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1949/05/10 第5回国会 参議院 参議院会議録情報 第005回国会 法務委員会 第11号
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1949/05/10 第5回国会 参議院

参議院会議録情報 第005回国会 法務委員会 第11号

#1
第005回国会 法務委員会 第11号
昭和二十四年五月十日(火曜日)
   午前十時三十分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○刑法の一部を改正する法律案(内閣
 送付)
○刑事訴訟法の一部を改正する法律案
 (内閣送付)
○皇族の身分を離れた者及び皇族とな
 つた者の戸籍に関する法律の一部を
 改正する法律案(内閣提出)
○公証人法等の一部を改正する法律案
 (内閣提出)
 (右法律案に関し証人の証言あり)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(伊藤修君) では法務委員会をこれより開きます。刑法の一部を改正する法律案を議題に供します。先ず政府委員の本案に対する内容についての説明を聽きます。
#3
○政府委員(岡咲恕一君) 政府はこのたび犯罪者予防更生法律案を立案いたしまして、國会に提出いたし、衆議院で御審議を仰いでおる次第でございますが、このたびの刑法改正は主として犯罪者予防更生法案と関係のあるものでございます。即ち犯罪者予防更生法案によりますると、犯罪者の社会復帰を援護する趣旨を以ちまして、犯罪者に対しまして一定の條件の下に保護観察に付するという制度を認めるのでございますが、この保護観察に付せられる者の中に、執行猶予の言渡しを受けた者をも加えようとするのが、このたびの刑法改正の重大な眼目でございます。即ち從前は懲役又は禁錮の刑につきまして執行猶予を言渡す場合には、無條件に刑の執行を猶予いたしたのでございますが、このたび第二十五條の二という新らしい規定を設けまして、無條件に執行猶予を付する場合もありますけれども、その猶予者に対して、必要があると認める場合には、特に遵守すべき事項を定めまして、猶予期間内本人を保護観察に付することができるという規定を設けた次第でございます。即ち被告人によりましては無條件に執行猶予をいたしますことが、その人の更生に役立つという場合もありますけれども、社会的生活能力の十分でない者に対しましては、むしろ保護観察を加えまして、そうしてその予防更生を援護いたすことが適当である場合も十分考えられまするので、そのような犯罪者に対しましては保護観察に付することが適当であり、且つ必要である場合があるという趣旨におきまして、かかる規定を設けた次第でございます。
 で從いまして、二十六條の二項に執行猶予の取消の事由といたしまして、從前の取消事由の外に、更に保護観察に付せられたる者が遵守すべき事項を遵守しないで、且つその情状が甚だ重い場合には執行猶予の取消をなし得るということにいたした次第でございます。これがこの刑法改正の主要なる眼目でございます。次に第二十九條の一項の四号を改めたのでございまするが、これは現在は「仮出獄取締規則ニ違背シタルトキ」と規定いたしておりまするが、この仮出獄に関する事項はこの犯罪者予防更生法案が成立いたしますると、防犯保護中央委員会におきまして、主としてその事務を管理せられるようになりまするし、「仮出獄中遵守スヘキ事項」はこの防犯保護中央委員会において規則として制定されることになりまするので、「仮出獄中遵守スヘキ事項」を「遵守セサリシトキ」とかように規定を改ためた次第でございます。これがこの刑法の一部を改正する法律案の改正の骨子でございます。
 附則につきましては、この法律の施行は犯罪者予防更生法の施行の日から施行いたすことにいたしまして、尚その刑法第二十五條の二項の改正、即ち執行猶予者に対して保護観察に付する旨のこの言渡しをなし得るという規定の適用につきましては、この法律が施行前に罪を犯したものにつきましては適用いたさないで、言い換えれば法律の不遡及の原則を明らかにいたしまして、少くともこの刑法改正の法律施行後に罪を犯したものに対してのみ第二十五條の二の新らしい規定を適用いたすという規定を設けた次第でございます。簡單でございまするが、以上を以て改正の要点を御説明いたした次第でございます。
#4
○委員長(伊藤修君) では本案に対する質疑に入ります。速記を止めて。
   〔速記中止〕
#5
○委員長(伊藤修君) 速記を始めて。
#6
○齋武雄君 連続犯の一部について裁判があつたとき、その他の部分については処罰されないように規定する考えがあるかどうか、ちよつとお聽きいたします。
#7
○政府委員(岡咲恕一君) 連続犯の取扱方につきましては、非常に困難な問題がございまするが、現在といたしましては現行の規定で処理いたすつもりでおります。或いは將來甚だ不当な場合が起きますならば、或いは改正をいたすというふうなことになるかと考えまするが、憲法の規定との関係もございまするし、連続犯に関する規定を今直ちに改めるということは、政府といたしては考えておりません。ただ実際上の取扱といたしまして、例えば連続犯の一部につきまして起訴がありまして執行猶予の言渡しを受けた。ところが、その後更にその刑の言渡しを受けました犯罪と連続の関係にあるような別罪が発見されて、そうして捜査を受けるというふうな場合に、すでに言渡しを受けました犯罪と捜査中の犯罪とを從前の関係におきまして、連続犯と認められ、而し連続犯として処断される場合に、同樣執行猶予の言渡を受けるであろうといつたような場合には、檢察当局におきましては、後に発覚しました犯罪につきましては、不起訴処分にするといつたような便宜主義を活用いたしまして、犯罪者に不当に不利益な結果を與えないというふうな措置を講じておりますので、現行法で賄い得る範囲で便宜な取扱もできる次第でありますので、今直ちに刑法の改正を試みたいというふうには、政府といたしては考えておりません。
#8
○深川タマヱ君 観察の方法をお教え願いたいと思います。保護というのは、從來折角更生いたしつつあるものも、この保護観察の方法が惡いために周囲に事情が知れまして、非常に本人が不幸に陥つておる例が余りにも多過ぎますので、この保護観察は今後どういうふうになさるのですか。その点を一つ……
#9
○政府委員(岡咲恕一君) 犯罪者予防更生法案につきましては、いずれ主管の局長が参りまして詳細に御説明を申上げると存じますが、この保護観察制度で一番肝心なのは、只今深川委員も御指摘になりましたように、この運用に当る人の問題であろうかと考えるのであります。この法律案におきましては、保護観察をいたしますための中央の機関といたしまして、先程申しましたように、法務総裁の所轄の下に防犯保護中央委員会というものを設けまして、その中央委員会の地方支分部局といたしまして、それぞれ地方少年保護委員会或いは地方成人保護委員会というものを設けまして、第一線の保護観察の事務はこの地方委員会において行い、これを総括する機関として中央委員会が活動いたすという関係に置かれる次第でございます。そうしまして、この委員会の構成につきましては、この法案の規定にございますように、ただ單に從來の官吏のみによつて構成いたしませんで廣く國会議員、或いは民間の有識者、その外こういう事業に十分理解なり経驗をお持ちの方々を委員に加えまして、その委員会におきまして、この運用を取扱うということになりますので、非常に民主的に、而し法律の精神に副うような運用が期待されるであろう、かように考えております。
#10
○深川タマヱ君 ちよつと希望條件を申述べて置きますが、お調べになられることは当然必要と存じますけれども、その会社とか或いはその近所にお出でになつて、この附近に惡い事をしておるような人はないかというふうな調べ方はいいでしようけれども、特にその人間の個人の名前を指しておつしやるということは、非常に警戒を要すると思いますので、特にお願い申上げます。
#11
○松井道夫君 その保護観察に付することを判決裁判所がする。保護観察のことについては外の機関が犯罪者予防更生法でいたしますので、そういつた專門の機関にしないで、判決裁判所に保護観察に付することをなさしめるということは、どういう理由であるかということが第一。それから遵守すべき事項を定めとありますが、遵守すべき事項というものはどういう事項を予定しておられるかということをお尋ねします。
#12
○政府委員(岡咲恕一君) 便宜お尋の後の方からお答え申上げたいと存じます。この予防更生法案によりますると、第三十四條に保護観察の指導監督及び保護援助の措置に関する規定がございまするが、その第二項に保護観察に付せられている者はその義務として第二項の規定により又は原審裁判所から付せられた條件のほか左の條件を守らなければならないと規定いたしておりまして、第一号から第四号まで保護観察に付されている者が一般的に遵守すべき法定の條件を規定いたしておる次第でございます。で、この條件を見ますると、第一号は「一定の住居に居住し、正業に從事すること。」第二号は「善行を保持すること。」第三号は「犯罪性のある者又は素行不良の者と交際しないこと。」第四号は「住居を轉じ、又は長期の旅行をするときは、あらかじめ、保護観察を行う者の許可を求めること。」というふうに、法定條件は規定いたしておりますが、これは極めて抽象的でございまして、例えば一号は住居不定になつていけない、社会的に不面目な職業に從事してはいけないとか、或いは第二号にありますような善行を保持すること、これは社会人として善良な生活行状を保持して行くこと、或いは三号の不良の者と交つてはいけない、四号は住居を轉じ或いは長期の旅行をするときは予め保護観察者の許可を求める。四号は多少具体的でございますが、一号から三号までは極めて抽象的ないわゆる正しい生活をするようにするということに盡きるような條件でございまして、これではむしろ甚だ不完全な條件と申さなければならないと存じます。各犯罪者につきましてはその犯罪なり或いは犯罪を犯した環境、その外いろいろな條件がそれぞれ犯罪者によつて異るのでございまして、その犯罪者の更生を援護いたすためにはもつと具体的に各犯罪者につきまして條件を定めて、その條件を遵守せしむることによつて更生を助けるということができるのでございまするから、この裁判所が附加いたしまする條件はもつと具体的に、例えば住居を指定いたしますについても親戚に有力な伯父があればその伯父の所に同居すること、或いは正業に從事するという場合もただ單に正業に從事するというのでありませんで、本人が能力もあり且つ見込もあるような業務を選ばせまして、その職業に從事すること、或いは学生であれば必ず在学をしてまじめに学校の研究を続けるといつたような條件を具体的に定める、そうしてその具体的に定めた條件を本人が遵守することによつて、それは多少苦痛も伴いますし、努力も必要とすると思いますが、そういうことによつて本人の更生を完うせしめようということにいたした方が適当と考えまして、法定條件の外に特に裁判所が遵守すべき事項を定めるということにいたした次第でございます。それから保護観察の執行機関は、この案にもございまするように、それぞれのこの委員会でございまして、裁判所はこの保護観察の執行の大要については直接には関與いたさない建前になつておるのであります。
