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1947/07/03 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 本会議 第10号
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1947/07/03 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 本会議 第10号

#1
第001回国会 本会議 第10号
昭和二十二年七月三日(木曜日)
   午前十時十三分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第九号
  昭和二十二年七月三日
   午前十時開議
 第一 國務大臣の演説に関する件(第三日)
    ━━━━━━━━━━━━━

#2
○議長(松平恒雄君) 各般の報告は、御異議がなければ朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(松平恒雄君) これより本日の会議を開きます。日程第一、國務大臣の演説に関する件、第三日、昨日に引続き通告順によりまして質疑を許します。東浦庄治君。
   〔東浦庄治君登壇、拍手〕
#4
○東浦庄治君 與えられましたこの光栄ある機会に、私は食糧問題を中心といたしまして政府の所信を質したいと存じます。先般組閣勿々緊急経済対策を発表せられ、この対策の中に食糧問題を第一の問題として取上げられ、一昨日又食糧緊急対策を急遽発表せられました政府の態度に対しましては、私は満腔の賛意を表するものであります。
 ただ第一に質問を申上げたいことは、この食糧問題と取組む政府の態度についてであります。昨日の社会党吉川君の演説によりますると、社会党の諸君は、選挙中、ポスターに、演説に、食糧問題について相当安易な放送をせられたということである。(拍手)このことは過去において農民の食糧供出に対する意欲を非常に減退せしめた。(拍手)(「ノーノー」「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)消費者に対しては食糧に対する節約の熱意を冷却せしめた。(拍手)(「本当だ」「ノーノー」と呼ぶ者あり)これが今日の食糧の緊迫せる事態に対して、決して責任のない問題でないとは言えない。(「勿論勿論」と呼ぶ者あり)(拍手)併し私は過去のこういう問題について、ここでその責任を云々しようとは思わないのである。(「そうではない」と呼ぶ者あり)ただ問題は将来にかかつておる。平野さんが農林大臣になられると、米が三合来るのではないかということを、國民大衆は正直であるから考えておるかも知れない。(拍手)(「ノーノー」と呼ぶ者あり)昨日詳細たる事実の発表がありまして、我々は食糧緊迫の事態に対して政府のこの態度を諒といたします。併しながら政府の政治的態度としては、ここに何か歯の抜けたものがある。この過去において安易なる観念を持たせたその気持ちが尚続いているとすれば、将来の緊急対策への協力は非常に鈍いものになる。ここで現内閣が過去における政党としての発言が誤まりであつたということを明確にされることが、将来に対して緊急対策を実行する上に非常に必要な案件ではないかと私は思うのであります。(拍手)恐らく片山総理大臣もこの点については御異存はあるまいと思うのであるまするが、私は一國の公党が、その政治的出発の第一において、こういう問題を曖昧に過す習慣を付けるということは、我が國今後の政治の公正なる発達のために、責任政治、政党政治、民主主義の健全なる発達のために、非常に遺憾なことと思うのであります。(拍手)(「左様」と呼ぶ者あり)この点について…(「間違つているぞ」と呼ぶ者あり)正義の戦士、先輩の片山総理大臣の…(「選挙演説はよせよ」「黙つておれよ」と呼び、その他発言する者が多い)答弁を特にお伺いいたしたいと思うのであります。(「まだ勉強は足らんぞ。お前は」と呼ぶ者あり)
 質問の第二点、昨日平野農林大臣から食糧の急迫せる事態について十分承つて諒といたしました。ただ既に全國平均十二日の遅配があり、今後二十日の遅配の余儀ない情勢であるということであります。(「お前らの罪じや」「謹聽謹聽」と呼ぶ者あり)これは将来埋められるものであるか。或いは欠配のまま続くものであるか。此の点についてはつきりした農林大臣の御所見を伺つて置きたいと思うのであります。(拍手)(「昨日言うた」「昨日言うとる」「昨日欠席したのか」と呼ぶ者あり)
 質問の第三点、食糧問題はなるほど当面緊急の問題ではありますけれども、緊急対策は直ちに将来の恒久対策に繁がることは、一昨日和田安本長官の説明によつても私は十分諒とするのでありまするが、その点について、近き将来において貿易が再開せられ、講和條約が締結されるならば、日本の國に外國の安價な食糧が洪水の如く流れ込んでくる。それが一面においては、農民にこういう放送をされていることが、農民の食糧生産に対する意欲を非常に殺いでおる。(拍手)他面では食糧問題に対する一般の考え方を相当ルーズにしておる。(拍手)そこで私は将来貿易が再開さるるといたしましても、見返り物資生産に対する我が國の貧弱なる生産力の状態、又輸入必要品が単に食糧に限つておらんという事態、及び爲替の諸問題から見て、決して左様な安易なる考え方の通るものではないと思いますけれども、この機会において政府がこれに対する見透しを発表されて置くことは、私は政治の大木として必要があると存じまするので、この点平野農林大臣の所見を伺つて置きたいと思うのであります。(拍手)
 更に以上の私の観点からいたしまするならば、國内における食糧の増産は今後國民が全力を挙げてしなければならん問題であると存ずるのでありますが、その條件として一つには價格の問題、農産物の價格が一般物價に比して低廉に失するということは、一般に認められているところであります。今回新麦、馬鈴薯の價格の値上げが行われ、更に二三日うちに所謂物價体系が公にされるということでありますが、この間における價格決定の要因について各種のモメント、そのモメントに対するウエイトの置き方、これは國民が十分納得のいつた上で決定されるべき問題であると思うのでありますが、政府においてはこれを発表される意見があるかどうか伺つて置きたい。價格の問題に関連いたしまして今一つ大きな問題は、私は或る意味においては價格問題は予算の問題よりも遙かに重大なる問題であると思うのであります。然るに價格の決定が、殊に今後行われるが如き体系的な物價の確立が単なる行政的な措置によつて決定いたされておるということは、國民の生活の根本に対して國会が触れないということである。(拍手)この点について、價格決定に関し國会の協賛を経ようとする意思があるかないか。この点総理大臣の確乎たる御信念を伺つて置きたいと思うのであります。(拍手)
 價格の問題と続いて農業生産上重要なる問題は、肥料、農用食材の問題でありますが、農林大臣或いは物價廳長官、或いは商工大臣、それぞれにお伺いをいたしたいのであるが、肥料、農業用資材に対して傾斜生産の角度をどの位強いものにするという御覚悟であるか。食糧の生産が刻下の危機突破の第一の重点事項として、これに対する資材の生産に第一に重点を置くということは申上げるまでもない。その傾斜の角度をいかように考えておられるか。
 第二に、乏しいさような資材を傾斜的に重点的に投ぜられた産業の生産力を最も効率的なならしめるために、曾て肥料の國家管理或いは國営ということが考えておつたのでありますが、こういう問題に対して政府当局はいかなる考え方をもつておられるか。この点この機会に伺つて置きたいと思うのであります。
 第三の條件として供出制度の問題、これの根本的改革をするということはすでに述べられておるのでありますが、現在までの供出の方法は、ややもするとでき上つたものを取り上げるというやり方に重点が置かれておるように思う。これは今少し個人の能率…月給ににおいてさえも各個人の能率給ということを考えておる今日であるが、食糧生産において個々人の能率を加味したような供出の方法を考える必要はないか。又報奨物資というようなものがいざとなると多分にばたばたと出されるようであるが、こういうものを今少し根本的な立前から出す方法に考慮する必要はないか。これらの点について農林大臣のお考えを承つて置きたいと思うのであります。
 以上の諸條件と同時に、食糧生産の基盤である農村の構造、農業の機構について若干伺つて置きたい。
 第一は土地の問題でありますが、土地制度について、第三次改革を行なうとか行なわぬとかいうことが言われておる。行なうならば行なうが宣しいが、行なわないならば…この問題を曖昧にして置くと、第二次の土地改革の進行を非常に阻碍する。日本農民の民主化を遅らせる虞れがあるので、この機会に農林大臣に明確に御指示を戴きたいと存ずるのであります。
 更に土地問題、土地改革に関連いたしまして、これの裏附けとなる協同組合の建設及び農業保険の制度の確立ということは欠くべからざる條件となつておるのでありまするが、土地改革は既に進行しつつあるに拘わらず、この両制度に対して来た成案を得ておらんようである。今議会にこの制度が提案さるる準備が十分整つておるかどうか。御所見を伺つて置きたいと存じます。更に今日の日本の國の人工の問題、産業の問題を全般的に通観いたしますと、今後我が國の農業が人口圧力のためにややもすれば零細化して行く傾向のあることは私は否めないと思うのであります。ここまで発展して参つた日本の國の農業を更に零細化せしめて、漸次手を使い足を使う原始農業に興落させて行くということは、我々今日見るに忍びない状態であります。(拍手)この問題に対して、農家経済を安定せしめ、更には新たなる技術の導入を計画する意思が農林省にあられるか。農地改革は誠に結構でありますが、単なる農地改革だけでは、日本の農業経済の興隆、従つて迎えられる日本農村の民主化ということは不可能であります。農業の技術の改革を今日ほど私は必要とする時代はないと思う。(拍手)今日共立講堂に三千の農村技術員が集まつて、今後の日本の農村の技術のあり方について熱心なる討議をいたしておるのでありまするが、この多数の技術員の熱意をいかにして活かして戴くか。私はこの機会に農林大臣の御所見を伺つて置きたいと存ずるのであります。以上いろいろな問題を雑然と申上げたのでありますが、最後に、我々の食糧問題は永久に外國に多くの物を依存するということを許されません。相当國内において自給の途を図つて行かなければ相ならんのでありまするが、現在の我が國の生産の諸條件を取り揃えて見て、今日の食生活の形態で十分或る程度の自給ができるということは申し難い。ここにおいて國民の食生活に対するなんらかの改革をいたさなければ私は相ならんと思う。一面においては粒食の改変という問題があろう。他面においては蛋白資源の開発という問題がある。蛋白資源の開発のためには有畜農業を大いに奨励しなければならんと同時に、水産の問題に極力力を與えなければ相ならんと存じまするが、水産問題に対しては殆ど対策として十分触れておられるところがないようである。この際農林当局の所見を伺つて置きたいと思うのであります。
 最後にこれは和田安本長官が一昨日日本のいろいろな経済問題は過少生産の問題であると言われたのであるが、私は過少生産の問題であるということは、引つくり返して見ると過剰人口の問題であるということになるのではないかと思う。(拍手)現在の日本のいろいろな資源、人口の状態から見まして、いかに急速に生産力の回復を図るといたしましても、この事実を被うことはできない。幸いにして私の記憶に誤りなくんば、総理大臣は曾て新聞紙上に移民の問題について若干の所見を述べられておつたように思うのであります。既に講和会議も目睫の間に迫つておるように仄聞をいたしますが、この機会にこの過剰の日本の人口を世界の経済再建のために、世界の文化興隆のために、何とかサービスをさせて貰う方法はないか。移民を許して貰う取り計らいはできないものであるか。これについて何か御措置を講じられておるのではあるか。或いは若し講じておられないとすれば、これに対して十分の政府の御善処をお願いいたしたいと私は思うのであります。この点について、でき得べくんば総理大臣の御所見を伺つておきたいと思います。以上甚だ簡単でございますが御質問いたします。(拍手)
   〔國務大臣片山哲君登壇〕
#5
○國務大臣(片山哲君) 只今の御質問に対して御答弁いたしたいと思います。第一はこの政党の公約したことを実行しなければならない。これに関する見解を問う。こういう点であつたと思うのであります。社会党が根本政策として発表いたしましたる事項は、これを実現するに努力しておるのであります。この政策は一般政策のから農業政策、労働政策、救済政策、各般に亘りまして、主として原則的な総括的な事項を明らかにいたしまして、その進むべき方向を示しておるのであります。この方向に向つて常に努力して、その実現に邁進したいと考えまして、党を挙げて、その党員に対しましてもこれを守るべく明示いたしておるのであります。従いまして、この原則から選挙政策におけるいろいろの問題も出て参りまするし、或は党大会におけるところにスローガンも出て参りまするし、又その時々の政策も出て参るのであります。いま御指摘になりましたような政策、昨日吉川君が言われ、又只今東浦君が言われましたような事柄が、党で決定いたしました政策であるか。或はその候補者が個人として揚げられました政策であるか。その点をよく判明いたしておりませんが、食糧の問題につきましては、重要な問題でありまして、遅配欠配をなるべくなくし、本当に國民の食糧問題解決に全力を挙げて進まなければならないという点については、常に努力しておつたのであります。のみならずその遅配欠配をなくし、増配をするためには、根本的に農地制度の改革もやり、肥料問題の解決もやり、或いは農村文化の発展から農業耕作方法の機械化等に至るまで、いろいろの問題につきまして努力して参つておるのであります。私共はそういう意味で公約の実施に全力を挙げておるのであります。ただこの食糧問題につきましては、時期の問題やら或はその表現の方法等について、具体的に現わす場合もあるし、或いは又包括的に現わす場合もあると思うのであります。この問題につきましては先般農林大臣から篤と説明されたことと思いまするから、特に農林大臣はその当時選挙政策を担当せられておつたと思いまするから、詳細は農林大臣から御答弁があると思います。私は公約を実施することに対して最も忠実でなければならない。全力を挙げて公約実施に努めるということを明らかに皆様に申上げたいと思うのであります。ただこれには順序もあり、又これを発表いたします時期の関係がある。食糧問題については特に時期の関係が重要であるということを考えまするので、その点は十分に御了解を仰ぎたいと思うのであります。社会党は決して公約を無視して、一時でたらめのことを言つて、その場のがれをするというような考えは毛頭持つていないのであります。(拍手)
 それから物價問題につきまして、議会にこれを諮つて、議会の問題とすべきではないかという御意見でありました。基本的に、原則的にその御意見には賛成であります。但し急を要する場合、又今日の問題に処しましては、或いは時機を逸する点等を考慮いたしまして、政令に譲るべき場合も御考慮を願いたいと思います。今間の物價問題に対しまして取りましたる政府の態度につきましては、和田安本長官から詳細御説明をいたしたいと思う次第であります。以上御了承を願いたいと思います。(拍手)(「人口問題、移民問題はどうか」と呼ぶ者あり)失礼しました。今一つは人口問題と移民問題の御質問が私に対してございましたが、これも目下の状態ではいかんともすべからざる状態でありまして、すべては講和会議後において慎重考慮すべく、又その実現を期すべき問題だろうと存じておるのであります。但しこの狭い所で過剰人口をどう捌いて行くか。人口問題、移民問題等につきましては、御意見を十分尊重いたしまして、慎重考慮し、時機を逸せず十分御要求に応ずるような、又我が民族のために最も適当なる処置を取りたいと考えておる次第であります。(拍手)
   〔國務大臣平野力三君登壇〕
#6
○國務大臣(平野力三君) 東浦君より屡々御質問がありましたので、私は関する部分につきまして順を追うて御答弁をいたしたいと思います。
 第一点として御尋ねになりましたのは、社会党が日頃公約しているところの政策がまだ十分実現しないではないか。こういうお問いでありまするが、このことに関しましては、御承知の通り、食糧事情の最も急迫いたしております。…東浦君疾くに御承知でありまするところの、この六月という時に組閣をいたしました現内閣といたしましては、僅か一箇月の施策を以てしては、全國民に十分納得の行く政策ができないという点に関しましては、一つ同情的立場を以て御理解を願いたいと思うのであります。(拍手)決して私が今ここで同情的ということを申上げましたのは、安價なる言葉を以て申したのではないのでありまして、凡そその政策を立てるに当りましては、先ず正確なる数字を把握し、又農林大臣といたしましては、農林省内におきまするところの、種々なる今まで行なわれておりましたるところの内容を検討いたしまして、これならばという確價を持つてから手配をしなければならないのでありまして、その点におきまして、約一箇月間の組閣の間、日を取つておりますということに関しましては、先ず御了解を願いたいと思うのであります。我々といたしましては、日頃宣言をいたしましたことについては必ず、只今総理大臣も申しましたように、誠意と良心を以つて、必ずこれの実行に当るということを、決して我々はその点におきて、いわゆるただ空論を申上げる積りではないのでありまするから、重ねて御了解を得たいと思います。
 第二の問題といたしまして、遅配の問題を取上げられまして、昨日申上げました数字については大体御了解を願つておるのでありますが、そこで私といたしましては、この遅配の問題を如何にするかということについては、大体第一次食糧危機突破対策というものを発表いたしまして、先ずこれを行ないたい。従つて第一次において不十分なる点においては、第二次、第三次と順を追うて、この米穀年度内におきましては必ず何時かの方法によつて、この遅配というものを飽くまで無くして行きたいという全努力を傾倒するものであるということを申上げておきたいと思います。
 その第一の問題といたしましては、輸入食糧に対して我々は全力を傾倒いたしますることは勿論、今回割当てました麦と馬鈴薯に関しまして、百パーセント供出に対して全力を挙げますることも当然でありまするが、同時に最も問題と相なつておりまするところの二十一年度産米の吸上げに関しましては、いわゆる縁故米、或は特別救援米、或いは代替制度等の諸般の施策を持つておるのでありまして、これらの施策は順次これから政府がなさんといたすところの方法でありますので、この点に関しては暫らく政府のなすところの食糧問題を見て戴きたいと思うのであります。尚昨日も申上げましたように、最後の段階に至りましてどうしても食糧が危機に当面いたしました時におきましては、大体に於て芋類によつて(「昨日聞いた」と呼ぶ者あり)或は水産加工物等によりましてこれからの点を補おうと考えておるのでありまするから、この遅配問題に関しましては、政府といたしまして十分な施策を以て臨むということを先ず御了解を得たいと思います。
 第三の問題といたしましては、貿易が再開した後においては日本の食糧問題はどうなるか。こういう御質問であつたと思いますが、私共といたしましては、この八月十五日に貿易が再開せられましたからというて、直ちに日本にそんなに豊富なる食糧が流入されるとは考えておらんのであります。寧ろ現在の世界の食糧事情から勘案いたしまして、この一年二年間というものは、仮に貿易が再開せられましても、日本の食糧事情というものは極めて困難なる状況を我々は漕ぎ抜けて行かなければならんと覚悟いたしておるということを、この際はつきり申上げて置きたいと思います。
 第三の價格の問題でありまするが、今回決定いたしましたる麦と馬鈴薯の價格は、いわゆる農業パリティ計算という方式を用いまして、相当数字的根拠の上に立つた價格であるのでありまして、将来價格の問題に関しましては、その時その時のいわゆる単なる物價趨勢等をみてやるのではなくして、直接の農産物米價を基準として、價格問題に関しましては相当國民の納得の行く價格政策を取りたいと考えておるのであります。ただお断りをいたしたいと思いますることは、この價格問題は単に農林大臣、単に一省においてこの問題を決するわけには参らんのでありまして、これに関しましては、政府といたしましては十分御期待に副うように、各省連合の上において善処したいと考えておる次第であります。
 第四の問題といたしましては、肥料の國営問題について論及をされたのでありまするが、この点は農林省に関しまする限りにおきましては、今回肥料公國なるものが設置をせられまして、いわゆる配給の部面におきましては殆ど國営化に近いところの状況に相なつておるのでありまして、今後は肥料の横流れ、或いは肥料の闇取引、こういう点に関しましては、この公園を通じまして厳に取締つて行きたいと考えておる次第でありまして、この点も御了解を得たいと思います。
 次には供出制度に関するところの御質問がありましたが、これは私といたしましては、必ず根本的な改革を断行したい。こういう考え方を持つておるのでありまして、現にこれの改革の一助といたしまして、この議会に農業生産調整令なるところの法律を提案いたさんとしておるのでありまするが、これはこの法律によりまして、はつきり日本の農業統計というものを農林大臣が把握いたしまして、その農林統計の基礎の上に立つて供出制度を考えるという構想であります。具体的に申しますると、従来の供出制度は、農家ででき上りましたところの生産物というものを推定して、その上に課したところの供出制度でありまするが故に、今後は土地の生産力、反別、これらの問題を事前に勘案をいたしまして、農家に対して比較的早くその供出の割当というものを断行することによつて、農民が増産にいそしむならば、それだけの價値が農民の懐ろに入るような新制度を考えて参りたいと思うておるのでありまするが、具体的なる問題に至りましては委員会において詳細に説明いたしたいと存じます。
 次にお問いになりました農地改革の問題でありまするが、これは極めて重大なる御質問でありまするので、少しく詳しく御説明をいたす機会を得たいと思うのであります。私といたしましては、農地制度の改革というものに関しましては、将来の日本の農業の理想といたしまして徹底したる改革を断行いたしたいという素志を持つておるものであります。而してこの徹底したところの土地改革を断行いたしますところの具体的手段といたしましては、先ず現在進行過程にありまするところの第二次土地改革案というものを、速かに実行いたしたいと思つております。その第二次土地改革案の進行の計画と内容について、この際発表いたしたいと思うのでありまするが、先ず政府が三月末日までに買上げましたところのいわゆる小作地は十五万余町歩であります。この七月に買上を断行いたしまする予定は十六万余町歩であります。八月から十月に買上を断行いたしまする町歩は十八万余町歩、十一月から十二月が三十一万余町歩、来年の一月から二月が十八万余町歩、来年の三月が二十四万余町歩、合計いたしまして来年の三月末日までに百二十二万余町歩の耕地を政府が買上げまして、これを自作農に移行せんとするものであります。現在第二次農地改革案において予定せられておりますところの耕地の予定地は、百五十万町歩でありまするからして、来年の三月までにこの予定を実行いたしますると、残りは僅かに四十万町歩になるのであります。かような手順によつて第二次農地改革案を先ず断行し、この第二次農地改革案を完全に実行いたしましたる後において、私は第三次農地改革案というものを考えて見たいと、かように思つておるのでありまするが、この点ははつきり一つ御了承願つて置きたいと思います。
