くにさくロゴ
1967/08/16 第56回国会 参議院 参議院会議録情報 第056回国会 社会労働委員会 第7号
姉妹サイト
 
1967/08/16 第56回国会 参議院

参議院会議録情報 第056回国会 社会労働委員会 第7号

#1
第056回国会 社会労働委員会 第7号
昭和四十二年八月十六日(水曜日)
   午前十時三十六分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         山本伊三郎君
    理 事         植木 光教君
                土屋 義彦君
                佐野 芳雄君
                藤田藤太郎君
    委 員
                黒木 利克君
                紅露 みつ君
                佐藤 芳男君
                玉置 和郎君
                船田  譲君
                丸茂 重貞君
                山下 春江君
                山本  杉君
                横山 フク君
                小柳  勇君
                藤原 道子君
                森  勝治君
                柳岡 秋夫君
                小平 芳平君
                片山 武夫君
   国務大臣
       内閣総理大臣   佐藤 榮作君
       大 蔵 大 臣  水田三喜男君
       厚 生 大 臣  坊  秀男君
   政府委員
       内閣法制局長官  高辻 正巳君
       総理府人事局長  増子 正宏君
       大蔵省主計局次
       長        岩尾  一君
       厚生政務次官   田川 誠一君
       厚生大臣官房長  梅本 純正君
       厚生省医務局長  若松 栄一君
       厚生省薬務局長  坂元貞一郎君
       社会保険庁医療
       保険部長     加藤 威二君
       労働省労働基準
       局長       村上 茂利君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        中原 武夫君
   参考人
       日本労働組合総
       評議会政治福祉
       局長       安恒 良一君
       健康保険組合連
       合会常務理事   加藤 俊三君
       法政大学講師   吉田 秀夫君
       武蔵野赤十字病
       院院長      神崎 三益君
       大阪府保険医協
       会副理事長    桑原 康則君
       日本石炭協会嘱
       託        松本 栄一君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する
 法律案(内閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(山本伊三郎君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
 健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律案を議題といたします。
 本日は、本法律案につきまして六名の参考人の方々から御意見をお伺いをいたします。
 参考人の皆さんに一言ごあいさつを申し上げます。
 ただいま本委員会におきましては本法案の審議中でございますが、内容性の重要性にかんがみまして、参考人の各位からの御意見を承りたいと存じまして御出席をお願い申し上げた次第でございます。御多忙中にもかかわらず、本委員会のため、まげて御出席をいただきましたことを、厚くお礼を申し上げます。
 それでは、これより参考人の方々に順次御意見をお述べを願いたいと存じます。議事の進行上、まことに失礼でございますが、お一人十五分程度でお述べを願いたいと存じます。参考人の方々の御意見の開陳が全部終わりました後、委員の質疑を行なうことといたしますので、御了承願いたいと思います。
 それでは、順次参考人の方々から御意見をお伺いをします。まず、安恒参考人にお願いいたします。
#3
○参考人(安恒良一君) 私は、総評の政治局長の安恒であります。最初に結論を申し上げますと、私は、今回の政府が提出をいたしておりますところの健康保険法の改正案について反対をいたします。ほんとうに国民や労働者の健康と生命を守る。こういう観点でありますならば、この法案を本委員会におきまして廃案にしていただき、あらためて抜本対策を講ずるなど、制度の全面的な改正に対して国会において慎重審議をされることをお願い申し上げるわけであります。
 まず、最初に、私の意見といたしまして申し上げたいのは、御承知のように、この法案が衆議院、参議院において審議を開始されるにあたりまして、百五十余の地方自治体、そこにおける会議等からの反対の決議がそれぞれ先生方のほうにまいっておると思います。また、御承知のように、連日のように労働者や国民の代表が多く国会に請願をいたしまして、反対行動を行なっておるわけであります。しかし、こういうような状況にもかかわらず、すでに特別国会、臨時国会、さらに臨時国会におきまして会期が延長され、衆議院におきましては強行採決によってやるというような、こういう政府・自民党の皆さん方のやり方について、私は国民の一人として、たいへん心から憤りを感ずると同時に、反対を申し上げたいと思います。なぜならば、すでに御承知のように、この問題が院外において社会保険審議会並びに社会保障制度審議会において議論をされました。そのときに、前文の中において、これは各側委員満場一致うたった意見でありますが、御承知のように、今回の政府管掌健康保険、船員保険の膨大な赤字をかかえている、こういう実態については私たちは否定をするものでありません。しかし、このような状態になることは、すでに昭和四十年の十月にわれわれが答申を出しましたときにすでに予見をいたしました。直ちにこのことについては健康保険制度の抜本的な改善を行なうべきである、こういう意味で、制度の基本的な問題である診療報酬体系の適正化の問題、医療経済に関する調査の問題、薬価基準の適正化、各種医療保険制度のあり方等について直ちに検討を加える必要がある、また、われわれ審議会のほうもこの点について検討する用意がある、こういうことを時の政府に警告をしたわけであります。ところが、政府はその後何らこれに対する対策を行なうことなく、今年の二月、社会保険審議会を開催をいたしまして、そこで七百四十五億の赤字があるがゆえにということで今回のような保険料率の大幅引き上げ、それから、新しい制度の導入としての薬代の一部負担の問題、初診、入院時の一部負担ということをもってまいったわけであります。このことは、いわゆる政府の厚生行政として、医療行政として何ら行なうことなく、その間に赤字が累積をすれば、直ちにその赤字を国民や労働者の犠牲によっ昭和四十二年八月十六日(水曜日)
   午前十時三十六分開会
    ―――――――――――――
出席者は左のとおり。
  委員長    山本伊三郎君
  理 事    植木 光教君
         土屋 義彦君
         佐野 芳雄君
         藤田藤太郎君
  委 員
         黒木 利克君
         紅露 みつ君
         佐藤 芳男君
         玉置 和郎君
         船田  譲君
         丸茂 重貞君
         山下 春江君
         山本  杉君
         横山 フク君
         小柳  勇君
         藤原 道子君
         森  勝治君
         柳岡 秋夫君
         小平 芳平君
         片山 武夫君
国務大臣
内閣総理大臣   佐藤 榮作君
大 蔵 大 臣  水田三喜男君
厚 生 大 臣  坊  秀男君
政府委員
内閣法制局長官  高辻 正巳君
総理府人事局長  増子 正宏君
大蔵省主計局次  岩尾  一君

厚生政務次官   田川 誠一君
厚生大臣官房長  梅本 純正君
厚生省医務局長  若松 栄一君
厚生省薬務局長  坂元貞一郎君
社会保険庁医療  加藤 威二君
保険部長
労働省労働基準  村上 茂利君
局長
事務局側
常任委員会専門  中原 武夫君

参考人
日本労働組合総  安恒 良一君
評議会政治福祉
局長
健康保険組合連  加藤 俊三君
合会常務理事
法政大学講師   吉田 秀夫君
武蔵野赤十字病  神崎 三益君
院院長
大阪府保険医協  桑原 康則君
会副理事長
日本石炭協会嘱  松本 栄一君

    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する
 法律案(内閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#4
○委員長(山本伊三郎君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
 健康保険法及び船員保険法の臨時特例に関する法律案を議題といたします。
 本日は、本法律案につきまして六名の参考人の方々から御意見をお伺いをいたします。
 参考人の皆さんに一言ごあいさつを申し上げます。
 ただいま本委員会におきましては本法案の審議中でございますが、内容性の重要性にかんがみまして、参考人の各位からの御意見を承りたいと存じまして御出席をお願い申し上げた次第でございます。御多忙中にもかかわらず、本委員会のため、まげて御出席をいただきましたことを、厚くお礼を申し上げます。
 それでは、これより参考人の方々に順次御意見をお述べを願いたいと存じます。議事の進行上、まことに失礼でございますが、お一人十五分程度でお述べを願いたいと存じます。参考人の方々の御意見の開陳が全部終わりました後、委員の質疑を行なうことといたしますので、御了承願いたいと思います。
 それでは、順次参考人の方々から御意見をお伺いをします。まず、安恒参考人にお願いいたします。
#5
○参考人(安恒良一君) 私は、総評の政治局長の安恒であります。最初に結論を申し上げますと、私は、今回の政府が提出をいたしておりますところの健康保険法の改正案について反対をいたします。ほんとうに国民や労働者の健康と生命を守る。こういう観点でありますならば、この法案を本委員会におきまして廃案にしていただき、あらためて抜本対策を講ずるなど、制度の全面的な改正に対して国会において慎重審議をされることをお願い申し上げるわけであります。
 まず、最初に、私の意見といたしまして申し上げたいのは、御承知のように、この法案が衆議院、参議院において審議を開始されるにあたりまして、百五十余の地方自治体、そこにおける会議等からの反対の決議がそれぞれ先生方のほうにまいっておると思います。また、御承知のように、連日のように労働者や国民の代表が多く国会に請願をいたしまして、反対行動を行なっておるわけであります。しかし、こういうような状況にもかかわらず、すでに特別国会、臨時国会、さらに臨時国会におきまして会期が延長され、衆議院におきましては強行採決によってやるというような、こういう政府・自民党の皆さん方のやり方について、私は国民の一人として、たいへん心から憤りを感ずると同時に、反対を申し上げたいと思います。なぜならば、すでに御承知のように、この問題が院外において社会保険審議会並びに社会保障制度審議会において議論をされました。そのときに、前文の中において、これは各側委員満場一致うたった意見でありますが、御承知のように、今回の政府管掌健康保険、船員保険の膨大な赤字をかかえている、こういう実態については私たちは否定をするものでありません。しかし、このような状態になることは、すでに昭和四十年の十月にわれわれが答申を出しましたときにすでに予見をいたしました。直ちにこのことについては健康保険制度の抜本的な改善を行なうべきである、こういう意味で、制度の基本的な問題である診療報酬体系の適正化の問題、医療経済に関する調査の問題、薬価基準の適正化、各種医療保険制度のあり方等について直ちに検討を加える必要がある、また、われわれ審議会のほうもこの点について検討する用意がある、こういうことを時の政府に警告をしたわけであります。ところが、政府はその後何らこれに対する対策を行なうことなく、今年の二月、社会保険審議会を開催をいたしまして、そこで七百四十五億の赤字があるがゆえにということで今回のような保険料率の大幅引き上げ、それから、新しい制度の導入としての薬代の一部負担の問題、初診、入院時の一部負担ということをもってまいったわけであります。このことは、いわゆる政府の厚生行政として、医療行政として何ら行なうことなく、その間に赤字が累積をすれば、直ちにその赤字を国民や労働者の犠牲によっ保障の権利が否定をされ、ただ単に保険という名において相互扶助に後退をしていくということであります。御承知のように、今日の医療保険というものは漸次社会保障へと向かってわが国は一歩一歩前進をしなければならぬというふうに思うのでありますが、今回の改悪というものは、その点については大幅な後退になるということを私は申し上げなければならぬと思います。すでに社会保障制度審議会がいわゆる総合的な勧告といたしまして、ヨーロッパ並みの水準にわが国が持っていかなければならぬということを重ねて指摘をいたしておりますが、今回の措置はそれと全く反対の方向にいくということであります。御承知のように、この貧困と疾病、こういうものの悪循環をいよいよ私は強めていくと同時に、この医学技術の進歩に伴って、それの恩恵を国民全体が平等に受けていく、こういうことを今回の措置ははばむものだということを考えなければなりません。特に私はこの中で心配をいたしますものは、今回の改悪というものが、さらに生活保護者、日雇健康保険者、こういうものの生活そのものを根底的に破壊をする、もしくは診療拒否という方向につながっていくんではないかということを私はたいへんに心配をするわけであります。でありますから、結論的に申し上げますならば、私どもは今回のこの措置については廃案にしていただいて、やはり抜本対策をすみやかにひとつやってもらいたい。そして、その抜本対策の中で国と使用者がどれだけいわゆる国民の生命と健康を守るという角度において負担をするか、私は、やはり大幅な国庫の定率定額負担を導入してもらいたい、そしてこういう名においてわれわれは医療保険制度全般について、いわゆる診療報酬体系のいい意味の合理化、それから、保険制度の抜本改正、こういうものの両々相まつ名においてわが国の健康保険制度を維持していただきたいということをお願いをしたいわけであります。でありますから、もうすでに八月でありますから、当面の対策、特に四十二年度の場合においては、当初政府が予定をいたしておりましたところの実施よりもかなり実施がおくれております。こういうことでありますと、七百四十五億という赤字につきましても、本年度の赤字がそれだけふえているわけでありますから、私どもは、当面、こういうものについては国庫の借り入れなり国の大幅な負担導入、こういう形において当面の対策を行ない、すみやかに抜本対策を講じ、その中で基本的な問題の解決を行なっていただきたいことをお願いいたしまして、意見にかえる次第であります。
#6
○理事(藤田藤太郎君) ありがとうございました。
    ―――――――――――――
#7
○理事(藤田藤太郎君) 次に、加藤参考人にお願いいたします。
#8
○参考人(加藤俊三君) 私は、健康保険組合連合会の加藤でございます。私は、現下の保険財政危機の現状と、その医療の実態にかんがみまして、抜本改正の前提として本改正の成立は必要であると考えるものでございます。
 まず、最初に、初診時などの一部負担金の引き上げ及び薬剤費の一部負担は、保険財政対策上必要であるのみならず、負担の公平化という観点からも必要であると思うのでございます。初診の際に支払うべき一部負担及び入院の際に支払うべき一部負担の額をそれぞれ引き上げ、さらに、外来診療で投薬を受ける際の薬剤の一部負担を新たに設けるということは、単に政府管掌の健康保険にとどまらず、すべての医療保険の財政状態から見まして必要であろうと考えるわけであります。保険であります以上、収支のバランスをはかるということは当然であると考えるのでございます。また、医療費は被保険者が負担するものでございますから、受益に相応するところの負担の仕組みを取り入れ、常時の負担でありますところの保険料負担の増加を押えるということは負担の公平になるのでありまして、保険料負担の増加調整策としても適当な措置であると考えるのであります。
 次に、家族に対する給付率の引き上げは、今後の課題でございますが、そのためにも、とりあえず保険財政の安定をはかることが先決問題であると考えます。国民健康保険、すなわち、国保の七割給付の完全実施ということによって、今後健保の家族に対しても七割給付を行なうということが必要だと思うのでございますが、それには、まず、健保財政の安定が必要でございます。一歩譲りまして、たといこのような積極面を考えなくても、このままでは現状維持すら困難でございまして、累積する赤字で保険財政は崩壊の危機に瀕すると思われるのでございます。現に一千億円をこえる政府管掌の健康保険の赤字がございますし、組合健保の中でも、中小企業を母体といたしますところの総合組合なるものが約一割強ございますが、これが政管健保同様、財政難におちいっております。また、一般の組合でも、打ち続く医療費の高騰に耐えかねまして、約半数の組合は、三十九年度以降、大幅な保険料の引き上げを行なっておりまして、すでに全体の一割は、その保険料率が、法定で認められておりますところの最高限度の千分の八十に達しているというような状況でございます。このような事態は制度始まって以来いまだかってないことでございまして、このまま放置いたしますと、診療報酬の支払い遅延も起こりかねないことでございましょうし、制度そのものが崩壊する危機をはらんでおると思います。なお、政管健保は一つの保険者として見るべきだと思いますので、現在の政管健保の財政の状態から見まして、保険料の引き上げも好ましくはございませんが、やむを得ない措置だと思うのでございます。
 次に、診療報酬制度を合理化することが絶対に必要でございますが、それが行なわれるまでの措置として、薬剤費の一部負担は最も必要なことであろうと思います。何となれば、今日の医療費の激増は、使用薬剤量の増大に原因しております。もちろん今日の医学、薬学の進歩に伴います薬剤費の増加は当然でございますが、社会医療調査の結果によりますと、そのふえ方がまことに不自然な増加を示しているということでございます。これは、一に、医師の収入が薬剤の使用量にリンクするという現在の医療費制度そのものに大きな原因があるのではないかというふうに考えられるわけでございます。これを正しまして、行き詰まった財政を整えるために抜本的な対策が実施されるまでの間の措置としてぜひ必要なことであろうと思われます。なお、低所得者対策を今回の薬剤費の一部負担制度の中に取り入れられましたことは、必ずしも適当であるとは思いませんが、抜本改善が行なわれるまでの間の措置としてはやむを得ないことであると思う次第でございます。
 最後に、私は、抜本改善の前提として臨時特例法案は成立させるべきものであると考えます。われわれは、今回の措置には全面的に満足するものではございません。たとえば赤字発生の最大原因でありますところの診療報酬体系には何ら手をつけずに、また、家族給付の向上など、積極的な面は全然考慮されておらないというような点に多大の不満を感ずるわけでございますが、これは抜本改正に譲るといたしましても、この抜本対策は短時日で成るわけではございません。その間現状のままで放置いたしますことは、制度そのものの崩壊を意味します。このようなことは、国民の健康と福祉の面から、絶対に回避しなければならないと思う次第でございます。そのためには、とりあえず、最低限の措置を講じて赤字の累積を食いとめるということが急務であろうと考えるわけでございます。
  〔理事藤田藤太郎君退席、委員長着席〕
それをしも実現できないようなことでは、抜本改善などは思いも及ばないことであろうと思うのでございます。
 以上の観点から、私は、本法案に賛成し、すみやかに成立することを念願する次第でございます。
 以上でございます。
#9
○委員長(山本伊三郎君) ありがとうございました。
    ―――――――――――――
#10
○委員長(山本伊三郎君) それでは、次に、吉田参考人にお願いいたします。
#11
○参考人(吉田秀夫君) 私の結論から申し上げますと、今回の健康保険臨時特例法案に対しては反対であります。
 健康保険の改正問題が非常にもめてからことしで四年になります。もしもこの間、政府が根本的な改善策を講ずるというかまえと、そのような具体的な案を示すならば、これほど同じような問題で四年間ももめるということはなかったのではないかと思います。つまり大体国会の指示や、あるいは国民諸階層の納得のいかないような、そういう案を次から次に出したという点に問題があろうかと思うわけであります。これはもうすでに申すまでもないことなんですが、オリンピックが過ぎた三十九年十一月の末に、当時厚生大臣であった神田さんが、非常に改悪オンパレードともいうべき健康保険の赤字対策案を公表しました。それ以来、四十年になりますと、これも御案内のように、春に総報酬制、あるいは薬代の半額、こういう案を予定したのですが、これは当時の医療費の紛争で流れた、それから、昨年は、やはり政府管掌健康保険の料率を引き上げ、さらに最高標準報酬を二倍に引き上げて十万四千円にしたということですが、政府管掌健康保険の場合には、すでに昨年こういう改正をしているわけです。ただ、昨年の場合には抜本的な改正案をつくってもらうというために、約十人くらいの学識経験を持っている人で臨時医療審議会をつくろうとして、これはほとんど国会ではまともな御審議なしに流産したということであります。それがことしになりまして、ようやっと第四ラウンドといいますか、臨時特例法というかっこうで出ました。まあとにかくいままでの四年間の推移を見ますと、膨大な健康保険制度の赤字、あるいは財政赤字に対応して、暫定的に赤字対策をやるというかっこうでほとんど貫かれております。したがって、率直にいいますと、これは社会保障のたてまえからいいましても、すべて後退改悪をやろうとしたために、先ほど安恒さんお話のように、今回の場合でも、あるいはかなり前の場合でも、かなりの地方自治体の反対や、あるいはあまり御存じないかもしれませんが、中央並びに約三十有余の都道府県の健保改悪反対というような、かなり多数の労働者や国民諸階層が参加した共同闘争組織を発生せしめているわけであります。大体諸外国におきましても、特にヨーロッパの場合には、しばしば社会保障の中で、たとえば年金やら、あるいは健康保険制度がかなり大きな政治的な、社会的な紛争の対象になってまいりました。しかし、私なんかの大体入手した、あるいは点検した範囲内におきましては、どの国でも、政府も議会もほとんど全力投球で、若干時間をかけましても、その改善や、あるいは抜本的な対策のためにいろいろな案をつくり、それを国民諸階層に提示し、国会を中心に、かなりいろいろな問題を論じていろいろ改善やら具体策を講じているということであります。そういうかまえがどうも日本のいままでの制度の場合にはないのじゃないかというように考えます。
 それから、先ほど安恒さんからお話のありましたように、社会保険審議会、あるいは社会保障制度審議会の場合でも、どうも政府は怠慢だと、いままではっきりと自信を持っていろいろな対策を講じなかったというような、こういうそしりを受けるのはまた当然ではないかと思うわけであります。
 さて、国会における審議の状態を仄聞しますと、健康保険制度は、これは医療保障ではない、あるいは社会保障という段階にはまだいかない。徹底的に保険仕組みの状態の中でやはり収支相償うような、そういうかまえでやるのが当然だと、こういう御答弁が、少なくとも大蔵大臣その他からなされているようであります。私は、まあそういう大体論法でいいますと、たとえばいろいろな医療保険制度がどんなに赤字でも、これに対して国が赤字埋めの国庫補助や、あるいは負担をする必要もないという論法にもなりますし、あるいは国庫負担が必要だということのほかに、たとえば労働組合なり、あるいはかなりの国民諸階層からも要望されております定率の国庫負担をするのは、これはおかしいというような理屈にまで通ずるようなことになるわけです。こういう考え方自体は、私は、第二次大戦後の、少なくとも、国際的ないろいろな諸外国を見ますと、これは時代逆行の論理ではないかと思います。少なくとも、第二次大戦後の国連なり、これは一九五八年の国連総会の宣言なり決議、あるいはILOのしばしばのいろいろな勧告なり、あるいはいろいろな意見を見ますと、一貫して言えることは、少なくとも、戦後社会保障といわれるような万般の制度に対する国の責任と義務が非常に増大し、また、それが強調され、また、少なくとも、ヨーロッパ各国や、あるいは新興国におきましても、社会保障の改善なり拡充にそれなりの努力をしてきたということであります。こういう点からいいますと、わが国の場合には、おせじにもそれが十分であったとは言えないのではないかと思います。たとえば社会保障は公正な所得再分配効果のためには最も有効な社会政策だという意見がございますが、それならば所得再分配の点から見てどうかといいますと、残念ながら、ILOの一九六五年の諸指標を見ましても、これはILOの常套手段ですが、国民全体の所得に対して社会保障の給付の総額が一年間に何%かというようなかっこうで、相撲の番付みたいな、そういう表がしばしばつくられてまいりましたが、それを見ますと、わが国の場合には一九六〇年の三十の国の中で二十二番目。日本と大体同じグループはパナマ、ポルトガル、南ア連邦、キプロス、こういうような国と同じ状態が実はその後いささかも改善されていないという状態であります。これはとりもなおさず、所得再分配といいましても、一番決定的な再分配の姿は、私は労働分配率からいいまして、日本の資本の利潤と、それから日本の労働者階級に与えられた賃金なり、あるいは社会保険の資本家の負担の割合においてどの程度労働分配率があるかということになりますと、これまた日本の場合は、一九六四年の場合にわずか分配率は三三%、ところが、先進諸国の場合には少なくとも五割、六割、へたすると七割ぐらい分配している、こういう点が一番問題だと思います。その上に、もう一つの大きな問題は、健康保険組合は例外でありますが、一切の労働者の医療保険制度は、保険料率はきちんと労使双方が折半負担するという原則が強制されているということであります。これは折半でなければならぬという理屈は少しもございません。そういう問題の中で、わが国の医療制度や、あるいは医療保険制度がどうもおかしい、あるいは曲がりかどにきているということが公然といわれ始めましたのは、これは御承知のように、昭和三十五年、三十六年の国際的にも異例の病院ストライキが全国的に激化した。そのとき批判がマスコミから行なわれた。それならば日本の医療保険や医療制度ががたがたになり、いろいろな矛盾があるといわれながら、政府は今日まで何をしたかといいますと、これはどうも的確な施策を講じてきたとはおせじにも言えないような状態ではないかと思うのであります。逆に、医療保険や、あるいは医療制度の矛盾、不合理がますます激化して今日に至ったという感を持たざるを得ないわけであります。
 さて、そういう状態の中で、なぜ日本の医療保険制度が全般的に財政危機に追い込まれ、その中でも政府管掌が四十一年度で約千四十数億、それから日雇健康保険は宿命的な赤字、さらに国民健康保険は四十年度の予算で千七百億余の国庫負担をしましても、いま市町村の組合健康保険は非常に運営に悩んでいる、こういう状態。これは日本の政治経済の構造的な、機構的な矛盾からきている現象ではないかと思います。そういう状態の中で医療費の増、これは単純に技術的にいいますと、厚生省の医療費というのは、受診率と、それから治療日数と、それから一件当たりの医療費をかけた医療費だ、こういう説明の中で、少なくとも、三十七年、三十八年、非常に急激に増大した。その段階では厚生省の言い分は、何で医療費が増大したかといいますと、結局ビタミン、抗生物質、あるいは肝臓薬、あるいは神経系統の薬、あるいは血圧の薬というような、そういう新しく開発された医薬品が非常にたくさん使われるようになったということが一つ。それから、もう一つは、心電図その他、十何年か前には全然なかったようないろいろなものが医学技術の中でじゃんじゃん使われるようになったからだ、こういうことをいわれていたわけです。これだけならば、私は、医学技術、薬学の進歩によって医療費が増大したんですから、これは外国にも例がないことはありませんから、これは当然ではないかと思うのです。ただ、その中で一件当たりの医療費の中で薬剤の占める位置が非常に強い、あるいは薬の使い過ぎではないか、こういうことで赤字問題がしばしばいわばすり変えられている点に私は問題があろうかと思います。
 さて、そういう状態の中で、私、最近、また、昨晩いただきました参議院の社労委員会の資料を見ましても、治療日数は低滞あるいは減少ぎみです。受診率は漸増しています。それならば一件当たりの医療費はどうかといいますと、これは四十一年、四十年の段階では、かえって三十七年や三十八年のような、そういう急激に増大するというわけにはいかぬような数字がいただいた資料の中では言えるわけであります。それならば三十七年、三十八年、三十九年と、なぜ医療費は急増したかということでありますが、私の考えでは、非常に大きな理由は、一つは、厚生省みずから制限診療をかなり大幅に緩和したその反映ではないかと思います。この点は、日本の医療機関、あるいは医療担当者、あるいは保険におきましては、外国に比類なきいろんな制限診療に対して、非常に戦後一貫して不満を持っていることは、これも御案内のとおりであります。たとえば保険医担当規則やら治療指針やら、あるいは薬価の基準やら、あるいはそれに加えて支払いの審査、監査、そういうことに対して非常に不満がある。それにかなり大幅に緩和したということでありますから、若干それにつれて先ほどの新規医薬品の採用を認めるということに合わして、これは薬剤を中心にして医療費の増大は当然ではないかと思うわけであります。
 それから、もう一つは、いままで健康保険は、病気になってもこれまで三年間で打ち切りだったが、それを転帰ないしは五年延長、こういう改善をした。これは当然医療費の増大の一つの要因であろうかと思うわけであります。しかし、非常に重要なことは、先ほど安恒さんが言われましたように、二十九年から三十九年までの十年間に病気が二倍にふえたということであります。具体的にこういう数字を並べる時間はございませんが、とにかく労働者や、あるいは国民諸階層、国民大衆の低賃金、あるいは低所得、あるいは貧困、これはかなり病気の発生と悪循環を持ち、拡大いたします。これもたぶん御案内だと思うのでありますが、厚生省の国民健康調査、あるいは栄養調査等によりますと、いま日本の人口は約一億、その中で約六割は日本人の標準カロリー二千五百カロリーはどうしてもとれないというような人たちだという事実。さらに圧倒的に栄養不足で、多分に貧血状態ではないかと思われるような人たちが約二割をこえます。としますと、約二千万人、そういう状態の中で、私なんか全国若干あちこち回りながら非常に頭が痛いのは、たとえば黄色い血、あるいは輸血、献血という問題にからんで、最近日本赤十字の車があちこちの団地のおかあさんたちの血をもらったり、あるいは農村のおかあさんたちから血をもらったり、こういう現象が多発しています。ところが、茨城県のある農村では、実際に十人のうち、自分の血が役に立つというおかあさんたちがたった四人。それから、これは二、三日前に北多摩のある団地でおかあさんたちに聞いた話ですが、六割は全然おまえの血は薄いからだめだというふうにけられたという話がある。マスコミによりますと、東京近郊の団地の場合に、八割まではおかあさん自身の血液が薄くて不合格だったというみじめな状態が実はいま進行しているということであります。これは、とりもなおさず、おやじさんだけの給料ではどうにもならぬから、やはり主婦も内職なり、あるいはパートで働きに出る、こういう状態が実はいま進行しているわけであります。そういう状態の中でさらに言えることは、これも全国回って見ての話なんですが、二十代、三十代というような若年労働者の間に実は老人病が非常に発生し始めているということであります。老人病といいますと、二十代のくせに、たとえば血圧が高いとか、あるいは心臓がおかしいとか、あるいは神経痛だ、あるいは心臓、肝臓が悪い、こういう大体老人病が二十代の青年労働者の中に非常に発生し、ある愛知のかなり大きな鉄鋼関係の健康組合の場合、その労働組合の委員長が私に言っていましたが、つい十年前には結核が一番財政負担だったが、近ごろは十代、二十代、三十代、四十代を問わず、各年齢に精神病患者が多発、これが健康組合の財政を圧迫している、こういうのが実はわが国のすべての医療保険制度をささえている非常にみじめな社会的、経済的な基盤ではないかと思うわけであります。
 さて、そういうこの辺の政治的、経済的な基盤の打開、あるいは改善がやはり一番、たとえば抜本的な改革案をつくる場合でも、この辺のことをなおざりにしては、ただ制度だけを技術的にいじくり回すということにならざるを得ないので、この辺が一番焦点ではないかと思うのであります。
 さて、もう一つは、政府管掌の健康保険の昨年三月末までの累積赤字が千億をこえた。ところが、四十二年度の満年度一年間の赤字は、御案内のように、七百四十五億円、こういうことで臨時特例法案が立案されました。これは私はかなり水増しがあるのではないかというふうに思うわけであります。問題なのは、赤字か赤字でないかということは、収入をどう把握するか、あるいは支出をどう把握するかということにあるわけです。その中で、支出をどう把握するかということに次いで一番問題なのは、医療給付、医療費が大体どういう状態にあるかという点の見通しを科学的に立てることであると思うのですが、とにかくいただきました参議院の社労委員会の資料、これは八月の資料ですから、非常に新しいものではないかと思うのですが、これを見ましても、たとえば政府管掌健康保険の診療費の推移を見ますと、前年度に比べてことしはどれくらいふえたかというそのパーセンテージの推移を見ますと、たとえば三十六年では一・一二%、ところが、非常に急増した三十七年、三十八年では一・二八、一・三〇、それから三十九年には一・三八というかっこうで増大しながら、四十年になりますとこれが下がりまして一・二〇%、それから、四十一年は、何とこの大体六年間の推移では最低で、一・一八%というような医療費の減少ぶりなんです。としますと、一ころ三十七年から三十九年までというような医療費の急増は、この辺で私は若干低調、あるいはストップぎみではないかと思うわけですね。その点はもっともっといろいろな資料で点検しないといけないわけでありますが、ところが、実際には七百四十五億円赤字だというその背景になった基礎は、四十一年度の――四十二年度はまだはっきりわかっていないのですから、三十九年度、その辺までの推移を見て、大体それと同じような医療費の伸びがあるだろうということを前提としてやはり支出の数字が出、それが七百四十五億のかなり大きなウエートとなっているということになりますと、私はこれはたいへん問題だと思うわけです。したがって、なぜじゃ医療費は鈍化し始めたかということになりますと、やはり先ほど言いましたように、三十七年、三十八年の制限診療の大幅な撤廃の直後のあおり、それから転帰までというような健康保険の一種の改善のあおり、そういうような一応安定した状態に立ち至ったということ、やはり健保問題は赤字だというように非常に宣伝されるものですから、それに合わして保険医並びに医療機関の担当者の方が若干萎縮し、あるいは審査や監査がこわいということも含めて、それこれがまざって医療費の経費が鈍化傾向を示し、平常状態になったのではないかと思うのです。
 それから、もう一つの問題は、標準報酬の見込みの問題です。四十一年度の政府管掌健康保険の標準報酬は、いただいた資料によりますと二万八千八百七十七円、ところが、健保組合の標準報酬は大体これより一万円上回ります。で、そういう状態の中で、そんならば三十七年、あるいは八年、九年、四十年というような、標準報酬の見込みからいいますと、四十二年度の標準報酬の見込みの割合は、これまでになく大体一割程度は上昇するというのを九%台に押えているということであります。もちろん四十一年度の場合には、昨年四月国会で標準報酬の料率が十万四千円に上がりましたから、これは大体一四%から一五%という急増という異例な年があった。しかし、それでも三十六年、三十七年、三十八年というふうな、別に標準報酬の改定のない状態の中で、大体四十二年度は逆にこういう過去の年よりも下回るというようなことは私はおかしいと思うわけであります。で、しばしばいわれておりますように、まさに日本の人口は老齢化をたどりながら、御承知のように、中学校出、高校出の若年労働者が圧倒的に不足しております。そういう状態の中で初任給はかなり上がっております。それにつれて、まあ毎月のように中小企業の倒産は非常に多いといいながら、実際は中小企業といえども、労働者の賃金全体をやはりめんどうをみなければならぬというような状態があるし、また、今度の春闘で、大手の産業で大体四千円から五千円取ったというような実績を見ましても、そのあおりは中小企業の場合にも反映しているのではないかと私は思うのです。そうしますと、大体一人当たりの……。
#12
○委員長(山本伊三郎君) ちょっと、時間が……。
#13
○参考人(吉田秀夫君) 一人当たりの医療費も少なくなり、それから、標準報酬も大体少な目に見るということでは、これは一年間の七百四十五億の見積もりというのは非常に大きな疑問を持たざるを得ないわけであります。
 時間がありませんが、もう一つ申し上げたいことは、たとえば衆議院の段階で自民党の修正案で、薬剤一日一剤十五円以上は標準報酬二万四千円以下の所得の場合には免除するということが通りました。これは一見きわめて人道主義的な、あるいは日本の戦後の政治の中でボーダーラインの労働者のことを考えたという点では初めてかもしれませんが、それだけたいへん私は危険なものを感じます。ということは、具体的に二万四千円のその資格、レッテルをどう張るか、あるいは保険医なり病院なりが具体的に月初めに請求をする場合に、この被保険者は一体二万四千円の上なのか下なのかという証明書をどう添付するのか、あるいはその証明書の発行はどうするのか、具体的に毎月毎月の証明はどうするのかというようなことになりますと、かつて昭和二十九年に健康保険制度が四十億の赤字で大騒ぎになり、三年間もめましたが、そのときに七人委員会が官給請求明細書というもの、べらぼうの一石数鳥のねらいの赤字対策案をつくった、こういう官給請求明細書につながるような、そういうにおいが、二万四千円のランクをつけて、あるいは病気のつど毎日証明書を発行するというようなことにつながるのではないかと思うのです。そういう点では当面の暫定的な対策ではありません。これは抜本的につながるそういう方向を今回の修正特例案が持ってるような気がいたします。そういう点で、やはりもっともっと私なんか外にいてお伺いしたいことが一ぱいあるのですが、以上のような点をさらに究明されて、慎重な審議を期待して、私の話を終わります。
#14
○委員長(山本伊三郎君) ありがとうございました。
    ―――――――――――――
#15
○委員長(山本伊三郎君) 次に、神崎参考人にお願いいたします。
#16
○参考人(神崎三益君) ただいまから申し上げる意見の大部分は、私が副会長をしております日本病院協会の公的な意見でございます。
 社会保険が崩壊の危機に瀕しておるということは、今日もののわかった人の間では異論のないことであります。一部過激な人々の間には、もう一度この制度はつぶしたほうがいい、そうして、よりよい制度を打ち立てるには、すっかり焼け野原にして整地して、そこへ理想的なものを建てる、こういう意見もありますが、日常患者さんを見ておりますわれわれとしては、こういう過激なことは、それがどんな苦しみを患者、国民に与えるかという点から、同調することはできません。で、何とかしてこの壊滅を防ぎたい、それには一歩一歩よりよい方向に改善してもらいたいものだ、いきたいものだということが医療担当者の一人としての念願でございます。その意味で、今回の特例法案は、後に述べます一、二の異なる意見は持っておりますが、やむを得ない措置であろうと考えております。ことに問題になっている薬価の一部負担、十五円の定額負担の問題でございます。三十五年におきましては総医療費の約二〇%が薬品費でありました。それが近々六年余りの間に、先ほど安恒参考人からもお話のありましたように、約四〇%、これが総医療費の中に占める薬品費ということで、二〇%のものが四〇%と、六年の間に二倍になっております。これは医療経済の問題としてだけではなく、医療そのものとして考えねばならない問題だと思います。薬品費がかような高率を占めるということは、わが国の医師の技術料をはじめ、医療従業員の待遇が低いということとの相関関係であろうと思いますが、いずれにしても、こういう高率な薬品費が医療費の中で占められておるということは、私は存じません。医学、薬学の進歩がこういうことをもたらしたというのであるならば、世界どこの国も同様な比率で薬品費の占める率が上がらなければならないのが、そういう状態がほかに見えないということは、私は、これは日本の特有な状況として考えおくべきことと存じております。いまは薬品費が約四二%でございますが、このままの勢いで進みますと、間もなく五〇%、あるいは五〇%を過ぎる、こういうことになりますと、私は日本の医療ということじゃなく、日本の薬療ということばに変えなければならない時代が間近に迫っておるということを心配するものでございます。薬剤費の一部を負担しているということは、これは御承知のごとく、世界各国で社会福祉の模範的な国家であるといわれておるスウェーデンにおいてもその例を見るわけでございまして、約二十数年前にイギリスがナショナル・ヘルス・サービスを打ち立てて、国民の医療については国家が責任を持つ、こういうことを打ち出したのでございますが、打ち出して間もなく、処方箋料だけは患者が負担するのだぞ、国民が負担するのだぞ、こういうことに改めた。そのことは何を意味するか、人間は、ただで物がもらえるということは、さもしい人間の心をそそり立てる。そういうことがイギリスにおいても、処方せん料だけは自己負担だということで、物をもらうということについての、私はこれはある意味のチェックではなかったか、こういうふうに考えます。
 また、一方、先ほど安恒参考人の言われましたように、現行の診療報酬体系では、薬剤の投与による収入が医療収入の大もとになっております。そこで、医療担当者の中にはそういうことがあってはならないと思いますが、あるとき、薬品の使用によって収入の増加をはかろうという不心得の者ができないとは保証できないんじゃないか、かように心配します。こういう二つの因子がある上に、先ほどお話のありましたように、薬業界のコマーシャルというものは非常な勢いで日本の医療の薬品消費に拍車をかけております。現にイギリスにおきましては、一般紙に広告した薬品はナショナル・ヘルス・サービスでは採用いたしません、こういうきびしい規制をしておるということは皆さん御承知のとおりでございます。
 そこで、われわれ日本病院協会は、昨年打ち出しました案に、薬剤の一部負担ということを打ち出したわけでございます。最初は定率制を考えましたが、定率制ということは、高価な薬品をもらう患者さんにとってはたえられない負担になるので、後にこれは定額制がよろしいということに考えを直したわけでございます。で、こういうことをわれわれ医療を担当する側から申しますと、先ほど吉田参考人の言われましたように、さもなくても繁雑な窓口に、この人は薬剤費を一剤十五円取ったんだ、いや、この人は取らなかった人だということを翌月出す請求書にどういうふうにして区分けをするか、こういうことの心配をいま持っておりますが、これは良識ある行政当局との話し合いで、これ以上われわれの業務の煩瑣を増すような心配はないんじゃないかと、かように考えております。
 それから、薬剤費一日一剤十五円の経済負担のことを強く言われますが、大体保険料が千分の五修正案では上がることになっておりますが、これは標準報酬三万円の人にとりましては年間に千八百円、その半額が被保険者負担でございますから九百円。それから、異議があると申しましたのは、窓口における百円が二百円になったということでございます。一口に百円と申しますが、大体統計を見ますと、一年に五回受診をするような数字が出ております。そうすると、百円の増加は一年に五百円でございます。厚生省の推計によれば、今度の一剤十五円は四百円程度だろう、こういうことでございますが、これはまたどういう見方か、説明を聞いておりませんけれども、われわれが統計から見まして、大体六百円から七百円と踏んでおけば間違いないじゃないか、かように考えております。で、そうすると、保険料の増額が自己負担として九百円、初診料の窓口負担で五百円ということが問題にならないで、この四百円か五百円という薬剤費の窓口負担――一部負担だけがなぜ問題になるのだろう。まあこれは安恒参考人の言われましたように、健保の発足以来初めてのことであります。こういうことだから、これは抜本対策でやるべきだというのであろうと思いますけれども、世間一般が保険医療の矛盾はわかっておる、矛盾がわかっておったら、その矛盾を抜本対策の日まで伏せておかなければならない理由がどこにあるか、こういうことを私は言いたいのであります。こういう窓口の負担こそ、初診の意欲を抑制して、そうして早期診断、早期治療という医療の最もかなめのところを押える問題であろうと、かように存じております。
 なお、赤字は税収入によってカバーしたらいいじゃないかという意見、私は医療担当者でございますが、もし国費をもって多くのことをやっていただけるのでありましたらば、経常費もけっこうでございますが、固定費に回していただきたい。現在の病院の建設費というものは、特定一部を除くのほかは、みんな医療収入で病院がやっているのでございます。これを私は、日本は病人に病院を建てさしておる冷酷むざんな国民性を持っておる、こういうことを申すのでございますが、で、三十九年の厚生省の発表にも、いま日本全体の病院の六三%は木造で危険なものである、早く改造しろと、こう言っております。
  〔委員長退席、理事藤田藤太郎君着席〕
また、ホテル、レストラン等に参りますと、もうほとんどルームクーラー、冷房でございますが、日本の病院で、冷房、ルームクーラーのついておる病院がどれだけあるか。病人は内からの熱と外からの熱に悩まされております。こういう固定費をほうっておいて、当面の経常費だけにわれわれがおさめた大事な税金を使われるということは、国民としても私は大いにふんまんを感ずるものでございます。
 以上でございます。
#17
○理事(藤田藤太郎君) ありがとうございました。
    ―――――――――――――
#18
○理事(藤田藤太郎君) 次に、桑原参考人にお願いいたします。
#19
○参考人(桑原康則君) 大阪府保険医協会の桑原でございます。
 私たち、今度国会に提出されましたこの臨時特例法案に反対しておりますが、なぜ反対するかという理由をまず申し上げたいと思うのですが、いままでいろいろ言われておりますことは、負担の公平とか、あるいはいろいろ社会保険全体の矛盾を解決するための暫定措置として取り上げられておるわけでございますが、ところが、ほんとうのところは、この暫定措置というものは、社会医療保険全般ではなくて、特に政府管掌という低所得の労働者、被保険者だけに負担をかけるということでしかないのでございます。いわゆる全体の問題としては少しも取り上げられていない、そういう口実のもとに低所得労働者に犠牲をおっかぶせている、ここに私たちは基本的な不満を持つわけであります。
 それから、先ほどから取り上げられました薬剤の一部負担にしましても、厚生大臣が社会保険審議会でも申されておりましたように、組合の裕福なところはこの一部負担はあとで償還してもよろしい、そういう制度をとってもよろしいということを言っております。したがって、ほんとうにこの薬剤一部負担の犠牲をこうむるのは、政府管掌とか、組合の中でも零細な組合だけである、ここに私は大きな問題があると思いますが、しかも、悪いことばで申しますと、貧乏な人たちからの取り立て役を医者にやらせようとしている、おまえたちが取れ、取れなかったらおまえたちの損失でかぶれ、こういう制度でございます。どうも私たちとしては納得できないことだ、これが基本的な矛盾点だと私は思います。
 結局今度の改正案の中は三つの柱がありますが、その中でも、第一、第二の患者負担の増大ということでございますが、これはもういままで再々述べられましたように、特にこれは零細層にかぶさるものでございますから、受診率が非常に制限されます。ということは、初めて医療を受けるいわゆる初診の日が一番負担が高くなります。初診料が二百円になる。それから、その日は薬剤がやはりどうしても出てきますので、費用が一番かかる、初診のときの負担が一番大きい。このことのために、ちょっとした病気ではなかなか医者にかからなくなる。最低二百六十円は要りますでしょう。いわゆる早期受診――病気というものは軽い間に早く見てもらって早くなおすというのが医療の本旨でございますが、このことがもうすでに阻害されるということであります。
 第二には、特に慢性病なんかの長い病気になりますと、この一部負担というものが相当大きくなりまして、いいかげんなところで治療を打ち切ります。もう少しくれば完全になおるというときに打ち切ってこれを悪化させ、また再発させるということ、そういうことの繰り返しで健康を害してくるというような結果が出てきます。この点、厚生省は、一日一剤十五円程度の負担では受診率にはたいした変動は起こらないのだということを言われております。しかし、起こらないということを証明する資料は何もございません。むしろその反対で、たとえば長瀬指数というものは、負担率の変動によっていかに受診率が変わるかということをはっきり示しております。また、私たち日常に遭遇しております実例から見ましてもたくさんございます。たとえば私が現在取り扱っておる患者のことを申し上げますが、これはいわゆる五カ年間無料でかかっておった患者です。ところが五カ年間過ぎると被扶養者になりまして半額負担しなければならない。ただである間は、五カ年間ほとんど日曜、祭日を除いて、毎月平均して見ますと約二十四、五日くらい五カ年間ずっと続いてきております。ところが、被扶養者になって半額の五十五円を負担しなければならなくなくなると、そのとたんに八日間――三分の一に来る日数が減る。この日数の変化ということは直接受診率とは結びつきませんけれども、このように一部負担によって診療を受ける頻度が変わってきたということは、当然受診率にもまた大きな変動を及ぼす一つの要素だということを考えて差しつかえないことだと思うのです。
 このように、非常に受診率が制限されるということが第一の弊害でございますが、第二には、やはりこのことで事務が非常に保険医は複雑になる。現在の健康保険は報酬が非常に安いので、いわゆる薄利多売といいますか、たくさんの患者を見なければやっていけない、そういう姿でありますが、ただ、健康保険の本人の場合、いわゆる被保険者の患者の場合には手数が要りません。カルテを出して診察して帰ればこれでよろしいのですが、これを薬剤をまた一々十五円の負担を勘定してこの受け取りをするということになりますとたいへんな手数の増加になりまして、私たちの見る患者の数というものは非常に制限されてきます。このようないわゆる制限をされるということは、半面から見ますと、患者がそれだけ待たされるということにもなるわけであります。こういう点が第二の矛盾点であります。
 それから、第三には、保険料率の引き上げということです。先ほど組合では千分の八十をとっておるところもあるんだということでございましたが、なるほど確かにそうであります。しかし、これは付加給付をやっておるからであります。法定給付、いわゆる健康保険と同じような給付、たとえば傷病手当金、あるいは病気の給付とか、こういういわゆる法定給付というものをやるところに要する保険料率は幾らかといいますと、政府管掌はこれを千分の七十二に引き上げてもまだ足りないというのが今度の厚生省の予算案でございます。ところが、健康保険組合は平均して千分の五十でございます。千分の五十であれば政府管掌と同じだけの給付ができるのです。それ以上のものは別の給付をしておるから金が要るわけであります。もちろん組合はたくさんあります。種々ありまして、千分の五十というのは平均でありますから、もっと高いところもあり、もっと安いところもございましょうが、平均して千分の五十で、これを見ても、保険料というものは、今度の引き上げでは、法定給付に関する限り、組合は一文も値上げしなくてもやっていけるんだということになる。ほんとうは、法定給付をやるための引き上げの必要なのは政府管掌の被保険者だけだということが厚生省の資料からでもはっきりうかがえるわけであります。
 結局、このような零細な被保険者層、政府管掌というものに対する措置としては、国にやはりこれはめんどうをみてもらわなければならぬ。それに対して、今度の予算を見ますと、国も二百二十五億の予算を組んでおるといいます。しかし、私たちは、この二百二十五億というのは見せ金だと思っております。要するに、この被保険者、患者に負担をおっかぶせる制度を通すために二百二十五億という数字を出しているにすぎないのであって、事実あれを実施したら二百二十五億は要らなくなると、こう考えます。このことについては長くなりますからやめますけれども、言うだけの私たちは基礎を持っております。理由を持っておるわけでございます。ただ見せ金であるということは、私もかつての過去の経験からも確信しておるのでございます。まあこういう原案はひどいものでございましたが、今度の衆議院での修正で、二万四千円以下の低所得者層に対してはこの負担を免除する、一見はなはだりっぱな修正案が通ったように見えるのでございます。ところが、これを実施の段階に移して考えてみますとどういうことになるか、これはどういう形で実施するかということは、厚生省はまだ発表しておりませんから、はっきりしたことは言えませんが、ただ、これを実施するときに、大きく分けてみますと二つの方法しか考えられません。一つの方法は、初めてかかるとき、初診のときに被保険者証かあるいは何かによって、患者は二万四千円以下、あるいは一部負担の免除対象者であるということが一見して保険医にわかるところの証明書を持参しなければならない、これは確かだと思います一そのことによって保険医は患者から取り立てを免除するわけでございます。しかし、それだけでよいかというと、そうはいかない。なぜなら、私たちはそれに基づいて毎月基金に請求書を出します。基金では、そういう証明書が何もないからわかりません。ただ保険医が書いたものだけを頭から信用する以外に方法がないわけでございます。保険者にいけばわかります。保険者にいけば、原簿と照らし合わせ、保険医の請求書と照らし合わせて、取っておるかいないか、当然取るべきものを取っておらない、こういうことが初めてわかるわけでございますが、これをするためにはものすごい人間の増加が必要になります。現在の社会保険出張所の人員ではとうていこなすことはできません。基金にやらせようとすると、これまたものすごい人員増、おそらくこういうことをやりましたならば、この薬剤負担で浮くところの金よりも、その点検に使う人件費のほうが高くつくという結果が出るのではないかということをおそれるのでございます。で、結局そういうことを考えますと、政府はそんな金のかかることはおそらくおやりにならぬだろう。そうするとどういうことをやるか、結局保険医が出した明細書ではっきりと、これは何といいますか、保険医が故意にそうするというのじゃなくて、記入を忘れることがあります。現在の初診時負担の百円でも、記入を忘れておる人がたくさんございます。しかし、これは基金ですぐわかります。なぜなら、初診料の二十四点という請求書が上に書いてある。そして一部負担の百円のところにこれが抜けていれば、これは抜けておりますということで保険医に返しておりますが、薬剤一部負担でこれをしようとすれば、何らかこれは免除者であるということの証明がこの請求書の上になければわからぬわけでございます。もしそうだとすれば、これは何らかの証明書を毎月の請求書とあわせて出さなければならぬということになる。そうなれば、患者は初診のときだけではなくて、いままで慢性の病気でも、一ぺん保険証を出しておけば二年でも三年でもそのままかかれておったものが、今後は毎月お役所か、あるいは事業所に行って月の初めにこの証明書をもらってきて保険医に渡さねばならぬ、こういう繁雑なことができるかどうか、おそらく被保険者はその繁雑にたえかねましょう。また、これを再三やると、労務管理という名目でいろいろな障害が起こってくるでございましょう。そういうことがあるとこれをもらいに行かなくなる。実質上は、こういう繁雑なために、免除ということが免除の役割りを果たさなくなる。しかし、一方、最初のときは、六十円ぐらいならしんぼうしようということで、お医者さんに証明書を持たずにかかります。しかし、これが五回なり十回になってくると五百円、六百円という金額になります。そうすると、これは二万四千円の給料取りにとっては非常に大きな金額です。しょうがないから月末になって証明書をもらって保険医に出す。ところが、保険医はいままで金を取っておるから、それを持ってこられると計算して払い返さなければなりません。月末になるとこういうのがどんどん殺到してくるでありましょう。この間いろいろと、持ってきた、持ってこないという紛争で、窓口の紛争は現在の初診料だけでも往生しているのです。皆さんにはおなじみないかもしれませんが、ちょうどこういう紛争というのは、現在大阪でもめております冷房タクシーの運ちゃんと一緒です。もう会社と利用者との間にはさまれて、現場の運転手が一番往生しておる。そういう目に私たちはあわされるんじゃないかということを心配しておるわけでございます。
 まあ結局そういうことで考えてみますと、十五円の薬剤一部負担によるところの受診制限よりも、こういう証明書をとりに行かねばならぬということによって受ける受診制限のほうがはるかに効果が多い、こう考えます。これは何も私がかってにこういうことを考えておるのじゃないのでございます。先ほど吉田さんもおっしゃいましたように、七人委員会や先般の牛丸委員会というもので、抜本対策の一つとして官給請求明細書というものを発行する案が出ております。これは保険医が毎月基金に提出する請求書を政府がつくって、これを患者に渡して、患者にお医者さんのところに持っていかせる、こういう案でございます。これは受診制限という非常に大きな武器になっておったわけでございますが、こういう例もございます。結局今後こういう薬剤一部負担ということは、こういうものとの関連なしにはちょっと考えられないわけです。
 こう見てきますと、この間における医師の事務量の増大、それから、患者との間に起こるトラブル、これはもうわれわれ現場の保険医として、とうてい耐えることができないのじゃないかということが頭に浮かぶわけでございまして、御承知のとおり、医療というものは患者と医師との間の信頼関係の上に立たない限り、ほんとうの治療はできない、医師を信用しない治療というものはきかない、こういうことでございますが、今度のこの修正ということによって、医師と患者との間の不信の観念はますます大きくなり、これではとうてい私たちはまともな医療はやっていけない。むしろそういう関係に置きかえられるくらいならば、これはもうこういうトラブルは被保険者と保険者の間でやってもらいたい。保険医は、もういっそのこと保険医ということをやめて、らち外にあってほんとうの治療をやってみたいということを考える人が多くなってきても私はやむを得ない。こういうことの結果、神崎先生がさっきおっしゃいましたような、過激であるかどうか知りませんが、もしこれが実施されるということになりますと、総辞退というものが、上からではなく、下から盛り上がってくる気配が相当多いということも一応お考え願いたいと思うのであります。
 なお、そういう現状でございますので、良識の府といわれる参議院におかれましても、十分事情を御賢察いただきまして、この法案が何とかひとつ廃案になりますように、先生方の御尽力をお願いいたしまして、私の口述を終わりたいと思います。
#20
○理事(藤田藤太郎君) ありがとうございました。
    ―――――――――――――
#21
○理事(藤田藤太郎君) 次に、松本参考人にお願いをいたします。
#22
○参考人(松本栄一君) 結論から先に申し上げますと、私はこの特例法案に賛成の意を表するものであります。
 本来、医療保険は、保険と、それから社会保障と両面を持っておりますので、社会保障的な制度としてこれを重く見ている人たちは、保険料の引き上げ、あるいは患者の一部負担というようなことについての反論を強くするわけでありますけれども、保険制度として見る限りは、保険財政が赤字になれば、これを埋め合わせるのは保険者と被保険者と患者が一体になって埋め合わせるということは当然のことであります。その場合において、今回の特例法案はやむを得ない措置ではないか。ただ、問題がありますのは、いただいた資料で拝見いたしますと、四十一年度の行政努力目標の中で、レセプトの点検の励行というのだけが目標額の半分にも達しない効果をあげております。こういう行政努力、ほかの点では九〇%、あるいは七〇%ぐらいの達成率を示しておりますのに、これだけが半分以下、四〇%の達成率というのはどういうのか、もう少し行政努力というものをすべきではないか。ことに政府管掌の健康保険は、昭和三十五年に七百五十八億であるのが、昭和四十年には二千四百四十三億と、三倍以上にもなっております。しかも、人員はこの間どのぐらいふえているかというと、約八百五十四万六千人から千百七十万人、これは四割弱のふえ方でございます。異常なふえ方でございます。こういう点から、やはりただ赤字になったということでなくて、保険者としての政府の努力というものが行政当局としては必要なのではないかと思うのであります。
 それから、薬剤費の負担、これは注射と投薬で、乙表関係というと大体個人診療所が多いのでありますけれども、これが昭和四十年の五月の社会医療調査によりますと、注射と投薬で六四・五%を占めている。まさに神崎先生のおっしゃったように、医療ではなくて薬療ということになるといっても過言ではない。こういう点、やはり全く神崎先生と同じ意見ですけれども、薬剤費の一部負担ということは、これはやむを得ない処置ではないか。ただ、これを患者によって抑制しよう、患者のみによって抑制しようとすることは、少し考え方がおかしいのであって、本来は、やはり診療点数で、先ほど安恒参考人が言いましたように、薬を多く出せば――多くというのは、たくさんの日数、それから、剤数を多くすれば、それだけ診療機関の収入がふえていくと、こういう制度そのものをやはり根本的に改めるということが必要なのではないか。
 それから、先ほど薬剤費は医療機関を素通りして製薬メーカーに入るようになっているという意見は、ちょっと安恒先生間違ったんじゃないかと思うのですけれども、おっしゃいましたけれども、実は医療機関が薬を患者に与えることによって相当の差益が出ているということがはっきりしております。それから、お医者さんが薬を売ることによって利益をあげるという制度、それも検討を加えなければならぬのじゃないか。薬価基準というものがございまして、それを毎年毎年検討をして適正な価格にするという約束をしておきながら、なかなかそれを実行しない政府の責任もございますし、それから、現在の制度として、医療機関の九〇%までが買える値段をもって薬価基準に対するというその制度もおかしいのでありまして、そういう点の改定ということも、また、今後当然行なわれなければならぬ問題ではないかと思うのであります。
 なお、今度の制度をとることに、桑原先生は、だいぶ医療機関の手数が増して困るということを反対の理由に、詳細にお述べになりましたけれども、そういうことは医薬分業をすることによって全然問題にならないことになるんではないかと思うのです。現在でも医薬分業して悪いなんというのじゃなくて、分業がたてまえなんであります。たてまえなんでありますけれども、いま薬剤師は一カ月にせいぜい薬剤師一人当たり十枚くらいの処方せんしがなくて、薬剤師としてはとうてい食っていけない程度の収入しかあげておりません。したがって、非常にひまです、薬剤師としての仕事は。だから、そんな手数がかかって困る、患者とのトラブルが多い、こういう御心配が出てくれば、どんどん処方せんを書いて薬剤師に薬を調合させればそういう問題は一挙に解決してしまうのではないかと思うのであります。したがって、こういうことはあまり反対の理由にはならないのではないか。
 それから、吉田先生の御意見ですと、医療費は上昇を鈍化さしていると、こういうふうにおっしゃっていましたけれども、少なくとも、私らが見ている資料では鈍化はしていない。いや、むしろ伸び方が少し大き過ぎはせぬかと思うほどやはり伸びていると思うのであります。賃金、あるいは物価の値上がりに比較しまして、あるいは国民総所得の増加というものに比較しまして医療費は相当伸びている、年率二〇%以上の伸びを示しているという点において、むしろ医療費の増加というものは異常ではないかと思っております。そういう点で、今後政府の七百四十五億という赤字の見込みは、保険料収入のほうで賃金の上昇が大きいし、医療費の伸びが鈍化しているので、再検討の余地があるというような御意見であったようでありますけれども、私はその点はちょっと見方を異にしております。
 以上のように考えますと、やはり今回の処置はやむを得ない処置ではないかと思いますけれども、しかし、政府は、赤字になったら料率の引き上げ、あるいは患者負担の引き上げというようなことで毎年毎年ごまかして根本的な対策を立てようとしない。すなわち、出るほう、支出のほうの検討というものは全然していない。これはやはり保険者として、あるいは政府として怠慢ではないかと思うのであります。抜本改正をやるやると言いながら、その抜本改正というのが収入の増加をはかる抜本改正であっては何にもならない。そうではなくて、支出を合理的に検討をして、そうしてやはり正常な伸び、国の経済が伸びるに従って医療需要もふえ、医療費も向上していくでしょうけれども、現在のような異常なる伸びがどこからきているかという検討を加えて、そうして抜本的な対策というものは支出面でも考えなければならぬ問題ではないかと思うのであります。どうか先生方もそういう点に御留意くださいまして、本特例法案を通過させるにあたりましては、そういう要望を加えて御賛意を表するようにお願いしたいと思います。
 終わります。
#23
○理事(藤田藤太郎君) どうも参考人の皆さん、ありがとうございました。
 以上で参考人各位の御意見の開陳を終わります。
 それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。質疑のある方は、順次御発言を願います。
#24
○黒木利克君 それでは、お許しを得まして、安恒さんにお尋ねをしたいと思います。
 安恒さんの御意見の中に、医療保険から医療保障へというのが社会保障の進歩の方向であるというようなお考えがございましたけれども、これは総評のかねてのお考えであり、また、社会党におかれましても、こういう立場で本委員会で長時間御質問がございました。政府のこれに対する答弁とは平行線をたどりまして、藤田委員は、とうとう、この問題は根本問題だから、どうも政府の答弁もふに落ちないというので、委員長にお預けになったという実は経過があるのであります。私も、この問題こそこの特例法案の一番の問題点だと思います。私もいささか――と申しましても、戦後二十年、社会保障を専門に勉強しておるのでありますが、そういう立場から一言なかるべからずという気持でおったのでありますが、いまに至るも私に発言の時間が少しも与えられませんので、(「何を言うか」「自民党でやらせなかったんだ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)この機会に御意見を伺っておきたいと思うのであります。
 社会保障、特に国民の医療を医療保険の方式で行なうか、あるいはイギリス流に国民保険、健康保険の方式で行なうか、これはそれぞれの国の特殊的な条件によって異なると思うのであります。しかし、私は、わが国においては、こういうイギリス流の国民保険方式というのは、まず、第一に、医療の国営ということが前提でなければ実現ができない。第二には、診療報酬の支払い方式の変化、特にわが国のように、出来高払い方式のような診療報酬の支払い方式のところでは実現できないと思うのであります。社会保障制度審議会もたびたび政府に勧告もし、答申もいたしておりますが、いまだかってイギリス方式の国民保険方式というか、そういう方式をよろしいと、賛成だということを勧告をし、答申したことを私は承知いたしていないのであります。むしろ昭和三十七年の勧告におきましては、医療保険に対しましては、国費の投入の順位は最後だと、最後の順位にいたしておるぐらいでありますから、私は、社会保障制度審議会が医療国営に向かっても、いわゆるイギリス流のナショナル・ヘルス・サービス方式というものを日本に取り入れるようにということは一度も勧告していないと思うのでありますが、安恒さんは、一体医療保障であれば無料の医療が原則であるという考えかどうか、そのことについてひとつ第一にお伺いしてみたいと思うのであります。
 それから、第二には、一部負担の問題についていろいろ御批判、御非難がございました。私が最近入手しました、ILOが一九六七年に出しておりまする「ソシアル・セキュリティー・プログラム・スルーアウト・ザ・ワールド」というのに先進国における患者負担の調査があるのでございますが、これを見ますと、ソビエトロシア、これは総評におかれてもこの国の社会保障については非常に敬意を払われておるという経過があったことを承知いたしておりますが、ここでは薬剤は全額患者に負担をさせておるのであります。それから、国営医療をやっておりまするイギリスにおきましても、先ほど神崎さんから御説明もありましたが、この法律ができてすぐ処方せんの患者負担というものをやっており、その後、患者負担がだんだんふえまして、特に歯科医療につきましては、これはわが国と同じように、出来高払いの診療報酬の支払い方式でありますが、ここでは患者が歯科医にかかるごとに一ポンド、わが国で千円以上の金になりますが、千円以上を毎回負担をさせておるのであります。つまり患者負担であります。しかも、きびしい事前承認制がとられておるのでありますけれども、わが国のように、イギリスよりももっと貧乏で、しかも、診療報酬全体が出来高払い制度というような国で、今回の改正のようなわずかな患者負担、しかも、これは本人だけであります。昨日のいろいろの御質問で、何か家族まで負担をさせるような御認識の御質問がありましたが、これは本人だけでございます。しかも、非常に少額でありますが、それも一体無理とお考えになるのか。外国の事例と比べまして、わが国ではこの程度ならやむを得ないのじゃないかと思うのでありますが、その辺についてのお考えをまず伺ってみたいと思います。
 なお、先ほど委員長さんに対しまして発言をいたしましたことについて失言があったようでございますから、これは取り消します。
#25
○理事(藤田藤太郎君) 委員長として申し上げます。
 この委員会は、委員長理事打合会において発言順序をきめ、そうして円満に議事日程まできめて、円満に運営をされてきているわけであります。いま委員長所用のために、私が委員長代理をいたしておりますけれども、この委員会で発言を押えてどうしたということはありません。委員長理事打合会できめて、円満に進めてきていることをここではっきりと申し上げておきます。
#26
○参考人(安恒良一君) 御質問の点については二つあったと思いますから、答弁をいたします。
 まず、結論的に言いますなれば、無料の医療を望んでいるのかどうかということでありますが、私どもは、将来の目標といたしまして、予防治療、それからアフターケアを含めまして、完備いたしましたところの医療が、社会保障制度として、すなわち、国と資本家の負担によって労働者並びに家族、国民が無料でできることを将来の私たちの目標として運動しております。ただし、今日、資本主義社会の中における私どもの運動でございますから、これが直ちにすぐに実現をするというふうには考えておりません。そこで、われわれの保険制度というものを一歩一歩漸進的に社会保障制度の方向に高めてもらいたいということをお願いしたわけでございますが、今回の措置は、これが明らかに逆行するという立場で反対を申し上げているのであります。この点をまず第一にお答えいたします。
 それから、第二の問題でありますが、一部負担についてであります。ソ連とイギリスの制度を引かれた。私は、たいへん社会保障制度を御勉強だということでありますから、むしろそういう二つの国だけでなくして、たとえばイタリアはどうなっているか、フランスではどうなっているか、デンマークではどうなっているか、ドイツではどうなっているかということを、ひとつ一部負担の問題だけではなくて、いわゆる大きく申し上げますと、政府管掌健康保険は、今日いわゆる保険料は本人と使用者の間が半額半額の負担であります。それに対して、若干ここ数年間赤字という問題で国の負担額をふやしておりますが、こういう点について、諸外国のいわゆる労働者の負担と使用主の負担と国の負担について御調査くだされば、日本というものがたいへんおくれているということについて御理解をいただけると思います。
 そこで、具体的な質問といたしまして、ソ連の制度を持っておいでになりました。私は比較にならないと思います。というのは、日本は、御承知のように、資本主義の国であります。ソ連は完全な社会主義の国であります。でありますから、世の中の仕組み全体が違います。たとえば一つの例を申し上げますならば、家賃なら家賃の問題一つとらえましても、住宅、光熱費の問題をとらえましても。でありますから、それを、ただ単にソ連においては薬剤が全額負担であるから日本の場合においても云々と、おまえたちはソ連の方向に向かっているのじゃないか、こういうやや失礼な質問でありますけれども、そういうことを言われているんですけれども、私は、やはり社会主義の国と資本主義の国の制度の違いというものをそのままの形において比較をした御質問については、問題をはずれているというふうに考えております。
 そこで、私は、たいしたことにならないじゃないか、この程度の負担であっても反対をするかという点について、私は二つの観点から反対いたします。一つは、労働者や国民に対する負担増という問題と、いま一つは、これは松本さんからも言われましたように、いわゆる薬剤、注射費が非常に増大している、それを患者の負担のみによっていわゆる解消するというところに問題がある。まず第一の問題について申し上げますと、先生方は国会議員でありますから、相当の収入を得られているわけでありますから、そういう中でたいしたことはないと言われますが、これは私どもが控え目に今回の措置によってどんな負担になるかということをいろいろ調べました。たとえば肺結核の場合でありますが、大体これは肺結核は二剤使用いたします。そして、これが二剤使用された場合の負担増をいろいろ考えてみますと、大体診療日数五日の場合に今回の負担増がどうなるかということを計算いたしました。投薬日数を、結核でありますから、三十一日分ということで計算いたしますと、初診料が百円ふえる、それから、改悪後の薬代が九百三十円ふえます。そうすると千三十円の増加になります。それから、最近非常に老人や中年の方に多いといわれるところの、たとえばいわゆる心筋梗塞症、それから慢性胃腸炎、それから高血圧、それから慢性胃炎、こういうようなもの、それから、いま一つは慢性肝炎等におけるところの負担増をいま言ったような方向で大体一カ月分を出してみますと、大体少なくても五百五十円から、多いときには千九百六十円、これはそれぞれお医者さんからデータをいただいたのでありますが、こういうことを見てまいった場合において、ほんとうにその負担増がいわゆるたいしたものにならないのか、こういうことを考えますと、御承知のとおり、まず、政管の労働者の場合には百人未満の事業所に働いている人が七〇・五%、いわゆる中小零細企業で働いている。その限りにおいて平均標準報酬を見ますと、二万四千円以下の人が五百八十三万人おります。そして平均標準報酬が二万八千八百七十七円であります。この平均標準報酬から考えてみましても、月にいま言ったような金額負担、しかも、いま名前をあげましたような病気というものは一カ月や二カ月で簡単になおる病気じゃありません。そういうことを考えてまいりますと、私は、今回の負担増ということが非常に大きな負担増になるということを言わざるを得ません。
 それと、いま一つ重大な問題は、政府管掌健康保険は、発足以来、使用者側と労働者側の負担がいわゆる五〇%・五〇%、こういうことで運営をされている。それがいまから数年前から、初診時百円の負担と、入院時一カ月間一旦二十円の一部負担を導入された。そのときにおいて五〇%・五〇%のバランスがくずれたのでありますが、今回の措置がさらにこれを大きくくずすことになる、フィフティ・フィフティという措置を大きくくずすことになる、こういうこと等をやはり制度上の問題としてもお考え願いたいということを申し上げておきたいと思います。
 それから、第二番の問題は、私が申し上げましたように、薬の一部負担、なるほど薬の負担が多い、注射の負担が多いというのは患者の責任でしょうか。少なくとも、私たちが病気になって行ったときには、お医者さんの御指示に従って薬をもらうわけです。患者が薬をよけい飲み過ぎるとか、よけいもらい過ぎるとかという、そういう論理は全くおかしい。中には会社の重役が、きのうゴルフに行って疲れたからビタミン注射を打ってくれというものも中にはあるでしょうが、一般に労働者はお医者さんの指示に従って薬をもらい、注射を打ってもらっているわけです。そういう結果、今日総医療費の中で投薬で四十数%、注射を含めますと六〇%近くになる。これを抑制しようということで、患者に負担させることによって問題解決にはならない。そういう先生おっしゃる出来高払い制度の診療報酬体系の中に問題があるのではないか。いわゆる技術を尊重しない、薬剤をうんと使えば医療機関の収入が多くなるという、そういうことを直さずに、患者だけに一部負担を増加する、このことによって問題を解決されるということは、これは本末転倒だ、こういう角度から申し上げているわけです。
#27
○柳岡秋夫君 私は、まず神崎さんにお伺いしたいのですが、先ほど神崎さんは、現在の薬価の総医療費の中に占めるウエートが非常に大きいということを一つの矛盾として、こういう矛盾を抜本対策までほうっておくべきではない、したがって、今回の特例法等については賛成だ、こういうような御意見だと思うのです。そこで、まず私も、その薬価の問題は大きな問題であるということは承知の上でございますけれども、今日まで抜本対策をうたってきたその行政当局の責任というものをどのように考えているかということがまず第一の問題だと思います。
 それから、もう一つは、私は、やはりこの保険制度の乗っかっているところの土台、いわゆる日本の医療制度そのものに対してやはり大きなメス、改革というものを加えていかなければ、単にこの薬価の問題だけを解決する、対策をとるといっても、これは根本的な対策にならない、このように思うのですね。先ほど神崎さんも税金の問題を取り上げて、税金をそのような保険財政に回すならば固定的な経費に回してもらいたい、いま病院が非常に苦しい経営をしているということ、そういういわゆる医療行政、こういう行政当局の今日までほうってきた政策、そういうものに対して、やはり大きな改革というか、メスを入れなければ、私は、ほんとうの医療保険財政の確立、あるいは日本の医療保障をよくしていくということにはならないのではないか、このように思いますので、この点をひとつ神崎さんにお伺いしたいわけです。
 それから、もう一つ加藤さんにもお伺いしたいのですが、加藤さんは、この案は抜本対策の前提として必要である、そうして、また、この法案は負担の公平化という観点からも非常に賛成である、こういう御意見です。そこで、いままで私どもこの社労委員会で厚生当局と論争してきた中で、この特例法は、あくまでも赤字を解消していく暫定対策である、したがって、たとえば薬剤の一部負担の新設についても、これは抜本対策のときには、これはあらためてどうするかということについて検討していく、こういう答弁でございました。ところが、負担の公平化のためにはこういう制度が必要だということになりますと、保険制度の運営上、そうするとこれは明らかな私は抜本対策と申しますか、この基本的な問題に関係をしているのではないかというふうに考えるわけです。そうすると、この一部負担の問題は、これは厚生省当局が意図しているものと違って、加藤さんのほうでは、これは今後抜本対策の中にもこういう問題は取り入れられるべきものである、こういう観点に立っているのではないかというふうにこれはうかがえるわけでございますけれども、この点をひとつお伺いしたい。
#28
○参考人(神崎三益君) ただいまの御質問にお答えいたします。
 今日になるまでこれを放置しておった行政当局の責任をどう考えるか、第一の問題はそうでございましたね。まさに行政当局、それから立法府ともに責任がある、こういうふうに考えております。しばしばそのことはわれわれ論文として発表してもおりますが、ただ、残念なことに、わが国においては病院団体というものを過小評価して、そうしてわれわれの団体に法的な発言の場を与えていない、そういうことが先生のお耳に達しないために責任問題を云々されたものだと思います。
 次に、もちろん今度の特例法案によって理想的のものにいくとは私は考えておりません。これは医療費から医療制度、この全面的な改革をしなければならない、抜本改正をしなければならないという考えにおいては、先生方に劣らないものを持っておると私は自負しております。いろいろその点について考えたものをまとめ上げておりますが、これは時間が長くなりますから、ただ、そういう熱意においては皆さま方に劣らないと、こういうことを申し上げて、答弁になるかどうか知りませんが、お答えをいたします。
#29
○参考人(加藤俊三君) お答えいたします。
 今回のは暫定措置であって、抜本改正へ移行する前提として私どもはこれを認めるということを申し上げたわけでございますが、先ほど先生御指摘のとおり、赤字を埋めるためにこの薬代の一部負担を取り入れるということは、制度の基本問題に触れるのじゃないかという御意見でございましたが、私もそのとおりに考えます。しかしながら、この赤字を埋めるために制度の基本に触れる問題の一部が入ってきても一向差しつかえないんじゃないかというふうに考えます。したがいまして、抜本改正の暁には、当然この問題は取り入れられるべきものであるというふうに考えるわけでございます。
#30
○藤原道子君 これは吉田参考人にお伺いいたします。
 抜本対策は絶対に必要だと思いますが、そういうときに参考人とされましてはどういうふうなお考えをお持ちでございますか。抜本対策はいかにあるべきか、この点をお伺いしたいと思います。
 さらに、桑原参考人にお伺いいたしますが、保険医は薬剤を乱用しているということをしばしばいわれておりますが、保険医としてどのようにお考えになっておいでになるか。また、医師会は本案に賛成しておいでになるようでございますが、参考人とはその考えを異にしているようでございますが、これはどういうわけであるか、この点と、それから、薬剤費一部負担は受診量が低下すると私たちは考えておりますが、この点についての率等に、もし見通しがございましたらお聞かせを願いたい。
 以上でございます。
#31
○参考人(吉田秀夫君) 藤原先生からたいへんむずかしい質問で困っておるのでございますが、実は、今度の健康保険の臨時特例法案に対して、かなり激しい国会内外の抵抗があるというのは、やはりその前提として、総理大臣も、あるいは厚生大臣も、あるいは大蔵大臣も、特に厚生省におかれましては、何年ごし抜本的改革案をやるんだと、やはりそういうことが言われておる前提の中でのそういう動きだと思います。としますと、やはりどうも政府の考えておるような抜本的改革案というのは、いままで以上に労働者や、あるいは家族や、あるいは国民大衆に犠牲や負担をしいる、そういう方向を多分に持っているというようなことを含んでおる。私はそれを非常に心配しながら、やはりこの臨時特例法案に対してはっきりと国民の意向を示さないと将来たいへんなことになるという、そういう気持ちもあると思います。そういう意味で、いままで抜本的改革案といわれる本物は、考えによっては、たとえば社会保障制度審議会の勧告とか、あるいは医療小委員会の意見書とか、あるいは厚生省の牛丸委員会が出しているような問題のテーマの整理とか、あるいはその他もろもろの公的な諮問機関なり、あるいはそれに付随して、日本医師会なり、あるいはお隣にいます保険医協会なり、あるいは日経連なり健保連合会なりという、そういう団体の意見を大体整理することが可能だと思いますね。その中で、かなり多くの部分は、どうもいままでの健康保険以上に積極的に改善、拡充するという方向ではなくて、逆に後退するような危険性のある意見が非常に多いということを心配しております。したがって、基本的な考えは、やはり保険制度だけをどんなにいじっても、これは社会保障全体もそうなんですが、これは労働者の低賃金や、国民、農民、市民の低所得あるいは貧困は社会保障でカバーできるはずはありませんから、その辺の一番もとになる問題を全然なおざりにして制度をいじるだけでは抜本の本に通じないのではないかと、私はいつも心配しております。そういう意味で、そういうことをほとんどノータッチでいるということは、厚生省だけで一体具体的な抜本的な改革がやれるのかやれないのか。諸外国を見ても、諸外国といっても、イギリスの場合でもフランスの場合でも、あるいは北欧諸国の場合でも、年金や健康保険といいますと、政府あげて、あるいは国会あげて対応しますね。そういう全力投球というような場がどうも日本の政治にないのではないかということを非常に心配しております。そういう意味で、基本的には、やはりいまの制度、特に日本の健康保険制度には非常に不均衡、アンバランスがありますから、それを下のほうに地ならしをするようなことでやられるというような、そういう抜本的な改正案には私は反対なんです。それよりも、やはり一番勤労者、あるいは国民の大部分の人たちが安心して近代的な医療をそう過大な自己負担なしにいつでも受けられるというような、そういう状態が保障されない限りは、私は後退だと思います。で、そういう意味で吉田秀夫の抜本的プランを出せと言われましても、
  〔理事藤田藤太郎君退席、委員長着席〕
そんな時間はありませんし、あえて出せということなら一時間でも二時間でもしゃべりますが、そういう時間はないようですから、基本的な考えだけでお許し願いたい。
#32
○参考人(桑原康則君) 第一の、薬剤の乱用ということについてどう考えるかというお話でございます。先ほど神崎先生は、日本のように高率の薬品費を使っているところは他国に例を見ない、これは日本特有の状態だとおっしゃいました。私も、まあ知人の欧米の臨床を勉強した人たちに聞きますと、確かに欧米のほうは日本よりも薬剤の使用が非常に少ないそうでございます。そうして、手術のあとなんか、日本の常識からいえば、この薬を使ったら早くなおるのにと思うような場合でも使わない場合がある。そのかわり、ペニシリンでも使うと非常によくきくと、こういう話を二、三聞いたことがございます。私その実情は知りませんが、おそらくこれは事実だろうと思います。しかし、それがはたして日本における医師の薬の乱用といえるかどうかという点については、私は非常に大きな疑問を持っております。といいますのは、欧米では、薬局では、しろうとが薬局に行きましても、医師の証明書、あるいは処方せんがない限り絶対に薬は売らないそうでございます。日本では、まあ毒薬以外はたいてい売ってくれるそうでございます。そういうことで、すでに医師に来る前に、患者自体が薬の乱用を非常にやっておる。そのために日本では薬がききにくいのでございます。現に私たちのところに来るのでも、もうペニシリンが非常にききにくくなりました。外国のようにそんなにききません。で、もう次々にあらわれる高度の新製品、非常に高いもの、それをどんどん次々にかえていかないときかない。そのほか、また新しい抗生剤、非常に高価になります。これを使わないときかない、これが実情でございます。こうなりますと、われわれは好んで何もそういう高価な薬を売っておるのじゃなくて、それを使わなければなおらないというような状態に現在なっておる。これはやはり売薬の制度にも問題がある。先ほど申し上げましたいろいろな薬剤資本の広告の問題、いろいろな問題があると思います。このことを度外視して、ただ形にあらわれただけで日本は外国よりも薬をたくさん使っておる、したがって、医師が乱用しているというふうに即断するのは、私には少し論理の飛躍のように思えるのでございます。もちろん、先ほど何といいますか、薬をたくさんやらなければもうからないと、こういう現在の点数制度の矛盾というものがある、これも事実でございます。しかし、なぜそういう矛盾が出てきたか、これは先ほど申されましたことに関連しますので、ちょっと申し上げたいのですが、医薬分業をやったら、そういう点数、いわゆる今度の事務の繁雑が一ぺんになくなるのじゃないかということと関連しますので申し上げますが、私、この医薬分業ということが非常に関連しておると思うのですが、医薬分業というのは、やはり日本の医療をどういうふうに将来打ち立てていくかという根本的な重大な命題でございます。これをただ健康保険の一つの行政的な事務を簡素化するための手段として、処方せんを出せばこれで片づくじゃないかと、こういうふうに軽々に扱ってもらっては非常に困る問題だと思うのです。やはりここには現在の点数の制度に非常に矛盾がありまして、医師のほんとうの技術料というものが独立していない。いま処方せんを出すということになりますと、おそらく過半の開業医が経営困難におちいる。このように薬剤に依存している部分が確かに多いのでございます。そのために乱用するということ、これはやはり支払基金というものがありまして、ここには大ぜいのエキスパートがおって、医師の臨床家としての常識からチェックをしておりますから、それほどむちゃな乱用は起こらないのでございます。結局しかし、そういうふうな基本的な点数規定の矛盾がございますから、あるいはそういうことを考えられるのも無理はないかと思うのですが、ただ、何といいますか、それを押えるためには医師の技術料をもっと十分にする、薬によらなくてもできるというところの点数規定をつくらなければできぬのだと思うし、また、現状においてもそういう矛盾があるにかかわらず、これで保険財政を危うくするというふうな、それほど大きな問題ではないと私は確信しております。
 それから、第二の、医師会はおまえの言うのと違うじゃないかと、おそらく医師会は薬剤の一部負担ということには反対せずに、百万円以下の低額所得者を免除せよという要求をしておったということだろうと思います。で、それを額面どおりとりますと、これは百万円が、七十万円か六十数万円か、とにかく金額は落ちましたが、一応その差はあるにしても、低額所得者の救済措置を講じたのだから日本医師会の要求は通っているのじゃないか、おまえは何を反対しているのかと、こういう御意見だと思うのですが、私、武見会長が百万円以下の云々ということを言われた真意がどこにあるか存じません。実はお聞きする機会はございませんし、代議員会もその後一ぺんも開かれておりませんので知りませんが、現在修正されたああいうものを意味して言われたのじゃない、それが誤解されているのじゃないだろうかと思います。といいますのは、現在すでに全国の医師会に指令して、患者の負担の増大は絶対反対せよ、これは初診時の負担の増大、入院時の負担の増大及び薬剤の負担の上昇、これを一切含めて、こういうものを全部反対せよという指令を発して運動を展開しているはずでございます。したがって、現段階におきまして日本医師会と私のそういう点についての意見の差はない、これは日本全国医師の希望だということは私は断言できると思います。
 第三の、受診率の問題でございますが、受診率について、ちょっと先ほど早口でお聞き取りにくかったと思いますが、これだけ上げると何%受診率が落ちるかという資料はおそらくどこにもございません。ただ、長瀬さんという方が、前厚生省のえらいお役人をしておった方だそうですが、この方が書かれたのに、国民保険の例をとったそうですが、四割給付の場合、五割給付の場合、七割給付の場合とか、給付率の差によって受診率は違っておった、これはあとで補正はしておりますが、そういう数字は出ております。私、きょうは十五分ということで資料は持ってきておりませんのですが、それと、いま一つは、私たちが実感として申し述べました、毎日来ておったものが三分の一に減った、こういう患者の例はたくさん持っておりますので、いかに厚生省が受診率に響かないとおっしゃっても、それは現場の保険医としては絶対に納得できないということを申し上げて差しつかえないと思います。
#33
○森勝治君 吉田さんに二点お伺いしたいのです。
 厚生省は、口を開けば七百四十五億の赤字、まさに政管保険の問題は累卵の危うきなどという大げさな表現を用いているのは先生御承知のとおりです。私も、この七百四十五億などというのは、どうもこの数日間にわたる質疑、討論の内容を聞いてみてもすぐわかりますように、赤字にどうも水増しをしているような気配を私は感ぜざるを得ないのです。ところが、医療給付の伸びというものが最近著しく鈍化してきたと、こういわれているわけですが、それはどういう理由で鈍化してきたのか、御存じでしたらひとつお聞かせ願いたいと思うのです。
 それから、もう一つ、医療費の増大というものが、患者の数が、ここ十年来医療が二倍にもふえたのでということがよくいわれているわけでありますが、私は、やはり最近のように、公害とか、あるいはその他著しいものが人間を貧乏と病気のふちに追いやるような社会的要因が幾多派生しつつあるわけでありますので、そういう面からも、また、どういう病気がどのようにふえてきたのか、そういう面につきましても、御存じでしたらお聞かせいただきたいと思うのです。
 それから、健康保険の連合会の加藤さんにお伺いしたいのですが、先ほどあなたの御意見を拝聴いたしておりますと、薬価の一部負担は当然であるという積極的な発言をされたわけでありますが、組合保険と政管健保との被保険者である、いわゆる労働者の社会的な背景というものが違うことは御承知のとおり。私も先般この点についても若干触れました。たとえば労働者一人当たりの短期にいたしましても、組合保険よりも政管健保のほうは一万円低いということ、もちろんこれは千二百万にもなんなんとする被保険者の数でありますけれども、これはもう組合保険よりも被保険者の数が多いわけであります。しかし、組合保険の場合は、御承知のように、採用時には厳密なる身体検査を行ない、その身体検査に合格した、すなわち、健康体を持った者でなければ採用をしないという、すでに職場、工場、事業場に働く第一歩において、もういわゆる健康診査をするわけですが、片や政管健保のほうはそういうことはいたしておりませんから、もうかど口ですでに差異があるわけです。さらに、この前も指摘しましたが、一千二百万の被保険者のうち、約一〇%は五十五歳以上の中高年層ということになります。これは組合健保の場合は五%ですから、その倍ということがいわれます。そうなれば、勢い、この点につきましては藤原さんからも先日指摘されたところの成人病その他のものが、いわゆる病気の要因というものがやはり組合保険の被保険者よりも政管健保の被保険者のほうが、私は、げすなことばで恐縮ですが、病気にかかるような下地が多くあるのではないかということになります。ならば、組合保険よりも政管健保のほうがどうしても赤字の累積ということが出てくることは必然的な現象、これは加藤さん御承知のとおりであります。だからといって、これを患者負担にするがごときということであるならば、かつてこの問題が十数年前に制定された当初のときよりも現在のほうが後退するし、安恒さんも先ほど言われましたように、今度初めて取るということになると、そうなりますと、非常にこういう政管健保に対する被保険者の信頼の度というのが薄まるわけであります。そういう点からいたしましても、これはもう当然そういう赤字は、働く労働者の責めに帰すような処理方法でなくして、やはり雇用主とか政府というものが、その工場、事業場に働く労働者諸君の健康を守ってやる責務があるだろうと思うのであります。生活と健康が守られて初めて生産に対する意欲が労働者側にわき起こってくる、こういうことでなければならぬと思うのですけれども、あなたはこういう点についてどうお考えなされるか、この点をお伺いしたい。
#34
○参考人(吉田秀夫君) 森先生から二点御質問ございました。その前に、どうも厚生省の七百四十五億という赤字は水増しではないかという、私と同じような感じをお持ちなんですが、ちょっと古いことで恐縮なんですが、健康保険は二十九年に初めて創設以来年間収支で約四十億の赤字を出した。そのとき三年越し、三十年、三十一年、三十二年と、健康保険の問題は国会を中心にもみにもんだわけです。ところが、あのときも私は国会に参りまして、実際には三十年、三十一年の段階で、もはや赤字ではないということを申し上げたのですが、事実、大蔵省から六十億円ぐらい借金しましたが、確かに三十年以後、政府管掌健康保険の財政は後退しました。ところが、そのころになりますと、厚生省の言い分は、赤字対策ではなくて、皆保険を前提にして、健康保険の地ならしで若干一部負担が必要だということで、現在の初診料百円、あるいは入院費三十円その他がまかり通ったわけです。そのとき以来、私は、どうも厚生省のこういう数字にはあまり信用を置いてないわけです。したがって、七百四十五億の中身につきましては、先ほども申し上げましたから、これはさらに慎重に厚生省を追及審議していただきたいと思うわけです。
 さて、そういう状態の中で、医療費、あるいは医療給付の鈍化の理由は何かということですが、これは先ほど言いましたように、日本医師会が、厚生省あるいは与党を相手にして、かなりユニークな見解をとったのは三十七年の春から夏です。そのあおりを受けて、五月に医療懇談会が了解事項を出した。そのときに小山保険局長は、とにかく制限診療を大幅に緩和するということで始めたのが三十七年から三十八年の制限診療の緩和です。それに伴って、新規で非常に値段の高いいろいろな薬品の採用もどんどん認めたという制限診療の緩和と、新規採用のいろいろな薬品の添付使用と、いろいろな諸検査を大幅に認めたというそのことが、やはり全国の保険医、あるいは医療担当者に反映しながら、やはり薬依存、あるいは検査依存の傾向が非常に増大したということは否定できないと思うのです。そういうまあ異常な状態がやはり四十年、四十一年の段階で一応ノーマルな状態になり、かつ、これは先ほどの御意見とはちょっと違うのですが、私は、どうも四十一年、あるいは四十二年という状態になってノーマルな状態に医療費はなってきているので、いままでのような急激な医療費の増はそうたいしたことではないのではないか、この辺は見解の相違ではないかと思うのですが、そういうふうに私は理解しております。
 それから、どんな病気が一体ふえたのかということですが、これは厚生省の国民健康調査によりますと、大体申し上げますとわかるのですが、ガンが昭和三十年から四十年の間に約二倍、血液性の疾患が三倍、精神病が三倍以上、神経系統の患者が二・六倍、心臓病などが四倍、呼吸器が二・五倍、消化器が二倍、骨の関節炎が四倍、それから、何と奇形児が四倍で、新生児未熟児が九倍もふえ、それに交通事故が二倍ということです。国民健康調査ですから、健康保険のような疾病調査と違う。それから、もう一つは、これは問診ですから、毎年十一月かに約一万ぐらいの世帯を役人が問接して調べた調査なんで、これもあまりどの程度当てになるかどうかわかりませんが、ただ、精神病とか性病というのはどうしても言いたくありませんから、これはこういう健康調査に反映しないのではないかと思います。いずれにいたしましても、こういう病気を並べますと最近の病気の様相がわかると思いますし、やはり人口の老齢化に伴って、何といっても人口の一割が六十歳以上の年寄りだということになりますと、これは非常に病気は多発すると思うのです。そういう人口構造の変化による疾病構造の変化、これも考えなくてはならないことではないかと思います。
 以上です。
#35
○参考人(加藤俊三君) 森先生のお尋ねにお答えいたします。
 最初に私が申し上げましたように、今日赤字発生の最大の原因は薬剤の使用量の増大にあるというふうに申し上げました。そして、この水の漏れ口をまずふさぐということを考えるのは当然でございますので、その意味で、いまの段階では薬剤の一部負担もやむを得ないのであるというふうに申し上げたわけでございます。
 次に、政管健保と組合健保の比較を申されましたが、まさに御指摘のとおりでございまして、社会的な背景も違いますし、それから、組合健保では採用時に厳密な身体検査をいたしますために、スタートラインにおいてもすでに差異が出ております。それから、その中身におきましても、政管健保には老齢者が多いし、あるいは、また、病弱者が多いとかいうようなことがいわれるわけでありますが、しかしながら、この政管健保と組合健保との差異は、もう一つわれわれとしてはぜひ御認識いただきたいと思いますのは、企業主と労働者と労働組合、これが三位一体になりましたところの経営努力、こういうものを無視することはできないと思います。で、政管健保も厚生省においてずいぶん行政努力をしておられるとは思いますが、しかしながら、最近数年間の医療費の伸び、この両方の伸びを比較いたしました場合、いま詳細な資料を持ち合わせておりませんが、政管健保の医療費のほうがはるかに伸びておるということでございます。ということは、野放しといえばことばが悪うございますが、組合の健保のほうにおきましては、レセプトの確認業務でありますとか、あるいは被保険者の指導でありますとか、いろいろそういう努力をしておることの差異があらわれてきているんじゃないかというふうに思うわけでございます。
 それから、最後に、この政管健保の赤字は、御指摘のとおり、確かに政府のほうにも責任がございます。行政の怠慢ということも原因になると思いますが、その責めを患者負担にするのは酷じゃないかという仰せでございますが、私もそのように考えます。しかしながら、私どもの主張いたしておりますのは、家族の給付を向上したいということをかねがね念願いたしておりまして、これは先ほどどなたかおっしゃいましたように、給付率が受診率に比例するとおっしゃいましたが、確かに本人の受診率と家族の受診率は違うのでございます。家族の受診率がはるかに低いということは、十割と五割、あるいは十割と七割ということに原因があろうと思うのでありますが、家族も同じ人間でございますので、同じような給付を受けるというためには、やはり受益者負担で一部を負担していただくと同時に、同じ人間でありますところの家族給付も向上さしたいというような意味で、いまの段階ではこの措置がやむを得ないものであろうと思うわけでございます。したがいまして、抜本改正におきましてもこういうことをぜひ取り入れていただきたいということを考えているわけでございます。
#36
○小柳勇君 私は一問だけ質問いたしますが、先ほど松本参考人が医薬分業についてお触れになりました。医薬分業について松本参考人からもう少し見解を聞きたいと思います。かつ、保険医として桑原参考人から医薬分業について御意見を伺いたいと思います。
#37
○参考人(松本栄一君) 年次はいつだったか、ちょっと記憶しておりませんけれども、駐留軍が日本の医療行政について検討を加えた勧告があって、それで医薬分業ということがたてまえになってそういう構成ができたわけでございますけれども、そのときに、ただし、患者が希望すれば直接薬を渡してもいいという規定が入ったわけであります。そのただし書きが現在原則になっておりまして、しかも、先ほど申し上げましたように、剤数と日数に比例して処方調剤料が上がっていくという、そういう制度が見られます。
 それから、もう一つは、実際の購入価格と薬価基準に登載された価格との差額が医療機関の収入になるという、そういう制度がございますので、なかなか処方せんを書かないというのが現状でございますが、その点は、たとえば甲表におきましては薬価基準は同じですけれども、調剤手数料とか、あるいは処方料とかいう制度がございませんから、甲表では相当処方せんを書いております。たとえば本郷赤門堂といったかと思いますが、あそこの薬局などは東大から出てくる処方せんでりっぱにやっておるという事例もあるようでございます。本来、薬を患者に売るというようなことは医療機関の行なうべきものではないというのがたてまえではないかと思っております。
#38
○参考人(桑原康則君) 先ほど、今度の法改正で医師の事務が非常に繁雑化するという、そういうことは医薬分業すれば、処方せんを出したら一ペんに片づくのではないかという松本さんのお話がありましたので、そのことについては、先ほど申し上げましたとおり、医薬分業というのは、やはり日本の医療のあり方を将来きめる非常に基本的な問題だと思うのでございますが、こういう大問題を、ただ保険行政の行政面における混乱を救うための手段として軽々しく取り扱ってもらっては困るということを先ほど申し上げたのです。基本問題として考えます場合に、医薬分業ということをどういう意味で使っておるのか。話す人でみな違うので、私ちょっとわかりかねるところがあるのですが、ある人は、医薬分業ということを、医師から調剤権を法律で取り上げる、医師は調剤すべからずということで禁止するのだ、もしそういうことだとすれば、諸外国でそういう禁止をしておるところが多いのかどうか。実はまだ私寡聞にしてはっきりわからないのですが、欧米でそういうことをやっているところがあるということを聞いておりません。問題は、欧米で医薬分業がなぜ行なわれておるか、薬を売ってその利ざやでもうけなければならぬほど外国の医師はみみっちくない。もっと十分な技術料をもらっておる、そんなものはものの数ではない、こういうことも一つの原因であろうかと思うのです。結局日本でこれができないというには、日本の医師の技術を不当に低く評価しておる。それから、昔から水散二剤という表現で内科の医師の技術料というものが評価されておった、こういう一つの歴史的なものもあろうかと思いますが、とにかくそういうふうに欧米と日本における背景を度外視して、ただ行政的に医薬分業さえすればすっきりいくのだということは、どうも私自身納得いかぬのでございます。先般外国を歩いた人に聞きました。これは短時日でありますから、どこまでほんとうであるか知りませんが、欧米でも、医師の門をたたいて処方せんをもらって、また薬局でもらわなければならぬという、これは非常に患者には不便だ、この不便さが非常にやはり訴えが大きくなりましたためか、現在は医師のところでやはり薬がもらえるようになったのだ、こういうことも言っております。決してこれは医薬分業というものは、そういうふうにただ現象的な面だけで云々すべきではなくて、もっと基本的な診療費体系のあり方というような問題から解決していかないとなかなか解決の困難な問題ではなかろうかと私は考えておりますので、ただこれさえやったら何もかもうまくいくのだという、こういう考え方には私は賛同しかねるのでございます。
 以上でございます。
#39
○佐野芳雄君 いまの桑原さんにお聞きしたいのですが、まだこの法律の修正の問題についての質問がされておりません。そこで、薬剤の一部負担という場合に、事務的な問題についての質疑をしていない。これからこれを事務当局に聞こうと思っておりますので、その参考にお伺いしたいわけですが、御承知のように、現在の事業所は単なる保険料の徴収義務者にしかすぎない。したがって、免除の場合のいわゆる二万四千円、あるいは家族の六千円というような免除資格を持った者の証明は一体どこでするのか、当然保険者の仕事になると思います。そうすると、七百万近いところの免除資格を持った者に対して、一体今日、十月とか十一月からそういうふうな証明書が出せるのかどうか、これは事務的なところかと思いますが、そういう点をこれから聞いてみようと思いますが、いま桑原参考人のお話の免除証明等は、あるいは事業所等というものをやはり考えているようなお話もあったのですが、そういう点をどういうふうに想像をされておりますか、あとで明らかに事務当局にしたいと思いますけれども、問題は、そうなりますと、そのあとで起こってくる証明の結果に基づきますところの問題、当然医療機関と患者の間、あるいは医療機関と基金との間に相当紛糾が予想されるのです。そういう点についてお考えがありましたら聞かしていただきたいと思います。
#40
○参考人(桑原康則君) 免除者であることをどこで証明するだろうかということ、事業所が証明するわけにはいくまいと思います。しかし、事業所から標準報酬はみな出張所に届けるわけでございますから、その該当者はこれこれであるということは事業所から出張所に届けて、出張所のほうで、あるいは保険課かもわかりませんが、そこのとにかく官庁が証明したものをまた事業所のほうへ返して本人に渡すということになるのではないかと思います。ただ、これは子供が生まれたりベース・アップがあった場合に、そのつど変わりますが、大体一年に一回、一定の時期、九月なら九月という時期を限って、これで一年間通用するようにするのじゃなかろうかとも思うのですが、その事務自体はそれほど複雑ではないと思うのでございます。これを事業所で渡すということは、終局その証明書を事業所に渡して本人に渡すのか、あるいは本人が直接出張所に行ってもらってくるのか、これは厚生省がどうおやりになるかわかりませんが、ただ一回きり、要するに、保険医に一回見せればいいというようなものであれば事業所から渡すこともあり得ると思いますが、受診のつど、あるいは毎月渡さねばならぬというようなことになると、さあこれはどうなりますか。もし出張所で渡さねばならぬということになると、現在の生活保護法の患者よりもたいへんなことになります。それから、この発行後に患者や保険医、あるいは基金との間にどういうふうなトラブルが起こるか、これを非常に私たちおそれているのでございまして、たとえば私、基金の審査員をしておりますが、基金で聞いてみるとお手あげだといっておりますし、それも厚生省からまだ指示が何も出ておりませんので、想像の域を脱しないわけでございますが、しかし、先ほど述べましたが、大まかに分けて、結局その二つの道しかないと考えるわけで、もしこれが後者の、そのつど渡すということになりましたら、これはたいへんなことになります。これは患者が受診のたびごとに、被保険者証だけではだめだ、それだけ持って行けば金を取られるわけです。免除証明がなければいかぬのでありますから、必ずもらいに行かなければならぬ。ところが、これは何といいますか、私は貧乏人でございますという証明書を持ってくるようなもので、非常に患者にとっては屈辱でございましょう。また、これを持ってくることによって患者がひけ目を感じる、あるいはこういうものを出したならば差別診療されないか、おれは貧乏人だということで差別診療が起こりはしないか、先生はいい薬をくれないのじゃないか、現在でも保険で来た場合に、先生、保険で出せないのだったら金を出しますからいい薬をください、こういうことを言う人がおります。これがこういう証明書が発行されると、こういう傾向がなお増大するのじゃないかということを私はおそれるわけでございます。それと、なお、めんどうだから、当初は事業主から証明をもらわずに行きます。最初水散二剤をもらったとして六十円の負担、六十円ぐらいいいわということで来ますが、この病気が長引いて五日、十日となり、それ以上になりますと五百円、六百円、八百円となります。そうすると、これはちょっとまとまるとなかなか被保険者には大きい額になりますので惜しくなってくる。そのときに初めて月末になって保険医のところに証明書を提出する。そうすると保険医はいままでもらった分を、すっかりまた勘定し直してお返しせぬならぬ、窓口の事務はたいへんなものです。もしちょっと月を越しますと、もうすでに請求してしまったという場合には、返せ、いや、返せないと、窓口でとんでもない混乱が起こってきます。こういうような事務的な混乱のために患者と医師との間に争いがもう絶えなくなる、こういうことを私は心配しておるわけでございます。結局そういうことから一日一剤十五円の負担ということも受診率を非常に下げるとは思いますが、それ以上に、証明書の発行ということは受診率を下げるのじゃなかろうかと、私このように考えておるわけでございます。
#41
○黒木利克君 吉田さんにお伺いいたします。先ほどの御意見の中で、こういう国民医療の問題が政治の大問題に先進国ではなっておる。なるほど、内閣がつぶれましたり国会が解散したりいたしております。わが国も、ようやくこのほど国民的関心の中で論議が行なわれる時代になったわけですから、その意味においては私は喜ぶべきことだと思うのでありますが、しかし、この論議を通じましても、どうもイデオロギーの対立といいますか、社会保障の方法論につきまして、どうも相入れない意見がありまして平行線をたどっておる。これじゃ根本対策すらこれ以上に難航し、混乱をするのじゃないかと思うのであります。そこで、先生にひとつお伺いをいたしたいのでありますが、私がたまたま研究したところによりますと、社会保障のこういう社会党とわが党との対立、あるいは野党との対立の問題は、先ほども申しましたが、イギリス方式でいくか、つまり大陸方式でいくか、あるいはドイツ流の保険方式でいくか、もちろんこの保険というのは、大蔵大臣がちょっとおっしゃいましたが、国庫負担の導入ということで、これは保険の収支均衡の原則がつぶれておりますので、社会保障の有力な方法としては社会保険ということでございますが、そういう新しい社会保険の方式でいくかということの論争だと思うのであります。これについては、イギリスがこういう医療保障をやりまして以来大論議がありまして、御案内のように、イギリスの労働党のブレーンであるフェビアン協会のアベルスミス、社会保障の専門家でございますが、これと保守党のマクロード、後の厚生大臣の有名な論争があったわけなんですね。当時保守党のマクロードは、イギリスのいわゆる無料の、すなわち、フリーザービスで、そうして全国民に対しての一律給付というものは迷信ではないか。これは必ずしも社会保障の進歩とは言えないということで、結局それが三、四年前に労働党がみずから、なるほど保守党のマクロードの言うとおりである。これはアベルスミスも思想転換をいたしまして、スーパー・アヌエーションという所得保障の論争で労働党が先手を打って保険方式に立ち返る、フラット方式もやめる。つまりドイツ方式に切り変わってまいったわけであります。これは先ほども言及しましたが、ナショナル・ヘルス・サービスの歯科診療における一部負担もそのあらわれだと私は思うのでありますが、そういうことで、私は、外国においては労働党のほうが歩み寄ってきた。問題は、長い目で見て、あるいは大局的に見て国民の医療のためにどちらがいいか、質のいい医療が国民にあまねく行き渡るためにはどちらのほうが早く実現できるかということに問題があるので、これは保守党も野党も何らこれに変わりはないのでありますが、いがみ合いの根本はこういうイデオロギーの論争にある。しかも、先進国においてはそういう歩み寄りで問題の解決を見つつある、そういう私は実例を知っておるのでありますが、そういう意味で、ひとつ今後の国民の医療を確立する意味で、こういうイデオロギーじゃなしに、お互いがひとつ国民医療の立場で歩み寄る方法はないものか、私はこの方法以外には――これが国会において大いに論議されて日本の社会保障も進展をするのではないか、そういう意味では、イギリスの政治のやり方が私非常に参考になるんではないかと思うのでありますが、そういうことについてどうお考えになるか。もちろん政府ももっと医療費を国民医療の質をよくするために上げる、そのためにはけちけちしないで大蔵省ももっと思い切って国費の投入をする、そうして問題は、いい医者、質のいい医療が行なわれるようにと、こういうことでもちろん政府もこれは努力しなくてはなりません。しかし、野党側も、そういうイデオロギーにこだわらないで、やっぱり日本の現実に合うように歩み寄るというところに問題の解決があるんではないかと思うのでありますが、学者の御意見を承りたいと思います。
#42
○委員長(山本伊三郎君) 吉田参考人にお願いしますが、時間がきておりますので、簡単にひとつ。
#43
○参考人(吉田秀夫君) 国会でイギリス方式がいいかどうかという審議はあまりされていないと思います。そういう意味で、イギリス方式を一番日本の場合に当てはめて問題点は、たとえば全国で八千ある病院のほとんど半分以上は私立病院だ、そういう病院を全部国営に切りかえるような、そういうめんどうが見きれるかどうかというのが一つ。もう一つは、開業医が約六万、この全部をイギリス式に固定して、陣頭指揮によってやれるかどうか、そういうことが一体日本でできるかどうかという点が一番問題で、社会保障という点で見ますと、たとえばナショナル・ヘルス・サービスでなくても、社会保険という仕組みの中でも、やはり国あるいは大資本が相当めんどうをみながら、やはり安心してかかれるような、そういう医療保障が可能だと私は思うのです。そういう意味で保険がまずいか、あるいは医療サービスがどうかというようなことは、私はあまり気にしていない。資本主義の中でも、やはり医療保障は保険仕組みでも可能だということを考えております。
