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1966/12/16 第53回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第053回国会 本会議 第4号
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1966/12/16 第53回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第053回国会 本会議 第4号

#1
第053回国会 本会議 第4号
昭和四十一年十二月十六日(金曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第四号
  昭和四十一年十二月十六日
   午後二時開議
  一 国務大臣の演説に対する質疑
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑
   午後二時二十八分開議
#2
○副議長(園田直君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑
#3
○副議長(園田直君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。長谷川峻君。
  〔長谷川峻君登壇〕
#4
○長谷川峻君 私は、自由民主党を代表して、政府の施政方針について、主として佐藤総理大臣に質問を行なわんとするものであります。
 まず第一は、議会政治に対する根本認識についてであります。
 議会政治は与野党の討論の場であります。政策綱領を掲げたそれぞれの政党が国民的利益を求めて議論し、その間に政策が理解され、国民の中にだんだんと定着し、生活向上となり、国力の発展となり、政治の信頼をかち得てきたと思うのであります。
 しかし、きょうの本会議場をごらんください。きのうもそうでしたが、社会党、民社党の議員は姿をあらわしておりません。審議権の放棄が大量に行なわれているのであります。台風地や冷害地の嘆きを無視し、年の瀬を迎えて待っている公務員のベースアップ等を計上している補正予算の審議を引き延ばし、妨害している上に、議員総辞職といって、各党の幹部がそれぞれの議員の辞表を取りまとめており、議長に提出するチャンスをねらっていると伝えられているのであります。
 わが国の議会政治は七十五年の歴史を持っております。スエズ運河以東、日本だけがこのような議会政治の長い伝統を持っているのであります。明治以来幾変遷がありましたが、このような議員総辞職論は、議会史上かつてない異例のことであります。
 国会議員は、憲法の定めによって、主権者たる全国民を代表し、国権の最高機関である国会を組織するものとして、有権者の真心の秘密の一票の積み重ねによって選ばれているのであります。その地位と職責は、上司から任命された他の公務員と違い、きわめて重いものであります。国会議員の辞職は、国会法第百七条において、国会の許可を要し、閉会中は議長の許可を要する旨を定めてあるのも、その地位の特殊性によるものであって、このことは、議員が特別の理由もないのに、自分かってに辞職することを許さない趣旨と解釈すべきでしょう。(拍手)
 国民の生命、財産について、白紙委任状ともいうべき一票によって選ばれ、国政に参画している国会議員が、何ら個人的な理由もないのに、かってに辞職することは、主権者である国民に対する反逆行為というべきでありましょう。(拍手)野党は、本院を解散に追い込む方便として、集団辞職し、議会という共通の土俵から自分からおりて院外からデモをかけること自体、議会政治の否認であり、議員としての自殺行為であるといわざるを得ません。(拍手)
 本院の解散は、内閣総理大臣の最高の政治的権能であって、絶対に他の圧力や威嚇によって行使されてはならないのであります。もしも、少数党の集団辞職という党利党略によって本院が解散されるようなことがあれば、主権者たる国民から選ばれたすべての衆議院議員の地位が、いつでも少数党の総辞職戦術によって失われ、民主政治の根本がくずれることになり、明らかに一種のクーデターであります。(拍手)しかも、都合のよいときには、議会政治を守るなどと宣伝する社会党が、党大会の興奮した雰囲気と締めつけからかかる行動に出ることは、歴史あるわが議会政治のために嘆かわしいことだと思っているものであります。(拍手)
 総理、国政には大小さまざまの問題があります。しかし、それらに優先するものは議会政治の確立と擁護であります。先輩から受け継いだこの制度を、方便、党利党略、戦術のために、われわれの時代に破壊しようとする社会党議員らの総辞職論を、どう見ておられるか、どのように対処していかれるか、あわせて、総理の解散についての御見解をお伺いしたいものであります。これが第一点です。
 次に、総理が自由民主党の総裁としての政治姿勢についてお尋ねいたします。
 政党は、主義綱領、党首、党員から成り立つ同志組織であります。自由民主党は、議会第一党として国政掌理の任に当たっている責任政党です。党の動向、運営は直接日本政治に影響するので、国民はわが党を特に注目しており、他の政党なら問題にならないようなことでもマスコミをにぎわし、批判の対象になるのであります。
 総理、あなたは自由民主党の党首であるがゆえに内閣総理大臣であります。その時点において、日本における最大なる政治責任が生まれてくるのであります。その政治的見識と行動は直ちに日本の運命に関係するものと私は思うのであります。ときおり、総理が孤独感に襲われるといわれるのもそのためだと思うのです。過般の総裁公選において百七十票の批判票が出たことをどう解釈されておりますか。今日、わが党が内外から指弾を浴びている黒い霧なるものは、積年にわたる宿弊のあらわれであって、政治の最高指導者としての佐藤一個人がその責任を負うべきでないかのような口吻をお漏らしになっている印象は、わが党に期待を寄せるまじめな国民大衆には責任回避的な言辞として受け取られているとしか思われないのであります。百七十票の批判票は、このような総理の態度をあきたらないとする不満票で、国政の重きに任じ得ないわが党のふがいなさを憤る票であるとともに、わが党が天下の公党として立ち直るべく、叱咤し激励する頂門の一針でもあり、二針でもあると解釈して、今後対処すべきではないかと思うのですが、どうでしょう。批判票もあったが支持票が圧倒的に多かったのです。意味のない満場一致の多数よりもよかったと思うのであります。そして、それらのものは総裁を中心に、ほとんど唯一の国民政党として、今日の多難な時局を中央突破して、経国済民に奮闘しようと燃えているのであります。総理は、まず、この明確なる支持票をその背後にある数千万の有権者の声として、その期待にこたえる決意がなければならぬと思うのであります。社会党が、総評の生産性向上反対のスローガンにささえられ、世界に類例のないベトナム反戦デモであおられ、階級大衆政党論を振りかざして、進歩と向上に背中を向けているときなだけに、私たちは一そう真剣にならざるを得ないのであります。
 批判票の諸君もまた、これまでともに勇戦してきた同志であり、共通の基盤、同じ党内にいるのであります。しかも、その諸君は、政治最高指導者としての総理、総裁が、流動する国際政局の中に、日本をどのように持っていくかという見識と、粛党の手段や政界革新の施策に勇断をもって当たることを期待して、じりじりしている心情だと、私は察するのであります。支持票の期待を生かしつつ行動することは、それが直ちに批判票の諸君に反映し、共鳴をかちうるゆえんと思うのであります。
 私たちは、自由と民主、刺激と競争、個人の創意によって、これまでの国運の回復を見てまいりました。党内においても、批判のあるところ刺激あり、競争あり、緊張あり、精進ありです。イギリス保守党の創始者ディスレリーは言っております。「善なるものにはどこまでも保守的で、悪に対してラジカルであることが、真の保守である。聡明な保守主義者は、常に一個の革命家でなければならない。」と。
 さきの総裁公選に示された批判票を激励のしるしと見て、責任政党としてのわが党近代化はもちろん、政界刷新のために、聡明な保守主義者として勇敢に邁進されることを国民もまた期待していると思いますが、総理大臣の御所見をお伺いしたいのであります。
 第三は、外交方針についてであります。
 私は、去る十一月十二日、東京−ニューヨーク線の一番機に乗り込みました。昨年この議場で、日米航空協定の不平等是正に関する決議が行なわれ、アメリカも日本の国論に動されて実現したものであります。おりから黒い霧の攻防戦で、政治的にはぎしぎししている時代でありましたが、待望の国民的利益が実現したのをまのあたり見るため、与野党の国会議員が仲よく行ったものであります。朝五時、まだ日の出もないサンフランシスコの空港に日航機が着いて、私たち一行が待合室までの長い廊下を歩いていくとき、そこに見出したものは、両側のソファーに腰をおろし、かかえている赤ん坊をじっと見詰めている若い兵士の姿でした。しかも、一人や二人ではありません。そばには、ぴたりと細君が不安な表情で寄り添うていたのです。昔の日本のように、勝ってくるぞの声も、歓呼の声に送られても、千人針もない、ひそやかな出征風衆です。この兵士たちはベトナム戦争に行くとのことです。本年は五千人の将兵が戦死していると新聞は伝えています。赤ん坊を抱いていたこの兵士たちも、死に、傷つくのかもわかりません。ベトナムでは戦いが続いています。
 隣の韓国は、朝鮮戦争の惨禍の中から、三十八度線に分割された国土に人口二千万をかかえ、日韓条約などの経済提携で、民生の向上に、その国の流儀で健闘しているとのことであります。
 インドネシアは、昨年九月三十日の事件以来、三十万とも五十万ともいわれる同胞が殺し合い、指導者が軍事裁判で死刑の宣告を受け、さらに裁判が続いているのであります。
 かって、第三勢力とか中道外交とかで世界外交の一翼をになっていたインドは、カシミール紛争の痛手を負うているほかに、四億の民衆が飢餓におののいていると伝えられます。
 共産中国は、二、三千万ともいわれる十歳から十七、八歳の紅衛兵に代表される文化革命の名のもとに、権力闘争が行なわれ、内紛や粛清で世界を驚かしているのであります。
 イギリスの経済不況や西ドイツの政変にまで言及しなくとも、私たち周辺のアジアがこのように混乱、動揺を続け、民族が苦悩にあえいでいるときに、なぜわが日本のみに経済復興があるのです。なぜ繁栄を謳歌できるのでしょう。去る日曜日、至るところのデパートは、戦後最大のお客さんと売り上げがあったと伝えるのは、何に基づくものでしょう。国民全体が思いをめぐらすときではなかろうかと思うのであります。
 すなわち、それは、わが党が掲げる集団安全保障体制、すなわち、日米安保条約によるものであると、自信を持って国民にあらためて訴える段階ではないかと思うのであります。(拍手)非武装中立を唱える野党や、安保条約廃棄を事ごとに呼号する観念論者の執拗な抵抗を排除してきた政府・与党の功績であると、私は思うのであります。(拍手)
 六年前の安保騒動は悪夢のようであります。あの勇気ある対決の結果、激動を続ける世界とアジアの中にわが国の安全と平和がもたらされ、今日の繁栄があるのです。反対陣営は、サンフランシスコ平和条約のときも、日本が単独講和を結ぶと世界の孤児になるとか、婦人が再び戦争未亡人になるとか、青年は再び銃をとって戦場にかり立てられるなど、国民をおどかし、講和条約反対の行動を起こしたことを思い、出すべきでありましょう。さらに、安保条約改定のときは、アジアの戦争に巻き込まれるといって、全学連などを動員して反対し続けたでしょう。いままた、一九七〇年の安保破棄を目標に、繰り返し繰り返し予行演習を続けているありさまであります。硬直したイデオロギーからくる彼らの空論と行動は、これまでもたらされた日本国の安全と平和、繁栄によって、もののみごとに打ち破られてきたのであります。国民は実感を持ってこのことをしっかりとはだに感じていると思うのであります。
 日本外交の中心をなす安保条約改定にあたっては、われわれもまた反対党の盲動にいまから備えなければならぬと思うのです。さらには、日米安保条約に守られて生じたわが繁栄、蓄積されたエネルギーを、世界に、アジアに向かってどう対処していく決意ですか、お伺いしたいと思うのであります。
 アジアの新風日本とうたわれながらも、国としての主体的方向を明らかにする努力が不足していると思うのです。そのために、いわれなき疑惑が国際的に起こってきていることは戒心すべきことでしょう。ひのき舞台に上がりたがらない日本とか、エコノミカルアニマル日本と国際社会でささやかれることは、決して日本の名誉にはなりません。現に、十三日のロンドンタイムスの日本特集は痛烈にこのことに触れております。総理大臣の明確な御所信をお尋ねいたすものであります。
 今日、国会が、黒い霧の生産工場として内外から激しい糾弾を浴びていることは、いまや小学校生徒でも知るところであります。わが国の青少年の眼には、わが党も、遺憾ながら、不潔と汚辱と退廃の党として映っているのであります。いや、腐敗し、退廃しているのはひとりわが党だけではないと安心しているわけにはまいりますまい。政治家への不信は、民主政治を崩壊させ、やがては左右いずれかの独裁、専制政治におちいることを深く憂えるものであります。(拍手)
 敗戦以来二十有余年、なるほどそこには目をみはるような経済成長と繁栄がありました。私たちは、野党のように無批判に国際共産主義に迎合して、観念論の中にうごめき、現実をとらえないでから回りしてきたのとはわけが違うのです。私たちは、立党の基本を、祖先から子孫にわたる、長い国家の存続を守るという、国家、民族の永遠性を信じ、与えられた国際、国内の諸条件の中で、現実に立脚して、可能な解決を次から次に積み重ね、国政の渋滞を防ぐことに重点を置いてきたのであります。これは世界の保守党を貫く大事な筋金です。国土と民族につながり、その上に立って国際的に行動する体系をとってきました。敗戦の廃墟の中から餓死を防ぎ、着ることを満たし、国際的に平和な国民として活躍を続けるに至ったことを、けしからぬことになったという国民は一人もいないと確信を持っているのであります。(拍手)
 しかし、わが党により国政運営のもとに、経済的成長と繁栄をかち得ましたにもかかわらず、国民の道義が日を追うて低下し、犯罪が逐年増加の一途をたどりつつあることもまた遺憾ながら天下周知のことであります。総理は、物質的な向上進歩に比例して、国民のモラルが荒廃し、礼節が乱れつつあるという、この物心背反のおそるべき事実を何とお考えになっておられますか。
 いまの日本は、もはやアメリカの占領国でもなければ、もとより中ソの属国でもありません。にもかかわらず、日本国民の精神生活を支配しているものは、占領期間中に押しつけられたヨーロッパ的、アメリカ的な唯物主義であり、その意味においては、実はアメリカによる占領はいまなお継続しているといわざるを得ない。唯物主義に立つ古い文明は、いまやヨーロッパにおいても、アメリカにおいても、さては共産主義のソ連においてさえも急速に死滅しつつあるのです。日本は占領統治下の置きみやげたる俗悪にして、浅薄なる唯物主義文明のかすを洗い落として、経済と道義との一体的調和の中に人間の正しい生き方を求める東洋本来の森厳な味をかみしめなければならぬと思うのです。明治百年の歴史的意義はまさにここに求めるべきではないかと思うのであります。(拍手)
 日本は、こういう過去的な次元を大きく乗り越えて、新しい文明の創造者たる歴史的な任務と使命を自覚しなければならない。そこに新しい日本民族の価値観が形成され、民族の志が打ち立てられるのではないかと思うのであります。
 総理、わが国の議会政治も、わが党もいまや存亡の関頭に立っていると思います。狂瀾を既倒にめぐらすために、内外の唯物的共産主義勢力と戦い、日本を共産化しようとする彼らの陰険かつ巧妙な作戦と行動を踏み破って、祖国日本を泰山の安きに置かなければなりません。(拍手)物価問題、もとより大事です。だが、物価問題とは比較にならぬほど大事な日本民族の存亡にかかわる問題が実は他にあることを忘れてはならないと思うのです。(拍手)
 野党第一党たる社会党の現状はどうでしょう。日本共産党さえ見捨てた中共に媚態を呈していましょう。さては毛沢東語録を振りかざしているていたらくは、内外の共産主義勢力に常に左右されるかいらいといわれても抗弁ができないでしょう。私たちはいまこそ黒い霧を一刀両断に払い清めて、わが党に対する国民の信頼を取り戻しつつ、その背後に立ち込める日本の妖雲、すなわち赤い霧と対決しなければならぬと思うのであります。(拍手)
 日本国民は優秀です。誇るべきものです。各国の技術陣から称賛されている東海道新幹線は時速二百十キロで一日五十二回も往復しております。これを運転する勤勉な労働者諸君。寒さ峻烈な三千七百七十六メートルの富士山頂の気象台のレーダーは世界最高です。そこで黙々と観測している若人たち。砕氷艦ふじは昭和基地に向かっています。零下六十度の非情の大陸、南極で越冬しながら世界の技術陣と協力しつつ調査しているあの科学者の諸君。総理もごらんになったでしょう。二十一万トンの世界最大のオイルタンカー出光丸は東京タワーより九メートルも大きく、それをわずか三十二名でペルシャ湾まで航行して世界の注目を浴びています。まだまだこんな例は無数です。教育は普及し、経済力のある一億国民の活力、バイタリティーの豊かさこそ日本の総合国力であります。総理は、その先頭に立ちませんか。国民とともに歩むのではなく、先頭に立つのです。艱難の先に立つ、男子の本懐これ以上のものはないと思うのであります。(拍手)
 日本の政治家には、他国のように死刑はありません。祖国を捨てての亡命もありません。いわんや粛清もないのです。それだけに責任と義務が大きいのであります。国会もさることながら、地方議会の腐敗も伝えられております。政治する者の全員に、いまこそ死刑、亡命、粛清のないものの責任と義務を呼びかけようではありませんか。(拍手)危機は飛躍のチャンスとも言えましょう。
 かつてリンカーン大統領が閣議にある法案をはかりました。並みいる各長官は反対でした。しかし、リンカーンは決断を下したのです。「賛成一票、全員反対、よって本案は可決。」と。各長官は行政担当です。大統領の任命です。日本の総理大臣と米国大統領とは、憲法上の資格においてはもちろん同一に論ずることはできません。しかし、私は、佐藤総理に、このリンカーンの気魄と決断を望みたいと思うのであります。わが党員だけにあらず、政治を見詰めている全国民、また同感共鳴することを信じて疑わないのであります。
 王之渙の有名な詩に「千里のながめを窮めんと欲して、更にのぼる一層の里」とあります。空前の政治危機に直面して、佐藤総理は、この議場を通じて、全国民に政治的心境を開陳されるよう希望いたしまして、私の質問を終わるものであります。(拍手)
  〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
#5
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) ただいまのお尋ねに答えます前に、一言、昨日愛知県下で発生いたしました交通事故につきまして、私の感じを申したいと思います。
 昨日は、愛知県下におきまして、多数のいたいけな保育園児が一瞬にして交通事故で生命を奪われました。まことに痛ましく、涙なくしては聞くこともできない事柄であります。御両親をはじめ御家族に対し心から哀悼の意を表するとともに、交通事故防止対策推進に決意を新たにするものであります。(拍手)ちょうど昨日も所信表明で交通事故防止、これに国民の協力を求めた際でございます。こういう事故が起こったこの機会に、さらに私は諸君とともに決意を新たにして交通事故防止対策に積極的に取り組むことをここで誓うものでございます。(拍手)
 ただいま長谷川君から御意見を交えてのるるのお尋ねがございました。ことに当面する基本的な問題として、わが国議会政治のあり方について、その所信をただされたのであります。私は、長谷川君も指摘されましたように、議会制民主主義そのものは、論議を尽くして、そうしてこれをその経過において国民に訴え、また論議を尽くして決をとる、きまった後にさらに国民の批判を仰ぐ、これが議会制民主政治の当然のあり方だと思います。そこで、いままで言われておりますのは、議会制民主政治にはルールが何といっても必要だ。そうしてそのルールとしてあげられますものは幾多ありますが、まず一つは、言論の自由であります。言論が守られなければならない、保護されなければならない、この言論の自由、このことは必要最も大事なことでありますが、同時にこれがしばしば乱用されておる。私は、国会の審議におきまして言論の自由、それがその文字どおりに尊重されてきておるが、乱用されたことはないだろうか、これは十分考えなければならないと思います。
 第二の問題は、多数決の原則によって最終的にはこれが決定されるということであります。そうしてこの多数決の原則が尊重される。一たんきまったならば、与野党ともすべてを忘れてその決定に従うべきであります。それで初めて民主政治はりっぱに育つと思います。この多数決の原則がしばしば批判を受けます。もちろんこれを乱用してはならないのであります。寛容と忍耐、この多数決の原則を安易な気持ちで相手にしいない、ここに民主主義の要諦があると私思います。しかし、多数の横暴、そのことが叫ばれますが、同時に、少数の暴力もしばしば繰り返されておるのであります。
 私は、これらの点を考えます際に、まことに現状は遺憾にたえません。わが国の民主政治は幾多の問題をただいま抱きかかえておる、かように申すのでありまして、民主政治またかたきかな、この感を深くするものであります。私は、ただいまの二つの原則が守られなければならない、かように強く願うのでありますが、言論の府である、また言論が保障されておるこの場所において、論議を尽くさずして欠席をする。本日もまた、野党の諸君は出ておりません。私は、国会議員たるものが論議を尽くすこと、これは国民に対する責務だ、責任だと思います。言論の府にある者が言論を放棄する、かような事態が次々に起こるなら、わが国の民主主義政治、これはたいへんな結果になると思います。まことにゆゆしい事態だと思います。私は、議運や国会対策その他の諸君が、与野党とも十分話を遂げて、そうして野党の諸君が審議に入るように最善の努力をされたことを多とするものでありますが、この機会におきましても、私は、野党の諸君が進んで審議に参加されるなら、それこそ本来の姿だと、これを喜んで迎えるつもりでございます。
 また、ただいまのお尋ねにもありますように、総辞職をするというこの戦術であります。まさか社会党の諸君も、かような無謀な――あえて私は無謀と申しますが、無謀な戦術をとるとは思いません。また非常識なあり方、かようなことを非常識にもとるとは私は思わないのであります。ただ私は、野党の諸君がこの国会の運営においての主導権をとりたい、その気持ちはわかりますが、そういうところに非常な無理がきておるのじゃないか。ただいまの多数決の原則、これは私ども多数の暴力を排しますが、その原則を承認されるならば、十分話をし、懇談をし、そうして国会運営にお互いに果たすべき役割りはある、かように私は思うのであります。その意味におきましてまことに残念に思います。
 次に、解散の問題であります。しばしば申しておりますように、ぜひとも解散に追い込むのだ、かように申しますが、解散というものはたいへん厳粛なものであります。私が申し上げるまでもございません。これを党利党略に使うという、党利党略でこの解散問題を論議することは、これはどこまでも排しなければなりません。私は、これは私どもの権限だとか、特別の権限があるかのような言い方は慎んでおるつもりであります。記者会見におきましても説明をいたしましたように、どこまでも世論の動向並びに審議の状況を勘案いたしまして慎重に決すべきものだ、かように私は思います。この点でわが党の諸君は、十分解散問題、これについて御理解をいただいておると思いますけれども、しかし、なおかつ解散をしいるために総辞職をするというようなことが流布されております。私は、万一さような事態があったといたしましたら、それこそわが国憲政史上に一大汚点を残すものであり、悪例を残すものだ、かように思うのでありまして、かような意味では解散など政府は考えるべきではないと思います。(拍手)どこまでも政府は、世論の動向を勘案し、審議の状況を十分考えまして、しかる後に決すべき問題だ、かように私は思います。このことは、すでに過日も記者会見あるいは議員総会におきまして私の所信を表明いたしましたが、本会議のこの席をかりまして重ねて私の考えを申し上げる次第でございます。
 次に、私の政治姿勢でございますが、これは所信表明でも私の政治姿勢に触れましたので重ねては申しません。ただその中に、お尋ねのありましたように、十二月一日の党大会における百七十票の批判票、これをいかに見るか、こういうお尋ねでありますが、当時も私が記者会見で私の考え方を表明いたしましたように、これは私が至らないから出てきたことだとは思いますが、頂門の一針、あるいは二針、三針である。かような意味におきまして、私は謙虚にこの批判で十分反省するものでございます。同時にまた、お話にもありましたように、時にこの批判票は私に対する愛のむちであり、また、私を激励する批判票でもあったと、かように思うのであります。
 いずれにいたしましても、私自身、私が果たさなければならない大役、これは申すまでもなく国家国民のために、また国家国民とともに政治をすることが課せられておるのであります。お話のように、私が先頭に立って、そして私の信ずるところ、政治を進めていく、これが私の決意でもあります。私は、この地位に恋々としておるものではございません。この点は、同志諸君、十分私を鞭撻し激励していただきたいと思います。(拍手)
 次に、黒い霧の問題であります。この点では、国民の方々から疑惑また政治不信、かようなゆゆしい事態を招きつつあります。昨日の所信表明におきましても、その意味におきまして、共和製糖事件をはじめ、きわむべきは徹底的にこれをきわめ、正すべきは徹底的に正す、これがわが党の態度である、またそれをやらなければならない。その意味におきまして、これをなすことによりまして、国民の不信を除き、政治に対する信頼を高めるようにいたしたい、かように私は思うのであります。ただ、この問題につきまして、非常にせっかちな考え方もございますが、しばらく時をかしていただいて、正すべきものを正すその時間をかしていただきたい、かようにお願いをする次第であります。
 次に、わが国の安全についての御意見であります。私は全面的に、お述べになりましたことについて同感であります。日米安全保障条約を締結すれば戦争に巻き込まれる、かような一部の意見があります。しかしながら、日米安全保障条約、そのおかげでわが国に繁栄があり、わが国の安全は確保されておる。これは歴史の証明するところであります。私は、この問題については、もう国内におきましても、世論もそれを認めておる、安定してまいりました。一部の安全保障条約に対し非難をする諸君、これはまことに力が弱いように思います。これは世論調査の示すところであります。今日まで、わが党並びに同志諸君、先輩の方方が、この問題で真剣に、国民のために、国民とともに戦ってこられたことについて、今日あらためて敬意を表する次第であります。
 また私は、今後ともわが国の安全、その方向、これは集団安全保障の方向だ、かように確信をいたしております。いろいろ論議もされるようであります。また、その技術的な問題等もあることだと思いますが、それらのこまかな点についての批判はいたしません。意見は述べませんが、大筋、わが国の安全は、ただいまの日米安全保障条約のもとにおいて確保されておるということをはっきり申し上げたいと思います。
 また、かような状態において、日本がアジア、またさらに国際社会において果たすべき役割りは、これは一体何だ、このお尋ねであります。同時にまた、意見を交えてのいろいろのお尋ねでありましたが、国連におけるわが国の地位が高く評価されておる、また、アジア開発銀行や東南アジア農業開発会議等、東京の会議等で示された幾多の実例等から見まして、アジアの先進国日本、この協力をアジアの諸国も積極的に求めております。わが国が自由を守り平和に徹するその国是、これを確立し、そうしてそのあり方について各国の理解を深めた今日におきまして、私どもは、わが国が持つ力にふさわしい協力を国際的にすること、これには進んで協力をするということをこの機会に申し上げる次第であります。(拍手)このことが、わが国が高く評価され、そうして期待をかけられるゆえんであります。
 最後に、いろいろお話が出ておりました。私は御鞭撻を得たので――得たからというわけじゃありませんが、当然私の責務として、国民の先頭に立って、そうしてみずからの信ずるところによりまして、勇断を持ってこの難局に処していく、これを皆さま方に重ねてお誓いする次第であります。
 以上であります。(拍手)
#6
○副議長(園田直君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#7
○副議長(園田直君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後三時十七分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        法 務 大 臣 田中伊三次君
        外 務 大 臣 三木 武夫君
        大 蔵 大 臣 水田三喜男君
        文 部 大 臣 剱木 亨弘君
        厚 生 大 臣 坊  秀男君
        農 林 大 臣 倉石 忠雄君
        通商産業大臣  菅野和太郎君
        運 輸 大 臣 大橋 武夫君
        郵 政 大 臣 小林 武治君
        労 働 大 臣 早川  崇君
        建 設 大 臣 西村 英一君
        自 治 大 臣 藤枝 泉介君
        国 務 大 臣 塚原 俊郎君
        国 務 大 臣 二階堂 進君
        国 務 大 臣 福永 健司君
        国 務 大 臣 増田甲子七君
        国 務 大 臣 松平 勇雄君
        国 務 大 臣 宮澤 喜一君
ソース: 国立国会図書館
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