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1949/05/31 第5回国会 参議院 参議院会議録情報 第005回国会 農林委員会 第28号
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1949/05/31 第5回国会 参議院

参議院会議録情報 第005回国会 農林委員会 第28号

#1
第005回国会 農林委員会 第28号
昭和二十四年五月三十一日(火曜日)
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○家畜商法案(衆議院提出)
○酪農業振興臨時措置法案(衆議院送
 付)
  ―――――――――――――
   午前十時十分開会
#2
○委員長(楠見義男君) それでは只今から農林委員会を開会いたします。昨日に引続きまして家畜北法案を議題にいたします。昨日問題になりました点について、衆議院の法制局から鮫島第三部長がお見えになつております。尚法務廳からも係官がお見えになつておりますが、昨日大畠さん或いは門田さんから疑問の点として質問せられた事柄、及び藤野さんから疑問として質問せられました事柄につきまして、便宜私から代表して伺つて、若し足らんところがありましたら補足して頂くことにいたします。最初の御質問の点は第十二條の第一号の点でありまして、即しこの法案では「家畜商でなくて家畜の取引の業務を営んだ者、」こういうようになつておりますが、「業務」という言葉は一回限りの行爲でも含まれるかどうか、即ち若し一回限りの行爲でもこの罰則に触れるとすれば、実際問題として相当苛酷な場合も出て來やせんか、こういうような御質問に対して、政府からは、第二條の「業務を営む者、」この「業務」と相照應して考えておるので、而もこの第二條の業務は、継続、反復的に行う行爲である、從つて個々の一つの行爲をやつた場合でも、それは、十二條第一項には該当しない、こういう答弁でございました。併しこの点については具体的に、刑罰が課せられる場合に極めて重要な問題でありますので、立案者と申しますが、提案者の意見を聽き、更にそれに参画した衆議院の法制局の御意見を伺い、又法務廳の意向を伺つた方がより正確になる、こういう意味で本日その方々の御出席を煩わしたのであります。
 それから第二の点は、政府の御説明では、「業務を営む」ということは、営利の観念を以て且つ継続反復的に行うことをいうのであるから、農業協合組合のように、法律上営利の観念を以て仕事ができないという建前になつておるようなものについては、この家畜商の範疇に入らない、從つて農業協同組合はここに書いてありますように家畜の賣買、交換斡旋等はできるけれども、併し免許の対象にならずしてできる、こういう点をはつきりとしたい、こういうふうな藤野さんの御質問でありました。それについては、政府はそれは、含まれておらない、こういう御答弁がございましたが、この点につきましても、同様に衆議院の法制局の方からその趣旨を明らかにして頂く必要があるというのであります。以上の二つの点について、若し欠けておりますれば更に補充して頂くことにいたしまして、この際衆議院の鮫島第三部長から御説明を伺うことにいたします。
#3
○衆議院参事(鮫島眞男君) 只今委員長から、昨日当委員会で質問の出ました事柄についてお話がございましたのですが、その点につきまして立案の実際に携わりました私から、立案当時の立案の趣旨を御説明申上げます。
 先ずその第十二條第一号には、「家畜商でなくて家畜の取引の業務を営んだ者」とございます。これり第十條に「家畜商でなければ、家畜の取引の業務を営んではならない。」これを受けた言葉でございます。この十條に「家畜の取引の業務を営」むという言葉がございます。それから又同じ言葉は、第二條に家畜商の定義を挙げてあるのでございますが、ここに「家畜の賣買若しくは交換又はそのあつ旋」これを家畜の取引というとございますが、こういうものの「業務を営む者」という言葉が第二條にございます。この以上の第二條、第十條、それから第十二條、ここに掲げてございます「家畜の取引の業務を営む」というのは、すべて同じ業容を持つものでございますので、これらの條文につきまして一括して申上げますと、先ず「業務」という言葉でございますが、「業務」というのは、只今委員長からも御話がごございましたのですが、やはり同じ行爲を継続的に反復して行うというのが業務でありまして、從いまして一回限りの行爲はこの「業務」には入らないということは明らかであろうかと思います。
 それから「業務を営む」、この「営む」という言葉はどういうことであるかということでございますが、これは営むというのでございまして、業務を行うというのとは違うのでありまして、「営む」と言いました関係上、やはりこれは営利の目的を以て行うというのがここに言う「營む」でございまして、單に業務を行うというのとは意味合は違つておろうかと思います。從いまして、結局業務を營むというのと營業というのとは同じ趣旨になると思います。それからこれは多少余談になりますが、「家畜商」という言葉で、「商」という言葉を使つております。これは「家畜商」というのは、單なる名前でございまして、これからは内容は出て來ませんけれども、併し法律は万能ではございますけれども、白を黒というまで、そうひどいことを法律は規定するのでありませんので、やはり、この場合におきます「家畜商」というこの「商」にもやはり特殊な意味を持たしておると、やはり解すべきものではないかと思うのでありまして、こういう点から申上げましても、營利を目的としておるということをこの法律は狙つておると申上げてよいと思います。從いまして營利行爲としてやる場合、即ち營業としてやる場合のみをこの法律は対象としたしますので、農業協同組合のように、法律上營利行爲を禁止せられておる團体におきましては、結局營行事業としてはなさないのでございますから、従いましてこの農業協同組合が「家畜の賣買交換又はそのあつ旋」を行う、たとえそれを反復的にやりましても、それには營利性はありませんので、この法律の対象にはならない、結局農業協同組合はこの法律の規定を拘わらず、こういうこの家畜の賣買、交換又はその斡旋の業務を營むことができると、こういうことになろうかと思います。立案の趣旨、又その立案当時の経過を離れましての法律上の解釈は以上の通りになろうかと思います。
#4
○大畠農夫雄君 そういたしますと、大体その説明で分ることは分りますけれども、これは國民の読む法律であつて、立案者の読む法律ではない。一般國民がそういう疑問を持つというのは法律ではない。大体最近文語体を口語体に直したということも、法律を國民によく分らすというのがその趣旨であろうと思う。一体國民がそういう説明を聞かなければ分らないというのは不備な法律であろうと私は思います。併し又もう少し或る面から嚴密に考えて見ますならば、業務ということは、長く仕事をやつておるそのことを指すのではない。一つの業種の一つの仕事を業務というのであつて、業務ということは一つの仕事を長くやることではない。業種の仕事が業務である。営むということは、三回やつても五回やつとも営むという言葉は使える。仮に一回でも使える。決して限定された言葉ではない。從つて大きな疑惑を持つておる。併しこういう場合の疑惑のある言葉を使わずに、「務」を抜かしてしまえばはつきりして來る。業とする。私はそういう意味を説明しなければ分らんような法律を國民に公布するということは間違つておる。尚理窟を言つてそう言つてお聞かせすれば分りますけれども、併し國民は誰も聽きながらこの法律を読む人は少い。裁判所へ行かない限りそんな解釈は聽かれないのであります。これがために家畜商は盛んに告発なんかするために國民が非常に苦しむということが起つて來る。どんどんこの十二條にこの業務という字があるために、勝手に告発することがあります。御承知のように法律においては、相手方が反対がなくても告訴ができるのでありますから、そういう疑問のために、沢山そういう事態が起るとするならば、外の一般國民は苦しむことが沢山起きて來るのであります。でありますから、國民に分り易いように、疑惑のないようにあつさり言つてもらいたい、私はこう思うのであります。今の御説明によりますと、私はピンと來ない、私は業務ということは私が今申しましたように、部長が言われたこととちよつと変つた角度から考えれば、私の考えは又外れて理窟が通つて來る、業務というのは仕事だ、業ではない、営むということは、決して二回やつても三回やつてもそれに付けられないということはないのでありまして、それにも付けられる。そうすればもつとはつきりした文字を使つて直すということも必要じやないかとこう思われる。その考えを伺います。
#5
○衆議院参事(鮫島眞男君) 今私御質問の趣旨を或いは聞き間違つているかも分りませんが、結局営利行爲、営利の目的を以てするというその結局動機の点にありますので、まあ例え一回二回やりましても、それは営利の目的を以てやるということになりますれば、これは一回二回でも営利行爲になるのでありまして、結局はこの営利の目的があるかどうかということで決まることになろうかと思います。それからこの言葉の表現の点は、これはまあこれが一番いい表現というわけでございませんので、疑問があるというその御指摘の点は御尤もでございまして、若し御質問がございますれば、又いい表現に直した方がもつと疑問が少くなるという点は、確かに御指摘の通りでございます。
#6
○大畠農夫雄君 私もそこなんです。勿論営利がなければということに引掛つて來ると思つたのでありますが、そうなると一回やつても営利の目的を以てやつたならば引掛ると思いますから、これは作り直さなければならん。一回でもこれに引掛つて來るということになる。そうするとただやつてやるという人はなかなか少いのでありまして、今頃例え一割でも鞘を儼けて、そうしてやつてやるというのが普通のやり方であります。どこまで何時間かかつても、或いはどんなに時間がかかつても、ただやつてやるということは考えられない。現在の経済状態から言つて……。そういう点から考えると、これは非常に危險な法律になつて來る。こういうのです。一回でも引掛かるとするならば、殆んどが引掛かります。仮に今申しましたように、農業協同組合がやつた場合でも、それは恐らく手数料を取ります。手数料という名目は成る程手数料として見るならば利益ではない。営利を目的としないということがありますが、併し営利を目的としないならば知りませんが、併し一割幾らというと敢て手数料とは言えない。いわゆるばくろうと言われる人でも一割儲け、五分儲けでやります。一割ではそれは利益でないということは言えないのであります。だからそういう点から考えますと、この点は御修正を私は希望するのであります。
#7
○委員長(楠見義男君) ちよつと委員長からも申上げますが、実はこれは業務を営むということで、而もその業務は継続反復的な行爲を指証しておるのだと、まあこういう御説明であり、而も他の立法例でこういう言葉を使つておつて、そういう解釈で進んでおると、ところが若しこの家畜商法案において、その從來の解釈に基いた言葉を変えることによつて、却つて他の立法例における業務の解釈を変えるような、反対解釈的なことが起るということになれば、私は法案全体としては、他の法案との関連において、これは相当問題ではないかと思うのですが、その点について法制局の方から御説明があれば伺いたいと思います。
#8
○衆議院参事(鮫島眞男君) この「業務を営む」というのは、昨日そういうような御質疑が、当委員会でございましたということを聞きまして、いろいろ外の法律を拜見したのでございますが、業務を営むというのは、度々そういう言葉を使つておる法律はあるのでございまして、例えば信託業務を営むとか、それから何でございましたが、証券取引所あたりで、取引の業務を營むという……、ちよつと今ここに書き出してはおりませんが、そういうような立法例は沢山にあるのでございまして、そうしてそれらの法律を拜見いたしますと、すべてやはり營利を目的として継続的に反復してやると、即ち營業としてやるという場合であるということは、それらの法律を見ますと、すべて明瞭であるのでございまして、業務を營むという言葉は例がないわけじやない。そういう例は尠なからず今までも使つておるのでございまして、若しこの際、この議案に書く「業務を營む」と、これは最初から立法するということでございましたら、これは又考えもございましようが、議案の趣旨がこういう營業を現わす意味で「業務を營む」という言葉にして置きながら、途中で「業務を營む」ということが又外の言葉に直りますと、結局それは「業務を営む」というのは営業という意味ではないのだというような、却つて反対の解釈が起きまして、自然に他の法律の解釈にも影響を及ぼす虞れがあるという心配は只今委員長のおつしやいましたように、そういう心配は多分に生じようかと存じます。
#9
○大畠農夫雄君 それは御尤もなんですが、併し私はこういう法規が出ますと、これは大抵地方に行きますと、独占企業的な地位を獲得してしまうのです。ですからそこへ行つて牛を買いたい、馬を買いたいと思いましても、ばくろうというものがございます。そのばくろうの手を経なければ買えない。必ずしもその人の手を経なければ買えないということになつておる。こういう條項があるので殆んど独占企業になつてしまう。私はそれを心配するのです。外の條文の関係ということになりますと、外の條文はそういうことをやることはいけないという、そういう趣旨においてできておると思います。これもその意味に置くならばいいのでありますけれども、私はそういうことはいけないというので反対するのでありまして、どうしても一回でも処罰するんだというためにこの條文を使つているなら……、文字を使つているなら私は納得できます。そういうことは認めないということならば、もう少し又文字を使つて頂きたいと思います。
#10
○門田定藏君 私は昨日も質問しました通り、この「業務を営む」というようなことは少し曖昧だとは思いますが、他の法律にこれを改正したために支障を來たすということがあるならば、はつきりと営利の目的でなくして、例えば私が農業を営んでおつて乙の人が牛を持つておる。これを農業に使用するために個人として買いに行く、そうして賣買する。それがその行爲がやつてもよいということがはつきりしないと、牛馬商なんか地方に存在して、個人と個人との賣買はばくろうの手を通さなければ買えやせん。そうでなければ告発するというようなことが今まであるのでありまして「業務を営む」ということは、今大畠君の言われました通り、農民が営むということが理解ができないのでありまして、個人と個人とが営利目的でなくして賣買してもよろしいということを、はつきり法律に謳つて貰いたいと思うのです。営利というものはただの一回でも、私はこれを交付したなら、この法律が決まつたならば、ただの一回でも商目的をするということはいかんと思う。例えば牛を甲のところで買うて、乙のところに行つてすぐに賣つて儲けるということはしてはいけない、ただ一回でも、私共個人がこの牛が好きだと、その牛を求めて飼育してみたいという目的で、生産者のところへ行つて買うならば、この行爲に当らんと思うのです。当らんなら当らんようにはつきりとこのことを法律に謳つて置かんと、農村の方にいろいろな問題が將來起る、これを私は心配するが故にはつきりと商行爲でない限りは、この限りにあらずということを一つ謳つて貰いたい。これは今申上げた通りですが、その点についてどういうお考えになるか、当局の方針を承わりたい。
#11
○委員長(楠見義男君) ちよつと速記を止めて、……。
   〔速記中止〕
#12
○委員長(楠見義男君) 速記を始めて。それでは先程の門田さんの御質問に対して、衆議院の法制局の第三部長からお答えいたします。
#13
○衆議院参事(鮫島眞男君) この法案で言つておりますところの家畜商は、この法文にもございますように、「家畜の賣買若しくは交換又はそのあつ旋の業務を営む者」ということでございまして、結局はこの「業務」という言葉と、それから「営む」という言葉が、この家畜商の観念の主なる要素になるのでございます。そういたしますと、この業務は同種の行爲を継続的に反復して行う、継続的に反復して同じような行爲を行うというのが「業務」でございまして、営利の目的を以て行うというのはこの「営む」でございます。でございますから、結局営業として行うということになります関係上、この一回限りの行爲がこれに該当しないのは勿論、又営利行爲を目的としても一回限りの行爲はここに入らないのは勿論、又たとえ継続的にやる場合でございましても、営利の目的がない場合には、ここにいう「業務を営む」ということにはならないということに相成ります。
#14
○委員長(楠見義男君) よろしうございますか。
#15
○門田定藏君 分りました。
#16
○池田恒雄君 生産者が直接取引する場合は、という解釈をいたした方がいいのじやないですか。営利を目的としない取引というのはないのだから……。
#17
○衆議院参事(鮫島眞男君) 從いまして今申上げました意味合から申上げまして、営利行爲を目的といたしませんところの農業協同組合がこういうような事業を行いますことは、この法律には何ら関係のないことでございます。それから又そういう営利目的を以てしませんところの家畜の生産者が行う場合、これもここにいう「業務を営む」ということには含まれないと思います。
#18
○大畠農夫雄君 そうしますと農業協同組合というのは別に免許を受けずして、営利の目的がないのでありますから何回でもできる、こういうわけになるのでございますね。
#19
○衆議院参事(鮫島眞男君) お尋ねの通りに、考えております。
#20
○委員長(楠見義男君) 大体これで質疑も終了したようでございますから、討論採決に入りたいと思います。加賀さん。
#21
○加賀操君 家畜商に対しまして、從來も、現在におきましても、最も要求せられておりますところは、家畜商が良心的に家畜を取引することであると考えられます。良心的であるということの一面は心の正しさで、この点につきましては、法文に欠格條件だとか聽聞、罰則などの証拠部面において、品位を保持するようにできているのでありまするが、他の面即ち家畜に関しまする知識、技術など的確に家畜の價値を判定する積極面において、提案理由に述べられております点は法に入つていないのであります。從つてその面におきまして、何らかの措置がなければ、この法の目的を完成することができないように考えられます。参考資料によりましても、現在すでに試驗免許制を採つている地方さえありますので、この点から見れば、或いはこの法律は後退であるとも思考されますので、政府においては直ちに講習だとか、実施指導など具体的な計画を立てまして、眞に家畜商の資質の向上に対処すると共に、先程問題になりましたいろいろな点におきまして、当事者がよく了解できるように通牒その他でよく周知し、指導する点に万全を期せられるように強くここに要請いたしまして、本案に賛成いたします。
#22
○委員長(楠見義男君) 他に御意見ございませんければ、直ちに家畜商法案を議題にいたしまして採決に入りたいと思います。衆議院送付原案通り可決することに御賛成の方の御起立をお願いいたします。
   〔総員起立〕
#23
○委員長(楠見義男君) 総員起立であります。從つて本案は全会一致を以て可決することにいたしました。尚議院に提出する委員長報告書に御署名を願います。
  多数意見者署名
    星   一  石川 準吉
    藤野 繁雄  加賀  操
    徳川 宗敬  國井 淳一
    北村 一男  岡田 宗司
     大畠農夫雄 高橋  啓
     平沼彌太郎 門田 定藏
     柴田 政次 池田 恒雄
  ―――――――――――――
#24
○委員長(楠見義男君) では続いて酪農業振興臨時措置法案につきまして、昨日に引続いて質疑をいたすわけでありますが、その前に昨日も申上げましたように、この法案は食糧確保臨時措置法と極めと密接な関係がありますので、その方面から見た酪農業振興措置法についての意見と申しますか、影響と申しますか、それらの点について食糧管理局の方から一應説明を伺うことにいたします。
#25
○政府委員(安孫子藤吉君) 酪農業振興臨時措置法につきましては、私共もいろいろ研究をいたしておつたのであります。十分の時間的余裕もございませんので、或いは十分論議を盡しますならば、我々といたしましても了解のできる点も相当あるだろうとは存じますが、一應只今まで出ておりまする、主として食糧操作の面から見ました考を申述べて見たいと思います。現在の供出制度が、いろいろこの本委員会におきましても論議を盡されておりましたように、絶対量の供出の問題の外にやはり各府縣間の均衡でありますとか、或いは町村間の均衡の問題、或いは個人の均衡の問題というものが、やはり割当の上におきましても、非常に大きなウエートを持つておると考えられる次第であります。そうしたことについて食糧管理局としては、今後ともますます努力をして参らなければならんと思うのでありまするが、この酪農業振興臨時措置法を運用することに当つて、この点に大きな悩みを我々としては持たざるを得ないと考えておるわけであります。例を申上げますならば、この法案は指定地域の酪農家にのみ指定作物の保有を認めることになるわけであります。それ以外の地域の酪農家、或いは全國の乳牛以外を飼育しております有畜農家というようなところの間に均衡を失するというような問題が出て來ると思います。又現在の状況からいたしますと、凡そこの法案によりまして差当り確保されるだろうと想定されまする面積が約二万町歩ございますが、この二万町歩は現実の割当をいたします際には只今の客観的な情勢からいたしまして、これが酪農地域以外の地域に殆んどかぶさつて行くというような危險性もあろうかと存じます。又現在の作付面積を或る程度飼料として殖やして行くという問題もあるように考えますが、併しそれはなかなか困難なことでありまして、それだけの面積を飼料作物の作付面積として殖やし得るならば、それは主食として考えるべきではないかというような論点から相当議論をされまして、結論におきましては二十五年の事前割当をいたします際に、その点が非常に本法の目的といたしておりまするような運用が困難でありまして、むしろ生産者を苦しめ、或いは酪農家に不利な状態に追い込まれるような可能制も我々としては相当考えられるのであります。そういう点からいたしまして、本法の通過をいたしました際の運用について、我々はまだ十分の自信を持つておらんわけであります。又これは我々の問題外ではありまするけれども、かように指定地域のみのこうした制度を認めますることは日本の酪農の立地條件を固定させるようなことになりまして、日本の酪農業全体の見地から見ましても疑問があるのではなかろうかと存じます。併し物事は一歩々々固めて行かなければならんという点から議論いたしまするならば、経過的な措置としてはそういうこともあり得るだろうと思いますが、もう少しその点についても考究をする点がありはしないか、それから飼料畑を確保することにつきまして、結局配給飼料の方がその分だけ減らされるということも一應考えて見なければならんと存ずる次第であります。飼料の輸入が相当窮屈になつておりまする現状におきまして、やはりこれを十分何といいますか、公正に或いは相当締めて飼料を配給するというようなことも予想されますので、そういたしますと、この法案が通りますことによつてむしろその方面の圧力が酪農家の方にかかつて來ますようなことも憂慮されるのであります。尚この乳製品の問題について、これは主要食糧農産物と同樣の供出管理を行つて行くというような建前になつておるのでありますが、この面から均衡論から申しましても、そういたしますれば乳製品の配給もやはり主食差引として考えるのが適当であろうかとも考えられます。政府部内におきましても、その点についていろいろ研究を遂げたときもあつたのであります。併しながら現在の乳製品價格は非常に高い値段であります。これを主食とプールいたしますときには、乳製品を必要としない主食の消費者に対しましても相当の負担を轉嫁せざるを得ないというようなことになりまするので、結局主食の消費者價格が上つて來るというようなことも、これは現在の経済情勢から申しまして適当ではないかというふうにも考えておるわけでございます。又これもいろいろ議論の余地はあろうかと思いまするが、現在乳製品は相当ストツクされておる状況でございます。原因は價格が高いということと私共は了承いたしておるのであります。やはりこのストツクをはかせるということは結局價格をもつと下げることについての端的ないろいろな施策が行われることが、結局乳製品を消費面に移す。その結果酪農関係が活溌になつて行くということにも考えられまするので、勿論この法案がそうした問題に対して全然意味のないものではないとは考えますけれども、その点はもつと別の施策がこれに先行されて考えられるべきではないかということが、乳製品の需給の現状から申しまして考えられるかと存じておる次第でございます。いろいろかような観点からいたしまして、私共といたしましては酪農業振興臨時措置法がもう少し檢討する余地があるというような考え方をいたしておるわけであります。勿論日本の農業が穀作のみによつて成り立つべきではなく、酪農を十分取り入れまして今後経営をして行かなければならんということについては、食糧管理局といたしましても十分了承いたしておるのでありますが、この法案自体につきましては、尚檢討すべき点が相当あるというふうに考えておる次第でございます。一應私共がこの法案を拜見いたしまして感じましたことを簡單に申上げた次第であります。
#26
○委員長(楠見義男君) 今の食糧管理局の意見に対して反駁論として酪農業振興臨時措置法案に対する食糧管理局の意見に対する反論という書類がお手件に配られておりまするが、これは恐らく提案者の方から作製されて配付されておるものだろうと思います。これを読めば大体今の食糧管理局の意見に対する反駁の要点が分ると思いますが、それでいいですか。それでは今の点について提案者の方から衆議院の遠藤三郎君が簡單に補足して説明せられたいそうであります。
#27
○衆議院議員(遠藤三郎君) 只今食糧管理当局からいろいろ御意見がありましたが、実はこの酪農振興法案を提出するにつきましては、衆議院の畜産関係の各党派を通じての議員の集まりで、この法案の作製をやつて参つたのであります。御承知のように、畜産業が段々圧迫されておりまして、殊に酪農業は現在すでに非常に苦しくなつて來ておりますことは御承知の通りであります。將來に向つてその將來の情勢を見ておりますと、非常に困難な情勢が目の前にぶら下つております。一本爲替レートの決定によりまして、飼料價格は補給金を差当りは認めるとはいうものの、恐らくは近い將來に或いは二倍乃至三倍に飼料價格が暴騰するような結果になつて來るのではないか。今食糧管理局長官の説明にもありましたように、牛乳及び乳製品の價格が非常に高くなつております。むしろこの價格を下げなければならないときに、更にそのコストの大部分を占めておる飼料價格というものが非常に上つて参りまして、乳價を上げなければ酪農経済というものが成り立たないといつたような板挟みの中に入りまして、非常に困難を予想されるのであります。乳價及び乳製品の價格を下げるには、やはり各農家にそれぞれ自給飼料を保有させまして、そしてこの自給飼料で以て酪農経済を安定させて行く、コストを下げて行くという以外には、酪農の生きて行く道がないのではないかというふうに考えまして、自給飼料を確保するということをこの法案の骨子に考えておるのであります。只今酪農家のみに有利な法案だという説明がありましたが、これは指定地域の酪農家に飼料圃を認めまして、そうして指定地域の酪農家については飼料圃の恩惠を與える代りに、そこからできた製品は乳幼兒、病弱者等に必ず配給して行くというそういう強い義務を負わせて、その他飼料圃の確保は食糧事情の関係もありますから、相当廣く確保して行くという建前を取らないで行こうという考え方になつております。それから二万町歩が損するというお話でありますが、これは從來の酪農家の経驗から言いますと、裏作を一生懸命で作つて面積を拡大して参りましても、皆追打的に供出を命ぜられてしまひまして、酪農業経済というものは成立たないのであります。そこで今度一生懸命で裏作を拡大して作つて行けば、それが飼料圃として維持できるのだ、そういう建前を取つて行きたい。從つて必らずしも二万町歩でなくしてむしろそれよりも減るということを考えて、二万町歩の犠牲を拂つても、それから出て行く酪農家を入れたことによつて、食糧生産の全体が増大して行くということを狙つておるのでありまして、むしろ食糧生産としては、これを認めることによつて、全体としてはプラスになつて行くという考え方が取られておるのであります。指定地域のみ認めるということか、非常にそこに固定されるというお話でありましたけれども、これは一應食糧事情を考えて指定地域というものを中心に考えましたけれども、食糧事情に應じて段々それを拡大して行くという考え方を持つております。その他の問題については時間もありませんようでありますから、私の方から出してありますこの意見を一つ御覧頂きまして、この次の機会に委員会で又詳細に御説明申上げたいと思います。
#28
○委員長(楠見義男君) それではこれにて散会いたします。
   午後十一時十六分散会
 出席者は左の通り
   委員長     楠見 義男君
   理事
           岡田 宗司君
           平沼彌太郎君
           石川 準吉君
           藤野 繁雄君
   委員
           大畠農夫雄君
           門田 定藏君
           高橋  啓君
           星   一君
           北村 一男君
           柴田 政次君
           加賀  操君
           徳川 宗敬君
           池田 恒雄君
           國井 淳一君
  衆議院議員    遠藤 三郎君
  政府委員
   食糧管理局長官 安孫子藤吉君
  衆議院法制局側
   参     事
   (第三部長)  鮫島 眞男君
ソース: 国立国会図書館
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