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1947/11/22 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 予算委員会 第24号
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1947/11/22 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 予算委員会 第24号

#1
第001回国会 予算委員会 第24号
  公聽会
――――――――――――――――
昭和二十二年十一月二十二日(土曜
日)
   午前十時二十分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○昭和二十二年度一般会計予算補正第
 七号(昭和二十二年度予算追加案に
 ついて)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(櫻内辰郎君) 只今より公聽会を開会いたします。公述人の皆樣に申上げます。本日は御多用中を特に本予算委員会のために、御出席を賜りましたことを厚く御礼申上げます。案件は昭和二十二年度予算追加案についてであります。公述を願いまする時間は、二十五分といたしまして、これに対して質疑應答を十分間、質疑の時間を五分以内、應答の時間を五分以内として、お述を願いたいと存じます。
 最初に産別労働組合事務局長吉田賢治氏にお願いいたします。間違いました、吉田資治氏であります。
#3
○公述人(吉田資治君) 産別会議の吉田資治であります。正確には、御承知でありませうが全日本産業別労働組合会議というのが正式の名前であります。その事務局長をいたしております吉田資治であります。只今も御訂正になりましたが、資の字を賢の字によく間違えられまして、賢治々々と言わ九るのですが、資次と、名前は資を治あるのでありますが、実はなかなか資が治まらないので、反対の仕事をいたしておるわけであります。本日の公聽会もそういふ意味で、労働者の立場からこの追加予算案について意見を申述べたいと思います。
 私は労働組合の代表でありまして、学者でもなければ專門家でもないのでありますので、いろいろ具体的な数字を挙げて、それを指摘するというような能力もありませんし、その余暇も持つておりません。外國などと比較する術もないのでありまして、この点につきましては、それぞれ專門家がそれぞれの立場から指摘されております。特に衆議院の公聽会におきましても、我々の代表中原淳吉君が申述ベておる通りであります。なおその他官廳関係の労働組合の代表者、特に全財の同志が專門的な立場からこの矛盾を指摘し、若しくは技術的な問題につきまして、詳細にこの批判をされておりますので、我々はその指摘、批判に対して全面的に支持をすることを先ず表明いたして置きます。
 我々はこの予算案の批判に入る前に、労働者として現在のいわゆる千八百円ベース、労働者の保護……低賃金政策に対しまして、到底生活ができたいということ、從つてそれぞれの持場における生産が益々低下せざるを得たい。かかる方法におきましては、日本の再建はおろか、益々日本は窮乏化して、遂に破滅の淵に陥るであろう。こういうふうに現在感じておるのであります。そういうことを我々は日々の生活の上におきまして、みずからの体驗において知つておるのでありまして、この見地から予算を見ていきますと、総て勤労階級の生活、これを基礎にした日本の再建が可能であるか否か、こういう見地からこの予算案を見ていきたいと思うのであります。然るにこの予算案はいはゆる政府の新物價体系、いわゆる賃金の千八百円ベースを基礎にした所の予算案である。これはいろいろの数字で明かなのでありまして、この一面からのみ見ましても、これは明かに労働者階級に対して飢餓を強いるものであり、待つて生産の基礎である労働力を破壞し、生産を次第に縮少再生産の危機に陷れるものである。このことは先程私が申述べましたように、日本の再建どころではない。日本を破滅の淵に陷れるところの途である。こういう点からのみ申上げましても、この予算は何と申しますか、亡國予算とでも謂わざるを得ない。我々はこういう予算には絶対に賛成するわけにはいかんのであります。このことを先ず最初に明らかにして置きたいと思うのであります。
 我々の考えるところの予算、眞に救國予算、國を建直すところの予算というものは、如何なるものでありましよう。それは歳入の面におきましては、勤労者の負担を軽くするものである。勤労者の負担をできるだけ軽くするように建てられなければならんのである。歳出の面におきましては、國民経済の再生産の部面に役立つ歳出が盛られなければならない。こういうものでなければならん。原則的にはそうであろうと私は信じておる。ところが本日の新聞を見ますと、昨日の公聽会におきまして、川北日銀副総裁がこの点に言及され、生産に役立つ歳出をすべきである。こういうふうに述べられておるのでありますが、そのことに関しましては、この言葉の字義通りにおいては、我々も異議はないのであります。けれどもその中に給與改善その他の人件費が多い。これはいはゆる生産の増強に役立つものでない。こういうことを述べられておる。この点におきまして私は絶対に反対の立場を持つもの、あります。我々の考えるところでは給與の改善その他の人件費の増額、これは先程申しました生産の基礎であります。いわゆる汽車を走らすための石炭に比すべきものでありまして、この給與の改善なくしては日本の生産は増強されない。これは極めて簡明なる事実でありまして、このことが現在あらゆる場面におきまして、労資の対立となつて現れておるのであります。我々は飽くまでもこの給與の改善、勤労者の生活を安定させることこそが日本の再建の基礎である。こういうふうに信じておりますが故に川北日銀副総裁のこの給與改善その他の人件費を削除すべしという案には、絶対に反対であります。むしろこれを現在要求されております通りに増額さるべきであることを主張するものであります。從つてこの予算におきましては、いわゆる價格調整費若しくは公債費こういう資本家並びに銀行界への奉仕となるべきところの費目は廃止されなければならないと私は考えますし、終戰処理費の如きも、これは大削減さるべきであると信じております。そうして眞に止むを得ざる終戰処理費に対しましては、これを特別会計といたしまして、この特別会計を賄うためには、戰爭の責任者であるところの資本家、地主、軍閥、戰爭による利得者にのみこの負担をかくべきであると考えます。こういう特別税を徴收する。この方法によつてのみ、戰爭の眞の責任が追及され、そうしてその負担は公平なものとなるであろう。こういうふうに信ずる者であります。その他一般的に言いまして、價格差益金であるとか、財産税であるとか、或いは現在の闇利得税、こういうふうなものは嚴重に取立てられなければならないのであります。そうして勤労によるところの所得税は、これは原則的には廃止さるべきものであると主張する者であります。尤もこの勤労所得の中には、経営者の重役等の所得も入るのでありますが、これは勿論控除さるべきであります。その他大衆課税であるところの間接税、こういうものはできるだけ軽減されなければならんし、特に生活必需品に対しましては、この課税は廃止さるべきものであると信ずる者であります。こういうふうに申しますと、そういうでたらめなことを言つたんでは、税なんかとれるものではない。こういうふうに言われるかも知れないのでありますが、税がとれないのは今に始まつたことではないのではないのであります。現在におきましても、いろいろな形で費目が出ておりますけれども、この税の徴収が遅れておる。むしろ故意に怠つている傾があるのであります。この端的な現れは、税務官吏の生活不安により、徴税の成績が非常に挙らんということが申されておる。これは先程申しましたように、労働者の生活の安定が生産の基礎になるという私の主張を裏附けるものでありまして、こういう方法で徴税が非常に成績が惡い。而もこの滞納の大部分が大口所得者であるということは、もう既に新聞等でも発表されている通りであります。特に惡質なのは、労働者から所得税を天引きいたしておきまして、それを納めないで事業資金等に流用いたしまして利を得る。こういうふうな惡質なものが非常に多いのであります。大体その額は四、五十億円に上るだろうというような、こういうような推定の出ているのを見ましても、如何にこれが計画的に行われているかということが分るのであります。むしろ私は逆な言い方をいたしますならば、政府が税務官吏の待遇を低下させることにより、この改善を怠ることによつて、徴税の方法を澁滞させ、そうして今言いましたような、大口利得者の滞納を許しておく。むしろそれに協力をさせる。こういうふうな結果にさえなっているのではないか、こういうふうにさえ我々は言いたいのでありまして、こういうふうにして現実に徴収されないものを最も抵抗力の少ない安易な方法、即ち大衆課税によって補なおお、こういうような卑怯なやり方を現在やつておる。煙草の値上などは、一向國民にも諮らずに勝手にやれておる。唯一の娯楽である映画や芝居の入場税も高額に引上げられようとしておる。こういうようなやり方で今の大口利得者の滞納、こういう胡麻化しを補つていこう。こういうやり方をしておるわけでありまして、こういうことに対しては、我々は政府に対して厳重な警告をいたしたいと思うのであります。問題は私が先ほど申しましたようなやり方にいたしましても、決して財源はないわけではない。例えば戦争直後の財産税一千億円と推定されておりましたのが、四百五十億に切下げられた。それが甚だ曖昧でありまして、どれだけ正確に取立てられておるのか、この点は私も正確な数字は知らないのでありますが、非常に徴税の率が悪いということだけを私は聞いておる。なおその当時からインフレの昂進によりまして、税の名目價格というものは非常に高くなつておるのでありまして、こういうところからも幾らでも財源が出るはずであります。又價格差益金というようなものも財務労組の諸君の主張によれば、三百億は徴れるという純技術的な立場からの推定でありますが、予算にはたつた七十一億しか計上されておらない。こういう財源が幾らもある。なお先ほど触れましたような二百六十六億に達するところの價格調整費、八十一億に達する公債費、こういうふうなものものを我々は廃止すべきだと主張しておるのでありまして、この一つ一つをとつてみましても、非常に莫大な財源となるものであると信ずる者であります。從つて政府はこういうところに努力の眼を向けなければならない。ありもしないところの山猫などを追つ駆け廻していないで、こういう宝の山を掘り崩すことが緊急の手段ではなかろうか。全逓や國鉄やその他全官の諸君の待遇改善の要求は、今申しました財源の一つを捻つても容易く出て來るのでありまして、こうしてこそ初めて日本の再建がその基礎を築くことができる。政府がそれを率先にしてるならば恐らく日本の資本家はこれに倣つて労働者の働けるだけの賃金を認めるでありましよう。それは期せずして我々が主張するところの日本の民主的再建のコースに乗ることになるのであります。
 即ち私はかかる意味におきまして、國家予算そのものは特定の少数者の利益を主眠にするものでなく、労働者、農民その他一般勤労階級の生活の安定をはかることを基礎にした予算でなければならない。こういうふうに信じておるものでありますが故に、本追加予算に対しましても、これだけでなく本予算そのものをも変更し得るように、重大なる修正を私は希望したいのであります。具体的な数字は既に指摘されております通りでありますし、なほ同志も見えておりますので、指摘あることと思いまするが、私は先ほど申しましたように、個々の問題でなく労働者の立場から基本的な問題に言及いたしまして、日本の前途を担う参議院の諸君が、眞に日本を愛し、日本の民主的再建を希われるならば、今私が主張いたしました勤労者をこそ、國家再建の基礎とすべしという主張に全幅の賛意を表せられ、この予算案に対しましても、かかる見地から修正の努力を拂われんことを心から希望いたす次第であります。終ります。
#4
○委員長(櫻内辰郎君) 御質疑がございませんか。御質疑がなければ次は日本教育会顧問遠山信一郎氏にお願いいたします。遠山信一郎君。
#5
○口述人(遠山信一郎君) 薀蓄の深い各位の前におきまして、財政経済の専門家ではありません私が申上げることは、大変おこがましいように感じます。ただ國民大衆の一人といたしまして、この予算に対して國民大衆はどいうようなことを常識的に考えておるものであるかという意味において、所感を述べさせて頂けますれば幸いに存じます。今回の追加予算がその歳入が歳出よりも四十九億超過いたしまして、本予算四十八億の赤字をも解消いたして健全財政であるということが公にせられました際に、私はそのお手際に驚くと同時に、現下のような國民経済乃至は國民生活が窮迫に窮迫をいたしておりまする際に、それは余りにも魔術的でないから、國民の目をこれは惑わすものでないか、というような疑を抱いたのであります。そこでその内容を検討をいたしたのでありまするが、遺憾ながらこの疑が單なる疑でなくして幾多の缺陥を見出し得たことを遺憾に存ずるのであります。大凡健全なる財政ということにつきましては、収支の均衡、國民負担の衡平及び予算の総額、大きさが國民所得の一定の限度内にあるというような点などにおきまして、平時ならざる現下といえども國民の納得の行くようなものでなければならないと存じます。國民所得を大藏省査定に基づきまして八千四百九十億といたしますれば、本年度の煙草収益金を加えた租税総額は約千八百億であります。その二二%弱に当ります。二二%といえば、可なりの率であるのでございます。我が國の職業を持つておる人を三千万と仮定いたしますれば、この有業者一人当り約六千円の高額なる負担となるわけであります。これに加うるに府縣税、市町村税その他の公租公課を加えましたならば、一人の負担額というものは、実に容易ならざるものであるのであります。而して闇取引の盛なる今日におきまして、國民の所得を捕捉することは困難でありまして、個人業種の所得はほんの四五割程度しか補足されておらない。その人員も八百七十万と予想されておりまするに四百七十万程度しか認められておらないのであります。而も酒の密造というものが二百万石乃至三百万石と称せられております。これが一升百円の税金を課し得るといたしますれば、二、三百億の税金を見出し得るような次第であります。かくの如く脱税者が非常に多い。そこでまじめな勤労者層が洩れなく課税せられる。そういうわけで多数の人々の擔税力というものは正に限界点を超えておるのではないかと思われるのであります。健全財政たるがためには、單に計数上の辻褄を合わせた形式的のものであつてはならない。実質上にも健全でなければならんのであります。從つて赤字を金融機関及び地方財政に轉嫁し、又は更に追加予算を必要とするようなものであつてはならないと存じます。又鉄道通信の赤字を一般会計に繰入れるようなものであつては、健全財政と申せないと思います。然るにこれらの諸点におきまして幾多の懸念を藏しております。例えば地方分與金は八十一億七千万円強に食い止めたのでありますけれども、地方は意外に財政難でございまして、俸給の支拂にさえ事缺きまして、銀行は固より個人にさえも借金をいたしまして、一時を支拂つておるというような状況にあるところもあるのであります。從つてこれだけでは到底地方の要求を満し得るものでない。この不足分は地方財政の負担となり、やがてこれが地方債の発行によつて賄われるということになりますれば、結局通貨の増発となることも止むを得んことではないかと思うのであります。
又復興金融公庫の出資金四十億円は本年度の復金所要額を満すことはできないと考えられるのであります。その際にこの不足分は結局日銀引受となるのでありましよう。かくては赤字公債を発行いたしまして、日銀引受とすることと、何ら変りがないこととなります。で、かく観じ來りますれば、財政の赤字を金融機関や地方財政に轉嫁することになると存ずるのであります。税の歳入が本年度は本予算、追加予算を合しまして、総額千三百三十四億でございまして、これに対する収税状況は、九月までに二百六十三億全体の二〇%弱に過ぎないでのあります。而して八月末までの未納額は、実に百億と称せられておるのであります。この残額、千億の徴税が果たして期限内にできるものでございましょうか、かかる不成績の理由はいろいろあるのでありましようが、結局國民の担税力が限界点に近付いておるということが一つ、闇利得の者の利得、インフレ所得者の所得というものが、非常に脱税が多い。その上脱税を知つておりまするところの眞面目な納税者と雖も、ついこれを脱税するような氣分になる。詰り課税の不公平と納税思想の低下と相俟つて、いよいよ徴税が困難になると思います。今一つは、現在の徴税陣の不完備であります。既に八万人と称せられておるところの徴税官が、今回は四万五千ぐらいしかないということであります。從つて徴税陣と今日の機構を以てしては、税金の完納は殆ど望めないのではないかと思うのであります。その未納分は結局通貨の増発となりまして、インフレを昂進せしめる原因となるのであることを憂える者であります。この追加予算はその歳出におきましては、先程もお話がありましたように、賃金千八百ベースと公定價格を基準としておるようであります。然るに物價は上昇の一途を辿つておりまして、東京都だけを見ましても五、六、七、八の四ケ月間に既に七〇%高騰をいたしております。仮に物價が安定を保ち得たと仮定いたしましても、幾多の必要が生じて参るのであります。例えば貿易資金の如きは、当局の言明によりますれば、今年度の所要資金はほぼ百億を要するということでありますが、計上されておりまするところは五十五億であるのであります。賠償撤去費用の如きも、これで足りるとは思われないのであります。その他も同様でありまするが、千八百ベースが維持できないのは言うを俟たない情勢でございまして、越冬資金一ケ月を拂うとしても、既に官民合せれば百七十億に達するということであります。なお大衆課税たるところの間接税を増額いたしまして、一面所得税は減額いたしたのでありまするけれどもが、煙草値上に伴いまして、喫煙登録者四千四百万人といたしますと、月々一人が約百円弱を拂わなければならんのであります。こう考えますると、所得税は減額されましたが、大衆たる國民に負担は結局非常に増加するものと思わなければなりませんのであります。健全財政のために必要なる行政整理なり、あるいは企業、官業の整理はまだその儘となつておるようであります。消費支出が生産支出に比べて非常に多いというようなこと、こういういろいろな点におきまして、素人の観察を以てしても、健全財政たり得ないのであります。
 殊にこの際一言申したいのは、本年度の当初予算及び追加予算の特色は、煙草の利益金に非常なる重点を置いておるということであります。即ち追加予算歳入九百七十四億の中、二百五十九億円が煙草益金であります。本予算益金二百二十六億を加えますると、正に四百八十五億円であります。これに原價を加えますれば五百四十億円となるようであります。この四百八十五億を二十二年度一般追加予算歳入総額に比較いたしますると、実に二四%になるのであります。二四%という大きな率になるのであります。專賣益金と全歳入との割合は、昭和元年には四・七%でございました。昨年二十一年は六%二であります。然るに本年は二四%となりまして、前年に比しまして一躍四倍の急激なる増加でございます。健全財政はこの不健全なる煙草の益金の上に立てられた、いわば煙の上に立てられたところの財政であるのであります。砂上の楼閣という言葉がございますけれども、この煙の上に立てられたる楼閣の如きこの財政が、健全財政の美名がやがて煙のように消えざらんことを願う次第であります。戦後各國とも財政難に陥つております。最も甚だしいフランスの如きその一つでありまするけれどもが、フランスと雖も、かくのごとき煙草益金というようなものに負うておることはないように聞いておるのでございます。
 次に六・三制の実施に伴う教育費の問題でございまするが、文部省は十四億を要求いたしております。これに起債その他地方負担を加えますると十七億、計三十一億となつておるのでございます、然るに政府は七億円を今回認めました。尤も実質的には他の七億円も何らかの形を以て認めるということになつておるということでございまするが、この残額は予備金より支出するものであるか、或いは第二次追加予算に計上せられるものでありましようか。その性質上から見ますれば、第二次の追加予算として速やかに実現せられたいのであります。何となれば、文部省は既に十四億が通過するものという前提の下に、それぞれ地方に指令を発しております。既に地方におきましては、校舎の増築その他のいろいろ手配をいたしておるのであります。從つてこれが遅れる場合、いろいろの不便を感じて來るのであります。物價は日に昂騰いたしております。一日遅るれば一日だけその費用が増加いたしまして、更に不足額を増加しなければならんということになるのでないでありましようか。さもなくば地方費に負担せしむるか、或いは父兄に寄附を強要するということになりますれば、さもなくとも重税に喘いでおりますところの父兄は、愈々その負担に苦しむようなことになるのであります。六・三制の実施は目下日本の実情では、随分困難が伴うものと思います。併し既に実施を決定いたしました以上は、飽くまでも実施しなければならないのでありまするが、地方によりましては戦災その他によりまして負担に堪えられん所が非常にあります。國庫が半額の補助、他は地方に委する場合におきましては、六・三割の実施がかなり凹凸になりまして、所によりましては実現難の所が生ずることを憂えるのであります。この六・三制の義務教育の性質に鑑みまして、私は地方財政の窮乏と届み合せまして、これは当然國の義務負担に属すべきものでありまするからして、この六・三制による教育費は全部國庫負担といたすべきものであるということを切望して止まないのであります。日本の急務は文化國家の建設、民主主義の実現にあるのであります。而してその実現の促進は教育より根本的なものはないのであります。然るに朝野共に教育に対してましては從來の如くに関心が薄いのであります。その費用の負担すらこれを惜んでおります。この新日本の再建の基礎をなす教育費に僅か七億円、全予算の一%だにも及ばないところの費用を出すすら容易でないということは、誠に嘆わしい次第でございます。この際どうか一つ金額國庫負担をお願をいたしたいのであります。
 次に非戦災者税というものの性質につきましては、いろいろ難点があるようでありまするが、仮に止むを得ざるものといたしましても、この際特殊のものの除外をお願いしたいのであります。その中の一つは農地法によりまして農地を買収せられたところの地主であります。地主は時價の数十分の一ににも当たらない非常な打撃を受けて如何なる課税よりも思い、再起のできない者すら多いのであります。これら概ね財産税を課せられており、更に今次非戰災税を課せられるに至りまするならば、地主は概ね大きな家を持つておるのでありますから、ここに三重の課税ということになるのであります。余りにも不公平であり、國民として、見るに忍びないものがあるのであります。されば財産税を負担させる場合において、既に財産税の負担をいたしましたところの地主には、これを除外してやればよかろうと思うのであります。終戰直後の農地の買上價格は決定当時と今日では非常な差が生じております。水田が八百円乃至千円……今日一反歩三万円前後を以て賣買せられておるということすら耳にいたすのであります。すべての公定價格が高率に引上げられました。然るに農地だけはそのままとなつておるのであります。農地の決定價格当時の事情に比しまして、当然公定價格を上ぐべきであると思うのであります。我が國のこの農地制度に対する基本観念は、ソ連がドイツ占領地区におきまして、百エーカー以上の大地主の土地を没收したような没收主義によるものでなくして、低廉なりと雖も、代價を支拂うという方針に出ております。買上主義によるこの價格を決定したものでありまする故に、すべての公定價格が高率に上げられて農地のみ單り顧みられないということは、これは理論の上からも、政策の上からも、私は合わんものであると思うのであります。單にこれは没落の運命にあるところの地主の救済という問題でなくして、政治の公平、文化國家、道義國家の当然の責任であると思うのであります。眞に國民経済を建直し、生活の安定を図るにはインフレを抑圧するとか、或いは行政整理を徹底的に斷行するとか、或いは官職の廃合なり、機構組織の改廃なり、その権限の縮小なり、或いは官業民業の整備合理化なり、流通秩序の確立なり、税制機構の整備充実なり、インフレ所得の徹底的徴收或いは公價主義の堅持、生産資本の増加と、いろいろの点は私は挙げて教え切れない程沢山あると思います。併しこれらを実行いたしまするためには、強力なる内閣の実現を必要とするのでありまするが、現下の政治情勢を以てしては途尚遠きを歎ずるものであります。この際特に考慮をお願いいたしたいことは、官僚の非常なる進出の問題であります。嘗て日本が強力なる軍と官の組織の下におりました。然るに軍が解消されまして官のみとなつたのであります。その官が敗戰の混乱の間に、ますます陣容を拡大強化いたしまして、安本の如き一大勢力を出現するに至つて、今や日本は官僚国家たらんとしておる感があるのであります。これは民主日本の実現とは相反する現状であると思うのであります。官僚の勢力の拡張強化は、無用なる統制強化に或いは封建思想の温存に種々の弊を釀す危險があります。日本の過去の過誤を再び繰返すが如き情勢を誘致せざるやを虞れ、民主主義の発展育成を害するものであると思うのであります。私は國会中心の実現のために大いにこの点をお願いいたしたいのであります。
 尚國会中心主義の実現の一つといたしまして、この國会に強力なる國政の調査機関を設けて頂きたいのであります。官はこの点整備されておりますために、國会は一々材料を官に仰ぎ、教えを請うておるというような始末であります。國会中心の実が挙らない。官僚政治に頭を下げなければならない。官僚を一面に非難しながらも、官僚に引摺られておるという現状を一日も早く脱却いたしまして、眞に國会中心の見事な國策を絶えず作り上げるために立派な調査機関を國会に設けて頂きたいのであります。尚道義を昂揚し、精神を振起し、國家再建の大運動を起すために費用を計上して頂きたいのであります。國民は生きんがために、又食わんがために、道義も精神も荒れるに委せてこれを顧みない。これを口にすれば却て時勢を知らざる者の如く疎んぜられるの有樣であります。教育者も宗教家も爲政者も触るるを避けておるかの如き観があるのであります。かくては坂に車を押すが如く、滔々として惡習というものが風をなすに至りまして、止まる所を知らない有樣であります。これが生産に生活に惡影響を及ぼすことは申すまでもないのであります。而も裕福でありましてこの際國家再建の基本となり得るような農民層と難も、この惡風に滔々として染まつて行くような次第でございます。民は食を以てなすと雖も、道義の大切なること、國家再建のために精神を振起することの必要なることは、経済の復興、生活の安定のために必要欠くべからざる基本でありまして、経済と並び車の両輪の始く必要なものであると思うのであります。大いにこの点に御努力を願いたいのであります。廟堂に立つ者がこの点に思いをいたさない。徒に政爭に没頭し、或いは同党相食んで天下にその醜を曝らし、民をして蹙顰愁嘆せしむ。國家の復興ならず、日に月に危機に臨むということは当然のことであると思うのであります。幕末に野州櫻町が凶作直次ぎまして民家離散し、農地は荒廃し、人心頽廃し、遂に救うべからざるに至つたのであります。小田原公は二宮尊徳に命じまして、これが復興の任に当らせたのであります。二宮翁は荒れたる田畑を耕やす前に、先ず荒れたる人の心を耕さなければならないといたしまして、至誠を盡して、道義と精神の回復昂揚に努めたのであります。而して遂に御承知の通り、櫻町の復興に成功したのであります。我が國の窮状というものが甚だしいと雖も、当時の櫻町に及ばないのであります。されば軌に在る者が二宮翁の至誠を以てしたならば、我が國の復興が何ぞむずかしいことがございましよう。ただこの至誠の人なきを悲しむ者であります。策なきにあらず、智なきにあらず、勇なきにあらず、誠なき故であると思うのであります。賓國の文忠公がその牧民忠告に曰く、官吏並びに廟堂に立つ者に忠告して、誠なれば智を生ずと申しております。何ぞ智なき策なきを憂えん。誠であるならば、愛であるならば、智及ばざるなしと思うのであります。國家の再建の途上におきまして、廟堂に立つ参議院諸賢にお願いして止まないことはこの一点であるのであります。これを以て終りといたします。
#6
○委員長(櫻内辰郎君) 御質疑はございませんか。
#7
○木内四郎君 只今遠山公述人から極めて傾聽に値する御意見の御開陳がありましたが、私は簡單に二点お伺いいたしたいと思います。遠山公述人は、特別会計の独立採算制を強調しておられまして、その赤字を一般会計に持込むことは余儀ないということでありますが、私が伺いたいのは、然らば鉄道の会計などによりまして歳入を増さなければならん、増すためには、料金を上げる必要がある。若しこれができんとすれば、一方において歳出を減らさなければならん。曾て二十四万人であつたものが今日、六十万人を超えておる、待遇を改善しないにしても、若し歳出を減らすとすれば人を減らさなければならん。いわんや待遇を改善するためには一層その必要がある。独立採算制のためには、どの方策がいいと考えられるか、それが第一点であります。
 それから第二点は、六・三制を実施するためには、来年度においては百億円、再来年度においては更に多くの金が要るという話がありますが、本年度において十四億円さえもこれは半分にしなければならんというような國家の財政の実情であるので、来年度においても非常に困難がありはしないかと思うのですが、若し仮に非常にその費用が削減されて、人的にも物的にも、設備が不完全というよりも、殆どできんというような情態においても、尚且六・三制は行なつて行くべきであり、行なつた方がいいと考えられるかどうか、この二点を伺いたい。
#8
○公述人(遠山信一郎君) 第一点につきましては、これは率直に申しまするならば思い切つてやはり整理をやらなければならんのじやないかと、こう思います。結局このままで行きますれば、やがて多数の職員か犠牲になつてしまわなければならんときが来るのではないか。結局木を枯らさんとする場合において、枝を切らなければならない。その枝を切つて尚足らなければますます太い枝まで切らなければならんという教えがございまするが、そういう行き方で行かなければ、今僅かなところで吝んでおりますると、最後には非常に犠牲が殖えるのじやないか。こういうふうに思われるのであります。勿論一面においにそういう官業を民業として本当に能率的にやらせようという意見もあるようでありますが、この点はいろいろ国家の情勢とも関連がありまするので、尚考究の余地があるものと思います。
 尚六・三制の問題でございまするが、もともと六・三制を、今日の日本の状況においてやるということは、非常な困難が伴うということは誰しも予測したところでございます。併し一旦これを行うということに決定をしてスタートした以上は、飽くまでもこれはやらなければならんことであります。そこでその費用というものを私は只今申しましたように、國庫の金額負担とすべきものと思うのでありまするが、その費用は他のものを節約してもこれはやらなければならん問題であると思います。尤も私は日本の教育制度というものが、すべて官に重きをおいておる。官立というものでなければ学校らしくないということに多年馴れて参りました。事実そのために官立学校、あるいは公立学校というものは非常にすべてが整備されておるのであります。一面私立学校というものは、どうしてもこれは発展いたしません。併しここに日本の官僚の行き方と封建的な行き方、乃至は眞の民主教育が徹底しない禍根があるのではないかということを根本的に考えておる一人であります。そこで私はこの義務教育制は、どこまでも全額國庫でやるけれどもが、それ以上の学校は今後大いに民に移してしまつた方がいいじやないかと思う者の一人でございます。固よりその過渡期におきましては、いろいろの欠陷が現れましようけれどもが、眞の民主國家を作る、眞の官製でない國民を作り上げるために、教育のいわゆる民間化ということを私は特に力を入れべきものじやないかと、こういうふうに考える一人でございます。これは今の状況を以てしては、なかなか困難と思いまするが、併し思い切つてこれをやらなければ、いずれのときにか、日本が本当に官という思想、階級思想から離れた眞の英米に伍する民主國民ができ上るかどうかということを憂えるものであります。思い切つて断行する。それに対して善処すれば、必ずよき時代が來ると思うのであります。そういう意味合から、果して答弁になるかどうかわかりませんが、私の意見を申上げた次第であります。
#9
○委員長(櫻内辰郎君) 次は丸岡秀子氏にお願いいたします。丸岡秀子君
#10
○公述人(丸岡秀子君) 私は社会的には、日本協同組合同衆の常任中央委員をいたしております丸岡秀子でございます。從つて私は今日は皆樣に主婦として父母として、それは都市の婦人ばかりでなく、農村の婦人の立場をも含めまして、本年度の追加予算を批判して見たいと存じます。
 本年度の追加予算の先ず藏出を主として、この立場から險討いたして見ましたがこれは全く母としても主婦としても唖然とするばかりでございました。それは申上げるまでもなく、総額の四割余を占むる終戰処理額又は賠償施設処理費、この二つは一應別といたしても、價格調整費であるとか、地方分與金、公共事業費、運輸通信会計繰入金等々を以て、歳出の大部分が占められまして、私たち都市、農村の主婦や母、又勤労婦人や全國百万に及ぶと言われておりますところの未亡へ等に関係のある項目になつておる歳出の部面がどこに在るか、これが私共の最も深い関心を持つ点でございます。大きな眼を開いてこの部厚な報告書をよく調べて見ましても、僅かに学童の六・三制の実施による校舍の整備費が、公共事業費の一部分に隠れるように計上されておるという状態でございます。又生活保護費の十八億の中の何割かの中に見られてる程度でございます。更に母として義務教育費を調べて見ますと、これも僅かに、追加予算におきましては、五千六百七十四万円という誠に貧しいものでございます。私が喋々と申上げるまでもなく、今家庭の母親は毎日の生活に追われまして疲れ、殊に農村の母たちは、都市の婦人以上に耕作者として文母として何重もの生活担当者であるために、子供の教育に力を注ぐ暇もない有樣でおります。やつとぼろを綴つて子供に纏わせ、又お芋をふかして與えつ放しになつておるのであり、石鹸のない水洗濯を続けて、その日その日を過ごしておるという、そういう生活状態の中におります。この状態の母から申しますれば、今こそ子供の教育を全面的に学校に委ねざるを得ない、委ねる以外に方法のないところまで追詰められてしまつております。ところがその学校の大部分は、硝子のかけに校舍であり、机、椅子の足りない学校だらけでございまして、この冬火の氣のない教室で寒い風に吹かれながら過ごす、これが学ぶ者と導く者との現在の環境でございます。この環境の中で果して將來の文化國家を作り上げ、世界の文化に仲間入りをすることを、私共再建の大きな目標といたしておりますが、この國民の大きな希望を果して達することが、こういう状態でできるでございましようか。先生は時々休んで家計のやり繰りをせずしては生きて行かれず、子供を託す母も窶れて疲れております。一つ例を挙げて給食の問題を申上げて見ますと、最近大きな都市だけでなくして、全國的に給食の問題が強調されて参り、又実行されて参つておりますが、これを続けることになりまして兒童の栄養を高めておることは事実でございます。現在一週間に四回、兒童に百八十カロリーの給食を與えております。この百八十カロリーの栄養は現在の家庭で補えないカロリーであるわけでございます。併しこれが最近になつて、一人の兒童の一ケ月のこの給食費というものが、大体九月以前では約五円程度の家庭の負担でございましたが、急に一人について一ケ月約六十円から七十円程度になつて参りました。これは勿論学校によつて異なりはいたしますので、この六、七十円の計算はまだ安い方でございます。その上、学校の修繕も新調品も殆どが保護者会費によつて賄われておる点を私は強調しないではおられません。私の近所の小学校では千人の学童がおります小学校で、これに区から参ります一年間の費用が全額で五千五百二十五円であります。一年間に千人の生徒に五千五百二十五円の区費が送られております。これですべてを賄えというわけでございます。昨日この小学校の先生にお会いしまして話をいたしましたら、終戰後まだ一度もこの学校に修繕のためのたつた一枚の板も、机一脚も区から貰つたことがない。殆んど保護者会費によつて賄つておる。その保護者会費は一年間に十万九千円をこの学校で見積られております。この十万九千円ですべてを賄つておるという状態でございます。併しこのことは兒童の教育上、非常に面白くない結果がいろいろ出て來て困ると先生が嘆いておられました。多く負担をしたり、寄附をしたりして呉れる父兄に対しては、先生がどんなに肩身の狭い思いをするか分らない。又それを負担できない子供達が、他の子供によつて侮蔑の眼を以て見られるというような面白くない結果も出て來ておると話しておられました。
 その外、失業保險十億、給與改善費上五十四億、生活保護費十八億という貧しさでございます。又同胞引揚費も僅かに五億という数字でございますが、これも私共婦人の立場からいたしますれば、この同胞引揚費の内容を險討して見ますと、外地引揚官公職員の給與金、帰還輸送費等に当てられたものでありまして、一般邦人の引揚の引揚後における生活の援護にいたつては、申上げるまでもなものでありまして、全く佗しい生活をいたしておるのが引揚者であり、引揚者と言えば。これは困窮者の代名詞であるかの如き生活に現在固定してしまつたという状態でございます。又農村婦人の立場に立ちます時、今日本の民主化の量も根本的な一環として、國民の大きな関心を持たれております農地改革についての費用が僅かに六億に過ぎぬということは、大きな不満でございます。而もそれらは農地委員会における給與の引上と登記に要する経費が主なものでございます。農地の改革の徹底は農地委員を挙げて置きさえすればいいという、そういうお座なりの見解の反映と見られても止むを得ないであろうと考えられます。農地改革を徹底化するための啓蒙宣傳費などというものは、もつと大きく浮び上つていいのではないかと考えられます。又農業生産調整費二億円という数字でありますが、苟も農村の民主的組織によつて食糧生産物の生産及び供出を合理的に確保し、肥料、農機具、農業用藥品等の農業用生産資材の公正なる配給を確保いたしますために必要な費用として、相変らず農林本省における事務機構を整備するために、又地方の調整委員会費の補助をするためにという費目でありまして、眞に農業生産者としての四五%を占める農村婦人の労苦を軽減させるための生活的な諸設備、例えば共同託兒所とか、共同娯楽設備とか、共同製パン所とかいうもの、これは決して軽々しく見過すべき問題ではなくて、今日本の食糧問題が、かくも大きな骨身に浸みた問題となつておることを眞面目に考えますならば、この食糧生産者たる農村婦人の問題が考慮され、当然この調整費の中に大きな項目として婦人の生活調整目が掲げられていていいと考えます。更に今日の農村の機械化、技術化は農業生産の決定的な條件であることは申すまでもございませんが、これを滲透させて行く施設も僅か一億に過ぎない状態では五百万農家に及ぼす力がどの程度か思いやられるものがございます。
 こう歳出の面を調べて見まして、結論的には結局戰爭中無謀な軍國主義が文化、教育、國民の幸福に関する問題は、すべて不要不急であるという名の下にこれを圧殺して顧みませんでした。今これと同じことが政治的に抵抗力の弱い私達主婦や、母や、未亡人や兒童の犠牲によつて同樣な結果が生じておるといたしましたならば、新憲法下に胸膨らむ思いで新しい生活を待望しております國民にどれ程暗いものを與える結果となるか。私達は今言語に絶した國難な國情をよく存じております。婦人や働く者の立場はただ救済や保護を求める消極的なものであつてはならない。それらは多かれ少かれ、祖國再建の積極的な面における行動が要求され、又そういう要求に基くものが國政や國費の上に表現されるものでなければならないと思います。併し先程も申上げましたように、引揚援護費が多く退職役人の救済や中間機関の補助金に使われて、実際の引揚の援護に直接役に立つでいないという指摘が行われましたように、家庭生活をあずかる主婦と、配給問題につきましても同樣な意見が益々盛でありまして、新しい時代の政策としては腑に落ちないことばかり多いように考えられます。予算に現われておりますものは、すべて手続機関や中間調整機関や助成機関、更に直接生産に注入されるのでなく、金融機関等に対する繰入が大部分でありまして、この点は婦人といたしまして誠に遺憾でございます。健康にして文化的な最小限度の生活や、人たるに値する生活に比べて全く羊頭を掲げて狗肉を売るの類と言われてもいたし方ないと思います。一体この予算案に対して、勤勞者の党と言われる社会党首班内閣の面目がどこに現われておりましまうが、今まで数千回編成されました予算と比べて何の変りもないものではないかと考えられます。即ち國民生活の安定に眼を見開くような政策があるとか、又生産増強に劃期的な予算があるとか、少くとも暗く打ちひしがれた國民に希望と激勵とを與えるような面がどこにも感じられないということは、誠に残念なことでございます。そうしてそこにあるのは全く過去の惰性と、從來の戰爭中の角度からする予算編成の精神が多く盛られておると考えられます。私共は都市農村を通じての勤勞婦人及び主婦、未亡人の要求として次のような政策の実現と予算の編成をお願いいたしたいと思うものであります。
 その一つは配給機構の再編成でございます。これの統制の範囲を重要なもののみに最小限に縮減して欲しいということ、例えば生鮮食料品の統制などは、主婦の立場かち申しますれば無鉄砲かも知れませんけれども、この統制は解除して貰つた方が、私達の生活は樂になるのであります。それから地域別主婦会というようなものを作りまして、そうして現在の配給機構の管理をさせて欲しいと思います。少くともその運営方法へ婦人を参加させて貰つたならば、現在のこの配給機構、配給方法というようなものが婦人の参加によつて、ずつと改善され、よくなるだろうということは確信を持つて申し上げることができます。又学童、学校教育施設の最小限度の充足、これも先に申し上げましたような給食費だけでも國庫負担にしてみたらどうか、先程義務教育費は全額国庫負担というお話がございましたが、私もこれは全面的に賛成でございます。それは國家の子供という意味で、将來の國を背負つて立つ者を育成するという意味で、先程給食費の問題も随分縷々申し上げましたが、全く貧乏人の子沢山で四人も五人も子供を小学校に通わせております母親が、現在一ケ月一人七十円の給食費を出すということも並大低なことではございません。考えますのに私選は給食費もそれから保護者会費もこれは形の変つた税金を納めていることだというような話を寄り寄りいたして、笑つておる次第でございます。
 又第三に農村婦人の特殊的な要求、これも前に申し上げましたように、農地改革を徹底化させるためには、どうしても農村婦人の負担を軽減させて、その農地改革を徹底させる、その一方の分担者としての使命を十分達成させて欲しいと思います。殊に日本の封建性を拂拭するという意味におきましても、農村婦人の生活の向上とこれの自覚という問題が随分大きな日本の問題ではないかしらと考えられる次第でございます。岡山縣の興除村、これは私まだ実際に見たことがありませんが、岡山縣の興除村が機械化されたために、婦人の地位が非常に上つたという報告はあちらこちらで読んでおりますが、成る程と肯けるものがございます。次に第四といたしまして未亡人の対策、これは只今百万の未亡人が日本全國に涙の生活をしておると考えられます。戰爭に因る最も大きな犠牲者であり、その悲しみを毎日背負つておる未亡人の問題、一番先に取上げて解決しなければならない問題でありつつ、この問題が誰も痛くて觸れることができない。觸れれば解決しなければならない。併し解決の途が個人の力では絶対にあり得ない。今までの封建的な家族制度の下では、そういうふうな未亡人の問題も、その親戚とか、縁故とかによつて救済されるまだ余裕もございましたけれども、最近の情勢では、そういう余裕が全くない。個人の力では何ともし難い。どうしてもこれは國家の力で解決して欲しいと思います。如何に嚴しい現実に佗しく暮しておるか、私共は今未亡人連盟の提唱というふうなことが寄り寄り話されておりますが、それと共に國家に大きく予算が組まれまして、これらの婦人の自主的更生への指導が強力になされて欲しいと願われます。又復員子弟の教育と生活の問題、最近の險しい世相の中に、復員子弟の犯罪が相当目立つて参つておりますが、復員して参りました子弟が温かい家庭に迎えらさて、若し納得の行く生活ができますならば、そういう犯罪に向う余地もない更生の生活ができる筈でございます。又浮浪兒の問題、これも私達母として、主婦として、どうしてもこれは國として根本的な対策を立て、それの解決方法として、歳出の面で、せめてどこかに浮浪兒対策の予算が組まるべき内閣ではないかしらと考えています。こうして取上げて参りますと、形だけ整つて國会においてお座なりの答辯をする、そういう予算ではなくして、どうか眞面目に、私達の胸を打つような、そういう施策を盛つたところの、血の通つた、脈々とした予算が組立てられなければならない現状であり、又内閣であらねばならないと考えております。歳入の面は私達婦人が喋々申上げるまでもないことと存じますが、ちよつと一言だけ、やはり私共も租税体系は直接税重課と高率累進の採用によつて、形の上では一應納存の行く体形が整えられておるようでありますが、併し実際面には高額所得者の負担する分は所得税、法人税を合せても僅かに百億円足らずで、莫大な予算は殆ど大衆の肩に掛つているということ、即ち非戰災家屋税と非戰災者税、臨時増加所得税や間接税によつて八百億近くが大衆の肩に掛り、酒、煙草等の官業收入の大幅引止げという姿になつていることには多くの批判が集中されておりますが、唯最も問題になります点は、國民大衆が指摘しておりますように、闇利得者や新興階級の所得の捕捉であります。これが眞面目に徹底的にやられるのでなければ、どんなに立派な時宜を得た課税体系ができていても、それは大衆の眼を蔽う隠れ簑と言わねばならない。これが納税の網から公然と逃れていて、そうして主婦であり母である私達が税金の網の中で喘いで生活を続けておるということは、何としてもこれは黙つておるわけには参りません。歳入歳出ともに労働者の党を代表しておると言われる社会党的では絶対にない。少くとも國民の九分九厘を占める勤労者を代表すべき党の予算とは言えないと存じます。國民全体の負担で賄われておる國家財政が、どのように組まれ、どのような方向に使われるかを知ることこそ國民の当然の権利であるにも拘わらず、又國会の現在の会期では徹底的の予算審議も果して行うことができるかどうかということも、私達主婦として母として疑問に考えておる点でございます。この内容を十分に國民に愬えるように御審議を願いたいと存じます。主婦として母として納得の行くように御審議を願い、それの具体化に皆樣方の力によつて御努力願いたいとお願いする次第でございます。(拍手)
#11
○委員長(櫻内辰郎君) 御質疑はございませんか。御質疑がなければ次は東京財務局事務官新井治次氏にお願いいたします。新井治次君。
#12
○公述人(新井治次君) 私は三十四年の税務官吏の体驗に徴しまして、只今國会で審議をいたされておりまする本年度の歳入予算の中租税收入の千三百三十二億円余り、果してこれは確保し得るか、健全財政は維持可能であるか、現在の税務の第一線の実情に照らしまして、聊か疑問なきを得ないのであります。勿論この租税收入の確保につきましては、この部面を担当いたしまする我々税務官吏の責任であります。又天職でありまするが故に、努力することは決して惜しむものではないのであります。どうか予算案審議に当りまして十分考慮され、御配慮を煩わしたい二、三の事項を申上げて見たいと思うのであります。
 先ず第一は税務官吏の傳統的精神を活かせという問題でございます。從來國家予算の審議の状況をこれはいわゆる予算分取り主義の言葉の下に、歳出面に重点が置かれたように考えられます。歳入部面は比較的に等閑視された傾向にあつたのではないかという感を與えたのであります。從いましてこの歳入部面を担当いたしまする我々下級税務官吏に対する物質的精神的の理解も、これ又等閑に視されておつたのではないか、かように考えられるのであります。由來税務官吏は早出晩退、全く時間の観念もありませんでした。全智全能を打込んで税と取組んだ以上は、職務に対する社会の非難もさ程苦慮することもなく、馬車馬の如く税を中心に邁進することをその精神といたし、又これを誇りとしたのであります。上司も亦これを徳とし、美風として賞讃せられたのでございます。この馬車馬的の精神が物心両面について盲目的にしたと言わざるを得ない。この盲目者に対して、政府はどういう手を打つたか、何ら手を打つことなく今日に至つておるのであります。勿論目醒めたかつた我々下級税務官吏に一端の責もございましよう。併し一つの枠内において指導され、育てられておるのでありまするので、これはやはり当局者に責任もあろうと考えるのであります。ここに待遇改善が強く要求され、叫ばれる所以ぢやないかと考えるのであります。下級税務官吏がその大部分を農家の子弟又は税務官吏の子弟が占める状況であるのによりましても、その生活程度は極めて低いのであります。そうして又この下級税務官軍の一体末路はどうであるか、壽命はどうであるか、停年により退職退官した後幾年生きたか、これを私の先輩について調査して見まするのに、一番永く生きた人で十五年でございます。平均壽命は四年にならないのでございます。大部分は退官後三年以内にこの世を去るという悲惨の状態であるのであります。如何に在職中に骨身を削り職務に忠実であつたか、これらは政府みずからがこの方面の各種の統計等によつて比較險討されれば分ることでございますので、こういう点も改善して欲しいと思うのであります。そうしてこの税務の傳統的精神を活かして、歳入の確保に邁進するよう最善の方策を取つて頂きたいと存ずるのであります。
 第三番目には税務署の廳舍、設備等は完備されておるかどうか、予算を使用する官公廳の廳舍、設備は、我々が訪ねて見たところによつて見ましても、概ね完備されておるのであります。この半面におきまして、税務官廳の建物、その所在、その設備は果してどうであるか、税は國民が理解し、納得して納める態勢におかなければならないと考えるのであります。理解し納得するためには、税法の普及宣傳は勿論強力に行われなければならないのであります。然るに宣傳は一般的であります。各納税者個々に合致しない場合も、又ありうるのであります。故に納税者一人々々が理解し得るためには、屡々税務官職に出入ができるいわゆる交通関係等においても、便利な所存を必要とするのであります。然るに所在は極めて不便のところであつて、その建物たるや、狭隘にして誠に暗く、物置倉庫等を利用しておるというのであります。又保健衞生になんらの考慮を拂われていないのが普通の状態でございます。更には器等の設備に至つては、御承知の如く誠に粗末であるのみでなく、例えば椅子の如きは外來者の一部に與えるのみで、大部分は立話で用を足すというような状況であるのであります。かくのごとく納税者の氣分を甚だしく暗くするものがあるのでございます。こんな雰囲氣の上にあつて二度と税務官廳に出入をすることを嫌うのは当然でございます。而も利益を伴なわない税の対談でございますので、周囲の環境、その場の環境等に大いに支配され、税に対する納得が行くか、行かないか疑われるのでございます。故にこの廳舎、設備萬端を完備いたしまして、明朗にして氣安く話合うことこそ、理解し、喜んで納税に協力し得るのであろうと考える次第でございます。
 次は調査旅費等の実費弁償の経費の配付はどういう状況であるか、という問題であります。近時税務官吏の職責に対しまして、世論、漸く認識を深くした傾向にあることは、我々下級税務官吏が意を強くする次第でございます。政府も亦、人員の増加につきまして考慮を拂われておるのでございます。そこで我が東京財務局管下十都縣を通じまして、租税收入の五割強を占むる所得税の調査の実例を申上げて見たいと思うのであります。十都縣の世帶数は四百五十万戸でありますが、その中納税見込世帶二百万世帶でございます。又調査の対象とすべき世帶数は約三百万世帶ございます。これに対して從事する税務官吏は幾人か、人員千六百人でございます。一人当り千八百七十五世帶を担当せなければならんということになります。これを年間三百日を稼動日数といたしますれば、一日当り大世帶強を調査し、これを本人の申告額を檢討し、諸帳簿の整理、納税者間の権衡、本人に対する税務計算の内容の説明等をなさねばならないのでございます。そこで数字的に考察して、調査の完璧は期し得ないのじやないか。説明も十分にできないのじやないか。推定による認定が行われるのではないかという御質問もあろうと存ずるのであります。併しこれに対しては、然りと答えざるを得ないのでございます。私共が長い経驗から申しますと、調査に十分時間をかけ、所得の捕捉が徹底さえいたしますれば、納税者はよく納得し、進んで納税義務を果すという実情でございます。そうして次の納税期には良心的の申告をなすという、これは現在の実情でございます。從來大藏省は最小の経費を以て、最大の効果を挙げることに汲々としておつたのが窺われるのでございます。要は徴收費を大幅に引上げることであろうと思います。終戰以來はその取引に、所得に、帳簿外に整理される部門が非常に多いのでございます。我々といたしましては、各種の資料をあらゆる角度より調査の結果を綜合帰納いたしまして、実体の捕捉に努めておるのでありまするが、限られた人員と経費とでは、この厖大な收入の確保は日暮れて道遠しの感があるのでございます。現段階におきまして必要定員は何程要るか。先す機構の改正も必要でございまするが、從事員一人当り大体三百世帶くらいが理想でございます。從つて東京局の所得税の調査に從事する從事員は、大体一万名程度の人員を必要とする、これが理想でございます。更に調査に伴う旅費等の実費弁償の諸経費が甚だ寡少なることでございます。例を東京都内の各署についで見まするに、本年の上半期までは一日の支給額が五円と七円の二通りであつたのであります。最近漸く一日の支給額を二十円に増額せられて参つたのでありまするが、この日額二十円、月に十五日分が配付予算額として参るのであります。ところが実際は二十日間以上出張せねばならん。而も專門的の知識を活用する点よりいたしまして、担当は各業種目ごとに受持つのが常態でございます。從つて電車賃は一日十円を要し、二ケ月に一度は靴の修繕もなさねばならない。この費用が三百円見当といたしまして、一ケ月の実費は三百五十円になるのでございます。これに対して十五日分三百円の支給でありますので、この差引赤字五十円は勢い給料に食い込むという状況でございます。又地方にありましては、主に自轉車を利用するという状況でございまするが、自轉車の維持費は年間安く見積つても五千円はかかるのであります。この赤字の千余円もこれ亦給料に食い込むという実情でございます。その他筆墨費は全部自弁であります。この方面の改善も全財から要求しております待遇改善と併行いたしまして、急速に断行いたして貰わなければ、今日の厖大な歳入の確保は不能であると、明確に申上げて置きたいのでであります。
 最後に税制度改正に当りまして、從來実情を無視して行われてはいないかという点でございます。税法は国民一般に理解し得る平易な税法であつて、而も習熟せしめなければならないと考えるのであります。然るにここ数年間に幾度の改正が行われたか、新税の創設は幾つ行われたか、この改正、創設が税務機構に合致して行われたかどうか、租税法規の複雜難解であることは、納税者の齊しく苦言を呈するところでございます。立法に当りましては、理論に走ることを避けまして、実体に即したる基本的の規定を設けることでございます。而して国民経済に順應せしむるよう、その運用に重点を置くべきであると思うのであります。そこで国民税であります所得税について考究して見まするに、現行法は誠に難解ではありまするが、最も民主的に改正されたのでありまするから、当分の間根本的改正を行わないということを前提といたしまして、この税法を前提に、現在の税務機構は果して合致しておるかどうか。現在税務署の機構は、直税課において調査、更正決定を行い、庶務課において徴收事務を行うのでございます。ところが現在、所得税の申告納税制度の本質に鑑みまして、一人当りの担当を三百世帶程度といたしまして、むしろ直税、庶務という制度を廃しまして、賦課、徴收を一元的になさしむるように機構を改正せねばならんと思うのであります。
 第二には、税法中に税籍の規定を設けることでございます。税籍は所得税法と言わず、すべての税法に必らず規定すべきであると考えるのであります。即ち税籍を戸籍と同樣に確立いたしまして、國民に普及させると共に、税籍を中心にあらゆる法令をこれに調和せしめる、而して脱税、滯納防止を図ることは勿論でありますが、納税道義心の昴揚に努めなければならんと思うのであります。
 第三番目には、國民皆税の趣旨を普及せしむることに中心を置かなくちやならんと思うのであります。所得税は國民税たるの本質が十分備わつてあるのでありまするから、特殊の世帶を除いては、或程度の最低目標制をとるということも好ましいことではないかということを考えておるのであります。これは敢て税收を上げることを目的としないで、税の意識を昂揚する、高めるという方法として、制度化する必要があるのじやないかと、こう考えておるのであります。
 次は現在の税法の調査権、檢査権を更に強化して貰いたいということでございます。税務の調査に際しまして、税法上に定められた権限の制約を受けることは甚だ遺憾でございます。現在所得の捕捉に当りましても、預貯金の調査を不能ならしめておるということは、調査権を甚だしく弱めておるのであります。而も的確なる所得の捕捉はできないのでございます。的確なる所得の捕捉ができないことは、納税者対摩擦を生ずる原因となるのであります。摩擦を起すことは、下級税務官吏の責任に轉嫁されるという現況でございます。こういう点は十分税法の改正に当つて考えて貰わなくちやならんと思うのであります。特に政府は生産の増強を貯蓄に頼つておるのでありまして、それがために預貯金の調査を不能ならしめるような方向に向つておるようであります。要するに貯蓄の増強の一手段と考えておるように思います。併しこういう面は私は別途に考うべきであろうと思うのであります。強いて税の面から貯蓄の増強を図るといたしますれば、思い切つて現行税率を相当に引下げて行かなければならないのじやないか。そうして余剩所得を生産増強に使用せしむる方策を考えなければならんと思うのであります。一面所得を正確に捕捉することによりまして、税收は税率の引下になつて減少するものではないと確信するものであります。いわば所得を正確に、而も実際の所得を捕捉いたしますれば、多少の税率の引下はこれによつてカバーされると思います。
 以上、私は第一線の税務に携わる一人といたしまして、実情と立場を申上げた次第でございます。如何なる國家の施策も歳入なくしては断じて不能であると考えます。又正に國民生存上の食糧の確保、企業再建上の石炭及び電力の確保、國民生活土の物價の安定、これも勿論必要でありますか、租税こそ、日本再建の鍵であると断じたいのであります。この租税の確保こそ、これは先程來申上げた税務官吏の傳統的精神を活かすと共に、全國財務労働組合より要求してあります待遇改善と並行いたしまして、徴税費を大巾に引上げて貰うということであろうと思うのであります。どうか皆樣方、この我々の実情を十分御考慮なさつて、予算を御審議願いたいと思うのであります。以上。
#13
○委員長(櫻内辰郎君) 御質疑はございませんか。御質疑がなければ、午後一時に再開することとしまして、暫時休憩をいたします。
   午後零日時八分休憩
   ―――――・―――――
   午後一時十七分開会
#14
○委員長(櫻内辰郎君) 只今より開会いたします。最初に官公労協議会常任幹事、岩上新一郎氏にお願いいたします。
#15
○公述人(岩山新一郎君) 全官公廳労働組合連絡協議会常任幹事岩上であります。昭和二十二年度の追加予算案につきまして、これは去る十月二十六日の臨時閣議において決定されまして、当初予算を含めまして、実に二千六十六億という厖大な予算案が、現在我々の前に投げ出されているわけでありますが、その案につきまして、全官公廳を代表いたしまして、二、三御参考に意見を述べさせて頂きます。現在全國の官公廳の労働者諸君二百六十万が、適正價格によるところの物資の完全配給を前提としての最低賃制を確立せよという大きな要求を掲げて鬪爭をいたしております。この鬪爭は先に政府が一方的に決めましたところの、いわゆる千八百円ベース、これに対しての鬪いでありまして、我々が生きるために最低の我々の生活を保障せよという要求であります。千八百円べースが如何に出鱈目なものであるかというようなことについては、既に多言を要しないところでありまして、千八百円の給料を仮に貰つたとしますならば、独り者で給與所得税が三百十八円差引かれるわけであります。手取りが結局千五百数十円になるわけでありますが。千五百数十円という金額は、仮に今政府が賣り出しておりますところのピースを一日一箇喫うならば一ケ月でなくなる金額であります。それにも拘らず政府は千八百円で我々の生活を賄うことができる。おまけにこの十一月には黒字になつて來るのであるというようなことを言つておるわけであります。ただそれたけで既にこの千八百円ベースなるものが、如何にインチキ極まるものであるかということがお分りになると思うのであります。この千八百円べースなるものはこの追加予算並びに本予算に対しまして重大な関係を持つておるのでありまして、現在の予算が果して健全財政であるかどうかというようなことを考える前に、我々はこの予算案が全官公吏の基準賃金を千八百円というところに置いて、いわゆる人件費を千八百円によつて賄つておる。而もあらゆる施設をマル公において支出しておるという基礎の下において成り立つた予算でありまして、既にこの千八百円ベースは我々の鬪爭によつて崩れかかつておる。こういつた際に今組まれておるところの予算が、果して健全なるものであるかどうかということははつきりして来ると思うのであります。從來この予算案に対しましては、去る衆議院の公聽会におきましても、それぞれの專門的な学者、或いは労働組合の代表、或いはその他、各方面から種々批判されまして、既に私がここで、この予算案の性格、内容そういつたことにつきまして、一々申上げるまでもなく、事新しく取上げて説明する必要はないのでありますが、私は全官公廳の代表並びに全財の代表といたしまして、少しく意見を述べさせて戴くわけであります。
 先ず今の予算案を眺めまして、この追加予算が歳入の面において、大衆課税的な收入によつて賄われておること、そうしてその歳出の面においては厖大なるところの終戰処理費並びに資本家救済的支出によつてでき上つておるということが言えると思うのであります。歳入の面においてでありますが、大体本年の予算額二千六十六億円の中、租税收入が千三百二十億円と言われております。その中、所得税を中心といたしまして、この租税が取上げられておること、所得税は六百六十九億円でありまして、租税收入の五〇%を占めておる。にも拘らず、法人税は僅かに六十三億、総体の租税收入の四%に過ぎないこと、それから酒税、物品税等を中心とするところの間接税は非常に多額を占めておりまして、こういうものが知らず知らずの中に、我々一般國民の間から徴收されるわけであります。そうして尚それに加えまして、專賣益金四百五十億という金額は、これは当然一般國民大衆の負担となるべきものでありまして、こういうような仕組によつて取上げられましたところの收入が如何なる方面に支出されるかと申しますならば。先程申上げました終戰処理費並びにその大部分が價格調整費或は出資金というような形で、一部の資本家の利益のために出されておる。勿論この予算案は相当削減されまして、ぎりぎりの予算案であると言われておりますが、削減されたにいたしましても相当多額の予算が計上されておるわけであります。そうして先程、前の公述人が述べられましたように、国民の生活についてはなんら考慮しておらないお座なりの予算であつて、国民生活を保障しておるものでないということが言われたのでありますが、全くその通りでありまして、寒空に叫んでおりますところの小学校の兒童に対しては、六・三制の予算を三十一億から七億に剃るというようなことでありまして、大体支出は資本家の利益を擁護するために出されておるということが言えるわけであります。大藏大臣は過日の衆議院の財政演説におきまして、本年度の國民所得を大体九千億と見積るならば、実に財政資金は二千六十六億円であつて、これが國民所得に占める割合は二割三分に当つておる。であるから相当國民所得中に占める財政資金の過重というものは否めないということを言つておるのでありますが、実にこの二千六十六億中の千三百二十億並びに四百六十億というような專賣益金、こういつたものが果して現在の混乱せる國民経済の下において、一般国民がその負担に堪え得るかどうかというようなことは甚だ疑問なのであります。この予算案を作製するにつきまして大藏当局は、去る七月以来種々協議をいたしまして漸く追加予算案ができたのでありまして、この背後にはこの厖大なるところの支出を賄うために財源をどこに見附けるかという点について、相当苦慮された跡は見受けられるのでありますが、大藏大臣は去る財政演説の中にこういうことも言つております。本予算は予算編成に当つて均衡編成に成功しておる。であるから財政面からは貨幣の増発によるところの赤字は出て來ない。であるから健全財政であるというようなことを言つておるのでありますが、果してこの予算案が健全財政というものであるかどうか。そうしてこれが実行可能なものであるかどうかということを私はここに以下例を述べまして、この予算が実行不可能なものであるということを言いたいと思うのであります。
 先程前の公述人が述べられましたように、この予算案の歳入の中の租税のことがいろいろ問題になつたのでありますが、租税の中の所得税、これが約五〇%で、租税の大半を占めておるのでありますが、この所得税は本年度より申告納税制度になりまして、この申告納税制度が現在の我が國の納税思想に比べて余りに進歩し過ぎた制度であるために、現在までにこの申告納税によつて納税されたところの税金は、政府が最初見込んだところの全收入に比しますと、非常に少額でありまして、この金額は、今まで各委員会等において皆さん方が十分御承知のことと思うのでありますが、実に憂うべき減少を來しているのであります。そうして今日大体租税の未收入分、つまり当初予定いたしましたところの租税收入の中、現に納つている分を除く他の部分は約一千億もある。その一千億近くの税金を、今後五ケ月で、果して現在の税務機構を以てして、この金額が調達が可能であるかどうかという問題は、大きな問題として残されるわけでありまするが、現在全國の税務署におきましては、所得の全更正決定ということに鋭意努力しておりまして、我々の同志は、日夜惡戰苦鬪いたしまして、薄給の中に鬪い続けているのであります。併しながら、最初に申上げました通り、あらゆる問題が、政府の千八百べース、これに絡んで参りまして、我々の待遇は非常に劣惡である。おまけに全國の税務官吏の待遇は、全官公廳の労働者諸君に比しまして、約二号乃至三号低いのでありまして、全國の官公廳の労働者の者の中で最下位にある。こういつたことは、これは先程前委員が言われましたように、長い間の大藏省の傳統で、いわゆる徴税費最小の原則と申しますか、安い月給で余計税金をとらせようという政策と、中に働いておりますところの人達が、よく訓練された奴隷、ということを私達は申すのでありますが、そういうような状態で長く置かれました結果、こういう現象ができて来たのでありまして、現在においては、既に千八百円ベースにおいても食えないのに、その又その下を行つておるというような状態にあるのであります。これは実に現在の日本の租税の徴收費が非常に少いということに原因しているのでありまして、この徴税費の少いということは、あらゆる面に障碍を来しているのであります。試みにこれを具体的に観察して行きますならば、全國の税務署の廳舍の大部分、全國に税務署が四百七十数ケ所あるのでありまするが、その中の二百二十は借家であること、そうしてその中七十一ケ所は戰災を蒙つております。而も、この借家に入つておりますところの借家の状態でありますが、雨の漏る、或いは学校の二階を借りたり、或いは物置に等しいような中で仕事をしておりまして、通風は惡い、それから採光も惡い、健康上誠に宜ろしくない場所で、非能率的な場所において仕事をさせられているわけであります。で、これに対しましては大藏当局は、いろいろこういつた点について考慮しておるというようなことをいうのでありまするが、最近、税務機構の拡充強化のために、全國に八十何ケ所かの新設の税務署ができたわけでありますが、これらの新設署に対して、一銭の予算も計上しておらないのであります。又廳舍と、問題は変りますが、全國の税務官吏が使つておりますところの筆墨、文具費こういつたものは一切使用人の負担になつておりまして、実に他所の人が聞いたら唖然たらざるを得ないのであります。執務しております筆一本、墨一本、インク一つに至るまで、全部使用者がこれを賄つておること。で、こういうような劣惡なる條件の下で結局我々は働いておるのでありますが、最近税務機構の拡充、強化に伴いまして、新規の人員を募集いたすに際しましても、新しい人は絶対入つて來ない。月給が安いから厭だといつて入つて來ない状態であります。その半面薄給の下で到底生活ができないという状態に置かれておりまして、我々の先輩、我いは同僚はどんどん職場を離れて行つてしまいまして、昨年の四月以降、東京の財務局管内におきましても、熟練者が二百五十名も退職しておる状態であります。こういうような状態の下におきまして、果して今の一千億円の税金が可能であるかどうか。私はこの税金は絶対にとれないと言わざるを得ないのであります、これに対しまして、先般来議会等におきましても、この問題を相当重要に取上げて下さいまして、いろいろ論議されておるわけでありますが、現在のままこれを放置しておくならば、本年度の予算は、租税收入の画から必ず崩れて來る。で、今年の税金は絶対とれないと言わざるを得ないのであります。
 以上のような状態でありまして、大分諄々しくなりましたが、我々の同僚であるところの税務官吏がどのくらいな人数で、これだけの仕事をしておるということを申上げますならば、現在東京財務局において事務官の定員が八千三百五十名の中、約四〇%は欠員になつておる。それから雇員が九千三百三十名の中六〇%が欠員になつておる。大体定員の半分の人数でありまして、これを全國的に見ましても大体三万人の人間が、而もその中には非常に慣れない人達、女の人達、そういつた者を加えまして、この重大なるところの租税の歳入をあずかつておる。租税收入の徴收に当つておるわけでありますが、この状態で行きまするならば、繰返して申上げますが、租税は絶対とれないと言わざるを得ないのであります。現在我々は働く者に働くだけの賃金を寄越せということで鬪つておりますが、この鬪いが現在相当強硬に鬪争が展開されておりまして、現在の状態で若し仮に政府が我々の要求を容れずにおくならば、日本の国家は財政面から破綻するであらうということが言われるわけであります。どうか参議院におかれましても今後この追加予算案につきましては、十分愼重に論議せられまして、我々の意見を用いて頂きたいというふうに考えるわけであります。既に本予算案は本日衆議院に上程されまして、近日中に参議院に廻されて来るものと思われるのでありまするが、どうか議員各諸公におかれましては、十分予算案について愼重審議、檢討されまして、我々の意見をその中に採り入れて頂きますことを希望いたしまして、公述人としての公述に代える次第であります。
#16
○委員長(櫻内辰郎君) 御質疑はありませんか。御質疑がありませんければ、次は毎日新聞大阪本社社員酒井信太郎氏にお願いいたします。酒井信太郎君
#17
○公述人(酒井進太郎君) 公聽会に出席の光栄に與りまして誠に有難く厚く御禮申上げます。一言お断り申しておきますが、私は毎日新聞の代表として参つたものではございません。一新聞社員として意見を述べさして頂きます。予め御承知置きを願います。
 私は追加予算案中には、インフレ抑制の方法が殆ど現れていないことを最も遺憾に存じます。先ず税の部面から述べさせて頂きますと、インフレを抑制するのに、大衆課税は何にもならないのであります。却てインフレ昂進することになるのであります。その理由はあとで申上げます。税源をいわゆる新円階級に求めねばならんのでありますがこの度の税制改正案によりますが、凡そ新円階級になられるような人は、頭脳明敏、且その実業的手腕に至りましては、正に海千山千、三舍も避けるようなものがあります。これらのものを所得税で以て捕捉できるか否かは誠に疑わしいものがあります、どうしても特別税によつてこれらの新円階級を補足せねばならんと存ずる次第であります。而して新円階級より徹底的に徴税するには、新円再封鎖、財産申告が効果的であります。その副作用として通貨に対する信用がなくなります。從つて物々交換が行われ、その交換材料を持たない勤労階級が困ることになるのであります。これを防ぐにはあらゆる物資を配給制にすればよいのでありますが、これも戰爭中ならばとも角、今日の状態では誠に期待すべきことは困難であります。
 偖、それではどうして新円階級に課税するか、その方法であります。併し工夫次第では新円階級も相当捕捉することができると思います。先ず財産税、つまり新旧円切替の調査期間以後において、不動産を購入したり、又は家屋を新築又は増築して現にこれを所有する人、今後不動産を購入し、又は家屋を新築又は増築する人に課税するのであります。これは併し大巾にかけて頂かなければならんと存じます。但しこれには除外例を認めます、それは住宅営團の解体に伴いまして、現在そこに住んでおる人がそれを買取る場合、それからそれは家主が税金が拂えないために、家屋を物納した、その場合に現に住んでおる人がそれを拂下を受ける場合、こういうような場合は、税を減免して頂きたいと思います。それから一昨日これを衆議院の財政及び金融委員会の公聽会の席上で申上げましたところが、質問がございまして、然らば借金をして住宅を買つた場合はどうなるのか、そういうことでありまして、その場合には、大低この家屋が抵当に入つておるのであります。貸す方では決して何も抵当を取らずに証文一枚で貸す人は恐らくないだらうと思います。從つて不動産台帳を見れば、大低所有権を取得した日と抵当権が設定された日が大体近いのでありますから、これらによつて判断することができると思います。それからいくら借金をして買つた住宅でありましても、門構の堂々たる住宅なんかは借金をして買つたというても、固より鵜の眞似をする烏でありまして、これらはやはり課税の対象とするのであります。
 それから次に通行税を改正いたします。そうして二等の鉄道の運賃、一、二等汽船運賃を大巾に引上げするのであります。これがために二等の鉄道運賃が現在の倍額程度になるのが効果的ではないかと思います。それに伴いまして、今度はいわゆるタクシイでありますが、これも利用者は大体新円階級に限られておるのであります。尤も病院とか妊産婦などを産院に搬入する場合には、産婆又は医師の証明を以ちまして免税とされたいのであります。これは通行税の関係でありませんが、自家用の自動車を持つておられる方、業務上の都合のために医者とか新聞社には除外して頂きたいと思います。次には個人の住宅用電話に課税するのであります。これは通行料金と同じく引上げて頂きたく存じます。これはその人の職業によりまして、やはり医者とか弁護士とか特に電話を必要とする方には除外して頂きたいき思います。先ずこういつた從來の新円階級を捕捉する工夫をして頂きたいのであります。而してこの増收によりまして、多少とも勤勞者階級の税負担の重圧を軽くすると共に、現在この改正案では、勤勞所得税の基礎控除額は小額であります。これを相当大市に引上げて頂きたいと思います。又非戰災者家屋税等でありますが、これは原案には、都市も田舎も同一扱いにして、賃貸價格の一律に百分の三百となつておりますが、都会よりも田舎の賃貸價格が安いのでありますが、税負担の公平を期する建前から考えまして、現在の官吏の地域手当の区別で、甲、乙、丙とありますが、丙地に相当する地域の賃貸價格はあの倍率を課けて頂きたい。二倍とか、三倍とか、それによつて徴税して頂きたいと存じます。
 次にこの追加予算案の基礎と新物價体系と賃金水準とでありますが、この新物價体系は、先ず最初に通信料金が引上げられ、それから今年の七月鉄道運賃が引上げられ、その後三ケ月以上経過してから新聞の購読料、廣告料が上つたのであります。その間の新聞社の経営というものは惨憺たるものがあります。そうして新聞代が上つて、更に一ケ月経つか、経たん中に、又鉄道運賃とか、通信料金の値上げ云々がされ、これらの運賃を國会の承認なく上げ得る法律が國会に提出されておると承ります。併し鉄道運賃とか、通信料金を引上げれば、これを最もよく利用しておる新聞事業は、元來利益の薄い商賣でありますから、忽ち経営難になります。その結果、又値上を申請しなければなりません。併しこれは新聞事業に限らず、恐らく他の事業もこれに似たような條件であると思います。併しこのいわゆる通信料金の値上の理由でありますが、今の通信料金、郵便、電信、電話の料金であります、これは千二百円ベースのときに決めたものであるから、べースが改訂になれば、当然改訂になるのは当り前であるという御意見でおられたのでは大変な間違いが起るのであります。先ず新聞事業で申しますが、現在の新聞の購読料、廣告料金などは、いわゆる運賃とか、通信料金が基準になつて決つておるのであります。從つて千二百円ベースとは何も関係がありません。それで現在、先ず大きな新聞社におきましては、この通信料金というものが、新聞社総支出の三分の一を占めております。でありますから、この値上の負担というものは、実に新聞社に取つては正に改命的というべきものであります。恐らくこれは外の事業もこれに似たようなものであろうと存じます。でありますから、これに伴いまして、一般物價が上ります、上れば賃上が起るのであります。今度は二千なんぼのベースになるか存じませんが、こんなことをしておれば、結局官業収入の増加に伴いまして、賃上の要求が起る。鼬ごつこばかりであります。又今度の煙草の値上については、禁酒はできても禁煙はなかなか困難であります。無理にこれを止めれば、病人同樣となつて仕事ができないのであります。煙草を喫わない女家族の分を御主人に廻わして頂ければいいのであります。これは恐らく中産階級以上の家庭のことと存じます。いわゆる符生活で家計の苦しい家庭では、奥樣方が大体これを以ちまして少しでも家計を補おうとされる結果、この煙草がいわゆる闇に流れるのであります。この闇煙草でありますが、「新生」、ピース等の半額で取引されております。それだから飛ぶように賣れる。だから四十円の「新生」、五十円のピースが賣れないのは当り前であります。これは專賣法に触れるものでありますから、取締の対象となる。取締られて一番困るのは勤勞者階級、結局は高い煙草を買わねばなりません。それが結局又賃上げ要求の原因ともなるのであります、つまり勤労者は止むを得ず闇買いをして、これが賃上げ要求の原因ともなるのでありますから、その原因をよく吟味して頂きたいのであります。又千八百円水準は現在檢討されつつありますが、大衆課税をされますと、この担税力のない勤労者階級は、これを理由に賃上の要求をいたさざるを得ないのであります。結局賃金と税金が鼬ごつこをする、それで税を決めて頂きます際には、よく勤労者の生活の実態を御参考にして頂きたいと存じます。
 以上述べましたことを、結論として申上げますが、政府がインフレ対策の一つとして、勤労者の賃金を成るべく引上げないようにするならば、その賃金引上の原因たる官業の料金の引上、大衆課税等には細心の注意を拂うことは勿論、生活必需品の必要量を公定價格において確実に入手できるような工夫を煩はしたいのであります。つまり勤労者の収入と、支出の不均衡を來すことのないように、ここに御配慮を願いたいのであります。而してこの新規の財源は、必ず新円階級からとつて頂きたいと思います。而してその方法は、先程述べましたようなあれも、ほんのこの方法の一部と存じます。まだまだ研究すれば、いくらでも手があると思います。私の申上げることは、これを以て終ります。
#18
○委員長(櫻内辰郎君) 質疑はございませんか。御質疑がなければ、次にお願いいたします農林省開拓研究所嘱託、吉見一也氏にお願いいたします。吉見一也君。
#19
○公述人(吉見一也君) 私は個人的な立場から、その限られた範囲、農業関係の問題について私見を述べさして頂きます。
 この予算案の性格或いは財政的な問題いとうものについては、それぞれ專門の学者或いは権威者から、種々な意見が述べられておりますが、我々としましては、末端農村における現実を見まして、予算構成そのものの基盤がいずこにあるかということを、議員諸公におかれて痛烈に論議して頂きたいと思います。
 結果論的に言いますれば、農業生産調整費というものが、調整事務に関する費用というものを主としておる場合に、これが末端の農村調整、農村における生産調整費というところまで行つた場合、如何なる額においてそれが分配されておるか。或いは逆に全國数千或いは数万の町村に対し、いか程の額を基準として、これを割り当てているかということを十分に檢討して頂きたいと思います。
 生産農地改革費においても同樣であります。農地改革というものが、農地委員の給與の低劣ということから、農地委員自体の、而も全國における農地委員の大多数の者は、自作、地主、小作、名前こそ階級的に区別されておりますけれども、殆どが勤労農民であります。彼等が経営主たる重要な位置の、相当な時間を割いて、農地改革事業に携さわるには、それ相当の保障が必要であります。これか十分なされておるかどうかということも、当然問題になると思います。又農地改革の進行状況を見ましても、土地の買上げというものは、或いは強行的に、或いはいわゆる民主的に、順調に行つておる所があるかもしれませんが、これの賣り渡しという問題になりますときに、これは結局農地改革の摂取の精神に違えるものと思いますけれども、均分主義をとる、或いは如何なる方法によつてこれを再分配するかということにおいて、地主、農地委員という側に問題があるのではなくして、この再分配を受ける小作人同志の間に、相剋があるということは、今日の切実な問題であります。これについての農地改革根本の精神、これを如何なる形において実現するか。その実現に関して、如何なる程度の予算的なウエイトを乘せるかということを、今日の非常なる情勢を考える場合に、或いは細かい問題であると言われるかも知れませんけれども、末端から逆に取上げた予算の檢討というものを私はお願いしたいと思います。それから、私の言わんとする問題は、それだけでありますけれども、外に研究、試驗機関に対する費用というものが含まれておりましたが、研究という仕事は、少くとも情熱を持たなくしては行い得ないものです。そういうような意味で、或いは前の方が言われた、よく訓練された奴隷というような表現を以て、簡單に片附けられるかも知れませんが、我々自身としては、公の予算がなければ、みずからの懷ろをはたいても、我々の研究に必要な資材、資料というものを整えるだけの情熱、責任を持つております。然るに私の経験及び又現状において、事務員の机はあつても、研究者の机はないというのが一つの研究、而も國家的に重大性を認めて、國家的に設けられた研究機関におけるところの公の考え方の現れが、ここにあるのではないかと私は考えております。かかる問題について、凡そ予算技術的な問題とはかげ離れたものでありましようけれども、一つの我々の心の持ち方として、議員の皆樣方の御檢討をお願いする次第であります。終り。
#20
○委員長(櫻内辰郎君) 御質疑はございませんか。御質疑がなければ、次は久保山石炭研究所長、久保山雄三氏にお願いいたします。久保山雄三君。
#21
○公述人(久保山雄三君) 石炭研究所の久保山であります。新憲法下に行われます第一回の國会の予算審議に、意見を述べさして頂きます機会をお與え下さいました委員長を始め、委員の皆様方に、愼んで謝意を申上げます。
 先ず私共が現在審議されております予算を檢討するに当りまして、その眼目を奈辺におくかということでありますけれども、私としては、その細部に互つて檢討する時間を許されません関係上、この財政案が、提案理由の説明書の中にたびたび書かれてあります、健全財政であるかどうかということを検討しなければならんと思います。そこで私は、この予算には、安定本部の和田長官が奮鬪努力されて、この案ができ上つたのでありますからして、お世辞にでも健全財政と申さなければならんと思いますけれども、現実の問題は健全財政どころか、全くこれと反対の不健全財政だと申上げなければならんと思います。そこでこの財政の根本の誤りは、現内閣がその目標として基準といたしました昭和九年から十一年の水準に対して六十五倍にしたんだと、こういうところにその間違いがあつたと思うのです。私は若し日本の財政を最も健全なものに建直そうとするならば、それは昭和六年の日本の物價体系をそのまま描写して、それに加うるに当時の自由主義経済、資本主義経済の弊害が、その弊害を是正することによつてのみ、健全財政と言われる財政が立てられるものだと信じておりま手。要するに今日私が公述しようとすることの結論を申上げれば。只今申上げました昭和六年の日本の物價体系その他をそのまま描写せよと、こうお願いいたしたいのであります。それで昭和九年から十一年の欄のそれを標準とした現内閣のこの予算が、なぜに誤りであつたかということを次に御説明申上げますなら、昭和六年の一般予算では十四億七千六百八十七万円の予算が計上されております。それに対して軍事予算、陸軍は二億二千七百四十八万四千円の予算であり、海軍が又一億二千七百十二万の予算であります。これの合計は四億五千四百六十一万円でありましたが、昭和九年には満洲事変というものがありましたので、一躍陸軍の予算が四億四千八百万円と倍以上に殖えておるのであります。海軍も亦同じく二億二千七百万円から四億円に殖えております。この合計が陸軍の昭和六年の陸海合計予算の四億五千万円に対して昭和九年は八億五千百万円と膨脹しておるのであります。かような少くとも軍事費を含んだ二十三億円という、当時としては厖大な予算が組まれておりました、そのときを以て基準とされたところに根本的な誤りが存しておると、こう考えます。ここで、では昭和六年時代の予算と現在の日本の予算とがどういう工合な開きを生じておるかと申しますと、賃金の点で昭和六年には全國の工場労働、その他全國の労働の平均賃金を見ますと、一円七十六銭という平均賃金が出ておりまして然るに現在のこの予算面に現われた予算を見ますと、当時十四億七千万円の予算のころ、工場に働く労働者の賃金は一円七十六銭でありましたので、本來ならば、現在の二千六十六億円の予算は当時に比較しますと、約百四十倍の飛躍を途げておるのであります。そうしてこの十四億七千万円の予算のころは、人件費におきまして一億五千万円を支拂つております。要するに総予算に対して一一%が人件費に支拂われておつたのであります。そうして今度の二千六十六億円のこの予算の面から人件費に支拂われる金額を見ますと、百二十五億四千万円拂われておりますので、これをパーセンテージを出して見ますと、総予算に対する人件費は鶴かに六%に下がつておるわけであります。ここに昭和六年の一一%に対して六%に下つておるというところに、我我は注目しなければならんと思います。ここに然らば、現在の本年度の本予算においては、九十三億円に対して五十四億円の追加予算をここに計上せられておりますけれども、私はこの予算説明書を読んで見まして意外に思いますことは、昨年の十月に比較して物價は二倍半乃至三倍に値上りになつたのであるから、この追加予算を計上しなければならないのだという説明が加えられてあるにもかかわらず、九十三億円に対して既に物價が二倍半乃至二倍に上つたとみずから言つていながら、五十四億円即ち六〇%の人件費の追加をしか見てないところに私は不合理な点が存すると思います。納得の行かない点が存すると思います。もつと具体的に申上げるならば、政府の申されておるように、昨年の十月から現在では恐らく物價は三倍に飛躍しておることは私どもも頷ける所でありますからして、若し本年度の本予算において九十三億円というが計上されておりますのは、恐らく昨年の十月、十二月、このごろの予算編成にかかるものであると考えますので、九十三億円の本予算は、昨年の十月ごろを基準として考えられたものだと私どもは解釈しなければならんのであります。從つてそういう工合に考えて参りますと、ここに追加さるべき予算は、人件費におい工九十三億円の三倍の予算となつて現われて來なければならんと考えるのであります。要するに、二百七十億円の人件費が計上されてこそ初めて私は妥当なる人件費だと、こう考えてよろしいと思います。私がそう申上げますと、それは昭和六年当時のものを直ちにここに当て嵌めたならば、終戰処理費の問題がどうなるのだという御疑問もおありになるかも知れませんけれども、本予算の中に現われております終戰処理費六百四十二億円と、賠償施設処理費四十億円を加えまして、六百八十二億円という終戰処理費がありますけれど、これは先に申上げました昭和六年次の十四億七千萬円に比較して四億五千四百万円の軍事費を計上しておりましたので、この割合を見ますと、本予算に對して軍の予算は三〇%を取られていたわけでありますからして、二千億円に射して六百八十二億円の予算を終戰処理費に取られましても、それは本予算の三三%にしか過ぎませんので、大体昭和六年當時の軍事予算を考えますならば、当時の状態と彷彿としておると申上げてよいと思います。私がかように申上げますと、それは昭和六年時代には國民一人当りの、即ち働く者一へ当りの生産能率がよかつたのではないか、だからそれだけの貸金が支拂われたのだと、こう言われるかも知れません。勿論私が昭和六年頃の財政に日本の経済界をそのまま当て嵌めろと申上げることは米一升四十銭であり、米一升が四十銭ならば、女事務員の初任給は、女学校を卒業したばかりの者ならば八十銭で食えるのだどいう、この常識をそのまま当て嵌めよと申上げるわけでありますからして、只今申上げました一人当りの生産能率が下つておるから、それだけは出せないのだと、こういう解釋を当然されることと思います。勿論私もその問題を解決するごとこそ、日本の再建ができるのだと申上げなければならんと思います。私の專門であります炭鉱の如きも、日本の記録を見ますと炭鉱で働く者一人当一日の出炭量は〇・八トンでありました。併しそれが終戰後の今日ではその三分の一程度に低下しておりますので、私は一般予算が百四十倍に上つたから、炭鉱労働者の賃金も百四十倍に上げろと、こう申上げるわけではありません。少くとも今日炭鉱においての生産能率が低下しておるのと同じように、工場労働は勿論、一般の働く人達の能率が低下しておることはもとよりでありますからして、ここに日本が本当に建直ろうとするならば、一人当りの能率を昭和六年当時まで持つて行くことに最善の努力を拂わなければならんと思うのであります。從つて私は本予算の中に、ここに辛うじて僅かに載せられておりますことは、研究試驗所の費用として七億二千五百万円本予算において計上されておりますが、それに対しての追加予算としては、僅かに五千百万円追加されております。それも新しい拡張費でなく、物價の値上りを補うために僅かに五千四百円の計上をされておりますのですが、この本予算の七億二千五百万円と難も、決して日本の生産能率を飛躍的に向上させるために計上されたのでなく、今日まで既存の研究実驗施設の恐らく維持程度に止められたものに過ぎないことが、この予算で明瞭に窺われるのでありますけれど、私はこの多くの予算のある中で、時間の関係でこの点を一つ具さに皆さん方にお聞き願つて、私の公述を終りたいと思います。この調査研究費を私は飛躍的に拡大することによつて、先刻申上げました昭和六年次の生産能率に引上げることができるのだと、こう考える次第であります。それば炭鉱の例を申上げますと、如何に訓練が能率を飛躍させるものであるかということを如実に示しておりますことは、炭鉱の中の一つの作業として、坑内で運搬器に石炭をつぎ込む作業があります。その作業を例えば実驗の記録で申上げますと、三井鉱山に田川鉱業所というのがありまして、これは勿論日本の大炭鉱の一つでありますけれども、そこの代表者が二トン四分の石炭をスコツプでつぎ込みますのに三十五分かかつておりました。ところが非常に訓練されました、勿論同一程度の訓練でありますけれども、その一方の方は、非常に科学的な研究を重ねておつた貝島炭鉱の中の大之浦炭鉱の代表であります桑原某という男は、三十五分かかつた同じ石炭を十七分何秒かで投決しておるのであります。同じ量を、而も三升田川の代表は七十キロという巨大な体格を持つており、大之浦の桑原という青年は僅かに五十五キロに過ぎなかつた小さな体でありながら時間においてはその半分以下で石炭を投げ込んだ記録があるのであります。かように訓練と研究が如何に能率を飛躍させるものであるかは、かような実驗につて明らかになつておるのでありまするからして、ここに現在の日本の能率の飛躍的向上をさせようとするならば、さような劃期的な実驗研究によつて、新らしい指導方法の下に、日本の産業界の全部門を指導することによつてこそ、初めて飛躍的な日本の増産ができると考えるのであります。日本國民一人当りの生産能率を飛躍させてこそ、初めて文化日本の建設ができるのでありますからして、我々がここに例えば一人当りの國民の配給量を殖やそうと考えることも、結論を申上げれは、一人当りの生産効率の向上以外にはないのであります。私はこの追加予算に妥当な人件費を、若し現在の政府が説明するような、昨年の十月の三倍に物價がなつておるというならば、その政府の御説に從つて、人件費の追加予算は、その三倍にならなければならんのだと、こう申上げたことは、或いは解釈の仕樣によつては、只今問題になつておる千八百円ベースを飛躍的に二倍にも引上げろというような結論になるかも知れませんけれども、私が現在の労働賃金を千八百円の倍にもせよと簡單に申上げるわけではあけません。それにはその一人当りの生産量を、昭和六年当時の能率に引上げることを努力することを條件としてからでなければなりませんので、先ずかような賃金体系においても、説明申上げる時間はありませんが、物價体系に、おいても経済安定本部で合理的結論だと申してはおられますけれども、昭和六年当時の最も平均されておりました均衡の保たれておりました当時の物價に比較しますれば、全く不均衡な今日の財政政策であり、物價体系であると申上げてよろしいと思います。故に根本の問題は、最初に申上げました画期的改革、革命的財政の改革をする意味において、昭和六年当時に当て嵌めることを、皆樣方賢明なる委員各位において御推進頂くことを勿論お願いいたしますけれども、その半面において、石炭は勿論、日本の全産業界の生産能率、一人当りの仕事の量というものが混沌として一定するところのない状態が、今日の能率下低となつて現われておることでありますからして、ここに國家的一大予算を以て、石炭は勿論、あらゆる産業部門に働く人一人当りの仕事の量はこれだけだということが、はつきり言明できるような権威ある標準を設定することが、日本経済再建の最大の要件だと存じます。
 丁度時間も参りましたので、どうかこの意味におきまして、日本におけるあらゆる産業部面においての研究実驗の予算を、もつと飛躍的に厖大なものを設けられて、日本の産業再建のために費せられんことを、賢明な委員の方方に特にお願い申上げまして、私の公述に代える次第でございます。御清聽を頂きましてありがとうございました。
#22
○委員長(櫻内辰郎君) 御質疑はございませんか。御質疑がありませんければ、次は日本鉄工業経営者連盟事務局の松田氏にお願いいたします。松田武君。
#23
○公述人(松田武君) 私は只今御紹介を頂きました松田であります。只今から皆樣方の貴重な御時間を割いて頂きまして、私の心からの叫びを聞き、御審議の御参考にして頂く機会を得ましたことを、心より嬉しく存ずるものであります。私は只今委員長より御紹介かありましたように、晝間働きながら夜中央大学の経済学部に学び、來年の三月卒業せんといたしておる者でありますが、過去五年間、即ち予科時代よりの苦しい夜学の体驗から、特に私は教育制度というものに深い関心を持つておる者でありまして、私の教育に対する考え方から、ここに今回の予算案について、私見の一端を述べさして頂くことにいたします。私は御覧のように学生であり、青二才でありまして、ここにおられる御権威の方々と違いますから、どうか軽い御参考の意味でお聞き流し下さいますことを、あらかじめお願いいたしておきます。
 我が國のように國土も狭く、その上非常に八千万という大多数の人口を擁し、資源にも惠まれていない貧乏な國では、過去は勿論のこと、今後はますます働きながら学ばねばならんことは必至であり、我々、次の時代を背負う者にとつて、多少の差こそあれ、これらの難関を乘り越えて、文化国家の大道をまつしぐらに前進しなければならないのであります。かかる日本経済の現状、更には文化國家建設という現在の日本が置かれております客観的な情勢というものを思うときに、教育の果す役割の重要であるということは、私が今更ここで言う必要はないと思います。我々は現在、時間と経済の束縛を受けながらも、鉄の如き意志と燃えるような向学心を持つて、日夜勉励努力しております。然るに我々の行く手には、教育の民主化を阻む不平等が、あたかも我々の次の時代を背負う者の努力を笑い且それを無視するかの如く、山の如く堆高く積んであります。即ち官私、晝夜の差別待遇を始めとする幾多の矛盾がそれであり、遂には働く学生に対する無理解、はては軽蔑にまでなつておる状應であります。このために我々は、そのおかれておる自分たちの國家的な地位というものを忘れ、学生である責務まで果さず、みずからを即下しなければならないことであります。かくの加くして行くならば、國家有爲の人材というものは、かかる不平等な教育制度の下に埋まり、それがひいては日本國家再建の前途を危殆に陷れんとするに至りまして、誠に國家のために歎わしき次第であります。
 かかる状態において、今回百年の大計の下に、いわゆる六・三制の新学制が布かれたことは、以上の観点からみまして、誠に喜ばしきものがある次第であります。この故に六三制の完全実施ということこそは、教育界のみならず、大きな社会問題であり、國家問題であり、子や孫やあるいは弟や妹を持つ世の父兄あるいは兄さん姉さんにとつて、又軽視できない大きな問題であると思うのでありまして、これは文化國家建設という第一歩であり、講和会議の時期を早め、日本の國を一日も早く一人前の國際的な國にする一つの道であると考えております。今回のいわゆる追加予算におきまして、この六・三制の完全実施のために、政府は公共事業費五十二億四千万円の中の七億円を、学校建物設備補助費として計上いたしております。これで一体何ができると政府は考えておるのでありましようか。二三日前の朝日新聞がその一端を報道しておるではありませんか。文部省では、これは三十一億円要求を出したのであります。その中で十四億が國庫負担と決まり、今回の追加予算に七億円が計上され、残りの七億円は予備金や追加予算で賄なうと言われ、國庫負担以外は地方債で賄なうはずであると新聞は報じております。今回の予算は総額八百五十六億円でありまして、六・三制の経費七億円というものは、僅かにその〇・八%に過ぎないのでありまして、百円に対する八十銭です。私の先程申上げました日本國家再建という見地からみまして文化國家再建という見地からみまして、誠に憂慮に湛えないものがあります。僅かにこれだけの金額で、日本の將來が、文化國家として一人前に再建して行くことができるでしようか。私は甚だ疑いなきを得ないのであります。憲法に謳われました武装解除の平和な日本が果してできるか、疑問に思います。物事はすべて初めが大切なのでありまして、スタートでつまずいては駄目であります。以上のように考えまして、私は以下二、三の点につきまして、愼重なる御審議の程をお願いしたいと思うのであります。
 先ず第一に、七億円についてすら相当議論があつたということを聞いております。六・三制の延期論さえあつたということが新聞にも出ておりました。これは先程申上げました理由から当然実施すべきでありまして、目先の日本経済の再建とか、國民生活の向上とかいうこととも勿論大切であります。併しながら國家百年の大計ということは、それ以上に大切でないかと考えるのであります。高い所から長い目をもつて大局を見、必ず強行して戴きたいと念願するものであります。六・三制の新制中学校はその後のカレツジ、ユニバーシテー、パート、タイム制、夜間教育、通信教育という教育大改革の第一歩でありまして、これら全体を含めましたいわゆる新学制こそは、日本再建の第一歩であると考えるのであります。この故に新制中学校こそは、第一歩の中の又第一歩であるという意味で、是非とも実施して戴きたいと存ずるものであります。
 第二に、十四億の國庫負担の中の今回計上されません後の七億円というものが一体どうなるのか私は心配を持つておるのであります。十一月七日に片山首相は衆議院の本会議で財源を考慮して追加したいと答えておられます。ところが最近の新聞によりますと、更に追加予算というものが組まれるように聞いております。一体具体的にこの残つた七億円というものはどういうふうになつておるのでありましようか。この点は、私は疑問に思つておる次第であります。更に國庫負担以外の地方債で賄うと言われております金額は、同じ十一月七日森戸文部大臣は衆議院の本会議で、地方に負担を掛ける積りはないと答えておられます、それでは一体どうする積りでありましようか。やはり新しく追加予算に入れる積りなのでありましようか。それならば今度の追加予算に入れたらいいではありませんか。今年初めの予算である千百四十五億は、追加予算の必要はないように、予備金なども増額して組んだ筈であります。それなのにここで追加予算を組まねばならないことはおかしな話であります。どうしても追加予算が必要であるならば、この上に煩瑣な手続と計算を必要とする更に新しい追加豫算を組む必要のないようにすべきでありまして、更に新しい追加豫算を組めば、益々日本経済を混乱に導くものではないかと心配しております。初めから足りないことが分つておるならば、当然今回の追加豫算の中に組むべきでありまして、私がちよつと單純に考えますのに、追加豫算というものは、國家豫算の中で足りないものを追加補正するものであると思います。若しそういう性質のものでありますならば、足りないことの分つておる部分を追加豫算に組まれずに、近い將來に更に追加豫算を出すということは、追加豫算がなんら追加豫算の意味をなさなくなるのではないかと思うのであります。全体としてこの六・三制につきましての豫算案は実に不明確なぼやけた性質のものでありまして、政府の実施に対する誠意を疑う。
 私は以上綜合いたしまして、ここに結論として六・三制の費用でありますところの文部省の要求しておる最小限の三上一億円こそ、金額國庫負担をお願いたしたいと思うのみならず、否、私は更に少くとも、五十億円というものはどうしても必要であると思います。五十億円というのは、今度の豫算七億円の七倍ではないか。そんな大きな額が、そんな大きな額がとお考えになるでございましようが、御尤もであります。併しここで考えて戴きたいのであります。もう少し、この数字を分析して戴きたいのであります。一体五億円額と言いますのはそんなに考える程大きな額でありましようか、二十年も三十年も前の豫算ならばいざ知らす、現在では少くとも私の見解では決して大きな額でないと思うのであります。今底計上されました、本豫算の八百五十六億に対しまして、この五十億円と言いますものは、僅かに五八%しか当つておりません。又本豫算、今度の追加豫算を合しまして二千六十六億円に対しましては僅に二・四%にしか当らないのであります。かかる比率を國家財政の点から見まして、決して大きな額ではないと思います。又たかだか五十億円そこらの金で、インフレというものがより一層促進し、日本経済が破壞するとは私は到底考えられません。私も聊か経済学を噛つておりまして、この豫算がインフレ豫算であり、健全豫算でないということは分つております。これは他の方々がこり公聽会で指摘されたことでありましようが、インフレであることの要素は外にあるはずであります。決して六・三制の豫算を五十億円に増額したからと言つて、インフレというものがより促進されるということは考えられません。私は七億円の原案を一躍七倍の五十億円にして欲しいとお願いするのでありますが、私はそれをどこから引出して來たのか、どこから五十億円という数字を出して來たのか、その根拠につきまして簡單に申上げることにいたします。この五十億円の計算は枢く大雜把な算術でありまして、私の設げました假定というものが間違つておるならば、話は別であります。新制中学に入ります年齢の子供は数え年で十四歳と十三歳の子供でありま千。十三歳と十四歳とで年齢構成別の人口というものを見ますと、十四歳の方が少いのであります。一應新制中学に人。ます子供の年齢というものを十四歳と抑えまして、それの人口を調べて見ますと、昨年の人口調査の結果では、男女合せまして百七十万六千七百八十九人あるのであります。ところがこの百七十万人の中、全部が新制中学に進学するのではありません。旧制度の中学に行く子供もありまして、差当つては來年度は約六十八万人たけを收容できる学校なり、教室なりがあればいいということになつております。この六十八万人を收容すべき新設教室数は約二方でありまして、建物に直しますと五十万坪であります。ところが坪当りいくらくらいで建設されるかということが問題になりますが、文部省あたりでは五千円乃至六千円くらいと抑えておるのでありましようが、インフレによる物價の騰貴ということなども考えますと、実際には約一万円くらいかかると言われております。一万円とするならば五十五坪は五十億円になるのであります。文部省でさえも三十一億円という数字を言つておるのでありまして、決して私の言つております五十億というものがでたらめな、お座なりな、思い附きの数字ではないのでございます。今までの経驗から見ましても、豫算通り賄つたのでは、破れガラスであり、雨の漏る天井であり、青空教室であります。それのみならず父兄への寄附の強要ということになり、子供の思想の惡化ということも起り、道義の頽廃ということも起り、由々しき社会問題となつた実情であるということを考えるときに、ここではやはり多少の裕りを以て大きな額を計上して置かねばならないと私は考えるわけであります。私の言います五十億円と言いますものが、決してでたらめな大きな額でないことは以上で大体お分りであると思います。ここでは極く大雜把な計算しかしてありませんが、それでも尚最小限度五十億円必要であるという結果なのでおります。その結果政府原案の七億円に対しまして増加される四十三億円の分は、仮に今後十二月から三月までの四ケ月間で全部消化するものと考えますと、月当り約十一億円になるのであります。これをやはり昨年の人口調査の結果でありますところの総人口七千三百十一万四千百三十六人で割りますというと、一人一月当り、約十五円になるのであります。今年の人口調査の結果は先日の新聞にも出ておりましたように七千三百万より殖えておりますので、これで割ればもつと少い結果が出るのであります。又同じ昨年の調査のとき世帶数一千四百七十八万六千三百七世帶で割りますれば、一世帶あたり、一月約七十五円でありまして、僅かに街で賣つております「新生」二十本にも満たない程でありまして、可愛い子供や、可愛い孫や、弟や妹のために、以上の経費を仮に大衆に負担させるという、最も惡い形をとつたといたしましても、決して大きい額ではないと思います。國民一人か月に映画を観る回数を一回減らすとか、或いは一つの世帶で「新生」二十本を煙にしなければ、それたけの耐乏生活で、たつたそれだけで將來の日本を背負つて立つ子供達が喜んで学校に行き、寒空に破れガラスの教室で震えながら勉強しないでも済むのです。財源を最も惡い大衆課税に求めてもこの結果であります。況や政府及び議会の人々の人格、手腕、力量を尊重いたしまするが故に、他に財源がないとは私はどうしても考えられないことだと思うのであります。どうしてもこの行詰りました國家財政の上に財源というものが求められないならば、次の時代の日本を背負つて立つところの子供連のために、我々國民は喜んで耐乏生活をしようではありませんか。かかる困難の道の中にこそ、日本再建の道というものが拓かれ、文化國家への大道があるのだと私は思うのであります。更にこの増加分四十三億円が現在増加しつつある日銀券の発行高より見ましても、決して大きなものではございません。十一月一日より十五日までの増加額は実に十一日間で三十一億二千八百万円でありまして、年末になるにつれ更にインフレの進行と共に、段々増加額が大きくなつて行くであろうことは容易に想像されるところでありますが、今のところ一日平均二億八千四百万円の増加でありまして、四十三億という数字はその十五日分にしか当つておらないのであります。以上ほんの一例でありますが、いろいろな点から学力拙ない私が一生懸命持つている限りのデーターで一應檢討した結果、五十億円という数字は決して大きくなく、又インフレを更に促進するものでもなく、況や財源がないとは考えられない或程度の妥当性を持つた数字ではないかと考えたのであります。私は私なりに、この五十億円というものに確信を持つたのでありまして、本日皆樣に御報告いたす次第であります。私は自分の言う五十億の数字といいますものがその根拠が絶対的に正しいものである、普遍妥当的なものであるとは思つておりません。正確な沢山のデーターをお持ちである筈の皆々樣におかれましても、どうかもう一度この政府のいいますところの七億円なり、私の言います五十億円なりに対しまして、十分の御檢討と御批判をお願いいたしたいのであります。
 以上のような意味から今度の予算案に対しまして、納得が行かず、ここに以上の、五十億円というように修正されんことを希望するのであります。併しながら私と雖も、國家財政が未曾有の困難というものに当面し、予算に見合う物資において不十分な計画しかなく、そのためにこの予算が現実に行い得る予算であるかどうかという点に対しましては、勿論疑問を持つております。併しながら仮令物資が十分あつたといたしましても、予算が少くては何にもなりません。物の面も大切ではありますか、あるだけの物を十二分に活かして使うためには、先ず予算というものが大切であると思うのでありまして、その意味からやはりその第一歩に予算というものを考えたのであります。予算削減で地方では建ちつつある学校の工事が中止になつているとさえ、或いは一世帶に四千円、五千円もの寄附が來ておるということが新聞は出ておりますが、日本の國民に愛と誠意と良心とがあるならば、私は可愛い子供連のために黙視できない一つの大きな問題であるということを確信しております。現在私のように夜学に学んでおります者が、東京都下の大学、高專以上で約三十校、恐らく五万人ぐらいおるのではないかと思います。又夜間の中等学校はその数において勿論これ以上であることは容易に想像が附くのでありまして、六・三制によつて今まで経済的に惠まれず、上級学校へ行かれない人々が、義務教育年限延長によつて、更に專門学校以上のパートタイム制、夜間授業、通信授業によつて教育を受けられる機会を得られたことに対しまして、これが夜間の中等学校並びに大学專門学校におる我々兄としての、或いは先輩としての立場と経驗から深い関心を持つておるのでありまして、その第一歩でありますところの新生中等学校がそのスタートにおいて躓き、不十分でありましたならば、國家の前途を憂うるは勿論、自分達の苦難の途を弟や妹、或いは後輩に歩ませたくないという人情のみからしても、一体夜学の学生というものがどんな氣持を持つでありましようか。私が甚だ勝手なことを申し、上げましたのは、國家の前途を憂うる、日本國をより立派な國にしたいという氣持からでありまして、セクト的な夜学生という根情からではないのであります。どうか私の氣持を十分にお酌み取り下され、日本再建のために、党派を超え利害を捨てて愼重なる御審議をされ、十分なる経費を新予算に盛られ、次の時代を背負うべき若人の努力と熱意とに対して裏附けされんことを切望いたします。この青二才の無礼な言辞、態度にも拘らず、最後までお聽き下さいましたことを厚く感謝いたす次第であります。終り。
#24
○委員長(櫻内辰郎君) 御質疑はございませんか。御質疑がなければ、次は会社役員の小田島禎治郎氏にお願いいたします。小田島禎治郎君
#25
○公述人(小田島禎治郎君) 二十二年度追加予算案は、大藏当局か健全財政なりと銘を打つて、相当の御自信と誇りをもつて御提案になつたように承知しておりますが、既往幾年の長い間、赤字財政でなければ國の財政は賄い切れなかつた、いわゆる彌縫財政の連続であつた事情から見て、本年度の予算面から赤字を追放したというこのこと自体が一應健全財政の形態を整えたものと言い得るかも知れないのであります。併し健全予算の本質的價値と申しますのは、表面單に計数の辻褄を合せさえすればよいという編成技術だけでは物足らないのでありまして、その内容に健全性を盛られた、がつちりとした備えが必要ではないかと思うのであります。先ず歳入面を拜見いたしますと、財源の捻出についていろいろ御苦心を拂われた形跡は十分認められるところでありまするが、一般会計の歳入通算二千六十六億の約六十五パーセントは税收入を財源として組立てられておりまする関係上、直接税の如きは最高の課税限界に達しまして、これがために生産面に大きな危機を感じておるのではないかという虞れがあるのであります。又間接税におきましても、大衆課税なりと社会から非難されておりまする通り、相当極端な線にまで達しておるために、政府はあらゆる犠牲を拂つてまでも堅持しようとしておる肝腎の物價体系を破壞し、延いてインフレを激化するような危險が孕んでおると見られておるのであります。財政の膨脹に関連しまして、通貨の増発も当然免れないところでありましようし、この予算運営の前途は必ずしも坦々たるものでないと思うのであります。課税対象となるものは固より國民所得でありますが、本年度の國民所得査定は八千億乃至九千億という線で抑えたように承知しておりますが、この査定は果して正しく把握されておるかどうかというところに私は多大の疑問を持たざるを得ないのであります。現に昨年度におきましても、國民所得の査定に当りまして、同じ大藏省内で主税局と理財局の調査を比較しますと、二千五百億の食い違いがあつたように聞いておるのでありますが、本年度の調査も可なり杜撰なものとすれば、如何にここに新税を設定されましても、又税率を高められたといたしましても、目的の税收は挙げ得られることに結果附けられるではないかと思うのであります。
 現在租税の滯納総額は、約二百億円に近いものであろうと傳えられていますが、これが果して本当だといたしまするならば、將來健全財政を確保維持する上に、大きな悩みを來すことは論のないところでありまして、然らばこの巨額な滯納原因はどこにあるかと申しますと、税制の民主化を目的といたしまして、直接税の申告制度を採用したという趣旨は、もとより結構なのでありますが、納税義務者は、一般的にこれを認識していない。却て脱税を奬勵するような逆効果を見ることでありまして、中には税の納入期日などは、延ばせるたけ延ばした方が得であるかのように履き違えまして、滯納しておる向きも相当あるようであります。併しこれはもとより滯納原因の全部ではないのでありまして、大部分は日常の生活苦の重圧に抑えられまして、事実税金を満足に納められない程、大衆が困つておると見るのが正しいのではないかと思うのであります。不幸にいたしまして、その観測に誤りなかつたといたしますれば、年度内に一千億を突破いたしますと思われます收税目的に、大きな狂いを生じまして、本年度予算の基盤か崩れる虞があるのではないかと思われるのであります。
 大藏大臣が追加予算の提案理由の御説明中に、歳入について勤労大衆の負担軽減する目的で、勤労所得と扶養親族控除の線を相当引上げる半面、インフレ利得者には重税を課し、国民負担の均衡公正を図つたと、かくのように述べられておりまするが、不十分ながらも、勤労所得者に若干の手加減を加えようとしたことは、事実のようであります。併しながら新円階級に重税を課したという御説明には、私は得心の行かないものがあります。尤もこれは技術的に相当困難の伴うことでありましようが、今日一番多く脱税しておるのは、この新円階級なんでありまして、これに向つてもう少し廣汎に、綿密に、メスを入れて頂きたいと思うのであります。近い例としまして、日銀劵発行高は、今日御承知のように、一千七百億に達しておるのでありますが、年末には二千億に近い発行高を予想されるということでありますが、この厖大臣額なる新円の放出は、如何に御当局が鐘や太鼓で貯蓄の奬勵運動をなさつても、金融機関に還濫される額は、数字的に十分な効果を別していないのであります。一方国民の九割以上を占めておりますところの勤労者の懷ろもまた火の車でありまして、実際に勤労者相手の商人は、例外なしにこの春頃を境といたしまして、著しく購買力が極度に低下していることを立証しているのであります。日銀から出た新円は、金融機関にも還らない。大衆の懷ろにもないとすれば、その行方は少数の層に、我々の想像もつかないような莫大なものが集中されていることは、予想されるところでありまして、当局は今後重点的にこの方向を調査されまして、脱税防止に全力を注いで頂きたいと、かくお願いする次第であります。同時に又第三國人に対する課税も十分な御考慮を加えるよう希望する次第であります。
 次に地方財政について申上げるのでありますが、如何に中央財政が健全化されましても、地方財政との均衡を失し、中央、地方を問わず、全面的に全財政の建前をとらなかつたならば、片手落の財政でありまして、誠に憂慮する次第であると思うのであります。政府は六・三制を実施して國民の教育水準を高めようとする御計画は、武裝なき平和文化國家として立上る日本の立場としては、誠に結構な御趣旨であります。併し地方財政に意外の重圧が加わり、現実に破滅の状態に陷つている市町村は少くないと思うのであります。私鎌倉に住んでおりまして、手近な鎌倉市の例を申上げますと、六三制に関連した教育費というものは、本年度の追加予算として今日まで要求されておりますのは、当初予算に比較して、その約六割をしめておる状態であります。明年度よりは、小学校及び初等中学校の十学級の増設に伴いまして、教室の建築を計画しておるのでありますが、この建築費として、臨時部予算に一千二百余万円を計上することになつており、その財源は、二百万円は起債に仰ぐ、一千万円は一般市民の寄附に待つという方針であります。鎌倉の総人口は、現在五万六千余でありまして、世帶数にいたしますと、一万四千見当でありますが、中には要援護者、その他いろいろの事情から、この寄附の負担のできない者もありますから、実際に何程でも寄附し得ると見込まれますのは、一万世帶が頂上だと思うのであります、これはもう既に、市民税その他の税金で、身に余る程の負担をしておるのでありますから、実質的には殆ど余裕を持つていないのでありまするがそれが一世帶平均一千円の寄附としては、先ず容易にこの予定額に達しないだろうと見るのが常識なのであります。更に二百万円の起債の面でありますが、事情余儀なきものとして、主務官廳は、これを許可するかも知れませんのでありますが、仮に許可になりましても、昔のように、地方金融機関は、容易においそれと借入に應じて呉れないという昨今の情勢でありますから、これでは折角起債が許可になりましても、事実借入不可能といたしますれば、意味をなさないのでありまするが、できることでありましたならば、こういう場合には、金融機関から円滑に借入が成功しますように、当局の指示、配慮を得たいと思うのであります。
 更に近く警察制度の改正が行われまして、自治警察の維持経済は、地方費で賄うことになるようでありますが、六・三制確立の財源に行き悩みを來しまして、につちもさつちも行かないような今日、更に巨額の警察費までが、地方費の支弁に置かれるようになりましては、ますます地方財政が行詰りを來しまして、この結果、思想的にも惡い大きな影響を與えるのではないかと思うのであります。
 今回の追加予算に計上されました、六・三制関係予算は、僅か七億円でありまして、これを全國的に割り振つて見ますると、雀の涙程の少額でありまして、その効果は同より期待をかけられないものと思います。政府自体が確信を以て六・三制制度なり、或いは自治警察制度をお定めになる以上、その裏附となる予算について十分な檢討と御考慮をお拂い下記ごまして、瀕死の状態に喘ぐ地方財政に活を入れる方策を立てて頂きたいとお願いする次第であります。
 最後に、嘗て軍需関係の建築物でありまして、終戰後に大藏省に移管になりまして、更に大藏省の手で民間に拂下げになつた建物は、前の横須賀鎭守府関係だけでも、実に莫大なものと予想されるのでありますが、この拂下につきまして私は不可解に思うことは、公入札として一般に周知せしめて拂下げるというような事実はなく、多くは対人関係で随意契約の形式で拂下になつたものが相当多いのであります。而もその拂下代金は、物件処理後一ケ年若しくはそれ以上を経過しておる今日、両大藏省から代金の納入告知が発せられていないという事実がありますけれども、建物以外におきましても、軍需関係の物件で一旦連合軍に接收されましたものがその後これが解除になりまして、只今同じような意味で民間に拂下になつたものも数々あるのでありまするが、これも又同樣の取扱を受けておる事実があるのであります。こういう拂下げに当つては、いずれから見ましても非難の対象とならないような方法をおとりになるのは常識であると思うのでありますが、拂下方法としても、決して最善を盡し得ない。而も代金の納入も又未解決に置かれるということは、如何に考えましても、私共の得心の行かないものがございます。問題はひとり前横須賀銀守府関係ばかりでない。全國的に幾多のこうした例があると思うのでありまするが、全額としましても、何十億、或いはより以上に上るものでないかと考えるのであります、財源枯渇の理由を以て、大衆の悲痛な反対までも押し切つて煙草の値上を強行した大藏当局が滯納税金二百億の未整理があり、一方拂下物件の巨額な代金の回收を捨てて省みないという点に対しまして、私共は深く遺憾の意を表しまして、当局の御反省を促したいのであります。
 以上簡單でありまするが、時間の制約もございまするから、これを以て私の公述を打切りたいと思うのであります。
#26
○委員長(櫻内辰郎君) 御質疑ございませんか。御質疑がなければ、最後に農業家の立場から松尾彪五氏にお願いいたします。松尾彪五君。
#27
○公述人(松尾彪五君) 私は横濱市鶴見区に住んでおります。元森林主事、今は農業をしております五十六歳の老人松尾彪五であります。よくも我々のような無名の者を本日予算委員長始め予算委員各位が御招待下さつたことを、深く感謝いたします。
 私の経驗から申しまして、百姓のことではありません。長年森林主事をしておつた関係から、六・三制の予算についてであります。六・三制の予算は、私は十四億が七億に削減せられておりますが、この七億の予算でさえもまだ沢山であると思うのであります。その理由といたしますところは、この日本政府が持つておりまするところの官有林であります。私が勤務しておりまする九州熊本の管轄であるところの、佐賀縣、長崎縣に亘つて三千尺の山があります。その裾野の方は、成る程民有林でありますが、その二合目から上の何千町歩というものは官有林であります。このような例は、これは東北の山國にはまだ多いと思いますが、九州のこの多良嶽という山一つだけとつても、この山には檜あり、欅あり、杉の木あり、松の木あり、雜木、楢がありまして、その他竹、このようなものを政府が無償で市町村に拂下げをするということ所であります。そうすると、現物の物資資材はそれで以て無料であります。然らばそれをどうするかと申しますると、それを勤労奉仕を以て、そうしてこれを運び、そうして一村に一つの学校を建てるということになると、易々としてこの資材を以て建つことであります。ただガラスが要るだけでありまして、釘は竹でよいのであります。木造建物には、あなた方は存じでないか知らんけれども、小林区などにおる者の住宅は、殆ど竹釘で造るのであります。それが決してバラツク建かと申しますと、そうでございません。堅牢な木造建物が建つのでおります。どうか参議院諸君は、この官有林の拂下げということに御着目下さい。そうすればガラスの代、或いは新制中学の学校の教員の費用くらいでおれば、優に二、三億くらいでこの新制中学は建つと思うのであります。なにかと申しますると、この物資の闇値で、公定ということはとてもできますまいが、闇値で買うといたしますと、なかなかの材木料が高いのでありまして、山国たる日本には沢山の官有林の拂下が、まだそれだけのものを持つておるのでありまして、今回の空襲にも、戰災を一つも蒙つてはおらないところが至る所に欝蒼たる千古に斧鉞を加えられておらない。この密林が沢山あるのであります。これを村人の勤労奉仕で以て働く。そうして狭いながらも樂しい我が家というようなことがありますが、狭いながらも自分の愛するところの第二の国民を教育する意味において、新制中学の校舍を五百人や千人を容れる校舍を一村、一町、一市というふうに建てたならば、決して七億の予算は愚か二、三億の程度で私は十分であろうと思うのであります。くれぐれも申しますが、何十年の一山番人をしておつた私の経驗から申しますと、七億の予算は決して少くはないのであると私は思うのでありますから、この点に参議院議員諸君はよく御注意下さつて、そうして殆ど皆が予算が足りない足りないといつて地方などでは大分騒いでおるようでありますが、かかるときこそ、森戸文部大臣のいわゆる精神作興運動を起して、我が村を愛するところの新制中学の一校舍を建てるという運動を立てて行つて述べられたなおば、質朴なるところの地方民は、これで以て非常に好感を持つと思うのであります。どうか官有林の政府無償拂下ということに御着目下さい。これで私は簡單ですが、終ります。
#28
○委員長(櫻内辰郎君) 御質疑はございませんか。御質疑がないと認めます。公聽会はこれを以て閉会をいたします。これによつて散会いたし任す。
   午後三時九分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     櫻内 辰郎君
   理事
           西川 昌夫君
           西郷吉之助君
           中西  功君
   委員
           木下 源吾君
           波多野 鼎君
           小野 光洋君
           左藤 義詮君
           鈴木 安孝君
           寺尾  豊君
           大島 定吉君
           木内 四郎君
           佐々木鹿藏君
           飯田精太郎君
           江熊 哲翁君
           岡部  常君
           岡本 愛祐君
           奥 むめお君
           河野 正夫君
           島津 忠彦君
           島村 軍次君
           服部 教一君
           東浦 庄治君
           姫井 伊介君
           渡邊 甚吉君
           池田 恒雄君
           川上  嘉君
           藤田 芳雄君
  公述人
   産別労働組合事
   務局長     吉田 資治君
   日本教育会顧問 遠山信一郎君
           丸岡 秀子君
   東京財務局事務
   官       新井 治次君
   官公労協議会常
   任幹事     岩山新一郎君
   農林省開拓研究
   所嘱託     吉見 一也君
   久保山石炭研究
   所長      久保山雄三君
   祉團法人日本鉄
   鋼業経営者聯盟
   事務局     松田  武君
   新 聞 社 員 酒井進太郎君
  会 社 役 員 小田島禎治郎君
   農     業 松尾 彪五君
ソース: 国立国会図書館
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