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1949/05/07 第5回国会 参議院 参議院会議録情報 第005回国会 厚生委員会 第19号
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1949/05/07 第5回国会 参議院

参議院会議録情報 第005回国会 厚生委員会 第19号

#1
第005回国会 厚生委員会 第19号
昭和二十四年五月七日(土曜日)
   午前十一時五十三分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○死体解剖保存法案(内閣提出)
○國立身体障害者更生指導所設置法案
 (内閣提出)
○証人喚問に関する件
  ―――――――――――――
#2
○委員長(塚本重藏君) これより委員会を開催いたします。本日は最初に死体解剖保存法案を議題といたします。先ず提案理由の説明を願います。浅岡政務次官。
#3
○政府委員(淺岡信夫君) ただいま議題となりました死体解剖保存法案の提案の理由を説明いたします。
 傳染病、中毒等により死亡した疑のある死体その他死因の明らかでない死体につきましては、連合軍総司令部の覚書に基づきまして、昭和二十二年厚生省令第一号死因不明死体の死因調査に関する件、が施行せられておりますが、これはいわゆるポツダム省令として制定せられましたものでありまして、新憲法の趣旨からいたしましても成るべく速かにこれを法律に改めることが必要なのであります。而してこの省令を法律に改めるに当りましては、これと密接な関連を有する「大学等へ死体交付に関する法律」の内容をもこれに統合することが適当であると考えられるのであります。
 更に又従来死体の解剖又は保存に関しましては、刑法中に死体の損壊又は遺棄を処罰する規定があります外は、法令の規定がないのでありまして、そのために例えば医学の教育又は研究のために、死体の解剖又は保存をなす等の場合には、それが適法であるか否かにつきまして多少の疑義があるのであります。
 かような現状は医学の教育又は研究のためにも望ましくないのでありまして、この際死体の解剖及び保存に関しまして、包括的な統一的法制を整備する必要が各方面から要望せられておりますことにも鑑みまして、ここにこの法律を提案いたした次第であります。
 次にその内容を簡単に申しますと、先ず最初にこの法律の目的は、死体の解剖及び保存の適正を期することによりまして、医学の教育又は研究に資するとともに、公衆衛生の向上を図ることにあることを明かにし、次にこの目的を達しますために、死体の解剖をしようとする者は、原則として行政廳の許可を受けなければならぬことといたしました反面、死体の解剖を特に必要とする場合、例えば医学に関する大学の教授又は厚生大臣が特に認定した者が解剖する場合、その他刑事訴訟法等他の法律の規定に基づいて解剖する場合等には、予めの許可を要せず、事後の届出を以て足ることと致しておるのであります。
 又死体の解剖は、尊嚴な人体の取扱いに関することでありますので、原則として遺族の承諾がなければこれをなすべきでないことは、むしろ刑法の解釈上当然でありますが、この法律におきましては、更に進んで遺族の承諾を要せず解剖し得る場合を列拳いたしまして、刑法との関係におきまして、違法性の阻却される場合の基準を明かにいたしたいのであります。
 更に解剖は、解剖室において行うべきことを規定した外、死体の保存につきましても、医学に関する大学又は総合病院において保存する場合等を除き、原則として都道府縣知事の許可を要することとし、その適正化を図つているのであります。
 以上がこの法案の主な内容でありますが、一方において医学の教育又は研究等のために欠くべからざる死体の解剖は、できるだけこれを容易ならしめるとともに、他方死体の尊厳に関する國民の宗教的感情の尊重にも十二分の意を用いているのであります。何とぞ御審議の上速かに可決せられるようお願い申し上げます。
#4
○委員長(塚本重藏君) 本案の内容についての説明を伺いたいと思いますが、如何ですか。
   [「異議なし」と呼ぶ者あり]
#5
○委員長(塚本重藏君) では久下医務局次長。
#6
○政府委員(久下勝次君) この法案の内容につきましては、只今提案理由の御説明を申上げましたので、大体の趣旨は盡きておると思いますが、やや細部に亘りまして御説明を申上げたいと存じます。
 従来死体の解剖につきましては、警察犯処罰令に規定がありまして、許可なくして死体を解剖した者は処罰をされることに相成つておつたのでございます。この警察犯処罰令が廃止になりまして、軽犯罪法が制定になりましたときに、この規定は軽犯罪法に採入れられずに今日に至つておるのでございます。従いまして、提案理由の説明にもございましたように、現在の法律上の建前といたしましては、刑法の百九十條に、「死体、遺骨、遺髪又ハ棺内の二藏置シタル物ヲ損壊、遺棄又ハ領得シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス」こういう規定がございまして、死体の解剖ということは取も直さず死体の損壊になりますので、一應はこの刑法百九十條の罪に相成ることになるのでございます。併しながら申すまでもなく、死体を解剖いたしますことは、先ず第一には医学の教育としては欠くべからざるものでございまして、解剖学の教育におきましては、人の死体を系統解剖と称しまして、学生が手を掛けて人間の体の構造を知るということが医学の第一歩となつているような実情でございます。從いましてそのことが一つと、それから更に又御承知の通りに、疾病によつて死亡いたしました者につきましても、必ず医師の診断が生前におきまして正確に行われることは限らないのでございます。いわゆる病理解剖と称しまして、死亡の原因を部分的な解剖によりまして確かめるということは、医学の進歩の上からも欠くべからざるものと相成つているのでございます。