#13
○松井道夫君 私のお尋ねしたのは要するに執行でなくて、保護観察に付することを、裁判所が執行猶予する場合に併せてやる、要するにこの保護観察ということは一つのいわば行政的なことで、要するに司法の本質的な固有のものでないとも考えられますので、裁判所というものはできるだけそういつた固有の裁判事務に全力を集中するようにしたい、保護とか行刑とかいうものはおのおの又別個の機関がおのずからあるわけでありますから、その決定も今の保護なら保護の機関がおのおのあるわけですから、その保護の機関がこれを行うことというようにした方がはつきりいたすのじやないかという氣がいたすのであります。それで裁判所が保護観察に付するということを決定することにしたのはどういうわけか、外の機関がしないで、裁判所に執行させるという意味を質問申上げたのです。
#14
○政府委員(岡咲恕一君) 保護観察の事務が行政的な一種の保安的な処分であるということは、松井委員の仰せの通りでございますが、裁判所が執行猶予の言渡しをします場合に、無條件で刑の執行猶予の言渡しをいたすことは、これは毫も差支えございませんし、又保護観察の行われております実情を見まして、恐らくこれは非常な好成績を挙げるであろうと期待いたしておりまするが、その場合にその運用の実情によりまして十分被告人を更生せしむるに足りると考えます場合には、裁判所といたしましては実刑を言渡すような場合でも、むしろ実刑を科すよりも保護観察に付することによつて本人に却つて社会に復帰せしむる能力を養い得ると考えて保護観察に付するという條件を附加することによつて、刑の執行猶予の言渡しをするという場合を將來はあるであろうというふうに考える次第でございまするが、保護観察自体は成る程行政処分でございまするけれども、その行政処分を裁判所が十分有効と認めまして、そうして保護観察下に付するという一つの裁判をいたしますることは、必ずしも裁判官が本來の裁判の枠を離れまして、一種の行政的な処分までいたすとは言えないではないか。成る程保護観察自体は一つの行政処分でございまするけれども、その保護観察を利用いたしまして、犯罪者の更生を図るための言渡しをいたすことはこれは差支ないのではないか。例えば刑の執行にいたしましても、これは嚴密に考えますと、行刑はこれは裁判事項じやございませんで、むしろ言葉の示しますように、一つの行政行爲であろうと考えまするが、その刑の執行に付する、言い換えれば懲役を言渡し、或いは禁錮の刑を言渡すというのも実は犯罪者に対して一つの行政処分下に本人を置くことに外ならないのでございまして、それとこの保護観察に付することが必ずしも甚だしく逕庭のあること、異つた一つの措置を命ずるということにはならないだろう、かように考える次第であります。
#15
○松井道夫君 これは今の犯罪者予防更生法案の機会に質問すればよろしかつたのかも知れませんが、只今の御答弁はその通りでございましよう。併しながら裁判所に現在よりも余計に行政的な考慮というものをさせるということは、これは爭われないことじやないかと思うのであります。私のお尋ねしておるのは、要するに例えば裁判所で執行猶予の言渡しをした人を今の予防更生関係の機関に通知なら通知する、保護観察の執行をやるのはそういつた機関でありますが、それでそういつた機関において果して保護観察に付するのが適当であるかどうかということを成る程度調べまして、そういう機関において決定をするということであれば、今のような問題は何も起きないのでありまして、そういう工合にしないで、裁判所に保護観察の決定をさせるということにしたのはどういうわけか、裁判所の方はもう全然保護観察ということから除外してもよさそうなものだ。裁判所に保護観察の仕事を新たに與えるこれを決定する。これを他の機関にすつかり委讓してしますことができないものかという意味でお尋ねしたのであります。
#16
○政府委員(岡咲恕一君) 只今の松井委員のお尋ねは極めて重要な点に触れておるお尋ねのように拜承いたしたのであります。実はこの保護観察の制度と、裁判所におけるところの刑の言渡しをどういうふうな関係にいたすかということにつきましては、いろいろ考え方がございまして、松井委員の仰せも一つの考え方だと拜承いたした次第でございまするが、保護観察に付されるものの範囲につきましては、犯罪者予防更生法案の第三十三條にございまして、一号が少年法に定むるところの保護処分を受けた者というのがございますが、これは申すまでもなく家庭裁判所におきまして少年法で保護処分を受けた者。それから第二号は少年院から仮退院を許されている者。それから第三号は、税務所から仮出嶽を許されて仮出嶽中の者。この三つがございまして、それに今度加えまして第四号として、條件を附けて刑の執行を猶予されている者、これがこの刑法の一部改正と関連ある規定でございます。一号の方は家庭裁判所において一つの処分を受けている者。二号と三号はそれぞれ少年院なり刑務所から仮退院或いは仮出嶽の処分を受けている者でありまして、これは一種の恩典といたしましてその後の退院或いは刑の執行を許されまして、社会に復帰した者でございまするが、こういう者につきまして、委員会が保護観察するということが極めて至当であり、適当であろうかと考えます。從つてこの保護観察者が若し條件に違反して甚だ社会復帰の資格を得ることが困難であるというふうになれば、仮退院、仮出嶽の処分は取消しまして、少年院なり刑務所に帰つて矯正を受けるということも極めて適当なことかと考えます。ところが執行猶予を受けている者が当然中央委員会なり、或いは地方委員会におきまして保護観察に付されておるということになりますると、保護観察はもとよりその人の社会復帰を、更生援護するためですから、本人の利益のために行われるのではございまするけれども、保護観察を受けている者の側から申しますと、やはり一種の束縛であり、拘束でありまして、或る意味において心身の自由、少くとも精神的には或る一種の負担を受けることは何と言つても免れ得ないだろうと思うのです。而もそういう負担を受けることにつきまして、行政権を行使しているに過ぎない委員会が、その認定によつて行なつて行くということは少し行き過ぎではないか。少くともその認定は裁判所が認定いたすということの方が正しいのではないか。その裁判所の犯罪と犯罪者の環境に対する認定というものを尊重いたしまして、裁判所が保護観察の運用の実際とも睨み合されまして、この実情の下においてならばこの被告人を保護観察に付することが適当であるとこう考えた場合にのみ保護観察に付するのだ。言い換えればそういう場合においてのみ一種の拘束を與えるんだということになることの方が適当であろうと考えまして、特にこれは裁判所の宣告によつて保護観察に付するということにいたした次第でございます。又かようにいたしますると、條件の遵守につきましても、若しその保護観察に付せられておる者が條件を遵守いたしませんで、而もその情状が甚だ重いという場合にこれを取消すということが極めて至当になつて参りまして、又取消される虞れがあるということになりますと、保護観察を受けておる者は多少苦痛でありましても、裁判所が示しましたこの條件を努力をしながら遵守して行く。而もそういう努力の中に自然にその予防更生の実も備えて参るわけでございまするので、誠に目的に適うであろうとかように考えて、この度のようなこの改正の考え方を取つたわけでございます。
#17
○松井道夫君 これは具体的に裁判所側においてこの保護観察の、要する遵守すべき事項などを書いて、そして言渡すのですか。どういう工合に、方式になるのですか。
#18
○政府委員(岡咲恕一君) 保護観察の言渡しにつきましては、この刑事訴訟法の一部を改正する法律案に規定がございまするが、只今お尋ねのような遵守すべき事項は刑の執行猶予を言渡しまする判決の中で示してあるものであると考えております。
#19
○松井道夫君 実はこの遵守すべき事項ということは先程御説明の通りであつて、これはまあありがた迷惑の場合が多いわけなんであります。それでやつて見てもいろいろ実情に適しないということもございましようし、これを変更するということも当然考えられるのですが、そういつたことについての考慮があるかどうか。それからこの遵守すべき事項を裁判所、幾ら裁判所といいましても、これはまあおのずからその限度があるわけなのでございます。裁判所だからどんな事項だつて定められるんだということですと、ここに一つの不安というものがどうしても出て來ざるを得ないのであります。遵守すべき事項の一定の限度を定める基準といいますか、そういつたものについて考えておられますか。
#20
○政府委員(岡咲恕一君) この保護観察に付する旨の言渡しをいたしました後、その條件を変更したり、或いはこの保護観察の期間を短縮する、或いは保護観察に付するということの言渡しを取消すというふうな手続はこの刑法、或いは刑事訴從法の改正においては考えておりません。從いまして、一旦保護観察に付すると、條件を定めまして保護観察に付するという言渡しをいたしますならば、それはそのまま保護観察に付せられまして、変更の余地はないわけでございます。
 それから第二のお尋ねのこの遵守すべき事項というものの基準があるかどうかというお尋ねでございまするが、一般的な條項といたしましては、ここに先程申しましたように、第三十五條の第二号にその規定がございますので、一應裁判所が定めまする特別遵守事項は、この一般的な基準によつて具体的な條件をお選びになるだろう、かように考えております。尚この一般的な基準と申しましても、実は個々の犯罪によりまして千態万樣でございまして、法律の上に裁判所が定めるべき遵守事項の基準を設けるということは多少困難ではないかと思います。少くとも保護観察の方の精神なり目的というものからおのずと事項が限定されて参る次第でありますから、それは裁判所の賢明なる判断、裁量にお委せしてよろしいかと考えております。
#21
○松井道夫君 保護観察に付したこと自体を後に変更するということは別としましても、遵守すべき事項を変更しなければならんというのが適当だという場合が沢山出ると思いますが、遵守すべき事項を変更する手続きということはできるのだというふうにされては如何か……
#22
○政府委員(岡咲恕一君) 保護観察に付せられます期間は、結局執行猶予の期間に限るのでございまして、或いは裁判所は猶予期間よりも短かい期間を限定いたしまして保護観察に付するということもあろうかと考えます。從つて裁判所が定めます條件は、遵守事項は大体保護観察に付せられる期間を考えまして、先ず変更をしないでも差支えないような條件を定めるであろうかと考えますので、その遵守事項の期間中、更に又裁判所の認定によつて変更し得るという規定は設ける必要はないのではないかと考えております。
#23
○宮城タマヨ君 少年事件でございますが、十六歳以上の少年が刑事裁判所で執行猶予を受けましたり、それから刑務所に参りまして仮出嶽をいたしました場合には、地方少年保護委員の保護観察に付せられるのでございましようが、それが又二十三歳になりましたときには、これはどうしても少年法によつて保護することができないので、今度は結局は地方成人保護委員会の方に変るわけなんだろうと思いますが、そういう場合の保護観察の取消しはどういうことになるのですか。
#24
○政府委員(岡咲恕一君) 只今宮城委員のお尋ねにつきましては、少年矯正局長から詳細にお答えさせたいと存じます。保護観察の期間は第三十三條の三項にございますように「本人が二十歳に達するまで」でございまして、「但し、本人が二十歳に達するまでに二年に満たない場合には、その者の保護観察の期間は、二年とする。」でございますから、大体二十歳、それから二十歳の間際に保護観察に付せられるということになりますと、二十二歳近くまで保護観察に付せられるわけと考えますが、只今お尋ねの点は恐らく施行関係で、施行がこの法案によりますと今年の七月一日から施行されることになつておりますが、恐らく地方少年保護委員会と現行の保護機関との関係は適当に調節されておるだろうと考えますが、少年矯正局長から詳細お答えいたさせたいと思います。
#25
○委員長(伊藤修君) ちよつと速記を止めて。
   午前十一時十五分速記中止
   ―――――・―――――
   午前十一時四十九分速記開始
#26
○委員長(伊藤修君) 速記を始めて。これにて休憩いたします。
   午前十一時五十分休憩
   ―――――・―――――
   午後一時三十一分開会
#27
○委員長(伊藤修君) では午前に引き続き会議を開きます。
 午前中大野委員及び松井委員から質問された点について、速記のなかつた点について政府委員の答弁をお願いいたします。
#28
○政府委員(岡咲恕一君) 大野委員からお尋ねのありました点につきましてお答申上げます。大野委員のお尋ねは、執行猶予の言渡しをいたします際に、遵守すべき特別條件を定めて保護観察に付する旨の言渡しをする、その場合は、保護観察に付する旨の言渡しに対して控訴を申立てることができるかというお尋ねと拜承いたしたのでございまするが、この点につきましては、私は刑事訴訟法の三百八十一條の規定に基きまして、控訴はできると、かように解釈して差支ないと考えております。保護観察の本質という問題でございまするが、これは一つの行政的な措置でございまして、もとより司法の事務ではございませんけれども、無條件に執行猶予の言渡しをする場合に、保護観察に付するという條件の下に執行猶予を言渡す場合といたしましては、被告人の置かれます立場が甚だ異なるのでございまして、特に保護観察に付せられた場合に遵守すべき事項を遵守せず、且つその情状が重いときには執行猶予の取消しを受けて、刑の実刑を科せられることになるのでございまして、少くとも將來刑に処せられる虞がある状態の下において執行猶予を言渡されておるわけでございます。保護観察は、法の精神なり目的とするところは、犯罪者の更生を國家的な力によつてこれを援護するというのでございまして、もとより被告人の利益のために行われるところでございまするけれども、その保護観察によりまして、被告人は少くとも精神的には甚だしく束縛の状態に置かれる。又日々の生活の行動におきましても、遵守すべき事項は遵守しなければならない法律的な義務を負つておるわけでございまして、少くとも一つの新らしい拘束義務の下に置かれておるということは申して差支ないと思います。從いまして、無條件に執行猶予の言渡しを受けました場合に比較いたしまして、少くとも甚だ不利益な状態に置かれておるという点も認めなければならないかと考えます。保護観察に付するという言渡しそのものは、決してそれ自体刑の言渡しということは申されませんけれども、懲役又は禁錮の刑を言渡され、執行猶予の恩典を附加せられますと共に、保護観察に付するという新らしい條件を加えられますることは、その判決全体から見ますると、やはり一つの被告人に取つては不利益な言渡しの條項が附加せられたとかように考えて差支ないのではないかと考えます。從いまして、保護観察に付するという趣旨の言渡しを受けたことに対して、それを不当として控訴いたすことは、刑事訴訟法の三百八十一條の規定によりまして控訴いたすことを認めてよろしいかと考えます。
 それから保護観察に付するという條件の下に執行猶予を言渡すというこの新らしい制度が、如何ように運用せられるであろうかという問題でございまするが、從來の執行猶予の言渡しをいたします場合には、犯罪の情状その外被告人の置かれておる環境、將來の見通し、あらゆる状況を斟酌いたしまして、被告人の更生のためには刑務所に入れて矯正の手段を講ずるよりも、むしろ社会に復帰せしめて、その自発的な、自律的な生活活動によつて更生せしむることが適当であると認める場合に、無條件に執行猶予を言渡す次第でありますが、新らしい制度が採用いたされますと、從來の取扱ならば無條件に社会に復帰せしめることに甚だ危惧の念がある、先ず刑務所に入れてその國家的な矯正保護の施設を通して更生を図るのが適当であると考えられるような事案におきましても、保護観察という一つの國家的な保護の下に置かれることになれば、刑務所に收容することを止めて、むしろ保護観察の下に社会に復帰せしむるという取扱いをすることが願わしきものであり、且つ当該の被告人においては妥当であるという場合もあるのでありまして、刑務所に收容するという実刑を科する措置の代りに保護観察に付するという條件の下に、執行猶予を言渡されるという場合が甚だ多いであろう。むしろそういう場合にこの保護観察に付するという條件の下に執行猶予を言渡されるであろうということを十分予想し得るのでありまして、この点から申しますると、被告人に対して執行猶予を言渡すべき機会が從來よりも甚だ殖えるであろう。その意味において被告人にとりましては、甚だ利益な制度であるであろう、かように考えるのであります。
#29
○委員長(伊藤修君) 午前中の大野委員の質疑にかかる部分に対して、政府の答弁を速記録に明瞭にいたしました。
#30
○大野幸一君 この執行猶予のことでありまするが、執行猶予を取消される機会が近頃多くなるとか、或いは又取消される危險を非常に感じる被告人側から見れば、そういう機会が多くあるようであります。というのは連続犯で從來のように一事不再理の原則が適用になつて、從來連続犯とした者が併合罪とする、こういうことになつたために、これを檢察側から見ると非常に運用するといいますか、惡用される危險がありまして、事実そういうことがあります。先般私が御調査を願つた地方檢察廳を初めとし、各弁護士会におきましても、弁護士の間においても連続犯の廃止こそ非常に困つたものである、こういう声が多いのでありましで、この改正が叫ばれておる。改正といいましても、連続犯を存置するという復活が相当やかましく希望されているのであります。ところで連続犯を廃止したというのが何といいましても、当時の檢察状況、犯罪を檢挙するに対して勾留日数が少い。あとから大きな事犯が、犯罪事実が発覚した場合にどうにもならないという救済策から、我我はそれを容認してここで審議したのであります。この両者をどうしても調節しなければならん。両者と申しますのは、最初申上げました連続犯に性質を持つたものを併合罪とするための弊害と、それから犯罪があとから発覚した場合にそれを救済する、この二つを調節するために何とか方法を講じなければならんという我々は要望を受けておるのであります。そこで午前中政府委員の説明によりますると、これは弊害を認めておいでにならなにようであります。ということになると、甚だ輿論というか実際というものを看取されていない嫌いがあるのだろうと私は思う。どこにおいてもこの弊害は認められる。例えばこれは執行猶予と関係がないけれども、連続犯において同一被害者から日時を異にして数回詐取する。それは犯罪事実数罪ということになる。而もそれは包括にしてあるに拘らず、これを常習とみなす、こう言つて保釈の方には関係して來る。保釈では我々はこういうことを立法当時は余の氣を付けていなかつたのですが、常習として三年以上の罪に当る者は除外する、権利保釈から除外するというような一項がありましたために、連続犯であると殆んど常習と認める。こういう今実際のやり方をされて保釈にされない。我々が予想した保釈は原則というよりもむしろ保釈は例外になつておるような状態であります。これも連続犯を全然廃してしまつたという結論からこういう弊害が派生的に起きて來る。常習というのは前に犯された罪を斟酌する、或いは前科とか……。ところが起訴事実そのものから常習を見るということになれば、連続犯は常に常習犯と、こういうことにしてしまつた方が却つてよくはないか。凡そ犯罪はそう一個にあるのではなくて連続的の性質を自然と有しておるものである。それを数罪とし、その起訴事実が十数あるから明らかに常習犯と、こういうように弊害が起きております。然るに政府委員の御答弁によると、まだこれに対して何らの法的措置を講ずる必要を認めないというお話でありまするが、これは実際実務家として経驗しておる在野法曹側から言わせれば、政府のいわゆる立法に対する注意というものに対して私は遺憾の意を表する者であります。実際の実情をもう少し一つ御調査願いたいということであります。重ねて申しますが、我々が先程申しました二個の弊害、即ち檢事の起訴、控訴権の濫用を防ぐ一方において、犯罪から逃れて不当に被告が利益を得ようとする場合を調節せんとする方法に対して何らかの立法措置を講ずるという考えがあつて然るべきだと思うのですが、この両者が調節されればここに今までの弊害を除去することができると思いますが、その点に関して重ねて一つ御答弁を願いたい。
#31
○政府委員(岡咲恕一君) 連続犯の取扱いを改めまする立法の趣旨につきましては、只今大野委員から御懇篤な御説明のありました通りでありまして、大きな狙いは連続にかかる從來の犯罪が、從前の取扱いによりますると、再び起訴できないという点、若し刑事訴訟法によるといたしますれば再審に該当するということにして取扱いをいたしたのですが、さようにいたしますと、憲法の二重起訴という規定に牴触いたします関係上、連続の観念を捨てましてこれをすべて併合罪として処断するという立て方を取りまして、刑法を改正いたしたことは大野委員のおつしやる通りでございます。併しそれに伴いまして、又大野委員から御指摘のございましたように、未発覚であつた過去の犯罪事実につきまして又新しく起訴せられる。そういたしますと、折角執行猶予の恩典を受けておる被告人が、その執行猶予の取消しを受けるというふうな非常に氣の毒な、場合によりましては残酷な結果をも生ずることがございますので、実は從來の観念で参りますと、連続犯にかかつておる過去の新事犯を発見いたしました場合の取扱いにつきましては、大野委員の御趣意を十分酌みまして、檢察当局といたしまして、新らしく発覚いたしました事犯を調べまして、特にそれが重大で、起訴に値する場合を除くの他は、不起訴処分にいたすような趣旨の確しか通牒を出しておりまして、それによりまして成るべく犯罪者に対しまして、苛酷な取扱い、苛酷な結果をもたらすようなことのないように十分善処いたしておるつもりでございまするが、併し或いは大野委員の御指摘のように実際上の取扱いにおきましても、甚だ冷酷な取扱いになる。從いまして、連続犯に対する檢討を改めていたしまして、その点に関する改正ということの必要が生じました場合には、政府はもとよりその問題を取り上げまして、善処いたすつもりでございます。今朝申上げましたのは、現在政府において連続犯の改正を考えておるかというお尋ねでございましたので、今直ちにはその点に関する刑法改正は考えていないという意味でお答えいたした次第でございまして、実は遠からず法務総裁の下に法制審議会が設けられまして、その法制審議会の一部局といたしまして、刑法部会が設けられるであろうと予想いたしておるのでございますが、その刑法部会におきましては、刑法或いは刑罰法規全般に対しまして、徹底的な研究を遂げ、必要がありますならば、進んでその結果に基きまして、刑法の改正をいたしたいと、かように考えておりますので、その際に連続犯につきましては、もう一度檢討いたすことをお約束いたしてもよろしいと考えております。
#32
○松井道夫君 只今連続犯の件につきまして、問題が提起されておつたのでありまするが、私は只今問題になつておりまする事項につきましては、單に連続犯に限らないと思うのでございます。さような弊害は併合罪、昔のいわゆる連続犯でありませんところの併合罪においても見られるのであります。御承知の通り最近は些々たる日常茶飯事が刑罰法規に反するということが少なからずございますので、そういつたものを取り上げまして、起訴されることになりますると、先に執行猶予の言渡しがあつたのが取消されまして、非常な苦痛を國民が嘗めるということに相成るのであります。それでさような弊害を防ぐために、政府におかれては通牒を出しておられるとのことでありまするが、私はこの通牒の内容を承知いたしたいと思うのであります。私は刑法第二十六條この第一項に一号二号三号とありまするが、この二号をば二項へ持つて來るのがよろしいではないかと考えておるのであります。要するに「猶予、言渡前ニ犯シタル他ノ罪ニ付キ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタルトキ」、この場合は第二項によりまして、執行猶予の言渡しを取り消すことができるのだということにしまするならば、今の連続犯が併合罪になりました弊害の一半、只今私が申しました併合罪で二つの判決があるといつた場合の欠陷を防ぐことができるのじやないかと存ずるのであります。元來併合罪で一緒に審判されますときは、些細な事件が二つ、三つ一緒になつておりましても、結構執行猶予の言渡しを頂けるのであります。ところがたまたまいろいろな関係におきまして、二個の審判を受けなければならんということになりましたときには、初めの罪については、勿論執行猶予があるのでありまするが、これは大体執行猶予を付ける場合の慣例といたしまして、大体檢事の求刑をそのまま申渡す、それに執処猶予を付けるというようなことになつておりまして、執行猶予を付けないならば、もう少し安くしていいというような場合も、多々あるのであります。ところが審判が二つになりましたために、若し一個の審判の場合には、軽い刑を言渡す、乃至は執行猶予を言渡されるというときに比べて、たまたま二つになつたために非常に不利益な結果を生ずるということがあるのであります。ところで罰金の場合を考えて見ますると、第二項におきまして、猶予の期間内に更に罪を犯して、罰金に処せられたるときは執行猶予の取消しをなすことができる、ということになつております。ところが猶予の言渡し前に犯した他の罪について、罰金の刑に処せられたるときというときには、別に取消し事由になつておらない、これは要するに第二十六條の第一項第一号、第二号の場合には、事の性質上差違があるのだということを立法者がすでに認めているということに解釈できると思うのであります。故に第二十六條第一項の第二号を第二項へ持つて参りまして、その場合には執行猶予の言渡しは、必ず取消さなければならんというのではないので、取消すことができるのだということにすると、弊害の一半というものが解決できるのじやないかと考えておりまするが、その辺についての当局の御見解を承りたいと存じます。
#33
○政府委員(岡咲恕一君) 只今松井委員から御指摘になりました條項は、古くからあります規定でございまするが、執行猶予を受けながら、その後猶予の取消された人員はどういう関係になつているかということを檢討いたして見まするに、昭和十四年当時におきましては、執行猶予人員が総数六千八百六十件でございまするが、猶予が取消された者の数は五百九十八。昭和十五年におきましては、執行猶予の言渡しを受けました者は六千七百十七人でございまするが、その後猶予の取消しを受けました者が七百六人。昭和十六年では七千五百九十一人執行猶予の言渡しを受けまして、その後取消された者が六百三十七人。昭和十七年におきましては、七千九百四十五人執行猶予の言渡しを受けまして、取消された者が七百十七人というふうで、大体一割乃至一割末程度の執行猶予の取消しがあつたわけでございますが、最近に至りまして、取消しの数が甚しく減少いたしまして、昭和二十一年では執行猶予の言渡しを受けました者が三万五千九本五十人で、その後取消された者が九百八十四人でございます。それで昭和二十二年におきましては、執行猶予の言渡しを受けました者は四万六千百五十四人でございまして、取消しを受けました者は二千八百二十五人、かようにこの執行猶予の取消しの率が甚だ低くなつておる次第でございます。で松井委員の御意見は誠に御尤もと拜承いたしたのでございますが、この問題は多少研究の愼重を要するかと思いまするので、他日の立法、改正のときに取上げることが適当じやないかと考えております。
#34
○委員長(伊藤修君) 一番問題になるものは、結局あなたの言うのは、後に発覚した場合ではなくて、第一起訴当時に二つ以上発覚しているにも拘らず、その中の一つを取上げて起訴して、それが執行猶予になつたというので、次に起訴する。從つて第二のものは執行猶予にすべき事犯でも執行猶予にできない。要するに檢事の手心によつて判決が左右されるということになるから、その弊害を除去しようと、それが全國にこの頃頻繁として行われておるから。そういう考え方ですね。
#35
○政府委員(岡咲恕一君) 只今委員長の重ねてのお尋ねでございまするが、委員長の御指摘になりましたように、結果は絶対に阻止したいと考えまして、発覚いたしました犯罪全体を檢討いたしまして、苟くも執行猶予が相当であり、且つ新らしい起訴すべき事犯が、必ずしも重大でなく、特に起訴を必要としない場合には、不起訴処分の取扱いをすべき旨の取扱い上の訓令を出しておる次第でございまして、若し檢察当局において、甚だ不当の取扱い方がございました場合には、一つ御遠慮なく法務総裁にその旨をお示し願いまして、法務総裁としては十分御指摘のような檢察の濫用に亘らないように嚴重に措置いたさせしめたいと思つております。
#36
○委員長(伊藤修君) 曾て法務総裁にも申述べたのです。又立法当時、いわゆる刑法改正当時に、現在日本の檢事としてはさような非常識なことを行う者はあり得ない。尚重ねて訓令を出して置く。こういう御説であつたの拘らず、最近岐阜でも宮城でも、或いはその他の地方でも、それが当然行われておるのですね。それで尚その檢察官は、別にそれは違法行爲じやないから、それを禁ずる法律は別にないじやないか。差支ないのだと言つて、正しさを強調して見えるのですがね、だから結局政府のお考えと第一線の人とはお考えが違つておるのです。
#37
○政府委員(岡咲恕一君) そういう事実がございますれば、私からも法務総裁なり檢務長官に申し傳えるつもりでございます。尚若しそういう事実がしばしば起るようでございますれば、十分立法上の措置も講じなければならないと考えております。
#38
○委員長(伊藤修君) そうすると、その訓令に違反した檢察官はどうなるのですか、どういう処分を受けられるのですか。
#39
○政府委員(岡咲恕一君) その点につきましては、法務総裁なり或いは檢務長官から更めて明確にお答えをいたさせたいと考えます。
#40
○委員長(伊藤修君) それでは本法に対する質疑はこの程度にして、あとは後日に讓ることにしてよろしうございますか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  ―――――――――――――
#41
○委員長(伊藤修君) 次に刑事訴訟法の一部を改正する法律案を議題にいたします。本案につきましてその内容を御説明願います。
#42
○政府委員(岡咲恕一君) 刑事訴訟法の一部を改正すり法律案につきましては、提案理由の御説明によりまして大略申上げたわけでございまするが、更めて二、三の点について附加的に御説明申上げたいと存じます。
 この法律案の改正は、大体三点から成つておるのでございまして、第一点は、今年の一月一日から家庭裁判所が開設せられましたのに伴う必要な改正でございます。即ち刑事訴訟法が制定されました当時には、家庭裁判所はまだ構想されておりませんので、家庭裁判所設置前の裁判所の訴訟手続といたしまして規定いたしたのでございますが、家庭裁判所が発足いたしました以上、家庭裁判所の裁判官に対しまして、刑事訴訟法の規定を適用いたさなければなりませんので、それに應ずる所要の改正をいたした次第でございます。即ち家庭裁判所の裁判官が忌避せられた場合の裁判に関する規定、家庭裁判所における特別弁護人の選任に関する規定、事実の取調、勾引、勾留、押收、搜索、証人訊問などの嘱託につきまして、家庭裁判所の裁判官に対しても、これを求めることができるという旨の規定、勾引状又は勾留状の執行の指揮は、急速を要する場合には地方裁判所又は簡易裁判所の裁判官の外、家庭裁判所の裁判官もこれをなすことができる旨の規定、執行猶予の言渡しの取消しの請求は、地方裁判所又は簡易裁判所の外、家庭裁判所に対してもすることができる旨の規定、並びに家庭裁判所の第一審判決に対しては、控訴することができる旨の規定、それから更に家庭裁判所の裁判所のした裁判の取消し又は変更の請求に対する決定は合議体でしなければならない旨の規定など、かかる規定を整備いたしまして、関係條文の中に、家庭裁判所という字句を加えたわけでございます。
 第二点は、只今議題になつております刑法の一部を改正する法律案に関連する改正でありまして、執行猶予を言渡す場合に、遵守すべき事項を定めて、保護観察に付する旨の裁判の言渡しをいたうことになるわけでございますが、この裁判の言渡しの手続き並びに執行猶予の取消し手続につきまして、必要なる改正規定を刑法中に加えたわけでございます。即ち刑事訴訟法の三百三十三條の條文を改正いたしまして、保護観察に付する旨の裁判の言渡しは、執行猶予の言い渡しと同時に判決でこれをしなければならない。それから三百四十九條の改正は、從來刑の執行猶予を取消す場合の取消しの原因は、刑法第二十六條に規定してありますように、新たに刑の処せられた場合玉は前に他の罪につき刑に処せられたことが発覚した場合等、比較的明瞭な事柄でありましたので、裁判所を被告人及び檢事の意見を聞いて上、その決定を以て取消しの裁判をいたしたのでございまするが、この度提案いたしておりまする刑法の改正によりまして、新たに保護観察に付せられた者が保護観察の期間中遵守すべき事項を遵守しないで、而もその情状が重いときに、執行猶予を取消すことができるというふうにいたしましたので、果して保護観察期間中遵守事項の違反があつたどうか、而もその違反は執行猶予の恩典を取消すのに値いする程度の重大なるものであるかどうか、又その当該の猶予者に対して執行猶予の取消をなすことが、諸般の事情から判断して適当であるかどうか、即ちこの裁判は公開の法廷で事実の取調をしなければならないし、且つその場合には必ず被告人又は少くともその代理人の意見、弁解の機会を與えなければならない。但し被告人が逃亡していて、行方不明になつてしまつたときというふうな場合には、被告人の意見を聞きということが甚だ困難であり、或は不能であります関係上、そういう特段の場合には、出頭をいたしませんで、意見を聞くことができませんでも、これは止むを得ないという便法を認めたわけでございまするが、原則として被告人に十分に意見、弁解の機会を與えた上に、裁判をいたすということにいたしたのでございます。そうして被告人の立場をよくいたしますために、特に弁護人を選任することができる、そうしてこの裁判に対しましては、特に通常の抗告を提起することを認めまして、而もその抗告期間は十四日と定めたわけでございます。而も被告人が取消の裁判があつたことを知らないうちに裁判が確定してしまうということを防ぐ意味を以ちまして、この抗告の期間は被告人が刑の執行猶予の言渡しを取消す旨の決定があつたことを知つた時から起算いたすということにいたしまして、被告人に十分防禦の機会を與えるようにした次第でございます。で、三百五十條の改正は、三百四十九條の改正をいたしましたのに伴う條文の整理でございます。
 改正の第三点は、その他の改正でございまして、或いは從來行なつておりました解釈を明らかにし、或いは不備の点を補正し、或は不要の規定を削除したものでございます。この中で多少御留意を煩したいのは、第二百十八條の改正でございまして、即ち「身体の拘束を受けている被疑者の指紋若しくは足型を採取し、身長若しくは体重を測定し、又は写眞を撮影するには、被疑者を裸にしない限り、前項の令状によることを要しない。」といたしまして、これは從來身体の拘束を受けておりまする被疑者に対しましては、解釈上かかる措置を取り得ると考えておつたのでございまするが、これを法文上明確にいたしたわけでございます。身体の拘束を受けておらない被疑者に対するかかる措置は、刑事訴訟法の本則に鑑みまして身体の檢査令状によつて行うことはもとより申すまでもないことでございます。
 それから最後にこの第五十五條の第三項の改正でございますが、これは從來期間の末日が日曜日、一月一日、二日、四日、十二月二十九日、三十日、三十一日、又は一般の休日として指定せられた日になるときには、これを期間に算入しないということになつておるのでありまして、これを旧刑事訴訟法の規定を踏襲いたした規定でございまするが、先般國民の祝日に関する法律が実施せられまして、一月三日及び五日はいずれも國民の祝日にはなつておらないのでありまして、一月四日を特に休日並みに取扱うという旧來の規定は意味がなくなつたのでございます。併し一月三日は祝日には指定されておりませんが、一般官廳の休暇日に指定せられており、國民生活の現実においても正月三ケ日の一日として特別の意味を持つておりますので、この際一月三日を休日に準じて取扱うことといたしたのでございます。簡單でございますが改正の要点についての御説明をいたします。
#43
○委員長(伊藤修君) では本案に対する質疑に入ります。
#44
○岡部常君 第二百十八條の「指紋若しくは足型を採取し」となつておりますが、足型は何か現在の指紋法に対應するような新らしい方法を御採用になるのでありますか、その点御説明願います。
#45
○政府委員(岡咲恕一君) 実は足型のことは私よく存じませんので、至急取調べましてお答え申上げます。
#46
○委員長(伊藤修君) 現在日本で指紋については統一されたところのものがあるのですか。
#47
○政府委員(岡咲恕一君) 大体統一された組織を持つておるように承つております。一つは警察関係の指紋でございまして、これは全部まとめまして警視廳に保管いたしておると存じます。法務廳関係の指紋につきましては、これは行刑の面から非常に嚴重に整然と処理いたしまして矯正局の方に保管いたしておるのでございます。
#48
○委員長(伊藤修君) 第一線刑事は被疑者の身分を照会するのに大変困難しておりますが、起訴当時は分りませんが、判決当時に至るまでに入手できないために、いわゆる前科関係の考慮が判決に現れていない。從つて後に來ておるために改めてそれを請求するという不便を感じておるのですが、法務廳がそういうものを統一するようなお考えはないのですか。大体法務廳に照会すれば何人の前科関係、身分関係というものは明らかになるというようなものはないのですか。
#49
○政府委員(岡咲恕一君) 委員長の御意見のように苟くも檢察官の総元締である、法務関係の統轄者としての法務総裁の下に、そういう設備を完備いたしたいと考えます。
#50
○委員長(伊藤修君) 現在ではないのですか。
#51
○政府委員(岡咲恕一君) 非常に不完全であると思います。
#52
○大野幸一君 「三百四十九條第二項を削り、同條第一項の次に次の四項を加える」という條文ですが、「檢察官及び被告人又はその代理人の意見を聽いて決定をしなければならない。但し、被告人及びその代理人が正当な理由がなく出頭をしないときは、これらの者の意見を聽くことを要しない。」とこう書いてありますが、この「被告人及びその代理人」というのは二人が來なければいけないように解釈されるが、この「及び」の解釈を伺いたい。
#53
○政府委員(岡咲恕一君) これはなるべく被告人及び利益を代理する代理人に陳述の機会を與えるという趣旨でございまして、その双方とも正当の理由がないのに出頭しないときは意見を聽かないで裁判をいたすことができる。苟くも一方が出頭し得るにも拘わらず、その出頭を求めないで裁判するということのないようにいたした次第でございます。
#54
○大野幸一君 誰か一人でも出頭すれば意見を聞かなければならない、こういうことになりますか。
#55
○政府委員(岡咲恕一君) そうです。
#56
○大野幸一君 その次に、「第二項の抗告の提起期間は、十四日とする。但し、被告人が刑の執行猶予の言渡を取り消す旨の決定があつたことを知らなかつた場合には、抗告の提起期間は、被告人がこれを知つた時から起算する。」とありますが、「知つた時」とは知り得べき時か、具体的に被告人が知つた場合でしようか、どちらですか。これに関連して一体決定の告示方法はどういうふうにするのか、こういうことを伺いたい。
#57
○政府委員(岡咲恕一君) 第一のお尋ねでございまするが、これは現実に被告人がその決定のあつたことを知つたときから抗告の期間が起算さるべきなのであります。知り得べきときではありませんので現実に知つたときでございます。それから決定の告知方法は刑事訴訟法の規定によるのでございまして、出頭いたしております場合には言渡しによつて効力を生じますし、無出頭である場合には、送達いたすことによつて決定を告示いたすわけでございます。そうして今お尋ねがございましたように、住所に宛てて実は決定を送達した、ところが住居が轉居しているとか、或いはその外に出張をしておるといつたような関係で、その決定のあつたことを知らなかつた場合には、現実にそういう裁判があつたということを知つたときから抗告の期間を起算いたすわけでございます。
#58
○大野幸一君 それからその前に「被疑者を裸にしない限り」というのは、裸というのはどのぐらいけ言いますか。裸にも半裸と全裸とか言いまして、人によつては肌をぬがせる、胸の乳から上を出してもよい、こういう虞れがありますね、これはどういう解釈ですか。
#59
○政府委員(岡咲恕一君) これは社会の一般通念で決めるべきことと考えますが、肩をぬぐ、或いは胸から上を出すというような場合にはやはり裸の中に入れて差支えないと思います。
#60
○松井道夫君 この三百三十三條で「保護観察に付する旨の言渡」のやり方があるのですが、遵守すべき事項もやはり判決書に書いてやるという趣旨の言葉が先にありましたが、これでははつきりしておらんようですがその点は……
#61
○政府委員(岡咲恕一君) 「保護観察に付する旨の言渡」の中に必ずその遵守すべき事項を示すべきでございまするが、言渡の裁判の中に遵守すべき事項は必ず明示しなければならんと考えております。
#62
○深川タマヱ君 ちよつとよい機会でありまするから、家庭裁判所と申しますのは各縣只今一つづつぐらいになつているでしようか、それからその次は参考のために東京都におきまして、この頃家庭裁判所の裁判官はどういうメンバーになつているのですか、第三はこの頃特に家庭裁判所で取扱う事件が殖えておる、内容はどういうものになつているのか、第四番目はこの家庭裁判所の判決に対して、この頃一般にどういう批評をしておりますか、お分りになつておられますればお教え願います。
#63
○政府委員(岡咲恕一君) 只今深川委員のお尋ねの事項は主として裁判所の行政に関する事項のようでございますので、最高裁判所の小川課長が御出席でございますから、できればその方から御答弁をお願いいたしたいと思います。家庭裁判所の設置関係につきましては、今年の一月一日から開設いたされましたので、全國の各地方裁判所所在地にはそれぞれ家庭裁判所が開設いたされておるわけでございます。尤も所長は地方裁判所の所長が兼任しておられたようでございまするが、最近たしか六ケ所、東京、横浜、以下六ケ所の重要な都市におきましては、專任の家庭裁判所長が置かれたようでございます。尚家庭裁判所の裁判官につきましては、新らしい制度でありますだけ、人選におきましても非常に愼重に行われまして、家庭事件或いは少年事件について十分練達な人が裁判官として選ばれておるように承つております。
#64
○委員長(伊藤修君) 三、四について小川課長よりお答え願います。
#65
○説明員(小川善吉君) 最高裁判所の小川でございます。只今お尋ねの点でございますが、すでに御承知のことと思いますが、家庭裁判所におきましては、從來の家事審判所で取扱つておりました家庭に関する諸事件を主に扱つておるわけであります。そうしてその外に家事関係では調停事件を扱つております。或る程度民事訴訟は調停を経なければその民事の訴訟が起すことができない。いわゆる調停前置主義になつております関係上、それから少年審判の関係につきましては、十八歳未満の少年事件は一應全部家事審判所に委嘱されることになりまして、家事審判所において保護処分に対する適当と思われるものは保護処分に附しまして、起訴すべき、或いは起訴相当とすべきものはこれを檢察廳に送るというような手続になつておりますが。実は私所管の関係でございませんので、現実にそれらの事件がどういう事件が起きて來て、どういう内容を持つておるかというようなところまで詳しく承知いたしておりませんけれども、後刻取調べまして御報告申上げたいと思います。
 それから先程ちよつとお話のありました家庭裁判所の職員はどういう人が当つておるかということでございます。これは先程のお話の新任の家庭裁判所長と申しますのは、過日先月の十日頃でありましたか発令になりましたのは、家庭裁判所長十一人でありまして、各高等裁判所所在地に一人づつと、それから東京高等裁判所管内で横浜、大阪高等裁判所管内で京都、神戸という三ケ所が高等裁判所所在地以外で置かれまして、十一人の所長が各地に置かれたことになつております。現在東京におきましては、從前家事審判所の審判官をしておられた方、こういう方々が主に家庭裁判所の家事審判関係の仕事をしておられました。それから少年審判の係はやはり從來少年審判に多くタッチして來ておられる方であるとか、或いはその他練達な人を愼重に選考いたしまして、大体東京あたりでは專從し得るだけの人が配置済みになつておる状態であります。全國的につきましては、多く家庭裁判所の裁判官と、地方裁判所の裁判官とは目下のところまだ兼職状態でありますが、近く定員法の改正案が出ますので、極めて若干の專任の人が置けるようになると思いますが、まだ一般の行政官廳の定員法の改正案が出ませんので、その時に相前後して裁判所関係の定員法の関係も政府の方で御審議中と考えます。その余の点につきましては、取調べて申上げることにいたします。
#66
○委員長(伊藤修君) 第四点の家庭裁判所についての批評。
#67
○説明員(小川善吉君) 御批評の点は、どうも世間樣の御批評をむしろ私の方からお伺いしたいくらいでございます。
#68
○岡部常君 第三百四十九條第四項の抗告期間は十四日になつておりますが、これはやや長きに失するかのように感じますが、どうも外のそれと、三日、四日、五日というものに比しまして、ちよつと外に例がないように思いますが、その点……
#69
○政府委員(岡咲恕一君) 執行猶予の取消しの裁判は、その裁判を受けます者につきましては、非常に重大な事柄でありますので、抗告をいたしまして、それに対して、抗議をする機会を十分與えたいという趣旨で、通常の抗告期間よりは十分ゆとりのある期間を設けた次第であります。
#70
○岡部常君 但し……。但していうとおかしいが、後に但書もありますので、或いはそういう虞れがないのではないか。そういたしますといよいよ期間が十四日というのは、不必要ではないかという感じがあります。その点もう一度。
#71
○政府委員(岡咲恕一君) 但書の活用によりまして、大いに救われる場合もあるかと思いますが、旅行中この裁判の宣告があつたとか、或いは裁判の送達があつたという場合に、但書でというと、現実に知つた時の期日というものを一應証明いたさなければならないわけですが、一應十四日という期間がありまして、旅行から帰つて参りましても、尚ゆとりの期間がありますと、但書の適用を待ちませんで、直ちに抗告書を出し得るというふうな便宜もございますので、但書の規定で大いに保護せられるとは存じますけれども、但書の規定を持つまでもなく、成るべくそういう点に関する爭点を作りませんで、有効な抗告として取扱はしめますためには、抗告期間を長くして置くことが適当だと考えまして、十四日ぐらいに、多少不相当な長いような期間を設けたいと考えます。
#72
○委員長(伊藤修君) 小川課長にお願いいたしますが、あなたの方で印刷されたのですが、対應家庭裁判所処理別調というのがあるのですが、それは一月、二月の調べですが、できるならば一月から最近までのこういう処理別調書をお配り願いたい。これは後に審議する法案と関連がありますから。
 別に御質疑がなければ、この程度にして置きまして、そのあとの質疑は後日に讓りたいと思います。次に民法の一部を改正する法律案を議題に供します。本法案につきまして、内容の御説明を政府委員からお願いいたします。
#73
○政府委員(岡咲恕一君) 民法等の一部を改正する法律案の提案理由によりまして、すでに十分改正趣旨は御了承を得たと存じますが、重ねて簡單に御説明申上げます。
 この改正は、民法の改正と、民事訴訟法の改正とに分れておりますが、民法の改正の部分は、雇人の給料に対する先取特権の順位を変更いたしまして、共益費用の次に、第二順位として雇人の給料の先取特権を認めたのであります。それが改正の一つの点であります。
 それから第二番目は、三百九條に、雇人給料の先取特権の範囲の規定をいたしておりまして、その但書に、その金額は五十円とするという規定がございますが、それは如何にも現在の物價、賃金、貨幣價値から考えますと、無意味極まる規定でございまして、殆んど雇人の給料の先取特権を認めておりまする法律の実益を無視したことになりますので、この但書を削除いたした次第でございます。
 民事訴訟法の改正は、六百十八條の改正によりまして、この差押を受けざる俸給生活者の債権の範囲は大いに改められたわけでございますが、五百七十條には、別に改正の手を施さなかつたのでありまして、差押物としては、労務者の給料、その他の給與は無條件に差押えられておつたわけでございますが、差押禁止物として五百七十條の第一項第六号を拡張いたしまして、十分の保護を與えるようにした次第でございます。即ち現行法によりますと、五百七十條の第一項の第六号は、官吏、それから神職、僧侶及び公立私立の教育場教師にありては、第六百十八條に規定する職務上の收入又は恩給の差押を受けざる金額、但し差押より次期の俸給又は恩給の支拂までの日数に應じてこれを計算す、かようになつておるのでありまして、官吏とか、或いは神職、僧侶、学校の教師というものの俸給、恩給はこれで保護いたされるわけですが、一般雇人或いは勤労者の俸給というものは、何らの制限なしに差押えられるというのでは勤労者の生活の保護において甚だ欠くるところがありまするので、六百十八條の改正の線に副いまして差押を禁止されておる債権につきましては、たとえそれが債権でなしに現実に給與を受けた場合、その給與の金額についても亦差押をすることを許されないということにいたした次第でございます。
#74
○委員長(伊藤修君) ちよつと速記を止めて。
   〔速記中止〕
#75
○委員長(伊藤修君) 速記を始めて。それでは本法に対するところの質疑は後日にこれを讓ることにいたします。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  ―――――――――――――
#76
○委員長(伊藤修君) 次に皇族の身分を離れた者及び皇族となつた者の戸籍に関する法律の一部を改正する法律案を議題に供します。前回に引続きまして審議を継続いたします。
#77
○深川タマヱ君 皇族の身分を持つておいでになりますと特に何か職業上の制限でもあるのでございましようか。例えば商行爲ができないとかいうようなことがありますのでしようか。
#78
○政府委員(村上朝一君) そういう法律上の制限はないように承知いたしております。
#79
○委員長(伊藤修君) 外に御質疑ありませんですか。では質疑は終局することに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#80
○委員長(伊藤修君) 質疑は終局いたします。討論は省略いたしまして直ちに採決に入ることに御異議ありませんですか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#81
○委員長(伊藤修君) それではさように決定いたします。本案全部を問題に供します。本案全部に御賛成の方は御起立を願います。
   〔総員起立〕
#82
○委員長(伊藤修君) 全会一致原案通り可決すべきものと決定いたします。尚本会議における委員長の口頭報告の内容につきましてはあらかじめ御了承願つて置きます。御賛成の諸君の御署名をお願いいたします。
 多数意見者署名
    大野 幸一 大野木秀次郎
    宮城タマヨ  來馬 琢道
    松村眞一郎  鈴木 安孝
    松井 道夫  深川タマヱ
  ―――――――――――――
#83
○委員長(伊藤修君) 次に公証人法等の一部を改正する法律案を議題に供します。本案につきましては昨日御決定を願いました証人の証言をお願いすることにいたしますがその前に宣誓書に捺印をお願います。
   〔証人は宣誓書に捺印する〕
#84
○委員長(伊藤修君) 東京公証人会長松澤卓規君よりまず証言を願います。
#85
○証人(松澤卓規君) 私として意見を述べます。今度の公証人法等の一部を改正する法律案につきましては当局の方から根本的改正でなくして、一部の改正に止めるということに重点を置かれましたことでございます。一部の改正ということになりますと、公正証書の作成についての簡易化ということが私共主眼となつて來ると考えます。これまで初めて作成しますときには市区町村長が印鑑証明をするという工合に、印鑑証明書を、面識のない者は印鑑証明書を以て第一の眼目としていたのであります。ところが私共実際の経驗によりまして、同じ印鑑証明書である以上、市区町村長の與えた印鑑証明ではなくして、その外裁判所が與える場合もありましようし、又その他の官廳が印鑑証明をいたす場合もありましようし、同じ認証的職務を行なつておる官公吏が発しまする以上は市区町村長に限る必要はない。廣く一般にやる方が当事者が非常に便利であるということを主張いたしまして、官公署ということにされたのでございます。非常にこれは印鑑証明について廣くなりますから、一般に便になるものと考えます。又これまでは証人二人が要るとか、随分手続が面倒でありますが、或いは委任状に対しても印鑑証明ということになつていましたが、その役場にそういう資格とか印鑑がありましたならば、毎日々々取らなくてもよろしい。これまでは毎日取りまして、一々委任状の場合は取つて置いたのでありますが、一遍出して置きましたならば、或る期間ならば差支えないという建前でこういう工合に……
 それでは初めの方の、選考委員ということについて何します。この公証人審査会の選考を経ましたならば、当該監督公証人の職務に必要なる学識経驗を有する者を公証人に任命するという案が出ましたので、実は私共はこれは公証人の質を低下するのではないかという考えが起きましたものですから、そのことを承わりましたところが、現在、辺鄙なところには公証人になりてがない。又随分それがために地方の方では非常に困つておるところもある。そういうところにはこれだけの多年の経驗があつて、そうして相当な人物であつたならば、公証人をやらしても差支えないのではないか。やはりそれで廣く道を開くというのは、廣く人材を登用するゆえんであるから、どうしてもその審査会の方に重点を置いて、審査会に公証人を半分ぐらい審査会委員として、それを檢討したならば、公証人の方で果してそれだけの資格ありや否やということの審査もできるし、大した弊害はないのではないか。決してそれがために公証人の地位も落ちることはないではないかというお話がありましたので、まだこの審査会のことにつきまし前は、はつきりしたことを私は知りませんけれども、とにかくそのときには約半数は公証人を選ぶという言葉でありました。一つは余り公証人が希望していない。いわば田舎の方にやるのだ。そうしてこの大都市の方にはそういうことを任命しないようにするという言葉がありましたものですから、私共はその言葉を信用いたしまして、極力これは制限をするという言葉を尊重いたしまして、それならば止むを得ないだろう。ただ公証人の地位が非常に今まで判檢事、弁護士に相当な、要するに國家試驗、今は試驗がありませんが、とにかく從來は國家試驗の選考を経て皆それぞれの資格のある者をやつておつたに拘わらず、そういうものがないことになりまするから質の低下になるのじやないかということを非常に心配いたしますけれども、当局からそういうお話がありましたもんですから、それを私共は信じまして、まあそこまで資格ということについて重きを置かれるならば、まあそれで仕方ないだろうという工合に申上げて、この案に私共も賛成したわけなんであります。それだけであります。
#86
○委員長(伊藤修君) 別にお尋ねになることはありませんですか。
#87
○大野幸一君 現在公証人の收入といいますか、それは地位を保つに十分な收入があるようですか、どうですか。
#88
○松澤証人 只今のところでは、昨年十一月に増加になりましたものですから、只今のところでは相当まあ地位が保つて行けるようであります。
#89
○大野幸一君 この選考によつて資格が賦與されて、それはなるべく從來公証人のなかつた地へやられるということになつて、それを信用してというお話ですが、一旦地方へ行つても余り仕事がなければ、又東京へ來て仕事をする、こういうことになつて、余り都会で数において多くなり過ぎると、とかく営業主義に走つてちよつとルーズにもなり、お客本位だと、こういうことになる場合もあります。從つて初めから資格は前のように嚴重にして置いた方がいいかとも考えられることがあるのですが、率直に一つ御答弁類いたいと思います。
#90
○松澤証人 誠に只今の仰せのごとく私共もこの案を見ましたときには、非常に公証人の地位の低下ということを心配いたしまして、極力そのことを申上げたのであります。その表も拜見いたしましたが、現在丁度無医村のような状態で公証人の志望者がない。そういう所にだけは練達の者をやつても大した弊害がないだろうということであつたもんですから……。それと、それからもの一つは、大都市といいますか、とにかく相当の人口のある所にはその人を置かれないという言葉があつたものですから、まあそれを信用しまして、当局がそうまで言いますれば、まさか嘘も言えぬだろうと考えましたもんですから、それではそれに從いましようということ。一つは又今こういう世の中でありますから、必ずしも試驗に及ぶとか、今は司法科試驗はなくなりましたが、とにかくそういうものでなくても実力があつて、そうして頭のよい相当の者であつたならばやはり開くのも一つの、いわゆる新憲法に副う人材登用の途を開くのも一つの方法かも分らんというような考えも湧きましたものですから、それで地方に行くということと、それから都会の方面と開きがないということの言質を得てやつたわけであります。若しそれを、地方に一旦任命して都合にやられますと、勿論今述べましたのと反対の立場をとります。ですから公証人の審査会の員数を、前当局がお述べになつたごとく、少くとも半数以上は、公証人にやつて頂くということを、私共は條件じやありませんが、こういう希望を持つております。
#91
○委員長(伊藤修君) 他に御質疑はありませんか……。では次に日本弁護士会連合会長水野東太郎君の御証言をお願いいたします。主として本法の第十三條についてお述べ願いたいと思います。
#92
○証人(水野東太郎君) 私は日本弁護士会連合会の会長をいたしております水野東太郎であります。
 公証人法の十三條後段の問題でありまするが、その後段の問題につきましては公証人が、公証力のある証書を作り、認証力あり、且つそれに対しての執行力を與えられる、そういう非常に重大な役目を持つておられる職責であるということに鑑みまして、その資格をどうするかということは、非常に大きな問題であろうということは直ちに感じられることなのでありまして、そこでこの法案が提出されているということを聞きまして、去る五月六日に連合会で委員を選定いたしまして、第一回の委員会を開催いたしました。最初のことでもありまするので、直ちに結論を得るわけに参りません。その委員は九名から構成されているのでございますが、一應この改正案の経過について、最も直接の立場にあられる公証人会の会長の松沢さんにおいでを頂いて一應の意見を求める、そういうふうな方法をとつて、後に連合会の委員会の態度を決めることがよろしいということになりまして、五月九日に二回の委員会を開きまして、そうして松沢さんにおいでを頂いたのでありますが、私は差支えがあつて出られなかつたのであります。松沢さんの意見は、或いは只今お聞きになりましてお分りのことかとは考えまするが、一應松沢さんは、結論的には大体この法案は御了承のように承わつたのであります。併しながら我々弁護士といたしましては、この公証関係というものは非常に重要な面が多いのでありまして、判決によつての執行ということ、公正証書によつて執行する場合、それから公証力ということが我々の事務の取扱において非常に大きな役割を果しているというような、こういう関係から我々独自の立場、考え方からそれを研究して、どうするのがいいのかということを、やはり考えなければいけないではないかということから、他にもいろいろ実は氣付いたこともありますし、論議された点もあるのでありますが、主に十三條後段の問題につきましては、後段の方の書き方が非常に曖昧だ、「多年」という言葉を使われ、「法務」という言葉を使われている、更に「公証人の職務ニ必要ナル学識経驗ヲ有スル」、この三つの言葉の使い方なんでありますが、この三つの言葉の使い方というものが非常にはつきりしておるという解説をまだ承つておりませんが故に、或いはその点認識が足りないことから出る意見かも知れません。併しながらどうも「多年」という言葉と、「法務ニ携ハリ」という言葉と、「法務」という言葉が、どうも如何にも確然としておらないのであります。どうもこういう曖昧な言葉によつて、重要な資格を與える一つの範囲を決めるということには、この問題の取扱如何によつて大変な弊害を釀すのじやなかろうか、前段におきまするようなはつきりしたこういう表示と比べまして、如何にもこれは余りにはつきりしな過ぎる。この字の取扱い方がこういうようなことについては十分檢討して見る必要がある、或いは狙われるところには簡易裁判所の判事、檢事を除かれておりますことと、かような人方、或いは又更に実際裁判所に書記とか、或いは司法事務官といたしまして、そういう立場におられて例えば特任判事とか副檢事などになり得るというような実力のある人には、裁判官、檢察官、弁護人という方々に準じて公証人の資格を與えてもよいのじやないかというようにも思われるのでありますけれども、そういう人だけを対象にしたものとは考えられない。もつと廣い意味でのことを含んでおると、かように私は考えるのであります。そうなりますとこれは非常に廣汎なものを対象にして一應の資格を與えることになるのではないか、こういうことによつて公証人という重大な職責を與えるということは、公証事務の上から申しまして非常な弊害が発生するのじやないかということを非常に虞れるのであります。勿論この後段につきましては、公証人審査会の選考ということの條件が加わつておりまして、而も公証人審査会は一体どういう組織力を持つておるとか、そういうことについては少しも現われておりません。のみならずこの改正條文を見ますると、八十二條が削られております。最初の案を私拜見いたしましたところでは、八十二條では、公証人審査会に関し必要なる事項は政令を以てこれを定む、かように法律案は伺つておつたのでありますが、さて最終の案を見ますと、八十二條が削られておる。八十二條が削られますと、果してどういうことによつて公証人審査会というものをお考えなすつていらつしやるか、政令に委すのでなく、或いは法律でおやりになさるか、仮によし又政令にするにいたしましても、一体どういう考え方をお持ちなのかを私はまだ存じませんので、殊に何ともこの点について直ちに私共の結論的なことは申上げにくいかも知れません。併しながらこの公証人審査会の運用に一歩誤まりますれば、これは非常に重大な弊害を釀す段階を招來するのじやないか、こういうことを非常に虞れるのであります。少くとも公証人審査会というものはいろいろな面の人をとり上げられるお考えではないかと思います。例えばそういうような意味においては公証事務に非常に重大な関係を持ち、更に法務関係にも相当の経驗を持つておりまする我々弁護士などもお入れなさることと考えられますが、そのいずれにいたしましてもそういう選考機関があるからよいではないかということによつて、直ちにこの後段の條文を設けることに安心するということは少くとも我々はならんのでありまするが故に、この後段はさような重要な職責を持たれる公証人の資格を與えられる方法としては、非常に弊害と危險を予想される、こういう意味から私共の委員会では、結論といたしましてはこれは削除して頂きたい、こういう結論に達しましたのであります。十三條の後段についてはそういうような経過とそういう結論であります。
#93
○委員長(伊藤修君) 只今の御証言に対して御質疑はありませんか。別にありませんですか。では最高裁判所事務総局総務局長の内藤君に御証言を願います。
#94
○証人(内藤頼博君) 公証人法等の一部を改正する法律案につきまして、公証人の資格を定めております第十三條の規定について意見を申上げたいと存じます。
 どういう人が公証人に任ぜられるかという問題は、公証人制度の根本に触れる問題でございまするし、又國民の法律生活の実態に触れて來る問題で、極めて重要なことであると考えております。それにつきまして、今回の改正は私共遺憾ながら御賛成いたしかねるのであります。公証人の職務を考えますと、從來「判事、檢事又ハ弁護士タルノ資格ヲ有スル者」に限られていたのでありますが、その妥当性と申しますか、その妥当性は今日の、又今後の我が國の進むべき道を考えますときに、少しも変つたところはない、否、それ以上にその妥当性を増しておると考えられるのであります。殊に今度の改正案で「多年法務ニ携ハリ」……「法務」という観念が法制上甚だはつきりしていないように思うのであります。こういつた漠然とした範囲を、ここに熟さない字句で表現せられるということは、問題が問題でありますだけに、御賛成いたしかねるわけであります。新らしい憲法の下に日本の法制が漸次整備されまして、いわゆる民主法治國としての面目を整えつつあるときに、公証人制度の根本についてこういつた改正が加えられますことは、何か私共としては時代に逆行するような感じを受けるのであります。私共の考えといたしましては、要するに試驗及び実地修習を経て公証人に任ぜられるという建前と、それから試驗及び実地修習を要しない者としては、弁護士たる資格を有する者、こういうふうに規定されればそれで事足りるものであつて、又それが最も妥当なのであつて、十三條後段の規定は削除して然るべきものと考える次第でございます。以上を以て私の証言を終ります。
#95
○委員長(伊藤修君) 只今の御証言について御質疑はありますか。別に御質疑はありませんか。
#96
○松井道夫君 私は今の十三條の点の御意見は了承いたしたのであります。更にもう一点三人の方に確かめたいと思いますことは、二十八條関係であります。只今松沢さんからは非常に手続が簡易になつてよろしいという御意見であつたのでありますが、それはそれといたしまして、何と申しましても公正証書の公正証書たるゆえんは、その証書の確実性といいますか、信憑性といいますか、絶対間違いがないというところにこの制度の根本があると存ずるのであります。從前の二十八條によりますと、「公証人嘱託人ノ氏名ヲ知ラス又ハ之ト面識ナキトキハ其ノ本籍地若ハ寄留地ノ市区町村長ノ作成シタル印鑑証明書ヲ提出セシメ又ハ氏名ヲ知リ且面識アル証人二人」云々ということに規定せられておるのでありまするが、今回の改正によりますると、「官公署ノ作成シタル印鑑証明書ノ提出」、これも從前に較べますと、官公署の種類に別に制限がない、それから「其ノ他確実ナル方法ニ依リ」ということ、確実なる方法を別に制限も何もしておらないのであります。單に主観的にこれは確実なる方法だ、それによつて人違いがないことは明らかだと思つたということだけで、如何なる方法でも差支えないことになつておるのでありまするが、これによりまして公正証書の公正証書たる信用を傷つけ、或いは訴訟事件を從來より刺戟するというような虞れがないかどうかということをお三人の方にお尋ねしたいと思います。
#97
○松澤証人 この「確実ナル方法」は時間的にも考えられますけれども、とにかく一定の公証事務をやつております以上は、無闇に私が本人であるから間違いないとか、或いは名刺ぐらい出して、これは自分が本人であるとかいうようなことはこの「確実ナル方法」ということの中には入りませんから、では私共の考えはどういうことかといいますと、或いはその本人が身分証明書を持つておりますとか、或いはこの頃よく持つております定期乘車券を持つておりますとか、それには年齢も書いてありますし、本人と年齢を対照して見ましたならば、大概不確実でない、本人であるという認識はできるように私共多年の経驗上思うのであります。又これを逆に考えまして、よく印鑑証明書と判を持つて他人が出頭して來る場合があるのであります。それもやはり公証人の方は年齢の記載や何かの関係上、あなたは大正生れだから年が行かないから本人でないだろうというと、いや私は弟であるとか、或いは伜であるとかいうことで取扱わないこともありまするから、そういう工合に私共は細心の注意を以てやつておりますから、その証明書があつてそういうものがありましたならば、私はその「確実」ということに重点を置いております以上は、公正証書としてそう間違わないだろう、こういうふうに私は確信を持つておりまして、殊に一般にそれが便利だということを考えたわけであります。
#98
○水野証人 この問題について私実は研究するつもりでおりましたのですが……、一應十三條ということなので、そこに触れなかつたのですが、「其ノ他確実ナル方法」ということには非常に疑問があるのでして、全く松井さんが持たれるのと同じ疑問を私持つておつたのであります。今松澤さんの御説明を承つて非常に危險を感じたのでありますが、今おつしやられるような程度が「確実ナル方法」として人違いなきことを証明し得るものだという若しお考えなりとすれば、これは非常に私危險があると思う。少くとも官公署の作成した印鑑証明書に相應する程度の一つの確実な方法ということでなければならんと思う。この人違いがあるかないかということは、公証力を與えたり、認証力を與えるのに非常に重要な根本なのでありまして、殊にこの債務力を得るということの公正証書の力というものは、私共から申しますと非常に重要なものであります。そういう重要な証書を作る基本である人の問題について、ここに今までもすでに印鑑証明そのものを僞造して、そうして人が違つて作成されたということによる爭いというものが相当にあるのでありまして、印鑑証明書というようなこういう確実な方法によつてすら尚且つ誤りがある。そうした便宜な方法から出たのでありましようけれども、松澤さんの考えられておられるようなことが確実な方法として処理されるということになると、私は極めて簡單に他人のこれに代つての公正証書が出て來るということは容易に考えられると思う。おつしやられるような意味のことがあるとすれば危險千万なことだ、これは私は何とか改めて貰わなければならんと思う。ただ印鑑証明書の提出に相應する何か常識的に我々経驗上考えて見て、印鑑証明はないけれども、印鑑証明に相当する毎度の確実性が保障されるのだというような場合には、強いてこれをいけないと言わなくてもいいのじやないか、かように考えられるのであります。いわゆるこの「確実ナル方法」ということの具体的の取扱いをどうするかということの問題によつて、これは決めて行かなければならんとかように私は考えます。
#99
○内藤証人 ここにございます「確実ナル方法ニ依リ」という規定の運用が極めて重要なことであることは申すまでもないことと存じます。やはりこれは印鑑証明書の提出に準ずるというような運用で行くことが妥当であると考えるのであります。結局これは公証人の方において、その具体的な場合々々に判断されることになると思うのでありますが、この二十八條には第一項に「面識アルコトヲ要ス」という規定がございましてこの「面識アル」という規定の運用も実は具体的にはなかなかむずかしい点があると察せられるのであります。どういつた場合に「面識アル」ということが言えるかということはむずかしい問題でありまして、結局個々の場合にその公証人の方が判断をされる外はない、判断と運用に当られる外はないわけであります。こういう第一項の只今申上げた「面識アル」第二項の「確実ナル方法」というようなことは、結局公証人の方の何と申しますか、品性よろしきを得て公証制度というものがしつかり運用されることを期する外はないのではないか、先程申上げましたようにやはり公証人たり得る資格に十分の考慮を拂われて、運用のよろしきを得ることを期されることがよろしいのではないかというふうに考えておるのであります。
#100
○委員長(伊藤修君) 他にお尋ねはございませんか。
#101
○大野幸一君 私から松澤公証人会長に一つお尋ねしたいと思います。この資格問題について、地方へ行く人が少いからそれを救済するため、こういうことが目的だとするならば、地方に行く人が少いというのは、生活上地方が嫌いだと言うのか、收入がないから地方が嫌いだと言うのかどういう意味でしようか。
#102
○松澤証人 それは私共も公証人のことに関してはお答えをいたしかねますが、地方のことは私共よく分りませんけれども、恐らく一般から考えまして、これは私の推測ですが、やはり経済上の点からだろうと思います。
#103
○大野幸一君 執行吏ですか、收入が或る程度まで保障される、こういうことになれば喜んで行く人があるだろうと思うのですが、どうお考えになるかということと、むしろ地方へ一般公証人よりも選考公証人……、選考された公証人が行くと、何といつてもレベルが低下されることになる、それで收入がないというとそこに職務上の誘惑を受ける危險があるのじやなないかと思うのです。と申しますのは、公証人ではないが、私が曾て経驗したところによると、何でも地方では確定日附を取るのに、登記所の官吏から確定日附を出せる権限があつた。そこで登記所の近所の知つておる人だと、遺言証書の確定日附を五日や六日くらいは遡らして取つたということを私は経驗しておる。そういうような危險がありはしないかと考えるのです。この二つについてもう一度お尋ねしたいと思います。
#104
○松澤証人 それはどうもその人の問題ですから、なかなかお答かできませんけれども、多年の経驗があり、それからいずれ審査会で付議されます以上は、履歴とかいろいろな関係がありましようから、そういうものを見てやるわけですから、その点は考えようによると思います。
 又もう一つはそういう惡いことは、一般的に言いますと、必ずしも教育があり、頭が非常にいい人は惡いことをしない、頭のぼんやりして学識のない者が惡いことをするというのじやなくて、これはむしろ性質から來る問題でありまするから、必ずしも学力とか知識等によらんと思いますが、六日に來たものを一日に遡らしてやるということは、これは一つの犯罪行爲なのですから、犯罪まで犯してやるということはよくよくの人だと思いますので、まあ仮に特性としまして、特任の人でも恐らくそういうことはやらないのじやないか、私はそう考えます。
#105
○大野幸一君 そうするとこの法案によりましても、徳望のあるとか人格のあるとかいうようなことは、これには一つのも盛られていないようです。成る程学問があつても惡いことをする人はするのですけれども、由來公証人は判檢事、弁護士というような資格がなくちやなれないというので、一つのプライド、自分の地位、自分自身に対する引締め心がある、そういうことが惡いことを引止める、自分は判事であり、檢事であり弁護士である。その後身であるというようなことから、比較的地位が高かつたので、そこにやはり資格問題というものと惡いことをするかしないかということは関連があると思うのですが、公証人審査会の選考の標準というものに対して、この十三條では別に徳望というか、人格というようなもので表示されていないのですが。あなた方はいろいろ参考に聞かれる場合には、そういうことを当然含んでいると解釈されますか。
#106
○松澤証人 私共は、それも先程証人のお二方がお述べになりました通り、まだこの審査会というものが、果してどういうものになるかということは、これは私共はただ判檢事が公証人になり得ると承つただけで、実は私も内容はよく分りませんでしたけれども、恐らくそういうことになりますれば、それは無論いろいろな学識以外に、そういう、その何と言いますか、品行と言いますか、性行と言いますか、そういう点まで十分考えてやるべきものだろうと実は考えております。
#107
○大野幸一君 先程お尋ねいたしました公証人に対して補助があるということになれば行く人はありますね。そうとも限らないのですか。
#108
○松澤証人 それは決済上ですからあるかも知れませんけれども……
#109
○委員長(伊藤修君) 別に他に……。それでは各証人の方から有益な御資料を頂きまして有難うございました。それでは本案につきまして修正意見がありましたら至急御提出を願いたいと思います。
 尚本案についての正誤の点を政府委員からお述べになりますから……
#110
○政府委員(村上朝一君) お手許に配付してあります法律案に、誤植による脱漏がございまして正誤の手続を取つておりますので、その正誤の内容を申上げますが、四頁の十一行目、即ち三十六條の第六号の改正の中で、「又ハ印鑑若ハ署名ニ関スル證明書」の下に「ヲ提出セシメテ證書」という文字が拔けておりました。つまり「證明書ノ眞正」というのが、「證明書ヲ提出セシメテ證書ノ眞正ナルコトヲ證明セシメタルトキハ其ノ旨」となるのでございます。その誤植でございますので訂正いたします。
#111
○委員長(伊藤修君) では本日はこの程度にいたします。明日午前十時から委員会を開きます。
   午後三時五十三分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     伊藤  修君
   理事
           岡部  常君
           宮城タマヨ君
   委員
           大野 幸一君
           齋  武雄君
          大野木秀次郎君
           深川タマヱ君
           來馬 琢道君
           松井 道夫君
           松村眞一郎君
  政府委員
   法務政務次官  遠山 丙市君
   法務廳事務官
   (調査意見第一
   局長)     岡咲 恕一君
   法務廳事務官
   (民事局長)  村上 朝一君
  説明員
   法務廳事務官
   (最高裁判所事
   務総局総務局第
   一課長)    小川 善吉君
  証人
   東京公証人会長 松澤 卓規君
   法務廳事務官
   (最高裁判所事
   務総局総務局
   長)      内藤 頼博君
   日本弁護士連合
   会会長     水野東太郎君
ソース: 国立国会図書館
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