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1947/11/15 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 予算委員会 第21号
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1947/11/15 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 予算委員会 第21号

#1
第001回国会 予算委員会 第21号
  付託事件
○昭和二十二年度一般会計予算補正
 (第七号)(内閣送付)
○昭和二十二年度一般会計予算補正
 (第八号)(内閣送付)
○昭和二十二年度特別会計予算補正
 (特第三号)(内閣送付)
――――――――――――――――
昭和二十二年十一月十五日(土曜日)
   午後一時四十七分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○昭和二十二年度一般会計予算補正
 (第七号)
○昭和二十二年度一般会計予算補正
 (第八号)
○昭和二十二年度特別会計予算補正
 (特第三号)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(櫻内辰郎君) 只今より委員会を開会いたします。服部教一君。
#3
○服部教一君 司法大臣が見えておりますから、司法省のことについて御意見を伺いたいのであります。
 私は多年司法関係のことを外部から見ておりまして、いろいろと御説を伺つて、そうして改革して貰いたいと思うようなことがあるのであります。
 それは第一に、検事と警察官との関係でありますが、犯罪事故におきまして、警察官がこれを調べるのに、不公平なこと、或いは偏したことは大いにあると思うのです。警察官が犯罪を検挙するに当つて、収賄して検挙すべき者を検挙せずに置いたり、又酷に失することがあると思うのです。それを検事の方へ持つていくというと、検事が警察官に媚びるようなことがあるように思うのです。警察官の調が間違つておつても、それを深く探究せずして、警察の御機嫌を伺うという程でなくても、もつとしつかり調べたらよく分ると思うものを、よく調べずして警察の調書によつてそのまま鵜呑みにするというようなことがあつて、無罪となるべき者が有罪となる。こういうことが随分あるように思うのです。どうしてあの検事が、あんなふうに沢山な検事がぼんくらかしらんと思うくらいな、ああいう人がどうして検事としてその職に、司法省に置いておくかしらんと思うようなことを、しばしば感ずるのであります。それで多年の悪風が残つているのみかも知れませんが、もつと検事なら検事らしく、ちやんとしつかりと調査して、下から、警察官が持つてくる調書というものの正しいか、正しくないかということを、よく調べて、そうして國民の信頼を受けるようにしつかりとやつて貰いたい。こういう感じがするのです。それから又裁判所において、それを裁判するに当つて、どうしてもつとしつかりした裁判ができんかしら、間違いだらけの裁判をしておられることをしばしば見るのであります。私共の知つている者で、その真相を私共を私共が、はつきりしているので間違つた裁判をされたことが、もう一再ならずあるのです。どうもこれは大学教育のやり方が悪いのかも知れませんが、書類によつて事を判断する、机上で判断するということが多いように思うのです。幾日間も続くその裁判が、私共がちよつと見たら半日旅行してその村へ行つて、ちよつと調べたら直ぐ間違つているか、正しいかということが直ぐ分るようなことを、ちつとも、出張してそういう実地の調査ということをせずして、裁判所の中で、机の上で、書類の上によつてやつておられるから、間違いが起るというふうに感ずることがしばしばあるのです。あれは、私は裁判所の中の規則はよく知りませんが、どうして、もうちつと出張して実地を調べるとか、又その土地へ行つてその様子を調べるとかいうような、裁判の仕方が足らんように思うのです。もう常識さえあれば、そこへ行つて、その村へ行つて、あつちこつち聞いて歩いたら直ぐ分る。それをしない。それから検事なんか調べに行つても警察署の中で調べる。そうだからうまく行かんのです。そんなことをせすして警察署の中で調べたら、その村へ行つてあつちこつちその土地の人に聞いてみたらどういうふうなことが真相であるか、その犯罪の本当にどこまで行われたということが直ぐ分る。半日くらいで調べがつくと思うのです。何もむずかしくない。それを行かないのです。そうして警察署の中で喚んで聞いたり、或いはもう裁判所の中で書類を見て、そうして判断されるのであつてですね。外からみておつて、なぜああいう下手なことをするか、間違つた裁判をするか、間違つた検挙をするかというようなことが、もう非常に多いのであります。もうちつと本当の正しい裁判のできるように、正しい検挙のできるように工夫を講じて貰いたいと、こういうふうに思うのです。それが一つです。
 もう一つはちようとしたことをですね重い刑に処するのです。これを例をもつて言うてみますれば、こういうことは今後しちやいかないぞ、こういう点は注意しなさいよ、一言言うたらそれでちやんと裁判ができてしまつておる。罪に落す必要がない。それをそうせずして、或いは一ヶ月だ、或いは三ヶ月だ、或いは私の知つておるので、一年というものを刑務所に入れて、そうして処罰するのです。刑務所へ入れば食も喰わしめなければならんし、國費が沢山ついえるのです。犯罪はそれを再び犯さないように、又適当にやればいいと思うのです。一ヶ月程入れて置けばいい奴を一年も入れたり、一年でいい奴を五年やつたり、どうして検事や裁判官に常識がないか。なぜ学校を卒業してからああいうところにおると、ああいうふうな常識のない人になるのかなと思うくらいに、外からみておつて思われるのです。そうしてその刑期などを決めるのに、どういう標準によつてやられるのか、そんなに長い間入れて置く必要のない者。或いは入れる必要のない者を長く入れ過ぎると思うのです。中には今日裁判にかかつている者の、刑務所に入つている者の三分の一は入る必要のない者が入つているだろうと言う人さえもあるのです。入さえすればよいように思つておるような傾向があるように思うのです。そういうことで、私共は実相を知つている。多くの例によつて、何時も感じているのです。今司法大臣が見えましたから、多年の、何十年という間に感じていることを、いい機会ですから、ちよつと申上げるのですが、なんとかそれを一つ、もつと改良して、悪いものは悪いものとして処罰しなければならんことは勿論でありますけれども、その度を過ごしたり、一月のやつを一年でやつたり、一年のやつを五年でやつたりするようなことを、軽々しくせんようにして貰いたいと思うのです。それで私はやはり検事でも裁判官でももつと待遇をよくして、そうして弁護士などをやつた人、社会で、学校から直ぐにずつと裁判官だけでやるのでなしに社会の実情に通じた人を採るように、それにはもつと待遇をよくして、好んでそういうところへ裁判官になることをするようにしたいとこう思うのです。ちよつとそのことをお尋ね申して、司法大臣がどういうふうにお感じになつておるか承りたいのであります。
#4
○國務大臣(鈴木義男君) お答をいたします。服部委員の御質問はいずれも御尤もの御意見でありまして、大体において私も所見を等しうするところであります。検事と警察官との関係をもつと緊密にせよという御意見でありますが、緊密にすると共に厳正にせよ、という御意見のようでありますが、従來の弊害は確かに服部委員が御指摘になつたような弊害があることを私も認めるのであります。収賄までするという実例は比較的少ないのでありまするが、情実を以て寛大にする、或いは逆に酷に失するというようなことは、検察にせよ、警察にせよ、宜しくないことは勿論でありますが、これは是非いずれも厳正公平に職務を行なうような組織を作らなければならん。こう考えておるのでありまして、幸いに近く発足をいたしまする警察制度の改正、これに伴ないまして警察が殊に地方自治体に委譲せられまする結果、運用を誤りますれば、一層今までよりも、何と申しましようか、紀律のとれない警察ができるという虜れがあるのでありまして、その点を私共の立場から非常に心配をいたしまして、警察官は総て法律に忠実であることの宣誓を就職の際に命じ、それから検事の指揮命令に従つて一切の犯罪の検挙をしなければならん義務を負わす。若し聽かない者がありますれば、正当な制裁を加えることができるというふうにいたす予定であるのであります。なほそれでも時として、警察官が十分に警察官の命に服しない。犯罪検挙の成績が挙らないというようなことがあることを惧れまして、検察官には特に司法警察権を持つ、犯人を逮捕する権限を持つところの検察補佐官というものを、できるだけ沢山の数を、検事局に布置いたしまして、これは一般の自治体警察或いは國家地方警察と無関係に、検事の指揮の下に独立に犯罪の捜査に任じ、犯人を逮捕して來ることができるというような仕組にいたそうということに相成つておるのも、そのためであります。故に今日までのような寛厳宜しきを得ないという弊害は、余程このこの方面から救うということができるのではないかと存ずるのであります。
 検事につきましては幸に情実を以て左右するというような疑を受けたことはないのでありまして、その点は日本の検察官を御信じ願つて宜しいと思うのであります。ただ仰せの如き取調の拙劣、或いは常識に遠ざかるというようなことから、間違つた検挙をしたり、或いは書類に基いてだけやるために誤つた判断をするようなことがないとは保証できない。それは従來多少その例はなかつたとは言われないのでありまして、書類で、裁くということは全く、生きておる事件につきましては、好ましくないことでありまして、できるだけ現場に就き生きた証拠に基いて或いは証人を法廷に喚ぶとか、証拠の物件も法廷に運ぶというふうにしてやるべきものと私共考えておるのでありまするが、従來はその任務を、予審制度というものがありまして予審判事がやりましたために、公判になりますると、大体書類だけで裁くという形になつたのであります。今度は御承知のように予審制度を廃止いたしましたから、検事は一生懸命で捜索をしてそうして起訴をする。その先は全く生きた事件を生のまま調べなければならん状態に置かれるわけでありまして、仰せの如く現場に出張をして調べ、或いは現実の証拠証人等を続々法廷に連れて來て直接審理をする、こういうことに自然に裁判が相成るであろうと思うのでありまして、その点は服部委員の御意見が今後大幅に実際に行われて行くであろうということを私は申上げて、お答にいたしたいと思うのであります。
 それから第二の重刑主義とでも申しましようか、科刑が著しく重きに過ぎて、被告が長い拘禁に服することになる。この弊害を何とかして除去しなければならないということも、御尤もの仰せであります。さなぎだに刑務所が過剰拘禁に悩んでおる現実の状態でありますから、できるだけ長い拘禁というものは私共いたしたくないのでありまするが、一つは捜査方法の科学的な或いは機械的な設備等がまだ発達をいたしておりませんために、一つは人員が不足でありまするがために、つい長い拘禁をするということになるのでありまして、これは非常に遺憾に存じておるのであります。それで私共喧しく拘禁を短縮することを命じておるのでありまするし、併し一般に刑罰が重くなつて來たということも、事実でありまして、法律の上で定める場合に……。自然に言渡刑が長くなるということも止むを得ないのであります。この刑を重くするか、軽くするかということは、偏に立法府の御判断に委ぬべき問題でありまするが、近時の刑罰法規は一般に刑は重くなつて來ておるのであります。そうでないと実際の犯罪の防遏にならないという見地から來ておるのでありまするが、併し行刑の上においては三分の一を務めたならば帰することができる。殊に今度の新しい監獄法、今度來るべき國会に提出をいたしまして御審議を仰ぐ新しい監獄法におきましては、かなりの程度にその点は伸縮自在にいたしまして、十分改悛の情の顕著なる受刑者は早く家に帰す。或いはいきなり家に帰すことが危険であるという場合には、中間刑務所のような所に置きまして、通いの仕事をさせるとか、いろいろな方法で今までやつておりまするような形式的な拘禁というものはできるだけ短縮する。そうして生きた教育的な刑を科する。こういう建前にいたす予定であります。その点も御期待に副うようにいたしたいと考えておる次第であります。
#5
○委員長(櫻内辰郎君) 奥むめお君
   〔服部教一君発言の許可を求む〕
#6
○委員長(櫻内辰郎君) 各大臣が後から見えますから、あなたの質疑は通告がないのですから、一巡したあとでお願いいたしたいのです。
#7
○奥むめお君 戰爭と不良少年少女、又は犯罪が非常に殖えるということは、これは付き物になつておりますけれども、全く今の世の中というものは、こういう問題で満ち溢れておると思いますが、司法省は保護課の中で、その方面の保護事業もしておいでになるようでございますが、予算を見ますと、少年保護の直接衝に当つてお手傳いをしておる人の手当が、大変安いということは、もう長年言われているのでございますが、今度の予算の補正を見ましても、そのままになつておるのでございますが、これはどういう都合でこのままになつたのか、つれから委託少年の補給金と申しますか、このお金が大変安いのでございます。これからそういう少年少女のますます多くなるばかりであるということと、物價が大変高くなりまして、到底今までの予算ではできる筈もないことであるし、余程ここで財源を用意しないことには、ますますこの人たちの指導ということが、むずかしくなるだろうと思うのでございます。でこの二つの数字的なことをお伺いしたいことが一つでございます。それからもう一つ根本的に考えますことは、こういう人たちの保護事業というものは、一般社会事業そのものが一番初めは或る篤志の方があつて、免囚保護事業からだんだん発達して來て、今日の社会事業まで及んで來ておるのでございますが、司法省が、その方面の仕事から手を延して、免囚保護事業から一般不良少年、少女たちの生活指導の問題にまで手を延していらつしやつたということは、これは当然のことだと思うのでございますが、今度の國会におきまして、児童福祉法案が通りまして、この実施も迫つておるのでございますが、この際におきまして、今までは司法省の建前は、そういう建前であつたけれども、ここで司法省そのものも、解体されるとも言われておりまして、いろいろ御事業の方面も変化のあるところでございますから、保護事業というものは、全部一般保護法、又はいわゆる司法保護と言われているすべての事業を司法省からお離しになつて、これを一本の保護事業として厚生省へ纏めて、そうしてもつと予算もしつかり組んで、もつと専門のいい人も揃えて、そうしてそちらへ一任するという建前をとらないことには、今日のやうな怒濤のような世の中で、ますます悪くなる人ばかりが殖えるということは、誠に憂うべきことでございますから、社会全体の高い立場からいつて再び罪を犯すことがないようにというだけでなしに、罪を犯す人がないように、そういう危険のある子供は、未然にこれを指導し、又保護すると同時に、一度でもそういう不幸な立場になりました者は、もつと積極的に國家的な愛と、社会の隣人の愛によりまして、その持つております優れた芽を伸して行かれるような処置をとる必要があると私考えまするので、この意味におきまして、司法省のこの方面の予算というものは、大分全体の予算から言いますと、お仕事といたしまして、相当の費用を充てていらつしやいますけれども、一本にするという建前をお持ちになつていないのかどうかということを伺いたいのでございます。
#8
○國務大臣(鈴木義男君) 奥委員の御質問は、今最も問題になつておる点でありまして、少年の保護、少女も含めますが、どういうふうにすべきかということは、非常に大切な問題であります。少年の犯罪並に不良化の顕著なことは仰せの通りであります。我が國にとつて最も憂うべき現象でありまして、今日力を入れべきもの、これ以上大切な仕事はないとさえ申してもいいかと思うのであります。これを今まで通りのようなやり方では、不徹底であるから、先ず第一に費用の点で大いに増額しなければならんということは勿論でありまして、この予算には出ておりませんが、委託補給金というものが少年一人一日三円になつておりますが、そういうことではとても賄えないことが明らかでありますから、只今予備金の中から出して頂きまするように、一人一日四十円ずつに増額して貰うことを要求しておるのであります。それから少年保護司の嘱託費は、これは原則として名誉職のような積りで今まではお願いしてありますために、一年に百円というような極く僅少な、何と申しますか、寸志を差上げておるに過ぎないのでありますが、そういうことでは到底本当の仕事をして頂くということはできないのでありますから、これも只今相当費額の増額をして頂きまするように、予算の運営を図りますと共に、要求もいたしておるのであります。それが今予算面には現れて來ておらないのでありまするが、予備費からでございますが、出して頂けをことと信ずるのであります。これは極く小さいことでありまして、今仰せられまする少年保護について、國家的にどういう建前を採つて行くべきであるかということは大問題であります。実は厚生委員会におきましても、司法委員会におきましても同様の問題がありまして、慎重考慮せよということでありましたので、十分に私共はそれぞれこの方面の専門家、権威者を集め、実は関係方面の、こういう方面に特別の蘊蓄の深いお方々の御支持をも得まして、そうして立案をいたしておるのでありまするが、丁度司法省の改革に伴いまして、この際一つ根本的に考え直そうという態度をとりまして、今迄行刑と保護というものを区別して扱つておりましたが、これは本來一本にすべきものである。只今奥委員が免囚保護事業から発展して來たと仰せられるように、保護事業というものは行刑と切り離して、考えるべきでないということが、結論として言われると思うのでありまして、そのために今度新しい制度の下におきましては保護と行刑とを一本にして、そうして少年少女と大人の婦人と男子というものを、同じような方針の下に区別して、行政と保護を行うということにいたすことにしたのであります。そうしてこの犯罪、少年と申しますか、一般不良少年、少女というものを、どういうふうに扱うか、これは一本で扱うのが望ましいのではないかという、理想論としてはその通りなんでありまするが、過去の実績に鑑みましても、又欧米各國の実例を見ましても、やはりどうも犯罪を犯し又は犯す虞れのある、そうして非常に抜きがたい犯罪を持つてる少年、少女を、普通の意味の不良少年、少女と一緒におく。或いは一緒に処遇するというこは、いろいろな弊害を、起さべておるのでありまして、結局最後には区別しなければならない。大体温い親心を以て、少年少女を扱う。どんな罪を犯した者でも扱うという根本精神と方針とには、変りはないのでありまするが、収容する施設、最後には強権力まで用いて、都合によつては、矯正院に入れて、もつと程度の強いものは監獄にまで収容しなければならん。そうなりますると検察権を行使しなければならないことに相成るのでありまして、厚生省において保育一点張りの行政に委ねることのできない部分があります。厚生省の方でそういう警察権まで持つことはどうかという議論もありましたが、やはりこれは分業的に扱う外はなかろう、こういうことに相成りまして、大体大部分は厚生省の少年保護の所管にお譲りをする予定でありまするが、いわゆる犯罪少年として犯罪を犯し、余りに迷惑をかける、実際過去の実績でも厚生省の方に、民生委員、或いは普通の保護團体にお預けをしても、これはとてももてあましておりますから、どうか一つ少年審判所の方なり、監獄なり、然るべき方へ送つて、もう少し厳格に鞭をあてながら教育をして貰いたいといつて、こちらへお遣わしになる例が多いのでありまして、こういうところにフラナガン神父のような、本当に愛と慈悲に満ちた社会事業家が現われて下さいますれば、監獄まで使わんで済むということになるかも知れないのでありますが、又司法省でも決して監獄を好んで用いるのではないのでありまして、監獄のようなところに収容するのは、極く九牛の一毛でありますので、いわゆる犯罪を犯した少年でも、八〇%までは監獄には入れないのであります。又検察の手に委ねずに保護をいたしておるのであります。そういう次第でありまして、好んで仕事を殖やそう、或いは不良少年を管轄の下に入れようというような氣持更にありませんが、結局厚生省の扱うべき少年保護事業、それから司法省の扱うべき少年保護事業というものは、やはり二つあつてよろしい、又あるべきであるという結論に到達したのであります。近く御審議を煩します法務廳法案というものでも、そういう建前でやつております。けれども司法省の扱いまするものは、どこまでも犯罪少年少女であつて、犯罪に至らないものは、全部挙げて厚生省に任せる、こういう建前でありますから御承知願います。
#9
○奥むめお君 今の建前はそれで承りました。つきましては、せんだつての埼玉縣の仁泉塾の問題を一例にいたしましても、世間の輿論の同情は、むしろ経営者が非常に苦しい立場におかれているということを、認めざるを得ないのですから、むしろ司法省がああいうふうな仕事に殆ど補助らしい補助もしないで、そうして沢山できるのを、沢山入れて、そうして構えをつけないという本省の保護政策と申しますか、その態度に対する批判の方が多かつたと思うのでありまして、これは所長さんが責任を引いて辞めまして、一度解決がついたかに見えますけれども、司法大臣としてそういう問題に対する責任をはつきりとつて頂くということにつきまして、私はここでもう一度申上げたいことは、司法省の直接やつていらつしやいます保護事業の施設というものは、大抵非常に立派でございます。又例えて申しますと、そこに収容されておる子供はお米を四合貰う。外へおいて貰つておるのは二合五勺しか貰えない。こういうふうに食べ物から違う。そうして先程も仰しやつたように、例えばその預つておる施設に対するお金なんというものは、一人当り三円というような物の数でもないようなものであるし、又着物その他足に履くもの、勞働に必要な作業服のようなものは、すべて司法省で直接やつておるものは、予算で見ましても、わかりますように非常に大きな数字を取つておりますので、或程度のことはできておる。そうして私設でやつておるものは、少しも保護されていないで、このあらしの世の中で非常に難航を続けて、一日暮しておるという形なんであります。ここに開きが非常に多いものでありますから、今日の現状では、むしろ直接役所でやつておる仕事は、重大な罪を犯した少年を容れるのであつて、外のものはその程度にならない者を容れるということになつておると、その程度ではない者は、あそこに容れられると、非常に余計お米が食える、その方が生活もそう不自由せんでもいいというので、むしろもつと大きい罪を犯して、あそこへ行きたいものだということを願わざるを得ないようになつておるのが現状なんでございます。こういうことを考えて見ますと、司法省の保護事業をしていなさる保護局長というものに、非常にその人を得たときには、一生懸命よくやつていなさる、併し大体人を得ないときの方が多い、それはその人の一つの出世の段階に過ぎないのです。それは自分の梯子段の一つとして職に就いておる、実際はその仕事に興味がない、そうして今までそういう事情におかれていたと思うのであります。ですから私共、第一司法省のそういう事業はこれから行刑と保護と一本にしたもので続けて行くというこの建前というものは、私共からいえば、どうも納得が行かない。それはやはり無理だ。殊に生活保護法でいろいろ枠を以て物を取れます。この生活保護法というものは、司法省には何にも関係がないものですから、司法省の関係の施設に対しては、地方でも生活保護法にかけて出すことを嫌いますのです。第一そういう施設があることだけでも、迷惑と思つておる所へ、地方から四分の一の費用を拂わなければならん。生活保護のその費用から出すということを喜びません。又それは直接民生委員なら直ぐそれをとれるのですけれども、民生委員に頼みに行く、司法関係の保護司が頼みに行つて、そうして手続きをして貰つて取るというふうになるわけなんでございますけれども、間接の関係でもあるし、最近司法省においても、次官通牒でそういうことをお出しになつたことがあるそうでございます。生活保護費の方から出して貰いたい。それは返事も何も來なくて大変困る。こういう團体の訴えを私共聞いておるのでございますが。そういうことを考えましても、又今度は地方に出先官憲を持たない地元と結付いてないお役所が、こういう仕事を又持つておるということは、やはり地方の結び付も薄弱でございますから、無理だと思います。どちらの理由を考えましても、全國に相当殖えるばかりである。このことを一日も早く保護、指導の手に預けなければならない。こういう若い大事な人達を預かるということを司法省関係で一つ掴んで行こうということは、私共無理だと思うのでございます。これは私の意見になりますけれども、御答弁下さいました現状に対しまして、一言申上げて置きます。
#10
○國務大臣(鈴木義男君) 只今のお話は、奥委員の長い間の実際的経験から帰納された適切な御意見でありまして、私共も十分その点は参考といたすつもりであります。実は埼玉の仁泉塾の事柄が契機となりまして、これはいわゆる私設の保護團体というようなものを、司法省が漫然管轄すべきではないということを痛感いたしまして、國家が責任を以てやる以上は立派なものをやらなければいかん。生半可にやることが過ちの因でありますから、その区別を明かにして、今度は司法省のやりますことは、全部官公立に限ることにいたす予定であります。それで民間の保護事業につきましては、挙げて厚生大臣にお任せするのでありますが、私共も協力いたしまして十分強力な精神的並びに物質的な援助を與える、そうして立派な保護事業としてやつて行けるようにいたしたい。こういう考え方をいたしております。そのことを一言申上げて、その他の御希望につきましては、十分に考慮いたすつもりであります。殊に保護局というようなものは、今度なくなりますけれども、行刑と保護を併せた仕事については、いわゆる検事を拜借して來るということでなく、これに打ち込んで仕事をして行くところの人をその委員に招聘したい。こういう氣持を持つておりますから、そのことも一つ申述べて置きたいと思います。
#11
○中西功君 鈴木司法大臣がおいでになりますから、私考えておりますことを伺いたいと思います。最初に追放問題、資格審査委員会、或いは又追放の実際の手続、そういう問題について二、三質問をします。追放の問題については、もう私が申すまでもなく今まで衆議院の本議場なんかにおいても、非常にいろいろ問題になつておりまして、それについて詳しく申上げるわけでありませんが、第一は資格審査委員会が若し政府の管轄に入つておるのならば、それを今後どういうふうに民主化される方針があるかどうか。これが可なり非民主的なものになり、運用が又公正欠いている面が多々指摘されております。そういう点で資格審査委員会を今後どういうふうに民主化される成算があるかという点が一つでありますが、むしろ私の中心は第二であります。それは公職追放或いはその該当のいろいろの決め方が、非常に形式的であるということは、これは一般によくいわれます。ただ枠を決めまして、その枠に該当する者は、その人が現在どういうふうな思想を持ち、或いは又行爲をしているかに拘らず、枠に嵌る者は、皆それで追放する、併し同時に現在において当然追放されなければならん沢山の人が、一度その枠にはずれておるという理由によつて、追放されていない。こういう非常な不公平があると思うのですが、その際これは司法省の管轄より、むしろ文部省の管轄にあるかと思いますが、あの一節の中に節操のないものという項があると思うのであります。この言葉はいくらにも解釈できると思うのであります。而もこの言葉の背後には非常におかしなことが実際あると思います。例えば戰時中において食うために止むを得ずにいろいろの公職に就いた。勿論その人は、その人が意識的に軍國主義者であつた場合もあります。或いは又止むを得ずに軍國主義をやつたといいますかその職を守るために、そういう風を装つた人もある。ところが一歩を譲りまして、戰時中非常な軍國主義者であつた。そういたしましても、戰後の新しい事態によりまして、自分の過去の過ちを認めて、そうして民主主義的な運動をやる。或いはそういう精神に切り替えたというふうな場合に、実はこの節操云々のことのために引掛つております。これが適用されますと非常におかしなことになりまして、戰時中は非常に軍國主義者であつた。現在も依然として軍國主義であるこういう場合には、これは節操を通しておるわけでありまして、この條項には入らない。併し戰時中には軍國主義であつたが、現在はそうでないはいうのは、これは節操が悪いというので、この條項に引掛る。これでは全くこの條項のために、依然として現在においても軍國主義であることを奨励している。そうでなければならないということになつておるということであります。実はこのために、廣汎に引掛つております。勿論そういう人々は戰時中においても、それは殆ど軍國主義ではなかつた。それが戰後においては、機会を得て最近民主主義的な運動に働いておる。而も重要な地位に就きつつあるというような人、そういう人が非常に掛かるわけです。ところが問題はこういう條項が、全て非常に軍國主義者であつて、現在切り替えているという人に適用されておるのではなくて、反対に非常に民主主義的なむ運動に挺身しておる人を何とかしてあらを探して、その職を追放するというような意味で、非常に悪用されておる。こういうような場合の例が非常に今日多いと思います。そういう点の実際の運用について責任を持たれる大臣が、どういうふうにお考になつておるか、というのが第二点であります。
 それから警察、或いは裁判所の方で、裁判所の方は、これは直接余り関係ないのですが、警察の方で可なり勞働者のストライキ運動、この勞働運動に非常に干渉があります。司法大臣はこういう干渉をどう考えておられるかということをお聽きして置きたいのですが、具体的に裁判所の問題で、実はこれは私が名古屋に行きましたときに聞いたのでありますが、直接当面したのでありますが、愛知製鋼爭議のときに、ストライキが起つておりまして、そのストライキに反対をした一部の連中が、その組合の決議によりまして、組合員としての権利を停止されたのであります。その停止された連中が民事裁判所に提訴してわけでありますが、ところがその提訴を裁判所が取上げて、そうして仮処分を決定したわけであります。それは一万円を供宅させて、そうしてこの組合がそういう一部のストライキ反対の組合員の権利を停止するということはよろしくないから、直ちにその組合員に参加する権利を認め、そうして組合大会の招集を求める権利を妨げてはならないというふうな決定をしたわけであります。通達されたのでありますが、こういうことが合法的とはどうか、今までは、主としてこういう問題は、勞働委員会の方へ提訴して、問題を解決しておつたと思うのでありますが、この点法相の御意見を伺いたいと思います。
#12
○國務大臣(鈴木義男君) 中西委員の御質問の第一点、資格審査委員会を一層民主化するつもりはないかというお尋ねであります。これは見方によつて官僚的であるとか、特権階級的であるという見方がいろいろな機会において起り得ると思うのでありまするが、私どもの見るところでは、只今の中央公職適格審査委員会は、相当進歩的な自由な考えを持つた人が入つておるつもりでありまして、特に今一層民主化しなければならないとは考えておらないのであります。ただ強いて申せば、共産党又は共産主義を奉ずる人を入れてない点が、あるいは遺憾であるといわれるかも知れないのでありまするが、これは今までの数的な比率その他から出て來ておる……、そういう何も正確な基準はありませんが、暗黙の中に、そういう考え方から只今のような構成を持つておるのだと思うのでありまして、政府としては、特に非民主的であるとは考えておりませんので、さよう御承知を願いたいのであります。
 それから公職追放の基準が形式的であるというお尋ねでありまするが、これは確かに形式的なのでありまして、これは誰がやつて見ても、ちよつと基準というもは、形式的に決める外に決めようがないのでありまして、実際に運用する場合に、十分その人が追放に値する人であるかどうか、間違つて、ああいうものを書いたのではないかというようなことで、御審査を願う外ないのでございまして、実際具体的には、それぞれただあるものは書いたから追放してしまうのではなくて、それを書いたけれども、本質がその人は自由主義であり、民主的な人であつて、いわゆる軍國主義の鼓吹もしなかつたというような場合には、多く追放を免かれておるという例もあるのでありまして、大体においては私は基準は形式的であるが、運用は健全に行つておると考えておるのであります。ただこの節操なきもの云々ということは、実はこれは文部大臣の管轄に属する問題でありまして、私の方の管轄に属するものには、実際問題としては、これは起こらないのでありまするから、私は責任あるお答はできないのでありまするが、設例のような元軍國主義で、今も軍國主義であるという人は、これは節操はあるが、当然追放される人でありまして、追放されない人は、これは間違つておる。元軍國主義であつたが、今は民主主義であるという人は、これはそれにも拘らず、戰時中の活動が烈しかつたために追放される人と、それほどでもなかつたということ、現在民主主義的であるということと相俟つて、これを追放から除外してもよかろうと、こういうようなことになる場合があると思うのでありまして、具体的に承りますれば、いろいろ又問題が出るかも知れませんが、抽象的に御設例のような場合には、やはり節操なきものという範疇に入る人が、その節操なき程度に応じて追放を受けておるのではないかと、こういうように考えるのであります。それで総てそれ等は委員会がやることでありまして、政府は決して指図等いたさないのでありますから、これは委員会の責任において、又委員会の形式において、やつておるのであるということも御承知を願つておきたいのであります。それから次の警察が、ストライキに干渉する、これは原則としてあるまじきことでありまして、ただ事実上暴力行爲に出るとか、治安を害するという場合に、これを阻止するために、実力行使に出ることは、止むを得ないことでありまするが、ストライキの、或る意味において範囲を逸脱するということになるわけでありまするから、そうでなく正当なる勞働法において認むる爭議をやつておりまする限り、警察権は決して干渉すべき限りではないのであります。設例の愛知製鋼爭議のことは、私はよく存じませんが、これは民事訴訟として扱つたようでありまして、それが妥当であるかどうかは、ちよつと疑問であると思いまするが、そういうやり方もあり得るということは考えられるのであります。併し仰せのように勞働委員に提訴して、そうして勞働委員から、もうこれに検察権の発動を必要とするというような場合には、検事局に訴え出るというような建前になつておるのでありまして、仮処分を用いたというのは、少しどうかと思うのであります。もう少し具体的に内容を知らなければ、責任ある批判はできませんが、原則としてストライキには決して干渉させない。こういう建前でおるのであります。検察権も勞働委員会、勞働組合等の要求を俟つて発動するという建前にいたしておる司法省の方針でありますから、御承知を願いたいと思うのであります。
#13
○西郷吉之助君 私は追加予算に関係いたしまして、斎藤國務大臣に御所見を伺いたいのであります。今囘の追加予算を見ますると待遇改善費といたしまして、一般会計におきまして、補正第四号から第七号、その追加予算まで、合計約三十六億円、その外この枠以外に、地方警察費國庫負担金中約五億三千万円、又義務教育費中國庫負担に属するものが約十三億六千万円、合計十九億、その外に特別会計におきまして、鉄道特別会計における待遇改善費が四十八億四千万円、又通信事業特別の会計における待遇改善費が四十一億余万円、合計約九十億、合計いたしまして約百四十四億八千万円というのに反しまして、今囘の補正予算におきまして、行政費の節約、大約十五億円が計上せられておるのでありまして、そのうち人件費の減少は僅かに十億円でありまして、他は物件費等であります。即ちその差引額は待遇改善費の計上のために、非常に増加する結果と相成つておるのでありまするが、又今日本院の本会議におきまして米窪勞働大臣からも御説明があつたのでありまするが、官公廳を初め現在の千八百円ベースでは、どうしてもやつて行けない。それで今囘提訴に基いて中勞委におきましては、缺配中の分として或程度の補給金を出すということも承つておるのでありますが、今日の政府の方針に基くところの物價を六十五倍に引上げ、これは同時に物價と賃金を同時に安定せしめるというこの方針が、今日までみておりましても、物價が益々上昇の一路を辿つておりまして、千八百円では食えないということは、もうこれは常識と相成つておるのであります。又今日の米窪勞働大臣の御説明でも、臨時給與審議会等を設けて、來年一月からの給與基準を決めるというお話もあるのでありまするが、当然來年度の予算、又はこの追加予算についても、今囘の提訴の関係から補給金の増額ということが考えられるのでありますが、今日の我が國の國家財政から申しまして、かくいたしましては待遇改善費が増大する一方であつて、今日の予算面から申しても、現状のままでしておるなりば非常にそのパーセンテージが殖えて來る。併しながら物價が今日のように上昇すれば、官公職員の待遇は勿論のこと、民間の会社においても相当の賃金を出さなければ、食つて行けないことは事実でありまするから、第一にこれに対しては政府自ら行政整理を断行しなければならんと思うのであります。併しながら今日の官公廳の職員というものは、鉄道においても通信事業におきましても、戰時中に非常に人員が増加したのであつて、それに対して戰後財政面からどうするかというふうな見地から、これを整理するということが、どうも今日まではつきりしないのであります。先般本委員会におきまして私は総理大臣にも御質問申したのでありまするが、極めて抽象的な御囘答でありまして、どうもその点がはつきり掴めなかつたのであります。よつてその衝に当つておられるところの斎藤國務大臣に対しまして、今日どういうふうにこれをなさるつもりか、どういうふうに現在まで行政調査部ではなさつておるのかということをはつきり伺つて置きたいと思うのであります。この点に関しましては、衆議院の方におきまして、國務大臣より御所見の発表があつたようでありまするが、今日議会におきましては、速記録等の調製が遅れており、衆議院の方でどういうふうなことをお述べになつたかも、我々には窺うすべもなく、又向うの傍聽もする暇もないのでありますから、これは私のみならず、他の委員においても非常に関心を持つておられますので、この際それに対しまして、この行政整理の問題、又どうしても待遇というものは改善しなければならん。そういうふうな段階に追い込まれておりまするので、それにはやはり相当の人員の削減を必要とすると思うのでありますが、併しながら今日の現状におきまして、人員の整理というものは、なかなか重大な社会問題でありまするから、その整理はどういうふうな考でなさるのか。又その配置轉換も、どういうふうに迅速に行うつもりでおられるか。そういうふうな点を、我々が十分納得のできますように、待遇は今後とうなさる。又行政整理、出先機関の整理というようなものも、どういうふうな英断を以てなさるのか。そういうようなことを、我々も非常に注意しておりますので、この加予算、厖大な追加予算を審議いたします上にも、又來年度からの予算に対する我々の心構えからいたしましても、この際、この大きな問題につきまして、その方の斎藤國務大臣から詳細に御説明を願いたいと考えるのであります。
#14
○委員長(櫻内辰郎君) 斎藤國務大臣。
#15
○國務大臣(齋藤隆夫君) 行政整理のことは、先般衆議院においても質問がありまして、大要総理大臣からして答えられておられます。即ち行政整理の内容は、行政機構の改革、公務員制度の改革並びにその運用等、併せて人員の整理、経費の節減というようなことが、行政整理の内容をなしておるものと思うのでありますが、私の考も、もとよりその通りであります。併しこれを実行するに当りましては、なかなかむずかしい事柄でありまして、歴代の政府も行政整理を口にしない者はないくらいでありましたが、これを徹底的にやつた者は恐らくはないと思うのであります。今日は併し國民諸君の要求もございますし、政府の方におきましても、できるだけその成績を挙げたと思つておりますが、第一には行政機構の改革でありますが、日本の行政組織は、御承知の通りに、明治以來の傳統によりまして、いろいろその根が深うございまして、この傳統をば根本的に覆えてしまつて、更に新しきものを拵えるということは、これは事実困難でありますのみならず、それが必ずしも時代の要求に応ずるものとは考えておりません。それ故に、理論においても、実際においても、でき得る限りの一つ機構について改革をいたしたいと思つております。その中で、昨年の十一月の末に、御承知の行政調査部が発足いたしまして、及ばずながら私がそれを主宰して、行政機構につきましては、内外文明國の組織も参酌いたしまして、いろいろ調査いたしております。その調査の結果は、たしか二囘ばかり國会に報告しております。行政調査部の官制におきましても、國会及び政府にその結果を報告しなければならないということになつておりますからして、報告しておりますけれども、まだ余り具体的に、何をやろうかということが現れておらんと思つております。これは余程浩瀚のものでありますからして、若し機会がありましたらば御一覧を願いまして、行政調査部はどういうことをやつておるかということを御承知願いたいと思います。それからして行政機構の改革といたしましては、御承知の通りに近頃内務省の解体とか、或いは司法省の構成を改革するとかいうようなことが現れまして、これも國会に提出いたしておりますりるか、いずれ最近に提出いたしまして、皆さんの御審議を仰ぐことになつております。それからして公務員の制度の改革につきましては、もうすでにあの公務員法が國会を通過いたしまして、それが実施せられまして、着々この制度の目的を達する準備に今取掛つてかりまするから、これも行政機構改革の一環をなしておるのであります。その外にも行政調査部で調べておりますことは大分あります。近頃問題になつておりますところの建設省の設置でありまするが、内務省が解体いたしまして、内務省の國土局と、それからして復興院とを併さす建設院というものをば設置することとなつておりますけれども、建設院だけではこれはどうも不満足であるからして、もつと廣く建設省を設置せよという呼声が大分國会におきましても起つておりまして、衆議院の地方自治体の委員会でありますか、頻りに建設省を設置せよという要求がありますが、これも今十分調査いたしております。それからして行政官廳事業官廳を離したら宜かろうというような議も起つておりまして、例えば今の運輸省の鉄道経営に関すること、こういうことは行政と違うからして、事業官廳を拵えて、それに任した方がよいじやないかというような議論がありますので、鉄道公廳とか、通信公廳とかいうようなものも調べておりまして、これも相当に案ができておりますけれども、まだまだ関係方面との交渉もありまするし、関係官廳との折衝もありまするので、どうなるか、この案の運命はまだ今日確言することはできないことになこております。それからして今お話のありました中央官廳の地方出先機関を整理すること、これにつきましては、もう案ができまして、これも関係方面と交渉中でございまして、この議会にもう出せんかも知れませんが、次の通常議会には相当徹底した案を出すことができると思つております。要するに新憲法も実施せられまして、なるべく官廳の組織及びその運用は民主的に、能率的に且つ簡素化いたしまして、一般の國民に迷惑を掛けないというこの方針を以て進んでおりますのが、これが行政機構改革に関する一般の方針であります。それからしてこれまで行政整理と言えば、直ぐに人員の整理、これに伴う経費の節減が重きをおかれておりまするが、いずれ行政整理をやりますにつきましては、この方面に力をいれなくちやならんと思つておりますけれども、まだそこまではよく具体的に決まつておりません。いずれ來年の予算と睨み合せまして、相当に人員も整理し、又経費も生み出して來なくてはならんと思つておりますが、人員を整理すると申しましても、御承知のような有様でありまするからして、失業対策、失業の受入れ態勢が整つておりませんというと、人員を淘汰することも、なかなかむずかしいと思いますからして、こういう方面を睨み合せまして、次の予算を編成する前におきまして、相当な整理をやらなければならんと思つておりますけれども、それは併し私が主宰しております行政調査部の研究することでなくて、いずれこれは政府全体といたしまして、余りに遠くない中においてその大方針を決めて、そうしてこれを実行するがために関係各省、各廳と諮らねばならんと思つております。今日はまだそのくらいの程度でありまして、今どこまで、どういうことをやるか、どの程度において、人員を整理するか、どれだけの金を生み出すかというようなことは、まだお答をする時期には至つておりませんから、どうか悪しからずその点は御了承を願つて置きたいと思います。
 片山総理大臣が答えられたことも、何分に詳しくお答えをするまでに、まだ進んでおりませんからして、極めて一般的の政府の方針を述べられたに過ぎないと思いまするが、私が行政調査部といたしまして、行政整理に関係しておりまする点は、大要右の通りでございまして、行政調査部といたしましては、政府の方針が決まつて、それに応ずるがための下準備をしておるだけのことでございまして、行政整理で計画したことがそのまま案となつて現れて來ることでもございませんからして、これ亦お含みを願つておきたいと思います。
#16
○西郷吉之助君 亦今いろいろ御説明を頂きましたが、お話の中に行政官廳と事業官廳とを切り離して行つてはどうかというふうな説もあるので、鉄道及び通信についてのお話がございましたが、そういうふうなことも一つの必要な考え方と考えるのでございますが、そういう際には、今日大蔵省の所管になつておりますところの専買局等も、当然鉄道、通信と共に事業官廳の方に移るべきものであろうと考えまするが、若し今お話のように事業官廳と行政官廳とを切り離す等の際には、専買局等も当然それに含まれるものと考えて宜しいものでございましようか。その点もお伺いして置きます。
#17
○國務大臣(齋藤隆夫君) 実は昨日行政調査部の部会を開きまして、この事業官廳のことについて、いろいろ相談いたしまして、只今申しました鉄道公廳、通信公廳というものの具体案はほぼできかかつております。その中でこの専買局というものが問題になつておりまして、これは果して公廳にするが宜いのであるか、悪いのであるか、ということがまだ実は決つておりませんのです。専買局と外の鉄道や通信と大分性質が違うもんでありますからして、どうしてもこれを公廳にするということはどうだろうというような工合で、いろいろ意見が出まして、まだ決まつておりませんが、いずれこの上ともよく利害を研究いたしまして、どちらにするか、余り遠くないうちに決まるだろうと思いますから……。
#18
○委員長(櫻内辰郎君) 総理大臣と大蔵大臣が今お見えになることになつておりますが、農林政務次官が見えておりますから、農林省所官についての御質疑がありましたら、この際にお願いいたしたいと存じます……。それでは暫時休憩をいたします。
   午後三時九分休憩
   ―――――・―――――
   午後三時五十五分開会
#19
○委員長(櫻内辰郎君) 只今より開会いたします。岡田宗司君。
#20
○岡田宗司君 昨日中央勞働委員会におきまして、全通から出しました要求に対しましての裁定が下されました。その結果、それによりますと、二・八ヶ月分の給與をすべきことということと骨子になつておる。これは單に全通だけに止まらず、次に國鉄その他全官公廳の問題となるわけでございますが、そういたしました場合に、これらの給與の増加といたしまして相当多額の費用を國家は支出しなければならんのでございます。この追加予算におきましては、千八百円ベースということで予算がくまれておるのでございますが、若しこの中央勞働委員会の決定に対しまして政府が服するということに相成るといたしましたならば、その財源を政府は如何にして求められるか、この点につきまして先ず大蔵大臣にお伺いいたしたいと存じます。
#21
○國務大臣(栗栖赳夫君) お答えいたします。この中勞委の裁定につきましては、実は本日初めて全文を拜見したような次第でございましてなお中勞委その他からも、いろいろ説明を聽くことにも相成つております。中勞委で又財源等についても、今後なお説明等もあろうと思うのであります。何分そういうような状態でございまして、政府といたしましては、今検討を始めたところでございまして、ここでこうだということは今少し時間を仮して頂かないと何も申されん次第でございます。少しお待ちを願いたいと思つております。
#22
○岡田宗司君 この裁定につきまして、裁定の下る前に、中勞委より政府の方に対しまして、何らかの内談と申しますか、打合せ、そういうものは全然なかつたのでございますか。
#23
○國務大臣(栗栖赳夫君) 政府といたしましては、この問題は單に財政上のみならず、日本國民経済全体の上にいろいろな大きな意味を齎らし、又影響を與えるものございますから、勞働閣僚の会議におきましては、西尾官房長官をこの代表者といたしまして、中勞委から連絡のあつた場合は、とるということになつておつたのでありますが、格別この中勞委からの十分な連絡はなかつたように聞いております。なお大蔵大臣としましては、國家の財政を聽きたいというような話がありまして、一度公廳会へ出たのでごごいますが、混乱をいたしまして一言も発しないで帰つたような次第でざごいます。その後呼び出しもございませんので、私といたしましては、それ以外には何らの関係を持たなかつたような次第でございます。
#24
○岡田宗司君 政府といたしましては、今次の爭議につきまして中勞委によつて何らかの裁定が下される。そうしてそれは必ず支出を伴うものであるというふうに私共には考えられるわけなんでございますが、それにつきまして、既に何分かの、その場合における準備をされておつたかどうか、つまり財源支出についての用意をされておるかどうかということについて、お伺いしたいと思います。
#25
○國務大臣(栗栖赳夫君) 今囘この追加予算にいたしましても、既に本会議の場合に述べましたように、随分國民経済にとつては無理も多数な点において含まれておるのでありますが、この健全財政ということで先まずインフレーシヨンを防止するというような点からのバランスのとれた、それは單に各目的でなしに、実質的にも相当深く抉つて、バランスのとれた財政を作るというようなことについて、全力を挙げたような次第であります。それでこの中勞委の裁定の問題につきましては、いろいろ仮定を前提として財源を取つておくというようなことは、全くいたさなかつたのであります。併しなお今後若干の例えば内務省の解体であるとか、その他人事院でございますか、それの設置であるとか、その他の或程度の小さい追加予算を盛らなければならん。或いは六三制の問題であるとか、そういうようなことで若干の財源は持つておるのであります。そういうものを内閣としましては、全体の面から見て、どのくらい賄い切れるかどうか、又中勞委でああいう裁定を下されるについては、財源についても相当の検討がしてあるはずだと思うのでありますが、その点なども十分聞きまして、そうして検討をして善処をいたしたいと、かように考えておる次第であります。
#26
○岡田宗司君 それではこの中勞委の裁定の結果といたしまして、新たに追加予算を組まれると、こう承知してよろしいわけでございますか。
#27
○國務大臣(栗栖赳夫君) お答えいたします。只今いろいろ検討をいたしておるのでございまして、それ以上に経済閣僚、或いは内閣として何ら決定をいたしておりませんのでございますから、それが決まるまで若干の日をお待ちを願いたいと思います。
#28
○大野幸一君 私は裁判官、検察官並びに刑務官の待遇問題について、特に大蔵大臣に対して御質問を申上げたいと思うのでございます。先般我々が司法委員といたしまして名古屋控訴院管内を視察いたしました。いろいろ我々に対する報告を司法官はされます。裁判官並びに検察官は皆報告されますが、不思議なことに一言も待遇のことに対しては申されないのであります。漸く我々の間に対して、初めて赤裸々なる実情を吐露されるのであります。それによると全く裁判官、司法官は今や食うに食えなくて、或者は賣り食いをし、全くたけのこ生活をしておるという実情がはつきり分かつて來るのでありまして、優秀なる裁判官はどしどし辞めてしまう。実に氣の毒な状態であるのであります。そこで先般のような山口判事のような問題が起きまして、漸く世間に注目されまするけれども、併しああいう人は一、二に留まらないのでありまして、私の知つておる人でも、いよいよ食えなくて裁判官を辞めて弁護士に登録した、その登録の喜びを持つて帰るときに倒れて、日比谷で死んでしまう。こういう実情にあるのであります。私は司法官がこれ程非常に遠慮深くて、そうして俸給のことをいうことは恥だというように考えてやつておいでになる、今まで、元來司法省は大蔵省に対して遠慮がちであつた、司法大臣が伴食大臣であるというような意味から、非常に何だか司法省は大蔵省に、いつも予算を大々的に削減されていたというような、こういうような今までの実情であつたのでありまするが、今や日本は司法官の地位こそ、最高裁判所長官が内閣総理大臣と同じ地位を獲得して、そうして厳然としてあらねばならないこのときに、司法官が今や総崩れとなるというような実情であるのであります。こういう場合に私は大蔵省当局がこの際、この司法官の待遇問題に対する大体のお考えとして、こういうことを希望したいと思うのであります。
 一体司法官は他の行政官と違つて非常に厳格なる氣持がありまして、例えば臨床訊問をいたしましても、まあお茶は飲むけれども、コーヒーが出されれば飲まない。菓子は勿論手をつけない。こういうような状態であります。こういうような状態であるのと、実際の行政官の今日の状態とはそれは違う。違うところに同じ官吏であつても、司法官にたいしては何とかして、この特殊な地位というか司法官の特殊性から、一つ司法官には特に何とかしてそういう厳格なる地位が保たれ得るような特遇が、予算の上において現せるか現せないか、こういうことを一つお尋ねしたいと思うのであります。例えば昨日でありましたか、ルイス博士の講話を聽きまして感じましたのでありますが、一九二六年にルイス博士が刑務所長をされておつた頃に暴動が起きた。調べて見ると、その原因は、看守が囚人から物を貰つたり金を取つていた。こういうようなことが分つたので、その看守を呼んで、そうしてお前達がそういうことをしておるのは知つておるが、それはどういうわけでそういうことをしたか、こういうことで聽いて見ると、非常にその月給が安いという実情を話されて、それでは今囘限り許すから、そういうものは、どのくらいあるか、率直に申出てくれ。申出れば、その実情を市会に報告して、そうして市会で予算を貰つて待遇を改善するから、今囘に限つて検挙しないことにするからということで、自分のはからいで申出をさせたところが、百人以上もあつた。それを市会に諮つて給料を倍にした。倍にしたならば、そこでいい刑務官も出て來て、それから以後は囚人の暴動がなかつた、こういう話であります。今囘各地に起こつておりまする刑務所の暴動、監獄の暴動事件、脱走事件というようなものも、畢竟するに、このルイス博士の筆法を以てすれば、刑務官の俸給が安かつたということになるのでありますが、さきの判事の餓死事件、或いは又今囘の刑務所の不祥事件なんかも、春秋の筆法を以てすれば、これはどこにあるかといえば、その餓死の教唆者、或いは監獄の不祥事件というものも、大蔵大臣にあるのじやないか、大蔵大臣が何といいますか、司法省の予算を余りに出ししぶるというような従來のやり方からこういうことが起きたのではないか、こう思うのであります。今後検察廳と裁判所とは独立しまして、そればためにいろいろと設備とか官舎だとか、或いは廳舎だとかいうようなものについて、両者の間において分離して行かなければならないし、おのおのその財産を持つて行かなければならん。こういうことに対して、全く今までと異なつて今後の大蔵当局はこういう点について一つ考慮して頂けるか、どうかということをお伺いしたいのであります。我々は本年十月八日、司法委員会の決議を以て、この点に関する決議をいたしておりますが、これに対する大蔵当局としてのお考えをお伺いしたいと思うのであります。
#29
○國務大臣(栗栖赳夫君) お答えいたします。今日まで裁判官、こういう方面の官吏の俸給が低かつたということにつきましては、いろいろ事情もあろうと思います。或いは高年の人が相当多くて、人の出入りがつまり行政官のように激しくないというような点とか、或いはどうも司法大臣が腕がなくて、大蔵大臣に押されて俸給が少なくなつたという意味ではなかろうと思う。併し低いということは私確かにこれは私も全く同感でありまして、これをなんとかしなければならん。こういうことは私も考えている次第であります。そこで先般も司法関係の委員会にも出まして、既でに申上げたのであります。殊に私としては若干法律の方の関係も多少は心得ております。殊に裁判官の如き者は、人がなくなれば直ぐ代りを求め得るというものではないのであります。専門の知識と経験を持たなければなかなかできないのであります。なかなか代え難い場合がしばしばあるのであります。然るに給料が低くて、弁護士になつて退官をする者が多いというようなことになりますというと、一國の公正なるべき裁判にも影響を持つのであります。裁判官の特殊性というものも十分尊重をいたしまして、この待遇の上においては改善を加えたいと思うのであります。これにつきましては、既に司法委員会の方でも御説明をいたしたと思うのでありますが、今後は殊に民主的な新しい國家を作り、そうして裁判制度というものも公正に厳粛に行われるということにつきましては、やはり十分な待遇をしておかんというと、できんという点を私も痛感いたしますので、今後については、十分考えたい。かように考えている次第でございます。既にこの間の法律案等につきましては、その席上へ出て賛成を言い、考慮もするということを申上げた次第であります。尚今後もその点は十分考えたい。かように思つている次第であります。
#30
○木村禧八郎君 昭和二十二年度一般会計予算補正第七号は、追加予算の中で最も大きい金額でありますが、この審議に当りまして、大蔵大臣がここに御出席になつて、御質問いたすのは初めてでございますので、少し基本的な問題について御質問いたしたいと思う。その前に一度今後の追加予算編成過程におきまして、大蔵当局が非常に努力されたということについては、一度敬意を表したいと思うのでありますが、併しながらこの補正予算を仔細に検討いたしますると、まだ我々には十分納得できない点がありますので、そういう点について御質問いたしたいのであります。併しながら短い期間多数の方々が御質問いたす予定になつておりますので、私としては極はめて簡單重要な点について御質問申上げたいと思うのです。大蔵大臣におかれましても、簡單平明に、率直に御答弁あらんことをお願いする次第であります。
 先ず質問の第一は、この補正第一号から第八号に至りますまでの今度の追加予算は、本予算と殆ど匹敵する程の大きな金額でありまして、これが國民経済に及ぼす影響は極めて深大なのでございますが、かくの如き大きな追加予算を編成するに当たりまして、大蔵大臣としては一体どういう編成方針を以てこれに臨まれましたか。先ずその補正予算編成の根本方針をお伺いいたしたいと思うのであります。これについては衆議院の方においても、こういう質問が出たと思うのでありますが、御答弁は簡單で結構でございますから、その根本の方針の点について御答弁を願いたいと思います。
#31
○國務大臣(栗栖赳夫君) お答えいたします。既に本会議で方針について御説明申上げておるのでありますが、先ず第一は、この経済危機を、このインフレーシヨンを抑止するということが非常な大きな問題であります。インフレーシヨンを抑止するということにつきましては、通貨の面の量を抑えるというのみならず、生産増強、こういう面にも、両々考えなければならぬわけであります。そうして、併しこの予算としましては、他方で生産増強という方面を考えながらも、通貨が……尤も通貨の放出は、今日まで、前内閣の予算を見ましても、その前を見ましても、すべて國家であります。そこで國家のこの財政ということについて、この日銀通貨が市場へ出るということを極力抑える。こういう点が先ず第一であります。それから本來いうならば、健全なる財政は、健全なる國民経済の上に築かれなければならんのであります。然らば健全なる國民経済にするのに何を第一にすべきかという点であります。これは政府自ら範を垂れて、この通貨の増発を誘致するような、好ましからざる影響を與える措置をとらぬという点にあるのでありまして、そこで國民経済の建直しということを見ながら、財政の建直しということに重点を置いた点であります。これば第二の点であります。それからこれにつきましては、國民の負担その他というものも、成る程平常時で考えれば簡單でございますが、極めて無理のある時期、無理を忍びながも盛り立てると、こういう点を考えた次第であります。第三の点はやはりこの健全財政、通貨増発を誘致するような点は、極力抑えて、そうして健全財政、健全な地方の財政、それからやはり健全金融というような方面を一環の操作をしまして、そうしてそれには先ず健全財政から入つて行かなければならんという点を考えまして、そうして單に名目だけどはなしに、実質的にも相当深入りした健全性というものを、求めようとして非常な努力をいたした次第であります。そうして先ず均衡のとれた財政ができるということは、この國際的な日本の信用というものを、先ず一歩進めるわけである。そういうことによつて、幸いにも貿易再開、殊に現下の日本の必要といたしますところの、輸出を振興して、そうして基礎資材その他を輸入し、産業の開発にまつて、而も輸入資材などを呼び水として建直しをするという、こういう点に第三番目には重きを置いた次第であります。なお帳面を合わすということだけでは駄目でございまして、この予算を忠実に実行する。それがためには歳出の面よりも、歳入の面に非常に重点を置く。その筋との関係で、丁度満百日を費したのでありますが、それがために予算の提出が相当遅れて参りました。遅れて参りまして、相当窮屈、無理を伴うのでありますけれども、この歳入を確保するという点に、非常に重きを置いたわけであります。又置かざるを得ないのでありまして、それがためには、このいろいろ納税機構その他についても、十分併せ考えて、國民にも納税の思想というものを十分普及し、現在の危機をも十分知らしてやつて行きたいと、かように考えて單に数字を守るのみならず、忠実に実行して納税などを忠実にさせて、そうしてこのバランスのとれた財政として、更に実質的にこの目的を達するような方法をとりたい。かように考えたのであります。なおこの予算が國家とかその他の一連の経済政策、殊に片山内閣の政策というものと調和をとり、今の基礎としておりますベースに重大なる影響を與えないようにということも十分考えたのでありまして、そういうようなここに挙げました主として五つの方向、方針を立てまして、かように編んだ次第であります。出て來ます数字というものが、終戰処理費その他に相当の大きな金額を盛りましたが、片山内閣として是非盛らなければならん特色のある政策をもできるだけ重要性に従つて並べまして、そうして重要の順序によつて配列し、そうして一面においては終戰処理費を少くし、一面においてはこの政策を実行するための予算を盛るというように努めた次第でございます。
#32
○木村禧八郎君 只今の御答辯によつて補正予算編成の根本方針は大体了承いたしました。その中一番基本的なものは、結局いろいろお話がございましたが、煎じ詰めて見れば財政のバランスを合せる。いわゆるバランスド・バジエツトを組むという点、第二はこれによつて國民生活の安定に支障のないように考慮を拂うということ、第三点は國民経済上の再生産を破壊しないような考慮を拂うということ、一番重要な点は大体この三つにあると拜聽いたしたのでありますが、そうしますと、この三つの点において、お考えはまあそうであつても、実際においてこの三つの点が実現されなければ、折角の予算編成の方針も画餅に帰するのでありまして、又インフレーシヨンもこれを防止できないのであります。従つてバランスド、バジエツトの点、いわゆる均衡財政の点、國民生活の安定の点、それから國民経済上から再生産を破壊しない。そういう三つの点について簡單に御質問したいと思うのであります。
 先ず第一に赤字を出さないこと、これは大蔵大臣のお話もございましたように、結局通貨面からはインフレーシヨンを促進させない。そういうことを意図されているわけでありまして、それならばこの均衡予算によつて通貨面……今後通貨の増発というものはその面から抑えられる。そういう予算であると思うのであります。併しながらそういう面から仮に通貨が抑えられても、他の面から通貨の膨張が起こりますと、やはりインフレーヨンは促進して行くであります。私の見るとこようにりますと、今後通貨の膨張を齎らす危険性のある原因は相当沢山あると思うのです。第一には、いうまでもなく復興金融金庫債券の問題でありますが、これは大蔵当局において極力日銀引受けを避けて、市中消化をされておりますが、併しながら市中における資金の需給状況から見まして、そう簡單に全部市中消化は困難ではないかと思うのです。例えば持株会社整理委員会における財閥株の放出もありますし、或いは又六・三制による地方債の起債もございましようし、又特別会計の方の公債発行もございましようし、又企業民主化によるいわゆる増資の問題も起きて來ましよう。そうしますと復金債券の市中消化というものもそう簡單なものではない。これが日銀引受けになりますれば、この方面からも通貨は膨張いたします。又貿易資金特別会計の借入金はこれは又通貨膨張になるわけであります。
 それから第二に先程も大蔵大臣のお話もありましたが、この予算の編成に当つては、歳入面において税をよく取るという面に重点を置かれたということでありますが、実際問題として千三百億の税をこれまで大体三百億ぐらい徴収して、今後において一千億税を取らなければならないのでありますが、実際問題として果してこれが取れるか、我々はこれを取れることを望んでおりますが、若し取れない場合に、大蔵省証券を発行して、そうしてこれを泳いで行く。傳えられるところによれば、大蔵省証券の発行限度も四百億拡張するやうに聞いておりますが、そうなりますと、この面から又通貨の膨張は免れないと思うのであります。又戰時中に累積されて、戰後に持越されているいわゆる各種の預金が沢山あるわけであります。こういう預金が引出されて行くということになれば、これ亦通貨の膨張になると思うのであります。更に又今後追加予算の要求が相当現れて來ると思うのであります。それが公債を以て賄われるということになれば、これ亦インフレの原因になるのでありますが、こういうふうに我々としては、今後仮に今の予算面において均衡予算を組んでも、今申上げたような面において、可なり通貨増発を齎す点が考えられるのであります。こういう点について大蔵大臣はこの通貨の増発、通貨のインフレーシヨンの前途、そういう点につきまして、どういうお見透かしを持つておられますか、この点を御伺いいたしたいとおもうのであります。
#33
○國務大臣(栗栖赳夫君) 木村委員の御質問でありますが、私も長年金融の面に携わつておりまして、その辺を最も心配いたしてのであります。実はこの追加予算を編みますにつきましても、その点についても随分検討議論も重ねて來たのであります。先ず今お話のように第一の問題は、復興金融金庫の債券発行であります。これは今日まで実は最初は一年の割引債券を一銭二厘で発行しておつたのであります。只今では大体一銭四厘五毛の利廻りに引上げておるのでありますが、これが市場では採算その他の点で非常にうまく行かないし、そのために多くの金額が日本銀行の引受ということになつて來ておつたのであります。この日本銀行の引受ということは、即ちそこに通貨増発があるのでありまして、日本の産業再建が復興金融金庫に頼る度が非常に多いということを思いますというと、この点で先ず通貨増発の途を切替えなければならんということを考えたのであります。そこで実はこういうような形をとつたのであります。これは特別会計による國債発行と併せてここで説明さして頂きたいと思うのであります。実は國民貯蓄運動が相当の効果を挙げまして、そうして去る九月の如きは百七十何億というような実績を挙げておるのであります。この運動を非常にするということは、勿論必要であります。そうして自由預金の純増の中で、大体封鎖預金の拂出しを差引いた純増であります。その純増の中で、大体半分を財政資金に、半分を産業資金へと向けるのであります。産業資金の点はその半分を囘収、その他ものを加えますので、相当の金額になると思うのであります。そうしてその財政資金の中で、一つは公債の消化、一つはこの復興金融金庫の債権引受けという形に持つていくようにいたしておるのであります。既に國債につきましては、そこで金融機関が國債を持ち得るように金利水準をも変えまして、そうして大体利廻りを四分五厘くらいのものにいたしまして、そうしてこの九月には十億、それから十月に十三億を市場消化だけで賄つたのであります。十一月、十二月は國債と同じような形を復興金融債券についても実行いたすのであります。復興金融債券のいろいろ金利水準、市場の水準、及び金融機関のコストなどから申しまして、一銭四厘五毛ではなお少しペイしない点もあるかと思いますが、そこでこの復興金融金庫の補償の下に貸し出すことが、足が少し高い点もありますので、そういうような復興金融債券の手取り利廻りと十分睨み合わせまして、両方をこみにいたしまして、金融機関でペイするところまで持つて行きまして、そうして引受けをするようにいたして貰いたい。こういうような話をしまして大体話ができておるのであります。そういうようにしますというと、日本銀行の引受けということは非常に削減されまして、市場消化、原則として市場消化一点張りで行きたいと考えておるのであります。そういうふうにして今後復興金融金庫の貸し出が多くなる、その多くなるのを、尚見合せて、債券発行或いは補償というふうなものもいたしたい。それを今申上げましたような市中の金融機関の共同引受というような形でやつて行きたいと思うのであります。市中の金融機関におきましては、こういうような事情もあるのであります。それは貸出しの対象であります企業が企業再建整備、或いは集中排除その他の点におきまして、見透しがつかん。そこで貸出しができない。そのために集まつた資金を一時いわゆる枠を在置して置きながら、日本銀行に返済しておるというような実情もあるのでありますが、そういう資金の場合に、その資金を復興金融金庫の補償によつて貸出す。或いは復興金融債券を引受けて、そして間接的にその資金を貸出しに廻すというような、あらゆる改善の方法をとつて日銀の資金をこれによつて大幅に流出することを止めたいと思う次第であります。それからなお只今お尋はございませんでしたが、この際申上げて置きたいのは、特別会計、鉄道と通信であります。これも従來は赤字でございまして非常に大きなものが借入金で賄うために、日本銀行券がそこから出ておつたのであります。これをも改めたい。かように考えまして、今囘例外的な措置であり、非常の措置でありますけれども、一先ず一般会計、一般収入から出ております一般会計から七十五億を繰り込みまして、そうして十二月から五月分のものは損益勘定において赤字を出さん。即ち日本銀行の借入れを行わない、通貨の増発をしない。こういうような方法でやつて行きたいと考えておる次第であります。
 貿易資金でありますが、貿易資金につきましては、この損益が赤字が出ておりましたので、これを借入金で賄いますと、やはり日本銀行の通貨の増発になりますので、一般歳入によつて補填しよう。そういうために五十五億でございましたか、それを見積つたわけであります。なおこの貿易資金の操作につきましては、従來もこれは前内閣の時にも、相当の赤字がその儘溜まつておるのであります。これでは金融の点に圧迫を與えるわけでございますが、十分考えまして操作等も収支の償うようにやつて行きたい。かように考えて十分その点をも改善を加えて或いは制度の上でも、再検討をいたす。こういうふうにいたしておるような次第であります。その他この預金部の十億の繰入でありますが、これも金融の関係で行きますと、通貨増発を招きますので、その辺も十分考え、預金部についても独立採算制ということでやつて行きたいと思うのであります。なおこの税が取れるか取れんかが極めて大事な問題であります。これを取らなければ、どうしあても赤字ということになる虞れがあり、その結果は一時の遣り繰りとして蔵券を出す。それがために日銀券が出る。こういう御説の通りの結果に來しますので、この点も十分考えたのであります。そうして大体この追加予算がその筋との関係その他の関係で非常に遅れました。そこで差迫つて巨額の税金その他を取上げなければならんという立場になつておりますけれども、徴収しなければならん立場になつておりますが、これも先程申しました税務機構の拡大強化と税務官吏の優遇というような点も十分考え、なお國民運動としても納税運動もいたしまして、そうして刻下の急務と、今の現段階における危機を國民が十分認識して税を納めるかどうかついう点等をも十分徹底的に滲み込まし、そうしてこの納税の実績をも挙げたい思うのであります。なおそれと同時に政府といたしましても、國民貯蓄運動も合せ行うのでありまして、國民貯蓄運動も合せ行うのでありまして、國民貯蓄運動は実は今年の一月から九月までで大体千億近い自由預金の増を持つておるのでありますが、これを更に來年の三月までは、この大幅の貯蓄をさす。その問題のために通貨の信用、今度の財政というものもそういう意味では十分考慮を拂つのでありまして、通過の信用というもの、或いは預金の安全性というものをも十分考えまして、そうして貯蓄をさす。それは通貨増発の誘致を防ぐという点と、その集まつた資金を一は財政資金、一は産業資金へと廻して経済再建に資そう。こういうような考でやつておる次第でございます。簡單でございますが、お答といたします。
#34
○木村禧八郎君 只今の点について大蔵大臣は一月から九月までに千億円近い自由預金が蓄積せられたというお話しでございましたが、これは恐らく無記名預金において多く増加したのであろうと思うのでありますが、併し無記名預金は、これは税の対象にならないと思うのであります。一種のこれは脱税となると思うのでありまして、このように沢山預金が集まつた半面においてそれだけ税金が新円において取れないという結果になるのではないかと思うのであります。この点は貯蓄と税との点をどうするかという点については、非常にむずかしい問題だとおもうのでありますが併しながらこのように沢山預金が集まるということは他面において、それだけ脱税が新円において行われておるということを意味するとなると、これは非常に重大な問題だと思うのでありますが、大蔵大臣はこの点どういうふうにお考になりますか。
#35
○國務大臣(栗栖赳夫君) この預貯金の増でありますが、これがどういう形態、性質において行われておるかということを先ず申上げんといかん思うのでありますが、これは本來申しますと、只今木村委員のご質問も、そういうことを前提としての御質問であろうと思いますが、長期性のある預貯金という形で集まらないというと、これは本來の性を持たんのであります。併しこういうような危機というものを上下したしておりますような日本の経済におきましては、長期性のある預貯金というものは十分集まつておるとは申されないのであります。併しこの短期性のものも相当あるのでございます。なおこの一面においては、政府はこの七月以來遅滞しておりまする支拂いというものも相当促進したのであります。これも従來は金を渡し放しという形であつたのでありますが、私はそれではどうもいかん。殊に終戰処理費用等の支拂いにも、そういう大口の金を渡し放しではいけないというので、最も主要なる取引先の銀行と連絡をとりまして、そこに必ず小切手を送り込むということにいたしまして、そうして必要なものだけをそこから出す。或いは一旦返済に当てまして、そうして更に返済をしましたから貸出しのマージンができますので、新たに貸出しをするとかいうように、極力大きな法人につきましても、現金として勝手に手許に残すというような機会を與えないような方法をとつたのであります。それが相当の増にもなつて現れたのであります。その性質から申しましても、まだこういう時代ではございますし、更に長期性のある預貯金の形で大幅に資金が集まらんという点が、将來の問題に残るのであります。性質はそういう意味において集つておりますので、必ずしも税を拂わないで、そうして預貯金の方に貯つておる。こういう関係だけではないと申さなければいかんと思うのであります。
#36
○木村禧八郎君 次にいわゆる健全財政の第二の要件であるところの國民生活の確保という点でありますが、この点については昨日すでに和田安本長官にお聽きしましたからここでは極めて簡單に、大蔵大臣にこの点についてお伺いしたいのは、昨日和田安本長官はこの官公廳の給與を引上げても、それは直接物價体系には影響しない。そういう御答弁であつたのでありますが、いわゆる物價秩序と賃金の値上げとの関連の問題であります。一般民間の給與の引上げは直ぐコストに影響いたしますが、この官公廳給與の引上げの程度では、これは財源が問題でありまして、その財源がインフレ的に調達されなければ、これは物價体系には直接影響ない。そういうような御答弁でありまして、私もそう考えておりますが、大蔵大臣はどういうふうにお考えでございましようか。
#37
○國務大臣(栗栖赳夫君) お答えいたします。官公吏の給料を引上げるという問題でありますが、これは先ず第一に引上げの程度がどういう程度かというも考えなければならんと思うのであります。この千八百円の水準を調整するとか、そういうような意味において適当なる金額と追加的に支拂う。こういうような意味におきましては、私も同様に考えている次第でございます。この支拂いをいたしましても、これは月々相当大きな金額になるのでありますが、それが購買力として好ましからざる方面の消費をするというまでの官公吏に余裕もないと思ひますので、私は木村委員、安本長官同様に解釈している次第でございます。
#38
○木村禧八郎君 最近のインフレーシヨンの昂進の結果、國民生活は又非常に窮迫もしておりますし、又紊乱しておるのでありまして、これはある新聞に出ておつたのでありますが、京都の警察部が大阪の鉄道局に対して、鉄道官吏が官服を一万円で貸しておつた。そういう記事が出ておる。それで京都の警察においては、大阪の鉄道局に抗議を申込んだところが、又大阪鉄道局で警察官にもそういう人がいないとも限らん。そういうような話であつたということであります。こういうような現象は、これは上海におけるインフレーシヨン下においても起つたことでありまして、こういうような状態になると、これは大変なことになると思うのであります。こういう点をよく考えられまして、殊に官紀がインフレーシヨンの結果紊乱するというのは、これは重大な問題でございますから、給與の改善の点については財源の関係もありましようけれども、十分に大蔵大臣においてもその点をお考え願いたいと思うのであります。この國民生活の側面についてはそういう希望を述べるに止めておきます。
 次にこの予算と再生産との問題でありますが、私はこの追加予算を通じて再生産確保の観点から大蔵大臣は一体どういうふうにお考なつておるかどうか、その中で一番再生産に大きな影響があるのは申すまでもなく終戰処理費でございますが、先ずこの点についてお伺いしたいのでありますが、この終戰処理費が日本の國民経済的な再生産に及す影響をどういうふうにお考になりますか。この終戰処理費は物の見合いおいてどの程度占めるのでございますか。日本の現在の生産の水準に大体どのくらいの割合を占めるのでありましようか。この点先ずお伺いして見たいと思うのであります。
#39
○國務大臣(栗栖赳夫君) 今のお尋ねの点は主として安本長官の問題であります。予算その他に関係する点で大蔵大臣として関係する限りをお答えしたいと思うのであります。終戰処理費というものについて物との裏付けどうなるか、而もその物をそれに廻すことにおいて國民の消費或いわ生産、そういうような資材をどういうように圧迫するという点を一番考えたのであります。そうしてこの終戰処理費につきましては、ポツダム宣言その他の関係もありまして、極力金額のみならず、物との関係の点についても検討を加え、そうして少くして頂くようにした次第であります。併し物が非常に圧迫するというような点は、今後の日本の生産が、現行行われております生産が三〇何%程度の生産でありますから、非常に少い。そういうようなもののためにと非常に圧迫しやせんかということも考えまして、物資の輸入という点をも考慮したしているのであります。これにつきましては回轉基金の設定が八月にあつたのであります。この実行ということにつきましても相当進んで参りまして、そうして日本が設備よりも、生産にはむしろ原材料というものが非常に少いという点を強調いたしまして、回轉基金の利用等によつて相当の資材をも入れるようにいたしたいと思うのであります。なおこの資材の輸入、クレジツトの設定等につきましては十分の努力を拂いまして、そうして物に、單に終戰処理費が圧迫を加えんよう、こういうような点を避けるというのみならず、日本の経済再建へのために大きな礎にいたしたいと考えている次第であります。なお回轉基金その他につきましては、別の機会において詳しいことを申上げたいと思いますので、この点で一つお許しを願いたいと思います。
#40
○木村禧八郎君 そこで参考のためにお伺いしたいのでありますが、今度の補正予算を含めて二十二年度の予算の中に占める終戰処理費の割合は大体三五%ぐらいであるようですが、ヨーロツパ諸國の敗戰國におけるそういう終戰処理費のようなものの負担、これは國民所得若しくは歳出のどの程度になるか、私の聞くところによればもつと以下である。そういうように聞いておるのでありますが、無論その額多くてもそれによつて國民経済の再生産がこれで破壊されなければ勿論それでよろしいのでありますが、参考のために若しかそういう点がお分かりでありましたなら、お聽かせ願いたい。
#41
○國務大臣(栗栖赳夫君) お答えいたします。この日本を中心として繞る現在の國際的その他の事情とヨーロツパにおける事情とはいろいろ異つた点も非常にあるのであります。又日本自体のこの経済、民度というような点をヨーロツパにおける敗戰國のその点というようなものも、違つた点が相当あるのでありまして、一率にはこれは申上げられないのであります。ハンガリーその他においても、こういう費用が國民の経済の立直りに圧迫をするということで段々減して貰うというような懇請を続け、そうして率も若干上げておるのであります。我々にいたしましても、勿論その点をいろいろ注意もいたしまして、そうしてそういうために非常に大きな金額からここまで削り落して頂いたような次第でありまして、先程來申し上げましたが、足りないものについては、資材の輸入その他についてもこれを補う。こういうような点を考えますし、なお今後もその点は十分努力を続けて行きたい。二十三年度の予算につきましても、十分努力いたしたいと、かように考えておる次第であります。
#42
○木村禧八郎君 連合國当局がこの終戰処理費関係で日本の経済の再生産を圧迫しては困るということについていろいろ配慮して下すつたということについては我々も承知しております。例えばダンス・ホールの建設とか、ゴルフ・リンクとか、或いはスキー場、そういうものの工事を中止されたということを聞きまして、我々はその好意を感謝しておるのでございますが、何分日本の敗戰後の経済というものは、現在の生産水準が事変前の三割及至上昇しても漸く四割程度、その少ない中から更に大きな部分がそういう直接再生産の面に役立たない。そういう方面に使われる場合、これは日本の経済を、再生産を破壊してしまえば、これは非常に不幸なことになるのであります。こういう点については大蔵当局においても予算面において非常に御苦心して、折衝されたことは分かるのでありますが、今後においても勿論、敗戰國として我々として十分その点は考えなければならんのでありますけれども、再生産を破壊されては、これでは意味をなさないのでありますから、今後ともその再生産と終戰処理費との調整につきましては、どうぞ真剣に折衝されて、そうして懇請されて、日本経済を破壊しないように一つその御努力をお願いする次第であります。更に最後に時間が余り長くなりますので、沢山まだ質問もございますが、省略しまして、最後に通貨安定の方策の問題についてお伺いしたいのであります。これに関連しまして一つ大蔵大臣に非常に抽象的なような質問でございますが、今の日本銀行券は一体銀行券でありますのか、或いは不換紙幣でありますのか、この点について先ずお伺いしたいと思います。
#43
○國務大臣(栗栖赳夫君) 今の日本銀行券は、法律的に言えば銀行券でありまして、勿論不換紙幣ではないのであります。今のお尋というものは、物との裏付において、十分であるかどうかというような意味が含まれておるのではないかと、かように考える次第であります。それにつきましては、御承知ように、こういうようにインフレーシヨンも進んだものでありまして、十分なる物の裏付というものが確保されておらんということはここで申上げることは躊躇しない。こう思うのであります、併しながら我々はここに日本経済の再建のために余程努力をするということは、物の裏付を増し、そうして通貨をして本当の通貨たらしめる、経済的意味における通貨たらしめるという点であると思うのであります。先程來日本の生産を増すという点について述べましたが、全くそういう趣意であると思うのであります。その通貨の点につきましては、國内生産を増すと同時に資材の輸入その他もし、更に或いは平和條約その他ができましたらば、好意ある連合軍に懇請をして、クレジツトの大幅な設定というようなこともいたし、そうしてその設定の長い期間において、これを日本の増産その他によつて返済をして行きまして、そうして通貨の安定ということを、一日も早く安定と信用の充実という目的を達したいと思つておる次第であります。抽象的でありますが……。
#44
○木村禧八郎君 私は決して意地の悪い質問をしたいのではないのでありまして、(笑声)若しは日本銀行券が本当の銀行券であるならば、又不換紙幣と違うならば、銀行券の特色は、申すまでもなく、それが貸付に使用されて還流して來る。貸したものが還つて來るというところに銀行券の特徴がある。又不換紙幣の特徴は支拂いに使われて、政府がこれを支拂えば還流して來ない。出つ放しで還つて來ないという点にあるのであります。従つて今後通貨の安全、健全金融ということを大蔵大臣は申されておりますが、それならば日本銀行券らしくされる必要があると思うのであります。銀行券らしくされるということは、結局貸したものが還つて來る。こういうことになるのであります。その点ついては私は一番心配いたしますのは、復興金融金庫を通じて出るところの通貨であります。復興金融金庫は、又非常に沢山の金を貸しておりますが、一体これは還つて來るのか、還つて來ないのか。若しかこれが還つて來なければ銀行券として流通されておるのではなく、不換紙幣として流通されておるということになる。この点に問題があるのでありまして、従つて私は日本銀行券は銀行券であるか、不換紙幣であるかということを聽きたいのであります。今後一番健全金融で問題になるのは復興金融金庫であります。一体この囘収についてどういうふうに大蔵大臣はお考えになつておりますか、私はそのお考が十分でないとしますれば、今の復興金融金庫その他の機構については可なり改革しなければならない点があるのではないか。そういうように考えておるのでありますが、まずその囘収の点についてどういうふうにお考えになつておりますか、その点をお伺いしたいとおもいます。
#45
○國務大臣(栗栖赳夫君) 復興金融金庫の貸出しと、それがいわゆるバツド・ローンになつて、貸し倒れになつて還つて來ないかどうかという点でありますが、これは私が申すまでもなく、金融の面からいいますと、囘収力を認め、囘収をさすということが金融の建前でありまして、若し囘収しない……これは戰爭中、殊に中頃以降においては度々あつたのではありますが、いわゆる命令融資の形で今日もいろいる預金者にも迷惑をかけておるのは勿論でありますが、借りた金は貰らつた金だという調子で、借りる者も借りるし、貸す方も國家の保証があるから大丈夫だというのでどんどん貸すと、これは実は財政資金的な作用をしておるのでありまして、金融じやないのであります。この点復興金融金庫としましても、設立前、設立後若干私は関係を持つておりまして、殊に資金その他については若干の関係を持つおりましたので、十分その点は注意いたしたのであります。殊に復興金融委員会というものができまして、大口の貸出しについては委員会の議を経るということになつておるのであります。事実囘収し得るかどうかという囘収力の点は、一番私共も金融家の第一義的な問題として、質問をし十分検討を加えたのであります。で復興金融金庫から貸出すものが、恰も戰爭中軍需会社等に貸出した命令融資と同じ形で出るならば、それわインフレーシヨンを抑えるどころか、激成するのでありまして、木村委員の御指摘の通り最も恐るべき点であります。そういう点は十分私注意したしまして、囘収力その他において十分考えていたしておるような次第であります。唯現状におきましては企業再建整備が非常に遅れております。尚又経済力集中排除等の問題がありまして、企業の再建整備が非常に遅れておる。それがために普通の金融でできるものができなくて、復興金融金庫に來ておる現状でありまして、その來ておるものについては赤字金融の性質を露骨に出すような申込みがあるのであります。ここは十分厳選をしてそういう結果に陥らないようにいたしておる次第であります。
 併し復興金融金庫の運営その他につきましては、先般この席でございましたか、或いは他の席でも私御質問に応じてお答えいたしたのでありますが、いわゆる委員会その他が恰も枠というような意味において、各省が予算を取るといういうような意味において取合うような点において、いろいろ弊害もあり、却て正当なととろに正当な貸出しができんという点があるのであります。委員会その他につきましても今少しく民主的に廣く各方面の知識を集めて、これを運営したがいいじやないか、こういうようにも考えておりますので、既に委員会につきましては、懇談会といいますか、今改善を加うべく、運営をちよつと中止しておるような次第でありす。幹事会でこれを代行いたしておりますが、尚今後もその運営については、私も寧ろ内部におりまして、いろいろ弊害も考えておるのでありますが、十分考えて、この改善を加えたい、かように思う次第でございます。
#46
○木村禧八郎君 最後にこの復興金融金庫の機構について、これを徹底的に改革される御意思がないかどうかをお伺いいたしたいのでありまするが、復興金融金庫の融資額は非常に大きくなつております。全金融機関の融資額よりも遥かに多くなる、そういう状況でありまして、これは日本の経済の再建にとつて、非常に大きな役割を、又ウエイトを持つておるのであります。従つてこの復興金融金庫の機構を従來のような形でなく、丁度持株会社整理委員会、或いは又公正取引委員会、ああいうような形にしまして、そうして相当大きな機構にしまして、これで民間の有力者又学識経験者、そういう人を集めましてそこにおいては企画を、いわゆるインヴエスメント。ボード、投資局のような形において、そこの議を経なければ貸付ができない。今の復興金融金庫は実施機関にする、そういう形にすることが私は適当ではないかと思うのでありますが、そういう点について大蔵大臣はどういうお考を持つておられますか。
#47
○國務大臣(栗栖赳夫君) お答えいたします。この復興金融金庫の機構に相当根本的な改善を加えて、別に貸すべきかどうか、如何に貸すべきか、如何なる状態において協力を求めるかという、企画的のボードを作る。そうして今の金庫を実施機関にするというお説であります。これは私はそこまで考えるかどうかという点において、なお考究をいたしたのであります。元來私永年金融ということ、殊に工業金融、事業金融をいたしたのでありますが、この急を要するものであると同時に、これはエキスパート・ビジネスでエキスパートの相当智慧によつて、そうして必要があるところには迅速に貸出すということが必要であるのであります。
 そこでこの全然ボードというものを今の金庫というものと離して、そこで貸出しを決めるということについては、お説として一つの考え方として十分承りますけれども、直ちにこれが実行して十分の成果を、殊に現状の日本において挙げ得るかどうかということについては、問題があると思います。
 併し先程來も申上げたように、委員会の運営、委員会の構成要素、委員会のタツチしますところの範囲その他について、或いは幹事会等については随分改善を加え、今木村委員の御指摘のように、或意味においてのボード的なことにするということも、私共考えておる次第であります。これも追加予算を済ましますれば、その方にも一つ手を加えて発展をさして行きたい、かように考えておるような次第でございます。
#48
○委員長(櫻内辰郎君) お諮りいたします。明後日午前十時から質疑を続行することといたしまして、本日はこの程度で散会いたしたいと存じまするが、御異議ございませんか。
  [「異議なし」と呼ぶ者あり]
#49
○委員長(櫻内辰郎君) 御異議なしと認めます。散会いたします。
   午後四時四十六分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     櫻内 辰郎君
   理事
           木村禧八郎君
           西郷吉之助君
           中西  功君
   委員
           大野 幸一君
           岡田 宗司君
           カニエ邦彦君
           木下 源吾君
           石坂 豊一君
           伊東 隆治君
           大島 定吉君
           小畑 哲夫君
           佐々木鹿藏君
           田口政五郎君
           鈴木 順一君
           飯田精太郎君
           岡部  常君
           岡本 愛祐君
           奥 むめお君
           高田  寛君
           服部 教一君
           東浦 庄治君
           姫井 伊介君
           渡邊 甚吉君
           池田 恒雄君
           川上  嘉君
           藤田 芳雄君
  國務大臣
   大 藏 大 臣 栗栖 赳夫君
   司 法 大 臣 鈴木 義男君
   國 務 大 臣 齋藤 隆夫君
ソース: 国立国会図書館
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