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1949/03/28 第5回国会 参議院 参議院会議録情報 第005回国会 法務委員会 第3号
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1949/03/28 第5回国会 参議院

参議院会議録情報 第005回国会 法務委員会 第3号

#1
第005回国会 法務委員会 第3号
昭和二十四年三月二十八日(月曜日)
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○檢察及び裁判の運営等に関する調査
 の件
  ―――――――――――――
   午後三時十九分開会
#2
○委員長(伊藤修君) それではこれより法務委員を開会いたします。
 本日は政府に対する質疑の申入が委員よりありました。先ず齋委員の質疑を許可いたします。
#3
○齋武雄君 檢察の運営に関しては、当委員会は重大な関心を持つておるのでありますが、横浜地方檢察廳のいろいろの汚職事件がありましたが、それについて事件の内容及び現在の状況を法務総裁からお伺いいたしたいと思います。
#4
○國務大臣(殖田俊吉君) 横浜の事件と申しますと、最近の事件は木船事務官と申します者の汚職に関しまして、廳内にいろいろの問題を巻きおこしまして、私へも刷新方を要望する建白があつたのであります。横浜檢察廳におきましてもこの問題を重大視しまして、すでに檢事正はこれを問題にいたしまして橋本檢事をして調査をさせておつたのであります。然るに更にこれを徹底せしめまする趣旨を以て香取檢事をしてこの橋本檢事に交替せしめました。その間に行違いがありまして、檢事を主任檢事と替えたのはこの事件を有耶無耶にもみ消すためではないかというような風評を生みまして、そこで非常にもめているのでありますが、決してさようでありません。檢事正の意向といたしましては更にこれを徹底的に調ベますために、橋本檢事よりもより適任な方を選んで調べさしていたといつたようなことであります。只今のところ事件に関係いたしまする事務官は五名であります。併しながらこれは事務官だけでありまして、檢事には今のところ疑惑は及んでおりません。今月中にこの取調を終るような予定でありましたが、檢事正はこれを東京高等檢察廳に持つて参りまして、只今は東京檢察廳において直接に取調をいたしております。何れ近く完全な報告が参ることと考えております。その報告によりまして、今度は思い切つたる処置を構じだいと考えているのであります。でこの横浜の地檢の問題が新聞等に表われますのは古い事件と混同されておりまして、横浜にはどういうわけ合いでありますか、古くから今の檢事のその前の檢事の前の檢事正の時からも、いろいろと噂が飛んでおりまして、新聞等ではそれが一括されまして大きな問題として取上げられているような感じがいたすのであります。併しそれは何れといたしましても、只今の事件もそう大きな事件ではないようでありまするが、併しながらこと檢察廳に関する事件でありまするから十分に調ベ上げまして、そうして容赦するところなく嚴正な処分を加えたいと思つております。
#5
○齋武雄君 檢察廳の汚職事件を檢察廳で調ベるということは今まででも例がありましたが不徹底である。それについて法務総裁は如何なる考を持つているか。他の機関において調ベる方が適当であるか、或いはその檢察廳でない上の檢察廳ですかがお調ベになるのが適当であると考えておられるのか、それを一つ伺いたい。
#6
○國務大臣(殖田俊吉君) 必ずしもその檢察廳において調べることがいけないとは考えませんけれども、愼重を期します上におきまして、このたびも上級の檢察廳へ移しまして取調をさしているような次第であります。
#7
○齋武雄君 今までの例によりますというと、最高檢察廳が調べておつて、ところがそれは不徹底である。極めて不徹底であつて、檢察廳が檢察廳を調べるということは却つて証拠の堙滅になる。そういう関係からして他の機関をして調べさせるという考がないかどうか、それを伺いたい。
#8
○國務大臣(殖田俊吉君) どうも檢察のことは、やはり檢察廳をして調べさせるのが一番適当であろうと思います。勿論お話のごとく自分の仲間同士を調べるということについてはこれは相当考えさせられる点がございますけれども、さればと申して他により適当な機関があるとも考えられません。殊に今日は若し不当な不起訴処分にいたしたような場合には檢察審議会ができておりまするから、この審議会が活動してこれらの非違を調べることもできまするし、更に檢察官の適格審査会も設けられましたので、それらの機関によつても調べることができるというわけ合でありまするから、從來よりもよほど爾後の監督が届いて参つておりまするから私は先ず檢察廳自体において調べましても大した間違いはあるまい。今のところその他に手はない。從つて地檢の問題は高檢に移し、更に高檢の問題は最高檢に移すというような程度でやることが適当であろうと考えております。
#9
○齋武雄君 この事件について一昨年でしたが、東京高等檢察廳の監査委員会が、内容を調査したと新聞紙上にありますが、その内容調査はどういうことを調べたのか、その報告書を求めたいのでございます。
#10
○政府委員(木内曾益君) その点私からお答えいたします。昨年行政監査委員の方々が横浜へ行つて、横浜檢察廳の檢察事務についていろいろ監査をされたことは私も承知しております。これは前法務総裁の時代でございます。その結果は私もどういう報告であつたかということは今記憶しておりませんから、御必要ならば、いずれその報告書をとつて御報告いたしたいと思いますが、この監査はただ今問題になつておる後藤関係の問題の監査というのでなくて、横浜檢察廳全体の檢察運営についての監査であつたと、かように心得ております。
#11
○齋武雄君 その報告書をそれではあとで御提出願います。
#12
○政府委員(木内曾益君) 承知いたしました。
#13
○鬼丸義齊君 大野委員からお尋ねになつておつたそうでありますが、私から法務総裁にお尋ねしようということになりましたので、私よりお尋ねするのでありますが、先ず第一にお尋ねいたしたいことは、刑訴の百九十九條、これによりまして被疑事件がありましちときに、裁判所に対して逮捕状の請求を檢事局よりいたします場合、この逮捕状を請求するについて、被疑事実を疑うに足るべき理由として請求書に書かなければならぬことになつておりますが、檢察廳の一般方針としてどういうような程度の請求書を出して裁判所に令状を求めておるかの点について、先ずお伺いいたしたいと思います。詳しく申上げますれば、令状請求に当つては被疑事実を証すべき関係書類を添付して請求するのであるか、或いは又單に被疑事実だけを書いて、格段被疑事実を記すべき資料の何物をも出さなくてよろしいのであるか、その点をお伺いいたしたいと思います。
#14
○國務大臣(殖田俊吉君) 只今のお尋ねの場合におきましては、やはり被疑事実を添付して請求するものであります。もう少し詳しく申上げますと、つまり逮捕状を請求いたしますときは、公訴提起前の捜査段階に属することでありまして、逮捕後更に捜査を進めようとするのでありますから、この場合の資料は、公訴提起の場合における資料のように、有罪判決を得るに足りるほど確実な証拠はこれを必要としないと考えます。併しながら、逮捕は人身を拘束する重大な手続でありますので、その者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるかどうかは、捜査官のほしいままな判断は基くことは許されないことでありまして、逮捕状の請求の当時明らかになつておる資料を合理的に判断して、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると考えた場合でなければならんと思います。具体的に如何なる資料を必要とするかを例示することは極めて困難でありますが、抽象的に申上げますれば只今申上げたようなことであります。
#15
○鬼丸義齊君 只今の法務総裁の御答弁は法文に記載をいたしておりまするから、別段その点に対しましては私は異議を持たない。法文には疑うに足るべき相当の理由がなければ逮捕状の請求はできないことになつておりますから、それは、只今の御答弁では法文そのものをただ述べられただけに止まつておると思います。私のお尋ねいたしますことは、その疑うに足るべき事、実これに対して裁判所が逮捕状を発付して然るべきものなりや否やということを判断するいわゆるその資料、当時請求者の手許にありまする、即ち被疑事実を疑うに足るべき資料があつて、その資料に基いて疑うべき事実ありというふうな認定をされて令状の請求をされるだろうと思いますが、その場合に、ありまするだけのやはり資料は当然裁判所に提出して、逮捕状の発付を待たなければならんのではなかろうか。それを疑うに足るべき事実ありや否やの裁定が檢事局だけによつて決定されるのでありますれば、敢えて裁判所の令状の発付を求める必要はない、裁判所の令状の発付を求める所以のものは、檢事局ではさように認めるから令状をよこして貰いたい、発付して貰いたいということを出すのでありますから、裁判所には当然その資料に基いて若干の判断をするべき程度の資料がなければ分らないのではなかろうか、こういう意味においてお尋ねしたのであります。
#16
○國務大臣(殖田俊吉君) 判事が逮捕状を発するのでありますから、判事をして逮捕状を発することが必要であると考えしむるだけの資料は当然必要であると思います。でありますから、できるだけの資料を準備するのが当り前であります。
#17
○鬼丸義齊君 只今の法務総裁の御答弁は、過般最高裁判所の規則を定められました結果、百四十三條において逮捕状を請求するのは、逮捕状発付の要件が在存することを認めるべき資料を提供しなければならないと思います。この規則の発付されましてから後に只今の総裁のお考えの如き考えがなされたのであるか、或いは又この規則が定められない以前におきましても同様なるお考えをお持ちになつておられたかどうか。すでに逮捕状に発付については刑訴において、百九十九條において請求して逮捕することになつておりまするので、定めて同様なる考えであつたろうとは存じますけれども、重ねてその点のお考えを質して置きたいと思います。
#18
○國務大臣(殖田俊吉君) 当然さように考えるべきものと思います。私は從前からさように考えておつたものと考えまするが、その辺の微妙なる点につきましては檢務長官からお答えさしたいと思います。
#19
○政府委員(木内曾益君) この問題につきましては只今法務総裁から御答弁になりました通りでありまして、檢察廳においても、法務廳におきましても、この規則ができる前から、勿論廳急措置法時代から鬼丸委員のおつしやつたと同様な考えを持つておつたものであります。
#20
○鬼丸義齊君 この問題に関連をいたしまして、実は過般問題になりました浜松の裁判所の天野判事の罷免訴追事件に関しまして、図らずも逮捕状の請求に関しまする問題が生じて参つたのであります。それは昨年の二月の六日浜松の某事件に対しまして大久保檢事から浜松の天野判事に対して逮捕状の請求をしたのであります。ところがその請求書によりますると、被疑事実は立派に書いてあります。そうして而もその被疑事実に対しまする事実を疑うに足るべき事実という欄に至りましては、右事実を証すべき書証の存在並びに関係人の陳述、これだけの例示を書き連ねてあるばかりでありまして、その他逮捕状を発付されるということが適当であるかどうであるか、或いは檢事局の方においてその被疑事実を疑うに足るべき理由をどういうふうに、どういう資料に基いて認めたのであるかということについては、一切関係の書類がなかつたのであります。そこで天野判事のその請求に対しては、これだけでは裁判所として果してこの被疑事実を証するに足るべき事実があるかないかということは分らない。いわゆる逮捕状を発付すべきものなりや否やという判断に困るから、関係の書類があるならば出して貰いたいということを申出でまして、ちようどその申出で当時に上席の國又檢事なでがおられまして、その天野判事の請求が尤もであるということを認められました結果、当時手許にありました資料を添付して逮捕状の請求書を出したのであります。この結果、天野判事は逮捕状を出しました。ところが続いて同日の十三日に至りまして、別件でありまするが、某氏二名に対しまする逮捕状の請求書を出して、同じく大久保檢事の名において天野判事に対して請求したのでありまするが、ところが先に逮捕状を出しました当時に問題にいたしまして、單なる書証の存在であるとか関係人の陳述であるとかいうだけのことでは、いわゆる被疑事実を疑うに足るべき判断をなすに足る資料というものが全然ないのであるから、裁判所ではそれは分りにくいから、あるだけの資料を出してくれということを求めた結果として、当時資料を出したから逮捕状を出したんだ。ところがその一週間経たない二月の十三日に再び大久保檢事から天野判事に対して同様な書き方をして逮捕状の請求をいたしたのであります。そこで天野判事は電話を以て大久保檢事に対して、これは前回も私の方で御注意申上げたのであるが、何らの資料なくして令状を出せということは裁判所としては判断に困るということで、手許に資料があるのであるならばこの際一つ出して貰いたいということを電話で以て大久保檢事に求めましたところが、大久保檢事はその申出に対して曰く、逮捕状の請求にはこれだけで十分だと、何を言つとる、この馬鹿野郎と、こういうような言葉を以て應酬したということになつております。それから、それならば裁判所としては逮捕状を出していいか分らないから、この程度では出すことができないということで、逮捕状の発付を拒絶した。そうしたところが時を移さず大久保檢事は、当時浜松檢事局に新聞記者を六名招集いたしまして、重要発表があるから集つてくれということで招集して、六名の新聞記者に対して、天野判事が禁綿事件に対して逮捕状の発付を理由なく拒絶した、天野判事はわれわれの持つ搜査権を妨害するのだということで以て、極めて激越なる言葉が発表されまして、当時靜岡を中心といたしまする各新聞には特筆大書してこの問題が提供されたのであります。この点につきまして先般天野判事の彈劾裁判におきまして、天野判事外関係の方々の全部の方に証人として御出廷を願つて、親しくこの事実を取調べいたしたのであります、その結果によりますれば、多少言葉の相違はございましたが、確かに新聞社に当時さような発表をしたことは間違いない、のみならずわれわれの理念においては、逮捕状の発付の然るべきや否やということは、檢事において判断すべきものであつて、裁判所は未だ裁判に至らざる前においてさようなことを判断する資格はないのだ。であるから檢事は責任を以て逮捕状を請求したならば、裁判所はそれに対してはそのまま逮捕状を発付して貰わなければいけないというふうに自分らとしては解釈しておる。こういうふうに実は証言があつたのであります。そこで当時のやはり関係者でありましたる國又上席檢事並びに靜岡の地方裁判所の檢事正、この御両君もやはり出廷をして頂いてこの点に対する証言を求めましたところが、甚だ曖昧なる証言でありました。時にはあるだけの資料を出して裁判所に令状を求むべきであると答えたるがごとくありまするが、一面におきましては搜査権は檢事にあるのであるから、必要なる疑うに足るべき事実ありや否やの判断は檢事の責任においてなすのであるというようなことで以て、非常に曖昧なことで以てそのときは終つております。私は部下を庇う立場にありまする上司としては情において尤もなことだとは思いましたけれども、甚だその証言が曖昧に終つております。そこでその後最高裁判所の規則が制定発布になりまして、すでに百四十三條において、かかる場合においてもあるだけの資料を提出して裁判所に令状を請求しなければならんことになつたのでありますから、もはや今日におきましては何らの疑問はございません。が併しその当時としましては、ただ刑訴の百九十九條にありましただけでありましたがために、やはりそういうふうなまちまちなる解釈をしておつたのではなかろうか。のみならず当時の天野判事を裁判に関しましては、そうしたようなことが非常に感情的に激化いたしまして、天田判事が「するめ」の闇事件に恰も被疑関係を持ち、そうして而も何らかその間甚だ暗い影のあるごとく傳えられまして、その後現職にあられましたる天野判事に対して静岡の地方裁判所の方の檢事局から三回に亘つて召喚状を出しております。或いは又天野判事のお宅は遠いために、ときによりますると途中で遅くなりますると泊りまする宿屋の女中までも調べました。私ども天野判事の責任を追及しておりましたのでありまするから、極めて公正にその点に対しまする判断はいたしたのでありまするが、如何にしてもその態度は甚だ面白からざるものであると感じたのであります。更にこの檢事局が苟くも犯罪の搜査の半ばにありまするいわゆる被疑者の逮捕、その前に当つて裁判所に逮捕状を求めたに拘らず、裁判所はそれを拒絶して逮捕を妨害するというようなことを堂々と新聞記者に発表いたしまして、裁判所対檢事局との間において新聞を通じて感情の激化しておりまする事実を天下にさらしまするとこは、如何にしても穏当ならざるものではなかろうかと当時考えたのでありまするが、この点に対しましては或いは法務総裁はお手許においていまだ御承知ないと思います。さような経緯がございまして、一切の関係書類は彈劾裁判所において各関係者の速記録等もございます。私が概要を今申し述べたのでありまするが、そうした搜査途上にありまする場合において、新聞記者に檢事が逮捕状拒絶の事実などというものを発表いたしまするが如き態度は、檢事として果して適当なる行動とお認めになりまするかどうか。尚この点に対しまして特に一つ愼重に御調査を願つて、然るべき御処置を監督者としておとりになることが適当でないかと存じます。
 この点お伺いしたいと思います。
#21
○國務大臣(殖田俊吉君) 令状請求に当りまして十分な資料を添付しなかつた。これは從來の檢察廳の取扱からいたしましても間違いでありまして、事務当局に聞きましたところによりますれば、常々これは注意してあることであるのであります。併しながら未だ不徹底であると見えますので、今後は訓令等によりましてこの点を明らかにいたしたいと思います。尚只今お話の当該檢事の取りました処置は決して穏当ではございません。甚だしく常軌を逸した処置と考えます。よく取調べまして嚴重に戒飭を加えたいと考えます。
#22
○大野幸一君 只今法務総裁の御答弁のうちに、よくその趣旨を徹底せしめて訓令等により万遺憾なきを期せしめると、こういう御答弁がありましたが、これは常に本委員会において委員の質問に対する常套語であるのではないかと、私はかように考えるのであります。そこで若しそういうことにおいて一時的に我々の質問から逃れられて大変なことが起きると、こういうことがあるのでありますが、若しそういう事実があつたときに、一体ここで答弁をせられた政府委員はそれに対して責任を負われるかどうかということであります。法務総裁のみならず各責任者として我々議員に約束されたことは責任を負われるかどうかということを私は第一点に聞いて置きます。その次に若しその訓令を出されたにも拘らずその訓令の趣旨に相反するような誤つたる行爲を下級第一線にある檢事がなしたときに対しては、これはどういう御処置をされるかされないか、こういうことを第二点に聞いて置きたいと思うのであります。
 第三点は連続犯の問題でありまして、これは更に立法の趣旨を一層明確ならしめるために御答弁を願つて置きたいと思うのであります。
 三点とも相関連する事実でありますから、具体的事実を挙げまして質問いたしたいと思うのですが、先月二十五六日に私が郷里の岐阜縣に帰つておりますると、新聞を賑わしておる事件が一つあるのであります。近頃は裁判は常に民衆の耳目の対象となることが多いのであります。今までは裁判に対して民衆はそれ程関心を持たなかつたのであります。專門家のやることは專門家に任して置け、その是非判断はやつとこ弁護士がすべきことだというので、他人事のように思つていたのが、最高裁判所の裁判官といえども総選挙に当つては罷免をするか罷免をしないかの投票権がある、こういうことが國民に段々分つて來まして、常に裁判に対してもその裁判所が適当であるか、適当でないかは裁判の判例においてこれは國民が注目しておるのであります。まして先程法務総裁も言われましたような檢事に対する一つの監査機関というようなものも設けられておつて、檢事がその処置よろしきや否かは我々法務委員とか、或いはまたその衝に当る者のみならず全國民が注視をしているのであります。そこで、こういう事案が先程申上げました日時に起きた。それは連続犯についての窃盗事件であつて、檢事は大部分の事実について起訴いたしまして、そこで少しの。後に残つた窃盗事件については起訴を保留にしておつたのであります。申上げて置きますが、最初からその事件は全部被疑者の果供によつて明かになつていたのであります。そうして一部の起訴を求めて裁判所に送りまして、公判の結果執行猶予になつたという事件であります。ところが檢事は執行猶予になつたのは甚だ面白くなかつたのでしよう。次に残つていたいわゆる連続犯の一部について追起訴もいたしました。裁判所は前の事件が執行猶予で確定してしまつておるから、旧刑法ならば当然問題にならないのですけれども、新刑法においてはこれを採上げなければならない。そこで裁判所は一ケ月に懲役を科した。考えて見ますならば、一ケ月の懲役ということで、その事件が如何に軽微な事件であつたか想像できると思います。そこで一ケ月の懲役を受けるために前の執行猶予は取消さなければならない。こういう事案が起きたのであります。当時新聞紙上に裁判長の談といたしまして、こういうことは非常に氣の毒であるということが載つていたのであります。檢事正か次席檢事か私今記憶がありませんが、二人のうちの一人の談といたしまして、これは法律にそうなつておるのであるから差支ない、こういうことが載つておりました。私は甚だ不満でありました。と申しまするのは、刑法が改正されるときに、本委員会におきまして、こういう内容の質疑應答が行われておるのであります。連続犯を廃止する所以のものは、当時理論的ないろいろな問題もありましたでしよう。併しながら我々がこれに承諾を與えてここで可決した所以のものは、何と言つても警察官が足りない、そこで十日間の勾留期間では、一部の犯罪事実は挙つても、その後に大きい事実が挙つた場合にどうにもしようがない、勾留期間が減縮されて搜査方針が嚴重になつたにもかかわらず、又その半面において大きな犯罪を見逃すことは困る、その例に、窃盗と強盗とが連続犯と認められておるが、前に窃盗罪が挙つて後から強盗罪が挙つた場合に非常に不権衡であるからという例を常に出されて我我をして説得せしめられたのであります。そもそも犯罪が犯された以上は、それを搜査するのは國民の義務である、被疑者、被告人に供述を強いるというようなことは國民に対して無理なことをせしめておるのではないか、その証拠には、今度の刑事訴訟法において默祕権を與えておるのもその論拠とするに足りると思うのであります。これは速記録をまだよく見ませんが、或は速記録になかつたかもわかりません。あの当時しばしば速記者の不足によりまして速記なしで質疑應答が行われたことがありますから、速記録にあるかないかは知りませんが、併しその片鱗は速記録にも現われておりましよう。私の記憶する答弁の中に、私の、若し檢事が殊更に次のことを考えて一部について起訴をし、その後に更に追起訴をするようなことがあるならば、被告人に対して苛酷ではないかという質問に対して、時の國宗さんであつたか、その外の人であつたか知りませんが、いや、そういう非常識なことは絶対にありません。よくその点は運営上注意をいたしまして訓令を出しますという意味のことがありました。私もその当時國宗さんの言われたことに全く賛成いたしました。というのはそういう非常識なことは全く考えられないということであります。ところが現に起きて來るところ先程説明いたしました事件におきましてはその非常識が現実となつて現われておるのであります。而も檢察の長にあるべき人が法律にあるから止むを得ないとこういうことであります。こういう点について我々がしばしば……只今のような法務総裁の訓令を出します、万遺憾無きを期しますということに対して、もう信用ができなくなります。どうかこの点について具体的の事案を一つ、岐阜檢察廳に対しても照会されまして御処置が願いたいと思うのであります。以上の例を以ちまして三点について私が御質問をした所以でございます。
#23
○國務大臣(殖田俊吉君) 檢察廳はよく事情を調査してその上で善処すると、或いは訓令を出すと言うが一向その事実がないではないかというお話でありますが、そういうこともあつたかと思います。ありましたら甚だ恐縮に存じまするが、この度はすでに事務当局とも相談をいたしまして直ちに訓令を実は起案をしておるような次第であります。今度はそういう申上げましたことに違背するようなことは決していたさないつもりであります。勿論事情が変化いたしまして違つた解釈をとり、或いは違つた決定もしなければならんようなこともあるかも知れませんが、そのときに改めてはつきりと申上げることができると思います。
 只今のお話の連続犯の問題でありまするが、これは伺います通りであるとすれば、誠に遺憾なことでありまして、今のお話の如く立法当時からその問題があつて、そういうことは運用によつてよろしきを得る。御心配のようなことは絶無を期するということであつたのだそうであります。然るにその趣旨が不徹底のためにときどき地方の檢察廳におきまして、かようなことが行われるそうであります。私は今日初めて伺つたのでありまするが、これは甚だ遺憾なことでありますので、直ちに岐阜の事件につきまして事情を取調べました上で、これこそ本当に善処いたしますると共に、一般的に各檢察廳に対しましても注意をいたしたいと考えております。
 それから又この訓令等を重視せずして勝手に行動いたします者に対しましては、それぞれ適当なる解釈の途を講じたいと考えております。
#24
○委員長(伊藤修君) 他に御質問ございませんか。ではこれを以て本日は散会いたします。
   午後四時四分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     伊藤  修君
   理事
           鬼丸 義齊君
           岡部  常君
   委員
           大野 幸一君
           齋  武雄君
           鈴木 安孝君
           岩木 哲夫君
           深川タマヱ君
           來馬 琢道君
  國務大臣
   國 務 大 臣 殖田 俊吉君
  政府委員
   檢 務 長 官 木内 曾益君
ソース: 国立国会図書館
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