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1967/09/08 第56回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第056回国会 社会労働委員会 第4号
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1967/09/08 第56回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第056回国会 社会労働委員会 第4号

#1
第056回国会 社会労働委員会 第4号
昭和四十二年九月八日(金曜日)
   午前十一時九分開議
 出席委員
   委員長 川野 芳滿君
   理事 佐々木義武君 理事 橋本龍太郎君
   理事 河野  正君 理事 田邊  誠君
      天野 光晴君    菅波  茂君
      世耕 政隆君    中野 四郎君
      中山 マサ君    藤本 孝雄君
     三ツ林弥太郎君    箕輪  登君
      渡辺  肇君    加藤 万吉君
      後藤 俊男君    佐藤觀次郎君
      西風  勲君    山本 政弘君
      本島百合子君    田中 昭二君
 出席国務大臣
        厚 生 大 臣 坊  秀男君
        労 働 大 臣 早川  崇君
 委員外の出席者
        人事院総裁   佐藤 達夫君
        人事院事務総局
        給与局長    尾崎 朝夷君
        総理府人事局長 増子 正宏君
        法務省入国管理
        局長      中川  進君
        外務省アジア局
        外務参事官   吉良 秀通君
        厚生政務次官  田川 誠一君
        厚生大臣官房長 梅本 純正君
        厚生省環境衛生
        局長      舘林 宣夫君
        厚生省援護局長 実本 博次君
        労働政務次官  海部 俊樹君
        労働大臣官房長 石黒 拓爾君
        労働省労政局長 松永 正男君
        専  門  員 安中 忠雄君
    ―――――――――――――
九月八日
 委員大橋敏雄君辞任につき、その補欠として田
 中昭二君が議長の指名で委員に選任された。
同日
 委員田中昭二君辞任につき、その補欠として大
 橋敏雄君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
八月十八日
 一、厚生関係及び労働関係の基本施策に関する
  件
 二、社会保障制度、医療、公衆衛生、社会福祉
  及び人口問題に関する件
 三、労使関係、労働基準及び雇用・失業対策に
  関する件
の閉会中審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 厚生関係及び労働関係の基本施策に関する件
     ――――◇―――――
#2
○川野委員長 これより会議を開きます。
 この際、一言申し上げます。会期中の委員会の運営につきましては、委員長ふなれのため委員各位に御迷惑をかけましたことは、まことに遺憾に存じます。今後は円満なる委員会運営に努力いたす所存でございますので、何とぞよろしくお願いいたします。
 厚生関係及び労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。河野正君。
#3
○河野(正)委員 きょうは、国民の健康と直接密接な関係を持っておりますところの食品衛生の問題について若干質疑を展開いたしたい、かように考えます。特に最近新しいところでは、あわのおもちゃとして売り出されておりまするクレージーフォーム、これを顔へ塗りました子供がたちまちまゆ毛が抜けてしまったというようなショッキングな記事があります。あるいは今日公取が取り上げておりますポッカレモンの問題だとか、あるいはコーヒー牛乳、フルーツ牛乳というふうな問題が、国民の非常に大きな関心を呼びつつあるというのが今日の現状であります。しかし、きょう私は特に話題をしぼって、そして先ほど申し上げました有害食品、特に健康を阻害するような有害食品の問題についてひとつ質問を行なってまいりたい、かように考えます。
 そこで、今日、日常茶飯事のようにこういうふうな新聞記事がたくさん出てまいりまして、そして国民も非常に大きな関心を持っておるわけですから、したがって大臣といえども、やはり関心のらち外におられるというわけにはまいらぬだろうと思います。そういう意味で、今日このようにはんらんをいたしておりまする有害食品の問題を、厚生大臣として食品衛生の立場からどういうふうにお考えになっておるか、まずそういう総括的な御意見を伺っておきたい、かように思います。
#4
○坊国務大臣 厚生省といたしましては、何にいたしましても国民の健康というものを何よりも重大視していくのが厚生行政であります。いやしくも食品の中に、有害だとか、さらに有毒だとかいったようなものが添加物として取り入れられておるということは、これはもう常に警戒を要することでございまして、さようなものが添加されておるということは、絶えず目をみはって、そしてこれを排除していかなければならない、かような考え方に立ちまして、近年さらにそういったような監視、取り締まり、指導というものを強化してまいっておる次第でございます。
#5
○河野(正)委員 そこで私は、一、二の例を取り上げながら、今日の厚生行政のあり方についての批判をひとつ加えてまいりたい、こういうふうに考えます。
 これは東京の話でございますが、飲み込んでもだいじょうぶといって宣伝された花はじきから、人体に非常に危険な着色料というものが発見をされた。あるいはまた、カレーパンに防腐剤として使用禁止をされておりまする添加物というものが混入されておる、こういう事例が具体的な例として最近新聞記事で報道されております。それからまた一方、デパートや食料品店に参りましても、その店頭では、着色料で染められたまっかなタラコあるいはウインナソーセージ、黄色いたくあん、それからジュース、そういった色彩のあざやかな、しかも怪しげな食品が、どこの陳列だなを見てまいりましても一ぱいであるというのが今日の現況であります。ところがこの食品添加物は、タラコやウインナソーセージのように一目でわかるというのは、これは着色料だけの問題であって、その他、国民が、消費者のほうがなかなか気づかぬという食品というものが非常に多い。たとえばカビ、腐敗を防ぐための防腐剤を入れた場合、これは目に見えませんから。それから色を白くするための漂白剤、これを使った場合にも目に見えない。それからもう一つは甘さを増す甘味料。これはズルチン等は最近は規制されておりますけれども、そういうような甘さを増すための甘味料、それから次には張りを持たせる膨張剤、結着剤、こういったいろいろなものが添加剤として使用されておる。消費者が見てわかるのは着色料だけでございますから、大部分のものは消費者の目から見てなかなかわからぬ。そこで、健康に重大な関係を持っておるけれども、国民の側からはなかなかその添加物に対する認識というものができない。それだけにこの問題というものは非常にやっかいな問題だと思うのです。しかも今日、私ども日常食生活をやっていくわけですが、その中で添加物が使われてない食品はほとんど皆無だというくらいまでいわれておるわけでございます。ある学者の言によりますと、一日に三度の食事をいたしますると八十種類くらいの添加物が体内に入ってくる、こういうことがいわれておるわけです。そこで私の友人のごときは、いまの有害食品の問題については、胃袋の公害だ、こういう名言を使ってこの問題を重要視いたしておるわけであります。
 こういうように、私どもが今日日常生活をする、日常生活には食生活というものは切っても切り離すことはできない。しかもその食生活の中で、いま申し上げまするように、一日三度の食事の中で八十種類もの添加物の入った食品をとらなければならぬ。これほどこの食品添加物というものは私どもの人体、健康とは重大な関係を持っておるわけですけれども、特にいま申し上げますように、その添加物というものは、最近ではやや厚生省は慎重な態度で許可されておるようですけれども、決してどんどん規制されるという方向ではないというのが現状でございます。いま大臣は、国民の健康は非常に重大である、それから有害、有毒の添加物が入ってくることについては厳重に監視をしておるとおっしゃっておるけれども、いま申し上げまするように、むしろ逆行しつつあるというのが今日の現状だと思うのです。それは国民は知らぬからいいんです。着色料だけしかわからぬ、色のついたやつだけしかわからぬから、国民はややこの問題について軽視しておるかもしれぬけれども、実態としては、いま申し上げまするように、非常に重大な影響を健康と人体に及ぼしつつあるということだと思うのです。そういう意味で私は、いま申し上げましたような現況の上に立って、もう少し突っ込んで大臣の御見解を承っておきたいと思うのです。
#6
○坊国務大臣 河野委員御指摘のとおり、私どもも非常にきわ立った色彩を持った添加物として色素が使われた食品をしばしば見受けるわけでございます。さらにまた御指摘のように、そういったわれわれの目につかないような添加物が添加されておるところの食品も少なからずあろうと思います。厚生省といたしましては、そういったような色素をはじめいろいろの添加物につきましては、十分その安全性が確かめられたといったようなものについて、最小限度にこれを認許可をしておるというような次第でございますけれども、なおそういったような中には、しさいにこれを点検いたしまするならば、人間の健康に対してあるいは有害なものがあるかもしれない。そういったようなものにつきましては、これは従来から取り締まりを厳にしてまいってきておりますが、その取り締まり過程においてそういったようなものが発見されるならば、すでに認可、許可されておるようなものも断然これは取り消してまいる、こういう方針できびしくこの取り締まりをやってまいっておりますが、なお私は、いまとにかく食品などというものは、非常にバラエティが毎日毎日ふえてくる。複雑多岐なる食品が出てまいっておる。したがってこの添加物も非常に多種多様になっておるであろうと思います。そういったような事態に処しまして、厚生省といたしましては、さらにこの取り締まりを厳にいたしまして、こういう添加物から国民の健康に害を及ぼすというようなことが万なきよう、これは十分注意をし、きびしくしてまいりたい、かように考えております。
#7
○河野(正)委員 その添加物の害というものは非常に大きな影響を持っておる、そこでこの認可等については厳重に処したいというような御答弁がございましたから、私はあえてお尋ねをしておきたいと思うわけですが、それは、たとえば細菌性の中毒のようなものでございますると、直ちに下痢をするとか嘔吐をするとかいうようなことで、すぐわかるわけです。ところが添加物の場合は、急性症状が出ないというのが大体たてまえなんです。そこで、いま食べたからといってすぐ下痢をしたりあるいは嘔吐したりというようなことにならぬ場合が非常に多いので、消費者、国民は健康に害があるということを十分承知しないまま長い間食べさせられる、こういう結果になってきておると思うのです。
 しかも、いろいろ添加物について不都合がある場合があるわけですけれども、その一つは、その使用を全面的に禁止されておるのに使う場合が一つの問題点だと思う。全然使ってはならぬものを使っておる。それから第二には、ある添加物を使用してはいけない食品に使う場合がもう一つある。それからもう一つは、一定の制限量をこえて使う場合。これはあと私が取り上げる問題と関連があるわけですけれども、そういう三つの場合がある。違反事項といっても、いまのような三つの場合があるわけですけれども、厚生大臣からいま、安全性を確かめる、そして徹底的に取り締まるというふうなお話があったわけですが、一体昨年一年間に、いま申し上げたような違反事項というものがどれくらい摘発されておるのか、この実態をひとつ御報告願いたいと思うのです。
#8
○舘林説明員 不良食品の一斉取り締まり結果によりますと、お尋ねは昭和四十一年の点でございますが、昭和三十九年以来の点について申し上げますと、三十九年には三百二十五件、調査品目の二・三%、昭和四十年には四百九十四件、二・六%、昭和四十一年には三百九十件、一・七%の使用基準違反が発見されております。この違反のおもなものは、デヒドロ酢酸、ソルビン酸、安息香酸などの使用量の超過及び使用が認められていない食品への使用でございます。
#9
○河野(正)委員 私が承知しておる数字と若干違うわけでございますが、いずれにしても、私が知っておる数字よりもいまのあなたのほうが少ないわけです。ですからもっと悪い結果になっておると思うのです。
 いま、調査をされて、そして違反事項が少なくとも二・三%あるいは二・四%。四十一年は若干減っておるようですけれども、そういうような違反事項というものが摘発されておる。ところが、この違反事項が摘発されたときは、国民はもう食べているわけですね。消費者の体内に入っているわけですから、その違反食品のために国民の健康というものはすでにおかされておるわけです。そこにこの問題の重要性があると思います。摘発するまでに被害がなければいいですけれどもね。私はこの添加物を私どもが特に重要視しなければならぬ問題点というのはそこにあると思う。
 そこで、この不良食品の処置について、厚生省の処置というものが敏速果敢に適切に行なわれぬ限りは、もうその摘発されたときには、国民の健康というものはかなり脅かされておる、おかされておる、こういう結果になるわけですから、私どもは、いまお示しになった数字が少ないということがいいか悪いかは別として、それだけのパーセンテージは少なくとも国民の健康をおかしたということですから、こういう意味で私どもはこの問題を重要視しなければならぬ。
 そこで、なるほど厚生大臣がおっしゃっておるように、徹底的に調査をして摘発するというお話でございましたけれども、どうもいまの厚生省の処置というものにはいろいろな疑問が生ずるというふうに私どもは感ずるわけです。というのはどういうことかと申しますと、たとえば甘味料でございますズルチン、これは人体に有害であることが学界でもそれぞれ証明をされて、米国では十数年前からこのズルチンの使用に対して規制を加えている。ところが、ズルチンが人体の肝臓とかじん臓等に有害であるということがわかっておりながら、日本の規制はこの数年前というふうに、非常におくれておる。あるいはまた、たくあんなんかを染めますタール系色素、これも最近、安いジュースをオレンジ色に染める、あるいはお菓子、そういうものに使っております。しかもこのタール系色素は、これをネズミなんかに使うとガンが発生するというような学者の発表もあるところでございますが、これにいたしましても、非常に規制がおくれておるわけです。
 そこで、有毒食品である場合には直ちに処置するという大臣のお話でございましたけれども、いま私は一、二の例をあげましたが、こういう例を見ても、日本の厚生省の処置というものは、業者に気がねしておるかどうかわからぬけれども、どうも処置というものが迅速じゃない。いま私はアメリカと比べたけれども、アメリカと比べてもわかるように、非常に時間的におくれておるわけですね。そういうことが悪いということがもう発表されて、アメリカが規制をする、それから数年もおくれなければ日本では規制しないということでは、私は日本の厚生省の行政措置というものが適切だったというふうには言いがたいと思うのです。それが業者に対する気がねだということならば、これはまたたいへんなことであって、私は、そういうことではほんとうに国民の生命と健康を守る厚生行政ではないというふうに指摘をせざるを得ぬと思うのです。
 先ほど申し上げましたように、胃袋の公害だといわれるゆえんはここにあると私は思う。タール系色素あるいはズルチン等の例を示しましたが、こういうような例から見ても、どうも厚生省の手の打ち方は手ぬるいのじゃないかという疑問があることは事実なんです。もっと敏速果敢、適切に規制すべきものは規制すべきじゃないか。しかも、学界でわかっただけじゃなくて、アメリカあたりでもうやっているのだから、そういう点についてはやるべきではないか。これは一、二の例でありましたけれども、どうも日本の厚生省のやり方というのは手ぬるい。手ぬるいのはいいけれども、そのために国民は健康をおかされるわけですから、そういう意味で私は、どうもいまの厚生省の手の打ち方については納得がいかない。しいていえば、業者と何か裏でつながっておるから、業者に気がねをしておるのじゃなかろうかという疑問も出てくると私は思うのです。そういう意味で、今日の厚生省が不良食品あるいは添加物にとってこられた措置に対する国民の疑問に対して、大臣は率直にお答えを願いたい。そして国民が安心するような明快な答弁をいただきたい、かように思います。
#10
○坊国務大臣 使ってはならない添加物、あるいは一定の分量以上使ってはならない添加物、また添加物を使ってはならない食品といったようなものに不当なる添加物が使われ、すでに事故を起こしたときには、もうその事故に関する限りは取り返しのつかぬことになっておるのじゃないかということは、しごくごもっともなことでございます。それであるから、使わない前に予防的に厚生省としてはできるだけ敏速果敢にその対策をとるべきじゃないかという河野委員の御意見、私非常に尊重して――尊重よりそのとおりにやっていかなければならない問題だと考えております。ただしかし、そういった事故が起こったときにも、これを厳重に措置する、厳重に処分するということが、一つの社会に対する警世と申しますか、警告と申しますか、そういう一般的予防の役割りをいたす作用を持っておることは、河野委員御理解くださることだと思います。だからこれは、そういったような事態が起こったときに厳重に措置していくということと、それからもう一つは、そういう事故の起こらないときに、厚生省といたしましてはさようなことが起こらないようにこれを予防していく、そういう両面から指導、取り締まりをやっていかなければならないのがわれわれの仕事だと考えております。
 なお、具体的に御例示になりましたズルチンの問題でございますが、このズルチンにつきましては、従前からいろいろ日本の国における学説等もあったことは、専門家の河野委員十分御理解のあるところだと思いますが、アメリカ等より日本はこれを規制し禁止することがおくれておったわけでございますけれども、ことしになりまして、このズルチンも相当きびしい制限をしてまいったというようなことで、これについては、中小企業等に相当な影響もあるような話もありましたが、いかに中小企業に影響がありましても、私はやはり生命や健康にはかえがたいものだと考えまして、今日このズルチンに対する制限も加えたというような次第でございます。そこらのこまかいいきさつにつきましては、関係局長から御答弁をいたさせます。
#11
○河野(正)委員 いいです。そこで、いま規制の問題が出ましたから、もう少し具体的に論議してまいりたいと思うのです。
 具体的な数字で示しますと、厚生省が許可した添加物は、昭和三十二年当時におきましては百八十九品目であったのであります。ところが現在では、その倍に近い三百四十何品目だそうでございますが、約三百五十品目、十年間で倍に添加物がふえておる、こういう実情でございます。この添加物がふえることは、国民、消費者にとっては、いつ有毒添加物でおかされるかわからぬ、そういう被害を受ける機会が多くなったということに通ずると思うのです。それは私ども全然効力を認めぬわけではございません。色彩をされいにして食欲を増すとかいうようなこともあるかもしれませんけれども、しかし私に言わせますならば、添加物がふえるということは、国民の健康をおかす機会がふえるということにも通じていくと思うのです。そこで、そういう立場から添加物の許可については慎重を期していかなければならぬということは大臣も御承知のとおりです。と同時に、昭和三十二年から約十年間に添加物の認可というものが倍近くになっておるわけですから、むしろそういうことでなくて、添加物の種類を大幅に少なくするほうが国民の健康を守る意味においては意義があるのではなかろうか。要するに添加物を入れても別に栄養価には何にも関係がないわけですね。ただ、しいていえば色が美しいから食欲が増すというようなこともあるかもしれぬけれども、栄養価には何ら関係がないわけですからね。本来からいえば、添加物というのは国民の健康には全然無関係なんです。そういうわけですから、添加物の種類というものは少ないほうがよろしい。そのためにはむしろ行政措置として、一挙にというわけにはいかぬでしょうから、これはだんだん減らしていくという方向をとるべきではなかろうか、こういうふうに考えるのですが、その点いかがですか。
#12
○坊国務大臣 御意見でございますが、私も個人といたしましては全く同感でございます。ただ、この問題について厚生省において検討する――あるいは事務当局においてやっておるのかもしれませんが、私はまだ直接事務当局と話し合いをした。ことはございませんけれども、おっしゃるとおり、たとえば色素等の添加物を加えることによりまして若干食欲をそそるというプラスの面があろうと思います。しかしながら、その添加物を許可することによって、河野委員御指摘のように、不当に添加物が使われるといったようなケースを考えますと、若干のプラスに対しまして、すべての場合にマイナスの面があらわれるとは私は考えませんけれども、ある場合にあらわれたマイナスというものは、非常に大きなマイナスになるおそれがある。さようなことから考えてみますならば、色素をはじめ、その他の栄養に何らの関係のない、ただ見かけと申しますか、そういったものだけがプラスになるというような作用をなす添加物のごときものは、でき得る限り使う種類、分量等を制限していくべきであって、今日、非常に多過ぎるとか、あるいは使ってマイナスになるおそれのあるものを使っておるかという具体的、実際的な検討はいたしておりませんが、一般的な考え方といたしましては、まさに河野委員おっしゃるとおりの御意見に私個人といたしましては同感でございます。
#13
○河野(正)委員 ひとつ、同感ということと同時に、ぜひそういう考え方で今後の行政の運用をはかってもらいたいというふうにお願いをしておきます。
 それからいま一つ、私ども国民の立場から疑問のございますのは、先ほどズルチンとかタール系色素の問題を取り上げて申し上げましたが、そういう規制というものが外国と比べて非常におくれておる。そういう点から現在許可されておる添加物の中にも危険な毒性を持ったものがありはしないかという疑問が国民ないし消費者の中にあると私は思うのです。そこでWHOでは毒性評価の国際基準をつくっておるそうですか、厚生省もこの四十年七月から添加物の審査を強化して安全性が実証されるように努力されておるということは承っております。しかし、事人命に関する問題でございますから、慎重にさらに慎重を重ねなければならぬことは当然のことだと思う。
 そこで私は、ズルチン、タール系色素の問題を見ても感ずるわけですが、現在許可されておる中にも、あるいはだんだん学問が進歩してきますから、当初は人体にそう影響ないと思っていても、人体に影響があるということもあり得るし、それからいろいろな検査あるいは調査研究が進んできて、最初は許可したけれどもどうも適当ではないというような結果が出てくる場合も、私は学問的にあり得ると思うのです。ですから私は、やはりそういうことを考えてまいりますと、事人命に関する問題ですから、現在認可、許可されておるものもあらためて審査をしてみてはどうか。そして、もし当初は許可しておったけれどもあらためて審査をした結果疑わしい結果が出てきたならば、これまた一日も早く規制をする。こういうふうな処置というものがとらるべきであろう。私はこれは建設的に申し上げるわけですけれども、そういう感じを強く持つわけです。そういう意味で、WHOの国際基準もあることだしいたしますので、さらに一歩進めて、現在の認可されたものについてもひとつ再検討していく、そして国民の健康というものを守っていくという処置をとるべきじゃないかという私の考え方に対して、ひとつ率直に大臣の御見解を承りたい。
#14
○坊国務大臣 私も御意見のとおりです。科学技術が非常に進歩成長しておる。それと同時にいろんな食品もまたふえてきておる。新しいある食品に対してある添加物が加わったときにどういう作用をするか、そういうことも私は考えていかなければならぬ一つの問題点だと思います。昔から食い合わせなんということがある。こういうことも科学的にどういうことかということも考えなければならないといったときに際しまして、お説のとおり、一般的には現在すでに添加物として許認可しておるというものについても再検討するということも、これは大いに必要であろう、かように考えております。したがいまして、この点につきまして、こまかい具体的な検討については事務当局とよく相談して、できるだけそういうことによる被害のないように運んでまいりたい、かように考えます。
#15
○河野(正)委員 いま大臣が食い合わせの話をされたわけですけれども、そのとおりで、一つの添加物だけでは人体にそう悪影響はしないけれども、二種類あるいは数種類以上の添加物が合わされると、相乗作用によって人体に悪影響を及ぼすというような場合もあり得るわけです。それがいま大臣が言われた食い合わせの項に属すると思うのですけれども、それを少しく学者らしく言うと、いま言うようなことだと思うのです。
 そこで、二種類あるいは何種類かを食べると相乗作用で悪影響を及ぼす、あるいは短期間食べておってはどうにもならぬけれども、長期間引き続いて食べておると、だんだん蓄積をして人体に悪影響を及ぼしてくるというような場合等があると思います。ところが、私どもいろいろ学者の意見を聞いてまいりましても、そういう方面における研究というものはかなり不十分だというふうに私どもは承っております。それでそのために、研究が不十分でございますから、科学的に解明をされておらぬ。たとえば食べ合わせの場合どういう結果が出るとか、あるいは長い問続けた場合どういう結果が出るとか、そういう場合における研究が不十分なために、まだ解明されない分野というものがかなり多い。そこで、そういうふうな食品衛正に関する研究体制の整備を急ぐ必要があるというのが一つ。それからもう一つは、食生活というものは何も日本国民だけの問題ではないわけですから、どんどん外国から入ってくる場合がございます。日本から出ていく場合もありましょう。ですから国際的な共同研究を促進をする必要がある、こういう見解が当然出てくると思うのです。
 そこで、お尋ねをしたいと思いまする点は、研究が不十分なために非常に解明されない面が多いおけですから、そのための研究体制の整備、それから食生活というものは国際的な問題にも通じていくわけですから、そういう意味では国際的な共同研究を促進する必要がある、こういう二つの点についてぜひひとつ大臣の前向きのお答えをいただきたい、かように思います。
#16
○坊国務大臣 ただいま御質問になりました、国内的にひとつ体系と申しますか、機構と申しますか、そういったようなものをしっかりときめて、食品についての添加物、そういったようなものの研究をやれというお話でございますが、これは現に衛生試験所においてこれを研究いたしておりますが、さらにこの機構を強化していくことが、この際、先ほど来の御質問なり私がお答え申し上げました趣旨から申しまして、これを強化していくということが私は必要である、かように考えております。また、国際的にはWHOに日本も参加いたしまして、その中の特定のセクションにおきまして、これの国際的の研究ということにも日本が参加いたしておる、こういうことでございまして、この点も、だんだん食品の国際性といったようなことから考えてみましても大いに必要であろう、かように考える次第であります。こういう線に沿うて鋭意これの充実をはかってまいりたい、かように考えております。
#17
○河野(正)委員 添加物の問題は、事人命に関する問題ですし、それからまた人間の健康に関係する問題ですから、いま申し上げまするように、徹底的にその研究、究明を行ない、さらにまた、いやしくも行政上のあやまちのために、国民の健康をおかされたり、あるいはまた生命をおかされたりすることのないように、ひとつ十二分な配慮というものが行なわれなければならない、そういう意味でいろいろ何点かについて御見解を承ったのでございますが、さらに、それらの行政上の点について、私は具体的な例をあげてひとつ御見解を承ってまいりたい、こういうふうに思います。
 いま、ちょっと中山委員のほうから関連質問があるらしいですから、具体的に入る前にひとり……。
#18
○中山(マ)委員 いま添加物の問題が出たのでありますが、この夏の間に神戸市で、婦人会の人たちが相寄りまして――いま非常に売れ行きのいいところのインスタント食品で、ビニールの中に入れてあるものが非常に売り出されております。いろいろ働きに出る人なんか、私もときどきああいうものを買って利用しておる立場でございまするが、神戸におけるところのそういう食品をテストした婦人会がございまして、そうしてそれをあけてみたところが、添加物によるところの結果かどうか知りませんけれども、大腸菌がうじゃうじゃと入っておったということで、御婦人方が非常に驚かれて、もしビニールの中に入れてあるところの食品の中にこういうものが発生するようであれば、まるで添加物以上の悪質なものを食事に自分たちが利用しているということになるから、もう今後はこういうビニールに包まれた食品は買わないようにしようという決意までしたという話を私は聞かされました。このビニールの中に防腐剤が入っているのでございましょうけれども、その防腐剤がどういう期間中有効であるかというような点は、御指示になっておるのかどうか。そういうものを抜き取り検査でも厚生省のほうでなさったことがあるかどうか。これは実際この夏神戸市で行なわれたことを私は伝え聞いたのでございますが、私ももうおそろしくなりまして、そういうものは今後買うまいと思っている者の一人でございます。そういうことを知らない人たちが、大腸菌までお金を出しまして買わされるというような妙なことになるのじゃもってのほかでございますが、こういう点については、厚生省のほうのいわゆるお指図といいますか、こういうことはどうなっておりますのか。その点、こういう防腐剤を使ったらこの期間中はだいじょうぶだというような御了解のもとにこういうものが製造されておるのかどうかということを承っておきたいと思います。
#19
○舘林説明員 最近お尋ねのようにビニール包装の食品が出ております。このビニールで包装するということは、処理、運搬等に便利であるということのほかに、外部からの汚染を防ぐという意味合いがあるわけでございます。すでにビニールの袋に入れる段階において汚染した食品でございますと、ビニールの中に入れることがむしろ腐敗菌の増殖を助けるいうようなことになるわけであります。お尋ねのように、しばしば添加物が加えられまして、食品にカビがはえるとかあるいは変質、腐敗を避ける措置がとられておると思いますが、これらの防腐剤は、必ずしも大腸菌のようなものを殺すとは限らないわけでございまして、腐敗をさせない、腐敗菌の繁殖を防ぐとか腐敗菌を殺すとかいう作用がございまして、必ずしもそれが大腸菌に働くというわけではないというような防腐剤が相当ございますので、お尋ねのように、たとえ添加物が入っておりましても、大腸菌が生き延びておるというようなことになるわけでございます。食品の不衛生のものを取り締まるために、収去いたしまして検査をいたしておるわけでございまして、したがいまして、お尋ねのような、大腸菌のような非常に汚染を推定できるような――直ちに大腸菌が有害というわけではありませんけれども、それはひいては食品の取り扱いが非常に不潔であるということを意味するようなことの指標として大腸菌の検査等もいたしておるわけでございます。そのような場合には、大腸菌にあわせていわゆる腸内伝染病のばい菌も入ってくるおそれがありますので、取り締まり等をいたしておるのでございます。私どもといたしましても、そのような食品衛生監視を通じて食品衛生の向上をはかっておるわけでございますが、お尋ねのように、市販にはなおそのようなものが出回っておるという事実がございまして、今後とも努力してまいる必要がある、かように思っております。
#20
○河野(正)委員 具体的な事例についてだんだん論議を発展さしてまいりたいと思うわけですが、最近保健飲料と称する飲みものが非常にはんらんをしてまいりましたことは御承知のとおりでございます。この保健飲料の中にいろいろな種類があるわけですけれども、特に今日乳酸飲料の消費というものが非常に伸びてまいっておることは、これはもう自他ともに許すところでございます。そこで私は、これらの乳酸飲料と、それから添加物に対します行政上の処置との関連について若干お尋ねをしてまいりたいわけです。
 乳酸飲料の消費というものが非常に伸びてきた、また最近、発酵乳業界の一つのホープとして伸びてきた、こういうことになりますと、このことと国民の健康というものには非常に重大な関係を持ってまいるわけですが、そこでまずお尋ねをしておきたいと思います点は、現在乳酸飲料の愛飲者と申しますか、消費者と申しますか、それはどの程度の数字であるのか、その点についてひとつお答えをいただきたい。
#21
○舘林説明員 毎日配達されます乳酸飲料を使いました発酵乳の形のものが、昭和四十年の調査でございますが、二十八億本ございます。これは年間に二十八億本、七十五CCのものが出ております。したがいまして、一日で平均いたしますと、一千万人には至りませんけれども、七百万人前後の人が毎日飲んでおるという計算になるかと思います。そのほかに、乳酸菌飲料といたしまして、百六十五CCのものが二億八千万本年間に出ております。この点は、これがどの程度の人々によって飲用されておるかわかりませんが、少なくとも毎日配達されるものを数百万人が飲用しておるということは確かでございます。
#22
○河野(正)委員 その中でいろいろな業者があると思うが、ヤクルトが占めます比重というものはどの程度であるかわかりますか。
#23
○舘林説明員 この毎日配達されます乳酸菌飲料の中では、ヤクルトの会社のものが七割近い数字になっておるように聞いております。
#24
○河野(正)委員 この乳酸飲料の消費というものが最近急速に伸びてきた、そうしてその中でこのヤクルトの占めます比重というものが、いま厚生省では七〇%――これはまあ時期的にもいろいろ消長がございますから、私ども承知する範囲では七〇から八〇%、こういうふうにいわれておるようでございます。それを数字で示しますと、大体一日の消費が千二百万本、こういうようにいわれておるようでございます。その千二百万本を毎日どれだけの消費者が飲んでおるかわかりませんけれども、一応数百万人の消費者、国民というものが愛飲しておるというような結果になろうと思うのです。そうしますと、このヤクルトの国民と申しますか、消費者に対します影響というものが非常に大きいということは、これはもういまの数字がよく示しておると思うのです。そこで、最近私どもが承っているところによりますと、このヤクルトをつくります過程の中でいろいろ問題があるというふうな意見があるわけですが、これらについて厚生省は御承知でございますかどうか、少なくとも一日千二百万本が消費をされ、特にこのヤクルトは青少年向けにPRをされ販売をされておりますから、日本の次代の国民の重責をになう数百万人の階層に消費をされておるわけですが、それらに及ぼします影響というものは非常に大きいわけですから、そういう意味で、製造過程での問題点等について、御承知でございますればひとつ明らかにしていただきたい。
#25
○舘林説明員 食品については、製造工程につきまして、製造許可に際して一応届け出がありまして、その内容を審査した上で許可されておるわけでございます。したがいまして、こちらで認可いたしました製造工程そのものには問題はないわけでございますが、お尋ねのように、最近その製造工程において問題があるかもしれないという話も生じておりますので、そのような製造工程上の違反ということは、お尋ねのように、公衆衛生上きわめて広範な問題を惹起いたしますので、厚生省としても調査を開始いたしておるところでございます。
#26
○河野(正)委員 ヤクルトの製造過程の中で問題になりますのは、牛乳の培地にクロレラを添加をする、そして乳酸菌の発育を促進をするということが、おそらく厚生省が認可をなさった内容ではなかろうかと思うのです。ところが、この乳酸菌の発育を促進するために、これは有毒物質ですが、マンガンを混入させておるという議論があるわけですが、この点についてはいかが御承知でございますか、ひとつお聞かせをいただきたい。
#27
○舘林説明員 ただいままでに、関係府県に指示いたしまして、製品としてのヤクルトの中のマンガンの含有量を調査いたしております。
 なお、実際の製造工程におきまして、何らか添加物としてマンガンの入った化合物を加えるというような、既定の製造工程以外の措置がとられておりはしないかということを目下調査中でございます。
#28
○河野(正)委員 マンガンの人体に及ぼす影響について、ひとつ御承知の点を明らかにしていただきたいと思うのです。
#29
○舘林説明員 マンガンは、ごく微量でございますと動植物の体内に広く分布をいたしておりまして、また人間の生理的な食品としてもごくわずかは必要でございますが、量が過ぎますと中毒を起こしてまいるわけでございまして、急性中毒といたしましては、過マンガン酸カリについて、動物のマウスのLD50、すなわち半数が死亡をする分量は一キロ当たり五百ミリグラム、ラットにおきましては一キログラム当たり七百ミリグラムでございまして、症状としては、種々の精神・神経症状を起こしてまいります。慢性中毒といたしましては、パーキン氏症状に近い言語・歩行障害を起こしてまいることが動物実験によってわかっておりまして、家兎に一日〇・二ないし〇・三グラムを三カ月投与いたしますと、骨の成長阻害が出てまいります。豚にクエン酸マンガン一日三・五グラム、九カ月投与いたしましたところでは、豚は異状がございません。ラットに千ないし二千PPM含有のえさを与えた場合にも異状はございません。それから百PPMを連続投与、そういう状態でございますと、動物の成長にはややこれを促進する傾向がございますが、量がふえまして六百PPMになりますと成長を阻害するということを、ネルソンという専門家が言っております。
#30
○河野(正)委員 いま局長からお答えいただきましたように、このマンガンが人体に及ぼします影響というものはかなり強いものがございます。それはなるほど百PPM程度でございますと、人体の発育を促進するという意味で効果がございますけれども、いま局長のお話しにございますように、六百PPMになりますと有害になる。そしてそれを摂取いたしますと、大体ある部分は尿の中に出てくるわけですけれども、一部は肝臓、それから骨、リンパ節に沈着をするわけですが、このマンガンに対します文献が非常に少ないので、実は私ども九大の猿田教授のもとでこの問題についていろいろ議論をしてまいったところでございますが、非常に文献が少ないということで詳細に知ることができませんけれども、いずれにしても人体にある程度以上のものが摂取されれば有害だということははっきり言えると思うのです。局長からもいま御説明がございましたような神経症状とかあるいは言語障害、歩行障害、ひどくなりますとマンガンプシコーゼ、マンガン精神病というような問題もあるそうでございます。
 そこで、自然の動植物の中に、たとえば地下水であるとか天然水であるとかという中にもマンガンがあるし、お茶の中にもありますし、それから自然に摂取することによって大体人間のからだの発育にはそれ相応の作用をしておるわけですから、それ以上とれば人体に影響をもたらすということはもうはっきり言えると思うのです。ですから、世間でマンガンが五十PPMヤクルトに使われるというような意見もあるわけですが、もしそういうことになりますと、直接そのことが人体に影響を及ぼさないでも、肝臓や骨やリンパ節に沈着するわけですから、そのことが、さっき私が申し上げたように、長期間連用した場合にはどういう障害が起こってくるかという問題と関係してくるだろうと思うのです。そういう意味で、この問題は、なるほど市販としては保健飲料――予防医学に対する保健飲料というのがキャッチフレーズだそうでございますけれども、もしいまのことが事実であるとするならば、保健飲料どころか人体を阻害し生命を脅かすという非常に危険なことになってくる、そういう意味から私はこのことを重要視しておるわけでございますが、厚生省も立ち入り検査で調査されておるということでございますから、いずれその成果については承りたい、こういうふうに考えます。そこで私ども承っておきたいと思います点は、このマンガンを食品添加物として使用をすることが許可されておるものかどうか、この点です。
#31
○舘林説明員 一般的にマンガンは食品添加物としては許可されておりません。したがいまして、マンガンを食品添加物として使用した場合には食品衛生法第六条違反でございます。ただ過マンガン酸カリのみは、限局いたしましてその使用を認めております。ただしその使用は清酒、合成清酒、しょうちゅうのみに対してでございまして、これ以外のものに、過マンガン酸カリでございましても使用することは、食品衛生法第七条違反になるわけでございます。
#32
○河野(正)委員 そうしますと、もしマンガンがヤクルトに使用されておるということになれば、食品衛生法第六条違反だということが明らかになったわけでございます。
 そこで、重ねてお尋ねをしておきたいと思うわけですが、この問題は、一つは昭和四十年の初め、このヤクルトのかつての重役でございました久保哲次郎という人が厚生省の友人に問い合わした経緯がある。その節厚生省のほうでは、故意にマンガンを投入した場合は、食品衛生法違反はもとより政治問題にも及び、ステンレスのタンクのごときは廃棄処令にしなければならぬというようなことをお答えになっておるように私は仄聞いたしております。そうしますと、この尋ねたほうはわかっているわけですから、相手がだれかが問題なんです。この四十年の初めのことでございますが、そういう事実があるのかないのかですね。尋ねたというほうはもう氏名はわかっておるわけですね。尋ねられた厚生省のほうはどうか。もし、そういう事実を聞きながら、しかもマンガンを投入した場合には法律違反ですよ、食品衛生法違反ですよと指摘しながら、それをそのまま放置しておったのかどうかという行政上の問題があるのです。その点、いかがか。
#33
○舘林説明員 私自身は直接はそのような質疑応答があったことは聞いておりませんが、必要によっては調査をしてお答え申し上げます。
#34
○河野(正)委員 さらにもう一つは、四十一年の三月一日付の保健新聞というのがあるそうですか、ヤクルトの重役、専務が講演をしておるわけですが、その講演の中で、ヤクルトにマンガンを入れておることを明言をしておる、こういう事実が四十一年の三月一日の保健新聞に取り上げられておるというようなことを私どもは聞いておるわけですが、この点について御承知であるかどうか。
#35
○舘林説明員 私は詳細には存じておりませんので、なお調べてお答えいたします。
#36
○河野(正)委員 いま一つは、三十八年の六月十日熊本でヤクルト業者の会議があった。その際に、ヤクルトの培養にマンガンを採用しておる、こういう発表が行なわれて業者間の非難をこうむった。これは公開の席上ですからね。そういう幾つかの疑わしいと思われる事例が、年を追ってまいりますとわかっておるわけですね。ですから私どもが伺いたいのは、そういうふうな疑いが、少なくとも昭和三十八年時点から今日まで四、五年間の期間があるわけですが、その中にいろいろ取りざたされておる。しかも、全国における愛飲者というものは数百万に及んでおる。それほど国民の健康というものに関係の深い重要問題ですが、そういう問題についてのいろいろな消費者の疑問というものが投げかけられておる、それが今日まで看過されておった、見のがされておったという点について私ども若干疑問を持つわけですが、いま局長の話では十分調査をしてということですから、調査をした結果は承りたいと思いますけれども、少なくともそういう事例というものが指摘されながら今日まで放置をされておるということについてはいかがなものだろうか。その点はひとつ大臣からお答えを願いたいと思う。
#37
○坊国務大臣 マンガンが、先ほど局長が申し上げましたとおり、ある一定の分量以上になると動物に対して非常に害がある。また、小量でもある特定の分量を長期に使うと、これがまた動物、むろん人体にも害があるというようなものでありますならば、これはマンガンの使用ということについては、できるだけさようなものを使用しないというように持っていくべきものであろうと私は思います。ところがヤクルトにつきましては、そのマンガンを投入しておるというようなうわさがあり、かつまた御指摘のように、ヤクルトの重役さんですか、マンガンを使ってあるというような話をされたというようなことでございますが、その事実につきましては私も局長も存じないのでございまするが、しかしながら、いずれにいたしましても、マンガンがさような害を人体に及ぼすものであるということでありますならば、まずその点から詳細に調べ上げ、かつまた、そういったような害のあるものを使っておるということはかんばしくない、よろしくないことだと思います。したがいまして、厚生省におきましてこれを鋭意調査をいたしておる段階でございますが、もしもそういったようなものが故意に投入されておるということでありますならば、それに対しましては厳重なる取り締まりをやっていかなければならない、かように考えます。
#38
○河野(正)委員 いま大臣が御答弁になったことは当然のことであって、要は私どもは国民の生命なり健康というものをどう守っていくかという立場からこの問題を取り上げておるわけですから、そういう疑念のありますことは、非常に私ども残念に思うわけでございます。特にこのヤクルトをつくります場合にクロレラを投入いたしますと、乳酸菌の発育というものが非常に活発になる。ところがいろいろ研究者の発表によりますと、クロレラの中には乳酸菌の発育を促進する二つの物質がある。一つはペプタイドという物質であり、一つはマンガンである。そこで、マンガンがあれば乳酸菌が非常に発育するんだということで、今度はマンガンだけを混入するというような経過のようでございます。そうしますと、大体培養にいたしましても、七日間で行なわれますのが三日でできる。価格も大体十分の一くらいででき上がる。そういうコストの面から、有害であり、また食品衛生法では禁止されておりながら、このマンガンが混入された、投入されたというような経緯のようでございます。
 そこで、これはもう十数年前になるわけですが、森永の砒素混入事件というなまなましい事件がございました。ところが、この森永の砒素混入ミルクというのは、原料に対しまする不注意から起こった事故でございますが、しかし、不注意とはいいながら非常に社会の大きな非難をこうむっておりましたことは御承知のとおりであります。今度の場合は、故意にマンガン――これは先ほど局長言ったように法律で禁止されておる。禁止されておるものを投入すれば、安上がりで、七日のものが三日に短縮される、タンクも小さくて済む、原料も十分の一で済むというようなことでこれがやられたということは、非常に重大な問題があると思うのです。そういう意味で私どもはこの問題を非常に重要視いたしておるところでございます。特に私は、先ほど厚生省に問い合わせた一件であるとか、あるいは熊本の業者会議において発表された意見であるとか、あるいはまた保健新聞の事例であるとか申し上げましたが、このように問題が問題であるゆえんは、故意にかつ長期に、計画的に、継続的に、有害物質でありながら一企業の私利私欲のためにマンガンの混入が実施されてきたというところに非常に大きな問題があろうと思うのです。
 そこで、これらについては、その事実を明らかにしたいと申し入れておられる方も数人おられるようでございます。これは当時の社長と、それから常務取締役あるいはまた業務担当者、製造主任、それらの方々で、その事実を明らかにしたいという意見もございます。私どもは、いま御承知のように、国民の健康を守っていく、それが逆に保健飲料、予防医学のためといわれながら、有害と知りながら法律で禁止されたマンガンが混入されておる、これは非常に大きな問題だと思うのです。そういう意味で私どもは、この問題をさらに国民の健康と生命を守るために徹底的にひとつ明らかにしていかなければならぬと思っておるわけですが、これは大臣にお答え願ったように、そういう事実があればそれはひとつ厳重に処置するということは当然のことである。ところが昭和三十四年当時からその研究がやられておる。そして具体的な事例がいろいろわかっておるわけですが、秘密裏に始められたということであるとするならば、それなら一体今日まで飲んできたものについてはどうなるかというような問題もあろうと思うのです。そういう意味で私は、厚生省の食品添加物というものが、国民の健康と生命を守るために非常に重大な意義を持っている、そういう立場から、この際ひとつ食品添加物に対しまする、また国民の食生活に対しまする関心というものを一そう深めていただかなければならぬというような意味で、特に格段の注意を喚起いたしておきたい、こういうふうに考えるわけでございます。
 そこで、いずれいま申し上げましたような点については、厚生省も立ち入り検査ということで調査されるということでございますから、その上で御報告承って、問題点があればさらにひとつ明らかにしていただきたい、こういうふうに考えるわけでございますが・その点について、いま大体経過についてお聞き願ったわけですが、いま立ち入り検査をし、さらに調査を進めてあらためて御報告を願うということについては、ひとつあらためて大臣からも御見解をお聞きしておきたいと思います。
#39
○坊国務大臣 非常に大事な問題でございますので、でき得る限り調査をいたしまして、そしてその結果につきましては他日御報告を申し上げるというつもりでおります。
#40
○川野委員長 田邊誠君。
#41
○田邊委員 日本におりまする朝鮮人の人たちの帰国問題に対しては、一九五九年の八月十三日、カルカッタにおいて日本赤十字社と朝鮮赤十字社との間において帰国の協定が調印をされまして、自乗八年間、六十万余といわれる在日朝鮮人の人たちの帰国が行なわれてまいったのであります。ところが、この帰国業務が行なわれてまいりまして、約八万七千余りの人たちがその間に北朝鮮すなわち朝鮮民主も義人民共和国に帰国をいたしたのでありますが、日本政府はつい最近この帰国協定を一方的に打ち切ることを宣言をいたしました。正確には、昨年の帰国協定の延長を協議する際に、昨年八月二十三日に閣議でもって、向こう一カ年の間に帰国業務は終結をして、それ以後については協定を破棄する、こういう決定をいたしたのであります。それについて今年の四月二十一日に再び閣議でこれを再確認する、こういう形になったわけであります。私どもは歴史的に見て、日本におる朝鮮人の人たちというものが日本に参ったという歴史的経過、その事実というものは、これはきわめて特異的なものでございまして、あとで時間があればさらにひとつ解明いたしたいのでありますけれども、そういう歴史的な背景を踏まえてみて、この帰国業務というものが人道上当然最後まで正しく行なわれなければならない、こういうように考えておるわけでありますけれども、政府が一方的にこれらの打ち切りを宣言したということは、これは人道上からいってもきわめて許しがたいことだろうと私は思うわけでありまするけれども、日本政府が帰国協定を破棄をするということを決定をいたしましたその最大の理由は一体どこにありまするか、お聞きをいたしたいと思います。
#42
○田川説明員 帰国協定を本年の十一月十二日で打ち切る一番大きな理由というものは、当初この協定が結ばれた当時と現在との客観的な情勢が非常に違ってきておるということが一点であります。もう少し具体的に申し上げますと、この協定が結ばれたときは、朝鮮の方々が一刻も早くお帰りになりたい、また日本政府もできるだけこれに協力して一刻も早くお帰ししたい、こういう気持ちでもってこの協定が結ばれたわけであります。したがいまして、この協定が結ばれた当時は、この協定の期限というものは一年三カ月とするということで、期限も一年三カ月ときめられたわけであります。ただ、一年三カ月といっても、これは完全にできるかどうかわからぬということで、その協定が期限どおりにいかない場合には両者が話し合って延長することができるという規定をしたわけであります。そのように協定が結ばれた当時の状態は、一刻も早く、できるだけ早く帰りたい。会談の当時に話が出ましたのを聞いてみますと、朝鮮のほうも、大体二年で帰れるだろうというような話も出ておったようなわけでありまして、協定が結ばれた当時は、そうした早く帰りたい、日本側も早くお帰ししなきゃならぬ、こういう状態でございました。でありますから、当時は相当の数がお帰りになったわけであります。しかし、現在は必ずしもそうではございませんで、お帰りになられると申請をなされた者でお帰りにならない者もあるし、いまの状態は、もっとはっきりした表現で申し上げますれば、朝鮮の方々が帰りたいときにお帰りになるというような状態になっておるわけであります。したがって、最近の帰国される方々の数というものは非常に少なくなっておりまして、昨年から本年までの統計は、詳しくは存じませんけれども、大体月に二百人あるいは百人というような情勢になっておるわけでございます。そういうように、結ばれた当時の状態と今日の状態とが情勢が非常に違ってきておるというのが、一番の大きな原因でございます。そして最近では数も少なくなっておりますので、今日この協定の趣旨からいえば、この辺でひとつ延期することはやめて、そして一般外国人並みにお帰り願う、お帰りになりたいというときにはいつでもお帰りできるような仕組みでお帰ししようじゃないか、こういうことになったわけでございます。
#43
○田邊委員 いま政務次官から、当時の客観的な情勢と現在とはかなりの変革があるというお答えがございました。私は、この帰国協定が結ばれた最大の理由というのは、これは戦前、まだ戦争に突入しない前から、いわば日本が過去長い間朝鮮に対して植民地政策をとってまいり、そのことからくるいろいろな強制的な労働を強いるようなそういう条件の中で、日本本土にかなりの朝鮮人が定着をぜざるを得ない、こういうことがその背景にあったということを忘れてはならぬと思うのであります。したがって、あくまでもこれは個人の自由な意思でもってここに住みついたという状態では断じてないのでございまして、そういう歴史的な背景があればこそ、いわばこの帰国協定が戦後において特異な一つの姿として結ばれ、今日までこれが続いてきた、こういうことになるだろうと私は思うのです。もちろん協定が結ばれた直後の大量に帰国をした状態というものと今日の帰国者の数というものは、これは私は変化があることは当然だろうと思うのであります。しかし、それにしても、月に二百人なり、年にすれば二千人余の人たちが最も少ないときでも帰国をしているというこの現実の姿は、これはおおうことはできないだろうと思うのです。
 しかも、帰国協定を結ぶ際に一番大きな問題になったのは、一体帰国者がその本人の自由な意思でもって北朝鮮に帰国するのかどうか。これは、いわば日本政府は逆の意味で、北朝鮮にばかりたくさん帰るのはいかがか、こういう考え方もあってこの自由意思というものを強調したのでありますけれども、しかし、今日私どもが静かに考えてみますと、あくまでもやはり自由な意思で帰国する、そういう立場であるとするならば、これはいつの時期に帰国するかということについても、これはその自由な意思を尊重さるべきであることは当然なことであります。しかも、いま申し上げたような歴史的な背景があれば、戦後外国人として日本に居住し生活するにはたいへんな苦労があったと思うのであります。いろいろな制約があったと思うのであります。それらの条件の中でいわば生活をしてきたところの人たちが、今度は国に帰るという、こういうことを考えるときには、実はたいへんな決断を要するのじゃないかと思うのです。いろいろな意味における準備が必要だと思うのであります。あるいはいろいろな借金を持っているかもしれない。あるいは幾ばくかの財産も積み上げたかもしれない、これらも清算をして帰国するということに対しては、たいへんいろいろな面で私は難渋があるだろうと思うのであります。したがって、一朝一夕にこのことがすぐできるものでもない。そういうことを考えたときに、私は、八年間連綿としてこの帰国が続けられてきたというこのことが、そのことを物語っておると思うのであります。
 そういった点から言いますならば、つい最近その帰国の人員が幾らか減少したということだけをもって、あるいはまた、早く帰りたい、早く帰したいという当時のいわば条件と幾らか変わってきたというこういうことだけをもってこの協定を打ち切るということは、私は、人道上許し得ないことじゃないか、こういうふうに考えておるのですが、その点もう一度ひとつお考えを承りたいと思います。
#44
○田川説明員 田邊委員がいまおっしゃりました、朝鮮人に対する日本の過去における歴史的な諸問題、こういう問題があるから人道的立場でもっと厚い考慮を払わなければならぬというおことば、これは一面確かにそうでありまして、であるからこそ、今日まで八年間、何回となくこの帰国協定を延長してきたわけであります。のみならず、御自分の住んでおるところから出港する新潟港に至るまでの旅費その他すべてを日本の国費でもって充て、そうして帰還の業務を日赤がやってきたわけでございまして、そういうような歴史的な考慮も払いつつ今日まできておるわけでございます。
 それからもう一つ、北朝鮮にお帰りになられる方々を、北朝鮮に帰るのを制限するとかいうようなことは、政府といたしましては毛頭ございません。日本に住んでおります朝鮮の方々で北朝鮮にお帰りになりたいという方は、これは自由にお帰りになられるようにしておるわけでございます。
 ただ、協定を打ち切ったあと、個々に自由にお帰りになれるわけでありますけれども、この自由に帰るということは、いまの北朝鮮の置かれております立場から申し上げまして、簡単に台湾へ行くとかあるいはアメリカへ行くとかというわけには、なかなか交通事情がまいりません。でありますから、協定が破棄されたあとお帰りになる具体的な便といいますか、交通の便に対しましては、これは何とか考慮を払わなければいけないというような気持ちは、政府としては持っておるわけでございまして、でありますから、単に協定が打ち切られたから朝鮮の方が北朝鮮に帰れないんだというようなことはございません。こういう問題につきましては政府としても十分考慮を払っておるわけでございます。でありますから、朝鮮の赤十字と日本の赤十字社との間でできるだけこうした問題を具体的に話し合って、一刻も早く解決しようということで、いまモスクワで両国の赤十字同士が話し合いをしておるわけでございます。でありますから、政府といたしましても、いまモスクワで行なわれております会談につきましては、できるだけ円満に解決するように期待をしておるわけでございます。
#45
○田邊委員 ちょっと大臣、いま政務次官からお答えがございましたけれども、いまのお話の中にもありましたとおり、これは国際赤十字の仲介のもとに両国の赤十字間でもって協定を結ばれたしという問題であります。したがって、当然今後の取り扱いについては、あとでまたお聞きをいたしますところのモスクワ会談でもって、現在いろいろな話し合いが行なわれておるという事実がございます。とすれば、政府も最初から帰国業務については日赤に委託をしたという関係もございまするから、この種の帰国協定については、両国間、当事者間で話し合いがなされる中でもってその結論を見出すべきであることは、これはもう外交上の礼儀からいっても手続からいっても当然であろうと思うわけでありますけれども、そういった両国赤十字の間における話し合いなり会談がなされる以前に、日本の政府が昨年の八月から今年の四月にかけて、帰国協定はこれで打ち切るのだ、もう八月十二日でもってこの申請は打ち切る、今年の末にはすべて業務は終了するのだ、こういう一方的な考え方でもって閣議決定をするということは、これはもう国際法上からいっても許し得ないことではないか、こういうふうに思うのですけれども、一体いかなる理由でもって、そういう当事者間の話し合いが開始される以前に日本政府がこの種の態度をとったのか、ひとつ国務大臣という立場でもってお聞きをいたしたいと思います。
#46
○坊国務大臣 帰国協定は、これは国と国との協定でございまして、この協定に基づいて実際の――いまのは、これは国交がございませんから、国と国との協定ということは、日本と朝鮮との間においては行なわれないということでございまするので、そこで赤十字間におきましてこれをきめたわけでございます。
 そこで、なぜ当事者である赤十字同士が話をきめないうちに国が打ち切ったかということでございますけれども、これは国が打ち切る前に日本の赤十字のほうが、大体この段階においては、先ほど政務次官がお答え申し上げましたように、この協定を打ち切るということをすでに考えておったということでございます。
#47
○田邊委員 厚生大臣、あまりにもあなたは事情を知らなさ過ぎて、実は話にもならぬのですけれども、ちょっと認識を新たにしてもらいたいのであります。いま御答弁の中に基本的な誤りをおかさんとされておったのでありますけれども、これは御承知のとおり、両赤十字間でもって合意に達して行なわれた協定であることは、これは疑いない事実であります。ところが、昨年帰国協定のいわば期限が切れるということになりまして、この延長をするかしないかという話があったときに、朝鮮から延長を提案する電報が日本赤十字社になされて、八月二十三日午前に、日本赤十字は延長について合意をするという返電を打ったのでありますけれども、その日のうちに閣議決定があって、一年間で打ち切る、延長しないということになったために、その午後に至って態度を豹変をして、日本赤十字は相手方に対してこの打ち切りを折り返し返電をしたといういきさつもあるのです。いずれにいたしましても、日本政府が赤十字に委託をして話し合いをしているこの種の問題に対して、日本政府の一方的な考え方でもってこの打ち切りを宣言をしているということは、疑いない事実であります。もし赤十字がそういう意思ありといたしましても、これは相手方との話し合いの中でもって最終的な決定はなすべきことは当然であります。それを見守らないうちに、そういった会談や話し合いが行なわれないうちに、去年の八月からことしの四月にかけて、二回にわたって政府は閣議においてこの打ち切りを宣言している。こういうことはあなたのいま答弁された考え方と相反することは事実であります。そういったことは許さるべきではないだろう、私はこういうことを言っておるのであります。事実をあまり御認識でないようでありまして、私としてはたいへん実は不安でありますけれども、もう一度ひとつ四月の閣議の状況についてお答えをいただきたいと思う。
#48
○田川説明員 去年のいきさつは大臣も私どもも詳しいことは実は存じ上げませんけれども、赤十字の考え方と政府の考え方というものは全く同じでございまして、この点はひとつ誤解のないようにお願いをしたいのであります。
 それから、政府が閣議でこういうようなことを話したということ、つまり北朝鮮の帰還業務について意思表示をしたということは、もちろんこの帰還業務については日赤が自主性を持っておやりになることでありますけれども、政府といたしましても、この帰国業務につきましては予算的にも支出しておるわけであります。国費をもって年一億近いお金を出しておるわけでございます。そういう意味では、政府はこの帰還事業に対する監督と申しますか、発言権というものはあるわけでございます。そういう意味で閣議で話し合いをしたわけであります。
 なぜそれでは二回もやったかと申しますと、やはり帰国協定を打ち切る場合には、直前になって今度はもう延長しないんだということを申し上げるよりも、一応できるだけ日時の余裕をとってやってほうが、むしろ帰る方々の準備の都合、そういうようなことを考えて親切じゃないかというような意味で、早く政府としての気持ちというものを閣議できめたようなわけでございまして、政府が閣議できめたこと自体は、これは決して権限を逸脱しておるものではございません。先ほど申し上げましたように、国費を出しておるのでございますから、発言の権限と申しますか、そういうものはあるわけでございまして、またそうすべきではないかと思います。
 昨年の事情につきましては、援護局長からもう少し具体的に説明をさせていただきます。
#49
○実本説明員 田邊先生からのお話の昨年の協定の延長の際のいきさつでございますが、これは一年間はやはり延長をしたわけでございまして、その延長をいたしました合意の返事を赤十字が向こうにいたします際に、一年間はとにかく従来どおり延長をされたがそれ以上は延長しない、それでやるのだということを説明書きにつけ加えてやった、こういういきさつでございまして、順序は、こういうふうにまず同意をして、ただしその説明書きに、来年一年限り延ばすのですよということを念書のように添えてあるといういきさつになっております。
#50
○坊国務大臣 ただいま政務次官及び援護局長からお答え申し上げましたとおりであります。
#51
○田邊委員 外務省どうでしょう。いろいろな外交上の手続なり協約、協定、条約というものがありまするけれども、この種の、いわば赤十字レベルでもって、人道的な立場でもっていままでやってまいりました帰国協定の中身について、私はちょっとあとでいまの答弁とその本旨の食い違う点について質問いたしまするけれども、いずれにいたしましても、こういった形で行なわれておるところの協定というものに対して、政府みずからがその内容に相反するような閣議決定、すなわち、帰国業務が完了できないときにはさらに無修正ないしは修正して延長できるという、こういう協定の中身があるわけですけれども、それらの事実問題というのは、これはあくまでも両者間で話し合いをして、一体帰国業務というものが完了したのかどうかという確認がもちろん前提でなければならぬわけでありますけれども、そういったことのいわば確認なしに日本政府というものがこういった協定に対して事前にくちばしをいれる、事前に打ち切りというものを宣言をするということは、私は、外交上の儀礼からいっても、手続からいっても、これはやはり正常のものではない、こういうふうに思うのでありますけれども、その点は外務省どうですか。
#52
○吉良説明員 先ほども厚生省の政務次官から御答弁がありましたごとく、わが国と北鮮との間には現在国交がないものでございまするから、この帰国問題につきましても、本来は国がやらなければならない協定であるものを、国交がないがために日赤に委託せざるを得なかった、こういう当初の事情がございます。本来国の仕事であるものを日赤にやっていただいておる。そういう意味におきましては、国と日赤とが一心同体になってやるということでございます。
 それから、これもすでに御説明があったことでございますが、協定締結当時の事情をさかのぼれば、やはり御承知のとおり、最初は一年三カ月という短期の協定であったわけでございますが、これは協定当事者の意思として、そんなに時間はかからぬだろう、まあ二年か三年あればいいんじゃないかということで、当初一年三カ月ということで発足したわけでございます。それを現在まで延長してきたというような事情でございまして、これは政府も日赤も、もうこの辺までやればいいだろうという意味においては意見の一致はございましたわけで、そういうふうな事情を踏まえて政府は閣議決定というようなことをやったわけでございまして、その当時におきまして、政府関係、各省と日赤との間には十分な協議もあったわけで、私はそういうふうに了解しております。したがいまして、日赤がやっていることについて政府がくちばしを出すというような問題ではございませんで、もともと日赤と政府が一緒になってやっておる、外務省としてこういうふうに了解しております。
#53
○田邊委員 一体となってやっておるならば、当然、日赤にしても、あるいはそれと一体の関係であるという政府にいたしましても、帰国協定でもってきめられておるいわゆる帰国の業務が実際に完了したという確認というものがなされなければ、一方的な打ち切りというものをきめることは、これはこの種の帰国協定の精神からいっても絶対に認めることはできない態度ではないか、こういうふうに私は思うのであります。
 一体、この帰国協定をやる一番の精神は何かといえば、当時も一年三カ月という協定の期限はありました。しかし、これはあなたがおっしゃるようないきさつであったのか、あるいは実際に帰国する人たちの数の把握というものができ得ないままに、とりあえずそれでは一年三カ月でやってみようじゃないか、その中でもっていろいろな事実関係が判明してくるだろう、帰国業務というものも一体円滑に行なわれるかどうかわからぬ、こういういわば非常に前途不安の状態の中でこの協定がなされるということも、これもひとつ明らかにしておかなくてはならぬことであります。そういった形でその後一年ごとに延長をなされてきて、事実問題として八万余の人たちが帰国をされておる、こういう形になっておるわけです。
 したがって、この帰国協定というものを打ち切る最大の理由は何かといえば、これは帰国業務が完了したという認識だろうと思うのです。完了できなかった場合は、無修正なり修正でもって延長するということにこれはなっておるわけです。完了したという確認を政府がしたとすれば、私はこれはたいへん事実関係と違うだろうと思うのです。現に八月十二日までに申請をした帰国をしたいという希望者の数は、これは御答弁を待つまでもなく一万七千余人、こういう形になっているのであります。私は答弁があるだろうと思いまするから、あらかじめお断わりしておきたいのでありまするけれども、実際に一万七千余人のうち全部が全部帰るのではないという、実はこういうお話もあるかと思いますけれども、これは私が先ほど申し上げたような、いろいろな帰国のための準備や、実はその間にいろいろな考え方というものが非常に複雑しておる、こういう困難な条件があるということを私どもが知った場合に、申請をした人がそのまま帰るということに即ならぬにいたしましても、帰国を希望する人は現在こんなに数多くの申請をしておるというこの事実を見ても、帰国は完了したという事実認識を持つことは、これは誤りであろうと思うのであります。そういたしまするならば、これは政府が日赤と一体という関係であるといたしまするならば、そういった事実をしっかり確認をしてきめられたということであるならば――私はそうではないと思うのでありますけれども、いまあなたのおっしゃったような、いわば一般論、抽象論というものはこの帰国協定の問題に対しては当てはまらない、こういうふうに思いますけれども、その点いかがですか。
#54
○実本説明員 お話のように、協定の結ばれました趣旨といたしましては、先生の御意見のようなことでございます。
 それから、先ほど田川政務次官からも申し上げましたように、政府の考え方といたしましては、あるいは日赤の考え方といたしましては、やはりこれは緊急にたくさんの人をお帰しするということで、一つの緊急処理というふうなかっこうで結ばれた協定であるというふうに、根本的な性格を政府、日赤は解釈しておるわけでございます。それも単なる類推解釈だけではなくて、現実に、協定は永久、未来永劫に一人でも帰る人がある間は続くという趣旨なら、一年とか一年三カ月とかいうふうな暫定的な期間を各当事者で納得して出発するはずはまずないということ。それから、そういった帰還業務ということは永久、未来永劫に六十万朝鮮人がおられる間はいつまでも続くんだというふうなことを前提として完了ということは書くはずはないので、やはり一定の期間に早くお帰し申し上げる、また帰りたいということで、それじゃこういう方法をやろうということで出発したのだ。まあ政府の解釈あるいは日赤の解釈も、そういう協定が非常に暫定的な仕事の緊急処理のためにつくられた協定である、根本的にその性格をそういうふうに解釈して今回の打ち切りに及んだわけでございます。
 蛇足になるかと思いますが、これはおそらく朝鮮人六十万人の方がおられる間は――最近の帰国を見ますと、高等学校を卒業したような若い方がどんどんお帰りになる。この協定を始めたときに帰られた人たち、当時帰ろうと思っていた人たちとは違って、その後帰還意思を持たれた方が多うございます。これからもずっと長い期間にわたって帰られるという方が幾らでもあると思いますので、そういう意味から申し上げましても、これはこういう協定でもって処理していくべき問題ではない、この協定の所期の目的は達せられた、こういうふうに考えまして今回の措置がとられたということでございます。ただ、あとあとの問題につきましては、先ほど政務次官のお話がありましたように、両赤十字社間で善後措置の打ち合わせに入っておる、こういう現状でございます。
#55
○田邊委員 その当時、帰国の意思があったかなかったか、あるいはまたつい最近になって帰国の意思を持った人がいるんじゃないか、こういうお話もありますけれども、私はやはり帰国協定の根本精神である本人の意思の自由を尊重する。さっき申し上げたように、当時の政府の考え方というものが、必ずしもその字句どおりにとっていいかどうか疑わしいことはあったにいたしましても、額面どおりにとって、自由意思を尊重するというたてまえであります。そういたしますならば、当然これは当時非常に小さな赤ん坊であったものが、いまある程度の年数に達して、その後日本におけるところのいろいろな仕事の面、あるいはいろいろな生活の面でたいへんな苦痛を持っておる。したがって、自分は将来の職業の選択をする立場からも、生活の根拠を定めるためにも、ひとつ国へ帰って生活をしよう、こういう形になるのは当然であると私は思う。その意思は自由であり、また尊重しなければならぬと思う。もちろん、いま局長が言われたような、私は未来永劫にこの帰国業務なり帰国協定なりが有効に存続しなければならぬという、そういう形式論にとらわれて質問しておるのではございません。もちろん、国交が回復されれば、そのとたんに局面が違ってまいるでありましょう。あるいはまた、それがなくとも、違う情勢の展開というものがあり得ると思うのであります。しかし、現在の段階では、非常に困難な情勢の中でもって朝鮮に帰っておるというこの立場を見た場合に、この帰国協定による帰国業務というものが、新潟から清津に向けての帰国船によって帰ることが最もこれは合理的であり、最も安全であり、最も近道である、こういうことだけは疑いない事実なんだ。それならば、これにかわるべきもっと有効な、もっと適切な、安全な方法があるかといえば、これは全然ないのでございます。これはさっき政務次官のお話がございました。私はそのことに対してまた質問いたしまするけれども、そういう形から見れば、この協定をいま打ち切らなければならぬ事由は何ものもないと私は思わざるを得ないのであります。
 法務省、ひとつお聞きをいたしまするけれども、一体今度政府は打ち切って、外国人並みにその後扱うのだというけれども、朝鮮に何かの形で帰った人が、今度また日本へ里帰りというか、いままで居住しておったのですから、いろいろな用事もあったり、あるいは家族も親戚もおるわけでありまするから、またひとつ日本にちょっと帰っていろいろと仕事をしたい、兄弟とも会いたい、こういうことを考えたときに、すぐ日本に来られるのですな。
#56
○中川説明員 御質問の趣旨は、この協定に基づて北鮮へ帰還した人が、再び日本に帰って来れるかということでございますか。――この点は、北鮮と日本とは御承知のように国交関係がございませんので、原則として日本への入国はしていただかない、こういうことになっております。
#57
○田邊委員 いま法務省からお話のありましたとおり、一たん帰りますと、いまのいわゆる関係が変化しない限り、また日本に対する入国は絶対といっていいほどできない。これはスポーツ選手の入国に対しても問題がありました。あるいは貿易関係にからんで技術者の入国に対して問題がございました。たいへんな実は支障――たいへんな支障というよりも、絶対といっていいほど困難が入国に伴う。そういう往来の自由が確保されていない今日、いわば帰国をすることは、よほどの意思とよほどの決心がなければできない。そういうことになれば、その意思の決定をするには、いろいろな周囲のことを清算する面からいっても、私は時間がかかると思うのであります。
 こういうことを考えてまいりますと、八年間続いてまいりました、しかもお聞きをしなくてもおわかりのとおり、この八年間、帰国業務は円滑に行なわれてきたのであります。一番最初のときに、帰国を妨害する騒ぎがありましたけれども、その後帰国業務が円滑に行なわれてきたことは、日本政府も日赤も認めておるところであります。そういたしますならば、いろいろなこういう困難な条件下でもって行なわれておる唯一の方法として、現在まで両国間の合意でもってなされてきた帰国協定を、私はこの際打ち切ることは人道上も許すべきでないし、いま私が申し上げたような歴史的な関係、事実関係からいっても認むべきでない、こういうふうに私は考えておるわけであります。この点は大臣にもひとつ認識を新たにしていただいて、もう一度これに対して政府の考え方を変更してもらわなければならぬ、こういうように思うのですけれども、いまの質疑応答聞いておって大臣、どのようにお考えですか。
#58
○坊国務大臣 先ほど来いろいろ御意見も承り、政府側の答弁も申し上げたわけでございますが、そういったようなことから、現段階におきましてこの帰国協定を打ち切るということをやめたらどうか、こういうお話でございますが、私はいまのところはこの協定の打ち切りということをやめる、これを変更するという考えはございません。ただ、この協定の打ち切りに伴いまして、今後どういうふうにこれを持っていこうか、こういうことにつきましては、できるだけ円滑な方法、手段というものを考えていかなければならぬ、かように考えております。
#59
○田邊委員 時間がございませんから簡単に質問いたしますので、簡明にお答えいただきたいのですが、いま申請をしておる一万七、八千人の人たちは大体十二月までに帰せますね。
#60
○実本説明員 八月十二日の締め切りまでに帰りたいと言ってこられた方の総数は一万七千八百七十七人でございます。その人たちの中で、八月中に帰りたいという方が二百七十八人ございました。これはこの前の八月の二十五日に出ました帰還船で百五十六人が実際帰られました。九月には四百六十九人、それから十月に千二百一人、十一月になって一万五千五百五十八人が帰りたい。このほか法務省、日赤で保留している数が三百七十一人、こういうのが一万七千八百七十七人の内訳でございます。これだけの人が帰りたいということでありますので、これはまだ協定期間内でございますので、いままでの配船ではとても帰り切れぬですから、その配船要求をかねましていまモスクワで両赤十字社同士が話し合いをいたしておるわけでございまして、現行協定におきます配船の数をふやしてくれるというふうに北鮮側が踏み切ってくれれば、これは協定期間内にこの方を全部お帰しする、そういうことができるわけでございます。
#61
○田邊委員 日本の政府は一方的に打ち切り宣言をしておいて、今度配船のときは、急激にふえる希望者に対して、相手方に対して何ばいかの船を配船してもらいたい、これは虫のいい話ですけれども、それはいずれにいたしましても、いまお話しのありましたような状態でいきますならば、なかなかもって今年中に希望者を帰すわけにまいらぬ、これは事実であろうと思います。そうなりますと、さっき政務次官は、何か帰国協定を打ち切ると言ったけれども、大臣もおっしゃったようだけれども、何かうまい手を用いて、その後の希望者に対してはお帰りいただくような措置をとっていく、こういうようなお話がありましたけれども、そういうような具体的な方策はございますか。
#62
○田川説明員 期限内に申請された方々が、協定の有効期間内に船の便が少なかったことなどでかりにお帰りになれないような場合、十一月十二日以降になってしまう、そういうような場合には、あまり長い期間ではございませんけれども、現行の協定に準じてお帰りいただくというようなことは考慮をしておりまして、そういうような問題については、いまモスクワで話をしているはずでございます。
 それから、今後自由に帰国される方々、これから申請してそして個々にお帰りになられる方々、こういう方々に対しても、これはこのまま、それじゃかってに飛行機なり船なりで自由にお帰りなさいといっても、先ほど申し上げましたように、いまの北鮮の置かれている立場から見ますと、たとえば飛行機で帰るとすれば香港を回り、中国を回って行かなければならぬというようなことでございますから、そういうことにならないように何らかの方法を考えていかなければならぬ、こういうことは、いま日赤の代表の方々が一つの腹案を持ちまして朝鮮の赤十字と話をしておるわけでございます。でありますから、先ほど田邊委員がおっしゃったように、日本側が一方的に何でもかんでも打ち切って、人道を無視してやっているのだということでは毛頭ございませんで、いまの北鮮の置かれている立場というものを十分考慮して、しかも自由にお帰りになれるというようなことは、十分に考慮してやっておるわけでございます。
 それから、もう一つ御理解をいただきたいことは、先ほど来田邊委員が、日本政府が一方的に帰還業務を打ち切るとおっしゃっておられますけれども、これは御承知のように何回も延長してきたわけで、その延長をやめるということで、いままで何回となく延長をしてきたということを御理解をいただきたいのであります。決して一方的に打ち切るとかいうことではございません。この協定を延長するには、両者が話し合って延長できるということでございますから、そういう意味で、私どもはそう人道主義を無視してやっているのだということではございません。先ほどから大臣が申し上げましたように、あくまで人道主義ということは十分考えて朝鮮人の帰還については当たっていかなければならぬということを、政府は十分考えておる。もりでございます。
#63
○田邊委員 いまのお答えにもあったとおり、政府は実は打ち切り後の何か具体的な代案があるような話をいたしておりますけれども、なかなかもってこれにかわるような有効適切な代案はないですよ。いま政務次官もはっきりした内容をわれわれの前に示すことができないのは当然であります。どうでしょう、外務省、これから帰国協定を打ち切られた場合に、在日朝鮮人の人たちが朝鮮民主主義人民共和国に帰る手だては、一体どういう手だてをもってこれはできることになるのですか。
#64
○吉良説明員 外務省側といたしましては、従来関係の各省ないしは日赤と、この点についてもいろいろ協議いたしたのでありまして、外務省で見つける方法はないわけでございますけれども、帰国協定打ち切り後も北鮮に帰りたいという希望がある場合に、これをとめるというふうなことではなくて、あらゆる可能な方法でお帰りを願っていいのだ、そういうことにつきまして外務省でできることは何かというお話もございまして、その間におきまして、たとえば現在のナホトカ航路を清津に寄港させるというようなことにつきましては、これは外交関係もございまして、日本とソビエトの間でございますから、ソビエトに話して、何とかナホトカ航路の清津寄港も実現させるようにしたらどうかというようなことにつきまして、外務省としてはそのラインで協力しておりますし、そのほか直接に外交関係には関連はございませんけれども、特に特日船と称する貿易船も往復していることでございますから、こういうものを使って帰るのもいいのではないかというふうに考えておりますし、そのほか特日船に限らず、日本に寄港しまして北鮮に参ります外国の船もあることでございますから、そういうものを適宜つかんで帰ることには一向差しつかえないのではないかというふうに寄り寄り話しておったわけでございます。
 なおまた特別に、これはいつまでもするということではないでありましょうけれども、十一月十二日に本協定は期間切れになるわけでございますが、先ほどから御指摘のように、かなり積み残しが出るやもしれないということでございますから、その積み残しにつきましては、協定が切れても北鮮から配船してくる場合には、これを日本の指定する港に受け入れて、事実上協定があるときと同じような取り扱いで集団帰国をさせるというようなことも考えていいのではないか、そんなふうに考えております。
#65
○田邊委員 あなたは外務省の責任者であれば、こういうことがあり得るというような、いわば仮定論に立ったようなお話ではなしに、一体ナホトカ航路というものを清浄に立ち寄らせるようなことをソビエトと交渉をしたことがあるのですか。まだそんなことはないでしょう。
 それから何か貿易船が行っているから、これを利用したらいいのではないかというお話もありましたが、いま政府は妨害しておって、正規の貿易ができておらないという立場じゃないですか。政府の力でこれはやっていることではない。しかも一人か二人ということであれば、これはまた別でしょうけれども、その貿易船の中に――いま大体百人から百五十人くらいの人たちが一月に一ぺん帰る、こういう状態の中で、その貿易船を一体利用して、かなりの数の人たちが安全に迅速に帰国することができるかといったら、これは事実問題としてなかなかできないことである。そういったことは、実際確定的に見通しがついて、その上でもって政府がこういう事後の措置ができたのだから、それならばひとつ打ち切りをしようじゃないかということであれば、私はそれは中身のよしあしにかかわらず、一つの理屈は通っていると思うが、いまのは、やみくもの話である。全く見通しのない話である。そういう状態の中でもって、ああいう方法もある、こういう方法もあると言っても、具体的にそれがいまの代案としてきわめて有効適切な円滑な帰国業務ができるような代案でないことは、あなたのあやふやな答弁をもってしてもうかがい知られるところであります。そういういわばきわめて合理性、あるいは確実性のあるような話をされるのではなしに、いろいろなことも考えられるというようなそういう推測だけでもってこの問題が将来残されるということは、私はどうしても了承することができないことじゃないか、こういうふうに思っているんですけれども、何か答弁ありますか。
#66
○吉良説明員 外務省といたしましては――最初の御質問、特にお答えしておく必要があるかと思います。すなわちナホトカ航路の清津寄港について、外務省としては交渉したことがあるのかということでございます。それにつきましては、すでに外務省といたしまして、ソビエトの政府と連絡をとりまして、その交渉をいたしております。
 あとの点につきまして、特日船、貿易船の利用につきましては、いろいろな方法の中の一つの可能性として申し上げただけで、そういうことだけですべて完ぺきにいくものだとは私も了承しておりません。
#67
○田邊委員 時間がございませんから終結をいたしたいと思いますけれども、いまモスクワでもって会談が行なわれております。八月の末から前後数回にわたって行なわれておりまするけれども、なかなか平行線でもって、会談の円満な結論を見出すことはきわめて困難じゃないかというふうに予測をされるわけですけれども、日本政府としては、いままでのような態度で、私どもから見ればきわめてかたくなな態度でありまするけれども、要はやはり両赤十字間でもって、いわば人道的な立場からこの問題の解決をはからんとすることについては、これは私は日本政府といえども傍観することができないと思うのです。したがって、そういう意味からいいまするならば、この会談というものはにわかに決裂すべきものでない、当然何らかの妥結を求めるまでその努力をなすべきである、こういうふうに私は考えるのですけれども、その立場で政府も日赤に対していろんな面における指導をして、いろんな面におけるところの連絡をして、これが円満な合意に達するような最善の努力を続けていただきたいと私は思っているんですけれども、その点に関してはいかがでございますか。
#68
○田川説明員 田邊委員のおっしゃるとおりでございまして、この朝鮮人の帰国の問題については、われわれも、政府も、重大視をしておるわけでございます。先ほど来御質問の中にあった、帰国協定のなくなったあとどうするかという問題も、あわせていまモスクワで話をしておるわけでございまして、したがいまして、あまり具体的なことをいまここで申し上げることはできません。しかし、両方の会談を私ども電報で見ましても、いま御指摘のように、朝鮮のほうは無修正延長ということであります。日本側のほうは協定を打ち切りたい、延長をしたくない、こういうことでございますから、形の上では確かに平行線をたどっております。しかし、われわれのほうといたしましては、日本側といたしましては、できるだけこれは話し合いの上で円満に解決をしなければならぬという態度をかたく持って交渉に臨んでおります。また朝鮮のほうの代表の発言なんかを電報で見ましても、非常にかたいことをおっしゃっておられますけれども、そのことばの端々の中に、何とか円満に解決したいんじゃないか、こういうような空気も見られるわけでございます。ですから、厚生省といたしましては、この会談ができるだけ円満に解決するように期待をし、また、努力をしなければならないと思っております。
 このいま行なわれている会談が、かりにもの別れになりましても、再び会談を継続して次の機会に会談を持って、そして根気強くこの帰国事業を円満にやりたい、こういう考えでおります。
 現地におきます代表の田辺日赤副社長も、病を押してこの会談に臨んでおります。また当初の予定では、ハーグにおきまして国際赤十字の会議に出席する予定でございましたけれども、その出席を取りやめて会談をしておるわけであります。でありますから、かりに今回の会談がもの別れになりましても次の会談をやれるという余裕を残して、一度帰れるなら帰るというような含みで、とにかく根気強く、粘り強くやっていくというのがわれわれ関係者の態度でございますので、どうか田邊委員におかれましても十分御理解をいただいて、この交渉が円満に妥結するように御協力のほどをお願い申し上げる次第でございます。
#69
○田邊委員 ひとつ日本政府としては閣議決定のいきさつもありまするけれども、いま政務次官のおっしゃったような、あくまでやはり帰国協定を結んだ当時の立場、精神、これに立ち戻って、在日朝鮮人の人たちが、自分の祖国へ帰りたいという自由な意思というものをあくまでも貫けるようなこういう措置というものを私はとるべきであろうと思いまするから、何か閣議決定を既定の事実として、その上に立って自分たちの考え方を押しつけようという、そういう形でなくて、あくまでも両赤十字の間における合意に達した上に立ってのこの帰国問題が、円満な一つの結論を見出すように努力すべきであると思いまするし、大臣も認識を新たにされて、この問題に対する一そうの関心を持たれ、国務大臣という立場でもって、当面日赤に対して直接の関係のある担当大臣として、この成り行きを注視をされて、これが最善の方策を見出せるように今後とも努力をされることを私は特に要望しておきたいと思うのです。外務省並びに法務省も、今後のいろいろな外交上の手続やあるいは在日朝鮮人の入国、出国、この問題に対してもさらにあたたかい手当てを講じられるように私は特に強く要望いたしまして、一応質問を終わります。また、その会談の推移を見て、あらためてお伺いをいたすことにいたしまして、本日はこれをもって打ち切らしていただきます。
#70
○川野委員長 加藤万吉君。
#71
○加藤(万)委員 私は、これから八月に人事院から勧告された公務員賃金について、それぞれ所管の担当大臣、責任者にお伺いをいたしたいというふうに思います。
 最初に、労働大臣にお伺いしますが、実は人事院の勧告を見まして、私は率直に感じた点が二点あります。そのまず第一点は、一体国家公務員労働者にはみずからの労働力をみずから評価をする力、すなわち労働力を賃金に換算をする手段と方法が、人事院勧告という中で生かされていくものだろうかどうだろうかという疑問を感じました。逆に言うならば、国家公務員、国家の各機関で働いている労働者が、みずからの労働力の価値というものをみずからが知らないんじゃないか、もしみずからがその労働力の価値を知っているとするならば、その労働力の価値に対する当然の要求があってしかるべきだし、その要求を通す手段というものが国の機関の中になければいけないのじゃないかというふうに実は考えておるわけであります。ILO問題が国会でもたいへん問題になりました。当事者能力の問題が国会でも問題になりましたし、ILO問題をめぐって、いわゆる団結権、団交権ないしは争議権、そういう三権に対する労働者側の要求が、国際的にも位置づけられるという今日の条件の中に、国家公務員がみずからの賃金をきめる手段と方法が法律的にきわめて制約されているというこの事実について、大臣はどうお考えになりますか、最初にお聞きをしたいというように思います。
#72
○早川国務大臣 これはなかなかむずかしい問題でございまして、国家公務員、地方公務員は、いわゆる一般職が中心であります。そういう関係で、民間の企業のように、どれだけが公務員の生産性であるか、賃金に換算することが、まことに困難な状況でございます。したがって、日本の場合には人事院というものを設けまして、どうしても、民間給与とそれから生活あるいは物価とか、そういうものを総合して、この人事院という公正な第三者に給与を勧告してもらう以外にないわけでございます。そういう意味で人事院というものの存在は、きわめて重要な公務員の給与に関する機関だと、かように考えております。
#73
○加藤(万)委員 確かに国家公務員が扱っている仕事そのものは、民間企業における再生産的な要素というものはきわめて少ないと思う。しかし、国全体でいえば、国家公務員のそれぞれの働きによって国全体の富を得ているわけですから、そういう意味でやはり、単に民間との比較、それから物価、この物価の問題についてはあとでまた御質問申し上げますが、あるいは生活だけで比較をするのでなくして、みずからの、特に国家公務員の場合に、これが――人事院勧告がそのまま地方の行政機関の労働者に準用されていくという過程をとりますと、地方行政機関で働いている現業部門等の賃金の決定等から見ていけば、当然そこには、労働力の価値判断を求める労働者の要求というものがあってしかるべきですし、そういう方法が国の機関の中に存在していいと思うのです。単に民間比較、物価、生活問題だけで公務員賃金を決定されるという基本方向について、私はどうも納得がいきません。
 それから、第二の私は矛盾を感じましたのは、一体今日日本の産業の場合には、きわめて極端といいましょうか、急速な技術革新を行なっているわけです。私は、国家の行政機関の中でも、いろいろな面で技術革新の影響、あるいは国全体の、何といいましょうか新しい体制下における仕事の内容等がたくさんあらわれているのだろうと思うのです。しかし、そういうやや仕事に即応する賃金体系というものが、一体いまの人事院の勧告――まあ人事院の勧告は御案内のように、単に額だけではなくて、体系までも示しておるわけですから、そういう勧告で淘汰ができるものだろうかという実は疑問を持ちました。いわゆる国家公務員の賃金体系、みずからの賃金、みずからの労働力を最高限表現できるような賃金体系というものは、いまの人事院勧告の中では取り上げられていかないのじゃないか。特に現業関係、あるいは事務関係でも、たとえばキーパンチャーが非常にふえたとか、あるいは機械による合理化システムが行なわれたとか、そのときに、何級何号俸で、その格差が何ぼで、というような形でその労働力を評価するなんということは、今日の時代からいえばきわめて時代おくれなもので、それに即応する賃金あるいはそれに対する労働力の報酬としての価値判断を体系に求めていく、こういうことでなければいけないのじゃないかというふうに実は思います。
 したがって、人事院勧告の第二点の問題は、人事院勧告の中で、今日の社会体制ないしは行政機関の新しい合理化といいましょうか、それに対する労働力評価としての賃金体系があれでいいのだろうか、それを是正することが、人事院勧告という中で、あるいは人事院が賃金を扱うという中でできるものだろうかどうだろうか、こういう点について大臣の御所見をお伺いしておきたいというふうに思います。
#74
○早川国務大臣 非常に技術的な問題になりますので、また人事院総裁が参りましたときにお聞きいただきたいと存じますが、いまの国家公務員、地方公務員合わせまして三百二、三十万が対象になっているわけでございます。その中には、加藤先生御指摘のように、たとえば林野庁の日雇い労務者まで国家公務員として扱われておる。いわゆるドライヤー報告では、そういう現業的な人はむしろ一般の民間企業の労働者のように、団交権とかあるいはストライキ権とかいうものの範疇に入れていったほうがいいのではないかというレポートもございます。そういう部門の人は、これは今後の公務員制度審議会で御検討願う問題で、民間と同じような一つの賃金体系ということで救済する道も一つの御意見だと存じます。ただ、一般公務員の場合には、お医者さんなんか今度だいぶ上げましたけれども、こういうのは非常に生産性というのがわかりやすいのでございますけれども、たとえば労働省のお役人の賃金体系はどうかということになりますと、あるいは民間からいえば、能率の面で人間が多過ぎるというような御意見もありましょう。そういう点でなかなかむずかしいものですから、一番常識的な、わかりやすい、いわゆる民間給与を参考にして、学歴とかあるいは勤務年数とかいうようなことを基礎にいたしまして勧告がなされておる、私はそういう感じを持っております。しかし、加藤先生の言われるように、もうこういう技術が進んだ時代ですから、それにかわる、公務員にもこれだけの生産性、これだけの賃金というのが出ればまことにけっこうですけれども、私は、残念ながら現在そういうものが客観的に発見されておらないというので、人事院勧告は従来のような形で賃金をはじいておるのではないかと存じます。
 なお、技術的な問題は、人事院当局にお聞き賜わりたい。
#75
○加藤(万)委員 技術的な問題はあとでお聞きしますけれども、私が言いたいことは、結局、国家公務員という労働者、これはまず賃金の総額の面において、みずからの労働力の価値を表現する、ないしは要求をし解決をするという一つの道を持たない、これが一つですね。
 いま一つは、やはり同時に、賃金全体について持たないわけですから、今度はみずからが、たとえば違った職務、違った労働の度合い、それに応ずる表現の方法もこれまた持たない。
  〔委員長退席、佐々木(義)委員長代理着席〕
 したがって、地方のたとえば現業関係に参りますと、それを表現するために、何級何号俸に対しては今度はたくさんの手当がついてしまうわけですね。その手当でカバーをするというような、いわば私どもが常識的に考える賃金の体系とはきわめて違った質的要素を持ったものがあるのではないか。したがって、いわゆる労働者個々人のまずみずからの賃金の価値、同時に、それを表現する賃金体系ができない。その基本には一体何があるのだろうといえば、結局のところ、すべて人事院で決定をされるという賃金の方式にやはり問題があるのではないか。いうならば団交権あるいはすべての労働者の権利の回復を行なわないところにマンネリ化した官僚賃金体系といいましょうか、あるいは労働者みずからの労働力を表現する賃金体系がきめ得られないという条件があるのじゃなかろうか。したがって、かつても人事院の存在に対しては多少問題がありましたけれども、今後そういう労働者の意思表示ができる機能として、人事院の存在といいましょうか、あるいはそういう機能をくみあげる政府側の態度といいましょうか、ILOの問題もありますし、ドライヤー勧告等もある過程の中で、今後労働者の条件をどういうふうにとらえていこうとするのか、交渉権をどうされるのか、あるいは団結権をどのように見ていかれようとするのか、人事院を今後どう配置されていくのか、ちょっと関連としてはむずかしいですけれども、それに対する御見解をまず最初に伺っておきたいと思います。
#76
○松永説明員 ただいま加藤先生の御質問の御趣旨は、公務員の賃金について、その労働の質と量にぴたりと合うような給与体系が必要じゃなかろうかという内容のものが一つだと思います。それからもう一つは、そのようなものを実現するのに、現在のような制度、器で、はたしてそれを盛り込めるかどうかという二点に集約しますとなるのじゃなかろうかと思います。
 御指摘になりましたように、確かに公務員の労働の質というものが、民間と詳細に比べましてもなおかつ全部同質かと申しますと、たとえば国会で私どもが御説明を申し上げるようなことが民間にあるかということになりますと、いろいろ問題はあろうかと思うのであります。そういう量と質にできるだけ合うようなものが望ましい、これは私は方向としては言えるのではないかと思います。その場合に、人事院勧告あるいはさらにそのもとに公務員の給与を法律で定めるということがございます。その法律で定めるにつきましては、公務員法によりますと国会がそれをおやりになる。それについて人事院は勧告を怠ってはならないというような、代償措置としての補充的なより手厚いたてまえになっておるのでございます。そのそもそもの考え方といたしましては、やはり民間企業におきましては、賃金というものは労使対等の原則によりまして団交によってきめるということが大原則であります。しかし、国家公務員の場合におきましては、やはり国民の納税によってまかなわれておるということになりますと、賃金その他の労働条件は、国民の代表である、納税者の代表である国会によってきめられることがたてまえとして妥当なのではなかろうかというところに考えの基礎があるのではないか。諸外国におきましても、たとえばアメリカとか、ドイツとか、フランスとかというようなところはそういう形をとっており、それからイギリスあたりはホイットレー委員会のような形をとっている。多少いろいろ違いますけれども、日本の国家公務員法の考え方は、そういう国民の代表によって、国民の納めた税金をどのように支払うかをきめるというところに根本の考え方があろうかと思います。したがいましてその場合に法律でどのような形、どのような給与体系をきめるかということも国会の権限であるわけでございますが、同時に人事院勧告制度というものがございます。人事院勧告につきましては、いままでの勧告が、御指摘のように行(一)、行(二)といった俸給表によりまして、何級何号という形になっておるわけでございますが、それでは人事院としてそういう現在のたてまえを変えることができないかといいますと、労働の質と量に応じた給与体系というものを、人事院としても十分御研究になっておられましょうし、勧告の場合にも、給与体系というものについての勧告もできるたてまえになっておると私は承知いたしておりますので、制度的な制約のために、量と質に応じた賃金の実現がはばまれているということではないように私は理解をいたしておるのでございます。
#77
○加藤(万)委員 それでは、今度の勧告を中心にしていろいろお聞きをしてみたいと思います。
 これは人事院にお聞きしますが、今度の勧告の基礎になる民間との比較、この調査事業所の対象は六千百四十というふうに勧告で述べていますが、この中の五百人以上の企業と以下の企業、これは数でもいいし、比率でもいいです。いま一つは、民間産業の五百人以上の労働者がどのくらい、以下がどのくらい、その比率、同時に、その比率から、この六千百四十事業所のうち、私の判断では、おそらく三千四百が五百人以上、二千七百四十が以下だろうと思うのですが、その関係等をお聞きしてみたいと思います。
#78
○佐藤説明員 私から一応お答えしますが、御承知のとおりに、私どもが調査事業所としてとらえます規模は、企業規模が百人以上、事業所規模が五十人以上という単位で、いまおことばにありました六千数百の事業所を無作為に抽出して、その従業員の四十数万人を個別に当たった、こういう行き方でございまして、いまお示しの五百人を境としての数字は表には出ておらないと思いますが、数字については局長から申し上げます。
#79
○尾崎説明員 総理府統計局の事業所統計調査がございますけれども、これによってみますと、私のほうで調べております企業規模百人以上で事業所規模五十人以上の事業所に在職しておる従業員は大体半数ということをめどにしてやっておるわけでございますが、会社の規模五百人以上に限定をしてみますと、それがほぼ三分の一になるというふうに承知しております。
#80
○加藤(万)委員 三分の一になるというのは、五百人以上が三分の一ということですか。
#81
○尾崎説明員 そうでございます。
#82
○加藤(万)委員 これは企業規模五百人以上が三分の一か、事業所規模が三分の一か、それとも事業所に所属する労働者が三分の一か、いずれですか。
#83
○尾崎説明員 従業員数について申し上げておるわけでございますが、企業規模五百人以上で、私どものほうで調査しております事業所規模五十人以上ということで見ますと、それが三三%程度になるというふうに思っております。
#84
○加藤(万)委員 ちょっと不明確ですね。事業所規模で五百人以上といったら相当大きいですよ。いま言われたのは、企業規模五百人以上が三分の一というふうに理解していいですか。そういうふうに理解しないと、あとで調査比較対照の場合に問題が出てきますから。
#85
○尾崎説明員 私どものほうで調査をいたしておりますのは、事業所規模五十人以上について調査をいたしております。かつ会社の規模、企業規模については百人以上で調査しているわけでございますが、それが全体の従業員数に対しまして約半数ということをめどにして、そこで切っておるわけでございますけれども、そのうちに会社の規模、企業規模百人を五百人に上げて調査をしてみますれば、約半数というところが三三%程度になるということでございます。むろん従業員だけの話でございます。
#86
○加藤(万)委員 まだ私明確にわかりません。おそらく企業規模だろうというふうに理解をしてまいりますが、そうしますと六千百四十の事業所、対象人員四十一万何がしでしたかね、それの三分の一が五百人以上の企業規模の対象労働者、国家公務員の位置が、日本の労働市場といいましょうか、あるいは全体の中で占められる比重というのは、私はもし三分の一だとしたらたいへんなことだと思うのです。少なくとも日本の就業労働人口は三千二百万ぐらいでしょうか、そのうちで大企業と言われている五百人以上の事業所に働く者、その比率と、それから人事院が対象にされた五百人以上の規模が三分の一だというと、公務員の賃金をきめる土台になる対象の労働者があまりにも中小企業に片寄った位置で算出の対象とされる、こういう結果になりませんか。
#87
○佐藤説明員 ちょっと私の理解しておるところを申し上げて、給与局長から、それは違うということなら違うと言わせますけれども、私どもはまず素朴に申しますと、事業所五十人、企業規模百人以上というところをなぜとったかというと、――五百人以上という企業規模で押えてもいいのじゃないか、あるいは千人以上で押えたらどうかといういろいろ御意見がございます。その場合に、なぜ百人以上で押えたかというときに、百人以上の企業にかかえられておる従業員の数を、日本全体の民間の従業員に比べると、半数以上カバーする。そこで、それをめどにとれば民間給与の水準をとるのには、まあ半数以上カバーしている人たちをつかまえるわけですから、合理的であろうということできておるので、それをだんだん千人以上に上げたらどうかとか、あるいは五百人以上をつかまえることにしたらどうかという話になると、やはりそれが三分の一とか、何分の一とかいうふうに、全労働者に対してカバー率が少なくなりますから、にわかにわがほうの勧告の資料をつかまえるそれには踏み切れません。こういうことからいつもきておるものですから、おそらく局長もそういう角度から御説明申し上げたと思います。
#88
○加藤(万)委員 いまの答弁はわかるのです。問題は百人以上の企業規模を対象にして無作為的にとるわけですね。その場合に日本の労働者の分布が問題になってくるわけです。百人以上のうちの百人から五百人までを三分の二とって、それから五百人以上の規模のところをかりに三分の一とったとするならば、それはいわゆる日本の労働力構成の中を平均化した賃金として出てこないわけですね。日本の場合は、御承知のように企業規模の格差によって現実に賃金の格差があるわけですから、下のほうだけとっていけばそうはならぬわけです。ですから、私が当初御質問申し上げましたように、一体日本の全体のいま働いておる労働者人口の中で、まあまあ普通大企業に属するだろうと言われている五百人以上の規模の中から見ていくと、三千何百万のうちのどのくらいの比率があるだろうか。そうすると百人以上の企業規模をとっていっても、かりに人事院側の言われていることはあと全体を通して妥当と見ても、二分の一をとりていてもいいんじゃないか。あるいは五百人以上の規模の――三百人以上でもいいですが、三百人以上の規模の労働者が三千万のうち二千万あり、百人から二百九十九人の規模の労働者が一千万あるとするならば、その抽出の方法は上に三分の二、下に三分の一をとるべきじゃないか。それを無作為的にとった場合に、百人のところにまた戻り、あるいは二百人のところにまた戻すという場合には、日本全体の労働者賃金から、国家公務員の賃金は安いか高いかという比重が出てこないじゃないかということを実は聞きたかったわけです。
#89
○尾崎説明員 私のほうで調べておりますのは、会社の規模が百人以上で、事業所の規模が五十人以上の全事業所の従業員につきまして調査対象にするということで、その平均賃金を、その平均的の給与を調べようということで調査をしているわけでございます。その場合に抽出方法といたしましては、事業所の規模を幾つかに分けまして、それから産業を産業分類別に、かつ地域別にいわゆる層化をいたしまして、その中で予算、調査人員を考慮いたしまして、それぞれについての抽出率を定めまして調査をしてまいるわけでございますが、その調査のそれぞれの層化の中から抽出した事業所は、全体で六千七百ございます。この六千七百を層化して抽出して調べるわけでございますが、結局計算は、その母集団でございます事業所規模五十人以上、会社の規模百人以上の全事業所の平均を算出するために抽出率をもとに戻しまして平均を計算する、そういう方法をとっているわけでございます。
#90
○加藤(万)委員 相当むずかしい抽出のしかただと思うのですが、最終的にどういう方程式で解かれるか私わかりませんけれども、その方式でいって、いまの日本の労働者の分布状況ですね、地域、産業、あるいは事業所、いろいろありますけれども、そのうちの、特に日本の場合には、企業規模の格差によって賃金の格差が非常に激しいわけですね。それが企業規模に沿った労働者の数として公平に出ますか。
#91
○尾崎説明員 いま申し上げましたように調査してくるわけでございますが、その調査してくる場合につきましては、ちょっと先になりますけれども、公務員と大体同等の職種だけ調べるということをするわけでございます。そしてそれ以外に賃金の決定にあたりましては、そういう職種だけでなくて、段階と申しますか、どういう職務段階――係長か課長かという職務段階、それから学歴、年齢、それから地域という五つの条件を調べてまいりまして、同じたとえば課長なら課長、それから事務なら事務の課長であって、そうして学歴は大学卒であって、年齢が四十歳で東京という条件のものにつきまして、公務員では幾らとっており、そういう条件に該当しております民間のほうが平均的な賃金として幾らとっておるか、その平均を調査をしてまいりまして、民間のその平均と、公務員のもらっている給与とを比較するという、こまかい方法で比較をしているわけでございます。
#92
○加藤(万)委員 いまのお話でもそうですけれども、どうしても企業の規模というやつが出てこないのです、調査をされる人事院の頭の中に。おそらく頭では考えておられるのでしょうけれども、いまでも地域、職種、学歴、地位ですね。日本の賃金構造を見て、企業規模を度外視して賃金はないと私は率直にいって思っているのです、対照する場合……。企業規模がどういう形で、この人事院の賃金対比をする場合の基礎として出てくるのだろうかということは、私どうしてもわからないのです。それが違ってくると、たとえば百人の中の土建業の係長と国家公務員の係長の賃金とのこの差ですね。これと、たとえば鹿島組とか藤田組とかいわれる大企業の土建業の係長の賃金とは、格差でいえば六〇%くらい違うでしょう。その下のほうだけを職種、学歴、地域、地位だけでとってきたんじゃこれは対照にならないですよ。公平な対照にならないですよ。一体企業規模というものをどういう形で人事院の場合吸い上げられ、民間との対照になっているのかということがどうしてもわかりません。
#93
○尾崎説明員 おっしゃいますように、会社の規模の大きいところと小さいところとでは、初任給はそれほど格差はありませんけれども、上のほうにまいりますと、相当の格差が出てまいります。かつ同じ職名、職務段階をとりましても、相当の差が出てくるということがございます。そういう規模別の賃金格差という関係につきましては、私のほうの調査の中にどのように入ってくるかということを申しますと、抽出にあたりまして事業所の規模別に抽出をいたしますので、そういう関係が反映して入ってくるということがございます。しかしながら、それは抽出でございますから、実際にございます会社の全体の状況が平均した形で入ってくるということに相なるわけでございます。
 それからもう一つの関係は、先ほど申し上げましたように、また御指摘がございましたように、大きいと小さいとでは同じ職名でも相当格差がございますので、公務員の、たとえば課長なら課長というものと対応させます場合に、大会社の課長と、それから中小企業の課長とでは、同じ等級に格づけするということはやはり適当でないというふうに考えますので、大きいところの課長と、それから小さいところの課長につきましては、これを五百人以上、五百人以下というふうに分けているわけでございますけれども、いわば一段階違えまして等級を対応させるということでございます。
#94
○加藤(万)委員 わかりました。
 そこで私は、今度の場合はこれで勧告が出ているわけですから、これを手直しするというわけにはまいりませんでしょうけれども、やはり労働者の分布ですね。それを基礎にして私は事業所の抽出というものを考えてほしいと思うのです。確かに無作為にとってそれが平均的に出る。それは出るかもしれません。しかし、より正確にするには、たとえば五百人以上の規模、千人以上の規模、あるいは三千人――三千人ということは必要ないですが、その事業所ないしは企業別の規模を一つの対照の基準において、それから無作為的に、たとえば日本の労働者の分布がありますね、それに基づいて無作為的に抽出してみて、その結果を比較するという方向にこれはひとつ考えてもらいたいと思うのです。私は実はこの人事院の勧告を読みまして、最後の春闘の積み残しの分のところにいって、この事業所によってパーセンテージが出ているのですが、二・二%というやつがどうしてもわからないのです。これはあとでまた御質問しますけれども……。
 結局、その場合でも、いわゆる積み残し分が対象労働者数としてどのくらいあったのだということになりますと、これは公務員の諸君が言っているように、四〇何%になるわけでしょう。そうすると今度は事業所の対象でいきますと二〇何%下がるわけでしょう。私は日本の労働者の賃金をより正確にするとするならば、それは事業所規模でなくて、やはり労働者数だと思うのです。
  〔佐々木(義)委員長代理退席、委員長着席〕
労働者数を逆に今度は事業所の分布によって割り出し、それを係数化していく、そういう方向が私は全体の賃金の対照の場合にも考えられていっていいのではないか。それがないものですから、しまいのほうにくると二・二%のあんな形になって出てきたのではないかというような考え方をこの人事院勧告に対して持ったわけです。どうでしょうか、今度の事業所の格差の問題、事業所の格差からくる賃金の格差の問題ですね。それに対して、私が言いましたようなことを調査の方法論として取り入れることができるのかどうか。方程式的なものは非常にあると思うのですけれども、その御見解をまず伺っておきたいと思います。
#95
○尾崎説明員 御指摘の点は、民間の賃金の実態におきましては、会社の規模によりまして相当な賃金格差があるので、やはりそういう関係を十分に反映するような形に調査をしたらいいのではないかというようなお話じゃなかろうかと存ずるのでございますけれども、私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、民間の賃金の実態を十分反映するという形で調査をする必要があるわけでございます。御指摘の点につきましては、大きな会社の賃金、それから中小企業の賃金という場合におきまして、官民比較をいたします場合には、先ほど申し上げましたように職務といいますか、職種とか段階とか、そういう関係を考えて比較をする必要がございます。したがいまして、比較をする場合にあたりまして、会社の規模の大きい小さいという関係を公務員のどれと比較をするか、そういういわば格づけの適正化ということが主眼になってくるのではなかろうかという感じがいたします。その点につきましては非常に重要な御指摘でございますし、私どもといたしましても、その関係は、民間のそういう関係につきましてさらにさらに調査をいたしまして、比較の公正さ、適正さというものにつきまして努力をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
 なお、積み残し関係につきまして……
#96
○加藤(万)委員 それはあとでやりますからいいです。
 確かに比較はおたくの言われているようにそれでいいのです。私の言っているのは、この勧告に出ています六千七百の事業所の対象そのものにまず問題がある、こう言っているのです。その中の労働者の個々の対照については、おたくがおっしゃるとおり、これは少し問題がありますけれども。六千七百の事業所をどこに選ぶかという、まずそこに問題が出てくるから、この辺のところから、企業規模というものと賃金格差というものを考慮したこれからの調査を、強化をしてもらいたいということを言っているわけです。
 これは、これ以上言いますと長くなりますからあまり申しませんが、それでは、そういう中から出てきた労働者の個別の対照、いま地域、職種、学歴、地位、こう言われました。日本の場合の賃金体系は、最近職務給の賃金体系が民間にもたいへん導入されておりますけれども、まだまだ全体的には年功序列型の賃金体系でございますね。年功序列の賃金体系というものは、単に学歴、職種、地位だけじゃなくて、そのほかに勤続的要素というものが、日本の場合には特異の形として入っているわけですが、一体民間における勤続的要素、いわゆる個々の職種に対照する労働者の勤続的要素というものを、どのようにお考えになってこの案に取り入れられたか、お聞きしておきたいと思います。
#97
○尾崎説明員 官民を比較いたします場合には、先ほど申し上げましたように職種、それから職務の段階、それから学歴、年齢、地域という形でこまかく条件をつけて比較をしているわけでございます。その場合に、年齢要因というのが一つ大きな当面のポイントでございますが、この年齢要因につきましては二つの目途を持っておるわけでございますけれども、一つは仕事に対する給与ということを考えまする場合には、御指摘のように勤続的要素、あるいは経験的な要素ということが重要なポイントになるというふうに思うわけでございます。ただ、この経験何年といったようなことを調査いたします場合には、個々の職員について調査をする必要がございますので、その個々の職員が、一体従来の経験として、何年その職種にどの程度経験があるかという点を調査することは、実際問題として困難でございます。したがいまして、その経験あるいは勤続という要因につきましては、個々の職員に当たって調査をするということがむずかしいという意味合いにおきまして、平均的という意味合いで、年齢というものをいわば調査の簡素化という意味合いでとっているわけでございます。
 それから、年齢要因といたしましてはもう一つ、家族の規模と申しますか、生活の規模というものがやはり一つの要因になっているわけでございますので、そういう関係も反映して、二つの要因を年齢要因として反映させまして、調査にあたりましては簡素な形で調査をするということをやっているわけでございます。
#98
○加藤(万)委員 おそらく調査に当たられている人ですからおわかりだと思いますが、日本の場合には、年齢的要素より勤続的要素が多いんですよ。年齢別の初任給と勤続給との関係を見られれば、これは明らかですね。三十五歳と四十歳の賃金の初任給の比較と、三十五歳から四十歳まで勤続した者との賃金の差を比べてごらんなさい。二倍から三倍違うはずですよ、たしか今日でも。そうしますと、年齢という要素は、生活面の要素だけです。その労働者の対社会的な消費、ないしは生活に対する要素としての分が多いのです。むしろ労働の評価としての賃金の面は、勤続的要素、いわば会社に対する貢献度ないしは経験、そういうものを日本の賃金体系としては大きくとっているわけですよ。
 私がさっき言いました対象の事業所、そこでまず一ダウンして、それからいま言った勤続的要素というものを非常に大きく取り入れている日本の賃金体系の中で、勤続的要素をわざとではないでしょうけれども、それを年齢と地位に置きかえているのですからね、この人事院勧告を見ますと。この二つの面ですでに私は民間対照の賃金比較として、人事院のこの勧告が価値あるものかどうかということになると、私は率直に言って首をかしげざるを得ないと思うのです。
 それから、これはひとつ総裁にお聞きしますが、この仲裁裁定の二三一号というのを御存じですか、例の電電公社の問題に対する仲裁裁定委員会の。この中に「当委員会としては、この比較方法を、」――これはいわゆる「年齢階級と勤続年数をクロスした賃金傾向値を用いて、」云々という例の仲裁裁定のやつですが、「当委員会としては、この比較方法を、より精密なものを志向する過程のものとして評価するにやぶさかではない。」とこう言っているのですが、どうでしょう。この仲裁裁定、これはたしか電電公社に対する仲裁委員会の文書ですが、こういう傾向に対して、いわゆる勤続的要素を賃金比較をする場合の要素として非常に取り入れることは、今後の日本の、特に人事院を中心として行なわれる国家公務員の賃金については重要な要素であり、そういうことは前進的なものとして評価をするという、その評価について、総裁は一体どういうふうにお考えになっておりますか。
#99
○佐藤説明員 われわれの勧告の信頼性が疑われるようになりかかっているように思われますので、大事なことだということから、先ほど来の私なりの復習をさせていただきますが、先ほど会社、企業体を選ぶ場合について、これはおそらく十分御承知の上での御質問だろうと思いますけれども、無作為抽出ということでございますが、実は私どもは単なるアトランダムの抽出ではないので、そこに層化無作為抽出で層化ということを加えておりますので、六千七百の事業所をつかまえたのはいいが二、三百人くらいのところを六千七百集めたというのではとんでもないことで、また水産業ばかりが集まった、はからずもそういうことになったということではたいへんなことになりますが、そういうことは、いまの層化ということで技術的に十分の配慮をしておるつもりでございます。
 それからもう一つは、年功序列の問題でございますが、私どもが公務員の立場を主として考えてまいりますと、公務員についても年功序列型という批判はございますけれども、しかし、公務員法及び一般職の給与法においては、やはり職務と責任に応じてということを鉄則にうたっておるわけでございます。その職務と責任の扱い方の幅は、これはやはり現在の実情からいいますと、あるところに非常に人がたくさんだまっていて、気の毒だという面がありますから、われわれとしてはそこの配慮はしておりますけれども、基本の考え方は、やはり職務と責任ということで押えておりますから、民間のほうは、たとえば非常に出世が早くて、若い人が部長さんになっているという場合には、その若くて部長になったということを見るかどうかというと、やはり部長対こちらの部長に相当する職務と責任の人だということで比べざるを得ない、そこに基本があるわけです。逆に申しますと、年功序列のことをかりに頭に置いて、そればかりに集中してとらえますと、民間が非常に出世の早い段階においては、これは公務員側からいうと、年齢要素を入れますから得なことになるわけですけれども、ところが民間が非常に沈滞して不振だということがあって、民間が行き詰まって老齢者が一ぱい下のほうにごろごろいるという段階においてこれをやると、公務員側が損するということもございますので、これはそのときそのときの経済情勢にもよることでございますし、かたがたいま申しましたように法律のたてまえは職務と責任ということでやっておりますから、先ほど局長が申しましたのは、同じ職務の責任の範囲での年齢の幅ということに御了解を願いたいと思います。
 そこで、最後の電電公社の裁定でございますが、仲裁裁定もいろいろ時代的に大きく見ますと、なかなかテクニックの変化が私どもにも見られるところでございます。したがって、その技術的な面から申しますと、われわれとしても常に参考にすべき面はあるだろうと思いますけれども、それはそれといたしまして、私どもの関係ではいま申しました基本のたてまえからこれを扱って、そしてそのものずばり、こうでございますという形でやっているわけでございます。なお、技術的には仲裁裁定を御参考にする面はございますのでなお検討はいたしますけれども、現在までは大体いま申し上げたようなプリンシプルのもとにこれを処理することが正しいということでやっておるわけで、今回の勧告もそういう基本にのっとってしておるわけでございます。
#100
○加藤(万)委員 いわゆる年齢と地位がそれに出てくると思うのですが、私はそれを全面的に否定しているのではないのです。問題は、それと同時に日本の賃金体系からくる勤続年数というものが、仲裁裁定でもこういう形で出ておるのですから、人事院あたりでも、たとえば全体の要素の八分の一か、七分の一か、あるいは五分の一かわかりませんけれども、そういう要素として加えられ勧告される必要があるのではないかということを実は申し上げておるわけです。
 ついでに、いま一つだけお聞きしておきますが、対照の等級の設定について、いまたまたま若くて部長がどうのこうのというお話がありましたが、私はこれを見させていただきまして、どうも官公労働者でないので、俸給のあり方というのがよくしっかりのみ込めないので困ったのですが、行政職(一)表の二等級の比較の問題ですね。これは人事院勧告資料によりますと、民間の場合に企業規模五百人未満の支店長、工場長、あるいは本社でいえば――私なんかは本社と言いますけれども、五百人以上は事務課長、技術課長、本社の課長との賃金の比較ですね。私は、企業規模の格差は多少あるにしましても、この比較のしかたは正しいと思うのです。
 ところが行政職(一)表の五等級の場合、どうして五百人以上の場合に事務上級係職員をとられたのですか、あるいは技術上級係職員をとられたのか、私はわからないのです。こちらの対照が事務課長、技術課長でしょう。だからここはいわばわれわれ民間でいうところの技術係長、事務係長ですね。そして五百人未満のところだけは、今度は事務係長、技術係長をとられているのですね。そして今度は全体の比較で見ると、いわゆる(C)からマイナス(D)はマイナス六千七百三十四円の形で、行政職表(一)表の二等級の場合とは逆な結果が全体として生まれているわけですね。私は、この比較については、率直に言って、先ほど総裁がいい意味で解釈をして、各等級職種を民間の職種、しかも急速に部長になった、課長になった場合のそれまで持っていかなければならぬ云々と言われた。確かに行政職(一)表二等級については、それは言われますけれども、逆に言って、行政職(一)表の五等級については、私はそのことはうかがえないと思うのですが、どうでございましょう。
#101
○尾崎説明員 行政職(一)における五等級の官民比較の問題でございますけれども、これはいま御指摘のように、二等級、三等級、四等級、五等級という一つの何といいますかラインの系列がございまして、その系列に従いまして、たとえば大きな会社の課長を公務員における本省庁の課長の二等級に合わせるということでやっておるわけでございますし、次の段階といたしましては、課長代理を本省庁の総括的な課長補佐というものと合わせておるわけでございます。それからその次の段階といたしましては、民間におきましてはいわゆる係長でございますが、この実態は、しかも調査の上で係員三人以上の係長ということで限定して調査をしておりまして、数人の係の長ということでやっておるわけでございますが、これは課長に直属いたしまして数人の係の長というのは、現在国家公務員の場合におきましては、いわゆる課長補佐、班長という形になっておりますので、四等級相当という形になっておるわけでございます。なお、五等級は、公務員の場合にはその下の小係長という形でございまして、現在の実態は部下一人ないし二人というのが平均的な係の姿でございまして、それと対応いたします民間の場合には、いわゆる係長、つまり大係の長の下におります主任――あるいはその係の中の主任という制度がございますればその主任をとり、その主任がございませんければ、その係の中の最先任の人だけをとってくるということで調査をいたしておりまして、公務員のほうの小係の長というものと対応させているわけでございます。
#102
○加藤(万)委員 本省の係長が部下一名か二名くらいだったら、そんな係長制度要らぬですよ。私はこの分布を見まして、そうでないと思いましたよ。いわゆる五等級に相当する人とそれ以下の係員ですね。それとを割っていけば、平均的な係長の下の部下はどのくらいあるだろうかということがわかるのですね。そうしますと、いま本省の係長というのは、課長補佐というのがあるから、その下の、民間でいえば係長と課長補佐、そして上級職員と係長、こういう対置で言われましたけれども、そうじゃないと思うのですよ。民間でも課長補佐という制度はあります。これはおそらく調査の段階では幾つかの企業にはあったでしょう。そうすると、本省の係長というのは、この全体の分布から見ても、五百人以上の規模などといっても、それは三人とか五人とかというところもあります。ありますけれども、私はやはり本省の係長と、少なくとも五百人以上の企業では係長と対置をされるのが正しいと思うのです。企業の規模が小さければ別ですよ。あなたが言っておることは私は納得しますけれども、ここでは五百人以上の規模について技術上級職員と事務上級職員との対置を置いておるわけですね。それでは対置の比較にはならない。同じ五百人の場合には民間の係長と官公庁の係長、それから課長補佐になりたての人は何号俸かわかりませんけれども、その人と対置をされるのがほんとうだ、私はこういうふうに思います。
 私は先ほど一般的に五百人以上の企業規模が申し上げましたけれども、官公労の場合の職員の賃金は民間でいえば五百人、少なく見ても三百人以上の事業所と対置をされるものだろうというふうに見るのですが、私はこの調査が百人ないし百五十人ですからその辺は触れませんけれども、五百人以上の企業規模の係長と対置をした場合には、国家公務員の係長との賃金の差は、おそらく一万円以上の差がある。そうなりますと、私はそこまで認めないとしても、五百人以上の係長と対置を全部しなさいということは言いません、百歩譲ってみても。ここに示されておる企業規模五百人未満の事務係長と技術係長、さらに五百人以上の事務上級係員と技術上級係員、それとの平均的な値と、それから本省の係長の五等級の平均値で見ていっても、それはおそらく推定ですからわかりませんけれども、四千円から五千円くらいの賃金の差が出てくるのではないか。いま三つの点を言いましたけれども、どうも安いところに格づけしよう格づけしようというように勧告の内容が見られてしょうがないわけです。どうでしょうか。行政職(一)の二等級についてはそれは認めるとしても、行政職(一)の五等級に対する対置のしかたとしてはいま一考される必要があろうかと思いますが、どうでしょう。
#103
○尾崎説明員 同じ職名におきましても、大きな会社のたとえば課長と、小さな会社の課長とでは、いろいろな意味におきまして違うということにつきまして御指摘がございましたけれども、私どもといたしましてもやはり五百人以上、五百人未満ということで、段階を一段階違えて比較をしておるわけでございますが、ただいま御指摘の五等級の比較におきましては、民間の場合には係長ではなくて、係長の下の主任というものと比較をしておることを申し上げたわけでございますけれども、民間の場合の係長というのは、しかも私どもがとってきております係長と申しますのは、部下三人以上の係でございまして、したがって平均的には部下数人の大係でございます。職員団体との交渉におきましても、その関係のいろいろ指摘がございますので、係長というのは少し実態をあらわしてない、これは大係長というふうにむしろ職名、こちらのほうの表示のしかたを改めたほうが適当だということを申したことがあるわけでございますけれども、民間の実態が単なる係長よりは規模の大きいものを持ってきておるというのが実態でございます。したがって、それは公務員における班長、課長補佐というものと対応させておるわけでございまして、その下の段階につきましては、先ほど御指摘がございましたけれども、公務員の場合の係長といいますものは、現在その組織の規模は非常に小さい規模でございます。したがいまして、先ほど申しましたように、もちろん単なるクラークを管轄しておる場合には非常に多い係もございますけれども、普通の本省庁、企画官庁における係、小係というものは、非常に小さい規模で担当を分けてやっておるわけでございまして、そういう関係と対応いたしますのは、いわゆる民間における大係長の下の主任あるいは主任級の人と対応させるのが適当だろうというふうに現在でも思っているわけでございます。
#104
○加藤(万)委員 そうなってくると、私は今度は本省の課長がそれではやはり民間との比較で民間の事務課長、技術課長と対置されるものかというと、逆におかしくなってくる。本省の課長というのは、係長の上の職責でしょう。三人、四人か、何人集まるかわかりませんけれども、民間の技術課長、事務課長に対置をこの際にされるというのは、同じ理屈からいけば少しおかしいのじゃないですか。しかし、これは時間がありませんから、私はこれ以上追及はしませんが、どうもここに作為的なものが、また総裁におこられるかもしれませんが感じられてならないというふうに私は思うわけです。
 それから、いま一つ聞きますが、初任給の問題です。これは単に初任給の安い、高いという問題ではなくして、一体いまの日本の行政機能の中で、あの初任給で国民にサービスができ得る学卒者が募集できるんだろうかどうだろうかという疑問を率直に言って持ったのです。今度のアップ額は中卒で八百円、五・六%です。それで高卒六%、約千円ですね。民間が来年中卒ないしは高卒、大卒を募集する際には、四月における賃金改定額を見込んだ額を各大学や高校に表示をするわけですね。そうしますと、たとえば来年労働省で大卒を募集されようとされた場合には、初任給が低い、安いのは一応こちらに置きましても、少なくともこれでいきますと、二年間の差をもって大学募集に当たるということになるわけですね。来年の募集額は、四月にまだ賃金きまりませんけれども、民間の場合には見込み賃金で出しますからことしの分、それから来年の分を含めての二年分ですね。それに国家公務員のいわゆる学卒者、新しい労働力を注入しようとするときに、その初任給で国民にサービスでき得る有知有能な労働者を吸収することができるのかどうかですね。これはまず総裁にお聞きしたいと思います。
#105
○佐藤説明員 前段の作為云々のお話でございますが、これはひとつ私から申し上げさしておいていただきたいと思いますけれども、基本的に低く出すためにというようなお疑いのことばも見受けられましたが、私どもとしては低く出して何ももうかるところは実はないのでございまして、私どもとしてはせめて民間水準にはぜひ公務員給与は合わしていただきたい、それ一点ばりでやっておって、これを水増しするわけにもまいりませんけれども、これを減らす方向で作為を加えるということも――むしろわれわれとしてそういうことをやっておった日には、勧告自体の権威の問題になります。これは絶対このとおり五月にさかのぼって完全実施していただきたいというだけの自信がなければできないことでございます。減らさなければならぬという義理合いはどこにもないことでございまして、そういう御推測だけは御かんべん願いたいと思う。われわれは一つももうかるわけでも何でもありません。これは大蔵省の主計局だったら、そういうお気持ちにあるいはおなりになるかもしれません。お金のことは私としては考える必要はないので、これは国会が御判断になることです。大所高所からの御判断は国会で……。われわれとしては正しいところを寸毫も作為を加えずして御批判に供する、そういう態度に徹しておりますから、これは十分御了解の上でお願いしたいと思う。
