑者の管理監督上あるいは出所後の問題と関連して必要であるとしても、その一番下の者が現在与えられているのでも私は不足だと思うのですね。やはりそのくらいの人権は認めてもらわなければいけないと思うんですね。
 それからこの規則によると――規則というのはこっちの施行規則です。ラジオあたりは聞かしておるが、テレビは書いてないが、いまはテレビを見せておるのでしょうね。
#128
○勝尾説明員 現在ラジオ、テレビ、新聞を官給で見せております。なお施設の部屋等の改造をもって図書室あるいは勉強室といったようなものを整備しているわけでございます。
#129
○田中(武)委員 大臣、いまの段階を分けてやることについてはどうか。
#130
○西郷国務大臣 ただいませっかくの御意見でもございますので、いろいろむずかしい点もあるかと存じますが、さらに検討させてみたいと思います。
#131
○田中(武)委員 次に信書の関係なんですが、監獄法で四十七条、信書の発受禁止、これは必要によってそういうことも必要だと思うのですが、これは国連規則のほうでも三十七条、三十八条等に保障するような意味のことがうたってありますね。ところが必要以上にこれを制限するというようなことがいままでにもありましたね。たとえば八海事件の、いまではこれがただ一人の犯人というか、真犯人になっている吉岡、これが服役中だ。吉岡が自分の反省と当時の模様等を書いた上申書、口述書等々を何回か裁判長あてあるいは検察庁といいますか、あてに書いたものを、刑務所長が握ってしまっておったという事実がありましたね。そういうようなことはいままででもたくさんあると思うのですが、その点どうなんです。
#132
○勝尾説明員 必要の範囲内か以上であったかということについては、まさにこれは具体的な場合場合で判断をするよりしかたがない問題でございます。
 八海事件について一言お触れになりましたので、私のほうも一言だけ申し上げますと、これは決して必要以上に押えていたというようには、私のほうではそのようには見ておらないのであります。しかしこれはまたいろいろ御意見もあるかと思いますが、私のほうは必要以上に押えていたという事実はない、このように思っております。
 ところで信書の問題につきましていわゆる必要であるかないかということにつきまして、実際現場で収容者を扱っている者にとって非常に悩むと申しますか、もっと何か明確な基準なりそういうものを示せるならば示してほしいという要望が、私のほうにも入っているわけでございます。御承知のように入っている収容者というのは、人間でございますと同時に犯罪者であるという事実も否定できないところがありまして、施設の運営管理に当たっている者は非常に苦労をいたしているわけでございますが、この信書の問題についても監獄法の改正の際に何らか明確な基準を打ち出せるならば出したいという考え方で検討をしております。
#133
○田中(武)委員 八海事件はもう無罪が確定しておりますので、いまさらこれを蒸し返す気持ちはありません。しかし八海事件があれだけ長い裁判になったのは、何回か最高裁の間を往復したとかいろいろありますがね。そういう刑務所の処置がやはりある程度私は問題じゃないかと思うのです。それが必要であったかなかったかは別として、少なくとも本人が、いままで言っておったことは間違いであります、こういう反省の上に立っての口述書です。上申書ですよね。そういうものは押えるべきでなかったと思う。しかしそれは済んだことだからやむを得ぬとして、今後はそういうことのないように、少なくとも、あなたもおっしゃいましたが、いわゆる現場にある人といいますか、刑務所長等が自由裁量によってそれを押えたりあるいは渡さなかったりというようなことができないような――もちろん規則でそんなにこまかいことはきめられないと思います。しかしある程度の基準は私は必要だと思うのです。いまのような状態なら、何でもかんでも刑務所長の考え方にかかっておる。そうすると、刑務所長の人柄によって待遇が違うてくる、こういうことになる。少なくとも人権という上に立ってそれらの点についての交通整理が必要だと思うのです。
 それに関連してですが、監獄法の五十九条、六十条に懲罰の問題があります。これにいたしましても、「在監者紀律ニ違ヒタルトキハ懲罰ニ処ス」だけで、「紀律」とは一体何ですか。もちろん、あれは入所というのですか、入ったときに、訓示等でこれこれのことはしてはいかぬというような話はあると思うのですが、これにしてもはっきりとしたものはないのでしょう。あるのですか。
#134
○勝尾説明員 ただいまお話に出ましたが、入所した際に入所時教育というのを一週間前後やっておりますが、そのほかにパンフレットをつくりまして、収容者の心得とかあるいはこういう行為があると懲罰に付されるということをパンフレットにして配りまして、こういうことをしたら懲罰に付されるということのあらかじめの周知徹底をはかって現在やっております。
#135
○田中(武)委員 それは通達か何かによってきまっておるのですか。
#136
○勝尾説明員 通達あるいは私のほうで所長会同等を招集した際に、私からも訓示の形で伝えております。
#137
○田中(武)委員 これは、私はそういうことでなくて、少なくとも法律によるあるいは法律に基づく例によることが必要だと思うのです。そしてこれは公にする必要があると思うのです。その点いかがでしょう。
#138
○勝尾説明員 御指摘の点は、現在監獄法改正の際にその問題をやはり問題点の一つとして検討いたしておりますが、方向といたしましては、私の考えでは、基本的な根拠はやはり法律に置くべきではなかろうか。細部は省令に譲り、さらにその細部は設置法に譲っていく、こういう形をとったほうが適当なのではないかというふうに考えております。
#139
○田中(武)委員 その法律によっても、いまの五十九条のようなことでなくてもっとはっきりしたものにしなければいかぬと思うのです。現在も、五十九条があるから法律によっていると言えぬこともないのですが、私の言っておるのはそういうことです。
 次に、懲罰の種類ですが、ずっとありますが、ことに私は問題だと思うのは十、十一、十二号なんです。「七日以内ノ減食」という、こういうところにも刑務所の食事は恩恵的に食わしておるのだ、いわゆる応報刑主義の考え方が多分に出てきておるわけですね。食事というものは人間生きていく上において絶対必要なものなんです。それを七日間減食、しかもそれは三分の一から二分の一に減らすという。その食事については、施行規則の九十四条にありますが、一人一日当たりが主食で千八百カロリーから三千カロリー、副食で二千三百カロリーから三千六百カロリー、これは規則できまっておるのですね。これの半分または三分の一に減らすのですよね、大臣。しかもこの予算を見ますと、本年度で主食が四十円七十八銭、副食が三十二円九十一銭、合計七十三円六十九銭です。それで三千カロリー、三千六百カロリー、最高が三千六百カロリーですか、ということになっておるわけです。それを二分の一ないし三分の一に減らすというのですね。私は、いかに受刑者たりといえどもこういう体罰はかけるべきではない。
 次の十一、十二のこの軽屏禁あるいは重屏禁、聞くところによると重屏禁ということについては二十二年ですか、通牒か何かで、当分の間これは行なわない、こういうことで現在やっていないということを聞いております。しかしまだ法律の上には残っておるわけですね。しかもこの重屏禁というのは、まっ暗にしておいて寝具も与えないで板の間に、裸かどうかしたらぬが、ふとんも持たさずにじっとすわらしておくというのですね。これは拷問ですよ。少なくとも憲法でいう残虐なる刑罰です。そこで二十二年からこれは当分の間行なわない、つとめて避けるべきであるというような通達が出ていていまはやってないのだそうですが、それならなぜこれを改正しないのか。いまこれを検討しておりまして、そういうような点についても考えておりますということですべてのがれられるのですが、これを今日までこのままほっておいたということについては、私は法務省の、ことに矯正の職に当たっておる人たちの感覚がどうかしておると思うのですよね。どうなんです、大臣。
#140
○勝尾説明員 御指摘のように、重屏禁は全くやっておりません。
 減食の問題につきましては、指導といたしましては、減食罰はしないようにという指導を現在やっておりますが、実情を見ますと、全然ないかということになりますと、やはり累犯者の処遇困難者をかかえた施設においてときたま減食罰が行なわれているということも否定できないところでございます。
 その減食の方法でございますが、これがかなりまちまちでございますが、二分の一とか三分の一という減らし方はどこでもやっていない。まあしゃもじで一さじ取るといった程度のように私どものほうでは理解いたしております。
 そこでこの減食罰をどうするかという問題でございますが、世界の刑務所を若干私も見てまいりましたが、やはりどうにも扱いと申しますか処遇上困難をきわめて、減食罰しか効果がないという収容者があるという実情も否定できないようでございまして、やはり外国でもこういうものがあるところがあるようでございます。もちろん医師の診断とかそういう手当てをやりながらでございます。
 そこで、現在監獄法でもこの減食罰というものを、現場で実際処遇困難者を扱っている施設の職員の立場と両方考えて、どういう形でかこの減食罰というものをなくすることができないだろうかということを検討をいたしておりますが、現段階ではまだ結論が出ておりません。
#141
○田中(武)委員 少なくとも体罰をかけるべきじゃないです。私はそう思います。あなた、外国の刑務所を見てこられたそうですが、デンマーク、ノルウェーの刑務所に行かれましたか。私はそこまでもっていけとはいいません。しかし、少なくとも、憲法でいうところの残虐なる刑罰にこれはなりますよ。私の申し上げているのは、少なくとも食事を与える、ほかにもいろいろあります。先ほど言っている手当の問題、報償の問題、与えるという恩恵的なという考え方の上に立っていると思うのですよ。そうでなくて、最初私が申し上げましたように、受刑者といえども、一定の制限のもとに――法律による制限のもとに、憲法によって基本的人権は守られておる。少なくとも、世界人権宣言でもこれは守られておるのだ。こういうことを、私、まず最初に確認したわけです。そういうような場合に、それはひどい人もあるでしょう、あると思いますが、減食ということはどうでしょうかね。しかも重屏禁が現在行なわれていない。二十二年から何年たっておりますか。少なくとも形式論的にいうならば、法律にあるのに、それを通牒でやっていないことになる。施行規則で三分の一、ないし二分の一に減食する、こうなっておるのに、それをそのようにせずに、しゃもじに一ぱい程度だということなら、形式論的にいうならば、法に対して忠実でなかったということになるのです。こういう言い方、いまの私の意見とは逆になりますけれども、法という上に立てば、法務省の職員、刑務所の職員は法を守ってなかったということになるのです。そういうものであるならば、なぜ通牒を出すと同時にというか、その以前に法自体、施行令自体を改正しないのですか。そうじゃないですか。少なくとも法が認めておる。これはよくないと私は言っておる。悪法も法なりという理論がいいのか、悪法は守らなくていいというのか。いいのかどうか、それは議論は別にいたしましょう。しかし少なくとも、法務省の職員は法を守るべきである。守ることがいわゆる残虐な体罰になる、だから手心を加えておるなら、そういうことでなくて、法自体を改正すべきですよ。いま、監獄法の改正をやって一応の成案を得ておるというが、一体、いつ改正しますか。それまで、これをこのままほっておきますか。
#142
○勝尾説明員 いままで改正がされていなかったという問題でございますが、私、監獄法改正の過程を調べてみますと、監獄法の改正の議というのは、すでに大正十五年ごろから起こっている問題でございまして、戦後も委員会が幾つか素案をつくっているわけでございますが、おそらくその改正案が間もなくできるということで、この部分的な手直しをしてこなかったのじゃないかと思うのでございます。それと監獄法という法律が、いわゆる先ほどおことばにもございましたが、集団の管理、運営ということをやっていく法律でございますので、いわゆる一般に広く公布されて効果が及ぶ法律とは若干その辺の趣が違うというようなことから、法律の改正をやらないで、通達でやってきたのではないか、私はそのように一応理解をいたしております。
#143
○田中(武)委員 言いわけはともかくとして、大正十五年から検討に入っておると言ったって一体ことしは何年目ですか。そういうことでなくて、根本的改正をすることは、もちろん作業は進められるべきであり、それ以前に、少なくとも憲法から見て、あるいは人件という上に立って問題があり、現にやっていない、あるいは手心を加えておるというならなぜ改正しないのですか。法務省自体が法を曲げておる、あるいは一片の通牒で法を曲げておるということにもなるのですよ。大臣、いかがです。
#144
○西郷国務大臣 先ほど来矯正局長も申し上げておりますとおりに、監獄法の改正等もいま検討しておりますので、ただいま先生より御指摘の諸点につきましてもあわせて検討をさせてみたいと存じます。
#145
○田中(武)委員 あわせて検討でなくて、いつまでに直します。これが憲法違反でないというなら論議しましょう。憲法から疑わしいと言っておるのですよ。現に守られていないのですよ。通牒で消してしまっておる。いうならば一片の行政通牒でもって法を曲げておる。消しておるのですよ。それをそのままはっきりしない期間ほうっておこうというのですか。そんならもっと議論いたしましょう。
#146
○西郷国務大臣 いま御指摘の点等もございますので、急ぎ検討させてみたいと思いますので、暫時時間をかしていただきたいと思います。
#147
○田中(武)委員 それは次期通常国会と了解いたします。また一年後には決算委員会でこういうことをやると思います。この議事録が残っております。また、私、予算委員もやっておりますので、予算委員会でまた問題にするかもわかりません。ともかくいま突然ですからはっきりできないでしょうが、この次に私が申し上げたとき、いつ幾日どういう改正をいたします、あるいはそれが間に合いませんので、少なくとも現監獄法の名称と、特に憲法からいってどうかと思うというようなところは直します、このくらいの答弁をしてもらいたいと思いますが、いかがですか。
#148
○西郷国務大臣 憲法に関連しての御意見でもございますし、憲法に関連するとすれば非常に重要な点もございますので、詳細に検討を加えまして御期待に沿いたいと思います。
#149
○田中(武)委員 食事のついでですが、少年院ですね。ここは少なくとも矯正教育という上に立って運営せられておると思うのです。私の調べてもらったところによると、多摩少年院で食事のときに、できるなら私はこの少年たちと教官が一緒に食事をすべきではないか、ところが、夜でしょうが、宿直教官は別なところで食事をして、食事中、用事のない者は入室をしないようという立て札を立てておるそうですね。これは少年から見れば何かいいものを食っておるのではないか、そういうように感ずるのは当然だと思うのです。それが少年院法第一条及び第四条によって矯正教育を受ける施設になっておる少年院において適当であるかどうか。いかがでしょう。もし適当でないとするならば、そのようなことは直ちにやめさせる、いかがですか。
#150
○西郷国務大臣 私もただいま初めてそういうことを知りましたので、調査、検討を加えて、悪ければ直ちにやめさせたいと思います。
#151
○田中(武)委員 ついでに監獄法でもう一つ、七十五条に死体解剖がありますね。そうして施行規則の百七十九条にもこれを受けての規定があります。しかし、私はこれは逆じゃないかと思うのですね。少なくとも本人が生前自分の死体を解剖のために提出するというか、供出するというか、そういう明確なる意思表示が必要であるという考え方に立たねばならぬのじゃないかと思うのです。ここは監獄法施行規則によると、消極的意思といいますか、本人が反対しなかった場合にはというようなことになっておるのです。「生前ニ於テ解剖ヲ肯セサル意思ヲ表示シタルトキハ」こういう、ともかくちょっと読みくだせぬような文句がこの法律には書いてあるのですね。だから、こういうこともやはり人権という上に立てば、まあ死んでしまえば人権はなくて物体だ――法律上物件です、物ですが、しかし、少なくとも人間感情からいって、死体解剖についてもやはり積極的な本人の意思表示が必要である。死んでまで別扱いする必要ないです。死体になって仏になればすベてが消えるというのが仏法上の精神じゃないですか。受刑者だからといって死んでからまで区別するのですか。どうです。
#152
○西郷国務大臣 人体に関することでもございますし、ただいま拝聴いたしましたので、十分検討を加えまして遺憾なきを期してまいりたいと思います。
#153
○田中(武)委員 監獄法についてはまだたくさん疑問の点があります。しかし、先ほど来言っておることを十分に取り入れてもらい、なおかつ、国連規則を十分に考慮をして、一日も早くこういった古い法律は直すべきだ、こういうことを申し上げておきます。
 次に、やはり人権に関連してでありますが、刑事補償の問題がございます。
 まず、刑事補償の根本的理念は何です。もう少しくだいて申しますと、末弘厳太郎博士は、大正時代に、刑事補償は社会正義の面からも当然である、こういうふうに言っておられますね。そこで、刑事補償というものの観念は、国が救済するものなのか、法律上の国の義務なのか、どういうふうに考えておられますか。
#154
○川井政府委員 憲法四十条の精神に基づくものでありまして、国の法律上の義務というふうに理解いたしております。
#155
○田中(武)委員 まず刑事補償の観念というものが明確に出てまいりました。
 そこで、これはもう皆さんも御承知ですが、この十二月十一日の各新聞で、たとえばある新聞を見てみますと「人を殺して刑事補償」 「分裂症男に二十六万円」「被害者側は泣き寝入り」。「殺人の元被告に奇妙な刑事補償」 「二十六万円を支払え」。「夫婦殺傷の精神病者に刑事補償金を出す」「無罪なら除外できぬ」このことについて、私は、いまの憲法四十条に、無罪の裁判を受けた場合とあるのですから、それがいかなる理由がありとせよ、いわゆる心神耗弱といいますか、こういうことで刑事責任なしということで無罪を受けた人に対する刑事補償はいけないと申し上げておるのじゃありません。しかし、こうしたときに社会正義だという考え方を――法律上の義務だということなら、法律はやはり正義ですよ。だから社会正義の観点から立てば、当然、これによって加害者が補償を受けるなら、被害者はどないしてくれるんだ。この問題は法務省プロパーの問題であるかどうかは知りません。しかし、それは当然出てくると思うのですが、少なくともこれについてはいわゆる被告人の人権と同時に殺された人たちの人権はより守られねばならない、こういう上に立って、この問題を、この間の十日の判決ですね、これは一々申し上げなくてもおわかりと思います。このような例は、前に神戸地裁の姫路支部でもありました。こういうことについて、社会正義という上に立ってどう考えられますか。何らかの必要はないでしょうか。
#156
○川井政府委員 法律に基づく社会制度というふうなものがどういうふうな形であるべきかということにつきまして、ただいま御指摘のとおり、まさに社会正義という基準が一つの有力な基準であることは、私も全く同意見でございます。
 本件の刑事補償でございますが、御存じのように、旧刑事補償法では、心神喪失で無罪となったというふうな場合には補償しないという制度になっていたわけでございます。いまの憲法になりまして、四十条に明確な規定が設けられましたので、その四十条の精神というものをあらゆる面から十二分に検討いたしまして、心神喪失を理由として無罪になったというものをすべて補償から除くということは必ずしも適当でないということで、現行の制度になったわけでございます。ただ、いま御指摘のような事件が数件出てまいりましたし、また、先般議員提案の形でもって刑事補償法全体についての考え方について、新しい観点からこれを考え直すべきじゃないかというふうな御意見も出ておりますし、私ども部内におきましても早くから、訴訟費用の点をもからめまして、刑事補償法全体について再検討する必要があるということでございまして、鋭意検討を進めている段階でございます。
#157
○田中(武)委員 現在の元被告に刑事補償したということについて私は言っておるのじゃないのですよ。旧法が、責任能力が否定せられたために無罪になった者には全然補償しないというたてまえをとったことも知っております。しかし、これを見た場合に、バランスというか、社会正義というか、人権の上に立って何だかおかしいじゃないか、こう思うのです。だから、このことはやはり法務省ですね、法務省がまず考えねばならぬと思うのです。そういう場合の被害者の側に立っての問題ですね、これはやっぱり法務省が考えるべき問題だと思うのです。
 それから、このことに関連してですが、法制審議会の刑事法特別部会第三小委員会か何かが精神異常者の再犯防止のために保安処分をするとかいうような何か答申を近くするとかせぬとかいっていますね、この新聞を見た場合に受ける感じは、これは社会通念というか常識として、これは片手落ちじゃないかということと、それから、こういうものを野放しにしてもらったらたいへんだということ、このことは私だれでも感じることだと思うのです。そこで、被害者側に対する人権の問題はどうなるのかということ、それから、再犯だけでなくて、危険なものを保安処分というか、保護していくという、こういうことが必要じゃないかと思う。危険が野放しになっておるという状態ですね、この二つはだれでも考えると思うのですが、そのことについていま聞いておるわけです。そこで大臣、ひとつ政治論としていかがでしょう。
#158
○西郷国務大臣 ただいまの問題は、法務省だけでなく、厚生省も関連する問題と存じますが、身体障害者のそういう問題については、なかなか重要なことと考えますので、厚生省等の意見も参酌いたしまして、よく対処してまいりたいと考えます。
#159
○田中(武)委員 それから刑事補償についてもう一つ注文をするならば、刑事補償法第一条要件ということになっておって、厳格にしぼっておるのですね。一口に言うならば、抑留または拘禁、あるいは刑の執行または拘置、あるいはこれに準ずるものと、一、二、三項となっておるわけですね。これはわかるのです。そこで、精神的な被害、言うならば慰謝料、罪なくして有罪決定をせられて、二審あるいは上告審において無罪になることは別として、そういう精神的な苦痛、あるいはその回りの人たちに与える精神上の苦痛等々、あるいはそのことだけによって一生を台なしにする人もあると思うのです。いわゆる有形だけでなくて無形な、言うなら損害賠償というか、慰謝料ですね、こういうものについては刑事補償法は考えていないわけですね。これについて考慮を払う余地はないわけですか。
