くにさくロゴ
1967/08/08 第56回国会 参議院 参議院会議録情報 第056回国会 社会労働委員会 第2号
姉妹サイト
 
1967/08/08 第56回国会 参議院

参議院会議録情報 第056回国会 社会労働委員会 第2号

#1
第056回国会 社会労働委員会 第2号
昭和四十二年八月八日(火曜日)
   午後一時三十九分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 八月七日
    辞任         補欠選任
     山下 春江君     林   塩君
 八月八日
    辞任         補欠選任
     杉山善太郎君     森  勝治君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         山本伊三郎君
    理 事
                植木 光教君
                土屋 義彦君
                佐野 芳雄君
                藤田藤太郎君
    委 員
                黒木 利克君
                紅露 みつ君
                佐藤 芳男君
                玉置 和郎君
                林   塩君
                船田  譲君
                丸茂 重貞君
                山本  杉君
                横山 フク君
                小柳  勇君
                藤原 道子君
                森  勝治君
                柳岡 秋夫君
                小平 芳平君
                片山 武夫君
   衆議院議員
       社会労働委員長  藏内 修治君
       代理理事
       修正案提出者   和田 耕作君
   国務大臣
       厚 生 大 臣  坊  秀男君
       国 務 大 臣  宮澤 喜一君
   政府委員
       経済企画庁総合  鹿野 義夫君
       計画局長
       厚生大臣官房長  梅本 純正君
       厚生省薬務局長  坂元貞一郎君
       厚生省保険局長  熊崎 正夫君
       社会保険庁医療
       保険部長     加藤 威二君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        中原 武夫君
    ―――――――――――――
 本日の会議に付した案件
○健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する
 法律案(内閣提出、衆議院送付)
○船員保険法の一部を改正する法律案(内閣提出、
 衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(山本伊三郎君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
 委員の異動について報告いたします。昨七日、山下春江君が委員を辞任され、その補欠として林塩君が選任されました。また、本日、杉山善太郎君が委員を辞任され、その補欠として森勝治君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(山本伊三郎君) 健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律案を議題といたします。
 まず、政府から提案理由の説明を聴取いたします。坊厚生大臣。
#4
○国務大臣(坊秀男君) ただいま議題となりました健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律案について、その提案の理由を御説明申し上げます。
 近年、医療保険の財政は各制度とも悪化の傾向にありますが、特に政府管掌健康保険及び船員保険においては深刻な財政危機に直面しており、このまま推移すれば制度の崩壊すらおそれられる事態にあります。
 政府は、両保険について当面の収支の均衡をはかり、何としても制度を維持するため、まず国が極力大幅な国庫負担を行なうこととし、同時に、この難局に対処するため、被保険者、事業主及び実際に給付を受ける方にも御協力を願うこととして臨時応急対策を策定し、前国会に健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律案を提出し、御審議をわずらわしたのでありますが、遺憾ながら審議未了となり、成立を見るに至りませんでした。しかしながら、保険財政の現状は極度に窮迫しており、一日も早く臨時応急対策の実施を必要とする状況にあるのでありまして、ここに再度この法律案を提案し、、御審議を願うことといたした次第であります。
 以上が、この法律案を提出した理由でございますが、次に、この法律案の概要を御説明いたします。
 まず、健康保険については、第一に、初診の際支払うべき一部負担金の額現行百円を二百円に、入院の際最初の一カ月間一日について支払うべき一部負担金の額現行三十円を六十円にするとともに、新たに被保険者が外来診療で投薬を受ける際、一剤一日分の額が十五円をこえる薬剤について十五円の定額負担をしていただくこととしております。なお、被保険者資格喪失後の継続療養受給者については、外来投薬時定額負担は支払うことを要しないものとし、入院時一部負担金は現行の額に据え置くこととしております。
 第二に、政府管掌健康保険の保険料率現行千分の六十五を千分の七十二とすることとしております。
 次に、船員保険については、第一に、初診時一部負担金及び外来投薬時の本人定額負担について健康保険と同様の取り扱いをいたすこととしております。
 第二に、保険料率については、失業保険の適用を受ける者の保険料率は、現行千分の二百二を千分の二百六に、失業保険の適用を受けない者の保険料率は、現行千分の百九十一を千分の百九十五とすることといたしております。
 なお、この法律は、保険料率に関する規定については昭和四十二年八月一日から、一部負担金に関する規定については昭和四十二年九月一日から実施することといたしております。
 以上がこの法律案を提出いたしました理由及び政府提出法律案の要旨であります。
 なお、衆議院において、薬剤の支給を受ける際の一部負担金について、比較的所得の低い者はその支払いを要しないこととし、並びに、政府管掌健康保険及び船員保険の保険料率の引き上げ幅を減ずるとともに、この法律の有効期限を二年間に限る旨の修正が行なわれております。
 何とぞ御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
#5
○委員長(山本伊三郎君) 次に、本案につきましては、衆議院において修正議決をされておりますので、この際、本案に対する衆議院における修正点について、衆議院社会労働委員長代理理事及び修正案提出者からそれぞれ説明を聴取いたします。衆議院社会労働委員長代理理事藏内修治君。
#6
○衆議院議員(藏内修治君) 健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律案に対する衆議院の修正部分について、その内容を御説明申し上げます。
 修正の第一は、薬剤の支給を受ける際の一部負担金について、所得の比較的低い方々に対する配慮を講ずることとして、標準報酬月額が二万四千円、被扶養者がある場合には一人につき六千円を加算した月額以下の被保険者は支払いを要しないこととしたことであります。
 第二は、政府管掌健康保険の保険料率の千分の七十二を千分の七十に改めるとともに、船員保険の保険料率についてもこれに相応した引き上げ幅の修正を行なうこととしたことであります。その他、施行期日等につき所要の修正を行なっております。
 以上が修正の要旨でありますが、何とぞよろしくお願いいたします。
#7
○委員長(山本伊三郎君) 衆議院議員和田耕作君。
#8
○衆議院議員(和田耕作君) 私は、ただいま議題となっております健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律案に対して衆議院の修正が行なわれましたが、その修正の趣旨について御説明いたします。なお、私は、この修正の中で二カ年間の時限を付したという点に関してのみ御説明をいたすことにいたします。
 まず、修正の本文でございますけれども、
  健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律案の一部を次のように修正する。
  第一条中「当分の間における」を削る。
  附則に次の一条を加える。
  第五条この法律は、昭和四十四年八月三十一日限り、その効力を失う。この場合における経過措置に関し必要な事項は、政令で定める。
 以上でございます。これは衆議院で私が提案趣旨の説明をしましたときに申し上げたことでございます。
 以下、私どもが出したこの修正案の趣旨の説明を簡単にいたしたいと思います。
 私は、議員の各位に心から訴えたいと思うのでございますが、私どもは、前国会に続きまして、この特別国会におきましても、健保法案について真剣な討議を繰り返してまいったわけでございます。御案内のように、各党それぞれの立場できびしい意見の対立がございます。しかし、このいろいろの論議を通じて共通の点が一つあると思います。その共通の点と申しますと、つまり一日も早く公正なる抜本対策を策定すべきであるということだと思うわけでございます。まあ御承知のような本国会の審議の段階におきまして、この点に特に注目をしていただきたいと思っておるわけでございます。私どもは、この健保特例法案を二カ年の時限立法とすることによりまして、ずるずると無期限に延長するおそれのあることをぜひとも防ぎたいという考えが基本にございます。そして、この二カ年間の時限の中で、公正なる抜本対策の策定実施に関しまして、立法という国の最高機関の決定という手続を経まして、政府を強く義務づけるとともに、各党ともに、この期間に責任のある医療政策の樹立をすることについて、ある義務を負うようにする、このような意味で二カ年間の時限立法にすることが現在最善の道ではないかと確信をしておるわけでございます。御承知のように、この期限の問題につきましては、総理の諮問機関であります社会保障制度審議会、また、厚生大臣の諮問機関であります社会保険審議会、この二つの医療問題についての専門家並びに関係各機関の責任者の集まっておりますこの機関でも、早くから、繰り返して抜本対策の必要を強く政府に求めておったのでございます。特に昭和四十年九月十五日、社会保障制度審議会では、両三年を目途として、総力をあげていわゆる抜本対策を確立すべきであるという要請も行なわれておるのでございます。また、本年の同審議会の答申におきましても、抜本対策を急速に確立する姿勢を明らかにするために時限的な臨時立法とするなどのくふうを加えることを強く要請しておるわけでございます。同答申は、また、この抜本対策の確立というのは、まさに天下の声だという強いことばも使っております。また、非常にこれは困難な問題ではあるけれども、問題点はすでに各方面から指摘されており、むしろ断を下すべき段階にきておるということを断言をしておるわけでございます。私は、この際、多くのことを申し上げません。ただ、国会の正常化という問題をひとつ直視していただいて、いろいろの立場からの御不満があることも十分承知の上でございますけれども、現状における局面打開の最良の方法として、また、正しい日本の医療保険、医療制度の問題について正しくするための最もいい処置としてこの本案を提出したわけでございまして、何とぞ党をこえて、議員各位の御理解のある御賛同を心からお願い申し上げる次第でございます。
 なお、最後に申し添えますけれども、私どもは民社党の代表として衆議院の本会議でこの趣旨説明をいたしたわけでございますけれども、私どもは、これは少し異例のことでございますが、もとの修正案に対しては反対の立場をとり、ただ一日も早く抜本対策を義務づけるために、あるいはお互いにしっかりとこの問題を見詰めるために二カ年間の時限を特に付したい、その点のみに限って修正案を提案した次第でございます。どうか議員各位の御理解ある御賛同をお願いする次第でございます。
 これでもって提案理由の説明を終わらせていただきます。
#9
○委員長(山本伊三郎君) 次に、船員保険法の一部を改正する法律案を議題とし、政府から提案理由の説明を聴取いたします。坊厚生大臣。
#10
○国務大臣(坊秀男君) ただいま議題となりました船員保険法の一部を改正する法律案について、その提案の理由を御説明申し上げます。
 船員が失業したときは、船員保険において失業保険金の支給、その他陸上労働者の場合における失業保険法による給付に準じた措置を講ずることとなっているのでありますが、今回の改正は、失業保険法による失業保険の給付水準との均衡を考慮し、船員保険の失業給付の改善を行なうこととするものであります。
 その改正の第一は、現在失業保険金の支給日額は、その最低額を含め、法律で規定されており、この結果、社会経済情勢の推移に応じ、迅速に改善を行ない得ないうらみがありますので、この点を改め、金額算定の基準を法律に規定するにとどめ、具体的な金額については、失業保険法における給付水準等を考慮して厚生大臣が定めることとしたことであります。なお、厚生大臣がこれを定める場合には、社会保険審議会の意見を聞くことといたしております。
 改正の第二は、失業保険金における配偶者加給金の日額を現行二十円から三十円に引き上げることとしたことであります。
 以上がこの法律案を提案する理由でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
#11
○委員長(山本伊三郎君) 速記をとめて。
  〔速記中止〕
#12
○委員長(山本伊三郎君) 速記をつけて。
 では、これより健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律案について質疑に入ります。質疑のある方は、順次御発言を願います。
#13
○藤田藤太郎君 私は、今度の健保改正案について、非常にたくさんな問題を国民生活の中に持っているわけでございます。まず、私が第一に聞きたいのは、日本の社会保障制度をどう進めていこうと政府はしておいでになるのかということでございます。私が経企庁長官も来ていただいたのはこのことなんであります。いろいろと具体的にあとからお聞きしますが、まず、日本の社会保障というのは、日本経済の発展のためにも、外国との貿易のためにも、それから、また、主権在民の国家体系においても、富の再配分、主権者が第一に守られるという立場を非常に含んだものでなくてはならないと私は思っているわけでありますが、経企庁長官と厚生大臣は、この日本の社会保障をいまどういうぐあいに理解されているか、今後どうしようとされているか、このことをお聞きしたいわけです。
#14
○国務大臣(坊秀男君) 御指摘のように、社会保障制度というものは、今日の日本の政策の中で、いろいろな政策は全部大事なものでございますけれども、そういったような政策が、その時点において、また、そのときの情勢におきましてそれぞれその重要性というものが、つまり何と申しますか、時の関係におきまして、また、そのときの実態と申しますか、国の実情と申しますか、そういったような縦と横との関係におきまして、この政策の非常に重要であるかどうかということが非常に強く影響されるであろうと思います。さような意味におきまして、今日の時点、今日の日本の実情という上におきまして、社会保障制度というものは、これは諸般の政策の中でも最も重要なる政策であろう、私はかような認識の上に立ちまして、今後私があずかっておりまするこの厚生行政の中におけるこの社会保障制度というものを、現時点において整備強化をはかっていかなければならない、かように考えておる次第であります。
#15
○国務大臣(宮澤喜一君) ただいま厚生大臣が答弁をなさいましたように私も考えておるわけでございますが、過般、閣議決定をいたしました経済社会発展計画におきましても、長期的な社会保障計画の必要を説いておりますとともに、今後五カ年間にわたるわが国の経済発展の中で、その発展のために十分な資金を含めました資源の裏づけをこれに与えるように、そういう裏づけを含めまして経済社会発展計画ではそのようなことを述べております。
#16
○藤田藤太郎君 いま両大臣からおっしゃったことは、社会保障は重要だ、重要な施策だとおっしゃったが、社会保障そのものは何かということは一つも仰せられなかった。社会保障とは何か、他の政策と名前を変えて並べるだけのものなのか。主権在民の国家における社会保障というのは、所得の再配分をして国の経済を発展さしていく、所得の再配分というものを柱にして、全体の社会で、生活苦の人や病気で困っておる人――貧乏と病気は相関連をして生まれてくるものでありますが、そういう経済社会の中で、困っている方々を社会全体が保障をしていこうということではないのですか。その社会保障の本質についてどう理解をしておられるか。その話を聞かなければ、重要だ重要だと言ったってどうなるか、それをはっきりしてもらいたい。
#17
○国務大臣(坊秀男君) 私は、社会保障につきましては、こういうことを申し上げると、藤田委員に対しましてはまさに釈迦に説法と私は考えますけれども、いまおまえはどういうふうに理解しておるか、こういう御質問でございますので申し上げますが、日本の国における社会保障と申しますのは、日本の国民が健康で、非常な貧乏で生活にも困るといったようなことでないように、心身の健康を保つとともに、それから、生活等につきまして、この貧乏のために非常に生活に苦しむというようなことのないようにやっていくのが社会保障でございまして、そのためには今日日本でいわれておりまする社会保障は、つまりこの医療保障というものと、それから、所得保障といったようなものが、これが制度として今日まで行なわれておる、こういうことでございますが、そういったような、とにかく国民の幸福と申しますか、しあわせな生活と申しますか、そういったものに資するために行なわれておるこの所得保障の制度、医療保障の制度というものが私は社会保障の二つの柱であるというふうに理解をいたしております。
#18
○藤田藤太郎君 厚生大臣、あなたの言われたことは、具体的にある特徴点をおあげになりまして、社会保障制度の中には所得保障と医療保障が柱になっていると、こういうことを仰せになりました。しかし、根本的にどうなのか、根本的に。富や所得の再配分をやっていくということが柱でなければならぬと私は思う。そのことが厚生大臣としてははっきりしない限りは、社会保障をどう進めていくかということがはっきりしないじゃないですか。いまの自由主義、自由経済の中で行なわれている社会保障というものは、そのことが明らかにならなければ、制度を幾らつくっても今度議論になるような問題になってくるんじゃないですか、そこを私ははっきりしてもらいたい。そうでなければ、だれでもそうおっしゃっておる。前の大臣もそうおっしゃっておる。所得や富の再配分の役割りをする。厚生白書にも書いてある。あなたはそのところはどういうぐあいに理解しているんですか。
#19
○国務大臣(坊秀男君) おっしゃるとおり、日本の全国民が、何と申しますか、相互に相助け合うというような思想から、おっしゃるとおり、所得の再配分というようなことが、われわれはその方法論といたしましては、そういったような考え方でもって、日本の国民みんなが、これまた相互の扶助と申しますか、相互的に一人一人の国民がしあわせに健康に暮らしていこうというような考え方がこの社会保障の私は基本だと、かように考えております。
#20
○藤田藤太郎君 私は、社会保障というものは、その前提をなすものがはっきりしなければ、制度を幾ら――制度を幾らという言い方は言い過ぎかわかりませんけれども、制度をつくっても、国全体がつくるのでなければ、いまの保険法のように受益負担論が出てきたり、被保険者から金を取って赤字のつじつまを合わせたり、そういうことになっていくわけでございます。私は、日本の経済計画をお立てになるときにも、生産が幾ら高まっても、国民購買力を高めていかない限り、経済がバランスをくずすのはあたりまえです。だから私は経企長官にお尋ねをしたい。あなたはこの前も経企長官をおやりになった、そうして経済計画に何回も参与されておられると思うのでありますが、その点社会保障というものに対してどういう理解をしておいでになるか、生産の成績をあげる、生産能力を高める、あわせて、その社会保障を根にした、一番底辺にした国民購買力をどうあげていくかということの計画というものがバランスをとられて順調にいかない限り、経済はもたぬのはあたりまえだと私は思う。だから、そういう意味で、経企長官は社会保障というものをどういうように、もう一度お尋ねいたしますが、理解をしておいでになるか、お聞きをしたい。
#21
○国務大臣(宮澤喜一君) わが国が近代化するに従いまして、人口の構成もだんだん老齢の人がふえてまいります。また、世帯が細分化される傾向がございます。で、産業構造も変化いたしますし、賃金、雇用にいたしましても、いわゆる近代化が行なわれつつあるわけであります。そういったような、従来とこれらは違った社会的な条件の変化でございますから、それに即応して国民福祉の向上をはかるために社会福祉の充実をする必要がある。で、仰せられますとおり、やはりその基本になりますものは、経済計画の上では移転所得と振替所得であると思います。もちろん私どもお互いに健康で文化的な生活を営むということであれば、第一義的には自分の生活に対しては自分が責任を持つということが、これが第一義的な原則であろうと思います。そのためには、やはりそれができるような基盤を国が国民経済の形で与えていかなければならないと思います。しかしながら、そういう基本的な原則の上に立って、いろいろな条件、あるいは理由から、自分だけの力では自分で健康で文化的な生活を営むことができないという人々はたくさんおられるわけでありますから、そういう人々に対しては、やはり移転所得、振替所得といったようなものが経済政策として考えられておるわけであります。
 そこで、経済社会発展計画では、大体昭和四十年、四十一年ころ、国民所得の中でほぼ五%、五・五%くらいが移転所得、振替所得になっているわけでございますけども、この計画の最終年次、五年後の昭和四十六年には、それをほぼ二ポイント上げよう、五・六%から二ポイントくらい増大しようと考えておるわけです。二ポイントと申し上げますと、ちょっと小さいような響きでございますけれども、昭和四十六年の国民所得はほぼ五十兆円と見込まれますので、二ポイントということは一兆円になるわけでございます。したがって、これから三年ないし四年の間に、ほぼ一兆円程度は移転所得、振替所得がふえなければならない、ふえるようにこの計画を組んでおるわけであります。それによって長期の社会保障計画をやはり政府としては立てていくべきである、それだけの資源をこの計画ではそのために割り当てておるわけでございます。
#22
○藤田藤太郎君 まああなたとの議論はちょっとあとにしますが、私は厚生大臣にお尋ねすることになるわけでありますけれども、今後の社会保障ということについて私が三回も質問をして、ようやくその社会保障の本質をおっしゃったのでありますけれども、社会保障というものの理解が、どうもいままでおっしゃってこられたけれども、理解が、しんからの所得の再配分を基礎にして主権在民の国家にふさわしい経済社会をつくっていこうという、その大きなものは社会保障だ、ヨーロッパ各国がやっているような姿にしていくのが社会保障だという認識が政府にないような気がするわけです。まあ厚生大臣は先ほどおっしゃったのですから、それはそれといたしまして、厚生白書というものは、あれは主観に基づいて書くものですか、客観的な事実を書くものですか、それをひとつ厚生大臣に聞きたい。
#23
○国務大臣(坊秀男君) 厚生白書は客観的な事実を書くということに私は考えております。
#24
○藤田藤太郎君 それは間違いないと私はあなたの発言を理解した上で質問をしたい。
 昨年の厚生白書をつくるときに、今後の社会保障を伸ばすのには、労使の負担によって伸ばしていくのだということが厚生白書に出てまいりました。これは政策的な、施策的ないまの政府の主観に基づいた宣伝だという以外には私は考えられないと思う。もう一つありました。私が指摘したのは、医療問題を去年から始めるにあたって、各国がやっている保険経済、保険制度、機構というものを一切書かないで、一部負担の表だけを厚生白書に載せようとされた。厚生白書というものは、これは総理大臣が来て答えるべきだと私は思うのですが、きょうは呼んでいませんが、しかし、そこが今度の健康保険の出発点だと私は思うのです。私は、今度の経済白書、経済政策を見てみますとそういう一面があるわけであります。特に社会保障の中核となった社会保険等においては、保険料中心により給付水準の向上等に見合った相当程度の保険料を引き上げるべきことは当然であるというぐあいに長期計画の中でいみじくも書いておいでになるわけであります。それは先ほど私が申し上げましたら、厚生省は客観的に書くのだ、主観に基づかないのだとおっしゃったけれども、それを一応は表から消したような形にこの厚生白書からはなっていますけれども、ここがいまの政府の社会保障に対する考え方、それが今日国民に不安をもたらし、そうして国民が不満に思っているところだと私は思うのです。それは厚生大臣はいかに御返事なさるのですか。
#25
○国務大臣(坊秀男君) 厚生白書は客観的な立場に立ってつくっている、客観的な記述ということでつくっていくということを申し上げたわけであります。そこで、今後の社会保障の充実というようなものを労使の負担によってすべきであるということを厚生白書で書いたのは一体どういうことか、こういう御質問でございますが、藤田さん十分御承知のとおりでして、今日現行制度における医療保険、医療保障、社会保障、これは保険方式をもってやっておるということは御承知のとおりでございますが、そこで、この保険制度でやっておるということをやめてしまって、そうして完全なる保障方式でいくということになりますと、これは非常に根本からこの方式を変えるということでございます。だけれども、現在保険方式でやっておるということは、これは客観的な事実でございますので、それを認めまして、そうして今後この制度の上で医療保障というものを充実していくというためには、労使の負担というようなものでやっていく、こういうふうに記述がされておる、こういうふうに私は考えておりますが、それを根本的にこの行き方を改めるということになりますと、これは相当な、何と申しますか、客観的でない一つのゾルレンと申しますか、そういったようなことに相なるということで、この点につきましては、私いまどちらがいいとか、どちらが悪いとかといったようなことに触れておるのではございません。そういったようなことにつきましては今後十分議論をし、検討もいたしましてきめていかなければならないことでございます。白書において述べられたのはさような意味において述べた、こういうふうに理解をいたしております。
#26
○藤田藤太郎君 そんな説明は私は聞けぬと思う。今後の社会保障の拡大は労使の負担でやるのだ、こういうのです。それが社会保障と言えるのですか。あなたいま説明された一つの問題点をとって、保険制度の分については保険料を上げていく、こうおっしゃった。そんな精神じゃないでしょう。社会全体が守っていく中で保険制度から保障制度へ発展していくべきものである。私はきょうから保障制度に全部切りかえろという議論をしているわけではない。ないけれども、社会保障というものはあなたさっき認められたように、富や所得の再配分をやっていく。やっていくのに国家の援護や補助、指導、そういうものが労使間の負担の限界にきたときに、負担が重くなるときには国がどういう方法でこれを補って国家負担を高めていくかという、将来は保障的なものであるけれども、現段階においても労使の負担だけで社会保障を高めていくなんていうことは、いまあなたがおっしゃったようなことでは説明にはならぬですよ、どう考えても。こんな議論はないじゃないですか。だから、先ほどのように、社会保障制度はどうだとかこうだとかいうことになって、社会保障の本質というものが少しも明らかになってこないから、社会保障制度というものは伸ばしていくけれども、内容は労使の負担でやっていくのだというのが頭からのかない。それで、今度の赤字対策は労使の負担でとればいいじゃないか、こういうことになってくるんじゃないかと私は思うのです。その根本から直してもらいたいと私は思うわけであります。その根本が、赤字の処理は労使の負担でやらせればいいんだ、その思想が出てくるわけです。だから、私は、厚生大臣はもっとしっかりと、社会保障というものはいかなるものか、その制度的な柱になるものは何と何か、これをどうしても国が援護、保護して、この全体の運営や制度というものを伸ばしていくということにいかなければ社会保障制度なんていうのは伸びないですよ。そこのところをうんと理解してもらわなければ私は困ると思う。
 私は、今度の新経済計画はそうはっきりは書いていませんけれども、何も保険料だけ特に高めて云々ということじゃなしに、たとえば国民所得の問題を見ても、昭和三十五年の倍増計画は、政府は失敗だと見て取り消されましたけれども、四十五年の国民所得は二十一兆ですよ。宮澤さんは御承知だと思うのです。しかし、ことしの国民所得の見通しは三十二兆ですよ。その間に社会保障がどう進んできたのか。なぜ生産力が進んでおるのに操業短縮が行なわれているのか、フィフティー・フィティーの貿易の中で輸出が伸びないのか、そういう点も私は生産と消費という問題点から出てきているんじゃないか。私は、完全雇用、そして勤労によって生活を立てていく、低い生活の方は援護していく、こういう中で、底辺が社会保障になっていくと思うのです。それから、個別の制度においても国が守っていくということになると思うのです。そういうものを保護しないでどうして社会保障が伸びるか。単に社会保障制度というものがほかの機構と同じような一つの制度だとお考えになっているからこういう現実というものが出てくるんじゃないかと私は思うのです。そこらがはっきりしないから経済の関係もこういうことになってくると私は思うのです。それらについて、両大臣、いかがですか。
#27
○国務大臣(坊秀男君) 私は、厚生白書に労使の負担によって充実していくというふうに書いてあるじゃないかと、こうおっしゃられるわけでございますが、たてまえとしましては、いま保険方式をとっておりますから、それは労使の負担ということも書いておりますけれども、何も労使の負担だけでもって充実していくということではない。これはどうしても国民皆保険といったような、日本が立てたこういう方式、制度をとっておるというような意味から申しまして、何も医療保険を充実強化していくのに労使の負担だけでやっていこう、そういうようなことを考えておるのではございません。とにかく一つの方式がありましても、いずれにいたしましても、国家の経済力といったようなものが、あるいは国民経済力といったようなものがだんだんと進んできておるというような場合には、社会保障を充実していくためには、できるだけやはり国庫負担といったようなものもこれはふやしていかなければならない。何も労使の負担だけでもってやっていくというような考え方を持っておるのではございません。
#28