このいわゆる系統解剖及び病理解剖は、医学校は勿論のこと各病院におきましては相当廣く行われているのでございます。そこでそれに対する解釈といたしましては、刑法総則第三十五條の「正当ノ業務ニ因リ爲シタル行爲ハ之ヲ罰セス」という規定がございます。その規定によりまして、現在の法律上の解釈といたしましては、先程申上げました刑法第百九十條の犯罪も今申上げましたような場合には、違法性が阻却されまして処罰されないというような解釈に相成つている実情でございます。併しながら実際問題といたしましては、「正当ノ業務ニ因リ為シタル行為」ということを具体的にどういうふうに判断すべきかということにつきましては、今日何ら決まつたことはございませんので、実際には必要に迫られて解剖が行われているのでございますが、それを積極的に適法化する法律上の根拠が、今日存在をしていないということに相成つているのでございます。これがこの法案の第一の内容に相成つているのでございます。即ち具体的に申しますとこの法案の第一に取上げました死体の解剖に関する規定といたしましては、一應原則的には許可を受けることにいたしているのでございます。但し法案の第二條に但書がございまするように死体の解剖に関しまして相当の学識技能を有する医師、歯科医師などでございまして、厚生大臣が確定をした人につきましては、一々の場合に許可受けなくても、事後において届出をすればよろしいという扱いをいたしたいと思つております。更に又医学に関する大学の解剖学、病理学又は法医学の教授又は助教授の職にもあります者は、当然只今申上げましました解剖に関する学識技能を有する者という確定が下されまするので、法律上当然に一々の場合は許可を要せず、事後において届出をすれば解剖をし得るようにいたしているのでございます。厚生大臣が学識技能を有するかどうかということを確定いたしますにつきましては、法案第四條にございますするように、死体解剖資格審査会というものを厚生省に設けまして、斯界の権威者に構成メンバーになつて頂きまして、十分適切な基準を定め、その基準に基きまして、具体的な場合の意見を聴いて指定するようにいたしたいと思つているのであります。
 尚死体の解剖はさような積極的に医学の教育又は研究のために必要であるという反面、死体の尊厳の維持或いは言葉を換えて申しますれば、遺族死体に対する宗教的な感情というものも無視すべきものではないのでございますので、第七條に書いてございまするように、許可又は届出によつて解剖をない得る場合でございましても、必ず原則として遺族の承諾を得なければならないというふうにいたしておるのでございます。これも併しながら特別の場合には、遺族の許可がなくてもいいという規定が第七條の各号にございます。この程度の例外だけを設けまして、原則としては一々遺族の承諾を得ることを要件として、遺族の死体に対する宗教的な感情を満足させるようにいたしたいという考えでございます。
 尚解剖につきましては特に設けられました解剖室において行うことを原則にいたしております。これは解剖にいたしました場合の汚物の処理等のためにも、或いは場合によりましては、傳染病の予防等の考慮を拂う必要がありまするので、原則としてはさようにいたしてございまするが、ただ特別な場合に死体の存在しておりまする個人の住宅等で行わざるを得ないような場合があると思いますので、さような場合には保健所長の許可を受けて、その解剖室以外でもなしえるような例外を設けてございます。
 更に又死体をずたずたに解剖しますいわゆる系統解剖につきましては、これは特に以上申上げました汚物の処理等いろいろな跡始末の関係がございまするので、それと又その必要性を考慮いたしまして第十條に規定してございまするように、医学に関する大学以外ではこれをやつてはならないようにいたしてございます。
 これが死体の解剖に関するこの法案の規定の主なものでございまするが、この法案の第二点として規定してございますることは、提案理由の説明にもございましたように、東京外六大都市におきまして現にポツダム政令によつて実施いたしておりまする死因調査に関する根拠規定をこの法案の中に盛り込んでございます。これらは連合軍司令部の指令に基きまして七大都市におきましては死因不明の死体を専門の監察医を置きまして検察又は解剖いたしまして、そうしてそれによりまして一方においては医学の進歩に資し、一方におきましては公衆衛生上の発達に資するというような趣旨で現に行つておることでございます。これを先程の提案理由の御説明にございましたようにすでにポツダム政令でやつておることを法律によつて御承認を頂きたいというのでございます。
 尚解剖につきましては特に各医科大学におきましては、今日の実情といたしまして死体の入手に非常に困難を感じております。特に系統解剖の死体につきましては各学校とも入手困難を感じておる実情でございます。と言つて無制限に何をやつてもいいという訳には参りませんので、原則として引取者のない死体につきましては、所在地の市町村から大学又は医学に関する学校の長の要求に基いてこれを交付し得るような規定を設けてございます。このことは大学等へ死体交付に関する法律というのをすでにご審議を頂きまして、個別の法律として出ておるのでございまするが、これを廃止いたしまして本法案の中に取り入れることにいたしておるのでございます。
 この法案の主な第三点といたしましては、死体の一部又は全部の保存に関する法律上の根拠を設けましたのでございます。先ず医学に関する大学又は総合病院、これは医療法に基きまして百ベット以上の各科を持つております病院をいうのでございます。医学に関する大学又は総合病院の長は医学の研究又は教育のために必要がありますときは、遺族の承諾を得て、死体の全部又は一部を標本として保存し得るような規定を設けました。これも御承知の通り各大学におきましては、解剖いたしました後におきまして、死体の全部又は一部、全部というのは殆んどございません。例外的には、ミイラなどが保存されておる学校がございます。そういうものを考慮して全部と書いたので、後は骨格でございますとか、或いは内臓の一部でございますとか、そうしたものを保存し得るようにいたしておるのでございます。更に又その外の医療に要請され、或いは許可を得られました医師が解剖いたしまし場合に、病理標本として保存したいという場合が相当多いのであります。そういう場合には死体の一部を標本として保存のできるようにいたしておるのであります。以上のように一應、法律におきまして死体の解剖を認めておりまする者以外、その他の者が死体の保存をいたそうとする場合には、遺族の承諾を得て更にその地の都道府縣知事の許可を受けなければならないことにいたしておるのでございます。
 以上がこの法案の内容の代要でございます。即ち繰返して申しますれば、死体の解剖に関する規定、死因調査に関する規定、それに関連をして、大学等に対する死体の交付に関する規定、最後に死体の保存に関する規定等を一括してこの法案に織り込みまして、結論といたしましては、提案理由の御説明にもございましたように、医学の教育又は研究の進歩に資し、更に又公衆衛生の改善を図るようにいたしたいというのでございます。簡単でございますが、
  ―――――――――――――
#7
○委員長(塚本重藏君) お諮りいたしますが、この死体解剖保存法についての質疑をいたしますか、それとも次の國立身体障害者更生指導所設置法案の説明を一緒に聞くことにしましようか。
   [「聞きましよう」とと呼ぶ者あり]
#8
○委員長(塚本重藏君) それでは國立身体障害者更生指導所設置法案を議題に供します。
#9
○政府委員(淺岡信夫君) 只今議題となりました國立身体障害者更生指導所設置法案につき、提案の理由を御説明申上げます。
 現在戦禍、交通事故その他不慮の原因によつて、傷痍の身となつた者は相当の数に上つているのでありまして、これ等身体障害者に対しましては、國立病院、療養所、國立光明寮、收容授産施設、職業補導施設などの各種施設を利用して極力その保護更生に努めているのであります。
 併し、身体障害者の保護更生につきましては、傷痍の種類、程度、年齢、生活環境、残存能力等を総合的に観察いたしましたうえ、その各々に應じた適切な指導をすることが是非必要とされるばかりでなく、かかる総合的判定に基き決定された適職が、医療管理の下において補導されることが最も望ましいことと存ずるのでありまして、身体障害者自身からもかかる條件を備えた施設の設置が強く要望されるに至つたのであります。
 よつて政府はこれらの要望に應えて医学的に、心理学的に、又職能的に、綜合判定を行い、生活問題、医療問題、職業問題等に関するあらゆる相談に應じ、助言を與え、又直ちに講師救済援護機関等へ連絡斡施を行うと共に、必要あるものにつきましては直ちに施設に收容し、職能判定より作業訓練、職業補導に至る迄の過程を一貫して医療管理の下、強力に実施し、身体障害者をして、その精神的、肉体的傷痍を速かに克服せしめ、再び積極的に社会活動に参加するに必要な指導及び訓練を行う國立身体障害者更生指導所を設置せんとするものであります。
 今回提出いたしました法案は、かかる國立身体障害者更生指導所を設置せんとする法案であります。
 何とぞよろしく御審議下さるようお願いいたします。
#10
○委員長(塚本重藏君) 続いて法案の内容についての説明を……
#11
○政府委員(木村忠二郎君) 本法案はこの指導所設置の根拠になる規定を設けたのでありまして、設置の趣旨並びに指導所の目的等につきましては、只今提案理由に御説明申げた通りでございます。あとの内容は、この指導所を設置しますること、この指導所の行いまする業務、指導所の内容というものにつきましての規定を設けてある次第であります。
  ―――――――――――――
#12
○委員長(塚本重藏君) 先ず最初に死体解剖保存法案についての御質疑を……
#13
○中平常太郎君 死体解剖の方の御質問を申上げますが、迂遠なようですが、死体と言うたら直ちに人体と解してよろしいと通念ではおもいますが、それには「死体」で人間の体の死体ということに解釈してよろしいのでありますか、文字から來るところの根本の何はそれでよろしいのですか、死体ということは人間を指して言う以外に用いない言葉ですか。
#14
○政府委員(久下勝次君) その点は私共從來死体といえばもう人間の死体ということに限定をして解釈をいたしております。先程申しましたように、刑法第百九十條の規定から申しましても、この場合の「死体」は人の死体であるというように考えております。刑法上の取扱いからいたしますと、人間以外の動物の死体は物という扱いになつておるようであります。
#15
○中平常太郎君 次にお尋ねいたしたいのですが、第七條の「死亡確認後三十日を経過しても、なおその死体について引取者のない場合」ということがありますが、死亡確認ということはよく分りますけれども、三十日ということが、解剖の場合には多分役立たんような日経ちになつてしまいますし、又三十日は経過しても一つもわからないもんかといつたら、そうでない、実際は分らすような広告或いはこれを分らしめる積極的な手段をとらずにおいて、そこに死んだ死骸を放置するなれば或いは数丁先の家庭の者が死んでおつても分らない場合がないとも限らない、この広告その他の問題は何ら書いてありませんが、消極的にただ「死体確認後三十日」と書いてありますけれども、豈図らんや同じ町の人の旅行友達が死んでおつたという場合もある、同じ村でもどつかへ出張したと家庭では思うておつてもその行きがけに死んだのかも知れない、而してこれは十分に死亡者の確認が、死んだということは確認はできるが、自由に死体を処理してよろしいという、いわゆる遺族の承諾を受けるという問題からは、そこに大きな不完全なところがあるように思いますが、これに対する御質問を申上げます。それから続いて申上げますから……
 第十一條の「死体を解剖した者は、その死体について犯罪と関係のある異状があると認めたときは、」とありますが、犯罪と関係のあるのを認めるのは医師ということでありますが、又犯罪と関係のあるのは警察当局でなければなりませんが、これで見るというと「死体を解剖した者は」というのがありますが、すでに死体の解剖は済んでおる、それから二十四時間以内ということになると死体にも変化が來ますし、一番最初からみなければならない大事な人物も、遂に死体は解剖してしまつておることになりますから……「犯罪と関係のある異状があると認めたときは」というのは死体解剖後二十四時間以内に警察署長に届けるということは條文においてそのずれをどういうふうに考えておりますか、この点お尋ねしたい。
 それから第六條に知事に届け出なければならないという処置の方法がありますが、「遅滞なくその所在地又は解剖地の都道府縣知事に届出なければならない。」とありますが、解剖したというのは何の某の解剖ということだけでありまして、それには解剖の目的、処置並びに遺族との関係、承諾の有無ということは、一切のことは知事に報ぜられるのでありますか、処置の内容はどの程度が行政面にこれが反映して行くものでありますか、これをお伺いしたい。
 それから第四條の審査委員会は死体解剖資格審査会というのは厚生大臣が決められるのでありますが、どうゆう内容をお持ちになつておりますか、審査会の構成はどうなつておりますか、定員等、その点をお伺いいたします。
 それからもう一つ、逆になりますが、第三條の認定を受けた医者は五ヵ年間は勝手にやれるということになつておりますが、お医者も人間でありますからその間いろいろな、お医者も軽い中風になる場合もあるし、その外いろいろ生理的な変化もあるし、身体にもありますし、境遇的な変化もあつたりいろいろでありますが、認定したならば五ヵ年の間勝手にやれるということは割合悪用の途ができはしないかと思われますが、それに命令を加える一つの方法は、五ヵ年以内に審査委員会はそういうものを審査して、五ヵ年以内の任期中の医者という資格まで審査するのかどうか、この点をお尋ねいたします。先ずそれだけのことをお尋ねいたします。
#16
○政府委員(久下勝次君) 先ず第一のお尋ねでございますが、三十日間という限定がございます。この規定はこの法律上の言葉でもうしますると身体の生理上の構造を明かにする解剖、即ち私共は逆にこれを系統解剖の対象になる死体について大体考えておる程度であります。普通病理解剖でありますと、三十日くらいはかかうことになつております。で、三十日くらいは待つて貰つて解剖するということになります。少なくとも遺族の分らない、引取者のない死体に対しては三十日間くらい待つて貰いたいという規定でもあります。この場合におきましてはこの法案の第十六條に規定がありまして、行施病人及び死亡人取扱法に基きまして引取者のない死体の存在いたした地の市町村はその死体について必ず公告をいたさなければならないことに相成つております。從つてこの種の死体につきましては行旅病人及行旅死亡人取扱法に基く所定の手続をなさなければならないという第十六條の規定がありまして、ここで考えておることが主として行旅病人及び行旅死亡人取扱法第七條の規定にこういう規定があります。「行旅死亡人アルトキハソノ所在地市町村長ハソノ状況相貌遺留物件ソノ他本人ノ認識ニ必要ナル事項ヲ記録シソノ死体ヲ仮土葬トスヘシ」とあり、更に第九條には「行旅病人ノ住所、居所若クハ氏名知レサルトキハ市町村長状況相貌遺留物件ソノ他本人ノ認識ニ必要ナル事項ヲ公署ノ掲示場ニ告示シ且ツ官報若クハ新聞紙ニ公示スベシ」という規定があります。これによりまして公告を一方において所在地市町村長はすることになつておりますので、遺族はそれによつて知り得るものと考えるのであります。
 それから順序が少し違うかも知れませんが、届出に関する御質問がありましたが届出の内容は大体御趣旨の單に解剖したということだけでは……解剖の目的処理というようなことも届出させる、勿論遺族の承諾の有無ということも届出の中に欠かせるようにいたしたいと思つております。
 それからしたい解剖資格審査会というものの構成についてお尋ねでありましたが、これはまだ確定的に私共といたしましては構成を決めておるのではありませんが、大体考えておることは十五、六名くらいの委員をお願いすればよろしいのではないかと思つております。先程も法案の御説明を申上げましたように、大体病理学解剖学等の専門家と更に臨床の医師等を加えてその程度の人員は委員として必要ではないかと思つております。
 それから認定を受けた日から五年間経過したときは認定を取消すことができるという規定のお尋ねでありますが、実は趣旨から申上げますと医師免許と同様に別に期限を定めずに或いは一定の欠格條件が起こるまではそのまま認定の効力を続けて行くのがいいという、むしろお尋ねとは逆の意見さえあるのであります。併しながらこの解剖につきましては私共として考えましたことは医学は日々進歩しておりますので、或るときの認定が永久に続いて行くというようなことも適当でないと思いまして、大体の達観から五ヵ年という期間を重ねたのでございます。これも併しながら必ず取消すと言う場合はその間に五年経ちまして医学の進歩等も状況に應じて認定をやり直す必要があるという場合にはその場合に初めて取消をして、新たなる認定を受け入れるというようにしたいと思つております。その間に悪用をされる慮れがないかという御心配でございますが、これは認定を受けましても先程お尋ねに中にございましたように、必ず解剖した後に必要な事項の届出を命じてございますので、その点からこの認定を悪用しておるかどうかということは十分取締がなし得るものと考えておる次第でございます。
#17
○中平常太郎君 死体解剖と時間との関係……
#18
○政府委員(久下勝次君) この規定は実は從來から医師法などの中にある規定でございまして、法務廳あたりの犯罪捜査の責任を負うております方面から是非このことはやつて貰いたいという注文もございましたので、法案の規定の中に入れたのでございます。結局死体を解剖して見ませんと具体的に申しまして、これは他殺であるとか或いはその他の何か、とにかく変つた死に方をしておる、で汎愛にどうも関係がありそうだというような疑いが起つた時の届出でございますから、從つて解剖をみないことには分らないのでございます。そこでまあ解剖した者というふうに書いたのでございますから、解剖してそういうふうな異状があつたということを認定したならばその時から二十四時間という時間の制限がございます。これは一應ここでできるだけ早い時間に届出をいたさして、犯罪捜査の上の手配がとれるようにいたしたいと思つております。御質問の趣旨は十分了解いたしかねたかも知れませんが、私共といたしましては、この種の規定は犯罪捜査の面から必要な規定であり、二十四時間という、時間はできるだけ短くと考えたのでありますが、この程度の余裕は置いた方が適当であろうと、從來の例もございまするので定めたのでございます。
#19
○中山壽彦君 この第二條の第一号の「相当の学識技能を有する医師、歯科医師その他の者」ということはどういう意味なんでございましようか。もう一つは第四條にこの死体解剖の認定の取消は資格審査会の意見によつて取消すということでありますが、そうすると余め全國の医者を、その資格を審査をして、これはよろしい、これは悪いということを初めからお決めになつて置くことは、これは煩瑣なことじやないかと思いますが、実際おういうふうに実行なさる御予定なんでありますか。
#20
○政府委員(久下勝次君) 先ず第二條の「その他の者」についてのお尋ねでございますが、実は実際の例ございますので「その他の者」という規定を加えたのでございます。或る医科大学の解剖学の教授に医師でもない、歯科医師でもない人が死体解剖学の教授として立派にやつておられる例がある、そういうふうに永年の経験を持ち、十分解剖学の教授としての資格があるというふうな人につきましてはこういうことが起り得ると考えまして、一應ここへ入れて置いたのでございますが、具体的な事例はあようなところから出発した規定でありまするが、その他の場合におきましても將來起り得る可能性があるという意味で、極めて例外的だと思いますが規定をして置いたのでございます。
 それからこの認定を全國的にやるのは大変ではないかというお尋ねでございまするが、この法案は附則の第一項にございまするように公布の日から起算して六ヶ月経過してから施行をするようにいたしたいと思つております。私共といたしましては、その間に御決定を頂きましたならば至急に先程の資格審査会を構成をいたしまして基準を定め、同時に又そういう希望のありまする人々には呼び掛けをいたしまして、そうして六ヶ月間の中にできるだけの準備を整えまして、施行後支障のないようにいたしたいと考えております。そういたしませんと、相当の学識経験のある人が一々許可を受けなければできないというのではこの法案の趣旨も達せられませんので、さような準備機関を以ちましてできるだけ一々の許可を受けずにやれるような、人を多くして解剖の円滑なる運営を図りたいと思います。
#21
○中山壽彦君 そうしますと、死体解剖をしたいという医者を予め当局の方で申入れて、その申入れた中でこの資格審査会が御決定なさる、こういうことになるのですか。
#22
○政府委員(久下勝次君) さようでございます。
#23
○谷口弥三郎君 午後にまだ沢山あるようでございますからこの辺で休憩を願いたいと思います。
   [「賛成」と呼ぶ者あり]
#24
○委員長(塚本重藏君) 時間も零時四十分になつておりますので、一應休憩いたしたいと思います。
   [「異議なし」と呼ぶ者あり]
#25
○委員長(塚本重藏君) 午後一時半まで休憩いたします。
   午後零時三十六分休憩
   ―――――・―――――
   午後一時五十二分開会
#26
○委員長(塚本重藏君) これより委員会を開会いたします。
 この際御報告を申上げて御承知を得たいと考えます。前回、優生保護法の一部を改正する法律案の審議の必要上、承認として五、六名喚問の手続をとるように委員長に御一任下さいましたが、日時を五月九日月曜日、午前十時といたしまして、東京都千代田区霞ヶ関一番地最高檢察廳檢事岡本梅次郎、東京都港区麻布盛岡町一の五、母子愛育会母性保健部長森山豊、東京都台東区浅草北松山町一山田悦世、東京都世田ヶ谷区上北沢ニの六百三香川豊彦、以上四人を喚問することにいたしました。尚勤労婦人代表といたしまして一人喚問することにいたしましたが、時間の関係で適当な人を得ることができませんでしたことを、遺憾でありますけれども、御承知願いまして、以上四人を喚問するということにいたしましたから、御了承願いたいと思います。御異議ございませんか。
   [「異議なし」と呼ぶ者あり]
#27
○委員長(塚本重藏君) さように決定いたします。
  ―――――――――――――
#28
○委員長(塚本重藏君) 午前に引続きまして、死体解剖保存法案の審議を続行いたします。
#29
○谷口弥三郎君 ちよつとお尋ねしたいのでございますが、今回できます死体解剖保存法案の中、この保存の方につきまして、大学又は総合病院ということになつておるようでありますが、これは單科の病院ではできんことになるのですか、それとも單科の病院は府縣知事の許可を得てやらせるというようなつもりでございましようか、その点を一つお伺いしたいと思います。
#30
○政府委員(東龍太郎君) 單科病院は総合病院でございませんので、只今お話のように、許可を受けて單科病院と雖も保存はできるという考えであります。
#31
○谷口弥三郎君 次にお尋ねしたいと思いますのは、胎兒の方の保存でございますが、今回は四ヵ月後の胎兒もやはり同様に保存され、或いは解剖などにも手続をとるようにはつきりとなつて來たことは、非常に結構なことだと思いますが、時に胎兒を保存いたします場合に、かいぼうという程ではありませんけれども保存液を体内に浸み込ませますために、保存上必要な関係からいたしまして、或いは腹部辺りをちよつと切開いたしますとか、腹部を切開して保存液が浸透するような措置をよくとるのでありますが、尚又脳水腫とかいうような場合には、余り大きい関係上、その一部の液を出して、そうして保存するというようなことがこれまでの普通のやり方でございますが、そういうような場合には、ちよつと切開、或いは穿刺くらいのやつは、特に解剖の届出をせんでも許して貰えるようになるのでありましようか、それともやはり解剖という正式の手續きをせんければならんのでございましようか、その点を一つお伺いいたしたいと思います。
#32
○政府委員(東龍太郎君) 只今のお尋ねのような範囲若しくは程度のものは、解剖とは認めなくてよろしいと思います。
#33
○山下義信君 第三條の一項の三号ですが、罰金以上の刑に処せられたる者を除外した理由はどういう理由でございましようか。
#34
○政府委員(東龍太郎君) 罰金以上の刑に処せられた場合には、罰金以上の刑と申しましてもその刑の内容情状等いろいろあると存じますが、その情状によりましては取消すことができるというつもりでおります。
#35
○山下義信君 それでは、もう一概にというわけではないのですね。
#36
○政府委員(東龍太郎君) そうではないのでございます。
#37
○山下義信君 次はこの解剖の届出の規定について、第二條第一項の者が解剖したときには、保健所長に届出させて、総合病院というような場合には知事に届出る、届出先を区別した理由はどういう理由ですか。
#38
○政府委員(東龍太郎君) これは後の知事に届出ます場合にも、保健所長を経由して届出させるつもりでありますが、ただそれは届出の対象が違つておるというだけで、深い意味ないのであります。
#39
○山下義信君 成るべく届出は私は一本にする方がよいと思うのであります。もとより、保健所長に届けるということも、知事に届けるということも、保健所法の建前では同じという考えも方もできますが、これは立法の体裁からいつても、これは一本にした方がよいのじやないかと思うのですが、そういう趣旨ならば了承します。
 それから第七條の遺族の承認を求むるという点でありまするが、その本人が生存中に死体の解剖を承諾して頼むというような場合は、尚遺族の承諾を要しますか、どうですか。
#40
○政府委員(東龍太郎君) その本人の希望というものの意思表示の仕方でございますが、只今お話のような場合でありますれば、それがございましても、尚一應遺族の承諾を求むるというふうな手続をとりたいという考えでございます。
#41
○山下義信君 私は法律的に伺うのですが、本人がちやんと意思表示しておる、性格に有効な手続を遺言でもして置く、そうすれば当然その通りにいたさなければならん。遺族が不承諾であるということになれば解剖できませんか。
#42
○政府委員(東龍太郎君) 本人の意思表示が、何と申しますか、法律上有効なような形の場合でも遺族が反対したらどうだろうというお尋ねであろうと考えますが、その場合は、遺族の反対の程度でありますが、私の方としましては、そういうふうな場合には、遺族に事を分けて話せば承諾を得られるものと思つておりますが、場合によりますれば、何としてでも解剖することを拒んで遺族が泣き叫ぶという愁嘆場を見ることも稀にあります。それまで押切つてやることがどうであろうかという心遣いを持つておるのであります。
#43
○山下義信君 これは実際問題としてあろうかと思うのです。いろいろ病氣に罹つた人が、自分死体を、せめて学術の研究にして貰いたいというようなことは、常に我々見聞するところなんです。そういう場合についても、遺族の承諾を絶対必要條件とすれば、この法律によればできないということになるので、この点法の不備ではないかと思うのですが、御研究を願いたい。
 それから第七條の一項のニ号ですね。二人以上の医師が診療中であつた場合には遺族の承諾について特別の除外例が規定されてありますが、私ちよつと素人で了解し難いのですが、どういうわけで二人以上の医師の場合は、こういうふな特別規定を設けましたか、御説明願いたいと思います。
#44
○政府委員(東龍太郎君) この点は相当問題になるところだと存じます。要するにこの狙いは、病氣の死因が、生存中にはつきりしなかつた、そうして死亡してしまつたその死因を明らかにすることが、結局医学の進歩なり、或いは医療の進展のために非常に貢献するところがあると思うような場合に、医師といたしましては、何とかして死因の究明のために解剖さして貰いたい、これはしばしば起ることであリますがその場合には遺族の承諾を求めてやるのが、現状でございます。たださような場合に、一人の医師が診ておつて、そうしてその死因を究明したいというふうな場合でありますと、その医師一人のこれは主観的のものである、或いはその医師一人の興味、好奇心というふなものと間違われ易い場合もありますし、或いは万々一さようなこともないとは言えないのでありますが、若しその場合にその患者を診ている医師が一人でない場合もありますれば、そのような一人の医師だけの特定の興味からするところの仕事ではなく、実際上さような死因の究明が必要であるということを証拠立てる人があるわけで、二人以上の医師が診ている場合にはそのいずれもがそういうふうな死因の究明を必要であると認めた場合には、遺族の承諾がなくてもできるというふうに、それだけ死因の究明のための解剖の行われる可能性を多くしたつもりでおるのであります。理想的に申しますれば一人の医師であつても私はそういう場合にはこういう承諾がなくてもやり得る程度にまで一般の人人の理解なりに了解ができるような程度に進みたいものとは存じておりますが、現状においては、一足跳びにそこまで参る状況とは考えられませんので、先ず一方から言いますと甚だ不徹底なようでありますが、この程度のところで今回は現状にも当嵌まるのではなかろうかということでございます。
#45
○山下義信君 そうするとこの二号の規定は、そうすると二人以上の医師の場合でも、解剖の必要を認める者が二人以上でなければならない、こういうわけですね。だから二名の場合は二人共そう認めなければならないということになつておりますね、ここは素人でもちよつと疑問に思うのでありますが、まあ専門家がおいでになりますから専門家の御意見もあろうかと思いますので措いて置きまして、その次に伺いたいと思いますのは、遺族が解剖に立会いたいという希望を申出られたらどういうふうに取扱いますか。
#46
○政府委員(東龍太郎君) これは当然遺族の御希望は只今でも適えられております。又將來も当然それは適えられるものと存じます。
#47
○山下義信君 それを認めるという規定はどこでそれを見ることができますか。
#48
○政府委員(東龍太郎君) その規定はこの法文の中にはございません。ただ在來と雖もさようにいたしておりますので、当然その希望は適えられるべきものと存じます。比較は当りませんが、手術の立会いの場合においては、或る場合には医者がこれを拒むことがあるかも知れませんが、解剖の場合に、遺族の方が立会いを希望せられて拒まれたという例は私は今まで知つておりません。ですから將來もそれは全部適えられるものと思つております。
#49
○山下義信君 これを拒否する場合がないとも言えないでしようが、拒否することはだきないことに規定をしましたらどうですか、規定しなくても何かそれをはつきりさせる方法が、本法の施行規則から何かの上に置くことができますか、私は規定して置く必要があるのじやないかと思うのですが、重大なる理由がない限りには拒否できないようにして置く理由があるのじやないかと思うのですが、当局の意見はどうですか。
#50
○政府委員(東龍太郎君) 只今の点につきましては、この法案の立案中にも実は考えたことがないのであります。それほど当然のことと実は思つておつたのでありますが、若しもさようなことが是非共必委であるというふうなお考えが一般的なお考えでありますれば、この法案に対しさような修正を將來加えられることにいたしまして、私共は何ら異存は持つておりませんが、実は考えてもいなかつた程の当然なことという意味でこの中に入つていないのだということを御了承願いたいと思います。
#51
○山下義信君 本案の参考資料を配布して頂きましたものを見ますると、いろいろ死体の出所が記載されてあります。その中に養老院でありますとか養育院でありますとかいう施設から出ておるしたいがいろいろあるのであります。そういう施設から死体が出まするときの取扱方はどういうふうになつてありますか、施設にはやはり監督官廳があると思う、例えば養老院から死体を病院とか学校とかというふうなところへ解剖用に引渡すというような場合には、解剖する者が保健所長の許可を受けるとか届出るとかいうことは、本法に規定してあるのでありますが、養老院の院長はその病死した者の死体をそこへ持つて行くのにはどういう手続でやつておりますか、脳病院などの死体が出ておるものも少からんものが出ておる。
#52
○政府委員(東龍太郎君) 養老院、或いは養育院、これらの施設の死体、申すまでもなくそれは引取人のない死体ということでありますが、この法律によりますれば、市町村長からその死体をそれらの大学等へ引渡すね交付するという形になるのでりまする在來はどうしておつたかということもお尋ねの中に入つておるかと思います。在來は養育院院長、養育院の責任者とねそれぞれの教育機関の当該の責任者との間に、死体の引渡し交付の契約と申しますかを持つておりまして、そうして行なつておつたことと存じます。例えば東京大学の医学部におきましては、元東京市の養育院から殆んど大部分の死体の交付を受けておりましたが、その場合は東京市当局と話合いをつけまして、そうして養育院の引取人のない死体はこれを東京大学の解剖教室に交付するという手続によつていたしておつたと存じます。
#53
○山下義信君 そうすると、今後は第十二條によりまして、市町村長から交付という手続によろうというお考えですか。
#54
○政府委員(東龍太郎君) さようでございます。
#55
○山下義信君 施設の長には親権が附興されておる場合もある、そうするとその面においては引取人がない死体とはいえないのであつて、つまり遺族ということに該当る場合になると、市町村長ではなくてもよいというふうに思われる面がありますが、そういう場合はどう考えますか、尚親権の附興は生存中だけに限るようにお考えになりますか。死体につきまして親権の行使は認めないといふお考えでありますか、それらの点はどう考えられますか。
#56
○政府委員(東龍太郎君) 私は法律のことに暗いものですから、或いはお答えが的確でないかも知れませんが、私が今伺いましたところでは、死体となりましても遺族に該当する親権と申しますかを持つておる場合にはやはり遺族と同様に考えまして、その場合にはその方が、死体の解剖について或いは死体の交付についての権利と申しますか資格もそのまま持つておられるものと考えます。
#57
○山下義信君 これは今後もあることでありまして、実際問題としては、そういう收容施設におきまして死亡した者の死体を交付いたしますることが粗畧に相成りますると、ややもすると問題が発生いたしまするので、十分にこの責任といいますか、筋道の立つような扱い方をすることが、必要であると思います。それで施設の長に親権が付不興されてあります場合の扱い方、実際の運営の上について十分御研究を願わんというと、この法の上では少し不備なように思われますので、御研究を願つて置きたいと思うのです。
 それからいま一つは、死体の賣買ということを許しますか、解剖のための死体の賣買ということを認めますか。
#58
○政府委員(東龍太郎君) 死体の賣買は認めない考えでございます。
#59
○山下義信君 当然そうと思うのでありますが、次は第二十條の、これは從來規定があつたのでありますが、特に礼意を失わないように注意しなければならんということがある、これは漠然たる規定でありまして、どの程度が礼意であるかということは、これは常識によらねばならんことであろうと思うのでありますが、解剖のときももとよりでありますが、それが本法によりまして保存されてあるものに対し手、学校における標本になりましても何になりましても、それらが保存されてある場合もこの第二十條が要求されてある、そういう死体に対して礼を失し冒涜の行爲があつた場合は、罰則がございませんが、それにつきましてはどういうふうに考えられますか。
#60
○政府委員(東龍太郎君) 二十條に対する罰則はございませんが、当然死体の解剖をする資格のある人々は、十分な教育を受けた方々であり、死体の取扱いについては、かような條項がなくとも、礼意を失わないようにその死体に対して又それのあとの処置についても行うものと、私共は信頼はいたしておるのであります。併しながら多数の人のうちでありますから、或いは誤つて礼意を失するようなことがないとも限らないというので、特に死体の尊厳についての注意を喚起する意味でかような條項を入れた次第でありますが、万一さような著しい例がありました場合には、この條文には罰則はございませんが、條文による罰則以外の方法でその人の良識に訴えまして、そうしてその誤つた行爲に対して反省を促すというふうなことは、当然やらなければならんことであります。併しながら、さようなことのないことを私共はより多く望んでおる次第であります。
#61
○山下義信君 これは道徳規定でありますが、私は御監督の上で御注意を十分願いたいということを希望いたしておきます。
 最後に伺いたいと思うのは、これも資料で承知いたしたのでございますが、いろいろ死体に対して祭粢料とか謝礼とかいうものが病院や学校あたりから贈られてある、或いは祭粢料が百円とかいうのがある、百五十円というのがある。或いは謝礼が二百円というのがある、中には周旋料が三十円というのもある、それらの意味がどういう意味でありまするかは詳かにいたしませんが、祭粢料というようなものも一つの礼儀であろうと思います。死体に対して直接の礼でなくても、やはりそれらの扱い方も十分鄭重にいたさなくちやならん、又引取人のない死体のような場合にはその祭粢料や謝礼はどこへ行くのか、何人の手に入るのか、小さいことでありますけれども、これらも注意しておかなくちやならん、そういうことに対しまして監督官廳といたしましては、何らか御研究になり御注意になりまするお考えがありますかどうか伺いたいと思います。
#62
○政府委員(東龍太郎君) 只今お話の祭粢料その他のことにつきましては、現在のところでは各学校、病院等によりまして非常に個々別々であります。いろいろな形でいろいろな金額の金が出ておりまして、その金の行方等につきましても御指摘のような懸念がないとは申されません。この点につきましては今回かような我が國といたしましては一種の画期的な法律ができました機会に、このことにつきましても十分当局におきましても研究もいたしますし、又適当な方法についての指示もいたす所存でおります。
#63
○山下義信君 いまの医務局長の答弁で了承いたしました。死体であるからと言つて、引取人のない死体であるからと言つて、或いは刑余者である、收容者であつた者の死体であるとかいう心持で百円とか、百五十円とかいうようなことで、金額の多少を言うのではありませんが、粗畧の扱いがあるということは私十分注意しなくちやならんと思いますので、どうかそういう点に関しましても、適正にそれを行いまするような、又手厚くそれらが取計られますよう十分御留意下さることを重ねてお願いいたして置きます。
#64
○小杉イ子君 私は第七條の一、二を予算面からお伺いしたいと思います。三十日以後を経過したものは解剖ができますかどうか。それから夏などでございますと防腐剤をお使いになるでしようが、大したこれは金額だろうと思います。
 それからもう一つ、或る村に行倒れがありますと、村長は村の掲示板に掲示いたします。併しの本人の家が遠くて分らなかつたら、その他に新聞、ラジオでも今ならお知らせになるでしようが、こういう費用は樂に政府から出るものでございましようか、私は大したこれは金額になりはせんかと、こういうことを思うのですが……
#65
○委員長(塚本重藏君) ちよつと皆さんにその前に御了観を得たいことが……
 速記を二時までと言われたのですが、もう二時を過ぎましたので他の委員会から是非廻して呉れというので外したい思います。御了解を願います。速記を止めて下さい。
   午後二時二十四分速記中止
   ―――――・―――――
   午後二時四十六分速記開始
#66
○委員長(塚本重藏君) 速記を始めて。本日はこれにて散会いたします。
   午後二時四十七分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     塚本 重藏君
   理事
           谷口弥三郎君
           姫井 伊介君
   委員
           中平常太郎君
           山下 義信君
           中山 壽彦君
           黒川 武雄君
           井上なつゑ君
           小杉 イ子君
  政府委員
   厚生政務次官  淺岡 信夫君
   厚生事務官
   (医務局次長) 久下 勝次君
   厚生事務官
   (社会局長)  木村忠二郎君
   厚 生 技 官
   (医務局長)  東 龍太郎君
ソース: 国立国会図書館
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