#160
○川井政府委員 この刑事補償というものはもうよく御存じのとおりでございますが、定型化された一種の国家賠償でございまして、その根本的な考え方としては、ただいま御指摘になりましたような精神的な慰謝料的なものをも含めてこれが定型化されている。ただその金額がそれで適当であるかどうかということは別問題でございますけれども、考え方としてはそういう考え方のもとに立案されているものでございます。いわば一種の無過失賠償責任であり、したがいまして、それは個個の事案によりまして算定が困難でございますので、一定の定型化された金額でございますが、内容といたしましては精神的な慰謝料的なものをも含めた内容のものである、こういうふうに考えておるわけであります。
#161
○田中(武)委員 刑事局長と私は議論する気はないのですが、いまの、一つは無過失的なものだ、それははたして無過失なものであるかどうか疑問だと思うのですね。それじゃそういう場合は憲法四十条じゃなくて十七条の国家賠償にいけるのかどうかということも問題になってきます。それは別として、先ほど言ったように、刑事補償法は抑留、拘禁、刑の執行、拘置とあげておるわけです。だからそういう慰謝料については私は含まっていないだろうと思うのですよ、この要件にぴしっと個条書きにしておるところを見ると。だからそういうことも含めて、私はそうなると損害賠償の算定あたりが、あるいは慰謝料の算定あたりがむずかしいと思うのです。要は金額になると思うのですが、この補償金額は昭和二十四年で一日二百円ないし四百円だったですね。現在六百円ですか、七百円ですか、どんなになっておるのですか。
#162
○川井政府委員 先般、この前の五十八通常国会で改正をしていただきまして値上げをいたしました。そして最低六百円から最高が千三百円になりました。
#163
○田中(武)委員 大臣、私のいまずっと言っていることも関連してですが、六百円から千三百円、これはやはり一般国民の生活程度という問題、それから私は賃金の現在の状況、さらに国家財政を無視することはできないと思うのです。国家財政を見て適当なものでなくてはならぬと思うのですが、これはやはり現在では、昨年改正したところというけれども、大体千三百円は出ないです。たいてい六百円か七百円でしょう。そういう点についてどうでしょう。私は、去年改正してすぐにまたことし改正せよとは申しませんが、少なくともこの補償金額は、先ほど言ったように、一般国民の生活程度の上がってきた程度、賃金の状況、あるいは国家財政等をにらみ合わしてきめるべきだと思うのですが、どうでしょう。
#164
○西郷国務大臣 いまの件につきましては、大事なことでございますけれども、ほかの補償関係の問題もございまして、それと勘案いたしまして検討を加えてまいる必要があるのではないかと思いますので、そうさしていただきたいと思います。
#165
○田中(武)委員 やはり人権に関連して、出入国の問題があると思うのです。もう時間の関係もありますから、私はだいぶん持っていますが、急ぎます。聞くところによると、出入国管理令を廃止して管理法をつくる、こういうふうにいわれておるのですが、そのことについて、それはいつどういう観点に立ってどのような規定をもってつくられるおつもりなのか、お尋ねしたい。
#166
○西郷国務大臣 先ほど法務委員会でも申し上げてまいりましたけれども、出入国管理令は、御承知のとおり、手を加えればいろいろの方面に手を加えなければなりませんので、先般来法務省におきまして慎重に検討を加えておりますけれども、御承知のとおりなかなか重要な要素もたくさんございますので、まだ検討中でございまして、次期国会に提出するかどうか、今後の検討状況を見ましてきめてまいりたいと考えますので、いま先生のおっしゃいました問題その他にもきめようといたしますとなかなか複雑な重要な意味を持つものがたくさんございますので、いま苦心して検討いたしております。
#167
○田中(武)委員 それが特定の国を対象として締めつけようというような考え方の上に立っておれば私いけないのじゃないかと思う。さらに一面、不良外人の日本は天国だといわれておる。そういうことについてはチェックすべきだと思うのです。
 それからもう一つ、これはきのうも何か大臣どこかでものを言っておられたようですが、在日朝鮮人の北朝鮮帰還問題ですね。これはまさに私は人道上、人権の問題だと思うのです。これは木村官房副長官の言も二、三日前の新聞に出ておりましたが、一両日中に態度をきめて云々ですが、こういうことについてどう考えておられますか。
#168
○西郷国務大臣 いま御指摘のとおり、中国問題もあったりいたしまして、決してそういうものを対象にするのではなくて、イデオロギーは違いましても、国際親善の上から入国の問題も考えていかなければならぬと思いますが、実際にはなかなかやっかいな問題がたくさんございますけれども、いま鋭意苦心をして検討いたしておるのでございます。
#169
○田中(武)委員 次を急ぎたいと思いますが、先ほど森本君が死刑囚についてお伺いしたわけなんですが、現在八十人おるということです。現在の通説といいますか考え方からいえば、死刑は憲法三十六条の残虐な刑罰ではない、いわゆる憲法は死刑を許しておるのだというのが通説のようです。しかしこれに対する反対論もあります。そこで、死刑というものを考えてみた場合に、大体野蛮な時代あるいは戦争の状態にある、こういうときにはいわゆる死刑ということも簡単にやっておるし、しかもその死刑の方法がもっと残忍な方法であった。日本でも戦国時代等を考えた場合には思い半ばするものがあります。そこでやはり平和ということ、それから文化が発展してくるということから考えた場合には、やはり同じ死刑でもその方法がだんだんと変わってきておる。私は、やはり平和に徹し――これは総理の好きなことばですが、文化国家とするならば、私はこの際もう死刑廃止の問題についてひとつ考えてみたらどうか、こういう考え方を持っているわけです。御承知でしょうが、御参考までに申しますと、ヨーロッパではスイス、西ドイツ、イタリア、オランダ、ノルウェー、デンマーク、スペイン等々、あるいはアメリカでもメイン州やミシガン州等々、もう死刑廃止のところがだいぶありますね。どうでしょうね。この死刑という問題についてそろそろ法務省あたりでも真剣に取り組んで議論したらどうでしょう。先ほど、現在八十人あるという、たとえば帝銀事件の平沢、彼は二十年間あのままほっておかれたわけです。これは精神状態がそういうことであるのか、あるいは特別な理由があるのか、まだあれには実際判決の結果についても一般国民は疑問を持っている。これはこれでよろしいとして、ノーマルな状態にあるならば、死刑が言い渡されて執行までの長い間悩むんですね。それは私は残虐ではないか、残酷ではないか。だからといって、きまったらすぐ殺してしまえ、こういうことを言っているのじゃないですよ。幸徳秋水の事件のように、死刑決定と同時に、あくる日殺してしまえというようなことを私は言っているのとは違いますよ。しかし、死刑の宣告を受けて、執行まである期間がある。その間死刑囚が相当悩む。悩んだあげく一つの悟りを開いたところで、ということが一つのあれであったろうと思いますが、これは残虐じゃないか。等々を考えた場合に、死刑廃止について前向きにひとつ法務省あたりで、法制審議会等で検討に入る、いかがでしょうか。
#170
○川井政府委員 御承知のように、法制審議会で刑法の全面改正を検討いたしております。この審議会の中におきまして、死刑のあり方につきましてもすでに議論が激しく戦わされております。そしてこの委員会の中には、きわめて有力な死刑廃止論者ももちろん参加しておりますので、いろいろな角度から死刑の存置、廃止につきまして真剣な議論が重ねられております。いずれ法制審議会の結論としての意見がそのうち出るのではないかというふうにも考えております。もちろん法制審議会と別個な立場から、現実の現行法について責任を持っておる法務当局におきましても、いろいろな観点から検討しておることは当然のことでございます。あわせまして、法務省全体といたしまして、御指摘のとおり、この問題について慎重また真剣な検討を加えている、こういうことでございます。
#171
○田中(武)委員 刑法改正について法制審議会をやっているということは昔からですよね。三十何年前に刑法改正草案というのが出たことがあるのですね。ぼくら学生時代にやったのです。それがまだずっときておるのでしょう。一部新しい憲法のもとで抵触するようなものははずしましたがね。だからそういうことじゃないのです。もっと身近な問題として、いまあなたは法制審議会だけでなくて、法務省においてもと言うから、そうだけれども、私は真剣に、前向きに考えるべき時期が来ておるのじゃないかと思う。
 もう一つそれとあわせて安楽死の問題です。この間も森川医師事件という悲劇がございました。あれを世間は安楽死、こういっておりますが、これはいわゆる安楽死の事件と違いますね。この問題について思うことは、重症身障者あるいは身障児の救済という人権的な問題だから、これは厚生省だろうと私は思いますが、法務省も人権擁護のたてまえから、こういうことについて考えるべきである。そのことによって、森川医師の悲劇を再び繰り返してはならない。こういうことは言えると思う。このことは世間では安楽死事件等々と新聞等にもいっておりましたが、しかしこれはいわゆる安楽死ではないと思う。
 そこで、刑法上のいわゆる安楽死の問題ですが、瀕死の状態にあたって苦痛に苦しむ者からその苦痛を除くために死期を早める措置――現在でも苦痛を除くために麻薬を打つ。その副作用として若干死期を早めるということは現にありますね。あるいはまた、ここで強心剤を打てば、まだある程度寿命といいますか、死期が長引く。しかし、あまり苦しむので強心剤を打たずに、結果的に死期が早まったということもあり得ると思います。医師がそういうことでやったとすれば、これは不作為による殺人罪ともいえないことはない。そういうことも含めて、少なくとも死期が緊迫しておるということ、苦痛が激しいということ、それからその傷病者の直接な意思表示を必要とするということ、そして、とられる医師としての措置が倫理的に認められるというようなこと、こういう点を考えて、安楽死についてももう一つの規定を持ってもいいのじゃないか、私はこういうふうに思うのですが、どうでしょう。
#172
○川井政府委員 安楽死の問題につきましても、刑法の委員会の第一小委員会でもっていろいろ検討が重ねられております。いろいろな観点からの非常にたくさんの資料と、それからまた深い観点からの検討がなされておりますので、法制審議会は法制審議会としての結論がそろそろ出ると考えております。
 ただ、法務省の刑事局長といたしましては、やはりこういうふうな刑罰法令の立案の責任者でございますので、そういう観点からももちろん検討いたしておりますが、これは非常に事がめんどうだと思います。法律的にただいまおあげになりましたようないろいろな条件を抽象的にあげることは可能でありますけれども、実際のケースにおいてこれを当てはめて、この場合は違法性がないのだ、これはあるのだ、こういうふうにいうのは非常に困難だと思います。
 御承知のとおり、判例でもって安楽死ということで無罪にした例はまだ一件もございません。またこれも御存じのとおり、たくさんの下級審の判例の中には、こういう場合には安楽死で違法性がなくなるぞというのもございますが、それらは七つも八つもの条件を掲げまして傍論としてこういうふうな場合にはよかろうというふうにいっておりますので、私はやはり先を見越しての検討はもちろんいたしておりますけれども、ここ当分の間は具体的なケース、ケースによってその考え方を積み重ねていくというふうなところが適当ではないかというふうに考えております。
#173
○田中(武)委員 きょうは、私冒頭申しましたように、国際人権年にあたって、人権という問題をずっと追っていって、法務大臣あるいは法務当局に考え方を聞きたいということで、いろいろあげてきました。まだあります。
 またこれが終わりましたら、次にいわゆる矯正保護といわれているが、矯正は施設内の問題である。保護は、刑余者といいますか、出てからの問題、保護司の問題あるいは先ほどもちょっと問題になっておりました矯正協会の問題等々、まだたくさんお伺いしたい点がございますが、大臣が一時四十分ごろまでにということで、委員長のほうから催足もございましたし、同僚浅井委員も少なくとも十分間くらいは大臣に質問したいということでありますので、自後の問題は保留いたしまして、あすあるいはまた適当なときに行なう。あすやる機会があると思いますが、そういうことで、一応きょうの質問はこの程度にとどめます。
#174
○鍛冶委員長代理 浅井美幸君。
#175
○浅井委員 今回の京阪神土地事件の問題は、先般の予算委員会でもございました。私は重ねてこの点についてお伺いしたいし、また別の角度からこの問題を取り上げたいと思います。
 大臣の御都合で時間が十分ぐらいしかないというので、まず最初に大臣にお伺いしたいのですけれども、今回正示代議士の件で不起訴になった、このことについて非常に検察の威信とかいろんな問題で国民の中で批判がございます。それをめぐってあっせん収賄という問題についてざる法ではないかという声が非常に高いのです。このあっせん収賄罪ができあがったのは、国民の政界浄化の声が非常に高まって、そしてその政界浄化の目的を果たすためにあっせん収賄罪ができた。私はこういうふうに記憶しております。
    〔鍛冶委員長代理退席、丹羽(久)委員長代理
  着席〕
したがって、今回のようにざる法であるというように世論が高いことについては、今後このあっせん収賄という法律に対して法務大臣としてどのようにお考えになっているか、また今後どのように改正されるか、その点の御決意をまず伺いたいと思います。
#176
○西郷国務大臣 ただいまのあっせん収賄罪につきましては、御承知のとおりいろいろ論議の的にもなっておりまするが、非常に重要な要素をも含んでおりますので、今前慎重に検討いたしてみたいと思います。
#177
○浅井委員 慎重に検討ということは、どなたでも言えることでありますけれども、今回の問題で山田という京阪神土地会社の会長は収賄あっせんのために増賄した。正示代議士の場合は収賄をしていない、顧問料であるといっております。この顧問料といわゆる収賄との関連性が非常に微妙になったわけです。このような点についてのこまかい法律の問題点でありますけれども、この点については大臣どういうふうにお考えになりますか。
#178
○西郷国務大臣 非常にむずかしい問題でもございますし、具体的な事件でもありますので、刑事局長から説明させます。
#179
○川井政府委員 顧問料でありますとか、あるいは陳情の謝礼とかというふうなことがいわれておるようでございまるけれども、そういうふうな弁解が出たからあっせん収賄にならないんだということではもちろんございませんで、いろいろ弁解は犯罪について必ず出ますけれども、その弁解の合理性があるかどうか、正しいかどうか、それからまたさらに弁解を否定するような証拠が十分あるかいなかということで判断がきまるわけでございますので、ただ顧問料であれば常にこの法律にかからないんだ、顧問料という弁解をすればこれにかからないんだということにはならないように思うわけでございます。
#180
○浅井委員 大臣に集約しますが、今回の事件もやはり政治的な圧力が非常にあったんではないかという疑いがかかっております。最高検首脳会議の模様等あるいはそれまでに最高検を通じて地元の県警あるいは地検等にもいろいろな働きかけがあった。また、きょうもおいでになっていますが、川井さんも何か六甲へおいでなっているらしいし、それらのことも一連の疑いがかかっております。この点について大臣どうでしょうか。
#181
○西郷国務大臣 あの事件につきましては、両院の予算委員会でも御答弁申し上げましたとおりに、非常に長期間慎重に不偏不党の立場で、これは検察庁の当然の立場でございますが、そういう厳正な立場で捜査、検討いたしましたが、いまお話しのとおりあっせん収賄罪に対する証拠不十分で不起訴処分と相なったわけでございます。結果につきましてはいろいろのお考えもあると思いますが、私は就任以来検察に満幅の信頼を置いておりまして、そうして最高検も最後には加わりましての結論でございますから、いま御心配のような圧力とかそういうようなものは全然ないというふうに私は確信いたしておる次第でございます。
#182
○浅井委員 具体的に申し上げますけれども、神戸地検が最高検の判断を求めるために書類を送検いたしまして、最高首脳会議であの結果が出たのは十一月の三日でありましたか、あれまでに大体二カ月たっておったのでございますけれども、その問いわゆる総裁選挙等もありまして、その総裁選挙等をめぐってわざとその結果を出すのを避けておったというようにいわれておりますし、またもう一つの理由は、いわゆる最高首脳会議で四者がそろわなかった、このようにいわれておりますが、この点はどのようなわけで二カ月間遷延になったか、御存じでしょうか。
#183
○西郷国務大臣 具体的な問題でありますので、詳細は刑事局長に説明をさせます。
#184
○浅井委員 大臣、これでけっこうですから、どうぞ……。
#185
○川井政府委員 九月二十八日に兵庫県警から検察庁が事件送致を受けまして、それを受理して内容を詳細に検討いたしました結果、証拠関係でかなり微妙なものがあるというふうなことで、ほとんど全般にわたりまして、検察官がもう一回証人、参考人、被疑者その他証拠物件全般にわたりまして、捜査のし直しというと語弊がございますけれども、補充的な捜査をいたしております。その結果を持ち寄りまして、検察首脳会議で起訴ができるかどうかということの判断があったわけでございまして、ほぼ二カ月間というこの期間は、この事件の内容、実質からいいまして、それからまた、検察官が行なった補充捜査の内容からいいまして決して長過ぎるものではないというふうに理解いたしております。御存じのとおり、LPG事件も日通事件も、東京地検というような非常に有力なスタッフを擁しているところでも、日通事件の場合には、前の年の九月の終わりから始めまして一応捜査が終わりましたのは次の年の十月でございましたので、神戸地検の実態からいいましても大体この程度の期間が必要ではなかったかと考えております。
#186
○浅井委員 神戸地検の最終書類はいつ提出されましたか、そして首脳会議の結果が出たのはいつでしたか、はっきり日にち別に言っていただきたい。
#187
○川井政府委員 御質問の御趣旨にぴったり合うようにお答えできないのが残念でございます。できればするわけなんでございますけれども、地検、高検、最高検の関係と申しますのは御存じのことだと思いますけれども、日をきめないで、常時証拠関係の内容と事件捜査の推移と見通しというようなものを上級官庁に報告をいたしまして、そのつどいろいろ指揮を受けて捜査が進んでいるというのが実際でございます。軽微なよくわかった定型化された窃盗事件とか業務過失の事件は別問題でございますけれども、このようなあっせん収賄というような非常にめんどうな事件につきましては、常時連絡をして指揮を受けるというのが実態でございますので、こまかくいついつかに神戸地検にどこからどういうことがあったということを詳細に申し上げる資料が実はないわけでございますが、具体的には一番最後の段階では、ただいま御指摘のとおり三日の日だったと思いまするけれども、神戸の地検、大阪の高検の担当官が上京して参りまして、最高検におきましてこの事件についての処分の最後の協議があってその結果できまった、こういうわけでございます。
#188
○浅井委員 神戸地検が、最高検の今回の措置に対して、非常にいろいろな意味から不審を持っておるということがうわさされています。そのときにいま私が申し上げた、約二カ月前の十月ですかに、書類を送検をしてあった。その結果が出たのが、いわゆる先ほど申し上げたように四者会議というのですか、最高首脳会議は。その最高首脳の四者の人たちがいろいろな理由でそろわなかったので首脳会議がおくれた、このように私は聞いておるのですが、この点はどうですか。
#189
○川井政府委員 特にそういうふうな特別な事情はなかったと思います。
#190
○浅井委員 では、どうしてもそれを否定になります。今回の最高首脳会議できめられた不起訴の理由をお答え願いたいと思います。
#191
○川井政府委員 大体要点は二つございます。第一点は京阪神土地株式会社の山田何がしが正示議員に対して法律に言うところの不正の請託をしたかどうかという事実を確認する証拠が十分でない、これが第一点でございます。
 それから第二点は正示議員が、問題の銀行の検査に当たった大蔵省の係官に対して何らかの働きかけをしたかいなかということについて、これまた証拠がない。この二点がはずれますというと、あっせん収賄罪の要件は大きくはずれることになりますので、犯罪の成立が見込みがない、公訴を提起するだけの確信を持てない、こういうことでございます。
#192
○浅井委員 ちょうど警察庁の方もお見えになっていただきましたので、私から警察庁の方にお聞きしたいのでありますが、この事件はまず兵庫県警のほうで京阪神土地事件が取り扱われた。その中にいろいろのことを山田自身が話してもおりますし、また山田自身が警察等で供述もしてきたというようなことを言われておりますし、また私もその話を聞いたわけであります。
 まず取り調べの中で教えていただきたいと思いますが、四十二年十月二十一日に第二議員会館に行って正示代議士の部屋へ行った。そうして沢本の紹介によって、沢本というのは鈴木学術財団の理事でありますけれども、この紹介によって正示と名刺交換し、導入預金のことについて、このことを銀行局は知っておるので、取引銀行に融資引き締めを指示したことについて事情を説明した。そうして正示代議士がこれを引き受けた、このように言われておりますけれども、この点について兵庫県警のほうでどのようにお調べになったか、お知らせ願いたいと思います。
#193
○内海政府委員 お答えを申し上げますが、その前に御了解を得ておきたいと思いますのは、私ども兵庫県警察から、のみならず一般的に第一線の警察から犯罪に関する捜査についての報告を受けておりますが、その報告におきましてはいろいろ膨大な資料に基づいて報告をしてまいりますけれども、捜査の内容の一つ一つ、あるいは証拠に取り上げた、あるいは取り上げないというふうなことの一つ一つというものについては、正規に報告をしてまいっておるものではございませんで、いずれも当該県警察におきまして捜査を遂げて送致すべき場合には送致をする、こういうことでございますので、もし捜査の内容について、あるいはそれを証拠上どういうふうな捜査をしたのかというふうなことでお尋ねをいただきました場合においては、単にお答えしかねるというだけでなく、そういうことについて詳細なお答えを申し上げ得る材料を私どもは持っておらない、こういうこともございますので、その点はあらかじめ前もって申し上げて御了解を得ておきたいと存じます。
 ただいまの御質問の件につきましても、ただいま申し上げましたような観点から、私それの詳細について正確に承知をしておるわけではございませんが、ただ事件を兵庫県警察におきましては捜査をいたしまして、犯罪ありということで神戸地方検察庁のほうに事件を送致いたしたわけでありまして、その送致した場合におきまして、いまお尋ねの件については確かに事件の当初においてただいま御指摘の二人の人が一人の立ち会いといいますか、参加者を得て会っておるという事実は私どもも承知をいたしておりますが、その中においてどういうふうなことが語られたかということについて、そのことにおけるものが証拠上この犯罪について兵庫県警察がきわめて重要な容疑という形での証拠にとっておるというふうなことは、私聞いておりません。
#194
○浅井委員 では、このときに、一々こまかい話では申しわけないのでありますけれども、正示代議士は顧問料という名目にしてほしいということで、年間百万円のうち五十万円の小切手を渡されたときに、その半分ということにしてほしい、このように言われております。このことについていま警察当局のほうからのお話もございましたのですが、この山田の容疑でございますけれども、これは送致した、十分かつ慎重に起訴されたわけでありますけれども、これは警察庁として確信を持って送検されたわけでありますけれども、この内容はどういう罪名によって、あるいはどういう容疑で起訴されたのか、その点をお知らせ願いたいと思います。
#195
○内海政府委員 いま起訴とおっしゃっておられますが、おそらくことばだけの問題と思いますが、地検のほうに送致をいたしたわけでございます。この事件については、あるいは御存じと思いますが、兵庫県警察で捜査をいたしましたのは、京阪神土地について、要するに会長あるいは会長の関係する多くの関係者との間における、あるいは背任あるいは贈収賄あるいはいわゆる導入預金に関する取り締まり法の違反というふうな、かなり多面的な犯罪であり、さらに土地を購入しようとした多くの人たちから、山田が要するに手付金という形で詐欺を行なったというようなことを含む非常に多解的な犯罪を捜査いたしたものでございます。その捜査の一環として、いわゆる代議士のあっせん収賄罪の容疑が考えられましたので、兵庫県警察といたしましては、これらの捜査もあわせ行なったわけでございます。その結果兵庫県警察の得ました証拠資料あるいは捜査の結果得ました関係者の供述等を、総合的に判断いたしまして、山田に関しましては贈賄、代議士につきましてはいわゆるあっせん収賄罪という容疑をもって、捜査を遂げて、神戸地方検察庁のほうに送致をいたした、こういうことであります。
#196
○浅井委員 その点、山田の話の中に、大阪方面の益田という料亭で四十二年の十一月四日と四十二年の十一月の中ごろですね。そこで同じように正示代議士と話し合いしておる、こういう事実はありますでしょうか。
#197
○内海政府委員 私、山田の供述の中にそのような話があったということは、口頭の説明を受けましたときに聞いておりますけれども、いわゆるそれが事実であったかどうか、あるいはそれの中でどういうふうなことがなされたかというふうなことについての話は、いまのところ記憶がございません。
#198
○浅井委員 それでは川井刑事局長にお伺いいたしますが、いまの件についてはどうでしょうか。地検のほうの捜査では、この点については出ていないでしょうか。
#199
○川井政府委員 先ほど冒頭に内海さんからもお話がございましたが、法務当局も具体的な事件について一々こまかい報告はとっておりません。これは御案内のとおり検察庁法十四条で、大臣は個個の事件を指揮してはいけない。指揮する場合には検事総長だけを指揮するのだということに相なっておりますので、その十四条が響いておりまして、具体的な個々の事件につきましては、ただいま仰せのようなどういう調書ができておるか、その調書の内容にどういうような供述があったかということについては、報告はないわけであります。ただそうは申しましても、この事件、大きな問題になりまして、国会でも取り上げられまして、議論の対象になりましたので、私は国会答弁の必要上という意味で、行政的な意味で、この事件の捜査の概要についての報告は受けておりますが、それもおのずからそういう意味の限度でございますので、ただいま御指摘のようないつ幾日にどこでだれが会ったかということにつきましては、的確な報告は私は入手いたしておりません。
#200
○浅井委員 ではいまの件について、私は、請託を受けておるし、あっせん行為があると思うのです。したがって、私はこのことについて申し上げたいと思いますので、御答弁願いたいと思います。
 まず、冒頭申し上げました、十月の二十一日に山田自身が議員会館にたずねてきて、そうして正示代議士がこれを引き受けた。これは明らかに請託行為だと私は思うのです。ましてこのあとで、正示代議士は、銀行局の後藤管理課長や谷川検査部長はよく知っており、こんな問題は簡単に片づけられる、このように言った、これはまさにあっせん行為を示しておるものと思うのです。また次に、十月の二十二日に正示代議士が山田事務所へ電話をかけて、後藤君から、君がばく大な導入預金を入れて何十億円という融資を受けていることを聞いたが、私が中に入ったらおそらく好転するだろう、このようにかかってきた、このように私は聞いておりますけれども、この点については刑事局長どうでしょう。あっせん行為だと思うのですけれども……。
#201
○川井政府委員 いつ幾日どこでだれが会って、どういう話をしたかという報告は受けておりませんけれども、冒頭に申し上げました第一の要件である不正の請託をしたという事実が、どういうふうないきさつで認められないのかという概要については承知をいたしております。その件でお答えをいたします。
 この問題の山田という人が沢本という人を介して正示議員に対して請託をした、こういう容疑が出てきているわけでございます。そこで山田がそのことについてどういう供述をしているかということ、間におりました沢本という人がそのことについてどういう供述をしているかということ、請託を受けてこれを承諾したといわれておる正示議員がそのことに対してどういう供述をしているかということ、三つの供述がございます。それからそれを裏づけるような客観的な状況証拠がかなりございます。それらを総合いたしまして、なるほど山田という人はただいま御指摘のような供述をあるいはしているのかもしれませんけれども、いま申し上げましたような全部の証拠を総合いたしまして、山田が正示代議士に対して不正の請託をしたのだという事実はとうてい認める証拠がない、こういう結論だ、こういうことでございます。あとは私の推定になりますけれども、おそらく間に立った沢本なりあるいは正示議員なりは、このことに関して山田の供述と全く相反する、あるいは趣旨が著しく違うような供述をしているのではなかろうか、こう思うわけでございまして、そうしますと、検察官として真相は何だ、こういうことになりますというと、勢い供述以外のたくさんの状況証拠によりまして、山田の言が是か、あるいは正示議員の言うところが否かということの判定をすることになろうかと思います。そこでいろいろ時間をかけて状況証拠を総合考覈いたしましたけれども、結局山田の供述というものを補強するだけの十分な資料が得られなかった。こういうことでもって、不正の請託をした事実というものを認める証拠がなかった、こういう結論に達したものではないか、こういうふうに感じます。
#202
○浅井委員 私はいま具体的なお話をしてここで川井さんにお聞きしたわけです。あなたが先ほどからお答えになったのは全部抽象論なんです。そうではなくて、私は具体的な事例をあげてあなたにお聞きしたのですから、具体的なことをお答えいただきたいのです。たとえば三つの供述、山田本人、沢本本人、正示代議士の供述、こういうふうに述べられておるから、こういうふうにおかしいのだ、あるいは状況証拠がこの辺がまずいからこの辺が裏づけがとれなかった、そういうものはこういうふうにそろっているということをあなたがお示しになるなら私は納得します。しかし、それを示さないで、いまのような、私の具体的な話にかかわらず抽象的なそういう答弁でもってこれを答えられたのでは、私とは全然見解が違ってしまうわけです。ですから、私があなたに求めるのは、私が聞いたこと、これはあっせん行為になるのではないか、こう言ったわけです。ならないということを検察首脳会議でおきめになったのですから、その結論として、ただ新聞紙上で出ておるような問題ではなくて、この事件はもう不起訴と決定した事件なんです。公判とは関係ないのです。ですからお知らせ願いたいと言うのです。
#203
○川井政府委員 実は私もかなり具体的な事実を承知いたしておりますので、ここで御質問の趣旨に対してお答えができないわけではございません。毎度同じようなことを申し上げてまことに恐縮なんでございますけれども、検事が一たん不起訴にいたした事件でございますけれども、職権でもって神戸の検察審査会が取り上げていま検事を呼びまして、不起訴にした経過の概要と証拠関係の内容にわたっていろいろ報告を求めております。その他またおそらく法律の専門家も呼びましてこの事件の当否について審議が重ねられて、審査会の結論が出るだろうと思います。結論が出ますと、それを踏まえてあらためてまた神戸の地検がこれについてさらに起訴、不起訴をきめる、こういう場面が出てまいりますので、これは私たいへん微妙な段階だと思います。ですから、ただいま御指摘の具体的な事実について、そういう事実があるかないか、その各人の検事に対する供述の内容を明らかに示せとまことにごもっともな御質問でございますけれども、ここでもってそれに詳細まっこうからお答えできない、お答えするのが適当でない、こういうふうに考えられますので、私はわざと具体的事実を抽象化して、しかしなるべく御趣旨に沿うようにお答えをしようと努力はいたしておるわけでございますので、努力だけはひとつお認めをいただきたいと思います。
#204
○浅井委員 川井さんの苦労しているのはわかるのですけれども、この問題は、この辺の問題が煮詰まりませんと私は国民に対して疑惑は晴れないと思うのです。検察審査会の結論の出るのは来年の秋というふうに私は承っております。したがって、その間にうやむやになってしまったような感じを国民は受ける。不可解な事件であったという印象はあるわけです。したがって私は、国民のその不信、疑問を晴らすためにも、なるべく早い機会に、まして川井刑事局長はいわゆる法務省の最高の権威者として、あなた自身の考え方を私は明確になさったほうがいいのではないか。将来検察審査会は検察審査会として独自の立場でおやりになるのであって、私は川井刑事局長のいわゆるきょうの答弁があったからといって、それに影響されるものではないと思うのです。それでは検察審査会の独自性がないわけでありますから。したがって、この件については、あなたのお知りになっておることをできるだけ詳細に御答弁していただかないと、私はこのことについて疑問を持ったままになります。したがって、この疑いを晴らしていただきたい。その意味において、このいわゆる一つのかぎを握っておるこの点の問題をお答え願いたいと思います。
#205
○川井政府委員 この山田何がしの供述を十分に聴取され、また検討されての御所論のように承っておるわけでございますけれども、それ以外の重要な関係者、たとえば沢本とかあるいは正示議員というふうな方々についての、山田に対すると同じような御調査なりあるいは事情聴取が行なわれているのかどうかということについて、実は私のほうから御質問を聞いておりまして若干の疑問があるわけでございますけれども、結論といたしましては、なるほど山田何がしの供述は、山田何がしの供述だけを全面的に信用するならば、不正の請託があったのではないかというふうにも思われましょうけれども、事の真相でございまして一人でやった行為じゃございませんので、やはり相手方の言い分も十分に聞かなければいけないということになりますと、間に立った人また相手方の供述というものは、その山田の供述というものにまっこうから相反し、また相反する理由についてかなり好意的な主張が行なわれている、こういうことでございますので、これは第三者の立場にある検察官がほんとうに不正の請託があったのかなかったのかということを判断するためには、やはり一方的な供述だけを信用するということはたいへん危険なことではないか、こう思われますので、私はやはり依然として抽象的でまことに申しわけございませんけれども、結論といたしましては請託の事実を認める容疑が十分ではなかった、これはやむを得ないことではないかと思います。
 それからもう一つは、よけいなことでございますが、おまえはいまここでいろいろしゃべくっても、そのこと自体が検察審査会に影響を与えるものではなかろう、なるほどそうだろうと思います。そうだろうと思いますけれども、私そのものは微々のものでございますけれども、ここは国民がみんな注目しておる国会の場面でございますので、そういう場面で行なわれた問答でございますから、私、かなり一般国民の方々には強い影響を持つものではないか、こう思います。裁判所をも含めまして……。そうでございますから、将来検察審査会という一つの機関があってそのことを審査する、さらにまたあらためて検察庁が事を判断する、さらにまた場合によればそのあとに裁判官があるということになりますと、いまの微妙な段階であまり不用意なことはここで申し上げないほうが、全国家的な立場から適当ではないか、こういう判断に基づいております。
#206
○浅井委員 では、一般論でございますけれども、いまあなたは山田の供述だけでは沢本あるいは正示代議士が否定されれば、あっせん収賄罪は成立しないという、これも具体論ではない、抽象論のお話なんで、私も抽象論を出しますけれども、贈賄者と収賄者との間に共犯関係が普通は生じるわけであります。共犯の一方の自白だけあるいは自供だけで他方を有罪にするということは、これはできるというのが判例であります。この判例はあなたとしては認められないですか。
#207
○川井政府委員 疑いをかけられた者の供述をもってそれを有罪にすることができないというのがわが憲法の明記するところでございます。したがいまして、現在の捜査というものは必ずしも自供にたよっているわけではございません。ですから、本件の場合におきましても、甲が自供をした、乙が否認をしているというふうな状態がございますけれども、両方の供述が一致しないから心証がこないのだ、こういうふうには申し上げていないわけでございます。二人とも否認をしておりましても、物的証拠その他状況証拠によりまして、両者の間に贈賄、収賄の関係があったということでありますれば、これは起訴して有罪になる例がたくさんございます。いまおあげになりましたように、贈賄関係とか収賄関係とかというのは必要的共犯で両方が処罰されるのでありますから、その両方ともに趣旨を否認しまた金銭の授受を否認するということが、多くの事例で当然のことでございます。したがいまして、むしろ贈収賄事件においては自供が全然ないわけじゃございませんけれども、統計的に見るならば自供は少ない、むしろほかの証拠でもってやっているというふうな事件のほうが数としては多いのじゃないか、こう思っておりますので、私、その自供だけに決してこだわっているわけではございません。
#208
○浅井委員 この場合、山田氏自身がいわゆる贈賄をしたということを言ったことは、これは自分の身にとって利益でしょうか。不利でしょうか。私は、少なくともこれは否定したほうが、みずから贈賄罪という罪は免れる。しかるに、山田氏は現在でもそう言っております。私は正示代議士に対してあっせんを依頼した、頼んだのだ、大蔵省の銀行局にあっせんしてもらいたいんだ、だから、沢本氏を通じてこれを依頼したのだ。当時の京阪神土地は導入預金のいわゆる裏金利でもって相当の赤字が出てきておる。京阪神土地は導入預金の総額は約百億にのぼる、そうして四十億の負債といっておりますけれども、さらに二十億の裏金利が支払われたというような膨大な、雪だるま式にふえた不正金融であります。したがって、それらを銀行から不正金融としてその貸し付けをとめられたならば、彼としてはもう命をとられるに等しい。必死になって彼は働きかけた。それに対するために、単なる顧問料だ、単なるお願いである、そういうものでは、これはない。そうして、山田自身が、私は導入預金の件で頼んだのだ、銀行局に働きかけてほしいと言ったのだ、こう言っておっても、それが事実あっせん収賄罪にならない。状況証拠がそろわなかった――どういう状況証拠がそろわなかったのか、一つも答弁ないのです。まさにくつの上から足をかいているみたいな御答弁で、私はさっぱりわからぬです。供述というものは、本人の供述がそれほど確かに言い切っておる。また新聞等を通じて社会にいろんなことを彼は公言しておる。記者会見等もしておる。それが報じられておる。しかるに検察庁はそのような判断をしなかった。国民にこれは疑惑を持たせ、不信を抱かせるに十分であります。したがって、私は、先ほど川井刑事局長はいわゆる検察審査会にも多少影響は――ないけれども、国民が見ておると言った。国民が見ておるから私も聞いておるのです。大事な問題なんです。国民が疑惑を感じておるから私も国民の代表の一人として聞いておる。ですから、率直に答えることが検察の威信をただすことになる。そのような理由があったのだと明確に国民の前に示すべきが社会正義の上から正しい道ではないか、私はこのように思うのですが、どうでしょう。
#209
○川井政府委員 請託があったかいなかという事実が証拠で認められるかどうかということをいままで問答してまいりましたけれども、もう少し話が進んでまいりましたので、やや法律的に深く入りますと、通説では、百九十七条の四の請託というのは、単純な請託ではなくて不正の請託であることが必要だ、こういうふうにいわれております。したがいまして、本件があっせん収賄罪の第一の要件である不正の請託があったかどうかというふうな場合に、かりに何らかの請託がありましても、その内容は不正の請託でなければいけない、こういうことになるわけであります。不正とは何ぞや、こういうことになりますけれども、そうしますと、百九十七条の四だったと思いますが、公務員をして不正の行為をなさせたりあるいは相当の行為をなさざらしむる云々と、こう書いてございますので、その不正という意味は、公務員が職務上与えられておる行為の裁量範囲内のことではなくて、原則的には法律違反の行為をその公務員にさせる、こういう請託がなければいけないというふうに解釈されているわけでございます。まあ御存じのとおりでございますけれども。そうしますと、単に山田何がしから沢本を介して正示議員に対して何らかの請託があったということではございませんで、かりに請託ありといたしましても、その内容はどういうふうな内容だったか、こういうことになるわけでございます。さらに詳しく申し上げれば、大蔵省の銀行局の検査部が金融関係について銀行の検査ができるということが法律に定められております。その検査は、目的によって内容が違いましょうけれども、本件のような場合においては、どういうふうな法規に基づいて、どの範囲、またどの程度の検査をするかということが問題になるわけでございまして、その検査に対して不正の行為、法律違反の行為をさせるような、そういうきわどい請託があったかどうかということが焦点になる、こう思うわけでございます。またこれも抽象的でございますが、その辺のところが十分に立証するだけのものがない、こういう報告でございます。
#210
○浅井委員 それでは先ほどの話を続けますと、四十二年の十一月の四日に、料亭益田で正示代議士は、後藤君や銀行局の連中をゴルフやその他に招待して聞いておる、何とかうまくやらせるからまかしておきなさい、こういうことを彼は山田に対して話をしておる。また、四十二年の十一月の中ごろにもまた再び益田で話をしたときには、山田自身が近畿財務局の西堀氏あるいは金融検査官を押えてほしい旨の依頼をした。正示代議士は、東京に帰るときに近畿財務局に立ち寄って圧力をかける旨を約束した。このこと自体は、これは不正の請託じゃないでしょうか。
#211
○川井政府委員 たいへん申しにくいのでございますけれども、浅井委員がどういう方法と、またどういうものからどういう御調査の結果、いま申し上げられたような事実をお述べになっているのか、私はうかがい知るすべもございませんけれども、私どもの立場からそういう事実があったかなかったということを申し上げるのは、言うまでもないことでございますけれども、刑事訴訟法にきめられた厳格な証拠法に基づいて得られたその証拠でもって、あるかないかということを判断いたしておりますので、一般的に私的に集められました主張なりまたそれに基づく事実の認定なりというものと、それから私のほうの立場から検察官の報告に基づいてお答えしていることとは、実は同じ供述でございましても、私のほうはずいぶん後退したものになるわけでございます。なぜならば、現行の刑事訴訟法の証拠法を読んでいただきましてもわかりますとおり、明らかに常識的に間違いないと思うような供述がございましても、それはそのままの形では決して法廷に持ち出せないわけでございまして、非常に厳格な証拠能力の制限がございます。そういう制限をかぶった上で、この供述が証拠に出せるかどうか、出せるとした場合に今度は、この供述は証明力がどのくらい歩どまりがあるかということを判断した上で、あるとかないとか、こう申し上げておりますので、いかにも迂遠なような、憶病なもののようにお聞き取りのことがあると思いますけれども、御質問なさるほうの方といたしましては、もっと手広い、常識的な観点からの、おそらく人間的な洞察力に基づいての御主張だと思います。その辺のところがちょっとかみ合わないと思いますけれども、弁解になるかもしれませんが、そういう立場から厳格に制限された範囲内で、供述があったかなかったか、またそれが信用できるかどうかということを私申し上げておりますので、その辺のところもひとつお含みの上でお願いをいたしたい、こう思います。
#212
○浅井委員 私は、山田氏自身にも会ったいろいろな話で総合して話をしております。ですから、確かに刑事局長がどのような証拠でとおっしゃいますと、これはあなたの法務当局にある書類とは少し違うかもしれません。しかし、私も当委員会で発言する以上は、やはりそれなりに状況証拠をまとめてまいりまして、ここで発言しております。したがって、お答えがすれ違うのはやむを得ないかもしれませんけれども、私は、できるだけこの事件の背景あるいはその事実を何とかここで川井刑事局長にお出しして、そして具体的なお話を伺いたい。確かに私よりもあなたのほうは詳しいかもしれない。したがって、詳しければ詳しいほどその内容を明らかにしていただきたいというので、私はこのようなヒントの話をしているわけです。ですから、その点をくんでいただきたいと思うのです。