 次に申上げたいと思うことは、かようにいたしまして、日本農業の将来のあり方をお問いになつたのでありまするが、この詳細に関しましては、委員会において申上げたいと思いまするが、その概括的な思想を申上げますると、大体において有畜機械化農業の傾向を持つて参りまして、その経営の形態は多角経営的立体的な方法を採るのでありまして、これを分りやすく申しますならば、デンマーク式農業経営と申しまするか、将来日本の農業が、世界の如何なる農産物のいわゆる恐慌の状況にありましても、日本農家経済というものが完全に立ち行くところの農業経営に、これを改善いたしたいと考えておるのであります。(拍手)詳細に関しましては委員会においてお答えをいたすことといたしまして、最後に水産問題、食糧生活等の問題がありましたが、いずれも御尤もな御質問でありまするので、これらの問題に関しましては、委員会において東浦君に詳細にお答えをいたします。
 以上簡単でありますがお答え申上げます。
   〔國務大臣和田博雄君登壇〕
#7
○國務大臣(和田博雄君) 東浦君の私に対する御質問にお答えいたします。一つは農産物價の價格決定においてパリティ・システムを採つたときのウエートと採り方を発表するかどうかということでありますが、これは御承知のようにパリティ方式というものが農業の再生産を確保するという見地から、農業経営に必要な資材の價格と、それからそれに対する農産物の價格との比率というものを基礎にして計算するわけであります。従いまして農業経営に必要ないろいろの資材についての重さというものは、当然考えるべきものでありますが、これは御承知のように、農業経営の要素である資材は非常に沢山の項目がありますので、その一々のウエートについては、いずれ常任委員会等で発表した方が適当であろうと思いますので、その機会に讓らして戴きたい。そう思います。それからもう一つ、價格の決定は國会の協賛を経るようにしたらどうかということでございますが、これは御承知のように統制経済をやつて参ります上に公定價格の制度を採つて行く、統制経済ではあるが、價格の持つておる機能を十分に働かして行くという点からいいますれば、お説のように價格というものが非常に國民の企業なり生活なりに影響を持つて来るわけであります。従いましてこれはどういう方法によつて價格というものを決定するかということにつきましては、私は十分國会のこの意見を参照して今後はやりたいと思います。ただこれは價格は相関的に、一つの部分だけを捉えて決定するわけには参りません。非常に技術的な面も加わつておりまするので、これはやはり一つの所で責任のある行政廳がやるのが適当ではないかと、かように考えておる次第であります。
 それからもう一つ農業についての傾斜生産の問題でありますが、これは御承知のように経済を復興して行くのに基礎産業である石炭とか鉄鋼とか、さういう基礎的な資材というものを重点的に増産して行つて、それを他の産業に配分して、そうして他の産業というものが大きくなつて行く、こういう方式をとつておるわけであります。従いまして、農業につきましては具体的に申しまして、石炭を沢山掘り、それによつて鋼材をより多く造つて、必要な鋼材が多く農機具の生産部面に配当される。それから肥料の部面に石炭がより多く加わつて行く、配当されるということによつて初めて肥料も確保され、農機具も確保されて来るのであります。この意味において農業自体における傾斜生産ではなくして、農業を経営して行く上において必要な資材については、傾斜生産の論理はそこまで貫かれておると御了解を願います。肥料につきましては、御承知のように石炭の配当につきましても、これは鉄道と同じように最も重要な部門として、優先的な割当をいたしておるのであります。農機具等につきましてもやはり生産財…非常に鋼材の少い中からも食糧生産の重要さを考えて、これに配当をいたしておるのでありまして、生産回復に対しては極めて論理的な傾斜生産をとりますが、その傾斜生産の結果というものを、各産業部門に割当をするのには、やはり経済全体における各産業の重さを考えて、そこにも、傾斜生産ではありませんが、傾斜生産に盛られた論理はそこに貫かれておる、こう御承知を願いたいのであります。
 大体以上で私に対する質問は盡きたようでありますが、技術の問題について、今農林大臣ちよつと御答弁ありませんでしたが、それはお話のように、土地改革だけで日本の農業の基礎が十分強固に立ち直るとは我々も考えておりません。やはり改革された土地所有の上に、経営の内容を盛つて行くということになつて来まするならば、これはどうしても農業の技術というものを向上して行く外はありません。併し農業の技術を向上していくにつきましては、日本の農業は或る程度は集約的な農業の生産というものを先ず営んで行かなければならん。その上における技術の向上ということもありまするが、それと同時に農業のやり方を変えて行く。いいかえれば、もつと高度化して行くという点につきましては、これは日本の工業面における回復自体と相俟つて、それと結んだ技術として発達して行く、こういうことになろうかと思うのでありまして、お話の点の技術の向上につきましては、これは政府といたしましても十分に考えておる次第であります。
 それから粉食、食生活の改善でありますが、これは乏しい消費物を有効に使うために、日本の今までの食の仕方を変えて、もつと粉食を取入れて行くということが、しばしばこの議場におきましても問題になつたのでありまするが、差当つてはこれはやはり粉食をして行くということにいたしますのには、どうしましても粉食についての工業というものを確立していく、いいかえれば農業工業としてもつと粉化事業等を取入れて行く、こういうことになろうかと思うのでありまして、この点については農林省の方において相当の具体案があると、かように考えるのであります。(拍手)
#8
○議長(松平恒雄君) 岩木哲夫君
   〔岩木哲夫登壇、拍手〕
#9
○岩木哲夫君 私はこの際政府の食糧緊急対策、並びにこれに関連する事項等に関しましてお尋ねいたしたいと存ずるのでありますが、それに先立ちまして昨日本議場におきまして、吉川議員と片山総理大臣との質疑応答の内容につきまして、この際片山総理大臣にお尋ねいたしたいと存ずるのであります。即ち昨日本議場におきまして、吉川議員より片山総理大臣に対しまして、参議院の政治的性格性能は、衆議院の行過ぎや間違つた議決をした場合において、その誤りを是正し、或いはブレーキをかけ、或る時は拍車をかける性格を持つ政治行動をも取ることを信ずる旨の御披瀝に対しまして、片山総理大臣は衆議院の行過ぎとか、誤りを是正するとかいうことは、それを承服するわけにはいかないとの御回答を以て、恰も撥ねつけたかのような感じを與えられましたのは、私達参議院議員の極めて重大なる問題といたしまして、遺憾の意を表すものでありますると共に、(拍手)私達の承服できざるところであります。(「その通り」「同感」と呼ぶものあり)参議院の性格につきましては、曾て前議会におかれまして、新憲法の創設の、主として衝に当られたと報ぜられております金森前國務大臣が、先に吉川議員が述べられましたと殆んど同様なる性格職能である旨の御見解と御所信を述べられておるのでありますが、然るに片山総理大臣は、これに対し、恰も異なつたかのような感を受ける御見解の御答弁が昨日あつたのであります。この際重ねて参議院の性格職能について、責任のある最も明確なる御答弁をお願いいたしたいと存ずるのであります。(拍手)
 次に先程申上げましたる政府の食糧緊急対策等につきまして、この際御関係各大臣に併せてお尋ねいたしたいと存ずるのであります。さきに総選挙の結果、我が片山内閣は、國民の輿望と信頼とを担つてこの経済破局と食糧不安の打開に非常の決意を以て乗り出されましたることは、私達の最も敬意を表する次第であります。その成課の一日も速やかならんことを國民と共に念願待望いたしておる次第であります。政府は組閣後、いわゆる経済緊急対策八項目なるものを発表され、又一昨日来本議場において、総理大臣並びに和田、平野両大臣によりまして、その施政方針を明らかにされ、且つ又現下最も重要なる食糧緊急対策を発表いたされまして、政府の向うところ、又民衆の赴くところを示されましたることは、國民総力結集の上にこの上もないことと存ずるのであります。然るに不幸にいたしまして、組閣以来、全國的主食の遅配状況は、組閣当時北海道の四十数日が今日既に百日に達する悪化と同様、全國主要消費都道府縣の遅配状況も亦同様の進行状態を示しておりまして、いよいよ食糧をめぐる生活不安の様相は、ますます深刻さを加培いたして参るばかりでありまして、最早今日蓄えも余力もないうらぶれた敗残の民衆は、正に飢餓線上に暴されておると申しましても敢えて過言ではないのであります。過般農林大臣は、天皇陛下より北海道は四十数日の遅配があるのに、何故餓死者が出ないのかとの御下問に対し、正規のルートに乗らない食糧が廻つておるからである旨のお答えをしたと申されておるようでありますが、遺憾ながらこの事実は、獨り供出未完遂の北海道ばかりでなく、供出が完遂された府縣の何処にでも、あらゆる都鄙を通ずる厳然たる事実でありまして、至るところ現下敗戦日本の食糧政策の一大欠陥を如実に露呈しておる公然の現象に対しまして、政府はこの事実を指摘せずして、唯成り行き的な食糧事情のみを述べておられるような感のあるのは、どういうわけでありまするか、(拍手)お尋ねいたしたいのであります。國民はこの欠陥をみづからあらゆる犠牲と努力とを拂いまして、生きんがため、止むを得ず法律に違反してまで闇買いや物交によつて、そのある物殆どを使い果し替え盡して、漸く尚今日うす暗き生存を辛うじて維持しておるという誠に惨めなのが現在國民生活の実相であります。要するにこの事態は、食糧はないのではないのでありまして、物さえ出せば、金さえ出せばあるのでありますが、これに対して政府の法律米と申しますか、管理米は殆どないというという矛盾が……併し民衆米というものはあるのであります。この矛盾が現下食糧政策の実相でありまして、政府は國民に対し、それでも政府の管理統制を遵奉し、政府米にすべてを依存せよといわれまするかどうか、遅配によつて食つて行けないという厳然たるこの事実に対し、我々消費者に必要な買出しの便法も與えないということは、これ亦どういう意味をなしておるのか、お伺いいたしたいのであります。この食糧政策の矛盾と大欠陥によつて、その犠牲となつて苦しむ者は、獨りか弱き消費民衆だけでありまして、殊に遵法精神に燃ゆる正直者ほど、一層裏切られたる悲惨な生活を敢えて続けなければならんというこの現状は、全く私達の黙視できない事態でありまして、この乏しい破局に瀕しておう民衆経済、これを政府は尚いつまで続け得られると思召させれるのかどうか、総理大臣に同情あり、眞劒なる御所信を承りたいのであります。きれによりまして、耐乏生活の強要や、精神運動でカモフラージュされましては堪らないのであります。然るにこの多年に亘りまする不安と猜疑のどん底に追い込んで来ましたるこの惨めな実情に対しまして、今回政府は非常な意気込みを以て発表されました今回のこの食糧緊急対策でありまするが、果してこの緊急対策で食糧難局をよく切り抜け、打開し得られると思召しますのかどうか、食糧問題解決を絶叫いたしましたる片山総理大臣、並びに平野農林大臣の僞らざる確固たる信念を御披瀝賜わりたいのでありまして、政府の無策によつて生じたる欠陥を、あらゆる精神運動で先程申上げました耐乏生活を強要されましては、堪らないのであります。
 第三にお尋ねいたしたいことは、政府は、昨日来の議会におきまして、七月から十月までの四ヶ月間が更に憂慮すべき需給状態にあることを御指摘になりまして、今後二十日に亘る遅配の余儀なきがごときを予想されておるようでありますが、その原因は昨日農林大臣がお述べになつたごとく、いろいろ予期せざる事態もあることとは考えまするが、これに一層の拍車をかけておるのは、六月三十日までの供出未了の分尚百六十万石を残しておることでありまして、その事実はもとより歴代内閣の食糧失政に外ならないとは存じまするが、又一方更に深い原因とされておりまするのは、某政党を背景とする農民縫合の一部におきまする。昨年来の八割供出運動の遺憾極まる惰力残滓によるところ又大なりとも考えられるのであります。(拍手)これらに対しまする責任と処置に対しまして、社会党平野農林大臣に敢えてお伺いいたしたいと存ずるのであります。
