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1967/12/08 第57回国会 参議院 参議院会議録情報 第057回国会 本会議 第3号
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1967/12/08 第57回国会 参議院

参議院会議録情報 第057回国会 本会議 第3号

#1
第057回国会 本会議 第3号
昭和四十二年十二月八日(金曜日)
   午前十時三分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第三号
 昭和四十二年十二月八日
   午前十時開議
第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
    ―――――――――――――
#3
○副議長(河野謙三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#4
○副議長(河野謙三君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、国務大臣の演説に関する件(第二日)。
 去る五日の国務大臣の演説に対し、これより順次質疑を許します。岡田宗司君。
   〔岡田宗司君登壇、拍手〕
#5
○岡田宗司君 私は、日本社会党を代表して、佐藤総理の所信表明演説に対し、質問を行なわんとするものであります。与えられた時間が短いので、内政、経済等の問題は同僚小林議員に譲り、私は佐藤・ジョンソン会談の結果、発表されました共同声明に盛られている沖縄・小笠原返還の問題並びにそれに関連する外交、防衛の問題に限定して、質問いたしたいと存じます。
 総理は、ジョンソン大統領との会談を終え、共同声明を発表して意気揚々と帰国されたのであります。しかし、実際には、今回の訪米の最大の焦点となっていた沖縄の返還については、「総理大臣は、両国政府がここ両三年内に双方の満足し得る返還の時期につき合意すべきであることを強調した。」にもかかわらず、その合意はついに得られず、返還そのものの時期のめどはおろか、両三年内に返還の時期について合意するというめどさえつけることができなかったのであります。あなたが胸を張って帰国されたその日、会談に多大の希望を託していた沖縄の同胞は、那覇市において七万人の抗議大集会を開き、日章旗に喪章をつけて、失望と悲しみと憤りとを表明し、彼らみずからの手で新たな決意をもって民族的復帰運動を展開することを誓ったのであります。われわれは、戦後二十二年間異民族の支配下に置かれ、その鎖を断ち切ろうと懸命に努力し、復帰を待ち望んでいた沖縄の同胞の心情を思うとき、まことに暗然たらざるを得ないのであります。
 しかるに、総理は、各地における記者会見において、また一日に行なわれた野党各党との党首会談において、ここ両三年のうちに沖縄返還の時期について合意に達することにつき大統領が了解を与えたがごとき発言をしているのであります。また、五日の所信表明演説においては、今後日米の間で行なわれる沖縄の地位について共同かつ継続的な協議を通じて、両三年内に米国との間に返還の時期について合意に達し得るものと確信しているとも言っているのであります。しかし、共同声明では、大統領は同意しているとは言っていないのであります。あなたのこの発言には、それを裏づける確証ははたして存在するものでありましょうか。もし大統領がそれを了解したものとすれば、そのことは当然共同声明に盛り込まれておらなければならないはずであります。あるいは、アメリカ側の事情でそれに盛り込まれなかったとすれば、それにかわるものとして公表されない覚え書きでも取りかわされているのでありましょうか。総理の確信は、はたしてそれに基づいて述べられているものでありましょうか。それとも、以心伝心、総理の感触によるだけのものでありましょうか。沖縄返還という重大な外交問題の具体的な第一歩であるこの点に関して、これを裏づけるものがないとすれば、私どもは、あなたのこの確信を根拠あるものとして信ずるわけにはまいらないのであります。(拍手)
 ジョンソン大統領は、国の内外においてその人気がはなはだしく低下しているのであります。もし来年の大統領選挙において、ジョンソン氏にかわって他の人物が大統領に選ばれた場合、あなたがジョンソン大統領との会談で了解を得たかのごとく言われていること、あるいはあなたの確信なるものは、両者の合意を確認した両国政府間の公式の文書がない限り、新大統領に対して何らの拘束力も持たないのであります。その場合、あなたの言う両三年中に必ず返還の時期のめどをつけるという確信は、砂上の楼閣のごとくくずれ去るでありましょう。したがって、確信ありというあなたの発言は、これは国民の失望と憤りをかわそうとするための一時のがれとしか考えられないのであります。
 共同声明中、沖縄の問題に関して具体的に述べられている点は、琉球列島高等弁務官のもとに置かれる日米琉諮問委員会の設置と、南方連絡事務所の機能の拡大についてのみであります。この諮問委員会は、「施政権が日本に返還されることとなるときに起こるであろう摩擦を最小限にするために、沖縄の住民とその制度と日本本土との一体化を進め、沖縄住民の経済的、社会的福祉を増進するための措置をとっていくこと」のために設けられるもので、沖縄の返還そのものについて協議するためのものでないことは明らかであります。たとえこの諮問委員会に公使級、大使級の人物が充てられようと、高等弁務官の諮問に答申するだけでなく、みずから勧告する権限を与えられようと、その本質には何ら変わりはないのでありまして、現在存在する日米協議委員会及び日米琉技術委員会の上に屋上屋を重ねるものにすぎないのであります。これを何か、返還そのものを促進する機構のごとく見せかけるようにすることは、羊頭を掲げて狗肉を売り、沖縄の同胞及び国民の目をくらまそうとするものと断定せざるを得ないのであります。(拍手)そこで私は、外務大臣にこの諮問委員会の性格、構成、権限、機能、この委員会と従来から存在する二つの委員会との関係、両国政府との関係はいかなるものであるかをお尋ねしたいのであります。
 次に、日本政府の南方連絡事務所の機能の拡大の点でありますが、これとても、その設置の根拠が変わらない限り、それは国と国との関係を処理する権限、すなわち外交交渉を行なう権限は持たされないのでありまして、何ら沖縄返還問題の本質には触れ得ないのであります。私どもは、これまた見せかけの粉飾と見るのでありますが、この権限の拡大とは、一九五二年の極東軍最高司令官の設置の招請及び五三年の南連事務所の所管業務についての規定そのものを変更するものであるかどうか、すなわちその性格を変えるものであるかどうか、また、その具体的な内容は何であるかを外務大臣からお示しを願いたいのであります。
 さらにこの第七項には、われわれが重大な関心を払わなければならない問題が取り上げられているのであります。「総理大臣と大統領は、これら諸島にある米国の軍事施設が日本および極東の自由諸国の安全を保障するため重要な役割を果たしていることを認めた。討議の結果、総理大臣と大統領は、日米両国政府が、沖縄の施政権を日本に返還するとの方針の下に、かつ、以上の討議を考慮しつつ、沖縄の地位について共同かつ継続的な検討を行なうことに合意した。」という個所であります。返還については大統領は「日本国民の要望を十分に理解している」と、ただばく然と述べているだけなのに、沖縄の軍事施設の問題については、返還される場合を予想して、共同かつ継続的な検討を行なうということを約束しているのであります。これは全く本末転倒と言わなければなりません。これについて思い出されるのは下田駐米大使のたび重なる発言であります。彼はしばしば沖縄における核基地の存在を認め、基地の自由使用を認めるのでなければ沖縄の返還はむずかしいと言っておるのであります。総理及び外務大臣はこの発言を政府の見解ではないと否認しておりますけれども、彼自身は、政府の言えないことを自分が言っておるのだとも公言しているのでありまして、単なる個人的見解とは思えないのであります。
 また総理は、去る四日、プレスクラブにおきまして外人記者の質問に対して、「この国の安全確保は同時に極東の安全確保と一致する。このことも十分考えなければならないし、沖縄と安全保障を同時に考えていきたい。日本が核武装するかどうかは将来沖縄返還のときにきめればよい」と答えているのであります。さきの下田発言と総理のこの発言とをあわせて検討しました場合、明らかに沖縄返還の際における核基地を認めること、軍事基地の自由使用を認めることについて、総理と大統領の間に討議が行なわれ、さらに日本の核武装の問題にまで及んだのではないかと推測されるのであります。これを裏書きするように、七日のイギリスのタイムス紙は、総理と大統領の間に、核つき返還の合意または暗黙の了解があった模様だと、すっぱ抜いているのであります。これらの問題について、いかなる話し合いが行なわれたのか、また、かかる合意または暗黙の了解が成立したのであるかどうか、さらに、総理は、日本の核武装、沖縄返還後の核基地の問題、核武装と日本憲法との関係の問題に関する従来の考え方を変えたのではないかどうか、その点をお伺いしたいのであります。
 また、総理は、アメリカの西太平洋防衛体制に日本が積極的に参加し、責任を分担することが、沖縄返還の前提条件であると考えておられるのかどうか、明らかにしていただきたいのであります。
 私どもが沖縄を返せと主張するのは、第一に、百万の同胞が外国の支配下に置かれているということは、独立国家として、統一民族国家として断じて耐え忍ぶことができないという民族的要求からであります。第二に、平和条約第三条は、日本の国連加盟によってすでに無効となり、アメリカは沖縄に施政権を保持する根拠を失ったと考えるからであります。第三に、アメリカによる沖縄の軍事植民地化は国連憲章、世界人権宣言に反するものだからであります。アメリカが先進国、文明国であると自認し、日本を対等の友朋国と見るならば、直ちに無条件に沖縄を日本に返還すべきであります。われわれは、堂々とアメリカに向かって、即時無条件全面返還を要求することが、日本国民の立場であると確信しているのであります。(拍手)しかるに、総理は、国民の要求と極東における安全保障とをどう調和させるかが問題であるとして、現在アメリカが沖縄を軍事的に保有していることを全面的に認め、その上に返還を求めているのであります。わが方がアメリカの沖縄保持の理由を一〇〇%是認するならば、討議においてアメリカの論理が貫徹し、日本側の返還の理論的根拠は押しまくられざるを得ないのであります。会談がアメリカ側のペースで進められたことは、共同声明そのものからも明らかであり、総理がインフェリオリティ・ーコンプレックスを持って会談に臨んだ姿が、まざまざと想像されるのであります。(拍手)総理は、今後の沖縄返還を進めていく上に、いかなる基本方針に基づいて具体化していこうとしているのでありますか、アメリカの軍事上の要求を検討することを最大の眼目として交渉を進めていくつもりであるかどうか、お伺いしたいのであります。
 次にお尋ねしたいのは、共同声明第三項に盛られている最近の国際情勢、特に極東における事態の発展に関する部分であります。「両者は、中共が核兵器の開発を進めている事実に注目し、アジア諸国が中共からの脅威に影響されないような状況をつくることが重要であることに合意した」とあります。これは明らかに中国封じ込め政策に合意したことを示すものであり、いま日本が中国封じ込め政策に公然と参加する姿勢を打ち出したことを意味するものであります。これはアジアにおける国際緊張を一そう激化させ、日中関係をさらに悪化させるものであって、アジアの政局の安定と日中関係の打開と正常化を求めようとする日本としては、断じてとってはならない政策なのであります。これはさきに、三木外務大臣がASPACを反共の性格を持たせないために努力するというのと明らかに食い違っているのであります。日本のかかる態度表明によって、ASPACは中国封じ込めの機構に転化せざるを得ないのであります。外務大臣、この項はあなたのいままでの主張と食い違っているではありませんか。あなたは中国封じ込め政策をとることに方針を変更したのであるかどうか、この点をお伺いしたいのであります。また総理は、アメリカの対中国封じ込め政策に参加することを、この会談においてはっきりコミットしたのかどうかをお伺いしたいのであります。
 次に、第四項のベトナム関係の問題についてお伺いをいたします。ここには「総理大臣は、北爆の停止にはハノイによるそれに対応した措置が期待されるべきであるとの見解を表明した。」としるされてあります。これは、明らかに北爆に関するアメリカの言い分をそのまま認め、支持することを宣言したものであり、アメリカのおつき合いをしてベトナムへ出兵をしている国々の立場と全く同じであります。あなたは、所信表明演説において、ベトナムの平和達成を強く念願していることを強調されているのでありますが、同時に、史上まれに見る不法残虐な北爆支持を公然と表明していることは、口に念仏を唱えながら人殺しの手伝いをしておるにひとしいと言わなければなりません。(拍手)日本国民の圧倒的多数は、一日も早くベトナムに平和が回復されることを念願しており、そのためにアメリカの北爆が直ちに停止され、話し合いが始められることを望んでおるのであります。ウ・タント国連事務総長をはじめ、社会主義国、中立国はもちろんのこと、アメリカの同盟国の政府や国民、アメリカの国内においてさえ、話し合いが行なわれるために、まずアメリカは北爆を停止せよという主張が日に月に強まっているのであります。下田大使がいかに否定しようと、北爆停止は日本の世論であり、世界の世論であります。あなたの訪米の直前に、由比忠之進さんが焼身自殺を遂げられたのは、国民大多数の声を代表して、あなたが日本国民の願望、世界の世論に反する態度をとることを死をもって押しとどめようとした信念からであります。総理のアメリカのベトナム戦争政策の支持は、アメリカの残虐行為を勢いづけ、日本をベトナム戦争へ一そう近づけ、日本国民を非常な不安におとしいれ、国民の熱望に逆行する危険な政策と言わなければなりません。(拍手)あなたのアメリカのベトナム戦争政策と北爆の支持は、あなたの言われる平和の探究とは両立し得ないのであります。総理は、アメリカのベトナム政策、ことに北爆が平和を招来するための唯一の道であるとして、本気で支持されるのかどうか、承わりたいのであります。
 次に、小笠原諸島の返還について二、三質問をいたします、小笠原諸島が一年以内に返還されることは、われわれもまた歓迎するところでありますが、しかしこれには、われわれが懸念し、警戒しなければならない問題が付随しているのであります。共同声明にある「この協議は、この地域の防衛の責任の多くを徐々に引き受けるという総理大臣が表明した日本政府の意図を考慮に入れるであろう。総理大臣と大統領は、米国が小笠原諸島において両国共通の安全保障上必要な軍事施設及び区域を日米両国の間の相互協力及び安全保障条約に基づいて保持すべきことに合意した。」というくだりがそれであります。現在、アメリカは小笠原諸島を軍事上重要視しておらず、軍の施設もわずかであり、駐とん部隊も少ないのであります。日本がこの地域の防衛の責任の多くを徐々に引き受けると約束したことは、日本が、これらの島々が返還された場合、この島々の地域を日本の領土として防衛する責任を引き受けるだけではなく、アメリカが西太平洋の防衛計画の一環としてこの地域で行なっている防衛の役割りの多くを日本が肩がわりをするということを意味するものであります。そうだとすれば、これは明らかに日本憲法に定められたところを逸脱するものと言わなければなりません。この肩がわりとは具体的にいかなる性質のものであり、またその範囲はいかなるものであるかを総理にお伺いしたいのであります。
 次に、小笠原返還の方式については、昭和二十八年十二月二十四日に締結された「奄美群島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定」の方式にならい、二国間協定でよいと言われておるのであります。アメリカに沖縄、小笠原の施政権を与えておる平和条約第三条に手をつけずに小笠原諸島の施政権返還を実現するために、かかる方式がとられるのでありましょうが、このいわゆる奄美方式には、一つの危険な問題が隠されていることを指摘せざるを得ないのであります。すなわち、この協定に付せられた交換公文がそれであります。「奄美群島及びその領水は、日本本土と南西諸島のその他の島々」、これは沖縄群島のことをさすのでありますが、この「島々におけるアメリカ合衆国の軍事施設との双方に近接しているため、極東の防衛及び安全と特異の関係を有する。日本国政府は、との特異の関係を認め、南西諸島のその他の島々の防衛を保全し、強化し、及び容易にするため、アメリカ合衆国が必要と認める要求を考慮に入れるものと了解される。」という点であります。日本政府が、アメリカが南西諸島、すなわち沖縄群島と特異の関係を持っていることを認め、アメリカが必要とする要求を考慮に入れるということを約束したことは、まさに注目に値する点であります。小笠原返還について奄美方式がとられるとすれば、同様に小笠原諸島もまた、アメリカの軍事施設のあるマリアナ群島、沖縄群島と近接していて特異の関係があるゆえに、日本は、アメリカが必要と認めるものを考慮に入れなければならないという条件が付せられることになるではありませんか。奄美大島の場合には、いままでこの交換公文に基づいて特別の要求はなかったのでありますが、小笠原の返還にあたって同じような条件がつけられるならば、将来アメリカは、これに基づいて、現在アメリカが小笠原諸島に持っている軍事施設以上に、いろいろな軍事上の要求を日本に持ち込んでくることが懸念されるのであります。このアメリカの必要とするものは、現在の日米安保条約の規定、運用に限定されておらず、事実上、これらの島々をそのままアメリカの西太平洋防衛体制に組み込んでしまう道が開かれるのであります。これは沖縄返還の際にも生ずると予想される重大な問題であります。奄美方式によって小笠原返還が行なわれる場合、これと同じような条件が交換公文などの形でつけられることを、われわれは断じて認めることはできないのであります。総理並びに外務大臣は、小笠原返還の協定締結にあたって、かような条件がつけられることをすでに約束されているのかどうか、お伺いしたいのであります。
 共同声明に盛られた内容について、なお幾多の問題がありますが、時間がございませんので、詳細な論議はさらに委員会において行ないたいと存じます。
 最後に、沖縄、小笠原の返還、それと関連する外交、防衛の問題についての会談の結果のバランスシートを、私なりにつくってみますと、アメリカ側は、
 一、日本が中国封じ込め政策に加わること。
 二、アメリカのベトナム戦争政策へ同調し、特に北爆を支持すること。
 三、早々と日米安保条約堅持の約束をしたこと。
 四、日米協力による東南アジア諸国への開発援助、すなわち、アメリカのアジア・太平洋諸国支配のためにその片棒をかついで、一部肩がわりをすること。
 五、小笠原の返還にあたり、日本領土としての防衛の責任のみならず、アメリカの西太平洋防衛体制に参加し、責任を引き受けることを約束したこと。
 六、沖縄における米軍事施設の重要性を確認し、日本が将来沖縄の返還にあたり、軍事施設の機能の維持、肩がわりを検討することを認めたこと。
 七、ドル防衛に協力を約束したこと。
 アメリカ側は、かようなものを日本側から取りつけたのであります。
 これに対して日本側は、最大の眼目であった沖縄返還については、ジョンソン大統領から、「日本国民の要望を理解している。」というおことばをちょうだいしただけでございまして、(拍手)何ら具体的返還のめどを得ることなく、わずかにアメリカが経済的にも、軍事的にも重きを置いていない小笠原諸島の返還を取りつけたにすぎないのであります。
 外交は、ギブ・アンド・テイクによって行なわれるといわれておりますが、日本はアメリカに十を与え、将来多くの重荷を背負わされ、わずかに一を得たにとどまっておるのであります。これは日本にとりましてまことに不利なバーゲンでありました。会談が終わったあと、ジョンソン大統領は非常なごきげんで、いままでに会った八十何カ国の元首、総理などとの会談のあとに、これくらい上きげんな顔を見せたことはないとも伝えられているのであります。この取引がアメリカの思うつぼにはまったものであったことは、それによっても明らかであります。ニューヨークタイムズは、アメリカはもっと日本に譲ってもよかったのではないかとさえ評しているのであります。佐藤総理は、この会談の成果を大成功であると誇示しているのでありますが、われわれは日本にとってまことに不利、失敗であったと断定せざるを得ないのであります。(拍手)
 沖縄の同胞が、この結果に失望し、悲しみ、憤り、佐藤内閣退陣を叫び出したのは当然のことといわなければなりません。われわれもまた、この失敗についてあなたの責任を徹底的に追及しなければなりません。いまから沖縄、本土を通じて従来とは全く異なった立場から、異なった形の沖縄返還の民族的闘争が展開されるでありましょう。わが党は、今後、沖縄返還並びにそれに関連する外交、防衛、政治、経済の諸問題に関し、国会において政府並びに与党と徹底的に討議を行ない、民族的国民運動を力強く、大規模に展開することを、ここに声明をいたしまして、私の質問を終えることといたします。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(佐藤榮作君) 岡田君にお答えいたしますが、社会党と私どもの基本的態度の相違がただいまの御意見にはっきり出てきたように思います。私は、かねてから申し上げておりますが、この領土問題を解決するにあたりましては、どこまでもアメリカと理解と協力によりましてこの問題を片づける、そのことが最善の道であり、また、最短の方法だと、かように考える。また、同時に、この基地と領土の返還、こういう問題は、これは分離できることではない。その一方だけを重視して片一方を軽視する、こういうようなものではないのであります。ことに、私自身が総理として課せられておる責任は、この国の安全を確保することであります。また、領土返還、祖国復帰、これは一億国民の念願でもある。その二つを同時に達成することができるのではないか。これは現に欧州における軍事施設等をお考えになれば、施政権の返還、また防衛体制の確保――この基地はちゃんとできている、二つできている。したがいまして、この場合におきましても、沖縄の領土返還、祖国復帰、これはもちろん一億の願望でありますから達成しなければならない。しかし、同時にまた、基地そのものも、それと矛盾することなしに、調和のとれた方法でちゃんとそれが残るんではないか、これは私どもがかねて主張しておるところであります。この点では、私はもちろん日本の憲法を守ります。その憲法の範囲内であることはもちろんであります。また私は、しばしば申し上げておりますように、日本の安全と平和、繁栄は、それこそ極東の平和、繁栄、安全とつながるものだ、かようなことも申しております。したがいまして、これらの観点に立ってこの難問題を解決する。しかも、平和の手段によってこれを解決するということ、これはたいへんむずかしい問題であります。ただいまいろいろお話を謙虚に私は伺いましたが、社会党と私との間には、基本的にただいま申し上げるような点で相違があるように思います。
 そこで、両三年の間に一体この問題は片がつくのか。この両三年の間に私は返還のめどがつくという確信を持ったのであります。それは、ただいま岡田君も共同声明をお読みになりましたが、私が一方的にわが国民の願望を率直に訴え、これに対してジョンソン大統領も理解を示した、それだけでは約束ではございません。しかしながら、その討議の結果、返還、祖国復帰への方針のもとに両者が継続的な協議をする、こういうことが一致したのであります。この点ははっきり合致したのであります。私は、そこから、ただいま申し上げますように、両三年のうちに祖国復帰のめどがつく、かような確信を持ったのであります。この点は、私がはっきりした確信を持っておりますので、これは国民の皆さんも十分信頼していただきたいと思います。
 また、諮問委員会の問題につきましては、これは外務大臣に説明を譲るといたしまして、その他のことについて申し上げますが、ただ、一言申したいのは、今日、政府間におきましては、日米間で協議が行なわれております。中央において協議委員会があります。また今回は、さらに一体化を進める、こういう意味で、日米琉諮問委員会を設けるということになったのであります。私どもは、すでに在来から、両政府間が日米協議委員会の結果は尊重するということを申し合わせておりますし、今回は、日米琉諮問委員会によりまして、高等弁務官の諮問にこたえ、また、高等弁務官に意見を答申する、かような権限が与えられ、日本政府の代表が直接高等弁務官に対しまして政府の意向を伝えることができる、これは非常な進歩である、かように思いますし、将来返還に備え、この一体化に必ず役立つものだ、かように考えております。
 また、ただいま、いろいろ何か密約があるのではないか、あるいは陰の約束があるのではないか、ないにしてはあまりにも大きな成果があがっているじゃないか、こういうような言い分のように聞けるような御意見であります。私は、この際に正直に申し上げますが、もう共同コミュニケ以外には何ものもございません。これはもう正直に申し上げまして、絶対に密約もなければ、その他秘密文書はございません。それでこれだけの効果があがっている、そのことを十分お考えをいただきたい。ただいまロンドン・タイムスの話が出まして、これなどは、その裏をすっぱ抜いた、こういうようなお話でございます。おそらく、各国は、平和裏に領土が返ってきた、かようなことにほんとうに目をみはっていると思います。私は、このことを大いにみずから誇ってしかるべきであると思います。また、皆さん方も、何か密約がなければそんなことは取りつけ得ないのじゃないか、かようなお尋ねのように思いますが、そういうものでは絶対にございません。私は、まことに、吉田また池田総理同様、絶対にうそは申しません。御了承をいただきたいと思います。
 次に、日本の中国問題でございますが、私は、今回の問題に際しましても、かねての日本の態度を変えた、かようなことはございません。したがいまして、中国大陸との間におきましては、在来どおり、政経分離の方向で貿易も、また文化交流も続けていくつもりでございます。その点では、絶対にいわゆる封じ込め政策というようなものに私ども賛成はいたしておりません。これも御心配がないように願いたいと思います。いな、むしろ米国自身、最近はたいへん流動的に中国問題と取り組んでいるようであります。したがいまして、私は、むしろわが国の態度にアメリカが近づいたのではないか、かように実は考えるような事柄でございますので、皆さん方も、もう封じ込め政策というようなことばはお使いにならないほうが適当ではないか、これはどうも時代おくれのことばのように実は思います。
 また、その次に、ベトナム問題について、アメリカの政策を全面的に支持したのではないか、かようなお話でございますが、私は、アメリカの政策を全面的に支持しておりません。私は、憲法を守り、軍事的に介入しておらないことは、在来どおりであります。また、私が東南アジア諸国を回りまして、そうして諸国の首脳者と会談をいたしました。それぞれの記事は必ず日本でも報道されたと思いますが、私は、その機会におきましても、在来からの私の主張を一歩も変えることなく、また、各国の協力を求めまして、できるだけ和平がもたらされるように実は心から念願し、その道を努力してまいったつもりであります。
 しばしば北爆について云々されますが、私は、北爆をやめるだけが能ではない、戦争そのものをなくすることが目的であります。(拍手)その意味におきまして、私どもは、北爆を停止するについては、停止するだけの、対応するところの保証が必要ではないのか、そういうものができることが望ましいのだ、かように私は考えるのでありまして、北爆停止を云々されるよりも、その基本的な戦争自身がなくなるように、この上とも最善を尽くしてまいる所存であります。
 私は、そこで、これは北ベトナムを攻撃するわけではありませんが、アメリカ自身は、いつでも、どこにでも、何時でも出かけて和平への交渉はする、かように申しております。今度の新しくできました南ベトナムの政府も、和平への呼びかけをいたしております。私は、やはり北側におきましても、この和平の呼びかけにこたえるべきが当然だと思っておりますが、とにかく、今日、さような状態ができておらないのはまことに私は遺憾に思います。したがいまして、社会党諸君も、ただいま申し上げるような和平への努力を、この上とも一そうしていただきたいと思います。
 次にお答えいたしますのは、小笠原の返還の問題でありますが、小笠原の返還について、米国の太平洋防衛体制に肩がわりするものではないかというお尋ねでございます。しかし、さようなことはございません。憲法違反は絶対にいたしません。ただいま私どもは、小笠原が返ってくれば、当然小笠原の領土、領空、領海、これは私どもが守っていく。そしてこれは本土並みの安全保障条約によりまして、日米で防衛する、こういう立場でございますが、米国の太平洋地域に対する防衛策に肩がわりをする、さようなことはございませんから、その辺は御安心いただきたいと思います。
 また、アメリカの防衛体制に徐々に取りかわるということを申しておりますのも、これは御承知のように、ただいまアメリカが防衛をしておりますから、この点が技術的にはやはり順次かわっていく。――技術的にもいま直ちにということはできないように私は思います。また、奄美大島方式についての云々のお話がございました。当時の安全保障条約と現在の安全保障条約は変わっておりますので、もう当時のような事態は私は必要はないだろう、かように思います。今回は奄美方式をとるといたしましても、当時結んだような交換公文の必要はないのではないか、かように思っております。いずれにいたしましても、これらの施設、区域等については、アメリカと十分協議するつもりであります。
 そこで、最後に申し上げますが、岡田君は、この私の訪米の結果をいろいろ評価づけられました。しかし、先ほどの答弁で、私がアメリカの政策に全面的に協力しておるものでないと、あるいはベトナム、中共政策について、在来からの態度は変わっておらない、これらの点が明白になったと思います。どうぞ御了承いただきます。(拍手)
   〔国務大臣三木武夫君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(三木武夫君) 総理から大体お答えになったようでございますが、せっかく名ざしの御質問がありましたので、簡単にお答えをいたします。
 第一点は、今回那覇に設置される諮問委員会は、従来の日米協議委員会あるいは日米琉技術委員会と重複するのではないかというお話でありましたが、この委員会はそれぞれ任務も構成も違っておるわけであります。諮問委員会は、高等弁務官に対して勧告をするわけであります。日米琉の三者の代表者が勧告をして、しかも施政権返還に伴って、経済的、社会的な本土とのいろんな格差、こういうものが返還の障害にならないようにいろんな勧告を行なうというのであって、たとえば日米協議委員会は両国政府が随時協議する機関、あるいは日米琉技術委員会は日本の援助に関する技術的な面だけを検討するので、任務、構成の違いがあると御承知おきを願いたいと思うのであります。
 第二点は、南連事務所の機能は、これを拡大したいと考えておりますが、これを具体的にどうするかということは、今後日米間で協議をしたいと思っております。
 第三点の、中国封じ込めに加担をしたのではないかということでございますが、すでに政経分離というもとで貿易をやり、しかも往復六億ドルという貿易をやり、文化、人事の交流をしておるという事実が、すでに日本の政策が中共封じ込めでないという何よりの証拠であります。(拍手)また、共同コミュニケの中でもそういう日本の意思が出ておりますが、日本は中共が一日も早く世界と協調できるような中共になって、そして極東における安定した状態が築かれるということが日本の希望であって、中共に対するとびらが常に開かれておるということは、わが政府の方針でございます。(拍手)
 さらに、小笠原の領土、小笠原の返還について、いろろい日本が軍事的な負担を負うたのではないかということでございますが、小笠原の施政権が返還になれば、日本の防衛の責任といいますか、領土、領海、領空に対する日本の責任が伴うことは当然でございますが、それ以上に日本が軍事的負担を負うたものではないことを明らかにいたしておきます。(拍手)
    ―――――――――――――
#8
○副議長(河野謙三君) 安井謙君。
   〔安井謙君登壇、拍手〕
#9
○安井謙君 私は自由民主党を代表いたしまして、総理並びに関係閣僚に対して若干の質問を試みたいと存じます。
 総理は、さきに東南アジア諸国を訪問して、これら諸国との友好親善をはかり、さらにアメリカ合衆国を訪問して、刻下の諸問題についてジョンソン大統領と隔意ない意見の交換を行なって、日米両国間の理解と親善を一そう深められたのであります。われわれは、総理のこの外交的努力に対しまして深甚の敬意を表します。
 ことに、日米首脳会談において、長い間の懸案でありました沖縄、小笠原の施政権の返還につきまして、「小笠原は一年以内に返還され、」「沖縄は両三年内に返還時期を決定する」という合意に達しましたことは、沖縄、小笠原の復帰を願う日本民族の願望に対して、大きな光明を与えたものであります。なぜ私が今回の会談の結果を高く評価するかと申しますと、いままでの返還交渉に比べまして、今回のそれは格段の前進を示しているからであります。沖縄、小笠原諸島の施政権返還に関する日米両国首脳会談は、過去においてすでに三回にわたって行なわれております。すなわち、岸総理・アイゼンハワー大統領、池田総理・ケネディ大統領及び一昨年の佐藤・ジョンソン会談がこれでございます。しかしながら、過去の三回にわたる折衝の結果は、遺憾ながらわれわれの満足すべきものとはなり得なかったのであります。会談の結論は、「沖縄、小笠原が日本固有の領土であることを確認する。」したがって、早期復帰は好ましいものではあるが、極東の緊張が解けるまでは、この問題を具体的に進めることは待ってほしいというのが、いままでの結論でございました。まさに施政権返還に対する壁は、極東における国際関係の緊張と不安であり、これが続く限り、返還問題は遠き将来の希望にすぎなかったのであります。いまなお、極東における不安定と緊張は依然として続いております。ベトナム戦争の継続、中共核実験による脅威といった国際関係の不安定な情勢のもとで、今回の会談も行なわれたわけであります。しかも、大統領選挙を明年に控えているという政治的な悪条件にもかかわらず、今回は施政権返還の基本方針を明らかに了解し、その実現のための具体的なスケジュールに入るという点で、双方の合意を見たのであります。まさに画期的な成果と言えましょう。これは言うまでもなく、一億国民の願望を背景に、佐藤総理が強く正しい主張をされたのに対して、米国が日本に対する信頼感をもってこれにこたえたということにほかなりません。(拍手)しかるに、国民の一部では、この成果をあえて過小評価し、また交渉結果に必要以上の疑心暗鬼を抱く方もなしとしません。この際、それらをただす意味において、総理の御見解を伺いたいと存じます。
 第一は、返還の時期の見通しと方式論についてであります。沖縄施政権の返還がいつごろ実現するであろうかということは、現地住民はもとより、日本国民すべての大きな関心事でございます。
 総理は、去る五日の演説において、「両三年内に米国との間に返還の時期についての合意に達し得るものと確信している」旨、述べられております。との裏づけは、共同声明において、総理が「両三年内に双方の満足し得る返還の時期につき合意すべきである」と主張されたのに対し、ジョンソン大統領が、「十分理解した」旨が記されておるのであります。この英文によりますと、フーリー・アンダースタンズということばが使ってございますが、これは私どもは、むしろ「了承した」と考えてもよろしいんじゃないかと思うのでございますが、いかがでありましょうか。
 総理は、さらに復帰を促進せしめるための日本側の態度について所信を表明されております。「日本が国際社会に対して果すべき責任をじみちに果たすとともに、国民一致して、みずからの国をみずからの手で守る気慨を持ち、現実的な対策を考えることが、近い将来、沖縄の復帰につながるものである」旨を述べられました。まことに当然の御意見だと存じます。日米安全保障体制を堅持しながら、著しい経済成長を遂げておる日本が、国際社会の一員として果たすべき役割りを果たすと同時に、自国の防衛に十分な関心を持つべきことは、理の当然であります。この当然な現実認識に対して、それが憲法改正、再軍備に通じるとか、徴兵制度をもくろんでおるとかいったような、的をはずれた議論も一部にあるようですから、この際、あらためて総理の具体的な御見解を伺いたいと存じます。
 次に、返還の方式論でありますが、申すまでもなく、沖縄は日本を含む極東の安全保障体制に重要な役割りを果たしてまいりました。また、今日その重要性はいささかも減退はしておりません。したがって、沖縄の施政権が返還されるにあたって、この安全保障体制上の問題がまず十分に配慮されなければなりません。もちろん、この機能はきわめて流動的なものであります。時間の経過による国際情勢の変化、科学技術の進歩等と関連し、現実には常にそのあり方が変化していくものと考えるべきでありましょう。
 沖縄返還の方式については、種々の見解が出ております。核基地つき返還、核抜き自由使用、地域的分離返還、本土並みの基地存置、即時全面返還等がこれに当たります。しかしながら、これらの方式は、いずれをとるにいたしましても、永続的に固定したものとして考えて、今日の段階で即断的な結論を下すことは正しい態度ではなかろうと存じます。むしろ返還の最終段階まで慎重な検討を続けた上で、最終的に決定されるべきものと考えますが、総理のお考えはいかがでございますか。
 第二に、今回の会談の結果、沖縄の施政権返還が小笠原諸島の返還とすりかえられたのではないか、あるいは返還問題にからんで、日本側が米国より防衛体制上新たな特別の任務を背負わされたのではないかという憶測が一部に行なわれているようですが、この点はいかがでございますか。
 第三に、今後の沖縄の施政権返還について、日米が継続的協議に入るにあたって、従来どおりの外交折衝にゆだねるのか、あるいはまた、別に日米間に特別の継続的協議機関を設置する用意があるのかどうかを、お伺いしたいと存じます。
 また、現地に新設される予定の日琉米代表よりなる委員会は高等弁務官の諮問機関といわれております。米国政府の諮問機関に日本政府の代表が加入することは、いかがであろうかという批判もあるようでございますが、このあたりの法的な解釈をお伺いしたいと存じます。また、参加する日本側の代表は民間人であるか、政府代表であるかの点も、あわせてお伺いします。
 第四は、沖縄と本土との一体化の問題についてであります。今日、沖縄と本土との間には社会制度と経済機構上かなり格差があります。佐藤内閣発足以来、この是正に意を用いられ、四十一年度、四十二年度の日本側の財政援助は飛躍的に増大してまいりました。しかしながら、長期にわたって米ドル経済のもとで成長してまいりました沖縄の社会経済機構を日本の水準に引き直すためには、今後なお相当の努力が必要でございます。単に財政援助のみにとどまらず、金融上の措置も必要であり、その他全般的な長期計画を立てる必要があろうと存じます。政府は南方連絡事務所の拡張等をお考えのようでありますが、さらに民間人等をも含めた総合調査機関をおつくりになる考えはございませんか。また、当面の問題として、明年度、政府の援助額については、どのように考えておられるかという点をお聞きいたします。
 なお、あわせて沖縄における重要産業である製糖業の近代化と振興対策につき、格別の配慮を農林大臣に要望いたしておきます。
 第五に、小笠原諸島の復帰は日本国民にとって、まさに朗報でありますが、旧島民が復帰できるためには相当な再開発計画が必要であろうと思います。私は、小笠原復興は、これを一地方団体にまかせるというようなことでなく、政府自体十分な責任をもって遂行されることが好ましいと思いますが、いかがでございますか。
 次に、北方領土について一言伺います。国後、択捉、歯舞、色丹等の北方諸島が、日本固有の領土であることは国際的な常識であります。今日、ソ連政府が一方的に領土権を主張し、領有しておることは、まことに遺憾と申さねばなりません。三木外務大臣は、先般訪ソの際、コスイギン首相より、この問題に関し中間的なものの提案を受けられたやに伺いますが、その内容はどういうものか、支障のない範囲で承りたいと存じます。
 また、国民の一部では、ベトナム問題中共関係、沖縄の施政権復帰等に関しては、一方的な立場でたいへん辛らつな批判をなさる一方、北方問題については、あえて口をぬぐうという風潮がなしとしません。これは、まことに遺憾なことであり、政府は、今後いかなる方策をもって北方領土の解決に努力されるか、御方針を承りたいと存じます。
 次に、財政問題に移って、特に、財政の硬直化と明年度予算の編成方針について大蔵大臣にお尋ねします。
 さきに、閣議で了承されました経済企画庁の「四十二年度経済見通し改定試案」によりますと、経済成長率は、名目で当初見通しの一三・四%が一六・九%、実質で九%が一二%というように、予想をはるかに上回っております。また、国際収支は、輸出が予想よりも減り、輸入は予想を上回り、貿易外収支もまた赤字幅を拡大する結果として、当初見通しの収支均衡はくずれておるようでございます。引き締め政策がとられておるにもかかわらず、このように経済の成長率が高く、国際収支に赤字を生じておるということは、日本経済の成長力についての評価が過小にすぎるため、政府のとった財政金融上の操作に食い違いが生じておるのではないかとの議論も一部にあるようですが、御見解を伺います。
 明年度予算は、景気抑制型の予算といわれ、国債への依存率をいかに押さえるかに重点が置かれているようであります。ところが、他方、歳出の当然増は一三・七%という、これまでにない大きな数字が予想されております。明年度予算が景気抑制型となり、予算規模の拡大が控え目に押さえられるならば、新規政策のための余裕はきわめて乏しいものとなります。この財政の硬直化をいかにして打開するか、明年度予算の最大の問題であります。
 今日、政府の予算に占める公共投資、社会資本の割合は、外国のそれに比べて決して低いものではありません。むしろ最高の率ともいえましょう。にもかかわらず、依然として公共施設、公共対策は、社会の実態に比べて立ちおくれております。交通問題一つとっても明らかであります。このことは、政府が公共事業に努力をしておるにもかかわらず、民間経済の成長のほうが、さらに上回っておるということにもなりましょう。言いかえれば、日本経済の規模に比べて、政府の予算規模が小さきにすぎるのではないかとの疑問もわいてくるわけであります。この間の事情について、大蔵大臣の御見解を伺いたいと存じます。
 財政硬直化の原因はいろいろございましょう。中でも、行政機構の複雑、膨大化と、毎年のベースアップによる人件費の増加、米価の逆ざやによる食管会計の赤字の増大、医療保険の赤字の増高等が特に注目をされております。
 いろいろ伺いたいのですが、時間の関係もあり、左の二点についてお伺いいたします。
 第一の行政機構の複雑、膨大化とベースアップによる人件費の累増を抑制するため、さきに総理は一省一局の削減という強い方針を打ち出されました。この総理の指示が時宜に適したものとして世論の広い支持を得たことは御承知のとおりであります。同時に、世論は、この一省一局の削減が名口だけのものでなく、実質的なものであることを期待しております。しかしながら、一方、現在の政府各省間を比較してみますと、定員と業務量との関係は必ずしもバランスを得たものとは言いがたいと思います。行政機構を簡素化し、定員を縮小させると同時に、各省間の業務繁閑のアンバランスを是正する必要がありましょう。そのため、各省設置法に基づく定員制を改め、政府の総定員を国家行政組織法で制定することの検討も進められておるやに伺いますが、この点、実現のお見通しがあるかどうかを伺いたいと存じます。
 また、公務員のベースアップの財源を当初予算に盛り込むことにより、年度中途における予算補正を避けるべきだとの議論があり、これまた傾聴すべき説だと存じますが、これには二つの問題点があります。一つは、ベースアップ分を当初予算に組み入れることにより、他の必要経費を圧迫するとの懸念であります。いま一つは、公務員のベースアップをあらかじめ想定することになります。したがって、公務員の給与を民間給与に準じて訂正するという本来の趣旨と異なってくるという点であります。この問の事情について政府の御見解を伺いたいと存じます。
 第二に、医療保険制度について伺います。
 さきに厚生省でまとめました医療保険制度の抜本改正案によりますと、現行の医療保険の各種の制度を統合することは行なわず、現行の諸制度はそのままにして、各保険から一定率の拠出を求め財源をプールし財政調整を行なう、給付については多少とも受益者負担の原則を導入する、ということになっております。これは確かに一案であるとは申せますが、抜本改正と申し得るかどうかは、いささか疑問ではなかろうかと存じます。
 医療保険は、読んで字のごとく保険である、社会保障ではないというのが、これまでのたてまえでございます。そのために、大会社の重役までが健康保険で十割の医療給付を受けられるというのが現状でございます。この現状を改めて、医療保険に社会保障の考え方を導入し、生活の余裕に乏しい低所得者に対しては手厚い医療給付を行ない、必要な国家負担も行なうが、一方、一定額以上の高額所得者に対しては、これを保険の対象からはずして、むしろ自由診療にゆだねる、そうして、その中間にある中位の所得者については保険システムをとる、こういう形で医療制度に自由診療と社会保障の考え方を導入するならば、現在の医療給付の悪平等は是正され、保険財政の赤字の解消にも役立つのではなかろうかと思うのでありますが、厚生大臣の御意見を伺いたいと存じます。
 最後に、大学の自治と学生運動の規制について文部大臣に伺います。
 最近頻発する一部学生の暴力事件に関しまして、灘尾文部大臣は、大学当局の責任者との会談において、学生の教育については大学自体がその責任の自覚を一段と深めてほしい、その上で学生指導、大学管理の責任体制を確立するため、大学自体具体的な検討を行ない、事実によって回答を示してほしいとの要望を出されたやに承っております。
 また、劔木前文部大臣も、羽田事件に対する善後策のため、二回にわたる大学当局との会合の席上でも、学校当局の自主的措置を強く要望されたようであります。これに対する大学当局の反応はいかがなものでございますか。私は大学の自治を尊重し、学生問題を極力学校当局の責任と自主性において解決するというたてまえは原則として何ら異存はありません。また、いつの時代にあっても、社会のひずみに対する学生諸君の持つ鋭い批判精神が正義感をさそい、情熱のほとばしりとなってあらわれ、時に常軌を逸した行動となったからといって、それを一つ一つとがめだてをするつもりはございません。それがわれわれの持つ社会観と異なった世界観から発したものであっても、でき得る限り寛容であるべきだと思います。しかしながら、ものには限度がございます。今日一部の学生の指導者によって行なわれておる数々の計画的暴力行為は、はるかにその限界を越えておると言うべきでありましょう。一種の異常感覚につちかわれた彼らの秩序破壊的行動を、教育という名のもとに温情主義をもって接していくだけでは、むしろ今日逆効果になる危険さえ含まれると私どもは思うのでございます。(拍手)大学の自治、学問研究の自由は尊重さるべきでありましょう。しかしながら、大学といえども治外法権の場ではありません。明らかに社会秩序を破壊し、あるいは個人の生命に危険を感ぜしめるがごとき一部学生の計画的暴力行為に対しては、断固たる法律による措置が、むしろ学校の自治を守り、善良なる学生の自由な研究を助けることになるのではないか。このことは識者もひとしく認めておるところだと思いますが、これに対しまして当局の御見解を伺いたいと存じます。
 以上をもって私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(佐藤榮作君) 安井君にお答えいたします。
 さすがに安井君は、沖縄、小笠原の問題を担当されて、私どもと苦労をともにされただけに、今回の取りきめにつきましての理解は私は人一倍だと、かように思っておるのであります。厚くお礼を申し上げます。この問題は、その衝にある者でなければほんとうに苦労がわからないはずであります。私は安井君が長い間ほんとうに苦労をしたこと、その気持ちをいまさら思い出しまして、安井君とともに喜びたいと思います。
 御承知のように、今回の外遊によりまして、いろいろ東南アジア諸地域を回りましたが、その際に私が各国首脳者と話しましたことは、やはり極東における安全、平和、それはどうしたらいいか、ことに最近の中共の核爆発、核開発、これが非常な影響を与えておりますので、東南アジアの諸国は、すべてこれに非常な関心を寄せております。また同時に、ベトナム問題、これが直接の問題でもございますので非常に関心を示しております。これらの事柄について十二分に話し合って、そして極東の平和と安全のためにお互いにできるだけの努力をしようじゃないかというような話もいたしました。また、各国との相互の関係の問題等についてもいろいろ話をいたしたのであります。いずれにいたしましても、この極東の問題、これは沖縄の問題小笠原の問題等を含めて、各国とも非常な関心を持っておる問題であります。それだけに、この問題の解決のむずかしさがあるわけであります。これは、何度も申し上げるようですが、ともに苦労した人で、初めてわかってくださる、かように私は思います。
 そこで、今回の日米の会談によりまして、沖縄を返還するとの方針のもとに、お互い協議するということ、そういう継続的な協議をするということが初めて取りきめができました。その以前に、当方の主張も、国民的要望も十分説明してございますし、これについては深い、いわゆるフーリー・アンダースタンズ、これを示しております。したがって、私は、ジョンソン大統領と私との間に、何らの食い違いはないと、かように思っております。
 また、これは、ジョンソン大統領については、いろんなことを言う人がございますが、しかし、米国の代表者、ジョンソン大統領、日本の首相、佐藤榮作が話し合ったのでございますから、両国間におきまして、どういうことがあろうとも、今回のこの取りきめ、これによりまして進んでいくことは、間違いのないことであります。そうして、私は、この沖縄の問題が即時に返還ができない、これは、ただいまの実情等から見まして、経済から見ましても、また、基地等から見ましても、即時にできないこと、これは、私は、日本国民も十分理解してくれると思います。即時返還ができない、返還が実現するまでは、その一体化について、さらに積極的に努力しようという、双方の意見が合致いたしまして、今回のような日米琉諮問委員会を設ける、こういうようなことで、一そうその点が前進した。これは何と言っても、両国にとりまして、しあわせなことだと、かように思っております。しかも、この事柄が、両国の友好関係を阻害することなく、完全な理解で、むしろ友好関係を増すことによって、この方法がこの妥結を見たこと、これもまた大きな成果だと、私は、かように自負しておる次第でございます。
 これらの点については、十分御理解があるようでございますので、私は、安井君のお述べになりましたところと、全然意見は同一であるということを申し上げまして、これ以上申し上げません。
 次に、返還方式でありますが、返還方式をただいまから簡単にきめるわけにはまいりません。これは、御指摘になりましたように、今後もいろいろ科学技術の進歩もありましょうし、国際情勢の変化もございましょうし、また、国論、世論の動向も考えていかなければならないと思いますので、ただいま簡単に、その返還方式はどうだ、地域返還、地域分離が可能だとか、あるいは一つ一つ返還できるのだ、こういうような簡単な結論は、まだ出すつもりはございません。十分慎重に、ただいま申し上げましたような状況を勘案いたしまして、そうして、国民の納得のいく、国民の満足するような方向で実現したい、かように私は考えております。
 また、基地のあり方につきまして、私が先ほどもお答えいたしましたように、施政権の返還と基地というもの、その二つを併存さすことができる、また、併存さしていかなければなりませんので、それで初めて日本の安全が確保されるのだ、かように思いますし、欧州におけるその例から見ましても、基地があるから施政権を持たなければならない、施政権を持っておるからどんな基地でもできるのだ、こういうようなものではないのでありまして、この基地、それから領土、これは、二つを同時に考えるもの、かように私はいまも考えておりますし、また、そういう意味で、今後の基地のあり方について、十分慎重に検討してまいるつもりであります。やっぱり、何と申しましても、長期的なわが国の安全保障の見地からこの問題を検討すべきである、これは御説のとおりであります。これは、まだ時間がかかるだろうと思いますが、そういう意味で、この問題を検討してまいるつもりであります。
 次に、日米間の協議機関の問題でございますが、これは今回特別の協議機関を設けなかった、このことがあるいは一部不満であるようにも私の耳には入るのであります。しかし、なぜ特別な協議機関を設けなかったか。これは申すまでもなく、広範にわたる祖国復帰の問題でありますだけに、本来の責任のある政府がこの外交チャンネルで話し合いをするのが最も適当である、そこに初めて政府の責任、国民に対する責任が明確である、かように私考えますから、外交チャンネルでこの問題と取り組むということにいたしたのであります。しかしながら、事柄の性質上、ときに専門委員の意見を徴する必要もあるだろうと思います。そういう場合には、専門委員をこの協議に参加さす、これはできるのでありまして、そういう点では日米両国間の合意も十分できております。したがって、私はいわゆる特殊な協議機関は設けなかったが、責任の所在のある外交チャンネルでこの問題を解決するということが最も望ましい方法ではないか、かように思っております。
 また、日米琉諮問委員会について先ほど来も岡田君にもお答えしたのでありますが、これが新しい今回の機関であります。これは何と申しましても、沖縄が祖国復帰する、その場合に摩擦を少なくする、今日からそういうことでいろいろの準備を進めていこうというのであります。したがって、この沖縄諮問委員会の日本の代表になられる方、これはもちろん適材でなければならないと思います。そういう意味で、私は、どういうものでなければならないとか、何の何がしであるとか、かようにただいま申し上げるわけにはまいりませんが、どこまでも適材をこの日本の代表として選ぶつもりでおりますし、また、日米琉諮問委員会の委員は高等弁務官に従属するのではないか、かような御懸念があるようでございますが、諮問する、諮問に答える、あるいは意見を述べる、その相手は高等弁務官でございますけれども、この高等弁務官から指揮監督を受けるようなものではございませんので、その点では、いわゆる従属するものでない、かように御了承をいただきたいと思います。
 また、この沖縄に対する予算、援助額、これをどういうようにするか、ただいませっかく予算編成中でございますので、できるだけ一体化、これを促進するようにこの上とも努力してまいることをこの機会に、抽象的ではありますが、申し上げましてお答えとしておきます。
 また、小笠原の問題については、これは申すまでもなく、小笠原の復帰準備対策本部というものを総理府に設けるつもりでございます。関係各省におきまして、ここの本部でこの小笠原復帰と真剣に取り組むということでございます。一年以内にこれが実現するのでありますから、急いで準備を取り運ばなければなりません。奄美大島が復帰いたしました際は、ちょうど宣言後四カ月ばかりで実はこれが実現しております。したがいまして、一年以内とは申しますが、できるだけ早くこの復帰を実現することが私どもの責任だと、かように思いますし、旧島民の心から願うところだと思いますから、政府はこの本部を通じましてあらゆる努力をして、早期にこの問題が実現するようにするつもりであります。
 また、この島々は、ただいままで荒廃に帰しておるものだと、かように思いますから、できるだけ早い目に現地調査団を派遣するつもりでございます。おそらくただいまのところでは来年早々にでも出かけるのではないか。もうすでに民間では調査団も出かけておるようであります。しかし、政府の責任ある調査団としては、来年早々現地調査団を派遣していくということにいたしたいと思います。
 また、島の再開発につきましては、おそらく相当荒廃に帰しておる、かように想像されますので、政府が積極的にこの問題と取り組まなければならない、かように思います。したがいまして、各党の御協力を得まして、国会等におきましても、この再開発に積極的に取り組んでいただきたいと思います。
 北方領土の問題もお尋ねがございました。私どもが当面しておる問題、いわゆる沖縄、小笠原の問題、また北方の国後、択捉、歯舞、色丹、こういう問題がございます。しかして、この南の沖縄、小笠原問題は、いわゆるサンフランシスコ条約第三条によって一応その根拠があるのでございますけれども、北方領土は遺憾ながら何ら条約上の根拠はございません。これは実力によって占領されておる、こういうものでございますだけに、私どもはあらゆる機会に絶えずこの返還を要望いたしておるわけであります。おそらく日本国民はすべての方がこの返還が一日も早く実現するように要望しておられることだと思います。しかし、ただいままでのところ、いろいろの折衝をいたしますが、あまりこれという手づるがなかった。しかし、ことし三木外務大臣がモスコーを訪問いたしましてコスイギン首相と相談した際、何か中間的なものを考えたらどうだろうか、こういうような一つの手がかりができた、かように思いますので、この問題につきましても、私どもはあきらめることなく、今後とも引き続き、ぜひとも国民総力を結集して、この問題が解決できるように、この上とも努力したいと思います。
 その他の事柄につきましては、それぞれの担当大臣からお答えいたさせます。(拍手)
   〔国務大臣三木武夫君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(三木武夫君) 安井君の御質問、総理がいまお答えになったようでございますが、多少補足をいたしますと、日ソ間の定期協議に私が今年の夏モスコーに行って、コスイギン首相と会談の節に、日ソ間の最大懸案である領土問題を解決のために何とか両国で話し合いできないであろうかという私の意見に対して、領土問題とは言いませんでしたが、平和条約を結ぶということに対しては、ソ連は、日本が賛成するならば、すぐにでも結ぶ用意がある、日本はそうもいかないようであるから、何か中間的な文書、そういうものを考えられないであろうか、これはひとつ日ソ両国の外交機関で検討してみてはどうかという提案があったわけであります。したがって、その中間的なものというものが、その内容がいかなるものであるかということは、コスイギン首相も、こういう案ということを頭の中ではっきりと描いて発言したものでもないと思われる点もありますので、この十二月にモスコーで、中川大使から、日ソ間のいわゆる中間的なものというものに対して、日ソ間でひとつ話し合いをしてみようということにいたしまして外交交渉を始めたわけでございます。これは多年の懸案でありますから、一気に解決できるという性質のものではない。腰を据えて、単に領土問題というだけでなしに、長期に日ソ間の関係を安定さすことは日ソ両国の国益に合致するという見解のもとに、いろいろな問題も含めて、ぜひ腰を落ちつけた外交交渉をこれから続けていく予定でございます。
 お答えといたします。(拍手)
   〔国務大臣水田三喜男君登壇、拍手〕
#12
○国務大臣(水田三喜男君) 今年度の経済見通しにつきまして、政府は先般改定を行ないましたが、もしそうだとすると、これまでの引き締め政策に欠けるところが出てきはしないかという御懸念でございましたが、私は、いまの引き締め政策は一月に入りましたら、必ず広く浸透して効果が出てくるものと確信しております。財政の繰り延べ措置は、もともと、四、五カ月たたないと効果があらわれてこないものでありますし、金融の引き締め政策が、食管会計を通じて非常に大きい米の代金が支払われましたので、引き締めの切実感を薄めた事実はございますが、しかし、いよいよ一月−三月の揚げ超期に入ってまいりますと、必ず効果は浸透して、金融も窮屈になってまいりましょうし、国内需給、国際収支の基調に変化が出てくることは必至であるというふうに考えております。
 それから御指摘のように、公共事業費の総予算の中に占める水準というものは、外国――欧米に比べて二倍以上という水準でございますが、それにもかかわらず社会資本のおくれが目立っておるのは何かと、結局、経済規模に対する財政規模が低過ぎはしないかという御質問でございましたが、確かに、国民経済の中に占める財政の比重は、欧米諸国に比べて日本は低うございますが、諸外国は防衛費が非常に多額でございますので、この防衛費を抜いた規模で比較いたしますと、決して低いものではございません。したがって、この公共資本の立ちおくれというのは、もともと、日本の社会資本の蓄積が少な過ぎたということと、昭和三十年代に入った急速な経済成長に、公共投資が追いつけなかったという事情であろうと思いますので、今後は均衡のとれた予算の配分によって対処したいと考えます。
 それから、来年度の予算編成に関しまして、公務員の給与ベースアップ分を当初予算に盛ることについての、これに関しての御質問でございましたが、今年度の補正予算でも、補正財源では非常に苦労いたしましたが、今後の日本経済を見通してみますと、もう年度の途中で、多い自然増収を期待するということはほとんど不可能であろうと存じます。したがって、多額の資金を要する、原資を必要とする補正要因を残しておいて当初予算を組むということは、健全財政の立場から私は好ましいことではないと存じます。したがって、補正予算の中で一番大きいもの、食管の赤字を埋めることとか、人事院勧告によるベースアップの問題というようなものを当初予算の中に入れ込んで、そうして、最初から他の経費との比較によって総合的に判断するという措置は、私は必要であろうというふうに考えて、できるだけ来年度の予算には、何かそういう方向に一歩改善した措置をとりたいというふうに考えていますが、なかなか、実際にこれを実行することは、御指摘のようなむずかしい問題もございますので、今後、これから財政制度審議会にもはかりまして、慎重に検討してこのやり方をきめたいというふうに考えている次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣園田直君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(園田直君) 御指摘の抜本改正案なるものは、これは部内で得ました結論ではなくて、厚生省内の事務当局の全くの試みの案でございます。と申しますことは、非常に大事な問題でありますから、さらに各党、各団体、各方面の御意見を率直に承り、さらに私の手元で検討して成案を得るべく努力をいたしております。
 そこで、第一の御意見は、ごもっともな御意見ではございまするが、しかしながら、各種保険及び支払い者側などいろいろ沿革もあり、相当な環境の相違もございますので、一挙にここでやりますることはいろいろ弊害等も生じますので、成案を得る際に、ただいまの御意見は参考として十分検討したいと考えております。
 第二番目の御意見は、非常に慎重に検討しなければならない問題ではありますが、ただいまのところ国民皆保険の方向を変える意思はございません。しかしながら、おっしゃることはごもっともでございまして、ただいま言われておりまする医療給付の悪平等、あるいは限られたる国家財政の中で保険財政をどう安定していくかという観点からいたしますると、当然仰せのごとく、高額所得者と低額所得者の扱い方は非常に考えなければならぬ問題でありまして、この点については御趣旨に沿うよう、成案を得る際、十分検討したい考えでおります。(拍手)
   〔国務大臣灘尾弘吉君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(灘尾弘吉君) お答えをいたします。
 先般の羽田空港付近における学生の行動に対しましては、国民ひとしく深い憂いを持ってこれを見ておるわけでございます。政府といたしましても、一昨日の総理大臣の所信表明にもございましたように、この問題につきましては、重大な関心を払っている問題でございます。最もこの問題について心配いたしておるのは、私は各大学の当局者であると信じております。従来からもいろいろ学生運動の中に、常軌を逸脱し、一般学生に対して迷惑を与えますとか、あるいはまた学生相互の間に乱闘を行ないますとか、あるいはまた学校の当局者に対しまして、人権侵害ともいうべき行動に出るとか、こういう事態がなかったわけではございません。必ずしも今回の羽田事件だけであるという問題でない。すでに相当の年月にわたりまして、この種の問題が学園の中に存在しておったということは御承知のとおりであります。これに対しまして、各大学におきましてもいろいろ心配をし、その改善のために努力をしてまいりましたことは、私はこれは認めなければならぬと思うのであります。ことに昨今の問題につきまして、このような問題は、ひいては大学の国民の間における信頼を失い、最も尊重せらるべき学園、大学の自治ということすら危殆におとしいれられる、かような心配のもとに、深刻な事態の改善について努力をいたしているものと私は認めているのであります。もとより、この種の問題につきましては、ただ単に大学当局だけで解決できる問題とは思いません。広く国民全体が深い関心を持ち、また学校教育といたしましても、単なる大学だけの問題ではなく、初等教育、中等教育、すべてを通じまして、これにつながる問題として考えていかなければならないきわめて広く、また深い問題であろうかと思うのであります。その意味における努力はもとより、政府といたしましても、関係当局者といたしましても、大学側といたしましても、また他の教育機関におきましても、いずれも協力して解決していかなければならぬ問題であると考えますけれども、現に当面いたしております大学の中における秩序の問題、大学の教育の一環として認められておりますところの自治会活動、その他の学生活動、これが常軌を逸することになり、教育の目的に反して学生の本分をみだる、このような事態が現にあるといたしまするならば、かような大学の自治そのものにも影響を与えるような不正不当、この状態はすみやかに排除せられなければなりません。このために、何と申しましても、大学当局がその責任において、この問題の事態の改善に努力すべきことは当然であり、現にその方向に向かって私は真剣な努力をいたしておると思うのであります。しかし、事態いかんによりましては、いかに努力しましても、そのような不正不当な状態を排除することができない、このような場合には、私はちゅうちょすることなく、合法的な実力の導入をはかることは当然のことであろうと思うのであります。こういうような事柄に対して、ややもすればちゅうちょする、迷う、したがって事態の改善は何ら行なわれない、こうなってまいりますと、これは大学がその大きく与えられておりますところの大学の自治そのものを守っていくことすらできないのであります。私は、最も大切な大学の自治を守っていく、この立場において、大学当局としては善処すべきものであろうと考えるのであります。迷いを生じ、あるいはまたちゅうちょをいたしましたために、肝心な大学自治そのものが脅かされるということになりましては、私は大学当局者の責任を果たしておるものとは考えられない。そういう場合にはき然として、勇気を持って問題の解決に当たってもらいたいと思うのであります。
 もとより、警察力の導入というようなことが、大学としまして歓迎すべきことでないことは当然のことであります。そういう意味におきましては、私は大学側も慎重であり、また警察側も慎重であり、お互いに良識を持って事態の改善のために協力する、このような理解と協力の関係こそ望ましい事態ではないかと思います。みだりに警察力が入るべきものではない。さりとて、これを入れないために、大学そのものが破壊されるというようなことになりましては、国家の大きな目的に反することになろうかと考えます。
 こういう考えのもとに、私は事態に対処してまいりたいと思います。大学の当事者が現にこの問題について慎重に研究し、努力しておるということは、私は認めてしかるべきものであろうかと考えます。(拍手)
#15
○副議長(河野謙三君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#16
○副議長(河野謙三君) 御異議ないと認めます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時五十分散会
ソース: 国立国会図書館
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