 さらに、正示代議士は近畿財務局にも寄られております。これは事実であります。したがって、そのことについてどのような具体的な話があったか知りませんが、いままでの類推をしてまいりますと、やはりそれ相応の話は近畿財務局にもされておる、このように思うわけです。私はその辺を、いわゆる検察庁としてこのように追及し、このように聞いてこのような答えが返ってきたということを明確にしてもらいたいのです。あくまでもこの辺が疑問なんです。したがって、この辺のことを私は私自身として知りたい。国民も知りたい。ですから、ヒントを与えて、刑事局長から、こうだったんだ、実はこうなんだという、それを私はここで答弁してもらいたいわけなんです。その意味で申し上げているわけです。
#213
○川井政府委員 御趣旨はよくわかります。同じことを申し上げてはなはだ恐縮なんでございますけれども、人がいつ幾日どこで会ったとかどこへ行ったとかというようなことは、その人の想像力なりあるいはその他の情況証拠の集め方でかなり変わった結論が出てくるということは、私ども犯罪の捜査ということをやっておりまして、ほんとうに事実というものは奇想天外なことがよくあるわけでございます。したがいまして、たとえばいま御指摘のように、正示議員が近畿財務局へ行ったとかあるいは大蔵省へ行ったとかというようなことは、おそらくそういう事実があったんだろうと私は思います。しかし、国会議員の方々が国勢調査に基づいて、ないしは持っておられる行政監督権というようなものの行使のために、あるいは国政全般のために私どものところなり行政機関というようなところへおいでになったり、またいろいろな御指導を受けたりするということ、これは何党たるを問わず非常によくあることでございます。いま、たまたま問題になっておる議員が、たまたま問題になっておる時期に、また問題とされておるところへ伺ったということでございますから、外形だけを考えてみますというと、やはりかなりな疑いといいますか、御指摘のような疑いを持たれるということはまことにもっともだ、こう思いますけれども、やはり犯罪ありとして裁判所に起訴訴して刑事責任を法律の規定に基づいて求めるというためには、かなり的確な証拠を求めて起訴するというのがいまの制度のたてまえになっておりますので、そういう厳格な立場から申し上げますと、いろいろな断片的な事実はございましても、一つ一つについて入念な弁解と情況証拠というものを集めた結果においては、全面的に山田の供述のみを信用して本件を起訴するということは適当でない、こういう結論に達したという報告でございます。
#214
○浅井委員 では、山田供述を主張する一つの重要な証拠として、後藤メモというのがございますね。これは検察庁にございます。この点の後藤メモについてはどうでしょうか。
#215
○川井政府委員 その内容を申し上げることが適当かどうかについて、私やや判断に迷いますけれども、御熱心な御主張でございますので、やや詳細申し上げてみたいと思います。
 これは、実は報告を受けたところでは、証拠物の関係には相なっておりません。調べを受けた方が、そういうふうな内容のものがあるということで、その写しのようなものをつくって、供述の際にそれを示して供述をした、こういうふうな報告になっております。したがいまして、何とかメモというものがありましても、そのメモの現物そのものではなくて、そのメモの写しを示しての供述という形で証拠固めがなされているようでございます。
#216
○浅井委員 メモの内容をおっしゃらなかったのですけれども、このことについては穏便に取り計らわれたい、導入預金ということばはなかったのですけれども、穏便にということばはあったはずですが、これはどうでしょうか。
#217
○川井政府委員 どっちかの予算委員会でしたかはっきりしませんが、衆議院の予算委員会だったと思いますが、たいへん失礼な答えを申し上げたのです。そのような趣旨のメモではございません、こういうことを申し上げました。問題は、そのメモの存否が問題でしょうけれども、そういうようなメモがあったということは間違いございませんので、何が記載されておったか、どういう趣旨が記載されておったかということが一番重要な問題だと思いますが、それにはただいま御指摘のような必ずしも的確な趣旨の記載がない、こういう報告でございます。
#218
○浅井委員 これは私たちは非常に重要に思うメモの内容であります。検察当局はそのように判断なさいましたけれども、私はこのメモの書かれた背景ですね、これには正示代議士に対して、京阪神土地会社の取引銀行を大蔵省の銀行検査官が導入預金の疑いで調査を始めた、したがって、このように融資を引き締められて困っているので、検査に手心を加えるよう大蔵省や近畿財務局に働きかけてほしいというその請託の依頼を正示代議士がそのまま実行されたのであって、通常の、議員の陳情活動を受けてやっておるのではない。まして通常のいわゆる請願あるいは陳情でなるならば、金銭は伴わないわけであります。したがって、そのような金銭が伴ったということについて、これが不正ということにつながる、私たちはそういうように思うのですが、この点はどうでしょう。
#219
○川井政府委員 ちょっと前に戻りますが、そのメモでございます。銀行の検査を担当した係官のメモがある。そのメモの内容の中に問題となっておる議員から、いつ幾日こういうことの依頼を受けた、もしこういう記載があったとするならば、これはもう供述も何も要りません。きわめて重要な物的証拠だと思います。したがいまして、冒頭に申し上げましたような不正の請託も立証できましょうし、それから不正の請託に基づいて他の公務員に不正の行為をするように働きかけをしたという要件も立証できますので、そのメモの存在それ自身によりまして、本件はもうあまり大ぜいの人の供述なくしても十分に立証ができる、起訴するに足る事件だ、こういわなければならないと思います。ところが、それが逆の言い方で失礼なんですけれども、起訴にならなかったということは――私、これはメモとかあるいはメモの写しがあるということは、おそらく検察審査会でも出て大ぜいの審査員がそれを手にとってお調べになる。でありますから、そういうものがあるということは言ってもいいと思います。内容は詳細には留保いたしたいと思いますけれども、当然検察審査会に出る内容のもので、もしそれにいま私が申したようなことがあるとするならば、これは当然起訴にならなければならない事件なんです。ならなかったということは、そういうふうな完全に証明するような記載がないということであります。一つの例をあげて言うならば、正示議員からいつ幾日こういうふうな請託があったということが書いてある場合と、それ以外の人たちからこういうふうな話があったんだ、もしこう書いてあるとするならば、前者のほうならば、たいへん有力な証拠でありますけれども、後者のほうであるならば、これは証拠になりません。そうですね。いまは正示という国会議員の方の刑事責任を追及しているわけでありますが、第三者からそういう話があったんだという記載であるならば、これは正示代議士の刑事責任とは結びつきませんので、有力な物的証拠とは言い得ないのであります。その辺はやや内容をぼかして申し上げなければいけませんけれども、的確な趣旨の記載がなかったのだということだけで御了承願いたいと思います。
#220
○浅井委員 刑事局長も非常に苦しいでしょうけれども、答弁が抽象的で、ちょっとこっちも推察しなければならない。それで、さらに山田供述一本で公判維持が困難であるというのですけれども、検察当局の判断で、山田供述を補強するに足る十分な裏づけ捜査を実施されたのか、この点について伺いたいと思うのです。どうも、聞いておりますと、正示代議士あるいは沢本の証言――この沢本というのはなかなか証言が得られなかったという、何だか非常にずるい男で、あまり内容をしゃべらなかったという話でありますけれども、この辺によって助けられたという話もあります。その点についての山田自身の供述を裏づけする捜査は十分になさっているのでしょうか。
#221
○川井政府委員 十二分にしているものと確信しております。
#222
○浅井委員 どんな捜査をしたか、じゃその内容を明らかにしてもらいたいと思うのです、山田供述の捜査について。
#223
○川井政府委員 山田の供述と申し上げますのは、最初の、ほかの事件で導入預金の取り締まりに関する法律、詐欺、文書偽造、その他いろいろな銀行員に対する贈賄の事件もございますが、それでずっと身柄を拘束して捜査をして順次起訴してまいりました。身柄の拘束期間がかなり長引いておりますけれども、並行して、その出てまいりました某議員に対するあっせん収賄の容疑についても取り調べが進められております。それが出てまいりましたのはかなりあとの段階になってのように記憶いたしておりますけれども、その山田の記憶なり供述なりというものを裏づける最も有力な供述は、おそらく沢本の供述だろうと思います。なぜならば、沢本何がしなる者は山田からいろいろな依頼を受けてそして橋渡しをした、一応こういうふうな山田の供述になっておりますので、山田の供述の真否というものを考える場合においては、ほかにも方法はありましょうけれども、手っとり早い捜査の方法としては、まず沢本について、そのとおりの言動なりそれから周囲の状況があったものかどうかということになろうかと思います。したがいまして、沢本につきましてもたくさんの容疑事実がございますので、これもかなり勾留を続けまして、沢本についてのその間の状況を何度も聞きただしております。それからそれだけではございませんで、山田は会長でございまして、その周囲にたくさんの人がおります。それから沢本のほうもその周辺に秘書的な事務をしている人がたくさんございます。そういうような大ぜいの人々につきましても、その間の状況及び証拠についてどういう行動があったかということを十分に調べております。それから、もし某議員に対してそういう不正なあっせんがあったとするならば、その議員は銀行なりあるいは大蔵省の係官なりに対して当然そういうふうなことをやらなければならないものだ、こういうふうに考えられますので、他の、そういうものを受けたであろうと思われるような向きにつきましても、一人の人について一回だけではございませんで、それぞれ数回にわたりまして日時を経てその当時の状況なりあるいは弁解なりというものを詳しく聴取いたしております。その弁解がはたしてまた真相であるかどうかということで、その弁解の裏づけ捜査も慎重にいたしております。この種の事件でございますから、金銭授受につきましては明確な物的証拠がございますけれども、そのほかのも一のについては的確な物的証拠はありませんけれども、検察官としてはでき得る限りの裏づけ捜査をした結果でございます。
#224
