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1967/06/16 第55回国会 参議院 参議院会議録情報 第055回国会 産業公害及び交通対策特別委員会 第9号
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1967/06/16 第55回国会 参議院

参議院会議録情報 第055回国会 産業公害及び交通対策特別委員会 第9号

#1
第055回国会 産業公害及び交通対策特別委員会 第9号
昭和四十二年六月十六日(金曜日)
   午後一時四十九分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 六月十二日
    辞任         補欠選任
     矢追 秀彦君     小平 芳平君
 六月十五日
    辞任         補欠選任
     中野 文門君     楠  正俊君
     野々山一三君     加藤シヅエ君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         松澤 兼人君
    理 事
                宮崎 正雄君
                柳岡 秋夫君
                原田  立君
    委 員
                植木 光教君
                木村 睦男君
                楠  正俊君
                柳田桃太郎君
                加藤シヅエ君
                戸田 菊雄君
                成瀬 幡治君
                小平 芳平君
                瓜生  清君
   衆議院議員
       発  議  者  角屋堅次郎君
       発  議  者  岡本 富夫君
       発  議  者  折小野良一君
   国務大臣
       厚 生 大 臣  坊  秀男君
   政府委員
       経済企画庁水資
       源局長      松本  茂君
       厚生政務次官   田川 誠一君
       厚生省環境衛生
       局長       舘林 宣夫君
       通商産業省化学
       工業局長     吉光  久君
       通商産業省鉱山
       局長       両角 良彦君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        中原 武夫君
   説明員
       内閣総理大臣官
       房参事官     仲矢  鍛君
       農林省農地局計
       画部長      目崎 初美君
       通商産業省企業
       局産業立地部長  馬場 一也君
       運輸省自動車局
       整備部長     堀山  健君
       運輸省航空局参
       事官       梶田 久春君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○公害対策基本法案(内閣送付、予備審査)
○公害対策基本法案(衆第一一号)(衆議院送付、
 予備審査)
○公害の顕著な地域等における公害防止特別措置
 法案(衆議院送付、予備審査)
○公害対策基本法案(衆第二四号)(衆議院送付、
 予備審査)
○公害対策基本法案(衆第一六号)(衆議院送付、
 予備審査)
○産業公害及び交通対策樹立に関する調査
 (産業公害対策に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(松澤兼人君) ただいまから、産業公害及び交通対策特別委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る十二日、矢追秀彦君が委員を辞任され、その補欠として小平芳平君が選任されました。
 また、昨十五日、中野文門君及び野々山一三君が委員を辞任され、その補欠として楠正俊君及び加藤シヅエ君がそれぞれ選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(松澤兼人君) 公害対策基本法案(閣法第一二八号)、公害対策基本法案(衆第一一号)、公害の顕著な地域等における公害防止特別措置法案(衆第一二号)、公害対策基本法案(衆第二四号)、公害対策基本法案(衆第一六号)
 以上五案を一括議題といたします。
 坊厚生大臣。
#4
○国務大臣(坊秀男君) ただいま議題となりました公害対策基本法案の提案の理由を御説明申し上げます。
 近年わが国においては、目ざましい経済の高度成長が遂げられつつあり、産業構造の近代化、人口の農村から都市への集中、工業地帯の形成等が予想をこえた速度で進行しておりますが、このような急激な経済的社会的変動の過程において、企業の公害防止施設や社会公共施設の整備の立ちおくれ、立地や土地利用に対する適正な配慮の不足等のため、大気や水の汚染、騒音、悪臭等による公害の発生が各地に見られ、人の健康や生活環境に対する脅威となって、重大な社会問題を引き起こしております。
 このような公害を除去するため、政府としては、従来、大気の汚染、水質の汚濁等の発生源の排出の規制、公害防止施設の整備を促進するための金融上、税制上の措置等をそれぞれ講じてまいったところでありますが、公害問題は複雑かつ困難な問題を内包しているため、必ずしも満足すべき効果をあげ得ず、また、対策が制度化されていない公害も残されている現状であります。
 これらの個々の対策を今後とも強化充実することは、もちろん必要とするところでありますが、公害対策は、相互に有機的な関係を保ちつつ、総合的、計画的に推進される必要があり、そのためには、公害対策の共通の原則を定め、事業者国及び地方公共団体の公害の防止に関する責務を明らかにし、公害防止のための基本的な施薬を確立することが重要であります。
 このような見地から、国民の健康を保護するとともに、生活環境を経済の健全な発展との調和をはかりつつ保全することを目的として、ここに公害対策基本法案を提案することといたした次第であります。
 次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。
 第一に、公害の防止に関する事業者、国、地方公共団体及び住民の責務を明らかにしたことであります。
 第二に、大気の汚染、水質の汚濁及び騒音については、環境基準を定めることとし、公害防止対策は、この基準の確保を目標にして総合的かつ有効適切に講ずべき旨を規定したことであります。
 第三は、公害の防止のために国及び地方公共団体の実施すべき施策について規定するとともに、特定の地域については、施策の総合的な効果を確保するため公害防止計画を策定し、その実施を推進することといたしております。
 その他、公害にかかる被害に関する救済制度の整備の促進、公害防止についての費用負担、財政措置並びに公害防止のための行政組織として公害対策会議及び公害対策審議会を設置することを規定しております。
 以上が、この法律案の提案理由でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
#5
○委員長(松澤兼人君) それでは、発議者衆議院議員角屋堅次郎君。
#6
○衆議院議員(角屋堅次郎君) 公害関係二法案について、順次御説明を申し上げたいと思います。
 まず最初に、公害対策基本法案について御説明申し上げます。
 私は、ただいま議題となりました公害対策基本法案につきまして、日本社会党を代表して、提案の理由並びにその趣旨を御説明申し上げたいと存じます。
 およそ公害は、今日、洋の東西を問わず、産業経産の目ざましい発展、人口の都市集中化、交通機関の高度の発達等に伴い、逐年増大の傾向を示し、大きな社会問題、政治問題になっております。したがいまして、いずれの国においても、国民を公害から守るために、公害の予防、排除、救済について、思い切った措置を講ずべきことは、まさに現代政治に課せられた重大な責務と申さなければなりません。
 災害は忘れたころにやってくるということわざがありますが、公害には必ず公害の発生源があり、この発生源に対する総合的な対策を誤れば、時に被害が人命にまで及ぶことがあります。かの有名なイギリスのロンドン事件では、一九五二年十二月五日から九日まで約一週間のスモッグで、四千名にのぼるいたましい犠牲者を出しました。また、ベルギーのミューズ事件、アメリカのドノラ事件、メキシコのポザリカ事件等でも相当の死者を出しております。わが国では、熊本の水俣病事件で四十一名の死者を出し、その原因の徹底的究明をあいまいにしている間に、第二の水俣病事件が、新潟の阿賀野川で発生し、現在大きな社会問題、政治問題になっていることは御承知のとおりであります。いやしくも、公害が人命にまで被害が及ぶことは近代国家の恥辱であり、人道上からも絶対許し得ないところであります。この意味で、二度にわたる水俣病事件の政治的責任は、きびしく糾弾されなければなりません。
 わが国の憲法は、その第二十五条第一項において、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」ことを述べ、同条第二項において、「国は、すべて生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」旨規定しております。わが国の公害の現状を見るとき、はたしてこの憲法の条項は完全に守られていると言えるのであろうか。いなむしろ、公害にかかる国民の基本的人権は全く無視され、侵害されていると断ぜざるを得ないのであります。
 今日、都市の住民は、ばいじんによごれた空気を吸い、亜硫酸ガスのために、ぜんそくなどで苦しんでおります。かつては魚をつり、遊泳ができるほど澄んでいた川の水は、工場の廃液や家庭の汚水のために、どぶ川と化しつつあります。また、ジェット機の交通騒音のために、静穏な日常生活は破壊され、学力の低下や食欲減退、高血圧の増加等を引き起こしております。地下水の過剰汲み上げ等による地盤の沈下は、災害の危険を増大させております。その上、住宅難、交通難、生活難等々が加わるのであります。かくして都市の生活環境に望まれる安全、健康、能率、快適の条件は、ますます遠のくばかりであります。東京都の美濃部知事が、選挙の際、「東京都に青い空を」と都民に訴えて、共感を得たことは、けだし当然のことと申さなければなりません。
 日本の都市公害が国際的レベルにおいて決して好条件にないことは、降下ばいじん量一つをとってみてもおのずから明らかであります。降下ばいじん量は、毎月一平方キロ当たりのトン数で表示されますが、東京の二十六・五トンに対し、ロンドンは半分以下の十一・五トンであり、大阪の三十三・七トンに対し、ロサンゼルスは四分の一以上の七・七トン、ピッツバーグでも半分の十六・四トンであります。その上、総合エネルギー調査会や経済審議会の答申にもあるとおり、昭和四十六年度の総合エネルギー需要が、石炭換算で三億七千万トンと昭和四十年度実績の一・六倍に達し、しかも石油が供給構成の六八%を占めると見込まれております。したがって、亜硫酸ガスの発生等による大気の汚染要因がさらに増大するわけであり、それに、工場、事業場等の増加による大気汚染、水質汚濁等の悪化要因をあわせ考えれば、今後公害の予防、排除のため、総合計画に基づく土地利用区分の設定、工場立地の適正化、公害防止施設の研究開発、厳格な規制等、なすべきことのきわめて多いことをあらためて痛感するものであります。その際アメリカのロサンゼルス、日本の宇部市など、大気汚染防止対策で顕著な成果をあげてきた教訓は、公害防止の指針として積極的に取り上げられなければなりません。いずれにせよ、今日我国の公害対策が、従来のような産業偏重、生産第一主義の姿勢では、これからの公害対策の万全を期することはとうてい不可能であり、われわれがつとに国民の健康、静穏な日常生活、財産及び農林水産資源等を公害から守るという大前提に立ったみずからの公害対策基本法案を提示し、政府に強く善処を要請してまいりましたのも、責任ある政党の立場として、けだし当然のことであります。佐藤内閣も、われわれの強い要請と世論の前に、ようやくみこしをあげ、先ほど坊厚生大臣より御説明のありました内容の政府案を提案されたのでありますが、政府案発表当時あらゆるマスコミがあげて批判したごとく、経済界の圧力に屈して、当初の厚生省試案より大幅に後退し、およそ公害対策基本法案たるにふさわしいバックボーンに欠けていることは、まことに遺憾であります。政府は、かつての水質二法、ばい煙規制法等で、本来の公害防止よりも産業との調和に目を奪われ、ほとんど実効をあげ得なかった過去の誤りを再びここで繰り返さんとしているのであります。われわれは、わが国の公害の現状と将来に深く思いをいたし、国民の公害対策基本法案に寄せる期待にこたえるため、最善の努力を尽くさなければなりません。その意味において、われわれの案こそまさに国民の期待にこたえる最良の案と信じ、以下、若干政府案にも言及しつつ、その内容のおもなる点を御説明いたします。
 まず第一は、本法の目的に関する事項についてであります。
 われわれの掲げている目的は、そのまますなおに御理解いただけると存じますが、政府案には「経済の健全な発展との調和を図りつつ」というきわめて重要な字句が挿入されているところに問題があります。この表現は、第一条の目的と第八条の「環境基準」に出ておりますが、本来公害の防止とは異質のものであり、国民の生存権にかかわる公害対策が、産業界の要求に道を譲って公害対策の万全は期し程ないし、企業自身も他の企業の公害によって被害を受けている事例に徴しても、当然削除すべきものであります。国民の健康と福祉の保持が、事業活動その他の経済活動における利益の追求に優先することを原則としない限り、公害の発生を防止することはできないと思考するからであります。
 第二は、公害に対する事業者の責任を明確にうたっていることであります。本来公害は、発生者責任主義によって処理すべきものであり、公害の主たる発生源なる事業者は、その社会的責任の立場からみても、進んで公害防止のための万全の措置を講ずべきであります。このことは、われわれの基本的主張であるのみならず、公害審議会答申、社会開発懇談会中間報告、人口問題審議会の意見、国民生活向上対策審議会の答申等の中でも、一致して同様の主張を述べております。従来、日本の事業者の場合、政府の企業擁護の政策と相まち、公害に対する企業責任の自覚に欠け、あるいは責任を回避する傾向の強かったことは、経団連の「公害防止対策の基本的な考え方」の中でも、明らかに読み取れる点であります。事業者の中には、日本の産業経済や地域開発に貢献しているというゆえをもって、ある程度の公害発生は大目にという尊大な気持ちがあったり、あるいは、企業間競争や国際競争に勝ち抜くためには、コストのかさむ公害防止施設の設置や所要の公害防止事業の実施など、ほどほどにという企業エゴイズムの強いものもあります。われわれをして率直に言わしむれば、年間六千億円をこえる交際費のたとい三分の一でも四分の一でも、思い切って公害防止事業に振り向けるという新しい企業者モラルを持つべきだと思うのであります。われわれは、一方で強く企業責任を追及する姿勢をとる反面、責任遂行に伴う必要な資金の確保及びあっせん、税制上の措置、助成金の交付等の施策は、企業の実態に即して、十分やってまいりたい所存であります。なお、公害防止の徹底と公害にかかわる被害の救済に万全を期するため、事業者の無過失賠償責任を明らかにしたことは、きわめて重要な点であります。
 第三は、国及び地方公共団体の責務を明確にし、公害の発生の防止のみならず、公害にかかわる被害の救済に関する施策を講ずることを明らかにいたしました。
 第四は、政府が公害対策に関する五カ年計画を作成して、国会に提出するのみならず、これを広く天下に公表し、毎年その実施状況を国会に報告する義務を課しております。これは、なぜか政府案から除かれておりますが、公害防止に関する総合計画の樹立は絶対必要であり、その年度別計画の実施状況とあわせ、国会と国民にその内容を明らかにすることは、責任政治の立場から見ても当然のことであります。
 第五は、公害行政の一元化による所要の機構整備をはかったことであります。
 すなわち、今回新たに公害の発生の防止に関する行政事務及び公害にかかわる紛争の処理に関する事務を統一的に、かつ公正に遂行させるため、総理府の外局として中央公害対策委員会を置き、この委員会に事務局及びその地方支分部局、中央公害対策審議会並びに公害防止研究所を置くことといたしております。
 また、都道府県または指定都市に、地方公害対策委員会を置くことができることとし、地方公共団体の自主性を尊重しつつ、公害行政の一元化をはかる所存であります。これらの新たな機構には、技術的職員の配置を含め、公害行政の一元的運営に必要な陣容を整備することとし、公害に対する国民の強い要請にこたえてまいりたいと存じます。
 この点について、政府案は、現体制の上に公害対策会議という、いわば関係閣僚会議ともいうべきものを設けるに過ぎず、従来の各省のセクショナリズムの排除、迅速適確なる行政運用などほとんど期待し得ないことは、過去の実績に徴しても、おのずから明らかであります。
 第六は、公害にかかわる許容限度の設定についてであります。
 中央公害対策委員会は、中央公害対策審議会の意見を聞いて、大気の汚染、水質の汚濁、及び騒音のそれぞれについて許容限度を設定することとし、その基本的条件は、住民の健康、静穏な日常生活、財産、農林水産資源等が侵害されないようにするため、必要かつ十分なものでなければならないと明確に規定して、公害から国民を守る国のき然たる態度を明らかにいたしております。しかも、この許容限度については、常に適切な科学的判断を加えて必要な改定を行なうことといたしております。
 第七は、排出等の基準の設定についてであります。
 排出等の基準の設定については、中央公害対策委員会が中央公害対策審議会の意見を聞いて行なってまいりますが、その権限を一部地方公害対策委員会等に委任することができることとし、中央、地方を通じ、実態に即した機動的運用をはかる所存であります。許容限度と排出等の基準との関係は、発生源対策としてきわめて重要な点でありますが、政府案のように両者の関係があいまいで、しかも環境基準が経済の発展との調和で制約されるようでは、そもそも環境基準を設けた本来の意義が失なわれてまいります。その点、われわれの案では、前述の基本的条件に適合した許容限度をこえないという大前提に立って、発生源たる事業者等の遵守すべき基準を設定してまいるのであります。
 第八は、公害にかかわる被害についての救済制度についてであります。
 これは、公害にかかわる被害を受けた国民からすれば重大関心事でありますが、従来の事例に徴しても、公害紛争は、被害者と加害者の間で短期間の間に処理されることが一般的に困難であり、かつ加害者が不特定多数で見きわめがたい場合において、現に被害者が公害にかかわる死亡もしくは病気という事態も当然予想されます。したがって、われわれは、公害にかかわる被害者の立場に立って、救済基金制度や救済のための公害保険制度等の創設を検討し、その結果に基づく救済制度を確立して、公害にかかわる被害者に対する医療の給付もしくは生活費の給付または公害にかかわる被害についての原状回復等の救済がすみやかに行なわれるようにいたしたいと存じます。また、公害にかかわる紛争が生じた場合における中央公害対策委員会等による紛争の処理についても必要な施策を講じ、問題を迅速適確に処理してまいりたいと考えております。
 最後に、公害の顕著な地域等における特別の施策については、政府案は、基本法案の中に実体法的性格の内容のものまで含まれていると考えられますが、われわれは、この点については明確に区分し、別に「公害の顕著な地域等における公害防止特別措置法案」として、基本法案と同時提案しておりますことを申し添えておきます。
 以上が、われわれの提出いたしました公害対策基本法案の概要であります。何とぞ慎重御審議の上、御可決あらんことをお願い申し上げまして、提案理由の説明を終わる次第であります。
    ―――――――――――――
 引き続きまして、公害の顕著な地域等における公害防止特別措置法案について御説明申し上げます。
 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました公害の顕著な地域等における公害防止特別措置法案の提案理由と内容につきまして御説明申し上げます。
 すでに公害対策基本法案の提案説明の際にも申し述べましたように、今日の公害による被害の発生は日に日に増大の一途をたどり、国民の健康と生活はもとより、その影響は産業自体にまで及び、いまや正常な生産活動を阻害する事態すら招来せしめているのであります。したがいまして、わが党の公害対策基本法案の二十条の規定にございますように、特に現在、公害が著しく発生し、また今後著しく発生するおそれのある地域につきましては、早急に除去または予防を総合的かつ計画的に実施する必要があると考える次第であります。これが、この法律案を提出する理由であります。
 以下、その内容について御説明申し上げます。
 第一に、現に公害が著しく発生し、または人口及び産業の急速な集中等により公害が著しく発生するおそれのある地域について、中央公害対策委員会がその関係地域の地方公害対策委員会に対して、実施すべき公害防止計画の基本方針を示して、その計画の策定を指示することといたしました。
 また、地方公害対策委員会は中央公害対策委員会にその指示を求めることができ、公害防止計画を作成するにあたっては、都市計画その他土地利用計画との調整をはかるとともに、関係市町村長、住民、事業者等の意見を聞かなければならないことといたしております。
 第二に、公害防止計画の内容は、公害発生の原因となる施設の立地及び土地利用の規制、さらに国または地方公共団体の実施する事業のうち緩衝地帯の設置、住居と敷地の買い上げ、家屋と宅地造成、工場移転、共同処理施設、道路、下水道、汚水処理場、清掃施設、工場団地など公害防止に関係ある計画または事業を含むこととし、それを推進するために必要な監視、測定等の体制の整備について定めることにいたしております。
 第三に、公害防止計画を達成するために、国及び地方公共団体が十分な措置を講ずるととはもとより、国と事業者はそれぞれその経費の一部または全部を負担することとし、負担すべき事業者の範囲と負担割合については、中央公害対策委員会の定める標準に基づき関係者が協議してきめることなど、所要事項を規定いたしております。
 何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。
    ―――――――――――――
#7
○委員長(松澤兼人君) 次に、発議者衆議院議員岡本富夫君。
#8
○衆議院議員(岡本富夫君) 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま上程されました公害対策基本法案につきまして、その提案理由並びに要旨について簡単に御説明申し上げます。
 わが国の産業経済の著しい発展は、人口の都市集中及び都市化を増大し、都市の過密、交通量の激増と生産設備の拡大増設は、住宅難、交通難に加えて必然的に産業公害発生の規模を増大し、これが国民の健康に重大な被害を与え、一時も看過できない問題となっています。
 すなわち、国家のすべての施策は、常に国民大衆の福祉増進をその目的とした手段でなくてはなりませんが、経済の高度成長政策は、産業経済の発展のみにすべてを集中し、国民生活の上に産業公害をおおいかぶせ、国民大衆に最も大切な健康維持の上に犠牲をしいる結果になったのであります。本来の産業経済の発展は、常に国民大衆の健康の維持と文化的生活の向上を確保する義務が伴うべきものでなくてはなりません。
 ところが、現実は、この目的に対する法の整備がきわめて不十分であり、今日における全国的な公害を招来したのであります。
 いまわれわれの急務は、すでに極度に汚染された大気と騒音、振動、河川の汚濁と臭気、さらには、人体をむしばんでゆく有毒物から国民の身体を守り、その原因の除去に全力を傾注しなければならないことであります。
 しかるに、今回上程されております政府案には、重大なる問題点が数多くあらわれているのであります。
 まず、その目的において「国民の健康、生活環境を守るとともに、経済との健全な発展との調和をはかりつつ」とうたっていますが、国民の健康優先をあと回しにし、経済発展いかんによっては国民の健康も維持できかねるという底意をあらわすもので、大きく法律の目的を失うものであり、総理の言う「人間尊重」に相違していると言えましよう。
 次に申し上げたいことは、事業者の責任が不明確である点であります。現行法における規制のあいまいさは、事業責任者が社会生活の上から道義的に公害防止をはかることを裏づけにすべき精神と解せられるものでありますが、現実の公害状況は、もはや業者責任を明確にしない限り、公害を防止できないと言えましょう。
 また、被害者に対する救済、損害補償についても責任ある手段が明文化されていないことは、政治責任をのがれようとする態度であります。
 さらに、環境基準の設定においても経済調和を強調している点は、結論的には、経済状態に法的措置が大きく左右されることとなります。
 このような理由において、わが党は、画期的な公害対策基本法案を提出し、徹底的に公害を追放し、最優先的に国民の健康を保護するとともに、国家の繁栄に資するべきであるとの立場から、本法案の御審議を願うものであります。
 では、その要旨について簡単に御説明申し上げます。
 その要点は、一、人間性尊重を第一義としたこと。二、発生原因者の責任を明確化するとともに、中小企業に対する助成措置を特にうたったこと。三、被害者の救済制度の確立をはかったこと。四、行政の一元化をはかるとともに、地方公共団体にも行政上の権限を与えたこと。
 次に法案の内容についてその概略を御説明申し上げます。
 第一は、その目的において、人間性尊重、大衆福祉の立場より、国民の健康、生活環境の保全を第一義として、さきに提出されました政府案のように「経済の健全な発展との調和をはかりつつ」という、人命と経済の並列をなくしたことであります。すなわち国民の健康保全があらゆる事業活動における利益の追求に優先することを原則としたことであります。
 第二は、事業者、国、地方公共団体の責務を明確にした点であります。特に公害発生の多くを占める事業者の責任については、無過失責任も負うべきことを明らかにし、公害対策は、すべての産業政策に優先して策定されなければならないことを明らかにしました。
 第三は、公害防止計画でありますが、五年ごとの長期計画を立案し、その目標を達成するための総合計画及び年度別計画を作成し、国会に提出するとともに、一般にも公表しまた、実施状況を毎年国会に報告することとして、公害対策の計画的推進を保障しようとするものであります。
 第四は、環境基準及び排出基準、及び排出基準の設定を行なうにあたっての厳重な規定を設けております。環境基準については、諸条件等を十分に考慮して実効的な基準を定め、かつ運用についてより適切な措置が行なわれるよう規定し、排出基準については、今日までの対策の実情を考慮し、より適切な措置が行なわれるよう整備を行ないます。特にこの基準は最高のものであって、できるだけ努力すべきことを明らかにし、また、改善命令、停止命令等による規制の強化を行なった点であります。さらに、規制の強化のみでなく、中小企業等に対する助成にも特別措置をうたったことであります。
 第五は、公害に関する研究調査については、科学技術の振興、また必要な指導及び助成を行ない、公害の発生防止と、発生した公害に対する措置の実施を保障するよう規定の整備を行ないました。
 第六は、公害の顕著な地域の特別の施策についてであります。このような地域については、その地域の基本方針を定め、これに基づいて具体的計画を樹立し、その達成に必要な措置を講ずべきことを規定しました。
 第七は、公害による被害についての救済制度の整備について、救済の遅延、不完全、不履行等を防止するため、国が責任をもって必要な施策を講じ、事業者に対する分担金の賦課等の制度を確立し、また紛争処理制度を確立するのに必要な施策を講ずべきこととし、救済の保障を明確化したことであります。
 第八は、行政事務及び紛争処理等の事務を統一的に、かつ公正に行なうために、総理府の外局に、国会の同意を得て任命される委員によって組織される中央公害対策委員会を置くこととし、地方には地方公害対策委員会を設けることとしました。特にこの点は、公害行政の統合一元化ということであり、行政の効率化と行政委員会による行政の中立性を確保しようとするものであります。
 以上、公明党提案の公害対策基本法案につきまして、提案理由並びに法案の要点のみを御説明申し上げました。何とぞ慎重御審議の上、御可決あらんことをお願い申し上げまして、説明を終わる次第であります。
    ―――――――――――――
#9
○委員長(松澤兼人君) 次に、発議者衆議院議員折小野良一君。
#10
○衆議院議員(折小野良一君) 私は、民主社会党を代表いたしまして、ただいま上程されました公害対策基本法案の提案理由並びにその内容につきまして、簡単に御説明申し上げます。
 わが国経済の目ざましい発展は、一面におきまして、多くの国民の犠牲の上に成り立っていると申すべきであります。かかる高度成長政策のひずみとして続発する公害は国民の健康をむしばみ、生活環境の悪化はゆゆしい社会問題を惹起しているのであります。しかも、産業の集中と人口の過密化は、これに対する適切な施策のないままに、公害の恐怖とその害毒をますます慢延させているのであります。したがいまして、公害の防止は、国民の健康を守り、財産を守り、よき生活環境を維持する上で、何をさておいても早急に解決されなければならない国政上の最重要課題の一つであると確信いたしますが、現実は、その施策の裏づけたるべき法の整備が不十分なために、公害を全国的に野放しにする結果を招いているのであります。
 すなわち、現行法制におきましては、第一に、公害と認定される統一された規定がなく、そのため、公害排出に対する規制が円滑に遂行されておりません。
 第二に、公害の防止に関する事業者等の責務があいまいでありましたがために、公害の事前の防止はもとよりのこと、被害補償や苦情処理等の救済も非常におくれているのであります。
 第三に、公害に関する基本的事項が定まっていないため、現在の公害関連法律はすべて事後法であり、事前にこれを防止するという十分な法的措置がとれない状態にあります。
 以上の諸点から、今日の事態は公害を抜本的に防止するための基本法案の制定を切実な問題として要請しており、本案を提出する理由は、まさにここにあるのであります。
 次に、法案の内容につきまして、その概略を御説明申し上げます。
 第一は、その目的において、この基本法は、国民の健康と生活環境を守るために、総合的かつ十分な対策が講ぜられなければならないことを明確に規定いたしたのであります。すなわち、公害対策についての人間尊重と社会正義の立場を宣言したものであります。
 第二は、事業者。国・地方公共団体等の公害に対する責務を明確に規定した点であります。特に、公害原因者である事業者の責任について、故意過失にかかわらず責任を負うべき旨を明らかにし、公害対策についての施策はすべての産業政策及び企業利益に優先して策定され、及び実施されなければならないことを明記いたしました。
 第三は、公害の発生の防止に関する計画等についてでありますが、十年ごとの長期目標を定め、この目標を達成するための総合計画及び年度別計画を作成し、これを国会に提出するとともに一般に公表し、または実施状況を毎年国会に報告することとして、公害対策の計画的な実施を保障しようとするものであります。
 第四は、許容限度の設定と排出等の規制を行なうための基準の設定について、明確かつ厳重な規定を設けております。許容限度については、地域の用途別、水域の利用目的別、昼夜の別、人口密度等を考慮して実効的な基準を定め、かつ運用について適切な措置がとられるよう規定し、排出基準については、今日までの対策の実情を考慮し、より適切な措置が行なわれるよう規定の整備を行ない、特にこの基準が最高限度のものであって、できるだけそれ以下にするようにつとめるべきことを明らかにし、また、改善命令、停止命令等による規制の強化を行なったのであります。
 第五は、公害に関する研究調査について、科学技術の振興をはかり、必要な指導、助成を行ない、公害の発生防止と、発生した公害に対する適切な措置の実施を保障するよう必要な規定の整備を行なうことといたしました。
 第六は、公害の顕著な地域等における特別の施策についてでありますが、このような地域につきましては、その地域の公害防止の基本方針を定め、これに基づいて必要な具体的公害防止計画を樹立し、その達成に必要な措置を講ずべきことを規定いたしました。
 第七は、公害による被害についての救済制度の整備につきまして、特に現実問題として、その原因並びに責任の不明確であることによる救済の遅延、不完全、不履行等を防止するため、国がその責任において必要な施策を講じ、自後事業者に対する分担金の賦課等の制度を確立し、また、紛争処理制度を確立するのに必要な施策を講ずべきこととし、公害による救済の保障を明らかにいたしました。
 第八は、公害対策についての行政事務及び公害にかかわる紛争処理等の事務を統一的に、かつ公正に行なうために、総理府の外局として、国会の同意を得て任命される委員によって組織される中央公害対策委員会を置くこととし、その下に各都道府県及び指定都市に地方公害対策委員会を設けることといたしました。特にこの点については、行政機構の統合一元化による行政の効率化と行政委員会による行政の中立性を確保しようとするものであります。
 以上、民主社会党提案の公害対策基本法案につきまして、提案理由並びに法案の要点のみ御説明申し上げました。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
#11
○委員長(松澤兼人君) 以上五案に対する質疑は後日に譲ることといたします。
    ―――――――――――――
#12
○委員長(松澤兼人君) 産業公害及び交通対策樹立に関する調査を議題とし、産業公害対策に関する件について調査を行ないます。
 これから質疑のおありの方の御発言を願うわけでございますが、先ほど理事会の御了解を得ましたので、私からごく簡単な質問をすることをお許し願いたいと思います。
 それは、愛知県に起こっております佐屋川かんがい用水の問題で、約十万戸の農家の方々から、三興製紙工場の排水のために田植えができないということを、委員会あて、または委員長あてに陳情がございましたので、簡単に、それぞれの所管の役所に御質問申し上げたいと思います。
 おそらく、これは工場の関係から言いますと通産省、それから水の関係から言えば経済企画庁、用水の関係から言えば農林省ということになるかと存じますが、実際にどのような事態が発生しているか、さらにはどのような対策を現にとっておられるか――これにつきまして、順次関係の官庁の方々からお伺いいたしたいと思います。私は委員長の立場でございますので、質疑の繰り返しはいたしませんので、現状と対策、どうなっているかということを簡単に御説明、御答弁をいたがきたいと思います。
#13
○説明員(目崎初美君) 現況と、現在とっております対策の概要を御報告いたします。
 けさ現在、私どもが出先の東海農政局を通じて聴取いたしました状況を申し上げますと、この問題はいろいろな側面からとらえることができるのでございますが、一つは、木曾川の河川の流量が非常に減っております事実でございます。あわせて、ちょうど植えつけの時期でございまして、佐屋川用水から取り入れております関係面積が約千五百町歩ございます。だんだんと田植えの最盛期に入ってまいっております。そこで、現在工場の廃液の濃度は、当初、水質の基準で定められた線をおおむね守っておるやに聞いておりますけれども、水量が減りましたために、取水地点におきまして相当の汚濁をいたしておるわけでございます。そこで、現状といたしましては、何とか工場の廃液をとめるということを措置していただきたい、あわせて、でき得れば河川の流量を増加する措置が好ましい、こういう二点が当面の問題になるわけでございます。
 農林省といたしましては、まず水量に対する対策といたしまして、佐屋川の取水地点にポンプを応急的に増設いたしました。これが平常ならば、自然流下で取水せきから河川流星が入ってくるのでございますけれども、水量が減っておりますので、特にポンプを使いましてこれを揚水せざるを得ないのでございます。六月の十四日ごろから逐次ポンプをふやしまして、現在では十五台のポンプを臨時に運転をいたしております。現在、おおむね三トン・毎秒程度の取水をいたしております。さらに、十七日ごろから二十五台のポンプを設置いたしまして、毎秒四・五トン程度の水を取水する予定で目下進めております。この措置ができますならば、現在の流量だけから見ますと十分ではございませんが、おおむね、植えつけ用水には支障はないものと思われます。水量的に見ますと、そういうことが言えるのでございます。
 第二の点は、先ほども申しましたとおり、水質が悪くなっております。この点につきましては、通産省のほうに特に私どもお願いをいたしまして、出先の通産局にいろいろごあっせんいただきまして、県と、関係の佐屋川土地改良区及び東海農政局がよく現地で相談をしていただきまして、私どもが現在聞いておりますところでは、かなり工場側で措置をいたしてくださっているようでございます。
 具体的な措置は通産省側から御報告いただければありがたいかと思いますけれども、これに関しまして、なお地元側の土地改良区の要望の点で、私どもいささかこの機会にお願いを申し上げておきたい点を御報告させていただきます。
 出先機関からの報告によりますと、この十八日から二十一日の間の用水の取水が一番重要な時期になるやに聞いております。この時期におきまして、現在三興製紙の施設が五台あるのだそうでございますが、そのうち一台程度は操業を中止していただけるというような手はずになっているそうでございますが、さらに二台ほど追加して操業停止できないだろうかということを強く地元の土地改良区から要望いたしております。ところが、この点に関しましては、先出機関のお打ち合わせの結果では、会社側のほうでも誠意ある努力をされているようでございますけれども、その他の措置とあわせまして、この部分については目下のところなかなか困難であるという意向を示しているようでございます。土地改良区のほうの要望といたしましては、他の部面において会社側がかなりの努力をいたしてくれましたので、それほど強く十八日から二十一日の部分についてさらに追加して二台の機械の操作停止について申し入れるつもりもないようでございますけれども、私どもが判断いたしましたところでは、ぜひこの二台の操業停止が好ましいと考えますので、できるだけさらに御配慮をいただきたい、かように考えます。ただし、地元関係のほうで、今後の植えつけ状況の推移いかんによりましては、話し合いが落着いたしますれば、農林省として特別の支障はないかと考えます。
 次に、河川の流量そのものをふやすという措置でございます。この点につきましては、木曾川の上流にございます発電関係のもろもろのダムがあるわけでございます。これらのダムの水を緊急放水していただく措置が考えられるのでございます。この点につきましても、東海農政局に指示をいたしまして、関係の土地改良区あるいは地建、関西電力、愛知県等でよく協議するように指示をいたしました。関係の出先機関が協議をいたしているわけでございますが、発電側にも、現在木曾川の本流の流量が絶対的に少ないという事実もございまして、発電用水にもかなり支障を来たしているという状況のようでございます。地元関係者の間では、この緊急放水ができるかどうかについては、なお研究中の由に聞いております。中央でこの問題を判断することはなかなか困難でございます。よく現地機関で誠意をもって検討を加え、今後必要に応じまして放水等の措置ができるように御配慮願えればよろしいかと思います。特にこれを要望する次第でございます。
 現時点までで、私どものほうで現地機関から報告を求めました事情並びに現在までの措置は、以上のとおりでございます。
 以上で終わります。
#14
○委員長(松澤兼人君) 次に、経済企画庁の松本水資源局長。
#15
○政府委員(松本茂君) 木曾川にございます名古屋市の上水道の取り入れ口でございます朝日取り入れ口から下流を水質保全法では木曾川下流水域といたしましてこれを指定水域にいたしまして、昭和三十八年の七月から水質基準を適用いたしておるわけでございます。その際には、河口地帯にございますノリに対する影響、同時にまた佐屋川用水取り入れ口の水質、こういった点を考慮いたしまして水質基準を決定いたしたわけでございます。しかるに、その後木曾川の水流が変わってまいりまして、左岸のほうに偏流するようになってまいりました。また工場の施設が増設されまして、排出される水の量が三割ほどふえてまいりました。そういうふうに事情が変わってまいりましたために、この佐屋川取り入れ口の水質がその後だんだん悪くなってきておる状況でございます。こういう事情になってまいりましたので、この下流地域の水質をどういうふうに改善していったらよろしいかという点につきまして、水質審議会におきましていろいろな方々の御意見をお伺いいたしまして検討いたしますと同時に、通産省、それから愛知県等、関係行政機関に対しまして、具体的に工場においてどういう汚水処理をされるか、またすべきであるか、そういった点についての研究と指導をお願いして今日に至っておるわけでございます。現在までのところ、通産省をはじめ、行政機関の指導によりまして、会社のほうも黒液分離装置を設置いたしますと同時に、引き続き、この分離いたしました黒液を濃縮燃焼いたしまして、その水質の保全をはかっていくという方向で、いろいろ具体的な検討が行なわれておるという状況でございます。経済企画庁といたしましては、その行政指導によりましてどういう具体的な措置が行なわれるか、また、そういった方法によりまして具体的にどの程度の水質に工場排水がなるか、そういった点と、また、下流のそういった農業なり、あるいはまた、水産業の観点から見まして保全すべき水質の基準としてどの水質基準を求めるべきか、そういった点を十分検討いたしまして、できるだけ早い機会に水質基準を改訂することにいたしたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。
#16
○委員長(松澤兼人君) それでは次に、通産省の馬場産業立地部長。
#17
○説明員(馬場一也君) 御報告申し上げます。三興製紙の祖父江工場の工業排水と農業用水の関係でございますが、先ほど来農林省のほうからお話のございましたような現状でございまして、本年度非常な異常渇水期でございますために、私どもの聞いておるところでごさいますと、この木曾三の流量は普通でございますと毎秒大体三百四、五十トンという流量があるのでございますが、六月十四日現在ではそれが五分の一ぐらい、七十三トンという程度にまで激減をしまして、したがいまして、工場側の排水は通常でございましても、それを希釈する流量が非常に乏しいということで、非常なかんがい期に当たっておりますので、農業側のほうから強い御要望があるという、こういう実情でございます。具体的に申しますと、六月の七日に地元の通産局に対しまして、農業側から当面の問題を会社側の操業休止によって解決をしてくれという――操業休止によって解決をしてまいりたいという御要望がございました。さらに六月の十日だったと思いますけれども、農民の組合の方が御上京になりまして、私ども直接に状況を伺いまして、それらを勘案いたしまして、私どものほうから地元の通産局に、当面の問題としてこのかんがい期に対しまして、非常な渇水期でございますので、特別の措置として会社側にもできるだけの指導をするようにという指示をいたしました。今週の初めから、通産局のほうが会社側と二、三度会談をいたしました。当初会社側が提示しておりました操業休止――臨時に休止する期間というのは、大体主力機械につきましては六月二十二日から三十日まで操業を休止するということ、これを会社側が申し出ておりましたのでございますが、これをさらに御要望によって繰り上げまして、主力機械を十四日の夜から十七日の夜まで――これはまる三日間になるかと思いますけれども、休止するという、会社側にとりましては従来提示の線よりもさらに操業休止の期間を繰り上げるということを、会社側は承諾をいたしまして、それで大体当面のかんがいには差しつかえないということで、農民側も了承したというような状況でございます。
 御参考までに申し上げますと、この三興製紙祖父江工場から排水されます水質は、この操業休止以前、つまり六月十三日現在におきましては、COD七五八PPMという状況でございました。その主力機械を操業休止いたしました十五日現在になりますと、それは操業が落ちましたので、二〇〇PPMという状況で非常に低下をいたしております。こういう状況でございますので、一応現在の大事なかんがい期における、しかも異常渇水期という状況におけるかんがいにつきましては、何とか農業側の御要望に沿えておるんじゃなかろうかというふうにわれわれは承知をいたしておるのでございます。さらにまた、ただいま農林省から御説明のありましたように、地元の農業側からはさらにこの主力機械の操業休止を二十一日まで延長してもらいたいという付帯的な御要望もあるようでございますけれども、会社側といたしましては、この主力機械は全生産量の大体半分をこれで出産する主力機械でございますので、十五日から十七日まで繰り上げて休止をいたしまして、二十一日まではひとつ会社側としてはぜひ稼働いたしたい。二十二日以降月末までは当初お約束いたしましたとおり、さらにこれを操業休止するということを会社側のほうは申しておりまして、この辺の具体的な状況につきましては逐次地元におきまして双方の御事情を把握いたしまして、大体これで差しつかえないものというふうに判断をいたしておりますが、今後、工場側の排水状況その他の、通産当局のほうでは状況を常時十分把握をしていくという状況でございます。
 なお、これが当面の渇水期の緊急措置でございますが、この祖父江工場の排水はこの木曾川に、ただいま企画庁の御説明がございましたように、三十八年に水質基準をきめられまして、平常時のきめられました水質基準と、工場側の水質基準は十分この排出水質基準以内にあるわけでございますけれども、先ほどお話のありましたように、木曾川の河床低下あるいは中州の状況が変わりましたというようなことで、従前木曾川の河口へ主として流れておりました排水が、農業用水の佐屋川の取り入れ口に転流したというところに新しい問題が出てきたわけでございますが、これらの事態にかんがみまして、会社側のほうでは、単に水質基準を守っておるということだけではいけないということで、これは昨年来、通産局から指導いたしまして、会社側のほうといたしましても、たいへん技術的にはむずかしい問題でございますけれども、このパルプの黒液燃焼装置を急遽設置するということを取りきめまして、濃縮燃焼装置でございますが、この装置をつけますのに六、七億かかる、非常に膨大な経費を要するのでございますが、これを四十三年末までに取り付けるということにきめておりまして、これを取り付けますと、この水質は、現在水質基準が一一〇〇PPMでございますけれども、これを四五〇PPMまでに低下し得るということで、大いに努力をいたしておるのでございます。さらにまた、これは四十三年までかかりますので、その周の期間といたしましては、ことしプレスファイナーというのを一台導入して、黒液を抽出をして、一応穴にためておき、それを逐次船に積みまして、差しつかえない海まで捨てにいくというような措置までやっておりまして、会社側といたしましては、大体資本金五億ぐらいの会社でございますが、その水質基準以下に下げることにつきまして、会社側としましては一応精一ぱいの努力をしておるというふうにわれわれは判断をしています。
#18
○委員長(松澤兼人君) ありがとうございました。それぞれの関係官庁及び出先の方々、御尽力いただいてありがたく存じます。
 なお、これで全部が解決したわけじゃございませんから、さらに円満な妥結を見るように御努力願いたいと思います。
#19
○成瀬幡治君 関連でございますから簡単に伺っておきたいと思うのですが、御案内のとおり、ここが穀倉地帯であることは私が申し上げるまでもない。また弥富の金魚、金魚で有名なところです。そこで、責任は会社にないということになるのですね。水質基準等を守っておる、ですから、責任、手落ちというものは会社になかったのだ、そういう観点をとられるものなのか、どうなんでしょうか。その辺のところをひとつ、まず明らかにしていただきたい。それはどこになるか。これはいわゆる水質ということになるなら、経企になるのか通産になるのか、どちらになるのですか。
#20
○説明員(馬場一也君) ただいま私、御報告申し上げました水質基準一一〇〇PPMというのは、水質保全法によりまして企画庁がこの川についておきめになった、いわば規制基準でございます。で、ただいま私が御報告申しましたように、平常時の水質基準はその水質基準以内にもちろんおさまっておりますし、さらに他面、臨時の渇水期等で、操業を一時休止することによりまして、さらに平常時の約三分の一程度にとどまっておる、こういう状況でございます。むろん、この水質保全法の水質基準というものは、いわゆる公的な規制法の排出基準でございますから、これをこれ以上に出すということは、むろんその水質保全法なり、あるいは工場排水法違反でございまして、これは当然公的規制を守らなければいかぬことは当然でございますが、同時に、この基準以内に出しておりましても、具体的にいろいろな農業その他に御迷惑をかけるというような問題は、これは基準を守っておる守らないということとは一応別問題に私どもは存じております。したがいまして、ただいまのような異常渇水事態に対しましては、会社側といたしましても平常時の状況を――できるだけ操業を休止する、その他の応急措置をとりまして、そうして農業側にできるだけ御迷惑をかけないように、いわば農業と紙パルプ工業とのお互いの操業を、まあひとつできる範囲まで譲り合って、そうしてお互いにひとつ差しつかえのないようにやっていく。こういうことをやりますのは、これはこの水質保全法の公的規制の以内でございましても、必要に応じてお互いに話し合ってやるべきことだというふうに存じております。
#21
○成瀬幡治君 いや、責任はどこにあるかということだけ明らかにしてもらいたい。話し合ってやるのだとか何とかいうことじゃなくて、責任は……。そういうふうに法律を工場側は守っているのだ、だからわしのほうが操業を停止してやるのは、農民に対して一つの恩恵を与えるという、そういう態度なのか。そういう場合には、操業を停止するというのがあたりまえの話になるのか。そこのところをびしっとしてもらいたい。そうでないと、いわゆるざる法で、今度提案されております公害対策基本法も同じことで、ざる法ばっかりふえたって意味がない、そういう一つのモデルになってくると思う。ですから、そこのところを明らかにしてもらいたい。こういう意味で質問申し上げておるのですから、そこのところをびしつとしてもらいたい。
#22
○説明員(馬場一也君) 先ほど来、企画庁のほうから御説明もございましたように、どの川でもそうかと存じますけれども、水質基準をきめますときには、その川の水がどういう状態にあることがいいのであるか、具体的に申せば、この水質基準は河口におきますノリその他の漁業に対する水質であれば支障がないということを基準に水質基準がきめられておる、こういうぐあいに承知をいたしておるのでございます。したがいまして、この水質基準以内に会社が操業しております場合には、平常時におきましてはおそらく、ほかの農業、漁業に御迷惑をかけることはないはずでございます。ただ、本年度のようなこういう異常渇水時期ということになりますと、まあ水質基準は、こういうような異常に流量が減ったときの流量を予想してつくられたものでございませんので、この場合には、会社側のほうで平常の水質基準を守っておるからという一点張りでは、これはいけないかと思いまして、その場合にはやはりそういう状態に対応して臨時に御迷惑をかけないような措置をする。お互いに、農業のほうの御要求を受け、あるいは会社側のほうもそれに対してなし得る限りのことをするというのは、当然のことかと存じております。
#23
○成瀬幡治君 そうすると、こういう異常の事態が発生をした場合にも、その責任は工場側にあると、この点は明らかですね。そういうふうに言い切っていいですか。
#24
○説明員(馬場一也君) 責任というのはどういう意味の責任か、私よくわかりませんが、普通の状態で川が流れております場合には、企画庁がおきめになりました水質基準を守っておれば、他の産業の支障にならないというのが水質基準であろうかと存じますので、その場合におきましては、この水質基準以内にこれを守るということが大体においてその産業としてなすべきことを一応果たしておる、こういう関係になるかと思いますが、しかし、この水量が異常渇水によって非常に激減をしたというのは、これはまあいわば天然自然の現象でございますので、天然自然の現象で会社側の罪にも帰せられない、あるいは農業のほうの事情でもないというような、いわばお互いに予想しなかったような事態が起きましたときには、これはもうだれに責任があるか、これは会社側の責任で渇水になったのではなかろうと思いますけれども、しかし、そういう事態に対応して、そのときにはお互いに迷惑をかけないという状況には、どういうふうにしたらいいのかということをお互いに話し合って、会社側も操業を休止するということはたいへんつらいことでございますが、同時に、農業に必要なかんがい用水が一定の水質で異常渇水の場合でも保たれるということは、これまた大事なことでございますから、その関係をどうやって確保するかという問題は、これは基本的に申しますればやはり両者が話し合う、もしその話し合いについて必要がございますれば、通産局なり、関係の役所がそれに対してごあっせんをするとか、あるいは話し合いの仲介をするというのが、まあ両者の関係を円滑にする道ではなかろうか、かように存ずるのでございます。
#25
○成瀬幡治君 これは先ほど農林省のほうが、いみじくも要望ということを言っておいでになる。法律に従って云々することができないことは私も承知しておるのです。それは水質基準というもの、あるいは工場排水規制法というものには、増設されたときにはどうするとか、いろいろなことがないわけですね。水が減ったり、いろいろなことがなくて、まあ簡単にいえば法律はあるけれども、産業優先のような形になってしまっておるところに問題があったり、あるいは何か工業立地適正化法案ぐらいが用意されておるようですけれども、いろいろなことをして努力をされようとする、そういうこともわかるわけです。しかし、現実にこういうことが起きたということになれば、これはもう何としても譲り合って、そしてしかも片方は三百六十五日とはいわないけれども、生産は取り返しができるものだと思う。田植え時期というのは一定の期間しか許されない。これは延びたらたいへんなんです。ですから、そういう場合には、どちらを取るかということになれば、なるほどそれは工業生産がたいへんなことだということはわかるわけです。わかるわけですけれども、それは譲ってもらわなくちゃならぬと思います。ですから、農民のほうからなお強い要望等が出てくる、あるいは地元の農政局等のほうから強い要望が出れば、あなたのほうの通産関係のほうの姿勢としては、機械をとめさしても田植えはさせると、こういう考え方でございましょうか。
#26
○説明員(馬場一也君) 刻々の状況でございますので、流量もたぶん刻々変わっておりますし、こういう刻々の具体的な現場の状況というものは、われわれ東京におりますと的確に把握できませんので、ただいま先生のお話のようなことが今後起こってまいりましたらば、この渇水期に対してただいま述べましたような精神で、ひとつ現場、現場の具体的な状況に応じまして、実情に即した措置をとるように調産局として指導したい、かように考えます。
#27
○成瀬幡治君 ポンプ・アップ等を盛んにされて渇水に備えるとともに、まあそういうものが薄くなるようにと申しましょうか、そういう努力をされてもおりますが、しかしそれは、そういう努力はうんとしていただかなきゃならぬとともに、万が一それでもなおかつという場合は、いまあなたがおっしゃったような、そういう姿勢で取り組んでいただくことを、私も心からお願いをしておきたいと思います。
 それから、そうでないと――何といったって、あそこの穀倉地帯はほんとうにまあ田植えの時期としてはおそくなっておる。しかも気候があれですから、時期を失したら取り返しのつかないことになると思いますから、そういうことでやっていただきたいと思います。この際のことですから、あとは基本法の審議のときに、いろんな点でまた意見を交えつつ質問をしていきたいと思いますが、ああこれは水質保全法はりっぱなものだ、工場排水規制法というものはいいものだ、だからここら辺のところはあまりなぶらんでもいいという考えをお持ちなのか。こういうようなこと、これは出た一つの例でございますが、私はまだほかにもあろうと思うんです。そういうことについて、いままで運用もしてお見えになったろうと思うんです。たとえば水質の保全のほうは昭和三十三年から施行されておるし、工場排水規制法も三十三年からやられておるわけですから、いままであなたたちが実際にこれが運営に当たられて、なるほどりっぱなものだと、これで大体手落ちがないというふうにお考えになっておるのか、いろいろな困難な問題があるんだ、ここらあたりは再検討しなくちゃならぬというふうにお考えになっておるか。その運用をいままでやってお見えになりました、過去まあ約十カ年。初めてこの問題が出たわけじゃございません。ですから、そういうことについても何か御感想があるなら、この際承っておきたいと思います。
#28
○政府委員(松本茂君) 水質保全法が制定されまして、実施に入りましてから、かなりの年月を経過いたしたわけでございますが、最近公害防止につきましての基本法が成案を得まして目下御審議を受けておる、こういう状況でございます。対策基本法が成立いたしますれば、これは公等に関しましての基本的な国の姿勢を示すものでございまして、公害に対する施策は今後この精神にのっとり、またこの規定に即応してやっていくと、こういうことになるわけでございます。水質保全法はそれに対しまして一つの実施法になっていくわけでございますから、基本法が確定いたしますれば、それに応じまして、それに即して水質保全法も必要な点があれば改正していく必要があろうと、こういうふうに思っております。そういうことで、現在具体的に問題点がないかどうか、いろいろ検討いたしておるところでございますが、たとえば目的のところ、あるいはまた、今度基本法におきまして環境基準という考え方が確立されておるわけでございますが、まあ流水基準ということで、いままでにすでに運用におきましては環境基準におおむね相当することは想定してやってまいったわけでございます。今度新しくそういうふうに環境基準ということが明定されておりますので、それに関連する規定をやはり水質保全法に制定する必要があるのではないかと、こういうふうにも思われます。また、規制の対象といたしまして、現行の水質保全法は特定施設を持っております工場、事業場、鉱山、水洗炭業の事業場、それから下水処理場、こういったものを対象にいたしておるわけでございますが、今度新しく防止法が制定されますと、廃油処理場あるいはまた屠殺場、へい獣処理場、し尿処理場、そういった河川を汚濁する、一つの経常的に事業を行なっております施設がいろいろあるわけでございますが、そういったものが現在その対象に入っておりませんので、そういったものをもこの保全法の中に取り入れていくべきではないか、こういうふうに考えられます。そういった点を総合いたしまして、その結論に応じまして所要の改正を加えていく必要がある、こういうふうに思っております。
#29
○戸田菊雄君 具体的な質問に入る前に、これは内閣総理大臣官房になるわけですが、公害という概念についてひとつ説明をしていただきたいと思います。
#30
○説明員(仲矢鍛君) ただいまお尋ねのありました公害という概念はたいへんむずかしい概念でございまして、何をとらえて公害と申しますか、まあ公害ということばは、たいへん失礼でございますけれども、これは英語のパブリック・ニューサンスということばを日本語に訳した「公の害」ということばを書いておるわけでございます。ただ、元来公という字を使う意味は、不特定多数の原因で、だれがどういう形で出したのかわからない、けれども、とにかく何らかの現象が出ている。たとえば煙のようなもの、これは工場の煙突から出る煙もございましょうし、家庭の暖房の煙もございましょうし、あるいは自動車の排気ガスの中にまじっている煙もございましょうし、そういういろんな現象がまじって一つの煙、大気汚染という現象を生じて、それでまた、特定の人ではなくて、不特定多数の人がそれによって被害を受けておる。そういう、出たところも受けるところも、きわめて不特定多数でばく然として、悪いことばを使いますと、だれが犯人かなかなかきめにくいというようなものを、パブリック・ニューサンスということばであらわしておるのが、通例だと考えております。ただ、これはまあ語源的な意味で申し上げたわけでございますけれども、現実にわが国で公害と言われておりますのは、いわゆる不特定多数の原因による不特定多数者の被害だけをわが国で公害と言っているかと申しますと、必ずしもそうでございませんで、これは事例は非常に悪いのでございますけれども、工場がある地域に一つしかない。その工場の煙突から出る煙、これによる害につきましても、これを一般に公害と呼んでおります。この呼び方が語源的に正しいかどうかということは、これは語源的な意味での判断はあろうかと思いますが、社会感情としましてはどうも不特定多数のものでないと公害とは言わないという、そういう日本語としての感じはないようでございまして、多くの人が何と申し上げますか、じわじわと目に見えないような形でいつの間にか被害を受けている。その被害を持っていける場所というものが、因果関係その他で画然としないようなもの、そういうものをとらえて公害と言っておるのが通例でございます。それからもっと極端な例を申し上げますと、ときどき新聞などをにぎわしております、野犬が郊外の荒れ地あたりに跳梁いたしまして子供にかみついたりしている事例、こういうのをとらえて、これも公害だというような言い方をしている例もございます。
 そういうふうに、公害ということばは、比較的人口に膾炙しておることばではございますけれども、現在の社会通念的な意味での内容がはっきり固まっていない。その辺が実は公害という問題を処理する上での一番むずかしい問題でございます。それで公害基本法をつくりますときにも、公害というものの定義をどうすればいいのかという議論があったわけでございますけれども、一応何と申し上げますか、語源そのものの正確さを全く捨てたわけではございませんけれども、社会通念というものに従いまして、できるだけその社会通念に近いような考え方で、発生者が不特定多数であるのか不特定少数であるのかということに、あまりとらわれないで、むしろ何らかそういう形の原因によって不特定多数の人が被害を受ける、その被害の受け方がかなり不特定多数の広範囲にわたる、そういうものを公害ということに考えたらどうか。現在の日本の社会感情としてはそういうとらえ方が一番妥当なんじゃなかろうか。基本法では公害というものをとらえるのにあたりまして、そういう考え方をとったわけでございます。
#31
○戸田菊雄君 この問題にあまり時間をとりたくないが、何か結論はあまり抽象的で、ぴりっとしないのですけれども、世界保健機構あたりでは、いまあなたが説明されたようなことは全然言ってないのですね。そういう問題については国、地方自治体あるいは企業、こういうものがすべて適切な救済措置といいますか、そういうものを含めて対策をとるべきだ、こういうことを明確に言っているわけです。そういうことは、あとで基本法等の問題についていずれ具体的に伺ってまいりたいと思いますが、私が聞いたのは――具体的に出ておる問題についての補償、救済、こういうことについて国がやっていることは皆無にひとしい。そういう事態の中で、一体公害というものについてどういう認識を持っておるかということを聞いたのですが、あまり明確には出ておりません。これは具体的な問題について進める中で伺ってまいりたいと考えております。
 それで、第一にお伺いをすることは航空局関係です。運輸省からも来られておりますからお尋ねしたいと思いますが、最近ジェット機の騒音が市民生活に非常な影響を与えている。今後もおそらく航空ということが相当拡大発展することは間違いないと思う。ことにジェット機の運航というものも増大することは間違いないと思うのです。そういうジェット機騒音に対して、ことに四発ジェット機でありますが、これらが離陸するときに一体何ホンぐらいの爆音が発生するのか、その辺が一つであります。それから、たとえば羽田なら羽田の飛行場一つとって見て、その爆音というものはどの辺まで地域的には影響を与えているものか、その辺の問題が一つあります。それから、たとえば牛が乳が出ない、鶏が卵を産まぬということがあると思いますが、こういうものに対して爆音の被害というものがあるかどうか、こういう問題について具体的にひとつお答えを願いたいと思います。
#32
○説明員(梶田久春君) ただいまの御質問の第一点につきまして、東京並びに大阪の国際空港におきます騒音の状況でございますが、東京国際空港におきましては、昭和三十四年十月、それから大阪の国際空港におきましては昭和三十九年の六月に、それぞれジェット機が就航するように相なりました。それ以後、ジェット機の就航がひんぱんになりますにつれまして、いろいろと騒音の問題が非常に大きな問題になってまいったのでございますが、実は東京国際空港の状況につきまして、日本音響学会が、先ほど御指摘のありました四発のDC8型機につきまして、当該航空機の発着騒音についていろいろ測定いたしました結果の数字が手元にございますので、御説明申し上げます。
 離陸時には、航空機の飛行経路に沿いまして、滑走路――これは御承知のように滑走路長三千メートルでございます――の先端から一キロメートルで最大百ホン、それから四キロメートルで最大九十ホン、それから六・五キロで最大八十ホンと、こういう数字が音響学会の調査の結果出ております。しかも、その継続時間は大体五秒ないし十秒間、こういう結果になっております。
 それから、第二点のお話でございますが、実はこういった航空機の騒音によりまして、家畜類、たとえば御指摘のございました、鶏が卵を産まなくなるのではなかろうか、あるいは乳牛が乳の出が悪くなるのではなかろうかということにつきましては、今日までいろいろ各界において検討されております。で、その中で、実は基地周辺――これは防衛庁の所管いたしております基地でございますが、基地周辺民生安定法の制定促進実行委員会というところの資料では、こういった騒音が畜類等に非常な影響を与えるのだということで、法務省の人権擁護局あたりに苦情を申し込まれたことがあるやに聞いております。その際、法務省人権擁護局から防衛施設庁あてには、「厚木米海軍航空基地の航空機騒音による人権事件について」という通告がございまして、その中で、騒音が健康にある程度影響を及ぼしておる疑いがあるけれども、主張されておるような健康上の被害が騒音に起因し、他の原因によるものでないとまで断定することは困難だというふうな通告があったことも一つの例でございます。それから、鶏の卵の問題でございますが、これは騒音がそういった鶏の産卵率に直接影響を与えるようなことではないと、それから乳牛の場合につきましても、乳牛を他の地区から航空機の騒音の障害のあります地域に連れて参りまして、そこで放牧なり何なりいたしました際には、一時的には乳の産出量が減るようでございますが、しばらくたちますと、もとに戻るというふうな状況である。こういった調査の結果を私ども受けておる次第でございます。
#33
○戸田菊雄君 いま、いろいろキロによって滑走路から出発する際の音量というものについて説明があったのですが、これは大体何ホン以上になると、いわば市民生活に障害を与えるのか、あるいはテレビやラジオの受信等についても障害を与えるのか、そういう基準といいますか、そういうものを一応航空局あたりで出しておるわけですか、その辺はどうですか。
#34
○説明員(梶田久春君) 実はどの程度のホンの場合にいろいろな障害が起こるかということで、私ども調査いたしましたところ、普通の学校の教室内で先生が生徒にいろいろ授業をやっておられますが、そのときの先生の声は七十ホンというふうに承知いたしております。したがいまして、当該学校において七十ホン以上の航空機の騒音が発生いたしますと、先生の授業が困難になると、一応の標準といたしまして、そういうふうに了解いたしております。
#35
○戸田菊雄君 これは羽田の場合ですけれども、大森第四中学校屋上でジェット機の騒音の測定をやった結果が出ております。それによりますと、夏場でありますけれども、これは大体百ホンないし百五ホンですね。こういうことになりますと、いま説明がありましたように、先生の発声音量というものは七十ホン、それ以上になると妨害になる、こういうことですから、少なくともいまジェット機が運航されておる大阪や羽田については、飛び立つその周囲にそれらの音量が発生されるところではしばしば授業というものは中断される、こういう結果が出てきておると思うのですがね。そういう問題についてはどういう一体措置をとっておるか、具体的に説明をお願いしたい。
#36
○説明員(梶田久春君) 御指摘のような状況で、現在羽田の周辺は非常に騒音による障害、被害を受けておられることは事実でございます。で、先生御指摘の第四小学校は大森第五小学校と記憶しておりますが……。
#37
○戸田菊雄君 第四中学校、屋上です。
#38
○説明員(梶田久春君) はあ、そうですが。そういったことで私ども羽田の飛行場の囲辺につきましては、いろいろ測定点を設けまして、各小学校、中学校、そういったところにおきます騒音のいわゆるホン数を調査いたしておりますが、こういった九十ホンだ、百ホンだ、あるいは百ホンをこえる騒音というものに対します対策というものは、これはまあいろいろと措置しなければいけない状態でございます。つきましては、今回国会にもお願い申し上げまして、公共用飛行場周辺におきますこういった騒音の対策についての法律、いわゆる騒音防止法案を御審議願っておるわけでございますが、こういった法律によりまして、まず教育、そういった人間の基本になります教育施設、学校、それから常に静穏を必要といたします病院、あるいは診療所、そういった施設については早急に防音工事を施行いたしたい、これが今度の法律の中にございますように、騒音の防止工事の助成ということでございます。それと、こういった騒音を防止いたします以前の問題といたしまして、できるだけそういった発生源を規制することができないだろうかということが考えられるわけでございまして、御承知のように羽田におきましては、夜間のジェット機の離着陸を、夜間十一時から午前六時まででございますが、閣議の了解を得まして、現在禁止いたしております。大阪におきましても同様でございます。それからもう一つは、飛行機の飛行経路によりまして、そういった大森地区におきます騒音のホン数がかなり異なってくる。現在、羽田には三本の滑走路がございますが、A滑走路、C滑走路、これはおおむね大森のほうに向かっておりますが、それで直進いたしました場合の騒音と、海側に旋回いたしましたときの騒音と比較いたしますと、四ないし五程度の――これははかる時、あるいは気象条件によってそれぞれ異なりますが、おおむね四、五ホン程度の差があって、右旋回いたしました場合には――海側に旋回いたしました場合には騒音の量が少なくなるということでございますので、現地におきます騒音防止対策委員会といった組織がございますが、その要望も加味いたしまして、現在羽田空港におきましては、飛行経路を規制いたしております。かような措置によりまして、できるだけわずかでも騒音を少なくしようということで措置いたしております。
  〔委員長退席、理事柳岡秋夫君着席〕
#39
○戸田菊雄君 この市民生活に耐え得るためにはいろいろあると思うのです。いま言われたように、夜間規制によって睡眠を妨害するということを取り去る、その辺はできるでしょう。だけど学校の場合は、何といって本昼間ですから、これはどうしても離着陸、こういうものについては規制ができないと思うのですね。ですから、勢い対策としては騒音防止対策、こういうものになっていかなくちゃいけないと思うのですが、その周囲の各学校とか、あるいはまた市民全体、いろいろ障害を受けておる者に、どうしても早期に防止対策というものを――政府が責任をもって、航空会社と協力して、そうしてひとつモデルケースというふうなものをやってみてはどうかというふうなことが意見として大きく出てきているのですけれども、そういう問題については何か具体的な防音措置――いまおっしゃられたことは、大体運航規制ないし運航方法によって少しなりとも防音というものを減少させよう、こういう説明にとどまったように思いますが、そういう何か具体的な、積極的な防音対策というものがないのかどうか、その辺はどうですか。
#40
○説明員(梶田久春君) 航空機の騒音を積極的になくするということ、あるいは相当幅広く軽減させるということは、現在の技術水準からいたしまして非常に困難性がある。もちろん世界各国におきまして、航空機自体が発します騒音の何らかの軽減策というものについては、あらゆる面から検討いたしておることは事実でございますが、現状におきましては見るべき程度の騒音軽減という技術はなかなか私どものほうでは見つからない状況でございます。したがいまして、地上におきますいろいろの騒音発生の防止ということは、これまた、いろいろの施設を設置することによりまして可能でございます。たとえばエンジンのテストをやる場合には遮音装置のあります建物の中でやるということ、これは現に羽田でやっております。それからランアップの際にはサイレンサー、いわゆる消音装置を装置することによりまして、そういった騒音が外部に伝わることを防止するという措置も可能でありますが、航空機自体の騒音というものについてはなかなか現時点においては技術的に困難である。したがいまして、そういった航空機、これは現在の航空交通の状況からいたしまして、やめるというわけにはまいりませんし、勢い積極的に学校、病院等におきます防音工事を実施するということ、さらには一般住民の方も航空機の騒音によりましていろいろと障害を受けておられるわけでございます。非常な迷惑を受けておられるわけでございます。こういった場合におきましては、当該住民の居住しておられる区域を管轄します市町村において、共同の学習施設なり、あるいはいろいろの共同利用施設をつくられる場合には、国がその建設費について補助をしましよう、助成いたしましょうという事項も今回の法律案には入っておるわけでございます。また、羽田の周辺におきましてはこのような例はございませんが、たとえば、大阪の空港におきましては、あの周辺において農業をやっておられる方がずいぶんたくさんございます。そういった方々が、これは騒音による直接の被害ということではございませんが、滑走路延長上で農耕に従事しておられる方々が、飛行機が低空で着陸しあるいは離陸するといった場合に、いろいろと圧迫感というものを受けられるのじゃないか。そういった場合、農耕の作業に非常な支障を来たしておるのじゃなかろうか、こういった農業を経営いたしますについて、その事業上こうむります損失についてもこれを補償するという、いわゆる防音工事の実施施行、それから共同利用施設の補助、それから損失補償、農耕損害補償。もう一つ、損失補償と申し上げましたのは、飛行場のある一定の区域をわれわれ現在検討中でございますが、一定の区域をきめまして、その中に住んでおられる方、一定区域の中におられる方につきましては、あまりやかましい所は移転をしていただく、これは当該本人から申し出がございましたならば、その建物の移転について補償しましょう。また、ある一定の区域につきましては土地も買い入れましょうという措置、こういった措置を今回の騒音防止法案の中に織り込んでございますし、本年度すでに三億円ばかり、額は少額でございますが、予算についておりますので、できるだけ積極的に、そういったいわゆる住民の生活環境に寄与し得るような方向でいろいろと措置をとってまいりたい、かように考えております。
#41
○戸田菊雄君 これは、諮問第十二号に対する第一次追加答申というのが航空機騒音対策、こういうことで航空審議会から政府に答申されたわけです。いまおっしゃられたようなことは、この中に具体的に答申内容として盛られておるわけです。ですから、問題は、私はそういういまおっしゃられたようなことが実行形態として具体的にやられておるのか。大体ジェット機で問題がある空港というものは羽田と大阪に限定されているわけです。また、こういう過密地帯に対する騒音というものは非常に最近大きくなっているわけです。だからそういう問題に対して、こういう答申案に基づいたものが具体的に尊重され、実行されているかということをいま聞いたのですが、残念ながら三億程度の予算措置をやったけれども、しかしそういうものに対してどういう助成で、どういうふうに金というものが使われているか。さしずめ私は、学校とかあるいは幼稚園であるとか、そういうものに対してはこれは大きな問題だと思っているのですよ。だからそういう問題について、各学校なんかも独自的にいま調査研究をして、そういうデータというものも出そろっておるわけです。そういうものをやはり吸い上げて、適切な防音装置対策というものを立てていく、こういうものがやられていかなくちゃいけないと思うのです。これは一つの例ですが、そういうものがいまの説明にはないのですけれども、何か具体的なものがありますか。
#42
○説明員(梶田久春君) 先ほどの説明で、具体的な件に触れませんで、いろいろお話がございましたが、四十二年度予算三億の金は具体的に申しまして、これは実際にこれをやるというところまで現在いっておりませんが、おおむね東京におきましては学校三校、大阪におきましては六校、計九校の学校の防音工事の補助ということで考えております。
#43
○戸田菊雄君 せっかくこういったいい答申があるんだけれども、いまおっしゃられたものによりますと、学校関係九校と、こういうことでございます。やはりもっと早急にそういう執行というものを推し進める必要が私はあると思うのです。何かどこかに欠陥がないかということなんです。たとえば運輸省内において公害対策というものがある。私が調べた範囲では船舶技術研究所ですか、これに何か公害課というものが設置された、こういうことですが、そういういわば組織機構上の問題について、運輸省としては再検討の余地がないかどうか。また、そういうところから、いまの公審対策というものはあまり進展していない、執行されていない。こういう弊害というものが生まれてきていないかどうかということですが、それはどうですか。
#44
○説明員(梶田久春君) 運輸省の機構上の点について、こういった公害問題を処理するのが非常におくれておるのではなかろうかというお話でございましたが、船舶局の公害、これはおそらく海水汚濁の問題ではなかろうかと思いますが、これは現在、運輸大臣官房でやっております。
 それから、航空機のこういった騒音に対しますいろいろの施策につきましては、航空局自体がやっておりまして、運輸省の組織の中でいろいろ利害が相反するために、こういった施策が円滑に実施できないということは全然ございませんで、むしろ航空機の騒音問題に対しますいろいろの施策というものは、航空局が最も実態についてよく把握いたしておるわけでございますから、航空局自体でこういったものを推し進めることが最も有効な方法ではないかと、かように考えております。
#45
○戸田菊雄君 それから、これはどなたに伺ったらいいのかわかりませんが、運輸省における公害課の設置について、機構上これはどうあるべきがいいと思いますか、大体機構のあり方についてですね。
#46
○説明員(堀山健君) 先ほど研究機構のことについてお話がございましたが、実は船舶技術研究所の中に陸上部門につきましては陸上交通部というものがございまして、それが今般予算の上では通していただきましたが、ただいま御審議中の設置法の関係で、自動車に対する公害の研究機関を今度部として増設する、こういうことになったわけでございます。
  〔理事柳岡秋夫君退席、委員長着席〕
それで機構として、何と申しますか、運輸省は海陸空全部を含んでおりますので、これを一つの機構としてまとめてやることも一つの方法かと思いますけれども、なかなか膨大な組織、機構でございます。それから同じ乗り物でございますけれども、それぞれ特色がございまして、自動車のように数の多い――何と申しますか、船のように一隻一隻がオーダー・メードのようなものと、それから自動車のように大量生産されるものと、これは扱いが違うと思います。自動車の場合におきましては、この研究所の中に、そういう自動車についての、主として排気ガスを中心とした交通公害担当のものをつくって、そこで専門的に研究する、そうしてその成果を行政に反映させる、こういうことにしております。
#47
○戸田菊雄君 いろいろ説明を聞いておりますと、騒音防止にしても問題はやはり財源の問題じゃないかと思うのです。いまおっしゃられたように、三億と、こういっておりますが、三億ではとても私は完ぺきな具体政策を推し進めることはできないと思うのです。一体どのくらい当面の予防措置として予算が組まれれば、具体的な施策ができるのか、その辺の見通しについてひとつお聞かせを願いたいと思います。
#48
○説明員(梶田久春君) 御承知のように、去る三月二十二日の閣議了解をもちまして空港整備五カ年計画を策定いたしました。これが内容につきましては今後早急に詰めることになっておりますが、総額千百五十億のいわゆる空港整備の投資額、この中で騒音対策の費用を考える。これは新東京国際空港の分は別でございます。したがいまして千百五十億円の中で騒音対策費はどの程度のものを見るかという作業を現在やっておりますが、御指摘のように本年度の三億円、初年度でございますので非常に少額でございまして、われわれこういうものではごく一部の対策しかとれないという考えには相違ございません。できるだけ来年度以降大蔵省との折衝もございますが、私どもが考えますような十分な額をできるだけ取るように努力いたしたい、かように考えます。
#49
○戸田菊雄君 ぜひ、そういうことで進めていただきたいと思います。
 次に、厚生省にお伺いするわけですが、この公害の被害者救済制度の問題についてですが、たとえば社会的に問題になりました水俣病の場合に現地で一応結着をつけたわけでありますが、この死亡者が実は三十万ですね、葬祭料が二万、生存者のおとな、これが十万円、子供が三万円の年金、子供が成人になれば五万円、一体こういう公害による被害者救済というものを政府としてはどう考えておられるか、これは人の命がたった三十万で片づけられている。少なくとも交通災害の場合には最低百五十万、われわれとしては当面これを五百万まで上げろと、こう言っているのでありますけれども、こういう問題について厚生次官はどう考えておられますか。
#50
○政府委員(田川誠一君) 公害の問題は、いろいろその因果関係がたいへんむずかしい問題が非常に多うございます。原因がはっきりしているところは原因者が補償をするわけでございます。いま御指摘の水俣の場合の金額をおっしゃられ、たいへん少ない額だということでございますけれども、これはお見舞金として差し上げたものでございます。地元の自治体から差し上げたものでございます。いま、そうした何といいますか、補償救済の制度が確立しておりませんから、そういうようなことにつきましてはっきり何といいますか、具体的にこれこれだというようなものができておりません。今度基本法におきまして被害の救済の必要な制度を整備するというようなことを、私どもも考えておりますが、そうした将来の問題といたしましては十分検討していかなければならない問題ではないか、このように考えております。
#51
○戸田菊雄君 その検討するということは、結局救済というものは必要であるから国が直接――それの負担割合はどうするというようなことは別にいたしましても、そういう補償態様というものをつくるということですか、つくると。かりにつくるとすれば、当面どのくらいがその限度と考えていますか。死亡あるいはもう、ほとんど就労不可能というか、そういう場合、一体その辺の見通しについてはどうなんですか。
#52
○政府委員(田川誠一君) 具体的な金額については、その原因であるとか、そのときの状態であるとかということで、いまここで申し上げるわけにはまいりませんし、また、そうした金額がすぐ出る問題ではございません。救済制度は何らかの形で立てていかなければならないということで、公害に関する紛争処理の問題であるとか、あるいは被害の判定、原因を把握する専門の機構の整備というような問題を、あわせてただいま検討をしておるような状況でございます。
#53
○戸田菊雄君 具体的に申し上げたこの数字を、水俣病の場合この補償金はどう考えますか。厚生次官低いと考えますか、これでいいと思いますか。
#54
○政府委員(田川誠一君) 必ずしも十分の額であるということは申し上げられません。
#55
○戸田菊雄君 少なくともいま災害発生の場合は、国が直接それに対しては一たん支出をして、あとで地方自治体が幾らといってそれを処理していくわけですね。少なくとも公害における問題は人命に直接関係する問題ですね。そういう立場からすれば、こういう補償なり医療態様について政府はやはりすべて国で当面めんどうを見る、こういう立場で推し進めるわけにはいかないのですか、これは。
#56
○政府委員(田川誠一君) いま戸田委員がおっしゃったようなことで、一つ一つ補償をしていくということに、かりになりますれば、これは一般の災害に対しても国がすべて補償をしていかなければならないということになるわけでありまして、こうした問題はたいへん簡単には考えられますけれども、実際にすぐ実現できるというような事柄ではないのではございませんでしょうか。
#57
○戸田菊雄君 いずれまた、あとで伺いますけれども、ぜひひとつ、この救済制度につきましては万全の措置を政府としてはとるような、前進の方向でひとつ御検討願いたいと思うのですね。さらにいろいろ、むずかしい問題もあるでありましょうけれども、問題はやはり生命にかかわる問題でありますから、ひとつ真剣に御検討願いたいと思うのです。
 次に、東京都立大工学部で東京都の公害部と協力して、定期的に都内の汚染度のぐあいについて検討を進めてきたわけでありますが、一応この東京都立大の研究によりますと、東京に白いスモッグが実は発生をしている、こういうことなんですが、こういうことについて厚生省としてはタッチされているかどうか、まずお伺いをしたい。
#58
○政府委員(舘林宣夫君) 東京都の汚染状況の調査につきましては、厚生省みずからも調査をいたしますし、あるいは東京都の調査に対しまして厚生省も協力をして調査状況を把握しておるわけであります。東京都の大気汚染の数年前の状態は石炭等によりますばい煙が相当多くなっておりまして、一平方キロ当り三十トン近いほどの降下ばいじんがあったわけでありますが、それが漸次重油に切りかえ、しかも排出規制などをいたしまして、いまやスモッグの状態は黒いスモッグの状況ではなくて、それほど濃くない、いまお説のような白いといったほうがいいようなスモッグを来たしております。ところが、そのスモッグなるものはばい煙こそございませんが、その状況の中にかなりSO2のような色のない有毒物質を相当含んでいる状況のスモッグを来たしておる、そういう傾向が漸次強まっておることは御指摘のとおりでございます。
#59
○戸田菊雄君 大気汚染の基準濃度というものは、大体どのくらいにあるのがいいと思っているのですか、その辺の見解はありますか。
#60
○政府委員(舘林宣夫君) この大気汚染の標準といいますと、この程度以下であれば、まあ都市の環境としてはやむを得ないという線そのものが、今回提出いたしております公害対策基本法の中の環境基準に該当するものでありまして、その点は目下厚生省の公害審議会に諮問をいたしまして、専門の先生に検討をしていただいているわけでございます。したがいまして、いまの段階でどの程度が適当であるかということを申し上げるまでに至っておりません。
#61
○戸田菊雄君 衆議院の公害対策委員会で四十一年四月二十一日、自動車排気ガス規制に関する決議案というものが出されているのです。これによりますと、少なくとも三分の一以下に押さえろ、こういう趣旨になっているわけですね。ですから、いま局長のおっしゃったのを含めて、一体今後こういう基準というものを早急につくらなければいけないと思うのですが、その辺のお考えはどうですか。
#62
○政府委員(舘林宣夫君) お説のように大都市、ことに東京、大阪周辺におきましては、排出規制はいたしておりましても、漸次濃度は濃くなってまいっております。したがいまして、できるだけ早急に環境基準をつくりまして、それ以上の汚染を食いとめるというような措置を講ずべきことは御指摘のとおりでございます。
 なお、ただいまお話のございました、三%以下にとどめる部分はCOの濃度でございまして、大原町の交差点、その他非常に交通が混雑いたします地点におきましては、漸次汚染の高まるおそれもございますので、この点も自動車の機構上の排出規制、あるいは交通の立体交差化というようなことで、環境の基準をきめるだけでなくて、それを守るような防止措置を強硬に推し進める必要が生じてきていると思います。
#63
○戸田菊雄君 東京の白いスモッグは、時間もありませんから、はしょって要点を申し上げますが、東京都立大の加藤博士の発表によりますと、結局、最近プロパン車が相当増加してきておって、その燃料であるプロパンガスの不良燃料、そういうものが出回っている証拠ではないか、こういうのでありますけれども、その辺に対して、厚生省としては何か調査をいたしておりますか。
 それからもう一つは、通産省として、そういういわばブテン類の混入燃料というものが出回っているという事実について御存じかどうか、ひとつお聞かせ願いたい。
#64
○政府委員(舘林宣夫君) 御説のような、プロパン車から出てまいります炭化水素が原因となりまして白いスモッグを形成している面がございます。この影響は高濃度の場合は呼吸障害を起こすわけでございまして、最近の自動車排気ガスがどれだけ人体に影響するかということを、ただいま調査研究を進めておるところでございます。
#65
○政府委員(両角良彦君) ただいまお話がございました白いスモッグにつきまして、その原因がLPG自動車にあるかどうかという点につきましては、現在なお明確な結論が出ていないかと思いますけれども、少なくともLPG自動車に使用されますLPGにつきましては、通常不飽和分が非常に多いとされております石油化学工場から出てまいりまするものを充当しないで、自動車燃料としては一般の石油精製工場から出まするLPG、ないしは輸入のLPGを組み入れるように指導いたしておる次第でございます。
#66
○戸田菊雄君 そういった不飽和の炭化水素ですね。そういうものが発生するとすれば当然イソブテン、ブタジエン、こういうものが混入されている証拠だと加藤博士は指摘をしているのです。ですから、そういうことだとすれば、当然オイルスタンドではそういう技術的な操作はできない、当然メーカーに責任があるということを指摘しているわけですが、その辺はどうですか、通産省としての考えは。
#67
○政府委員(両角良彦君) 御指摘の点につきましては、先ほどお話も出ました厚生省におきまする研究調査等の成果を待ちまして、所要の対策を講じたいと考えますが、少なくとも現段階においては石油化学工場の不飽和分の多いLPGは、これを避けるように指導いたしておるという段階でございます。
#68
○戸田菊雄君 最近非常に需要度が高まって、プロパンガスの品薄といいますか、そういう状態があると思いますが、そういうところがこの不良業者を現出さしてまいったことになる。それが結局、白いスモッグの要因になっている。こういうことになるとすれば、これはたいへんなことだと思うのですね。だから、そういう問題に対して通産省としては、メーカーに対して適切な指導監督というものを強めていく必要があるのではないかと考えますが、その点はどうですか。
#69
○政府委員(両角良彦君) そのような問題につきましては御指摘のとおり、これに関係いたしておりまする厚生省あるいは運輸省、通産省等、関係各省が十分協議、協力いたしまして、原因の究明なりあるいは所要の対策の推進をはかりたいと思いますが、少なくとも通産省といたしましては、そのような原因究明にあたっての資料の提供その他については、積極的に協力をいたしてまいりたいと思っております。
#70
○戸田菊雄君 終わります。
#71
○委員長(松澤兼人君) 本日の調査はこの程度とし、これにて散会いたします。
  午後三時五十七分散会
    ―――――――――――――
ソース: 国立国会図書館
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