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1967/12/07 第57回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第057回国会 本会議 第3号
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1967/12/07 第57回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第057回国会 本会議 第3号

#1
第057回国会 本会議 第3号
昭和四十二年十二月七日(木曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第三号
  昭和四十二年十二月七日
   午後二時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 内閣委員長關谷勝利君辞任の件
 内閣委員長の選挙
 国務大臣の演説に対する質疑
   午後二時六分開議
#2
○議長(石井光次郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 内閣委員長關谷勝利君辞任の件
#3
○議長(石井光次郎君) おはかりいたします。
 内閣委員長關谷勝利君から、委員長を辞任いたしたいとの申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(石井光次郎君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
     ――――◇―――――
 内閣委員長の選挙
#5
○議長(石井光次郎君) つきましては、これより内閣委員長の選挙を行ないます。
#6
○竹内黎一君 内閣委員長の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。
#7
○議長(石井光次郎君) 竹内黎一君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○議長(石井光次郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 議長は、内閣委員長に三池信君を指名いたします。
  〔拍手〕
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑
#9
○議長(石井光次郎君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。勝間田清一君。
  〔勝間田清一君登壇〕
#10
○勝間田清一君 私は、日本社会党を代表し、当面の最も重要問題である日米共同声明を中心に、沖縄、小笠原の返還問題と、日本及び極東の安全保障問題に限定して、佐藤総理大臣に質問いたしたいと思うのであります。(拍手)
 しかし、私は、本論に先立って、佐藤総理にまず反省を求めなければなりません。
 去る一日の佐藤総理との会談において、私は、総理に対し、所信表明にあたっては、共同声明の大半を占め、またその本質ともいうべき日本及び極東の安全保障に関連したその重要内容を、余すところなく国民に報告すべきであることを勧告いたしたのであります。しかるに、総理は、今回の所信表明において、この重大な安全保障の問題については一言半句も言及せず、ひたすら領土返還が大きく前進したかのごとくに宣伝これつとめたにすぎなかったのであります。(拍手)何ゆえに佐藤総理は、日本国民の平和と安全に重大な関係を持った今回の日米間の取りきめを、国民にあえて報告しないのであるか。小さなみやげを大きく見せ、危険な重荷への批判をことさら回避しようとする、こうした非民主的な政治的態度に対して、私は強くその反省を求めたいのであります。(拍手)
 今回の総理の渡米にあたって、国民が、大きな不安と危惧を抱きながらも、なおほのかな期待を寄せていたことは否定できない事実であります。国民の期待は、ほかでもありません。沖縄、小笠原の早期全面返還の要求に明確な回答を取りつけてきてもらいたいということでありました。そして、不安と危惧を代表する人たちは、総理がアメリカの極東戦略という大きな歯車に一そう深く巻き込まれて、危険な負担をさらに背負い込まされてくるのではないかという心配であったのであります。(拍手)
 結果はどうだったでありましょう。国民の期待はみごとに裏切られました。小笠原の返還というささやかなみやげと引きかえに、沖縄の施政権返還という最も重要な民族的課題は、不確定な未来の問題としてはるかかなたに追いやられたのであります。(拍手)そしてわれわれの予想したとおり、総理は日米軍事体制の強化という重荷をしょわされて帰ってきたのであります。
 だからこそ、総理の帰国直後、沖縄県民は那覇市に集まり、一大抗議集会を開いたのであります。七万にのぼる県民が弔旗を掲げ、悲しみと怒りを込めて、ついに佐藤内閣打倒を決議したことは、すでに御承知だと思うのであります。(拍手)これこそが、佐藤首相の訪米に対する日本全国民の偽らざる評価であり、象徴的な反応であると申し上げたいのであります。(拍手)
 このような国民の不信に満ちた抗議に対して、総理は、去る十一月二十一日の記者会見において、次のように答えております。すなわち、「わが国が安全確保について確信が得られ、国民がみずから国を守るという決心がつけば、三年を待たずして沖縄は返る」というのであります。また所信表明においても、「国民一致してみずからの国をみずからの手で守る気概を持ち、現実的な対策を考えるべきだ」と強調いたしたのであります。われわれは、この発言を重大視せざるを得ません。これはとりもなおさず、沖縄が返るのも返らないのも、日本人の再武装への決心次第である、日本国民が再び銃をとる決意をしさえすれば、沖縄は返ってくるのだという、ある意味では開き直っているようにも思えるからであります。(拍手)このことは、また沖縄返還の問題を防衛問題に巧妙にすりかえようとしているという点においても、きわめて重大といわなければなりません。(拍手)
 そこで私は、次のことを佐藤総理にお尋ねいたしたいのであります。
 質問の第一点は、「もし日本国民が自国の防衛について決意をすれば、沖縄は三年を待たずして返る」というのでありますが、その根拠は何かということであります。
 共同声明には、佐藤総理が両三年内に返還の時期について合意すべきであると強調したことは、確かに書き込まれてありますが、しかし、これに対して大統領が同意を与えていないことも、また明白な事実であります。(拍手)そればかりか、アメリカ政府当局は、同意していない旨を、後日再三にわたって言明いたしておるのであります。この点について、ニューヨーク・タイムズは、「これによってアメリカは不確定の未来にわたって沖縄を支配することになった」といっております。フランスのル・モンド紙のごときは、このことに関連し、「佐藤首相の訪米は、多少軽率であり、失敗でもあった」と言い放っておるのであります。(拍手)したがって、何を根拠に、沖縄返還のめどがついているというのか、国民が納得できるように説明していただきたいのであります。(拍手)
 質問の第二は、「みずからの国を守る決意」を国民に迫っているわけでありますが、これは具体的には何を意味するのか。現実的対策とは何か。国民に、はたしてどうしろというのであるか。総理の構想を隠すことなく、その全貌を国民の前に明らかにしていただきたいのであります。(拍手)
 はたして、第三次防衛力整備計画の修正拡大であるのか。海外派兵や徴兵制を可能にするための憲法の改正であるのか。沖縄の核基地あるいは米軍による基地の自由使用を認めることなどであるのか。こうした国民の深刻な疑問に対して、率直に答えていただきたいのであります。(拍手)
 ときにあたかも、去る七日、ロンドン・タイムズは、「佐藤総理はジョンソンとの間に秘密協定あるいは暗黙の合意に達した明白な証拠がある」と断定した重大なニュースを発表いたしておるのであります。沖縄の核基地と基地の自由使用について、こうした秘密協定あるいは暗黙の合意があればこそ、両三年に返る確信があると、総理が強調しているのかどうか。ここにも明確な回答をいただきたいと思うのであります。(拍手)
 また十一月の十九日、ワシントン・ポスト紙が、「沖縄の返還は、日本の軍事、政治、憲法の仕組みを大きく変える問題と関連している」と報道していることも、これを裏づけていると思いますので、それはこれから国民自身が考えるべきことだなどと逃げ口上を言うのではなくて、事実を明確に答えていただきたいのであります。(拍手)
