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1947/07/01 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 本会議 第8号
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1947/07/01 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 本会議 第8号

#1
第001回国会 本会議 第8号
昭和二十二年七月一日(火曜日)
   午後三時六分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第七号
  昭和二十二年七月一日
   午後三時開議
 第一 國務大臣の演説に関する件
 第二 國会第三十九條第二項の規定による國会の議決に関する件
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#2
○議長(松平恒雄君) 諸般の報告は御異議がなければ朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(松平恒雄君) これより本日の会議を開きます。請暇件につきお諮りいたします
 出淵勝次君より病氣につき二十日間請暇の申出がございました。許可をいたして御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。
     ―――――・―――――
#5
○議長(松平恒雄君) 去る二十七日間慶松勝左衛門君及び大屋晋三君よりおのおの理由を附して、議院運営委員を辞任いたしたき旨申出がございました。両君の委員辞任を許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(松平恒雄君) 御異議ないものと認めます。つきましては議長はその補欠として黒川武雄君及び森田豊壽君を議院運営委員に指名いたします。
     ―――――・―――――
#7
○議長(松平恒雄君) 日程第一、國務大臣の演設に関する件、内閣総理大臣及び和田國務大臣より発言を求められております。これより発言を許可いたします。片山内閣総理大臣。
   〔國務大臣片山哲君登壇、拍手〕
#8
○國務大臣(片山哲君) 新憲法実施最初の國会におきまして、政府を代表いたしまして施政方針を述べる機会を得ましたることは、私の最も光栄とするところであります。殊に私は、さきに本國会におきまして諸君の大多数によりまして、政府の首班に指名せられましたのでありまするが、このことは、私の生涯にとりまして忘れがたき感激の至りであります。爾來直ちに組閣に從事いたしまして、現下の情勢に應じ挙國体制による四党連立政権を樹立いたしたいと考えで参つたのでありまするが、目的通り十分の成功を收めることが出來なかつたのでありまするが、ここに成立いたしましたる三党連立現内閣に対しまして、自由党の諸君も閣外にあつて協力せられることと存じまして、深くこれに期待し、拳國危機突破に挙げて向いたいものと考えておる次第であります。
 政府はこの歴史的な第一回國会の開会に際しまして、政府の現下時局に対しまする所信と決意を率直に披瀝いたしまして、諸君の絶大な御協力を仰ぎたいと存ずるのであります。
 先ず第一に申し上げたい点は、憲法に対する政府の信念であります。政府は新憲法を嚴に守りまして、その精神をいかすことに最も忠実であることを誓うものであります。特に新憲法のもつておりますところの民主主義の大精神と、平和主義の大理想とを政府は一切の政治行動の大目標として高く掲げて、これを大胆明快に、現実化いたしたいと考えているのであります。即ち國民代表でありますところの國会によつて指名せられたる政府であるところの政府であることを十分に自覚いたしまして、國会を尊重するのは申すまでもなく、憲法の各條章に基づきまして國会と政府との関係につきましても、何卒今後紛淆を來さないように、細心の拂いたいと考えているのであります。殊に司法権の独立につきましては、特に留意を拂いまして最高裁判所構成の問題につきましての、憲法の精神に基づく民主主義の方法によります手段をとりまして、新憲法のもつ高遠なる大理想を一日も早く、且つできるだけ多く現実化いたしたいと考えているのであります。尚これに基づきまする必要なる一切の諸法規を早く國会に提出いたすべくそれぞれ準備を整えつつある次第であります。
 第二に、政府の施政方針に関しまする根本觀念を先ず明かにいたしたいと考えているのであります。政府は現下諸般の情勢を考慮いたしまして、この際我らの理想といたしておりまする民主主義を拡充発展せしめました高度民主主義体制を確立いたしまして、新時代に副うべき政治理念を、あらゆる方面に浸透せしめて、その徹底を図ることが必要であると考えているのであります。
 即ち現内閣の至高指導精神であります高度民主主義を、各方面に徹底せしめるために努力するのでありまして、政治上における民主主義徹底の急を要することは、いうまでもないところでありますが、問題は更に進んで民主主義を産業、経済の部面に透徹させたいと考えているのであります。産業経済の発展は、実にその機構の民主化に負うところ多大であると考えております。又社会生活の部面におきましても、健康にして、文化的なる生活をなさしめるべく一切の革新手段を講じたいと考えているのであります。即ち民主主義を日常生活に織り込みまして、生活体樣を民主化するの急務なることを考えるのであります。即ち政治上における民主主義の浸透は、封建的官僚機構を一掃することとなり、産業経済に民主主義浸透することによつて眞に産業の隆盛発展を來たすこととなるのであります。社会生活に民主主義が浸透することによりまして、生活文化の向上が確立せられるのであります。國際方面に民主主義が浸みわたることによりまして、眞の恒久平和が確立せられること考えるのであります。
 思うに、人間生活を規律いたしまする政治原理としての民主主義は、十八世紀時代より進展いたしまして、歴史的幾多の変轉を経て、第一次、第二次世界戰爭の後におきまして、ここに初めて世界共通の新生活原理として発見せられるに至つと考えるのであります。西洋文化は御承知の通り、ギリシャ文明、キリスト教文明、近代科学の集積であると思うのであります。今私の考えておりまする高度民主主義こそは、その集積に基づくものでありまして、平和主義の根柢となるものと信ずるのであります。又民主主義の裏附けなくしては、世界恒久平和の実現は不可能であると信ずるのであります。又人類生活を向上発展せしめ、産業を隆盛発展ならしめる原則も、これ又高度民主主義を基本とするものなりと考えるのであります。即ちこれは眞の人道主義であり、合理主義であり、社会民主主義であると信ずるのであります。よつて我々は、此の高度民主主義によりまして、暴力による政治行動を排し、その他一切の直接行動に反対するものであることを明らかにすると共に、民主主義政治体制たる議会主義を採るものであり、政府はこの信念に基づきまして、施政方針を樹立いたすものであることを、明らかにいたしたいと存ずるのであります。
 第三に現下の國際情勢に鑑がみまして、我が國の性格を極めて率直且つ明白に世界各國に表示いたしまして、その理解と援助を求めると共に、國際的信用の回復に努めることが最も必要なる我々國民に與えられたる任務であると考えるのであります。
 新憲法には主権在國民と、戰爭放棄と、人権尊重とを明文として表しているのであります故に、我が國の性格はここに一変いたしまして、新しき日本として再出発せることはいうまでもありません。我が國の性格がもはや武力國、好戰國、警察國、官僚國ではなくなり、封建的な一切の機構は、制度上漸次拂拭せられまして、民主的議会政治が確立せられんとしているのでありますから、これらを事実以て立証し、世界に向かつて、日本國民の努力と眞実さとを示さなければならんと考えているのであります。政府の考えておりまする平和國家の要素はなんであるかと申しますと、第一は國民に、憲法に基づく各種の自由を保障するの國家でなければならんと思います。第二は國民に、健康にして、文化的なる生活を保障するの國家であり、第三には國民が暴力と不合理と不正義を排し、道議と人類愛に基づく平和に徹すると共に、正義をどこまでも守るの國家でなければならないと思います。第四に勤労と、科学と、藝術と、宗教を尊重するの國家であり、第五には適正なる教育制度の確立によりまして、次代國民の民主的平和的育成に努める國家でなければならんと思うのであります。
 我々日本國民は、この意味におきまして、かかる要素をもつ平和國家としての日本を建設しつつあることを、世界に向つ説明しなければならないと考えているのであります。(拍手)
 第四に我が國の経済事情を詳細に亘りまして申し上げて見たいと思います。我が國の経済が誠に恐るべき危機に当面いたしておりまする点でありまするが、敗戰による憂慮すべき結果が、まさに現実の問題として日本國民に襲い來つているのであります。即ち食糧の欠乏であり、インフレの進行であり、産業の不振であり、失業の厖大、闇の横行等であります。政府は組閣後直ちにこの問題を取り上げまして、万難を排して、この危機を突破しなければならんとの決意の下に、経済緊急対策第八項目を掲げまして、この実行について既に國民諸君の御協力を仰いでいる次第であります。今、私はこれを繰り返して説明するの煩を避けたいと思いますが、問題の重要性に鑑がみまして、ここに危機の由つて來る要因を説明いたしたいと思うのであります。
 戰爭と敗戰によつて、根本から破壊されてしまいました我が國の経済を、どうして再建するかということは、きわめてむずかしいことがらでありますが、今まで敗戰後の経済の実相というものが、全國民に十分理解されておらず、政府の從來の施策又徹底を欠いておつた憾があるのであります。そのために、不幸にして今日まで立ちなおりの端諸をつかむことができず、経済の情勢は次第に悪化して参りましたために、國民の精神や文化にも深刻な影響を與えたのであります。
 我々は、今日経済の実体から判断いたしまして、今日こそ、我が國が経済の再建をなしとげうる最後の機会であると考えておるのであります。このことを十分に國民に理解していただきたいために、政府は近くこの國会に、我が國経済の現状を明らかにいたしまする実相報告書を提出いたしまして、先般の経済緊急対策の基礎となつた政府の見解を、國会を通じて國民に報告いたしたいと考えている次第であります。
 現在の経済がどんなにむずかしくなつてきているのかという具体的な事実につきましては、この実相報告書によつて御承知願いたいのでありますが、我が國の経済が悪化しるるあるということの根本的な原因は、なにかという点につきましては、これを次のように三つに区別して申し上げてみたいと思います。
 第一に、我が國は敗戰の結果経済資源の相当の部分を失ない、また生産や輸送などの設備が、戰爭を通じて破壊し且老朽化し、生産資財のストツクもだんだんとなくなり、労働の生産性も戰前にくらべては、はなはだしく低下したのであります。そのために、現在生産されている物の量は、戰前の三割程度にとどまり、かりにこれを全部國民の消費に当てましても、その一人当たりの消費量は、ぎりぎりの生活を続けていくにも足りないのでありまして、所謂過少生産と呼ばれる状態にあるのであります。そのために、生産された物の大部分が消費されてしまい、産業生産力を維持して行くために、必要な設備の修理や取り替えさえ、ほとんど満足に行くことができないのであります。この僅かな生産の規模そのものが、むしろもつともつと小さくなりつつある状態であります。
 第二には生産のこのような低下とは反対に、人口は、敗戰の結果かえつて増加いたしておりまするし、消費に対する欲求は、戰爭の間抑えられてゐた欲望がときはなたれたということもありまして、これにからみ合つて、非常に強くなつておるので、國民のすべてが、なんとかしてその消費生活を高めようとして、爭そつて僅かな生産物に殺到し、それで足りない部分は、残されゐる過去の蓄積にくいこんで行つておりますので、総体としては我が國の経済が生みだす生産量よりも、はるかに多くの消費がなされて有様であります。この根本的な事実は、そのまま経済の各部門に現われているのでありまして、例えば國民の家計も、企業の経理も、國の財政もみなその結果赤字を出しておる有様であります。又外國との貿易を見ましても、大きな輸入超過で、直接消費する食糧すら外國から借りているという形になつているのであります。
 第三には戰爭のため、生産物の裏附けのない莫大な購買力が放出されたことを原因として起こつたインフレーシヨンが、以上のような経済各分野の赤字の現状とむすびついて、賃金と物價との悪循環という形をとりながら、次第にその速度をはやめていることであります。インフレーシヨンが、ますますまじめな企業の経営を困難にし、勤労者の生活を脅かし、生産を妨げ、投機と闇取引を盛んにして、更に次のインフレーションの進行を刺戟いたしている有様であります。
 以上三つのことがらは、決して独立ばらばらのものではなく、それぞれ互いに複雑にからみあつて、因となり果となり経済を破局の方向に導いていると思うのであります。而もその進み方を見ますならば、もうすでにきわめて危險なところまできていると判断せらるる状態であります。これが現在の経済の実相と考えるのであります。
 我々は、このような経済の状態を見まして、あらゆる力を奮つてこれを立てなおす決意を固めておるのであります。我々は事態を樂観するものではありませんが、併し決して徒づらに悲観するものではなく、方法さえ誤らず、又國民が一致團結をしてこれに当たりまするならば、必らずこの悪化しつつある経済を引き戻して、再建の軌道に乗せることができると確信いたしているのであります。(拍手)
 最も緊急を要しまする食糧問題につきましては、政府は食料緊急対策を決定いたしまして、本日これを発表いたしまして、國民諸君の御協力の下に、その実行に邁進している次第であります。
 私はここでこの七月から十月の端境期に至る四ヶ月間の食糧需給の見透しが、きわめて憂慮すべき状態にあることを、率直に皆さまに申し上げたいと思うのであります。
 即ち國内的には、昨年産米並びに甘藷の供出は、前内閣以来あらゆる手段と方法を講じ、農民諸君も亦絶大なる努力を拂われ、これが確保に当られたのでありますが、遺憾ながら所期の一一〇%供出は未だ完了するに至つていないのであります。六月三十日までの成績は一〇四%弱であります。約百五十万石の供出未了となつている有様であります。而も期待されました麦類及び馬鈴薯の生産も、天候不順その他の事情のため、必ずしも芳しくない模様でありまして、國内供給量の点で最初の予定とは少なからぬ狂いが生じている有様であります。
 他方輸入食糧は、連合軍最高司令部の絶大なる援助にも拘わらず、諸般の事情のため我が國不足量の全部を賄うことは到底不可能と考えられておるのであります。かくて今後十月に至るまでの四ヶ月間の食糧の見透しは、全く文字通りの危機であると感ずるのでありますが、政府は食糧の確保があらゆる施策の根本であることを率直に認め、今後決定いたしました緊急対策を断行する外、國内供給力の増加と輸入の懇請に全力を盡して、最低基準量の確保に努力する方針であります。國民諸君も何卒政府の施策に協力せられまして、救國の熱意を以て食糧危機突破に邁進されんことを希望して止まないのであります。本月から実地いたします全國料理店、飲食店の休業も眞に止むを得ない措置であることを御了承願い得ると存ずるのであります。
 食糧について重要なる問題はいわゆるインフレーシヨンの防止であります。政府は現在インフレ進行の主要原因が、政府支出の厖大にあることを率直に認めるのであります。出來得る限り歳出を節約いたしまして、健全財政の確立に努力する方針であります。同時にいわゆる新円所得者の浮動購買力に対しましても、租税或は貯蓄を通じましてこれを吸収するの方針でありまして、特に租税制作においては、負担の公正を期するために、大口の新円所得者に対しまして高率の課税を行わんといたしておるものであります。(拍手)
  他方、金融統制は経済緊急対策に基づいて一層強化するの必要があるのでありまして、金融機関は、生産再開にあくまで協力するの建前の下に、今後とも貯蓄の増強、赤字金融の抑制に努力して貰いたいのであります。政府といたしましては、金融機関はあくまで産業の奉仕者であると考えおるのでありまして、(拍手)金融機関は苟しくも産業に優越するかのよう如き観念に陷らざるよう粛自戒して、生産再開に協力されるよう切望いたして止まないのであります。(拍手)
 次に重要なる石炭問題につきまして、諸般の情勢に鑑がみ、その三千万トン生産計画を遂行するために、國家管理案を目下立てつつあるのであります。近くその内容を発表し、諸君の御協力を仰ぐ予定であります。更に労働省設置に伴ない、労働基準法の実施を急ぎ、その内容実現に努めると共に、健全なる労働組合運動の発展に重点を置く外、失業問題につきましては特に失業手当法、失業保險法等、失業救済施設の拡充強化に関する具体策を本國会に提出する予定であります。また賃金と物價の問題につきましては、物價の安定に主力を注ぎ、生活必需品配給の確保等によりまして、実質賃金を維持することに努力する考えであります。
 日本経済再建の長期的な計画につきましても、この機会に一言触れたいと思います。政府は緊急対策と並行いたしまして、これを立案しつつあるのでありまして、後日発表し得る段取りとなると思うのでありまするが、この計画の中において、政府は特に水力電氣の開発を重視いたしまして、事情の許す限り速やかに大規模水力電源の開発、ダムの建設に着手いたしたいと考えているのであります。更に貿易産業の振興も、長期的な経済再建計画の基調となるべきものであると考えまして、國内において最大限に消費を節約いたしても、輸出の振興を図らねばならないのであると思います。尚貿易の振興に関連いたしまして、私は中小商工業者諸君の奮起と御協力を要望するものあります。我が國今後の貿易は、特産物乃至離品輸出に俟つところ多いのでありまして、この点において中小商工業諸君の果たすべき役割は、蓋し大なるものがあると考えるのであります。
 かくして産業の復興に全力を傾倒し、なんとしても最も重要なる食糧欠乏を中心といたしまするこの危機突破対策を遂行しなければならぬ決意を高めつつある次第であります。この目的を達し得るや否やは、一にかかつて我ら日本國民が自力をもつて、よくこの難関を切りぬけ得るや否や、耐乏生活を続け得るや否や、全國民一致協力をいたしまして、これをなし遂げるやいなや否やにかかつているのであります。一人の餓死者なきを期するためには、豪奢な生活をなくして、分配の公正化と、不当利得者を排除しなければならないと考えておるのであります。(拍手)これをなし遂げるために政府は非常な決意を以て立ち上がつているのであります。諸君の御協力を一段とお願いいたしたいのであります。
 第五に、緊急経済対策のみならず、一般政策をも必ず實践にうつして、一つ一つを生ける実効策としなければならないと考えているのであります。而してその第一段の実行者は政府と役人であるということを考えておるのであります。第二段におきましては、國民大衆諸君も強く立ち上がつて、その実行に当られんことを希望いたすものであります。
 先ず政府が実行の衝に当るために、行政機構の改革と官吏制度の刷新に着手いたしたいと思つているのであります。これら改革の心構えは、官僚的観念の打破でありまして、官吏はどこまでも國民のために仕事をする任務を負うものであり、自己の相当する任務につき強い責任感を持ち、正義公平を生命するものなることを徹底せしめると共に、(拍手)又内務省をこの際廃止いたしまして地方自治制度に根本的改革を加え、警察制度、官吏任用、服務規程等にも新らしき劃期的な考慮を拂いたいと考えておるのでございます。尚この際我々は断乎として今まで問題を重ねておりました官紀粛正をも断行しなければならないという決意を深くいたしておるのでございます。これらの中、成案を得たるのもは本國会に、準備の遅れるものは次の國会に提出いたしたいと考えております。これ一に行政機構の民主化を実現いたしたい精神に出ずるに外ならないのであります。
 國民諸君もその実行の衝に当たつて貰うために、自主的な新日本建設國民運動の展開さるることを要望して止まないのであります。この國民運動はいうまでもなく單なる精神運動では決してありません。又國民運動に関する要綱を作文に終らしめたくはないのであります。勿論我々は精神運動よりも食糧問題の重要性を考え、これを平行して行いたいということを考えておるのであります。精神運動よりも食糧問題の解決が先だという声はよく聞くところでありまするが、政府の食糧危機突破対策と、この國民運動と、両者不可分の関係に置きまして実行いたしたい所存であります。政府の國民に求める耐乏生活は普遍でありまして、而して公平であることを考えておりますると共に、これは光明を約束し、希望に満ちておるものであることを、この機会に明らかにいたしたいと思うのであります。(拍手)尚この國民運動とも密接な関係を持ち、且つ憲法の精神を生かすべき文教問題については、政府はさきに第九十二議会において協賛を経ました新教育制度、特に六・三制の完全実施に関ましては、種々の困難はありまするが、その実現のために許す限りの努力を盡することを考えておるのでございます。(拍手)
 第六に、講和会議の問題について申上げたいと思います。講和会議の開催こそは、日本國民にとりまして希望と光明を與える大きな課題であると考えております。その開催の一日も早からんことを我々は要望し、全國民と共にこれを促進いたす思考のあることを明らかにいたしたいと思うのであります。顧みますならば、終戰以來二ヶ年ポツダム宣言に規定されました我が国の非軍事化並びに民主化の事業は、國民一般の努力によりまして、着々と進捗を見て参りました。政府は今後とも一層の努力と誠意とを以て、ポツダム宣言の受諾に伴う義務を忠実に履行し、眞に民主的平和國家の実を挙げ、以て國際社会への復帰の條件を充たさんとしつつある次第であります。幸いにも連合軍総司令部の御好意により、來る八月十五日より民間貿易が再開せられることとなりましたことを、心より喜ぶと共に、その順調なる進行を期待している次第であります。これについても我々日本國民はすべて率直なる心持を端的に披瀝いたしまして、建て直りつつある眞の我が國の姿を世界に示すことが必要と考えるのであります。即ち我々の希望するものは、國民生活の安定と、産業の再建であり、世界恒久平和への熱望にあることを表明し、連合國各国の精神的、経済的援助を求めたいと考えておる次第でああります。尚、海外同胞引揚促進につきましては、政府は細心の注意を拂つて対策を講じつつあるのでありますが、今後ともこれがためあらゆる手段方法を以て努力を続けたい考えであります。
 結論といたしまして、以上政府の施政方針の大要を述べましたが、その他重要なる政策につきましては、既にに発表いたしましたる緊急諸対策、並びに本國会に提出すべき予算案及び法律案等につきまして、御了承願いたいと思うのであります。
 最後に一言いたします。誠に時局は重大であります。危機は深刻であります。この危機を突破し、來るべき講和会議を迎えて祖國を再建するためには、全國民の並々ならぬ努力と忍耐を必要とするのであります。政府は新憲法の下、國民の自由なる意思によつて選ばれたる最初の民主主義政府として、いな、國民の公僕といたしまして、眞に決死難局に当るの覚悟を以て祖國再建に邁進するものであるということを諸君の前に明らかにいたしたいと考えておるのであります。(拍手)諸君は何卒この政府の決意を諒とされ、挙國一体、危機突破に御協力されんことを切望して止みません。
 我々の道は耐乏と苦難の道でありますが、前途に光明が控えておると思います。この危機を突破いたしまするならば、連合國の好意ある御援助により再び國際社会の一員に列しまして、民主的なる平和國家、文化國家の建設に進み、生活の安定と民族文化の向上を実現し得るものであることを考えます。救國のため、明日の光明をもたらすために、諸君の心からなる御協力を望んで止まない次第であります。(拍手)
#9
○議長(松平恒雄君) 和田國務大臣。
   〔國務大臣和田博雄君登壇、拍手〕
#10
○國務大臣(和田博雄君) 只今総理大臣から現在の経済の状況と、これに対しまする政府の決意につきまして申述べられましたが、私は先般発表いたしました経済緊急対策の立案に当りました責任者といたしまして、この対策の底を流れております基本的な態度、考え方につきまして若干御説明を申上げたいと存じます。
 今日の我が國経済が直面しておりまする困難の具体的な事実につきましては、別に提出いたしまする実相報告書によりまして、詳細に御覽をお願いいたしたいのでありますが、いろいろな事実を通しまして、現在の経済危機の根底をなしておりまものは、要するに第一には、過少生産と呼ばれている生産の絶対的な不足であり、第二には、國民経済において蓄積された資本部分が消耗されて、生産力の基礎は次第に弱まり、狭まりつつあり、いわゆる再生産の規模がますます小さくなつて行つて、再建のための資本の蓄積の要素とは、経済の運行は、凡そ反対に逆行しているということであります。第三の点は、物價と賃金の悪循環という形をとつておりますインフレーシヨンの促進であります。
 以上申述べましたような事実認識の上に立ちまして、我々はあの経済緊急対策を作案したのでありまして、この対策を貫いておりまする基本的な考え方は、大体次の三点に要約できるのであります。即ち第一には、生産の量を厖大すること、第二には、生産と消費とを調整し、國民消費の内容を合理的に切りつめて、資本の維持、生産財も確保に努めますると共に、生産及び流通を計画的に行い得るような経済の秩序を確立すること、第三には、インフレーシヨンの拡大を防止しまするために、実質賃金の充実を中心しまして、物價と賃金との悪循環を断ち切ることの三つであります。勿論この三つの目標は、互に密接につながり合つているものでありまして、これを達成するための手段も、それぞれ切り放せない関係になつておりますることは、申すまでもございません。
 第一番目の生産の量を増すためには、基礎的な生産資財の重点的な増産と輸出の振興という二つの方策を中心として考えております。我が國の経済回復を、できるだけ自力によつて図りまするためには、先ず國内にありまする生産資源を余すところなく活用するのが当然でありまして、その重点は、食糧はもとより、他の物資の生産の前提になる基礎的な生産資材に向けられなければなりません。この意味におきまして、石炭、鉄鋼及び輸送力というものに、他に優先してあらゆるものを注ぎ込み、これを大きくして行くといういわゆる傾斜生産の方式は、あくまでこれを守り抜く決心であります。本年度におきまする石炭生産三千万トンの目標は、鉄鋼生産七〇万トン、陸上輸送一億一千六百万トン、海上輸送力千六十八万トンの目標は、できるだけの努力を拂つてこれを達成したいと考えておるのであります。併し、これらの基礎産業の復興に必要な資材も、決して十分にあるわけでなくて、迂回生産によつて作られた資材が、再びこれらの基礎産業によつ廻つて來るのを待つのでは、相当長い時間がかかるのであります。この時間を最も短いものに切り詰めまするためには、一方では輸出を行いまして輸入資金を獲得し、これを使いまして端的に必要な資材を購入することが一当の早道であります。現状におきましては、我が國は國民のやつと生きて行くだけの食糧を輸入することにさえ、遙かに不足な輸入しかいたしておらず、復興資材の輸入は殆どいうに足らないような有様でありますが、一日も早く経済の建て直しをしまするためには、我々はどんな無理を忍んでも出せるだけの物は皆輸出して、復興資材の輸入資金を作り、これを基礎産業に注ぎ込んで、生産循環の拡大を図つていかなければならんと考えるのであります。勿論輸出を盛んにしますためには、乏しい中から輸出産業に必要なだけの生産資材を割かなくてはなりません。併し國民が一致協力して工夫いたしますならば、今の國力が割くことのできるだけの資材で、尚相当の輸出品の生産ができることを確信いたすのであります。このような方法で生産量の厖大を図つていこうとするのでありますが、生産を上げて行くための根本は、つまることろ勤労者諸君の労働生産性の向上にあります。現在のは労働生産性は勤労者一人当たりで見ますと、平均して戰前の二分の一至三分の一におちております。どうしてもこれを上げて行かなければ、諸外國の労働生産性に比べて低いだけそれだけ我が國民生活水準が低くならざるを得ないのでありまして、單に國際市場におきまして太刀打ちができないばかりでなく、いつまで経つても文化的な生活水準に達することができないのであります。労働者諸君が進んで意欲を発揚し、技能の練磨に努力されましたならば、海外諸國に対しまして恥かしからん能率を実現するだけの素質は我が日本民族は十分に持つておると信ずるものであります。勿論労働生産性の低下は、決して勤労者諸君だけの責任ではございません。労働力と結びつかなければならない原料資材や生産設備にも原因はあります。又大きな問題として、戰時中に生産技術が停滞或いは退歩したことや、経営者側の経営能力が低下したことを挙げねばなりません。ここに貿易の再開を控えまして、輸出に最大の重点を置いたこと、又將來の我が國経済が大きく國際貿易に依存することを考えますならば、今日から技術の改善と、経営の合理化とにあらゆる努力をしまければならんと信ずるのでありまして、政府もこれについてはでくるだけの措置を講ずるつもりです。
 基礎生産財産業と輸出産業とに、今申しまするように重点を置くということは、他の産業や一般國民の消費に與えられるものがそれだけ少なくなるということを意味するのであります。長い眼で見まするならば、このことは國民全部のためになることでありますが、短い期間についていいますならば、他の國民の犠牲によつて、貴重な物資やサービスが重点産業に注ぎ込まれるということがいえるのであります。そうであります以上は、政府といたしましてはこうして注ぎ込まれたものが、本当に挙げるべき効果を挙げるように指導していく責任があるのであります。かような見地からしまして、今までの私の企業形態による経営では、どうしても此の事が保障できないという場合には、直接政府が責任を負えるような体制を作ろうという決意が生じて参るのでございます。
 第二の点である生産と消費との調整を図るということにつきましては、二つの方面から施策を考えていく必要があろうかと思います。一面におきましては、現在のようにきわめて乏しい生産の下で、生産資本に対する食い込みを止めて、重要産業に付いては積極的に資本の貯蓄を図つて行く、そのためには相当な部分を生産財に割いていくということを実行いたします以上、國民消に残される部分は差当たりきわめて限られたものとなさざるを得ないのでありまして、國民の耐乏がどうしても必要となるのであります。そうであるとしまするならば、この消費部分は國民の間に均等に分配されなければなりません。國民の一部だけが耐乏生活を強制されているのに他方では贅沢な生活をしている者があるとしましたならば、これをそのままにしておいて、國民に耐乏を求めることはできないのであります。このような見地からいたしまして、政府といたしましては、インフレ利得はためろうことなく、これを國庫に撤收し、國民全般の福利のために使用する方針を堅持して行くつもりでありますが、乏しい國民の消費部分を横流れさせる本となりまするような料理店、飲食店などの奢侈的な消費施設に対しましては、七月五日から差し当り六ヶ月間全國民にこれを止めさせることにいたしましたのであります。我々は経済の建て直しをなし遂げる原動力が國民の血と汗の勤労の外にはないことを堅く信じておるものであります。この國民の勤労に報い、この國民の勤労を励ますために、政府はこの乏しい消費部分の中から、できるだけ勤労の度に應じた重要配給を行つていくつもりあります。又いろいろな止む得ない事情から、働きたいと思つても働けない人々に対しましては、できるだけの援護措置を実施して行く考えであります。
 次に第二の面としましては、生産と消費とを合理的に結びつけ、物資の生産と流通が秩序正しく計画的に行われるように、できるだけの施策を講じなければなりません。今日までの経済の悪化の一番大きな原因は、率直にいいまいして、この流通の秩序が全く乱れているということにあります。乏しい経済力を有効に使つて、なんとかして國の経済を建て直そうとしまするならば、これを計画的に運用をしなければならず、その運用を確実に行うためには、物資を秩序正しく流すようにしなければならないのでありまして、前に述べました基礎産業の重点集中も、輸出の振興も、この流通秩序の確保なくしては決して成功いないものであります。又この秩序が乱れておりまするらば、一部の者が不当な利得によつて不当な消費をなし、他の國民は不当にその勤労の成果を搾り取られて、ただでさえ乏しい生活の最低限度すら脅かされるようになるのであります。この物資の流通秩序の確立こそがすべての経済対策の要であり、又前提であります。企業も正しい経路によつて決められた資材が手に入り、國民も最低限度の生活を確保するための配給物資が間違いなく手に入るようになれば、困難な條件の下での生産も計画的に実行されるでありましようし、苦しい耐乏生活も明るい氣持ちで忍んで行くことができるでありましよう。政府としてもこの點に全力を傾けて、民主的な統制機構の再建に努める決意を固くいたしておる次第であります。
 第三の点、即ち物價と賃金の悪循環を断ち切るということは、非常に困難なむずかしい問題であります。私たちは勤労者諸君の生活が確保され、改善されることを強く望んでおるのであります。併し財政も企業も家庭も赤字である今日におきまして、この問題を貨幣賃金を中心として考えますと、家計の赤字を埋めるために又それだけの貨幣賃金の引上げをしましたならば、生産量の増加も、その他生産條件に変化のない限り、それは直ぐに企業や財政の赤字を大きくすることになり、企業や財政の赤字を埋めますために物價を引上げますれば、貨幣賃金の購買力が減つて、家計は再び赤字となり、財政の赤字も更に加わり、財政の赤字を埋めるために増税をすれば、家計と企業は又赤字となり、國民貯蓄の裏附けのない公債発行で、賄えば、物價が上るというように、赤字は家計と企業と財政の間を轉々と移動して、その度毎に物價と賃金との水準を循環的に引上げて行くだけであります。これこそとりもなおさずインフレーシヨン進行の姿でありまして、経済安定とはおよそ正反対のものであり、結果においてなんら勤労者の利益にはならないのであります。從つて本当に勤労者の利益を図り、その家計を改善して行く方法は貨幣的な名目賃金の引上げではなくして、その実質的な消費内容の充実であると信ずるのであります。経済実相報告書にも明らかにしておきましたように、今日の家計の赤字の大きな部分を占めておりますのは、数量からみればごく僅かのものを闇買いするための支出であります。この闇買いが少なくなればなるほど、同じ貨幣賃金で勤労者の生活内容は豊かになるのであります。私達はあらゆる手段をつくしてこの闇買い少なくすることに努力し、これによゆて家計の安定を図り、その結果として貨幣賃金を安定し、ひいて物價の安定を確保しようと考えるものでります。
 即ち物價と賃金の悪循環という形で現れておりまするインフレーシヨンを断ち切る方法は、結局においては流通秩序の確立、即ち闇の撲滅と生産量の増加の外にはないのでありまして、根本的には第一と第二の問題が解決されて、初めてこの問題は解決され得るのであります。併し現実の経済が貨幣経済として動いております以上、この三つの問題は互いにからみ合つておるのでありまして、第一、第二の問題と並行して、やはりこの面からも手を打つ必要があるのであります。そこで政府とおしましては、既ににまじめな企業にとつても、到底耐えられなくなつておる現在の價格体系を、少なくとも当面のコストを賄える程度にまで全面的に改めますと共に、その家計などへの影響を緩和しますために、國庫支出による補給金を活用して、物價の騰貴率を、一定の安全帶の中に食い止め、家計に対しましては正規配給量の増加などを考慮しながら、改訂物價の下においても、十分生計を確保できるような業種別の平均賃金を設けて、これを新たなる價格に同時的に織り込んでいくという方法を採用いたしたのであります。尚、右の正規配給量の増加につきましては、食糧が一番の問題になりますので、政府といたしましては、今回の緊急対策におきましてもこれを第一番に取り上げ、又その具体化につきましても、他にさきがけまして本日その大綱を決定発表いたした次第であります、勿論インフレーシヨンの進行を抑えますためには、財政を引締め、企業に対する赤字金融も止むをえない限度に止めなければなりません。併しこれらの取扱は、短い期間における数字上の形式的なバランスよりも、やや長い光を見透して、國民経済全体の健全な回復に、最も役立つように運用されなければならないと考えるのであります。こうして財政も企業も家計も、いずれも苦しい所を堪えながら國民全体が助け合つて、正しい流通秩序の確立と生産の増強とによりまして、この苦しさを根本から解決して行こうと考えているのであります。政府といたしましては勤労者諸君に対し、その実質賃金を引上げる方法は、結局みづからの勤労によつて生産を増加し、その勤労の果実である生産物を正しく自分達の手に入れるように、お互いがもつと密接に助け合うようにほかはないことを、十分に理解していただきたいのであります。
 大体以上が先般発表しました緊急対策の底を流れている考え方の骨子でありまして、我々はその前文にも謳つておりますように、誠実に実行に努力いたすつもりであります。これに伴いまする具体的な施設につきましては、既に一部実施に移したものもありますが、今後も引続き急速にその実行を図ることといたしまして、この國会にも必要な法律案、予算案を提出いたしまして、皆さんの御審議を願う予定であります。
 この緊急対策はその名の通り緊急を要するものであります。併しながらそれは決して目前のインフレーシヨンの進行を一時食い止めるといういうような、目先だけのことを考えたものではございません。政府といたしましては日本経済再建の長期にわたる構想の一環としまして、この緊急対策を考えているのであります。又危機の防止だけに専念しまして、國民に耐乏生活を説くだけで、將來の希望について、なんらの見透しを持たないというような、消極的な態度も決して取つてはいないのであります。私達は本当に計画的に経済を運用して行きますならば、経済の再建はどんなに困難であつても、決してそう遠い將來ではないと確信しているのであります。この意味からも我々はできるだけ早く、長期の経済再建計画を計数的に作成しまして、國民諸君に報告したいと念願しております。併し例をこの二十二年度に取りましても、我々は本年度を以て我が國再建のための第一歩として計画を立てているのでありまして、きわめて限られた輸入物資の期待の下に、もつぱら國内の経済力を重点的に運用し、前に述べました石炭三千万トンを基礎といたしまして、これと鉄鋼生産、輸送力の三者を中核として、鉱工業生産全体の水準を上げることを狙つているのであります。若くしも我々が國民一致の努力によりまして、この計画を達成し得たとしましたならば、例えば鋼材は昨年度の三十三万トンに比べて二倍以上の七十万トン、セメントは昨年の百二万トンに対しまして、八五%増の百八十七万トン、化学工業の基礎であるソーダ灰、苛性ソーダは、それぞれ昨年の二一五%、六四%の増加となります。又食糧生産の重要條件である硫安の生産も、昨年度の五十五万トンから約二倍に近い百三万トンにまで上昇し得るのでありまして、これによりまして農業生産の厖大に寄與することが出来、今後の農業生産の使命である國内市場の拡大と、貿易収支の改善という方向に前進することができるわけであります。次に輸出の大宗である綿糸も、昨年度の二倍を超える生産を上げ得る見込みであります。勿論これで生産を回復しましたとしましても、それは戰前の水準に遠いことはいうまでもなく、又現在の最低需要を満たすにも尚不足でありましよう。從つてこれだけで経済が安定するのに十分だと申すわけには参りません。併し自然に放置して破局の淵に追い込まれるのと比べますれば、我々の努力次第でここまで回復することができるというのは、非常な相違であろうと考えるのであります。而もこれだけのことをなし遂げ得まするならば、我々はこれを土台としまして、次の年度にには又生産の規模を一層高め、終局の安定に向つて更に一歩を進めることができるのであります。このような回復か破滅かの分れ道を決定しますものは、全く今日の我々のやり方如何にかかつているものであります。日本の経済再建の仕事というものは、本当にむづかしい仕事であります。併しこの困難な仕事をなし遂げ得るかどうかということは、全く國民がこれを十分に理解して、單なる批判者としてではなしに、みづから実践者として政府と共にこれをやるのだという氣魄で立ち上つて下さるかどうかによつて、私は決まると信じております。どうかかような意味におきまして、皆様方及び國民諸君が一丸となつて、政府と共に進んで下さりまするならば、なによりの幸いと存ずる次第であります。(拍手)
#11
○議長(松平恒雄君) 國務大臣の演説に対し質疑の通告がございますが、質疑は明日に譲りたいと存じます。御異議はございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#12
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。
     ―――――・―――――
#13
○議長(松平恒雄君) 日程第二、國会法第三十九條第二項の規定による國会の議決に関する件、お諮り致しますものが二件ございます。先ず裁判所法第三十九條第五項の規定により設けられた裁判官任命諮問委員会の委員に両院議長及び両院議員を当てる件であります。内閣総理大臣からのこのお申出を容れることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#14
○議長(松平恒雄君) 御異議ないものと認めます。次に公職適否審査基準諮問委員会の委員に衆議院議長を当てる件であります。内閣総理大臣からこのお申出を容れることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#15
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。本日はこれにて延会いたします。明日は午前十時より開会いたします。議事日程は公報を以て御通知いたします。本日はこれにて散会いたします。
   午後四時十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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