 第四に今回この非常に期待されまして現内閣が取られんとする食糧政策につきましては、一昨日来いろいろ承わつておるのでありまするが、我々又大いに期待を、希望を繋いでおるのでありまするが、今回特に採られましたる緊急対策、或いは続いて第二第三の方策が講ぜられると言われておるのでありまするが、只今まで承わつておりまする内容措置におきましては、遺憾ながら全般を通じまして聊か政府の食糧政策は成り行き的な対策ばかりで、拍子抜けの感が少くないのであります。又その実行性と効果につきましても、聊か疑問を有するものがあるのであります。固より経過的当然の措置といたしましては、麦、じやが芋の供出対策、輸送対策、配給の公平化及び副食調味品の増産配給措置、並びに乳児食糧の計画及び配給秩序の確立等、その実現と実行を幸いに得ますればこの上もない仕合せと存ずるのでありますが、これだけでは断じて現下の食糧不安は打開できません。何を申しましても現在の食糧問題収拾の中核をなすものは、供出未了の分のみを追いかけるような手段のみでは根本的な解決はでき難いのであります。先程も申上げましたる通り、金さえ出せば得られる、物さえ出せば得られるという、供出完了後尚流通いたしておるこの食糧に対する非常特別な緊急措置が講ぜられない限り、現下の食糧問題解決はなし得られないと確信するのであります。即ち農林大臣が既に御指摘になつて、陛下にお答え申上げましたるその通り、正規のルートに乗らない全國莫大な横流れの食糧を把握いたしまして、これを正規のルートに乗せまして、これを以て遅配を解消する抜本且つ徹底的なる緊急措置を講じますることが、先決問題中の先決問題であると思うのであります。更に最も政府の御指摘せられるところでありまするが、全國民共に苦難と乏しきに堪ゆる同胞協力一致の精神を以て、生産者消費者を問わず、一列に一体に食糧消費の配給の凸凹を是正し、その品質の不公平を至急平均化することが、尚お且つ重要でなければならんと信ずるのであります。尤もこれには根本的な需給差引き操作上の組替え輸送とか、或いは公選知事の最近顕著な動向でありまする狭量な自府縣ブロック化の苦々しき態度に対する操作指示力の徹底いかん等、多少の問題があるとは考えまするが、政府はこの際断乎たる方針を以て、これらが是正断行を要望いたしたいのであります。ここにその決意の程を農林大臣にお尋ねいたしたいのであります。併しいずれに致しましても、根本問題は國民殆んどと申していい位、現に政府の配給以外の食糧で配給量以上の食糧を、つまり大体三合位なものはあの手この手で、惨めな苦労はいたしますけれども、とにもかくにも現に食うておる嚴然たるこの現実の上に立つて、その原因と、これに伴う対策を至急衝くべきであろうと考えるのであります。然らば何故政府の管理米以外にかくの如きものが多数横流れ、闇流れいたしておるかという問題でありまするが、元来旧國家総動員法を背景として多くの場合運営され、又戰時統制の観念を根幹とされておりまする現行食糧管理法の統制法規には、先ず生産作付統制権がない上に、作況、収穫及び消費加工等の調査統計と、その機構の不完全と無権威とになりますることなどから、とかく実情收穫数量の的確なる把握ができませず、更に價格決定の綜合樹立性もありません等のことから。常に生産経済を無視せる供出價格並びに供出割当の不公平等の諸種の欠陥が積り積つて、かてて加えて一般財政経済の膨張変化に伴う機動性の欠除等から、その法律は刹那々々の継ぎ足しだらけでありまして、かくして現在に至つておりまするこの食糧管理法の欠陥は、最近それを非常に露呈して参つた感が深いのであります。従つて毎年作付反別、作柄予想、実収穫、生産價格、供出價格及び肥料、農必物資の價格並びに配給の問題から、或は還元配給問題など、論議紛糾は絶え間なく起りまして、今や到底本法だけの独自の組織と力だけでは、その供出割当の権威ある実践を遂行いたします上に、余程の難澁且つ矛盾を来しつつあるのでありますが、農林大臣並びに和田國務大臣は、この継ぎ足しだらけの笊のやうに漏り易い食糧管理法に対し、至急改正の御意思がありますかどうかをお尋ねいたしたいと存ずるのであります。こうした結果、この間に処しまして、とかく問題の多い生産農家の立場といたされましては、概ねその自営的措置といてしまして現われておりますのが、即ち現在の供出意欲がとかく積極的にならないというまざまざとした事実となつておるのであります。
 固よりこれにはその他いろいろの理由もありましようが、第一に現在の政府の食糧買上價格では、農家といたしましては再生生産経済が償えない。第二に、供出割当の方法を生産と農業経営の実態に応じた公平な方法でやつて貰いたいのである。或いはその割当に対する改正要望、各般の不平不満、第三に、肥料及び農必物資がマル公で手に入らない。第四に、還元配給に関する政府に対する不信頼、従来の政府公約に対する不履行の不信頼など、その他いろいろ農村政策に対しまする欠陥、不平から、政府のやることに信頼が置けない等の結果から、多数の農家の中では大体次のような措置が必然的に講ぜられておるものと信ぜられるのであります。即ち第一に、作付反別の数字報告を或る程度下目に報告いたしておるのではあるまいか。
 第二に、反当り收量及び実收穫数字の報告にも、一定歩合の手控えが加えられておるのではあるまいか等、以上の方法によつて生じて来まする全國農村の別途食糧は、年間を通じまして米麦、芋類、雜穀等を総計いたしまして、優に二千万石は下らないとの観察が有力であるのであります。然らばこれをいかなる方法で処置していられるのであろうかと観察いたしますると、先ず第一に農家といたしましては、肥料及び農必物資の購入代償といたしまして、再生産必要上の物交用として放出せるもの、その二千万石の中約四〇%、即ち八百万石、第二に農家の政府割当量以外に、増産用としての自家消費及び縁故贈與等、或いは還元配給の遅配又は不履行の身代り用として備蓄せんとせられておるものが、その約二千万石の中の約二〇%、即ち約四百万石、第三に再生産上の経済補填用乃至は農業経営の営利観念等による放出がその約二五%、即ち約五百万石、第四に菓子、濁酒及び加工用として流用せられておるものが約一五%、即ち三百万石、この合計二千万石などと、こうした処置がせられておるものと推定されるのでありまして、以上の状態から、政府の割当供出量以外に実際農家の手から第三者乃至直接消費者の手に流れておりまする主要食糧の量は、即ち米麦、芋類等を合しますれば、一箇年後に一千五百万石は下るまいと推定されるのでありまして、この正規のルート以外に流通されておりまする莫大なる食糧に対する処置が、現在一番大きな問題と存ずるのであります。尤もこの数字は的確に統計したものではありませんが、併し仮に全國五千余万人の消費者が、政府の配給量でありまする二合五勺以上、別に一人当り一日五勺、つまり米換算の三合平均を食べておるものといたしますれば、一箇年約九千万石に相当するのでありまするから、全般の実情から見まして、その他の消費を合算するが優に一箇年一千二百万石内外は、配給生活をしておるこの消費者だけでも、別途に政府の配給以外に食つておるということは、世間一般の日常廣く体験せる事実であります。
 以上の観察はもとより私の余程内輪に観察いたしておるところでありまして、恐らく政府当局の御観察も同様であろうことを確信いたすのであります。ここにおきまして、私はこの民衆生活苦難の表裏に徹せられております片山内閣が、この事態と趨勢を把握認識せられまして、この際一切の理屈と障碍を超越いたしまして、一大勇断を以ちまして、この供出完了後の米麦、芋類一切の主食に対し、適切且つ実行性のある組織を機関を以ちまして、即時政府の所有の物資の一部とも抱き合わせまして、この農家の節約と義侠心による余剰販売食糧を恐く政府の統制の下で集荷し、その價格は生産者と消費者等の相互協定によります方法か、或いは相談價格で特別質入をするか、いずれの方法によりましても、この金さえ出せばある食糧、物さえあれば出る食糧を、時價協定で統制集荷をする方法を採りますれば、恐らく七月から十月末までには、優に三百万石以上の集荷は必ずやでき得ると確信を有するものでありまして、只今國民の不安といたしまする十月末までの需給不足額二百三四十万石は、楽にカバーし得るのでありまして、この悲惨な遅配にあえぐ飢餓民衆を救済するの一手は、実にこの法律と理屈を超越いたしました人民救命の特別食糧政策を断行すべきでありまして、この方法以外に現下の遅配解消の方途は断じてないことを確信するのでありまするが、これに対しまして農林大臣並びに和田國務大臣はいかなる措置をとられんとしておられますかをお伺いしたいのであります。もとよりこの方法を断行する上におきましては、先ず第一に、それだけの食糧を果して農家が節約や経済上の観点から出してくれるかどうか。或いは又果してそれだけのものが産地にあるであろうかどうかの問題でありまするが、この点につきましては、先程私が申述べましたように、正規のルート以外に全國都鄙を通じて流れておりまする食糧は、我々の日常生活におきまして、百も二百も千も万も、全國民毎日ひとしく実生活において深く認識体験せる事実でありまして、政府におきましても後で申上げまする縁故米制度において、あの非常に複雑と制約された上におきまして、而も無料贈與を原則とせる集荷の見積りでありましても、殊に米のみに限つておりまして、尚七月十日から八月三十一日までの二箇月足らずの短かい期間においてすら、およそ百万石近いものが予期されておるとの観察から推しましても、政府は私の申上げました数字以外に、この正規のルート以外の食糧が、方法いかんによつては集荷できるではあるまいかという自信と目算を有せられるものと存ずるのであります。ましてや報奨物資を抱き合しての農家との相談價格で買上げるといたしますれば、而も米に限らず、麦、芋類、雑穀、粉等を挙げて一切の主食糧を集荷するといたしますれば、十月末迄の四箇月間に、優に三百万石以上は易々と集荷でき得るものと確信するものであります。ただこの場合政府の取られんとする経済再建の、インフレ防遏及び物價と賃金の悪循環に一層の拍車をかける懸念と、もう一つはその相談價格又は時價買入れによる消費者の経済上の負担を、政府が全額負担するか、或いは消費者が負担するのかの問題もありますが、インフレ問題にいたしましても、また物價並びに通貨の問題にいたしましても、政府が今回の緊急食糧対策の措置だけでは、殆ど食糧救済は至難とされておるところの票結果の方がむしろ危険率が多く、且つ悲惨な恐ろしい事態を招来すると懸念いたすのでありまして、農村の金融統制には特別の方法を講じますれば敢えて至難ではありませず、又消費者経済の負担にいたしましても、仮に政府五〇%、消費都道府縣二五%消費者二五%といつたような負担割合を勘案いたしますれば、消費者の負担は一升二三十円位までの程度で、政府の配給以外の食糧によりましてこの補給ができ得ると思うのでありますから、難中の難事といえども、敢えて絶対不可能の問題ではないと信ずるのでありますが故に、是非この政策を断行せらるべきであろうと存ずるのであります。又供出完了農家と然らざる農家との場合、或いは大農、小農、その他麦、芋地区農家等との関係に、或いは多少の不公平の生ずる虞れはありますが、私は、これに対し、農家の各位に対し、十月迄の暫定的緊急措置として、この同胞救援の國難打開の不可避の方策と致しまして、暫時御辛抱をひたすら懇請いたしますれば、傳統の友情と祖國同胞愛に燃える我が尊敬する農家各位は、必ず襟度を示されまして御協力願えるものと付度し得るのであります。これに反しまして、我々消費者民衆五千万人は、実に昨年度におきましても多数の遅欠配の棚上げをされて、見返えられることなく、置いてけぼりを食いまして、又今日六月末迄の現在におきまして、全國主要消費都道府縣は、北海道の百日を筆頭に、その他平均十数日の遅配で、心身全く消耗その極に達しておる上に、更に七月以降十月末までに二十日に亘る遅配の虞れあるこの悲惨な食糧不安の下に、息絶え絶えの地獄絵のごとき悲痛なる消費者のこの事実に処しまして、暫定的でありまする生産農家各位に対する多少の不公平や、理屈や、法規のとかくに拘泥することなく、この際適切なる処置を講ぜられんことを敢えて農林大臣に重ねてお願いする次第であります。要は非常対策は非常対策らしく、従来の官僚気分的法律万能の食糧政策に陥らざるよう、実情把握に重点をおかれんことを切望する次第であります。
 次に縁故米制度の問題でありまするが、これによつて少しでも生産地より縁故米補給を得んとしておる努力に対しましては、勿論敬意は表するものでありますが、この縁故米制度は果して政府は厳密なる方策を採るのか。ソフトな方法を採られるのでありますか。(「後がつかえておるぞ」と呼ぶ者あり)尚私は大変恐縮いたしましたが、政府は國民食糧の根本的方策といたしまして、三合配給の用意、準備を新食糧年度で進められておりますかどうか。或いは来るべき講和会議に対しまする食糧條約的な食糧確保の特別方策を講ぜられておりますかどうか。或いは自由貿易に対しまする見返り輸入品の食糧をできるだけ南方米、朝鮮米に限定されまする方法を講じて戴けまするか。
#10
○議長(松平恒雄君) 時間は三十分でございます。既に時間は越えておりますから御注意いたします。(拍手)
#11
○岩木哲夫君(續) 或いは食糧対策と警察行政との関係につきましてお伺いいたしたいと存ずるのであります。
   〔國務大臣片山哲君登壇〕
#12
○國務大臣(片山哲君) 只今岩木君より、昨日の吉川君の参議院の政治的構成、性格等の点についての私の答弁について重ねてお尋ねがありましたので、お答えいたしたいと思います。
 昨日吉川君のお話は、一方的なお話のように伺いましたが、二院制度というものはそれはお互いの関係でなければならない。二院制度の妙味を十分に発揮して貰いたいという趣旨からお答えしたのであります。特に我が國における参議院は衆議院と違いまして、選挙の関係、或いは解散のないこと、又任期の関係等におきまして、十分特色が発揮せられると思うのであります。どうか諸君は参議院の特色を十分に発揮して戴いて、我が國議会政治の権威を高めて戴きたいと思うのであります。そうして二院制度の特質、二院制度の持つ妙味を十分発揮して戴き、参議院と参議院との関係を密にして戴きたいということを願つておるのであります。その意味においてお答えいたしたのでありまして、決して参議院を軽視するとか、或いはその機能が薄いものであるとか、こういうような意味でお答えしたのではないのであります。(「そんな答弁は駄目だ」「静かに聞け」と呼ぶ者あり)この意味におきまして、我が憲法及び國会法に定められておりまする二院制度なるものは、お互いの関係で、お互いに行き過ぎ或いは過ちを是正し合つてこそ、初めて憲政の妙味を発揮することができるということを固く信じておりまするから、その点を以て御答弁に代えたいと思う次第であります。(拍手)
   〔國務大臣平野力三君登壇〕
#13
○國務大臣(平野力三君) 岩木君の御質問の第一点は、非常に長期に亘る遅配地區においては、これらの人が生活をしておるのが不思議ではないかというような点を中心としてのお尋ねでありまするが、現在率直に申しますと、政府のルートによつて配給を受けて生活をいたす部面と、何がしか政府のルート以外の手によつて食糧を得ておるところの生活様式があるということは、是認せざるを得ないと思うのであります。政府といたしましては今後あらゆる努力を傾倒いたしまして、少くとも主食は完全に政府ルートにこれを乗せ、而して遅配欠配をなくするということの方針については、極めて断乎たる決意と、これに対して如何なる困難があつても日本の食糧政策をこの線に持つて行くという努力は、決して惜しむものではないのであります。(「当り前だ」と呼ぶ者あり)唯この点に関しては、具体的には種々困難なる問題があるのであります。今日唱えて明日行われるところの問題ではありませんので、我々といたしましては、種々なる計画と施策の上に立つて、この方面に持つて行きたいと考えておるのであります。
 第一の御質問は、政府は食糧政策を成り行きに任せて、時には計画遅配になつてもしようがないのではないかというように見ておるのではないかとお問いになりましたが、決してそういうことはありません。我々といたしましては、この米穀年度内において何らかの方法によつて打てるだけの手はあらゆる手段を盡して、この遅配欠配をなくするということについては、閣僚全部この点に関しましては、あらゆるその省の立場において全力を傾倒するものであると考えて戴きたいと思うのであります。(拍手)このことにつきましては、極めて我々は厳粛なる気持ちを以て、決して食糧政策を成り行きに任せるというようなことはなく、あらゆる手段を考えてこれを打ち盡すということを御了解願いたいと思います。次に遅配の平均化の問題についてお問いがありましたが、これはもとより或る地方においては米ばかり、或地方においては粉ばかりと、こういうようなことはなるべくなくするようにいたしまして、仮に遅配が継続いたしておりまする間においても、でき得る限りこの平均化を図るということは当然でありまして、現にこの問題に関しましては、今月一日より今日に至るまで三日間全國の経済部長会議を招集いたしまして、その対策を現在練りつつある状況であります。
 最後に岩木君は食糧管理法の不備をお説きになりまして、将来この供出制度及び現在の食糧危機突破に対して如何なる方法を採るかというお問いと共に、岩木君の御専門でありまするところの食糧問題の立場から、屡々具体案をお述べになりましたることは、誠に私共といたしまして、その専門的なる御意見を深く傾聴した次第であります。このお述べになりました細かい詳細なる問題に関しましては、近く政府において農業生産調整令を提出いたしますその時に、この委員会において岩木君の御意見に対して逐條一つ御答弁をいたし、又岩木君の御意見のあるところを十分尊重して行きたいと考えておるのであります。
 最後にお述べになりました現在の縁故米制度において、果して食糧危機は突破できるか。或いは政府といたしましては単に現在の公式主義に囚われることなく、如何なる方法でか、この難局を突破すべしという激励の御演説に対しましては、政府といたしましては大いにこれを傾聴いたしまして、少くともこの十月三十一日までの危機突破にあたりましては、単に食糧管理法の規則がこうであるとか、従来の機構がこうであるようような、そういうことのみに拘束さるることなく、政府といたしましては相当大胆なる政策をとりまして、この難局を突破いたしたいと斯様に考えておるのでありまして、この点何卒御了承願いたい、残余の問題は委員会においてお答えいたしたいと思います。(拍手)
#14
○議長(松平恒雄君) 一松政二君。
   〔一松政二君登壇、拍手〕
#15
○一松政二君 新憲法は個人の自由と尊厳を基本とするのであります。そうしてその基本の上に民主主義の原則を打立てたものであります。この民主主義の原則は、政治上においては勿論、経済上においても実現せられてなければならないのであります。その実現のためには、経済面では、企業の中においては経営者も勤労者も相互の人格を認め合い、正義と寛容を以て相携えて産業の隆昌に努力することであります。同時に現在の過渡的な経済危機状態を脱却した暁には、民主主義の根抵たる私的企業の経済活動の自由を回復することであります。而して人類進歩の源泉たる自由なる個人の創意を最大限に尊重し、個人の社会的、文化的な生活を向上せしむることが根本であります。この意味におきまして、民主主義こそは眞の意味における自由主義の実現であると信ずるものであります。
 然るに一昨日の施政方針演説におきまして片山総理大臣は、現内閣の指導方針は、高度民主主義を各方面に徹底せしめることであると、如何にも耳新らしい文字を使われたのでありますが、果してこれは具體的には一体何を指すのであるか。巷においては、或いはこれを博愛主義である。いや、そうではない。あれは強度の社会主義政策の実現のためのカモフラージュであるというふうに、幾通りにも解釈しておるのであります。そこで一体経済面における具体的な政策は何であるのか、殊に総理大臣は高度民主主義こそは産業を隆昌ならしめる基本であると言われた。これは一体統制経済の強化を指すのか。或いは更に進んで計画経済を強行しようというのか。この点を明白に具体的に御答弁が願いたいのであります。総理大臣は今回新しく高度民主主義という言葉を使われたのであります。これは考えようによりましては、いわゆる前の近衛総理大臣が使われた新体制とちよつと似通つておるのであります。同時に片山総理大臣は常に精神主義、或いは精神革命、或いは新生活運動、色々な精神運動を提唱せられておるのであります。日本人は由来非常にスローガン好きの國民であります。そこへもつて来て現内閣が又指導方針を持つたのであります。一体現内閣は誰を指導しようというのでありまするか。東條総理大臣でも或いは指導原理とかいつておりました。片山さんが東條総理大臣や近衛さんのような方とは思いません。頗る民衆的な、デモクラテイツクな方であるということは、皆さん御承知の通りでありまするけれども、朝に立つた片山さんは東條総理大臣や近衛さんの言われたことと余り大した違いはないという感じを皆が持つておるのであります。(拍手)(「その通り」と呼ぶ者あり)この点につきまして片山総理大臣の抱く令の高度民主主義という言葉を、もつと具体的に明白に國民に分るように御説明が願いたいのであります。
 更に総理大臣は経済危機の三代原因を挙げられ、これがそれぞれ互いにからみ合つて経済を悪化せしめておる。そうして経済の立て直しをするためには、いわゆる物資の流通秩序を確立して、新物價体系を作つて、これを堅持する。これがいわゆる経済立て直しの根本であるように考えられるのであります。
 而して現在の公定價格が既に生産を阻害しておると緊急対策の中には書いておるのであります。それはどういうことであるかというと、これまでその変化に應じて業者から度々陳情があるのも拘わらず、公定價格の変更を怠つておるのであります。(「誰が怠つたのだ」と呼ぶ者あり)それ故に今回は思い切つて新物價体系を作り上げたつもりでも、いつ又これが生産を阻害せぬとも限らんのであります。世の中は時時刻々に変化をいたしまして、一波は万波を呼ぶことは御承知の通りであります。好むと好まざるとに拘わらずインフレの原因は随所にあるのでありまして、いかに安本長官の頑張りが強くても、物價の変動を据え置かんとすれば必らずそだけの弊害が起こるのであります。物價は必ずしも上がるばかりではないのであります。デフレの傾向も相当に強いのであります。下がる方も相当持つておるのであります。今日の段階においては、公定價格制度に執着することそれ自体が経済破綻の原因をなすに至るのであります。それ故に私はこの際断然公定價格制度を廃することが、却つて経済のエクイリブリユームを確保する。このエクイリブリユームが経済に一番大切であります。これがなかなかむずかしいのであります。資材が政府の計画によりましても、既に公團制度と切符制度の運用によつて固く枠の中に嵌められておるのでありますから、公定價格を廃止しましても物が買占められる虞れはないのであります。恐るるところは物價が暴騰しないかということでありますが、今日公定價格を布いておりましても、公定價格以下の商品は幾らでも巷にあるのであります。若し物價が上るとすれば、それだけ上がる原因があるのでありまして、無理に押し付ければ切符に闇値を呼ぶようなことになりまして、今日に見るいわゆる闇取引が起るのであります。それで私は公定價格の代りに峻厳なる暴利取締令を布いて、物價は経済の自然の自律作用に待つた方が、どの位安定に役立つか知れないと考えるものであります。(「痴人の夢だ」と呼ぶ者あり)かくすることによつて、戦争以来非難の的であつたところの粗悪品も一掃することが出来るのであります。我が國の経済の立て直しは結局我々がみずから築いて行く以外にはない。どこからの援助も期待してはならんのであります。それは要するに総理大臣が常に言われる通り、血と汗と勤勉と努力によつて立て直しに邁進するのであります。それには各人が政府の掛け声を掛けずとも、みずからの心の奥底から働けるような世の中を実現してやることであります。決して新生活運動とか、或いは精神運動によりまして、そういうことは実現できるのではないことは、既に戦時以来のことで皆さん御承知の通りであります。で、そうしてインフレの坂を緩やかにして破局を避け、外國貿易の再開によりまして、そうしていわゆる商業のクレジット或いは國家クレジットを懇請しまして、そうして経済の安定をはかる。それまでは我々が働いて行く。働けるような世の中を作つてやることで、精神運動によつてこれは実現できんと思うのであります。
 この点につきまして片山総理大臣と安本長官は如何なる御見解を持つておられますか。はつきり御答弁を願いたいと存ずる次第であります。
 更に政府は食糧緊急対策のために、料理飲食店業者を今年の末まで休業せしむることになりましたが、これは食糧欠乏のため万巳むを得ざる窮余の一策であつたであろうとは存じまするが、休業の及ぼす影響は深刻なものがあります。事業主や従業員及びその家族、並びにこれに連なる一連の業者の中には、戦災者もあり、復員者もあり、或は引揚者もあり、寡婦、時によつては孤児もあるのであります。その数は全國を合して数百万人と言われております。組織労働者でない彼等、殊にかよわい女性の中には、既に相当困つておる者もあるということであります。
 政府は既にかくの如き弱い者いじめをしておるのでありまして、これでも人道主義と言われるのでありましようか。(「違う、違う」「もつと賢こいことをしやべろ」と呼ぶ者あり)朝に立つ者は声なき巷の囁きにも耳を蔽うてはならんのであります。東京は閉店後一箇月、全國各地は来る五日から実施するとのことでありますが、政府は既に東京都のかくの如きものに対しましていかなる処置を取つておるでありまするか。(「闇屋の手先か」と呼ぶ者あり)又全國の明日から休業になる者に対していかなる救済の手を差伸べておられるのでありまするか。かくの如き対策がなくして若し遽々然とお遣りになつたとすれば、これは人権蹂躙も甚だしいのであります。(笑声起る)非常措置を取る場合に、政府は何故にかくのごとき重大なる事項を議会にお諮りにならなかつたのでありましようか。これを内務省の恐らく一行政命令か何かでやつたのではないかと存じますが、かくのごとき非常措置はこの國会の初めにおいて(「もつと勉強しろ」と呼ぶ者あり)そうして國会の同意を得てやるべきが至当だと存ずるのであります。この点につきまして内務大臣と米倉國務大臣の御答弁が願いたいのであります。(「米倉ではない」と呼ぶ者あり)米窪國務大臣であります。
 更に総理大臣は、金融機関は飽くまで産業の奉仕者であつて、産業に優越せるがごとき観念に陥らざるよう自粛自戒して産業の再建に協力すべきであると、特に一段声を張り上げて強調されておりまするが、(「その通り」と呼ぶ者あり)金融機関におきましては何か悪いことでもしておるのでありまするか。これは実に重大問題であります。総理が國会劈頭の施政方針演説の中に強調せられてありまするから、國民の全部、殊に銀行の預金者は固唾を呑んで聞耳を立てておるのであります。今日の銀行にて自己の資産を保有するものは実に少いのであります。全部が預金者の金であると申しても差支えないのであります。私は多数の人の大切な財産を預かる金融業者が、戰時中のように無茶苦茶に貸附を強要せられ、而も戦後は補償を打切られましたことによりまして、ひどい目を見た者は、銀行或いは保険業者ではなくて、実に預金者及び各保険の加入者、即ち國民一般大衆であつたのであります。(拍手)若し又統制強化によつて、半命令的な回収見込不確実な融資や、國営、國官の事業又は赤字公債の引受けを強要せらるるようなことがあつては、銀行に金を預ける人が少なくなりませんか。或いは預けておる者が引出しはせんかということを恐れておるのでありまして、政府の企図するいわゆる貯蓄増強どころでなく、資本の蓄積に努める人も少なくなり、換物思想に拍車をかけ、インフレ激成の原因になると思うのであります。いかなる場合においても銀行の資産は健全であることを要しまして、かりそめにも預金者に不安を與えてはならんのであります。その信託財産たる銀行の資金を簡単に貸出してはならんと信ずるものであります。それ故に特に自粛自戒をこの席上で、而も國会の劈頭に求められた片山総理大臣は、金融業者に何か起つたのか。具体的な事実を挙げてこれは御答弁を願いたいのでありまして、この金融業者は産業に奉仕する、或いは従属すべきものである。こういうことで金融の責任が盡せますか。これは大蔵大臣に明白なる御答弁をも重ねて願いたいのであります。
 政府は更に緊急対策第八におきまして、私企業がその本来の性質上、過度の危険の虞れその他の理由によつて期待された成績を挙げ得ない場合には、その企業に対して必要なる管理を行う。こういうことを言うておるのであります。これは態の好い國有、國管、國営、これ等一連のいわゆるイデオロギーを行わんとする伏線であるか。或いは又國家なら幾ら損してもやれ。資材や資金は自由であるというのであるか。何でもかんでも國家でやれば宣いという思想でありますならば、これは全体主義的な考え方であると存ずるのであります。
 更に又緊急対策案の前文におきまして、「まじめに働く者同士が今までよりはもつともつと直接に繋がり合う体制を生み出すことによつて、窮乏の生活もそれだけ堪え易いものになることができよう」ということが書いてあるのでありまして、それが八の二項に移りまして、いわゆる「勤労者で組織する生産統合的な企業形態を制度化し…」ここに現れておるのであります。「その助長に努める」とある。その「生産組合的な」と書いておるのでありまするから、まだ、その形態もはつきりはしておらないと思うのであります。これは見様によつては一種の生産管理に等しいようなものでありまして、緊急対策に織り込む必要が何処にあるのであるか。そんなものを制度化せずとも、世の中に必要なるものは自然に放つて置いても栄えて来るのでありまして、若しそれが育たなかつたならば、それ自身はこの世の中に用がないのであります。でありまするから、これを緊急対策に盛つたということが非常に重要なのでありまするから、殊にこれには一連のイデオロギーが必ず伏在しておるものと考えるのであります。すこぶる事は重大なのでありますから、私は総理大臣と、それから芦田外務大臣と、それから商工大臣及び和田安本長官に、もう一尊重ねてこの問題を開明していただきたいと存ずる次第であります。
 次は労務の配置転換について伺いたいのであります。一体配置転換ということはどういうことを意味するのでありまするか。若し同一企業内における配置転換を意味するのであるといたしますれば、私の企業では今日までかくのごときことを怠つておる所はない。必ず必要なだけの転換をおこなつておると信ずるものでありまして、若し配置転換が端的に人員の整理を意味するということであれば、これは労働組合と國体協約の関係もありまして、簡単に決行し得られるものではないと存ずるのであります。企業が過剰従業員を抱いておる程不健全なものはないのでありまして、これをどうにかせなければならんというのは、これは國民の常識であろうと思うのであります。而も中小企業方面においては人員を求めておる所がかなり多いのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)そうして一方には非常に余つた過剰従業員がおる。問題はそこにあるのであります。凡そ計画経済に労務配置の計画がないことは致命的ではないかと思うのであります。資材と資金と價格を調整しまして、それによつて一定の生産量を予定しながら、その原動力であるところの労務を計画的に配置せられず、単に職業紹介所式の自由経済では、凹凸を矯正することはできないのではありませんか。現に過剰労働者があり、一方では足らんということを示しておるのであります。で政府は労働基準量を定め、これに応じて労務の的確、不的確、或いは過剰であるか不足であるか。かくのごときことを計画的に調整する。配置転換をする意思があるのか。若しないとすれば、的確なる計画的な労務配置を行わずしていかにして計画通りの生産物が得られるか。この点につきましては安本長官並びに米窪國務大臣に御答弁をお願いする次第であります。
 次に農林大臣にお尋ねしたいのでありますが、これは昨日も今日も度々質問が重なつておりまするので、私はこの点につきましては一二の重複しない部分だけを申上げることにいたします。私は昨日もここの席で申されましたように、人間のすることには限りがあると思うのであります。これをいかなる法律や、いかなる規制を以て、或いはいかなる警察力を以てしても、人間の個々の行動まで一々指図することはできないのであります。若しこれをするというのでありますならば、これはいわゆる全体主義の最も強い秘密警察を持ち、秘密探偵を持つて、そうして國民の相互猜疑心とお互いの監視によつてこれを持つて行くというところまで徹底せざる限り、到底見込みはないのであります。いかに経済を、或いは法律を事細かに企画しましても、これには限度があるのであります。で、食糧問題もここが重大なのであります。どうしても或る程度供出せしめましたならば、それから先は人間の自由意思に委したのが一番いいのであります。即ち供出後の米麦の自由販売を認めることが一番適切なのであります。この点につきましてはこれを断行するだけの考えをお持ちになつておるかどうか。それからもう一つは、いわゆる供出制度の改正についてであります。今伺つておりますれば、これから更にやろうとしておるようでありまするが、今年度の米はもう既に始まつておりまして、田植はもう九州も大方今頃は済んだ頃だろうと思うのであります。今が大切なのであります。今彼等に基準量を示して、彼等にこの秋には幾ら幾らの供出がくるぞ。君の所は精出して作つて置かなければならん。これは、こうすればそれ以上のものは家の者が取れると、こういうことになるのでありますから、若しこれからやるとすれば、このでき秋には間に合はないことになる。これは重大なものでありまするから、このでき秋に合うようになつておるかどうか。或いはどの位進歩しておるのであるか。これを私は伺いたいのであります。
 それから生鮮食料品と生果物であります。これはこの間野菜を統制強化して二十日間、東京と殆んど蔬菜飢餓が来たということは皆さん御存じの通りであります。これを更にはつきりとやるのかやらんのか。やるならばやる。やらんならばやらん。どつちかはつきりしてしまつた方がいいのであります。私はやらない方が一番いいと思うのでありますが、農林大臣の御意見を聴きたいのであります。
 それから生果物であります。果物であります。未だ以て配給として売られたことは一度も経験がないのであります。最近におきましては、これは一体統制しておるのか統制しないのか。統制しておるならば統制しておる。或いは統制しないならば統制しない。自由に任せておるのだ。この点をはつきり國民に認識させる必要があるのであります。
 それと先程問題になりましたのは農地調整法の問題であります。第二次農地調整法は既に着々進行しておるそれは誠に結構なわけでありますが、ここに非常な犠牲者が現れておる。いわゆる地主、マルクスの言うキヤピタリスト、これはそのまま主張する人に私は返還さして戴きますが、いわゆる二反三反の地主或いは戦災者、復員者、引揚者或いは教員が他郷に出て教鞭を取つておつたために家にいなかつた。これらの一連の者が不在地主となつて、自分の小作料は今日でも一石七十五円そこそこ、若し土地を買上げられれば、たしか一反歩一千円前後でないかと信ずる次第であります。政府は既にあらゆる方面において、インフレであり、物價高である或は今後ますます更にこれが進行し或いは破局に陥るかも知れないといつて憂えておるのであります。こういう状態を見ておりながら、地主からこれを過去のあの價格でそのまま買上げてこれはよろしいと思うのでありますか。私はマルクスが旗を高く揚げて、労働者よ団結せよと言つたのは、これは労働者が非常に弱い立場にあつたからであります。政府はいかなる場合でも…私は左様な信念においては社会党の諸君と絶対欠くるものではないのであります。私も百姓の忰であります。私は十九才まで田の草を取つた者であります。左様な次第でありますから、私が自由党の者のでありますからといつて、決して料理屋や或は地主や、そういう者の味方をしておるという見方でありますならば、これは根本的に変えて戴きたいと存ずる次第であります(拍手)(「やめてしまえ」と呼ぶ者あり)私は社会正義の観念と新憲法の精神によりまして、そうしてその点につきましてこれを救済する方法を考えているかいないか。こういうことについてお伺いしたいのであります。(「時間がない、やめろ」と呼ぶ者あり)
 それからもう一分間…(「長くやれ」と呼ぶ者あり)私は商工大臣にお伺いしたいのであります。今日中小工業が我が國の産業の中核をなすと言うことは随所に言われておるのでありますが、経済緊急対策の中に中小工業に対して一言半句ありますか。全國に中小工業者は…あれだけの緊急対策を立て、而もイデオロギー的なまだ形の「くらげ」か何か分らん生産組合的なものを取り上げて、そうしてそれを制度化しようということがちやんと一項目に揚げてあるにも拘わらず、中小工業に対する対策について一言半句も触れておらん。(「ヒヤヒヤ」と呼ぶ者あり)金融の面においても傾斜生産とか重点産業とか言つて、いわゆる戦時中の行き方そつくりそのままの行き方を今日しておる。そうして中小工業者、特に商業者は殆ど闇屋の巣窟のように言われ、今日ほど商業者のいじめられておることはないのであります。殊に中小工業者でありまするから、これを担当されておりまするところの商工大臣は、何故にあの経済緊急対策の中にこの商工業者の問題を言わなかつたのでありまするか。この点につきましては私ははつきりした御答弁を願いたいのであります。これを以て私の質問演説を終ることにいたします。(拍手)
   〔國務大臣片山哲君登壇〕
#16
○國務大臣(片山哲君) 只今の御質問の中、私に関する部分についてお答えいたしたいと思います。私の唱えました民主主義の徹底、各方面に高度なる民主主義の徹底を図りたいということにつきまして、それは東條或いは近衛時代の新体制運動と同じではないかというような御意見がありましたが、これは非常に迷惑でありまして、根本的に違つておるのであります。全体主義であるとか新体制運動は、自分で決めまして大勢の人について来い、ひつぱつて行くというような意味を以て強制するのでありましようが、私共の考えておりまする民主主義の徹底はそうではなくして、國民全体の中に澎湃として上つて来るべき運動でなければならないと思つておるのでありまして、政治を担当しておりまする政府は施政の方針を約束するのであります。こういう方針で政治をするのである。政治に対する根本的な心構えを明らかにいたしまして、さてこれを中心といたしまして一切の政策を立案し、それを行う。実際政治を担当して行くのである。こういう建前でありまするから、やり方が全然違つておるのであります。又先程一松君は、自由を與えなければならない。自由が目的でなければならない。こういうことを言われました。なるほど國民に自由を與える。人間の生活の喜びでありまする自由を獲得するということが終局の目的でなければならないのでありまするが、現在の社会において果して國民全般の中に大多数の人々がこの自由を得られておりましようか。得られていない。自由が少数の人に握られて、大衆は自由を獲得することができないということを公平にしたいというのが我々の考えであります。(拍手)その意味において、できるだけ分配を公平にして行かなければならない。分配の公正化を期さなければならないという意味において、自由を自力によつて獲得しておりまする人々に対して一時不自由を忍んで貰わなければならないと思うのであります。既に指摘されました農地調整法然りであります。農地調整法は地主に不自由を忍んで貰つて、小作大衆の耕作権確立をはかつて、そうして農地を改革し食糧増産を計画するのであります。又我々が計画いたしておりまする石炭問題につきましても、今日至上命令でありまする三千万トンはどうしても獲得しなければならない。掘り出さなければならない。それがためにはどうする方法が一番いいか、政府の考える方法といたしましては、國家管理案を以て行こうとする極めて現実的なやり方で健全なる方法を選んで行くのでありまするが、この國家管理案が本当に三千万トンを掘り出し得るの方策である。こういうことを信じてやるのであります。そのためには労働者大衆に働き易いような立場を與えて行かなければならない。企業家には不自由を忍んで貰わなければならない場合もありましよう。これらの問題を調節しつつ産業の発展を図つて行かなければならないと考えておるのであります。こういう意味を各方面に徹底せしめたい。家庭問題につきましても同様でありまして、憲法に謳われておりまする男女同権、夫婦平等の立場を明らかにするためには、今日の親族法、相続法には徹底的な改正を加えて、婦人解放の実を挙げて行かなければならないのであります。そのためには戸主を廃止するとか、或は夫の権利を制限する。こういう不自由さが出てくるのでありまするが、これも民主化のためには必要なることであると考えておるのであります。(拍手)こういう意味で、窮極の自由を與えるために今は計画経済をして行かなければならない。この計画経済を実行して行こうとする民主主義の徹底が、私共の考えでありまする高度民主主義であつて、政府その方針の下に政策を立て政治を行つて行くものであるというお約束をいたしましたのが、施政方針の演説であると御了承願いたいのであります。(拍手)金融機関につきまして、産業に奉仕し、産業に先行することは慎しんで貰いたいということを私は申上げました。今日産業の再開、産業の隆盛を図つて行かなければならないということは、最も祖國再建のために必要なる事項であります。こういう場合に金融が先行し、金融を中心として行くというようなことでは、到底産業の隆盛、産業の再開はできないのであります。産業発展のために、金融機関に携わる方々がこの意味を十分に体得して戴きたいと考えるのであります。その意味において自粛自戒を求めて、本当に祖国再建のために邁進して貰うという趣旨から申上げたのであつて、決して金融機関を粛視するとか或は軽視するとか、そういう意味で申上げたのではないことを御了承願いたいと存ずるのであります。その他細微に亘りまして御質問がありましたが、所管大臣よりそれぞれ説明、答弁することとなりまするから、この点も亦御了解を願いたいと存じます。(拍手)
   〔國務大臣芦田均君登壇〕
#17
○國務大臣(芦田均君) 一松君より私に御質問になりました最近政府の発表した緊急対策の冒頭の問題つきましては、同案起草の際に主としてその面に当たりました安本長官より答弁がある筈であります。政府といたしましては、この問題について共同責任を持つておりますから、安本長官の答弁を以て政府の統一したる見解と御承知願います。(拍手)
   〔國務大臣和田博雄君登壇〕
#18
○國務大臣(和田博雄君) 私に関しまする御質問にお答えいたします。第一点は、公定價格はやめたらどうかというお話でありますが、これは、一部分は只今総理から御答弁になりましたように、今の日本で経済自由主義を徹底的に行なう前提條件はございません。従いまして公定價格の制度をやめるという方策は取れないと思います。ただ今度の緊急経済対策に謳つて置きましたように、價格統制の実益のない雑品につきましては、これは物價統制というものをやらないというか、統制品目の整理をいたすということをやる考えであります。今まで公定價格の決定が非常に遅れましたのは、價格公定に関する根本的な方針が決まらず、又物價公定をやる前提條件になる一般の経済対策についての綜合的な施策というものが決まりませなんだ結果、色々の点で遅れて参つたのであります。今回はそれらの弊を一掃いたしまして、價格公定に対する方式については、工業品については原價主義を取り、農業品についてはパリテイ・システムによるという原則の点において、関係方面と十分な連絡を持ちましたが故に、今後は公定價格の決定というものは、即時に極めて敏速にできる態勢が整いましたことを御了承願いたいと思うのであります。勿論一松さんのおつしやいますように、経済自体が動いて行くわけでありまするが、公定價格の決定自体が早くありまするならば、その調節は十分できると信ずるのであります。
 それから第二点は飲食店の問題でありまするが、これは新らしい憲法の下で、まだポツダム命令の制度を置いて置かなければならないということは実際忍びないことでありまするが、これは今日の我が國の置かれておりまする特殊の地位から言つて本当に止むを得ないということを御了承をお願いいたしたいのであります。委任命令の性質上、國会の活動中でありましても命令を以て処置し得るのでありまするが、この点は法律上は許されておるところでありまするが、併し政府としましては、憲法の新精神に従いまして、國会の活動中にありましては、特別な事由が、例えば日限りその他特殊の條件のありません限りは、重要案件は極力法律の形を以て処理すべき方針であることに変りございません。飲食店のことは、只今の日本の食糧事情からその実施の時期は客観的に決つておりますし、又関係方面との関係もありまして、これをここにポツダム政令という制度によつて制定いたすことにいたしました点を御了承願いたいと存ずるのであります。その対策の中で失業問題等につきましては、これは一般的に失業対策については、米窪さんがお答えいたしまするが、飲食店に関しまする限りも、料理店その他が正当な旅館に変つたり、或は主食その他について何の煩らいもなく本当に更正して行こうという具体的にいいものがありますならば、あの條例の中にもありまするように、それは安本長官その他の許可によつてこれを許すという途も講じておるのであります。要は今の食糧の事情から言いまして、横流れその他闇の温床になるそういう点を拂拭いたしまして、國民の消費生活というものを公平にいたしたいという考えであることを御了承願いたいと思います。それから第三点は、生産組合というものがいかにもイデオロギーが背後にあるということでありますが、どういうイデオロギーであるのか具体的に御指示がありませんので、私からこの点については御答弁の限りでないと思いまするが、併し我々の考はこの乏しい窮迫した事情の下において國民が耐乏の生活をしまするならば、矢張り働く人達はもつと実際に繋がり合つて、或いは協同の生活組合運動であるとか、又生産面においても繋がり合つてお互いに協同の力でこれを凌いで行く。こういうことにいたしたいと考えておるのであります。生産組合を制度化するということは、只今合作社なる名目の下におきまして実際上各地において中小の企業が営まれておるのであります。それらのものを本当に働く人たちの生産組合として制度化して助長させて行きたいと、こう思うのであります。
 それから中小企業の点がちつとも触れていないということでありまするが、これはよく緊急対策をお読み願いたいと思うのであります。第八の一番しまいに、中小企業については、生産者を中心にした中小企業の共同施設というものを中心にして中小企業を助長をして行くとか、或いは輸出品その他生活必需品の中小企業については、技術の高度化、経営の改善を行なうとかいう対策が盛られておるのであります。ただ緊急対策を作りました時に、中小企業の問題を特別の項目として別にしなかつた理由につきましては、先般政党その他言論界の人たちにお集まりを願つて趣旨を述べました時に、私から一応の御説明をいたしたわけであります。それはあの緊急対策の個々の項目について、主として中小企業が重要な地位を占めまするものにつきましては、今後個々の点に亘つて具体的に中小企業の振興の策というものを採つて、これを國民の前に提示して実行に移して行きたい。こういうように考えておる次第でありますことを御了承願いたいのであります。
 それから労働力の合理的の配置転換なくしては生産が上がらないということは尤もの御意見と思います。併し労働力の合理的の配置転換を個々の企業において行なうということは勿論必要でありまするし、又國全体として労働力の合理的な配置ということは、これは我々が乏しいいろいろの資材資源を使つていきまする上から言いましても基本的な問題でありまするが、残念ながら只今の日本におきましては、イギリスその他と違いまして、そういう合理的な統計資料がございません。併し我我は今あるところの資料を基礎にして、長期の計画等におきましては十分そういう点を考慮しまして、日本の工業の将来行く途をはつきりと見透しをつけたい。こう考えておる次第であります。大体私に関しまする御質問についてのお答えといたします。(拍手)
   〔國務大臣米窪滿亮君登壇〕
#19
○國務大臣(米窪滿亮君) 一松さんから私に対する御質問は、大体において七日五日から実施される飲食店、料理店の向う六箇月間の休業によつて生ずるところの業者及び従業員に対する失業対策はどうするか。第二点は労務の配置転換に対するお尋ねでございます。
 第一の点につきましては、先程和田さんから御説明がありました通り、これは窮迫せる食糧事情の爲に採られた非常処置でございまして、それが爲に犠牲になるところの業者及び従業員の各位に対しては政府としても誠に同情しておる次第でございまするが、これは國務を遂行するための必要なる手段でございまして、六箇月後に事情が好転をしてそういう休業を続けて行くことの必要を認めない時になつたならば、再び認可を求めて来た時にはこれを許可する方針であるのでございます。問題は向う六箇月間これによつて失業する人をどうするかということでございます。これについては外食券の食堂であるとか、旅館であるとか、或いは喫茶店であるとかいうものについては、この際許可を申請すれば、それがこの法律の趣旨に背かないということが認定された時にはこれを許すことになつておるのでありまするから、若干の業者はこれに転業できるだろうと思うのでございます。従つて転業によつて従業員の若干はこれに使われることができる。又既存の喫茶店や外食券食堂の方へも若干の従業員は救われるだろうと考えておるのでございます。それでも尚吸収されない者に対しては、政府としては全國に五百四十何箇所の職業安定所がございます。又全國に四百三十箇所の職業補導所がございまするから、この五百四十箇所の職業安定所を総動員いたして、極力こういうことによつて出て来たところの失業諸君に対して職を與えることに努力したいと思つておるのでございます。又四百三十箇所に亘る職業補導所においてはこういう人たちに対して労務転換ができるような補導をいたしまして、他の職業に転業するように勧めるつもりでございます。尚且つそれでも吸収されない者に対しては、既に前議会において九十五億円というような予算を以て公共事業を起こしておるのでございまするが、これは飽くまでも事業という角度から見たものではございまするけれども、同時にやはり失業救済になると私は考えております。又将来政府としては、輸出の振興或いは電源の開発というような事業に相当の失業者を救済し得る見込みを持つております。又昨年公共職業安定所で以て取り扱つた成績によりまするというと、求職者が二百二十万人に対しまして、求人者はあべこべに三百万人という数字を示しております。これは勿論非常にアブノーマルな現象でございまするが、又これを以て一般を推知することはできませんが、そこには私は職を求める人のために、尚若干のそこに余裕があると私は考えておるのでございます。こういう意味合におきまして、政府は極力あらゆる施設を動員して、これらの気の毒なる失業者を吸収したいと思つております。尚それでも吸収できない人に対しては、現在三十五億円の予算を以て実施しておるところの生活保護法によつてその生計費を助けて差上げたいと、こういう具合に考えております。
 第二の労働者の配置転換のお尋ねでございまするが、この労務の配置転換を國家の企画においてやつたらどうかということについては、既に和田さんから御説明がありましたですから、私はこれを省きます。ただ私が一松さんに申上げたい点は、労務の配置転換が企業内においてはどうである。或いは國家的にどうであるという御意見がありましたが、拝聴しておりますというと、これは完全雇傭の問題をお尋ねになつているのだろうと私は考えております。今日の日本の経済を復興するためにはどうしても産業の合理化ということが必要であり、同時に労働者の生産性の昂揚ということが必要でありますが、この二つは共に並んで行かなければこの経済の危機を打破することは到底困難でございます。そこでこの産業の合理化に伴つて当然起ることは企業の整備であります。これを好むと好まざるとに拘わらず行わなければならないのであります。ここにおいて問題になるのは完全雇傭の問題でございますが、これは國家的な廣い意味から見ましても、企業毎の範囲内において考えましても、非常にこれは困難である問題と考えております。日本が今日のように資材が非常に不足であり、資金が拘束されており、施設も壊されている。こういう時に、労働人口が非常に多く、供給源が非常に多いのであるに拘わらず、これらを吸収する職場が極めて少ないという現状から見て、完全雇傭ということは、私はこれは理論としては非常に結構であるが、実際としては非常に困難であると思うのであります。従つてこの産業の合理化、企業の整備に伴つて起つて来るものはどうしても労務の転換をしなければならないのでありまして、我々としては極力職業補導所その他の機関を動員して労務の転換をすることによつて、その特定の労務に出て来た失業者を他の職場にこれを振り向けたいと考えておるのでございます。それでも尚且つ失業者が出た場合におきましては、先程飲食店、料理店の失業者に対する対策を申上げたと同じような方法を以て極力これらの気の毒なる人を救済したいと、こう考えております。以上簡単でございましたですが、私の答弁を終わります。(拍手)
   〔國務大臣平野力三君登壇〕
#20
○國務大臣(平野力三君) 供出制度を早く改正しなければ間に合わんではないかという御質問でありますが、この点に関しましては農林大臣就任直後より勘案をいたしまして、今日において相当準備を進めておりますので、この秋の米から大体間に合せたいと考えております。御指摘になりました供出後の自由販売制という問題もすこぶる重要な問題でありますので、一つの課題として検討の中に加えております。このことを、今日明確に自由販売にするかどうかということをお答えすることは出来ないのでありますが、この点は御了承を願いたいと思います。
 次に野菜の統制を撤廃するかという御質問でありますが、これは撤廃するわけには参りません。問題は権力主義によるところの統制ではなく、実情に即したところの統制によつてこの問題を処理して行きたいと考えております。
 次に農地調整法による農地改革を断行する途上の地主の問題がありましたが、これは土地革命の進行途上における地主の立場はもとより相当なる窮境でありますが。この点は我慢を願いたいと思います。但し地主の転業問題、将来耕地の百五十万町歩以上の開墾を行なつて、これらの土地問題は、単に現在の土地問題の解決点ばかりでなく、日本全体の土地制度を睨み合せまして、これ等の地主諸君に対しても十分お答えできるであろうと思います。簡単にお答え申上げます。
   〔國務大臣木村小左衞門君登壇〕
#21
○國務大臣(木村小左衞門君) 一松さんから内務大臣という御指名になりましたから御答弁をいたします。今回の飲食営業取締りの緊急処置令は内務省の手続きで行つたものではございません。先程安本長官から屡々御説明いたされましたごとく、ポツダム宣言の受諾に伴ない発するところの命令により政令の処置をいたしたものでございます。これ以上のことは申上げなくても…(「内務大臣の御署名があります」と呼ぶ者あり)内務大臣の署名がありますが、あれは便宜上共管になつておりまして、この政令はもともと食糧対策に基本して行なつたものでありまして、これは取締の方は内務大臣が行ないますけれども、主管となります者は、主なる者は農林大臣であります。それから許可の方につきましては厚生大臣の許可事項になつておりまして、この三者の共管でこれは発令いたした次第でございます。この第三條にちよつとありますように、「外食券食堂、旅館、喫茶店その他主務大臣の云々」とあります。この主務大臣云々とありますのはこういう見解によりまして、主務大臣が違います。旅館、喫茶店というようなものの許可認可は厚生大臣であります。料理店の許可は内務大臣が持つておりますが、これもこの度の政令によりましては、農林大臣の配給するところの許可がなければこれは許可ができないことになつております。その点どうぞ御了承を願いたいと思います。尚東京都が六月一日からこの政令を実行いたしますまでに休業いたしておりましたことは、どういう手続とどういうわけであつたかというような御質問があつたようでございますが、これは東京都内におけるところの当該営業者は、自粛いたしまして、自発的に営業を休止しておつたような次第でございます。簡単でございますが御答弁いたします。
   〔國務大臣栗栖赳夫君登壇〕
#22
○國務大臣(栗栖赳夫君) 一松さんに対してお答えいたします。元来金融機関と産業は、恰も車の両輪の如く、相助け相一体となつて、この難関であります企業再建整備、経済危機の突破ということをいたすべきものと信じておるのであります。従つて現在金融機関と産業との間には勿論十分の連絡協力があると信じますけれども、この経済危機突破ということは極めて重大なことでありますから、仮にもそれに拘わらず金融機関が上位に立つというような考えはみずから戒めなければならん。こういう趣意と解しておる次第でございます。
 次に昨日吉川さんの御質問に対してお答えを申したいと存じます。元来長期に亘る財政計画を立てまして、そうしてこれに沿うて進んで行かなければならんものであります。私も経済再建、この日本の経済安定ということが進みますならば、そういう線に沿うて参りたいと思うのであります。目下のところでは、いろいろ不明の事情その他がありまして、長期に亘る財政計画は立て難い次第であります。併しながら本年度の予算につきましては昨日申上げましたように、改めて追加予算を編成いたしまして皆様の御承認を得たいと考えております。その追加予算の編成に当りましては、科学振興に関する、科学教育の振興に関する点は尊重し考慮をいたしたいと存ずる次第であります。それから尚一言附加えさして戴きたいと思います。今朝の一新聞に、私が新円課税を徹底化するというような意味に誤まり傳えられておりますが、新円課税と私申したのではなしに、他の新聞にありますように、新円階級に対する課税を徹底する。こういう趣意でございますので、事が、誤りが重大と思いましたので、皆様の御承認を、御了承を得て置きたいと思う次第であります。(拍手)
#23
○小林英三君 議事の進行についてお願い申上げます。時間も相当経過したのでありますから、今日はこれにて散会、あとの質問は明日に延期されんことの動議を提出いたします。
   〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
   〔一松政二君「私は水谷商工大臣に」と述ぶ〕〔「許可しておらない、誰も」と呼ぶ者あり〕
#24
○議長(松平恒雄君) 小林君の本日はこれにて延会する動議に御異議がございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#25
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。本日はこれにて延会いたしたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#26
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。明日は午前十時より開会いたします。議事日程は公報を以て御通知いたします。今日はこれにて散会いたします。
   午後零時四十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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