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1949/04/26 第5回国会 参議院 参議院会議録情報 第005回国会 法務委員会 第7号
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1949/04/26 第5回国会 参議院

参議院会議録情報 第005回国会 法務委員会 第7号

#1
第005回国会 法務委員会 第7号
昭和二十四年四月二十六日(火曜日)
   午後一時五十四分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○檢察及び裁判の運営等に関する調査
 の件
○罹災都市借地借家臨時処理法第二十
 五條の二の災害及び同條の規定を適
 用する地区を定める法律案(内閣送
 付)
○訴訟費用等臨時措置法の一部を改正
 する法律案(内閣提出)
○公判前の証人等に対する旅費、日
 当、宿泊料等支給法案(内閣提出)
○刑事訴訟費用法の一部を改正する法
 律案(内閣提出)
○司法警察職員等指定鷹急措置法等の
 一部を改正する法律案(内閣提出)
○会社等臨時措置法等を廃止する政令
 の一部を改正する法律案(内閣提
 出)
○公証人法等の一部を改正する法律案
 (内閣提出)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(伊藤修君) これより開会いたします。罹災都市借地借家臨時処理法第二十五條の二の災害及び同條の規定を適用する地区を定める法律案、訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案、公判前の証人等に対する旅費、日当、宿泊料等支給法案、刑事訴訟費用法の一部を改正する法律案、司法警察職員等指定應急措置法等の一部を改正する法律案、会社等臨時措置法等を廃止する政令の一部を改正する法律案、公証人法等の一部を改正する法律案を一括して議題に供します。
#3
○鬼丸義齊君 私ちよつと法務総裁に伺いたいと思いますが……
#4
○委員長(伊藤修君) それでは以上の法案の提案理由を御説明願う前に委員の発言を許可いたします。
#5
○鬼丸義齊君 法務総裁にこの際伺いたいと思いますることは、近來檢察官の大異動があるということで、すでにこのことは相当前から新聞にも、或いはその他法務部内におきましても噂をされておりました。又その噂に伴いまして、いろいろなるそれからそれへと疑心暗鬼を生じておりまするようにも聞き及んでおります。殊に今回の異動は非常に廣汎に亘る。本廳のことは別といたしまして、各地方の檢察廳においても、高等檢察廳並びに地方檢察廳両方面に亘りまする方面について、法務総裁がそれぞれ関係の長官を招致いたしまして、事情を聽取されたかということも聞いております。かたがたこれが徒らに日子を経ますることは、廳内におきまして非常な事務上に大きな影響を及ぼすことだろうと思います。又一面におきましては甚だ不安の氣持を持たしめることになりまして、これが事務上に及ぼしまする影響は申すまでもない。この点についてすでに御成案は得ておられることとは存じますが、果して法務総裁はこの異動は実行されるのであるか、又その範囲が言うがごとくに廣範囲に亘るものであるかどうか。尚、今回の檢察廳の異動については、何が原因となつてそうした質動をしなければならんことになつておるのであるか、この点について法務総裁の明確なるお答えを頂きたいと思います。更にこれは杞憂だけに過ぎないことでありまするならば仕合せでありまするが、私の聽き取りまするところによれば、檢察官、殊に檢事の方面において相当團体的に職を辞するというようなふうな氣分が部内に段々と釀成されつつあるがごとくに聞いております。申すまでもなく裁判檢察の事務はそれぞれ專門に亘りますることでありまするから、堪能なる経驗者を失いまする結果としては大変なことであろうと思う、一朝にしてこれを救うことができない。殊にこれまでの例からいたしましても、一度裁判檢察の職にあられまする方が野に下りましたときには、もはや覆水盆に還らざるようなふうな状況であります。さようなことを考えて見ますると、由々しきことではなかろうか、或いはかようなことがデマでありまするならば仕合せでありまするが、デマでないといたしましても、部内にそうした氣分が若干ありますることだけは間違いないことだと思います。一本この原因はどこにあるか、或いは檢察官の大異動の状況に随伴しての一時的の現象でありまするならば幸でありまするが、何かこれにつきましては、待遇の問題であるとか、或いは又廳内の空氣の問題であるとか、こういうような点等も理由の一つになつておるのではなかろうかとも心配いたしております。この点に対しまして、法務総裁はどういうふうなお考えを御認識があられるかということを先ず伺いたい。続いて後のことを伺うといたしまして、一つそれだけ……
#6
○國務大臣(殖田俊吉君) 鬼丸さんの御質問にお答えを申上げます。檢察廳におきまして人事の異動を行うと申しますことは、実は私共の準備まだ全からざるにおきまして、世上にどういうことでありましたか、そういう噂が傳わりまして、新聞紙上にも載りましたのであります。甚だまだ準傳整わないときに、そういう話が出ましたことは実は困りましたのでありまするが、これはいたし方ないことでありまするが、爾來私共も檢察廳内に、廳部内におきまする人事が聊か沈滯をしている、三年以上も同じ任地に務めている檢事正も檢事も相当に多数にある、三年に上りません者も相当長い期間同一地に勤務する人が多数あるというような状況であります。その人事の異動が比較的緩慢に行われているということにつきましても、いろいろ理由があるのでありまするけれども、さればと申して、その理由に拘泥いたしまして異動を行わずに置きますれば沈滯がますます甚だしくなる。こういうことを考えましたので、どうしても相当な範囲に亘りまして異動をいたしたい、こう考えまして、異動の目的と申しまするか、理由と申しまするかは、先ず聊か沈滯せる部内の空氣を一新したい、つまり刷新したい、清新の空氣を部内に注入いたしまして、今後ますます複雜になりまする檢察の仕事に対しまして、從來よりも一層緊張した態度を以てこれに当らしめたい。こういうことを考えまして異動を考えたのであります。世上或いは檢察陣の腐敗の話であるとか、或いはいろいろ忌わしい話などが傳わりまして、そのために異動を行うということを傳えられたのでありますが、私共はそういう考えではございません。それはそのときどきに必要に應じまして処置をいたして参るのでありまして、これを一般の人事の異動によりまして解消したいと考えているわけではありません。今申すような極く一般的な大きな考えを以て異動を実は考えておるのであります。そういう次第でありまするから、自然全國に亘りましてその異動が行われるわけになるのでありまするから、私共は愼重にも愼重を期しまして、且つ又檢察官は身分の保障もありますので、それらの点も十分に考慮いたしまして、後でいろいろ非難の起らないような異動をいたしたい、こう考えましたために、準備にも大変手数がかかりまして、今日までに至つておるのであります。この間総選挙がございますとか、或は内閣の改造が行われますとかいうことのために、政府の部内における実情からも遅れました原因が相当にあるのであります。併しながらもはやそれらの手続、準備も凡そ終りましたので、近く最後の決定をいたしたいと考えております。それからお話のごとく最近檢察部内におきまして、殊に若い優秀な檢事の方々の中で幾人か辞めたいという方が出ておることは事実であります。併しながらそれ程実は多数ではありません。殊に又これはお互いに相通じ合つて團結して辞めるというようなことでは決してございません。ただその人々の個人的の理由からでありまするが、全般的に見ますれば、どうしても待遇というような経済上の問題が大きにあるようでございます。或いは又最近傳えられまする弁護士法の改正のために、判檢事がその任地において直ちに弁護士を開業することに支障を來す憂があるということのために、そういう改正の成立たない前に辞めておりたいということを申し出て辞める者もあるやに聞いておりまするけれども、これもほんの一二の人でありまして、決して全般に跨つた共通の問題ではございません。ただ御承知のように檢察員は実は定員がありまするけれども、定員を完全に充足しておりませんのでございまして、相当に欠員を持つております。然るに一方では処理すべき犯罪は多々ますます殖えて参るということのために、檢察員は非常に過労に陷つておりませんかと思うのであります。從つてこの際一人でも辞められますことは甚だ困りますことで、殊に優秀なる若い人が辞めて行くことが何より困るのでありまして、そのためには常にいろいろと工夫をし、考慮いたしまして、これを防ぎ止めておるような次第でございます。今後も檢察方面の人事につきましては、十分に経済上その他につきまして考慮を拂いまして、立派な人物を揃えて、そうしてせめて定員だけは充実して、國民に対して御迷惑をかけないような心構えを常に持つておりたい、こう考えておるのであります。これも終戰後いろんな事情からいたしまして、急激に老練な方々が退官をされたということのために、大きなギヤップができまして、それに加うるに今のように仕事が殖えて來て、人を要することがますます多くなつたということのために、大きな穴が明いておるのであります。併しその穴の明いておるときに、一人でも手の欲しいときに、たとえ年を取つた人であつても、これを辞めさすのは不合理ではないかという又議論も出て來るのでありますが、それは又別な考でありまして、実は年を取つた方には退いて頂いて、そうして若い方が勇躍その仕事に精進する途を開きたい、こう考えるのであります。これは実は人員を多少一時減らしても、能率を更に上げたい、こういうことに考えておる次第であります。又將來法曹として立ちたいという若い人をどしどし今は養成中でありまするが、そういう人の中で、どうも檢察の方は刑事よりも志望者が聊さか少いのでありまして、これも何とかして檢事の方にも十分な人を得たいと思いまして、いろいろ焦慮をいたしている次第であります。又只今は弁護士の間からも直ちに檢事に任用ができるのでありまするから、私は將來は弁護士の方面からも新進の人物を檢事に入つて頂きたい、そうすれば、只今のような人の不足は余程緩和ができはしないかと考えているのであります。その方面におきましても、幸い弁護士でもあられまするから、一層御盡力をお願いいたしたいと思うのであります。
#7
○鬼丸義齊君 檢察官の離職を申出る者が個人的の理由からあるという説でありまして、現在檢察陣は、只今法務総裁のお説のごとくに、こうした世相のために一段と事務が殖えて参りますに反しまして、檢事の定員は著しく食込んで、恐らく各檢察廰共に相当数の欠員を生じて、残つておられまする檢事としては全く心身共に疲れ切つているようなふうに私共は見受けております。この点は衷心同情に堪えないと思つております。ところがこの補充につきましては、只今も法務総裁のお説もありましたごとくに、判事の方の志願者が多くして、檢事の方の志願者が割合に少いというお説でありました。併し幸いに弁護士は裁判、檢察官になり得ます資格も持つているのでありまするから、今一段の努力をお拂いになるならば、必ずそれ程この定員を深く食い込んでおらなければならんということは考えられんと思います。成る程先には非常に待遇が惡い、いろいろ生活脅威を受けまするようなことから、耐え難き事情等もありましたけれども、今日の裁判、檢察官の待遇といたしましては、少くとも他の官吏に比較いたしました惡いとは私は思つておりません。恐らく今昔の感に堪えざるくらいに私共は考えております。でありまするから、この際先ず以てその有資格者の中から、一つ懸命の努力を拂つて、一日も早く人員を補充して、事務の余りに過当なることを避けるようにお力を盡して頂きたいと思います。尚、最近副檢事の制度が布かれまして以來、檢察官の方面の眞の活動の力は、却つて副檢事の方に傾いて行くような状態になりつつあると聞いております。ところがこれは恐らく法務総裁においてもお氣付きのことと思いますが、副檢事の採用におきましても、新らしい制度を布いて俄かにこれを補充いたしたようなところから、多少この人選については氣遣われる点が恐らくあつたであろうと思います。これが又近來相当な批判の対象になつているように聞いております。各地方檢察廰に所属いたしておりまする檢事は、戰爭中から終戰後続いて上層部の方はおられまするようなところから、とかくこの非常な食生活の窮屈なとき、並びに待遇等が甚だ薄かつたようなところから、そのようなことから、どうも閲歴の上において若干の批判を受けるような歴史を持つておりまする檢事がおりますることから、却つて若い者の方はそれが非常に正しくやつておるというので、部内の納まりが余りうまく行かない、こういうふうに私共は聞いております。監督上におきましては、定めて考慮を拂われておることとは思いまするけれども、檢事並びに副檢事の職務の扱いにつきましては、極めて一つ適切なる御指導を頂かなければ、やがて今度は檢事局の殆んどすべての中心勢力が副檢事の方に行つてしまう、こうなりますると、一方においては、副檢事の素質は、語弊があるか存じませんけれども、檢事に少くとも優るべきものとは思いません。そういたしますれば、大変檢察陣の公の信用というものにも大きな影響があろうと思います。この点特に一つ御留意を頂きたいと思います。又副檢事採用につきましても、必ずしも警察方面だけに依存いたしますることもどうであろうかと私共も思つておりまするし、これまで批判の対象になつておりまする者は、概してそうしたような歴史を持つている人が却つて批判の中心になつております。弊害の方を持つて來て長所を忘れて來ておるような嫌いがあるのであります。御採用に当りましては、將來をお考え願いまして、やはり素質のいい人を任用しなければ、やがて救い難き弊害を招くことになるのじやなかろうかと思うのであります。尚これは少し立入り過ぎたお尋ねかも存じませんけれども、檢察官の異動について遅々として進まないことは、法務廰と最高檢察廰との間の関係が余りにうまく行つていない、又法務総裁の立場が制度の上において完璧を期していないということから、例えば一つの人事の問題におきましても、自然結論を得ることに非常に支障を來すというようなことも私共は聞いておるのでありまするが、法務総裁として、この際部内の現在がそうしたようなふうな多少なり雰囲氣があるのかどうか、及び現在の制度で以て満足すべきものであるかどうか、この点をこの際お伺いしたいと存じます。
#8
○國務大臣(殖田俊吉君) 法務部内の人事の問題につきまして、いろいろ御心配を頂きまして有難うございます。私共も御意見誠に御尤もでありまして、今後十分に留意いたしまして、御趣旨のあるところに副いたいと実は考えておりますので、檢察廰と法務廰との間に意見の間隔というものはございません。それは極く円満に参つておるのでありまするが、併しながら機構といたしまして、お互いに十分に相談をしてやる仕組みに今なつておるのであります。成るべくその仕組は尊重いたしまして、少し遠廻りをいたしまするけれども、大きな人事でありまするので、円満にこれを行なつて行きたいと考えておるのであります。又その構榮が將來或いは改善を要しやしないかというような点も一々御尤もでありまして、それらの点につきましても今後多多考えなければならん点があるかとは考えておりまするけれども、只今直ちに非常にやりにくい、改めなければならん、さようにも考えておらんのであります。これらは今後の問題として残して置きたいと思つております。
#9
○星野芳樹君 この際地方に、この國民の直接請求の権限を危うくするがごとき事件が起きておりますので、これに対して法務総裁、法務廳として如何なる措置をなされるか、態度を持たれるかを伺いたいと思うのであります。この事件と申しますのは、群馬縣前橋市のリコール運動が起つたのでありますが、このリコール運動の趣旨は、担税力極度に減少、食糧窮乏のとき、都市計画事業の強行により、より以上市民の負担を強要するのを主題目として、以下七項目であつて、二月十六日に正式に市会解散請求代表者署名書を選挙管理委員会から公布されたリコール運動でありますが、この際に、リコール署名を集めておる期間中に、三月二十五日に群馬縣の縣知事伊能芳雄氏が、知事署名のビラを作りまして、三万枚作つて新聞に折込みで以て各市民に配布いたしまして、このリコール反対のビラを撤いたわけなんであります。で知事はまあ反対というわけでなく、愼重に考えて呉れという意味だと言つておりますが、内容には市議会を解散しなければならない程の理由は一つもないと信ずる、賢明なる市民の皆さんはこの運動が如何なる立場の人たちによつて進められ、その結果がどうなるかをよく考えて頂きたい。この悲しむべきリコール運動については云々とあつて、明らかに反対の意思を表明したビラを撤いたものなんであります。それから又この問題について去る二十日に本院の地方行政委員会で、たまたま知事が東京へ來ておりましたので、証人として呼びましたところ、知事みずからの証言として、今申したように三万枚撤いたし、その費用は区画整理委員会、この縣でなしておる区画整理委員会の費用を以て出した、こういう証言をしておるのであります。それからこの事件に絡まつて買收事件もあるわけです。今申した区画整理委員会の委員長の大槻榮二という人が、前橋市の國領町附近にピース一個ずつを配つて、この署名に参加するなという買收をして歩いたという二つの事件があるわけなんですが、これに対して現在の法規といたしましてはどうなるのでありましようか。このリコールというものは三分の一の署名が成立して、それから今度は正式な市民投票になつて、その段階に行けば選挙管理委員会の所管になり、選挙法がすべて適用されて、買收がはつきりとなるわけですが、これ以前に対しては選挙法は適用はされないようでありますが、さらばといつてこのようなリコール運動が起つた場合に、この官廳が知事の肩書を以て、一つの民衆に圧力を持つておる肩書を以て一方的な立場に立ち、而も官廳の費用を以て一方的に加担するという場合には、民間から起つたリコール運動というのは全く成立の余地がないと考えられるので、これが何らかの方法で処断ができないとすると、知事の取つた行爲が正当であるという場合でなくても、これを処断する方法がないとすると、直接請求の権限というのは全く有名無実に帰す虞れがあると思う、この点を如何なる法律を以て如何なる態度を以て処断するかを伺いたいわけであります。知事の考えによりますれば、都市計画に反対してリコールだから、都市計画を遂行している都市計画委員会の費用を充当してこのリコール運動をもみ消せば、都市計画が遂行されるので当然と思つて使用したというような考えを持つているようでありますが、これは誠に全体主義的な考えであつて、これは放置できない点ではないかと思うのであります。このリコールの趣旨がいいか、惡いかは民衆が判断するのであつて、そこに市民投票という制度も設けられておる、それ以前にこうした官廳が官廳の費用を使つて一方にできた事項を落す、これは如何なる法律を以てどういうふうに処断されるか、それからもう一つは今の買收等の問題については如何なる態度を取られるか、これを伺いたいと思うのであります。
