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1949/05/13 第5回国会 参議院 参議院会議録情報 第005回国会 大蔵委員会 第26号
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1949/05/13 第5回国会 参議院

参議院会議録情報 第005回国会 大蔵委員会 第26号

#1
第005回国会 大蔵委員会 第26号
  公聽会
  ―――――――――――――
昭和二十四年五月十三日(金曜日)
   午後一時二十一分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○國立病院特別会計法案(内閣提出、
 衆議院送付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(櫻内辰郎君) これより大蔵委員会公聽会を開会いたします。開会に先立ちまして大蔵委員長として本日特に大蔵委員会のために公述をして頂きまする公述人の方々にお礼を申上げたいと存じます。御多忙のところをお繰合せを頂きまして、本委員会のために御公述頂きますことを厚く御礼を申上げます。案件は國立病院特別会計法案についての御公述を願うわけであります。発言の時間はお一人二十分以内ということに御了解を頂きたいと存じます。そうしてその後十分以内において、委員との間における質疑應答の時間に用いたいと存じます。さよう御承知を願いたいと存じます。又この際甚だ恐縮でありますが、私は一時半から本会議が開かれますると、大藏委員会の委員長報告をしなくてはならないことになつておりまするので、中座をいたしまするが、その間は本委員会の理事に座長席に著いて頂きますから、この点を予め御了解願つて置きたいと思います。
 最初に國立東京第一病院長坂口康藏君の御港述をお願いいたします。
#3
○公述人(坂口康藏君) 私は國立病院の院長の坂口でございます。今日この問題について申上げますることは、國立病院長を代表してという意味ではございません。私が國立病院におりまして、國立病院の内情を大体よく知つておりますので、その観点に立ちまして、これを國家的に考えてどういうふうにしたらばいいかというような意見を申述べさして頂きたいと思います。この國立病院を特別会計にするという案は、昨年以來大藏当局が強く主張されておりまして、本年になりましてから厚生省もこれに賛成したことのように承知しております。厚生省当局の話によりますというと、國立病院がその使命を果すためには相当の赤字が出ることは当然であつて、これは國庫から補助して貰わなければならないが、同じ額の金が出して貰えるとするならば、一般会計よりも特別会計の方が、國立病院の実情に則して有意義に使うことができる、又特別会計になれば、各病院がその経理面において現在よりも一層注意して呉れるので、その方が都合がよくはないかというようなことで賛成されたということであります。これは一應大変に御尤もでありますが、大藏当局が國立病院使命達成のために、必要な補助金は出し惜しみをしない、決して自給自足を強制乃至奨励するような態度はとらないという保障が與えられまするならば、こういうお考え方は正しいと思うのであります。そういう条件の下におきましては、私も決してこの特別会計に反対するものではないのでございまするが、若し大藏省方面のお考えがそうでないということでありまするというと、自給自足を目標としておられるというようなことでありまするというと、これは病院はいわゆる儲け主義になりまして、その結果として、我が國民には非常に大きな不幸を齎すことになると考えるのであります。若しそういうお考えであるといたしまするならば、私はこの制度には反対しなければならないと思うのでございます。
   〔委員長退席、理事黒田英雄君委員長席に著く〕
世間の人は、医者は儲かるものである、病院はやりようによつては幾らでも黒字が出せるものであるというように考えているようでありますが、こういう考え方は非常に危險な思想でございまして、これ医者に向つて惡いことをするように奨励或いは強制するものでありまして、今日医道昂揚が叫ばれておりまするが、これは医者にも惡いところが十分にありましようけれども、世間もその責任を大いに持たなければならないと考えているのであります。從來大学の病院であるとか、縣立病院であるとか、組合病院などの公共の病院におきましても、予算面を左右するところの当局の方々が、病院が黒字を出すように強制するところの態度を採られた結果、病院は收入を上げることに努めるだけでなく、支出を減らそうということに極力努力いたしました。それがために当然病院で負担しなければならないような費用をも何らかの形で以てカモフラージユして患者に負担させるというようなことが起つて來ているのでありまして、例えば病人の看病というようなものは、当然これは病院の看護婦がすべきものでありますのに、それを家の人であるとか、附添婦を雇わせて、それに看護をさせておいて、看護婦は掃除であるとか、或いは事務的の仕事であるとかいうようなことに手傳わせて、そうしてその方面の人件費を節約するというようなことが、いつとなしに起つて参りまして、今日ではそれが一般に行われているというような状態になつているのであります。こういうようなことは明治時代にはなかつたのでありまして、これは全く無理にこの黒字を出せというようなことを強いられた結果、自然にこういうことが官公立病院においても行われるようになる。私立病院がこれに見倣うというようなことになつて來たのでありまして、このたびその筋の方からしてこういう不合理なことはやめろというようなことを言われましたのは、誠に一言もないのであつて、私などは赤而を感ずる次第であります。これも全く大学などに対しては、大藏省のやり方が惡いのだというふうに私は考えているのであります。これは一例でありまして、これと同じようなことがいろいろありまするので、そのために患者は入院料以外に相当の金がかかつております。場合によりましては、入院料以上に、そういう外のことに金を使わなければならないというような状況になつているのであります。こういう点は大藏省の当局の方は余程考えて頂かなければならないかと思うのであります。診療費は医学が進渉するに從いまして段々と高くなつて行くものであります。私が卒業しました当時の明治頃におきましては、診療費というものは非常に安いものであつたのでありまして、この負担に堪えないというような者は、國民の中でも極く少数の者であつたのでありまするが、そのうちにレントゲンが盛んに使われるようになるとか、輸血が行われるとか、いろいろ高い薬ができるようになりまして、そのお蔭で以前は死ぬべきものが今日は助かるということになりましたけれども、その代りに診療費というものは非常に高くなりまして、その負担に堪えない者が戰爭前においても既に可成り多くなつて來たのでありまするが、今日におきましては、國民の大部分が診療費の負担に堪えないというようになつて來ておるように感ずるのであります。でそこで問題になりますのは、こういう診療費を本人が拂えない場合にこれはどうするかという問題でありますが、以前には病氣に罹つて場合にはそれは本人の責任若くは不運であるのである。診療費は当然本人の負担すべきものであつて、若しその能力がないならば、それは病院が癒らないで死んでもこれは仕方がない、併しそれはかわいそうであるから、慈善團体とか或いは政府などが幾らか援助してやる。であるからして、その援助の額は幾ら少くとも、ないよりはいいのだから、幾らでもいいのだというような考え方であつたのでありますが、これは全く社会が余り発達しておらず、個人々々の関係が密でなかつた場合の考え方でありまして、もう皆さんには申上げるまでもないことでありまするが、今日のように社会が発達して参りまするというと、國家と個人との関係は丁度人体とこれを構成しておる細胞のようなものでありまして、恰も指の怪我は單に指の問題ではなくて、その人全体に苦痛を與えて能率を低下させると同じように、病人ができました場合には、これは單にその人だけの問題ではなくて、社会全体の経済及び安寧に大きな影響があるのでありますので、一日も早くそういう病人を癒してなくしてしまうということが國家の利益なのであります。それでこれは國家の責任において或いは國家の費用において病人を早くなくしてしまうべきでありますけれども、その治療によつて最も利益を受けるのは本人及びその家族でございまするから、できるだけは本人達にその費用を負担させるというのがこれは当然のことであります。併しその負担能力がないから、昔流の考のように治療が不完全であつてもこれは仕方がないというわけには参りません。そういうような場合には当然これは國民全体の利害に関係することでありまするからして、國民全体が金を出し合つて、即ち税金で以てその費用を出して行くというのが当然なのでありまして、今日ではこの診療費というものに関しましては、そういうような考え方になつてきておるのであります。このことについてはもう皆さんには申上げる必要はないのでありまするけれども、世間一般ではまだ旧式な考を持つておる人も相当にございまして、治療は單に本人の利益に過ぎないのであるから、それに対して國民全体の税金をそんなに廻す必要はないというような意見が相当にあつて、そのために大藏当局もそれに多少氣兼ねするか或いは引摺られるというようなことがあるのではないかと考えまするので、政府当局の方や議会の方方、政治に関係しておいでになる方々は、この國民の頭を切り替えるようにどうぞ御指導をお願いたしたいと思うのであります。で私は國立病院を特別会計にすると、一般会計にすると、何れにいたしましても、國民の利益を代表しておいでになる議員の方々が國民の利益のために、大藏当局の方々が國立病院に限らず一般この衞生費に対してもつと十分に金を出すように、御努力願いたいというふうに考えるのであります。
 次に國立病院の内情について少しく申上げたいと存じますが、國立病院の收入は只今のところ大部分健康保險や國民保險などの保險の患者から挙げておるのでありますが、一般の保險に入つておりません人々も無論診療しておりますが、そういう人々からは保險と同額の金を取つておるのであります。それで人院料は東京におきましては一日二百二十円でありますが、その筋の方からして言明されておりまするように、病院本來の姿に立帰りまして、先程申上げましたような不合理なことはしないで患者の看護というふうなものは病院の看護婦がちやんとやるようにする。その代りに掃除掃なり或いはその外の事務的の人は、それだけ入れてちやんとやつて行くというようなことにし、又患者の食事にいたしましても、患者に食えないようなものを出して、それを附添いが食つておるというような不合理なことをいたしませんで、ちやんと、患者に適当な、その病氣に適合した食事を出すようにするというようなことにしなければならんというような言明されておりますが、これは当然なことでありまして、他人から言われる迄もなくそうすべきなのでありますが、それが先程申上げましたような理由で、こういうふうに曲つたことになつておるのでありますが、今後においてはどうしてもそうしなければならないのであります。そういうふうにいたしますと、この二百二十円では到底、普通の宿賃を考えてみましても分りますように、その外にまだ藥代その他でいろいろなことも出るのでありますから、到底これでは賄つて行けないことは明らかでありまして、相当な赤字が出る筈であります。そういたしましたときに、この赤字をどこから埋めるかという問題になるのでありまするが、これは人院料を値上げするか或いは國庫の方から補助金を出して貰うか、或いは患者の方から取立てるかということになるのでありますが、保險に入つておりません人々に対しましては現在の診療費だけでも、なかなか負担に堪えないのが多いのでありまして、今日もちよつと病院で話が出たのでありますけれども、保險に入つていない人が來ると、レントゲンを撮りたいと思つても、撮つていいだろうかどうだろうか、一々向うの人の懐ろ工合を考えてからでなければ診療ができない。実に辛いことだ。以前には保險の人は差別待遇をされるというので医者から嫌われるかのように言われておつたが、國立病院においては保險の方に対しては幾らか樂であるが、一般の患者に対しては非常に氣がねをして、それこそ別の意味において差別待遇をしなければならないというようなことであるという話も言つておりましたけれども、そういうふうなことで國民の診療費の負担能力というものが今非常に低くなつて來ておるのでありまするから、診療費の値上げというようなことはなかなか困難なことであると思うのであります。それから今申上げましたように、保險に入つておらない人で診療費に堪えない人がなかなかございますので、そういうような者は、事情を聽きまして、國立病院では割引をやつております。で、そういう実情でありまするからして、とても入院料を増すというようなことはなかなか困難なことと存じます。それで、患者にはこれを負担する能力がもうないのでありますから、そうすればもう患者の診療が不完全になるか、或いは國庫でこれを援助して行くかという以外に道はないのでありまするから、これは先程申上げましたようなわけで、これは当然國民の租税で出して行くべきであると考えるのであります。で、昨年度の國立病院の收入は支出の約七割になつておる。これは全國の平均いたしますと約七割になつておるのでありまするから、ちよつと考えますと三割の補助金を出してやつたらそれで十分じやないかというふうに考えられますけれども、この昨年度の診療というものは私のところでもそうでありますが、恐らく全國の病院そうだろうと思いますが、非常にその予算を切詰められておりますために、殆んど新らしい診療機械というようなものは全く買つておりません。それから毀れた機械も殆ど修理しておりません。先日氣管にものを引掛けて來た患者がありまして、耳鼻科の方でそれを取出そうとしたのでありますが、あすこにはそういうものを吸出すいい機械がありますが、毀れておりましてそれを修理するだけの金がないのでそのままにしておつたので、手でそれを引出したというような旧式なやり方をやつたというような有樣でありまして、私はよく言つておるのでありますが、実際私の方には非常に優秀な人が多勢來ておりますが、それでどうやらこうやら診療は一般の開業医などに負けない程のことはやつておりますけれども、それを若しも厚生省の当局が見て國立の病院は外のところに負けないだけの治療をやつておるというふうに安心されるならば、これは非常に大きな間違いであり、私共のところには大学の教授をやつておられたような、例えば小兒科の栗山君、或いは大槻外科の大槻君というような非常に優秀な人が來ておりますけれども、今のでやられるとすれば、丁度竹槍を持つて戰をさしているようなもので、成程腕がいいから竹槍でも外の人が眞劍を持つた以上の成績を挙げているかも知れませんけれども、竹槍はどこまでも竹槍であるので、人が変つた場合にはそこでがた落ちすると思うのであります。これは早急に金を掛けていろいろの設備を完全にして行かなければならないのであります。又資材の問題におきましても、軍時代から残つたものが大分ありますので、そういうものを使つて参りましたけれども、これも段段と盡きて参りました。さような特別な状況下におきまして私のところの丁度七割になつております。全國の平均も七割になつているのでありますが、それだから三割の補助金を出してやつたらそれでいいだらうというわけには参りませんので、私はどうしても四割なければ特別会計をして、若し補助金を出すとすれば、四割なければ段々と素質は低下して行くと思つております。ところが今度は二割五分の補助金で特別会計にするというお話でございますが、若しもこれを今年度の予算はどうしても変えることができないということであるならば、せめて來年度におきましては何らかの方法を用いてももつと出すようにしませんというと、國立病院におきまして、我々院長はできるだけ変なことにならんようなことに努めはいたしますけれども、知らず知らずの間に不合理的な、先程申上げましたようないろいろな儲け主義的なことが言わず語らずの間に、これは院長の力、厚生省の立では抑え切れないと思いますので、変なやり方をするようになりまして、それが將來國立病院のやり方というものが、日本全國の病院のやり方に影響を來して参りまするというと、これがために受けるところの國民の不幸というものは非常に大きなものであろうと思うのであります。これを二割五分の補助金ということにいたしまして、年度末に蓋を開けて見ますれば恐らく大した赤字にはなつておらないと私は思うのでありますが、そういう成績を政府当局なり或いはその外の方が見ましてやはりそれでよかつたのである。或いはやりようによつてはそれでもできたのだというふうにして安心されるということがありましたならば、これは非常に大きな間違いでありまして、その蔭には恐ろしい將來有害になることが潜んでおる。その影響というものは非常に大きなものであるということを十分にお考え願いたいと思うのであります。私はこの特別会計、或いは一般会計とどちらがいいというようなことについては、私は余り、又あとからいろいろの方の御意見がありましようから、私はこの問題については特に賛成とか反対とかいうようなことを強く申上げませんけれども、それよりも私が最も心配いたしますことは、この制度問題云々というよりも、日本の國民が病人を早くなくすこと、或いは疾病の予防、治療ということを、單にその病人に、或いは又その家族の人に限られる事柄であるというような旧式な頭を捨てて、これは國民全体のためのものであるからして、そのためには新規に租税を取つても十分な金を出すべきものであるというように考えるように政府当局及び議会の方々はそういうふうに國民を指導して頂くように御盡力願いたいというふうに考える次第でございます。大変長く申上げまして失礼いたしました。
#4
○理事(黒田英雄君) 何か公述人にお尋ねがありますか。お尋ねがあれば時間が大分過ぎておりますから簡單に一つ願います。
#5
○木村禧八郎君 先程その筋から病院のやり方その他について指示があつたというお話でございますが、具体的に一、二お伺いしましたが、大体どういうようなことなのですか。
#6
○公述人(坂口康藏君) 一番の問題は先程申上げました看護婦の問題であります。これは全く日本はだらしがない話であります。看護婦を一切、看護婦に折角教育を與えたものであるからそれは專門的なことにだけ使え、それ以外のことに使うな、それ以外のことはそれぞれ人に傭つてやればいいじやないか、こういうことであります。それからして、食事は日本では形式的に食事は出しますけれども、本当の病人に合せたちやんとした食事は出しませんのです。從つて大概御承知の通り病人に出した食事の物は家の者が、附添いが食べちやつて、病人の料理は家から作つて持つて來るとか、又病院で作るということが行われておりまして、最近は食糧関係からどこの病院でも家の人が來て病人の料理をしておりましたけれども、あれは特別な、戰爭の影響の変態のことでありますので、けれども併しそれでない場合においてもすでにそういうことが行われておつた。これは余り病院の方に対して大藏省が少し締め過ぎた結果であると私は考えております。これはどうしても本当に病院である限りにおいては、病人には病人のその病氣に適した、家から持つて來た物よりも、もつと安心して食べられるような物を出すべきであつて、食事は一種の藥と同じことでありますが、全くそういうことが行われていなかつた。そういうことはちやんとやれという指令も出ております。まだその他にいろいろなことが出ております。非常に不潔である、掃除が行き屆かないというような、これには掃除婦を置かなければならないのでありますが、これは今度の戰爭のためにこの病院が汚ないわけでありますが、戰爭のために汚なくなつておりましたけれども、そういう点については殊に公平の病院でありますというと、定員で以てひどく喧しく言われておりますので掃除婦などを置くことができませんので、費用の点と人員の点で以てなかなか私立病院のようなふうにはきれいにはできなかつたのであります。だからしてそういうことに注意をしてなかつたわけじやないのでありますが、これもやはり予算の関係であります。そういう点が大分向うから指摘されておりますのですが、それはみんな予算に関係しておることであります。
#7
○理事(黒田英雄君) それでは次に全國國立病院患者同盟委員長村山悠基雄君にお願いいたします。
#8
○公述人(村上悠基雄君) 私は只今紹介に預りました全國國立病院患者同盟中央委員長をしております村山でございます。先ず私が公述さして頂くに先立ちまして、本日は当参議院大藏委員会におきまして、我々國立病院利用者として、特に我々のために今日の公聽会をお開き下さつたところの当大藏委員会並びに本日の公聽会に御出席を煩しましたところの院長先生始め関係者皆さんに厚く御礼申上げます。
 今日國立病院には二万余名の入院患者が常時お世話になつております。これらのものは今や終戰後の四年を経て眞に國民大衆の公器といたしまして、完全にその社会的な義務を果しつつあることを、院内外の國民が十分に知悉するときに当りまして、一昨年よりは國立病院の有料化を標榜し、月々に増額されるところの医療費、最後に参りまして今回國立病院にも特別会計法を提案されまして、我々はすでに先月の二十一日に衆議院の大藏委員会並びに参議院の皆樣の方にも請願書を提出し、我々患者関係におきましても、二十二万四千五百六十五名の反対署名を得、一方におきましては國立病院療養所等の從業員の皆さんから四十余万の反対署名を以て本案の撤回を請願しておるのであります。國立病院の性格そのものは今更申上げるまでもないのでありますが、性格的に戰後においてこそ、初めて新らしい憲法の下において、健康にして文化的な國民生活のためとして國立病院が設けられたものと我々は固く信じております。かかるときにおきまして、病院を國営でやるのは儲からないであろうとか、或いは國家の負担が多過ぎるとかいうような意見が昨年頃からぼつぼつ出て参りまして、アメリカのごとくに各州各郡において市立、都立の病院というものが、如何なる行路病者であろうとも、或いはその人種も老幼男女を問わずして完全に面倒を見る状態、或いはイギリスを始めノルウエー、スエーデン方面において、社会保障制度が今や確立されつつある。かようなときに当りまして、世界に冠たるところの憲法を持つ我々が、如何にして社会保障を謳つてある憲法に逆行するがごとき法案を持たなければならないかということは我々の解釈に苦しむところであります。今や國立病院というものが、この特別会計法を用意されましてから先ず第一に申上げたいことは、四月新年度よりは、從來保險制度の点数も一般患者は十七点TB患者或いは精神病、かような者は十六点、普通は勿論二十点でありますが、かように國家の保護の下において点数を減ぜられて、のみならず入院後の治療費に対しましても、一割を減ずるという規則があつたのでありますが、新年度よりはこれを廃止して一般の委託病院と同樣にすベて二十点でこれを実施するのみならず、從來十六点に切り下げておりましたところの結核のうち、開放性結核患者に対しては一割を追加してよろしい、つまり二十二点といたしまして、今日の計算で参りますと二百四十四円となるのであります。むしろ今日まで國家的な医療機関として社会保障制度を前堤とするところの大きな礎石であると信じておつたものが、大きな逆行を示す状態に追いやられたのでありまして、若しこの法案に対して聊かなりとも成功する見通しがあるならば、日ならずして療養所方面にも蔓延するだろう。かような下におきまして療養所患者四万余人の人達が、大きな危惧を抱いておるものであります。尚今の点数が結局上げられるかという点以外におきましても、例えば從前は國立病院においては減免規定は生活保護法の枠に入らないものであるとか、特殊なものに対しては減額規定を実施しておつたのでありまするが、これも從来一〇%ぐらいは何とか融通がつくというお話で、將來もそれを実施すると申しておりますけれども、いざこれが実際特会制になつた場合に、各施設がその收入が八割なり、或いは九割を上げ得ない場合には、当然これが打切られて來るのは火を賭るよりも明らかであります。又一方におきまして保險患者でありまするが、生活保護費その他の保險保付の患者に対しましては、その現金の收入運転困難なるが故に、或いは根本的に生活保護法そのものが完全なるところの改訂を見ない限り、一昨年も昨年も亦新年度もと、この急速に高騰するところの生活費に対しまして、生活保護費そのものは増額されてない実情にあると聞きまして、ここに生活保護費の單價は殖やしましても、結果から見ますれば、これはむしろ非常に縮少されたといえるのでありまして、勢い先程申しましたところの医療券の点数、一日の費用を上り、加うるに生活保護費の予算も増額され、両方相俟つて、益益國立病院に対しましても医療というものは窄き門となる、こういう結果に我々は見受けるのであります。特にこの医療券の点につきましては、曾つて外地におきまして傷病の身に喘いだところの多くの人達が國立病院或いは療養所において御世話になつて來たのでありますけれども、一昨年來有料と申しても從來と変りはないようにする、こう申したのが、昨年春よりは強制的と申しますか、自殺者まで出したところの恐慌まで來しまして、種々の有料制度が実施され、生活保護法の枠にも入らない、或いは又到底暴騰するところの医療費を拂い切れなくて退院を止むなくされ、同時に日ならずして非常な惡化状態に陥り、結論的に見まして社会へ出ましても完全な人間として働き得ない。國営医療機関であれば、少なくもより一歩よりよく治して行つて社会へ出てたとえ五%、一〇%でもより大きいところの稼動力を持たしてこそ、國営医療機関の使命があると信じておるにも拘わらず、医療が中途で停止されれば外科、内科に拘わらず、その健康というのはすでに危險に脅やかされ、且つ社会の稼働力というものを削減するのみであつて、今にして一日或いは十日を延長して完全に療養させるならば、社会へ出ましてからのプラスするところは、それに幾層倍するものがあるとこう確信いたします。
 私が國立病院を利用させられる國民を代表いたしまして、極めて杜撰なるところのお話を申上げましたのですが、もう一つ特別会計制を実施するということを見ましてからの特異なるところの例といたしまして、其國立病院におきましては、大部屋から小部屋の附添人を要する部屋とか、そういう重症の部屋へ移ろうとしますならば、一日五十円拂えとか、特殊なと申しますか、余分なお願いをしなければ、そういう治療も受けられないというような姿が出て参りまして、我々はすでに衆参両議院の厚生委員会並びに大藏委員会に対しまして、我々の衷情を縷縷述ベまして請願を出してあるのでありまするが、この医療費の昴謄と、好むと好まざるとに拘わらず如何なる健康者も今日の、明日の傷病については誰も自信を持ち得ない我々の國民生活に対しまして、一昨年の春までは大体医療費が一日三十円か四十円でありましたのですが、今日は二百五十円として十二倍、十三倍になつております。賃金関係から見まするときに、この二年間において僅かに五倍余である。かような状態から考えましても、國民の医療費負担というものは限度に來ておるということを、皆さんも必ずや看取できるものと信じます。何とぞ我々の幾百万の國立病院を利用させて貰う者の現状というものをよく御洞察下さいまして、本特別会計法案に対しまして御愼重な御檢討をお願いしたいと思うのであります。甚だ杜撰でありましたのですが、これで終ります。(拍手)
  ―――――――――――――
#9
○理事(黒田英雄君) それでは次に全日本國立医療労働組合委員長、堀江信二郎君にお願いたします。
#10
○証人(堀江信二郎君) 只今御紹介に預りました堀江でございます。私は國立病院療養所の三万の從業員、職員の総意といたしまして、今回政府が提案しましたこの特別会計法案に対し強く反対するものであります。その理由はこの特別会計実施によつて、現在の國立病院の性格が変つてしまうということなんであります。御承知のように、この特別病院は現在九十七、殆んど全國の各府縣にあります。ベツト数は二万四千、月の平均入院の延数は六十万、それから外來の延の月平均が五十万、而もこの國立病院に收容しておる患者はその五〇%は生活保護法による患者であります。更にその二〇%が社会保險による患者、次の一〇%は生活保護法にも、社会保險にもよらない、そういう患者を特に厚生省において全額免除をする、或いは割引をする、そういう措置をとつておる患者なのであります。今申しましたような、この生活保護法の五〇%、社会保險の二〇%、全額免除の一〇%計八十%、そういつた患者が大体今まで國立病院に收容されて來ておるのであります。而も國立病院におきましては、この社会保險におきましても、入院においては一般よりも一五%、更に外來については一〇%の割引をしております。更に減免規定というものを設けまして、その生活状態に應じて減免しておる。こういつたような國立病院の運営というものは、現在及び將來の日本の医療のあり方、社会保障のために非常に重要な役割を果しておる、こう我々は信じておるのであります。この國立病院の運営について、如何にそれが國民にとつて重要なものであるか、今までの運営が重要なものであるかということを一つの実例を挙げて申しますと、これは衆議院の代議士の方なのでありますが、そのお嬢さんが結核に罹つた。ところが月六千円ずつかかつたそうです。けれども國立病院というようなものを知らなかつた。非常に金がかかり、長くなるので、苦しい。けれども何ともそれを持つて行く場所がなかつた。ところが図らずも國立病院においていろいろ減免規定なり或いは生活保護法、社会保險で、それで喜んで受入れて貰えるということが分りまして、非常に國立病院というものが國民のために重要なものだということを身に泌みて感じられた。そうして現に衆議院において熱心にこの特別会計法案阻止の運動をして頂きました。又或る相当裕福の家の方なんでありますが、そこで一人の息子さんが病氣になつた。ところが月に二万円から三万円金がかかつておつたのであります。とうとうその一人の病人のために四十万円の金を使い切つてしまつた。もうこれ以上は何ともならない。それで相当裕福なこの家の方がその土地の民生委員に泣きついて、生活保護法によつて國立病院に收容して貰つたのであります。生活保護法というものは、生活の困窮者に万遍なく利用さすものでなくちなならぬのに、病氣になつた場合には、こういつた裕福な人が、而も生活保護法に頼らなくちやいけない、こういうこと、而もそれが國立病院であるが故に收容して頂けるということ、こういうところから見まするというと、國立病院というものが果して來た役割、これが日本人に対して非常に重要な役割を果して來ておるものだということをこの事実によつて了解できる、こう思うのであります。
 このことは又言い換えますならば、この國立病院というものが、從來医療の面における社会保障というものをゆるゆるながらも実施して來たということを御承知願えればと思うのであります。御承知のように社会保障制度の確立、これは民主々義國家の重要な骨組の一つといたしまして、どうしても社会保障制度を確立しなければならない。御承知のようにイギリスを初めすべての民主々義國家においては、すでに社会保障制度も相当強度に実施されております。而もイギリスなどにおいては、これに力瘤を入れているのに、日本においてはこれから我々が社会保障制度を確立しなくちやならない。而もこれは現在の政治における非常に重要な義務であるわけなのであります。この社会保障制度の確立、その医療の面における最も基礎になることを國立病院は今まで実施して來ております。
 これにつきまして我々職員はかねてから國立病院というものを強化拡充しなければならないということを強力に政府側に要望して來ておるのであります。併し政府におかれましては、厚生省の態度を見ましても、必ずしも医療のあり方というものについて、社会保障の精神に立脚した考え方が徹底しておらない、大藏省におきましても、医療というものに対する理解と熱意が非常に不足しております。我々といたしましては、この今の國立病院をむしろ拡充して行く、整備して行くというのが現在の政治の大きい責任であらう、こう思つておるわけなのであります。今まで申上げましたこれが我々といたしまして國立病院の性格と、こう信じております。
 この性格を変えて行くということを我々が最も憂慮しておるわけでありまするが、この性格を変えて行く理由、その先ず第一番目の理由は、從來政府の医療に対する根本的な考え方がいけない、と申しますのは、この國立病院の問題を考える場合に、先ず一番重要なことは、これを利用する患者のことを主にして考えなければならない、ところが目下の政府の考え方は、そこで経理がやり得るかやる得ないかというだけのことを基準にいたしまして、医療というものの本質を何ら考えていない、だから先程東一の坂内先生の言われましたように、何か医療というものを企業視して、そこから黒字を挙げるというようなことを期待しておるといつたような工合に見受けられるのであります。病院の管理ということにつきましては、これはアメリカなどにおいても一つの学問になつております。先程來朝しておるデヴイソン博士も、病院というものが患者の收入に依存して経営されるということ、そういう考え方、これは非常にワンダフルだということをはつきり言つております。ところが日本におきましては、病院、医療のあり方、こういうものに対して非常に考え方が稀薄であつたということ、だからこそこういう法案が出て來た。而もこの稀薄な考え方を持つておる政府が、この法案によつて実施して行く場合には、それは医療というものに対して非常に重大なる影響が現われるだろうということを先ず第一に我々は指摘したい。
 第二番目には、特別会計法によつて國立病院というものが完全に営利化するということ、これを申上げたいのであります。御承知のように特別会計制になつた場合には、今年度においては二割五分を一般会計から繰入れ、從つて我々は七割五分以上の收入を是が非でも上げなくては、この國立病院というものを維持して行けないわけなのであります。今まではとにかく非常に予算は窮屈ではありました、けれども、一般会計によつて次々と必要なことを実施して行くことができた、けれでも今年はこの病院を維持して行くためには、是が非でも患者からその收入を取らなくちやならない、從つて收入の上らないようなやり方は全部削除して行つて、できるだけ收入の上るようなことのみを狙わなくちや維持して行けないのであります。これにつきましては昨年の春でありましたか、厚生省が現在の國立病院の運営に関しまして、歳入の目標を指示して來たことがあります。ところがそれが非常な衝撃を與えまして、各國立病院において收入を上げるため、一等病室とか、二等病室とかいつたような、非常に特殊な金の儲かるような病室を作ろうとしたというような傾向もあります。そういつたように先ず精神的にも施設の運営面において儲けなくちやならない、とにかく金を取らなくちやならない、こういうことが非常に支配的になつて來るということ、これが先ず非常に強く施設の運営の面に現われて來るということを、先ず我々は言いたいのであります。
 それから第三番目には、從つて営利化する結果、社会保險の患者、或いは生活保護法の患者、更にそれによらない全額免除の患者、こういつたものを締出して行くという結果になる。この生活保護法における五〇%の患者について見る場合に、昨年度の二十三年度においては、生活保護法においては八十九億円の金が使われておるのであります。二十四年度においては百十四億円と聞いております。その増加は非常に微々たるものであります。昨年の八十九億円のうち、三八%が医療に使われておつた、その三八%の患者のうち、相当数が國立病院に收容されて、それが國立病院の五〇%の患者になつておるわけなんであります。ところが今年度の見通しといたしましては、御承知のように行政整理、或いは企業整備、こういつたようなことによりまして、非常に多くの失業者が出るということは、これは必至であります。そうするならば生活保護法というものは医療面に使われるよりも、先ず生活扶助の面により多く使われざるを得ない、そういうことを我々は先ず予想しなくちやならないのであります。そうするというと、この生活保護法の、現在病院に收容されておる五〇%の患者というものは、必ずしも今後生活保護法の恩惠に浴し得ないということを先ず考えなくちやならない。尚生活保護法について見る場合に、地方の財政が非常に苦しくなつて來ておるということは非常に大きい問題であります。御承知のように生活保護法は、地方においてそれを適用するということを決定しなければ、國費をそれに見てやるわけには行かないのでありまして、現に國立病院に收容されておる患者の中で、相当数が生活保護法の打切りの通告を受けておるような現状であります。
 次に社会保險なんでありまするが、社会保險は、そのうちの健康保險について見ますると、昨年度は八億の赤字を出しておるわけなんであります。ところが保險法をかけて來る傾向が段々と惡くなるということが予想されております。ところが非常に生活が苦しいために、健康保險に頼らざるを得ないという傾向が逆に保險料を多く医療の方に拂出さしておる、それで昨年度は八億の赤字を出しておるわけなんであります。ところが今回の國会において健康保險の改惡を実施されておる、それが一般の國民に相当な重圧になつて來るわけなんでありまして、この社会保險による患者というものは現在二〇%ですが、果してこの社会保險によつて恩惠を受けておるかどうかということは、非常に見通しとしては悲觀的なものがあるわけなんであります。こういつたような社会保險、生活保護法からも締出されるという患者を、然らば我々は全額免除で國立病院で收容して行けるかというと、決して特別会計になつた場合にはそれは許されない、從つて社会保險、生活保護法から締出される患者は、勿論自動的にこれは病院から出て貰わなくちやならない、即ち生活保護法、社会保險の恩典というものは非常にぎこちないものがありまして、そういうものに依存しておるというと、病院の運営というものは非常に不円滑になるのであります。そうするというと從來一般会計ならよかつたのでありますが、特別会計になるというと、非常に金の運転というものが早くなければなかなかうまく行かない、そういうところからそういう余り香しからない生活保護法、社会保險の患者というものすら敬遠される、そうした現金ですばすばと拂えるような患者のみを歓迎するというような傾向が必ず生じて來る。從つてそういう社会保險、生活保護法、それから全額免除しなくちやならない患者、こういうものは自然的に締出されざるを得ない、そういう結結になる。こう我々は断定するものであります。
 次に四番目の問題といたしましては、こういう場合に営利化して來る、自然と、そうすると医療の質とか内容とか、そういつたようなものが低下して來るということ、これはこの病院というものが、経営というものを主にして考えるために、医者としての良心というものが、この経営のために制約されるということは必ず生まれて参ると思います。現在國立病院におきましても、一般会計の予算の窮屈なために、ペニシリンといつたようなものは大体全部自己負担であります。ところが今後はペニシリン以外の藥であつても、拂える患者、それ以外にはやれないということが現われて來るのであります。尚重要なことはこの國立病院というものが、文字通り國民の病院になるためには、ここで非常に研究費というものを多く出して頂いて、文字通りこの日本の医療の指導ができるような、研究のできるようなものでなくちやならないのであります。ところが今度そういつた研究費なども、すべて患者の收入の中から、我々は見て行かなくちやならん、ところが收入によつては経営すらできるかできないか分らんものを、それにその中から研究費を多く期待するということはこれは不可能であります。從つて医療の質と内容ということは必然的に低下されるということ、それから五番目の理由といたしましては、現在九十七あるところの國立病院の施設というものが、必ずや整理縮小されるという傾向に行くだろうということ、御承知のようにこの國立病院というものは、軍時代のものそのまま引継いでおります。これに対して我我といたしましては、軍時代のそのままのものであつては、機能を十分発揮できないのであるから、飽くまでも今の國民全般のために開放し、利用できるような、そういうものを整理しなくちやならないということを強調しておるわけであります。併しこれに対して政府は殆んど手を打つておらないのでありまして、まだ國立病院を整理縮小しなくちやならん問題が相当あるわけであります。ところがそういうことすらやつておらないで、今いつたような特別会計法を実施するのならば、当然その施設を維持するということが主になりまして、この收入の上げにくいこと、そういうところは非常に全体の面から邪魔もの扱いにされて來る、今のような政府の考え方から行くならば、そうして而も現在いろいろ言われておることは、金の上らないということは、職員の怠慢から上らないのだといつたような考え方すらあつたのでありまして、そういう意味の考え方からすれば、そういうところも根本的に整備するということではなしに、上らないということだけを理由にして邪魔にして來る。從つて全國に、大体その都道府縣に万遍なくあるこの國立病院というものが、金の上らない理由でもつて整理されて來るだろう、そうするならば將來むしろ拡充して日本の社会保障の完全な実施のために基礎にならなくてはならないこの國立病院というものが、だんだん縮小されて來るということ、これは非常に重大な問題だとこう思うのであります。尚この点についてこの金の上らないことは職員の怠慢だと言われる向きもありましたが、実際にこの國立病院、療養所に勤務しておる職員というものは非常に過重労働を強いられておるのであります。然るに過重労働を強いられておりながら、手当すら十分に拂つておらない。このことにつきまして、我々の方から中央労働委員会に提訴しておりましたが、それを中央労働委員会といたしましては、この参議院に建議書を出しまして、この参議院においては、その中央労働委員会を経て出しました我々の建議書が受理されて決議されております。その中で見られるようにこの國立病院療養所においては、いやな仕事、危險な仕事、而も超過労働をいたして、手当も貰わないで職員が献身的にやつておる。そして辛じてこの施設を維持して來ておるわけであります。そういうことが金の上らない理由で整理されて行くという傾向になるのであります。先ずこういつた五つのことを研究しまして、この結果この國立病院の性格というものが完全に変つてしまうということを私は申上げたいのであります。この問題についてのお話は、單にこの職員の労働組合だけではなしに、全國に施設された九十七のうちの八〇%のものが切々ため手紙を寄せて、反対の意思表示をしております。更にこの全國において約六十万の署名が、各都道府縣においてなされております。そうして而も目下届いておる六十万の数は一部でありまして、非常に全國的な大きな問題になつておる。尚この市町村会においても、この特別会計法を反対するという決議が相当多く行われて、病院にも出て参りました。こういうこと、更に將來の社会保障制度の確立ということが、現在の日本の政治に非常に重要な課題であるということ、而も國立病院というものが、非常に緩るいながらもそういつたことを現在までに果して來たということを、これを是非お考え願いまして、この特別会計法案をこの参議院において阻止して頂きたいということを我々は強く希望するものであります。以上で私の意見を終ります。
#11
○理事(黒田英雄君) 次に國立横浜病院看護婦梁瀬美代子君にお願いいたします。
#12
○公述人(梁瀬美代子君) 私は現在國立横浜病院に勤務しております看護婦の梁瀬であります。本日は國立病院の特別会計制に対する意見を述べられたいというお話でございましたので、私は先ず第一番目に患者を看護する者の立場として、第二番目に職員としての看護婦の立場、二つの面から意見を述べさして頂きたいと思います。
 先ず第一番目に患者を看護する者の立場といたしまして、一昨年本省からの指令によりまして、歳出の六割の收入を上げるようにという指令があつたのでございますが、その結果として施設にどういうことが起つたかと申しますと、先ず引揚患者や復員患者が、お前達は治つたんだからと言われまして退院させられる、それから有料患者を一人でも多く入院させるようにという庶務からの命令があつたのでございます。私共が平常患者には差別待遇をしてはならないという原則の下で教育をされ、又それを建前として看護をして参つたのでありますが、現実にはこれと反対の現状が起つてきたのであります。今度は一昨年のときと違いまして、確実に七割五分の收入を挙げるようにという特別会計制の仕組みになつておりまして、こういうことが私共の國立病院に要求されるといたしましたら、厚生省ではどんなに営利化しないとおつしやられましても、病院ではやはり一昨年より以上の患者に対する差別待遇は行なわれて來るのではないかと私共は非常に心配しているような状態でございます。次に厚生省においては國立病院の職員が診療費をとることを怠つているから特別会計制にやるんだとおつしやつております。併し横浜病院、或いは私の知つております関東地方の病院におきましては絶対にそのような例はございません。病院では会計の係の者が殆んど毎日のように市町村役場に通いまして集金に歩いたり、又私の病院では毎月一回関係の民生委員を集めまして連絡して集金に努力をいたしております。で大藏省や厚生省では今までもしばしば收入の少い病院は廃止すると言明されておりますので、現在は收入面のことは病院の会計係の方でも非常に神経質になつておりますので、今更診療費を取ることを怠つているからというような理由はただ特別会計制を強行するためにこじつけたものに過ぎないものと私は解釈する次第でございます。こういうことは極く稀にあつた一二の例を以て全般的なものとして言うことは非常に心外でございまして、患者数から判断すれば大体の收入額はもう分つておるのでございますから、厚生省でこういうことをちよつと氣を付ければ済むのではないかと私は考えるわけであります。
 第三番目に、私共看護婦が、收入の目標でこれを強行するといたしますと一番心配することは、高價な藥品、例えば結核の特効藥であるストレプトマイシン、ペニシリン、それから化膿性に効くダイアジン、駆虫剤のサントニン、こういう藥は金の拂える患者には実施できますが、金のない患者には、結局は金によつて差別を余儀なくさせられるような状態になつて來るのであります。私共國立病院に勤務する看護婦といたしましては、良心的にも、お金の拂えない患者から文句を言われることは一番つらいことでありまして、勿論机の上で計画された厚生省の役人の方はそんなことはないとおつしやるかも知れませんが、現実は一昨年の通達にもよりまして一應こういう問題が起つておりますから、当然今後もこうして問題が起つて來るのではないかと考えるわけであります。でありますから收入を挙げることも結構ではありますが、收入と支出の面は全然別にして頂きたい。結局一般会計にして置くべきではないかと考えるわけであります。もつと早く入院すれば助かつたであろうと思われる患者も、金に困りまして入院をさせなかつた故に入院したときにはもう見込みなくすでに死んで行つた人もあり、結核病棟の患者数の半分以上がそうなのであります。一本のペニシリンを買う金もなく肺炎の子供を死なせた母親の涙を流して語るのを聽きますとき、私共は、生活がますます苦しくなつて來ておりますときに一看護婦としてこの矛盾をどう解決してよいものか非常に判断に苦しむものであります。
 それから私の病院では、全國でも施設や医療機械が完備している方になつておるのであります。一昨年私の病院で皮膚泌尿料を開設いたしましたがそのときは予算もなくたつた一人の看護婦が病院中を駈けずり廻りまして材料を揃え、やつて皮膚泌尿科の店開きを始めたわけであります。一昨年はまだ何とか病院内でやりくりができましたが、今では全然医療機械も藥品も不足しておりまして、毎日取扱う機械も損耗しておるような状態であります。今のままで行きましたら機械は消耗し又藥品はなくなつてしまうことだろうと思つております。昨年七割收入があつたから今年は二割五分の補助で特別会計制ができるとお考えになりますならば、私共手術室或いは病室勤務のものは來年にでもなつたら、医者からは叱られ藥局からは補充してくれず、患者の方からは注射もしないと文句を言われ、本当に泣くにも泣けない状態に追い込まれるだろうと想像するのであります。でありますから、どうしても特別会計制をやるとおつしやるならば、せめて三、四年間看護婦の人員、或いは医者の人員を補充し、医療機械、それらのものの施設を完備して、それから後やつて頂くというのが私共のぎりぎり一杯の最後のお願いなのであります。五番目に、その外にも特別会計制を実施するという理由で、先月から健康保險の点数で計算した一割を実費患者に割引していたのが中止になりました。即ち今までよりも一割も上つたのですけれども、それだけで患者もぐつと減りまして、入院患者もそれだけ退院を早め、又医療費の安い慈善病院辺りに代つて行く患者もございます。特別会計制にしても営利化しないと言いながら、結局こうした方面に営利化しておる方向が出て來ております。ですから机の上で計画することは簡單でございますが、たつた一円でも二円でも医療費の高騰がありますと、お金を持たない人からお金を取らなければならない、直接看護に関係がある私達の苦しい立場も十分考慮に入れて頂きたいと思うのであります。
 次に議員としての立場から申しますと、先ず完全な医療を行なうためには、医者や看護婦の人員を補充しなければならないと考えます。併し國立病院は俸給が民間に比べて非常に安いために看護婦が余り來ません。そうして來てもすぐ交替して行くような状況にあります。私の病院の看護婦の平均勤務年限は約七ケ月であると言われております。一年間の移動数が約七〇%ございまして、その最も多い理由は待遇が惡いからという理由でありまして、今後は当然医療技術者として待遇改善が行われなければならないと考えておりますが、今度こういう特別会計制が布かれますと、一般会計と特別会計から人件費が出るといたしますと、私共の待遇をよくすることが結局は医療費を高くし、患者の負担をますます重くさせる結果になるのではないかと心配しております。私共は惠まれないこういう患者さんから取るお金は少しでも少くしまして、一般会計からこういう人件費を出して頂いて、完全な医療を行なうべきではないかと考えております。又予算の枠内において待遇を改善するためには、人を少くして人員整理の方向に持つて行かれるのではないかと思います。今でさえも人員が非常に少くて、私共の病院では拘束二十四時間又は拘束十六時間をやりまして二交替という二つの勤務方法を取つておりまして、非常に看護婦の発病率が多いのであります。看護婦百名に対して毎日四名乃至六名の入院患者があり、毎日一名乃至三名の休養者があり、急病者が毎日一割以上出ておるというような状態であります。そうして発病者の約五五%というものは結核患者であり、如何に今の勤務状況が過労であるかお分りになると思います。その上非常に手不足でありまして、本來の看護婦業務が全然行われておらず、私共の勤務の内容と申しますのは、医者の仕事、看護婦の仕事の一部、雜用婦の仕事、事務員の仕事、そういう仕事で手が一杯でありまして、患者のサーヴイスの面においては非常に不十分なのであります。
 次に看護婦は今までのような低い地位から、名目上は地位が高いものとされましたのは、昨年看護婦助産婦保健婦法が制定されてからであります。これによりまして昭和二十六年度から、國家試驗によつて甲種看護婦の地位が與えられることになつておりますが、併しこの試驗を受けるためには、私共は勉強しなければなりません。安い俸給の國立病院にこうやつて勤務しておりますのは、やはりこうした補習教育が行われるという魅力において勤務しておる看護婦が全体の約半分くらいはいるのではないかと考えられます。ところが今年の七月からは特別会計から予算が出ることになつておりますが、一方においては看護婦の資質の向上を叫びながら、一方においては補習教育の予算が非常に削減されておるという政府のやり方なのであります。又被服におきましても、私共は二年間にたつた一枚の看護衣しか渡りません。又看護婦の宿舍等も軍病院時代のそのままでありまして、何ら手を加えておりませんので、疊は切れ、ガラス戸は破れ、壁は落ちておるようなところも非常に多いのであります。こういうことは、予算を増額して貰えばよいのですが、結局予算を殖やすことが、特別会計制が施かれることによりまして、患者さんの負担が増され、その反面には医療の完璧を期することができなくなるのであります。こうした小さい問題はまだ非常に沢山あるのでございますが、要は特別会計制を実施することは、医療の万全を期するという点においてはマイナスでこそあれ、プラスになる面は全くないという判断を下すわけであります。でありますから、特別会計制を本年七月からおやりになると言われる厚生省に対しても、机上プランだけでなく現実をよく把握して頂きたいと思うのであります。そうして本國会におきましても、是非この特別会計制法を撤廃して頂きたいと最後にお願いいたす次第でございます。
  ―――――――――――――
#13
○理事(黒田英雄君) 次に東京慈惠会医科大学教授石川博士にお願いいたします。
#14
○公述人(石川光昭君) 私も他の公述人の方々と同樣に、この法案には賛成いたしかねるのであります。その理由も大体他の方々によつて述べられたと同樣でありますが、一應私の見解を簡單に申上げたいと思うのであります。私が賛成いたしかねるという理由の第一は、この法案の趣旨の根柢に医療保健に対する國庫の負担を減少するという意図が含まれておると考えるからであるということ、そうしてこの考え方は、いうところの社会福祉の増進の根柢をなすところの健康、或いは文化國家の基盤をなすところの社会全般の健康というものの増進に有害であると信ずるからであります。この法案の提出理由として國立病院の経理の適正を図るということが掲げられておりますが、我々日本の社会の國家の健康状態をどうすればよくすることができるかということを研究、念願いたしておるものの観点から眺めますというと、その経理の適正を図ることによつて國立病院の拡充強化を図るのか、或いは單に経費を削減して國家の負担を軽からしめるのか、若しくは國立病院の経理の適正化によつて、若し國費が節約できればそれを保健衞生の他の部面に振向けるというのか、その点がいずこにあるかということがこの法案の是非を判断する革新的なポイントだと思うのであります。
   〔理事黒田英雄君退席、理事波多野鼎君委員長席に著く〕
 そうして私は先刻名医である坂口先生はこの問題についての判定を、診断を差控えられたようでありますが、凡医の私の診断では、その根柢の趣旨は保健衞生に関する費用を節約するというところにあると判定いたさざるを得ない。そしてこれは從來坂口先生も御指摘になりましたが、我が國の弊風であるところの保健衛生に関する問題を軽く見る。從つてその経費等も軽く扱われるという、その基本的な考え方の片鱗の現れである、こう考えて私はこの問題に眞に実行に当られる方々の反省を求める意味を以て反対をいたしたいと思うのであります。何故こういう考え方が好ましくないかと申しますと、今日我々が持つておる医学上の知識を十分に、そして廣く社会のあらゆる階層、あらゆる職域に及ぼすことができまするならば、必らず社会全般の健康状態を改善せしめ得るということ、それには一定限度の公共的な経費が絶対的に必要であるということ、それから我が國の現実は施設においても、経費においても甚だ貧困であるということがその主たる点であります。
 御承知の通り我が國の医学は、この研究なり、或いは知識なりの面におきましては世界的の水準、若しくはそれに近いところまで達しておるというのが多くの人の見るところでありますが、これを應用する路面、特に個々の患者の治療を通してでなく、もつと社会的な方法、公衆的な方式によつて應用するという面が著しく劣つておる。これが一つの原因になりまして、甚だ悲しむべき健康状態になつております。戰前我々が日本は世界の一等國であるということを考えておりました時代におきましても、この保健衞生の問題に実際の面においては、三等國若しくはそれ以下であつたというところが本当のところでありまして、そのことは死亡率が高いとか、結核患者が多いとか、法定傳染病が多いとか、或いは平均の壽命が短いとかいうような、いろいろな事実によつて示されておるのであります。それならば何故この應用の部面が劣つておつたかといいますと、これにはいろいろの理由があると思うのでありまして、我々医者の畑の者もその責任の一端を負わなければならんのでありますが、日本の政治家の健康、医療という問題に対する社会的意義の把握の仕方、認識の仕方が乏しい、正しくなかつたというところが一つの原因であると私は考えているのであります。このことは、先程イギリスのお話が出ましたが、政治家の各位に申上げることは釈迦に説法だと思いますけれども、御承知の通りイギリスの有名な十九世紀の政治家でありまするジスレリーは、國民の幸福の因は健康である、國民の健康を保持することは政治家の第一の任務でなければならん、こう唱えたのであります。又労働党が今日いわゆる社会保障制度を実施しましたが、それまでには多年に亘る医療政策に関する研究を積んでおつたのであります。ところが飜つて我が國におきましては、この保健問題について経論を示された総理大臣を思い出すことができない、僅かに私の記憶では、内務大臣をやられた安達謙藏氏が非常に健康の問題に熱心であつたということだけであります。私は政党の方のことはよく知りませんけれども、今日の各政党におきましても、この保健、医療の政策について眞面目に調査研究をして、保健政策というものの案を持つておられるという政党がないように感ずるのであります。今日諸事一変のときでありまするので、政治家の方々におかれましても、この問題の本当の意議を認識されまして処理されるという心構えになつて頂きたいというのが私の切望に堪えないところであります。
 今から二十年ぐらい前の話になりますが、私がアメリカにおりました当時、あちらの保健運動の標語の一つとして、ヘルス・イズ・パーチヤス、健康は騰い得るものであるというのがあつた、正に事実はその通りでありまして、國家なり社会なりが一定の金を費やせば國民の健康というものを講い得る、併しながら金を出さなければこれを購うことができないというのであります。勿論健康、医療の問題に対する支出というものは、当面の問題として考えれば非生産的な経費であろうと思いますが、併しながら健康が生産力の原動でもあり、或いは又健康というものは社会的ないろいろな問題、例えば疾病というものは貧困と因果の関係を持つている、疾病は貧困の原因でもあり、又貧困は又疾病の原因にもなり得る、そうして又貧困は犯罪の原因ともなることは御承知の通りでありまして、健康を増進する、疾病をなくすということによつて、社会の福祉を増進することが基本的な問題としてできるという点を考えて見まするというと、これは決して不賢明な投資ではなかろうと私は信ずるのであります。勿論我我学校の教員も、今日の日本の國家財政の窮乏の状態はよく分るのでありまして、その際あんなことを言つてもあれは空論であるという御批判があることは覚悟の前でありまするけれども、乏しき中から必要なものを選び、そうして眼前の問題でなく、遠きを慮るという観点から、適当な経費を捻出するというところに、單なる形面を越えたところの本当の政治というものがあるのではないかと、こう考えまして、今日の政治家並びに政府当局の方々にその見識を期待したいと思うのであります。
 第二の点は先程も指摘されましたが、現在の情勢におきまして、國立病院のような公共的な医療機関というものの必要性は増大しておるということであります。どういう組織によつて医療を供給することが最も適切であるかという、いわゆる医療制度の問題は、先程坂口先生が仰せられましたように、基本的には医学の進歩、それ自体に伴つて医療の経費を増大せしめるということと、いろいろな社会的な状態から十九世紀の末、特に二十世紀になりましてから、各國が当面しておる一つの社会問題になつておりまして、今日でもまだ患者も、医者も國家社会も共に満足するという解決方策は見出されておらないようでありまするけれども、大体の方向としては私的医療つまり先程もお話がありましたように個人、患者が負担して医者の治療を受けるという私的の医療の範囲がせばまつて、そうして公共的な社会保險、組織的には社会保險制度であります。そういう社会的な制度、それから國立病院のような公共的な医療機関においては、医療というものが増大をしておるというのが各國共通の現象でありまして、ただその社会化といいますか、そういう傾向の尺度、範囲というものが國によつて異つておりまして、先程言われたようにイギリスにおいては社会保障制度が実施され、アメリカにおいては大統領が勧告をしておるに拘わらず、まだ強制的な健康保險制度も行われておらない。我が國においては國民健康保險なり、健康保險なりという社会保險制度が発展して今日に至つておるという状態でありまして、この公共的な医療機関の必要というものは、増しこそすれ決して減少するものではないと私は考えておるのであります。現在國立病院は全国の病院の病床の二五%を占めて、多数の患者、入院患者の診療に当つておる、又外來の診療にも当つておるという、つまり医療の面におきまして機能を果しておると同時に、学問と実際の実力とを兼ね備えた医者を作るために、いわゆる実地習練を、インターン……。医学校を出てから一年間試驗を受ける前にそういう期間を経なければならんのでありますが、その実地習練の道場といたしましても非常な役割を果しておるのであります。この観点からいたしますと、國立病院はむしろ拡充強院さるべきものであるというのが私の見るところであります。勿論現在の國立病院には、つまり軍の施設があつたものが自然的に移行したという関係から、地域的その他の條件におきまして、総合病院としての機能を十分に発揮できないものがあるかも知れないのでありますが、こういう場合にはやはり我が國において、非常に不足しております結核の療養所なり、或いは精神病院なりという方面に転換をさせるということも、これは國家的の保健施設の計画において必要ならば止むを得ないと私は思うのであります。
 それから第三の点は、この法案の実施によりまして生ずるところの害が利益よりも大きいと、こう考えることであります。厚生省の当局のお示しになりました提案の解説書にもあります通り、又先程現場に働いておられる方々が指摘された通り、この法案が実施されますというと、そうして又その根底が國庫の経費を減少させるというところにあります以上、どうしても経営、即ち收支の面に重点が置かれて來るということは止むを得ないのでありまして、それがためにこの國立病院の存在理由であるところの公共性というものが失われて來るという危險が非常に大きいと思うのであります。これに対しまして厚生省の説明書によりまするというと、当局においてはこの監督を嚴重にするとか、いろいろな方法を用意されておるようでありまするが、実際問題として、そういう監督などによつてこの弊害を完全に相殺し得るかどうかということを考えて見まするというと、医療内容の監督ということは、これは言うべくして実際に行えないというのが私の考えでありまして、ですからして、なかなか監督をしながら而も医療の質を落さずに適正な医療を行つて行くということは至難であると、こう考えるのであります。これに伴う利益としましては、つまり経理の適正であるということが言われておるのでありまして、これは確かにでき得るかと思いまするが、併しながらこの経理の面におきましても、厚生省の御説明によりますと、近來は経理状態も一般的に國立病院の経理状態がよくなつておるという際でもありまするので、この際会計の方式を変えて、その國立病院の本來の性格を失わせるの危險を冒すの必要はないではないかというのが私の考えであります。むしろこの際は國立病院の人事の刷新なり或いはサービスの改善なり必要なる事柄を積極的に行なつて、そうしてこの國立病院を活用するという方向に更の一段の工夫があつて然るべきではないかと、こう私は考える次第であります。
 これを以て私の見解の御説明を終ります。
  ―――――――――――――
#15
○理事(波多野鼎君) 次に産別会議幹事兼保健部長吉田秀夫君。
#16
○公述人(吉田秀夫君) 最初に、本委員会が公聽会の処置をとられたことに対しまして深く敬意を表する次第であります。
 産別会議は、十五單産百二十万の組織労働者の総意といたしまして、実は四月の下旬にこれを問題にしまして、衆議院、参議院或いは関係大臣等宛に、きつい抗議文を出しております。これは單に労働者ばかりの問題でなしに、この会場に堆く積まれております六十万人の労働組合或いは患者同盟が中心になりました署名運動にも現われておりますように、恐らくは市民、労働者、或いは全國民大衆の声ではないかと思うのであります。我々労働者階級は医療費や病氣の問題或いは教育問題につきましては、殆んど本能的に近いほど全面的に國家保障を要求しております。というのは、今までのお話にもありましたように、現在のような非常に苦しい生活の状態におきましては、病氣になるということは、これは労働者におきましては、健康保險その他のいろいろな社会保險の一應の恩惠はありますが、それでも尚且つ殆んど日々の生活を徹底的に破滅に導くという、それ程に大きな非常な負担であります。これは、まして社会保險の余り恩惠のない農民、市民にとりましては、殆んど致命的に近い打撃だと思うのであります。こういつた医療費の問題或いは又教育費の問題、これは飽くまでも全面的に國家が保障するという、そういつた仕組になる世の中を作るために、実は我々労働者は戰つておると言つていいと思うのであります。それと関連いたしまして、日本の医療制度はやはり國立医療機関を中心にしまして、全面的に恒久的な医療制度に切替えて行くという建前でなけれどならないと思うのでありますが、併し最近におきまする非常に深刻な健康保險その他の社会保險の危機、又実際に患者が病院や医者の窓口に行けないというような状態、そういつた状態を見ますと、大体日本の医師の、或いは医療機関の七割を占める数が開業の医である、営利的な医療制度である。こういつた形では、どうにも仕方がないという状態に今來ておるのじやないかと思います。併しながら私達は現在の國立病院或いは療養所のあり方、こういつたことを中心にして無條件にこの國立医療を支持するものでありません。それは先程看護婦さんの梁瀬さんのお話にありましたように、あのような非常な労働強化で罹患率も高い。又辞める率も高い。自分の仕事以外にいろんな雜務があつた、患者に十分なサービスができないというような労働強化の状態、又昨年の中央労働委員会のときにも認めておる。今以て低賃金に喘いでおるような、そういつた國立医療從業員の状態、又施設が荒廃し、結核病床も八万病床殖やすことになつておるにも拘わらず、それを撤回するという状態、こういう國立医療の状態につきましては、誠に不満であります。從つてこれは飽くまでも國立医療の名に値するだけの完備した設備と又十分な待遇と、それから十分な國民大衆サービスという、そういつた点、あらゆる面で最高峰を行くものでなければならんと思うのでありますが、現在の國立医療、そういつた内容の不備、劣惡さにつきましては、非常に不満を持つものであります、これは飽くまでも國家の責任であると思うのであります。以上の観点から我々労働者が如何に國立病院或いは國立医療機関を要求しているかということを具体的な資料から申したいと思うのであります。これは東京都の例であります。大金融労働組合の中の日立製作亀有工場には約三千人近い從業員があるのであります。この男女合せて二千六百五十七名、全從業員に対しまして基準法の則りまして昨年集團檢診をやつたのであります。ところが異状発見者は一三・三%、約三百五十四名でありまして、その結果、結核性の疾患者は約半分の百八十五名であります。併しこの当時におきましては入院している者が二十四名、自宅で療養している者が三十名という数になつておりまして、その健康保險組合或いは労働組合におきましては三百余名の患者を收容すべき場所がなくて非常に困惑しておるのであります。この日立亀有の工場の診療所は、足立、葛飾を通じまして最も優秀な医療設備だと言われております設備でありますが、それにいたしましてもこの三百名も即時入院させなけれどならんというようなことに対しましてはどうしようもないのであります。ここは一年間に昭和二十年の健康保險の予算が一千七百万円であります。そのうち恐らく八割が医療給付になるだろうというようなことを言つたおります。而も結核病患者を一人発見すれば先程もお話がありましたように、七千円から一万円もかかると労働組合の人達は言つております。從つて数十人もの患者を抱え込んでおりますと、実際その会社と工場の健康保險組合は潰れるのであります。実際潰したくないといいましても、東京都内におきましては國立病院も療養所も満員でありますが、まともに手続きを取れば三日も掛るという状態ではどうしようもないというので、会社側に要求しまして、非常に多額のお金を掛ける自分達のそういつた施設を作ろうという動きさえもあるのであります。それからもう一つは大体入院や、或いはその発見された患者の後の処置でありますが、こういつた場合に全然生活保險の裏付けがないということで、殊に健康保險の規定によりますと、標準報酬の六〇%の傷病手当はあるのでありますが、これではどうしようもないというのが、現在の労働者の現情であります。更に結核予防会の統計によりますと、大体工場労働者におきましては四%から七%、こういつた結核の罹患者があります。その中三分の一或いは半分近くは即刻入院させなければならん労働者なのであります。
 これが事務系統の労働者になりますと更に上廻りまして、その八%から一二%、最高では一五%、最近商工省の電氣試驗所には二〇%というふうな、べらぼうな結核の罹患率を示しておりますが、そのうちの三分の二はやはり直ぐ治療しなければならんという人達であります。こういつた意味合からいいまして、例えば労働者のためにあります最低の線と言われております基準法の実施の点からいいましても、集團檢診一つすら満足に実行できないというのが現情であります。基準法によりますと、年に一回乃至二回程度の檢診をしなければならないのでありますが、大工場は一應やつておりますが、併し中小企業では殆んどやつていないか、或いはやつても近くの開業医を呼んで形ばかりやるということであります。問題は集團檢診をした後で、その事後の対策が何ら講ぜられていないし、又それが伴つて國家保障がないというのですけれども、集團檢診は最近非常に殖えた未曾有の工場閉鎖や大量首切りや、こういつた状態の下におきましては、何か胸に病氣があればその首切りの対象になるという模樣で、労働者の当然の要求として実施された集團檢診の実施する拒否しようというような非常にみじめな状態である。このような状態は基準法や、或いは集團檢診や、或いは工場の労働者のそういつたいろいろの病氣の状態から見ましても、それに十分対應するだけの國営的な施設が欲しいというのが労働者の本当の叫びでありまして、例えば川崎市におきましては、大体百五十人から七千人の工場が百五十四ありまして、川崎市には約十一万人の労働者がおりますが、この川崎市内におきまして集團檢診をするレントゲンの施設を持つておりますのは、保健所に二台、それから東芝という会社と、日本鋼管に一台づつある。こういう状態で、実際に十一万の労働者が集團檢診をしたり、或いは自分達の利益を守るために、いろいろの措置をする綜合病院もなければ、或いはそういつた療養所がないというようなことのために、実際には保健所あたりでもこういつた仕事を全然できないので、実際にはどこにどうしておるか分らないと、あすこの所長から私自身聞いたことがあります。このように大体労働階級は綜合病院や、或いは末端の診療所、その他の医療網を國営の形で十分に整備されるようにという要求を熾烈に言つておるものであります。更に健康保險で今まで度々問題になつておるのでありますが、社会保險は全面的に危機にあると我々は見ておるのであります。労働者の生活は非常にみじめでありますから、健康保險とか或いは労働者災害保障保險、こういつたもののみが唯一の健康を守り、疾病を予防する手段でありますが。その健康保險が今回改惡されて、赤字補填のためにいわゆる一部負担金といわれる制度が新しく復活した、そのことがもうすでに具体的に地方におきまして、或いは東京におきましても、保險医達の差別扱いを助長し、それから制限診療をもたらしております。今朝の新聞を見ますと、千葉のどこかの町の保險医は健康保險は断るというような決議をしたという話であります。こういつた健康保險という一應の制度はあるのでありますが、現在のところ労働者の待遇からいいますと、十二月からまだ給料を貰つていない、貰つていたとしても、それは非常に分割されて非常に低いというような形におきましては、半額健康保險で補助されておりますその半額の家族負担も拂えないというのが実情であります。又労働者災害保險の業務上の疾病も、一應一部負担金で三百円というものを労働者が窓口で拂わなければならないのでありますが、その金も都合が付かないという実情、こういつたことのために、例えば金属関係のいろいろな工場労働者組合におきましては、疾病を治すために、保險のいろいろな諸掛りを拂うために、融資機関をなんとか設けて欲しいということを言つておるのであります。況してや非常に長い期間を要します傷病の場合に、六〇%というような傷病手当金におきましては、これは本人の療養は勿論、家族の生活も維持できないという実情でありまして、その点、具体的な直接の問題として、こういう問題があるのでありますが、更に健康保險全体の問題としましては、先程の昭和二十三年に八億というような赤字もございます。この赤字補填のために一應健康保險を改惡し、労働者の犠牲による費用を強いて來たのであります。その点でも恐らく解決が付かないと思うのであります。例えば五百人以上の從業員を持ちます健康保險組合におきましては、最近事業主によります保險料の滯納によりまして、三月に一組合、四月に九組合、五月に二つの健康保險組合が政府によりまして解散を命ぜられております。こういつた状態が恐らく九原則の強化によりまして、今後ますます熾烈に激化するであろうということは明らかだろうと思います。從つて我々労働者に取りましては、健康保險、労災保險、その他の保險、これを十分に活用し、なお且ついろいろな形で、少しでも生活の赤字を埋めるというような形で、いろいろ要求すると思うのでありますが、併し一度目になつた場合は、これはどうしても生活保護法の適用を受けざるを得ないと思います。この生活保護法適用自体が昨年度八十七億、今年百十八億で、これは昨年度に比べますと、要保護者の増加或いは生活の昂騰から非常に増加しております。殊に昨年度は、この額の三十八%が医療保護であつたというようなことを見ますと、この生活保護のうちに占める医療費は非常に大きくなると思います。併し恐らく政府は医療券の発行に対して相当制限するのでありましよう。例えば生活保護法を実際に適用しておるもののみに医療券を発行するというような形で、或いはなるべく入院させないというようなそういう方針を取りつつあるやに聞いております。こういう状態では恐らく失業者や貧乏人に対しましては、死ねという以外には道がないというような、非常に悲惨な状態が來ると思うのであります。
 又一方農民の國民健康保險につきましては、これは現在七千の組合と、それから人口にしまして二千八百万人の人たちが、農民や市民の健康保險の組合員になつておりますが、併しこれに対しまして僅かに九億一千万円、そうして一戸当り平均千六百円というような保險料だそうであります。併しこれ自体が大体半分ぐらいが漸くその日その日、毎月々々をやつと送らして行けるというようなものだけで、非常に不振を極めておるというようなことは、これは厚生省自体が言つております。この問題は、國民健康保險を作る問題に関連しまして、例えば最近村長を辞めたとか、或いは村会で問題になつて、リコールになつたとかいうような問題すらもありますので、実際に労働者と比べますと、市民や農民の状態はもつともつとみじめであるだろうと思うのであります。以上によりまして、大体我々労働者階級は國立病院特会制になれば、これはもう一体労働者の本能的な希望であり、期待でありますところの日本で最高峯を行く医療機関であります國立病院が、一應非常に営利的な一つの企業体になる。先程もお話がありましたように、金を持つておるやつだけがかかれる。金を持たない、殊に生活保護法や、失業保險関係の患者は相当制約されるというような形、こういつた形には絶対我々は不満なのであります。殊に大体公共的な医療機関と雖も、最近におきましては殆んど独立採算を取り、そのために非常に四苦八苦して、人件費もなかなか満足に拂えないというような状態を我々聞いておりますが、併しこういつた状態が強化されれば、日本の國立、或いは公共的な医療機関は、金を持つておる特権階級のみに利用されまして、國民に取つては殆んど緑のないような、そういつた存在になるのではないかということを心配するのであります。
   〔理事波多野鼎君退席、委員長著席〕
 それから今までの國立病院の統計によりますと、十六%の入院料の全免患者があつた。そういつた問題が恐らく今後廃止の憂目を見るでありましようし、或いは減免患者の削減、そういつたこと、或いは医療費がいろいろな形で値上げになつて、それが日本全体のいろいろな医療制度の中に含まれて、医療費の値上げに響くというようなこと、それから患者は恐らく院内でもはつきりした差別待遇を受けるのではないかというようなことを考えられると思うのであります。以上の觀点から我々はやはり一般会計の中に含まして收入と支出を別にして、そうして國立病院は國立病院らしく、飽くまで國家の責任において運営して欲しいという問題が一つと、飽くまでも特会制を強行し、そうして営利的な企業的に方向に断行するならば、日本が当面考えております社会保障というふうなそういつたものは政府はよろしく撤回し、全然出直して貰いたいと思うのであります。そう思うのであります。それは現在の國民建健保險や、その他の社会保險の危機に対しまして、何らの具体的な対策がないという点から見ましてもはつきりします。以上特会制につきましては全面的に反対を表明するものであります。(拍手)
#17
○委員長(櫻内辰郎君) 只今の公述に対しまして御質疑がありましたら、この際お願いをいたしたいと存じます。
#18
○小川友三君 今公述人の方が最後の方で医療費が幾らか上るような傾きを心配をするという見方を持つていらつしやいますが、或る一部におきましてはそういうお考えが出るかも知れませんが、十年前と違いまして、現在は医師が非常に多いのでございます。医師が多くて開業医が開業したけれども、博士の看板は取つたが、患者は一日に一人か、二人しか來ないという状態が沢山ございます。そこでこの問題に関連をしまして、幾らか治療費が全般的に上るような傾きのような御説がありましたけれども、医師が多いから、だからなかなか一般の医療費は上らないと思うのであります。そうした見方に対しまして何か御意見がありましたら一つ……
#19
○公述人(吉田秀夫君) 大体私達は絶対に國立公共医療機関のみを守るというのでなしに、今のお話にもありましたように、開業医自体が患者が一人か乃至三人ぐらいしか來ないで税金も拂えなくて非常に困つておるという、こういうことを非常に心配するのであります。ですからこれは日本の医療全体を守るような形で問題を考えないとどうにもならないのじやないかと存じます。今度点数制が若干改正されまして、或いは政府は医療費は余り上らないと言つておりますが、一般の医療費が五%、歯科診療も若干上ると思います。そうしますと全般的のこの医療費の非常なる増額でありまして、八億円を支出しましても点数制の改正によりましてプラスマイナスゼロになるのじやないかと思うのであります。從いまして厚生医療費の基準をお決めになるというようなことは、これは我々期待できると思うのでありますが、その場合にやはりどうしても診療費を上げなくちやならんという觀点からそれくらいが少くても上ります。その点、外に影響しますのじやないかと、その点心配いたしておりますから……
#20
○委員長(櫻内辰郎君) 次は東京都墨田区会議員民生委員水沢正君の公述をお願いいたします。
#21
○公述人(水澤正君) 私は國会法に明示されました公聽会の公述人として機会を得ましたことは光栄に存じますが、本件に関しましては何らのいわゆる知識等を持合せしておりませんです。かような点から本委員会におかれまして、直接私を指名して下さつた点等につきまして、今後においてこの國会が公聽会を開くに当つて直接呼出すということに対しては若干の弊害があるのじやないかと、かような点を考えるものであります。何故ならば私は幸にして別に何らの背景を持つておりませんですが、どういう方面の人選によつて私達がその指名されるものとする場合においては、若しも誤つたところのいわゆる行き方がされる場合があるのじやないかとかような点を杞憂するものでありまして、若しもいわゆるその職責が、例えば公人であつて、そうして民生委員というところの職責とか、議員とかいう職責に対して要望するとするならば、少くとも民生委員会にそれを求めるか、若しくはその区議会にいわゆる参加するところの人の人選方を依頼すべきものじやなかろうかと私はかように考えるものであります。かような点から全く本日のこの委員会に対して、いわゆる医療の國立病院の特別会計法案に対するところの意見等につきましては、この席に來るまで初めて入るまで何らの意見も持たなかつたものであります。ただこの本日の公述人のいわゆる前日六人の方の御意見等をそれぞれ耳にしておりましたときに、私は初めて知つたような次第であることを前置といたしまして職責を果したいと思つております。若しも私は委員長にお尋ねしてお許しを得られるならば私は本日の公述人の方に御質問をして見たいと思いますが、かような点は許されないことでしようか。
#22
○委員長(櫻内辰郎君) あとからでしたらどうぞ……
#23
○公述人(水澤正君) そうしますと、私にはその全く、この話についての知識を持つていないというふうになつてしまうのです。ただたつてこれを申上げなければならないとなりますと私達が、民生委員としてこの國立病院の特別会計問題について聞くところによると、五〇%が民生委員の手によるところの生活保護法よるものだというような点を耳にしておる場合において、私達はかような問題は少くとも私は全國民生委員代議員会が過般二十六七日等にあつたが、かような点が一つも議題として供されて私達この点に関して耳にする機会等を得ておりませんし、尚東京都の民生委員連合会の評議員会等も過般二十日の日にありましたが、かような重大な問題等も耳にしておりませんです。かような点から民生委員が五〇%の國立病院の利用者を持つているのだとするならば、余りお急ぎにならないで、私達民生委員がそれぞれの組織を持つているものでありますから、五〇%というところの実績の手前からも、もう少しその機会を與えて貰つて、そうしてこの参議院の本委員会等におかれましても、十分なるところの意を盡して頂けるならば幸甚だと、かように考えます。特に私はこの問題について余り心配をいたしまして、区役所へ行つて民生課長さんに聞いて見ても、そんなものは俺一向分らん、助役さんに聞いてもそんなものは一向に分らん、余りこれじや職責を果し得ないからと思いまして、心配の余り今度は健康保險所の渡医医学博士のところに行つても、いやそんなことは新聞の投書欄に出ていたが、一向にそんなことは分らん、かようなふうで私はこの新聞の投書欄によつて、この國立病院等に呻吟されているところの各位が悩み抜いている等の事実を見、そうして今日の公述人の中にその一人として出られたときに、参議院のお方がこれに暖かいところの椅子を勧められるところの参議院の諸公であるならば、恐らく信頼して可なりと、かように考えまして、今日のいわゆる各位の意のあるところは、これら参議院の各位が取上げて下さるだろうと固く信じまして、一部の職責を果して見たいと思いますが、私は本案の聞くところによりますと、政府提出によるものだということを耳にしたときにおいて、政府のお役人というものは、自分の碌さえ食んでいれば、それで能事足れりとしているところの各位でありまして、かようないわゆる政府提案こそ、参議院の各位によつて愼重に御審議願いたいと、かように希望するものであります。特に私はかように強調する点は生活保護法のいわゆる物價指数が上つて参つての第七次、第八次、第九次の改訂等は一年に三回も矢継早に行われております。而も第九次の基準額改訂等に至りましては、科学的なるところの、日本で初めていろいろな角度から構想を練つて作られたところのものだとみずから厚生省が誇つております。私達はかような第九次の基準額こそ日本の憲法が男女平等であると言いながらにして、こんな不平等な基準額は曾てなかつたのじやないか。ここで私の時間がありますから申上げるとするならば、婦人の場合におけるところと、それから男の場合におけるところのこの差額というものは生活保護法において、生れて來たときにだけは同じで、後はずつと、これを年齢的に見て参りますと、仮に八歳の場合においては男の子は一千十五円で、女は八百五十円だ。仮にこれを五十二歳のときに見た場合においては、男は千二百円、女は六百二十五円。かように生活保護法において、その生活を立てる、いわゆる動物的なところの生活を立てる場合において差がついている。一体これで男女平等だと言えるだろうか。いわゆる新憲法下において、世界に誇るところの憲法だと称していても、若しも一朝困つて落伍した場合においては、かようなところの取扱いを受けなければならない現状になつております。尚これが若しもこれを病氣の方面に結び付けて参りますならば、この方達はむしろ健康である方が生きて行かれない。病氣になつて、病院に入つてしまえば先ず食う方の点だけは、國立病院等の場合においては、どうやら寢ていながらにして食つて行けるのだというふうになつている。併しこの場合において生活保護法の併給するところのいわゆる三百五十円の最低生活の基準額というものは、何々が加わつておるかと言いますと、衣類として補修布、縫糸、手拭、足袋というようなもの等におきまして八円六十四銭一ケ月に計上されております。更に身廻品等におきまして、縫針、下駄、草履、鋏、小刀、こういうもので一ケ月三十円六十三銭を計上されておる。保健衞生費としては理髪代、石鹸、歯磨、歯ブラシ、衞生綿等によつて百三十三円十銭が支給されておる。雜費として、雜誌代とか、新聞代、用紙代、インキ、万年筆、鉛筆といつたようなものによりまして百七十七円六十三銭、通信費において十四円というものが計上され、その他五十二円五十六銭。病院に入院しておつてそうしてどこからも金も來ない、生活保護法によつて來るたつた三百五十円のこの金に頼りに待つておるのであります。今日は暖かい時節でありますから余り関心がぴんと來ないだろうと思いますが、寒い場合において足袋一足買つても闇足袋が一足四百円する。諸々数々のかような項目だけが沢山並べてあるが、果して一体これで國立病院等に入つておる患者の人達が立つて行けるだろうか。私はかような点等から考えましたときに、第九次の基準額の改訂等において生活費が科学的に組合せ式になつて、カロリー計算によつて算出されておるというが、國立病院に入つて呻吟しておる人達が忘れられたごとくにして三百五十円は依然としてそのままになつております。私は更に不思議極まることと思うのですが、女がかくまでも虐待されるものかと思うのは、この第九次基準額において女の子供というようなものには衞生費の中に理髪代というものはありません。日本の女の子供は熊の子と同じなんです。おかつぱにしない子供はきようびありません。おかつぱにする必要はないのだ、熊の子みたいに髪はぼうぼうと伸ばして置けばいいのだというのが第九次基準額の改訂された基準になつておるのです。これが非常に文化的な組合せのし方だというふうに言われまして、私達は遺憾ながらこれを忠実に守つておるものの一人であります。どうか一つ、参議院は最近活溌な活動をして、新聞紙上等によりますと、常に公聽会等をお聞きになつておりまして、私達はこの憲法下においてこの國会法を見たときに、参議院にだけおすがりして我々の今日当面に困つておる問題等を解決したい、私自身今日ここに出たことを光栄に考えて、將來とも参議院に方達にはいつの場合にも足を向けないで寢ようと思つておるのであります。以上を以ちまして、大変七番目というものはつらいのです。眞打ですから……。(笑声)以上を以ちまして私の公述といたします。
#24
○委員長(櫻内辰郎君) これより公述人の方に対しての御質疑がありましたら御質疑を願います。
#25
○波多野鼎君 ちよつと皆さんにお諮りして置きたい点ですが、横浜の國立病院の看護婦さんの梁瀬さんが先程の公述におきまして、今年の四月國立病院が特別会計になれば、治療費ですか、入院費ですか、一割を上げることの通告を受けて、治療費を一割すでに上げて、実行しておるということを公述の中に言つておられましたので、そういう通告が厚生省からどういう形で正式に言つて來られたかどうかということを実は知りたいのです。これはどこへ頼んだらいいのですか。梁瀬さんの方へ頼んだらいいか、或いは厚生省の方に頼んだら……。委員会として正式に公述人に材料を出して頂くようにお願いいたします。
#26
○委員長(櫻内辰郎君) それでは梁瀬さんからそういう通知がどういうところから來たかということを御存じならば、ちよつと述べて頂きます。あとでも結構ですから……
#27
○公述人(梁瀬美代子君) 今まで健康保險にかかつております患者は一割引きだつたのございますが、今度特別会計制が布かれるという建前から、四月からは健康保險に対する一割引きを全然なくしてしまつたわけでございます。それで営利じやないと言いながら、現実の面では、そして今までよりは一割上つているということを先程私が申述べましたが、詳しいデータは後程委員会の方へお送りしたいと思うのであります。
#28
○天田勝正君 それに関連しまして、坂口さんですか、責任者でありまするから、こうした通牒に接しておるだろうと思うのです。いつどういう形で通牒が來られたか。御存じでしたらお述べ願います。
#29
○公述人(村上悠基雄君) お答え申上げます。村山でございます。只今の健康保險法等に対して從來一割引の点が、それがなくなつた点とか、いろいろ申されましたですが、この通牒につきましては、昨日私共患者数名が集まりまして協議しましたですが、正確な数字が必要で、大体は分つておりますが、尚我々の方でも厚生省その他に問い合せましてお答えします。今私並びに梁瀬さんが申上げましたことは、或いは組合で、或いは東京第一病院等で聞いて來た正確なところの説明であります。いずれ調べて見ます。
#30
○委員長(櫻内辰郎君) 外に御質疑はございませんか……。それでは御質疑はないものとして取計います。公述人の方にお礼を申上げたいと存じます。本日の御多忙のところをお繰合せ下さいまして御出席下さいましたことを委員会を代表いたしまして厚くお礼を申上げます。
#31
○中西功君 今日は出席された方々非常に熱心に、又よく調べて來られたのです。ところが今まで参議院は随分公聽会をやつておるのですが、その公聽会の結論が十分法案の中に通つたことが珍らしいと思うのです。こういうことでは私は折角ここに出向いて來られた方々に対して相済まんと思うので、一つ委員各位に公聽会におけるこういう意見は大いに尊重するといいますか、酌んで一つやつて貰う。そういうことが実質において今日來られた方々への最大の儲けだと思うのであります。一言そういう点を発言したいと思います。(「その通り」呼ぶ者あり)
#32
○委員長(櫻内辰郎君) それでは本日の公聽会はこれにて散会をいたします。
   午後三時四十五分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     櫻内 辰郎君
   理事
           波多野 鼎君
           黒田 英雄君
           九鬼紋十郎君
   委員
           天田 勝正君
           森下 政一君
           西川甚五郎君
           木内 四郎君
           油井賢太郎君
           小林米三郎君
           小宮山常吉君
           高橋龍太郎君
           中西  功君
           川上  嘉君
           木村禧八郎君
           米倉 龍也君
           小川 友三君
  公述人
   國立東京第一病
   院長医学博士  坂口 康藏君
   全國國立病院患
   者同盟委員長  村上悠基雄君
   全日本國立医療
  労働組合委員長  堀江信二郎君
   國立横浜病院看
   護婦      梁瀬美代子君
   東京慈惠会医科
   大学教授医学博
   士       石川 光昭君
   産別会議幹事兼
   保健部長    吉田 秀夫君
   東京都墨田区会
   議員民生委員  水澤  正君
ソース: 国立国会図書館
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