くにさくロゴ
1949/05/11 第5回国会 参議院 参議院会議録情報 第005回国会 法務委員会 第12号
姉妹サイト
 
1949/05/11 第5回国会 参議院

参議院会議録情報 第005回国会 法務委員会 第12号

#1
第005回国会 法務委員会 第12号
昭和二十四年五月十一日(水曜日)
   午前十一時二十八分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○出版法及び新聞用紙法を廃止する法
 律案(内閣送付)
○檢察廳法の一部を改正法律案(内閣
 送付)
○連合委員会開会の件
  ―――――――――――――
#2
○委員長(伊藤修君) これより法務委員会を開会いたします。出版法及び新聞紙法を廃止する法律案を議題に供します。先ず政府委員の本法案に対するところの内容説明を求めます。
#3
○説明員(横大路俊一君) 出版法及び新聞紙法を廃止する法律案の提案理由について説明申上げます。御承知の通り、終戰直後におきまして、言論及び出版の自由を抑圧していた一切の制限が取除かれたのであります。具体的に申しますれば、昭和二十年九月二十七日の連合國最高司令官の覚書によりまして、新聞紙法を初め、他の十二の法律及び勅令等の覚書に牴触するものが廃止されるように日本政府に命令されたのであります。よつて政府は右の中、新聞紙法を除きまして、他の十一の法令に対しては、それぞれ同年十月中に正式の廃止の手続をとつたのであります。ただ新聞紙法につきましては、その中の規定の全部が、必ずしも檢閲とか、或いは発賣図止処分、その他言論の自由を抑圧するものばかりでもありませんでしたので、当時内務省と司令部との間におきまして、新聞紙法及び出版法は、これに代るべき適当な法律が制定せられるまでその効力を停止して置き、その正式の廃止手続は暫くこれは見合わせることとしていたのであります。因みに申しますが、出版法は、前に申しました覚書の中には列挙せられていませんが、その内容からして、当然新聞紙法と同樣にこれを取扱うこととされたのであります。併しながら新聞紙法と出版法の改正の問題は、その後進展せず、そのうちに二十二年五月には出版に関する事務は文部省に引継がれ、又内務省は二十二年末を以て解体せらるるに至りました。尚一昨年刑法の一部分が改正されました際に、猥褻罪の罰の程度が高められましたし、又名譽毀損罪に関する規定の中に、從來の新聞紙法及び出版法の中の規定の一部分が採入れられましたし、更に処罰の程度も高められたりいたしましたので、今般政府としましては、新聞紙法及び出版法を正規の手続を経て廃止し、以て覚書の趣旨の通りに結末をつけることとした次第であります。法律案の法文自体は極めて簡單なものでありまして、説明の要もないかと存じますが、附則の中で予約出版法の一部を改正いたしていますので、この点について若干説明を申上げたいと存じます。元來この予約出版法は言論、或いは思想の自由を取締るための法律ではなくして、予約購読者であるところの一般國民を惡徳出版業者から行政的に保護することを目的とするものであります。從つてこの法律を廃止したり、或いはこれに対して実質的な改正を加えたりすることは、今後の研究問題であります。ただこの法律の中には出版法を引用している個所が若干ありますので、今回は出版法の廃止に伴つて当然加えられなくてはならない形式的な改正、即ち字句の削除とか、或いは書替えをこの法案に対して行なつただけであります。何とぞよろしく御審議頂きまして、速かに可決の運びに至りますようお願いいたします。
#4
○委員長(伊藤修君) これから質疑に入ります。
#5
○大野幸一君 この予約出版のことでありますが、現在の状態をお聞きしたいと思うのです。先程予約出版法のことについての立法の御趣旨はよく分りました。併しそれにも拘わらず予約によつて当時の價格と、出版した当時の價格とで大変出版業者において経済上の変動があつたことも影響しておることでしようが、とにかくその予約出版が随分多数に迷惑を掛けていますが、そのことについてどういうような今状況であるか、それをどういうふうにして取締つているかを一つお聞かせ願いたいと思います。
#6
○説明員(横大路俊一君) 只今申しました通り出版関係は二十二年の五月に文部省に全部移りましたために、或いは文部省の方の政府委員の方の御答弁が適当かと思いますが、私はこれを法務廰と文部省と共同で閣議請求いたしたりした関係もございますので、若干その間の事情を聞き及んでおりますから、私の聞き及んでおります程度でお答え申上げたいと存じます。予約出版法は只今御指摘の通りに貨幣價値が非常に変動いたしますときには、実際には殆んど行われておらないというのが実情でございます。それから或いはこの部分だけ速記を止めて頂きたいと思います。
#7
○委員長(伊藤修君) 速記を止めて……
   〔速記中止〕
#8
○委員長(伊藤修君) 速記を始めて……
#9
○説明員(横大路俊一君) 実際問題としまして予約出版の届出は地方の教育委員会を通じて文部省にやつておることを聞いておりますが、非常に件数も少いそうであります。そうして只今御指摘のように昔の安い値段で契約しても実際実行できないなら、その値段の改訂を教育委員会に求めて來ますので、委員会の方でもそれを認めてやつておるというようなことで、途中でその金額の変更を行政官廰の方に願い出て、そしてやつておるように聞いております。
#10
○松井道夫君 この新聞紙法、出版法に代るべき法律を作る意思があるかどうか。この点について伺いたい。
#11
○説明員(横大路俊一君) 提案理由の中でもちよつと触れました通りに、名譽毀損とか、或いは猥褻という問題につきましては、一昨年刑法が改正になりまして罰の程度も高められましたので、一應問題は解決しておると考えておるのであります。併し全般的に言論及び出版の自由を制限するということは司令部の指令にも正面から牴触いたしますので、容易にこれは実行でき難いことと思うのであります。先程申しました昭和二十年九月二十七日の覚書の第六項という所には「如何なる政府機関と雖も今後は新聞取締規則を発布してはならぬ。」ということを明瞭に書かれておるのであります。ただ先般お配りいたしました参考資料の中にも掲げてありますように、特別の必要に基いて特殊の出版の自由に関する制限をした法律は若干あるのであります。それは例えば少年法、これは昭和二十三年の法律でありますが、少年法の第六十一條には、家庭裁判所の審判に付された少年についてはその氏名とか、年齢、職業、住所等によつてその者がその事件の本人であることを推知することができるような記事又は写眞を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない、という規定があります。これは、年若い少年が犯罪を犯したためにそれが新聞に余りに詳しく出て、本人の一生涯の傷になるようなことをしては、本人が將來過るであろうというような心配から、こういう特別の法律に入れられておるわけであります。又陪審法、これは、只今その実施が停止されてはおりますが、陪審法の中に、陪審員が評議、これは裁判について相談をすることでありますが、陪審員が評議の顛末とか或いは銘々の意見とか或いはその他のことを漏らしたときには千円以下の罰金に処し、このことを新聞紙その他の出版物に掲載したときには編輯人、発行人その他を処罰するという規定がございます。それから更に証券取引法には、有價証券の相場を僞つて記載した文書を作製してはならない。或いは藥事法、藥のことを取締る法律には、虚僞又は誇大な記事を廣告したりしてはならない、或いは御承知の通り衆議院議員選挙法には、文書図画に関する制限をする、そうして選挙犯罪を煽動した場合には、新聞紙や雜誌の場合にあつては編輯人や、実際編輯を担当した者を処罰する。今若干の例を挙げましたが、こういうように特別の必要に基いて特別のことに限つて制限することは、これは止むを得ないのじやないかと思いますが、全面的に制限をするような規定を作ることは只今のところ、一部の方面においては必要を感じられておるようではありますが、非常にデリケートな問題でもありますし、具体的な案は持つておらないのであります。
#12
○松井道夫君 終戰後、今の新聞紙法、出版法が効力を停止されて以來、出版を停止したり、そういつた処置をやつた例があるかないか、あるとすればその法律上の根拠はどこにあるか、その点をお聞きしたいと思います。
#13
○説明員(横大路俊一君) 直接出版を制限した事例は私は聞いておりません。
#14
○松井道夫君 出版そのものを禁止した例がないにしても、出版物の配布を禁止したような例はありませんか、あつたとしたらその根拠を……
#15
○説明員(横大路俊一君) 或いは猥褻物などで裁判に掛けられまして、裁判所の命令によつて沒收されたりしたものはあるかと思いますが、行政処分によつてそういう配布を止めるということは、今のところ法律上の根拠もありませんのでできないと思います。
#16
○松井道夫君 新聞によりますと、石川達三氏の或る小説が問題になつて、確か配布を禁じられたのですか、発賣を禁止されたのか、それはよく記憶をいたしませんか、その他一、二新聞によつた例があるように伺つているのでありますが、その点は如何でしようか。
#17
○説明員(横大路俊一君) お話の通り、石川達三氏或い石坂洋次郎といつたような人の書いたものが新聞記事に出たことを私記憶いたしておりますが、その当時私共は直接そういう行政方面に関係しておらないものでありますから、警視廳に行つて特に確かめたわけでもありませんので、新聞記事以上に正確なことは存じませんが、若しそういうことをやつたとすれば、これは飽くまで官憲の力によつてやつたというよりは、或は多少警視廳の弁解になるようかも知れませんが、本屋の主人に任意にそういうものの発賣をしないようにと言つて勧告をして本屋の主人が任意にそれに應じたといつたような処理じやなかつたかと記憶しております。
#18
○松井道夫君 現在新聞を規律するのにプレスコードというものがあるということを聞いておるのでありまして、参考書類の中にもそれが伺われるのでありまするが、これは先程の御意見によりますると、日本の法律としてこういつたプレスコードのようなものを出すことは困難であるような御意見があつたのであります。併しながら進駐軍の司令部の方の指令でも、日本の法律の形にし、乃至はポツダム勅令の形にして國内法上の効力を持たせる、その意味で適用するということがこれは終戰後原則的な取扱であつたのではないかと存ぜられるのでありまするが、このプレスコードにあるようなものを國内法にすることはできないのかどうか、又このプレスコードが現在法律的にどういう効力があるものかどうか、又その実際の運用状況はどんなことになつておりますか、その辺をお尋ねしたいと思います。
#19
○説明員(横大路俊一君) この法案を作ります前に司令部のプレスコードの関係当局に意向を特に確めに参りましたですが、これを國内法として作ることは今のところ司令部当局は考えていないということをはつきり申しておりました。それでこのプレスコードは、只今のところこれは違反した場合には進駐軍が直接に自分の軍事裁判に掛けて処罰するということになつておりますが、私の聞きました範囲では、実際軍事裁判に掛けました件数は極めて少く、今まで確か二つだけだつたように聞いております。
#20
○委員長(伊藤修君) 松井さんの御質問に対してお答えの警視廳が任意にやつておるということは一体それでいいのですか。
#21
○説明員(横大路俊一君) じやないかと私は想像しただけの話で……
#22
○委員長(伊藤修君) 法律上の根拠はないのですね。
#23
○説明員(横大路俊一君) その点は法律上の根拠は今のところ何もございません。
#24
○委員長(伊藤修君) 先きに新聞記事が言論の自由に名を借つて行過ぎているような感もあると思いますが、これに対して何ら法的措置を講ずるというようなお考えは持つておりませんか。
#25
○説明員(横大路俊一君) 例えば新聞記事で人の名譽を毀損するようなことを書きました場合に、それを書かれた人の方で泣寢入りせずに積極的に新聞社に対して訂正を申込み、若し新聞社が應じない場合には進んで名譽毀損の訴えを起し、損害賠償を請求するというぐらいに強くやつて頂けば、新聞社の方も自然と自粛して來るのじやないかと、こう考えている次第でございます。又治安に関係のあるようなことも非常にデリケートな場合があるようでありますが、これは今のところ行政的な予防措置をやりますと、曾ての新聞紙法のあつた時代と同じような弊害が又生ずるという心配もありますから、やはりそういう場合には、事件を一度裁判所に持出しまして、そして裁判所の判決を受けた上で適当に処理するというふうにして行くのが本筋の考え方ではなかろうかと、こう考えております。
#26
