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1949/04/25 第5回国会 参議院 参議院会議録情報 第005回国会 運輸委員会 第10号
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1949/04/25 第5回国会 参議院

参議院会議録情報 第005回国会 運輸委員会 第10号

#1
第005回国会 運輸委員会 第10号
昭和二十四年四月二十五日(月曜日)
   午前十時四十一分開会
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○通訳案内業法案(内閣提出)
○港則法の一部を改正する法律案(内
 閣提出)
○國有鉄道運賃法の一部を改正する法
 律案(内閣送付)
 (右法律案に関し証人の証言あり)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(板谷順助君) これより会議を開きます。まず通訳案内業法案が本委員会に本付託されておりますのでこの際政府委員の説明を求めます。
#3
○政府委員(加藤常太郎君) 只今から通訳案内業法案の提案理由について御説明申上げます。御承知のごとく通訳案内業者、いわゆるガイドは外客接遇の第一線に立つ者でありまして、その素質の如何は外客接遇上重大な影響を與えるのみでなく、延いては我が國の外客誘致事業の隆替にも影響するところが少くないのであります。特に我が國の言葉は欧米の言葉とは根本的に異なつておりますので、外客の斡旋案内の十全を期するためには、語学に堪能な者を必要とするのでありますが、それと共に我が國の姿を正しく、且つ十分に紹介し、併せてその斡旋案内に遺憾なきを期しまするためには相当の教養と経驗とが必要であります。然るに我が國における從來のガイドに関する取締法規である案内業者取締規則は、罰則その他の関係上、法律とする必要を生じ、法律第七十二号によりまして、昭和二十二年末を以て失効したのであります。從いまして現在通訳案内業は全く自由営業となつておりますため、無秩序無統制に流れておるのでありまして、これは外客の來訪が日に多きを加えつつあります今日、誠に遺憾に堪えません。現にガイドの團体はもとより、観光事業関係諸機関からも、業者の育成と取締に関する適切な新法律の制定を切に要望しておるのでありまして、当省といたしましても、かかる実情に鑑み、既存の取締規則の失効前に制定するため、法案の作成を急ぎ、昭和二十二年末閣議決定を見たのでありますが、関係方面の了解の取付その他で遅延し、本國会に提出することとなつた次第であります。
 次に本法案が從來の取締規則と異なる主なる点を申上げまするに、その第一は通訳案内業の試驗と免許とを分離した点でありまして、從來は試驗も免許も共に都道府縣知事が行なつておつたのでありますが、これではその試驗が府縣によつて区々となり、業者の素質の統一と向上を図ることが極めて困難でありますので、試驗につきましては、運輸大臣において全國に亘り統一的に行い、且つこれを資格試驗といたしたのであります。尚免許につきましては、業者の指導取締の便宜等を考慮し、從來通り都道府縣知事において行い得ることとすると共に、これまではその免許は一部の都道府縣知事のみが行なつておりましたのを、今後は業者に対する全國的需要を考えまして、全都部府縣知事がすべて免許をなし得ることに改めた次第であります。
 次に本法案が從來の取締規則と異なる第二の点は、新たに免許の更新に関する規定を設けた点であります。從來は一度免許を受ければ、そのまま終生営業を続け得ることとなつていたのでありますが、これは業者の指導取締上好ましくありませんので、五年目ごとに都道府縣知事に申請せしめ、免許の更新を受けしめることといたしたのであります。
 第三は業者の取締の民主化を図つた点でありまして、免許の取消乃至営業の停止等を行うに当りましては、予め当該業者に十分抗弁の機会を與え、且つその処分に不服のあるときに訴願をなし得ることといたしたのであります。
 最後に本法案の経過規定について一言いたしまするに、從來の取締規則によつて免許を受け、現に通訳案内業を営んでいる者につきましては、既得権を尊重する意味におきまして、本法による試驗に合格した者とみなし、且つ本法施行後三ケ月を限り本法による免許を受けないでも営業をなし得ることといたしたのであります。
 以上本法の制定の趣旨及び内容の概要を御説明申上げた次第でありますが、何とぞ愼重御審議の上速かに御可決あらんことをお願いいたします。
#4
○委員長(板谷順助君) 何か御質疑がありましたらどうぞ。
#5
○小野哲君 現在通訳案内業が内務省令の取締規則で從來はやつておつたんですが、これが失効になつて今度新たに法律を制定されようというのが、この通訳案内業法案の趣旨であると思いますが、先ず現在一体通訳案内業に從事している者はどれくらいおるかということ、第二はどういうふうな経歴、学歴等を持つておるかということ、そういう点を伺つておきたいと思います。
#6
○政府委員(芥川治君) 現在いろいろな調書が燒失したりいたしました関係上、正確なところは分らないのでありまするが、大体において約千名ぐらいと見当をつけております。それから学力等につきましては、試驗の内容によつて審査することに相成つておりまして、從來の学校における経歴等は、この條件には入つておらないというふうになつておるのであります。
#7
○小野哲君 今度は試驗制度によつて、言い換えれば資格を與えるということが一つと、それから指導取締上の便宜上から都道府縣知事において免許を行うというふうなことが主な狙いになつておるようですが、大体こういうふうな取扱をする場合においては、免許について基準を定めることが適当ではないかと思うのですが、今回の法律案では、免許を聳える場合の基準について、政府はお考えになつておられるか、それを伺つておきたい。
#8
○政府委員(芥川治君) 小野委員から御質問のありましたように、免許の基準等につきまして、この法案については規定はされてないのでありまするが、一應我々の方の見積りといたしましては、試驗をすることによつて一應基準がほぼ決定を見ると思うのであります。それで大体において專門学校以上の学力を有する、そういうふうな試驗の基準を決めることによりまして、全國一率にその標準が決まつて行くというふうに考えているわけであります。
#9
○橋本萬右衞門君 從來約一千名と推定されるガイドの中には、随分学力の低い無責任な者のあることも知つておりますが、この法案が通過しまして法律になれば、その者も一樣に試驗をさせるのでしようか。過渡期的便法として、或る期間はそのままガイドとして從事することを認めるようにするお考えでしようか。その点をお伺いいたします。
#10
○政府委員(芥川治君) 從來都道府縣から免許をすでに受けております者につきましては、その既得権を認めまして、お話のように学力等につきましては、相当疑問の点があるかと思うのでありますが、既得権を尊重する意味におきまして、從來通りやれるというふうに相成つておるわけであります。附則にもありまするように、三ケ月間の猶予期間を以ちまして、その間は免許なしにも通訳案内業を営むことができるわけでありますが、その間に免許を得れば、試驗をなしに通訳案内業を営むことができる。そういうふうに規定されております。
#11
○小野哲君 今橋本委員の御質問に関連しておるんですが、橋本委員の御質問は、恐らく経過規定の点であろうとこう思うのです。経過規定によれば、先程提案理由の御説明の中にもありましたように、既得権を尊重して、本法による試驗に合格した者とみなし、且つ本法施行後三ケ月を限り、本法による免許を受けないでも、営業をなし得ることとした。こういうふうな御説明があり、又この法案の経過規定もこれに基いた趣旨が書かれておるわけでありますが、從來のガイドの状況を見ますと、相当人格的にも亦学歴の点からいつても、必ずしも妥当でない者が多数におつたのではないか。これらのことが相当禍をなしておるということは、識者の認めておるところでありまして、從つてこの際無條件に通訳案内業者の既得権を認めるということが、果してどうであろうかと、こういう懸念を持つわけであります。從つて経過規定によつて、試驗に合格をした、いい換えれば資格を持つておるということ、並びに免許を受けないでもよろしいと、こういうふうな、期間としては三ケ月でありますけれども、この三ケ月という期間が相当重要ではないか。こういうふうに思うのでありますが、運輸大臣に申請をすることになるような手続もあるであろうと思うのでありまして、無條件にこれを認めるというのではなくて、申請期間において、三ケ月以後でありますが、恐らく申請をするわけになると思いまするが、いずれにしましても、何らか確認をいたしましてその間において不適当である者は適当に整理をするというふうな方法を考えるべきではなかろうか。要約いたしますと、無條件でこれを認めるというのでなくして、政府がこの法律の趣旨に基いて現実に通訳案内業者をある程度整理して行く、この期間内においてよい者ならばこれを認めるというふうな方法を講ずることが必要ではないか。こう思うのですが、何かこの点について措置をお執りになるお考えがあるか伺つておきたいと思います。
#12
○政府委員(芥川治君) 小野委員から御注意のありました点は、当初に、法案を立案いたします場合におきましても相当愼重に考慮をいたしたのでありますが、現在の日本の状況におきまして、私企業を運輸大臣が圧迫するというような観念を持たせるのはどうかというふうな関係から、無條件で認めるということに、この法案につきましては、相成つておるわけであります。ただ現在でも交通公社内にあります日本観光通訳協会に、殆んど一流の通訳案内業の人は登録をしておる関係で、こういう面から自然に惡い者は淘汰されて行くというふうに考えておるのでありまして、お説の惡き者をこの際申請によつて排除して行くというふうな考えは、今のところ考えておらないのであります。
#13
○小野哲君 この経過規定のお取扱は、今御説明になつたように、全然無條件で現状を認めて行くということになつておりますが、私が申上げる内容で更に附加えておきたいことは、免許の制度を確立するという場合におきましては、相当これは現在の自由営業を免許営業にするということになりまして、関係業者にも相当重大な影響を與えるものでありますが、同時に免許業者たり得る者についても、その素質等については十分に檢討を加えて行かなければならないので、やはりこの点については何らかの行政上の措置をお採りなる必要があるのではないか。例えば大体この法律が施行された以後において、免許を受け得るようなものが、やはり認められるというふうなことにする。そのためにはこの期間に政府が確認をする、或いは認証をするというふうな方法を考えて、移り変りについて遺漏のないようにされることが必要である。こんなふうに思うのであります。從來の事業方式は大体無條件で認めるということでなしに、何らかその間に措置を講ぜられておるように思うのでありますが、政府はこの点について、通訳案内業者については特別な取扱をされようとするのでありますか。必ずしもこういう措置を採ることによつて運輸大臣が業者を圧迫するというふうな結果にはならないと思うのでありますが、御見解を承つておきたいと思います。
#14
○政府委員(芥川治君) 從來免許を受けておりましたものの数は相当ありまするので、私共もその点につきましてはいろいろと考えたのでありまするが、從來の法規に基いて免許を受けておりましたものを、この際運輸大臣の方で急にそれを廃除するというふうな考え方は、どうも現在の日本の情勢におきまして私企業の圧迫というような観念を持たれるのではないかという点等を考慮いたしまして、実際の運用において、例えば十三條等にありまする不正な行爲をした場合にこれを禁止する、そういうふうな方面からこれを一面矯正をして行きますと同時に、先程申しましたように日本観光通訳協会のいろいろな正式な申込によつて、一流の案内業者が表に出て行きますので、こういう方面から運用で調整をして行ければ、惡いものは自然になくなつて行くというふうに考えるのであります。
#15
○委員長(板谷順助君) 免許を受けておるものが約千名、これは推定でありましようけれども、どうも聞くところによると随分通訳の中には如何わしいものも相当にあるようでありますが、今小野委員のお話のように、一定の基準を設けて、この際既得の権理を認めるといつたところが、果してどれだけ試驗を受けて試驗に合格したのであるか。例えば今お話の交通公社の関係は或いはどうか知れませんけれども、その免許を受けるときにどういうような資格で受けたか。從來受けたものは……。
#16
○政府委員(芥川治君) 從來試驗を受けましたものは、從來は必ずしも各都道府縣知事が全部免許をしたわけではないのでありまして、警視総監、北海道長官、京都府知事、神奈川縣知事、兵庫縣知事、長崎縣知事、大体観光に直接関係のありまする都道府縣の免許でありまして、その数が大体約千名ぐらいと想定をしておるわけでありますが、現在社團法人の日本観光通訳協会の会員として加入中のものは、そのうち約百七十五名程度ございまして、恐らくこれは各縣の内務省令によります取締規則が、二十二年に失効いたしまして、協会が独立の立場において行なつた試驗に合格して会員となつたものが相当含くまれております。これは殆んどすべてが英語になつておるわけであります。從來の案内業者の取締規則の試驗の内容は、外國語と本邦の地理歴史、今度の試驗によりますと、それに第四として産業、経済、政治及び文化に関する一般の常識、それともう一つは人物考査と、二つ加えられております。学科の内容につきましては從來も今も変りなく、ただ程度の問題につきましては場合によつては都道府縣知事に任せてあります関係上、地方によつては非常に低い程度の試驗に合格しておるのもあるのではないかということも一應考えられると思います。一應はこういう形式の試驗を済ませて免許を受けておるわけであります。
#17
○委員長(板谷順助君) そうすると今度の試驗というのは、例えば英語とかロシア語とかフランス語とかいう各國語に亘つての試驗を全部設けることになるのですか。
#18
○政府委員(芥川治君) 從來は全部の外國来に亘つてありました。併し八〇%は英語でありました。昭和十三年末の数字でありますが、百九十九名のうち八〇%の百六十三名が英語でありまして、フランス語が、十二名になつております。その他ドイツ語十名、スペイン語が八名、こういう状態になつておるわけでありますが、現在の日本の状況におきましては、差当りは他の外國語を措いて先ず英語を中心にして試驗をして行くのがいい、これは後で試驗の告示ごとにその都度々々、その情勢に應じて告示をして決めて行きたい。こういうふうに考えるのであります。
   ―――――・―――――
#19
○委員長(板谷順助君) 港則法について御質疑ありませんか……。海上保安廳の方にちよつと伺います。この間港湾局長が、例えば港において大藏省或いは建設省、運輸省と港に直接の関係のある仕事が、ばらばらになつておる。そこでこれを統一する意味において從來は主として都道府縣知事とかいうようなものが、主して地方の施設をやつておつた傾向があるのですが、港に港長というようなものを設けて、それに港に関するあらゆる仕事を統一させるというような案を、今立案中だというようなお話をしておりましたが、あなたの方で何かそれについて関與されておるか。或いは又あなたの立場においては、港則法を制定されるについてどういうふうに考えておられますか。
#20
○政府委員(大久保武雄君) 只今委員長から御発言のように、港の行政機関が非常に各方面に分れております。そこで概括して申しますと、港に関する一つの警察的な取締をする機関と、港の経済的な面に対する行政をする面と、更に又土木的な現実の行爲をして行く面というようなものがございますが、海上保安廳の所管しております港長の任務というものは、この中で港の交通の安全に関する警察的な業務を所管いたしております次第であります。そこで現今における行政の体系が、警察機関が経済その他の行政行爲を同時に行わないのを本則とするということになつておりますので、私共の考えといたしましては、港長の職務というものを余り廣範囲に拡げることは若干問題ではなかろうか。又逆に申しますと、港長の行なつておる警察的な職権を、港の管理者、経営者自体が行うということは、再びいわゆる警察権と実体権とを合せて持つております旧式警察に堕する虞れがございまするから、飽くまで港長は中立的な立場に立ちまして交通の安全を執り行うことが適当ではなかろうか、かように考えておる次第であります。
#21
○委員長(板谷順助君) 私が今申上げた港長というのは港湾行政を統一するための港長で、例えば最近問題になつておる、横浜の埠頭を司令部が返すというにも拘わらず、未だに運輸省、大藏省、或いは建設省などいろいろ爭つておるようですが、こういう運輸行政が統一せざる限りは解決ができないというような、そこに非常な欠陥もあるようですが、あなたの港長はただ交通取締の一部というようにお考えであるけれども、運輸省内部においても、港湾局長あたりはそういうふうな積極的なお考えを持つておるようでありますが……。
#22
○政府委員(大久保武雄君) 只今委員長から港長という御発言がございまして、私若干誤解いたしまして御答弁を申上げたのでありますが、港湾局で考えております港長というのは、或いは港長という名前を向うは他の名前に改正された方が適当かも知れませんが、いわゆるボート・オーソリテイという仕事の面で、私共の方の港長は、外國でいえばキヤプテン・オヴ・ザ・ポートといつた面の仕事でございます。これはおのずから全然責任の分野が違つている。いわゆるポート・オーソリテイは港湾の経営者でありまして、これは岸壁を持ち或いはその他の施設を持ちまして、港湾の経営をする機関であります。そこでやはりこの面と、私共の方のキヤプテン・オヴ・ザ・ポートという組織というものは、やはり両々存立して然るべきであつて、或いはポート・オーソリテイの面において適当なる統合一元化というものが行われまするならば、これは一つの行き方ではなかろうかと、かように考えておる次第であります。
   ―――――・―――――
#23
○委員長(板谷順助君) 高田君、今通訳法案が議題となつておりますが、何かお尋ねがありましたら一つ。
#24
○高田寛君 今までいろいろ御質疑もあつたことと思いますが、私遅れて参りましたので……。この通訳案内業法のような、こういうような法制というものは、ヨーロツパの観光國あたりどういうふうになつておるか、その点を先ず最初にお伺いいたしたいと思います。
#25
○政府委員(芥川治君) 非常に観光方面につきましてはいろいろとありまするが、大体メキシコとフランスがその例として取り得ると思うのであります。フランスにおきましては、昭和十四年に大統領令で取締に関する規則を制定して、これを実施しておるわけであります。メキシコにおきましては、内務省令で出しておりまして、相当嚴重な取締をやつて、その教養の向上を要求しておるわけであります。
#26
○高田寛君 そうすると、或いはスイスとか、或いは戰前のドイツとか、相当観光事業に力を入れた純の辺の國ではどういうふうになつておりますか。
#27
○政府委員(芥川治君) スイスその他ドイツ等につきましては、詳しいことは承知いたさないのでありまするが、どうもそういう法令がないところを見ますと、國語が共通であるという点が一つの大きな原因になりまして、比較的に相互の理解が容易に行われるというような関係から、こういうふうな特殊な立法が一般的には割合に少いのではないかというように考えられるのであります。
#28
○高田寛君 それからこの前の取締規則はすでに失効になつて、現在は取締法規が何もないと思うのですが、その取締法規がない現在において、こういう取訳案内業の業者達がどんな意見を持つておるか、又政府に出してどんなような動きをしておるか、その辺の実情も一つ伺つて置きたいと思います。
#29
○政府委員(芥川治君) 終戰後におきまして、大体試驗をいたしましたのは、警視廳と京都においておのおの一回これを施行しております。警視廳におきましては二十二名、京都におきましては一名の合格者になつております。それから自由営業になりまして以來、この通訳案内業をしたいというふうな関係から、相当交通公社にありまするところの日本観光通訳協会等にいろいろな問合せがありまして、できるだけこういう方面につきまして、業者としての免許といいますか、試驗といいますか、そういうものについてはつきりしたものを作つて呉れという希望が相当多いように聞いております。
#30
○高田寛君 それから尚現在まあ從來の試驗によつてライセンスを持つておる者の数がどのくらいあるか、その点も一つ伺いたいと思います。
#31
○政府委員(芥川治君) この点につきましては、都道府縣の資料の燒失等で、はつきりした数字は掴めないのでありまするが、大体において約千名の人が免許を受けておる状態であります。そのうち社團法人の日本観光通訳協会の会員となつております者が、百七十五名程度になつておるわけであります。
#32
○丹羽五郎君 この法案は非常に適切なものだと私は考えておりますけれども、実は今の一千名の現在ガイドをしておる者の中に、女子は一体何名ぐらい從事しておりますか。
#33
○政府委員(芥川治君) 誠に遺憾でありますが、どうも資料がはつきり掴めませんので、現に私共の方に聞いて來るぐらいでありまして、都道府縣においても資料がありませんので、はつきりしたことは掴めませんが、はつきり日本観光通訳協会の会員となりまして、これに合格した者百七十五名の中には、これもはつきりした数字は記憶しておりませんが、数名はおるという程度であります。
#34
○丹羽五郎君 向後、外客誘致ということについて、一番ガイドということが重要な仕事の一つになると考えておりますが、この場合外國から來た客に、いろいろのいやな感じを持たせないように、よく法律の上においてもそれを織込んで見たいと、かように考えておりますが、この第四條の、「左の各号の一に該当する者の中には免許を與えない」ということの中に「傳染病の疾病にかかつている者」というのが、これはどういう方法によつて知るようになつておりますか。傳染病というものは、或いは傳染病にかかつた届出をするのであるか。その点はどういうように第四條の立法の精神を持つておられるか。ちよつとお伺いしたいのであります。ただ傳染病にかかつておる者ということですが、これは少し僕はどうもこの法の運用等について少し面倒になつて來やしないかと思いますが、その点を一つお伺いしたい。
#35
○政府委員(芥川治君) 第四條の二項にありまする「精神病又は傳染病の疾病にかかつている者」、こういう表現は今までなかつた。今まであつたのですけれども、それは今まで「精神病又は人の嫌惡すべき疾病にある者」、こういう規定が今まであつたわけであります。それを失効にいたしまして、今度新らしくこの法案では、「精神病又は傳染病の疾病にかかつている者」、これは試驗を受ける際に健康診断等によりまして医師の証明を受ける。そういうことによつてこれを調べて行きたいと、かように考えております。
#36
○丹羽五郎君 私の問わんとすることは、傳染病にかかつておる者は免許を與えない。そうすると現在試驗に合格をして免許を取つておる者でも傳染病にかかつておる者はその期間、その病氣が治るまで免許を停止するか、或いはその職業を停止するというような規定がここに盛り込まれていないのであります。この抽象的なことでなく、もう少し、これは一番重大なことだと、かように考えておりますが、日本には非常に傳染病患者が多いので、仮に外國から日本に來る人は、非常にそういう点にも留意しておるのでありますが、それに対して何か定期的に年三回なら三回、健康診断をするというようなことがここに條文に掲げておかないと、ただその抽象的ではその立法の精神を十分に動かして行くことはできない。かように考えるのでありますが、ただこれも一つの法文の羅列であつて、これの運用ということはどういう方法において行われるか。その点をお伺いしたい。私のお尋ねするのは、疾病などそういうことを予見する方法ですね。
#37
○政府委員(芥川治君) これは試驗を受けまする前に健康診断をいたすことによつて分りますと同時に、又その通訳案内業者自体が免許後に病氣になつたというような場合には、それの営業を停止することもできるのでありまして、これは第十四條に掲げてあるのであります。從來の取締規則もこの新らしい法案も、この点には重大なる関心を持つて書いてありまするので、運用につきましても先ず十分やつて行けると思うのであります。
#38
○丹羽五郎君 私の問わんとするのは、この試驗に合格して通訳業者となつた者が疾病した。その疾病、或いはそういうような患者の疾病に対する予見の方法は、或いは定期的に年三回なら年三回健康診断をするというようなことが一つもこの規定には現われていないのであります。ただ疾病というのでは、それを隱蔽しておるということもありますが、その辺の方法をどういう工合にするか。取締方法です。若しも傳染病にかかつておつた人が、それを隱蔽してそのままでおる場合に、それの予見する方法というものは、一つもこの法案の中には書かれてないようなことでありますが、年三回なら三回定期的に健康診断をするということをやるか。そういうことをしなければ、ただ抽象的にこの法文を羅列しても一向効果がないように思います。
#39
○政府委員(芥川治君) これは恐らく丹羽委員の御心配になりますことは、実際問題として起つた場合に大変なことになるということであろうと思うのでありまして、その点につきましては、傳染病にもいろいろありまして、仮に潜伏しているような場合には、或いは簡單には健康診断でも出て來んというような場合もあろうと思いますが、それは稀な例であろうと思われますので、これを年何回というふうにここで規定するよりも、むしろ大部分の人は日本観光通訳協会の專門の人の集まる所で、絶えず道徳的にも或いは法規的にも運用によりまして是正し、それぞれ健康診断等を事前に行いまして、それによつて通訳を出すというふうにむしろ運用して行つた方が却つてうまく行くのではないかというふうに考えておるわけであります。
#40
○丹羽五郎君 仮に接客業者の取締規則によりましても、年三回なり四回なりという健康診断を法律で決めております。そういうことがちつとも書いてないので、私はそれをどういう方法でやるかということをお尋ねするのです。
#41
○政府委員(加藤常太郎君) 今の丹羽委員の御質問でありますが、この法文の実際の運用の面において行けると思いますが、それは第十四條に、「通訳案内業者が第四條各号の一に該当するに至つたとき、又は前條の規定に違反し、その他業務に関し不正の行爲をしたときは」と、これで今丹羽さんの御質問の点を生かすようにできると思いますから、この法律の運用において、年一回健康診断をやるとか、そういうようにしたらどうですか。
#42
○丹羽五郎君 それからもう一つお尋ねしたいのは、この第五條の第五項の人物考査は、大体選択をするようになつておりますが、最近いろいろいかがわしい人がガイドをやつて、いろいろのなまめかしい話もちよいちよい聞いておるのですが、これは最初の試驗の折にも人物考査で大体選択はできると思つておりますが、何か第四條の中に或いは風紀を紊した者とかそういうふうなことをやつた者に対して、これには何はないのでありますか。その点はどういう考えを持つておられるのですか。これは試驗を受けたときには人物考査で大体できるが、試驗後における、いろいろ最近ちよいちよい私共耳にしておる嫌な氣持のする、外客に対して誘致方法を超越した行爲をやつておるというようなことをちよいちよい聞いておるのですが、そういう者に対して何か第四條で取締又は免許を取消すというような制裁を加えて行く項目を入れる必要はないのでありますか。それで私実は御婦人が何人おられるかということを前提にお尋ねしたのでありますが……。
#43
○委員長(板谷順助君) ちよつと速記を止めて下さい。
   〔速記中止〕
#44
○委員長(板谷順助君) 速記を始めて下さい。
#45
○丹羽五郎君 もう一点、これに対しての報酬、給與というようなことについてはどういうお考えを持つておられるのですか。
#46
○政府委員(芥川治君) 通訳の報酬につきましては大体この法律ではその点については決められておらないのであります。
#47
○丹羽五郎君 細則か何かでそういうことがあるのですか。
#48
○政府委員(芥川治君) これは日本観光通訳協会等にお願いいたしまして、公定料金というようなものを作つて、それによつて行つて頂きたい、こういうふうに考えておるわけであります。大体の見当を申上げますと、一人から三人までが約六百円、四人から十人までが約七百円、十一人以上が八百円、こんな見当で以てやるようにいたしたいというふうに考えておるわけであります。
#49
○委員長(板谷順助君) 高田君、從來あなたの方のつまりガイドが別に專属になつておるわけではないのでしようが、どういうふうになつておるのですか。やはり一日幾らというようになつておるのですか。
#50
○高田寛君 これはガイドが、今お話に出て観光通訳案内業協会というのですか、日本観光通訳協会ができていて、これがいろいろ今お話に出たような料金のことなどについてはこれを自治的に規行を行なつておる、こういうふうに動いておるので交通公社当りの專属のガイドということにはなつていないのであります。必要なときには通訳協会の会員の中一日幾らで依頼する、こういうやり方になつておるのであります。
#51
○委員長(板谷順助君) 從來通訳というものが、例えば外人が來て物を買う場合において、業者と組んで相当の何を取るというような弊害があつたようですね。
#52
○高田寛君 それは多分にありました。
#53
○委員長(板谷順助君) その点から丹羽君の御質問のように、或る程度人格というものを相当のものにしませんと、いろいろ弊害が起るわけなんですが……。
#54
○高田寛君 この十四條の、「業務に関し不正の行爲をしたときは、」ここに丹羽さんの心配されておるような、不正とまでは行かなくても、不正又は不都合な行爲、そういうふうな文字を入れたらということも考えられますね。
#55
○政府委員(加藤常太郎君) その「不正の行爲」を範囲にするか、文句をもう一つ入れるかですね。
#56
○政府委員(芥川治君) それから今お話の中にありましたように、大分前には品行の惡い者、素行不正な者というふうなものがありましたが、今度のこれにはないのでありますが、今度の試驗は御承知の通り相当高級な試驗をするつもりでおりますので、合格するような男であり又女でありましても、これは相当な学歴を持つておるか、相当勉強した人でないと合格しないと思うのであります。從つてそれは相当教養の高い人がこの試驗に合格して、通訳案内業を営むようになると考えておりますので、そういう点につきましては割合に心配がないのではないかというふうにも考えられるのであります。
#57
○高田寛君 今のお話に関連して、この見通しの問題ですが、從來は各府縣で個々に試驗をやつていた、それをまあ今度は中央で纏めて相当嚴格な試驗をやるということになるのですが、これを余程從來より程度を高くするおつもりかどうか。又そうした場合に現在の見通しとして、これに應募し合格する者が相当に出て來るかどうか。差当りどんどん観光客が入つて來ると、今度需要があるからというので、止むを得ず相当程度の低い試驗でパスさせなければその供給が間に合わなくなりはしないか、その辺の見通しはどうなつておりますか。その点をお伺いしたいと思います。
#58
○政府委員(芥川治君) 大体試驗の程度は專門学校卒業以上にいたしたいと思つておるのでありまするが、現に日本観光通訳協会が試驗をいたしましたそれから見ましても、應募者が相当多く七百五十名ありまして、そのうち一割は合格しておる。この程度でありますれば年二回の試驗をいたしますれば、観光客の要望に應じられるような数は獲得できるというふうに考えておるわけであります。
#59
○丹羽五郎君 私高田君と同じような質問をしたいと思うのですが、大体外客、遊覧客というものは、一年どれほどの人が來るとお考えになつておるか、その点を一つ……。
#60
○政府委員(芥川治君) 二十三年度の実績でありますが、外客の数を合計いたしまして六千三百十人になります。円貨に換算いたしまして約十億円という結果になつておりますが、二十四年度は大体一万八千名以上が來ると予想しておるわけであります。そして大体この入國外客の金が二十七億円ぐらいであると想定しているわけであります。入國外客の数の内訳を申上げますと、一時上陸いたしまする観光客と、通過するものと、一般のものと分けますと、一時上陸のものが約八千余りでありまして、通過の者が一万八千ばかり、一般の観光客が一万二千ばかり、その外に貿易業者の入國数が約二千三百、それから近親訪問者の入國数が三千二百、その他これはザビエルの四百年祭に参加等を考えますと、それが約五百人、大体こういうふうに考えております。
#61
○小野哲君 先程來いろいろ同僚委員から御質問であるのでありますが、すでに内務省令は失効になつておるのでありますけれども、この法案の審議の便宜のために、從來の案内業者取締規則を資料として御提出願いたいと思います。
 それからもう一つ、先程來の御質問に関連して、一應承つておきたいことは、この通訳案内業法は、追訳案内業者個人を対象として、或いは取締或いは適正な指導によつて、外客接遇の向上に資して行こうという、極めて妥当な目的を持つた法律案だと思うのでありますが、法案これを運用して行く場合については、多数の個人を相手にしてこの法律の趣旨を徹低するということは困難であろうと、かように思うのであります。精神病又は傳染性の疾病にかかつておるかどうかということにつきましても、その他通訳安内業者としての資質の向上という点から申しましても、なかなか十分には行きかねるのではないか。そういう場合に、政府委員からの御答弁の中にありましたように、現在通訳案内業者につきましては協会が作られておるようでありますが、これは現在のような自由営業の場合における一つの協会でありますが、この法律案が実施されました場合において、この種通訳案内業者の協会のような團体を、政府はどういうように指導されようとしておるか。又個々の通訳案内業者を対象としてこの法律の十分な運用が困難な点があるとするならば、かような協会のようなものに成る程度責任を持たすという方が、行政監督上からいつても妥当な方法ではなかろうか、かように思うのでありまして、この法律案の中には、通訳案内業者の團体の結成等については何ら触れておられないようでありますが、協会の行爲等をこの法律で或る程度規定するというふうな点について御研究をされましたかどうか。又この種協会をこの法律施行後更に存置する或いは新設するというような場合に、協会の性格をとういうふうに持つて行こうとお考えになつておるか。こういうふうな点も伺つておきたいと思うのであります。
#62
○政府委員(芥川治君) 只今の御質問誠に御尤もでございまするが、この法案を作りますまでの間には、実はまだそこまで十分な檢討は遂げておらないのでありまするが、日本観光通訳協会を法規的に云々するというところまでは、つまり考えておらないのでありまするが、この日本観光通訳協会の実体そのものが、先程から申しまするように非常に充実しておるのでありまして、殆んど一流の通訳案内業の人はこれに全部入つておりますので、むしろこの日本観光通訳協会を、運輸省といたしましても十分助長してやつて行きたいというふうには考えておるのであります。從つて将來講習会をこれによつて催すとかいろいろな方法によつて、助長して指導して行くという面につきましては十分考えておるのであります。
#63
○小野哲君 実は私がこういうことを申上げましたのは、政府委員の御説明の中で、先程丹羽委員の御質問に対する御答弁でありましたが、報酬等については協会で協定をするとかなんとかというふうなお話があつたようでありますが、而もこの通訳案内業というものは一つの免許事業になりますので、免許事業の報酬をこの種團体の協定料金でいい、言い換えれば自由に委しておくということは、果して如何なものであろうか。免許事業の料金であるならば、或る程度法律の免許の下にこれを取扱つて行くということにしませんと、やや行き過ぎた点が起りはしないか。從つてこの料金を判定することを通訳協会等の團体にお委せになるということになりますと、この協会の権限とか或いは組織等についても、何か法律の上でお定めになる必要が起るのではなかろうか。更に又通訳安内業者が今後この免許を受けた以後においての行動について、協会にお委せになるということになるならば、この点についてもその行動の如何が、この法律によつて、或いは免許事業の取消とか或いは停止というふうな重大な影響を及ぼすことになりますので、やはりこの点についても何らかの檢討を加えておくことが必要じやなかろうか。それについては、この法律に伴う施行規則をお作りになると思うのですが、そういうふうなところでお考えになつておられるか。今の自由営業を免許事業にされるということと相俟つての團体の取扱をどうするか。若し團体に或る程度運用を委せるという場合においては、全然法律から離れた自由な立場でこれに責任を持たせるということは、少し行き過ぎじやなかろうか。こういうふうな感じがいたしますので、御研究になつておられるならば、この点についての御所見を承つておきたいと思います。
#64
○政府委員(芥川治君) お説の通り、從來の取締規則によりますと通訳案内業につきましては、都道府縣知事の認可を要するということになつておつたのでありますが、先程から私が申しますように現在では日本観光通訳協会を施行法等で基準を決めて、それによつて法的な措置をするというところまでは、実は考えておらないのであります。一應これでやつて行きまして、將來どうしても工合が惡くなつた場合にはその点も考えなければならんと思うのでありまするが、これは関係方面の実は意向がありまして、実はそういう制限を撤廃したという関係に相成つておるのであります。
#65
○丹羽五郎君 この法案は簡單なように一應見えますけれども、非常に將來日本の外貨獲得というような上において重要な法案でありまするので、この委員会に観光小委員会を設けられておるので、これと非常に関係の深いもんでありまするから、一應さつき小野君が要求しました内務省の現在の規則その他いろいろ資料を政府から出して頂いて、観光小委員会で一應これを檢討して見たい、かように考えております。
#66
○委員長(板谷順助君) どうですか。今観光小委員会に付託するという性質でないかも知れませんが、一應一つ付託して頂いて、更に又本委員会において質疑應答を重ねるということにしたら如何ですか。
#67
○高田寛君 尚これはただ法案の上で実際これの運用がどうなるか、この法律を作つてうまく行くかどうかという実際の見通しを立てるについては、又観光通訳協会の協任者などを呼び出してその点もよく檢討したいと思いますので、丹羽委員の提議されたような観光小委員会でもう少し專門的に練る方だ適当だと私も思つております。
#68
○委員長(板谷順助君) 御異議がなければそのように決定いたします。
   〔委員長退席、理事小野哲君委員長席に着く〕
   ―――――・―――――
#69
○丹羽五郎君 港則法の一部を改正する法律案、この中の一番狙いは特定港以外にもこれを準用するということになつておりますが、そういたしますと、改正法案によつて特定港以外にも港長を設けるのであるかどうか、この点をお尋ねいたしたいと思います。
#70
○政府委員(山崎小五郎君) 現在特定港以外におきましては專任の港長は置いておりませんが、各地方の保安部長なり、保安本部長が保安官を時々派遣をいたしまして取締りをするということになつておりますので、そういう方法で特定港以外のことにつきまして田取締をしておるのであります。
#71
○丹羽五郎君 そうしますと、特定港以外の港は今後は港長を置くのでありますか。
#72
○政府委員(山崎小五郎君) 今のところまだ置くという意思はございません。
#73
○丹羽五郎君 そうすると、この改正案の根本は特定港以外にもこれを準用するというのは、港長を置かずにやるのですか。ちよつとその点が……。改正法案の一番狙いはそこじやないのですか。
#74
○政府委員(山崎小五郎君) それでこの法律を新らしく規定いたしましたことは、そういう港長を置かない港には保安本部長が港長事務を保安官をして執らしめ、又は執ることができるようにこの法律でしたいというのが改正案になつております。
#75
○丹羽五郎君 そうすると、現在の港長以外には港長の増員はやらないのですか。
#76
○政府委員(山崎小五郎君) 今のところ増員はしないつもりでおります。
#77
○理事(小野哲君) 外に御質問がなければ、これを以て休憩いたします。
   午前十一時五十七分休憩
   ―――――・―――――
   午後一時二十二分開会
#78
○委員長(板谷順助君) 会議に先立ちまして、一言御挨拶申上げます。本日は、証人各位におかれましては、御多忙の御中を御参集願いまして、誠に感謝に堪えません。御承知の通り、今回政府は運賃改正法案を提出いたしまして、この提出は甚だ遅れたために、実は広く民間の意見を聽散するという意味から公聽会を開くという考えでありましたのが、今申上げまするように、政府は五月一日から運賃改正を実施したいということでありまするが、これにつきまして、現在の鉄道会計の状況を申上げますると、昨年御承知の通り、貨物を三倍半、旅客を二割五分五厘上げたのであります。ところが、貨物はいわゆる政策運賃でありまして、現在におきましても原價から見まするというと、殆んど四三%、半分以下のいせゆる政策運賃になつております。旅客に対してはやや原價から見まして均衡を保つておるような情勢でありますが、現在の運賃の割合であつては、尚二百三十億の赤字が出る。この赤字をどうするかというところから、旅客運賃をこの度六割上げ、貨物はそのまま据置く、政府の言うところによりますと、物價の影響のある運賃等は一切上げてはいかないという建前から、こういう案が出たという説明であります。そこで、問題は御承知の通り、我國におけるところの、海陸の輸送分野を明確にする、又海産運賃の調整を図るというような点につきましても、この委員会においてしばしば論議されたのでありまするが、今申上げまする通り、広く民間の意見を承わりまして、この委員会において、大いに参考にしたいというような考えからお出でを願つたわけでありまするから、どうか各位におかれましても、忌憚なく、率直に、公平な意見をこの際お述べを願いたいと思うのであります。本日お出でになつた方は、東京商大の細野日出男君、京浜急行の社長の井田正一君、東京新聞論説委員の福良俊之君、東京商工会桐所垣査部長の高瀬千波君、新日本石炭輸送会社社長の野村治一良君、産別労働組合執行委員の和田次郎君、全日本学生自治会総連合執行委員長の武井照夫君、この方々であります。尚諸君の御意見は十分拜聽したいのでありまするが、何分多数の方のおいででありまするから、まあ大体三十分程度ぐらいに簡單明瞭に一つ意見の御発言を願いたいと思います。尚委員各位から質疑もありましようが、これは一先ず各位の陳述が終つた、その後に讓るようにいたしたいと考えております。
 尚証人の各位に宣誓をお願いすることになつておりまするから宣誓をお願いします。
   〔総員起立、証人は次のように宜誓を行なつた〕
   宣誓書
  良心に從つて、眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。
         証人 細野日出男
         証人 井田 正一
         証人 福良 俊之
         証人 高瀬 千波
         証人 野村治一良
         証人 和田 次郎
         証人 武井 照夫
#79
○委員長(板谷順助君) それではどうか今申上げましたように、十分一つこの民間の輿論を代表する、こういう意味において率直に御発議をお願いしたいと思います。……そうするとお並びになつておる順から順次御発言願いたいと思います。細野さんどうぞ一つ。
#80
○證人(細野日出男君) 今度の運賃改正は、経済九原則を実行するという日本経済再建のための画期的な時期でありますと同時に、日本のこの國有鉄道がパブリック・コーポレーシヨンとしまして、日本國有鉄道として独立してやつて行くという丁度時機にも際会いたします。いろんな意味から根本的な檢討或いは改正が加えらるべき時機だと考うるべきだと思います。私は交通経済学の專攻の学徒という見地から、又國有鉄道の財政或いは運賃問題を研究しておる者の一人という立場から申上げたいと存じます。
 経済九原則によりまして、財政の赤字を絶対に出さないということが最も強く要請されておりますので、從つて日本國有鉄道に対しては独立採算ということが強行されることになつて來たわけであります。日本國有鉄道の新発足といたしましても、独立採算でもつて新らしくやつて行くということが、これは望ましいわけであります。併しながら今までの状況では、去年は三百数十億というような大きな赤字を出しております。これは殊に國家の物價政策或いは経済政策、社会政策の影響によるところが大きいのでありまして、多額の政府補給金を貰つて漸く辻褄を合せておるような状態でありますから、一挙に独立採算に持つて行くということは、これは非常にむずかしい問題だと思うのであります。從つて今度の予算といたしましては、一通りは健全、独立採算の予算を立てられておるようでありますけれども、その中身を拜見いたしますというと、非常に無理がかかつておると考えるのであります。殊に旅客運賃の方は値上げをしない。旅客運賃だけで行こう。而も経費の方をうんと節約しなければ、その辻褄は合わないというところから、経済九原則実行のための経済政策的乃至社会政策的の負担というものが、旅客の画と、利用者のうちの旅客だけ、それから鉄道経営自体即ち鉄道の從業員か多分にこれを負担するという立場になるのでありますが、そういう利用者とそれから利用者に対しては、旅客の運賃値上げ、それから経営者は從業員に対しましては、経営の合理化という名前の下に、強力な節約を励行させるというような結果になつておるのであります。即ち経済政策的な犠牲というものを旅客、それから鉄道從業員というものにかぶせてしまうというような結果になつておるということが考えられるのであります。日本國有鉄道といたしましては、独立採算を確立することがこの際是非必要でありますけれども、併しながらその内容を健全なものとして確立するということは、今度はまだ到底できない。従つて本当に健全な財政確定の時期に対して見通しをつけて段階的に鞘寄せをやつて行くというようなことをする必要があると思いますから、経営の合理化なるものも今回一挙に実行することはできないと考えられますが、経営の合理化におきましては、客観的な適正原價を発見するというようなことが一番必要だと存じます。即ち適正定員、どのぐらいの人間があればこの仕事がやれるのか、それからどの程度の資本、國有鉄道でありますから、資本報酬なるものは益金として配当するようなことは必要がない筈でありますけれども、併しながら新らしい新資本の自己積立を行うということは是非或る程度は必要だと考えます。そういう原價を入れる、殊に原價のうちには、減價償却というものを十分に盛り込まなければならないと考えます。減價償却は今度十三億何がしか計上されておるようでありまするが、これがいわゆる帳簿價格に過ぎないのでありまして、鉄道のような永久的生命を持ちました公益事業におきましては、常にアツプ・ツー・デートな状況にして置かなければならないのでありますから、減價償却は即ち取替え費でなければなりません。取替えが新らしい現在の物價による、今後の物價によるところの取替え費に相当するものを減價償却費として積立てて行くということが必要でありまして、これが即ち適正原價の中身になると思うのであります。この適正原價に基きまして、合理的な運賃体系を立てるということが、これが望ましい次第、合理的な運賃体系というものは勿論コストを睨み合せる、この適正原價を睨み合せまして、そしていわゆるオーヴアーヘツド・コストに当る部分というものが負担力によつて按配される、負担力によつて分担されるというような行き方で行くべきものだと考えるのであります。そういう合理的運賃体系を立てるべきであるという見地から、今度の運賃改正法案を拜見いたしますというと、一向そういう問題は考えられておらないということができると思うのであります。適正原價というものは、まだ発見は相当困難のようでありまするが、一應の原價はこの頂きました配付資料によりましても出ておるようでありますが、原價によりますというと、去年の第一四半期七月から九月まででありまするが、單位当りの收支におきましては、黒字を出しておりますものは定期外の旅客だけであります。これだけが收入の方が支出よりも多い。一・三一という数字が頂きました資料の中に出ておりますが、それ以外のものは、すべてこれは赤字になつております。定期のごときは〇・二六原價に対して收入が僅かに四分の一しか人つていない。それから手小荷物につきましては、やはり四分の一の〇・二六、郵便のごときは約半分〇・四七、それから貨物は小口扱も車扱もどちらも〇・四三ずつ、又自動車、船舶も旅客も貨物も一切がひどい赤字であります。即ち定期外旅客だけが現在の状況におきましても償つておる。原價に対して三割以上の余計の收入を挙げております。結局國鉄全体の赤字は三百億を挙げておりますから、この割合で行きますと定期外旅客というもので以て、その赤字のうちの相当部分を結局負担しておるということになるのであります。ところが今度の改正案で参りますと、やはりこの定期外旅客というものが一番主なる負担者となるのでありまして、六割の引上げの結果は、もう一つの第七表の方で拜見いたしますと、定期外旅客の原價に対する收入の割合は二倍七分一厘八毛ということになつております、約二倍七分になる。定期の方が漸く〇・五九、手小荷物が〇・五〇、郵便は〇・六二、小口扱が〇・五六、車扱が〇・五〇、貨物運賃がちつとも変らないのに原價に対する收入の割が去年よりもよくなつて來ておりますのは、これは國鉄の経営合理化の反映だと思うのでありますが、〇・五〇というところになつて來ておるようであります。自動車その他汽船も連絡船関係も一切赤字でありまして、唯一の黒字はやはり定期外の旅客だけなのであります。定期外の旅客というものが一切合切を背負い込まされておる。それで独立採算になるということは合理的運賃体系から言いますと、甚だ滑稽な不健全なものたと言わなければならないと思います。
 勿論國有鉄道というものは、私設鉄道と違います。私設鉄道におきましても公益事業といたしましては、相当公共的な政策を執行する権利と義務があるものだと思うのでありまするが、國有鉄道はその独立採算の範囲内におきまして、みずから公共政策を行うべきであります。從つて営業政策上のみならず経済政策、社会政策という見地からも、運賃のコストに比較しまして、運賃の負担の程度というものを或る程度割振りするということは、これは当然やるべきことであります。併しながらそれにも或る程度の限界があると考えるのであります。勿論営業政策的見地から申しますと、余裕輸送力を利用するという見地から、いわゆる追加的運輸を獲得するために、割引運賃を行うというようなことが、営業政策的なり、前引運賃的なものになつて出て参りますが、経済開発的の貨物だとか、物價政策的の貨物運賃を低く置く、或いは通勤者や通学者の定期券の運賃といつたようなものを安く置こうというような、社会政策的な運賃というようなものは、これは勿論國有鉄道の独立採算の範囲内におきまして、或る程度は実行できるところであります。併しながら現在見ますような一切合切が定期外旅客が負担するというようなこういう状態は、その限界を逸脱したものだと思うのでございます。一應各種の輸送物がコストを償うということがこれは望ましいのでありますが、必ずしもそうはいかないのがこれが各國とも実情であります。併しながら日本におきましては最近までの状況では、競爭という事情から、交通機関の競爭という事情から運賃政策を左右されるといつたような面が少いという点が大変日本の國有鉄道の特徴だと思うのでありますが、そういういわば独占の威力というものを発揮いたしまして、定期外旅客にのみ極度の負担を掛けるというようなことは、健全なる運賃政策とは言い難いと思うのであります。簡單に申しますと何人と雖も自分のコストを他人に拂わせようとしないということは、これはやはり民主主義の大原則であるべきだと思います。利用によつて直接利益を受ける日が、そのコストに從つて拂うということは、これは民主主義の原則でありまして、俺の運賃、俺の汽車賃は誰かが拂つて呉れ、この貨物の運賃は俺が拂えないから誰かが拂つて呉れというような態度は、これは非面に民主主義の原則に、反するものだと思うのであります。そういう面から言いましても、できるだけ各種の輸送物が、それぞれのコストを償なうというような運賃が決められるべきものだと考えます。それから米國の例などから申しますというと、原價論から言いますというと、アメリカの鉄道も最近戰爭後は又経営状況が、経費が上りますし、殊に人件費なども非常に上つて來ておりまして、経営が苦しくなつて來ておるようでありますが、貨物運賃は、すでに六回も小刻みでありますが、値上げをいたしまして、戰爭の初めの状態に比べまして、四割五分程度、六回程に小刻みの値上げをしておるような状況であります。一昨年、四十七年の実績というものは、貨物では十二億ドル程儲けておる。十二億五千万ドル程儲けまして、旅客で以て四億五千万ドル程の損失をしておるのであります。これは丁度日本におけると正反対の状況なのでありますが、日本のように旅客だけで非常に沢山儲けて、貨物の方でひどく損失しておるといつたような鉄道は、世界にも又珍らしいことではないかと考えます。アメリカがなぜ旅客運賃で以て損するかということは、これは競爭が激烈だからなのでありまして、航空機、バス、殊に個人の乘用自動車というものが、三千万台もあるのでありますから、鉄道の旅客運賃の方を物價に從つて上げよう、原價に從つて上げようといたしましても、却つて個人乘用車の方に皆行つてしまうというような結果になります。競爭事情から、これは上げることができないのであります。ところが日本の事情におきましては、全くそういう旅客面におきましては、殊に独占性が強烈でありまして、旅客の負担において、貨物の赤字を、郵便物の輸送の赤字まで旅客が償う。それも定期外旅客というものが償うというような状況になつておるのであります。非常にこれはアブノーマルなことではないかと考えます。勿論日本のような國情におきましては、今までの國有鉄道の沿革をずつと見ましても、旅客收入の方が常に貨物收入を上廻つておるという傾向にあり、旅客の方が貨物よりも儲かるというようなことになつておるのでありますからして、こういう時期におきましては、その傾向は今までよりも、もつと強く現われるということは、これは止むを得ないと思いますが、現在までの状況と、それから今度の案に現われましたような状況というようなものは、これは相当なる行過ぎだと考えるのであります。やはりですから貨物運賃の引上げということが、或る程度行われて、旅客運賃の引上げというものが、或る程度緩和されるということが望ましい。殊に旅客運賃のうちでも定期券の運賃はこれは原價に見合いまして余りにも償つておりません。何人も自分にかかつたコストは自分が拂うべきだ。誰かに拂わせるべきものではないという見地から言いますというと、定期券運賃も当然値上げすべきものだと考えます。一ケ月定期の外三ケ月、六ケ月の廃止というようなことで以て、四十八億円といつたような厖大なこの増收が上るということは、これは一面定期の利用者にとつても非常に負担を意味するということであるのでありますが、今までが非常に安過ぎるのでありまして、いつかの時期にこれは調整されなければならないものと考えます。但しそれを一挙に持つて行くというところに問題があるのだと思うのでありまして、そこに或る程度の緩和期間を置くという意味から、私個人の考えといたしましては、六ケ月定期は廃しても三ケ月程度のところは残して置くというようなことも過渡的の方法ではないかと考えます。
 尤も近頃は定期券というもの、一般に通勤定期というものは官廳以外におきましては経営者負担のところが大変に多いのでありまして、これらは、旅客の方は値上げしても物價に影響しないという見地が今度の案の根本だと思うのでありますが、必ずしもそうはいえない。又定期外旅客運賃においても、大幅の値上げが行われますというと、長距離乘客の実情を或る程度調べた話を聞きますというと、長距離乘客の中には官廳、会社の出張による用向の者が大変に多いということであります。官廳や会社の出張による用向の人達は一等或いは二等の運賃を貰います。そうして実際は一等車が連結してなかつたり、或いは二等車が連結してなかつたり、或いはありましても一等や二等は買えなかつたり買わなかつたり、というようなことで、下級の乘車券を買いまして、会社や官廳の負担としては運賃高が十不に現われて参りますけれども、鉄道の收入としてはそう現われて來ない。二等の出張旅費を貰つても三等の切符で済ましてしまう。一等の出張旅費を貰つても二等、或いは三等の運賃で済ましてしまうというようなことをいたしますと、それは結局物價高の原因にはなりますけれども、鉄道收入の効果は挙らない。徒らに、個人の利益になりまして、それは儲かつたものとして何かに濫費されるというような傾向になるものでありまするからして、そういうことから見ましても、旅客運賃のみを大幅に上げるというようなことは余り策を得たものではないと考えるのであります。又貨物運賃の引上げが必要であるということは、鉄道経済自身としてコストの半分に達するか達しないかということのみならず、例のトラックや海運、汽船、それから機帆船というようなものとの運賃の調整の問題もあるのでありまして、そういう点からも或る程度の修正が施されて然るべきだと考えます。併し貨物運賃を引上げれば、必ず物價に影響する。從つて物價の改訂を必要とすることを避けるために今度はそうやつたというようなふうに聞いておりますが、これは或る程度は事実であります。併しながら或る程度は必ずしもそうでない。貨物運賃の引上げをいたしましても、その程度によつては第一次においてすでに吸收できるものがある。二次、三次においても吸收できるものが相当あるのであります。勿論吸收できなくて直ちに生産者價格を上げ、消費者價格まで上げなければならないというようなものも、多少は出て來ると思いますけれども、これらは結局日本経済の健全化を図るために、終局におきまして健全物價体系を作るということのためには、生産の能率を上げて行かなければならない。その生産の能率を上げるという面におきまして、こういう貨物運賃の合理化による引上げというものは吸收されなければ、健全な物價体系というものにはならないと考えるのであります。今日のような一般の定期外旅客に徹底的におんぶしましたような運賃、貨物運賃というものを基礎として、その上に成立ちましたところの物價体系というものは、外國の市場において競爭するというような日本経済の自立のためには、結局脆弱極まる運賃ではないかと思うのです。從つて貨物運賃が、例えば新聞で拜見いたしますと五割引上げ、旅客運賃は三割程度の引上げに止める。定期券は三ケ月定期程度を残すといつたような修正案が新聞に両院のいずれかの案であつたようでありますが、そういつたようなものが通れば誠に結構だと考えます。但し私は決して今度の運賃の改正によりまして、一挙に國鉄財政健全化ということができるとは考えませんで、一定のこれから何ケ月か、一年か或いはそれぐらいの日本経済の自立の、この程度ならば合理的なものであるというようなものを作り上げるところの目標的時期を定めるという必要がある。それまでに漸次鞘寄せをする方法が必要だと思うのであります。その意味からも貨物運賃を今日このままにして置くということは、その將來の修正のときにおきまして、非常に又大幅に修正をして物價に大きな影響を與えなければならんというような大きな危險を包藏するものでありまするからして、この際やはり貨物運賃にも相当タツチして置くということが必要だと考えるのであります。
 それから今一つこの新聞ラジオ等の聽取者の声を聞きましても、國鉄に対する世論というものは、主として旅客の面から起つておるのであります。ですから貨物の面からは余り起つて來ない。國鉄をいろいろ非難し非議するといつたような声は主として旅客の面から起つておるというような方面から見ましても、國鉄は今度の旅客運賃値上げによりまして、又囂々たる非難の対象となるということがはつきりいたしておるのでありまして、殊に定期客というものはこれは世論の中心になる、即ち、代弁者といつた形になるのでありますので、非常に主張が強いのでありますが、併しながら旅客の中で定期外旅客と言われる者が一切合切鉄道の赤字を背負い込んでおるのだというようなことをこの際もつと國会方面において、はつきり國民に知らせるということが望ましいのであります。尚國民の声がそれでも止むを得ないということであるならば、この運賃の定期外旅客が高い唯一の黒字を負担して行くということも又民主的に承認されるということになるのでありますが、この事実を余りはつきりさせないでそのまま定期外旅客の六割値上げというようなことで國鉄の独立採算を強行するというようなことは、國民と國鉄とも関係を惡化するものでありまして、決して國鉄のためにも、國民のためにも望ましいことではないと考えるのであります、学生定期のごときは今の引上げは事実上非常に氣の毒な面が多いようでありますが、併し現在のものは余りにも不均衡である。学生の中でも煙草を吸つたり、コーヒーを飲んだり、映画に行つたり、食物や服裝というようなものに相当金をかけておる者もあるのでありまして、学生定期のみ不当に安くしておるということはこれらの学生に濫費或いは贅沢をさせる結果になるのであります。学生定期も相当引上げる、そうして本当に困つておるという者に対しては学生定期に対して特例を開く、例えば言葉は惡いかも知れませんが、貧困証明書といつたものを出すことによつてそれらの本当に困つておる煙草を吸つたりコーヒーを飲んだりできないというような学生達に対しては学生定期の中に更に特別の割引制度を考えるというようなことも方法としてはあるのではないかと考えるのであります。結局近い將來における完全な國鉄の健全財政を確立する時というものに目安を置きまして、そのときに本当に合理的な運賃体系を作る。それまでは今度は鞘寄せの時期として運賃改正を行うということが適当でないかと考えます。そこでその本当の意味の合理的運賃体系を立てられますときには、貨物運賃というものがもつとコストを償うように引上げられる。そのときには現在の今度の非常に高くなりますところの旅客運賃の方は引下げるというような方法を講じて合理的な運賃負担に戻すべきではないかと考えるのであります。
#81
○委員長(板谷順助君) 次に井田さんにお願いいたします。
   〔委員長退席、理事丹羽五郎君委員長席に着く〕
#82
○證人(井田正一君) 如何なる企業も独立採算制を採らなければならないということは当然なことでありまして、これは九原則があろうが、三原則があろうが、私はしかくあるべきものであると考えております。況んや國鉄が独立した企業体になるには、当然そうあるべきものだと思いますし、そうあつてこそよく運営であり、又事業もよき発展が期待されると私は考えております。大臣のお話の中にもあつたのでありますが、一般物價の上昇率と運賃の上昇割合とを比較して考えて見ますと、一般物價が今日百九十倍以上、或いは二百倍ぐらいにもなつておると思います。然るに鉄道運賃は國鉄の場合は五十倍、私共の私鉄の場合は六十四、五倍だと思つております。非常に低い状態に置かれてあるのでありまして、又物價の中に占めております運賃の割合を考えましても、頂戴いたしました表の中にもあつたと思いますが、貨物運賃の割合というものは昭和十一年が四・六%、二十三年が二・六%という状態であつたと思います。これは百円の品物のうち二円六十銭が運賃であるという意味でありまして、これは物の値段の方にも大きく影響があるとは私共は考えません。況んや昭和十一年に比較いたしまして概ね六割ぐらい低くなつておる今日においては尚更そういうことを私は考えております。
 更に又一人当りの生計費から考えましても、これも表の中にあつたと思うのでありますが、私の調べました数字は、昭和十年が一人当りの生計費というものは、たしか二百七十円ばかりと思いました。それから二十三年九月の調べでありますが、これは二万九千二百四、五十円になつておつたと思います。この一人当りの生計費の中に占める交通費というものは、昭和十年の場合は一・五%と思います。頂いた表の中に昭和二十三年の率が載つておりますが、一・三%になつておつたと思いますが、これは日本における東京、大阪、京都、三大都市の比率が載かつておつたと思います。かくのごとく運賃というものが他の物價に比較いたしまして不当に低廉であるということは、私が申すまでもなく世間一般にさように考えておられることと私は考えております。
 今回の國鉄の運賃の改正は特に貨物運賃について見まするというと、コストを割つておることは事実でありますし、独立採算制ということを考えましたならば、大体独立採算制と申しまするのは、貨物であろうが、旅客であろうが、いずれもコストを割らないことが独立採算制なのでありまして、貨物は上げても、旅客は割らなくともいいという理屈はないのでありまして、貨物のごときは当然改正せられるものと私は考えます。コストに対する貨物の運賃と旅客の運賃が同じ條件下にあるといたしましたならばその料金の仮にいずれを増額すべきかという問題が起きたとしまするならば、私は旅客の運賃は改正してもいいと考えます。貨物の運賃は上りましても、貨物というものは輸送を差控えることには参らんと思うのであります。けれども旅客の運賃はこれは我々の生活費の一部でありまして、他の消費を節約するという手があるのでありまして、そういう意味からも、若し同じ條件にあるとするならば、旅客の運賃は改正しなければならん必要があるとするならば、改正しても仕方がないと、私は考えております。最前も申しましたように、運賃が非常に低廉であつて、むしろ運賃が上ることによつて他の物價が上るということよりも、他の物價が上つて後から運賃がのこのこついて歩いて行くのが、今日の実情だと私は考えます。從つて貨物は当然上げて然るべきものと私は考えますが、旅客の運賃も亦先程もお話がありましたように、いずれも頗る低廉な料金でありまして、定期のごとき、我々私鉄の現状から考えましても、普通料金の二割乃至三割というのが平均しての我々の手取りになつております。こういう実状にある運賃は、いつかは改正せられなければならない問題であると、私は考えまするが、特に健全財政とか、均衡財政とか、又は独立採算制を採らなければならないという今日にあつては、当然物價と運賃との正確な、正しい判断をして頂いて、この是正は当然せらるべきものと、私は考えております。昨年の七月に運賃が改正せられましたように、ここに数字は持ち合しておりませんが、運賃の改正が物價に影きはしないかということを、東京急行におりますときに、私は調べた記憶があるのでありまするが、当時日銀の統計資料を私見たのでありますが、むしろ運賃の改正による物價の騰貴ということよりも、通貨の発行高の影響の方が頗る大であつたことを、私は記憶いたしております。頂いた表の中にもありますように、交通料金が頗る低廉であるということ、物價に占める割合が頗る低位にあること、それから生計費に占める交通費の割合が頗る低位にあるということは、尚これを負担する力があるということを、証明しておると思いますので、特に又今回の旅客運賃の改正が私共私鉄業者、特に私共並行線にあります関係から、特に関心が持たれるのでありまするが、今回の措置を、改正の要綱を拜見いたしますると、比較的乘客の多い区間に対しては非常に短距離でありますが、國鉄と我々私鉄との関係においては、非常に調節が行われておる点がよく分るのでありまして、長距離でありますと、むしろ私共の方が安くなりまして、國鉄の方が高くなつたような状態でありますが、これは國鉄と私鉄との関係が、本質的に違つております関係から当然であると思いますし、その影響は、殆んど惡い影響はないと私は考えております。
 以上が私の今回の國鉄の運賃改正に対する意見でありまするが、貨物運賃が今回改正せられない結果、特に旅客運賃がやや大幅に改正せられるように思われるのでありますが、いつも運賃が改正せられるときには、大体都市生活者の大多数というものは、日常交通機関を利用しております関係から、運賃が上がれば直ちに物價に影響するというふうに、心理的に考えることの方が強くあつて、実情は左程までに影響がないと私は考えております。運賃が上りまして、一企業体で申しますならば操業度とか、又は運賃の負担力とか、個々の生産費について申しますならば、その價格の査定の基礎になります原價計算の賃金とか、又は原材料とかいうように、それぞれ引上ります料金を吸收する部面が沢山ありまするので、これが直接に消費者に影響するということは、その値上りしまする半分はおろか、三分の一以下にも達しないくらいのものであると思いますので、むしろ今回は旅客運賃よりは、貨物運賃は当然改正せらるべきものと、私は考えております。
#83
○理事(丹羽五郎君) 次に東京新聞社の福良君。
#84
○證人(福良俊之君) 私から申上げるのは少し筋が違うかと思いますけれども、すでに予算が決定した今日、運賃率改正案について論議するのは、ただ形式を整えるに過ぎないと思うのであります。殊に財政法第三條の特例を実施した趣意から、或いは経過から考えて見ましても、今回の措置は誠に残念に堪えないのであります。價格政策の見地から貨物運賃を据置きとしたことは、余りにも安易な機械的な措置であると考えるのであります。輸入補給金あり、國内價格調整費あり、貨物運賃の据置きによる一種の補給金があるわけでありますが、これらの調整費は総合的に、合理的にそして調整処理されるべきものであると信ずるものであります。國有鉄道の独立採算制を確立するという美名の下に、旅客運賃の値上げを行いながら、價格政策の立場から貨物運賃を据置きしたというのは、矛盾であると考えるのであります。貨物運賃に政策運賃が許されるならば、定期旅客運賃についても政策運賃が或る程度許されて然るべきであると思います。從つて最も利用度が多いと思われる三ケ月定期券の倍率を緩和するという措置が、考えられて然るべきだと思います。運賃を引上げる以上、経営の合理化を図り、経費の節減、運賃收入減少を食い止めるという政策を採ることは、当然のことと思いますが、國鉄の場合、支出の最大部面を占める石炭の合理的使用、更に最も問題になる無賃乘車券の整理をして、運賃收入減少を食い止める措置が講ぜられて然るべきだと思います。無賃乘車券の発行枚数は新聞の傳えますところによりますと、これは長短各種あると思いますが、二百二十万枚に上ると傳えられておりますが、この数はどう考えて見ても、多過ぎるように思われます。或る私鉄で経営費の節約を行う際にパスの発行を千枚整理しましたところ、年間に百万円の消極的な利益があつたと言われております。今この例で考えて見ますと、若しも前記の二百二十万枚の半分を整理することができれば凡そ十億円の金が浮いて來る勘定になるのであります。
   〔理事丹羽五郎君退席、委員長着席〕
 更にもう一つ申上げなきやならないのは、國鉄從業員に対して無賃の乘車券が発行されておりますが、これを利用して私鉄にも無賃で乘車しておるように見受けられるのであります。その代りというのではありますまいけれども、私鉄の從業員が同じく私鉄の発行しておる無賃乘車券によつて國鉄を無賃で利用しておるというような事実があるようでありますが、若しそういうことがあるとすれば我々としては甚だ理解に苦しむ措置のように思われるのであります。
 結論として申上げたいことは、價格政策を維持するという建前から、貨物運賃を機械的に、一律的に据置きとした措置は決して合理的な措置とは言い得ないと思うのであります。貨物運賃を据置く代りに、そのよつて生ずる赤字を補填するために旅客運賃の引上げをされる。更に定期運賃までも引上げるということを考えますならば、定期運賃の割引率が非常に高いということは一つ問題でありますけれども、今日までの情勢から見て直ちに三ケ月定期或いは半年の定期を廃止するということは必ずしも当を得たものではなく、この際としてはやはり六ケ月定期を廃止しても三ケ月定期に対しては運賃の引上げ倍率を緩和する措置を講ずることが必要のように思うのであります。簡單でありますがこれで終ります。
#85
○委員長(板谷順助君) 高瀬さんお願いいたします。
#86
○證人(高瀬千波君) 前に申されまし見方のと重複いたしますので、できるだけ簡單に申上げます。
 この度國有鉄道の独立採算制を確立するために運賃の引上げを実行することになりましたが、独立採算制を先ず経費の面において四百億円を節減し、收入の面において運賃値上げによつて二百三十億円を捻出するという計画でありますが、これにつきましては経費節減の内容を檢討するとかいろいろの問題があると思いますけれども、一應この二百三十億円の旅客收入というものを前提として申上げます。申すまでもなく運賃というものはコストの一部をなし、又生計費の一部をなすものでありますからして、できるだけこれを低くしたいということは当然であります、止むを得ない事情によりましてこれを引上げざるを得ないといたしましても、できるだけ運賃以外の收入によつてカバーすることができるように努めまして、運賃の値上げは低くして頂きたいと思います。その收入増加ということは只今福良さんから申上げましたところの無賃パスの整理ということ、これが非常に大きな要素をなすものではないかと思います。恐らくこのパスの整理ということは世論であると思いますけれども、それがなぜ実行できないのか実は不思議に思う次第であります。この際一般の旅客運賃、殊に定期の運賃の引上げをされます際に思い切つてその方面の整理を断行して頂きたいということを申上げたいと思います。それから尚このパスの整理がいろいろな関係からできないといたしましても國有鉄道の独立採算制を貫徹するという意味から申しますと、國鉄自身の必要に基かないで別に無賃パスを出しておるという例が沢山ございます。例えば國会議員の方々は無賃のパスを持つております。これは先ず止むを得ないといたしましても、その分は國鉄が負担するのはこれは筋が合わないということでありまして、これに相当する分は一般会計から國鉄の方に繰入れるという措置を採るのが当然であると思います。例えば進駐軍の運輸の費用はこれは終戰処理費から出しておる。同樣にやはりそういう措置を会計制度の上において確立するということが必要であると思います。金額においては大きくないかも知れませんが、これは是非実行すべきことであると思います。
 尚それから戰時中に強制買收いたしましたところの私鉄の路線がありますが、これもこの際民間に拂下げる必要がある。鉄道において不用の車両その他を拂下げるということになつておりますが、路線の拂下げの方は計画の中に入つておりませんようです。これを拂下げて、これが直ちに事業收入の方に入れられるかどうかということはちよつと疑問でありますけれども、併し國鉄の全体の收支を改善するためには採るべき手段であると考える次第であります。以上のようにできるだけ他の方面によりまして收入を上げることに努めると共に特にやはり私の申上げたいことは定期の運賃につきまして、これをできるだけ軽減する措置が必要であると思うわけであります。御承知のようにこの定期の運賃を会社の負担にしておるのが、恐らく全額負担にしておるのが五割くらいあると思います。その他一部負担も加えまして八割くらい会社が負担しておると思います。このこと自身がいいかどうかということは疑問でありますけれども、すでにそういう慣習になつておる。これを今回二倍半に値上げになると会社自身にとつて負担が増加することになることは言うまでもありません。それから生計費の方が、会社自身が負担しない場合には生計費に相当響く。それも現在のようにこういう住居の不足の状態でありますと、どうしても遠距離から通勤しなければならん者が相当ありますけれども、その者に対しては非常に不公平になるわけであります。どうしても定期のいわゆる六三制の廃止ということは考えものであると思います。長期の期間の定期を出します場合にはどうしても運賃の前取りをするわけでありますから、金利に相当する分はこれを引くのが当然であります。又長期の間には利用しない日も相当できるかも知れません。それを考慮する必要もある。
 それから紙代、印刷代、事務費等も節約できるわけでありますが、この割引するというのは、特に恩典を與えるという意味でなくて当然の措置であると思う。殊に行政の簡素化ということが叫ばれておる際に、これによりまして國鉄の事務が更に複雜を加える、民間の事業においてもやはり同樣毎月買うことになればいろいろな手数がかかる、そういうことから考えますと、当然六三制というものは維持すべきものであると思います。ただ從來のように大幅の割引をすることが適当であるかどうかということについては問題でありまするが、いずれにしろ存置するということはいろいろな見地から当然であると考える次第であります。
 それから尚これは細かいことになりますけれども、今、定期を会社で負担しておる場合に大体月二百五十円、半歳千五百円まではこれは実費弁償というような形で税がかかつておらないわけです。これは所得税がかかつておらん。これを運賃が引上げられる場合には、当然相当程度引上げらるべきであると思う。やはり現在の経済秩序というものが、この物價と生計費とを根拠としておる以上、これに対しまして、そう急激な変化を加えるということはよくないと考える次第であります。先程細野さんがおつしやいましたが、この際根本的の改革というようなことは、理論的にはよろしいけれども、実行は困難であるとするならばできるだけ変化の急激でないような処置を講じて欲しいということを申上げたいと思います。尚將來の問題としましては、どうしても國鉄の経営に更に一層ビジネスライク・ビジネスに基いた経営なり経理なりをしなければならない。今回國有鉄道の特別会計に制定されますけれども、その点についての考慮は、まだ十分に加えられておらないようですから、將來の問題としては、そういう点を是非必要といたします。それから電化を促進することによつて経費の節減を図るということを希望として併せてお願い申上げたいと思うのであります。
#87
○委員長(板谷順助君) 福良さんのとき私はちよつと中座いたしておりましたが、あなたの御発言中に通常予算がすでに決まつておる。單にこの会議は形式でないかというようなお話があつたそうでありますが、御承知の通りそれは通常予算においては、旅客運賃を六割上げるということで大体編成されております。併し運輸当局もですね、國会の権限において公正なるその修正と言いますか、それは一向差支ないというような見地から、今この委員会は予備審査であるけれども併しながらあなた方の御意見、即ち民間におけるところの輿論を廣く承わりまして適当にこの委員会において考慮する。場合によつては関係方面にできるだけの折衝をしたい。こういうようの方針でありますから從つてどうぞ御意見のあるところは、率直に忌憚なく必ずしも形式に追われるというような考えは持つておりませんからどうぞそのおつもりで一つ御発言願いたいと思います。
 お次は野村君お願いいたします。
#88
○證人(野村治一良君) 貴重なる時間をお割き下さいましてこの席に参列することになりました。今國鉄の運賃法の改正をするということでありますが、その改正は旅客の運賃を六割上げるということが國会に提出されておる。その是非についての我々の意見があればということであります。配付を受けました書類の中に今回の運賃を改正する法律案の提案の理由として運輸大臣が述べられておる最後の項に、「尚貨物運賃の据置きによつて機帆船その他の運輸機関との運賃調整の問題が残ることは十分承知しており、且つ貨物運賃は、輸送原價の半ばにも達しない現状でありますので、合理的な運賃体系に復することは國鉄の経営上も極めて必要であると感じておりますが、今日は物價政策上、その適当な時期でないことを遺憾に思う次第であります。」とこういうような言葉が述べられておるのを一つ引用したいと思います。それからもう一つ直接これは私は見たことはございませんが、運輸大臣がこの荷物の引上げというようなことになりまする上において、物價の上に起るものは極く僅少である。その割合は、〇・七七である。極めて微細なものであるとこういうことを或る國会の委員会が、本会かどうか知りませんが、その席で御説明になつたということを承つておるのでございます。そこで今日の問題になりますことは、旅客運賃の引上げということにおきましては非常な不当なことは、前にこの皆樣からお述べになつたことであつて、貨物運賃は今日どうしても上げなければならんというような御議論に承つております。ただ單にそれが物價の政策上という一点に止まつておりのでございます。この点につきまして私共は物價の政策上貨物運賃をそのままにして置くということは、物價の政策という問題はいろいろございますけれども、鉄道の運賃をこのままにして置くことが直ぐに物價の上に行くか行かんかと先程細野先生からもこの問題はありましたが多少そういうこともありますけれども、全然これは物價の政策の上に行かない。或いは政策の上にカバーすべきでないということを承つたのでありますが、私はこの点については物價政策の上において、運賃というものは別の方法で今日は行かなければならない。物價の政策上にやつておいでになる上におきましては、いろいろの面において、補給金ができ、又いろいろな面でなつておりますが、更にこれを運賃でやるということは非常な不公平をそこに画するのであります。物價政策で必要であるのならば、これはその物價を是正しなければならん。適正にしなければならんという理由がありますが、製鉄のごとき、石炭のごとき、すべてあらゆる点において補給金を必要としておる。この必要に基いて、貰う運賃は運賃と、採算、運賃……採算運賃と殊に鉄道の独立採算によりましてカバーさすべきものはさせるという一本でやつて貰うのがいいのではないかということを切に思うのであります。これは外でもございませんが、鉄道の運賃というものと、單に世上で傳えられておりますところの運賃というものになりますというと、これは公平に決められた運賃だというふうに世間では普通に見ておる。又それを活用させておるのであります。今日の國鉄の運賃というものは、これは政策運賃であるということは一方としては分るのであります。もう一つは外の面では、汽船の面におきましても、船舶運営会の面におきましても、これはもう政策の運賃である。こう二つ、そこで旅客の方は別にいたしまして、貨物運賃ということになりまして、公正なる採算運賃というもので決められておりますものは、私共経営をいたします機帆船の運賃というものは物價の上において公正に決められた運賃を今守つておるのであります。その運賃の額を申しますれば、汽船におきましては約半分以下である。國鉄におきましては尚更である。これは皆政策運賃で決められておるために、我々機帆船の会社を経営する上において非常なるもはや倒産的な障害を受けておるのが現状でございます。公正なるデモクラシーの下におきまして、こういうことがどうであるかということを愬えるために、どうしてみても鉄道は今度の機会において公正なる運賃、全体で参りませんでもカバーするだけの運賃を取つて貰うということをやつて頂きたいと思うのでございます。そこで何がそういうことにいいかということになりますと、先程からもいろいろ議論が出ましたが、一人の旅客を一キロメーターを運ぶに要する原價としては、現在は僅かに四十七銭六厘ということに聞いております。五月一日からこの原價計算によりまして、八割三分も上廻つて八十七銭三厘というようなことに相成つておるように聞いております。ところがこれを貨物の方で見ますと、一キロ運ぶのに必要な原價計算がトンキロと申しますのですが、二円六十八銭ぐらいに一トンが相成つておるのであります。現行の貨物運賃が一円十六銭ぐらいにしかついていない。即ち当然二倍三分になるというようなことに相成るのでございますが、この一円十六銭というものは荷物一トンであります。人間があの定期のラツシユアワーの時期に追い詰められて行つておる人一人の一キロ当りが八十七銭三厘ということであり、荷物一トンと申しますればリンご箱にしますと二十箱であります。それが一円十六銭ということになつておる。如何に旅客と貨物とが非常な不均衡の下に置かれておるかということは、この比例を見てみても私は分ることと存ずるのでございます。この点に十分の御理解をお願いいたしまして、この今日の不合理なもので、独立採算制という美名の下に運賃は一部棚上げして置いて、引合つておる旅客でカバーして行くということによつて、その政策において泣く者は自立して輸送業をやつておる者が自然的なに泣く。國鉄は民業を圧迫するというような結果を今日は來しておるという実情を十分御認識頂きまして、今度の改正案につきましては是非共貨物の方の運賃を適正に是正せられんことを切に希望する次第であります。委員長、ちよつと、私國鉄の問題でございますが、併せまして貨物の運賃に関連しておりますから、運営会の汽船の面をちよつと説明を加えたいと思います。
#89
○委員長(板谷順助君) 簡單明瞭に願います。
#90
○證人(野村治一良君) これは今日の議題にはなつておりませんのですが、丁度貨物運賃の問題が出ましたから、今日本の貨物運賃として政府の指導の下において、船舶運営会が全部の鋼船の扱いをされておる、そこの経営されておる率を申しますというと、一ケ年に政府から補助の要るのが六十億ばかりです。赤字を政府が補助をされておるのであります。それ以外に、この船舶運営会が使われておるところの石炭の價格というものについて、運営会が安くやつておられるのでございます。私共が今石炭を一トン汽船の燃料として買いますのは三千五、六百円であります。運営会が特別に貰つておる價格差補給金を貰つて供給を受けておられるのは千五百十七円、こういうことになつております。一ケ年に百三十万トンばかり石炭を使われるのでございます。そうするというと約四十億というものが價格差補給で運営会の経理に行つておる。こういうようなことになる。今政府の方の赤字で五十五億と二十四年度に相成つております。これに合せますれば依然として百億、これを同じようなケースにいたしましたなれば、貨物運賃に対してはやはり六七百円の補償をしておると同じような結果になる。この二つのものを合せまして私共は鉄道といい、鋼船といい、國家の補償ある運賃の補償政策による犠牲となつて、今日本の全國におる機帆船が戰わなければならん。約半分以下のレートと戰わなければならんというような結果になつております。今日非常な経済界の圧縮と申しましようか。非常に惡い現象になりまして、一般物資は減りつつあります。國鉄の輸送力は非常にこれから殖えて参つております。若しこれで以て國鉄の方ですべての問題を取上げて、非常に安い運賃で行かれるというと、國内におけるこの沿岸の荷物が國鉄に吸收されるというようなことに相成つて、現に今まで國鉄が使われておるところの石炭はこういう現状になりまして四月の一日から陸上の方へ轉換されたという事実が七万トンばかりございます。今その外のものも陸上轉換というようなことをそれぞれの企画において計画されておるのであります。こういう計画は畢竟ずるに國鉄といい、汽船の面といい、運賃が、政策運賃の安いものをそれぞれの一つの率としているというために荷主の側におかれましてもそれぞれ採算的に安く行つておるか、安く行くのを選ばれるというような自立できないような現象に相成つておるのが今日の現状でございます。かかるが故に然らば機帆船そのものというものは余りに一般には知れ渡つて行かなく、力の上においては少いような感じがされておつて來たつたのでございますが、日本の海上輸送における輸送力の約半分はこの機帆船が持つて経営をしておるというのが今日まで現われておる事実であります。今後ともにもこの事実において仕事をして参る、来ておるような情勢でございます。そこで全体から申しますというと、一億一千トンを國鉄で運ぶということになつておりますが、そのうち國鉄の方はキロトンによりますが、一億一千トンが二十四年度の計画のようですが、併しこれは國鉄の方はキロトンが割合に少い汽船なり、機帆船の方面から参りまするというと、約七十万トンぐらいが國鉄と同じようなキロトンに直すというようなキロトンになつておるのであります。その七千トンのうち約四千五、六百トンは機帆船で輸送しておる。そしてこれに從事しておるのは十三万人ばかり從事しておる、これがこの不均衡な運賃政策において今日非常な窮地に追い込まれておるという点を深く御考慮に入れて下さいまして、今日の機会に是非とも國鉄の貨物運賃はフルにとは申しませんが、適当の度合まで我々の均衡の取れる程度まで是正せられんことを私は切に希望したいと思います。一言お願いを申上げます。
#91
○委員長(板谷順助君) 次に和田さんにお願いいたします。
#92
○證人(和田次郎君) 私も先程そちらの方が申されたように國家予算が、而もいろいろの予算が全労働者、産別ばかりでなく、総同盟いわゆる中立といわれるところの労働者が挙げて反対した予算が通過したあとにおいて、この問題を論ずることは若干矛盾を感ずるものでありますけれども、時局の重要性に鑑みまして二、三の点を強調いたしまして全面的に反対の意を表明したいと思います。
 第一に、政府の國有鉄道に対するところの政策が、その政策の欠陥によつて生じたところのこの赤字を労働者を中心とする一般勤労大衆の負担によつてこれを逃れようとする、そして大口取引者で利用者であるところの大正本家、或いは大闇屋というものの利益を擁護するという、そういう行き方に対しては我々はどうしても納得はできない。更に現在の國有鉄道の状態はどうであるかということを私はここで事細かく申上げる時間もないのでありますけれども、いずれにいたしましても昨年から比べて見ましても、國有鉄道に対する予算が約その三〇%、而もそれは昨年において殆んど使い果されておる、新らしいところの計画、つまり機関車或いは貸車、客車等の新造は殆んど皆無であるというような状態になつておるのであります。從いまして一時間で行けるところの輸送が、或いは一時間半、そういう長時間を要するばかりでなしに、すでに全面的に機関車は老朽化し、鉄道、橋梁は想像以上に傷んでおり、輸送の危機が迫つておるところのときに、これに対するところの根本的な何らの方途も講ぜられない。そうしてそれらの改善によるところの能率化を何ら積極的に考えない。勤労大衆の負担によつて國鉄の赤字を、独立採算制の美名の下にこれを糊塗しようとしておる。こういう行き方に対しては、我々は徹底的に反対せざるを得ないと思うのであります。殊に我々労働者側といたしまして、重要に考えますことは、この旅客運賃の引上げ、或いは小口の手荷物、そういうものの引上げが郵便料金引上げと共に、今回の國会提出されようとしておるところの労働法規の改惡を実質的に裏付けんとするところの意図があるという点を我々は考えるのであります。それは皆さんも御承知の通りに経済九原則を現在の内閣が一方的に労働大衆の犠牲によつて強行しようとしておる、その結果が、現在日本におけるところの全産業に対する破壞の姿になつて現われて來ておる。工場を潰し、労働者は限りなく首を切られて街頭に放り出されておる。そうして現在雇用されているところの労働者に対しましても、予算云々ということを資本家は口実にいたしまして、働いた賃金すらも拂おうとはしないのであります。これが今全國的に起きているところの労働者に対する賃金の遅配欠配、この問題であります。而も戰爭によつて最も犠牲を蒙つておるのは労働大衆である。勤労大衆である。その人達は家を燒かれ、着のみ着のままで、遠くの聊かの縁辺を頼つて、遠隔の地から、それぞれの働く場所に通勤せざるを得ない状態に未だに追い込まれておる。これに対する住宅の問題に対して、何ら積極的なるところの方策も講ぜずして、而も働いて尚その賃金が國家予算云々ということを口実にして支拂われない。こういう状態に置かれているところの労働者が、ここで再び通勤費を倍額に近いところの高額に引上げられる場合においては、どのような結果を生ずるか、如何に國家の産業の発展を願い、工場において、或いは事務所において、それぞれの責任を果そうとしても、賃金は支拂われない、通勤費はますます引上げられ、從つて工場或いはその他の仕事場に行こうとしても、行けないような状態が生ずるという危險性が多分にある。その場合において資本家は如何なる態度をとつて労働者に向つて來るか、それは言うまでもなく、石炭の労働者の方に現在現われておりますように、三日或いは五日欠勤したということによつて、首切りの対象になる。就業規則違反という名目を以て、一銭の退職手当も支給せずに労働者を思うがままに首を切ることができるという結果を招來することは明らかなんであります。而も労働者が何年か非常に苦しい鬪いの中から賃金の一部として獲得したところの通勤費会社側負担という條件すらも、すでに國有鉄道の運賃が引下げられるという案が発表されるや、資本家はこれを会社において支拂う能力がないという口実を以て全面的に破棄しておる。こういう状態も全國的に現われているのであります。而も労働法規の改惡の中に含まれているところの組合專從者に対するところの賃金を、全面的に組合が負担せよという問題は、全國的な單一的な労働組合を分裂させよう、弱化させようとするところの單位組合の自主性という問題と非常に関連があるということであります。労働者は賃金の枠が抑えられ、而もその他の物價はますます高騰しつつある。而も小口の郵便手荷物、或いは貨物等の輸送の問題について、やはり旅客運賃等と同樣に高額引上げということは、労働組合の財政を根本的に破壞せしむる方向に持つて行つている。こういうことを考えて見ましても、敗戰後における日本の民主化が、労働組合の健全なる発達の上においてのみこれが達成されると言われているポツダム宣言、或いは極東十六原則をも否定するという、そういう労働法規改惡と一体の姿をとつて我々に対してこれを強行せられようとしている、こういう行き方に対しましては、我々は全面的に反対せざるを得ないと思うのであります。而もこれは、学生の問題についてはあとの方が申されると思いますが、授業料の引下げ、学生生活の破綻、こういうものとも関連して、教育の問題においても重大なる支障が当然起きて來る。而もこのような重大な問題を廣く民間の意見を徴するとは言いながら、本日ここに出席した数名の者を以てして、果して十分であるかどうかということについても、多分に私は疑念を持たざるを得ない。從つて当局者にして廣く民間の意見を聽くという誠意が眞にあるならば、再び廣く民間の意見を聽く別な機会を作らるべきである。そういうことも合せて希望いたしまして簡單に二、三申上げました。
#93
○委員長(板谷順助君) 次に武井さんお願いします。
#94
○證人(武井昭夫君) 今度の國有鉄道の運賃値上げの問題につきましては、学生の実情と、学生の意向に基きまして、全面的に反対である旨を述べたいと思います。
 最初に運輸大臣のこの國有鉄道運賃法の一部を改正する法律案提案の理由の説明の中において言われておる事実の中で、特に我々として残念に思う点は、この中に一つも國民の生活が、この値上げによつてどれだけの打撃を受けるか、その中には勿論学生を含まれるわけですが、そういつたことについての大臣の意向というもの、或いは関係当局が如何にこのことを考えているかということについては一言も触れていないということなんであります。昨日私、用がありましてこれを見ただけで他に頂いた資料を十分に見ておらないのですが、そういつた観点がやはり今度の値上げのことについて一貫して現われているのではないかというふうに考えるのであります。即ちここでも経済九原則に從つてこの國鉄運賃の値上げのうち、特に物價に関係のある貨物の運賃は値上げをせずに、主に旅客の運賃の値上げ、或いは荷物でも手荷物、或いは小荷物関係のみを値上げしているというようなやり方の中に、経済九原則というものを名目として、或いはそれに從う独立採算制というものを名目にして、先程からいろいろの方によつて言われている通りの、貨物の輸送運賃が現在原價の四三%というような低率を、主に一般國民の負担になつておる旅客運賃と定期券の値上げによつて賄つて行こうというような方法として出て來ている。このことは國民の生活が如何に破壞されているか、それから更にこのことがどのくらい破壞するかということを少しも考慮しない措置だろうというふうに考えられます。経済の九原則と言い、又それが出て來るところの日本経済の自立、或いは日本の生産の復興ということも、やはり國民の生活の安定、乃至は最低限の生活を保障するということが極めて大きな要素になつているのでなければならないと思いますが、そういつたことは、これは國鉄の運賃のみではなしに、現在の政府がこれを行おうとしている政府全体の政策として考慮されていないということを主に学生生活の面から述べさして頂きたいと思います。
 最初に現在の学生の生活が戰前の学生の生活とどれ程違つて來ておるかということのデータとして一つ挙げたいのは、今年の二月に東京大学の厚生部が奬学学生の実態調査をしたところの資料にあるのですが、昭和十三年における学生生活の出費の面を見ますと、食糧が三〇%、書籍を買う金が二五%、その他部屋代が約二〇%、交通費が六、七%、その他諸雜費という形になつておりますが、ところが現在の学生の出費の状態を見ますと、食費がすでに五三%、それから書籍費が僅かに八%、部屋代が約一八%くらいになつております。その他研究費、ノート代、それから交通費というものがそれぞれ占めておりますが、交通費の前と今度との割合は大体同じくらいの割合になつております。この数字の問題でありますが、殆んど現在の学生の生活費の半数以上が食費によつて占められて來ておる。そうしてその食費というのも、決して昔の学生生活における一ケ月の総支出の三〇%の食糧に比べて話にならないような状態の食事であります。即ち現在の東京大学の学生の例を取りましても、朝の食事を拔いておるという学生が極めて多量に上つておるという状態で、この五三%というのは決して十分に食事をするための食費を判定したというのではなくて、食事を拔くぐらいにしながらも、尚且つ五三%の食費なしには済まされないという状態になつて來ておる、從つて部屋代とか電氣代、そういうようなもの、ノート代というものはどうしても必要な、生きるためにも必要なものでありますので、学生に取つては極めて重要な本代というものが僅かに八%に削られて來ておる。而も現在の物價高により本の非常に高價なことを考えますと、昔の学生の二五%と八%という比率ではなしに、どれ程学門がしにくいか、どれ程学生の書架から本が失われて行つておるか、殆んど本を持たない学生さえも続出しておるという現状がはつきり示していると思います。その外研究費というものが、昔はなかつたのが非常な勢いで殖えて來ておるのは、現に教育予算が非常に削られておるために、理科学生の実驗その他で使うフラスコその他の藥品は自分で買わなければならない。文科関係の学生においても、研究室にはそれぞれの備品というのはすでに何年間も新たに備えられるということがないために、みずからそれを買わなければならないというような苦境にあるために、このように逼迫した学生生活費の中から、当然政府が負担すべき研究費までも学生が支拂わなければ知識というものが得られないという状態になつております。これなんか学校側の調査した調査表によつて、こういつた数字が出ております。更に交通費の今度の値上げがどれ程学生に大きな打繁を與えるかという問題につきましては、現在全國の学生がこの値上げに対しては絶対反対の意向を表明しておるということ、それから更にその根拠として言われることは、先ず最初に國会の方から頂きました資料によりますと、生活費における運賃の占める比率が一・三%だというふうに了解しておりますが、若し一・三%としますと、例えば現在の、これは國民全体の平均率だと思いますが、一・三%だとすれば、一ケ月に若し四百円の交通費を支拂つておる人間であれば、その人間の一ケ月の給料というものは約三万円近くになるのですが、現在の國民生活において給料を貰つておる労働者や学生が三万円の生活費を自分が取つておるか、又支拂つておるかということについては極めて疑わしいと思います。更にこの交通費の問題でありますけれども、それは文部省の学徒厚生課の調査によりますと、現在の事実は昨年の十一月であります、昨年の十一月における文部省の学徒厚生課の調査によりましても現在の大学学生の生活津というものは平均にして四千八百円、そのうちの交通費は平均して四百円になつております。この数字は全生計費の八%に当つております。而もこれは値上げ前において八%でありますから、今度旅客運賃の六割値上げ、それから定期券の六割値上げ、三ケ月、六ケ月の廃止により定期券の値上げは、学生にとつては二・五倍の値上げになるのです。そうするとこの比率で換算いたしますと約二倍の値上げになる。そうするとこれが二掛ける八の一六%、学生の生計費は決して運賃が値上げになつたからといつて現在のアルバイト費が値上げになるわけではないし、学生の生計費の総額が上るわけではないので、これは当然学生の生活費のうちの一六%を交通費が占めるというような状態になつて來るわけであります。こういうふうな状態は極めて一般的な例でありまして、例えばここで多くの学生が殆んど私の同じような状態にあるのではないかと思いますので簡單に私の例を申上げますと、現在鶴見から通学しておりまして、学生定期だけで一ケ月に現在六ケ月定期で九百十六円かかつております。九百十六円かかつておりまして、これが六割値上りになつたということだけで換算いたしましても一ケ月三百八十円かかつております。更に澁谷にアルバイトの家庭教師に行きますと、お茶の水から出掛けまして片道五心、帰りに品川に出まして五円、これが六割値上げになりますと両方で十六円になります。週に三回行きまして一ケ月十五回となりまして二百四十円。それから更に一週に外二回程荻窪へ家庭教師に参りまして十三円、帰りに品川まで十三円、六割値上りますと二十円ずつで四十円であります。そうすると三百六十円、これは両方とも月千円の給料で行つておるわけでありますが、千円の給料の中の澁谷の場合には二四%、荻窪の場合には三六%が交通費によつて占められてしもうというような現況であります。そうすると私の現在と、今まで値上げ前においてはどれだけかと申しますと、以前は百四十円、二百四十円、合計三百八十余円でありますが、今度の場合にはそれが更に大幅に二四%、三六%を占めてしもう。更にこの二千円で授業料とそれから学校に通う通学費とノート代、或いはそれに書籍費というものを賄つておりますが、これは私のところに入つて來る二千円のうちの、今度六割値上げの状態で九百八十円を交通費に奪われるということになります。現在五百三十余円かかつておるのです。この外いろいろなところに使われる、或いは偶には友達の家に行こうということになりますと、約收入の半分は、学生が生活するために必要なアルバイト費の半分は交通費のみに奪われるということであります。更に今度の予算が通りましたことによつて官立の大学の授業料は二倍になり、育英資金は新規申込みは停止、更に今まで取つていた者でも何人かは、何割かは辞退しなければならないというような状態になつておる現在、更に私立の学生においては、私学の経営難に陷つておるにも拘わらず國庫補助というものは一切打切られており、今度の予算においても打切られておる結果再び私学の学生の授業料の大幅の値上げが起ることは必然でありまして、すでに一万円を起えるというものが普通でありまして、研究費という形で取られるものを入れますと二万円に上り、年に二万円以上になる学校さえ出ておるという状態であります。このような状態におきましては、官公私立の全学生は今度の予算並びに鉄道運賃の値上げによつて、ただでさえ苦しい学生生活というものが殆んど致命的に破壞されてしまうであろう、こういうふうに考えます。更にここでは停止されておりませんが、加賀山鉄道総局長官の言によりますと、学生定期は更にパンチ制を実行するということを言つております。これは学生は通学に利用するだけであるから、往きと復りとパンチを入れて一往復しかさせない、そうして途中下車を許さない、乘越しも許さない、このような制度を取りたいということを言つております。この制度を取る場合においてどのような弊害が現われるかということについては、運輸省の旅客課津がすでにこれは労働強化である、更にラッシュ・ァワーにおける学生定期の一切のパンチ制を取る混乱から言えば殆んど実現が出來ないというようなことを言明しておることでも分りますが、学生生活にどれだけ大きな打撃を與えるかということは、先ず学生の現在四五%はアルバイトを行なつておる、八五%はアルバイトを望んでおるのであります。それらり学生が通学の帰りにそれぞれ家庭教師に出、或いは編集とかいろいろな形でアルバイトに出掛けておるのでありますが、そういつた学生が途中下車ができない、或るは乘越しが出來ないということになりますと、アルバイトをやつておる学生は自分の定期券の帰りの半数は殆んど無効になり、而も無効になつて、買わなければならない運賃の額というものは、一・六倍に今後値上げということになれば、今後学生のアルバイトというものはむしろ殆んど無意味になつて來る。支も学生アルバイトの低賃金というのはすでに御説明するまでもない状態であります。これを以て現在の大量首切りという形で職場から学生がどんどん追われて、家庭教師の方に向つて戻りつつある。而も家庭教師というものは、殆んどの家庭が生活難のために、家庭教師を雇うというのは昔のように多くはなくなつて來ておる。こういうように学生をアルバイトの面からも、又運賃値上げによつて更にパンチ制というようなものを取られるならば、殆んど生活というものは壞滅的になる。こういうふうに考えられるのであります。更に我々はこの外現在の政府の取つておる文教政策についてもいろいろ不可解な点があるのでありますが、このような政策を尚且つ政府が取られるとすれば、我々学生としては、政府は文教政策について何ら責任ある措置を取られない、学生が最低限の学問をして行くだけの生活の保障と、或いは施設の保障について何ら誠意がないものと考えざるを得ないと私は言わざるを得ないのであります。
 それでは私達の考えとして代り財源、学生の定期券や、或いは学生の定期券に対してパンチ制を採る、或いは國民生活に大きな打撃を與えながらも、尚且つこの運賃を値上げしなければどうしても行けないのかということについては、私達は非常に疑問を持つわけであります。先程から述べられておりますように、貨物の運賃の問題でいろいろ物價に非常に影響があると言つておりますが、昨年度においても僅かに運賃は物價の一%以下であり、これはデータに出ている昭和十一年よりも更に下つておるという状態であつて、これらの物價が実に諸外國に比して例外がない程原價を割つておる、四三%に割つておるというような状態であつて、我々としては飽くまでもこの貨物の運賃を上げるべきである。そのことによつて旅客運賃の、今度の値上げによれば二二六%の原價を上廻るようなそういつた出たらめな、旅客の、國民に対して負担が掛かるような値上げに対して、値上げはすべて当然原價の四三%というふうに割つておる貨物を上げるべきであると考えます。
 更に國鉄の石炭の問題でありますが、これは私達も聞くところによりますと、日鉄においてトン千円のものが、國鉄においては平均して三千円で購入しておる。これの質が更に國鉄においては惡いということも我々は聞いております。旅客課長に問い質した場合に、質が惡いということは徐々に直つておるが、確かに高いということは二・五倍、三倍であるということを我々の前に言つておる。こういうことは國鉄の独立採算制という名目で以て石炭を不当に高く買上げるというような行き方が採られているということは、我々は誠に不思議に思う者であります。更に鉄道の弘済会、或いは交通公社というものをもつと正しい形でこの國鉄の中に吸收して行く。こういう寄生的な存在について正しい行き方というものを我々は強く要望しなければならないと思うのです。更に國鉄の拂下げの問題でありますが、これについても不当に廉いということを聞いて学生は考えざるを得ない。
 以上のような観点によつて私達は独立採算制という名目、或いは経済の九原則に從うという名目の下に、鉄道運賃のうちの特に國民的なもの、いわば学生とか、給料生活者とか、小市民、そういつた人達が九〇%以上利用している旅客運賃、更に定期券、更に小荷物をチツキというものの値上げのみをやり、殆んど大きな資材を輸送するというような、國民に直接負担のかからない面の負担を不当に廉くしておる、こういう行き方の独立採算制、或いは運賃値上げについては絶対反対であつて、このようなやり方が如何に國民の生活を破壞し、学生生活を徹底的に破壞に陷れるかということを強調することを以て終りたいと思います。
#95
○委員長(板谷順助君) これにて証人の陳述は全部終りました。これより証人を委員間の質疑に移ります。
#96
○丹羽五郎君 今先程細野証人のお話の中に、学生の定期券の引上要請というお話があつたのですが、而もそれに対しては一部学生は煙草を喫つたりなんかとしてるから、そういうことじやそれを規制するために定期券の引上げをせいというお言葉のように私は聞いておりましたが、後段の言葉は即ち学生の道義の昂揚である。道義の昂揚をさせるのに定期券の引上げをせいというのは聊か私はどうかとかように考えております。且つ今武井君のお話の中にも、学生生活の殆んど一六%はこの運賃によつて取られるのだ、かくこの運賃が上るならば、殆んど学生は倒産状態になつて学業を廃止しなきやならんというような非常な土壇場におる窮屈なお話を承つて、私は細野証人のお話の学生定期の引上げというお言葉に対して、これは計数的に根拠を立ててのお話であるか、或いはただ政治的に一應そういうようなお考えを持たれたのであるか、ちよつとその点を伺います。
#97
○證人(細野日出男君) 特に計数はございませんですが、併し私が申しますのは、学生の道義を昂揚するために定期券の運賃を上げるということではなく、道義の昂揚は学生自身が考えるべきであり、又教育者が考えるべきであると思いますが、学生というものは平等に皆負担力がないものではないということであります。学生のうちにも負担力に富んでおる者もおるということであります。ですから学生定期というものを現下の〇・二六%、或いは改正されまして〇・五九八%……、或いは学生利期はそれよりもつと下になりましよう。これは普通定期と一緒の平均でありますから……。ですからそういつたような低い、原價を償わないようなところにある、非常に償わない、一般の定期外乘客に対し、殆んどこれは……、大体定期券というものは二割程度コストが廉いものだと思つております。併しながら学生自身というものは全部が平等のものじやないのでありまして、実際晝間映画館なぞへ一番大勢行つているのは学生であります。それから日比谷のCIEの図書館などに参りますと、あちらの方においては一方において非常に眞面目に熱心に勉強している人がおりますが、筋向いの日比谷映画劇場にずつと行列を作つておる連中を見ますというと、半分ぐらいは学生であります。そういつたような人達は、学生の中で以て負担力の富んでいる階級の人達の子弟だろうと思うのであります。こういつたような人達と、それからアルバイトをしなければどうしてもやれない、アルバイトをするといつたも思うように学資が出ないといつたような人とを平等に扱うということは不適当であるという意味で、一通り或る程度上げておいて、そうしてアルバイトをやつてもなかなか学資が出ないというような人達に対しては、一方においてはそんな贅沢な濫費をやつているものでないということの確認の下に、もつと割引したところの学生定期を発行すべきものである、そういつたような考え方を持つております。惡平等を防ぐという意味であります。
#98
○丹羽五郎君 学生の、映画を見る、或いは煙草を喫うということにおいても、私はこれを敢えて咎むべきことではなくして、学生自体の自主性においてやるべきことであろうと考えます。尚細野証人は多くの学生をお取扱いになつておられる商大の講師の立場において、私は只今のお話は少し私共の聞く上においては重大なお言葉のように、かように考えるのでありますが、勤労一般大衆の今日の生活における悩みという点、且つ現在の学生の大半は恐らく私は勤労大衆の子弟であろうと、かように考えておるのであります。ただあなたのお考えの映画を見る、或いは煙草を喫うというような極く小さい立場の、客観的立場からの眺め方の、学生定期の引上げということは、聊か私腑に落ちないのであります。而も教育の要に立つておられる商大講師の、而も交通に対しては最も日本の権威者として我々尊敬をしておる細野氏のお言葉としては聊かどうかと、かように考えているのですが、もう少し積極的に質問するならば、私いずれにでもしますけれども、ちよつともう一度証人に反省を促したいと、かように考えます。
#99
○證人(細野日出男君) もう一度申上げさして頂きますと、学生が煙草を喫つちやいけないということは申しません。併しながら「ピース」を喫つたり、「光」を喫つたりしている学生が相当いるということ、それから喫茶店に参りますというと、私は殆んど行つたことはないのでありますが、新宿だとか、いわゆる学生街と認められるところへ行きますというと、やはり学生が大半を占めております。そうして一杯二十五円か三十円ぐらいのコーヒーをすすつておる、そうして私の娘が今度定期を買いましたが、東中野から市ケ谷まで行きまして三ケ月で百七十円という廉さであります。僅かコースー六杯乃至七杯といつたようなもので行けるというような事実を見ておりますので、そういつたような学生はもつと敗戰の事実を認識して、そういう無駄遣いをする部面をなくすべきだという、そういうことをする余地のある人達に対しては学生定期の値上げをしてよろしいということを言いたいのであります。
#100
○委員長(板谷順助君) 御意見分りました。そこで私が細野さんにちよつとお伺いしたいのは、あなたが、國鉄が独立採算制の確立を図るについては、そう急激にやつてはいかん。とにかく相当な年を籍さなければならんという御意見は、それも御尤もでありますが、苟くも独立採算制を確立する上におきましては、先程來お話しになつたように、貨物運賃を或る程度上げなければならん、ところが政府当局は、貸物運賃はいわゆる政策運賃であるけれども、これを上げるということは物價に影響するというのが理由になつておるわけであります。ところが先程申上げたように例えば物價が運賃に及ぼしておる割合が、昭和十一年においては四・六、それが現在の物價が運賃に及ぼしておる割合がどれだけになるかと言えば、現在の貨物運賃を七割上げると、やはり四・六になる。そこで然ちば七割を上げた場合において、物價にどういう影響があるかと言うと、米に対しては〇・九一、野菜に対しては二・六五、鮮魚に対しては一・四一、味噌に対しては〇・九一、石炭に対しては八・八九、銑鉄が一四・五四、鋼材が五・五、こういうつまり負担額が多くなるわけであります。そこで問題は御承知のように今度爲替レートが三百六十円に決められたというような関係から、米は……すでに主食は或る程度値上げをしておる。又砂糖、油のごときも値上げせねばならん。又一面において爲替レートの関係において、恐らくは或る程度値上げをせねばならんというような品目もできると、こう思うのでありますが、これに対するどれぐらいの程度貨物運賃を上げたならば均衡を保つことができるかというようなことについて御意見があるならば一つ承わりたい。
#101
○證人(細野日出男君) 私考えておりますことは、先程の学生定期にいたしましても同じようなことでありまして、貨物の中でも値上げをしても影響しないものがある、そういつたものは当然値上げさるべきでありますが、貨物運賃を値上げすれば物價に影響するという一般的な観念のために、そういうものまで便乘して値上げされないでしまうということは、これは不当だと思うのであります。それから今日本の特徴というものは貧乏インフレでありますので、物資不足というところから來ておるものでありますから、物の方が人に比べて大変に高くなつておるわけであります。それらのものの中には需給関係から高くなつておるものが相当ありますし、温室経済から來たところの経営合理化というものを保つておるという面から來ておるものもあります。日本の経済は、結局十五億ドルの輸出貿易ができるようにならなければ自立できないのであります。十五億ドルの輸出貿易ができるようになつて初めて日本の経済というものはおのおのの面において合理的な態勢を立て得るものになるのだと思いますが、その場合にはどうしても凸凹、無理ができて來ると思います。その間我慢して誰かがいわゆる俺の部分を拂つて呉れと言われて誰かが拂つてやらなれれば、日本の経済は成り立つて行かないというわけでありますので、それで旅客、殊に定期外旅客というものがその負担者として選ばれたというようなことになつておるのだと思うのでありますが、ここに私の方でも調査したものがございますが、重要物資に対する鉄道運賃の貨物の比率というようなものの研究がありまして、第一次的に價格に対してどれくらいの運賃のパーセンテージになつておるか、それからその物を作るために使うところのいろいろな資材、第一次生産資材、第二次生産資材、第三次生産資材といつたようなものにつきまして、漸次鉄道の運賃がどれくらいのパーセンテージを含むものであるかということも全体として貨物、大貨物に対する運賃の割合がどんなふうになつておるかというような調査があるのでありますが、それによりますとやはり一般に値上げをいたしましても、消費者價格においては影響するところが頻る少い、即ち生産の合理化、もつと能率を上げて生産をするということによつて運賃の引上げというものは吸收されるというようなものがまだまだ相当あると思うのであります。そういうようなものと、それから適当でない、実際値上げをすれば直ちにその物價に響かざるを得ないというようなものとがあるのでありまするが、それらを一視同仁的に値上げしないで置くということはこれは間違いじやないかと思うのであります。
#102
○委員長(板谷順助君) 他に何か御質疑はありませんか。
#103
○丹羽五郎君 それから野村証人にお尋ねしたいのですが、先程のお話の中で、國鉄並びに鋼船、即ち汽船の運賃は即ち政策運賃、機帆船の運賃はこれは採算運賃であるというお話のように承つておつたのですが、結局これの運賃の調整をすることをお考えになつて希望されておるように聞いておつたのですが、如何なる方法でこれを調整をいたすべきかということについて、何か御意見があれば伺つて置きたいと思います。
#104
○證人(野村治一良君) お答え申上げます。私は鉄道でも独立採算制が仮になりますれば、適当な運賃が出ると思います。私の構想から申しますれば今鉄道の独立採算制で考えられておる以外に、中に入れて貰いたい問題があります。それは我々の企業態勢をとる上において今日の現状から申しまして、國鉄も我々の民業と同じような体形をとつて貰いたい。それからもう一つは鋼船の方はこれは丹羽さんは先輩であり、よく御承知だと思いますが、それぞれ原價計算をしております今日では、ただ運営会で扱つておりますから、恐らく運営会で経営しておられる上において、それぞれの運行度数において自然な運賃が出ると思います。いわば今度の爲替レートの決まりました上におきまして、三百六十円ということになりますと、昔に比べますと百八十倍になつております。外國航路の運賃はやはりこれと同じような形で決定されますということを考えますと、今臺湾から日本へ來る荷物の運賃が七ドルから九ドルというものであります。それを換算したしますれば、やはりこの爲替率に似よつたような問題に相成ると思います。これを言い換えますれば、國鉄の方で約二倍ということになると思います。運営会の方としては〇・八倍が大体において均衡がとれるじやないかというような構想を、私だけの算盤ですが、そのような算盤でやつております。数字に間違いがありますれば訂正いたします。恐らく今まで感で仕事をしておりますとこういうようになつております。最初に委員長の板谷さんのお話がありました六割とか七割とかいう問題、これは我々はやはり板谷さんがそれだけの船の問題であるとか或いは鉄道の問題についてそれぞれ研究されておられまして、感から來ておる問題とほぼ合うておるのじやないかということを考えております。以上で私お答えにいたします。
#105
○丹羽五郎君 もう一つ、野村証人にお尋ねします。現在省炭の輸送船に対しては重油の割当量が六千七百四十キロになつておるが、五月これからが三千キロに打切られていることを聞いておりますが、さような面において、政策運賃と採算運賃において聞きがあるとき、機帆船のみに殆んど半分以下に重油の割当が削られるということになつて來ますと、一体機帆船はどういう立ち行き方になるわけでありますか、その点を一つお尋したいのです。
#106
○證人(野村治一良君) 先程の私の意見の中に、それも申したかつたのでありますが、問題がい違いましたか差控えておつたのです。只今丹羽さんから御質疑がありましたので、卒直にお考えいたして置きたいと存じます。只今のお話のうちの中にも國鉄という問題がございましたが、これは配炭公團の扱われる石炭全体の問題でございます。これは機帆船は港によりまして六千キロぐらい貰つておりましたが、五月の月に入りましたから半減するという、こういう達しを受け、これでは私共はやつて行けないので非常に苦んでおります。機帆船の運営の状況は、九州山口炭の大半は機帆船によつておるのです。これは積上地の経済情勢とか、或いは輸送数量ロツトなど勘案して、今C・T・Sの御裁決を求めておるのであります。こういうように港を調べた結果によりますと一ケ月に五十万トンの炭が、どうしても機帆船によらなければ運べないというような情勢であります。これは吃水の問題、積上地の問題等すべてを勘案しております。一例を申しますと九州の西の方、北松周辺のものですが、これは私の方としては積上地のベターな計算をして、どうしても五十万トンばかりのものは機帆船によらなければならないということははつきりしております。これは一昨日もC・T・Sに御裁決を願い、よく調べるということになつておりますが、そのときでも日本の方には汽船が剰つておるから、その汽船を利用しなければならん。その場合には機帆船は犠牲に供しても止むを得ないという議論が出ておるように承つておりますが、こういうことは日本の海運を維持する上において將來とも出て來る問題と考えております。九州山口炭における日本の帆船の発達は、海上トラツクに代る経済上から発達したのでありまして、單に戰爭のために起つたのではない。石炭の現状と大阪及び各需要地の工場に横付けて、而もそれはまとまつて持つて來ずに、そこに必要なだけ少しずつ選ぶということが、現地経済の原則に適つておるのであります。だからこれは私は潰れることはなかろうと思いますが、悲しいかな今C・T・Sの関係の方々に日本の機帆船の実情を十分に分つて貰えんことから、そういうことが起つておるのですが、もう一つは日本の鋼船が今日情勢が惡くなつたために非常に誤つておる。これを活用しなければならんという、この二面から來ておるのでございます。この不自然な結果は、いずれ是正されるということは認めますけれども、当面非常に混乱に陷つていますが、このために、我々は混乱を打開しなければならんと非常に一生懸命やつておる、というのが現状であります。以上現状だけ御説明申上げます。
#107
○委員長(板谷順助君) 外に御質疑ありませんか……井田さんに伺いますが私鉄に及ぼす現在の運賃の改正はどういうふうに見ておられますか。
#108
○證人(井田正一君) 先程ちよつと私申上げたつもりでありますが、これは貨物を引上げないためにそういう結果が出たものと私は思いますが、仮にそれを実施する場合の影響を考えて見ると、大体國鉄としての運賃の、それぞれの区間の決定の内意を、案を伺つて檢討して見たのでありまするが、概ね乘客の密度の多い区間、短距離になりますが、これは大体廉い私鉄の賃率から割出されましたところの料金と一致せしめられております。それから長距離になりますというと、私共の方は一円二十銭廉いのでありますからして、結局料金は廉くなつております。けれどもこれは國鉄と私鉄とは本質的な違いがありまして、私の会社の例を見まするというと、確か逗子、九里浜、横須賀の汐留でありますが、十円くらいの違いしかないと思つております。十円ぐらいの違いであつたと思います。概ねどこの会社でも、大体そういう状況じやないかと私は考えます。これは國鉄と私鉄との本質的な違いがありますので、この違いがありましても、國鉄に対しても惡い影響はないと思いまするし、私共としても惡い影響はないと思うのであります。
#109
○委員長(板谷順助君) どうですか外に御質疑はございませんか……証人の御おつしやることはありませんか……それでは本日の公聽会はこれにて終了いたします。
 一言御挨拶申上げますが、長時間に亘つて証人各位におかれましては熱心なる御意見の御発表がありまして、当委員会といたしましても諸君の御意見を大いに参考にいたしまして、できるだけ公正妥当なる案に向つて進みたいと思いまするが、ただ御承知の通り、何分関係方面の意向もありますので、果して將來あなた方の御陳述になつた意見が通るかどうか分りませんが、いずれにいたしましても、委員会においてはできるだけ愼重審議をいたしまして、御承知のように五月一日から運賃改正というようなことになつておるのでありますけれども、何分運賃改正案が漸く二、三日前出て参りまして、先程大藏委員のお話のように通常予算においては旅客運賃六割値上げというようなことが予算の上においては決まつておりますけれども、併し我々の委員会の考えはこの二百三十億の赤字を埋めるについて、この枠の中に何か適当な修正案があるならば発見さしたいというような考えで御足労を煩わしたわけであります。併し皆さんの御意見に基いて大いに我々は参考としてできるだけこの委員会において愼重審議をしたいという考えでありまするからさよう御承知を願いたいと思います。本日はわざわざ御足労願つて誠に有難うございましたこの際甚だ御迷惑でも茶菓でも差上げて懇談会といいますか、諸君の労を犒らいたいと思いますからどうぞよろしく……本日はこれにて散会いたします。
   午後三時三十五分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     板谷 順助君
   理事
           小野  哲君
           丹羽 五郎君
   委員
           内村 清次君
          橋本萬右衞門君
           入交 太藏君
           飯田精太郎君
           高田  寛君
  政府委員
   運輸政務次官  加藤常太郎君
   運輸事務官
   (大臣官房長) 芥川  治君
   運輸事務官
   (海上保安廳長
   官)      大久保武雄君
   運輸事務官
   (海上保安廳保
   安局長)    山崎小五郎君
  証人
   東京商科大学講
   師       細野日出男君
   京浜急行電鉄社
   長       井田 正一君
   東京新聞論説委
   員       福良 俊之君
   東京商工会議所
   調査部長    高瀬 千波君
   西日本石炭輸送
   会社社長    野村治一良君
   産別労組執行委
   員       和田 次郎君
   全学連中央執行
   委員長     武井 昭夫君
ソース: 国立国会図書館
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