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1967/04/21 第55回国会 参議院 参議院会議録情報 第055回国会 沖縄問題等に関する特別委員会 第3号
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1967/04/21 第55回国会 参議院

参議院会議録情報 第055回国会 沖縄問題等に関する特別委員会 第3号

#1
第055回国会 沖縄問題等に関する特別委員会 第3号
昭和四十二年四月二十一日(金曜日)
   午前十時二十三分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         山本 利壽君
    理 事
                小柳 牧衞君
                岡田 宗司君
                佐多 忠隆君
    委 員
                植木 光教君
                大谷 贇雄君
                源田  実君
                田中 茂穂君
                谷口 慶吉君
                鍋島 直紹君
                長谷川 仁君
                林田悠紀夫君
                増原 恵吉君
                春日 正一君
   国務大臣
       国 務 大 臣  塚原 俊郎君
   政府委員
       総理府特別地域
       連絡局長     山野 幸吉君
       外務政務次官   田中 榮一君
       外務省北米局長  東郷 文彦君
       労働政務次官   海部 俊樹君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        鈴木  武君
       常任委員会専門
       員        増本 甲吉君
       常任委員会専門
       員        瓜生 復男君
   説明員
       外務省欧亜局参
       事官       岡田  晃君
       労働省職業安定
       局審議官     岡部 実夫君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○宮古群島及び八重山群島におけるテレビジョン
 放送に必要な設備の譲与に関する法律案(内閣
 提出)
○沖糸繩居住者等に対する失業保険に関する特別措
 置法案(内閣送付、予備審査)
○沖繩その他の固有領土に関しての対策樹立に関
 する調査
 (沖繩その他の固有領土に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(山本利壽君) ただいまから、沖縄問題等に関する特別委員会を開会いたします。
 宮古群島及び八重山群島におけるテレビジョン放送に必要な設備の譲与に関する法律案を議題といたします。
 まず、政府から提案理由の説明を聴取いたします。塚原総理府総務長官。
#3
○国務大臣(塚原俊郎君) 私、総務長官の塚原でございます。どうぞよろしくお願いをいたします。
 ただいま議題となりました宮古群島及び八重山群島におけるテレビジョン放送に必要な設備の譲与に関する法律案につきまして、その提案理由及び概要を御説明いたします。
 この法律案は、沖縄援助対策の一環として、政府において宮古群島及び八重山群島に設置するテレビジョン放送に必要な設備を琉球政府に譲与することができることとしようとするものであります。
 以下、これが譲与を必要とする理由の概略について申し述べます。
 沖縄の宮古群島及び八重山群島における放送事情を見ますと、ラジオ放送は、宮古島に琉球放送株式会社の中継局がありますので、両群島における聴取は一応可能でありますが、テレビジョン放送は、現在その送信設備がないため、視聴することができない現状であります。
 このため、これらの地域にテレビジョン放送局を設置することは、かねてから十二万住民はもとより琉球政府の強い要望であり、その要望は、昭和三十九年九月沖縄本島において本土のテレビジョン放送の中継が可能となるに及んで一そう強くなるに至りました。一方、琉球政府または民間放送経営者がこれらの地域にテレビジョン放送局を設置することもその財政力、経済力等から見てきわめて困難な事情があります。
 政府は、これらの要請にこたえ、昭和四十一年度予算及び国会に提案いたしました昭和四十二年度予算合計七億一千四百七十六万二千円をもって、宮古群島及び八重山群島におけるテレビジョン放送に必要な設備を設置することとしております。この設備は、昭和四十二年十一月には完成の見込みでありますので、完成後これを琉球政府に対し譲与することといたし、当該設備がこれらの地域におけるテレビジョン放送に有効に使用されるようにいたしたいと存じます。
 このため、政府は、財政法第九条の定めるところに従い、この法律を制定し、もって宮古群島及び八重山群島におけるテレビジョン放送に必要な設備を琉球政府に対し譲与することができることとする必要があります。
 以上が、この法律案の提案の理由及びその概要であります。何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。
#4
○委員長(山本利壽君) 引き続き補足説明を聴取いたします。山野特別地域連絡局長。
#5
○政府委員(山野幸吉君) 特別地域連絡局長の山野でございます。
 ただいまの総務長官の御説明を補足いたしまして簡単に御説明申し上げます。
 まず、この特別立法を必要とする理由でございますが、今回のテレビ施設は、日本政府が現地に出かけましてこの放送施設をつくりまして、今年の大体十一月ごろに完成いたしますが、それを琉球政府に譲渡するという構想でございます。したがいまして、できたものは日本政府の、国の財産でございますので、御案内のとおり、財政法第九条一項の規定によりまして、法律に基づく場合を除くほかは、適正な対価なくしてこれを譲与したり貸与したりしてはならないというたてまえになっておる。したがいまして、国の財産の無償譲与に関する現行法といたしまして、国有財産法の二十八条と、それから、物品の無償貸付及び譲与等に関する法律とございますが、これらはいずれも譲与の対象物件とかあるいは譲与の対象者とか、譲与可能な場合等を制限列挙で規定してございます。したがいまして、この法律案の内容とするようなテレビ放送施設を琉球政府に無償譲与することはこれらの規定に該当いたしませんので、特別立法の制定が必要である、こういうことでございます。これと同じような例といたしましては、南大東島及び石垣島における高層気象観測に必要な物品の譲与に関する法律、これを昭和三十五年四月一日に提案いたしております。それから、沖縄における模範農場に必要な物品及び本邦と沖縄との間の電気通信に必要な電気通信設備の譲与に関する法律、これを昭和三十六年に提案いたしております。
 それから、工事の内容等について若干御説明いたしますと、お手元に御配付申し上げております最後に、琉球列島の全図という図がございますが、今度の放送施設によりまして先島のほぼ全体がカバーできるようになっております。もちろん、これはなま放送ではございませんで、主としてビデオを本島から運びましてビデオを流していく。もちろん、現場でその施設を使って演奏する施設をつくってございますが、中心はビデオになるだろうと思うわけでございます。で演奏所、送信所の設備をあわせて持つ放送局――親局を宮古島と石垣島にそれぞれ一カ所ずつ置きまして、それから無人放送中継局――サテライト局を石垣島と西表島と与那国島の三カ所に建設することにいたしております。建設工程は、ただいま総務長官の御説明にございましたように、昨年の十一月に着工いたしまして、本年の十一月に完工する予定でございます。
 工事費は、昭和四十一年度の歳出予算に二億一千七百二十八万円、それから昭和四十二年度の歳出予算に四億九千七百四十八万二千円、合計七億一千四百七十六万二千円でございます。
 放送エリアといたしましては、先ほど御説明申し上げましたように、先島群島の全世帯数二万四千、人口約十二万、そのほとんどが聴視できる、こういうことに相なるわけでございます。
 以上で私の補足説明を終わります。
#6
○委員長(山本利壽君) 本案に対する質疑は、後日に譲ります。
    ―――――――――――――
#7
○委員長(山本利壽君) 次に、沖縄居住者等に対する失業保険に関する特別措置法案を議題といたします。
 まず、政府から提案理由の説明を聴取いたします。海部労働政務次官。
#8
○政府委員(海部俊樹君) ただいま議題となりました沖縄居住者等に対する失業保険に関する特別措置法案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 近年、本邦と沖縄との間における労働力の交流が活発となっておりますが、昭和四十年において、沖縄から本邦に就職のため移転した者についてこれを見ますと、約九千四百人の多きに達しております。また、これに伴い沖縄に帰郷する者も増加しており、同じく昭和四十年には約三千八百人となっております。
 ところで、これら沖縄帰郷者の中には、本邦の失業保険法による失業保険金の受給資格を得て帰郷する者もかなり多数にのぼるものと推定されますが、沖縄地域では、その受給資格に基づく失業保険給付を受けることができず、したがって、その者が沖縄地域において失業している場合に失業期間中の生活が保障されないうらみがあるのであります。また、船員保険法による失業保険金の受給資格を得て沖縄地域に帰郷する者についても、これと同様の事情が見られるのであります。逆に、沖縄地域に施行されている失業保険法による失業保険金の受給資格を得て本邦に移転して来る者についても、その数は比較的少数と推定されますが、やはり失業保険給付を受けることができない状態に置かれているのであります。
 この問題の解決につきましては、国会をはじめ、琉球政府その他関係各方面から種々の要望があり、政府といたしましても長年の懸案であったこの問題を解決するため、琉球列島米国民政府及び琉球政府との三者間で協議を続けてまいったのであります。その結果、本邦及び沖縄において、それぞれ特別の立法措置を講じて、それぞれの政府が失業保険給付に相当する給付を行なうこととし、当該給付及び給付事務の執行に要する費用は、給付を行なった相手方政府にそれぞれ交付するという相互主義の考え方で、三者間の意見の一致を見たのであります。
 政府といたしましては、右の経緯にかんがみ、沖縄居住者等に対する失業保険の特別措置につきまして、ここにこの法律案を提出することといたした次第であります。
 次にこの法律案の内容の概略を御説明申し上げます。
 第一に、琉球政府が、本邦失業保険法の規定による失業保険金の受給資格者で沖縄地域において失業している者に対し、その者が本邦において受けることができるものと同内容の給付、すなわち失業保険法相当給付を行なうときは、政府はその給付に要する費用及び給付事務の執行に要する費用を琉球政府に交付することとしております。
 第二に、船員保険法の規定による失業保険金の受給資格者が沖縄地域で失業している場合にも、先に述べました失業保険法の規定による失業保険金の受給資格者と同様の取り扱いをいたすこととしております。
 第三に、沖縄の失業保険法においては、船員をも含めて取り扱っているところでありますが、同法の規定による失業保険金の受給資格者が本邦において失業している場合には、政府は、その者が沖縄地域において受けることができるものと同内容の給付、すなわち沖縄法相当給付を支給することとしております。
 この場合、沖縄法相当給付の支給は、原則として母法である沖縄失業保険法の定めるところによることとしておりますが、ただ支給が本邦において行なわれます関係上、他の受給資格者との調整をはかりますためにも、支給にあたっての単なる手続や支給処分についての不服申し立て等は、失業保険法の定めるところに準じて行なうことといたしております。
 次に、沖縄法相当給付の支給に要する費用及び当該給付にかかる事務の執行に要する費用は、琉球政府からの受け入れ金をもって充てることとしております。
 第四に、この法律案の制定に伴いまして、失業保険特別会計法、船員保険特別会計法その他の関係法律につきまして、所要の改正を行なうこととしております。
 第五に、この法律案の施行期日につきましては、別途政令で定める日から施行することといたしておりますが、政府といたしましては、琉球列島米国民政府及び琉球政府との三者間において、本措置の実施に必要な取りきめを行なうとともに、その他の準備事務をできる限り早期に行なった上、本年七月一日から施行することにいたしたいと考えております。
 以上、簡単でございますが、この法律案の提案理由及びその概要につきまして御説明申し上げました。
 何とぞ、慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
#9
○委員長(山本利壽君) 引き続き補足説明を聴取いたします。岡部職業安定局審議官。
#10
○説明員(岡部実夫君) ただいまの法律案につきまして補足的に説明さしていただきます。
 まず、法律案の第一条、これは目的でございますが、これは先ほどの政務次官の御説明にございましたように、本邦の失業保険法、沖縄の失業保険法、それぞれによりましてそれぞれの地域で受給資格を得た者が、本邦から沖縄に、あるいは沖縄から本邦に戻りまして失業いたした場合に、従来掛け捨てになっておる。したがいまして、事実上失業保険法の適用を受けられない、保護を受けられないという状態にございます。それが最近のいろいろ経済交流その他から失業保険の受給資格を受けながら、いまのような事情で、現実には保険給付の支給を受けることができないという事態が発生してまいりましたので、それを救済する意味で、それぞれの政府が相手国の法律によって受給資格を受けて自分の領土で失業いたした者を、失業の認定を行ないまして、それぞれの母法に基づきます保険金を受けられる。ただ、その経費は、本来その母法を適用する国が支払うべきものとして相互にその経費を交付し合うということにいたします。その相互主義のたてまえを書いたものでございます。あと、各条におきましてそれぞれ失業保険法の相当給付、これは保険法で支払うべきものでございます。これは日本の保険法で資格を受けて沖縄に参りまして失業した者に対して、琉球政府が失業の認定をして支給する、その場合に、日本政府がその保険相当給付額に要する経費を琉球政府に交付するということになります。
 それからその次が、船員保険に関しまして先ほど御説明ございましたように、沖縄では失業保険一本でございます。わが国では船員保険法と分かれておりますので、船員保険法につきまして失業保険の先ほどのあれと同様の規定を置いて失業保険法相当給付を支給できるということにして、その分を日本政府から琉球政府に交付する、この規定でございます。
 それからその次が、沖縄の法律に基づいて受給資格を受けた者に対しまする給付で、これにつきましては、沖縄が日本で認定をいたしまして給付した分を沖縄政府から交付してもらう、こういうことに相なって、そのような規定を置いておるわけでございます。
 なお、施行期日は、ただいま政務次官の御説明にございましたように、政令に委任しておりますが、準備の整い次第、七月一日を目途に施行したいということで、琉球政府もほぼこの特別法と同様の沖縄の失業保険の特別法を立法院に提出しておるやに聞いております。それを目途に施行をいたしたいと考えております。
 なお、これに関しましては、七月を目途に一応の推定に基づきます予算を計上しておる次第でございます。
 簡単でございますが、補足説明を終わらせていただきます。
#11
○委員長(山本利壽君) 本案に対する質疑は、後日に譲ります。
    ―――――――――――――
#12
○委員長(山本利壽君) 次に、沖縄その他の固有領土に関しての対策樹立に関する調査中、沖縄その他の固有領土に関する件を議題といたします。
 まず、政府より説明を求めます。塚原総理府総務長官。
#13
○国務大臣(塚原俊郎君) このたび沖縄問題等に関する特別委員会が設置され、現在国民の最も関心の深い問題の一つである沖縄等に関する諸問題について審議が行なわれることとなりましたことは、沖縄等に関する政府施策の推進の上におきまして、きわめて有意義なことと存ずる次第であります。私はこの機会を拝借いたしまして、従来政府として沖縄に対してとってまいりました施策の概略について御説明申し上げますとともに、沖縄問題等に対する私の所信の一端を述べさせていただきたいと存じます。
 まず、沖縄に対する政府の施策の基本といたしましては、昭和四十年一月の佐藤総理、ジョンソン大統領の共同声明において述べられているところでありまして、同共同声明におきましては、総理及び大統領は、沖縄における米国の軍事施設が極東の安全のため重要であることを認め、大統領は、施政権返還に対する日本の政府及び国民の願望に対して理解を示すとともに、極東における自由世界の安全保障上の利益がこの願望の実現を許す日を待望していると述べ、次に両者は、沖縄住民の福祉と安寧向上のため、今後とも経済援助を続けるべきことを確認するとともに、日米協議委員会が経済援助の問題にとどまらず、沖縄住民の安寧の向上をはかるため、その他の問題についても協議し得るよう機能を拡大することに意見の一致を見たとしております。
 申すまでもなく、沖縄は平和条約第三条によりまして米国の施政権下にありますが、一方、沖縄が日本領土の一部であり、かつ、沖縄住民は日本国民であることは明らかな事実であります。そして九十七万の沖縄住民を含めた一億日本国民が沖縄の祖国復帰の念願を戦後二十余年を経た今日まで抱き続けていることも厳粛な事実であります。
 しかしながら、共同声明にうたわれているごとく、現在沖縄がわが国を含む極東の安全保障上の見地からきわめて重要な地位を占めていることは無視することはできないのであり、このきびしい現実を認識しますとき、沖縄の本土復帰をいま直ちに実現することには困難が伴うこともまた率直に認めざるを得ないところであります。
 したがって、沖縄の本土復帰の問題は、高度の政治的配慮を加えつつ今後ともあらゆる機会をとらえてその実現に努力すべきことは言うまでもありませんが、沖縄が本土に復帰するまでの間、政府の当面の施策といたしましては、日米協力して沖縄に対する経済援助を拡充することにより、沖縄の教育、社会福祉、産業経済等各分野における本土との格差の解消につとめ、沖縄住民が本土における日本国民と同様な民生福祉を享受できるようにし、沖縄と本土との一体化を促進することであります。
 昭和四十年八月佐藤総理の沖縄訪問後編成されました昭和四十一年度の対沖縄援助費は、五十八億九十七万円と、前年度の二十八億六千五百六十三万円に比較し一躍倍額以上となったのでありますが、援助の対象事業といたしましても、義務教育教職員給与費の半額援助、義務教育教科書無償給付、医療保険、公務員退職年金、先島テレビ放送施設等、多くの新規事業を取り入れ、質的にも格段の充実を見たのであります。特に義務教育教職員給与費の半額援助は、沖縄の学校教育が沖縄の教育基本法の規定に基づき日本国民としての教育を実施している点にかんがみ、本土都道府県に対する国庫負担制度とほぼ同様な援助を実施することとしたものであります。
 さらに昭和四十二年度、一部昭和四十三年度に支出を予定されるものを含んでおりますが、対沖縄援助費は、去る三月一日に開催された第十二回日米協議委員会において百三億五千二百七十六万円で日米間の合意を見ましたが、前年度に比較してさらに大幅な増額となっております。
 なお、その内容につきましても、社会福祉対策、先島テレビ放送施設、極超短波電話回線建設等、質的な充実強化をはかることといたしております。
 先に触れましたように、沖縄に対する経済援助は、沖縄住民の福祉と民生の向上のために日米相協力して実施すべきものと考えるのでありまして、このような日本側の対沖縄援助費の増大に対応して、施設権者である米側においても沖縄援助の増額をはかるよう政府として強く要請している次第であります。
 次に、沖縄住民の自治権の拡充について申し上げます。
 政府といたしましては、民主主義のたてまえからいって、沖縄住民の自治を拡充し、かつ、琉球政府の権限を強化すべきであるとの見地から、自治権の拡大強化について日米協議委員会その他の外交ルートを通じて努力してまいっているのであります。
 米国政府におきましても、昭和三十七年ケネディ大統領声明において、必ずしも米国が保留しておく必要のない行政機能を琉球政府に委譲し得る時期等について検討する旨を明らかにしたのでありますが、特にワトソン前高等弁務官の就任以来、自治権拡大の方針に沿い、各種の改善が行なわれてまいりました。
 すなわち、同高等弁務官のもとにおきまして琉球政府行政主席の任命方法を改善し、従来、琉球政府の行政主席は、立法院が行ない、かつ高等弁務官が受諾し得る指名に基づいて、高等弁務官が任命することになっておりましたのを、今後は、立法院の全議員の過半数によって選挙されることに改める等の措置をとったほか、相当数の布令布告を廃止して琉球立法院の民立法にゆだねる等の措置を講じたのであります。
 またアンガー現高等弁務官も、自治の拡大につきましては、ワトソン前高等弁務官と同様な方針をとっており、すでに昨年十二月、米国民政府布令による立法院議員の被選挙権の制限規定を廃止したのでありますが、本年二月の立法院定例議会におけるメッセージの中においても、琉球政府の権限拡大については最高度の協力をすることを明らかにしております。政府としましては今後ともこのような方針が持続され、自治権の拡大が行なわれることを期待しております。
 この間、沖縄における特殊な事情から、たとえば裁判移送問題等の好ましくない事例も生起したのでありますが、政府としましてはそのつど米側に善処方を強く要望してまいりましたし、今後とも日本国民である沖縄住民の民生福祉の向上を妨げる諸問題の解決に積極的に努力してまいりたいと存じます。
 昭和四十年一月佐藤・ジョンソン共同声明に基づき、沖縄に関する日米協議委員会の権限が拡大され、経済援助以外の沖縄住民の民生の向上をはかるために日米両国が協力し得るその他の問題についても協議できることとなったのでありますが、昭和四十一年五月の第九回日米協議委員会において、沖縄住民が海外及び日本本土へ渡航する際の旅券等を南方連絡事務所で発行する件、沖縄からの移住者を含む在外沖縄住民の保護権を第一義的に日本政府が行使する件及び沖縄船舶に日の丸を併揚する件が議題とされ、これらの議題のうち、旅券等の発行及び在外沖縄住民の保護権に関しましては同委員会において日米の合意を見、沖縄船舶に日の丸を併揚する件については、米側において検討の上、去る三月一日の第十二回日米協議委員会において合意が成立したのであります。これらの案件はいずれも沖縄本土間で多年懸案とされてきたものであり、その解決を見ましたことは、従来にない実質的な成果と言えると思うのであります。さらに、去る三月三十一日には、アンガー高等弁務官は、日本航空株式会社の先島航路乗り入れについて、地元会社と日本航空との合弁方式で認可したのでありますが、このことは地元はもちろん本土側としてもその実現を要望してきた経緯にかんがみ、きわめて適切な措置として歓迎している次第であります。
 次に、沖縄と本土との教育の一体化をはかる見地から、沖縄の教育について日本政府が責任を持って実施していくという考え方に立った沖縄の教育権の分離返還の問題については、目下沖縄問題懇談会で鋭意検討中でありますが、政府としましては、沖縄問題懇談会が、沖縄と本土の教育の一体化に関し、広い角度から検討され答申されることを期待いたしております。いずれにしましても、答申の結果を十分参考にしてまいりたいと存じます。
 以上、沖縄問題について申し述べましたが、次に小笠原問題については、沖縄と同様、小笠原の早期返還の実現について要望をいたしてまいる方針でありますが、当面引き揚げ島民の帰島の促進をはかる一方、帰島が実現できるまでの間、島民代表による墓参の実施を行なっている次第であります。
 また、北方問題につきましては、歯舞・色丹及び国後・択捉等の北方地域はわが国固有の領土であるという立場から北方領土の返還につき折衝を行なってまいっておりますが、今後も引き続き努力を重ねてまいりたいと存じます。
 以上、沖縄問題を中心に政府の諸施策について申し述べましたが、当特別委員会が設置されましたのを機会に、当特別委員会を通じて各位の御意見を承り、これを政府の施策の上に反映してまいりたいと存じますので、各位の御協力をお願いいたす次第であります。
#14
○委員長(山本利壽君) 次に、山野特別地域連絡局長。
#15
○政府委員(山野幸吉君) ただいま総務長官からごあいさつがございましたが、私から補足いたしまして、沖縄の経済事情、日本政府の沖縄に対する財政援助、民生福祉の現状及び自治権拡充等の問題につきまして、補足いたしまして概略御説明申し上げたいと思います。なお、若干数字にわたりますので、お手元に参考のために簡単な数字が差し上げてございますので、ごらんをいただきながらお聞き取りをお願いいたします。
 まず、沖縄の経済事情の問題でございますが、御案内のとおり、沖縄は高温多湿の亜熱帯地域でございます。しかも台風の常襲地帯でございまして、その上天然資源が乏しく、戦前におきましてはほとんど産業らしい産業がなかった実情でございます。さらに、同地域は太平洋戦争の末期におきまして未曾有の激戦場になりましたために、産業経済はほとんど壊滅的な打撃を受けましたのでございまして、戦後におきましても、しばらくの問は米軍の米麦、医療等の現物給与に依存していたという状態であったのであります。しかしながら、戦後復興に対する沖縄住民の異常な努力と熱意によりまして、このような悪条件の中から沖縄の経済が漸次立ち直りまして、さらに近年に至りましては、日米両国の援助によりまして順調な経済の成長を見せておるのであります。
 すなわち、琉球政府の資料によりますと、一九六六年度における国民総生産は四億三千五百五十万ドル、日本円で約千五百六十八億円に達しておりまして、前年度の三億六千九百十万ドルに対しまして一八%の伸び率を示しております。また、一人当たりの名目国民所得も、一九六六年度におきましては四百二十八ドル、邦貨で十五万四千八十円に達しておりまして、前年度の三百六十七ドルに比べまして約一七%の伸びを示しておりますが、これは数字としてはこうなっておりますが、内容に立ち入って検討してみますると、まあいろいろな問題はございます。
 まず、沖縄の産業別就業人口から見ますと、一九六五年度において、第一次産業約三九%、第二次産業が約一四%、第三次産業は四七%でございます。ところが、これを一九六六年度の産業別国民所得から見ますと、第一次産業が約一三%、第二次産業が一七%、第三次産業が約七〇%で、第三次産業に依存する部分がきわめて大きいのであります。
 また、一九六五年度の国際収支の面から見ました場合、受け取り総額が二億三千九十万ドル、邦貨で約八百三十一億円に対しまして、支払い総額は二億三千八百四十万ドル約、八百五十八億円、差し引き七百五十万ドルの赤字になっているのでございますが、受け取り総額のうち四三%強に当たる一億ドル――三百六十億円は、米軍関係からの収入になっております。また、支払い総額のうち大部分を占める輸入に対する支払い額二億一千七十万ドルに対し、輸出額はわずかに七千九百四十万ドル、こういうことでございまして、貿易のアンバランスがあるわけでございます。
 輸出の大宗をなしますのは砂糖とパインナップルでございますことは申し上げるまでもございませんが、これらも本土の特恵措置に依存しましてようやく産業が維持されていると言ってよいのであります。したがいまして、将来の沖縄の産業経済の振興方策をどうするかということがきわめて重要な課題でございまして、昨年七月、日本本土と沖縄双方の民間の経済の指導的立場におられる方々によりまして、沖縄経済振興懇談会というのが設けられまして、本土経済界と沖縄経済界との相互理解と相互協力を進めようとしておられるのでございますが、この意味におきましてまことに意義あることと考えるのでございます。
 沖縄経済振興懇談会は、昨年七月の第一回会合に続きまして、去る本年三月二十七日から四日間、沖縄現地の那覇市において、主として観光事業、畜産業の振興策、融資問題、経済総合開発計画の策定等の問題を議題といたしまして第二回の会合を開催されたのでありますが、今後ともこの懇談会は継続的に開催され、沖縄経済の当面する諸問題はもとより、本土経済の一環としての沖縄経済の将来のビジョンについて検討を続けることになっておりまして、政府としてもその成果に大きな期待をかけている次第でございます。
 次に、沖縄における日本政府の財政援助の問題について申し上げます。
 昭和四十二年度日本政府の対沖縄援助費――一部昭和四十三年度に支出予定のものを含んでおりますが、この援助費につきましては、お手元に簡単な資料を配付してございますが、これを要約して御説明申し上げます。
 日本政府の沖縄援助は、昭和二十七年度から開始されたのでございますが、当初は、沖縄の教員を本土に招致して研修をさせましたり、沖縄の学生に国費を与えて本土の大学に進学させる等、教育訓練のための技術的な援助でございました。
 次いで昭和三十一年度から、特殊法人であります南方同胞援護会を通じて、沖縄の民間団体あるいは個人に対する援助が行なわれ、昭和三十四年度からは総理府を通ずる一般技術援助が開始されたのでございますが、当時は、援助の規模、内容ともにきわめて不十分であったのであります。
 その後、昭和三十六年の池田・ケネディ会談を契機といたしまして、昭和三十七年度から琉球政府に対する本格的な財政援助が開始されたのでございますが、特に昭和四十年度の佐藤総理大臣の沖縄訪問以後、沖縄に対する財政援助が、その総額、内容ともに飛躍的に充実強化されたことは、ただいま総務長官のごあいさつにあったとおりでございます。
 昭和三十七年度以降の日本政府の対沖縄援助費を申し上げますと、昭和三十七年度は約十億一千万円、昭和三十八年度は約十八億三千万円、昭和三十九年度は約十八億七千万円、昭和四十年度は約二十八億六千万円でございまして、総理訪沖後の昭和四十一年度におきましては、災害関係援助費を除きましても約五十八億円にのぼっておるのであります。
 さらに、昭和四十二年度におきましては、ただいま総務長官が述べられましたように、第十二回日米協議委員会において、一部昭和四十三年度に支出予定のものを含めまして、援助費が百三億五千二百七十六万円の合意を見ましたので、琉球政府の会計年度との関係で、昭和四十二年度においてはこのうち約八十二億円を計上し、残り約二十一億円を翌年度予算に計上する予定でございますが、大筋の考え方といたしましては、教育関係の援助と民生福祉に対する援助を中核といたしまして、その他、産業開発、交通土木、技術援助等に分けることができるのでございます。
 教育関係の援助といたしましては、義務教育教職員給与の半額相当額の援助、教科書無償給与、学校施設及び備品の整備充実、育英資金の援助等のほか、沖縄教員の資質の向上をはかるための教育研修センター、学生文化センター等に対して援助することといたしております。
 民生福祉等に対する援助といたしましては、沖縄住民の医療問題の解決のため、政府は従来から、医師、歯科医師の派遣、無医地区診療対策、結核、精神病、ハンセン氏病対策にあわせまして、病院、診療所等の整備を実施する一方、児童保護、生活保護、公営住宅の建設、農山漁村の電気導入等に対する援助を行なってまいっておりますが、この種の分野におきましては、本土と比べ、なお相当の格差が見られますので、特に重点を置いておるわけでございます。本年度におきましては、生活扶助費及び児童措置費に対する援助費は、本土において政府から地方団体に支出される額に相当する額にほぼ近いものとなっております。また、最近発足を見ました医療保険、公務員退職年金及び本年七月実施予定の老齢福祉年金制度に対する財政援助費も計上されております。
 次に、産業開発交通土木関係の援助につきましては、道路、港湾、漁港、治山治水、土地改良、家畜増殖、農林漁業及び中小企業に対する融資金、水産資源調査、漁業海岸無線局、臨時糖業振興助成のための援助等を予定しております。
 なお、先島テレビ放送施設につきましては、現在工事が順調に進行しておりまして、本年十一月に完成を見る予定になっておりますことはただいま御説明申し上げたとおりでございます。また、本島と先島間の電話回線整備のため、極超短波による電話回線施設の設置に対する援助費を計上しております。
 技術援助につきましては、沖縄への専門家の派遣、沖縄からの技術研修生の本土側への受け入れ、その他各般の技術援助を実施することとしております。
 また、昨年九月、沖縄を襲いました第二宮古島台風による台風災害に対しましては、予備費を支出しまして緊急援助を行ないましたが、さらに、昭和四十一年度補正におきまして三億六千万円の住宅建設融資金を援助いたしましたが、昭和四十二年度予算にも必要な援助費の計上をいたしておる次第でございます。
 第三に、沖縄における民生福祉の現状について申し上げます。まず、公的扶助及び社会福祉施策の面から住民の生活水準の現状を見ますと、昨年九月現在で、生活保護対象者は人口千人に対して二十三・五人でございまして、本土の十五・九人に比べて非常に高い比率を占めております。生活保護、老人福祉、身体障害者福祉、児童福祉等の社会福祉制度におきましては、おおむね本土法に準じた立法が行なわれておりますが、その実施の状況を見ますと、その実態は本土に比較してなお格差を持っておる状態でございます。
 次に社会保険の面におきましては、医療保険と公務員退職年金制度がようやく昨年七月から施行され、また、老齢福祉年金制度が本年七月から発足する予定になっておりますが、国民健康保険、国民年金等の制度の実施はなお将来の問題として残されておるわけでございます。
 医療、公衆衛生の面におきましては、医師をはじめ医療従事者が著しく不足しており、医師の数は、人口千人当たり三・九人で、本土の相当県の九・三人に比べ約三分の一という状況でございまして、医療機関その他環境衛生施設等の整備もおくれている状況でございます。
 なお、本土政府といたしましては、昭和三十六年度ごろから今日まで、財政的、技術的両面の援助により急速にこれらの整備に協力してきたのでございますが、さらに今後とも民生福祉の面における格差解消のために重点的に援助を行なってまいりたいと考えているのでございます。
 次に、最近の沖縄における自治権拡充等の動きにつきまして御説明申し上げます。
 総務長官のごあいさつの中にもございましたとおり、琉球政府の権限強化につきましては、一九六二年のケネディ大統領の声明の中にうたわれているのでありますが、ワトソン前高等弁務官は、就任後この米国の基本的な方針を熱心に推進されましたし、アンガー現高等弁務官もこの基本的な方針を継続しておるわけでございますが、以下その概要を申し上げます。
 まず、布告、布令等の廃止及び民立法への移しかえが積極的に行なわれてきております。
 先に、総務長官から御説明のありましたように、琉球政府行政主席の任命方法に関する大統領行政命令の改正並びに行政副主席任命制の廃止、琉球政府職員の任命に関する高等弁務官の認可制の廃止及び立法院議員被選挙権の欠格条項の廃止に伴う琉球政府章典の改正等も行なわれたのでありますが、さらに、「出版許可制」にかかわる布令条項の廃止、交通規制に関する布令条項を廃止して民立法に譲ったこと、「琉球船舶規制」中の大部分の規定を民立法の関係法令に譲ったこと、「宮古用水管理局の設立」に関する布令及び「麻薬類及び或る特定の薬品類の取締り」に関する布令を廃止したこと等、ワトソン前高等弁務官就任当時百四十五を数えた布告、布令等が現在では九十程度に減少いたしておりますが、アンガー高等弁務官は、本年二月三日、琉球政府立法院第三十三回定例議会に送ったメッセージの中で、さらに廃止し得る布告、布令二十九のリストを琉球政府行政主席に送付した旨を明らかにしているのでございまして、このような自治権拡充に対する米民政府の態度はきわめて歓迎すべきものと考えておる次第でございます。
 このほか、琉球政府裁判所への裁判権の一部委譲を行なったこと、法案審査促進委員会を設置して米国民政府と琉球政府との法案の調整を容易にしたこと、非琉球人の雇用並びに外資導入許可権限を琉球政府に委譲したこと、永住権を取得するための資格、条件等を緩和する措置がとられたこと等も沖縄における自治権拡充のためにとられた措置と言うことができると思います。
 その他、渡航手続の簡素化、迅速化についてでありますが、昭和三十九年九月以来現在までに三回にわたり渡航手続の簡素化、迅速化のための措置がとられました。すなわち、米民政府在京機関の権限を拡大し、同機関限りで許可し得る範囲を広げて、入域許可に要する時間を短縮したこと、沖縄を経由して海外旅行をする通過旅行者のために、七十二時間以内の沖縄滞在は、在京機関限りでほとんど許可できるようにしたこと、入域許可申請書様式の簡素化、入域許可書の有効期間の延長、日本政府職員に対する数次往復入域許可証の発給その他の改善措置がとられたことでございます。
 最後に、最近沖縄において問題となっている教公二法案をめぐる動きについて御説明申し上げます。
 現在、沖縄におきましては、地方教育区公務員法及び教育公務員特例法のいわゆる教公二法の立法をするかどうかということについていろいろ問題が起こっております。沖縄におきましては、琉球政府立の中学、高校、大学については、教職員の身分関係を規律する法規として、一九五三年に琉球政府公務員法が制定されておりまして、これによって身分関係が確立しておるのでございますが、本土における市町村立の小学校、中学校等に相当する地方教育区立の小学校、中学校等の公立学校に勤務する教職員につきましては、身分関係を規律する法規がないのでございます。そこで、これらの教職員の身分関係を明確にする目的で立法勧告を行なったのが地方教育区公務員法案でございます。
 また、琉球政府と地方教育区立たるとを問わず、これらの全教育公務員について、その職務の特殊性に基づき、中央、地方を通じ教育公務員の任免、分限、服務、研修及び福祉等に関して特別の措置を講ずる目的をもって、本土の教育公務員特例法にならって立案されたのが教育公務員特例法案でございます。
 この教公二法について問題となっております点は、主として政治的行為を制限すること及び争議行為を禁止することの規定に関してでありまして、立法院内部においては与野党が激しく対立しており、また院外におきましては、教公二法阻止共闘会議というのが組織されて前記二法の立法化に反対しておりまして、去る二月二十四日には教公二法についての文教社会委員会発議案の本会議上程をめぐって院の内外において混乱が起こり、現在沖縄における大きな政治的問題となっているのでございます。
 本土政府といたしましては、沖縄の立法院が一日も早く正常化されて、当面の諸問題についての審議が開始されることを期待しております。
 以上、簡単でございますが、私の説明を終わります。
#16
○委員長(山本利壽君) 次に田中外務政務次官。
#17
○政府委員(田中榮一君) 外務政務次官の田中榮一でございます。今後よろしく御指導願いたいと思います。
 私から簡単に一言申し上げたいと存じます。
 沖縄におきまする種々の問題がございまするが、これから当委員会におきまして、これらのいろいろな重要問題を御審議願うことに相なるのでございますが、とりわけ施政権の返還問題につきましては、今後さらに当委員会の御審議を願うことと相なるかと考えております。外務省といたしましても、本問題につきましては、沖縄住民はもとよりのこと、日本国民といたしましてもかねがね長い間の熱望でございまするので、今後、外交経路を通じまして本件につきましては、常にこれが実現を期するよう努力を重ねてまいりたいと考えております。
 なお、住民の自治権の拡大と福祉向上のためにさらに諸施策を進めていくことはもちろんでございますが、これらの諸施策を進めるということは、将来の施政権の返還とあわせて考えますと、一そうその必要がございまするので、特に住民の民生福祉の向上、それから本土との格差の是正、充実をはかるということは、特にこうした将来の施政権の返還を行なうという場合におきましても、こうした下地をつくるという意味におきましても、最も必要であろうと考えるのでありまして、常に米国とも協力いたしまして、対沖縄援助の充実をはかることに努力いたしておる次第でございます。
 なお、沖縄問題は極東の安全保障の関係ともあわせて考えていく必要がございますので、本件に関しましては、高度の政治的配慮のもとに今後検討を加えていく必要があろうと考えております。
 なお、小笠原の施政権の返還、あるいは島民の帰島の問題等も、これからも外交経路を通じまして常に折衝を重ねて努力をいたしていく所存でございます。
 なお、北方問題につきましても、択捉・国後及び歯舞・色丹の返還問題につきましては、機会あるごとにソ連政府当局に対しましてその返還の要求を重ねておるのでございますが、いまだ期待するような結果を得ませんことはまことに残念でありまするが、さらに今後もこれが努力を重ねていく決意であります。
 こうしたいろいろな問題の堆積をいたしております現状におきまして、この沖縄問題等の特別委員会が開かれまして、いろいろ一つ一つ問題をとり上げて解決に持っていかれるということは、まことに私どもとしましてもけっこうなことでございまして、今後関係省とも十分にひとつ連絡を密にいたしまして、本問題解決に善処する考えでございまするので、この上とも御指導、御協力のほどをひとえにお願い申し上げたいと存じます。
 なお、沖縄問題につきましては、東郷北米局長、それから北方領土返還問題については岡田参事官が参っておりますから、これらの関係者から詳しく御説明申し上げたいと存じます。
#18
○委員長(山本利壽君) それでは東郷北米局長。
#19
○政府委員(東郷文彦君) 北米局長の東郷でございます。
 沖縄の問題は、日本とアメリカ、日本と沖縄、それからアメリカと沖縄、この三つの面がございますが、そのうちの日米関係を主といたしまして、多少の重複をお許し願いまして、若干補足的に御説明させていただきます。
 沖縄問題は、当面日米間の最も重要な問題でございまして、さればこそ、歴代の総理も、ワシントンに行かれたような場合には、必ずこの問題についてアメリカ側とお話をしていらっしゃるわけでございます。現在の双方の立場は、先刻総務長官から御披露のございました、一昨年、一九六五年一月の佐藤総理・ジョンソン大統領の共同声明に比較的はっきりとあらわれております。すなわち、総理大臣のほうから、施政権ができるだけ早い機会に日本に返還されることを希望する、同時に、沖縄住民の自治の拡大、沖縄住民の福祉の一そうの向上に対し重大な関心を表明した。これに対してアメリカ大統領のほうからは、極東における自由世界の安全保障上の利益がこの願望の実現を許す日を待望していると述べた。これが現在の日米双方の態度であると思います。
 アメリカ側から見まして、日本を含む極東の安全保障という問題に関し、沖縄の軍事施設に対する考え方は非常にかたいものがあるわけでございます。その一つの例としまして、一九五七年の行政命令を改正するに際しまして故ケネディ大統領が発表した声明の中にも次のように述べられております。すなわち、「これらの基地に展開されている兵力は、極東の平和に対する脅威にかんがみ、われわれの阻止力を維持する上で最も重要なものである。琉球諸島の米国基地は、日本から東南アジアにかけて大きな弓形になって横たわる同盟諸国に対し、一たん事あるときは米国は援助におもむく意思も能力もあるのだということを保証するのに役立っている。」こういうふうにケネディ大統領も言っております。アメリカの考え方としましては、沖縄の基地は、極東における前進基地として、ここにいかなる事態にも対処し得るよう即応兵力を配置し、また、前線基地としての兵たん補給の中心をここに置いておりまして、こういう状態がすなわち極東における平和維持のために抑止力になるという考え方でございます。
 このことは、同時に、アメリカの沖縄に対する施政権は、施政権自体が目的なのではなくて、日本を含む極東の安全保障という一つの目的のための手段であるということであります。ある条件が成就すれば、アメリカとしては、対日平和条約上与えられた施政権を日本のために放棄するということになると思います。このことは、同じく先ほどのケネディ大統領の声明の中で、私は琉球が日本本土の一部であることを認めるもので、自由世界の安全保障上の考慮が、沖縄が完全に日本の主権のもとに復帰することを許す日を待望していると述べている点からも明らかであります。
 そこで、現在のアメリカの沖縄統治の形でございますが、御承知のように、この統治の基本法は、一九五七年の大統領行政命令でございます。この行政命令はその後、六二年、六五年と若干修正を加えておりますが、これによりまして、沖縄の統治の責任は国防長官に授権され、国防長官は、この沖縄の統治にあたって、民主主義の原則に基礎を置き、健全な財政機構を持つ、責任ある琉球政府を盛り立てていくことになっております。なお、行政命令は、国防長官のもとに高等弁務官というものを置いて、これが当面の責任者として沖縄の統治に当たり、またさらに、琉球政府の行政、立法、司法三権の形もこの行政命令の中に規定されておるわけであります。
 かような状態で、現在、戦後二十一年たってなおわが沖縄が外国の施政下にあるということは、実はまことに遺憾なことでございまして、われわれとしては、この不自然な状態を何とか是正したいと考えるわけでありますが、わが方のこの問題に対する基本的な態度は、すでに総理も外務大臣もたびたび御説明をされておりますように、沖縄はわが国を含む極東の安全保障のために重要な役割りを果たしているという事実を念頭に置きながら、施政権返還の問題については、極東の安全保障上の要請と、沖縄の早期復帰に関する日本国民と沖縄住民の願望とをいかに調整するかについて、日米間において絶えず協議検討していくということでございます。
 施政権の返還が実現するまでの間におきましては、沖縄住民の福祉の向上をはかり、沖縄の本土復帰の際の困難を少なくするため、今後とも、教育、社会、経済等の各分野における本土との格差是正、各種機能についての本土との一体化を促進するということが当面の仕事になるわけでございます。しかしながら、施政権返還が実現するまでの間、米国の施政権というワクの中においてやり得ることは、おのずからいろいろ制限があるわけでございます。この点に関しまして、先ほど総務長官からお話がございました日米協議委員会のことをちょっと御説明申し上げます。
 なくなりました池田総理がワシントンを訪問された際、三十六年の六月に共同声明を出されました。この共同声明には、大統領は、米国が琉球住民の安寧と福祉を増進するために一そう努力を払う旨確言し、さらに、この努力に対する日本の協力を歓迎する旨述べた、総理大臣は、日本がこの目的のため米国と引き続き協力する旨確言したと述べられております。この了解から発しまして、その後、昭和三十九年、東京において、わがほうは外務大臣と総理府総務長官、アメリカのほうは在京米大使を委員とする協議委員会を設置することになりました。この委員会の仕事は、その後、佐藤総理訪米の後、若干拡大されまして、先ほど特連局長からお話のありました経済援助のみならず、沖縄住民の安寧に関係のあるいろいろなことをそこで取り上げるようになったわけでございます。
 ここで、昨年来その委員会の場において合意された若干の問題を御説明申し上げます。
 一つは、海外にある沖縄住民の外交的保護の問題でございます。沖縄住民が海外にある場合には、外交的保護について日本の保護権とアメリカの保護権と競合するわけでございます。この問題につきまして昨年五月の委員会の合意によりまして、日本人である沖縄人が外国にある場合の保護は、第一義的に日本政府がこれに当たるということになりました。
 同時に、沖縄住民が海外に旅行する場合の旅券の問題についても、従来は、沖縄住民が海外に参ります場合には、日本人でありながら、アメリカの高等弁務官が発給した身分証明書を持つ、また、日本人といわず、琉球住民という身分証明書を持って出たわけでございます。そのために往々にして、第三国で、これは何だかわからないと言われるようなこともあったわけでございます。それを、昨年の協議委員会における合意によりまして、沖縄の出入域の許可の権限はアメリカ側に留保されるけれども、沖縄住民も日本政府の旅券を沖縄において発給してもらえるということになったわけでございます。
 次に移住の問題に関しまして、従来、沖縄からの戦後の海外移住は米国民政府の責任において行なわれておりました。そのためにボリビアの移住地などにおきましても問題があったということでございます。この問題につきましても、同じく昨年の委員会におきまして、沖縄からの移住については、今後は日本政府及び日本の海外移住事業団が、琉球民政府、それから、琉球政府及び琉球海外移住公社、琉球海外協会と協議の上、計画をつくり、実施するということになりました。準備が整えば、ことしの夏ぐらいからわがほうの移住事業団が沖縄に出張所を設けまして、従来の沖縄関係の移住公社等を吸収いたしまして、全部日本側の責任において行なうということになるわけでございます。
 そのほか、船舶に掲げる旗につきましても、先ほど総務長官からお話がございました。
 かようなわけで、施政権返還の実現に至りますまでは、何といっても米国の施政権のワクがありますので、現在なし得ることにも制約があるわけでございますが、しかし、できることは一つ一つ実現して施政権返還の日に備えたい、こう考える次第でございます。
 最後に、小笠原のことでございます。これも先ほど総務長官からお話がございました。これは施政権返還のみならず、帰島もまだ実現していない状態であります。昭和三十六年、旧島民が帰島できないためにこうむっている損害に対する補償としまして六百万ドルを受領しましたことは御承知のとおりでございます。その後帰島の話はなかなか実現せず、ようやく一昨年から墓参が実施されている次第でございます。
 沖縄、小笠原の現状につきましては、遺憾ながら非常に多くの問題がございます。われわれといたしましても、施政権返還に備えて事務当局として最善を尽くしたいと考えているわけでございます。
#20
○委員長(山本利壽君) 岡田外務参事官。
#21
○説明員(岡田晃君) 欧亜局の岡田参事官であります。ただいまの総務長官及び田中政務次官の御発言に対しまして、事務的補足をさせていただきます。
 北方領土の問題につきましては、一九五六年の日ソ共同宣言で、ソ側は、歯舞・色丹は平和条約ができたなら日本側に現実に返すということを認めたわけでございますが、国後・択捉に関しましては、それ以前の一九五五年からの交渉におきましても、これは一貫して、戦争中のいろいろの国際会議あるいは条約においてすでに解決を見たものであるということで、わがほうの固有の領土であるということに同意いたしませず、遂に平和条約はできずに、日ソ共同宣言という形で外交関係を再開することになったわけでございます。
 わがほうの主張といたしましては、歴史的に見ましても、一八五五年の日魯通好条約ないしは一八七五年の千島樺太交換条約、こういうようなものを見ましても、一貫して日本は国後・択捉、これはわが国固有の領土であるということが立証される多くの国際的な資料がございますので、これはどうしてもいわゆるサンフランシスコ条約において放棄いたしました千島及び南樺太の領土内に入っていないというたてまえをとっておるわけでございますが、ソ側はこれはソ連領土であるとして、もうすでに解決を見たものであるとしてわがほうの主張を認めなかったわけでございます。その後、外交関係が再開されまして、一九六一年グロムイコ外務大臣は、日ソ共同宣言の規定いかんにかかわらず、米軍が日本の領土から撤退しなければ、歯舞・色丹さえ返さないというような政治的な発言をしたこともございますし、また、一九六四年にフルシチョフ前首相が、わが国の訪ソ議員団に対して同様の趣旨の発言をしたこともございます。ただ、その後事態は次第に、日ソ関係は変遷を見てまいりまして、一九六六年一月に椎名外務大臣が訪ソされまして、そして前の諸外務大臣と同様に強くこの国後・択捉問題の解決を要請されたわけでございます。非公式会談におきましてソ側は、この日ソ共同宣言の条項に従って歯舞・色丹の返還を認めるということをグロムイコ外相は述べており、それによって前のいろいろな政治的な発言を取り消したやに感ぜられる発言をいたしております。で、その後七月になりましてグロムイコ外相が参りまして、やはり椎名前外務大臣から強く本件を要請されましたが、結局今日に至るまで何ら解決を見ておりません。その後におきましても三木外務大臣その他、事あるごとに先方に強くこの点を要請いたしておりますけれども、ソ側といたしましては、この問題は第二次大戦中のいろいろの国際条約、宣言及び戦後の種々の一連の国際条約等によってすでに解決済みである、そういう立場をとっております。御承知のとおりに、ソ連は今日まで第二次大戦後戦争によって取得した領土というものを返したことがほとんどございません。非常にまれなケースでございますけれども、フィンランドの一部の地域においてそういうケースがごく最近あったわけでございますが、それ以外にはほとんどそういう領土を返還したということは聞いておりません。御存じのように、中国ないしはその他の東ヨーロッパ諸国との間に領土の問題の懸案事項がございますので、なかなかむずかしい国際問題に発展する可能性があるということが察せられるわけでございます。現在におきましては、少なくとも政治的ないしは事務的に解決する努力といたしまして、まず歯舞・色丹ないしは国後・択捉水域における安全操業の問題が残っております。これは歯舞・色丹は平和条約ができれば当然日本に返ってくる領土でございますので、あの地域において漁民が安全に操業し得るという事態は、他の地域におけるよりも最もわが国にとって合理性があると考えられますし、根室とあの付近とが一体の経済圏をなしているという事情もございますので、わがほうより強くこの地域における安全操業というものを実現するように要請いたしております。
 また、国後・択捉に対する墓参の実現の問題でございますが、これも昨年、三年来初めて解決いたしまして、昨年墓参団が参ることができるようになったわけでございます。
 それから、北方領土復帰期成同盟というのがありまして、外務省といたしましては、非常にささいではございますが、これに対して幾ぶんの補助をいたして、そして世論を喚気し、国民とともにこの領土の復帰のために強くソ側に働きかけたい、今後とも努力していきたいと思っております。
 以上、簡単でございますが……。
#22
○委員長(山本利壽君) 以上で政府からの説明聴取は終了いたしました。本件に対する質疑はこれを後日に譲りたいと思います。
 次回の委員会は四月二十八日金曜日とし、本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時三十五分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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