○委員長(伊藤修君) 殊に帝銀事件のごとき搜査途上において或る特定の人を恰かも犯人のごとく推断の下にどんどん書かれるというような場合には、新刑法訴訟法の精神にも悖るような結果になりはしないかと思うのであります。予めその裁判官が新聞によつて予断を抱くというような虞れにもなるがそういう面に対する考慮はないのですか。又搜査の上においても非常に障碍を來すという二面において何かお考えを政府でお持ちになつておりませんか。
#27
○説明員(横大路俊一君) まだどうなるか分らない被疑者に対して、恰もそれが犯罪者であるかのごとく書きます場合には、それは本人から名譽毀損の訴を起すなりいたすことが適当かと思いますが、搜査のことについていろいろ書きますのは、これはむしろ檢察当局自身がそういうことを新聞社の人に感付かれるといつたような場合に、すでに自分に欠点と申しますか、弱点があるのではないかと思いますので、これは搜査当局の方で嚴に祕密を守つてやつて行けばよろしいのじやないか、こう考えます。
#28
○大野幸一君 時々著作物なんかについて訂正とか、或いは先程の訂正ということでなければこれが風俗に害ありとして檢察廳の調べを受けたり、警視廳の問題になつたり、大体小説の内容、著作物の内容では往々にして檢察廳側と民間のいわゆる著者の間、或いはこれを批判する大衆との間に大分見解の相違が生ずるのであつて、これも時勢によつて変化するのでありまして、今堂々と展覽会に掲げてある裸体油絵は昔であつたら当然風俗壞乱になると思う節もあると思うのであります。それもいつも問題になるために、檢査廳側、取調べる警視廳あたりがどうも時代遅れのように新聞に書かれることもあります。又そういう場合もあります。これを審査する方法として作者側代表委員或いは又読者側代表委員とか檢察廳側というふうに一つ合議制を常に拵えておいて、半面それを民主的に判定を下す、こういう方法を考慮されているかどうか、そういうことも一つの方法と思うが、どうお考えなさいますか。
#29
○説明員(横大路俊一君) これも或いは文部当局の方がお答えすべき問題かと思うのでありますが、私が法案を準備しますときに、文部判の人と連絡して知つている限りを申上げますと、昭和二十三年の十月に教育刷新委員会の総会がございまして、そのときにいわゆる低俗文化、低級な風俗の文化という意味でありますが、低俗文化を排除するという問題について決議をいたしておりますが、それの前書によりますと、こういう問題は國民大衆の健全なる常識に俟つべきものである、國民に対する教育の普及とか或いは教養の向上を図つて、國民自身がみずからこれを判断するようにして行くのが理想であるというような前書で始つておりまして、最後のところには文化の問題について限界と申しますか、その境い目の問題を判断し、又これを指導するために適当な機関を設け、そうして健全高尚な價値のあるものを奨励するようにという項目があるのでございますが、或いは文部省の方におきまして、今おつしやいましたような文化方面の人或いは民間人といつたような人を入れて、適当な藝術株面の指導をする機関を設けるように計画しておるのじやないかと思つております。
#30
○松井道夫君 先きの新聞紙法によりますというと、その第十七條の記事に錯誤のあつた場合に関係者から正誤の請求をすることができる、場合によつては正誤表、弁駁書の全部を掲載するということになつておつたのであります。これは終戰後においても新聞の記事がときに正確を失しまして、本人名譽その他利益を害するようなことが必ずしも少くなかつたと存んずるのでありますが、かかる規定は非常に適切なものでないかと思うのであります。勿論これでよろしいかどうか、これは疑問があると思いますが、又先程委員長からも触れられたのでありますが、搜査中の被疑事要、搜査中、事件につきましては、これは新刑事訴訟法においても、被疑者その他の者の名譽を害しないように注意しなければならんという趣旨の規定がございます。終戰後の状況を見ておりますると、この点が非常にルーズの言論界において取扱われているのではないかと存ずるのであります。その適否につきましては、いろいろ議論もございましようけれども、今の新聞紙法の第十九條のような規定は、或る意味において存在意義があるのではないかと思うのであります。又その二十條、これは議会等において公にせざる文書、これを新聞紙においてどう政扱うべきかといつたようなことが規定されておつて、これも或る程度の規制が必要であるかどうかが議論さるべきものであると存ずるのであります。それから第二十一條、これは十九條とも関連するのでありまするが、これも必ずしも等閑に附していい規定とも考えられない、それから第二十三條、これは安寧秩序を紊し、又は風俗を害する者、これは内務大臣がこれを差押えるというようなことになつておりますが、その方法の適否は、これは十分に研究しなければならないのでありまするが、大分國際情勢その他が緊迫して参りますと、國内関係におきましても経済状態その他がいろいろ緊迫して参りますると、安寧秩序を害すような言説記事も掲げられるようなことが起きて來るのじやないかと存ずるのであります。プレス・コードによりますと、勿論こういつた公安を害するような記事を載せてはいけないということになつているのでありまするが、それが專ら進駐軍の方の判断だけでよろしい、日本人は專実的にそういうことを判断してそれに対する対策を講ずることができないというようなことは、甚だおかしなことであつて、近時司令部におきましても日本の技術、日本人の自主性ということを非常にやかましく言つておられるのでありますが、只今挙げましたような條文に規定されているようなことゐこのようなことが政府当局として必要がないと考えておられるという趣旨に承つたのでありますが、俄かにそれだけの簡單なお答えでは、ちよつと納得行きかねるものがあると存ずるのであります。その点について伺いたいと思います。
#31
○説明員(横大路俊一君) 先程提案理由の中でも申述べました通りに、新聞紙法及び出版法の規定の全部が必ずしも惡かつたわけではありませんで、当時内務省と司令部との間の話合いによりましても、例えば新聞紙の正誤に関する規定とか、或いは名譽毀損の場合の実事証明に関する規定のようなものは、依然適用されて然るべきものと考えられておつたのであります。そういう関係もありましたので、差に指令では十二の法令を即時廃止しろということが言われまして、十一の法令は二十年の十月中に正規の手続を以て廃止したのでありますが、新聞紙法だけは今おつしやつたような正誤そり他の点もあつたものですから、特に司令部の方の了解を得て、代べるき法律を作るまではそのままにして置こうということになつておつたのであります。併しそのうちに内務省も潰れてしまいますし、司令部の当該係官も交替したりしたものでありますから、そのまま放任されておりまして、この新聞紙法が正式に廃止されるのか或いは代るべき法律ができるのかということが分らないままに今日に当つておるのであります。先程御指摘のありましたように、例えば搜査中の事件について、書いていいのか惡いのかという問題が去年の夏具体的に起つたのであります。そのときに初めて問題が司令部に提出されまして、司令部の方でも、新聞紙法は終戰直後の指令によつて廃止されておる筈だ、そういう問題が今起るのはおかしいじやないかと言つて調べて見ましたところが、これか形式的にはまだ法律として残つておるということが分つたものでありますから、法律の所管廳である内務省は潰れましたが、法律のことを取扱う法務廳で、じや廃止の手続をやれということの注意を受けて、廃止することに手続を進めて参つたわけであります。その際に私共も、今御指摘のありましたような関係條文を一條々々当りまして、こういう條文を残すかどうかということも司令部当局を細かく折衝したのでありますが、最後のところに至りますと、結局終戰直後の指令を実行してないのは日本政府の怠慢ではないか、だから代るべき法律を作るにしても、取敢えずこれを近い機会に議会で廃止だけはしろ、若しその中のいい規定を活かしたいならば、そういう法律は又別途研究して作ることには差支はないというような了解があつたものでありますから、これは取敢えず廃止するということだけにしまして、今後積極的にいい規定を盛つたものを作るというのは、場合によつては文部省主管で考えられるのじやないかと、こう存じております。
#32
○松井道夫君 そうすると、先程新らしい法律を作る意思はないというように私は簡單に了承したのでありまするが、そうすると法務廳としてそういつた法案を作る意思がないという意味だと思いますが、どうですか。
#33
○説明員(横大路俊一君) 先程申しました私の言葉は少し表現がまずかつたと思いますのでございますが、私は全然作る意思がないというほど強く申上げたつもりではありませんでしたが、ただ制限をするような法律を作りますと、一歩誤るとその運用が濫用せらるる虞れもあるから、十分研究して掛からねばならない問題だというようなつもりで申上げたのでございます。
#34
○岡部常君 松井委員の御質疑で大体趣旨は通つておりますが、尚私は具体的に少し問題を持つて行きましてお尋ねいたしたいと思います。風俗に関する問題は別といたしまして、それ以外の著しく反社会的の事件を取扱つたものというようなもの、これをもつと具体的に申しますれば、現行の日本國憲法を否定する、或いはその憲法下に成立しておりまするところの政府を倒すというようなことを主張するような記事でも出た場合、それをどういうふうにするかということにまで私は考えて行かなければならないと思うのであります。先程のこれは言葉尻を捉えるようになりますが、文部省の所管の方で法案を立てるといつたような程度のものならばよろしうございますが、今申しましたような、國家の基本を紊るというようなことも、これは考えて置かなければならないのであります。今町に氾濫しておりまする出版物の状況を見ますと、必ずしも風俗だけでなく、そこにやはり今申したような危險性が必ずしもなしと申せないのであります。そういうふうなものに対して具体的に、これは法務廳関係であろうと私は思いますが、法務廳は速かに何らかの方法を講ずべきものだと私は信ずるのでありますが、その点に対しまして、政府の考え方をお伺いいたしたいのであります。
#35
○説明員(横大路俊一君) 憲法で國民に保障しておりまするところの言論思想の自由の要求と、他面國家社会の治安維持のための最小限度の取締の要求というものは、非常に微妙な境界線を以て接触しておると言えるのであります。その間に明確な一本の線を引くということは現実に必要な感じられておりますけれども、実際面としてはなかなか困難な仕事であると思われるのであります。今御指摘になりましたような、例えば憲法で認められた政府を暴力で轉覆せよといつたようなことを煽動するというようなものがありました場合に、今の法律で考えられますのは、例えば刑法の騒擾に関する罪、或いは内乱に関する罪の規定では、実際問題としてそれを実行する人間が出て來ない限り、煽動者自身を処罰するということは困難と思われますし、又新聞とか、ビラにその程度のことを書いたくらいでは、從來の考では騒擾罪とか内乱罪に対する予備陰謀といつたような考え、概念の中に入れるのも少し無理かと思われるのであります。又軽犯罪法の中に、他人の家の屏に貼紙してはいけないとかいうような規定はありますが、それで引掛けるのも実際の目的を達することはできないと思います。で、この思想問題につきましては、行政官廳の方で事前に予防的な措置を講ずることが非常に困難でありますから、國家社会に有害なものと認められるかどうかというのは、これは裁判所の判断によつて初めて決するというのが新らしい憲法の精神であるとこう考えております。いずれにいたしましてもこの問題は相当困難であり、且つデリケートな問題でありますし、立法技術の方面と社会情勢の方面とを両方研究して善処いたしたいと、こう考えておる次第であります。
#36
○岡部常君 成る程言論の自由を尊重するということ、それを何らかの方法で取締ろうということは非常にむずかしいところがあるということはよく分ります。又今の御説明でも分りまするが、併しとにかく從前の法律が停止せられてからすでに三ケ年を経過しておる、その間にいろいろ事件も起つておろうと思いますし、又それに対應する政府としての策というものも必ずやあつたことと思うのであります。これらについてやはり政府としての本当のお考えを承わつて置きたい、廃止はするがこれから除々に考えるというような生温いことではこれは到底むずかしいと、これからの思想戰の激しかるべきときにおきまして欠くるところができるのではないかということを惧れるのであります。
#37
○大野幸一君 今政府委員の御答弁甚だ不満なんで、というのはあなたは岡部委員の質問に対して現在の政府を暴力に以て倒すという宣傳ビラを撤いたときに、それに対するあなたの考えをもう一度お伺いします。
#38
○説明員(横大路俊一君) 今のところでは私が申しましたのは行政官廳の手では取締方法がない、だからそれは裁判所に告発して裁判所の方で処罰するようになればこれは又別でありますという意味で申上げたのであります。