 そこで技術的なことは局長が答えましたけれども、いつもあの点はおっしゃるとおり、各方面からいろいろ御批判のあるところなんです。しかし、われわれといたしましても、御批判を聞いてなるほどと思うところは、加藤先生御指摘のように、直したこともあるのです。いまの段階では局長は自信を持っておりますが、これはまた謙虚にわれわれは今後に検討をしますから、それはそれとして、しかし、基本的な態度としては、先ほど申しましたようなことで御了解をぜひ願わないとわれわれとしては立場がない、こういうことでございます。
 そこで第二段の初任給の問題、それはまことにわが意を得た御指摘なんでして、私どもは給与の問題もおあずかりしておりますけれども、御承知のように公務員試験の責任者――試験をして、できるだけ多くの人に公務員になってもらいたいという意味で責任を持っておるわけです。したがいまして、初任給を一つの大きな関心の的としておる。これは御推察できると思う。しかし、と申しましても、先ほど触れましたようにやはり官民の比較という立場にわれわれは徹しておるわけでございます。民間は先行き、おそらくまたいまのお話のように、水増しして来年度の募集をされるだろうということを八月現在でわが方が考えて、何%増しでお願いしようかなんということは、さっきの基本的な態度からいうと実はできない。しかし、民間と比較はいたしますけれども、たとえば高校卒の場合でいうと、民間との比較はこうなるけれども、御承知のように標準生計費というものをわれわれ独自に計算しまして、標準生計費を割るようであってはいけないというわけで、標準生計費によって相当ささえておる面が――これははっきりいままで申し上げておることで、うしろ暗いことでも何でもない。そこで標準生計費を考えて算定する。そういうことで、民間よりも上回るとも決して下回ることはないというだけの配慮はやっておるわけです。これは配分の問題としてやっておるわけです。ことしはおかしなことになりまして、東京都で標準生計費の上がりが足りない。標準生計費の上がりが足りないといって下げることはできない。とんでもないことで、そんなことはできないということで、民間の初任給と比べて、そこでさっき申しましたように色はつけております。色はつけておりますけれども、来年の四月を見越してということは、われわれの基本的態度からして、これは許されないということが率直なところであります。
#106
○加藤(万)委員 御趣旨はわかりました。前段の御趣旨もわかりました。私もできるかぎりそういう色目で見ないでこの勧告を観察したつもりなんです。そういう意味での批判ですから、悪意にはとらないでほしいと思います。
 そこでいまの初任給は、確かに民間比較でいけばそうでしょう。ところが、今度は官公省庁で民間の有能な人をとろうとすれば、それに対置されるのは、いわゆる中小五十人以上、百人以上の規模ではなくて、大企業の募集に対して、有能な士をどうとるかということになってくるわけですね。私は初任給の設定については、確かに生計費は東京都の場合は統計に出ておりますからわかりますけれども、そうではなくて、そういう大企業に対して国民にサービスできる労働者を吸収する――一般のことばでは東大卒はこのごろ入らなくなったということがよくいわれます。それに対応する初任給として、これでいいかどうかということが問題になってくると思う。単に民間の五十人や百人規模の初任給に比べて云々ではない。それが一つです。
 それから百歩譲って、民間の比較賃金、初任給でとってみましょうといっても、民間の初任給はことしの四月段階ですでに十何%上がっておるわけですね。ところが、それに対置をするのはいわゆる積み残し分として二・二%でしょう、人事院勧告で見ますと。そこで民間が来年の四月、見込み初任給を出さないにしても、すでにことしの四月に上がった分は来年の四月には出てくるのですから、そこで初任給の争いで、どっちをとろうかという場合には、この格差が出てくるわけです。ですから、見てみるならば二重の民間賃金である。有能な人を求めようとする場合には、大企業との対置の問題、いま一つは四月以降の二・二%分と民間が十何%上げたはね上がりはどうか。この二つを見ていかなければいけない。そういう角度で初任給を見ていかないと、国民にサービスするすべての機関の中に有知有能な労働者を吸収することはできない、こういうふうに私は思うのですが、その見解はどうでしょう。特に総理府の人事局長もお見えのようですから、人事局長からも答弁していただきたい。
#107
○佐藤説明員 痛いほど御趣旨はよくわかります。わかりますが、先ほど触れましたように、見込みといえばこれまた問題がある。それと、大会社と初任給がせり合わないと、大会社に流れる人をこちらに取り込むわけにいかない、そういうことになると初任給だけの問題ではなしに、それから一年たってどのくらい上げてやる、課長になったらどのくらい上げてやる、ずっと連鎖反応で、公務員給与全体を大会社並みにしないと話はとおらないという大きな問題にも逢着しますので、先ほど申しましたように、できる限りのことでそこに色をつけておくというところでがまんせざるを得ない。あとはひとつ公共のために奉仕しようじゃないかという志願者の意気込みにまつほかはないということになってしまうわけでありますが、要するに心がけてはおります。配分の問題として心がけております。できる限りの心がけはやっております。こういうことであります。
#108
○増子説明員 ただいま初任給の問題、御指摘のように有能な職員を公務に誘引し確保するためには、民間のいわゆる競争相手になります企業と匹敵するような水準であることが望ましいといいますか、必要であるということは当然考えられることでございます。しかしながら、その意味において公務員の初任給を上げていきますことが、全体として許されるかどうか、つまり一流企業と匹敵するような俸給を公務員に確保していくということは、実際問題として非常に困難というか、ほとんど不可能に近いことではないだろうかというふうに思います。これは公務員の給与を一体民間のどこを目安としてきめるかという問題と関連する問題でございますが、このやり方としましては、先ほど来人事院のほうから御説明ありますような企業規模を、一応対象としてきめているわけでございます。したがって、初任給の場合も、そういった調査対象の企業における平均的な姿に出てくる。それが御指摘のように一流企業から見たら非常に低いもので、それではとても有能な職員を採用することについて民間の企業と競争できないのではないかという御指摘も、まさにそのとおりであろうかと私は思います。それについて人事院総裁がただいまお答えになりましたわけですが、私どもの考え方といいますか、受け取り方は、総裁のお話の御趣旨と全く同様でございます。俸給において民間の一流企業と競争するということは、とうてい十分にはできない。そうすると、そのほかの面においてある程度劣った条件であるけれども、公務に奉仕したいという、そういう青年といいますか、若い人たちに期待するしかないというふうな考え方でございます。
#109
○加藤(万)委員 私は、どうも極端に議論してほしくないのですが、一流じゃなくてもいいですよ。二流でいいですよ。二流までなってないじゃないですか。来年の四月になったら二流にも追いつかないですよ。ことしの積み残し分が、ことしの民間のアップ分より少ないのですから、それだけでも違うのですからね。そういう二流でもいい。とにかく有知有能な労働者をやはり国民のサービス機関として注入していくという、そういう努力をいま少しやってもらわないと、どうも国費が、そういう意味ではむだとは私は言いませんけれども、要するに人ばかり多くてという一般的批判が強く出てくることを実は憂えるわけです。
 そこで確かに初任給を上げれば、総裁や局長も言われましたように、全体の賃金を上げていかないといけないわけですね。さっき国鉄の話がありましたけれども、例の中ぶくれちょうちん型賃金ですね。こういう形になる。したがって、この中ぶくれちょうちん型を直すには縦型に直していかなければなりません。その直すことが、一番最初の議論に戻ってしまうわけですけれども、いまの俸給体系がこれでいいかどうかということが実は問題になってくるわけです。先ほど総裁もそれから局長も言われましたけれども、いまの労働者はもっとドライですよ。みずからの経済観念というのは非常に発達しているわけですから、それを精神訓話で受けとめていこうということを考えておられたのでは、日本の国家機能の中における職員の体系としては少し問題がありはしないかと思う。私はこの際、そういう初任給問題は、これだけの格差が出てくるのは当然のことなんですから、だれが言っても間違いないことなんですから、それをてこにして、いまの労働者、新しい若年労働者に即応する賃金体系と、賃金をめぐって国家行政に対する意欲を燃やすような方向というものを、この際やはり従来のままの考え方から一歩変えられる必要が私はあろうかと思うのです。
 時間がありませんからこれ以上言いませんが、これはひとつ今後の課題として人事院でもぜひ取り組んでいただきたいというように私は思います。
 そこで、問題になりました春闘の積み残し分ですね、これはどうしても理解ができないのです。二・二%という数字を出したところで、ことしのアップ分は労働省でも言われておりますように一二・一%でしたか、定昇込みで、民間産業全体の。その中から定昇分を引きまして九・三%かける今度は事業所数になっているのですね。私は本来はかりにそれが全体の調査の中で二三%の事業所であっても、民間ではことしの四月にどのくらい賃金が上がったのだろうかということから積み残し分というものが出てこなくちゃいかぬと思うのです。それでないと、一年おくれの公務員の賃金というものは直らないですよ。ことしの四月に、民間はどのくらい上がったのだろうか。その事業所がたまたま五月の段階で、全体としては二三%しがなかった、こう言われますけれども、二三%の事業所が問題ではなくて、ことしの四月に二三%の事業所で何%上がったのだろうかということが問題になってくるのです。そこのアップ分のパーセンテージを問題にせずに、その時点でアップをしたのは二三%の事業所だということは、どうもアップということと、これだけの労働者がこれだけ上がったんだということをすりかえられて、結果的に二・二%という積み上げ率を出されたというように私は判断せざるを得ないのですが、どうでしょうか。私の当初申し上げました、本来はアップ率を考えるべきだという考え方は、間違っているのでしょうか。
#110
○佐藤説明員 これは、一言御説明せざるを得ないことでございますが、私どもはずっと前は三月現在で比較をやっていた。それが賃金の変動の大きいのは大体春だ、それには四月を押えるほうがなお適切であるということで、四月中に現に支払われた給与を基礎にして官民比較を従来やっておったわけです。ところが三年前あたりから、いわゆる春闘なるものがだんだんとおくれてまいりまして、それをどうしてくれるという話が公務員代表の諸君からは強く出る。私どもの立場から見ると、それは四月現在でわれわれが算定する以上は、積み残しの問題は翌年送りで、翌年まで待ってくれというのが筋になるわけですね。それでなければ、毎年春闘がおくれるということになれば、調査時期を六月か七月にして、そっちのほうの調査にまたなければ筋が通らないということから、われわれの基本的態度の問題に触れることでして、そんなことはやすやすとできるものか、むしろ春闘のほうを急いでもらえばいいじゃないかということさえ申し上げたことがあるのです。しかし、現実は現実で、三年ばかり前に相当顕著なおくれがありましたから、大体これはその前からやっておったのですけれども、四月に調査員が調査に出かけますときに、ついでにまだ賃金は支払ってないけれども、妥結はしましたというところがあれば、四月にさかのぼって支払うという妥結をしたということがその際にわかれば、それを付帯事項のところに付記して、それが相当集まってきて、それによってなるほどことしは二十何%の事業所がおくれておるわい、おくれて四月にさかのぼって払う、中身はわかりませんよ、精密なことまでとても調べられませんから。それほどパーセンテージが出てくるならば、それをみすみす来年送りということは、大所高所から見て、合理性から見てどうだろう、正確ではないけれどもそれでは拾えるだけ拾うべきだろう、私としてはたいへんな決断だったわけです、最初やりましたときは。そうして春闘が早まるようにむしろ祈っておったわけです。それが去年はおくれ、ことしは地方選挙かどうか知りませんけれども、またおくれたということは、これは困ったことだ。そうしていまの付帯調査で出た数字を見ればやっぱり二十何%、捨ておけないということで、過去三年ばかりは、いわゆる春闘積み残しの処置というものを思い切ってやっておるわけですが、しかし、いま申し上げましたように、本格調査でやっているわけじゃないんです。いま妥結ほやほやでございます。四月にさかのぼることはきまりましたというのをつかまえるわけですから、そのパーセンテージをこまかく分けて、さっきの職種別じゃないけれども、そういうところまでとても立ち入って作業はできません。大づかみではあるけれども、来年に残すよりはことしのうちにという気持ちでやっておるわけでございますが、そこのところはよっぽど御了解を得ておきませんと、あまりそこのところをこまかく追及されると、じゃ、調査時期を五月にしようじゃないか、六月にしようじゃないかということにわれわれとしては追い込まれざるを得ない。そうしたらそうしたで、またいろいろな問題がありますから、そこも踏み切れないということは十分御了解の上で、そしてわれわれのやっているところを了とされたいということですな、要するに。
#111
○加藤(万)委員 わかりました。
 私が言っているのは、アップ率を何らかの方程式によって傾向値を出すことができて、そしていくことは可能な条件がありはしないかということを実は思ったわけです。今度それを百歩譲っても、二十三%の事業所じゃなくて、二十三%の事業所に働いている労働者はつかめるわけですから、六千七百に対して二十何――最初に申し上げましたように、人員比例で見たらどうだろうか。そうしますと、二十三%の事業所よりも、より正確な数字として積み残し分を主張することができるじゃないか、こういうように実は思っているわけです。これは人事院としても三年前にやられたことは私も承知していますし、思い切った措置だと思いますが、より正確にとらえるとすれば、二十三%の事業所数ではなくて、先ほど、当初も申し上げましたように、できる限り労働者数に置きかえるような配慮をされるように私はお願いをしておきたいというふうに思うわけです。
 ここで私は、一つだけわからなかったことがあったわけです。それは、積み残し分と来年度の四月一日段階で調査をされる分との差というものは、一体人事院はどうお考えになっておるんだろうか。それからいま一つは、五・何%という昭和四十一年の四月から四十二年の四月までの民間のアップ額、それを来年の四十三年の四月に延ばした場合は、ことしは御承知のようにたいへん賃金のアップ率が高い。そうすると来年は――いままではそんなことはなかったと思うんです。来年はアップ率が高いから、したがって、積み残し分を差し引いて云々という問題が出るんだろうか出ないんだろうかという疑問を実は持ったわけです。この辺はどうでしょうか。
#112
○佐藤説明員 積み残しをされいにさらってあれば、翌年の本調査で出る格差は縮んで出るわけだと思います。その証拠には、最初積み残しを見ました翌年の格差はごく小さい、格差が五・二ぐらいしか出なかった。私ども自身驚いたくらいです。それは、前の年に清算しておいたからこれだけで済んだんだろうという気持ちを持っております。したがって、積み残しの多い少ないというのは、来年の四月現在の格差は、これは清算された形で出てきて、なるほどまたずいぶん残っておったわいという数字は出るわけではございますけれども、それ以外には、いまの積み残し分としてこれを今度は加算するかどうかの問題になると、これはやはりわれわれとしては、異常な事態であった、たいへんなおくれであったということで踏み切ったわけですから、パーセンテージがよっぽど高くないと、そういう例外的措置はとれない。したがって、原則はあくまでも四月調査の原則でございますということで言わざるを得ない。
#113
○加藤(万)委員 わかりました。ぜひそういう方向で、来年度の場合は当然また人事院内部では問題になることでしょうから、ひとつ配慮してもらいたいと思います。
 あと、問題がありますが、最後に労働大臣にお聞きします。
 こういう勧告が出て、いまも総裁から話がありましたように、この勧告は決して政府としては、あるいは大蔵――政府としてはと言ったほうがいいでしょう、できない問題ではない、五月実施はやってもらわなければ困るし、また、やる条件が十分にある、こう総裁が言われておるのですが、政府側としてこの勧告を受けとめる立場として、今日現時点でどういうお考えを持っておられるか、私は国務大臣としてお聞きをしたいと思うのです。
#114
○早川国務大臣 直接所管大臣でございませんが、人事院勧告はこれをあくまで尊重する立場で努力をいたしておる次第でございます。何ぶん、大蔵あるいは経企、自治、いわゆる六人委員会という関係閣僚会議が三時から本日もございます。労働大臣という立場からは、ぜひこれをひとつ尊重してもらいたいというように、微力でありますけれどもせっかく努力をいたしておる次第でございます。
#115
○加藤(万)委員 私がもう申し上げるまでもなく、過去七年間、人事院勧告がいわゆる完全に実施をされたということはないわけです。その間の国家公務員が事実上、本来勧告どおり行なえばもらえる賃金の損失額というのは、相当な膨大なものであります。私は、率直に言って、これだけ勧告どおり行なえば、地方の賃金を含めれば千数巨億になると思いますけれども、、国でもこれでは六百何億ですか――いや、失礼、何億だか度忘れしましたが、それだけの額をこの時期に支出をするということが、大蔵大臣も、そういう予算の組み方がいいかどうかについて政府としても問題があるんだ、こういうことを内閣委員会等で言われておるようですけれども、私は、公労協の場合に、仲裁裁定の完全実施が行なわれているという実情から見て、人事院の勧告が勧告どおり行なわれないという理由づけは、もうかかって政府側の財源措置、財政措置以外にはないと実は見ているのです。したがって、これは労働大臣は当然労働者側の立場で閣議では発言をされ、所信を貫かれると思いますけれども、国の予算編成が十月から十一月に行なわれるわけですが、そういう段階でも十分配慮していただき、勧告が完全に実施ができる、こういう立場をぜひ政府部内で意思統一されることを希望して、私の質問を終わりたいというふうに思います。
#116
○川野委員長 本日は、これにて散会いたします。
   午後二時五十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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