くにさくロゴ
1949/04/04 第5回国会 参議院 参議院会議録情報 第005回国会 本会議 第8号
姉妹サイト
 
1949/04/04 第5回国会 参議院

参議院会議録情報 第005回国会 本会議 第8号

#1
第005回国会 本会議 第8号
昭和二十四年四月四日(月曜日)
   午後零時五十一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第七号
  昭和二十四年四月四日
   午前十時開議
 第一 國務大臣の演説に関する件
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(松平恒雄君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(松平恒雄君) これより本日の会議を開きます。
 この際お諮りいたします、中野重治君より理由を附して文部委員辞任の申出がございました。許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。尚、欠員中の労働委員に中野重治君を指名いたします。
     ―――――・―――――
#5
○岡元義人君 本員は、中共地区引揚問題並びに本年度一般帰還者の受入態勢について、緊急質問の動議を提出いたします
#6
○中村正雄君 岡元君の動議に賛成いたします
#7
○議長(松平恒雄君) 岡元君の緊急質問の動議に賛成の諸君の起立を請います。
   〔起立者多数〕
#8
○議長(松平恒雄君) 過半数と認めます。
#9
○岡元義人君 只今吉田首相は御出席になつておりません。然るに本員の緊急質問につきましては、首相の出席答弁が必要でありますので、参議院は院議を以てこの際直ちに吉田首相の出席を要求し、その出席あるまで本会議を休憩することの動議を提出いたします。
#10
○中村正雄君 岡元君の動議に賛成いたします。
#11
○議長(松平恒雄君) 岡元君の動議に賛成の諸君の起立を請います。
   〔起立者多数〕
#12
○議長(松平恒雄君) 過半数と認めます。よつて動議は可決せられました。参議院は吉田首相の出席を要求することに決し、その間暫時休憩いたします。
   午後零時五十三分休憩
     ―――――・―――――
   午後三時七分開議
#13
○議長(松平恒雄君) 休憩前に引続きこれより開会いたします。
 この際、岡元義人君の緊急質問の発言を許します。岡元義人君。
   〔岡元義人君登壇、拍手〕
#14
○岡元義人君 私は在外同胞引揚問題に関する特別委員会を代表いたしまして、政府当局に対し、中共地区引揚対策並びに本年度一般引揚受入対策につきまして御質問申上げたいと思うのであります。
 先ず中共地区引揚に関しましては、終戰以來今日に至るまで最も憂慮されて來た問題であるのでありますが、現在のところ残留数は六万乃至七万と言われておるのでありますけれども、我々委員会におきましては、鋭意資料の蒐集に努めました結果、遥かに上廻るものと推定されておるのであります。曾て日本赤十字社より派遣されました看護婦の外に、現地におきまして徴用されたるところの者を合せて二万に余る婦女子も含まれておるのであります。現在の状態は大体三つに区分することができると思うのであります。その一つは、現に技術者として徴用されております者であり、第二は、難民及び病弱者であります。その三は、ハルピン地区にありましては井上孝一の指導を受け、吉林地区にありましては上田正夫、山ノ内武の指導の下に共産教育を受けて、内地に帰していいという者であります。又この外に白頭地区にあつては、旧軍隊の者がそのまま一万人程度残つておると言われておるのであります。以上述ベました第二、第三の者たちは、いつにても内地に帰れる状態にあるのでありまして、事実三百五十一名の者が、昨年七月三日元山より宗谷丸によつて日本に帰つて來ておるのであります。今やソ連地区引揚も目睫に迫つております今日、先に述ベましたる第二、第三の部に属する者たちは、船さえ來ればいつにても乘船できる状態にあるのであります。先月も五十二名の者が、ハルピンより元山まで船便があるというので出て來たのであります。併しながら予定の船便がなく、その中の二名が日本に連絡を取るために三十八度線を越えんと計画して、元山を出発して、そのうち一名が無事に日本に辿り着いたのであります。先日当院に証人といたしまして召喚いたしました梁瀬美智子が当人であります。以上の状態よりいたしましても、船さえ北鮮地区等に廻すことができましたならば、多くの同胞がいつにても帰つて來られるわけであります。只人北京におきましては、中共との和平交渉が実現し、又中共地区との通商開始等の点とも睨み合せまして、これら中共地区引揚に関し、緊急手を打つベきときと考えられるのでありますが、政府は如何なる対策を取つて來られたか、又取らんとしておられるのか承わりたいのであります。
 特に吉田総理に申上げて置きたいことは、第三、第四國会においても、その外交的手腕に絶大の信頼をかけております留守家族初め國民は、一時も早くこの問題に対するところの所信を聞きたかつたのであります。併しながら公務員法、選挙等多忙の時期を勘案いたしまして、今日まで延び延びになつて來たのでありまして、第五國会におきましては、経済自立の重要な使命を負荷されておられますけれども、併しながら、この血を分け分つた同胞を日本に帰すことは終戰処理の最たるものであり、昨年九月二十七日、七歳の幼兒七十歳になる老母相携えて宮城前に決死の絶食祈願を続けたことは御承知の通りであります。本年度は政府の誠意如何によりましては最も憂慮さるべき事態さえも考えられるのでありまして、この点総理の責任も亦大と言わなければならんのであります。本年に入りますや、福岡においては嚴冬の海中に身を投じて元旦祈願が行われ、本年こそはと全國津々浦々に必死の帰還実現の祈願が続けられておるのでありますが、又本年度引揚に関しましては、予算処置においては財還完了の予定の下にすべてが処置されておるようでありますが、ソ連地区引揚の昨年の五万の協定に達せざる状態等を考えます際に、非常な困難が前途に予想される理由でありますが、これに対して万全の対策が取られておるのか。又再び五年目の冬を彼の地に送らせるようなことがありますならば、留守家族の思いは勿論のこと、残留同胞の忍苦にもおのずから限度があるのでありまして、祖國の面影を抱いて狂い死させるにもひとしい結果となるのであります。この点についても誠意あるお答を併せてお願いいたしたいのであります。
 又外務大臣としての吉田総理にお尋ねいたしたいことは、今回の敗戰は、誠に日本の歴史の上に大書記録されるものであることは何人も肯定でき得るのでありますが、六百四十万の同胞が万感胸に迫るものを抱きながら各地より引揚げて來る途中、不幸にして祖國の土を踏み得ずして、中途において倒れて行つた者、又莫大な数に上つておるのであります。曾ての戰時中の企業整備の犠牲となりまして満州に追いやられた開拓團のごときは、その無責任極まる軍当局の連絡不備と政府出先機関の不手際によりまして、出発の時期を失し、途中においてあらゆる困難に遭遇して、一千名單位の梯團のうち、或る者は服毒し、又我と我が子と刺違えて絶命する者等、夥しい数に上り、僅かに生き返つた者七十名と言われる梯團さえもあるのであります。又或る梯團のごときは、蒙古の野に数千の白骨を今尚さらしておると傳えられておるのであります。乘船間際におきましても、天津の例を取つて申しますと、中國の好意により與えられた墓地に、寒氣と栄養失調とのために倒れて行つた、いたいけな幼兒たちの卒塔婆の数だけでも数千に及んでおるのでありますが、これら非惨な死歿者たちの如何なる記録も外務省は蒐集していないのであります。我々は二千六百年の歴史の中に生きて來たのでありますが、これと同時に、これからの歴史を作つて行かねばならないのでありまして、又子孫に対する教材としても残して行かなければならないのであります。かかる重要なる問題が何ら処置もされていなかつた点は明らかに外務省当局の怠慢であり、速かに何らかの処置あつて然るべきだと存ずるのであります。この点責任ある御回答を願いたいのであります。
 次に厚生大臣にお伺いいたしますが、今や四年の貴い犠牲において帰つて來る本年度帰還者に対しまして、應急援護対策としては如何なる態度を以て迎えられんとしておるのか伺いたいのであります。又樺太地区引揚者及びその他無縁故者等に対しての住宅関係におきましては、僅かに四億五千万円の予算処置が講ぜられておると聞いておるのでありますが、本年度帰還者の大半が無縁故者であります関係上、一体どのような受入をされるつもりか、又補修費等に関しまして何ら予算処置も決定しておらないように伺つておるのでありますが、併せてお答え願いたいのであります。又生活保護法による住宅にいたしましても、單に集團的に一時的收容をなすことは法の精神に背くものであり、飽くまで一戸々々の住宅が法の精神と解せられるのでありますが、今後この趣旨に從つて計画を持つておられるのか、誠意ある御回答を願うものであります。特に熊本の青葉寮のごときは極端なる一例でありまして、四千名に余る者を今日まで收容して來ておるのでありますが、旧軍隊の厩舎をそのまま、コンクリートの上に直かに生活せしめて、年々倒れて行く者相当数に上つておるのでありますが、これに対しまして今日まで何ら顧みられることなく放置してあつたために、去る二月十五日、本院議長名を以て至急大藏、安本、厚生当局の実態調査を要請したにも拘わらず、今日に至るまで何らの誠意も果されずにいることは誠に遺憾に堪えない次第でありまして、この点についてそれぞれ所管大臣より誠意ある回答を煩わしたいと思うのであります。
 次に生業資金の問題でありますが、聞くところによりますと、本年度は僅か三億円であり、償還金より二億円を追加するとのことでありますが、既往の帰還者さえも未だ四十万世帶貸付未了になつておる際に、本年度帰還者に対しまして十分なる処置ができると思つておられるのか。又從來一世帶七千円となつておりますが、厚生省当局は一万五千引上をしばしば言明しておられるが、一体いつから実施される予定か伺いたいのであります。
 次に、本年度帰還者の就職問題でありますが、労働大臣、大藏大臣にお伺いいたしたいのは、特に本年は行政整理の関係等を勘案いたしまするに、帰還者の就職は甚だ憂慮されるところでありまして、これら四年目の困苦を越えて帰つて來られる人々に対して如何なる就職対策を持つておられるのか。又最近非常に問題になつておりますソ連地区引揚者の就職は、穏健なる思想の持主でありましても一般的に忌避される傾向にあるのであります。これらの問題に対してどのような対策をお考えになつておるのか伺いたいのであります。
 次に、これら本年度帰還者は殆んど持帰り金も持つておらないのであります。併し上陸と同時に一切の給與は中止されまして、完全なる失業者となるのでありますが、飽くまで未復員者給與法は給與である関係上、政府職員にありましては、退職手当の支給もされておるのでありますが、從來これらの帰還者は何らの手当も受けておらないのであります。留守家族等におきましては、待つていた人が帰つて來て呉れたことは誠に嬉しい限りでありますが、その日から食うに困る状態となるのでありまして、かかる問題が本年も等閑に附されるがごときことがあつてはならないのでありまして、これら帰還者は当然國の雇傭者であることは明らかでありまして、失業保險の対象者たることも十分確認されておるのであります。大藏省として、本年度帰還者に対しまして七千八百万円の失業保險補助金を考慮してあるのか、又これに代る方途を考えておられるのか、大藏大臣よりお答が願いたいのであります。又帰還者等経済再建のためにあらゆる期待を以て念願しておつた國民金融公社法も本國会に提案されると承つておるのでありますが、その内容を見ますと資本金十三億円となつておりますけれども、実際は庶民金庫の日銀債権に返済する金が十二億七千万円ありますので、残り金は庶民金庫限りの償還金一億と計一億三千万円程度が本年度の実際の貸付金となつておるのでありまして、金融公社はできたけれども本年度は貸す金はないというのが実情と思われますが、この点に対しまして大藏当局は内部的に増資の方法等が考慮してあるのか。又産業資金等につきましても、引揚げて來る者に対して何らか建設協力の意欲を満足せしむるような処置が考慮されておるのか。併せて大藏大臣よりお答え願いたいと思うのであります。
 最後に、本年は引揚も大体完了に近ずくわけでありますが、それと共に相当の遺骨が帰つて來る可能性も想定できるのであります。從來遺骨の引渡しは縣町村役場において授受されまして、その後、宗教的法会が個人において又は遺族会等において行われるのでありますが、この法会に対し、縣町村長その他名士の方々を個人の資格において御列席をお願いたしましても、なかなか出て貰えないのであります。こういうことが遺族等にとつて最も心寂しく感じられておるのでありまして、昭和二十一年十一月一日政教分離の通牒によりまして、個人の資格において列席は少しも差支ないと、かような点が地方末端に十分理解されておらないような氣がするのでありますが、厚生大臣、文部大臣より、この点如何ようにお考えになり、又今後如何ように御指導されるつもりか、お答が願いたいのであります。尚これらの法令について文民と戰歿者等の処置は異なつて來るわけでありますが、前者の際は功労者である場合等は地方公共團体葬もできるわけでありますが、一体、終戰後強制労働に服役中死亡した者については、その後の覚書指令に基いて軍隊というものはなくなつておるのでありますから、戰歿者として取扱うのは果して妥当であるか、相当な疑問を持たざるを得ないのでありますが、又一般人にしましても、軍人軍属と同樣の労役中に死歿せる者も相当あるわけでありまして、これらの法会に対する地方の者の処置がすベて混同されておる状態で、速やかに將來禍根を残さざるよう善処さるベきであると思うのでありますが、この点文部大臣より今後の処置について承わりたいのであります。
 以上で私の質問は終りたいと思うのでありますが、一言附言して置きたいことは、引揚問題につきましては、在外資産を初め、今尚殆んど未解決事項が山積しておることをお含みの上、最善の努力を要望するものでありますが、最近しばしば非日委員会等のことを見聞するのでありますが、その病源のよつて來るところは当局は十分に知悉しておられる筈でありまして、その初期において治療せず、化膿するがままに任せて置いて、重態になつて騒ぎ出しておる感が深いのであります。やがてはカンプルも効かなくなる虞れなきにしもあらずでありまして、徒らに共産党の諸君を喜ばすのみの結果になるということさえも考えられるのであります。(笑声)(「何を寝言を言つておるのか」「笑うな」と呼ぶ者あり)本年度の帰還者の受入態勢には單なる事務的処置では解決できないものが多々あることを十分認識され、人間愛に徹した万全の対策が最も適切に行われることを心から念願いたしまして、各大臣の御答弁も誠意を以て懇切にお答あらんことをお願いする次第であります。(拍手)
   〔國務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#15
○國務大臣(吉田茂君) お答をいたします。御質問の御趣意は誠に御尤もであります。政府といたしましても、この処置につきましては從來とも甚だ心配いたしておつたのでありまするが、特にここの申上げたいことは、昨年の十月であつたか、十一月であつたか、ちよつと記憶がありませんが、確かな日にちは記憶はありませんが、恰かも南京、上海、あの辺が危險状態になつて、そのために南京、上海地方において拘禁せられておる陸軍の戰犯に関係しておる將士の安否については甚だ心配な状態のように新聞その他において見られたものでありまするから、マツカーサー元帥に、これはどう処置せられるものか。新聞に傳うるところによつては、今にも上海或いは南京地方が共産……中共でありますか、のために占領せられて、不幸な事件が起りはしないかと思つて心配するのであるという話をいたしましたところが、元帥は、直ちにそれは船を送つて、そうして全部日本に帰還せしめることにしておるという話でありました。それから間もないと思いますが、三百四十何名かと思いまするが、日本に帰還して今は巣鴨におります。というような……これは上海、南京の話でありまするが、北部の地方については実は状況甚だ不明なのであります。御承知の通り在外公館も閉鎖されているために、実際の実情については僅かに帰還者の報告によつてこれを知るのみというような状況で、それでなければ司令部を通して断片的に承知をするというような状態でありますが、併しながら司令部としても可なり心配をしていろいろな手段を以て情報を集めて我々の方に供給して呉れるのであります。その情報は甚だ区々でありまして、例えば山西地方のごときは甚だ優遇されておる。生活も安秦であるというような報告もありますし、これに違つた報告もあるので、実は心配いたしておるのでありますが、最近新聞によりますると、平和の問題も大分進みつつあるようでありまするから、そういたせば、和平が成立いたせば、纏まつた交渉もできるでありましよう。併し無論これは司令部を通じての交渉でありますが、政府といたしてはでき得るだけその引揚を速かならしめるように努力するつもりであり、又努力いたしておるのであります。これを以てお答といたします。
   〔國務大臣林讓治君登壇〕
#16
○國務大臣(林讓治君) 岡元議員の御質問に対してお答をいたします。引揚再開後帰還する方々の取扱につきましては、從來の早期引揚者の場合よりも一層愼重な配慮を必要とすると考えますので、引揚者一人々々の心情を深く洞察いたしまして、同胞愛の精神に徹して援護策を講じたいと存じておるわけであります。この基本方針に基きまして、政府といたしましては次のような諸方策の実施について措置を講ずる考えであります。先ず援護局内の諸施設に工夫改善を加え、又食事、休養、或いは慰安等について特別の考慮を拂うなど、上陸地受入態勢を整備強化すると共に、局内における引揚者間の紛爭事件等の根絶につきましても万全の措置を講ずる考えでおるのであります。又局内滯在期間を通じて、内地生活から遮断されていた引揚者に正確な國内の事情をお知らせするようにいたしまするし、又懇切に個人的相談に應しまして、的確なる指導をなし得るよう努めたいと考えている次第であります。尚、引揚船内及び引揚列車内の施設につきましても、関係当局と協力いたしまして、尚一段の改善を加えまして援護の徹底を図る所在であります。又いわゆる駅頭援護につきましても、長く海外に抑留生活を送つて來られました引揚者に対しましては、國民全般の歓迎の熱意を示しまして、その定着を円滑ならしめるように取計いをいたしまするし、又再開後は中央、地方一体となり、積極者に援護の充実強化を期する考えでおります。尚引揚者は身心共に疲労困憊しておられまして、且つ又國内事情にも極めて疎い者がおられるのでありますから、受入市町村においては、民生委員など有志による家庭訪問を励行せしめまするし、一刻も早く市町村民として立ち直れるよう、側面より有形無形の援助の手を差し伸べるよう、特別の配慮をいたす考えであります。
 それから、二十四年度における生産資金貨付資金の財政支出は、約三億円に内定いたしているのでありますが、その外にすでに貸出しております分による償還金が約二億円くらいのものがあると思いますが、それらのものを合せまして、約五億円の資金運轉の貸付ができるもで、先ずこれで十分だとは考えませんが、大体昨年度と同樣な貸付事業がやれるような予定と考えているわけであります。尚、二十四年度公共事業費といたしまして、四億五千七百三十万円の予算が内定されているのでありますが、この二十四年度新規樺太引揚無縁故者、その他の地区の引揚無縁故者及び既引揚者にして一時收容所等に滯留している者など、約四万八千余人分の住宅を設置いたしまして、これらの者を收容する予定を持つているわけであります。先程お話のありました青葉寮であるとか或いは磯敷寮という問題につきましては、誠に仰せのごとく破損しておりまして、同情に堪えないのでありますが、その甚だしく破損をいたしておりますものは、補修改善を要するものと考え、これらの集團收容施設の補修に対して必要な措置を至急講じたいと考えているわけであります。
 それから又外地から帰還して來られた遺骨の輸送、保管、傳達に際し、礼を失せざるように、敬虔な態度で鄭重に取扱うべきことはもとよりであるのでありますから、これを十分指導いたしたいと考えている次第であります。尚種々なる行事につきまして、宗教的な行事等につきまして、我々は今日遺憾ながら官公吏等の資格を以て出席をするということができかねまするので、或いは親戚であるとか、或いは知人であるとかというような個人といたしまして列席をいたしますように、又我々の方からも各市町村等に対しましては、十二分にこの点を注意をいたしますように、傳達をいたしたいと考えているわけであります。以上を以て簡單ながらお答をいたします。(拍手)
   〔國務大臣池田勇人君登壇〕
#17
○國務大臣(池田勇人君) 岡元議員の御質問に対しましては、すでに厚生大臣よりお答になりましたところでありまするが、私からも一言お答をいたします。
 引揚者の生業資金につきましては、お話の通り大体今度の予算には三億程度見込んでおります。又一世帶当りの金額も三千円より五千円、五千円より七千円に上つて参つておりまするが、今後の情勢によりまして、この金額につきましても檢討いたしたいと思つております。又今議会に提案いたしました國民金融公社を活用いたしまして、でき得る限り引揚者に対しましては、優先的に融資を考えておる次第でございます。(拍手)
   〔國務大臣青木孝義君登壇〕
#18
○國務大臣(青木孝義君) 岡元議員の御質問中、青葉寮に関する問題でありまするが、これは只今折角調査中に属しておりますので、追つて御回答申上げるつもりであります。(拍手)
   〔國務大臣鈴木正文君登壇〕
#19
○國務大臣(鈴木正文君) 労働省といたしましては、引揚者の方々に対する当面の第一線の政策といたしましては、先ず、上陸地の府縣及び公共職業安定所、それを通じまして職業相談所というものを設けまして、引揚げて來る方たちに、先ず日本の職業情勢の実際というものを御説明申上げまして、そうして御相談をも受け、情勢をも先ず頭に入れて頂くということを、第一段階として從來からやつて來ておるのであります。それから引揚列車又は引揚船の中にも、公共職業安定所の職員を派遣いたしまして、同じように職業の情勢その他の御説明及び御相談に当つて來ておるのであります。これらの方たちが、それぞれの府縣に引揚げて参りますというと、それぞれの引揚先の府縣におきましては、公共職業安定所において向うの引揚團体と連絡いたしまして、先ず集團的な職業相談を行なつておるのであります。この方法は今年の事情に鑑みまして一層力を入れてやつて参りたいと思つております。一般の失業対策問題の一環といたしまして、この問題の重要でありますことは、只今御指摘の通りであります。本年度の失業問題は深刻な樣相を呈して來るということも十分考えられるのでありまして、これにつきましては一般の失業対策の重要なる一環といたしまして、本年度引揚げて來られる方々をも考慮に入れて計画を準備中でありまして、これに必要な経費その他予算上の措置或いは臨時國会における措置というものを以て、政府全体の責任として断乎として行わなければならない問題、そういうふうに考えて措置を急いでおるのであります。尚ソ連からの引揚者の方々に対する職業方面の忌避というふうな問題は、これは同胞に対して全く申訳ない、そういう情勢があるといたしましたならば申訳ない話でありまして、労働省といたしましては、職業安定所を通じては勿論のこと、一般に対しましても思想の懸隔した引揚げて來る我々の同胞に対しまして、こういつた忌避的な考えは勿論、何ら差別のない態度を以て臨んで参りたいという趣旨を、日に日に徹底して行くつもりであります。
 失業保險の問題は大藏大臣から先程お話が……ありませんでしたか。(笑声)実はこの問題は、技術的に或いは財政的に、諸般の方面からすでに研究を続けておるのであります。現段階におきましては、尚技術的に、それから財政的に研究を残しておるのでありまして、依然としてこの問題は研究を続けております。(「了承」と呼ぶ者あり)
#20
○議長(松平恒雄君) 文部大臣は只今関係方面に参つておられますので、他日答弁のある趣きであります。
     ―――――・―――――
#21
○議長(松平恒雄君) 日程第一、國務大臣の演説に関する件、内閣総理大臣、経済安定本部総務長官及び大藏大より発言を求められております。これより発言を許します。吉田内閣総理大臣。
   〔國務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#22
○國務大臣(吉田茂君) ここに現内閣の施政方針について陳述する機会を得ましたことを欣快に存じます。
 惟うに國民は今回の総選挙において、終戰以來の苦しき経驗に鑑み、安定せる政局の下に、我が國の再建を健全なる保守政党に托さんとして、我々保守政党を圧倒的に支持したものであると信ずるものであります。(拍手)ここに政府は着々所信を断行し、以て國家の復興再建を成就し、外は連合國の好意と援助とに應え、内は國民の輿望と負託に應えんとするものであります。過去十年間に亘る無謀なる戰爭による名状し難き破壞と混乱の跡始末をなし、我が國の復興再建を図るために、挙國一致協力、この痛ましき現状を直視し、一大決心の下に、一大覚悟の下に、敢然として將來の大計を今日これを樹つべきものと信ずるものであります。(拍手)
