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1967/07/31 第56回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第056回国会 本会議 第4号
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1967/07/31 第56回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第056回国会 本会議 第4号

#1
第056回国会 本会議 第4号
昭和四十二年七月三十一日(月曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第四号
  昭和四十二年七月三十一日
   午後二時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
                (前会の続)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 公正取引委員会委員長及び同委員任命につき同
  意を求めるの件
国務大臣の演説に対する質疑
                (前会の続)
   午後二時五分開議
#2
○副議長(園田直君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 公正取引委員会委員長及び同委員任命につき
  同意を求めるの件
#3
○副議長(園田直君) おはかりいたします。内閣から、公正取引委員会委員長に山田精一君を、同委員会委員に有賀美智子君を任命したいので、本院の同意を得たいとの申し出があります。右申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#4
○副議長(園田直君) 起立多数。よって、同意を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑
                 (前会の続)
#5
○副議長(園田直君) これより国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。河野正君。
  〔河野正君登壇〕
#6
○河野正君 私は、日本社会党を代表いたしまして、わが党山花国対委員長のあとを受けて、当面切実な国民の福祉や生活と関係する数点の問題点について質疑を行ない、佐藤総理の率直な御所信を承りたいと思うのであります。(拍手)
 まず第一にお伺いいたしたい点は、その政治姿勢についてであります。
 すなわち、佐藤総理は、常に、わが国の進むべき道は、社会の主体は人間であり、経済の繁栄は人間の尊厳と社会の福祉に奉仕するものでなければならぬと、風格ある社会、人間尊重の政治を実行することにあると強調せられてきたのであります。また、さきには、ことしの政府の経済白書が発表されたのでありますが、この白書は、これまでの白書の型を破ったきわめて特色のあるものとして評価されているのであります。すなわち、その特色とは、今日まで経済は予期以上に成長したにもかかわらず、依然として生活上の不満はなくならないといった現実があったとはいいながら、ことしの白書が従来の経済成長だけの重点を改め、国民生活の向上と、国民福祉という生活重視の観点を大幅に取り入れてまいった点であります。このように、経済の繁栄は人間の尊厳と社会福祉に奉仕するという人間尊重の政治は、佐藤内閣の背骨となってあらわれてまいったのであります。
 ところが、この第五十六臨時国会は、周知のとおり前国会で国民のきびしい批判をこうむり、ついに廃案に追い込まれた健康保険特例法案をはじめ、失業保険、最低賃金法案等を再び提出、その強行成立をねらって召集せられているのであります。しかも、これらの法案のすべてが国民生活を大きく圧迫し、反労働者的であることは、すでにわれわれが今日まで、いろんな機会を通じて明らかにしてまいったところであります。したがって、このような国民の声を全く無視した国民不在の政治は、遺憾ながら、さきに佐藤総理が示されたわが国の進むべき道にも逆行し、またせっかく高く評価された経済白書も一片の絵にかいたもちに終わったと指摘せざるを得ないのであります。(拍手)
 そこで、私はまず第一にお尋ねしたい点は、このような総理の国民の前に明らかにされてきた至言と現実の政治に矛盾を感じられないかどうかという政治姿勢の点についてであります。
 次に私は、今日の上昇の機運にある経済の動向と、国民生活や国民福祉との関係についてお尋ねいたしたいのであります。
 御承知のように、今日の日本の経済の動向は、政府が当初予想した以上に景気上昇の現象をもたらしているのであります。もちろん、中小企業の整理倒産が三割も増加したという一面もあり、景気上昇が各階層におけるひとしい現象として認めることができないといたしましても、予算編成当時の経済成長の見通しは、名目で一三・四%、実質で九%、ところが今日の調査では、名目で一六%、実質で一〇%と、当初の経済見通しと、最近における大きな変化と、歳入見通しの変化の生じたことは一般的な常識であります。経済全体の拡大と、経済成長の伸びが、以上の数字が示しておりますように、当初の予想を上回るといたしますれば、税の自然増収も当然考えられるのであります。非公式ではありますが、すでに政府部内におきましても、その自然増は三千ないし四千億円に達するものといわれているのであります。
 私が、ここに特に指摘したい点は、今日の上昇機運にある経済の実態と、国民の切実な諸要求が遊離しているという点であります。そのことは、具体的には今回の医療保険問題に、あるいは消費者米価問題に、あるいはその他の物価問題に見ることができるのであります。先日の総理の所信を伺っても、今回の健康保険の特例法案は、保険財政の健全化をはかり、これを基盤として医療保険制度の抜本改正を行なうと言っておられるように、赤字財政を補てんするための緊急対策であります。しかもその赤字を一方的に国民の負担によって解決をはかろうといたしておるのであります。
 政治資金規正法案は、政界における黒い霧を払い、国民の政治信頼を回復するために、どうしても実現せねばならぬ天の声であったのであります。ところが政府・自民党は無謀にもこれを流してしまいました。このような断ち切れぬ財界とのくされ縁は、経済の成長、税収の自然増にも大きな圧力となり、再び設備投資や公債償還に食いつぶされ^切実な医療保険や米価や公務員賃金といった諸要求の解決にはきわめて縁遠いものとなりつつあるのであります。(拍手)
 総理の、経済繁栄は人間の尊厳と社会福祉に奉仕するものだと言われる公約どおり、新しい財源は人間尊重、人間福祉に振り向けられるべきものと考えるのでありますが、この点、総理の誠意あるお答えをいただきたいと思うのであります。これが、お尋ねしたい第二の点であります。
 次にお尋ねをいたしたいのは、問題の医療保険を中心とした社会保障についてであります。
 御承知のごとく、この臨時国会は、一名健保国会ともいわれているのであります。したがって、その臨時国会の持つ特殊性からも、従来の形式にとらわれたようなお答えではなく、血の通ったお答えをいただきたいと思うのであります。
 さきにも申し述べたように、日本の経済は高度の成長を果たしつつあるにもかかわらず、中小企業の労働者は、その恩恵どころか、かえってしわ寄せを食っておるのがその実情であります。したがって、国の社会保障、なかんずく医療保険制度こそは、これら所得の少ない国民にとっては、命の綱であるといっても断じて過言ではないのであります。(拍手)児童手当をはじめとし、社会保障の充実、改善に何らの熱意を示さないのみか、かえって命の綱である医療保険については、昨年に引き続いて保険料率を大幅に引き上げ、入院、初診時の一部負担を倍増させ、さらに薬剤費の患者負担まで新設、強行しようとしているのであります。これでは、低所得者の健康開発を目的とした総理の一枚看板、社会開発計画とは、まさしく逆行するものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)今日、生命の脅威すら感じている零細な国民の前に、その矛盾点を率直に御解明いただきたいと思うのであります。
 次に私は、問題解決の建設的な立場から、一言指摘をいたしたいのであります。それは、わが国の経済の飛躍と、わが国社会保障の実態との対比についてであります。
 いまや、わが国の鉄鋼、自動車、電力の生産は世界第三位であり、テレビ、合成繊維は世界第二位であり、造船のごときは世界第一位に君臨するに至っているのであります。このように工業生産力はまさに先進国と比肩するに至っておるのでありますが、一方、わが国社会保障の水準は今日なお昭和三十五年当時の西欧諸国の水準にも遠く及ばないのであります。そして医療、公害、教育、交通、住宅と人間不在、社会矛盾をそれぞれ暴露いたしておるのであります。したがって、これらの問題を解決し、総理の社会開発、人間尊重の公約を額面どおり達成されるためには、総理の勇断と効率的計画が当然必要と思うのであります。
 ところが、さきに策定された政府の経済社会発展計画においても、社会保障の長期計画の位置づけはきわめて不明確であります。むしろ生産第一主義の至上命令のため、その片りんすら失いつつあるのであります。
 この際、問題の抜本解決のため、私はその長期計画の策定を強く要求するものであります。総理の公約達成のためにも誠意ある御見解を承りたいと思うのであります。(拍手)これがお尋ねを申し上げたい第四点であります。
 さらに、いま申し上げた社会保障の長期計画の策定に関連して、医療保障の基本と今後の政府の方針についてお伺いをいたしたいのであります。
 医療保障の基本的なあり方については、すでに昭和二十五年社会保障制度審議会の答申したところであります。また、その総合調整については昭和三十七年に、医療保険財政の問題点については一昨年と、それぞれ答申を行なったところであります。
 しかるにもかかわらず、政府は、今日まで水上の浮き草のごとく風のまにまにゆれ動き、あるいは右顧左べんに終始し、単に医療保険のみならず、医療制度全般にわたっても、その改革を怠り、しかも、そのことが今日の混乱と今日の制度の後退をもたらしたのでありますから、総理の責任はきわめて重大といわなければなりません。(拍手)
 しかも、社会保障制度審議会設置法第二条は、総理及び関係各大臣が審議会の社会保障の企画、立法、運営についての意見を尊重せねばならぬことを明らかにいたしておるのであります。したがって、政府の今日の態度というものは、まさしく法律違反なりと私は断ぜざるを得ないのであります。(拍手)この答申を無視して、ひずみの是正と社会開発の使命を達成することは全く不可能のことであります。これでは、総理の風格ある社会や人間尊重の合いことばは、聞く耳にはいかにきれいであっても、その期待は薄く、今日苦悩する国民の生活は断じて救われないのであります。
 去る二十八日の総理の所信表明における健保の提案は、今日の保険財政の赤字が制度の崩壊を来たすという一点にあるようであります。しかしながら、元来、政府管掌保険の赤字は、その原因も日本の皆保険体制下の視野において探求しなければならぬものであります。したがって、その改善の方策も皆保険体制下の視野において解決せらるべきものであります。ところが、今回の健保特例法案は、この皆保険的視野を全く忘れてしまっているところに大きなあやまちをおかしているのであります。(拍手)
 元来、今日、医療保険の赤字が増大してきた理由は、総理の演説にもございますように、医療費の急激な増大であります。わが国の医療費の伸びは、ここ数年来国民所得の上昇率をはるかに上回っており、二〇%前後の数字を示しておるのであります。その結果として、国民総医療費は、年間一兆四千億円にも達しようとしておるのであります。医療費増大の要因は、医学、薬学の進歩による医療水準の向上、疾病の増加や複雑化、いま一つは、行政当局の怠慢であります。ところが、政府は、このような背景を無視して、健保の赤字を政管健保のワク内における収支だけで、簡単にその原因を求め、その解決をはかろうとしておるのであります。全く知恵のない話であります。このことは、皆保険体制下の国家的使命に反するもはなはだしいといわなければならぬのであります。(拍手)
 また、総理は、所信演説の中で、保険財政の健全化をはかり、これを基盤として制度全般にわたる抜本的改善に着手することも明らかにされておるのであります。ところが、もともとこの医療保険の抜本改正は、昭和三十六年当時の灘尾厚生大臣以来の公約であったのであります。しかるに、今日まで六ヵ年間、何らの具体的な方策を見出すこともなく、いたずらに政治と行政の停滞を許したその責任は、まことに重大といわなければなりません。(拍手)特に、政管健保は千三百万人に及ぶ零細企業の健康保険であります。日常における健康管理はきわめて不十分であり、生活水準は低く、疾病量の多いのは当然であります。受診率の高いのもその特色であります。老齢者が多いのもその特色であります。したがって、政管健保の赤字はまさしく出るべくして出てまいった赤字であります。福祉国家を呼称し、国民に皆保険を強制する政府が、これらの赤字に対して国庫負担によって補てんすべきはきわめて当然であります。しかるに、このような状態を六ヵ年間の長きにわたり放置し、しかも今回の特例法が成立した後に抜本改正をはかることを表明するごときは、国民の名において断じて許せないのであります。(拍手)
 わが社会党は、これらの抜本的解決をはかるため、つとに定率三割の国庫負担を主張してまいったところであります。今日までの政府の怠慢に強く反省を求め、同時に、国庫負担を含め抜本的改正の具体的なスケジュールを明らかにされることを強く求めるものであります。これがお尋ねをしたい第五、六点であります。
 次にお伺いをいたしたい点は、一部負担制と制限診療に対するお考えについてであります。
 すでに申し述べたように、赤字の四四・六%を国民に押しつけ、さらにまた薬剤費の一部負担制を一方的に課することは、まさしく暴力行為にもひとしいものであります。受診の制限を目的とした初診時、入院時一部負担の倍額徴収、加えて投薬の制限をねらう薬剤の一部負担制は、政府みずからが今日の皆保険主義を破壊するものだと指弾せざるを得ないのであります。(拍手)特に、高い罹病率の低所得者階層のためにも、人間尊重の立場からも、一部負担制のごとき制度後退は断じて許せないのであります。赤字の亡霊と化した政府は、さきの国会では、国民の声にこたえ十分審議を尽くすべく、わが党の委員十二名が質疑を通告したにもかかわらず、わずか三名のみが一応の質疑を行なっただけで、それらの質疑の解明を十分行なうこともなく、無謀にも質疑打ち切りさえはからんといたしたのであります。
 総理は、国民の健康と生命を必死に守ろうとする国民の声にこたえ、この際、勇断をもって出直されることを期待するものであります。しかるとき、国民は必ず総理に感謝の賛辞を贈るであろうことを申し上げておきたいと思います。(拍手)
 次に、私は、いま一つ重大な点を御指摘したいと思うのであります。それは、去る七月十五日、坊厚生大臣が無謀にもビタミン剤を保険適用よりはずす用意のあることを明らかにされた点であります。
 今日、ビタミン剤は保健薬、強壮剤ではなく、完全なる治療薬であります。新陳代謝の調整剤としてあるいは脳出血後の後遺症に広く使用されておることは、すでに医学の常識であります。ところが、厚生大臣がこの医学の常識すら無視して保険適用よりはずす用意のあることを発表したことは、制限診療以上の人命を無視した破壊的暴力行為であると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)この点は人ごとではありません。血圧の高い議員の皆さんには特に注意を喚起しておきたいと思います。
 この点について、この際、国民の健康増進と人命尊重の立場から血の通ったお答えをいただきたいと思うのであります。これがお尋ねをしたい第七点であります。
 さらにまた、今日失業保険法、最低賃金法等が提議されていることでもございますので、最後に私は、不安定な雇用と物価高、生活に苦悩する労働者の賃金と公務員賃金の問題についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。
 今日の激動する経済事情と相次ぐ物価高の中にあって、労働者の職場は依然として不安定であり、実質賃金の引き下げと、合理化のあらしの中で労働者は苦悩いたしておるのであります。ところが、労働者の賃金を論ずる際、政府は、常に賃金と生産性、賃金と物価の関係を重視し、みずから医療費、米価など公共価格の値上げを決定しながら、賃金の上昇があたかも物価の引き上げを招いているかのごとき錯覚を国民に与えているのであります。しかも、今日、日本の総生産は世界第五位の水準に達しながら、一方、国民の総所得は世界の第二十二位にとどまっているのであります。このことは、日本の労働者の賃金水準がいかに低いかを物語っているではありませんか。
 この際、人間性尊重のたてまえからも、人間らしい生活のできる賃金、この賃金水準の引き上げについて、積極的な姿勢を示すべき段階が来ていると思うのでありますが、経済の繁栄と人間性の尊厳を主張される総理の公約どおりのお答えをいただきたいのであります。
 最後に、私は、この賃金問題に関連いたしまして、公務員賃金に対する、現行制度による人事院勧告の完全実施を強く要求いたすものであります。一さきの予算委員会においても、人事院勧告の時期が八月中旬であることが、人事院総裁によって明らかにされているところであります。御承知のごとく、公務員法第二十八条は、民間賃金との格差をなくすためのものであります。したがって、その精神からも、四月調査、四月実施がたてまえでなければならぬと思うのであります。ところが、今日まで、十二回に及ぶ勧告、昭和三十五年以降の不完全実施、その政府の値切り分が積もって、すでに三千億円という膨大な金額に達しているのであります。この金額は、実に公務員一人当たり十一万円に相当するものであります。しかるに総理は、さきの予算委員会におけるわが党委員の質問に対し、今日までの政府の措置は、人事院勧告を無視したものではないとの見解を明らかにされたのであります。
 さきに政府の値切り分を数字で示したのでありますが、過去十二回に及ぶ人事院勧告を一回も完全実施することなく、誠意を示したと言われる総理の発言は許しがたいのであります。近く行なわれることが予測されます人事院勧告に対し、ことしこそは完全実施をと、公務員労働者は強く期待しているところでありますが、完全実施の御意図があるかどうか、総理の誠意あるお答えをいただきたいと思うのであります。特に、労働者の地位を高めることは、わが国の国際的、経済的地位と価値を高めるゆえんのものであります。その意味でも、前向きのお答えをいただきたいと思うのであります。これがお尋ねをいたしたい最後の第九点目であります。
 以上、私は、今日当面する国民の経済と健康と生命と、そして生活を守るための切実な願いを込めての質疑を展開したのでありますが、願わくは、総理も、この国民の切実な悲願にこたえ得るようなお答えを特に期待いたしまして、私の質問を終わらんとするものであります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#7
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 まず第一は、私のかねての主張と、今回の健康保険特例法案を提出したことは矛盾するのではないか、こういうお尋ねでございます。私は、私自身の今回の行動に矛盾を感じないものでございます。
 さらに、その説明をつけ加えてみたいと思いますが、河野君は、ただいまの医療保険制度、これが保険制度であることはお認めだと思います。しかし、広義の社会保障の一環であること、一つの柱であること、これも認められると思います。したがいまして、いわゆる福祉国家を建設しようとするかねての私どもの政治的主張と、今回のこの特例法案を提出したこととは別に矛盾はないのであります。申すまでもなく、保険制度については、やはり保険料率によってこれをまかなっていくということが骨子でございまして、いたずらに政府負担においてこの赤字を解消していく、こういうことを考うべきではないのでございます。申すまでもなく、今回は、国民の努力によりまして自然増収もずいぶん大きい額にのぼるようでございます。そういう意味におきまして、国家の負担そのものも私どもは十分考慮いたしますが、同時に、制度そのもの、保険制度そのものとしてのあり方もよく考えてまいりたいと思うのであります。今回特例法案を再提出いたしましたのも、保険制度であるそのたてまえから、やはりこの点で国民の理解を得、負担すべきものは負担していただきたい、かように考えるような次第でございます。(拍手)
 次に、社会保障制度についての長期計画を策定しろ、これを強く要望されました。私は、さすがに河野君はこの方面の専門だ、かように思います。たいへん当然のことだと思います。私どもがかねてから主張しております福祉国家の建設、こういう立場に立ちまして、ただいまの長期計画、これはなければならないものでございます。そういう意味で、経済社会発展計画におきましても強くこの問題を取り上げまして、将来国民所得に対する振替所得の割合は、さらにこれを高めていくといいますか、そういう方向でこの社会福祉国家の建設に万全を期する考えでございます。(拍手)
 次に、この抜本対策はいつから――これは三十六年以来検討されておること、御指摘のとおりであります。今回の特例法、これの成案を得ましてさしあたりの問題を緊急処置をし、そうして抜本的な対策、これを進めていくつもりでございます。時期は、四十三年度以降におきましてこれを取り上げていきたい、かようなことで積極的に検討しておる次第でございます。
 次に、今回の赤字は、これは行政上の不手ぎわなんだ、かように言われますが、これは私が申し上げるまでもなく、すでに医学あるいは薬学が非常に発達しております。また同時に、診療機関も整備拡充されております。また、国民所得もふえてまいりました。そういう意味におきまして、薬の使い方もよほど変わっております。そういう点から今日のこの制度自身がかもし出しておることにも関係があるのでございます。必ずや、この行政上の責任だけではなくて、制度上の責任でもある、さような意味でこれを考えなければならない、私はかように考えております。
 この制度上の関係があるという点について、先ほども、定率三割の国庫負担ということを考えたらどうか、こういうような御提案がございました。私は、これも一つの案だと思います。抜本的な対策を立てる際には、もちろん、この定率三割国庫負担というようなことも検討すべき事柄だ、かように思っております。
 私は、この国会におきましてぜひとも今回の特例法案の成立を期したい、かように思っております。そこで、河野君から、勇断をもって出直したらどうか、こういうお話でございますが、勇断をもってこの国会に成立を期する考えでございます。(拍手)
 次に、ビタミン剤の使用につきまして、専門的な立場から、ただいまはこれは治療薬だ、ただ単なる強壮剤ではない、かような御指摘でございます。これは専門家である河野君に私も敬意を表したいと思います。厚生大臣坊君が申しましたのは、おそらく、この法案も成立しない、こういうようなことだと赤字が非常にかさむので、こういうような薬については特別な制限をつけなければならないのではないかというような、行政的な処置を話をしたのではないかと私は想像いたします。しかし、皆さん方の協力を得まして、かような措置をとらなくてもいいようにぜひともしたいものだと私は考えております。(拍手)
 次は、賃金の問題についてお答えをいたします。
 申すまでもなく、もうすでに御承知のことだと思いますが、三十五年から四十一年までの間、製造業に従事する労働者の賃金は、大体八割上がっております。そうして、その間においていわゆる生産性は七割上がったのでございます。これは製造業についての特別な例でございます。この点で、私が申し上げるまでもないのでございますが、今後経済を発展させ、生産性を向上させ、そうして賃金がふえていくような、改善ができるような、そういう経済状態をつくりたい、これが私の政治目標でもございます。どうかそういう意味でこの上とも御協力を得たいと思います。
 次は、公務員の給与について、これはお話にもありましたように、まだ具体的な勧告がまいっておりません。政府は、かねてから、この勧告を尊重するという態度を堅持しております。したがいまして、この勧告が出ましたら、誠意をもってこれが実現を期する、最善を尽くすことをこの機会に申し上げておきます。(拍手)
    ―――――――――――――
#8
○副議長(園田直君) 春日一幸君。
  〔春日一幸君登壇〕
#9
○春日一幸君 私は、民社党を代表し、佐藤総理の所信表明に対し、本臨時国会の主要課題とおぼしき次の諸点について政府の見解をただしたいと存じます。
 私は、まず最初に、政治資金規正法案に関連し、佐藤総理の政治姿勢について質問いたします。
 総理、私は、このほど、元官吏と称する富山市在住の七十四歳の未知の人から、次のような書簡を受けました。
 すなわち、その書簡は政治資金規正法案に対するあなたの政治責任を筆をきわめて論難糾弾して、これを次のように述べられております。朗読をいたしますが、「ここに最も重大な問題は、一国の総理が公約をじゅうりんして、てんとして恥を知らず、何ら責任を感じようとしないこの一事です。これはわが国の政治、わが国の国運にとって、決して軽視できない重大事です。一国の総理が政治道義を守らず、政治責任を感じないということは、これは日本政治の危機であります。私の最も憂慮することは、このことが一億国民の世道人心に及ぼす影響です。佐藤内閣は一日も早く葬るべきです。いまの一億国民はだれしも私と同じ気持ちだと思います。」云々とあるのでございまして、この手紙は、さらに切々とあなたに対するきびしいせっかんを加えておるのであります。
 昨日来の野党質問に答えられる総理の言動から判断いたしまするに、このような国民の憤激について、あなたはいまだに十分なる御認識を持たれていない様子であります。したがいまして、私は、ここにあらためて本問題のいきさつをつまびらかにし、あなたの御反省を促したいと存じます。
 総理、まことにあなたは、政治資金規正法案の扱いについて、実に二重、三重の政治悪を積み重ねられました。
 すなわち、この法案の策定にあたって、あなたは、選挙制度審議会の答申を換骨奪胎して、これをはなはだしくゆがめてしまいました。およそ、民主政治は、それぞれの機関の意思が尊重されてこそ初めて成り立つ政治であるといわれておりますのに、あれでは、何のためにあの選挙制度審議会を設置したものやら、また、その審議会は何のためにあのような激しい検討、論議を重ねてきたものやら、おそらく、国民の大多数は、民主主義という名の権力主義者のあのようなかって気ままな独壇場に、やる方ない憤りを抱いていることでありましょう。(拍手)これが、本法案に対しあなたがおかした最初の政治悪であります。
 次いで、そのようにして提出された政府原案は、こともあろうに、あなたが総裁として統括されるあなたの党によって、その審議は、まるでおもちゃのようにもてあそばれ、そして結局は、こわれたおもちゃのように、特別国会の幕切れのどさくさの中に投げ捨てられたのであります。これは議院内閣制における政府と与党との責任一体の鉄則を踏みにじり、議会制民主政治の本義を破壊した前代未聞の暴挙であります。これが、あなたによって積み重ねられた二重の政治悪であります。
 かくて、ここに第五十六臨時国会が召集されましたが、これは実質上、前国会の再延長国会にほかなりません。したがいまして、佐藤総理にして、もし、この政治資金規正法案の不成立について、総理、総裁として責任を感ずるところありとするなら、すべからくその法案をここに再提出し、今度こそは政府と与党が翻然悔悟してその成立につとむべきは当然のことでありました。しかるに、政府も自民党にも何らの反省なく、したがって、いまだその提案はなされておりません。これが第三重の政治悪であります。
 ここに、昭和二十三年一月の第二国会において、時の片山内閣は、その補正予算案が与党の一部の反乱によって撤回動議が成立したとき、片山総理はその政治責任を痛感し、憲政の常道に従って厳然として総辞職を決行いたされました。まことに、政治資金規正法案こそは、昨秋来政界に立ち込めた黒い霧を晴らすためのこの出直し国会において、まさに政界粛正の中心的使命をになう最重要法案であったことにかんがみまして、この法案のかかる結末について、政府も与党も何らの責任をとらないということは、決して許されることではないでありましょう。(拍手)かつて片山内閣における補正予算案不成立に基づく内閣総辞職の前例をあわせ考えられて、私はこの際、とくと佐藤総理の猛省を求めてやみません。
 以上、私は、政治資金規正法案の扱いに対する一般国民の憤激をありのままにお伝え申し上げ、あわせてわが党の見解を申し述べました。これに対する総理の御所見はいかがでありますか、この際、あわせて次の諸点について総理の御方針を明らかにいたされたいと存じます。
 そこで、この政治資金規正法案は、以上申し述べた理由により、政府はその責任において最もすみやかに成立をはかるべきであると思うが、現に自民党のあのような猛反対の実情にかんがみて、はたしてそのことが佐藤内閣で可能でありましょうか。また一方、総理は自民党の総裁として、まず、みずからの党の体制を調整される必要がおありであろうが、はたしてその御意思をお持ちであられますか、これらの点について今後総理はどのように対処される方針か、この際、その真意のほどを国民の前に明らかにいたされたいと存じます。(拍手)
 次に、政府がこの法案の早期成立の意思をお持ちでありとするならば、政府がこの臨時国会にその法案を提出しないことは、何人もとうてい納得できることではありません。現に国会は、公職選挙法改正特別委員会を衆参両院に設置して、それを審議する体制を整えております。かりにこの臨時国会が特に健保特例法案の審議を求めたものであったといたしましても、そのことは、選挙法改正特別委員会の審議能力をいささかも阻害するものではありません。また、この政治資金規正法案に与野党とも疑義や問題がありとするなら、なおさらのこと、この臨時国会の貴重な時間を活用して審議を進め、それら疑義の氷解をはかるべきではありませんか。幸いに、本日はいまだこの会期の初頭にあります。総理は、国民世論の動向と野党の主張に対し、あらためて胸襟を開き、この際、答申を尊重したあの法案を再提出し、与野党の合意を求めて、その成立の方向に向かって努力せらるべきであると思うが、総理の御見解はいかがでありますか。また、もしこの法案を本臨時国会に提出しないとするなら、今後、いつ、どのようにして提案される御所存か、また、その提案には、自民党の一部に主張されているような、たとえば選挙区制の変更など、新しく別個の条件が並列されてからむ形になるのであるか、この際、その見通しをも加えて総理の御方針をお示し願いたいのであります。
 次に、外交問題について質問いたします。
 いまや、わが国をめぐる国際情勢は、拡大の一途をたどるベトナム紛争、中国の水爆並びに中距離弾道弾による本格的核武装の進展、米ソが背景国となる中近東の紛争の混迷、そしてさらに、核拡散防止条約の締結をめぐる米ソ間並びに核保有国と非核国との対立など、その様相はきわめて複雑で、かつ、流動性を加えつつあるのであります。この中にあって、わが国は、みずからの安全確保と、アジアにおける平和の積極的創造のために、一体何をなさんとするものであるか。これが今日佐藤内閣に問われておる外交上の課題であります。このような見地に立ち、以下、当面する重要なる諸問題について、佐藤外交の核心についてお伺いをいたしたいと存じます。
 質問の第一は、ベトナム和平に対する日本政府の具体的行動についてであります。
 本日、ベトナム和平の唯一のきっかけとなるものは、まず北爆の停止であります。それはウ・タント国連事務総長の言にまつまでもなく、もはや世界世論の定説となっておるところであります。本日、米国は、北ベトナムの南方浸透停止の保障が得られないことを理由に、北爆継続やむなしとして、その戦闘を進めておりますが、これでは、ベトナムの和平は、日とともに危険な階段をのぼりつつ、逆の方向に向かって遠ざかるばかりでありましょう。したがいまして、ベトナム和平に対する日本政府の当面の努力対象は、一方において、米国に対し、北爆中止の強い要請を行なうことであり、他方において、対ソ折衝を進めて、これに見合う北ベトナムの南方浸透停止の約束を取りつけること、ここに焦点をしぼって努力をすべきものと考えられます。しかるに、佐藤総理は、べトナム和平のかぎが、このようにして対米、対ソ外交の機微に秘められておるさなかに、大胆にも、この九月、戦争の一方当事国たる南ベトナムを訪問されるとの趣でありますが、人情と勢いのおもむくところ、これは期せずして南にあなたの心を傾けさせ、それが北への刺激要因となって、その結果は、全体としてベトナム和平に対するわが国の説得力をそこねることになりませんか。私どもはこのことを率直に憂うるものであります。
 総理は、一昨日、山花議員の質問に答えられて、もしそのことがベトナム和平に大きく役立つならば、また北越を訪問するにやぶさかではないと答えられましたが、ここにベトナム和平の方途を達観すれば、現実の問題として、南越、北越の政権だけではそれを解決し得る客観条件はすでに乏しきものと見るべきでありましょう。したがいまして、私どもは、佐藤総理が、真にアジアの指導国の首相たるの自負を持って、ここに和平の道を求めて南越を訪問されたといたしましても、しょせんはその効果は少なく、かえってその逆効果の多からんことをおもんばかるものであります。(拍手)
 総理は、この際、勇断をもって南越訪問を思いとどまり、その情熱をひっさげて米ソにおもむき、北爆の率先停止と、それにこたえる南浸停止を強力に働きかけられるべきであると思うが、この点に対しまして、総理の御見解と御方針をできるだけ具体的にお示し願いたいと存じます。(拍手)
 次に、対ソ外交について質問をいたします。
 去る七月二十七日、某新聞の報道によれば、コスイギン首相は、三木外相との会談の席上で、もし条件さえ整えば、中国と絶縁してもベトナム解決に踏み切ってもよいとの意思表示があったやに伝えております。
 従来、われわれの常識的見解では、中国を除外してベトナム問題の解決はあり得ないというのが、本日までの一般的観察でありました。したがって、ソ連が今回特に中共を除外したベトナム問題解決の決意を表明したことは、画期的なできごととして刮目したのでありますが、その後、ポーランドよりの報道によりますと、このコスイギン発言は、三木外相によってまっこうから否定されたようであります。しかしながら、問題の重大性にかんがみ、私どもはこの間に何らかの事情が伏在しているように感じられてなりません。まことに、このコスイギン発言として伝えられたものは、それがベトナム戦争解決のかぎを握ると目されるソ連の底意を示すものとして、わが国民の関心は絶大なものがあります。よって、この際、あのようなコスイギン発言は、実際に事実無根のものであったかどうか、政府よりできるだけ明確にそのいきさつと真相を御説明願いたいと存じます。
 次に、今回の日ソ定期協議に際し、特に三木・コスイギン会談で、懸案の領土問題と平和条約問題について話し合いが行なわれ、今後この二つの問題について日ソ両国がさらに話し合う道を切り開いたとの趣でありますが、これは、まさしく日ソ定期協議のもたらした一個の成果であり、率直に敬意を表します。しかしながら、それらの問題をめぐる話し合いの中身がどのようなものであったかは、必ずしもいまだ明確ではありません。伝えられるところによれば、コスイギン首相は、何らかの中間的なものをつくる可能性を示唆したといわれておりますが、一体それはどのような方式のものでありましょうか。特に、平和条約締結の根本問題たる領土問題について、この際、政府の厳然たる態度をあらためて伺っておきたいと存じます。
 これまで、政府は、北方領土については、南千島の返還をあくまで要求する立場を堅持してまいりましたが、かりに、平和条約の締結問題が今後具体化する場合、政府はこの既定方針を一貫して堅持する決意かどうか。一部には、歯舞、色丹さえ返れば、あとの領土についてはこれをペンディングのまま平和条約を結んでもよいとの議論もありますが、これほど平和条約の本来の性格をわきまえず、かつ、わが国の領土問題を軽視した議論はありません。この問題に対する佐藤総理の御所信のほどを、この際国民の前に厳然と明らかにしておいていただきたいと存じます。(拍手)
 次は、沖繩問題について質問いたします。
