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1949/05/09 第5回国会 参議院 参議院会議録情報 第005回国会 厚生委員会 第20号
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1949/05/09 第5回国会 参議院

参議院会議録情報 第005回国会 厚生委員会 第20号

#1
第005回国会 厚生委員会 第20号
昭和二十四年五月九日(月曜日)
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○優生保護法の一部を改正する法律案
 (谷口弥三郎君外三名発議)
 (右案に関し証人の証言あり)
  ―――――――――――――
   午前十時三十一分開会
#2
○委員長(塚本重藏君) それではこれより委員会を開会いたします。本日は優生保護法の一部を改正する法律案を審議することとし、予め御承認を得ておきました証人の出頭をお願いいたした次第であります。申上げるまでもなく、大体御了解願つておると思いますが、この度参議院の厚生委員会におきまして、委員の提出法案といたしまして、優生保護法の一部を改正する法律案が出されたのであります。数回に亘つて審議を続けて参りましたが、尚愼重を期しまして、各界の御意見をお伺いして、これの審議に資したい、かように考えてお願いいたした次第であります。お出で下さいました四氏の方に対しまして厚くお礼申上げます。最初に宣誓をお願いいたします。皆さんの御起立を願います。
   〔総員起立、証人は次のように宣誓を行なつた〕
   宣誓書
 良心に從つて眞実を述べ何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。
        証人 岡本梅次郎
   宣誓書
 良心に從つて眞実を述べ何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。
        証人 森山  豊
   宣誓書
 良心に從つて眞実を述べ何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。
        証人 山田 悦世
   宣誓書
 良心に從つて眞実を述べ何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。
        証人 賀川 豊彦
#3
○委員長(塚本重藏君) それでは順次御所見を伺うことにいたしますが、先ず最初に最高檢察廳檢事岡本梅次郎君からお願いいたします。
#4
○證人(岡本梅次郎君) 私は幸にいたしまして、これまで優生保護法の改正の委員会に加えられまして、大体改正の御趣旨を承つておりましたので、本日最終的に改正案につきまして、多少の考えを述べる機会を與えられましたことを非常に愉快に思つておるものであります。
 第三章の母性保護の章であります。この改正の五つの條章が相当重大なことが規定せられてあるように伺います。殊にこの第十三條における一号、二号、三号の問題であります。殊に又第四号、これは申すまでもなく第四号のごときは、これは刑法上の問題にも係わつて來る問題であります。これは非常な重要性をもつております。実際に「暴行若しくは脅迫によつて、又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて、妊娠したもの」が指定医師の認定によりました、人工中絶ができるということは画期的な私は法文であろう思いまして、非常に賛意を表しておるのでございます。又第三号の問題でありますが、これは前の委員会でも問題になりました点でございまして、前の原文は健康を目的とする法文であつた、これは併しながら新らしい改正法の第二号に纒められまして、「妊娠の継続又は分娩が母体の健康を著しく害するもの」、極めて簡單で而も明瞭な條文に書き変えられたことは、非常に私は嬉しく思うのであります。そうしてこれは三号に「妊娠の継続又は分娩によつて生活が窮迫状態に陷るもの」これは経済上の問題でありまするが、第三章、殊にこの法案の全部から通覧したしますると、優生保護の目的が、不良な子孫の出生を防止し、母性の生命健康を保護するというこの二つの大きな問題になつておるのであります。そこへ以て來てこの経済問題が加えられるのでありまするから、考えようによつては何らかそぐいが惡いようなお考えを一般の方がお持ちになるかも知れんと思うのでありまするけれどもが、大体現今又將來の日本の問題といたしまして、人口と食糧との二つは大きな問題なのであります。これを解決するにあらざれば國民の経済生活の安定というものが期し得られないように思うのであります。でこの國民の経済生活の安定が保たれてこそ初めて國内の治安の維持というものが望み得るのであります。治安の確保ができた後経済の安定がそこにあつて、初めて私は文化の推進向上というものが期せられるように考えるのであります。古い諺でございまするけれどもが、衣食足つて礼節を知る、これは私千古不滅の金言であろうと思うのであります。こういう意味におきまして、我が國民が文化の推進と向上が期せられるようになつて初めて、いわゆるみずから賄い得る自主的精神というものが、國民の間に湧然と湧いて來ることになり、ここに自由な民主主義が湧いて來るものと、まあかように考えられるのであります。このことによつて初めて私は和平日本というものができるのじやなかろうかと思うのであります。この際に当りましたかように重大な法文の挿入せられるということは、私意義あるこしと思つて賛成しております。
 他の点におきまして、他の方々から御意見ももとより拜聽できることと思いますが、差当りこの第三章の問題についてのみこの機会に私の意見を述べたいと思います。
#5
○委員長(塚本重藏君) 続いて森山豊君からお願いいたします。
#6
○證人(森山豊君) 私は産婦人科の專門医といたしまして、実際にこの人工妊娠中絶を行う者の立場といたしまして、今度の改正案は大変結構だと思つております。まあ終戰後は特に人工妊娠中絶を希望する者が非常に多くなつて参つたのでありますけれども、その実情、その中絶を希望する理由は、経済状態というものが非常に関係していたわけなのですが、從來はそれがその適用によつて中絶が認められませんでした。それで実際に國民のそういう訴えを直接切実に訴えられる者は医師でありまして、ですから医師が法律とそういう実情との板挾みになりまして、非常に苦境にあつたと思います。ですからそういう点におきまして、その実情に即した改正が行われるということは、医師の立場からいたしましても非常に良心的な仕事ができると思われます。
 それからこの第三章第十五條の規定、指定医師以外の医師の人工妊娠中絶ということについても、この度改正案では、指定医師以外の医師は特別の場合の外は人工妊娠中絶を行うことができないというふうに規定されておりますが、これも非常に結構だと思います。この人工妊娠中絶の手術その他の方法は、この頃一般に非常に簡單に考えられまして、それによる弊害が相当出て來て母体の犠牲者が出て來ておるのが実情であります。それは人工妊娠中絶というものは非常に簡單に考え過ぎる。又專門家でない者がこれを行うために起るところの犠牲であります。ですからこの一定の資格を持つた者の指定医師以外は、この方法を行うことができないということを明文化して頂くことは、母体の保護の上から申しまして大変結構なことだと思います。その他のことにつきましては又後程……。
#7
○委員長(塚本重藏君) 続いて民生委員であられます山田悦世さんにお願いいたします。
#8
○證人(山田悦世君) 私は民生委員の立場から本法案の改正の中の第十三條の三号、妊娠の継続又は分娩によつて生活が著しく窮迫するという項目ができましたことを、衷心から喜ぶ者でございます。実際のケースを扱つて見まして一番只今までにこれが私達の望む本当に必要なものでありまして、今までの法案といたしますと、生活の困窮というような状態の者に対する的確なる民生委員としての意見書を添えることがないために、実際面において私達はもう一日もこういう法案の改正を必要として望んでおつたものでございます。本日の機会において、私達は、この生活が著しく困窮する者に対しての、民生委員の立場というものが活用されるということは、大変結構と思いまするので、その外に対して私達の立場から申上げる面につきましては別に何もないように思われますのでございますけれども、お時間をお許しして頂けるのでございますれば、第四号に対して多少私達の意見として申上げなければならないことがあると思うのでございますけれどもそれはあとで、……只今でもよろしうございますか。
#9
○委員長(塚本重藏君) どうぞ引続いてお願いいたします。
#10
○證人(山田悦世君) 第四号の「暴行若しくは脅迫によつて、又は抵抗若しくは拒迫することができない間に姦淫されて、妊妊したもの」それに対しては民生委員の意見書を添えることを要するという法文がございます。それにつきまして民生委員の立場といたしまして、どの範囲にどのような項目によつてその意見書を作成するかどうかということは、非常にむずかしい問題であると存じます。それでこの廣範囲にお許し願える場合等ございますれば、民生委員としての意見書もよろしいと思いますが、的確なる保証は不可能と存じますので、この面についての民生委員の意見書というものは大変民生委員の立場からは迷惑と申上げてはあれでございますけれども、はつきりした自分達の責任を取ることができないように思いますのでその点如何な御意見でございましようか。
 それからもう一つ前に問題が戻りますが、医療保護の問題でございますが、生活困窮者が妊娠中絶の意見書を添える場合に、実際の面で浮び上つて來ることは、その妊娠中絶の費用の点に対して、医療保護をすべき優生保護の中にあるその人工中絶に対する費用の点は、どういたしたらよろしいものでございましようか。それはやはり生活保護法の中の医療というものと関連してよろしいかどうか。その点をはつきりお伺いしたいと思います。実際の面ではそれが一番大切なことだと思います。それだけでございます。
#11
○委員長(塚本重藏君) 続いて賀川豊彦先生から宗教家の立場、評論家の立場から御所見をお伺いいたします。
#12
○證人(賀川豊彦君) 私は修正案の妊娠の継続又は分娩によつて生活が著しく窮迫する者ということにつきまして、條件的に考えなくちやならんと思うのであります。第一はこの優生保護法から來るものは実に立派なものでありまして私は大賛成であります。けれども経済的なるが故に、貧乏な家に必ず中絶してもよいということは私は言い切れないと思うんです。何故ならば貧乏であるけれども私たちの知人に四十数年間満足に住んでおりまして、非常に立派な家庭がある。若しもその立派な家庭がどんどん産兒制限してしまつたものならば、私は日本の優秀な家庭の絶滅が來る心配があると思う。それで私は條件附きで賛成するものです。
 先ず第一に私はここに伺いたいことは、一体日本の食糧問題は本当に解決するのか、解決していない。これは例えば我が國の耕地は六百二十万町歩あつたものが四百万町歩に戰爭によりまして減りました。けれども山岳地帶は千五百万町歩、原野が約五百万町、合計二千四百万町歩くらいでありますが、これに対するに西洋諸國では山岳農業は随分盛んにし、いわゆる樹木作物をやつております。けれども日本においては殆んど栃木縣においてさえ「とち」の木は一本もありません。却つて群馬縣の方があるし、福島縣あたりにもある。「とち」の実が一本の木から恐らく一千粒くらい採れるのでありますが、これをほつたらかしておる。秋田縣でもほつたらかしておる、恐らく私は事実ほつたらかしておる量は三千万石と私は考えておる。三千万石のものを捨てて置いて、これは「にわとり」の餌にもなるし、蛋白資源なり、澱粉資源、油の資源にもなろうというのに殆んどほつたらかしてある。それで果して日本の人口問題を解決できるか。大きな誤診である。この際須らく山岳農業を盛んにしなくちや本当でない。アメリカは御覧の通りに一九二〇年に若しもアメリカの総人口が一億九千五百万人であつたらばそれ以上発展しないということも嘘である。段々調べて見ると二〇何%しか耕作していない。樹木作物については恐らくそれがずつと九割まで食糧資源に替え得る。日本においても、若しもこの山岳地帶の、私共の永年主張しております樹木作物「くり」、「しい」、「とち」、「かや」或いはその他の沢山日本には温帶の関係で非常によいものがありますけれども手をつけない。私は是非この際西洋の人がああ言うからというのでなくて、もう少し食糧問題を人口問題と並行して考えて行きたいと思うのであります。
 次にアメリカあたりでは女学生が大学を出て結婚するものが四割くらい、優秀な者は却つて結婚せずして優秀でない者がどんどん子を生んで行くという心配をしておるものもあります。マルサスもそう考えておる。ところが私はこの優生保護法は非常に結構だと思いますけれども、著しく窮迫する者の中にも優秀な家庭がありますが、それに対する憲法第二十五條によるところの保護法を十分徹底して頂きたい。そういうものに対して、民生委員の方からこういう家庭は多産であつても、これは保護して頂きたいということを逆に訴えるだけの御準備があるならば私は賛成します。然らずして、ただ貧乏だから誰でも、彼でも、優等な家庭でも皆産兒制限をするというならば絶対に反対です。我が國の食糧問題は今の場合は弱つておりますけれども、必ずしも私は悲観しておらない。日本の今の耕地面積六百万町歩に対し四倍のものがまだあるのだ。これに対する我が國の農業者及び食糧生産者は怠慢である。故に是非これらは努力をして、食糧問題は内地において解決しなれればならん。例えば我が國における農業でも、余りに硫酸アンモニア或いは燐酸などを使い過ぎる。デンマークではたつた二キログラムしか使つていないのに、日本では二十二キロもの人造肥料を使つている。それで酸性過多の結果水素イオンが段々惡化し減つている。近海魚も減つてしまう。何億円も戰前收入のあつたものが今では減つてしまつて困る。これは我が國の一つの大問題であります。だからして農業生産と工業生産とが同時に考えられ又人口問題に影響して來ると思う。最近の開墾などでも、私は我が國の一番大事な國土のエロージョン、腐蝕土を流してしまい、段々膠質が流れてしまつて、そのまま放つて置けば人口の半分して支えられないと思います。そういう意味でもう少し眞劍になつて、ただ單に農業は農業政策、人口は人口政策だけという局部的な研究でなくて、総合的な研究をして頂きたいと思います。私は日本において今の人口が、例えば一億になつても、或いは一億五千万になつても、今の倍になつても、今の山岳地帶を十分に手入するならば、我が國においては雨量が多いし温帶三十四度線の上下に発達している國でありますから、人口は保ち得る、こう考えておりますが、それは今の間に合わない。間に合わないから部分的においては産制をする。それに対しては繰返して申しますが、優秀な貧しい家庭に対しては憲法第二十五條によつて保護して頂きますことを必ず挿入して頂きたい。
 それから更に進んで、西洋諸國で問題になつております、丁度動物的な考えか知りませんが、人工受精の問題、西洋では優秀な家庭に対しては、そのスペルマをオヴアルムに挿入し、人工受精ができるまで考えられているのでありますから、私は貧乏人なるが故に貧しい家庭を保護せずして、それを全部中絶してしまうということは絶対に反対、これは國家が責任を以て保護すべきものだと思うのであります。更に逆効果の心配をしております。だからこの第三條には同時に優秀な家庭に対しては保護をするということに対しての但書を入れて頂きたい。
 もう一つは我が國で一番心配しているのは封建的「いとこ同士の結婚でありまして、今尚日本では「いとこ同士の結婚を許しておりますが、我が國の聾唖者、唖と聾の不具者は十万人くらいあるということを推定されております。その七割五分というものは殆んどいとこ同士の結婚であります。それでこの「いとこ」同士の結婚に対して何らかの措置をして頂きたい。すでにそういう家庭において聾唖者が出た、或いはその外結婚によるところの退化状態が現われた者に対しては、優生委員会において監視をして頂きたい。或いは思い切つて「いとこ」同士が結婚する場合においては、必ず民生委員、或いは民生委員会の許可を得るというようなことをもお考えおき願いたいと思うのであります。以上を以て私の証言を終ります。
#13
○委員長(塚本重藏君) 先の証人のお言葉の中に多数法案改正についてお尋ねのあつたような点もありますので、この際提案者の谷口委員から説明を願いたいと思います。
#14
○谷口弥三郎君 只今証人の四名の方方から順次いろいろの点について御説明を頂きまして誠にありがとうございました。私は提案者の一人といたしまして、只今のお話のあつたうちで一、二申上げておいた方がよかろうと思いますので申上げておきます。岡本檢事さん並びに森山保健部長さんのお話は共に御賛成を得ておりますので申上げることもございませんが、山田悦世さんのお話の中に十三條の四号につきまして、四号は只今のところではあのままに留めおきまして、改正の方では入れておらないのでありますが、第四号につきまして民生委員としては非常にあの点に困つておられるということをお伺いしまして、誠にさようであると私共も思うておるのであります。実際に暴行を受けて抵抗のできんという場合に姦淫されたということは、これは実際の実情として而もそのときには妊娠したか妊娠せぬか分らないような場合でありますから、その後妊娠いたしまして申出て來ましたときに、以前に実際にそういうような事実があつたかないかということについて、民生委員の方々はこれに対する意見書をお書きになるときにお困りになるということは十分承知いたしております。事実実際上そういう場合もあり得ると思いますので、これは民生委員の方は誠に御迷惑だけれど、その人を助けるという意味からいたしまして、ぜひそういう場合がございましたら、よくその人の状況を聞いて、そうして意見を出して頂きたいと思います。無論その場合の意見書はその民生委員のおられるところ、妊婦のおられるところの民生委員に限つておりません。或いは事実のあつたところの民生委員の方にお願いいたしまして、そうしてできるだけやつて頂きたいと思つております。
 それから尚第三号のところで生活困窮者において医療費をどうするかというお話がございましたが、これは御尤もなことでありますが、我々といたしましては、いわゆる生活保護法による者、或いは生活保護を受けんければならん状態にある者に対しましては、医療費を必ずその場合には支給するというようにしたいと思つておるのであります。その点につきましては尚後刻大藏省の主計局の方とも十分懇談して、必ず医療費として出されるようにしておきたいと思いますから、どうぞその点は御安心して十分これがいよいよ公布された場合においては、大いに御協力、お世話を頂きたいと思います。
 それから賀川先生のお話のうちで、この十三條の三号の中にいわゆる貧困者、貧乏人は必ずしも不良の者ではない。貧乏人の中にも優秀な者があるというお話で、至極御尤なことでございまして、我々もそういうように考えておるのでございます。この点につきましては、この法文には掲げてはございませんけれども、或いは施行の方面におきまして、是非優秀な者は残すように、人工中絶をやらんように進めて貫らうようにしたいと思つております。無論優秀な方に対しまして、それだけ子供を余計持つて貰う以上は、その優秀な者に対しては國家が育英方面とか何かの方法で、十分にその人には償いをせんければならんというようなふうに存じて、この案を施行する場合にも十分その点には注意するように考えておるのでございます。
 それから又近親者の結婚に対しての御注意がございましたが、これも実に私共もそういうような実例を十分存じておりますので、只今のところでは優生結婚相談所におきまして、近親者が結婚するようなふうな場合には、是非それを相談所に持つて行き、そうして十分聞いて頂く、無論近親者でも優秀な者のみの結婚であつたらそう書はございませんけれども、多くは近親者は惡いのがよく入るものですからいかんのでありますが、その点は優生結婚相談所で十分その点を注意をしたいと思つております。この点につきましても実は民生委員の方々にもお願いして置いて、結婚するようなふうな場合には優生結婚相談所に成るべく一應相談をするようにというようなことも、仕事の多い民生委員にお願いするのは御迷惑と思いますけれども、そういうところも將來お願いしたいというようなふうに考えております。提案者といたしまして一言只今のお話に対して申上げて置きたいと思います。
#15
○山下義信君 簡單に証人に質疑したい点があるのですが。……。
#16
○委員長(塚本重藏君) 尚証人の方で、今までのことについて何か附加えられるようなことはありませんか。
#17
○岡本證人 御論議の中に大体出ておりましたから、多く附加することもないように思いますが、やはり十三條の場合でありますが、この指定医師の申請、地区優生保護委員に対してなすのでありまするが、これには民生委員の意見書を添えることになつておりますので、只今賀川証人のお言葉を聽きましても私共肯ける点があるので、こういう憂えを除くために、どうかこの委員会の意見につきましては、嚴密な意見を成るべく徴するようにして頂きたいと思います。單に経済が窮迫状態に陥つておるからと申しましても、主観的に捉われないように、客観的によく御審査賜わるようにお願したいと思うのであります。地区優生保護委員会におきましてもその審議を嚴密になさるようにこれは運用して頂きたいと、こう思うのであります。
#18
○委員長(塚本重藏君) それではこの際各委員からお尋ねになることがありましたら……。
#19
○山下義信君 岡本証人に伺いますが、妊娠中絶が容易に行われるようなふうになつて参りますと、つまり通俗に申しますと堕胎の公認というような意味になる、あなたのお立場としまして、現行刑法の堕胎罪との関係などにつきまして、或いはその堕胎罪の適用などにつきまして御所感がございましたらば承りたいと思います。
 それから山田さんに伺いたいと思いますのは、生活保護法を適用いたしておりまする家庭は、これはもう分つておるわけでありますが、妊娠によりまして生活が窮迫状態にこれからなろうとするというその認定につきまして、民生委員としては御確信が持てますかどうかという点を伺いたいと思います。
 尚併せまして民生委員の立場としては言うまでもございませんが、兒童委員の立場がございます。兒童福祉法の関係から申しますと、妊産婦につきましては十分に保護を加えて行かなければならん面もございますので、この生活困難者に対しまする妊娠中絶を許しまする優生保護法と、兒童福祉法によりまする妊産婦に加えまする保護の面とのその調節につきましては、民生委員といたされましてどうお考えになりますか、その点を伺いたいと思います。
 それから最後に私賀川さんに伺いたいと思いますのは、こういうふうに妊娠中絶を大幅に認めるように相成りますると、いろいろ道義の上に及ぼしまする影響、これにつきましてはどういうふうにお考え下さいますでしようか。相当その方面のことも考えなければならんのではないかと思われます。
 尚又今一つは宗教という立場から申しますると、例えばそれが少々劣つておる者でございましても大切にいたして行かなければならんのではないかと思いまするし、いろいろ母性愛その他の点からいたしまして、宗教的な影響は如何でございましようか。世道人心に及ぼしまする影響の点につきまして、宗教的立場のお考えを承りたいと思います。以上でございます。
#20
○岡本證人 從來私共檢察官或いは裁判所の、殊に檢察官の場合でありますが、堕胎罪の犯罪態樣を見てみますると、多くは不倫行爲に基くものが多いのであります。正常の夫婦関係の場合におきまして、なさるる場合は極めて少いのであります。正常の夫婦関係の下においてなさるる場合は、母体の保健的立場から、或いは胸を患い或いは他の病氣によつて妊娠を継続することを不合理と考えて、医師の診断を求めその証明書を持つて、又婦人科医に駈けつけて手続を取つて貰う。そういう手続が不備なる場合によくその容疑者となるのであります。そこでその認定問題になつて來るのであります。果してその必要程度の健康上の問題があつたかどうか、不倫な場合はもう大体それで分りますから、成る程不倫を原因として堕胎を志した、こういうことが分りますからいいのであります。ところが本法のできることによつて、結論的に申上げますると、檢察、警察の立場における認定の困難が極めて減つて、不幸なる堕胎罪というものが減つて來ると、私はこう思うのであります。
 それは二つの方面から観察できると思います。指定医師というものが法人である医師会から嚴密なる選定を受け、この医師のいわゆる意見によつて、この者は人工中絶の必要がある、こう認める一つの仕組みがここに公けに認められるし、又当事者の本人が、明らかに自分がこれを堕したいという意思表示を明るみに申出て來る、そうしてこれを委員会で、客観的に檢討する、これは堕すのが合理的だ、こういうことになつて参りますと、この堕胎罪の裏には施術者側におきましても不当な財産上の利得とか何とかという問題が纒わつて來ておつたのでありますが、それも防げますし、不倫行爲の闇から闇に流さんとした本人の不正行爲も防げる、かように考えるのであります。
 ではこの法文はそういう意味におきまして私は非常に意義のある法文だと思つております。從つて將來の堕胎罪の檢挙取扱いにつきましては、極めて扱い易くなり、又容疑者が不測の禍を受けることもなくなる、かように思うのであります。
#21
○委員長(塚本重藏君) 山田証人にお願いします。
#22
○山田證人 先程山下さんから生活に窮迫している者に対して正義の立場からどの程度の判断を下し得るかという御意見は。民生委員として大変結構だと思うのであります。民生委員として一番大切なことは、生活補助を受けるような生活保護の線に沿つて、民生委員としてはこの法律の決めるところを適用して行くということになりますが、一歩前のところで民生委員として、とにかく民生委員の職務上これが一番涙ぐましく、民生委員の努力如何によつてはつきりとその原因を確かめるということが現れるわけでございますから、生活困窮者で著しく窮迫している者に対しての調査というものは、民生委員の職務の一番大切なことでありますから、お説の通り認定によつてどうこうという如何わしい点はあるかも存じませんけれども、私達の立場から参りますと、生活に困窮している者に対しての調査というものについては、私達は涙ぐましい程に原因を先ず確めて、そうして或る時期において、生活困窮者に該当する者は、時間的には余裕のない場合が多いのでございますが、その一歩前の多少の時間的余裕がありますものは、調査の上において、私達が家庭を訪問いたしましたり、或いはその境遇がどの方面からそういうふうに生活困窮を來したのかという原因に対して、その家族或いはその環境、或いは又健康、身体の保健、そういう方面から全面的に、多方面に亘つての調査を民生委員としてはするわけでございます。そうして追及に追及を重ねて行く。そのときにその涙と愛によつて、先方が絶対に民生委員に対しては誠意を以て、それに対する自分達の胸奧を披瀝するだけの精神的の愛情の面において解決して行くというのが、私達は正しい民生委員の認定の方法の一つであると考えております。それができないで、ただ米の通帳を持つて來て應急米が欲しいとか、或いは又いろいろなことのテクニツクによつて、民生委員が左右せられるという場合があるとすれば、これは國家が制定された民生委員というものに対しての考え方がどうかと思うのであります。その面については以上の御心配は或る程度ないということを私として民生委員の立場から申上げられるということでございます。
 第二には妊産婦の保護のことでございますが、それは兒童福祉の面にも謳つてございますように、母子手帳を交付されて現今非常にみんなが関心を持つておりますので、兒童委員の立場といたしまして、妊産婦の問題は私達はつねづね日々に研究しておりまして、妊産婦の保護という面については、妊婦いたしました者の一ヶ年の生活状態、それによつて起るいろいろな複雜なる精神の過程、或いは生活面における経済的の負担、自分が働き得なくなつた場合にその夫が如何にそれに対して理解を持つかということが、一番この保護の問題として私は取上げられるべきだと思うのです。そもそも妊娠ということの根本を考えますれば、これは男女とも非常に重大な問題でありますから、勿論夫たるものは母性に対しては別の面の妻という立場、或いは又妊産婦、自分の子孫が入つている体に対して、それはただ單なる自分のベター・ハーフという立場でなしに、眞劍に、やはり子孫というものに対する考え方の家庭的の根拠がはつきりいたしますれば、保護の面においていろいろな福祉の施設もございます。民生委員が御相談を受けた場合にも、その面についての医療、保健、衞生或いは精神、そういうことは民生委員としては如何なる方法でも盡せます。要は根本は夫婦の生活面がその場合にどのようになり得るか、それだけが私は根本だと思います。
#23
○山下義信君 ちよつとこういうことを伺いたいのです。あなたは民生委員兼兒童委員の立場で、ここに妊産婦があるとしましたらば、先ずそれがお産を健やかにするようにという方へ先に指導なさいますか。或いは生活窮迫の状態を見て、妊婦中絶の方へ御指導になりますか。それはいろいろケースも違いましようが、大体この法律ができたら、あなたは一体どつちの方を御指導になりますか。
#24
○山田證人 それは賀川先生が先程おつしいましたように、優生保護の立場から言えば、質的の問題でございますね。でありますからその方法はどちらとも言いかねます。
#25
○山下義信君 そのときにその質の優劣の御判定ができる御自信がございますか。
#26
○山田證人 私はその面については玄人でございませんので、はつきりは申上げかねますけれども、それについて疑問を抱いた場合も、專門家がおりますことですから、一應私達はそのケースに対しての調査表を披瀝いたしまして、どこまでも自分自身に責任を持てる範囲までは追求いたします。そうして大体私達が見まして、兒童委員の立場からも子供の成長を見ますと分ります。その母親の健康状態というものは、精神的にも健康的にもその子供がよい例でありますから……。子供のない方の場合は、又そのお子さんの生れて参りましたお母さんの健康状態とか或いは又環境及び生活状態、生活をどういうふうにこの家は切り開いているかしらんというような生活状態から見れば、大体その人の健康、又これをどういうふうにすべきかということは、自然に出て來ることでございますから、民生委員といたしましては、專門家ではございませんけれども、專門家を煩わしてまでも誠意を以て保護に対する熱意は受け得られると思いますから、その点は御心配は要りません。
 それからこの法案を読みますと、優生結婚相談所のところで「受胎調節に関する適正な方法の普及指導をするため」、改正の必要があるということが書いてございますが、これは優生結婚相談所は必ずしも保健所に附属しているものではないのでございましようと只今の場合考えられるのでございますけれども、優生結婚相談所でなしに保健所というものが受胎調節に関する適正な方法を行い、その場合民生委員の一人がそれに対して意見を述べられるような方法にして頂けば大変に結構だと思います。
#27
○委員長(塚本重藏君) それでは賀川証人にお願いします。
#28
○賀川證人 第一にこの道義の頽廃に関する件でございますが、これはすでに婦人雜誌あたりが極端に書いてしまつたものですから……兵庫縣あたりは去年の間に中学生の強姦及び輪姦が神戸市だけで六十件ございました。驚くべき犯罪でございまして、殊に最近の傾向は一昨々日神戸の少年審判所の報告を間接に聞きましたが、一九四七年に比べて一九四八年は男子において三五%の増加、女子が八五%の増加、そのうち顯著なものが性的犯罪です。だからして私はこの御発表でもオランダ式にして頂きたい。オランダではやはりダツチペツサリーというのを大変皆さん使つておりまして、オランダには貧乏人は一人もいないというくらいまで徹底しているのでございます。けれども道義は保たれております。これは教育学的に取扱つておる。日本では無軌道に新聞雜誌がでかでかと書くものですから、子供らが面白がつて沢山使いたがつてそうしてあちらこちらで雜魚寢をする。中学生が雜魚寢をする。恥かしいことを沢山新聞雜誌に傳えられているようなことが起つて來るのです。それで、できれば是非この優生保護法の方は非常に立派に作られていらつしやいますが、この優生保護法の程度で教育学的に取扱わなければいかんと思う。新聞雜誌が面白がつて書かないように一つその点何かの工夫をして頂きたいと思う。
 宗教の方面でございますが、これは食糧不足から参りまするいわゆる嬰兒殺し、インフアンチサイドというものはとても怖いものでございまして、有名なアリユーシヤン列島における冬季の嬰兒殺しは、食糧が來たらば止まつてしまつたということがクロパトキンの「相互扶助論」に書いてございますが、日本においても少し食糧が豊富になり又日本の優生保護法が徹底して参りますると、驚く程赤ん坊の死亡率は減つて参ります。逆に貧民窟あたりを、私共多年の間経驗しておりますが、嬰兒殺しというものは大抵は先程お述べになりましたような不倫の関係から女中に子を孕ましたとか、或いは不義の中で生れたけれども、育て上げられないために金をつけて貧民窟に捨てに來る。どんどん捨てていつて仕舞には嬰兒殺しになつて訴えられるというような工合でございまするから、その嬰兒殺しを止めるためには、どうしても或る程度オランダ式の産兒制限、いわゆる受胎調節はしなくちやいけないと思うのです。勿論オランダでは割合に宗教的な情操があるものですから極端な脱線はしておりませんが、我が國は明治以後の宗教教育が徹底しておりませんし、両親教育が家庭において鈍いものですから非常に心配しているのです。是非この点は文部省とも連絡をとつて下すつて、又一般公民教育と連絡をとつて教育的に扱う。只今申しましたことは、これは余りに宣傳がましい與味本位に取扱う新聞雜誌に対しては或る警告を発して頂きたい。もう一つはこういう講習会の場合においては、努めて子供らを入れないこと、それを一つ極く嚴重に取扱つて頂きたい。
 尚一つお願いしたいのですが、とにかく唖と聾が日本には減らないのでございます。それでむしろこの際三親等の結婚に対しては、民生的に民生委員の許可を得るというような、逆に何か手段を取つて頂かないと、折角のこの優生保護法が一番急所の点において私は駄目になると思う。
#29
○山下義信君 私森山証人に伺いたいと思うのですが、これは委員の中にも專門家がおられますから伺つてもいいんですが折角ですから証言を一つこの際伺いたいと思います。それは生活困窮者の妊娠中絶の、つまり治療代、これは当然負担すべきであるということを我々も考えておるのでありますが、ただその手術料だけでなしに、その妊娠中絶をやつている間の前後保養をいたさなければならん期間の、その間の生活の保護も考えなければならんと私は思う。で凡そ何日ぐらい、妊娠中絶の手術につきましてこの婦人は休まなければなりませんか。完全にこの健康に復しまするに要しまする普通の日数はどのくらいでございますか。專門家の御意見を伺いたいと思います。
#30
○森山證人 正常の分娩でございますと、全く健康の状態に帰るのはお産後短かくて六週間、普通六週間及至八週間ぐらいしませんと、妊娠前の状態に帰らないのでございますけれども、それが妊娠中絶でございますと、勿論その月数が中途でございますから、その中絶をするときの妊娠月数によりまして、その妊娠前の状態に帰る期間というものが違つて参るわけでございまして、勿論妊娠月数が少い程、妊娠前の状態に帰る期間は短くなるわけです。それですから今お話のように、大体何日ぐらいということは全体にはちよつと申しかねると思うのです。正しく言えば月数によつて分けなくちやいかん。併し一般に妊娠中絶を行う場合は三、四ヶ月以内に行うことが大部分でございます。その場合でしたらまあ大体二週間乃至三週間ぐらいと考えられます。それも全く元に還るとは申されませんけれども、大体家庭生活ができる程度はそのくらい、三週間乃至四週間かと考えていいのぢやないかと思います。
#31
○井上なつゑ君 森山さんにお伺いしたいのでございますけれども、この改正の十三條の母性保護の立場から只今問題になつております経済的に非常に困ります者の妊娠中絶が行われていいということでございますが、こうなりますとこれはこの妊娠中絶の回数に非常に大きな興味を持つておりますが、人によりますと一年に三回ぐらい妊娠しておりまして、そうして妊娠中絶を行つたというような例も私知つておりますので、こういうことで妊娠中絶が行われましては、母性保護の立場から考えまして、一時の場合は非常に経済的にもその外の肉体的にも保護せられるように考えられますが、何年か経ちまして惡い例では直ぐ一年以内ぐらいに、葡萄状鬼胎のあとに、惡性の脈絡膜性の上皮腫というようなものが起つたり又癌を起したりするようなことがないかと憂います。一時経済的に肉体的に樂になつても却つて年を経ましてそうした病氣が起れば、母性保護の意味がなくなるような結果になると思いますのでございますが、医学的の立場からどういうものでございましようか。
#32
○森山證人 今の何回も続けて妊娠中絶を行えば母体にどういう影響があるかということでございますが、これは條件があると思います。一つは中絶を行う方法が医学的に正しく行われたかどうかということと、それからその中絶の手術を受けました婦人のあとの節制如何、この二つが非常に大きな影響を持つものだと考えますが、その二つのいずれかが正鵠を得ませんければ、いろいろな障碍がそのたびに起つて來ると思います。ですからその二つの條件が満たされまして医学的に非常に正しく行われて、且そのあとの節制が十分行われたならば、回数を行いましても特別障碍はない筈でございます。併し現在の日本の状態からしますならば、その点非常に心配を私達も懷いております。可なり今そういうふうな中絶後における不節制とか、中絶方法の拙劣とかということによつて障碍を受けた者が可なり出て來ておるように私達も聞いております。そういう点においては十分に指導することと、それからその施行する方は今後は指定医がありますので心配ないと思いますけれども、中絶後の節制指導ということが非常に大事だと思います。そういうような條件がいつでも満たされるとは限りませんから、そういう中絶を要するような家庭に対しましては、やはり妊娠してから簡單に中絶できるというふうな考え方でなく、はやりそういう家庭には妊娠の防止、受胎調節の指導を積極的にする方が、やはり本筋だと私達考えております。
#33
○委員長(塚本重藏君) 外に御質問になる方がございませんか。委員外ですが、藤森さんに発言さしてよろしうございますか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#34
○委員長(塚本重藏君) ではどうぞ。
#35
○委員外議員(藤森眞治君) 岡本さんにちよつとお伺いしますが、指定医以外の者は人工妊娠中絶ができないこういう規定に今度明らかになるのですけれども、そうすると指定医以外の者がやりました場合には、これは堕胎罪の対象になるものでしようかどうでしようか。殊に最近檢察側の方でもいろいろお考えになつて、いわゆる処罰の対象にはなつていないというのが最近の実例のようでございますが、その辺で若し指定医以外がやつた場合に堕胎罪の対象にはならないが、一方医師の身分という上から行政上の対象について或る考え方を持たなければならん、こういう難かしい点に逢着しておりますので、その点ちよつとお伺いいたします。
#36
○岡本證人 先程もこれについて、ちよつと指定医の嚴選問題に希望を述べておきましたが、指定の医師という者が嚴選せられておる場合に、指定医師以外の人に勝手に人工妊娠中絶を依頼したというのは一應の堕胎罪の容疑を持たれはしないか、その憂があるのです。でこの点は一つどうか法の運用上、指定医師でなければこの妊娠中絶ができないと、医師の良心に訴え、医師の取締の上からやつて頂きたいと思います。行政上の問題は私、別でありまするけれどもが、一應そういうことが暗がりでなされた場合、その原因関係について堕胎容疑の対象になると思います。ただその場合、手続を間違えてやつたんだとか指定してない者が…。ちよつとこの法文の十五條の二で多少運用上、解釋上問題になる点もある、こう思つておるのです。例えば指定医師が出先におきまして、妊娠中絶を依頼され、自分がその施設その他のものを持つていない場合、近所に指定医指でない人がある、これをして自分の名の下に手傳よしてなさしむる。これを医療行爲ということに見るかどうか。その医院がその施設と働きを貸す。それについては正当の謝礼も受けるだろう。これは医師として一つの医療行爲ではないかと思う。指定医師が行きましてそれに手傳わさしてやる場合、これは十五條の二の問題であります。これは法文を御檢討なさる上に、恐らく立案の趣旨の御説明の中にそれが嚴密になされて置けば、私はこれは明らかになると思うのであります。先程意見を申述べなかつたそういう場合も考えられます。そこで、指定医師にあらざる者がやつたということにつきましても、或いは本人の申出その他のものが合法的になされておつて、堕胎の疑いがそこに存しない場合は、たとえ一應の容疑を受けましても、私はそれは解消してしまう、そういうふうに思つております。
#37
○委員外議員(藤森眞治君) その点で実は、非常に面倒と申しまするか、複雜になつて参りますので、指定医師以外の医師はいわゆる十五條の二で医療行爲としてでも、緊急避難のような場合以外はできないとこう規定されると、指定医師以外の者が或る人から依頼されて中絶をやつたという場合には、これは違法だということになつて來ると、いわゆるこれは堕胎罪ということになるのじやないか。こういうふうに一應考えられるのですが……。
#38
○岡本證人 本質的には私は、それは実質的の要素も伴うておれは堕胎罪にならんと思います。それは医師の身分上においては違反を構成するかも知れません。
#39
○委員外議員(藤森眞治君) もう一つ。そういう場合、指定医師以外の者で、多少惡質と申しますか、いわゆる営利を目的として指定医師以外の者がやるということで、訪れる者が実際の場合には少くない実例があるのであります。こういうふうなものはどういうふうな解釈でしようか。
#40
○岡本證人 これは私憂いは残りまするが、不当な利益を対象とする医師は段々減つて來るのでないかと思うのです。指定医師を定めることによつてですね。で、今一應堕胎の容疑もかけられる憂いがあるというのはそこでありますから、その危險を敢て冒してやるという、これが少くなつて來るのでなかろうか。少くとも合法的の手段を経てやる。私前回あなたのお見えにならん前に申上げたんですが、これは二つの面から、本人も人工中絶を申立てる、そうしてこれを委員会等で明らかに檢討して、それから医師の面においては、制裁によつて減少されるという面から堕胎の容疑は非常に減つて來るのでないか。今まで始末に困つておつたのが、不義不倫の子供の始末であります。これは四項にも規定してあるし、又その不義不倫の行爲の行われるのは、上流階級、有閑階級の者もあつたんでありますが、多くは下流階級の道義のすたつた面に多いのでありますから、これは大いに堕胎の容疑が減つて來るのでないかと思います。
#41
○委員会(塚本重藏君) 本日は我々委員会におきまする優生保護法の審議に当りまして、四人の方の御出席を願いまして、いろいろとそれぞれの專門的な立場から、この改正法に対しまする御意見並びに改正後の施行に関しまするいろいろの御意見を伺いまして、我我の審議の上に非常に益するところが多かつたことを、厚く感謝してお礼を申上げる次第であります。尚正午まで少し時間がありますので、正式な委員会を閉じて懇談いたしたいと考えます。午前はこれを以て休憩いたします。午後又、この優生保護について審議を続行いたします。
   午前十一時三十八分休憩
   ―――――・―――――
   午前二時十分開会
#42
○委員長(塚本重藏君) 只今より午前に引続き開会いたします。速記を止めて……。
   午後二時十一分速記中止
   ―――――・―――――
   午後二時二十五分速記開始
#43
○委員長(塚本重藏君) 速記を始めて……。本日はこれで散会いたします。
   午後二時二十六分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     塚本 重藏君
   理事
           谷口弥三郎君
           姫井 伊介君
   委員
           中平常太郎君
           山下 義信君
           中山 壽彦君
           井上なつゑ君
           小杉 イ子君
           穗積眞六郎君
  委員外議員
           藤森 眞治君
  証人
   最高檢察廳檢事 岡本梅次郎君
   母子愛育会母性
   保健部長    森山  豊君
   民 生 委 員 山田 悦世君
           賀川 豊彦君
ソース: 国立国会図書館
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