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1949/03/31 第5回国会 参議院 参議院会議録情報 第005回国会 地方行政委員会 第4号
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1949/03/31 第5回国会 参議院

参議院会議録情報 第005回国会 地方行政委員会 第4号

#1
第005回国会 地方行政委員会 第4号
昭和二十四年三月三十一日(木曜日)
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  本日の会議に付した事件
○派遣議員の報告
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   午後一時三十九分開会
#2
○委員長(岡本愛祐君) これより委員会を開会いたします。今日の議題は、派遣議員の報告でございます。選挙関係は報告が済みましたが、まだ兵庫、山口、島根各縣に治安状況の現地視察に参りました、その報告が残つておりますから、今日はそれを御報告いたします。私と黒川議員と島村議員三人が今申しました三縣下並びに門司の海上保安本部に治安関係の調査に行くことになりました。島村議員は止むを得ない事情で遂に行を共にすることができなくなられまして欠席されました。我我二人は二月二十日から三月一日まで十日間に亘りまして、右三縣下に出張いたしまして、兵庫縣廰、廣島市、山口縣廰、宇部市、下関市、門司海上保安本部、萩市、島根縣の益田町、島根縣廰の九ケ所におきまして、各縣、市、町の首脳者、公安委員、國家地方及び自治体両警察の首脳者、海上保安廰の関係官、経済調査廰の関係官、その他の関係者から親しく現地の治安状況、殊に姫路事件とか、これは昭和二十三年十二月十日姫路市における朝鮮人連盟対朝鮮民團の衝突事件であります。それから宇部事件、これは十二月九日宇部市における朝鮮人群衆と警察官との衝突事件であります。益田事件、これは十二月二十五日島根縣益田町高津部落の朝鮮人に対する密貿易の隠匿物資の摘発に端を発して、翌二十六日朝鮮人の群衆が自治体警察署に押寄せて参りまして、朝鮮人と警察側双方に負傷者を出した事件であります。これを中心としまして各地における酒類の密造、密貿易、密入國及びその取締状況等の朝鮮人関係の治安問題について、詳細に事情を調査した次第であります。この内容の詳細につきましては、同行して呉れられた福永專門員がノートを作つておられます。それから関係者から説明資料の提出を受けました。これは委員部の方にございますから、それを御覧願うことにいたします。ここでは專ら以上の結果を総合して得ました結論的な部分を述べまして、今回の現地調査の報告といたします。これに対して國家公安委員長、國家地方警察本部長官、海上保安廰の長官に御出席を願いまして、いろいろ御意見を承わり、又質問も申上げたい、こういうふうに思つております。
 先ず調査各地における朝鮮人問題の概観を申上げますと、阪神地方においては、從來から労働問題、思想問題に関連しまして、同地に在留しております朝鮮人がその影響を非常に受けておるのであります。戰後朝鮮人の多くは生業を離れまして、失業状態に陷つておる人が非常に多いのであります。闇ブローカーとか、酒類の密造等の経済違反行爲の温床をなしておるのであります。大阪、兵庫附近におきます朝鮮人の数は非常に多い。そこにこの経済事犯行爲が非常にありますし、又いわゆる闇商人が列車を乘り廻つておるというような状況であります。殊に最近はこの種の違反行爲が集團的、計画的且つ惡質なものとなる傾向が強くありまして、從つてその取締の対策もこれに相應して強力且つ充実せるものが必要となつて参りました。今年の二月の九日に、尼崎市の自治体警察が中心となりまして、檢察廰、國家地方警察、税務当局等がこれに協力して、一体となつて尼崎市の守部部落における朝鮮人の集團的な酒類の密造に対する一斉の取締を行いまして百十四名を檢挙し、酒類百三十三石、その他証拠品を多数押收しましたが、これは從來こういう取締をしようとしますと、どういうわけですか事前に漏れまして、うまく行かなかつたのであります。いろいろ神戸の檢察廰、警察の方で苦慮いたしまして、これは当日いよいよ檢挙に着手いたします直前まで税務署、それから警察署の方に知らせなかつたのであります。幹部だけは知つておりました。これを甲子園ですかの野球場において新刑事訴訟法の講習会を開くという名義で招集しまして、そうして皆集まつて來たところで、実はこれから尼崎市のこういうところに檢挙に行くんだということで行つたんです。それで非常にうまく行きまして、この新刑事訴訟法下に立派な檢挙ができて、大した事故もなかつたのであります。こういう例がございます。かような環境の下におきまして、兵庫縣の日本海方面の但馬方面、それから瀬戸内海方面からの密輸入、それから密輸出もございます。それから密航が増加する兆候がありまして、これが阪神地方を脅かしておるのであります。殊に最近においては、ピイトルなんかの危險物も密輸入せられる虞れがあります。嚴重な警戒を要する状態であります。丁度行つておりますときに大きな生ゴムの密輸入がありました。これも苦心の結果檢挙いたしております。更に注目すべきことは南朝鮮、大韓民國側と北鮮の朝鮮人民共和國の方の対立状態や、それから中共の進出等の大陸の情勢が政治的に、又思想的に相当敏感に在留鮮人に反映しております。それでどうもトラブルを起し易い。日本の警察がその過中に捲き込まれるというようなことになつて來ておるのであります。昨年の十二月姫路市に起つたいわゆる姫路事件でありますが、これは同地方における朝鮮人連盟、つまり北鮮側と南鮮の系統の側に分属している朝鮮人が集團的に抗爭しまして一名が殺されたという事態が起りました。双方に数名の負傷者を出しております。これが表面に現われた一例であります。
 山口縣におきましては、終戰当時約十五万五千人の朝鮮人が在住しております。現在は登録令によつて登録しております数が三万人ぐらいに減つております。併し密航によりまして潜入した者が随分おるのであります。この数ははつきり分りませんけれども、下関だけでも登録した者の一万五千人に対しまして、いわゆる潜りの朝鮮人の幽霊人口と申しますか、それが一万もあるのであります。これを見ても、大体どういう状況になつているかということがお分りであろうと思います。下関、宇部、小野田等の各市におきましては、これらの朝鮮人が密集部落を成しておりまして、特殊の生活環境を作つておるのであります。宇部、小野田は炭鉱地帶でありまして、朝鮮人のグループが過激であるかとこういうふうに思つたのですが、却つてそうでなくて、割合これは温順なのであります。ところが、下関の方は、これは非常に過激な分子が多い、こういうことになつております。山口縣地方の朝鮮人についても、その生活環境の基礎條件においては、阪神地方と共通のものが見られます。而も本縣は、本州の門戸でありまして、玄海灘を隔てて朝鮮と一衣帶水の近接距離にあります。連絡が極めて朝鮮と容易である関係で、鮮内事情を最も直接的に且つ敏感に感受いたしておりまして、影響せられるものが非常に多いのであります。特に最近におきましては、北鮮側の動きが南鮮側を圧迫しておりまして、南鮮側にも北鮮側の勢力が著しく浸潤しております。非常に緊迫した朝鮮の状況を直ちに山口縣に反映しておりまして、朝鮮人が政治的、思想的にいよいよ尖鋭化をして、北鮮系と見られる朝鮮人連盟の殆んど一色に山口縣では團結いたしております。而も、日本共産党の地元組織とも連繋が段々できて來ているように見受けられるのでありまして、税金の鬪爭等各種の鬪爭を活溌に行なつているのであります。殊に注目すべきことは、日本警察に対する反感と抗爭意識が底に下関方面において熾烈旺盛の点があるように見受けられます。この点は非常に警戒を要すべきだと見て参りました。
 昨年十二月九日宇部市にいわゆる朝鮮人生活防衞鬪爭人民大会というものが開かれましたが、その会場に潜入した北鮮の國旗掲揚事件の責任者、これは下関市で北鮮の國旗を掲揚した。北鮮の國旗は連合軍の方から禁止をされているのでありますが、それにも拘わらず、下関市で北鮮の國旗を掲揚したその責任者の崔民煥というのがおります。これは朝連側の山口縣の本部の委員長であります。これは、下関市に住んでいるのでありますが、それが宇部の人民大会の会場に逃げて來たのであります。逮捕に向つた警察官と会場の朝鮮人の群衆二千人との間に猛烈な乱鬪が起りまして、遂に警察則、朝鮮人側双方にそれぞれ数十名の負傷者を出すほどでありました。朝鮮人群衆――この中には多数の婦女子も交つておりますが、その抵抗が非常に強く、遂に崔民煥の逮捕目的を達し得なかつた。逃げてしまつたというのがこれが宇部事件の概件であります。宇部事件は山口縣地方における朝鮮人問題の様相と特殊性を最も具体的に表現した典型的事件であります。殊に山口縣において朝鮮人の群衆が岩國に潜在しております。イギリス濠洲軍の憲兵に対してすら猛烈な抵抗を示しております。負傷にも屈せず反撃の態度に出ております。これは朝鮮人問題の再発を考えるに当つて見逃がすことができない重大なる事柄だと思います。宇部市におります朝鮮人は前に申しましたように割合に穏健なのでありますが、下関の方から應援に來た、又各地からそこへ集まつて來た連中が非常に過激だということになつております。
 島根縣における朝鮮人の数は約六千四百名でありますが、日本海を隔てて朝鮮と対しております。潮流の関係で釜山方面から島根、鳥取方面に來易いという状況になつております。それで本縣の地理的な関係上、朝鮮人関係の密貿易、密入國事件も少くないのであります。昨年中の統計の数字を挙げておりますが、それを見ますと、密貿易の中で違反対象物の價額が千七百二十万円に上り、檢挙した密貿易の件数が六件、密入國者の逮捕数が十八回で五百八十一名、押收した船が六隻ということになつております。その外に甚だ長い沿岸線を持つておりますので、監視の目を逃がれて潜入しておる者も相当あるだろうと想像することができるのであります。島根縣下の朝鮮人は在留期間の長い者が比較的多いのでございます。全般的にいつて比較的温順である。併し益田町の高津部落の朝鮮人約十一戸、七十名おりましたが、それが集團居住しておりまして、定まつた生業を有する者が少く、密造酒、闇物資の仲介等によつて大体生活を立てておるという状態であります。これは他の地方におけると殆んど同じ型に属しておりまして、ただそのスケールが小さいのであります。この地方における朝鮮人の間には朝連を通じまして十分の連絡がありまして、必要に應じては、益田町事件の例に見られるように、附近の朝鮮人を直ぐ急速に糾合しまして、そうして警察署に押寄せて行く。そうして益田町事件の場合は二百名を動員しまして警官隊との間の乱鬪が起きまして、二十余名の負傷者が生ずるに至つたのであります。穏健だといつてもその附近から直ぐ應援に参りますから、なかなかこれも油断ができない情勢であります。以上は三縣の一般の状況であります。
 次に対策について申上げます。前述の朝鮮人問題に対しまして、我が國としては如何に対処して行くべきであろうか、その対策は軽々に結論を得る程簡單なものではないのであります。問題のよつて來るところが深く遠いものがありますし、その幅も廣いし、その根底に深刻な微妙なものを含んでおります。併し先ず第一に我が國におきまして、大きな政治的考慮によりまして急速にこの朝鮮との関係を調整して、在留朝鮮人の地位を明確にしなければいけないと思います。どうも今までいろいろな法令があつてないようなものでありまして、朝鮮人に対する処遇方針と申しますか、又一方には違反者に対する取締方針と言いますか、それが確立しているようで確立をしていないのであります。それで早くその処遇方針を本当に確立させまして、これを忠実に且つ強力に推進することによつて、問題を抜本的に解決を図らねばならんことが一番大事なことであります。これは我が委員会においても段々政府を督励してそういうふうにやらして行かなければなりませんが、尚当面の対策として考えられる数項目を挙げて行きたいと思います。
 戰後激動する社会情勢を反映しまして、生活の不安定からややもすれば動搖不穏な雰囲氣を釀成し易い環境に置かれまして、この在留朝鮮人は精神的に、又物質的に絶えず刺戟と影響を與えられております。密造酒や、密造のたばこ、密貿易なんかを取締ることは我々の生活権を脅かすものだというような主張をしている者もあります。併しこういう情勢の惡化をどうしても助けているのは朝鮮本土からの密輸、密貿易、密航事件であります。その中継拠点になつておりますのが對馬であり、隱岐島である。この對馬、隱岐島の状況はこれは相当憂慮しなければならない。又警察方面、殊に海上保安廳方面においても取締を要するものと認めるのであります。殊に對馬方面では余程ひどい條件になつているようでございます。この点について後程公安委員長並びに海上保安廳方面でお分りになつている点について、改めて御説明を願いたいと思つております。今申しましたように情勢に対しまして、最前線において取締ることが一番必要なんですが、その責任を有しておられるのが海上保安廳であります。地方に海上保安本部を置かれ、又その下に海上保安部、それから海上保安署なんかを置いておられます。併しその陣容はこう申しては失礼でありますが、甚だ劣勢でありまして、海上保安廳によつて與えられた、許された百二十五隻の船舶、五万総トンの船舶を許されているのでありますが、燈台船なんかを皆入れて四十二隻の船しかないというような状況、それから武器もピストルの携行は許されているのでありますが、必要に應じて國家地方警察から借りるというような極めて貧弱であります。あまつさえ関係官の多くは経驗が浅く職務も不慣れのために十分な活動もできない。予算の不足も原因して、海上保安廳は失礼ではありますが、海上保安廳の機能が非常に阻まれているというふうに見て参りました。驚いている次第でございます。
 門司の海上保安廳本部は九州、山口の沿岸の廣い海上を管轄し、殊に下関を中心とする山口縣の海岸、北九州一帶等の朝鮮人の密集地、密輸、密航の屈強の中継地である對馬等重要地点を控えているのに、この保安本部で聞いて見ますと全くその人員は心細いのでありまして、もう保安本部の方でもこれはとてもやろうとしてもやれないのだと悲鳴を上げておられるような状態であります。どうか早く至急にこの陣容を充実強化されまして、密輸、密航の第一線を取締を嚴重にして頂いて、海上保安の万全を期して頂きたい。こう申した次第であります。
 もう一つ申しますと、関門地方に次いで朝鮮の近接距離にある島根、鳥取両縣の沿岸の日本海の海面のために浜田、境の両海上保安部が設けられております。ところがその陣容は実に貧弱極まるものでありまして、機能発揮などとてもできない、而もこの両海上保安部は門司の方が近いのでありますが、どういう関係か廣島の海上保安本部の所管に属しており、山陰地方に孤立の状態に置かれてしまつておる、而も今申しましたように、船も貧弱ならば部員も少い。それで同地方における、先程御説明したような密航や密輸の実状に実際そぐわないのであります。私はこれはどうも門司海上保安本部の方に移管されまして、この方面におきましての取締の一体化を図られた方がいいのではないかと考えて來た次第であります。
 次に朝鮮人の密輸、密航等に対しまする取締の第二陣と申しますか、それは山口、島根の両縣において実施しておる監視哨の制度であります。監視哨というものを置きまして、それで晝夜見張つておる、晝だけ見張つていないところもありますが、併しこれは主として予算の制約を受けまして、内容は極めて貧弱であります。殊に萩市のように臨海地でありましても、自治体警察の所管区域では、自治体の財政難のために監視哨を設けないのが普通であります。下関市は貧弱ながら実施しております。萩市の方は実施していない、こういう状況であります。監視哨は國家地方警察の方でこれを設置して、地方の漁業組合等の協力を受けて辛うじでこれを維持しておるような現状であります。自治体警察の方はやりませんから海上の管轄を奪われておる。國家地方警察の方で陸地の方をやる、こういうような状況であります。これは政府の方においても財政的に……自治体の方においてもこういう密輸とか、密航とかいうようなことは單にその自治体だけの仕事ではないのでありますから、取締れないのでありますから、國家において是非そういう財政的に援助して、監視哨の設置を図つて、海上保安勢力の増強と相俟つて取締に遺憾なきを期すべきであるとこういうように考えます。而も以上の海上保安廳と監視哨を第一線とする陸上警察との間には、海上保安という共同目的に対して殆んど有機的の連絡組織を持つておりません。双方とも両者間の分担、協力の必要について明確な認識に乏しく、現状の不満足なことに氣付いていながら、積極的に連絡提携の方途を講じようとしておりません。下関の自治体警察と門司の海上保安本部との連絡を聞いて見ますと、三ケ月に一遍寄り合つておるというようなことで驚いたのであります。これは一月に三回とか或いは始終連絡会議を開かなけれどならない。三ケ月に一遍では仕方がないではないかと言つて來たのでありますが、漫然姑息な方法でその場その場を凌いでおる。実に遺憾極まることだと見て参りました。海上保安廳監哨網の拡充強化は、まあいわば対外的な方策とも称すべきものでありまして、海外からの刺戟によつて朝鮮人関係の治安問題の惡化を予防するのでありますが、前に述べました通り、現在各地に多数の朝鮮人がおりまして、姫路、宇部、益田の各事件が示しますように、幾多治安上注意すべき問題を起しております。これに対して直接の関係、直接責任の地位にありますものは、言うまでもなく警察であります。ところが現行の新らしい警察制度は、発足早々朝鮮人関係の治安問題に当面して、今申したような事件の経驗が、新警察制度の試金石と言われる結果になるのでございまして、余りうまく行つていないところが多いのでありまして、殊に下関市の自治体警察のごときは、もう朝鮮人の密航者は、三分の一しか捕えられないということを申しております。密航して來るものが三分の二は内地に潜入してしまう。下関市には一万五千人からの朝鮮人の部落があります。これはその中には殆んど自治体警察の警察官が入れない。入ればピストルで射たれるというような危險な状態でありまして、全く手を挙げているのであります。まあうんと警察官を増員いたしまして、取締つて行けばとにかく、毎日そこを巡邏し、密行するようなことはとてもできない、こういう状態であります。山口縣知事が言われた話であつたのでありますが、山口縣の知事は、非常にこの山口縣における朝鮮人問題、朝鮮人によつて釀し出される治安問題ということを憂えております。今のような状況では、もう自信は持てないとまで申しております。これに対しまして國家地方警察の方でどう見ておられるか、國家公安委員の方ではどういうように見ておられるか。これは山口縣知事の方とも、これまでしばしばお話合いがあつたことと思いますから、その点もお尋ねいたしたいと思います。
 それで今申しました各事件によつて示されるように、警察取締の対象の事件が漸次計画的な集團的な傾向を帶びておるように、我々には観察せられるのであります。それでその傾向に鑑みまして、國家地方警察、自治体警察、二本建制。それから約千六百に上る群小――小さな自治体警察が並立している。これを整理するという問題があります。それから警察費に対する國家負担の増加の問題。自治体警察に対してもこれは國家が負担してやらなければならない。又はそれに自治体警察をやつて行くについての財源の、國庫からの十分な負担をしなければならんという問題。それから地方的な非常事態の宣言が出來るようにしなければならん、その問題。それから貧弱な警察官の武裝、ピストルも五人に一挺というようなことでは、とてもこれはいかん、その強化の問題。それから警察機動力の増強の問題。それから國家地方警察と、自治体警察の連繋の問題。殊にこの治安関係はどうしても國家の存立に関する問題でありますから、自治体の間に起つた事態でありましても、治安の問題は、これは國家地方警察が自治体の中へ入つて來、それを防衞することが出來る組織にする必要があるのじやないか、こういう問題。それから海上保安廳と國家地方警察、自治体警察との連繋を速かに円滑緊密ならしめる問題。それから自治体警察の持つている水上警察の充実。それから國家地方警察が水上警察を持てないという、その不合理をなくする問題。國家地方警察による特別警備区域の設定の問題。こういう問題を我々かねてこの委員会において檢討しつつあるのでありますが、今度の視察によりましてこれは是非とも、この問題は早急に警察法を改めて何とか早く強化をいたしまして、そうして治安の万全を期さなければならんということを、痛切に今度の調査によつても感じました。この委員会におきましても皆様の御協力を得まして、こういう問題について着々成案を得まして、國内の治安の万全を期したい、こういうふうに考えております。以上一通り御報告申上げました。御質問ございましたら……。尚今日は辻公安委員長、齋藤國家地方警察本部長官、大久保海上保安廳長官が見えております。それから海上保安廳長官はGHQへお出でになる用事がありますから、先に御質問なり、御答弁願いたいと思います。
#3
○政府委員(大久保武雄君) 私海上保安廳長官の大久保であります。只今委員長から日本西部方面御視察の御結果につきまして、詳細な御報告を拜聽いたしまして、私共甚だまだ不備なる点を痛感いたし、申訳ないことと存じておる次第であります。御承知のように海上保安廳は百二十五隻の船舶、一万人の職員を以て制限せられて、昨年五月に出発いたした次第であります。現在この百二十五隻に該当いたしますところの巡視船が、燈台水路船を含めまして四十隻、それ以外の港内船等、小さいものを含めまして約二百八十隻あります。そこで只今委員長から御発言の第一点の對馬、九州方面に対する対策でございます。私共何と申しましても、對馬を含めました九州全域は、一番海上保安上重大な地点だと考えております。それで私共の持つております船舶の過半数を、この九州方面へ配分いたし、對馬、五島、関門、北九州方面には常時警戒の態勢を取つております次第であります。そこで当初警察と協力いたしまして、朝鮮方面からの密航者に対処いたしますために、關門海峽におきまして東口と西口の檢問をいたしまして、昨年の五月以降相当実績を挙げたのであります。併しながらその後海上における特有なる船舶の機動性を発揮いたしまして、現在におきましては関門ばかりでなく、只今委員長から御発言の島根縣、鳥取縣、更に遠く延びまして舞鶴方面、更に昨年の暮あたりには能登半島、更に佐渡という方面まで密航船の、密貿易船の渡來が行われているという次第で、更に南の方は五島から長崎、天草、鹿兒島、更に鹿兒島の南端を迂回いたしまして、或いは豊後水道に入り、或いは土佐沖に現われ、更に紀伊水道から阪神地方に入つて來る。更に沖繩方面からは遠く太平洋を航行いたしまして、小さい船で房総半島までやつて來る。こういつたようにいろいろ密航、密貿易船の分野というものは、日本全域に亘つて活動を始めた。かような状態に相成つております。併しながら九州はその最も重要なる航海の要衝でございますから、九州の北から南にかけまして、私共のさき得る殆んど最大の主力をさいて、九州の沿岸の治安維持に当つておりまするような次第でございます。この点につきましては、現在の保有船舶の情勢というものが、私共といたしましても甚だ不十分である、かように考えておる次第であります。何と申しましても海上におきましては、船舶と船舶とが一対一の勝負であります。全然応援もなく、その一対一の勢力を以て相手を逮捕するということでなければならないので、只今委員長からも御発言のように、最近は相当の武裝をいたしております。ダイナマイト、ピストルその他の武器を所有いたしておりまして、これが逮捕には常に非常なる困難を極めておる次第であります。而も現在私共が所有いたしておりまする船舶の主力は、排水トン百三十トン程度の木船でありまして、而もそれは非常に古い船を使つておりますために、取締には速力その他の点におきまして非常な不利を生じておる次第であります。これを補いますために、海上保安廳の職員の武裝問題も、現在海上保安廳には武裝の携帶を許されておりますけれども、目下まだ実現していない状況にございます。そこで現在どういうふうにして捕えておりますかというと、殆んど職員が持つておりまする薪を反手の船に投げ込んで行く。或いは九州方面その他において、警察方面から借用いたしました若干の武器を使つておる。或いは警察官の臨時來船を願つて、そうしてこの相手の兇惡なる者に対する取締をやるといつたようなあらゆる手段をとつておりまするけれども、ここにも写眞がございますけれども、どうしても停船しない船に対しましては、海上保安廳の巡視船がみずから体当りをいたしまして、そうしてこの相手の船を破壞して逮捕する。自分の方の船も、いつこれは破壞されるかも知らないという捨身の戰法で逮捕している実状でございます。かように職員といたしましては全力を傾倒いたしまして、殆んどみずから身命を抛つて逮捕に從事しておりますけれども、密航者の数というものは、先程委員長の御説明の通りなかなか絶えないし、又非常なる廣汎なる水域においては、非常にこの檢挙が困難であるということは御説明の通りであります。そこで私共が五月から十二月までに挙げました檢挙件数は三千七百九十人でありまして、この大部分は不法入出國、或いは又は密貿易の罪によるものであります。これが約二千二百名ばかりに達しております。それに続きまして多いのは密漁であります。これらの罪が私共の取扱いまする犯罪の殆んど大部分でございます。そこで今後におきましても、私共が海上において取締を強化いたしますためには、どうしても船を持つということが第一であります。よい船を持つということが第一であります。そこで海上保安廳は、百二十五隻を分類いたしまして、総トン数は五万トンを超えてはいけない。一隻の排水トンを最大千五百トンを超えてはいけない。速力は最高十五ノツトを超えてはいけないというような制限がございます。そこで二十三年度に海上保安廳が発足いたしましたときは、残念ながら一隻の新らいし船の新造計画もなく、古い船を以ちまして出発をいたしたのでありますけれども、海上保安廳が新らしい海上保安廳の目的に即應した船を持ちますということは、一番先決の問題であります。そこで二十四年度予算におきましては、若し御協賛を願いますならば、海上保安廳は初めて新らしい船を新造いたしまして、日本の近海の治安維持に当るという体制が初めて実現いたすかと存じております。私共は皆樣の御期待に副うべく、あらゆる力を盡しまして努力いたす次第でありまするが、現在その努力にも拘わらず、あらゆる点において未だ欠陷を排除し得ないことは御説明の通りであると存じております。
 次に委員長から御説明の萩の附近の管轄区域の問題であります。実は海の取締は非常に管轄の方法が困難でありまして、陸上以上に一つの地形を下する境界というものがないのでございます。殊に九州と山口縣並びに島根縣方面に対する境界の設定の方法というものは、実に困難を極めるのであります。併し萩は非常にデリケートな地点で而も仙崎と見合いまして、密入國者の狙つております一つのポイントでございます。そこで今後萩附近の山口縣の帰属というものにつきましては、委員長の御説明の点も御尤もと存ずる次第でございまして、この点につきましては近き將來において研究の上、適当なる解決措置を講じたい、かように存ずる次第でございます。
 それから國家警察並びに自治体警察との協力の方法でございます。これは陸上に限らず、陸海の警察におきましても、この相互間の協力ということが一番大事なことでありまして、苟くも治安上眞空状態を作らないということは絶対の條件であります。そこで私共も若干の重複いたしました部面がございましても、できるだけ眞空状態を作らないということに最大の関心を持つておる次第でございます。協力の点におきまして私共の組織が新らしいために、まだ不十分の点がございますが、最近におきまして採りました点といたしましては、海上保安廳は無線通信を主力といたします無線系統を持つております。警察におかれましても厖大なる有線通信網を主体とした通信組織をお持ちになつております。これが相互に協力して通信の敏速を図るということは、非常に大切なことでございまするが、今回國家警察の非常なる御協力を得まして、陸海通信網が相互に協力する全般の態勢ができ上つた次第でございます。何と申しましても治安活動が通信というものを措きましては敏活な活動はできないのでありますが、國家並びに海上治安が通信において協力するということは、これは非常に結構なことであると私も存じております次第でございます。尚又國家警察との間におきましては、中央におきましても諸般の情報交換その他をいたしておる次第でありますが、まだまだ全般の、全國に亘りましては不十分な点もあろうかと存じております。ただ方面によりましてはいわゆる警察の官署その他の機関と連絡をとりまして、常時相互に緊密なる治安維持に対する協力態勢をとつておる地域もございます。併しながらこの点がまだ全般的に見まして完全ではないと考えておりますから、只今委員長の御説明もあり、私共も今後におきまして、警察側と十分お打合せをいたしまして、その間に全面的に協力する態勢を一日も早く招來いたすように今後とも努力いたします決心でございます。甚だ簡單でございますが、委員長の御説明に対しまして主なる点を御答え申上げた次第でございます。
#4
○委員長(岡本愛祐君) 海上保安廳長官に対しまして御質問はございませんか。
#5
○柏木庫治君 今の御説明を承わりまして、通信の点において全面的に警察と協力をなさる、実に時宜を得たことと思うのでありますが、その他國土、治安を守るという意味において保安廳から眺めまして、一つ通信網だけでなく、その他通信網のごとく協力をいたしたいと、こう考えるようなことはないかということをお尋ねいたしたいのです。
#6
○政府委員(大久保武雄君) 海上保安廳方面におきましても、警察側との強力な協力態勢を要請いたしておりますし、私共の方の治安維持の面におきましては、これは一点の隙があつては相成らない。そこで例えば船舶の供用にいたしましても、或いは兇惡の犯罪に対する警察官の應援を受ける態勢にいたしましても、警察との協力関係を全面的に一つ押し進めるということにつきましては、今後各面につきまして考慮して行きたい、かように存ずる次第であります。
#7
○柏木庫治君 今の御説明で、氣持はよく分つたのでありますが、今までにここはもう一つ警察との協力ができておつたらうまく行つたんじやないかというふうに、実際問題で不便を感じて、治安の目的を十分に達し得なかつたというような憾みはないか。あるならばそれに対しての協力の方法を、どちらからか働きかけなければならん。不便を感じた方から先ず求めなければならんのじやないかと思います。実は通信の点において全面的の協力をいたすことに最近なられて、非常に御満足のようであつたものですから、その御満足の態勢にすベてをなさつたら結構じやないかと思いますので、從來の歩みにおいて、ここはもう一つというようなことをお感じになつた事実はないか。若しあるならばそれに対してどういう働きかけをしておるかというような、氣持だけでなくて、具体的なことを私は承わりたいと思います。
#8
○政府委員(大久保武雄君) 最近の犯罪、殊に海上犯罪は先程も委員長から御説明のように、なかなか大掛かりでありまして、相当やはり多数の人が組んで犯罪を犯しておる場合が多うございます。そこでなかなか海上保安廳だけではこれが檢挙というものは困難であります。又その策謀その他が陸上と呼鷹して行われるという点もございまして、最近は警察側と協力しました捜査本部も作りまして、共同捜査本部を結成して檢挙いたしました例が最近頻頻と起つております。そこで現在私共のお頼みに対しまして、警察側といたしましても全面的に可能なる限り御協力を頂いておりまして、この点に関しましては感謝に堪えない次第でありますが、ただ先程も申しましたように、私共は目下のところ武器を持つておりません。相手に非常に強力なる武器若しくはその強力なる抵抗というものが予想される場合において、警察との協力を連絡しておる間にこれを逃走せしめるといつた例は具体的に挙つております。そういう点に関しまして、これは或いは裝備の点、或いはその他の点において尚從來の経驗に徴しまして、今後も又私共の方も方法を講じまして、遺憾なきを期したいと思つておる次第であります。
#9
○柏木庫治君 甚だしつこいようでありますが、これは私が見たことではないのでありますが、参議院の或る立派な方から事実として承つたのであります。瀬戸内海の小さな島で警察力が及ばないので、何か昔の海賊船みたようなのが一つの小さな島を、全村といいますか全島といいますか、脅かすようなことを半年ぐらい前に聞いたと思いますが、再々ある。そういう瀬戸内海の小さな島に……これは愛媛縣の人から承つたのでありますが、住んでおる者は戰々兢々たるものがあるという、こういうことを承つたのでありますが、そういうことは事実あるのか、事実そういう姿が見えたのか、それはひとり海上保安廳だけでなく、警察の方にもそういうことはないか、若しあるならばこれは海上保安廳とも連絡して活動すベきものじやないかと思いますので、最後の質問としてお尋ねいたしたいと思います。これはお三方に承わりたいと思います。
#10
○政府委員(大久保武雄君) 昨年瀬戸内海で現われました非常に兇惡なる犯罪でございまして、やはり島若しくは沿岸村落を荒しました犯人があります。これは相当大勢の犯罪でありまして、関係方面におきましても、この檢挙につきましては非常に関心を抱かれまして、我々も激励を受けておつた次第であります。警察側とも協力いたしまして捜索に当つておりましたが、これは廣島縣におきましてこの関係の犯人全部を檢挙いたしましたのであります。その際犯人の居宅からはピストル、日本刀、手榴彈、ダイナマイトその他相当数の火藥まで発見された。これは最近における最も兇惡なる武器を持つた犯罪であります。かように考えております。恐らくその件ではなかつたかと思つております。
#11
○柏木庫治君 近頃は瀬戸内海は安全ですか。
#12
○政府委員(大久保武雄君) 今年になりましてから瀬戸内海も大体中央方面の島及びそれに関連した一帶の海岸地域に亘りまして、或る程度類似した海賊の犯罪が起つております。一番兇惡でありますのは、石炭船を襲いまして、そうしてこの物品を掠奪をいたしまして、そしてこのエンジンの部品を外して、そうして二日間船を漂流せしめたというような犯罪がございますが、かくのごときは自分の逮捕を免がれしめるために、一時船を漂流せしめる。最も兇惡な犯罪と思いまして、これらに対しましては現在廣島海上保安本部を中心といたしまして、関係の機関とも協力をいたしまして、極力これが逮捕に努力しておる、かような次第でございます。
#13
○柏木庫治君 まだ不安は去らずというわけですね。
#14
○委員長(岡本愛祐君) 外に海上保安廳長官に対する質疑はございませんか。……次に國家公安委員長。
#15
○政府委員(辻二郎君) 朝鮮人の密入國の問題につきましては、只今委員長からいろいろ御説明がございましたが、御説明のごとくでありまして、昨年の春私共現地に参りました当時から、この問題は非常な厄介な問題とされておつたのであります。何分にも現在國家地方警察は三万名の定員でありまして、うち五千名は管区警察学校に常時入校いたしておりますような人員であります。山口縣、長崎縣、福岡縣等の海岸、長い海岸線に当つては密入國を取締つておるということは、非常に困難な状態でございます。併しながら勿論各所において逮捕できましたものは、嚴重に送還の手続をとつておりますが、如何せん数不足というような点がありまして、對馬島にはその後特に監視哨を強化いたしまして、苦しい中から人員等も殖やしておるのでありますが、今日決して十分とは考えられないと思います。人員の問題は法律を以て決められておりまして、これを増員いたしますことは、現在におきましては、不可能な状態であります。せめてこの人員をできるだけ有効に能率よく活動せしめるためには、何としても裝備の強化をし、且つ機動力等を画期的に増さなければ如何とも手の下しようがない。武器の問題にいたしましても、御承知のごとく拳銃等は殆んど警察官の一割ぐらいしか持つておらん状態であります。この機動力裝備等の強化のために詳細な案を作成いたしまして、昨年來政府に要請をいたしております。今日におきましては未だ遺憾ながらその案の実行を見るベき予算を間に合わせられない状態になつております。尚新警察制度につきまして、先程委員長からいろいろ御指示がございました諸点につきましては、私共も昨年一ケ年間の間にいろいろ現地を廻わりまして調査をいたし、尚六管区の公安委員連絡協議会が毎月或いは隔月に各地において開かれております。その都度こちらから国家公安委員も出席いたしまして、管区の意見を聽き、これを取纒めております。更に又昨月も全國の公安委員、國家地方警察及び自治体からの代表に御参集を願いまして、懇談をいたしましたのでありますが、現在の新警察法についての御意見は、全國公安委員の御意見はほぼ大体もう決まつておるのでありまして、例えば小さい自治体が到底経理的に運営が困難であるという問題、又小さい自治体がいろいろな意味におきまして無力化するという心配等は殆んど全國に共通の観があるがごとくに認められるのでありまして、又現在の法律では國家地方警察が自治体の要請に應じて應援に出ることがでぎますが、その逆な場合はできないことになつております、これが不便である点。又自治体同士の相互援助が合法化されない点等、又これらの援助を受けた場合の費用の負担の問題等非常に厄介な問題が起つておるのであります。地方的な大事件が起りました場合に、これを地方的な非常事態の報告を縣知事の権限によつて報告できるようにという要請も非常に多うございますが、すベてこれらの問題は私共におきましては國民一般の輿論といたしまして、全國の公安委員を通じましてその意見を取纒めております。その結論は大体こういうふうになつておりますが、不備な点はこれらでありますけれども、これは法律を改正するという問題になりますので、私共といたしましてはむしろ当委員会等を通じて、國会においてお取上げを願うベきことではないか。それらに対する私共といたしましての案のあつたものは、やや形を整えておる次第でございます。尚詳細につきましては齋藤長官から説明申上げます。
#16
○委員長(岡本愛祐君) 齋藤政府委員。
#17
○政府委員(斎藤昇君) 御質問がありましたらお答え申上げます。
#18
○委員長(岡本愛祐君) 御質問ございませんか。先程お尋ねした對馬の状況ですね。又隱岐の状況、これは非常に密貿易、又密航者なんかの基地になつておるということですが、この点はどうですか。
#19
○政府委員(斎藤昇君) 委員長の御報告の通り對馬、隱岐殊に對馬は南鮮の濟州島に近い関係からいたしまして、非常に重要な場所になつております。長崎縣の國家警察としましても對馬の重要性をよく考えまして、ここに最近特別多人数の警察官を派遣をいたしまして、只今の密輸入の防止に当つております。この對馬にいたしましても、やはり自治体警察と國家警察がございますので、この間の情勢連絡を図りつつやつておるのでありますが、如何にうまく連絡ができましても、やはり自治体と國家警察と、別の人格で別の責任者ということになつておりますので、どういたしましてもうまく行かないという点は免かれないと思つておるのであります。更に一番弱つております点は、國家警察は総人員が非常に少い、それにも拘わらず特に必要なところに、或いは自治体警察の置かれておるところにも、そういつたような意味で應援に出して置かなければならんという関係がありますので、對馬のような辺鄙なところには長く同一警察官を置いて置くということは、又いろいろな点で警察官の困ることもありましたり、いろいろ不便な点はありまするが、最も重要な点と考えて對馬には警戒をいたしておるのであります。對馬と濟州島の間は確か二時間半ぐらいで往來ができるところでありますので、殊に濟州島は御承知のような状況になつておりまするから、いろいろな意味で、最も重要な所だと考えておるのであります。日本海方面におきましては、隱岐もやはり一つの中継点となつておりますので、ここも主要点と考えてやつておるのでありますが、併し一設的の、この密入國者の趨勢は段々と時に從つて上陸する場所が処つて参ります。隱岐及び對馬の主要な点は、これは余り変化はないにいたしましても、併しながら或いは島根、鳥取、山口、最近は瀬戸内海の愛媛、その他内海の沿岸という工合に手薄な所、手薄な所と狙つて上陸をして來るというような状況であります。我々の何と言いますか、警戒すべき海岸線が、非常に長くなつておるということを御承知願いたいと思います。
 尚この外に自治体警察の区域内における監視哨の経費の問題でありますが、これは事柄の性質として、自治体警察が、自治体自身にとつては大して痛痒を感じないというような事柄で、金もないし、又力を入れるということは、これは自然薄くなるということは理の当然で止むを得ないと考えるのであります。さりとて今日の警察法におきましては、國家警察が、直接自治体の区域内に施設を設け、直接取締をやるということもでき得ません。何としても第一着手としては自治体警察にやつて貰うというしかないのであります。從つて然らば財政的にそういう費用を補助とか、援助をしたらどうかという御意見であつたと思うのでありますが、大体自治体警察の経費は自治体で全部賄う。併しながら地方財政全体の裏付として警察に要する自治体の費用も、地方自治体の財源賦與という点において総括的に得られておる。地方財政委員会において見まして、これを國の移管として、或いは配付の形で廻つて行くわけであります。その経費の中に特に主要なる監視の関係から主要な自治体の警察のありまするところに対しましては、そういつた監視費用もかかるであろうという意味におきまして、この財源賦與の形で新らしい予算といたしましては、確か二千万ばかり地方財政委員会の方から廻るという形になつておるのであります。予算の御協賛が願えれば只今おつしやいました御趣旨もそれによつて、先ず幾らか達せるということではないかと考えておりますが、併しながら財源が参りましても、それだけ果して、効果が上るかどうか、むしろ私は制度の問題であろうと思います。
#20
○委員長(岡本愛祐君) 今の齊藤長官の御説明についてちよつとお伺いしますが、下関が朝鮮人の密入國のために警察官の人員をそれだけさかれる。その取締のために警察官が專門に從事すり者が不足して來る、そうすると、その密入國というものは國家の治安のために必要で、下関という自治体のためだけにやつているわけでありますから、その二、三十人、そのために要る費用は、國家でやつて貰いたい。もう一つの例を言いますと、舞鶴市で引揚者が段々帰つて來る。そのために毎日二十人ぐらいの警察官が專門に舞鶴の自治体警察から出さなければならない。その費用は何も舞鶴市のための費用ではなくして、國家の治安というもののための費用であります。それを舞鶴市だけに負担させないで、國家は当然その二十人の費用は持つべきだ。こういう要求があるのは当然だと思うのです。で、それに対して今おつしやつた二千万円というような金を以て、そういうところにはそれだけの費用をやろうと、こういうことでしようか、今おつしやつたのは……。
#21
○政府委員(斎藤昇君) 只今申しましたのは、監視哨を設け、これを運営する費用として、そういうところの自治体警察にはそれに余計財源を賦與する、こういう趣旨であります。
#22
○委員長(岡本愛祐君) 監視哨だけですか。
#23
○政府委員(斎藤昇君) 監視哨だけです。それは只今例に挙げられました点は、これは密入國或いは引揚者の多い関係上、或いは交通取締の関係上という工合に、その自治体の区域内における警察の仕事の多い少いによりまして、自治体警察の定員を一應決めておりますから、從つてその理由はどういう理由であろうとも、自治体自体としては五百人しか要らないかも知れないけれども、いろいろな警備対象があるので千人を要するというので置いておる所もあります。それらは例えば、警察官一人当りどのくらい経費がかかるであろう、そうすると警察官全体にどのくらい経費がかかる、それを財政委員会の方で財源賦與として総括的に認めておるわけでありますから、仕事の一々の内容によつては見ていないのであります。私の先程申しましたものは、これはそういつた中に含まれないような特別な施設でありますので、こういうことにいたしております。
#24
○委員長(岡本愛祐君) 尚もう一点お伺いいたします。先程伺いましたが、山口縣では知事初め、この朝鮮人の密入國を中心とした治安の問題について、非常に悲観的な現状で、自信がないということですが、これに対してのお考えはどうですか。
#25
○政府委員(斎藤昇君) 山口縣の知事からもしばしば意見を聞いておるのでありますので、先程御報告にありましたように、山口縣は南鮮と一衣帶水の所であります。朝鮮人の数も非常に多い。そういつた意味で治安上いろいろむずかしい問題が起り、又將來起ることが予見されるのであります。これに対しまして山口縣の國家地方警察は、たしか総員数が六百五十四人ぐらいかと思いますが、自治体警察が千三百人、両方合せて二千人足らず、國家警察として全部駐在を狩出しても六百五十という手薄でありますから、從つて山口縣知事としては非常に心許なく感ぜられるものも尤だと考えております。併しながらさりとて、他の三府縣からここに警察官を何百人かを廻すということは、多少それは程度の差はあるかも知れませんが、どの縣も國家警察の定員の不足を歎いておるのでありまするので、なかなかこれは削減するわけには参りません。何らかの機会を得たときに、私は山口の方へ、そういつた將來の状況を見て、定員を余計廻したいと考えておるのでありますが、今日只今の状況ではちよつとそれは困難に考えておるのであります。併しながら若し何か相当な事件が起るであろうという予見のされたとき、又起りましたときには、これはあらゆる方途を構じまして、他の府縣からも應援を出し、当面の治安の維持は全ういたしたいと考えておりまするし、又今日ならばまあ何とかできるのではなかろうかと、かように考えております。
#26
○委員長(岡本愛祐君) 何か御質問ございませんか。……それでは外に予定が陳情がございますが、それは今日はやらないでこれにて散会いたします。
   午後三時三分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     岡本 愛祐君
   理事      
           鈴木 順一君
   委員
           藤井 新一君
           黒川 武雄君
          深川榮左エ門君
           柏木 庫治君
           西郷吉之助君
           島村 軍次君
           太田 敏兄君
  政府委員
   國家公安委員長 辻  二郎君
   國家地方警察本
   部長官     斎藤  昇君
   運輸事務官
   (海上保安廳長
   官)      大久保武雄君
ソース: 国立国会図書館
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