 思い起こすまでもなく、ここ一、二年、佐藤内閣は、一面において下田発言等を通じ、国民に再軍備の決意を促し、いわゆる核アレルギー的体質の改善を迫り、核兵器、核基地の承認を示唆し、世論操作をはかってまいりました。また、他面においては、佐藤総理の韓国訪問を皮切りに、台湾、南ベトナム等の歴訪を通じて、アジアにおける反共体制の強化に狂奔してきたことも、まぎれもない事実であります。(拍手)そして、その集約が、このたびの佐藤・ジョンソン会談であり、共同声明であると見ることは、決して間違いではないと思うのであります。したがって、共同声明が中国の脅威に関する合意で始まり、きわめて論理的な順序で、各種軍事条項を次々と織り込み、沖縄問題がその中に埋没してしまったのも当然の帰結ということができるのであります。しかし、われわれは、佐藤内閣がこのような既定路線の上をひたすらばく進すればするほど、いよいよ不安を増大せずにはおられないのであります。現在、ベトナム戦争のどろ沼の中で北爆がさらに拡大され、ついにマクナマラ国防長官が辞任するというきわめて緊迫した情勢にあるだけに、このような危険な外交、そしてそれを押し通そうとする佐藤総理の権力主義的なやり方に対し、私は心から抵抗を感ぜざるを得ないのであります。(拍手)この上、総理が国民に何を求め、何をさせようとしているのか、ぜひ明らかにしてもらいたいと思います。
 次に、私は中国の核兵器の脅威という問題についてお伺いいたしたいと思います。
 佐藤総理は、共同声明の第三項について、「中共が核兵器の開発を進めている事実に注目し、アジア諸国が中共らの脅威に影響されないような状況をつくることが重要であること」に合意いたしております。
 もとよりわが党は、いかなる国の核にも反対であり、中国の核といえども例外ではないことは言うまでもありません。しかしながら、佐藤総理は、何ゆえに中国の核のみを問題にし、中国の何百倍、何千倍の核兵器と、運搬手段としての強力なミサイルを持っているアメリカやソ連の核を問題にしないのでありましょう。その理由を明らかにしてもらいたいのであります。(拍手)
 中国は、確かに、いままでに六回にわたる核実験を行なっております。第一回の実験が一九六四年十月であったことも、われわれの記憶に新たなところであります。しかし、そのときまでにすでにアメリカは、第七艦隊の核装備を中心に、アジア・太平洋全域にわたって、広範な核戦略体制を確立していたことも忘れてはならないのであります。事実、朝鮮戦争に際しては、早くもマッカーサーが、中国に対し、核脅迫を行なっていたのであります。軍備や戦争が、常に相対的なものであるという事実に照らしてみるとき、アメリカのこのような態度が、中国の核開発を導き出したのだと言っても決して過言ではありません。(拍手)また、中国が、「自分のほうから最初に核攻撃を加えることはしない」と再三にわたって言明していることも、破滅的な報復力を米ソが持っていることを考え合わせるならば、決して単なる宣伝と受け取ることはできないはずであります。さらに、私は、中国が、核保有国が核兵器を使用しないという協定を締結するために、首脳会議を開くべきであると提唱いたしている事実にも、謙虚に耳を傾けるべきだと思うのであります。
 ともあれ、核兵器及びその保有国が脅威であるかいなかは、何よりもまず、その国と友好関係が保たれているかどうかにかかっていると言うべきであります。(拍手)したがって、中国の核の脅威を感ずるということは、自民党政府が、戦後二十二年にわたり、依然として日中の間を不自然な状態のままに放置し、アメリカの中国敵視政策と封じ込め政策に加担しているところに、その最大の原因があると思うのであります。(拍手)一日も早く、平和五原則に基づく日中友好関係を確立することこそが、問題解決のかぎであることは言うまでもないのであります。にもかかわらず、佐藤総理は、以上のような努力を払うことなく、ついにアメリカをはじめ、反共国家とともに、中国の核脅威を一方的に宣伝し、アメリカの核のかさの下に入って、核兵器の持ち込み、基地の自由使用を認め、自衛隊を核武装の方向に強引に引きずっていこうとするならば、許すことのできない暴挙といわなければならぬのであります。(拍手)
 私はかかる政府の行為をきびしく批判しつつ、あらためて次のことを総理に問うものであります。
 すなわち、共同声明において、アジア諸国が中国の核の脅威に影響されない状況をつくると述べておるのでありますが、それは具体的にどういうことをさしているのかということであります。私が指摘したような、核には核をもってという発想に基づいて、核の持ち込みや基地の自由使用を認めるようなことは考えてはいないというのであるならば、なおさらのこと、どのような措置をとり、どのような外交をこれから推し進めようとしておるのであるか、ここに明確にお答えをいただきたいのであります。(拍手)
 以上、私は共同声明の中に盛られている、ささやかな成果と引きかえに、日本と日本国民にとってあまりにも不利益となり、危険な負担となっていると思われる二、三の点について質問を行なったのであります。しかし、共同声明の中には、このほかにもまだ幾つかの危惧すべき点があります。
 たとえば、日米安保条約の長期堅持を確認すると同時に、責任ある。パートナーとして、アメリカのベトナム侵略を一方的に支持し、さらには、東南アジアに対する経済援助の肩がわりと、ドル防衛のための一そうの協力を誓ったことなどがそれであります。特にジョンソンの北爆を含む戦争政策を全面的に支持したことは、日本国民はもちろん、世界の世論にそむく行為というべきであります。(拍手)このことは、総理の南ベトナム訪問と相まって、日本がベトナム参戦国と同じ立場に立ったことを、全世界に示したことになると言っても過言ではありますまい。(拍手)
 また、日本の国際的信用を著しく失墜させることになったばかりでなく、ベトナム戦争を遂行するために重要な役割りを果たしている沖縄の返還を、いよいよ困難にする条件をつくったといわなければなりません。(拍手)
 沖縄県民は、毎日身をもってベトナム戦争を体験いたしております。だからこそ、最近の世論調査において、その圧倒的多数の人が、軍事基地とは、平和や安全のためのものではなく、緊張を激化させ、みずからを戦争に巻き込んでいく要因であるという結論を出しておるのであります。この回答こそ、特定のイデオロギーから生まれたものではなく、ベトナム基地としての沖縄県民の体験の中から生まれた貴重な結論であると思うのであります。(拍手)
 また、佐藤総理が、東南アジアに対する経済援助の肩がわりを約束したり、ドル防衛のための一そうの協力を誓ったことも、決して単なる経済的行為としてのみ受け取ることはできないのであります。ベトナム戦争を支援し、ベトナム戦争を長引かせる誤った約束といわなければなりません。アメリカの深刻なドル危機が、年々戦費三百億ドル以上もベトナムに浪費していることに原因していることを思えば、ドゴールを学ぶまでもなく、佐藤総理は、ベトナム戦争の中止をこそ要求すべきだったのであります。(拍手)
 それにつけても、共同声明にある、「国際収支の均衡を早期に回復する」ための相互の支援のために、佐藤総理は何を具体的に約束しようとしているのか、答弁を求めたいのであります。
 西ドイツは、今年七月、米政府との間に、ドイツ連邦銀行が一年間に五億五千万ドルの米政府発行の中期債券を購入するという協定を結びました。今回の訪米にあたっても、佐藤首相は、ジョンソン大統領から、中期債券や武器購入を含む五億ドルの協力を要求され、それに全面的な約束を与えたとも伝えられているのであります。はたしてそうであるならば、このたびの交渉は、安全保障上の義務を負わされただけでなく、貴重な金の代償まで要求されたことを意味するといわなければなりません。(拍手)
 いま日本の経済は、本年六億ドルに達するかもしれないほどの国際収支の赤字に直面しております。そして、この改善のために、一連の経済引き締め政策がとられ、中小企業は記録的倒産を示しているのであります。日米交渉がいかに高価なものであったか、また、佐藤内閣の安全保障と称するものがいかに高いものにつくかということを如実に示したものだと思うのであります。(拍手)
 以上、日米共同声明に従えば、佐藤総理が、アメリカ大統領と、責任ある。パートナーとしての盟約を結び、これから二、三年後、すなわち一九七〇年に向けて推し進めようとしている日本及び極東の安全保障なるものの全貌はきわめて明白であります。すなわち、反共、反中国を中心的目標として設定し、この目標のもとに、ベトナム戦争という当面の課題に対しては、アメリカの主張や行動を全面かつ無条件に支持する、アジアにおける反共体制には、当面、政治的、経済的に主導的役割りを担当する、沖縄はこれら諸国を結ぶ軍事的かなめ石としてその重要性を確認する、日本みずからは、アメリカの核のかさの下で、日米安保条約を長期的に継続し、みずからは強力な国防体制をとるということであります。(拍手)
 かくして佐藤総理は帰国し、平和憲法は外国には適用されないと強弁し、社会党の平和外交に挑戦するばかりか、みずからの国を守る決意をせよ、そうすれば沖縄は返ると称して、日本国民に再軍備を強要いたしておるのであります。(拍手)はたしてこれが、一億国民の生命、財産を守る、平和と安全を保障する道であろうか、再び民族を破滅させる戦争への道であろうか、われわれ国民は重大な岐路に立たされたといわざるを得ないのであります。(拍手)
 しかし、私は、第二次大戦の経験を持ち、広島、長崎の悲惨を味わった日本国民は、必ずやその危険な本質を見破り、正しい判断を下すものと確信いたすのであります。
 いまわれわれ日本国民にとって必要なことは、思想、信条の相違にもかかわらず、隣人中国と一日も早く友好、平和の関係を回復することであります。外国の干渉と援助とによって分裂している朝鮮、中国、ベトナムの民族の平和的統一に寄与することであります。(拍手)アジア全般に存在する貧困と窮乏を克服し、経済の繁栄と民族独立に、友人としての手を差し伸べることであるのであります。(拍手)したがって、爆撃を支持することではなくて、その中止をこそ要求しなければなりません。(拍手)外国軍隊の基地を認めることではなく、撤退を要求することであります。(拍手)ましてや、日本は、軍事同盟を継続強化することでもなく、軍備を拡大することでもないのであります。わが国の平和憲法が差し示す道も、佐藤総理自身がみずから言うところの「平和に徹する」ということも、この道にこそあると確信して疑わぬのであります。(拍手)また、こうした体制を、日本及び極東に樹立することが、日本国民と十億のアジア民衆が求め、国連憲章がまた追求しているところの正しい安全保障の体制と言うことができると確信いたすものであります。(拍手)
 佐藤総理の見解を伺い、私の質問を終わる次第であります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#11
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) ただいま勝間田君から、私に反省を求められ、同時にまた、私のやり方が非民主的だと、こう言って、その態度も非難されました。私は、私の席におきまして静かに謹聴し、御意見を謙虚に伺ったのであります。しかし、その間には幾多の誤解もあり、また、十分理解もしていただけない点があるようでありますから、この際にお答えをいたします。
 私は、まず、総理といたしまして一番の責任は一体何か。それは申すまでもなく、わが国の安全をいかにして確保していくべきか、これが私の責任でもあり、同時に、総理として私に課せられた義務である、かように感じております。(拍手)また、日本の安全は、アジアの平和と安全なくしては確保のできないこともよくわかっております。かような意味におきまして、アジア、特に極東の平和と安全という問題も、私の頭から去らないことでございます。
 私は、本年夏以来、ビルマ以東の東南アジア各国を歴訪し、引き続き、米国を訪問いたしました。これらの国々におきまして、それぞれの指導者と、アジアの平和と安全という問題について率直な意見の交換をしたことは言うまでもございません。
 アジアの各国は、私が申し上げましたように、政治的、経済的独立の達成と、民族の尊厳維持のため、政府、国民ともに大きな努力を払っております。現在、これらの国々が当面している課題は、その貧困、飢餓、疾病の克服であります。また、政治的不安の諸要因、中でも、現に核開発を行ないつつある中共の影響をいかに受けとめるかということが一つの大きな問題であります。この意味におきまして、中共が教条主義的な姿勢をやわらげて、平和共存に踏み切ることをアジアの各国は強く希望しております。(拍手)
 また、ワシントンにおけるジョンソン大統領との会談におきましても、アジアにおける持続的な平和を確立するとの見地から、中共が現在のような非妥協的な立場を捨てて、国際協調をはかることを希望する点については、全く意見を同じくしたのであります。(拍手)
 私は、アジア及び米国訪問を通じて、世界の平和というものは軍事力だけで達成できるものではないということ、国の政治的安定と経済的繁栄がこれからの世界においては平和を維持するきめ手であるということを、あらためて痛感したのであります。
 ジョンソン大統領との共同声明におきましても、平和と安全の維持が、単に軍事的要因のみならず、政治的安定と経済的発展によるものであることを認めているのであります。したがいまして、わが国のように、自衛のためにしか軍事力を用いないことを世界に宣言している特異な国の役割りが、新しく国際間の重要課題として浮かび上がってきたと思います。これらのことは、所信表明演説におきまして、私が今更以来の外国歴訪を通じて、われわれがこれまでとり続けてきた平和国家としての方針を貫き、わが国を取り巻くアジアの各国の政治的安定と経済的繁栄に資することが、ひいてはわが国の安全につながるという、以上の考え方が妥当なものであるとの確信を深めたのでございます。(拍手)ジョンソン大統領との会談におきましては、以上の基本的考え方に立って、現在のきびしい国際情勢の中での現実的施策として、日米安保体制を引き続き堅持するという原則を確認したのであります。(拍手)そこに何ら新しいこと、変わったこと、これは一切ございません。したがいまして、重荷を負わされて帰ってきたんだ。こういうことは当たらないのでございますから、この点をはっきり御了承いただきたいと思います。(拍手)
 次に、沖縄問題についてのお尋ねが二問題ありますが、これをあわせてお答えをいたします。まとめてお答えいたします。
 私は、日米両国間の相互信頼と協力の基礎に立って問題に対処するということが、沖縄問題をわが国の国益にかなう形で解決する最善の方法であり、最短の道であると考えております。(拍手)この点では、社会党の諸君の考え方とは違うのであります。
 さらに、ニューヨーク・タイムズを引き合いに出されましたが、ニューヨーク。タイムズにおきましては、わが国の主張を支持するという記事が出ておりますが、それこそは、ニューヨーク・タイムズのような有力な新聞すら、日本の主張がこれは穏当なものであるということをはっきり裏書きしたのであります。私は、今回の日米会談におきましても、このような立場から、沖縄、小笠原問題について率直な話し合いをいたしました。その根本的解決を近い将来にもたらすための軌道はすでに敷かれた、そうして、それに乗せることができたと、かように確信しておるのであります。(拍手)
 近い将来沖縄の祖国復帰を実現するためには、沖縄を含めた日本の安全をいかにして確保していくかという課題を、いまから国民一人一人がまっ正面から考えなければならないと思うのであります。日本国民は、核兵器の開発はしない、他国の内政には干渉しない、こういう二つの大きな国民的総意を持っておりますが、世界の現実の中でみずからの国の安全を確保するという最も根本的な問題については、私をして忌憚なく言わしむれば、いまだ国民の間にこの問題についての関心が十分向けられているとは思っておりません。(拍手)ここに国民的総意を形成するための真剣、かつ、現実な討議が十分に行なわれていないというのが現実の姿であります。したがって、私は、国民一人一人の認識と努力によって、この総意が着実につくられていくことを念願しており、それが、ひいて沖縄の祖国復帰を促進するゆえんであると確信しているのであります。(拍手)
 お尋ねのありました、私が記者会見で申しました趣旨は、現在の日米関係から見て、このような国民的総意の基礎の上にこそ、沖縄の返還も予想以上に早まるということを申したのであります。しかも、これはまさにわが国の最高の国益のために全国民が真剣になって討議し、取り組んでいくべき問題なのであります。
 なお、御質問のありましたような密約はございません。第三次防を改定するというような考え方もいたしておりません。もちろん憲法改正も、私は、お尋ねがありましたが、さようなことも考えておりません。沖縄の基地の取り扱いについては、今後日米両国政府の間で継続的に協議し、両三年内に返還時期についてめどをつげ、国民の賛同を得る線で解決する考えであります。この点を明確にいたしておきますから、誤解のないようにお願いしておきます。(拍手)
 次に、米ソの核兵器については非難しないで、中共の核だけを非難すると、かような御意見でございますが、政府はさようなことをした覚えはございません。米ソを含む核保有国の核軍縮の必要性につきましては、従来からしばしば核拡散防止条約のその趣旨を尊重すると、かように申しておりますし、私が申し上げるまでもなく、中共だけの非難ではないということ、これをはっきり理解していただきたいのであります。(拍手)しかし、現実の問題としては、核保有国をこれ以上増加したくないという世界の強い願望にもかかわらず、中共が核兵器の開発を鋭意進めている現状は、特にアジアの近隣諸国におきまして重大な関心が持たれておるのであります。(拍手)核兵器を開発しない、また、核を持ち込まない、この立場に立つわが国といたしましては、これらの国々と同様に、中共の核開発に重大なる関心を持つのは、これは当然でございます。(拍手)私は、勝間田君も、よくこれらの点を考えられて、わが国が置かれておる現状についての認識をもっと正しく持っていただきたいようにお願いをいたします。(拍手)
 私は、しばしば述べていますとおり、いずれの国とも仲よくするということを外交の基本方針としております。でありますから、中国本土との関係におきましても、従来の関係を続けております。いわゆる政経分離の形におきまして、節度ある交流をいたしておるわけであります。今回の共同コミュニケにおきまして、これらの点に変更があったとは私は思いませんし、また、全然変更いたしておりません。いな、むしろ、米国がかつての封じ込め政策から、さらに弾力的な態度に変わったということ、これはむしろわが国のあり方について賛成してくれた、かように私は考えておるのでありまして、このことも、世界の情勢を正しく認識していただくことが最も大事だと、かように思います。(拍手)私は、こういう意味で、いろいろの御注意はありましたが、中共を敵視するものではなく、常に窓口を閉ざさないように、かように東南アジア諸国を回りましても発言をいたしております。そのことはそのつど新聞等で報道されておりますから、社会党の諸君といえども、との新聞報道はごらんになったことだと思います。したがいまして、今回中共に対して、私が封じ込め政策に賛成したなぞ、とんでもない考え方だと思いますから、さようなことのないことをこの機会にはっきり申し上げておきます。(拍手)
 次に、ベトナム問題についてお話を申し上げます。私は、アメリカに対しまして、いわゆる北爆を支持するというような声明はいたしておりません。御承知のように、ただ個々の行為を取り上げて、そうして、それをやめろ、北爆はよくない、しかし北からの浸透はそのままほっておくというようなことでは、それは片手落ちだ。われわれの望むところは、真の平和がベトナムに招来されることなのだ。もちろん、さようになれば、北爆もなくなるし、浸透もなくなります。同一の民族が相戦わなければならないという、こういうような悲惨な状態を、できるだけ早く解消してほしい、かように申しておるのであります。その点では、新しく選ばれた南ベトナムのチュー大統領は和平を呼びかけております。また、アメリカも、公正な平和が招来されるなら、恒久的な平和が招来されるなら、いつでも、どこにでも出かける、かように申しております。なぜ、この呼びかけに北が応じてくれないのか、私はまことに残念に思うのであります。(拍手)この意味におきまして、一日も早く平和が招来するように、またそういう意味で私どもがとるべき処置があるならば、いつでも喜んで仲介の労をとるということを申しておるのであります。これらの点がどうも一方的に北ベトナムだけを攻撃しておるようにとられておることは、まことに残念に思います。しかし、以上の私の所信で十分おわかりがいったことだと思います。
 次に、ドル防衛について特別な密約を取りつけた、あるいはドイツの話を引き合いに出されまして、日本もしたのではないか、こういうようなお尋ねであります。結論から申しますが、密約はございません。はっきり申しておきます。しかし、皆さまも御承知のように、ただいまドルと円、これは密接に結びついております。アメリカの国際収支の健全性、これはアメリカだけではなく、日本の利益でもあります。また日本の国際収支の健全性はアメリカの利益でもあります。このことを考えますならば、両国間におきまして、共通の問題として、密接にこれらの問題で討議するのは当然であります。そういう意味におきまして、円も強く、ドルも強くなければならない、これは私どもの国益であります。ただいまの国際経済情勢下におきまして、このくらいのことを考えないようでは、それは自国が利己的な行動だということになると思います。(拍手)
 最後に、私は勝間田君にお答えいたします。勝間田君は、歴代自民党内閣がとっておりますいわゆる日米安保体制、それこそは戦争への道だ、戦争へ歩む道だ、また、これを歩むがゆえに、沖縄はいつまでも返ってこないんだ、沖縄県民は、戦争に巻き込まれることを非常に心配しておる、こういうような御意見まで出ました。しかし、私は、沖縄が戦争に巻き込まれるということは、現実の問題としては、さようなことを考えるべきではないように思います。また、沖縄に対して報復的な攻撃が加えられるとしたならば、それこそはアメリカと全面衝突であります。さような国はまずないんだ、かように考えるのが国際常識ではないだろうかと思います。(拍手)
 私は、沖縄よりも、この安全保障条約のもとにおいて、日本がほんとうに平和のうちに経済再建に力を注ぎ、今日の隆盛を来たしたという、このことを十分認識していただきたいのであります。安全保障条約をつくりました際に、社会党の諸君は、これこそ戦争への道だと言って、まっこうから反対されました。今日もなお戦争への道だと言われる。しかし過去におきまして、日本は、戦争、そういう危険がございましたか、さようなことはなかったでしょう。(拍手)それどころか、日本は今日のような世界第三の工業国にまでなろうという、かような意味の繁栄すらしておるではありませんか。私は、平和のうちに安全が確保されたその際に、初めて産業界も力を持ち、国民の一人一人がほんとうの力を出して、その英知の結集が今日の繁栄を来たしたものだと思います。(拍手)私は、かような意味で、日米安全保障条約のこの体制は堅持すべきもの、かように考えておる次第であります。(拍手)
#12
○議長(石井光次郎君) 先刻の勝間田君の質疑に対し、答弁漏れがあるとのことであります。
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#13
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 答弁漏れがあるということですが、もう一度申し上げます。
 その点は、私が両三年内に返るということを、新聞記者会見で、した。そのほうはよく説明をいたしましたが、両三年内にめどがつくという確信を持っておるという、その確信はどこから出たか、こういうお尋ねのようでございますから、その点を明確にいたしておきます。
 この共同声明をよくごらんになったと思いますが、この中に、その第七項、その中間的なものは、私とジョンソン大統領とのやりとりの問題であります。それが述べてあります。そのやりとりではどう言っているかというと、「総理大臣は、さらに、両国政府がここ両三年内に双方の満足しうる返還の時期につき合意すべきであることを強調した。」これは合意ではありません、強調した。「大統領は、これら諸島の本土復帰に対する日本国民の要望は、十分理解しているところであると述べた。」これは理解を示した。そうして、その次が大事なのですが、ちょっと抜かしますが、以上「討議の結果、総理大臣と大統領は、日米両国政府が、沖縄の施政権を日本に返還するとの方針の下に、かつ、以上の討議を考慮しつつ、沖縄の地位について共同かつ継続的な検討を行なうことに合意した。」これは合意であります。そこで、私が両三年内にめどがつくという確信を得た、かように私は申しておるのであります。以上で、それより以上の説明はございません。
 第二の問題で、国民が一致してこの国を守るという、そのことは具体的に何かと、こういうお尋ねでありますが、私は、まず大事なことは、日本の憲法のもとにおきまして私どもは防衛力を持つこと、自己防衛することは、これは認められております。そこで、やはり何といっても自主防衛をするのだ、みずからの国がみずからの手で守るのだという、この自主防衛、この気概が必要でありますし、その気概に基づいての具体的な措置を講ずることが必要でございます。そこで、その具体的な措置として、だんだん憲法改正をするのではないかとか、徴兵制をしくのではないかとか、こういうようなお尋ねがありますから、さようなことはございません。第三次防も、ただいま改正するような考えはございません。これをはっきり申したのであります。何ら誤解はないと思います。(発言する者多し)静かに聞いてくださると、よくわかると思います。
 第三の問題は、私のことばがやや不適当であったかと思います。これは、私の東南アジア諸国歴訪の状態は、各紙にも詳しく出ておるから、ごらんになった皆さんもよく御承知だろう、こう言ったつもりでございますが、その際に、社会党ということを名ざしたというのでたいへん問題になったようであります。もしその点がありましたら、これは速記を訂正することはちっとも差しつかえありません。(拍手)
    ―――――――――――――
#14
○議長(石井光次郎君) 愛知揆一君。
  〔愛知揆一君登壇〕
#15
○愛知揆一君 私は、自由民主党を代表して、佐藤内閣総理大臣の所信表明と、水田大蔵大臣の演説につきまして、特に重要と思われる数点につきまして質問を行ないたいと思います。(拍手)
 佐藤総理大臣が先般来数回にわたって、隣邦大韓民国、中華民国をはじめ東南アジア、大洋州等に及ぶ十数カ国を歴訪され、最後に米国を訪問して、多大の成果をあげられ、とりわけジョンソン大統領との間の最高会談において、沖縄、小笠原問題につき、いわば体当たりの努力を傾けられましたことは、私は深甚な敬意を表するものであります。(拍手)
 沖縄、小笠原の返還問題につきまして、総理は所信表明の中でいろいろと説明されておりますが、私は、以下質問申し上げ、総理からさらに詳細に、そして率直に御答弁をお聞かせ願い、この議場を通じて、国民をあげて、この問題の今後の進め方についての心がまえを、建設的につくり上げるようにいたしたいと存じます。(拍手)
 戦後二十二年にわたって異民族の統治下に置かれた沖縄、小笠原の状態はまことに不自然であり、そのすみやかな返還を求めることは、これら同胞の悲願であり、日本本土全国民をあげての熱願でありまして、最近においてその願いは頂点に達しました。これは、戦後国力の充実に伴うわが国の民族的自覚の表現とも申すべきであって、佐藤総理が、「沖縄の返還なくして戦後は終わらない」と言われたことは、国民の胸を打つものでありました。それだけに、今回の訪米に全国民の期待がかかっておったことは申すまでもありません。と同時に、沖縄を含むわが国の独立と安全を確保し、これを維持することは、一国の存立の基礎条件であります。わが国は、戦後今日に至るまでの間、世界のどこかでいつも戦争が行なわれ、また戦争の恐怖に現実にさらされていたのに反して、わが国のみひとり平和であり得た。その最大の基盤が日米安保条約にあったことは何人も否定できない事実だと思いますが、それは、いかなる種類の攻撃に対してもわが国を防衛するというアメリカの異常な決意と約束によって、戦争勃発の危機を抑止する作用が十分に発揮されているからであり、その体制下において沖縄が占めてきた地位を思うとき、沖縄の返還と関連して、国の平和と安全を確保していかなければならないということを、真剣に考えなければならないと存ずるのであります。(拍手)
 沖縄の返還と安全保障、この二つを二律背反として取り上げる向きもありますが、私は、そのようには考えません。安全を確保しつつ沖縄の主権を取り戻す、この調和をはかることは本来きわめてむずかしいことではおりますけれども、その間の調整をはかって、二つの大きな目的を全うしなければならない、それこそは、日米両国の心からの相互信頼と理解によってのみ可能になし得るのであります。(拍手)そのゆえに、これこそは日米の最高会談でなければ解決を期待することはできなかったのであります。
 かくして、まず小笠原の返還が決定せられました。平和時における領土問題の解決、世界史にも例のない近来の快挙であります。(拍手)喜びにたえません。そして、沖縄については、施政権を返還するとの方針のもとに、その地位について、共同かつ継続的な検討を行なうことの合意が成立いたしたのであります。共同声明において、両三年内に返還の時期に合意ができるようにとの総理の強い願望が、大統領において十分理解され、かつ、考慮されることが約束されたのであります。佐藤総理は、その願望が合意に達し得るものとの確信を、本議場において、ただいまも披瀝せられておるのであります。かくして、快挙第二号のスタートは切られたのであります。
 私は、ここで、総理大臣にまず伺いたいのは、返還と安全の問題に関してであります。
 一部の論議において、沖縄の領土返還と防衛問題とは次元の違う問題であるとして、即時無条件返還を主張する向きがあります。すでに日米共同声明で基本線が確定した以上、このような論議に一顧も与える必要はないとは考えまするものの、従来から本土において一部に唱えられておる安保廃棄、無防備中立論を、沖縄返還の国民的願望の上に利用して、本土におけるこうした論争を沖縄問題を舞台として展開しようとし、あるいは、少なくとも結果においてこの論議を沖縄に結びつけることになる危険性を、私はここに指摘したいのであります。(拍手)
 日米安保条約は、すでに実績においてその効果を十分に発揮しておることは、国民の大多数が承認しておるところであり、また、今回の共同声明においても、明らかにその堅持が約束されております。いま沖縄の返還問題に際して、またしても、かつての安保論争を再び蒸し返すことは、せっかくの沖縄返還の時期をはるかかなたへ押しやる結果になり、返還に逆行する。そして、沖縄の平和と安全もそこなわれるおそれがあるということを、私は、賢明な沖縄の同胞の方々にも訴えたいのであります。(拍手)
 そもそも、私は、アメリカを敵とし、沖縄は対米闘争によって奪い返すべきものであるとか、アメリカの占有の根拠である平和条約第三条は空文であるというような発想や態度はとるべきでないとかねがね主張しておったのであります。また、社会党の質疑にありますがごとく、いわゆるすりかえ論、たとえば小笠原の返還で、沖縄問題は将来に引き延ばしたというようなことは、断じてあり得ないと考えておりまするし、これは共同声明に、施政権返還を前提として、本土との一体化を促進するため、那覇に日米琉諮問委員会を設置することになっておることを見ましても、なお一そう明らかであると信ずるのであります。
 こうしたすりかえ論、さらにまた、総理がアメリカに対し何らかの代償を支払ったとか、取引をしたとか、秘密協定があるはずだというようなことを、ことさらにせんさくする向きがありますが、この点も念のため、私はそのしからざることを、いま一度総理から明確にしておいていただきたいと存じます。(拍手)
 そうした観念論やあげ足とりではなく、実質的なことはほかにあります。思うに、私は、今回の会談で明らかになった最も重要な点は、アメリカ側の意向が、沖縄に対して領土的な野心のごときことは全く持っていないこと、日本及び沖縄を含む極東の安全保障に、従来にも増してかたい決意を有するが、沖縄の施政権保持をその絶対的要件とは考えていないこと、ただ、沖縄の地位が重要であるので、返還に際しては、将来とも安全の目的が十分に達成できるように、あるいはアメリカ側が軍事的行動等の自由を持ち、あるいは日本側の積極的協力によってその目的が達成され、あるいはその目的が阻害されないような方法、日米双方が安心できる、そして可能な方法を共同で検討しようということが基本であることが、浮き彫りにされているということがきわめて大切なことでございます。(拍手)この点は基本的な問題でございますから、特に総理の御意見を伺いたいと思いまするが、私はそうした考え方を前提にして、以下質問を続けたいと思います。
 私は、沖縄の返還問題は、まず当面、この共同声明にあらわれたことが着実に、このまますなおに、かつすみやかに、そして具体的に実現されることをひたすらにこいねがい、進めてまいりたいと思います。しこうして、返還の最終的な方式、たとえば基地問題の取り扱い方、核の問題等については、時間的な要素、科学技術の進歩、国際情勢の変化等、いろいろの要素を将来に考えながら対処すべきものであって、早計に断定的な考え方を固定化することは当を得ないと思うのでありますが、この点について総理はいかがお考えでありましょうか。(拍手)
 他面、国民全体が、この際、心を新たにして、祖国の安全と平和を確立するため、みずから、いかに対処すべきであるか、真剣に取り上げるべき時期はまさに来たと思うのでありまして、防衛問題をタブーとせずに、論議が展開されることが望ましいと思うのであります。(拍手)総理が、さきの記者会見において、国民が防衛についての考え方が固まってくれば、沖縄は三年ならずして返還されるであろうという趣旨のことを言われたのも、こうした気持ちがおありになったからではないかと想像されますが、このような点、すなわち、返還と安全に関する総理大臣の基本的な御見解をこの際明らかにしていただきたいと存ずる次第であります。
 次に、沖縄返還をめぐる具体的問題について伺いたいと思います。
 この点は、細部にわたるところは、総理から基本的なお考え方を伺うことでけっこうでございますが、まず沖縄の地位について、日米両国間で共同かつ継続的な検討を進めていくことになったことは、まことに喜ばしいことでありますが、このための特別の協議機関が設けられればさらに上々の首尾であったと思いますが、これが設けられなかった理由は何でありましょうか。また、設けられないのでありますれば、これらは外交チャンネルで行なうこととなると思いますが、その検討はいつから開始せられますか。また、その検討の内容は、いかなる事項になりましょうか。この返還の問題について、施政権の問題に関するあらゆる事項ということになりますると、返還の時期、わが国を含む極東の安全保障との関連のある事項、沖縄にある米軍施設区域の整理、行政、財政の本土との一本化、財政、経済の援助、司法、人権、裁判権の問題、布告、布令撤廃の問題、本土との人事交流、日本国籍の公務員の採用、渡航の自由化、通貨問題、そして主席公選国政参加等を含むものと思うのでありますが、私は、これら広範にわたる問題が順序よく解決されることを、心から望むものであります。
 次に、日米琉三者の諮問委員会は直ちに設けられるものと理解いたしますが、これは沖縄同胞の復帰にいわば復帰ショックを与えることなく、安心して復帰できるようにとのかねてのわれわれの願いが具現するもので、けっこうなことでございますが、その性格が共同声明によりますと、沖縄同胞の経済的及び社会的障壁を除去する勧告をアメリカの高等弁務官に対して行なう諮問機関となっておるのであります。これは日本側が沖縄の行政そのものの中に入り込んで、その施政に直接日本側の考え方を生かしていき得る仕組みになるのでありましょうか、念を押しておきたいと思うのであります。
 なお、この諮問委員会と従来の日米協議委員会との関係、あるいはわがほうの南連事務所の機能拡大との関連はいかがになるのでありましょうか。
 ここに、私が重大であると思いますのは、通貨の問題でございます。現に沖縄で使用せられておるドルが円に切りかえられますのには慎重な事前準備が必要でありますが、その実現は非常に望まれる大切な問題であります。どのように検討、措置されるのでありましょうか、お伺いをいたします。
 次に、小笠原についてであります。二十有余年にわたり帰島を待ちわびていた島民の喜びはいかばかりかと察するにつけ、小笠原の開発、復興についての具体的な施策について、すみやかに詳細を明らかにすべきであると存じます。
 ところで、総理はこの地域の防衛の責任を徐々に引き受けると述べておられますが、この地域とは小笠原諸島及びその領海のみをさすのか、あるいは小笠原周辺の太平洋水域をもさすのでありましょうか。また、これら領域の防衛について安保条約を前提としてどのような措置が考えられるのでありましょうか。さらにまたこれらに関連いたしまして、わが国の自主防衛体制の整備について積極的な御構想をお持ちならば、お聞かせいただきたいと存ずるのであります。
 さて、私は、今回の日米共同声明で取り上げられておる幾つかの重要問題について御所見を伺いたいと存じます。
 その第一は、ベトナム問題であります。そもそも、ベトナム問題については、そのよってきたった経緯にことさら目をおおい、アメリカが侵略者であるという一方的な断定のもとに、アメリカに対してだけ片務的に責任と義務を負わせようとする発想は、私のとらざるところであります。(拍手)また、現に戦闘行為が起こっておる以上、北爆の停止を求めるためには、相手方のこれに対応した措置が必要であって、戦争に不介入の態度をとりつつ、仲介者たらんとしてきたわが佐藤総理大臣としては、当然、かつ、堂々たる立場をここに明らかにしたものであると思いますが、これに対する総理の御所見をあらためて明確にしていただきたいと存じます。同時に、和平の探求につきましては、いかなる措置をとられつつありますか、また見通しはいかがでありますか、あわせてお尋ねをいたします。
 第二は、中共の問題であります。この問題についての今回の声明を一九五五年のそれと対比して見る場合、そこには大きな違いを見出すのであります。前回のそれは、総理と大統領はそれぞれの対中共観を披瀝し合って、いわば一方通行でありました。今回のそれは、中共が核兵器の開発を進めている事実に着目して、アジア諸国がこうした脅威に影響されないような環境をつくることが重要であるということに意見が一致しているのでありますが、同時に、アジアにおける持続的な平和確立の見地からすれば、中共が非妥協的態度を捨てて、国際社会において共存共栄をはかるに至るようにとの希望を両者が合意しておるのであります。いわゆる封じ込め、敵視政策、いわんや軍事協力の約束に巻き込まれたなどというのは、錯覚もはなはだしいと思います。(拍手)むしろ、今回の場合は、わが国の中共観にアメリカが同調したと私は理解したいのでありますが、総理の率直な御見解を承りたいのであります。(拍手)また、政経分離の原則に基づく中共との民間ベースの貿易についての総理の御方針を承りたいのであります。
 その三として、私が特に強調したいのは、今回の共同声明において、佐藤総理が、発展途上の国、後進地域の民衆の安定がアジアの平和のために一番大切であること、そのため特に東南アジア諸国に対する経済援助を強化する必要を説き、アメリカの一そうの協力を得ることで大統領の同意を取りつけていることであります。これは、佐藤総理の就任以来力説されている平和共存外交の精神の発露でありまして、高く評価さるべきことであります。これらの点について、新たに実施される援助計画があれば、そのおおよその見通しが承りたいのであります。
 共同声明は、核の拡散防止条約の早期締結にも触れております。わが国が核の拡散防止の構想そのものについてこれを支持することは当然でありますが、同時に、わが国が核を持たざる国である立場から、原子力の平和利用等については将来とも障害がないよう、公正なものにすることを主張すべき立場にありますが、その点も十分に認められる見通しができたものであろうと私は理解いたしております。
 ここに私は一言いたしたいのでありますが、実は私は、核については、日ごろかように思っております。いまのわが国の力をもってすれば、核武装はやろうと思えばやれる国である。いわゆる持とうと思えば持てる国、グッド・ハブ・カントリーズの中でも最も有力な国の一つにあげられているのであります。かりに核武装の開発をするということになれば、わが国の国際的発言力はきわめて強いものにもなりましょう。こうしたことは、知ってはおるけれども、核武装だけはやるまいねと、われとわが身に言い聞かしておる、誓っているというのが、わが国民の感情ではないであろうか、私はこういうふうに考えております。(拍手)総理のお考えも、このようなところにあるのではなかろうかと推測いたしますが、率直な御意見を伺いたいものであります。
 さて、領土の問題といえば、北方領土の問題は、ソ連側は全く理不尽な態度に終始しておるものでありまして、沖縄、小笠原問題とは性質の異なるものであります。政府としては、この際、さらに一そう強力な態度をもってその返還実現に当たるべきであると思いますが、総理の御決意のほどを承りたいと存じます。(拍手)
 さて、近時わが国の財政は、昭和三十年代と異なる幾つかの重要な基調の変化に直面しております。政府は、すでにこうした転換期に備えて、公債発行予定額の減額、公定歩合の引き上げ、公共事業費の繰り延べ等、適切な対応策を行なってまいりましたが、いまだに本年度国民総生産は実質一二%増と見通され、行き過ぎと思われるところへ、ポンド切り下げ、各国の金利引き上げ、その他の海外要因はますますきびしくなってまいったのであります。あえて財政硬直というまでもなく、総合的な転換策が望まれるのであります。
 私は、本来、公債発行を伴う財政政策は、景気調節がやりやすい政策のはずであり、特に公債というものは、民間と公共部門との資金源の適正な配分を可能とする潤滑油でもあるので、財政政策は、特に民間との協調を保って推進するところに、重点と妙味があると思うのであります。換言すれば、今日のような転換期には、財政の側からも、一般経済社会への要請があってしかるべきではないかと思うのであります。もしそれ、民間の投資需要が、今年度のごとく、六兆二千億の見通しをはるかにこえる七兆一千五百億にもなる場合、設備投資拡張はそのままで、財政のみがきびしい自己批判に悩むのも、いささか受け取れない気もするのでありますが、(拍手)この場合、経済、産業、金融あるいは所得等の各政策を総合し、また、ややもすれば行き過ぎがちな企業マインドとの相互協調体制が、一段とうまく総合的に整えられぬものでありましょうか。総理の御指導のもとに、全閣僚の格段の御努力をわずらわしたいところであります。私は、各界の権威者をもって、利益代表の立場を離れた最高の総合経済政策の審議の機構をつくるのも一案と思われますが、いかがでありましょうか。
 かくして、国際収支の改善と物価安定に全力を傾けることとし、輸出の増進に拍車をかけ、財政の膨張を押え、公債の発行を削減するとともに、設備投資の大幅な増加を避け、賃金と物価の上昇の悪循環を断ち切ることを政策の支柱とすべきものと思うのであります。しこうして、これら設備投資の抑制、消費、外貨、その他公共料金、地価、再販売価格制度をいかにするか等、個々の具体的な問題につきまして、もし御意見が熟しておれば承りたいのであります。
 そうして四十三年度の成長率はいかにするか、物価をどの程度に押えるか、国際収支をいかにするか、これらの点をお伺いいたしたいのでありますが、もう一つ重要な点は、財政硬直化の一大要因となっておる年度途中の給与引き上げや米価の決定について、根本的な改善をする御決意があるかどうか。四十三年度予算については、あらかじめ予測し得る要素をすべて織り込んで、補正を前提としないいわゆるのみ込み予算の編成をされる決意を固められたかどうかという点をお伺いできればしあわせであります。
 私は、過般のポンド切り下げを見ましても、その近因はいろいろあげられますが、そのよって来たるところは遠く、広く、かつ深い。企業家が技術革新や近代化を怠り、自由競争をとかく軽視して、輸出不振を激化し、一方、労働者は、生産性を上回る賃上げを要求して、社会福祉政策にたより過ぎ、勤労意欲を欠くうらみがあったことに思いをいたさなければならないと思います。(拍手)また、西ドイツの財政硬直化がその崩壊に至る過程を見ると、労働需給の逼迫から、超完全雇用となり、勤勉なドイツ人が働く意欲を減殺し、「金と財産とよい暮らし」という人生観が財政に重圧をかけ、物価騰貴、国際収支の悪化をもたらしたものであることを、私は他山の石といたしたいと思うのであります。(拍手)いまこそわが国においては、英国の例にならわぬためには、円価値の維持に努力し、西独の轍を踏まぬためには、財政の弾力性の回復につとめ、ころばぬ先のつえを用意する必要があると思うのであります。あえて政府の決意のほどをあらためて伺いたいのであります。
 私は、さらに、国際経済の変動と先行きに重大な関心を持たざるを得ないのであります。私は、かねがね、ポンドが切り下げられればドルも弱くなると見ておりましたが、はたして世界市場で金の相場は上昇いたしました。これに対して、いま金の価格を引き上げることは、各国の物価問題から見ても、通貨準備をふやす方法としても、世界的に賢明な策とは思われません。私は、国際通貨問題については、国際的な舞台において、ドル防衛と新準備資産の創設などを通じての国際通貨の安定に、わが国は積極的、全面的に協力することが必要であると思うのであります。一方、各国の金利引き上げ競争を抑止すること等について、日本はあらゆる努力を傾けるべきであると思うのでございます。
 これに関連し、今回の共同声明で、国際収支関係の小委員会を設置することが合意されました関係から、たまたま十二月一日、日本銀行と連邦準備銀行とのスワップ取りきめが拡大されたことを結びつけ、ドル追随政策などという向きがありますが、そもそもスワップとは、国際的に中央銀行が相互間に自国通貨を預け合って、短期な国際収支、通貨安定の対策とする、国際協力の近代的な手法でありまして、この場合は、ドルの支援にも役立つでありましょうが、わが国の外貨準備の補強策でもあり、また、短期資本の流出が生ずるおそれのある中でのわが国としても、適切な対策であったと思うのであります。伝えられる中期債券の買い入れの申し入れというようなことも、かくのごとく高い立場において、また、日本の自信を持った立場において、国際協力による経済の安定策にむしろこの小委員会を活用して、私は邁進すべきものであると思います。(拍手)
 以上、財政等の問題につきましては、大蔵大臣、企画庁長官からも御答弁をいただきたいと思います。
 さて、私は、以上総理大臣に対する沖縄問題をはじめとする総括的な質問、また財政問題に対する若干の質問をいたしたのでありますが、思えばわれわれは、いよいよ間近に明治百年を迎えようとしております。過ぎし百年を正しく評価し、その上に新しい前進を堂々と行なわなければならないと思います。(拍手)二十一世紀もわれわれを呼びかけております。幸いにして今日、わが国はきわめて平和のうちに国民総生産は千億ドル、世界第一流の地位を占むるに至りました。内外の情勢いよいよ多端なりとは言え、これまでに処してくることができたわが歴代自由民主党内閣の実績の上に誇りと自信を持って、さらには今回訪米において一大事績をなし遂げられた佐藤総理大臣が、いよいよ勇健にして風格のあるステーツマンとして邁進、国運の隆盛に力をいたされることを心から祈念いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#16
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 沖縄、小笠原の問題について、十分御理解をいただいておるようであります。一部におきまして、安保破棄、あるいは無防備中立論、あるいは即時無条件返還、かような声も国民の一部にはありましたが、私は、それらの点は国民の声として伺い、特に安保破棄あるいは無防備中立論、これは、私は採用しない。先ほどもはっきりお答えをいたしましたので、それをもって御了承をいただきたいと思います。
 ただ、御指摘になりましたように、この安全保障と、それから祖国返還、これがいかにも二律背反という、そういうように考えられやすい問題でありますが、欧州の例を見ましても、この二つのことは、同時にりっぱにかなえられる。いわゆる施政権は施政権、また軍事基地は軍事基地、そうして、その二つを併存できるんだ。また、それをやらなければならないんだ。そうして、そのことが、今回の沖縄復帰にも十分私どもが相手を説得し得るのである。そのためには、基礎的にアメリカ自身、日米間に相互理解、それがなければならない。相互理解、相互親善、相互信頼、それがありましてこそ、初めて、ただいま申すように、基地と返還、この二つのものを同時に実施することができるんだ、かように私も考えております。これは外国の、欧州の例なども参考にされれば当然のことでありますので、私は、そういう意味で、さらにこの具体的な問題と取り組むつもりであります。
 次に、平和条約第三条の問題でありますが、これについてはいろいろの御議論がございます。しかし、一部で言われておるような、対米闘争によって祖国の返還、その復帰を実現するんだ、こういうことは私のくみしないところでありまして、ただいまも申しましたように、どこまでも相互理解、相互信頼、そのもとにこの復帰を実現する、かような考え方でございます。
 小笠原の返還によって沖縄問題をすりかえたのではないかというようなお話がございますが、これはもちろん、さようなすりかえの考えはございません。これは私が申すまでもなく、沖縄、小笠原問題は一体のものであります。そうしてまず小笠原が返還された、このことは将来沖縄も返ってくる、そのことの証左だと、かように私は考えております。ただ、この小笠原が返ってきましたその際に、これに対するわが国の果たすべき役割り、これを十分にいたしたいと思います。したがいまして、沖縄の地位の問題等も、ただいま小笠原が返ってきた、それに対する対策等から、当然将来のことも協議すべきだ、かように思っておる次第であります。
 また、この問題について、何らかの代償だとか、秘密協定だとか、さようなものは、先ほど社会党にもお答えいたしましたように絶対にございません。私はうそは決して申しませんから、その点は御信頼をいただきたいと思います。
 次に、沖縄返還の最終的方式につきましてお答えいたしますが、基地の取り扱いだとか核の問題等につきましては、もちろん、御指摘になりましたように、時局的な要素や、科学技術の進歩や、国際情勢の変化等を考慮して対処すべきものでありまして、一そう慎重にこれらの問題と取り組んで結論を出すようにいたしたいと思います。
 次に、防衛についてのお尋ねがありましたが、先ほども社会党にお答えいたしましたように、何といっても自主防衛の気概を持ち、そうして具体的な対策を立てていく、こういうことが望ましいのであります。したがいまして、今後とも、御指摘になりましたように、防衛問題については、これはオープンに国民の前で堂々と議論すべき問題であろう、かように私も思います。
 次に、沖縄の地位に関する日米両国間の特別協議機関を設置しなかったことは、まことに残念だと言われますが、私は、本来これは外交チャンネルでやるべき仕事だと、かように考えております。もちろん、専門的な知識を必要とするような場合に、専門委員を任命することはあります。また、そういう人の参加を求めることはありますが、当然政府が、その外交チャンネルで堂々と進めるべきものだと、かように私は考えております。また、その協議する、検討すべき内容等、これは一体どうかということでありますが、これはたいへん高度の政治性を持つものでありますから、ただいまのように政府の外交チャンネルでやりますが、これこれはやらないというような、ただいままでの取りきめはございませんから、各般にわたりましてそれぞれ話をすることができる、かように私は思っております。
 次に、日米琉諮問委員会の問題でありますが、これはできるだけ早く設置するように、これを具体化してまいるつもりであります。これも御指摘のとおりであります。そうして、日米琉諮問委員会と、また南方事務所、あるいは協議委員会、この三つがありますが、それぞれがそれぞれの目的を持つのでありますので、その間に重複あるいは相反するようなことはない、かように思っております。(「内容を言え」と呼ぶ者あり)いま内容をどういうふうにするかというような不規則発言もございますが、ただいま申し上げますように、もちろん広範にわたるものであります。経済的、社会的福祉の増進はもちろんのことであります。その他一般の問題につきましても十分話し合いができる。これはできるだけ一体化を進めていき、同時にまた、日本に施政権が返ってきたときに、円滑にその施政権の返還が実現するように、便するように、ただいまの協議機関がそれぞれ働きをするつもりであります。
 次に、沖縄の通貨を円に切りかえる問題についてお触れになりました。これは現状におきましては時期尚早であります。もちろん慎重に取り扱う考えでございます。御協力を得たいと思います。
 小笠原の開発、復興につきましては、まず考えられますことは、小笠原復帰準備対策本部、そういうものを設けまして、そうして島の開発あるいは帰島等につきまして万全を期するつもりであります。これはすでに所信表明でもその態度をはっきり申し上げましたので、御協力のほどをお願いいたします。
 次に、小笠原の周辺の安全保障の問題でありますが、わが国が安全保障をわが国の責任において担当するものは、領土、領空、領海であります。これはもうはっきりいたしております。しかしながら、わが国の船舶であるとかあるいは国民の財産等について、これが領海外におきましても、それらのものを保護するのは政府の当然の責任であります。しかし、誤解のないようにお願いしたいのは、そのときでも、この防衛の対象が領海外ではないのであります。どこまでも日本国民、国土あるいは国の財産、かように御了承いただきたいと思います。
 次に、ベトナム問題についてお触れになりました。これも先ほど社会党の勝間田君に詳しくお答えをいたしましたので、そのお答えで御了承いただきたいと思います。省略させていただきます。ただ、私は、今日の置かれている立場が、積極的に軍事的に参加しておらない立場でありますので、戦争しておりませんので、平和への探求、またアジアにある国民がこのアジアの問題を片づける、こういう意味におきまして、わが国に対する期待は非常に大きいのであります。そういう意味で、わが国が果たすべき和平への方途あるいはその探求につきましては、今後とも最善を尽くしてまいるつもりであります。
 次に、対中共政策につきましては、これまた先ほどもお答えしたとおりでありますが、かねてから政経分離の方針のもとに、中国大陸とはただいま人的、物的の交流をいたしております。この方針は、今日も変わりはございません。米国も十分この点を了承しておりますし、先ほど御指摘になりましたように、むしろ米国内におきましても、非常に流動的な意見がだんだん盛り上がっておる、これが今日の状況でございます。
 次に、経済援助の問題についてお触れになりました。これは二国間協力の問題並びに地域協力の問題と二つがございます。同時に、また域外からの協力も必要でございますので、これら発展途上にある国々に対しましては、先進工業国がこれに援助の手を差し伸べる、これは資金的にも、あるいはまた技術的にも援助の手を差し伸べる、そうしてこれらの国々の独立達成に力をかすべきではないか、かように思います。
 次に、核の問題についてお触れになりました。核の問題については、すでに日本は、兵器としては核は持たない、しかし平和利用についてはこの上とも積極的でありたい、かように申しておるわけであります。これらの点では、共同声明にもこの点に触れております。また最近、ジョンソン大統領がシカゴにおいて演説をいたしましたその際にも、もう一定の条件のもとにおいてこの平和利用に協力するといいますか、便宜をはかる。かような基本的方針をきめております。そのためにも、一日も早く核拡散防止条約、これができることを心から望んでおるような次第であります。(拍手)
 また、共同声明で非常に大事なことであり、また先ほどの御質問にもありましたが、日本はどこまでも核武装はしない、そうして平和憲法の精神に徹して、二度と核戦争の惨禍を招くようなことがあってはならない、かような方針をはっきり堅持しておりますので、各党におきましても御支援のほどをお願いいたします。(拍手)
 北方領土の問題についてのお尋ねがありました。北方領土の問題は、沖縄、小笠原の問題とは、でき上がった原因が違っております。したがいまして、北方領土に対しましては、私どもは、従前にも増して一そう努力しなければならないと思います。しかし、ことしは、三木外務大臣とコスイギンとの間にいろいろこの問題について話し合い、中間的なものを考えてはどうだろうかというような話まで出ております。中間的とは一体何なのか、ただいま公使、大使等がいろいろ相手国と交渉しておる、かような状況でございますから、さらに御声援をお願いしておきます。
 最後に、経済問題について一言、大蔵大臣、経済企画庁長官の前にお答えしておきますが、経済の総需要、こういうものを抑制するためには、何と申しましても財政と民間設備投資、これが相互に協調しつつ、それぞれ節度を持って、そうして国の内外の経済環境に対処していくことが望ましいことはお説のとおりであります。私も、今日当面しております国際経済の環境はまことにきびしいものがありますので、こういう際であれますだけに、ただいまの財政と民間との協力、これを一そう緊密にいたしまして、この事態に対処してまいるつもりであります。それについて、具体的に各界の有識者を集めて特別な会議を開いたらどうかという、たいへん示唆に富んだ御提案がございました。これらについては十分検討して、そうしてただいまの景気調整に対処していく、かような態度で進みたいと思います。
 また、その他あるいは広範にわたってのお尋ねでございましたので、一部落としておるような点がありましたら、どうか委員会等でまたお尋ねのほどをお願いしておきます。(拍手)
  〔国務大臣水田三喜男君登壇〕
#17
○国務大臣(水田三喜男君) お答えいたします。
 まず最初に、国際通貨問題についての御質問でございましたが、御指摘のように、新しい準備資産を創設するということは、世界経済にとりまして、流動性解決のために喫緊の措置でございます。したがって、いまIMFにおいて協定の準備をいたしておりますので、おそらく明年の四月ごろには、国会の批准をお願いする段取りになろうかと存じております。
 それから、金利の問題でございますが、世界経済を縮小させないために、金利の引き上げ競争を避けたいということは、最近のあらゆる国際会議で強調されてきましたが、結果がこのようなことになったことは、非常に遺憾と存じます。しかし、各国ともさらにこの協力を継続するように、今後引き続いて努力するつもりでございます。
 それから、去る十二月一日にニューヨークの連銀を相手とするスワップ取りきめのワクか拡大されたことは御指摘のとおりでございますが、この措置は、ポンドの切り下げ後の緊張した状況にかんがみまして、世界全体の金融情勢を安定させるために、米国の連銀と各国の中央銀行との間でスワップのワクの拡大をはかったものでありまして、わが国にとりましては、ただいま国際収支が不調なときでございますし、また、ポンドの切り下げによって貿易の環境が非常にきびしくなってきた、これが予想されるときでもございますので、日本にとっては非常に歓迎すべき措置でございます。これは御意見のとおりでございます。
 その次は、予算についての御質問でございましたが、補正予算を前提としない予算を組むつもりはないかという御質問でございましたが、これからの日本経済を展望してみますと、従来のように、年次の途中で多額の自然増収があるというようなことは、とうてい見込まれることができません。したがって、多額の原資を要する補正要因をそのまま残して当初予算を組むということは、健全財政の見地から見て決して好ましいことではないと考えます。したがって、来年度の予算においては何らかの形でこれを改善する一歩を踏み出したい、こういう考えのもとにただいま財政制度審議会にも御相談をかけているところでございます。
 それに関連して、公債発行についてのお尋ねがございましたが、これはたびたび申し上げておりますように、十何%という公債の依存率は世界でただいま最高のものであって、異常のことでございますので、これはもう極力来年度の予算においては圧縮するという方向を堅持してまいりたい、こう考えておる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
#18
○国務大臣(宮澤喜一君) 来年度の経済見通しにつきまして、まだ具体的に申し上げることができない段階でございますが、ただいま大まかに考えられますことは、今年度始まりました設備投資が、そのかなり多くの部分が来年度も継続して行なわれるであろうということ、それから消費は引き続きおそらく堅調であろう、かなり高いであろうということ、したがって労働需給関係の逼迫も手伝いまして、物価は、消費者物価、卸売り物価とも強含みであろうというふうに想像されます。
 国際収支につきましては、御指摘のとおりの国際信用の不安定の問題がございますので、世界貿易にあまり大きな伸びを期待することはできないのではなかろうかという気がいたしますので、国際収支、総合収支は実はなかなか容易ではない、楽観できない問題を含んでおるように思っております。したがいまして、明年度は、経済の面から申しますと、相当多難の年であるということを覚悟してかからなければならないかと思います。
 これに対しまして、御指摘のように各般の関連の施策を総合的にもう一度検討をし、また実施をするということは、確かに喫緊のことだと思いますし、さしずめは明年度の予算編成にあたりまして、政府がこの事態に対処するような姿勢をとって範を示すということが大切なことではないか、かように考えております。(拍手)
     ――――◇―――――
#19
○竹内黎一君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明八日午後二時より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
#20
○議長(石井光次郎君) 竹内黎一君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#21
○議長(石井光次郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 本日は、これにて散会いたします。
   午後四時二十五分散会
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 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        法 務 大 臣 赤間 文三君
        外 務 大 臣 三木 武夫君
        大 蔵 大 臣 水田三喜男君
        文 部 大 臣 灘尾 弘吉君
        厚 生 大 臣 園田  直君
        農 林 大 臣 倉石 忠雄君
        通商産業大臣  椎名悦三郎君
        運 輸 大 臣 中曽根康弘君
        郵 政 大 臣 小林 武治君
        労 働 大 臣 小川 平二君
        建 設 大 臣 保利  茂君
        自 治 大 臣 赤澤 正道君
        国 務 大 臣 木村 武雄君
        国 務 大 臣 木村 俊夫君
        国 務 大 臣 田中 龍夫君
        国 務 大 臣 鍋島 直紹君
        国 務 大 臣 増田甲子七君
        国 務 大 臣 宮澤 喜一君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 高辻 正巳君
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ソース: 国立国会図書館
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