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1949/04/11 第5回国会 参議院 参議院会議録情報 第005回国会 予算委員会 第9号
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1949/04/11 第5回国会 参議院

参議院会議録情報 第005回国会 予算委員会 第9号

#1
第005回国会 予算委員会 第9号
  公聴会
  ―――――――――――――
昭和二十四年四月十一日(月曜日)
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○昭和二十四年度一般会計予算(内閣
 送付)
○昭和二十四年度特別会計予算(内閣
 送付)
○昭和二十四年度政府関係機関予算
 (内閣送付)
  ―――――――――――――
   午前十時二十三分開会
#2
○委員長(黒川武雄君) 只今より昭和二十四年度予算につきまして公聴会を開会いたします。
先ず公述人の方に申上げます。御多用のところを本予算委員会のために特にお繰り合せ御出席下さいまして公述をして頂きますことを衷心より感謝いたします。お礼を申上げます。公述の方法は午前四人、午後五人の方にお願をいたします。一人二十五分間、質問時間は五分といたします。それではこれより日本機帆船業会専務理事の立川さんにお願をいたします。
#3
○公述人(立川繁君) 私日本機帆船業会専務理事立川繁でございます。本日は公述の機会を與えて下さいまして誠に有難うございました。殊に慎重をその機能とせられることも一つであるところの参議院におきまして公述させて頂きますということは誠に仕合せに存じます。たくさんの公述人の方がおられますから、成るべく簡単に申上げたいと存じます。
 国有鉄道は現在のままで参りますると傳えるところ約五百億の赤字を出すと、こういうことを聞いておるのであります。ところがその内容が旅客の方面におきましては大体償つておる、ペイしておる、こういう話であります。併し貨物の輸送の方面におきましては非常な赤字である、こういうわけであります。でありますから、五百億の赤字は、言換えますると、貨物輸送の赤字であるように存じます。それでこの赤字がどう転嫁されるかと申しますると、前年度までは結局国民の負担であつたと思います。本年度からは旅客運賃を大幅に引上げられまして、旅客にこれが転嫁せられることになるのであります。そうして一面貨物運賃が非常に安く、伝えるところによりますと、コストの半分以下で輸送しておる。こういうことの結果はどう現われますかと申しますと、海運に行くべき言い荷物が故意に陸上の鉄道に流れて行く、こういう結果になると思います。元来申上げますると、すでに御案内だと存じまするが、本来から申しますると、鉄道と海運との関係は何も競争の点はないのであります。又国家の政策から見ましても、海陸輸送の調整をすると、こういうことが国会でも大いに論議せられておるということはやはりその点にあるのだと思います。日本の大体の地理の状況が、長さで申しますると約二千キロ、而も小さな国でありまして、大小約一千の島々から成つておる国であります。従つて大陸というものは全然ない。小さな島で、アメリカ大陸、南米の大陸、アジア大陸、こういうような大陸とは全然違つておりまして、船を使えないところは殆んどないのであります。又船でなくてはならない。大小一千の島から成つているという点から見ましてもはつきりするのであります。そうしまして、船の方に流れます貨物は大体大量の、而も長距離、遠距離の大量の貨物が船に行く性質を持つている又以前からそうであつたのであります。ところがそれがこうコストの安い貨物でありますると、それが全部鉄道に流れているのでありまして、その結果はどういうことになるかと言いますと、根本の日本の運輸政策というのが非常に乱れて来て、大きな禍根をここに残してゆく結果になるのではないか。日本の経済の上から見ましても、鉄道の経済の上から見ましても大きな禍根がここにあるのではないか。禍根を植付けていくのではないか、こう考えるのであります。そこで翻つて海運界の方の現状を申しますと、私共日本機帆船業会の受持つておりまする業者、つまり機帆船の業者と申しますと、現在約四十八万総トンの船を持つております。隻数にしまして一万六千隻あります。そうしてその船員が約五万六千人であります。そうしてもう一つ特異な現象は、その船主、事業主が約一万二千人おります。そうしてその一万二千人の船主の業態が、いわゆる一杯船主、一杯だけ持つている船主が一万二千のうちの一万一千人に及んでおるのであります。そうしてその一万一千人の中の大部分、約八割程度というものがいわゆる船主船長でありまして、船主船長と申しますのは、くどいようでありまするが、自分が船主であつて、自分が船長である。陸を離れていつも航海に従事している船主であります。これが言換えますると、一万二千の機帆船の業者の中の大部分がいわゆる船主、船長である、こういうことになつておるのであります。そしてこの機帆船の業態は、日本の海運の歴史から見まして、常に何らの国家の恩恵も補助も一つも受けておりません。全く自由の子で、全くその自分の責任において、自分の事業の合理化の点において、働きに働き抜いて来ておる業者であります。この業者に回るべき荷物が鉄道にどんどん回つておるのであります。最も早い話が石炭がその例であります。これは運賃が安いところへ流れるのは、これは当然の話であります。若し国有鉄道の方で本当に事業を合理化せられまして、海運よりも鉄道が合理化せられて、そうしてその結果運賃が安いというのでありまするなら、これは非常に結構なことでありまして、海運人の、殊に機帆船の業者は大いに顧みて自分の方の事業を合理化すべき理由があるんでありまするが、先に申しましたように、五百億という程の大きな補助金、若しくは旅客の御負担にかかる金を以つて、そうして貨物を不合理に不自然に安くして、そうしてその結果はどこが痛め付けられているかというと、全く自由の子であるところの機帆船業者が、言葉が甚だ悪うございますが、痛めつけられた結果になつておるのであります。その事情は、殊に昨年の暮れ以来というものは非常にひどくなつてきておるのであります。一面におきまして鉄道の方が非常に事業の内容がよくなつた。こういう点もありましようけれども、一面において国家の政策の上に大いに反省しなくちやならん点があるんじやないかと思うのであります。先に申しましたように、日本の国自体の実情が小さな島々ばかりでありまするから、鉄道によるべきものというものは結局旅客が主なのでありまして、貨物の点におきましては、近距離のもの若しくは少量のもの、若しくは積合せ的なものが、これが貨物に回るべきものであります。鉄道本来の貨物も又あり得るわけであります。そういう荷物が鉄道の方へ回つて行きますと、運べば運ぶだけ鉄道の方では結局損をする、赤字はますます大きくなるのではないか、いつまで経つても赤字を消す方法はないんじやないか。一面非常に影響を受ける部分がある。この点につきましては十分皆様の方で一つ御調査なり御審議を頂きたい、こう考えるのであります。これにつきまして旅客等の点につきましては、或いは日本の国民が現在では鉄道を利用し過ぎる。言換えますると、ガスとか、電気とか、殊に電気等は利用し過ぎる。こういうので超過料金等を取られもするが、この超過料金を取られるような意味の、或る程度の禁止的な意味まで含んでおるものだとすれば、その点よく存じませんけれども、乗客に無用に鉄道を濫用させない、こういう意味まで含んでおるものだとすれば、電気等と同じに、超過料金は国庫において一般会計において収入とせられる、そうしてその結果を国民の負担に掛けないようにするのが本筋ではないかと思うのであります。従つて本年度、二十四年度の予算におきましても、若しできるならばそういう方法を考慮して頂けないものだろうか、その点も若しできないものだといたしますれば、そういう金ができ上りましたならば、これを以てすぐそのまま漫然と同じ会計の中で、自由に片方の小規模の弱小事業者の影響になるような、而も一面申上げますると、機帆船と言えば如何にも小さいようでありまするが、鉄道の貨物の一列車くらいは、大きな機帆船でありますれば一隻で積み得るのであります。小さい機帆船でも二、三杯ありますれば、優に鉄道の貨物の一列車くらいは積み得るのであります。そういう機帆船の業務の方に大きな影響を来さないように、日本の将来の経済に影響を来さないような、禍根を残さないような貨物の動き方をさせる、こういうことを監視し若しくは指導する、こういう機能をこの予算の上にも一つお認め願つて、そういう付帯決議でも頂きまして、そうして思い付きでありまするけれども、委員会、物資官廳、農林とか、商工省の方の物資官廳或るいは大蔵省の方、物資の方の采配を揮つておられる官廳並びに予算の方の大蔵省、運輸省にしましても鉄道の方及び海運の方の各省から委員を選定しまして、この委員の指導によつて、そうして折角旅客の頭に非常に大きな負担を国民の負担となるような負担をかけた金が、多分五百億出るんだろうと思いますが、そういうような大きな金の出ましたものを漫然と片方の海運の使命を持つておる機帆船業者に影響のないような方法でその金を注ぎ込む、こういうような方法を一段と考慮して頂ける方法はないものであろうか、これは私の単なる思い付きでありまするけれども、国政を御審議になりまする皆様の所で御工夫、御慎重な御審議が願えますれば、何らかの案が立ち得るんじやないか、こう思うのであります。
 誠に簡単な公述でございますが、切に皆様のこの重大な予算の御審議に当られまして、以上申上げました点を御考慮下さいまするならば、私共誠に仕合せに存ずる次第であります。極めて簡単でございまするけれども、有難うございました。(拍手)
#4
○深川タマヱ君 お仕事が違いますので少々御無理かと思いますが、お話と関連がありますので、お尋ねしたいのですけれども、鉄道の貨物輸送の赤字の原因がどこに或るのか、お分りでございましたら……。
#5
○公述人(立川繁君) 赤字の原因は、私が今申上げましたように貨物に或るんじやないか、旅客はペイしておる。
#6
○深川タマヱ君 いやそうではございません、鉄道の貨物の方の赤字の原因がどこに或るか。
#7
○公述人(立川繁君) 私、鉄道の内部のことはよく存じませんが、貨物の方になくてはならものだ、こう申上げたのです。
#8
○深川タマヱ君 分りました。
#9
○飯田精太郎君 鉄道は貨物の運賃をコストを割らん程度まで上げれば、機帆船というものは自立できますか。
#10
○公述人(立川繁君) コストを割らん程度と申しますると、実は私共考えておりますのは、国鉄は全然税金を払つておりません。又配当も一つもしておりません。そういうようなものを皆入れました意味のコスト、こうなりますると、それではそういう運賃になりまするならば、機帆船の業者と雖も文句はない。これでなら十分やつて行かなくちやならん、こういうように考えております。元来がレールのありまする鉄道よりも、レールのありません機帆船の方が、機船の方が安かるべき筈なのです。又日本の国の土地の上から見ましても、鉄道を敷きますと、簡単に考えますけれども、あれだけの列車の操車場を拵えるにしても大変な地積を要するのでございます。船の方は操車場が皆海の中でございますから、もうその点だけでも非情な国の上の利益になりまするし、勿論広い意味のコストもかからんと、こういうわけでございます。
#11
○波多野鼎君 鉄道運賃と現在の船の運賃との簡単な比較はできませんですか、どのくらいになつておるか、例えば一定距離の間、鉄道で運ぶ場合の運賃と、船で運ぶところの運賃との比率はどれくらいになつているかということと、もう一つ船舶運営会とどういう関係に或るか、この二点です。
#12
○公述人(立川繁君) 運営会の運賃も実は六十二億、今年度の多分予算にも補助金が入れてあります。それでその補助金を持つた汽船の運賃と、鉄道の同じく約五百億かどうか、六百億になるか知れませんが、それだけを持つた運賃と比較することは余りどうかと思つて私共比較しておりません。機帆船が全く自由な立場でございますので、これと比較いたしまして、或るものは三倍ぐらい機帆船が高くなつておるのです。所によりまして、今の運賃が多少私共の方でも是正すべき点があるやに考えております。石炭及び雑貨と、こう分かれますが、ついでに申上げますと、海運でざつとこの二十三年度の前半期の輸送をいたしました計数を拾つて見ますと、約二千二百万トンになつております。昭和二十二年度は三千三百万トンでございましたが、上りまして昭和二十三年度は半年分で二千二百万トン、それから推計しますと、二十三年度は四千四百万トンに近いのではないかと思いますが、先程申しましたように、年末以来鉄道の方へどんどん荷物が流れておりまするから、多少下回るんじやないかという気もいたします。それでその四千四百万トンの中の石炭を除きますとを約九割というものが雑貨でありまして、石炭と石炭以外を区別した話でございます。これの大部分を機帆船が、先に申しました四十八万トン、一万六千隻の機帆船が運んでおるのでございます。汽船と機帆船と比較いたしますると、大体七割程度が石炭も入れまして機帆船の輸送で、三割程度が汽船輸送であります。汽船は非常に大量の物を運びますが、日本の産業から見ましたら、それ程大きな産業は汽船で運ぶ程度のものは余りない、数える程しかないということになると思います。結局汽船は外国から原料を輸入して、加工したりしたものを外国に出す、これが大きい汽船の本来の使命でありまして、国内海運におきましては汽船の分野というものは、日本は小さな島でございますし、産業は非常に貧弱でございますから、殆ど大きな大型六千トン以上の船を使うということは余り価値がないように存じております。
#13
○委員長(黒川武雄君) 外に御質問ございませんか……有難うございました。
 次は、総同盟総主事の高野さんにお願いいたします。
#14
○公述人(高野實君) 総同盟の高野實でございます。二十四年度の予算につきましてく極く総括的に感じておるところを申上げて見たいと存じます。今度の予算はドツジ公使の声明によりまして彩られましたいわゆるドツジ・ラインというものの線に沿つて作成せられたものと考えます。従つて私共は今度の予算の内容を見ますと、ドッチ・ラインに対する労働階級側からの鋭い批判を浴せなければならなくなつております。今度の予算が総合予算の均衡ということを特に強調して、その線ですべてのものを律しておる点は、大凡そ一般的には正しいものと考えられまするが、そのために起る多くのダーク・サイドが出ておるものと考えます。私共が今度の均衡予算を見ますると、そこには甚だしい重税が見られるのです。分けても一昨年の国民所得に対しては凡そ十八%三、昨年の予算においては十九%三であつたものが、今年は少くとも二十%或るいは二十一%の重税となつて来ております。果してどれだけの重税を国民一般から吸収し得るのであるかどうかということについて多大の疑問を投げかけざるを得ません。御承知のように、政府の支払金が大変に遅れましたために、すでに各事業場においては賃金の遅配、欠配が一般化しております。つい先だつても東芝の堀川工場から一千四百万円の税金を取立てたために、その日から東芝関係の労働者の間には賃金の遅配、欠配が起り、到頭当分の間賃金を支払うことのできない状態に陥つておりますが、こういう事例は東芝だけではなくて、可なり著明な工場、事業場の間にも一般化しつつあります。こういう事業場の不況の中で、今度の予算に現われておりますような多くの税金を事業場から徴収することは果して可能であろうかどうか、小商店や小企業者の間の重税負担の不可能であるということは、これらの多くの大衆が共産党の重税反対運動、この運動の中に流れ込んで、そうして彼らの志とは凡そ違う運動にまで進出しておるという事実において、如何に重税をこれ以上負担することができない状態にあるかということが分ります。この上に今度の均衡予算は地方財政を含んでおりますために、地方財政からの圧迫は更に各都市町村の新らしい増税を見込まなければなりました。今まで地方においてはそれぞれ必要な建設公債などを相当額見込んでおりましたけれども、そういうことが大凡そ禁圧せられる状況にありまするにおいては、やはりこれらの事業そのものが縮小されるだけでなしに、それぞれ姿の変つた徴税とならざるを得ません。そうして大都市においては勿論、小さな村に至るまで、各個人の負担しまする地方税というものは倍加せられるのではないかという憂を持たざるを得ません。従つてそういう徴税が、一体国民が堪え得るのであるかどうか、こういうことについて大きな疑問を投げかけざるを得ません。又賃金労働者の問題にいたして見ますならば、三千七百円ベースの時には大凡そ一〇%前後の源泉課税でありましたが、今度六千三百円ベースになりましたときの源泉課税を見ますると、大凡そ二〇%前後になるのではないかと思われます。現実に生産に従事しておる人々の間からかような重税を捲き上げるということは決して生産意欲を高揚させるものではなくて、却つて意気沮喪せしめるものがあるのではないか、又純生産を要求しておるのであるが、若純生産のために賃金を奨励歩合、増産歩合などで獲得した場合には、現在の税率においてはいよいよ税金が加重されて、全く生産意欲を破壊してしまうのではないか、こういうことに加えて、今度の予算では食糧が一五%、通信は五〇%、運賃は六〇%、その他家屋税、土地税などの何倍かの増徴があるという有様であつて、こういうことでは個人の生活自体をも破綻に陥れしめて、従つて国民からの税金の徴収ということが不可能に陥るのではないか、況やドツジ・ラインが想定いたしておりまする四百万になんなんとする失業者を案じて見ますならば、今度の予算に現われた租税というものが余りにも不適当なものではないか、そうして日本の国民生活を破壊に陥れ、産業を困憊せしめるものではないか、かように考えます。
 第二の点は、ドツジ・ラインが強く主張しておりますような産業政策が進行いたしますならば、そのときには必然に賃金低下の問題が起つて参ります。この賃金低下は、すでに六千三百円ベースでも飯が食えるか食えないかという問題を持つておる今日、廣汎な商工業労働者の間では一ヶ月三千円、四千円で働いて、而もその事業場から転職することができないという程度の失業の声に晒されております今日、この予算の進行に基く低賃金政策が如何ように労働階級の生活を圧迫するに至るであろうかということを案ぜざるを得ません。若し今度の予算が強大なる産業計画を抱いておつて、労働階級の間に一年すれば、或いは二年すれば、或いは又三年すれば、これだけ日本の産業計画は進行し、国民生産は向上するに違いないという、さような輝かしい希望を抱かしめるならば、今日ドツジ・ラインに現われております低賃金政策というものにも労働階級は決してこれを徒らに拒否するものではありません。併しこの度の予算に現われておりますように、産業計画資金というものを殆んど大部分削つて貿易の黒字が出た場合に、これらの中から若干のものを割当てようとする政策に対しては、直ちに納得することができないものがございます。誠に労働階級は将来を案じて暗澹たらざるを得ない次第でございます。
 第三には、先程も申上げましたように、すでに賃金の遅配欠配というものが一般化しつつあります。この状態がいつ果つべしとも思われない。否いよいよ激化するのではないかと存ぜられます。今度の予算では鉄道の方でも、通信の方でも、凡そ前年度に比較して半額に近い賃金しか出ておりませんので、政府支払いの最も悪い運輸省の関係の工業は殆んど全滅せざるを得ません。又通信関係のうち、多くのものはもうすでに倒壊しつつあります。又鉄鋼その他基幹産業の部面でも、価格差補給金が一般的に減少しただけでなく、若し石炭ならば石炭が四千二百万トン掘れないならば、それだけ補助金が出なくて予算の上で余裕が出て来る。鉄鋼の百八十万トン作れないならば、それだけの補助金の額は予算の上で浮いて来るのではないかという考え方が、若しこのまま進行いたすとしますならば、そのときには石炭は誰人が命令いたしましようとも四千二百万トンを生産することは不可能であります。又鉄鋼を百八十万トン生産することも不可能であると言わなければなりません。こういう事業計画と予算の面に現われた考え方との間の開きが、当面する基幹産業並びにその他重要産業を破壊に陥れる危険があるのではないか、今の予算で真に石炭を四千三百万トン必要とするならば、四千二百万トンの石炭を掘るまで予算はいかなる手当を施すべき考え方を持つておるのであるか、鉄鋼は百八十万トン必要であるというならば、この計画に基いて予算はこれをどう処置すべきであるのか、という問題がひそんでおるように思われます。