#39
○大野幸一君 ちよつと関連して、そこでそれを新聞紙に発表したときにただ行政官廳とするのでなくて、そういう内容を持つた新聞紙に、新聞掲載した場合に新聞紙法によつて、これを抑制する方法の考えがあるかどうかというのが私は岡部委員の質問の要旨だろうと思うのであります。こういう意味においてただそれは行政官廳だとおつしやるけれども、法務廳側から本日出席されておるのでありましようから、法務廳として立法対策としてこういう場合を予想されやしないか、こういう場合を予定して何らかの方策はないかという質問だと思いますから、この点を御答弁願いたい、如何に言論の自由と雖も現行新憲法による民主國家を破壞せんとするところの言論に対しては、これは公共の福祉を侵すものであるから取締らなければならんと思うのだが、故に私はもう一度お伺いしたい。
#40
○岡部常君 それに補足して私の伺いたいことも実はその点でありますが、裁判所が最後に憲法問題を解釈する、或いは法律問題を解釈する、これは尤もなことでありますが、その前に如何なる法的措置が講ぜられるか、立法措置を考えておるかということに帰著するわけであります。どうぞその点……
#41
○説明員(横大路俊一君) 実は只今のことろ先程申上げました通りプレスコードに相当するような規定を設けるかどうかということを研究する意向を私共も持つておつたのでありますが、それは占領軍の政策として面白くない、プレスコードは飽くまでこれは占領軍が、直接やるのだ、それと同じような内容のものを日本の國内法として認めることは面白くないとはつきり言われております関係上、今のところ手が出ないということになつております。御指摘のように一方において言論思想の自由があつても、又一方において國家社会というものが健全に発達して行くためには、その治安を維持するための最小限度の必要というものはやはり認められますために、今のままでは多少不安があるということは感ぜられておるのでありますが、この両方の要求の間にどこらあたりで一つの線を画すかということが非常にむずかしい問題でありますし、又仮にそういうものを作りましても運用の点で非常にデリケートなところがありまして、一歩過りますと往年の治安維持法或いは新聞紙法と同じような結果を惹き起す虞れもありますので、今のところは社会情勢の進展というものを見た上で判断したらどうであろうか、ただこの法律は先程申しましたように、終戰直後の指令に違反して三年半をほつたらかしておるのは怪しからんじやないかという司令部から指摘された点もありましたので、取敢えずこれは今回廃止させて頂いて、そうしてあとは情勢を見た上で考えさして頂きたいというつもりにいたしております。
#42
○岡部常君 先程ちよつと承つたと思いますが、プレスコードを実際に適用せられた件数というものは何件ございますか。
#43
○説明員(横大路俊一君) 私が聞いております限りは二つありますが、一つは去年の夏頃であつたと思いますが、日刊スポーツでしたか何か、そういつたような名前の新聞でありました。それから一つは極く最近でありますが、大阪で共産党系の人が、ソヴィエットからの引揚げ問題について司令部を誹謗した、内容は共産党は日本人の引揚げを大いにやつておるのだけれども司令部が乘り氣がしないといつたような記事であつたとかというようなことを聞いております。
#44
○岡部常君 それだけですか。
#45
○説明員(横大路俊一君) そうです。
#46
○松井道夫君 先程裁判所が判断するものである、裁判所に言つたらよろしいのだという趣旨の御答弁がございましたが、これは私前々から質問しておりますのは結局その趣旨になりますので、要するに現在裁判所へ持つて行くべき法規があるのかどうか、この新聞紙法が廃止されたら……。この点を重ねてはつきり伺つて置きたい。今の大野委員、岡部委員が述べられたような例の場合、果してそれを裁判所へ持つて行く、要するに起訴する法規があるのかどうか、その点……
#47
○説明員(横大路俊一君) 風俗につきましては、これは刑法の規定もありますし、問題ないと思います。それから名誉毀損についてもそうでありますが、一般治安という問題につきましては、直接今のところ規定がございませんので、具体的な問題としましては、恐らく昭和二十一年の勅令三百十一号、占領軍の占領目的に有害な行爲と判断されるものが起訴される場合があり得ると思います。実際問題として、治安問題について起訴されて、又或いは処分された例があるかということは、私は直接その方面を担当いたしておりませんので、つまびらかにいたしておりません。
#48
○岡部常君 念のためにお伺いいたしたいのですが、本法の廃止に関連いたしまして、著作権法との関係において、何か支障を生ずるような虞れはありませんか。
#49
○説明員(横大路俊一君) 著作権との関係では何も支障は生じないと思います。その点は文部省とよく打合せをいたしました。
#50
○委員長(伊藤修君) 外に御質疑はありませんか……。それでは先程から御質問があつたように、いわゆる松井さんからも大野さんも、岡部さんからもこもごも御質問がありましたごとく、最少限度國内の治安を維持するために、いわゆる新聞紙法において残されて差支ない箇條取びプレスコードに盛られたところの事項というものを纒めて、新らしい新聞界に対するところの一つの取締規定というものを置くことが必要じやないかと思うのですが、ただ進駐軍がそう言うからというたところが、それは進駐軍に対するところの問題については、勿論向うで取締ることはよいけれども、國内問題については、日本國内においてやはり立法措置をとつて日々の言論の自由に対しての或る一定の基準を示唆するということは必要じやないかと思うのですが、どうしていけないのですか。
#51
○説明員(横大路俊一君) まだその点は研究が未熟でありますので、研究問題としては……
#52
○委員長(伊藤修君) 研究問題ではないじやないですか。三年も掛かつておつて、今日この法律を廃止してしまつて野放にして無法律状態に置いていいのかどうかということを聞くのです。三年も掛かつておつてまだ研究中というのは、我々として納得できないです。それは用意があるのかないのか。
#53
○松井道夫君 その点法務総裁の意見を聽いて見たいのですが。
#54
○委員長(伊藤修君) あなたとしてどうですか。
#55
○説明員(横大路俊一君) 私共としては先程あなたから條文を列挙されましたような條項を持つたものを作るつもりで準備はいたしたのであります。で、この法律案を提出するかどうかということを法務廳の内部の廳議で研究したときにも、代るべきものを作つた方がいいという考えの方が当初の間は過半数であつたのが事実であります。ちよつと速記を……
#56
○委員長(伊藤修君) 速記を止めて下さい。
   〔速記中止〕
#57
○委員長(伊藤修君) 速記を始めて。
#58
○説明員(横大路俊一君) 法務総裁のお考えも、法務廳の内部の会議のときには何らか対策を考えるべきではないかという考えをお持ちでありました。
#59
○委員長(伊藤修君) そうすると要するに今まで何らの研究もなされていなかつたということですね。
#60
○説明員(横大路俊一君) そういうことでございます。それが先程申しました通り内務省時代からずつと引続いておりまして、その役所のなくなつたために誰もこれを構うものがいなかつたということでございます。
#61
○委員長(伊藤修君) だけれども法務廳が設置されてからすでに一年有余になるのですから、法務廳は國家の法務に関する最高ですから、当然あなた達の所管において研究されていなければならないことだろうと思う。殊に日常の新聞紙、全國に何百とあるその新聞の言論に一定の基準を定めるということは最も緊急な事項ではないかと思う。詰らん法律をごちやごちやなぶつておらんで、こういうような根本法について相当に御研究になつて然るべきだと思うのです。
#62
○岡部常君 その点では今お話を伺つていると、如何にも消極的権限爭議を聞くような氣がするのですが、その点は一つ十分積極的にことを処理するということをお考えにならなければならぬと思うのですが、のみならずこれは一九四五年九月十日の言論及び新聞の自由に関する覚書の一に、「日本帝國政府は新聞、ラジオ放送、又はその他の出版物等により眞実に符合せず、若しくは公安を害するニュースの傳播を防止するため必要なる命令を発することを要する。」「要する。」と書かれておるのであります。これは積極的に政府がそれぞれの立場に立つて発動しなければならないことを意味すると思うのです。これはなすり合いなんか言つて消極的に権限爭議を來すなんてことは以ての外で、許されないと考えておりますが、これに対してどういうお考えで措置されておりますか、これを伺つておきたい。この点は最も大きい問題ですから、法務総裁がおいでになつた時にお答え願つた方が或いはいいかも知れません。
#63
○委員長(伊藤修君) 法務総裁でも分らないでしよう。私はまだ素人だからと言つて答弁をしないでしよう。あなたの方の責任者は誰ですか。
#64
○説明員(横大路俊一君) 私の方は調査意見長官兼子一です。
#65
○委員長(伊藤修君) 法務総裁は常に知らん知らんと言う。
#66
○政府委員(高橋一郎君) ちよつと私の方の関係だけ……、実は只今のようなメモランダムが外にも多数出ておりまして、つまりこういうふうに政府にいろいろな措置を要求したり、或いは國民に遵守を要求したりするメモランダムが沢山出ております。終戰直後それから今日に至りましても、その事情はそうは変らないのでありますけれども、このメモランダムを全部法制化する、而もそれを時間的にも直ぐに発動するようにやるということは到底不可能であつたのであります。そういう関係がありまして、いわゆる勅令三百十一号と言われておりますけれども、「連合國占領軍の占領目的に有害な行爲に対する処罰等に関する勅令」というのが昭和二十一年勅令三百十一号を以て出されまして、このようなメモランダムの違反は特にそのための法令ができなくとも、メモランダムに違反した場合は三百十一号の罰則の適用を受けるということになつておるのであります。從いまして只今御指摘の昭和二十年九月十日の言論及び出版に関する覚書といいますものも、やはりこの三百十一号のいわゆる最高司令官の指令ということになりまして、法律上はこれに該当するものはこれを國内法を以て処罰し得る建前になつておるのであります。このメモランダム違反として檢察上問題になりましたことが数回ございます。併しそれはいずれもいわゆる治安に非常に影響があるというような程度のものではなくして、もつと軽い程度のもののように私共は見ておるのでありまして、中央にいわゆる禀請、請訓でありますが、指揮を求めて参つたものは全部これは不起訴になつております。現地限りで処理したものの中で二、三件起訴した事例がございます実はこの三百十一号と申しますものが、こういう非常に包括的な内容を持つた法令であります。止むを得ずしてこういう方法を採らねばならないのでありますけれども、そういうような点も考慮いたしまして、それから先程政府委員から説明がありましたような言論の自由という問題なんかも考えまして、割合にこのメモランダム違反につきましては愼重に運用をいたしております。いたしておりますが、法律的にはその点はこのメモランダムをそのまま國内法として活用することに相成つておるのでございます。補足的に御説明いたします。
#67
○委員長(伊藤修君) 私の方のお尋ねしようというのはいわゆる千九百四十五年の九月十日に出ておるに拘わらず、今日までそれに対するところの対應する、呼應していわゆる法規、そういうものをなぜお作りにならなかつたか、そうして今日指摘されて慌てて廃止するということは政府として怠慢ではないかと思うのですが、それに対する法律をいつまでに作るとか、どういう具体的に措置が考えられておるかどうかという基本的なことをお尋ねするわけです。それはこれから除々に御研究をするというのでは余りに怠慢過ぎるのではないかと思います。それでもこれはできない……尚その点は政府の責任あるお言葉を伺うべくお求めしておきます。
 では只今の法案に対する質疑はこの程度にしまして後日に讓ることにいたします。
  ―――――――――――――
#68
○委員長(伊藤修君) 次に檢察廳法の一部を改正する法律案を議題に供します。先ず本案に対するところの政府委員の御説明をお願いいたします。
#69
○政府委員(高橋一郎君) 檢察廳法の一部を改正する法律案の逐條説明をいたします。
 先ず第十五條関係でございますが、檢察官の任免については、從來檢察廳法第十五條に基いてこれを行なつていたのでありますが、本年一月八日人事院規則一――三が施行され、國家公務員法第五十五條以下の國家公務員の任免に関する規定がその適用を見ることになりましたので、檢察官の任免についても国家公務員法の規定によりこととなり、法務総裁がこれを行うこととなつたのであります。併し認証官たる檢事総長、次長檢事及び各檢事長につきましては、檢察事務の主脳者たるその職責に鑑み、従來のごとく内閣がその任免を行うことが適当と認められ、又その手続の面よりいたしましても、認証官たる性質よりして認証について内閣の奏請を必要とする関係上、むしろ任免をも内閣がこれを行うことが適当と認められるので、この主旨に從つて本條第一項を改正したのであります。そうしてその他の檢察官につきましては、國家公務員法の原則に從つて法務総裁がこれを任免するものとし、その結果第二項はこれを存置する必要がないこととなるので、これを削除したのであります。
 次に第十八條関係でありますが、政府におきましては、從來の高等試驗に代るものとして司法試驗法案を立案し、國会の御審議を受けることとなつておりますが、これに伴つて本條第二項第一号を改正する必要を生じたのでありますが、本案におきましては、本号に掲げる試驗は司法修習生たる資格を得る試驗と同一のものであることを明らかにすることを適当と認め、その主旨の改正をいたしたのであります。第二項及び第四項中の「副檢事選考委員会」につきましては、国家行政組織法及び法務廳設置法の一部を改正する法律の弁行に伴いまして、その名称を改正する必要を生じたわけであります。
 第十九條関係につきましては、法務廳設置法の一部を改正する法律により、「法務廳」は「法務府」と改められることとなつたので、これに伴つて本條についても整理を加える必要を生じたので、第五号につきましては、現在一級官吏選考委員会というものは存在しませんので、本号の規定を置く必要がないので、これを削除したのであります。
 次に第二十三條関係でありますが、本條については三種の改正を行うこととしました。即ち、第一は、國家行政組織法、法務廳設置法の一部を改正する法律の施行に伴い、「檢察官適格審査委員会」を「檢察官適格審査会」に、「法務廳」を「法務府」に改めたことであります。第二は、第十五條の改正により、檢事総長、次長檢事及び各檢事長については内閣が、その他の檢察官については法務総裁が、その任免を行うこととなりますので、罷免手続についても、認証官以外の檢察官については、檢察官適格審査会の議決を経て、法務総裁が罷免するものとしたことであります。第三は、檢察官適格審査会に予備委員を置く旨の規定を加えたことであります。予備委員については、先きに本條第五項に基き、檢察官適格審査委員会令、昭和二十三年政令第二九二号中にこれを規定したのでありますが、これは委員会に関する重要事項であり、且つ國会議員については、國会法第三十九條により、内閣総理大臣、その他の國務大臣、内閣官房長官、各省次官を兼ねる場合及び國会の議決に基いて内閣行政各部における各種の委員が、顧問、参與その他これに準ずる職務に就く場合の外は、法律で定めた場合でなければ國又は地方公共團体の公務員を兼ねることはできないことになつているので、これを法律により規定することを適当と認めたのであります。而して、本案においては、予備委員は、各委員に対應して置かれ、その資格は対應する委員と同一の資格を要するものとし、國会議員たる予備委員は、委員の場合と同樣に、それぞれ衆議院又は参議院において、これを選出するものとしたのであります。
 第二十九條関係では、國家行政組織法によれば、行政機関の職員の定員は法律でこれを定めることとなつているので、これに從い檢察廳の定員も法律でこれを利めることとしたのであります。
 第三十條関係では、本條に規定する三級官吏の進退に関する権限の委任並びに檢察事務官、檢察技官の支部勤務命令については、國家公務員法第五十五條第二項の規定が優先する結果、何れもすでに不要となつたので、これを削除したのであります。
 第三十二條の二は、檢察官は、刑事訴訟法により、唯一の公訴提起機関として規定せられております。從つて、檢察官の職務執行の公正なりや否やは、直接刑事裁判の結果に重大な影響を及ぼすものであります。このような職責の特殊性に鑑み、從來檢察官については、一般行政官と異り、裁判官に準ずる身分の保障及び待遇を與えられていたのでありますが、國家公務員法施行後と雖も、この檢察官の特殊性は何ら変ることなく、從つてその任免については、尚一般の國家公務員とは、おのずからその取扱を異にすべきものであります。よつて、本條は、國家公務員法附則第十三條の規定に基き、檢察廳法中、檢察官の任免に関する規定を國家公務員法の特例を定めたものとしたのであります。
 次は第三十七條関係でありますが、本條第二項によれば、檢察庁法施行前弁護士試補として一年六ケ月以上の実務修習を終え考試を経た者は、第十八條及び第十九條の適用については、その考試を経た時に司法修習生の修習を終えたものとみなされるのでありますが、檢察廳法施行の際弁護士試補であつて、未だ考試を経なかつた者は、その後考試を経た場合でも、右のような資格を認められなかつた。ところがかかる者の中には檢事たることを志望している者もあり、裁判所法第四十一條乃至第四十四條の適用については同法施行令第十條第二項で、これらの者を司法修習静の修習を終えたものとみなしておりますので、檢察官たる資格に関しても、これと同樣の取扱をすることとしたのであります。第三項の追加は、外地弁護士に檢事たる資格を附與する規定であります。裁判所構成法によれば、三年以上弁護士たる者は、檢事の資格を有することになつており、その結果これらの者については、檢察廳法第三十七條第一項の規定により、檢事たる資格を得た時に、司法修習生の修習を終えたものとみなされるのでありますが、弁護士たる資格を有する者が三年以上外地弁護士をしていた場合、又は内地外地の弁護士在職を通じて三年以上になる場合にも、右と同一の取扱をなすことが相当であり、又弁護士たる資格を有する者が、朝鮮弁護士令による弁護士試補として一年六ケ月以上の実務修習を終え考試を経た場合には、内地の弁護士試補として一年六ケ月以上の実務修習を終え、考試を経た場合と同一の取扱をするのを相当と認め、判事補の職権の特例等に関する法律第三條の規定にならつて、第三項としてこの趣旨を規定することとしたのであります。
 次は附則でありますが、第一項については、本案は、その大部分の規定が、國家行政組織法及び法務廳設置法の一部を改正する法律の施行に伴う改正規定でありますので、これらの法律とその施行期日を一致することとしたのであります。第二項及び第三項は、本則による改正に伴い必要な経過規定を設けたものであります。以上を以ちまして簡單でありますが……
#70
○委員長(伊藤修君) 佐藤さんに伺いますが、一体本法のうちの予備委員については、昨年の四月二日の当委員会において極力その点の必要性を質問いたしましたが、それに対してあなたは反対しておつて、殊に当委員会において修正して本院を通して送り付けたものに対してその修正は否決されておる、政府としてもその当時必要なしということを極力言われているのでありますが、何のために今度これを入れなければならないか、その理由をお伺いしたい。
#71
○政府委員(佐藤藤佐君) 檢察官適格審査委員会の委員の任命につきまして、確かに委員長の仰せのように予備委員についても法律において定むべきではないかという御意見を拜承いたしたのでありますが、あの当時といたしましては、本委員は本法で定め、予備委員は政令で賄いたいという希望を持つておつたのであります。併しながらその後いろいろ研究いたしました結果、やはり皆さんの御意見のように、かような重要な事項は本法においてはつきりと規定する方が適当であろうという結論に到達いたした次第であります。今回檢察廳法の一部を改正する法律案を起案する際にこの点をも改めて改正案に織り込みまして、改めて御審議をお願いいたしたいと存じて、かような提案をいたした次第であります。
#72
○大野幸一君 研究の結果と仰しやいますが、その理由をもう少しはつきりとおつしやつて下さい。
   〔委員長退席、理事岡部常君委員長席に著く〕
#73
○政府委員(佐藤藤佐君) 檢察官適格審査委員会の構成メンバーである委員を法律において規定しなければならんことは、これは当然でありまするが、その本委員が事故あつた場合に代つて本委員の職務をとる予備委員でありまするから、さような重要な職務を持つ予備委員はやはり本委員と同樣に法律において明定する方が適当であろう、こういう考えの下にこれまでの考を飜しまして、皆さんの御意見に從つたのであります。
#74
○大野幸一君 別に今になつて私の方で言うわけでないが、当時私も確か発言記録に何さておると思いますが、由來政府委員は自分の説を固執して、何でもその法案を通そうという癖がある、今の政府委員は皆立派な人であるから敬服しておるけれども、以前はこういうことがあつたと記憶しておりますが、委員長は意味惡くてするのでなくてやはり頭は惡いけれども國民の権利擁護からするのですから……、だから政府委員に言わせると、委員の愚問、あなた方の檢討、私は或る裁判官の会合で、國会議員の審議の状況は愚問檢討と言つたら頷かれことがある、頷かれたのはどういうわけか分りませんが愚問檢討の中に、愚問と言つてもなかなかいいことがあるのであるから、將來も國会議員の修正等については愼重に一つ考慮して貰いたい、修正意見等も考慮して貰いたいということを切望して本案には賛成しようと思つております。
#75
○理事(岡部常君) ちよつと速記を止めて下さい。
   〔速記中止〕
#76
○理事(岡部常君) 速記を始めて下さい。
#77
○松村眞一郎君 檢察廳法の一部を改正する法律案の中に、第十八條第二項第一号中「高等試驗」を「裁判所法第六十六條第一項の試驗」に改めるということがありますけれども、今度この司法試驗法というものが出た以上は、司法試驗でやつた方が簡單明瞭ではないかと私は思うのです。元來常職から言えば、元は外交科試驗、行政科試驗、司法科試驗、こうあつた、端的に言えば、司法試驗でいいのであつて、裁判所の規定をここに引用するということは、裁判所から出たということになつて、逆になる虞れがあるということを、私は裁判所法の一部改正の場合に述べておるのです。元來司法試驗というものが実質的にあつて、それに合格した者で、学力の基礎的のものを備えておるということを前提として、その養成を今高等裁判所の司法修習生としてやる、それは中間の過程だ、その資格はすべて檢察官にも、裁判官にも、弁護士にも共通した司法試驗というものがあつて、これに合格した者、こういう考え方で、法律はできた方がいいのであつてむしろこれは司法試驗と書いた方が、私明瞭じやないかと思うのですが、殊更にこういうことを書いたのはどういうわけですか。
#78
○政府委員(高橋一郎君) 只今の御指摘の点は、どうも注意が行き届きませんお叱りを蒙むるかと思いますけれども、司法試驗の方と並行して、実はこれを進めたのでありますから、名前が仮に変りましても、実体が変らないというようなことで、こういうふうにしたのでありまして、確かに仰せのように司法試驗法ができますれば、司法試驗とした方が分り易いし、よろしいと思うのであります。そういう事情で、このような表現になつておるのであります。
  ―――――――――――――
#79
○理事(岡部常君) この程度で休憩いたしますが、午後は農業資産相続特例法案の説明を聽く予定でございますが、これについては農林委員会と連合委員会を開催する申込みをいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#80
○理事(岡部常君) それでは申込みをいたしまして、本日午後の委員会の終り頃に、連合委員会を開きたいと思います。さよう御承知願います。これを以て休憩いたします。
   午後一時四分休憩
   ―――――・―――――
   午後三時七分開会
#81
○委員長(伊藤修君) これより再会いたします。速記を止めて。
   午後三時八分速記中止
   ―――――・―――――
   午後四時二十四分速記開始
#82
○委員長(伊藤修君) 速記を始めて。これにて本日は散会いたします。
   午後四時二十五分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     伊藤  修君
   理事
           岡部  常君
           宮城タマヨ君
   委員
           大野 幸一君
           齋  武雄君
           鈴木 安孝君
           深川タマヱ君
           來馬 琢道君
           松井 道夫君
           松村眞一郎君
           星野 芳樹君
  政府委員
   法務政務次官  遠山 丙市君
   法務廳事務官
   (檢務局長)  高橋 一郎君
   法務行政長官  佐藤 藤佐君
  説明員
   法務廳事務官
   (調査意見第二
   局長)     横大路俊一君
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト