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1967/07/20 第55回国会 参議院 参議院会議録情報 第055回国会 大蔵委員会 第30号
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1967/07/20 第55回国会 参議院

参議院会議録情報 第055回国会 大蔵委員会 第30号

#1
第055回国会 大蔵委員会 第30号
昭和四十二年七月二十日(木曜日)
   午後二時二十四分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 七月二十日
    辞任         補欠選任
     館  哲二君     山下 春江君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         竹中 恒夫君
    理 事
                青柳 秀夫君
                藤田 正明君
                柴谷  要君
                中尾 辰義君
    委 員
                青木 一男君
                伊藤 五郎君
                大竹平八郎君
                大谷 贇雄君
                小林  章君
                西郷吉之助君
                西田 信一君
                山下 春江君
                木村禧八郎君
                田中寿美子君
                戸田 菊雄君
                野上  元君
                瓜生  清君
                須藤 五郎君
   国務大臣
       国 務 大 臣  塚原 俊郎君
   政府委員
       総理府総務副長
       官        上村千一郎君
       内閣総理大臣官
       房臨時在外財産
       問題調査室長   栗山 廉平君
       大蔵政務次官   米田 正文君
       大蔵省主計局次
       長        岩尾  一君
       厚生省援護局長  実本 博次君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        坂入長太郎君
   説明員
       厚生省公衆衛生
       局企画課長    宮田 千秋君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律
 案(内閣提出、衆議院送付)
○引揚者等に対する特別交付金の支給に関する法
 律案(内閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(竹中恒夫君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。
 委員の異動について報告いたします。
 本日、館哲二君が委員を辞任され、その補欠として山下春江君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(竹中恒夫君) 国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から提案理由、同補足説明を順次聴取いたします。米田大蔵政務次官。
#4
○政府委員(米田正文君) ただいま議題となりました国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。
 (一)公債償還の基本的考え方及び減債制度のあり方につきましては、昨年の財政制度審議会において慎重な審議を願い、昨年十二月に報告をいただいたのでありますが、これによりますと、公債政策に関する政府の節度ある姿勢を示すためには、より充実した減債制度を確立すべきであるとされ、さらに、今後の償還財源繰り入れ方式としては、(1)国債残高に対する定率繰り入れを基本とし、(2)財政法第六条による一般会計剰余金の二分の一以上の繰り入れをもってこれを補完し、(3)さらに、必要に応じて予算措置による繰り入れを行なう、こととするのが適当であると述べられているのでありまして、政府は、この報告の趣旨に沿って減債制度の整備改善をはかることといたしたのであります。
 このため、政府は、国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律を今国会に提案することとした次第であります。
 (二)次にその内容について申し上げます。
 まず第一に、国債の元金償還に充てるべき資金の定率による繰り入れの制度を復活し、前年度首における国債総額の百分の一・六に相当する金額を毎年度一般会計または特別会計から国債整理基金特別会計に繰り入れることとしております。
 この率は、公債の発行によってつくり出される資産が国民経済の発展向上に役立つものであるところがら、公債の見合い資産が平均的に効用を発揮し得る期間をめどとして一般財源による償還が可能となるようにこれを定めることとし、その期間を約六十年と見て、百分の一・六としたものであります。
 なお、定率による繰り入れについては、従来から短期証券及び借り入れ金は対象から除外されていたのでありますが、今後は、遺族国庫債券、農地被買収者国庫債券等の割賦償還方式の交付国債も定率繰り入れの対象から除外することとしております。
 第二は、予算繰り入れに関する規定の新設であります。これは、定率による繰り入れ及び財政法第六条による一般会計剰余金の二分の一以上の繰り入れのほかに、国債の元金償還に支障を生じないようにするため、必要に応じ、予算をもって定める金額を一般会計または特別会計から国債整理基金特別会計に繰り入れるべきこととするものであります。
 以上のほか、他の特別会計法の例にならい、この会計の収入支出に関する規程は政令をもって定めることを明らかにする等規定の整備をはかるとともに、従来定率を万分の百十六の三分の一とする特例を定めていた昭和七年度以降国債償還資金ノ繰入一部停止二関スル法律及び一般会計について定率による繰り入れを停止していた国債整理基金に充てるべき資金の繰入れの特例に関する法律を廃止することとしております。
 以上が、この法律案の提案の理由であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
#5
○委員長(竹中恒夫君) 続いて補足説明を願います。岩尾主計局次長。
#6
○政府委員(岩尾一君) 国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由を補足して御説明申し上げます。
 国債整理基金特別会計法は明治三十九年に制定されたものでありまして、減債制度としては、当初は、日露戦争関係国債の元利償還資金として毎年度一億一千万円以上を国債整理基金特別会計へ繰り入れるべきことを定めていたのでありますが、大正四年に至り、この元利償還資金の繰り入れば廃止されて定率による元金償還財源繰り入れ制度に改められ、前年度首国債総額の万分の百十六以上で三千万円を下らない金額を、毎年度国債整理基金特別会計に繰り入れるべきこととされたのであります。
 しかしながら、その後昭和七年に至り、毎年多額の歳入補てん公債の発行を行なうよりも減債資金繰り入れ額を減額するほうが適当であると考えられたため、昭和七年度以降国債償還資金ノ繰入一部停止二関スル法律により、当分の間、定率を前年度首国債総額の万分の百十六の三分の一とする特例が定められ、以後この率によって償還財源繰り入れが行なわれたのであります。
 次いで、戦後昭和二十二年に新しく制定された財政法第六条の規定により、戦時中に急増した国債の償還を促進するため、定率による繰り入れ額のほか、一般会計の決算上の剰余金の二分の一を下らない金額を国債償還財源に充てる制度が設けられたのであります。
 このような積極的な国債償還が実施されました結果、国債総額が減少した反面、財政規模が増大したことにより、国債の償還財源は財政法第六条による繰り入れ額だけで十分となりましたので、昭和二十八年度以降は、毎年特別立法により一般会計の定率繰り入れを停止することとしていたのでありますが、さらに、昭和三十六年に国債整理基金に充てるべき資金の繰入れの特例に関する法律を制定し、一般会計については、当分の間定率繰り入れを停止し、国債の償還財源に充てるべき金額は、財政法第六条その他他の法律の規定により繰り入れるべき金額と合わして毎年度の予算で定めるところによることとしたのであります。
 以上のような改正が行なわれた結果、現在の減債制度は、一般会計につきましては定率繰り入れば行なわれず、剰余金の二分の一を下らない金額の繰り入れが行なわれ、また、特別会計につきましては前年度首国債総額の万分の百十六の三分の一の繰り入れが行なわれるという姿になっているわけであります。
 ところで、わが国の財政は、御承知のとおり昭和四十年度から公債政策を導入するに至ったのでありますが、昭和四十年度の税収不足補てん公債の発行及び四十一年度の財政法第四条に基づく公債の発行に際しまして、国会審議の過程におきまして、今後の国債償還の基本的考え方及び減債制度のあり方につきまして種々御論議があったのであります。このような経緯にかんがみまして、政府は、この問題について、財政制度審議会において約一年間にわたり慎重に検討していただいた結果、昨年十二月に報告をいただいたのでありますが、この報告によりますと、公債政策に関する政府の節度ある姿勢を示すためには、より充実した減債制度を確立すべきであるとされ、さらに、今後の償還財源繰り入れ方式としては、国債残高に対する定率繰り入れを基本とし、財政法第六条による一般会計剰余金の二分の一以上の繰り入れをもってこれを補完し、さらに、必要に応じて予算措置による繰り入れを行なうこととするのが適当であると述べられているのでありまして、政府は、この報告の趣旨に沿って減債制度の整備改善をはかることといたしたのであります。
 以上、国債整理基金特別会計法の一部を改正する法律案について、提案の理由を補足して御説明申し上げた次第であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
#7
○委員長(竹中恒夫君) 以上で説明を終わりました。
    ―――――――――――――
#8
○委員長(竹中恒夫君) 次に、引揚者等に対する特別交付金の支給に関する法律案を議題といたします。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#9
○田中寿美子君 この法案は、引き揚げ者に対する在外財産の補償ということばは使わないで、引き揚げ者に対する特別交付金の支給ということになっておりますけれども、そして千九百二十五億円を計上することになっておりますが、これは十カ年間均等償還の国債で支給するということ。で、私、この法案については、衆議院で社会党も賛成で送ってきているのでございますけれども、非常に不安に感じることがたくさんございますので、それらの点を解明していただきたいと思うんです。
 で、その提案理由説明によりますと、今度のこの法案によって引き揚げ者に対する給付といいますか、戦後処理はもう最終的な解決にするのだということにされておりますが、そして法律上の義務はないが政策的な措置として支給するんだというふうに説明されております。私は総理府総務長官にお伺いしたいんですけれども、千九百二十五億という相当大きな金額を計上して、最終的な解決にこれがなるんだろうかどうだろうか、戦後処理はもうこれで終わったというような考え方に立っていると説明されておりますけれども、しかし、これは在外財産の補償というのではなくて、かつて昭和三十二年に立ち上がり資金みたいな形で五百億を出しておりますが、今度また再び引き揚げ者に対して二重に給付していくわけなんで、それで、これからあともまたそのような、今度はほんとうに在外財産の補償という形であとをひくことがありはしないのかという点については、どのようにお考えでいらっしゃいましょうか。
#10
○国務大臣(塚原俊郎君) 田中委員御指摘のように、明らかにこの提案理由の説明の中で、在外財産問題についてはピリオドを打つということをうたっておりまするが、もちろん私はこれでピリオドを打つ考えでございます。
 昭和三十二年に行ないました措置は、これまたおことばにもありましたように、やはりあくまでも立ち上がり資金であったわけであります。その後いろいろと在外財産問題についての御意見等もあり、昭和三十九年だったと思いますが、第三次在外財産問題審議会というものができまして、なお残された問題があるではないかということで、その審議会で御審議を願い、その答申が出たのが昨年の十一月の末であったと私は考えております。この答申によりますると、これまた提案理由の説明の中に答申の文句を入れてありまするが、国に補償の義務はないけれども、この失った財産そのものに対してではなくて、財産を構成するための諸要因、つまりヒューマンリレーション、あるいは何と申しますか、生活利益と申しまするか、そういったものがある特殊のものであるだけに、政策的措置をもってこの問題の解決をはかるべきであるという答申が出てまいったのであります。
 で、政府といたしましては、この答申の線に沿って検討いたしました結果、この法案を提出したわけでありまするが、まあ私個人的に考えましても、答申そのものがきわめて抽象的で、審議会の委員の方もこの中におられるようでありまするが、欲をいうならばもっとはっきりしたものを出していただくと、立法措置の過程においてもそれほどの苦労がなかったと思うのですけれども、抽象的なもの――もちろん具体的なものもございましたけれども、総じて抽象的なものが多かったために、立法過程においてはまあいろいろと苦労もあったわけであります。しかし、補償の義務はないとして、政策的措置でやれというこの答申に沿って、いま御審議を願っているような法案を提出した次第であります。これで在外財産についてはピリオドを打つ考えであります。
#11
○田中寿美子君 総務長官、六月二十七日でしたか、朝日新聞紙上のおことばを拝見しましたのですけれども、戦後処理はもうこれで終わるつもりだと。したがって、原爆被爆者の補償なんというようなものの要求に対していま応じないつもりであるということを言われておりますけれども、そうでございますか。
#12
○国務大臣(塚原俊郎君) いまの田中委員の御質問、前段は、ちょうどこれが終わりましたとき社の方がおいでになって、この国会の場に自民党を代表した西村直己委員の質問に対して佐藤総理が答えられた文句を引用いたしまして、この種の問題のピリオドをこれで打ちたいということを、私はこれを担当する大臣として申し上げたことは事実でございますが、その後段のほうについては私は言及しておりませんから、何かの誤解ではなかろうかと考えております。
 しかし、これは衆議院の委員会等においても質問が出ました。厚生省が担当でございまするから、坊厚生大臣とも打ち合わせております。厚生省がおいでになっていると思いまするから、厚生省からお答えすることが妥当と思いますが、何か実態調査が十月ごろ終わりまして、それによって援護措置の強化というか、そういう方向が出るという報告も受けておりまするが、戦後二十二年、あの忌まわしい大戦、しかも体験したこともない敗戦によるいろんな問題が起きたことは、これはまことに遺憾なことでありまするが、御批判はあるといたしましても、この種の問題の解決はここで終わりたいというような考えを私は強く持っております。しからば、残された問題をどうするかということがあるでしょう。これは社会保障の充実等によって援護措置の強化ということで解決されることが、それぞれの所掌事務をあずかる所管省において解決されることが望ましいと私は考えております。
#13
○田中寿美子君 そうしますと、原爆被災者の補償の問題は社会保障として別個に取り扱うというお考えでございますね。
#14
○国務大臣(塚原俊郎君) 私、所管以外のものですから、私の口から申し上げるのもどうかと思いまするが、これをもってピリオドを打って、それ以外の問題はまだあると思います、ほかに。現にこの委員会でもこの間御質問もありましたし、そういったまあ社会保障のワク内においてできないものもあるではないかという御批判もあることも私は存じておりますが、そのワク内において援護措置の強化をはかるべきである、このように考えております。
#15
○田中寿美子君 この在外財産問題審議会の昨年の答申の出てきた経緯について多少お尋ねしたいんですけれども、三十二年のときの、あれは第二次答申ですか、あれが出ましたときも、やはりこれで在外財産の処理は打ち切りだというふうな政府の説明があったと思うんですが、しかし、今回またあらためて、池田内閣の末期ごろからもう一度この問題が蒸し返されてきたと申しますか、大きく引き揚げ者のための在外財産の補償が要求されたり、また政府でもそれを問題にしてこられた。そのきっかけといいますか、それを進めてきた要因はどういうことでございましょうか。
#16
○政府委員(栗山廉平君) 私のほうから答えさせていただきます。
 第二次の審議会におきましての答申の内容を簡単に、結論だけでございますが申し上げますと、法律的に在外財産に対して国が補償の義務があるかどうかという法律問題につきまして、第二次審議会におきましては両方の論があって、結論を得るに至らなかったと、こういう内容があるわけでございます。それで、引き揚げ者の引き揚げてきてからのいろいろの援護措置を強化すべきだと、こういう政策的な内容がそれについているわけでございます。そこで、前から、特に平和条約前後から強く言われておりましたことが、つまり法律的に国に補償の義務があるのだという運動でございます。その要求――要求といいますか、運動に対しましては、第二次の審議会は結論を出さなかったわけでございます。そこで、法律的義務ありというやはり運動がそのまま実は続いてきたわけでございまして、この運動は表面的に見ますとやや薄くなったように見えましても、やはり底流はずっと続いてきたわけでございます。それが、何といいますか、われわれの聞いておりまするところでは、農地報償等の関係から、再燃といいますか、さらに強いものが表へ再び浮かび上がってきたというようなことでありまして、事務的に見ますると、やはり法律上の義務があるという主張はそのままずっと絶えずにきておったわけでございます。そういう底流がございまして、第三次審議会におきましては、この法律的な補償義務があるかどうかということが審議会における審議におきまして最も時間をたくさん要し、それからまたこの答申の中身におきましてもほとんど大部分を占めておるというようなのが現状でございます。
 そこで、この法律的な補償義務があるかどうかということにつきましての問題を解決し、なお、その問題に付随しまして、残された問題があるかどうか、もしあるとすれば、そういう問題に対しては何かする必要があるかどうかというような諮問によりまして、この第三次審議会ができまして、その内容を答申したわけでございまして、第二次審議会から、さらにまた第三次審議会ができましたというその理由は、ただいま申し上げましたような理由でございます。
#17
○田中寿美子君 審議会の答申にですね、在外財産に対して国の法律上の補償義務はないという結論が今度は出ておりますが、けれども、政策的な措置をすると。政策的なという意味は先ほど総務長官の言われたことだと思いますけれども、もう一度はっきりと政策的という意味を伺いたいと思います。
#18
○政府委員(栗山廉平君) 国に法律上の補償義務はないと申しまするのは、これは読んで字のごとしでございまして、国際法的にも、それから国内の憲法の立場から見ましても、どうも法律上きちっと当てはめて補償の義務が出てくるということは、幾ら追及してもどうもそういうかっこうになってこない。もっともこれは憲法問題が中心でございまするけれども、こういう敗戦のような非常に国家として未曽有の問題を取り扱うようなことは、憲法の中には実はないわけでございまして、そういう意味では、法律問題に根本的にはなかなかなじめないというような問題である半面も持っているわけでございます。
 そこで、法律上補償義務がないという結論にまず審議会が到達したわけでございますが、それでは、法律上補償義務はないということで、何もする必要がないのかどうかという検討を審議会はいたしたわけでございます。そこで、先ほど半面と申し上げましたが、そもそも非常に法律問題にはなじみにくい問題がこの中にはあるわけでございます。先ほど申しましたように、敗戦といったような未曽有の事態を律する法律といったようなものが、実は平時のことを考えておる法律にはないわけでございますし、またさらに法律の問題といたしますと、平和条約、あるいは平和条約を結んでおっても請求権問題が片づいておらない地域は、法律的には全然まだ論ずる段階にまで至っておらないというような地域があるわけでございます。たとえて申し上げますと、台湾、樺太、それから北鮮、あるいはさらに当時の外国としましては満州、中国大陸といったような、非常に在外財産の問題から考えますると大きな部分を占めておりまするところの地域にあります日本の在外財産といったようなものが、法的にはほとんどまだ論じ得ない段階にあるというような事実の問題もございまして、政策上これに対していかなることをやったらよろしいかということが非常に大きな問題になったわけでございます。そこで、法律上の問題として義務がないという結論が出ましたけれども、事実上の政策問題としてこれは解決すべき残された問題があるということで、答申に政策的な問題ということでさように書き込まれたわけでございます。
#19
○田中寿美子君 いま在外財産の補償に関して法律上の義務があるかないかという問題について詳しく御説明ありましたけれども、その問題はもう少しあとで触れるとしまして、今回の第三次答申の結果、こういう給付をするということになりましたこの経過を見てみますと、もう引き揚げ者団体の運動といいますか、圧力が非常に動いていたと思われるのです。で、引き揚げ者団体連合会の解釈では、国家に法律上の義務があるという解釈に立っております。それは国際法上からもその義務があるというふうな立場に立って要求しているのだと思うのですけれども、これが、この団体が要求しておりました金額というのは非常に最初は膨大なものであったのであります。一兆二千億円。それがだんだん、大蔵省側はもっとずっと少ないものを言われ、そしてその交渉があったと思うのですが、その結果今度は千九百二十五億円というところに落ちついた。
 で、この引き揚げ者団体ですね、これは厚生省のほうだと思いますけれども、いま会員はどのくらいあると推定されていらっしゃいますでしょうか。
#20
○政府委員(実本博次君) 引き揚げ者関係の団体につきましては、その会員の数はつまびらかでございませんが、それを推定するには、いま引き揚げ者の数が約三百六十万にのぼっておりますので、それから推計していただくよりほかないと思います。的確な団体員の数は押えておりません。
#21
○田中寿美子君 この引き揚げ者団体連合会の役員の構成とか、そんなのはわかっているのですけれども、しかし、これは明確に会員になっている者の数がはっきりわからないというようなことはおかしいと私は思いますが、これは一つの政治的な地盤になっていると思うのです、これの圧力と申しますか。で、これは先ほどもおっしゃいましたが、農地報償であれだけの金額を出したということに刺激されて、やはり旧地主が補償されるならば引き揚げ者ももっと、わずか五百億というものじゃなくてもっと補償される権利があるというふうな運動になったんだと思うのです。
 ところで、これは戦争の被害者といいますか、戦争犠牲者というのは引き揚げ者だけではないわけで、今度の補償給付でも千九百二十五億というのは、やはり同じように戦争の被害を受けた国内の戦災者、そのほかいろいろな形のものがあると思うのですけれども、そういうものの税金でまかなわれていくということになるわけでありますね。その辺矛盾を感じますし、戦争犠牲者もその負担をしなければならないというような点で、片手落ちだというふうにお考えにならないでしょうか、その辺を、総務長官。
#22
○国務大臣(塚原俊郎君) 私は、この問題を処理するにあたりまして、国民全部が戦争犠牲者であるという考え方、それから国民の納得を得るということ、これが非常に大事である。この二つを私は基本原則として、この問題に取り組んだわけでございます。一部その団体の圧力に云々ということがありまするが、私はそういうことは全然ありません。
 それから、金額につきましては、戦後のこの種の問題のあり方とにらみ合わせまして、しかも答申にある世帯単位ということを頭に置いてやったわけでありますが、たとえばいまの三百六十万という数字にいたしましても、世帯が九十五万四千世帯というものも、あくまで推計でありまして、的確なものをキャッチすることは、これは困難なのであります。この世帯の九十五万四千世帯と申しましても、いつも申しますように、塚原家がいまどこにいる、あるいは田中家がどこにいるということをキャッチすることはできませんので、どうしても個人単位になって、それができ上がったのが千九百二十五億でありますけれども、私は先ほど申しました国民全部が戦争犠牲者であるという考え方から、田中委員御指摘のように、いわゆる批判をどうするかということ、国民の納得のいく、国民世論の納得いく形で解決するということ、それから、戦後のこの処理の問題で、それとの見合いをはかったということ、こういうことを基本としてはじき出した数字でございまして、もちろんいろいろな批判はあることとは存じておりまするが、私は、これが妥当なものであると考えて御審議を願っておるわけであります。
#23
○田中寿美子君 戦争被害者の中には、先ほどの原爆被災者もおりますわけですね。この原爆被災者の医療法によりますと、それは健康診断と治療費が出るだけで生活費は出ないわけです。こういう問題についてほかの委員がお聞きになると思いますが、こういう問題についても、これは厚生省だと思いますが、この引き揚げ者に対する特別交付金支給ということが今回行なわれるのに対して、何か今後の方向を考えておいでになりますか。
#24
○政府委員(実本博次君) 原爆被爆者の援護と申しますかに対します対策といたしましては、先生いまお話しのように、昭和三十二年にこの原爆被爆者の医療法ができまして、医療援護からする面では、別にそういった特殊の措置法を拡充してまいっておるわけであります。ただ、それ以外の援護の面につきましては、実は所管外でありますけれども、公衆衛生局のほうで原爆被爆者の実態調査というのをやっておりまして、その結果がことしの秋に出てまいるということになりまする予定になっておりまして、その被爆者の実態調査の結果を見まして、もし何か処置することがあればその段階において考えることにしてはどうかと、こういうふうな厚生省としての考え方を持っておるわけでございます。
#25
○田中寿美子君 それで、今度のこの法案のことが決定されましたときに、もう一つ不安と申しますか、心配になりますのは、この国会にはとうとう提案されずに終わるようでありますけれども、在外財産基金法案なんです。このことが決定されましたときに福田幹事長がやはり記者会見で、戦後処理はこれでもう終わりだ、そして今度の引き揚げ者に交付する交付金の有効な運用を期するために、たとえば海外協力基金というような形でプールしておくのがいいというような発言をしていらっしゃるのですね。これはあくまで、先ほど個人に対して支給するんだと。これは政策的な意味があって、いろいろ外地で苦労したから、その人たちに対する一種の、何といいますか、生活を助ける意味の給付なんだということでございますのに、それを引き揚げ者団体にプールして、そしてそれを投資に使うというような考え方があるようなんですけれども、その点で私は非常に懸念するわけなんです。総務長官はそのようなやり方をどうお考えになりますか。
#26
○国務大臣(塚原俊郎君) ただいま御指摘の件につきましては、私は何ら関係がございません。また、立法過程において、私はその当該大臣として考えてもおりません。ただ、堂内に議員立法の形で、たとえば農地報償の際にも勧業基金法案ですか、そういった動きのあることは存じておりますが、私は何ら関係ございません。
#27
○田中寿美子君 在外財産基金法案というのは、これは議員立法として出して、そのうちの一千億をプールして投資に回すと、こういうような考え方があるのです。そしてそれを福田幹事長も、たとえば海外協力基金というような形でやるのは好ましいということを言っておられますが、私はそのような使い方をされるということになりますと、これは邪道だと思います。そういう意味で、ことしはこの法案は出ておりませんけれども、もしこの引き揚げ者に対する給付の法案が通って、給付は来年度から始まる、そして来年になってもう一つの議員立法でありますところの在外財産基金法案を通せば、団体に相当額の金がプールされていくというこの点を、私は非常に警告しておかなければならぬ問題だと思っております。
 次に、さっきもうすでに多少お話がありましたけれども、在外財産に対する国の法律上の補償の義務の問題なんですが、これは引き揚げ者団体の方なんかは、これは義務があると言っておるわけなんですね。これは平和条約で在外財産の接収を連合国に日本は承認した、渡した、これは国策によるものなんだから、つまり賠償金を払うかわりに在外に持っていた引き揚げ者の財産を引き当てにしたんだという考え方ですね。このことは法律的にいったらどういうふうに解釈なさいますか。この審議会の答申はそういうふうでないとしても、政府はどうでしょうか。
#28
○政府委員(栗山廉平君) 政府におきましては、前から法律上の補償義務はないという見解に立っておりまして、国会の答弁等にもあらわれております。今度の第三次審議会におきまする答申におきましても、ただいま先生おっしゃいましたように、やはり政府と同じような、法律上の補償義務はないという結論で、内容は似ているといいまするか、同じわけでございます。
 そこで、ただいま仰せられましたような、賠償との関係があるのではないか、賠償に引き当てられるという、その肩がわりをしたから、したがってこの平和条約の十四条を読めば、当然国に補償義務が出てくるのではないか、これは大ざっぱにいいまして補償義務論の方々の主張される論点になるわけでございます。賠償ということばが実は十四条の一番初めにちょっと出てくるわけでございますが、これは、そしてまた日本におきましては資源も十分でないから、またそれは何といいますか、賠償を多く課することができないということもわかるというような文句がございまして、そして役務的な提供と、それから在外財産の処分権、連合国による処分権というものの規定があとから出てくるわけでございます。
 で、もっぱら問題は、この在外財産の処分権を連合国が獲得といいまするか、認められたと。それを日本国が平和条約に署名することによって認めた、あるいは認めさせられたと、こういう点にかかってくるわけでございまするから、これは処分をする権利を連合国が認められたということでございまして、つまりどういうように処分するかは連合国のほうの意思によってきまるわけでございます。中にはその在外財産を南米の国々のように日本人に返してきておると、そういう処分をしておるところもございますし、また当然没収のような措置をとっておるところもございます。しかし、その没収をするなり、あるいは返すなり、そういう処分をするにあたっては、国内で、その国国で立法措置をとりまして、その内容によって処分をする、返還するなり取り上げるなり、いろいろなことをやるということになっておりまして、取り上げるといいますか、あるいは返すといいますか、そういう行為そのものはそこのおのおのの連合国が自分の権限で行なうということでございます。したがいまして、憲法論からいきますと、日本の憲法二十九条におきましては、日本の国が日本の国の権力で日本国民からある種の財物を収用するというようなときに正当な補償をしなければならないと、こういうような内容に相なっておるわけでございまするが、外国が自分の権力でその国の中にある日本人の財産を取り上げるというのにはどうもなじまない規定になるわけでございます。
 それから、もう一つ、わが国がそういう条約に署名したではないかと。署名したことがすなわちもう取り上げたということになるのではないかと、こういう論が一つあるわけでございまするが、これも署名といいますか、まあ平和条約に日本が署名いたしましたのは、国際法的に見ますと、いわゆる外交保護権の放棄といいまするか、国民の権利そのものではなくして、国が日本国民を保護するというまあ権能を持っておる、その外交保護権というものを放棄した。つまり、各国がいろいろの返還なり、あるいは没収なりの処分をすることにつきまして、国として保護権発動はいたしません、文句は申し上げませんという意味の外交保護権の放棄ということでございまして、それが直ちにこの憲法二十九条の公用収用といったものに当たるかどうかという問題につきましては、審議会におきましても、それは当たるという解釈はできない、政府も前からそう考えておるわけでございますが、というようなことでございまして、国際法的あるいはまあ国内法的に、国に法律上の補償義務が出てくると言うわけにはまいらぬ、こういう結論になっておるわけでございます。
#29
○田中寿美子君 平和条約を結んでいない国ですね、たとえば中国だとか北朝鮮だとか、そういう国にいた者が多いわけですね、引き揚げ者の中には。そういう人たちの財産の接収をこれは相手国にゆだねたということにはならないわけですね。それはどういうふうに解釈なさるわけですか。
#30
○政府委員(栗山廉平君) 平和条約を結んでおらない国、それからまた、先ほど申し上げましたように、台湾のように平和条約は結んでおりまするけれども、財産の関係におきましては両方の国で条約といいますか、特別な取りきめを締結することによって財産問題を片づけるというところの関係の国もございまするが、要するにどちらにいたしましても、そこにある日本人の在外財産につきましては、法律的には何らの関係がないわけでございます。まだ法律状態にくる以前の問題でございまして、事実上いろいろの損害を受けたり、接収を受けたりということはございましょうけれども、法律的にはまだ日本の在外財産としましては権利はあるわけでございます。したがいまして、国としましては、これに対して請求権は依然持っておるという解釈になるわけでございます。
#31
○田中寿美子君 そうすると、請求権を要求するということもあり得るわけですね、将来。
#32
○政府委員(栗山廉平君) そういう場合もあり得ると存じます。
#33
○田中寿美子君 そうしますと、在外財産の補償の問題はこれで最終的に解決したということにはならないのでございましょうね。また要求がある場合があると思いますが。
#34
○政府委員(栗山廉平君) 国によりまして、これは仮定の問題でございまするから、どうなりまするか、将来の問題はわかりませんですが、国によりまして、もし日本の国に賠償といったようなことがはっきり出まして、賠償額幾らといったようなことがもしも条約にでも書かれまして、それでその賠償額の中に、その国にある在外財産のどれとどれを充てるということがもしはっきり出ました場合には、そういう問題が起こってくるだろうと思います。
#35
○田中寿美子君 引き揚げ者が今回のように、これは在外財産の補償ではないということで給付を受ける。そうすると、またあらためて在外財産の補償を要求するということがあり得ると思います。この点はどうお思いになりますか。
#36
○政府委員(栗山廉平君) 先ほどからちょっとくどくど申し上げましたが、ただいま先生がおっしゃいましたような、まだ条約未締結といったような国における在外財産につきましては、将来の条約関係によっていろいろ問題が出てくる場合もあり得るわけでございますが、すでにサンフランシスコ平和条約等の条約を結んでしまった地域につきましては、この政府の見解あるいは答申あるいは――長く書いてございますが、とにかく補償の義務はないという見解でございます。これは裁判の関係におきましても、政府は一貫してそういうふうに考えておるわけでございますが、なお、御承知かと存じますけれども、ひとついま最高裁にかかっておる問題もございまするが、そういう問題はそういう問題といたしまして、政府の側におきましては、この答申に書いてあるような線でずっと通してきているわけでございます。
#37
○田中寿美子君 その条約未締結の国の場合にはそういうことがあり、請求権の要求もあり得ると言われたんですけどね、引き揚げ者の大部分が中国本土と、それから北朝鮮なんかからもあるわけでございますね。そうすると、これでもうすっかり戦後処理は終わったというふうに言えない状態が起こり得る。また、やはり在外財産の補償ということが運動として起こってくる可能性があるという見通しはお持ちにならないのでしょうか。
#38
○政府委員(栗山廉平君) どうも非常に複雑な国際関係でございまするし、ことに将来の問題でございまして、何とも私どうも申し上げるわけにはまいらないような立場でございます。
#39
○田中寿美子君 私は、これで最終的な解決になったと総務長官はおっしゃいますけれども、十分将来に不安を残しているということを思っております。引き揚げ者団体の方たちは、外国の場合、特にこれは敗戦国ばっかりで、こういう補償をするというのは戦勝国にはあまりないんじゃないでしょうか。それで、西ドイツとかイタリーの例を引いて、特に西ドイツなどは全面的に補償している、だからああいうふうにやれということを要求しておりますですね。西ドイツの状況なんかについてはどういうふうにお思いになりますですか。
#40
○政府委員(栗山廉平君) 先ほどちょっと申し落としましたが、未締結国についてまだ問題が残るのではないかということをおっしゃいましたけれども、少なくもいまの国内における――在外財産問題審議会も在外財産問題ということばを使っておりますが、国内における在外財産問題としての解決は、これをもってやはり終わるということを、条約未締結の地域がたくさんあるにしましても、そういう意思で審議会もそういうことを述べておりまするし、政府もそういうつもりでおりまするので、その点一言つけ加えさしていただきます。
 それから、同じ敗戦国の西ドイツにおける例はどうかということでございます。西ドイツにおきましては、ごく簡単に申し上げますると、負担調整法といいますか、国民の負担をアレンジしまして、なるべく平等に地ならしをしようという意味の負担調整法という法律ができておりまして、これによりまして戦争並びに占領から生じました各種の損害についての地ならしをする方針で運用されているわけでございます。戦争によって残った財産を持っておる西ドイツの国民に対しまして、一回限りの相当多額の特別税を課しまして、三十年間にわたってこれは取り立てるわけでございますが、それを財源にいたしまして、戦争並びに占領から出ましたいろいろな物的損害、そういうものに対して穴埋めをする。これは多い損害ほど率を少なくいたしまして、社会政策的な点が盛ってございまするが、そしてさらに特徴がありまする点は、法人は全然対象にしない、個人だけ、自然人だけを対象にするという内容に相なっております。したがいまして、もちろん在外財産につきましても、当然これは法律の対象になるべきはずのところでございましたが、御承知のように、ドイツにおきましてはまだ東西両独が分割しておるようなことで、正式のといいますか、本格的な意味の平和条約はまだ未締結の状態にあるわけでございます。で、西側の諸国と西独の間に結ばれた平和条約に準ずるような条約がございまするが、そういう中で賠償問題が最終的な平和条約で片づくまでの間ということで、西側諸国の中にあるドイツの在外財産についていろいろの規定が、まあ没収するような規定があるわけでございます。その問題がまだ正式に片ずかないというときに、先ほど申し上げました負担調整法という法律が出たものでございますから、その法律の中には在外財産による損害を受けた方を対象に入れておらなければならないわけでございます。したがいまして、それは賠償なり、あるいは在外財産の没収問題が片づいたときに、別の法律でもって同じような内容の法律を制定して、負担調整法と同じやり方で在外財産の損害者に対しても同じような施策を行なうということになっておったわけでございまするが、その法律が一たん出まして審議未了に相なりまして、さらにことしになりましてから、また法案が出されるように聞いておりましたが、まだ国会に提出されたということを聞いておりません。この賠償損害法案という法案は、したがいまして、まだドイツでは成立しておらないはずでございます。内容といたしましては、先ほどの負担調整法と同じ内容で、法人には全然措置をしない、自然人たる個人にだけ措置をする。それもほかの戦災、それからロシアのほうから引き揚げてきた引き揚げ者といったようなものの損害に対すると同じ方法でやる、こういうような法案の内容に相なっております。
#41
○田中寿美子君 西ドイツの場合は、在外財産の補償とか引き揚げ者だけではなくて、非常に広範に戦争の犠牲者を含めているわけですね。そういう点では、さっきちょっと言われましたけれども、引き揚げ者以外の問題、たとえば原爆の被爆者、それから国内での戦災者、その他たくさん、日本でも国民はみんな戦争の犠牲者であると総務長官言われましたけれども、それでしたら、やっぱりこれはもっと広く社会保障の面でやっていくべきものだというふうに思います。そういう意味で不公平になっているんじゃないかと。戦争の犠牲を補償するという意味では、たいへん不公平なやり方になっているのじゃないかというように思います。
 次に、今度の特別交付金を支給される引き揚げ者の数と、それから今度の資金との関係なんでございますけれども、いただきました資料で見ますと、人員は三百六十万の中で死亡者がありますね。そしてこの前の三十二年の引き揚げ者国債を発行しましたときですね、これは三百四十五万二千七百人という交付の予定の人数をあげましたけれども、実際には発行した国債を受け取った人の数は三百十六万九千八百三十二人ですから、金額においても五百億の予定が四百六十億余で済んでおりますね。それで、その残りは何に使ったものなんですか、これは。
#42
○政府委員(実本博次君) 前回の引き揚げ者給付金につきましてのお尋ねと思いますが、先生お話しのように、当初の三十二年の引き揚げ者給付金の場合に、一応引き揚げ者の対象になります方を予定いたしました見込み数というものが三百四十五万、こういうことになって出発いたしたわけでございますが、昭和四十二年の、ことしの四月末現在で、給付金である国債発行を現実に伝達いたしました数が三百十七万二千人になっておりますので、最初の対象見込み数の約九二%に達しておるわけでございますが、その対象見込み数と実際に国債を受け取られた方との差がどういうことだったかと、こういうお尋ねだと思いますが、この大部分はやはり、今回の給付金と違いましてこの前の給付金は援護措置でございましたので、一定の生活レベル以上の方には差し上げないというふうないわゆる資産調査をした結果差し上げておりますので、最初からもう、私たちは請求権を持っているんだが、とても所得制限にかかってもらえないだろうということを意識されたかどうか知りませんが、そういうことを意識された方々で、要するにいままでに請求がないという方が大部分でございます。それから、まだ現在もなお請求書を市町村なり都道府県の段階で受理して申請中のもの約三万ばかりあるわけでございますが、それといま申し上げましたような未請求の方がおる、それが大部分だろうということでございます。
#43
○田中寿美子君 それで、今回の場合ですね、数はどのくらいを推定していらっしゃいますでしょうか。それから、だんだん年をとられてなくなられる方もあるわけですね。そうしますと、それは遺族給付になるわけですね。そうしますと、金額も減っていくわけですね。ですから、予算額なんかもこれは千九百二十五億円全部要るものかどうか、それはどんなふうに見ていらっしゃいますか。
#44
○政府委員(栗山廉平君) 今回の措置の人数につきましては、かねてお手元に差し上げました参考資料というものがございますけれども、これの裏の一番最後の表に詳しく書かれてあるところでございます。総数三百六十一万六千でございまするが、そのうち法律によりまして在外居住年数の一年以上の方が対象となるのでございますので、一年未満の者を除くことになるわけでございます。一年未満の者は従来の調査で全体の約三・三%というふうな目算が出ておりまするので、その数をかけまして消していく。それからさらに、法律にありますように、在外居住年数八年以上の者に、生存者には一万円、死亡者には遺族に七割の七千円というものを加算する規定がございまするが、その額を金額として、人数は変わりませんが、金額としてそれを加えまして、それで千九百二十五億という額が出てまいりましたのでございまするけれども、その支給の対象となる人数は、ここにありますように三百四十九万七千人というふうに推定をさせていただいておるわけでございます。
#45
○田中寿美子君 それで、その実際の実行額は違ってくると思いますね。
#46
○政府委員(栗山廉平君) 一つ落としまして失礼いたしました。その点についてお答えいたします。
 死亡者などがその後出れば遺族に行くのであるから、額が減るのではないかというような点を一点おっしゃいましたのですが、この法律の交付の日を起点といたしまして、たとえば八月の一日なら一日に交付をすると仮定いたしますと、その前の日までになくなられたその引き揚げ者の方、その方の遺族に遺族の交付金が行くわけでございます。そこで、一日に生きておられまして八月一日、つまり法律公布と予定されているその日の以後に引き揚げ者の方が、引き揚げて来られた方がなくなられた場合に、御本人が一日に生きておられましたからもらう権利があるわけでございます。したがいまして、これは遺族に――さっきから申しました遺族に差し上げる七割の額ではございませんで、何といいますか、もとの引き揚げ者そのものがもらう額、それをどなたかが相続によって獲得されるわけでございます。したがいまして、法律が公布されたあとになくなられる方があるわけでございまするが、その場合にはそのなくなられた引き揚げ者のいわゆる遺族には、遺族に対する交付金ではございませんで、いわゆる相続によって御本人がもらわれると同じ額が行くわけでございます。子供さんが三人おられれば三つに分けますけれども、総額としては同じ額が参りますので、支給額がなくなられるということによって減ってくることはございません。
 それからなお、千九百二十五億が全部そのまま出るのかどうかという御質問の趣旨がもう一つあったと存じますが、これはどうも正直のところを申し上げますと、申請される方が一〇〇%申請されるかどうかという問題が一つあるわけでございまして、その辺の見当は何ともどうもつきかねますが、できるだけPRをさしていただきまして、皆さんこぞってお出し願えるようにわれわれとしては万全の努力をいたしたいと、かように存じております。
#47
○田中寿美子君 次は大蔵省のほう見えておりますか。現在の交付国債の残高がどのくらいございますですか。
#48
○政府委員(岩尾一君) 全部ですか。
#49
○田中寿美子君 いろいろあると思うのですけれども。これはたいへん今後は、農地報償に続いてまただんだんふえていくと思うのですがね、どういう実態でございますか。
#50
○政府委員(岩尾一君) 現在各種の交付公債が出ておりますが、昭和四十年度末におきまして交付公債全体の額は八百七十五億が一般会計でございまして、これ以外に特別会計のものが若干ございますので、合わせて八百七十七億出ております。
#51
○田中寿美子君 新しくまたこういう給付をいたします国債を発行していきますので、財政を相当圧迫していくのではないかと思いますけれども、その辺はどうですか、大蔵省。
#52
○政府委員(岩尾一君) ただいま御説明のありましたように、今回の交付金は千九百二十五億でございますが、十年賦の交付公債でございますので、一年百九十五億ということに相なるわけでございます。先ほどちょっと御質問がございましたが、たとえば先般の五百億の交付公債を予定しておったけれども、四百六十億で済んで、残りはどうなったかというお話がございますが、これは特にその金を積んでいるというわけではございませんので、国債整理基金特別会計の中で、交付公債でございますからその毎年毎年の償還期が参りましたときに、十分の一ずつ国債整理基金のほうから払い出していくわけでございます。したがって、先ほどの五百億につきましては四十億分はまだ払っていないという状態になっておるだけのことでございます。今後はこの法案によりまして国債整理基金から毎年少なくとも百九十五億以内の金額を出していかなくちゃならない。国債整理基金はいろいろな運用もございますが、国債を整理するために一般会計からいろいろ入れていく金、あるいは特別会計から入れていく金、あるいは先ほど御説明をいたしました定率繰り入れによって一般会計から入れていく金、そういうものがたまっておる金でございます。ここから払っていくということになりますから、その払う金が不足をすると国債整理基金への一般会計からの繰り入れをふやさなければならないということに相なりますので、財政を圧迫するということは幾ぶん考えられると思います。
#53
○田中寿美子君 昭和四十一年度、二年度国債を発行しましたおりに、社会党の木村禧八郎さんから何回か言われましたが、財政法四条に基づいて国債の償還の計画を明確に明示する義務があるじゃないかということを言われておりますけれども、今度のこの交付国債についても、予算上特別の項目を設けてその償還計画を明示する必要があると思うのですけれども、いかがですか。
#54
○政府委員(岩尾一君) ただいま御質問のございました償還計画等の規定のございますのは、財政法第四条によります国の歳出に充てるための財源を調達するために発行される国債の議論でございます。したがって、先ほど御説明いたしております交付公債といいますのは、名前は公債でございますけれども、いわば一種の政府の債務証書と申しますか、年金証書と申しますか、そういった形のものでございますので、財政法第四条が言っているような国の歳出、いわゆる財源にするために発行する公債ではないわけでございます。したがって、この財政法四条の規定は働きませんので、特に償還計画を出すということにもならないわけでございます。
 なお、交付公債は、この発行によりまして国が債務を負うわけでございますから、その債務については何か国会の御了承を得なきゃならぬじゃないか、特に財政法十五条には、そういった国が債務を負う場合には法律に基づかなくちゃいかぬということを規定いたしております。したがって、今回こういう法案を提出いたしまして、御審議いただければ、そこでそういう債務を負う権限もいただいたということで発行し得るということになるわけであります。しかも、実際上の問題といたしましては、特に償還というものもはっきりと十年間に十分の一ずっというふうにきまっておるわけでございますので、特に提出する必要はないというふうに考えております。
#55
○田中寿美子君 もう一つ、大蔵省のあれですけれども、農地報償のほうは昨年から第一回の償還が始まっておりますね。これは第一年度目、第一年過ぎたら償還が始まるわけですね。そうすると、そういうものがだんだん累積していくと相当膨大な金額になると思いますが、それでも財政上の圧迫にはならないわけでございますか。
#56
○政府委員(岩尾一君) 先生のおっしゃるとおり、来年は農地報償の償還額にさらにこれが加わっていくということに相なります。したがって、確かに財政を圧迫するわけでございますが、またその交付公債の中には、戦後早く発行いたしまして、十年の期限が参りまして、落ちていくものもあるわけでございます。そういうものを差し引きいたしまして、やはりこれは相当の増加になることは事実でございますので、たいへん財政上はつらい問題だと考えておりますが、おっしゃるように非常に大きな負担ということにはまだならないと言える状態ではないかと思います。
#57
○田中寿美子君 今度の交付金に関して、引き揚げ者団体の方々の要求と、それから一部の政治家の要求と、それから大蔵省の要求とはたいへん違っていたわけで、私はそういう点で相当負担になるんではないかというふうに考えておりますが、最後に、先ほども申しましたけれども、戦争の犠牲者というのは全国民であるとすれば、社会保障をもっと拡充することによってすべての人に生活の保障がいくような方向に全体として政府は向かっていかなければならないと思うのですが、今度のは生活保護法の適用者には特別交付金は収入等と認定して差し引くことになっていますが、この点、厚生省のほうにお伺いしますが、あるいは総務長官でもいいんですけれども、こういう考え方は私は非常に妥当じゃない、そういう意味で生活保護者から収入を引くというようなことをしないようにすべきではないかと思いますが、いかがですか。
#58
○政府委員(実本博次君) これは社会局の所管でございますが、私の知っている範囲でお答え申し上げます。
 先生御承知のごとく、生活保護法は、あらゆる財産をつぎ込んでなおかつ生活ができない、そういう場合に最低生活を保障するというたてまえでございまして、収入があれば、それはどういう収入であろうと、認定するというのがたてまえでございます。ただ、前のこの引き揚げ者給付金の場合、これは今回と違いまして、まずこれは援護措置であるということでございますから、お困りになっておられる方について差し上げる措置をしたわけでございますから、その措置といたしましては、まず買い上げ償還を優先的に生活保護法の被保護者の方々にはして差し上げる。その償還がされた場合に金が一時どっと入るわけでございますが、その際に、そのお金を具体的に何か、その人たちがそういう最低生活から立ち上がる更生の具体的な計画があって、それに充当するというふうなことがあります場合には、これは収入と認定しない、とういうふうな取り扱いを三十二年の措置、給付金のときにとったわけでございます。したがいまして、今回のこれはそういう援護措置じゃなくて、いわば別の措置でございますから、援護措置でとったそういった態度まではとり得るのじゃないか、今回の措置につきましては。そういうふうに考えておる次第でございます。
#59
○田中寿美子君 今回のは給付対象者に所得制限しておりませんね。だれにでも全部一律に与えているのですからね。ですから、私は生活保護者の場合にも生活保護者の給付から差し引くというのは非常に矛盾だというふうに思います。それで、これは衆議院の内閣委員会では附帯決議がついたんではないですか。「生活困窮者等に対して買上償還等の措置を講ずること」というような附帯決議がついたんだと思うのですけれども、私はやっぱり社会保障的な――在外財産関係の問題は、もう全部終戦処理は終わりだ、今後はすべて社会保障でやっていくという考え方に立っているならば、生活保護者の収入から今度のこの給付を差し引くということをしてはならないと思いますが、その点をぜひ。
#60
○政府委員(岩尾一君) 私から便宜。衆議院のほうの附帯決議は「生活困窮者等に対して買上償還等の措置を講ずること」というのがございます。したがって、「等」という中に、あるいは先生のおっしゃったことが入っておるのかどうかということになるかと思いますけれども、先ほど援護局長から御答弁がございましたように、むしろ前の給付金は所得制限をしたということは高額な人には出さない、お金があるような、もうすでに生活の再建ができているような人には出さない、困っている人に出すんだという趣旨で出た金であるわけです。今回の交付金はこれと逆でございまして、所得制限してないわけですから、どんな人にも出ていくという交付金になるわけです。したがって、事柄の性質からいいますと、むしろ前回はそういった生活保護の認定についてもゆるやかに考えられるべきであったのかもわかりません。逆に今回のは、そういう意味からいうと、この交付金の性質からいえば、認定はちゃんとするというべきであろうと私は考えております。ただ、実際上といたしましては、先ほど御説明のありましたように、お困りの方が生業資金等に使う場合、たとえば渡した年金証書で毎年毎年の年金だけでは非常に少ない、そこで担保にしたり、あるいは買い上げ償還していただいたりして、たくさん一時に金が入った場合には、その分を生業資金として使うんだ、これは収入認定しないという方針でいっておるわけでございますから、その措置で十分ではなかろうか、かように考えております。
#61
○田中寿美子君 私はこれで終わります。ただ、いまおっしゃったことは私は反対に考えます。それだけ申し上げまして、私の質問を終わります。
#62
○青木一男君 関連して。田中委員の御質問に関連して、ちょっとお尋ねしておきます。
 総務長官は、今回の措置をもって在外財産問題の最終解決にしたい、こういうことを言われた。ところが、政府委員の答弁によると、条約未締結国間の今後の条約の締結状況によっては、この財産補償の問題が出てくるかもしれないというように聞こえた答弁がありまして、どうもちょっと矛盾するというような印象を与えたと思います。私はその点をはっきりするために、私は政府委員の答弁をこういうふうに理解しておるのですが、それが間違いないかどうかを確かめたい。
 日本は敗戦国として、講和条約によって多くの国との条約においては賠償を免除されておるわけです。ごく少ない国との条約によって賠償の義務を負っておりますけれども、先ほど政府委員が例にあげられたように、賠償額をきめて、その履行として日本国民の在外財産をその金額の一部に、これこれの金額はこの品物でというような、そういう外国の例にあるような条約は日本には一つもなかったと思います。したがって、今後も政府が条約未締結国との間の講和条約を結ぶ場合に、いままでのような方針をそのまま踏襲するならば、いまの問題が起きない、これはやはり最終的な解決になるのだ、まあそういうふうに私は政府委員が答弁されたと思うのですが、その点間違いないかどうか、ひとつ伺っておきたい。
#63
○政府委員(栗山廉平君) 先ほどはどうもちょっとことばが足りなかっだかとも存じますが、まああくまでも仮定の問題でございまして、こういうふうになるというような問題ではないわけでございます。
 いままで、サンフランシスコの平和条約によりまして賠償は課せられておらないわけでございます。それから青木先生おっしゃいましたように、二、三の国との間にそういう協定が結ばれておりますけれども、これはサンフランシスコの平和条約の中で、日本から賠償を取り立てる気持ちはわかるけれども、資源がないからやらないという、その次の二項目に、先ほど申し上げましたように役務賠償的なものが一つございます。沈船引き揚げとか、そういうもの、その役務賠償の一部として二、三の国の間にああいう協定が結ばれておるわけでございます。この場合にも金額が、御承知のようにきめられてございますが、そこの国、たとえばビルマ、インドネシアといったような国におきます日本人の、あるいは日本の在外財産との関係は現実の場合にどうかといいますと、これはこれでやはり十四条の(a)項で処分権が認められておる。それと賠償との関係は全然ないわけでございます。賠償は賠償で、国のほうの予算から別に払っておるわけでございまして、賠償に充てられているわけでも何でもございません。したがいまして、今後、こういう条約をずっと結んできておるわけでございますから、先ほど申しましたような仮定の問題が起こるかどうかということにつきましては、これは先の問題で、何とも申し上げられませんですけれども、いまのような同じような条約のかっこうで結ばれるといたしますならば、その場合には在外財産補償のような問題は、ビルマやインドネシアの例と同じように全然起きてこないということをはっきり申し上げられると存じます。
#64
○青木一男君 わかりました。
#65
○中尾辰義君 今度の引き揚げ者の在外資産の補償問題につきましては、非常に国民の関心も深いし、賛成の意見を持つ人もありますが、かなりまた反対の意見を持つ人もあるように思いますので、まあ若干質問がダブる点もございますけれども、要点だけでけっこうですから、答弁願いたいと思います。
 まず最初にお伺いしたいのは、三十二年のこの引き揚げ者給付金の支給によりまして、今度の在外資産の問題は一応それで解決した、こういうふうになっておるわけですが、さらに今回二千億円近くの特別交付金を交付する。はたしてこれが国民の納得を得られるかどうか、この点が非常に私ども疑問に思っておるわけですが、この補償問題が今日再び浮かび上がってきた、その間の事情についてまず長官に説明を願いたいと思います。
#66
○国務大臣(塚原俊郎君) 先ほど田中委員の御質問にもお答えいたしたのでありますが、三十二年の措置、さらにその後の在外財産問題審議会の答申に基づいてとった処置につきましてのお尋ねでありますから、御説明申し上げたいと思います。
 多年のペンディングであったこの問題について、政府は、第二次審議会の答申に基づいて引揚者給付金等支給法、これは三十二年にとったいわゆる立ち上がり資金でありまするが、これで一応解決したと考えておりましたのでありますが、その後、世上幾多の論議が出てまいりまして、三十九年、第三次審議会を設置いたしまして、在外財産問題に対してなお措置すべき方策の要否、及びこれを要するとすればその処理方式いかんという諮問を出したことは御承知であると思うのであります。これに基づきまして、審議会の答申は、前回の措置に対する評価は、前回の、つまり三十二年の措置の果たした援護的な意義は十分に評価されるべきであるけれども、在外財産問題についてはなお残された問題があり、それに対して所要の措置を講ずることにより、本問題の最終的な収束をはかることが望ましいというお答えがあったのであります。
 すなわち、田中委員にもお答えしたのでありまするが、引揚者給付金等支給法の措置は、主として引き揚げ者の国内における社会復帰に資するために講ぜられた措置であるという意味で、戦後一連の援護措置を最終的に仕上げたものとして評価され得るということは言えると思いますが、引き揚げ者が海外においてこうむった損害は、通常の財物としての財産の喪失のほかに、そこに居住すること自体によって長い間につちかったヒューマンリレーション、人間関係、生活利益、人間としての生活の最も基本となるささえまでも破壊されたという、きわめて過酷なものであったのでありまして、引き揚げ者の受けたこのような打撃は、いわゆる援護措置のみによってすべて完全に解決されたと割り切ることはできないという面がある。そういう考え方から、今回新しくこのように、特別な意味と価値とを持った財産の喪失者としての引き揚げ者に対し、特別の措置として交付金支給の措置を講ずることとなった次第です。
 ややこしい文句がありますが、答申の文句を引用いたしましたので、要するにこの前の三十二年は、立ち上がり資金である。しかし、この引き揚げ者というものは特殊のものである。人間関係、生活利益等、これに補償の義務はないとしても、政策措置として解決すべきであるという答申の趣旨に沿いまして、今回立法措置として御審議願っているわけであります。
#67
○中尾辰義君 それでは、三十二年度の引揚者給付金等支給法に基づく交付国債の発行の状況ですね、つまり支給人員、支給額、利子、所得制限等について答弁を願いたい。
#68
○政府委員(実本博次君) 前回の三十二年の場合の引き揚げ者給付金によります引き揚げ者国庫債券の発行状況等についてお答え申し上げます。
 四十二年の四月末現在におきまして、三百十七万二千件の国債の発行をやっております。そうしまして、この金額が四百六十一億一千七百万円、こういうふうな額に達しているわけでございます。それから、これにつきましては、六分の利子が、各交付を受けます際に、単利で計算されてついてまいっております。
 それから、所得制限でございますが、これは三十一年の所得税額を中心にいたしまして、三十一年分の所得税額が八万八千二百円をこえる者については交付しないというふうなことで、前の給付金が、そういう一定の資産以上のものを持っている者には出さない、こういうことになっておりまして、これによって受け取らなかったであろうと思われます的確な数字はわかりませんが、先ほど田中先生のときにお答え申し上げましたように、予定の三百四十五万に対して、さっき申し上げました、その四月末現在におきます実際に発行しました三百十七万二千というもの、約九二%までは出しておりますが、その予定数と実際発行いたしました数との差は、大半はそういった方々ではなかろうかと、こういうふうに思います。
#69
○中尾辰義君 一人一人の支給額を。
#70
○政府委員(実本博次君) 支給額は、先ほど申し上げましたように――先ほどは申し上げませんでした。支給額総額が四百六十一億一千七百万、こうなっております。
#71
○中尾辰義君 トータルでなしに、一人一人のものを。
#72
○政府委員(実本博次君) それはちょっと私のところではわかりません。これは法律の内容をおっしゃっておられるわけでございますか。――この支給額につきましては、前回は年齢別になっておりまして、年齢五十歳以上の方々につきましては二万八千円、それから三十歳以上五十歳未満の方には二万円、それから十八歳以上三十歳未満の方には一万五千円、それから十八歳未満の方につきましては七千円と、こういうふうな額で差し上げておるわけでございます。
#73
○中尾辰義君 そうしますと、今回約千九百億の特別交付金が支給されるわけですが、前回は立ち直り資金だというが、今度の性格はどうなのか、これをまず承りたいと思います。
#74
○政府委員(栗山廉平君) 私から答えさしていただきます。
 今回の特別交付金の措置の性格はどういう性格であるかという御質問でございますが、今回の措置の性格はいわゆる補償の措置ではございません。答申にもございまするように、引き揚げ者が終戦によって、海外におけるそれまでの生活をささえていた一切のものを失ったという、戦災者等の受けたものとまた異なる特異性に着目して講ずるところの特別の措置だということが端的に言い得ると存じます。そういう特殊な性格は、この前の三十二年の給付金が援護措置の最終的な仕上げであるとしておることに対しまして、はっきりした特徴になっておるわけでございます。
 そこで、それではそういう性格の特徴は今度の措置の中のどういうところにあらわれているかと申し上げますと、前回は所得制限があったわけでございます。けれども、今回の場合には所得制限は設けられてございません。それからまた、在外居住年数というものが一年未満の方には、原則として交付金は支給されないという点、なおさらに、八年以上の長い在外年数を持っておられる方には特に交付金を加算するというような制度が設けられておる点、それからまた、中年以上であった者には、同じ年齢別でも、この法案の中では三十五歳以上となっておりまするが、金額の上で優遇を加えておること、こういった諸点が先ほど申し上げました性格の特徴をあらわしておると存じます。
#75
○中尾辰義君 私がお伺いしたいのは、農地報償の問題でもそうでありましたが、国民感情という面から見まして、やはり戦災を受けた人たちもおるわけですね。そういう人たちに、前回も、三十二年度に一回もらっているじゃないか、さらに今回もらうというのはどういうわけだ、こういう素朴な意見があるから私は聞いておるわけです。が、しかし、その辺のところ、三十二年度の場合のこの趣旨はこういう趣旨だ、今回はこういうわけなんだと、明確に答弁をしてもらわなければ、条件がどうのこうの、ごじゃごじゃと言ったのでは理解に困りますから、その点ひとつ総務長官からお伺いしたい。
#76
○国務大臣(塚原俊郎君) 三十二年にとりました措置は援護的措置、つまり立ち上がり資金であります。その後、引き揚げ者の特殊な立場と申しますか、私は先ほど人間関係、生活利益ということばで表現いたしましたが、これは答申にあることばでありますが、こういう特殊のものに対して政策的措置を講ぜよという答申に基づいてやったわけであります。
#77
○中尾辰義君 まあ答申はそうでありますがね、政策的目的について、答申は答申として、政府はどういうふうにそれを考えて今回の処置をしたのか。
#78
○国務大臣(塚原俊郎君) 答申に沿って処置いたしたわけであります。
#79
○中尾辰義君 時間がないですから、あなたと押し問答してもしようがないですけれども。
 次に、三十二年度以降政府は一貫して在外財産補償問題はこれで処理が済んだと、こういうふうな統一見解をもって今日まで終始してきたわけですね。ところが、今回審議会の答申に基づいて特別交付金を交付する。言ってみれば、これは政府は国民に対してそれをごまかしたような気がするわけですね。これについて政府はどういう責任を感じておるのか、その点をひとつお伺いしたい。
#80
○国務大臣(塚原俊郎君) 繰り返すようでありますが、三十二年度の処理、つまり立ち上がり資金でこの問題の解決がはかられたやに見られたことは、これまた事実であります。しかし、その後、引き揚げ者の特殊な状況というものを、繰り返すようでありますが、人間関係、あるいは生活利益等、よって立つ基盤の喪失というような面から、国に補償の義務はないにしても、政策的措置をもってこの問題にピリオドを打つべきであるという考え方に基づいて政府がとった処置でありますので、御指摘のようなごまかしというような気持ちは毛頭持っておりません。
#81
○中尾辰義君 次に、先ほども質問がありましたが、引き揚げ者以外の戦争犠牲者である戦災者、原爆被害者、強制疎開者に対して、今日まで政府はどのような救済措置を講じてきたか、これが第一点。
 次はですね、今回の措置をもって最後の戦後処理とする意向があるようであるが、今後これらの戦争犠牲者に対する補償を行なう考えであるかどうか。
 この二点をお伺いしたい。
#82
○国務大臣(塚原俊郎君) 政府がとってまいりました措置としていろいろのものがありまするが、これは事務当局から答えさせます。
 この種の問題の処理は、今度の在外財産の問題でもってピリオドを打ちたいということは、何回も繰り返して申し上げているところでございます。しかし、いろいろと問題があるではないかという御批判、また御質問等も私たびたび承っております。それらは社会保障制度の充実拡充ということによって、それぞれの省において援護措置を強化して、そしてお困りの方々にお救いの手を差し伸べてまいりたい、このように考えております。
#83
○中尾辰義君 次に、審議会の答申は、在外財産に対しては国際法上または国内法上の観点から検討して、国には補償の義務がない、こういうことを結論づけておりますが、政府の見解はどうなのか、それをお伺いしたい。
#84
○政府委員(栗山廉平君) 法律上の補償義務があるかどうかということにつきましての政府の見解いかん、こういう御質問だと思います。政府は従来から、国際法上、国内法上、いずれから見ましても、国に法律上の補償義務はないということで主張をずっと通してきておるわけでございます。
#85
○中尾辰義君 法律上の措置でなくして、今回は政策的な配慮に基づくものというならば、社会保障的な考えを取り入れるべきではなかったのか、これが一つ。たとえば所得制限をつけるべきである、このように考えられるわけですがね。言うならば、非常に困っておる者もまた引き揚げ者であるがその後財産を築いて今日は何ら生活に不自由のないそういう人も、平等に今回は支給されるわけですね。こういう点について若干疑義もあるわけです。その点はいかがですか。
#86
○政府委員(栗山廉平君) 今回の措置は、審議会の答申でもよく御承知でありますとおり、引き揚げ者が強制的な引き揚げによりまして財産を含む一切のものを失ったという打撃、その打撃はほかの戦災者等に比べることのできないほどの特別なものである、これに対して国が特別な政策的な措置を講ずる必要があるという内容の答申であるわけであります。そこで、前回は援護的な措置でございましたので、引き揚げ者の引き揚げられてきた後における財産の状況によりまして、所得の多い方には差し上げないという所得制限があったわけでございまするが、今度は、過去におきましてそういう一切のものを失った、これがほかの犠牲者とは違った点である、特異性を持つものであるという点に着目して、特別な措置を講ずるのだということになっておりまするので、現在の状況がどうであるかということには関係なく措置をするというかっこうになったわけでございます。
 しかし、現実に生活困窮者もあることでございまするし、そういう方々につきましては、先ほどからもお話が出たと存じますが、国債の買い上げ償還とか、あるいは国民金融公庫による国債担保の貸し付けとか、または生活保護世帯の問題もございましたが、そういう場合の生業費として償還金を使用する場合に収入として認定しないといった方法の措置と、こういうような一連の措置を講ずることなどによりまして、運用の面におきまして、社会福祉的あるいは社会政策的な配慮をいたすべく関係省と総理府におきましては目下協議中でございます。
#87
○中尾辰義君 今度の交付総額千九百二十五億円、この線が決定するまでに引き揚げ者団体と政府側の意見がかなり開きがあったようであります。この両者のそれぞれの主張の根拠を説明願いたい。
#88
○国務大臣(塚原俊郎君) 新聞紙上いろいろの数字が伝えられましたことは事実でありまするが、この問題を扱う私は責任者といたしまして、あくまでも国民全部が戦争犠牲者であるという考え方、それから国民の納得のいく姿においてこの問題の最終的解決をはかりたい、国家財政とのにらみ合いにおいてこの問題の解決をはかりたい。しかし、答申を尊重すると申しましても、先ほど田中委員の御質問にお答えいたしましたように、抽象的な面が多いので、この解釈に率直なところ非常に苦しんだわけであります。そこで、世帯単位でやればこれは一番いい。なるほど九十五万四千世帯というその世帯に、一世帯幾らということでやっていけば一番いいのですが、これまた先ほど申しましたように推定の世帯数でありますので、いまそのとき実在した世帯数の一つ一つをキャッチすることができないということがありましたので、答申の世帯単位にやるべしということを考えながら、個人単位の積み上げ方式ということになっておることはこれまた事実でございます。と同時に、戦後のこういった措置の問題の数字等ももちろんそれは参考にしなければなりません。そういった面で政府は妥当な考え方であるという最終的な結論に立って、この千九百二十五億という数字を出したのでございます。
#89
○中尾辰義君 それから、今度の交付金は、五十歳以上で十六万、三十五歳から五十歳未満が十万、二十五歳から三十五歳未満が五万円、二十歳から二十五歳未満が三万円、二十歳未満が二万円、こうなっておりますが、遣族の場合は七割になっております。この理由はいかがですか。
#90
○政府委員(栗山廉平君) 今回のこの交付金の措置は、引き揚げ者がその海外における生活をささえていたところの一切のものを失ったという特異性に目をつけまして講ずる措置であることは先ほどから申し上げておるとおりでございまするが、そういう打撃、あるいは一切の喪失によりましてこうむったいろいろの引き揚げ者のショック――ショックといいますか、打撃というものは、厳密な意味では引き揚げ者一身に属するというふうにも考えられるわけでございまするが、かといって、本人だけにというわけにもいかない、言い切れない面があるとも考えられるわけでございます。そこで、引き揚げ者が死亡された場合には、一体それではどうするかというわけでございまするが、そういう引き揚げ者個人の一身に専属するとのみは考えられませんので、遺族に対してやはり支給することが適当ではないかというふうに考えられるのでございます。しかし、その遺族のそれでは受けた打撃というものは、引き揚げ者本人の打撃と一体同じであろうかどうかという問題が実はあるわけでございますが、その程度につきましては、本人の場合よりも遺族のほうがやはり少ないのではないかというふうに考えられまするので、交付金の額の決定にあたりましては、そういう点をも考慮いたしまして、引き揚げ者本人に対するものの七割というふうに算定をいたした次第でございます。
#91
○中尾辰義君 それから、外国における在外財産の処理はどういうようなふうになっておりますか。それが一つ。それから、今回の交付金は法人が対象になっておりませんが、それはどういう理由なのか、その二点。
#92
○政府委員(栗山廉平君) 外国の例でございまするが、ごく簡単に申し上げます。イタリアの例とドイツの例がございます。まず第一に、イタリアの例でございまするが、イタリアは平和条約におきましてはっきり賠償額がきめられてあるわけであります。条文の中に書いてあるわけでございます。そういう賠償、並びに戦争からイタリアに生じた債務というものに充てるために、連合国が自分の国内にあるイタリアの財産を処分するということに相なっております。ただし、その処分される在外財産というものは、あくまでも賠償のそういう金額を埋めるために役立つ財産だけでございまして、もうすでに戦災を受けたりあるいは破壊されたりしておるような、そういう目にあった在外財産は当然これはそういう賠償の用にはならないものでございまするから、すべての在外財産、昔あった在外財産なら全部というわけにはまいらぬわけであります。賠償に充て得る在外財産だけに限られるわけでございます。それで、そういう賠償に充てられたあるいは充て得るという財産を持っておるもとの権利者に対しましては、イタリアは国内法をつくりましてその補償の――補償ということばは使っておりませんが、補償の譲与をする、こういう立法措置を講じておるのでございます。この場合には、個人も法人も両方対象に相なっております。ただし、その補償といいますか賠償――補償でございます、補償のしかたは何も全額ではございませんで、やはり社会措置的な額によってやっておるのでございます。
 なお、イタリアにおきましては、そのほかに――ほかにと申しますと何でございますが、それとは別個に戦争損害補償法というものができておりまして、これはイタリア国内あるいは国外におけるイタリアの財産で戦災を受けたものに対しましては助成金を出すといったような方向で別途の法律が出されております。したがいまして、在外財産につきましては、戦災を受けた在外財産と、それから賠償の一部に充てられる意味の在外財産と、なお戦災も受けないで残ったけれども賠償にも充てられずにそのままという財産と、三種類あるわけでございます。
 それから、次がドイツの問題でございますが、ドイツにつきましては、先ほどもちょっと触れましたけれども、一九五二年、昭和二十七年でございまするが、負担調整法という法律が制定されまして、戦争によって残った財産に特別税を課して、それによって得た収入を財源としまして、その財源をもって戦時及び占領下における物的損害の被害者たる個人に、つまり法人は除きまして、個人に対してのみ調整の給付措置を講じたのでございます。この場合法人を除きましたのは、ドイツのいわゆるドイツ人、ドイツの自然人でございますが、戦争に負けてドイツの個人個人が同じスタートラインに立って、戦争による負担を同じように引き受けまして、同じスタートラインから出発しようというような趣旨があったというように聞いておりまして、したがいまして、法人は全然対象にしないということに相なっておるわけでございます。それで、先ほどもちょっと触れましたように、在外財産に対する同じような措置につきましては、法案が一度国会に提出されて、解散によりこれが流れたわけでございまして、再度提出するというように聞いておりましたが、まだドイツの国会に提出されたということを聞いておりませんので、在外財産の損害に対する措置はまだなされておらないというふうに考えるわけでございます。
 そしてこの両国とも、ドイツ、イタリアとも、国内立法をつくります場合には、法律上の補償義務があるからということではなくて、国内の負担の均衡、あるいは正義の実現といったような立場で、そういう理念に基づいて法律をつくるというふうに言っておるわけでございます。
 それから、第二点の御質問でございまするが、今度の、いま御審議願っておりまする法律の内容におきまして、個人だけが対象になって法人が除かれておるのはどういう理由であるかという御質問でございますが、在外財産というものに対する補償でありまするならば、これは個人であろうと法人であろうと、要するにどなたがその財産を持っておろうと、その財産に対する措置がなされねばならないわけでございます。が、しかし、今度の場合は答申にもありまするとおり法律上の補償義務はない。ただし、引き揚げ者が強制引き揚げによりまして一切のものを根こそぎ失ったという非常に特別なケースに着目して、これに特別の措置をとるようにという答申でございます。政府はそれを受けまして、引き揚げ者たる、つまりこれは自然人でございまするが、それを対象にいたしましてこういうような内容の法律を提案させていただいた次第でございます。
#93
○中尾辰義君 次に、三十二年の引き揚げ者給付金の場合は六カ月以上の人でも給付を受けたのに、今回は何ゆえに一年以上としたのか。
 それと、外地で生まれた場合、一歳以上と一歳未満の間に差別を設けておるわけですが、この点は非常に不合理と思われるんですが、いかがでしょうか。
#94
○政府委員(栗山廉平君) 前回の場合に六カ月の在外居住年数をとっておりながら、今回一年になったのはどういうのかとおっしゃる御質問の第一点でございまするが。今回の措置は、先ほどから何回も申し上げましたように、その性格が引き揚げ者の海外における一切のものを失ったという点を考慮して、それを理由として、それに着目して行なうのであるという内容でありまして、答申にも言っておりまするように、その地にあって家庭人として家族とともにくつろぎ、安らぐといったようなものとか、あるいは社会人として地域社会のために奉仕する誇りといったような、そういう精神的な支柱も一切含まれておるわけでございます。そういう意味での生活のささえというものは、一定の期間引き続いてやはり安定あるいは安住した生活を営むことによって初めてつちかわれるものであるというふうに考えるわけでございまして、答申におきまして在外居住が一定年数未満の者を対象から除くようにとしておりますのも、まさにこの趣旨によるものであると解されるのでございます。そこで、その年数をそれではどういうふうにきめるかということでございまするが、この一定年数をあまり長くいたしますることは、引き揚げ者に対しまして非常に不利となることになりまするので、最小限の一年という年数を要件といたしたのでございます。前回の引き揚げ者の給付金の措置におきましては、前回の措置は、先ほどから何回も申し上げておりまするように、そういう一切のものを失ったということに着眼していたしたのではなく、外地における生活基盤を失って新たに内地に引き揚げてきまして内地で生活の再建をはからなければならなかった、そういう点の援護ということに着目したのでございまするから、在外居住年数に要する要件というものは六カ月で、前回と今回と異なるのも決して理由がないことではないと存ずる次第でございます。
 それから、一歳未満の子供と一歳以上の子供の間に事実上の差別ができるではないか、これは不合理と思われるがどうだと、こういう御質問だと第二点は存じておりまするが、一歳というような年齢からこの区別が出るわけではございませんで、先ほどからるる申し上げました在外年数が一定年数以上、つまりこの場合は法案では一年以上という線をとったわけでございまするが、そういう点から在外居住年数が一年に満たないお方は、まあお年をめした方でも、あるいは赤ん坊でも年少者でも、要するに全部についてこの一年末満の者は落とされるということが当てはまるその結果としてくるわけでございまして、特に一歳以下の方だけを目標にというようなことでとらえた内容ではございませんので、その点は御承知おきを願いとうございます。
#95
○中尾辰義君 在外居住者は十年、二十年、三十年とまあいろいろあるわけですが、それを八年以上を一括してこれに一万円の加算をしたその理由について説明してください。
#96
○政府委員(栗山廉平君) 一般的に申し上げまして、外地、外国における財産形成とか、あるいはそこに居住すること事態から生ずる先ほど大臣が申しましたような人間関係、生活利益といったような状況につきましては、在外居住年数の長いか短いかによって差異があるものというふうに一般的には考えられるわけでございます。一般措置としてはそういうふうな考えをとらざるを得ないかと存じます。そこで、今回の措置が外地におけるこういったような財産の喪失と人間関係の喪失、一切のものを失ったそういう事態に着目してなされるものでありまする以上、在外居住年数の長い者ほど実は優遇されるべきではないかというふうに考えることは、これは当然だろうと存じますが、ただし、在外居住年数をこまかく切りまして、それに応じて一々比例的に加算の措置を講ずるといったようなことは、とてもこれは実態がむずかしく事務的になかなか困難であるという観点からしまして、そういうきめのこまかい認定はなかなかむずかしいので、実務上の点からしまして、一応日華事変の始まったところの昭和十二年を基準にいたしまして八年というような年数を出しまして、それ以前からの長い居住者に対しましては若干のここにございまするように加算の措置をもって優遇をいたしたい、こういう考えで出したわけでございます。
#97
○中尾辰義君 次に、この引き揚げ者の定義につきまして「生活の本拠を有していた者」と、こういうふうに法案になっておりますが、その意味について。それが一つ。
 それから、軍人軍属が含まれることになるのか。一般民間人と軍人軍属を同一に扱うことは少しおかしいような気もするわけです。その点についてひとつ説明してもらいたい。
#98
○政府委員(栗山廉平君) 法律の中に引き揚げ者等の定義の中で「一年以上生活の本拠を有していた者で」というようなことばがあるけれども、生活の本拠というのはどういうものであるかという御質問でございますが、生活の本拠と申しますのは、主たる生活をそこで営んでおるという、いわゆる生活がそこによってもって立っているそのもとをなすものというように考えておるわけでございます。したがいまして、ただ単なる旅行者とか、あるいは一時そこにちょっとおられたというような方は、生活の本拠とは見ていないわけでございます。そういう意味でこの「生活の本拠」ということを書いておるわけでございます。
 それから、軍人、軍属が一体入るのか入らないのか、こういう御質問だと存じますが、原則といたしまして、軍人、軍属は対象といたしておりません。ただし、たとえば現地の応召、あるいは現地で、つまり現地にちゃんと家族や世帯がございまして、そうして現地で応召する、あるいは現地で入営するというような方もやはりあるわけでございます。現地で軍属になられるというような方は、外地にやはり生活の本拠があるわけでございますから、そういう方々がたまたま応召されたりあるいは軍属の身分になられたということでございまして、その本質はあくまでも引き揚げ者の本質を持っておるわけでございます。したがいまして、結果的には軍人、軍属でございますけれども、そういう方で軍人、軍属になられた方は引き揚げ者の中に含めて対象としてお考え願う、こういうことでございます。
#99
○中尾辰義君 法律案の第二条第一項に「政令で定める者を除く。」、こういうように出ておりますが、この意味について。
#100
○政府委員(栗山廉平君) ただいまの先生の御質問は第二条第一項第五号でございますか、この第二条第一項第五号の「政令で定める者を除く。」と申しますのは、ちょっと五号はややこしい書き方でございますが、この五号におきましては、終戦あるいは終戦後というとちょっと厳密を欠くかもしれませんが、終戦直後のあの混乱した時代に引き揚げられたというお方が四号まで、大体三号までに書いてあるわけでございます。五号におきましては、むしろ開戦の前後というのがここに書いてあるわけでございまして、終戦、戦後のあの混乱した――終戦といいますとことばがよろしいのですが、敗戦でございます、要するに。敗戦前後の時代と開戦前後の時代は全然その時代を異にしているわけでございまして、開戦前後の場合には、たとえば引き揚げの交換船というような場合には、そういう敗戦に伴うまことに混乱した時代で引き揚げてくるというのと違いまして、たとえばこの交換船の場合には外交官、あるいはその他の政府の官吏、それが家族をちゃんと連れまして引き揚げてくるといったような時代、あるいは大きな会社、あるいは新聞社、銀行といったような方方のニューヨーク支店長、サンフランシスコ支店長といった、あるいはその支店の勤務員といった方が非常に多くを占めていたわけでございます。そこで、これらの人々につきましては、そもそも前々からの勤務者でございますから、一定の年数を勤務すれば、また別のほうに派遣地が、勤務地が変わっていくというようないわゆる勤務者でございます。そういう本社あるいは本国の命令によりましてその勤務地につとめておった方というような方を政令で除きたい。この方たちは別にそこに生活の本拠をどっかとかまえておったとは考えられませんし、また敗戦のときのような混乱で一切の生活手段の喪失といったような事態も考えられませんので、そういう方は政令をもって除きたい、こういうことでございます。
#101
○中尾辰義君 それから、第二条の三項に「戦争に関連する緊迫した事態に基づく日本国政府の命令又は要請により外地に生活の本拠を有するに至ったものであると内閣総理大臣の認める者」、これはどういう意味ですか。
#102
○政府委員(栗山廉平君) 第二条第三項でございますですね、「戦争に関連する緊迫した事態に基づく日本国政府の命令又は要請により外地に生活の本拠を有するに至ったものであると内閣総理大臣の認める者」、この点につきましては、戦争の末期におきまして、連合国の本土空襲の激化に伴い、軍需工場の維持、増強が内地においては非常に困難な事態に直面いたしましたために、政府が内地の軍需工場及びその関連工場の一部施設を大陸に移しまして生産に従事させようということをきめたわけでございます。政府はこれらの工場の移設を命ずるにあたりまして、そこで働いておりました必要なる技術者、あるいは技能者、労務者といったようなものの移住もその工場とともに命令をしたわけでございます。これらの要員は、内地における生活関係の一切を清算して、工場とともに大陸に渡ったものでございます。そこで、満州開拓民の農業移民といったようなものに対しまして、工業移民的な性格を持っておったわけでございます。したがいまして、これらの者につきましては、満州開拓移民と同じような取り扱いをしたいと存じておるわけでございまするが、この前の引揚者給付金等支給法におきましても、同じようなことばで厚生大臣が認めた者というものがございましたので、それと同じ意味でここに掲げさせていただいたわけでございます。この前実際に厚生大臣が認められました工場が五ついままではあったわけでございます。おそらくわれわれのほうもそれに従うことになろうと存じます。
#103
○中尾辰義君 それから、今度の交付国債は譲渡、担保は禁止になっておるわけですが、生活困窮者の支給については買い上げ措置なり、あるいは国民金融公庫のこの担保貸し付けを行なう道をしてあるかどうか、この点。
#104
○政府委員(栗山廉平君) 先ほどこの点につきましても申し上げましたが、第七条に、国債につきましては、 「政令で定める場合を除くほか、譲渡、担保権の設定その他の処分をすることができない。」ということが第七条の四項に書いてございます。政令で定める場合はしからばいかなる場合かと申しますと、生活困窮者の方に対して国が買い上げをいたすというような場合、あるいはまた、いま先生がおっしゃいましたような生業資金を得るために国民金融公庫といったようなところから貸し出しをする場合といったような、従来と同じような方向で、いませっかく関係省と協議をいたしております。おそらくそういうようなことになるのではないかというように存じます。
#105
○中尾辰義君 最後に、本案が成立したあとの手続の経過、支給までの期間はどういうようになっているか、説明してください。
#106
○政府委員(栗山廉平君) この法律が国会を通過した場合にどういうような大体かっこうになってくるかということでございますが、該当する請求者は、請求を自分の住んでおりますところの、つまり居住地の市区町村にお出しになるわけでございます。そうしますと、その請求書は居住地の都道府県を経由しまして、請求者の終戦時の本籍地があったところの都道府県に送られまして、ここで認定の処分が行なわれるわけでございます。その報告に基づきまして、総理府から大蔵省に対して国債発行の請求を文書でいたすわけでございます。で、その請求がありました場合、大蔵省から日銀等を通じまして、国債発行の具体的な手続がとられるということになるわけでございます。したがいまして、請求者が終戦時の本籍地にそのまま居住しているか、あるいはその後もう何十年もたっておりますから、本籍地をいろいろ離れまして、他府県に行っているかというようなことによりまして、経由するところの数が違いまするから、多少の差異はあるかと存じまするが、本籍地に居住しておる引き揚げ者で証拠書類等が比較的完備しておる、あるいはこの前の三十二年のときに書類を出しておられまして、それが非常によく活用できるというような場合には、前回の実績から見まして、まあ四カ月か五カ月ぐらいでお手元に公債が届くのではなかろうかと、かようにわれわれは事務的に考えておる次第でございます。
#107
○中尾辰義君 最後にちょっとお伺いしますけれども、戦災孤児については、戦後二十二年間、一円の補償もなかったと、こういう何が来ていますよね。ですから、在外資産等に対しても非常に不満の意見を持っている人が――これは新聞に対する投書ですよ。私は参考に聞いているわけですよ。こういうのはどういうふうになっているんですか。
#108
○政府委員(実本博次君) 先生お尋ねの戦災孤児でございますが、終戦直後は御承知のように生活保護法というものがございませんで、生活困窮者緊急保護の事業というものがございまして、単に戦災孤児だけじゃなくて、いわゆるいま生活保護法の対象になるあるいは児童福祉法の対象になるような子供さんといったような人たち全体を対象としまして、生活困窮者の緊急援護事業によって、それぞれその人たちが持っておりますニードといいますか、困窮度合いに応じた援護の手が差し伸べられておったわけでございまして、何もしていないというふうなことではなくて、そういった緊急援護事業として処置いたしていたわけでございます。その他民間のいろんな施設も当時はまだ完備した――やはり荒廃いたしておりましたが、しかし民間の施設等もあわせまして、そういった人たちが何らかの社会的サービスを受けておったというふうに承知いたしておるわけでございます。
#109
○委員長(竹中恒夫君) 関連質問で山下委員も質問がおありだそうですから、発言を許します。山下君。
#110
○山下春江君 私は終戦直後ずうっと衆議院におりましたので、引き揚げ問題の議会内で設置された特別委員会の委員長を非常に長くやっておりましたので、舞鶴に引き揚げ者の方々をお迎えに行くこと十九回、たいへん不便な汽車の旅をおかして行きましたが、あのときの引き揚げ者の面影をいまでも思い出すのであります。全くあの冬の寒いときに上着を着ていない人があって、なぜ上着を着ていないかと言いましたら、長い汽車で輸送されるときに栄養失調で子供がなくなったので、なくなったからだだからいいとは思いながらも、何か寒いだろうと思って上着を脱いで、そのからだを包んであげて、荒縄で縛ってレールの脇にそっと置いてきたということを涙ながらに訴えられた人もあるし、さまざまの引き揚げの悲劇を私は十九回ながめてまいりました。
 それで、ちょうどいま御議論のありました五百億の第一回の立ち上がり資金が制定されましたときは、私、厚生政務次官をいたしておりましたので、この問題についてもつぶさに存じておるわけでございますが、それが先ほど政府委員のお答えのように、約五十億余っているような感じでございますが、これがなぜ余ったかということは、ちょっとやっぱりたいへんむずかしい内容なものですから、そこで、引き揚げてこられた方で、まだ出かせぎとかあるいは日雇いとかそういうところでからだが自由にならない方があって、自分の住まっておるところから遠いところへ出かせぎに行っている人なぞは、五日間ぐらいの休暇をもらってきてその手続をしようとしても、なかなかうまくいかなくて、手続が完了しないために、何べんも行くわけにはいかないものですから、とうとうあきらめて、もう放棄してしまったというケースが非常にたくさんございますので、そういうことで、今回政府が言われますように、最後のこの引き揚げ者の人たちに対する在外財産の給付の措置につきましては、政府でいろいろお考えでいらっしゃろうと思いますけれども、これがまた前のときのように手続がたいへんむずかしかったり、いろいろ十分に法律上の内容がわからないために放棄する方があったのでは、せっかく引き揚げ者の方々の特別な立場を考慮して考えていただきました今度の特別給付金が、またぞろ手続の煩瑣のためにどうしてもそれを受けることができないというようなことができますとたいへんお気の毒だと思いますので、その点に関しましては政府は十分な御配慮を賜わりたいと思います。
 何かそういうことのないように、窓口で十分な指導をしてくれるような措置を講じていただきたいと思いますが、その辺に対しまして政府のお考えが、いまその煩瑣な手続をスムーズに進めるための何かお考えがまとまっていれば、それを一点だけ聞かしておいていただきたいと思います。
#111
○国務大臣(塚原俊郎君) 過般、当院の予算委員会においても、農地報償のアフターケアの問題としていろいろの論議がありましたことは御承知だと思いまするが、えてしてこういうものが、まあ宣伝の不足と申しまするか、また手続の煩瑣ということから、全部に均霑しないといううらみがあることを私これは認めざるを得ないと思うのであります。そうなりますと、せっかくつくりましても、その目的を達しないということになりまするので、いままでのいろいろな具体例というものを重要なる参考資料といたしまして、万遺憾なきを期していきたい。
 なお、三十二年、まあ山下先生、厚生政務次官としておいでになられましたが、その際に、これは初めての事務として都道府県においてこれを扱ったのでありますが、最初のことだけにいろいろな面で問題はあったと思います。で、今回も、ややなれているとは申しましても、やはりいま御指摘のような煩瑣な手続等のためにこれをギブアップする、放棄するというような方があってはお気の毒でありますから、そういうことのないよう十分処置いたしたいと考えております。
 それで、たびたびこの問題に精通しておられる引き揚げ者団体の方を御利用なすってはという声もあちこちで聞きまするし、衆議院でもそういう問題も出ましたのでありまするが、やはり法律事項に基づく行政事務でありますだけに、その仕事を民間団体にゆだねるということは私は好ましいことではないと考えております。しかし、問題が非常に抽象的なものも多く、またたとえば先ほどから申しておりますように、世帯数にしても、引き揚げ者数にしても、すべて推定に基づき、答申そのものが抽象的であるというようにつかみにくいものもかなりありまするので、そういう方面に造詣の深い方々の御意見を十分拝聴いたしまして、この問題がすみやかに円滑に施行されることを心から望んでおりまするし、また、そうなければならないと考えておる次第であります。
#112
○山下春江君 十分その点につきましては御配慮の御答弁をいただきまして、ありがとうございました。十分な御配慮をいただきたいと存じます。これで終わります。
#113
○戸田菊雄君 総務長官にお伺いをしますが、この今回の法案の策定にあたって、いろいろな矛盾といいますか、非常に不明朗な事態というものが取りざたされているわけですが、何かきわめて政治的なにおいがあるのですけれどもね。そういう背景、経過、こういう問題についてひとつ総務長官にお伺いをしたいと思います、本法案の成立にあたっての。
#114
○国務大臣(塚原俊郎君) この法案の成立――この法案をつくる過程においてですか。実は私のところは、まあこれは非常に守備範囲が広いわけですが、この問題を担当させられまして、初めてといってはたいへん語弊があるかもしれませんが、答申、それから今日までのいきさつ、何せ室長以下四人しかいないところでありますが、それこそ昼夜兼行でこの問題と取り組んだわけであります。社会党の方、また民社党の方、いろいろの方もおいでくださいましたし、できるだけ私は、私の目で、耳でこの問題の把握につとめるよう、あるいはマスコミ関係の方と、精力的に立ち回ったつもりであります。いま御指摘の点は、いわゆる数字等の問題についての問題も多分に含まれていると思うのでありますが、
  〔委員長退席、理事青柳秀夫君着席〕
なるべくこれを、佐藤総理も在外財産問題をこの国会で片づけるという施政方針の演説、また自民党の代表者であった西村君もこの問題についての質問をなさっている。その前行なわれた選挙では、確かにこれは自由民主党の公約であったことも私は認めます。しかし、その数字については、公表されたということは私は聞いていないのであります。しかし、新聞紙上伝えられる数字等について、野党の方をはじめとし、いろいろな方々から私のところにいろいろな話が参ったことも、これ事実でありまするが、私は、先ほどから申し上げておりまするように、これを担当するものといたしまして、すべてが戦争犠牲者であるという考え方、国民全部が戦争犠牲者であるという考え方、世論の納得のいく方法、国家財政の、財政状況の許す範囲においてこれを処理する、それから他の戦後のこういった処置等の関連においても行なうということを基本原則として取り組んだのでありまして、私自身のところには、いま言ったような背景とか矛盾というものは私は感じません。私は私なりにそういう考えで進んだつもりであります。いろいろ御批判もいただきましたが、率直に私はそういう考えでこの問題と取り組み、御批判はあると思いまするが、いま御審議を願っておる法案を提出いたした次第でございます。
#115
○戸田菊雄君 端的にいうと、自民党の来年の参議院対策じゃないかと、こういう意向もいろいろ取りざたをされているのですが、そういう点はどうですか。
#116
○国務大臣(塚原俊郎君) 政党の活動は選挙によって云々ということは、これは常識だと思います。それから、政治も日常闘争であるとも言われております。ですから、国民の求めているものを、それぞれの政党が公約としてこれを取り上げ、これを実行に移す努力をすることも、私は当然あるべき姿と考えております。しかし、先ほどから繰り返して申しておりまするように、この担当した塚原、私は、決してさようなことを考慮に入れて、頭に入れてやったわけではございません。たまたま明年参議院の選挙が行なわれるということから、時期的にそういうことを勘ぐる方があるかもわかりませんが、私はそういうふうには考えておりません。
#117
○戸田菊雄君 この法律の第一条を見ますると、「この法律は、引揚者及びその遺族並びに引揚前死亡者の遺族に対する特別交付金の支給に関し必要な事項を規定する、」こうなって、「法律の趣旨」ということになっておるのでありますから、この法律が生まれてくる根源ですね、確かに引き揚げ者は、非常に在外資産を多数喪失をして裸一本で帰ってきた。非常に気の毒です。ですから、こういった者に対する政府の援護措置というものは当然あってしかるべきでありますが、そのよってくる根源はどういう解釈なり立論によってこの法律が生まれてきたか。たとえば、具体的にお伺いしますが、これは戦時災害という考え方、あるいはそういうことなのか。そういう立場でこの本法の制定というものが行なわれてきたのか、そういう点についてはどうですか。
#118
○政府委員(栗山廉平君) 今度のこの引揚者等に対する特別交付金の支給に関する法律の趣旨でございまするが、答申にもはっきりうたっておりまするように、戦争犠牲の一種であることは、これは間違いございません。ただし、そういうものの中で他と比べられない特別の特異性があるということで、こういう方たちに特別な措置を講ずる必要があるというのが答申の骨子でございます。そこで、その答申の趣旨に基づきまして、この法律をこういうふうなかっこうで出されていただいたというのが経過でございます。
#119
○戸田菊雄君 その特異なケースというんですけれども、私、具体的に伺いますが、たとえば原爆被害者、あるいはまた戦後インフレ経済によって経済封鎖が行なわれた。当時の私の記憶では、百円以上が大体封鎖対象になった。それで政府に没収ですね。それから、戦時中強制疎開とかあるいはその他戦争災害というものは非常に多いのだと思いますが、こういったものと比較してどういうふうに解釈しますか。
#120
○政府委員(栗山廉平君) この引き揚げ者が失ったというその失い方でございまするが、これはすべての経済的な財産のみならず、社会的ないろいろの利益、それから財産形成的なその土地における、その社会における能力といったような生活の根本のささえが、戦争、特に敗戦によりまする強制的な自分の住んでおった土地を去らされる、つまり強制的に移住させられる、引き揚げさせられるという、ほかにない特別な事情によりまして、一切その地域にはやしておった根まで、つまり生活の根拠でございますが、それまでも一切剥奪されたという点が、単なる戦災等による損害とは異なった性格を持っておる。それが引き揚げ者の、在外財産喪失者としての引き揚げ者の特異性というものであるので、これに特別な措置をする必要があるのじゃないかということが答申に書いてございます趣旨でございます。それに対しまして、政府はその線に沿いましてこれを出させていただいたというわけでございます。
#121
○戸田菊雄君 引き揚げ者がその特異なケースであるということは私も認めるんですよ。だから、そういう類似ケースがないかどうかということをいま聞いておるのであって、それを具体的に、たとえば原爆被害者とか、これはかつて政府が四十一年の四月二十七日でございますけれども、橋本官房長官時代だったんですけれども、原爆被害者の実態調査等について三千八百万円見当の予算を使って、いろいろその政策化の方向に向かって実態調査をやったことがあるわけです。その調査結果によりますと、原爆被害の特殊性というものが明らかになっておる。たとえば、原爆被害の特殊性というものは、第一、放射能の障害があるということ、そのことによって各種のガンあるいは肝臓疾患、循環器疾患、糖尿病、こういうものが非常に多発の傾向である。あるいは原爆ぶらぶら病といった状態である。第二は、瞬時の無差別大量殺傷、こういうことによって多くの欠損家族というものが生み出された。いわば家屋なり財産なり労働の場というものを根底から失った、こういう事態もあるのである。さらにこういう原爆の被害そのものを、大体動向というものを見てみますというと、被爆者の四五%、年齢にいたしまして五十五歳ないし五十九歳、こういった人たちがほとんどがニコヨンといわれておる。失対事業等で実は働いておる。こういう事実、実証というものは、明らかに生活の根底の場を失っておるということは言い得ると思う。こういうものは一体特異のケースに入らないのかどうか、こういう点についてどうですか。
#122
○政府委員(実本博次君) いまお話しの原爆被爆者の問題につきましては、先生も御指摘になりましたように、四十一年の国会での決議、つまり原爆被爆者の実態調査をして、すみやかにその対策を考えろという決議に沿いまして、実は原爆被爆者実態調査をこの十月にまとめる予定でやっております。先生がお話しになられました原爆被爆者の状態というものは、確かに中間報告でそういうことをこの三月でございましたか発表いたしたわけでございますが、そういった中間報告の最終仕上げを十月に行ないますので、そういった報告がまとまりましたところで、いろいろそういう人たちのニードをよく見てみまして、そして一般の社会保障でやるべきものであるか、あるいはまた特別な措置をとるべきものであるかといったようなことをその時点において検討いたしてみるというふうな厚生省なりの考えをいま持っておるわけでございます。
#123
○戸田菊雄君 総務長官にお伺いしますが、こういった引き揚げ者の特異ケースを立法化しなければいけないというのは、言ってみれば、日本の社会保障体制、こういうところの欠陥であるんじゃないですか、その点はどうですか。
#124
○国務大臣(塚原俊郎君) まあやはり戦争という、いままで敗戦というかつて味わったことのないことによって起きたいろいろな問題、その一つがこれであろうと私は考えております。社会保障の充実につきましても、政府は鋭意力を入れてやってきておりまするが、御批判のあることも承知いたしておりまするが、社会保障が足りないためにこの問題が起きたとは私は考えておりません。やはり引き揚げ者という特殊なケースに基づいて答申が出されました。それにのっとって立法措置を講じたのでありまして、その点、戸田委員とやや見解を異にするのではないかと考えております。
#125
○戸田菊雄君 で、その具体的な内容についてお伺いをしてまいりたいと思うんですが、もう今日まで、大体資料によりますると、昭和二十九年に在外財産問題審議会というものがつくられまして、自来こういろいろ検討されまして、一定の援護保護措置というものが行なわれてきたんでありますが、そういう従来までの援護厚生施策の具体的に実施した内容ですね、それから、でき得れば、その総額についてはどのくらいそういう援護措置としてとられたのか、そういう内容について説明を願いたいと思います。
#126
○政府委員(実本博次君) 簡単に申し上げますと、引き揚げ者に対します援護措置といたしまして、終戦後今日までとられてまいったもの、応急援護措置と、それから定着援護措置というふうな二つの種類に分けて見てまいりますと、応急援護といたしましては、とりあえず、上陸地に着かれましたときに、応急援護として帰還手当といったようなものを一人一万円、それを差し上げている。それから医療品、日用品等の支給をやる。それから、たとえば上陸地の受け入れ機関、いまで申しますと検疫所のようなところで給養と申しますか、食べたり寝泊まりする経費、そういうもの、
  〔理事青柳秀夫君退席、委員長着席〕
それから今度は定着地までお帰りになる帰郷旅費といったものを差し上げることにいたしておりまして、それが昭和四十一年までの予算上の額といたしましては、三十一億七千二百万円、こういうふうになっております。
 それから、今度は定着先に帰られましてからの定着援護というものでございますが、これにつきましては、住宅対策、引き揚げ者に対して特に当初は旧軍用地の施設等を補修改造いたしまして引き揚げ者を収容してきたわけでございますが、二十三年度から二十八年度までは、四万六千戸の住宅を新設いたしまして、引き揚げ者が入居できるような措置をとってきた。それから、二十九年度以降におきましては、建設省の所管で、引き揚げ者向けの第二種公営住宅を建設いたしまして、住宅に困窮する引き揚げ者を入居させましたわけでございます。それが大体四十一年までに二万一千戸というふうなものが措置されております。で、これはちょっと金額といたしましては、四十一年度で六十八億九千五百万円、こういった額にのぼっております。
 それから、更生資金の貸し付けでございますが、二十年の九月以降、国民金融公庫から一世帯三万円、それから特別の事情のあるものは五万円の範囲内で、約二十一万件ばかりを貸し付けてまいっておりますが、その貸し付け金額が三十五億五千万円になっております。それから、引き揚げ者の国債担保によります生業資金の貸し付けでございますが、これが約二十五万件で、六十七億六千万円といったような額になっております。
 それから、その他定着地でいわゆる越冬寝具といったようなもので現物給付をしておりますが、これが六億三千万、それから、その他特別更生資金貸し付けということで、中共関係の引き揚げ者のみに関して別な生業資金の貸し付けをやっておりますが、これが一億九千八百万円といったようなことで、その計が二百二十六億九千八百万円、こういうことに相なっております。
 それから、前回の引揚者給付金等支給法によりまして、先ほども申し上げましたが、大体四十一年度までには四百六十一億というものが給付されておるわけです。
#127
○戸田菊雄君 こまかい数字までいま具体的にお示しいただいたんですけれども、それで何といいますか、援護措置関係は完全にいっているのですか。十分ですか。
#128
○政府委員(実本博次君) 終戦直後、あるいはそれから十年とかあるいは二十年とかいう区切りでもって、大体国民生活一般のレベルもあるいはその他の生活水準も上がっております関係上、いろいろ相対的な見方をしてまいらなければならないと思いますが、現在のところ、こういったいま申し上げましたような対策を行なってまいりました結果、引き揚げ者に対する援護措置といたしましては、まずまずのところではないか。もちろん、こういった措置をいたしましても、なおかつ生活困窮者になっていくという人はございますが、これはまた一般の生活保護の対策なり、その他の社会福祉政策の対象の線で援護していく、こういうことになるわけでございまして、引き揚げ者に対する特別の援護措置といたしましての効果というものは、ほかのものとのバランスもございますが、まずまずと言えるのじゃないか、こういうふうに考えるわけでございます。
#129
○戸田菊雄君 それからもう一つ、こまかいことですがお伺いするんですが、引揚者給付金等支給法の措置についてどういうふうに具体的に実行されてきたのか、その辺をはっきり経過、内容について、わかっておればお示しを願いたい。
#130
○政府委員(実本博次君) お尋ねの引揚者給付金等支給法の、前の支給法によります支給金のことでございますか。これは三十二年の前回の審議会の答申に基づきまして、引き揚げ者の生活基盤を失って帰ってこられた内地におきます援護措置を目的としてつくられました法律でございまして、これが先ほど申し上げましたように、年齢別による援護の措置でございますから、やはり生活能力を年齢別によって分けまして、五十歳以上の年寄りには二万八千円、それから三十歳以上五十歳未満の方には二万円、それから十八歳以上三十歳未満の方には一万五千円、それから十八歳未満の児童につきましては七千円というふうな援護めどによります分け方をもちまして、それぞれ給付してまいったわけでありますが、その給付総額が四百六十一億に達しておりまして、これはことしの四月末現在の数字でございます。それの件数といたしましては三百十七万二千件というふうになっておる次第でございます。
#131
○戸田菊雄君 具体的な内容で、支給額についてでありますけれども、大体五分類くらいに分けられていると思いますね。一つは五十歳以上、これは十六万円、三十五歳から五十歳未満、これは十万、二十五歳から三十五歳未満は五万円、二十歳から二十五歳未満は三万円、二十歳未満は二万円、なおかつ外地居住年限が八年以上に対して一万円の追加、こういうことで追加措置もとられておる。この基準はどういうところから一体案出をされたのか、どういうものを土台にして生み出されたのか、その辺の内容についてついでにお願いしたい。
#132
○政府委員(栗山廉平君) 今回の措置にあたりましては、答申にも書いてございまするが、財産関係も念頭にあってやるわけでございまして、世帯を単位にいろいろ支給基準等も考えていくのが合理的ではないかということが答申の最後に書いてあるわけでございます。しかし、二十年も二十年以上も前の、しかも外地、外国における世帯というようなものは、なかなかこれは把握がむずかしゅうございまして、特に二十年もたっておりますると、引き揚げてきたときの世帯がまた分離をしましたり、あるいはまた離婚といったような事情もございまして、その世帯のだれか代表にやろうということは、かえって実情を無視するような場面も出てくるわけでございまするので、個人個人を対象として支給をさしていただくように相なった。これは先ほど塚原長官からも申し上げたとおりでございます。
 そこで、個人個人の支給につきまして総額を大体割り当ててみますと、五万少しになるわけでございまするが、平均いたしますとそんなかっこうになりますが、大体その辺をめどにいたしまして、しかも答中の内容といたしましては、先ほどから申し上げておりまするように、中年以上を重んずるようにということが書いてあるわけでございます。中年以上を何歳とするかという点につきましては、いろいろな議論もあるところでございまするが、この法案におきましては、政府として三十五歳以上という点を中年と考えた。終戦当時の年齢でございますが、三十五歳以上の方を中年とまあ考えたわけでありまして、そこで三十五歳以上の中年の方たちに多い金額を差し上げるということを一つのめどにし、なおかつ三十五歳以上の中でも高年齢と考えられまするところの終戦時五十歳以上の方、これにはさらによけい重点を置くようにしたいということで、そういう考えからしまして、したがいまして二十歳から二十五歳の方のほうには五万円よりもっと減らす、さらに二十歳未満、つまり未成年の方にはさらにそれよりも減して二万というようなことにいたしまして、この減したほうからいまの、先ほど申し上げました答申が言っておりまする中年以上に重点を置けというその線に沿いまして、三十五歳以上、それからさらにその中で五十歳以上というふうに、それをまあ充当すべくいろいろ計算をしたわけでございます。計算によりましてこの年齢の段階の人数というのがおのおのみんな違うわけでございまするから、そういうことも考慮に入れながらここに提案してありまするような額が出てまいったような次第でございます。
 さらに、八年以上生活の本拠を有しておった方に支給する加算の額、これについてはどうかというお話だったと存じまするが、この一万円の加算の額の根拠としましては、先ほど申しました未成年の、つまり二十歳未満の方たちに差し上げる額が二万円でございます。これとの均衡も考えまして、これと同じというわけにもまいりませんので、一万円の加算ということにさしていただいたわけでございます。
#133
○戸田菊雄君 だから、いまおっしゃられたように、平均五万円というものはどこから出てきたかということですね、問題は。その点はどうですか。
#134
○政府委員(栗山廉平君) 答申が世帯のことをうたっておりまするが、その世帯のことにつきましては、推定が九十五万四千世帯というような推定をいたしておるわけでございまするけれども、まあそういう世帯等のことも頭に入れながら、ほかの戦後措置のいろいろの点を考慮さしていただきまして、それにさらに第三次審議会の答申の内容をよく検討いたしまして、その結果が大体いま申し上げましたような平均の額に相なったという実情でございます。
#135
○戸田菊雄君 一つの政策があるのだろうと思うのですね、五万円なら五万円という平均を割り出すには。いま引き揚げ者の人たちはどういうことで一番困っておるか、たとえば中には家を建てたいとか、あるいは若干耕作地を買ってもっと生計を安定化したいとか、いろいろあるのだと思うのです。そういうものに向けて今回総額千九百二十五億ですか、そういうことになるわけだと思うのです。そういういわば引き揚げ者の要望に基づいての何か支給していく援護措置の重点目標というのがあるだろうと思う。そういう問題はどこにあるのですか。
#136
○政府委員(栗山廉平君) 先ほどからもるる申し上げておるところでございまするが、今度のこの法案に盛ってあるこの措置は援護措置ということではございませんで、この前の昭和三十二年のときの引き揚げ者給付金の支給、この措置はまさに援護措置の一環というふうに考えておりまするが、今回のこの措置はあくまでも、外地、外国におきまして強制引き揚げという事態に伴って一切のものを根底から喪失したという打撃に対する特別な措置というのが今回の措置の性格、これは先ほど申し上げたとおりでございます。したがいまして、これに対する方策としてどういうような点に重点を置いてこういう金額等を考えたのかということに対するお答えといたしましては、やはり一番大事な点としまして、国の財政の見地からの問題が一つあるわけでございます。それからもう一つは、他のいろいろの措置との均衡というものがあるわけでございます。これは先ほどから総務長官のおっしゃいましたように、国民の納得を得るという見地が大きく働いてくるわけでございますが、これは答申にも最後にはっきり書いてございます。そういう見地に立ちまして、いろいろ苦心しましてできましたものがこういう内容に相なった次第でございます。
#137
○戸田菊雄君 そうすると、いまの説明ですと、国家的財政、この関係、それからもう一つは他との均衡、具体的には国民世論という、そういうことできめていったとすれば、引き揚げ者が一番痛切に訴えている内容というのは、逆な面でいうならば取り入れられていない、こういうことになるのじゃないですか。
 そこで、私はさらにお伺いしたいのは、この提案理由の中にもあるのですよ。そのことをさして私は「政策的措置」と呼んでいると思うわけです。この内容についてひとつ具体的に説明してください。
#138
○政府委員(栗山廉平君) 引き揚げ者のお方々の主張しておられまするところは、先ほども御質問が前にございましたが、在外財産は賠償の肩がわりになったから、そこで国として補償の義務がある、義務の履行として在外財産の喪失に対する補償をせよと、こういうのが簡単に申しまして引き揚げ者の方々の要求しておられた論点だったわけでございます。そこで、第三次審議会の答申におきましては、その補償義務の云々を一番重点的なテーマといたしまして、約一年半にわたりまして詳細検討いたしました結果、国際法的にも国内法的にも国に補償の義務はどうしても出てこない、こういう結論になったわけでございまして、法律的にそういうことであるとして、政策的にはしからば何もしなくてもいいのかどうか、こういう点の検討をまた詳しくいたしたわけでございます。そこで、今度のこの引き揚げ者の一切を失ったということに対する点は、法律的には先ほど申しましたように補償の義務というものはないにしても、事実上非常に打撃をこうむっておることはこれはもうおおうべからざる明白なことでございまするから、それに対しまして、これは法律の義務――国が何か債務を負ってそれを果たすというような法律上の義務ではないにしても、そういう事実に対しまして、国としては特殊な性格を認めて特別な措置をとるというのが適当である、国の責任においてやるのが適当であるというのが答申の趣旨でございまして、国としても、政府といたしましても、その趣旨を十分にくみ、その趣旨にのっとりまして、政策的に措置をするこういう法案を提出させていただいたわけでございます。
#139
○戸田菊雄君 いろいろと説明されるのですが、私の聞きたいと思う具体的なものは何も出てこないんですがね。
 そこで、一つお伺いしますけれども、それじゃ在外財産の平均、この資料によりますると三百四十九万七千人が対象となっている、世帯数にしてどのくらいになるかわかりませんけれども、その一世帯当たり在外財産として喪失したそういう平均額というものは一体どのくらいに見ているのですか。
#140
○政府委員(栗山廉平君) 日本の在外財産の額がどれくらいあったかという点につきましては、いろいろ外務当局等におかれましても努力をしてお調べになられた点もございまするけれども、ただいままでのところ、この財産の額というものについてのはっきりしたものはまだ聞いておりません。出ておりませんです。
#141
○戸田菊雄君 どうも私は納得しないのですが、たとえば四十二年度予算を作成するということになれば、文教費が幾らである、農林水産関係が幾らである、そういういわば必要性に応じて具体的に積み重ねてくるだろうと思うのですよ。ただ抽象的に、国家的に一つの補償態様が必要だからといって、中身は何もない。どこに一体ウエートを置いてこういう交付金額の平均なら平均というものを編み出したか、この点どうなんですか。
#142
○政府委員(栗山廉平君) 結局、答申が申しておりますることは少しくどいかもしれませんが、在外財産そのものの補償ということではなくして、引き揚げ者が強制的にそこを移住させられた、内地に引き揚げさせられたということに伴い、一切の生活のもとを失った、喪失したというその打撃に対して、何らかの特別の、国としてほかにやらなくてここにだけやるという特別な措置をしてやったらいいんではないかというのが答申の趣旨でございます。そこで、政府としまして、この答申を受けて措置をする場合に、この措置の具体的なことはなかなか答申におきましては書いてございませんで、先ほど塚原大臣から申し上げましたように、措置の内容としてはこういうふうなことをやったらいいじゃないかということは、きわめて抽象的に書いてあるわけでございます。そこで政府といたしまして、事務的にいろいろこれを軌道に乗せまする場合に、一番の問題になりまするのが、先ほど先生の仰せられたような、やはり世帯はなかなかとりにくいものですから、やはりこの引き揚げ者の方々の人数、しかもその対象となり得る引き揚げ者の方々の人数ということが最も一番最初のきめ手といいまするか、基準の算出のもとになるわけでございます。それから第二番目に大きなあれとなりまするのが、人数の中で年齢別の区分がどうなっておるかという点でございます。それから、年齢別にさらに生存者と死亡者、つまり遺族の場合に七割でございますから額が違うわけでございまして、同じ年齢の区分の中でもその中で死亡者の方がどれくらい占めておられるか、こういうようなやはり数字をもとにしましてはじき出してくるということ以外には一般的な基準はございませんので、そういう見地からほかとの関係等とも考え、それから先ほど申し上げましたように国家財政とのかみ合わせによりましてこういうような数字を出さしていただいたというわけでございます。
#143
○瓜生清君 関連。いま戸田委員がおっしゃいましたけれども、この政策的にということはわからぬわけじゃないのです。しかし、実際にそれが効果をあらわした案になっておるかというと、私ちょっと疑問があるのです。たとえば五十歳以上で八年以上おった人で十六万円プラス一万円ですね、合計十七万円になるのですよ。これを無利子の国債で記名で交付をして、そうして十年以内に償還していくというわけですね。そうすると、十七万円と設定した場合には一年に一万七千円です。そうすると、現在の貨幣価値の趨勢からいたしますと、五年ないし六年たてば一万七千円が一万円くらいになるかもわからないのですよ。そうすると、確かにこの答申の一番最後に「財政負担の規模の決定にあたっては、ひろく国民の納得が得られるよう、十分、国家財政全般の見地に立って配慮することが必要であると考える。」、これを政府はたてにとってこういうふうな考え方なり、あるいは他のいろいろな救済等との関連を考えられて、こういう処置をとられたと私は思うのですけれども、じゃ受けるほう、引き揚げ者自体は十七万円もらえる。これはないよりはましでしょう。だけれども、これから十年先のことを考えますと、一年一年貨幣価値というものは下がっていく。そうすると、千九百二十五億円という膨大な金額にかかわらず、そのこと自体が引き揚げ者に大きなプラスになっておるかというと、なっていない。ならないだろうと私は思うのです。そこに私は政策的だということをおっしゃいますけれども、一つの落とし穴があるような気がするのです。長官、いかがですか。
#144
○国務大臣(塚原俊郎君) 多々ますます弁ずであることはだれでも望むところでございまするが、繰り返して申すようでありまするが、国家財政状況、世論の納得の許す線に沿って考えますると、いま御審議を願っておる法案が妥当であると。御批判はあると思います。政策的措置ということば自体が、これはどうにでも解釈できると言われればやむを得ませんけれども、答申の線に沿い、それから先ほども申しましたような条件を考慮して、この法案は提出したわけでございます。
#145
○戸田菊雄君 時間もありませんから、一カ所にとどまっているわけにまいりませんので、先に急ぎますが、支給の年齢区分ですが、五十歳以上十六万円、次に三十五歳以上五十歳未満は十万円で、この差六万、それから二十五歳以上三十五歳未満が五万円で、その差が五万、二十歳以上二十五歳未満が三万円で、その差が二万、二十歳未満二万、こういうぐあいになっているが、この年齢区分というものがどういうところから編み出されておるのですかね。
#146
○政府委員(栗山廉平君) 答申の中に、終戦当時すでに中年以上であった者に対しては特に重点を置いて措置すべきであるという一項目がございます。この特に重点を置いて措置すべき中年以上というのは一体何歳かという問題が一つあるわけでございまするが、これにつきましてはいろいろの案もございましたが、政府としましては、三十五歳以上を中年と考えることが適当ではないか。最近におきまする再就職の問題で、中高年齢層の対策といったようなことが労働行政でございまするが、大体その場合でも中高年齢は三十五歳以上を大体考えておられるようでございます。そういうような関連もございまして、三十五歳以上を中年以上と考えることが適当であろうという観点から、三十五歳以上のところに大きな差を設けまして、特にここに重点を置いて措置をするということを考えたわけでございます。さらに、その中におきまして、当時五十歳以上の方々には、今度は高年齢者という考えからさらにプラスをいたしまして優遇、重く措置をするという考えのわけでございます。したがいまして、中年以下の二十五歳以上三十五歳未満、これが平均的な額の考えでいきまして、それから成年二十歳以上二十五歳、それから二十歳未満、つまりまだ成年になっていない方というところに区分を設けまして、おのおのそれを減しまして、ここに掲げますような額にいたしたような次第でございます。
#147
○戸田菊雄君 前に田中委員やあるいは中尾委員も質問されておったようでありますが、遺族の範囲は配偶者、子供、孫というぐあいになっておりますけれども、これは七割ですね。この格差をつけたというのはどういう理由ですか。前にちょっと質問なされて、回答されておったようですから、お聞かせ願いたい。
#148
○政府委員(栗山廉平君) 遺族の交付金を引き揚げ者本人の七割としたのはどういう理由かという御質問かと存じます。今回のこの法案に盛られております趣旨は、先ほどから何回も申し上げましたが、引き揚げ者が強制的な引き揚げというようなことによって一切の生活を――財産を含む生活、ヒューマンリレーション、生活利益等を一切失ったという、その打撃に対して講ずる措置のことは先刻も申し上げておるとおりでございます。そこで、そういう打撃というものは、打撃を直接こうむった引き揚げ者本人だけにとどまるものかどうかという点から考えまするというと、もちろん打撃を受けた本人が最も中心であることは間違いございませんが、本人だけにその打撃がとどまるということを絶対にそうだと言い切ることはなかなかできないと考えられるわけでございます。そこで、引き揚げ者本人が死亡した場合には、その遺族に対しましても、いま申し上げましたような見地から交付金を支給するというのが最も妥当であろうと考えるのでございまするが、しかし、その遺族がこうむった打撃というものは、引き揚げ者本人の打撃そのものと同じであると考えることがちょっとむずかしゅうございまして、やはりその程度は本人よりも少ないということは考えられるわけでございます。そこで、交付金の額の決定にあたりましては、その辺の事情を考慮いたしまして、引き揚げ者本人に対するものの七割のあたりが適当ではなかろうかということで、七割の線にきめさせていただいたわけでございます。
#149
○戸田菊雄君 いろいろと説明聞いたんですけれども、どうも納得しないんですが、結局、私は、どんぶり勘定で総額がきまった、何かの支給方法を考えなくちゃいかぬし、答申には沿わなければいけない、年齢区分でひとつやってみよう、家族関係はどうする、七割ぐらいでいいだろう、こういったところが正直なところじゃないかと思うのですが、それはどうですか。科学的ないわば一つの区分方式によって、ほんとうに国民が理解納得できる、あるいは引き揚げ者団体自体がこういう問題についてほんとうに理解をしているかというと、私はなかなかそうはいかないのじゃないか、こういうふうに考えるのですが、いかがですか。
#150
○政府委員(栗山廉平君) 答申が申しておりますことが、財産そのものということではございませんので、そういうものももちろん含むわけでございますが、個々の方がどのくらい在外財産を持っておったか、あるいは中にはマイナスの財産をお持ちの方も個々にはあるわけでございますが、そういう個々の財産の額あるいは個々の損害といったようなものにもとを置くのではございませんで、御本人がそこを強制的に立ちのかされた、あるいは引き揚げをさせられたということに伴うところの一切の社会的な地位、その他いろいろなものを含めての生活の喪失ということに対して何か特別の措置をしてやったらいいのじゃないかという、こういうのが答申の趣旨でございまして、これを科学的に推しはかるというのはなかなかむずかしいことでございます。したがいまして、戸田先生がいまおっしゃいましたように、そういう点では科学的な方程式等によって出ないわけでございまするから、腰だめではないかとおっしゃられれば、その点は確かにそうだと存じます。
 しかし、われわれ事務的にはなるべくこの答申の線に沿って最善の努力をしたつもりでございまするが、厳密に科学的な意味では、まさにおっしゃるとおりだというふうに私は個人として思っております。
#151
○戸田菊雄君 非常に苦労されたことは理解をいたします。問題は第七条でありまするが、「特別交付金は、十年以内に償還すべき記名国債をもって交付する。」、こうなっておるわけでありますが、沖繩の場合、これは適用されておらない、こういうことでありまするから、政令制定の場合に沖繩については沖繩銀行で取り扱うようにはいかないのか。従来のものについては非常に不便を感じおるわけでございまして、そういう点はどうでしょう。長官にもあとでその辺の考え方についてお答えをいただきたいと思います。
#152
○政府委員(栗山廉平君) 戸田先生のいまおっしゃいましたことは、沖繩に外地から引き揚げてこられたお方でございましょうか。そうでございますか。沖繩に外地から、あるいは当時の外国から引き揚げてこられた引き揚げ者、この方に対しましては、この法律の対象になります。それで、ただいまのお話では、今度実際に支給を受ける機関のお話でございますが、この法律の中におきましては、内地の場合は御承知のように都道府県の知事さんにいろいろ、「地方公共団体の長」ということばがついてございますが、そこでお願いすることになっております。
 それで、沖繩の場合には、印刷物十七ページの十五条に、総理府の出先機関でございますが、那覇日本政府南方連絡事務所ということばがここに出てございます。「地方公共団体の長及び那覇日本政府南方連絡事務所長にその一部を委任することができる。」、こういう条文がございまするが、これによりまして認定の事務を那覇にあるこの事務所長に委任するわけでございます。
 さらに今度、国債の、つまりお金の関係でございますが、これにつきましては十三条の条文に、「国債の償還金の支払」という条文がございます。この中におきまして、内地の場合ですと、「郵政大臣が取り扱うことができる。」となっておりまして、郵便局の窓口が一つあるわけでございます。もちろん、日本銀行の窓口もございますが、まあ一般的には郵政省の窓口が多く利用されるわけでございます。それで、今度沖繩の場合には、しからばどうなるかということでございまするが、琉球政府におきますところの、日本のちょうど郵政省と同じ仕事をやっておりまする部局があるわけでございますが、そこにこのお金の支払いの事務を委託いたす考えでおりまして、法律が通りましたならば、琉球政府との間にその話を進める予定にいたしております。
#153
○戸田菊雄君 結局、この郵政省ですか、琉球政府の。そこをもって窓口とするということですね。
#154
○政府委員(栗山廉平君) その予定でございます。
#155
○戸田菊雄君 それから、いま瓜生委員からもちょっと疑問点が出されたのですが、これは十年償還の無利子、記名国債、こういうことで支給をしていく、こういうことになるわけですけれども、こうなると、せっかくそれぞれ年齢区分によってあのような支給額というものがきまっておるのでありますが、それが十年償還、こういうことでは引き揚げ者の人たちは全くぬか喜びにひとしいのじゃないかと考えるのですが、これは一年とか二年で決済するという方向にいかないものですか。さっきも言ったような、これから経済情勢の変動等によってはその効果というものは非常に極端に下落すると思いますね。何か、瓜生委員も指摘をされたのですが、どうも落とし穴があるような、ほんとうにそういう気がするのですよ。それはどうですか。
#156
○政府委員(栗山廉平君) 先ほどから厚生省の関係のほうからも申し述べておるのですが、生活困窮の状態におありの方には国が買い上げるという措置をいたす考えで、政令に書き込むつもりでおります。それからさらに、何といいますか、まあ生活保護の話はさっきも出ましたが、生業等の場合の担保ということも考慮をいたしておるわけでございまして、最近におきまする交付公債の例に右にならえということで、十年ということできめたわけでございます。御了承願います。
#157
○戸田菊雄君 次に、今回非課税措置をとられているわけですね。これは国民大衆、ことに苦しい皆さんのことですから、決してそのこと自体に私は異議あるはずはないのですが、ただ、税法上からいって、公平の原則、こういうものからいって、たとえば具体的に申しますと、いまの生活保護対象者、この間千葉で二つになる子供さんが交通事故でけがをした。お父さんは病気でもって病院に入院している。一歳の子供がおって、四人家族、生活保護対象として二万数千円もらっている。子供さんがけがして、市でもって災害保険というものに全員入れている。そこから一万一千円ばかり交付された。直ちに生活保護対象からそれを差し引かれた。こういういわば落伍者といわれる人に対しても、いまの政府の措置というものは、全く涙もないような冷酷な措置をやっているのであります。そういうものとのかね合いにおいて、はたしてこういう非課税措置というものが、税法上のそういう現実、そういうものから一体妥当なのかどうか。これについてはどうですか。
#158
○政府委員(栗山廉平君) 今回の措置が、引き揚げ者が、先ほどから申し上げますように、強制引き揚げによりまして、生活のささえとなっていた一切のものを失ったという特殊な事情にあることに着目いたしまして、それで講ずるところの特別の政策的措置であるわけでございますが、こういうような措置の特別な性格に照らしまして、この特別交付金に対しますところの税の関係におきまして、所得税は課さないということが適当であろうということで、こういう内容にさせていただいたわけでございます。
#159
○戸田菊雄君 最後に、何といいますか、政府は本来在外財産基金、こういうものの設立を考えているというのですが、それが今回同時に立法化されなかった理由は一体どういうところにあるのか。
#160
○国務大臣(塚原俊郎君) 先ほど中尾委員でしたか田中委員にもお答えいたしましたが、政府は何も考えておりません。
#161
○木村禧八郎君 関連。いま、政府は考えていないというお話ですが、議員提案として在外財産基金法、それからもう一つ勧業基金法というのが提案されているんですよ。そういうものに対してどういうふうに考えているのか。それは御存じのはずです。自民党提案ですから、自民党の方として十分これはおわかりのはずです。私は、参議院予算委員会で総理大臣に、非常にこれは問題の法案であるが、これは撤回される必要があるのじゃないかということを質問しました。しかし、総理大臣は、党の問題だから、よく事情を聞いて処置したいということでありました。この法案と重要な関係があるのです。無関係ではないのです。これが通らなければ、そういうことはできないわけです。ですから、それはまだ引き揚げ者をほんとうに――先ほどのようないろいろなお話から、引き揚げということによって生じた苦痛に対してこういう措置をとる、審議会の答申の精神を尊重してやるということならば、ああいう基金法案によって、かりに引き揚げ者が今度は非常に犠牲になる、そういう事態が生じた場合、やはりもう現にそういうあれが出ているのですから、そういう考慮をしながら措置しなければなりませんし、衆議院の大蔵委員会でも問題になったと思うのですが、この問題がかりにここで出されなくても、また出してくる危険性もあります。そこで、私はこの点ひとつ伺って、関連ですから、あとほかの方の御質問がありますから、もう一つだけ伺っておきたい。
 それは、第七条で、この国債は「政令で定める場合を除くほか、譲渡、担保権の設定その他の処分をすることができない。」、こうなっていますが、「政令で定める場合を除くほか」とございますが、今後政令で譲渡、担保権の設定ができるように、その他の処分をすることができるようになっているわけです。政令で定める場合を除くほかできないとなっているけれども、政令でできるということなんです、これは。そうでしょう。裏を返せば、政令でそういうことができるのですか。また、今後そういう政令を出す可能性があるのか、ないのか、この点法律でもってはっきりしないといけない。これはほんとうは除くべきですよ。「政令で定める場合を除くほか、」この国債については「譲渡、担保権の設定その他の処分をすることができない。」、これをはっきりさせれば、さっきのような基金法案は出てこない。ここにあいまいな点があるわけですね。ここをひとつはっきりさせてください。
#162
○国務大臣(塚原俊郎君) 私、この在外財産問題の処理を担当いたしまして、いろいろと論議の過程において見られたように、問題はたくさんありましたけれども、最大公約数的なものを盛りながら立法措置を講じ、御審議を願っているわけですが、いま木村委員御質問の基金法案ですか、については、私は何ら考えも持っておりませんし、立法過程においてそういうものにタッチもいたしておりません。議員立法で考えておるということは耳にいたしておりまするが、相談にあずかったこともございませんし、私としては、立法過程においてそういうことは全然念頭になかったということをここではっきり申し上げておきます。
#163
○木村禧八郎君 いや、ちょっと待ってください。関連ですからやめますが、しかし、あなたのほうの党はそういう法案を出すとき、議員提案でも政調会にかけるでしょう。政調会にかけて、それですぐりをかけて出すのじゃないですか。そういう段取りを、議員提案で党か個人が出す場合、やはりそれは党の正式機関にかけてから出さなければならぬのでしょう。われわれの党はそうですよ。ですから、やはり議員提案といえども自民党の提案なんですから、自民党の党としての議員提案でありますから、聞かないというわけにいかないのですよ。かりに聞かなくても、責任がないということはない。党員として、党としてあるわけですよね。それで、これと密接な関係あるものについて関知してないなんというのは、私はおかしいと思うのですよ。これ通ったあと、引き揚げ者はどうなったってかまわないという考えですか。もし基金が、在外基金としてああいう内容によってあんなことができないということになったら一体どうなります。あれでかえって迷惑をかけるということになってしまったら、これは非常に重要な問題を含んでいると思います。勧業基金のほうもやはり同じような着想だと思うのですがね。われわれは出てくれば、実際に中身を検討すれば、これは自民党としてもそれをよく御検討になれば、こんな不名誉な法案ないと思うのですよ。ですから、その点について知らないというのはおかしいし、もう一度重ねてその点を伺いたいのです。また、そういうようなあれだったら党としてどういうように扱うか、党として、総理大臣、はっきり言われたのですから。
#164
○国務大臣(塚原俊郎君) 私は隠しても何してもいるわけじゃありません。そういうものにタッチいたしておりません。私の所掌事務にはそういうことは問題にしておりません。ですから、たとえば議員提案でそういうことがなされれば、所管省においてこれは考慮すべき問題だと私は考えております。しかし、私も政府の一員として、また、党員でもありますから、よく事情をひとつ聞いてみましょう。私は何も事情はわかりません。タッチいたしておりません。
#165
○木村禧八郎君 さっきの第七条は。
#166
○政府委員(栗山廉平君) 法律の第七条第四項に、「国債については、政令で定める場合を除くほか、譲渡、担保権の設定その他の処分をすることができない。」とございますが、「政令で定める場合」というのはどういう場合を考えておるか、こういう御質問だったと思います。この第七条四項にあります「政令で定める場合」、ここで「定める」と、その場合は譲渡あるいは担保権の設定ができるわけでございますが、私どもの総理府のほうで目下関係省と折衝中でありまするけれども、私のほうの立場といたしましては、従来の例がいろいろございまして、この種の国債の譲渡及び担保権は、従来認められているその例を出ることはいたさないつもりでおります。その例といたしましては、まず第一が国に譲渡する場合でございまするが、これは低所得者、先ほどから話がありましたように、生活保護は受けていないけれども、非常に生活に困難しておるというような低所得者の方たちが国に買い上げてもらう、こういう国に譲渡する場合が一つございます。
 なお、さらにもう一つ、これは今回どうなるか、ちょっとまだわかりませんが、災害地の被災者に対して国債を国が買い上げたという例も聞いてはおります。したがいまして、これも折衝の中には加えたいと思っております。それが一つ。
 それから、もう一つは担保に供する場合ですが、これは国民金融公庫に担保権を設定する場合に限るというような方向でせっかく折衝中でございます。これ以外のことは私のほうは考えておりません。
#167
○木村禧八郎君 そうなると、国民金融公庫に担保する場合は生活困窮者以外でもいいということになるのでしょう。
#168
○政府委員(栗山廉平君) 国民金融公庫の場合には、国民金融公庫法という御承知のような法律がございまして、小口の生業資金を貸し付けるのがこの公庫の目的であるということをはっきり書いてございまするから、その目的に沿った人でなければ担保権を設定して借りることはできないということに相なるわけでございます。
#169
○木村禧八郎君 もうこれで終わりますが、それじゃ、もうそれ以外には政令で考えていないとはっきりとここで確約できますか。
#170
○政府委員(栗山廉平君) われわれのところでは考えておりません。
#171
○戸田菊雄君 時間がありませんから、最後の質問ですけれども、この引揚者等に対する特別交付金の支給に関する法律案に対する附帯決議案、この案の中の三号に、「原爆被爆者等の医療手当については年度内に増額処置を行なうこと。なお後援護法制定についても特段の配慮をすること。」、こういうことになっておるわけでありまするけれども、これはあとから委員会の附帯決議として提案されると思いますが、この原爆被爆者に対して具体的にどの程度の増額ですね、これを考えておるのか、あるいは「後援護法制定についても特段の配慮」とあるけれども、これは一体どういう内容を示しているのか、その辺についてひとつ説明を願います。
#172
○政府委員(実本博次君) いま先生のおっしゃられましたその項目につきましては、ちょっといま……。
#173
○戸田菊雄君 それは、だから私も案によるとと申したので、これから委員会でも上がってくるのですから、それは御存じないかもしれませんけれども、じゃ、そういうことをさておいて、被爆者に対する何らかの措置、いわゆる増額措置。こういうものを考えられませんか、どうです。これはいろいろと被団共から、その団体から具体的に政府に対しては何回か要請がある事項だと思います。ですから、事情としては私は十分知っているのじゃないか。ですから、いまの被爆者の要求というものは、私の理解でいけば総額八十数億と考えておる、そういうものについて幾らかでも増額措置をとって、もう少し拡大をする方向に検討されておるのかどうか、その辺をひとつ伺いたい。
#174
○政府委員(実本博次君) 原爆被爆者に対していろいろ援護措置を強化すべきであるというふうな御意見がだんだんに出ておるわけでございますが、もう繰り返し申し上げておりますように、原爆被爆者が最も必要とする健康管理、あるいは原爆の治療のための医療の給付ということを中心にいたしましたこの原爆被爆者に対する医療法が三十二年に制定されまして、これはずっとこの各年度ごとの予算を見てみますと、もう百億をこえるだけの予算が計上されて、また、これが現に施行されてまいっております。したがいまして、原爆被爆者に対しまする最も大きなニードというものは満たし続けてまいっておるわけでございます。それ以外の原爆被爆者に対する措置は何が必要なのか、これはやはり一般の社会保障でそういう御要望を満たしてまいっておるわけですが、それではなお原爆被爆者にとって、特にそういう一般的な社会保障によっては満たされない何かニードがあるんじゃないかというふうなことでもって、原爆被爆者の実態調査を四十一年に公衆衛生局のほうで始められたわけでございます。その結果がことしの秋に集大成されて出てまいるわけでございますので、その結果を見まして、特に一般の社会保障で充足されないものを持っておるかどうか、持っておるとすれば、それは一体どういうふうにしたらいいかというふうなことにつきましての考慮を、原爆実態調査の結果を見まして行ないます。こういうふうな考え方で厚生省はされたわけでございます。
#175
○戸田菊雄君 これは衆議院の附帯決議案には、「原爆被爆者等の援護措置については、其の緊急性に鑑み、特段の配慮」と、こうなっておりますね。これはどういう内容ですか、「特段の配慮」とは。
#176
○政府委員(実本博次君) それは附帯決議をいただきました院のほうでの、特にやはり緊急に何かしろとおっしゃる意味は、先ほど申し上げたように、実態調査の結果、そういうふうなニードがあるかないかということを厚生省としてはまず緊急に確かめたい、こういうふうに考えているわけであります。
#177
○須藤五郎君 私は、日本共産党を代表いたしまして、この法案について政府の見解をただしたいと思います。具体的質問に入る前に、事柄の性質上、この問題についてのわが党の基本的な考え方をあらかじめ明らかにしておきたいと思います。
 言うまでもなく、今次太平洋戦争、あるいはそれに至るまでの一連の日本帝国主義の侵略戦争は、天皇や軍閥、財閥、独占資本など反動勢力が企て、推し進めたものであり、圧倒的多数の勤労人民はすべてその犠牲者と言わなければなりません。したがって、この侵略戦争の犠牲となって苦しんでいるすべての人々、引き揚げ者はもちろん、戦後二十二年たった今日、なおその悲惨な状態に苦しんでいる原爆被災者など、すべての犠牲者に対して、その生活と権利を守るために国が一切の必要な措置をとらなければならないことはきわめて当然のことだと思います。なお、それは社会保障の一環としてやるべきだと考えております。これがわが党の基本的な考え方であり、そしてわが党はその実現のために今日まで一貫して戦ってきたものであります。しかし、今回の引き揚げ者に対する特別交付金の支給の問題は、かかるわが党の基本的立場からいたしまして支持できないものであります。特にこの問題に関して進められている自民党政府のたくらみ、その政治的意図というものは、佐藤内閣の最近の一連の動きとあわせて、きわめて危険なものであると言わざるを得ません。佐藤内閣は、過去の侵略戦争、植民地政策に対して何ら反省を示さず、むしろこれを肯定しようとしております。この法案もこれらのことと無関係のものとは言えません。まず冒頭にこの点を明らかにいたしまして、以下具体的にお尋ねしたいと思います。なお、時間が少ないのでありますから、答弁は簡潔にお願いいたしたいと思うのです。
 まず、質問の第一、今回の特別交付金の支給の目的は一体何か、これをはっきりさせていただきたいと思います。
#178
○国務大臣(塚原俊郎君) 前の委員の質問にもお答えいたしておりまするが、三十二年にはいわゆる立ち上がり資金としての措置をとりましたことは御承知のとおりでございます。その後、この引き揚げ者の特殊性と申しますか、人間関係、あるいは生活利益というものを中心として、第三次在外財産問題審議会が昨年の暮れ答申を出されたのであります。その趣旨にのっとりまして、国に補償の義務はないけれども、政策的措置をもってこの問題の解決をはかれという、その趣旨に沿って立法措置を講じ、御審議を願っておるわけでございます。
#179
○須藤五郎君 私も審議会の答申書をつぶさに拝見いたしました。しかし、審議会のあの答申も実にはっきりしない点でたくさんあるわけです。私は、これは当然引き揚げ者の在外財産の補償であると、こういうふうに考えておりますが、長官、補償ではないのですか。
#180
○国務大臣(塚原俊郎君) 国に補償の義務がないという答申を私はそのまま受け取っております。
#181
○須藤五郎君 しかし、その問題は、こうはっきり書いてあるのですね、あの答申の中にも。あなたの提案理由の説明によりまするとこうなっておりますよ。 「政府は、昭和二十九年に設置された在外財産問題審議会の意見等を考慮し、昭和三十二年に引き揚げ者給付金等の措置を講じたのでありますが、」云々と、それから「世上においては在外財産そのものについての論議が、いわゆる補償要求等の形においてその後もなお続けられてきたのであります。このような実情に顧み、政府は、この問題の最終的解決をはかるため、」審議会を設置し、 「在外財産問題に対し、なお措置すべき方策の要否及びこれを要するとすれば、その処理方針はいかにあるべきかについて諮問」したと、こう書いてあります。すなわち、補償の問題の最終的解決をはかると、はっきりここに書いてあるわけなんですね。そうして審議会の答申は、国に法律上の補償の義務はないとしながらも、引き揚げ者が長年住みなれた社会の中で居住すること自体が許されなくなったことにより、生活を営む上で最も基本となるささえまで一切失ったという、他と異なる特殊な事情にあることに顧み、単なる財物ではなく、特別な意味と価値を持った財産の喪失に対し、国が特別の政策的措置として引き揚げ者に交付金を支給すべきである、こう言っております。引き揚げ者が要求しているのは財産補償ではないのですか。引き揚げ者のほうから私のところへも文書が届きました。その中に、われわれは生活に困って援護を要求しているのではないのだと、われわれは権利として財産補償を要求しているのだと、こういう意味の文書が私のところに届いておりますが、法律に基づく義務としてではないかもしれませんが、政策的措置として財産補償を行なえと、はっきりこういうふうに言っておるのです。政府もこの趣旨にのっとりこの法案を提出したと述べておるのです。これは明らかに財産補償じゃないですか。名前は違っても、内容、性格は明らかにこれは財産補償ではないですか。
#182
○国務大臣(塚原俊郎君) 繰り返えすようでありまするが、三十二年の措置に対して、その後もなおこの問題が論議の対象となりまして、もちろんその間には補償云々のことばもあったでしょう。そこで、第三次審議会に諮問されまして、約二年間にわたって熱心な論議がかわされたことも私は承知いたしております。その結論として出ましたものが、国に法律上補償の義務がないということが、これははっきりここにうたっておるわけでありますね。その文句をまた言ってみますると、「引き揚げ者に交付金を支給し、これに報いることこそは、在外財産問題の中に残された最後の課題を解決するゆえんであるといたしている」、「報いる」ということばでありまするからして、これは法律上補償の義務はないというこの答申の線に沿って、そしてこの報いるための政策措置ということで今度の立法措置を講じお願いいたしておるわけでございます。
#183
○須藤五郎君 そういうふうにことばの上ではごまかし得ましても、その精神、それは明らかに私は補償だと思うのです。そうでなくて、これは要するに社会保障の性格を負うているもの、そういうものだったら何もこういう形でやらなくてもいいのです。政策措置などといういいかげんな名前をつけてこういう形でやらなければならぬ、それは審議会の答申にも、補償は法的根拠がないということを答申しているために、あなたがやろうと思ってもやれないような状態になっているから、だから政策措置というような名前でやっておるのであって、その実質は補償じゃないんですか、財産補償じゃないのですか。私たちはそう理解している。それ以外に理解のしょうがないのです、どうですか。
#184
○国務大臣(塚原俊郎君) やや見解を異にするのじゃないかと思っておりますが、先ほどから、答申そのものがきわめて抽象的でありまして、われわれは答申を尊重して、答申の線に沿って立法措置を講ずることに苦労しておりますことは、これは事実であります。各方面の御意見等も参酌してここまでまいったのでありまするが、御批判があることは私もよく承知いたしております。そこに腰だめとか、あるいは政策的措置という、その内容についての御批判があることも私は十分承知をいたしておりますが、あなたはあくまでも補償であると言う、私はこれは報いると言う、いわゆる審議会の答申に沿うというところにどうも見解の相違があるんじゃないか、このように考えております。
#185
○須藤五郎君 自民党はもちろん、政府としましても積極的に在外財産の補償をやるという、その精神に立って今度これをやっておるんじゃないですか。その証拠には、審議会をつくり、これに諮問したのは佐藤総理ではないですか。また、佐藤総理は、この間の選挙中にはっきりと財産補償をやるのだ、こういうことを繰り返し繰り返し演説しているじゃないですか。一党の総裁であり、総理ともある責任ある人が財産補償をやるのだ、財産補償をやると公衆の前ではっきり言っておって、そうしてこういうことになってきた。だから、いかにことばをごまかして財産補償じゃないと言っても、金の性格、性質というものは財産補償だということは明らかだと思うのです。そうして、この法案を現に出してきたのもあなた方政府じゃないですか。政府みずから先頭に立ってこの問題に取り組んでおる、これはまぎれもない事実だと思うのです。長官が幾ら補償でない補償でないと言っても、そんなことで国民はごまかされませんよ。事のいきさつ、成り行き、経過、そういうものからずっと判断するならば、国民の前に補償ということにすれば問題が大きくなってくるから、だから補償ということばを使えないのだ。だから政策措置だというふうなわけのわからぬことばを使って、そうしてごまかして、実際は財産補償をやろう、これが今度の私は法案だと思うのです。いろいろ言いのがれをあなたたちはやっておりますが、これは単に引き揚げ者の圧力を受けた在外議員と申しますか、おかしな名前でありますが、在外議員の突き上げによりまして出されたというような面に、これは佐藤内閣と自民党の当面の重要政策の一つとして出されておる、ここが私は重要な点だと思うのです。これはかつて農地報償をやり、あるいはまた紀元節の復活、金鵄勲章など、自民党と佐藤内閣が進めておりますところの一連の軍国主義政策として出されてきた大反動法案と全く同じ性格を持ったものだと、こう言わなければなりません。だから佐藤総理みずから音頭をとって、一生懸命この法案を通そうとしてやっきになっているではありませんか。どうですか、長官。
#186
○国務大臣(塚原俊郎君) おあげになりましたことの中でちょっと間違っている点がありますから、御訂正願いたいと思いますが、総理は財産補償ということばを使ったことはございません。どこでお聞きになったか、どこの演説会でありましたか、そういうことは私はないと思っております。在外財産問題について解決をはかるということのそういう表現は用いましたけれども、補償ということで言ったということは何かのお間違いではないでしょうか。私は総理をかばう意味ではありませんが、この問題を担当しておりまして、私もいろいろ今日までの経緯を調べました関係で、一言御注意申し上げておきたい。
 それから、戦争政策云々ということになりますると非常に話が飛躍するのでありますが、共産党のほうはすべてそういうふうにお考えになるのは、これは別ですが、私はこの問題を担当した一人といたしまして、決して圧力団体に屈したわけでもなく、国民の要望している点、しかも、国家財政の状況とにらみ合わせて、世論の納得を得つつこの問題の解決に当たってまいったつもりでございます。
#187
○委員長(竹中恒夫君) 須藤委員に御注意申し上げます。御質問を願います。討論はまた別の機会があればお願いします。御意見は別に願います。
#188
○須藤五郎君 これは質問ですよ。
 第二の質問に移ります。他の戦争犠牲者に対する措置で、今回の引き揚げ者への特別交付金の支給と同じ性格のものがほかにあるかどうか、お尋ねいたします。
#189
○政府委員(栗山廉平君) 同じような性格のものはないと思っております。
#190
○須藤五郎君 同じものがないというならば、それならば他の戦争犠牲者――戦争犠牲者は、先ほども申し述べられましたように、たくさんある。引き揚げ者だけではないです。他にもたくさんの戦争犠牲者があるわけなんです。一体その他の戦争犠牲者の問題をほったらかしておいて、そして引き揚げ者だけいま特別扱いにするその理由は何なんですか。長官答えてください。
#191
○国務大臣(塚原俊郎君) まあ初めて日本人が味わった敗戦ということで、いろいろ不愉快な、また、いまわしい事件があったことは、これはお互いにまことに残念でたまらないのでありますが、しかし、今回の措置をとりましたのは、やはり国民全部が戦争犠牲者であるという考え方を基本にしてこの問題の解決に当たりましたことは先ほどからも申しておるところでございまして、その他いろいろまだほかにもあるんじゃないかという御指摘でございますが、それはそれぞれの所管省において、それぞれの法律に基づき、また、それぞれの援護措置に基づいて、御批判はあるが、手は打たれていると私は考えております。
#192
○須藤五郎君 私が第一問で、戦争犠牲者に対する措置で、ほかにこれと同じ措置をやったかというと、やっていない。それで、何でこの引き揚げ者だけにこういう特別扱いをしなければならぬのか、あなたの答弁では納得できないですよ。はっきりしていないのです。はっきり答えてください。何で引き揚げ者だけを特別に扱わなければならぬのか。戦争犠牲者というものは引き揚げ者だけではないですよ、もっともっと困っている人がたくさんあるんですよ。それをほったらかしておいて、そしてこれだけこうやる、それで長官は、ほかのことは社会保障なんかでやっていると。冗談言っちゃいけませんよ、どれだけの社会保障をやっているんですか。この問題についてはまたあとで質問しますが、もっとはっきり答えてください。
#193
○政府委員(栗山廉平君) 戦争犠牲者に対しましては、今回の引き揚げ者に対する措置だけしかないようなふうにちょっと私受け取ったのでございまするが、直接戦争に関係されました戦没者等、それから、また、一般戦災者に対しまする戦時災害保護法等、未帰還者に対しまする未帰還者留守家族等援護法等、それから占領軍による被害者に対して、占領軍の行為等による被害者等に対する給付金の支給に関する法律等、まだいろいろございますが、一連のそういった意味の戦争犠牲者に対する法律はまだほかにたくさんあるわけでございますが、この種の措置は、これは引き揚げ者の特殊性に基づいてやった措置でございまして、全く同じ措置というのはほかにはないわけでございまするけれども、戦争犠牲ということに対するいろいろの措置はほかにたくさんあるわけでございます。
#194
○須藤五郎君 これと同じ性格のものはあなたはほかにないと答えた。それで私は、何で引き揚げ者だけ特別扱いしなければならぬか、理由がわからないから、その理由をはっきり述べてくれと言言ったんです。そこはどうなんです、何でですか。
#195
○政府委員(栗山廉平君) こういう在外財産の関係、在外財産問題の中におきまして、そういう財産だけではなくして、そこにおける生活のささえ一切を失ったということが、内地における戦災等によって財産を単に失ったという場合とは異った特異性が見出されるということで、答申が、これに対しまして特別な交付金を支給してその労に報いることが妥当であるという内容を申しておるわけでございまして、その趣旨に沿いまして、引き揚げ者の特異性という点に着目しまして、引き揚げ者に対しましてこの種の措置をとらしていただくことになったわけでございます。
#196
○須藤五郎君 それならもう一ぺん質問しますが、国内で戦災によって一切の財物を焼失し、親きょうだい、肉親さえも失ない、全く生活のささえを失ってしまったたくさんの人は一体どうなんですか。全く同じ状態じゃないですか。それを引き揚げ者だけ特殊性があるということは、それは話にならぬですよ、同じじゃないですか。財物を失い、親子が別れて家も焼かれて、何もかもすっからかんになってしまったのと同じじゃないですか。それでは理由になりませんよ。それとも、あなたたちは、国内で被害を受けた人たちの犠牲はたいしたことじゃないと、こういうふうに引き揚げ者よりも以下に見るのですか、犠牲を。長官答えてくださいよ、せっかくいらっしゃるんですから。
#197
○国務大臣(塚原俊郎君) 敗戦ということによって国民全部が犠牲者になり、それぞれいろいろな面で被害を受けた、これはまことに残念でたまりません。私なども長い間軍籍にあり、帰ってきたら家を焼かれて何もなかった一人でありますが、調べてみますと、その強制疎開、あるいは戦災というものについて、当時の法律に基づいて、全部には行き渡らない、もちろん周知の方法もなかったでしょうが、そういう措置がとられたということを私は承知いたしておりまするが、まことにお気の毒であることは当然であります。ただ、今度在外についてのみ特に優遇するのではないかということでありますが、在外の場合と比べて戦災者はどうでもいいんだ、そういう考えは毛頭ございません。在外財産のほうは、長い間外地にあって、その財産そのものでなくて、財産によって生まれてきたヒューマンリレーション、あるいは生活利益という特殊なケースというものが審議会の答申に盛られておったわけでございますから、これを中心として政策措置をとったわけでございます。
#198
○須藤五郎君 その答弁では満足できませんよ。引き揚げ者も同じ日本人ですよ、国内で被害を受けた人も日本人です。同じ条件です。それで家を失った、財産を失ったことは同じじゃないですか。内地の人でも親子別れている人もたくさんあるんです。みんな同じです。私は引き揚げ者に補償するのはけしからぬ、そういうことを言っているのじゃないんです。私たちは補償はすべきでないけれども、内地で困っている人も外地から帰って困っている人も、みんな同じように、同じ立場で十分な社会保障をして、その困っている人たちの生活は守らなければならぬという立場に立って私はこの話をしているんです。それはまずこの質問に入る前に述べた点です。しかも、長官たちの考えは、引き揚げ者は特別だ特別だといって特別扱いをしている。内地で家を失い、きょうだい親子を失い、財産を失った人を何ら考慮しない、それはおかしいじゃないですか。同じ日本人ですよ、同じように考えるべきですよ。そこを考えていない点を私たちはおかしいと思うんですよ。長官どうですか、もう一ぺん答えてください。
#199
○国務大臣(塚原俊郎君) 厚い薄いの御批判はあるかと存じますけれども、まあ当時の混乱状態にありまして周知徹底の方法もなく、また、連絡の方法等もなくて行き渡らない面もありましたが、厚薄の差こそあれ、措置をとってまいったことは事実であります。また、今日まで厚生省所管を中心といたしまして、それぞれの援護措置の強化をとってまいったことも事実であります。それについて御批判はおありでしょうけれども、優遇したというようなわけではございません。
#200
○須藤五郎君 こういうことで押し問答しても時間をとりますから先にいきますが、長官は、先ほどの同僚議員の質問に対しましても、しきりに社会保障でやる、こういうことをおっしゃるのです。それでは一体具体的にお尋ねしますが、大蔵大臣がここにいらっしゃいませんが、私はここで大蔵大臣にまず最初に質問するつもりでおった。日本政府がやっておる社会保障、一体その実態はどういうふうなんですか。社会保障の実態を示してください。社会保障社会保障、ばかに社会保障をやっているような大きなことを言っているが、一体日本の社会保障はどんなものですか。そんなに自慢すべきような社会保障をやっているのですか、政府は。実態を示してください。
#201
○国務大臣(塚原俊郎君) たいへんきついおことばでおしかりを受けましたが、自民党政府といたしましては、財政の許す限り社会保障の充実につとめ、また、その実行をいたしておるわけでありまして、財政的に裏づけの面でお尋ねになりましたら、それは所管省からお聞き願いたいと思います。
#202
○政府委員(岩尾一君) 日本の社会保障の実態でございますけれども、どういうふうに御説明すれば一番納得がいくかと思うのですが、たとえばILO等で統計をとっております振りかえ所得の比率でございますとか、あるいは社会保障費として振り向けられている部門の一般会計に占める割合、いろいろな数字がございます。私の記憶いたしておりますところでは、大体外国の水準から見ますると二、三ポイント低いような状況になっておりますけれども、これは先生も御承知のように、わが国では非常に現在老人層が少のうございますので、また、年金制度が始まって間もないということから、非常に年金給付が少ないということのためにそういうポイントは低いわけでございますけれども、しかし、いま考えられております制度としての部門は、これは世界でやっております各部門を全部取り入れている、こういう状況でございます。私は決して外国に比較して低いものとは存じておりません。
#203
○須藤五郎君 一つ例をあげますが、社会保障社会保障と言っているけれども、生活保護者に対するあの給付なんというのは全くなっていないですよ。生活保護者には一日成人で百四十何円で三食のめしを食えというのがあなたたちの自慢する社会保障の実態じゃないですか、そうでしょう。それでそういう悲しい生活をしている人たちがそれではとても食っていけない、今日の物価高で。そうしてよそへ内職へ行くと、その内職が見つかると生活保護費からその内職の分だけ差っ引いている。こんな残酷な社会保障というのは世界を探してもないですよ。こんなむちゃくちゃな社会保障をやっておきながら、社会保障でやります、大きなことばかり言っています。そんな大口をたたけますか、もっと考えてください。
 それでは、次に原爆被害者の問題に移りましょう。これは衆議院内閣委員会の附帯決議にも入っていますが、被爆者が今日どういうような状態に置かれているか、説明してもらいたい。被爆者の数、生活状態、被爆者の要求、これはどういうふうにあなたたちつかんでおりますか、答えてください。
#204
○説明員(宮田千秋君) こまかい数字にわたりますので、私から説明させていただきます。
 現在、原爆の被爆者につきましては、その健康上の特別な状態に対応いたしまして、昭和三十二年に原爆医療法が制定されまして、健康診断、医療の給付等を行なっております。ただいまのところ、同法によりまして原爆被爆者の健康手帳を交付しております。被爆者の数は、今年の三月三十一日現在で三十万千六百九十五名、約三十万名でございます。このうち、近距離の濃厚被爆者を特別被爆者といたしておりますけれども、それが二十四万五千名、それ以外の一般被爆者が五万六千名であります。
#205
○須藤五郎君 数だけで、ほんとうの点を述べておりませんが、私は広島へたびたび行き、長崎へ行って、実際被爆者にたびたび会ってその生活を見ております。みじめですよ、被爆者の生活というのは。一般の市民に比べて非常みじめです。被爆者であるために就職もできない、結婚もできない、実に暗たんたる生活をしておるのです。被爆者の中にはたくさんの自殺者が出ているのですよ。これで社会保障をやっていますなんて、被爆者を見ても、全然それが社会保障になっていないということははっきりするじゃないですか。被爆者の要求を知っていますか。被爆者は、いま当面、被爆者の医療法の完全実施、これの改正、これを要求していますよ。それから、被爆者援護法の制定、被爆者は食っていけないですから、援護法でちゃんと生活の安定をしてもらいたいということで要求しているのです。先ほど戸田さんも質問なさったのがこの医療法なんです。あした出てくるであろうこの附帯決議に出てくるのはこの点なんです。(「そんな附帯決議は討議していない。」と呼ぶ者あり)討議していないけれども、先ほど戸田さんが発言したから、それを引いて言っているのですよ。そういう状態なんです。そういうことをあなたたちつかんでいないのです。つかんでいたら、これで社会保障やっていますという、そんな大きなことは言えないはずです。あなたたち、私がいま言ったような被爆者のささやかな要求の実現をはかるためにどのような具体的な措置をとっているのですか、答えてください。
#206
○説明員(宮田千秋君) 被爆者の実態につきましては、ただいま実態調査の整理をいたしておりまして、ことしの秋にその概要がまとまりますので、その実態調査の結果の概要がまとまりますのを待って今後の対策を検討いたしたいと思います。
#207
○須藤五郎君 何ごとですか。もう被爆してから何年になるのですか、二十年たっているのですよ。二十年たってまだ調査もできていないのですか。それは怠慢もはなはだしいじゃないですか。そういうことであなたたちは大きなこと言えません。怠慢ですよ、そんなことは。もうとうの昔にできて、いまごろ被爆者が安心して生活のできるような状態を築いておかなければいかぬです。長官、あなたは社会保障社会保障といいますけれども、いま述べましたように、日本の社会保障がいかにお粗末なものかということはこれでわかるでしょう。こういうお粗末な社会保障をやっておきながら、引き揚げ者だけ特別だ特別だといって特別扱いしよう、これでは日本のたくさんの不幸な人たちは承知しないですよ。その点を私はっきり言っておきます。何一つ具体的保障をしない、社会保障でやるというようなことを、この法案を通すためにその場限りの出まかせをあなたたち言っている、こういうふうに言わなければなりません。これは国会と国民を愚弄するものではないでしょうか。被爆者のささやかな要求、これを当然政府として責任を持ってやるべきです。政府はほんとうに被爆者の要求を解決するために責任を持ってやる意思があるのかどうか、はっきりしておいてください。
#208
○政府委員(実本博次君) これは公衆衛生局のほうからお答えがありましたが、重ねて申し上げますが、原爆被爆者につきましては、先ほどの田中先生その他の先生方からもお話がございましたように、三十二年にその最も緊急に国から措置をしなければならないという原爆医療法を制定いたしまして、その人たちに対しましては、三十二年以来、最もその人たちの要求の高い健康管理なり、あるいは原爆のために出てきます特殊の治療をなさるための医療の給付の法律を制定いたしまして、それをとにかく実施してまいっておりまして、そのほかのニードにつきましては、これは一般の社会保障の中で措置してまいったわけでございます。ただ、最近四十一年の国会での決議もございましたし、三十九年の国会での決議もございまして、原爆被爆者の実態というものをもう少しよく、医療だけの問題ではなくて、生活全体の実態をよく調査して、その上で適当な対策を考えろというふうな御決議もいただいたことがありまして、現在その実態調査にとりかかっており、この秋にそれがまとまるわけでございますから、それを見まして措置をしたい、こういっているわけでございます。
#209
○須藤五郎君 この秋までにやりますというような、その態度自体がけしからぬといっているのですよ。原爆が落ちてから何年たちましたか。そうしてあの不幸な人たちを二十年もさらしものにしておいて、この秋には調査がととのいます、そんな冷たいことがよく言えたものだと思って、ぼくはあきれるのです。これはいけないですよ。早急に全力を注いでやりますと、こういうふうに答えるべきですよ。そんな状態では原爆被害者は政府を信用しないし、安心しませんよ。満足しませんよ。大体あなた方は引き揚げ者だけにこういうふうに特別扱いをすることに対して、国民の中から、特に被爆者などから批判が出るだろうということは百も承知で出しているのですよ。一体どうなのか。国民がどんな批判をしようと、そんなことは問題にしないのだ、これが政府、自民党のほんとうの腹ではないのですか。どうです。
 第三問に移ります。この法律案の第二条には引き揚げ者の定義を定めております。この規定の、要件さえ満たせば、職業、経歴、生活実態などにかかわりなく、すべての人に交付金が支給されるのかどうか、伺いたいと思います。
#210
○政府委員(栗山廉平君) 第二条の定義に当てはまる方には、この法律に基づくあれが出るわけでございます。
#211
○須藤五郎君 先ほどあなたの答えで、軍人、軍属は入らないと、こう答えましたね。しかし、現地で応召した人は入るのだ、こういうふうに答えました。そうすると、旧高級軍人、特権官僚、満鉄など在外独占企業の役員、諜報機関要員、右翼の首脳、こういう人にも規定の要件さえ満たされれば交付金の支給がなされるのですか、どうですか。
#212
○国務大臣(塚原俊郎君) 審議会の答申にわれわれは沿ってこの問題の処置をはかっているところでございますから、現在どういうポストにあり、かつてどういうポストであったか、それは問題にいたしません。条件にかなっている方には支給いたすことになっております。
#213
○須藤五郎君 この審議会の中には、旧満州国の総務庁の次長というのですか、名前は私はいま覚えておりませんが、その方が入っているはずなんです。こういう方にもこの引き揚げ者等の定義を当てはめて、そうしてその定義にはまるならば支給をされるというのですか。政府は、この高級軍人、特権官僚、満鉄などの在外独占企業、諜報機関の要員、右翼の首脳、こういう人たちでも、第二条の条件に合うならば支給するという答えですが、政府はこういう人たちも戦争犠牲者と考えるのですか、どうなんですか。長官これ答えてください。
#214
○国務大臣(塚原俊郎君) 私はどういう方が該当するか、いま何か一方的にきめつけておるようでありますけれども、私は全然そういうことは考えておりません。条件に合う方にはこれは支給するのが法律のたてまえであります。
#215
○須藤五郎君 じゃ、こういう人たちも条件に合うならば支給するのですか、こう質問しているのです。そうしてこういう人たちも戦争犠牲者なんですかどうですかと言って私は質問しているのですよ。
#216
○国務大臣(塚原俊郎君) 条件に合う方には支給いたします。それから、日本人全部が戦争犠牲者であると私は考えております。
#217
○須藤五郎君 日本人すべてが戦争犠牲者だという考え方に対しても私は反対です。そうじゃないのです。戦争責任者という、戦争犯罪者というものがあるのです。そういう者まで戦争犠牲者の中に入れるというような、そんなばかなことはないですよ。高級官僚やこういう人たちの中には戦争犯罪者がたくさんあるのです。そういう人たちも、こういう第二条の条件に合うならば戦争犠牲者、そういう考え方、そういう答弁であなた方の正体が私にははっきりわかってきましたよ。こういう連中は――笑いごとじゃないですよ、こういう連中は、明らかに日本帝国主義の無謀な侵略戦争の加担者ですよ、犠牲者なんというものではありませんよ。朝鮮におきまして、満州、中国においてこういう連中は一体何をやってきたのですか。略奪の限りを尽くしてきた、収奪の限りを尽くしてきた人がたくさんおるのです。植民地支配の先兵ではないでしょうか。これに対して、圧倒的多数の引き揚げ者はやはり戦争の犠牲者だと私は考えております。なぜ犠牲者かといいますならば、内地においては資本家や地主に搾取され、故郷を離れて外地に出て行った、そうしてまた敗戦によって無一物になって帰ってきた、これは確かに犠牲者だと思いますよ。しかるに、今回のこの交付金の支給は、引き揚げ者の引き揚げ時の年齢に応じ交付金を支給するという形で、侵略戦争の加担者までも戦争犠牲者に仕立てあげて補償するという不当なものではないですか。政府は、日本人民をあのような悲惨な状態におとしいれた、また、朝鮮人や中国人に、はかり知れないばく大な損害を与えた日本帝国主義の侵略戦争、これを正当なものだと考えておりまするかどうですか。長官答えてください。
#218
○国務大臣(塚原俊郎君) どうも議論をいたしますとこれ時間がだいぶかかると思いますが、基本的に須藤委員と私は見解を異にいたしておりまするので、立論の根拠が違うような気がいたします。須藤委員の仰せられることは私は納得することはできません。
#219
○須藤五郎君 審議会の答申には、引き揚げ者はわが国の対外発展に寄与したと、こういうことが盛んに強調されております。わが国の対外発展に寄与したというのは一体どういうことなんですか、伺いたいと思うのです。戦前、日本帝国主義時代の対外発展とは対外侵略、植民地収奪のことではなかったのでしょうか。政府はこの点どういうふうに考えておるか、答えていただきたいと思います。これを正当だと考えているからこそ、一般引き揚げ者に加えて、侵略戦争の露払いをした反動分子さえも犠牲者として補償し、これを鼓舞激励しているじゃないですか。あなた方は一般の引き揚げ者の声にこたえるかのごときふりをして、引き揚げ者の中にこういう反動的、侵略的勢力を温存し、激励し、軍国主義復活の推進者に育成しようとしている。これこそ今回の特別交付金支給法の最大のねらいだと私は考えます。だから政府、自民党は国民の当然の批判や要求には何一つまじめにこたえようとせず、ろくに審議もせず、会期末のどさくさをねらって、国民の目をはばかりながら、一気に通してしまおうとしておるのであります。これもまたこの法案の性格を実によく示しておるといわなければなりません。
 次に、第四問に移ります。こういうことは何も私がかつてに根拠のないことを言っているのではないのです。あなた方が出しておる資料に基づいて私はやっているのですよ。この引揚者特別交付金支給法とともに、在外財産基金法というのが出されてきております。先ほど長官は私の知ったことではないと、こういうふうに答えておりますが、木村議員もおっしゃったように、それはあまりに無責任な答弁ではないかと思うのですよ。自民党議員があの法案を出してくるならば、やはり政策審議会の目を通っておるにきまっているのですよ。長官は自民党の幹部ですもの、幹部が知らぬ存ぜぬと言っても、それでは世間が通りませんよ。必ず知っていることだと私は思うのです。これについて、その目的、事業内容、資本金総額など、ひとつ説明してもらいたいと思います。(「法案が出ていないよ」、「答弁できる人おらぬ」と呼ぶ者あり)答えられない――それならわからぬと答えてください。
 まあ議員提案だから、政府は知らぬ知らぬと言うから、知らぬものをこれ以上追及してもしようがないから、私は追及しませんが、しかし、知らぬ存ぜぬでは実際世間が通らないですよ、あなたたち笑うけれども。長官も知らぬと言ったって、それでは世間が通りませんよ。実際は知っておっても答えないのだと思いますから、私はこれ以上追及しませんよ。ぼくたちが知っておる、報道されておるところによりますと、基金の設立目的、この目的は、圧力団体側が自民党内の在外議員を突き上げて、無利子の交付国債に果実を実らせることであり、また、補償問題の解決で存在理由のなくなった引き揚げ者団体の空中分解を防ぎ、選挙の票田として確保することだと、こういうふうに言われているのです。まさに政府の言うとおり、政策措置とは一体このことかどうかという、こういうことになるわけですね。ここに政策措置政策措置と政府が言う根源があるのじゃないかと、こういうことになってくるのですよ。私が読みました基金の法案によりますと、基金の目的は、「産業の振興その他国民経済の発展に寄与する」と、こういうふうになっているのですよ。引き揚げ者に交付される国債をかき集めて営利を目的とする金融機関をつくる、こういっておるのですよ。これは自民党の議員立法なんだから、議員諸君よく聞いておいてください。こういう法案があなたたちの同僚によって計画されておるのです。在外財産補償の総額は千九百二十五億円、これははっきりしております。これを全部基金の資本金に繰り入れることが予定されている、こういうふうに言われているのです。最終的にはおそらく二千億円になんなんとする巨額のものになるのではないだろうか。素朴な引き揚げ者の中には、これで何がしかの金が手に入ると期待している人が多くいると思うのです。ところが、実際は引き揚げ者の手に入るのではなく、基金の資本金としてプールされる、これは明らかに引き揚げ者を食いものにしようというものではないでしょうか。あなた方は苦労した引き揚げ者に報いるなどともっともらしいことを言っておりますが、実際にやろうとしていることはこういうことなんです。しかも、これは国民の血税なんです。千九百二十五億円というのは国民の血税です。日本の国民総数一億、赤ちゃんからおじいさんに至るまで頭割り二千円ずつですよ。その金を引き揚げ者の諸君に交付金の形で差し上げようというのですよ。たいへんなことじゃないですか。この国民の血税を一度引き揚げ者に渡して、それをもう一ぺんかき集めて二千億くらいの金融機関をつくる。一体政府はこんなようなことが許されると思うのですか。
 以上明らかにしてきましたように、他の戦争犠牲者をほったらかしておいて、引き揚げ者だけを特別にとり上げて特別交付金の支給をやろうということは、いかなる点から見ても私は不当なことだと思うのです。そうして実際には引き揚げ者の要求にさえもこたえるものではないということは、いまのあなた方の答弁、態度で私はわかる。これはどんな言いのがれをしても、農地報償、紀元節の復活、靖国神社の国家護持、これにあらわれておる。佐藤自民党内閣の軍国主義復活政策の一つであることは否定できない事実だと思うのです。在外財産補償問題は、審議会答申をかくれみのにしていろいろな理屈をこねておりますが、金でごまかそうとしておりますが、そのほんとうのねらいは、佐藤内閣、自民党、米日反動勢力が全体として押し進めようとしておるところの軍国主義の復活、対外侵略政策の一環であるということは私は明らかであると思うのです。
 さらに、あなた方はいかにももっともらしいことばを並べ立て、人民からしぼり立てた血税二千億円を使って、自民党の強い支持団体といわれる引揚者団体連合会の要求にこたえることで自民党の選挙地盤の培養をはかろうとさえしておるのです。このような不法不当な今回の措置は、わが党はとうてい認めることはできないのです。
#220
○委員長(竹中恒夫君) 須藤委員に申し上げます。議事の運営上、質問をしていただかなければ……。
#221
○須藤五郎君 以上私の意見を述べまして、私の質問を一応終わります。
#222
○藤田正明君 本法により交付される国債の第七条第四項の規定による担保権の設定というのがございますが、それについて質問をいたしたいと思います。
 引き揚げ者の中で沖繩に居住される人が、約でけっこうですが、何人くらいおりますか。それで、それが全体の何〇%くらいを占めておるか。そして、また、大体でけっこうですが、その交付金額は大体どれくらいになりましょうか。
#223
○政府委員(栗山廉平君) 沖繩におられます引き揚げ者関係の方は約九万五千人おられるそうでございます。金額につきましては、ちょっと年齢構成その他のあれがございませんので、まだしさいにいたしておりません。
#224
○藤田正明君 大体でけっこうですが、それもわかりませんね。
#225
○政府委員(栗山廉平君) 一人平均五万ちょっとと考えますと、約五十億くらいになろうかと存じます。
#226
○藤田正明君 これは約三%くらいになると思いますが、総支給額の。これらの九万五千の人は担保権の設定というようなことが従来認められてなかったと思うのですね。ということは、戦争未亡人等の交付公債の場合、担保権の設定権というものが認められていなかった。今回はこの件についてはどういうふうな措置をお考えになっておりましょうか。
#227
○政府委員(栗山廉平君) この前の十年前の引揚者給付金の国債の関係について申し上げますと、沖繩の関係におきましては、一括買い上げの件はこの前実施しておりまするが、お話のような担保権を設定して、それによって融資を受けるという措置はやっておらないそうでございます。
#228
○藤田正明君 いや、そのやっていないことはわかっているのですが、今回もやるんですかやらないんですかということを聞いているのですが、答弁はいいです、大体わかっているから。大体やらないことになっているのですそれは。それで、なぜできないかということは、これは為替管理法上のいろいろな問題があると思います。
 それから、先ほど木村委員のおっしゃった「政令で定める場合を除くほか」という、これは国民金融公庫のことを言っていると思うのですが、こういう国民金融公庫は沖繩にはないということですね。銀行とすれば鹿児島銀行の一事務所があるにすぎない。ここでは委託業務ができないということではなかろうかと思うわけです。これは技術的な問題だと思うわけです。そこで、沖繩に大衆金融公庫というものがあると思うのです。これの性格は日本の国民金融公庫と全く同じものだと思うのですが、ここに業務委託というふうなことは考えられませんか。
#229
○政府委員(岩尾一君) ただいま先生のおっしゃいましたような点は、為替管理法上だけではございませんで、現在の沖繩とわが国の間の外交的な立場の相違ということが非常にあると思うのです。大衆金融公庫は確かに沖繩にございます。ございますが、この原資は全部米軍からきた金でございます。したがって、そういった資金ソースで、沖繩自体が持っている行政権の範囲内でこれをやっているわけでございます。したがって、日本が、日本の政府でつくりました国民金融公庫ならば幾らでも自由がききますけれども、沖繩の大衆金融公庫にこれをやらせるというのは外交上の問題になると思います。したがって、総理府の特連局その他で折衝すればあるいはそういうことができるかもわかりませんけれども、現状ではやらせるということは不可能である、こういうことでございます。
#230
○藤田正明君 私の言う意味は、沖繩の大衆金融公庫、これは日本の金でないことはわかっております。日本の財政資金が出ていないことはわかっている。しかし、日本のほうは沖繩に対して百億とか二百億の補助を出しているわけですから、その補助の一部をそういう大衆金融公庫に業務委託して金を預けて、そうしてその担保権の設定を許すような措置はとれないのか、こういう意味です。
#231
○政府委員(岩尾一君) 沖繩との間におきましてわが国がいまやっております経済援助でございます沖繩援助というのは、米国政府から援助要請がまいりまして、それに対してわれわれのほうがその項目その他について折衝いたしまして、総額内容についてセットした上できめている、こういう状況でございます。したがって、その援助の項目の中に、アメリカが、こういうことをやることについて日本は援助してくれぬかという話がきまりますれば、これは当然できるわけでございます。そういう意味で、むしろ総理府の特連局が今後行ないます外交折衝の問題であろう、かように考えます。
#232
○藤田正明君 よくわかりました。そういう外交折衝なり、そして、また、いまの為替管理法上の問題もあろうかと思います。そういうふうなものをこえて、やはり個人の意思にかかわらない同じような悲劇的な過去を持った引き揚げ者の方であります。たまたま沖繩に居住されておる、それがゆえに担保権の設定を許されない、そういうチャンスが与えられない、これは非常に不公平である。私は、いまの主計局次長の答弁によって、むずかしい点が二、三あるということもわかりますけれども、これを前向きに努力されたいという要望をして、質問を終わります。
#233
○委員長(竹中恒夫君) 本案に対する質疑は、本日はこの程度にいたします。
 それでは、本日はこれにて散会いたします。
   午後六時五十二分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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