○藤田藤太郎君 厚生大臣、隣に企画庁長官がおいでになるわけですから、閣議で、人間の生命を預かっている厚生大臣ですから、いまそうおっしゃったのですから、いろいろの議論をされていると私は思うのです。しかし、ここにことしの七月十一日の「エコノミスト」に出ている表を読み上げますから、ちょっと聞いてください。国民総支出中に占める個人消費支出、一九六三年支出は、ベルギーが六八・二%、イギリスが六五・五%、フランスが六五・四%、アメリカが六四・二%、それからイタリアが六二・二%、西独が五七%、日本が五三・二%なんですね、総支出中に占める個人消費支出は。それから、今度は反対に固定資本形成になりますと、日本が三二%、西独が二五・一%、イタリアが二三・二%、フランスが一九・八%、ベルギーが一九・六%、イギリスが一六・一%、アメリカが一三・三%なんです。これは何を意味しているか、国民の消費は世界数カ国の最低です。それから、固定資本形成だけは低いところの二倍以上。生産力を上げる、物をつくることだけに一生懸命になるけれども、物価値上げその他をやって、国民の生活を守っていくということはできない。世界にも例のない経済が続いているのじゃないですか。そういう状態を通過しているのが日本の経済です。
 あなた先ほどおっしゃったように、労使の負担でこれから社会保障を伸ばすといったような考え方、私はこればかり言いませんよ、そのような考え方をやめてくださいと言いたいのですよ。政府としても、厚生大臣としても、主権者は国民なんだ、経済が伸び、成長する、生産力が高まるに応じて、国民の所得も社会保障も高めていくという道筋をとりなさいということを言っている。赤字が出たら労使に負担をさしておけばいいのだ、それを乗りこえて、また薬価の負担まで被保険者にさそうなんというようなものの考え方は、労使の負担になったら、使用者は労働者にその負担を押しつけるのはあたりまえですよ。それが歴史なんです。現状じゃありませんか。一部においては違った面もあります。ありますけれども、そういう形で今日の経済が構成されているじゃありませんか。だから、これはひとつ経企長官にも聞きたい。こんな状態で国民生活が守れるはずはないじゃないかと私は思う。
#29
○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほども申し上げましたように、私どもは、健康で文化的な生活を営むということは、第一義的にはそのおのおの一人一人の責任であると考えております。その点は、たとい御同意をいただけなくても、少なくとも私どもはそう考えているということについては御理解はいただきたいと思うわけであります。しかしながら、先刻申し上げましたような理由で、すべての人がそうすることができるということには、残念ながら、そういうことにはならないわけでございますから、したがって、そこで社会保障というようなものの必要が生じてくる。で、社会保障の一つの大きな方法は、富の、あるいは所得の再配分ではないかと言われますことには、私もそのとおりであると思います。
 ところで、所得なり富の再配分率を高めるというのには、私は二つ方法があると思いますのです。一つは、配分率そのものを上げるということであります。これは先刻申し上げましたように、私ども五カ年計画でもそれを二ポイントほど上げたいと思っております。もう一つの方法は、しかし、その再配分のもとになりますところの富なり所得なりを増大することであります。これが増大されれば、率が同じであっても、再配分される金額が大きくなることは当然であります。それが私どもはやはり一つの大切な方法であろうと思う。
 で、財政負担のことを仰せられましたが、それにしてもそうでありまして、国が大きな財政負担を社会保障のためになし得るためには、国にそれだけの経済力がなければならないわけであります。そのことは、やはり経済成長をするからそれだけの再配分が可能になる。個人の経済においても国の経済においても、私は当然それはそのとおりであろうと思いますから、経済成長というものは社会保障の敵ではないので、経済成長というものはむしろ社会保障を充実させる道であるというふうに私どもは考えておるのであります。
#30
○藤田藤太郎君 いまの経企長官のおっしゃったところで少し私はわからぬところがあるわけです。経済を成長させて個人の分配を高めることは、まず第一は経済の基盤をこしらえることであると、こうおっしゃった。池田さん以来そうおっしゃっておられた。そして経済の基盤をこしらえる、生産力、設備をこしらえる、そのためには膨大な資金が要る。一つは、中小企業を非常に犠牲に三年ほど前からいたしました。一つは、物価値上げで国民を犠牲にいたしました。鉄にいたしましたら、二千万トンが、八千五百万トン計画がほぼできようとする。ことしの設備投資はどうですか。これの五割増し計画を、もっと大きい計画をみな産業が持っているじゃないですか。特徴的な問題をいうと、セメントなんかでも、六割くらいしか動いていない、もっと低いかもしれません、操業率は。それでもけっこう去年より大きい投資をしているというぐあいに、調整はされておいでのようでありますけれども、そういうものがみんな国民にしわ寄せしてきておるのじゃないですか。だから、あなたもよくヨーロッパなんかへおいでになるし、OECDのメンバーとして重要な役割りを果たそうとされるなら、今日、景気変動のないヨーロッパの各国の国内の生産力が上がるに応じて国民の生活が上がってバランスがとれていくあの状態というものを、私は長官はよく見ておいでになると思う。むろん国民所得も上がるし、社会保障も上がる。貧乏をなくそう、病人は国が責任を持って全部なおそうという、そういうものと並行して、生産と消費のバランスがとれて景気変動をなくす。最近のOECDの目的というものは、おくれた後進国に対する援助その他の問題をとらえておやりになっている。私たちといたしましても、ああいう形は決して反対いたしません、全体人類の幸福のために。しかし、それなら日本の国はどうかといったら、そういうかっこうになっていない。いまの私が読み上げた数字一つとってみても、あまりにも極端過ぎるではないか。社会保障の内容について、経企長官はいま富や所得の再配分だとおっしゃいましたけれども、そのことが具体的な経済のバランスの面、生産と消費のバランスをとりながら発展していくという面にこれが関係をしていないところに、私は社会保障に対する根本的な考え方が、十分にいまおっしゃったこととやっておいでになることが合っていないところに問題があるのではないかと、私はそう思うのです。
 それから、労働者の生活を見てもそうでありますけれども、最近の労働者の生活はどうでございましょうか。私が見ていましても、経済の生産力というものは三十五年を一〇〇にしたら、合理化を含めて私は四〇〇近くになっていると思います、推定でありますが。生産指数が二七〇、この生産指数の取り方は、当時の三十五年の操業度を中心にとっていますから、何かあいまいでありますけれども、二七〇か三〇〇近くになっているわけでありますが、これはまあ少し違うのでありましょうけれども、生産能力そのものについては、私は四倍近くになっているじゃないか。しかし、労働者の実質賃金はどうなんだ。二五%ぐらいしか実質賃金は上がっていないのですよ、三十五年を一〇〇にして。消費者物価は五割近く上がっている。最近よく政府は、三十五年、三十年を基礎にして一〇〇とか、このごろは四十年を基礎にして指数を出されるから、なかなかわれわれとしてつかみにくいけれども、そういう状態なんであります。そういう状態の中で、勤労所得はむろんのことでありますけれども、所得保障や社会保障でカバーをしない限り、国民の購買力、国民にいま言われるような負担能力があるのかないのかということになるとたいへんな問題であろう。私はそれを心配しているから、社会保障の概念について、先ほどから経済との関係でしつこくお尋ねをしているわけであります。そこらあたりの点について、経企長官、ひとつ物をつくるのが先、毎年そういうことでいったら、生産力だけはできていくけれども、取り残されていくのは国民じゃないかという、これは池田さん以来の話でありますけれども、私はそこらはうんと考えていただかなければならぬのじゃないか。ある政府に関係した学者が三、四年前に、名前を言いますといけませんから言いませんけれども、昭和三十七、八年ごろだったと思います。消費者物価は年々上がっていく、六%も七%も上がって、この消費者物価は国民に対するサービスを含んでいるのだから、これはもう消費者物価の値上げなんか問題にすべきじゃないということをおっしゃる。そうして立場くるりと変わったら、三十七年、三十八年、三十九年に四兆五千億の過剰投資をしたから、これにかえるものをつくれと政府に要求をされた。私は国民はたまったものじゃないと思うのです。物をつくるときにはどんどん自分の立場においてつくる。三年間で四兆五千億も過剰投資をやったから、これの対策をしなければけしからぬなんていうようなことをおっしゃる。これだけ言えば宮澤長官はおわかりだと私は思う。こんなことで経済政策をやられちゃ困る。そのために倍増計画がだめになり、中期経済計画がだめになり、今度の経済計画になったわけでありますけれども、今度の経済計画には、用心されたというのかどうか知りませんけれども、具体的な、国民所得について、生活についてどうするということが出てきていない。日本のように物だけつくる経済計画とやらをやっているところがありますか、ヨーロッパで。完全雇用をこれだけするために、国民生活をこれだけするためにこれだけの設備投資が必要でどうだというような、たとえばイタリアのバノーニ計画なんか一番いい標本じゃありませんか。そうして国民生活を守り、社会保障を高めてきたのが今日のヨーロッパ各国だと思う。だから、特に経企長官に来ていただいたのは、社会保障に対する、人間の生命を守る厚生省の重要な法案について私は御意見を聞きたいので今日頼んだのであります。そういう点、ひとつ経企長官の御意見を聞かしていただきたい。
#31
○国務大臣(宮澤喜一君) 十年間に生産がほぼ四倍になっただろうと言われました。私も大体そうだと思っております。その間、実質の賃金は、おそらく私の感じでは、ほぼ五〇%上昇したのではないかというふうに考えております。それで、私どもの経済政策にももちろんたくさん欠陥はございますので、その間、消費者物価が上がらないで済めばこれはほんとうによかっただろうと、こう思います。この点は残念に思いますが、消費者物価は相当上昇をいたしました。また、先刻仰せられました、国民総生産の中で国民消費の率が低いではないか、それに対して固定資本形成の率が高いではないか、数字をあげて言われましたが、そのとおりだと思います。もう少し国が進みまして国民消費が高くなるということは望ましいと思いますし、また、いわゆる労働の分配率がもう少し高くなることも、これも望ましいことだと思います。いろいろ欠陥はたくさんございます。これは認めなければなりません。しかし、私ども考えますのに、福祉国家の一番の基本、いわば最も確かな社会保障は、やはり私は完全雇用であろうというふうに考えております。十年余りの経済成長の中で、それが一部の財閥なり大企業の利益になったと御指摘になりました。私も損をしておったとは思いません。しかし、問題は、そこが大事なのではなくて、その十何年の経済成長でわが国がいまや非常に完全雇用に近づきつつある、このことが私は一番大切なことだと思います。これより確かな福祉国家政策、これより確実な社会保障は、まあ比喩でございますが、私はないと思います。片っ方で非常に高い社会保障制度を持ちながらたくさんの失業をかかえるよりも、たとい社会保障のほうが幾らか不満足であっても、国民が完全雇用に近づいていくということのほうが望ましいと私は思いますので、そういうことによって国民のすべてが完全雇用になり、国民所得が大きくなる、それによって先ほど来御指摘の分配の、いわゆる振替所得の量が大きくなる、私どもはそういう政策をとってきたつもりでございまして、実績にかんがみてそれに大きな誤りはなかった、こう思っております。
#32
○藤田藤太郎君 宮澤さんがそういう議論をされるとは。私は、前段はさすが宮澤さんだと思ったけれども、最後の一言、私たちは間違ってきたとは思わないと、こうおっしゃるその一言が、どうも私は気に入らぬ。それならば、何で倍増計画を続けてこられなかったのですか、中期経済計画をなぜ続けておいでにならなかったのですか。十年もたたない、七年の間に長期経済計画を三回も打ち出されたのではありませんか。私は雇用問題をここで議論するとまたどうもいかぬから、あまりしたくはありませんけれども、いまのヨーロッパの各国で、雇用について失業者が多いというような国はありますか。日本の潜在失業者という概念はどうお考えになりますか。たとえばいまだに民間の労働者は十代から働いて五十五まで、その職場の熟練工になった者は定年制でみな首を切られてほうり出されているのですよ。わずかな年金制で、それでその年金制度も六十歳にならなければもらえないのです。その労働者は定年制で首切られて街頭にほうり出されているじゃないですか、子供のある人が。それが現状です。それじゃ、まずそこから、完全雇用が一番社会保障の進んだものだとおっしゃるなら、なぜそれをぴちっと、せめて年金をもらえるときまで働かすという保障をなぜされないのですか、経済の計画で。おかしいじゃないですか、そんなことをおっしゃって。そうじゃありませんか。学卒のフレッシュな安い労働者を利用して、これが四倍も――技術労働者か百何十万も足らぬとおっしゃる。おっしゃるけれども、しかし、しっかり技術を持った、長年積み上げた経験を持った労働者を五十五歳で定年制で首切っているじゃありませんか。最近フレッシュな青年労働者が集まらないから、ようやくこのごろそういう労働者を、いままで働いた五割か、低いのは四割、まあ六割ぐらいの賃金で再雇用か、身分がはっきりしない形で働かす。現状働いているというのが民間労働者の末路じゃないですか。厚生年金は安うございます。あれではとても食っていけません。厚生年金を上げてやらなければとても食っていけない。OECDの中心勢力であるEECは賃金の六割を年金に出すということも一九六二年の十二月からきめて実施しているじゃないか。多子家族には児童手当を出して生活を守っているじゃありませんか。そういう、貧乏にならない、病気になっても心配のない、そこでしっかり働いて生産を高めてくれというのが私は政治だと思うのです。だから、こういう議論をやると派生しますから、あまりやりませんけれども、それを間違っていなかったという一言が私は気に入らぬ。あなたのような非常に知性の高い人が、現実のこの問題と取り組んで世界じゅうをかけめぐっておいでになって、世界じゃうのことがよくわかっている方がそういうことを結論としておっしゃるのは、私はどうも納得がいかぬのですよ。取り上げたら幾らでもあります。ありますけれども、私は雇用問題の問題点はいずれ労働大臣に適当なときに来てもらって、そこで雇用問題その他をやりたいと思いますけれども、しかし、私は、そういう経済の面から見て、社会保障というものが富や所得の再配分というものの精神からはずれてしまって、制度だけかっこうをつけたらよいということになってきているのではないか。私はそういう気がしますから、率直に言って聞くわけですから、反論があったらしていただきたいと私は思うのです。それを厚生大臣が忘れてくれたら、私はもう社会保障制度というものは、経済企画庁長官は全体の大筋の経済をやるけれども、人間の生命を預かっていただいておりまする厚生大臣がそれをはずしてもらったら私はたいへんだと思うから先ほど厚生白書の問題もやかましく言ったわけです。だから、ひとつ宮澤企画庁長官にもう一言お聞きして、そして厚生大臣の御意見を承りたいと思います。
#33
○国務大臣(宮澤喜一君) 確かに現在のわが国の雇用状況、あるいは社会保障制度等、ヨーロッパの先進国に比べてまだまだ劣っておりますことは御指摘のとおりだと思います。しかし、そういう御議論の中で、藤田委員は、わが国のそれらの制度状況をヨーロッパの先進国とともかく比較をしてまだまだ劣っておるではないかと言っておられるのでありまして、比較ということがともかくもやや可能に現在なってきたわけであります。十年前にはそういう比較ということはほとんど可能ではなかったわけでありますから、まだまだ及ばないけれども、その差が詰まってきた、これからも詰まるのではないかということだけは申し上げても私は大きな間違いでないと――先ほど、大筋で間違いでないと申し上げておしかりをいただきましたけれども、その差は縮まりつつあるということは、私はやはり認めてもいいのじゃないか。もとよりいろいろ政策的にも欠陥もございますし、いろいろございますけれども、大筋では先進国の列に近づきつつある、おそらくこれからもその差は縮まっていくであろうというふうに私どもは思っております。
#34
○国務大臣(坊秀男君) 先ほども私はお答え申し上げましたように、社会保障の問題に限らず、いろいろな政策問題は、すべてそのときにおけるその国の政治、経済その他の背景の上にこれが打ち立てられるものだと思います。さような意味におきまして、その背景から考えまして、あるときにおいて、ある環境においてはどういったような政策が非常に大事であるか、どれに重点を注がなければならないかといったようなことは、これは私は政治をやる人間の非常に慎重に考えていかなければならぬ問題だと思いますが、今日までこれはもう経済の背景、経済の推移等につきましては宮澤長官からお話がございましたが、ある時点においては、日本のこの政策の中で、あるいは生産だ、あるいは経済だといったようなものに非常に重点を注がなければならないといったような時代ももちろんありまして、そういったようなことで今日まで日本経済が推移し、進んでまいったように私は思いますけれども、いまの時点で考えてみますと、もうすでにいまだけの問題じゃない、数年前からの問題でございますけれども、私は日本の国における政策の中で、社会保障というものは、先ほどからもお話がございましたように、西欧各国に比べまして、いろんな角度から、いろんな面からこれをながめて見まして立ちおくれておるということは、これは否定すべくもない事実でございます。さような意味におきまして、いまの時点におきまして、いまのこの経済、政治、諸般の環境におきまして、この社会保障というものに対して政策の重点を置いていかなければならない、こういうことであろうと思いまして、私はそういう方向に向かって努力を傾けてまいりたい、かように考えております。
#35
○藤田藤太郎君 宮澤長官がまた用事があるようですから、もう二、三点お帰りになるまでに聞いておきたい、こう私は思います。
 先ほど、昭和四十五年度までに社会保障に二%、国民所得が四十六年には五十兆だから、その二%は一兆円になると、こうおっしゃったわけでございます。そしてあなたのおっしゃる面でいえば、社会保障というのは、そうすると国民所得の五%プラス二%で七%ですか、七・五%とおっしゃるのですか。いずれにしても、七%か七・五%にしかならぬわけです。今日のヨーロッパの産業国の国民所得に対する社会保障水準というのは一五%から二〇%の水準になってきている。これを、日本は生産が上がってきたと過去の問題ばかりさっきおっしゃったわけでありますけれども、私がさっき読み上げましたようなことを続けておったらそんなことにはなりっこない。そして外国が国民所得に対して二〇%をこえているのに、日本はようやく七%か七・五%で、国民よ、しんぼうせよという、こういう経済計画ですか。
#36
○国務大臣(宮澤喜一君) 国民所得に占める振替所得の比率というのは、実は統計的には非常にとらえがたいものであります。ただいま仰せられました、たとえば私どもの持っております統計では、フランスが二一%、あるいは西ドイツが一六・六%で、高いほうでございます。イタリアが一二%余り、イギリスは八・七%、ほほ九%、アメリカが六%余り、こういうことでございますから、七・五%になりましても、仰せのように、まだ確かに低いわけでございます。そこで、しかし、非常に問題なのは、そのように振替所得を高くしていくとすれば、租税をそれだけ高く取らなければならないことになるはずであります。その場合に、相当の高額所得者が厚い層を持っておるならば、ある程度租税収入でそれをまかなうことになると思いますけれども、わが国のように、いわば富士山型のような所得構成でありますと、それだけの租税を取るためには、かなりいわゆる大衆課税の税率を高くしていかなければならない。現在の国民負担、租税負担率というものは、私は決してわが国では楽ではないというふうに考えておりますから、これを飛躍的に高くしていって、それで振替所得の率を高めていくか、あるいは租税負担がこの程度が限界であると思えば、それに相応した振替所得の率を考えるか、それは選択の問題であろうと思います。
 私、思いますのに、これから先、国民の所得水準が相当高くなってまいりましたら、おそらくその層に対してはもう少し高い累進税率を課することができることになると思いますので、それが振替所得の財源になっていく、こういうふうに考えるべきではないだろうか。仰せのように七・五%にいたしましても、決してこれで十分とは考えておりませんが、やはりそれを高めていくためには、国民の所得水準が高くなって担税力がふえてまいるということと並行していかなければならない、こう思っております。
#37
○藤田藤太郎君 ぼくはそこの考え方が宮澤さん改まらないかということをもう一度お尋ねしたい。ヨーロッパのドイツやフランスや、あの辺に比べて、分配所得は日本の倍くらいですね。しかし、率でいったら、日本が一万円なら二万円なり三万円になるわけでしょう、これは率ですから。国民所得に対して何ぼという率ですから、額の問題じゃないのです。率の問題としてそれだけのものを実施して、生産性を上げて、消費、購買力との間にバランスをとって経済を発展さしているわけです。先ほどのようなことを続けておったら、いつまでたったって発展しないのではないですか。社会保障というものが国民生活を守れないのじゃないですか。
 これはちょっと門外漢になりますけれども、年年の八月に、四十二年度の国民の危機、あわせて日本の経済の危機として、そうして社会保障制度審議会が内閣総理大臣、関係大臣に、少なくとも直接の社会保障費を一兆円まで四十二年度は上げてくださいといろいろ言ったことがあります。これはいずれ厚生大臣に詳しく聞きたいと思うのですけれども、社会保障を見ている者は、国民の学識者はそれくらい心配しているわけです、日本の経済そのものについて。それでバランスをとらなければ、日本の経済は中小企業を犠牲にし、国民だけを犠牲にしては成り立たぬという考え、そうしてそういう意見が自然発生的に出てきている、これが現状だと私は思うわけでございます。あなたは、累進課税で税を取る、そういくほかないとおっしゃいましたが、今日高い投資を一ぺんも休まずに続けているではありませんか。私はあなたと議論したときに、こういう議論をしたことがある。三十六年から五年間の要するに日本の投資と外国の投資を見てみたら、国民総生産に対して一番高いところでは一三%、日本は三十六年は二六%、そんな投資をやっている。日本が外国の一番高い一三%にプラス二%、一五%ずつこの五年間に拡大投資計画をやってきて、九兆六千億の過剰投資があるわけです。そうしてこの半分でも国民に回したら国民経済はどうなるのか、国民生活はどれだけ守れるかという議論を私は四十一年にしたと記憶している。それがそのままひとつも調整をされないで、今日まだ鉄のごときは五割の設備拡大、私は日本の産業の設備投資計画をここに持っておりますけれども、そういうことがあなたのほうで調整されるわけでしょう。そこらあたりから調整しない限り、社会保障が四十六年度、すなわち一九七一年にこれが七・五%だというようなことは、これで私は先進諸国の社会保障の高い国と貿易ができますか、実際問題として。輸出能力にしてもいまの倍くらいあるといっても、それにしてもどうにもならぬですよ。私は輸出はできないと思っている。そういう心配まで国民の中にはしているんです。それをなぜこんなことを続けておいでになるのか。それで国民や中小企業を犠牲にしている。社会保障というのは、単に技術的に給付をやるだけが社会保障ではない。生産と消費のバランスをとって内容を高めることがいまの重要な要件になっている。私はそういうぐあいに理解をしているのですが、私のさっきから言っているのは、需要を高めるだけで国民生産はどうでもいいということでは決してない。生産というものは公器ですから、これによって国民が幸福になるということが基本でなくてはならない。それを基本にするけれども、あまりにひどいじゃないか。ことしは七年目ですけれども、生産力が四倍にもなっているのに国民の実質所得が二五%だ。名目所得がありますから、ことしの春の賃上げその他によったら、計数が出ておりませんけれども、二五%よりちょっと上がったかもしれませんけれども、実質所得はそんなものです。二割か三割、これではあまりにもバランスがとれないじゃないか。そこを労使にぐっとその負担をかぶせて社会保障を進めていこうなんというものの考え方がどうして生まれてきたかということを、これはこれから厚生大臣に聞くわけですけれども、やはり厚生大臣のそういうお考え、いまおやりになっている基礎は国の経済計画から出発しなければいかぬのであって、きょう初めて審議するわけですが、一番冒頭に経企長官に来ていただいて日本経済の構想を聞きたいと思ったのです。たとえば財源上の処理、これは大蔵大臣の関係ですけれども、一言だけ触れておきますと、ことしの予算をお立てになるときに、自然増収の見込みは七千三百億だったと私は記憶するわけでございます。成長率が名目一三%、実質九%、鉱工業生産一四%で、大体七千三百億の自然増収があるというたてまえに立って予算をお立てになった。それが今日の実績を見てみたら、鉱工業生産は二〇%をこえる状態になっていると聞いておりますが、いかがでございましょうか。そうなったときに、これに七千三百億プラス四千億、五千億というこの自然増収が入ってくる。こういうときに、なぜこれを、保険料もそうでありますけれども、困っている国民に、患者にまでこの負担を頭からおっかぶせる必要があるかという気がいたしますから、この経済見通しについてひとつ経企長官から意見を聞いておきたい。
#38
○国務大臣(宮澤喜一君) ただいまの経済情勢が当初見込みしまたよりはかなり高い水準にあるということは御指摘のとおりであると思います。したがって、本予算に見込みました租税収入よりも何がしかの自然増収があるであろうということも、これもほぼ私は間違いないというふうに考えております。でありますが、私どもとしては、ともかく相当の国債を発行いたしておりますので、将来のこれが負担になるということを考えてまいりますと、やはりある程度の自然増収があるならば、まずこの際借金をする額を減らしておきたい。全部なくすという意味ではございませんし、その必要もないでありましょうけれども、やはり前々から予算委員会等を通じて、ことに野党から御指摘のありますように、国債の額をできるだけ減らせるものは減らしたいと私たちも考えまして、方向としてはそういうふうにまずやっていくべきではなかろうか。何がしの自然増収があるかということは、まだ年度が始まりましてほんの二カ月――本年は六月から始まったようなものでございますから、二カ月余りでございますので、はっきり申し上げられません。自然増収があるとすれば、まずある程度のものは国債の減額に充てたい、こういうふうに私どもは考えております。
#39
○藤田藤太郎君 そうすると何ですか、いまの自然増収の問題はわかりました。あなたのお話を聞いていると、ほかに使うところがまだあるのだということ、国民は生活に困っているようだけれども、まだほかに使うところがあるのだというふうにしか聞こえないことになるのですが、どんなものですか。
#40
○国務大臣(宮澤喜一君) 国債を全部やめてしまうなんということは考えているわけじゃございませんが、やはり前々から御指摘のありますように、一般会計の歳出の国債依存率というものが、わが国の場合少し高過ぎるわけでございますので、まずもう少しこれを低いところに持っていきたい。もちろん財源があればいろいろしたいことがございます。けれども、まずまず借金をとにかく少しでも軽くしておこうということが必要なのではないか、それが全部とは申し上げませんが、そう思っております。
#41
○藤田藤太郎君 そうしますと何ですか、経企長官としては、いままであなたとだいぶ議論しましたが、今度の健康保険その他については国民に負担能力があるのだというお考え、私はそこまで極端な言い方をしませんけれども、しかし、そういう重要な国民全体のこれだけアンバランスになっている国民所得に対して、税金か保険料という形で取り上げる、保険料で取り上げるような方式、またもとの二年前の厚生白書に返ってくるわけでありますが、そこらをあなたはすっきりされないわけですね、もっと何とか、これは大蔵省の財政との関係ですが、あなたとしては日本の経済のひずみというものは十分にわかりながら、りっぱにかじをとって前に船を進めるということにならなければいかぬのじゃないかと私は思うのですが、どうもやはり富と所得の再配分という問題についても、口ではおっしゃいますけれども、なかなか気がないように理解せざるを得ないので、非常に残念でありますけれども、しかし、今後の日本経済は、私が少し議論いたしましたような形で、主人公は国民なんですから、その主権者のために守っていかなければならないというこの考え方だけはしっかり持ってやってもらわなければ話にならぬのじゃないかと私は思います。こういう話が出ております。経済の企画庁はあるけれども、国民生活を守る社会政策や社会保障を含めた社会政策企画庁でもこしらえなければ日本の経済はもたない、国民の犠牲というものはもっともっと深まるだろうという意見が出ておりますけれども、企画庁長官、お聞きじゃありませんか。これは自然、国民の中からそういうことが出てくると私は思うのです。そうやっていかなければどうにもならぬところに日本の経済は追い込まれると私は思っているのでありますが、どうも時間がないようですから、私はまた来ていただいて御意見を承ることもあると思います。あなたの先ほどのその完全雇用論、その他いろいろ承りたいことがあると思いますけれども、きょうは御用事があるようですから、まあこの程度にとどめますが、問題点だけを提起しておきたいと思うわけでございます。
 それから、もう一つお帰りの前に聞いておきたいのですけれども、三十七年の社会保障制度審議会から出しました「今後十年の日本の社会保障について」ということについても御理解をいただいているでしょうか、取り組んでおいでになったでしょうか、いままでの経済計画の中に。それだけ一言聞いておきたい。
#42
○国務大臣(宮澤喜一君) このたびの経済社会発展計画には、その方面の専門家の方も参画をしていただいておりますので、そういったようなことは、今度計画を立てましたときに、完全とは申せませんまでも、ある程度参酌をいたしておるものと考えております。
#43
○小柳勇君 関連して。企画庁長官、もうお帰りのようですけれども、いまの藤田君の言いました自然増収とこれの使途の問題、こういうところは、やはりわれわれがいま論議しておる健康保険の赤字をどうするかという問題に直接結びつく問題と思います。したがって、いまもう時間がないから数字的に論争できません。私は、いまの問題はこの次の時間、私に与えられた時間の中で長官に来ていただいて、先般私、本会議で大蔵大臣に質問いたしましたときに、私どもの試算と大蔵省の試算が若干相違しておるようであるし、見通しについても若干違いがありますから、そういう問題については、いま藤田君が党を代表して一般質問をいたしましたけれども、私はもう少し具体的に質問がありますから、その問題は保留いたしまして、この自然増収と健保赤字の補てんの問題、いま政府は二百二十五億を出そうとしておる、予算に組みましたが、これでは何とも解決できない問題ですね、したがって、そういう問題を経済企画庁としてどう考えるかということについて具体的に次に話をしたいと思いますので、その問題については保留をいたしまして、資料がありましたら見通しなどの資料を、私どもの質問するまでに御提出願いたいと思います。いかがでございましょうか。