 昨年十二月十九日、マツカーサー元帥の私に宛てられた九原則を含む書簡及び最近におけるドツジ氏声明等は、すべて石の趣旨に出でたものであります。私もこの線によるにあらずんば我が國の再建はでき難しと衷心より信ずるのであります。(拍手)今回提出せんとする予算案は、右九原則及びドツジ氏声明の趣旨を了承し、政府の責任においてこれを具体化したものであります。政府は幾多の困難なる事情あるに拘わらず、先ず以て均衡予算を作成し、眞の自立再建を図る決心であります。併しながら敗戰後今日に至るの間、我が経済は非常に縮小し、我が國財源は極端に枯渇し、重税に國民は未だ曾て見ざる苦痛を感じつつあるのであります。誠に憂慮に堪えざる事態であります。故に政府は根本的に政府税制等の改革を断行いたしまして、均衡予算案実施の途上においても、税制及び徴税方法の改善を図り、(「何を言うか」と呼ぶ者あり)他方、歳出の面におきましても、更に現実に節約を期しまして、でき得る限り國民財産を処分し、実績を得るに從つて臨時國会を召集して、予算の補正、國民負担の軽減に努力する覚悟であります。(「又欺すか」と呼ぶ者あり)
 眞の安定と進歩とは、國家的諸問題を健全な財政通貨政策によりまして処理することに立脚しなければならんのであります。有効なる安定をもたらすためには、財政政策の基本的手段たる政府の予算と、すべての政策決定とを連関させることが必要なのであります。過去においてインフレーシヨンを激化せしめたのは主として政府であります。今日の段階において、これを終熄せしめなければ、國家経済の破滅を來すより外はないのであります。補給金と投資、その他一般の費目から支出を削ることは、政府に取つて誠に困難なることでありまするが、これは必ず断行しなければならないのであります。
 又我が國の現状を見まするのに、日本の生産指数は米國の援助資金の大幅な増加に連れて上昇しており、輸入超過額も増加いたしますし、輸出入の不均衡は年々激増いたしておりますが、僅かに米國の援助資金によつて辻褄を合せておるような状態であるのであります。この現状は國家経済上看過し難きところであります。経済の終局的安定を図り、徹底的にインフレーシヨンを終熄をせしめ、更に豊かなる経済的発展を遂げ、祖國を自立再建するために、國民生活において、たとえ一時容易ならぬ影響があるといたしましても、國民最大多数の究極における幸福のため断じて行なわなければならないところであります。でき得る限り早く光明のある未來を招來するためには、手術は早きを必要といたしますし、國家をしてこの手術に堪えしむるためには、一に國民諸君の不動の信念と熱烈なる愛國心の協力に俟たねばならないのであります。(拍手)連合國特に米國の日本に対する深い理解と絶大な援助は、我々の衷心感謝措く能わざるところでありまするが、我々として最も大切なることは、でき得るだけ早くこれらの援助なくとも自立し、祖國を再興するということであります。私は連合國の恩惠のみに依存することなく、國民みずから強烈なる自主的精神と、耐乏生活に徹した努力とによつて、速かに再建を成就する決意を八千万國民が挙げて固うせらるることを切望して止まないのであります。(拍手)彼の英國國民が非常なる決意の下に経済的自立を目指して協力一致いたしておる態度は、我々の最も学ぶべきところであると信ずるのであります。私は現内閣が今後遂行せんとする強力にして責任ある政策に対し、國民諸君が全幅の後援と鞭撻とを與えられんことを特に希望して止まないのであります。
 ここに一言申上げたいことは、近く設定を見まする單一爲替についてであります。單一爲替レートは、申すまでもなく貿易振興、外資導入のために必要欠くべからざるものであります。現在日本の経済は、一應表面的には安定の段階に達しておるように見えまするが、その実は自力によるものではなく、米國の援助に支えられての安定であり、内面においては幾多の不安定要素を包含しておるのであります。たとえ單一爲替レートの設定を見ましても、健全なる経済力の回復がなければこれを維持し得ることはできないのであります。又経済復興に必要なる外資の導入も期待し得ないのであります。尚その他輸出産業の刷新とか、農業の振興改良、失業対策、災害対策、文教の刷新、科学技術の振興、道義の高揚等悉く皆重要な問題でありまするが、これらの施策については順次所管大臣より詳細御説明いたす筈であります。
 尚、海外同胞の引揚につきまして外務大臣として一言いたします、これまで約六百十余万の引揚を了しましたが、未だ尚四十余万同胞が嚴寒の地に四度越冬を余儀なくされておることは誠に遺憾であります。その親戚故旧及び家族に対しては、誠に同情に堪えないのであります。連合軍司令部も非常なる同情を以て引揚完了に盡力いたしておりますし、相手國との交渉においても不断の努力を拂われております。その結果相手國も我が國の事情はよく了承しておられると存ぜられますから、本年中には引揚完了を期待し得るものと信ずるものであります。
 この機会に一言いたしまするが、近時我が國の國際情勢より來る將來の危險性に関連いたしまして、種々の噂が生じておりますることは、諸君御承知の通りでありますが、これは大戰後常に生ずる状態であります。併しながらいずれの國も戰爭の記憶は今尚新たなるものがあり、又いずれの國も平和を欲するということは明らかでありまするから、私は國民が軽々しく海外情報に迷わされることなきように希望いたすのであります。又最近学術、宗教、赤十字、労働、通商の諸会議に招請を受くること漸く多く、又通商使節として、海外渡航を許さるる者の多きに至れるは、誠に喜ぶべき現象であります。又國内事情において極右極左というような言葉をよく聞くのでありまするが、これは、ためにする者の言うところであつて、現在國民の大多数は安定せる政局の下に経済再建を強力に衷心より希つており、又その途に邁進協力して行こうと決意している國民であることを私は信じて疑わないのであります。(拍手)併しながら又あらゆる手段を弄して、祖國の再建を妨げ(「民自党のごとく」と呼ぶ者あり)祖國に破壊と混乱をもたらさんとする者が少数ながら一部に現存することは、私は遺憾ながら認めなければならないのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)
 これを要するに、この度提出の予算は、戰後の我が政府が当然実行せなければならなかつたことを、今まで怠つていたものであります。政府はポツダム宣言及び九原則を含むその他の管理政策を、熱意を以て(嘘を言うな」と呼ぶ者あり)誠実に遵守履行し、國民は挙つて経済的愛國心により売主経済並びに民主政治を確立し、世界列國が一日も早く栄誉ある國際社会の一員として、我が國を迎うるに至らんことを、國民諸君と共に熱望して止まないのであります。
 ここに政府の施策大網と私の衷情とを披瀝し、敢て國民諸君の協力と奮起とを衷心より切望いたすものであります。(拍手)
#23
○議長(松平恒雄君) 青木國務大臣。
   〔國務大臣青木孝義君登壇、拍手〕
#24
○國務大臣(青木孝義君) 終戰以來五星霜、苦難の途を辿つて参りました日本経済も、最近に至りまして漸く生産も比較的順調な上昇を來し、インフレーシヨンは緩慢化し、勤労者の実質賃金も漸次向上するに至りまして、(「嘘を言うな」と呼ぶ者あり)ここに経済安定への萠しを示し始めて参りましたのでありますが、その基礎は未だいわゆる竹馬経済たるを免れないのであります。それはもとより、この間一面において連合國側の理解ある援助と指導とに負うところ誠に大なるものがあると共に、他面において、食糧の供出、石炭の増産等、経済の各分野において拂われました全國民の再建への努力と熱意によるものでありまして、ここに深く感謝の意を表するものであります。併しながら今や経済九原則に從い、健全財政を樹立して國家再建の基礎を固むるにつきましては、我が國経済の実体を洞察して、その中に包藏している不健全な要素を的確に認識しなければならないと思うのであります。
 即ち先ずその最大のものは、年間数億ドルに上る外國援助を受けている事実でありまして、我が國経済安定の萠しも、実は米國の市民と企業の負担による援助に支えられているものであることを忘れてはならないのであります。次に経済活動の担い手たる企業においては、その生産設備は荒廃し且つ老朽して、いわゆる企業実体資本減耗の傾向は著しく、企業の経営は多額の價格調整費の支出に依存し、赤字金融は累積する等、その健全性と自主性とを著しく喪失するに至つているのであります。更に河川災害の累増、山林の消耗等、國土の荒廃、國富の喰い潰しの傾向も亦憂うべきものがあるのでありまして、インフレーシヨンの緩慢化と生産水準の上昇の背後には、誠に憂慮すべき実態が隱されていることを指摘せざるを得ないのであります。言葉を換えて申しますれば、米國の援助と補助金政策とによつて衰乏経済の上に実力以上の経済運営が行われているというのが、日本経済の現状であると申さなければなりません。このまま推移して行くならば、脆弱なる経済基盤の上に不安定なる経済繁栄を築く結果となるの虞れがあるのでありまして、今後の経済施策の根本は、経済の眞の安定から再出発すべきであることを痛感する次第であります。昨年十二月、連合國最高司令部から発せられた経済九原則の指令も、正にこの趣旨を明確にしたものでありまして、連合國の対日政策が、今や日本経済の安定と自立とを要求する段階に到達したことを物語るものであります。從つて九原則の狙いとするところは、將來における経済の自立を目標として、当面何よりも経済安定を目途とする施策を強力に実施し、経済性に徹した合理的な経済運営を期すべしとする点にありまして、これがため單一爲替レート設定の準備といたしまして、九項目の施策を実施すべきことを内容としているのであります。
 思うに経済自立の基盤となるべき健全な経済力の回復は、経済の安定なくしては期待され得ないのであります。從つて強力なインフレ対策の実施を遷延いたしますれば、それを長引かせる程、現在の不健全な状態を更に長く続けることとなるのでありまして、かくては、たとえ爲替レートを設定いたしましても、これを維持することは困難となり、國民経済に却つて有害な影響を及ぼすのでありましようし、又待望の民間外國投資も、経済の安定なくしてはその本格的導入を期待し得べくもないのであります。私はかかる情勢の下においては、九原則指令の線に沿い、堪え難きを忍んで、経済自立のための第一歩である経済の安定を万難を排して達成するにあらずんば、我が國の再建は期し難いと衷心より信ずるものであります。(「公約はどうした」と呼ぶ者あり)政府といたしましても、かかる信念の下に、企業に対しては強力な合理化施策を強く要求すると共に、國民生活に対しても敢て一段の耐乏を要請することとし、諸般の経済施策を強力に推進して行く方針であります。
 かかる方針の下に政府は先ず二十四年度予算の編成に当面いたしたのでありますが、その内容の詳細につきましては大藏大臣の演説に譲ることといたしまして、ここにはその基本的な構想と総合的な経済施策との関連につきまして簡單に申述べたいと思います。
 先ず経済安定九原則に掲げられた総合予算の眞の均衡ということでありますが、その趣旨とするところは財政面から來るイレフン要因の徹底的排除というにあるのでありまして、そのためには、一般会計、特別会計は勿論、その他の政府関係諸機関の收支一切を予算に網羅し、この收支全体に亘つて実質的な均衡を確保することが先ず必要となるのであります。併しながら均衡予算の編成に当つてはあらゆる経済的要求が悉くこの面に現われて來る結果、その間の調整は政府の最も苦心いたしたところであります。即ち先ず歳出につきましては、誠に切実な公共事業費の要求に対しても敢てこれを削減せざるを得なかつたのみならず、行政整理の断行、特別会計の経営合理化の強行、その他あらゆる経費節減を強行し、更に又物價安定のための價格調整費についてもその支出範囲を縮小し、支出單價に思い切つた削減を加えて、企業に極度の合理化を要求すると共に、同じく輸入補給金についても企業経理と國民生計費の堪え得る極限まで、できる限り圧縮節約を図つたのであります。
 他面歳入につきましては、実質的均衡財政実現のためには租税收入の増加と確保に俟つ外はなく、政府といたしましても、現行税制の下に專ら税收の確保に万全の努力をいたす覚悟であります。現在國民の租税負担の決して軽いものでないことは、もとより政府の十分承知いたしておるところでありまして、均衡予算実施途上においても徴税方法の改善を図り、負担の公平化について一段と努力を拂う所存でありますると共に、予算に計上せられた経費につきましても実施上更にその削減に努め、國有財産の処分を行う等、國民負担の軽減に資する所存でありますが、國民各位におかれましても、我が國経済の自立のために拂わなければならない負担として、この税收の確保に進んで協力下されんことをお願いする次第であります。
 次に米國の援助資金についてでありますが、從來その使途について明確さを欠いていた結果、折角の好意ある援助もその本來の趣旨に副い難い憾みがあつたのでありまして、政府はこの際これを円價として明確に予算化することによつて、最も効果的な運営を期したい所存であります。即ち今後この援助資金はこれを米國対日援助見返り資金特別会計に繰入れて、経済復興の資金や國債の買上等、最も有効適切な方途に使用することにいたしたいと存じております。
 次に金融の問題についてでありまするが、健全金融方策の確立とその徹底的な遂行を期することを、ここに改めて宣明いたしたいのであります。即ち資金の給源は蓄積資金の範囲内で賄う原則の下に、國民に対しては極力その消費を節約し貯蓄の増強に努めるよう協力を要望すると共に、企業に対しては企業三原則の枠内において、みずからの生産努力と資本蓄積とにより、所要の資金を調達すべきことを要請せられるのであります。更に政府といたしましても、今回の予算編成に当つては、財政の負担すべきものは率直にこれを財政の負担とすることによつて、ややもすれば財政の負担を金融に轉嫁するがごとき從來の行き方を嚴に是正する態度を明白にいたした次第であります。かくして財政及び金融の両面を通じてインフレ要因の徹底的除去を期したのでありますが、他面、生産活動の維持、経済復興のため、眞に必要な資金については、かような健全金融の方針の下においてその調達に遺憾なきを期さなければならんことは申すまでもないところでありまして、これを資金の供給面について見ますならば、幸いに米國の援助資金の相当部分を建設資金及び復興資金の使途に充て、更に國債、復金債等の償還を通じて産業資金に充てることになりましたので、当面二十四年度の産業資金は、運轉資金においても、設備資金においても、計算上その額としては必らずしも事業活動を著しく阻碍するがごときものでないと考えられるのであります。併しながら今後復興金融金庫の事業が縮小せられ、市中金融機関の任務が、國債、復金債等の償還による手許資金の増加とも相俟つて、ますます重要性を加えて参りますに鑑みまして、國民経済上の見地から所要資金を所要の事業に確保するためには、金融機関の自主的な協力を得ることが絶対の要請となつて來る次第であります。更に政府といたしても、今後の事態の推移とも睨み合わせまして、必要な資金の規制につき実情に即した措置を講じたい所存でありますと共に、企業の自己資本調達を極力促進する見地から、証券市場の健全な発達を期する外、從來の資本の喰い潰しを防止するため、減價償却の合理的実施を可能ならしめるための施策を檢討いたしておる次第であります。
 次に現段階における物價政策についてでありますが、その重点は、前述のごとき財政金融の強い健全化方策に対應いたしまして、物價の低位安定を期するにあり、更に單一レートの設定を契機とする國際経済への参加を目睫の間に控えまして、國内物價の國際物價への鞘寄せを図るにあるのでありまして、これを起点として均衡ある経済の安定を進めて参る所存であります。即ち昨年六月に発足しました現行價格体系は、その後の経済條件の変化によりまして、若干のひずみが生じ、このため経済の合理的な運行が阻碍せられる面も見受けられるので、これが調整は必要に應じて行う方針ではありますが、全体としての價格水準の引上はこの際避ける方針であります。特に貨物運賃、安定帶物資價格はこれを据置くこととし、これに対應して繰業條件の好轉している消費財につきましては、その價格引下をも考慮し、家計の安定と價格のバランスの確保に資したい所存であります。而してこの物價の低位安定を図りますために、今回の予算編成に際しましても、相当多額の價格調整補給金を用意しておるのでありますが、本來かかる補給金制度は、経済の合理性と企業の自立性との要請の見地からは、必ずしも好ましからぬものであります。併しながら日本経済の脆弱なる現状において一挙にその解決を図ろうとすることは、却つて徒らなる混乱を惹起する虞れもあり、この際この程度の補給金の計上は誠に止むを得なかつた次第であります。併しながらこの補給金の支出に際しましては、補給金單價の切下を行いますと共に、今後の企業努力及び企業合理化促進措置の強行によりまして、これが節約を図り、荀くも不合理な経営に対し、漫然これが支柱となるような補給金の使い方は絶対に避ける方針であります。
 更に國内價格の国際價格への鞘寄せ及び爲替要因からの國内價格への影響調整の問題につきましては、先ず久しく国際経済から隔離された我が國の孤立物價体系から、國際價格体系の一環としての合理的且つ自然な價格体系へ移行することが、今後の日本経済の正常な発展のために強く要請せられるところであります。換言いたしますれば、日本経済が國際経済の一員として、自立の途を拓いて行くためには、先ず国際價格体系のうちにみずから融和するごとく経済的努力を進めることが、当面重要なる課題であると信ずるのであります。(拍手)併しながら他面、單一爲替レートの設定と、國際價格への鞘寄せにより、企業、家計等に余り急激なる影響を與えることも亦物価安定の見地からは能う限り避くべきものでありますので、政府におきましては差当り過渡的な方策として、輸入補給金によるその緩和策を採つたのでありますが、この輸入補給金の支出に際しましても、生産費切下の努力により、これが節減に努めて参る方針であります。
 以上申述べました低位安定を目途とする物價政策にも拘わらず、農業パリテイ指数の上昇に伴い、近く主食の消費者價格を若干引上げる見込であり、又特別会計の独立採算制堅持のため、旅客運賃、通信料金についても或る程度の引上が不可避であります。尚又輸入物資に多する補給金が若干廃止される結果、延いては消費物資についても多少の價格改訂を余儀なくせられますが、国民経済自立のためには、消費を節約して蓄積を行わざるを得ず、而も國も、企業も、家計も、すべてが節約耐乏する以外に、自力による日本経済の再建は期し難いのでありまして、國民諸君におかれましては、この際耐えがたきを忍んで耐乏生活を克服せられるよう念願する次第であります。(「片山内閣の眞似をするな」と呼ぶ者あり)日本経済の眞の安定を期するための根本的な方策が生産の確保増強を図るにあることは、改めて申すまでもないところでありまして、これがため政府は先ず全企業、全勧労者の奮起を要望するのでありますが、かかる生産の増加も、合理的な経済運営の基盤の上に立つてこそ、初めて力強い経済発展の基礎たり得るものと信ずるのであります。(「社会党の眞似をするな」と呼ぶ者あり)この見地から政府は先に企業三原則の方針を明示し、今回重ねて九原則の線に沿う施策を講じて、企業の合理化を強力に推移し、合理化された基盤の上に健全な民間外資の道入を期待せんとするものであります。これを先ず價格の面から見ますならば、第一に石炭、電力等の基幹産業については、現在の價格を据え置き、その範囲内において收支相償う合理的経営を行い、所期の生産要請を充足すべきことの要求であります。從來これらの務業にあつては、生産を第一主義の止むを得ざる要請から、ややもすれば補給金、赤字融資等、政府援助に依存する傾向が続く、その経営に幾多の不合理且つ不健全な要素を内包しつつ今日に至つたのでありますが、今後は先ず経営の合理化を強行して確乎たる経済的経営を行い得る基礎を確立し、所期の増産を正常な経済的基盤の上に遂行せしめることこそ、日本経済の自立と健全化の第一歩をなすものでありまして、これに先ず企業三原則の線を強く貫徹しなければならんのであります。この結果行われる合理化は、相当熾烈なものがあると予想せられるのでありますが、経済の安定と自立達成のためには、かかる基幹産業が正常な計済的運営に立直ることが急務であると信ずる次第であります。而して石炭、電力等の基礎資材の價格が据置かれることと対照いたしますと、來年度において操業度の上昇が期待される製造工業については、相当経営上の余裕が生ずるものと認められますので、前に述べましたごとき物價政策に対應しまして、これに対しては企業合理化の見地から、輸入補給金の廃止に伴う輸入原材料の値上りを吸收せしめる外、價格調整補給金單價の削減、公定價格引下げ等の可能性につき、実情に應じた檢討を加えまして、物價の安定、コスト引下による企業合理化の推進に資して参りたいと存じております。殊に輸出産業については、熾烈なる國際競爭場裡に立ち向うべき合理化が当面火急の問題として要求せられるのでありまして、政府といたしましても爲替レート設定への一段階として、差当り四月一日から輸出の價格比率を四百二十五円で打切ると共に、爲替レート実施の際には輸出補助金はこれを全廃する方針の下に、企業の合理化を強力に推進して行く方針であります。
 次に資金の供給の面から企業の経営に及ぼす影響としての対策について一言いたします。前述のごとき強固なる均衡財政、健全金融方針の確立の結果、産業資金は主として蓄積資金の範囲内で賜わざるを得ないこととなるのであります。從つて企業に対しては、企業三原則の建前からも、赤字融資を行わないということは勿論、健全金融の方針の下に圧縮された一定の資金の枠内で、所要の増産と建設とを行うよう強く要請されることとなるのであります故に、企業は何よりも先ず生産費の切下による合理化の力強い遂行を要求せられるのでありますが、政府といたしましてもこれに應ずる資金確保の対策を講ずる所存であります。
 以上企業一般に対する施策とそのあり方を示したのでありますが、かかる施策遂行が、特に中小企業に及ぼす影響については、政府といたしましても重大なる関心を抱いておる次第であります。即ち中小企業が日本経済の発展に果すべき特殊の役割を自覚して、経営の改善合理化を促進し、前に述べました通り経済九原則の趣旨に副う努力を盡されるならば、政府は必ずや中小企業がその窮境を打開して日本経済に確乎たる地歩を占めることを信じますと共に、この線に沿う育成に努めたい所存であります。
 以上、経済安定の基本方策を強力に遂行する結果、今後における実質賃金の上昇は、労資一体の企業努力による生産の増加に俟つ以外にないのであります。言うまでもなく政府におきましても、日本経済再建のために、その担い手ため勤労者の生活安定が必要であるとの認識の下に、(「嘘つけ」と呼ぶ者あり)流通秩序の確立、生活必需物資の確保につきましては、一段と強力に努力を傾ける所存であります。從來の赤字融資、国庫補給金の支出、價格の引上により甘やかされた経済がそのまま推移いたしますれば、その結果はインフレーシヨンの進行を激化せしめ、日本経済の自立と安定は百年河清を待つにひとしく、勤労者の生活は不断に脅かされ、かくしては勤労者の眞の利益たり得ないと信じ、ここに政府は断乎として口に苦き良藥の施策を実施せんと決意いたしておる次第であります。(拍手)企業及び勤労者各位におかれましては、この試煉と耐乏と勤儉力行の実踐を経てこそ、日本経済の再建と生活水準の向上が期待されるものであることを理解されまして、政府の微衷に御協力賜わらんことをお願いする次第であります。(拍手)尚、政府におきましては、かくのごとき施策強行により不幸にして生ずることあるべき失業者の発生に対しましては、今後発展して行く産業、殊に輸出産業部門及び援助資金の活用等による新投資事業等に吸收いたしますと共に、失業保險等の円滑なる運用と充実につきましても、國力の許す限りこれに努力して参る所存であります。
 今や日本経済の重大なる岐路に立ち、政府は健全なる労働組合の発展を希求いたしますと共に、勤労者諸君の自覚と努力に多大の期待を寄せている次第であります。ひるがえつて農業の面を見ますれば、その生産を増強することが経済安定の基盤を確立し、食糧の輸入を減少する見地からも、現下の日本経済に取つて根本的な重要性を持つており事実に鑑みまして、この際、農民諸君の食糧増産への一層の努力を要請する次第であります、終戰以來の未曾有の食糧危機を切り拔けて参りましたのも、主として農民諸君の努力に負うところが多く、誠に感謝に堪えないところでありますが、政府は更に供出制度の効率化と公平化とを図るための施策を講ずることとし、すでに実施しました昭和二十四年産主要食糧の事前割当による生産と供出の完遂を期すると共に、それ以上の増産と供出とを期待することとした次第であります。政府といたしましては、農業生産力の増強に欠くべからざる土地改良等、生産條件の改善につきましては、國力の許す限りその促進につき今後の努力を期すると共に、前述のごとき物價水準維持により農家の経営と家計への影響を極力阻止し、肥料その他再生産資材を可能な限り確保する措置を講じ、(「嘘ばかり言うな」と呼ぶ者あり)又米麦等の價格につきましては、昨年における價格決定後の農業パリテイの上昇分についても迫拂をする等、農業再生産確保の見地から所要の措置を取る方針であります。併しながら農民諸君も又徒らに政府の施策にのみ頼ることなく、消費を節約し、農民みずからの手で、みずからの組織によつて資本を農業内部に蓄積し、これを生産的投資に振向けて、將來の農業生産の維持発展への萌芽を育成して行かなければならんと存じます。
 次に、輸出振興対策について申上げます。以上主として國内経済の安定施策について申述べ來つたのでありますが、日本経済の現状、特に貧困なる國土資源の下に過剩なる八千万の人口を擁し、米國からの巨額の援助資金及び物資によつて辛うじて現在の生産水準及び生活水準を保ち得ておる現状に鑑みまして、日本経済の自立と復興を期しますためには、輸出の振興と、これによる経済循環の拡大を図ることが、刻下最大の喫緊事であります。竹馬経済の汚名を拂拭し、自力による経済の再建を図りますためには、國内需要はできるだけ節約し、コストの引下に努力し、輸出の伸展、貿易外收入の増大を期するため、政府におきましては輸出最優先原則を確立し、輸出用資材の優先確保を図りますと共に、貿易金融の円滑化等に努力を拂いつつある次第であります。尚、貿易手続の簡素化を行い、民間貿易の拡大を図り、正常貿易の復帰に努めておりますと共に、輸出市場の積極的開拓及び貿易條件の改善等、対外的関係の調整を懇請いたしておる次第であります。政府におきましては、以上のごとき輸出最重点方針を採用し、これがためにはあらゆる努力を傾注いたす所存でありますが、單一爲替レートの設定に際しまして、輸出補助金の交付による輸出助成措置は、國際的にも許容せられないところであり、從つて日本経済が激烈なる世界経済の競爭場裡に伍して、その地歩を確保するためには、峻嚴なる企業合理化の推進、科学技術の振興による技術水準の向上に努めることが絶対の要請となつて参つたわけでありまして、輸出産業関係業界の特段の努力を強調するゆえんであります。(「講演会と違うぞ」と呼ぶ者あり)
 以上申述ベましたごとく、企業の合理化と國民生活の耐乏とを要請する施策が強力に実施されます結果、購買力は一般に相当圧縮され、有効需要の減退が予想される共に、物資の需給状況も漸次改善されつつある状況に鑑みまして、この際物資の割当配給、價格統制等、物の面からの経済統制は極力これを簡素化すると共に、縮減された領域に対しては実効ある取締を行い、流通秩序の確立に資する所存であります。而して前述のごとき企業合理化の推進に当りましては、何よりも企業の自主性と経済性を回復せしめる施策が要請せられるのでありまして、この面から、ややもすれば徒らに煩瑣に堕するがごとき統制はこれを撤廃いたすと共に、必要なる統制の実施に当つては、競爭原理の導入を目途とする強力性ある方策を工夫して参りたいと存ずる次第であります。今般配給公團制度を整理し、指定生産資材の品目を減少せんとし、蔬菜類の配給統制を撤廃いたしましたのも、以上のごとき見地に基くものでありまして、又懸案の料飮店問題につきましても、実情に應じた再開措置が講ぜられる予定であります。(「耐乏生活どうした」と呼ぶ者あり)
 以上経済安定九原則の趣旨に則りまして、先ず國内経済の安定措置を断行し、この経済の安定の基盤の上に輸出の振興を図り、日本経済復興の萠芽を培つて参りますならば、爲替レートの設定も又早期に実現し、これを堅持する見通しの下に、内外の信用を得て、民間外資の導入も促進せられ、雇傭機会は増大し、生活水準は向上し、日本経済の自立は達成せられるであろうことを確信いたすものであります。かくしてこそ初めて國際社会の友誼的な一員として認められ、独立と平和への途は開かれるものと信ずるのであります。(「嘘をいうな」「矛盾だらけだ」「默つておればいい氣になつている」と呼ぶ者あり)
#25
○議長(松平恒雄君) 池田大藏大臣。
   〔國務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#26
○國務大臣(池田勇人君) 我が國民経済は、敗戰による國土の荒廃、生産規模の縮小に加えまして、財政に基因するインフレーシヨンの結果、極度の混乱に陷り、今日まで連合國の援助により辛うじて國民生活を維持し來つたのであります。即ちこれを財政について見ますれば、一般会計予算は從來も一應の收支均衡を得ておつたのでありまするが、各特別会計及び復興金融金庫等を含みまする政府関係諸機関を通じて見た場合におきましては、公債及び借入金は年々増加し、巨額に上る復興資金の大部分は日本銀行の引受によつて賄われ通貨増発の主因となつて來たのでありまして、今、昭和二十三年中の実績を見ましても、千三百億円を超える通貨増発高のうち、八割以上が財政に基因するものであつたのであります。このような状態を一変するのなければ、財政は將來長くインフレーシヨンの根源となり、眞の通貨の安定は百年河清を待つに等しいものであります。他方、生産の復興状況は最近表面的には好調を辿つておりますが、その実体は毎年数億ドルに上るアメリカからの援助の賜であつて、我が國民経済自身の力によるものではなく、むしろ徒らに生産の復興を焦慮するの余り、資金の濫費を招き、インフレーシヨンを高進せしめると共に、他方不自然且つ煩瑣なる統制によりまして、いわば温室経済的な保護に堕して、企業の自立心を喪失せしめ、我が國民経済は年と共に國際経済の圈外に残されるに至つたのであります。こうした状態を継続することはもはや許されません。昨年末マツカーサー元帥が述べられましたように、経済的に眞の自立がない所には永遠に政治の自由と独立とは期待し得ないのであります。又表面的な生産上昇に目を奪われ、ともすれば健全な生産の基礎と資本の蓄積とを疎かにする結果は、我が國の企業を弱体化しまして、將來各國企業との自由競爭場裡に立ち得ないものとする虞れが多く、我が國百年の大計として採り得ないところであります。
 以上の観点に立つて、我が党内閣は今回の予算案を編成するに当り、從來の一時を糊塗するがごとき方針を一擲したのであります。即ち第一に、一般会計、特別会計並びに政府関係諸機関を通じて、眞に総合的に予算の均衡を図り、インフレーシヨンをこれ以上進行せしめないよう、断然これを抑制せんとするものであります。第二に、非経済的な放漫なる生産第一主義から轉じて、健全にして効率的なる生産の基礎と資本の蓄積とを長期に亘つて築き上げるため、國民の耐乏と節約とによる各般の施策を講ずると共に、米國からの援助はこれを明確に区分して、経済復興のため最も効率的な活用を図ることといたしたのであります。第三に、輸出補助金を廃止する等の措置によつて、我が國内経済が除々にではありましても國際経済への参加に向つて一歩々々着実に前進することを目途といたしたのであります。
 次に只今の三大目的が今回の予算に如何に具体的に表現せられたかについて説明いたします。
 第一に、財政インフレーシヨンを排除するため、すべての政府支出を收入に均衡せしめるは勿論、進んで既存の債務の減少を図つたのであります。このため経費のすべてについて極力圧縮に努め、新規事業を取止めることはもとより、既定の経費につきましても、眞に緊急止むを得ないものの外はこれを削減し、而もこれら歳出は、すべて租税を大宗とする実質的な國庫收入を以て賄うことといたしました。
 次に予算の実行に当りましては支出を極力節約せんとする所存でございます。即ち從來は、歳出予算に計上せられた金額は当然全額を使用すべきものと考え、その合理的な節約について十分な配慮が欠けておつた嫌いがあるのでありますが、今回はこの予算に計上せられた金額と雖も、その使用に当つて嚴重な審査を励行して、年度末にはでき得る限り多額の剩余を残し、以て國民の租税負担の軽減に資したいと考えておるのであります。(拍手)
 第三に、政府みずから節約の範を示すため徹底的な行政整理を断行いたします。思うに行政機構が厖大な組織と人員とを擁しておる結果、國民の租税負担を不当に増大する一方、しばしば経済統制の名の下に無用且つ煩雜な拘束を國民経済に課し、活溌なる経済活動を阻害し、且ついわゆる官僚独善の氣風を助長し來つたのであります。政府は今回断然行政の規模を縮小合理化し、冗費を節約すると共に、かかる幣風を一掃せんとするのであります。第四に、長期に亘つて健全なる生産の基礎と資本の蓄積とを築き上げるためには、一方において、從來ややもすれば経済界に対し徒らな安易感を與えておつた復金の貸出を原則として停止することといたしました。他方において画期的な措置として、千七百五十億円に達すると見込まれる米國からの対日援助を、特別会計として明確に区分経理せんとするものであります。即ち從來米國からの援助は、極めて曖昧な姿で輸出入物資に対する実質上の價格差補給金などに漫然使用せられておつたのでありますが、今後はこれを内外に明確にし、経済再建に必要なる方面に対する長期資金の供給、國債等の償還に活用して、市中金融の緩和に資したいと存じます。我が國民経済自立のために尚暫く米國からの援助を必要とする現在、今回の対日援助資金に関するこの措置は、援助の趣旨を最大限に実現するがための最も時宜に適したものと信ずるものであります。
 第五に、今回の予算案は我が國民経済を國際経済へ参加せしめるために具体的な一歩を進めんとするものであります。即ち政府は輸出に対する補助金を一切撤廃して、温室的保護を排し、輸出産業をして徒らに政府に頼ることなく、將來國際場裡における自由競争に堪え得るよう、企業の整理合理化を促進せんとするものであります。又輸入補助金及び價格調整補給金につきましても、これをすべて予算面に計上すると共に、極力その削減に努めました。尤も現下の不安定なる國民生活、労働條件等に鑑み、現行物價水準を急激に変更することは適当でないと考えられ、一挙に大幅に削減をいたし得なかつたのでありますが、極めて近き將來に予想せられる單一爲替レートの設定と相俟つて、政府は成るべく速かにこれらの補助金を撤廃し、以て我が國内経済が自力により國際経済に参加する日の早からんことを期待するものであります。
 以上の方針に從つて作成せられた一般会計予算は、歳入総額七千四十九億余万円、歳出総額四千四十六億余万円であります。その内容の主要なるものにつきまして御説明いたします。
 先ず歳出予算のうち終戰処理関係諸経費は一千二百九十六億円余でありまして、前年度に比し事業量において相当な減少となつておるのであります。これは終戰処理費に含まれておる建設工事の縮小その他各種経費の節約に基くものであります。次に公共事業費は五百億円余でありまして、前年度に比しその全体の事業量において若干の減少となるのでありまするが、その使途に格別の考慮を加え、最も喫緊な方面に重点的に使用することによつてその不足を補いたいと存じます。地方配付税配付金五百七十七億円余は、地方財政の現状に鑑み、この金額は必ずしも十分とは申し難いのでありますが、中央、地方を通ずる財政の総合的調整を図るため、この程度の金額を地方公共團体に配付することといたしました。次に出資及び投資金八百十八億円余は復興金融金庫の既発行債券の償還に充てるもの三百億円、貿易特別会計の資金に充足するもの四百億円等を包含しておるのであります。次に價格調整費は二千二十二億円余に上り、前年度六百二十五億円に対し大幅の増加となつておるのであります。これは從來貿易資金の操作によつて賄われておつた実質上の補給金を價格調整費中に計上したことと、價格補給金の対象となる物資の生産量の増加を見込んだことによるものであります。併しながらその範囲及び單價については極力これが圧縮に努め、安定帶物資に対する本年度分千二億円、前年度からの繰越分百五十億円、輸入物資補給金八百三十三億円等を計上いたしたのであります。尚今回の予算の編成に際し、物價については旅客運賃、郵便料金及び食糧について若干の引上を予定しておりますが、物價水準としては現状を堅持することを建前といたしております。
 次に歳入について説明いたします。今回の歳出予算は我が國民経済に相当重い負担を負わせることになるのでありますが、歳入歳出の実質的均衡を図ることが絶対の要請である現在、その財源はすべて租税その他の実質的な收入を以て賄うことといたしました。なかんずく租税收入は五千百四十六億円余に上り、全歳入中に占めるその割合は七三%となり、前年度に比し相当増加しておるのでありまするが、本年度予算編成に当りましては、原則として現行の税制をそのまま踏襲することといたしました。ただ取引高税につきましては、特に納税方法等につきまして大幅な改正を行い、世上最も非難の多かつた印紙納税の制度を廃止すると共に、非課税範囲を拡張し、又一定額以下の零細な取引高については免税することといたしました。これにより取引高税の納税者数は約三十万人程度減少することとなり、本税の納税は今後円滑に行われるものと信じます。尚、新たにガソリン税を創設し、歳入増加の一助といたした次第であります。飜つて我が國現在の税制を檢討いたしますると、國民の租税負担はすでに相当重く、且つ制度そのものにつきましても、現在の経済情勢の推移に十分適應しない嫌いがあるのであります。從つて政府としては徴税事務の運営を改善し、できるだけ適正な課税を行うことに全力を傾注する所存でありまして、納税者各位の協力によつて租税の徴收効率の向上が実現されるならば、歳出の実行上の節約と相俟つて、近き將來成るべく速かな機会に是非共税制の合理化を図り、國民負担の軽減と公平化を行いたいと考えておるのであります。次に煙草專賣益金は千二百億円を計上いたしました。本年度は約六百六十億本を製造する予定であります。又政府はこの際國有財産の賣拂を促進し、連合國軍の解除物件につきましても、賣却の可能なものはこの際極力民間に賣却することとし、以てこれらの物件の経済的効用を高めると共に、歳入増加を図ることといたしたのであります。尚國有鉄道事業及び通信事業の各特別会計については、現行鉄道運賃及び郵便料金を据え置くとしますれば、鉄道二百三十五億円、通信四十九億円の收入不足を生ずる見込でありますので、本年五月から旅客運賃について約六割、郵便料金について平均約四割の引上を行い、以てこれらの会計の独立採算制の確立を期することといたしました。
 先に申述べました通り、眞に総合的に財政の均衡を確保する結果、從來と異なり、政府の財政需要が金融面を圧迫することは殆んど解消し、今後は金融の自主的活動が大いに期待されることになつたのであります。而して金融面において最も意を用うべきは、通貨の安定と金融の正常化を期することであります。これがためには日本銀行の信用造出による資金供給は極力これを避けねばならないのでありまして、新らしい状況の下における信用統制については、眞に國民経済全体の要請に應じ得るような措置を考究する必要があるのであります。即ち我が國民経済の自立復興を図るためには、産業資金の需要は依然相当巨額によるものと考えられまするのみならず、輸出振興、正常取引の増加に伴う運轉資金の供給を確保することも亦肝要であります。このため一面において企業自身が自己の信用によつて所要資金の蓄積に努力することは勿論、國民の耐乏と節約により、貯蓄の増加を図り、かくて蓄積せられた資金を経済再建のため眞に必要とする面に限り効率的に配分せられるよう一段の努力を拂う所存でございます。特に長期設備資金の供給については、復興金融庫が從來の融資方式を廃止することとしたしました関係上、この方面の資金供給に対する一般金融機関の積極的活動を促進すると共に、農林金融、中小商工金融等については、その特殊性に鑑み、必要な資金の供給に遺憾なきを期したいと存ずるのであります。又政府は今回新たに國民金融公社を設立し、一般の金融機関から資金の供給を受けることが困難な者に対し、生業資金の融通を行わしめることにいたしたいと考えております。又政府は一日も早く証券取引所の再開を行うことができるよう努力いたしております。尚このような情勢の下における金融機関の使命は極めて重大でありますので、この際私は金融機関としてはその任務の公共性を自覚し、その運営に万遺憾なきを期するよう特に切望する次第であります。
 最後に私は、ここに國民各位に対し敗戰の日、即ち昭和二十年八月十五日、その日を回想されんことを切望いたします。(発言する者多し)当時國民のすべては前途の希望を失い、祖國の滅亡を憂えたのであります。僅々三年半余にして、とにもかくにも今日の程度にまで経済復興をなし遂げようとは、当時何人が予想し得たでありましよう。(「ノーノー」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)冒頭に述べました通り、我が國民経済が今日の状態を取戻したことは(「それが官僚の言うことだ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)連合國、なかんずく米國の援助によるものであります。殊に我が國は未だ講和條約の締結を見ざる状態にあるにも拘わらず、米國はこれに対して連合國であつた西ヨーロツパ諸國に対すると全く同樣の援助を供與いたしておるのであります。(発言する者多し)この事実を我々は襟を正して再思三省すべきであります。(拍手、「公約はどうした」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)同時に先に引用いたしました通り、経済上の自立なくして眞の政治の自由と独立とは望み得ないのであります。(発言する者多し)我々日本國民がみずから額に汗することなく、徒らに他國の援助に頼つて徒食するとしましたならば、我々は祖先と子孫とを辱しめるものと言わなければなりません。(拍手)諸君、私は國民各位が本予算を通じて闡明せられました政府の施策を十分に了得せられ、耐乏と勤儉を通じ全幅の協力を寄せられんことを(「寄せられるようにしろ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)固く信じて疑わぬものであります。(拍手)
#27
○議長(松平恒雄君) 只今の國務大臣の演説に対しまして質疑の通告がございますが、この質疑は明日に讓りまして、本日はこれにて延会いたしたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#28
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。本日はこれにて散会いたします。
   午後四時五十二分散会
     ―――――・―――――
○本日の会議に付した事件
 一、常任委員辞任及び補欠の件
 一、中共地区引揚問題並に本年度一般帰還者の受入態勢に関する緊急質問
 一、日程第一 國務大臣の演説に関する件
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト