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1949/05/06 第5回国会 参議院 参議院会議録情報 第005回国会 厚生委員会 第18号
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1949/05/06 第5回国会 参議院

参議院会議録情報 第005回国会 厚生委員会 第18号

#1
第005回国会 厚生委員会 第18号
昭和二十四年五月六日(金曜日)
   午前十一時四十六分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○優生保護法の一部を改正する法律案
 (谷口弥三郎君外三名発議)
○連合委員会中止の件
○証人喚問に関する件
  ―――――――――――――
#2
○委員長(塚本重藏君) これより委員会を開会いたします。
 日程の順序に從いまして、優生保護法の一部を改正する法律案を議題に供します。先ず提案者の説明を願います。
#3
○谷口弥三郎君 優生保護法の一部を改正する法律案に関する提案理由の説明でございますが、優生保護法は昨年の第二國会を通過いたしまして、去年の九月十一日から実施になつているのでございますが、同法が施行せられまして以來の実績と、社会情勢の急激な変化に鑑みまして、人工妊娠中絶の施行範囲を拡げる必要に迫られましたことと、受胎調節に関しまする適正な方法の普及、指導を差当り優生結婚相談所にして貰いたいと思うことと、並びにいろいろの手続きの簡素化を図りますために、その基本法規に改正を加える必要が生じたためでございます。
 今その内容を少し詳細に説明申上げますと、本法の第三條の中におきまして、最近精神病並びに遺傳学の趨勢に從いまして、この改正の機会に、遺傳性の精神変質症並びに遺傳性の病的性格といいますのを遺傳性精神病質と改めたことでございます。
 第四條の中で別表におきまして、病名を列挙していたのでございますが、これを削除いたしまして、時代に即應すべく、厚生大臣の指定といたしまして、その指定のときには中央優生保護委員会に意見を聞くことといたします。尚医師が診療の結果強制優生手術を行うことが公益上必要であると認めますときは、審査を「申請することができる。」と、医師の任意的判断に任せておつたのでございますが、それを「申請しなければならない。」と医師に義務付けるようにいたしたのでございます。
 次に第十三條の第一号におきまして、その適当範囲を拡大いたしまして、配偶者にまでも及ぼしたのであります。尚遺傳性の精神病であるとか、遺傳性の精神薄弱とありましたのを、すべての精神病、精神薄弱と拡大されて規定をいたしておるのであります。第二号におきまして、妊娠の継続又は分娩が母体の健康を害するものとしましたのは、從來は分娩によりまして母体の健康を著しく害する虞のある場合でありましても、分娩後一年以内に更に妊娠いたしましたとか、現に数人の子を有しておる者が更に妊娠した場合のみにつきまして、人工妊娠中絶が認められたに過ぎなかつたのでございますが、これらの條件をすべて外しまして、妊娠、分娩が母体の健康を著しく害する場合には、常に地区優生保護委員会の審査決定を経た上で、人工妊娠中絶を行ない得ることといたしておるのでございます。尚從前の場合でありますと、戸籍謄本などを必要といたしますために、手続が極めて煩雜で、時日を要するという関係がございますので、この手続の煩雜の実状に鑑みまして、手続の簡素化を図つた次第でございます。第三号におきまして「妊娠の継続又は分娩によつて生活が窮迫状態に陷るもの」というのを一号新設いたしまして、現下の時勢に即應せしめますためには、本改正案中最も重要なこの部分が改正点になつておるのでございまして、現在の優生保護法におきましては、優生学的又医学的及び倫理的見地からする人工妊娠中絶を認めていたのでありまして、経済的理由による人工妊娠中絶には触れていなかつたのであります。然るに本法が実施されて以來経済的理由から人工妊娠中絶を認めよという要望が極めて強くありますので、これが要望に應えますことは、他面急激なる人口の増加を抑制するためにも必要であると認めまして、その運用の基準を生活保護法の適用線上に置く趣旨で、生計上困窮状態に陷る者を対象とすることといたしたいと存じておるのでございます。
 それから十五條の二は指定医師以外の医師は母体の生命を助けるために緊急止むを得ない場合にのみ人工妊娠中絶を行うことができるのでありまして、その他は禁止される旨を、解釈上の疑いが生じないように、特に一條を設けまして、明確に規定した次第でございます。
 尚第二十條の優生結婚相談所におきましては、從來は優生知識の普及、向上を図ることを目的としていたのでございますが、今回は更に科学的に受胎調節の普及、指導に当ることを規定したのでありまして、將來は貧困、多産婦とか、生活保護を受けておるような者などには、避妊用資材を無料で配給し得るようになしたいものと考えておる次第でございます。
 それから第二十八條の現行法におきましては、この法律の規定による場合の外は優生手術を故なく行つてはならないと禁止いたしまして、レントゲン照射はその効果が不確実でありますために放任していたのでありますが、これを應用いたしまして、優生保護法によらずに断種の処置をする者が可なり多く出て参りましたので、その弊害を除きますためにこれを禁止しようといたしたものでございます。
 以上が改正案の主なる点でありますが、優生保護法の運用を適切且つ容易にいたしますために、若干の改正をいたしたのでございます。例えば任意の優生手術に関しまして、四親等以内の血族関係にある者の遺傳性疾患につきまして、「子孫にこれが遺傳する虞れのあるもの」という條件を入れておりましたのを、今回はこの條件を外しまして、單に遺傳性疾患を「有しているもの」というだけに簡素化いたしております。その他地区優生保護委員会の審査決定を経た上で行われます人工妊娠中絶につきましては、本人がその意思を表示することのできない場合には、これまでは後見人、保佐人のみを掲げておりましたのでございますが、その他に親権者の同意についても本人の同意に代えることができるということにいたしました。更に後見人、保佐人又は親権者のいずれもがいないときは、親族の同意を以て本人同意に代えることができる、以上のいずれもがおらん場合には本人の同意を必要とせんということにいたしております。
 以上がこの改正案の内容でございます。どうぞ愼重御審議を頂きまして、可決確定いたしますようお願いいたします。
#4
○委員長(塚本重藏君) 只今の提案理由並びに修正の説明につきまして、御質疑はございませんか。
#5
○山下義信君 二三の点を伺いたいと思うのですが、これは非常に画期的な改正をなさろうとするので、私共も大体において賛意を表するにやぶさかならないものでございますか、大体本法は質の問題に向つての主張が置かれておつて、優生保護法が今回の改正案の重大なる点といたしましては、量の問題にこの改正が及ぼされたということにつきましては、非常に画期的なものであると考えるのであります。從いまして、この第十三條の第一項の三号の問題でございますが、生活窮迫状態に陷るものについて妊娠中絶を許そう。こういう改正点に関しまして伺いたいのでありますが、只今も提案の理由の御説明にもあつたのでございますが、生活保護法を受くる者を基準にという御説明があつたようでございますが、生活が窮迫状態に陷るものというその認定の基準につきましては、どういうふうにお考えになつておられましようか。今少し明確に承つて置きたいと思うのであります。これは非常に大事なところであろうと思います。これは本法の第十三條第二項によりまして、民生委員の意見書に添えまして、地区の優生保護委員会が審査することに相成つておるようでありますが、その民生委員の意見書というものの扱い方の上に重大な関係があると思うのでありますから、生活窮迫状態に陷るということをどの程度を以てさような状態であるとされるお考えでありますか。この良を伺いたいと思う。これが第一点であります。
 第二点は改正案を見まして、判然といたしかねますのは、この三号の「妊娠の継続又は分娩によつて生活が窮迫状態に陷るもの」というのは誰が生活窮迫状態に陷るのでございますか。妊婦が生活窮迫の状態に陷るのであるか。誰が生活の窮迫状態に陷る場合にそうしようというのでありますか。世帶もありましよう。配偶者もありましよう。その生活が窮迫状態に陷る者の範囲をどこまで見るのでありますか。これが第二点であります。先ずこの点を伺いたいと思うのであります。
#6
○谷口弥三郎君 只今の御質問にお答えいたします。この第十三條の三号におきまして、「生活が窮迫状態に陷るもの」と申しますのを、生活保護法の線に基準を置いておると申しましたのは、実は貧困というのをここに用いたいと思いましたけれど、貧困ではどうもはつきりした線が現われて來ないから、それで現に生活保護法を受けておるような方々に対してはこの項目を適用する、尚その次の「妊娠の継続又は分娩によつて生活が窮迫状態に陷るもの」、今現に陷つておらんけれども、妊娠を続けておるというと、或いは失業をいたしますとか、分娩後仕事ができんとかいう関係で、生活が窮迫状態に陷る者、即ち生活保護法程度に貧困に陷る者というのを土台にいたしております。從つてこの妊婦のみでありませずに、その家族或いは扶養者、その家族が、いわゆる世帶が生活窮迫に陷るような場合を全部この中に入れたいというようなふうに思つてここに揚げてあるのでございます。
#7
○山下義信君 そういたしますと、現に生活保護を受けていなくても、妊娠、分娩によりまして、そういう状態になるかも分らんという場合も本法の適用を受けるということになるのでございますね。
#8
○谷口弥三郎君 そういうようなふうに考えております。
#9
○山下義信君 その場合に何と申しますか、その夫婦と申しますか、妊婦と申しますか、それが大体素質が相当よろしいというような者でもやはり本法によりまして妊娠中絶を行わせますか、素質が非常によろしいような夫婦の場合というような場合には、何らかお考えはございませんか。
#10
○谷口弥三郎君 この優生保護法におきましては、先刻のお尋ねにもありましたように、質の改善、質を良くしたいというのも一つでございますが、尚優生法でなくて、保護という立場から申しますと、母性の保護ということを第二に眼目といたしておりわけです。從つて今現に生活窮迫はしておらんでも、今後するというような方は、その人の母性を保護するという立場からいたしまして、生活窮迫になれば自然いろいろの点が不完全になつて参るといつたような関係からいたしまして、質を加えるのみならず、母性保護という立場からその点までもやりたいというようなふうに思つておるわけであります。
#11
○山下義信君 これは優秀な質を保存して行くということは、これは十分考慮しなければならんことではないかと思うのです。若し本法の実施によりまして、いわゆる生活窮迫という下にこれをされるというようなことになりました場合に、優秀な質までも皆多く妊娠中絶が行われるということになりますと、民族の優秀性の保存ということの上におきまして、非常な障害を來すのではないかと考えるのでありまして、この点非常に重大であると思うのでありますが、やはりたとえ生活が窮迫いたしましても、その質が優秀な者につきましては、その者の生活の窮迫につきましては、他にも緩護の方法があるのでございますから、質の優秀な者に対しての妊娠中絶につきましては、そこに手心というものがなければならんと考えるのでございますが、それにつきましては、何か運用上に十分御注意に相成るお考えがございますか、今一度伺つて置きたいと思います。
#12
○谷口弥三郎君 質の優秀なものを保存したいというのは、この法の最も必要な眼目の一つでございますので、そういう場合には審議会におきまして、十分考慮して貰わんければならんと思つております。ただ生活が困窮に陷つたという場合におきましては、すべての場合にこれは永久避妊をするとかいうような関係でありませずに、現に起つておる妊娠を中絶するというだけでありますので、將來その方が分娩をせんということがないのでありますからして、まあ或る点までは経済的理由を以て人工妊娠中絶をさせたいというようなふうに考えておるのであります。
#13
○山下義信君 民生委員がいわゆる承諾しなかつたというような場合には、直接地区の優生保護委員会に訴える途でも開けておりますか、すべて民生委員の意見書に左右されるということに相成るのでございますか、民生委員の意見書と地区の優生保護委員会の意見とが相違するというような場合にはどちらをお取りになりまするお考えでございますか、その点を伺いたいと思います。
#14
○谷口弥三郎君 地区の優生保護委員会に対しまして、只今のような場合には民生委員が必ず意見書を附けて出して貰うことにいたしておるのであります。從つて民生委員の意見書が出ませんというと、地区優生保護委員会としては何ともしようがないのでございます。今後は民生委員の方々にも十分こういうことを理解して頂いて、成るべく法の精神が徹底いたしますようにしたいと存じておるのであります。とにかく民生委員の意見書がなければ優生保護委員会としては何ら手を付けることはできんことになつております。
#15
○山下義信君 この民生委員が第三号に該当するかしないかということを認定するわけなんで、そこで民生委員の考え方、所見が事実と相違したという場合、本人がこの第三号の該当者だと、こういうので民生委員の認定と本人の考えと相反した場合には、本人が直接優生保護委員会に申出て審査をして貰うという途がなけらねば完全でないように考えるのでありますが、その点何か運用上にでもお考えになりますることはございませんか。
#16
○谷口弥三郎君 この点は民生委員が非常に重大な関係を持つておるのでありますが、本人は特に希望しておるが、民生委員が意見書を書いて呉れんというような場件もきつと起つて來るというようなことも考えられておりますが、運営の方面におきまして、できるだけ民生委員にはこういうようなふうの優生保護法というような点に対して十分徹底するように、各地でいろいろと指導をしたり、或いは相談をしたりするような機会を作りたいと存じておるのでございます。尚又民生委員が、或の人の場合にはどうしても行かなかつたというような場合には、或いは外の民生委員に又一度頼んで見ても、それはちつとも構わんと思つておるのであります。
#17
○山下義信君 次は受胎調節の指導は、優生結婚相談所をして行わしめようとする第二十條の改正でありますが、これは提案者のお考えでは受胎調節に関する普及指導等はすべて優生結婚相談所一本に限ろうというお考えでありますか、或いは優生結婚相談所以外でもこの受胎調節に関する普及、指導というようなことをいたしてもよろしいというお考でございますか。その点を伺いたいと思います。
#18
○谷口弥三郎君 受胎調節につきましては、只今ここに優生結婚相談所の中におられる方でこれを指導して頂こうというふうにいたしておるのでありますが、とにかく現在人口問題審議会などができまして、無論審議会でも入口問題になりますと、受胎調節ということが大いに取上げられるだろうと思いますが、その場合になりましたら受胎調節ということを、優生結婚相談所以外の場所にも多数こういうものはできなければならんと存じておるのであります。殊に只今受胎調節につきましては、何ら法で決めておりませんので、すべてのこういう方面に知識のある方が指導されても何ら違法にならんのが現在の状況でありますので、單に優生結婚相談所のみにこれを置くという氣持は少しもないのであります。ただ人口問題審議会ができて、その方の成案ができますことを持つておりまして、ただそれで相談所のみに入れておる次第であります。
#19
○山下義信君 この第二十條の趣旨からいたしますというと、優生結婚相談所で受胎調節を適正な方法で普及指導をやるということになつておりますが、大体ここが中心になつて來るようにならねばならん筈と考えるのでありますが、これはその普及指導につきましては、この優生結婚相談所で行わせる普及指導の方法につきましては、何か提案者の方でお考えがございますか。
 それから尚関連しまして、優生結婚相談所という名称でございますが、かくのごとく廣く受胎調節までいろいろ活動するというようなことになりますと、むしろ結婚という文字がなくて、優生相談所と言つた方が名称としては適切のように考えるのでありますが、この点提案者はどうお考えになりますか。
#20
○谷口弥三郎君 受胎調節の方法につきましては、只今どの方法が最もいいかということは、まだそこまで研究が進んでおらんのでございますけれども、大体といたしましては、受胎調節は或いは器機を用いるとか、藥を用いるとか、器機を用いるにしても男子に用いるか、女子に用いるか、方法がありますけれども、その方法のうちで障害なしに同時に成るべく妊娠せんような方面のものを指導して貰いたいと思つておるのであります。この点につきましては、尚日本婦人科学会の先日の会合でも受胎調節竝びに人工妊娠中絶の方法などについて、この研究を大いに進めることになつておるような次第でございますから、こういうようなところで結論が出れば、尚そういう方面まで加えて行きたいと思つております。
 それから第二に、優生結婚相談所という名前は、優生相談所ぐらいにした方がよくはないかと仰せられたのでありますが、実は受胎調節までやるとなりますと、結婚だけでなしに余程拡大された状況になつて参るのでありますが、実は優生結婚相談所というものが、各地に置かれることになつておりますので、差当りそこのうちにこれを附加えてやつて貰う。將來は、繰返すようでございますが、人口問題審議会の方で成案ができたら、そのときに変えてもよかろうと存じまして、今回まではこの優生結婚相談所のうちに置くことにいたしておるわけであります。
#21
○山下義信君 只今の点は了承いたしました。私は優生結婚相談所の名称は結婚だけの相談のように名称の概念が印象を與えますから、そういう仕事の範囲を拡げることになりますと、名称が適当でないと考えますが、提案者の只今の御答弁で、適当な機会を持つことにいたしますが、次は第十五條の二の指定医師以外の医師の手術の禁止でございますが、これは指定医師というものは我々の素人考えでは、それは專門家でなくても、手術の功拙があつて危險性もあろうと思いますが、相当廣くこれは指定されないと、却つて本法改正の趣旨が徹底しないのではないかと考えます。又指定医師が少いということになりますと、独占的な弊害があつたりすると思いますが、今後この指定医師の範囲をどの程度になさろうとするお考えでありますか。この点であります。それから関連しまして、第二点は我々素人の常識といたしましては、病院とか、診療所とかいうものは、これは患者が信用いたしますので、病院に行けばよろしいという考え方を持つのでありますが、病院を指定するというような考えはあるのでございましようか、ないのでございましようか、医師だけの指定であるのでしようか、病院を指定するという場合があるでしようか、その点を併せて伺いたいと思います。
#22
○谷口弥三郎君 指定医師の範囲でございますが、仰せられたように指定医師が余り少な過ぎるというと、独占的になるし、又民衆のためにも非常に不便でありますので、実は指定医師をできるだけ多数に指定するというふうにいたしておるのでございます。尤も指定医師にはその指定医師の資格を作りまして、その資格は本人の技術と、設備と、本人の人格という三つの点を土台にしまして、範囲を決めておるのでございます。そうでないと、如何によくできる人でも場所がなければ手術がうまく行きませんので、又技術がなければいろいろ失敗もいたしますから、母性保護の立場から拵えた指定が却つて母性に悪影響を來たすということになつてはなりませんので、この資格を持つたような方をできるだけ多数指定しております。現に東京都におきましては、只今までは四百七十名ぐらいでございましたのが、数日前に五十名ばかり範囲を拡げまして、五百二十名とかというようなふうに段々拡つて参つております。今、全國におきまして、総数は分りませんが、多分六、七千名ぐらいの医者が指定されておるというような状況であります。尚その上に技頃が優秀で、而も設備があり、人格が揃つておれば、今後どしどし指定医師を拡張するようなふうに医師会では努めている次第でございます。
 第二の病院を指定するか、本人を指定するかという御質問でございましたが、実は病院を指定するという場合には、十分技術を持つているような人がいない場合がございますので、やはりその人を指定しているのでございます。無論病院の設備などがその人を指定する場合の一つの條件になつているような現状でございます。
#23
○山下義信君 最後に伺いたいと思うのですが、今回の改正の第十三條の一号から三号の改正なのですが、現行法によりますと、「現に数人の子を有し」云々ということがあつたのですが、これが止めになりまして、そしてかように一号、二号、三号というようなことに変えられたのでありますが、これは何か本法の施行の上に、やはり三人以上の子ある者とか、或いは五回以上の受胎をいたした者とかいうような施行上の細則か何かの中に、そういう運営上の規定を存置される考えでございますか。その点は如何でございましようか。尚本法の普及につきまして、特に必要と考えられるのは、労働者階級であると思いますが、労働者階級に本法の趣旨が適切に普及されるにつきまして、何らかの方法をお考えになつておりまするか、どうでありますか。この二点を最後に伺つて置きたいと思います。
#24
○谷口弥三郎君 只今のお話の中で、現行法では、「現に数人の子を有し」とか或いは「分晩後一年以内」の者というような項目を置いておりましたのでございますが、今回それを省くことにいたしましたのは、実は戸籍謄本が施行規則におきまして是非必要だということになりましたために、戸籍謄本を取ろうとします場合には、なかなか時日がかかりますし、手数がかかりますために、その結果やはりこれをせんければ健康を害するような者が、そのまま妊娠を継続しているという場合が可なり多数にありますので、この際そういうような手続簡素と同時に、健康を害するというような場合には、一應できるだけ人工流産をするといつた方面に持つて行つた方がよいと思いまして、それを外してしまつたようなわけでございます。
 第二に労働者階級方面において大いに徹底する必要がありはせんかというお話で、これは至極必要だと認めているのでございます。從つて各地におきましては、指定された医者が母性保護医協会というのを各府縣に作りまして、そうしてその協会からいたしまして、或いは労働者方面とか、或いは貧困者方面とか、又は民生委員の方々とかいつた方面に進んで出て参りまして、この法の趣旨を徹底させるようにしているのでございます。從つてそういうような会を組織いたしまして、現に徹底させようといたしているような状況でございます。
#25
○山下義信君 今の最後の労働者階級への何といいますか、本法の適正な運用につきまして御盡力願わなければならんことは、母性保護医協会ですか、そういう協会によりまして御盡力願うのも結構でございますが、私共の希望いたしますることは、この妊娠中絶というようなことについての手術料といいますか、治療というものが極めて安價に行われる、場合によつては無料で行われるということがなければ、如何に法は完全にでき、その趣旨は大体において妥でありましても、実行するという場合におきまして、費用が嵩むということに相成りましたのでは、これは本法の折角の改正の趣旨は空文に帰すると思うのであります。從いまして、この妊娠中絶の手術料或いは受胎調節に関する費用でありますが、要するところ本法の改正の趣旨を徹底せしめて、折角のこの改正の特長を有効ならしめるためには、その点に十分考慮する必要があるのではないかと考えるのでありますが、この点提案者におきましてはお考えはございませんか。
#26
○谷口弥三郎君 只今のいわゆる費用につきましては、これは私共母性保護医協会などにおきましても、こういうふうにいたしておるのでございます。從來はこの人口妊娠中絶は、殊に圏で行われた時代には非常に費用が高かつたのでございます。これはどうしても安くせんければならんと思いまして、普通人口妊娠中絶は千五百円程度にいたしますし、余程ひどい場合でも二千円という程度にして、決して高く取らんようにということを一般に互いに自粛自戒させておるのでございます。尚これは幸いにいたしまして、社会保險におきましても、普通社会保險は御承知のように治療の場合のみやつておつたのでございますが、こういうふうな予防的の手術も社会保險でやることができますし、尚生活保護法でこの費用を拂つて頂くことができますので、特に民生委員などに説明いたします場合には、貧困者であつて生活保護を受けておる方は、それによつて費用は出るのだからして安心して治療を受けるようにというようなことを勧めるようにいたしておるのでございます。
#27
○委員長(塚本重藏君) 一時半まで休憩したいと思いますが、如何でございましよう。
#28
○姫井伊介君 短時間にちよつとお尋ねしたいと思います。
#29
○委員長(塚本重藏君) 質疑を続けます。姫井委員。
#30
○姫井伊介君 この改正法律案の実施に伴いまして、その運用上政府当局として何かお考えになつておることがありますか。一應それを伺いたいと思います。
#31
○政府委員(三木行治君) この改正法律案は二、三の点で、法施行者としての私共の立場から申しまするならば、やりよくなつた点があるのでありまして、その点は結構でございますが、この改正法律案の第十三條第三号の「妊娠の継続又は分娩によつて生活が窮迫状態に陷るもの」という、これを実際に適用する場合でございますが、それらの点につきましてはなかなかむずかしいのではないかと思います。
 それから第十五條の二の「医療行爲としてでも、」というのがありますが、医師の正当業務としてもやれないというのはどういうことであるかというような点で、立法者の御意向を伺つて置きたい点が二、三あるのであります。
#32
○姫井伊介君 時間を取つて済みませんが、序でにその点を聞かせて頂きたいと思います。政府とこの立法者の間におきましての……
#33
○谷口弥三郎君 この第十三條の第三号につきまして「生活が窮迫状態に陷るもの」というこの表現が非常に困難をいたしまして、数回いろいろの方に協議を願つた結果、まあ生活が窮迫状態に陷るもの、即ち先刻申しましたように、生活保護法によるというぐらいに置こうというようなふうにいたしておるのですから、当局におかれても是非そのような部分を委員である地区の母性保護委員会に徹底するように御説明願いたいと思います。それから第十五條の二の「医療行爲としてでも」というのは、この字は要らんようなふうに私共の思つておつたのでございますけれども、法制方面の方々といたしましては、例えば医師が肺結核の患者を診断した場合に、肺結核はどうせ妊娠、分娩当りにも悪くなりますからして、そういう場合には医者の正当業務としてこれまではやれておつたのですけれども、それを今回は特に指定医でなければならん、母性保護の立場から指定医を用いるということにいたしましたために、緊急避難行爲以外は医療行爲としてでも行つちやならんというようなふうにいたしておるのであります。
#34
○政府委員(三木行治君) 第三号の「妊娠の継継又は分娩によつて生活が窮迫状態に陷るもの」というこの解釈でありますが、現に生活保護を受けておらなくても、妊娠を継続し又は分娩によつて生活が窮迫状態に陷る。そこでこれは民生委員が先を見越して決心をしなければならんのであります。その点を言うことはやさしいのでございますが、私共がこれを地方末端まで徹底いたしますためにどういうふうな筋を引くかということが、実はなかなかむずかしいのであります。それからもう一つは、この妊娠の継続又は分娩ということだけが理由になつておりますが、生活窮迫は家庭に病人ができたり、主人が失業したというような場合は、これは適用できないのでございましようか。適用いたすのでございましようか。それから第十五條の二でございますが、今谷口委員の御説明になりましたようなことは、これは異議ございませんが、例えば今子宮筋腫がある。そこで手術をして見たところが妊娠しておつた。こいつはどうしても妊娠中絶をやるというような結果になるのでございますが、そういうのは医師の正当の業務であつたもそこでは腹を閉じて、他の指定医に渡さなければならんものであるかどうか。そういう点についても私は若干の疑義があるのでございます。
#35
○谷口弥三郎君 只今の十三條の三号は、現在はそうでなくても、継続又は分娩によつて生活が窮迫状態に陷るものと申しますのは、本人並びにそれの主人とか配偶者などをも一緒に含めておる、そうしてやりたいというようなふうに思つておるのでございます。それから第二の方の子宮筋腫などの場合は、これはこれ以前からもそう申しておつたのですが、子宮筋腫を治療するのが目的であつて人工妊娠中絶というのが目的でなしにやる場合は、医者の正当の業務としてやつてかまわんというようなふうには私は解釈しております。
#36
○政府委員(三木行治君) これは私共が法の施行者としてというよりも、法の施行をやつております者の立場から、若しお許しを得られますならば、希望を述べさして頂きたいと思うのであります。というのは、この生活困難という問題で、生活困難を理由として妊娠中絶を認めておる國は世界中にないのでございますが、又これをやるということになりますと、宗教的にも社会経済的にも、いろいろな問題が実はあると思うのであります。それで國会でお決めになりましてこれが法律として施行せられますならば、私共は当然それは忠実にやらなければならんのでございますが、立法者の御意思を伺いましても、尚且つ法を施行するに当つてデリケートな問題につきましては、やはり世論に動かされるということになると思うのであります、勿論國会が世論を代表しておられることは言うまでもないことでありますから結構でありますが、ただいろいろな論議をせられておりまするという実情を考えてみますと、やはり公聽会のようなものでもおやり頂いたならば、それらの状況等も伺いまして、細かい点で私共法を施行するに当つて実情に即するようにやれるのでないか、かように考えるのでありまして、一言、これは私共として言うべきことじやないかも知れませんが、若し許されますならば、一言希望を述べさして頂きたしと考えます。
#37
○谷口弥三郎君 只今の生活窮迫状態というような経済的理由を元として人工妊娠中絶をすることのできない、世界中にそれがないというようなことを実は考えましたので、前回の第二國会においては貧困とか窮迫状態というようなものを出し切らずにおつたのであります。ところが、この法が実施されまして以來、世界にないか知らんが、日本がこういう貧困状態に、こういう困難な状態になつておるのは、世界中でどこにもありはせんじやないか。從つてこの際には是非とも貧困を、経済的方面を土台にして法を作つて貰わねば、これが入らんと折角のこの十三條の項目は何にもならんという世論が非常に激しいのと、各地から陳情書、請願書とか、或いは決議文とか、いろいろ來ました結果、どうしてもこの際はこの貧困を土台として人工妊娠中絶を許すという範囲を拵えなければならんという関係から、作つておるのでありまして、この点を認めるということは、世界で初めてこういう方面にまで進んだということになつておるのでありますから、どうぞその点を御了解願います。
#38
○姫井伊介君 さつき山下委員が指摘されました十三條の第三号は誠に重大なものだと思うのでありまして、生活事情が悪くてそして優生学的見地から素質が悪ければ、これは当然問題はありませんが、貧乏であつても素質のいい者と、一方生活に余裕がある者でも素質が悪くて低能者でも生み出す、そこの矛盾があるわけでありますから、この点につきましてはこの施行法かなんかで、山下委員の言われましたような意味においての注意的な取扱事項が決めて欲しいと思います。それは決められるかどうかということと、今一つはこれは誠に細かいことでありますが、十五條の二の「人工妊娠中絶を行うことができない。」これは文字の上なんですけれども、変に皮肉に考えますと、できないことが俺はできるぞといつたような意味にも取れるわけなんです。だから、これはやはり行なつてはならないといつたふうにしなければ皮肉に受取られることはないか、こういうことなんであります。その点どうでしよう。
#39
○谷口弥三郎君 只今の十三條第三号でございますが、先刻山下委員からお話があつたように、又只今姫井委員のお話のように、優秀な者が妊娠しておる場合にはそれは大いに考えなければならないのではないかという御質問ですが、それは至極必要だと存じております。貧困必ずしも劣性というわけには参りませず、なかなかいいのもおるのでありますから、これは又運用の委員会の方面で、特に優秀というような場合には考えて呉れというようなことも言うてお願いしてもいいと思います。ただ併しこの点優秀とか、優秀でないとかいうことの判定が又非常に困難になりますので、やはり或る程度生活窮迫ということを主題にせんければならんと存じておるのであります。それから第二の「人工妊娠中絶を行うことができない」というのを、「行うてはならない」という文句は、その方がよく分るように思いますけれども、これでも分らんことはないと思いますから、如何でございましようか。
#40
○委員長(塚本重藏君) ちよつとお諮りいたしますが、大藏委員会との連合委員会は中止することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#41
○委員長(塚本重藏君) 御異議ないと認めます。
#42
○山下義信君 優生保護法の一部を改正する法律案につき、証人を喚問することにし、日時及び人選は委員長に一任する動議を提出いたします。
   〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
#43
○委員長(塚本重藏君) 只今の山下委員の御動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」て呼ぶ者あり〕
#44
○委員長(塚本重藏君) 山下委員の動議の通り証人を喚問することにし、日時及び人選は委員長に一任することに決定いたしました。それでは本日はこれにて散会いたします。
   午後零時四十三分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     塚本 重藏君
   理事
           谷口弥三郎君
           姫井 伊介君
   委員
           山下 義信君
           中山 壽彦君
           竹中 七郎君
           井上なつゑ君
           小杉 イ子君
  政府委員
   厚 生 技 官
   (公衆衞生局
   長)      三木 行治君
ソース: 国立国会図書館
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