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1949/05/07 第5回国会 参議院 参議院会議録情報 第005回国会 本会議 第22号
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1949/05/07 第5回国会 参議院

参議院会議録情報 第005回国会 本会議 第22号

#1
第005回国会 本会議 第22号
昭和二十四年五月七日(土曜日)
   午前十時三十一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第二十一号
  昭和二十四年五月七日
   午前十時開議
 第一 國務大臣の演説に関する件(第二日)
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(松平恒雄君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(松平恒雄君) これより本日の会議を開きます。
 この際お諮りいたします。市來乙彦君及び町村敬貴君より内閣委員を、鈴木直人君及び岡田喜久治君より他方行政委員を、小串清一君より人事委員を、半田逸郎君より経済安定委員を、新谷寅三郎君より逓信委員を、森田豊壽君及び田口政五郎君より労働委員を、それぞれ辞任いたしたい旨の申出がございました。いずれも許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。つきましては、その補欠として、内閣委員に新谷寅三郎君及び鈴木直人君を、地方行政委員に鎌田逸郎君及び森田豊壽君を、人事委員に田口政五郎君を、経済安定委員に町村敬貴君を、逓信委員に市來乙彦君を、労働委員に岡田喜久治君及び小串清一君を指名いたします。
     ―――――・―――――
#5
○議長(松平恒雄君) 日程第一、國務大臣の演説に関する件(第二日)、昨日に引続き労働大臣の説明に対する質疑を続行いたします。先ず昨日の中野重治君の質疑に対する労働大臣の答弁を求めます。鈴木労働大臣。
   〔國務大臣鈴木正文君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(鈴木正文君) 昨日の中野議員の御質問に対してお答え申上げます。
 第一は労働組合法、労調法の改正案などと、その他の労働省が目下提案しておる諸法案との関係はどうであるかという御質問に併せて、緊急失業対策法の内容についての御意見であつたと思いますが、申上げるまでもなく、前二法、即ち労働組合法及び労調法の改正案は、繰返して申します通り、日本の労働組合の民主化、自由建設的な性格を強化するというところにその重点が置かれておるのでありまして、その外の労働省から目下提案しておりまするところの諸法案は、いずれもそれぞれの角度において、例えば失業保險法の一部を改正する法律案におきましては、労働者及び……労働者諸君だけではありません、一般失業者をも加えまして、失業状態にある人たちの立場を擁護するという角度から、又昨日御指摘にありました緊急失業対策法におきましては、同じく失業状態にある人たちに対して段階的な失業救済事業を展開して対処して行くという方針をとつておるのでありまして、根本におきまして労働者、働く人たちの立場を擁護するという面におきましては共通的な性格を持つておりまするし、決して両者相反し矛盾するというふうな関係には立つておらないと思うのであります。尚、緊急失業対策の内容は、どぶ浚いとか或は都市の清掃事業等に過ぎないのではないかという御意見もありましたけれども、それらもありまするし、更にそれに知識階級の調査事業或は補導事業というふうなものも併せましたところの諸事業は、すでに、今年度以後の緊急失業対策法による事業としてでなく、昨年度まで労働省所管の公共事業の一部として、すべて実行しておつたものでありまして、新らしく緊急失業対策法ができ上りますれば、これらの事業をも継承いたしますけれども、更に情勢に應じて幾多の都市中心の事業を展開して行くという性質のものでありまして、單にどぶ浚い或いはそれに類するような仕事のみを以て終始しようとするものではないのであります。
 それから労働組合法、労調法の中で、法文を簡素化したというけれども、重要な部分を而も労働者の諸君にとつて不利な形において削除しておるではないかという御意見であり、二三の実例をお挙げになつたと思いますが、その中の第一の労調法四十條を削除したのは云々という御質問は、これは実は削除しておらないのであります。この中の主要な部分は、不当労働行爲を行なつたことによつて使用者側がこれに差別待遇をしてはいけないという部分は、別に改正労働組合法の方に、そのまま、それが盛られておるのでありまして、消滅してはおりません。それから発言に対して云々という部分は、そのまま労調法の中に残つておるのでありまして、労調法四十條は実質的に削除されてはおらないのでありまして、法律の挿入個所を変えたのみであります。それから二十五條、これを削除したということは怪しからんというお話でありましたけれども、これには賛否両論があつたのでありまして、むしろ公聽会におきましては、中に挿入されておるところの平和條項という性質を持つたこの條項に対しまして、労働組合側から猛烈な反対があつたのでありまして、むしろ使用者側から、これを保存すべきである、若しくはもつと明確にして保存すべきであるという意見が強かつた條なのであります。この点につきまして、この平和條項的な性格を持つた一面をも含めて削除いたしましたことは、これらの平和條項という問題は將來別の角度で更に再吟味されることがあるかも知れませんけれども、少くとも今日までのこの程度の平和條項的の條文においては、運用上何らの実効なく、むしろこれは労働教育の面から措置して行くのが適当である、こういう考え方の下に、使用者の方面のその削除に対する反対はあつたのでありまするが、むしろ労働組合の強い要望の線に沿つてこれを削除したというのが私共の考え方であり、推移であつたのでありまして、この点について中野さんあたりから労働者の不利の形において削除したのではないかという御指摘は不思議に思えるのであります。(拍手)
 更に組合の許可制を云々というお話がありましたが、現行法の方では、その性格が強いのでありまするが、昨日提案の際にも御説明申上げました通り、今度の改正法におきましては、これらの方針もすべて改めまして、一切自由設立の主義を徹底しておるのでありまして、この点につきましては法文を全体に亘つて読んで頂けば御了解が得られると思います。
 労働委員会を労働大臣の所轄にしたという点が指摘されましたけれども、これは形式的に國家行政組織法との関係で、敢えて労働委員会のみならず、各省のこういつた性格のものはその外局となるというふうな関係から、單に國家行政組織法との関係から、そうしたのに過ぎないのでありまして、(「國家行政組織法がいけないのだ」と呼ぶ者あり)労働委員会の運営自体につきましては、依然として法の基くところに從つて、労働委員会は独立の見解の下に、独立の権限を持つて行動するのでありますから、何らその独立性を侵害してはおらないと思うのであります。以上大体お答え申上げます。
   〔中野重治君発言の許可を求む〕
#7
○議長(松平恒雄君) 再質問ですか。
#8
○中野重治君 そうです。
#9
○議長(松平恒雄君) 時間は一、二分ほか余つておりませんから、その範囲ならよろしうございます。
#10
○中野重治君 ここで質問をします。(「登壇」「そこで十分じやないか」「そこじや聞えない、上に上つてやれ」「どつちかはつきりせい」と呼ぶ者あり)
   〔中野重治君登壇、拍手〕
#11
○中野重治君 今の労働大臣の答えが一晩考えた挙句であることは私は極めて不満足です。(「余計なことは言わなくてもいい」「時間がない」と呼ぶ者あり)時間がありませんから今の労働委員会の問題について再び質問します。
 こういう答弁を一晩寢た挙句する、そういう労働大臣が労働委員会を行政的な機関に引入れようとすることは、今ここで述べられましたが、そのことこそ日本の労働組合運動に対する、労働委員会を官僚側の盾としてのフアツシヨ化、産報化の復活の方式ではないかという質問に対する今の答えはどういうことになるかということをお尋ねします。(拍手)
   〔國務大臣鈴木正文君登壇、拍手〕
#12
○國務大臣(鈴木正文君) 御質問の趣旨が明確に分りかねる点がありますけれども、(「そうだ」と呼ぶ者あり)先程も申しましたように、労働委員会が労働大臣の管轄云々と言いますのは、單に形式的な國家行政組織法との関係に過ぎないことは、さつき申した通りであります。又独立の立場においてその機能を発揮するという点は、單にこの法令を冷靜に全面的に読んで頂けば十分に分つて頂けると思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)
#13
○議長(松平恒雄君) 早川愼一君。
   〔早川愼一君登壇、拍手〕
#14
○早川愼一君 私は緑風会の一員といたしまして、政治的には嚴正中立の立場から、又終戰以來、今日まで労資の問題につきまして直接掌理に当りました実感に基きまして、この際政府に対しまして質問申上げ、明らかにして置きたいと思うのであります。
 先ず第一に、この法案が國会に提出せられるまでの経過についてであります。昨日の提案の御説明によりますと、昨年の十二月にマツカーサー司令部の示唆を受けられまして、労働省は本法案の改正に着手せられた。二月の十四日に第一次試案が発表になりました。第一次試案は八章六十七ケ條でありましたが、極めて廣汎なものでありまして、今回提案になりましたのは三章三十三條、單に形の上からだけ申すわけではありませんが、我々の受ける印象は非常に後退されたという印象を受けるのであります。(「それが中立か」と呼ぶ者あり)尚、試案の発表の際に、改正の主要な題目として四つの項目を挙げておられるのであります。その第一は、組合の民主化、自主性、或いは責任性の確立、第二は、團体交渉の慣行と手続の確立、第三は労働委員会の強化、第四は爭議行爲と公共の福祉との調和というような、四つの主要な題目を挙げられておるのであります。今回の改正案によりますと、このうちの主要な部分がすべて省かれておるのであります。只今も大臣は、基本方針には変りはない、即ちその基本方針は労働組合の自主的、民主的責任性の確立という方面に重点があるのである、こういう御説明であります。併しながら、これは從來もいろいろ労働省或いはその他の方面から教育の部面に随分盡しておられるのでありまして、すでに通牒等も行われ、又その一部についてはすでに実行を命ぜられておるのであります。むしろ今日の事態から申しまするならば、今日労働紛爭が起きました場合に、一体どういうことが行われておるかということを果して認識せられておるのかどうか。私共の感想によりますというと、実は團体交渉の面におきまして、いろいろ現在の法規が不備欠陷がありますために、頗るこれを一部の過激なる労働組合の指導者に濫用されておる点が多々あるのであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)若しその実例を挙げろと言われるならば非常に沢山あるのであります。ここに政府の発表せられました事件だけでも、最高裁判所の刑事部で発表になつております労働関係の事件の判決集によりますというと、昭和二十三年の六月までに、有罪と決定されておるものだけでも、暴力行爲三十二件、傷害十三件、業務妨害十一件、不法監禁八件、住居侵入七件、建造物侵入五件、公務執行妨害四件、強要二件、業務上横領二件、暴行二件、名誉毀損、殺人、脅迫各一件、かように多くの事例が今日実際に行われておるのであります。(「使用者側のやつはどうした」と呼ぶ者あり)然るに昨日もこの議場で、現在の第一條の第二項でありますか、いわゆる刑法の三十五條の規定が労働組合の正当なる行爲については適用される、即ちこれを言い換えますというと、労働組合の行爲はどういうことをやつてもよろしいのだというように專ら言い触らされておるのであります。又それが実際の実情なのであります。かようなことに対して(「どこの國でだ」と呼ぶ者あり)昨日一議員から、この條文は撤回すべきものである。成る程この條文は宣言的な法文でありますので、必ずしも必要のないことでありますが、かくのごとく今日はこの條文すら惡用されておるのであります。かような実態を基にいたしまして、現実を直視するならば、今回の改正法案が提出されることは極めて当然と言わなければならぬと思うのであります。(拍手、「賛成演説か」「それが質問か」と呼ぶ者あり)そこで、かように現実を直視し……労働組合の問題はイデオロギーの問題ではありません。(「賛成々々」と呼ぶ者あり)現在の事態を如何に解決するかということが根本にあるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)そのような観点からいたしますれば、今回の労働者がとられました手続については、私は遺憾ながら賛成いたしかねるのであります。なぜかと申しますというと、大体労働立法に対して、内閣が基本方針を決めずに、いきなり労働省に事務的な立案を命ぜられたということは如何なる理由によるのでありましようか。(「総理大臣を呼べ」と呼ぶ者あり)そのために先の試案と今回の提出案との間に非常な後退或いは違つたところができましたことは、労資双方に非常な心理的な影響を及ぼすのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)即ち今後の労働紛爭に対しまして、かような影響を與えたことにつきまして、果して政府は今後の労働紛爭が円満に解決できる御自信があるのかどうかということを、先ず第一にお伺いいたしたいと思います。(「そうではないよ」と呼ぶ者あり)
 次にお伺いしたい第二点は、経済九原則の実施と本改正案との関連に関することであります。経済九原則が実施せられましてその効果を挙げて参りますのには、その前提といたしましては、労資間の安定関係が維持せられ、その紛爭が終熄せられるということでなければならんのであります。この点に関しまして九原則の指令のマツカーサー書簡の中には、目的を弁えぬところの労働紛爭、破壊的な思想の圧迫の結果による復興の妨害を除去しなければならぬということが示されておるのであります。そのために、自由の社会に與えられておるところの特権と、自由の一部の一時的な放棄も亦止むを得ないということが示されておるのであります。このように九原則の指令は、今後の労資関係につきまして、生産増強という線に沿うて協力体制へ強力に推進せられなければならぬということを示しておるのであります。その結果といたしまして、労資関係はここに新たな轉機をいたさなければならぬことは何人も認めざるを得ないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)そこで、経済九原則の実施によりまして、労働法規も亦この線に沿つて改正せられなければならぬと思うのであります。特に私共が強調いたしたいのは、この原則が実施せられない過去において、或いは労働協約により、或いは経営協議会、或いはストの脅威によつて、不当に奪われておる企業権の拘束を解放するということが先ず以て必要なりと思うのであります。申すまでもなく九原則は、企業の経営に対しましては誠に峻嚴なる制約條件であります。この原則の下におきましては、何人も企業経営に当りまして、好むと好まざるとに拘わらず、企業の整備、合理化をして行かなければならぬことが要求せられておるのであります。この点に関しまして、私供が考えますのは、労資間において成るべく爭議に訴えないようにおのおのが平和的な安定條件に立つように、爭議が激発しないように、予め労資双方の間において平和義務を守るということが最も必要なのではないかと思うのであります。(「平和だけでは生産が挙らない」と呼ぶ者あり)從來、労働協約の中にかかる平和條項を設けるということは、即ち爭議権の剥奪であり、或いは抑制であるということを言われておるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)併しながら、これは決してそういうものではありません。(笑声)往々にして直接交渉をいたしますときには、双方が或るときには面子に囚われて、その勢いのために爭議に突入することも間々あるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)かような意味におきまして、(拍手)第三者の調停を予め予期して置いたり、或いはその他いろいろの方法を設けて、勢いによつてストに突入するというようなことにならぬように労働協約の中に設けて置く必要があると思うのであります。(拍手)これは決して爭議権の剥奪でもなければ制限でもないと思うのであります。(「さよう」と呼ぶ者あり、笑声、「その平和條項を削つたんだよ」「労働組合法を作つた者は黙つておれ」と呼ぶ者あり)
 第三には、これはたびたびここに問題になつておりまする公共の福祉をストの惨禍から救うということであります。この点に関しましては、少くとも今日経済再建に不可欠な基幹産業は、公益事業にこれを含めまして、この部門の産業平和を絶対に確保するということが、そういう措置を採ることが急速に講ぜられなければならぬと思うのであります。然らざれば折角の経済再建計画も遂には根柢から覆えされることになると思うのでありますが、これを要するに、経済九原則が実行せられるその面から見まして、今回の改正案がこれで十分だという政府のお考えでありますか。その御所信の程をお尋ねしたいのであります。
 質問の第三点は、現行の法規が頗る抽象的で概括的である、そのために惡辣な過激なアジテーターのために非常に利用されておるということを申上げたいのであります。(「何がアジテーターだ」と呼ぶ者あり)法規の中にも誠に解釈に苦しむことが沢山あるのであります。で、このために政府はしばしば通牒或いは解釈規定をお出しになつておるのであります。つい最近、檢務長官の通牒によりますというと、現行法の第一條第二項の正当なるものについての解釈規定があるのであります。然るにこの通牒と今回の暴力の行使という通牒との関係におきまして、私共は現在の規定は未だ十分でないのみならず、暴力の行使は正当なものでないという御解釈が正しいとするならば、或いは又暴力以外のものは何でも正当であるというふうに解釈されるのであります。この点は、政府はどういうお考えでありますか。或いは又かねて労働省は次官名を以ちまして、労働協約並びに労働組合に関して指導要領をお出しになつておりますが、その中には随分法規としてお採り上げになるべきものが多々あるように思うのであります。これらの通牒と今回の改正法規とは如何なる関連を持つておりまするか。又何故通牒で明らかにされておることを、法規の上に、はつきり規定されないのであるか。これが私の質問の第三点であります。
 尚この際、特に條文について問題を明らかにして置きたい点が二三ございますので、これを追加して御答弁を願いたいと思うのであります。それは先程申しました第一條第二項の正当性の限界がどういうものであるか。但書で暴力の行使のみを明記してありまして、その他の行爲が正当であるかのごとき解釈が採られるのでありますが、この点に関する政府のお考えを質して置きたいと思います。尚その他各條につきまして、正当という文字が方々に散見するのであります。特に第八條の損害賠償の免責について、正当なるものということがありますが、これは一体過去においていろいろ問題になつておりました生産管理を含んでおるのかどうかということも、この際明らかにして置きたいと思うのであります。それから團体交渉の拒否に関する規定でありますが、それは第七條の第二号に、ここにも正当な理由のある場合には團体交渉を拒否し得ることがあります。併しこの正当な理由というのは如何なる意味を含んでおりますか。試案には可なり詳細にこれが規定してあるのであります。この点を明らかにする必要があると思うのであります。尚、昨日も問題になつておりましたが、專從者の給與の問題であります。このことは試案には明らかに專從者の給與の問題が謳つてありまするが、今回の改正案によりますと、使用者の経理上の援助を受けるものというようなことになつておるのであります。かように不分明な点が多々ありますことは、今後の労働紛爭の上において、決して好い結果を來さないだろうということを甚だ恐れるものであります。これを以て私の質問を終ります。(拍手)
   〔國務大臣鈴木正文君登壇〕
#15
○國務大臣(鈴木正文君) お答え申上げます。
 第一に、この最終案は著しく最初の試案よりも後退したのではないかという御質問でありましたが、これはそれぞれ見る角度によつていろいろの相違があるのであります。私共は各角度からの幾多の批判をこの最後案に至るまでに受けたのでありまするが、昨日も申上げました通り、率直に公聽会及び現在の日本の労働情勢というものをも考慮いたしまして、そうしてこの最終案にまで到達したのでありまして、最初からこの改訂の根本の原則として掲げて來たところの組合の民主化、團体交渉のよき慣行の確立、それから労働委員会の強化、それから公共の福祉との調和という、この四つの点につきましては、決して後退もしておらないし、終始この四つの点は堅持して、最終案にもこの点は十分に盛り込まれておると確信しておる次第でございます。それから暴力的な行爲、その他のものについても御質問がありましたけれども、これは最終の、正当なるもの及びその解釈という御質問のところに包括されると思いますので、最後にやや詳細に見解を申上げたいと存じます。
 第三に、こういうような推移で、いわば後退したごとく、最初の試案と極めて変つたような形で以て出されたところの最終案、こういう最終案によつて仮に法案が成立しても、それによつて今後の困難な労働問題に対して処理して行くところの確信があるか。こういう御質問でありましたけれども、申すまでもなく現在の與えられた困難を極める日本の國情の下におきまして、労働問題の処理は極めてこれもむずかしい問題であることは、申上げるまでもないと思うのであります。併しながら現行法に比べまして、この最終案に盛られましたところの方式を以てしまするならば、組合の独裁的、破壊的な指導者によるところの組合運動というものを、相当程度に抑制することができまして、民主的な、建設的な、自主的な方向に労働組合を持つて行くことによつて、少くとも現行法よりは遥かに労働問題の妥当なる処理という問題に対して寄與することが大きいと確信しておるのでございます。
 それから九原則との関係についての御質問もございました。この点につきましては、それに附随いたしまして、労働権と経営権との眞の対等の上にでなければ、九原則の遂行も日本経済の再建もできないのではないかという御指摘に対しましては、これは全く同感でございます。労働権と共に経営権の対等ということは根本的の原則でありまして、それがために、御指摘になりました例えば生産管理のごときは、労働権と経営権との対等という原則から考えまして、間違えておる、これは違法であるという解釈は、すでに前内閣において、鈴木法務総裁及び当時の労働大臣もこれを言明した通りであります。現内閣においても、同樣この解釈を堅持していることに間違いはないのでございます。それから公益事業の追加というような問題について御指摘がありました。特に公益事業は一般事業と区別いたしまして、公共の福祉との関係において、これに対して深い考慮が、又公共事業の労働爭議に対する特殊な考え方が行われなければならないという御質問でありましたが、勿論、根本的に労働者の労働権、それから團体交渉権、そういつたものを根本的にこれを認めるという原則には変りはないにいたしましても、公益事業におきまして、段階的に特殊な措置のとられるということは、一方において必要であり、これらは労調法における公益事業の追加という方式に新らしい改訂を加えまして、國会の承認を経て総理大臣が行うというところまで前進して來ておる、変つて來ておるということを御了解願いたいと思うのであります。それから最後に、第一條の正当なる行爲の限界についての御質問がありましたが、これはやや專門的に亘りますし、そうしてしばしば各方面から採り上げられ、幾多の関係をはらむ問題でありますので、やや詳細に御説明申上げたいと存じます。四月十三日、法務廳檢務局長が労働組合法の解釈に関して出したところの通牒の第一條第二項の解釈は正しいものであると私共も信じております。これを改正法案中に同樣な明文を置かなかつたところの理由は、第一には、通牒の樣式は自由であつて、十分の説明を加え得るけれども、法文としてこれを盛ることは、なかなか簡潔にこれを表現することができず、殆んど事実上列挙して行つても不可能であるというような点もあつたのであります。第二には、同通牒が明言しておるごとくに、労働組合の行爲であつて正当でないものは外にも沢山あるのであつて、決して同通牒によつてすべてを言い盡しておるのではないのであります。同通牒では、「ここでは、先ず、この條項は不法な実力を決して是認するものではないことを明らかにしようとするものである」と言つておるがごとくに、他の問題はさしおいて、暴力犯罪及びこれに準ずる行爲を挙げておるのであります。改正法案では暴力行爲については極めて明瞭でありまするが、その他については表現が困難であり、且つ問題が多いので、先ず暴力行爲のみを掲げたわけであります。この外に、同通牒に掲げられたような行爲は勿論、その他不当なる行爲が多々あることは申すまでもないのでありまして、これを形式的に列挙することはなかなか困難であり、却つてこれを一般的の今日の解釈と運用に俟つべきであると考えたからであります。いわゆる次官通牒、即ち本年二月二日附労働次官より各都道府縣知事に宛てられた通牒は、現行労働組合法第六條に基くところの労働組合の資格審査を行う場合の基準として、現行法第二條の解釈として発せられたものでありまするが、改正法案においても、この解釈の趣旨に別に変化はないのであります。ただ経費援助については、現行法が「主たる経費」と言つておるのを、改正案では明確に限定列挙以外の経費援助をすべて禁止しておりますが、これも、趣旨とするところは根本的には同じであります。改正案も、法律と通牒の差異から、文章は次官通牒よりやや簡潔に改正案の方がなつておるのであります。通牒が分らないというような非難は、或いは文章が生硬難解であるかも知れませんが、事の性質上、結局個々具体的の業種、業態に立ち入らなければ判断のし難い使用者利益代表者というものを、でき得る限り具体的に分り易くしようとしたものであつて、現行法の「使用者の利益を代表すと認むべき者」よりは余程分り易くなつておるのであります。尚、今後労働教育指導によつて趣旨の徹底に努めたい方針であります。正当性の限界については、結局において健全なる社会通念に委ね、具体的には判例及び解釈に俟つより外ないものであります。併しながら少くとも正当でない労働組合の行爲として明らかであるものは、檢務局長通牒にあるごとく、力暴犯罪その他これに準ずる行爲を初めとして、暴力的又は秩序を紊すような行爲、換言すれば、平和的に且つ秩序を保つて行われるのでない行爲は、すべて不当なものであつて、具体的には生産管理の不当性というふうなことは、すでに申上げた通りであります。又政治的目的貫徹のために行うところのストライキ、いわゆる政治スト、同情スト、ゼネストのごときも、いずれも労働者がその経済的利益を守るために認められた権利を濫用するものであつて、正当な爭議行爲とは解することはできないという解釈を持つておるのであります。大体その他のこれに附随するところの解釈につきましては以上を以て御了解を得たいと思います。尚、詳細につきましては委員会等において申上げることがあると思います。(拍手)
#16
○議長(松平恒雄君) 三好始君。
   〔三好始君登壇、拍手〕
#17
○三好始君 昨日労働大臣より説明のありました労働組合法案並びに労働関係調整法の一部を改正する法律案に関して、二三の点についてお尋ねいたします。すでに昨日來の質疑によつて主要なる問題は大体指摘された感がありますので、私は主として今まで論せられなかつた問題に限定して簡單にお尋ねいたします。
 第一の問題は、労働者と使用者との関係を如何に把握し、それを法的に如何に具体化すべきかという総合的な問題についてであります。労働組合法及び労働関係調整法には、これらに対する明確な表現は見当らないのでありますが、多くの規定は、両者の関係を対立的関係として規定いたしておると考えられるのであります。勿論、労働條件をめぐつて両者の関係は一應直接的には対立するわけでありますが、企業体を一体として観察して、その興廃浮沈が労働者、使用者双方に影響することを考えますとき、両者の関係は一つの生産協同体でなければならないとの考え方も可能であります。殊に生産の復興が、國家の再建、民族の復興にそのまま繋がることを考えますとき、労働者の一方的な犠牲を強要することなく、その自主的、主体的立場において、
   〔議長退席、副議長著席〕
かかる協同体制が精神的にも組織的にも確立されることが望ましいと思うのであります。労働大臣は、かかる状態の実現に対して、具体的に如何なる考え方を持つておるか、又その実現を促進する用意があるかどうかを先ず承わりたいのであります。
 次にこれに関連した問題でありますが、労働組合法案においては、労働條件その他に関する労働協約について、形式的にその有効條件を規定しておるだけで、これによつて労働者が経営に参加し得る途が開かれておるとは言えないのであります。労働大臣は、私企業の労働者の経営参加を実現し、公共企業体の場合は少くとも労働組合の意見を経営に反映せしめるための法的措置について、如何に考えておるかを承わりたいのであります。(拍手)
 次に労働組合法案第二條但書第二号、同じく第七條第三号において、使用者の組合経費援助禁止の例外として、労働者の厚生福利について援助をなし得る規定があるのであります。私はこれらは使用者によつてなし得る可能性に止めずして、最少限度の安全施設、厚生施設、福利施設などは、使用者の義務として規定すべきであると思うのでありますが、これに対する労働大臣の所見を承わりたいのであります。
 次に、労働組合法案は第一條に具体的に目的を掲げておるのでありますが、その中で、「この法律は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより、労働者の地位を向上させること、」を第一に謳つておるのであります。ところが改正法案は、組合專從者の給與と猶予期間を設けまして組合員担に切替えんとする規定に見られるごとく、実質的には全体に労働者の地位を從來よりも低下せしめる結果を招來するものと思われるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)これは健全なる労働組合運動をも抑圧する結果となり、却つて政党による組合の支配を一層助長する結果になることも予想されるのであります。政府はこの点について如何なる意見と対策を持つておるかを承わりたいのであります。
 以上を以て私の質疑を終ります。(拍手)
   〔國務大臣鈴木正文君登壇〕
#18
○國務大臣(鈴木正文君) 第一の御質問は、労資の関係は決して対立的な、絶体的相反的なものではなくして、共通的な利害をも持つているのであり、生産の形態としては生産協同体というふうなものを基本とすることはどうか、又そういうように労働組合及び経営者則の面を持つて行くというような考えを持つておるのかという御質問であつたと思います。言うまでもなく私共も、一部の人たちが考えておるように、経営者と労働者とが現在の日本の社会機構のごときこの機構の下におきまして、絶体に何らの協同的の面を持たない絶体の相反的鬪爭形態であるというふうには考えておりません。その間には生産に対する協同的な努力を拂い、企業成績の引上げについて、共同の利益と共同の努力を拂うところの根本的な繋がりというものがあるということは十分認めておるわけでありまして、そうであるからこそ、民主的な、建設的な、自由な労働組合と、一方において、新らしく脱皮して、新らしい時代に歩調を合せて進んで行き得るところの経営者の精神と團体とが、双方が必要になつて來る筈でありまして、(拍手)労働組合法その他の改訂は、この面に沿つての考え方でありまして、ただ、これを法的に実現して行くという問題につきましては、少くとも現段階においてその段階ではないと思うのでありまして、これは段階的には、使用者と経営者と労働者、特に組合側とのそれぞれの協力と、そして了解によつて措置して行くべき段階であると考えております。
 第二には、私企業の方面の経営に労働者を参加せしめるという考え方はどうか、そして、これを法規化するところの考え方を持つておるかという御質問でありました。この点につきましては、経営者と労働者との経営協議会というふうなもの及びそれに類するあの線に沿つての考え方、方式は、今後ますます日本再建の重要なる一つの方式として、これを拡大し、そして活溌な活動を期待したい。そういう立場をとつており、この線に沿つての政策的御協力は十分いたす考えでありまするが、これを法規化するという段階ではないと、これも亦そういうふうに考えておるのであります。
 それから安全、厚生、福利その他の施設、こういつた問題にもつと力を入れなければならないという考え方に至りましては、これは全く同感でありまするが、これも一つの体系的法として実現するということは今のところ考えておりません。労働基準法その他のこういつた見面の法的措置を講じ、その遂行を図ると共に、この問題につきましては、一挙に一つの社会法的なものを作り上げるという考え方は持つておりませんけれども、方向として、政策としては、極力、力を入れるべきであると考えております。(「やるつもりはないんですか」と呼ぶ者あり)
 それから專從職員の問題は、ああいうふうに規定したというふうなごときは、一方において、法の初めにおいて、その目的として労働者諸君の立場を高めるということを謳いながら、それと相反するのではないかという御質問でありましたけれども、本來、自主的な、民主的な、自由な組合があつてこそ労働者諸君の立場も眞に高まるのでありまして、その自由な、責任性のあるところの、民主的な組合を実現する現段階における重大な一つの要素としての自己経費負担の原則を確立するということが、労働者諸君の立場を引き下げるというふうな結論には絶対にならないと考えておる次第でございます。(拍手)
#19
○副議長(松嶋喜作君) これにて質疑の通告者は全部終了いたしました。質疑は終局したものと認めます。
 これにて本日の議事日程は終了いたしました。次会は明後日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以てお知らせいたします。本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時二十五分散会
     ―――――・―――――
○本日の会議に付した事件
 一、常任委員辞任及び補欠の件
 一、日程第一 國務大臣の演説に関する件(第二日)
ソース: 国立国会図書館
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