 沖繩は、母国日本の施政から離れてすでに二十二年を経過いたしました。沖繩百万同胞の悲願がかかる長期にまたがって握りつぶされてきたことは、まさにわが国政治の無能と貧困を如実に物語るものであります。
 しかしながら、昨今情勢はとみに変化のきざしをあらわし、特に先般の佐藤・ハンフリー会談を契機に、沖繩、小笠原の返還問題が今秋の日米首脳会談の主題になろうとしていることはまことに歓迎すべき事態であります。すなわち、日本政府の強い決意と提案内容のいかんによっては、沖繩、小笠原の施政権返還を実現することは、もはや必ずしも不可能なことではない情勢にありと思われます。
 しかるに、ここに沖繩返還に対する従来の政府の態度は、総理府筋の教育権分離論、下田駐米大使の核基地つき返還論、与党内の地域的分離論、政府筋のばく然たる全面返還論など、雑然として定まるところのないことは、まことに遺憾きわまるところでありまして、もはやこのような無定見な態度は許されません。
 佐藤総理は、来たるべき日米首脳会談において、沖繩、小笠原の施政権返還をジョンソン大統領に対して明確に要求談判すべきであると思うが、総理の御決意はいかがでありますか。
 またその際、当然その返還について日本側から具体的な方式を提案しなければならないが、これに備える政府の具体案はどのようなものか。この際、総理より沖縄返還に対する政府の明確な態度、方針を明らかにいたされたいと存じます。(拍手)
 最後に、健保特例法案について質問いたします。
 ここに、医療保険財政に、現行制度のたてまえでは、年間七、八百億の赤字が出るとするなら、政府はその管掌責任者として、それに対する対策を根本的に講ずべきは当然の責務でありましょう。かくて、政府は、そのような根本策の提案について、ここ二、三年来しばしば国会でその約束、言明を重ねながら、いまだにそれを実行しておりません。これはまことに驚くべき政府の怠慢であります。ここに、先国会以来問題にされておる健保特例法案は、依然として臨時的な、部分的な応急措置であって、それは何ら現行制度の根本的改善に寄与するものではありません。
 わが党がこの法案に反対する理由は、このようなびほう策を安易に次々と積み重ねていては、それによって本来の保険制度が次第にかたわにされていくおそれがあるからであります。政府筋では、この法案が成立しないと医療保険制度を崩壊させる心配があると大ぎょうに言いふらされておりますが、もしもそのような心配があるならば、それは当然政府の責任においてその不安を取り除くべきでありましょう。たとえば、現に今回の改正案においても、政府はすでに二百二十五億の国庫補助を計上しているのでありますから、ここに本年度の税収の自然増加は三千億ないし五千億と見込まれておることにかんがみまして、この際、この二百二十五億の国庫負担の当初計画を七百四十五億の国庫負担に増額すれば、当面する保険財政のつじつまはそれで十分に均衡をはかることができるのであります。
 元来、医療保険というものは、それが社会保障政策である限り、その財政経理は保険の概念と社会政策の概念との配合によって措置すべきものでありまして、したがって、その当面の赤字が国の支出によって補てんされるということは、決して異様なことでもなく、相手が日の丸というようなばかげたものでもございません。健保問題解決の道は、まずもって政府がその言明に従い、健保制度に対する根本的改善策を策定し、これを国会に提出されることであります。
 そこで、あらためてお伺いいたしますが、健保問題については論じ尽くされたこのようないきさつがあり、かつ、健保制度そのものの欠陥が現に日とともに拡大の傾向にあるにもかかわらず、政府がいまなおその改善のための根本対策を国会に提出しないのは、一体いかなる事情によるものであるのか。また、そのためにしばしば健保特例法案の提出をめぐって国会は混乱におちいるのであるが、厚生省当局はその政治責任を一体どのように理解しておるのであるか。さらに、政府は、その根本的改善策を四十三年をめどに立法作業を急いでおると言われておるが、はたしてその四十三年には、政府はそれを確実に国会に提案することができるのであるか、必ずできるというのであれば、その保証は一体何か、この際、総理並びに厚相より責任ある御答弁をお願いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#10
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 春日君にお答えいたします。
 政治資金規正法案があの期間中に論議をまとめることができなかったことは、まことに残念でございます。また、私は、国民に対しましてもまことに遺憾に思っておる次第でございます。この点は、過日も申し上げたとおりでございます。ただいまいろいろの御意見を交えてのお尋ねをいただきました。私は謙虚に御意見を伺い、同時に私みずからが反省もした次第でございます。具体的にこの問題についてお尋ねがございましたが、この国会は短い会期であるからこの国会で審議することは不適当だと、かように考えましたので、ぜひとも他の国会におきまして、近い将来においてこれを再提出し、そうして成立を期する考えでございます。また、その際に審議会の答申を尊重することはもちろんでございます。しかし、審議会が特に緊急措置すべきものとしていただいた政治資金規正に関する答申でございますから、その他の答申、区制その他のものが近く出ると考えますけれども、それがどういうものが出てくるか、これは全然私いま予想もできません。これらを一体として考えていくことは、これは審議会の趣旨でもないと、かように考えますので、政府もその審議会の趣旨を十分尊重していくつもりでございます。
 次に、外交問題についてお答えをいたします。
 外交問題は、今回東南アジア諸国歴訪、同時にまたアメリカを訪問する予定でございますが、これは私が申し上げるまでもなく、わが国がアジアの一員として、また先進工業国として国際的な役割りを果たしつつありますが、その観点に立って東南アジアの諸国を訪問し、実情を認識し、親善友好を深め、また、それぞれの責任者、指導者と話し合うことによりまして、今後の平和繁栄への協力を話し合っていくつもりでございます。
 特に問題になりますのは、ただいまベトナムにおきまして戦争が行なわれておりますので、ベトナムの和平がその中心になるということは、これは当然でございます。しかし、このたび私が出かけましても、このベトナムの和平と取り組んでおる日本の態度には何ら変わりはないのでございます。また、その意味では各国もわが国を誤解はしておらないと、かように考えます。このたび私が行くことによりまして、あるいは軍事的に介入するとか、いろいろの批判をする方があるようでございますが、私どもが平和を心から願っており、その意味の探求に出かけるのだということには何らの誤解はないようでございますから、御心配がないようにお願いをいたします。したがいまして、ただいまもたいへん好意のある、ベトナム行きをひとつ中止したらどうかというお話でございますが、むしろ、ベトナムに参りまして、そして実情を把握し、選挙後の責任者とこの問題を話し合っていくということは、たいへん好ましい結果をもたらすものではないかと、かように私は考えるのであります。
 また、アメリカに参りまして、もちろんこれらの問題についての話し合いをいたします。お話にもありましたように北爆停止、これは一つの和平へのきっかけだと思います。しかし、北爆停止をいたします限りにおきましては、北側におきましても、南へのこれに相応する浸透をやめるということであってほしいと私は思います。今日までこの和平の問題が進まないのは、一方的にただ北爆停止のみを叫んでおる、そういうところにも問題があるのではないかと私は考えるのでございます。(拍手)これらの点につきましては、十分それぞれの関係国と話を進めてまいりたいと思います。
 ただいま三木外務大臣がソ連に行き、また、東欧諸国を歴訪しながらも、このベトナムの和平への協力を願っておる姿、これで佐藤内閣の考え方は御理解がいくだろうと思います。(拍手)
 次に、三木外務大臣が訪ソいたしまして、いわゆるコスイギン首相の発言として一部新聞に報道されました事柄でございますが、これは、三木外務大臣が、二十七日ワルソーにおきまして、事実無根だ、こういうことではっきり取り消しておりますので、さような事態はなかったことだ、かように考えております。
 次に、北方領土の問題につきましていろいろ報道されておりますが、コスイギン首相の話として、領土問題や平和条約の問題について何らか中間的のものを考えることはできないかというような発言があったというのが報道されております。しかし、この中間的のものということについては明確でございません。いずれ近く三木外務大臣帰ってまいりますので、十分実情を聞くつもりでおります。
 次に、沖繩、小笠原問題についてお触れになりました。私は、北方領土と同様にこれらの問題を考えていくべきではないかと思っております。日ソ交渉において平和条約を締結する、かように申しましても、領土問題がかぎでございます。そうして私どもが今日まで主張し続けてきた国後、択捉、両島は、わが国の固有の領土であり、サンフランシスコ条約の際も日本政府が放棄した地域ではございません。いわゆる千島列島ではございません。また、歯舞、色丹は、これは北海道の一部でございます。さような意味で、この領土問題はぜひとも解決しなければならない、かように考えておりますので、ただいま激励を受けましたその立場におきまして、各党協力いたしまして、これはぜひとも実現いたしたいものだ、かように思います。(拍手)沖繩、小笠原の問題につきましては、もちろん私がアメリカに参りました際に話し合う重要な問題でございます。その具体的な構想について話をしろということでございますが、私は、ただいまはこの具体的構想を明らかにするその時期でない、かように考えておりますので、これはお許しを得たいと思います。
 次は、健保問題についてのお尋ねでございます。先ほど河野君にお答えいたしましたので、春日君御了承をいただきたいと思いますが、他の点について厚生大臣からお答えさせます。(拍手)
  〔国務大臣坊秀男君登壇〕
#11
○国務大臣(坊秀男君) お答え申します。
 今度の健康保険等の特例法案の趣旨といたしますところは、御承知のとおり健康保険の中には非常に赤字が累積してきておる。この累積してきておる赤字をそのままにしておきますと、これは危殆に瀕してくる。こういうようなこともございまして、そういうような健康保険について、どうしてもこの健康保険というものを維持していかなければならないということが一つの大きな目的でございます。さらに日本の国における今日の医療保険制度というものは、春日さんも御指摘のようにいろいろな点において欠陥が生じておる、いろいろな点において是正をしなければならないところが露呈されておるというようなことで、どうしてもこの抜本対策をやらなければならない、こういうことに相なっておるのでございますが、その抜本対策を断行するに際しましても、片方において現に赤字が累積しておる、その赤字をそのままにしておいて、そうして赤字対策に終始しなければならないというようなことでは、抜本対策というものが、まさにこれは二正面の工作をしなければならないということで、抜本対策が非常に困難になってくる。
 かような意味におきまして、一は、政管健保の財政の健全化をはかるということと、他方におきましては、抜本対策をやっていく前提の条件を確立するという意味におきまして、今度の特例法案というものは、どうしてもこれは御審議、御決定を願わなければならない。(拍手)かようなことでございますが、前国会におきましてこれが審議未了と相なりましたことは、まことに残念でございます。それで引き続きまして、これを御審議、御決定を願いたく今度の国会に提出いたしたような次第でございます。
 たとえば健康保険はどうしても体質の改善をはからなければならないときに、これが赤字でひょろひょろしておったのでは、根本的な改造がなかなかできませんから、そこでこれに対しまして体力の補強をやっていかなければならないというのが、今度の臨時緊急対策でございます。おそらく春日書記長におかれましても、この辺の事情については、御審議していただけば御納得をいただけることだと信じております。
 なお、抜本対策につきましては、この暫定対策が御審議、御決定を願えますれば、すみやかにこの抜本対策に取り組みまして、四十三年度をめどといたしまして、これの緒についてまいりたい、かように考えておる次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#12
○副議長(園田直君) 渡部一郎君。
  〔渡部一郎君登壇〕
#13
○渡部一郎君 私は、公明党を代表いたしまして、総理の所信表明に対し若干の質問をいたすものであります。
 まず最初に、外交問題について伺いたい。
 総理は、このたびの所信表明の中で、勇躍東南アジア諸国の歴訪を計画されておりますが、その目的については、実情の認識であるとか、友好親善であるとか、あるいは各国首脳と会うとか等をあげられておりますが、それは行動にすぎないのであって、どういうような内容を持って訪問されるかは、はなはだもって不明確であります。したがって、まずその意図をもう一回具体的に明らかにしていただきたい。
 特に、南ベトナムについては、従来わが国がベトナム戦争に不介入の方針を堅持してまいりましたが、今回の総理の訪問が持つ意味は、国際的にきわめて重大であり、大きな波紋を呼んでおります。さらに、医療援助、経済援助の増大を伴うとするならば、交戦国の一方を実質的に支援するものであり、きわめて不穏当ではないかと考えられるのであります。
 総理は、先日の本会議における答弁の中において、北ベトナムからも招待があるならば行くと言明されましたが、このことは実に日本外交の大転換であり、その意気たるやまことに壮とするものであります。しかし、一国の総理が未承認国を訪問するのは異例のことでありますがゆえに、北ベトナム政府を実質的に承認する方向へ向かうものと解してよろしいのでありましょうか、お伺いいたします。また、北ベトナムからの招待に応じるのであるならば、それと同様に、北朝鮮からも、中共からも招待があるならば、総理は訪問される決意でありましょうか。さらに、これら共産圏諸国との国交回復、承認へと進むという方針なのでありましょうか。もしもそうでないとするならば、さきの総理の言明は失言であったとみっともなくも取り消されるのでありましょうか。この点を明らかにしていただきたいのであります。
 総理は、さらに今秋米国を訪問される予定を明らかにせられました。そうして、アジアの平和と繁栄について率直な意見を伝えたいと申されておりますが、一体これはいかなる意見でありましょうか。率直な意見とは、ベトナム戦争の停止について、北爆の即時停止要求を意味するものでありましょうか。また、戦後二十二年にわたる国民的悲願の沖繩及び小笠原諸島の返還こそ最も重要な懸案であります。総理の言われる率直な意見とは、多年日米外交の障害になっていた沖繩、小笠原の返還を強く要求するという意味でありましょうか。沖繩住民の大多数が支持していないいわゆる核つき返還を要求するものでありましょうか。わが日本政府の積極的な返還要求への具体的努力は、寡聞にしていまだ耳にしていないのであります。
 米国内にも、ライシャワー前大使をはじめとして、沖繩を日本に返還しないことが、日米友好と連帯の重大障害になっていることを指摘する識者がだんだんとふえてまいりました。また、USニューズ誌の報道では、米国防省では、沖繩基地を移動して、中国ミサイルの射程外にあるマリアナ諸島に後退することが考えられているとのことでありますが、これについてはどう考えられますか。いまこそあなたは、アメリカに対し、き然として主張すべきものを主張し、もしもアメリカが友邦日本を失いたくないならば、この問題解決に全力を尽くすべきときが来たということを説得し、認識させるべきときではありませんか。総理の見解をあらためて伺いたいのであります。(拍手)
 また、沖繩返還の際、当然起こるべき経済問題、民生問題、教育問題、医療問題、裁判官問題等に関して、いまから十分な計画が必要であると思うのでありますが、これらに対してはどう対処されるかを伺いたいのであります。
 次に、対ソ外交についてでありますが、三木外相の訪ソの結果、コスイギン首相より、多年の懸案であった領土問題について中間的文書の作成が提案されたと報道されたことは、わが国民にとりまして非常に朗報として受け取られたのであります。また、三木外相は、新聞の報道によれば、これらの発言の一部を訂正され、否定された模様でありますが、新聞報道を冒涜するものであるだけでなく、かかる大事な問題について佐藤総理が報告を受けていないとは察しられないのであります。いかに二元外交の憂いがあるといっても、かかる重大な報道について佐藤総理は聞いていないわけはないし、これについて国民の前に正当な報告をなすべきであると私は信ずるのであります。(拍手)
 しかし、今日までの政府・自民党の対ソ外交を振り返ってみますと、対米外交と同じく弱腰外交、無定見外交ではなかったでありましょうか。数度にわたる漁業交渉は常に日本の譲歩によって妥結してまいりました。領土問題についても、わが国固有の領土の占拠を何と十数年にわたって漫然と認めてまいりました。このことは政府の無責任、無定見を示す以外の何ものでもないのであります。
 しかも近来に至っては、シベリア開発における日本の工業力は、ソ連にとって垂挺おくあたわざるものになった例にも見るごとく、世界情勢の変化とともに日本はソ連にとって重大な意味を持つに至りました。ASPACにおける三木発言に至っては、たとえ表面上のことにもせよ、ソ連に対するきわめて友好的な発言ではなかったか。さりとすれば、わが国の対ソ外交はもっと言うべきことを言い、日本の国益を優先するものであってもよいのではありませんか。この点総理の見解を伺いたい。
 政府は、特にこの際懸案となっている歯舞、色丹、国後、択捉、北千島、樺太のいずれまでをわが国固有の領土と見ておるのでありますか。また、そのいずれまでを返還せしめるよう努力するつもりかを明示していただきたい。
 日ソ共同宣言において、ソ連側の話によれば、領土問題は自由党とすでに解決済みであると言明されているようでありますが、いかなる協定を結ばれたのか、もう一回明らかにしていただきたい。
 また、歯舞、色丹、千島等の諸島からゆえなく追放されている日本の二万の同胞について、特別の補償をするつもりであるかどうかを伺いたい。そして少なくとも自民党政府は、この際本腰を入れて対ソ外交に取り組むべきであると信ずるのでありますが、総理の確たる決意を披瀝していただきたいと存ずるのであります。(拍手)