#44
○国務大臣(宮澤喜一君) 次の機会にそれではお尋ねがございますればお答えを申し上げますが、実は資料がございません。政府の持っておりますのは、すでに過般お手元に差し上げました今年三月の経済見通しだけでございまして、その後委員会に提出できる資料はございません。
#45
○小柳勇君 今回国債と政保債千二百億の減債金を組みましたその根拠は税の自然増収である、こういうことは本会議で言明されておるわけです。見通しがないのに国債発行及び政府保証債の減額をきめるはずはないわけでありますから、閣議決定したときに試算の資料はあるはずでありますから、それでもよろしいからお出し願いたいと思いますが、いかがですか。
#46
○国務大臣(宮澤喜一君) 国債減額と政府保証債の減額、合わせて千二百億円でございますが、これは閣議決定をいたしたわけではございません。私の承知いたしておりますところでは、大蔵大臣が片方で大蔵省資金運用部に対する余裕金の流用のしかた、他方でどういうふうに定めましたか、私には必ずしも正確ではございませんけれども、ある程度の今年度の自然増の予測と申しますか、これは計数的と申すよりは、一つの腰だめの胸算用をなすったのではないかと思いますが、その中で、この程度ならまず安全であろう、そういうめどのもとにおやりになったように思います。
 なお、そのための的確な資料がもしございますようなら、大蔵省のほうに私のほうから申しておきますけれども、おそらくそれはないのじゃないかというふうに私は承知しております。
#47
○小柳勇君 私はことばじりをとって責めるのじゃありませんが、閣議決定してないということはあなた確かですか。私どもは本会議で質問したのですから、閣議決定によって云々ということで確かめた上で質問しているのですから、それは大蔵大臣がそういうふうに答弁されておるわけですね。大蔵大臣にこの次に来てもらって質問いたしますけれども、いま藤田君への答弁を聞いておって、自然増収についても、あいまいでありますから、いま私は、その問題は私ども社会党として代表質問ではありましたけれども、これで終わったんじゃないということをいま申し上げておるわけであります。なお、詳細には、大蔵大臣と一緒に来てもらって、次の機会に質問することにいたします。
#48
○国務大臣(宮澤喜一君) その点はこうでございます。合わせて千二百億円減額をしようと思う、この問題については、本来、大蔵大臣、経済企画庁長官、あるいは日銀総裁等で相談をして、自分たちの行政の権限の範囲内でやっていいことでありますけれども、たまたま比較的に年度の最初のことでありますから閣議に報告をしておきます、こういうことでございます。
#49
○藤田藤太郎君 長官のいまの問題については後刻やることにいたします。
 そこで、私は厚生大臣にお尋ねをしたい。あなたには社会保障の概念の問題だけちょっと一言、二言お伺いしたわけですが、昭和三十七年の社会保障制度審議会の答申、建議というものをあなたは熟読してよく内容を御存じですか。
#50
○国務大臣(坊秀男君) 三十七年の社会保障制度審議会からの御意見でございますが、一応は私は拝読をいたしております。しかし、いま一字一句覚えておるというのではございません。
#51
○藤田藤太郎君 その社会保障制度審議会が三十七年に出した答申案というものは、ちょうど三十四年か五年――三十三年ころからの統計をもとにして、ようやく三十七年に答申ができたということであります。日本の経済が三十五年から所得倍増計画が行なわれてきて、先ほど申し上げましたように、国民所得を見ても四十五年に二十一兆という計画が、もうこれはだめになりましたけれども、ことしは三十二兆ですね、国民所得は。去年の実績見通しが二十八兆という時代になってきておる。これだけでは、とても日本経済が先進国並みに社会保障制度をやろうとしても、もうおくれておる。おくれているのでありますけれども、これは三十七年当時のヨーロッパの社会保障水準に今後十年の間にしなさいというのがこの勧告の趣旨でございます。ところが、それが今日もう五年たっているのにできない。そこで、昨年の八月、社会保障制度審議会は、総理大臣、大蔵大臣、厚生大臣、労働大臣、あわせて社会保障制度委員全員が集まって問題点を中心に議論したことを覚えておいでになると思うのですが、いかがでございましょう。
#52
○国務大臣(坊秀男君) そのことのありましたことは私はお聞きはいたしております。だから、私自身がそのときに参加をいたしておりませんが、もちろん私は厚生大臣といたしまして、そういったような会談があったということはよく承知いたしております。
#53
○藤田藤太郎君 そこで、一番重要な問題として指摘したいのは、昨年の社会保障費が六千百億です。そして四十二年度の社会保障費の国庫支出は一兆円にしなさい、そうでなければとてもおくれている日本の社会保障が十年間の幅を持った、十年前のヨーロッパの事態にまでいかぬじゃないか。特に総理大臣をはじめ、関係大臣にそれを申し入れたわけです。ところが、ふたをあけて見たら社会保障費は七千百億、そして先ほどの問題とからんで、そして大臣は御存じなくとも、厚生省の次官以下の職員はそのことを大臣に引き継ぎ、そして対策は立ててきたものだと私は承知をするのでありますけれども、予算上出てくるものはそんなものではない。これはどういうことなんです。
#54
○国務大臣(坊秀男君) 社会保障制度審議会からの御意見は、いま藤田委員御指摘のとおりでございます。ところが、四十二年度予算におきましては、制度審議会の御意見のとおりにはまだほど遠い予算が組まれておるということも、これも事実でございまして、厚生省といたしましても、でき得る限り制度審議会の御意見というものを尊重いたしてまいったのでございますけれども、予算の編成等の関係で、完全にそのとおりということには相なっていないということでございます。非常にこの点は私も残念に思っておりますけれども、そのとおりにはいかないということでございます。
#55
○藤田藤太郎君 残念に思っているけれどもそのとおりになっていないなんというふうな返事を大臣がわれわれにされるということはどういうことなんですかね。五年前に答申が出て、はい、やりましょう、一生懸命努力しましょうと言って三十七年に答申、建議を受けて五年たっている今日、少なくとも四十二年度の予算はこうしなければとてもその低い要求でも満たすことはできませんぞと言って社会保障制度審議会が要求したんです。総理大臣に要求して、そして厚生大臣も立ち会っておられる。努力いたしましょうと言っているじゃないですか。それでどうなっているんです。まだできてませんと。それは何でできなかったのか、それを聞かせてもらいたい。
#56
○国務大臣(坊秀男君) 四十一年度における社会保障費が六千二百億円、四十二年度は七千百億余、約七千二百億円ということでございまして、一兆にはほど遠いのでございますが、予算総額の前年度の伸びが四兆三千億から四兆九千五百億ということでございまして、その総額の伸びが一四%余りということに相なっております。こういうような関係上、この六千二百億円を一挙に一兆に持っていくということは、これは財政なんか、国民の健康に関しては問題じゃないじゃないか、そういったような御意見もあるかもしれませんけれども、いずれにいたしましても、この日本の国の財政経済各般の角度からながめてまいりましてこういう結果に相ならざるを得なかったということでございます。
#57
○藤田藤太郎君 私は、厚生省というのはずっと続いて――前の大臣のことは知らぬと、もう一つ前の大臣のことは知らぬという、そういう機構じゃないと私は思うんですが、特に与党と野党とかわるなら、いまの自由民主党が社会党にかわった、その他にかわったというなら、それは政策の問題は知らぬというような、まあ他人のことのような御答弁もできるけれども、その厚生行政というものはずっと続いておる、前に約束したことはやっぱりきちっとやってもらわなければかなわぬですよ、何て言ったって。それでいまになって予算がこうやからどうや、そんなことじゃないでしょう。十年の間に当時のヨーロッパの先進国の状態にしてください、はい、そういたしましょうという返答で、やらぬもんだから、せめてこれぐらい――これ一〇〇%の数字じゃないですよ、五年目の数字が。せめてこれぐらいやらなければ十年間の数字ができやせぬじゃないですか、答申の状態に。そこで、社会保障制度審議会は、もうたまらなくて全員が、この中には私みたいな立場の者もおりますし、自民党の議員の方もおいでになりますし、学者先生、いまの日経連、経団連の先生もおいでになる。それだけの全部の方を含めて、これだけはと言って特に総理大臣と関係大臣を集めて、やってもらいたいということを言っておるのにできなかった。単年度の責任の問題を追及しているのじゃありませんよ。前にやってこなかったやつは、今度単年度にいまの大臣のあなたの責任において処理するという、私は責任感の連続がなければ行政というものは困るんじゃないですかね、そんなにあっさり返事をされちゃ。どうですか、そこは。
#58
○国務大臣(坊秀男君) 去年のその集まりにおいて強い御要請のあったということにつきましては私もお聞きはいたしておりますけれども、そのときに、前鈴木厚生大臣が、その御意見に対しまして、これをもちろん大臣は尊重をされるというようなことをおっしゃったであろうことは、私も信じてこれに対して何らの疑いは持っておりませんけれども、そっくりそのままこれを実施いたしましょうというようなお約束を、おそらくは客観事態に照らしましてできなかったのではなかろうかと、かように私は考えておりますが、でき得る限り御趣旨を体して、そうしてそういう線に沿うて鋭意努力してまいったということであろうと思いまして、私もまたそういう方向で今度の予算編成をやってまいっておるのでございます。
#59
○藤田藤太郎君 そうすると、社会保障制度審議会がこれだけ各界を代表をして熱心にされた方向というものは、厚生省は紙を受け取って、いままで――あなたの責任を全部追及しているわけじゃありませんよ、ありませんけれども、ずっとこういう審議会なんというものが、とにかく受け取ったらどうでもいい、単なる諮問だから、ああそうですかといって聞いておけばいいということになるのでしょうか。そんなための審議会でしょうか。そこらあたりのところの大臣の心がまえをもうちょっと聞いておきたいんですけれどもね。
#60
○国務大臣(坊秀男君) もちろん各審議会の御意見というものはどうでもいいなんていうものでは絶対にないと思います。審議会の御意見というものは尊重してまいらなければならないものでありますが、実際にそのとおりにこれが実現できるというものではなかろうと私は思います。
#61
○藤田藤太郎君 そのとおりじゃなかろうなんていうような答弁はないですね。そこで、実際そんなことであなたの答弁をこのまま許すわけにはいかぬのですよ。
#62
○森勝治君 関連。佐藤総理は人間尊重のたてまえをとっておられることは大臣も御承知のとおり。それから、各種の政府機関の答申その他の問題についての意見具申についてはつまびらかにこれを承知して、行政の場で具体的に実施するということをしばしば言われておった。しかし、たとえば公務員の給与改定等はなかなかやらない、趣旨ごもっともです、しかし、やりませんということであった。某方面の話じゃありません。坊さんですから間違えられますから。そんなしゃれはさておきまして、あなたのお話を聞いていると、たださえ暑いこの席上が非常に暑くてうんざりいたします。なぜか、担当大臣としての熱意の一片だにない。なぜないか。前大臣の意見尊重というものは、おそらく尊重されたでしょうけれども、実施いたしませんと言う、これはもうなくなられた人を引き合いに出して恐縮だが、池田総理大臣よりあなたのほうがよほどずうずうしいと思う。あの人はうそは申しませんと言ってうそを言ったんだ。あなたは尊重するけれどもやりませんと言う。どういうことですか、これは。かりそめにも、いま全国民の視聴を一身に集めておりますこの当席上における担当大臣のこの問題に対する熱意というものに私は疑問というものを大きくいま持った。熱意があるのかないのかさっぱりわからない。職を賭してやるとかつて言ったあなたのことばとは思えない。先ほどの発言、かりそめにも軽率などというそしりを受けるような発言であったならば、これはあなたのためのみならず、この健康保険の行くえを見守っている国民は非常に落胆、がっかりするでしょう。落胆もがっかりももちろん同じであります。二重に悲しむという意味です。大臣、担当大臣として、所管の大臣として、歴代の厚生大臣が各種の問題、このことばかりじゃありません、約束いたしましたことがたくさんあります。それをあなたの手によって具体化する、この問題がいま具体化しようとしておるのに、先ほど藤田委員がしばしば指摘しておるように、生産は上がり、日本の産業は興隆したけれども、さてその生産、産業の興隆に重大なる役割りを果たした職場の労働者に対する反対給付というものは必ずしも期待されるものでない、上下の格差はますます広がっておる。あなたはあなたで、あたかもこの健康保険などというものが受益者負担のようなそういう発言をされることは、私ども非常にあなたの発言に、今後これから慎重に討議を重ねようというのに、その冒頭のこの席上で、各種の審議会なんか尊重いたします、尊重ということはそもそも何だ、日本語で言ってごらんなさい。何ですか、尊重というのは。尊重ということは、皆さんのおきめになったことを行政の場であまねく具体的に、率直に、しかも、迅速に国民福祉のために実施するということじゃないですか。尊重します尊重しますと、その辺の三百代言じゃない、まことに失礼だけれども。尊重するということばを使うならば、それはあなたが身命を賭してこの問題で国民福祉のために戦うと、大臣は戦うということばはきらいだから、戦うなんということばはやめますけれども、国民のしあわせのためにがんばる、こういう積極的な発言でなければ、こういう熱意でなければわれわれはばかばかしくて審議に参加できなくなってくる。どうか担当大臣として熱意のほどをひとつ示していただきたい。
#63
○国務大臣(坊秀男君) 私は、鈴木前大臣が必ずや尊重なすったということを申し上げております。その鈴木前大臣のあとを受けまして、私もまたこれを尊重いたします。しかし、尊重いたしましても、私は熱意とか、あるいは生命を賭するとかいうことだけで政治というものはやっていけないものだと思います。さればと言って、私は、何もそれを尊重したことを否定するとか、それを実現しないことだ、そんなことを私は考えておるのではございません。尊重した以上は、これはあくまでもその実現を期してまいるということが、これが尊重の意義だと私は思いますけれども、しかしながら、そういったような熱意とか意思とかいうことだけでもってはなかなか現実の政治というものは動いていかないということは諸先生のよく私は御理解、御存じくださることだと思います。さような意味におきまして、私は鈴木前大臣のあとを受けまして予算編成に当たってまいりましたけれども、私の力をもってしても、いまここに書いておりまする七千億余りということに相なったということを、これは私は決して十分なものだとも、あるいは、また、制度審議会の御意見を尊重してまいって、その尊重をしてまいるということがこれを実現することだというような立場に立ちましては非常にほど遠いものであるということは私もよくわかっておりますけれども、ぎりぎり力一ぱいにやりましたのがこの数字でございます。
#64
○森勝治君 尊重したけれどもほど遠いということは、裏を返せばどういうことですか、尊重しないということじゃないですか。もう一度あなた具体的に言ってください。日本語でしゃべってほしい、われわれにわかるように。
#65
○国務大臣(坊秀男君) どうもことばの解釈みたいなことに相なりましてはなはだ恐縮でございますが、ほど遠いということは、努力はいたしましたけれども、まだその域に達することに相当開きがあるということは、私どもにいたしましても非常に残念に思っておると、こういうことであります。
#66
○藤田藤太郎君 先ほどから私は宮澤さんと議論をしていましたね、大臣よくお聞きになっていたと思うのですが、それで、この答申は一九六一年から七〇年までの間にヨーロッパの六一年度並みの社会保障をしてくださいと、そういうことなんですよ。さっき経企長官も認めたように、その六一年から今日まで日本の生産力は四倍になっているのですよ、四倍に。その四倍の生産力ができているのに、労働者はいま産業労働力の六〇%をこえました、その六〇%をこえた労働者の所得が三〇%上がってないのですよ、実質所得で。そういうことなんです。社会保障もいま私たちがそういう状態の中で上げていかなければどうにもならぬからやってくださいということを言っておる。あなたは閣議の中でどういうぐあいに、それじゃ社会保障制度審議会の答申案を、当時の大臣のことまではおわかりにならないでしょうけれども、今度の予算編成のときに閣議の中でどうしてもらいたい、特に八月ですから、予算閣議には間に合ったはずですから、あなたはこの社会保障制度審議会が五年前にやったものを、ことしまた来年度予算に積んでくれと、総理大臣もお聞きになったとおり、どういうぐあいにがんばられて、それで大蔵省が予算の元締めですからあかんと言われたか、そこらの話をひとつ聞かしてもらわぬと、尊重しますけれどもできなかったのだということは、日本の経済の根本的なひずみと外へ向かってはそうおっしゃる、内閣の皆さん方は。ひずみを直すとおっしゃるけれども、ひずみを直す根本はどこにあるか、このことをなぜ閣議で主張して、そうしてこの問題と取り組もうとされなかったか、どういう発言をしてどういうことになったのか、そこらあたりをひとつ聞かしていただきたい。
#67
○国務大臣(坊秀男君) 四十二年度の予算編成につきましては、これは鈴木前大臣から私はバトンを受け継ぎまして、そうして四十二年度の去る国会において御審議、御決定を願った四十二年度予算でございますが、この予算の折衝には、大蔵省とは私は厚生大臣として折衝いたしたわけであります。そのときに社会保険、つまり医療保障の問題については、私が折衝いたしました重点は、いま御審議を願っておりまする政管健保等の臨時特例、これを実施していくためにどういうことにしたらいいか、つまり政管健保における非常な大きな赤字といったようなものを解消していくためにはどう持っていったらいいかというようなことについて私は大蔵省との折衝を続けておったわけでございます。
#68
○藤田藤太郎君 いや、私は、大蔵省との折衝もありましょうが、閣議でどう社会保障をこの鈴木大臣から引き継がれて閣議の中で主張されてきたかということを言っているんです。大蔵省との折衝じゃないんです。
#69
○国務大臣(坊秀男君) 閣議におきましても大蔵省との折衝におきましても、つまり今度の四十二年度にどうして難局を、つまり政管健保を中心とする赤字をどういうふうにして切り抜けるかということについて、主として閣議におきましても大蔵省に対しましても、そういったようなことで論議をしておったわけであります。
#70
○藤田藤太郎君 いや、私は、社会保障全体の問題をあなたに聞いているんですよ。健康保険の問題については、あとこれに続いてちょっと聞きますけれども、社会保障の根本議論についてあなたにお聞きしているわけです。だから、どうも政管健保の赤字だけを頭に置いて、社会保障というものを忘れられたということはないわけでしょうけれども、どうも熱が入っていないような感じに受け取れるんですけれども、どうなんですか。
#71
○国務大臣(坊秀男君) 私が就任いたしましたのは去年の十二月でございます。十二月になりますと、これは予算の折衝のほんとうのどたんばになってくるわけでございますけれども、その後解散が行なわれたり、選挙が行なわれたりいたしまして、ところが、予算はどうしても編成しなければならない、こういうような羽目に相なったわけでございまして、そこで、私といたしましては、この予算をどうして切り抜けていくかということで、私の主として胸の中がこれで一ぱいになっておったというようなことでございます。それに関連いたしまして、一体この日本の社会保障というものをどう持っていくかということについて私はいろいろと考えてまいったのでございますが、要するに、私はそういったようなことで、とにもかくにも、日本の社会保障の問題には重大なる問題がある、これは抜本的に根本的に考えていかなければならない、策定していかなければならないということも考えてまいったのでございますけれども、実際厚生行政として、その当面の問題をどうして解決していくかということが、私は就任して予算を編成して国会に皆さん方の御審議を願うということに相なったのでございます。そういうことでもってこの問題を解決して、そうしてほんとうに日本の社会保障、医療保障というものをどう持っていくかという、いわゆる根本策定と申しまするか、抜本的な対策と申しますか、それを策定していかなければならない、かように考えておるのでございます。
#72
○藤田藤太郎君 まああなたの話を聞いていると、健康保険で精一ぱいだったということで、一言で言えば落ちつくわけでありますけれども、厚生大臣におなりになるというときには、私はあなたばかり責めるのではなしに、厚生省の次官以下の職員の諸君も、厚生大臣ですから、厚生大臣が裁断をみな下すのだから、厚生大臣には厚生行政というものはかくかくのことをやらなければならぬということをもっとやはり大臣に教えなければいかんと思うのですよ。ですから、当面の問題だけで一生懸命だったと正直におっしゃっているのかどうか知りませんけれども、これでは私は一国の日本のいまの経済のひずみの中心省であります厚生省の大臣といたしましては困ると私は思う。私はそれじゃこれは一応置いといて尋ねますけれども、今度の健保の赤字対策とおっしゃっているけれども、私たち社会労働委員会でこの健康保険、政管健保の問題と取り組んだのは昭和三十二年ですね、当時五十四億の赤字が出て、それをどう始末するかということで、五十四億の赤字を何とかしてもらわなければならぬと一生懸命におっしゃった。そうして私たちは徹底的に反対したのはなぜかといったら、患者に負担させようという思想なんですね。そこで反対をした。そのかわりに、われわれは残念ながらあそこで結末をつけたのは、三十億の金を毎年積み立てて、経済や国民生活、医療費の上昇において、それはスライドとははっきりしていませんけれども、少なくとも最低三十億を毎年積み立てて政管健保のこの財政を守っていく、そのためにもうやりませんから、一部負担――入院料と初診料を負担してくれと言って一生懸命に頼まれた、これが一つ。それから、もう一つ出てきたのは、これは学者先生でございました、健康な者と病気になった者と同じに保険料を出しているのだ。病気になって診察をしてもらい、給付を受けることは健康な人より得をしている。よけい利益を受けるのだから受益負担は当然だという意見がここで出てきた。そういうことなら、あなたは社会保障の学者じゃない。社会保障はそういうことを研究するところか、学会というものは、と言って大議論をしたことを、十年前のことですが、いまだに思い浮べる。残念ながら、そのときには一部負担は反対いたしました。いまでも反対であります、患者にその負担をかけるなんて。そのとき、病気は個人の責任である、個人の責任だから、個人が給付を受けたりするのは、それは受益者負担であたりまえだということをおっしゃった。そして私は議論をして、そんなばかなことはない、こんなばかなことがあるかと言って大いに議論をして、その議論は消えた。そうしたら、そのあくる年から十億は打ち切って、たった五億しか出さぬ。健保が黒字になってきた。出す必要はありませんと言ってずっと出さぬでおいて、今度赤字になってきたら、赤字の処理は、昨年の白書に出てきたように、労使の負担で全部かぶせてやるんじゃあまりみっともないから、ちょっと出そうかと言って政府が百五十億出してきた。ことし赤字が出たら二百二十億で、七百五十億、あとの五百億あまりは被保険者のところまで議論がいったらそういう議論になるのだけれども、まあ非常に受益負担論が出てきてこれどうなるのですか、前のことを知らぬとおっしゃるのですか。いまのようなことになってくると、前のことを知らぬ、いま私が大臣をしているのはことしだから、ことしの分だけはおまえら出せ――おまえらということじゃなくても、被保険者が出せばいいのだ、それで償えばいいのだという、それは食言ですよ。その食言の歴史はたな上げをしておいて、ことしの負担は労使によって負担せよ、患者が負担せよというような議論が、これが健康保険の始まりですわ、去年から。その私が一番先にあなたや経企長官に質問したそこから問題が出発してきている。それで、ちょっと健康保険に赤字が出てきたから、また昔の議論を繰り返して、白書にまででかでかと出ているのだけれども、これから労使の負担で一切社会保障をやっていくんだということを言って、経済計画の中には、保険料の値上げでまかなうのだという言い方をしていた。こんなことであなたの観念的な責任論、厚生大臣という職に対する責任論といまのお話と、まあちょっと言い過ぎですけれども、場当たり的ですね。場当たり的な厚生行政というものが大臣によって行なわれるということは、私は残念でしようがないのです。だから、もう繰り返しませんが、一番最初に明確にしたかったので社会保障とは何かということを繰り返した。その社会保障の富や所得の分配というしん柱が、厚生行政というか、あなたのしん柱がないからこういうことになってきたのじゃないですか。しん柱があれば、生産力が五倍になっているのです、三十五年から。いまの話は三十二年です、四倍になっているのです。それだけなっているのに、国民はそれで三〇%足らずの所得しかない。それに、全部その発想のしかたは使用者と労働者の負担じゃとかかっていく。弱い者いじめの行政というもののきっかけを厚生大臣はおやりになるというと、厚生大臣は国民の政府なのか経営者団体の政府なのかとまで極論をしたくなるわけです。だから、あなたは、いまの社会保障の議論ですけれども、社会保障のそれだけのはっきりしたものがあるのに、いやいや、どうも目がつかなんだ、これだけやってきたのだというだけで、正直でいいか知りませんが、それだけでは国民はいまの内閣の厚生大臣を任命したのじゃないと私は思う。いまの勧告もしかり、健康保険の昭和三十二年からのあと処理もしかり、まずこの責任からひとつ政府はとってもらわなければ、私たちとしては、健康保険の今度の赤字は君たちで持てという議論には、なかなか私は屈することができないのです。そこらをお考えになったことがありますか。この国会に来て、また国会の議論の中でお感じになったことがあるのでしょうか。私はまずそこから聞きたいのですよ。厚生省のものの考え方をただしたい。あまりにも一貫性のない行政というものがかなりあるのです。社会労働委員会というのは、社会保障に限って、そんなにみんなが角を突き合わして議論する場じゃないのです。どうしたら国民の生活を向上さすことができ、国民の生命、健康が守れるか、この議論をするのが社会労働委員会ですよ。われわれの対象とするところに資本家階級や大会社や産業があるわけじゃない。私たちの労働行政にしたってそうです。厚生行政にしたってそうなんです。働いている労働者と困っている方々、みんな勤労国民の生活をどうしよう、病気をどうしよう、突発した事故をどうしようということをやるところですよ。
 私はもう一言このことについてつけ加えて、大臣にあらためて御意見を承わりたいと思うのでありますけれども、この間できました公害基本法で、私たちはここで連合審査をやろうと念願しておりました。しかし、残念ながら連合審査をせずに終わったのであります。あの公害基本法で厚生省の環境衛生局が事務局を担当する、そうして目的の第一が人命と健康を守る、あわせて、経済との調和のもとに施策を立てるのだ、こういう生産優先のいまの経済の動きを見たってそうですよ。片一方は四倍になる、労働者はたった三〇%しか賃金が上がっていない。こんな状態で生産第一主義で行なわれている今日の経済政策の中で、人命と健康を守る、あわせて、経済と調和と言ったって対策なしという結論以外には何もないじゃないですか。これをあなたは厚生省の環境衛生局で事務局を担当するというのですよ。あなたはそのときに何とおっしゃったのですか、その閣議で。いかにおとなしい社会保障制度審議会でも、全部が腹を立てて、そういうものの考え方は間違っておるということを政府に出したでしょう。大臣、どうお考えになられたか。この三点を大臣はどう解明されるのか。この解明のもとに初めて私はこの健康保険法の問題に入っていかなければならぬと思うのです。さきの経済のバランスの問題と、この具体的にいま申し上げた三点、これを解明してくれなければ、われわれは法案の審議にどうして入れるのですか。全く基本的にそうですよ。労働者も勤労国民もそう思っておりますよ。この改正案は、単に政府管掌の健康保険だけでなしに、共済健保から、しまいには国民健保までこれが派生していく問題です。患者からしぼり上げるそんな社会保障がありますか。今度の保険の場合の問題その前提になるこのつながっておる問題を厚生大臣は今日どう考えておいでになるか、これが前提じゃないですか。この前提をつまびらかにせぬ限り、そっちに入れないじゃないですか。まだ基本的な問題があります。私は次に言わなきゃならぬのは薬の問題であります。医療制度の中で、全体が、医者も看護婦も病人も、保険者も被保険者も医療制度の中におるのに、ひとり薬をつくる製造業者だけは、自由主義経済の中で大手を振ってこれに取り組んでいるじゃないですか。(「そのとおり」と呼ぶ者あり、笑声)そうでしょう。まあこの問題はあとにしますが、そうでしょう。この問題は重大な問題ですよ。これはあなただけに言うのじゃない。しかし、これはまあ私は、前段の三点を厚生大臣はどう考えるか、このことを明らかにしなければ、法律案の審議に入れないじゃないですか。
#73
○国務大臣(坊秀男君) 私が就任したときに、何も政管健保の赤字を解決することを目的としたものでもない。そういうことで能事終われりと私はもちろん考えておりません。ところが、就任いたしましてすぐ逢着いたしましたのは予算の編成ということであったために、そこで、この予算の編成をどうやってしのいでいくか、切り抜けていくかということで、そのほうへ頭を突っ込んでまいったわけでありますけれども、そこで、国民の健康にして文化的な生活というものを確保していくためには、これは社会保障の問題でありますが、この社会保障の中の医療保険をそのためにどうやっていくかということにつきましては、医療保険の中には非常にたくさんの脆弱な点、不合理な点、そういったようなものが露呈されておるということは、これは私にもよくわかったのでございます。そういったようなことを是正していくというためには、よほど腹を据えまして、この複雑にして非常に広範にわたるところの問題、たとえば制度が非常に分立しておるとか、あるいは、また、給付率や、あるいは費用の負担といったようなことがたいへんまちまちであるということだとか、また、単に政管健保だけでなくして、保険制度の中には財政が非常に不安定であるというような点だとか、仰せられました医療費の問題といったようなものがたくさんございますが、こういったような問題を取り上げまして、そしてこれに対して根本的な対策を策定していくというためには、よほど腹を据えて、よほど準備を整えてまいらなければならない。こういうことは、藤田委員もその道におけるほんとうのベテランとして御理解くださることだと思いますが、そういったような大問題に逢着いたしまして、先ほどから申し上げておりまする、政治における非常な激流といったようなものがあったわけでございますが、これは国民に対しては何らの申しわけにならないと思います。そんな激流を起こしたということは、これは政治がそういうことをやったのであって、その責任が政治にあるということでございまするから、国民に対しての申しわけを私はしようとも思いませんし、また、できることではないと思いますが、現実の問題といたしまして、そういったようないわば非常な動揺、政界が激動をしておるという中におきまして、いま申しましたような根本的な対策というものができなかったということは、私は国民に対しても非常に申しわけないことだと考えておりますが、そういったようなわけで、しかしながら、このままほうっておいたのでは、政管健保というものがこれはどうしてもたいへんな危殆に瀕するというので、さしあたってこの問題を解決しなければならない。そこで、私は、まず第一に、この問題を解決していくためには政府が一番力を入れなければならない、こういうことで、政府にささえをやらすということと、それから、また、この保険の方式、とにかくいま保険の方式をとっておりますので、保険財政が非常に窮迫しておるということを救済していくためには、保険の料率というものに対しても若干の引き上げということをやっていかなければならない。それから、ただいま御指摘になられました一部負担といったようなことにつきましても、何も私は受益者負担などということを考えているのではございませんけれども、この危機に瀕した保険を救っていく、これを立ち直らしていくためには、事業主も、それから被保険者も、それから現に給付を受けるという方々も、これは一応応分にひとつ危機を突破するためにささえをしていただきたい、かような考え方でもって今度のこの特例というものをつくってまいったのが私の趣旨でございます。
#74
○藤田藤太郎君 大臣ね、あなたの思っておられることはわかりました。しかし、あなたの思っておいでになることはわれわれは納得できないんですよ。いまのことしの赤字をどうするかということだけでは片がつかぬじゃないですか。私の申し上げている三点というのは、社会保障制度審議会の答申と去年の約束、これが一つです。二番目は、昭和三十二年の政府が負担をしていこうという赤字に対する約束――一部負担はもう今後やりませんという約束。そうして、経済がその三年後の三十五年から生産力が四倍にもなっているのにほうっておいて、赤字になってきたら受益者負担でやっていこうなどという、この間の責任はどうしてとってくれる、これが二点。もう一つ、生命に関係をして、公害基本法のときに、人命尊重といわれる佐藤内閣にしてはあるまじき経済の調和ということでものを処理していこうというものの考え方、これは厚生行政の厚生大臣の基本的問題だと私は思う。この問題の解決を一つ一つわれわれに納得いくようにやってもらわなければ法案にはいれないじゃないですか。
#75
○国務大臣(坊秀男君) ただいま仰せられました公害基本法の問題でございますが、これにつきまして、経済との調和ということにつきましては、公害特別委員会でもしばしば論議されたところでございますけれども、私どもの考え方といたしまして、あの公害基本法は、経済との調和ということを文言としてうたっておりますけれども、この経済との調和ということは、われわれのいやしくも健康にかかわるといったようなときには、これはもう経済との調和なんということは考えていない。いやしくも健康に障害がある、害があるといったような場合には、これは経済なんというものは考えの外に置いて健康を守っていくということでございますけれども、さらに、その健康を守るということから一歩進みまして、やや快適な生活をしていこう、つまり生活環境というものを向上さしていこうといったような場合には、これは経済を無視するわけにはまいらない。そういったような程度まで生活環境というものを快適な生活にするために引き上げていくときには、ひとつ経済との調和をはかろうじゃないか、こういうふうに法律ができておりまして、すでにそのことをさらに明確にするために、与野党の間におきましてそこのところをはっきりさせるために法案の改正もそこに触れて行なわれたことでございまして、いやしくも健康ということにつきましては、これはもう絶対のものであるということは、この法案におきましてもはっきりとさして、修正におきましてもそこのところが強調されておるということであります。
#76
○藤田藤太郎君 目的の中から経済との調和をはずして、適切に今後政府の経済計画でおやりになるなら、いまの大臣の話もわれわれもある程度理解ができる。どうしても目的のところからはずさぬというので、それじゃ一項、二項をつくって、二項にそれを書くというようなことで厚生大臣は自信があるのかどうか。そういうことについて人命の問題についてどうお考えになっているのか。さっき正直に、健康保険で一ぱいだったと言われたけれども、それはどうですかね。それだけでは答えにはならぬじゃないですか。これが一つですよ。もう二つある。もうちょっとそのいまのところを御意見を聞かしてください。
#77
○国務大臣(坊秀男君) 目的という条項からはずさない、こういうことで非常に御非難を受けておりますけれども、あの文言によりまして実にはっきりした、修正をしなくても、私どもといたしましては、法律解釈といたしまして、健康は絶対である、健康はもう何よりも優先するのだ、こういうことが明瞭になっておりましたけれども、さらにこれを修正することによりまして実にこれは明瞭になったと、こういうふうに私は考えております。
#78
○藤田藤太郎君 それも一つ責任ですね。そうでっしゃろ。あんなはそうなったと言われるけれども、私はそこらもどうも厚生大臣は無関心、無関係やという感じがしますから、一言この問題の三点のやつに触れた。
 二番目の、昭和三十二年以後の健康保険の問題についてあなたはどうお考えになりますか。
#79
○政府委員(熊崎正夫君) 三十二年当時のことでございますが、藤田先生御指摘のように、三十二年に非常に多額の赤字が出まして、国庫負担につきましては三十億を投入し、それから保険料率の改定をやり、あわせて一部負担制度を創設いたしたわけでございます。当時の一部負担を創設しました趣旨につきましては、私どもも当時の速記録を読みまして、いろいろと当時の大臣、局長の答弁内容は承知をいたしております。しかし、一部負担制度自体につきまして、厚生省側がこれを将来廃止するというふうなことを申し上げた中身につきましては、私は承知をいたしておりませんので、この点はあるいは藤田先生の御趣旨と違うと思いますけれども、ただ、一部負担制度につきましては、受益者負担ということばは確かに適当ではないというふうに私どもは考えておりますけれども、しかし、医療保険制度において一部負担制度をどのように考えていくかということについては、その費用負担の公平かつ妥当な方法をどういうふうにして考えていくかという問題のあるところでございまして、これは必ずしも一部負担制度ができたことによって医療保障ないし社会保障が後退するというような考え方は必ずしもとるべきものでもないのではなかろうかというような考え方があるわけでございます。したがいまして、欧州の先進社会保障の各国におきましても、一部負担制度というものはある程度導入されているわけでございまして、中身につきましてはいろいろと多様でございます。しかし、非常に医療保障が進んでおります国におきましても、また、完全に税金でやっております国におきましても、やはり何らかの患者の一部負担制度というものは現に存在をしている。そういう意味におきまして、一部負担制度を完全に捨ててしまうということにつきましては、私どもは非常に問題があるというふうに考えているわけでございます。しかも、今回の一部負担制度につきましては、昭和三十二年に一部負担制度を創設をいたしましてここ十年間、所得も伸びましたし、また、賃金も確かに伸びておりますし、片や医療費も非常に伸びております。それに応じまして一部負担制度は当時の金額がそのままに据え置かれておりますので、これを若干上げるということとあわせて、あまり一部負担を上げ過ぎても、現在の初診の、あるいは入院の一部負担を上げ過ぎても患者にはたいへんな御迷惑をかけるという点を考えまして、それに肩がわりするものとして、患者の八〇%ないし九〇%の方々がお医者の門をくぐるときに、薬をもらってお帰りになるその場合に、少額のきわめて少ない定額の金額を負担していただく。これは、現在の入院、外来の一部負担の肩がわりとして考えるというふうな考え方に立ったわけでございます。いろいろと御意見はあろうと思いますけれども、一部負担制度自体が医療保障の完全な後退だというふうな考え方は私どもは必ずしもとっておらないわけでございます。
#80
○藤田藤太郎君 一部負担の問題についてはあとから申し上げることにいたします。私のいま大臣に言っている問題の焦点は、政府が三十億を持って毎年その金を積み重ねて、経済の変動に応じて政管健保を守っていくということを約束したことを実行しない。このことの責任はどこが持つかということを言っている。これは、熊崎局長、どういうふうに御答弁なさいますか。
#81
○政府委員(熊崎正夫君) 確かに当時の政管の赤字対策として一般会計から三十億を繰り入れましたときに、当時の大蔵大臣並びに厚生大臣も、この三十億は当分の間一般会計で負担をするというような御言明がございました。しかし、その後、政府管掌健康保険のほうは経営内容が非常に好転をしてまいりまして、三十三年度以降黒字になったわけでございます。そうして、一時、積み立て金も三百億近くの、二百億をこえる積み立て金をかかえるような状態になりまして、予算の折衝の段階におきまして、三十億にのぼる国庫負担をこの際一般会計から投入することは適当ではないというような話し合いによりまして、一部負担の三十億はその後減ってまいりまして、一時はゼロになりましたけれども、その後医療費の次々とアップする段階におきまして、やはり医療費の値上がりに応じて政府管掌健康保険もある程度一般会計から投入すべきだということで、五億程度は三十七年以降出しておったわけでございます。ところが、先ほど大臣が申し上げましたように、昨年の政管の臨時対策のときにこの五億を百五十億にふやしまして、今回はさらにその五割増しの二百二十五億を負担したという経緯になっているわけでございまして、黒字の際に一般会計から負担をしなかったということにつきましては、確かに当時のいろいろな事情もございましたけれども、藤田先生の御指摘のとおり、あるいは適当ではなかったという御非難はあろうかと思いますが、これも当時の財政状態としてはやむを得ない処置ではございましたが、しかし、いずれにしましても、非常に金額は少なかった。政府管掌健康保険の一般会計負担が、昨年からことしに引き続きまして、私どもとしては、五億に比べれば非常に多額の金額が入っておるということで、ある程度このような非常事態に対処し得る予算措置はできたのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
#82
○藤田藤太郎君 どうも、私はそこのところが納得がしにくいんです。そして、政管健保というのは組合健保と違って、中小企業を中心とする政管健保だから、何とかして今後間違いのないように守っていこうじゃないかと、全くあの社会労働委員会ではそれが一致して、大蔵大臣も厚生大臣も約束をして、一年もたたぬ間にそれをやらないようになった。黒字ができたといいますけれども、それじゃいまはどうですか。赤字になって、そして、赤字対策は、また先のことを言わんならぬことになるけれども、労使の負担で処理しようと、そんなことがどうして私らに納得ができるんです。経済の伸展に応じて健保の黒字が出た、けれども、それだけのものは出していこう、積み立てていこう、いずれ赤字になったときのために、そういうのが保険経済を守っていく根本趣旨じゃないんですか。私はそう思うんです。そのことをほっておいて、今度赤字になったからといって、去年は百五十億、それは黒字になった分を全部食ったんです、その前の年に。食ってしまって赤字になったから、今度は特別赤字になったから、これだけ出すから、あと国民で負担せいというものの考え方でどうだろう。たとえば国保が定率で補助をされております。この前の社会保障制度審議会のときに、厚生大臣は、政管健保のこの問題については、やっぱり中小企業、零細企業であるから、今度は定率の問題も考えなきゃなりませんということはっきり言っている。去年の大臣はそう言うて、ことしの大臣はそれを言わぬ。これは一人一人によって主観があって違うでしょうが、厚生行政というものは続いているわけです。この続いているものの考え方、私が一番腹に据えかねているのは、昭和三十二年のあの当時の約束を果たしもせんといて、そしていま赤字になったから労使のほうにぶっかぶせて赤字解消をしようというものの考え方が私は腹に据えかねるのであります。そんなんなら、抜本対策抜本抜策とおっしゃるけれども、抜本対策ではどうする。抜本対策では、二割とか三割の定率の国家負担をここでちゃんと約束されぬですか。私は抜本対策の内容までいま触れることはしませんけれども、それをおやりになるつもりなんでしょうか。この問題は大臣は聞いておられると思うのですけれども、熊崎局長が当時のことを代弁されているわけですけれども、熊崎局長が答えたとおりなんです。それをほったらかしにしといて今日まで来て、まずその問題をどうわれわれに理解さす、そしてその上に立って今度のような処置をとっていこうというなら、まだ議論の焦点が合うてくると思うんです。議論が合うてこないじゃないですか、長い間の問題だけど。合うてこない問題をそのままにしておくから合うてこない。それでこれを負担せい負担せいということになってくるんじゃないですか。それで、今度その次の問題は、薬価の一部負担ですよ。これはだれが得するんです。これを出したら医者が得をするでしょうか、だれが得をする。看護婦さんが得をするでしょうか。だれも得しないじゃないですか。これは薬価基準をはじめ、薬品の制度の根本的な問題に触れざるを得ない。しかし、これはあとにして、私はそうはやりませんけれども、その一部負担をしていこうというものの考え方をこの間も私は聞きました。そんなことがあるかと言ったら、今度は均衡やという話を聞きました。全くもって社会保障の概念からはずれてしまう。社会保障というものは国が負担せないで労使から取り上げたらいいと、つじつまを合わすだけの問題として提起されていると私は感ずる。多少違った感じの人もあるかもしれません。そういう問題を前段に解決しないでおいて、それでこれをやれやれと言ったってなかなか賛成できるはずがないじゃないですか。それから、前の問題がありますけれども、まずこの問題をどう解決していこうとされるんですか。私は、この問題を解決しない限りは、次の本論に入れないんです。
#83
○政府委員(熊崎正夫君) 国庫負担につきましては、かねてから定率の国庫負担をすべきであるという主張がありますことは私どもよく承知いたしております。ただ、どの程度の定率の負担をすべきかということにつきましては、これは慎重に検討しなければならない問題だと思っております。現在、国民健康保険につきましては、定率四割の給付がございます。あと五分は財政調整に回しておるわけでございますが、国民健康保険の場合の補助金は、いわば事業主というものが国民健康保険の被保険者の場合にはないわけでございまして、これがいわば国が肩がわりをするというふうな趣旨を含めまして、しかも、さらに低所得者階層が多いということで国庫負担の定率化を実現をいたしておるわけでございます。ところが、被用者保険につきまして国庫負担を導入する、どのような形で導入するかということにつきましては、定率がいいのか、あるいはその他の、たとえば低所得対策を行なって、それに対しての国庫負担をするのがいいのか、いろいろと議論の分かれるところでございます。たとえば社会保障制度審議会におきましても、このような被用者保険につきまして定率の国庫負担をするのがいいか、あるいは低所得対策をやって、それに応じた国庫負担をするのがいいのか、これにつきましてはある程度の御答申をいただいております。私どもとしましては、被用者保険につきまして、率で行くのがいいか、あるいは国庫負担で別の形でやるのがいいかということにつきましては慎重に検討をして、これこそまさに抜本対策の際に方針をはっきりきめるべきであるというふうに考えておるわけでございます。
 ところが、今回の二百二十五億の国庫負担につきましては、そのような考え方とは全然別の考え方になっておるわけでございます。これは、先ほど大臣が申し上げましたように、昨年の暫定対策に引き続き、重ねての暫定対策をお願いいたしております。昨年百五十億程度入れましたけれども、それでもなおかつ赤字が続きますために、さらにそれよりも国庫負担をまずなるべく多く入れて、残りの分を保険料なり、あるいは患者負担でしのいでいくという形ででき上がった次第でございまして、いわば暫定対策としての国庫負担でございますので、藤田先生御指摘のような定率、あるいは低所得対策を入れた国庫負担、これにつきましては抜本対策の際にすべての問題を含めた問題と一緒に前向きで私たちは検討すると、こういう考え方に立っておるわけでございます。
#84
○藤田藤太郎君 定率とか定額とか、厚生大臣が言ったそのことについて、いまあなたの答弁ですね。これは抜本対策のときに行なうことでありましょう。しかし、私は、ものの考え方として、三十億を毎年出して、経済に見合って政府管掌健保を守っていこうというこの大精神は、定率と言おうと定額と言おうと、そのことだけは貫いてもらわなければならないということを言っているんです。それは貫かれぬでこのままにしておいて、それで、今度の問題で、大臣のさっき正直な話がありましたけれども、いまの問題に取り組むんだということをおっしゃいました。これだけを私は責めません。責めませんけれども、われわれから見た厚生行政というものは、そういう基本的な問題をやはり何とか方向をつけてもらって、それでこの審議に入っていく、内容に入っていくということにしなければ、前段が解消しないじゃないですか。そうでしょう。去年もいろいろありました。ありましたけれども、去年の問題は大体私たちが理解できるように問題か――私はなぜこの問題をここまで言うか。保険局長がおっしゃいましたけれども、病気になった者が他の健康な人よりか利益を受けているから受益負担をするんだというものの理屈を頭にして、あなたはいまおっしゃいませんでしたけれども、そんなことを思う国民がどこにおりますか。日本の勤労者、労働者階級には、そんな、隣の人が病気になって、あいつはお医者に見てもらって給付を受けているから、われわれより得をしているんだという考えの人がきょうここの傍聴者の中にでもおるでしょうか。なぜそんなところへ負担をさして赤字解消するということになるのか。あなたは外国で一部負担がたくさんあるとおっしゃいました。しかし、外国の保険経済を見てみなさいよ、一部負担との関係を。ただ一部負担という名で出ている分だけ言えば、もっともらしい、外国にもあるから日本もやむを得ないと、こうおっしゃるかもしれぬ、思う人があるかもしれぬが、イギリスは保険制度の全体の経済を八〇%国が見ているんですよ。そうでしょう。これはうそも隠しもしない事実の問題ですよ。フランス、イタリアは三・一、二・三対一というぐあいに使用者が多額を負担をしているわけですからね。その上に立って一部負担がある。これは制度が私はよくわからないけれども、日本は、本人、扶養家族とも、国保では七になりましたけれども、いまの政管健保の家族は五割負担ですよ。そうでしょう。ドイツではフィフティー・フィフティー、日本と同じように労使が折半して保険経済を負担をいたしております。だけれども、一部負担というような概念は入っていません。処方せん料が二十二円かそこらだ。日本の金にしたら、いまの経済からいったら十円ぐらいです。これを限度にしかドイツにはあなたの言われる一部負担というものは入っていないじゃないですか。だから、単に一部負担だけを掲げて、よそも一部負担をしているから日本もするのはあたりまえだということになるでしょうか。一番最初の社会保障の議論にまた返ってこざるを得ないじゃないですか。そういうものがある。その上の理屈に受益者負担だという問題が出てくる。これでは日本の社会保障の、主権在民の国家における主権者である国民を守っていこうという制度というものが前進しないじゃないですか。このことを私は皆さん方に――皆さん方じゃない、厚生省から聞きたいわけです。
 だから、私は、前段の問題と社会保障、せっかくの総理大臣直属の社会保障制度審議会の全般の社会保障のバランスをどうするか。児童手当もあるでしょう。いろいろの問題も含めて、社会保障をどうするかという問題についても、残念ながらしっかり取り組みができていない。この国会の公式の場で約束されたことも実現をされていない。そうして赤字は出てくる。あとで修正案を出されたようでありますけれども、しかし、政府の意思というもの、厚生省の意思というものがそんなことで日本の社会保障は進むのであろうかということがまず一番前提じゃないですか。この前提をわれわれに納得させれば法案の審議に入れますが、どうでしょう。
#85
○政府委員(熊崎正夫君) 藤田先生のおっしゃることはまことにごもっともなところが多いと思います。ただ、私どもとしましては、今度の一部負担の問題につきましては、でき上がるまでに非常にいろいろと議論を戦わしたわけでございます。わが国の保険制度といいますものが一番端的にこれを模範にしましたのはドイツの健康保険制度でございます。ドイツの制度は、藤田先生は非常にお詳しいわけでございますが、そもそも、やはり国の負担はやらないのをたてまえにいたしております。全然国の負担はやらないで、組合の料率でもって調整をするという形になっているわけでございます。一部負担制度につきましては、御指摘のように、きわめて少額の一部負担があるわけでございますが、しかし、私どもとしましては、現在の政府管掌保険制度の危機を乗り切るためには、国庫負担を全然導入しないで一部負担を導入するというふうな考え方は絶対にとるべきではない。しかし、国庫負担をある程度導入するならばば、金額につきましては、御指摘のように、必ずしも十分ではないと私どもは思ってはおりますけれども、しかし、相当程度の国庫負担を導入するならば、やはりそこでもってほんとうからいえば料率は国庫負担が導入されなければ相当な料率の引き上げにならざるを得ないわけでございまして、私どもが概算をいたしましても、現在の政府管掌健康保険は千分の八十四、五をとらなければならないような財政状況にあるわけでございます。しかし、それを防ぐために国庫負担の獲得に大臣がたいへん御努力いただきまして、それで国庫負担を大幅にとることによって料率の引き上げもある程度押え、しかも一部負担につきましては、この際国庫負担をこれだけとったために、このような難局を処理するためには患者負担をある程度負担していただくのはやむを得ないということで考えました考え方でございます。その辺は、私どもの現在ピンチに立つ政府管掌のやむを得ない暫定臨時対策ということで御了解をいただく以外にないわけでございます。
#86
○藤田藤太郎君 だいぶ問題の中へ入ったようなかっこうですけれども、私は臨時的にと言っても、そんな病気になった者に追い打ちをかけるなんというようなものの考え方が、人間の健康と生命を守っていくという厚生省の中から何が出てくるのか。まさか皆さん方そうお考えになってはいない。どっかの圧力で押えられて、自分の負担を軽くするためにここからとれということになっているのか、そこらのところを正直におっしゃったらどうなのか。そうでしょう。料率が千分の八十何ぼになる。それがいま折半だから、おれのところにかかってくるから、それを限度を押えて、答申を見てみなさいよ、五%以上はいかぬ、それで患者から一部負担でとれということを押しつけられて、それは厚生大臣にしても局長にしても、まさか一億の国民の中で病気になった人が利益を受けている、得をしていると思う人は一人もいないと思う。あなたもその一人だと思う。それをそんなものにかぶせてくるなんということは、機構上の問題が悪ければ機構上の問題を直す。人道上の問題として、病気になった者から金をしぼり上げるなんということを実際問題としてお考えになっているんでしょうか。私はそんな気がするんです。これはやかましいことを言いますけれども、だから、もっと正直におっしゃったらどうなんですか。あなた方の一番最初に触れた労使の負担で社会保障を伸ばすのだということも、回り回ったらみんな被保険者にかぶってくる。そういうぐあいに前段で言いながら、ほんとうは病気になって苦しんでいる病人からまたこれをしぼり上げるなんというものの考え方がどうして出てきたか。私らはどんなことを考えてみたって理解に苦しむわけですね。そこらあたりが一つもすっきりせぬ。それで受益負担ということを言われると、いや、そうじゃない、そんなことは言いません、今度負担の均衡だというふうなことをおっしゃってみたって、国民は納得しませんぜ、それは。医は仁術と昔からいわれてきた。人間の生命と健康を守っていくお医者さんは生命の神といわれた。そこのところの医療制度全体のところに、どうすればこんなことをしないで済むかということを、抜本対策というんですか、それを何か先ほど非常に説明が長くありましたけれども、二年の時限立法だと、こうおっしゃっておりました。これは二年以上あれで押えねばならぬものを、抜本対策は三年も四年も続けるつもりだったんですか。このままあれさえ通ればほうっておくつもりだったんですか。そこらあたりのことも聞きたい。この間の質問の中では、来年つくるんだったということですけれども、そういうあいまいさ、中へ入れば疑問点がいっぱいあるわけですが、私はそこらの基本的な問題が一つも解消していない。だから、熊崎さんはいろいろおっしゃるけれども、あなたの一部負担論にしても、これを見てみて、保険経済と社会保障の概念についてどう関係してくるかというような点から、あなた、これは一目りょう然ですよ。資料がここにありますよ。これは間違いないと思う。
 それから、まだ私はつけ加えたいのは、それは労働者はどんな生活をしているのか。受益負担の関係は、二、三年やってみると、受益負担より社会負担の比率のほうがずっと高う上がっているわけですね。そうしてみたりしている今日において、その根本的な問題をその場限りでものを言って、そうしていままで言ったことは責任を持たない。それで、基本的な問題については一言で答えるぐらい精神にかちっと大臣が腹に据えておられるかと思ったら、そうでないという状態で、赤字対策だけをここへ持ってくるなんということは、少しこれはひどいんじゃないかということです。だから、先ほどのことをまずひとつ解決してくださいよ。そうしたらわれわれは具体的に入りたい。入って、たとえばいま問題になっている全体の総医療費の一兆三千億の中に四二%も薬剤の占める割合だなんということが、これはわれわれにそんなものを負担せいというよりか、政府の責任ですよ。そうじゃないですか。何でそんなことになっているのか。それが片方できちっと制度があって、片方で自由主義、自由経済があると言ったら、わっとさっきどこかから声が出たから、私は次にと言うたけれども、事実問題じゃないですか、これは。この赤字というものはどこから出てきたか。われわれが、被保険者が負担したらだれが得するのかということを明らかにその次に言わなければ、問題は前に進まぬじゃないですか。これはこの次の議論になるでしょうが、社会労働委員会ですから、的確にさらけ出して議論したらいいと思う。われわれは社会保障の事実関係を明らかにしたほうがいいと思うんです。その全体の解決をせぬと、ただ今日こうやからどうやからと言って、それは厚生大臣は赤字だから何とか解決したいという心配もおありでしょう、担当大臣として。しかし、それはおありでしょうけれども、そこらあたりは、もうちょっとはっきり前段を明らかにして次に進むということにしてもらわなければ、これは第一ラウンドから第三ラウンドに一ぺんにいくということでなくて、第二ラウンドに移っていくのだから、それはやっぱりそうしてもらわないと困ると思うんです。
#87
○政府委員(熊崎正夫君) 私はありのままを申し上げておるわけでございまして、私の申し上げることに隠れたものは何もございません。今度の入院、初診時の一部負担の金額を上げたという理由につきましては、すでに大臣からも御説明をいただいておるわけでございますが、標準報酬の三十二年からの伸びを見ますと、三十二年度を一〇〇といたしまして、四十二年度は二四八になっております。二倍半に標準報酬が上がっておるわけでございます。それから、医療費のほうは、入院を三十二年を一〇〇といたしますと、一人当たりの金額は、四十二年度は二八四ということで、二・八倍に上がっておるわけでございます。これはむろん被保険者本人でございます。また被保険者の外来、入院外につきましては、三十二年を一〇〇といたしますと、四十二年度は五三九、つまり五倍半近くになっておるわけでございます。当時三十二年度に初めて初診、入院時の現行の百円、三十円が制定をされましたが、医療費の伸びは非常に激しく伸びておるわけでございまして、その主要原因は、御承知のように、外来の本人の一人当たりの金額が非常にふえておる、こういうことでございます。ただ、医療費がふえたということだけでもってそれにスライドして一部負担をふやすべきだというふうな考え方は私どもはとりたくもありませんし、今回もとっておりません。しかし、片一方で標準報酬のほうは二倍以上の伸びを示しておるといった場合に、やはり現行の一部負担百円、三十円を二倍程度引き上げることについては、このような危機に立つ政管健保の現状からいえば万やむを得ない措置ではなかろうかと、こういうふうに考えて倍額の引き上げを立案いたしたわけでございます。本来から言えば、いま外来の一人当たりの金額を申し上げましたように、一〇〇が五三九になっているわけでございますから、五倍くらい引き上げるということで、たとえば百円を五百円ぐらいに初診時の負担を引き上げるということになりますれば、何も薬代一部負担の今度のような対策をとる必要はないわけでございます。ところが、初診の一部負担百円を五百円にするというふうな考え方に立った場合に、これは外来の患者であっても、病気になったら五百円札を用意しなければならぬということになれば、せっかくの医療保障、つまり早期治療、早期受診を完全に抑制をするということになりますので、これはやはりせいぜい引き上げる幅は倍程度ではなかろうか。そうすると、やはりどうしてもそれ以外に負担していただく別途の考え方を考えなければならないということで、これは医療費の中身の薬の使用量がふえておるとかふえておらないとかということと全然関係なしに、患者がお医者さんにかかる場合に共通的に負担するものは何であろうかというふうに考えた場合に、注射でもなし処置でもなし、やはり薬の負担をお願いする以外にないのではなかろうか。しかし、その薬の負担につきましても、きわめて少額に、一日一剤十五円という負担でひとつお願いをしたい。いわば初診時の一部負担を五倍程度引き上げるのがいいか、あるいは患者の薬の外来の低額の負担がいいかどうかというふうな考え方で考えてみまして、それで薬の少額の負担をひとつお願いをしようというふうな考え方に立ったわけでございまして、これは何もほかのほうの、外側からの話とか要求とか、そういうことじゃなしに、私どもが暫定対策としてぎりぎり考える最小限度の患者一部負担という考え方に立って立案をいたしたわけでございますので、その点は御了承をいただきたいと思います。
#88
○委員長(山本伊三郎君) 速記をとめて。
  〔速記中止〕
#89
○委員長(山本伊三郎君) 速記をつけて。
 藤田君の質疑は続きますけれども、ここで暫時休憩いたします。
   午後四時五十三分休憩
  〔休憩後開会に至らなかった〕
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト