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1949/05/13 第5回国会 参議院 参議院会議録情報 第005回国会 水産委員会 第6号
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1949/05/13 第5回国会 参議院

参議院会議録情報 第005回国会 水産委員会 第6号

#1
第005回国会 水産委員会 第6号
昭和二十四年五月十三日(金曜日)
   午後一時三十五分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○水産業団体整理特別措置法案(内閣
 提出・衆議院送付)
○漁業法案(内閣送付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(木下辰雄君) 只今から委員会を開会いたします。
 先ず水産業団体整理特別措置法案を議題に供します。この法案につきましては衆議院において決議しまして、そうして参議院に送つて來たのでありますので、今日は本審査であります。この前の委員会に大体この法案に対する質疑応答は大略済んでおると思いますけれども、尚この法案について質疑がありましたらお述べ願います。
 その前にミスプリントがあるそうですから訂正させます。
#3
○説明員(藤田巖君) 現在政府が手続をいたしておりますけれども、まだ御手許まで参つておらんかと思いますけれども、訂正の個所三点ございますがお直し頂きたいと思います。
 第三條第三項の三行目でありますが、「資産処理委員会の認定した價格」とございますが、これは「資産処理委員会の定める價格」と、次は六頁の一行目でありますが「第十一條第一項の規定による認可の申請」でございますが、これを「十一條第一項の規定による財産移轉の認可の申請」つまり「財産移轉の」という字を追加して頂きたいと思います。
 それから第九條三行目、「帳簿價格と時價の簿囲内」とありますのを、「帳簿價格と時價との簿囲内で」と「と」を追加して頂きたいと思います。以上であります。
#4
○委員長(木下辰雄君) 質疑がありませんか。
#5
○千田正君 ちよつと伺つておきたいのですが、第四條の第四項でありまするが、「前項の規定により当該財産の讓渡を受けるべき水産業協同組合が二以上ある場合には」ということで、処分方法を規定してありますが、從來の農業会の資産の讓渡の際は各地方においていろいろな紛爭を釀しておる現状に照らし合せまして、今度水産業団体のこうした特別措置法で出るに際しましては、そうした理由がないとやれないのでありますが、この規定で十分に何ら紛爭を釀さずに次の水産業協同組合がこの財産を取得する方法として、これは完きものであるかどうか、という点について、御自信があるかどうか、一つ政府の御所信を承つて置きたいと思います。
#6
○説明員(藤田巖君) これは農業団体の前例に鑑みまして、改むべき点を改めまして、相当事情に適したように規定をしておるつもりでございますが、尚一つ一つ重要な点につきましては、更に細目に亘る通牒を出すことにいたしまして、その通牒の中で、はつきりと具体的にこの政府の意向を明らかにして行きたいというふうにまあ考えております。
#7
○委員長(木下辰雄君) 外にありませんか。
 質疑は終了したものとして差支えありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○委員長(木下辰雄君) 御異議ないと認めます。質疑は終了いたしました。それでは只今から本案の討論に移ります。御意見のある方はお述べを願います。
#9
○淺岡信夫君 討論を省略いたしまして、直ちに採決に入られたいと思います。
#10
○委員長(木下辰雄君) 只今淺岡君の動議が出ましたが、如何ですか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#11
○委員長(木下辰雄君) 御異議ないと認めます。それでは討論は終結したと認めます。採決いたします。本案全部を議題に供します。本案に賛成の諸君の挙手を願います。
   〔総員挙手〕
#12
○委員長(木下辰雄君) 全員賛成と認めます。よつて本案は全会一致を以て可決すべきものと決定をいたしました。本案の本会議における委員長の口頭報告に対しては、第百四條によりまして、予め多数意見者の賛成を求むることになつております。委員長はこの審議の経過について、本会に報告したいと思いますが、お申し出でがありますか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#13
○委員長(木下辰雄君) 御異議ないと認めます。それでは委員長が口頭報告を作成いたしまして、本会議に報告いたします。次に本院の規則第七十二條によりまして、議院に提出する報告書には多数意見者の御署名をすることに相成つております。で全員の御署名を願います。
  多数意見者署名
    千田  正   西山 龜七
   尾形六郎兵衞   淺岡 信夫
    江熊 哲翁   青山 正一
  ―――――――――――――
#14
○委員長(木下辰雄君) 署名漏れはありませんね、署名漏れはないと認めます。
#15
○委員長(木下辰雄君) 次に漁業法案につきまして前回に引続き一般質問をお願いいたします。
#16
○青山正一君 先ず私のお尋ねいたしたいのは、漁業法の立法の精神と申しましようか、つまりこの度の新らしい漁業権制度を法律案として提出するに当りまして、その底を流れておるいろいろなことを想像いたしますとき、果してこの法律案を通過させていいものか、非常に頭を混乱させておるのであります。勿論先き頃の委員会におきまして、農林大臣の、確か、これは一昨日の委員会であつたろうと思いますが、その趣旨の説明があつたのでありますが、如何にもいろいろな美辞麗句一応納得の行くかのごとき文章で以て書き列ねておりましたのですが、その法律案の内容についていろいろ檢索して見ますと、これは昨日の委員会において江熊委員からも話があつたわけでありますが、ちよつとやそつとで通過させるというわけには行かないと思うのであります。そこで、そこでです、先ず第一に委員長にお尋ねいたしたい、お尋ねするというよりも一つ御相談申上げたいのは、今度の法律案は、根本的に法律の建て方というものが間違つておる、從つて大修正を加えなければならん、或いはその條項の一つ一つを見ましても、修正しなければならんところが相当あろうと思います。私の考えでは、衆議院あたりは、恐らく無修正でただ幾らかの希望條項とか、或いは附帶決議などを附けましてお茶を濁す程度が関の山々だろうと思うのであります。参議院はそういうことじや困る、例の水産業協同組合法、これは前々國会に通過しました。私も大体五つの希望條項なり或いは附帶決議というものを附けまして賛成いたしたのであります。併し世間ではどう言つておるか、一般漁業者はどう言つておるか、協同組合法は漁民の意見を聞く暇もなく又意見も聞かずに緑風会とか、或いは民主党、民自党或いは社会党の代議士なり、或いは参議院の諸公がいい加減に水産常任委員会を通してしまつた、その責任、協同組合法を骨拔きにいたしたのは議会なり、或いは政府でやつたことである、こういうふうに難じておるのであります。そこで、私共水産常任委員といたしまして、別にこの世論に甲とか、或いは乙とか左右される必要はありませんが、この前の協同組合法上程の際とは違つた行き方で修正すべき点があれば堂々と反対し、例えばその筋の了解をどうしても得られないならば、得られるまで待つ、つまり修正意見を出す、然らずんは了解を得られるまで待つ、こういつた考えが恐らく参議院の全部の皆樣がそういつた御意見をお持ちであろうと私は思うのであります。で、委員長のこれに対する一つの御心構えの程を御発表願いたいと存じます。
 それから政府当局におききいたしたいのであります、これからは本題であります。今度の漁業法立法の精神は、つまり新らしい漁業権制度、その底に流れておる行き方というものは農業に比べてどうかという問題であります。御存じのごとく農業の方では大きな地主、その地主の持つておる土地というものが取上げられて小作も自作となつて、そして開放されておる、農業協同組合法ができて、組合ができまして、どんどん仕事を行なつておる、こういつた農業の方面の流れと比較して皆樣方が言つておりますところのいわゆる漁村の民主化、或は漁業權を漁民に開放するというこの立派なる名目で作られましたところのこの漁業権制度、この法律案の底を流れておる行き方、そういつた点を堀下げて一つお聞きしたいのであります。農業と漁業とは、観点上はこれは比較できんと或はおつしやるかも知れません、或はいろいろ見解の相違という言葉を使われるかも知れませんが、ただ私の申上げたいのは、農業の民主化の程度とそれから漁業の民主化の程度の比較です。この漁業法を出すについての……。これは長官かばりでなく、ここに列席しておりますところの協同組合課長などの返答も必要であります。漁民はこれは今更申上げるまでもなく、税金とか或は金融方面或は資材などで四苦八苦の状態であります。魚が獲れない、魚も賣れない、何もかもないない盡くしであります。税金も勘定して見ますと十種類以上も掛かつております。経営者とか事業者でないところの從業員、或は船子まで、ちよつとした歩分に対してまでも所得税とか或は事業税を取られておるのであります。漁網を賣つたり、或は家財道具、或は自分の着物等を賣りまして漸く差押えを逃がれておるような状態であります。そういつた零細な漁民は何によつて仕事をしておるか、恐らく全部が全部協同組合に組合員として入りまして、漁業協同組合員として仕事をするより外に途がないのであります。その漁業協同組合は今までの漁業界の与えられていたところの権力というものは殆んど喪失したような感がいたすのであります。今度の制度の底を流れておるところのものは、いわゆる零細漁民とか、中小漁業者の何もできないような状態であります。漁民とか漁業者というようなものは協同組合に所属することによつて力を得ております。生活もできておるのでありますが、ところがこの協同組合の力というものは專用漁業権というものを持つていない。浮魚というものも資本漁業の方に、金を持つている漁業家に手渡さなければならん。これじやこの漁業権に関する問題は、これは御破算にして、今まで通りにして置けばよいというような議論も生れて來て、漁民を幸福にしようという漁業権制度、或いは「ボスよ左樣なら」と書いて配付までしておる農林省のビラ、或いは漁業権を、働く漁民に開放すると指導なさつている、これがボスがいよいよ肥れよ、或いは漁業権を金持である資本家に開放せいという場合に逆手に進みやしないか今度の法律案は実質的に恐らくそうなつて行かざるを得ないというふうに私共は解釈せざるを得ないのであります。で水産廳長官にそういつた裏の裏の氣持を承わりたいと思うのであります。立案の根本方針を根本的に直す必要がないかどうか。それから又協同組合課長として個人的にどういう考えを持つておられるか、つまり折角九州の果てから東京まで迎えられて課長に就任した者の心中には、この協同組合がますます退化して行くというような状況を見て、而も今度の漁業権制度を見まして、恐らく困つたものだというふうに内心では思つていやしないかどうかという心中を明かして貰いたいのであります。これは非常に重要な問題でありまして、一つ懇切丁寧に委員長、長官、次長、或いは協同組合課長の御返答をお願いいたしたいと思います。
#17
○委員長(木下辰雄君) 青山君の委員長に対する質問に対してお答えいたします。委員会は多数委員の意見に從つて運行することは当然でありますので、私は常にそのことを考えてやつておりますので、漁業法案に対しては、皆さんの御意見がこの本会期においては到底議了し得ないという御意見でありましたので、目下継続審議の手続中であります。今後とも多数意見に從つて運行いたすことをここで申上げて置きます。
   〔「了承」と呼ぶ者あり〕
#18
○政府委員(飯山太平君) 只今青山委員から漁業法改正の根本方針を変える必要があるかないか、こういう御意向を質されたように承知いたしました。縷々お話の中に、今度の漁業法改正がむしろ零細の漁業者、若しくは漁民の諸君を却つて生活苦におとしいれるというような結果を招來するだろう、こういう御判断でありますが、そこと申しましてもこの法律の精神は、先般農林大臣から説明されたことが美辞麗句であつて、眞にその精神が現われていない、或いは間違つた方向に向いているのじやないかというような御判断のように拜承するのでありますが、我々といたしましては農地改革と並んでこの漁業制度の改正をするということはひとり私共当局の意見ではなくして、日本政府の根本的精神であるのであります。從つてその改正の結果が零細漁民の諸氏にむしろ非常な困苦を与え、或いは不利益を來すというようなことは私共といたしましては考えておらんのであります。ただ協同組合法案の出たときにも、協同組合はできるけれども、これを裏付けするところの施策が伴わないじやないかというような点についていろいろ御意見を伺つておるのであります。又今度の法案につきましてもこれを実施するに当つて資金、或いは資材というような裏付が協同組合になければこの目的を達成ができないだろうということは、これは各方面から私共が伺つている点であります。又私共もこの裏付がなしには協同組合の強化は容易に行いにくい、從つて我々といたしましては、これが裏付の方法として資金の団体資金の問題を目下非常に努力をいたしているのであります。根本精神はどこまでもやはり漁業の民主化と、これが基盤になつてそうして生産力を更に増加して行くという以外にはないのであります。生産力の増加も要は民主化の実現がなければできない、個々の生産力は或いは必ずしもそうは参りませんかも知れませんが、全体的に総合的に考えた場合に本当の民主化の基盤に立たなければ漁業の將來の発展は期待できない、又漁民諸君の生活の安定向上も期せられない、かように固く信じているのであります。從つて農地改良が直ちに小作農民の生活を安定し、又これが向上を図り得るにも拘わらず、漁業の方はそれができないじやないか、こういうふうなお話でありますが、併し私共は遺憾ながらその御意見に同感できないのであります。勿論これが実施された当初からその目的を完全に達せられたとは考えておりません。併しながら少くもその基盤を作る点においてはこれで行けるという固い信念を私共は持つております。從つて現在の改正法案を改めて考え直すというような考えは持つておりません。このことだけを申上げて置きます。
#19
○委員長(木下辰雄君) 外に一般的質問はございませんか。
#20
○青山正一君 協同組合が……。
#21
○説明員(藤田巖君) この漁業制度改革の問題は、この漁業というものが一定の漁場内で多種多樣の漁獲方法を以ていろいろの漁族を獲つている、そういうような特別の性質を持つている、而も日本の沿岸漁業というものが、非常に複雜をいたしております関係から農業における方面の改革のやり方とは又違つた非常に複雜な考え方をしなければならんと思うのであります。そこで先程浮魚を從來の專用漁業権から外すというようなやり方をする結果、零細な漁民の手からそれを奪つて、資本家、漁業者の跳梁に委かせるというふうな逆の結果になるのじやないかというふうな御意見がございましたので、これは私共といたしましても、從來漁業制度改革を考えておりました案が数次に亘つて変改を加えられているわけであります。漁業制度改革が三年も掛かりました原因は、結局誰に漁業権を与えるか、誰に漁業を経営せしむるか、この点がやはりむずかしいためにいろいろと苦心をしておつたのであります。私共といたしましては、現在提案いたしておりますところのこの案が実際の事情に即応した案であろうと考えておりますわけであります。そこで浮魚を対象とする漁業をなぜ漁業権から外したかという問題であります。これは御承知のように漁業権制度というものが旧幕時代からの慣行に基きまして、その当時の漁業慣行を主といたしまして、部落というものに割拠的に与えられている、それがずつと永らくの間現在まで根本的には変改されないで現在に及んでいる、その間漁船の動力化の問題がある。それから又人口構成が非常に変つて來ております。そういうふうな事情と從來の漁業権の関係が、何と申しますか、相対応しないような状態になつているわけであります。從つて私共といたしましては、そういうふうな從來の割拠的な独占排他的な観念を改めまして、広く浮魚を運用する漁区で獲ろうとするものについてはこれを漁業権から外しまして、從來のような権利を持とうとしたところの政策ということよりも、更に広い範囲において一定漁区の漁業調整委員会、それは漁民が自ら自主的な意思によつて選びましたところの委員、その委員の手によつてこれを適当に合理的に調整しよう、こういうような方式を考え出したのであります。つまり権利を通じての調整でなく、更に広い範囲の水面の総合的高度利用という見地からいたしまして、人を通じての調整に変つたということが根本の狙いであります。今回のやり方の極めてむずかしい点は私は調整の中心になりますところの調整委員会というものが本当に民主的に動くかどうか、これが根本の問題であります。その傾向、考え方自身については間違つておるとは決して考えておりません。ただ漁業調整委員会というものが民主的な機構として完全に動くかどうかこの点が今度の漁業調整法式がうまく行くか行かないかの根本的な分れ目になると考えております。併しながらその点につきましては、私共といたしましてはやはり根本は漁民の啓蒙をいたしまして、やはり漁民自身が目覚めてみずから本当の意思によつて正しい人を選び出す、こういうふうな啓蒙運動を繰返して行くということによつて漸次その結果が民主的な我々の考えております方向に決定して行くというように指導して行かなければならん。その点についての重大な点を私共は認めておりますわけであります。考え方としてはその方が從來のような考え方より更に一歩進んだ考え方というふうに思つております。
#22
○説明員(曾根徹君) この度の漁業制度の根本問題は漁業権を保有するという問題よりも漁業権を行使するという問題にその根本の概念が変つて來ておると思います。で、不在地主的構成方法は許されない、從いましてその漁業権の行使を、つまり入海関係を如何に秩序を立てて行くか、如何に調整して行くかということにこの度の漁業制度の根本があると思います。この根本から考えまして、協同組合はどうしてもみずからこれを自営する、或いは生産組合或いは地区の組合等の自営という方式によるより外の漁業権を、自分のものとして、漁民大衆のものとして、これを行使する方法はないわけなのであります。從いまして協同組合がこれから行くべき途は漁民の自主的な協同組合の育成によつてこれをみずから行使するという方向に進まなければならないと思います。それには先程ございました通り、金融制度の根本的な民主化或いはその他御指摘になりましたような販賣事業、購買事業等を取巻く統制方式の漁民的な民主化というようなものが附随いたす必要があると考えるのであります。從いまして協同組合はこれから組織の力を以ちましてこういつたことをも大きな組織力を以て解決して行かなければならない使命を持つておるものと私は考えます。尚協同組合がかかる漁業権の根本的な考え方にも拘わらず、多少協同組合みずからが漁業権を管理する。管理方式が幾分ずつでも拡張されつつあります。この管理方式が許されますならば、成るべく多くこの管理方式を協同組合に取入れるということは將來望ましいものと私は考えるのであります。
#23
○西山龜七君 最近各産業部門を見てみますと、企業の整備、拡充そういうようなことをせなければどうしても乘切れないというような実情は御承知の通りであります。水産業におきましても終戰以來インフレのためにどうも海面の方が一定をしておるにも拘わらず、設備の方が過剩しておるように感ずるのであります。そうしまするとこの水産業におきましてもどういうように整備してこの業体の確立をして行くかということが問題になりはしないかと、かように考えるのであります。これは漁区の拡張があれば問題は解決はできると思いますけれども、この点は相当に困難と思いますが、つきましては漁業会に対しまして失業者ができた場合にどういうような政府は考えを持つておるか、將來この漁業会の整備、拡充に対しましては、どういうような御意見があるかということに対しまして政府の所見を伺いたいと思います。
#24
○政府委員(飯山太平君) 西山委員の御質問にお答えいたします。日本に九原則が実行せられて以來各産業会がお説の通り企業合理化の線に進みつつあることは私共も承知しております。ひとり水産業だけがこの埓外に置かれるとは勿論考えておらんのであります。併しながら漁業の仕事は漁船と同時に技術を持つておるところの從業員この二つが非常に重大なんでありまして、他の陸上の産業におきましては必ずしも甲から乙の仕事に移ることが困難ではないのであります。併しながら水産の從業員は水産以外の、特に漁業でありまするが、漁業の從業員は他の産業に移るということは、これは容易にできないのであります。從つて如何に合理化いたしましてもその余剩の從業員に関しましてはこれは水産関係において保有するような対策を立てなければならんと、かように考えておるのであります。從つて或いは「かつお」、「まぐろ」漁業、以西底曳、その他諸種の漁業におきまして若し合理化されたために失業者が起るというような場合には、これは一面社会制度としての失業保險制度にもよりまするけれども、私共の考え方としては合理化をした場合にその残余の業界の人々によつてこれを必要とするところの人々を養うような、いわゆる相互扶助的な考えを水産業には持つより他に方法はないのじやないか、殊に漁業は他の工業或いは農業と違いまして、その働らく海区というものは大体これは協同のものであります。協同の働き場所になつておるのであります。私共がいつでも考えておることは、少くも漁業におきましては、漁業それ自体の本質的性格から当然経営の面にも國家保障の精神を盛らなければならないというふうに私共は考えております。從つてそういう方向に向つて水産業の合理化については失業対策を立てて行きたい、かように考えております。
#25
○千田正君 漁業法案は勿論画期的な日本の漁業権の根本法として我々は大いにこれから檢討を加えなければならないと思いますが、一番現実に困つておる問題として、こういう法律を作つても、現在の漁業が本当に軌道に乘つて來るかどうかということを我々は再檢討したい、そのためにはやはりこの法案は同時に出さるべき法案の漁業災害補償制度法案、若しくは信用保証制度法案或いは漁業保險法案というようなものが同所に出されない限りは、この法案は先つき青山委員が度々申されたように零細漁民のために、安定した生活を保障する何ものもなくなつてしまうという虞れがありますので、根本法案を提出するについて、そうした側面からこの法を活かすような法案を出すだけの用意が、現在において政府当局において持つておられますか、この点について長官若しくは次長の御答弁を頂きたいと思います。
#26
○江熊哲翁君 今千田議員から御質問ありましたのですが、私は別の意味において漁業法の改正の際に、今千田議員の言われたようなことが少くとも政府においては十分準備されておらなければならないと考える一人でありますが、いずれこれは御答弁があると思いますが、更に私は漁業法の大改正が行われた際に、もう一つ考えなければならん問題がある、それは沿岸漁業の資源培養に対する法的措置を講ずるという点について、相当の調査準備をすでにされておるだろうと思うのでありますが、こういう点について、どの程度に準備されておるか、次の國会において、そういつたことが法律化されるようになつておるかどうか、私はこの資源培養の問題についてはずつと以前の國会あたりで御質問申上げたのでありますが、併し漁業法の大改正をやられるというので、法案を見ますと、私はこの資源培養に関する法的措置を早急にやらなければならんという氣がいたすのであります。一つその点について御所見を承つて置きたいと思います。
#27
○政府委員(飯山太平君) 千田委員の御質問にお答えいたします。先程青山委員からも御指摘の際に発言いたしましたように、漁業権制度の改正も、漁業協同組合の實施も、要するにこれを裏付するものがなければならないということは、全く御意見の通りであります。併しながら現在この法案を出す情勢下におきまして、直ちに同時に災害補償制度、或いは漁業保險制度というような必要な制度でありますけれども、御承知の通りこれには財政の関係が伴うのであります。従つて現状のような情勢におきましては、遺憾ながらこれが同時に実施をするというような事情にないのであります。そのためにこれが提出をできなかつたのでありますが、第四國会におきましても、当委員会において、この第五國会には、これらの案を出せということは、委員長からも固く私共は要望されておつたのであります。又できるだけそのように努力いたしますということをお答えいたしたのでありますが、爾來いろいろ檢討は加えておるのであります。併しながら、只今申上げるように災害補償制度にしましても、保險制度にしましても、いずれもこれは国家的財政の支出がなければできないのであります。現状においては、それができませんので、最近は何とかして、これを自主的にでも考えるようにすべきではないかというようなことから、実は現在各業界にも呼び掛けて、信用保証制度を一つ実施するように、そうして業者みずからの努力と共に國家の協力をさせる。こういう態勢に持つて行くより現状としては止むを得ないというようなことであります。その点について、目下具体的な案を進めつつあるのであります。併し、これも御承知のように、業界がいずれも非常な悲境にありまするので、これを業者みずからの手において、十分に実施するというような態勢を作ることは困難でありますので、その点については、安本方面にも、大藏方面にも、その折衝を続けつつあるのであります。併しながら具体的にかような制度をこの國会、若しくは近い將來において具体的に出し得るという言明ができないのは、私共は誠に遺憾であると思うのであります。それから先程江熊委員から資源の培養ということについて、この漁業法に何らの制度も加えていないじやないかという御質問でありますが、一般の海洋の資源につきましても、具体的な案は加えておりませんけれども、内水面における、養殖、増殖関係は、これを國家が管理して、そうして、種苗の配付というようなことを営むというようなことに新たに規定を加えておるのであります。御承知のように國際的に見ましても、漁場拡張の問題も、皆日本が資源培養について何らの関心を持つていないと、むしろ資源を冒涜すると、侵略するというようなことが、今日漁区拡張の一番実現を阻んでおるというような原因になつておるのであります。それらの点から考えましても、お説のように、根本的に法規の上にこれを表わして行くということは非常に大切なことでありますので、この点につきましては、機会を見て我々としてもこれが制度を加えるように努力をいたしたいと考えております。
#28
○千田正君 今の長官の御答弁誠に結構でありまするが、私はただ一つ不満な点があるのであります、というのは、同じ原始産業において漁業のみが農業と比較した場合において跛行的な存在である、而もいつの場合においても、泥繩式の制度しか水産業界においては行われておらなかつたというところに、今までの水産業発達の遅々として進まない原因がある、而も不漁対策というような、天候或いは潮流その他の一般自然の異変によるところの不安定な業であるだけに、我々としてはこうした不安定な業から生ずるところの不測の災害を如何にして除去するかということを根本的に考えない限りにおいては、今後の水産というものは十分な発達を成し遂げ得ないというというところに私の根本の観念がありますので、その点に対しまして、むしろ起きたものに対する施策を考えるよりも、起る前に不測を予想して、そこに行うべきところの立法的措置を考えるのが至当ではないかと、私はかように考えるのであります、その点について如何に考えられますか、長官の御答弁を頂きたいと思います。
#29
○政府委員(飯山太平君) お答えいたします。未然に防止するということが賢明の策であることは、全く御意見に私も同感であります。我々の今日までの当局の努力がその点に向けられてなかつたということにつきましては、ここに遺憾の意を表したいと思います。ただ農業と比べて水産がいつでも後手になつておるという、この事実も私共は卒直に認めざるを得ないのでありまするが、この点については、農林省の予算を御覽になる時に御承知と思うのであります。私共も農林省の現在の予算が二百七十億ある中に、水産の予算が僅かに公共事業を合せても二十億に充たないという、この数字を見る時に、誠に衷心忸怩たるものがあるのであります。併しながらこれは我々のみの努力では、到底これを強化するということは困難なのであります。私共はお答に対してお願いをすることは甚だ当を得ませんが、今後におきまして、どうか我々が計画、企画に対しまして、皆様の特別の御配慮、御協力を頂きまして、少なくとも相当の予算が現実に獲得できるような段階に持つて行つて頂くことを私は衷心からお願いしたいと思います。そうして我々も一つ先程のお話のように、未然の対策を立てるということに一段の努力をしなければならんという氣構えをここに新たにする次第であります。
#30
○尾形六郎兵衞君 長官に、漁業権の補償についてちよつとお尋ねしたいと思うんですが、一昨年つまり第一回國会が始まつた時に、この漁業法の改正の最初の案とも言われるだろうか、一つの案を持つて來られまして、政府委員が説明したのでありますが、その時の漁業権というものは、無償でこれを沒收するというと語弊がありましようが、とにかく無償で取上げるような案であつた。そこで私は、その時質問したんですが、当時社会黨の内閣であつたんです。日本の社会黨は、英國の労働党をあの当時手本にするということを片山総理が言つておりましたが、その英國でさえも有償で、私有財産を國営に移す時は、有償でやるといつている時に、余りにけちなことをするじやないかということを質問したんですが、当時憲法第二十九條の第三項を適用するという意味だということを政府委員が説明しておつた、今後は一つの基準を立てまして、漁業権を補償されるということでありますが、その額につきましては、例えばこれは、その額を妥当としまして、相応しましたものでも、余りにこの償還の期限が長いので、補償して貰つても、果してその甲斐があるかどうかということは懸念される、それから又この漁場をやります人も、元金と利息と共に拂うだけの負担を今日の漁業経営上できるかどうかということにつきまして、相当懸念があるんですが、これに対する長官のお見通しと見解をおききしたいと思います。
#31
○政府委員(飯山太平君) 尾形委員にお答えしたいます。漁業権の補償の問題でありますが、これは当初いろいろな関係方面の事情でそういう案が出たのであつたように思います。それから現在の補償の基準についてのお尋ねに対してお答えいたします。現在の漁業権は全國的に見まして、賃貸料が大体漁獲の一割乃至少くとも五分以上の賃貸料を支拂つておるのであります。これが全國の全体平均数字になつておるのであります。今度は賃貸料とは申しませんけれども、免許料若しくは許可料というような名稱でこの賃貸料を納めて貰うこういう形なんであります。そうしてその標準は現在の見通しでは大体平均して三・七%でありまするから、從來の業者が仮に同じ漁場を経営した、こう仮定しますと、從來は一割乃至五%以上拂つておつたということから比べれば、むしろ低率になつておるのでないか、従つて特に漁業権制度が行われたからといつて、それが経営者において負担の能力がないというようなことには考えられないのであります。尚今後インフレの進行がどうなるか分りませんが、大体の見通しとしてはむしろその率は多少は低下し得るんじやないか、こういう見通しを持つておるのであります。從つて一面においては今の補償がいわゆる漁業証券というようなことで、而も二十五年というような長期では、これは補償して貰つてもそれが有用にならんじやないかというお説でありますが、これが國庫の支出において補償できる場合には短期にするということも或いは可能かも知れませんが、御承知のように免許料を以てその補償の材源といたしておるのであります。従つてこれを短期にしようとすれば、おのずから免許料を多額にしなければならん、こういうデイレンマに陷りますので、三・七%という程度の免許料とすれば、どうしてもこの程度の年限にならさるを得ないのでありまして、これが証券の利用、つまりそれが金融の種になるというような点については、これが政府の補償でありますので、今後我々としては金融機関との折衝においてこれができるだけ漁業者の資金面に活用ができるような方法をとりたい、かように考えております。
#32
○委員長(木下辰雄君) 本日はこの程度で質問を打切ることに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#33
○委員長(木下辰雄君) 御異議ないと認めます、只今から閉会いたします。
   午後二時三十四分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     木下 辰雄君
   理事
          尾形六郎兵衞君
           千田  正君
   委員
           青山 正一君
           淺岡 信夫君
           西山 龜七君
           江熊 哲翁君
  政府委員
   水産廳長官   飯山 太平君
  説明員
   農林事務官
   (水産廳次長) 藤田  巖君
   農林事務官
   (水産廳漁政部
   協同組合課長) 曾根  徹君
ソース: 国立国会図書館
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