 又第四には、今度の予算の中には建設公債が二百五十億程しか見込まれてありません。そのために折角新らしい吉田内閣が計画しておりました幾つかの事業計画さえも、これを全部外してしまわねばならないということになりました。これは単なる公約の履行であるとか、或いは吉田内閣の不面目であるとかいうような、そういう小さい問題ではございません。日本の産業計画は凡そ安本の五ヶ年計画を軸として今日まで運営されて参りました。無論この安本も五ヶ年計画についてはいろいろ議論があるところと思いますが、とにかく安本の五ヶ年計画を軸として日本の産業計画を進めて参りました。そうしてその一環として復金も生れ、復金の融資というものも有用に使われて参つたと思うのでありますが、今度の予算面ではこういうものが全部外されておる。そうして新らしい吉田内閣が折角提案をしました、例えば住宅金庫の問題等でさえもやはり問題視されていない。これらの問題は盡く若し純輸出が行われて、そうしてその純輸出の成果が上れば、その中から若干の見合いがある、こういう考え方が現われておるように思われるのでございまするが、私共はそういうことでは到底日本の荒廃せる産業を回復することも、国民生活水準を保つことも不可能であると考えます。
 今一つ教育の問題にいたしましても、折角六・三制を支持しました人々が、今や教育費の問題について一暼も加えないという態度に至つては、私共は甚だ遺憾を表明せざるを得ません。而して新年度におきまする子弟の教育のためには、全国至る所の貧富の区別なく、全国至る所の国民が、止むなく身を削つて子弟の教育費を出さなければならないということになるのであるが、こういうことは決して善政ではない、これは悪政ではないか。今度の予算面の中から、こういう悪政と思われる諸点を是非剔扶して貰わなければならん、かように考えます。私共はこういうふうに予算の一々について申上げることはすでに不必要かと思いますが、私共はドツジ・ラインの形で体系付けられました政策について強い批判を持つております。従つて今度の予算に対してもやはり強い批判を持つております。そうしてこの予算に対して次のような点を要求いたしたいと存じます。純生産、純輸出を要求するならば、是非とも豊富なる事業資金を出せ、事業計画資金も事業に回せ、失業者の救済のために失業保険の費用を増額せよ、失業者のための失業保険費を増額せよ、長期産業計画のために貿易の黒字資金と言われるものを即時使えるように按配をせよ、直接生産に従事している労働者の源泉課税を軽減せよ、その他大衆課税と思われるものについてそれぞれ減額を計画せよ、大口闇屋に対して重税を課せ、特に大小事業場が経営しておるトンネル会社に対してこれに重税をかけよ、又今度の予算内示がありまして、政府が予算案を国会に出しましてから僅か一週間足らずして議会を通過せしめなければならないという今日の事態については甚だ遺憾に存じます。聞くところによれど、国会は十四日までにこの予算案を通すようにと言われておるということでありますが、私共は労働階級の名において衆議院の方々も、参議院の方々も、国民が共々に納得し得るような予算を作り出すために十分な日時を掛けて審議をして頂きたい。そうして皆さんの力戦奮闘によつて、国民が一つでも、二つでも納得するならば、国民は決して我がままを言わず、みずからら耐乏生活に耐えて、日本の再建のために盡す意思を持つておるのだ、さようなことを率直に表明いたしたいと思います。私共は今度の予算の進行が国民生活水準を一段と下げるのではないか、下げるに違いない、こういう考えの下に予算全体に対して反対の意思を表示するものです。
#15
○委員長(黒川武雄君) 御質問ございませんか。
#16
○田村文吉君 ちよつと高野さんにお尋ねいたしますが、只今御説明の中の第三項にありましたか価格補給金ですね。こういうものについてはどういう考えなのですか、価格補給金をやることによつて産業を維持してやらないと、つまり国の復興が遅れる、こういうような御趣旨に伺いましたが、補給金がなくても値段を上げて貰えば、補給金と同じような役目をするわけですね。その点については、値段が上つてもいいから補給金を止やめた方がいいというのか、或いは補給金はやはり殖し、又復金等も復活してやつた方がよい、こういう御意見か、その点御見解を一つ。
#17
○公述人(高野實君) 補給金をどれだけ出すかということについては、単に補給金という問題だけでは片付きませんで、物価と国民生活水準との関係がございますから、やはり公の是正ということが問題になると思います。公を是正しないで、今のままで補給金をこれだけやる、だからこれだけの補給金で我慢してこの仕事をやれというのでは、少なくとも幾つもの重要基幹産業がそれぞれ困難に当面するのではないか。復金の問題につきましては、復金そのものが悪いのではないと思うのです。若し大きな長期計画を政府が持つならば、或いは日本国民が持つならば復金のような作用をする機構が是非とも必要だと思います。昭和電工事件、その他の疑獄などは運営が下手なのであつて、失敗なのであつて、復金というような機関は、日本のような復興途上にあるいう国柄では是非必要ではないかと考えております。
#18
○深川タマヱ君 ドツジ・ラインが非常に重税で国民が担税力がなくて困るというお説は御同感でございますけれども、最後に先生がお挙げになりました数項を守りましたならば、アメリカの援助資金を使わなくても、日本の自主経済が成立するというお考えなんでございますか。結局アメリカの援助資金を使わないでも、自主経済の確立ということが差迫つた問題です。先生が先生の案としてお挙げになりました今度の予算案に対する改訂案にお出しになつたでしよう。先生のあれだけで、アメリカの援助資金を使わないでも日本の……。
#19
○公述人(高野實君) むしろ考え方があべこべで、アメリカの援助資金が凡そ千七百五十億というものは見込まれておるのですから、この金は国民経済を再建するのに必要な電源開発、その他の長期計画に即時使えるように按配をして貰いたい、こういう考え方です。ですから直ちにアメリカの援助を辞退してもよいのではないかという、こういう考え方ではなく、援助のある間に、そういう援助資金というものはできるだけ電源開発その他の長期計画に投資してしまう。そのために今度の場合のように純輸出が成功するならば、それから残りの千五百億に対して、何とか見合を考えて見るというような生ぬるいことでは、やはり半年なり、一年なり直ちに事態を遅らせてしまうのではないか。そうして日本の国民生活というものは一層悪いところに落込んでしまうのではないか。こう考えております。
#20
○油井賢太郎君 ちよつと高野さんにお伺いしたいのであります。三千七百円ベース当時と、六千三百七円の今日の賃金ベースになつてからの賃金の実効価値というものはその程度にお考えになつておられるか。御研究なさつたらちよつとお知らせ願いたいと思います。
#21
○公述人(高野實君) 実効価格については凡そ三割程度下つておると思つております。
#22
○油井賢太郎君 何か御研究になつたは資料がありますか。
#23
○公述人(高野實君) 労働組合の方で凡そ購買力について資料を作つておりますが、六千七百円ベースになりましたために生活水準全体が直ちに上つておるかというと、必ずしもそうではない。むしろ今度の食糧の値上げ、その他の値上げなどを考えますと、三割程度は実効価格が下つておるというふうに思われます。
#24
○油井賢太郎君 三千七百円当時の方がよいのですね。
#25
○公述人(高野實君) そうではなくて、昨年の十月なら十月に六千三百円貰つたときと、今日貰う場合とでは三割程度の実効価格の差ができて来ておるのではないかと考えております。
#26
○油井賢太郎君 私の言うのは三千七百円当時と六千三百円になつてからの比較ですが。
#27
○公述人(高野實君) それは別に計算はしておりませんが、今度の重税を見込みますと、やはり生活状態は必ずしもよくなつていないというふうに思います。その上に実際に貰つておる人は六千三百円で食えるか食えないかということが一つの問題になります。廣汎な失業者が出て参りますし、商工省なのでは非常に悪い賃金が流行しておりようですから、労働階級全体としては、相当の生活水準の低下が来るのだと考えております。
#28
○木村禧八郎君 ちよつと二点お伺いしたいのですが、先程のお話ですと、産業資金、これは豊富に出して急速に産業を復興せねばならん。その際インフレーションについてはどういうお考えですか、まあドツジ・ラインですと一挙にインフレーションを処理して行こうという線で進んでする。その処理の仕方が問題になると思うのですが、一挙にここで処理しようとしておるわけですが、そういう処理の仕方に対して多少インフレが起きても、産業資金を豊富に供給した方がよいという御意見に対して、やはりインフレーションは、その方法は又別問題ですが、この際二十四年度予算編成を機会に一挙に処理した方がいいという、労働階級としてはこういうお考えか、この点一つ。もう一つは九原則ははつきりマッカーサー元帥の書簡によつても、国民生活により以上の耐乏を求めることになつて、国民生活をもつと切下げるということをはつきり言つておるわけです。それでそれはもう絶対命令として要請されている場合、この国民生活の切下げに反対と言つても始まらない。そういうことになつた場合、国民生活を切下げなきやならんといつた場合に、労働階級としてはどういうふうに要求すべきか、したらいいか、その二点です。
#29
○公述人(高野實君) 第一の点は、私共はインフレーションの収束を要求しておりますが、併しそのインフレーションの収束は一挙安定の形で収束することについては必らずしも賛成ができない。これはやはり即座に即刻労働階級の方へだけ犠牲をかけてしまう危険があるから、それよりもやはりインフレーションの解決というものは、日本の基礎的な産業の回復と相俟つてこれを解決する方がよいのではないかというふうに考えております。それから第二の国民生活水準を下げるということが九原則の要求であり、ドツジ・ラインの要求であるというふうに言いますが、労働階級としては今日以上の生活水準の低下というものには納得することができません。ですから国民生活水準の低下になるような政策に対しては反対せざるを得ないのであります。それはも若しこれ以上の生活水準の低下をもたらすことになれば、やはり労働の再生産が困難になるし、それから反政府的な運動に労働者が流れて、そうして日本の産業全体を破壊に導く危険があると思うのであります。ですからドツジ・ラインが示すから仕方がないじやないか、こういうふうには私共は考えておりません。ドツジ・ラインでも労働者階級の生活に対して脅威を與えるならば、そういうものに対してはやはり批判せざるを得ないというふうに考えております。
#30
○木村禧八郎君 その前に例えば政治のあり方は如何によつて、例えばドツジ・ラインが一挙安定ということを示しており、又国民に耐乏生活を要求している。それが勤労大衆にのみ犠牲にされてしまうから、勤労大衆としては非常に問題になるのだが、若しその枠内において、或いは国民所有の分配の問題とか、或いは又財産の分配の問題とか、そういう範囲内においては、その一挙安定も国民生活の、特に勤労者の生活の低下は相当緩和される。政策如何、政治如何によつてそういうことはお考えになりませんか。今のところ大体今の政治ではそういうふうになるのであるか、その点もう一つお伺いしたい。
#31
○公述人(高野實君) その点はお考えと同様です。今日の政治ではどうしてもドツジ・ラインを強行せられれば全部労働階級に被つてしまうのじやないか。ですから少くとも長期産業計画が相当に一方で按配をされるということであれば、これは又困難は忍びながら耐えるということもあるが、併し全部労働階級の肩の上に犠牲が浴せられるというような状況においては、条件の下では、やはりドツジ・ラインが何を言おうとも、そういうものについてはやはり批判をし、或る場合には抗議をしなきやならんと考えております。
#32
○池田恒雄君 賃金の不払いが非常に流行しているというような話でありますが、その賃金不払いというのはどういう部門で、どんな傾向を持つて現われておるわけでありますか。
#33
○公述人(高野實君) 政府支払いの遅れておるところではもう一般的に起つております。例えば昨年の秋から非常に廣汎に起つておりますのは石炭関連産業です。若し北九州に行つて御覧になるならば、北九州の工場で賃金の遅配欠配をしておらない工場などというものは先ず見当らないという状態です。東京地方に参りましても、先程も申上げましたように、東芝などは非常な影響を受けております。それから安立なんども政府支払のないために非常に困つております。扶桑金属なども運輸省にタイヤを納めておりますが、昨年の九月頃からも政府支払が遅延になつておりますために、今年の二月の初めから賃金の二割をお預けをするようになりました。住友関係では四国機械のごときは、二月分は都合十四回に給與を支払つたというようなのわけで、一回のごときにはただ僅かに二百円の金が支払われております。そのたびに蜿々列をなして給與を貰うという状態になつております。
#34
○深川タマヱ君 簡単に……政府支払いが遅れている原因……。
#35
○公述人(高野實君) 原因はやはり徴税が困難になつていると思うのです。徴税が困難になつております理由は沢山あるのでありますが、やはり事業そのものがもう疲弊困憊、倒壊の状態にあるということが大きな原因だと思います。片一方ではなかなか金を持つておるような商人、或いは工場からはその金の徴収できないような事情がいろいろひそんでおるのではないかと思つております。ですから政府の方で金が集まりますれば払うということであります。三月の末ですか、幾らですか相当の金が三十一日に出ましたが、尚政府は日本銀行の方では二百何十億かの金をそのまま払わずにおるようですが、そういうことについても相当の議論があるのじやないかと思つております。
#36
○池田恒雄君 先程大口闇屋に対する徴税というような御意見を出されておりましたが、あなた方が労働組合なら労働組合の運動の線上において、大口闇屋ということで脱税なんかしておるというようなところを、何かがずつと捕捉するようなことはありますか。
#37
○公述人(高野實君) 具体的に言つてもよろしいですけれども、例えば或る金属会社が十九万五千円の会社ですが、月々四億を下らない金属を扱つておるようです。そうしてその商会では月々四千万円以上の金が儲かりますので、その処分に困つて一千万円の行李を拵らえて、それを地下に埋めておるということが聞かれます。又その会社は日本の殆んど全電線会社に金を貸しまして、電線会社を事実上統制しておるのではないかと思われる節があります。又同商会では、今年の二月頃に屑綿を持つておる資金で、買付けたと言われております。そういうふうに相当の闇会社があるのでありますが、そういう闇会社の方には、税金はほんのちよつぴりではないかと思つております。
#38
○委員長(黒川武雄君) 有難うございました。次は大内博士にお願いします。
#39
○公述人(大内兵衞君) 私は一昨年の十月及び昨年の六月のこの公聴会におきまして、日本の予算が不健全な理由を申述べ、それが第一には復金制度による事業金融であるということ、第二には鉄道及び通信特別会計の建設費予算というものが公債によつておるということを指摘いたしまして、それがインフレーションの根本原因であるということを申上げました。そしてこの二つが何とか処分せられないならば、日本の経済は決して再興しないということを申上げました。それから先般のこの席上では大々的な行政整理をすることは日本の議会の責任である。それに対して議会が適当な処置を執らなければなるまいていることを申上げました。その後経済九原則の要求というものが司令部から出、それを実行する具体的な方針がドツジ氏によつて示されて、それが今回の予算に表現せられることになりました。ドツジ・ラインはそういう意味では私の主張と全く同一でありまして、又ドツジ・プランそのものはこの線を貫くものとして妥当であると私は考えます。そういう意味においてこの予算を私はラインにおいても、プランにおいても支持するものであります。併し私はこのような案が日本政府のイニシアチブによらずして、アメリカのデイクテーションによつてできたということを甚だ悲しむものであります。私は終戦後インフレーションを制御するためには、そうして日本経済を自立せしむるためには、どうしても擬制資本を思い切つて打ち切らなければならん。そのためには或る程度蛮勇を振わなければならんと主張いたしましたが、今日までこのことは全く行われず、反対に復金制度や価格補給金制度や貿易資金制度やによつて、物的な見返りのない資金がどんどんと増加して、そのためインフレーションがひどくなつた。然るに議会においても政府においてもその弊害を認めながら、それを根本的に直そうとせず、毎年赤字予算を組んでインフレを促進して来たのであります。それ故に彼らに取つては、即ち議会及び従来の政府に関係のあつた政党に取りましては、ドツジ声明は何か恐るべき過激な、或る意味における蛮勇と思われるかも知れませんけれども、そうでは決してありません。ただ日本人みずからが行わなければならなかつたことを、外国人の指示によつて行うということが誤まつておるわけであります。ドツジ・ラインというのは、結局においては為替の安定、いわゆるその単一レートの設定及び維持を目標とするものでありますが、この今回の予算が今の目標を直ちに実現するものではありません。ただその目標へのスタート・ラインに止るものであります。私はこれについて、この予算を審議する諸君に二つのことを注意いたしたいと思います。一つは為替の設定維持ということ、換言すれば金本位の復帰ということは、日本に取つては生死の問題、生きるか死ぬかの問題であつて、下手をすると日本経済はこの問題のために全く土崩瓦解するかも知れんということであります。第二は、ドツジ・ラインによる現在の政策そのものは、アメリカの救援資金も支柱とする一つの試案であつて、試みであつて、それ自身全く過渡的なものであるということ、私はこの二つを説明することによつて、第三に私の特殊な主張を諸君に申述べて見たいと思うのであります。
 第一、日本が金本位を離脱してからすでに二十年に近いのであります。その間に日本は世界に例のないような統制経済をやり、且つ又例のない程のインフレーションを行なつたのであります。そこで今の日本の価格体系は世界のそれと比べて実に滅茶苦茶であります。これに対して金本位に返るということ、そのことは結局において物価の水準をすべての物品について世界のそれと関連せしむるということでありましよう。為替レートを定めてそれを維持するというのはどういうことかということ、結局においては今の日本の物価体系を世界的水準において作直すということであります。この事業が如何に困難なことであるかということは、昭和五年における井上大蔵大臣の金解禁を考え合せば簡単に分ることであります。あの金解禁は第一次大戦を去ること十二年であつた。又あのときは日本は相当強力な輸出品の生産力を持つておつた。然るに今回はどうかと言えば、戦争を去ることまだ四年であります。そうして戦争の大いさ、その損害の大いさは何十倍何百倍であります。そうして今の日本の輸出生産力は全く貧弱であります。のみならず、今は世界殊に東洋において市場がありません。このときに金本位に返ることの困難さ、日本経済に対する打撃の多いさは昭和五年当時の比較でないことは言うまでもありません。あの当時濱口、井上の、あの周到なる用意を以てしてもあのような失敗をした。その失敗のあとが高橋財政によるインフレの始まりとなり、また馬場、結城のファッショ財政に続いたのであります。ドツジ・ラインを踏み出すということがどのくらい困難な事業であるか。下手をすれば日本経済を完全に破壊するものであるということ。どうかこのことを忘れないで頂きたいと存じます。