#10
○國務大臣(殖田俊吉君) 私はその事実について深く存じません。伺いますると、これは先ず地方財政委員会、或いは選挙貿理委員会等におきまして考慮すべき問題のように考えるのであります。お話のような御質問のあることを伺いまして、檢務長官によりまして多少調べておりまするから、檢務長官からお答えさしたいと思います。
#11
○政府委員(木内曾益君) 只今御質問の具体的な事実につきましては、私共の方もまだ報告が参つておりませんので承知いたしておりません。ただお話のようにリコールのために署名運動をするとか、或いはその反対のために署名運動をするということについて文書をいろいろ頒布するとか、或いは署名を取るために、いわゆる買收の行爲をやるというようなことについては取締りの規定がないのであります。これは地方自治法の欠陷でありまして、今日の法制下においてはその点は取締り得ない、又恐らく立法当時において、そのことを立法者において予測しなかつたために落ちたのではないかと、かように考えております。尚、知事がその運動のために区画整理委員会の金を使つたというようなことにつきましては、尚十分調べて見なければ判断できませんが、從つてここでその点について正確なるお答えはできませんが、事情によつては或いは背任というような問題が起きて來るか、或いはその支出方法が適当であるか、これは具体的に調べなければ御返答ができないと考える次第であります。
#12
○星野芳樹君 この問題をお取調べにならなければ分らないと申しますが、去る二十日の地方行政委員会に、知事みずから出頭いたしまして、区画整理委員会の金を使つたということをはつきり証言しておるのであります。私が質問を申込んだのは数日前ですから、それをお調べになればそれだけで事実は判明すると思うのですが、そういうふうに、明らかに本人も縣費の一部を使つておるという証言があるのでありますから、これに対しても今言つたような不得要領な御答弁きりできないのでしようか。
#13
○政府委員(木内曾益君) 私は地方財政委員会における速記録を読んでおりませんから、その点についてお答できないのであります。只今星野委員の言われるような証言がありましても、それは更にいろいろの事情もあるでありましようし、その個々の事実について私がここで、これは背任であるとか、にならないということはお答えできない。こう申上げただけであります。或いは刑務上の犯罪になるかも知れません。或いはならないかも分らない。それは檢察廳において取調べた上でないとお答できない。さよう申上げた次第であります。
#14
○星野芳樹君 個々の事情と言われますが、原則としてこうした直接請求の要求に対して、官廳が官廳の費用を使つて、その善惡の一方に加担するということに対しては、これは檢察廳では原則として処置するものなのでございましようか。処置しないものでございましようか。官廳の費用を使つておるということは明らかなんです。如何なる事情があろうともの官廳の費用を使つておる。そうして問題は直接請求の、國民の権限に関わつております。これに対して、官廳が費用を使うとなれば、それは費用を幾らでも使えることになり、これを放置すれば、如何なる問題でも直接請求の要求が出ても、官廳が一方の立場に立つて、費用も官廳から出る。これでは民間運動としては全然成立たないので、直接請求を全く抑えてしまうという結果になるのですから、これを官廳の費用をこういうことに使うということが適当と思われておるのかどうか。
#15
○國務大臣(殖田俊吉君) さようの問題は、これは制度そのものに対する一つの批判でありまして、どうしても地方財政委員会或いは選挙管理委員会、そういう方面の行政上の問題だろうと思います。その行政上それが適当であるか不当であるかは、そのおのおのの権限を持つものが直接考えなければならないと存じます。私共も法務廳といたしましては、法律上の見解は或いは述べ得るかも知れません。今お話を伺つただけでは、実は法務廳としても積極的な判断ができません。行政廳から、或いはその監督の委員会から、もつと具体的の事情を具して、そうして自分の意見を付して相談をして参れば、又我々としても適当な意見が述べられるかと思います。お話を伺いましただけでは、直ちに法務廳としての意見を述べることは差控えたいと思います。
#16
○松井道夫君 かねて法務当局に御報告を求めておつたのでありますが、今春の衆議院議員選挙におきまして、新潟県の第四区から立候補いたしました田中彰治氏、この人の選挙運動につきまして違反事件が惹起いたしたのでありまして、それに関連いたしまして、新聞紙上に傳うるところによりますと、この田中彰治氏は昨春の五月に詐欺事件の刑の時効が完成いたしたのである。それで今回の選挙に立候補するという段階に相成つたのだというようなことが報道されたのであります。それにつきまして檢察当局においても非常な関心を持たれて、東京高等檢察廳あたりからいろいろ御調査になつたと承わつておるのであります。この問題は、一田中彰治氏の刑を時効によつて免れたという問題には止まりません。現在はさようなことは余りございますまいが、以前はよく、例えば病氣に藉口いたしまして、いつまで経つても刑の執行を受付けないというようなことがたびたび巷間傳えられたのであります。裁判も結局執行されなければ意味がありませんので、これは司法の威信に関わる重大な問題であると存ずるのであります。これ又新聞の傳うるところによりますと、高等檢察廳においても非常に関心を持ち、又前々からその田中彰治氏の事件のことを知つておりまして、刑の執行の指揮をした。併しながら捕まらなかつたのだというようなことが新聞に断片的に書かれたのでありますが、一体現在の捜査能力、檢察関係の能力からいたしまして、全力を盡して確定判決を受けた者の逮捕に努力いたしますならば、殊に現在は外國に高飛びするわけにも参りませんし、天駆けり、或いは地に潜る方法もございませんのでありますから、その当局の努力によりましては捕まらんという筈はないのであります、と私は考える。他方その反面を裏返しますると、要するにそういつた、金力に依るのでありまするか、或いは何の力に依るのですか知りませんが、その関係の人達にその力を及ぼしまして、要するに職を汚す、そういうようなことの可能性が多分に想像できるのであります。そういうことなしには捕まらないということが想像できないような状況で、現在はあると信ずるのであります。私共法務委員会の委員といたしまして、國会再開以來、刑の問題、刑務所の問題についていろいろと努力して参つたのであります。又その後は裁判、檢察の運営に関して大きな関心を持ちまして調査等をいたしておることは御承知の通りなのであります。私の立場からいたしまして、その事実の御報告を頂かなくては職を全うするものでないのではなかろうかということを考えましたので、私は新潟縣におります。敢えて報告を求めたのでありまするが、承わるところによりますると、その調査も報告のできる程度にでき上つたということであります。この際御報告を煩わしたいと思います。
#17
○政府委員(木内曾益君) 先般当委員会で、松井委員からの御質問がありましたこの田中彰治氏に関係する問題につきまして調査いたしましたところ、事情詳細判明いたしましたので御報告申上げたいと思います。田中彰治氏に対する事件というのは、詐欺事件でありまして、昭和十五年十一月二十九日、東京刑事地方裁判所で有罪の判決を受け、控訴いたしまして昭和十七年十一月十三日、東京控訴院第一刑事部で詐欺罪により懲役二年六月、未決拘留三十日通算という判決があつたのであります。これに対して更に上告をしまして昭和十八年五月十八日には上告棄却になりまして、この判決が確定したわけであります。確定後直ちに執行をしようといたしましたところ、昭和十八年八月三十日に田中氏の弁護人川島英晃から、田中は福岡縣に居住しているのだから、福岡刑務所で執行をして貰いたいという上申書を東京控訴院檢事局宛に出したのであります。そこで同年九月二日に、東京控訴院檢事局から福岡地方裁判所檢事局宛に刑の執行を嘱託したわけであります。ところが同年九月五日に田中氏自身から、自分の経営しておる振興炭鉱整備のため執行を延期して貰いたいという上申書が出たのであります。そこで十八年の十月十五日までその執行を延期したわけであります。尚その延期中である同年十月十三日に、田中氏から上申書が出まして、自分の叔父の長男が戰死したので、家事整理のために一週間執行を延期して呉れという上申書が出ております。そこで同年の十月十五日から更に一週間執行を延期したわけであります。尚、同年十月十四日には司法省刑事局長から福岡地方裁判所檢事正宛に、電報を以て田中から炭鉱事業経営のため刑の執行を延期して呉れという陳情があつたが、その意見を承わりたい、こういう電報が行つておるのであります。同年十月十九日、福岡地方裁判所檢事正から刑事局長宛に、炭鉱経営について田中の功績は大である、後任者あるまで刑の執行を停止するも増炭の必要上やむを得ないと認めるという回答になつております。同年十月二十二日、田中は更に上申書を出しまして、福岡鉱山監督局長から振興部隊の部隊長を命ぜられ増炭に從事中であるから、昭和十九年三月三十一日まで刑の執行を延期して貰いたい、こういう上申書が出ておるのであります。これによつて更に刑の執行を延期しておつたのであります。尚、昭和十八年十二月八日に、福岡檢事正から福岡鉱山監督局長宛に、田中の炭鉱事業上の重要性について照会をしております。同年の十二月二十八日、福岡鉱山監督局長から福岡地方裁判所の檢事正宛に、田中は石炭増産上必要な人物であるという回答が來ておるわけであります。昭和十九年三月二十八日に、田中が更に上申書を出して、新鉱の分割を受けてその開発に專念しておるので、向う六カ月間執行を延期して貰いたい、こういう上申書が又更に出ております。これによりまして昭和十九年九月三十日まで刑の執行を延期しておつた。同年九月三十日田中は更に上申書を出して、九月五日更に新鉱の開発を命ぜられたについては向う半年執行を延期して貰いたいという上申書を出しております。これによつて昭和二十年三月三十一日まで刑の執行を延期しておるわけであります。尚、昭和十九年十月十五日には弁余人の川島から同趣旨の上申書が出ております。昭和二十年四月四日に、福岡地方裁判所檢事局から田中に対し、いよいよ執行延期の期間が切れましたので、四月十一日に出頭しろという呼出状を出しております。すると同年四月七日に、田中の経営しておる振興炭鉱から、田中は上京して不在であるから出頭できないという回答が來ております。この間、昭和二十年八月九日まで刑の執行を延期しております。同年五月四日、福岡地方裁判所檢事局から九州鉱山局長宛に、田中の炭鉱経営上の重要性について照会状を発しております。同年五月四日、弁護人の川島氏から上申書を出して、尚、昭和二十年八月九日以後の執行延期は申入れをしないから、それまで延期して貰いたいという誓約書を付けて上申書を出しております。同年六月二十五日に至りまして、田中は更に上申書を出して、空襲で妻子五名が死亡したために、同年九月二十日まで執行を延期して貰いたい、こういう上申書を出しております。同年八月二十日付で、田中は更に今度は東京で刑の執行を受けたいからという上申書を出しております。同年九月十五日、これに基いて福岡地方裁判所檢事局では東京刑事地方裁判所檢事局に対し、田中の刑の執行の嘱託しております。同年九月二十四日、東京刑事地方裁判所檢事局から田中に対する逮捕状を出しまして、板橋警察署にその執行を命じております。当時の住居が板橋管内であつたためであります。昭和二十一年二月五日に至り、その間恐らく板橋署から何らの回答がなかつたものと思われます。この間空白になつております。二十年九月四日から暫く空白になつております。そこで昭和二十一年二月五日に、東京刑事地方裁判所檢事局から板橋警察署に宛てて、田中の逮捕状執行についての状況報告を命じております。昭和二十一年二月九日、板橋警察署から東京刑事地方裁判所檢事局宛に、田中は九州の炭鉱の方に居住しておるので逮捕不能という回答が來ております。そこで同年二月十四日、東京刑事地方裁判所檢事局から福岡地方裁判所檢事局に宛てて、田中の刑の執行の嘱託書を出しております。同年二月二十二日、福岡地方裁判所檢事局では田中に対し、二月二十八日に出頭しろという呼出状を出しております。同年二月二十八日に田中の妻、前のは空襲で死んでおるわけでありますから、後妻じやないかと思いますが、田中の妻から、田中は動脈梗化症の治療のために東京都板橋区六谷口町千百二十二番地の居宅に出発したから不在であるという返事が來ております。同年二月二十八日、福岡地方裁判所檢事局から管内の田中警察署に対し、田中の所在捜査の指揮を出しております。同年四月一日、田川警察署からその復命がありまして、田中は上京した後帰つて來ないという回答がありました。同年四月六日、福岡地方裁判所檢事局では、東京刑事地方裁判所檢事局に対しまして執行嘱託書を戻しておるわけであります。そこで同年四月十八日、東京刑事地方裁判所檢事局では板橋警察署に対して、更に逮捕状の執行を命じております。同年四月二十五日、板橋警察署から東京刑事地方裁判所檢事局に対し、田中は長野、新潟方面に向つたまま帰つて來ないので、所在不明だという回答が來ております。同年五月二十四日、東京刑事地方裁判所檢事局は板橋警察署に対し、更に田中の所在捜査を指揮しております。同年五月三十日にその復命がありまして、田中は新潟縣中顯城郡岡山村大字小野澤の笹川金太郎方で目下静養中であるという復命が來ております。同年六月十四日に東京刑事地方裁判所檢事局では、高田区裁判所檢事局に対しまして、田中の刑の執行を嘱託しております。同年七月三日に高田区裁判所檢事局から田中に対し、七月九日出頭するようにという呼出状を出しております。同年七月九日田中の妻から、田中は七月二日東京へ行くと言つて出て行つたまま、その後の所在は不明であるという返事が來ております。同年七月十六日、高田区裁判所檢事局から管内の新井警察署に対し、田中の所在捜査を指揮しております。同年七月二十三日、新井警察署からの復命によれば、田中はこちらへは立廻つておらず、所在不明だということになつております。同年七月三十日、高田区裁判所檢事局から東京刑事地方裁判所檢事局に対し執行嘱託書を返戻しております。同年八月一日、田中の妻から手紙で、田中は北海道におるらしく所在捜査中であるという手紙が参つております。同年十月十二日、東京刑事地方裁判所檢事局から新井警察署に対し、更に田中の所在捜査を指揮しております。同年十月二十五日、新井警察署からの復命によれば、福岡縣田川郡採銅所村長光というところにある田中の農場におるという復命になつております、同年十月十四日、尚東京刑事地方裁判所檢事局では、板橋警察署に対しましても田中の所在捜査の指揮をしておりますがこれに対し、十一月二日に板橋警察署から復命があつて、田中は福岡縣田川郡勾金村字中津原の振興炭鉱に住んでおるということになつております。昭和二十二年一月十五日に、東京刑事地方裁判所檢事局から後藤寺の警察署に対し、更に住在捜査の指揮をしております。一月二十九日に復命があつて、田中は東京都板橋区大谷口町に住んでおるということになつております。同年二月十五日、東京刑事地方裁判所檢事局から田中に対し、二月二十八日に出頭するようにという呼出状を出しております。同年二月二十六日田中の妻から、田中は二月十二日に北海道小樽長橋町平岡宅に出発して以來帰京しないという返事がありました。同年八月七日、東京地方檢察廳から田中に対し、八月十五日に出頭するようにという呼出状を出しております。同年八月十四日田中の妻から、田中の所在は分らないからという返事がありました。同年十月六日、東京地方檢察廳から板橋警察署に対し逮捕状の執行を命じております。同年十月十日、板橋警察署から東京地方檢察廳に対し、田中は最近立廻つた形跡がなく、北海道又は九州あたりにおるようだという回答であります。同年十一月六日、札幌地方檢察廳から東京地方檢察廳に対して、北海道には居住していないという回答がありました。同年十月二十三日には、尚東京地方檢察廳から福岡地方檢察廳に所在捜査の嘱託をしております。同年十一月十日に回答があつて、田中は福岡縣嘉穗郡穗波村字辨分振興炭鉱内に居住するという回答になつております。同年十一月十九日、東京地方檢察廳から福岡地方檢察廳に対してその執行の嘱託をしております。同年十二月十三日、福岡地方檢査廳飯塚支部では田中に逮捕状を出しております。同年十二月二十六日、飯塚警察署より回答があつて、九州にいる見込みあるも所在が分らんという回答であります。昭和二十三年一月六日、田中の長男から、田中は昭和二十二年十二月二十一日から二十五日まで福岡市にいたが、その後上京、七月まで東京滯在の見込みであるという連絡がありました。同年一月十三日、福岡地方檢察廳飯塚支部から東京地方檢察廳に執行嘱託書を返しております。同年一月二十六日、東京地方檢察廳は板橋警察署に対し、更に逮捕状の執行を命じ、同年三月四日板橋署の回答では、田中の所在は不明である。妻の申立によれば、福岡縣田川郡勾金村字下高野によるということになつております。同年一月十六日、東京地方檢察廳では福岡地方檢察廳に対し刑の執行を嘱託しております。同年二月二日に、福岡地方檢察廳から東京地方檢察廳に対し、田中は東京におるからと言つて嘱託書を返しております。同年三月十二日、東京地方檢察廳から福岡地方檢察廳に対し、更に刑の執行の嘱託をし、それから同年四月七日に、福岡地方檢察廳田川支部から逮捕状を出しております。同年四月十六日、田中警察署からの回答によれば、田中は三月十五日上京以來不在、四月十二日電報によれば、盲腸災のために大阪に下車、入院しているということになつております。同年四月二十日、福岡地方檢察廳田川支部から東京地方檢察廳に対し、田中は管内に居住せず、逮捕不能ということになつております。同年五月十四日、東京地方檢察廳から板橋警察署に対し、更に逮捕状の執行を命じ、同日東京地方檢察廳から東京高等檢察廳に執行嘱託書を返しております。同年五月十五日に、東京高等檢察廳では刑事訴訟法第五百四十六條第一号により執行停止決定をいたし、その停止期間は昭和二十三年五月十五日より二十三年九月十四日までということになつております。同年五月二十六日東京高等檢察廳から小樽警察署に対し捜査指揮をいたしましたところ、六月十日に田中は管内に居住せずという回答になつております。同年五月二十六日、東京高等檢察廳から福岡警察署に対し、更に所在捜査指揮をしております。同年六月十四日、福岡警察署の回答によればやはり管内に居住せずということになつております。尚、同年五月二十六日に、東京高等檢察廳から田川警察署にも所在捜査指揮を出しましたが、六月二十八日の回答によれば、福岡縣田川郡勾金村字下高野の田中ふさ方より、六月二日頃まで博多振興鉱業の博多出張所及び飯塚市二瀬振興鉱業所に出張中であるということになつております。同年五月二十六日、東京高等檢察廳から新井警察署に対し所在捜査の指揮をしております。同年七月七日、やはり管内に居住せずという回答が來ております。同年五月二十六日、東京高等檢察廳から飯塚警察署に対し、更に所在搜査指揮をしましたところ、同年六月十一日に至り、昭和二十三年五月二十九日以後、福岡縣嘉穗郡穗波村字辨分振興炭鉱社宅に居住しておるという回答になつております。そこで同年八月四日に、東京高等檢察廳から福岡地方檢察廳飯塚支部に逮捕状の発行及び刑の執行の嘱託をしております。同年八月十六日、飯塚区檢察廳から嘉穗地区警察署に対し所在搜査指揮を出しましたところが、八月二十五日に回答があつて、昭和二十三年八月二十日に、上京するとて出発したまま所在不明であるということになつております。同年九月三日に、福岡地方檢察廳飯塚支部から東京高等檢察廳に対して執行嘱託書を戻しております。同年九月八日、飯橋警察署から東京高等檢察廳に対し、昭和二十三年八月二十四日、九州から田中が上京して、八月二十八日北海道に行つたということになつており、又同日東京高等檢察廳で更に逮捕状を出しております。警察署だけでは、これはとても駄目だというので、いよいよ東京高等檢察廳では、警視廳の搜査二課に所在搜査に指揮をいたしましたところ、同年九月二十四日に至つて搜査二課から、やはり田中の所在は不明であるということになつたのであります。そこで高等檢察廳では、これは時効にかかつては大変だというので、昭和二十三年九月十四日に、刑事訴訟法の五百四十六條七号、逃走中の理由で執行停止の決定をいたし、停止期間は二十三年九月十四日から、二十四年一月十三日までといたしたのであります。併しながらこの停止決定につきましては、この理由では理由にならない。從つてもうすでにその前に時効にかかつておつたということになつているわけであります。そこでこれが時効にかかつたことについていろいろ御疑問を持たれるのも御尤もと思いまするが、只今申上げましたように、誠に檢察廳としましては、手を盡して十分執行をしようとしておつたのでありまするが、只今この経過を申上げましたような経過を辿つて時効にかかつてしまつたわけでありまして、檢察廳といたしましては、これ以上手の施しようがないわけでありまして、これが時効にかかつたことによつて、別に手落ちはないと思います。尤も今から考えますれば、尚いろいろこういうふうにしたらどうかというような点もありまするが、一應手は盡してあると思うのであります。ただ檢察廳が直接その所在搜査をするという機関もないのでありまして、どうしても警察に依存しなければならないのでありまして、檢察廳としては、止むを得ないと、かように考えているのであります。
#18
○松井道夫君 只今驚くべき程詳細に経過を御報告になつたのでありまするが、そして最後に御意見として、これは檢察廳側には何ら責任はないのだ、手落ちという意味で責任はないのだ、さような御意見でありました。私今の説明をお聽きしている間の感想を申上げますと、勿論実際の衝に当つたわけでもないのでありますから、実際の状況と違つているかも知れませんが、どうもみんなして田中を逃がしてやつているように思うのであります。逮捕状が行くと、そらそんなら東京へ行けというので、順繰り順繰りにやつている。みんなして氣持を合せて田中を逃がしてやつているとして受取れない。私の曲解かも知れません。又先程申しました檢察廳の職員の或るものが、非常にこの点について、重大性を考えて、熱意を持つてやればたやすく逮捕できたのではないかと思います。尤も時効の期間が迫つたときはそれは本人も一生懸命でしようから、なかなかうまく行かなかつたかも知れませんが、事一大事となるまでどうもその熱意が足りない。私聽いた感じではそう断言せざるを得ないのであります。尚、檢務長官の御意見は檢務長官の御意見といたしまして、この問題についての法務総裁の御意見を拜聽したいと思います。
#19
○國務大臣(殖田俊吉君) 私も今日の際でありましたが、この前衆議院の法務委員会におきまして檢務長官の今と同じ報告をされるのを聽いたのであります。私もどうも何とか外に方法があつたのではないかという感じが実はするのであります。法規上これは手続は誤まつているのではありませんで、正当な手続を経て当り前にやつて参つたのでありまするが、併し結果において犯人が捕まらなかつたということは、これは確かに事実であります。捕まえようと思つて捕まらなかつたということは、大きなそこに欠陷があるのではないかと、こう考えるのであります。從來のやり方は純粹に技術的でありまして、如何にも目的に向つて方法が、手段が不十分であつたという憾みがあると思うのであります。実は内部におきましても、この点につきまして遺憾に考えている次第であります。今後はかようなことのないように十分手を盡したい。こう相談をいたしているところであります。
#20
○松井道夫君 もう一つ附加えて置きたいと思いますことは、只今法務総裁の言われたこともございましよう。いろいろそういう場合に手足となるものがないのだというところもございますが、併しながら私は根本はやはり自分の執務に対する責任感というものの不足ということを考えるのです。單に法規に從つて通り一遍にやつておれば、それで責任が果されるのだという、この考え方はいわゆる官僚的な考え方でありまして、消極的な考え方でありまして、これが官僚主義と言いますか、何と言いますか、一つの大きな弊害であります。だから相手が恐しく横紙破りの男でありますと、その消極性に乘ぜられてこんな結果に相成る。結果になつてから、その期限が迫つてから慌てても及ばないということになるのであります。この事件の決して責任を責めようとか、何とかいう意味で聽いておるのではありませんで、法務委員として、その経過原因を採りたいという意味でございます。別に積極的に追及するという意味では毛頭ありません。ただ法務総裁のいろいろ言われますように、この事件を契機といたしまして、深く諸般の反省、その他を研究を盡されまして、この同一轍に出でますところのあらゆる事件の発生ということの根絶を期せられたい。これを希望いたします。
#21
○星野芳樹君 先程檢務長官の御答弁の中に、私の伺つたところでは、事件についてはそれだけの事情では断言することはできないけれども、或いは横領罪になるかも知れないということを言われたので、結局本事件については横領罪が先立する可能性があると考えられるのであります。可能性がある限り、檢察廳としてはこれを調査する責任を取られるものとこう考えるのですが、この点如何がでありますか。或いは外部からの告発を持つて動かれるのでありますか。
#22
○政府委員(木内曾益君) 御質問のように、或いはこれが背任とか、横領とかいうことになるかも知れません。ならないかも知れませんが、ここで論議されて何でございますが、これは檢察廳で取調べをして貰らわなければ、私はここで何とも断言申されません。その見通しのあるものは所轄檢察廳に通知いたしまして、それぞれ調べをするようにさせたいと思います。
#23
○宮城タマヨ君 かねて法務総裁にお伺いいたしたいと思つておりました問題は、刑務所に收容されております母親が連れております乳兒の問題でございます。授乳期の子供は非常に感受性が強いと言われておるのでございますが、あの空氣の中におきまして、そうして労働の点からも、栄養の点からも、その外精神的に起つて参りますいろいろな問題のために、あそこにそのまま置きますということがどんなことかと思いまして、質問したいのでございますが、丁度幸い今日配付されました極く最近、二十四年二月末日現在においての刑務所におります乳兒の数は百四十七名になつております。これはまあ全体の子供から申しますというと、数の上では大した問題ではないとも言えますけれども、併し兒童福祉法もあんなにできております今日、この子供達のためにも最善を盡さなければならないのじやないかということを考えますときに、母親の特別の取扱いとか、或いは乳兒の特別な取扱いという点について、何らかのお考えがございましようかということについて伺いたかつたのでございます。それで若しできることなら、母親の犯罪の種類や内容にもよりますけれども、授乳期に一時的の釈放をされるというようなことが考えられておるかどうか。それから又子供を預りますところの託兒所のようなものについての設備の問題なんかはどうでございましようか。或いは里子ということが考えられはしないか。まあ小さいことになりましては、私の見て参りました範囲内では、実に世間にも問題になつております子供の着物や、おむつというものの今非常に不自由なときでございますためでございましようか、随分考えなければならないなと思わせられるようなものが、諸所にございますように思いますが、そういう点についての御考慮がございましようかという点を私伺いたいのでございます。
#24
○國務大臣(殖田俊吉君) 私は実は甚だ怠慢でありまするが、具体的に詳しく存じませんのでございます。統計を見ておりまして、どういうふうにやつておるものかと考えてはありましたけれども、詳しく実は存じませんので、お答ができませんから、いずれみんなに聞きまして、そうして又明日でも明後日でも申上げたいと思います。專門家も参つておるのでございますが、今探しておりますから、或いは間に合うかも知れません。
#25
○委員長(伊藤修君) 尚、これは少年法というのが出ておりますから、そのときにもつと突込んでお尋ね下さつた方が、專門家が出ておいでになるでしようと思いますから、その方がよいと思います。
#26
○齋武雄君 この機会に連続犯についてお尋ねしたいのですが、この前に大野委員から質問がありましたが、岐阜の裁判所においては、連続犯について別々に公訴を提起しておる、こういう事件がございますが、これは全國に沢山あると思います。それで法務廳として、連続犯を各別に公訴しておるかどうか、全國の裁判所で幾らしておるか、それは資料の調査を願いたい、こういうことでございます。
#27
○政府委員(木内曾益君) どういう資料でございますか。
#28
○齋武雄君 連続犯について別々に公訴を提起しておる……
#29
○委員長(伊藤修君) 要するに、起訴当時すでに分つておつた事件を分割して審理を求めておる事件があるかないか、あればその事犯の数を報告して貰いたいと、こういう意味です。
#30
○國務大臣(殖田俊吉君) それに関連しましてちよつと私から申上げます。実はこの前御質問がございましたが、誠に御尤もな御意見でありまして、法務廳でも同じような意見でありました。若し実際にさようなことが行われておれば、それは間違いであるというふうに考えまして、四月七日実は檢務長官の名前を以ちまして、檢察廳に指令を発したのであります。今それを読んで見ますから、お聽きを願いたいと思います。裁判確定後における余罪の処理について、表記の件については、先に連続犯の廃止が行われるに当り、昭和二十二年十月二十八日、九日の檢察長官会同における司法次官の注意及び同年十二月三日の刑事実務家会同における刑事局長の指示によつて、これを愼重にすべきことが明示されておるのであるが、最近二、三遺憾な事例が見受けられたことに鑑み、この際一個の裁判確定後において余罪を処理するに当つては、その軽微なものまでこれを起訴することのないように、一層愼重を期し、以て被告人の利益を不当に害する結果を生ぜしめないよう格別の御考慮を煩わしたい。こういう通牒を出しました。実は御懸念の点は、これで一應解消するだろうと思います。
#31
○齋武雄君 全國の檢察廳に対して、そのことを報告して頂きたいと思います。私の方では、法案を提出するについて準備をいたしたいと思いますから……
#32
○委員長(伊藤修君) よろしうございますか。
#33
○政府委員(木内曾益君) 承知いたしました。
#34
○深川タマヱ君 昨日の新聞であつたかと思いますが、福島縣の或る少年院の子供が天井を燒き切りまして二十数名集團脱走を企てたということが見えておりましたが、多分あの少年院だつたと思いますが、過日この委員会が視察に参りましたときに、委員長以下一樣に、國辱的な存在であると折紙を付けた程、設備待遇の惡い所でありまして、二寸角程の木の格子の嵌つた所で、御不浄と同居しておりまして、極めて通風採光が惡い。私達のような大人でも、空氣が惡くてその前に十分間もおられませんでした。それから薄着をして藁細工をしておつたのでありますが、その中の一人が監督官の目を逃れて、腹が減つて寒くてやり切れないのだということを私達に漏らしておりました、全くこういう事件がありそうだと思つたのですが、子供は感受性が強いので、元來こういう所に來る子供は、周囲からよく見られていないので、その上にこんな待遇を受けると、ますます待遇にふさわしいような心境になつて來るのではないか、あんな所に置いて果していい子になるかどうかということを頭をかしげさせられたのです。その後徳島縣の方のを視察いたしましたが、そこに非常に設備も行届いて、又指導の方法がよかつたと存ずることは、建物もよかつたのですが、上品な映画や音樂によつて、お説教以外に情操教育をしておるようであります。一時間ばかりおりまして、こういう所で人間らしい待遇を受けたときには、やはり忘れていた歌を思い出すというふうに、忘れていた人間の行いを思い出してよくなるのではないか、暫くこういう所に置くといい習慣が付くのではないかと思つたのですが、今度の予算を見ると、少年院は一億数千万円ばかりの予算でありますが、極めて少いので、増額をお願いいたしたいと思つたのですが、質問の時間がございませんでしたが、内部でやり繰りが付くならば、こういう惡い設備の所をよく御監督になつて、指導の方法についてもよき御監督を要るのではないかと思いましたので、それが一つ。それからもう一つは、私達歴代の内閣に対して強く要望して参りましたことですが、未だにはかばかしい結果を得られませんので、國会に婦人議員がおることを甚だ心苦しく思つておるのは、第二次の吉田内閣の法務総裁のときからのことでありますが、闇の女の対策についてどういうふうにお考えになつておられますか、それについてお伺いいたしたいと思います。失業対策と考え併せまして、今度の失業対策から考えましても、新らしく出て來る失業救済について予算を割かれるようでありますが、御存じの通り命よりも大切な貞操を賣つていることを一つの失業救済に政府が数えておると困りますので、断乎たる処置を取つて頂きたいと思いますので、今後賣春行爲取締法案が出るか出ないか、こういうことを併せて御意見を伺いたい。
#35
○國務大臣(殖田俊吉君) 誠に御尤もな御意見でありまして、私は第一少年観護所、少年院等におきまして設備が甚だ不十分でありまして、從つてお話のごとき事態が生ずるのであります。更に刑務所におきましても過剩拘禁が甚だしいのでありまして、到底理想的な矯正ができない状態にありまするので、甚だ遺憾に考えております。予算の許す限り速かにこれを改善いたしたいと考えております。ただお話のごとく予算が誠に少ないのでございます。併しながら今日の公共事業費全体に対する予算から見ますると、あれでも相当に財政当局は奮発をして呉れたもののようであります。その乏しい中から成るべく速かに立派なものを作りたいと実は考えております。賣春等、決してこれを失業対策と考えるわけじや無論ありません。これに対する法律を、取締りの法律を立法いたしたいと考えまして、すでに相当の案を得ておるのであります。まだいろいろと考うべき点がございますので、この議会には提出する運びに参らんのであります。いずれ十分に各方面とも考究いたしまして、そういう法律を提出するようにいたしたいと思つております。
 更にこの賣春等の問題、つまり闇の女が殖えることに対する対策と。今の取締りをいたしますと同時に、これはどうしても社会的、経済的の面におきまして一層我が國の再建ということを考えなければならんと思います。それからこれは道徳の問題でありまして、一般に國民道徳の昂揚というようなことも考えなければならん、賣る方も買う方も同じく道徳的の向上がなければならんのであります。これは私だけではございません。政府の内部におきましてよく相談をいたしまして、今後さようなことの、絶滅はなかなか困難と思いまするが、成るべくこれを小さくして、せめて外に見えない、國辱にはならないように努めたいと考えております。
#36
○委員長(伊藤修君) ちよつと一点伺つて置きたいのですが、木内さん、先程の長い御報告ですね。大変結構ですけれども、最後の御意見ですが、これは満足し切れないのですがね。何らの手落ちがなかつたという啖呵を切られたということは、私として承服でき兼ねるのです。それで御報告を伺つて冷靜に考えれば、如何にも苦労されていることがはつきり分ると思います。それで司法権がですね、かくまで愚弄されて司法の威信に関しないか、あなたはその点にお氣付きにならないか。それから今一つは、それ以後その介在した弁護士とか、それらがいろいろの手のこんだ、非常な法律的な知識を持つた稀に見るところの、私は一つの研究課題だと思います。これに対して尚あなた方は進んで関係者を將來の参考のためにお調べになる御意向があるかないか、その二点をお伺いします。
#37
○政府委員(木内曾益君) 私も檢察廳に手落ちはないと言つて啖呵を切つたわけではないのでありまして、今日から考えて見ますれば、先程申しました通りに、いろいろ考慮さるべき点もあるわけであるが、当時の事情として止むを得なかつた点もあるのではないかという趣旨で申上げた次第でございます。無論先程法務総裁もおつしやつた通りに、その経過を私が詳細申上げましたのもその趣旨があつて、事詳細に御報告申上げたわけでありまして、かく報告している私も誠に内心は、どうも実に妙なこともあるものだということを痛感しているわけでありまして、これも無論この結果につきまして、高等檢察廳においていろいろ手を盡して、その後の從來の経過について取調をした筈であります、詳細の報告は聽いておりませんけれども、結局東京高等檢察廳においても、どうもこの際これはこういうことになるのは止むを得ないんじやないかという結論になつたわけであります。そこで今のところ高等檢察廳が手を盡して一應調べたという報告でありまするから、更に私の方で今これを再調査しようという考えは持つておりませんが、再びかようなことの起らないように、総裁もおつしやいました通り、いろいろ十分の対策を考えたいと、その点は研究している次第であります。それからこれは先程も私が御報告のときに申上げました通り、檢察廳が直接所在等を調べる機関と申しまするか、手がないためにこういう問題も起きているのではないかということを痛感するのであります。これはどうしても警察に依存しなければならん。今日警察が自治体警察、或いは妙なふうに分散いたし、檢察廳の職権の程度も從來よりは弱まつた今日においては、一層かような点について我我としても考えなければならん問題である。いろいろその点は十分研究いたしている次第でございます。
#38
○委員長(伊藤修君) それでは高等檢察廳におきまして、どの範囲において関係者をお調べになつたか、後日御報告願いたいと思います。
  ―――――――――――――
#39
○委員長(伊藤修君) では本日上程いたしました七つの法案につきまして、政府の提案理由をお伺いいたします。
#40
○國務大臣(殖田俊吉君) 罹災都市借地借家臨時処理法第二十五條の二の災害及び同條の規定を適用する地区を定める法律案の提案理由を御説明申上げます。
 罹災都市借地借家臨時処理法は、或いは罹災建物の旧借主に優先的に借地権を所得させ、或いは罹災地の借地権で今後存続させる意思のないと認められるものを消滅させる等の途を開き、借地借家関係を調整して、戰爭による罹災都市の急速な復興を図ることを目的として制定されたのでありますが、その後同法の改正により、第二十五條の二の規定が追加せられた結果、戰災の場合のみならず、別に法律で指定した火災、震災、風水害その他の災害の場合にも、同法の規定を適用して、かかる災害地の復興の促進に資することとなつたのであります。そして同法第二十七條第二項によりますと、その適用地区も亦災害ごとに別に法律で定めることとなつているのであります。
 よつて去る二月二十日、秋田縣能代市に発生いたしました火災につきまして、地元の秋田縣及び市の意向をも参酌しまして、その被害状況等を調査檢討いたしましたところ、右災害につき、同地区にも罹災都市借地借家臨時処理法の規定を適用することといたしますのが、同市の借地借家関係を調整して、以て速かに復興させるゆえんと考えられますので、ここに本法律案を提出した次第でございます。
 何とぞ愼重御審議の上速かに可決せられんことをお願いいたします。
 その次に、訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明いたします。
 執行吏の恩給については、御承知の通り執達吏規則により執行吏が手数料の不足額を國庫から補助を受ける場合の基準額たる六百円を俸給年額とみなして算定することになつておるのであります。然るに手数料不足額の國庫補助の基準額は、統戰後における諸物價の高騰に伴い、数次に亘つて増額せられましたにも拘わらず、ひとり執行吏の恩給については從前通り六百円を基準として算定されているわけであります。又他方昭和二十三年法律第百九十号、恩給法臨時特例の制定により、一般公務員の恩給については、その額の算定につき俸給額の増加部分を制限することを止めると共に、すでに給與事由の生じたものに対しても相当程度の増額を認めることとなりました。從いまして執行吏の恩給についても、これに倣い、その臨時的措置を取る必要があるのでありまして、これがこの法律案を提出した理由であります。以下改正の要点を申上げます。
 第一は、執行吏の受くべき恩給年額は、執行吏に対する國庫補助の基準額を定めた政令の額を俸給額とみなして算定しようとするものであります。執行吏に対する國庫補助の基準額は、物價の変動に即應するための臨時的措置として、訴訟費用等臨時措置法第五條により、その定めを政令に委任しているのでありますが、執行吏の受くべき恩給額は從前の建前から申しましても、この政令の定める額にスライドせしめることが最も合理的であると考えられますので、この措置を講ぜんとするものであります。第六條が即ちその規定であります。そしてこの措置は昭和二十三年七月一日以後に給與事由の生じたものに適用せんとするものであります。
 第二は、同年六月三十日以前に給與事由の生じた執行吏の恩給については、一般官吏の例に倣い、同年九月分までは尚從前通りとし、同年十月分以後は一万五千八百四十円を俸給年額とみなして算出した額を恩給年額としようとするものであります。尚この一万五千八百四十円という額は、現在恩給額の算定上執行吏の俸給額とみなされている六百円という額を、前述の恩給法臨時特例の例に倣つて増額したものであります。附則第二項及び第三項がその規定であります。
 何とぞ愼重御審議の上速かに可決せられんことをお願いいたします。その次は、公判前の証人等に対する旅費、日当、宿泊料等支給法案の提案理由の御説明をいたします。
 本案は、刑事訴訟法の実施に伴い、旧刑事訴訟法の下において制定されていた大正十三年司法省令第十一号証人、鑑定人、通事又は飜訳人に旅費、日当、止宿料給與の件を改正し、且つ國費支出の根拠を明確にするため、これを法律にしようとするものであります。
 この大正十三年の司法省令は、刑事訴訟費用法に規定している場合以外で、刑事手続に関して証人等に旅費等を支給し得る場合を規定し、その額について刑事訴訟費用法の相当規定を準用しているのでありまして、その場合としては、旧刑事訴訟法第二百五十五條の規定により檢事の請求した強制の処分につき裁判官の召喚した証人、鑑定人、通訳人又は飜訳人に対して支給する場合、犯罪捜査につき檢事の呼出に應じて出頭した者に対して支給する場合等を規定しているのであります。本案第一條は、いわば右の前者の場合に相当するものであり、本案第二條は、方の後者の場合に相当するものであります。
 新刑事訴訟法第百七十七條は、被告人、被疑者又は弁護人からの請求により、証拠保全のため裁判官が証人尋問等の処分をする場合を規定しており、同法第二百二十六條及び第二百二十七條は、檢察官の請求により、いわば証拠保全として裁判官が証人尋問をする場合を規定しておりまして、いずれも旧刑事訴訟法第二百五十五條の場合に類比すべきものであります。ただこれらの場合には新刑事訴訟法の解釈といたしましては、これらの規定により喚問された証人等は、旅費等の請求権はすでに刑事訴訟法自体により認められており、ただその額が決定されていないものと解されるのであります。そこで本案第一條では、その額につき刑事訴訟費用及び訴訟費用等臨時措置法の相当規定に準用することにいたし、且つ必要な読替規定を置くに止めた次第であります。
 次に、新刑事訴訟法第二百二十三條は、檢察官、檢察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者以外の者の出頭を求め、これを取調べ又はこれに鑑定通訳若しくは飜訳を嘱託することができる旨を規定しておるのであります。本案第二條は、前述の司法省令の規定している後者の場合を新刑事訴訟法のこの新らしい條文に当嵌めて規定したものであります。ただ新刑事訴訟法では、檢察官の外同じく檢察廳の職員である檢察事務官も廣く捜査権限を認められておりますので、檢察事務官の取調べ又は嘱託した者にも旅費等を支給することができるものとすると共に、司法警察職員の取調べ又は嘱託した者については予算的措置、その他尚研究すべき点がありまするので、本案としましては、從前通り別に規定を置かぬことにしたのであります。そういたしまして檢察官又は檢察事務官の取調べ又は嘱託を受けた者は、刑事訴訟法上に旅費等の請求権を認められておりませんから、本案第二條によつて檢察官の裁量により、且つその額については刑事訴訟費用法及び訴訟費用等臨時措置法の規定するところに準じて、これを支給されることになるのでありまして、これらの点は從前と同様であります。
 以上が提案理由の説明でございます。何とぞ愼重御審議の上速かに御可決あらんことをお願いいたします。
 その次は、刑事訴訟費用法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明いたします。
 本案は、いわゆる在廷証人に対しても旅費、日当、宿泊料等を支給すると共にこれを訴訟費用の一部を加えようとするものであります。職権主義を基調とし、且つ起訴と同時に一件捜査記録が裁判所に引き継がれることになつておりました旧刑事訴訟法の下におきましては、在廷証人の利用は数えるに足りる程度で、殆んど問題になることがなかつたのでありまするが、職権主義が後退し、多分に当事者主義が採り入れられ、且ついわゆる起訴状一本主義が採用せられている新刑事訴訟法になりましてからは、この在廷証人の利用が從來に比し著しく活溌になつて來ておるのであります。これは証拠は先ず檢察官なり、被告人又は弁護人なりの当事者側から提出することにした新刑事訴訟法の当事者主義的構造にももとらず、且つ全体としての審理の促進を図る上からいたしましても当然の傾向と認められるのであります。而して、かかる在廷証人は、当事者の求めにより、当該公判期日に出頭して來ているものでありますから、裁判所において証人として採用され、取調を受けた以上、当初から裁判所が喚問した証人とその取扱を同じにするのが相当と認められるのであります。尚鑑定人等についてもこれに準じて考えられるのであります。それでこれらの者に対しても旅費、日当、宿泊料等を支給し、これを訴訟使用の一部に加えることにいたした次第であります。
 以上で簡單ながら提案理由の御説明を終りますが、何とぞ愼重御審議の上、速かに御可決あらんことを願います。
 その次は、司法警察職員等指定應急尊置法等の一部を改正する法律案の提案理由を御説明いたします。
 第一は、司法警察職員等指定應急措置法の一部改正でありますが、御承知の通り運輸事務官、鉄道手等の國有鉄道の職員につきましては、從來大正十二年勅令第五百二十八号により司法警察官吏の職務を行う者として指定されており、改正刑事訴訟法の下におきましても、司法警察職員等指定應急措置法により從來と同様に司法警察職員として指定されているのでありますが、今回日本國有鉄道法の施行に伴いまして、これらの職員は公法人たる日本國有鉄道の役員又は職員となることと相成りましたので、これを新たに司法警察職員として指定する必要を生じ、これを司法警察職員等指定應急措置法中に規定することといたしたのであります。尚指定の方法につきましては、先に申述べましたように日本國有鉄道が国家の手を離れた公法人であることに鑑みまして、從來のごとくその指名権者を当該役職員の所属する事務所の長に一定する方法によることなく、運輸大臣が適当と認める者を指名権者として選定することとし、指名について運輸大臣の監督の道を残したのであります。
 次は、海上保安廳法第三十一條の改正でありますが、現在海上保安官につきましては、二級の海上保安官が司法警察員として、三級の海上保安官が司法巡査として職務を行うものとせられているのであります。ところが二級の海上保安官はその数が比較的少なく、そのために司法警察員として捜査事件の処理をいたします際に少なからん不便を感じて來たのであります。そこで、本案におきまして、司法警察員と司法巡査の区別を海上保安廳長官の定めるところによるものといたしまして、その職務の遂行を円滑ならしめることにいたしたのであります。
 以上御説明いたしましたように、本案は、特殊司法警察職員の機能を十分に発揮せしめるため是非とも必要な應急的措置を規定いたしましたものでありますから、何とぞ愼重御審議の上速かに可決せられんことを望む次第であります。
 その次は、会社等臨時措置法等を廃止する政令の一部を改正する法律案の提案の理由を御説明申上げます。
 会社等臨時措置法は、昨年十二月三十一日同法施行令と共に、連合國最高司令官の覚書に基き、政令第四百二号を以て廃止したのでありますが、その際、その附則において同法及び同法施行令中の若干の規定について、本年四月三十日まで尚効力を有するものといたしました。元來同法は第一條の示すように戰時中の特例を定めた立法でありますが、同法の規定の大部分は戰時中の窮迫して社会事情、例えば交通通信の不便、物資の不足、戰爭による災害等に対処する措置を定めたものでありまして、同法が廃止された当時におきましても、尚このような事情が完全に解消するに至つていないため、これらの規定の効力を尚存続させる必要がありましたのと、他面その一部の規定は、会社経営の実情に適するものとして、経済界からその恒久化が要望されておりますので、これを恒久法とすることの可否を檢討し、必要があれば商法の中に取入れる等の措置を構じなければならない関係上、そのときまでこれらの規定の効力を、失わしめないで置くのが相当と考えられたからであります。ところで今日尚前述の窮迫した社会事情は尚完全に復旧しておらず、又恒久立法とすることの可否についても尚檢討を要する状況にありまして、現に効力を有するこれらの規定につき、更に本年十二月三十一日までその効力を存続させる必要がありますので、この点について前述の政令を改正するため、この法律案を提出いたしたのであります。ここに有効期間を延長しようとする規定は、先ず会社に関するものとしては、会社等臨時措置法第二條から第三條に二まで及び第五條並びにこれに関連する施行令の諸規定であり、会社以外の法人に関するものとしては、第八條及びこれに関言する施行令の規定であります。これらの規定について関單に御説明をいたします。
 会社等臨時措置法第二條の規定は、資本金二十万円未満の株式会社の公告の方法について、商法第百六十六條第二項に定める公告方法によることを要しない。訟ち官報又は時事に関する日刊新聞紙に掲示して公告することを要しないとするのでありまして、用紙欠乏による官報及び新聞紙の紙面不足に対処いたしまして、併せて会社の経費の負担を軽減させるものでありますが、今日尚新聞紙の紙面不足等の事情は解消しておりません状況でありますので、この規定の効力を存続させることとしたのであります。
 第三條の規定は、株主の数が千人を起える株式会社について、株主総会の招集法方を簡易化し、且つ商法第三百四十三條の特別決議をするための総会の定足数を緩和するものでありますが、この規定を設ける根拠とされた戰時中における交通通信の不便という事情は近時大いに改善されましたけれども、反面におきまして交通費、通信費の著しき増大と、株式民主化の趨勢に伴う株主数増加の傾向とによりまして、今後商法の要求しているような総会招集の通知及び特別決議の定足数の出席がますます困難となることが予想されるのでありまして、この規定を今直ちに失効させることは、会社経営に大きな支障を與える虞れがあり、この点に関する商法の規定を再檢討する必要ありと考えられますので、本條も又その効力を存続させようとするものであります。
 第三條の二の規定は、戰災その他の災害により、株式名簿を喪失し、記名株主の全部又は一部の氏名又は住所を確知することのできなくなつて株式会社について、当該株主に対する総会招集の通知を省略し、その者を特別決議の定足数ため株主の数に算入しないこととし、戰災を受けた会社の運営に支障なからしめようとするのでありますが、戰災により株主名簿を喪失した会社で、今日尚記名株式の株主の氏名又は住所を確知し得ないものが存在しますので、第三條と同様この規定の効力を存続させることにいたしたのであります。
 第五條は、日本興業銀行、日本勧業銀行その他法務総裁の指定する株式会社の社債の登記に関し簡易な手続を認めるものであり、これらの会社は多くは特別の法令を定によりその社債発行額の限度が商法所定の限度よりも高いため、社債発行の額及び数が非常に大きく、その登記が煩瑣に堪えないので、その手続を簡易化し、その手数及び費用を節約しようとするのでありますが、その社債発行の頻度数は減少しておらず、又社債に関する登記事項について商法の規定を檢討する必要もあるので、この規定も亦その効力を存続しようとするのであります。
 第八條の規定は、会社以外の法人に関し、その発行する債券の登記について第五條におけると同様な取扱をするものであり、第五條と同様の理由でこの規定の効力を存続しようとするのであります。以上述べましたところが政令附則第二條の改正であります。
 尚、敍上の改正に伴い、政令中の経過規定に所要の改正を加える必要がありますので、これを附加いたしました、附則第五條の改正がこれであります。何とぞ愼重御審議の上速かに御可決あらんことをお願いいたします。
 次に、公証人法等の一部を然正する法律案でございます。その提案理由を御説明申上げます。
 公証人に対する監督事務につきましては、一昨年五月、裁判所の分離独立に伴い、これより切離して法務行政の下に置かれることとなつたのでありますが、当時止む得ない事情から、一般的な應急措置が施されたに止まり、裁判所の分離に伴う公証人法の規定の整理は見送られて今日に至つたのであります。ところがこの度再び法務廳の機構の改組に伴い、公証人法の関係規定を整理することが必要となつたのであります。尚、同法が規定する公証の手続等に関しては、從來徒らに煩瑣に過ぎ、時代に即さないものがありますので、この際これを是正すると共に、又公証人の任用資格等についても現状に即するよう改正を加える必要があるのであります。これがこの法律案を提出した理由であります。以下改正の要点を御説明申上げます。
 第一は、法務廳設置法の一部を改正する法律により、司法事務局又はその出張所が法務局若しくは地方法務局又はその支局若しくは出張所に改組されると共に、公証人懲刑委員会については、これを公証人審査会として同法に規定されることになりましたので、これらに伴い、公証人法の関係規定を整理しようとするものであります。公証人法第七條乃至第十一條、第一四條、第一五條、第一七條、第二十一條、第二十四條、第二十五條、第六十二條ノ二、第六十二條ノ五、第六十三條、第六十四條、第六十六條乃至第六十八條、第七十一條、第七十三條乃至第七十六條、第七十八條、第八十一條乃至第八十三條及び第八十五條の改正規定がこれであります。
 第二は、公証、認証等の手続を簡素化しようとするものであります。公証人が公正証書を作成し、私署証書等に認証を與える行爲は、私権に重要なる関係を有するものでありますから、公証制度の権威のためにも軽々にその手続を簡易化することは嚴に愼まなければならないことではありますが、併しながら現行法の規定は余りにも嚴格に過ぎ、却つて公証人は勿論当事者に対しても徒らにその煩に堪えざらしめておるのでありまして、この度公証制度の趣旨に反しない範囲内においてこれを適当に是正して、ますます公証制度の機能を発揮せしめようとするものであります。尚、公証人の調製する帳簿についてもこれを簡易化するよう若干の修正を試みました。公証人法第二十八條、第三十二條、第三十四條、第三十六條乃至第四十二條、第四十四條乃至第四十七條、第五十一條、第五十五條、第五十九條乃至第六十二條及び第六十二條ノ四の改正規定がこれに当ります。
 第三は、公証人の任用資格等につき、現行法では判事、檢事又は弁護士たる資格を有する者に限つて、所定の試驗及び実地修習を経ないで公証人に任ぜられることができるのでありますが、これでは広く適材を求めるに適しない憾みがありますので、この度これを改正して、多年法務に携わり、公証人の職務に必要な学識経驗を有する者で、公証人審査会の選考を経た者も亦試驗及び実施修習を経ることなくして公証人に任ぜられることを得るものとしようとするものであります。尚、公証人の住居、筆生の名称、身元保証金及び過料の額等についてもそれぞれ所要の改正を試みました。公証人法第十二條、第十八條、第十九條、第二十四條、第三十四條、第八十條及び民法第九百七十四條、改正規定がこれに当ります。何とぞ愼重御審議の上、速かに可決せられんことをお願いいたします。
#41
○委員長(伊藤修君) 以上七つの法案に対するところの質疑は明日午後一時から継続して行います。本日はこれで散会いたします。
   午後四時六分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     伊藤  修君
   理事
           鬼丸 義齊君
           岡部  常君
           宮城タマヨ君
   委員
           齋  武雄君
          大野木秀次郎君
           遠山 丙市君
           深川タマヱ君
           來馬 琢道君
           松井 道夫君
           星野 芳樹君
  國務大臣
   國 務 大 臣 殖田 俊吉君
  政府委員
   法務政務次官  遠山 丙市君
   檢 務 長 官 木内 曾益君
ソース: 国立国会図書館
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