 次にお尋ねしたいことは、政治資金規正法についてであります。
 総理は、所信表明において、政治資金規正法の改正案を近い国会に再び提案して、その成立をはかる決意であると述べられ、さらに健保については本国会に再びこれを提出し、御審議を願うと言っておられるのであります。
 そこで、総理にお伺いしたい。この二つの法案は、いずれも前特別国会において審議未了、廃案となったものであります。政治資金規正については、国民的要請を背景に、総理の重なる公約においても、絶対に緊急を要すると説明されており、答申の精神もまたそこにあったのであります。しかるに国民の多数が反対する健保は再び提案し、国民の最も切望する政治資金規正法改正案を本国会に提出しようとしない理由の説明が何らなされていないのであります。なぜ政治資金を取り上げず、健保のみに限られたのか、納得のいく説明をお願いしたいのであります。(拍手)
 昨年来、政界にどす黒い一連の腐敗事件が相次ぎ、国民の指弾を浴びた際、積年の病弊を根絶し、政界刷新に取り組むことが自分の責任であり、義務であると大みえを切ったのは、総理、あなたではなかったでしょうか。ところが、答申はむざんにも骨抜きにされ、さらに廃案になってしまったのであります。骨を抜いたのも与党の自民党、廃案にしたのも自民党、あなたは総理として、また総裁として、国民に明々白々にその間の実情についてつぶさに説明すべき義務があると信ずるのであります。(拍手)
 総理は、次のことばに御記憶がございますか。政治資金規正法については、「小骨一本抜かない」「国民の至上命令である」「勇断をもって成立をはかる」「党内の異論を担えて成立を期する」、これらの数多くの名文句をよもやお忘れではございますまい。あれほど公約されたにもかかわらず、一たび党内に反対論が起こり、ただならぬ空気が発生すると、あなたは総理、総裁としての勇断を何らお見せにならなかった。さらに、当該委員会より出席要求があったにもかかわらず、総理は、その委員会にただの一度も出席することなく、同法案の成立をはかろうとなさらなかった。
 さらに総理は、近い国会に再び提案すると言っておられるが、なぜ本国会に提案なさらないのか。会期が短いことを理由とされているようでありますが、たとえ十五日の短い会期でも、われわれはその通過成立に全面的に協力する姿勢を持っております。前国会においても、公明党は、不十分な政府案に対してさえ、あえて国民の至上命令にこたえてその成立をはかったのであります。(拍手)したがって、会期が短いなどということは、いたずらな逃げ口上にすぎないのであり、政府・自民党に本法案成立の意思全くなしと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
 さらに総理は、その所信において、「政治の基盤である選挙制度の合理的な改善をはかり、公党の倫理性を高めることこそ、議会民主政治に対する国民各位の信頼にこたえるものであると信じます。」と言っておられます。まさに開き直った言い方であります。せめて選挙制度の合理的な改善は今後の課題としましても、さしあたり緊急に要望されている政治資金規正法の成立により公党の倫理性を高める云々というのであるならば筋が通っております。公党の倫理性を高めることは、すみやかに本法案を成立させる以外にないのであります。
 さらに総理は、「審議未了となったことはまことに遺憾であります。」と言われました。新聞の中にも批評が出ておりますが、遺憾に思っているのはむしろ国民でございましょう。審議会の総会において、あなたは、平あやまりにあやまられたそうでありますが、それは当然のことでございましょう。しかし、総理がほんとうにあやまらなければならなかったのは、総理が任命された審議会の委員よりも、むしろ主権者である国民に対してであります。
 あらためて伺いたい。総理は、今国会において政治資金規正法改正案を提出する意思は全くないのか。もしないとするならば、一体いつの議会に提案されるのか、明確にされたいのであります。また、新たに提出される改正案は、先日提出されたものよりも、よもや後退したものとはなり得ないであろうと確信するのでありますが、どのような程度のものを提出されるのか、総理のお考えを伺いたい。さらに、小選挙区制とあわせて提出しようとの両輪論のごとき卑劣なる策略を総理はおとりにならぬと確信いたしますが、その点のお考えもあわせて伺いたい。
 最後に、健康保険特例法案について、総理にその真意を伺いたいのであります。
 本法案は、前特別国会に提出される以前から、被保険者はもちろん、事業主、医療担当者まで、あらゆる方面から、健康保険の改悪法案であると強い反対を受けていたものであります。したがって、この世論のおもむくところ、前特別国会に与野党一致で審議未了、廃案という当然の帰結に終わったのであります。それにもかかわらず、再びこの臨時国会に原案そのままを提案してくるとは、全く無定見、厚顔無恥といわざるを得ないのであります。この点いかなる考えに基づいて再提出せられたものか、明確に御説明を願いたいと思うのであります。
 また、ただいまの前議員に対する答弁の際、坊厚生大臣は、審議してもらえばわかるというふうな御説明をされたようでありますが、自民党の幹事長は、健保は二、三日中に強行突破すると言明したそうであります。審議を尽くす前にかかる決意を公言するとは一体何事でありましょうか。民主政治に対する破壊ではありませんか。自民党の総裁でもある総理は、十分の審議を行なう決意があるかどうかを、この場でしかと御答弁を賜わりたいのであります。(拍手)
 今日の健保財政の赤字問題は、政府の放漫、かつ責任回避の医療行政によって、この最悪事態を招いたのであります。しかも政府は、みずからの無為無策には一片の反省もなく、その責任を一方的に低所得にあえぐ国民に押しつけ、生命と健康管理を無視して、単に赤字解消の名のもとに被保険者の負担において処理しようとすることは、まさに本末転倒といわざるを得ません。そこで、この赤字問題について、政府は責任をどのように感じているかを伺いたいのであります。
 実に医療問題は混乱の極にあり、抜本対策以外に道はなく、すなわち制度の基本的問題、診療報酬体系の適正化、医業実態の把握、薬価基準の改定等、根本的に検討を加えるべきであります。ところが政府は、審議会の警告にもかかわらず、有効な手段、方策を講ずることなく、六年間の歳月を漫然と費やして今日に至っているのであります。いまこそ政府は、具体的に抜本対策の方向と決断を示してしかるべきときであります。これまで政府は、抜本対策を明示せよとの国民の強い要望に対し、まず赤字を解消してから抜本対策を講ずるのが順序だと強弁しておりますが、なぜ抜本対策の樹立を先にしてはいけないのか、この点について総理の明快なる答弁を伺いたいのであります。(拍手)
 かねてから総理は、人間生命の尊重と福祉国家の樹立を強調してはばからないのであります。実に社会保障の充実こそが福祉国家社会の基本であります。しかるに、今年度の予算編成を見ても、もっぱら大企業優先の施策であり、また、社会保障費関係予算の一般会計総額に占める割合を見ても、常々総理の言われていることと矛盾していることを明らかに立証しているのであります。すなわち、中小企業対策費に総予算の一%に満たない、社会保障費は一四・五%にすぎない。先進諸国の二五%と比較していただきたい。これでは福祉国家への道はほど遠い現状であります。
 さらに産業の二重構造による中小企業従事者の労働過重と所得格差は種々の問題を惹起しており、これら小零細企業従事者の生活は、皆さま方の予想とは異なって大いに逼迫しているのであります。総理は、あらためてこの事態を再認識し、いやしくも福祉国家を旗じるしとする以上、この恵まれない人々に対し、いま一段のあたたかい手を差し伸べるべく施策を講ずる決意が必要であります。
 そもそも政管健保の赤字の原因の一つは、その構成員たる被用者の特異性によるものであります。生活環境も著しく悪く、老齢者も多く、したがって罹病率も高いのであります。この特異性を補うためにも、政管健保は社会保障の見地に立って対処すべきであります。総理は所信表明の中で、みずから、社会保障政策の一環としてということばをもって、これを裏づけられたではございませんか。私は、この際、総理は勇断をもって本法案を成立させると先ほど述べられましたけれども、かかる不十分な法案の成立を期すことは、勇断ではなくて横暴の二字に尽きるものであります。この際、謙虚に法案を撤回し、万人の納得のいく、大衆福祉を根幹とした施策を講ずるべきであると考えるのでありますが、しかと御見解を承りたいと存ずるのでございます。
 以上をもって質問といたします。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#14
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 私の東南アジア諸国訪問についてのお尋ねでございますが、特に重点を置かれておるのは南ベトナム訪問のことだと、かように考えますので、南ベトナムに出かけるその気持ちを率直にお話をしてみたいと思います。
 私は、申し上げるまでもなく、先ほど来たびたび説明したのでございますが、ただいま戦禍に苦しんでおるのはベトナムでございます。そうしてこのベトナムのうち、いわゆる南ベトナムを私どもは承認し、これと交渉を持っておることは御承知のとおりでございます。この戦争の行なわれておるベトナム、これがいわゆる分裂国家の一つの様相でございます。そういう国柄に対して、どういうことを一体われわれは望むか。私はたびたび申し上げますとおり、一日も早く和平が招来されることを念願しておるのであります。そういう意味におきまして、私は、まず停戦、しかる後に話し合い、そのことを提案しております。しかし、先ほどもお話し申し上げましたように、この停戦ということについては、無条件で北爆停止だということを一方的に主張する北ベトナムもあるのでありまして、この話はなかなか実を結んでおりません。先ほど来申したとおりのいきさつでございます。
 そこで、私が今回南ベトナムに出かけますと、これは結局、南ベトナム政府を激励するのではないか、こういうお話でございます。私は別に出かけたからといって、その政権を激励するという筋のものではないように思っております。日本が独自の立場でこの戦争と取り組んでおるその態度、これはすでにもう各国とも了承しておることでございますので、別に誤解はございません。いわゆる激励云々のような誤解は全然ございません。また、国民から見ましても、私がいまさら南ベトナムに参ったからといって、いわゆる軍事的な協力をする、派兵あるいは弾薬等を送るというようなことは考えていないと思います。これは憲法から申しましても、自衛隊法から申しましても、かかる軍事的協力は禁止されております。したがいまして、絶対に心配のない事柄であります。ただ問題は、現実にただいま戦争が行なわれておりますから、それが早く平静に帰するように、その道を選ぶ、その道をさがすのが私の今回の訪問でございます。
 そこでお尋ねがありましたが、私は北ベトナムへ出かけることもやぶさかでないということを申しました。しかし、これは私が申し上げるまでもなく、平和のため積極的に役立つならということを申したのでございます。真に和平に役立つという、そういう立場においては、私はどこにでも出かけるということを実は申したのであります。しかし、現状におきましては、私が北に出かけると申しましても、これが真に和平への道であるとは、ただいまの状況では考えられません。したがいまして、具体的にはそういう問題はなかなか実現性がないものだと御了承いただきたいと思います。
 また、北ベトナム、北鮮、あるいは中共に対しても、呼ばれたら行くかということでございますが、ただいまの状況ではさような実現性はない、かように私は考えますので、お答えはいたしません。
 次は、私が今秋アメリカに参りますから、アメリカに参りましたら、国際問題についてはもちろんでございますが、日米両国の間の重要問題につきまして、それぞれその立場において十分意見を開陳し、理解を深めていくということをいたしたいと思っております。その具体的な構想をこの際に申し上げることは、私は、それは適当でない、かように考えますから、それは預らしていただきます。
 次に、三木君のソ連訪問につきましては、先ほどもちょっと触れたのでございますが、大体弱腰ではなかったかという御批判でございますが、弱腰でも強腰でもない、いわゆる正常な状況において交渉しておるわけであります。これらの点は、この交渉の結果をよくごらんになればよくわかるのでございまして、強いばかりが能でもございませんし、弱腰自身ということも、これは適当でないように私は思います。
 歯舞、色丹は、先ほども申しましたように北海道の一部であり、国後、択捉はわが国固有の領土でございます。いままでサンフランシスコ条約の際にも放棄したようなことはございません。これらの国後、択捉、固有の領土、これは当然私どもはこれを確保すべく主張いたします。また、おそらく各党の方も同じような気持ちでこの政府の態度を支持なさると私は確信しております。
 この国後、択捉の住民に対する補償の措置はどうかということでございますが、これは御承知のように、先般の引揚者等に対する特別交付金の支給に関する法律並びに三十六年の北方地域旧漁業権者等に対する特別措置に関する法律等で十分めんどうを見ておりますが、なお不足の分につきましては、実情に応じましてさらにさらに万全を期したい、かように考えております。
 先ほどの、三木外務大臣からの報告はもちろんございます。外務大臣が私のところへ報告をしないことはございません。ただいまの、いわゆるコスイギン発言というもの、中間的なものを考えてはどうかという、この発言の内容、これはまだ明確でないというのでございますから、この点では誤解のないように願っておきます。
 政治資金の問題につきましては、先ほど来たびたび私の所信を申し上げましたので、それらの点については重ねて申し上げません。私はたいへん遺憾に思っており、まことに残念に思っております。次の機会におきましては、この法律案を再び提案いたしまして、成立をはかる考えでございます。その際は、審議会の答申を尊重することはもちろんでございます。ことにこの審議会では政治資金規正、これを緊急の必要ありとして特に答申をされたのでございますので、その他の事案についての答申がいかようにありましょうとも、これらとの関連はございますけれども、もちろん密接な関連においてこれを処理しようというのではなくて、答申のとおり、緊急に措置すべきものとしてのその趣旨を尊重していくつもりでございます。
 以上、お答えいたします。(拍手)(「健保はどうした」と呼び、その他発言する者あり)
 健保の問題について落としまして、まことに申しわけございません。これは御承知のように、廃案、審議未了になりましたものを重ねてこの国会にも出しました。これは緊急やむを得ない処置だとして政府は決意をいたしたのでございますから、どうか御審議のほどをお願いをいたします。そうして、この法案について、あるいは強行突破その他の発言が与党にあるといっておしかりを受けておりますが、また、野党側からも、これは絶対廃案だ、かようなことばが出ておりますので、それらの点は、どうか国会ではなるべくそういうことばは使わないようにして、お互いに円満な審議をはかっていくように御協力のほどをお願いをいたします。(拍手)
 なお、この抜本的対策をなぜとらないかということでございますが、社会保障制度審議会の答申の趣旨を見ましても、四十三年度実施を示唆しておるように私ども考えておりますので、今回は緊急処置として特例法を出しまして、そしてまずその成立を期し、あわせて、並行していわゆる抜本的な、基本的対策を立てていくという考え方でございます。
 次に、低所得者層にしわ寄せすることのないようにという御注意でございます。もちろん、今回の改正によりましては被保険者の負担増を招く、そういう点もございますが、これはやむを得ない処置でございまして、私は国庫負担の措置もあわせて考えておりますので、できるだけ低所得層に対してのしわ寄せを押える、こういうことをいたすつもりでございます。さような意味でこの特例法案を再提出いたしたのでございまして、せっかくの本提案を撤回しろという御注意がございましたが、これは撤回はいたしません。御了承いただきたいと思います。(拍手)
#15
○副議長(園田直君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
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#16
○副議長(園田直君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後三時四十七分散会
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 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        法 務 大 臣 田中伊三次君
        大 蔵 大 臣 水田三喜男君
        文 部 大 臣 剱木 亨弘君
        厚 生 大 臣 坊  秀男君
        農 林 大 臣 倉石 忠雄君
        通商産業大 臣 菅野和太郎君
        運 輸 大 臣 大橋 武夫君
        郵 政 大 臣 小林 武治君
        労 働 大 臣 早川  崇君
        建 設 大 臣 西村 英一君
        自 治 大 臣 藤枝 泉介君
        国 務 大 臣 木村 俊夫君
        国 務 大 臣 塚原 俊郎君
        国 務 大 臣 二階堂 進君
        国 務 大 臣 増田甲子七君
        国 務 大 臣 松平 勇雄君
        国 務 大 臣 宮澤 喜一君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 高辻 正巳君
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ソース: 国立国会図書館
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