 第二に、こんな大きな歴史的な意義であるに拘わらず、それ程にこれが直ちに急激な破壊を日本経済に起さないのは、然らばどういうわけであるかと言いますと、それは申すまでもなくアメリカの対日援助が五億何千万ドルかあるということ、その見返金一千七百五十億円というものが来年度の予算の不足を助けておるということを、それだけがこの日本再建の資金として利用できるという、この事実であります。このことは政策の実行に取つても、日本経済に取つても誠に有難いことに相違ありませんが、併しこのことは飽くまでもアメリカの政策にかかつておるものであること、故にいつでもこの支柱は、この柱は外される危険があるものであるということ、又そうでなくとも、この援助を受けておる限り日本経済の独立、従つて日本の独立、従つてポツダム宣言に基く国際社会に入るということはできないということをはつきり意識したいのであります。だから今年又は明年のようなアメリカの援助を支柱とする日本経済の予算は、ここ二、三年ののちにはどうなるかということが分らない。それと同じような予算は立てられないものであるということ、日本が独立の意思を持つ限り、必ず別の予算を、そういうもののない予算を立てねばならんということを今から覚悟する必要があります。そうして若しアメリカの援助がなくても、日本の経済が立つて行くということになれば、如何なることが必要であるかというと、少くとも日本経済が対外的に輸出超過にならなければならんという条件があるのであります。日本の人口を戦争前の生活水準において維持しようとするならば、戦前の物価において少くとも三十五億円の物資を輸入しなければ、その生活、それ程の生活水準は維持することはできないのであります。それに対して日本経済が輸出超過にならねばならんということでありますならば、少くとも日本経済は戦争前の物価において四十億円程度の輸出をしなければならん。それだけの生産力を日本経済が持たなければならんということになるのであります。こういうことは今の日本の貧弱な経済・即ち輸出力が戦前の物価で僅かに数億円でしかない日本の現在の生産力に取つては、とても思いも及ばない大事業であります。併しこれを成就しなくては今回のドツジ・ラインで我々がスタートするということは無意味であります。このことを忘れないで頂きたいと思うのであります。そこで今回のドツジ・ラインが為替レートの設定を通じて金本位への復活のスタートであるといたしますならば、それに間違いないのでありますが、一方においては、日本の生産において恐るべき破壊力を持つものであると共に、他方においてはそれにも拘らず、日本の生産力は今の何倍かに回復しなければその目的を達し得ない。そういうことが現在の日本の至上命令であります。若しそういうむつかしい地位に我々があるとするならば、今日日本の急務は何であるか、そのことを私は述べたいのであります。私は次のごとく問いたい。日本はこんな大事業をするの用意があるか、私は本日このことについて国民の一人として、諸君の特別の決意を要請したいと思うのであります。そうして第一に、諸君は何年間にこの目的を達するつもりであるかを質問して見たいのであります。そうして第二に、財政と金融と物価の改訂と、国民的公共事業との各方面において、それぞれの計画がしかと持つておられるかどうかということを聴きたいのであります。私はこれらの点において政府も、民自党も、その他の諸政党も明確な見通しと、それに応じたプラントとを持つていないものであると思つておるものであります。そうしてそういうことは諸君に対してその上もなく失礼なことであると思いますけれども、私個人、国民の一員としては慨歎しておる次第であります。ドツジ氏は諸君のためにすでにスタート・ラインを引いております。それから出発して当るべきものは諸君であつて、諸君の指導され、担当される日本政府であります。その目標が與えられておるのにも拘わらず、自分の力で何年間でその目的に達するか、又どの点にどのくらいのエネルギーを使つてよいのか、それが分らないでは余りに心細くないでしようか。国民としての私の要求を端的に申します。政府も各政党にも、例えば五ヶ年でもいい。私はそれが短かいことを希望しますけれども、恐らくは不可能であると思いますから、七ヶ年でもいい、或るは八ヶ年でもいい。日本経済自立のためのを案をおのおのにおいて直ちに立案して、それを国民に示すべきでありましよう。その案は恐らくは数個の部門を持つべきであります。
 第一は財政、これは無論租税の負担の軽減を含んでおるのでありましようが、併しそのことは恐らくは他の計画と矛盾するでありましよう。従つて今いろいろ計画されておるのとは異なる、併しその収入金額においては劣らないような、より徹底した科学的な租税体系を必要とするものであります。又それに応じて財政は今計画しておる
ところのより以上のより徹底した科学的な行政整理案を持たなければなりますまい。又公共事業、地方財政、特別会計についてもそれぞれ具体的な案がなくてはいけません。それが財政に関すること。第二は金融、これは財政計画を相応じて国民資金の全部をどのように使い、どのくらいの資本蓄積を行うかについて具体的な数字を示さなくてはいけますまい。第三に、価格体系の変更につきましての目標とその方法が示されなければならない。これについて本年度予算は実に二千二十二億の補助金を予定していますが、いずれはこれを全部廃止しなくてはなりません。その影響が恐るべきものであることは誰にも分ります。それについての案がなくては問題は永遠に解決しないでありましよう。第四に、具体的な科学的な失業対策がなくてはならんことは申すまでもない。失業は現在すでに百何万、本年度数十万と言われておりますが、来年度においてドツジ案が進むに連れてこれが数百万にも達するかも知れません。それをどうするか。具体的な案がなくては社会的不安は免かれず、多くの人口が死ぬかもしれません。
 以上のような点について、政府も、どの政党も即座にその案を国民に示して頂きたい。国民はそれがなくては安心はできません。又国民はその案に従つて政党の実力を判断し、自己の生活を託する政党を選ぶことになると思います。要するに本年の予算は戦後初めての健全予算へのスタートでありますが、国民はそれが外国人の力によらず、この際自分の判断によつて、自分の立てた計画によつて、日本が堂々とポツダム宣言の目的に従つて歩いておるという姿を見たいのであります。国民は一日も早く経済独立のプランを示すことを政府と政治家に望んでおります。
#40
○委員長(黒川武雄君) 御質問ございませんか。
#41
○帆足計君 只今大内先生のお話を伺いまして、このような重要な転換期における予算の問題について指摘されたことは、私一委員としても有益に感じております。それからお話の指摘されました点は、むしろ我々が政治家としてこの重要な問題に対して如何なる抱負経倫を持つておるかということについて考うべき問題の中核の数点を示されまして、これ又我々にとつて最も有益なことでありましたが、そのような前提から二つばかりの問題につきまして御意見を聞きたいと思います。第一の問題は産業資金の問題であります。日本の経済の現状はアメリカその他に比べれば非常な変態的な状況にありまして、特に第一には戦災によつて非常に疲弊しておつた。補修修理なくしては安定ができないという特殊事情にある。それから経済構造が非常に変つて新らしいバランスを作らなければやつていけない。そのためにはやはり非常な補修と建設資金を要すること、そういうような事実の上に、更に従来の物価政策がなかなかむずかしくて特に基礎資材の公が非常に無理な状況に置かれてをおつて、操業率が六、七月以上にあるに拘わらず、自分で資本蓄積のできないような状況に置かれている。そこで総じて日本経済の現状は資本蓄積の額が非常に少い。大体において筍生活をしておりまして、自分で資本を蓄積する能力が非常に乏しい。従つて健全な金融に頼つておつて、その金額を当てにしたところで貯金の増加額というものは、価格差益金のような形の増加が比較的多くて、大きなインフレによる増加が多くて蓄積という意味の貯金の増加というものは非常に少ない。そうであるに拘わらず、安定しようとすれば補修や復興の費用に相当の金をかけなければならん。このアンバランスを救うために一種の復金資金のような国家資金が出ておつたわけですが、そこで第一の問題は、こういう種類の国家資金で日本の経済の復興を補わなければならないのであるかどうか、補わなくてはならないとすれば、旧来の復金は非情な欠陥があるので、それから改めなければならないわけでありますけれども、これを合理的に運営し、その資金の放出の限度も資材並びに客観的な諸条件の許す範囲において適量に、若し制約された場合には若干の国家資金の放出は差支えないのではあるまいか。従いまして第一の問題は、国民貯蓄の増加を補うために若干の国家資金を出してもよいかどうか。第二に、出すとすれば如何なる条件を考えねばならんか。そこで改良された復金のようなものが何らかの形で必要ではあるまいか。必要だとすればどういう御注意が必要であろうか。それがお伺いしたい第一の問題です。
 それから第二の問題は、より深刻な問題で、大内先生が最後に下された問題でありますが、私は日本の復興計画というものが、全国民の指導的な方々がこれを理解し、数個の復興計画が当然国民の前に提出さるべきであるに拘わらず、それが出ていないということは非常な欠陥であると思います。併し一方から考えますると、日本を援助しているアメリカ自身も、今やはつきりした見通しすら持ち得ない状況であるのであります。私は日本の置かれている現状は、すでにアメリカの援助の限度を出ておる、アメリカのあれ程の実力と合理主義の力を以てしても、尚且つ私は日本の復興というものが困難であり、場合によつては不可能のような状況に置かれておると思う。恰も南朝鮮の状況に幾らか似ておるところがあるのではあるまいか。そこで日本の自立のためには勿論輸出の超過、これが最も必要なことではありますけれども、ヨーロッパは余りにも遠く、アメリカとは生糸の輸出を制限した今日、正常な経済関係というものは幾ばくも増加を望まれず、残された世界は中国、朝鮮、東南洋諸国との貿易以外に途がない。そういう点において日本は或る意味における南朝鮮であり、北朝鮮に当る場所は即ち中国、東南アジア、これらの国々と日本が経済的に有機的関係を結び得るという見通しを付け、結び得る政治力があり、そうして相当国内に思い切つたラジカルな民主主義的な諸政策が取られる準備がなければ、もはや復興計画は立ち得ないのではあるまいかというふうに考えられるのですけれども、先生にお尋ねしたい最後の問題は、日本の復興計画を立てるとすれば、中国、東南洋、朝鮮、これらの諸国と日本が民主的に経済的提携をする政治的な諸方策の裏付けがなければ、もはや復興計画は立て得ないところに来ておるのではあるまいか。勿論こういう議論は相当過激でありまして、もう少し慎重に論議さるべき問題でありますけれども、私は戦争中、愚かなこと、間違つた目標であるに拘わらず、誰もこれを論議せずに数ヶ月やりまして、そうして失敗してしまつた。今こそ日本の再建については、やはり率直にものの本質を掴まねばならんところであると思いますから、この第二の問題につきまして何かお気付きの点がありましたら併せてお伺いしたいと思いまして、一言申上げた次第であります。
#42
○公述人(大内兵衞君) 時間が余りないようですから、イエス、ノーだけをお答えます。
 第一の問題、即ち日本の公共事業、その他復興事業上は無論のこと、産業上でも復興に必要な資金は、この上とも財政資金を出すべきではないかという問題です。これは今度の予算ではそういう方針ではできておらないので、すべてアメリカの救援資金も見返りとする金だけで以てその両方とも賄えとをいうこと、即ち財政の赤字を一文も出すな、如何なる名義であつても、間接的であつても出すな、即ち復金のようなものはいけない。従つてそのラインを考える限りは、第二復金を作ることはよくないというふうにできておると思います。私はこれは飽くまでも財政の正道であつて、これ以外のことをやればやはりインフレーションは進みますし、それから日本の復興はできないと思います。よく世間では復興か安定かとか、安定か復興かとかいう議論をする人がありますが、それは根本的に間違つております。安定が復興の前提でありまして、安定なき復興というものは、それは臨時の、嘘の復興でありますし、そうして又それに若しインフレーションが伴う。日本では今必ず伴いますから、そういう条件の下における復興は安定復興の敵であります。併しそれは原則論でありまして、実際二十年間インフレーションをやつて来たことを一遍に止めるということがいいか悪いかということになりますというと、これは原則を如何に貫くかという問題の応用といたしましては、私は全部を今直ちにという今年のラインがいいと思いますけれども、必ずしもそれが最善であるかどうかということについては、はつきりとした意見をここで述べることはできませんが、多少の余裕を持つてもいいのじやないかというふうに考えております。それは先程も申したように、安定計画を五年にするか、七年にするか、八年にするか、十年にするかという問題であります。併しその根本ラインを乱さないということは絶対に必要だと思います。
 それから第二の、日本の将来とアメリカの援助と、それから東洋の市場との問題、これは実に重要な問題でありますが、アメリカの計画が、今日の世界的な援助をしなければならんということになつております。これは実に第一次大戦後と異なつたる世界の情勢でありまして、東洋のみならず、西洋の主な十数ヶ国の国の生活がアメリカの国民の負担において維持されておる。少なくとも社会的安定及び軍事的力が維持されておるという現状におきまして、アメリカが非常に計画的にそれをやつておるということは疑いないのですが、先程計画的が行き詰りはしないかというお話でありましたが、計画的であるが故に行詰まる、つまり限度はおのずからあると思います。その限度が日本に対して殖えるか減るかということは私には無論分りません。これは世界の情勢によることでありますが、併し今ここ一、二年に、即ち五億何千万ドルという援助資金、そういうものが長く必ず続くということを予定した計画は駄目だと思います。それではなくして、逆の計画を作つて、即ちそれなくしても自立するという計画を作つたときに、民間資金なり或いは政府資金なりが却つて余計入つて来るという基礎ができるので、そこのところは先日ロイヤル長官の日本に対する軍事的な言葉として述べられて、それが嘘である、間違いであると言われたこと、そのことが仮に間違いでありましても、そういう話が出るということには、やはりアメリカとしては基礎があると思いますから、経済についてもやはり同じであります。その点はしかと国民としては覚悟して置くべきであろうと思います。
#43
○小川友三君 ちよつと大内先生にお伺いしますが、経済独立プランを国民の多くは要求しているんだというような……最後に大内先生は、それは今の日本に当嵌つているんだというような感じを與えるような言い方を言われましたが、経済の独立プランを立てて、その食糧問題の解決の付く途が大内さんにはあるのかないのかということを先ず第一にお伺いします。それから人口問題に対して、あなたはどういうお考を持つていらつしやるか、肥料問題に対して、過燐酸加里鉱石はこちらにないので、それは独立プランでどこから持つて来るんだという結論を言つて頂きたいと思つております。それから米国の計画的な援助で、そうしてこの援助があると思いますが、それは意味が非常に悪いように感ずる者もありますが、その計画的な人類愛精神からやつておるという意味かどうかということをお伺いしまして、それから政府が出すところの補助資金はこれは廃止すべきであつて、非常に悪い結果を来すのであるということを言われましたが、それはあなたの見解が蒸溜水的な見解なんです。蒸溜水じや人間は生きて行かれない、普通の水道の水でも、一リットルに何十万という微生物がいても(「長い長い」「整理々々」「委員長整理したらどうですか」と呼び、その他発言する者多し)
#44
○委員長(黒川武雄君) 整理いたします。小川委員、簡単にお願いいたします。
#45
○小川友三君 それだけお伺いします。
#46
○公述人(大内兵衞君) 最初の問題ですが、日本経済独立と申しましたけれども、外国から物を入れないと言つたんじやありません。そうじやなくて、沢山外国から入れる、即ち三十何億入れなければならん。それに対して四十億輸出しなければならんと言つたんですから、物を余計売つたり買つたりするということですから、あなたの意味においては独立という問題はないわけです。そういう意味の独立ではなくして、経済がアメリカのお世話にならんで独立する。それから第二の点は余りはつきりいたしませんのでお答えできかねます。
#47
○木村禧八郎君 簡単に二点お伺いいたしたいんですが、先程大内先生からいろいろ有益な御意見を伺いまして、再建プランというものを立てる必要がある。財政・金融、物価、失業対策等等というようなそうしたプランを立つて、それを行う体制でございますが、社会的な体制・或いは機構、こういうものについては先生はどういうふうにお考えになりますか、これが一点であります。それからもう一つは具体的に直ぐ現在の問題とも関連して来るのでございますが、金融機構の問題でありますが、先生のお考えでは、国民資金の計画的な運用を科学的にプランを立つてやらなければいけないというお話しですが、本年度予算につきましても、もう御承知の通り今度は民間の金融機関の役割が非常に多くなつて来た。復金に代り得るようなことになるのですが、そういうような場合に今の金融機関、日本銀行及び市中銀行を含めて、現状のようなままでよろしいか、又政府は日本銀行の改組を考えておるようでありまして、日本銀行の中にクレジット・ボード見たいなものを作るというように伝えられておりますが、そういうような日銀改革でよろしいものでしようか、この点についてお伺いいたします。
#48
○公述人(大内兵衞君) お答えいたします。第一の点は現在の政治力が、今のようなプランを作るのに適当かどうかという問題であります。これは私政治問題ですからわざとお答えしないのが適当かと思いますが、国民は先程申上げましたような意味において最も建設的な、そうして数字がはつきりして嘘のない、あつちの計算、こつちの計算、金融・財政・産業・物価すべての計算がぴたつと合うようなことをすれば、納得するだけの力を持つておると思います。そういうはつきりした政党を国民は必ず支持する。国民はそういう政府が出現することを希望しておると思います。それから具体的な問題は私差支がありますから、皆さんにも差支があつてはいけないと思いますから申上げません。この第二は、現在の資金計画というものは、戦時中の資金計画から段々糸を引いてその後をやつておるのでありますが、どうも不完全であります。それはもう少し完備したい。統計その他にもう少し完備してやりたいと思います。日本銀行その他の金融機関の改組をするのがいいかという問題は、私は前から改組論でありますが、併しこれも実にむずかしい問題でありまして、仕事が動いておるときに、社会が動いておるときに改組をするのがいいかという問題になりますと、必ずしもそうはいかんということもあります。いずれを先にするかということについてはいろいろ考慮すべきであると思います。併し改組は無論さるべきでありまして、日本銀行も、興業銀行も、勧業銀行も幾分改組されましたけれども、併し旧来の日本帝国主義の育成した機関としていろいろな点について不適当なことがあると思います。
#49
○委員長(黒川武雄君) 他に御質問ございませんか……次に、自治労連の副委員長の三田さんにお願いいたします。
#50
○公述人(三田朝丸君) 私はこの昭和二十四年度の予算につきまして次の二点から反対いたすのであります。
 その第一点は、先ず第一番にその予算の内容そのものは労働者、勤労市民、中小事業者或いは中小農民、これらの犠牲を要求する、こういうような建前になつておる予算であるので反対する。その第二点は、今まで余り論議されていないようでしたが、地方自治体を強度に圧迫する。そうしてこれを崩壊せしめるような内容を持つ予算である。こういう点につきまして反対をいたすのであります。
 その第一点につきまして、私共は労働者の立場から一応国民所得と我々の税負担等の問題を考えて見ますと、大体今度の予算は一応一般会計において三億円の黒字ということになつておるようでありますが、この二つの問題を考えてみますと、大体昨年度は国民負担との割合というのは、国民所得に比例して二一・六%というようなことになつておるということを言われておるのでありますが、本年度は二六・七%をというように大幅に上つておるというふうに新聞に報道されております。併し私共は率直に考えまして、更に地方税の問題であるとか、あるいは今我々に取つては痛い問題である交通費の問題或いは通信料の問題であるというような問題を併せて考えますと、大体我々の負担というものは三八%程度になつておるのではないか。そうしますと我我の所得の、全体的に見て四割程度が負担になつて来ておる。これは昨年度に比べて非常に大きな負担で、これを金額に直しますと、大体新聞紙上では一人当り三万五千七百三十四円の所得に対して九千五百四十二円の負担であるということを言つておりますが、我我の立場から考えて十分検討して見ますと、一万三千九百八十二円の負担になります。これが大体四〇%である。先程どなたか申されたと思いますが、今日我々労働者の生活というものは非常に苦しい。併し我々はこの苦しい中にやはり生産に従事し、飽くまでも日本を復興させようというのでやつて来ておるのですが、すでにもう我々の負担というものは限界を超えておる。勤労所得にいたしましても、昨年度の状況を見ますると、勤労所得とを事業所得の関係は四〇%対六〇%というふうになつておつたのでありますが、本年の予算の内容を見ますと、事業所得三三%に対し勤労所得六七%というふうに非常に勤労所得の税額が増加しておる。それは三千七百円ベースから六千三百円ベースになつたが、而も所得税の内容というものは変つておらない。そのために我々の負担が非常に増大して来た。我々の給與水準というものは一昨年の七月のC・P・Sの基準と、更に民間の給與などを比較して人事院で作つたものであるが、物価の値上り、又本年主食については一五%の値上り、鉄道運賃で六割程度の値上り或いは通信料金の値上り、こういうふうに官業の面で値上りがあると、一般民間の物価というものがそれに応ずる値上りをすることは当然である。そのために我々の生活はますます苦しくなる。こういうような建前で、我々としてはこの予算案に対して先ず反対せざるを得ない。更にもう一つは、この予算は当然均衡予算であるという建前からいつて、少くとも今日の予算を見ましたときに、均衡予算というものは飽くまでも実質的にその収入がなければならないんじやないかということを考えるのでありますが、この点については、もう先程申しました通り、既に我々の負担というものは余りに加重されておつて、実質的に徴税機構を強化しようと、或いはその他の方法を取ろうと、普段の手段ではなかなか負担収入を見込むことができない、徴収ができない。こういうような実行の面において、この均衡予算は実際に破綻に瀕するのではないかというふうに考えておるのであります。更にこの予算を強行すれば、先程大内先生が言われた通り、このまま計画なしに実行するならば数百万の失業者は街頭に飢死するより外途がない。この予算を通じて我々といたしましては馘首、低賃金、労働強化に繋がるものであり、又これがその中に相当内包されておる。これに対して政府は失業対策については何らの方途も今講じておらない。失業対策の予算というものは極めて少額である。聞くところによると、大体八億円程度で済ませようというようなことになつていると聞いておりますが、若しもこういうことが実行されるならば、我々労働者としては生産意欲も低下する。従つて生産が上らない。こういうことになるのではないかと思うのであります。
 次の第二点について申上げますと、地方財政は御承知の通り、今度の新憲法において本当に日本を民主主義平和国家にするためには地方自治体の確立がなければならない。このために特に憲法は章を設けてこのことを制定いたしたのでありますが、その後地方財政については何らの考慮が払われていない。地方自治体は組織の面については相当民主化いたしたのでありますが、その地方自治の基礎となる地方財政については、今までの封建的な官治性そのままに今日までやられて参つて来ているのであります。そこで今問題になつておりますこの予算の中の歳出の配付税の問題であります。これが我々としては、本来的に言えば、地方財政というものは地方の自治的な確立がなければならない。而もこれは民主的でなければならないということを考えております。この点から行けば、配付税或いは国庫支出金というものは本来的に余り多くない方がよいのであります。でありますが、現在の日本の実情、殊に地方自治というものを確立するという美名の下に、今申上げた通り地方財政については財源の点について何らの考慮が払われておらない。飽くまでも国の財政中心であつて、そうして地方財政に対するところの財政需要に対する裏付けがない。いわゆる応能税と称する所得税或いはその他の主要な最も弾力性がある取り易い税金はすべてこれは中央に取つてしまう。地方には物件税或いはその他の極く取りにくい税金が残されている。而も国は委任事務というような形でどんどん地方に仕事を押付けて来ております。六・三制の問題然り、災害復旧の問題然り、殆ど今日では自治体は大都市においては六〇%乃至七〇%の委任事務に追われている。従つて自治体の主要な仕事はできない。地方の中小都市或いは町村においてはこれが更に増加して七〇%或いは八〇%、最近地財の調査によりますと、或る中都市では十五億三千万円の中で八五%までが委任事務に使われているというような状態であります。これは最もひどい例だと思いますが、かようにして今日地方自治体はどうにもならなくなつて来ている。自治法が施行されてから今日まで、自治体の約一割に当るところの町村の町村長が辞職している。その辞職している中の八〇%は、地方財政の破綻にどうしてもやりきれなくなつて辞めてしまつたような実例が現にあるのであります。そこで私共といたしましては、今度のこの予算、而も配付税につきましては、配付税法の第二条で所得税及び法人税の三十三・一四%というものが決められている。ところが政府はご承知の通り予算を一方的に編成して、その後において国家財政の都合で止むを得ないからこれを大幅に引下げると言つて、大体一六・二九%くらいに当る五百七十七億というものを先に予算に出してしまい、その後において配付税を改正する。こういうようなことをやつておる。池田蔵相に言はせれば、前に例があつたということを言つておりますが、それは少なくとも曾ての封建的な地方自治、官治性の強い地方自治の場合にはこれはいいかもしれない。併し少なくとも日本の民主主義国家にしようというために地方自治体の確立が憲法で決まつた上は、かようなことは私は断じて許されない問題だと思うのです。六・三制の問題にいたしましても非常にひどい。実情を申上げますと、最近でも新聞に報じられております通り、宮崎県の或る所では馬小屋で義務教育をやつておる。現に私は東京都でありますが、東京都においても二部教授、三部教授は当り前であります。もつとひどいのは現に我々の住んでおる区におきましては、生徒を板の間に坐らして授業をしておる。子供はこの寒空でガラスもなし、天井は穴が空いておる。而も板の間でやつておる、机と椅子はありません。私はこれを留置場教育と言つておる。父兄はこれに対して憤激をいたしておるのでありまするが、これは財源がない、財源がないということでそのままになつておるとこういう状態、かような状態は単に私が挙げた一例ばかりでなく、東京都ですら相当に各方面に起つておりまして、都知事或いは区長に対して陳情が出ておる、町村においてもやはり同様であります。戦災都市におけるこれらの問題は非常に重要な問題であると同時に、戦災を被らない都市ですら、これらの問題について困つておるというような状態であります。更に災害復旧におきましても、先程申上げました通り地方自治体におきましては、国で一応復興やれというような命令を下し、或いは自治体がみずからやるということにつきましても、いずれもこれは政府のように幅がない。地方自治体の行政というものは直接住民に常に繋がつておるのでありますから、どうしても必要なものは延期したり、中止したり、然るべく処置するというようなことはできないのであります。従つて、地方住民に対する責任上市町村長はどうしてもやらなければならない、ところがこれに対する財源の裏付がない、現に委任事務の問題であつても、先程申しましたように大体七〇%以上の委任事務がある。これに対して国庫支出金というものは現在では半額程度、今度の予算ではこれが更に低下するのではないかというふうに考えられるのであります。地方財政につきましては、私共はただ単に金額が多いからいいのだということは言つておりません。併し少くとも地方自治が完全に運営できるような裏付けをするのが当然である。私共は中央の財政も地方財政も財政需要というものを総合的に考える、そうしてこれが財源の配付についても同意同列に扱うべきだと我々は考えている。然るに先程申上げました通り、今日の国家財政の立て方、予算の立て方というものは全く地方自治体を無視している。我々はこういう建前の下にこの予算案に反対するのであります。
 最後に申し加えたいと思いますが、総括して申上げますと、国の財政、地方財政ているものは、例えて言えば紙の裏表のようなものであると私は考えるのであります。ところが今申上げました通り地方の財政というのは全く破綻に瀕してをおる。当時決めた四千三百四十億円の予算、あの予算すらすでに三百二十億円の赤字を出してをおる。新規事業は計上されていない。物価の基準は昨年の十一月である。それを今度のように圧縮し、更に配付税を大幅に減額してしまうということになりますと、すでに紙の裏が破れておる。又その紙の表面につきましても、先程も申上げました通り、税負担の能力というものが今日限界点に達しておる。殊にかような建前から考えて見ますと、国の財政は一応黒字を出しておるけれども、その裏であるところの地方財政の面ですでに破綻が来ておる。今度地方では止むを得ず地租、これを二倍半に上げようとしておる。家屋税を二倍に上げようとしておる。その他の税目をやはり上げようとしておる。今日皆様方がお考えになつても、すでに昨年土地については十倍上つております。家屋税につきましては、大体四倍乃至五倍値上げしておる。それを更に本年二倍半或いは二倍ということになれば国民が困る。国民は国家の再建のためには止むを得ないというような考を持つておるけれども、これは実際には行われない。従つて滞納というものが非常に多くなつておる。こういうふうにして、紙の裏表であるところの裏の面からすでにこの赤字というものが出て来る。もうすでに出て来ておる。又それを今度実行するならば尚更その破綻というものがひどくなる。こういうことを考えて見ますと、今日の国家の財政というものは、本当の均衡予算ではない。すでに赤字を出してをおる。或いは本年度予算を実行すればどうしても出て来る。こういう私は見通しを持つておるのであります。この点につきましては、先般の知事会議にも、或いはは関東の市町村長大会、最近では四月九日に行われました別府の全国市町村長大会におきましても、これらの問題は非常に重要なる問題であるというので、政府に対して強力に陳情する、或いは知事会議におきましては、もう陳情等では遅い。決議では遅い。実力行動に出るべきだということを、すでに止むを得ずこういう処置を取らなければならないということを言われておりますが、若しこれらのことが事実であるならば、今後の日本の地方財政或いは地方行政、こういう上に大きな悪影響を来し、延いてこれが国政の上に及ぼす影響は、私は極めて大きいと考えるのであります。
 以上簡単でありますが、二つの点から私共は反対いたすのでありますが、できることでしたならば、私は今日のこの重要な予算というものが如何なる結果を持つておるに拘わらず、政府が僅か十日ぐらいで決めてしまえというようなことを考えておるのでありますが、この点については私は全く不満であります。少くともこのような重要な予算を決めるときには、やはり政府は基本的に十分な調査をいたし、又議会は対しては国民に対する責任上最大限の時間を許し、そうして立てるべきだが、二つとも政府がこれに対する責任を取つておらず、先程どなたか申上げました通り、責任のない、計画性のない予算、これらの点については私は甚だ遺憾と思います。そういう点におきまして、私はこの予算に反対するのであります。これを以て公述を終ります。
#51
○委員長(黒川武雄君) 有難うございました。それでは一旦休憩いたしまして、午後は一時半から再開いたします。
   午後零時二十六分休憩
   ―――――・―――――
   午後一時四十分開会
#52
○委員長(黒川武雄君) これより公聴会を開会いたします。横浜興信銀行の笹子さんにお願いいたします。
#53
○公述人(笹子豊治君) 私横浜興信銀行の笹子であります。現在全国銀行従業員組合連合会の書記長やつております。私今日初めてこちらの予算委員会に参りまして、本年度の予算につきまして、何か意見を吐けということでありますのですが、この予算の内容、或いは細目に亘つていろいろ意見を述べるという、そのためにはいろいろを検討して見なければならん問題が沢山あるわけでありますが、現在そうした時間的な余裕もありませんし、又私考えますのに、予算の本質を突く場合に、内容の平面的な検討、ただそれだけでは駄目でありまして、やはり予算の本質はその政府の取つているところの政策、いわば今次民自党が政権の座に坐つておりますけれども、民自党が現在何をしているか、又今後何をしようとしているかというような政策面の上において理解するということが私は本質であろうと考えます。そういうことで、初めて今次予算の七千四十九億に上るところの厖大な予算のいわゆる階級性がはつきりすると私は考えるわけであります。それで終戦以来歴代の政府の取つてきた政策、或いは又特に現在政府が取つておる政策、又今後どういう形でそれが発展するかというような見通しの上に立ちまして、我々といたしましては一応こういうふうに理解しているわけであります。
 先ず、外資導入の問題でありますが、政府は外資導入、外資導入というようなことを盛んに言つております。併し外資はただでよその国が日本に呉れるものではないわけでありまして、その間のことにつきましては、先にマッカーサー司令部からも、外国は何も日本の国に対して慈善事業をやつているのじやないというふうなことによつてもはつきりと示されております。であるにも拘わらず、政府が飽くまでも外資に縋るというふうなことにつきましては、我々労働者といたしましては、日本の国内における独占資本並びにそれに結びつくところの国際的な資本というものの二重の搾取、収奪の下に、われわれ労働者階級をますます困窮の方向に持つて行くというふうに理解するわけでありまして、併せてこれはマーシャル・プランによつてもはつきり窺えることでありますけれども、何らかの形の政治的な、或いは経済的な譲歩なしには、外国の援助というものは受け得られない、考え得られないのだというようなことは、我々は労働者として特に最近痛感するところであります。延いてこの外資に頼り過ぎるという卑屈な態度は、やがて民族の独立を危殆に陥れるというような危険性を孕んでおるものとして我々は理解するわけであります。従いまして今次予算に上程されましたところの千七百五十億の援助見返資金というものは、それがどうした形で管理されるか、又それがいつどういうような形で、又どういうレートの換算率によつて入つて来るかというようなことがはつきりしない限り、余りそれに頼るというようなことは断じて許し得ないことであろうというふうに私は考えます。貿易の面におきましても今までやつておるところを見まするに、平たく申上げますと、各国の安い品物を高く買つておる半面、国際価格よりも非常に安く日本の品物を売つております。こういうような形で飽くまでも一部独占的な資本の擁護をやつておるのが今の政府のやり方であろうというふうに我々は理解するわけであります。でその半面、産業資本家或いは中小企業家、或いは労働階級、こういう者の犠牲の上においてすべてそうした貿易政策を通じてのマイナスを我々の税金収奪、或いは勤労階級からの国家財政によるところの収奪を通じて独占資本に奉仕しておるというような形が強く打出されておるように我々には感じ得られるわけであります。その他又価格政策にいたしましても同様のことが言えると思います。労働政策におきましては、我々労働階級の実質的な賃金の低下を策し、その間において労働法規を改悪し、日に日に我々を窮乏のどん底に叩き込んでおる、こういうような暴力的な政策を現にやつておるわけであります。その他皆さんも御承知の通り東宝の爭議の問題、或るいは現在戦われておりますところの日教組の六・三制擁護の問題、こういう問題を見まするに、伝統的な日本の民俗文化、これを発展させ、いわゆる民族文化を守り、或るいは育て、或るいは発展させる、その発展させる者が誰であるか、或るいは又眞に民主主義的な教育を擁護し、その立場に立つている者は誰であるかということはすでにはつきりしておるわけであります。政府は常に弾圧政策を以ちまして、伝統的民族文化を破壊するような行き方、或るいは又民主的な教育的基礎を破壊するような行き方、こういうような行き方をやつております。こういう一連の政策によつて裏付けられるところの今時の予算、而も七千四十九億の厖大予算、これに対しましては、我々労働者といたしましては断じて賛成することはできないわけであります。全国の労働組合、勤労大衆、或いは又現時躍進しつつあるところの世界の民主主義的勢力、この名において我々としては断じて賛成することはいかないわけであります。
 さて次に私は金融機関に従事しておりますので、現在の政府の考えておる金融政策につきまして一二私の常に考えておりますことを述べまして、且つ政府に対して私の疑問とするところを開陳いたしまして、私の意見を終りたいと思います。私共は常に銀行内部に在りまして、銀行経営の民主化を通じ常に闘つておるわけであります。と同時に我々が銀行経営の徹底的な民主化、これを闘うことによりまして、金融機関を社会化の方向に持つて行くということを常に考えておるわけであります。ところが現在金融機関の一般的な傾向でありますが、非常に内部的に腐敗しております。この間青木大臣がインフレはすでに終息の過程を辿つておるというようなことを言つておられましたが、これは非常に私は楽観論であろうと考えるのであります。と申しますのは、大体政府の考え方を推察いたしまするに、インフレが終息過程に入つたという考え方の裏付といたしまして、日銀の発行券高の非常に鈍化したということを主として挙げているようであります。併し日銀の発券高が鈍化の傾向を辿つたということは、何もインフレ終息の、インフレが安定期に入つたというような条件にはならんと我々は考えるわけであります。ということは日銀の発券高が鈍化したということは、政府が税金の面におきまして重税による暴力的な徴税をやつております。これが一つの原因であります。それから又資金が非常に回転率を速めて貸出されているというようなこともその一の要因であろうと思います。或いは又手形の利用が非常に広範になつているということも言えると思います。特にこの手形の流用の面でありますけれども、これには信用制度の上に立つておるところの金融機関といたしまして、非常に寒心すべき傾向が現在出ておるわけであります。いわゆる手形の悪用が一般化の傾向を辿つております。これこそはそれが大きな社会的な犯罪の温床をなしておるという意味におきましても、いわゆるインフレは終息の過程を辿つておるのではなくて、そうした面におきましてむしろ内部的に悪化しているというふうに我々は考えておるわけであります。でよく復金の問題が指摘されておりますけれども、復金の問題は、いわば氷山に例えて申しますならば海面に僅かに出た頂点でありまして、全金融機関は規標の大小を問わずいわゆる不正或いは不当こういうような形の融資が非常に多くなつております。これに対しまして政府はどういうような政策を立てるのでありましようか、我々の疑問とするところであります。昨日の新聞の発表によりますと信用統制機関を強化するというような記事が出ておるようでありますけれども、官僚的な機構の下においての信用統制機構、そうした金融機関の現実の悪傾向の基礎を破壊するというところまでには手が届かんじやないか、上滑りをしてしまうのじやないかというような危惧を我々は持つております。これが今金融機関の一般的な動きとしては非常に好ましくない傾向であるわけです。それで我々は銀行内部において経営の民主化の一環といたしまして、融資、資金の適正な配分というようなこと主張しております。いわゆる民主的な融資をやれということでありますが、ところが我々の経営者に至りましては、いわゆる不当融資ということと不良融資ということをすり替えまして、中小企業に対して完全に財布の蓋を閉めておるような現状であります。成る程現在の国家統制の下においての中小企業は実に悲惨な状態にあります。恐らくは銀行が銀行のいわゆる資本の論理を貫くという立場に立つたときには、現在の中小企業にはおいそれと金は出せない現状でありまして、明らかに現在の中小企業は、その意味においては不良貸出しということにならざるを得ないところの問題があろうと考えます。こういうような内部的なさまざまの矛盾は激化の一途を辿つておるというふうに我々は理解するわけでありますが、何故こういうような状態が、いわゆる目の前において打ち倒れるところの中小企業の健全な融資対象が奪われておるがために、融資市場が非常に狭隘化しつつあるというような現状の上に立つて見殺しにしておる。そういうような矛盾した状態、これは何によつて招来されるかということでありますけれども、これこそがいわゆる集中金融方式、政府の採つておりますところの独占的な大企業に注ぎ込む、独占的な金融資本の支配、そうした面において我々は理解するわけであります。我々として考えますのには、眞に銀行の経営を民主化して、その公共性を発揮させるためには、政府の金融政策そのものが飽くまでも独占的な行き方、独占的な企業の擁護、独占金融資本の覇権の確立というような方向でなくして、飽くまでも産業資本家或いは中小企業家・我々勤労大衆、こうした立場に立つてやらない限りは、又そうした民主的な方法を採らない限りは、なかなか救われんのじやないかというふうに我々は理解するわけであります。
 これは一つの質問にもなるわけでありますけれども、昨日の新聞によりますと大蔵省は省議によりまして、大体今二十四年度におきまして貯蓄のを増額目標を二千五百億と推定し、そのうちの千八百億を国家資金計画に繰入れるというようなことを言つております。併しここで一つ考えて貰いたいことは、今まで救国貯蓄運動というような名目、その他戦時中にもありましたけれども、頭から枠を決めて、各金融機関に割当てるというような行き方、こうした官僚的な行き方が、結局は金融機関を毒しておるという面をよくお考え願いたいと我々は考えるわけであります。、ことは割当が決りますと否でも応でもそこへ持つて行かなければならん、又官僚機構によりましてそうした監督の仕方をいたしますので、どうしてもそこへ持つて行かなければならん。従つて現在の段階におきまして貯金の増強は政府の還付資金も引受けるか、或いは又貸出という形を通じて、いわゆる水をさすことによつて入れるという方法をとらない限りは、おいそれと貯金は増強しないものであります。こういうふうな頭から、上から枠を決めて押しつけるというような官僚的な生き方は是非止めてい行きたい、こういうふうに考えます。
 それから又大体千八百億は国家資金計画に繰入れられるものであるかどうか、それだけ集まるかどうか。現在経済安定推進本部におきまして貯蓄増強の促進に当つておりますけれども、例えばこれは大蔵省にこの前そうした考え方があつたようでありますけれども、昨年金融政策の名によつて、銀行員の給與は非常に高い、これはもつと賃金ストップをやらなければいかんというような考え方が出ておるようでありますけれども、我々の給與というものは決して高いのではないわけであります。例えば大銀行の給與と小さな銀行の給與は、その面においても随分段差があります。従つて高い低いということは総体的に理解すべき性質のものでありまして、決して実質的な面においては我々は高いのではない、そのためのデータは幾らでも政府にお見せすることができるというふうに考えております。そうした我々の生活を上から押えつけるという行き方をする限りは、この貯金の増強状況ということは私はどうもなかなかおいそれと経済安定本部が鐘や太鼓を叩いても集まるものではないというふうに我々は考えるのであります。
 それから又よしや二千五百億が或いは三千億が集まつたとしても、国家資金に繰入れられるということが見通しの上に立つておりましても亦一つ問題があるのであります。これは他の産業部門におきましても、独占的な大企業と、そうでない中小企業との対立、摩擦はますます激化の一路を辿つております。それと同じように又金融機関内部におきましても、大銀行と中小銀行との経営上の対立摩擦は激化しつつあるのであります。恐らくは九大銀行が全銀行の貯金総額の七〇%強を現実に支配しておるのが実情であると考えております。ということはその中でも一、二……今日も出席なさつておるようでありますけれども、千代田銀行或いは富士銀行こうした財閥系の独占的な金融資本は全国的に店舗を持つておるということと、それから又保主的な政治権力との結び着きを持つておるということと、官僚どんなにでも自分の手足の如く使えるというようなことにおきまして、そういう形を通じて復金の事件にも見られますように、その独占的な支配力をますます強化しつつあるわけであります。復金の融資が皆さん御承知のように一千三百億の貸出しが、大体中小企業に対しては僅か四%か五%ぐらい、他の大部分は独占的な企業である。その企業の内訳を見ましても、例えば三井鉱山或いは三菱鉱業、昭和電工、こういうようなところへ何十億という金が入つておる。それは直ちにいわゆる大銀行の懐に入るというに我々は理解しても決して過言ではない、こういうふうに考えております。いわゆるそうした金融機関におきましても、独占的な資本とそうでない中小銀行との対立が激化しつつある。そうした独占的な大銀行は又独占的な大企業と結び付き、そういうような形を通じて現在の日本の経済はますます強引に国家独占の性格を強くむき出しにしておるというに我々は理解するわけであります。特に九大銀行以下の約六十銀行と申しますのは、大体地方産業において抜き差しならない地歩を占めておりますところのいわゆる小銀行であります。これらの小銀行は政府の諸政策が飽くまでも独占資本の擁護というような立場に立つ限りにおいては、資金或は資材面においても非常に大きな圧迫を受けておる。従つてそうした民族産業の基盤の上に立つておるところの中小銀行というものは、併せて経営が苦しくなつてくるのは当然であるわけであります。そこに大きな問題があります。そうした大銀行と地方銀行との対立の問題、これを政府はいかに統制しどういうふうにするかということについても、私は大蔵省辺りの見解を聞きたいところであります。
 最後に私は金融政策の四つの基本線といたしまして、大蔵省が考えておられるようでありますところの経営の民主化の問題、銀行経営の健全化の問題について少しくやはり聞きしたいところであるのですが、伺わして頂きたいと思います。銀行経営の健全化は只今までお話申上げましたような状態におきましては、なかなかむずかしいように我々は感ずる次第であります。昨年新立法によるところの金融制度の全面的な改正指針というものがマッカーサー司令部から出されまして、その手段とするところは、今まで金融措置を通じて国家財政の破綻の尻拭いをやつておつた、こういうような因果関係は断ち切らなければいかんという趣旨であつたようでありまして、従つてこの構構改革も対象とされておつたのは日銀であります。又大蔵省の貯金分辺りの機構も変えなければいかんというような御意見のようにも承わつております。ところがそれに対しまして政府はいわゆる三委員会―大蔵大臣、安本長官、或いは日銀の一万田さん、これらを交えて三人委員会を構成して、そうして改革を指示されておるところの、日銀或いはそうしたところの代表の方たちが集つて三人委員会を作つて民主化の問題を討議されたということ、又それに対しまして経営者側から一つの案を出したのに対して私共も又勤労者の立場に立つて今後の金融機関はどうあらねばならないかという意味におきまして、金融の改正案を出したわけであります。ところがそれが途中ですうつと消えてしまつて国会上程というような問題もなくなつてしまつた。ところが今度日銀を中心にいたしまして、日銀の機構の上に据えるものとしてクレジット・ボードの設立という問題が出ておるようであります。ちよつとこのクレジット・ボードの中には今打ち見たところ、安本の長官や副長官、日銀の総裁、大蔵大臣或いは次官、それから金融界或いは産業界というような形で委員が任命されるような向きでありますけれども、政府はこの中に真に金融機関の健全化を図るため、又民主的な金融政策を打ち立てるために、我々労働階級の代表或いは金融機関の代表、これを入れる意図があるかないかというようなことを、我々はお聞きしたい訳であります。
 時間がなくなりましたので尻切れとんぼになりましたが、最後に大急ぎに今度の予算面に出ておりますところの国民金融公社の問題について皆さんにお考え願いたいと思います。ということは、国民金融公社は庶民金庫並びに恩給金庫の二つを改廃いたしまして作る訳でありますが、政府からは十三億の出資があります。ところでこの十三億のうち十一億七千万円は大体日銀に返済するという形になつておりまして、残りは僅か一億足らずであります。それに対しまして、厚生省の予算によりますところの引揚者生業資金が約三億ばかり出ることになつておりますけれども、合計しても四億何ぼであります。これで今まで庶民金庫或いは恩給金庫おきましてはどういうような役割を持つておつたかと申しますと、市街地信用組合、無盡、引揚者の救済資金、或いは困窮者というような一般庶民の金融の機能を果たしておつた訳であります。それを政府が一方的に止めにしてそうした実際仕事にも何にもならないような予算を計上いたしまして、国民金融公社を作る意図並びに政府の言つております中小企業に対する対策、それとの関連の上において、そうしたことによつて中小企業を果して救い得るかどうか、一般庶民金融というような面におきましても、大きな疑問を投げかけている訳でありまして、庶民金庫の組合員は現在その問題について闘つております。大体首切りは二割、或いは片一方は六割というようなことを聞いておりますけれども、いずれにいたしましてもこの問題については重大な関心を示して闘う決意を持つておる訳であります。
 大分時間が取れまして尻切れとんぼになりましたけれども、私の言わんとする主眼は、今度の予算は、あらゆる政府の考えておる、現在持つておる、今後やるであろうところのさまざまの政策が非民主的であり、明らかにポツダム宣言或いは極東委員会の原則並びに新憲法、こういうものの違反というような事項が非常に多いという意味におきまして、我々としましてはどうしても賛成する訳にはいかん、反対いたします。反対するということを率直に申し上げまして私の考え方を終ります。
#54
○委員長(黒川武雄君) どなたか御質問はございませんか。
#55
○木村禧八郎君 一つだけお伺いしたいのですが、先程のお話しの中に最近非常に手形の利用が多くなつて来た。手形の悪用が一般化して社会的犯罪の温床を形成しておるというお話がありましたが、差支えがなかつたならば、何かその具体的の事例がございましたらお話を願いたいと思います。
#56
○公述人(笹子豊治君) 御質問の具体的な資料というものは今日持つておりませんけれども、大体こういうことが言える。まあこれに近いということを私は御返事申上げられるかと思います。ということは、先程も申しましたように、中小企業は非常に圧迫されております。従つてこの人達が月を越し或いは年の瀬を越すという意味におきまして、これは死者狂いのわけであります。従つてあらゆる、どういうふうな方法を持つても銀行にとりつき、十日一割というような高率では商売はますます上つたり、従つて何とかして銀行に食いついて、銀行から金を借りるということに狂奔する。この行き方としまして、これは一応決して現在の法的に見ましてもそういう不合理なことではないのですが、不合理な行き方で、いわゆる小切手の利用という問題はいろいろな形で出ておるので、……木村先生どうですか。そういうような心当りはございませんですか。ああいう行き方ではないかというようなことで如何でございましよう。
#57
○委員長(黒川武雄君) 次は王子製紙の金子さんにお願いいたします。
#58
○公述人(金子佐一郎君) 二十四年度の予算を見まするのに、曾て見たこともないような厳格な均衡財政政策を採られております。これはインフレーションを抑制いたしまして、企業の合理化を促進し自主的経済態勢を確立せしめて、国際貿易に対処せしめんとするがごとく我々は了承をいたしたのでございます。従つてその金額も七千億円を超える未曾有の大予算となつておるのあります。その大綱を見まするのに、歳出面におきましては実質的な収支均衡と政府債務の減小を主眼としておるために、一見歳出金額の膨張にも拘わらず、終戦処理費、公共事業費、地方財政費等を初め、すべての経費について前年度に比して実質上圧縮せられておりますが、半面物価水準を据置くために価格補給金を相当増額されておるのが一際目立つております。この巨額な歳出に対しまして歳入面におきましては、租税及び印紙税収入といたしまして五千四百十六億円を計上し、前年度に比しまして約二千億円の増収を見込んでおるのであります。これによつて見ますれば財政支出の要望に基いて、国民負担の増大を強要した感が甚だ強いと感ずるのであります。従つて本予算を実施するといたしますれば、国民負担の水準の上昇はおろか、当分の間は耐乏生活を続ける覚悟を要するように考えられる。企業は合理化を促進せられ、その結果人員の整理又は賃金の引下げを初めとして、あらゆる角度から経営の合理化を図る決意をされるものと考えられます。即ちこの予算の実施に当りましては、政府も国民も余程重大の決意を持たなければ、これが完遂は覚束ないというような印象を特に受けておるのであります。特にこの所得税とか法人税等の直接税について、甚だしく増徴を期しておられるようであります。これは二十四年度の国民所得を二兆九千七百億円と推計したものでございまして、これに現行の税法を適用いたしまして算出したものと考えられるのであります。この国民所得の計算につきましては、従来からしばしば議論のあるものでありまして、特にこの実質所得というものをこれは無視しておるものではないかというような感があります。このような不合理なものであるというようなことは、いろいろの角度から言えるのではないかと我々は思われます。故にこれが完全な徴収を若しも強行するといたしますならば、これが税徴収の結果においては非常に無理が生ずるというふうに思われます。まして九原則の厳格な実施によりまして、企業の合理化、人員整理、購買力の減退等を考慮に入れるものといたしますならば、国民所得の減少は免れないと考えられます。これを対象といたしましたところの直接税も亦当然減収となるのも止むを得ないのではないかと考えられます。故にこれを強行徴税いたすならば、その結果は想像に余りあるものであろうと心配する者であります。併し税制につきましては、近くショープ博士の一行を迎えるような話がございまして、この来朝を期しまして、再検討するというふうに承つておりますので、今これを論ずることは適当ではないと考えられます。ただ所得税、法人税等の軽減と合理的改正は、固定資産の再評価の問題と共に、是非とも実施せらるべきであることを強調いたしたいのであります。併したとえその実施をいたすといたしましても、均衡財政を堅持するという以上は、この五千百四十六億円というところの絶対額はなかなか減額できんものと考えまするならば、直接、間接の相違はあつても、国民の税負担の減少を期待することは容易にできないように考えられます。それ故に政府は歳出面特に価格調整的の諸経費、或いは人件費等の支出を極力節約されまして、或いは官有財産の売却代が四十四億円を計上されておりますが、更にこれが増額を図られる等、この過重な税負担の軽減に充当するように、すべての点において余程の考慮を煩わしたいと考えるのでございます。この徴税の過大見積りをいたしました場合におきましては、そしてこれを更に強行せんとするならば、企業の場合から申しますれば合理化の域を脱しまして、或いはこれを破壊せしめるような虞れがないとは言えないし、国民も亦苛斂誅求によりまして倒産するに至りますならば、国家も亦この健全財政を放棄せねばならないばかりか、折角企図いたしました日本経済再建という大問題も覚束ないことになるのじやなかろうかというふうに考えるのでありまして、是非ともこの点を再検討して頂きたいと思います。
 私は産業人の立場から申しまして、特に産業資金とこの予算関係について強く申上げて見たいと思いますが、この予算の上に現われておるところを見ますると、復興金融金庫の貸出しを停止いたしましたのを初めといたしまして、特別措置を講ぜざる限りは産業資金に不足を来す虞れが多分にあるのでございます。殊に企業の合理化又は整理に必要な資金の要求を予期しなければならないのでございます。即ち企業の合理化による人員の整理のためにも多額の退職資金の支給を必要といたしますし、設備を合理化せんとするならば、これ亦補修改良費を必要といたすがごとく、いろいろな意味において合理化資金の供給がないならば、これが目的は貫徹することは不可能であろうというふうに考えられます。この本予算におきまして失業対策費といたしまして、二十九億円を計上しておられますが、今年度の失業者は百二十万人から百七十万人ぐらいと推定されておる以上、これは過少といわざるを得ないのであります。勿論これらの失業者が輸出産業等への吸収を考慮されておるといいましても、期間的ずれがあり且つ完全に吸収せしめるということは無理ではなかろうかと考えられます。復金への出資金といたしまして三百億円を計上いたしまして、このすべてが復金債の償還に充てられておりますが、更に国債償還につきましても多大な留意が寄せられておるように思われます。従つて一般市中金融機関の資金は増加するように思われますけれども、この資金は日銀の貸出の回収として吸い上げられてしまい、日銀手持国債或いは復金債が償還されることによりまして、通貨は縮小するのであります。ただ市中金融機関が、従来毎月末預貯金増加額の三五%を天引せられまして、これらの債権を買入れせしめられておりましたことが必要ではなくなるのではないかと思います。従つてそれだけ融資力の増加を思わせてますが、一方政府事業の縮小或いは租税負担額の増大等のために、預貯金の増加はあまり期待ができないように考えられます。多く見積つても二千億円ということが言われておりますが、本年度の民間必要資金は、設備運転資金を併せまして、三千六百億円と見積られておりますからには、その不足額を如何にして調達するかということが非常な問題ではなかろうかと考えられます。特に長期資金については、政府で蓄積いたしまして、金融機関を通じまして融資するという建前でありますが、復金の貸出を期待し得ない今日におきましては、主として援助見返資産勘定の運用如何にこれが依存せざるを得ないのでございます。それ故に現在差当つて第一・四半期の所要資金の調達ということにつきましては、到底これに間に合わないのであります。然るにこの六月までの所要資金は、各会社におきましては厖大な額に上つておりますので、これが繋ぎ資金に対しまする方策を早急に立てることが絶対に必要だと考えるのであります。即ち貿易資金会計資金が集まる時期と、或いは徴税の時期が遅れることはこれより明らかでありますから、この間大蔵省証券の発行を考慮されるか、或いは融資の方法として、日銀の保証による特別融資の形式を取らなければ、市中金融機関よりこれが繋ぎ資金の貸出しを期待することはできないのでありまして、これを若しも放任いたしますならば、この一・四半期に資金の得られないために、各企業の受ける影響は甚大なものと考えなければなりません。運転資金につきましても亦同様でございまして、昨年のように大幅な物価改訂がない限り、その点は一応よいといたしましても、貿易資金或いは合理化資金等が増大いたしますので、絶対額の不足は当然生じますが、これを円滑にするためには長期資金と同様に、繋ぎ資金等の金融措置につきまして、十分な考慮を払う必要があると確信する者であります。
 企業の金詰りは更にもう一つ大きな要素があります。これは官庁支払いの遅延であります。これに対しましては産業界は勿論、私個人といたしましても機会あるごとにこれが是正方を要望して参りましたが、なかなか改善されておらないのは遺憾でございます。併し今回は名実共に均衡財政であるばかりでなく、インフレ抑制を建前としておるからには、昨年のごとく年度中には大幅な物価改訂による予算不足となる虞れもないと思われますので、政府の支払資金は絶対に確保されておるという以上は、歳入歳出の時期的調節を図るため、且又この支払手続事務の敏速を期するよう努力いたしまして、企業の金詰りを緩和することこそ、企業経理面の合理化を図り得るゆえんだと考えるのでございます。殊に価格差益納付金といたしまして百一億円を計上してあるのが見られますが、前年度に比して約半減しておるとは申しながら、昨年のごとき大幅の物価改訂を予期される本年の均衡財政の建前から見れば、過大のようにも思われるし又矛盾するようにも考えられます。勿論納付金は一種のインフレ課税でもありますし、資本課税でもあります。従来よりその廃止が要望されていたにも拘わりませず、今年度の予算にこれが計上を見ましたことは、甚だ意外に考えるのであります。これが納付は絶対に借入金に依存せねばならんので、金融難を予想せられるときに企業の金詰りを一層強化することは必至であろうと今から予想されるのであります。
 最後に結論といたしまして、前からのでましたごとく本予算は従来のものとは全くその性格を異にいたしております。名実共に健全財政、均衡財政であることは勿論でありますが、国家のみが黒字財政であり健全財政であつても、その歳入の主たるものが租税収入に基いておるからには、企業も黒字であり、個人も亦最低生活費以上の所得がなければならないと考えられます。企業も個人も赤字となれば担税力を失いまして、予算は崩壊すると言わなければなりません。故に本予算の実施の結果は、企業はその合理化を強要されるであろうし、国民の生活水準の上昇も当分期待できず、耐乏生活の覚悟を要するのでありますが、飽くまでこれを実施するに当りましては、企業も個人も破滅に陥れないように、政府は最善の考慮を払つて安定に主眼を置きつつ、折角緒に就かんといたしますところの復興五ヶ年計画との関連性も保ちつつ、再建へ導くようにしなければならないであろうと思います。予算面では復金の企業への貸出が中止になりまして、一見産業資金の不足により企業の積極的活動は阻害されるようにも思われますが、これが対策といたしましては対日援助見返資金特別会計予算に計上されておりますところの一千七百五十億円の使途こそが、玉手箱であるということができるのであります。これが使途如何によりましては、産業資金、公共事業資金、失業対策費等の増加も期待できる。実に弾力性を有する性格を備えておるものと我々は思つております。従つてこのをいわゆる玉手箱の使途を速かに明確にされまして、これを一般に公示して頂かなければ一般産業界の不安も解消いたさないのでありますから、是非と共これがいかなる方向に使われ、産業資金の確保ができるかというようなめどを早く與えて頂けるようにお願いいたしたいのであります。ただ私が考えまするのに、これらのことが実現いたしますには、政府の誠意と絶大なる努力によつてこそ初めてこれが実現し得るものだと考えるのでございます。以上を以ちまして本予算に対しまするところの私の所見を終りたいと思います。
#59
○委員長(黒川武雄君) 御質問どうですか。
#60
○油井賢太郎君 ちよつと伺いますが今のお話の中の政府支払いの遅延ですが、これは平均何日くらいになつておりますか。それから第二点で伺いたいのは、新らしい資金が出なければ企業合理化ということは絶対になし得ないものですか。或いは創意工夫によつてでき得るものですか、その点ちよつと……。
#61
○公述人(金子佐一郎君) 政府の支払いは何日分であるかというような御質問、何ヶ月分とかいうお話がございましたけれども、最近のところを聞きますと、当社王子製紙あたりでは大体四千万円くらい残つておるわけであります。なかなか次々と足りなく浮ばれない。それから尚車両会社その他というような鉄鋼関係の部門について聞きましたり、或いは通信事業その他のようなところに聞きますと、これは厖大なる数字でございまして、特に昨年七月の物価改訂によりまして追加要求をいたしますと、それは予算がないから当分駄目であるというようなことで、現在棚上げになつておるということが先般その会社の社長からも私共にお話しがございました。大変苦慮いたしております。この数字は勿論何億ということでございまして、決して生易しいものではございません。特に案外小さいような企業におきまして、やはり政府からお金が貰えないために非常に金詰りを来しておりますので、この点は我々は常日頃から苦慮いたしておる次第でございますから、何とかして頂きたい。殊に場合によれば金融機関を通じて手形割引をするというような処置を是非お願いしたい。即ち一般企業が手形を出しておるように政府も支払補償というようなことによりまして、我々はその補償があればその手形が割引されるというようなことによつて金融を図つて頂くというようなことも申しております。
 それから企業の合理化には必ず金が伴うかというようなお話でございますが、これは私といたしまして二つの点を特に申上げたのでございますが、企業の合理化は必らずしも絶対に金がなければできないというものではないと思います。多くの場合におきまして首を切れば必らず退職手当が必要であるというようなことも常識的に考えられます。それから特に当社で現実にぶつかつておりますことは、原単位の切下げ、いわゆる原価の引下げによりまして、企業の合理化を図るということも我々として是非ともいたさなければならんのでありますが、それには現在の機械だけでこれをやることは無理である、やはり現在の機械を幾分でも改良するとか、能率的に悪いところを補充してこの能率を改善するというような措置が採られて初めてそれができるので、結局資金なしで無手でできないことはございませんけれども、おのずから限度があり果してこのような大きな合理化を強要されて来るといたしますならば、それだけでは無理ではないかと考えるのであります。よろしうございますか。
#62
○小川友三君 今あなたのおつしやるのは政府の支払は非常に悪いという御説ですが、そうは悪くないと思いますが、相当に税金を取つてて貰つておるわけですから、ただ悪いだけでなく今油井先生のおつしやつたのは、どのくらい遅れておるかという問題なんです。あなた方の……。
#63
○公述人(金子佐一郎君) 二ヶ月くらい遅れるのじやないでしようか。
#64
○小川友三君 それくらいならいいでしよう(笑声)
#65
○公述人(金子佐一郎君) 全体が遅れるものもあります。それかわもつと酷いのもあります。私共の会社はそれくらいです。まあとにかくそういう声を耳にいたしますようなわけでございます。
#66
○小川友三君 税金の中から政府支払はやりますのですが、あなたの会社に滞納どのくらいありますか。
#67
○公述人(金子佐一郎君) 滞納はありません。
#68
○委員長(黒川武雄君) 有難うございました。
 次は産別の副議長嵯峨さんにお願いいたします。
#69
○公述人(嵯峨善兵君) 産別会議の嵯峨であります。
 今回の民自党政府の国家予算について大体各項目に亘つて産別会議は日本の労働者階級を代表してどのように考えておるかということを申述べたいと思います。
先ず第一に我々労働者階級として特に問題になりますのは、公共事業費及び失業対策費の問題であります。これは民自党政府は当初二十四年度予算中公共事業費を一千億円と最初に言つておりましたが、それが次第に九百億、七百五十億、六百億と段々下げられまして最後の予算案におきましては五百億に落付いております。ところが右のような予算では次のように政府が約百八十万人新規事業に失業者を吸収するというようなことを言つておりますが、我々の考えでは九百億では十八万人が吸収不可能、七百五十億では新規吸収は僅かに十一万人に過ぎないのであります。六百億では六十二万人がこぼれるようになります。そうして結局決定した五百億では昨年度の四百九十五億と殆んど変りありませんから、この一年間における物価の値上り等を計算いたしますと実質的には約四〇%減となりまして、昨年度の継続事業さえ覚束ないということになるわけであります。現に昨日の新聞におきまして池田蔵相は百万人は吸収できないということをはつきり言つております。こういうことがどういうことになるかと言いますと、潜在失業者、それから再三政府が企業の合理化、官吏の首切り等によつて起る首切りの人員を約百五六十万、それに推定する民間企業の百二三十万から二百万、三百万人以上の人間に一、五乃至二の家族を見積りましても、約六百万人以上、一千万人の人間が路頭に迷うという予算であります。従つてこのような公共事業費、失業対策費は我々にとつて全然反対であります。さてでは公共事業費のうち六・三制の学校の問題、及び病院厚生施設の新築等、全部これは削られております。僅かに道路改修費が五十六億、港湾施設が四十億などの一部非生産的な性格を帯びたものには相当多く支出されておりますが、又その外に労働組合運動、民主主義的な運動を弾圧するための意図を持つ行刑費、いわゆる刑務所の増築費等大部分は労働組合及び民主主義団体に対する弾圧のための準備であるというに考えられます。このように公共事業費が使われております。そうして我々の最も必要とするところの住宅建築その他の支出は全体の六・七%になつております。
 さてそれで失業対策費は結局八億円余と失業保険費政府支出の二十一億と、僅か我々が最も当面問題とするところは二十九億乃至三十億であります。これがこの厖大な予算から見れば如何に僅少なものであるかということがはつきり分るわけであります。
 さてそのうちの取上げます文教費、六・三制という形で今後民主日本を再建する担い手である我々の子弟がどのような教育をされるのか。民自党政府による国家予算によつて見ますと、僅かに十五億ばかりのものが計上されかけようとしております。これは中央財政・地方財政との比率から行きましても僅か一対二から一対一七くらいになりまして、我々の子弟の教育される殆んどの費用が今後は強制寄付という形で行わざるを得ないという状態が起るわけであります。このことはどういうことかと申しますと、憲法の二十六条におきますところの義務教育はすべて無償とするという憲法違反を明らかにこの国予算によつて行うわけであります。
 さてこのような我々の子弟に対する教育予算に比べまして、我々民主主義的な団体及び労働組合に対する弾圧をもくろむための支配機構の強化に対する予算はどのような形で現れておるか、いま一度はつきりと数字の上から申上げてみたいと思います。司法警察部費が百六十六億であります。二十三年度は百二億であります。これをパーセンテージにいたしますと約六割の増加であります。裁判所費が四十二億、昨年度が二十億で二・一倍、行政部費が三百七十九億で昨年度が百九十六億で二倍弱、全部合算いたしますと五百八十二億、全予算の八・二%をとつておるわけであります。このほか地方警察維持費などを加えるから非常に厖大なものになつております。そうしてこれらの費用が二十三年度の刑務所収容費は十二億、地方警察国庫負担金は三十億でありましたが、只今申しましたように、中央でこのような厖大な予算を組んだ上に、地方自治体の警察費、これは我々から直接強制寄附というような形で今後拡充されるであろうことは間違いのないところであります。
 次に価格調整費の問題でありますが、これは二千二十二億というものが予算に出ております。これに船舶運営会の補助金を加えますと、全予算額の二九・五%、二十三年度の一三・二%よりも一六・三%の増加であります。そうしてこのような価格調整費がどのような形でそれでは使われるのか、我我人民、労働者階級の利益に使われるのかどうかという点について、少しく数字を上げて見たいと思うわけであります。この二千二十二億のうち安定帯の分として石炭三百六十五、鉄鋼四百十六、非鉄金属二十八、肥料百七十四、ソーダ十九、輸入補給金分として食糧は四百六、肥料に百十八、主要原材料に二百六、繊維六十五、その他三十八というような数字になつております。このうちの輸入品に対する補給金分は前年度は貿易資金特別会計から出ておりましたが、今年はそうではありませんから、丸々増加になつております。この安定帯分は二十三年度よりも総額の上で六十%の増になつておりますが、生産計画は石炭が四千二百万トン、昨年が三千六百万トン、鉄鋼百八十万トン、昨年の百十九万トンに比してそれぞれ引上げられておりますため、石炭を除き単位当りの補給金は下つております。この補給金が石炭を除いて下つておるということは、中小企業を犠牲とする集中生産を現しておるわけでありまして、それは生産価格中の賃金部分の切下げという形で、これを生産者価格を現状のまま抑えるということが目的でありますから、生産者価格の中の賃金部分の切下げという形で出て来るわけであります。このトン当たりの減額率を計算して数字で行きますと、二十三年度に比べて鉄鋼が十五%、石炭窒素が五%、ソーダ灰三%、ア法ソーダ三%減となりますから、大体これによつても鉄鋼のごときは銑鉄三号の生産者価格は一万二千二百五十円となりまして、日本の鉄鋼産業、銑鉄産業のうちの八幡だけが残つて、他は殆んど収支計算が合わないために潰れるという形が出るわけであります。
 それから二十四年度の食糧輸入計画は、二百三十万トンでありますから、これが大体三億八千六百万ドルであります。これに四百六億円の補給金を出すと、一万トンあたりの補給金が約一億八千万円であります。、又トン当りの輸入価格はFOB百六十七ドルとなり、これは先日行われました国際小麦協定の最高額一ブッシェル一・八ドルよりも約二倍近い高額で輸入されるということを現わしております。でありますから我々一般人民労働者階級は国際価格よりも約ニ倍も高い小麦を食つて生きて行くという状態が現われるわけであります。又この輸入食糧はドル九十円から百円の円貨換算で今までやつておりましたが、これが若し三百三十円のレートとなりますならば、我々にとつては三・三倍となるわけであります。ここにも我々は非常に高い食糧を食べなければならんということが予想の面に現われているわけであります。で安定帯は昨年も大体同じ割合になつております。これは独占資本本位に計算するとしても今年は千三百億となります。併し鉛、亜鉛、アルミ、苛性ソーダ、ソーダ灰の五品目が安定帯物資から除外されております。そのために鉛は一四〇%、電気亜鉛一三五%、蒸油亜鉛一二八%、アルミ一二〇%とそれぞれ生産者価格が上がり、消費者価格で鉛トン当たり五万九千百三円から十三万七千円、アルミは十一万六千百九十五円から二十五万五千七百九十円と上がるように大体計算されるわけであります。
 こういう形で行われる価格調整が果して合理的であるかどうかという点について、一応の例を挙げて見るわけであります。これは硫安を例に取ります。東北肥料の新修正原価は一万九千五百円でありまして、前原価が二万八千二百円であります。これから見ますと三〇%の減になつております。でありますから今までの肥料産業というものは三〇%の誠に厖大な利潤を上げていたということがここではつきりするわけであります。これを今度は逆算いたしまして、日本の独占資本、独占企業の有数な肥料生産企業を挙げまして、日本窒素、日産化学、三菱化成などの生産原価を出しますとこういうことになります。日窒一万七百二十六円、日産では一万七百八十四円、三菱では一万八百二十七円となりまして、これが今度の新修正原価で行きますと一万七千二百円でありますから、日窒では六千四百七十四円、日産は六千四百十四円、三菱では四千八百七十三円と、補給金を丸々我々労働者階級人民から搾り上げた税金によつて、この厖大な三社の企業に対して利潤を保証するわけであります。その半面ではこの独占資本三つの企業以外に、中小企業の肥料関係はどういうことになるかというと、詳しくは申上げませんが、大体東圧、東洋合成、東北肥料その他十一企業辺りはこういう形で行きますと、工場閉鎖というような形が出るわけであります。大体このように見ましても今度の国家予算におきまする価格調整費というものは、一体誰の利益のために計上されておるのかという点がはつきりしておるわけであります。
 次にこの厖大な国家予算におきます税金の面を取上げる訳でありますが、この税金は我々労働者階級に至つて直接我々から搾り取られる面でありますから非常に注意力が喚起しております。租税収入は歳入全体の大体七十二%を占めております。前年度は六〇%でありましてこれに比例しますと大変重くなつております。国民一人当たりの税負担は安本の国民所得の水増し算定でも、昨年は六千百四十円に対して九千五百四十二円で、一人当たりの国民所得を一〇〇%とすると税金は二一・六%から二六・七%に上るわけであります。我々の直接月給袋から搾取されるところの勤労所得税源泉徴収分を見ますと、一千二百億円で前年に比べると約二倍であります。政府はこの前年に比べて二倍の源泉徴収分に対して勤労収入を前年度よりも五五%殖えるものと計算しております。併しこれは決してこういうふうに我々の収入が殖えているわけではありません。これは過大なる評価でありまして、現にこの税率を計算いたして見ますと、最初三千七百円ベースのままで行きますと、三千七百円ベースは一・五人の扶養家族でありますから、これは九十四円であつた税金が、六千三百円ベースになりますと、七百十六円とはね上つております。大体こういうふうにはね上つておりますから、二十三年度において六千三百円ベースになつてから約二倍になつたものが二十四年度の今度の国家予算では又その倍とはね上る計算になるわけであります。又申告税の問題につきましては二十三年度千二百億円に対して二十四年度は一千九百億円でありまして一・六倍になつております。これは私が詳しくここで数字を挙げて申上げるまでもなく、このような税金が果たして我々人民から取れるものかどうか。このような民自党政府によつて現在行われておる税金の収奪はどういうことがこの社会に現われておるか。一家心中、廃業、発狂その他いろいろあります。そういう形で現われるのがはつきりこの国家予算で出ておるわけであります。人民の窮乏、人民の狂気した生活というようなものを押し付けることがはつきりここへ出ておるわけであります。現に農民におきましては、供出とこの税金の搾取のために耕作放棄という問題がすでに現われております。耕作放棄面積は全国で五千二百五十九町歩になつております。このうち税金の過重と供出の過重のための理由が七三%に上つているところを見てもはつきりと分るわけであります。その外物品税、取引高税等いろいろあります。地方税については先程の公述人自治労連の副委員長の話にもありますように、家屋税、地租税等の厖大な収奪等を設けるわけであります。又鉄道の特別会計におきましては、すでに我々勤労人民がはつきり反対をしておるところの旅客運賃の六割値上げという形で現われまして、貨物運賃については何らの処置が施されないということは、明らかに独占資本に連なるもろもろの大きな産業企業だけを擁護する、そうして一般人民、一般勤労者はこの負担を鉄道運賃においてもするのだという点は、はつきり現われておるわけであります。
 さてこのような国家予算が立てられまして、そうしてこれが金融の面ではどのような形で出ておるかという点を少しく述べてみたいわけであります。簡単に申上げます。大体先程も銀行員の方が申されましたように、この厖大な予算の中に我々全人民の貯蓄というものを二千億ばかり予定しておりますが、皆さんがよく御存じのように、我々人民の生活が果たして貯蓄をするだけの収入を持つているものかどうかということは、はつきり分かつておるわけであります。これ二千億余りに予想いたしますことは、何らかの形で国家権力を以つて我々から強制収奪をしなければならんわけであります。これは戦前において行われたような強制貯蓄、上から我々の給料を或る一定の水準に抑えて置いて、それより上回るものを全部貯蓄させるという形でも行わない限り、こういうことは殆んど不可能であるというふうに我々は考えるわけであります。
 大体このような形で行われております国家予算の、先程からの公述人の方が申されましたように、この国家予算を左右最も主要な部分になるであろうと言われているところの、見返勘定の問題を少しく触れてみたいわけであります。でこの見返勘定は、こういうふうに大体対日援助費を五億三千万ドルというふうに見ておるようであります。これを仮想レートの三百二十円で円価に換算したものが一千七百五十億というふうになつております。でこの一千七百五十億を大体電源開発、石炭、造船、鉄鋼などの基幹産業に振向けられるというふうに言われておりますが、この一千七百五十億というものが、果して正確なものかどうかという点になると、誠にあやふやなものだと我々は考えるわけであります。大体この基金は米国の新会計年度、一九四九年七月になつて初めて明らかになるものでありまして、大体米本国においても未だにこの予算は審議されておらないという点が先ず第一であります。でありますからこれが五億ドルになるか五億三千万ドルになるかについても、民自民党政府は非常に簡単にことを決めておるようなわけであります。この大体円価を三百三十円のレートにすると言つておりますが、このレートも決まつたものでないという点に、第二のあやふやな点があります。大体このようなあやふやな点を取上げて見ましても、この対日援助資金の一千七百五十億というものは、不確実なものだということを我々ははつきりと知らなければならないわけであります。このような不確実な一千七百五十億というものが、一体若し民自党によつて入つたものを使われるとしたらば、これは一体我々の利益に使われるのかどうか、我我人民、労働者階級の利益に使われるのかどうかということを考えてみますと、これは全然反対の立場によつて使われるものだと我々は推定するものであります。この一千七百五十億のうちの復金債六百二十四億、特別会計の建設公債二百七十億と推定されております。これらの産業資金に流用されるというものが、一体どういう形で流用されるのかというと、従来復金が融資しておりましたよりも、もつともつと狭い枠で、独占資本の利益のためにのみ融資されるだろうということは、火を見るよりも民自党の性格からして明らかなのであります。でありますから一千七百五十億というものは我々の利益でなくして、一部独占資本の利益にのみ使われるということははつきりするわけであります。従来の貿易資金特別会計からは輸入食料などの補給金も出ておりましたが、これは農産物価を非常に低く抑え付ける作用をいたしておりましたが、今度はこれを殆んど全部援助資金は独占資本に使うことになりますから、われわれのこの前年度の貿易資金特別会計から出た輸入補給金と食糧の補給金というものは、全部我々一般人民、労働者階級の負担になるわけであります。ではこの援助資金が米国のコントロールの下に大体興銀、市銀等から賄われるとしますと、市中銀行がますます国家権力とはつきり結合しまして、これが独占資本の利益にのみに使われるということは、何とも申すまでもないことであります。
 大体今回の民自党政府による莫大なこの国家予算を我々の立場から、これが通つた場合にどういうことが起きるかという点を申上げたいわけであります。我々の生活の基礎であるところの賃金は三千七百円ベースに一・六六倍の六千三百円ベースで現在抑えられておるわけであります。これが明らかにすでに六千三百円ベースは、実質的にもつとそれ以下に切り下げられたというのは、はつきり官庁職員の場合には四十八時間制というものによつて、実際的な労働強化が現われておるわけであります。又民間企業におきましては、給与の遅欠配というものがはつきり現われております。これは先程も問題になつた筈であります。我々の資料によりますと、遅欠配は東京だけで二十三年度の一月から二月間において二億四千万円に上つておるわけであります。例を挙げますと、池貝鉄工では二月分の給料が僅かに四月九日に支給されております。大体このようなことがはつきりと現われるわけであります。
 それから政府は能率を上げれば、我我勤労者に対して過重な負担をするならば、給与を上げられるということをはつきり言つておりますが、併しこれも我々が次の例を挙げて申しますれば、殆んど不可能でありまして、独占企業が労働強化によつて利益を得るに過ぎないということがはつきりしておるわけであります。例を挙げますと、為替レートの設定に伴いまして、生糸関係業者の壊滅を避けるために、現在釜一日一台当たりの製糸量を二百匁見当と見ておりますのを、二百五十匁見当に引上げるということは、製糸労働者を約四割首切るということになるわけであります。
 以上のようなコスト低下方策の強行の結果、基礎物資価格引上に影響を及ぼすことは、末端にまで影響を及ぼさんという言明に拘わらず、はつきりしておるわけであります。大体例を挙げればいくらもあるわけでありますが、例えば旅客運賃の問題にしても、又郵便が五月から八月に引上げられるということ、例えば勤労者に取つての定期券が六割引上と共に六ヶ月、三ヶ月分は廃止になるというような形、それから棉花の最終製品が約二倍に上るような形で現われる。我々の生活の窮乏からこの例を幾つか挙げるまでもなく、今度の厖大な国家予算を、民自党政府によつて、国家の機関において、衆参両院を通じて実行されるならば、日本の全人民、労働者階級の生活はますます破壊に陥れられ、窮乏下のどん底に喘ぐというような状態が出るわけであります。我々日本の労働者階級は先ず食えるだけの賃金、働けるだけの賃金、明日の労働の再生産のできる給与をもらわないで、どうして日本の再建も日本の復興もあり得ようかということをはつきりここに申述べるわけであります。あらゆる国家予算は日本の労働者階級、働く人民の生活の安定から立てられるべきであるというふうに考えるわけであります。
#70
○委員長(黒川武雄君) 外に御質問ありませんか。
#71
○小川友三君 労働者代表の嵯峨さんの今の御意見に対しましては、極めて敬意を表しまして拝聴しました。それでこの価格差補給金問題から引例して、硫安の製造の例を承つて非常に参考になりましたのですが、本議員もこの点は重点的にやつておりますが、これはつまり日窒は一万七百二十六円、三菱化成は一万二千八百二十七円という生産になつておりますが、この点は所得税の課税で行きますから、そう心配はないと思います。
#72
○証人(嵯峨善兵君) そうですか、その点はいろいろ見解の相違があると思いますから……。
#73
○委員長(黒川武雄君) 有難うございました。次は朝日新聞の藤田さんにお願いいたします。
#74
○証人(藤田武雄君) 私は本年度予算が編成されました根本の方針であります日本経済を、本年度を期して断乎安定の域に持つて行く方針については、原則として賛成するものであります。併し個々の政策につきましては、いろいろと批判の余地もあり、幾多の矛盾も含まれておるように考えます。その中で私がここで一つ意見を開陳したいと思いますのは、本年度予算の歳入面において非常に大きな欠陥がある。その欠陥は、予算を編成いたしまする財政政策というものが本年度においては、ひどく自主性が失なわれておるというような原因によつておるのだと考えます。この点について述べて見ます。
 御承知の通り本年度の財政は一般会計、特別会計、政府機関、更に地方財政までも含めたいわゆる総合財政主義をとつております。而も総合財政の峻儼なる均衡を保つという建前であります。このことだけは極めて結構なことであります。当然やるべきことをやつたに過ぎないと思います。ただその上
にもう一つ本年度財政が負担しておるといいますか、織込んでおる大きな問題があるのであります。それは財政が均衡した上に、更に厖大なる資本の蓄積を計画しておる、要するに国家の力によつて巨額な資本の蓄積を財政面に計上しておるということであります。その結果本年度財政というものが非常な圧力を加えられまして、その結果結局我々国民大衆の租税の負担に直接結び付いておるということであります。今度の予算を見ますと、政府及び政府機関を通ずる予算の総合バランスというものが上がつておりますが、これによると約二千五百七十七億円の剰余金というものが計上されております。これは取りも直さず国家権力を背景とする資本の蓄積であります。そうしてその資本の蓄積は主として政府及び政府関係機関の債務の減少、即ち公債の借入とか借入金の返済に当てて、それが増減差引きまして、約五百四十四億の債務の減少となつております。更に一般会計の剰余金として二億六千万円計上されておる特別会計、及び資金の増加のために保留されておるものが二千八百億円に上つております。更に第四にはアメリカの対日援助見返勘定資金として一千七百五十億円が計上されております。これは明らかに予算が均衡をとつたうえで、更にこれだけの資本蓄積を強要しておると、こう解釈できるのであります。こういう結果が即ち現在の政府が当初計画いたしました六千億円内で予算を組もうというような計画が覆えりまして七千億を突破する予算の計上の止むなきに至つたという直接的な原因だと思います。
 更にもう一つの点は、物価政策の角度から、緊急止むを得ないものとして二千億以上の補助金が計上されております。これも財政というものが明らかに安定計画のために圧倒的な圧力を負担しておるということであります。そうしてその圧力を無批判に呑んでおるという結果に外ならないと思います。このような結果といたしまして、財政というものが安定計画の一〇〇%行使という結果になつておるのであります。勿論現在における我が国といたしましては、いわゆる九原則なるものは、いわば至上命令である、これに正面から反対するわけでありませんが、同じ九原則の範囲内においても、財政政策なるものは今少し主体性を持つてほしいと、こう考えるのであります。財政政策は主体性を持つということが九原則に必ずしも正面から反対する意味ではない、こう確信するのであります。以上のように財政政策が或いは物価政策のために、或いは資本蓄積のために、非常な圧力が加わつた結果が、本年度の租税収入の面において昨年度に比べて六割以上の増加というものを呑まざるを得ないという結果になつております。この祖税収入の中身を見ますと六割増加しておるのでありますが、なかんずく所得税……取引高税ではありません、所得税がその負担の最もひどい部面であります。その所得税の中でも、我々勤労大衆の最も関係の深い給与所得が、更に多くの負担を被つておる、こういうような状態であります。元来インフレーションの進行過程において、超過累進税率を採用する所得税法の下においては、そのインフレーションの進行の度合いに従つて、税制ををどんどん負担の軽減の方に持つて行くということを行わなければ、負担の公平を期し得られないことは申すまでもありません。こういうような角度から見ますと、先般政府が発表いたしました経済白書にも明らかに明記してあります通り、勤労者の所得は昨年度において、大体二倍に増加しております。そういたしますとこの後、名目的に増加した所得があるにも拘わらず、税率を従来の通りにせよ、池田大蔵大臣の財政演説のごとく、事もなげに現行税法そのまま踏襲すると、こういうようなことでは到底負担の均衡ということは、確保できないということは申すまでもないことでございます。試みにこの税率をとつて見ますと、安定本部の計算によつて、大体給料が名目的に二倍になつたという想定の下に、過去一ヶ年間に給与が倍になつた或る給与階級をとります。それは月給が五千円で、扶養家族が三人、こういう者の、毎月の税金は現行税法では九十二円であります。それが過去一ヶ年に月収が倍になつて、一万円になつたとします。そうするとその毎月の税金は千百九十五円になります。給与は名目的に倍になるが、税金が十三倍に飛躍するのであります。こういうような実に不合理といいますか、甚だしいその負担の不公平或いは非常な重圧を加えるような、現行税法をそのままにして置いて予算を組むということは、これは実に看過できない。本年度財政の歳入面における欠陥だろうと思います。九原則による安定計画を強行に遂行する以上は決して生易しい犠牲ではできないことは誰しも考えるのでありますが、特に企業は合理化を強要され、国民は耐乏強要される、こういう時期において、かくのごとき不均衡、不合理な税制の下において歳入計画を樹てるということは、この経済安定に伴う国民の犠牲というものが、極めて不均衡に不合理になる。要するに犠牲の公平化が行われない、或る階層では非常に重圧されるという結果になるのであります。これでは本予算の目的である経済安定を期する上において、非常な支障があり或いは国との摩擦を引き起こすという結果にならざるを得ないと思うのであります。
 かくは申しますが、私は必ずしも安定計画そのものを正面から反対するのでなく、或いは赤字財政を編成しろと、こう申すのではありません。与えられた安定計画の枠の中で、財政をもう少し実勢を以つて考えて貰いたい、こういうわけであります。その一つの方法として、私は現在の税制を本国会において思い切つて修正して貰いたい、こう考えるのであります。池田大蔵大臣は今度アメリカから商工使節団が来る、そうしたらそれと相談して改むべきものがあれば改める。こういうことを申しております。仮にこの使節団が四月に来るといたします、それから三ヶ月間くらいの研修期間を要し、而もそれと政府と話合いをして、若し特別な措置が講ぜられるとしても、その実施は恐らく今秋十月以降であろうと思います。そういたしますると、この堪え難い不公平な税制をそのまま置いて、尚後六ヶ月間も国民の窮状を傍観するというようなことは、到底堪え難いことであろうと思います。
 では如何なる対策が必要であるかと申しますと、現政府にとつては甚だ意見が対立するのでありますが、思い切つた税制の改革の中心を、直接税を軽減して、その代りに不足する財源は間接税に転嫁して行く。こういう方向以外にこの危急を救う途は私はないと思うのであります。間接税の増徴は勿論大衆課税としていろいろ反対もあると思います。理論的には確かに間接税の増徴は大衆課税であります。併しながらこの際我々の考えなければならないのは、現在のような税制を放任する方がよいか、或いは大衆課税であつても間接税を増徴して低額所得者の困窮を救うか、どちらがよいか、こう比較の問題でありまして、絶対に間接税かよいというのではありませんが、比較して考えますするならばこの不合理な制度をこのまま放任するよりも、それを改めて間接税に負担を持つて行くというのが正しいのではないかと思います。直接税だけで改正するといたしましても、すでに現在において高額所得税は御承知の通り殆んど負担の限界に達するがごとき高率であります。問題は正しく税金を納めるか納めないかというところに掛つておるのであります。税率そのものは最早最高の限界に来ておると思います。そういたしますと低額所得者の軽減を高額所得者に転嫁する余地は税法の上では殆どない。どうしても予算の枠が動かないと考えますならば、間接税に持つていかざるを得ない、こう考えるのであります。間接税の中で実際問題としてお考え願いたいのは、民自党内閣としては甚だお困りかもしれませんが、物品税或いは取引高税、これらの増徴あるのみだと思います。すでに民自党は取引高税を廃止する、その代りに生産税或いは手形税、運輸税といつたような実質的には取引高税の性格を有する税法をお考えのなつておつたようであります。そうしてその税率は現行の取引高税の百分の一を百分の二にする、百分の二の税率をもつて行つたのであります。これだけの勇気があるならば、現在の取引高税を思い切つて百分の二の税率に上げ、そうして四百数十億の税収を確保し、これをもつて直接税の低額所得者の救済に当てるということを私は提言するのであります。昔から二兎を追う者一兎をも得ずと申しますが、現在の民自党は、取引高税も廃止する、所得税の軽減もする、こういうようなことを言つておつたのでは、この危急の間には合いません。思い切つて取引高税の方を犠牲にして、国民大衆のためにここで政策の転換をした増収を以つて、勤労所得税のみに限らず低額所得の階級の負担を軽減して頂きたい。これが今後安定計画の強行に伴う社会的な摩擦、或いは窮乏ということを乗切るための一つの欠くべからざる要点である、こう考えるのであります。私は敢えて現政府の猛省を促したいと思います。
#75
○委員長(黒川武雄君) 何かご質問ございませんか。
#76
○小川友三君 あなた大新聞社でありますが、一千七百五十億の対日救済基金の問題をあなたは素通りしましたね。向こうから何か……。
#77
○公述人(藤田武雄君) 出これは蓄積の中の最も大きな問題でありますが、これは何といいますか現在一千七百五十億、政府の予定しておりますのによると、鉄道公債を引受ける、公債借入及び経済建設に振当てる、こういうことになつておりますが、又政府のみでなく民間各方面においても、この一千七百五十億円に何とかして割込もうという、いろいろと取らぬ狸の皮算用を盛にやつているのでありますが、勿論これは日本国民全体のために与えられたものでありますから、国民全体がこれに対して権利を要求することは当然であります。一部特殊なものだけがこの恩恵に与かるべきものではないと思います。併しながら実際問題としてこの運用がどういうふうになるか、西欧諸国の例を見ますと、積立てられた資金の中から解除されたものが、大体六割前後というようなのが現在の実情であります。アメリカが日本の一千七百五十億を、果して同様に西欧の通り運用するかどうか疑問であります。あの経済協力法というものによつてやつている、西欧諸国においてもそうであります。日本の経済協力とは関係なく今度実施されたのでありますが、果してこれに如何ようなる態度を持ちますか。西欧においてさえ解除は六割前後でありますから、若しこういうような結果に日本の運営が相成りますならば、実際取らぬ狸の皮算用で、日本経済としてはこれに期待が大きいだけに問題は深刻であると思います。
#78
○一松政二君 ちよつと取引高税のことについてお伺いしたいのですが、取引高税を倍額増徴、それは私も適当であろうと思うのですが、藤田さんは現行のままの取引高税をお考えになるのか、あるいは各国でやつておられるように、消費段階に二%乃至三%かけるという、いわゆるセイルス・タックスの形でお考えになるのか、今日日本で行なつているようにあらゆる取引に、多少の弊害はありますけれども、原料であれ、製品であれ、半製品であれ、取引ごとに税金をかけて行くという今日の行き方をそのまま是認してのお考えであるか。いろいろ御意見もあろうと思いますが、時間の関係で端折つておつしやつたこととは存じますけれども、その税金のお考え方について何か御意見があれば、ちよつと伺つておきたい。
#79
○公述人(藤田武雄君) その点につきましては、現行の百分の一程度の税率で、いわゆるセイルス・タックスだけでは予定の財源は確保できない。この方面に非常に税率を引上げまして、勤労階級或いは低額所得階級の負担の軽減を図ろうと思いますれば、現行の税法において税率を少なくとも百分の二程度に引上げる、こう考えております。
#80
○一松政二君 セイルス・タックスという考えでなくて、現行のまま……。
#81
○公述人(藤田武雄君) 現行の、日本の行なつておりますする取引高税でなければ、それだけの必要なる財源の確保できない、こう思います。
#82
○委員長(黒川武雄君) 外に御質問ございませんか……。有難うございました。
 それでは千代田銀行頭取の千金良さんお願いいたします。
#83
○公述人(千金良宗三郎君) 私は千代田銀行の千金良宗三郎であります。今度の予算を産業資金の確保という面から少し研究して見たいと思います。
 二十四年度の予算の検討に入ります前に、二十三年度の予算の実績といいますか、それについて少し検討して見たいと思います。これは勿論二十四年度の予算の運用に関係があるからでございます。御承知のように現在非常な徴税の強行又一方におきまして政府未払いの堆積、これによつて非常な金融の逼迫を起していることは申上げるまでもないのであります。最近日本銀行におきますする政府貯金の残高は段々と殖えて参りまして、三月の末には恐らく四百億円ぐらいに上つていると思います。一方におきまして、政府の支払は相当遅れておりまして、ここに資金の緊縮が行われているのでありますからして、これを政府は救済する意味におきまして、日本銀行の政府貯金の残高からして一般の市中銀行へ残高の移し替えをやつております。これによつて幾分この金融の逼迫を救おうという考えであろうと思います。これがいわゆる最近行われました指定貯金制であります。只今のところでは恐らく三百十六億円のものが、日本銀行から市中銀行に対して預け替えをされていると思います。ただしこの金はいわゆる通知貯金という形のものでありまして、二日間の予告を以つていつでも引出される種類の金であります。従つて市中銀行としましては、日銀に対する借入金の返済に当てるという程度の利用方法しかないのでありまして、一たびこの引出しに会うときには又日本銀行から借入れをしなければならなんという関係から、これを落着いて一般の産業資金に投下するというわけにはいかないのであります。勿論この金を預かつているうちに、一方貯金が殖えますれば、その預金の増加の一部を割いて政府貯金の引出しに応ずるということはできる筈でありますけれども、現在におきましてはさように貯金は増加するような状態にありませんので、どうしてもこういうような資金の利用方法しか見付からないのであります。政府貯金の面はかようなわけでありますが、一方政府の支払の状況であります。これは段々と殖えて参りまして、ちよつとここに簡単な数字を申上げますると、二十三年の十二月の末には政府の予算を配布して、それがまだ未払い、その分が二百七十億ありました。二十四年の一月の末にはそれが四百三十億に殖え、二月の末にはそれが四百五十億に殖え、三月の十八日の現在を見まするとそれが六百億くらいに殖えておるのであります。これは推定でありますがそれくらいと思われます。つまり一方未払高は月と共に増加する、その一方において日本銀行における政府の預金も亦増加して今日に至つておる。これは実際には各省の各部門に対する予算の配布高とその未払い高と突合せないと、支払遅延の実情ははつきりしないのでありまするけれども、併し政府支払の遅延に対する民間の苦情というものは昨今のことではありません。非常に長い間この苦情は聞いておるわけであります。然るにも拘わらずこれが是正されないばかりでなく、月と共に却つて増加して行くというのはどういうわけであるか。成る程徴税の成績は非常に良好であります。一月からして三月までに約一千三百億円以上の取上げを行つております。この四月中も約四百億円くらいは取上げられると思います。然るに支払の方は一向にはかが行かない。これは必ずしも予算を実行する支払の当局の事務能力の関係とか何とかばかりではないのではないか。そうするというと各省に必要以上に十分な予算があつて、実際にはそれだけ大きな支払をしなくても済むのではないかというような疑問が起らざるを得ないのであります。又一方において予算配布とその予算の支配との関係ばかりでなく、税の増収ということも考えられますからして、この両方からして相当二十三年度の財政においては剰余金が出るのではないか。これはもちろん十分に調査しませんと、どのくらい出るかということは申上げかねると思いますけれども、これは国会においても十分御研究願いたいと思います。不幸ということもありませんが、むしろ幸いにして私の杞憂が少しでも当つておつて、仮にここに百億なり、二百億なり剰余金が出るということになりました場合は、もちろんこれは財政法の規定もありますが、できるだけ国債或いは復金債のうちで以て市中の銀行の手持ちになつておる分を償還するとか、或いは買上げ償還するとかされて、それが一日も早く産業資金の面に向くように、現在でも日銀の政府預金を預かりましても、それは思切つて放出できない状態にあります。かようにして国債或いは復金債の償還によつて本当の市中金融機関の手持ちに思切つて放出できるような資金を供給されるということは、今のこの金融逼迫の状態において非債に意義があることではないかと存じます。尚これも一種の杞憂に終るかもしれませんが、従来のように予算は使い切るというような考えでもつて、仮に剰余見積りというと甚だ語弊がありまするが、少し余分に見積つたその予算を余らせないというような考えでもつて支払当局がいられたならば、これはむしろ浪費に終るのでありますからして、できるだけそういうことの起り得ないように、これも国会において十分に御検討願いたいと存じております。
 二十四年度の予算についてでございまするが、歳入の面で先ず第一番に気がつきまするのは、例の一般会計が七千四十九億円、その中の租税の部門であります。税収の中でも、殊に所得税並びに法人税、これが一番我々関心を持つておるのでありまするが、所得税においては二十三年度に比較しまして千二百六十七億円の増収ということが予定せられておりますが、これは二十四年度においては一人当りの所得が増加するという理由に基くものでありましようが、例の九原則、三原則等による企業の合理化等又は食糧、交通費等の値上りというようなことによりまする収入の減少、このことを考えまするというと、この増収には一抹の危惧を抱かないわけには行かないのであります。同時に又法人税の二百七十二億円、これは丁度二十三年度に比較しまして九十二億円の増収になることになつておりまするが、これもやはり前述と同じような理由によつて、この増収には疑問がないことはないのであります。殊に最近の増資に対するプレミアム課税ということを止めるというようなことになつておりまするし、減収の可能性があるのではないか。但しこれは例のシャープというのですか、シャープ博士の一行が来られるということでありますから、重ねて十分なる検討が施されるであろうと、こう思つております。
 歳出の面の中で私達が一番関心を持ちまするのは、一般会計の七千四十六億円ですが、その中で価格調整費の二千二十二億円、安定帯物資に対する補給金、これが一千二億円となつておりまするが、例の増産をする、従つて単位当りのむしろ補給金は減つておる。この減つておるギャップは勿論企業努力、或いはその他の合理化作用によつて補われるであろうと思いまするが、これがこの通りにやつて果して所期の増産の実を挙げ得るかどうかということが懸念されるのであります。それからして尚歳出の項目で、出資金とか投資金というのがあります。これは八百三十五億円、この中で私達が産業資金の面から考えられるところは、例の復金への出資の三百億円でありまするが、これが全部市中手持の償還に充てられまして、一日も早く産業面に再投資をせられるということを希望しておる次第であります。
 特別会計の方では、米国対日援助見返資金千七百五十億、これは実に今度の予算におきまする、カードでいえば一種のジョーカーのようなものでありまして、各方面でこれを財源に考えておるようでありまするが、併しこれは恐らくなかなか引出すことは厳重であろうということは勿論考えております。ただこの資金は初め私共は、米国におきまする予算の新年度から使える従つてそれまでは一種の時期的なずれを調整する作用が必要であろうかと思つておつたのでありまするが、去る七日衆議院予算委員会におきまして、蔵省は資金は四月から積立てられるということを言つておられるので、そのずれは多少緩和される、こう思いますが、併しいずれにしてもこの資金が、本質的には品物が輸入されるに従つて積立らるべきものでありまするからして、たとえアメリカの予算新年度以前に輸入されたものもその売上金額の勘定に入るとしても、やはり時期的なずれは起るのでありますからして、何らかの調整手段は、程度の差こそあれ、必ず必要なものと思つております。この点から言つて我々が今考えておりまするのは、鉄道通信建設公債が二百七十億円、産業長期建設資金が五百乃至七百億、その残りが公債並びに復金債の償還又は買上に充てられる、こう考えておりまするが、これで私はこの予算と産業資金との問題について、どういう経路で以て産業資金が供給せられるかということを考えて見たいのであります。この産業資金の所要額というものは、経済安定本部並びに大蔵省等いろいろな関係がありまして、必ずしもまだ一定しておるようには考えられませんが、いずれにしても設備並びに運転両資金を合せまして大体四千億乃至四千二百億円、こういうふうに考えられるのであります。この資金の出得る源泉は、第一が今の一般会計から復金債等の手持分の償還によつて供給せられる三百億円、第二が対日援助資金の見返勘定から出るところの建設債の引受並びに産業長期資金の行使及び国債、復金債の償還、これが先程申上げました通り二百七十億に五百億乃至七百億、国債、復金債の方は全部で九百八十億乃至九百六十億、こういうふうに考えられます。第三は預貯金の増加でありますが、これはせんだつても貯蓄目標は二千二百億というように伺つておりますが、併しこれはまぁ目標であつて、目標は大きい程よろしいのですが、実際において我々がこの産業資金の財源として見込み得るものは約千五百億乃至千七百億くらいは抑える方がいいのではないかと思つております。それから第四は直接投資でありますが、これは主として証券市場に株式或いは社債を売出しまして、これから得られる資金が約四百億くらいではないか、この合計が結局三千九百五十億。もとよりこのうちの第三、第四の項目は財政の予算とは関係がないのでありまするが、財政の関係の資金と、その外民間蓄積の資金、これを集めまして三千九百五十億円くらいになる。これに各企業の内部留保金を若干合せまするというと、これが四千億円乃至四千二百億円の所要資金が得られるのではないか、こう考えております。
 従つてこの資金源の方は大体出し得るようなことになりますが、ただこれを如何にして産業に放出するか、もとよりこれらの金融は全部が健全金融であるということは申すまでもないのでありますからして、その線に沿うて出すのが当然でありますけれども、併しそれでは企業が全部健全化してから出していいか、こういう問題であります。大体健全化しなければ出せない筈でありまするが、ただ仮に炭鉱のごときものは本当の企業の健全化というところまで行くのに時間がかかります。併し一方において石炭を掘らないわけに行かんのでありますからして、かようなものはどうしても以前の復金のようなものがあればそれで出すべきでありますが、これが利用できないとすれば、これは政府が仮に援助資金なり援助資金の見返勘定からして直接の投資をして、その窓口を従来の長期金融機関であるところの市中銀行がやる、こういう外にはないだろうと思います。又この特殊な今の見返勘定のごときものを使うためにできる融資の、或る決定機関が恐らくできるだろうと思いますが、これはもとより日本の考え方ばかりでは実行できないものだろうと思います。併しやるとすれば相当産業事情に通じた第三者的な人物を選定しまして、事務的な仕事は日本銀行にやらせる。窓口はよく事情を知つておる各市中銀行にやらせる。こうしたならば以前の復金の例の融資委員会のようなものを繰返すことがなくして、もつと一層効果的な産業に融資ができるのではないか、こう考えております。尚この資金収支の時期的なずれでありますが、このずれの調節の問題が残つておりますが、これは眼目とするところはこの予算の収支を調節して、飽くまで市場の資金量を平等に維持するというような目的で、やはり大蔵省証券の或の一定の額の増発というようなやり方で行つたならば一番いいのではないか、こういうふうに考えております。私の申上げることはこれだけでございます。
#84
○委員長(黒川武雄君) 何か御質問はありませんか。
#85
○波多野鼎君 預貯金の増が千五百億乃至千七百億というお見込みですが。
#86
○公述人(千金良宗三郎君) はぁ。
#87
○波多野鼎君 今年度の実績はどんなものでしようか。
#88
○公述人(千金良宗三郎君) 三千七百億程度でしような。今年は御承知のような経済情勢でありますから、その半分を見込むことはなかなか困難じやないかと思います。
#89
○波多野鼎君 もう一つ直接投資は四百億ですが今年はどんなものでしようか。
#90
○公述人(千金良宗三郎君) 本年は大体三百億……。
#91
○波多野鼎君 千金良さんのお考えでは、これはどう行けばバランスがあつて日銀券の増発ということが起らない見通しなんですか。
#92
○公述人(千金良宗三郎君) これだけで行けば、資金源がこれで済めば、日銀券の増発がなくて済むと思います。
#93
○小川友三君 今千代田銀行の千金良さんのおつしやるのと前の方と食い違いがあるように思うが、通知預金だと、政府は、だから産業資金に回されないのだというお話しがあつた。ところが政府は昨年十二月二百七十億の預金が残つておる。一月は四百三十億残つておる、二月は四百五十億、三月になつて六百億になつた。そうした金があるから結局政府は定期預金、居眠り預金に類するような預金をしておるわけです。そうして支払いはうんと延ばしておるというような状態でありまして、市中銀行に三百十六億くらい、それを通知預金しておるというのは、相当これは産業資金に回すとは言わないけれども、そういう意味も入つておるのでしようか。
#94
○公述人(千金良宗三郎君) 産業資金に回しても、情勢がどんどん預金が増えて来る情勢ならば、少しも矛盾なくやれるわけです。ところが預金の増勢が見込めないということになると、そういう時は思い切つて全部それを半年の投資にする、或いは三ヶ月の投資にするということができない、従つて、一番手近な各市中銀行が、皆日本銀行にえらい借金をしておるが、それを一時返して、それで融資力を涵養する。従つてその間に又特に資金の需要が起れば一次融資を、他へ貸すということになる。
#95
○尾形六郎兵衞君 さつきの産業資金の四千億、それは株式に四百億、預貯金に千五百億、後は何なんですか。
#96
○公述人(千金良宗三郎君) 後は皆財政的な資金です。見返勘定から千七百五十億、対日援助費の……。
#97
○尾形六郎兵衞君 それからいくら預貯金の方へ……。
#98
○公述人(千金良宗三郎君) それは全部回る。例えば今の建設債の二百七十億の切替、これも一種の長期預金の放出、それから五百億乃至七百億の長期設備資金、これもやはり長期資金……。
#99
○尾形六郎兵衞君 見返資金の千七百五十億は、全部産業資金に回るわけですね。
#100
○公述人(千金良宗三郎君) そうです。ただ出し方が今度は管理委員会か何かできて、非常な厳選をするでしようからして、相当にここに隘路があると考えております。
#101
○尾形六郎兵衞君 今から一時間程前に愛知銀行局長と水産委員会が会つたのですが、愛知局長に質問したら、貯蓄は千八百億くらいのことを言つております。株式や社債の投資は七百億という推定をしております。
#102
○公述人(千金良宗三郎君) 我々の目標は二千二百億でも二千三百億でも結構です。ところが私共のような保守的な、成るべく確かに確保しようという立場から言うと、やはり千五百億とか、千七百億とかいうことに……。
#103
○尾形六郎兵衞君 四千億ありますと、二十三年度の産業資金の合計と、二十四年度の今の見込みの四千億というものの比較は……。二十三年度の合計はどのくらいになつておりますか。
#104
○公述人(千金良宗三郎君) 今数字を持つておりませんので……。
#105
○油井賢太郎君 今の通知預金は、結局日銀の借入金で、産業資金に回らないということになるのですか。
#106
○公述人(千金良宗三郎君) 回らないともはつきり言えないが、今のような状態では産業資金に全部回し得るともいえない。ただ日本銀行に対する借金を今の預金で返すということならば、あなたのおつしやる通りですが、もとよりそれだけではありません。日本銀行へ又入る余力ができます、その余力を回すことはできます。併し実際においてはあなたのおつしやる通りです。
#107
○委員長(黒川武雄君) どうも有難うございました。公述人の方々に重ねて御挨拶申上げますが、今日は長時間誠に御示教頂きまして有難うございました。これを以つて公聴会を終ります。
   午後四時七分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     黒川 武雄君
   理事
           内村 清次君
           油井賢太郎君
           飯田精太郎君
           島村 軍次君
           田村 文吉君
           東浦 庄治君
           木村禧八郎君
           岩男 仁藏君
   委員
           岩崎正三郎君
           木下 源吾君
           波多野 鼎君
           山下 義信君
           小串 清一君
           西川 昌夫君
          橋本萬右衞門君
           一松 政二君
           深水 六郎君
          尾形六郎兵衞君
           鬼丸 義齊君
           小杉 繁安君
           櫻内 辰郎君
           高橋  啓君
           深川タマヱ君
           西郷吉之助君
           新谷寅三郎君
           高橋龍太郎君
           伊達源一郎君
           玉置吉之丞君
           久松 定武君
           帆足  計君
           松村眞一郎君
           池田 恒雄君
           栗山 良雄君
           小川 友三君
  政府委員
   経済安定政務次
   官       中川 以良君
   大藏政務次官  田口政五郎君
   厚生政務次官  淺岡 信夫君
   建設政務次官  赤木 正雄君
  公述人
   日本機帆船業会
   專務理事    立川  繁君
   総同盟総主事  高野  實君
   経済学博士   大内 兵衞君
   自治労連副委員
   長       三田 朝丸君
   横浜興信銀行員 笹子 豊治君
   王子製紙経理部
   長       金子佐一郎君
  千代田銀行頭取 千金良宗三郎君
   朝日新聞論説委
   員       藤田 武雄君
   産別副議長   嵯峨 善兵君
ソース: 国立国会図書館
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