○浅井委員 裏づけ捜査をされていると私も信じたい。しかしその疑いは、いわゆる正示代議士あるいは沢本――沢本は正示代議士側と見てよい、このように私たちは判断ができるわけです。したがって、私はその山田供述を取り上げなかったこと自身が、今回の幹旋収賄の犯罪構成要素を何らか傷つけられておるように私は感じております。それから不起訴の理由として、正示代議士のあっせんの現実的な効果はあらわれていない、このようなこともいわれております。この点について、あっせん収賄罪の成立にはあっせんが功を奏することは要しない。あなたも法律家でございますから、あっせんをすること、またしたことの対価としてわいろを収受し、また要求もしくは約束することによって成立するのであって、他の公務員、すなわちこの場合であれば大蔵省の金融検査官としての不正の行為、すなわち不良債権についてその指定をしないようにあっせんすることの対価として金員を受領することが、刑法の百九十七条ノ四の先ほどおっしゃったあっせん収賄罪の構成要件に該当するわけです。だからそもそもあっせん収賄の規定の立法趣旨は、公務員が公務の執行に対して厳正を保つこと、したがって公務の公正を害する危険のある行為、しかも巧妙に有力な第三者を介して公務員に働きかける行為を処罰することにあるのであって、結果の発生は重要ではないわけです。むしろそのような行為そのものが問題なのであって、私は先ほど申し上げたように、この正示代議士が谷川あるいは後藤のところへ行った、あるいは近畿財務局の西堀氏のところへ行った、この行為が私は問題だろうと思うのです。ですから、不正の請託を受けてわいろを収受し、もしくはその約束をすることをもって犯罪が成立するというように規定されておる。もし山田供述を信用しないで正示代議士の弁解を入れる根拠としてあっせんの現実的な効果はなくて、通常のいわゆる議員の日常活動であったというように言うならば、それはあっせん収賄罪の立法趣旨並びに精神を冒涜するものだと思うのです。この点どうでしょうか。
#225
○川井政府委員 あっせん収賄罪の要件につきましては御指摘のとおりでございまして、依頼を受けた公務員が他の公務員について具体的に不正な行為をさせるように働きかけをするという要件は必要ではございません。ただ問題は、その不正の請託をした、それから受けたほうは、そういうものを受けたことはない、簡単に割り切ってこう言っている場合に、どっちが真相かということを割り切るためには、請託を受けたならば、受けたことに基づいて相手方の公務員に対して不正な請託をするというところまで証拠を固めませんと、この種の事件はいままで私どもの経験によりますならば、裁判所を通ったためしがございません。あっせん収賄罪は昭和三十三年に成立をした法律でございますけれども、今日までちょうど四十名起訴いたしております。ほとんど大部分が有罪になっておりますけれども、これらの事件一件一件調べてみましても、すべて捜査は依頼を受けるほうの第三者、第三者といいますか、不正な行為をする公務員が不正な請託を仲介の公務員から受けて、それに基づくような不正な行為をしたというところまで事実をつかんだ上で起訴がされて有罪の判決がなされておるというのが、これは実務の実際でございます。ですから、法律の構成要件の平面的、形式的な解釈と、それから人一人を法律に基づいて身柄を拘束して刑事責任を追及するために起訴という重大な処分を行なうということのためには、やはり証拠固めということは慎重でなければならないという点で、あっせん収賄罪の起訴のいままでの経験から申しましても、法律上の形式的な要件ではございませんけれども、実務の実際といたしましては、そこまで証拠を固めて初めて検事として心証がくるということでございますので、本件の場合でありましても、その辺のところを十二分に勘案をして調べて、もし請託を受けたといわれる議員の方のほうがそういうふうな請託の趣旨があったんだ、しかしおれは銀行のほうへは働きかけていないぞ、こういうふうな供述の場合もあろうかと思います。請託を受けたということを認め、したという人も認めておるということになりますと、これは心証としては結果は現実に実害が発生しないけれども、犯罪は成立しているんだなという心証がくると思います。ですから、そこまで証拠固めをするということは、本件のような片方が否認しているというような場合には、犯罪の成否を勘案するためにも重要でありますし、情状を勘案するためにもたいへん重要な事項であると思います。
#226
○浅井委員 法律の平面的な解釈だけではいけないという実務家のお話があったそうでございますけれども、われわれは実務家ではございません。しかし、私たちは法律上にそのように載っておれば、私たちとして当然そのような犯罪の要素があれば、犯罪がこの条文に該当するように感ずるのはあたりまえだと思うのです。
 さらに時間もあまりございませんので、続けますならば、この今回の正示代議士の百万円は顧問料であるという名義だそうですけれども、この点はどうでしょうか。
#227
○川井政府委員 そのように報告を受けております。
#228
○浅井委員 このいわゆる先ほどの確認できないことの中で、私は顧問料ということが一つの大きな要素になっておったんじゃないかと思うのですが、この点はどうでしょうか。
#229
○川井政府委員 犯罪の成立を消極的に考えた要素に、顧問料ということがどれだけの分量を占めておったかどうかということは、私の立場からは的確に申し上げられません。申し上げられませんけれども、顧問料であるというのは単なる弁解であるかどうかということは、当然捜査しなければなりません。したがいまして、顧問料であるという弁解を裏づけるような合理性がどれだけあったかということで、いま御指摘の点はきまるんじゃないかと思います。それにつきましては、いまの山田という人の経営しておる会社なり、その事業の内容なりというようなこと、間に立った沢本という人の地位、身分なり、またその人のやっておるいろいろな事柄なり、その背景なり、それからまた問題になっておる議員の方の経歴なり、それから持っておられる学識あるいは識見あるいは技術的な面というようなものを考え合わせまして、いろいろな有力な方々を企業がいろいろの名目で顧問としてその知識をかりるということは、これは世上によくあることでございますので、顧問料というのは、単なる弁解にすぎないというふうに一蹴するわけにはいきませんで、おそらく顧問料という弁解に合理性があるかどうかということにつきましては、先ほどから申し上げておりますようないろいろ合理性の裏づけの捜査というふうなものがかなりなされておりまして、その結果顧問料というふうな弁解もにわかに排斥ができない、こういうふうなことから、本件が消極的な判断のほうに傾いていったということだと思いますので、顧問料という主張も消極的な判断を導いた一つの理由になっておるということだろうと思います。
#230
○浅井委員 その判断の内容を私は示していただきたいと思うのです。顧問料ということについて、顧問が大蔵省へ行って働きかけたことを議員の日常活動であるというように見る、こういう見方ができる、これは私はもってのほかだと言いたいのです。正示代議士のこの京阪神土地会社の顧問としての実態は一体何だったのか、この点を私は教えていただきたいのです。
#231
○川井政府委員 正示代議士がこの会社の顧問になったかならぬかということは、かりに顧問であるとしても、どういう事務の顧問になったのかというような点、いろいろ問題があると思います。
 それからもう一つたいへん重要なことがあるのですけれども、仲介をする公務員が、公務員の立場で仲介をしなければいけない。たまたま公務員という身分を持っているけれども、知人、友人としてやったというようなことになりますと、やはりこれは構成要件にはずれてまいります。これはかなり争いがあった点でございますけれども、先般十月の幾日でしたか、最高裁の判例が出まして、あっせん収賄罪においてまん中に仲介に立った公務員は、ただ公務員という身分を持っているだけじゃいけません。あっせんをするにあたって、あっせんをする事項について公務員の立場においてあっせんをしたということが必要だということが明確にされましたので、この学説上の争いはこの十月になって初めて終止符を打ったわけでございますけれども、本件の場合に、それがどう響いてくるかということはまた別問題でございます。やはり公務員というのは、本件の場合国会議員でありますが、衆議院議員でありますが、衆議院議員という特別職の公務員としての立場において、そしてその会社のどういうふうな事務についてどういう仕事をするという顧問になったか、こういうことがやはり一番御指摘のいまの問題だろうと思うのです。国会議員の方はいろいろ手広い活動をなさっておるようでございまするけれども、一がいにこういうふうな顧問になってはいけないということは、私言えないのじゃないかと思います。やはりその仕事仕事、目的目的に応じまして、社会通念の上でもって適当と思われる範囲の顧問的なお仕事をなさるということは、これはもう当然なことではなかろうか、こう思うわけでございまして、検事の捜査によりますれば、本件の場合に顧問として活動したのだというふうな弁解は、ほかの証拠から勘案いたしましてもにわかに排斥ができないということが、それだけじゃございませんが、一つの理由になったのだ、この程度でございます。
#232
○浅井委員 刑事局長のお話は、十分の一もお答えになってないと思います。そのような答弁では私たちは納得しないと思うのです。顧問としての実態は一体何だったのか。では会社のほうに顧問としての登記があったのか、並びに帳簿上にどういう事務を担当するということが記入されておるのか、それらに対する約束ができたのか、その具体的なものは一つもないのです。顧問という名前はあるけれども実態はないのです。私たちはこのことについて再三再四論議をしてみました。ところが単なる顧問にしてほしいというだけのことであって、顧問という名目が今回の正示代議士の不起訴に対する大きな証拠になったというふうに言われると、私たちはそんなに検察当局は甘いものか、そういうふうに思うのです。それは国会議員という、国権の最高機関の議員だというので丁重に扱われたのかもしれません。しかし私は法はもとより厳正であらねばならないと思うのです。したがって、そのような追及のしかた。あるいは調査のしかた、取り調べのしかた、これが人によって異なっておるのではないか、そのような疑問を持つのです。世間において、社会において百円を盗んだというだけで、きびしい追及を受けて牢獄につながれておる。何百万、何千万もらってものうのうとしておる。明らかに不正な金であってもそれを言い抜けておる、このような不平等があっていいものかと私は思うのです。法はもともと平等でなければならないはずなんです。しかるに、そのような顧問ということが今回も不起訴になった一つの大きな理由の中に入っておる。そして先ほどからお伺いしたように、山田供述はたよりにならない、あるいは実行行為がなかった等々、考えれば私たちにとっては非常に便利な考え方でもって不起訴の理由としておられるように思う。
 私はその他、この鈴木学術財団との関係等についてもっと聞きたい。しかし時間もずいぶん過ぎておりますので、同僚委員の御迷惑も考えますので、この辺で――私はきょうの質問によって疑問が晴れたとは思っておりません。答弁が非常に抽象的でありますので、こういう答弁であったならば国民の疑惑はますます増すのではないか、そのように危惧いたします。
 委員長にはかっていただきたいのですが、私の質問はこれで終わりたいと思いますが、鈴木学術財団の沢本理事、これも被疑者の一人であります。また山田正光、これは京阪神土地会社の会長であって、いまも中心人物であります。あるいはまた鈴木学術財団の理事長である佐藤喜一郎氏、これらについて同僚委員の田中先生からも朝から話がございましたので、これらの参考人の召喚について御検討いただきたい、このように要請したいと思います。
 以上要請いたしまして私の質問を終わります。たいへんありがとうございました。
#233
○丹羽(久)委員長代理 浅井委員にお答え申し上げますが、ただいまの件については、後日理事会にはかって決定いたします。
 次回は明十九日午前十時十五分理事会、午前十時三十分委員会を開きます。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後二時五十分散会
ソース: 国立国会図書館
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