#44
○委員長(山本伊三郎君) これにて参考人に対する質疑を終わりたいと存じます。
 参考人の方々に一言お礼を申し上げます。本日は御多忙の中を貴重な御意見を拝聴いたしまして、まことにありがとうございます。この機会に厚くお礼申し上げます。
 引き続いて政府に対する質疑を行ないます。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
#45
○小柳勇君 私は、総理並びに厚生、大蔵両大臣に質問いたします。この臨時国会、さらに延長されたこの国会の中でいま健康保険の特例法案が審議されておりますが、七百四十五億の赤字を埋めるためにということで、延々十数日の臨時国会です。その中心の問題については、あと私はじめ、同僚委員一諸に質問してまいりますが、たまたま昨日の午後人事院勧告が出ました。したがって、この健康保険赤字が政府の責任であるという追及の質問の前に、人事院勧告につきまして総理の決意をお聞きしておきたいと思います。そしてこの健保の赤字の問題に入っていきたいと思います。
 昨日人事院勧告が出ましたが、七・九%の引き上げを勧告いたしました。五月実施であります。で、これが要求されましたのはすでに昨年でありますが、八千円、民間並みの賃金を要求いたしました。団体交渉、あるいはスト権もない公務員に対しまして人事院が勧告を出したのであります。ところが、民間は一二・一%が平均引き上げられる。これに対して今回七・九%。また、都市手当は新設いたしましたけれども、現行甲地が五・四%、乙地が二・七%でありますから、たいした差はございません。たいした引き上げでもない。また、宿日直手当も改正されましたけれども、課税の対象になる。特に実施時期につきましては、四月が正しいと認めながら五月を勧告した、こういうことで、内容について不満でありますけれども、これが一応出たのであります。この人事院勧告に対しまして、総理大臣は、まず内容につきましてどういうふうにおとりになっておるか、お聞きいたします。
#46
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 政府は、かねてから人事院勧告は尊重する、こういう態度をとっております。このたびも同じような考え方で、その態度をくずしておりません。したがいまして、昨日人事院勧告を受けましたので、ただいま事務当局にこれを渡して、その点でどういうように扱うべきか、いろいろ検討さしておるわけであります。この事務当局が扱います前に、もちろん関係閣僚の協議会がございますので、給与担当大臣を中心にした関係閣僚の間におきまして、尊重するという態度でこの勧告を慎重に扱っていくということでございます。何ぶんにも、ただいまいただいたばかりでございますし、さらに、いま言われますように、内容につきましても各方面でいろいろ批判がある、また、過去におきましての実施時期等についてこれまた批判があるのでございますから、十分それらの点も考えまして、影響するところは非常に大きいのだから、そういうふうな点について十分検討して、そして尊重する、その趣旨を通すようにいたしたい、かように思います。
#47
○小柳勇君 尊重するということは前々からも再三言明されました。尊重するということは、勧告について公務員としては不満であるけれども、しかし、これが出た以上、政府としては完全に実施するということが尊重するということの意味だと思いますが、いかがでございますか。
#48
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま最初に申しましたように、政府の態度としては、今回も在来とその態度が変わってはおりません。尊重するという態度でこれを検討するつもりでございます。ただいまその時期等についての意見も出ておりますから、それをそのとおりやるということにはなかなかならない場合もございますが、政府自身が尊重するというこの気持ちをひとつくみ取っていただきたい、こう思います。
#49
○小柳勇君 大蔵大臣にも同時に質問いたしておきたいと思いますが、この実施につきましては予算を伴います。当然予算の補正も必要かと思いますが、勧告が出ました以上、完全に実施することが総理の言われる尊重の意味だと思いますが、その線で大蔵大臣としては予算措置を考えられますか、お伺いいたします。
#50
○国務大臣(水田三喜男君) 政府としましては、従来と同じ態度でこの勧告に臨みたいという考えで、尊重するという考えで、いまようやくこの勧告の内容の検討にきのうから入ったというところでございます。
#51
○小柳勇君 かつての閣僚で、現在の自民党の責任者である人の発言として、新聞記事でありますが、昨日、今度は九月からでなくて八月からにでもするかというような放言がなされておるようでありまするが、このようなことでは完全な実施ではないし、尊重ではないと思いますが、総理大臣いかがでしょうか。
#52
○国務大臣(佐藤榮作君) いま私、政府として、また、大蔵大臣としても、この人事院勧告については政府の態度を説明したばかりでございます。ただいま、在来同様、人事院勧告があれば勧告を尊重する、この立場でいろいろ内容を検討したい、かように御了承いただきたいと思います。
#53
○小柳勇君 ただいまの段階で、きのう出たばかりでありますから、内容についても内閣としていま検討中と思います。われわれはあの人事院勧告は不満でありますけれども、出た以上はこれが完全に実施される、そのことが総理大臣が常に言われる尊重ということばにマッチする、こういうことを信じながら次の質問に入りたいと思います。
 次は、この特例法に関する質問であります。この法律の趣旨はもう総理御存じのとおりです。ことしは七百四十五億台の赤字が出そうであるから、この特例法によって埋めてまいりたい。保険料率の改定によりまして三百二十五億、初診時診察料の増加並びに入院時の負担増加によって四十四億、外来投薬費本人一部負担によって百二十五億、行政努力によって二十五億、合計が七百四十五億であります。ところが、衆議院によりまして自民党が修正いたしました。したがって、その結果によりますと、百八十二億が減額されることになり、これが平年度でありますから、本年度は三百十九億が減ります。合計すれば四百二十六億を特例法で生み出そうというのがこの法律の趣旨である、そう了解いたします。総理、それでよろしゅうございましょうか。
#54
○国務大臣(佐藤榮作君) いま関係閣僚の意見を聞くとそのとおりだと、かように申しております。
#55
○小柳勇君 その本年度四百二十六億円の金を患者から取り上げ、もちろん国庫負担二百二十五億はやります、行政努力も二十五億はやりますけれども、患者から保険料率の引き上げと一部負担で取り上げようというために臨時国会が開かれ、さらに国会が延長されて今日に至っております。数日来われわれが中心に論議いたしております、たとえば外来投薬費本人一部負担によりまして本年増加の見込みはわずかに十五億円であります。国家予算に比べまして、その中でわずかに十五億円を生み出そうとする法律改正であります。そうして延々臨時国会を開き、さらに国会は延長されました。もちろん料率の引き上げについても問題であります。現在千分の六十五が千分の七十二に原案は出されて、衆議院で千分の七十に修正されました。これら料率の引き上げでもわずかに百三十九億、患者にとってはばく大な金でありますけれども、国民にとりましては百三十九億、千分の六十五から千分の七十に引き上げられますから、ばく大な負担でありますが、国家予算にとりましてはわずかに百三十九億であります。初診時、入院時二十二億でありますから、合計いたしましても百七十億ぐらいの金を生み出すために臨時国会が開かれ、さらに国会が延長されて今日に至っております。この国会のこの姿に対しまして総理大臣としてどのような御見解でございますか。
#56
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま小柳君たいへんうまく説明していらっしゃるので、私から申し上げるまでもなく、ただいま御審議をいただいております特例法、これはいわゆる社会保障制度の一環としてのその医療保険制度の問題でございます。いわゆる社会保障制度だからということで、保険制度を無視するわけには実はまいりません。やはり保険制度でスタートしたものは、このたてまえはやはり貫くことが必要でございます。いまの金額が少ないとか多いとかという御批判もおありだと思います。しかし、これは何といっても保険制度そのものを守る、これが政府の態度でございますし、特に暑い際におきましても各党に御審議をいただくということで、ただいまの臨時国会で御審議をいただいておる次第でございます。私は、皆さん方のいろいろ御議論なさることもわからないわけではございませんけれども、ただ、その立場が相当違っておる。やはり今日の特例法は、わが国の医療保険制度、これを守るというこの立場において、また、これを前進さすという立場において今回の審議はやむを得ないものだ、かように考えております。どうぞひとつよろしくお願いいたします。
#57
○小柳勇君 それでは、この赤字の問題についてはあとでさらに総理並びに関係大臣に質問いたしますが、ただいまおっしゃいました保険制度を一応是認するといたしましても、さっきもここで参考人から御意見がありましたように、病院協会としても医師会としても、あるいは社会保険審議会といたしましても、数年前から抜本改正を政府に迫っておるわけであります。日本医師会は昭和三十六年、時の厚生大臣とすでにもう書面も取りかわしたとわれわれは聞いておる。社会保険審議会では、四十年十月、政府に申し入れております。病院協会もそう方向で改正するように抜本改正を進言いたしました。数年来そのような抜本改正が言われておるにかかわらず、今日まで放任しておきながら、いまここで患者負担だけで十数億の金を生みだそうとする、そういうことは私どもは了解できませんが、なぜ抜本改正が、医師会にすれば五、六年間、社会保険審議会にいたしましてもあるいは二年間、なぜ抜本改正ができないで、ことし問題になりまして、衆議院の修正を通すために二年間の時限がつけられましたか。昭和四十二年からと言明されました。なぜいままでできなかったのか、政府の責任ある総理としての見解を聞きます。
#58
○国務大臣(佐藤榮作君) 今回の特例法も、ただ単に患者だけの負担でこれを片づけるというものではございません。国庫も適当な負担をしておりますから、その点は重ねて説明をいたしませんが、私、いまの根本問題がなぜおくれておるか、これは申すまでもなく、たいへん広範で、しかも、多岐にわたっております。そういう問題でございますから、たいへんむずかしい問題でございます。ここらにいままでなかなか取り組めなかったものがあると思います。時に保険者、被保険者、それぞれの立場におきましても互いに利害相反するものもあるようでございますし、それらの点が非常にむずかしかった、かように思います。しかし、今回この臨時特例法、これを手がける、ことに時限立法でございますから、どうしても基本的な対策に取り組まなければならない。したがいまして、政府は何度も申しましたように、これはもうむずかしいことだ、また、非常に多岐にわたる広範のものではあるが、その根本対策がその緒につくようにぜひともしたいと思いますと、かようなことを何度も説明をいたしております。この関係者が非常に広範だ、こういう意味からなかなか成案を得ることは困難だと思います。しかし、やっぱり大局的見地に立って、大所高所からの議論でこの社会保障制度を前進さす、そのうちの医療保険制度をさらに内容を充実してりっぱなものにする、こういう立場でこのむずかしい問題にぜひとも取り組みたい、政府はかように考えておる次第でございます。
#59
○小柳勇君 私はこの前の本会議で同じ質問をいたしました。そして最後に、抜本改正と一口に言うけれども、なかなかたいへんでございましょうが、政府のとる体制ですね、体制はいかがでしょうかと言ったところが、それをできるような体制をとるとおっしゃいました。その後、内閣として抜本対策をやる組織並びにそういう体制、そういうものについてどのような検討がなされておるでしょうか。
#60
○国務大臣(佐藤榮作君) 政府といたしまして、もちろん事務当局がそれぞれの案をつくる、厚生省が中心になっていろいろな案をつくりますが、その前に、各種の審議会ございますので、審議会の意見を十分拝聴いたしまして、そうして審議会の答申に沿った案をつくるということでございます。もうすでにそういう意味で厚生大臣は行動を起こしておる、かように私は信じております。
#61
○小柳勇君 厚生大臣にお聞きいたしますが、すでにもう行動を起こしておるという総理大臣の御答弁でございますが、具体的に何か動いておりますか。
#62
○国務大臣(坊秀男君) しばしば申し上げておりますとおり、この抜本改正の大きな柱と申しますか、テーマと申しますか、それは給付率、給付の均衡、あるいは費用負担のアンバランスの是正、それから財政の確立といったようなことのほかに、診療報酬体系といったようなものについて、これを適正化、合理化していかなければならない、こういったような幾つかの柱があるわけでございますけれども、厚生省といたしましては、その柱の中の一つでありまする診療報酬体系といったようなものにつきましては、鋭意これの体系の整備と申しますか、適正化と申しますか、そういったようなことを実現いたしていくために中医協におきまして非常に努力を重ねてもらっておるのでございますが、これの結論というものは早晩もたらされるというような段階にございます。
#63
○小柳勇君 あとで総理の質問の後にまた質問しましよう。
 総理に次に、さっき保険主義だとおっしゃいました。この特例法の本質に入ってまいりますが、保険主義であるから、保険が赤字になったのであるから被保険者が負担する、そのたてまえで法律を出しておる、そうおっしゃいました。そしていわゆる日本の健康保険制度ですね、保険制度が保険主義であるというたてまえに立って総理も見解を述べておられます。私どもはそれに反対でありますけれども、一応それを是認いたしましても、ただいまこの法案になっておりまする政府管掌健康保険ですね、政府管掌の健康保険というのは組合健保と違うわけですね。また、国保とも違います。これも数日来ここで論議しているところでありますが、現在の日本の医療体系というものは一緒です。いわゆる医療機関なりその診療体系は一緒、診療報酬も一緒です。いわゆる医者の薬代も一緒です。注射代も一緒、診察料も一緒。ところが、それにかかります病人は収入が違うわけです。大企業に働く者、これが組合健保をつくっています。それから国民健康保険、これは事業外の家庭の人々がばらばらに入っています。その中間に中小企業、零細企業、五人未満の事業所の人々などが政府管掌の健康保険に入っている。ここに四十一年度の平均標準報酬月額というのを一応例として私とってみました。それによりますと、政府管掌のほうは月に二万九千二百八十一円、ところが、組合管掌のほうは三万七千四百三十二円です。これだけ平均標準報酬が違うわけです。言うならば、この三割から違うランクの人が組合健保をつくっている。医者代は同じである。保険料は料率も違いますが、いま保険料率は、組合健保は千分の六十五でございますが、政府管掌のほうは千分の六十七・七、また、保険負担割合は、組合健保は事業主が六対四で、政府管掌のほうは折半でありますから、給料は安いけれども、保険料として納めるときはあまり変わらぬのですね。ところが、大体標準報酬が少ないものですから、集まりましたものは保険金額が少ないわけです。少ないから赤字になるわけでしょう。そこで、国民健康保険のほうでは定率四割の国庫補助をきめました。四割を国がめんどうみるわけです。それは健康保険を正常に発達せしめるために四割の定率国庫負担です。組合健保は黒字であります。政府管掌のほうは赤字であります。国保ももちろんそれでやっていけません。現在の四割定率負担でも市町村ではやっていけないところがたくさんあります。これもめんどうをみなければならぬのです、将来国が。そういう考えからいくならば、この政府管掌の健康保険というものは、総理がさっきおっしゃったように、保険主義ですから、足らないものは保険料でとるのは当然だという考え方はわれわれ納得できません。それをきのうも大蔵大臣と厚生大臣に並んでもらっていろいろ話したんですけれども、まだ解決しません。総理大臣はこの点をどうお考えになりますか。
#64
○国務大臣(佐藤榮作君) 私は、ただいまは保険制度の立場でこの問題を解決するのが本筋だと思います。しかし、保険制度だからといって、全部一から十まで保険料率で片づけるというわけのものではないと思います。したがいまして、今回におきましても政府自身が負担する金額も相当ございますし、また、収入の点で医療費の負担を一、二にしておるというようなことも、その実情に合った措置をとっておるのであります。私は先ほど来申し、また、政府がとっているところの大筋、本来の筋は、やっぱり保険制度としてものを考えるべきじゃないか、保険制度を無視したような考え方にはどうも賛成できない、これが私どもの考え方でございます。
#65
○小柳勇君 問題たくさんございますけれども、まず一つずつ片づけてまいりますが、一つは、標準報酬がなぜこんなに違うかということですね。組合健保に入りました人たちの平均標準報酬と政府管掌健保に入りました人たちの平均標準報酬がなぜ違うか、これは企業の格差もありますし、賃金の格差、生活の格差です。それを埋めることも政府の政策でなければならぬでしょう。まず原因はここにあります。したがって、これはその病人個人の責任というよりも、むしろ政策の責任ですね。大企業に入った人、中小企業にしか入れない人、そういうようないわゆる政策の責任があります。そういうものから発生した赤字を、患者から料率の引き上げと一部負担で取り上げるということは片手落ちではないか、これは決して負担の公平ではないのではないか、これが私どもの見解ですが、いかがですか。
#66
○国務大臣(佐藤榮作君) 小柳君の言われることも、全然保険制度を無視した、眼中に置かないんだと、こういうような考え方じゃないように私は聞き取ったのであります。いわゆる全面的な社会保障制度というものじゃない。やっぱり保険制度というもの、一つそれを認めたとしても、加入者の負担というか、それには限度があるんじゃないか、そこらである程度の差別をつけるというか、同じように赤字が出たといっても、これをどういうような負担で消すかということをひとつ考える、こういうことであります。政府もそういうような同じ考え方で、今回はある程度負担する、また、保険料率も上げる、あるいは新しく薬価も支払ってもらう、こういうような考え方をしたんだと思います。私はただいまのお話を聞いて、必ずしも政府は全然別な方向でこの対策を立てたわけではない、ただ、程度の問題が相当違っているのじゃないか、そこで、両方でいろんな意見が出ているのじゃないかなと、かように私は聞いたのでございます。私は、いずれ暫定的な措置、これは二年間ということでございますが、暫定的な措置をとります。しかし、同時に、基本的な根本問題を考える。その根本問題には、先ほども各方面にわたるのだということを申しましたが、中には、いまお話になりますように、制度そのものについてやはり政府も考えなければならないことがあるのでございます。それらの点もあわせて今後のあり方として考うべきではないか、これがいわゆる根本対策の一つの部面だと、かように考えますので、私はその根本対策をやるにいたしましても、今回はこの暫定特例法を必要とする、かように考えておるのであります。
#67
○小柳勇君 抜本対策の中で解決しなければならぬ問題、それは一番大きな問題でありますが、とりあえず、いまの法律にも関連いたしまして総理に質問いたしますが、たとえば国保で定率四割を国庫負担しておるように、二百二十五億を今度は負担してやります。その金は国保で負担しているようなものに理解するならば、この国庫負担二百二十五億だけではなくて、いま申し上げましたように、わずかに百数十億ですね、百数十億ですから、この際二百二十五億にプラスして負担をしておいて、それで今度はこの法律はお預けにしておいて、次はもう四十三年ですから、抜本改正したらどうですか、いかがでしょう。
#68
○国務大臣(佐藤榮作君) 私はこういう議論も出ようかと思うのです。今度特例法をとにかくこの際は通して、そうして並行して抜本対策を立てる、やはり保険制度は保険制度として生かしていく、こういうことが望ましい結果だと、かように思うのであります。ただ、全般的ないわゆる社会保障制度、もっと大きな立場から医療保険制度というものにあるいはメスを入れなければならないような事態が起こるかもわかりません。しかしながら、そういう事柄は将来の根本対策その他で十分検討していただける、かように思いますので、この際はこの暫定特例法案をぜひとも成立させたい、かように思うのであります。
#69
○小柳勇君 昨日、私は数字をあげて厚生大臣にも迫ったのですが、さっき申し上げましたように、料率の引き上げと、それから一部負担、合計いたしますと百数十億です。ところが、四十一年度の決算をやってみましたところが、その金と、それから、行政努力によりますと、百数十億の金は、特に投薬時の本人一部負担という十五億の金は、わざわざ法律をつくらぬでも金の出どころがあるわけです。財源があるわけです。もう政府の自然増収など論及しません。金がほかにあるわけです。厚生省内で金があるわけです。それにもかかわらず、やらなければならぬのですか。それにもかかわらず、この法律を通さなければならぬのですか、そのことをお聞きしたいのです。
#70
○国務大臣(佐藤榮作君) いま金が余るとか余らないとかいうお話でございますが、私は別にどんぶり勘定がいかぬとは申しませんが、とにかく一応筋道を立てた方向で処理していかなければならない。そうでないと、ことしは財源があったが、しかし、その翌年はないときもありましょうし、だから、そういうものは本来たよる筋のものではない、こういうように考えて、やはり区別して処置すべきじゃないかと思います。
#71
○小柳勇君 初めのこの法律の出発は、ことしも七百四十五億の赤字が出るから、暫定対策としてこの特例を出します、これが提出の趣旨です。本筋ですよ。そこで、金がほかにありますから、厚生省内で金は見通しがありますから、したがって、この法律はもう一応お預けにしておいてよいではないか、こういうことですよ。何も私たちは曲がったことを言っておるのじゃありません。総理大臣、あなたのお考えはどうでしょうか。
#72
○国務大臣(佐藤榮作君) どうもいまの言っておられることは私はよくわからないのですが、いまの十五億という金が、赤字として当初予定した赤字より少ないじゃないか、こういう御議論ならばそれはよく検討いたしますけれども、私、むしろ厚生大臣から答えさしたほうがその点はぴんとくるのじゃないかと思います。私としてはよく存じ上げないわけです。
#73
○小柳勇君 厚生大臣にはあとでゆっくり聞きますが、この法律を出したのは赤字対策である、暫定対策である、抜本対策は来年やるんです。来年すぐやるんですよ。ことし赤字があるからこの法律は暫定対策だとおっしゃるわけです。そういたしましたならば、この料率でことしは百三十九億円取りたい、ふやしたい、それから、薬価の一部負担で十五億円、入院と初診時の診察料で二十二億円と、これだけです。百数十億円ですよ、この金は。これだけですよ。診療報酬支払いも若干減少の傾向にあります。また、四十一年度の決算で六十八億円見込み違いがありまして余っているのですよ、借り入れ金の中で余りました。したがって、そういう金がありますから、これはもう今度はお預けにしておいて、そして来年の抜本対策でやったらどうですかと、特に中央医療協議会がいま答申を出そうとしている、総理御存じのとおりです。これで医療診療の診療報酬が変わりますね、料金が変わります。それによって秋には予算の補正をしなければならぬ、秋には。きのうそれが明らかになりました。秋には予算の補正をしなければなりませんし、わずかに百数十億ですから、その補正と一緒にやりましたら、もう来年まで待たんで解消するのですから、この法律は一応預けたらどうですかと、こういうことですから、何もむずかしいことないのですが、どうですか。
#74
○国務大臣(佐藤榮作君) いま金が相当余っておるということですが、これは厚生大臣から詳しく説明したらいいと思いますが、私はそのお話を、いま赤字として金額は一応予定しておりますが、その赤字がやや少なくて済むのか、こういうようにとります。したがいまして、いまの対策、同時に、また、所要資金として借り入れその他を計画しておると思いますが、それらのものも、まず借り入れが、そういうところへ財源があればそのほうが減るとかいう問題ではないだろうかと思いますので、いま御意見はいろいろございましたけれども、私実際どうもつかみかねるので、ともかく厚生大臣から詳しく説明させます。
#75
○小柳勇君 数字的な説明ではございませんですよ。臨時国会を開いて、しかも、その国会が延長されて今日こうやって国民注視の中で論議しておるのに、」国の総理大臣がその法律の内容について十分把握してないということについては、私は納得できません。何でこの法律が出ておるのか、何でこれだけ国会が紛糾しておるのか、具体的にこれは数字の問題です。今度の特例法は、日韓条約とか安保条約という問題ならば外交問題でありますが、この法律は、新聞でも書いておりますように、数字の問題であります。保険財政をどうするかという数字です。抜本対策は来年すぐやるとおっしゃった。そんならことしだけの数字の問題です。その数字の問題だから、私どもはいま数字で論争しておる。それならば、総理大臣もまず数字を把握しておいて、そしてこれだけになったから、それではひとつこの金で、ことしはこっちにやっておいて、来年の抜本対策でやりましょうと、そういたしますと臨時国会も何も要らんのです。私は総理大臣がそういうような見解では納得できません。
#76
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいまのお話は数字の問題でございます。これはひとつ厚生大臣からお聞き取りいただきます。
#77
○国務大臣(坊秀男君) ただいまの問題でございますが、小柳さんは六十七億というものが、(「六十八億じゃないか」と呼ぶ者あり)現実の四十一年度の決算と、それから決算のあらかじめの見積りというものとの相違があって六十七億というものが四十一年度において見積りよりも赤字が減ったじゃないかと、そこで、この六十七億というものを充当すれば、いろいろな積極的な一部負担や何だといったようなものに使えば負担を課す必要がないじゃないか、こういう御質問のように私は受け取るのでございますが、それにつきましては、四十一年度に不足するであろうというものが、これが六十七億だけ不足しないということになる、こういうことでございますが、絶えずこの委員会で御指摘をいただいておりますとおりです。七百四十五億というものは、四十二年度の赤字を解消するために、それまでの四十一年度末での赤字というものは一応たな上げにしてあるが、そのたな上げにしてある千四十六億というものを一体どうするのだと、こういうきつい御批判のお声も承っておるわけです。その千四十六億というものにつきましては、これは政府といたしましてはどういうふうにしてこれを解消していくかということで、非常に重大なる問題だと私は思っております。しからば、これをどういうふうに解決するかということにつきましては、ただいまのところは、決定的にこれをどうするのだということは結論は出ておりませんけれども、この重要なる問題を解決していくためには、この六十七億というこの金額というものは非常に大事な問題でございまして、直ちにこの六十七億というものを積極的にこの今度の対策の財源として持っていくということよりも、これは過去の累積赤字というものをこれだけ減らしていったということでございますので、それが非常に大事な作用であると思いまして、これを直ちに今度の四十二年度の暫定対策の財源に充当するということは、私はどうかと考えるのでございます。
#78
○小柳勇君 そんな数字の話じゃございません。そんな数字の話はジュニアな話です。一国の総理大臣にここに来てもらって聞いているのは、そういう一千数百億の金をどうするかという話、そうじゃなくて、いまここに問題になっている特例法というのを提出された理由は、七百四十五億円ことしは政管健保は赤になりそうだから、国庫補助は二百二十五億しかしないから、あとは料率の引き上げと初診料及び入院料、薬価の一部負担でまかなおうという、そういう法律案です。ところが、衆議院で修正されまして、これはその半分ぐらいに減りました。三百十九億赤字になった。しかも、時限立法二年になりました。抜本対策は四十三年から着手すると言明した。情勢は、初めにこの法律案を出したときからもうぐっと変わってしまっておるわけです。情勢はほとんど変わってしまって、この法律を出す理由がなくなったのではないか。その出す理由のなくなった法律案を、延々十数日、臨時国会、延長国会で論議している。その内容を総理が御存じないから、ここでいままた追及しているわけです。金の問題じゃない。金の問題ならば私はもっと詳しく言いましょう。初めに千三百三十四億の借り入れ金をやっておる。ところが、それが四十二年度の予算では赤字が千四十六億の見積りであったところが、実際決算しましたところが九百七十八億になりましたから、六十八億は見込み違いと、この財源だけでも六十八億ありますから、薬価一部負担の十五億ぐらいはそれで一応まかなっておいたらどうか。肩がわり全部はできません、一応まかなっておいたらどうか。そうしたら薬価一部負担はこれで一応チャラになる。あと料率の問題はまた別途論議しますけれども、そうしましたらこのような臨時国会はもう直ちにやめてもよいではないか、そういう国の政治の姿勢を言っているわけですよ。その問題を総理は延々やっておるから、同じことだろう――初めに法律案が出た、初めに予算がきまったとき、そのときと同じであるということで、自民党を叱咤激励されて、延々延長国会をやられておるのだろうと思うから、よく内容を知っておられるかどうかと思っていま質問しているわけです。したがって、私いま申し上げましたように、税の自然増収を充てなくても、これはこれでやっていけるし、四十二年度は抜本対策に入るのです。そのときに、あるいは薬価の一部負担もどうしても入れなきゃならぬならば、この問題はあとでまた論議はしますけれども、ことしはとりあえず厚生省だけでも予算をまかなえるから、これで一応来年度に持ち越したらどうか。特に秋には中央医療協の答申があるから、予算の補正もあるから、そのときに暫定的に少しずつ赤字を解消していってもよいではないか、こういうことを言っているわけです。いかがでしょう。
#79
○国務大臣(佐藤榮作君) 私小柳君のお話、だいぶ誤解していたようです。いまの特例法は、どうせ特例法だから、今回はその特例法という立場で、現に生じておる赤字を補てんするために別に特例法を設けなくてもいいじゃないか、こういう御意見のようであります。さように理解していたのでございますが。ところが、政府がこの特例法を出しておりますのは、将来やっぱり根本対策も考えますけれども、この特例法はやっぱり将来赤字を生じないような基本的なものの考え方もあるのでございます。したがいまして、特例法と、かように申しますけれども、やっぱりこれを通したいと思います。その新しい一つの組織として、たてまえとして考えていこうというのがこの特例法を出しております一つのねらいでございまして、これはいままでそこまでの議論を詰めなかったか知りませんけれども、私は、全然別な方向で特例法が出されるわけではございません。やっぱり根本対策と全然矛盾するような方向で特例法というものを出しちゃいません。やはりそういうような将来の再建方法――将来赤字が出てこないように、そういうような考え方から特例法を考えなければならぬ。(「いままでの答弁と全然違う。」「そんな答弁あるか。」「厚生大臣はどうなんだ。」と呼ぶ者あり)
#80
○小柳勇君 厚生大臣の見解、いままでわれわれが長く論議しました考え方ともう全然違いますから、もう一ぺん休憩して、閣内の意見を統一してもらって、それから論議しましょう。休憩を要求します。
#81
○国務大臣(坊秀男君) 総理の御答弁と厚生大臣の答弁との間に、私は何らの違いがないと思います。この暫定対策というものは、これは四十二年度におけるこの緊急事態をしのいでいくというためのものでありますが、しかし、それは迫まられておりますところの抜本対策を確立していくためにも、ぜひともその前提といたしましてこの暫定対策というものが必要である、こういうことで、その暫定対策を抜本対策の前提としてやっていくためには、近い将来において考えられる抜本対策と矛盾したようなものを暫定対策として樹立していくということは、これは総理はさような考えではない、こういうようなことを答弁されたのでありまして、私といたしましても、総理の答弁と私の考え方とには何ら隔たりがあるとは考えておりません。いずれにいたしましても、保険財政の赤字というものが、これの赤字が減っていく、少なくなったから、それを暫定対策の財源に充てるというようなことは、これは赤字というものはそのままにしておくとますますふえる、ふえても赤字はそのままでやっていくということでありまして、こういったようなことは保険の永遠の策ではない。赤字が少なくなったから、それを暫定対策の財源に使うというようなことで私はこの保険の抜本対策というものをやっていくことは非常に困難である。いずれにいたしましても、総理と厚生大臣との間には何らの意見の隔たりはないということを申し上げます。(「ばらばらじゃないか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
#82
○委員長(山本伊三郎君) ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
#83
○委員長(山本伊三郎君) 速記をつけて。
#84
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま厚生大臣、大蔵大臣など、全部私を中心にして意見を調整いたしました。あるいは私の発言で不十分な点があったかと思いますが、私の申しておりますことは、今回のこの臨時特例法、これによりまして、この薬の問題、その他政府の負担するもの、料率の問題、これは全部臨時特例法の柱でございますから、ぜひそのとおり守ってくださいということを申し上げているのであります。そうしてこの次に基本対策、根本対策を立てます際に、いろいろ審議会等の御意見もございますから、ただいまきめたことは一切動かさない、こういうのではない。その点が、もし将来これだけのものを絶対動かさない、かようにおとりになったとすれば、この点は私の言い方が不十分だったと思います。かように思いますから、それらの点の根本対策は根本対策で、十分審議会等の意見を聞いて、そうしてきめるというふうに御了承いただきたい。今日、厚生大臣の考え方も大蔵大臣の考え方もそのとおりでございます。(「違うじゃないか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
#85
○小柳勇君 いままで長い間審議してきたのは違うのです、そういう話じゃない。保険財政が危機に瀕している、政管健保は崩壊に瀕しているから、この七百四十五億の金をとりあえずこの法律で救いたい、そういうことでいままで論議してきたんです。そういう提案でいままでやってきた抜本対策は来年からやりますというのです。ところが、総理は、その金はそれで何とかなるかもしれないけれども、抜本対策ですから、これをどうしても通さなければならないと言われるならば全然違うのです。そういうことなら総理は新たに法律案を提案し直しなさい。二の法律案の提案理由と違うのです。そういうものを一緒にして論議するわけにまいらないのです。
#86
○国務大臣(坊秀男君) ただいま総理から御答弁がございましたが、ふえんさせていただきたいと思います。今度の暫定対策は、しばしば申し上げておりますとおり、四十二年度に遭遇いたしまする健保の運営が非常に危険に瀕しまするので、それを何とかしてしのいでいくために、保険の関係者、船員保険も含めまして、それぞれ応分の負担を願いたい、こういうことで、その負担の中に、ただいま問題になっております薬の外来投薬費の一部負担というものがあるわけでございますが、この外来投薬費の本人一部負担ということは今度の暫定対策における一つの大きな柱になっております。柱はたくさんございますけれども、その柱になっておるのがこの薬の一部負担でございますが、だから、この暫定対策におきましては、総理も私も、これは柱でございますので、金額は十五億になっているかもしれませんけれども、これはひとつどうか御了承を願いたい。しかしながら、暫定対策とは別に、最も近い将来において抜本対策を策定していかなければならない。その抜本対策を策定していくときには、ただいまのこの暫定対策で柱の一つとなっておりますところのこの薬の一部負担ということについては、これはそのままこれを踏襲するとか何とかということは考えていない。これにつきましては抜本対策のときにはそっくりそのまま踏襲するということではなくて、これを検討してまいりたい、全く別個のものであるということを申し上げておる次第であります。
#87
○小柳勇君 いま厚生大臣が言ったのなら、この赤字解消すれば、またこの薬剤費の一部負担などはさらに新たに検討しましょうというんでしょう。総理はそう言っておられない。金はほかにあるかもわからぬが、この一部負担というのは、制度としてあるのだから、この法律案をどうぞ通してくださいといっておられる。総理とあなたとの意見は全然逆なんです。それならば、もうこれは総理がおっしゃったのは別の意味ですから、内閣総理大臣にわざわざここに来てもらったというのはそういうことではないかと思ったわけです。きのう大蔵大臣に聞いてみると――笑わないでくださいよ。きのうわざわざ総理大臣を要求したのは、厚生大臣の考えと大蔵大臣の考えと違うわけです。大蔵大臣は二百二十五億国庫負担をしておる、厚生大臣がいままで言ってきたことと1少しきのう厚生大臣の考え方も変わってきたけれども、意見が一致しないから、それじゃ総理大臣に聞こうということになった。しかし、やはり違います。だから、もう一ぺん閣議を招集して法律案をつくり直さなければいかぬ。
#88
○国務大臣(佐藤榮作君) 私がさっき答えたのは、いずれ速記ではっきりするだろうと思いますが、いま坊君のお答えしておるのをいまここで聞いておりましたが、私の申し上げておることとちっとも違わないと思いますが、どの点が違うんでしょう。いま坊君が言っておるように私も先ほどお答えしたばかりでございます。御了承いただきたいと思います。
#89
○小平芳平君 その違う点は、今回の特例法は赤字対策である、これはもう総理もおっしゃっておる。ところで、この赤字はどこからくる赤字かといえば、医療制度の欠陥からくる赤字ということがたくさん考えられる。とともに、また、これは審議会の答申でもいっているように、政府の過去の無為無策からくる赤字、それも考えられる。したがって、そうした赤字対策を、確かに国庫からもお金を出します、確かに国庫からお金は出しますが、この際、保険料率を上げて大衆の負担をふやし、特にまた、いまおっしゃっている意味は、患者に対して入院料、初診料の値上げ、特に薬代の二部を負担してもらうという、これはいままでにない制度を新しくつくることになる。したがって、きのうも詳しい数字を厚生省からお聞きしましたけれども、いまここでは時間がないから申し上げませんけれども、こうして今回の特例法の成立した結果を、国庫負担と保険の負担と患者負担を比べた場合に、患者の負担が一番多くふえるわけです。この結果、したがって、患者には何も責任がない。この赤字の責任は医療制度、あるいは政府、そういうところからくる赤字を患者に一番よけい負担してもらって――率の上でですよ、負担率の上で患者に一番よけい負担してもらって赤字対策をしようというその行き方が納得できないということ、患者泣かせのその行き方が納得できないということが一つと、さらに、そのことが将来ともに続くとなれば、ますますもって問題なわけです。将来は医療制度、あるいは政府が、ほんとうに一厚生大臣、一内閣の問題ではないと答申でも言っておりますように、政府が、一内閣が、それこそのるかそるか、ほんとうに本腰になって取っ組まなければ解決できない重大な問題がここにある。それを一時的な患者負担で赤字をしのいで、将来ともそのままいくなんということになったらとんでもない行き方じゃないか。また、厚生大臣は、いままでは、将来のことはさらさら考えていない、ただ四十二年度の赤字だけが問題だというような意味のことをおっしゃっていたわけです。それについていかがですか。
#90
○国務大臣(佐藤榮作君) 先ほど小柳君にもいろいろお答えし、また、私と厚生大臣と、あるいは大蔵大臣、その間に違いがあるというお話でしたが、実は違っておらないんです。いま御意見を述べられましたように、薬価負担につきましては、これはたいへん議論のあるところでございます、しかし、今回の特例法、暫定措置として政府とすればこれを負担してもらうことが適当なる措置だ、かように思ってこれを考えたわけです。ところが、この中でも、国民の所得によりましてずいぶんその負担が過重になるような場合もある、こういうようなことでございますから所要の修正を加えたわけであります。ところで、いま暫定措置として特例法、これは今回二年間はこれでやりたいというのでございますが、しかし、根本対策を立てるときには、先ほど厚生大臣がお答えいたしましたように、このものを必ず厳守する、こういうものでもございません。その際には、やはりこれは自由な立場で十分検討していただきたいということを申し上げておるわけでございます。別に私は先ほど来申しておることに非常な矛盾があるとはどうも考えられないのでございます。御了承をいただきたいと思います。
#91
○小平芳平君 それは非常に国民の納得のいく終着点というものを求めるために審議が行なわれておると思うんです。ところが、今回の健保特例法の場合は、衆議院でもあのような結末で終わっております。したがって、この参議院において一体納得のいく線がどこにあるかということを、これを政府側としても考えていただきたい。特に先ほどから指摘されていることは、薬代を一部負担して幾らお金がかかるかというような問題ですね、これはひとつとっくり考慮していただきたいということを申し上げているわけです。特にちょっと前の特別国会の終わりから考えてみますと、特別国会の終わりに健保特例法と政治資金規正法が審議未了で廃案になった。ところが、健保のほうは、もうそれこそ反対の陳情、意見、そういうようなものがたくさんきているわけです。その反対の陳情、意見が全国からきているものを、総理は臨時国会を開き、また、延長してまで強硬に成立させようとなさるその意味がわからないわけです。政治資金規正法のほうは、全部が政界浄化のためにその成立を期待している、こういうものこそ臨時国会を開いて、延長してまで成立させたらいいじゃないかと思うわけであります。ですから、要は、国民の納得のいく線というものをここで考える、それが政治のあり方ではないかと思いますが、いかかでしょう。
#92
○国務大臣(佐藤榮作君) もちろん政治のあり方は国民の期待に沿うということでなければならないと思います。私は、この特例法、これはただいま御指摘になりましたように、反対するものもありますが、同時に、これをつくって、そうして保険制度をはっきりさせる、やはり将来赤字が起こらないようにすべきだ、こういう意見も出ております。皆さんのところにもおそらく反対の意見ばかりじゃない、私のほうにもやはり賛成の意見ばかりじゃない、これは立場が違いますが、そういうことはひとつ御了承いただきたいと思います。問題はそういう意味でございます。これは前回、また、今回も臨時国会をやりましてぜひ成立させたい、こういうことで、特にお暑い際にお願いしておるような次第でございます。大体私は、皆さん方の反対しておられることも、先ほど来の質疑を通じまして、それが一応どういう点で反対しておられるか、これは私は賛成するというわけじゃございませんが、その御主張も実はだんだんはっきりいたしたのであります。一番最初はどういうわけで反対されるんだろうかと、非常に疑問を持っておりましたが、やはり社会保障制度というたてまえに立って、保険制度のほうにこだわらないで、もっと社会保障という立場からこの問題に取り組んだらどうかというのが皆さん方の御主張のようでございます。政府は、やはり社会保障制度の一部、その保険制度、そういうたてまえでこれを処理すべきだ、これが基本的な問題の食い違いだと思います。また、ただいま言われておりますように、それぞれの条件は、いずれ抜本対策、根本問題と取り組むのでございますから、その際に十分ひとつ御審議をいただきたい、かように申しておりますので、政府の態度はそれではっきりする。
 そこで、ただいま政治資金規正法の話も出てまいりました。これは私がすでに申しましたように、たいへん私も残念に思っておりますし、ことに私の意見が強かっただけに、国民の期待に反した、そういう点では率直に遺憾の意を表しておる次第でございます。この政治資金規正法は、いずれ近い時期に重ねて提案をいたしまして、必ず成立を期するつもりでございます。これは、しかし、もちろん特別国会における審議の経過等を見まして所要の改正も加えなければならないと思いますが、これらの点は十分ひとつ検討させてもらって、その上で提案することにいたしたい、かように思います。
#93
○小柳勇君 さっき総理大臣は厚生大臣と同じだと言う。そういうふうに前言をひるがえしました。初めの話では、財源がほかにあっても、これは制度だからこの法案は通さなければならぬ、こう言われた。ところが、厚生大臣はそう言われぬのです。厚生大臣は、この危機に瀕した政管健保を一時しのぎの暫定措置としてこれを法律化するのだ。来年は来年また抜本対策を出すんだ、こういう話です。総理大臣、そうしますと、その財源措置がほかにあるならばこの法案は通さぬでもよいではないか、そうしていまの薬代の一部負担などが抜本対策で必要あるならば、そのときに出して論議してもおそくはないのではないか、これだけ反対があるのだからと、そう言っているわけです。その点についていかがでしょう。
#94
○国務大臣(佐藤榮作君) まあ先ほど私が小平君にことばが足りなくて誤解を受けたのではないかというのはその点でございます。私が申しましたのは、特例法として三つの柱で実はこの問題と取り組んでおる、その特例法の中の一つの柱を片づけるわけにはいかない、これが私の主張でございます。しかし、その問題を将来の問題としてどういうように扱うか、これは先ほど来、厚生大臣がお答えしておりますように、これは十分審議会等の意見も聞いて、しかる上でこの問題と取り組むということでございますから、誤解のないようにお願いします。
#95
○小柳勇君 総理大臣、これは何も審議会に聞く問題じゃないのです。この特例法は、暫定措置として当面のことしの見込みの赤字を解消する、これが提案の趣旨です。それは一致されますね。そうしましたら、冒頭言われました、金はほかにあっても――私は、このほかの補正予算とか何とか言いません。この保険財政の中で処理できるから意味がないのではないかと言ったところが、総理は、いや、それは制度の問題だからと、そう言っておられるわけです。その問題ははっきりしておいてもらいたい。
#96
○国務大臣(佐藤榮作君) この制度の問題、これはやはり保険制度という制度の問題ですし、ただいま金が残っておると、こういうことを言われますが、いままでの借金その他から見ましても累積赤字等から見ましても、金が残るはずがないのです。いま金が現実に残ったと言われれば、赤字はもう一切ないということです。だから、皆さん方のほうで、この年度だけ考えるならば現実にこれだけのものがあるじゃないか、とにかく過去の赤字は赤字としてたな上げしておいて、どうせ特例法は臨時措置法だから、そこでこの一年はこの黒字でこれをまかなえる、そうしてもう特例法というものはつくらないで、直ちに抜本対策と取り組め、こういう御主張だと思います。しかし、私は、政府としてこの際に特例法はどうしても必要だ、そうして皆さん方が要望されるような抜本対策、これはいずれ検討する、そして、できるだけ早い機会に抜本策がその緒につくように努力するということを実は申し上げておる次第でございます。
#97
○片山武夫君 総理に御質問をしたいわけですが、今日まで特例法について政府見解をいろいろと聞いたわけなんですが、私も冷静に聞いておりまして、いろいろ混乱していることがたいへんはっきりしたわけです。ということは、特にきょうも総理が発言せられておりますように、この暫定措置を講ずる場合、三つの柱がある。その三つの柱、特に新しい薬価負担の問題なんですが、いわゆる抜本策を考える場合に、当然この暫定措置の中でそういうことも十分考えないで処置するようなことはできない、こういう御答弁を私は記憶しております。したがいまして、当然その抜本策というものの中にこの制度の一つがすべり込んでいくということはあり得るのだということを私は答弁されたと思うのであります。ところが、厚生大臣は、この抜本策を考慮する場合には、これは審議会の意見を聞いて、その中でこの柱の取捨選択は考えてもよろしい、こういうことを言っているわけなんですが、考えてもよろしいということは、この方針を政府の見解として審議会に述べる、述べた結果、それが取り上げられなくてもこれはかまわないのだと、こういう私は見解だと思うのであります。いいですか。これはだいぶ私は考え方として違うと思うのです。これはまあひとつもう少しはっきりした見解を述べていただきたいと思うのですが、いま一度繰り返しますが、総理は、抜本策を考える場合、これはもう当然抜本策を打ち出すのだということは、去年から、また、今度の国会においてもずいぶん言っておられる。したがって、抜本策についてどうかという今日まで質問をしたわけなんですが、これは将来考えることであって、いま言うべきではないと言っておられたわけなんでありますが、きょうたまたま総理の答弁の中に、いわゆる暫定措置を考える場合、新しい制度、いわゆる薬価負担、こういう制度はこの抜本策の中に考えないということじゃないのだ、当然入ってくることもあり得る、そういうことを私は言われたのだと思う。ところが、厚生大臣は、審議会の意見を聞いて、そうしてこれを固執するものではない、こういう答弁をされている。固執するものでないということは意見を述べるということであって、これは政府の見解である、そういうことに私はなると思う。その点をもう少しはっきりしていただきたい。
#98
○国務大臣(佐藤榮作君) 御承知のように、今度の特例法、これは各政党とも、特例法というものをめぐりまして、たいへん御熱心に御審議をいただいております。しかし、これはどこまでも特例法だということで二年の時限立法にした。時限立法は十分説明しておると思います。いずれ根本対策を立てる、これが皆さんの要望でもあるし、また、根本対策を立てる際は、これはどこにもとらわれないでりっぱな制度をそういう立場で十分ひとつ検討する、これが皆さん方の御意見でもあると思います。私もその説には賛成でございます。ただ、いま問題になっておりますように、根本対策を立てる、来年から政府は取り組むと言っているから、だからもう臨時特例法はやめろ、こう言われることについては、どうも政府は賛成しかねる。この際、臨時特例法はどうしてもやっぱりつくっていただきたい、これがお願いでございます。したがいまして、この根本対策を立てます際に、臨時特例法でいろいろなことを考えておりますけれども、それにこだわるものではない、これは政府の言い分でございますし、政府の態度でございます。誤解のないようにお願いしたいと思います。
#99
○小平芳平君 先ほど総理が私に対して御答弁くださったことで、内容が違いますので、あえて一つの具体例をあげてぜひとももう一つ御質問したいわけです。それは、総理は、確かにこの特例法を早く制定してくれという意見がきていると言われます。しかし、それは私たちの言うところの医療制度の欠陥からくる赤字、政府の無為無策からくる赤字、これに政府としてはまっ先に取り組まなければならない問題ではないかということを申し上げているわけです。それは政府の無為無策がそれでよろしい、医療制度の現状がそれでよろしいなんていう意見は、ついぞきているはずはないと私は思うのです。そこで、いま一例を申し上げますと、現在の医療制度の赤字、その医療費が一兆三千億、一兆三千億の医療費の中で、四〇%くらいは薬代になっている。これは総理も御存じだと思うのですね。そういう状態がいいかどうか。しかも、その薬がどういう現状かといえば、きのうの当委員会の質問で厚生省の局長が答弁された。それは健康保険で十一円で扱われている薬を四円とか五円で買えるのじゃないかという指摘に対して、局長は、そういう実情にあることはよく知っていると言っている。よく知っていながらなぜそれをほうっておくのか。また、もう一つの例で申し上げますと、これはある某製薬会社の薬が町では一錠百三十三円のものが、健康保険では六十一円五十銭、それが外国の会社と技術提携している場合、香港へ行けば十五円で買える薬が、健康保険では六十一円、町で買えば百三十三円、そういう現状を政府として知っていながら、どうしてほうっておくのか。知らないでほうっておくのか、そういう点がふに落ちない。また、決算委員会で黒柳委員から質問のあった、政府機関が買い上げる薬は同じ値段で買っているというのですね。しかも、その会社も業者も順ぐりに回して納品している。それに対して大蔵大臣はよく調べますと答えている。また、そういうことがあれば独禁法違反の疑いも十分あると公取でも答えている。こういうような現状をほうっておいて知らぬ顔しておいて、さあ患者さん、あなたたちは今度負担をふやしてください、赤字で困るから、被保険者の皆さん、料率を上げてください、これで済まされるかということを御質問しているわけです。こういう薬の扱いについて、あるいは官庁に納める薬のこうしたやり方について、これはもうすでに速記録にも全部ちゃんと出ておりますから、どうお考えか。そういうことに対する対策をほうっておいてまで無理やりにこの特例法案を強行しようとなさるのか、いかがでしょうか。
#100
○国務大臣(佐藤榮作君) この健康保険制度、これはぜひ必要だ、そういう意味の強い主張をしておられるのは、ことに中小企業の方ですね、こういう少数の従業員を擁しておりますこれらのところでは、ぜひ健康保険制度を育ててくれといわれるし、また、そのことによって非常に能率があがっておる。これを他の全然保険制度のない場合に要する手数から見ると、これがあることによって中小企業はたいへん助かっております。だから、それを助けるような考え方でぜひ力をかしてくれ、これが私ども政府が鞭撻されておる証拠であります。おそらくこれは皆さん方のほうにおきましても同様であって、健康保険制度自身を非難する方はないだろう。ただ、健康保険制度の費用負担の問題で、特殊な階層、所得の少ない階層に対して、だから、その点について特別なめんどう、考慮を払う、これがいま出てきておる議論だと思います。だから、政府で全部赤字を負担したらいいじゃないか、極端なことを言えばそういうことになります。あるいはそこまでいかなくても、この薬代まで取らなくてもいいじゃないか、いま議論が集約されているのはその点だと思います。
 ところで、いま薬の問題が出てまいりました。これは私が申し上げるまでもなく、最近の薬学、医学の進歩、同時に、また、国民の所得もふえて生活の内容も充実してきた。そうなってくると、やっぱり薬をだんだん使う量も多くなります。ここらに一つの問題があるわけであります。したがって、あるいはただ単なる強壮剤なりや、あるいは治療薬なりや、そういうような議論まで実は発展してきておる。でございますが、現代生活から見まして、過去よりももっとうんと薬を使うようになってきた、そこに保険制度のいろいろな面から見まして一つの問題のポイントがあるということは確かだと思います。そこで、いま言われるように、薬価は一体何が適当なのか、この点が一つ問題になる。だから、薬価の調査、これをまずやらなければならない。過去におきまして薬の標準価格、これが一体幾らかということをきめることがなかなかできない。これは実情調査がなかなかできないのでございます。しかし、私の内閣になり、また、坊厚生大臣ができてから一度調査ができたのです。だから、私は、これができるというその形において、今後、より改善されるだろう、かように思います。ただいま言われますように、薬は実際はもっと安いのだ、その標準価格で医療費というものに取り組んでいただけば、国民の負担も、また国の負担も非常に改善されるだろう、こういうことに目をつけられるのは当然であって、たいへんいい点に気づいていらっしゃることだと思います。ところが、これはなかなか各方面にいろいろ関係するところがございますから、過去におきましてこれはなかなか協力を得られなかった。いまようやくその緒についた。今度は回数をしばしばふやすことによりましてさらに適当なる薬価というものがきまってくるのじゃないか、かように思います。新しい考え方ですから、そういう意見で、いままでのところは十分でない、さらに改善を加えていきたい、かように思います。
#101
○小平芳平君 政府に納めている薬……。
#102
○国務大臣(佐藤榮作君) 政府に納める薬の値段というものも、やっぱり実情の調査が先であります。しかし、いままでも特別の薬について非常にかけ離れがございますから、値段をそれぞれきめておるそのきめ方は、もっと正確な調査に基づいてきめなければならない、かように政府も考えております。
#103
○小柳勇君 さっきの総理の答弁で、厚生大臣の考え方が根本的に違いましたから、速記を調べて閣内の意見の不統一を追及しなければならないのでしたが、若干歩み寄りました。歩み寄りましたところで、もう少し総理の見解を最後に聞いておきたいのです。この政管健保の性格については初めに申し上げたとおりです。中小企業、零細企業の負担能力の限界、そういうものが全く赤字になってまいっておる、これが一つ。それから、医療費はうんとかさんでまいる。これは医療費は国際水準です。医療費はどんどん上がってまいる。しかも、日本の労働者の賃金水準は二十一か二十二位、しかも、政管健保に入った方はさっき申し上げたとおりであります。そういうものが根本的に矛盾がある、そういう面からも出発している。もちろん薬価基準の問題もありましょう。そういうものを抜本的に改正しなければこの赤字は解消せぬのではないか。いま暫定策とおっしゃるならば、この七百四十五億の中で、できるだけの国庫負担をして、そして患者負担を半年なり一年間だけなぜ待ってもらえないのか。これはいま小平君の意見もそうで、あるいは民社党の意見もそうでありましょう。いまこれだけ強引にこの法案を通す、それには制度の問題としてこれをすべり込ませようとしておる。その腹が総理大臣にも内閣にもある。そういうものを見まして、その制度の問題があるならば、この法案は根本的に変えて出してもらわなければならない。さっきの話では、もうこの赤字の問題が第一で、あとの薬価基準の問題なんかは、一部負担などは先のほうでまた検討しましょうというところまできました、その問題はそれで次にまた検討いたしますが、厚生大臣と佐藤総理大臣がいま意見が一致されたところで、この法律は基本的には赤字の解消である、これを最後に総理大臣の見解を聞いておきたい。
#104
○国務大臣(坊秀男君) 私から専門的なお答えをいたしまして、あとで総理から答えていただきます。
 先ほど来お答え申し上げましたとおり、この薬の一部負担という問題は、もちろんその暫定対策の一つの柱として、赤字を解消するためのその柱でございますので、これをいま削除するというような考えは、ちょっと政府は持っていないのでございますが、しからば、いま小柳さんがそれをひとつ延期したらどうか、こういうお話でございます。いま小柳さんのいろいろなおしかりによりますれば、一体十五億しか残らないのではないかというようなおしかりもあるわけでございます。私どもといたしましては、その金額もさることながら、これは暫定対策の中の一つの柱というふうに理解をいたしましてこれをやるのでございますけれども、もしもこれを延期するということになりますれば、さらにこの財政効果というものが縮減せられるということにも相なるわけでございまして、私どもは、この柱ということと財政効果ということとは、これは不可分のものに考えまして、これをやめる、あるいは延期するとかいうようなことは考えていないのでございます。
#105
○国務大臣(佐藤榮作君) いま厚生大臣がお答えいたしましたように、今回の処置は特例法でございます。この特例法をどうしてもこの際に皆さんの御協力を得まして成立させたいというのが政府の考え方でございます。また、皆さん方のほうの御意見をここで聞いておりますと、何か特例法ではないか、いずれ根本対策をやるのだから、二年間政府はしんぼうしたらどうか、これを主張していらっしゃるのでございます。私は皆さん方のお気持ちはわからないわけではございませんが、政府は、この際にどうしてもこの特例法を成立させたい、かように思いますので、ぜひとも皆さん方の御協力を得たい、これを重ねてお願いをいたしまして御答弁といたします。
#106
○委員長(山本伊三郎君) 速記をとめてください。
  〔速記中止〕
#107
○委員長(山本伊三郎君) それでは速記を始めて。
 質問続行ですが、これから厚生大臣、大蔵大臣に質問を開始いたします。
#108
○片山武夫君 ちょっと委員長にお伺いするのですが、先ほど何か理事さんの打ち合わせの中で、民社党にも五分間質問時間を与える、こういうことがきめられておるということを私連絡を受けておりまして、したがって、五分間は発言が許されるものと……(「往復五分間」と呼ぶ者あり)往復五分間とは聞いておりません。
#109
○委員長(山本伊三郎君) それは理事で話しますから、質問してください。
#110
○片山武夫君 先ほど総理にもちょっとお伺いしましたが、厚生大臣に質問いたしたいと思います。
 今度の法案をめぐりまして、いろいろ今日まで政府の見解をお尋ねしたわけでありますが、先ほど理解しにくい点が幾つかありました。したがって、その点をいま少しく明確にしたいために質問をさしていただくわけであります。
 今回の赤字補てんを中心にした改正案をめぐりまして、いわゆる社会保障なのか、あるいは保険制度なのか、こういうことについて理解のしにくい御答弁が幾つかなされておるわけなんでありますが、その一つとして、これは大蔵大臣並びに厚生大臣のいわゆる統一見解の中にも幾らかはっきりしておると思うのでありますが、いわゆる政管健保、あるいは組合健保、これらはいわゆる保険制度として確立していくのがたてまえである、こういうふうに言われておるわけなんであります。ところが、現在政府の政策の柱の中に国民保障、いわゆる国民福祉の増進であるとか、あるいは社会保障の充実、こういう中にこの政管健保も、あるいは組合健保も含めて、その国民福祉の向上をはかるという中に含めて方針が私は打ち出されておると思うのでありますが、しかし、一方において、いま言った保険制度というたてまえで独立採算で行なわなければならないということになりますと、いわゆる国の保障的な援助というものは一体どういう形でなされることが正しいのか、こういう点が問題になるわけであります。その御答弁の中でいろいろ言われておりますが、たとい政管健保であろうとも、赤字が出た場合とか、あるいは緊急の場合にはそれは国庫負担をするんだと、こういうことを言っておりますが、この点は多少私は見解の食い違いがあるのではないか。いわゆる保険制度でこれを運営する場合には、これは国の保障はしない、独立採算でやるのがたてまえだと言いながら、そういうたてまえでありながら、国の補助、あるいは負担、こういうことはいわゆる保障という意味でなされているのではないということになりますと、いわゆる政府の政策の一環として福祉国家建設、社会保障の拡充というワク内にはこれは入ってこない問題だと、こういうふうに私は理解するわけなんです。その辺、私は非常に見解の食い違いがあるかと思います。それが第一点。
 それから、いま一つは、政管健保といわゆる組合健保、この二つが同列になっておるわけなんであります。これほど格差の違った保険が同列に並べられて運営されているということが私ははたして正しいことなのかどうか、いろいろこれは私は問題があります。したがって、この比較的財政的に貧困な政管健保、これへの援助ということは、組合健保以上にこれはやっていかなければならない将来の問題ではなかろうか、私はさように考えるのでありますが、この点についての見解を私はひとつお伺いしたいのであります。
 それから、第三の問題として、今回この政管健保、いわゆる健康保険法が改正されるにあたりまして、この初診料であるとか、あるいは、また、薬価負担であるとか、こういうものは組合健保のほうにも及んでくると思います。そうすると、いま健全な運営がされている組合健保のほうにこれだけのいわゆる増収が見込まれる、これは一体どうするのかという問題が私は残ろうかと思います。したがって、そう取り扱いは、組合が自主的に運営ができるような指導をするのかどうか、これが第三点であります。
 以上三点について明快にお答えを願いたいわけでありますが、最後に、先ほども言いましたように、この暫定措置を考える場合に、すでに抜本方策ということがいろいろ言われておるわけなんです。したがって、その抜本方策についてどうなのかという各委員の質問に対して、まだその具体的な、あるいは、また、根本となるべき考えはまとまっていないのだ、審議会を招集して、そこで意見を聞くのだということを言われているわけなんでありますけれども、今度の薬価負担という制度は抜本策に通ずる問題だ、かように私は思うわけであります。したがって、今度政府の言うこの健保は、健康保険は保険制度として、そういうたてまえでこれを確立するのだ、こういうふうに言われているのでありますから、当然にこれは政府補助がないのだということになろうかと思いますし、そういう中で薬価負担という新制度を入れたということは、このほかに抜本策として何かあるか。私はこれ以上のものはないと思うのです。これによって抜本策はほとんど完成されたのではないか、かような印象を受けるのですが、その点についての見解をお伺いしたいと思います。
#111
○国務大臣(坊秀男君) 問題はたくさん提示せられましたが、順次お答え申し上げます。
 いまの医療保障が保険方式をもって行なわれているということは御承知のことだと思います。ところが、その保険方式か国家保障方式かということは、これは全く基本的な問題でございまして、私どもといたしましては、厳密なる国家保障でやるのだ、すなわち、保険の経費というものを全額国家でやるのだというような意味だといたしますれば、これは私はにわかに賛成はいたしがたい。しかしながら、国民の健康を保持し、国民のために皆保険といったような制度ということになっておるというところから考えますと、私は、これに将来日本の国民の経済力、あるいは生活等、いろんな角度から考えてまいりまして、そして漸次この医療保障というものに国家が本腰を入れていくという方向でいくということは、これは私は医療保障の精神から申しまして、これはそういう方向にいくべきものである、かように私は考えております。されば、きのうあたりからも問題になっておりまする健康保険法七十条ノ三といったようなものもそういう趣旨で規定されているのだと思いますけれども、これは繰り返すようでございますが、健康保険が健全に発展していくというためにああいったような制度が打ち立てられているということでございまして、単に赤字だから黒字だからといったようなことではなくこれを運営していく、こういうことであろうと思います。
 それから、政管健康と組合健保とには、非常に健保を組織していく背景において違いがあるのではないか、おっしゃるとおりだと思います。政管健保は、主として中小企業の人たちがこれを結成するものであり、組合健保は、比較的大企業と一番大きな企業にまで及んでそういう方々が結成するということでございますので、ここに何と申しまするか、組合健保と政管健保との財政力と申しまするか、そういうものについては違いがあろうと思います。そこで、今日まで政管健保につきましては、いろいろ金額的には大きかったり、大小の数字がありましたけれども、政府が腰を入れてまいった、こういうことでございます。
 それから、最後に、薬の一部負担を将来抜本対策にすべり込ましていくのではないか、こういうお話でございますが、この一部負担ということは、単に薬の一部負担ということでなしに、ほかにも一部負担という制度が現在行なわれておりますけれども、こういったような一部負担の姿をそのまま抜本対策にこれをすべり込ましていこうといったような考えは持っておりませんということを申し上げます。
#112
○小柳勇君 厚生大臣に質問いたしますが、いま暫定対策ということを強調せられておりますが、今度適用される薬剤一部負担などは七一%は免除されるわけですね。それでもなお二九%にこれを実施することが柱を貫く、そういうふうに考えられるわけですか。
#113
○国務大臣(坊秀男君) この薬の一部負担は薬の一部負担といたしまして、今度の暫定対策の私は柱と考えております。そこで、これは私どもとして、衆議院段階において修正されたことでございますけれども、そういったようなことで、全部の方々にこの薬の一部負担ということでなしに、低額の所得、つまり例外的にそういったような方々に対して薬の一部負担を免除する、こういうことでございますので、私は、そういったような数字、七一と二九といったような数字ということもさることながら、私は、これはしばしば申し上げておりますように、暫定対策の一つの柱としてこれはぜひ御承認を願いたいと、かように考えます。
   〔船田譲君「委員長、本件の質疑を打ち切
   り、直ちに討論、採決に入ることの動議を
   提出いたします。」と述ぶ。「質問中に何
   だ」「反対反対」と呼ぶ者あり、その他発
   言する者多し〕
#114
○委員長(山本伊三郎君) 速記をとめて。
  〔速記中止〕
#115
○委員長(山本伊三郎君) 速記を起こして。
 暫時休憩いたします。
   午後三時三分休憩
  〔休憩後開会に至らなかった〕
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト